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1964-03-25 第46回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十五日(水曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 菅野和太郎君 理事 佐々木義武君    理事 中曽根康弘君 理事 西村 英一君    理事 福井  勇君 理事 岡  良一君    理事 原   茂君 理事 山内  広君       池田正之輔君   小宮山重四郎君       保科善四郎君    細田 吉藏君       渡辺美智雄君    久保 三郎君       田中 武夫君    三木 喜夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         科学技術政務次         官       鹿島 俊雄君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   江上 龍彦君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   島村 武久君  委員外出席者         原子力委員会委         員       兼重寛九郎君         原子力委員会委         員       西村 熊雄君         外務事務官         (国際連合局外         務参事官)   力石健次郎君     ————————————— 三月十九日  委員細田吉藏君及び河野正辞任につき、その  補欠として森山欽司君及び石野久男君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員森山欽司君及び石野久男辞任につき、そ  の補欠として細田吉藏君及び河野正君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(原子力に関する  問題等)      ————◇—————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験を禁止する条約の締結について承認を求める件、本件は外務委員会に付託となっているのでございますが、本委員会の所管である原子力行政とも密接な関係がありますので、この際、外務省当局よりその概要について説明を聴取いたしたいと存じます。力石国連局参事官
  3. 力石健次郎

    力石説明員 大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験を禁止する条約の大要について御説明申し上げたいと思います。  この条約は、前文と五つの条項からなっておりまして、その条約前文において定められておりますとおりに、国際連合目的に従って厳重な国際管理のもとにおける全国的な完全軍縮に関する合意をできる限りすみやかに達成し、それにより軍備競争を終止させるとともに、あらゆる種類兵器生産及び実験を促す要因を除去することを念願としまして、今後全面的な核兵器実験禁止を実現するための交渉を継続し、人類を放射能による汚染から保護せんとする決意及び希望のもとに作成されたものでございます。  本文規定に入りまして、第一条の第一項の規定によりますと、各締約国は、その管轄の及ぶ場所または一時的にせよその管理のもとにあるすべての場所において、核兵器実験及び他の核爆発等を禁止すること、防止すること及び実施しないことを約しております。この場合、爆発が現実に生じます環境が、大気圏内外であると水中であるとを問わないわけでございます。ただ、ここで例外が一つございまして、一定の条件のもとにおける地下核爆発をやるということは禁止していないのでございます。すなわち、地下爆発の結果、放射性物質爆発が行なわれる国の領域以外に出ないという条件が満たされます場合には、そういう地下爆発というものはこの条約では禁止されておらないわけでございます。  次に、第一条の第二項は、すべての場所においての爆発を実施させ、奨励し、またはいかなる態様においてもこれに参加することを差し控える義務規定しております。したがいまして、締約国はどんな場合におきましても核実験を行なわない義務、他国が行なう実験などを援助したり奨励したりしない義務、さらに自国の管轄または管理のもとにございます場所におきましては、こういう実験を禁止し、または防止する義務を負うということになるわけでございます。  次に、第二条に移りまして、この第二条と申しますのはこの条約改正規定でございまして、この条約改正案承認のためには、アメリカイギリスソ連の三国を含めます全締約国過半数による賛成が必要でございます。そしてその結果といたしまして、アメリカイギリスソ連の三つの国の批准書を含む全締約国過半数批准書寄託されまたしたときに、この条約改正はすべての締約国について効力を生ずるということになっております。  次に、第三条の規定でございますが、第三条におきましては、この条約署名批准及び加入並びに発効につきますことを規定しておりまして、署名はこの条約の発効するまではすべての国に開放される。批准書及び加入書は、原締約国たるアメリカイギリスソ連三国の政府寄託することになっております。  また、この条約は、すべて原締約国による批准及び批准書寄託により発効し、その後に批准書または加入書寄託する国については、その寄託の日に当該国について効力を発生するということになっております。  次は、第四条の規定でございます。第四条の規定は、この条約有効期限は無期限であるということを定めております。  また、この条約の対象でございます事項につきましては、異常の事態が生じ、これによって自分の国の最高の利益が害されると締約国自身が判断します場合には、三カ月の事前通告をもってこの条約から脱退することができるということを定めております。  第五条は、条約の末文でございまして、英語及びロシア語本文で、そのテキストが正文である。そうして認証謄本は、寄託国政府署名国及び加入国政府に送付するということをきめております。  以上がこの条約の概略であります。
  4. 前田正男

    前田委員長 以上で説明聴取は終わりました。     —————————————
  5. 前田正男

    前田委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。岡良一君。
  6. 岡良一

    岡委員 私は少し聞き漏らしましたので、前文をいま一度お読みいただきたいと思います。
  7. 力石健次郎

    力石説明員 それでは、前文を読み上げることといたします。  「アメリカ合衆国、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びソヴィエト社会主義共和国連邦(以下「原締約国」という。)の政府は、国際連合目的に従って厳重な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する合意をできる限りすみやかに達成し、その合意により、軍備競争を、終止させ、かつ、核兵器を含むすべての種類兵器生産及び実験への誘因を除去することをその主要な目的として宣言し、核兵器のすべての実験的爆発永久的停止の達成を求め、その目的のために交渉継続することを決意し、また、放射性物質による人類環境汚染を終止させることを希望して、次のとおり協定した。」  これがこの条約前文でございます。
  8. 岡良一

    岡委員 いまお読みになった前文は、しばしば国連総会でわが方等も参加をいたしました核実験停止決議案内容にほぼ似通っておるもののように考えます。また、国会が再度にわたって核実験停止決議をいたしましたが、その内容にもこれはきわめて似通った趣旨のものであると存じますが、そういうふうに理解していいのですか。
  9. 力石健次郎

    力石説明員 われわれはそのように考えております。
  10. 岡良一

    岡委員 佐藤長官にお尋ねをいたします。  そうなりますると、かつて私ども与野党一致をもって議員提出立法として通過成立をいたしました原子力基本法原子力研究開発利用は平和の目的に限るというこの基本法精神が、歴史的に正しかったということをこの部分的核停条約が示しておると私は感ずるのでございますが、原子力委員長としての御所信を承りたい。
  11. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 衆参両院通過を見ました基本法、これは御指摘のように平和利用、そういう意味から民主、自主、公開、こういう原則のもとに、基本法がその精神で貫かれておると思います。これはわが国原子力に対する態度、それを規定したものだと思います。  ただいまのモスクワ核協定とこれとは実は関係がないように思うのでございまして、私ども基本法を貫いておる精神こそまことにりっぱなものじゃないか、かように私は自負しておるような次第でございます。
  12. 岡良一

    岡委員 関係がないとは、私はおかしいと思うのです。いま前文をお聞きいたしますると、行く行くは全面軍縮に踏み切りたい、まずその前段階として原子力軍事利用、すなわち核兵器生産保有はやめたい、その前段階として核実験部分的停止をやるのだ、こう三段階に積み上げてある。しかも、わが方の原子力基本法第二条では、わが国における原子力研究開発利用は平和の目的に限る、こううたってあるわけです。  してみれば、これは明らかに原子力基本法第二条の原子力研究開発利用は平和の目的に限るというわが方の精神が、部分的核停協定とか決議案を通じて正しかったということが立証されておるもの、このように自負することが当然ではないのでしょうか。
  13. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私は、われわれの主張が正しい、そういう意味からこの基本法を貫いている精神を自負している、こういうことでございます。ただいまの核協定を云々と引き合いに出す、これは必要のないことだ、かように思っておりますので、その点を申し上げておる次第でございます。誤解のないように願います。
  14. 岡良一

