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1964-06-16 第46回国会 衆議院 運輸委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十六日(火曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 有田 喜一君 理事 關谷 勝利君    理事 塚原 俊郎君 理事 西村 直己君    理事 山田 彌一君 理事 久保 三郎君    理事 肥田 次郎君 理事 矢尾喜三郎君       佐々木義武君    壽原 正一君       高橋清一郎君    高橋 禎一君       西村 英一君    長谷川 峻君       細田 吉藏君    勝澤 芳雄君       泊谷 裕夫君    山口丈太郎君       内海  清君    佐々木良作君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 綾部健太郎君  出席政府委員         運輸事務官         (海運局長)  若狹 得治君         運輸事務官         (船員局長)  亀山 信郎君         海上保安庁長官 今井 榮文君  委員外出席者         運輸事務官         (海運局参事         官)      高林 康一君         運 輸 技 官         (船舶局検査制         度課長)    佐藤美津雄君         海上保安官         (警備救難部         長)      猪口 猛夫君         運 輸 技 官         (気象庁予報部         長)      日下部文雄君         日本国有鉄道参         与         (船舶局長)  小山 一郎君         日本国有鉄道参         事         (船舶局海務課         長)      荒木 善之君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  海上衝突予防法の一部を改正する法律案(内閣  提出第一三一号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  海上衝突予防法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、政府当局より補足説明を聴取いたします。若狭海運局長
  3. 若狹得治

    ○若狹政府委員 海上衝突予防法の一部を改正する法律案につきまして、補足的に御説明申し上げます。  現行海上衝突予防法は、一九四八年の海上人命安全会議において採択されました国際海上衝突予防規則に基づきまして制定されたものでありまして、受諾国は五十七でございますけれども世界各国ともわが国と同様に措置いたしておるようでございます。一九六〇年に開催されました海上人命安全会議におきまして、新しい情勢に適応するようこの国際規則が改正されましたので、これに即応するように海上衝突予防法の改正を行なうことが必要となったわけでございます。  この国際規則発効期日につきましては、本月初め開催されましたIMCO、と申しますのは国際政府間海事機構でございますけれどもIMCO理事会におきまして、百総トン以上の船舶について、受諾国船舶数合計世界船舶隻数の七五%になるか、あるいは総トン数合計世界船舶総トン数の八五%に達するか、いずれかの条件を満したとき、そのときから一年後において規則発効するというように決定されたということでございます。したがいまして本年四月現在の受諾国は二十七カ国で、隻数におきまして六〇・八%、総トン数におきまして六六・五%でございまして、日本受諾いたしますと隻数において七三%、総トン数においてやはり七三・三%に達しますので、日本受諾時期が事実上この規則発効時期を左右するものと考えておるわけでございます。  次に、この法律要旨について御説明申し上げます。  第一に、従来は総トン数四十トンあるいは二十トン未満船舶につきまして灯火表示信号方法を緩和しておりましたけれども、最近世界的に減トン措置によりまして船舶の大きさとトン数が比例しないという傾向を生じておりますので、これらの小型船範囲を最も正確に示す方法といたしまして、船舶の長さを基準として採用することといたしたのでございます。  第二に、引き船が他の船舶を長く引いております場合には、引き船と引かれ船との関係が不明確になりまして、また引き綱の中間水面下に没しまして、他船中間を横切られる危険が生ずるおそれもありますので、引いている長さが百八十三メートルをこえる場合におきましては、昼間においても、引き船、引かれ船の双方に黒色のひし形の形象物を掲げさせることといたしました。  第三は、測量船航路標識敷設船海底電線敷設船水中作業船等は、その特殊作業従事中は、他船の進路を避けることが困難でございますので、その旨を示す特殊な標識を掲げることとされておりますが、航空機の発着に従事する船舶、及び洋上におきまして、燃料油等の補給に従事いたします給油船につきましては、その作業従事中は一定の速力及び針路を保つ必要がありますので、これらを前記特殊作業船の範疇に入れまして、また、機雷掃海従事する掃海作業船につきましては、その作業従事中は前の特殊作業船と同様の状態でございますが、なお、その後部におきまして機雷の爆発のおそれがあり、また危険でございますので、緑灯二個あるいは三個の独特の灯火表示させることといたしました。  第四は、漁労従事船につきましては、従来は、その従事している漁労方法の種別、動力船帆船との別、航行中と停泊中の区別によりまして、多様に分類された灯火表示することとされておりましたため、その識別が非常に困難でありましたので、これを他船運航妨害度の少ないトロール船につきましては緑白灯妨害度の大きいはえなわ船等につきましては、赤白灯識別灯といたしまして、かつ、対水速力を有する場合に限りましていずれも舷灯船尾灯を掲げるように、簡明な方法に改めたわけであります。  第五といたしまして、長さ十九・八メートル未満小型船舶引き船または押し船従事する場合におきましては、これらが単独航行中の場合に準じまして、引き船灯及び舷灯性能等を緩和することといたしました。  第六といたしまして、漁労従事船霧中信号につきましては、従来、一回の吹鳴と号鐘信号または高低交互に変調するサイレンの信号でありましたが、漁労従事船運航の形態が特殊作業従事船の場合に類似いたしておりますので、これを特殊作業従事船と同様の「長、短、短」の信号に改めたわけでございます。  第七といたしまして、横切りまたは行き会い等の場合における航法規定は、船舶が互いに相手を認めた場合に適用されることとなっておりますけれでも、近時レーダー使用が普及いたしましたため、霧中等視界制限時におきましても、レーダー映像によって他船の存在を知り、直ちに一方的な動作をとる傾向がありまして、このような一方的動作に起因する衝突事故世界的に多発いたしております。したがいましてレーダー使用する場合につきまして、使用上の注意事項を勧告することといたしましたほか、レーダー映像によって他船を認めた場合の航法特則を設けたわけでございます。  第八といたしまして、帆船相互間の航法を、国際ヨットレース規則と同様の内容のものに簡略化いたしました。  第九といたしまして、ヨット小型遊覧船等の増加に対応いたしまして、大型船舶航行可能な水域が限定されているような狭い水道におきましては、これらの小型船に対し、大型船安全通航阻害を禁止することといたしました。  第十といたしまして、遭難信号として新たに一九四八年の海上人命安全条約で採用された腕の上下連動及び大量発煙による信号を加えました。  以上がこの法律案の大体の要旨でございます。     —————————————
  4. 川野芳滿

    川野委員長 これより質疑を行ないます。山口丈太郎君。
  5. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 ただいま説明になりました海上衝突予防法内容について質問をいたします。まず私は気象庁関係について質問をしようと思ったのですけれども、見えておりませんから、海上保安庁質問をいたしたいと思います。  先日配付されました資料のうちで、昨年の海上における衝突隻数が明示されておりますが、この衝突のおもなるものがどういう原因によって起きておるか、まずその衝突原因について御説明を願いたいと思います。
  6. 今井榮文

    今井政府委員 衝突事故原因の大多数は、操船上の過誤ということになっております。
  7. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 操船上の誤りによる衝突、これは概念的にはそうでありましょうけれども、ただ一がい操船上の誤りということだけでは律せられないものがあるのではないかと私は思うわけでありますけれども、これはただ、いま簡単に御説明になりましたように、操船上の誤りということだけに原因するものでしょうか。
  8. 猪口猛夫

    猪口説明員 操船過誤に至りますまでの遠因的な問題といたしましては、もちろん気象的な要素多分に含まれているわけでございます。なおかつ、あるいは海図等の見誤りとかそういうような要素多分に含まれておるのでございますが、大体私たちのほうの統計的な数字から申し上げますと、四三%は運行上の誤りであるという数字が出ているわけでございます。
  9. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 いま申された中に、海図のいわゆる読み誤りというような点も指摘されたようでありますが、私はこの海図についてはなるほど正確なものがあるのですけれども、その航路表示その他について完全な措置がないのではないか、それがいわゆる航法を誤らして衝突をするというような事態があるのではないか、こういうふうに考えるわけでありますけれども、これはいかがですか。
  10. 猪口猛夫

