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1964-10-01 第46回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十月一日(木曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 菅野和太郎君 理事 佐々木義武君    理事 中曽根康弘君 理事 岡  良一君    理事 原   茂君 理事 山内  広君      小宮山重四郎君    坂田 英一君       渡辺美智雄君    田中 武夫君       楯 兼次郎君    中村 重光君       三木 喜夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 愛知 揆一君  委員外出席者         原子力委員会委         員       兼重寛九郎君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         科学技術事務次         官代理     黒沢 俊一君         総理府事務官         (科学技術庁大         臣官房長)   江上 竜彦君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力次長)   中川埋一郎君         総理府技官         (科学技術庁原         子力次長)   鈴木 嘉一君         総理府技官         (科学技術庁原         子力調査課長) 湊  恒生君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局放射能課         長)      友田 千年君         外務事務官         (アメリカ局安         全保障課長)  山中 駿一君         参  考  人         (大阪大学名誉         教授)     浅田常三郎君         参  考  人         (東京工業大学         教授)     西脇  安君         参  考  人         (立教大学助教         授)      服部  学君         参  考  人         (早稲田大学教         授)      藤本 陽一君     ————————————— 十月一日  委員河野正辞任につき、その補欠として中村  重光君が議長指名委員に選任された。 同  日  委員中村重光辞任につき、その補欠として河  野正君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(原子力潜水艦の  安全性に関する問題)      ————◇—————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  本日は、原子力潜水艦安全性に関する問題について調査するため、参考人として、大阪大学名誉教授浅田常三郎君、東京工業大学教授西脇安君、立教大学助教授服部学君及び早稲田大学教授藤本陽一君、以上四名の方々に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席くださいまして、どうもありがとうございました。どうかそれぞれの立場において、忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。  なお、参考人の御意見の開陳はお一人約十五分程度とし、後刻委員からの質疑の際、十分お答えくださるようお願い申し上げます。  それでは服部参考人からお願いいたします。
  3. 服部学

    服部参考人 立教大学原子力研究所服部でございます。  本日の四名の参考人の中で、原子炉運転経験と申しますか、毎日原子炉を使って仕事をしております人間は私一人のようでございますので、特に原子炉自体安全性について申し上げたいと思うわけでございます。  先に簡単に結論を申し上げておきますと、一つ原子力潜水艦に使っております加圧水型の原子炉、この原子炉冷却系統事故に対しまして非常に危険性が大きいという点でございます。それからもう一つ申し上げたいことは、軍艦原子炉というものは積むべきではない。この二点について私は申し上げたいと思うわけでございます。  今回の寄港受諾の回答に伴いまして、いろいろの政府発表文書その他を拝見いたしますと、あたかも原子力潜水艦安全性の問題では放射性廃棄物海洋投棄基準の問題だけが残っていて、その問題も解決したからこれで安全性の問題は解決したと言わぬばかりのように聞こえるわけでございますけれども、私たちは、その放射性廃棄物海洋投棄基準問題一つをとりましても、これも詳しく検討いたしますと、決して問題は解決しておらないと思うわけでございます。しかも、原子炉安全性と申します場合には、放射性廃棄物の問題ももちろん安全性の問題の一つではありますが、原子炉安全性検討いたしますときに一番中心になりますのは、何と申しましても原子炉自体安全性、それから原子炉のまわりの条件がどうなっておるか、この二つが安全性検討の上で一番中心的のものになるべきであろうと考えるわけでございます。  この肝心の原子炉安全性につきましては、今回の政府発表、それから原子力委員会総合見解というものを拝見いたしましても、私たち科学者としてどうしても納得のいきかねるものを感ずるわけでございます。  私、昨年三月この委員会にお招きを受けまして、その際にも原子力潜水艦事故可能性についていろいろとお話を申し上げております。そのときの議事録を読み返してみましても、私これにつけ加えるべき何ものもない、あのときの意見そのままであると申し上げてよいかと思うわけであります。ただ、その後最近のいろいろの資料などをつけ加えまして若干のお話を申し上げたいと思うわけでございます。  その一つは、この原子力平和利用の場合の原子力商船サバンナ号、このサバンナ号原子力潜水艦につきましては、昨年も申し上げましたが、アメリカ自体で、サバンナ号のほうが潜水艦よりも安全性が高いということは認められておるわけであります。これは学術雑誌その他にもそういう記述があるわけであります。そのサバンナ号につきましては、実はアメリカ原子力委員長のシーボルグ氏が二年ほど前に、このサバンナ号はいずれ近い将来には普通の船と全く同じような自由船になるだろう。こういうことを約束していたわけであります。ところが、その後サバンナ号労働争議その他の問題でガルベストンの港にくぎづけになっていたわけでございます。ことしの六月以来再び航海に出たわけでございます。そのときに、ニューヨーク港へ入るというときになりまして、アメリカ原子炉安全諮問委員会、ACRSから非常にきびしい勧告が出だ。「ニュクレオニクス」という雑誌にその記事が出ております。「新しい運航規則の承認は、サバンナ号格納容器系に対する信用を事実上拒否する原子炉安全諮問委員会勧告によって、先月、伏兵の中に飛び込むことになってしまった。」こういうような記事が出ております。どういうことかと申しますと、サバンナ号が港に入る前に数日間は原子炉出力を下げておく、あるいは最大想定事故の発生から炉心が溶けてしまう、溶融開始までの計算上の時間の間隔というものが一時間以上になるまで引き船がそばについていなければならない。そのどちらかを要求することになるだろう。こういう勧告でございます。  これは何を考えているかと申しますと、サバンナ号あるいは原子力潜水艦のような加圧水型の原子炉というものは、冷却系統に万一の事故がございますと、たとえそのときに原子炉を停止いたしましても、原子炉の中で発生いたしました短寿命核分裂生成物、いわゆる放射線死の灰と申すものでございますが、そのうちの短寿命のものの崩壊熱でもって炉心が、燃料が溶けてしまう、こういう可能性が非常に大きいわけでございます。そのことをアメリカ原子炉安全諮問委員会自体がやはり考えの基礎に置いておる。溶融するということを考えた上で、しかもそのコンテナだけではそれが押えられないのではないかという心配をしているわけであります。  この加圧水型のそういった欠点に対しましては最近のジュネーブ会議でもそれに関連する論文が出ております。その一つジュネーブ会議論文論文番号二〇二というものでございます。これは「加圧水型の運転経験」と題しまして、アメリカのコーという人が提出している論文でございます。この中で、インディアン・ポイントというところの原子力発電所で一九六三年十一月十八日にタービンの制御バルブにつながっている二十四インチの主蒸気管の中の一本に、管周に沿って約四インチ半のクラックが入っているということが発見された。そのために発電所を停止した。さらにスロットバルブに入っている二十四インチかける二十インチの偏心レデューサーの上部にも四インチかける十インチの部分に内面に一連のクラックがあることが発見された。それで、修理が完了して発電を始めたのは一九六三年十二月三日であった。というような記録がございます。やはりこの点は加圧水型で非常に大きな問題となっているわけでございます。  さらには、サバンナ号につきましては、前からいろいろな資料が出されておりますけれども、ことしの五月に新しく技術資料というものが出されております。この中を検討いたしましても、やはり冷却系統事故ということを非常に重視しておりました。万一冷却系統事故があったときに予備のポンプをどうする、予備冷却系統をどうするということについて非常に詳しい検討がなされているわけであります。この点が加圧水型では非常に大きな問題となるであろうということを考えるわけでございます。  例のスレッシャ一号につきましても、これは調査委員会報告書発表しておりますが、結局ほんとうの原因はわからないということになっております。しかし、あのような条件の中であのような事故が起こったという場合には、私はやはり原子炉自体燃料のメルトダウン、溶融を起こしていると考えるほうが普通ではないかと考えるわけであります。  さらに、ジュネーブ会議のもう一つ論文、二七五番という論文がございます。これはアメリカ原子力委員会ペックという方が「米国の原子炉経験動力炉の敷地問題」と題して報告された論文でございます。これはこれまでのアメリカの二十一年間にわたる二百四十六台の原子炉のすべての運転経験の中から、どういう事故が起こったかということを分類をしたわけでございます。いろいろな事故が起こっている。それを簡単に申し上げます。  冷却系統が閉鎖された事故というのが三例ある。どの場合にも燃料の一部が損傷を起こしている。  それから二番目には、蓄積された水素の爆発と火事というのが一例ある。これはやはり付属施設損傷が起こっている。  三番目に、制御棒遠隔操作の間違いがあった。これが二例あります。一つの例では、運転員が一人、二・五レントゲン過剰被曝を受けた。もう一つの例、これは有名なSL1の事故でございます。これは三人の運転員が死亡し、原子炉がひどくこわれてしまった。  四番目に計器の故障と不良、これが三例あります。一つの例では、二五〇%の出力超過が起こったが、損傷はなかった。第二の例では、燃料が少し溶けていた。  五番目として、悪い件条の中での連続運転、それから冷却材中の不純物、こういうのが一例ある。この場合にも燃料が著しく溶けてしまっている。  六番目としまして、実験原子炉動作との相互作用出力の異常な上昇が起こった。これが二例ある。  七番目に、限られた危険区域内での原子炉暴走実験が二例起こった。そのうちの一例では、燃料が曲がってしまって、一部が溶けて気体の放射能が放出された。他の例では、燃料が著しく溶けてしまった。これは予想計算された以上の事故になってしまったという意味で取り上げております。  それから八番目として、不適当な遮蔽で燃料取りかえをしている間に過剰被曝を受けたのが一例。これは八名が二ないし二十レントゲン過剰被曝を受けた。  九番目に、新しい運転員始動時に計器の不良を見のがしてしまった。これが一件ある。出力が超過して、燃料の一部が損傷を起こした。  十番目に制御棒始動法計算を間違えた。これが二例ある。一例では、燃料の一部が損傷を起こした。他の一例では、出力が急激に上がり過ぎた。  それから十一番目、故意に行なった破壊実験の場合の効果の計算違いというのが二件ある。予想以上の著しい損傷が起こった。  こういったいろいろの事故分類をした結果、ペックは、結論として次のようなことを考えるべきであると言っております。  一つは、事故というものは起こり得るものと考えなければならぬ。  次に、事故というものは予想しない原因から起こるものであるという点であります。  三番目に事故というものは予想しない結果を生ずることが多い。  四番目に、事故というものは予想しないときに起こるが、通常でない条件のときが多い。  それから五番目に事故の際には、たよりにしていた安全装置が動かなくなることがある。  その次に、事故の大多数は実験炉試験炉で起こっておって、動力炉推進炉生産炉では四件だけ小事故が起こっている。これは動力炉の数が日本は少ないので当然であります。  それからその次に、これまでの事故の結果というものを見ると、事故条件から予想されるものよりは一般にずっと小さかったということを申しております。  それからその次に、SL1の場合には最大想定事故として推定されていたものに近い損傷があった。これ以外はこういった事故に近いものは起こっていないけれども、最大想定事故というものは起こり得るものであるということを考えておかなければならない。  それから最後に、全体として事故経験というものは非常に役に立っている。こういうことを申しているわけであります。  原子力潜水艦の場合にも、安全性検討いたします場合に、原子炉自体、あるいは衝突その他の海難事故によって原子炉破壊を受ける、そういったことによっていろいろな事故が起こるという原子炉自体に関する事故可能性というものを過小評価してはならないということが私の申し上げたい第一一の点でございます。  それから第二の点は、昨年の十月、それから十一月に、アメリカ上下両院合同原子力委員会が、海上艦艇原子力推進に関する聴聞会というものを開いております。その記録を最近見たわけでございます。この聴聞会では将来アメリカ海上艦艇を全部原子力推進にしたいということが議論されているわけです。そのときに議論対象となっております中心的なことは核武装経済化、いかにして安上がりの核武装をするかというのが議論中心になっておる。安全性の問題というようなものが忘れられてしまっている。もともと軍艦というものは、相手を沈めるか、あるいは自分が沈められるか、ということを想定してつくられているものであります。そういうものに原子炉を積み込むということは、どっちかの原子炉がこわれるということを想定していることになるわけです。こういった大型の動力炉というものを原子力軍艦に積み込んでおきました場合には、当然広島型原子爆弾の数十倍程度核分裂生成物、 いわゆる放射線死の灰、これが原子炉内に蓄積されているわけです。そういったどっちかの原子炉がこわれるということ自体、これは単に原子兵器の問題ばかりでなくて海上放射能汚染という意味で非常に大きな問題を起こすわけであります。  ことしの八月、原水協主催の第十回原水爆禁止世界大会というのが開かれました。その中で、京都で科学者協議会というものが開かれております。この席に四百名以上の科学者が集まったわけでございます。その科学者協議会で、私たちは、原子力潜水艦日本寄港に反対するばかりでなく、動く核基地としての原子力潜水艦そのものの破棄を要求する、 こういう声明をいたしていろわけでございます。原子力潜水艦あるいはその他の原子力軍艦というものは、核武装の問題をたとえ別にいたしましても、動力として原子力軍事目的のために使う。私たちは、原子力平和利用の三原則原子力基本法の第二条にもうたわれております三原則精神に従って、日本の中で原子力平和利用の研究というものを進めているわけでございますけれども、この平和利用原則精神というものは、何も日本の国内だけに限るのではない、これを世界に広めていきたいということこそが私たちの念願でございます。原水爆禁止ということと同時に、原子力を、たとえ動力としてであっても、軍事目的のために使うということをやめてほしい。特に軍艦にこの原子炉を積み込むということをやめてもらいたいというのが、私の科学者としての心からの願いでございます。
  4. 前田正男

  5. 浅田常三郎

    浅田参考人 浅田でございます。  アメリカ原子力潜水艦の寄港問題に端を発しまして、原子力潜水艦安全性に関する問題が方々で討議されまして日本学術会議なり、あるいはたくさんの人たち意見なり、また原子力局意見なりが印刷物として出ておりまして、それは皆さんも御承知のとおりでございます。  そのいままで出ております御意見、その他を参照しまして感じましたことは、第一に、潜水艦安全性に対しまして、平常時の安全性、言いかえますと、それから出す放射能を含んだ一次冷却水の問題、それからイオン交換樹脂が海の中に捨てられたらどうなるかという問題、その他廃棄物の問題、それから燃料取りかえの場合の問題。異常時の問題としまして、原子炉に起こる事故、及び船に起こる事故でございます。そういうものが考えられるべきだと思うのでございます。  それで、学術会議その他で非常に御熱心な検討があり、ただいまお話のございましたようないろんな検討がございまして、そのために原子力潜水艦に対する皆さん方考え方が非常に慎重になり、そしてそのことが日本原子力を扱っているところに反映いたしまして、原子炉の取り扱いその他が慎重に行なわれるようになったということは、非常に慶賀すべきことだと存じております。しかし、その出ております印刷されたものから見まして、どうも納得のいかないところがございますので、二、三申し上げたいと思います。  一つ原子炉の一次冷却水原子炉始動の際に海の中に捨てる。その捨てるおりの基準日本の法規できめている基準の百倍以上になる。これはけしからぬということが至るところに書かれておるわけでございます。しかし、これを検討いたしてみますと、アメリカにおける基準日本における基準も、大体似たものでございます。日本は、ICRPの勧告に基づきまして日本基準をこしらえております。アメリカはその勧告に基づいてやはりNBSの六十九で発表しているところでございまして、大体大きさは同じでございます。それは字句の上で完全に同じとは申し上げませんが、大体同じでございます。これが原子炉から出る冷却水最大許容濃度をきめているものでございます。しかし、実際炉を運転する場合に際しまして、その基準のとおりいきにくい場合がございます。たとえば日本の東海村でその炉を運転する場合に、すなわちJPDRでございますが、炉から出る排出水を海の中に捨てる。その海の中に一定の監視境界線を考えて、その境界線においてはその法律のきめている量に呼応するのでございますが、海の中には境界線ができないものでございますから、したがって、炉から出る、あるいは直接排せつされるような水に対しての量をきめるということが、日本ではそれぞれの炉に対して保安規程というものがつくられております。アメリカ原子力潜水艦に対しましても、潜水艦から外へ捨てる水が、ぐるりの監視区域において、いまの法に定めるところに合致しておるかどうかということを見ることが困難でございますから、原則としてどれだけの水を捨てていいかということをきめる、その規則艦政本部訓令として出ております。日本保安規程アメリカ艦政本部訓令とはあい相当したものでございまして、これはいずれも法律できめている量の百倍をとっております。この百倍というのはどういう意味かと申しますと、原子炉から出る水は、日本の場合は三カ月の平均をとりまして、監視区域において日本法律の規定するところを越えないということが条件でございます。  しかし一回ごとに捨てる量は大体百倍までよろしい。三カ月の平均値日本法律の指示するところに従わなければいけないということでございます。アメリカでも同様でございますが、アメリカは、日本の三カ月に対して一年という期間をとっております。ですから、 これは時間的平均をとるか、ある監視区域まで考えて水で薄められた平均値をとるかということでございまして、考え方としては同じでございますが、海の中で監視をするということがやりにくいものでございますから、それで、たとえば船から捨てるものに対しては一回についてはそれが百倍であってよろしい。ただしある期間内での平均値は必ず法律のきめるところに従うようにということになっているわけでございます。それから、日本発表では、アメリカは百倍だというのは、比較する対象が違うのを比較して書いておられるような感じがするわけでございます。  第二の問題としまして、やはりこれは学術会議から検討を経て出ておるものでございますが、海の中で廃棄物を捨てた場合に、すなわちこれは一次冷却水をされいにするためにイオン交換樹脂を使っております。そのイオン交換樹脂を捨てたところの沿岸から十二マイル離れるとかなんとか、いろいろな条件がございますが、そこにはいまの法律のきめるような量にまで希釈をするには一・八かける十の八乗立法メートルの海水が必要でございます。これは一億立方メートルでございますから、たいへんんなものでございます。そういうことはできないのじゃないかということを書かれておるのでございます。しかし、どこから計算されたかということを当たってみますと、これはやはり勧告の中で、核種が、すなわち捨てる放射性物質の原子核の種数がわからないときには一立方センチメートル当たり十のマイナス七乗マイクロキュリーという基準をとってやっておるようでございます。しかし、いまアメリカでは捨てる水を全部中に何が入っているかということを調べているわけでございます。日本原子炉でも、やはり捨てる水の中に何があるかということを調べられているわけでございます。アメリカの場合、捨てるものの中に何があるかということを調べた場合に、それの計算をやってみますと、いまの訓令に基づいてやりますと三マイクロキュリーパーccでございます。これをもしもそのまま捨てるとして、これの千分の一をとりましたものでございまして、十のマイナス四乗マイクロキュリーパーccの程度になります。そうすると、先ほど学術会議で御計算になりました十のマイナス七乗とは三けたか四けた量が違ってくるわけでございます。そうすると、いままで一億立方メートルの水が要ると言うておったが、数千立方メートルの水があれば、すなわち船の排水量とひとしいくらいの水があれば、それの薄まったものは毒でないということになるわけでございます。海の中を航海している船では、自分の船の排水量の水くらいは至るところにあるわけでございますから、あまり問題にならないことだろうと思っております。  それからもう一つは、一般最大許容量ということに対する考え方を申し上げたいのでございます。最大許容量をこえるといまにも危険である、いまにも死ぬかのように騒ぎ立てられる場合がたくさんございます。御承知のとおり、水の中に溶けている最大許容量をきめておりますのは、その水を毎日二・二リットルずつ飲んで、飲んだ水の中の放射性物質一部分はそのまま小便で排せつされて、一部分は器官に沈着をいたします。沈着したものも新陳代謝で排せつされるものもあります。あるいは自分自身が半減期の規則に従って物理的に減衰してなくなるやつもございます。ですから、その水を二・二リットル毎日飲み続けて一生続けてもその人の健康に害にならないような量を、いまの最大許容量としてきめているわけでございます。そうすると、潜水艦がはき出した水が海の中へ溶けてそれが最大許容量になったとしましても、海の水を毎日二・二リットル一生飲む人はないわけでございます。したがって、それをこえたからというて急に死ぬようなことはないわけであります。これは法律の命ずるところによって、その量をこさないということは厳重に守られております。それをこえたから非常に危険だという感じを一般に植えつけるような印刷物が多いわけでございますが、この点は、将来原子力の平和的利用ということが日本で普及するためには、この許容量という勘定は、それをこえたら危険だというようないいあらわし方ではなく、それまでは安全だという——安全と申し上げるのは、その人の一生の健康に対して安全だという意味でございます。——そういう意味にひとつお考えくださることを切にお願いするわけでございます。  それから、実際アメリカ原子力潜水艦がはき出しておる、たとえば一次冷却水にどれくらい放射能が入っているかというようなことは、アメリカが非常に詳しい報告を出しております。原子力局なり方々でそれの印刷したものが配られておりますから御承知のとおりでございますが、一番よけい出たときでも、先ほどきめました訓令によっているやつの十分の一も出ておりません。  原子力潜水艦が一年間にその船から捨てておる一次冷却水の中に含んでいる全部の放射能を寄せ集めても、一キュリーに達しておりません。海の中には御承知のとおりカリウムのような自然放射能を含んでいるものもあり、あるいは現在のところでは避けることのできないフォールアウト、いわゆる原子灰が降ってきているわけでございます。あるいは宇宙線から生じたものもございましょうし、あるいは原水爆実験から生じたものもございましょううが、そいうものから降ってきて、海の水の中の放射性同位元素の量は、潜水艦から一年間に捨てる量の二けた以上多いわけでございます。ですから、いま潜水艦から出るものをできるだけ防ぐということは非常にけっこうなことでございますが、それよりも二けたも大きいやつがやってきているということは御認識いただきたいのでございます。  もう一つは、これもアメリカの報告でございますが、たとえば原子力潜水艦のノーテラスが四年間、スケートが一年間ニューロンドンを根拠地として停泊していたおりに、そのニューロンドンの港の中における放射能の強さというものは、在来の自然放射能から、計器に観測できる程度のふえ方は全然しておらない。空から降ってくる原子灰の量が減るかふえるかに応じて少し海の中の放射能がふえたり減ったりしておりますが、潜水艦に起因する放射能の増減というものは見つかっておらない。そういうことがございまして、アメリカ艦政本部訓令のほうでも、原子潜水艦から、あるいは原子力を備えた船から廃棄する水は、その付近の自然放射能計器で測定し得る程度に上回ることはできないということは、これはアメリカも非常に厳重に守っておりますし、日本でも守ると言っているわけでございます。  それから、たとえば海の中に捨てられたものがそのままずっとたまっているわけではなしに、どうせ広がるだろうと思われるわけでございますが、それに対してアメリカでは、人口の棚密なところでは捨ててはならないとか、いろいろな条件が出ておりますが、日本の場合も同様でございます。日本では、日本政府から、佐世保なりアメリカが入りたいと言うている港に対する詳しい測候所なりあるいは海洋気象台なりのデータをアメリカに送り、アメリカと同じような検討アメリカで行なっているそうでございます。これはアメリカ軍艦でございますから日本でコントロールできない。したがって、やむを得ずアメリカのデータをうのみにせざるを得ない状態だと思います。それで、いまアメリカ原子力関係のことで事故の御報告がございましたが、これもアメリカの報告そのままをうのみにされておりまして、一々日本からアメリカまで調べに行ってあの報告を確かめたものではないだろうと思うのであります。  それからもう一つは、事故の問題でございます。よくSL1の事故の話が出るわけでありますが、あれは原子炉をばらして修繕している間に操作を誤って事故が起きたわけでございます。これは決して大きい事故とはいえないわけでございます。実際何か工場で装置をやっている場合には、工場で爆発もあり、化学工場で爆発もあり、電気の場合には漏電もあり感電もあり、火事もある。何かあると事故はありがちであります。このわずかな事故を一々取り上げて並べ立てられることは、いま原子炉に対してはやられておりますが、そのほかのものに対してはやられていなかったのであります。同様な事例をあげてみたら、ほかのものでも同じようなパーセンテージがあるかもしれない。これは私はやったわけではございませんが、このごろ新聞を見れば毎日のように事故の報告が出ております。その新聞に出る、たとえば化学工場の爆発であるとか、新潟でどんなことがあったとか、そういうことは原子炉でないがために一般の人の注意がわりに引かれていなかったわけでございます。  もう一つ、一番注意しなければならないことは、放射線にさらされることはできるだけ避けねばならない。これはもう原則でございます。人の遺伝というような問題に関して考えてみますと、もう放射線はできるだけ当たらないようにしなければいけない。しかしこれは法規の許す範囲以下の話であります。  そうすると、できるだけ少なくという意味の「できるだけ」という意味のところです。これは一般に考えられていることは、原子力から出る放射線によって受ける被害と、放射線を出すようにした原因が何か。人類の福祉なり何かをもたらすことに作用しているのだったら、両方のかね合いで、できるだけその量は勘考すべきであるということに考えられるべきものであります。  いま日本が、あの戦後の非常に破壊された状態から、世界も驚くほど立ち直ってきたということの反面において、軍備に対する大きな税金を出さなくてよかった。それが国民の健康のため、あるいは国民の福祉のために使われたと見ても、ある意味ではその見方はいいじゃないかと思います。そうすると、そういうふうになった、すなわち軍備をやらなくていいということに対しては、御承知のとおり、日本の安全を保障してくれる何かがあったためであります。ですから、それといまの原子力潜水艦とをバランスにかけた場合に、できるだけ放射能を少なくするということ、これは皆さんたちのほうでよく御検討いただければ幸いだと思います。  それからもう一つは、原子力潜水艦はどこの国でもきらった。その一例に、デンマークでは現実に原子力潜水艦が入ってくるのを断わった。いままでの雑誌面では至るところに書かれていたわけであります。原子力潜水艦があぶなくないというほうのところでは、たとえばアメリカは外国の港に何べん入って、そうしてどんな港に入ったという報告が出ております。そうしてあぶないという立場から、デンマークはそれを断わったということで出ておるのでございます。しかし、内容をよく調べてみますと、デンマークに原子力潜水艦が入りたいと言うたのは、いまから七、八年前でございまして、原子力潜水艦がどういうものであるかということがデンマークにまだよくわかっていなかったときでございます。それで、ことしの初めにデンマークの外務大臣が日本に来られましたが、もう原子力潜水艦がデンマークに来てもコペンハーゲンに入ることは許可するつもりだと言われたことが、この外務省の情報の中に出てございます。したがって、まだよくわからなくて断わったということでございます。それがいつまでも続いて考えられているということは、デンマークでも次第に考え方が変わっているということを御参考に願いたいと思うのでございます。  原子力発電なりあるいは原子力による船の推進とか、いろんなことが世界じゅう至るところで目下の問題であり、日本も遠からず燃料問題に対して原子力が登場してくると思うのでございます。これが登場するに対して、たとえば発電原子炉のサイトをきめる際に、現在のところでは至るところで地元の反対が出ております。これはほんとうにあぶないからといって反対される人もございましょうし、あるいはあぶないからという人の声を聞いて反対する方もあるかもしれないのでございます。それで、できるだけこういう原子力発電はやらなければいけないことでございます。これは原子炉というものは潜在的にあぶないものだという御意見もございますが、しかし建設と設計と運営と管理等を完全にやればあぶなくない。それは至るところで立証されているところであり、ただいまお話しくださいました服部さんのところでも非常によく運営をやりておられますから、武山において原子炉をば安全に運転されておるわけでございます。こういう非常に注意深いお方が御監督くださるので、日本原子炉も安心して使えるという境地になっておるわけでございますから、一般人たちが、原子炉をむやみにこわがらないような御指導をばこの委員会でおやりくださることをば、将来の日本原子力が平和的の目的のために開発されるためにぜひお願いしたいと思いまして、私の感じたことを申し上げる次第でございます。
  6. 前田正男

