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1964-05-12 第46回国会 衆議院 運輸委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十二日(火曜日)    午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 有田 喜一君 理事 關谷 勝利君    理事 塚原 俊郎君 理事 西村 直己君    理事 久保 三郎君 理事 肥田 次郎君    理事 矢尾喜三郎君       佐々木義武君    壽原 正一君       高橋清一郎君    高橋 禎一君       西村 英一君    長谷川 峻君       細田 吉藏君    井岡 大治君       勝澤 芳雄君    泊谷 裕夫君       野間千代三君    佐々木良作君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 綾部健太郎君  出席政府委員         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      廣瀬 眞一君  委員外出席者         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  深草 克巳君         日本国有鉄道総         裁       石田 礼助君         日本国有鉄道常         務理事     石原 米彦君         日本国有鉄道参         与         (新幹線局総務         部長)     野村 慶昌君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 五月十二日  委員細田吉藏君及び伊藤卯四郎辞任につき、  その補欠として原健三郎君及び佐々木良作君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員原健三郎辞任につき、その補欠として細  田吉藏君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  東海道新幹線鉄道における列車運行の安全を妨  げる行為処罰に関する特例法案内閣提出第  一五三号)      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  東海道新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為処罰に関する特例法案を議題とし、審査を行ないます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。矢尾喜三郎君。
  3. 矢尾喜三郎

    矢尾委員 ただいま上程されました法案につきまして、二、三基本的な問題についてお伺いしたいと思います。  この法案そのものにつきましては、われわれとしましても反対するところはないと思うのでございますけれども、しかしながら今度この法案を出されたという目的が、新しく新幹線が開通した上において列車運行の安全をはかっていくために、これを阻害するような行為に対してきつく罰しようとするのが目的であると思うのでございます。この際お伺いいたしたいと思いますのは、この法案によって新幹線の安全というものが完全に行なわれるのだという御確信を持っておられるかどうかということについて、まずお聞きしたいと思います。
  4. 廣瀬眞一

    廣瀬政府委員 東海道新幹線の安全の確保措置につきましては、この法律のほかにと申しますか、法律の前にやるべきことがいろいろございまして、国鉄におきましては種々の対策を講じておるわけでございます。まず施設車両の面につきましては、運転士注意力あるいは判断力にたよることを極力避けまして、自動列車制御装置であるとかあるいは列車集中制御装置あるいは自動進路設定装置等、技術的に見まして、現在の世界の最高水準にあると考えられます運行保安設備を設けることにしております。また従業員教育の面につきましては、高速運転に適応する高度の教育訓練モデル線区で実施中でございます。また風水害等の天災の防止の点につきましては、在来線における各種の災害の経験からいたしまして、路盤、橋梁等風水害に対しまして十分な設備をするとともに、沿線の必要な個所には風速計を設けて、風速一定限度を越えた場合には運行停止等措置をとることにいたしております。それからこの法律案と関連いたしてまいりますが、人災防止の面につきましては一番従来の鉄道で大きな災害のもとになります踏切関係でございますが、全線立体交差といたしまして踏切を皆無にしており、また必要な個所にはその立ち入りあるいは落石を防止するための防護施設等を設置するというようなことにいたしまして、あらゆる面で新幹線安全確保を講じておるわけでございます。なお、そのようないろいろな設備等をいたしましても人災が出てくるという可能性もございますので、御審議を願っております特例法を制定いたしまして、従来の鉄道営業法あるいは刑法等におきましてカバーできない面をカバーしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  5. 矢尾喜三郎

    矢尾委員 ただいま鉄監局長から新幹線全般保安設備につきまして御説明がありましたが、この法案目的としておる大きなものは何であるかといえば、それは列車妨害、いわゆる運行を阻害するということについて重点が置かれておると思うのです。最近の交通事故白書というものを見ますと、ずっと件数昭和十三年から三十七年まであげておりますが、その中に一番大きな件数をあげておりますのが列車妨害踏切障害、それから線路故障、こういうような順序になってきておるのでありますが、いま説明されたように、踏切障害については、新幹線立体交差あるいは高架というような立場から、この障害はないような方針であるように聞かれます。しかし列車妨害につきましては、昭和三十年には三千五百三十三件、三十七年度におきましては二千百七十七件という件数が出ておるのであります。これは多い年には四千五百件から出ておる。三十七年度においては二千何件というふうに出ておりますが、大体列車妨害というのは内容的にすぐにはおわかりになりませんでしょうけれども、大体においてどういうものがおもなものであるかということをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  6. 廣瀬眞一

    廣瀬政府委員 いま矢尾先生からお尋ねのございました点でございますが、まず先生がいまおっしゃいましたように、踏切障害というのは全部なくなるというふうに考えております。と申しますのは、いま申しましたように全部立体交差しておりますので踏切障害はない。なお、道路が上を通っておるような場所につきまして、自動車等が転落するようなおそれのあるところは厳重な防護さくをいたしますので、まず踏切関係事故は皆無になるというふうに確信しておりますが、いまお尋ねのございましたように置き石等列車妨害、これを私ども非常におそれておるわけでございまして、遺憾ながら在来線におきまして非常な件数が毎年発生しております。この内容でございますが、農閑期等におきます小さな子供の置き石等が非常に数が多いかと存じます。そのほか、やや知能程度の低い人によるあまり意味のない列車妨害、たまには鉄道に対する怨恨等によりまして列車妨害等のなされる場合がございますが、いずれにいたしましても、小さな子供あるいは成人である場合も比較的知能程度の低い人による列車妨害というのが大部分かと存じます。したがいまして、新幹線におきましては、先般御視察いただきましたように、橋梁あるいは高架構造のところは除きまして、盛り土部分につきましては容易に入れないような防護さく全線にわたって設置するということによりまして、いま申し上げましたような人たちによる列車妨害、置き石というものは未然に十分防ぎ得るというふうに考えております。
  7. 矢尾喜三郎

    矢尾委員 いまの御答弁によりますと、大体線路の上に石を置いたり障害になるようなものを置くというのは、子供いたずらであるとかいわれるが、たまたまいままでの低い線路で、田とかそういうものと並行しておりますと、親がたんぼに行くのに子供を連れていく、そうして子供は監督せずして、そのまま遊んでおって、いたずらに石を置いたりするというような状態もあると思うのです。しかしそういうような場合、この法案との間において、石を置いた者は子供である、そうすると罰せられるのはだれが罰せられるか。子供列車を妨害しようとか、あるいはまた汽車を転覆さそうとか、そんな意識も何もなしに、いたずら半分にやって、その罰則が五万円以下の罰金、一年以下の懲役というようなことになってくると、これは大体だれを対象としてやっておるかということです。また意識的に列車を転覆しようとかなんとかいうような意図のもとに、大きな目的があってやるということになれば、一年以下ぐらいの懲役、五万円ぐらいの罰金では、死刑になってもかまわぬという気持ちにおいてやるということになります。この条文によりますと、対象というものが子供いたずらだからしようがないということでしまってしまうのか、それはやはり監督する親の責任になるのかというようなことについては、どういうお考えを持っておりますか。
  8. 廣瀬眞一

    廣瀬政府委員 この特例法刑罰規定でございますので、たとえば子供であるとかあるいは精神障害のある者、こういう者は主観的要件を満たさないわけでございますから、これを処罰するわけにはまいらないと思います。したがいまして、この法律刑罰法規でございますので、主観的要件を満たす者が処罰をされるということになるわけでございます。私が申し上げましたのは、たとえば子供であるとかあるいは比較的知能程度の低い者は、防護さく等施設によって十分防ぎ得るので、軽い気持ち子供が石を置くとか、あるいは知能程度の低い者がちょっといたずらをしようというようなことは、物理的な施設によりまして、入れないというふうになっております。この刑罰法規によって処罰されますのは、通常の精神状態のものがあえてやった場合に処罰されるわけでございます。
  9. 矢尾喜三郎

    矢尾委員 そうしますと、それはそれとしまして、大体この法案目的というのが、明治三十三年につくられた鉄道営業法の中から特に取り上げて列車妨害に対する罰則を強化されたのでありますが、この営業法をずっと見てみますと、三十二条には「列車警報機濫用シタル者ハ五十円以下ノ罰金ハ科料ニ処ス」こういうことになっております。また、そのほかにいろいろありますが、三十六条において「車輌、停車場其ノ他鉄道地内ノ標識掲示ヲ改竄、毀棄、撤去シハ燈火滅シハ其ノ用ヲ失ハシメタル者ハ五十円以下ノ罰金ハ科料ニ処ス」こういうことになっております。また三十九条には「車内停車場其ノ他鉄道地内ニ於テ発砲シタル者ハ三十円以下ノ罰金ハ科料ニ処ス」、四十条において「列車ニテ瓦石類投擲シタル者ハ科料ニ処ス」石や瓦を投げた者に対しては科料に処す、——罰金までいかぬ、科料に処す、こういうことになっておるのですが、今度の新幹線の場合は、いま局長が言われたように、石を置いたり何かするということは、高架ですからあまりいたずらにわざわざということはできませんけれども、石を投げたり、あるいは発砲したり標識を改ざんしたりというようなことは、先ほど申されたように、いたずらをするということを越えて、国鉄に対して何か恨みを持っているとか、そういうようなものがこういうようなことをやった場合に、いわゆる列車の大きな機能を失わせるような行為をやった場合において、やはり昔ながらの鉄道営業法の軽い、三十円以下の罰金とか科料に処すというようなことで、私は、列車安全運行というものを期すことはできぬと思いますが、特にそういうようなものを取り上げてやられるというようなことになれば、そういうようなこともなぜこの中に取り入れなかったか、まあ時代も変わっていますし、そういうことで取り入れてやられなかったのか。強化されるのならば、もう少し範囲を広げてやられなかったかというようなことについて、どういうお考えでこれだけをやられたのであるか、お聞きしたいと思います。
  10. 廣瀬眞一

    廣瀬政府委員 確かにいま先生が御指摘になりました信号機の改ざんとか、それから瓦石等の投てきというものは鉄道営業法の中にございます。そしてこの法律はそういったものを含めないで非常にしぼったかっこうになっておるわけでございます。これは、まず鉄道営業法考え方は、在来鉄道対象としておりまして、もちろん乗客あるいは乗務員の保護ということも考えておりますが、むしろ考え方といたしましては、鉄道の秩序を保つというような考え方が主になってできております。それから現在御審議を願っております特例法は、東海道新幹線列車が非常に高速である、二百キロメートルで走行する、従来の鉄道と比べまして、いわば質的に違った鉄道であるというようなことから、鉄道営業法とは一応関係なしに、高速性という点から列車運行に重大な支障を与えるであろうということで、ごくしぼった数項目についてかなり重い罰則を課しております。罰則が重いわけでございますので、項目必要最小限度にしぼったということでございます。  なお、鉄道営業法につきましても、ただいま御指摘になりましたように、この刑量等も非常に古いものでございますので、他の法体系から比べまして不備な点も確かにあるわけでありますが、現在臨時鉄道法制調査会におきまして、罰則に限らず鉄道営業法を全面的に検討中でございます。在来線のほうは不備な点は確かにあるとは存じますが、期限を限って臨時鉄道法制調査会検討中でございますので、その結論が出るまでしばらく待とうということでございます。
  11. 矢尾喜三郎

    矢尾委員 鉄監局長の御答弁によりますと、しぼったと言われますけれども、あまりしぼり過ぎたのではないかと思われるほどしぼられておる。今度の新幹線において、あまり必要のないところに重点を置いて、そして肝心なやつが置き忘れられておるようにも思われるのです。そういう点につきましても、いろいろまだこの法案には不備な点が多々ございます。しかし、このいまの列車妨害ということも一つ事故のもとでありますけれども、もう一つ重大なものは、やはりこれを運転する従業員立場に立ちまして、最近飛行機事故がよくあること等にかんがみましても、まあ機械の故障とかそういうようなこともありますけれども、やはり根本的にはこれに携わっておる人の、まあ技術方面においては十分注意されておると思いますけれども、過労であるとか、そういうようなことが原因になって信号を無視するとか、あるいはまた居眠りをやるとか、いろいろの問題が起こると思います。現在の運行されておる列車におきましても、そういうことによって事故というものはまま起こっておるのでありますが、この新幹線に対しましても二百キロ以上の、飛行機にも匹敵するスピードで走っておるということになりますと、精神的にもまた肉体的にも非常に疲労を感ずる度がきついと思うのです。これは大体国鉄のほうの人にお伺いするほうが正しいと思うのですが、これに対して、この新幹線勤務する乗務員勤務時間あるいはまたこれに対処する待遇等につきまして、現在の国鉄の職員に対する待遇の上において何かお考えになっておるかどうかということをお聞かせ願いたいと思います。
  12. 石原米彦