    猪口説明員 御承的のように日本沿岸は非常に島嶼あるいは暗礁、岬の出入りが多いとかいうことで、仰せのとおりに航路標識がたくさん必要であるということは、日本がダーク・シーといわれているほどでございまして、お説のとおりでございますが、しかしやはり乗り組み員の十分なる注意をもっていたしますれば、航路標識はどこにどういうものがあるということが海図上に明示されておりますし、それから暗礁等につきましても特異な暗礁については優先的に航路標識も、現段階では一〇〇%とは申せませんが、整備されておると思われます。もちろん全面的に航路標識整備上に欠陥がないとは申せないと思いますが、一に乗り組み員の注意いかんによってある程度の事故は防止されるのではないかと私たちは考察しておる次第でございます。
  11. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 いま答弁がありましたように、私もただ乗り組み長が目をつぶっていても衝突予防できるとは考えていない。安全航行ができるとは考えておりません。けれども当局答弁としてはなるほど完全なものでありますということしか答弁はできないかもしれませんが、しかし実際に見ますというと、たとえば瀬戸内海のごときも主要航路標識はほぼ完全にあるようには見えますけれども、しかしあのふくそうする航路で私はなお欠けているものがあるのではないかと思う。いわゆる航行方向によって航路指示を変えるというような措置というものはほとんどない。その航路の中であればどういうふうに航行しても、別にそれがあまり規制の対象になっていないというようにも聞いておるわけでありますが、特にああいう狭い海上において、そういうふうな処置ができていないのではないかと思われるのですけれども、これについてはいかがですか。
  12. 猪口猛夫

    猪口説明員 来島海峡とか関門海峡とか明石海峡等の狭水道におきまして、私たち海難防止または海難救助に当たります者の立場から申し上げますと、あたかも陸上交通標識のように、一方通行なら一方通行表示するような航路標識の配備、整備ということが好ましいともちろん思っております。しかし御承知のように海の上は陸上の道路とは違いまして、船も動いている、そのものも動いているというようなことでもございますし、また航路標識整備様式につきましてもある程度国際的な様式等もございまして、一がい陸上のそれをそのまま適用するということは非常に困難だろうと思います。狭水道におきます航路標識整備あるいはその運航につきましては、運輸省にもあります海上航行安全審議会等におかれまして十分審議されておりますし、また問題があるたびに審議されておるようでございますので、そういう点につきましてもいろいろ問題を研究しておられると思います。狭水道海難の実績から見ましても、これで足りるということでもございませんが、現在の航路標識等につきましても長年研究され、また整備されて現存に至っておりますので、現状でまずまず一〇〇%とは申しませんが、満足しておらなければならぬのではないかと考えておる次第でございます。
  13. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は陸上交通そのままを海上に当てはめるというようなことは、技術上も実際上もできないと思いますけれども、私はもう少し標識整備して、少なくとも主要航路へ乗りましたならば、その船が少なくとも他航路を妨害するようなことのないように、たとえば東を向いていく主要航路があれば、それに対して西向きの主要航路が必ずあるわけでありますから、それについてもう少し指導航路と言いますか、指示航路と言いますか、そういうような標識を設けて、あの海上はますます繁雑になってくると思いますが、そういう予防措置を完全にする必要があるのではないか、こういうように考えるわけです。これについて審議会等があるようでありますが、議論になっているのかなっていないのか、それをひとつお尋ねしたいと思います。
  14. 今井榮文

    今井政府委員 いま警備救難部長から答弁をいたしましたように、航路標識につきましては、大体において最小限度のものは一応整備してあるということでございますが、先生の御指摘のように、まだまだ足らない面が相当あるわけでございます。御承知のように、いわゆる大型灯台というものは大体主要航路においては一応整備を見ておるわけでございますけれども、私どもといたしましては昭和三十七年度からこれを初年度といたしまして、一応五カ年間にどういうふうな種類のものをどの程度つくっていったらいいかという計画を実は持っているわけでございます。その内容を申しますと、港湾開発に伴います港湾標識、あるいは新たな漁港開発に伴います漁港のいわゆる港湾標識というようなものを考えております。  それからいま御指摘のような沿岸航行する船舶が常に移転方位がとれるようにするための沿岸小型灯台というふうなこと、あるいはまた暗礁その他につきましての障害を警告する意味での障害標識、それからさらに非常に進んだシステムでございますが、ロランであるとかあるいはデッカであるとか、そういう電波局を新たにつくる、こういうふうな計画を持っております。これによりますと、さらに大体一千基を緊急に増設する、それ以外に既存の老朽施設あるいは機器等につきましてこれを改良し、燭光を増大するという措置をとっていくということで進めておるわけでありますので、昭和三十九年度におきましては航路標識整備費として約十二億六千万の予算を計上いたしまして、三十九年度の実施計画を現在行ないつつある、こういう状況でございます。
  15. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 ただいまの御答弁で大体了承いたしますが、特にこの瀬戸内海においては、見えておる島以外に暗礁地帯が非常に多いわけです。この暗礁明示標識というものは、いまの御計画によりますと完備される方向にあるようでありますけれども暗礁表示標識というものはぜひ一日も早く完備してもらわないと、私は非常に危険だと思うのです。これが表示してないために、航海図によれば正確に行けるわけでありますけれども小型船漁船等においては必ずしもそういうものを備えつけておらぬ船が多い。ですから無差別に航海する。そういたしますと、幾ら片方の船が完備した海図によって航海をしておっても、衝突は免れないという結果になる。したがって私はこれを非常に憂うるわけでありますけれども、この暗礁表示標識というものはいまどの程度に進んでおりますか。
  16. 今井榮文

    今井政府委員 いま手元に詳細な資料がございませんので、詳しい点につきましては後刻資料をもって御報告いたしたいと思います。  障害標識につきましては、大体主要な暗礁等障害個所につきましては相当の施設を整催いたしておるつもりでおります。しかしながら、御指摘のように、障害標識につきましても必ずしもまだ十分というわけに参りませんので、特にいわゆる暗礁関係で設置に非常に金のかかる、たとえば一基の障害標識をつくるために一億以上も金がかかるという個所も相当ございまして、私たちとしてはそういうところを特にやりたいということで、実はお願いはいたしておるわけでございますが、まだ必ずしも実現いたしておりません。したがいまして四十年度予算におきましては、やはりそういう点に重点を置いて障害標識整備していきたい、かように考えております。
  17. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 そこで大臣質問いたしますが、いまお聞きのように、この航路を設定するにあたって、完全航行を確保するためには、いままで質問いたしましたように、外国はどうか知りません、日本内海ぐらい暗礁の多いところはないのではないかと思われる。しかもその内海における船舶航行というものは、陸上自動車交通と同じくらいのふくそう度を示しておる。したがって、この暗礁表示標識というものは、これは航海上一番重要なものだと私は思うのであります。ところが非常に経費がかかるので、なかなかそれが意のようになっていないというのが実情だと思う。これについては、運輸大臣、どういうふうに危険個所表示整備しようとされますか。その確たる御計画をぜひ明示していただきたいと思います。
  18. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 先ほど事務当局が申しましたように、予算の許す範囲において年次計画を立ててやっておるはずでございます。そこで、私どもといたしましては、その予算が獲得できるよう、最善の努力をいたしてまいりたいと考えております。
  19. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 もちろん予算の許す範囲でありますけれども予算の許す範囲といっても、これには消極性積極性の二つがあると思います。これにはもっと積極性を持ってやっていただかないと、単なる一般的な概念ではこれは解決できないと思う。もう少し積極性のある対策を立てていただきたいと思うので、これはひとつぜひ運輸大臣に要望しておきたいと思います。  次に質問をいたしますが、これも保安庁関係になりますが、最近また朝鮮韓国においては、内政の慕情もあるんだと思いますが、李ライン警備が非常に強化されたり、あるいは日本漁船を追跡するというような事故が起きておりますし、それからこの五月三十日には対馬の三ツ島灯台北方領海怪船が侵しているのを巡視艇が捜査をしようといたしましたところが、不法ないわゆる威嚇行為があって非常に苦労をされておるようであります。こういうような場合に、漁船警備艇の間をさくために巡視艇がその間に入る。これはほんとうを言えば特攻隊のようなもので、悲壮なものじゃないかと私は思うのです。こういうようなものに対処するためにも、もっと私は政府としても朝鮮に対して積極的な抗議なり、あるいは必要な安全処置をとるべきだと思うのです。海上保安庁としては、こういうものは、海上における人命の安全のための国際条約や、その他いろいろの条約に照らしても、韓国違法行為じゃないかと思うのですけれども、これはいまどういう処置をしておられるのですか。
  20. 今井榮文

