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1964-05-22 第46回国会 衆議院 オリンピック東京大会準備促進特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十二日(金曜日)    午後二時三十六分開議  出席委員    委員長 島村 一郎君    理事 伊能繁次郎君 理事 上村千一郎君    理事 重盛 寿治君 理事 中嶋 英夫君    理事 永井勝次郎君       岡崎 英城君    金子 一平君       小山 省二君    四宮 久吉君       田川 誠一君    地崎宇三郎君       長谷川 峻君    小松  幹君       穗積 七郎君  出席政府委員         総理府総務長官 野田 武夫君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房審議室長) 松永  勇君  委員外出席者         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房参事官)  金田 智成君         警  視  長         (警察庁交通局         交通指導課長) 片岡  誠君         文部事務官         (体育局オリン         ピック課長)  西田 泰介君         通商産業事務官         (企業局商務課         長)      森口 八郎君         運輸事務官         (観光局業務課         長)      見角 修二君         建設事務官         (都市局首都高         速道路公団監理         官)      吉田 伸一君         建 設 技 官         (営繕局営繕計         画課長)    横山 正彦君         参  考  人         (東京オリン         ピック準備局企         画部長)    森岡 一夫君         参  考  人         (東京道路建         設本部長)   石井 興良君         参  考  人         (オリンピック         東京大会組織委         員会事務総長) 与謝野 秀君         参  考  人         (オリンピック         東京大会組織委         員会事務次長) 佐藤 朝生君     ————————————— 四月十三日  委員臼井莊一君辞任につき、その補欠として福  井勇君が議長指名委員に選任された。 五月二十二日  委員中村梅吉辞任につき、その補欠として小  山省二君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  オリンピック東京大会準備促進に関する件(競  技施設等準備進捗状況並びにオリンピック国  民運動推進現況等)      ————◇—————
  2. 島村一郎

    島村委員長 これより会議を開きます。  オリンピック東京大会準備促進に関する件について調査を行ないます。  本件調査のため、本日は委員長より、東京オリンピック準備局企画部長森岡一夫君、東京道路建設本部長石井興良君、オリンピック東京大会組織委員会事務総長与謝野秀君、同事務次長佐藤朝生君の諸君に、参考人として出席を求めております。  まず、オリンピック東京大会準備進捗状況並びにオリンピック国民運動推進現況について、総理府より説明を聴取いたします。松永審議室長
  3. 松永勇

