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1964-06-12 第46回国会 衆議院 運輸委員会 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十二日(金曜日)    午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 有田 喜一君 理事 關谷 勝利君    理事 塚原 俊郎君 理事 西村 直己君    理事 久保 三郎君 理事 肥田 次郎君    理事 矢尾喜三郎君       亀岡 高夫君    佐々木義武君       進藤 一馬君    壽原 正一君       高橋清一郎君    細田 吉藏君       泊谷 裕夫君    野間千代三君       山口大太郎君    佐々木良作君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 綾部健太郎君  出席政府委員         社会保険庁長官 大山  正君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  竹下 精紀君         水産庁長官   庄野五一郎君         運 輸 技 官         (船舶局長)  藤野  淳君         運輸事務官         (船員局長)  亀山 信郎君         海上保安庁長官 今井 榮文君         高等海難審判庁         長官      藤枝  盈君  委員外出席者         外務事務官         (アメリカ局北         米課長)    中島 信之君         外務事務官         (欧亜局西欧課         長)      鹿取 泰衛君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 六月十二日  委員泊谷裕夫君及び伊藤卯四郎辞任につき、  その補欠として茜ケ久保重光君及び佐々木良作  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員茜ケ久保重光辞任につき、その補欠とし  て泊谷裕夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案佐  海運及び海上保安に関する件(船員福利厚生  等に関する問題)      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  海運に関する件及び海上保安に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  3. 久保三郎

    久保委員 前回の委員会に引き続いて、主として漁船の問題でお尋ねするわけでありますが、本日は、大体もう会期も後半になりまして、余白をあまり残しませんので、一応けじめをつけたい、こういう考えでおりますので、答弁もこれに向いた答弁をひとつお願いしたい、こういうふうに思っております。  一つは、本委員会で、たとえば船舶安全法改正あるいは船員法改正の法案を審議の際に、それぞれの附帯決議を実はしているわけであります。この附帯決議が忠実に行なわれているかどうかの問題が一つございます。そういう点についてお伺いしますので、あらかじめひとつお目通しをいただきたい、こういうふうに思っております。  そこで、この質問に入る前に、先般の委員会でお尋ねをしておきましたいわゆる室戸岬所属の九十九トンの漁船の遭難の問題であります。これについて海上保安庁としていままでどういう調査をし、あるいは判明したものがあるかどうか、そういうことについて一応お話しをいただきたい、こういうふうに思います。
  4. 今井榮文

    今井政府委員 前会の久保先生の御質問に対しましてお答えいたしましたとおり、海上保安庁といたしましては、本件についてはすでにこの二月当初ころより調査を進めておったのでございますが、さらにこの五月の下旬におきましては、本格的に担当者を定めまして、船主あるいは近隣者、乗り組み員、あるいはまた組合関係その他関係官庁等について内調査を進めてまいったのでございますが、現在のところでは故意に船を沈めたというふうな面についてのはっきりした事実は出ておらないというのが現状でございます。
  5. 久保三郎

    久保委員 事実は出ておらぬということでありますが、今後、これについて引き続き真相究明の作業を進める考えであるのかどうか、この点どうなんですか。
  6. 今井榮文

    今井政府委員 先生のおっしゃるとおり、われわれとしても今後鋭意調査を進めていきたいと思います。
  7. 久保三郎

    久保委員 次に、これも保安庁の所管でありますが、漁船との関係は直接ございませんでしたが、先般の韓国沖合いにおけるところの巡視船に対する国際法違反の問題、この問題はその後どうなったか、さらには、新聞に伝えるところによりますれば、保安庁巡視艇、艦船は、これに対処するために、その後起きた事件もあるようでありますが、対馬沖の問題、これに対して武装するというふうに報ぜられているが、この点はどういうふうになっておるか、その二点について……。
  8. 今井榮文

    今井政府委員 第一点の木浦沖合いにおきまする韓国警察艇による巡視船「ちくご」連行事件につきましては、直ちに外務省から口上書によりまして強硬な抗議を向こうに申し出ておる状況でございます。その抗議内容といたしましては、そういった事件を惹起した者に対する処分をも要求するという強い内容のものでございます。それに対する韓国側の返事が現在来ておるという点につきましては、私どもはまだ確認いたしておりません。  それから第二の点でございますが、これは全く質の違う問題でございまして、五月三十日でございますか、対馬沖合いのわが領海内におきまして、灰色に塗った国籍不明の不審船がおるという情報を得まして、海上第七管区本部といたしましては、何とかこれを捕捉したいということで、実は巡視船で、あるいは巡視艇で近づきますと逃走されるおそれもあるということで、漁船をチャーターし、漁夫のかっこうなしてそれに乗り込んだのでございますが、これに対して突如として自動小銃あるいは短銃等保安官を威嚇し、乗り組んだ艇長としてはやむを得ずこれを退避せざるを得なかった。これに対して該不審船はいかりを切って高速で逃走したという事件でございます。少なくともわが国領海においてこのような悪質な侵犯行為があるということは全く許せない事実でございまして、私どもといたしましてもこれに対する断固とした対応策を立てる必要があるということで、先般運輸省といたしまして対策を決定して閣議に御報告を申し上げた次第でございます。その内容といたしましては、御承知のようにわれわれは、高速巡視艇はきわめて数も乏しいのでございますが、さしあたっては高速巡視艇をでき得る限りそういったおそれのある海域に配置がえをいたしまして、これに対して、万々一の事態に対しても即応できるように小口径機銃あるいは自動小銃というものを配備すると同時に、巡視艇のそういった船の立ち入り検査に従事する職員につきましても、あるいは防弾チョッキを着用せしむるとかその他身辺の保護に関するでき得る限りの措置を講じまして、悪質な侵犯者に対する海上警察の厳正な執行という面を確保したい、かように考えておる次第でございます。
  9. 久保三郎

    久保委員 外務省から抗議をしているそうでありますが、その中には、いまの今井長官お話だというと、関係者処分も含むというんだが、それはそれでいいと思うのでありますが、それ以外にわが国に対して国際法に反したことをやっているのでありますから、当然のごとく陳謝なり何なりもさせるべきだと思うが、それは入っているのですか。
  10. 今井榮文

    今井政府委員 おっしゃるとおり入っております。
  11. 久保三郎

    久保委員 外務省担当官が来ておられないようでありますからその問題はあとにしまして、いまの対馬沖怪船に対する対抗措置としていまお述べになりましたが、具体的には武装を強化するのでありますか。快速艇を配置することはわかりました。武装を強化するというように新聞等には報道されておりましたが、そういうことで閣議了承を得て通達をされておりますか。
  12. 今井榮文

    今井政府委員 現在、海上保安庁法によりまして巡視艇がある程度火器を芸備するということは法律的に定められておるわけでございますので、実際現在までの沿岸警備状況からいたしますれば、特に領海内の密猟あるいは密入国、密貿易というふうなものを取り締まるために、従来使っておりましたいわゆる二十三メートル、二十一メートル、十五メートル等のいわゆる巡視艇につきましては、乗り組み員が拳銃を持っておるというふうな程度装備しかしておらなかったわけでございまして、したがいまして、今般の措置は、先ほど御説明申し上げましたように、従来事実上装備しておらなかった自動小銃であるとかあるいはまた小口径機銃というふうなものを法律上認められた範囲で巡視艇装備するということでございまして、その意味においてそういった拳銃等より強力な火器を備えることを武装を強化するという意味考えた場合には、そういうふうに武装を強化するというふうにおっしゃっていただいてけっこうだと思うのです。
  13. 久保三郎

    久保委員 それはいままでも、たとえば機関砲ですか、そういうものの積んである巡視船というか、艇というかわかりませんがございますね。こういうものも含めて、これは大体撃たないということでおおいをかぶせてある。そうですね。そういうものはおおいを取って実弾を用意しておく、こういうことになるわけですか。
  14. 今井榮文