    今井政府委員 おっしゃるような事件が最近しばしば起こっておるわけでございますが、私どもといたしましては、韓国領海三海里より外側は公海であるという観点に立ちまして、その海域において漁労する漁船の保護に挺身いたしておるわけでございます。お説のとおり韓国警備艇の活動は、国際法の慣例からいいましても明らかに違法なる行為であるというふうにわれわれは考えております。
  21. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 事務当局違法行為であると認定をしても、これは政府においてしかるべき処置をとられなければどうにもならない問題でありまして、これは運輸省関係だけではなくて、私は日本政治全体の問題だと思うのですけれども、一体いままでにどういう処置をしておられるのですか。さっぱりわれわれには処置をされておることがわからない。向こうの不法行為はやられっぱなし、こういうように聞こえるのですが、これは運輸大臣どうですか。
  22. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 日本が置かれておりますところの地位にかんがみまして、不当な疑惑を持たれるような行為をしないようにして、しかも日本漁船を守るということにつきまして海上保安庁としては最善を尽くしておりまして、そういう事故をなからしむるよう努力いたしております。万一そういうことが起こりました場合には、外交折衝によって強く相手国へ、すなわち韓国政府に対して強く抗議を申し込みまして、順次解決していきたい、かように考えて、今朝も外務大臣に対してそのことについて一そう厳重なる抗議を要請いたしておいたような次第でございます。ただ、何分にもいろいろな事故が起こりまして、私どもといたしましても遺憾に考えておるのでありますが、極力そういうことのないように努力いたしたいと思います。
  23. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 これは海上衝突とはあまり関係はないのですが、しかし、わが国公海の安全という面から見ますというと、それだけでもゆゆしい問題なので、どうも政府のやっておられるのは——いろいろの事情とはどういう事情なのか私は知りませんけれども、こういうような不法行為によって拿捕するのはまるきり強盗だと思います。強盗的行為です。国際法を無視し、そうしてかってに李ラインなんて引いて、そうして中へ入っているものを拿捕するとか、あるいは銃撃まで加えるなどに至っては、全く昔の海賊行為です。これについては、ただ単なる通り一ぺんの抗議ぐらいなことで承知をするような人じゃありませんよ、極端に言いますと。国際法上こういうことばを使っちゃどうかと思いますけれども、実際耐えられません。ですから、もっと政府の強い態度で損害賠償を訴えるなり、あるいはしかるべき国際機関審議を求めるなり、そういう強硬な処置はとれないものですか。ただ海上保安庁の人にそれをまかしておくというのでは気の毒です。やっぱり高度の政治力が必要であるし、確固たる信念に基づいてやらなければだめだと思います。閣議じゃこれについて議論をされておると思うのですけれども、どういうことなのですか、この処置を一ぺんお聞かせ願いたい。
  24. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 実力を行使してやるということは、わが国の置かれたる現在の地位におきまして困難でございますから、外交上の交渉にまつ以外に方法はないと思います。そこで、極力日本権益擁護意味から、外務大臣を通じていろいろな交渉をやりまして、ときにはその交渉をいれられて漁民、漁船ともに釈放されたこともございます。しかしこのごろまたそれが激しくなったのは、おそらくは韓国の政情によるものだろうと思いますが、はなはだ遺憾にたえません。すみやかに万全の方途を講ずるよう、実は今朝も、昨日の拿捕事件に関しまして外務大臣閣議の席上で強く要望いたしまして、外務大臣もその趣旨に従って強く抗議をするということでございました。いずれにいたしましても、日本平和国家であって、武力を使わないという原則を乱すようなことがあってはこれまた大問題になるので、慎重の上にも慎重を重ねまして、出先の海上保安庁としてはほんとうに切歯扼腕しておるだろうと思うのですが、ただいま申し上げたような事情でございまして、順次外交交渉によりまして最善解決策をとりたい、かように考えて、政府としてもそういうふうに努力する、外務大臣としてもそういうふうに努力すると申しておりますから、しばらく推移を眺めていきたい、かように考えております。
  25. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 あなたはじきに実力行使とか何とか言いますけれども、何も撃ち合いをせいとまで言っておるのではないのです。しかし、閣議で、何かこの巡視艇に武装するというようなことも御決定になったようでありますが、実際に実力行使をそれでやられるのですか。いかがですか。
  26. 今井榮文

