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1963-12-17 第45回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年十二月十七日(火曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     太田 正孝君    理事            大谷藤之助君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            村山 道雄君            戸叶  武君            羽生 三七君            市川 房枝君            高山 恒雄君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            江藤  智君            加藤 武徳君            金丸 冨夫君            木村篤太郎君            小林 英三君            小柳 牧衞君            小山邦太郎君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            河野 謙三君            郡  祐一君            塩見 俊二君            杉原 荒太君            館  哲二君            鳥畠徳次郎君            山本  杉君            稲葉 誠一君            大倉 精一君            亀田 得治君            木村禧八郎君            瀬谷 英行君            藤田藤太郎君            松本 賢一君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君            中尾 辰義君            田畑 金光君            鈴木 市藏君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 賀屋 興宣君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    厚 生 大 臣 小林 武治君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    郵 政 大 臣 古池 信三君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    建 設 大 臣 河野 一郎君    自 治 大 臣 早川  崇君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    総理府総務長官 野田 武夫君    公正取引委員会    委員長     渡邊喜久造君    大蔵省主計局長 佐藤 一郎君    大蔵省主税局長 泉 美之松君    大蔵省銀行局長 高橋 俊英君    厚生省社会局長 大山  正君    農林大臣官房長 中西 一郎君    農林省農林経済    局長      松岡  亮君    農林省農地局長 丹羽雅次郎君    林野庁長官   田中 重五君    水産庁長官   庄野五一郎君    通商産業省石炭    局長      新井 眞一君    通商産業省鉱山    保安局長    田原 正邦君    中小企業庁長官 中野 正一君    運輸省鉄道監督    局長      廣瀬 眞一君    郵政大臣官房長 武田  功君    郵政省人事局長 増森  孝君    労働省労働基準    局長      村上 茂利君    自治省財政局長 柴田  護君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    大蔵省主税局税    制第一課長   山下 元利君    福岡鉱山保安監    督局長     森本伊佐夫君    日本国有鉄道総    裁       石田 礼助君    日本国有鉄道副    総裁      磯崎  叡君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十八年度一般会計補正予算  (第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十八年度特別会計補正予算  (特第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十八年度政府関係機関補正予  算(機第2号)(内閣提出、衆議院  送付)   —————————————
  2. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和三十八年度一般会計補正予算(第2号)、昭和三十八年度特別会計補正予算(特第2号)、三十八年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、質疑を行ないます。田畑金光君。
  3. 田畑金光

    田畑金光君 私は、初めに総理に対しましてお尋ねしたいと思いますが、政府を初め政府経済金融税制等の各諮問機関は、最近アフターケアということばを使います。これは日本語に訳しますと手直しとかひずみの是正とか、こう解すべきだと思いますが、また第二ラウンドということばを聞くのでありまするが、それはアフターケアと同じことを意味しておるのかどうか、まずそのことをお尋ねいたします。
  4. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 十年以内所得倍増計画は、私の大体の方向としては予想どおりにいっております。ただ、初めの三年間九%というのが相当予想以上にいきました。したがいまして、その次には少し手控えるというかっこうでいっておるのであります。第二ラウンドとかアフターケアということは、いまの、初めに行き過ぎたのを少しためるということ、そうして予定どおりには行っておるけれども、行き過ぎたほうとの差を今度縮めていこう、こういうことを言っておるわけであります。
  5. 田畑金光

    田畑金光君 そういたしますと、第二ラウンドとして、これからは農業中小企業社会資本充実重点を指向すると政府は言っておられますが、第一ラウンドのひずみ、手直しが即農業中小企業近代化社会資本強化ということに理解してよろしゅうございますか。
  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 程度問題でございますが、当初から農業、あるいは中小企業には特別の施策をしなきゃいかぬと私は考えておったのであります。私が十年後においては農民は三分の一ぐらい減るだろうということを当初から予定しておりました。しこうして、だんだんその施策を続けていっておりまして、予定以上にいきました関係上、普通の予定どおりにいった分との差が起きてまいりました。それを直そうと、中小企業農業社会資本社会資本をここで考えるのでございますがオリンピックその他の問題で社会資本もある程度、場合によっては相当急いだ、こういう点は、急ぎ過ぎたところは社会資本でもある程度ためなければいかぬのじゃないか、また社会資本のうちで一番おくれている住宅問題等には相当力を入れていかなければならぬ、一がいに社会資本と申しましても、その程度の差はあり得る、また、それは主目的に、また時期的に差をつけていかなければならぬと考えております。
  7. 田畑金光

    田畑金光君 この一両年以来の池田内閣倍増政策には、いろいろの矛盾やまた摩擦が出ております。第一は、景気の変動があまりにも大きいということ、第二には、消費者物価の値上がりが政治問題化するほど大きくなっておるということ、第三は、国際収支の恒常的な不安定が続いております。第四は、大企業に比べていまお話しのように中小企業農業が著しく立ちおくれております。第五には、企業資本充実に比較いたしますと、社会資本の立ちおくれが著しいわけです。第六に、若年労働力の不足、中、高年齢層の失業不安が続いておるわけです。以上のように、高度成長政策のひずみと申しますか、摩擦矛盾が出ておりまして、その中で中小企業農業がいま答弁のようにおくれておるわけです。第二ラウンドは単なる手直し、ひずみの是正ではなくして、私は高度成長政策そのものの質的な転換であり、安定成長政策への第一歩であると考えるわけです。そういう意味におきまして、私は池田内閣経済政策が一つの大きな転換期にきておる。こうみなしても差しつかえないと考えますが、総理の見解を承りたいわけです。
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 転換期がきているといいますけれども、それはおくれたことばです。転換期は、もう昭和三十七年度予算のときからきております。三十七年からきておる。それはなぜかといったら、三十四年、五年、六年と、非常に行き過ぎたから、三十七年から転換期としてやっておる。そうしていまも、三十は年も相当三十五、六、七年と違った経済政策をとっております。ですから、いま転換期にきておると言うことは、一年半おくれたことばです。私は一年半前に、二年近く前にやっておるわけです。そうして非常にひずみがきていますが、戦後の日本国際収支等につきましては、昭和二十九年と三十三年がございます。そのときの状況を申しますと、やはり生産は伸びが少なかった。国民生産並びに国民所得で大体二十九年には三%程度、三十三年も三%程度、しかし今度は、ひずみはありましても、そのときよりも生産所得はほとんど倍近く五・七%昨年も伸びております。名目では八・九%。それから三十八年も大体国民所得で八%程度実質上がっておる。こういうことで、ひずみも昭和二十九年あるいは三十三年よりも非常に少なくなってきております。転換期ということばですが、もう予算組みようその他でおわかりになるように、三十七年、三十八年も転換状況になっております。三十九年もそれでいとう。それはなぜかといったならば、三十四、三十五、三十六、三十七年は非常に進み過ぎたからで、いま転換期だとかなんとかということは、少しおそいんじゃないかと思う。私はもう三十七年の予算からやっておる。
  9. 田畑金光

    田畑金光君 そういう意味転換期という見方もありましょうが、私の言いたいことは、高度の成長政策のねらいそのものが地域間の格差をなくし、農業と非農業間の産業間の格差をなくし、大企業中小企業企業規模別格差をなくしよう。この目的のために高度成長政策はとられたはずでありまするが、一両年たって今日振り返ってみると、かえって農業と非農業格差が拡大した。大企業中小企業のズレが大きくなった。したがって、そういう意味において第二ラウンドは今までの政策に対する池田内閣政策の質的な転換、こう私は見るべきだと考えますが、その点に限定して見る場合に、総理はどのようにお考えでございしょうか。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういうのは転換とは私は考えておりません。補強と申しますか、是正と申しますか、転換ではないのであります。進み過ぎたところ、そして普通にはいっておるけれども進み過ぎたととろに比べれば進みが足りないところ、これは転換というのではない、補強と申します。是正ということばもあると思いますが、しわを伸ばしていく、転換という本質的なものではございません。もし財政経済政策転換があるとすれば、三十七年からやっておるということを申し上げたのでございます。
  11. 田畑金光

    田畑金光君 総理は、選挙中、中小企業農業近代化をやって一両年中に物価を下げると言っておられます。してみますと、この第二ラウンドというものは、およそ二、三年を予測されておられるのかどうか。はたして二、三年のうちに中小企業農業近代化社会資本充実、そして物価の安定ということが期待できると確信を持たれるのかどうか。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは、格差是正するとか、いろんな問題は十年計画でいっております。したがいまして、いまの三年、四年——あと二、三年でやるというわけのものじゃございません。いろんな問題が出てくると思います。常に気を配ってやらなければなりません。したがいまして、消費者物価の安定というととは、その急激な上昇の原因はおおむね農業中小企業あるいはサービス業の点でございますので、これの近代化合理化をやれば消費者物価の安定に資する、こういうことを言っておるのであります。
  13. 田畑金光

    田畑金光君 総理の御趣旨はよくわかりますが、私はこういう疑問を持っておるわけです。資本主義政治のもとで中小企業農業近代化というのがほんとうにできるのかどうか。なぜならば、資本主義経済のもとでは、資本というのは資本効率の高い重化学工業、大企業に集中し、資本効率の低い、したがって生産性の低い中小企業農業にはなかなか資本というのは流れません。ほんとうにそれを総理の言われるように農業中小企業に革新的な近代化を行なおうとするならば、私は自由主義経済姿勢そのものに反省を加えなければできないと考えておりまするが、この点はどうでしょうか。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは議論のあるところでございますが、農業の発展を助長するには、いわゆる資本主義経済計画経済あるいは社会主義経済、どっちがいいかということを、実例を言えば、ソ連中共のそれのごとく、計画経済あるいは社会主義経済共産主義経済、あのやり方はいけないということは、もう世界の人の認めるととろであります。はたせるかな中共ソ連のいわゆる農業政策中小企業というのはあまりございません−農業政策の失敗は、やはり資本主義経済のもとでなければいかぬということは、世界の世論は結論を出しておる、フルシチョフも私は出しておると思います。
  15. 田畑金光

    田畑金光君 経済効率主義をやめて、バランス、均衡のとれた経済態勢をつくるということでありますると、従来の高度成長政策というのは反省しなければならぬと思っておる。なぜならば、中小企業農業を本格的に育て、近代化しよう、あるいは道路住宅重点を置くとすれば、成長率は当然下がると思います。いな、下げなければならぬと思います。したがって、第二ラウンドにおいて真に中小企業農業近代化をやろうというならば、金融税制予算投資等重点が置かれましょうが、結果としては高度成長そのものに私は質的な転換をやらなければ、これは私はことばだけであって、実現不可能だと考えているわけです。結局私ほ、成長率を押えなければ、農業中小企業社会資本充実強化ということは期待できない、こう考えますが、どうでしょうか。
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 非常に歴史にないような成長率を期待すれば、それは手っ取り早いのは第二次産業、第三次産業でございます。しかし、私の十年倍増というのならば、私は大体今の成長率でいくならば、十年たたぬうちに、去年がたとえば五・九%、今年の見込みが八・一%、こういえば、もう優に、三十五、六と進んでおりますので、この程度ならば、大体私は十年以内はおろか、八年ぐらいでいくのじゃないかと思っております。これは実質でございますよ。
  17. 田畑金光

    田畑金光君 来年度予算編成で、きのういろいろ質疑応答の中で田中大蔵大臣お話を承りましたが、予算規模財政投融資計画で、来年ほんとう農業中小企業社会資本充実に革命的な、あるいは革新的な近代化をやるというお話でありますが、できるのかどうか、私は深く疑問を感ずるわけで、来年度予算編成規模、あるいはそれが政策費に回し得る余裕財源等々について承りたいと思うわけです。
  18. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 現在予算編成中でございますから、さだかなことは申し上げられませんということは、きのう木村さんにお答えをしたとおりでございます。いま経済企画庁及び大蔵省の間で詰めかけておりますので、もう二、三日いたしましたら、御報告できるというふうに考えております。しかし、予算の基本的な姿勢に対して申し上げますと、三十五年、三十六年、三十七年と、非常に対前年度比大きく増加をしておるわけでありますが、…十六年、三十七年の二四%余対前年度比に比べまして今年度予算は一七・四%、一般会計であります。財政投融資は前年度当初の見込みよりも二二・六%増してきたわけでありまが、今年度成長も安定的な経済成長を見込んでおりますので、いままでのような高い水準で財源を求めるということはむずかしいと思いますので、健全均衡の線をあくまでも貫いていきたいという考えでおるわけであります。しかし、規模も大きくなっておりますし、この一般会計及び財政投融資、また税制上の配慮等によりまして、総理大臣お答えをいたしておりますような中小企業、それから農業等に対しましては、従来も十分な施策を行なってきたわけでありますが、それに倍した前向きな積極的な施策をとってまいりたい。また、とっていけるという考え方でおります。
  19. 田畑金光

    田畑金光君 昨日の大蔵大臣の御答弁によると、来年度自然増は一応六千から六千七、八百億と言われております。そういたしますと・その中から減税に二千億持っていかれ、あるいはまたその他の当然支出しなければならぬ予算費目相当額にのぼっておるわけです。あるいは税の増に伴う地方交付税の増ということも考えなくてはなりません。そういたしますと、新規に来年度自然増財源の中から政策的に使える予算というものは、一体どの程度見積もっておるのか、見積もられるのか、承りたい。
  20. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) きのうも申し上げましたように、六千億ないし六千七、八百と言いましたのも、基本的数字を固めて申し上げたわけではないのであります。木村さんの質問オウム返しお答えしたわけでありますから、その中でどの程度新しい財源として新政策に回せるものがあるかということを御質問になられてお答えすることはなかなかできにくいわけでありますが、まあ大ざっぱな考え方−何もお答えしないというわけにはいきませんから、大ざっぱな考え方を申し上げれば、おおむね千四、五百億というふうに考えていただければいいのではないかと思います。これは一般会計について申し上げるわけであります。
  21. 田畑金光

    田畑金光君 千五百億前後しか新規財源がないとすれば——政策費に向けられる財源が千五百億前後しかないとすれば、私は一般会計予算規模そのものから見ましても、特に来年は国際収支、あるいはまた物価の問題を顧慮して、引き締めぎみ予算編成をやらざるを得ぬということを考えてみますと、中小企業農業の革命的な施策とか、あるいはまた社会資本強化ということに、皆さん方選挙のときの公約どおりに実行できる余裕があるのかどうか、どうでしょうか。
  22. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 予算の額が何%増しになるから革命的な施策を行なったというふうにだけおとりになることは狭義な解釈だと思います。中小企業農業等に対しまして、一般会計で見ておるものもありますし、財政投融資で見ておるものもありますし、また、金融政策という財政に匹敵するか、これとまさに一体になる政策の運用もあるのでありますし、またその上に、税制の改正によりまして、これらの施策を行なうということもできるわけでありますから、広範な意味考えまして、前向きで、かつ積極的な施策を行なうということに対してはこたえ得ると先ほど申し上げておるわけであります。
  23. 田畑金光

    田畑金光君 若干、減税問題についてお尋ねしたいわけですが、総理は昨日、平年度二千億以上の減税を約束すると明言されました。まことにこれはけっこうなことであり、国民として喜ばしいことであると思います。ただ、その際明確になりませんでしたが、ガソリン税引き上げ、その他たとえば輸出所得控除制度を廃止する等々、いわば増税になる面もあるわけです。政府の二千億減税とか、平年度二千億以上の減税とかいうのは、こういう増税になるものは除いて言われておるのかどうか。
  24. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) きのうもお答えいたしましたように、現在、税制調査会答申待ちという段階でありますので、明確な数字を申し上げるわけにはいきませんが、ガソリン税増徴もしありとしても、これは目的税でありますし、道路整備という五カ年計画の改定が必要であるか、またガソリン税増徴することによってのみできるとしたならば、増徴をやめて現行の二兆一千億でいいのかという、新しい観点に立っての経済計算をするわけでありますから、ガソリン税は二千億減税の中に含めておりませんということを明らかに申し上げていいと思います。  それから輸出振興につきましては、もう時限法であって切れるのでありますから、これはもう自動的に——増収ということではなく、また増税ということではなく——当然税法上切れれば普通の財源として計上するわけでありますが、皆さんのお考えもありますし、総理大臣も平年度二千億と、こういうふうに言っておられるのでありますので、事務当局である私たちとしてはこの輸出振興という面から、期限切れになって財源が確保される部分を差し引いても二千億の中央、地方を通じての減税は確保したいという基本的な姿勢であることを申し上げます。
  25. 田畑金光