    石原説明員 お答え申し上げます。これは前回のときにも似たような御質問がございましてお答えいたしたわけでございますが、実は一番問題になりますのは運転士かと存じます。それで、これはすでに一昨年にモデル線が開始をいたしましてから逐次養成しております。これは養成期間がだいぶかかります。それでまた心理的あるいは医学的の疲労度というようなものもいろいろテストしております。それによりますと、二百キロの速度で走りますと、初めの一月ぐらいは非常に疲労いたします。従来の鉄道運転を操縦いたしておりますのに比べてたいへん疲労いたします。これはやはりスピードが高いことと、それに伴う非常な緊張感ということが基礎になってくるわけでございます。ところが二カ月くらいたちますと、大体現在線と疲労は大差なくなってきます。これは速度になれます点がございます。それで新幹線と現在線をそういう長い目で落ちついたところで比べてみますと、確かに速度が高いということは、将来先々まで負担になると存じますが、反面疲労度を減らすような要素もだいぶございます。たとえば、踏切というのは、乗務員とすれば、現在の鉄道運転では一番神経を悩ましておるところでございます。いつ何が飛び出してくるかわからない。特に大型のダンプカーが飛び出してくると、列車そのものがあぶない、転覆するときがあるということで、大体現在線は五百メートル足らずのところに一つ踏切がございますが、それを一々心配しております。今度はそういう踏切一つもございません。それから信号は絶対に見なければならないということになっておりますが、それが現在は地上信号になっております。霧のとき、あるいは雨のとき、あるいはカーブがあって片側に木が茂ったりして見通しが悪くなるというようなときもございまして、これも乗務員神経を悩ます一つの種になっておりますが、これが車内信号になって目の前にある信号を見ていけばよろしゅうございます。それからまた現在は乗務員ブレーキをかけるときにかけそこないますと、直ちに列車の危険ということにつながりますが、少なくともブレーキについては、自動列車制御装置が危険の前にブレーキを自動的にかけるという装置になっておりますので、その点は自分の誤りによって大きな問題が、起こるということは、少なくともブレーキ扱いについては起こらないわけでございます。列車停車場へとまるときだけの問題でございます。そのほか一般に見通しといたしましても、最大のカーブが二千五百メートルという、ほとんど直線に近いものになっております。また築堤が大部分になっておりまして、非常に見通しがよくなっております。そういう点で従来の運転よりも気苦労が少ないという面もございまして、これは実際に運転を始めてみませんと、どのくらいの疲労度かというようなことは、五百キロの全線にわたっての電車の試運転ができませんと、十分はっきりしたことは言えませんが、大体従来の勤務を著しく変えなければ疲労度の点で危険がくるということは、そう心配しなくてもいいのじゃないかと思います。  それから、なお労働条件その他につきましては、定員の基礎になる問題でございますので、労働組合と現在折衝段階でございますので、なおそれの決定を待ちましてから決定いたしたいと存じます。  なお休養設備その他の点につきましても、従来以上に考慮するつもりでおります。
  13. 矢尾喜三郎

    矢尾委員 先ほどの鉄監局長の御答弁とも関連するんですが、列車妨害防護施設ですね。これはいまのところでは高架——ぼくは専門のことばを知らぬが、柱が立っていますね。ああいうものについては石を置いたりなんかしておく。土手のほうは登ろうと思えば登れますね。そういうことについて、保安設備に対して国鉄としてはもう少し何かお考えになっておるかということと、それからまた白書によりましても三番目か四番目になっておりますのは線路故障であります。それが相当大きく出ております。これは新しくできた一年や二年の間はそうはたいした何はないと思いますけれども、時期的なあれは別として、線路が破損するとかなんとかいうようなことについては、いままで以上に保安設備をやって、立ち入りできるような場所については立ち入りができないようにするとか、またその線路に対してはいまでも保安に対しては十分注意されておると思いますが、しかしこの白書を見てみますと、相当線路によっての事故というものが出ておりますので、始終これに対して監視するとか、あるいはそれに対して視察をするとか、そういうようなことについてはどういうお考えを持っておられますか。
  14. 石原米彦

    石原説明員 人による妨害——人災と申しますか、その問題と線路事故故障事故についての御質問でございます。これは鉄監局長からもお話がございましたけれども、もう少しこまかく申し上げますと、私どもとしまして、鉄道事故は非常にいろいろな種類のものがございますが、新幹線に関する限りは、やはり一番心配しておりますのは人災でございます。人が積極的にやりますのは予測し得ない。どんなことが起こるかわからぬという点がございまして、実はその点に一番頭を悩ましております。それで、これは監督局長の御説明とダブリますが、もう一度申し上げますと、新幹線線路のうちで、トンネル、橋梁高架というのが二百キロメートル余りあるわけでございます。高架のところには、従来の高架でも人が立ち入ったことはございません。特に今度の新幹線高架は従来の高架以上に高くなっておりますので、尋常一様の手段ではまず上がれないと思います。万一上がればおりられなくなる。これは従来の長年の実績から見ましても、そう心配することはまずないのではなかろうかと思います。高欄程度がまわりにある程度でございますが、あれはなかなか上がれるものじゃございません。したがいまして、残りのどろでつくりました築堤あるいは切り取り、いわゆる土工の部分の三百キロ足らずが問題の対象になります。そうしますと、ここのところにつきましても、土盛りした下のほうをコンクリートで二メートル以上も積み上げたところがございますが、これは尋常一様ではたどりつけません。それ以下のところにつきましては、ごらんいただきましたような二メートル以上のさくを全部やってございます。築堤が、コンクリートがそれに足りないところは継ぎ足しをしておりますが、その上には忍び返しをつけて有刺鉄線をつけております。このかっこうにいたしますと子供では入れませんし、思いつきぐらいで、いわゆる無手で、道具なしではおとなでも入れませんので、そういうように設計をいたしました。したがいまして、これは必ずある程度道具がなければ、そうして、おとなでなければ入れないというところまでは防いでおります。そうなりますと、従来の置き石の大部分、置き石だけではございません。線路妨害の大部分は、鉄道監督局長からも御説明がございましたように、知能指数の低いほうの人間では網で入れません。しかし、それがある程度以上の知能のある者でございましたならば、これは完全に防げる方法は考えられません。万里の長城のようにしなければ完全ということは期せられませんので、ある程度以上の知恵のある者が、ある程度道具をもってすれば、どんなことをしましても結局入れます。その際には、そういう知能指数のある者は、こういう法律をつくっていただきますれば、入っただけで法律で相当厳重な処罰を受ける。万一それで縁もゆかりもない人に危害を加えるようなことをすれば、場合によっては死刑まで処罰を受ける、一体そんなことをするのはどうだろうかと反省する程度知能のある者は、この法律の精神的な防護策によりまして防ぎまして、この物理的な防護策法律的な策と両方で、いかなる知能指数の者も一応防げる、これが第一段になります。  それから第二段に、これもこの前御答弁申し上げましたが、大体、保線、電力、通信、それから電気所と申しておりますが、電気関係保守修繕要員、これを合わせますと二千二、三百人程度のものが線路の上を職場として検査もしくは修繕に従うことになります。これが相当の面になります。それから列車が相当ひんぱんに往復いたしますので、この列車の上から前途を見ておりますれば、非常に見通しがいいところでございますから、怪しい者が入ってきたとか、何か変なことをしているとかいうようなことはよくわかります。フットボールで言えばゴールキーパーのような最後の手段といたしまして、列車車両の前に非常に厳重なエプロンをつけまして、スカートをつけまして、それではね飛ばすようにしております。そのスカートの下をくぐって入りますものに対しては、ゴムを入れて、そのゴムが二段がまえになっております。これもいろいろ実験をしてみましたけれども、たいていのものはその二段がまえではね飛ばすことができます。そういうように何段がまえにもしたものでございまして、この法律は実際にそれが防げます一つの有力な策ではございますけれども、そのほかのものとあわせまして万全を期するように考えておる次第でございます。
  15. 矢尾喜三郎

    矢尾委員 まだちょっと残っておりますけれども、大臣がお席を立たれるようですから、質問をいたしたいと思います。  先ほどもちょっとお伺いいたしましたが、鉄道営業法が明治三十三年にできてそのままになっておりますので、これについてどういう考えを現在持っておられるかということです。これはもちろん改正しなければならぬ個所も多々ありますし、罰金にしても科料にしても、貨幣価値の点でいたずら罰則をきつくするということは目的ではありませんけれども、ああいう明治三十三年にできたようなものがどうなっておるかといえば、実際の時代に適合しておらぬ。列車だけは近代的な、世界に誇るべき新しい列車ができておりますけれども、鉄道営業法というのは明治三十三年にできてぽっぽ走った時分の状態にそのまま置かれております。これに対しまして大臣はどういうお考えを持っておられるか。
  16. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 御趣旨のとおりでございまして、そのことにつきまして国鉄内部におきましても、また運輸省におきましても、その改正の必要性を認めまして、各方面の権威者を集めまして現に鉄道営業法全般について御審議を願っております。東大の鈴木先生委員長にいたしまして目下検討中でございまして、それも時間を切りましてなるべく早く結論を得るように目下熱心に委員会を開いていただいております。日ならずして結論が出るだろうと思いますから、それに従いまして法律の改正をいたしたい、かように考えております。
  17. 矢尾喜三郎

    矢尾委員 先ほどの質問の中の、線路保安についての対策ということについてお答えをいただきたい。
  18. 石原米彦

    石原説明員 もう一つの御質問の、線路故障に対する配意をいかにしているかということでございますが、線路と申しましても、レールの問題と、その下のどろの問題と、かなり違った実情になりますので、この二つに分けてお答えいたしたいと思います。  レールの状態が車輪との関連におきまして正しく保たれているということが高速運転では非常に大事な点でありまして、この点は従来の鉄道よりもはるかに限度を詰めて考えなければいけないと思います。それに対しまして何段がまえにも考えておりまして、まず最初の設計構造というものが在来の線路構造の概念とは相当飛躍した厳重なものになっております。つまり砂利層を相当厚くいたしまして、その上にコンクリートのまくら木を敷きまして、これは非常に重くなっております。それからその上に置きましたレールも、太さは、従来のレールに比べて、少しだけではありますが、太くなっております。丈夫さ、こわさという点から申しますと三割増しになっておりまして、それをバネとゴムを使いまして、いわゆる弾性的に一定の力でぎゅっと詰めております。こういたしますと伸び縮みも相当に抑制いたしますから、横の張り出しにしても、上の飛び出しにしても、線路の狂いにつきましても、在来とは比較にならないほど丈夫な構造のものになっております。したがいまして、レールは一キロ半全部接続し溶接してありまして、その一キロ半ごとに、これは安全のために伸縮継ぎ手というところをつくっておりますが、これはほんとうの念のためでありまして、理論的に申しますと、五百キロメートル全部一本のものにしてしまっても大丈夫のような構造になっております。まずそこで非常に丈夫なものになります。  それから、それを検査いたしますのに車両検測車を用います。従来は大体歩いて回り、見て回ったのでございまして、これが検査の主体になっておりましたが、これには欠陥もございますので、非常に精密な検査測定のできる検測車というのを列車につないで走らせます。つまり列車が走行しておる状態で、高速度で重荷がかかる、その高速度で走っておるときに線路はどんな状態になっておるか、線路と車輪との関係はどうなっておるかということを走りながら非常に精密に測定できる。これは世界に誇っていい精密な車両であります。それによりまして、大体開業当初は一週間に二度ずつくらい走らせるつもりに考えております。現在は試運転期間中でございますから、東京と大阪との試運転におきまして——大阪には走っておりませんが、もっとひんぱんに運行するつもりに考えております。それから一日に列車二往復くらいは車両の中に振動計を前部と中部と後部とに取りつけまして、それで一応の振動を測定するかっこうになっております。要するに目で歩いて見るかわりに機械的に走行状態を測定するということを考えております。このほうがはるかに進歩的だと考えます。なおレールのきずのようなものは、超音波探傷器のようなものでやることになっております。それできずも未然に発見するというのを使うことになっておりまして、レールのきずというものはいきなりぱっと切れるわけではありませんで、きずが入りましてそれをそのまま気がつかずにおきますと口があきますから、あらかじめそれを調べるということであります。なお一度レールが切れた場合どうなるかということは、研究所の試験をいたしましたが、欠損してもまくら木で抑えつけて非常に厳重にしておりますから口は十センチもあかない。これは押えられておりますので、かってに伸び縮みができないし、そうたいした口があかない。そうすれば高速度でその上を走りましても飛んでいってしまいますし、危険はないという結論になっております。  以上が大体レールそのものの危険の問題であります。  次に、砂利から下の土の部分ですが、これのほうがだいぶ問題が多いと思います。土を盛りましたところ、あるいは切り取りましたところであります。土というのは、遺憾ながら草がはえて、土が全部落ちつきますまでに若干の年月を要するのであります。したがいまして、大きな土盛りを要するようなところはなるべく早く工事をいたします。大体土の大部分は、一年以上の経験を経てから、風雨にさらされてから開業になります。場合によってはそれ以上、二年以上もさらされており、その間に極力落ちつくということになりますが、雨のひどい豪雨のときとか、暴風雨のときといったような場合には警戒をしなければならぬ。要するに今日のようなよく晴れたときに線路の下の土が急にぱっと下がるというようなことは絶対ございません。そういう工法はいたしておりません。非常に丁寧な工法をいたしております。ただし、ある程度以上の雨が降りましたときは、土質、地質によりまして心配なところが出てくることが予想されますので、これはあらかじめよく測定をしておきまして、ある程度以上の雨量の場合には直ちに警備員を配置するという計画にしております。この点は現在線と非常に似たような形式をとることになります。  なお、指導方針といたしましては、少なくとも開業の半年ないし一年の間には十分まえびろに安全側の処置をとる。たとえば少しでも危険を感じられるような場合には徐行をするとか、あるいは一応列車をとめてから検査をするとか、そういった措置を従来以上に大事をとったやり方をするように指導しております。  要するに、鉄道よりも航空機のほうが危険だということで、欠航したり遅延したりするわけでありますが、その鉄道と航空機の間くらいと考えて処置しようという指導をいたしておるわけでございます。以上によりまして、大体予想されます列車の危険ということは設計から警戒に至るまでの全過程において断ち切ることができると信じております。
  19. 矢尾喜三郎

