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1964-03-19 第46回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会原子力政策に関する小委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十九日(木曜日)    午前十時十七分開議  出席小委員    小委員長 中曽根康弘君       菅野和太郎君    佐々木義武君       西村 英一君    福井  勇君       前田 正男君    森山 欽司君       渡辺美智雄君    石野 久男君       久保 三郎君    田中 武夫君       原   茂君    鈴木  一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   江上 龍彦君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   島村 武久君  小委員外出席者         科学技術振興対         策特別委員   三木 喜夫君         原子力委員会委         員       駒形 作次君         原子力委員会委         員       兼重寛九郎君         原子力委員会委         員       西村 熊雄君     ————————————— 三月十九日  小委員細田吉藏君及び河野正君同日委員辞任に  つき、その補欠として森山欽司君及び石野久男  君が委員長指名で小委員に選任された。 同日  小委員森山欽司君及び石野久男君同日委員辞任  につき、その補欠として細田吉藏君及び河野正  君が委員長指名で小委員に選任された。 同日  小委員久保三郎君同日小委員辞任につき、その  補欠として田中武夫君が委員長指名で小委員  に選任された。 同日  小委員田中武夫君同日小委員辞任につき、その  補欠として久保三郎君が委員長指名で小委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  原子力政策に関する件(日本原子力研究所に関  する問題)      ————◇—————
  2. 中曽根康弘

    中曽根委員長 これより原子力政策に関する小委員会を開会いたします。  原子力政策に関する件について調査を進めます。  去る二月十九日第一回の小委員会におきまして、日本原子力研究所現状並びに将来に関する問題点改革点等数項目について、日本原子力研究所及び原子力委員会当局に対し、それぞれの立場で独自の見解を文書をもって本小委員会提出するよう要求したのでございますが、双方より提出されましたので、まず本日は原子力委員会当局よりその概要について説明を聴取することといたします。原子力委員兼重君。
  3. 兼重寛九郎

    兼重説明員 ただいま委員長から御指名でございますので、一昨日提出いたしました「原子力研究をめぐる諸問題」についての原子力委員会からの提出書類につきまして、要点だけを御説明申し上げます。  目次にございますように、1の「国民生活の中において原子力の将来利用される方向とその産業構造への影響」から始まりまして、6の「改革諸点」まで、五十数ページにわたるものでございます。この中で、1の「国民生活の中において原子力の将来利用される方向とその産業構造への影響」と申しますことについては、私ここで御説明を省略させていただきたいと思います。そこで、2の「原子力日本における位置」でございますが、これもこれまでいろいろな機会にいわれてきておりますこととそれほど変わっておるわけではございませんけれども、ここに「位置原研」というふうに書いてありますために、そこの要点だけを簡単に申し上げることにいたします。前に述べましたように、原子力国民生活ないし国民経済に非常に重要な位置を占めるものでありまして、次に述べますような理由から、その研究開発政府中心になって、民間協力を得ながら強力かつ効率的に進める必要があると考えております。その(イ)は、原子力研究開発には巨額資金を必要とすること。(ロ)が、わが国エネルギー資源賦存状況エネルギー需給の見通しなどから見まして、エネルギーの低廉かつ安定的供給に対する要求が非常に強いわが国におきましては、他国以上にこれらを満たすに足る原子力平和利用推進する必要があること。(ハ)は、核兵器の開発で蓄積した強力な技術基盤施設の上に立って原子力平和利用推進しております先進外国、アメリカ、ソ連、イギリスというような国と異なりまして、そのような技術基盤を持たず、かつ時間的に非常におくれて着手しましたわが国といたしましては、そのおくれを早急に取り戻す必要があること。(ニ)に、原子力研究開発は、新しい高度な技術の集積の上に成り立つものでありまして、それを進めるにあたりましては衆知を集める必要があること、こういうふうなことから、わが国昭和三十一年に原子力委員会を発足させ、原子力開発利用のための長期基本計画を策定いたしまして、三十六年にはそれを改定するなど、原子力研究開発利用基本方針を明らかにしてきたのであります。このことはここに申すまでもないことであります。その次に、「先進諸国わが国との比較」が数字などであげてありますが、これも御承知のことが多いと思いますし、省略させていただきます。次に、3の「あるべき原研の姿とその発展像」というところに入りたいと思いますが、初めに「原研設立の趣旨とその役割」を申し上げます。前に述べてありますとおりに、諸外国にも増して原子力開発利用必要性が大きい、これはエネルギー事情その他から考えましてそういうふうになるのでありますが、それにもかかわらず、非常におくれてスタートいたしましたわが国といたしましては、そのおくれをできるだけ早く取り戻すというために、先ほども一度述べましたように、巨額の投資を必要とするけれども、当面直ちにそれの回収ができにくいというようなことから、資金の大部分を国が出す必要がある。研究開発は、日本の持っております人的要素及び資金あるいは資源、そういうふうな関係から見て集中的に行なう必要がある。こういうようなことから、日本原子力開発中枢的機関として特殊法人日本原子力研究所をつくるということが考え出されたわけでございます。それで、原研は発足以来、前に述べました長期計画に従って各種の施設拡充整備を進め、今日では初期段階整備を一応終わりまして第二の発展段階に移行しようとする時期にきているわけであります。  したがって、現在原研が向かうべき研究開発重点といたしましては、1基礎研究の促進をはかること。2基礎研究実用化とのかけ橋的役割りを果たすための研究開発を実施すること。さらに、3目的を明らかにしたプロジェクト、特に動力炉開発プロジェクト中心学界産業界と密接な協力関係を確立いたしまして、これに意欲的に取り組むこと。こういうようなことが重点と考えられておるわけであります。  なお、基礎研究というものは、原研だけに限るわけではもちろんありません。大学でこういうふうなことは行なわれておるわけでありますが、原研で行ないます基礎研究というのは、原子力研究開発に特に関連が深く、将来わが国独自の創意を発展せしめるということを考えながら、大学などの研究と十分な連携を保ちつつ実施する必要があると考えております。その上に施設整備が進み、研究の実績が加わるに従いまして3の比重がだんだん大きくなりつつあるというふうに考え、将来さらにそれが大きくなっていくことを期待しておるわけであります。  このほか、原研は幾らか事業をすることも必要であるわけでありますが、三つばかり——1研究施設を各界の利用に供して、所外の研究に広く協力すること。2原子力に関する科学技術者を教育して肝要の訓練を行なうこと。3アイソトープ製造頒布、それに基づく廃棄物処理というようなことの事業を行なうということも、原研がなすべき役割りの一部であります。  そこで、設立以来八年を経過いたしまして、今後ますますその使命に徹し、発展していかなければならないのでありますが、「原研の将来の発展像」と申しますのは、五年、十年先を考えますと、これをはっきり描くということはなかなかむずかしいことでありますけれども、私ども現在頭に描き得る程度のことを申しますと、第一に、既設の研究炉あるいは近く建設に着手される材料試験炉の活用を通じまして、舶用の原子炉を含め動力炉としてすでに実用化の域に到達しつつある原子炉の改良及び国産化に貢献をすること。第二には、わが国に適した動力炉開発を進めること。第三には、高速増殖炉開発を進めて、燃料資源有効利用とその経済性向上に寄与すること、というようなことをあげることができます。その成果は炭業界に次第に利用されていくようにならなければならないと考えております。  そのほか、「放射線化学」につきましても、あるいは「アイソトープ」の利用につきましてもいろいろ考えられるわけでありますが、要点は、原研として学界産業界との共同研究及び委託研究のようなものにも一そうの力を用いながら、日本原子力開発中枢的機関というふうになっていくべきであり、またいくことを期待しております。  現在、原究の問題が非常に大きな問題になりまして、国会におきましてもたいへんこれについて御心労をわずらわすような状態になっておることは、私ども、出発の当時原子力委員会原子力局原子力研究所というようなものは三位一体となって進めていかなければならないといって、みんながその気で出発しましたのが、現状、そのときとはやや期待に反する点があります。それらの三本柱の一つとして私ども責任を感じておるわけでありますが、ここではそういうことについての問題を離れまして、4に「原研問題点」と考えておりますことを率直に書面に書いておきます。  その第一は、「経営管理」のことでございます。原研はその事業遂行にあたりましていろいろな面で困難な事情を持っております。たとえば、その一つは、設立したときあるいはその後の急速な人員充実に際しまして、学界からも産業界からも、あるいは行政機関など、非常に多方面から人員を集めて、そういう人たちがいろいろこれまでのやり方などと違ったところから一度に集まってきた、こういうことがあります。第二に、研究者あるいは特殊な技術を持っておる者、ごく普通の一般技術者、あるいは事務関係者というふうに、多種多様な職種構成になっておりますこと、三番は、わが国として経験の少なかった大規模施設を持っておる研究所であるというようなことは、考えられますその困難な事情でございます。  原研経営者は、これらの困難を克服するために管理面にいろいろ努力を払ってきたのでありますが、それにもかかわらず、組織及び運営の面から見まして、次の諸点については現在改善する必要があると考えております。  その一つは、理事長東海研究所の所長を兼務し、他の理事もそれぞれの部門を細分して担当しておりますために、ややもいたしますと理事会議運用が総合的な見地に立って事業運営方針を十分審議し得ないうらみがあります。また、各年度事業計画理事会議の審議の結果が研究所全体に十分浸透しないために、事業体として組織的活動に欠けるというふうに見える面があることであります。  第二は、上層部からの権限委譲専決処理が必ずしも十分に行なわれておるとは見えないのであります。業務進捗度が常時把握されていなかったり、それに対して適確指示を与え得るような総合調整機能が十分ではない。また、予算、人員などが業務進捗度のいかんにかかわらず、年度当初に割り当てられたワクに固定されて、その結果、運営弾力性が乏しくなっているというようなこともあります。  第三に、所内の各級各階層の段階における意思統一の決定を行なう組織が十分に活用されていないために、下部の意見組織的、制度的に上部に伝達されにくいといううらみがあります。  第四番目は、東海研究所組織が相当平面的に細分化されておりますために、業務の総合的、効率的な運営を困難にしている、というようなことが経営管理の面で見られておりますので、そういうことの改善期待したいと思います。  給与昇進制につきましては、原研は、財団法人時代が一時あったわけでありますが、そのときには比較的恵まれた給与ベースをとることができた。これを受け継いで特殊法人日本原子力研究所が発足いたしたのでありますが、その後何回かにわたりまして国家公務員に準ずる給与改定が行なわれてきました。特に研究員の処遇につきましては、昭和三十四年のいわゆる中山あっせん案といわれております中労委あっせん契機にその優遇措置として研究手当が新設されました。このような事情でありますので、最初財団法人時代と同じであるとはもちろんいえないのでありますけれども、現在におきましても、公務員及びこの種の特殊法人に比べましては、その給与優位性というものは保持されておると考えております。原研は特に優秀な研究者確保を必要とするところでありますから、その給与水準民間を含めて考えても相当の水準のものであるべきであり、またその職務が特に社会的責任の大きい原子炉及びその付帯設備の運転に関連する職務に従事する者もありますので、そういう者には特殊な考慮を払うことが適当であると考えております。それで、こういう見解に立ちまして漸次給与制度適正化をはかっていくべきであるということは、去る昭和三十七年十一月に原子力委員会として見解を明らかにしたことがございます。しかし、こういうふうにまだ努力をすべき点が残されておることは認めながらも、現在の給与制度におきましてもある程度弾力的な運用が可能であると考えておりますから、昇給昇格にあたりまして、職種に応じ適正な勤務評価を行なって、能力がある者がそれに報いられるものにすることなど、対策が全然ないといえないと考えております。ところが、現在はこのようなことが行なわれていないようでありまして、年功序列主義におちいっているというふうに見えることは大きな欠陥であると考えております。  なお大事なことは、原研職員全体の「士気モラル」に関することであります。これはどこの職場においても言うまでもないことでありますので、職員の一人一人がその持つ力を十分発揮するように、士気モラル向上をはからなければいけないと考えます。この意味におきまして、職員に対する教育訓練に力を入れ、就業規程を励行し、信賞必罰を行なって、年功序列主義といわれる弊害を排しまして、昇給昇格職員勤務評価を取り入れなければいけないと考えます。また、原研という特殊な経営体に適した能力のある経営者管理者研究指導者の多数を得ることがむずかしいのでありますから、そのために若年層のこういう人に対する信頼感が薄いというふうなことを耳にするのでありますけれども、これもそういうことについて十分対策を講じておく必要があると考えます。  あと「研究管理」の問題、あるいは「経営管理研究管理」との関連など、そこに書いてございますことで、特に御説明を加えることを避けたいと思います。  「労務問題」につきましては、原研は、前に述べましたとおり、その経営を行なうにあたりまして、特殊かつ困難な諸条件があるということは認めなければならないと思うのであります。特に原研労働関係は、労使対等の原則に立脚した一般労働法規の適用を受けます反面、給与、諸手当等労働条件の主体をなすものにつきまして国の監督に服するという、民間企業と異なった制約があります。さらに、放射線下の作業という新しい特殊な分野を含んでおります。したがって、これらの諸問題を内包する原研の労働問題の解決は容易ではないと考えるのであります。  また、政府関係研究機関でありますために、民間事業もしくは公益事業と異なりまして、研究機関でありますために、業務の停滞が経営を危殆におとしいれたり、国民生活に直接的な影響を与えることが少ないことが労使間の紛争を長引かせ、あるいはストライキを安易に発生させるというような傾向を生みやすいということは否定できないのであります。ところが、労組は良識を欠く傾きがありますし、経営者はとるべき措置対策を十分講じられませんで、安易な妥協を重ねる傾向のありましたことが事態を一そう複雑かつ深刻にし、今日のような不安定な労使関係が導き出されたものと見るべきであります。  したがって、原研が今後その事業の円滑な遂行をはかっていきますためには、その業務規模実態等の進展に即応した管理体制を確立するとともに、紛争の原因となるような諸問題はつとめて早期に解決をはかり、労使双方が相協力して原研目的を達成するように努力することが必要であろうと思います。  その次に、「原研労組おい立ち」その他書いてございますけれども、これは私どもがこういうふうに聞いておるということを述べたのにとどまります。  最後に6の「改革諸点」ということを御説明申し上げて、終わりたいと思います。  原子力は、多くの分野におきまして国民生活と密接な関係にあり、今後わが国経済発展のかぎともなるべきものでありますから、その開発利用は大いに推進しなければならないことは言うまでもございません。原研は、かかる原子力研究開発推進中核的機関でありますし、これに課せられた使命役割りはきわめて大きいのであります。  原研は、設立以来すでに八年を経過しまして、原子炉その他研究施設は急速に充実し、その業務複雑化を加え、これに伴ってその組織運営に種々の不備が生じてきたことは前に述べたとおりであります。  原研がその重大使命を円滑かつ効率的に達成し得るよう所要の改革をはからねばならないと考えます。その改革を要すべき諸点概要は、大体次のようなものと考えております。  第一は、「使命感徹底」であります。原研初期的段階としての施設整備も一応終わり、第二の発展段階に入ろうとしておりますが、この際、わが国原子力研究開発推進中核的機関たる使命感に徹し、各人がその能力を十分に発揮するよう人心の刷新と士気向上につとめるべきである。このため人材確保をはかりつつ、能力評価基礎とした給与昇進制の確立、適材適所主義徹底信賞必罰の励行、教育訓練充実を行なうべきであります。  第二は、「経営組織とその機能改善強化」。急送に膨大、複雑化してきた原研組織につきまして、その管理機能が十分に発揮されるよう、特に理事者機能強化研究管理機構新設強化労務管理機構整備充実安全衛生管理機構充実重点を置いて経営組織とその機能改善強化をはかるべきである。  第三は、「学界産業界との提携」です。今後ますます学界産業界と一体となって研究開発を行なう必要があるようなプロジェクトと取り組まなければなりませんし、また、それが学界研究推進炭業界技術水準向上をもたらすゆえんのものでもありますので、研究協力人材の交流によりましてその協力を得るように努力し、原子力研究開発のセンターとしての役割りを果たさなければならないと思います。なお、原研施設は他には求めがたいものもたくさんありますので、学界産業界に開放、その利用に供することに留意する必要があると考えます。  以上、日本原子力研究所中心としましてわが国原子力政策現状と将来について述べてまいったのでありますが、原子力開発利用重要性を考えますとき、先進諸国からのおくれをすみやかに取り戻し、原子力利用を本格化するために、政府は今後とも原研中心といたしましてその研究開発を積極的に推進することが肝要であると考えております。  原子力委員会といたしましては、すでに長期計画わが国原子力研究開発の進むべき方向を示してまいりましたが、この際、原研をめぐる諸問題を契機といたしまして原子力政策を一そう充実し、より効率的な原子力研究開発が行なわれまして、国民生活発展に貢献し得るよう力を尽くし、国民期待にこたえたいと考えております。どうもありがとうございました。
  4. 中曽根康弘