  7. 藤本陽一

    藤本参考人 早稲田大学の藤本と申します。  すでに国会におきまして、原子力潜水艦の寄港問題について、科学者の私の尊敬する湯川先生をはじめ、桧山教授、野中教授服部教授、それらの方々がこれまでに御意見を述べられたと思いますので、それに私が今回新たにつけ加えることはほとんどございません。ただきょう機会を与えられましたので、私たち科学者が千六百名の署名をもとに、アメリカ原子力潜水艦の寄港について反対の声明を出しました、 その声明の千六百名の一人として、私の意見を若干申し上げたい、そういうふうに思います。  私たちは、言うまでもなく原子物理学を専攻しておる者でありまして、原子力平和利用を阻害しようというような気は毛頭あるのではございません。私たちが心から願っておりますのは、原子力日本における開発が、平和利用を目的として健全な形で、できるだけ早く大きな発達を遂げる。特に原子力潜水艦に関連して言うならば、原子力商船の問題についても、間違いなく、われわれの国で将来健全な発達が遂げられることを望んでおるのであって、あたかも私たちが黒船をおそれるがごとく言っておるというような非難を目にいたしますけれども、私たちの気持ちがそういうところにないということは、重々御了解していただきたいと思います。  そのことは、ここで繰り返して言うまでもなく、もともと日本原子力開発が始まりましたときに、学術会議中心といたしまして、日本原子力平和利用をどういうふうに進めるかということで、三原則の提案があり、国会のこの委員会中心にいたしまして、それが原子力基本法にまで盛り込まれ、原子力原則日本原子力平和利用の背骨になったといういきさつを考えていただけば、私たち考え方は非常にはっきりわかっていただけるのではないかと思います。  さて、安全性の問題でございます。ただいま浅田教授からいろいろなお話がございましたけれども、放射線障害とか、あるいは原子炉事故と申しますのは、普通の事故や普通の障害と違った、特殊な性格を持っておるということを十分考えなければならないと思います。その特殊な性格にかんがみまして、たとえば学術会議では、原子力の開発には安全を最重点とするという方針を立てて、それを政府勧告いたしました。その勧告の趣旨は、たぶんこの委員会でも数年前にやられたと思いますけれども、この委員会のお骨折りがあったと伝え聞いておりますが、それによって日本原子炉の安全審査の場合に、それまでの手続が改められまして、原子炉安全審査会が生まれたというようないきさつも、もう一ぺん考え直してみなければならないかと思います。もともと原子炉事故の問題、あるいは放射線の障害の問題も、潜在的な危険を議論するわけですから、非常に水かけ論におちいりがちなことは事実だと思います。しかし、私たちは長い間そういう問題について、いろいろ経験を積み、研究も重ねまして、やっと最近、たとえば地上炉の問題については、日本平和利用原子炉、研究炉あるいは動力試験炉については、安全審査及び安全管理についての方式が落ちついてきたと申していいのではないかと思います。  それから、ここで一言申し上げたいのは、日本においては、日本のこの方面の研究が、ことに核兵器実験のホールアウト、死の灰でございますけれども、それを中心として進んでおりまして、武谷教授、田島教授、桧山教授などの業績は世界的に評価されているということを考えていただきたいと思います。ですから、いま私たちが考えている原子炉及び放射線についての安全性考え方は、決して外国のしき写しではございませんで、私たちのこれまでのいろいろな経験でここまでやってきたという事実を考えていただきたいと思います。  そういう背景に立ちますと、学術会議が今回の原子力潜水艦の寄港に際して科学的な公式の審査を要求し、その結果を公表することを要求したというのは、私はきわめて当然な処置であったと思います。重ねて学術会議は、その手続が取られない現状であるならば寄港は望ましくない、そういうように声明を発したのは昨年のことでございます。その上にさらに、昨年のその声明のあとに、学術会議では原子力特別委員会中心といたしまして、この問題についてアメリカ側から公開された資料のみをもとにいたしまして、原子力潜水艦安全性について問題点を指摘いたしました。その問題点を指摘いたしました文章は、原子力委員会における安全審査の場合の参考にしていただくために、原子力委員会にいっていると思います。今日浅田教授が御引用くださいましたのもその文章でございますけれども、私が現在聞いておりまして、浅田教授の引用のされ方は決してその文章そのものをちゃんとおとりになっていないと思います。私は、できるならば、学術会議アメリカの公開の資料をもとにして問題点を指摘したこの文章をこの委員会資料として皆さんに配っていただいて、それで審査の参考にしていただけないか、そういうふうに思います。私に与えられた時間は限られておりますので、それの詳細について述べ、かつ浅田教授がどう誤解して引用されたかということについて一々申し上げることは控えたい、そういうふうに思います。  ところで、今回の原子力委員会及び政府の決定でございますけれども、原子力委員会の決定の一番大きなポイントはどこにあるかというと、安全審査会を通すという手続を無視したという点にあると思います。それは、安全審査会というのは、科学的な資料に基づいて検討する場所でありますし、それからなお学術会議勧告及び国会の当委員会の努力によって安全性原子力の最重点であるという方針の具体化としてあらわれた場所であるということをもう一ぺん思い出していただきたいと思います。ですから、原子力委員会が、安全審査会を無視して、そこの審査にかけるという手続を省いて、突然見解を発表なすったということは、私たちにとってたいへん意外なことであると申さねばならないと思います。  この問題につきましては、学術会議委員会の中では原子核特別委員会がつい先日に開かれまして、この問題が検討されました。学術会議がこれまで公式の、科学的な審査を要求したことについて、はたして今田の原子力委員会の手続によって満たされているかという点でございますけれども、その点について委員会の見解は、学術会議が要求している方式の科学的審査とは認めがたいという見解をまとめました。それは現在その委員会から会長に申し送られております。学術会議全体として、今回の原子力委員会の決定が、前に学術会議政府に申し入れた手続に合っているかどうかということについては、会長の朝永教授にお伺いになればよろしいだろうと私は思います。  私たちの原子核特別委員会の見解によりますと、原子力平和利用には、申すまでもなく自主、民主、公開の三つの原則がございます。今度の安全審査の問題につきましても、自主の原則は全く貫かれていないということについては一言も説明をつけ加える必要はないと思います。それから公開の原則でございますけれども、これは私たちは公開という原則の持っている一つの大きな問題は、日本の国の中に原子力の外国の軍事機密が入ることを排除するという理由があったと思います。そういう点から考えますと、今回原子力潜水艦が入ってくる、しかもその原子力潜水艦について一切公開は許されていないというのは、公開の原則が無視されたと考えざるを得ないと思います。最後に民主の原則を述べますならば、安全審査会の審査も行ないませんし、それから学術会議中心とする——学術会議日本科学者の総意をあらわす機関でございますけれども、そこでかなり問題点が指摘され、しかも参考資料として検討していただくために、公表された資料に基づいた問題点を出しているにもかかわらず、それについて何の御意見もなしに、何の御釈明もなしに、科学者意見あるいは批判というものを全然いれられないで、今回きめられたということは、私は非常に遺憾な手続であろうと特に思います。  そもそも原子炉安全性の問題でございますが、今回浅田教授原子炉安全性についての御意見を申されましたけれども、この見解は、これまで学術会議原子炉事故の特殊性について指摘してきた考え方とは著しく異なっていると私は思わざるを得ません。一つ原子炉をとってきた場合に、それが安全であるかあるいは危険であるかという御質問に対して答えなければならないときには、それは一〇〇%安全ということはあり得ないわけでございます。  それからまた、それはあしたにも事故を起こすであろうということを予言することもできないわけであります。  そういうわけで、私たちが扱わなければならない問題点というのは、原子炉事故に関しては潜在的な危険性であり、絶えず確率の問題であろうと思うのです。服部教授が今回いろいろ外国の例をたくさん引用なさって、大体それで見当はついたと思いますけれども、服部教授のデータを引用するならば、潜水艦原子炉平和利用原子炉に使うには著しく安全であるという理由は何も見当たらない。にもかかわらず、軍艦のほうが普通の商船あるいは地上の動力炉よりも安全について考慮を払っておる、その設計つにいてそれだけの主張をする根拠があるということは何も見当たらないと思います。  そういうふうに考えますと、日本であちらこちらに動いております原子炉と、今回入港を予定されておる原子力潜水艦原子炉と、どっちが安全性が高いか、どっちが潜在的な危険性が高いかという比較の議論は、かなり客観的に行なえるということを考えていただきたいと思います。一つ原子炉について申しますならば、それが事故を起こす確率は何万分の一かということの議論はむずかしいでしょうが、相対的な比較はきわめて客観的に行なうことができると私は思います。  そういうふうに考えて、しかも服部教授が述べられたように軍艦のほうが特に安全であると主張する理由が何もないとするならば、私は、アメリカの今度の原子力潜水艦原子炉についてことさらにゆるい基準で、基準も何もなしにフリーパスにそれを認めるということについては非常に抵抗を感ぜざるを得ない、そういうふうに思います。  ことに、その問題は昨年九人の声明というのが出ました。それは湯川教授中心といたしまして、桧山教授、それから田鳥教授その他でございますけれども、日本原子力施設について責任を持っておられる方々が声明を出しております。その声明の趣旨は、つまりアメリカ潜水艦に対して非常にルーズな態度をとるならば、原子力委員会は勢い日本のいろいろな原子炉施設についてもルーズな態度をとらざるを得ないだろう。つまりアメリカ原子力潜水艦に対してだけは、あなたはどうぞごかってに、アメリカのやり方でよろしいといっておきながら、日本平和利用の炉に対してだけ一々こまかいこれまでのしきたりを守るということは非常にむずかしくなるのではないか。ことに原子力施設に直接従事されておる方、たとえば服部さんのような方にするならば、いままで一生懸命安全問題についてつとめてきたこれまでの努力は一体どうしてくれるのか、という問題が起こってくると思います。  ですから、当委員会は、原子力潜水艦ばかりでなしに、日本原子力平和利用全体について責任を持たれている場所だと思いますので、一たびそういう場所で安全問題について、たとえば海水で百倍に薄まるだろうから周辺監視区域など設けなくてもよろしいという考え方が、アメリカ原子炉アメリカ潜水艦についてはやむを得ないということで通ったならば、あらゆる炉もそれを適用しなければならなくなってしまうだろうと私は心配します。そうすると、いままで日本原子力の研究者たちが一生懸命周辺監視区域を設け、そこではかり、あるいはずいぶん苦労をして安全性を保持してきたという努力がすべて水のあわとなって、原子力委員会は国民に対しても信頼を疑われますし、それからまた科学者たちの間では権威がなくなって、安全問題はついて無政府状態になりかねないと私はたいへんおそれます。その点について、どうか慎重な御考慮をお願いしたいと思います。  簡単でありますが、これで私の意見を終わります。
  8. 前田正男