    松永(勇)政府委員 オリンピック東京大会進捗状況につきましては、お手元に、月例報告としまして五月一日現在の進捗状況をお示ししたものがお配りしてございます。詳しくはこの書面で見ていただきます。  準備全体としましては非常に順調に進んでおります。多少おくれておるというか、予定よりおくれておるという意味ではなくて、進捗率がまだ少しおそいというのは国立競技場です。主体工事はすでに一〇〇%になっておりますが、付帯工事が若干残っておる。それから屋内総合競技場が六五%ぐらいで、武道館が六五%、それからプレスマンハウスが七八%で、もう一息というような状況でございます。それ以外のところも大体順調に進んでおりまして、工事予定期間内には完了するというふうに考えております。  次に、オリンピック国民運動を進めております状況でございますが、オリンピック東京大会まであと百三十日ほどということで、各競技施設は順調に進んでおり、また選手強化もいよいよ本格化してまいっております。この大会を成功させることは日本国民すべての念願であり、いまや各方面で準備の総仕上げのための努力が払われておるのでございますが、特にこれから必要なことは、国民全般オリンピックを迎える心がまえの盛り上げであろうと存じます。そのために、かねてから提唱されておるオリンピック国民運動をこれからいよいよ力を入れて推進することが必要であると考えております。  オリンピック国民運動は、すでに御承知のとおり、昨年の六月に、政府機関民間団体約百八十団体が相集まって、オリンピック国民運動推進連絡会議を結成し、相協力してこれを推進することをきめたものでございます。この運動は、オリンピック理解国際理解公衆道徳交通道徳商業道徳国土美化及び健康増進七つ重点目標を掲げて、それぞれの運動ごと部会を設けて活動してまいっております。一言で言えば、オリンピック開催国にふさわしい心身ともに健全な国民生活態度及び社会環境国民自身の手でつくろうとするものでありまして、オリンピック大会が成功するかどうかはこの国民運動の成否にかかっていると言っても過言ではないという自負を持ってこの運動を進めている次第でございます。  この運動について概観的に申し上げますが、この連絡会議が結成されましてからちょうど一年になります。それぞれの部会関係者努力によりまして、重点目標ごとにその具体的な活動を進めてまいっているのでございますが、政府としましても、この運動の性格が国民みずからの日本的運動であるとの見地から、できるだけ側面的な援助にとどめてきたのでございますが、最終年度であります本年度におきましては、特に政府予算も計上いたしまして、一段とその成果を期しておるところでございます。  この運動七つの各運動で現在いかなることをなし、いかなることをこれからしょうとしているかということを簡単に申し上げます。  まず、オリンピック理解運動部会では、来たる六月二十三日に予定されていますオリンピックデー記念行事協力して、より一そう国民一般へのオリンピック精神の浸透をはかる、特に学校教育社会教育などの教育面においてオリンピック理解を大きく取り上げるよう措置してまいりたい、また、オリンピックマーク保護尊重必要性を広くPRしていくというようなことであります。  第二の、国際理解運動部会では、「友好と理解で結ぶ五つの輪」「東京五輪で結ぶ世界の和」というような標語を選定いたしまして、これの一般への普及を通して国際理解運動促進をはかっております。また、善意ガイド運動と申しまして、大会時の来訪外国人に接して簡単なガイドの奉仕のできる人々を募って、外客接遇対策の一助に資する運動を進めることにいたしております。そのほか、国際理解青年弁論大会開催オリンピック国際理解学級開設等事業も計画実施しております。  第三の、公衆道徳高揚運動部会では、「清潔秩序、親切」の共同スローガンのもとで各団体がそれぞれの事業を進めておりますが、特に婦人団体中心となりまして、オリンピックを成功させるための五つ約束——この五つというのは、行列への割り込みをやめましょう、歩きながらの喫煙をやめましょう、所かまわぬごみ捨てをやめましょう、たん、つばの吐き捨てをやめましょう、街頭での酔っぱらいをやめましょうという五つ運動全国に展開することにいたしております。この五つ約束を記入したいわゆるエチケットカードというものをつくりまして、会員六十万人の手で広く国民に配布して、その実施を促進するということも計画いたしております。特に、オリンピック関係なく現在進められています「小さな親切運動」は、この国民運動見地からもきわめて有効なものであると考えられますので、その発展を大いに期待しているところでございます。  第四の部会といたしまして、商業道徳高揚運動部会では、まず五輪マーク営利的使用自粛運動を強化いたしたり、ノーチップ運動推進国際親善店の指定、優良みやげ品の推奨その他の具体的運動の展開をはかっております。  第五に、交通道徳高揚運動部会では、「高い交通道徳オリンピックを飾ろう」のスローガンのもとに、交通安全、接客サービス輸送施設清潔交通秩序等の問題について努力を払っております。  第六の、国土美化運動部会は、国土ごみ一掃運動花一ぱい運動の二つを具体的な目標として、特に地方ごと地区組織を強化して具体的成果を期しております。  第七の、健康増進運動部会としましては、毎月七日を「健康の日」と定め、この日は、全国にこれを表示するとともに、国民の健康と体力の増進をはかるということで、体操の実践、環境衛生の徹底というようなことをいたしております。  大体以上がこの連絡会議の各部会運動状況でございますが、国民運動推進連絡会議といたしましては、六月と九月を運動重点に選びまして強調月間を開き、この月のうちに各種の行事をできるだけ集中して、国民協力を得るようにやっていきたいということで進めております。来たる六月二十二日は、本会議が発足しましてからちょうど一周年になりますので、この日に総会を開いて、さらに運動推進をはかるということを計画いたしております。  大体以上の状況でございます。     —————————————
  4. 島村一郎

    島村委員長 ただいまの御説明に対し質疑の通告がありますので、これを許します。穗積七郎君。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 私は、時間の都合で、たいへん恐縮ですが、あと設備状況進捗について簡単に質問したいと思いますが、この分については、書類で報告のありましたものをよく検討いたしまして、次の機会にお聞きしたいと思います。
  6. 島村一郎

  7. 重盛壽治

    重盛委員 この国民運動推進連絡会議に関連して一つ質問がありますが、その前に、これは事務総長にお答え願ったほうがよいかと思いますが、きのうの新聞を見ますと、インドネシア不参加理由アラブ十三カ国も東京五輪ボイコットという新聞報道がなされております。この内容を見ますと、インドネシア不参加ならばアラブ十三カ国は東京には行かない、こういう申し合わせを全員一致で決定したんだということが出ております。与謝野さんの意見も出ておりますし、竹田さんの意見も出ておりますが、私が申し上げるまでもなく、東京オリンピックは、おそらくや長い間東京に招致することに努力をし、いま報告されたように、今日すでにすべての準備が完了して、競技を実行する段階までになったやさき、こういう報道がなされるということは、きわめて残念なことであるので、どういうような経過からこういう状態になってきておるのか、さらには、こういう問題に関連して、将来——将来といっても、十月に実行されるオリンピックでありますので、当面どのような処置を講じようとなさっておるのか、その点を、簡単でけっこうでありますから、お答えを願いたいと思います。
  8. 与謝野秀