    中曽根委員長 どうも御苦労さまでした。     —————————————
  5. 中曽根康弘

    中曽根委員長 質疑の通告があります。これを許します。石野久男君。
  6. 石野久男

    石野委員 原子力委員会の「原子力研究をめぐる諸問題」という本委員会の設問に答える御意見をいまお聞きしたのですが、二、三の点についてお尋ねしたいと思います。  まだこの意見書は十分に読み尽くしていませんので、後ほどいろいろの質問をしますけれども最初原子力委員会責任について。特に、この問題の提起された重点労使関係等について置かれておるようでございますけれども原子力委員会は、原研紛争についていままでどういうことをしてきておりますか。
  7. 兼重寛九郎

    兼重説明員 私どもは、日本原子力研究所政府監督のもとにありますために、政府監督をする、それに対する意見を申し述べておるわけでございます。したがって、原研理事者のほうに対しましては指示あるいは助言というようなことができるし、また、それをいたしてきたわけでありますけれども原研の中での理事者とあるいは組合との交渉というようなことは、これは原研内部の問題でございますので、たとえば組合側に対してどういうふうなことをというようなことはこれまでやったことはございません。それで、組合側主張がどういうふうになっていますかというようなことも、理事者のほうを通じて聞いておるわけでございますが、それに対して理事者がその責任を果たし、原研運営をやっていけるように私どもとしてできるだけの努力はいたしてまいりましたし、また、理事者助言もしてまいりました。  先般、岡先生から、そういうふうなことについて、どういうときにどんな相談をしたかというその資料の提出を求められておりましたので、これはすでに提出いたしたかと存じます。
  8. 石野久男

    石野委員 原研労使間の紛争については、内部の問題に立ち入りたくないからあまりそれには立ち入らないという話ですが、結局理事者側に対しては指示助言をしておるわけです。紛争が起きているときは、その責任の一端はやはり原子力委員会も持たなければならないだろうにいうように私は考えるわけです。そういう点について、委員会は全然その責任を感じませんかどうか。
  9. 兼重寛九郎

    兼重説明員 私、先ほどこの「原子力研究をめぐる諸問題」の説明をいたしますときに、この中に書いてないことを一つ申したのであります。それは、日本原子力研究開発を始めるというそのときに、原子力委員会ができ、原子力局、あるいは科学技術庁と申すべきかもしれませんが、そういうものができ、日本原子力研究所がつくられましたときに、三位一体となって開発に当たるべきである、そういう覚悟をもって出発したというふうに聞いております。私はそのときに実は現在の立場にはなかったのでございますけれども、そういうふうであることはずいぶん前からたびたび聞かされております。したがって、その三本柱の一つであるという意味責任は十分感じております。
  10. 石野久男

    石野委員 責任を感じております場合、紛争が起きたから理事者側からもいろいろ話を聞くのも当然だろうと思うし、労働者側からも事情を聴取するということなど必要なことではなかったかと思いますが、そういう点はやられたことはありますか。
  11. 兼重寛九郎

    兼重説明員 量初、初めの御質問にお答えいたしましたような考えから、組合側主張を直接聞くということはいたしませんでした。
  12. 石野久男

    石野委員 原研紛争の問題については、非常にあやまって世間に伝えられていることが多いと思うのです。こういう問題については、委員会は積極的に委員会立場から国民に正しくこれを報告するということをしないと、紛糾はますます拡大するだけだと思うのです。  この報告書によりますと、紛争の問題については常に安易な妥協におちいりというふうに結論しているようでございますが、委員会は、そういうことをどういう根拠に基づいて結論を出しているのですか。その安易な妥協をしているということについては、やはり労働者側あるいは理事者側双方意見を十二分に知り尽くさなければなかなか出ないとわれわれは思うわけなんです。しかし、それにもかかわらず、一応安易な妥協におちいりというようなことを先ほども強調されておるようですが、そういう点はどういう根拠からかということをきわめて簡単に、端的にひとつ。
  13. 兼重寛九郎

    兼重説明員 私どもは、原子力委員会の庶務を扱う原子力委員会事務局とも申すべきものとして原子力局を持っております。したがって、ここに書かれておりますそういう原研の中の事情などは、その庶務を果たしておる原子力局の報告をとっておるわけであります。したがって、その中から出てくることでございますけれども、たとえて申しますと、相当長期の協約、協定というものがなければ始めてはいけないというふうに考えられるものを、短期の協定だけで仕事を始める。  これは、あまり近い例で申しますのは適当でないかと思いますけれども、たとえば昨年の暮れ、いわゆるJPDR問題が起こりましたときに、二十四時間の予告問題が出たわけでございます。その予告問題がJPDRの引き渡しを受けるまでというので、そこに進んだことは当時の情勢でやむを得ないと考えておりますけれども、その協定が失効しましたあと、これを日本側に受け取ったあとで同じ性質のものをつくる必要があると私は考えておったのであります。その協定を結ぶ前に運転の再開をしようとするような情報がありましたので、そのときには、原子力局長の責任においてこれを一時運転再開を待ってもらったようなことがあったのであります。  そういうようなことから考えまして、やはり理事者側はもう少しはっきりした態度をとるべきであった。これを安易な妥協というのは、組合側に対して言うことではございませんで、むしろ理事者側に対してそういうふうなことを言っておるわけでございます。
  14. 石野久男

    石野委員 長期的な協定を結ぶ際に事を妥協的な立場で処置したという問題について、いまJPDRの再開の問題等について話がありました。それらを含めて事の起こる基本的問題点というのは原子力委員会が真剣に原子力政策あるいはまた開発体制のあり方というものについてはっきりした一定の路線というものを差し示す、そういう使命感、むしろ原子力委員会にそういう使命感が欠けているものがあったのじゃないかというふうにわれわれは思う。そういう点での努力が足りないで、いたずらにこれを労使間に問題の転嫁をするということは、これは間違いだろうと思うのです。  この報告の中に、「今後ますます学界産業界と一体となって研究開発を行なう必要があるプロジェクトと取り組まねばならず、」こういうふうに書いてありますが、たとえば三十六年度に決定したあの原子力開発利用長期計画をひとつ見ましても、原子力委員会が差し示したその方向一つの誤りがあったのじゃないだろうか。あるいはまた、それを設定するにあたって非常に薄弱な根拠によってつくられたのじゃないかということを、あの半均質炉のプロジェクトについて言うことができるのじゃないか、私どもはこう思う。こういう点について、原子力委員会としてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  15. 兼重寛九郎

    兼重説明員 私ども長期計画が非常に完全であるということは、それは強く申したならばよくないことだと思いますけれども、あの長期計画をつくりますときには、日本関係方面の意見も十分聞きましてつくったものであります。その意見の中には原研自体の御意見も入っておりまして、そういうことに関する限りは根拠は薄弱ではないと考えております。  いま半均質炉の例が御質問に出ましたので、実はこれは私申し上げたくないのでございますけれども、半均質炉の開発が非常に有望であって、これは日本の独創的な考えであるということを聞きましたのは、原研から聞いたのでございます。そこで、それを奨励し、その開発を進めることが非常にいいというふうに判断いたしまして、これをプロジェクトにして進めることに計画を立てたのであります。ところが、その後、不幸にいたしまして、その研究開発は予期どおりに進まないために、原研におきましてその開発を中止するというふうになりましたために、いまこれはプロジェクトから消えております。原研に何らそれを開始する気持ちがなかったものをその計画に入れて、これの開発を進めさせ、その後原研がこれを熱心に進めつつあるのを予算的に切ってプロジェクトからはずした、そういうふうなことではなかったのでございますが、そういうふうにいろいろ事情がありますことはあまり表に出すことは適当でないと考えまして、この中にはそういうふうなことは書いていないわけでございます。  しかし、すべてのことがみんなその例のようであるというわけではございません。もちろん原子力委員会の示したことにも十分趣旨の徹底しないこともあるかとは思いますけれども、これはそのときそのときに両者の間の協議を進めながらだんだん計画を実現していくということは、いつの場合にも行なわれることであり、また必要なことであろうと考えております。
  16. 石野久男

    石野委員 私は、この半均質炉の問題について、それがプロジェクトとして設定されあるいは廃止されるという間の経緯についての原子力委員会原子力研究所との関係等、それはいろいろあろうと思う。しかし、こういう問題の本質は、やはり原子力委員会の、責任に帰するというふうに私はむしろ思っているくらいです。そういう点は、はっきりと委員会自身が自覚しなければいけないのではないか、こういうふうに私は思います。  ことに、今日ここに出されておる問題の提起のしかたは、ほとんど原子力研究所並びに原子力研究所の労働組合の側に問題の所在点が多いような書き方が、すべての面でなされておるようです。私はそういうことよりも、むしろ原子力委員会自身がもっともっと日本原子力政策あるいは開発政策に対する責任感を反省すべきではないかというふうにさえ思う。  特に、先般もわれわれの同僚である委員から原子力委員会に対する質問もあったと思いまするが、原子力委員会委員の中には、その委員の重責を無視して、非常に長期にわたって海外旅行をしている方が二名もおるということを聞いておるわけです。こういう非常に多事多難な原子力問題の提起されているときに、こういうことでは、とても原子力委員会自身の責務を遂行することもできないのではないかというふうにさえ私は思うので、こういう点についてもやはり委員会自身の自覚がもう少しあってほしいものだ、こういうふうに私は思うのだが、どういうふうにお考えになりますか。
  17. 兼重寛九郎