  9. 西脇安

    西脇参考人 おそれ入ますが、私図面を用意してきましたので、どこかへ張らしていただければありがたいと思います。  私、東京工業大学教授をしております西脇と申します。先ほどから皆様方のごりっぱな先生方の御意見を伺っておりますと、まず最初に服部先生から原子炉事故についていろいろと御指摘がありました。慎重の上にも慎重を期するようにという御意見だったと思います。引き続きまして浅田教授から、慎重にしていればそう心配は要らない。引き続きまして藤本教授から、学術会議、それからまたこの原子力潜水艦の寄港に反対しておられる方の一人といたしまして、その立場から御説明になったと思います。  そこで、私は一応、 何と申しますか、正常な状態において万一入ってまいりました場合に、絶対安全ということはいえないまでも、じゃどの程度危険なのか。一般の方は絶対安全ということは保証できないと申しますとすぐに、じゃ絶対危険じゃないかというぐあいに誤解をされるおそれがあるわけでございますけれども、ものごとというものは、決してそういうものではないわけであります。そうすると、どの程度危険性の感覚を持って判断すればよろしいかということになるわけであります。  そこで、よくいわれますように、放射能は少なければ少ないほどよろしいということ、これはまことにもっともなことでありまして、たとえばこれを交通事故にたとえますと、 交通事故は起こすべからずということになります。また自動車について見ますと、自動車から出すところの排気ガスというのは少しでも少ないほうがよろしいというのは、これは原則論として当然のことであります。ところが、自動車でも、動かしますと何がしかの排気ガスというのは、これはやむを得ない。そこで、一体どの程度までならばそんなに危険と感じなくてもよろしいのだろうかという限界というものを設定しておきませんと、これはどうにも世の中が動かなくなる。  特にこういう放射能の問題に関しまして、いま申しましたような問題に逢着しておりますのは、ヨーロッパの諸国でありまして、たとえば非常に大きな河川が幾つかの国を通じて通っております。エルベ川とかライン川。そうしてそういう大きい川のうちには、たとえばチェコスロバキア辺に端を発しまして、そうして東ドイツを通って西ドイツに入ってきておる。そしてチェコスロバキアでも、私も直接何年か前に見てまいりましたけれども、川のへりに原子炉が建っておるということになります。そうして、東ドイツでも原子炉がある。そうすると、それの廃棄物の水というものが西側のドイツに流れ込んでくる。ベルリンを通って流れている場合もございますけれども、そこで少しでもいかぬということになりますと、これはお互にどうにもならない。  じゃ一体どの程度までならば国際的な感覚という立場からいたしまして危険なものであるということでもって反対するとか、あるいはそういったことがどの程度までならばまあまあそんなに危険なものでないというぐあいに考えられるかという考え方が、国際原子力機関というのがウィーンに、世界じゅうのほとんどの原子力をやっている国が加盟したのがございますけれども、打ち出されているわけでございます。この国際原子力機関というところでもっていろいろ検討しております。それから、アメリカのナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス、どう訳しますか、アメリカ科学アカデミーというようなところでも、こういった問題をそれより以前にいろいろと検討しております。  こういった考え方に基づきまして一応判定してみるとどういうことになるかということを、一応簡単に御紹介したいと思うわけであります。  まず最初に、国際原子力機関から出されております報告書の中に、原子力船が将来約三百隻ぐらいになるだろうということを予測しまして、そうして将来いろいろ変わった型の原子炉というものが出てくるというと、その中の放射能の成分も多少変わってくるかもしれない。つまり一次冷却水の中の放射能も変わってくるかもしれない。しかし一応現在のところこれを検討してみるためには、現に動いておりますサバンナ号、それからノーチラス号といった、商船つまり水上船とそれから潜水艦というものをいろいろ比較をいたしております。   〔西脇参考人、図を示す〕  この第一表に掲げましたのが、一応両方を比較してあるわけであります。この比較した資料によりますと、サバンナ号イオン交換樹脂——一次冷却水中の不純物をとるためにイオン交換樹脂をもちまして放射能を集めておるわけであります。その放射能というものが約五十日作動した後において総計四百五キュリー放射能になります。内訳は書いてあります。これに対しましてノーテラス号の原子力潜水艦イオン交換樹脂というのが約十二・五というように、むしろ厚子力潜水艦のほうが少なく出ておる。それからもう一つ、この一次冷却水中のグロス・アクティビティーといいますか、総放射能というものも比較いたしてみますと、サバンナの場合には濃度が〇・〇八マイクロキュリー、一cc当たりの値であります。そうして膨張水分の中の総放射能量が六・八かける十のマイナス一乗、〇・〇六八。これに対しまして原子力潜水艦の場合におきましてはこの値が三二かける十のマイナス三乗、つまり十分の一以上濃度が低いということになります。非常に半減期の短いもの、数時間のものは、これは急速に減少してしまいすのでそういった数時間で半減してしまうというようなものを除きますと、 大体これくらいになる。それから膨張水、この膨張水分として大体平均五百ガロン出すというぐあいに仮定をいたしますと、その量というものも五・九かける十のマイナス三乗。サバンナ号の値に比べますと、大ざっぱに申しまして約百分の一ぐらい潜水艦のほうが低い、つまりサバンナ号のほうが高いということになります。  そこで、平均的な値というのをどういうところに置いて考えればよろしいかということになりますので、一応国際原子力機関におきましてはその中間をとりまして、原子力潜水艦よりはかなり高いけれども、一応サバンナ号よりは少し低い、サバンナ号の最高値よりは低いというような、膨張水分中の放射能にいたしましても〇・四一キュリー。これでもノーテラス号の資料に基づくものよりも約百倍程度高い値になっておりますけれども、こういう値を仮定いたしました。  それから、イオン交換樹脂を投棄してよろしいかどうかという問題につきましても、これもサバンナ号の場合でも、五十日運転したときに四百キュリーというような値が出ておりますけれども、これも時期によって大体戸キュリーから四百キュリーぐらいまで変動があるというので、その中間をとりまして百六十キュリー。これも原子力潜水艦について出されております値の十倍以上の値でありますけれども、こういう値を仮定していろいろ検討しております。こういう値を仮定して検討してみますと、百六十キュリーといったようなイオン交換樹脂に吸着している放射能というのは港の中に捨ててはいけないということになりますので、これは大体原則として捨てない。もしも捨てるにしましても、十二海里以上離れたところ、既知の漁区を避けて捨てるようにしなければいけないというようなことになってきておるわけであります。ところが、一次冷却水中の濃度ということになりますと、いま申しましたようにはるかに薄い、その量も少ないということになりますので、その程度ならば条件によっては十二海里以内においてもだいじょうぶではないかというような推定も成り立つことになってくるわけであります。  さて、よくこの放射能について混同が起こっておりますのはなるべく詳しく説明しようとするとやっかいになりますので、申しわけないのですけれども、むずかしくなります。スキップジャック号のアメリカの国会の公聴会といったものによりますと、二つ値が出ていまして、たとえば十五分値というのは、原子力潜水艦冷却水中の放射能をとりまして、とった時間から十五分たったときの測定値と、それから百二十時間たったときの測定値というものと、二つ出しております。これはスキップジャック号のアメリカの国会の公聴会の報告書に出ておる数字でありますけれども、十五分値でたとえば一cc中に〇・〇五マイクロキュリー。一マイクロキュリーは百万分の一キュリーということでありますが、 それを単位として〇・〇五、一cc中にある。ところが、これが百二十時間たちますと、数時間というような半減期のものが減少してしまいますので、〇・〇〇三マイクロキュリーというぐあいに、十分の一以下に下がってきておる。そうしてこれを五百ガロン投棄するといたしまして、その十五分後にはかった値を、月一回としますと、〇・〇九五キュリーという総放射能になります。そうしてこれを十二カ月間、一年間足し合わせますと、一・一四キュリー。一年間にこれだけ、約一キュリー一年間に投棄する。これを毎月五百ガロンずつ投棄して約一キュリーということになるわけであります。ところが、現実に月一回ずつ一キュリー捨てておりましても、一年の終わりに実際にはかってみますと、十五分と百二十時間とでは十分の一に下がっておりますように、ぐっと下ってくる。ですから、たまっておるのはそれだけない。どこへも拡散しないとしましても、半減期がありますので、一定量ずつ投棄しておればそう無限にたまるものではない。百二十時間値で計算するというのがむしろ現実に近いのではないかというので、百二十時間値で計算しますと、一カ月当たり〇・〇〇五七キュリー近いのですけれども、これを十二倍いたしますと一年間に〇・〇七キュリー。五百ガロンずつ投棄して約七十ミリキュリーということになるわけであります。  そして、どんどん放射能を一定量ずつ入れていくと、無限に量がふえるのではないかというぐあいによく考えられるかと思いまして、ここに一つの例を持ってきたわけですけれども、いま年間〇・〇七キュリーということになりますけれども、そのうちのコバルト六〇というのは一体どれくらい入っておるかというと、半減期が五・二年でありますけれどもそうすると大体約五百分の一——五百七十分の一ぐらいになるかと思いますけれども、入っておる。それで、コバルト六〇という半減期五・二年のものについてみますと、cc中には百万分の一キュリーを単位としまして百万分の五・七というような値になります。百万分の五・七マイクロキュリーcc。五百ガロン出すとしまして、これをccに直しますと、大体千九百リットルが五百ガロンというぐあいに推定をしておりますけれども、これをかけますと、一月当たり五百ガロンを千九百リットルとして十マイクロキュリーマイクロキュリーは百万分の一キュリーでございます。これが十二カ月としまして年に百二十マイクロキュリー。年に百二十マイクロキュリーずつ捨てていくというぐあいにしますと、これが無限にたまっていくかというと、そうじゃない。五・二年たつと最初の半分になるというぐあいに減少しますので、無限にこれを続けるとしましても大体九百マイクロキュリー以上にはならない。九百マイクロキュリーといいますと、ミリキュリーという単位にしますと〇・九ミリ、約千分の一キュリー。一万分の九キュリーということになる。  ストロンチウム九〇にいたしましても、この量というのはわずかでありまして、約六万分の一くらいだと思います。この放射能の六万分の一であります。それにつきまして一カ月分総計いたしましても一年で一・一マイクロキュリーマイクロキュリーというのは百万分の一キュリー。ですから、一年当たり大ざっぱに見ましてストロンチウム九〇が約百万分の一キュリーということになるわけです。これもずっと連続して投棄しまして、どこへも逃げないというぐあいに投棄していきましても、二十八年で半分になるという割合でもって減少してきておりますので、無限に投棄しましても三七・五マイクロキュリー、百万分の三七・五ですから、十万分の三・七五キュリー。これをこえないということになるわけです。  ところが、たとえばいま問題になっております佐世保、大村湾地区というのに空から降ってきているストロンチウム九〇というのを推定してみますと、一九六三年度には、大体東京の一平方キロメートル当たり降った値に佐世保、大村湾の面積をかけますというと、約七キュリーくらいになります。ですから、この七キュリーと十万分の三・七五キュリー、こういった比較になるわけであります。  それから、ヨード一三一という放射線を出すヨード、これは各病院なんかでも最近は甲状腺の治療に使われておりますけれども、この量が大体一CC中に、マイクロキュリー、百万分の一キュリーを単位としまして、十万分の一程度。これに五百ガロンのCC数をかけますと、月に約十九マイクロキュリー。ところが、月に十九マイクロキュリーずつ投棄していきましたら、その総和は一年間で二百三十マイクロキュリーということになるわけであります。ところが、このヨード一三一は半減期が八日である。つまり八日たちますというと半分、半分という割合で減っていく。ですから、一年の初めにあったものは八日で半分、十六日で四分の一、それにまた八日足しまして二十四日で八分の一、三十二日でもってまたその半分というぐあいに順番に減ってまいります。したがいまして、大体一カ月たちますと十分の一以下、約十三分の一以下になりますので、一年の初めに捨てましたものは一カ月ごとに十分の一、十分の一、十分の一にいきますので、もう一番最後の月に投棄したものだけが残る。そこでもって、たとえば毎月一日にヨード一三一を十九マイクロキュリー投棄したといたしますと、年末には一番最後の十二月の一日に投棄したものが一・四マイクロキューリー。それから、その前から加算してきたのが約一マイクロキュリー、総計約一・五マイクロキュリーしかそこにない。これはどこへも逃げないとしても半減期で減っていきますから、そう無限にふえるものではない。  したがいまして、数時間で半減するというような放射性物質につきましては一応問題が少ないので、非常に量が多いとまた別でありますけれども、少なくともこの原子力潜水艦から出る程度のものではまず問題がないということになります。  それから、先ほど浅田教授からも少しお話がありました旧艦船局訓令によりますというと、大体古い国際勧告案によりまして一CC中に三マイクロキュリー、こういう濃度をきめておったのであります。これがアメリカの国立基準局のNBSハンドブック六九号に出ている。これを反映したといいますので、訂正した値でもって計算しますと、一CC中〇・二マイクロキュリーを限界としている。実際に投棄しておりますのは、いままででもこの上限よりはかなり低い値のようであります。これが十五分後にはかった濃度一CC当たりで〇・〇五マイクロキュリー。それから百二十時間ではこの十分の一、半減期数時間ものが減少しておる。  それから、ノーテラス号、スケート号両艦がニューロンドン港に出入りしておる。これの例が出してありますけれども、この場合の例を見ますと、月間平均投棄ガロン量というのは六百二十五ガロンでありまして、そして月間平均投棄回数が七回。七で割りますと大体平均九十ガロンしか投棄しておらない。これも平均五百ガロンといいましても、原子炉の一次冷却水が高い温度で回っておる。とめると温度が低くなってくる。低くなってくるときに水が収縮しますので、そこへすき間があかないように水を入れる。そうしてまた出港のときに温度を上げると水が膨張するので、その膨張分を外に出すということになる。ところが、その原子炉をとめまして温度がほとんど冷えない間に出ていくということになりますと、 必然的にその間の膨張する水の量、温度があまり冷えてないから、もとの温度まで上げる温度差が少ないという場合には厳密に申しまして、何といいますか、温度が全然下がらずに、入ってきてすぐ出るという場合ですと、膨張水分というものはほとんどないのではないかというぐあいに考えられるわけでありますけれども、実際に一カ月間その平均値というのを見てみますと九十ガロンである。九十ガロンとしますと約三百四十リットルになるので、百二十時間後の濃度にこれをかけますと、一回の投棄量が約一ミリキュリー、一千分の一キュリー程度である。そういうぐあいに推定されるわけであります。  それから、イオン交換樹脂を十二海里以上離れたところで捨てておる。これも一九六一年、六二年にいろいろな値が報告されておりますけれども、それを見ますと、世界じゅうの海へ投棄した総量が年間約二十キュリー程度になっております。年間二十キュリー広い世界の海の中に投棄したというのが、一体どの程度危険だと考えられるか。その比較資料といたしまして、ストロンチウム九〇、一九六三年、昨年度の佐世保、大村湾に降った量というのを、東京における値を基準にして佐世保、大村湾の面積をかけますと、一年に七キュリー。先ほど申しましたように冷却水中分の放出物という中のストロンチウム九〇だけですと大体百万分の一キュリーということになりますけれども、現実に雨から昨年一年に降り込んでいるのが七キュリー程度日本全体に対しては一年間に七千四百キュリー。これは、現実にわが国が実験用に輸入しておるというストロンチウム九〇の量よりもはるかに大きな量が無料でもって空から降ってきておる。まことに迷惑な話でありますけれども、 七千四百キュリー入ってきておる。北半球全体につきましては、これは東京の平均値に北半球の面積をかけるわけにはいきません。これはことしの国連の科学委員会の報告から引用したわけでありますけれども、大体北半球全体の平均は一平方キロ当たり九・一ミリキュリーで、ミリキュリーが一千分の一ですけれども、九・一、これに北半球の面積をかけますと、北半球全体に太平洋、大西洋を含めて二百三十万キュリーのストロンチウム九〇という値を出しておる。  セシウム一三七というのはストロンチウム九〇と同じくらい半減期の長いものでありますけれども、これも佐世保、大村湾に入った量というのが、ストロンチウム九〇に対してセシウム一三七というのが約二倍近いと仮定しますと、一年間に十四キュリー程度日本全体に降り込んでおる量は昨年一カ年でセシウム一三七は一万四千八百キュリーということになる。それから国連科学委員会資料北半球全体については、一平方キロメートル当たり十四ミリキュリーという平均値に面積をかけたのだと思いますけれども、三百五十万キュリー降ってきておる。  こういった値に対しまして、原子力潜水艦からイオン交換樹脂世界中の海に投げる年間の量が六一年、六二年の平均値で二十キュリー程度であるということと比較をしていただきたいと思います。ここに書いてありますけれども大体約二十キュリー前後ということになります。  それから、浅田教授からちょっと話されましたけれども、天然のカリウム四〇という放射能があります。これが世界中の海の中にどれだけあるかというのをちょっと見ていただきますと、これは半減期が約十二億五千万年でございますけれども、四千六百億キュリーというのが世界中の海にあります。それから、海水の量が多いのでそれで割りますと、一cm当たり大体一千万分の三マイクロキュリーマイクロキュリーは百万分の一キュリーを単位として一千万分の三というような程度になる、 ということになるわけであります。  こういうぐあいに、現実に核爆発実験で降ってきておるのが非常に多いということをよく注目していただきたいと思うわけであります。  それで、実際に六一年から六二年にかけて港にどの程度投棄しておるかということがアメリカの公衆衛生局によって調べられておりますけれども、この公衆衛生局にあてられましたアメリカ海軍からの報告書によりますと、六一年で教ミリないし教十ミリキュリー、六二年で教十ミリないし教百ミリキュリー程度であります。これは総計であります。沖縄県の那覇にも現に出入りしておりますけれども、ここに投棄しました総量が、これを見てわかりますように約百分の一キュリー、〇・〇一三キュリー。普通はこういう場合には千分の一キュリーを単位としまして、ミリキュリーという単位で十三ミリキュリー程度、これが六二年に投棄した総量であります。  それから今度は、このニューロンドンという港とか、そういう値が少し高くなっておりますけれども報告書に注がありまして、これは何も原子力潜水艦だけから出したものではなくて、造船所から出たものも全部一緒にして大体この程度と推定されておるんだというぐあいに言われております。  これにありますように世界中の海に六一年で二十一キュリー、六二年で約十八キュリー、ですから平均しますと約二十キュリー程度。もちろんストロンチウム90とかそういったものの割合というのはこれよりもはるかに低くなってきております。これに対しまして、北半球全体には数百万キュリーのストロンチウム九〇とかセシウム一三七が入ってきておるんだということであります。  それから、現実に海岸にイギリスあたりでどれくらい出しているか。ウィンズケール及びコールダーホールという原子炉がありますが、これがパイプラインを通じましてオープンシーに、外の海に流しておる。これがアイリッシュ・シーに流れ込んで、大西洋のほうに入ってしまうわけでありますけれども、これが年間水の量にしまして約八十万トン、ベータ一線の放射能にしまして年間約九千キュリー。これは一九五八年から六〇年の平均値でありまして、正式に英国の政府からウイーンの国際原子力機関に出された報告書から引用したものであります。それからルテニウムが約年間四千キュリー、ストロンチウム九〇が年間約千五百キュリー、それからアルファ線を出す非常に危険なものが年間七十キュリー。この程度パイプラインを通じて海の中に出しておる。海の拡散力というものは非常に大きいのじゃないかというような感じがいたしますけれども、この程度のものを出しております。  それからドーンレーという研究所におきましては、やはりオープンシーにパイプラインを通じて出しておりますけれども、ベータ三線で年間約四千キュリー、ストロンチウム九〇が年間二十キュリー、それからアルファ線放射体が難問五キュリーであります。  それから、一番多いのがアメリカのハンフォードの原子炉であります。こういうところはただ原子炉だけでなくて、いろいろ研究したり放射能を使ったようなものも一部は入っているのじゃないかと思うのですけれども、この液体廃棄物としまして川に流しておる。これが川を伝いまして太平洋の中に入ってきておると思いますけれども、これは年じゃなくて一日にべーター線放射体三千キュリー、それからクローム五一というのが一日に千二百キュリー、 亜鉛六五は一日七十キュリー、ストロンチウム九〇が一日に〇・二キュリー。一年ではこの三百六十五倍であります。  それで、原子力潜水艦から廃棄物を出しましても、まあ沖縄県の例なんかですと、千分の一キュリーを単位として十三ミリキュリーであります。ですから、 こういったものと比較しまして、大体どの程度のものなんだということの感じをくみ取っていただければ幸いだと存じます。
  10. 前田正男

    前田委員長 以上で参考人からの御意見の聴取は終わりました。
  11. 前田正男

    前田委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。最初に中曽根康弘君。
  12. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいま四参考人から御意見を承りまして、非常に参考になりました。たいへんありがとうございました。私の感想を申し述べながら質問をいたしたいと思います。  大体、原子力潜水艦寄港に関する賛成、反対の論議には二つの種類があるように思うのであります。  一つは、政治論議であって、すなわち安保条約反対という議論から、アメリカの兵器類が日本にくることに反対である。その一環として原子力潜水艦反対だという議論が出てきている。  もう一つは、科学論議であって、科学的に見て危険性があったらいけない。そういうわりあいに純粋な科学的な観点からの議論があるわけなのです。  当委員会においては、もちろん科学枝術特別委員会でありますから、科学性を中心にした議論をやるべきであり、それが開催の趣旨であると思うのであります。しかし、いま四人の参考人お話を承りますと、これが非常に混淆している向きがあるのは遺憾にたえないところであります。われわれが常識で考えているような程度の、そういう政治論議の要素が入っている部分も必ずしもなくはないと思って、苦笑を禁じ得なかったことはあるのであります。  そこで、科学性というものを中心にしてこの議論を持ってくるというと、この場合は私は多分にエンジニアリングの問題になるだろうと思うのです。抽象的な理論的な話よりも、むしろ現実に安全か危険かという問題は枝術工学上の問題である。その枝術工学を中心にした話を実は聞きたかったのであります。しかし、そういう点がわりあいなかった。藤本さんの場合は原子核の先生でありますから、そういう性格から遠いのであって、抽象的になるのはやむを得ないし、いままでのお説もそのようであったと思いますが、服部さんの場合は原子炉を扱っておられるのでありますから、コンテナーの問題とか、そういういろいろ枝術的な問題が問題に出されると思って、実はお聞きしたがったのであります。その点はまた後刻お聞きできれば幸いであると思います。  そこで質問申し上げたいのは、まず第一に藤本さんが手続上の問題を出されましたが、いつも学術会議からやってくる問題は、手続がとってなかったとかあったとかいう議論が多いので、ものの本質に触れたものはわりあい少ないのでありますが、この場合も原子炉審査会を通らなかったということが一つ指摘されている。この点に関して兼重さんはいかにお考えになるか、兼重さんのお考えを承りたい。
  13. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 わが国の原子炉設に置つきましては、原子炉等の規制法の定めるところにおいてやり方がきまっております。ところが、その規制法の中には外国の軍艦原子力で推進される軍艦のことについての手続は定められておりません。この問題が原子力委員会の設置法とどういうふうに関係があるかということは、この前、田中先生から御質問がありまして、愛知国務大臣からお答えになったことがあるわけでございますが、そういう関係で、この原子力潜水艦の手続に公式の手続が何であるかということはきまっておりませんから、先ほど藤本教授は安全審査会を無視したというような表現をお使いになりましたけれども、決して無視したわけではございません。私どもは安全審査会の性格からいって、それに枝術的に判断をしてもらう、資料もないのに枝術的な判断を請うということは、これは適当でないと考えておったわけであります。
  14. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私はしろうとでありますから、 しろうと論議を申し上げると、最も厳密に申し上げるならば、原子力潜水艦が危険であるという議論も非科学的であると思うし、安全であるという議論も同じ程度に非科学的であると私は思う。なぜならば、最も厳密な議論で考えれば、設計書を見た人はいないのですから、安全か危険かということは、厳密にその設計書なり構造を点検してみた上で言えるので、そういうことをやっていない以上は、危険だと断定するのも非科学的であるし、安全だと断定するのも非科学的で、いわばわからないというのが正直な話ではないかと私は思う。  そこで、わからないというところから次の段階に下ってみて、今度は現実に適用するという政治的判断あるいは政策的判断、そういう政治上の問題に許容度を下げてもらって話を持ってくると、私は参考にすべきものはその類推だろうと思うのです。そうして、設計書がない以上は、いままでのいろんなデータ、そのほかの問題から見て危険度、安全度を類推して想定するということ。それからもう一つは、過去何年間かの経験である。事故があったかないか、どういう結果があったか、そういう経験の度数だろうと思う。  そういう二つの類推と経験の度数からいろいろ議論を聞いてみると、私は安全であると判定していいと思うのです。それを危険であるというのは、むしろ政治論議から議論を曲げておるような感じがするのです。安保条約反対というものがここへ顔を出してきてそういう議論になるのじゃないかと私は考えざるを得ない。  そこで、 そういうものの根拠として、経験についてはもうすでに七年間のアメリカの数十隻の原子力潜水艦の航行の経験がありまして、これはすでに公表されておるから、われわれはこれを信頼していいと思うのです。しかし、類推の問題について幾つかの問題点がありますが、アメリカ側が日本に言ってきた公式の書類によれば、ともかく昼間浮上して港へ入ってくるということ、それからブイを指定しておくということ、そういうようなレギュレーションを確立してやっておる。そういう面から見て、まあ問題になると思うのは、一つは一次冷却水の問題、それからもし万一衝突した場合の危険性がどうであるかということが問題になると思うのです。夜間来ないということや、浮上して昼間入ってくるということ、水先案内を使うということ、ブイを指定しておくということや二十四時間前に通告してくるということ等々を考えれば、かなりの配慮をして入ってくるということはわかりますが、それでも万一衝突がないとは言えない。一次冷却水の問題は、いま西脇さんのお話で余すところなく説明されたので心配する必要はないと私は思いますが、衝突が万一起こった場合を考えてみたいと思います。  そこで西脇さんに質問したいと思いますが一体原子力潜水艦の場合とサバンナのような商船の場合の強度、船の外壁の強度とか、あるいは原子炉のコンテナーの強さ、そういうものはどのような差異があるか。軍艦のほうが悪いのか、あるいはいいのか。  それからもう一つは、原子力潜水艦の場合と商船の場合の運動能力、やはり衝突を回避するというような場合に運動能力の問題が出てくる。  そういう軍艦と商船とを対比した場合の性能の差異について、以上そのほかの数点について西脇さんの御所見を述べていただきたい。
  15. 西脇安