    今井政府委員 先般閣議で御報告申し上げまして御了承を得ました内容は、五月の三十日に対馬沖にあらわれた快速の国籍不明船が重火器をもって保安官を威嚇したという事件に端を発しまして、悪質な領海侵犯に対しては断固国の権益を維持するというたてまえから巡視艇に軽機関銃あるいは自動小銃というものを備えたわけでございまして、これは主権の尊厳を維持するというたてまえからいえば当然な海上における警察行為であるというふうに考えております。したがいまして、そういったもので撃ち合いをするということがどうとかということではなくして、やはりこちらとしてもそういう悪質な侵犯事犯に対してはそれに対応するだけの措置を講ずる、こういう趣旨でございます。
  27. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 なるほどいま御答弁がありました不法行為に対しては、何しろ国民の前にでも拳銃をぶっ放すこともやむを得ないこともあるんですから、何もそれを全面的に否定するというわけではありませんが、事、国際の問題であります。ですから、これについてはよほど慎重な態度をとらなければならぬと思うのです。そこで、何もそういうことをしなくても、こういう拿捕事件なんかでどんどん善良な人が拿捕されていって、向こうで不法裁判に処せられておる、そして長らくの間拘禁をされて、しかも船は没収される、そんな強盗的な人に対して制裁を加えるのなら、もっと経済上の問題なり、外交の問題でこっちもいろいろ対抗することはできると思うのです。それに一方ではどんどん善良な人間がいじめられておる。その国に対して一方では経済援助的に、たとえそれが民間であろうと政府間であろうと、どんどん援助をやっておる。そういうばかげたことはやめたらいいじゃないですか。そんな援助は打ち切ってしまいなさい。正常な取引をしようという中共やソ連との貿易すらいろいろ制限を加えておる。われわれののどもとへあいくちを突きつけて強盗的な行為をやっておる者に、何も金を貸したり物を売ったりする必要はありませんよ。何もそんな人と取引をしないでも、もっと正常なところと取引が幾らでもできる。閣議でそういうことについて話題になったことはないですか。そういう点については向こうの言うとおりなんですか。あまりにも一方的じゃありませんか。これはどうなんです。
  28. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 国民の憤りの考え方と申しますか、国民の心情はまさに山口委員のおっしゃるとおりでありますが、すべて日本の置かれている国際地位にかんがみまして、許されるだけの最善の道を尽くしていくのが日本のあり方であると考えまして、そういうことについていま努力をいたしているというのが現状でございまして、閣議でもあなたのおっしゃったような議論がしばしば出るのでございますが、ただいまのところ、そういうやめるとかやらぬとかいうような議論閣議ではありませんです。
  29. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 そういう手ぬるいことでは——向こうは実力強盗をやっているんですよ。強盗に追い銭といいますけれども、そんなものをやる必要はないと私は思うのです。なぜき然たる態度をとらないか。それが日本の置かれている立場じゃないですか。どうも政府日本の置かれている立場というものを逆に見ていると私は思っている。そんな逆な見方をして、いつまでも手ぬるいことをやっておったんではだめですよ。ですから、李ラインを撤廃してこういう行為をやめないならば、日本としてはもっとき然たる態度で、経済についてはあらゆる援助をしない、取引もしない、これくらい強い態度をもってなぜ臨めないのですか。国民が泣いていますよ。それを平気で見過しておるというようなことでは、これは政治にならぬと私は思うのです。私は何も抗議しようとは思いませんけれども、見ているとあまりにもかって気ままほうだいではありませんか。そんなことが一体許されますか。何をやっているのか私にはわからぬです。正常な生業を営んでいるものをかって気ままに拿捕して持って行ったり、あるいは不法入国をやったり、密貿易をしたり、一体韓国のやっていることは何なんです。そんなでたらめなことをやっている国は韓国以外にはありませんよ。それを何もしないで置いておくという手はないと私は思う。もっと強い態度で臨むべきですよ。私はこれを強く希望しておきます。  それから次に、国鉄にお伺いをしますが、さきの資料によれば、各連絡船の濃霧による運航中止は二十六航海、十三往復に及んでいる、こういうことを聞いているのですけれども、たとえば青函連絡船にしても宇高連絡船にしても、国鉄の連絡船というのは海上往来の非常に激しいところを、しかも横断的にやっているわけです。ですから非常に危険なんですよ。その危険な航路へ出ていってから航路上でとまっているというのはたいへん不安です。そこで私は、こういうような出港を未然に見合わせるというような措置がなぜとれないのか、これはどこに欠陥があるのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  30. 荒木善之

    ○荒木説明員 十三往復になっておりますが、二十六回航行中止になっております。このうち、高松を出ますときに、防波堤の灯台が見えます範囲が三百メートル、三百メートル以上見えますときは出航することを原則にしております。三百メートル未満のときは欠航するというふうなやり方をとっております。途中で欠航しましたのを合わせまして、二十六航海ということになっております。
  31. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はそういう事務的なことを問うておるのじゃないのですよ。濃霧のために出航してから途中で停船をしなければならぬ、しかも往来の激しい航路上に停泊しなければならぬというのは、どこに欠陥があるのかということを聞いておるのです。
  32. 荒木善之

    ○荒木説明員 気象情報を非常に参考にしておりますけれども、気象情報は非帯に幅の広い時間帯で出ますので、現実に宇野から高松のほうが見える、それから高松から宇野のほうが見える、したがって、気象情報が出ておりましても、晴れておりますれば出航して一向差しつかえないというふうに考えております。いよいよあぶなければとまる。とまりましたときは特別な停泊信号があるわけでありまして、そこで危険を排除しておる状態でございます。
  33. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 信号と言われますけれども、濃霧で向こうが見えぬようになれば、信号も見えぬようになりますよ。そこまでやってこぬと、信号は遠いから、二百、三百、五百メートルのところから見えぬのなら、航行もできぬ。だからそんなことでは衝突は予防できないと思うのですけれども……。
  34. 荒木善之

    ○荒木説明員 信号は汽笛信号ですから、相当の距離から聞こえると思います。
  35. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 警笛信号を鳴らすと言われますが、しかしその警笛信号で万全と言えないと私は思うのです。とにかく出航せぬに限るのです。ですから出航前に濃霧の発生している状況というものが両方の基地にもっと詳細に通報されなければならぬと私は思うのです。そういう処置を、それは気象庁の管轄だからとか、あるいはその判断は国鉄の判断だからといって、いわゆる官庁のなわ張り争いのように責任のなすり合いをしておってはいかぬ。そうするとまた洞爺丸や紫雲丸の事件が起こる。事件が起こってからとやかく言っても、これは貴重な人命を失った後のことでありますから、金銭によって解決できない問題ですよ。ですからそこのところをどういうふうに処置をせられるのか、ひとつ聞きたいということなんです。
  36. 荒木善之

    ○荒木説明員 いま先生のおっしゃったようなやり方をしますと、気象情報が出ましたら全部欠航になって、しまう。ところがそれが二十四時間あるいは三十六時間という長い期間で気象情報が出ております。その間運航を停止しましたら、ほとんど宇高連絡はとまってしまう。ところが実態は見えておる時間がある。その間は心配なく動ける、ほとんど動かしておるということであります。途中停泊することはめったにございません。出航時に気象情報と実態を見まして、晴れないと見ればほとんどとまっておるというのが実情でございます。
  37. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 いまの答弁のように機械的にやれと言うのじゃないのですよ。いわゆる濃霧が発生するおそれがあるとすれば、気象序は濃霧警報を発するでしょう。それが二日になるか三日になるか、何時間になるかわからない。その間とまっておったらたいへんなことになる。しかしそういう気象情報が出た、そうすると、国鉄ではそれを受けて、情報は出ておるが、いまどこからどこまでの航行区間、たとえば宇高連絡船をとってみますと、宇高間においては、この航路についてはいまの状況はこうだということで、的確に予報を知らされるというような処置をしてもらえば、たとえ濃霧警報が出ておっても、これは出航に差しつかえありませんし、また途中で停船するということはないと思う。ところがどうもそういうことではなくて、途中で停船をするような事態が起きておるのではないかと思うのですけれども、気象通報を受けて、それに対応するのはどういうふうにしてやっておるのかということです。
  38. 荒木善之

    ○荒木説明員 いまの第一点は、宇野、高松の両桟橋で気象観測をやっております。両桟橋から無線電話で各連絡船に情報を通報しておる、それと気象予報、二つを合わせてやっておるわけであります。あとは海峡のまん中に観測所がありますれば、なおさらけっこうだと思います。
  39. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 この図で見ますと、そういうものを設けるところがあるのですけれども、いまそういう施設はないのですか。
  40. 荒木善之

    ○荒木説明員 いまのところございません。
  41. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 運輸大臣、これはそういう通報をする場所は幾らでもあるのですね。この両端だけでは、いま言ったように、出航して途中でとまるという危険がある。これはぜひその予算を認めてやって、気象庁の所轄にするか、国鉄の直接の所轄にするかは、これは御決定次第でありますけれども、やはり途中にそういう観測所、通報するところを設けることが必要だと思います。大臣、これは予算でそういうものを認めてやるわけにいかぬのですか。
  42. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 たびたび申しますように、予算の問題でございまして、そういうことの必要を痛感いたして認めるようにぜひいたしたいと思いますが、ただいまのところそれでは来年からやるかとか再来年からやるかということは、国鉄の予算あるいは気象庁の予算等に関連しますから、ここでいま私が言明するということは差し控えたいと思います。
  43. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 どうもさっぱり要領を得ないことばかりでだめですな。気象庁どうですか、これは気象庁としてもひとつ考えなければならぬと思うのですがね。
  44. 日下部文雄