    岡委員 必要がないというのが私はよくわからないのです。  わが方では、いち早く八年前に原子力平和利用をはっきり法律をもって規定しておる。しかし、その当時、米ソ両国等核実験競合しておる。ところが、核実験競合を部分的にもしろやめようという決意に立ててきた。そうすれば、わが方の原子力基本法第二条の平和目的に限っての原子力利用という精神が、米ソ両国等合意を通じて国際的にその正当性が認められたものと自負することが、私は原子力委員会としての当然のことじゃないかと思う。関係がないどころじゃなくて、大ありじゃございませんか。
  15. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私は、原子力基本法はどこまでもわが国法律であり、その精神で貫いておる、これはそれだけでりっぱに意義のあることだ、かように思います。  核協定が幸いにしてこれと同じように同じ方向へ向いてきた、かように考えるならそれもけっこうでございましょうが、核協定ができたから原子力基本法がそれでりっぱなものだ、こういうことは私は意味のないことだ、こういうことを申し上げたい。各国とも原子力基本法のような精神を相互の精神にされる、理解を持たれる、これはたいへん喜ぶべきことに違いはございません。しかし、それだからといって、よし反対された場合でも、私どもは、基本法を貫いておる精神はりっぱなものだ、ましてや、それに同調するものがあちらこちらにあるならこれはたいへんしあわせなことだ、かように思います。
  16. 岡良一

    岡委員 国連局のほうにお尋ねいたします。これはもうすでに国会批准を求めて提出されておるわけですね。
  17. 力石健次郎

    力石説明員 提出されてございます。
  18. 岡良一

    岡委員 その前文のごとく、したがって、この部分的核停条約国会批准するということは、行く行くは核兵器生産保有使用等全面禁止、ひいては全面軍縮を期待してわれわれはこれを批准するということになると思うのですが、このように解釈していいのでしょうか。
  19. 力石健次郎

    力石説明員 これは前文に書いてございます趣旨賛成であるから批准するということになると思うのです。
  20. 岡良一

    岡委員 そうすれば、佐藤原子力委員長、結局核兵器平和利用というわれわれが八年前に掲げた大きな旗じるしが、この部分的核停協定というものが批准を求められるというこの段階においては、いよいよ国際的に正しかったということが立証されておる一つの大きな要素じゃないのでしょうか。
  21. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私は、これに賛成されたから原子力基本法権威を持つようになった、こういう考え方にはどうも賛成しかねるのです。私どもはりっぱなその精神を貫いておる。それこそどこへ出したって別にあやまるべき筋でもなければ、これは堂々たる態度だと思う。  だから、幸いにして国際的にそういう問題にも賛成されたということは、これは当然のことであって、別にそれができたから原子力基本法権威を持ったのだとか、あるいはこれが国際的な原則にもなったのだとか、そうまで考えることはないじゃないかというような気がするのですが、いかがなものでしょうか。少しことばは過ぎますけれども、社会党さんのお得意の、それこそ自主的な態度じゃないか。わが国の自主的な態度がそういう意味において理解されたという、それはたいへんうれしいことではございますが、そのために権威を持ったのだ、かように自分たちの決定を裏づける必要はないのじゃないか、かように私は思います。いかがなものですか。
  22. 岡良一

    岡委員 いかがなものでしょうと言われるけれども……。まあ、大体落ち着くところに落ち着くということだと思うのです。  八年前に原子力基本法全会一致成立せしめた当時は、御存じのように、米ソとも核ミサイル競合にうき身をやつしていた。だからして、原子力平和利用という旗じるしというものはまことにイバラの道の中に投げ出された形だ。しかし、今日となって、米ソ核ミサイル競合については、少なくとも新型の核兵器生産については、あるいは大規模の核兵器生産については部分的に実験をやめるということ、そのことは、われわれの原子力基本法にうたった原子力平和利用のの旗じるしが、やはり米ソにおいても当然彼らの歩む道そのものが正しいと実証してくれたんだ。そういう意味の誇りをわれわれは持っていいのじゃないか。その見解をどうかとお聞きしておるのです。  長官も大体そういうお気持ちのようなんだが、非常に政治的な言い回しをされる。私は何も奥歯にもののはさまった考え方で、伏線を引いてお尋ねしているのじゃないのです。率直なあなたの見解をお聞きしているのです。大体落ちつくところに落ちついていると思うのですが、どうなんですか。私に聞かれるより、あなたのほうに……。
  23. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お説のとおり、私ども科学技術庁、いわゆる科学技術者立場から申すだけではございません。もちろん政治背景にしての平和利用、それならばこれは納得ができる、だから平和的なものに限る、これに賛成者がだんだんできてくる。しかも八年前からそういう主張をしていた、それこそわが国の平和的な性格をはっきりしていて、たいへんけっこうなことだと思います。  それを、ただいまのように、米英ソもようやくおそまきにこの精神がわかってくれた、かように自慢するのもいいことですが、私どもは、私どもの厳然として掲げたこの旗こそたいへんりっぱなものである、かように自負しておる、こういうことを申し上げておるのであります。  もちろん、政治的背景なしにこの種の問題がきめられておるとも思いません。だからこそ、今後モスクワ核協定に対しましてもわが国が率先してこれに参加する、そういう手続を外務省のほうでもとっておるわけです。これはまことに一貫した態度であり、当然りっぱなことである、かように私は思っておるのです。
  24. 岡良一

    岡委員 そこで、いま国連局長の御説明を聞くと、前文趣旨国会において承認をされたときに初めて批准成立するということなんです。もちろんわが党もこれには賛成をしておる。してみれば、当然政府としては、行く行くは核兵器全面撤廃という方向を目ざして今後努力をする必要がある。この点について、国務大臣としてのあなたの御所見を伺いたい。
  25. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは私個人の問題じゃなく、もう池田内閣性格からも、また日本国民全体からも、その態度は非常にはっきりしておると思います。したがいまして、私どもが最善の努力をすることは、もう申し上げるまでもないところであります。
  26. 岡良一

    岡委員 なぜこうして部分的核停、部分的ではあろうとも、長年人類が望んでおった核実験停止が実現をしたのか。なぜこれを米ソ、あるいは米英ソをして実現せしめたか。国連局長なり佐藤大臣は、どう解釈しておられますか。
  27. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 どうも外交上の問題のように思いますので、私とやかく申し上げることを差し控えたいと思いますが、しかし、ただいまの外交的な状況、あるいはわが国の本来の主張から申せば、現状をもって満足すべき、状態でないことは、これはもうはっきり御指摘のとおりだと思います。製造、保管、移動、それが自由である、そして部分的核実験を禁止するということでは非常に不満だ、これはもう数次の国会決議等にもあると思います。  しかし、事柄の性質上、漸を追うてその大目的に到達する、こういう意味において私どもは今回の協定賛成しておる、かような状態ではないかと思います。
  28. 岡良一

    岡委員 この協定賛成するしないじゃなく、なぜこのような合意米英ソ三国の間にまず成立をしたか、その原因をどう解釈しておるか、お尋ねしたい。
  29. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これもしばしばいわれておることですが、兵器そのもの人類の不幸をもたらすものだ。そういう意味から、ただいまのところでは大気の汚染もするからそれを除くとか、この程度でございますが、核兵器そのものに対しての批判、これはもっと根深いものだ、これは両立しないものだ、こういう意味であります。
  30. 岡良一