    与謝野参考人 お答えいたします。  御承知のとおり、一昨年ジャカルタでアジア大会がございまして、その際にインドネシアイスラエルと台湾を入れなかった、追い返したという形になりまして、そのためにいろいろな紛糾が起きたのであります。ところで、その後この問題がオリンピック国際委員会報告されまして、国際委員会のほうでインドネシアのとった態度はけしからぬという声が高まりまして、昨年の十月の総会で、インドネシアに対して、今後はオリンピック精神を守るということを言ってくれれば、いま資格が停止になっているのを取り消してもいいという通知を出したのでありますが、インドネシアのほうでは、そういうことを言えば、将来のこととはいえ、過去において自分たちが悪かったのだということを書面で認めるということになるので、そういうことはできないと言って、国際委員会正面対立の形になりました。その後、東京オリンピック大会には自分のほうからも参加しないのだという声明を出しているわけであります。ところが、インドネシアイスラエルというものはそれほど仇敵関係にあるのではなくて、実はイスラエルと仲の悪いのはアラブ諸国なんであります。したがって、イスラエルが出る競技会には自分たちが出るのは好まぬという空気が当然アラブ側にある。インドネシアがそれをいれてイスラエルを締め出したわけであります。ところが、自分たちの希望するところによってかえってインドネシアだけが被害者になってしまったということで、アラブとしては非常にむずかしい立場に立ちているなということは、かねて予測されていたのであります。アラブ連盟というのは、政治経済問題を討議するアラブ諸国会議でありまして、連盟事務局もあるのでございますが、そこでこのスポーツの問題が取り上げられたものと推定されるのであります。私も初代のエジプト大使として、他のアラブ諸国との国交開始にいろいろあの辺の国を回った経験もあるので、いかにイスラエルアラブ関係がむずかしいかということは身をもって知っているのであります。そこで、オリンピック関係あります国は、十三カ国のうちの十カ国でありまして、サウジアラビア、イエメン、クエート、この三つの国はまだオリンピック委員会もできておらない。したがいまして、ただいまお話のありましたように、これらの国が今回決議した政治的の決議でありますが、それに従ってその国のオリンピック委員会東京オリンピック不参加ということを言ってまいります場合には、十ヵ国が参加しないことになり、非常に残念なことになるわけであります。しかしながら、われわれのところで各国選手団が一体何人くらい来られるつもりかというようなことを事前調査しておりますところでは、これらのアラブ諸国の大部分は、選手、役員の人数等をもうこちらに通報してきたようなわけでありまして、本来は参加したいということを関係者考えていると思うのであります。しかしながら、何分にもインドネシアがそういう態度であり、IOCと正面衝突している現状では、事態が非常にむずかしくなってきている。したがいまして、問題はIOCインドネシア関係でございますが、おそらく、来月末にローザンヌでIOC理事会というものが臨時に開かれることになりましたので、あるいはもう二度この問題が取り上げられるかとも思うのでありまして、われわれとしては、ぜひ世界の全部の国が東京大会に参加してもらいたいということを念願していることは変わりないのでございますが、これによって、日本のほうから進んで、もうアラブ諸国は来ない、インドネシアは絶対来ないというようなことを言うのは避けたい、こう考えております。
  9. 重盛壽治

    重盛委員 これはあなたに申し上げていいかどうか知らぬが、私は、次のIOCの何かが開かれるから、そこできめられるだろう、そしてこの問題はIOCインドネシアの問題であるからということで、いまの段階で片づけるのは好ましくない。やはりオリンピック主催国という立場から、IOCに対して、こういう態度とこういう決定は、なるほどインドネシア——私は、これは新聞ですからわかりませんが、インドネシアが答えるか答えないかというよりも、インドネシアいわく、とにかくIOC精神は私どもも知っておる、参加するからにはそれを守ることは当然ではないかということを言われているので、そういう論議の渦中に入ってわれわれがどうこうというのではありませんが、少なくとも日本主催国である、同時に、その日本でやる場合に、私の知っておる限りにおきましては、アジアで初めて行なわれるものである、そうだとすれば、それの関係の一番深い、しかも日本インドネシアは決して相反する立場をとっておらない、イデオロギー的には若干相違するものがあるかもしれないが、しかし経済交流もやっておるようでありますし、いろいろな立場からいうならばきわめて重要な関係にあるでもありますので、主催国として、IOCに対してもう少し強力な発言をする資格があるのではないか——資格があるかないかはともかくとして、日本でやるのだから、もう少し至急に考慮するようひとつ努力してほしいという、努力要求ぐらいは出してもいいのじゃないか、また出すべきではないかというふうに考えております。これはインドネシアIOCとの関係の問題だというお考え方だけでは、少し消極的過ぎはしないかというふうに考えるのでありますが、この点どうでありますか。
  10. 与謝野秀