    田畑金光君 このガソリン税あるいは軽油引取税増税については、物価問題の懇談会等においても、これが物価問題にはね返るということをおそれて、慎重に取り扱うべし、こういう意向を明らかにしておりますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
  26. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ガソリン税につきましては、十年間に何回か引き上げられて、道路整備財源が確保されてきているわけでありますが、もう一五%程度引き上げますと、ガソリン税においてはおおむね先進国ガソリン税の率に近くなりますので、一五%引き上げれば、これが限度だと考えているわけであります。これはしかも、きのうも申し上げているように、いま引き上げるときめているわけでもありませんし、また、税制調査会答申待ちでもありますし、これが物価等に対しても、物価の何%という非常に小さな面を占めるものであり、それよりも道路整備のほうが、より物価を引き下げることに役立つという議論もありますけれども、これが増徴に対しては、非常に慎重な態度でおりますことは、前段申し上げたとおりであります。もし引き上げるとしたならばという仮定で御答弁をしているわけでありますが、そのときには、道路整備のほうに回したほうがコストダウンになる、物価を安くする、下げるということの判定がつけば、その上でガソリン税引き上げて、道路整備計画を改定することになりますし、それよりもガソリン税引き上げ物価問題としては問題であるということになれば、引き上げないということもあり得るのでありまして、最終段階においてまだきまらないのは、かような慎重な態度をとっているから、いまこのような御答弁しかできないわけであります。
  27. 田畑金光

    田畑金光君 それからこの税制調査会答申の中にも盛られるようでありますが、配当所得分離課税の問題であります。税制調査会のおそらく答申案の中には、企業課税の根本に触れるので慎重に取り扱われるべきであると、反対の意向を示しているわけでありますが、田中蔵相は、これを不満とされて、所得税減税の一部を見送っても資本蓄積減税のような政策効果のあるものをふやすべきだというように言われたように聞いておりますし、また配当所得分離課税については、たしか新聞の伝うるところによれば、十一月二十九日と記憶しますが、佐藤国務相池田総理に進言されたということも聞いております。この税金については、どういう方針で政府としていかれるのか、池田総理からひとつ承りたいと思います。
  28. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 分離課税というものの実体がよくみんなに徹底していない。で、配当資料の届け出を、昔は、二十年ぐらい前は、年十円未満の配当は申告しなかった。その後二十円、戦後においては三千円あるいは五千円、今では一万円の配当は申告しない。これをどれだけ上げるかという問題、あるいは五十万円という線、十万円という線もある。それを配当資料で報告をしないということを分離課税というのか、あるいはしないのみならず、総合課税をしないということを分離課税というのか、その場合に、分離課税した場合には、いまの源泉の五%をどのくらい上げるかと、こういう問題もあります。こういういろいろ陳情を受けますが、はっきりしない。そこで日本配当所得に対する課税の問題は、大正八年高橋是清大蔵大臣原内閣のときに、今まで総合しなかったのを総合して、しかも六割の総合をやっている。その後いろいろ変遷を経ておりますが、配当所得総合課税しないという建前、分離するという建前は、世界各国歴史にあまりない。もしその分離課税というものを、配当資料の額に制限するとすれば、いまも一万円まではやっております。その実体がどこにあるかという問題が、まだはっきりしません。ことに法人税徴収の場合に、配当を損金に見るという議論が非常に強くなっております。いまその手段を四分の一程度やっております。この配当を法人の損金に見るという最近起きた、また世界税制にあるものを日本にも取り入れるとすれば、これは分離課税というものは根本的に取り入れられるわけです。そういう点がなかなか私にはぴんとこない。だから私はその実体を何かと言っておるのですが、なかなかそれが……。いまではその配当資料の提出の問題に限られておるようでございます。こうなると程度問題でございます。だから分離課税をやるかやらぬか、あなたのお聞きになる分離課税というものはどういうものかということをおっしゃっていただければ、私お答えいたします。単に分離課税といったのでは、なかなか答えにくいのであります。
  29. 田畑金光

    田畑金光君 この問題について、これは新聞にいろいろ報道されておりますが、まあ御両所の見解もいろいろあるでしょう。これはまた時間のあるときに譲ります。  それからもう一つこの問題に関連してお尋ねしたいことは、この所得税の軽減ですね。これもまた今回大蔵当局としては、従来の課税の最低限を引き上げるということを言われております。マーケット・バスケットによる算定方式によれば、少なくとも年収四十七万円余は最低生活費として減税措置を施される。そういうわけで月四万月収は免税するということがおよその方針のように聞いておりますが、しかし明日予測される税制調査会答申は、所得税特に給与所得税の減税については、もっと積極的な手を打つべしと、おそらく答申が出るやに新聞は報じております。この点につきましては、いろいろ私は議論を、時間がないのでできませんが、消費者物価の値上がりも予測するし、また今回大蔵省が根拠としておりますこの資料を見ましても、月収四万円では、私は最低生活費そのものにやはり税金がかかるという結果になろうと思っております。ましてや実施が来年度四月からの実施であるといたしまするならば。そういうことを考えたときに、答申に示された所得税減税については、答申をすなおに尊重するだけの政府意向があるかどうか、これもあわせて承っておきたい。
  30. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 所得税減税をいたしますということを公約いたしておりますし、また、課税最低限も約四十八万円まで引き上げるということを言っておるのでありますから、大体このような答申は出してもらえると思っております。答申に対しては尊重していきたいという基本的な態度であります。
  31. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと一つ関連して。先ほどの点に戻ってちょっと恐縮でありますが、来年度予算編成の場合、具体的な金額等は、いま作業の最中だそうですからお尋ねいたしません。大局的な問題だけ一つお尋ねいたします。  それは今までの高度成長が大企業中心ということから、今後は立ちおくれた中小企業農業等施策重点を指向する、これも政府の最近とられた態度だと思います。その場合に、従来のこの方針を、特に大企業中心という政策を変えてそうして相当部分を中小企業農業に移すというのか、あるいは従来の政策をそのままで、その上積みとして中小企業農業にも相当施策を行なうというのか。そうなると予算上特に場合によったら税収との関係もあって、なかなか困難だと思います。もしそれをやろうとすれば、公債を発行するとか、あるいは逆にまた景気の過熱というような問題も起こってきます。だからその点が非常にむずかしいので、従来の政策をそのままにしてその上積みに中小企業農業をやるというのか、中に質的な変換というものがあるのか、その点はどうか。いろいろ選挙中約束されたことを相当部分、革新的というか革命的な盛り込みを——それは先ほど大蔵大臣——総理ですか、全額だけにこだわるのはどうかと言われましたが、質的にもそういう革新的といわれる政策が指向できるのか。従来の基本的な姿勢をそのままにしてその上積みに中小企業農業ということになれば、相当私、これは財政的にも制約されるし、それから物価問題、国際収支、各方面に波及するところが大きいと思います。そういう点の大局的な質的な問題はどういう形で予算編成されるのか、その一点だけを伺いたいと思います。
  32. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今までの政策では大企業中心であるからという前提に立っての御質問でありますが、いままでは大企業中心であったわけではありません。いままでも御承知のとおり農業基本法、中小企業基本法等をつくりながら積極的にやってきたわけでありますが、しかし今度の予算編成の基本については、開放経済に向かいまして国際競争力もつけ、また輸出振興を大いに進めていかなければならないという基本的な考え方はくずさないわけでありますし、これに必要な施策はとっていくわけでありますけれども、御承知のとおり今年の下期から実質八%以上も経済成長率が上がるほど生産も上がっておりますので、多少今年の第四四半期においては引き締め的な、安定的な経済成長に持っていこうという考え方でありますので、三十九年度予算に対しては重点中小企業農業に、今までも努力はしましたけれども、新しい立場に立って思い切ってやらなければならないという、これら施策に主点を置いて施策を行なおうという考え方であります。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連、簡単に……。先ほどの配当分離課税の問題ですね、もう少しはっきりさしていただきたいんです。総理大臣は、逆に田畑君にあなたの言う分離課税の内容はどうだ、その内容によって御答弁すると言いますが、まず伺いたいことは、大蔵大臣はこれまで何回も分離課税のことを主張しております。したがって大蔵大臣の主張される分離課税の内容を明らかにしていただきたいことと、それからわれわれもこれは税制上非常に重要な問題だと思う。先ほど総理大臣も言われましたが、配当の損金算入の問題とも関連しますし、これは非常に問題であります。全体の配当分離課税を言われるのか。その場合に今度は配当控除の問題も関連してきます。それから証券業者がいま陳情しているのは預金の利子との均衡上の分離課税を言っているのですね。これは銀行と証券業者の何か資金についての争奪、対立のようにも見えるわけです。銀行には分離課税が預金利子についてはあって、預金利子には分離課税しておりながら配当について分離課税しないのはこれはふつり合いではないかという主張のようでございますが、その点、大蔵大臣が主張される分離課税は何のために分離課税するのか。これまで大蔵省は、銀行預金の利子についてはこれは分離課税をやっていると同時に、また銀行に税金を一割から、五分に下げました。しかしそういうことは何ら資本蓄積に役立たぬということを言っているのですよ。だから、またその分離課税をやって、はたして資本蓄積に役立つのか役立たぬのか、そこが問題だと思うのですよ。そういう点が非常にいま問題になっているところですから、単に突っぱなすような御答弁ではなく、分離課税はいまこういう点で問題になっているのだ、私の主張する分離課税はこうなんだ、こういう点について疑義があるのだというふうに、もう少し懇切に答弁されるのが当然ではないかと思うのです。その点、大蔵大臣あるいは総理大臣から御答弁を願いたい。
  34. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 分離課税問題につきましては、税制の基本に関する問題でありますので、結論としては、税制調査会答申を待ってから政府考えを決定するのだということに尽きるわけであります。いままでの新聞に報道されたものやなにから、私と総理大臣の間に分離課税の問題で意見の違いがあるがというようなニュアンスの御発言がありましたが、そういうことは絶対ありません。総理大臣のほうが税制に対しては専門家でありますから……。十分意思の疎通ははかっておりますので、基本的に考えの相違は全然ないことを明らかにいたしておきます。  それからなぜいろいろな問題、資本蓄積に関する税制上の問題が議論になるかと申しますと、来年の四月にIMF八条国に移行するわけでありますし、それからガットの関税引き下げの問題、また、資本の自由化を前提としたOECDの加盟というようなことを考えますと、いままでのような、温室的といいますか、鎖国的というか、そういうようなものさしではかるわけにはいかない、新しい立場と視野に立って、新しい現実に対処しなければならないときに、日本の、一体、資本の状態はどうかというと、戦前自己資本比率六一%のものが、現在、二七%、二四%、二二%と、だんだんと下がっておるような状態で開放経済に向かわなければならないのでありますから、何らかの処置をとって、資本蓄積や貯蓄地強に資さなければならないということに対しては、皆さんにも御異論のないところだと思います。しかし、それが一部に言われておりますように、分離課税というものによって片づけられるのか。また現行の制度の中で、支払い徴収の一万円というものがありますが、これを、一体、引き上げることが可能なのかどうか。また投信分離の問題も出ておりますが、それを一体やることがいいのか。また、いまの証券市場の育成強化のためにはどういう処置をとらなければならぬのかというような、具体的な問題がたくさんあるわけであります。でありますから、バランスの問題だけを考えるというよりも、実質的に、どうすれば資本蓄積の実があがるのかという問題に対しては努力もし、勉強もしておるわけでありますが、総理大臣が先ほど申されたとおり、分離課税と一口に言う分離課税は、一体、十万まで、百万までと、無制限に分離課税ということを主張しているのでもないと思いますが、私たちが大蔵省として検討をいたしておりますのは、どうすれば、一体、資本蓄積の実があがるか、しかも税制上も間違いない、お互いのバランスもとれるかというような観点に立って検討を続けておるわけでありますが、いずれにしても、最終的には税制調査会答申を待ってから態度を決定するという現状であります。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私に対する御答弁になっていないのですよ。大蔵大臣は何回も分離課税を主張されてきているのですよ。それは新聞に何回も出ているじゃありませんか。そこで大蔵大臣考えられる分離課税の内容はどういうものかということを伺っているのです。分離課税をやるかやらぬかは聞いておりません。それは総理との間にお話し合いをして、最後は総理がおきめになると思うのですが、それをやるかやらぬかを聞いているのじゃない。これ左で大蔵大臣は何回も言われているのですよ。総理田畑さんに、あなたの言う内容はどうかと言っているが、大蔵大臣はしょっちゅう主張しているわけですから、大蔵大臣が言われている内容を、これをまず明らかにしていただきたい。  それからもう一つ重要なことは、損金算入の問題もやはりあわせて考える必要があるということを言われましたが、配当の損金算入四分の一を拡大するということは、これはまたたいへんな問題ですよ、大きい問題。それをやはり考えられているわけです。そうなると、これは非常に問題が重大になってきますから、この二つの点について。私、関連質問ですから、あまり長い質問できませんから、質問に対して的確に御答弁願いたい。
  36. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 新聞を見られて言われているわけでありますが、私は国会で分離課税賛成であるというような意見を一ぺんも言ったことはありません。それから、新聞社の諸君もおられますが、明らかにしておきたいと思いますのは、分離課税をやりたい、また、分離課税が資金蓄積に対する唯一の税制上の処置であるというようなことは言っておりません。私がいままで言っておりますのは、開放経済に向かって資本蓄積を行なうということに対して、いろいろな方法があるが、こういうものに対しては、一部資本家を擁護するなどという在来のものの考え方だけではなく、まじめにこの問題を考えないと元も子もなくなるかもしらぬからということを、まず前提にして申し上げております。私の今までの報道に対する御質問でありますが、配当金の損金算入の問題に対しては、これは前にシャープ税制のときに、これらの問題が議題になったわけでありますが、その経緯にも徴して、こういうことをやっては一体どのくらいの減収が立つのか、計算してごらんなさいということを主税局に申したことはあります。で、主税局としては、これをやれば相当大幅な減収が立ちますので、大臣のお考えはだめですなと、こういう答弁でありましたので、まあそう大幅なものであればまた別なものを考えなければいかぬということで、この問題に対しては終止符を打っているわけであります。いま一体何を考えているかということでありますが、これは税制調査会関係毛ありますので、はっきり申し上げる段階ではないと思いますが、投信に対する分離をやった場合に一体どのくらいの減収が立つのか。支払い徴収の一万円が一万五千円、二万円にした場合一体どうなのか。それから証券市場の育成強化、公社債市場の育成強化のためには、証券業者の準備金等をどの程度に一体やったらいいのか。また証券市場の育成だけではなく、公社債の流通市場の育成という問題に対しては、銀行の窓口を使って売ることができないか。それに対して証券業法六十五条の一体解釈はどうとるのかといったような問題を一つ一つ取り上げまして、十分な検討はいたしておりますが、一切の問題は税制調査会答申を待ってから、実際の数字をはじきながら、可能な限度において考えたいというのが今の私の考え方であります。
  37. 田畑金光

    田畑金光君 時間がございませんから簡単にお尋ねしますが、通産大臣にお伺いしたいことは、まあいまの私のお尋ねしてきた経緯から見て、中小企業の革命的な近代化施策を来年から始めると、総理大蔵大臣言われておりますが、具体的に何をやろうとするのか。
  38. 福田一

    国務大臣(福田一君) 中小企業の体質改善といいますか、これを実現する方途ということになりますと、御案内のように、中小企業には非常に種類がいろいろございまして、なかなかむずかしい問題がありますが、しかし、おしなべて言えることは、税の問題、金融の問題、あるいは弱いものが一緒になって仕事ができるようにする協業化の問題、こういうことがあるわけであります。これはもう今からすぐにでもできることでありますから、そういう面から見て、まず画期的な方途を講ずる。したがって、税の問題等におきましては、私としては専従者控除の問題、その他種々ございますが、こういう面において特に力を入れて、その実現をはかってもらうように努力をいたしております。また金融面につきましては、一方においてこの政府関係金融機関の持っておりますところのワクを大幅に増ワクする。また下請企業等が非常に長期の手形等を受け取りまして、それによって非常にまあ資金繰りが困っているというような事情もございますので、こういうものを何らかの方法によって救済する方法はないかというので、実はこれを手形の割引について保証をするような制度を一つ考えてみてはどうかということで、いま具体策を進めております。なお、その他いろいろございますが、こういうような税あるいは金融の面等において施策を講じてまいり、いろいろいま考えておるところでありまして、しかし、これは何といっても全般の予算の内容等も関連をいたしておりますが、私は、画期的とか革命的とかという言葉も、その現実の問題に適応する場合においては具体化して、適当なものから着実にこれを実行し、そしてことし一年でできなければ、来年にでもというふうに、順次やっていくというのが、これが正しい姿であると思っておるのであります。しかし、できる限りにおいてこの実現をはかっていくというつもりで努力をいたしております。要は、私は、大企業中小企業との間におけるひずみというものは、生産性がいささかといいますか、相当程度中小企業とと大企業との間に差異ができております。この生産性の向上をはかるということが一つの大きな目標になってくる、こう思うのでありまして、この生産性向上という見地からすべての施策を割り出して、そうしてこれを実現していく、こういう方途を考えておるわけでございます。
  39. 田畑金光