    今井政府委員 今回決定いたしましたのは、非常に悪質な、先般の対馬沖におけるような領海侵犯に対する対策として、巡視艇につきましてただいま申し上げましたような火器装備するということを閣議で御報告をいたし、御了承を得たわけでございますが、全般的に漁船保護の任務に行動する巡視船につきましては、おっしゃいましたように国際紛争を惹起しないというたてまえで、従来は三インチ砲あるいはまた四十ミリ機銃というふうな機銃は持っておりましたが、そういったものは使わないというたてまえで行動しておったわけでございます。今後こういった面につきまして私どもとしてはやはり公海における漁業保護という点につきましては、でき得る限り国際紛争を避けるという観点で進んでいきたいと思うのでございます。ただ、巡視船がやはり国権のいわば先兵という立場にございますので、巡視船権威を保持する、公海における巡視船としての当然の誇持を維持していくというふうな面については十分職員を訓練し、それからまたその責任の重大性を認識せしめるというふうなことによって、国の権威を失墜しないようにわれわれとしては努力していきたい、かように考える次第であります。
  15. 久保三郎

    久保委員 そうしまと、装備は多少強化したというか、そういうことでありますが、このいわゆる武器の使用については従来の方針と変わりはない、こういうことですね。
  16. 今井榮文

    今井政府委員 公海における漁船保護につきましては、でき得る限り現在までの方針を踏襲していきたい、かように考える次第であります。
  17. 久保三郎

    久保委員 これはどういう方針でおやりになったのか、質疑応答の中ではちょっとわかりませんので、閣議の了解を求めたその写し、それからあなたのほうから出先官憲通達したところの通達写し、これをあとでください。この問題はあとにします。  そこで、次は各省庁からお見えになっておりますので、最後までお残りいただくのはもちろん運輸省関係でありますが、それ以外の省から来ておりますので、質問の順序を変更して能率的にやりたい、こう思います。  まず第一、外務省関係でありますが、マグロ海外基地における漁業実態であります。これは特にサモアあるいはラスパルマスというようなところが御承知のように基地になっておるわけでありますが、それぞれの基地には常時多数の漁船船員が寄港し、休養する。あるいは商取引も行なわれておる。あるいはその他のこともやっているわけでありますが、これらに対して実は監督官庁というか、指導的な立場にある水産庁なり運輸省出先というものは実は行っておらないし、外務省出先もないように見ております。ついては、実はこの外国における基地漁業は国際的にも問題を投げかけておるわけでありまして、これは十分御理解かと思うのであります。長期操業をして、たとえばラスパルマスならラスバルマスの基地に戻る。極端なことを言えば、小さな船でありますから、長期にわたって浴場の設備もございません。清水の保有も限界を切った操業をしておりますが、そうなりますと、実は基地に帰港するやいなやまっ裸になって水浴する。しかもラスパルマスのごときは御承知のように観光地でありまして、たまたまそういうことが日本の国際的な立場からも芳しくないし、また漁船船員の地位というか、そういうものも国際的に軽んじられるという、あまり芳しくない事故が多い。さらには船員同士紛争もある。あるいは労働条件についてもこれまた非常に厄介な問題が出先としてある。さらにもう一つ福利厚生の問題でございますが、これがサモアには診療所を、日本海員掖済会でありますか、こういうものの手によって建てられたというけれども、これもサモアだけでありまして、ラスパルマスにおいては、残念ながら看護婦が一名か二名駐在しているという程度でありまして、必ずしも十分ではない。さらにもう一つは、労働災害で一番多いのは、きのうも川崎で多数の死傷者を出しましたが、全体として労働災害の多いのは、鉱山や何かより以上に多いのはこの漁船であります。疾病を含めて多いのであります。そういうことになりますと、この国際的な漁業の発展、さらにはそれを裏づけするところの、これに従事する漁船船員の問題、これは単に外国基地を設けているということで等閑視するわけにはいかない事態になったと思うのです。さらに最近の傾向として、御承知のごとくこの日本の四つの島の近間には漁場はない。どうしても遠洋に行くという傾向が強くなるし、またそういうことになることは当然だと思うのです。そういうことからいきましても、当然もうこの際外務省出先としてそれぞれの基地には領事館設置が必要ではなかろうかと思う。さらにもう一つは、領事館というだけで、外務省の純粋な外交官だけの駐在では、実はこれはなかなかむずかしい問題がある。でありますから、運輸省船員局関係の者あるいは水産庁のそれぞれの担当官、こういう者を外務官としての身分を保有させて、それを領事館設置させるということが緊急の事柄だ、こう考えているわけなんでありますが、この問題についてはしばしば当委員会で話題になっているのでありますけれども、いまだ目鼻がつかぬということであります。たとえば外務省として、いま私があげた少なくとも最低二つは最近のうちに結論をつけるべきじゃないか、こういうふうに思っているのですが、いかがですか。
  18. 鹿取泰衛

    鹿取説明員 いま先生が御指摘になりました問題につきましては、外務省においても現地報告並び水産庁運輸省からのいろいろな御説明によりまして、十分問題のあるところは存じておる次第でございます。私は担当地域といたしまして、先生の御指摘になりました二つの場所のうちのラスパルマスが私の担当地域でございますが、これにつきましては従来、この二、三年来この問題の重要性に気がつきまして、領事館設置するという方向でずっと努力を続けてまいったのでございます。ただ外務省といたして、在外公館を各地に新設する場合にいろいろ順位がございましたので、残念ながら昨年度までは実現するに至りませんでしたけれども、来年度の要求においては、外務省としておそらく重点在外公館設置のうちの上から一、二番には必ずこれを入れて、大蔵省に対して強く折衝するつもりでございます。ことし領事館ができなかったわけでございますけれども現状におきましては、マドリッド大使館館員をできるならば月に一回くらいは、あるいはいろいろ先ほど先生が御指摘になったような事故や問題がありましたときには、そのつど出張させるように命じておりまして、そのための旅費も現地に配付しております。  それからラスパルマスにおいて海員——これは日本海員だけではないと存じますけれども、諸外国海員船員厚生施設海員クラブのようなものをつくるという話がありました場合にも、現地公館からの報告に基づいて、それに日本として何分の寄与をするというようなことにつきましても、出先マドリッド大使館を通じてやっておるわけであります。ただ何と申しましてもそれでは不十分でございますので、ぜひ来年度は領事館ないし総領事館設置したいと思います。それで領事館総領事館設置いたしました場合に、先生の御指摘になりましたような関係各省の専門の方に来ていただくということについては、私どもそれに異存はございませんし、その方々が領事館館員として、領事または副領事ということになると思いますけれども領事特権と言いますか、国際法上与えられた領事特権をもって、出先の地方のいろいろな官憲といろいろ折衝せられるということは可能と存じております。
  19. 中島信之

    中島説明員 ただいま御質問のございましたサモアパゴパゴ基地でございますが、御指摘のございましたように、大体月に三十ぱい、一ぱい二十名乗りといたしまして六百名前後の船員の方が基地に交代で入っておられます。それでこの基地での厚生施設等が全然ございませんために、基地に入られた漁船の方が慰安もない、あるいは不便をされるというような問題がございまして、それの解決について前から関係各省及び関係の会社、団体等とも密接に協力いたしながら努力いたしてはまいっておりますが、何ぶんとも遠隔の地でございまして、その後昨年の十月十五日に、ただいまお話のございました医療施設として、平山医師現地に派遣して診療所を開設していただいたということが具体的な一つの進歩でございまして、外務省といたしましても、この現地サモアの全体をいま見ております官庁みたいなものがございますが、そのガバナーと密接な連携をとりまして、漁船入港あるいは船員の方の入港されたあとのいろいろな問題について問題が起こらないように、なるべくうまく進むようにということでやってまいっております。  それでここに領事館をつくるかという問題は、昨年くらいから具体的な問題といたしまして省内でも慎重に検討いたしてまいっておりますが、現在のところホノルルから定期に長期出張をいたさせまして、出張した人間現地に若干期間滞在いたしまして、その領事館のない現状を補っております。それでただいまのところ来年度の予算で領事館設置を具体的に決定するかしないかということを検討中でございます。ただいまここでどういう方針にするかということを申し上げられないのが残念でございますが、少なくとも領事館設置されない場合でも、定期的な出張をできるだけひんぱんに行なって、現地における諸般の問題の解決に努力したいという心組みではございますが、なおこのサモアパゴパゴ基地は最近漁獲量が若干減ってきておるということで、基地が少しほかに移動するのではないかというようなこともございまして、そういうことの関連もあって、ここに政府としてそういう役所的なものを考えていくかということも、そういうものとの関連も考慮の上で決定していきたいということが、ただいま外務省の中で諸官庁の御意見を伺いながら検討しております問題でございます。
  20. 久保三郎