    岡委員 大臣の御答弁は、非常に現象的だと思うのです。この委員会外務委員会ではございません。特に、科学技術振興という立場からこの問題を取り上げておるわけです。科学技術振興という立場から、なぜ米英ソが部分的核停の同意に到達をしたかということを分折をするならば、これは当然科学技術発展がそれをもたらしたという意味じゃないですか。またそのように把握しなくては、この部分的核停というものの本質的な意義、歴史的な意義というものは把握できないと思う。ただ現象的に、人類核実験停止を求めておるからしたのだというのじゃなく、ここ十年ほどアメリカソ連も、御存じのように核ミサイル実験競合をいたしました。相手をうち負かすために競合をした。ところが、いよいよミサイルも発達をして、いわゆるボタン戦争という時代になった。彼らの保有しておる水爆の量というものは、両国を合わせれば地球上の全人類を死滅せしめるだけの量に到達しておる。そこで、戦争武器が平和の武器になる。相手をうち負かそうとして核ミサイル競合したが、つくってみたら戦争を断念せしぬる武器になった。この力というものは科学技術発展がもたらしたものである。戦争武器が平和の武器に百八十度の転換をした。この科学技術発展というもの、大きな弁証法的な発展というものをあなた方は認識しなくては、この部分的核停というものの本質を把握することはできない。センチメンタルな問題じゃないので、この点について、もっと政府は明確な認識を持たるべきだと思うのだが、重ねて原子力委員長の御意見を承っておきたい。
  31. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまのお話ですが、私ども原子力基本法、これは明確にいたしておるわけです。この原子力基本法では、別に原子力研究をやめろとはいってない。これはどこまでも進めていくべきだ、平和的目的のために公開原則でやろうと申しておる。そこには秘密はないはずだ。しかし、これが兵器となるならばなかなかそうはいかない。やめろとはいっておらないと思います。  しかし、米英ソとも、この三国が兵器としての原子力利用というものについて反省をするとか、あるいは実験停止しようというその協定にまで到達したこと、これは科学技術者科学的な考え方でなしに、やはり政治的な考慮から出てきているだろう。その意味では、いまお話しになりましたこともやや違うようですが、私どもも、これが科学的に進んで、そして同時に兵器として使われる危険がある、こういうことも念頭に置かなければならない。だからこそ、平和的利用にこれを限るのだ、わが国としてははっきりした方向を示しておる。それこそがとうといのだと先ほど来申し上げておるのでございます。  したがって、これで原子力科学的な研究にとんざを来たすものだとは私は思いません。問題は、人類自身お互いの幸福を招来する、こういう意味において科学が使われること、それこそは本来の科学者の望むところであり、それこそが民族あるいは国家の目的じゃないのか。しかし、それが間違って使われること、その方向についてはこれを抑制しようじゃないか、その一つのあらわれだろうと思います。それならば、一切戦争のない状態、そういう状態を理想として、また目標として掲げておるには違いないと思いますが、その方向への第一歩としてモスクワ協定ができたのだ、かように理解すべきではないでしょうか。  いままでしばしば見ますごとく、科学技術の進歩は、しばしば兵器として開発されることが端緒になっている。そういう科学技術もずいぶんあると思います。しかし、そのことは、本来の性格から見て間違っているのじゃないか。それが先ほど来の、大いに誇るべきものじゃないかという原子力基本法の示すところなんです。私どもはそれをどこまでもはっきりと平和的目標に使う、そして人類の幸福のために役立たせよう、かように実は申しておるので、かように私は思うのであります。  しかし、過去において、ただいま申し上げますように、軍事的、いわゆる国防という観点から、予算にほとんど制限もしないで、何もかも国防優先だ、第一主義だ、こういうところで科学技術が進歩していることも見のがすことはできない。私は過去の実例等を見たときにそう思いますけれども、それを誤らさない、これが今回の考え方だろうと思います。
  32. 岡良一

    岡委員 私がお尋ね申し上げた点をお取り違えをしておられる点と、また私が確認を求めたいことをそっくりそのままお答えを願った点とがございます。  私が申し上げましたのは、部分的核停協定というものがなぜ結ばれたのか、どこに物質的根拠があるのか。これはフルシチョフやあるいはケネディ大統領道義的勇気とでもいうような、ヒューマニズムだけとすべきものかどうか。  そこで、いま簡単に申し上げましたように、アメリカソ連核ミサイル競合をした。かりにアメリカ実験をテージスとすれば、モスクワ実験はアンチ・テージスです。ところが、競合の結果、お互いがもう人数の破滅をもたらすような水爆ミサイルの蓄積に到達した。そこで、しばしばこの問題に触れてフルシチョフやあるいはケネディが申しておるように、途方もない巨大な破壊力を持ってしまった。そこで、ジン・テージスとして平和共存ということで、その結果として部分的核停に踏み切ったのだ、このようにこの部分的核停の意義というものを把握しなくてはならない。全面的な核兵器撤廃へ、全面軍縮へと発展させるための根底にはこの把握がなければなるまい、ということについて私は御所見を求めたのです。  ところで、いま長官がおっしゃったように、かつては科学発展というものは戦争がもたらした。しかし、もはや科学発展は平和のためのものになってきた。科学技術発展は平和のためのものになってきた。このことを部分的核停条約成立というものが明らかにわれわれに示しておる。これはすべての国々の科学者に示し、すべての人類に示しておる歴史的な大きな事実であろうと私は思う。この点をあなたは国務大臣として、原子力委員会委員長として認識されるかどうか。この点をひとつ率直に、端的に御所信を伺いたいと思います。
  33. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 それはもう、先ほどから何度も繰り返しておりますように、原子力、これは平和目的のために開発するのだ、こういうことを申しております。今日人類の基本的な問題といたしまして、おそらく平和ということが最大の目標であろうと思います。平和共存だとか申しますが、私どもはかねてから共存共栄ということを申しておる。その共存共栄立場から見ましても、戦争のある姿はこれはたいへんだ、もうだれも賛成しない。そういう意味共存共栄方向をたどるものではないか、また、そのために最善の努力をすべきじゃないか。これはもう一貫している。また、ただいま御指摘のように、科学技術も、もういまやそれこそ共存共栄、そういう意味平和目的のために開発研究される、こうあるべきだと思います。
  34. 岡良一

    岡委員 この問題は、いずれまた外務委員会で私は大臣にもお尋ねをいたしたいと思っておりますが、ただ、私の申し上げた点について、もし御感想でもあれば、国連局からそれについてお聞きしたいと思います。
  35. 力石健次郎

    力石説明員 特に感想を申し上げる立場でもないのですが、この条約の中に書いてありますることは、われわれとしては非常にけっこうなことである、それでこれにぜひ国会の御承認をいただきたいと考えておるわけでございます。
  36. 岡良一

    岡委員 きわめてどうも的をはずれた答弁しかいただけないのですが、これは後日に譲りたいと思います。  そこで、この前、昨年の二月だったかと思いますが、私は原子力潜水艦の寄港承認問題について原子力委員会の統一見解を求めました。これは文書をもって私どもにももたらされました。その中には、原子力基本法第二条は他国の原子力軍事利用を拘束し得るものではないと書かれてあります。もちろんそのことは私も了解いたします。  しかしながら、このような形で、少なくとも日本の原子力基本法にうたわれた原子力平和利用というものが、米英ソ等の原子力軍事利用に懸命だった国々をも部分的協定に踏み切らしめるという事態になってみれば、原子力基本法の第二条が正しかったということを彼ら自身、身をもってわれわれに示さざるを得ないという事態になってきたとするならば、私は、この際もう潜水艦の寄港等についても決意を新たにすべきだと思う。日本の国内法であるから条約に優先をしたり云々というような形式論で、原子力潜水艦の寄港問題の承認については、これは他国の軍事利用は拘束できない、こういうのは、私は同時にやはり基本法の守り本尊としての任務を負っておる原子力委員会としてはもっと道義的な勇気を持つべきである、そうしてやはり原子力潜水艦の寄港はこれを拒否するのが原子力委員会の正当な任務であろう、ということを私は申し上げたことがございます。ところが、その後この核停協定成立というふうな段階になってまいったわけでございます。こういう段階になってくれば、いよいよ私は日本の原子力委員会としては、第二条の精神に基づいて、原子力潜水艦の寄港に関してももっと勇気と自信ある態度をもって臨まるべきものではないか、このように考えるのでございますが、委員長としての御所信を伺っておきたいと思います。
  37. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 われわれの理想とするところのもの、また理論的にもそうあってほしいと思うもの、しかしながら、遺憾ながら現実はそれとは違うわけでございます。その現実とのギャップを調整することが今日の私どもの責任であります。したがいまして、ただいまのお話にはすぐは賛成しかねるのであります。私どもは勇気と決断をもって、それこそ現実に対処する、そのことが必要なことではないだろうか、かように考えます。
  38. 岡良一