    矢尾委員 いままでいろいろ御質問いたしました御答弁を得まして、技術的にも世界に誇る日本の国鉄でございますので、特に安全は期しておられると思いますが、新幹線につきましてはいま国民全般も非常に心配しております。そういうような事故に対する点につきましては、先の総裁の十河総裁が、新幹線国鉄の赤字を克服する、いわゆるもうけるということを第一義的にこれを敷いたというようなことを言っておられました。それでもうかることはもうかると思いますが、また予算の面において、あるいはまた保安設備の上において、また労働強化にならないように十分対処されまして、事故が起こらないように——それは事故が起こらぬようにといいましても、小さい事故は起こるかもわかりませんけれども、それも大きな被害を与えるような事故ではなくして、小事故に食いとめることができるような、いまの説明を聞いておりますと、そういうような感じがするのですけれども、一そう、予算の面においても、いわゆる節約せずして、十分考えていただきたいと思います。  それからまた運輸省に対しましても、この法案だけによっては絶対に食いとめることはむずかしい、さっき読み上げました営業法の内容におきましても、鉄砲を撃つとか、石を投げるとかいうような問題もありますし、あるいはそのほか計画的に列車転覆をはかるというようなことになれば、これはなかなか法律だけで前もって防止しておくということはできぬと思いますけれども、そういうようなことのできないようなことも十分注意していただきたいと思います。  以上をもちまして、私の質問を終わります。
  20. 川野芳滿

    川野委員長 久保三郎君。
  21. 久保三郎

    ○久保委員 私は、東海道新幹線が間もなく開業だというのでありますから、一応東海道新幹線の管理運営の問題、さらには安全対策の問題、そして提案されている法案の内容というふうに、大体そういう順序に従いましてダブらぬように質問したいのであります。  そこでまず第一にお伺いしたいのは、新幹線の管理というか、これは先般資料としてお出し願いました幹線支社というか、そういうもので管理をしていくという大筋がありますが、ついては既設線区における鉄道管理局との共管というか、そういう部面にも一応関係を持つということでありまして、言うなれば新幹線新幹線の支社で一本にやるという割り切り方はしていないのであります。これには、実際の運営を一つとりましても、既設線区と新幹線を同一の停車場で客貨を扱うということもありますので、そういう関係が出ると思うのでありますが、そういうことでやっていく場合に、はたして支社と管理局とはうまくいくだろうかという心配が一つあるのです。これはまだいろいろな問題を実際にやっておらぬので、何とも言えないと思うのですが、こういう点をどういうふうに考えているか、これは国鉄当局にお伺いしたらいいと思いますが、どうでしょう。
  22. 石原米彦

    石原説明員 お答えいたします。ただいまの組織上の問題で新幹線支社にいたしました場合の現在線との関連の問題、特に駅の営業上の問題、これは確かに御指摘のありましたように、私どももむずかしいと申しますか、やっかいな問題だと思っております。われわれとしてもいろいろ議論にも出ましたし、今後ともその点はよほど気をつけてやっていかなければならぬと思っております。しかし何分にも駅では、特殊の駅を除きましては、全部共同の駅でございますから、入ってきたお客さんが、現在線の切符を買えば、新幹線の切符も買うし、乗りかえもするということになりますので、一つの駅内で、これは新幹線の要員、これは在来線の要員と分けることは、どうしても駅の管理上もまたお客さんの扱い上もぐあいが悪いということで、駅は全部現在線の駅長の管轄下に置きまして、幹線支社長はその関係鉄道局長を必要に応じて区処するという形で、つまり従事員は全部駅長だけを見ておりまして、それに対する営業上の問題は管理局長を通じて幹線支社長が指示、監督するという形にいたしたわけでございます。しかしそれ以外の問題につきましては、たとえば列車運行にいたしましても、あるいは線路電気関係の保守にいたしましても、日常の指令にいたしましても、中央の指令所から各列車乗務員まで即時に電話で呼び出せますし、それから各駅のポイントは、各駅で扱いませんで、東京駅にあります中央指令所において全部遠隔制御いたすことになりますので、列車運転あるいは安全の確保ということに関する問題は、全部一元化いたしまして、これは在来線あるいは在来の管理局の管理機構といったようなものとは独立してやれるような形になっております。そういう形になると、どういたしましても、支社というものを分けまして、新幹線の主体の運営は新幹線支社が責任を持つ、ただ駅という接触面だけについて、これは在来線の駅長が一括して両方をにらむというような形にするのがよかろうという結論に達しまして、そういうことになっております。この点は今後の運営におきましても、両者はよほど密に常に連絡を保っていかなければならぬと思っております。
  23. 久保三郎

    ○久保委員 管理機構というものの競合というか、そういうことについては、いまお話しのとおり、今後に待つ以外にないと思いますが、そこで幹線調査会が三十三年に答申した中に、新規路線というか、新幹線、これの投資効果をはっきり部外にもわかるように、新幹線の収支全体について責任の所在を明確にするように外部に対してやれという意見が出ているわけです。そういう点についてはどのように考えておりますか。
  24. 石原米彦

    石原説明員 幹線支社というものをつくりまして、新幹線の運営を一元的に支社にまかせることにいたしました一つの理由は、ただいまも御指摘のありましたように、経営の責任、収支の責任というものを独立して明らかにするという目的も実は含まれておったわけでございます。したがいまして、これは現在投資上の問題で、在来線とちょっと入り組んだ面なんかもだいぶございますが、現在経理局、資材局——経理局が主として中心になって努力いたしまして、在来線の採算と新幹線の採算とを区別するようにいま作業中でございます。そういたしまして、在来線と分けた収支、これは資本費までも入れまして、全部分けてやってまいります。たとえば駅の要員は、さいぜん申し上げましたように、駅長の麾下に入りますけれども、経費といたしましては、新幹線にどれだけの人間が従事したということは、定員的にも一応分けるのでございます。ただ日常の作業命令系統が駅長のもとに一元化されるというだけのことになっております。そういうふうなことにいたしまして、全然在来線とは区別した経理、収支が成り立つようにいたします。この点は、もっとも現在、線区別計算が相当成り立っておりますから、各支社ごとの独立採算というようなものも相当厳重にやれております。その経験をもちまして、そう困難ではなくできるつもりに考えております。
  25. 久保三郎

    ○久保委員 いまのお話だと、やはり新幹線新幹線として線別計算で、収支の所在、責任がはっきりするということでございますが、その場合、新幹線はいわゆる東海道線の輸送力増強、いうならば線増の形の変わったものということになります。そこであとからもこれはお尋ねしますが、その場合、既設線の収入は従来どおりというか、いま現在どおりの伸びというか、そういうものはあり得ないと思うのです。そうなった場合に、既設線区に与える影響というのは、内部的な経理の問題でありますが、これは考えようによっては各鉄道管理局のいわゆる営業成績というものにも直接響いてくる。そうなると末端の職員というか、そういうものの勤労意欲にも関係するというような微妙な問題も実は発生すると思うのです。ついては、その新幹線だけの線別計算、それからもう一つ新幹線と既設線を含めた東海道の線別計算、こういうものをおやりになるのかどうか。いかがですか。
  26. 石原米彦

    石原説明員 これは御指摘のようにすることを考えております。したがいまして、新幹線の収支を明らかにすると同時に、在来線の優等列車、たとえば東京−大阪間の特急というようなものは原則としてやめます。いわば、在来線としてはドル箱がなくなりますので、当然従来よりも減収が予想されるわけでございます。もっとも、それらによりましてあいた線路容量を使って、従来お断わりしておりました貨物を秋冬繁忙期に運ぶというようなことで、線路容量のあいたところは列車を増発して増収することにはなりますけれども、やはり最も経営上収益性の高い特急、急行が主として新幹線のほうに移りますので、これは当然減収が予想されます。この点についてはすでに両方の収支の一応の試算は、長期にわたりまして、昭和四十五年ぐらいまでも見通しまして一応の試算はしております。ただしこれは運賃その他が未確定でございますので、正確な計算はできませんが、大体列車計画がきまりますれば、同時に新幹線ができたために現在線はどのくらいの損をするといったような見当もつきますので、それらによりまして在来のいわば支社あるいは管理局のノルマはそれだけかげんをして与えるということになります。この点につきましては影響が非常に大きいものでございますが、相当こまかく計算はできます。従来も、たとえば新線が開業いたした場合、あるいは局、支社の境界が変更したような場合、おのおのその収支を予測いたしまして収支のノルマを変えております。それと同じようなことになりますので、スケールが非常に大きなものだということでございまして、計算のやり方自身としては経験もございますので、大体不公平のないような処置はとれると考えております。
  27. 久保三郎

    ○久保委員 次に運賃の定め方でありますが、この前の委員会で、副総裁から、特急料金というか、料金のほうは大体三割か四割ぐらい高くなるだろう、こういうような予想をお話しになりましたが、たとえば副総裁が言うように三割ないし四割の増ということは、幹線調査会の答申にもあるように、これは既設線から転移が容易であるような運賃に定めるべきである、こういう注文がついておるわけですが、大体三割ないし四割ならば転移が容易であるという観点からこれは検討されているかどうか、これはこれからの問題でしょうから、検討されているかどうか、いかがでしょう。
  28. 石原米彦

    石原説明員 御説のような観点から研究をいたしております。ただし、非常にむずかしい問題といたしましては、従来の普通の線増でございますと当然列車が直通できますが、ゲージが違いますので列車が直通できません。したがいまして、東海道の大阪まででおりてしまう人はよろしいのでございますが、先に直通する人が乗り継いでいかなければならなくなるという場合の料金といったようなことにつきまして、だいぶ事務的にと申しますか、技術的にむずかしい面がございますので、それらにつきましていま検討中でございます。それらの検討がつき次第、近く結論を出さなければならぬと思っておりますが、趣旨は、おっしゃいますように、できるだけ新幹線に移り得るようにということを主体に考えなければならぬと考えております。
  29. 久保三郎

    ○久保委員 研究途上でありますから、料金については私のほうでもとやかくこまかいことは申し上げられないと思うのでありますが、ただ問題は、国鉄全体の料金の問題ですね。運賃の問題はさりながら、まず料金の問題について検討する時期に来てやしないか、こういうことをこの際申し上げてみたいのです。と申し上げますのは、たとえばいまのは寝台料金もございます。それから特急、急行、準急の料金、もう一つは座席の指定券、はたしてこういう料金体系が現代において合理的であるかどうか、そういう観点から、この際新幹線についてもやはり合理的な料金体系というのは検討すべきだと思うのです。私は、卑近な例を引きますが、最近は、これは国鉄のいわゆる企業性から出た非常に濃厚な弊害だと思うのですが、ある線区は非常に短い。短い区間でも準急はあります。二百キロ程度のところにもございます。しかも常時乗るのは大体そのうち百キロ以内、そこに準急の旅客がたくさんある。ところがこの一等車の面を見てみますと、二両連結する。一両は自由席というか、いままでのとおり、もう一両は大体座席指定。ところが常時——私は普通の日にも乗っておりますが、この座席指定車に乗る者はほとんどない。あってもせいぜい五人か十人です。もちろんこれは土曜、日曜というようなときには、これまで満員にはなりましょう。ところがほんとうの営業政策から見ても、常時そういうものをからで走らせるのが得かどうかということです。準急の座席指定はたしか二百円だと思いますが、その二百円も、常時そういう席をあけておいて、土曜、日曜の日だけにそれが満員になるということで、はたして計算が成り立つかどうかというと、私は成り立たぬと思う。むしろ一般自由席にしておいたほうが、コンスタントに一等の料金が取れる、こういうふうに考えるべきだと思うのです。これは料金体系のあり方の一つであります。  それからもう一つは、準急料金、急行、特急にいたしましても、最近は特急のごときは東海道なら東海道は車種は大体そろえてまいりました。ところがその車種全体を見ましても、必ずしもこれは統一されておらない。本来ならば、これはその投下資本に対してしかるべき対価をいただくということが料金のあり方だと思うのです。ところが特急料金一本できまっているのですね。あるいは急行料金一本できまっている。特に東海道ベルト地帯は優秀な列車があるが、たとえば東北あるいは北海道、九州、裏日本、こういうところを見ますと、必ずしも東海道と同じような車両は走っておらぬ。ところが料金は同じです。こういうばかな話が営業政策から出るのだろうか。私はもっと機動性を帯びたところの料金体系を考えるべき時期だと思うのです。そういう意味からもやはり新幹線の急行料金というか、特殊料金というのは設定さるべきだと思うのだが、これはどういうふうに思っていますか。いわゆる国鉄全体の料金体系というのはあれでいいのかどうか、いかがでしょう。
  30. 石原米彦