    ○日下部説明員 ただいまの問題につきましては、非常にごもっともな御意見と思います。気象庁の現在の考え方といたしましては、気象情報あるいは濃霧注意報の問題でございますが、濃霧が発生し得る状態にあるということを的確に把握することがまず第一である。そういう状態のもとに、そこで濃霧がどのくらいの濃さになるかの問題、第二段がそうなると思っておりますが、現在気象庁のいろいろな施設その他の状態からいたしまして、第一番目の、全体として濃霧が発生し得る状況にあるかどうかということの判定の問題をまずしっかりやりませんと、それから先の問題についてもお役に立つような答えが出にくいというようなこともございますので、現在気象庁といたしましては、瀬戸内海に非常にそういう問題が多い状況でございますので、瀬戸内海の濃霧に限らず、その他の問題も含めまして、前線が瀬戸内海のどんな状況のところにあって、どういう種類の異常な気象が起こり得る状態であるかということをまず的確に把握できるような体制を固めてまいりたいというようなことで、施設その他についていろいろお願いをいたしておる状況でございます。  なお、先ほどの連絡船との関係につきましては、高松桟橋におきましては、高松地方気象台と国鉄とは非常に密接に連絡をとって、海上の連絡船等からの観測、それからその他桟橋で行なわれております観測もいただいておりまして、私どもとしては非常に感謝いたしておる次第でございます。  成績につきましてちょっと調べてみましたところ、やはり濃霧注意報が出ておりまして、船の運航をとめなければならないほど濃くならなかった場合というのも数件出ておりますような状態で、やはりこの霧というようなものが、ある広い海域の中で、場所的に非常に部分的に濃いところが出るという問題については私どもとしては非常に難問題であり、非常に困っておるわけでございますけれども、一カ所まん中に観測所ができておりますと非常に助かるとは思いますが、それだけで全部うまくいくようになり得るかどうかということはまだ自信がございません。
  45. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 大体気象庁というものは予報をして、そしてその目的というのは防災が目的だと思うんです。防災ということに役立たぬのだったら、あまり気象庁の存在価値はないんですね。ですからやはり防災ということを特に主に置いて考えた場合に、これはいま部長がおっしゃるように、気象予報というものは全体的なものであって、局地的にとらえて予報するということがなかなか困難なことは、これは私も知っているのです。けれども重要な航路その他については、予報を出してそのままでもう事足れりというのでは、私は防災にならないと思うのです。ですからその予報に基づいて、刻々その地域において移り変わる状態をその当事者に通報するということによって、初めて防災の完ぺきを期することができる、こう私は思うのです。そのためにはもっと人員の増加ということも必要でありましょう。ところがそれは手がないから、人がないからできない、こういうふうに言われちゃこれは困るので、金の問題で解決するわけです。いかがですか、そういうものを充実していくという方針はないのですか、あるのですか。
  46. 日下部文雄

    ○日下部説明員 ただいまのお話、非常にごもっともでございまして、私どもとしても、できるだけ防災という面につきましては、施設、人員ともに充実してまいりたいと努力いたしておるような次第でございます。いまお話しになりましたことにつきましては一々ごもっともでございます。今後とも続けてまいる所存でございます。
  47. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 ちょっと部長、声が小さいので聞き取りにくくて困るから、もう少し大きい声でやってください。  これまた結論は運輸大臣のほうにいくわけですが、やはり時代はだんだん進歩していくのですから、そうすると陸上においても海上においても交通がひんぱん化してくる。それに対応する体制をやはり整えてやらぬと、これは下部の職員がどれほどねじりはち巻きで気ばってもだめなんです。もう少し気象関係でも即刻に通報がその当事者にできるような体制を整備してやる必要があると思う。相当、機材等の充実をはかられたことはたいへんけっこうだと思うけれども、事はやはり人命に関する問題で、これはあとでいろいろ言ってもだめなんです。ですから、こういう主要航路、特に近海の主要航路、定期航路を持っておる連絡船等に対する気象通報の迅速化ということは焦眉の急だと思うのですが、これについての整備方針は、運輸大臣としてどういうものをお持ちなんですか、お聞かせ願っておきたいと思います。
  48. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 先ほど気象庁の部長がお答え申しましたように、機材と人員と、いずれも金のかかる問題でございます。年々気象庁の予算をふやしまして、防災、特に人命の安全ということについては常々重点を置いて、施策について有効的に予算を使うように指示してございまして、予算の許す限度におきましては私は十分やっておると考えておりますが、何と申しましても国の要望する予算が非常に多うございまして、気象庁に要るだけ全部を出せといっても、これはなかなか無理だということは御了承願えると思いますが、御趣旨の点はよく勘案いたしまして、今後とも予算の折衝にあたりまして最善の努力をいたしたいと考えております。
  49. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 そこで、気象庁にはちょっと小言があるのですが、とにかく、どうもテレビでいろいろ高気圧がどうなって、低気圧がどうなってと解説だけは十分しておるわけです。ところが、その解説者自身が、どうもこのごろは私らの予想どおりに動いておりませんで、説明もお恥ずかしいのですけれどもと言いながら、いろいろ説明をしておる。これは世間の人はこう言っております。天気予報じゃなくて、天気後報だ、こういう極端なことを言う人まで出てくるありさまです。これはあまりにも機械にたより過ぎておるのではないか、もっと人的観測といいますか、それに力を入れてやって、それと機械観測と両方総合して予報を出すべきではないかと思うのです。ところが、人的観測のほうは、からだがえらいものだから、機械にやらしておいて、悪く言ったら、自分は遊んでおっても機械が予報して知らしてくれるから、そのとおり言ったらよい、こういう安易な考えがあるのではないか。そうすると、先に言ったように、気象庁は予防を目的として、重大な任務に携わっておるのでありますから、こんななおざりなことでは困ると思う。天気後報だなんて言われるようなことでは困ります。予報してもらって防災に役立たせるということでなくてはならない。今日では気象の観測に機械を要請されるごとく、その他の諸施設もだんだんと近代化して、しかも交通にいたしましても農業にいたしましても、社会構造上のすべてが非常に進歩してきておるだけに、すべてのものが繁雑かつひんぱん化しておる、こういうときに気象が後報だというようなことでは困ると思う。きょうはいいお天気でありました。前の日の予報では、きょうは雨が降るでしょうなんて言って、それが天気だったらばこれは災害がなくて済んだということになるけれども、天気でしょうなんて言ってどしゃ降りになるなんということではたいへんな害をこうむるということになる。そういうことでは、海上なんかは特に波浪注意報であるとかあるいはまた濃霧注意報であるとかいうものは、これはでき得る限り的確な予報がないと陸上よりもなおその危険度は多いと思うのです。一体どうなんですか。定点観測も不十分だと言うんなら、もっと運輸大臣予算の要求をやればいいんだし、いま言うように主要航路の予報が的確にできないで後報になるんだと言うんなら、もっと本来の予報的な的確な予報ができるように措置をしなきゃならぬと思うのですけれども、これはどうなんです。
  50. 日下部文雄