    岡委員 しかし、それこそ委員長の言われる自立性のない態度ではないのですか。現実に屈服する態度です。原子力平和利用というものが、部分的核停協定等の成立とともにいよいよ正しいということを、大国といえども認めざるを得ない状態になってきつつあるならば——日本は原子力平和利用しかできないのです。原子力に関する限りは、核兵器に関する限りは、まる裸の日本です。このまる裸の日本、しかも、協定前文においては核兵器の全面的撤廃をもうたわれておる。しからば、この線に沿って政府としては原子力潜水艦の寄港を拒否する、ここまで自信と勇気を持つのがあなたのいう自主性であって、現実に口をかりてこの責任をあいまいにすることこそ、非自主性もきわまれりと私は言わなければならない。どうなんですか。
  39. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 どうも自主性をしいられるようですが、私は自主性をもって現実と理想との相違と取り組むのだ、かように申し上げるのでございます。これは反自主性ではない、みずからがそういう決断をするということであります。これはやはりいずれの場合におきましても、そういう事態があるだろう。主義に忠実であり、理想に忠実であればあるほど、その自主性をもって現実との食い違いを克服していく、これが私どものつとめだと思います。
  40. 岡良一

    岡委員 私は何も、佐藤さんから世渡りの道を聞いておるのではない。むしろ原子力委員会というものの公の責任ある方針を私はお尋ねしておる。どうも佐藤さんは、私に、先輩のゆえをもってか世渡りの道を教えられる。きわめて迷惑な話です。  そこで、先般佐藤原子力委員長は、原子力潜水艦の安全性については、納得がいかない限りはその寄港の承認はしない、これは拒否するということをはっきりとこの委員会で明言されておりますが、いまもその御心境でございますか。
  41. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 別に私が申し上げましたことを、あえて私はうそを申しませんと断わりませんが、私は信念をもって申し上げておりますから、そう変化はございません。
  42. 岡良一

    岡委員 そこで、いただきました資料、私これを十分に精査いたしておりませんが、これも実は二年越しでやっといただいたというような始未のものです。  この資料で、たとえば安全性については、一番初歩的な条件ともいえる第一次冷却水の排水問題については、アメリカのほうではNSBが一九五三年ですかのICRPの勧告を基準にしておる。わがほうは一九五八年の勧告を基準としておるので、ここに食い違いがあって、目下折衝中というふうなことになっておる。これは国連局あたりが折衝しておられるのだろうが、一体どうなっておるのですか。その相手方の態度というものと、今日までの折衝の経過をどう見ておられるのですか。
  43. 力石健次郎

    力石説明員 これはまことに申しわけないのですが、私のところではやっておりませんで、アメリカ局でやっておりまして、私は詳しいことは存じておりません。
  44. 岡良一

    岡委員 それじゃ、これは原子力局のほうでは御存じございませんか。
  45. 島村武久

    ○島村政府委員 この委員会で一従来たびたび岡先生から御質問を受けてお答え申し上げておるわけでございますが、その後もやはり外務省におきましてアメリカ側と種々折衝を続けておられると聞いております。また、その内容につきましては、私どものほうにも御連絡があるわけでございますけれども、折衝のこまかい経緯等につきましては、かねがね申し上げておりますとおり、外務省のほうからお答えすることになっておることでございまして、私どものほうでかってにその内容を申し上げるわけにもまいりませんので、御了承いただきたいと思っております。
  46. 岡良一

    岡委員 しかし、これはうかつ千万な話だと思う。原子力委員長としては、安全性について納得がいかない限りは承認、許可すべきでないということを国会で言明しているわけです。ところが、その安全性の最も初歩的な第一次冷却水についての安全基準というものについての折衝は外務省にまかしている。原子力委員会は何も知らない。そんなことでは、委員長の言明というものに対して責任がないじゃないですか。何をしているのですか。外務省にそういう専門家がいるのですか。スタッフでもそろえているのですか。少なくともここにはちゃんと、原子力局なり、原子力の専門家がいるのですから、これと常時不断に連絡をとり、原子力委員会なり、専門家の意見を基礎に外務省相手方の意見を求めて、そしてそれは逐次、逐一報告されるべきである。その上で、安全性について納得がいくかいかないかということの決定は、原子力委員会がされるべきである。  外務省にまかせておいて、知らない、こんなことで、どうして一体安全性の確認が得られますか。
  47. 島村武久

    ○島村政府委員 外務省においてアメリカ側と折衝しておられるということを申し上げましたので、私のほうは何も知らないと申し上げているわけではございません。外務省が折衝されておりますその中身につきましては、外務省から相談を受けまして、私ども科学的な立場からいいろいろな意見を外務省にも申し上げております。その結果に基づいて外務省が折衝しておられるわけでございます。
  48. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 岡さんの要求されました資料、これは私も相談を受けましたが、たいへん長くかかり、今日まで数回督促を受けたにもかかわらずその資料の提出ができなかったことを、まず第一にあやまっておきます。たいへん資料の取り扱い等について粗漏があったようであります。  私ども、わからないことはわからないと、かように申しておけばはっきりするのじゃないだろうか、それがまだ明確にならないからといって、国会からの要求を軽く扱ったような印象を与えてはこれはいかぬぞ、こういうことで申し上げたのでございます。  したがいまして、いま提出されたお手元にいっております資料につきましても、意を尽くしておらないというお考えの面も多分にあるだろうと思います。どうも外交の折衝でございますから、これは外務省がやる。しかし、科学技術については、その判断なりあるいは理解度といいますか、これは外務省よりも私のほうがもちろん専門的な考え方があり、軍門的な知識を持っていると思いますので、外務省の折衝等につきましても、十分確認してほしいような点は外務省にも注意し、その上で外務省が折衝しておる、かような状況でございます。したがいまして、ただいま仰せになりました事柄は、ただいまお手元に差し上げました資料等がまことに要領を得ないものである、こういうことに尽きるのではないか。私ども責任を回避もしておりませんし、また外務省科学技術庁を全然無視して適当に交渉をしておる、かようにも私は考えません。その辺は、政府部内のことでございますので、十分注意をいたしておるつもりでございます。
  49. 岡良一

    岡委員 少なくとも、長官は安全性についてははっきりとした科学的な立証がない限りは寄港は拒否すべきであると言明されたのであるから、このような問題についての折衝は、やはり原子力委員会の主体性と責任においてぜひやっていただきたいということを私は希望したい。  ところで、今度は、その際、資料としてではなく、私が質問の一端として申し上げておきましたイオン交換樹脂、あの海洋投棄によって十キュリーほどの放射能が放出されるということを聞いたが、あれはアメリカ側にただされましたか、返事でもきましたか。
  50. 島村武久

    ○島村政府委員 岡先生から資料要求もございましたことでもございますし、その後も検討を続けておりまして、近くお手元にその結果を差し出したいと考えておるわけでございます。
  51. 岡良一