    田畑金光君 これは新聞で伝えるところによると、中小企業施策の問題で、中小企業金融公庫債の発行、それから政府関係機関の金融機関の金利を引き下げる問題等々について、大蔵大臣、通産大臣の間には話がついているやに、あるいはまだつかないやに聞いておりますが、これはどうですか。
  40. 福田一

    国務大臣(福田一君) 中小企業金融公庫の公庫債発行の問題につきましては、大体において方向的に意見が一致しておると私は立冬にております。一方、金利の引き下げの問題につきましては、歩積み両建てを廃していくという点では、これは完全に一致いたしておりますが、さらに、この段階においてどの程度にいわゆる金利の引き下げをはかるかということは、これから予算編成の問題とも関連をいたしまして、十分に研究をしてまいりたいと思っております。
  41. 田畑金光

    田畑金光君 通産大臣の御答弁を聞いておりますと、革新的な施策といっても、何一つ新味はないわけです。ただ、いま御答弁の中に、歩積み両建てを廃止するということについては意見の一致をみているというお話でありますが、そこで私は、少なくとも何かやったんだという政府が実績を残すとすれば、せめて長年の懸案であった歩積み両建ての廃止についてぐらいは真剣に取り組んでいただきたい、こう考えておりますが、このことが要するに金利の低下をはかり、あるいは国際競争力の強化をはかり、また物価の引き下げを促す道だと考えておりますが、この点総理の御見解を承っておきたいと思います。
  42. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 一般銀行、相互銀行、信用金庫等におきまして従来長く行なわれております歩積み両建ては、私は年来の主張であります、これを廃止すること、特に強く大蔵大臣に要請いたしまして、これを着々実現できるよう努力いたしておるのであります。なお、金利の低下のみならず、金融をどういうふうにして中小企業に貸し付けるかということにつきましても、ただいま中小企業金融公庫の債券の発行等々いろんな方法を講じて、いままで手をつけなかったことに対しまして、新たにひとつ金利の低下並びに資金確保、そしてまた減税につきまして中小企業には特にやっていきたい、こういうことを考えております。
  43. 田畑金光

    田畑金光君 大蔵大臣の見解をひとつ承りたい。
  44. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まだ予算の最終的な折衝は済んでおりませんから申し上げる段階にはありませんけれども、中小企業関係三公庫の笠利も一部高いともいわれておりますけれども、実際の金利を見ますと、歩積み両建て等の事情もありまして、民間金利と比べると安いわけであります。なお、資金需要者はどういう状態にあるかというと、金利よりもまず資金量である、できれば手形の再割もやってくれというような資金量の問題のほうに重点をおいております。なお、政府関係機関の金利を是正するということになりますと、金融機関とかあらゆる金利に波及をする問題でありますので、これら金利の問題に対しては慎重な態度でおりますが、資金量に対しては画期的な措置をとりたいということは事実であります。  それから民間の中小企業専門機関、相互銀行とかまた信用金庫とか地方銀行とか、そういう問題に対しては歩積み両建ての点に対して非常に強い態度で臨んでおりますし、また月割りでその実績をあげようという前向きな姿勢を機関もとっておりますので、これに対してはできるだけの実績をあげ、できるだけ早い機会に歩積み両建ての全廃というところまでもっていきたいという努力をいたしております。特にこの問題に対しては総理大臣から強い要求もありますから、私たちのほうでも全力をあげて歩積み両建ての解消ということに対処していきたい、こう考えております。  それから都市銀行その他等ともいま定時検査を行ない、また場合によっては特別検査を行なうということによって、歩積み両建ての早期解消ということをはかることによって。実質金利負担の軽減をはかってまいりたいという考えであります。
  45. 田畑金光

    田畑金光君 大蔵大臣の固い決意のほどはよくわかりましたが、この歩積み両建ての廃止については、大蔵省の監督行政だけで全うできるのかどうか。ということは、戦後十五回にわたって警告を発しておるはずです。しかし、今日なお何ら改善がなされていない。そこで公取委の介入という問題が当然出てくるわけですが、大蔵大臣としては、大蔵省としては金融行政の二元化ということでこれに反対しておると、こう聞いておるのです。どうなんですか。
  46. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 唯、金融機関に対する行政責任は大蔵省にあるのでありますから、大蔵省で人工力をあげて歩積み再建ての解消に対して実効をあげたい、こういう基本的な考え方は変わりありません。しかもこの歩積み両建てというものは個々のケースを見ますと、なかなかその状況がわかりにくいわけであります。でありますので、金融機関独自の良心にも訴えまして、こういうことはよろしくないことである、いかに慣習であっても、これらの問題に対しては積極的に解消を求めるという強い態度でおります。しかし、公取は独自の機関でありますから、私が幾ら言っても実効があがっておらぬということになったら、公取は独自に動きますよという強い態度をとっておりますから、また金融機関が私の要請に応じて、公取に指定をされて検査を受けないで済むように、急遽歩積み両建てを解消することが金融機関のためでもあり、金融の正常化をはかる唯一の道だと考えておりますが、それでもなおやらなければ、公取は動くであろうというふうに判断されるわけであります。
  47. 田畑金光

    田畑金光君 この点は先ほど私申し上げたように、大蔵省金融指導だけで私は実効があがるとは期待しておりません。期待できません。聞くところによれば、大蔵省は三月上旬抜き打ち検査をやったはずです。その検査の資料を公取委が求めても、公務上知り得た秘密を漏らすことはできぬというようなことで、資料すらも提供しないというようなことは、あまりにも大蔵当局は独善的にすぎはせぬかどうか。エコノミストの十二月三日号に井上全国銀行協会の会長が、歩積み両建てに取り組む態度について述べておられますが、私はこれを読んでみても、銀行側がはたして自主的に自粛の実をあげ得るかということは、強く疑問に感じております。この点について、大蔵大臣はそのようにお考えか。さらに私は、この問題について公取委員長に、今日まで公取委はこの問題についてどういう方針できておられるかを明確に御説明願いたいと思っております。
  48. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほどから申し上げておりますとおり、公取委員会が権限を発動すると言っておる現状であるから、大蔵大臣の言うことを聞いて、できるだけすみやかに最良な金融態勢に戻り、歩積み、両建てを早急に解消すべしという、こういう強い態度で臨んでおります。それで具体的には、抜き打ち検査も特別検査もやりますよと、こう言っておるの、ですから、それでもなお聞かなければ、すぐ公取が出るということは、銀行関係も知っておるので、出てはこないだろうと、また、出てきてから片づければいいんだと、こう考えておるとすれば、何をか言わんやであります。もう銀行法の改正でも考えなきゃいかぬということになるわけでありますから、そこまで考えなくとも、私は、いまの銀行の態度では、私たちも積極的に、場合によっては計画を出して自粛体制をとりますと、こういうところに信用をおいておるわけでありますが、まああなたの言われるように、どうも大蔵大臣の言うことだけではとても対処できるような相手ではない。向こうはなかなかやりませんよ、ということになれば、先ほど申し上げたように、公取の動くことをこちらから要請をしてまで私たちはやります、というような段階にはないと思います。
  49. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) お答えいたします。  公正取引委員会としましては、この四月に、歩積み、両建てを廃止するということの要請の警告書を出しておりまして、それはちょうど銀行のほうで自粛をするという通牒を出した際でございまして、様子を見ていたわけでございます。どうもあまり警告の実、自粛の実があがっているような様子がわれわれのほうには見えておりません。したがいまして、現在のごとき段階におきましては、私のほうとしては、第二の警告的な意味において、特殊指定をするという準備をしております。しかし、いま大蔵大臣お話もありましたように、銀行がほんとうに、今度はもうちっとやそっとじゃ済まないといって、自粛の実をあげてくれるなら、あえて特殊指定する必要はないと思いますが、しかし、どうもそう一筋なわでいく相手でないということであれば、われわれのほうはもうちゅうちょせず特殊指定するという踏み切り方をしたい、かように考えております。
  50. 田畑金光

    田畑金光君 私は、この問題についてはいろいろこまかい点に触れたいのでありますが、時間がございませんので、私は総理に、総理が断固たる態度で歩積み、両建ての廃止を実行する、また公取委員長は、金融の動きを見て、銀行の今後の動きを見て、特殊指定も発動する、こういう強い決意のようでもあるし、大蔵大臣もまた強力に指導するということでもありますから、まあ一応それを信用する以外にないと、こう思うのです。しかし私は、中小企業の革新的な施策といっても、結局聞いてみても何もありはしません。私は、言うならば選挙の公約違反だと、こう申し上げたい。せめて歩積み、両建ての廃止ぐらいは実現して、中小企業の実質金利の低減を実現していただきたい、とのことを要望申し上げまして、この問題について、ひとつ総理大臣の最終的な今後の具体的な指導について承りたいと思います。
  51. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来言っておるとおり、私の年来の主張であり、また、中小企業に革新的施策を講ずるには、これが大きい一つの柱と考え、実現に努力いたしたいと思います。
  52. 田畑金光

    田畑金光君 農林大臣に、今後の農業施策の革新的な内容について、何かということを承りたい。
  53. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 農業につきましては、御承知のように、農業基本法におきまして、農業近代化の方向が示されておるわけでございます。しかしながら、その内容につきまして、たとえば農業の機械化あるいはまた畜産化、あるいは果樹等の面につきましても十分にいっておらないと思います。その原因は、やはりそういうことをやる基盤といいますか、環境といいますか、この整備が非常におくれておる、こういうふうに認識いたしておりますので、私どもはその基盤を強く推し進めていかなくちゃならない。その内容といたしましては、大型の圃場の整備——これは耕地の拡大あるいは集団化あるいは農村道というような問題も含めてございますが、大型圃場の整備、それから草地の造成等、土地改良面、基盤の整備を強力に推進していきたい、こういうことが第一でございます。  第二といたしましては、国内の他産業との関係、その他開放経済下における農村の実態を見まして、農山漁村の体質を改善しなければならない。そのためには、従来も手をつけておりますけれども、農業改善の事業を強く推し進めていきたい。そのために支障になっておるという面が、詳しくはもう御承知だと思いますので申し上げませんが、そういうものを取り除いて、そうして体質を改善していかなければならない。それとまた、農山漁村民の生活の安定を推進しなければなりませんし、また、食糧に依存しておりますところの全国民の食糧対策ということも。ございます。そういう意味によりまして流通対策をぜひ進めていかなくちゃならないと同時に、また、価格政策につきまして、いままでの生産者のほうの価格等につきましては、相当法的には整理されておりますけれども、さらに一そうこれを強力に推し進めて、価格の安定、これは消費者の面も含めて考えていかなければならぬ。そういう面で、何といたしましても、財政金融面で裏づけをしていかなければなりません。その点では財政当局とも折衝中でございますが、ことに農村金融面におきまして、農林漁業金融公庫等におきまするところの融資のワクの拡大改善、先ほど申し上げましたように、農業改善推進資金のワクあるいは農地取得資金のワクの拡大等につきまして検討折衝中でございます。あるいはまた貸し付けが煩瑣になり非常に手続がめんどうだ、こういう面も十分注意してこれを改めなければいけない、あるいは農業近代化の資金のワクなども広げて、そうしていま申し上げましたような柱といいますか、政策を強力に推進していきたい、こういうことで、目下その裏づけ方面との折衝を重ねておる次第でございます。
  54. 田畑金光

    田畑金光君 農林大臣の御答弁を承りますと、いままでやってきたことを継続してやっていこうということだけですね。別に目新しいものは何にも承ることができないわけです。ただ最近、農林大臣がいろいろ旅行先で談話をなされておりますが、その中で農地法の再検討ということを言われておりますが、どういう理念でどういう方向に農地改革を再検討されようというのか、それが一つ。さらにまた、いまお話の中に融資の面のワクをふやすということをお話しになっておりますが、たとえば本年度の農林漁業経営構造改善資金ですか、三百億の融資のワクは出ておりますが、現実に貸し出しになっている額は二十七億七千万しか貸していない、融資になっていない。これは、融資のワクを広げるといっても、私は予算折衝で大蔵省はなかなか応じないのじゃないかと見ております。これはどう考えておられるのか。
  55. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 農地の問題につきましては、御承知のように、前の農地法は地主と小作人との関係ということを頭に置きまして、地主の復活ということを強く押えていこう、こういうような基本観念から農地法はできておったと思います。しかし、御承知のように、地主が復活するというような事情はもう私はあり得ない、こういうふうに考えております。それよりは、先ほど申し上げましたように、農業近代化するためには耕作地が広くなくてはいけない、あるいは、一ところにまとまっておらなければいけない、あるいは草地の問題等もあると思います。こういう面から、実は三十七年ですか、三十七年に三町歩ですか、二町歩以上を耕作してはいかぬということを撤廃いたしまして、耕作の拡大につきましては制限を設けない、こういうことに改正されました。あるいはまた御承知のように、人も少なくなっておりますので、生産法人を作ってその生産法人で農業を営むようにしたらどうか、あるいはまた不在地主あるいは兼業農家の整理というような関係−整理ということじゃありませんが、兼業農家が土地を放さないでしかも兼業しておる、しかし、耕作はできないというような場合に、農協等に信託をする、こういう制度で、三十七年に改正されたのでございます。しかし、さらに考えられますることは、耕地の集団化あるいは所有——いまのところでは耕作面積では制限が撤廃されております、耕作面積はどれだけ大きくなってもよいと。しかし、人を雇ってやる場合には、たとえば生産法人につきましても、半分以上を雇う場合には生産法人は認めない、こういうことでございますけれども、これを企業農業というような形でやる場合に、所有権の移動でなくて、賃借のままで耕地を、耕作を拡大していくというようなことも考えなくちゃならぬのではないか。しかし、その反面には、そういう場合には耕作権の問題、これをどうするか。あまり耕作権を否定するような形にいきましても、この間に摩擦がございます。こういうことがありますので、こういう面をどうしようか。あるいはまた小作料との関係等もその中には含まれてきます。まあ信託制度を設けましたけれども、小作料の関係その他いろいろございますけれども、そういうような関係で、実際、全国で信託制度をやりたいという農協が、二千近く認可申請はきて認めておりますけれども、実際にやっておりますのは人件くらいでございます。そういう面にからまって、小作料統制の問題、こういう問題をどういうふうに扱うか、こういう問題もございます。あるいはまは農地の転換でございますが、農地の転換農業をしていく上において支障のないもの、ことに都市近く等におきまして農地法で押えていくよりも、ほかの方面に転換さしたほうが適当ではないかというような面なども相当ございます。そこで、農地の転換の問題につきましてこれをどういうふうに措置していったらいいか、こういう問題点がたくさんございます。たくさんございますが、三十七年に相当改正いたしておりまするから、いま直ちに農地法を改正するということではございませんけれども、この農地の問題につきましては、何といたしましても農耕の基本的な問題でございますから、そういう問題点を整理して検討して、そうして結論が出るということでしたら、これは農地法を改正していこうじゃないかということで目下検討を続けておるということでございます。問題点がたくさんありますので、その検討の結論を待ちまして、改正すべき点がありましたならば、私は勇敢に改正していきたい、こう考えております。
  56. 田畑金光

    田畑金光君 問題点だけ私は最後に二、三総理大臣にお尋ねしたいと思いますが、予算編成期を前にしていつも問題になっておる旧地主の報償問題、これについては、内閣としてはどういう方針で出られるわけですか。
  57. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) まだ実態調査をしておりまして、結論が出ておりません。
  58. 田畑金光

    田畑金光君 来年度予算の中でこの問題の処理を進めていかれようということですか。実態調査が出ておるはずですが——出ておるとも聞いておりますが……。
  59. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) まだ出ておりません。——私寡聞でございました、きょう発表したそうでございますが、それは実態調査の結果だけで、まだこれに対しての態度をきめておりません。
  60. 田畑金光

    田畑金光君 実情調査の結果、今度の三十九年度予算の中では最終的な結論を出さなくちゃならぬと、こう思うのですが、どうでしょうか。
  61. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) きょう発表したのは一部でございまして、実は被買収者の人員は百八、九十万といっておりましたが、申告の人員は九十万程度でございます。しこうして、またこれは数の問題で、ほんとうの実態の分はこれから調査しなければならぬ状況でございます。したがいまして、来年度予算編成に間に合うか、合わないか、私の見込みでは、今明日中あるいは四、五日中というわけにはいかないのじゃないかと思います。
  62. 田畑金光