    ○日下部説明員 どうも私のほうのやっております予報が当たらないのでたいへん御迷惑をおかけしていたことについては非常に遺憾に存じております。私どもといたしましては、いろいろな原因が考えられますので、何とかこれは正確な予報に持っていきたいと努力しておりますが、一つの原因でありましたものは、気象が非常に異常であるということで、各地の気象台が、たとえば雨日数あるいは気温等において開設以来というような記録を昨年以来示しておる。世界的に見ましてもいままでの経過とは非常に違ったものが出てきておる。これは学問的にはいろいろ言われておりますが、要するに経験的あるいは統計的な方法で予報をやってまいりますシステムでは、そういう記録破りのと申しますか、何百年に一ぺんというような状態の変化が起こると予報が非常にむずかしくなる、当たらなくなる、そういうような意味を含めまして学問的に堂々とその予報の精度を上げていくためには、経験とか勘とかいうものにたよる部分を排除して、何とか正攻法で切り抜けていく方法を講じたいというような方向で大いに努力を続けておるわけでございますが、予報の精度向上というような問題はほかの科学技術のようになかなか簡単にはいかない。と申しますのは、室内実験のように実験を繰り返して急速にやるということがなかなかできない。やはり一年周期にならなければ同じような状況は出てこないということで、ほかの科学技術のように繰り返し実験室の中で五十ぺんも百ぺんも同じことをして法則を見出すということがむずかしいような状況もございまして、どうも進歩が皆様方の御期待に沿うほど進んでいかれない。たとえば気象の歴史始まりましてから数百年たったといたしましても、やはり数百回の実験しかできておらないのであって、ことに高層の観測や何かが信頼できる値を提供されるようになりましたのは終戦後の状態でありまして、十数年しかたっておらない。そういったような状態で、まだ一般的な技術の開発を十分になし遂げることがなかなかできない、これは非常に残念に思っておる次第でございますが、そんなことは言っておれませんので、私どもといたしましてはできる限りの努力は続けてまいりたいということを考えております。幸いにいたしまして測器のほうの面におきましては、レーダー観測網も整備されてまいりましたし、沿岸の海洋の問題につきましては波浪計のようなもの、潮位計のようなものも整備されてまいりまして、海洋の問題につきましても逐次資料が集積される状態になってまいりましたので、今後努力を続けて御期待に沿えるように持ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  51. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 どうもお話を聞いておると、何とかして近代的な、いわゆる学問的な面からこの気象予報を完成をしたいという努力をしておられることについては、私もこれに非常に敬意を表するのですけれども、少なくともそれと並行してでき得る限り的確な予報をしていただかないと、いま申しましたように現場でやっておるのに、たとえば濃霧注意報一つをとりましても、予報を出したのだからそれでいいというわけにはいかないので、やはり局地的なそういうものについても十分に連絡ができるような鑑別の施設というものを持たなくては、船が衝突して沈没した、何名かの人命を失った、その責任といってわれわれが責任ばかり追及してみても、死んだ人は戻りません。ですからそれだけの重要な、いわば人命を左右するような重要な任務を持っておると私は思うので、そういう意味施設が足りないと言われるなら、遠慮なくもっと積極性を持ってやるべきです。大体運輸省というのは消極的過ぎますよ。これに限らずいろいろの、平たく言えば運輸行政全般についてあっちからもこっちからもこれくらい陳情されることはないのですよ。最近くらいあっちからもこっちからも陳情攻めにあうことはありません。これは何としても行政全般について、もう少し運輸省独自の積極性を持ったことをやってもらわなければならぬと思う。ですから各庁ともにもつと積極的にこの施設整備についても予算の要求をして、そして万全を期するようにしてもらいたい。人命を尊重するための施設というものはだれも反対しないだろうと思うのです。しかし往々にしてその一番重要なことが軽んじられているというのが今日の現状じゃないかと私は思うわけです。こういうことではいけませんから、ひとつ十分にしていただくように希望します。  その次に、これは海運のほうになるのですかどうですか、いま船舶に取り付けたレーダー設備というものは非常に進んでいるわけです。これはレーダーを装置するということはまだ義務制にはなっていないのじゃないかと思うのですけれども、そうなっているのですか、どうですか。  もう一つ尋ねますが、それと同時に、レーダー使用するにあたって、船員に対する訓練が必要だと思うのですけれども、これについてどういう訓練を指導しておられるのか、この二点についてお答え願いたいと思います。
  52. 佐藤美津雄

    ○佐藤説明員 前者の質問にお答えいたしますが、レーダーはまだ強制になっておりません。レーダーにつきましては、運輸省に一応電波航法研究会という研究会が前からございまして、そして海図の面から航法の面から長い間かかって検討しておりますが、いまの段階ではまだ尚早であるということになっております。
  53. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 レーダーを扱います船員は、電波法によりまして一応の試験が必要になっております。現在のレーダーを取り扱います船員は、一応その試験を受けた者が取り扱っております。さらに従来海技試験、つまり航海士の免状を出す場合に、内航船、小型船等については特に電波計器と船舶の運行関係というものについての試験問題を出していなかった。と申しますのは、内航の小型船等ではそういうものの装備が大型船に比べて少なかったという状況で、必ずしも試験——海技試験のほうでございますが、電波監理局の試験とは別に、船舶運航術のほうの試験で、最近、六月に試験の一部を改正いたしまして、いままで甲種あるいは乙種船長まで電波計器の試験問題を出しておりまして、乙一、つまり内航船の五百トン程度の船の航海士あるいは船長たるべき者の試験にまで電波装置の出題をすることにいたしまして、航海に当たる者がレーダー等の電波装置の取り扱いに間違いのないようにということを進めておる次第ございます。
  54. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 このレーダー等の取り扱いは、そういたしますと、船に乗っておる主要幹部については、すべての人にやらせるような知識を持たせるような措置をしておるということですか。
  55. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 レーダーを取り扱いますのは、船長及び航海士のつとめでございます。全部というお話がございましたけれども、機関部員、機関士、機関長、機関部の関係は、航海上の計器でございますので、これについては特段の知識を試験でも要求はしておりません。それからいわゆる普通船員といわれる、部員といわれる者は、これはレーダーの監視は、航海士の命を受けて、その隣で見てはおりますけれども、しかしいま言ったような電波計器の取り扱いに関する免許は特に得させるようにはいたしておりません。これは航海士の横におって手助けをしておるだけでありまして、責任者、大型船についてはすべてレーダーを取り扱い得る者ということにいたしております。
  56. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 そこでお尋ねいたしますが、前に一度、無電の通信士を一人にするか二人にするかとか、いろいろ問題になったことがあります。レーダーの取り扱いは、これは無電士とは別の分野で取り扱いをさせるという方針なのか、あるいはその責任は無電士の責任として所在を明らかにするのか、どっちなんですか。
  57. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 レーダーは航海上の必要な計器でございますので、これは無線部門でなくて、航海士の部門が取り扱うように進んでおります。ただ従来、計器の故障等の場合に、通信士は何といっても非常な電波関係の機器の専門家でございますから、それの保守等を行なわせておりましたけれども方向といたしましては、これらの保守、管理、運用、すべて甲板部士官の職務というふうになっております。
  58. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 これは私は、いま言われましたが責任者をはっきりしておくことが必要だと思うのです。重要なものでありますから。しかしその取り扱い者をやはりまたきめて、そうして遺漏のないようにしておかないといけないので、したがって将来はやはりこれはこれだけ進歩しておれば、何トン以上はレーダーを備えつけなければならぬという義務を負わさなきゃならぬと思うのです。各国にそういうことがあるのかないのか、ひとつ伺いたい。
  59. 佐藤美津雄

    ○佐藤説明員 レーダーの効果につきましては、国際的に衝突予防法で一応の目安をつけておりますが、各国とも実は強制ということはまだ聞いておりません。
  60. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は、これはやはり野放しにやるべきではなくて、規格をきめて、そうして十分に責任の持てるような行政指導なり、法律が必要であるというのなら法律を出すようにしてもらいたと思います。  それではその次にもう一つ聞いておきたいのですけれども、これも海上保安庁に属することだと思うのですが、航空機を使用しての誘導あるいは救難、発見等はどういうふうになっておるのですか。それからまた機種はどれだけありますか。
  61. 今井榮文