    西脇参考人 私も、いま御質問にありましたような点について、最初のうちは、実際申しますと、いろいろ心配をしておりました。そこで、昨年の三月に私、 ウイーンの国際原子力機関で、放射性物質安全輸送に関する国際勧告原案を検討するというパネル委員会出席いたしまして、そのときにもいろいろこの話を各国の専門家に伺いました。また、ことしの二月にやはりウイーンの国際原子力機関主催でもって、各国の原子力施設の放射線防御についての一応の勧告案を、国際勧告的なものをつくりたいというので、その原案を検討するという委員会に出ました。  それから、パリでもやはり放射性物費に関係のある会議、これは欧州原子力機関主催の会議ですけれども、それに出まして、帰りがけにイギリスに寄りまして、直接アメリカ原子力潜水艦の基地になっておりますホリーロッホとスコットランドでは呼んでおりますけれども、英語ではハリロックというふうに発音しておりますが、この基地を直接見に参りました。これはだれにも了解を求めずに私一人で、パリから着くなり、 心配だったものですから、日曜日でしたけれども、かってにすっ飛んでいきまして、現地を見てきたわけであります。現地の人たちといろいろお話をいたしてみましても原子力潜水艦自体というものがどかんと爆発するというような危懼というものはわりあいに少ない。それよりも、一部ポラリスの基地であるというようなことでの反対はございましたけれども、ただ普通の原子力潜水艦というものにつきましては、そんなにそれ自体があぶないという感覚は国民が持っておらない。そこでもって、またすぐロンドンに引き返しまして、英国原子力公社のこの問題に関係のある専門家、——ハーウェルとリズレー、そういうところにかなり専門家の方がおられます。それから、現にアメリカ原子力潜水艦の基地を受け入れるという場合に、やはりそういう問題の審議に関連されて、イギリスでは現実に自分の国でも通常装備の原子力潜水艦がすでに昨年ドレッドノート号というのが就役している関係もありますので、いろいろ検討しておられます。こういった人にも伺いました。  それからまた、ことしの六月に、私オークリッジの国立原子力研究所主催の国際シンポジウムで講演を頼まれましたので、そのときにも向こうの来ている専門家、それから、私も心配だったので、オークリッジの人に、一体どうなんだ、 ということを聞きましたら、やはり原子力潜水艦をつくりましたリッコーバー中将というのが中心になって推進いたしましたけれども、やはりこの設計図面なんかを全部持ってきまして、そうしてこのオークリッジの専門家の意見を求めに来たらしい。ところが、そのオークリッジの専門家の意見でも、こんながんじょうなものをつくってどうするのだ、これで一体海の上に浮くのかといって心配したぐらいだというような話をしておりました。  それでもなお私は気がかりだったので、いろいろ突っ込んで聞きますと、一度その潜水艦を設計してつくっている本部へ乗り込んでみろということでもって、私は帰りがけにワシントンに寄りまして、全く非公式でありますけれども、ほかの人を交えずにリッコーバー中将と、それからその下でもってこの設計を担当しておりますロックウェルというような人とディスカッションをしてまいりました。いろいろディスカッションをいたしまして、そうしてまた向こうの言っていることの信憑性というようなことも、かなりこれは問題になるかもしれぬというような気がかりがあったもんですから、やはり日本におきましても、現実に日本潜水艦を設計しておられる技師の方などもたずねまして、いろいろとお教えを請うたわけであります。  そういったところを総合してみますと、まず先ほど中曽根先生からもちょっとお話しになりましたように、潜水艦のほうがあぶない、つぶれやすくできているのだということはちょっと考えにくい。大体いまの常識といたしましては、最近の原子力潜水艦というものは、大体少なくとも何メートル実際に安全にくぐれるかということは、これは軍事機密になっているようでありますけれども、大体千フィート、約三百メートル程度はくぐれるのではないかということが大体の一致した観測のようであります。そこでもって、三百メートル水の下をくぐるということになりますと、水の下に入りますと圧力がものすごくかかってくるもんですから、潜水艦を設計しておられる方のお話によりましても、ちょっとしたすき間がありましてもそこから水が入りましてもたいへんなことになるというので、 気密試験は十分にテストしている。そしてまた、この圧力に耐えるというのも、設計限度が安全に潜航し得るぎりぎり限度だったらこれはだめでありますので、 それよりも必ず余裕——安全係数というものをとってある。この場合の安全係数というのは、通常の潜水艦の設計におきましては大体安全に航行し得る深度の最低一・五倍あるいはそれ以上にとるというのが常識のようであります。そうしますと、 その深度における圧力というのが、三百メートルにおける周囲から受ける圧力というのが大体三十気圧ぐらい、これに一・五の最低の安全係数をとってやったとしましても、おそらく設計強度としましては四十五気圧ぐらいに耐えるように設計されているのではなかろうかというふうに推定されるわけであります。  それから、発表されました潜水艦のいろいろな資料アメリカ潜水艦につきまして公表の資料を集めてみたのですけれども、それよりも最近、ソ連から「原子力潜水艦」という本が出ております。これにノーテラス号の図面とか、そういったものがかなり詳しく出ております。そういったものを見てみましても、大体原子炉と一次冷却ループというのがプレッシャー・ベッセル、耐圧容器に入っておる。それから一次冷却系統の全体というものが、熱交換器、蒸気発小器というものも含めまして、これがリアクター・コンパートメント、原子炉隔室というのにきっちりと密封されておる。それからその外を耐圧船殻、いわゆるプレッシャー・シェルといっておりますけれども、耐圧殻というもので囲まれております。そして通常の潜水艦でありますと、輪切りにしますとこの耐圧殻がほとんどまんまるいようなものでありまして、そしてその周囲にもう一つ船腹が二兎になっておる。いわゆるダブル・ハールといっておりますけれども、二重になっておる。こういった構造と、それから陸上にあります原子炉というのがやはり万一の事故の場合に放射能が漏れないというためにコンテナというものが着せてあります。これが日本動力試験のJPDRというコンテナにしましても、大体約三・五気圧に耐え得る程度である。それからアメリカのドレスデンとかヤンキーの原子炉、これはおそらく原子力潜水艦に使ってある原子炉よりははるかに大きなものだと思いますけれども、こういったもののコンテナの耐圧力というものも約二気圧である。こういったことから推定いたしましても、万一の事故というものを考えましても、潜水艦の耐圧殻というもののほうがはるかにがっちりしておる。  それから、一部によりますというと、外圧に対しては耐え得るかもしれないけれども、内圧に対しては弱いのじゃないか。たとえば球を半分に切っておりまして、そしてぴしゃっとひっつけて外から圧力がくると、もっておるけれども、中から圧力がかかるとぽかんと割れるのじゃないかというような御意見も出ましたので、これも潜水艦を設計しておられる方に直接お伺いをいたしましたら、いやいやとんでもない、普通の船だったら中から圧力がかかったらばかっといって、外からのほうに強い張りがしてあるけれども、チューブ様の構造を持った潜水艦の耐圧殻というようなものはむしろ内圧のほうによく耐えますよ、外圧に対してよりも内圧のほうがまさるとも劣らぬくらい十分耐えます、というようなお話です。  そこで、いろいろな立場から検討するというのでもって、一次冷却ループというのがサバンナ号の場合には公開されておりますので、これは満載排水量二万一千八百五十トン、ノーテラス号ですと約三千トンくらい、サバンナ号に使ってある水の量より多いとは思えませんので、こういった量と、それから公表されている温度といったようなものから、万一、一次冷却ループが破裂したというような場合の圧力上昇というようなものを考えてみましても、十分潜水艦の耐圧殻で、もつんじゃないかというようなことが推定されるわけであります。  それから、潜水艦でありますと、その付属兵器につきましては、最近の「エレクトロニクス」という電子工学関係の雑誌にずいぶんいろいろなものが出ておりますけれども、 ソナーとか、こういうものを潜水艦には使ってあるというのが、アメリカ雑誌にも一部公表されております。そういったものを見ましても、おそらく普通の水上船とか商船とかいうものが持っておる電波探知機とか音波探知機というものよりもはるかに精密なものをもっておるだろう。  それから、操縦性能というような点にしましても、たとえば今度入ってくるソードフィッシュというような潜水艦の場合にはスクリューを二つつけておりますので、一方を逆回転して非常に操縦性能がいい。  こういった点から考えますと、もちろん海難事故というものが絶対起こらないということは言えないと思いますけれども、普通の商船に比べて原子力潜水艦のほうが弱いということはちょっと言えないんじゃないかというぐあいに考える次第であります。
  16. 前田正男

    前田委員長 関連して佐々木義武君。
  17. 佐々木義武

    ○佐々木(義)委員 私は服部さんにお伺いいたします。  さっき冒頭の御説明では、加圧水型というものの冷却系統に弱点がありまして、他の原子炉に比較して危険性が多いというお話、それは常識的なことだろうと思います。  ただ、その後にスレッシャ一号の沈没の原因に触れられまして、たしか原子炉事故で沈没したのではなかろうかと断定を下したようにお聞きしましたが、そうでございましょうか。
  18. 服部学

    服部参考人 いまの一番最後のお話からまずお答えいたします。  私、先ほどスレッシャーが原子炉事故原因で沈没したとは申さなかったのであります。あのような事故が起こったときに原子炉が当然こわれている、その中の燃料溶融しているということは容易に考えられる、こういうことを私は申し上げた。  それからもう一つつけ加えますならば、先生のおっしゃいますように原子炉事故原因じゃなかったということはやはり言えないと思います。その可能性というものはやはり十分に残っているということも考えております。
  19. 佐々木義武

    ○佐々木(義)委員 私あまり勉強していないのですが、たしか米国の海軍の査問委員会調査によりますと、沈没した周辺には放射能はちっとも見えないというような報告になっておりますけれども、その点も参照の上での発言でしょうか。沈没した際には放射能が出ているに違いないという論断のようでございました。あの問題に関しては、米国の海軍の査問委員会が詳細に調査をしまして、もちろん放射能のあるなしも調査をして、何もなかったという報告のように承知していますが、それを参照の上でそういうお話をなさったのかどうかということを聞いているわけです。
  20. 服部学

    服部参考人 もちろん査問委員会報告書は全部検討いたしました。その上での話であります。  スレッシャー号の事故と申しますのは、不幸中の幸いでございますけれども、たまたま三千メートルなどという非常に深いところに沈んでくれました。そのおかげで、現実に潜水艦がどこに沈んでいるか、原子炉がどうなっているかということすらいまだにつかめない状態であります。ましてや、その近所に放射能が出ているかどうかというようなことは測定ができないわけであります。しかし、原子力潜水艦というものがいつでも必ずそんな何千メートルというような深いところに行って沈んでくれるとは限らないわけでございます。万一あれがもう少し浅いところであったという場合には、やはり非常に大きな影響があったというふうに推定をするわけでございます。
  21. 佐々木義武

    ○佐々木(義)委員 原子炉放射能が放出したであろうという想定というものは、 むしろ原子炉内の遮蔽材等の問題、工学上の問題が主じゃなかろうかと思いますが、ただいまの西脇さんの話を聞きますと、そういう例は工学的にはほとんどないというくらい吟味したものだということでございますが、物理学者としての推定上、そういう工学的な問題とはどうかね合いになるのか、お伺いします。
  22. 服部学

    服部参考人 現実にスレッシャ一号は沈んでおります。そしてその破片だけは見つかっております。潜水艦の艦体自体はこわれているわけです。その艦体はどこにいったのかということは、先ほど申しましたように全然わかっておらないわけでございます。あのようなところで潜水艦の艦体がこわれますと、当然これは一次冷却水その他の回路というところにも故障がいっていると考えるのが常識であろうと思います。  また、そういった潜水艦の艦体自体がこわれた場合には、当然補助ポンプその他のものも働かないわけでありますから、先ほど申しましたように、加圧水型の原子炉というのは冷却水がもしとまった場合には、直後の短寿命核分裂生成物崩壊熱でもって原子炉炉心溶融する、燃料が溶けてしまうということを考えるのがむしろ自然であろうと考えております。これはサバンナ号につきまして、最近ACRSが出しました勧告というものから類推いたしましても、当然そういうことは考えられる、考えておかなければならないというふうに考えるわけでございます。
  23. 佐々木義武

    ○佐々木(義)委員 私、別に議論するのじゃないのですが、炉心が云々というその結論がすぐに放射能が出たであろうということにはならぬように思います。
  24. 服部学

    服部参考人 炉心溶融いたしまして燃料棒が溶けておりますれば、その中にたくわえられております放射性物質、いわゆる死の灰といわれているものは当然外に出てまいります。
  25. 佐々木義武

    ○佐々木(義)委員 その点は私まだ疑問がありますけれども、やめます。  それから、サバンナ号の問題が出ましたが、これも常識論で恐縮ですけれども、今度私どもジュネーブの会議に出ますときに、コペンハーゲンに寄りますと、ちょうど潜水艦入港を反対しているというデンマークでは、当然これは先ほどお話もございましたように、許可になったようで、サバンナ号が入っておりました。私見ませんでしたが、市民がたいへん大ぜい押しかけまして、だれにも公開して参観させるということで、まことに平穏無事なような感じを受けたのです。  先ほどのお話では、加圧水型は危険なものだという御説明がございましたけれども、それがすぐ何か、原子力潜水艦につけ、あるいは船につけますとたいへん危険なものだという飛躍した議論に結びついているようにも感じますが、一体どういうふうに解釈したらいいのでしょうか。
  26. 服部学

    服部参考人 サバンナ号の場合にはデータが公表されている。私たちがそれを検討することができる。原子力潜水潜については公表されていない。まずこれが大きな違いであります。軍事利用と平和利用のまず大きな違いでございます。  サバンナ号について申しますならば、先ほども引用いたしましたが、最近の新しい資料が出ております。これを見ますと、たとえば先ほどから問題になっております放射性廃棄物の投棄にいたしましても、サバンナ号の場合ですと、湾内では、あるいは二海里以内の沿岸では十のマイナス七乗マイクロキュリーパーccという非常にきびしい値をとっております。原子力潜水艦よりもきびしい値をとっております。そのこと一つから類推いたしましても、いかにサバンナ号安全性というものを考えているかということの証拠になると思うわけでございます。  そしてまた、このサバンナ号の場合に、だいぶ前でございますけれども、非常に厚い安全解析の報告書が出ております。その場合に、やはり衝突の問題というものをその中で詳しく検討してございます。それを読みますと、サバンナ号のような商船の場合には、造船のほうの専門用語を知りませんけれども、横のはりが何重にもある。これが横からの衝突に対しては非常にじょうぶなんだ、まんまるいものに横から衝撃がくるというのではなくて、横の隔壁というものが衝突に対して非常にじょうぶなんだということが、こんな厚いものとして詳しい検討が出ております。サバンナ号のほうが原子力潜水艦よりも安全性の上で十分に検討されているということは、アメリカの中でも雑誌やなんかにも書かれていることでございます。  そのサバンナ号でさえ、二年前にシーボルグ委員長が近い将来には全く自由船になるだろうと言っていた約束にもかかわらず、最近になってACRSが運航に対して非常にきびしい制限をつけた。入港してくる前にやはり数日間は海上で低出力にしておいて、短寿命放射性物質がなるべく少ないようにして、万一事故が起こっても燃料溶融が起こらないようにしてほしい、そういう勧告が出された。それだけ安全にしているものについてさえ、いまだにそういう新しい措置がつけ加えられているということを先ほど申しましたわけでございます。
  27. 佐々木義武

    ○佐々木(義)委員 そこで西脇さんにお聞きしたいのです。あなたは実際に現場と申しますか、内部の設計先で見てきたそうですか、いまのお話に対してどういう見解をお持ちですか。
  28. 西脇安

    西脇参考人 私、サバンナは見ておりませんけれども、図面の上だけではサバンナのハザード・リポートというようなものは聞いております。しかし、もちろんこれは軍事機密というようなこともありますので、私自身も完全に全部見たというようなことはございません。  しかし、何といいますか、サバンナ号のような普通の商船のような構造ですと、これを強くするために、はりをつけられるということはこれは当然だと思いますけれども潜水艦にも、何といいますか、耐圧横隔壁とかそういうものがちゃんとついておるはずです、ですから、そう潜水艦の場合のほうがつぶれやすいのだというぐあいには一がいには言えないのではないか。サバンナ号の場合、完全解析書によりますと、ロイドとかアンダーライターの保険会社のいろいろなデータを引用いたしまして、原子炉が破損するような事故の起こる確率が二十年間に十万分の七・五とかいうような値を出しております。原子力潜水艦でもたとえばスレッシャー号、先ほど出ましたけれどもああいうふうに圧壊深度をこえて突入いたしますと、これはどういう潜水艦でも、水の圧力がものすごいものですから、おそらくつぶれるのではないかというぐあいに思いますけれども、しかし寄港してくるという場合におきましては、これは何といいますか、外国の領域でも無害航行権というのがあるそうですけれども、潜水艦の場合は潜航して入ってくる場合には無害とはみなされないというので、国際慣行上も万一潜水艦が黙ってもぐったまま入ってきたら撃沈してもよろしいというようなことになっておるくらいですから、一応そういった慣行上からも浮上して国旗を掲げて入ってくるというようなことが予想されます。ですから、スレッシャー号の事件はちょっと面接に寄港問題の安全性というものとはダイレクトな問題ではないのです。その場合がだいぶ違うわけです。  それから、もちろん船体がばらばらになるという場合におきましては原子力系統も一部故障が起こっておるのではないかと想像されるのは、これも非常にもっともな想像だと思いますけれども、サバンナ号の安全解析書あたりを見ますと、万一沈没した場合には、各深度に応じての解析が示されておりまして、浅海の場合には、原子炉のバルブが閉じまして放射能が出ないようになって、それを引き上げるようになっている。それから、引き上げ時間というものを一応推定いたしまして、そうして引き上げる時間内において万一、一次冷却ループが破損しても燃料が溶けないはずだというようなことを、何か検討してみたのだというようなことは言っております。それから、うんと深いところに落ちますと、外圧がものすごくなって、加圧水型といっておりますから内部の圧力が相当強いものですから、外部からそれに対して圧力がかかりますとバランスがとれるというような問題もあるので、そう船体自体ほどにばらばらになるとは考えられませんけれども、サバンナ号の場合の設計図面によりますと、外圧のほうがうんと高くなってきますと、内外圧を平均するために自動的にバルブが開いて海水を導入してまた締めるというようなデバイスがしてある。  それから、最近のリッコーバー中将の証言などを見ましても、スレッシャー号の沈没に関して強い放射能がなかなか検出できなかった。むしろそれが検出できれば、それを追跡していくと船がどこへいったかというありかがわかるはずなんだが、それが見つからなかったということは、たとえ一部は故障しておるにしても、そうものすごい炉心部の放射能というものがそっくりそのまま飛び出して海中に溶け出したのではないのじゃないかということが推定されるわけであります。
  29. 佐々木義武

    ○佐々木(義)委員 わかりました。  それからもう一つ藤本さんにお聞きしたいのですが、私官吏時代にもよく見えられましてお話を伺いましたが、どうも先きほど中曽根さんも言っておられたのですが物理学的あるいは技術的、工学的な問題からの発言でなくて、むしろ法律学者的な発言のほうが多かったように患います。きょうも何か政府の今度の処費が、自主、民主、公開という原子力基本法原則に反するというお話をたいへん強調しておられたように承ったのでありますが、そういう点は、あれでございましょうか、今度の何か学術会議からの申し入れ、そういうものにそういう態度で、あるいはそういう点を論証しながら申し入れたのでございましょうか。
  30. 藤本陽一

    藤本参考人 御質問の趣旨がよくわかりませんので、ちゃんとそれに対するお答えになるかどうか私はわかりませんけれども、自主、民主、公開という三つの原則をわれわれが生み出し、それが国会の審議を経て基本法に盛り込まれたということは、決して法律の問題でないことをあらためて思い出していただきたいと思います。というのは、原子力の開発というものが日本では平和利用だけでやっておる。それから外国は、いわゆる原子力先進国と申しましょうか、そういう国々はほとんどが全部軍事利用を中心として開発を進めてきたということをわれわれが考えて、それで三つの原則をつくった。決して法律の問題でない。むしろ原子力の枝術の本質がどこかということを考えてその三つの原則を提案し、それがここで審議されたものと私はかたく信じて疑いません。  それから、なお一つ、つけ加えさしていただくならば、安全の問題が原子炉そのものの工学的な強度の問題のみであるような御発言が、中曽根さんにも、 あなたの御質問にもございました。もちろん工学的な部分もございますけれども、それ以外に、立地条件の問題もございますし、それから海上での衝突の問題もございますし、非常に複雑な問題であるということを十分お考えくだすって、原子力委員会が審査する場合にも、アメリカのある港で安全だからといって日本のたとえば佐世保なり横須賀なりで安全であると直ちに結論できないということを十分考えていただきたいと思います。
  31. 前田正男