    田畑金光君 次に、大きな問題として漁業災害補償制度の確立の問題です。この点について、衆議院の本会議における池田総理の御答弁は、否定的な態度であるし、予算委員会における農林大臣の御答弁は、肯定しておりますが、どれが内閣の方針なのか、これを承りたいと思います。
  63. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私から先にお答えいたします。  本会議におきまして総理大臣は、漁業災害補償制度というものは非常に困難である、むつかしい問題である、こういうふうに答弁されております。私も確かにむつかしい問題だと思います。しかし、前に私が農林大臣のころに試験実施をやることといたしまして、それは相当進んでおるわけでございます。でありますので、試験実施の段階は打ち切って本格的に漁業共済制度にもう切りかえたらいいんじゃないか、こう考えております。したがって、これにつきましては予算面の折衝等をいたしておりまするし、あるいは立法面におきましても準備を進めて、すみやかに出したい。しかし、何しろ保険経済のことでございますから、加入を相当進めなくちゃなりません。あるいはまた、その他いろいろ困難な面がございますから、そういう困難な面を整理していかなくちゃなりませんけれども、しかし、少なくとも、すみやかにこの提案ができるように私は立法を進めるように、事務当局あるいはその他とも折衝を続けて準備をいたしておるような状態であります。
  64. 田畑金光

    田畑金光君 いまの点について総理大臣の御答弁を後刻お願いしたいのですが、時間がまいりましたので、最後に私はもう一点だけ、これは池田総理に特にお尋ねしておきたいのは、国有林開放の問題です。本年の六月農林次官通達は、「農業構造の改善のための国有林野の活用について」が出ておりますが、これが地元の期待に反する渋いものであったために、国有林開放の声は全国的にいまや世論というほどに高まってきているわけです。池田首相は、本年九月の青森における一日内閣で、国有林を大幅に開放すると、こう言われておるわけです。十月三十日の中央森林審議会は、「国有林の活用について」と題して答申を出しておりますが、それによりますと、国有林本来の使命達成の支障とならない限り、積極的に林業用、農業用、地元福祉増進用として活用すべし、こういうような趣旨の答申を出しておるわけですが、私は、この国有林開放の問題については、いろいろ準備しなくちゃならぬし、また合理的な角度で進めなくちゃならぬと思いますが、少なくとも、農業構造改善事業を実質的に裏づけるためにも、あるいは農山村の農業経営の向上のためにも、この問題は政府としてももっと積極的に取り組まなければならぬ問題だと、こう考えておりますが、この問題について池田総理のひとつ今後の方針を承っておきたいと思います。
  65. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この問題は、農業の構造改善にぜひ必要なことであり、ことにまた国有林の多い地方の農民の状況を見ますと、非常に重要な問題でございます。私はできるだけすみやかに、できるだけ多く開放する方針で進みたいと思います。
  66. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 田畑君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  67. 太田正孝

  68. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 私は、時間の関係もあって、この際国鉄と炭鉱の事故に関する問題にしぼって政府の見解をただしておきたいと思います。質問は項目別に行ないますから、答弁もひとつそのようにお答え願いたいと思います。  十一月九日に起きた二大事故について、国民のすべてはまあ大きな怒りと不安に包まれています。そして、これに対する責任の所在を明白にしろ、抜本的な対策を立てよ、さらに当面の具体的な対策を直ちに実行に移すことを要求しています。  で、まず第一に、国鉄事故のよって起こる根本的な原因と、これを取り除くための基本的方向について、総理、運輸、国鉄にお尋ねしたいと思います。  この国鉄事故のよって起こる根本的な理由は、私の考えでは二つあると思います。その一つは、歴史的な背景であります。他の一つは、制度的に根本的な欠陥があるということであります。つまり、現在の公社制自体の中に根本的な理由がひそんでいるということであります。周知のように、昭和二十四年、アメリカ占領者は、国鉄を国営から公社制につくりかえ、公共企業関係労働法を押しつけて、同時に国鉄労働者からストライキの権利を奪ったのであります。この占領政策日本支配の重要な一環としてとられた国鉄の公共企業そのものが今日そのまま続けられているということ、つまり占領政策は生きているということ、しかもますます反動的に強められているという事実の中に、本質的に国鉄が国民の立場に立ち得ない今日の国鉄輸送の危機をもたらした歴史的な根源があったと考えております。これに対して根本的にいかなる見解を持っているかお尋ねをします。  こうして公社制になった国鉄は、いやおうなしに独立採算制を強要される反面、政府の出資が大幅に削減をされ、安全輸送よりも営利主義に追いまくられていったのであります。加えて、池田内閣高度成長政策による大都市の膨張と輸送のしわ寄せを受けて、まるで半身不随の状態におとしいれられております。ここに事故続発の原因があると言わざるを得ません。政府は、この際、公社制そのものに根本的、抜本的な検討を加えて、国民の立場に立つ国鉄、すなわち国鉄の徹底的民主化を行なう用意があるかどうか、この点について、総理、運輸、国鉄当局の答弁を求めます。
  69. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 三公社の経営の形態につきましては、いろいろ議論があるようでございます。あるいは純民間の制度にしてはどうかという議論も数年前にあったのでございます。ただいまの状態といたしまして、私はいまの公社制度が適当である。ただ、その運営その他につきましては、事態の推移によって相当検討を加えなければならぬ点もあると思います。公社制をいまやめる考えはございません。
  70. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えします。  日本国有鉄道のあり方の基本につきましては、ただいま総理から御答弁されたとおりであります。私は、それに加えて、常に国鉄の公共性を強調すると同時に、人命尊重をその以前の問題として強く指示してまいっているのでございます。  それから、公労法上の争議行為の禁止撤廃ということにつきましては、国鉄のあなたのおっしゃるような高度の公共性にかんがみまして、国民の福祉に影響を非常にもたらす大問題でございまして、ただいまのところはこれを廃止するという意図はありません。
  71. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) お答えいたします。  御承知のとおり、国鉄は昭和二十四年以来公共企業体として経営しております。世間ではよくこの公共性というものと企業性というものとの矛盾ということを申しますが、私はこれは違っていると思う。公共企業体というものは、目的は公共事業、ただ経営を事業的精神をもって経営しろ−要するに、能率的に企業をする、投資効果をうんとあげて、それによって公共性を大いに発揮して、公共事業として福祉をもたらす、こういうことでありまして、国鉄の経営機構からいって、別に公共企業体という組織が悪いということには私は考えておりません。  で、この間の鶴見の事故なんというものは、別にこの機構から生じたという考えは、これは私は成り立たないと思う。間違っていると思います。
  72. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 この根本的な矛盾にメスを入れることなくしては、私は国鉄の危機は去ることはできないし、事故が続発するであろうと思います。  次に、国鉄事故防止のための当面の対策について、次の三点の質問をいたします。  まず第一に必要なことは、人命の安全に対する国民の深刻な不安を解消しなければならないということです。今日あらゆる対策の中で直ちに手を打たなければならないのは、輸送の安全に関する一斉の検査と申しますか、一斉の点検を行なうことだと思う。そして改めるべきは即時その場で改めることができるように現場即応の体制をつくる必要があると思いますが、この点運輸並びに国鉄当局はどう考えるか。  第二の問題は、現在行なわれている国鉄五カ年計画は安全輸送の見地に立っているとは言えません。時間がないので、この問題について詳細に討論はできませんが、したがってこの五カ年計画を取りやめるべきだ。そして、過密ダイヤを改めるためには、何といっても大都市周辺の通勤と通学の輸送の緩和と安全のために線路の容量を拡大する以外にない。そして、踏切を初めとして、保安施設の整備を行なって、必要な人員の増加をはかる。この三つが必要なんです。アメリカから借金までして東海道の新幹線を急ぐということはない。この安全のための施設と人員を確保するために思い切った資金を投じて、また政府もこれを保証すべきであると考えるが、この資金保証の面については、総理大臣の御答弁を願います。  第三、事故の責任を国鉄労働者に転嫁することはやめなければいけません。現在国鉄労働者の労働過重は目に余るものがある。一例をあげれば、この二年の間に二十万キロに及ぶ列車を増発しておきながら、これに見合う乗務員の増員を行なっていない。また、九十五日間の回り交番制で、八十二日間も自宅にいることができないという状態の者さえいる。それだけじゃありません。十分か十五分ふろに入る時間が早いかおそいかで、どうです、裸のまま手綻をかけて公衆の面前を引きずって歩く——国鉄の労働者を、こういう非人間的なことが行なわれているわけです。事故防止や合理化反対の闘争には、数百名の公安官や警察官まで動員して弾圧しているじゃありませんか。こうして職場の民主的発言と行動を押えておいて、労働強化にかり立てて、どうして事故防止ができますか。労働者の生活の安定をはかり、労働強化をやめて、当然の民主的権利であるストライキの権利を国鉄の労働者に返還して、労働者の自由にして民主的な創造力を生かすことが絶対に必要であると考えます。  以上の三つの点について、総理、運輸並びに国鉄当局の答弁を求めます。
  73. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 財政上の問題に対してお答えをいたします。  国有鉄道に対しましては、五カ年計画を現在推進中でありまして、三十九年度予算編成につきましても、財政原資の中で日本国有鉄道に対する配分が一番大きいという状態でございますが、今度の事故もありましたので、国鉄当局、また運輸省当局との間に十分な意見の調整をはかりながら、これが保安上の問題等の解決に当たっていきたいということを考えているわけであります。ただ、財政当局としての立場で国鉄収支に対して申しますと、大体三十七年度の総収入が年間五千億であります。この五千億に対して、借り入れ金の総額は約六千億ということでございます。しかし、東京の卸売り物価で見ますと、昭和十一年を一として、三百五十一培ということに昭和三十六年末で計算をされるわけでありますが、旅客運賃は一五一、それから貨物は二一四というふうに、鉄道運賃が過去に比べて非常に安く押えられておるということは、この数字が示すとおりであります。これは、公共負担という意味で、多額の、通勤及び学生等に対しては九割、八割というような高い運賃の割引を行なっており、しかもその割引を行なっておる国鉄の収入としては非常に大きな負担を負っている部分について一番保安や線路容量の増強等に金がかかるというような面であることは、御承知のとおりであります。いわば制度としては、国有鉄道という公社の中でどの程度公共負担をやっていくかというような面に対しては十分な検討を行なっておりますので、保安の問題、輸送増強の問題等も勘案をしながら財政上の措置をしてまいりたいと、こう考えます。
  74. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) お答えいたします。  鶴見の事故の最大原因は、私はいかにも国鉄のダイヤというものの細密化ということが根本の原因をなしておりますと考えております。したがって、今後こういう事故を防ぐためには、どうしても輸送力というものをふやして、少なくとも現在のような虫めがねで見ねばわからないようなダイヤというものは、余裕を持たせるということが、これは必要だと存じます。これにつきまして、ただいま五カ年計画なんていうものは取り消したらどうかというようなお言葉がありましたが、私はこれは反対です。五カ年計画というものは、できるだけ早くこれを完成するというところに輸送力の増強というものがある。そこにダイヤというものに余裕を持たせることがある。これは、五カ年計画というものは、御承知か知りませんが、三十八年度の末までにおいて三年たつ、しかもその完成はわずかに四割、あと六割というものが三十九年、四十年においてやらにゃならぬ。これはぜひとも三十九年、四十年においてやって、そうしてその後にさらに第…次計画を立てる、こういうふうに進むべきものであると考えております。  それから保安設備の問題でありまするが、これは実は三河島事故以後、何とかしてああいうような大きな事故をなくしたいということで、この要員の指導、訓練、考査の問題とともに、この保安設備というものの完成を期しておるのでありまして、これはただいま御質問にありませんが、踏切の問題とともに、できるだけこの事故発生の原因を削除するということに全力を尽くしてやっておるのであります。  それから、その次の三河島の事故の問題について、その責任を労務者に課しておると、これは私は何か誤解じゃないか。責任は私が一人で負っております。私が負っておって、決して労務者には責任を転嫁してやせぬ。この点は誤解のないようにお願いせにゃならぬ。  それから、事故の発生の原因は増員すべきものを増員しなかったからということでありまするが、国鉄は、御承知のとおり、独立採算のたてまえにおきまして、できるだけ合理的に、能率的に経営せにゃならぬ。しかも、国鉄の経費の五割以上というものは人件費にかかっておる。そういう点から申しまして、しかも一方に業務量というものはふえている。それを人間をふやさないでやっていこうというところに、われわれの非常に苦心するところがありまして、これはあらゆる合理化をいたしまして、それによって出てきたものを忙しい方面に回すというようなことで、増員はいたしませんけれども、決して無理な仕事というものはやっておらぬ、こういうことはひとつ御了承願いたいと思います。  それから要員の、労務者の休養の問題でありますが、この点につきましては、休養の時間は与えておるが、休養する場所の設備の不備というような点はあるのでありまして、これは国鉄としては至急に何とか改善したい、こういうことに考えております。  東海道新幹線のことについてお話がありましたが、東海道新幹線はなぜこれをやっておるか。これは、必要やむを得ずにやっておる。御承知のとおり、東海道というものは、輸送量の、貨物において、また旅客において、ふえるパーセンテージが一番大きなところなんです。これは、いま以上には、このままではにっちもさっちもいかぬ。そこにおいて、国鉄は東海道新幹線というものに踏み切った次第でありまして、別にこれはぜいたくでも何でもないのであります。みえでも何でもないのであります。こういうことをひとつ御了承願いたい。  それから組合との問題でありまするが、給与その他の問題につきましても、特に国鉄といたしましては、組合と相談いたしまして、その結果によってできるだけのことをいたしておるのでありまして、私は無理なことをしておるということには考えておりません。
  75. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 話を聞いていますけれども、さっぱり要領を得ません。特に国鉄の労働者を、労務者、労務者とあなたは呼んでおりますけれども、こういう呼び方というのは正しくないのです。また、こういう恩情の中に、労働者を虫けらのように扱っておる考え方が忍んでくるわけです。もっと、現状、実情を調査をして、労働強化ほんとうに目に余るところまで来ておるかどうかということを責任をもってあなたは調査して、しかるべきときにまたこの点についての質問をしたいと考えております。時間の関係で次に移りたいと思います。  質問を炭鉱災害のほうに移します。  この続発する炭鉱災害は、石炭合理化政策の犠牲であります。石炭政策は、エネルギー総合政策の最重点として位置づける必要がありますが、現在のようにアメリカ独占の石油を野放しにしておいて、エネルギー政策が民族の利益に合致するはずは絶対にありません。これを根本的に解決する道は、労働者階級を中心とする民主勢力の力を集めて、石炭をはじめ、エネルギー産業を国有化し、その民主的管理を行なう以外にないとわれわれは考えておるわけです。そこで、政府の見解について、以下の三点を質問したいと思います。これは、答弁は一括してけっこうです。  第一、現在進行中の石炭合理化計画を中止する気はないか。真にわが国の自主的な立場に立つ総合エネルギー政策確立の立場に立って石炭政策を根本的に再検討すべきであると考えるが、この点について総理の見解を聞きたい。  第二、この際、時を移さず、全部の炭鉱に対して、鉱山保安法、石炭鉱山保安規則及び労働基準法、労働安全衛生規則が厳重に守られているかどうかを、この際は所管にとらわれることなく、また法の改正のいかんにかかわらず、政府は労働組合の代表を加えた調査団をつくって、一斉に点検を行なう必要がある。これに違反する場合があったならば、鉱山保安法第二十四条の厳正な発動を行なって、この発動が生きている間労働者の賃金の全額補償を行なうべきであると考えるが、この点について通産大臣の見解を聞きたいと思います。  第三、炭鉱災害による遺家族の生活の保障の問題です。また、事故による入院愚考に対する治療と生活の保障及び当時坑道に入った救援隊の健康についての管理をかなり長期にわたって行なうべきであると思います。  以上、三点について、それぞれ答弁を求めますが、時間が来たようでありますから、最後に、この国鉄と炭鉱の事故における政治的責任を質問したいと思うのです。  この二つの事故は起こるべくして起きた事故であって、決して偶然ではありません。事態はきわめて重大であります。この政治的責任は、池田内閣とその政策自体にあることは明らかだと思います。人命尊重をうたっている総理あなたは、一体この続発する事故について、特に鶴見と炭鉱の二つの大事故についていかなる責任をとる考えであるか、はっきりと御答弁を願って、私の質問を終わります。
  76. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 石炭政策の根本につきましては、御承知のとおり、一昨年来有沢調査団の周到な調査並びに今後の見通しにつきましての答申によって、そうして大体両院におきまして一応の了承を得たのであります。したがって私は、この根本方針をいま変える考えはございません。  なお、鶴見、三池に起こりました不慮の事故は、まことに遺憾であります。今後は、かかる亡とのないよう、極力原因の究明と対策を講じていきたいと考えております。
  77. 福田一