    石原説明員 これは御指摘のようにわれわれもどうも変えなければならない時期に来ていると思います。実は新幹線の開業に伴いまして、少なくとも料金制度だけでも変えられないかというのを一つの目標にいたしまして検討いたしたのでございますが、時間切れになりまして間に合わなくなりまして、とりあえず新幹線の開業には新幹線の料金だけをきめてスタートすることになりますが、その次の機会にはこれはぜひ改正しなければならぬと考えまして、いま営業局で鋭意検討しております。その問題といたしましては、まず一番根本的に、特急、急行、準急という三段がまえに現在なっております。この三段がまえ自体がどうかという問題も出てきております。それから、御指摘になりました座席指定につきましても、非常に込みますのと、それから座席指定にしてくれないと安心できないという問題といろいろからみまして、まことに変な形の自由席と指定席がごちゃごちゃになったような列車になっておりますが、これらにつきましても、少なくとも今後乗車効率を少しずつ緩和していくのに伴いまして、どうすべきかということを考え直さなければならぬ段階に来ておると思います。  さらに、もう一つ大きな問題といたしまして、これは従来も運輸大臣その他からも御答弁がございましたように、鉄道の経営全体から見て現在の経営をいかにしていくべきかというのが例の内閣の懇談会で検討される段階に来ておりまして、これは当然運賃の基礎まで入っていくと思います。これはおそらく今年中に運賃の基礎につきましては相当議論が進むと思いますので、そうなりますと、料金につきましても当然根本的に考えていくべきものだと存じます。  なお、御指摘になりました支線区のサービスと幹線のサービスの違いという問題がございますが、反面、サービスに伴う料金であると同時に、原価をまかなうかどうかという面になりますとまた違った面からの議論も出てきますので、そこら辺が今後大いに検討を要する問題ではなかろうかと存じます。たとえば東海道線は非常にいい車両と申しますか、早いサービス、いい車のサービスをしておりますが、それでも原価的には非常に利益をあげまして、全国の赤字線区を養っておるわけでございまして、原価主義という面からとそれからサービスの対価という面からの両方が逆の議論になりますので、そこらは今後いろいろ検討の余地があろうかと存じます。
  31. 久保三郎

    ○久保委員 石原常務の御意見にはちょっと私は異論がある。原価とサービスと言いますが、やはり与えるサービスは、国鉄という大世帯でありますから、東海道線のサービスと東北線のサービスが同じなら、やっぱり同じ料金でしかるべきなんですね。そうだと思うのです。原価が償うか償わないかの問題は、これはまた別な問題だと思う。たとえば運賃が一本になっているということは、国鉄はやはり総合運賃制でしょう。そのたてまえをくずすなら、あなたのおっしゃることはそのとおり理屈として成り立つのですが、私は料金のことをいま申し上げているのです。でありますから、料金はサービスの提供であります。同じサービスを与えるところは同じような料金をとってしかるべきだと私は思うのです。しかも、いま懇談会で運賃の問題に入ったというが、そうだろうと私も予想して、この前からこの懇談会については指摘をしていた。運賃問題は実際あと回しでいいのです。運賃問題はもちろん一番大事です。大事ですが、もっと国鉄経営全体の問題から実際は入ってほしいと私は思っておるのです。だから、私どもの提案として整備緊急措置法という法案を出した。これは余談になりますが、料金体系というのをこの際国鉄なり運輸省で考究して、新幹線についても、やはりそういう体系から割り出してやるべきだと私は主張したいのです。私は東北のほうばかり言うが、列車一つ見ても、それはひどい列車です。たとえば座席一つ見ても、座席のシートがみなはげちょろけているのが、これが一等車なんだ。準急だから、座席を指定すれば、やはり東海道と同じように二百円取る。汽車のおそい早いは別として、少なくとも、これではたしていいだろうかというのです。これはそろえるといったって、なかなかできませんね。しかし、車両そのもののサービス、たとえば便所の話になりますが、便所に入っても紙一つない。洗面所に入ってもせっけんもない。片方にはちゃんと飲料水のコップまで置いて、きれいなサービス、これで同じ料金というのはどういうわけです。今度の東海道新幹線は最高のサービスでしょう。そういうことから考えて、三割ないし四割くらい上がるだろうという目の子勘定であっては私はならぬと思う。これはなかなかむずかしい問題で一口には言えないと思うのでありますが、少なくとも、ものの考え方だけは、きちっとして料金はきめてほしいと私は思う。もちろん石原常務は、そのほうの専門の担当ではないようでありますから申し上げにくいのでありますが、少なくとも私はそういうことだと思いますね。運賃問題にいく前に、そういう優等列車のサービスについて、やはり御検討あってしかるべきだ。それが正しい意味の企業性だと私は思う。  それからもう一つは、座席指定そのものに私は疑問を持っております。込ませておいて座席指定で二百円なり何百円なり取るということは、はたして公正な競争というか、商売かどうか。これは石原さん、どう思いますか。
  32. 石原米彦

    石原説明員 私は新幹線の建設のほうを担当しておりますが、ちょっといま営業担当の理事も副総裁も欠席しておりますので、どうも恐縮でございますが、戦前のサービスから見ますと、現在のサービスは全体的に劣っておりまして、戦前でしたら、夜行の急行列車ではお客さんを立たしただけでも問題になったわけでございます。これらは一ぺんには何ともならぬと思いますが、現在の非常に異常な状態というものを逐次解消していかなければならぬ問題だと思っております。
  33. 久保三郎

    ○久保委員 あなたは新幹線担当だから、私は新幹線に関連して料金というか、指定席というか、そういうものを申し上げておるのです。新しい線路が画期的なものができるのだから、この際こそ検討して、やはりきちっとした方針でやるべきじゃないかという意見を持っておるのです。そういう意味でお尋ねしておるのであります。もちろん担当外でありますから詳しくわからぬと言えばそれまででありますが、少なくとも私はそう思う。新幹線はみな座席指定ですか。
  34. 石原米彦

    石原説明員 新幹線は開業当初、全部座席指定にしております。それから料金は、この前申し上げましたように、在来よりも高くなります。
  35. 久保三郎

    ○久保委員 それでは、みんな込みで料金を取るということですね。切符は二枚ですか、一枚ですか。なぜそういうこまかいことを聞くかというと、切符を三枚も四枚も持たなければ汽車に乗れないというところに問題があるのです。せめて新幹線くらいは一枚の切符にしたらどうかということを申し上げたいのです。
  36. 野村慶昌

    ○野村説明員 新幹線では現在運賃のほうは御存じのとおり在来線と同一でございます。したがいまして、大体切符は二枚になると思っております。
  37. 久保三郎

    ○久保委員 駅も十二駅です。中間を言うと十一しかないのですね。十一しかないのだから、そんな切符を二枚持たせる必要はないのじゃないかというのです。こまかい話でいきばっているようですが、ここら辺の頭の切りかえがつかぬ。そういう切符を一々買うわけでしょう。そうだとするなら、やっぱりそういうものも研究してみたらどうだというのです。どこの輸送機関で切符を二枚も三枚も持たせるところがありますか。頭を変えていくべきだということを言いたいのです。まあ御研究願います。これは専門でないようだからやめておきます。  それでは、次に既設線区からどの程度、あるいは路面交通からどの程度転移する見込みか。これは料金にも関係がありますが、大体これは当初の計画の当時と同じかどうか、いかがですか。
  38. 石原米彦

    石原説明員 この転移いたします量と増加率は、転移のさらに四割増くらいになるだろうという自然増を考えております。転移の増を考えておりますが、それらは全部初めに立てました計画と同じにやっております。
  39. 久保三郎

    ○久保委員 そうしますと、列車の本数はどの程度いったら最終的に充足されるのか。石原常務がおっしゃるように、いまの見通しでどの程度まで列車の本数は設定されるのか、これはいかがです。
  40. 石原米彦

    石原説明員 ダイヤの問題につきましては、一番基礎になります速度自身がきめられませんので腹がきまっておりませんが、しかし大体開業当初は三百六十両をつぎ込みますので、ダイヤといたしましては三十往復程度のダイヤを組むつもりにしております。そうなりますと大体現在線の優等列車が二十往復程度減らせる見込みになっております。それから半年か少なくとも一年以内ぐらいには五十五往復ダイヤというものを組みたいと思っております。そうなりますと、在来線列車は、これもさらに詳細検討しなければなりませんが、大体三十往復程度は間引けるんではないかと考えております。
  41. 久保三郎

    ○久保委員 三十往復では何分ヘッドで走らせることになりますか。
  42. 石原米彦

    石原説明員 大体三十分間隔程度になります。
  43. 久保三郎

    ○久保委員 わかりました。それはさしあたりの予想ですか。
  44. 石原米彦

    石原説明員 それは開業のダイヤでございます。
  45. 久保三郎

    ○久保委員 私がお尋ねしているのは、あなたがお話しになった転移の予想からいって、新幹線の輸送力は大体どの程度にすべきか、そういう観点からいって列車設定は何分置きぐらいか、こう聞きたいのです。おわかりですか。
  46. 石原米彦

    石原説明員 その点は、さいぜん申しましたように、開業後半年ないし一年くらいに五十五往復ダイヤというのを四百八十両をつぎ込んでやりたいと思っております。このダイヤは、前から発表しておりましたように、超特急三時間、それから中間駅全部とまりまして四時間というのを目標に、これは初めから計画しておりましたのでございますが、四百八十両をつぎ込みまして、そのスピードを早くすることができますと、五十五往復程度のダイヤが組めます。そうなりますと、時隔は、特急、急行、超特急と各駅停車を一緒にいたしまして大体十五分ないし三十分、大部分は十五分間隔程度のダイヤになります。
  47. 久保三郎

    ○久保委員 五十五往復というのが大体予想される最高の列車密度でございますか。それで、先ほどの見通しによって、大体この程度の輸送力設定をすれば、転移されるもの、増加するものがおよそいまの段階でははけきれる、こういう予想になりますか、いかがですか。
  48. 石原米彦

    石原説明員 これはもちろん将来どんどん増加いたしてまいりますから、年々増発をするかっこうになると思います。したがいまして、五十五往復と申しますのは、現在開業間もなくに予想される輸送量でございまして、開業当初の三十往復程度と申しますのは、したがいまして新幹線としては不十分な、何と言いますか腰だめ的にまずそのくらいで開業しても、できるだけ早く速度も上げますし、車両もつぎ込みまして、五十五往復ダイヤにしたい。それから先は年々の増加に応じまして年々増発して、車両も増備していくというかっこうになると思います。
  49. 久保三郎

    ○久保委員 その点も予想でありますから、なかなか予想がつきかねると思うのでありますが、少なくともわれわれが聞きたいのは、東海道はこれで東海道新幹線をフルに動かせば大体輸送は間に合う、こういうふうに考えてきたわけであります。だから、これには余裕を持って、これだけの輸送量を設定すれば、将来のいまの展望からいけば大体間に合う。間に合うのには、いま言ったように五十五往復なら五十五往復ということになるかどうかと聞きたいのです。これは予想でありますから……。
  50. 石原米彦

    石原説明員 これは複線を新しく増設いたしたのでございますから、現在線は二百往復程度も走っておりますが、これは少し過密でございますけれども、新幹線線路の力とすれば百五十往復くらいは十分入れるわけでございます。したがいまして、今後東海道線の予想がつきますれば、長距離輸送に関する限りは新幹線に車とわずかの人さえつぎ込めば幾らでも輸送に応じられます。したがいまして、長距離輸送に関する限りは、東海道線ができれば東海道輸送というものは行き詰まりがないといってよろしいのであります。ただ、他の機会にも御質問がございましたように、通勤輸送になりますとちょっと事情が違いますので、これは別でございます。やや状態が違いますが、長距離輸送に関する限りは十分な余裕がありまして、これはお客さんの乗りぐあいを見て、五十五往復というのはいわば一応の予想をしておりますので、需要が多ければ、車をつくりさえすれば幾らでも需要に応じられるということになります。
  51. 久保三郎