    兼重説明員 長期にわたって出張しました二人の中の一人は私自身でございます。私は、昨年の暮れに急に話が出まして、国連の経済社会理事会に新たにできました科学技術開発のために利用することについての諮問委員会の専門委員として任命されるという問題が起こりまして、これはそれを受けるべきかどうかということを佐藤委員長とも御相談いたしまして、受けることにいたしたのでありますが、その第一回の会合が去る二月二十五日から三月六日まで開かれるということは、当時からきまっておったことでございます。十八人の委員は全部出席いたしましたので、もし私が向こうに参りません場合は、日本から選ばれた——私は日本を代表しているわけではございませんが、——日本から選ばれた私だけが欠席しなければならなかったという事態になったと思います。幸い私はそこに出ますときに、実は私がこの問題について、あるいはそれに関連したことについて果たさなければならなかった問題は一応片づけることができまして、二週間余りの留守中進行するという見通しも立つような状況でございましたので、隣においでになります佐藤委員長の御了解を得て出張させていただいたわけでございます。しかし、そういうことが望ましかったことかそうでなかったことかという御質問であれば、私も自分から進んで行ったわけではございません。  そういう意味で、反省は決してないわけではございませんけれども、ここに出ております問題は、現在の原研の事態というものに重点を置きますためにそういう書き方をしておるわけでございます。全然反省の色がないというおしかりを受けますことは、この書類の書き方からそういう印象を与えたかとも思いますけれども、昨年の秋ごろからいろいろな問題について終始検討を続けてきておることは申し上げることができます。
  18. 石野久男

    石野委員 この報告書を通じて述べられていることは、ほとんど原研理事者並びに労働者の側にその使命感が欠除しているというようなことが貫かれて書かれているわけです。そういう問題を原子力委員会が書くことはおこがましいことだと私は思っている。そういう書き方をするのだったら、原子力委員会それ自体がこの原研そのものの本質、それから本来の使命感というものについてあれこれ明確な指示を与えないで、いろいろな茶々を入れるというようなやり方はむしろやめて、もっと原研を本来の使命感に立たせるような場をつくるべきじゃないだろうかと思う。  そういう立場から、たとえばこの二四ページのところに述べられております「予算、人員等は、業務進捗度のいかんにかかわらず、年度当初割り当てられた枠に固定し、その結果、運営弾力性のないものになっている」というようなこの書き方ですね。この書き方についても、たとえば原研内部的に、三十九年度に計画された事業遂行には大体二百五十人の人員を必要とするということを要求しておる。それに対して、百五十人に上からさっと削減してきているわけです。そういう結果として、主としてそれが運転要員というような形にしぼってきておりますから、原研本来の使命研究部員というような形で仕事をすることができないような状態になってきているのじゃないだろうか。原研が当面している国産動力炉だとか、あるいは材料試験炉、あるいはそれらの建設のためには、非常に研究部員をさかなければならないような状態がずいぶん出てきているわけですね。こういうことになりますると、原研の自主性といいますか、主体性というものをもうその時点で完全に阻害されてしまうような結果になってきている。そういうようなやり方を原子力委員会が何らかの形でセーブするということをしないで、むしろそれを押しつけていくというような形になってくれば、これは原研当局にしても、あるいは労働者側にしても、文句を言うのは当然のことだと思うのですよ。私は、もう少し原研の自主性について、そういう時点でのものの考え方を明確にしてもらわないといけないと思うのだが、そういう点では委員会はどういうふうに考えておりますか。
  19. 兼重寛九郎

    兼重説明員 この二四ページに書かれておりますことは、いまのこととは違ったものであるというふうに私は了解しております。このことは年度当初に原研の中で、たとえば今度の三十九年度に百五十人に人員がふえることになると思いますが、その百五十人も含めていままでの人もいれ、いろいろな新しい仕事を考えて配置をする。そのときに年度の途中でいろいろ新しい問題が起こり、あるいは事態が出て、それの変更をするというようなときに、これは原研の中でやれることがわりあいに最初のワクに固定されておって、運営弾力性のないものになっていく、こういう意味のことを申しておるわけであります。  そこで、初めの問題に戻りますが、要求二百五十人に対して認められた人員が一百五十人、そういうふうにひどく削減を受けますことはもちろん好ましいことではございません。けれどもわが国での予算要求あるいは人員要求に対して、それの査定を受けます例は、原研だけがそういうのではありません。原研はその割合からいえば、ほかの場合に比べてむしろ割合は大きいのでございます。したがって、どうしてもそれで仕事がやっていけないという場合には、人員がふやしてもらえないときには仕事を引き受けることをやめるよりしょうがないかと思うのでありますが、そういうときに仕事をやめる、あるいは人員をどうするというときの最後の判断の責任者は、原研の場合でありますと理事長でありますので、理事長がどちらか判断をされる。それを原子力委員会が、仕事はこれだけやりなさい、人員はこれだけしか出せないということを押しつけるというようなことは、やるべき立場でもありませんし、いままでやっておりません。したがって、その二百五十人に対して百五十人しか認められなかったという不満が当然あることは私どももよく了解できることでございますけれども、不満は不満ながらもそれで承知をした上は、その範囲内でやることを考究するのがその担当の者の任務である、こういうふうに考えております。
  20. 石野久男

    石野委員 研究所の自主性の問題が、われわれの見方では、原子力委員会からの計画や運営に対するところの細部にわたる干渉のために多分に阻害されておるという見方をいままでしてきたのです。そういう点を配慮されないと、たとえばここに意見として「意思統一の決定を行なう組織が十分に活用されていないため、下部の意見組織的、制度的に上部に伝達され難いうらみがある」というように書かれておるけれども、実はそうではなくて、原研内においては全く計画されていないようなものを委員会のほうから差し向ける。そのために下部からの上部に対するいろいろな意見の出方とか、あるいはまたそれに対して取り組む体制が十分になされないというような結果が出てきていることが間々あると思うのです。たとえばJRR4プール型の原子炉なんかについては、研究所内では全く計画も何もされていなかったようなものを原子力局が押しつけてきているわけです。こういうようなことのために、かえって協力体側とか、あるいはそれをスムーズに運ばすという問題ができなかった。結局そういうような問題はホットラボの創設なんかにもあると思うのです。こういうものは、もう少し原研の主体性を考えてやるという姿勢がないと、依然として残るだろうと思うのです。そういう問題についてはどうお考えになりますか。
  21. 兼重寛九郎

    兼重説明員 これまでの歴史でそういうふうな押しつけが一つもなかったとは私も申し得ないと思います。私の知っております範囲で、放射線化学の現在高崎研究所というものになっておりますものは、これは、原研が発意されたものではありませんし、またこれを原研の中に引き取ることについて、おそらく理事長もかなり終わりの段階まであまり希望されてはいなかったと思います。しかし、いろいろ協議の結果、原研の中に置くことがやはり適当であるということになって、現在の高崎研究所ができたのでございます。  これに類した例はもう一つございまして、アイソトープ・センターというものがございますが、原研の中にアイソトープを生産する部門ができてきたわけでございます。これは事業的な性格の強いものでありますので、研究をしております部門とはかなり性格が違うので、これを同じ特殊法人日本原子力研究所の中に置くにしても、これは東海研究所とは別の組織にして運営するほうが適当であろうということから、アイソトープ・センターというものをつくることもこれは原研から出た案ではございません。多少は押しつけということばがあるいは当たるかもわかりません。  ただいま御指摘になりました四号炉のできますころは、私はすでに原子力委員会関係はしておりましたが、その辺の事情は私は非常によく知っておるというわけではございませんので、何でしたらその辺の事情原子力局長が存じておるかもしれませんから、お許しがあればそちらから説明をさせることにいたしたいと思います。
  22. 田中武夫

    田中(武)小委員 いまの石野委員質問関連してお伺いいたします。  大臣御承知のように、当委員会では先日来原子力研究所労使問題、これについていろいろと参考人を呼んだり、あるいはいま問題として質問いたしておりますように、原子力委員会からその報告といいますか、新聞では白書というような名前で出ておりましたが、それを出してもらってやっておるわけです。労使の問題は、労使双方に自主性がなければ十分な当事者間においての解決はできないと私は思う。労使の問題につきましては、一番いいことは、当事者間において十分話し合って解決する、これが一番いいことです。  ところが、一方におきまして、自主性がないというところに問題が解決しにくかったり、こじれるということがあるわけです。いま石野委員からも質問が続けられておりますが、一体原子力研究所というものの運営に対して一番責任を持っておるのはだれか、こういうことになりますと、原子力研究所法を見ますと、主体といたしましてはまず内閣総理大臣だ。それがそれそれのところで大蔵大臣との協議とか、あるいは、原子力委員会の議を経てとかいうことになります。  少なくとも原子力研究所法を見る限り、原子力委員会原子力研究所へ法律的に関与できるのは二点だけなんです。その一点は、役員、顧問の任命または解任、これは総理大臣がやるときに原子力委員会の議を経てということになっております。もう一つは、業務に関する基本方針、これがやはり原子力委員会の議を経て、こういうことになっておるわけです。  そこで、先ほど来論議が続けられておりますが、原子力研究川に対して直接の責任者といいますか、監督者といいますか、管理者というのは、一体だれなのか。科学技術庁設置法の第九条の原子力局事務と、原子力委会設置法の第二条の所掌事務、これがほとんど同じような条文があがっているわけなんです。そうすると、ほんとうにそういうことに対して、まず第一線として、原子力研究川に対して臨むのは、原子力委員会なのか、科学技術庁原子力局となりますのか。どっちなのですか。
  23. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 過日来当委員会がこの原研労使問題についてたいへん建設的な御検討をいただいておること、たいへんありがたく思っております。私は、本米労使関係の問題こそ、それは研究以前の問題だ。したがって、正常なる労使関係を打ち立てない限り、研究はなかなか円滑にいかない。しかも、私自身がただいま科学技術庁長官として責任を持っておりますが、そういう意味から、この労使問題に官庁側がタッチすること、これはよろしくないことだ。労使双方において正常なる検討を加えていただきたい、こういうことで、ただいままですっと見てきたのです。労使の問題は労使双方が取りきめることが一番よろしい。おそらく他の何ものの干渉もいれない、そういうことが本来の筋ではなかろうか、かように思います。  そういう意味から、私ども、はたでずいぶんいらいらしながらも今日まで過ごしてきた。  ただいまお話が出ております原子力委員会責任なのか、あるいは科学技術庁責任なのか、こういうことなんですが、直接の責任は、ただいま申し上げるように労使双方できめることです。しかし、こういう問題については、科学技術庁原子力のほうは多分に関心を持っておる、こりいうことは言えるだろうと思います。  それから、先ほど来いろいろ議論が出ております。その議論を通じまして私の所見を申しますならば、本来労使関係のことは、ただいま申すように、基本的に労使双方できめるんだ、これでよろしい。ただ、原子力研究所には特別な使命があるんだから、その意味において研究は自由でなければならない。研究の自由を確保する、こういうことでございます。この点について、いわゆる原子力委員会、これが研究の大方針はきめるだろう。通常のこまかな研究の管外——そういうことはが適当かとりかわかりませんが、——研究の管理については、原子力研究所理事長がその責任を持ってやるだろう。したがって、こまかな点にまで原子力委員会がとやかく言うことはいかがかと思う。しかし、大きな問題については、原子力研究所原子力委員会においては十分連絡をとりまして、そうしてその実情に合ったような措置をとる。それから先は、研究の題目は原子力研究所でやる。そうしてまた、研究も分けてみると、基礎研究もあるし、また開発研究もある、そういう意味のそれぞれの研究テーマが与えられてしかるべきではないか。かように私、大まかに申しまして考えております。
  24. 田中武夫