    国務大臣(福田一君) 石炭のこういうような災害の起きますことについては、まことに遺憾に存じておりますが、政府としては、今年の春にも、大手、中小炭鉱全部の炭鉱に対して、いわゆる人命尊重のたてまえで十分注意してもらいたいということをとくと申し述べているところであります。また、今度の事件が起きましても、早々に、大手十八社並びに中小の炭鉱の方々を集めて、特に保安に注意するようにという措置をとっております。私は、この問題については、いまあなたの仰せになるようなことをしなくても、現在私たちが法規の範囲内でやっておりまするこの一応の措置というものによって、これを極力防ぐということをやると同時に、将来の問題といたしましては、法規の改正その他についても、必要があればこれはやらなければならないと、かように考えておりますが、いまあなたが仰せになったような緊急措置をとるまでの必要性、また、それだけの権限の問題等は、十分考えてみる必要はあるが、いたしかねるかと思うのであります。  なお、遺家族の問題その他につきましてのお話でありますが、また、病院に入っておられる入院患者の問題、あるいはまた、現場におって、いまは十分健康的であるけれども、将来どういうような事故が起こるかわからないというような問題等もあります。これは、お説のとおり、十分にわれわれとしては、これが救済策といいますか、今後の措置について、できるだけの措置をはかっていきたい、かように考えているところでございます。
  78. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 鈴木君の質疑は終了いたしました。  暫時休憩いたします。    午後零時二十九分休憩    ————————    午後一時四十三分開会
  79. 太田正孝

    委員長太田正孝君) これより予算委員会を開きます。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。瀬谷英行君。
  80. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私は、きょうは交通政策、事故防止の根本対策、新幹線の安全性、国鉄経営のあり方といったような一連の問題と、天然ガスの開発利用について質問をしたいと思います。  最初に、通産大臣にお伺いしたいと思います。最近化学工業の原料として、あるいは家庭用燃料として天然、ガスの需要が非常に大きくなってきているのでありますけれども、この天然ガスの開発について政府が積極的かつ重点的に力を入れるべきではないか。未開発資源の利用という意味でその点を最初にお伺いしたいと思います。
  81. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えをいたします。  天然ガスの開発につきましては、やはり国内エネルギー資源の一つといたしまして、できるだけこれを開発する方針で計画を進めておるのでありまして、大体昭和三十七年度において十三億立米の天然ガスが試掘されておるのでありますが、三十八年度では十八億立米にふやすような計画に相なっております。今後もこれは順次ふやす方針で計画を進めておる次第であります。
  82. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 現在石油資源の開発会社なり帝石が主としてその開発に当たっておりますが、まだ資金面で十分でないという点があります。秋田県の天然ガスの生産が三十七年の当初日産五十万立方メーターだったものが、現在ではその半分に減るような結果になって、そのためにメタノールや肥料等の化学工業の生産ががた落ちになって膨大な赤字を抱え、操短を余儀なくされる。そのため従業員の整理や不幸な事態の発生が予見をされるようになり、厳冬期を控えて都市ガス並びに家庭用燃料ガスの制限にも及ぶ、こういう事態になりました。非常に地元の不安を巻き起こしておるのでありますが、これらの問題に対して政府がどのような援助をお考えいただけるのか、通産大臣の御意見を承りたいと思います。
  83. 福田一

    国務大臣(福田一君) お説のとおり三十七年の初めには五十、万立米であったのが、秋田地区の天然ガスは最近は十八万立米でかれこれ三分の一になっております。大体このガスなどの寿命というものは二十年と言われているのでありますが、どうも八橋のガス源は近年非常に激減をいたしておるのであります。これに伴いまして、秋田県全体の地区における天然ガスの生産量は二十二万、約二十二万立米に——ほかにもありますから、二十二万立米になったわけであります。そこでこれに対処いたしまして、まず需用の面から考えまして、都市、ガスに二万立米をまず先に取りまして、その他は一定の、案分比例によって鴨川者が分けている、こういうようなやり方をいたしているのでありますが、しかしどうもこういうやり方ではたしていけるかどうかは問題がありますので、一方においてはナフサを利用して、そうしてこの事業を続けるように需用者に対して指導をいたしますと同時に、来年度予算におきましては、これは天然ガスの探鉱補助金を相当額増額をいたしまして、相当部分を秋田地区に充てよう、こういうような方針で臨んでいるわけであります。  また、石油資源開発の来年度の事業計画の中でも、大体これは予算でございますから、まだはっきりきまってはおりませんが、十億程度の融資を——融資分についてはできるだけ重点的に秋田地区の探鉱事業に向けるような処置を考えております。
  84. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 石油資源開発会社や帝石等だけにまかしておくのではなく、今の答弁を承りますと、政府としてもできる限りの投資を行なって、天然ガスの開発を行ないたい、このように聞き取れたのでありますけれども、この天然ガスは東京大学なり、東北大学なり、秋田大学、通産省鉱山局開発課、地質調査所等の調査によってみても、試掘をすれば有望であるという結論が出ているということでありますので、今後未開発資源を生かしていくという意味で、秋田地方に対しては、この緊急事態に対処し得る十分な態勢をおとりいただけるものというふうに解釈をしてよろしゅうございますか、通産大臣の御意見を承ります。
  85. 福田一