    岡委員 それから、私、いただいた資料を見てちょっと奇異に感じておるのです。日本側は一九五八年のICRPの勧告をたてにし、アメリカ側のナショナル・スタンダード・ビューローは一九五三年のICRPの勧告を基準にした、こういうことでございます。  しかし、この前やはり資料として御提出をお願いしてあります、いわゆるサバンナ号の停泊基準ですね。あのサバンナ号の停泊基準は、原子力船の安全性にかかる停泊華準としてAECが考慮したものですが、あれは被曝総線量という概念からあの安全基準がきめられた。被曝総線量という概念は、一九五八年のICRPが初めて採用した概念です。それまでは個人の許容量というものが認められていた。しかし、一九五八年のICRPの総会で、放射能には個人の許容壷というものはあり得ないという結論になった。そこで、総被曝線量というものが問題になってきた。その蓄積が問題になってきた。そうすると、原子力潜水艦の場合には一九五三年の古いICRPの勧告を採用した。しかも、自分の国の貨客船であるサバンナ号という原子力船には、AEC自身が一九五八年の安全基準の勧告に基づいた停泊基準というものをきめている。非常に矛盾していると思うのです。そうじゃないでしょうか。私の記憶違いかもしれません。停泊基準については、確かに被曝総線量ということばが随所に出ておったが、そうすると、一九五三年の勧告には被曝総線量というものはなかった。個人を対象とする許容量とした。しかも、ICRPは、総会を開くたびにますますシビアーにこの許容量というものをだんだん制限してきて、ついに個人の許容量というものは考えられないということから、被曝総線量という概念を打ち出した。そうすると、このいただいた資料の内容では、アメリカ自身の態度が矛盾していると私は感じられてしょがない。私の記憶違いかもしれません。その点おわかりの方がありましたらお教え願いたい。
  52. 島村武久

    ○島村政府委員 私もあまりむずかしいことはわからないのでございますけれども、岡先生のお話を伺っておりまして、ちょっと混淆なすっていらっしゃるのではないかと思う点があるわけでございます。もちろん、停泊基準の考え方につきましては、これは一般的に、万一の事故がありましたときの場合を予想して、そういうことを考慮してきめるわけでございますけれども、ただいま御引用になりましたICRPの勧告に基づきましてそのどの分をとっておるか。同じ基づくと言いながら、五三年をとっておるか、五八年をとっておるかという問題につきましては、これは放射性物質を含みました廃液の放出の基準のことでございます。いわば平常時の場合の考え方でございます。したがいまして、非常時の場合と、一般的に平常時に排水いたしますところの許容量とをごっちゃにした考え方というものでは、お答えしにくいのではなかろうかと考えております。  いずれにいたしましても、サバンナ号が入ってきた場合にどこまで入れるかというような資料の御提出の要求もございましたので、私のほうといたしましても、でき得る限りお役に立つような資料を御提出いたしたいと考えているわけでございます。
  53. 岡良一

    岡委員 この点は私もよく勉強させていただきたいと思うが、しかし、私が局長に資料として要求したのはサバンナ号に関してではないのですよ。サバンナ号に関してはすでにAECは停泊基準を設けている、だからいわゆる低人口地域と申しますか、船と低人口地域と人口細密地域の距離というものが、少なくとも一・六マイル以上なければならないのだという、これはすでに事故を予想しての数字なんだね。だから、平常時におけるものではなく、事故を予想しての安全な基準というものはそういうものだ。原子力潜水艦はサバンナ号と違ってコンテナもないと聞いておるし、しかも、ウランも九〇%の濃縮ウランを使っているということも聞いているし、そうすれば蓄積される放射能の量も非常に多いといわなければならないし、そういうことから、サバンナ号の停泊基準というものはもっともっとシビアーに補正しなければならない。こういうような点をはっきりアメリカ側に確かめなくては、この安全性に関して納得のいく立証が得られないということになりますので、この点、原子力委員会アメリカ側と十分に折衝した結論をひとつ聞かしてくれというのが私の資料要求の趣旨だったのですね。そういうふうなことで、いますぐでなくてもけっこうだが、お願いをしたいと思う。
  54. 島村武久

    ○島村政府委員 岡先生のそういうような前提のもとに資料を要求されたことは存じておるのでございますけれども、速記録も十分に検討いたしまして、その上で私どもは作業しております。資料はもちろんそういうことも頭に置いてのことではあろうと思いますけれども、それではきっとわからないだろうから、サバンナ号の停泊基準によって作業してみた資料を地図の上にまるを書いて出せ、こういうお話でございましたが、これは一見簡単なようでございますけれども、とり方によってはなかなかむずかしいものでございますので、いろいろ苦心いたしておるわけでございます。  ただサバンナ号じゃなくて、ほんとうの潜水艦が、それこそいまおっしゃいましたようにサバンナ号とは違うのだから、そういうことも考えた上で資料を出せということになりますと、これは簡単にはまいりません。いずれ潜水艦に関します安全性の問題の結論が出ました時期に御提出するほかないと思います。そのように御了解いただきたいと思います。
  55. 岡良一

    岡委員 資料を私が見る見ないということよりも、問題は安全性について納得のいく立証がない限り寄港は承認できないと委員長が言明されるならば、これが一番中心の問題なんですね。だから、もしこれをアメリカ側がはっきりするということになれば、船の設計はもとより、おそらく炉の設計も全部明らかになる。これは出せない、向こうはおそらく拒んでるのだろうと思う。そうすれば、一番重要な問題について原子力委員会としてはお約束のごとき安全性の立証をしたということは私は言えないと思う。そうなれば、原子力潜水艦の寄港ということは、その点からも私は原子力局としては検討すべきものだ、そういうふうに考えているわけです。  まあしかし、これは原子力局なり原子力委員会のほうで御努力願って、その結果をまた適当な機会に御報告願いたいと思う。  それから、被曝線量の問題も、サバンナ号の停泊基準、被曝線量の考え方も、資料がお役所にたくさんおありでしょうから、ぜひ一度お調べいただいて、もし私の間違いであったら、また適当な機会に訂正をしていただきたいと思います。  それから、実はこれはたびたび申し上げていることだが、私は中共の核実験というものを非常に憂慮しておる。御存じのように、部分的核停条約に対して中共はどういう態度をとっておりますか。具体的な声明その他がありましたらお示し願いたい。
  56. 力石健次郎

    力石説明員 御承知のとおり、中共はこの条約に加盟しておりません。それで、昨年の七月十九日付の人民日報の社説におきましては、この条約には反対であるという立場を明らかにしております。したがいまして、このようないきさつから考えますと、中共がこの条約に加盟する可能性は少ないのではないかというふうに考えております。
  57. 岡良一

