○梶本
政府委員 ただいま御指摘の
産業観光の重要性につきましては論を待たないところでございますので、省略さしていただきます。
この
産業観光、テクニカル・ツーリズムということばが
日本に入ってまいりましたのは数年前のことでございますが、みながその重要性に気がついて一おりながら、なぜ盛んにならなかったかと申しますと、やはり受け入れる側にいたしましても、外人がやってくれば、工場に洋式の便所の
一つもつくらなければならない、まただれか通訳のできる人も置いておかなければならないし、また時ならぬときに見学に来られても工場としても迷惑だし、それでもまだ数多くおいでになるならばけっこうでございますけれ
ども、当初はそれほど御希望の方がなかったというふうなことで、なかなか緒につかなかったわけでございますが、最近では大阪では大阪市、名古屋では名古屋商工
会議所、神奈川県では神奈川県
観光協会、京都は京都市、神戸は神戸市というのが、おのおの協力工場のリストを作成されまして、希望者に工場の見学が便利なように仕向けておられます。三十七年の十二月十七日に、御承知の有楽町に総合
観光案内所を当時の
日本観光協会が設置したわけでございます。そのときに、外人
観光客向けの
産業観光対象一覧表という、こういった表をつくりまして、協力の工場をお願いいたしましたところ、二百二十六社がお申し出があったわけでございます。今日では国際
観光振興会と名前が変わりましたが、その振興会がこのリストを中心においでになった
観光客に対して御案内を申し上げている、こういう実情でございます。しかし、それだけでは決して足りませんので、最近でははとバス、それから交通
公社がこの
産業観光を中心としたコースを設定をしておられます。たとえば、東京から箱根、静岡、名古屋、賢島、京都、それだけを回って歩く、その途中に日立であるとか日産あるいはキリンビールの工場を見るとか、ノリタケチャイナに寄るとか、あるいは雪印の工場を見るとかいうふうなことで、その工場を見つつ、また
日本の風景もめでるというふうなことで、
産業観光コースを設定しておりますが、これが非常に評判がよろしゅうございます。それでもっと大々的にオリンピックを契機にやらなければいけないのではないかということで、実は最近四大証券会社に働きかけまして、そちらの協力によって
産業観光を軌道に乗せよう、こういう動きが出てまいっております。
それにも増して一番大きな原動力になりましたのは自由化の問題でございます。いままではうるさい、めんどうくさいと言っておりました工場が、自由化を控えて、やはり積極的に協力しなければいけない、こういう気持ちになられたということが、
産業観光を軌道に乗せる
一つの大きな原動力になった、かように
考えておる次第でございます。運輸省としましては、今後ともこの問題に大いに力を入れていきたい、かように
考えております。
先生も御承知のとおりでございますが、たとえばフランスで香水の工場を見に行きますと、必ず工場を見終わったときに香水を並べてそれを直ちに見学者に売る、こういう
方法をとっている。
日本ではそういったところまでまだ発展しておりません。現に免税になります物品の指定販売個所と申しま
すか、これにつきましては、国税局のほうで御指定にならなければ免税になった物品は販売できないわけでございます。こういった問題を少し掘り下げて、その工場でも即売できるという体制をとったほうが、より
産業観光の目的を達するのではないかというふうに
考えておる次第でございます。もちろんその流通機構を乱すとか、問屋に対してどうも圧迫をするようになるとかいうふうな議論もあることはあるのですけれ
ども、問屋を圧迫し、流通機構を乱すほど売れればまことにけっこうなことでございまして、むしろ工場を見終わったとたんに写真機なり何なり、そういったものが即売できる、しかも免税で即売できるというふうなシステムを、将来運輸省としましては
関係官庁にお願いをいたしまして広めていきたい、かように
考えております。