    与謝野参考人 御意見はよくわかりますが、この問題が起きましたのは昨年の二月でございまして、自来、日本側IOC委員をしておる東、高石両氏も、また当時のオリンピック担当大臣であった川島大臣も、何とかこの問題が円満に片づいて、インドネシアオリンピックに参加できるようにというための努力を払われたのであります。それの結果が、結局、もう過去は問わない、しかし、将来オリンピック精神は守るのだという、非常にやわらかい態度で、もう一ぺん誘いをかけようということになったのでありますが、それでも強いというので、いまけんか別れになっているというのが状況でありまして、私がここで、いや日本がもっとやるのだやるのだと申し上げるよりも、やはりそういう道があればできるだけ最後まで努力を惜しまない、これは政府関係者考えておられるでありましょうし、われわれもこれを希望しておるのでありますから、根本の考えにおいて違うところはないと信じております。
  11. 重盛壽治

    重盛委員 委員長はたまたまオリンピック組織委員の一人でありますし、私は決して与謝野さんを責めるようなことばを使いたくないのですが、何か知らぬが、私の聞いたところの感じでは、これは私どもの権限の範囲外だ、おれはここのところの事務だけをやればいいのだというふうに聞こえるが、国民全般から見たところでは、せっかく日本オリンピックをやるのだから、どういう事態があるか知らぬが、日本オリンピック契機としてこういう問題の解消をはかるべきではないか、同時に、主催国であるあなた方日本政府が、これくらいの問題は処理する努力をすべきではなかろうか、こういう考え方で見守っていることは事実であります。したがって、私はこれは必ずしも答弁を求めませんが、委員長とともにお願いすることは、こうした問題を何とか最後最後まで主催国日本としては努力をして、インドネシアが参加できるように一生懸命に努力するということをひとつお願いしておきたいと思います。それから、 いまの準備経過の問題の中で、私はずっとほとんど全部施設は拝見をいたしました。一回だけおじやまできなかったのですが、その見た目からいきますならば、施設は大体完了しておるように感じられます。もちろん、事務的に処理しなければならぬものは若干残っておるけれども、ただそういう中で、これはまだもう少し努力をしてもらわなければならぬのじゃないかという問題は、特にここに出ておりますように、これは交通道徳というように出ておりまするが、交通問題の万般的な対策が必ずしもできておるかどうかということが一つ考えられる。ということは、たとえば高速道路から一号国道におりるところが混雑する。これは羽田がそれまでにできるからいいじゃないかということで解消するかもしれぬが、あるいはあの高速道路から甲州街道へおりる、こういうおり口は一体どうなる。いまのような、私どもの目から見ただけで考えるならば、あそこで詰まってしまって、どうにもならぬ状態ができはしないか。その他、いわゆる高速道路から一般道路におりたり入ったりするこの出入口がかなり完備をされ、しかも相当な御理解を願って御協力をしてもらうという体制をつくらぬと、これは私は相当な混乱を惹起するのではないかと思う。私はたまたまいま地方行政委員会の中で道路交通法をやっておりまするが、その中でも、オリンピックを目前において、ただ罰則を強化したり取り締まることによって交通問題の解決がつくというような考え方をお持ちになっては困るということを要望しておりますが、まさにそのとおりであって、どうも何かすれば罰則だけつくっておりますが、抜本的にこういう問題をもう少しオリンピック組織委員会としても考えて、要請すべきところは、あちらへも頼んでおきました、こちらへも頼んでおいて、できると思いましたけれども、間に合いませんでしたでは、これは現実に間に合わないことになる。したがって、そういうことのないように、交通輸送の問題に対しは特段の配慮を私は払っていただきたい。  もう一点、これはあるいはあなた方と私と意見が違うかしれませんけれども国際理解運動ということがここに書いてある。一番の、オリンピック理解運動というところで、オリンピックに対する理解は、これは国民全体に対して理解をするように運動をしようというので、これはけっこうだと思いまするが、国際理解運動という中では、どうも先ほどの説明だけではいけないのではないか。いわゆる次代をしょって立つ全世界若人日本に集まってくるということは、おそらくやこのオリンピック機会を除いてはないであろう。したがって、その中には、将来総理大臣になる人、あるいは重要な地位につく人が来るかもしれません。そうした人たちが来て、日本のある姿を見てお帰りになると思う。そういう場合に、日本の歴史というようなことは——そういうことばがいいかとうか知りませんが、沿革といいますか、日本という国は現在どういう地位に置かれて、どんな形で国民生活が安定をし、しかもこれを契機にしていわば観光誘致をしようとまでいわれておるやさきでありますので、もっと奥深いところを見てもらう必要がありはせぬか。一体それは何であるのか、これは私が申し上げるまでもなく、ありのままの姿を見てもらう以外にない。