    前田委員長 次に、原茂君。
  32. 原茂

    ○原(茂)委員 冒頭少し、科学枝術特別委員会の性格に前に触れたようでございますから、 私からは逆な立場で申し上げてみたいと思うのです。当然これはわが国政治全般にわたる討議の場である議会の科学枝術特別委員会というものでございますから、科学枝術というものを政治の場にどう取り入れて国民福祉を向上するかということがわれわれの態度にならなければいけないわけでございますから、当委員会でございますからといって、別にわれわれが純粋な科学枝術にのみ幅を狭めて論議をするということはあり得ませんし、その態度は間違いだと思いますので、きょう参考人各位お話の中にも多少政治的な配慮、そういうにおいのするものもありましたこともむしろ当然だと考えておりますし、そうなければいけないと思うわけでございます。ただ、そういうものを考えていこうとするときに、純粋な科学技術という立場で、われわれはしろうとでございますが、できる限りその内容を知らしていただきまして、それをも非常に貴重な参考意見として取り入れていくということは、われわれの常に考えなければいけない態度というふうに考えておりますので、先ほど論じられましたような当委員会の性格というものに対して、私どもは全然違う立場にあるということをまず冒頭に意見として申し上げておくわけでございます。  いまいろいろと貴重な御意見を拝聴いたしましたが、どうも純技術的な数字の問題等になりますと、少しく私どもに難解な点もございました。しかし、ぼんやりお聞きいたしておりましただけでも、何か、たとえば西脇さんの御説明なり、あるいは浅田さんの御説明なりをお伺いしておりますと、三つの点で少しく私なりの理解とまた疑問が生まれてきたわけでございます。  その一つは、交通事故だってあるじゃないか、あるいは工場の爆発だってないと思っていてもあるじゃないか、したがって、この原子力潜水艦あるいは原子力船というものにも当然事故があってあたりまえじゃないか、というような非常に平易な受け取り方を私はしたわけでございます。  この点で、冒頭申し上げた政治的な判断を特に要求されておる立場からいいますと、聞きのがすことのできない問題だと、実は第一に考えるわけでございます。  先ほども服部さんなりあるいは藤木さんなりの御説明、あるいはお四方全部の御意見を集約いたしましても、安全性というものに対しては、私どもの窺知し得ないほどに真剣に討議をされ、論議をされておられる皆さんであることを同時に考えますと、どうも何かあまりにも政治的に何かを考え、ために原子力あるいは原子炉安全性というものを考える前提に、逆に言いますと何か不純なものがあるのではないだろうかというふうに考えざるを得ないのであります。普通の交通事故でございますとか、工場の何かの爆発した事故というものがあるから、この事故も、というふうにお考えでございますが、いまもちろん国としても、政府としても真剣に工場のいわゆる安全の取り締まり規程その他の改廃を通じてまでこの措置をやろうといたしておりますが、このことはおそらく一〇〇%といっては言い過ぎるかもしれませんが、十二分に可能性がある。工場でございますとか、交通事故というものをなくそうという点では、非常に大きな可能性というものがあるだろうと思うのです。なぜかといいますと、しろうとでわかりませんが、現に私たちは動いております自動車なら自動車の構造等、その内容あるいは動きつつある社会における情勢全部を見ることができます。あるいは工場における操作の中で、あるいは危険物を貯蔵するという現場を幾つでも自由に調べることができます。ただ、いま問題になっております原子力潜水艦の問題に関しては、先ほども兼重さんの御説明にありましたように、資料がないから安全委員会で調べるわけにいかなかったのだ。この権威のある兼重さんまでそうおっしゃるほどに、とにかく資料がないという。資料がないものを、ただ一方的な、簡単に言いますと、安全であるとか、心配はない、そういったことを前提にした説明が科学者である皆さんになされ、しかし皆さん自身はほんとうにそうかなと思って検討しようとしてもその資料をお持ちになっていないわけです。西脇さんはイギリスか何かでアメリカ原子力潜水艦をごらんになったかもしれませんが、これも単にごならんになっただけで、純粋な科学的な立場で調査しようというので、設計書を前に置きながら現物の原潜を一々検討されたのではないだろうと思います。ということになりますと、一体どこに根拠を置いて、まずこれならだいじょうぶだということをわれわれに確信させてもらえるだろうか。そういう見ることができない、現に私たちの社会の中に、常にわれわれの眼前にいろいろと動いている状態をつかんでいないというような、この原子力潜水艦に関する限りは、どうも同じ交通事故だの工場の爆発があるのだから、これもことによると事故あるいはその他海難事故で補償があるかもしれぬが、やむを得ないのではないかというような割り切り方には、逆に言ってあまりにもどぎついといいますか、何か政治的な配慮というものがあり過ぎるのではないだろうかというように一点考えますので、この点を両先生どちらでもけっこうでございますから、私の疑問を解くという意味でお答えを願いたいというのが一点であります。  それからもう一つは、先ほどの御説明の中で、特に浅田さんの場合ですが、常態だけを説明されたように思うのです。この事故というものを中心にあらゆる想定をして、その事故が起きたときに一体どうなるかという、そういう検討をされているのだろうと思いますが、説明がなかったように思いますので、これはいま仮定される事故というものはスレッシャー号あるいはその他いろいろございますし、スレッシャー号の前後に、もうすでに日本の港において同じときに同じような事故が起きていますから、海難事故としてはたくさんあるわけです。そういうような事故が起きたときでも先ほど御説明になりましたような、いわゆる平易な気持ちで御説明になったと同じ心境におられるかどうか。事故というものを中心に考えたときには、一体どういうふうにお考えになるか。これが二つ目です。  それから三つ目には、西脇さんに特にお答えを願いたいのですが、先ほど潜水艦日本に入ってくるときには浮上をして入ってくる、こういう御説明がございました。これは常識でございますし、国際法上からいっても当然の慣行でございますから、そう見てよろしいと思うのでございます。しかし、現実に事態が不幸な事態に突入をし始め、たとえばトンキン湾事件におけるああいう事態から、安保体制のもとに日本の基地からアメリカのいわゆる戦力というものが出ていくというようなことも現にいま行なわれているわけですから、それがいま一歩深刻にいわゆる悪化した事態になりますと、局部的でございましょうが、日本のわれわれの知らない間に戦争と見なしてもいいような状態に入ったときに、しかもおそるべき近代的ないわゆる最も優秀な兵器のかたまりのような原子力潜水艦日本の港に入ってくるときは一々いつも浮上するんだ、潜航して入ってくることはないんだというようなことも、事態の急迫した場合にはそのこと自体だってやはり考えていかなければいけないので、先ほど私が第一に申し上げたことに関連をするわけですが、何か少しあまりにも平易に、簡単に考え過ぎているのではないか。潜航したままで港に入ることはあり得ないというような前提に立つこと自体が、科学者としては、やはり事故というものを中心安全性がどうかということを真剣に検討していただくときには、浮上して必ず入ってくるのだということを前提にするその態度についても、お聞きしている中で疑義を生じたわけですが、これは私が考えることがおかしいのか。どうも西脇さんから、先ほど必ず浮いて入ってくるのだというような前提に立っていろいろと貴重な説明があったのですが、 私はもう少し深刻に、日本人の一人といえどもその生命なり将来の安全というものを考えていこうという立場からいいますと、あらゆる事態を想定する中に、浮上して入ってくるのだ、潜航して入ってくることはあり得ないというような前提に立つこと自体が、科学者の立場で少し何か検討するときの甘さといいますか、そういうものを一連のものとして感じたわけでございますので、この点をまず第一に先にお伺いをしておきたいと思います。
  33. 浅田常三郎

    浅田参考人 先ほど事故の話が出ましたが、事故と申し上げたのは原子炉事故とは申し上げておりません。ですから、船を操作している間に、ただいかりがどないしたとか、あるいは乗り組み員の人が少しのミスでとちったというような事故もあり得るわけなんでございます。  上原子炉自体の、あるいは放射能を含んだものが出る、この大きな事故に対しては、先ほど申し上げたように、アメリカ原子炉事故のいままでの統計が出ておりますのは、その大部分が外へ放射能を散らすという事故ではございませんでして、そのうちの事故一つは、SL1、あの原子炉の操作の誤りから人が三名なくなり、放射能も相当飛び散ったようでございます。しかし、この事故というのは、原子炉を分解して今度組み立てる際に、ふなれな人がコントロール・ロッドを引き抜いたということから起こっておるようでございます。  アメリカ日本に言うてきているのは、軍船に対しては向こうの言うことを聞くよりこちらで判断のしょうがないわけでございますが、日本の港の中では炉を修繕しない、炉の中の燃料の入れかえをやらない、日本の港の中だけでなしに、日本の領海内ではそれを行なわないということを言っておるわけなんでございます。そうすると、いま申し上げたような事故はまず起こるまいと考えられるわけでございます。  それから、事故はつきものだ、事故は絶対にないということは申し上げられないということで、その船に対しては、これは原子炉事故でなしにほかの事故もあり、それが事故としてあげられているのが、先ほど御紹介いたしましたアメリカ事故の中で計器の読みを間違ったとかなんとかということもございましたが、あれは決して原子炉がそれがためにこわれたというような事故ではなかったわけでございます。絶対安全だということを申し上げることができない例として、事故が起こり得るということを申し上げたわけでございます。  それからもう一つは、先ほどお話しのように、人命を大切にするということは非常に大切なことでございます。特にアメリカが人命を大切にするということは、戦争中、湾の中に落ちた一人の兵隊を助けるために何台も飛行機がやってきてそれを救っているということで御承知のとおり、人命を大切にするということはアメリカが一番大事にしております。日本のような、あの戦時中に特攻機とかなんとかというようなことがございましたが、戦時中でもアメリカはそんなことはやってなかったと私は存じております。したがって、そういう人命を大切にする国で、しかも今度、その潜航艇に対する乗り組み員の訓練は非常な金をかけてやっている。その乗り組み員の安全及びその健康、及びその潜水艇が入っている周囲の環境に対する安全ということに対しては、非常にアメリカがそれを大事に考えてやっておることは、これは日本がやると同様であり、あるいは日本より以上に考えているのだろうと思うのでございます。その点で、日本人がやはり健康あるいはその他のことに対して大事に考えると同様に、アメリカは同じように考えているのだ、アメリカだからあぶない潜航艇をこしらえて、乗っているやつがいつ死んでもいいという意味でやっているのではないことを確信しておるわけでございます。  その意味で、事故の起こることもあるかもしれない、しかしその事故原子炉放射能をまき散らすような事故は起こるまい。これは起こらないとは断言できない。しかし、まず起こるまい。これは先ほど西脇さんからお話がございましたが、そういう事故の起こる確率の問題になるだろうと思うのであります。そういう意味で私申し上げたのでございます。
  34. 西脇安

    西脇参考人 先ほどお話しございましたけれども、いろいろこういった問題の解析にあたりましては、条件というものが大切だと思うのです。それで、つまりめったに起こらないような条件と作為的な条件、たとえば船長がみずから追突させたらどうなるか、あるいは沈没させたらどうなるか、そういった作為的な条件というものを導入しましたら、これはどんな安全なものでも危険だという結論は出てくるだろうと思うわけです。  そこで、私先ほど申し上げましたのは、いろいろな報道を見てみますと、一応入港の際は二十四時間前に通報される、しかも入港の目的は休養と補給である、そういった一つ条件が与えられております。何も私がかってに想像したという条件じゃございませんで、そういう与えられた条件において検討したわけでございます。ですから、戦争というような場合を考えますと、これはいろいろな条件が入ってきますので、アメリカ潜水艦もそれは沈むかもしれないし、それからアメリカだけでなくて、敵の潜水艦も入ってくるかもしれない。敵の原子力潜水艦だって黙って入ってくるかもしれない。いろいろな条件を考えますと、これは非常にこんがらかってまいりますので、ちょっとその問題はやっかいなことになってくるので、すぐに私からどうこうということは、ちょっと私の力の範囲を越えているのじゃないかというぐあいに想像するわけであります。  それから、いま浅田教授もおっしゃいましたけれども、もちろん私も一番最初に強調いたしましたように、事故はできるだけ起こすな、慎重にせよということは、これはきわめて大切なことだと思うわけであります。そこで、そういった作為的な条件なしに、では一体平常状態において起こる確率というものはどうだろうかということを考えまして、そうしてそういったいろいろな——あるいは平常の状態においても、たとえば自動車の排気ガスを出すとこれも発ガン性とかなんとかいわれておりますけれども、まだ放射線ほどはっきりわかっておらない。——それで、平常状態において、私も一番初めに申し上げましたのも、そういった与えられた条件のもとにおきまして、一体どの程度危険性の感覚を持ってものごとを判断すればよろしいかという参考資料として御説明申し上げた次第であります。この点御了承願いたい。  それからもう一つ、先ほどからわが国の原子炉の審査委員会が審査してないという話がございますけれども、これは英国に行きましていろいろディスカッションいたしましたときの向こう側の話ですけれども、炉をつくるときの審査というものと、それからでき上がってから運航しておるというものの審査とは、必ずしも同じ機関が妥当であるかどうかということは、これは検討を要する問題じゃないか。たとえば船にしましても自動車にしましても、まず建造するところを監督したり審査する場合は、建造するときは安全にとにかく動くかどうかというので一生懸命になるわけです。これは原子力船が入ってくるとか、あるいは原子力潜水艦が入ってくると、現実にまあまあいままでのところは寄港の際に非常に大きな事故——浅田教授のおっしゃたような小さい事故はあったかもしれませんけれども、周辺が全滅するというような、原爆のような大きな爆発になったこともない。そうしますと、これは入ってくる、そういう運航の場合の安全性を審査するという委員会が別途必要なんじゃないか。ところが、わが国においてはそれがまだない。それから、安全審査についても、軍事機密の点なんかもあって、詳細な設計図面なんかも検討するわけにいかない。たとえ設計図面が入りましても、われわれのほうでつくった経験もなければ、それを相手の船をばらして調べ上げるということもむずかしい話で、疑問を持ち出して疑い出したら限りなく続くわけです。そこで、どこかでもって向こうの言うことを信じないと、なかなかたいへんなことになる。  そこで、外務省の発表なんかを、私も新聞とかそういうもので読んだ程度ですけれども、それをみてみますと、昨年学術会議から政府に対して、なるべく注意してやれという意見が出されておりますけれども、 その初めの方に、アメリカ原子炉安全審査諮問委員会ですか、そういったところも、原子力委員会にこうこうこういうぐあいに注意しなければいけないというようなことを述べているじゃないかということがずっと引用して書いてあるわけなんです。それで、今度の発表を読んでみますと、はっきりとアメリカ原子力委員会、それから日本学術会議がもっと慎重にやれとアメリカでも言っているじゃないかというぐあいに引用しているところのアメリカ原子炉安全審査諮問委員会というもの自体が、乗員の訓練とか、原子炉のみならず、そういった点までも含めまして審査をして、その運航を始めることを許しておるものであるというような条項があったために、学術会議なんかの意見も決して無視してやっておられるわけじゃないのじゃないかという感じもするわけなんです。  ですから、そういった点はよくわかりませんけれども、とにかく私の申しましたのは、一応与えられた条件資料に基づきまして、そして一定の不確定さはあるにいたしましても、その範囲内において一体どの程度の感覚を持って判断していただければよろしいかという意味で、御参考のために御説明したわけでございます。
  35. 原茂

    ○原(茂)委員 西脇さんのお考えも一つの面だと思うのですが、先ほどおっしゃったような平時はいいのですが、有事の際に、それはこんがらがってわれわれには判断できない、こうおっしゃったのですが、これはそういうことがあったらたいへんだという立場で、実は私たちの配慮はされていますし、そういうときの目的のために潜水艦ができているんだということを前提にすることが正しいと思っていますから、平時の場合、有事でない場合の潜水艦の運航というものだけを基準に考えるなんということは、とうていわれわれにはできないし、それではいけないのだという立場で実はわれわれは論議をしてるわけです。  これは立場も違いますし、お考えが大体わかりました。いま申し上げたように、 潜水艦ということである限りは、平時の状態だけを論議するというのは間違いだ。有事の状態というものを前提に考えることが正しいというふうに私は実は考えています。原子力潜水艦−サバンナのごとく原子力船である場合には別ですが−潜水艦である場合には、有事の際における潜水艦、その目的のためにつくられた船だこういうことを実は前提にしますから、すこぶる重大なんです。いま西脇さんのこんがらがってくるという、そのこんがらがってくるのをほどきまして、そこから実はこの問題を論議していく立場をとっているわけです。これが国民に対する私の義務だというふうに考えていますから、こういう点はきょう先生と論議しようとは思っておりません。  なお、浅田さんのお話の、事故はないだろう、こう思っておられるのはずいぶん楽天主義者で、私は驚いたのです。そういう考え方も正しいかもしれませんが、やはり現に船の事故というものがありますし、スレッシャー号沈没もありますし、そのほかにも先ほど説明されましたような幾多の事故があるわけですから、まずまず事故は起きないだろうという前提に立った考え方が、私は科学者としてどうかなあという感じをもう一度率直に申し上げておきます。これも論議をしようとは思っておりません。  それから、アメリカ人が特に人の生命を大切にする。どうも、これもちょっと。いやだいやだという、私たちこれは社会党の立場ですが、うしろにいる千数百万人がいやだ、そんなおっかないものをよこしちゃいけない、こう言っておるにもかかわらず、とにかく彼らの必要に応じて、ことによると起こるかもしれない事故を内臓しているものを日本の港に強引に入れようとするのですから、あまり、人の生命を大小にするのだという善意だけで解釈することもできないという立場をとっているわけです。最後に、最後というのは西脇さんに最後にお伺いしたいのです。いまも安全審査委員会お話がございました。これは浅田さんにその立場があればお答え願ってよろしいのですが、安全審査委員会というものが原子力委員会にはあって、そこでこの安全性というものの審議をしないという事態で寄港に対する承認を与えたということ、それだけを考えたとき、手続上、しかも日本のこの種の問題を論議しようとする先生方の立場からいって、この点はどうお思いになりましょうか。安全審査委員会が現実にあるのですから。しかも平和三原則というものを主体とする原子力委員会が、一番中心的ないわゆる技術者の布陣をしている場所なんです。ここが大事な関所になるわけです。われわれいま国会の立場からいいますと、こういうところを全然通さないままに承認を与えたということ自体、どうしてもこれは資料がないからできないのだ、そういう答弁が先ほどありましたけれども、遺憾だと思いませんか。
  36. 西脇安

    西脇参考人 一番最初に申しましたその条件の問題で、ちょっと私の言ったとおりの意思が伝わっていなかったのじゃないかと思います。その条件と申しますのが、たとえば、平常の場合はそうですけれども、一たん平常でない、つまりノーマルな状態をはずれたというような場合を入れますと、いま申しました原子炉安全審査委員会でも、戦争になって爆撃されたらどうなるか、そういった問題は入ってないのじゃないか。それで、一体戦争といいましても、じゃどういう戦争を想定するのか。これもいろいろな場合があるだろうと思う。そうしましたら、必ずしも原子力サバンナ号などでも相手の対象にならないとは言えないし、一方は潜航できるけれども、一方は逃げるにも逃げられない。陸上なら動くにも動けない。いろいろな立場があると思いますので、この条件によって、はたしてどちらがどうということは、これはむずかしい問題だろうという意味を申し上げたわけでございます。  確かに軍艦でありまして、いろいろな資料がとれないということは、これは当然だと思いますけれども、しかし私が先ほど申しましたのは、たとえば英国あたりでは、原子炉自体の建設というものを調べるというのと、それから運航して入ってくる一たとえばサバンナ号の運航の場合におきましても、やはり一部英国の原子力公社とかいうところからも検討するために出ますけれども、しかし同時にこの原子炉だけじゃなくて、今度はたとえば先ほどから御指摘のありますように、海難事故とかいろいろな問題が入ってきますと、港のポート・マスターとかいっておりますけれども、港湾長に相当する人もやはり関係してもらうとか、そういったただ単に原子炉、従来の陸上にじっとすわっているのをこれからつくり上げ場合とは異なる。とにかく安全に動くか動かないかわからない。それで、動き出したとたんにどかんといっては困るのじゃないか、そういう点だけを審査しておられる委員会では、ちょっとそれだけではもの足らぬのじゃないか、というのが私のいま述べたところなんです。  確かにいまおっしゃったように、何もかもこちらから調べに行ければそれにこしたことはないとは思うわけなんです。しかし、私の申し上げているポイントがちょっと誤解されたのじゃないかと思いますので、そこのところを御了承いただけたら幸いだと思います。
  37. 浅田常三郎

    浅田参考人 いまの御質問、原子力潜航艇に事故はないだろうと安易に考えているのじゃないかというお話がございましたが、決してそうじゃございません。こういう事故があるかないかということに対しまして、いままでアメリカで四十六隻の原子力潜航艇が動いているわけでございます。そして一番長いので七年以上動いております。それらの潜航艇が原子炉固有の事故事故を起こしたことがまだなかったようでございます。そうしてこの間沈みましたストレッシャー号は、原子炉事故でなしに、深いところへどこまでもぐれるかという実験をやっていた際に、 どこにミスがあったか存じません、向こうの発表で見ればパイプから水が入ったということになっておりますが、それが事実であるかどうかは私わかりませんが、それがために沈んで、圧壊深度以上にまで達して、潜水艇が結局つぶされて沈んだように了解しております。しかし、先ほどからの西脇さんのお話にございますように、潜航艇圧壊されましても、中のコンテナがつぶれないようにできている、そういう設計にされているように発表されておるわけでございます。  もう一つは、先ほどから中の燃料が溶けた場合ということが非常に問題になっておりました。燃料が溶けましても、一次冷却水のほうに入るかもしれませんけれども、一次冷却水系と原子力系は全部コンテナの中に入っておりまして、これは普通の状態では圧壊されない状態になっているように存じております。今度沈んだものがどこに沈んだかをさがす場合にさがせなかったというのは、あるいは中の燃料が溶けたか溶けなかったかこれは存じませんが、よし溶けたにしても、プレッシャーベッセルの外には出なかっただろうと思われるということが、どうさがしてもわからなかった一つ原因じゃないかと思います。したがって、そういう事故が起こりましても、いまの場合では放射能を持ったものが外に出ておらない。  しかも、今度は日本に入港する場合を考えてみますと、決して圧壊深度の様な港が日本にあるわけじゃございませんから、いまのような事故は起こらない。これは断言できるわけでございます。そうしてみますと、いままでの、すなわち七年間以上の経験から事故が起らなかったということが、事故が将来起こるか起こらないかということをきめる一つの手がかりになるだろうと思います。七年間起こらなかったからあとは起こらないというのではございませんがあと起こらないだろうというプロバビリティがいま相当の強さをもって考えられる、そういうことを申し上げたわけでごげいます。
  38. 田中武夫

    ○田中(武)委員 原さんの質問を継続中でありますが、愛知大臣が時間の都合があるそうですから大臣だけにしぼって質問いたします。  そもそも最初に、当委員会の性格については先ほど原委員がおっしゃったとおりであります。中曽根委員の発言は間違いである。私も科学技術者じゃありません。ここは科学技術の研究所じゃありません。やはり国会の場であります。したがって政治論、法律論議を展開したいと思います。  まず最初に兼重さんにお伺いします。先ほど中曽根委員の質問に対して、 なぜ安全審議会にかけなかったか、これに対しては、資料がなかったからかけなかった、かけられるような資料がなかった、 そう答えていますね。ところが、かけるような資料がないのになぜ安全性を確認したのですか。その根拠を聞かしてもらいたい。
  39. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 先ほど私のお答えいたしましたことが少し不十分であったと存じますが、かけなかった理由は資料がなかったことだけではございません。いまの御質問は、その資料がないのになぜ安全性を判断したかという、そのほうにお答えいたしたいと思います。  軍艦が国際法上特殊な地位を占めておりますことから、軍の機密に属するような資料を得ることができないということは、最初からわかっておることと思います。したがって、そういう資料をもって受け入れ国が審査をしなければ原子力軍艦を受け入れるべきでないということからいたしますなら、原子力軍艦を受け入れることは問題にならぬと思います。しかし、世界の国の中で、おそらくデンマークは、先ほどどなたか、いまならば受け入れるかもしらぬという外務大臣の話があったとかいうことがございましたけれども、その当時のたてまえとしては、先ほどから服部藤本教授の言われましたような意味もあったことかと私は想像するのでございます。そのたてまえをとる以外には方法はないと思います。しかし、そのほかの十幾つの国は、それとは違った考えをしておりますから、そのどちらのたてまえをとるべきかということはこれは原子力委員会だけがきめることではなかろうと思います。  そこで、 軍艦の特殊な立場をとって、資料がないときにその安全性をなにするという場合になりますと、相手国政府の保証を信頼するとか、そういうふうなことが一番おもなことになります。あと発表資料など、学術会議でもこれまでの公表が科学的にいろいろ検討の方法があるじゃないかというやり方を示されましたけれども、そういうふうなことは裏づけにはなると思いますので同じことをやっておりますけれども、正式には相手国政府の保証を信頼するだけだ、こういうことでございますので、そのたてまえをとったわけでございます。
  40. 田中武夫