    岡委員 問題は、これ以上発展するとおそらく外務委員会の問題になろうかと思いますが、とにもかくにも日本は部分的核停協定賛成であり、批准も日本はしておる。一衣帯水の中共においてはこれに反対しておる。しかも、これに反対をしておるフランスと結んで中共の核実験があり得る。すでに防衛庁長官は一年以内にあり得るであろうということを国会説明しておる。そういうようなことになった場合、これが与えるアジア諸国に対する政治的な心理的な影響というものは、たいへんなものが起こり得ると私は思う。  ところが、いま日本政府態度は、全くこれに対しては拱手傍観、何の手も打ってない。それでは部分的核停協定賛成というものは全く日本の自己満足のための一人芝居に終わってしまう、かように思う。こういう事態に対して、もっと政府は真剣に対策を講ずべきだと思う。  もちろんこれは外務委員会のお仕事であり、論議の問題点ではございましょうが、中共は、いまおっしゃったように、とにかく核兵器を独占しておる国々が自分たちの独占をあくまでも続けたいために部分的核停に踏み切ったのだ、これはアメリカ帝国主義の中共に対する、核侵略に対する合理化だ、こういうようなことを声明でうたったのを私は読んだことがございます。しかも、御存じのように、中共も核実験の可能性、条件というものは、私の知る限りでは整っておる。ただ政治的なタイミングを彼らは選んでおるといえるのじゃないかとさえ私は思っておる。  でありますから、この問題は、アジア地域における平和と安全のために非常に重要な問題である。これは内閣としてもどういう態度に出るかということは、核兵器平和利用を念願するわれわれこの委員会に対して、ぜひ適当な機会に責任ある外務大臣なり、あるいは国務大臣としての佐藤大臣なりから、明確な御見解を御披露願いたいと私は思うのです。ぜひひとつこのことをお願いしておきます。  ところで、私がお聞きしたいのは、中共の言い分は、おそらく高姿勢、第七艦隊が核武装をしておるとか、沖縄のマタドールが北京や重慶をねらっているということで、これに対して中共は核兵器保有に踏み切るということ、いわば力と力の均衡という古いダレス方式というようなものがやはりあるような感じがするわけです。ところが、部分的核停協定承認をする、批准を与えるという日本政府態度は、力と力の均衡による平和というものはもはや古い方式なんだ、これは恐怖と不信の均衡でしかないということにはっきり目ざめての態度なのか、私はこの点が一つの非常に疑問に思っておる点なんです。これも外務大臣でなければ御答弁できないでしょうが、これはやはり国務大臣としての御答弁を、また人生修行のつもりでお聞きしたい。
  58. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 どうもお尋ねになるところが、科学技術庁長官の範囲ではないように思います。  ただいま、中共が核兵器を持つだろうか、あるいは核実験をするだろうか、こういうことが議題になっております。これには二通りの見方がある。二通りと申すのもいかがかと思いますが、一つの見方がある。それはただいま国連局長が御披露いたしたような考え方もあろうし、あるいは福田君がどんなお答えをしたか私は聞いておりませんが、福田君もこういう点に触れておるだろうと思います。しかし、私どもは、中共は、かねての主張である平和共存というその立場に立つと、そう簡単に核兵器は持たないだろう——これは私の希望かもわからないが、多分持たないだろう。また、あげて平和への方向へ進もうとしておる際に、人類の希望しないような核実験をするというそういうことは、おそらくそのうち反省するだろう。あるいは淡い希望かもわかりませんが、私はそういうことを考える。  したがいまして、現状において中共がどういう態度に出るか。それはただいま仰せのごとく、帝国主義アメリカ、その核侵略に対して中共がこれを守るんだ、こういう意味核兵器を必ず持つだろう、ここまで踏み切れるのか。これも議論がずいぶんかってないことであり、わが国の国内において要求しておるものとはおよそ違うのです。そういう議論が成り立つならば、わが国においてもそういう議論が通用するはずだ。したがいまして、これはたいへんむずかしいことで、もちろん科学技術庁の問題ではございませんが、あえて私の意見を聞かれますのでお答えをいたしますが、私どもは、一体人類は何を念願しておるか。その目標実現への各国の協力を要望してやまない。中共もまた国際社会に復帰したいという今日、その片りんを示すことが望ましいのではないだろうか。私どもが安心して中共とつき合い得る、そういう形であってほしい。日本の立場は、この原子力基本法に示しておるように、また憲法の示すところのように、もう侵略国家ではございません。どこまでも平和に徹しようという、そういう形で国をつくり、またその方向において努力をしておるのであります。この私どもの気持を率直に——他国にしいるということ、そういうことはいたしませんけれども、同時に他国の政治に干渉するようなつもりは毛頭ございません。おそらく道理は一つであり、人類の希望するところのものは一つじゃないか。さように考えると、中共がいかような処置をとるかというその結論はとやかく私どもが軽々に口にすべきではないだろう、いましばらく中共の実際のあり方、実際の取り方、それを見ているのが望ましい姿ではないか。だが、私ども希望、理想、それだけははっきりさせたほうがいいんじゃないか、かように私は思います。
  59. 岡良一

    岡委員 だから、私は一人相撲の一人芝居だと申すのです。私どもが、原子力平和利用ということの旗を何百万べん振ってみたところで、やるものはやるんだ、それに干渉すべきじゃないというような考え方。いま一つは、やらないかもしれないという考え方御存じのように、昨日新聞で見たのでありますが、アジア・アフリカ会議の準備会議か何かの席上で中共代表が、平和共存の線はアジア諸地域における帝国主義支配を温存しようとするマルクス・レーニン主義の修正主義どもの言い分だ、こう言い切っているんですよ。さすれば、こんなのんきな、やらないであろうというような観測を持たれているのは、私はむしろ不見識だと思う。しかし、そういうことはここで申し上げるべきものではないかもしれません。  ただ、私きょう「原子力平和利用を推進するためのアジア及び太平洋諸国の会議」という英文の資料をいただいた。これをちょっと拝見しますと、その参加者のリストの中のチャイナは全部台湾なんです。それから、コリアというのがありますが、韓国です。  一体、アジア諸国の原子力平和利用会議と銘打たれて、日本がイニシアチブをとって招集された会議に、なぜ中共を呼ばないのか。これは科学技術政策上の重要な問題だ。どういうわけで中共を呼ばないのか。科学者科学の知識というものは国境を越えている。しかも、こういう重要な平和利用会議になぜ中共を呼ばないのか。アメリカとソビエトの科学者だって、原子力問題については情報の交換もやり、協力関係も結んでいる状況にあるのに、なぜ中共を呼ばないか。
  60. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 昨年の会議は、IAEA加盟国でアジア太平洋地域の国々の人を招待する、そういうことで進んでおりますので、そこにあげてありますような国の参加を求めたわけでございます。
  61. 岡良一

    岡委員 何も加盟国でなければならないことはないじゃないですか。アジア諸地域における原子力平和利用のための会議なら、加盟していようがいまいが……。  それじゃ、兼重さんにお聞きいたしますが、台湾に原子炉があるんですか。韓国に原子炉がありますか。
  62. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 原子炉は台湾にもあります、韓国にもあると聞いております。
  63. 岡良一

    岡委員 しかし、最も数も多く、出力の大きな原子炉を持っているのは中共でしょう。
  64. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 あるいはそうかもわかりません。中共のほうの数ははっきりしておりませんが、あるいはインドなどももっと多いと思いますけれども、別に原子炉を持っているところ、あるいは数の多い少ないということではありませんで、IAEAとの関係がございましたので、IAEAの加盟国ということでやる。そして、地域は、アジアと太平洋地区と申しますことは、オーストラリアとニュージーランドが加わるということであります。
  65. 岡良一

    岡委員 だから、私は、そこに日本の科学技術外交の、いってみれば非自主性があるということを言いたい。アジア諸国において、中共は韓国よりも台湾よりも大規模な出力を持った原子炉がある。おそらく昨年の三月には韓国や台湾よりも数が多い。プルトニウムの処理施設までもすでに数年前につくっておる。それは現に稼働しておるじゃありませんか。そういうことはわからないはずはないと思う。そういう国をなぜ呼ばないのか。しかも、そうして国境を越えた科学の分野においてやはり科学者平和利用のための交流をやる。これがアジアにおける平和であり、また、各国の軍事利用に対して、阻止し得る一つの大きな役割りを演じ得る期待を持てると思う。だから、こういう機会にこそ呼ぶべきがほんとうではないか。何もIAEAにこだわる必要はない。  私はこの点で、実はボンベイでインドの原子力委員会の諸君と会ったこともある。このときにこの諸君は、やはり中共を入れるべきだということを私に言っておった。  なぜ日本が中共を除外するのか。その理由は、IAEAの加盟国だけだというようなことで、一方ではあるいは原爆実験もするかもしれないだろうというような不安な情勢を求めてかもすようなことになる。会議自体の権威からいっても、責任からいっても、まことに納得いたしがたい。
  66. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 昨年の三月のアジア太平洋地域の原子力会議というものが日本で行なわれることになりましたのは、その前にいろいろ準備が進められておったのでありますけれども、日本がそういうようなことを進んで開くということについては、いろいろ考慮すべき点もあったように聞いておりますが、最終的に日本政府がそういう国々に働きかけまして、その結果それぞれ代表を出してもらうということになったようでございます。  そこで、この会議の結論にもありますように、この会議をまたこの次どこかの国が主催して同じように開くということではなくて、IAEAのアジア太平洋地域にもっと目を向けて、たとえばこの次のこの種の会議はIAEAが主催をして開くようにしてほしい、これが参加国全員の希望として表明され、そのときに列席されておりましたIAEAのエクランド事務総長も、それについては努力をする旨の言明をしておるわけであります。  そのように、日本はIAEA創立以来これに協力するということが基本方針でございますから、IAEAの仕事と対立するようなことになることは極力避けてきておりますし、この会議についても同じような方針をとったわけでございます。ですから、IAEA加盟国ということは、その次のことを考えますとやはり必要な条件であると思います。このことは原子力委員会だけできめたことではございませんで、これの主催は外務省の仕事でありますから、そちらとも十分打ち合わせをした上できめたことでございます。
  67. 岡良一