    久保委員 水産庁長官にお尋ねしますが、いま北米課長説明ではサモア基地は移動するんではなかろうかという観測もしているそうであります。漁獲も減ってきたと言いますが、そういう傾向にございますか。
  21. 庄野五一郎

    庄野政府委員 サモア基地は御承知のとおりマグロ漁業をやっておるわけでございます。サモアには御承知と思いますが、アメリカのバンキャンプあるいはスターキストのマグロカン詰め工場がある。そこに周辺漁獲しましたマグロを陸揚げして供給する、こういうような形になっております。昨年の大体の統計で申し上げますと、米領サモアには大体百隻前後の船が入っております。年間で二千三百人程度日本人がそこを基地にして操業しておるという状態でございますが、御承知のように、このサモア周辺にはなおサントとかあるいはヌメアとかいろいろ基地ができつつございますが、何といいましてもやはりこのサモアパゴパゴが一番中心地でございます。それから現在のところすぐ移動するかどうかということはまだ明確でございませんが、全体的にやはりマグロ漁獲率というのは多少下がってきつつある、こういう状態でございます。やはり同じサモアなり、あるいはサントなりヌメア、こういったところを中心にいたしまするマグロ漁業のストックといいますか、資源は同一な資源でございまして、そういう面から漁獲率が下がってきた。こういう点で、これに対して水産庁としてもどういうふうな対策を講ずるかということについては検討を要すると思いますが、サモア基地が移動するということは急速には起こらない、こういうふうに考えております。
  22. 久保三郎

    久保委員 なお運輸大臣にお尋ねしますが、いま外務省の両課長からお話があって、サモアについては水産庁長官お話とは若干違うようでありますが、検討することでありましょう。ラスパルマスのほうはすでにたくさんの漁船船員が立ち寄っているわけでありますから、これは先ほどの西欧課長のおっしゃる方針でいくべきだろうと思うし、サモアについては検討の上、これも結論は、少なくともことしだめなら来年、こういうことだろうと思うのです。来年まで待つ必要があるかどうかの問題ですが、私は、ラスパルマスのごときは今後この国会を終わって臨時国会も開かれる時期も当然来ると思うのでありますが、中途においてもこれは当然やるべきであると思っているわけです。その際には、いままでそれぞれの課長からお話があったように、運輸省なり水産庁からそれぞれの担当官を、外交官としての資格でその領事官なり何なりに駐在させる、そして適切な指導ということもやっていくべきだと思うのですが、そういう申し出を外務大臣とも早急に話 をさるべきだと思うんだが、これはどうですか。
  23. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私は外務大臣とたびたび——そういうことにつきまして外務省並びに農林省の水産庁とも事務当局が折衝をしておりまして、全くあなたと同意見で、それをやるようにもうすでに外務大臣とも話し合っております。日本の重要な産業の基地でございますから、行く人間がなるべくいろいろな不自由のないようにするというのは当然と考えて、そういうように努力しておりますし、今後もさらに一そう強力に努力いたすつもりでございます。
  24. 久保三郎

    久保委員 水産庁長官もこれについてはやはりいまの運輸大臣お話のとおり積極的におやりになることだと思うのですが、さらにもう一つ加えておくと、このサモアなりラスパルマスには船主側業者団体というか、そういうものの関係者が若干行っているのだろうと思うのですが、これは大体商取引重点で行っていると思うのです。ですから、商取引で行っているのはいいとしましても、いまのような外務省なり運輸省の見解に基づくところのものは、むしろ船主団体として責任ある者が行って、現地において適当な船員労働なり何なりを処置できるというふうなためにも、あわせて業界からの代表も駐在させるべきだ、こういうふうに思うのですが、その点はどうですか。
  25. 庄野五一郎

    庄野政府委員 ラスパルマス基地につきましては、ただいま漁業関係では御承知のようにトロール関係漁船と、それからマグロ関係漁船が参っております。ここは、昨年の統計でも、トロール関係では三十一隻を上回る、それからマグロ関係では百二十隻を上回る、こういった程度でございますが、なおこれは増加するのではないか、こういう傾向でございます。日本人もそういう関係入港ごとに上陸している、こういうことで日本人漁師が非常に多いわけでございます。そういうことで、ここ二、三年急速に発展してきたわけでございますが、こういうラスパルマスあるいはサモア、こういう基地についてやはり日本人漁夫従事者の世話をするところがなくちゃならぬ、こうわれわれも痛感するわけでございまして、三十九年の三月には水産庁からもサモアなりあるいはラスパルマスにも調査員を出して、操業実態あるいは漁師の上陸した場合の、そういうときの娯楽、慰安状況とか治療関係、そういうものを視察さしてきたわけでございます。御指摘のようにやはりラスパルマス日本人が多いわけでございますので、昨年から外務省にもぜひひとつ領事館設置されるようにという御要望を申し上げているわけでございまして、先ほど御答弁のように、非常に努力をいたしましたが、三十九年度はまだ実現しなかった。今後とも領事館設置はぜひひとつ実現していただきたい、こういうふうに思っておりますが、そういう際には、農林関係あるいは水産関係に縁故のあるところについては農林省からも外務省に人を出して駐在さしているという例もございますので、そういうふうに努力したい、こう思っております。  なお、現地におきまする業者関係におきましては、水揚げされました漁獲物を売却、処理するという関係で、商社関係中心になったものが行っておりまして、やはりそういうものが中心になって、漁獲物ばかりではなしに、漁船の世話等もいたしておるわけでございますが、先生が御指摘になりましたように、船主の団体からも直接人を出すように、こういう点はまだ実現いたしておりませんが、今後ともそういうことが実現いたしますように、マグロの団体あるいは遠洋トロールの業界のほうで、そういう強力な指導や世話をする人が実際に行くことが実現するようにしたい、こういうふうに考えております。
  26. 久保三郎

    久保委員 そこで、この問題はこれで終わりにしますが、外務省の両課長からそれぞれお話がありましたけれども、さらに関係各省庁からもお話がありまして、意見の食い違いはないようでありますので、これはやはり早急に、領事館というか、外務省出先として、ものごとを処理されることを強く要望しておきます。それでは外務省はもうけっこうです。やってくれるんでしょうから、よろしくお願いいたします。  水産庁長官にいまのお話で申し上げたいのだが、やはりこれは業界も何人も人を出すということはなかなか困難だと思います。やはり商取引のために行っている方々が実際に漁船船員や何かのめんどうも見られる。そこで現地である程度権限を持ってさばけるというふうなものに置きかえる——と言っては語弊がありますが、そういう資格を与えられればものごとは早く解決すると思うのですが、これは領事館ができる、できないにかかわらず、やはりそういう指導を業界にもするべきだと思う。これはそういうことをさっそく考えてほしい、こういうふうに要望しておきます。  次に、やはり外国基地におけるところの漁船船員福利厚生施設の問題であります。これは社会保険庁長官にお尋ねするのでありますが、従来も運輸省あるいは水産庁関係から要望があったのではなかろうかと思うのでありますけれども、ただいままで申し上げたたとえば二つ基地、これについては当然のごとく——船員保険の積み立て金というものがございますね。いわゆる千分の七、これは船員の福祉費ということで実は積み立てておられると思う。積み立てされたこの原資は国内において相当使っておられると思うのでありますが、特に、ただいま申し上げたように、外国基地においては何らそういう設備がないままに今日まで放置されているわけです。ついては、社会保険庁として福利厚生施設の設置に対して積極的な施策を講ずるべきだ、かように思うのですが、いかがでしょう。
  27. 大山正