    ○田中(武)委員 いまのは答弁になっておりません。科学技術委員会がより科学的であるというよりか、むしろ原子力委員会のほうがより科学的でなくちゃならないと思います。その原子力委員会が政治的判断によって科学の判断を左右せられたというところに問題がある。  そこで、愛知大臣に伺います。原子力委員会の設置の目的及びその所管事項をお伺いします。
  41. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 原子力委員会の権限責任等は、申し上げるまでもございませんんが、原子力委員会設置法で明らかにされているとおりでございます。
  42. 田中武夫

    ○田中(武)委員 この原子力委員会設置法はその前提として原子力基本法があってそこに自主、民主、公開の原則がまず確立せられ、その上に立ってできたものです。したがって、原子力委員会はこの基本法の精神、自主、民主公開の上に立つ、さらにその目的は平和利用のためにという制限を受ける。そうでしょう。  あなた方が八月の二十何日かに安全性を確認したということは、その原子力委員会の権限からは、はずれております。はずれていないというならば、法律根拠を示して、これでやりましたといってください。権限外のことをやっています。
  43. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 原子力基本法に基づいて原子力委員会設置法ができていることはお話のとおりであります。  それから、いわゆる原子力潜水艦問題についての原子力委員会の立場ということについてのお尋ねですけれども、これをお尋ねに対して法律的にお答えをいたさなければならぬと思いますから、その点を申し上げたいと思います。  条文の解釈上からいたしますと、原子力委員会設置法の第二条に所掌事務が書かれてあるわけですが、その第四号に「核燃料物質及び原子炉に関する規制に関すること。」ということが掲げられております。その掲げられておる規制に関する事項というのは、一般法律問題と同じように、いわゆる属地的にわが国の施政力が及ぶ範囲内に適用されるものだ、こう解釈すべきものであると思いますから、その限りにおいては、たとえば外国の原子力商船というようなものは、領海内にある外国の原子力船というようなものは、この属地的の権限からいって第四号の対象になるものと思います。  ところが、先ほど来いろいろお話が出ておりますように、また前々から申し上げておりますように、原子力潜水艦という、軍艦という特殊な地位がこの問題についてはございますので、この軍艦については、これも申し上げるまでもございませんが、 国際法上なり、あるいは国際慣習上、特殊な地位が与えられておりますから、国内法の規制の外に置かれる、こういうふうに解すべきであると思います。その点においては、ただいま田中委員のおっしゃったことと相通ずるところがあると思います。しかし……
  44. 田中武夫

    ○田中(武)委員 四号なら四号と答えたらいいんだよ、要らぬことを言わぬでいい。
  45. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いや、これはなかなか重要な点ですから…。  しかし、具体的な、いわゆる顕在的な事項としては所掌の範囲外にありますけれども、潜在的にやはりここに関連を持ってくるといわざるを得ない。そこで、原子力委員会といたしましては十分慎重に検討いたしまして、なし得る限りの努力をいたしましたということは、前会、前々会にも申し上げているとおりでございます。
  46. 田中武夫

    ○田中(武)委員 だからだめだというのだ。第二条第四号はそういう読み方をするのですか。原子力委員会の設置の目的は何か。平和利用ですよ。したがって、平和利用のための核燃料云々と読むべきですよ。離脱していますよ。そんな法律の解釈がありますか。そういうことでは委員長はつとまりませんよ。軍事利用のために検討するとどこに書いてあるのですか。法律の読み方がわからないのですか、あなたは。これは第二条を読む前には第一条を読むべきだ。瞬時に、いかなる前提に立ってどういう経過のもとに原子力委員会が置かれたかという立法精神を見るべきである。そうでしょう。——そういうことは茶坊主ですよ。  茶坊主解釈ですよ。  と同時に、この前、私は確認しましたが、政府から原子力委員会に対して何らの諮問もなかったのでしょう。その諮問もないものに対してわざわざ、だいじょうぶでございますと、何のために言っているのか。かりにこれを逆に考えて、政府は許そうとしている、だがしかし、こういう面においてまだ技術的に安全性について確認できない不安定なところがある、危険があるというときなら、あなたのおっしゃるように、原子力委員会として、国民を放射能から守るためにちょっとお持ちくださいということは言えると思う。ところが、そうじゃない。逆に、政府が今度の結論を出した一つのよりどころに、原子力委員会安全性を確認したからというのでしょう。一つの隠れみのに使われているのです。それを諮問もないのに何のために言っていったのですか。そういうことを茶坊主というのだ、茶坊主ですよ。第二条四号をそういう解釈をするかしないか、これは一つ法律の専門家を呼んでもらってやりましょう。委員長、どうです。
  47. 前田正男

    前田委員長 答弁を聞いていただいて……。
  48. 田中武夫

    ○田中(武)委員 答弁は間違っているんだよ。
  49. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど申し上げましたように、純粋の法律論としても潜在的に——具体的に顕現的な権限というものはないかもしれませんけれども、潜在的にそういったような仕事を所管すべきものであると、法律論としても解釈できると思います。  それから、この点は最初から申し上げておりますように、同時にいまも御指摘のあるように、こうした問題については原子力委員会というところが、いろいろの意味において、公の機関として、そして専門の方々もおられるところでありますから、これに対して、そもそも原子力潜水艦問題が起こりまして以来、国会を通じて総理その他の答弁や説明にもありますように、原子力委員会意見をも徴していきたいというような考え方もあったわけでございますから、そこで、純粋な、法律的にいっての正式の諮問というようなことはなかったけれども、そういったような雰囲気といいますか、経過からいって、原子力委員会としても十分にできるだけの条件のもとに検討を続けて、 そしてその総合的の見解を出した。したがって、その総合的の見解というのは、これはまたひるがえって法律論を申し上げるようになりますけれども、設置法第二条によるところの決定とは私は法律上は解すべきではなかろうかと思っております。したがって、総合見解として総理大臣に報告をしたのも、これは純粋に法律的にいえば法律第三条によるところの報告ではないということになろうかと思います。
  50. 田中武夫

    ○田中(武)委員 三条による報告でないということはこの前あなたも言ったとおりです。二条の四号ですよ。二条の四号でそういうことができるかと言っているんですよ。潜在的云々などと言いますが、四号を読んでごらんなさい。四号はそんこなとをいっておりますか。原子力委員会の設置の目的は何です。原子力基本法精神は何です。自主、民主、公開、この上に立って当然やるべきですよ。原子力委員会は、あくまでも日本においては原子力平和利用以外には使うことはできないわけです。はっきりしているんですよ。原子力潜水艦の来ることはその平和利用と言えるんですか。そういうことを言う原子力委員会が、諮問もないのにだいじょうぶでございますなんと言っていったことが間違いだというんです。法律を越えたことをやっておる、権限を越えたことをやっておる。しかも政治的にあなたのやった行為は茶坊主的行為である、こう言っているのです。否定するなら、してごらん。
  51. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 外国の軍事利用という点についての御指摘がございましたが、たとえば第二条の第九号で「放射性降下物による障害の防止に関する対策の基本に関すること。」というのは、発生の原因は必ずしも平和利用というふうには読めないのではなかろうか、こういう点もございまするので、前々から私言っておりますが、法律論はともかくといたしまして、原子力委員会というところに対する国民的な期待と申しますか、そういうような点からなし得る限りの努力をいたしたということになるわけでございます。
  52. 田中武夫

    ○田中(武)委員 今度は九号できましたか。この九号の意味は何です。あなたが言っているのと違いますよ。これはその原因が何かということについては疑問がありましょう。しかし、日本の場合はあくまでも平和利用、しかもこの九号の規定は、そういう放射能から国民を守るための対策を協議するんでしょう。原子力委員会でどういう対策を協議しました。原子力潜水艦が来ることに対してどういう対策を協議しました。それはあとで何とか、はかるとかなんとかいうことだけでしょう。それが九号でできるというのですか。言い切れますか。  いつまでやっておっても、時間もなさそうだからきょうはやめます。  そこで、法律の、ことに行政法、行政組織法の権威者を呼んでいただきます。その前で討論いたしましょう。もしあなたが負けたら大臣やめますね。いいですか。
  53. 岡良一

    ○岡委員 関連して。  いま愛知原子力委員長は、この原子力基本法第二条の日本における原子力の研究、開発は平和の目的に限るという条章の解釈について、何かふに落ちないような御発言があったようであります。私どもは、日本における原子力の研究、開発はあくまでも平和の目的のためだ。御存じのとおり、この法律は当時の与野党全員、われわれも熱心にこの作業に参加いたしまして、当時の科学者の諸君の意向も十分組み入れて、全会一致で国会を通過した法律です。そのとき、はっきりこのことは概念規定がされておるわけであります。その点についてふに落ちない御発言があったということは、もう一度私は承っておきます。
  54. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまの御発言に対しては私は何の異議も持っておりません。全く御同感でございます。
  55. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣に質問を二十六日にしようと思ったんですが、ちょっと一問だけ。  来年サバンナ号がおそらく日本にも来るのではないかと思うのです。これが日本に入るときには、いろいろな手続上の問題等もいま疑義がありますが、どういう手続でサバンナ号の入港に対する調査なり許可を与えるのか。そういう基準等を新たにつくるのか。それをちょっと聞いておきます。
  56. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この点は御案内のとおり、国際的に、大体来年の五月と予定されているわけですが、海上人命安全条約が来年の五月に発効するということになりますれば、これに参加しておるわが国としては、当然この条約によっての措置をいたすことになると思います。
  57. 原茂

    ○原(茂)委員 もう一問だけ。そのときの措置の中に、いまは原潜は軍艦だからできませんが、サバンナ号はやはり調査をきちっとやりますか。
  58. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは御案内と思いますが、この条約によって安全説明書を提出してもらって、それによって審査をするということになっております。
  59. 原茂

    ○原(茂)委員 要するに船の調査はやりますね、現実に。  それから、原子力委員会の安全審査委員会でこの審査をするわけでしょうね。
  60. 村田浩

    ○村田説明員 その点につきましては、現在の原子炉安全専門審査会は、設置法上でその事項はきまっております。その点と比べまして、必ずしも原子力商船そのままかけられるということでもございませんので、この措置につきまして目下検討を進めております。いずれにしましても、審査をいたすことになります。
  61. 原茂

    ○原(茂)委員 その件についてはまた二十六日にあらためて質問します。  先ほどの続きですが、服部さんにお伺いしたいのです。  先ほど西脇さんから、廃棄物の海水に与える濃度を非常に詳細な数字によって説明があったわけです。あの比較の中に特に冷却水等の問題で、サバンナ号と今回のノーテラス号というような比較が三つ、 四つ出てまいりました。やはり全体をあのサバンナとノーチラスの比較に局限されたような印象を受けたわけです。服部さんの立場で、数字で恐縮ですが、日本の安全基準に照らしてあれと同じような比較をした説明をできるだけ簡単にお伺いをしたいと思います。
  62. 服部学

    服部参考人 先ほどもちょっと申し上げたのですけれども、サバンナ号の場合につきましては、たとえば放射性廃棄物の廃棄の基準というものの資料が出ております。これは原子力潜水艦の場合、アメリカの海軍省の訓令というものと比べますと、 著しくシビアな、きびしいものになっております。これならば、おそらくは日本で安全審査をした場合にも通るのではないか。これは安全審査会でおきめになること、しかるべき組織で審査されることだと思いますけれども、私の判断した範囲では非常にきびしい措置をとっているのではないかという気がいたします。もちろん、先ほど申し上げましたような、入港前の出力を落としておけといったようないろいろなことがあるかもしれませんけれども、放射性廃棄物基準の問題につきます限り、先ほどちょっと申し上げましたけれども、たとえば湾内ですと、十のマイナス七乗という非常にきびしい数字をとって、それ以下でなければ絶対捨てちゃいけないということをまずいっております。その点、この程度ですと、多分日本の安全基準にも通るんじゃないかと思います。  それから、日本の安全基準というものにつきまして、先ほど西脇先生のいろいろ御説明になりましたことは、西脇先生は昔のノーテラス号とスケート号の記録を引用されましたが、これは発表されましたのは、一九五九年のスキップジャック号の中で開かれました米国上下両院合同原子力委員会聴聞会記録の中に付属文書として出ているもので、これは昨年私たち議論をした問題でございます。その訓令の中で、これは西脇先生もたしかさっきお間違えがあったと思うのですけれども、アメリカ基準は、今度は六十九号になったといっておりますけれども、決して六十九号になったとはいっておりません。六十九号を反映したものになっているということしか書いてございません。その点が一つ。それから、海軍省の訓令でやはり基準の百倍まではいいんだということは、これは全然書いておりません。その点が日本基準と海軍省の訓令との大きな違いでございます。  この点につきましては、今回の政府発表で、日本基準と全く一致するというふうに言っておられるのはどうかと思うわけでございます。特に原子力潜水艦の場合のように周辺監視区域というものをつくり得ない場合には、当然これは法律の条文解釈からいっても出口で規制しなければならない。出口で十分の一という規制が行なわれるのが当然かと存じます。そうしますと、基準の百倍までは捨ててもいいという海軍省の訓令日本の場合とは著しく違う。また、これは一次冷却水だけのことでございますが、イオン交換樹脂の問題につきましては、明らかに日本基準とは合致いたしておりません。そういうような問題があるわけでございます。  それから、多少御質問の趣旨から、はずれるかと思いますが、中曽根さんがおられなくなったので残念なんですが、先ほど、この委員会は科学論議をするところだということを中曽根さんがおっしゃいました。その場合に、科学とは何かということを私は問題にしたいと思います。科学というのは、決して一ミリキュリーは一キュリーの千分の一だ、一マイクロキュリーは百万分の一だという数字をいじくり回すことだけでなくて、数字の持つ意味が何であるかということの判断を下すこと、これが科学であろうと私たちは考えるわけでございます。したがって、安全性の問題というものも、単に中曽根さんの言われましたようにエンジニアリングの問題というふうに判断されることは非常に間違いである。安全性の問題というものは、すべての問題を総合的に判断するということで初めて安全性ということが言えるわけです。先ほど中曽根さんは、いままでのデータだけで安全と断定するのも非科学的だ、しかし危険と断定するのも非科学的だ、 こういうご発言をなさいました。その、安全と断定するのは非科学的だという点については私も異論ございません。それでは、安全性とか危険性とは何かということになるわけでありますが、危険だということが証明されたらもうおしまいなんでございます。私たちは、安全性が立証されないということ、そのこと自体危険性と申しているわけでございます。これは原子力に限らず、すべての場合に安全性というものの考え方に対する根本的なフィロソフィーであろう、このように考えるわけでございます。危険だということが立証されないからだいじょうぶだ、こういうことは安全性議論では根本的に間違っている議論ではないかというふうに考えるわけでございます。  それからもう一つ、私たち原子科学者というものは、好むと好まざるとにかかわらず、核戦争の問題についての専門家という立場に追い込まれているわけでございます。私たちが核戦争の問題について発言いたしますのは、決していわゆる政治論議をしているのではなくて、科学の専門家としての立場から常に発言をしているのであるということを申し添えておきたいと思います。
  63. 原茂

    ○原(茂)委員 もう一つだけお伺いします。  先ほど原子力潜水艦と普通の原子力船との安全性の比較というお答えがございました。あれをお聞きしてみますと、原子力潜水艦が特に危険を包蔵しているものではない、設計上からいっても、あるいはその要求される性能からいっても、普通の原子力船と比較して特にこういう点で脆弱性があるとか、あるいは危険性があるというようなものではないというような印象を受けたのです。この点、服部さんのお考えで、くだいて比較をされて、原子力潜水艦と普通の原子力船、普通の船というようなものの比較において、特に潜水艦という軍艦、戦闘力というものを要求される立場で設計上の無理が相当あるのではないかとしろうと判断するわけですが、これとたとえばサバンナ号でもけっこうですが、こういう原子力船との比較において、安全度というものはそうたいして違わないというふうに御判断になりますかどうか。
  64. 服部学

    服部参考人 まず基本的な考え方というところから申し上げたいと思います。それは、昨年も申し上げたことだと思いますけれども、先ほど申しましたアメリカ聴聞会記録、これを読みますと、アメリカの議員さんが放射性廃棄物の投棄の問題について質問をいたしております。その中にこういうことがございます。サバンナ号のように一次冷却水を吹き出したやつを一ぺん別のタンクにためておく、そういうことをどうしてやらないのか、こういう質問が出ております。サバンナ号の場合には、あふれ出たものはすぐ流すというようなことはやっておりませんで、一ぺんタンクにためるわけです。原子力潜水艦の場合にはそのタンクがないわけです。なぜそういうことをやらないのかといいましたら、これに対して海軍側の答弁というのは、原子力潜水艦の艦内というのは非常に狭い、であるから、そういう余分のタンクをつけることによってスペースに無理が生じてくる、それは軍艦としての性能をそこなうことになる、であるからそういったきびしい制限というのは海軍としては受け入れられない。こういう説明が行なわれております。これはアメリカの海軍省の考え方というものがいかに軍事目的軍艦としての性能というものを第一に考えて、安全性の問題を二の次にしているかということの何よりの表現ではないかと思うわけでございます。  それから、よく引き合いに出されることでございますが、先ほど浅田先生のお答えは多少誤解があると思うのでございますが、原子力潜水艦にはいわゆるコンテナというものはついておりません。原子炉の圧力容器、これは確かにございます。その外側にもう一重コンテナというのをつけるのが、これがアメリカ原子力委員会動力炉に対する基本的な考え方で、最近では出力の大きい原子炉の場合には二重にも三重にもつけろという考え方まで出てきているわけであります。原子力潜水艦の場合には、まずそのコンテナだってないじゃないか、こういう議論がすでにアメリカの中で行なわれているわけでございます。いわゆるコンテナというものと原子炉の圧力容器というのは、これは日本語に訳すと同じことになってしまいますけれども、いわゆるコンテナといわれているのは原子炉の容器のもう一重外側のやつでございます。これは原子力潜水艦の場合にはついておりません。西脇先生は、自体が全体がコンテナだ、非常にじょうぶなんだということを、前に佐世保の市議会あるいは長崎の県議会等でおっしゃったこともございますけれども、そうしますと、アメリカの水兵さんは常時コンテナの中に閉じ込められておるということにもなりかねないわけでございまして、潜水艦の艦体をコンテナであるというふうに解釈するのはどうかと思うわけでございます。
  65. 浅田常三郎

    浅田参考人 いまのお話でございますが、ここにこれはソ連から発表したアメリカ原子力潜水艦の図面がございます。これはソ連の発表でございますので、どこまで確かであるかは存じません。この中にコンテナに相当するやつはコンパートメントという名前で出ておりますが、船殻以外にやはり原子炉を包んでいる相当厚い壁の中に入れているようでございますので、コンテナと訳そうとあるいはコンパートメントと訳そうと、その中に出た放射能は、放射能物質を閉じ込めておくような一つの装置があるようでございます。
  66. 西脇安

    西脇参考人 先ほど、NBSの六十九号によっておるというんじゃなくて、反映しておるんだというお話服部さんからございましたけれども、私の図面で引用しましたところでは、NBS六十九号によっているとするとこうなるんだということを書いたわけであります。  それから、一九五九年のスキャップジャック号の古い資料という話もございましたけれども、一番最後にお見せしましたように、実際に投棄しておるデータというのが、一九六一年から六二年の現実に投棄したとしてアメリカの公衆衛生局に報告されております一番新しいデータに基づいております。
  67. 前田正男

    前田委員長 関連して、佐々木義武君。
  68. 佐々木義武

    ○佐々木(義)委員 中曽根さんおらぬものですから、 ちょっと気になるのですけれども、さっき服部さんが言われた点で、中曽根さんが言ったのはそういう意味ではなくて、きょうの問題は、主として原子力潜水艦が安全なりやいなやという問題なので、そこで、原子力理論、あるいは原子力科学という問題よりも、原子力工学というほうが一番重要な問題なのではなかろうかという点を指摘したのだと思います。決して工学の問題だけで科学を論じて、工学がどうだというような発言じゃなかったように考えているのです。大事な話でありますから……。
  69. 服部学

    服部参考人 先ほど中曽根さんのお話では、安全性の問題はエンジニアリングの問題である、こういうふうにおっしゃいました。その安全性の問題というのは私は単なるエンジニアリングの問題ではない、全般的に判断を下さなければならない問題である。しかも私はその場合に、科学的ということばの意味というものは、単にこまかい数字を並べるということが科学ではないということを申し上げたわけでございます。
  70. 前田正男