    田中(武)小委員 まあ、大まかにいえばそういうことでしょうが、実際そのものさしを具体的なところに持っていくと、どこがやるのかわからないことになる。私は、原子力研究所運営といいますか、そういうことは、原子力基本法のいわゆる三原則ですか、これにのっとって、その中に民主性だとか、平和性だとかいうことがありますが、その民主的運営の上に立って、政府自体が監督命令をするよりか行政委員会としての独立した——もちろん大臣が委員長を兼ねられるわけですが、役所というものではなくて、いわゆる政府という考えてはなくて——独立した行政委員会である原子力委員会が、まず当面当たる。このことが原子力基本法にいう民主的運営だということで、こういうかっこうになったのではなかろうかと思うわけです。  ところが、原子力研究所法を見ますと、これはもうありふれた特殊法人の型に入れた立法の形式になっております。もちろん特殊法人でございますので、やはり政府、この場合には内閣総理大臣あるいは大蔵大臣あるいは経済企画庁長官、こういうところから監督なり管理をするということは、特殊法人の性質上当然だと思います。しかしまた、原子力研究所という特別な制度、特別な任務からいって、他のいわゆる一般の何々公庫とか、何々公団とかいうのと違っておると思う。ところが、この原子力研究所法を見ると、定まった一つのタイプに型に入っておるわけです。私はここに一つの問題があるのではないかと思うのです。公社、公団と同じようなタイプのものがきめてある。すなわち原子力基本法によって、民主制を強調するために原子力委員会という行政委員会ができた。それに当たらすということが民主的な、いわゆる政府から一応独立したやり方でやるのだというこの上に立つならば、金融公庫だとか何々公団とは違ったタイプを持ってくる必要があると思う。そこに私は問題があると思う。  そこでいまこれを一々言ってもどうかと思いますが、ひとつ実力大臣の時代に、この原子力研究所を一ぺん他のものと同じようなタイプ、こういうものでないようにやってもらわないといかぬと思うのであります。たとえば、これはほとんど同じようなかっこうですが、特殊法人につきましては役員の退職金あるいは職員給与、そういうことについては、本文で主管大臣あるいは総理大臣の許可を得る、こうなっておるのと、定款によって、そうして定款変更がそれぞれの主務大臣、主管大臣あるいは総理大臣に許可を得る、こういうことになっておる。この場合は定款三十六条によって退職金、給与の基準をきめるとなっておる。それは研究所法の第六条二項で総理大臣の認可を得る。もちろん特殊法人ですから、かってに退職金をきめたり、どんどんかってな給与をきめられても困ると思います。しかし、そういう条文があり、それにのっとらないと具体的な労働条件もきめられないというところにいろいろ問題が出てくるのではないか。直ちにこの条文を廃止しろとは申しません。しかし、そういったような、いま申しましたように他の一般的な特殊法人と違った任務を持つ原研でございますから、もう百年一日のように一つの型に入れたような法制局の型で立法するということは改めて、何か特別な方法で、やっていく。そうしてその当局者に、省側に相当な自主性を持たせない限り、私は労使紛争は十分に解決しないと思います。そういう点について、大臣どうお考えでしょうか。
  25. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 原子力委員会、これはいわゆる行政委員会ではございません。これは行政組織法第八条にはっきり明記してあるところでございます。したがって、ただいま御指摘になるような問題は、内閣総理大臣、それから委任を受けておる科学技術庁でやることになっております。  ただ、私はこの際に申し上げたいのです。これは田中さんや社会党の方ですから、よく労使の問題は御承知なんで、私がとやかく言うことはないように思いますが、本来労働問題と研究の問題とを少しごっちゃにしていることがありはしないか。研究の自由というか、これについては私ども尊重します。しかし、労使問題ならばそれはまた別な考え方がある。したがって、その研究の範囲にいたしましても、これはやはり管理者において責任をもって研究をしていく、こういうものでなければならない。人事におきましても、やはり研究所であるというその特殊性から、年功序列であっては困る、こういうような主張もある。ただいまの退職金その他について特別の考慮をしろと言われることは、あるいはいままで扱っていた年功序列の給与制度についてもメスを入れろ、こういうことのようにも聞けました。しかし、現在の労使関係はそう簡単なものでもございませんから、一がいにはいかないと思います。非常にはっきりした研究者の才能というものは生かしていかなければならぬ、かように思いますが、そこらに研究所としての特殊性をどの程度生かし得るか、これを考えていかなければならぬ、かように思います。やはり先ほど来申し上げておりますように、労使の問題、労働関係研究以前の問題だ、この点に特に注意を喚起いたしたい、かように思いますので、研究と、研究に名をかりての労使関係の特殊性、これを主張する場合、この点はなかなかむずかしい議論になるのじゃないだろうか、かように思っております。私はそう理屈一点ばりでとやかくの議論をするつもりはございませんが、とかくそれを一緒にしていろいろな要求が出ているように見受けますので、この点ははっきり区別すべきではないか、かように私は思っております。
  26. 田中武夫

    田中(武)小委員 これはちょっと私の失敗だったと思うが、それでは原子力委員会は行政組織法の八条の設置ですか。
  27. 島村武久

    ○島村政府委員 これは原子力委員会設置法ができました当時非常に問題になりましたことでございますので、議論が戦わされた問題でございますが、政府といたしましては行政組織法第八条に基づく機関の一つとして原子力委員会設置法を提案いたしまして、御承認をいただいたわけでございます。  ただし、立論の過程におきまして、法律上は行政組織法第八条にによるものではあるけれども、諸外国がみな原子力委員会というものをいわゆる行政委員会的に運営しております実情もございますし、また行政委員会でやるべしという意見も非常に強うございました。したがいまして、第八条の機関ではあるけれども、できるだけ第三条の機関に近いような運営をすることが望ましいということで、特にそれまでの法律にはございませんでした、その決定を内閣総理大臣が尊重するというような条文も入れてできておるわけでございます。  しかし、そういう事情はございますけれども、法律的に申しますならばこれは第八条に基づく機関ということになっております。
  28. 田中武夫

    田中(武)小委員 原子力委員会の性格の問題はいま当面して議題になっておりませんので、これはこれ以上言いません。どうも八条によるということは、名称等も違うし、何々審議会、諮問に答えるのが八条で、独立にやれるのが、三条ですよ。  そういうような点について、原子力委員会の性格、これが原子力基本法との関係においてどうあるべきかということ、そういうようなことについては後刻また論議することにいたしまして、私は関連質問であるので終わりたいと思いますが、結局大臣、労使の問題は双方に自主性がなければどんなに努力しても解決はしないわけなんです。そこで、特殊法人という特別な立場、地位はあるといたしましても、こういう特殊なものでありますから、相当に自主性を持たしていくということを考えていただかない限りは円満な解決はできないと思うので、こまかい点についての質問はいたしませんが、基本的な態度として大臣に要望いたしておきます。
  29. 石野久男

    石野委員 いま田中委員から大臣に要望したのだけれども、私は要望だけでなしに、やはり大臣の意見を聞いておきたい。  この研究所の場合の自主性という問題は、労使関係の問題で非常に大事な問題だと私は思っております。長期計画原子力委員会がつくって、それを具体的に研究所に実施させる、そういう形の中で計画の押しつけというか、長期計画委員会の仕事ですが、それで進められておって途中で変更されたり、何か計画の押しつけが研究所の実施過税の中で出てまいりますと、混乱を生じてきます。その混乱の中から、大臣がよく言われる労使関係研究の自由のその前の段階の問題だ、こういうにもかかわらず、この作業過程の中なりあるいは勤務過程の中で出てくる混乱が労使関係の問題へ波及し、混乱を生ずるというこの因果関係があるというのは、聡明な大臣はわかっておると思う。幾ら研究は自由で労使関係はそれ以前の問題だといっても、これを切り離して考えるというそういう非科学的なことは考えられないと思います。これは一体の問題だと思います。  そういう意味で、私は研究所における自主性の問題を先ほど来言っておるわけなんですから、そういう研究所の自主性の問題について大臣はどのようにお考えになっておるか、いま明確に御答弁をいただきたいと思います。
  30. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 これは石野さんもよく御存じのことだと思いますが、私はただいま研究の自由、こういうことを口にはしておりますが、研究の自由というものが完全な自由があるか、これには一つの疑問を持ちます。おそらく原子力委員会研究題目、テーマを与えたその範囲においての研究の自由だ、かように私は考えるのでございまして、研究員みずからが好んで何でもやれる、こういうものでもないだろう。ただ、基礎研究につきましてはよほど自由な研究というものに私どもも敬意を表してまいります。しかし、開発計画その他になれば、これは研究テーマがちゃんとありまして、それでやっていくものだ、かように考えております。  したがって、ただいまのような押しつけた研究テーマ、こういう問題が議論になりますが、その場合におきましても、原子力委員会が必ず原子力研究所と十分連絡をとりまして、そしてその新しい研究題目というものについての相談をするだろう、もしそれに遺憾の点があれば、将来は一そう気をつけて緊密な方法をとっていくだろう、これはもう当然のことのように思います。したがって、ただいまのお話の点は原子力委員会原子力研究所との間には議論の余地はほとんどないものではないかと私は思います。  ただ、いま問題になっております。また皆さん方が非常に関心を持っておられます労使の問題、これは労使双方が自主性がなければならないという田中さんのお話でございますが、ただいまのところ、よほど労使関係は新しい近代的な組織関係といいますか、そういうほうに移りつつある。ILOの条約につきましてもよほど進歩的な考え方をわれわれも持っておる。そういう時代でありますだけに、いかにも今日までの原研における労使双方の問題は遺憾な点が非常に多い。これはぜひとも何とかして、こういう機会に労使双方が真剣にこの問題を取り上げられて、そして一般的な話し合いが進み得るようにぜひしたいものだ、このことについての責任がどこにあるかとか、あるいはだれがどうしたとかいうことよりも、将来の建設の方向へ向かっていくことが最も望ましいのじゃないだろうか。それでこそ初めて研究者も安心して研究ができ、また原子力委員会も安心してそのテーマが出せる、そういう状態に一日も早くすることだ。これも多額の税、国民からの資金によってこれができておるのですから、そういうことを考えますと、ほんとうに真剣に考えていただきたいものだ、これは労使双方に私が強くお願いする次第です。以上です。
  31. 中曽根康弘

    中曽根委員長 石野さん、ほかの質問者がありますから、そろそろ締めくくりをお願いいたします。それとも、自民党の方に先にやっていただいて……。
  32. 石野久男

    石野委員 答弁が長いのです。私の質問は非常に短くやっているわけですから、その点は委員長のほうからも注意していただきたい。なるべく委員長の意図をくんでやるようにいたします。  大臣から、自主性の問題について、わかったようなわからないような話がありました。実をいうと、私はやはりこの労使間の問題の紛争を長引かせている、原因の一番大きいのは、労使双方の間に、特に現場における理事者側の自主的な解決能力が欠除しているところにあると思うのです。欠除ということは、それ自体理事者側の欠除ではなくて、むしろ上からの押しつけなり干渉があってそれが自由にできないということのためにきているんじゃないだろうか、そういうように理解される。もしそういう点がないならば、あるいは現場におけるところの理事者に対してそういう能力を明確に与えておられるならば、この際ひとつ大臣からはっきりそのことを言っておいていただきたい。これからあと理事者になる方々がそういう立場に立たれたとき、いつも上からのいろいろな干渉によって自分の考え方で話し合いができないようなことになれば、これは何ぼどんな白書が出ても私は同じことだと思うのです。この点については、理事者側に対して明確な自主性を与えておるかどうか、はっきり御答弁していただきたい。
  33. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 これは先ほど来たびたび私答えておりますように、一切のものが干渉しない、もちろん自主的に責任をもって理事者がその衝に当たるものだ、かように思っております。一切干渉させません。
  34. 石野久男

    石野委員 そのことばは信じます。  白書では、この原研給与の問題については、特殊法人として非常に他の公務員よりも優位にあるし、そしてまたそれは現在そのとおりに優位性は保持されている、こういうように書いておるのです。これはことばの問題で、書くことは非常に簡単に書けるんだけれども、こういう問題点は具体的にどういうようになっておるかということをはっきりさせないと、問題の紛争点は解決しないだろうと思うので、=黄お聞きしますが、ことしの定期昇給の原資は、本給に対して大体どのくらいつけておりますか。
  35. 島村武久

    ○島村政府委員 三十九年度三・八%見込んでおります。
  36. 石野久男

    石野委員 これはいまの一般民間産業なんかを見ましても、およそ六%程度のものを与えなければ大体昇給の問題の解決は十分にいかないですよ。だから、三・八%という問題で人事考課をやるということになれば、どういう結果が出てくるか、この結果はもうはっきりしていると思うのです。他の産業や何かから比較しても、当然減額だけが効果になってくるのですよ。だから、優位性などというものは全然出てこない。むしろ士気の高揚とかなんとかいう問題は、こういう給与問題や定期昇給の問題等の中に含まれる原資の不足ということからくるのであるというふうにわれわれは見なくちゃいけないし、また現場でも、労働者側は他の春闘なんかの見合い等を考えましても、物価高なんかの問題を考えてみても、それだけのもので査定をされ、それで甲乙がつけられていくということになると、これはとてもじゃないが、問題の解決にならないと思いますが、大臣どういうふうに思いますか。
  37. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 これは各公社、公団あるいは公務員その他の均衡の問題がございますので、予算の査定はそういうことでございます。  ただ、いまのお話でございますが、最初できましたときは、これは確かに一般よりもよかったように思います。しかし、その後の推移、経過によりましては、それがだんだんならされる方向に行っているのじゃないだろうか、かように思っております。  また、いろいろ給与の支払い方法等につきましても、これは理事者責任においてやったことでございましょうが、ややルーズであったような気もいたします。したがって、これらの原資が十分目的を達するように使われていない。ただいま監査すればそういう結果にもなるのではないだろうか、かように私は率直に過去の問題を見てお答えをしております。
  38. 石野久男

    石野委員 この研究所員の給与の問題というのは、特に特殊法人として設定されるその時点から非常に問題だったと思うのです。人材をここに集めるという意味でも給与の問題は非常に大事だった。今後の原研のあり方というものについての構想とも当然関連してくるわけなんです。  この給与の問題は、一般民間原子力産業部門と研究所におけるところの研究員関係等をどういうふうに関係づけるか。原子力研究所におけるところの研究員給与関係一般民間産業における原子力部門のものと同一視するという形の考え方も出てくるだろうし、あるいは原研なら原研一つ研究所としての特殊な使命をそこで維持し、発展し、開発していくということを考えていきます場合には、おのずからやはり給与の体制の中でもそれだけの配慮がありませんと、所期の目的が達成されないだろうと思うのです。私は給与問題に関連して、これからあとの研究所のあり方ですね、この白書には使命感だとかなんとか、ずいぶんむずかしいことばが使われておるわけなんですから、そういう点について大臣は委員長としてどういうふうにお考えになっておるか、この際はっきりお聞かせいただきたい。
  39. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 あまりはっきり答えられぬかわかりませんが、研究所研究者給与、こういう問題につきまして、アメリカ式だとか、またその他の仕組みがございます。ほんとうに研究の成果をあげるためには、もう少し思い切った研究費の一つの構想を立てるべきじゃないだろうか、そういうことも実は研究の課目にいたしております。しかし、これはすぐ簡単に右から左にできることじゃないように思います。  アメリカなどは、りっぱな科学者を二年なら二年、あるいは三年なら三年、そういう期間で幾ら幾らだ、こういう報酬をきめて、その方に研究に没頭してもらう。そしてその研究の成果を研究所が取り上げる。こういう方法をとっておるところもあるようです。こういう事柄も必要なように思います。  ただいままでの日本研究所原研について申しますならば、今日問題になっておりますが、ちょうど八年たって、ある程度整備もできた。これから本格的にいわゆる研究テーマに取り組むべき段階に来ているのじゃないだろうか。また研究者もさような意気込みを持っております。また、この白書にはいろいろなことが書いてございますが、研究者の全部が全部とは申しませんが、おそらく研究者の中には非常な使命感に徹した方もある。そういうことを、これらの方々の使命を達し得るような環境を整備することが私どもの仕事だろうと思います。その中にはいわゆる給与の問題ももちろんある、かように考えております。しかし、給与の問題になりますと、大蔵省の発行がなかなか強うございます。そう理論だけでは解決はいたしません。したがってまた、この白書の中に書いてありますように、年功序列式ではいかぬ、こういう書き方をいたしておりますが、これも現在の原研に直ちに適用できることかどうか、もう少しよく具体的に考えてみないと、これはやや無理があるのじゃないだろうか、かようにも思います。  しかし、一般的に申しまして、科学者、技術者を優遇しなくて科学技術の振興のないということ、これは一般に通用する基礎的な理念のように考えます。そういう意味におきまして、大蔵省等がその他の機関との関連においても十分均衡とるように努力はされますが、一そう突き進んでの科学技術者の優遇、そういう方面に私自身が努力すべきじゃないだろうか。しかし、これはただいま申しましても、努力するのでございますので、いついつから給与がどうなる、ここまで申し上げるわけにはいかぬ。その点は石野さんなり田中さんなりも御了承いただけるだろう。私は、科学者、技術者の優遇なしに科学技術の振興はないという、これもまた私の持論の一つでございますので、そういう意味においての努力をいたしたい、かように考えております。
  40. 石野久男