    ○大山(正)政府委員 船員保険の福祉施設につきましては、ただいまお話がありましたように、千分の七に相当する保険料によりまして毎年五億ないし六億くらいの予算をもちまして施設しているところでございますが、現在までのところ、国内施設の整備充実ということに追われまして、残念ながら海外基地にまでは及んでおらないのが実情でございます。先ほど外務省からもお話がありましたように、海外出漁船員の問題につきまして、関係各省あるいは関係団体等によります対策協議会ができておるのでございますが、本年の四月から、福利厚生の問題もございまして、私どものほうもそれに参加いたしまして、現在これら海外における船員福利厚生施設につきまして検討を重ねているような段階でございます。
  28. 久保三郎

    久保委員 毎年五、六億の金を使っておられるそうですか、毎年そのくらいの金が積み立てられるというか、徴収されるわけですね。船員保険の中で福祉費というのは残高は幾らくらいあるのですか。その年に全部使ってしまうのですか。
  29. 大山正

    ○大山(正)政府委員 毎年予算に計上いたしまして、ただいまお話ししました五億ないし六億の金を使いまして毎年施設をやっておりまして、特に残高として積み立てているということはございません。
  30. 久保三郎

    久保委員 これは船舶安全法改正船員法改正で、二、三年前になりますが、その際に伺ったときには、たしか福祉費は幾らか残っている、十分に使っていない——と言っては語弊があるが、残っているように聞いたのだが、その後は毎年みんな払ってしまうのですか、全部使っていますか、いかがですか。
  31. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 積み立て金でございますが、御承知のとおり、船員保険におきましては失業、疾病、年金、総合的な運営をいたしているわけでございまして、従来は〇・七%の保険料をもって得ました福祉施設費の中で必ずしも全部使っていなかったわけでございます。したがいまして、そういったものが約二億程度積み立て金として総合的に残っておる、こういう状況でございますが、三十七年以降につきましては、徴収しました福祉施設費は大体全額その年度で使っておるような状況でございます。
  32. 久保三郎

    久保委員 人数の点からいけば国内に大半が使われるのが当然だと思うのです。決してこれは否定しませんが、ただこれの必要度からいくと、海外の、とにかくラスパルマスのごときは二、三千行っているというのでありますから、これに対しては早急に措置を講ずべきではないか。サモアのほうは私よく存じませんけれども、人数は少ないようでありますが、これまた非常に便利の悪いところであります。ラスパルマスのほうは観光地といわれるようでありますから、多少便利がいいだろうと私は見ています。そういうことからいきますと、両者ともそれぞれの問題をはらんでいるということでありますので、保険庁長官がお述べになりましたように、いまの答弁を聞くと、初めて私どもが入るようになりましたということで、大体運輸省なり水産庁は何をやっているんだと私は思う。最初から社会保険庁が入らなければ金が出っこはないじゃないか。入れたんだから文句は言いませんけれども……。そういうふうな、どうも各省庁てんでん向き向き——と言っては語弊があるが、向いたほうを向いていたのでは、問題は解決しないと私は思う。  そこで運輸大臣にひとつお伺いするのですが、社会保険庁長官からお話があったように、今度は協議会として社会保険庁も入れてやるそうでありますが、これの主導権はどこがとるのですか、おわかりになりませんか。それは船員局長……。
  33. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 海外出漁対策協議会は本年四月に発足いたしました。それ以前におきまして、関係者が集まりまして、海外基地における船員のモラル向上ということで懇談会を持って、「船員の海外における行動の心得」というものの編さんを進めてまいりましたけれども、これはその問題だけでなく、広く船員福利厚生一般を含めて協議すべきであるということに関係者意見がまとまりまして、本年四月に、いま申し上げましたような形で対策協議会という官労使三者の集まりを持ったわけであります。これは現在のところ私のほうで庶務を行なっておりますし、この対策協議会をつくります際にも、モラル向上懇談会における労使の意向を受けまして、私ども関係省庁にも呼びかけて四月に発足したような次第でございます。
  34. 久保三郎

    久保委員 関係者の懇談会でモラル向上という話ですが、別にけちをつけるわけじゃございませんが、モラルというのは人間性の話ですから、人間性を否定した労働の環境の中では、モラルは訓辞やパンフレットでは芽ばえてはきません。たいへんことばは悪いのですが、そうだと思うのです。船員局長のおっしゃるようなモラルの問題を話題にすることは否定するわけじゃありませんけれども、モラルを考えるならば、そのパンフレットをつくるのもけっこうでありますが、モラルが芽ばえるところの人間性を回復してやるということで一刻も早くこれらの措置を講ずべきだと思うのです。  これから船員局長中心にずっとお尋ねするわけでありますが、この福利厚生施設についても、いま社会保険庁長官がおっしゃるように、懇談会は三者構成でやっているわけですね。これはいつめどをつける考えですか。
  35. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 海外対策協議会は別に法律に基づくものでもございませんから、関係省庁と労働者側、それから水産業界の方々にお集まりを願って、当面来年度予算にかかわる事項というのを優先的に取り上げようということで、先般、ただいまここでお話しになっております海外における厚生施設並びに領事館設置というふうなことを関係者一同で推進してまいろうということに話をしております。したがいまして、現在のところは海外における厚生施設をどこにどの程度のものを、そうして国がどの程度援助すべきか、また福利施設ということになりますと、当然使用者側が相当負担すべきものだと私ども考えておりますが、その負担の限度はどの程度であるかというふうなことを現在話し合っておるところでございます。
  36. 久保三郎

    久保委員 社会保険庁長官にお尋ねしますが、いま船員局長からお話があったように、少なくとも来年度予算に間に合うように結論をつけたい、こういうことでありますが、おたくのほうでは、たとえばラスパルマスならラスバルマスに行って、船員のそういう実情についてお調べにはなっておられるのですか。
  37. 大山正

    ○大山(正)政府委員 現在までのところ、私どものほうの関係者が参りまして調べたことはございません。それからまた、それに要する旅費等も実は予算にございませんので、ただいまのところ私ども関係者が直接参りまして実情を調べるということは不可能である、かように考えておりますが、先ほどお話がありましたような外務省在外公館等ができるというようなことでありますれば、それらを通じまして十分な情報が得られると考えております。
  38. 久保三郎

    久保委員 先ほどの外務省課長の話では、早くて来年度の話なんです。それで私は中途でもやれという要望をしているのですが、あなたのおっしゃることだと、在外公館ができてから、そうすればパイプが通ずるからよくわかるだろうということですが、そうすると、先ほどの船員局長の少なくとも来年の予算には決着をつけたい、こういうことになると、たいへん食い違いがありますので、予算の点は多少問題があると思うのでありますが、少なくとも実態を把握してなければ、あるいは船員局あるいは水産庁、こういうところからの話だけではなかなかさいふを握っている社会保険庁としても出しにくいのではなかろうかと私は推測しているから、お調べになったか、こう聞いているわけなんです。予算の点については、これはあらためて要求するなり何なり必要だと思うのでありますが、少なくとも事態はもうじんぜん日を送る場合でないとさえわれわれは聞いておるわけです。ついては早急に調査なら調査をするなりして、来年度予算に少なくとも間に合うようにやるべきだと思うのです。そういう積極的な意欲はお持ちですか。
  39. 大山正

    ○大山(正)政府委員 先ほどの対策協議会の場を通じまして、関係各省との連絡も十分とれますので、すでに把握しておられます水産庁なり運輸省なり等の事情を私どもも十分承りまして、来年度予算についてこれを計上するかどうか、あるいは国内における施設整備との優先順位をどうするかというようなことを十分考えまして検討さしていただきたい、かように考えております。
  40. 久保三郎