日本のきれいなところといえば日光や富士山だというような感覚であったり、何かお座敷があれば芸者ガールが出てきて、それの踊りがきれいだったりというような、こんなところは私は見せても見せなくてもいいと思う。むしろ、日本のあらゆる事業建設の姿、道路の姿、国鉄のあり方、さらに進んで言うならば、日本ほんとう姿——日本ほんとうの姿というのは、これはこういう委員会では少し筋が違うかもしれませんけれども、やはり現実の姿、日本という国は、あの悲惨な戦争をやって、今日のような憲法をつくって、戦争をやらない平和な国である、平和国家というものが日本の姿の実態だということは、少なくとも全世界各国から集まる若人、それから新聞記者中心とする報道陣、オリンピックを見に来る見学者に、日本あり方というものをはっきり焼きつけて帰す、こういうことを、やはりオリンピック日本でやるという重大な意義の一こまとして扱っていかなければならぬ。これは私は大臣がおらぬのははなはだ遺憾でありますが、関係大臣のお仕事であろうかと存じますが、そういうものがやはり含まれて、日本という国はスポーツ的に、文化的に、そして思想的に愉快な国である、オリンピック契機にして、日本は一ぺんぜひ行ってみなければならぬ国だというような、日本の将来のあり方にも一つの新しい機軸を描き出すというくらいな抱負をもってオリンピックを遂行しなければならぬ。何人かの選手を強化し、日の丸の旗が何本かよけいに立ったというようなことは、私はそう重く見るべきではなくて、実際の日の丸あり方というものを、明確にこの機会に、いわゆる国際的な立場から国際理解運動の中に盛り込んでやっていくべきだ、このように考えております。どこまでお考えになり、どれだけの余裕があるか知りませんが、もう限られた時日ではありますけれども、こうした面にも取っ組んでおるのか取っ組んでおらぬのか、もし取っ組んでおらぬとするならば、私の申し上げたとおりが必ずしもよろしいとは私は考えておらぬが、全般の諸君の見方というものはあろうと思いますけれども、少なくともやはりいま言うように、日本のあるべき姿と、将来の日本というものは世界的な地位からいうならばどういう地位にいくだろう、いわば平和な民族として世界平和を呼びかけ、率直に言うならば指導していくほどの崇高な理念を持つものが日本民族であるということぐらい焼きつけてやるような、何かの機会をつかまえてそういう方向づけをするのが重大な役割りではなかろうかと私は考えております。どうもこれは大臣関係の方がおらなければ、御答弁がいただけるかどうか知りませんが、これは私は、質問というか、要望を兼ねて申し上げておきます。
  12. 松永勇

    松永(勇)政府委員 いまお話のあったことは全く同感でございます。オリンピック国民運動が発足するというか、これは政府がどうしたということではなくて、民間の盛り上がる力がこの国民運動連絡会議というものをつくったわけでございます。そこにまさに国民運動としての本質があるだろうと思います。私たちもそういう盛り上がった国民の気持ちというものでこの連絡会議が発足することになったものだろうと思います。特にその国際理解ということは、日本のこれから進んでいく道、そういうことを考えますと、非常にじみではございますが、この国民運動連絡会議の中でも非常に大きな期待を寄せ、また努力をしなければならない運動考えております。先ほど私が申し上げましたのは、主としてこれから行なってまいります事業のおも立ったものを申し上げたわけでございますが、その運動の根底というか、考え方は、まさに先生のおっしゃるとおりでございまして、このほかに、実はオリンピック機会世界青少年キャンプを開催する計画が進められております。これもまさに世界の青少年が手をつないで、そしてこのオリンピック精神と同じ精神で今後の国際親善を進めていくという考えから、あわせて行なうことになっております。なお、先ほど申しませんでした、各国の国旗を尊重するとか、互いにそれぞれの国の歴史、国のあり方、お互いの立場を尊重し合おう、そういうことがこの運動中心をなしております。したがいまして、この運動というものは、先ほど触れましたように、政府が旗を振るということではなく、国民の中から起こってきた運動ということにほんとうの特色があり、またそこに非常に商い価値があるというふうに思っております。私たちも、今後残された期間を、そういう国民運動政府として側面から推進してまいりたいという考えでございます。  お答えが前後いたしましたが、もう一つ交通道徳の面も、まさにこういう交通状態のもとで東京オリンピック大会が行なわれるという現実をよく直視して、いかにこれを処理するかということは、政府関係機関みんながいま頭を悩ましている問題でございます。今回の措置ですべて十分であるというふうには考えておりません。施設の面においてもそうでございますし、国民運動としてもさらにこれからやらなければならない。特に私たちはこの国民運動として「高い交通道徳オリンピックを飾ろう」その運動をさらに進めて、物的施設その他ではなお不十分な点を十分補っていきたいという考えで遊んでおります。施設の個々の面につきましては関係各省のほうから補足説明していただきたいと思います。
  13. 重盛壽治