    今井政府委員 まず航空機の機種の問題を先にお答えいたしたいと思いますが、現在ヘリコプターが九機ございまして、それから固定翼の飛行機はビーチクラフトが五機ございます。これに対し三十九年度予算でビーチクラフトが一機買えることになっておりますので、合計六機、全部で航空勢力は十五機ということになるわけでございます。最近の海難で、特に新聞等でもあるいは先生のお目にとまるかとも思いますけれども、航空機とそれから巡視船のいわゆる立体的な海難救助というものが非常に成功いたしておるわけでございます。やり方といたしましては、海難船が発生したという情報を受けますと同時に、われわれの基地から航空機が飛び出しまして、その付近の海面を空中から捜査するということをやりまして、その間巡視船は基地から出動の準備をいたしまして、もちろん遭難船の位置、方向がわかっております際には、巡視船は準備のなり次第出港いたすわけでございますが、航空機が遭難船を発見いたした場合に直ちに巡視船に連絡をいたしまして、巡視船を誘導して遭難船の現場まで持っていく、こういうふうな形で現存やっておるわけでございます。
  62. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 そこでもう一つ聞いておきますが、さきにも出ましたが、李ラインなんかでの拿捕事件が非常に頻発しておるわけですけれども、これは予防措置として航空機などを使用して警報を漁船に送るというようなことはやっていないのですか、やれないのですか、どっちですか。
  63. 川野芳滿

    川野委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  64. 川野芳滿

    川野委員長 速記を始めて。
  65. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 もう時間がありませんから、私はこれでおきますけれども、私が最後に言うことを、関連質問で全部要望されましたから、重ねては言いませんが、両国の問題は、やはりそういう一方的な、戦勝国でもこんなむちゃなことはやりませんよ。戦勝国以上のことですよ。朝鮮に対してなるほど日本韓国併合上いろいろやったかもしれませんが、一面からいうとやはり朝鮮だけではできないような国内開発もやってきておると思うのです。それは元手をとっておるのではない、みな向こうに残しておるのです。したがって、もっと虚心たんかいに善隣友好を考えるならば、韓国はもっと深く考えるべきだと思うのです。それを考えずしてやるならば、あるいは経済断交やむを得ないというような強い姿勢をとってしかるべきだ、それが国民大多数の考えだと思うのです。ですからそんな巡視船に大砲を積んだり機関銃を積んだり撃ち合いせいと言っておるのではない。われわれは平和的な手段において両国の正常な国交をやるべきだと思うのです。それが相手は不正常なことをやって、暴力をもって平和的な国民をおどしまくって、降伏でもさせようと思っておるのかもしれないけれども、そうはいきませんよ。これは閣議ででも強く要求をしていただきたいと思うのです。  先ほどから質問をいたしましたが、いわゆる海上の安全のためには、少なくとも気象の予報関係において、あるいは公海上航路標識その他暗礁灯の明示、あるいはまた海洋の遭難時における立体捜査、すなわち航空機あるいは巡視船等の立体捜査の強化等についてもまだまだ私どもは満足のいかない点が非常に多いと思いますし、特に海上保安庁の職員の給与、厚生施設の問題についてはもっと積極的な施策をとってやってもらわないと、これほど平和時において命を的に人の救難に当たっておるものはないと思うのです。したがってもっとそういうような点についての姿勢を強化してもらいたい。これだけいろいろの問題があるのですから、運輸大臣も十分にこれを了承して、明年度からはもっと積極的な施策をとられるようにこの際要望して、私の質問を終わります。
  66. 川野芳滿

    川野委員長 久保三郎君。
  67. 久保三郎

    ○久保委員 一言だけ聞いておきます。  海上保安庁長官にお尋ねしますが、日本の保安庁が所管している水路図誌は大体全部完備しているのですか。
  68. 今井榮文

    今井政府委員 大体において完備しております。
  69. 久保三郎

    ○久保委員 これは委託で測量をやらしておるところはないのですね。みな保安庁直轄でおやりですか。
  70. 今井榮文

    今井政府委員 直轄でやっております。
  71. 久保三郎

    ○久保委員 これの効用については大体問題ないのですか。たとえば船を運航する着が水路図誌の正確なものを持っておるとか、そういう普及度はどうなんですか。
  72. 今井榮文

    今井政府委員 これはもう長い歴史のある図誌でございまして、船舶の常備品といいますか、これは必ず備えつけてあると思っております。
  73. 久保三郎

    ○久保委員 常備してあると言うが、常備してはいないのもあるのじゃないか、図誌じゃなくて勘でやっておる者もあるのじゃないですか。それから最近潮流の変化その他もあるでしょうし、航路標識などは毎年変わってくるというか、造成されますから、これは見ればわかりますが、そういう変化に応じたものはどうなんですか。
  74. 今井榮文

    今井政府委員 これは測量、改測、検測等をやりました際には必ず補正の図誌を出版することになっております。しかしながら通常の貨物船その他旅客船等のいわゆる商船は別でありますけれども漁船等の中には、あるいは補正以前の図誌というような若干古いものを持って航行いたしておるものもあるのではないかと思います。
  75. 久保三郎

    ○久保委員 それでは海上衝突予防法を改正すれば条約規則に全部合致するわけですね。
  76. 若狹得治

    ○若狹政府委員 さようでございます。
  77. 久保三郎

    ○久保委員 そうしますとこの規則受諾はいつなさるわけですか。
  78. 若狹得治

    ○若狹政府委員 この法律が成立いたしました後におきまして受諾することにしております。
  79. 久保三郎

    ○久保委員 これは規則というか、条約ですね。どういうことになっておりますか。
  80. 高林康一

    ○高林説明員 これは条約としては考えておりませんで、規則として考えております。
  81. 久保三郎

    ○久保委員 ちょっと外交文書には暗いのでありますが、国際間の規則でありますから、規則というのは条約の一種ではないですか。違いますか。
  82. 高林康一

    ○高林説明員 今回の海上衝突予防法規則は前回の四八年規則と同様でございまして、この国際人命安全条約で付属させないということが前文で断わってあります。そこで条約の一部を形成するものではないということを人命安全条約の前文で規定しておるわけであります。そこでこの場合におけるところの規則というものの内容は、大体におきまして各国ともこれを模範法典というふうに考えております。模範法典といいました場合におきましては、結局この規則内容を国内法として採用することについて関係各国に勧告されましたもの、その採択したものを模範法典というふうにしてこれを取り扱っておるわけであります。それでこれ自身につきましては、一八八九年のワシントンの国際海事会議からでもずっと規則という形式で備えておるわけでございまして、これは先ほど申しましたような条約とは切り離した模範法典というふうに考えておるわけでございます。
  83. 久保三郎

    ○久保委員 この模範法典ということでありますが、申し合わせですか。どういう手続をとられるのですか。
  84. 高林康一

    ○高林説明員 受諾と申しますのは、一九四八年の会議におきまして議事録等にもあらわれておりますように、関係各国が規則を国内法といたしまして採用する意思を有する旨の表明というようなことだと考えております。したがって、一般的にいう条約受諾というものと、ここでいう受諾とは合致しないと申しますか、異なった意味でこれを議事録等におきましては使っておるという状況でございます。
  85. 久保三郎

    ○久保委員 それじゃそれは単なる通報ですか。わが国でも模範規則どおりに国内法を改めましたということですか。それともこの規則についてわれわれは承知したとかいうことですか。どうなんでしょうか。
  86. 高林康一

    ○高林説明員 単なる通告ではございません。これを国内法制として実施するという意思の表明でございます。
  87. 久保三郎

    ○久保委員 ちょっとわからぬので、こういう機会でありますからお尋ねをしておるのでありますが、これは国際間の広い意味における条約ではない、そういう意味ですか。——そうすると、そういう国際間の取りきめというものは条約以外にどんなものがあるのですか。たとえばこれがそうだとすると、そのほかにどんなものがありますか。わかりやすいものがありますか。
  88. 高林康一