    久保委員 国内のやつもそれは十分につくってほしいと思うのでありますが、ただ何といっても長期にわたって、これらは大体一年半、長いのは三年近くもなるそうでありますが、そういうふうに海外に縛りつけられている現状であります。そういうことと、土地柄ということも考えて、やはりこれは優先的に取り上げられる筋合いのものだ、かように思っているわけなんです。この点についてはここであなたも言明できないだろうと思うが、十分考えてやってほしい、こう思うし、それから水産庁長官もこれは異論のないところだし、またあなたも魚をとるほうだけが主ではないようにお話を聞いておりまして、そこに働く者も考えておやりになるという長官お話でありましたから、少なくともこの点についても、水産庁も単にこれは運輸省が大体幹事役だからということじゃなくて、積極的にやはり推進すべきだと思うのだが、これに御異論はございませんね。
  41. 庄野五一郎

    庄野政府委員 もちろんそのつもりで積極的に推進してまいりたい、このように考えている次第でございます。
  42. 久保三郎

    久保委員 次に、もう一つ社会保険庁長官にお伺いしておきますが、三十七年の船員法改正のときの行方不明手当については、船員保険法の給付として、これはその後改正していますね。そうしますと、最近における船員保険法の問題点というのは何かございますか。
  43. 大山正

    ○大山(正)政府委員 ただいま厚生年金保険法の改正と並びまして、船員保険につきましてもやはり年金の給付額の改定等を行ないたいということで、今国会改正案の御審議をお願いしております。
  44. 久保三郎

    久保委員 それでは社会保険庁関係はよろしゅうございます。  次に、審判庁長官がおいででありますから伺いますが、手元に、ただいま私が要求した裁決の写しというか、抜粋が届いております。そこで、これは先般も関係省庁のそれぞれの方にお聞きしたのでありますが、これらについては大体答弁はうまい答弁をいたしておりましたが、だれも読んでおらぬというのが実態でございます。そこで藤枝長官にお伺いしますが、これらの裁決書というのは官報か何かに出すのですか、それは出さぬのですか。
  45. 藤枝盈

    ○藤枝政府委員 お答えいたします。裁決書というのは官報には掲載しておりません。関係者に出します。
  46. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、これは運輸大臣もおりますが、審判庁というところは非常に民主的な、技術に関係しますので、特別な裁判制度というか、そういうことになっておるわけですね。ところがこの審理なりこれの裁決について関係当局は一つも関心を持っていないということが先般来明らかになったわけです。しかも審判庁当局もいまお述べになったように、官報にもこれは登載しません。関係者に送達するという。関係者というのは、裁決を受けた者、いわゆる受審人といいますか、そういう者だけにこれは通達されるわけですね。そうしますと、これは言うならば、審判庁の結論として、なるほど裁決は下したというところの効果はあるかもしらない、あるいはこれによって処分をしたという効果はあるかもしらないが、さらにこの裁決というか、この海難の結論としてかくかくの問題点があったというようなことがちっとも生かされてこない。それではこの特殊な裁判機構である審判庁そのものも十分に機能を果たしているとは私は思えないのです。ついては、この制度はそのままでいいとしても、これを受けるところの関係者の受けとめ方について検討する必要があると私は思うのです。  大体運輸大臣は、率直に申し上げて、あまりこれは御存じないでしょう。よく知っていますか。
  47. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私、一昨々日でございましたか、判決のいまの書類の提出がありまして、詳細な説明を聞きまして、内容一言一句違わぬようには覚えておりませんが、大体覚えております。
  48. 久保三郎

    久保委員 これはまあ運輸大臣はどうかと思うのでありますが、藤枝長官にお尋ねしますが、あなたのほうの権限には勧告というのがございますね。勧告というのは、いかなるときに勧告するのですか。
  49. 藤枝盈

    ○藤枝政府委員 お答えいたします。海難審判法上にある勧告という制度は、その事件事件で、免状を持った受審人あるいは指定海難関係人、つまり当事者でございますが、そういう審理の途上におきまして、免状を持った受審人というものに対する過失が認定される場合には懲戒という手を打ちますが、そうでない者には懲戒の手は打てませんので、これは何らかの方法においてこういう事故防止の手を打たなければならぬのじゃないかということから、海難審判法では勧告という制度を設けてあります。この勧告という意味は、その事件関係した者に何か落ち度があったという事実がはっきりしてまいりますと、この点をこういうふうに改善しなくちゃいかぬのじゃないかという意味の勧告文を出すことになっておりまして、先般先生から御指摘がありましたような何か白書的な、全般に通じたような結論を一般に出すというような、こういう点がこうだからこうせねばいかぬというような白書的の勧告はどうかというおことばもございましたが、私のほうで扱っておりまする勧告というのは、そういう意味ではなくて、事件事件、個々の事件についての勧告でございます。
  50. 久保三郎

    久保委員 これはだいぶ膨大なものでありますから、まだよく目を通していないのでありますが、その勧告の問題は別として、海難の審判関係人といいますか、たとえば機関部のいわゆる摩耗というようなものによって海難になったという結論が出たとすると、その船体の検査について的確にしたかどうか、船体の検査は、これは運輸省の船舶局のほうの役目でありますね、こういうのも、そういうことがあれば的確にやったかどうかの調べがあれば、これも関係人として処置をされるわけですね。そういうことはありますか。
  51. 藤枝盈

    ○藤枝政府委員 もちろんその事件事件内容によりまして、検査なら検査の粗漏によってこれが出たという事実があれば、当然その検査のやり方が悪いということは指示します。ところがいまお手元に差し上げました資料の中には、そういうケースはあまり出ておりません。と申しますのは、船舶職員としてそういう船に乗り組ませる資格には、それぞれ必要な技能を認定しております。したがいまして私たちは、その船舶職員たるべき乗り組み員の資格を信用しまして、これは国家が与える免許でございますので、その本人の学力といいますか技量といいますか、そういうものをもとにしまして判断をしておりますので、特にそこに船舶の検査が粗漏であったとかそういう点が出てくれば別でございますが、それでそのつど本人の判断で処置していく場合、それが誤っておったかどうかという判定をするわけで、そこに船舶検査というものが必要であるかないかということは、本人の判断で適当な処置をしたかせぬかということで過失が出てくるというわけで、本人の処置が誤っておったかどうかということによって判定する。もし御質問のような、たとえば検査の粗漏な処置があったというようなことが出てまいりますれば、それに対する処置をとります。
  52. 久保三郎

    久保委員 審判庁の性格からいって、あるいはその関係各省庁に対して注意を喚起するというような機能がないというお話でありますれば、これまた審判庁制度の制度そのものについてもわれわれは検討してみたい、こう思うので、本件については以上にしておきます。ただ残念なことは、運輸大臣に申し上げておきますが、先ほど言ったように、この裁決などは実際だれも見てないのですよ。見ているような答弁を、この間水産庁長官はじめ、みんな長い答弁をしましたが、実際は見てない。亀山船員局長は一番長い答弁をしたが、これも実際は見てないということであります。まあ見ている、見ていないは別にして、少なくともこういうふうに毎日のごとく海難が起きている。その大半は漁船であります。きのうも起きています。おとといもありましょう。数限りない。きのう川崎で爆発事故で十一名かそこら死にましたが、あれ以上のものが毎日続いているのです。これはどういうわけか。その基本問題について、運輸大臣として関心を持つということが大事ではなかろうかと思うのです。あなたの所管の局長さんはあまり見ていない。こういうことでありまして、非常に残念でありますが、一応注意を喚起しておきます。  なお審判庁の制度については、これは前向きで検討する必要もあろうかと私は思うのです。どうも庁という名のつくところは、水産庁なり保安庁はわりあい日の当たる場所にいる庁でありますが、あとの庁はどうもどこの庁でも日があまり当たらぬということで、やっている仕事にも張りがないのではないか、こういうふうに思います。審判庁のごときは、事故があれば焦点が当てられるが、普通の仕事についても、予算などもあまりもらっていないのだろうと私は思うのです。だからこういう点についても、後刻これは制度自体について検討することにして次にまいります。よって、藤枝長官御苦労さまでした。  次に、ILO九十二号条約でありますが、これはわが国ではまだ批准をしておりません。おりませんが、船内船員設備基準について言及しているわけなんであります。このILO九十二号条約は何がゆえに批准をためらっているか、この点について船員局長のほうからひとつ御答弁願いたい。
  53. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 ILO九十二号条約につきましては、かねてからその内容検討を続けております。そしてこれをわが国海運に適用するのにどうしたらいいかということで、船内船員設備につきましては関係者意見を徴しまして、わが国実態に即応した船内船員設備が何であるかということを検討いたしましたが、現在のところ必ずしも条約の示す基準に全面的に適合するということが困難であるという事情でございますので、現在のところまだ批准に至っていないのでございます。
  54. 久保三郎