    岡委員 それは外務省も、それから原子力委員会も、非常な手落ちだと思う。IAEA、IAEAと申されますが、IAEAの憲章第二条の目的にはどう書いてありますか。原子力平和利用を通じて人類の繁栄と福祉の増進につとめるのがIAEAの目的だと書いてある。そして、そういう目的のためにこの会議が開かれておるのではないですか。  そうしてみれば、このアジアの特殊な事情のもとにやはり中共を入れるということは、当然の措置である。こういうへんぱな措置をとるということが、この科学技術外交というもののこれまでの日本の欠点であった。  私は申し上げたいのだが、御存じのように、かつてはバートランド・ラッセル、アインシュタインの共同声明があって、その後全世界の科学者がウィーンに集まってウィーン宣言を出した。核兵器の禁止を幾らうたっても、万一戦争が始まったのでは、おそらく高度の工業国は核兵器をひそかにつくって使うだろう、だから、世界の平和は核兵器の禁止ではなくて、全面軍縮でなければならぬという結論になっておる。これを引き受けて、一昨々年ですか、一昨年ですか、九月に国連総会米ソ両国全面軍縮に関する共同提案をしている。このことは明らかに、世界の科学者の良識が世界平和のための大きな要素になっているということを如実に示しておる。  だからして、もしわれわれがアジアの平和を希求するならば、日本の科学者も中共の科学者も、原子力の分野においては堂々と平和利用のための交流をすべきである。こういう会議には喜んで迎えるというような方針を持つことが、中共の原子爆弾というものに関してわれわれが非常な不安を持っているときに、私はとても大切なことだと思うのです。どうなんですか、これは。原子力委員長にお尋ねをしたいのだが、科学者の諸君が、御存じのように、パグウォッシュ会議の日本版のような会議を開いて、科学者立場から平和問題を取り上げ、論じておられる。中共の科学者とそういう意味の交流を、日本の科学者の諸君が立ち上がってやろうというときには、政府もこれに大きな理解を与え、協力を与える、これは私は当然なことだと思うのだが、原子力委員会としてはどう考えるか。
  68. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 問題は、これはよくおわかりになっておるように、中共とか、北京政府をいかに取り扱うかというところにやっぱり問題が返っていくのじゃないか。ただ単に科学者、技術者の扱い方の問題ではないだろうと思います。ただいま議論になっておりますIAEAにいたしましも、このメンバーでないことは御承知のとおりであります。ウィーンに本部のあるこのIAEAには八十数カ国加盟しておりますし、もちろん共産圏のソ連をはじめその他の国も入っております。したがって、そのウィーンの会議性格は非常にはっきりしておると思いますが、やはり今日問題になっておる中共の身分の問題、その身分が解決しないと、ただいま仰せのごとく科学はどことも交流あってしかるべきじゃないか、平和利用だ、ただこういう意味からそう除外する筋のものじゃないのじゃないか、こういう議論にはちょっと飛躍があるのじゃないか。まことに残念ながら、ただいまのところはIAEAの正式メンバーになっておりませんし、今度フランスは承認をいたしましたが、まだわが国態度も厳然としており、いわゆる政経分離の立場においてこれとの交渉を持つと言い、その他の文化交流、こういう点はすでに口にいたしております。  あるいは、こういう日本で開催される国際会議は別といたしましても、それじゃ科学の交流、そういう意味の問題はどう考えるのか、こう言われるならば、私は過日もこの委員会でお答えしたと思う。これは私ども原子力平和利用なんだから、どこまでも秘密のものはございません。したがって、その意味においての平和利用で、わが国の資料などが外国、中共をも含めてそういうものに出たからといって別に異存はないはずだ。ただ、正式のルートを通さないと、私ども責任を持つ立場から言うとどうも困りますから、研究者の個人の自由は、そういう意味では困りますよということをお答えしたように思います。ただいま各方面にわたって民間のベースにおける交流、それは盛んに行なわれておるというのが現状ではないだろうか、かように思います。
  69. 岡良一

    岡委員 ただ、文化交流の一翼として、日本の核物理学の専門家、技術者が、中共のそういう諸君との間に、政経分離と同じ立場において十分な交流をするということは当然なことだと私は思う。これは政府も認めておるというのだから、むしろこれを推進をするというぐらいな意気込みがあってもいいのじゃないかということを私は申し上げているのです。  それから、国際原子力機関に加盟しておらない、国際連合に加盟しておらないというんだったら、韓国だって国際連合に加盟しておらないじゃないですか。そうでしょう。韓国が加盟しておりますか。
  70. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 韓国はIAEAに加盟にしておる、そして国際連合において、朝鮮半島における唯一の合法的な政権であるとはっきり認めておる、こういう状況でございますから、中国の場合とは遺憾ながら事情を異にしておる、かように思います。  ことに、私は文化交流ということはしばしば言っておるから、文化交流の一翼として科学技術の交流もあってしかるべきだ、これは一般的に申し得ることでございます。  しかし、なお詳細に誤解のないように願いたいのは、先ほど来御指摘のように、中共が原子力を軍事的に使う、こういうことならば、私どももこれは相当警戒を要するのではないだろうか。だから、そういう意味におきましても、軍事的には使わないのだ、われわれはどこまでも平和的利用だ、当方には秘密はございませんが、その材料が軍事的に使われることは私どもの予期しないことなんだから、なるべくそういうことのないような慎重な方法をとることは、これまたあたりまえでございます。誤解のないように申し上げておきます。
  71. 岡良一

    岡委員 国連で朝鮮半島を代表する政権と認められるかどうかは別として、国際連合に加盟しておらないことは事実です。  それから、この原子力機関とか、そのほか国際連合には下部機関がたくさんある。その中には国連に加盟が認められておらない国も、いろいろな形で参加している機構があるはずだ。してみれば、アジア地域において原子力平和利用会議を持とうとすれば、当然中共を入れる。韓国や台湾というふうな原子力についてはきわめてまだ幼稚な段階の国を呼んで、一万キロワット以上の出力を持った原子炉を運転させてほんとうにスペント・フュエルの処理施設を持っているような国を呼ばない、というような政治的な偏向が日本の科学技術外交の中にある。こういうような点を、私は基本的には自主性がないと言っておる。しかし、科学者の良識というものが世界平和の大きなささえにいまなっておるという事実を、もっと目を開いて見てもらわなければいかぬと思う。これは佐藤さんと押し問答をしてみたところで意味がないからやめます。  そこで、一言だけ。これは、原子力の小委員会も設けられておるので、いろいろなレポートもいただいておる。それを読んで、その内容についてということで、私はお尋ねはいたしませんが、原研の今日の状況に対して、原子力委員会は一体責任を感じておるのかどうか。この点、私はきわめて遺憾に思う。原子力研究所の今日の現状、あの紛争の実態というものには、原子力委員会は当然重大な責任があると思うのだが、どう考えておられるのか。
  72. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お説のとおりだと思います。私、原子力委員長としてさようにお答えいたします。
  73. 岡良一