    ○久保委員 百五十往復やってから二百往復——まあ百五十往復できるだろうと言いますが、スピードも早い列車であります。既設線区のようにヘッドをあまり短くして走らせることは不可能だと私は思う。そういうところの予想もお立てになっているのかという意味でお聞きしたのであります。いずれにしてもこれは予想でありますから、あとでよくお考えいただいて、ひとつこの際、開業を目の前にしているのだから、大体将来の展望はこうなりますということくらいのことはお聞かせ願いたい、こういうふうに思っております。  もう一つ、それではさしあたり展望がきく範囲で、東海道から転移される列車、いわゆる間引きができる列車、そういうものはどの程度になるのか。というのは、いまは大体東海道の線路の保守にしましても、過密ダイヤで保守する時間がない、こういうのが実態でありますね。そこで、せめてこの線路の安全をはかるためにも、東海道新幹線ができたらば、東海道のいわゆる線路の軌道あるいはその他の保安設備も強化していきたい、せねばならぬというのがいままでの主張の一つでありました。これについてはどういうことになりますか。
  52. 石原米彦

    石原説明員 どういう列車を具体的に減らせるか。もちろん「つばめ」「こだま」のように東京−大阪間だけの特急、これは当然全廃いたしますが、そのほかの急行あるいは山陽線に直通する列車といったようなものをどの程度にどうするかという具体的な問題につきましては、ただいまなお検討中でございますので、具体的には申し上げかねますが、なるべく新幹線のほうに移るように考えたいという前の審議会の答申の趣旨を生かすように考えたいと思って研究しております段階でございます。  それから線路容量の保線間合いなんかの問題につきましては、実は現在東海道線が非常に過密になっておりますものの一つの大きな原因は、列車速度と種類が非常にいろいろなものがまじっておるというところが一つの大きな問題でございまして、のろい貨物列車も、「こだま」のような特急も一つ線路の上を走っております。したがって相当の時間間合いを置きませんと前の列車に追いついてしまうという点もありまして、またそれを待避させるとか何とか、列車本数以上に非常に大きな問題をはらんでおるわけでございます。今度新幹線ができまして高速列車を極力そちらのほうに移しますと、列車本数が二十本減った、三十本減ったと申しましても、その一本一本の効果が非常に大きいのでございまして、残りました各駅停車とそれから貨物列車速度が非常に近くなりますので、いわば並行ダイヤに近くなりまして、複線の輸送といたしましては理想に近づくわけでございます。したがいまして、御質問のありましたような保線間合いとかいうようなものにつきましても、従来のように夜昼通じて保線間合いをとることが非常に困難だという問題が非常に救済されてくると考えております。
  53. 久保三郎

    ○久保委員 保守の面は強化されるという御答弁であります。  それではその次に、これとうらはらになりますが、現在の東海道線で、通勤輸送並びにローカル輸送というものの逼迫が相当あるわけですね。これは改善策として、東海道新幹線の完成に合わせて計画を立てておられるわけですか。輸送力増強について、いかがですか。
  54. 石田礼助

    ○石田説明員 お答えいたします。実は問題は、いま久保さんのお尋ねになった通勤、通学の東京近所の問題、これは新幹線ができましても、ラッシュアワーにおける通勤、通学の問題というものの解決には、たいした解決の道にならぬ。たとえば私は朝、東海道を国府津からやってくるのですが、通勤時間帯の急行列車をパス・オーバーさせるものがたった三本しかない。したがってその間に入れる通勤、通学の列車というものはそれだけしかない。そういうことになりますので、そこに新幹線ができても、東京近在それから大阪近在というようなこの通勤、通学の激しいところには救いの道にならぬ。ここにわれわれは第三次五ヵ年計画というものを立ててこれを何とかしなければいかぬ、こういうことになっているわけであります。たとえば御承知でしょうが、平塚から普通の列車のほかに貨物線があります。あれなんかも活用して、旅客に使う。それから貨物線は別につくるということにせにゃならぬ。これは実にやっかいな問題で、金もかかる問題でありますが、国鉄としてはどうもやはりサービスの点からいってどうしてもやらなければならぬ、こういうことになっております。
  55. 久保三郎

    ○久保委員 いまの総裁のお話は、結局長距離輸送はある程度緩和できても、近距離の通勤、通学輸送などはとても緩和できない。これは新たな観点からやらなければならぬ、こういうことでありますが、実は幹線調査会の答申以来、新幹線に対する国民の期待というものは、夢の超特急だけではなかったのであります。既設線区における輸送を緩和する、東海道の輸送が行き詰まる、だからこれを緩和するということで受け取った。受け取り方には二つありまして、旅客の長距離輸送は、国民大衆が考えたごとく、これは新幹線ができればなるほどそのとおりに要求は満たされるでしょう。しかしもう一方考えれば、一般大衆というか、近距離の輸送は、やはり新幹線ができれば、この線区はもう少しサービスがよくなるだろう、こういうふうに期待したのであります。いまのお話によると、その期待が持てないということになるが、おそらく実情からいってそうでしょう。そうだとすると、これは新たな観点から並行してやらなければならぬと思うのです。こういうのはどうなっていますか。いまのお話では、通勤、通学の輸送の緩和はやらなければならぬと言うが、それではその計画はどういうふうになっていますか。
  56. 石田礼助

    ○石田説明員 そこにつまり、今度四十年から始まる第三次五カ年計画というものがあるのであります。これは単に東海道ばかりでなくて、房総線しかり、常磐線しかり、北陸線しかり、ここに過密ダイヤというものの巣窟がある。久保さんは私より国鉄に関してはお詳しいのじゃないかと思うので、ぼくが説明するのは変ですが、少なくとも旅客輸送に関する限りは、人口からいって、三割が東京近在、それから一割が大阪近在、合計すると四割というものが東京、大阪を中心とした近在、これを解決するということが、つまり過密ダイヤの解消というものの中心になるわけであります。これは東海道新幹線ができたからといって解決するわけではない。これは別個にやらなければならぬ。そこに第三次五カ年計画というものを立てて、これは経済計算から言えば問題にならぬのでありますが、ときには独立採算なんというものを度外視しても、必要上やらざるを得ないということで、いまや懇談会というものでその計画をつくるべく着々として準備しておる次第であります。
  57. 久保三郎

    ○久保委員 わかりました。それで話は収支のほうになりますが、これは石原常務にお尋ねするのですけれども、膨大な資金を投下して新幹線ができましたが、先ほど来質問をしたように、最初の計画には何年後には大体ペイするというような計画までお出しになったはずですが、いま国鉄当局としては、新幹線に対する投下資本は大体いつまでに回収するというふうに予想しておられるのですか。これはもちろん料金がきまりませんからはっきりわかりませんが、おおよそいつごろまでにペイさせようというふうに考えておられるのか、お考えがありますればお聞かせを願いたい。
  58. 石原米彦

    石原説明員 収支の問題につきましては、前々から収支計算を一応いたしまして、特に世銀から借り入れをするときなんかも詳細な一応の見込みなんかも提出いたしております。ただ以前から比べましてその収支の見込みが若干違いました点は、建設費が当初の千九百億から三千八百億にふえましたので、それの資本費、つまり資本利子並びに減価償却費が二百億程度ふえましたが、反面最初に予想されました上りも客貨の輸送量の伸びが著しく多くございまして、着工しました当時の輸送見込みから見ますと著しくふえてきております。それで東海道現在線と新幹線とを合わせました収支で見まして、三十八年ごろの現在線の黒字が大体六百億以上になっておりますが、昭和四十年か四十一年ごろには、現在線と新幹線と合わせまして、やはりその程度の黒字になりまして、その後は輸送の伸びに応じまして黒字がどんどんふえていくという見込みになっております。したがいまして、東海道線は現在でも全国の赤字線をカバーする黒字線でありますが、それをさらに線増しました新幹線と合わせましても、なお全国の赤字線を培養します黒字線になる見込みであります。
  59. 久保三郎

    ○久保委員 無理かと思ったのでありますが、大体心づもりとして、東海道新幹線に対する投下資本の回収は何年ごろまでと考えておられるかということを聞いているのです。なかなかむずかしいと思うのですが、およそ五年なら五年、十年なら十年先に元手をとるということになるのかどうかということです。
  60. 石原米彦

    石原説明員 これは現在線とからみますので、ちょっと出しにくいのでありますが、新幹線だけ独立して考えますと、大体十年以内には取り返しがつくはずでございます。資本費と申しましても、四十一年ごろで見まして大体千億円くらいの収入があるかと考えております。そうしますと、資本費は大体四千億投下いたしましても、減価償却費と利子合わせて一〇%と見ればよろしいのですから、年間四百億くらいに見ております。償却の始まりでもって大体四百億くらいに見ておるわけであります。それに対しまして大体四十一、二年ごろ、つまり五十五往復ゲイヤが動き出しますときには、新幹線だけの収入は千億をすこしこすと考えられております。したがいまして、投下資本が若干ありましても、大体新幹線だけで三百億ないし四百億くらいの黒字は開業後二、三年すれば出てまいりますわけで、そのまま輸送量がふえますれば、どんどんふえてまいりますので、利子を払いながら十年以内には償却できる。新幹線だけを取りますれば、これは実は簡単なことでございます。ただし現在線と合わせますと、現在線のほうが少し収入が減りますので、少し計算が複雑になりますが、新幹線だけが独立のものと考えれば、これは十年以内に十分償却できるのでございます。
  61. 久保三郎

    ○久保委員 なぜこれをお尋ねするかというと、新幹線のお話が始まったときに、三十三年の四月に計画が国鉄から出ているのであります。やはりそのときの参考資料として当時の資金計画からいって十五年間に年七分の利息をつけて返すとして大体こうだ、こういう試算が出ているわけなんです。大体できちゃったから、あとは知らぬと言っては語弊があるかもしれないが、もうかるんだということでは、国民に対してもどうかと思うので、私としてはたとえばこういう試算でいきますと、いまのお話だと既設線を含めて試算しておりますが、これは試算でありますから、あまり権威がないと言えばそれまででありますけれども、少なくとも三十三年に出した計画の裏づけがあってしかるべきじゃなかろうかというのがわれわれ国会議員としては言いたいのです。そうでしょう。当時はこういうふうになります、なりますと言って、それじゃあと、出たあとは知らぬ顔の半兵衛——知らぬと言っては国民に対して理屈がつきません。これはおかしい。だからこのぐらいの試算はあってしかるべきじゃないか。利益はあなたがおっしゃっているように出ています。そのとおりの試算でいっても出ております。それで十五年間で年七分でやっていく。もちろん資金は多くなっております。償還の計画期間は全部違うと思います。少なくともそういう経理方式で、いわゆる私が言いたいのは企業性、企業性といっても官僚的な企業性であって、幾ら事業だけやって、社会正義に照らしてもあとは知らぬというような企業性は、私は排すべきだという考えから言っておるのです。別に試算したものを出さなければ承知せぬと言ってはおりませんが、少なくともそのくらいの責任は感じてほしいと言いたいのです。もっとも石原常務はこういう計算のほうは担当せられないからわからないかもしれませんが、少なくともそういうことは必要だと私は思うのです。見通しとしてはどうだ、利潤は変わらぬというのだから、三割増しから四割増しくらいまででやるという。中をとって三割五分でやれば大体試算できますよ。大体このくらいのこうだという見通し。ですから、そうすると、この金は十五年後におきましては全部返します、そしてその間において輸送も十分充足します、こういうことになれば国民も納得できるじゃないかと私は思うのでお尋ねしているわけです。お答えがむずかしければいいですよ。
  62. 石田礼助

    ○石田説明員 久保さんにお尋ねしますが、なかなかむずかしい問題だ。結局今後運賃がどう変わるかということがありましょう。とにかく、少なくとも四十年にちゃんと利子を払い、減価償却を見て、そうして二百七億もうかってくるんだ。鉄道というものは普通の商売と違って、そう敷いたからといってすぐもうかるものじゃないですよ。それで年々歳々これはますますふえていくのだ。われわれは東海道新幹線をつくれば決して損はない。もうかります。こういうことを申し上げたのですが、そういう点をもう一度申し上げなければならぬのは、東海道線の行き詰まりはとことんまで来ている。これはもうかる、もうからぬを別にしても、どうしても輸送の任務を期すべく、あるいは採算を度外視してもやらなければならぬ、こういうような状態に来ているんです。いわんやこれはもうかるんだということですから、決して御心配にならぬようにお願いしたいと思います。
  63. 久保三郎