    久保委員 困難であるからということでありますが、いろいろな意味で困難かもしれませんが、それじゃ困難だから批准の方向で船内船員設備基準というか、そういうものはつくる意思はない、こういうふうに受け取ってよろしいのかどうか、全然この問題には手を触れていないのかどうか、触れているとするならばどの点に触れておられるのか伺いたい。
  55. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 船員の居住設備については、私どもは先般の船員法改正の際に、そのことも含めて省令で設備に関する基準が制定し得るように法律の改正をお願いしたわけでございまして、現在も鋭意その準備を進めております。労働安全衛生規則がようやくでき上がりまして、近く公布の運びになりますが、引き続きまして、設備に関する省令をつくり上げたいというふうに考えておる次第でござまいす。
  56. 久保三郎

    久保委員 その設備基準については、近くまとめて省令を出したい、こうおっしゃいますが、それは五百トン以上のものについてのみでありますか。
  57. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 五百トン以上のみに限るか、五百トン以下あるいは漁船も含めるかどうかという点についても、現在検討中でございます。
  58. 久保三郎

    久保委員 いかなる場所で検討されていますか。
  59. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 私のほうで現在検討しておりまして、近く船員中央労働委員会に諮問をいたす準備をいたしております。
  60. 久保三郎

    久保委員 近くというのは今月中でございますか。
  61. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 なるべく早くということで、今月中もしくは来月早々というふうにお考えおきを願いたいと思います。
  62. 久保三郎

    久保委員 五百トンというのは、大体条約では五百トン以上、こういうことになっております。そこで私は聞いているのでありますが、あなたのお話だと、漁船を含めてやるかどうかはいま検討中、こういうことで全般的に考えておられる、こういうことでございますが、水産庁も共同作業に加わっておりますか。
  63. 庄野五一郎

    庄野政府委員 まだ船員局の段階で検討されている、こういうふうに聞いております。
  64. 久保三郎

    久保委員 船員中央労働委員会にかかっているということは、まだ二年も三年もかかるのじゃなかろうかと思うのでありますが、いかがですか。これから水産庁と合議というか、相談というかわかりませんが、話し合いをすることでありますが、実際これにまたたいへん手数がかかると私は見ているのです。これはかかるのはしかたがないのでありますが、今度は労働委員会にかかって、二年も三年もかかるようなことでは、残念ながらどうも期待に反すると思うのです。われわれは御承知のように昨年でありましたか、一年前に船舶安全法の、審議の際に附帯決議をつけているわけです。これに対して、政府も異論はない、決議の趣旨に沿って善処いたしますという答弁を実はしているわけなんです。ですから一年たった今日では、もうそういう態度があってしかるべきだと思うのですが、いまのお話だと、来年にもちょっと無理ではなかろうか、こういう気持ちがするのですが、船員局長、どうですか。
  65. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 今日まで船員局並びに船員中央労働委員会におきましては、三十七年の船員法改正以降、まず船員の安全衛生ということをまっ先に取り上げるべきであるということで、船員労働安全衛生規則について審議を続けてまいり、成案を得て近く、と申しますのは来週早々にも省令として公布し得る段階までやっとこぎつけた次第でございます。引き続きいま申し上げました設備の基準を、省令でいかに定めるかということに入るわけでございまして、私どもといたしましては、なるべくすみやかに成案を得たいということを考えておる次第でございます。
  66. 久保三郎

    久保委員 その場合、漁船も含める、こういうことでありますか。大体漁船を含める場合には、どの程度漁船まで含める考えでございますか。
  67. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 これは今後の検討の問題でございますが、現在漁船を含めるべきかどうか、法的規制として含めるべきかどうかという点はきわめて重大でありまして、慎重な検討を要すると思いますが、現在までのところ、御承知のように、水産庁長官並びに船舶局長船員局長の共同通牒で、遠洋に出ます漁船については、行政指導といたしまして、一応の居住設備の基準を示して、関係者がそれぞれこれの実現に鋭意努力をいたしております。したがいまして、立法化ということがもし漁船についても行なわれるといたしますれば、現在の通牒が一つのめどになるのではないか、こういうふうに考えております。
  68. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、いまのお話だと、遠洋のカツオ、マグロ漁業については少なくとも入れるべきだ、こう見解を持っておられるのですね。水産庁長官どうですか。
  69. 庄野五一郎

    庄野政府委員 ILO九十二号条約に関しましては、大体先生の御指摘のように、五百トン以上の大型船が主たる対象になっていると承知いたしております。これにつきまして、やはり漁船をそのまま含めるかどうかということはただいま運輸省のほうから御答弁がありましたように、漁業実態等から、一般の客貨船とは違うところがありまして、慎重な検討が必要かと存じます。先ほどお話がございましたように、水産庁運輸省船舶局長船員局長の三者の共同通牒によりまして、それぞれ行政的な指導をやっておりますが、その実績等をも見ながら、また実施状況等も見ながら、また漁業の種類あるいは漁船のトン数等によりましてもいろいろ差異が出てくると思います。そういう点を考慮しまして運輸省とも十分協議して、先生の御趣旨に沿うよう努力してまいりたい、こういうように考えております。
  70. 久保三郎

    久保委員 私の趣旨に沿うように努力するということでありますから、私の趣旨は少なくともことしじゅうには結論づけてほしいということでありますので、そういう点で了解しておきましょう。  次には、やはり船舶安全法改正のときに、「小型漁船についての安全性を確保するよう措置すること」ということで附帯決議をしておきました。これについて特に、その次の項目には、「最近における海難事故にかんがみ、船舶検査体制を整備し、検査が一層有効適切に行なわれるよう措置すること」、この二項目がいわゆる漁船等の関係であります。ついては、これは船舶局長にお尋ねするわけでありますが、この安全性を確保する措置あるいは検査対象の強化、こういうものについて、これは一年たっておるわけでありますが、この一年間に措置されたものは何と何がございますか。
  71. 藤野淳