    ○高林説明員 このような種類の模範法典というような意味におきますところの規則というものについては、私ども全体はよく存じませんけれども、大体この海上衝突予防規則あたりが該当するくらいじゃないかと思いますが、全体的にはほかの例につきましては、残念ながらよく存じ上げていない状況であります。
  89. 久保三郎

    ○久保委員 私も知らないので聞いているのですが、いま高林参事官がおっしゃる模範法典というのは、この条約のどこに書いてあるのですか。
  90. 高林康一

    ○高林説明員 この規則ないし条約につきましては、模範法典ということをその中には直接書いてございません。ただ一九四八年の条約、この規則を制定いたしましたときに、各種の議事録がございまして、そのときにこの予防規則の法的性格についてはいろいろと検討されたわけでございますが、その会議におきまして、先ほど申しましたように、各国の国内法として採用されるため勧告された模範法典であるというふうなことになったわけであります。と申します実態的理由といたしましては、かつて第一次大戦前だったと存じますけれども、これが安全条約の一部をなして、条約と一体となっておったわけであります。そこで、条約という形式をとっておりましたため各国の批准が非常におくれて、そのためにこれが統一法としてなかなか施行できなかったというような実態的な背景があるわけであります。この場合におきまして、四八年の会議におきましては、本規則はこれを一応切り離すということ、付属せしめないというふうに前文で書いてあるわけでございます。前文におきましては、この改正された規則は一九六〇年の海上における人命の安全のための国際条約には付属させないことに決定したというふうに規定しておるわけであります。ここで一応形式的な意味におきますところの条約と切り離して、これをいわば単独のものにするという意思決定をしたわけでございますが、その場合の規則の性格につきましては、先ほど申しましたような会議におきまして模範法典として勧告されたものであるというふうにこれを考えておるということが議事録その他によって明らかになっておる状況でございます。
  91. 久保三郎

    ○久保委員 たいへん時間がないのに申しわけないのですが、こういう機会でありますからお尋ねしておくわけで、御了承をいただきたいのですけれども、あなたのおっしゃるとおり、いわゆる人命安全のための国際条約にはこれを付属させない、こう決定された。付属させないということは単独であるということですね。単独であるというからには、模範法典というものはどこまでもいわゆる模範法典であって、それは各国がこれに準拠して規則をきめていこうじゃないかという申し合わせだ、こういうことですか。そうなれば、受諾という文句はおかしいのじゃないですか、どうですか。
  92. 高林康一

    ○高林説明員 全体につきましては、各国が模範法典としてこれを国内法として受け入れるという意味におけるところの意思の表明ということで考えておるわけでございます。この場合に受諾という文句を使っております。この受諾意味は、先ほど申しました、そういう国内法典としての採用ということの意思の表明と解すべきでございます。かつ、この規則の中に、全体的にはたとえば締約国とかその他、そういうような意味条約ということを示すところの文言は見当たらないわけでございます。そこでそういうような関係でこれを模範法典として考えたわけでございまして、その場合にアクセプトということばを使っておるわけでございます。この場合におきましても、いわゆる条約受諾というような意味内容とは違って、国内法としての意思の表明であるということで当時の会議においてこれを認めておるというのが従来の会議の経過でございます。
  93. 久保三郎

    ○久保委員 あなたは、締約国云々はどこにも見当たらない、こういうことでありますが、それはそういうことですか。実際的にはいずれにしても条約と同じようなかっこうをとるわけですね。これは国内法を改めてそれでその規則受諾するという形でありますが、国際法上そういうことになっているのですか。こういうものは条約でない——どうも海運局に聞いてもうまくないかもしれないが、海運局長は国際人だからわかるでしょう。
  94. 若狹得治

    ○若狹政府委員 一九六〇年の会議に出席いたしましたけれども、そういう根本的な問題はあまり研究してまいらなかったわけでございまして、たいへん恐縮でございます。  衝突予防規則につきましては、世界関係各国が集まってルールをつくりまして、それを各国が自発的に受諾するという形をとっておるわけでございます。条約の場合には批准書の寄託ということによって効力が発生するわけでございますけれども、この規則につきましては、条約というような形の義務ではございませんで、各国が自発的にこれを国内法として制定するという形をとっておるわけでございます。したがいまして、規定の内容につきましても、この法律自体には罰則の規定はないわけでございます。これは各国がそれぞれ別個の法体系によって処理していこうということでございまして、この規則自体は世界共通の一つの規則として示されて、それを各国が自発的に国内法として制定して、結果的には条約と同じような形になると思いますけれども、形はあくまで条約の形で強制しない、各国が自発的な意思によってこれを決定するという形をとっておるわけでございます。
  95. 久保三郎

    ○久保委員 あなたはこの会議には全権委員筆頭代理で御出席されて、あなたが言うことがほんとうだと思うんだけれども、どうもちょっとわかりかねるのであとにしますが、手続の問題でありますから、実質的には差しつかえはないだろうと思う。  そうしますと、これは一九四〇年の海上人命安全条約及びそれに付属しないところの海上衝突予防規則、こういうものに大体全部合致した、こう思ってよろしいですか。
  96. 高林康一

    ○高林説明員 そのとおりでございます。
  97. 久保三郎

    ○久保委員 あと残りは、御承知のように原子力船の問題が一つ残っておりますね、これはどういうふうに考えておられますか。
  98. 佐藤美津雄

    ○佐藤説明員 原子力船の構造その他に関しましては、一九六〇年条約におきまして規制いたしております。衝突予防に関しましては一般船舶と同様の事項を考えておるのではないかと思います。と申しますのは、それにつきましては規制がございません。
  99. 久保三郎

    ○久保委員 ちょっとことばがわかりにくいのですが、別に規制はない、こうおっしゃったのですか。
  100. 佐藤美津雄

    ○佐藤説明員 運航についてはございませんが、構造その他につきましては条約のほうで規制しております。
  101. 久保三郎

    ○久保委員 その条約に準拠して国内法として設備基準というか、そういうものの設定はどうなっているのですか。
  102. 佐藤美津雄

    ○佐藤説明員 前国会におきまして一九六〇年条約の批准のための御承認をいただき、船舶安全法の一部改正を実はしていただいたわけでありますが、原子力船につきましては、実はまだ現物がないことと、いまいろいろ勉強中の大きな問題もありますし、ただ安全法だけでなく、ほかのほうのいろいろな法律、たとえば科学技術庁の炉規制法とか、障害防止の法律とか、その他乗り組み員なんかの関係とかいろいろございますので、その辺のかね合いもありまして、船舶局長から大体船ができ上がるころ、運航の始まるころまでに国内法を整催して、船舶安全の確保をしたい、こういうふうに御答弁いたしておりますが、大体その趣旨でわれわれのほうも進んでおります。
  103. 久保三郎

    ○久保委員 それは前回そういう答弁があったと思いますが、われわれから見れば、船ができ上がってからそういうものをつくるということは逆ではなかろうかというしろうと考えをしておるわけであります。そのときの答弁では、たとえば原子力船の事業団ができまして、そこで一応の設備基準というものをつくりながらやっていくから心配はないというふうに言われたのでありますが、少なくともそういう設備基準が先行して初めて設計の段階に入るということだと思うのですが、それはどうなっておりますか。
  104. 佐藤美津雄

    ○佐藤説明員 おっしゃるとおり、一応安全基準というものが各界の代表をもちまして内規ができまして、それに対する設備基準は早急に規制しよう、ことしじゅうに規制しようということで、ただいま作業を進めております。
  105. 川野芳滿

    川野委員長 次会は来たる十九日金曜日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十四分散会