    国務大臣(福田一君) 先ほども申し上げましたように、わが国の天然ガスは、新潟とか千葉等ではどんどんふえておるのでありますが、お説のとおり秋田では非常に漸減をいたしております。これでは需用者である化学工業が成り立たないという問題が、先ほどお話がありましたとおり出てきますので、われわれとしては、重点的に秋田に資金をつぎ込んでも、ひとつ何とかその試掘を積極的にはかって参りたい、かように考えておるところであります。
  86. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 わかりました。それでは、次に、問題は国鉄の事故関係について御質問したいと思います。  国鉄の鶴見事故が、昨年の三河鳥事故同様に多数の犠牲者を生じた根本的な原因としては、過密ダイヤの問題があり、そのことは今までの衆参両院の関係委員会でも述べられております。過密ダイヤは人口の極端な大都市集中と、これに追いつけない輸送力に起因しているというふうに考えられるのでありますけれども、だとするならば、類似の事故の危険性、可能性は今日少しも解消しない。また問題は国鉄だけでは解決し得ないんじゃないかというふうに考えられるのでありますけれども、運輸大臣並びに国鉄総裁の見解を承りたいと思います。
  87. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。  瀬谷議員の仰せのとおり、都市の過大集中、それに伴う輸送の増強がマッチしていないということは事実でございます。そこで、一番輸送の隘路である東海道線、これにつきましては、御承知のように新幹線を建設いたしまして、明年度に完成して、その輸送量の増強をはかることといたしております。その他、交通基本問題調査会その他の衆知を集めまして、この都市集中の人口に対する輸送難の緩和に努力いたしております。たとえば地下鉄の都心へ向かう十字路線の新設、その他あらゆる面から検討をいたして、ただいま御指摘のような状況に対処いたしたい存念でございます。具体的な問題につきましては、国鉄総裁よりお答えいたします。
  88. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 三河島事故にいたしましても、鶴見事故にいたしましても、ああいう大きな事故が起こったというこの根底には、過密ダイヤというものが確かに原因をなしておるのであります。あのためにつまり連鎖反応を起こして大きな事故になった。したがって、今後ああいう大きな事故を再び起こさないようにするためには、どうしたってこの問題を解決しなければならぬ。ところが、これは非常に大きな問題である。つまり、この過密ダイヤというものは、戦争中にぶちこわされた輸送力、さらに終戦後における過少投資というものの集積がああいうことになっている。これをほんとう余裕のあるダイヤに完成するについては、非常な金がかかる。そしてまた、国鉄の技術力をもっても限界がありますので、なかなか急なことにはいかぬ。しかし、これはぜひともやらなければという。ことで、国鉄は三十九年度予算におきましても、四十年度予算におきましても、少なくとも東海道新幹線を除いた第二次五カ年計画というものは、三年たってようやくまだ四割しか進捗してないのでありますが・その残りの六割というものはぜひ三十九年、四十年にひとつやって、そうして、そのあとはまた、さらに計画を立てて、このダイヤに余裕をつくるということにしたいと存じておるんでありますが、しかしこれはなかなか急なことにはいかぬ。それではどうするかということになりますと、まず人の問題であります。これはただいまの御質問にはありませんでしたが、実は鶴見事故以後に実に悪質な事故が幾つも引き続いて起こっている。これは実にどうも国鉄としては申しわけない。何とも弁解のできないことであります。この鶴見事故以後の問題というのは、人に関する問題であります。人に関する問題につきましては、三河島事故からいたしまして何とか思い切った改善をやらにゃいかぬということで、指導、訓練、考査というような方面について全力を尽くしてやってきたのでありまして、その後の情勢によるというと、だいぶよくなったということに考えておりましたが、三河島事故以後において五件も——また最近は函館においても事故が起こった——六件も事故が起こった。何か一体われわれのやり方について根本的な間違いがあるんじゃないか、こういうことで、これはひとつ頭を新たにいたしまして検討しているのであります。だが、同時に、それによりまして指導、訓練、考査というようなことに対しては思い切った改善をやらにゃならぬと思うのであります。同時に運輸保安設備の問題であります。たとえば自動停止機の問題とか、自動警報機とかいうようなものも、ひとつ思い切って、この際確保しなければいかぬ。さらに、一番最近における数からいうと、事故の原因は踏切の問題であります。これに対しても、今までの予算にさらに考慮を加えまして、思い切った改善をしたいと思うのであります。それから信号保安装置、それから車両の改善の問題、こういうことで改良を進めておりまして、また鶴見の事故の貨車の脱線ということに対しましても、今まで貨車の脱線というものはときどきあったんでありますが、その調査が実は中途はんぱでありました。今度はひとつ徹底的にその点について調査いたしまして、再びこのようなことのないようにしたい。このようなことに考えております。
  89. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 貨車の脱線の原因というのは、これは技術的な問題であって、もちろん、こういう原因を究明することも大事なことだとは思いますけれども、それだけでは問題は解決しないんじゃないか、こういう気がするんです。たとえば東京都を中心とする近県の人口を合わせると、二千万になろうという状態であります。近郊の事情を聞いてみますると、京浜東北線にいたしましても、総武線にいたしましても、乗降人員が年々十何%ずつふえている。また一例を赤羽にあげれば、この一年間に二万人以上の乗降客がふえている。京浜線の大宮、浦和、あるいは西川口等でも年々七千人ぐらいふえている。団地がどんどんふえるから乗降客がふえる。これをこのままほったらかしておいて、国鉄だけが輸送力の増強をやって、何とかなるものかどうか。現状は、国鉄の利用者は軽わざ師の背中におぶさって綱渡りをしているようなものじゃないか。その軽わざ師の熟練と注意力だけで、かろうじて綱から落ちないだけだ、何かの間違いがあれば、たちまち綱から落ちて大事故になるということになるんじゃないか。とすれば、この人口が集中するというような問題をそのままにしておいて、根本的な解決策が立ち得るのかどうか、国鉄として追いつける自信があるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  90. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) お答えいたします。ただいま東京を中心といたしました通勤通学の問題につきまして、御質問がありましたが、これは国鉄一個の力をもってしては、いかんともすることができない問題だと思います。これは東京都の問題であり、また、政府の問題であると私は思います。そこにおいてつまり東京都にしましても、運輸省にいたしましても、地下鉄の発達をはかるということにしたのでありまして、これは地下鉄がいまの計画のやつが完成すれば、相当私は国鉄にしょわされている荷物というものが向こうに移ると思うのであります。しかし、この点については、とにかく賃率の問題、いかに地下鉄ができてみたところで、国鉄の賃率が安くて向こうが高ければ、国鉄のロードというものは向こうに移りはせぬ。こういうことについての運輸行政というものの強力な私は指導の必要があると思う。それで国鉄といたしましては、大体これは、私は国鉄のいままでやった過失を白状するようなものでありますが、一時は一体東京都を中心とした通勤通学というものは、世間では国鉄だけの問題のように考えているが国鉄の問題ではない。問題ではないとは言わぬが、むしろ国鉄の使命というものは、鉄道幹線における輸送というものがこれは使命だということで、全力をそのほうへ尽くしておったのでありまして、通勤通学というものに対する力の尽くし方というものは私は少なかったと思います。しかし、これは私としては、あれだけの大きなたくさんの人が国鉄に生命を託する状態を見ておれば、これは使命かどうか知らぬが、国鉄としては全一力を尽くしてやらなければならぬ、こういうことでただいまやっているのでありますが、なかなか輸送需要の増強に対して国鉄の輸送力をふやすというわけにいかぬ。それがためには便宜的にいろいろなことをやっておりまして、いままでのところではまずまず無事にいっているのでありますが、この冬の外套を着て、ふくれたときの通勤ラッシュというものを考えると、実に心配なのであります。いずれにいたしましても、この問題は、ひとつ地下鉄というものが協力をすることにおいて、初めて解決するのでありまして、国鉄といたしましても、一列車の数をふやすとか、あるいはまた、列車と列車の間の時間の短縮をはかるということに全力を尽くしてやっているのでありまして、また、実際の問題といたしましても、たとえば新宿駅のごときにおいては、もう問題が起こればプラットホーム。プラットホームにあまり人が集まり過ぎるから起こるということで、始終、あそこには駅長が運転指令室に立って、その状態を見て、そして改札口なりにおいてブレーキをかけて、プラットホームに集まる人間の制限をするとか、そういう点、できるだけしり押しというようなことで、一車に詰め込むやつよりは、できるだけ早く列車を出すというような方針でもって、乗る人を制限するというようないろいろなことをやっておりますが、いままでのところでは、相当効果的だ。国鉄としてはできるだけのことをやっているつもりであります。
  91. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いまの総裁の答弁によりますと、これは国鉄だけの問題ではない。国鉄だけではどうにもならない。都の問題であり政府の問題である。国鉄としては地下鉄の協力を得て、国鉄の任務を何とか全うしていきたい、こういう意味の御答弁でありました。  今度はひるがえって交通事故による死者の数がどのくらいかというと、先ほど新聞に出ておりました統計によると、今年に入ってすでに二万一千名を突破したということであります。これは、結局政府総合的な交通政策あるいは道路行政、都市計画住宅対策といったようなことが高度経済成長政策から取り残されて、忘れられて全くおくれていたからじゃないか、こういう気がするのでありますけれども、これらの総合的な交通政策はじめ一連の道路行政、都市計画住宅対策等について一体どのように政府としては考えられるのか、大蔵大臣並びに建設大臣からお伺いしたいと思います。
  92. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国有鉄道の増強につきましては、政府としましても可能な限り最大の努力をいたしておるわけであります。午前中にも申し上げましたが、財政投融資につきましては、年々国鉄がその一割近い金額を占めておるのでありまして、最も大きな対象に取り上げておるわけであります。しかし、これだけの投資をしてもなお不足であるということで、現在五カ年計画が進められておりますので、来年度予算編成におきましても国鉄の輸送力増強のためには最大の配慮をいたしたいと、このように考えておるのであります。  それから第二の問題、いわゆる九千七百万の人口のうち二千万以上の人口が東京周辺に集まっておるという事実に対して、これは確かにもう十年前から識者の間に言われておることであります。このままでもう十年もたてば、東京、大阪の二拠点を中心にして人口の五割近くが過一度に集中をするというような見通しでありましたので、政府も低開発地開発促進法、新産業都市建設、また、水資源開発促進法とか、東北北海道開発法とか、また各地域の開発促進法等を制定をしまして、国土開発法に基づいて諸般の施策を進めることによって産業、人口、文化等が、この東京、大阪という二大拠点に過度に集中をしないように政策の方向として進めておるわけであります。また、来年度予算編成に対してもそのような方向で進みたいというふうに考えておるわけであります。東京には年間大体三十五、六万、多いときには五十万、六十万の人口が流入しておるのでありますから、もうこれ以上東京に流入をさせる、過度に集中させるというようなことはいけないという考え方であります。どうしてこういうことになったかというと、端的に考えると、行政の効率投資、投資効率を求めることに急であると、どうしても明治初年から九十年にわたって国の重点施策が行なわれておる基盤の上に発展をすることが、その単位企業としての計算上一番有利であるという考え方でこのような現象が起きたことは間違いないことでありまして、こういうことの背後には、勇気を持った施策を進めなければならないということを考えて、政府としましても研究機関の郊外移転とかいろいろなことを考えておるわけであります。しかし、公団その他が団地をつくったためにその生活人口が一挙に三倍、五倍に上がっておるということで、いま通勤輸送の障害になっておるという事実もあります。そういう問題に対しては、交通全般の問題として閣僚会議も設置をされておりますので、できるだけ早い機会に結論を得て、鉄道だけに過重な負担をかけて公共投資がどこまでいっても追いつかないというような不安定の状況は可及的すみやかに解消すべきだと考えておるのであります。
  93. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 大体大蔵大臣から御説明申し上げたとおりでございます。しいて申し上げますれば、道路行政が非常に遅延化しておりまして、その行政の進行状態よりも人口の移動のほうが非常に過度にスピーディーに行なわれておる。私はただつけ加えて申し上げますれば、ここ数年来の経済の変遷、つまり国内経済から国際経済に移行しました関係から、これら大都市に急激に人がふえてきた。そのために都市の過度の集中のために都市と地方の間の物資の集配もしくは資材の分配等のために過度の交通量が動いてきた。それと道路計画がうまくいってないということによるものが多いと考えまして、それらの対策に鋭意努力しているというのが私の考えです。
  94. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 人口の際限のない大都市集中に伴う鉄道輸送並びに道路交通の行き詰まりや麻酔状態、あるいは住宅難、地価の暴騰というようなことは、政府のいままで言ってまいりました自由主義の原則に立って自由に放任していられなくなっているのではないかと思うのです。池田さんは自由主義ということを謳歌されますけれども、こういう事態を自由にほったらかしにしておけば動きがとれなくなるのではないか、こう思います。鶴見事故のような大事故が再度起こらないうちに何とかしなければならない緊急の問題ではないかと思うのです。大蔵大臣の御答弁によりますと、勇気を持った施策を行なわなければならない、早く結論を得て問題を解決したいということでありますけれども、総合的なじゃあ対策はどこが中心になってこれからどうするつもりなのか、具体的には勇気を持った施策というものはどういうことであり、だれが中心になってやるのか。これは首都圏整備委員長であり、近畿圏整備本部の委員長である河野さんも考えておられることじゃないかと思いますが、大蔵大臣でもよろしいし、建設大臣でもよろしいのですが、この勇気を持った施策というのは、早く結論を出すためにはどうするつもりなのかということを具体的にお答え願いたいと思います。
  95. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 交通閣僚懇談会をつくっておりまして、交通問題に対して対処いたしておるわけでありますが、何ぶんにも現実問題を申し上げますと、現状をどうするかという問題にやはり重点がしぼられて、あなたがいま言われるようにもつ抜本的に検討しなければならないような——焦眉の急の問題にとらわれ過ぎて、抜本的な問題はいつでもあと回しになるわけでありますが、いま仰せられたように、この問題を解決せずしてびほう策をやってもどうにもならないわけであります。でありますから、先ほど申し上げましたように、法律をつくったり、また、予算編成をいたすときも、人口が東京や大阪という大都市に過度に集中をしないように、また、作業も東京や大阪に増強されたほうがより有利であるというような条件をなくして地方に分散的に定着をすることがより有利であり、国家目的にも沿うものだという基本的な線に沿わなければならないということを考えておるわけであります。率直に申し上げますと、東京はこれは私たちだけではなく日本全体で考えなければならない問題だと思いますが、いままで戦後焼き払われた現実という上に立っておりますから、絶対量が不足しておるということで、ある意味でいうと安かろう悪かろうということで、住宅にしても平面都市、平面道路がどこまでも延長されていったわけであります。でありますから、南は熱海までもうすでに沼津まで町並みがつながるという状態でありますし、また、北は高崎、宇都宮まで家並みがつながるという平面都市をまずつくって、人間が住めるということがまず前提で、そのあとから追っかけて道路をつくり、それを掘り返して下水をつくり、また、水道を引くというようなことで進めてきたわけでありますが、外国の例から見ても、地下構造をつくってその上に立体都市をつくっていくということでありますので、今度建設省でも地下共同溝をつくって理想的な都市つくりをしようということを考えておられるようでありますし、また、大蔵省と自治省と話をして、いままで無制限に平面都市として伸ばしていった考え方を改めて立体的に高層不燃化するということによって、交通の総延長もできるだけ——今の延長でも合理的にやればできるのでありますから、その意味で固定資産税及び不動産取得税等大幅に減免を行なうということを国会でも申し上げておるわけでありますから、都市改造の問題それから都市の中にある学校の移転とか生産に直結しないもの、東京や大阪でなくても十分その機能を発揮できるものは、この都市の混雑の中から早く分散をするような方針で施策を進めておるわけであります。
  96. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 人口が集中しないように、産業が集中しないように分散をはからなければならぬということはわかりますが、いままでのやり方は、一例をあげると、東京に入り切れなくなった産業や人口というものが周辺にだんだん伸びるから、たとえば埼玉県等でも工場誘致が行なわれますけれども、道路が先にでき、上下水道が先にでき、しかる後に工場ができるのではなくて、たんぼのまん中に工場ができてしまって、しかる後にその周辺をダンプカーが砂煙を上げて走り回る。道路がぶっこわれてから道路問題がやかましくなり、それから上下水道がやかましくなり、住宅が建てられる、こういうような本末転倒した行き方が今日でも行なわれておるわけです。せっかく首都圏整備法であるとかあるいは近畿圏整備法というものがあるのでありますけれども、はたしてそれらの法律が十分に機能を発揮しておるのかどうか。発揮し得ないとするならば、その原因は那辺にあるのか、今後どうしたらこれらの過剰都市という問題を解消するという方策が立てられるのかという点について、建設大臣の御意見を向いたいと思います。
  97. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 私、建設大臣になり、首都圏整備委員長になりましてからまだ日が浅うございますが、これまでやってまいりました点について多少遺憾の点もだんだん検討しまして、お話のとおり、一ぺんにものを改革するということはなかなかむずかしゅうございますし、さればといって、ただ道路道路なりにやっておりますと、こういうふうに急激に変わってまいります産業の状態、国情でございますので、それが明日の日本にはたして役に立つことになるかならぬかということも相当考えなければならぬというような面から、ごく素案ではございますが、最近までに、今後二十年後における日本はどうなるであろうかということの勉強を識者のお集まりを願って一応取りまとめをいたしました。十年先にはどの程度に、どういうふうになるだろうかということについても、幾らか二十年先よりもまとまったものをつくり上げ、こういうふうにして、大体日本の将来のあるべき姿について一つの方向を実は出しておる。しかし、それは決してこれで絶対にいくべきものだというほどの確信のあるものではございませんけれども、何とはなしに一つの方向づけはいたしております。この方向づけによりまして、道路につきましても、実は道路計画を立て、これを五カ年間にどの程度やろうという検討をしております。これが東京を中心にして、どういうふうにこの道路が流れていくべきものか、たとえば東海道について申しますれば、これをどういうふうに東海道は考えていくか、さらに高崎方面にはどういうふうにしていくか、宇都宮方面にはどういう道路でどういうふうにいくか、さらに水戸方面にはどうするかということについての方向づけをいたしております。これを年次によって作っていく。これと同時に、こういうふうに道路ができた場合に、東京に入る人口を抑えるために、たとえば東海道につきましては箱根の山の手前、西湘と名づけておりますが、ここに連合都市を作ろう、そして、それについては明年度予算にも予算も実はある程度計上して着手する予定にいたしております。さらに、高崎、前橋方面には新しい一本の路線を考えておりまして、これによりまして、おおむね高崎まで一時間弱で走れる道路計画をいたしております。これを大体五年ぐらいで完成する予定でございます。そういたしますと、この方面に同様に一つの都市計画を立てまして、ここにも、いま申しましたような都市を勘案いたしております。宇都宮の周辺にも考え、水戸の周辺にも考えて、関東平野についておおむね四つの新しい工業都市を勘案して、ここに都市計画を作り、ここに新しい基盤を持って指導してまいりたい。先ほど、いまのような自由放任でこれらの問題が片がつくかというお話でございましたが、われわれは法律的にこれを統制し、区画するということは考えませんけれども、行政指導によりましてあらかじめ工場団地を作り、住宅団地を作り、都市計画を行ない、そしてそこに一つの住みいい、働きいい場所を作っていくということにしていくならば、将来の日本産業構造改善の上にも非常に役立つ。それとあわせて、東京部内のほうは自然のうちにこういう方面に移転し、移住していくようになるだろう、新しい人はそこに住めるようになるだろう、こういう方向を持ちまして、従来の首都圏整備委員会をその方向に引っぱっていこう。東京都内のためのことにつきましては、別に考えておりますけれども、まず、東京の人口の過度の集中につきましては、そういう方向でこれを整備していく。大阪につきましてはいま検討中でございますが、そういうふうに順次に方向をきめまして、それについて予算的裏づけをし、事業を進めてまいりたい。何分にも公共投資が非常におくれておる。一音に申しますれば、人口の移動とか産業構造の改善というものは副次的にどんどん進んで、それに公共投資が先行すればよかったと思いますけれども、おくれておりますために、このように道路があと回しになり、下水があと回しになるということになっておりますが、何とかしてここ四、五年のうちにこの状態を変えて、そして国家の構造を改善していきたい。それには公共投資を思い切って先行させるようにしていきたい、こう考えております。
  98. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 まあなるべく早く手を打たなければならないと思うのでありますが、さしあたっての問題は、これは国鉄自体でもって処理をするほかはないと思うのであります。今後の事故防止対策を考えた場合に、従前どおりの独算制の機構、経営方針を踏襲して安全輸送を約束することができるのかどうか。公共性と企業性ということを両方とも兼ね備えなければならぬという建前をとってきておりますけれども、そういうふうに欲ばって両方ともうまいことやろうというふうないままでのやり方で、はたしてよろしいのかどうかということ、運輸大臣並びに国鉄総裁にお伺いしたいと思います。
  99. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。公共性と企業性をどういうふうに合わせていくかがいまの御質問に答えるゆえんだろうと思いますが、なかなかむずかしゅうございまして、私どもはやはり公共性を中心にして、しかも、まずその前提と同時に、人命尊重という点におきまして保安対策に万全を期していきたいと思っております。その具体的な方策につきましては、あるいは国鉄新五カ年計画事業、保安対策も、先ほど国鉄総裁からも言われたような踏切の改善、信号機の増設等々があると思いますが、要は、ただいま申しましたように、公共性と企業性をいかに調和していくかというところに非常にむずかしさがあります。同時に、そういうことの以前の問題として、人命尊重に万全を期していきたいと考えております。まだ国鉄にそういう指導をいたしておりません。運輸省の中にも、そういうものについて検討をすべく運輸省の中で機関を持っております。
  100. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) お答えいたします。これからの輸送の安全を保つ上において、いまのような国鉄の機構でいいかどうかという問題でありまするが、そこを公共性というものと企業性というものがだいぶ問題になっておったのでありまするが、この点につきましては、けさほど私がここで御説明申し上げましたように、要するに、国鉄の公共企業体というものは、目的は公共事業、それを経営するのに企業精神をもってする、能率的に合理的に投資効果をふやすようにするということがつまり企業性、こういうことなんで、私は公共企業体というものの機構というものに対しては、別にメスを入れる必要はないと考えております。いかにしてこれをうまく運用していくかというところに、今後の国鉄の経営があるのじゃないかと感じているのであります。
  101. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 公共性も企業性も両方ともうまくということなんでありますけれども、両方ともうまくといっても、からだをぬらさないようにしてうまく泳ごうといっても、なかなかそうはいかないと思うのです。だから、その点はどうしたらいいかということで、すでに国鉄総裁自身が、総裁に就任をしてからいろいろ不便を感じているということがたくさんあるのではないか。不便を感じてないのだというふうにおっしゃるならけっこうですよ。しかし、そういういろいろな機構上の不備ということはあるのじゃないか。これは、こういう大事故が起こったような際に改善をする必要があるのではないかというふうに考えましたから私は申し上げたのです。だから、通り一ぺんのことでなくて、自分が考えておられることは率直に言ってもらいたいということが私の希望です。  あわせて今度もう一つ質問したいと思うのでありますが、東海道新幹線の安全性であります。計画どおりに、はたしてこの予定期日までに営業を開始できるのかどうか。それから、この東海道新幹線の安全性ということは、非常に高速に走るのでありますから、もし事故が起きた場合には、鶴見事故、三河島事故の比じゃないと思うのでありますが、十分だというふうに確信を持てるのかどうか、その点について最初にお伺いしたいと思います。
  102. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) まず第一に、さっきの公共企業性ということにつきまして、ちょっとつけ加えて申しますが、国鉄は企業性を発揮して大いに国鉄の収益をふやして、それによって公共事業に邁進する、こういうことなんですが、国鉄が公共性を帯びているために、つまりときに政府政策が国鉄の犠牲において相当にやられているということは、これは事実です。例の公共負担なんというものは、全くそのとおりなんだ。これは一方に国鉄というものは独立採算というものがありまして、ちゃんとバランスというものをとっていかなければならぬ。したがいまして、犠牲があまりに多くなるというと、独立採算制というものはとれない。そうして、また収益が減って投資することができない、改良というものはできないということになるのでありまして、こういう点につきましては、今後とも私は問題が起こってくると思う。  それから、東海道新幹線の問題でありまするが、これは御心配ごもっとも千万だと思う。それで私といたしましては、 つまり東海道新幹線ができれば東京−大阪問を三時間で走るというようなことが、これまで盛んにPRされているのでありまするが、これはすこぶる慎重を要する問題であります。とにかく事故が起きれば非常に大きな事故なんです。したがって、私が総裁である閥においては、絶対に安全だということが見通しつくまでは、三時間で走れというようなことはやらぬ、あるいは四時間か五時間で行くかもしれません。とにかく、一番こわいのは運転の障害事故であります。いまの、つまり新幹線でないときでも、小石を置いたりいろいろな障害物を置くということによってこの事故が年々歳々ふえておる。実にこわいことだ。われわれが心配しているのはその点であります。これに対しては、いかにしたらそういう障害物を排除することができるかというような機械的の考案を盛んにやっておるのでありまするが、はたしてそれでうまくいくかどうか、まだまだほんとうの確信するところまで来てない。そこで国鉄といたしましては、とにかく事故は起こさぬということのために、あるいは経費がかかっても相当の警備員を配置して、そういう障害物が置かれるような事故のないようにしたい。あるいはまた今考えておることの一つでありますが、列車の走る前に、まずもって朝パイロットのようなものを走らして、そういう障害物がないかどうかということを確かめる。いろいろなことを考えておるのでありまして、いずれにいたしましても、この事故のなからむことに対しては、最大の努力をいたしておるのであるということをどうぞ御了承願いたいと思います。
  103. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 これはサンデー毎日の表紙に載っておる新幹線の写真なのであります。このサンデー毎日の表紙、これはごらんになっていただければわかるのでありますが、こういうふうに二台ここに複線で線路があって、ここに列車が来る。もしこっちの反対側からも列車が来るというと、ここの車両と車両の間隔の問題です。これは現在工事中だから私は調べてみたのでありますけれども、国鉄当局で出しておる「新幹線の話」というパンフレットを見ますと、車両限界といいますか、車両と車両の間隔というのは八十センチしかないというふうに書かれてあります。なるほどこれを見てみますと、すれ違う場合には、もう間隔がほとんどありません。これを見ると、八十センチなんです。八十センチというとどれくらいかというと、ちょっとこれを持ってきましたけれどもね、これしかないんです、これしか。二百キロでもって飛行機並みのスピードでもって走る列車がすれ違う場合の間隔というのが、これしかない。これは人間一人が入れるか入れないかです。何でいま建設をしている新幹線がそういう窮屈なことをしなければならないかということなんです。あぶないということがどうしてもこれは考えられるんじゃないか。すれ違いの際の風圧が問題になりました。すれ違いの際の風圧が問題になるくらいならば、風圧が問題にならないような間隔をなぜとろうとしないのかということを私は聞きたい。とにかく巻き尺ではかってみれば八十センチで、これだけですよ。総裁だってこの八十センチの中へ入れば、あまりからだを大きくしているわけにいかないと思う。で、もし土地の買収の経費その他でもってどうしてもこの間隔を八十センチしかとれないのだと言うならば、現在工事をしておるところの名神国道、あるいは予定されておりますところの東名国道はどうかというと、道幅は二十四メートル四十あります。ざらにこれが立体交差だから、両方に広がっておって、四、五十メートルくらいの幅を持っておる。国道が二十四メートルの幅がとれるものを、新幹線を新しく建設する際に、せめてこの国道の半分の十二メートルにして——これは十メートル七十になっております——もう二メートルほど広げれば、一車両分くらいが間に余裕が持てるということになるんじゃないですか。そうすれば、それでも万全を期するというわけにはいかないと思うけれども、ぎりぎり一ぱいの危険をおかす必要はないんじゃないかと思うのでありますけれども、特にこれは現在工事をやっておる最中でありますから、完成後、あるいはでき上がったあとで事故が起きてからいろいろ問題になってもしようがないと思うので、このことについての見解をお伺いしたいと思うのであります。
  104. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 私はどうもしろうとで、そういう技術的のことはわかりませんので副総裁から……。
  105. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 技術的な問題でございますので、私からかわって御答弁申し上げます。  新幹線をつくります際に、線路と線路の幅をどうとるべきかということにつきましては、ずいぶん関係の技術者の中で検討した問題の一つであります。いままでの普通の速度の列車の線路間隔でいいか、あるいはもっと広げなければならないかということについても、いま先生のおっしゃった風圧の問題その他、ことに隧道の中の風圧の問題等とも関係いたしまして、いろいろ計数的に計算いたしました結果、もちろん幅の広いにこしたことはない。たとえば万が一この間の鶴見のように脱線いたしまして横になりましても、隣の線までひっかからないくらいの幅があるにこしたことはないのでございますけれども、やはりいろいろな関係上、応検討いたしました結果、現在の車両限界の幅——車両の外側と外側との幅が八十センチあれば風圧その他の関係上絶対だいじょうぶであるということの結論のもとにやったわけでございます。ただ、先ほどお示しのとおり、名神国道あるいは東海道の国道等につきましては、鉄道の幅よりもずっと幅の広いものであることは事実でございます。私どもといたしましては、土地の買収その他の問題も関係いたしまして、技術的に可能な限度、しかも技術的に絶対に安全だという限度において工事を施行したのでございます。
  106. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 八十センチというのは、ちょっと大きな車両がかしがっただけで、上り下りで接触をして、それが二百キロというスピードであれば、とんでもない事故になるということは、しろうとが考えたって容易に想像される。それだから、でき上がってから、ではなかなかたいへんだから、つくる前に国道の幅等を勘案をして、せめて名神国道の半分くらいの幅をとっておくということができれば、かなり安心できるのではないかというふうに私は考えるから、その点を申し上げたわけなんです。これは今後の問題として私は慎重に考えてもらわなければならぬと思います。  それから、新幹線が完成をしたあとで、この延長計画があるのかどうか、またその必要性があるのかどうかということもあわせてお伺いしたいと思います。
  107. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 東海道新幹線が完成した後に、この延長の問題をどうするかということにつきましては、ずっと将来にわかりませんが、ただいまのところ、そこまではまだ考えておりません。それよりは、いまの既設の線路の輸送の不足をどうするかということが、これがまず先決問題だ。やろうとしても、それだけの金はないのでありますから、また実際に必要の上からいいましても、急にやらなければならぬというようなことは、いまのところでないのであります。どうぞ御了承願います。
  108. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私がそれをお伺いしたいのは、東名国道なり、名神国道ができ上がろうとしておる。この間その道路を視察した際に、道路公団の人があすこのところは国鉄に先手を打たれてしまったということを言っておるわけであります。競争しておるわけなんであります。今後道路、たとえば中国縦貫道路であるとか、いろいろな高速自動車道路を建設する計画があるようでありますが、そのための土地の買収というものは、少なくとも幅四、五十メートルを必要とすると言っておるのであります。それほどの幅の土地を買収するならば、その機会に国鉄なり道路公団なりが別々に競争をして土地の価格をつり上げて買収するということを考えるよりも、国の費用を使うのでありますから、一ぺんに両方やってしまったほうがいいんじゃないか、そのほうが将来の国土開発のためにいいのではないかと考えるので、それらのことははたしてできるものかどうか、以上の点は大蔵大臣にお伺いしたいのです。
  109. 田中角榮