    岡委員 内容には触れません。  ところが、きょういただいたこの資料を見ると、原研の立て直しということが大きな焦点として国民の目が向けられてまいった一月、二月、どうなんですか。原子力委員会の定例会議は一月が一回も開かれておらない。二月が一回。毎週水曜日に開かれるということになっておるのに、原研の建て直し問題について一番国民の視聴が集まっておる、しかも、原子力委員会の人事というものは国会人事なんです。原子力予算というものは一括計上して、原子力委員の皆さんが責任をもって配分しておられる。八年間に三百五十億の金をつぎ込んだものが、いろいろなことで国民の期待を大きく裏切るような結果となっておるときに、こういう怠慢なことで、一体委員長は、責任を感じておると言われるが、全然怠慢ではございませんか。何の責任をとるのか。もっと真剣に取っ組んでいくのがほんとうだと思うのだが、実に怠慢きわまる。どうなんです、こういうことは。
  74. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん、ただいま原子力委員会にその責任もあるということを申し上げましたが、ただいま怠慢だというおしかりを受けた。これはここに手元に出ております会議の議題そのものについて言われておるのではないかと思います。あるいは開催の回数が少ないとか、かような意味から、そういう形の上でお考えになるよりも、実質的にどういう処置をとっておるか、そのほうを賢明な岡さんとしては十分御考慮願いたいと思うのであります。形だけで云々されないようにこれは要望しておきます。
  75. 岡良一

    岡委員 最後に、これはどうせ小委員会で十分また内容にわたって論議をしたいと思いますが、原子力委員会のほうからいただいた報告も私はとうてい納得ができない。全く顧みて他を言うような無責任な態度です。  問題は、先ほど長官も言われたように、原子力基本法が民主的に自主的に運営されなければならないということがはっきり法律規定されておるにもかかわらず、原子力政策というものは全然そうじゃない。ここに問題点がある。これはいずれ日をあらためて申し上げます。  しかし、賢明な岡さんなんて、おだててもらっては困る。形式的に見られるというが、原子力委員の定例会議という公式な会合を開いて真剣にこの問題と取っ組んでもらわなければ困るじゃないですか。これが原子力委員会の当然な責任じゃないですか。原子力研究所の改善なんという打ち合わせ会なんか開かれたって、そんなことで問題が解決するものじゃない。権威ある原子力委員会の運営としては全く遺憾だと思う。この点は質問を保留して、きょうはこの程度で終わります。      ————◇—————
  76. 前田正男

    前田委員長 次に、科学技術行政に関する問題について質疑の通告がありますので、これを許します。西村英一君。
  77. 西村英一

    西村(英)委員 一言、長官にお伺いします。きわめて簡単なことですが、非常に重要な事柄であります。  国の繁栄のためには科学技術振興がいわれておることは御承知のとおりであります。そのためにこの国会でも科学技術の特別委員会もできましたし、また三十二年ですか、科学技術庁もできて、こういうふうにして科学技術振興に力を入れておるのでありますが、実際予算の面から見ましても、科学技術庁ができました当時と今日とは、科学技術振興が国の繁栄には必要だ必要だといわれておる割合に、科学技術振興費の国家財政に対する比率であるとか、あるいは国民所得に対する比率というものがだんだんスローダウンしつつあることも、もう大臣御承知のとおりだと思うのです。  そこで、先般来、何とかここでひとつ科学技術振興のために新しいことを考えなければいけないだろうということで、科学技術庁を中心にしまして、私たちも例の科学技術基本法というものをつくって、そして筋金を入れようじゃないかということで、基本法が数年来議論されておるわけであります。しかし、科学技術基本法と一口に申しましても、なかなかそういうものの立法技術もむずかしいし、いろいろなことで今日まで行き悩んでおるのでありまして、科学技術庁でもそのほうに検討を加えつつある。私たちのほうも、何とかこれを将来に向かってひとつ法律的な裏づけをしたいということは考えておるのですが、大臣も先般から、この国会には科学技術法は出すに至らないだろうということを言われておるわけであります。しかし、法案は出さなくても、科学技術振興に対する特別な、ひとつ大臣に、画期的と申しますか、考慮をしていただきたい。  結局、科学技術基本法を出しましても、その基本法の中身になるものは、私の考えでは二つしかないのでございます。一つは、科学技術の行政をどういうふうにしてやっていくかということの行政機構の問題。それからもう一つは、科学技術行政の長期計画をつくれということ。その基本法をつくりましても、その中身になるのは、おおよそこの二つではなかろうかと思うのであります。  この行政機構の問題につきましては、これもひとつ大臣に、もう認識しておると思いますが、私申し上げたいのは、いま科学技術振興費という予算がありますが、それが三十九年度四百二十五、六億でしょう。ところが、科学技術庁長官が科学技術庁の予算として計上されておるものしか手がつけられないとすると、おおよそ科学技術振興費の三分の一ぐらいしか長官は権限がないと申しますか、タッチしておらないのであります。いわんや文部省の大学の科学技術に対するところの予算を考えますると、おそらく科学技術予算の十分の一ぐらいしか、せっかく科学技術庁長官があってもタッチしておらないのであります。したがいまして、私は先般も、科学技術庁長官がある以上は科学教育にまでタッチしなければいかぬだろう、こういうことを申し上げたのがその一つでございます。  この行政機構の問題につきましては、ただいまも臨時行政調査会がありますので、これをどうするか一生懸命やっておりますから、これの答申が出ましたら、ぜひひとつこの線に沿うて行政の建て直しをやってもらいたい。これに対する大臣の、もう十分心がまえはできておると思いますが、行政のあり方について、答申が出ましたら十分やっていただきたいということについて、その所信をちょっとお伺いしたいと思います。
  78. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまの御意見を交えてのお尋ねでございますが、御意見の点につきましては、しごく私ども同感でございます。ただいまの機構を一体どうするかということは、お話にありましたように、ただいま進行いたしております行政調査会の調査を待ちまして、しかる上でこれと真剣に取り組む、かような考え方でございます。
  79. 西村英一

    西村(英)委員 それから、第二の問題の、この科学技術行政の長期計画ですね。いままでの予算がスローダウンしたというのも、その計画性がないからであります。それで、予算折衝のときになるとその場限りで考えるから、だんだん予算としてもスローダウンをしてくるし、目新しいことがない。  したがいまして、科学技術の行政の長期計画、何をやらんとするか、何をやれば国家の繁栄を科学技術の面から期待できるかということで、私は長期計画というものが最も必要であろうと思う。これは基本法があるなしにかかわらず、いまからでも考えなければならぬ問題だろうと私は思うのです。これは、長期計画をつくる方法としては、科学技術庁がどういう方法でつくってもかまわないし、せっかく科学技術委員会もありますし、科学技術庁が、どういう方法でもいい、しかし長期計画は絶対に必要だと私は思うのでございますが、長期計画をつくるつもりがありましょうか、どうでしょうか。ひとつその点をお伺いいたしておきたいのでございます。
  80. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 長期計画という、いわゆる計画と、こういうことでしばるかどうか、そのことばはやや違うかわかりませんが、とにかく長期の見通しというか、ある程度の腹づもりを持たない限りは困る。しかも、その腹づもりが、ただ長官だけの問題ではなしに、科学陣、学界の協力を得るような、そういうものがほしい。これは私も念願するところであります。ただいまお示しのごとく、この点につきましては、もっと考えておかないと、予算が先ぼそりになっておるとか、あるいは力を入れるべき技術部門がおくれているとか、あるいはまた開発が特殊の科学部門でおくれているとか、いろいろあるだろうと思います。それが面々によって違っておるようでは困りますから、各界の権威のある方々の御意見を聞く。ただいまならば最高技術会議、それに諮問して、今後力を入れていくべき点、そういう点を明確にする、こういうことが望ましいではないだろうか。いずれにいたしましても、各界、学界や財界の協力を得る、こういう立場に立ち、また各省の協力を得るような立場において、ただいま申し上げたような手続を順次踏んでいくべきではないだろうか。そういう意味から、長期科学技術振興計画——これが計画ということばになりますか、そういうものを考えてみる、これはその時期にきているではないか、かように私も思います。
  81. 西村英一

    西村(英)委員 それだけ大臣所見を伺いましたから、本日はこの程度にして私の質問を終わります。
  82. 前田正男

    前田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。   午後零時三十三分散会