    ○久保委員 せっかくのお尋ねと御答弁でありますからお答えしますが、総裁、私が言いたいのは、当初すべり出しに総試算を出して置きながら出さぬというのはおかしいじゃないかということが一つ。それからもう一つは、企業者としてあなたがおっしゃるようにもうかることは確実だ。そうですよ。もうかるからいいじゃないかということは、なるほどおっしゃるとおりかもしれませんが、それじゃちょっと違うじゃないか。もうけるのにもいろいろある。心づもりがなければもうかりません。何年後には大体資金が回収できて、このあとはほんとうのもうけだ、こういうふうな筋道を立つべきじゃないかというのが私の言いたいことです。それからもう一つ、あなたのおっしゃるとおり、たとえもうかってももうからぬでも、とにかく新幹線をつくるという大きな目的は、何といっても既設線である東海道の輸送力を何とかしなければならぬということですから、これはもうかっても、もうからぬでも、やらなければならぬ。これとそれとは別ですから、ごっちゃにしないでほしいと思うのです。いずれにしても、まだ法案が通りませんから、そういう試算なりそういう心づもりがあるならある、ないならない、あとは成り行きにまかせる、そういうことで経営の方針はいいのかということが私は言いたかったのです。それは御答弁は要りません。しかし少なくとも私はそういうことはあってしかるべきじゃないかと思う。ただ単に身のまわりのことだけやってもだめだ。これだけ膨大な資金をやっても、もうかったらいいじゃないか、それだけで経営者はいいかどうかという問題を考えていただきたい、こういうふうに思うわけです。  時間もありませんからもう一つ新幹線高架下はどの程度利用できるか。話に聞くと、すでに契約ができたという話だが、どういう者にどういう方針で貸しつけるか、これはいかがですか。——安全運転だけのほうらしいから、それじゃ、この問題は次回に担当者に来て説明してほしい。これは、新聞を見ますと行政管理庁に先般指摘されております。そういう問題はすっきりさして出発してほしいと思うので、この点はこの次の委員会に答弁していただきます。  そこで次に申し上げたいのは、幹線のいわゆる修理関係の工場は、基地としては浜松工場ですね。浜松工場は鉄道管理局に属しておくようですが、浜松工場の内容は、新幹線の修理以外に何かやることがたくさんありますか。
  64. 石原米彦

    石原説明員 これは新幹線以外に、現在でも現在線の車両修繕を引き受けております。あれは元来は蒸気機関車の修理でスタートしたところでございますが、現在はディーゼル機関車、電気機関車その他のものも引き受けまして現在線の修理をやっております。そのうちの一部を改装いたしまして、新幹線の修理、修繕職場に改装したわけでございます。
  65. 久保三郎

    ○久保委員 そうしますと、浜松工場の業務内容というか、その比重は、新幹線はごく一部である、こうとってよろしいですか。
  66. 石原米彦

    石原説明員 開業当初は、修繕はそう入場いたしませんが、だんだん車がくたびれますと、くたびれるに応じまして新幹線の仕事量もふえてくるわけです。開業一、二年後いたしまして平常の状態になったときを見ましても、現在線のほうが六、七割ぐらいのウエートになると思います。
  67. 久保三郎

    ○久保委員 その次に伺いますが、新幹線の支社には保安管理室というものを設けるようでありますが、これは、どういう陣容でどういう仕事をなさるのですか。
  68. 石原米彦

    石原説明員 これは各系統の技術者を混合して入れることに考えております。それで、いままでの支社になかった組織でございますが、特に新幹線保安の重要性にかんがみまして、日常の指令業務のほかに、この点を特にフリーな立場から監査するということでございまして、先般本社にできました保安審議室とやや似たような形になると思いますが、中には運転施設や電気や、各種の系統の専門家が入りまして、混成してフリーな立場から始終安全のほうの問題をチェックするという組織になっております。
  69. 久保三郎

    ○久保委員 陣容はどの程度でやりますか。
  70. 石原米彦

    石原説明員 室長一名の下に調査役三名を置きまして、その下に若干のスタッフを置くという形でやります。
  71. 久保三郎

    ○久保委員 そうすると、スタッフというからにはあまり数は多くない、十人かそこらでやりますか。
  72. 石原米彦

    石原説明員 総員で十名程度になっております。
  73. 久保三郎

    ○久保委員 これは安全管理についての企画ということが重点になりますか。
  74. 石原米彦

    石原説明員 これは監査、それから企画、両方の立場になっております。
  75. 久保三郎

    ○久保委員 駅にしても十二駅ありますね。私が望みたいのは、この管理室というのはむしろ安全性の点検、指導というふうに、単なる査察じゃなくて、そういうものに力点を置くべきだと思うのでありますが、お答えはおそらくそれは運転所なり、運輸所というか、駅なり、こういう現場があるから、現場の長をしてやらせるということになるかもしれない。もちろんそれも必要でありますが、そのほかに、こういうような特殊な列車運転区間でありますから、いまの線区においても私は言いたいのでありますが、この管理室は単なる十人ぐらいのスタッフで、査察が主であってということでは、私はどうももの足りないと思うのです。いかがでしょうか。
  76. 石原米彦

    石原説明員 一応指導監督の系統といたしましては、支社に各系統の部長がおりますし、その下に各所長がおりまして、その所の下に支所、ラインはそういう形でできております。したがいまして、鉄道の仕事でございますから、やはり安全が最大の使命になりますので、このラインで専門的に安全の指導、企画はいたします。それをさらに立場を変えまして、総合的に違った目で常にチェックをし、監査をしという形になりますので、これはブレーンは非常に重要でございますが、人数を多くは要しないというような、そういう組織じゃないかと思うのです。
  77. 久保三郎

    ○久保委員 私はあなたと同じでありまして、安全ということが一番大事だと思うのです。だから今度の新幹線についても、法案は出ていますが、これは言うなら、つけ足しと言っては語弊がありますが、そういうことでありましょう。むしろ安全対策というのは、内部的な責任としてやはりやるべきであって、そういう意味から言えば、単なるスタッフ十人でいまの御説明のようなことをやるということでは、私はもの足りないと思うのです。特に、たとえば先ほど矢尾先生からの質問に答えられていますが、路盤のところ一つ見ましても、急速につくった線路でありますから、これは常時点検とその対策が必要だと思うのです。たとえば橋梁と路盤とのつなぎ、あるいは隧道と路盤とのつなぎ、あるいは高架線と路盤とのつなぎ、そういうところにも実際は一つの問題が出てくるんじゃないかと思うのです。それを考えますと、しょっちゅうこれは点検専門であって、その実施部隊はなるほど現業部隊を動員してやることが必要だと思うのですが、そういう点検を現場長にまかせるんじゃなくて、別な観点から見て指導する、あるいはチェックするということが必要だと思うのです。それには十人ではちょっと少ないじゃないか。どうも私の言うことと考えていることではだいぶ隔りがあります。この点は再考してしかるべきじゃないと思うのですが、どうでしょうか。
  78. 石原米彦

    石原説明員 それは実施いたしまして、また支社の実施機構でございますから、支社長の意向によりまして課長以下は自由にかえられますので、実施の全然新しい問題でございますから、やってみまして、特に開業します前に、八月から全線運転をいたしますので、それらによりまして、つまり機構定員も含めましていろいろ検討すればよろしいと思っております。ただ、たとえば例を引かれました保線の問題について考えてみますと、保線の仕事と申しますのは、線路の安全というもの以外はほとんど考えておらぬと言ってもいい仕事でございます。したがいまして、この形は、施設部長の下に四つの保線所長がありまして、その下に二十あまりの支所がございますが、それらはほとんど全部安全ということ以外は考えないで仕事に携わっている関係になります。監督の問題といたしましては、五百十五キロにわたっておりますので、反面非常に便利に往復できますので、支社からの監督者が行くという問題につきましては、在来の一管理局よりも便利なくらいに往復ができると考えております。そうしまして、一番問題なのは人の質の問題でありますが、これは現在の新幹線の建設中も、それから今度の支社にいたしましても、特にそういう安全に関する技術の面では最も優秀な連中をよっておりますので、これは単に数の問題だけではなく、特にこれは新しい問題でございますので、非常に優秀な人を持っていかなければ役に立ちませんが、その点の人選につきましては特に考えております。それらによりまして大体相当厳重にカバーできているものと考えておりますが、なおもちろん御指摘のように、開業になりましてからも十分それらの点を反省しながら、組織、定員配置その他も状況に応じて考えてまいりたいと思っております。
  79. 久保三郎

    ○久保委員 いまのお話だと、あまり心配せぬでもいい、大体やっていけますというお話であります。しかし、保線所といいますか、これは四つあるそうでありますが、これにしても、四つだというと大体百二、三十キロに一つという、停車場の数が大体十二だという、一区間大体五十キロですか、そういう長い区間は残念ながら汽車はとまらぬ。そうなりますと、見張りというか、点検もなかなか容易でないと思います。私は、十分人間は配置していくべきだと思う。  それからもう一つは、筋肉労働から監視労働に置きかえるということが新幹線では要求されますね、そうだとすれば、人間の頭脳というか、そういうものはやはり新しい観点から見直して要員の配置はすべきだと思うのです。単なる筋肉労働では、ここからここまで何キロあるから、その線路を保守するには大体幾らという単純な計算というか、大体人間の能力というものはわかりますから、これは割り出せる。ただ、監視労働になりますと、そういう計算ではいけません。でありますから、今度の要員の配置は、全般にわたって監視労働という観点から配置されるお考えですか、どうですか。
  80. 石原米彦

    石原説明員 少し話がこまかくなりますけれども、具体的に線路保守のほうに持っていきまして、どんなことをやるかということを系統立ててちょっとお話し申し上げます。こういうことになります。従来ですと各線路班が相当狭い区域を受け持ちまして、一日一回は必ず巡回をするというような形になっておりますが、今後は、線路の保守といいますか、巡視の主体になりますので、先ほど申しました軌道検測車になります。この軌道検測車には、本社の専門技術者が乗りまして、落ちつきましても一週間に一ぺん、開業当初は一週間に二へんくらいが適当ではないかと思いますが、それだけ往復いたします。同時に十五、六のデータをとりながら往復いたします。その際に、たとえばここのところは少しゆれが大きいとか、ここのところは線路の状況が悪いというようなところは、直ちに翌日の朝までにそれを全部支所まで届けるわけであります。そうすると、いわばレントゲンで身体検査をしたり、脈摶をはかったり、心電図をはかったりというような形になりますが、それを見まして、その場所場所を担当している連中がそのグラフを見まして、ここのところに弱点が出てきたというようなことで見当をつけることができます。そのほかに二往復ないし三往復、車両の前とうしろとまん中に振動測定機をつけまして、これには保線所の役員が乗りまして、各担当区間をその振動状態を見ながら走ります。それによりまして、自分でもある程度以上の大きい振動というものはそれで見るわけであります。さらに巡回という問題がそれにつけ加わって、その巡回も従来と違いまして、たとえば車両のひずみというようなものを機械的に見ていくといったような動作もいたします。それから今度は線路状態の悪いのを直すということになりますと、夜は列車が通っておりませんので、その間に固めて修繕をやるという形に考えております。したがいまして、これは列車の場合も十分な修繕ができるわけであります。大体そういうようなたてまえになっておりますので、人数的な問題よりはむしろその改良も、いわば昔は打診でありましたが、レントゲンの機械も発達し、そのレントゲンの見方が大事なように、軌道検測車の使い方、軌道検測車によって出てきたデータをどう生かすかというようなことを今後検討いたしますと、従来の何百人分の仕事が一台の一往復でできてしまうというふうなかっこうになると考えております。
  81. 久保三郎

    ○久保委員 人数の問題については若干意見の相違があるようでありますが、私としては筋肉労働の場合はあまり間違いがない、判断の狂いというものはないと思う。ただとにかくくいを打つならくいを打つということをやりますが、監視労働になると、打ち方がどうか、打ち方が正しいかどうかという問題が出てくる。だからこれはそろばんではちょっと出ないですね。ここでも国鉄事故対策小委員会で参考人を呼んだときに、そういう話をされる参考人がございました。これと同じだと思います。ただいまの運転要員にしましても、なるほどこの間じゅう見せていただきまして、運転士は大体監視していればよさそうだということになるわけですね。監視していてやれば、自動的にとまったり何かするということであります。それではその監視が万が一誤った場合にどういうことがあるかというと、万が一が出た場合にはたいへんな結果が出ることが予想されるわけであります。ですから要員の配置については、あまりちびった考えでいたり、それから質の問題はもちろんございます。それから転換教育については十全を期すべきだと思うのだが、いままで運転要員については説明があったと思うのでありますが、この転換教育その他のほうはどうなんです。電気なり施設なり土木というか通信というか、そういうものの転換教育、養成というか、訓練というのか、そういうのはどういうふうになっていますか。
  82. 石原米彦