    石野委員 科学技術者給与については優遇するように努力するという御意見、非常によくわかりました。  もう一つ、この際聞いておきたいと思いますことは、原子力研究所の者と、それから最近の各民間産業における原子力産業部門で同じような仕事をしている者との給与関係がございます。私どもの見ているところでは、特殊法人として特に開発の部門に携わっている原子力研究所職員の諸君は、いろいろ地理的な不便や何かを忍んでみなあそこへ行っている。私は現実にあの地に住んでいるものでございますから、東京とかあるいはそれぞれの文化的なところへお住まいになっている方に対して、その方々があそこへ来ていただくことを思ってみますと、ずいぶん不便をしのんでもらっていると思う。これはただ御本人だけでなしに、奥さん方や子供さんの教育の問題にもみんな影響してきます。  そういうような意味から言いましても、この特殊法人としての原子力研究所設立するときの論議のなにをよく思い出すのでございます。が、そういう意味で、私は原子力研究所におる科学者、技術者給与というものは、一般民間の医業で同じような仕事をしている者とどういう関係にあるかというと、これはやはり原子力委員会なり、あるいは担当の佐藤大臣あたりが明確にしておきませんと、いつも俸給で当事者間の交渉の中で、理事者の側でもずいぶん混乱する問題が出てくるのじゃないだろうか、こういうように思うのです。そこで、私は大臣にそういう問題についてどういうようなお考えをお持ちになっておられるか、この際お聞きしておきたいと思います。
  41. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 御承知のように、原子力、これは戦後に始まった技術でございます。そういう意味で、当初におきましては原子力関係の者が非常に技術者が得にくい、科学者が得にくい、こういう立場からずいぶん優遇もされ、そういう意味の要望も達せられたように思います。  しかし、今日、わが国においても原子力技術者はよほどふえてまいっております。そうすると、その優位性というものがいつまで維持されるかどうか、これも一つの疑問があるだろう、かように思います。  しかし、今日まで概して申せますところは、政府機関よりも民間のほうが優遇しているのじゃないのか。したがって、民間には政府関係の機関から優秀な技術者がどんどん出ていく、民間に出かける、こういう心配があるわけです。これはいわゆる原子力グループその他の、そういう研究所にもそういう問題がございますし、それから原子力発電所もいよいよ来年になれば動き出すと思うのでございますが、そういうところで働いておる人たち給与、こういうものとのにらみ合わせ、これは絶えず考えていかないと、優秀なる技術者をとめておくことが困難になる、これが私の心配している一つでございます。しかし、この点ではなかなか大蔵省がやかましいのでありまして、御承知のように思うにまかせないというのが実情でございます。私どもが一番心配しておりますのは、いま隣にできておる原子力発電所、そういうものとの均衡をとるように十分考えていかなければならぬ、かように考えております。
  42. 石野久男

    石野委員 時間がありませんから、あまり論議はいたしませんが、労務問題の点について、白書は簡単に、ストライキを安易に行なうというふうに書いておるのだけれども、この白書では労働者側というのはほとんど良識を欠いておるような書き方なんですね。しかし、むしろ書く方の良識を私は疑うのです。  そこで、ストライキを安易に行なうという、その「安易に」ということはどういうことなんですか。ここに書いてありますよ。——大臣でなくていい、書いた人でいいですよ。
  43. 兼重寛九郎

    兼重説明員 良識を欠いておると申しますのは、私自分でそう感じましたので……。一例を申し上げますけれども、昨年の十月の末でございますが、三号炉の運転中に三十分の予告でストライキに入ったことがございます。私は、組合はストライキをする権利を持っておりますから、ストライキに入ること自体どうこうというわけじゃございません。原子炉は、そういうことをしたらすぐあぶないとは申しませんけれども、人間の力の及ぶ範囲ではできるだけ慎重に取り扱うべきものだと了解しておるのでございます。また、組合側の諸君もふだんからそれを強く主張しておられるところであります。  ところが、そのときに、研究所全体のストライキではなくして、原子炉に、いわゆる部分ストというのでございましょうが、三十分の予告で行なわれた。そのことはやはり、組合としても原子炉に対するストライキは最後の手段として訴えるときに使うものであって、それを一番先に安易に使うべきものではないというふうに私は確信しておるのであります。それがそうでないということは、やはり良識を欠いておると私は判断するのであります。安易であるかないか、これは人の判断によりますけれども、回数が非常に多いということはやはり安易にという印象を持たざるを得ないということなんでございます。
  44. 石野久男

    石野委員 いま兼重委員のお話の安易というのは、たとえば労働法規などでストライキというものを——特に原研の場合のストライキの問題なんかについて回数が多いとか、あるいは炉をとめる場合の処置が非常に不見識だ、こういうようなことを言われる根拠は、労働組合側がそういうストライキをやるのに全く原研の側、理事者側に無通告でやったというふうなことの意味なんですか。
  45. 兼重寛九郎

    兼重説明員 無通告でということではございません。三十分の予告ということもございますけれども原子炉に部分ストを割合に早い時期にかけるということは、やはり労働組合がふだんから原子炉について言っておられることから見ましても、そう安易にとるべき手段ではなくて、あらゆる手段を講じてもそれが効果を結ばないからやむを得ずということならば、これは私も了解いたしますけれども、ストライキのことも原子炉の性格からいって、人為的に避けられることは避けたほうがいいということからいいまして、二十四時間の予告は必要であると私も考えております。それは最近組合側も了解されて、協定ができたということを聞いて喜んでおるわけであります。
  46. 石野久男

    石野委員 大臣は笑っているようですけれども、これは組合の側は十分事前に通告もし、また事故が起きた場合の問題などを考えておるから、保安要員も十分置いてやっておるのであって、これは労働組合がストライキをやることについて、特に原子力委員会が労務者側の意見を一ぺんも聞いたことがないというのですから、聞かないでただ一方的な判断を下すというふうなことは、私は委員会も軽率だと思うのです。  先ほど来、紛争の中には巻き込まれたくない、当事者で自主的に解決すべきだということは、大臣もしばしば言っておられます。そういうことは非常にけっこうなことですが、しかし、問題の判断を下し、あるいは何かの意見を述べようとする場合には、やはり双方意見は聞いた上で判断を下し、あるいは意見を述べるべきだ。そういうことを何もしないで、一方的に労働組合が安易なやり方をしているのだからというようなきめ方の中にこそ、紛争が長引いていく大きな原因があるのだ。先ほど田中君からも言っておることは、こういうことを言っておるのだと私は思うのです。こういう労務問題についての労使双方紛争問題のあり方については、原子力委員会ももう少し勉強してもらわなければいかぬと思うのです。  これは大臣、首を横に振っておるけれども、この問題は非常に大事なことなのです。大臣は先ほどから、研究の事由の前の問題として労使問題があるのだと言っておりました。これは人間関係もお互いに入っておるわけです。そうであるだけに、お互いに理路整然とした理屈も必要である。けれども、それ以前に職場の中には、ふだんのいろいろと清水のようにわき出ている問題がたくさんあるわけだ。そういう問題を全然無視して話を解決しようとしても、これはできないだろうと思うのです。  だから、たとえば炉をとめるというようなことについても、そこに行くようないろいろな問題があったと私は思います。しかも、それを全然無通告のままでやっているのではなくて、十二分に通告しているという、労働者側のむしろ良識のある態度を買わなければいかぬのではないか、私はそういうふうに思います。この問題については当局、特に原子力委員会なりあるいは原子力局科学技術庁というような、監督する立場におる人々が、当事者の理事者組合側との話し合いの場に対して上からの干渉や何かをしないで、もっと話し合いを進めさせるようにすると、こういう問題の解決はもっとスムーズにいくのではないかと私は思う。こういう問題点については、ひとつ大臣も理解をもってもらわなければいかぬと思うのだが、どうですか。
  47. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 いまの三十分前に通告をしたとか、それはそんなことはございませんとか言われるが、二十四時間前の通告、そういうことがいまようやく協定ができた。その事実をお考えになれば、いかにこの三十分だとか一時間とかいうことで長い間議論してきておったかがよくおわかりだと思います。  それから、ただいま石野さんが偶然お話しになったのだが、保安要員も組合側で出しておる、こう言われましたが、これは保安要員の供出などについて、組合側協力も必要でございますが、これはどこまでも管理者責任をもってやるべき事柄だ、こういう点もはっきりしておかないといけないと思います。それでこそ初めて近代的な組合活動だ、こう言えるのではないだろうか。  私は、いままでの二十四時間の事前通告というのがあれだけ難航した、それで原子力委員会が、安易な気持ちでストライキに入っているのではないだろうか、こういう判断をされたことも何だか理解ができるように思います。なお、そういう点は、十分ひとつ考えていただきたいものだ、かように思います。
  48. 久保三郎

    久保委員 関連して。一つだけ大臣と原子力委員会の方にお尋ねします。  この白書というか、原子力委員会から出たもの、あるいは原研当局者から出たもの、それからこれは非公式であったかと思うのでありますが、研究者から出たもの、大体読んでみまして、いろいろ各委員からいままでお尋ねがあったことに尽きると思うのでありますが、なお大筋として三つあると思うのです。  一つは、いままで問題になっているいわゆる自主性の問題でありますね。特に管理体制の自主性、それは先ほど大臣がおっしゃるように、特に給与の問題その他は一つの大きな壁があるということです。大臣はそれの一つの試案として考えられた点をさっき発表になりました。それも一つの案でありますが、少なくとも自主性をどう回復するかが私は一番問題だと思うのです。  いま石野委員からの御発言で、安易という文句はどうもおかしいではないかというお話がありました。そのお答えが、三十分というのは安易だというふうにお聞きしたのです。三十分と二十四時間のことで安易というふうにとったのでは、それはかえっておかしい。この白書というか、出したものによれば、この御意見は、しょっちゅうストライキをやって困るということに尽きるわけですね。中身の問題については別ですが、そういう表現です。それではなぜストライキが起こるかという背景をつかぬ限りは、三十分がいいのか、二十四時間がいいのか、そんなことは抹消的だと私は思うのです。それはそうです。というのは、運転する原研職員が、二十四時間なら安全だが、三十分は危険だということを承知しながらやるはずはないのです。でありますから、極端な言い方でありますが、二十四時間とか三十分の問題ではなくて、あなたが原子力委員会で見られたような、その根源をつくところの管理体制、いわゆる自主性の回復をひとつどうしても掘り下げなければならぬ。これは大きな問題です。  もう一つは、士気の高揚とおっしゃった。いわゆる年功序列の問題についても研究された。これも見ようによっては一つかもしれません。しかし、原研士気の高揚がはかれないというか、士気が低下してている原因は何かというと、将来に対する展望がちっともないということですね。原子力研究所理事長研究者が参考人としてこの席に出てまいりましたとき、その話の中で共通した点が一つある。それは、長期計画をぜひつくってくれ、少なくとも五カ年間くらいの安定した計画をつくってくれということです。いままでそれはあったかどうかわかりませんけれども、少なくとも将来に対する展望がないから何をやっていいかわからぬ、行く先がどこだかわからぬというのが今日大きな問題の一つになっている。  それからもう一つは、先ほど来御論議の中に出ましたが、研究者のほうで書いておりますものの中に、気のきいた者は論文でも書いてやる、そういうものに関係のない者は基礎研究などはもういいかげんでほうり出す、こういうようなことが書いてあります。これが事実とするならば、やはりそこにおける研究体制というか、管理体制というか、こういう意見を取り上げて積み上げないと、単なる労務問題だけで終始したのでは原研の再建にはならぬ、こういうふうに私は思うのですが、いかがでしょう。
  49. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまのお話の中で、給与そのものについては大蔵省という壁がある、これはよく御理解をいただいたようです。  なお、誤解を招きやすいのに自主性ということばがございます。これは十分誤解のないように願いたいと思います。労使双方原研の職内においてこれを解決してくれ、そうしてそれぞれの立場においてそれぞれの意見を持たれるだろう、それを自主性ということで申し上げておる。その範囲において所し合いをつけていただくなら非常にけっこうだ。  ただ、久保さんにしても、石野さんにしても、私は少し理解しかねるのは、通告が三十分あるいは二十四時間、そういうことがいま問題になっておりますが、これは原子炉という特殊な場所であるだけに、これについては経営者側、管理者側にその責任があるのだ、こういうことをはっきり申し上げている。その管理者側として、三十分の通告では手配がおくれる。これは、組合側においていかに自分たちが責任を持つと言いましても、それは別なことでございまして、管理者側において責任を持つべきことです。ですからその点がやや誤解を招くのじゃないだろうか。私は、二十四時間あるいは三十分、それは議論になっておるが、その争議の内容を十分検討しなければいかぬと思います。それについては私も異存はございません。それは争議の原因はどこにあるかということです。しかし、争議行為に入ったときに、原子炉という特殊なものを対象にしておれば、これはやはり管理者責任の持てるような、その時間だけの余裕はぜひ与えてほしい。またそれは組合側においても、原子炉の特殊性をしばしば主張しておるじゃないか。そういう意味からもこれは組合側において納得さるべきものだ。最近組合側においてもそれを納得したということで、この長い問題が今日解決を見ましたことは、これはたいへんけっこうなことのように思います。争議には必ず原因があるのでありますから、そういう意味においてはその原因を追及しない限り十分の解決はできないだろう。  ただ、原研の方々に申し上げたいのは、政府関係機関としてのこれは共通の立場のものがございますので、他の部門と特殊に、原研の特殊性を、どの程度まで主張し得るか、これは一つのポイントだと思います。こういう点では、常識のある解決をするという立場ならば、これまた原研側においても納得をしていただかないと、私どもとしてはまことに困る状況なんです。  いずれにいたしましても、組合自身が最近のような形でなしに、今後はおそらく国会の問題にもなり、各方面からも批判を受け、必ず近代的な組合のあり方に変わるだろう、私はそれを希望してやまないのです。私はまたそういうようにあってほしい、その点を重ねてお答えしておきます。
  50. 久保三郎