    ○国務大里(田中角榮君) 用地取得という問題で、道路、鉄道が並行してやれれば、これは非常に合理的だと思いますが、構造上は、特に道路は九十キロないし百二十キロぐらいの速度で計画しておりますし、鉄道はいまのように新しい新幹線工事ですと二百キロと、こういう計画でありますから、実際において道路の両間隔と鉄道の車間隔と全くマッチするかということは、技術上は問題はあるかと思います。しかし、その相当部分、直線部分、すなわちあまり車間隔を必要としない場合は、ずっと鉄道の側に道路がついておるということが原則になっておりますので、これらの問題については五カ年計画、十カ年計画というような長期計画に対しては十分考えるべきだと思います。
  110. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 土地を、買収をする際、道路公団とか国鉄がそれぞれ別々に競争して買いあさるというようなことは国費のむだであるということを考えるから私は今申し上げたのです。まあこれはきておきまして、次に、先ほど総裁の答弁の中でも、最近の事故の中には従業員の不注意等のために起こった事故も相当多いということを言われました。そこで、私は追突市政を起こした運転士等について当局者の意見を聞いてみましたが、ふだんは非常にまじめな人間である、いままで事故を起こしたこともなければ、日ごろの勤務成績も非常にまじめな人間である、それがたまたま事故を起こしたのである、と言っております。そういうふうになって参りますと、これはやはり現在の国鉄のやり方について根本的に考えてもらわなければならない面がたくさんあるのではないかと思うのです。最近の国鉄の要員事情、特に新規採用者の要員需給が一体円滑に行なわれているのかどうか。たとえば、昔だったならば十人に一人ぐらいの激しい競争でないと職員の採用が行なわれなかった。それが、聞いてみますと、東京周辺では二人に一人とか、あるいは一・何人に一人、要するに競争がほとんどなくなってしまっているということなんでありますが、これは賃金なり労働条件と責任の程度とが他産業に比較をしてどうも分が悪い、敬遠される、こういうようなことになっているのではないかと思うのでありますけれども、そういう傾向がないのかどうか。これは、他産業との比較の面において労働大臣にお伺いしたいのです。また、要員の需給の事情について国鉄の総裁にお伺いしたいと思います。
  111. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 国鉄の賃金水準についてでございまするが、毎月勤労統計によりますというと、昭和三十七年の平均におきましては三万八千二十四円ということに相なっております。同じ年の毎月勤労統計によりますと、私鉄におきましては三万七千百十七円、調査産業総数におきましては二万九千四百五十八円、うち五百人以上の作業場におきましては三万三千九百五十九円、これが平均の賃金に相なっております。したがいまして、年齢、職種など労働者の構成の相違がありますから、厳密な比較はこれだけではできませんが、国鉄の賃金は私鉄その他の産業に比べまして特に劣っているとは考えられません。
  112. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) お答えいたします。  国鉄職員の指呼、訓練、考査ということが、これは思い切ってやらにゃならぬのでありますが、それよりも前に、さっきお話のあった適当な人間を採るという、これは一番大事な仕事だと思う。その点につきましては、いわゆるこれは天下の大勢かもしれませんが、昔に比べるというと希望者がだいぶ減っている。前には十人に一人とか採っておったのだが、いまは三人か四人に対して一人採用する。結局、その結果は質の低下ということに相なっているのであります。しかし、この問題につきましては、まだ国鉄としては大いに研究の余地がある。たとえば東京近在においてはそういう情勢でありますが、東北あたりに行くというと必ずしもそうでない。大阪あたりでもそうだ。こういうことで、国鉄としては、志望者のあるところはたくさ採る、志望者の少いところではそれだけ採る、そうしてその間の融通をつける、こういう面につきまして、いかにしていい人間を採るかという点についての検討は、ただいま十分やっておるのであります。御了承願います。
  113. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 その志願者が少なくなってきたということは、給料と仕事の内容と比較して割りが悪いから他の産業に走ってしまうのじゃないかと思う。そういうことになると、素質も適性も十分でない人間しか集まらないということになり、国鉄は将来の安全ということを考えた場合に、ゆゆしい問題だと思うのであります。そうすると、やはり安全を考えた場合には、十分に適性を持った人間を厳選をして採用しなければならぬし、給与なり労働条件を幾らかでも考えなければならぬじゃないかということになるのじゃないかと思いますが、総裁の見解はどうでしょう。
  114. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) お答えいたします。  それはごもっともだと思いますが、国鉄の給与の問題はこれは簡単にいかぬのでありまして、これは職務給というようなものはぜひ上げなければいかんというように思っておりますが、実は運転士というようなああいう重大な責任を持っている者に対する給与というものは、一般の職員並みにというとこれははなはだいかんというようなことで、私は、これは監査委員長のときでありましたが、国鉄総裁に進言をして、その間に相当の差をつけたのでありますが、しかし、これに非常な大きな差をつけるということは、これはなかなかむずかしい問題でありまするが、しかし、御趣旨は私はしごくごもっともだと思います。この点については特に考究してみたいと存じております。
  115. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それでは、最後にお伺いしたいのでありまするが、いま総裁の御答弁をお聞きしますと、給与の問題は、考えろといっても簡単にはいかない、こういうふうに言われました。しかし、簡単にいかないからといって、国鉄の安全性ということを考えた場合には、簡単にいかないことでも何とかしなければならないということになるのじゃないかと思うのであります。  そこで、いま、諮問、委員会の当時に総裁は当時の総裁に対して答申をしたということをおっしゃいましたが、国鉄の諮問委員会なりあるいは関東支社評議委員会といったようなところで答申を出しております。その答申というものは、国鉄の財政の確立をするために、定期券をはじめ公共負担分は、これはもう定期券の値上げ等を行なっていくか、あるいはまた政府が公共負担を行なうか、どちらかにしなければならぬという意味答申が諮問委員会にあります。それから評議委員会では、定期券の値上げがよろしいというような答申が出ております。そこで、一体、国鉄としては、諮問委員会あるいは評議委員会の答申にあるように定期券等の値上げをして財政措置を講じていくつもりであるのか、あるいはまた、国鉄財政を確立をするために、政府が公共負担分を財投その他便法を講じて財政措置を講ずるという考え方があるのか。一体どちらにするのか。もしも政府が負担を考えるということであれば別でありますが、そうでないと、公共料金の値上げということが非常に問題になっているにもかかわらず、定期券を上げなければならない、運賃を上げなければならないという問題にぶつかります。ここで現状のままほったらかしにしておけば、財政的に動きがとれないということになる。一体どうなさるおつもりなのか、このところはひとつ大蔵大臣なり運輸大臣にそれぞれ御回答を願いたいと思います。
  116. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 確かに御説のとおり、国鉄の財政はそう楽なものではありません。しかも、午前中にも申し上げたとおり、昭和十一年からの物価指数と比べましても、約その半分くらいしか国鉄の料金が上がっておらないわけであります。これは、もちろん戦後の特殊な事情における公共性というようなものが十分主張ざれたために国鉄の会計に非常に大きな圧迫になっているということは事実であります。特に通勤輸送とか通学のための都市内における鉄道機関の工事費は非常に大きいのでありますが、その面における割引率が非常に高い。一、二年前までは学生等においては九割以上の割引をやっておったわけであります。百円の運賃が十円で乗れるというように非常に高い割引をやっておったわけであります。今日でも八〇%の割引をやっておるというような状態でありますので、この面に対してどうするかという問題は相当深刻に考えるべきだと思います。まあ私も、だから、ある時期に、非常に安定をしましたときには、値上げもある時期においては必要だと思いますが、現在の段階においては、政府物価対策を強力に進めておりますし、公共料金を据え置くことについても前向きで検討いたしておりますので、現在の段階においては鉄道運賃を値上げをするとか、また、割引率を法律どおりに戻すとかということは考えておりません。  それでは政府は何をするのかということでありますが、前国会でもお願いをしておりますとおり、過度集中等を排除するために鉄道の新線分を建設をしなければならないわけでありますが、国鉄の会計の中からこのような大きな新線建設ができないというので、国鉄からは年々新線に支出をいたしております七十五億を限度として支出せしめることにし、他は別な財源をもって新線建設の大きな負担は国鉄から省いてやろうということで鉄道新線建設公団の設置法案を審議をお願いしたわけであります。この国会は短いので、次の通常国会では提出をいたし、成立をはかるつもりでありますが、そのようにしてできるだけ国鉄の負担は軽減を財政面からしてやりたいということを考えているわけであります。
  117. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。  企業体の経済学上の原則に従いますれば、安過ぎるこの運賃を適正な価格まで上げるということは、これは原則でございます。が、しかし、現内閣の方針といたしまして、現在におきましては、そういうことは言うべくして行なわれぬと考えておりますから、ただいま大蔵大臣答弁されましたように、何とか合法的にして国鉄の財政を豊かにする方法をいろいろ考えております。鉄道建設公団設立の趣旨もここにあるのでありまして、その他いろいろ研究いたしまして、国鉄財政を少しでも楽にさせるような方途を考えておる次第でございます。
  118. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 終わります。
  119. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 瀬谷君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  120. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 稲葉誠一君。
  121. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 最初に、三井三池の炭鉱の事故、この問題からお尋ねをしていきたいと思います。  これは通産大臣ですか、一体どこに責任があってこの事故が起きたと、こういうふうに考えておるわけですか。
  122. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えをいたします。  ただいま、あなたの御承知のように、原因訓育のために調査団を組織いたしまして現地へ行っていただいて、まあ大体年内にはその結論が出る、こういう段階になっておるのであります。したがって、最終的な責任の問題につきましては、その原因の調査を待った上でこれを明らかにいたさねばならないと思うのでありますが、ただいまのところで明らかになっておるところは、炭じん爆発であることは大体認められておりますが、なぜそのような炭車が逸走したとか、あるいはそれに火源がどういう理由で起きたかということが明らかになっておらないわけでありまして、私たちとしてはその調査の結果を待ってこれを明らかにいたして参りたい、かように考えておるのであります。
  123. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いまの段階で、政府に責任があると、幾らかの責任か知りませんけれども、政府に責任があると、こういうふうなことは考えておるわけですか。
  124. 福田一

    国務大臣(福田一君) 問題は炭じんがあったということ、その炭じんがあることは、政府として監督官が四月に確認をしておる。そして六月にはこれを除去するような会社側からのこの書面が出ておりまして、その後切り羽の関係においては十分何度も検査をいたしておりましたが、いわゆる今度爆発が起きた斜坑の点においては、これが十分監督が、炭じんが除去されておるかどうかということをはっきり確認をいたしてはおりません。ここには私はいきさかの問題があろうかと考えておるところであります。
  125. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 炭じんが多いということを四月に警告しておるというわけですが、その警告の内容というのはどういうのですか。
  126. 福田一

    国務大臣(福田一君) その御質問意味がはっきりいたしませんが、もちろん警告するということは、炭じんを除去しなければいけないということを通知をいたしておるところであります。
  127. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 炭じんを除去しろというのを、具体的にどういうふうにしろとか、いつまでにしろとか、そういう形での警告というか、そういうふうなものを出しておるのですか。そこがどうもはっきりしないのですが、どういう警告なのですか。内容が。内容というか、その条件なり何なり……。
  128. 福田一

    国務大臣(福田一君) その内容につきましては、これは、係のものから御説明をさしたほうがいいと思いますが、いま参っておりませんので、呼び寄せた上でお答えをいたしたいと思います。
  129. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、通産大臣の答弁の中に、四月には警告を発した。それが実際に警告どおり除去されたかどうかをどうして、鉱山保安局ですか、見きわめることをしなかったのですか。
  130. 福田一

    国務大臣(福田一君) 御承知のように、こういう監督というのは、二六時中ついて、朝から晩までやっておるわけじゃありません。たとえば、一日監督をしないでおれば、その間に、作業をしておれば、またそれだけの分の炭じんが出てくるということもあるでしょう。だから、大体において、こういう監督というものは、一定の期日を置いて、そしてそれができておるかどうかということを監督するのでありまして、そういう面からいえば、私は監督には限度があると思っております。したがって、炭じんを除去しろということを言うて、それに対して六月に、山のほうから、こういうふうにやります、今後はこういうふうにしますと言って、大体いままで確認しておるところでは、たしか八月ごろまではある程度やっておられたというように聞いておるのでありますが、そういう具体的なことは、一日じゅう監督官がついて監督しておるのじゃないのでありまするから、監督というものは、適当なときに、いわゆる一定期間にやる監督と、あるいは抜き打ちの監督と、いろいろあるわけでありますが、そういうものをあわせ、並行して行なっていくわけでありますから、そこに責任問題が起きたとしても、限度というものがあるだろう、こう考えておるわけであります。
  131. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 その限度があるという意味は、自由主義経済なんだから、私企業にそこまで深く関与することができないんだ、これが一つの原則なんだ、こういう考え方があるわけですか。
  132. 福田一