    石原説明員 電気、施設につきましては、大体支社の保守職員の半数以上を現在の工事要員のうちから回すことに考えております。たとえば現在の工事、土木関係施設関係の工事も、いわば土木と軌道と二系統になりますが、土木は大部分が在来の職場に帰りまして、一部が工事係として残りますが、軌道係は原則として軌道工事をやりました者がほとんど残りまして、軌道の保守にもあわせて当たることになります。それにさらに現在すでに線路保守に経験のある者を回してまいりまして、それを加えて構成するという形になりまして、純粋の労務的なものは極力工事の請負のほうに回しまして、相当経験のある者をもってリードする、そういうふうに考えております。電気につきましても大体同様であります。新しい技術でありますので、それをつくった者がそのまま残って中心になる、それが大体半数ちょっとくらいになると考えております。
  83. 久保三郎

    ○久保委員 要員の配置その他については団体交渉の対象にもなるでしょうから、こまかにここで私から申し上げる必要はないと思いますが、たとえば先ほど申し上げたように、運転士一つをとりましても、いわゆる筋肉労働の疲労度がある程度わかります。従来の観念とは違って、高速で走るというような監視業務というか、労働というか、そういう疲労度というものはたいへんなものが予想されると思いますね。これはなかなかすぐに計算というものはできないと思います。やはり何といっても安全が第一でありますから、念には念を入れて、要員の面でも、そういう点は、わからぬところはまずセーフティ・サイドにものを考えて配置すべきだと私は思うのです。そういう観点から考えておられますか、いかがですか。
  84. 石原米彦

    石原説明員 これは石田総裁からも非常にやかましく言われておりますが、安全第一にしろということだけをわれわれ命令を受けております。そして安全に対して必要な施設あるいは要員規定というようなものでございましたならば、これは必要と認めますならば、金の問題ではなくやるつもりにしております。事実たとえばさいぜんも話題に出ました防護さくのような問題、これも全線で十五、六億ほどかかりますが、そういったものも必要と認めますれば直ちにやることに決定するようにいたしまして、事、列車の安全に対して必要と認められる問題につきましては謙虚に判断いたしまして、必ず実施するというつもりでおります。いままで大体これでよろしいとは思っておりますが、なお今後の経験に基づき、あるいはいろいろ御忠言をいただきましたことで反省すべき点がありますれば、今後といえども直ちに改めて万全を期するということにいたしたいと思っております。
  85. 久保三郎

    ○久保委員 次に前後しましたが、貨物輸送は大体計画としてはいつごろからお始めになる予定ですか。
  86. 石原米彦

    石原説明員 現在のところまだいつ開業するということははっきりきめておりません。少なくも一年以内には貨物は開業はし得ないと思っておりますが、いつということは、現在確定するまでに至っておりません。
  87. 久保三郎

    ○久保委員 次に事故の問題というか——安全の問題にからんで事故の問題でありますが、先ほど来いろいろお話がありましたが、大体事故の要因というか、そういうものを大ざっぱに見ますと、一つは職員の誤り、誤扱い、それからもう一つ運転設備の構造上の問題、それからもう一つ踏切の問題、そのほかに今度は外部からの要因、大体この種類に分けられると思うのです。東海道新幹線では踏切はございませんね。だからこの事故はなし、残りはあとの三つという程度になると思うのです。構造上の問題は万全でありますか、いかがですか。
  88. 石原米彦

    石原説明員 これはまず構造が一番土台になりますが、少なくとも従来の鉄道に比べますと、一けた二けた上にいろいろと考えて準備いたしております。これは構造全般にわたりますので、非常に全体を見ますればたいへんな問題になりますが、二、三の例だけを申し上げますれば、まず土木的な構造物について申し上げますと、鉄とコンクリートを使いました構造物は十分計算もできますので、これはまず全く御心配はありません。大体現在運転しております車両に対しまして、長さ当たり倍の重量のものでもなお十分な安全率をとっておるという構造規格になっております。そうなりますと、問題は上でございます。上でできたものがさいぜん申しましたように落ちつくまでの間は、特に暴風雨あるいは集中豪雨なんかがあったときが心配でございますので、これは警戒規定をつくりまして、しかもまえびろに警戒体制をしく、あるいは列車運行を規制するというようなことによりまして対応することに考えております。それから上の構造の上の軌道につきましては、さいぜん申しましたように、これは非常にがっちりとできておりますので、従来よりもはるかに信頼度が高いのであります。  それから次に車両につきましては、現在試運転に入りました営業用の設計車、これは震動状態からいきましても、その他から見ましても、非常に満足すべき状態になっております。また試運転線、モデル線に使いましたのは、すでにおととしの六月から使っておりますので、約二年近く使っておりますが、二カ月くらい前に主要部分を全部ばらしまして検査いたしましたが、これは基本的な心配だというよう設計変更をすべき部分は認められないのでございます。しかも営業車は試運転車両六両のうらの最もいいと考えられる部分を集めまして設計をいたしたのでございまして、車両につきましても在来のものとは相当安全度を高く考えております。特に主要部分の車輪とか車軸というものにつきましては安全度を高く考えております。ちょっとこまかくなりますが、たとえば車輪でありますとタイヤが割れるという問題がありましたが、これはディスク型の一枚板の車輪を使いまして、それから「こだま」あたりでは中空軸を使いましたが、中空軸のほうは信頼度がなお少ないので、目方は重くなりますが、実体軸のものを使うとか、そういったものを考えております。  それから電気設備につきましても同様であります。保安設備につきましては、これは特に従来よりはけた違いに安全を期しまして、構造的に、たとえば従来保安設備故障を起こしまして、そのために人の注意力にたよって失敗をした例なんかもございますが、間違いが起こりますれば、たとえばリレーみたいなもので、継電器みたいなものは事前に検査しにくいのでありますが、新幹線には二つつけまして、片一方が故障いたしますればすぐ一方に自動的に切りかわるような設備をしております。そういったような各設備につきまして、構造的に従来の鉄道とは一、二段、段違いに安全度を期しておりますので、それにさらに検査に十分の手配を考えていきますれば、まずそのほうで失敗をするということはないと考えております。
  89. 久保三郎

    ○久保委員 まず心配はないということでありますから、それ以上心配があるだろうということも申し上げませんが、たとえば上下線の車両限界の隔たりは大体既設線は六百ミリ、これを八百ミリにしてあるということでありますが、これは風圧その他で広げたと思うのであります。ただ三河島の事故や鶴見の事故から考えまして、上下線を支障するような事故が出た場合の救いようはあるのかないのか。なるほど既設線の東海道と新幹線との間にはいわゆる格差を設けて、そういう支障のないようにしてあるということでありますが、新幹線は同じ水平にありまして、そういうことを予想すること自体がどうかと思うのでありますが、新幹線の設計をした当時には、三河島や鶴見のような事故はなかったのであります。先ほど来の話によりますれば、最高で百五十往復くらいはできそうだ、さしあたり五十五往復くらいは予想したいということになりますと、かなりの密度の列車運行の計画になります。そうなった場合に、しかもスピードが早いというときに、上下線支障のような事故が万が一出た場合の救いようがあるのかないのか、どうなんですか。一番上下線支障の事故が大きいのです。これはいままでも研究課題というより、これが一番ガンになっておる。ところがこれに対する対策はこれを見ていくとどうもあまりないようです。どうなるかという疑問ですが、どうです。
  90. 石原米彦

    石原説明員 これは人心不安にも関係いたしますので、あまり公開の席では申したくないのでございますが、実は現在線でございますと、脱線しただけではそう大したことはない。それに対して反対線が突っかけますと非常に大きな結果になる。これは三河島にしましても、鶴見の事故にいたしましても、その他にいたしましても同様でございまして、大体列車脱線ではそう大きな結果になることは少ないが、それが列車衝突に発展いたしますと非常に大きなものになるということなんでございます。新幹線につきましては、私どもはこんなふうに予想しておるのであります。これは脱線いたしますと、飛行機の墜落にかなり近いくらいの被害を予想しなければならぬということで、実は脱線と衝突——衝突は二個列車になりますから倍になりますけれども、従来の例のように十倍、百倍になるというのとは意味が違うと考えております。したがいまして、新幹線については列車脱線を絶対させてはいけない、列車が脱線をするということは、飛行機でいえば墜落したということに近いような厳密さでやらなければならぬと考えております。また事実脱線いたしました場合に、それが反対線を支障するの、しないのというようなことはとうてい考えられないということに考えております。したがいまして、新幹線に関する限り、安全の重点は、もちろん列車の安全ということでございますが、その列車安全ということは、脱線させたらもうおしまいだというところに全部の重点をしぼりまして、たとえば本日御審議願っております法律案などもずいぶん大事をとった考え方のように見えますけれども、これは脱線したらそれっきり、率直に申しまして、定員千人近い方の生命に関する重大な問題だと考えております。したがいまして、その上の、それが反対線との列車衝突に発展するという問題につきましては、実際問題としては防ぎようがございませんし、もちろん線路におります者が危険を発見しますれば直ちに列車をとめる装置とか、あるいは反対線の列車でも、反対線の線路に危険が感じられる場合には直ちに列車をとめる装置とかいったようなものを装置いたしておりますけれども、それからたとえばまた中央指令所との電話連絡は各列車が常にとれますけれども、脱線しましても他の線に支障しないというようなことにつきましては考えようもないし、事実考えておりませんというのが事実でございます。
  91. 久保三郎

    ○久保委員 だいぶ深刻な話で、私も触れたくないのでありますが、脱線すればもちろんのこと、脱線して正面衝突すればもうこれこそたいへんなことだ、少なくともやはり安全の問題を考える場合に、最悪の事態を予想して、できる限りの防護というか、予防措置を講ずるのが当然だと思うので、私が指摘したいのは、既設線区との間には格差を設けても、新幹線の上下線には格差を設けなかったことが最大のミスではなかったかとも考えているわけです。格差を設けておけば、あなたのお話のように、一個列車の脱線ならそれだけで被害がとどまるが、いまのような場合には上下線ともこれは惨事を巻き起こすというように考える。ついては、そんなことはあり得ないと私は信じたのでありますが、そういうことができたときにどうするかというのには、方法がないということですね。そうなりますと、いまでき上がりつつあるところの線路の問題、車両の問題についての研究はさらに根を詰めてやるべき筋合いだと思うのです。ところが最近新聞で見ますと、スピードの問題をさらに研究されるそうであります。決して私は否定はいたしませんが、二百五十キロのスピードの電車をということで、新幹線の技術陣あるいは車両製作の事務所の人員、鉄研の人員も集まっておやりになるそうであります。これもけっこうでありますが、いま申し上げたようなことがやはり当面の大きな問題でございまして、資金と人材はかかる方面に投入すべきだと思うのだが、これは石田総裁、いかがですか。
  92. 石田礼助

    ○石田説明員 ごもっともの御心配だと思います。東京−大阪間を三時間でやるなんということは初めから考えておらぬ、まず四時間半か四時間半でやって、おもむろにその結果を見て三時間にするということが、これが当面の問題。あるいは技術研究所のほうでは、ヨーロッパのほうで二百五十キロ出すというようなことでもって、日本のほうでもどうかということを考えている者もありますが、しかしそれはわれわれがまじめにそこに集中して研究しておる問題じゃない。まずわれわれは三時間で東京−大阪間を走るということを考える。これは当面、それよりも一歩進んでおるということはないのであります。どうぞその点は御安心願いたい。
  93. 久保三郎

    ○久保委員 安心しろという総裁の話ですが、新聞に出ております。われわれのほうもその新聞を読んで、ちょっとどうもどうかと私は思っているわけです。そこで私は強く要望しておきますが、東海道新幹線はテストケースです。それを外国で三百キロ出したからわがほうも二百五十キロは出せるだろう、その自信のほどはわかります。技術者というのは大体そういうものですから、それは買います。買いますが、われわれの立場からいけば、新幹線のいわゆる安全はどうなるのかということが当面の大きな問題であります。これはまだ研究も足りておりません。たとえば、なるほど構造上は、いままでの汽車からいけば二段も三段も上回ったという石原常務の御説明のとおりでしょう。しかし、たとえば支障物があることを制動可能距離において発見できる装置一つもないわけですね。そうでしょう。そういうものの追求をしているといえばしているのでしょうが、そういうものは全然追求されないと言っては語弊があるが、少なくともこれは陰に隠れてスピードの問題を取り上げるようでは、頭がおかしいのではないかと私は言いたいのです。いま国鉄陣営は、少なくともスピード問題は新幹線でこれは一応テストケース、これから本式にやる。いわゆる試運転区間で二百五十キロ出たからもっと出るなんということは考える必要は私はないと思う。二百五十キロが実用に適するかどうかの問題が今日大きな問題ですね。この関門をくぐらぬうちに、先ばしったことは考えるべきじゃないと私は思うのです。そういう意味で、少なくとも安全性についてさらに追求すべき段階だと私は思うのです。いまのお話では心配するなということでありますから、あまり心配しません、あなたがそうおっしゃるのですから。しかしそういうようなことをチェックするのが国鉄の首脳部だと思う。私は決して二百五十キロを研究しちゃいかぬというのではありません。ありませんが、貴重な人材と技術は安全の方向にもう一ぺん見直したらどうかと言いたいのです。  それからもう一つは、この構造上の問題はお話がありましたから、こまかい話になりますからいいとしましょう。  そこで今度職員の誤扱いという問題は全然ないのですか。それに基づくような事故というのは予想されませんか。いかがです。
  94. 石原米彦