    前田委員長 次に山内広君。
  71. 山内広

    ○山内委員 先ほど佐々木委員の御質問があったことに関連しまして、少しお伺いしておきたいと思います。  スレッシャー号の沈没でありますが、それは服部先生は浮いておるおそれもある、こういう御発言があって、三千メートルの下におって、そうして亀裂でも生ずれば原子炉自体から放射能が出てくる。私も、三千メートルの圧力というものはたいへんなものですから、船自体もわからぬし、船もいびつになったろうし、原子炉自体もいびつになっている。そしてある程度そこから出てくるという心配もないわけではない。それをいかにも、ああいう事故があっても放射能というのは出てこないのだというような御説明というのは、やはり私はしろうとを誤らせる。私特にしろうとですから、特に海上はいかに潮流が長くとも、もう何千メートルの下というものはほとんど動いていない。しかし最近の海洋学の説明では、そうではなく、海の何千メートルの下でも、だんだんと潮流が動いて、そうして放射能というものも、ある局部に落とされたものも、それが希釈されていくというような木も読んでおるわけであります。  そういう意味で、いまリッコーバー中将ですか、西脇先生に説明されたときに、そこで所在がわからなかったと言われたが、それで出てないという保証にはならない。これはあるいは何カ月後、何年後にそれが出てくるかもわからない。こういう重いものでもない、浮かぶ軽いものでもない、私、どの程度の重力や浮力があるかわかりませんけれども、そういう意味でいまのスレッシャーの放射能は、しろうと考えとすれば、何年後を予想してだんだんわれわれが認識するというようなことになるんじゃないか。  特に私奇異に感ずるのは、あの事件が起きたときに、いろいろどこにいるということを観測された。苦労の末に、いまの遮蔽幕か何かわかりませんけれども、やけついた放射能の——いま、だいぶ問題になりましたが、どこの部分かわからぬけれども遮蔽した布の一部が出たとか、盛んにあれは新聞で写真入りで報道された。ところが、いまになれば、何も放射能は出ていないという、ちょっとすりかえのお話があるのですが、一体この海流というもの、特に深いところの、そういう何百メートル、何千メートル、こういう深いところの海流はどうなっておるのか。これは海洋学の領域かと思いますので、御答弁が得られなければやむを得ませんけれども、学術会議などでお話が出ると思うのですが、捨てられた放射能が希釈になっていく、この条件というものはどういうふうにして起こるのか、どの程度に起こるのか。よく先生方の中に、直後にそこを通った魚が非常に濃縮される心配もあるという発表もあるわけですから、その点、もっと学的に御説明をいただければと思います。
  72. 服部学

    服部参考人 初めのスレッシャーの問題でございますが、先ほど申しましたように、たまたま三千メートルというような非常に深いところに沈んでくれた。実は放射性廃棄物海洋投棄——たとえば日本でも、どうしても海へ捨てないといけないというときにはどういうところに捨てるかという場合に、これはたしか日本法律では二千メートルだったかと思います。そういう深いところへ密閉して捨てろということが言われているわけです。ある意味では放射性物質の捨て場のようなところにたまたま沈没してくれたということでございます。  それじゃ何千メートルという海底の水が動かないかどうかということにつきましては、最近になっていろいろやはり新しい問題が出てきております。たとえば国際原子力機関の放射性物質海洋投棄に関するパネルが開かれております。初め科学者パネルが開かれ、後に法律学者のパネルが開かれたわけでございます。ここでソビエトの学者などは、現在のわれわれの放射性物質の人体あるいは生物に対する影響に対する知識というものが不満足な状態では一切の海洋投棄をやめるべきだ、こういう提案が出されて、結局これが国際条約の案としてまとまらなかったという経緯もあるわけでございます。  私も、もちろん海洋学者ではございませんから、深海の海の状況がどうなっているかということはわかりませんけれども、現在ではとにかく一応これが日本法律などでも放射性廃棄物の捨て場と考えられているところにたまたま沈んでくれた。これはもう潜水艦自体の発見も困難だし、またそこから放射性物質が出ているとしてもその検出は非常に困難である、これは当然予想されることでございます。  それからもう一つ放射性物質を海にまいたときに、それがどのように薄まるかという問題。これはたとえば教育大学の三宅泰雄先生というのは海洋の放射能汚染についての世界的な権威の方でございますが、昨年日本学術会議で海洋の放射能汚染についてシンポジウムが開かれましたときに、海洋あるいは海水というものをそう単純に考えてはならない。詳しいことはいまちょっとことばを覚えておりませんけれども、いろいろな複雑な条件があるのだ、そう簡単に一様に希釈というものが起こると考えてはならないということを指摘されました。その後も海洋学者あるいは水産学者の声明その他の中でも、そのことは特に強調されている点でございます。  それからもう一つは、先ほど西脇先生のお話の中に、フォールアウトがどのくらいでイオン交換樹脂がどのくらいでという数字がありましたけれども、フォールアウトというのは世界じゅうに一様に降ってきているものでありますが、イオン交換樹脂というものの投棄は、数十キュリーというものが一カ所に投棄される、これが大きな違いであります。  私たちはもちろん、アメリカ原子力潜水艦イオン交換樹脂を投棄したから、それで太平洋の魚が全部放射能で汚染している、そういうことは戻して申しておりません。しかし、たまたま局部的に非常に強い放射能を持った地域ができる、そしてまた少数ではあっても非常に強い放射能を持った魚、水産物というものがあらわれてくる可能性がある。それが普通の方法ではわからない間に私たちの食ぜんにのぼってしまう可能性があるのだ、そういう点を申し上げているわけでございます。すべての魚が一様に汚染するというようなことではなくて、たまたま非常に汚染の強い魚というものが出てくる。東大の水産学科の檜山先生のことばをかりますと、檜山先生が昨年の三月のこの委員会で御説明になったことでございますけれども、一匹食べると一ころという魚が出てくるという可能性が十分あり得る、それを水産学者の立場から指摘したいということをこの委員会でおっしゃったわけでございます。私たちも、特に日本人のように動物性たん白の補給源のかなりの部分というものを水産物に依存している私たちの場合に、特にこの問題というのは慎重に考えなければならない問題ではないかというふうに考える次第でございます。
  73. 山内広

    ○山内委員 詳細な御答弁をいただきましたが、実はこの原子力潜水艦の寄港問題が起きまして、政府はあわてて今度バックグラウンドの測定をやるということで、約一億の予算を考え、一カ月で済ませて、十一月には節一船を迎えるというところまで話がいっているらしいのであります。そういう答弁が内閣委員会の速記録に出ております。  そこでお伺いしたいのですが、いまの先生のお話の中にも、なかなかむずかしいものがある、春、夏、秋、冬、あるいは天候、潮流、海流、いろいろな条件が変わって、港の中の測定というものはそう一カ月でできるわけはないと、これはまあしろうとで考えるわけですが、一体どういう方法でやって、一カ月くらいで、入ってきて出ていったあとの比較対照ができるような精密な調査ができるのかどうか、その点のことをお伺いしたい。
  74. 服部学

    服部参考人 ただいまバックグラウンドの放射能測定についての御質問でございます。バックグラウンドの放射能測定と申しますのは、非常に微量の放射能をしかも非常に精密にはからなければならないという問題でございますので、私たち放射能測定の技術の中でも実は最も困難なものの一つとされているわけでございます。当然周到な計画と十分な準備、そしてまた高度の経験を積んだ技術というものがなければ、形だけの測定をやっても何も意味のある結果というものは得られないわけでございます。特にこの際指摘しておきたいと思いますことは、一回や二回の測定ということでは何の意味もないということでございます。いまおっしゃいましたような季節的な変化というようなものもございます。  たとえば潮流がどう変わっているか、プランクトンの発生状況がどうであるか、気象条件がどうであるかというようなことは、当然季節的な変化を伴うわけでございます。これまでも、陸上に原子炉を設置するという場合に、まわりの環境の事前調査ということは当然重要なものになってくるわけでありますが、最低一年間はそういうものを続けてやらなければ意味がないのではないか、これが私たちの常識になっているわけでございます。  たとえば佐世保の港について申しますと、潮流の調査というようなものについてさえ、いままで何も行なわれたことがないというふうに私聞いております。そういうふうなところで一回や二回形だけの測定をやって、それでそのバックグラウンドの測定が終わったということは、私は科学者の立場からしてどうしても納得ができないことでございます。もちろん私は寄港を前提としたバックグラウンド調査ということは賛成できないわけでございますが、 たとえその寄港を認めるにしても、最低一年間はその調査というものを精密にやってからにしていただきたい、こういうふうに考える次第でございます。
  75. 山内広

    ○山内委員 よくわかりました。  いま軍艦が問題になっておるわけですけれども、来年の五月ごろにはサバンナ号が入る、あるいはまた数年後には日本自体原子力船を持つ。そういうことで、 原子力の発達というものは、五年、十年後を考えれば相当たくさんの船が出入りすることになると思うのです。そこで、先ほど西脇先生は、 港の問題も若干あげられた中にも、濃淡いろいろ差があるわけですけれども、将来こういうふうにたくさん海洋を船が歩くことになりますと、やはりしろうととして、その半減期の短いものもあり、長いものもあるでしょうけれども、とにかく海洋が汚染されて、決していいことではない、そう思うわけです。ですから、科学者の立場からすれば、そういう害が将来も完全にないように研究を目途にしてそれは困難なことだと思いますけれども、たとえばさっき服部先生の言われたように、完全にイオン交換樹脂ならイオン交換樹脂に全部吸収してしまう。そして、それは小さなものですから、ある一定の個所に埋没でもしておけば、これはそういう問題が出ない。また、その点はまだ研究の余地もあるし、私そこまでできないとは思われないわけです。そういうことで努力していただきたいと思うのです。  そこで、私のお聞きしたいことは、これはたしか浅田先生だったと思いますが、確かにこういう危険なもので、まだ開発の過程といってもいいと思うのですが、研究の過程ですから、プラスとマイナスがある。マイナスが若干あってもプラスが多ければいいじゃないかという御説明なんです。そういうことも一つの理屈としてお聞きしますけれども、今度原子力潜水艦が入るについて一体どういうプラスがあるのか。先ほど、サバンナ号であれば安全説明書も出ますし、あるいは船内に入って行っていろいろなものが見れますから、いろいろ日本におる技術の方々の参考にするものもあるし、 これは私、発展の上にある程度の寄与をする点があると思いますけれども、これは軍機だと称して、そしてそういうものの——たとえばサブロックを搭載しているかどうか、そういう調査も一切まかりならぬ。そういう意味で船に乗り組むことは拒絶する。歓迎の意味の儀礼的なものならば喜んでお受けしますと、ちゃんと公文書の中にも書いてあるわけです。そういうことになりますと、あとはもう政治論議で、私どものほうが寄港を認めるか認めないかということは、安保を中心として議論される。学者の立場として一体潜水艦は何のプラスをもたらすか。お話を聞けば、危険な、若干事故が——海難事故はもうないとはいえない。それは私、船に乗っての体験もあります。特に東京湾は一カ年に六百件くらいの海難事故を生じて、これは世界的なおそろしい海難事故が多い港なんですから、こういうところに好んで入られるとなれば、やはりこの点も考えなければいけない。そういう意味で、これはお二人ずつ御意見が分かれておるようでありますけれども、一体原子力潜水艦は学界としてはどういうプラスをもたらすのか。さっき、しいて言えばバックグラウンドの調査はできないけれども、一カ月やったそれだけぐらいのことは、あるいは一億の予算がつきますし、あるのかもしれませんけれども、そういう意味考え方をお聞きしたいと思います。
  76. 西脇安

    西脇参考人 いまの御質問、浅川教授に向けられておる点もあるかと思いますけれども、先ほどの服部さんの御説明になったところで、これだけ船体がばらばらになっておるのだとおそらく原子炉もこわれているのじゃないか。これも非常にもっともな御想像だと思うのですけれども、しかし、われわれとしては、何ぶん、何らか証拠がないというと確認ができない。それで、唯一の入ります資料というのは、やはりアメリカ側で調査いたしまして、そして発表しておるものを読んでみますと、炉心は爆弾のように爆発することが物理的にできないように設計されている。原子炉燃料体は海中において耐浸食性のきわめて高い物質でつくられており、これにより燃料体の中に含まれておる放射能物質が流出することはない。また、原子炉における多くの防護装置と事故制御装置は燃料体の溶解を自動的に防止するようになっておる。これはリッコーバーの報告なんです。それからもう一つ入っておりますのは、船はばらばらになったかもしれませんけれども、原子炉がばらばらになったという証拠はない。また、放射能も何ら検出されていない。こういう報告を出されているのです。それはうそだろうということになると話はまた別ですけれども、こういうように公式に出されているものは一応与えられた条件として考えるということで、おそらく浅田先生もそうだと思います。ですから、そこの点は限られた資料に基づいてということを御了承いただきたい。  それから、イオン交換樹脂の投棄について、先ほど服部さんからも、スレッシャーが幸いたいへん深いところに沈んでくれた、これは廃棄物のため場のようなところに沈んでくれたというようなお話でございましたが、アメリカの公衆衛生局の発表されております資料によりますと、 六一年、六二年に、これは千二百フィートより深い海水中に放棄したという工合に一応書かれております。これは英語の原文で読みますと、ディスチャージド・アット・シー・イン・ウォーター・モアザン・トエルブハンドレッドフィート・ディープ、千二百フィートより深いところにそれが二十キュリー程度ということに一応なっております。  それからもう一つ。佐世保に入ってきた場合に攪拌が起こらないこともあるではないかというようなこともございまして、データもないじゃないかというようなことだったわけですけれども、完全にわかっておらないというわけではないのです。私もその点に関しまして、全然まざらないのだという結論はできないという感じがするのです。一応佐世保について私のほうで調査しましたもので簡単に御説明さしていただきます。  これをちょっとはりつけていただきます。   〔西脇参考人、図を示す〕  私も、佐世保が問題になっているものですから、ほんとうに心配があるかどうかということを調べるために、一応佐世保に関するいろいろな資料を当たってみたわけであります。そうしますと、ちょっとわかりにくいかもしれませんけれども、これが港になっておりまして、そうして、この裏に大村湾という大きなのがあって、これがずうっと流れ込んできて、そうして干満のときには佐世保の港を通ってしか動かない、というより動けない。つまり、何といいますか、大きなプールがあって、ピストンの中に中間地点というような形をとっております。問題は、軍港になっているのがこちらで、これが第一港区、第二港区、それから第三港区。正式に漁獲権があるのは第三港区が中心になっている。第一港区、第二港区についてはオフィシャルというよりも、むしろ米軍の許可を得て、一部漁獲権というような形でなくてとっているのかもしれませんけれども、オフィシャルに登録されたのは第三港区である。第一、第二、第三と分けまして、一応この中の海水量、平均深度というのが大体出ますから、それでもって平均深度に面積をかけますと海水の量が出てくるわけですけれども、港区の海水量は大体六億五千万トンあるということになります。  それから、雨が降り込んでおりますけれども、降雨量というのは東京よりも少し多いじゃないか。三十七年は二千五百ミリ、 三十八年は二千三百ミリ、何年かの平均をとりますと二千百一ミリということになります。この雨の量が一体どのくらい入っているか。川が流れ込んでいるのですが、流量を十五の川について調査しますと、直接、港湾に降り込んでいるものを含めて全部の総計をとりますと、大体年間十二億五千万トンの水が川から入ってくる。これだけの水がとにかく外へ流れ出ないとだんだんあふれてしまって、佐世保が水びたしになるのです。一昨年の二千五百ミリを仮定しまして、大体その割合でふえると約十五億トン。これは一応次に申しますように、これだけの水がとにかく港から出ていかないとだんだん水位が高くなってくる。これは直接降り込んでいるものと十五の川、そのおもな川だけであります。その他海岸からも雨なんかのときは流れ込んでいると思いますけれども、川だけでここに書いてありますように、大体五億二千万トンの水が年間流れ込んでおる。これが佐世保湾を通らないと外へ出ていかないということになります。大体佐世保の水の総量というのが六億五千万トン程度と推定されますので、大体それの二倍に匹敵するくらいの量が年間雨や川から流れ込んでいる。大ざっぱに言いまして、大体一カ月当たり一億トンぐらいの雨の水でとにかく洗っておるということになる。  それから、もう一つの問題は、高潮のときと低潮のときと潮位の差によってどれぐらい水が動くか。これも出口における水流というのか、ここにございますように海面から三メートル、十メートル、二十メートル、四十メートルーこれは新しい資料がなかったのでございますけれども、昔の海軍の軍港だったものですから、昔秘密であった資料というものが一部公開されておるということで、それでもって調べてみますと、最初のうちは底のほうが動かないのだと思っておりましたら、底のほうがむしろ早いくらいだ。ここでM2というのは小潮のときの十二時間周期をとったのでございますけれども、大潮のときには大体小潮の三倍ぐらいの速度で動いておる。最低の予想を立てましても、一回の潮の満ち引きで六時間ごとに二億六千四百万トンの水が出たり入ったりする。満ちるときには入ってくる。出る、入るということを一日に四回繰り返す。出入を一周期としますと、二周期になるわけであります。こういう状況から見ますと、これは平均量でありますけれども、潮位の差が高いときには約倍近く、低いときでも半分程度というのが六時間ごとにここに出入りするわけです。こういう状況から考えますと、雨が降り込んでいるぐらいだけは少なくとも持ち出されなければならぬ。それから潮流で攪拌するという条件が入ってきますので、全然攪拌しないということは考えられないのではないか。そうすると、はたしてどの程度攪拌するかということが問題になるでありましょう。  それからもう一つは、海洋というのは、御専門の方に聞きましても、非常に複雑なものである。ですから、どういう条件があるにいたしましても、現在政府で考えられておるようなモニターをやるということはきわめて重要なことではないか考えますけれども、全然攪拌しないということは考えられないのではないかと思います。
  77. 浅田常三郎

    浅田参考人 いま御質問がございやして、プラスマイナスのことで何か政治的なお話をしたからいけないというお話がございました。私のいただきましたこれには、原子力潜水艦安全性に関する問題について何か感じることをしゃべれということでございまして、科学的なことをしゃべれとは一言も出ておりません。  それから、私、学校に長らくお世話になっておりましたが、戦後学校が疲弊した状態から現在のようによくなりましたのは、これは皆さんから非常にたくさん予算をいただき、よくしていただいたことで非常に感謝いたしております。これが戦後の状態のままで置かれたならば、非常に困ったわけでございます。そうすると、こうして学校に予算を回していただく一これは私の科学者としての立場なんですが、私個人の生活としては戦争中のみじめな状態から、非常に戦前に比べても楽な生活をいたしております。これも国の力がそれだけふえたということだと思います。これは戦前は一生懸命に軍艦をこしらえておって、そのほうに金をつぎ込まれたから困ったのでございます。今度は軍艦をこしらえなくてもよいようになった。したがって、私たちの生活も楽になったので、私はこれに対して非常に喜んでおります。  これといまの原子力潜水艦の問題との間に何か関係があるだろうということですが、 これは皆さんよく御承知で、それを私に言わそうとしても私は申し上げかねます。しかし、これは皆さんが御承知のことであります。そうすると、いまの原子力潜水艦と科学技術に対しても何か関連がある、表に出ないのですが、あると了解していいと思います。これが私の申し上げたプラスマイナスでございます。そのほかに、このごろ原子力発電方々でやろうという問題がございます。これをどこかでやりますというと、必ず現地で反対がございます。この反対の場合には、 初めはおとなしい反対が、次第に殺気立ってまいりまして、私この前行ったおりは、村の中で乱闘がございました。これは皆さんよく新聞で御承知だろうと思います。そういう問題があったのは、これはほんとうに原子炉がこわいからという乱闘じゃなかったようでございます。また、大阪大学で原子炉をこしらえようという場合に、至るところで反対がございました。この場合、私はよく話しに参りましたおりに、あなたが来てくれたら困ります、今度来たら竹やりでけがをさせてやります、そうするとそのことでいかに反対しているかよくわかるようになりますから、そうやりますのでいらっしゃいますな、こういうような発言がございました。こういうふうになってくることは、国民の人々が原子炉に対して非常な恐怖を持っておるということは事実であります。その恐怖が度を越した恐怖ではなかろうかと思います。人の言うことを聞かずやってきたら竹やりで突いてやるから来るな、こういうことになったら困るものですから、きょうの主宰されておるところが科学技術振興対策特別委員会でおやりでございますので、日本の科学技術振興に対しては、平和的目的の原子力の進展、発展、開発ということが一つの問題になると思いますので、この点に関しまして何をしゃべってもいいからひとつ言ってくれということでございましたので、申し上げた。これはお願いでありまして、できるだけ慎重に原子炉を扱うべきものであるが、無用にこわがらせないような政策をとっていただきたいことを特にお願するわけでございます。
  78. 服部学

    服部参考人 佐世保潮流の調査自体一度も行なわれていない。私も佐世保に行ってそのことを確かめてまいりました。そうしたら西脇先生、佐世保の湾の水が何度ということを申し上げておりましたが、私の申し上げておることは全然的はずれでありまして、私の申し上げておるのは潮流調査自体が一度も行われていない、そういうところで潮流調査、事前調査をやるというならば、ちゃんとしたことをやってからでなければ困るということを申し上げたわけであります。  それからもうう一つ、スレッシャーのことについては、西脇先生いろいろ引用なさいましたが、スレッシャー号の調査委員会報告書というものの中にこういうたことが書いてございます。調査委員会は、起ったと考えられる事件の合理的説明づけを提示しただけである、現在まで入手した情報をもってしては、現実に何が発生したかをより正確に決定することは不可能である、こういうことを言っております。  ここで私申しあげたいことは、先ほどもお話がありましたけれども、スレッシャー号の事故原因原子炉そのものにあるという考え方も現実にアメリカの中で行なわれておる。このことは、ことしのジュネーブ原子力平和利用会議のときに、会場外でアメリカのレオ・グッドマンという方が、スレッシャ一号の事故原因原子炉そのものよるものであることは当事者はほとんど知っておるが、公表されずおるものだった、こういうような報道も出ておるわけであります。この点につきましては、立教大学の豊田教授がジュネーブに出席したあと近くお帰りになるわけでありますが、特に詳しくご存じなのではないかと考えるわけであります。
  79. 岡良一