    久保委員 大臣のお話で三十分、二十四時間の問題は、重要性というか安全性というか、この問題については別として、問題の本質からすればそれは下のほうじゃないか、こう言いたいわけです。それで、自主性の問題も大臣の立場でいいますれば権限のワク内でということでありましょうが、そのワクが非常に困るという問題があるから、やはりこれは管理体制というか、管理者側として多少考えなければいかぬというよりは、もう少し真剣に考えていただいて、安易にストライキができるというか、そういう見方をされていることに少し反省を加えてほしい。私は別にストライキを好むものではありません。正常に話し合いが進んで解決がつけば一番いいのですから、そういう点を考えれば、この問題は労使が悪いとかなんとかいう議論もいろいろありましょうが、かかってやはりいまの制度自体をもう少し大臣が考えていただきたい、こういうことに尽きやしないかと思うのです。  それから、先ほど私が申し上げた長期計画について、それがいままでないというか、あるにはあるのでしょうが、安定していないような話ですね。これは研究者としては非常に困る問題だと思うのです。私はしろうとでよくわかりませんが、一号から四号まで何のためにできたかわからない。その先はどうなんだという不安は確かにあると思う。そういう点をひとつはっきりしていただきたいと思います。
  51. 兼重寛九郎

    兼重説明員 長期計画のことでございますが、これは研究主任会世話人というところで、一部の意見として書かれたものでございますが、そこの中に「毎年のように改稿修正される原子力長期計画ではいかに特殊法人といえどもこれらの全ての要求は消化しきれない。」こう書いてございます。これは何か誤解がありまして、長期計画というのは原子力委員会が発足しました直後に一度できました。それから四、五年たちまして三十六年の二月に策定されたものが現存あります。それはそれ以後何ら改定はされておりません。もちろん時勢の進展がありますから、一言一句そのとおりに動いておるわけではありませんけれども、私などは、むしろその計画にあまりにも沿い過ぎるくらいに沿って動いておると考えておるのでございます。  ところが、毎年、年度ごとに、原子力委員会の決議に基づきまして内閣総理大臣が示す事業計画というのがございます。これは毎年、毎年、その一年間のことをきめて出すわけでございますから、これは一年ごとにまた改定修正されなければおかしいものなんでございます。その改定のときには、原子力研究所理事者側とは十分打ち合わせをいたしまして、それをきめておるわけであります。原子力研究川の理事者側がこういうことはできないとか、やらないとかいっておるものを、無理に押しつけてその中に含めたことは、私の記憶する範囲ではちっともございません。したがって、もしもこれが、こういう人たちにとって、自分たちの全然やる気のないものをやれと原子力委員会からいわれておるという印象を与えておるとしたならば、それこそ中の管理機構に改善を要する点があるのではないかというふうに私は考えます。(久保委員「その点は菊池理事長がおっしゃいましたよ」と呼ぶ)  菊池理年長が言われましたことは、こういう計画をするときに、いまの日本の予算制度は一年こっきりであるので、長いあれはできない、こういうことでございます。ところが、御承知と思いますけれども、金の面につきましては、債務負担行為を認める制度がございますから、契約などを進めるのに、相当先のことまでできるようにできますので、その点は菊池理事長がどういう意味でおっしゃったか、 いまちょっとよくわかりません。  ただ、人の面につきましては、いわゆる債務負担行為に類するような、この計画に対しては人員は来年幾ら、その次幾ら、そういうことは全然ございませんから、その限りにおいては一年暮らしということもできますけれども原子力研究所は発足以来今日まで八年間、毎年百人とか百何十人という定員増加がなかったことはないのでございまして、その範囲を多少大き目に見積もるか少な目に見積もるかは別の問題でございますけれども、そういう点で全然先が約束されていないというふうに考えないでも、やっていく方法はあります。現にほかの研究機関などみな同じ状況でありますけれども、ある程度の計画は立ててやっておるわけであります。  それは、菊池理事長のような方がやられるのに、いまのものでは不十分だということはもちろん私も理解できまずから、いまので完全であるということを申すわけでございませんが、全然動けない、あれでは長期のことは何もできないということはないというように考えております。
  52. 中曽根康弘

    中曽根委員長 森山君。石野委員が二問ということで御了解を得ておりますからお待ちください。
  53. 石野久男

    石野委員 委員長のきつい締めつけがきておりますが、なるべく要領よくやりますから、お許しいただきたいと思います。  いまの長期計画の問題でもそうですか、これは大臣にひとつお考えいただきたいと思うのです。原研開発途上の一つの部門を持っている非常に新しい組織である。したがって、他の政府機関の部門のような、でき上がった部門と違います。だから予算が年々歳々ふえていきましても、与えられるプロジェクトがまた多ければ、それの単位当たりの予算なりあるいは人員というものは必ずしも充足されているとは言えないのです。それを他の政府機関と同じような見方をして御答弁なさっておられるように見受けられる、私の聞き方が間違っていないとすれば。これはやはり当局の、特に大臣の側で、そういう問題点について、菊池世相長なりあるいはその他の原研当局、あるいは労組の側からも言っておるような問題点は謙虚に受けて、問題の解決にあたってもらわなければいけないのではないか。そういうことの意味をいま久保委員からお話が出ておると思いますので、いま兼重委員から言われたような、年々歳々予算がふえているからいいのだということでは、ちょっと原研の問題を解決するには十分でなかろう思います。この点がまず一つ。二回しか言えないのですから続けて質問しますが、労務問題です。この白書といいますか、これによるところのいわゆる労務問題では、いろいろな面で労働者に対するきびしい書き方がしてあると思うのです。先ほどから何べんもお附きしているように、ストライキは確かに何回も行なわれておりますけれども、通告なしで行なわれたストライキはないのです。三七ページに「また近年ストの予告時間が極度に短縮され、抜打的に行なわれることもある。」と書いてある。この「抜打的に」という意味は、無通告でストをやったという意味なのか。どういう意味なのか。これはちょっとした読み方をしますと、労働組合が当局には何も言わないでかってにやったというふうにとるのですよ。もしそうでないとするなら、この部分は消してもらわなければいかぬ。これは大きな誤解を生みます。労働組合を悪意に理解させようとするような意図を持たれているように思われるので、こういうような書き方はやめてもらわなければいかぬと思います。それについても御意見を承りたいと思っております。  それからもう一つ、労務関係の中で、私は、特にこの四〇ページのところで出されておりまする「組合からおよそ次のような主張がなされている。」ということを書かれて、(a)と(b)とで、「法定被曝線量をこえて被曝したときは、障害となって発現しなくとも、その超える部分について補償することと。」あるいは「法定被曝線黄以下の部分については、放射線手当を支給すること。」などという、こういうような労働者側からの要求が出て、しかも、こういう問題については現場におけるところの理事者側との話し合いもついて、これを上部へ上げておるのだけれども、しかし、上のほうからこれを押えて、こういう問題については全く握りつぶしておるというような問題点もあるように聞いておるのですが、そういうことはないのかどうか。もしそういうことがあるとするならば、これは労働者側から文句が出るのはあたりまえなんですよ。こういう問題を現場では、もうそれは大事なことなんだからというて出している問題を上で押えてあるいは予算がどうだとかこうだとかで抑えられている場合、労働組合はその問題を契機としてやはり愚見を述べたり、あるいは何かの行動を起こすことは当然だと思います。そういう点をどういうふうに考えておられるのか、ひとつ聞いておきたいと思います。  それからまた、四三ページに「原子炉の安全性についての報告」というのがございます。これは、こまかいことは私は聞きませんけれども原子力委員会がここに書いてありますることは、原子炉の安全性についての報告ということはどういうことを意味しているかということなんです。これは原子炉等の規制法という法によって安全の問題は規定しておりまするし、あるいはまた原子炉の設置基準法等によっても原子炉の安全性の問題等についてはちゃんと規定しております。で、原子力委員会がここでいう安全性の報告ということの意味は、その法との関係はどういうふうな意味を持っておるのか。まず第一番にこの問題を第一点としてお聞きします。
  54. 兼重寛九郎

    兼重説明員 順が逆になるかもわかりませんが、原子炉の安全性についての報告というのは、たぶんこういうことだと思います。原子力研究所原子炉を設置しますときには、その他の者が設置します場合と違いまして、設置許可の手続が省略されるのであります。しかし、安全性については、やはり原子炉安全専門審査会の意見を聞きまして、それが確保されるかどうかということをするようにいたしております。そのために、そういう意味の手続、実質的な設置のときにするような手続をしております。その手続をするための手段として、これが報告という形になっておるのじゃないかと思いますが、ここのところ、この報告が何であるかということを私は直接確かめることを怠りましたので、もし私の答えが間違っておりましたら次の機会に訂正さしていただきます。   〔小委員長退席、福井小委員長代理着席〕  それから、前の放射線の四〇ページから四一ページにありますそのことにつきましては、原子力委員会でも検討したことがございますが、特に(b)ことなどは、こういうようなことは考えるのがおかしいじゃないか。もしもこういうことをしなければならないような職場の状況であるならば、それを改称して、そこで働いてもらうようにしなければならぬ。現在は、私どもの了解では、そういうことの必要がない状態の職場になっておると了解しておりますし、そういう状況が国際的にも認められ、よその国でもこういうことはしておるということは聞いておりませんので、この問題を取り上げていないのでございますが、それは理事長もそのことについて了解し、もちろんそれに賛成をしておられると私は考えております。そこで、私どもは、こういう原子炉その他これに類似した施設は特に注意して運転をしなければならぬ、そういう社会的な責任も負うておることでありますので、それについては、たしか名称は運転手当というので、ある手当を支給することをつくりまして、そのための予算措置もとったのでございますけれども、私の聞くところによりますと、組合側がそれを拒否しておりますために、現在も支給されていないというふうに聞いております。
  55. 島村武久

    ○島村政府委員 ただいまのお尋ねのうち補足申し上げますと、第一の点、兼重委員からお答えになりました点はそのとおりでございまして、一般的に原子力研究所以外のものは、原子炉の安全審査を受けまして、そして許可を得て動かすわけでございますが、原子力研究所は法律的にはその手続を省略すると申しますか、その規定の適用はございません。しかし、原子力研究所におきます原子炉につきましても、第三者による公平な安全審査が望ましいというところから、監督命令によりましてそのような安全性についての報告を徴収いたしておるわけでございます。  なお、石野委員のお尋ねにありましたストと、予告期間の問題でございますけれども、原則的にはおっしゃいますように事前の予告を組合から研究者側は受けておりますが、その例で見ますと、十分あるいは十五分というようなものもちょいちょいございましたし、はなはだしい例に至りましては、実施いたしましたあとで通告があるというような例もございましたので、必ずしもこの表現が非常にオーバーだというわけでもないと思います。しかし、最近は労組側も非常に常識的でございまして、ことしになりまして以後は、たいてい一日ぐらい前に事実問題といたしましても通告をしてくれるようになっておりますことを申し添えます。
  56. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 いまの第二、第三、第四、これは政府委員説明でいいかと思います。  第一間に提示されました問題につきましては、誤解を受けないようにと申しますのは、あまり官側、役所側が干渉しない、そういう意味において誤解を受けない程度の連絡は十分するようにいたすつもりでございます。
  57. 石野久男