    重盛委員 限られた時間でありますから私は多くを申しませんが、何回も申しますように、日本オリンピックをやれるということは、当分の間ありません。率直に言うと、われわれの生ある限りにおいては、これをもって初めの終わりになる、このように考えるものでありますから、全体に総合的な立場に立って、やはり日本オリンピックは、長い間何カ所かでオリンピックをやられたけれども競技の内容といい、設備といい、それから国民おのおのの気持ちといい、非常にりっぱであった——オリンピック契機として日本の政治路線が若干変わってもいいじゃないか。ほんとう日本人というものは平和な民族で、スポーツも全くイデオロギーにとらわれず行なわれて、こんなりっぱなものはなかったというような成果をあげるように一そうの御努力をしていただきますようお願いをいたしまして、きょうの質問は一応打ち切らしていただきます。
  14. 四宮久吉

    ○四宮委員 関連して。私、少し時間がおくれて、参考人の方の御意見に接しないで残念でございました。  聞くところによると、このオリンピック機会に、ひとりオリンピックだけではなく、かりに神奈川県方面における農業であるとか、漁業に対するいろいろな施設の生産状況であるとか、文化に関する日本の実情、その他産業の面、いろいろな製造工場の点等について、それぞれ視察する場所、あるいは場所によっては宿泊所までも準備されるような話もかつて聞いたことがあるのですが、こういう問題に対して当局者は、ひとりオリンピックだけにとどまらずというお話の中に——私たちもその問題について少し考えておるものですが、こういう問題についていろいろ考えられたり、あるいはまた、当局でもそれに対する計画がいままで進められておるのでしょうか、ちょっと承っておきたいと思います。——神奈川県あたり、見に行く農家の準備までできておるかのように聞いておった。漁業の網の製造場所の施設日本の特色があるところを見てもらったり、あるいはまた工場を見てもらったり、あるいは文化の大へん古い、何かいろいろありますが、こういうような日本の昔からの姿を見る機会を各方面において準備されつつあるというように聞いたのですが、そういうことは計画されておりますか。
  15. 松永勇

    松永(勇)政府委員 私も全部知っておるわけではございませんが、もちろん、外客がおいでになった場合に、かねて観光旅行とかいう面では、観光旅行のためのいろいろな接遇の施策ということはお考えになっていると思いますけれども政府もしくはこれに準ずる団体が主催していまの漁業の何かを見せるとか農業云々というような話は、総理府にございます連絡会議の席上にそういうものが持ち込まれたという事実はございません。
  16. 島村一郎