    ○岡委員 時間も相当なくなりましたし、参考人皆さんもおなかがすかれたと思いますから、簡単にお聞きしたいのですが、浅田先生、どうか私どもの気持なり立場なりを誤解しないようにしていただきたい。というは、ちょうど昨年、原子潜水艦の問題たけなわのときに、私どもの党は原子力船開発事業団法案にきん然として賛成しておる。平和利用をあくまでも進めろという立場に立っておるのであって、そういうえこじな反対は決してわれわれのグループはしておらない。この点誤解のないように。  ただ、私ども先ほど来いろいろお話を承って、きょうはいわば新鋭の若手の科学者方々から切実な御見解を承ったのでありますがどれがたまたま二つに分かれてしまったということの印象を受けたことは、これは国民のためにも国家のためにもまことに不幸なことだと思う。しかし、そのことについては、いろいろ西脇さんからもお話がございましたが、実は私は釣りの気違いなんで、私は釣りに行っておるものですから、雨の水が出てきてさっと流れていくというものではない。一番クロダイとスズキがとれるかとれないかは雨のあとの潮かげんなんで、千二百フィートといえば百六十ひろくらいですから、百六十ひろなんてものは、私ども沖釣りに行けばしょちゅう釣っている。そこで釣れた魚を食えば私が一ころになったらたいへんなことなので、千二百フィートというのはそういうのんびりしたものじゃない。  それはそうといたしまして、私、具体的にお聞きしたいのです。今度のいわゆる安全であるという原子力委員会の総合判断の中には、事故に対する対策というものがどうも見当たらない。事故が起ったらどうするのか、これは原子炉安全性を確かめる一番の要件なんです。ところが、これがちっとも出ておらない。それはなるほど、いろいろ事故解析をするような資料が得られなかったというような事情は重々わかるが、それであればあるだけこれは不用意な話だと思います。  それはさておきまして参考人の方、特に西脇さんと服部さんにお聞きしたいのです。一体サバンナ号原子力潜水艦が、かりに近いところで、サバンナがロスを出たとしましょう、それから原子力潜水艦がザンディエゴを出たとしましょう。そして横須賀に来たときに、その炉の中に蓄積される放射能はどちらが多く、どちらが少ないか。あなた方もいろいろ情報をとっておられるようだから、それらのデータを中心に、どう判断されるか、これをまずお聞かせ願いたい。
  80. 服部学

    服部参考人 サバンナ号の場合には、原子炉が大体七万キロワットということが発表されております。それから原子力潜水艦の場合には、最近のS5Wの出力はわかりませんけれども、以前のS2Wのプロトタイプが陸上に建設されましたときに、これが五方キロワットということが発表されております。S5Wはそれよも熱出力がはるかに大きくなっているという発表がございますので、サバンナと同程度、あるいはそれよりもむしろ大きいのではないかということを私は想定いたしております。たぶん十万キロワットに近いというのが私の推定でございます。それでなければまたこのスキップジャック号のようなあういう水中での高速力は出ないわけでございます。原子炉出力が同じでございますと、消費いたしますウランの量というのは同じでございます。したがって、炉内に蓄積されております放射能性の核分裂生成物の量というのも、ほとんど同程度のものと考えてよいかと思います。
  81. 西脇安

    西脇参考人 これも直接私、サバンナ号を見たわけではございませんけれども、発表されておる資料によりますと、大体六十九メガワットというようなぐあいに、一応サバンナの場合には公表されております。ですから約七十メガワットといま服部先生が言われたとおりだと思います。これと比較するために、サバンナ号原子炉の審査に一応関係しておられたという方にお聞きしまして、たとえばノーチラスの原子炉サバンナ号のとどっちが大きいのだと聞いてみましたら、 このサバンナ号より大きいということはちょっと考えられないということを向こうの方がお答えになっておったと思います。ですけれども、潜水艦にもいろいろなタイプがありますし、それから最近まで炉のタイプにもいろんなものがあり、現在のところではS5Wというのがいわゆる米国の標準型というようなことになってきているようですけれども、大体どちらが大きいかということは、いま服部さんは大きいと言われますし、それから私が直接アメリカ原子力委員会の人にお尋ねしますと、それよりは大きくない。まあ中間をとると、大体同じ程度のものじゃないかと想像していいんじゃないかという感じがします。しかし、サバンナ号の満載排水量が二万一千八百五十一トン、それからノーチラス号の場合には大体排水量が三千トン前後、しかし一方はスピードも出すでしょうし、いろいろむずかしい問題もあるでしょうけれども、正確な答えは私はできません。  それから学者が二つに割れているとかなんとかということもお聞きいたしましたけれども、私の立場としては、決して入るのに賛成であるとか反対であるとかという立場を前提として検討したというものじゃございません。  それからアメリカ潜水艦が安全でソ連のがあぶないとかということでなく、たとえソ連の潜水艦が入ってきてもやはり同じような考え方をしなければいかぬのじゃないかという考え方でやっておりますので、御了承願います。
  82. 岡良一

    ○岡委員 現在安全といわれれる総合見解です 総合判断ですか、何か発表されたようですが、実際問題として中曽根君も流水とか言ったようだが、入る港についてはサバンナ号を一応基準とした安全対策というものは当然立てるのが妥当だ、こう私どもは思うわけだが、その点については科学者のお立場としてはどうお考えになりますか。
  83. 服部学

    服部参考人 私たちは最初から公式に安全審査をやって、その結果を国民に公表してほしいということを原子力委員会に申し入れをしておるわけでございまして、その観点から申しましても、当然入港につきましてもいろいろな検討というものは行なわれなければならないというふうに考えております。
  84. 西脇安

    西脇参考人 その点につきましては、私英国に参りましたときに、向こうで一体どういうぐあいな処置をとっているのか、 基地を持っておりますから、具体的にいろいろ聞きましたら、一応半永久的な基地、いわゆるイギリスのホリーロッホのような場合には、ミニストリー・オブ・アグリカルチャー・アンド・ローカル・ハウジング、まあイギリスの組織は非常にやっかいですけれども、そこが一応放射能調査などをやりまして、その結果を見ましても、過去の核爆発実験で降ってくるほうがはるかに強くて、現実には原子力潜水艦放射能というものはほとんど問題にならないということは、英国原子力公社の方からお聞きいたしました。  そういうパーマネントの基地については、そういう対策をし、しかも日本では、先ほど浅田先生もおっしゃいましたように、原子炉でもつくるようなときには一応解析ということをやるわけです。万々一のことが起こっても、大体このくらいとっておけばだいじょうぶでしょうというような一応書類をつくるわけですけれども、そういうものが出ますと、それがいまにでも起こるんだというようなぐあいに解釈されて、今度は非常に人心をまどわすというような場合も起こり得ると思われるので、非常にやっかいなんですけれども、英国で安全解析をホリーロッホというところについてやったときの詳細なデータは一応見せてくれましたけれども、これは外部に現在の段階では公表できないんだから、記録はとってくれるなということで、結果だけを私は聞いてまいりました。  一応向こうでやっております万一の事故の場合の解析によりますと、万々一の事故が起こりましても、直接の危険範囲というものは約三十ヤード、それから間接的な危険範囲は大体四、五百メートルというような解析を行なっております。現実にハリーロックを見てまいりましたも、佐世保と非常に似たような山地帯でございまして、潜水艦用の埠頭がありまして、そのうしろが別荘地帯でずっと人家が建っております。大体いま言ったようなところで、たとえば潜水艦の乗員の休養とかそういうような目的で入ってくる場合には別に何ら特別の措置をとっておらないのであります。(岡委員「私の聞いている点だけお答え願いたい。」と呼ぶ)
  85. 服部学

    服部参考人 先ほどの岡先生のおっしゃいましたことに関連することでございますが、私たち原子力平和利用原子炉設置申請書を出しますときには、どうやって事故を起さないようにするかという安全対策と、それからそのほかにもう一つ、万一事故が起こったときにどういう具体的な処置をとるかという障害対策書、この両方を出さないといけない。この両方相まって安全審査の対象となるわけなんです。  今度の場合には、確かに障害対策書に相当するようなものは原子力委員会では何一つお考えになっていないのではないかという点を私はたいへん心配しておるわけです。  それからもう一つ、これは西脇さんのあげ足をとるようなことで、たいへんこまかいことなんで恐縮なんでございますが、先ほどの御発言の中に、原子力潜水艦は、二十四時間前に通告をしてくるということをおっしゃいましたけれども、この文書をちゃんと正確に読んでみますと、通常は二十四時間前に通告するということだけしか言っておりません。通常でないときにはどうするかということこそが、私たち、問題にしなければならないことだと思います。  それから、寄港の問題につきましても、乗り組み員の休養とレクリエーションとおっしゃいましたけれども、文章をよく読みますと、乗り組み員の休養とレクリエーション以外に、兵たんの補給と維持にあるということがはっきり書いてございます。兵たんの補給と維持ということこそは、まさに軍艦の基地としての最大の役割りではないかというふうに私たちは考えるわけです。
  86. 岡良一

    ○岡委員 服部さんも、私がお尋ねしたことにだけお答えいただきたいと思うのですがね。  それで、英国の例も引きましたが、しかし英国の例なんかは、私が調査したのと、くろうとの西脇さんの場合とは違う。私自身、サバンナ号が英国のリバプールへ来るか来ないかということがロンドンで大きく問題になっておったときに、 私は、ロンドンにおった。とうとうその当時は、もう領海の中に入ってもらっちゃ困るという結論を出した。また、アメリカ原子力潜水艦が英国に基地を持つか持たないかというときにも、これは非常に問題となって、政府刑協定でもって、特にシビアな、住民の安全保障規定というものが設けられておるはずです。でありますから、そういう点もよくひとつ御調査願っていただきたいと私は思います。私の記憶では、そういう結論になっておるわけです。  それはそうといたしまして、 問題は、何も英国の関係じゃないが、 また、科学者の立場から、万一シビアな管理規則のようなものをこしらえると人心を不要に惑わすとか惑わさないとかなんというようなことは、あなたの失言だと私は思う。問題は、やはり科学者の立場からは、万一、原子力潜水艦が入ってくるとするならば、どのような安全対策をその港はとるべきだ。そのためには、前提として、どれだけの放射能を蓄積しつつ入ってくるかということが問題なんです。  そこで、私は先ほど、かりに船のほうはサンフランシスコなりロスから出る、すぐ近くのサンディエゴから潜水艦が出たと仮定して、入ってくると仮定した場合に、どれくらいの放射能を蓄積したままで入ってくるかということをお尋ねしたが、大体、似たようなものであろうというわけですね。大体、似たようなものであるということならば、サバンナ号が入ってくる場合、再入国の場合は、やはりある安全基準対策というものを持って、サバンナ号を迎えようとしておるわけです。であるから、 日本も、原子力潜水艦が、五日であるか十日であるかわからないが、やはり人口稠密の地帯に停泊するんだ。それに対しては、やはりサバンナ号と同様な蓄積の放射能を持ってくるとするならば、何らかの安全対策の手を打つべきではないか。この点をお尋ねしておるわけです。打たなくてもいいのか、打つ必要があるのか。それを、科学者の良心的なお立場から——政策的なお話じゃない、良心的な立場から、当然とるべき性格のものであるとお考えになるか、とる必要はないとお考えになるか。ともかく、どちらかいずれか一方お答え願えれば、それで私はいいと思います。
  87. 西脇安

    西脇参考人 いま英国の話がやはりちょっと出ましたけれども、私、話しましたのは、サバンナ号を迎えるためのポート・ハザード・エバリュエーション・コミッテーというのができておりますけれども、その委員に、英国原子力公社のほうから出る直接の人と、それからその上の、つまりダンスターという人、こういった人と直接デスィカッションをした結果であります。サバンナ号の場合につきましては、先ほどからもお話のありましたように、安全解析書というものが、向こうから送りつけてこられますので、もうすでに日本にも何部か入っておると思いますけれども、そういったものに基づいて、一応解析を行ないまして、そうして現在、英国でやっておりますのは、入ってきたところに、英国原子力公社のほうから、空気中のモニターが二台だけ出まして、そうしてはかるんだということを言っておりましたけれども、しかし、もちろんはかっておるとはいっても、はかっておるというと、すぐに、非常に危険だからはかっておるんだろうというぐあいに一般に——英国も、ウインズケールの事故なんかありまして、ある意味では、一部が非常にセンシティブであるという関係があるので、一応、 測定はするけれども、そんなに入ってきたとたんにすぐに大事故が起こるということを予想してやっているんではない。  それからもう一つは、やはり警備なんかは厳重にする。つまり、日本海上保安庁的なものに相当するところと、それから、向こうはアドミラルティー、海軍省がおりまして、そういうのが誘導とかそういう警備に当たるというようなことは言っております。それから、ポート・マスターといいまして、港湾長が入ります。それから、これはアメリカ側の依頼で、WVS、ウイメン・ボランティア・ソサエティーというのがありまして、その代表がやはり入っております。それから、イギリスのその入る港の病院関係の代表が入るというような形をとっております。それで、この病院関係がなぜ入るのかということを置いてみましたら、これはむしろアメリカ側が入れてくれ。それで、なぜだということを聞くと、 これは万一、原子力船が入ったら、見物人が行列をつくって、待っている間にぶつ倒れたりすると困るので病院関係とか、それの世話役に当たる婦人の有志の団体といったような団体も入れて構成しておるということをおっしゃっておられました。
  88. 岡良一

    ○岡委員 それでは、知らなくてもいいというお話ですね。モニタリング程度でいいというわけですね。
  89. 西脇安

    西脇参考人 ですから、モニターをやるということは、これは非常に重要なことだと思います。
  90. 岡良一

    ○岡委員 わかりました。実は、これは私、二週間ほど前にアメリカのワシントンでAECからもらってきたサバンナ号運転管理準則なんですがね。ところが、これはなかなかシビアなんです。これはそんなのんびりしたものじゃない。モニタリングなんというものだけで済ましておけというものじゃない。これは一々私は申し上げませんけれども、実にシビアなものなんです。いずれまた別な機会に原子力委員会の諸君に御忠告申し上げたいと思います。  それから同時に、だから、港湾のあらゆる安全に関する諸条件調査というものについては、厳重な記録を、相手国もそれをとって、安全であるかどうかを確認するということ。その記録は、一例をいえば、その地方における地理学、気象学、水文学上の記録なんというものは、そう一朝一夕に出るものじゃないと私は思う。バックグラウンドの放射能調査するなんて、ちゃちなものではない。そのほか、もうとにかく記録というものが、 六点、七点、八点にわたって実に詳細な記録が徴されて、安全であるかどうかということになるわけです。  だから、これだけのことは佐世保なり横須賀においても、 日本側としても、この準則というものに照らし合わせて安全性が判定されるべきものだ。だから、ぼくは、よかったか悪かったか、やったことがいいか悪いか、そんなことは言いたくないのだが、これだけの厳重なオペレーションのための一つのルールというものができている。これはやはり日本としても守るべきだと私は思うのです。いかがでしょう。
  91. 西脇安

    西脇参考人 まことに岡先生のおっしゃられるとおりに、慎重の上にも慎重を期するということは、きわめて大切なことだと思います。しかし、入るということをきめられておるというような条件のもとにおきましては、いまからでもやるということのほうが、全然やらないよりはいいという感じがしますので、それは大いにやっていただきたい。やっていただくことはまことにけっこうだという感じがいたしております。
  92. 岡良一

    ○岡委員 西脇さんも、どうもいつの間になかなか政治家になられちゃって……。  だから、このサバンナ号なんかも、そういうような条件を入港の場合に掲げている理由は、やはりこのマキシマム・クレディブル・アクシデントというものを前提として安全審査しておる。ところが、これはもう、アメリカでは常識になっておるので、原子炉安全諮問委員会ですか、これは、安全審査はみんなこれをとって、これを基準にやってある。そういうところから、このサバンナ号が入ってくる場合には、港内における緊急事態計画というものを立てておれということになっておる。そこで、それは要するに、かりにMCAほどではなくても、何らかの事故が起こり得るという立場から、少なくともMCAを基準にした緊急事態計画というものを立てるべきだということをいっている。佐世保にしろ横須賀にしろ、これだけの放射能の蓄積を持って入ってくるならば、当然これだけの対策は私は必要だと思うが、科学者の立場からどう思われますか。
  93. 西脇安

    西脇参考人 確かに必要だと思います。これはイギリスあたりでは、いま申しましたようなコミッティーの名前をローカル・リエゾン・コミッティーというような名前をつけまして、原子力公社の専門家と、それから警察とか港湾長とかでそういうコミッティーをつくりまして、そして万一の事故の場合にはそのコミッティーが一応判断して処置をきめるというようなことでもってやっておったように存じております。したがいまして、そういった委員会のようなものを組織して検討しておくということは、きわめて重要なことだと思います。
  94. 岡良一

    ○岡委員 服部さんも御異議ないですか。
  95. 服部学

    服部参考人 先ほど一番最初に引用いたしましたペック論文の中でも最大想定事故、マキシマム・クレディブル・アクシデントはやはり起こるものだと考えてかからなければならないということが特に指摘されているわけでございまして、障害対策ということは十分に考えておかなければならないことだと思います。にもかかわらず、現在それについては何らの手も打たれてない。私の知っている範囲では、昨年何か科学技術庁のメモというのが出まして、押し入れの中に隠れろとか手ぬぐいで口を押えろとか、ああいうことでは障害対策ということには当然ならないものだと思います。やはり十分な障害対策というものを検討した上で初めてこの潜水艦の人港という具体的な問題、許すか許さないかという問題、安全性の面からだけ考えましてもその点を考えなければいけない、かように考えております。
  96. 岡良一

    ○岡委員 そこで、この二十六口にまたこの原潜問題をめぐる委員会が開かれることになっておるから、原子力委員会としてはこの港内における緊急事態計画、何か一時それこそ子供だましのようなものが物議をかもしておったこともあるようだが、納得のできる緊急事態計画というものを資料として示してもらいたい。この委員会にぜひ御提示を願いたいと切に私は要望するのだが、原子力委員会、やれますか。
  97. 村田浩

    ○村田説明員 ただいま原子力委員長がおられませんので確答いたしかねますが、よく相談いたしたいと思います。
  98. 岡良一

    ○岡委員 それはどういう意味だね。原子力局原子力委員会の事務局だと常日ごろ言っておるのだが、原子力委員長が出せないと言えば出せない、そういう性質のものなのか。先ほど来、るるお話が出ておるように、大体サバンナ号が入ってきた場合にはこれはやるのでしょう。アメリカ国内においてさえこれだけの計画を持ち、これだけの調査をやらなければ入港させないといっているのだから。来年五月にはサバンナ号が入ってくるのならこれだけのことはやるのでしょう、MCAというものを前提として。さすれば、同じ放射能を蓄積した原子力潜水艦が入ってくるならば、これだけの港内緊急事態計画というものはあってしかるべきだ。ないとするならば、放射性降下物から国民を守るのが原子力委員会の任務だと設置法に書いてある、全くその任務というものを無視することだ。国民に対して不親切きわまりないじゃありませんか。当然これは出してもらわなければならぬ。出せないということであれば、あなた方は佐世保なり横須賀に来る原子力潜水艦安全性について責任が持てないということだ。したがって、重ねて強く私は要求しておきたい。  これで大体私のお話を終えたいと思いますが、浅田さん、ちょっとあなたのお話について私関連して申し上げておきいたことがある。それはデンマークの問題です、私昨年デンマークのコペンハーゲンにまいりました。原子力潜水艦のことで私はまいったのです。そして政府与党の方に会いまして、なぜあなた方は原子力潜水艦の入港を拒否しましたかということを責任者に聞いた。被いわく、実は政府としてはNATOの条約の手前当然これは受け入れるべきものであると考えておった、日本政府と同じ態度だった。ところが、ボーア博士をリーダーとする原子力委員会が、安全審査に関する何ら無の科学的データもわれわれは得ることができない、したがってわれわれは安全性を立証することができない、安全性を立証することができないということでは原子力委員会としては国民に対して国民の放射能禍を避け得ないという立場に立つので、これは拒否すべきものであるという勧告をしました、政府はその勧告を受けたので拒否いたしました、仲間はずれだけれども、拒否いたしました、ということを答えておる。一昨年のことです。おそらくあの拒否したときには、まだ大西洋には原子力潜水艦は十隻とはいなかったでしょう。いまではその三倍もおるだろうと思います。なおしかし入っていない。  問題は、人っているいないではなく、このデンマークの原子力委員会の立場、あるいは原子力委員会によって代表される科学者の見識というもの、また同時に科学者のこの権威というものを尊重する政府の態度、これと日本の現状というものは一体どうであるかということを、私は留守中にああいう始末になって、この間帰ってきて、しみじみ感じました。願わくはあなた方も——くどいことは申し上げませんが、いまオーバーキルの時代だといわれておる。科学の発展によってオーバーキルの時代を招来する。そしてアインシュタインとバートランド・ラッセルの共同宣言、その他ウイーン宣言から、数次のバグウオッシュ会議を通じて、あなた方こそ科学者である前に人間としての良心と、科学者としての責任に立って、どうしたらこの日に日に革命的に発展する科学の力というものを平和と繁栄のために役立てるかということがあなた方の基本的な姿勢でなければならぬということを特に訴えたいのです。私どもはそういう立場から原子力潜水艦の問題を扱っておる。したがって、われわれは単なる条約そのものとかそういうことで言っておるのじゃない。だから私どもの立場も誤解はもちろんしてほしくないが、どうか皆さん方も、そういう崇高なとうといバグウォッシュ精神というものがいま科学者を通ずる大きな精神であり、大きな柱だと思う、こういう気持ちで今後も御精進を願いたい。  たいへん長い間皆さんに、あとでお説教みたいなことを申し上げて恐縮でございますが、これで私の発言を終わります。
  99. 前田正男

    前田委員長 参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日はたいへん長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のためたいへん参考になりました。委員会を代表いたしまして厚くお礼申し上げます。どうもありがとうございました。     —————————————
  100. 前田正男

    前田委員長 次に、 先般東海、中部、近幾、及び北陸地方等に委員を派遣し、科学技術の実情を調査いたしましたのでありますが、その調査報告につきましては、参考のためこれを会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  101. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次会は来たる十月二十六日、月曜日午前十時より理事会、同十時三十分より委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。  午後二時四十八分散会      ————◇—————