    ○藤野政府委員 昨年の船舶安全法の一部改正附帯決議によりますと、ただいま先生の御指摘になりましたような漁船の安全確保に関する検査の強化の問題がございます。その後われわれの措置したものといたしましては、安全の基本になりますことは、やはり小型漁船においてしばしば起こっております海難の実態考えてみますと、漁獲物の過載という問題が根本問題であるように考えております。これにつきましては、三十九年度予算におきまして、漁船その他を含めまして小型船の積み高制と申しますか、あるいは満載喫水線と申しますか、その基本的な問題につきまして基礎的な調査をする、しかしそれもあまり長くかかる調査ではございませんけれども、急速にやらなければならぬ。調査するための予算の確保に努力いたしまして、三十九年度には必要な予算が認められております。これにつきましては水産庁当局におかれましても、漁船の種類別に最大積載量を検討し、決定したいという考えでおりますので、いずれ結論が出ますれば、われわれといたしましては当然協議を受けて適正な積み高制と申しますか、乾舷と申しますか、そういうようなものを決定いたしたいと思っております。  なおその他漁船の海難の原因あるいは海難を起こした場合の救助等につきまして、通信関係の不備が相当あることが明らかになっておりますが、これにつきましては、いずれもラジオブイというものがございます。ラジオブイは非常に有効であることが一般に認識されておりますが、漁業用のラジオブイをSOSブイに切りかえるというような方式が一部に望まれておるわけであります。この問題につきましてはいろいろ技術的な問題がございますので、でき得べくんば専用のSOSブイを装備することが望ましいというふうに考えまして、これを強制的に備えつけさせるために規則の改正を準備いたておる次第でございます。  なお、全般的な検査の強化充実という問題につきましては、安全法の一部改正を契機といたしまして、二百数十名の検査官を督励いたしまして、特に漁船の検査につきましては、機関の故障等が非常に多い、これは積み高、漁獲物の過載の問題のほかに、そういうのがございますので、これにつきましては厳重に検査をいたしまして、メタルの焼損、シャフトの折損、あるいはその他の機関の故障の起こらないように十分整備することをやっておる次第でございます。  なお、救命具につきましては、先ほどのラジオブイのほかに、ふくらまし型の救命具が非常に有効であるということが幾つかの事例でだんだん認められておるわけであります。これにつきましては、ふくらまし型を使用いたします場合に、カバーがないために海水が浸入して、十分な効果を発揮し得ないという場合がしばしばございますので、これを改造いたしまして、カバー——おおいが装備できるようにという改造の通達をただいま出す準備を整えておる次第でございます。  そのほかいろいろございまして、根本的には、漁獲物の過載を防止するために積み商制限、乾舷ということを決定することを鋭意検討いたしておる次第でございます。
  72. 久保三郎

    久保委員 いまお話がありましたが、それぞれ手配をとっておるというのだが、多少とっておる程度でございまして、予算もことし取ったので、まず調査をするということでございますが、われわれの側から見ると、どうも少しおそいのではなかろうか、こういうふうに思う。  それでは、たとえばSOSのラジオブイでありますが、これはお話によりますと、規則なり何なりをつくって強制的に備えつけさせますか、そういうことになるんですか。
  73. 藤野淳

    ○藤野政府委員 価格の問題がございまして、ただいま十五、六万円するわけでございますが、経済問題も考慮いたしまして、できればこれを強制的に装備することをいたしたい、かように考えております。
  74. 久保三郎

    久保委員 水産庁長官、いまの船舶局長お話、大体了解してよろしいんでありますね。
  75. 庄野五一郎

    庄野政府委員 漁船の海難事故の多いことにつきましては、御指摘のとおりでございます。この事故の原因につきましては、われわれも海難統計あるいは審判書等もよく参酌いたしまして、その中で運航技術の過失によるものとか、あるいは機関の取り扱いに過失があったもの、あるいは機関故障、そういった点が多いわけでございますので、そういう点につきましては、数年来、乗り組み員の技術の向上、こういう意味で運航技術あるいは機関の取り扱いの技術、あるいは通信の取り扱いにつきましての技術の資質の向上をはかるということで、水産庁からも補助金を流しまして、修練会を毎年各地区ごとに開催して、そういう技術の向上につとめる。こういうことをもって、できるだけ過失に基づく海難事故の防止につとめてまいってきておるわけでございます。  なお、漁船保険の面からも、事故のできるだけの防止あるいは回避という意味から、保険事業を通じましてもやはり海難防止の思想の高揚、あるいは技術的な面の訓練、そういう点もいたしておるわけでございます。  御指摘のラジオブイの問題でございますが、ただいまはラジオブイあるいは膨張救命器具、こういったものについての設置につきましては、農林漁業金融公庫から低利長期の資金を貸し出す道を開きまして、そういう救命器具の設置導入の促進を奨励いたしておるわけでございますが、これの法制化等につきましては、運輸省とも十分協議いたしまして、そういうことに努力したい、かように考えます。
  76. 久保三郎

    久保委員 時間がありませんから、先ほど来船舶局長がお述べになった、あるいは船員局長がお述べになった、いわゆるすでに省令を出すというようなこともありましたから、そういうものができ次第こちらにも回してほしい、こう思います。  そこで、船員法七十三条の船員の中でも特に漁船船員、あるいは小型船も入りますが、そういうものの労働条件については、いわゆる労働委員会の決議によって命令で定める、こういうことになっていまして、これは船員法改正のときにもきつく附帯決議をしておるわけでありますが、これらについては、当時も指導要綱を関係省庁合議の上で出しておりますが、最近運輸省としては、特に船員局としては、この労働条件の指導要綱をさらに強化して出す考えがあるというふうに聞いているんだが、それは事実でありますか。
  77. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 仰せのとおり、近く指導要綱を出す予定にいたしております。
  78. 久保三郎

    久保委員 その内容を聞く時間がございませんが、すでに水産庁には連絡をとっているわけだろうと思うんだが、これは水産庁には全然関係ありませんか。
  79. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 水産庁にも内容をお見せしております。
  80. 久保三郎

    久保委員 そこで水産庁長官、いま亀山局長の言うことについて、一応了解点に達したのでしょうか、いかがですか。
  81. 庄野五一郎

    庄野政府委員 この問題については、先般来お答え申し上げておるように、いろいろ運輸省検討中でございまして、まだ十分結論には達していない、こういう状況でございます。
  82. 久保三郎

    久保委員 検討中だというが、結論はいつごろ出しますか。それから、問題点はどういうところですか。前の指導要綱と違った点は幾つもないと思うのですが、この点はどうですか。
  83. 庄野五一郎

    庄野政府委員 問題点は、やはり賃金体系の問題等が中心だろうかと思います。そういう点につきましてはできるだけ早く検討を進めてまいりたい、こういうふうに考えます。
  84. 久保三郎

    久保委員 賃金の問題でありますが、新しい指導要綱では、いわゆる歩合給に属するものは、奨励金というか、固定給六割にプラス奨励金、これはこの前の通達と同じだと思うのですね。そこで、今度違う点はいわゆる歩合給のとり方でありますが、明確にするために、大仲経費を差し引いたあとの歩合給でなくして、総水揚げ高に対する歩合給、こういうふうにしようという点が当然指導されるようであります。これは問題はないと思いますが、大体いままでの指導で、固定給を六割というのはどうなっているか、現状はどうなんですか。時間がないようですから、与党のほうで何か御都合があるそうですから、そうであるかないか簡単に答弁願いたい。
  85. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 固定給を六割にするようにという指導は昨年来行なっておりますが、現在のところ六割にはまだ到達いたしておりませんで、五割程度にとどまっておるのが現状でございます。
  86. 久保三郎

    久保委員 水産庁長官から丁寧な答弁がほしいのでありますが、いま簡単に五割程度だというのです。これはどういうふうに水産庁として指導しておりますか。
  87. 庄野五一郎

    庄野政府委員 賃金の体系でございますが、水産庁におきましては、御指摘のように資本的に大きな漁業者もございますし、カツオ、マグロのように大部分が中小漁業的な経営でやっている面もあるわけでございまして、その間にいろいろ困難な問題もあり、格差もあるわけでございまして、一律に何割ということがどうかという問題に逢着しておるわけでございます。基本的にはそういう固定給を設けていくという方向にはわれわれも異存もないし、そういう方向に沿うように努力する、こういうことで業界ともよく話し合っておるわけでございますが、いろいろ業界に格差がある。こういう点について実質的な問題があろう、そういう点を何とか早く検討し、詰めてまいって、固定給制をできるだけ加味していく、こういう方向に考えたいと思います。
  88. 久保三郎

    久保委員 それでは歩合給ということについて、総水揚げ高で算出するという方式はどういうふうに考えておりますか。大仲経費を差し引いてといういまのやり方はやめて、大仲経費ではなかなかむずかしいというか不明朗なものがある。この際総水揚げ高に対して歩合給を算定するという方針が正しいと思うし、単純明確だと思うのですが、いかがですか。
  89. 庄野五一郎