    島村委員長 中嶋英夫君。
  17. 中嶋英夫

    ○中嶋(英)委員 小さな問題ですけれどもオリンピック国民運動推進関係ですが、商業道徳関係ノーチップ運動というのが最近よく問題になりますね。私もノーチップ制度というものは賛成であります。特に、中国などに行って、チップは一切ないということ、アメリカを旅行して、朝から晩までチップの心配をしなければならぬという両面を見ると、チップはないほうがいいと思うのです。ただ実際問題として、いま世界各国でチップの制度というものがまだ画一化されていないと私は理解するのですが、各国へ参った場合に、公式的なノーチップでどうなのかという問題がある。というのは、最近の若い労働者の考え方は、年配の人から見ると、ちょっと問題があるとお考えになるくらい、きめられた仕事はきちんとする、きめられた仕事以外は違うんだという考え方なんです。悪く言えば個人主義かもしれぬが、よく言えば、やはりけじめのついたものの考え方が発達してきた。したがって、最近、たしか作家ですか、どなたかの随筆に出ていましたけれども、ホテルの結婚式場に行って、ボーイに何かひじでこづかれたということで、非常に不愉快な思いをした。確かにこづくなんということはよくないことで、特にそれがアルバイト制であったということでいろいろ問題があったのですが、チップが習慣になっておる働き場で、ただ公式的に、ノーチップなんだということが何かスローガンだけで出て、実際に理解が十分通っていないときに起きるいろいろな紛争があるのではないかと思うのです。それから、きめられた仕事以外の仕事を頼む場合は、あるいは仕事以外の特別な親切を受けた場合、これに何かこたえたいという人間の本能的なものがあると思うのです。たとえば、中国でノーチップ制度であっても、中国というところは、大体バッジを持っていけば喜ぶという通念があるのです。ホテルで世話になった、それには、持っていったバッジを胸につけてやる、チップは受け取らないが、バッジは喜んで受け取る。やはり善意に対する善意のこたえというつながりがあるわけです。それがもし、善意にこたえる善意というものでなくて、とにかく外国のお客さまには徹頭徹尾サービスしたほうがいいんだ、きまっている仕事以外のことでも一生懸命何でもサービスしたほうがいいんだ、こういう考え方が突き進むと、一種の媚態になると思うのです。同時に、これは国民外交の形でいくならば、媚態外交に通ずる危険もあると思うのです。こういう点を、もう一年ない非常に切迫した時間で困難があろうと思うのですが、単に紹介所にまかせるだけでなくて、各国状態と個々に合うようにするのか、あるいは、仕事のけじめをつけて、けじめ以上のものについてのチップは快く受け取っていいと解釈するのかどうか、この辺のところが、小さなことのようで、日本に来、そうして日本オリンピックに参加し、あるいはそのついでに日本を見て帰っていく中で、案外こんなことが快く残る。われわれが外国に行って帰った場合でも、そういうことが非常に快く残っておる。私が心配があるのは、昔から日本は大体チップ制度です。祝儀というのがあるのですから。ノーチップへ通ずる過渡期のようなときにこのオリンピックを迎える、これに対して推進本部のほうでは何か特別のお考えがあるのか。単に紹介所等に、商業道徳の高揚という、ちょっと耳ざわりのいい、私も賛成ですけれども、いま、とにかくたてまえはノーチップがいいというお仕着せの指導だけで済むのかどうか、こういう点についてのお考えなり御方針を承っておきたい。
  18. 見角修二

    ○見角説明員 ただいまお尋ねのノーチップの問題でございますが、運輸省の観光局といたしましては、ちょうどいまを去る二年前に、ノーチップの徹底ということにつきまして、旅館、ホテルその他観光関係の業界に広く呼びかけたわけでございます。御存じのように、ノーチップ制は非常にわが国の国際観光上の大きな魅力になっておりまして、外客誘致や接遇の上に非常に大きな役割りを果たしておるわけでございますが、ともすれば従来外国の風習がいつとはなしに日本に伝染いたしまして、ホテル、旅館でやはりいやな目にあうという例がないわけではなかったわけでございます。そこで二年前にそういう周知徹底を呼びかけた通達を関係業界に出したわけでございますが、あれから二年を経過いたしましたし、先ほど先生御指摘の、一部のホテルについても不愉快な事件が新聞雑誌等にも載ったこともございます。オリンピックも間近に控えておりますので、さらに今回、ちょうど五月一日付でございますが、ノーチップ制の徹底方を関係業界に呼びかける、こういう措置をとったわけでございます。そのかわりに、正規に従業員がサービスをした分につきましては、たとえばホテル、旅館でございますれば、宿泊料のほかにサービス料という名義で一たん経営者のふところへ入れる、こういうことで、従業員がお客から直接チップをいただくということは厳に慎んでもらいたい、こういうふうな指導を行なっているわけでございます。
  19. 中嶋英夫