    石野委員 とにかく、そういたしましたとかいたしますとかという問題は別といたしましても、組合側としてはストライキを何べんかやったことは事実ですけれども、それはみな一つの問題の提起された中での事件でございまして、交渉過程の中で起きている問題ですから、たいていどこでも組合の争議過程の中ではそういうことはあり得るのです。それをあまりきびしく別な問題点のように取り上げられますと、ことさらに労使関係が紛糾してきますから、この問題についての考え方は、あまり敵対意識を持たないほうがいいのじゃないか。佐藤委員長はむしろ労働組合をひとつぶっつぶしてしまえという気持ちでやっておるのではないかとさえ思われるような誤解を受けますから、これはひとつお考えおき願いたいと思います。  次に、私は、労働組合理事者側との双方の自主的な交渉という問題については、これは先ほど来大臣が何べんもそれを阻害するようなこと、じゃまするようなこと、干渉することはしないと言っておるのです。しかし、たとえば退職金規程のような問題なんかにつきましても、これはやはり労使双方で話し合いをしてやらなければならぬ問題だろうと思うのです。しかし、聞くところによると、きのうすでに、退職金規程については組合との協議をしないで一方的にきめておるということを聞いておるのですが、そういうことはないのですか。これはひとつはっきりしておいてもらいたいのです。こういう問題を一方でがしっときめておいて——それこそストをやってあとからきめたのではないので——きめておいて、今度労働組合がああだったこうだったというようなことにしないように、初めに双方で考えて話し合いをしておいてもらいませんと、こういう退職金規程なんというものはやはり長きにわたって労使関係の基本的な問題にも触れてきますから、やはりこれは慎重に取り上げておいてもらいたいと思うのです。私の聞いていることが間違っていなければけっこうですけれども、間違っていればこれは取り消しますけれども、もし一方的に、労働組合との話し合いもなしに、現在も問題になっておる退職金規程の問題が一方的にきめられておるというようなことがあるならば、これはちょっと考え直してもらいたいと私は思います。  それから、先ほど来の炉の安全性の問題については、別に基準法があったりあるいは規制法があったりしますが、これは報告はするのだ、しかしここでいう報告は、報告をした場合、これが悪いというようなことになったときにはどういうように扱うのか。そういう問題を当局のほうではどういうふうに考えておるかということもこの際聞かしておいていただきたい。それで私の質問は一応終わります。
  58. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 私はみずから顧みて非常に進歩的な科学技術丘長官だと思っております。したがって、労働組合をつぶしてしまえ、こういうようなことは全然考えておりません。  また、いまの退職金を一方的にきめたというお話も、まだ聞いておりません。
  59. 島村武久

    ○島村政府委員 退職金規程につきましては、長い間労使の間で話がつきませんでしたけれども、私のほうに対しましては、今年に入りまして理事者側から申請がございまして、所要の手続に従いましてこれを認可いたしております。しかしながら、御指摘のように、労組との間に話がつかないままに一方的に実施したというようなことは承知いたしておりません。  等二の点でございますけれども、いろいろ監督命令を出しておりますが、それでうまくないと考えたときにどういう措置をとっておるかというお尋ねでございます。ただいままでのところ、いろいろ報告を徴収したりあるいは監督命令を出したりしたことはございますけれども、その結果につきまして、非常にまずくて、さらにそれに対してあらためてまたこうすべしという意味での監督命令を発した事例はございません。言いかえますと、それはよく話し合いをいたしました結果、うまくいっておるということになりますので、過去におきましてはうまくいかないがゆえにさらに監督命令を出して、それに対して是正を求めるというような措置を講じたことはございません。架空の問題といたしまして、どうしてもおもしろくないということになりますれば、やはりさらに監督命令によってそれを是正するという道が残されております。
  60. 福井勇

    ○福井小委員長代理 森山欽司君。
  61. 森山欽司

    森山委員 原研の問題が新聞紙上をにぎわし、また当委員会においても取り上げられているゆえんは、最近において争議行為が頻発してしばしば業務が停滞しているということに大きな原因があろうと思います。それによって、先般本小委員会においても原子力委員会あるいは日本原子力研究所のほうに、原子力研究所の機構改革の問題についての調査をお願いし、その調査のお答えを、きのうですか、おとといですか、お出しになられ、きょうそれについての御説明があり、私どもがそれについて質疑をしている、こういう順序になっておろうかと思います。  私は、今度の原子力委員会のこの報告書を通読いたしまして、所感を申し上げますならば、兼重委員が、原子力委員会にも今日のような情勢を来たしたことに一半の責任があるということをお認めになられましたので、そういう意味のことを前提といたしまするならば、ここに書いてあるところの報告はすべて妥当なものだというふうに感じておりまして、先ほど来野党の諸君からいろいろな御質問がありました点には同意しがたいのでございます。しかし、ここで与野党の間の議論を展開することは趣旨ではございません。よって、この中身の問題の若干について御質疑を申し上げ、私も一時間か二時間やりたかったのでありますが、もう一時まで二十五分しかございませんので、一時ごろまで大臣、よろしゅうございましょうか——できるだけ早くいたしたいと思いますが……。
  62. 福井勇

    ○福井小委員長代理 森山委員、たいへんお待たせをして恐縮しておりますから、大臣の分をなるべく先に集約を願いたいという希望を申し上げておきます。
  63. 森山欽司

    森山委員 それでは、できるだけ簡単に申し上げたいと思っております。  先ほど大臣の御答弁で、原研労使問題は当面焦眉の問題であると同時に、原子力研究所運営ないし研究以前の問題であるという御認識の御表明がありました。その点については私も全く同感であります。  この報告書によりますと、組合は「良識を欠く」傾向がある。何が良識を欠くかということについては、おそらくはこのあとにも書いてございますとおり、昨年「昭和三十八年は一年間に約四十回行なわれた。」「近年ストの予告期間が極度に短縮され、抜打的に行なわれることもある。」そういうようなことをおそらく良識を欠いたというふうに言われるのではないかと私は思います。  それで、この問題について原研の当事者から先般同じような回答書が出ておったのですが、その中に非常におもしろいことが書いてあります。「労組活動の最終目標が経済闘争にあるのか、また、それとは異なった別の目標があるのか理解に苦しむ」「これはやはり思想的背景が存在すること」等が「大きな影響を持つであろう。」というようなことを書いておるわけでございます。  管理されております原子力研究川の当事者がそんな感じを持っておるというこの切実な感じ方については、原子力委員会としてはどういうふうにお感じか、ちょっとお伺いいたしたいと思います。大臣より兼重さん、学者のほうがよろしゅうございます。
  64. 兼重寛九郎

    兼重説明員 この点はたいへん判断がむずかしいところでございまして、そういうような見方をする人々もずいぶん多いことも承知しております。そしてそれがこのストライキが非常にたびたび行なわれる理由だということを言う人もございますけれども、私どもそれがそうであるのかないのかということを突きとめる手段を持っておりませんので、ここではそれに対して何らの判定はいたしていないわけでございます。それは否定もしなければ肯定もしないという態度でございます。
  65. 森山欽司

    森山委員 原子力委員会の先生方にせひひとつ——先般私がこの委員会でも申し上げましたとおり、現在日本原子力研究所には、公安調査庁の次長との電話連絡によりますと、日本共産党員とはっきり言える者が二十名ちょっとおる。その同調者はその五倍程度にのぼっておる、百二十名くらいの者がおるということ、それから労組運動がその影響を非常に受けておるという事実、そういう問題等について、ひとつ原子力委員会においても学者の方々はよく御勉強していただきたいという希望だけを、私はこの機会に申し上げておきたいと思う次第であります。  そこで、この報告書の中に「労使懸案事項の概要労組主張」というのが三八ページからずっと載っておるわけであります。その項目をあげますならば「労働協約」、「争議協定」、「ベースアップ」、「勤務時間中の組合活動」、「放射線労働に関する取極」というようなことでございます。  先般のこの科学技術特別委員会の本委員会のほうで私は原研理事者側に聞いたのでございますが、いわゆる争議協定ができたらこれで問題は当面解決するかと聞きましたところ、四月一日からいわゆる交代勤務の問題とか、あるいは超過勤務手当の問題、原子炉の運転手当の処置の問題等で、この話がきまらないと、またとまるおそれがあるというようなことを承ったわけでございます。それで、国民注視の的であるJPDRが動くか動かないかの問題は、動かし始めてからまたとまるおそれがあるというようなことは、われわれとして遺憾にたえない。その意味で、先般大臣が、原子力委員長がおっしゃいましたように、JPDRを動かすことについてちょっと待てというようなお話をされたという点は、非常に適切な措置であったと私は思っております。ともかく、従来のようなことでいくと、これらの問題についての話し合いがきまらないで、またとまる可能性があるということは、理事者自体も言明をいたしておるところでございます。  そこで、私はお伺いをいたしたいことは、ともかくこの原子力研究川の労働組合というのは、御承知のとおり、勤務時間内の組合活動はもう全く野放しにいまのところなっておるわけでございます。専従制度もしかれておりませんし、時川内に組合の各種の集会を思うままにやっておる。しかも、回数の制限も、賃金カットもやっておらないというようなことでございます。この問題について、先般、近く理事者側組合側に提案をするのだという話を聞きましたが、いままでの提案はちょっと常識外のような提案を理事者側はしておるので、今度は変えるのだというお話でございますから、それを拝見してから私どもはまた意見を申し述べたいと思っております。ともかく、相撲を取るにいたしましてもルールというものがあるわけです。十五尺の土俵の中で相撲を取る。ところが、この原子力研究川に関する限り、そういうルールがない。相撲でいえば土俵がないのです。労働組合というものは確かにある。りっぱな規約もございます。しかし、労使間におけるところの常識的なルールの初歩的な取りきめさえないというような今日の状況になっておるわけでございまして、これは、その意味においては、ただにその研究以前の問題であるというよりも、体をなしてない、全く問題にならないというようなことでございます。  そこで私は、これは大臣に申し上げたいのですが、先ほど来何か自主性自主性という議論が出ました。自主性もけっこうでしょう。しかし、こんな結果になっておるのは、労使双方にあまりにも自主性があり過ぎたことからこういうことになったのである。その自主性を尊重されては困るのではないか。私はそんな事態のような感じすらいたしてならないわけでございます。一体こんなにだらしないことを今日まで、それでは原子力委員会あるいは科学技術庁長官——これは佐藤長官はごく最近御着任になったわけでございますが、もう八年間この原子力委員会はやっておる。歴代、監督すべき立場にある科学技術庁長官ないし原子力委員会というものが、あまりにも自主性を尊重して野放しにしておいたからこんなことになったのではないか。あるいはあなた方は、こういうことはいけないと思って、気がついて言ったのだけれども、やらなかったのか。自主性を尊重していたからこんなことになったのか。その辺のところの経過を、大臣はきわめて大ワクでけっこうですが、うしろに居村原子力助長がおりますから、どの程度自主性を尊重し過ぎた結果であるか、自主性というものなしに一々くちばしを入れた結果であるか、この辺のところをひとつ明らかにしていただきたいと思うわけです。
  66. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま自主性についての御意見がございました。先ほど来誤解はないだろうと思って久保さんにもお答えしたのでございますが、私は、組合が近代的な組合になっておらない、この点が量も大事なことではないか。ただ、ただいま御指摘になりましたように、労使双方で協議すべき事柄も全然ないのだ、そしてそれは積み重ね方式とか申しておりますが、八年もたった今日なおその積み重ね方式、そういう点からいまの自主性ということが問題になるだろう、そういう意味においての自主性の主張は強過ぎるだろう、これも御指摘のとおりではないだろうか。少なくとも近代的な組合のあり方というものは、最近はILOの条約すら批准しようとしておる、そういう際でございます。それならば、この勤務時間中における労働活動、組合活動、こういうものについてもちゃんときちんとしたルールがあってしかるべきだろう。そういうこともない。これは私はまことに遺徳のように思います。  ただ、誤解を受けるのじゃないかと思いますのは、先ほど来お話がございました思想についての問題であります。今日は、思想の事由、これはあるのでございます。ただ、思想は自由ではございますが、そういう意味において特殊な組合活動が展開されるということになりますと、これは私どもよほど気をつけなければならない。思想は自由にしても、組合活動自身として現実に問題を引き起こす場合に、それが他の政治活動を主にするような運動であるならば、これは社会的な批判もあるだろう、かように私思いますので、そういう点について、組合側においても自主な、また近代的な組合であるべきだろう、こういうことを強く希望してやまないものであります。
  67. 森山欽司

    森山委員 、原子力局長、労使間の問題に原子力局としてはどの程度の介入をしておるのか、してこなかったからこうなったのか、したからこうなったのか。はっきりしてもらいたい。
  68. 島村武久