    石原説明員 職員の誤扱いにもいろいろございますが、やはり一番件数も多いし、従来結果が大きくもなっておりますのは、運転士あるいは駅の運転取り扱い者の事故というのが一番多いのであります。これにつきましては保安設備を非常に厳重にしまして、一人の思い違いとか考え違いあるいは誤扱いということによって少なくとも列車に危険を及ぼす事故が起こらないように、保安設備が必ずカバーをするようにできております。これはやはり人というものは必ず場合によっては間違いを起こす可能性があるのだという前提に立ちまして、それを保安設備で必ずうしろだてをつけるというたてまえになっております。したがいまして、従来ありました信号掛が信号を取り扱い違いしたとか、運転士信号を見違えたとか、あるいは操縦を誤ったとかいったようなことによりまして、少なくとも列車に危険を及ぼす事故というのは起こらないようにできております。あとは保守要員の誤りということになりますが、非常警戒の場合の保線要員あるいは信号保安設備の保守要員といったようなものは、これは間違いによりまして、その安全を保障しているべきはずの人が間違いを起こすということもあり得ますので、この点は今後ともに十分指導監督もいたしますし、教養もつけなければならぬと思っておりますが、指導精神はあくまでも、さいぜんから申しておりますようにまえびろに安全を期する、決してきわどいことをさせないというのを指導精神にして、安全第一にやっていく必要があると思います。
  95. 久保三郎

    ○久保委員 先ほど申し上げたように、一たん万が一のことができれば、これは史上最大の惨事になるわけです。だから私が先ほど来申し上げておるように、なるほど構造上は大体今日ただいまで考えられる装置をして安全を確保したい、これはそのとおりでよろしい、しかしこれをチェックするのは、やはりダブルチェックというようなかっこうでやるべきだと思うのです。一人の人間がこれをチェックしたからオーケーというのじゃなくて、機械にも誤差もありましょうし、狂いもありましょう。そういうことでありますから、やはり新幹線は安全第一に考えなければならぬ。というのは、大体いままでの列車という観念から、新幹線列車が想定されるところによりますれば、これは違うのです。汽車じゃないのですね、汽車と飛行機の間でしょう。そういう観点からものごとを全部見直さなければいけないと思うのです。そういう意味で、私は人間の配置もダブルチェックの制度をつくってやるべきだと思っているわけなんです。いまのお話ではただ機械をチェックするということでありますが、私はダブルチェックまで考えるべきだと思うのですが、いかがですか。
  96. 石原米彦

    石原説明員 御説のように、この保守関係あるいは工場のチェックといったことにつきましても、十分に責任者が適切にチェックをするというようなシステムにしてまいりたいと考えております。なお安全の問題につきましては、私も昨年の五月にこの仕事を引き受けましてから安全以外のことを実は申しておりませんので、新幹線に関しては大体列車脱線といったような問題は一世紀に一度起こってもいかぬ、まさにお説のとおりに、飛行機鉄道の間に考えなければいけないという御意見がございましたが、全く同感でございまして、私も全く同じようなことを申しまして、従来の鉄道とは違った観念で全部のシステムを見るように指導しております。
  97. 久保三郎

    ○久保委員 そこでもう一つ残っている事故の原因には、部外的な要因から来るもの、これはたとえば石を置くとか、あるいは物を投げるとか、あるいは物が落ちてきたとか、あるいは天災地変とか、そういうものですね。その中で天災地変は、先ほど来の御答弁で、たとえば風水害の場合はそれぞれ予防措置をとるということであります。それでは、いま法案対象になっているような防護さくでも十五、六億かかるそうでありますが、防護さく一つでこれは可能だということでいいのかどうか、たとえば鉄道側として防護さくをつくって、法律をつくってもらったからそれでいいのかというと、私はそうじゃないと思うのです。もう一つ抜けているものがあると思うのです。この列車の性格を周知徹底さすということはどういうふうに考えているかということなんです。いかがですか。
  98. 石田礼助

    ○石田説明員 現在の鉄道事故の発生は、障害事故というものは年々ふえこそすれ減らぬ。それはたとえば子供線路の上に小石を置くとかということで、実はこれにはてこずっているのであります。ただいま久保さんのおっしゃったいろいろのそれに対する防護策を講じましても、やはりやろうと思えば金庫を破って金をとるようなもので、できないことはないので、ただできがたいようにできるだけのことをわれわれは人力の及ぶ限りにおいてやるということで、それに対しては実は予算を超過いたしますが、防護網をつくるというところまで進んでおりまして、われわれとしては最善を尽くしたつもりでおるのであります。
  99. 久保三郎

    ○久保委員 総裁からお話が出ましたが、防護さくにも金がかかるけれどもやるのだ、こういうことであります。先ほど矢尾先生からお話がありましたが、どうもやるにはやるが研究が足りない、こう言いたいのです。この間じゅう現場でも石原常務に意見を申し上げましたが、研究が足りないのじゃないかと実際は言いたいのです。もっと真剣に研究してもらいたい。あなた方は、そんなものは何があろうとも入ろうとするやつは入るのだからだめだ、こうおっしゃるかもしれないが、それじゃ実際言えばさくも要らぬのですよ。ところが、入っては困るというのでありますから、さくを立てるのは企業者の責任で立てる。それは単に入ってはいけないというさくではなくて、入れないようにするというのが責任じゃないですか。そうだとすれば、単にさくを立てましたというだけではいかぬ。全線にわたってさくはまだ立っておりません。開業までにはりっぱにできると思いますけれども、少なくともやはり万全を期して、何億かかるかわかりませんけれども、企業の責任として、入り得ないようなさくをつくるならつくる、それにはどうしたらいいか研究もすべきじゃないか、一つはこう言いたいのです。もう一つは、今度の汽車はいままでの汽車という概念と違うのです。だからこういうことをやられたならばたいへんなことになりますというPRというか、周知徹底は企業の責任としてやるべきだと思うのですが、この点はどういうふうになっているかをお尋ねしておきます。
  100. 石田礼助

    ○石田説明員 さくを立てても、これはやろうという意思があればさくを破って入ることはできると思います。ちょうど夜寝るときにうらの戸を締めてもどろぼうが入ろうと思えば入れるのだから。ただしかし、入りにくいということにするということしかわれわれの人力をもってしてはできない。この点はとにかく久保さんもひとつ御了承願いたい。そういう悪いことをしようという悪人があれば、これはいかんともすべからず。これはやはり社会教育の上でもって是正するほか道はない。たとえばレールの上に小石を置くなどということは、われわれは文部省に交渉し、またさらに局長がその土地の小学校の校長に交渉してやっておるのでありますが、年々どうしても減らない。これはいかんともすべからず。やっぱりうらの中にどろぼうが入るようなものである。しかし、できるだけのことはとにかくやって、あとはひとつ神さまの擁護を願う、こういうことだと私は考えます。
  101. 久保三郎

    ○久保委員 総裁、神さまにお願いすることもけっこうであります。人間のやることは十全でありませんから、最後は神さまにお願いするほかありませんが、私が言うのは、たとえば人間は夜寝るときに戸を締めるだけではありません。入りにくいように戸を締めるだけではなくて、戸を締めてかんぬきをかけるのですね。かんぬきをかけることを忘れてはいけませんと言うのです。戸を締めても入ってきた、入ってくるのはどろぼうだといえば、そのとおりです。法律で処断をする。ところが、その身の安全を保つには戸を締めてさらにかんぬきをかけるということじゃないでしょうか。私がこの間じゅう見せていただいた防護さくのあり方にしても、かんぬきを忘れていやしないかということを言いたいのです。だからかんぬきについてもう少し考えてもらいたいということであります。それから、何とか方法を考えまして入ってくるやつは入ってきますよ。それは防ぎようがありませんから、それを言っているのではありません。  それからもう一つは、このPRについてどういう方策を持っているかということです。これは企業の責任として当然、かかる鉄道は、こういうものである、よって、こういうことをやれば、こういう結果になる、いままでと違うのだからということを世間一般に対して強調しなければならぬと思う。従来の汽車の観念でそのままいては困るのです。これは、一つもいままで聞いてないが、方策があるのかどうか。これを聞いておるのです。
  102. 石田礼助

    ○石田説明員 ただいまの問題につきましては、これは議会にお願いいたしまして、レールのところに入ることのできないような法律をつくることにお願いしております。それでさらにPRの問題、これはお説のとおり、今後大いにやらなければいかぬ。国鉄としても学校に対しては文部省の力をもってして児童によくその危険なことを教える。さらに世間に対しては十分なPRをやる。これはもちろん国鉄としても今後大いにやらなければならぬことでありますし、やろうと思っておる次第であります。
  103. 久保三郎

    ○久保委員 次に、この法案に出てまいりますようなことを予想しているようでありますが、この法案によってどういう効果があるのか。これはこの法案ばかりではなくて、法律にいろいろあります。航空法にもありますが、そういう効果というのは、いままで検討されたためしがあるのでしょうか。これは運輸省に聞くほかはない。こういう法律があるとなしではどんなに違うのでしょうね。あったほうがよいという程度であるか。たとえば、犯罪を犯したら処罰するという効果はありますね。しかし、この法律で言うならば、予防的犯罪、予防的法律ですね。だから、予防ができるかどうかにメリットがなければ困るのですね。これはどうでしょう。
  104. 廣瀬眞一

    廣瀬政府委員 これは一般の刑罰法規に対する国民の受け取り方がどういうことになるかということだと思いますが、実は、ここに書かれてありますような犯罪を犯してもらっては非常に困るわけなのです。犯した場合には、ここに書いてございますように、従来の鉄道営業法なりあるいは刑法でカバーできない面は処罰ができるという効果がございます。その場合に、一般の刑罰法規と同じように、この各条に書いてございますような妨害行為等は、非常に社会の重大な犯罪になるということを十分に徹底させるという効果がございますので、それによって十分理解を深める、犯罪を犯さないようにさせるという効果は、他の刑罰法規と同じような効果があると考えております。
  105. 久保三郎

    ○久保委員 これは論議すれば切りのない話でありますが、たとえば殺人罪というものもございます。じゃ殺人罪という刑法があるから人を殺さぬかというと、殺すやつが出てくる。法律があろうが、なかろうが、やるのですね。それと同じかどうかという問題がありますね。ただ、一般秩序の問題からいって、社会的秩序からいって、かかる刑罰を科することが妥当かどうか、こういうようなことかもしれません。しかし、私らはいま安全性の問題について追及しておる。提案の理由が、安全性について予防措置としてかかる法案を出してきておるということでありますから、私は、実際は、その効果についてもっと具体的に伺いたかったのです。これは法制局にあとで出てきてもらって、一応そういうものの受けとめ方について説明を聞きたいと思いますが、いずれにしても、この予防的な効果があるかどうかは論争が尽きないと思う。ただ、それじゃ、先ほど来質問もありましたが、営業法との関連で特例法をつくった理由はどこにあるのかということであります。そこで、もう一つ申し上げますが、特例法をつくれば犯罪が少なくなるということでおつくりになったかどうかですね。
  106. 廣瀬眞一

    廣瀬政府委員 特別な刑罰法規を制定した場合に、犯罪の予防になるかどうかということからお話いたしますと、これは一般的な考え方として、さっき例にお引きになりました殺人罪、これは刑罰法規の前に道義的な問題として、そのようなことはやるべきでないということはだれでも知っておると思うのでございますが、やはり道義的な問題の上にと申しますか、やはり社会の公益を守るためには刑罰法規が要るという、こういう一般論になってしまうと思います。  それから営業との関係でございますが、これは先ほどお答えいたしましたが、営業法には二、三の項目がございます。しかし、新幹線鉄道運転方式というものは、営業法制定当時予測していないものがございます。たとえば保安装置にいたしましても、信号機だけでなくて、列車の自動制御装置であるとか、あるいはCTCといった営業法で予想しておらないいろいろな保安装置もございます。それから列車運行自体が、先ほどからお話がございますように、わかりやすく言えば在来の列車飛行機の中間というようなことも考えられますので、営業法が予想していない新しい形態の鉄道であるというようなこと、そういったことから営業法でカバーできない面を新しくカバーする必要がございますし、それからかりに妨害がございました場合には、在来線と違って非常に大きな結果を生ずるというようなことから、他の法令等を参考にいたしまして罰則の規定を重くしておるというのがこの法律案を提出した次第でございます。端的に申せば、営業法で予測していない行為あるいは営業法では罰が軽過ぎるというものに対して特例的な法の制定が必要でないかというふうに考えている次第であります。
  107. 川野芳滿

    川野委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三分散会