    ○中嶋(英)委員 重ねて恐縮ですけれども、いま運輸省の関係の方からお話があったいわゆる正規のサービス料ですね、私が最近旅行してみて、あれは全然善意に対する善意のこたえというものから縁遠いものになってしまった。もう実際は有名無実ですよ。ですから、実際旅行をした場合、最近京都へ旅をしたのですが、サービス料に織り込んである、正規のものである、これでは、私は率直に言うけれども、チップを期待するしないは別として、善意の手当、めんどうを見てもらったものには善意が返ってくる可能性がある程度のところのほうがかえっていいのじゃないか。最近では、国会でこんな発言をしていいか悪いかわかりませんけれども、奉仕料というものが料金の一部同様になってしまっている。もうお客さんもそう思っているし、サービスの衝に当たる従業員もそう思っているのではなかろうかという面持ちを感じて、実は奉仕料以外にチップを払っている、これが実情だと思うのです。特に観光地などではこれは相当実情だと思う。たとえばお仲人してお嫁に出してやる場合、あるいは親が、上野あるいは東京駅で、あるいは羽田空港で新郎新婦を送り出す場合、行く前に、大体チップはこのくらいということを説明するのが、親なり仲人の最近の仕事になっています。大体旅館はこのくらいの旅館だ、サービス料は入っているけれども、しかも帰りでなくて、着いたらすぐにこのくらいの見当のものはというので教えてやるのが、最近の親心ではないかと思う。これでは、ノーチップ制度を提唱して、魂が入らないために、上つらだけでいったために、実際は、いわゆる正しいというか、規定のというお話があったけれども、料金値上げをして、やはり第二次のチップが生まれてきている、これが事実だと思う。こういう過渡期だからやむを得ぬとは思うのだけれども、そういう断層のときにオリンピックを迎えることについて、いまのお答えだけで、その強化だけではたして問題がないかどうかというと、そうではないと思う。ですから、もう一歩も二歩も中へ入ってみて——私はノーチップ制度説ですが、しかし、公式的なノーチップ制度では進まないだろう、もう一歩中へ入ってみて対策をするというところまで取り組んでいただきたいと思う。そういう点についてのお考えを伺ってみたい。
  20. 見角修二

    ○見角説明員 ただいまのお話でございますけれども、問題は、結局経営者に一たん渡った奉仕料、サー、ビス料が、そのままそのサービスをした従業員に再び還元されるかどうかというところにあろうかと思うのでございます。したがいまして、われわれといたしましては、従業員が直接とるチップはやめてもらいたい、しかし、経営者がサービス料として一たん収受したものは、そのサービスをした従業員に極力還元してもらう、一〇〇%還元してもらう、こういうことも同時に経営者に呼びかけているわけであります。それからもう一つ、特別に従業員がお客に非常にめんどうを見てやった、たとえば急病で徹夜で看病したとか、そういうごく例外的な場合に、お客がほんとうの感謝の気持ちで従業員にそれ相当のお礼の意を示すということまで、われわれとしては一般的な問題として禁ずべきではないのではないか、こういうふうに考えております。そういった含みをもってわれわれとしてはノーチップ制を関係業界に呼びかけておるということを御了解願います。
  21. 中嶋英夫

    ○中嶋(英)委員 誤解があるといけませんから——私はチップを奨励するわけではないのですが、ノーチップ制度でいくのだという指導ではなくて、チップをもらわなくても、ちゃんときまった仕事はするのだということを前提にして、その上に善意と善意の交換として得たものは、いまの段階では是認してよいのではないか。しかし、もらわないからやらぬということでは困る。というのは、業者の手に入る、主人の手に入る、それが一〇〇%いくかどうかに問題があるというお話がいまあったが、私はそうじゃないと思う。それもそうだが、もう一点ある。奉仕料というのは、うちは一割、うちは一割五分あるいは二割、これはおまえたちにいくのだよ、これが月大体どのくらいになる、だから、おまえの月給はこうなんだといって、やはり労働条件化していると思うのです。ですから、奉仕料がこのくらい入るし、本給はこのくらいだから、合わせてこのくらいということになるから、これは奉仕料でもなければ、祝儀でもなければ、チップでもない、労働条件だ。労働条件になっておるがゆえに、それが案外少ない場合は、労働条件の切り下げですから、固定月収が下がってくるのですから、気持ちよく働けっこないのです。当然、お客さんに対する態度も、そう、にこやかにしていられなくなってくる可能性が、いいことではないが、ある。ですから、チップはもらわなくとも、ちゃんと働くのだよ、それだけの報酬は、月々の収入はこれだけですよ、月給はこれだけです、その上に善意と善意の交換のチップについては、要求してはいかぬが、チップについては快くお受けしなさいというあたりが、今度のこの秋あたりの日本のホテルに対する段階ではなかろうかと思うのです。ですから、いま言った、奉仕料が従業員の手にいくかどうか、途中で取るかどうか、そんなことじゃないのです。私は払っておると思う。それは女中なりボーイが一〇〇%持っていくのですから、それを見て、自分のところに来ないのだったら、これはわかる。これが基本月収の中に繰り込みになっておるというところに問題があると思う。まあこまかい問題で、むずかしい問題ですから、きょう結論をとは言いませんが、少なくとも、ノーチップ制度の旗じるしだけでなく、もう一歩二歩入った、きめこまかい指導が必要ではないかと思いますので、その点を要望しておきます。
  22. 島村一郎

    島村委員長 他に御質疑はありませんか。——なければ、本日はこの程度で散会いたします。    午後三時二十九分散会