    庄野政府委員 まだその点十分詰めておりませんが、そういう基本的態度で業界と話しております。
  90. 久保三郎

    久保委員 業界と話をするのもけっこうでありますが、指導でありますから、最近の漁業労働力の需給関係からいっても、やはり方針は業界も考えてもらわなければいかぬと思うのです。本来ならばこれは法律できめるわけです。ところがやわらかく、漁業実態もあるからということで指導要綱でやっておると思うのです。こういう点も十分勘案して、業界にも納得させるように努力していただきたいと思います。  それからもう一つは休日あるいは労働時間の問題でありますが、一日につき少なくとも何時間睡眠させたらいいと思うのですか。実態は洋上において十八時間労働これは一日十八時間平均してあるそうでありますが、こういう場合に水産庁としてはどういうふうに考えておりますか。
  91. 庄野五一郎

    庄野政府委員 水産の業種によりまして、マグロとか底引きとかいろいろ業態に差異がございます。われわれといたしましては、やはり休養時間は八時間程度必要であろうというふうに考えて、こういう方向に指導したいと考えております。
  92. 久保三郎

    久保委員 次は休暇について船員局長に聞くのでありますが、休暇といっても、一年以上も操業に出っぱなしという場合に、はたしてどういうように休暇をとらせているか。いままでの指導要綱でも一カ月に二日とかいうことで出しておりますが、それは前進したものだと考えております。しかし実際にたとえばマグロ漁業のごとく、少なくとも一年半なり三年近くまでということになりますと、これは休養、休暇の実態からいってもなかなかむずかしいと思うのです。ついては休暇の指導をされると同時に、これはなかなかむずかしい問題かもしれませんが、一航海といいますか、一操業といいますか、一年半も二年も洋上に張りつけっぱなしということは、一般の外航汽船にもない話であります。だからいわゆる一操業期間、少なくとも最大限一年たてば基地に帰すというか、内地に帰す、こういう指導があってしかるべきだと思いますが、これについてはどう思っておりますか。
  93. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 御指摘のごとく非常に長期にわたって洋上にあるということは、何と申しましても船員にとって一番つらいことでございます。出漁期間を制限することは必要かと思いますけれども、それぞれの漁業の種別により事情も異なりますので、一律にはなかなか困難かと思いますが、なるべく短縮する方向で指導いたしたい、そういうふうに考えております。
  94. 久保三郎

    久保委員 水産庁長官に簡単に御答弁いただきたいのでありますが、いま亀山局長が言うのは漁業実態もあるからなかなか一律にいかぬということでありますが、特に遠洋の場合は、やはり企業にそういう責任を負わせるべきだと思います。企業として成り立つかどうかの問題はもちろん一つあります。しかしながら、企業が成り立たぬからというので二年も二年半も洋上において人間性を喪失したような労働をしいておることは、企業の社会的責任があると思います。そういう責任を少なくと本最小限負わせるという指導をしてしかるべきだ。そういう意味から、捕鯨船にいたしましてもおそらく半年くらいで、これがいままでの漁業では一番長かったほうではないかと思いますが、長期にわたる場合は少なくとも一年くらいで内地に帰して交代制をとらせる必要がありはせぬか。そういうことでなかったならば、休暇といい、休日といっても真に労働の再生産にはならないではないか、こういうように思うが、この点はいかがですか。
  95. 庄野五一郎

    庄野政府委員 最近の漁業実態といたしまして、特にマグロ漁業等につきましては操業期間が非常に長くなってきておる傾向がございます。とれにつきましては、母船式漁業あるいは単船式漁業等によってもまた格差もありましょうし、またマグロ漁業につきましても、先ほど申しましたように、中小漁業形態の経営が大部分であるというような実態もございまして、先生の御指摘の点は十分われわれもその必要があろうと存ずるわけでございます。これをどの程度で交代制にするかという点については、遠洋トロール等については大資本経営においても交代制を実施しておるわけでありますが、カツオ、マグロになると問題があろうかと思いますが、先生の御意向に沿うように、今後もそういう業界等ともよく協議して、そういう方向で指導してまいりたいと考えます。
  96. 久保三郎

    久保委員 いろいろ申し上げたいのでありますが、時間がないようでありますけれども、少なくとも先ほど来お話があった今年度の指導要綱はいままでの指導要綱よりは多少前向きにやっていくことと、それからもう一つ最後にお聞きしたいのは、指導要綱もけっこうでありますが、七十三条の規定による成規の命令を出す準備をすべきだろうと思います。この前の委員会では機帆船並びに小型船についてのみ作業しておるというが、漁船の問題についても私から注意を喚起したが、その点はどう思いますか。
  97. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 現在船員中央労働委員会でお説のとおり機帆船、小型船についての労働時間の審議を続けております。先般労働時間小委員会というのが中央労働委員会に設けられておりますので、その委員長にもすみやかに漁船についての労働時間の基準を御検討いただくように要請をいたしました。本日も小委員会がありますので、私も出席いたしまして、各委員に要請いたしたいと考えております。
  98. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、そういう七十三条の、特に漁船、並びに機帆船も含めますが、そういうものは今年度じゅうに決着をつけるつもりでいまかかっておりますか、いかがですか。
  99. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 なるべくすみやかに成案を得たいということでございますが、今年じゅうにでき得るかどうか。なるべくすみやかに努力するということで御了承を願いたいと思います。
  100. 久保三郎

    久保委員 一番大事なところは検討するとか約束できないという。これは一番なところなのです。マグロでいえばとろです。マグロの話をさっきからしでいるのですから……。水産庁長官はとろばかり食っているから、うまみがよくわかっていると思うのだが、うまみはやはり分かち与えるというのが原則であります。船員労働力を確保し、優秀な若い労働力を確保するという場合に、前近代的な労働慣行なり労働条件では、残念ながら日本漁業は国際的に見ても劣勢におちいらざるを得ない、こういうふうに思うので、最後に、これは運輸大臣に申し上げますが、少なくとも漁船船員の問題については、政府部内においても、あるがままの機構でお互いにやっていることもけっこうでありますが、もう少しくふうをこらして、真剣に取っ組むべき時期だと思う。水産庁長官も来ておりますが、あなたは人命尊重ということで——池田内閣も最近はいろいろ看板だけあげていますが、なかなか中身が伴っておらぬ、そういうことでありますから、この際、下の人にも聞いて、近い閣議の席で何か提案してもらいたい、こう思うのです。労働委員会にかけることもけっこうでありますが、二年も三年もかかったのでは、これはつぶれてしまうのではないかと私は思うのです。いかがですか。
  101. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 御趣旨に沿って努力いたしたいと思います。
  102. 久保三郎

    久保委員 もう一言つけ加えておきますが、附帯決議というのは、われわれ国会側としては一つの注文と考えています。注文というのは、いつかしらできる、いつできてもいいということではないのであります。ところが、われわれの委員会でやっただけでも、船舶安全法改正のときの附帯決議、これは三十八年の三月、それから船員法改正のときの附帯決議、これは三十七年、長い論議をした結果この附帯決議をしたのですが、その中で大体実現したと思われるものは幾つもございません。たとえば社会保険庁長官に尋ねた行方不明手当については、船員保険法を改正してやりなさい、これはできたのです。それから船員法のときに、いわゆる二十トン以上のものを船員保険に入れなさい、これもできた。船員保険法のほうは大体うまくいったんだが、あとの肝心かなめのいわゆる死なないくふうのほうはちっとも前進していない。たとえば適正な乾舷を設けることとか、先ほど言った船員設備の基準をどうするとか、あるいは船体の検査についてもっと強化しろとかいう点については、何もやっていないといっては語弊がありますが、遅々として進まない。肝心かなめの船員法七十三条の命令を発する手段については、先ほど来亀山局長の話のあったとおりです。なるほどやってはいるが、いつになったら結論がつくかわからぬというのが実態なんです。この点は附帯決議というのはいつでもこう出しますから——もっとも大臣も、これは内閣改造もあるかもしれませんが、改造があったときには一番重点として引き継ぎされるべき事項だと私は思うのでありまして、ひとつこの点は強く申し上げて、私の質問を終わります。
  103. 川野芳滿

    川野委員長 次会は来たる十六日火曜日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四分散会