    ○島村政府委員 全然労使間の問題に無関心で何も知らずにおったわけではない。しかし、すべてを知り、かつすべての問題についてこうあったほうがいいというような意見を述べ続けてきたというわけでもございません。  先般来非常に問題になっております自主性という意味でございますけれども、これは大臣からも本日も再々お述べになっておられますように、何よりもこの原子力研究川というものは、研究所法第一条にございますように、原子力基本法に基づきできておるわけでございまして、基本法の精神を体していかなければならない。その基本法には自主性ということがうたわれておるということのために、すべての点についての自主性というふうに誤解されやすい血があったのじゃなかろうか。基本法で述べております自生性というものは、研究開発利用といったような問題についていっておることであります。原子力研究川という特殊法人につきましてはそのすべてが自主的に片づけられていくということであり得ないのは当然でございまして、日本原子力研究所法提案理由の際にも、政府の強い監督のもとに日本原子力研究所を設けることにしたい、こういうふうに述べております。ただ、先ほど来の石野委員も御指摘のように、研究の自由あるいは研究活動というようなものとその組織あるいは労働問題というものが完全に無関係ではあり得ない、こういうことでありまして、そこに原子力研究所に対します監督の実際のあり方といたしましては、非常に困難な問題が具体的なケース、ケースによってあらわれてくるわけであります。  私どもの考え方といたしましては、できるだけいわば自主的にやっていただくことを希望いたしますし、大臣の御指示もございまして、特に労使間の問題というようなことについては極力介入というようなことのないようにやってまいったつもりでございます。その結果今日のような事態を生じておることが、そのことだけのためにそうなっておるのか、つまり、私どもはなるべく自主的にやってもらいたいということで、介入をなるべく避けるという方針でやってきました結果が今日の事態になったかどうか、これは考えようによることでございます。私どもといたしましては、そのような態度をとりましても、もっとうまくいくこともあり得たのじゃなかろうかと思います。いま御質問にありましたように、なかなかむずかしいことでございまして、自主的にやらしておったからそうなったのかどうかということにつきましては、判断の問題じゃなかろうかと考えております。
  69. 森山欽司

    森山委員 いまの島村原子力局長は、何を言っておるのか私はよくわからない。しかし、島村君をとっちめてもしょうがないから……。  とにかく、原子力研究川の建設が非常に大事でしたから、そっちのほうに重点がいって、労使関係の問題なんておそらく眼中になかったんじゃないか。あっても適当にやっておけというような気持ちでやってきたというようなことがこういうことになったので、そういう意味においては、先ほど来問題になった自主性を重んじ過ぎたから、むしろこんなことになった。だから、あまりこれから自主性を重んじられることは、よほど慎重におやりになる必要はないか、こういうふうに私は思いますので、大臣、ちょっとそのことだけ……。
  70. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 私は自主制があってしかるべきだと思います。しかし、問題は、こういうヒューマン・リレーション、あるいは研究以前の問題、こういうことについての理解の問題になるだろうと思います。確かにこの点につきましては、管理者側において、十分かくあるべき労使関係というものについての確固たる考え方が欠除しておったのじゃないか、こういう感じはいたします。これは研究に没頭すること、それでもういいんじゃないか、こういう方面で、研究ということについては科学者、技術者として非常な関心事であり、またそういうことに非常に気をつけてまいりますけれども、その以前のヒューマン・リレーション、労使問題、そういうものについての理解が十分でないじゃないか、私はさように思います。  ただ、白土性だといって、それが双方がかってなことを言っている。これが自主性というものでもございません。おそらく十分な理解をもって話し合うならば、同じ原子力研究川で、そういうものを生かしていくという方向への協力双方に生まれてきたはずだ、かように私は理解しておるのでございまして、先ほど来自主性・自主性ということが問題になっておりますが、これは誤解のないように願いたい、かように私は思います。
  71. 森山欽司

    森山委員 実は先般契約されました三月十日付の争議協定の共同宣言の中に、「原研の自主性のもとに事態を収拾することを」理事長と執行委員長は「申し合わせた。」この自主性は何を言っているのかと思って、格別気にもしなかったのですが、きょうは野党側からこの問題を中心に御議論になったので、念のためにお伺いしたのです。いまの大臣のお考えでけっこうでございます。また原子力委員会報告書によりましても、法律のもとにおいて自主性を十分尊重し、国の立場から見て必要最小限度のもとに監督権は限っておる。法律のたてまえもそういうふうになっており、また大臣のお答えもそうである。願わくはひとつ健全なる労使関係の軌道を引かれるように、自主性を十分尊重されて御指導をお願いいたしたい。  もう一つ、私お伺いをいたしたいことがございます。それは今度の労使間懸案事項の概要でございますが、労働協約、争議協定、ベースアップ、勤務時間内の組合活動、放射性物質の労働に関する取りきめ等があるのですが、原研労使間の取りきめ等を見ますと、個別的なものが非常に多いわけでございます。幾つあるかはあとで原子力局長から伺いますが、おそらく二十や三十あるのじゃないかと私は思うのです。そうして、それがいずれも、大部分のものが、一月、二月、三月というようなこま切れです。ばらばら協定のこま切れ協定をやっておるわけです。多少勘ぐるようでございますけれども、もし十二の協約があって、毎月一つずつ協約の期限がくるといたします。しかも、これが短期間の一月、二月ずつ更改していきますと、毎月三つや四つの協約の改定でもって、これは労使関係は安定しっこないというふうに私は思うのです。  そこで、少なくも基本的な問題については、一般的な労働協約を締結するという考え方がなければ、私はこの際まずいのではないかと思う。特に勤務時間内の組合活動の規制を含めての労働協約の締結というのをこの際打ち出しておかないと、とにかく毎月毎月問題が出てくる。そうして組合の性格によっては——組合の性格によってというのは、要するに労使間の関係を対立抗争の関係と見て労使間の問題を処理しようという考え方の組合、そういう性格を持っておる組合の場合は、問題が片づかないと私は思うのです。  そこで、大きな問題は、この際、労働協約という、そういう一般的な労働協約の形で処理していくということが私は必要な段階じゃないかと思う。もしそれをやらないで、要するにいままでみたいなばらばらのこま切れ協約を続けていくということになりますと、これは毎月毎月紛争の種が絶えない。今月終わったかと思うとまた来月出る、来月終わったかと思うとまたその次出てくる、ということになろうかと思うのでございます。そういう意味では、理事者側のほうでも労働協約の締結は一度したようです。ここにも、「一般労働協約は、労使間に小委員会を設けて協議されたが、三十六年ごろから個別協定の積み上げの方向をとり、一般労働協約締結の協議は現在行なわれていない」ということですが、だいぶ情勢も変わってきましたので、そういうような動きもあるやに聞いておるわけですから、この際やはりそういう方向に持っていくべきじゃないか。しかし、積年のやり方がございますから、そこでそういうことをやっていきますと、相当また問題が起きると思いますが、その意味では、今後の原子力研究所運営ないしは原子炉の運転というものについて相当腹をきめた体制をもって臨むべきだと思うのですが、これについての大臣の御所見を承りたい。
  72. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまのお尋ねは、私しごく同感でございます。先ほど来申し上げておりますように、組合が近代的でないのじゃないか、かように私自身が考えておりますのは、今日まで基本的な取りきめがない、それが一つの問題でございます。これはぜひとも労使双方において、そういう取りきめをしていくべきじゃないだろうか。いままでのような毎月毎月争議を展開するような問題、これについてメスを入れなければならない、かように私は考えております。おそらく今回の問題を契機にいたしまして、労使双方が建設的な意見を戦わすようなことになるのじゃないだろうか。いわゆる対立抗争に終始する労使関係ではなくて、同じ職場において、また国民の税金によってお互いがそれぞれの目的を達する、そういう原子力研究所、その性格からもおそらく今度は変わってくるだろう、またそれを私は期待しております。  そういう立場に立てば、ただいまのような点についても、これは当然メスが入るべきじゃないだろうか。かくして組合も近代的になり、また私どもが考えましても非常にすっきりした組合、こういうものができるだろう。  そこで問題は、研究以前の問題だということ、このヒューマン・リレーションというその事柄は、非常に大事な事柄でございます。これは研究以前の問題なんだ。そういう事柄についての十分な見通しを立てないで、今日のまま過ごしていくことはまことに遺憾に思う。これだけの投資をし、それが十分効果を上げる、そういう意味で、ほんとうに健全な、また進歩的な労使関係をこの際樹立すべきである、そのためにあらゆる事柄をいたします、菊池さんもさようなお答えでございますし、また私どもは、多額の予算を投入した設備、これが十分生かされて活用されることを希望するのであります。そういう意味で、研究以前の問題というか、これは基本的な問題です。したがって、ただ研究以前の問題、ヒューマン・リレーションだ、こういうことばだけでこの考え方を軽く見ないで、まさしく御指摘のとおり、私どもも重大なる決意をもって、一日もすみやかに健全な労使関係を樹立することを考えたい、かように考えております。
  73. 森山欽司

    森山委員 いま大臣のお話で、重大な御決意をもって事に当たられるということでありますから、政府の最高責任者の一人である佐藤大臣の今後の行き方に対して、私は大きな期待を持っておるわけでございます。  あと二点、ほど続けて質問申し上げたいと思います。  先ほど大臣が研究の自由ということを言われました。しかし、この報告書にも書いてありますように、「従来原研においては、研究管理の考えが十分であったとはいい得ない。むしろ研究は管理の対象とすべきものではないという風潮があった」ということで、研究管理の重大性を言っておるのです。研究の自由ということは、かって気ままに研究をするということではなくて、やはりおのずからなるワクをつくって、そのワク内における研究管理の対象となるものだという考え方を、研究の自由という大臣のおことばは否定するものではないというふうに理解してよろしゅうございますか。
  74. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 さように理解されて、それが正しい解釈だと思います。私は、研究所研究は、個々ばらばらの研究員研究活動というものはあり得ないと思います。したがいまして、研究管理——管理ということばに何だかいやみがあるようにお考えのようですが、これはやはり研究テーマをもらい、その研究テーマで研究を続けていく、そうしてその間において絶えずトレースしてみる、こういうことで初めて研究の成果があがるのだと思います。今日までの原研のあり方等については、研究管理体制にどうも遺憾の点があるのじゃないか。これはひとり原研について申すばかりではございません。他の研究室あるいは研究機関等におきましても、大学等におけるように、それぞれテーマをもらい、そうしてそのテーマについて研究を進めていき、そうしてその研究の結果を絶えずチェックされておる、このことを私は研究管理体制の整備だと考えております。  したがって、研究の自由ということは、おそらく基礎的な問題についての部分的なものはありましょうが、しかし、今日の原子力研究所のほうで、開発部門についての研究のテーマは非常にはっきりしているものだろう、かように考えます。いわゆる研究の自由ということが、それぞれのかって気ままなばらばらな研究をする、あるいは管理者以外において研究員自身がみずからの発意によって研究していくということでなしに、これは管理者と一体となって、そうして研究テーマをもらっていく、こういうことが望ましいのではないか、かように私は考えます。
  75. 森山欽司

    森山委員 先般の科学技術特別委員会におきまして、研究主任会の方々も招致されまして、その方々から「原研問題点改善方向」という小冊子をもらいました。その中に「部長を含む高級管理職者は会社の停年退職者が多く、その中には原子力開発に対する情熱に欠けている人もいる。」というようなことも書いてございますし、また、原子力委員会から出しました今回の資料にも、「経営者はとるべき措置対策を十分講ぜず、安易な妥協を重ねる傾向のあった」ということが指摘をされております。これからの原子力研究所理事はもとより、高級管理者と申しますものにその人を得るかどうかが今後の要点一つになろうと思いますが、大臣のそれについての御所見を承りたいと思います。
  76. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 いま主任者会議云々を出されました。私もあの報告を読んでおりましたので、菊池さんに、一体主任者会議というものはどういうものですか、かように聞きましたら、これは原研が認めておる会議ではございません、こういうことでございます。認めておる会議はどういうのかといえば、いわゆる管理者の加わった会議だ、こういうことだろうと思います。  したがいまして、グループ別の会議にいたしましても、その中で十分傾聴に値するというか、りっぱな意見が出ておれば、もちろんそれを採用するにやぶさかではありませんが、ただいま当委員会においてそういう材料を持たれてそれについての説明を聞かれましても、私ども責任をもって答える筋合いではないように思う、そのことを明らかにしておきます。もちろん傾聴に値する意見があるならば、だれが申しましてもそういうことは採用してしかるべきだと思います。  また、他から入ってきた人、これら高給者がいたずらに定年の連中、あるいは退職の連中の、行くべき職場がなくてそういうところに来たのだ、こう一がいにきめてしまうことは、これはたいへん事態にも合わないのじゃないだろうかと思います。ことに私考えますのに、原子力は先ほど来お答えいたしましたように新しい研究部門であります。したがいまして、若い人で有能な人もおるだろう、また年寄りであってそういう意味においての非常な研究者もおるだろう、そこに人的構成のむずかしさがあるだろう、かように考えます。しかし、一部だけで研究が十分の成果をあげるとは思いませんし、学界、財界各方面からの協力を得て初めて原研はりっぱな成果をあげるのだ、かように考えます。ことに科学技術庁の長官として考えますると、わが国の科学技術でどうも原子力はおくれておるのではないか、そのためにはどうしてもこれを早く取り返したい、その意味においては一そう学界、財界の協力を得なければならない、そういう専門的な部門ではないか、かように考えますので、いたずらに毛ぎらいすることなしに、人材は各方面にこれを求めていく、こういうことでありたいものだ、かように考えます。
  77. 森山欽司

    森山委員 時間もきましたから、最後に一点だけ希望を申し上げて私の質疑を終わりたいと思います。  原子力研究所は、御承知のとおり昭和三十一年以来三十八年度までにすでに三百五十億円の国家資金の投入をされておって、人員は千六百人に達しておるそうであります。十年後には人員は四千人、今後十年間の所要資金は千二百億円ということでありまして、原子力開発の大きな使命に思いをいたしますならば、現在はきわめて重要な段階だと思います。こいねがわくは、この時期において原研の行くべき道に対して、主務大臣として最善の措置をおとりになるように期待いたしまして、また要望いたしまして私の質疑を終わります。
  78. 福井勇

    ○福井小委員長代理 本日はこの程度にして、次会は公報をもってお知らせいたします。  これにて散会いたします。    午後一時九分散会