    国務大臣(福田一君) 私企業だからとか、そういうわけではありません。もちろん、これは自由企業でございますから、私企業ではありますが、しかし、それを監督するのには、ちゃんと鉱山保安監督法というものがあって、そしてその法律に基づいて、今度は保安規則というものを山々がつくっておる、こういうものをつくらなければいけない。そうして保安規則というものがあって、その上で今度は、実際問題として、その山で保安の責任者もつくり、また生産の場合に、そういうこともいろいろ含めて、いわゆる生産をやっておるわけであります。そういう場合において、そういう生産が行なわれておる、そのときに監督をしておる。どういうふうに監督をするか、直接いつでもそれを見ておるわけではございません。何人かの人が交互に監督を行ない、一定期間に監督を行なっておる、こういうわけであります。したがって、それだけの監督をやった場合に、山のほうでそれを十分守り、あるいはまた山の中でも、経営者がそういうことをしなかったのか、あるいは保安監督者がしなかったのか、保安係の人がしなかったか、いろいろの問題が起こるだろうと思います。   〔委員長退席、理事斎藤昇君着席〕 こういうことは、やはり原因調査を明らかにした上でなければ明らかになってこないと思っております。
  133. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 四月に炭じんが多いということで警告した。その警告したときに、短時日の間にこれを除去しないと大きな事故になるかもしれないということをある程度認識していたわけですか。どういう認識のもとに警告を出していたんですか。
  134. 福田一

    国務大臣(福田一君) それは、炭じんが相当程度たまっておったと認定をしているのでありまして、そうしてそう認定しておりますが、そういう場合については、それを除去することを要求するということは、これは当然なことでありまして、会社側が今度はそれを除去する、こちらが言った場合に除去していくと、こういうことでなければ、これは二六時中ついておって、それは取れてないから全部取らなきゃいかぬ、そういうふうにまで監督することにはなっておらないわけであります。
  135. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そんなことを聞いているのじゃないですよ。炭じんが多いとか、たまっている、これを除去しろと警告したわけです。その警告したときに、これは、もし会社側なら会社側が一定の期日の間に除去しなかったらどういう事故が起こるかということを当然鉱山保安局ですか、これは認識していなくちゃならぬわけじゃないですか。どういう認識のもとに警告を発したのですか。これは、大臣がわからないということはおかしいですよ。これは大きなこの事件のポイントの一つですよ。これは職務怠慢だな。
  136. 福田一

    国務大臣(福田一君) もちろん、炭じんがたまっておることは危険であるからこそ、これを除去しろということを警告しておるわけであります。私は、警告をしたと、警告をしておれば、そのいわゆる一定の限度において監督をやっておれば、それで十分だと申し上げるわけにはいかぬかもしれない。人の問題もあるし、それから人数の問題もあれば、物理的な問題もございますから、いろいろあると思いますが、しかし、私は、危険であるということを認定して、もちろん、これは除去したほろがいいということを言っておるのであります。
  137. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 だから、危険というのは一体どういうことかというのですよ。危険なのは、人命に危険があるということでしょう。そういう可能性がある。だから、いつ幾日にこれを除去するなら除去しろという警告を発しておるのじゃないですか。そうすれば、それが事実、具体的に実行されたかどうかということを、これは確認する義務は当然あるのじゃないですか。そうやってないところに大きな問題がある。だから、大臣だって、ここで政府に責任があるということを、私が聞けば、責任がないとはあなたは答弁しないじゃないですか。そこにこの問題があるのじゃないですか。どういう警告を発したのですか。どういう危険があるという認識のもとに警告を発したのですか。それがはっきりしなければ、この事件について、政府が一体何を考えているのか。まるで全部の責任を会社側に転嫁さしておって、あとはまあということしか考えられないじゃないですか。
  138. 福田一

    国務大臣(福田一君) 私が申し上げておるのは、そういうような炭じんがあれば、そういう危険なというか、爆発のような危険が起きる可能性がある。だからこそ、それを除去しなければならない、こう言っておるわけでありますから、私がいま申し上げたように、その後、事態を全部確認をしておらなかったというところには、私は、一部の問題、責任がある、こういう意味で申し上げておる。しかしながら、そういうことがあっても、たとえば、炭じんがあっても、散水を十分しておるとか、あるいは岩粉を十分まいておるとか、そういうようなことはどういうふうになっておったのか。あるいはまた、その場合において、今までにもそういうことがあるから、必ず事故が起こるわけではありませんが、そういうことをしておれば大体危険はないということになっておる。そういうことについても、十分調査した上でなければ、責任の問題は申し上げるわけにはいかないと思います。ただしかし、いずれにしても、炭じんがあったからこそ爆発が起きたということであれば、私は、その面において、監督しておる面において確認をしなかったという面では、問題があると私は考えております。こう申し上げておるのであります。しからば、それがどういうふうになったかということについては、すべての原因が明らかになってから、私は、その責任問題を解決すればいいのではないかと、今のところ、調査の段階において部分的に責任問題を云々していく必要はない、かように申し上げておるのであります。
  139. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 本会議で、通産大臣は、「山の人たちがほんとうに保安を考えて、そうして一生懸命やってくださることで保安が充実してまいると思うのであります。」と答えていますね。山の人たちというのはどういう意味ですか。だれのことを言っておるのですか。
  140. 福田一

    国務大臣(福田一君) 山の人たちというのは、経営者、労務者全部を含めた意味であります。
  141. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 労務者がほんとうに保安を考えて云々ということを言っていいますね。そうすると、労務者が保安のことを考えない、それが本件の一つの事故の発生原因になっていると、こうおっしゃるわけですか。
  142. 福田一

    国務大臣(福田一君) それは、原因が明らかになった上でなければ申し上げるわけには参りません。
  143. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 ここでいう山の人たちというのは、あなたの言われる会社側と見るのが常識じゃないですか。会社側の人たちが保安に十分な熱意を示さなかったということ、利潤を追求するために、それが人命を峰視し、本件の事故が起きた直接の原因であると、そういうふうに率直におっしゃったらいいじゃないですか。そうじゃないですか。今の段階でも、その程度のことはおっしゃられるのじゃないですか。
  144. 福田一

    国務大臣(福田一君) 過去の例から見てみましても、必ずしも経営者だけが原因であったというわけではないようであります。
  145. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 この問題については、いずれ、いま調査団が、これはきょう、佐山さんですか、通産大臣に報告するというようなことになっておりまするし、私どものほうでもいろいろ調査をいたしておりますから、それに基づいて、別な機会にこの問題についてはもっと追及していきたい、こういうふうに考えます。
  146. 斎藤昇

    ○理事(斎藤昇君) 福岡の鉱山保安監督局長が見えましたから、先ほどの補足答弁を願います。
  147. 森本伊佐夫

    説明員森本伊佐夫君) 福岡鉱山保安監督局長の森本でございます。ただいま御質問の内容につきまして御説明を申し上げます。若干具体的な御説明を申し上げたいと思います。  本年の四月二十八日付をもちまして、保安監督官の清水繁春が、三項目につきまして、炭じん関係の監督表による指示をいたしております。それに対しまして、この監督表に対しまする会社側の改善計画といたしまして、この三点、それぞれ監督賞の指示のとおり実施をいたしますという改善計画でございますが、その中で、第三点といたしまして、毎週コンベア・ベルト及びベルト電動機室の清掃を実施いたしますという改善計画書が提出されておるわけでありますが、さらに、監督局といたしましては、炭じんの問題は相当重大災害にも関連する問題でございますので、追っかけまして、三十八年の五月十六日に、さっきの監督表は四月でございますが、その内容をさらに監督局長名をもちまして、通達書の形で五月十六日に、三池炭鉱の鉱業代理人安田所長あてに通達書を交付いたしております。その通達書に対しまして、会社側から、六月七日付をもちまして、改善事項、これはすでに改善を完了している事項、それから現在すでに実施している事項並びに今後実施する予定、そういうような内容につきまして、通達書に対する改善計画が会社のほうから提出されたのでございます。その中で、特に炭じん関係につきましては、週一回の清掃を現在いたしておる、今後もその程度の清掃を完全に実施するというような計画内容が出てまいったわけでございますが、それで、監督局といたしましては、この計画の内容を十分に検討いたしまして、この改善計画が完全に守られれば一応事態の改善はできるであろう、保安状態はいい状態で維持されるであろうという認定をいたしたわけでございますが、その後の私のほうの追跡確認がされておりません。この点は、私どものほうといたしましても十分反省をいたしておるわけでございますが、実は、四月に監督賞の巡回をいたしました後に、八月と十月の二回にわたりまして、やはり監督官の一般巡回監督を三川鉱に対して実施いたしております。この二回の監督官の巡回監督のときに、問題の三川第一斜坑の炭じん検査について追跡検査をしなかったということ、これは非常に遺憾でございます。御承知と思いますが、三川鉱の現在の坑内の総延長が約八十キロございます。それと、現在までの三池炭鉱の重大災害の発生の傾向が、主として作業場周辺、いわゆる採炭切り羽の周辺で密集的に災害が続発してまいったわけでございますので、私どものほうといたしましては、特にその災害の種類は、主として落盤災害、それから運搬災害、そういうような死亡災害、特にそういう災害関係に重大災害が続発する傾向にございましたので、そういった方面への巡回監督を強化するという意味で、その後の二回の巡回監督は、そういう作業場周辺における巡回監督をするように、私のほうから指示をいたしたわけでございます。さらに、その炭じんの問題でございますが、実は昨年ごろから、私どもの非常に重大な監督方針の一項目といたしまして、炭じん爆発防止という項目を新たに入れまして、その炭じん爆発災害防止についてのいろいろな監督を強化する必要があるということでいままでやってまいったわけでございます。特に三池の炭鉱におきましても、作業場周辺の炭じんの清掃、これについては、監督官も相当神経的に調査をいたしました。作業場周辺の炭じん清掃につきましては、毎回巡回のつど相当綿密の指示を実施いたしておるわけでございますが、今度災害が発生いたしました第一斜坑の炭じん清掃につきましては、その後の追跡検査が結果的に実施されていなかったということは、私どもは重々反省をいたしておる次第でございます。
  148. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 関連。いま追認していなかったということは手落ちであったということを率直に述べられました。私はこの問題を言いたかったわけであります。いまの鉱山保安法で、坑内の、ガスについては、どれだけの濃度までは作業できるけれども、それ以上のときは作業させない。そうして坑内の安全を守っておるわけです。四月に、炭じんがあり、濃度が濃くなって危険だからこれを除去しなさい——そうしてあとで確認をしていない、これはもってのほかの監督行為だと私は思う。何のために法律ができたか。一応、今日までの危険をなくするために、濃度の問題や、危険のない安全性の問題がちゃんと法律にある。これを守らなかった事業家も悪いけれども、この監督をそんな状態に置いておいたという行政監督の欠陥というものは、私はほんとうに大いに反省をしてもらわなければならぬと思う。そんなことで法律運営をやってもらっちゃ困る。  それからもう一つ、私はこの際つけ加えて質問をしておきますけれども、炭鉱の事故のあと始末というものがいつもあいまいであるということです。たとえば。出水事故でたくさんの人が今日まで人命をなくしました。古洞の調査地図を作って、再び出水事故がないようにいたしますということを言われたが、これができておるか。これも重要な問題であります。このガス爆発でも最近にまた一つ起きておるわけです。実際に再びそういう事故が起きないように、現場における企業家も、監督に当たられる鉱山保安監督局も、再び人命をなくさないように常日ごろ気をつけるということが必要であると思う。たとえば、少しでもそういう疑いがあったならば、それが徹底的に除去され、これが確認されるまでは営業をちょっと待ったでもしてやるところに、本来の保安監督の使命がある、私はそう思う。何か大臣の答弁を聞いておると、そういう点が非常にあいまいだ。最終的な責任は、いまおっしゃられたように十分な調査の上に立って出るでありましょうけれども、しかしその過程が、私らが聞いていて納得できない。いま監督局長が、追認をしなかったことは申しわけないとおっしゃっておりますけれども、このような事態についてもう一度お答えを願いたい。
  149. 福田一

    国務大臣(福田一君) 私が先ほども申し上げた意味は、調査団がいま調査をいたしておりますので、原因が明らかになった上で、われわれとしても責任をとるべき問題があれば、私はもちろんそういうことを避けようという意味で申し上げておるのではありません。ただしかし、いま調査しておる段階でありますし、また一方におきまして、実はこの監督官の人数もそう十分ではないのであります。現在十分とは言えません。そういうこともいろいろ考えまして、実はいまそれじゃこうしますとか、ああしますとかということをはっきり申し上げなかったわけであります。ただしかし、いまお話のありましたうちで、ガスが〇・五ミリであればこれはやってはいけないのだ、操業してはいけないのだというお話がございました。これはごもっともでございます。ところが、炭じんのほうは実はいまは規定がないので、あります。そこで、こういう故が起きましたの、で、私この間、十一月の十四日に現地に参りまして、そういう規定がないので、実はいまその規定を一応科学的に何か研究して作りたいと思っておる、こういうようなことを言っておったので、そういうことではいけない、炭じんというものは一定の度合いがあったならば、もう常識的にきめて置いたならばいいじゃないか、それがどの程度かどうかなんということでなくて、常識的にきめて、そうしてあとで科学的にこの程度ならば絶対にしてはいけない、こういうような結論を出しなさい、そうしないと、そういうことを研究しておる間にまた同じような事故が起きては困るじゃないかというので、実はいま炭じんの問題についても、一定のこれくらいの分量がたまっておったら、これはやってはいけないという規則を作らせるというように実は指導をいたしてまいったようなわけでございまして、私としては決してそういう意味で責任を回避しようとか、あるいは今後の保安体制を改善しないでこのままで持っていこう、そういう気持で申し上げておらないということだけは了解を賜わりたいと思うのでございます。
  150. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 古洞の調査資料がちゃんとあるかどうか。この前の六十人が水没したときに、通産省は古洞の調査をして再び出水事故が起きないようにするということを約束されている。古洞の地図がちゃんとあって再び出水の事故が起きないという、その防止をやるということですが、どういう状態で、どんな対策で、今どういう現状にあるかということもこの際聞いておきたい。
  151. 森本伊佐夫

    説明員森本伊佐夫君) 御説明申し上げます。豊州炭鉱の坑内出水災害、これも非常に大きな災害でございまして、今後そういった坑内出水を絶対に防止するということのために、現在、役所のほうで持っておりますいわゆる旧採掘あとの図面、これをまず収集をいたしまして、さらに土地の古老の話とか、場合によってはいろいろな科学調査、ボーリングによりまして要所々々に坑内の採掘あとの状況を確認する、そういうようないろいろな方法を講じまして、現在、一応坑内出水の危険性のある地区に対しましては、鉱山保安監督、それから福岡通商産業局、それは協同調査の形になっておりますが、現在の段階では一応坑内の採掘あとの状況は把握いたしておるつもりでございます。私どもといたしましても、そういった坑内出水、もちろん爆発関係も大きな重大災害でありますが、出水関係も非常に結果的に遺体が坑外に搬出できないという悲惨な災害になりますので、こういった坑内出水を絶対に起こさないという態度で、現地の監督局といたしましても厳重な監督を続けてまいっております。現在までは幸いそういうような大きな出水事故はございませんが、ただ私どもがおそれておりますのは、図面にあらわれておる採掘あとは警戒をいたしますが、いかなる科学調査をいたしましても、人間がやることでございますので、あるいは網の目をくぐるような、われわれの予知し得ない採掘あとがあるかもしれない。それに当てることが一番われわれおそろしいことでございますので、これはわれわれのほうで十分監督を強化いたしまして、そういう徴候が若干でも坑内の採掘現場にあらわれた場合には、直ちに必要な措置、たとえば先進ボーリング、そういうことによりまして古洞の状態を迅速にキャッチいたしまして適切な措置を講じさせる、そういうような措置を現在も続けてしまいっておるわけであります。
  152. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 経済情勢の認識を中心とする問題ですが、経済企画庁長官、あなたは十二月十二日に毎日新聞の記者との一問一答で、問いは、長官の政策転換論は相当の波紋を呼んだが、真意は何か。答え、はっきり政策転換といわれると困るが、今後の経済政策の運営にあたって引き締めの基調を強く打ち出すべきだろう、それは国際収支が予想外に悪化してきたのをはじめ、経済情勢が重大局面に立たされており、このままではドラスチックな対策を打たねばならないかもしれないからだと、こういうふうに述べておると新聞紙は伝えているわけです。これは、経済情勢が重大局面に立たされておるということは、どういうことですか。
  153. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 正確に、この言葉を使いましたかどうか記憶がございませんけれども、大体、私の考えておりますことを伝えておると思います。つまり、鉱工業生産、一般に生産と申し上げておきますが、生産の伸びが相当高いわけでございます。十月ごろを対前年に対比いたしますと、一五、一六%アップというような相当高い水準になっております。そして、しかも、それが一般の製品在庫が減っておるから生産水準が高いということではございませんで、製品在庫のほうもやはり高い。そういう両方が高いということでございますから、普通の常識では、多少、理解しがたいような姿になっておる。おそらく、それは何かの事情で在庫が高いことを知りながらも、闘い生産を維持しなければならないという企業家の考え方だと判断をいたしますが、それでは、しかし、適正な利潤、収益を前提にしたところの企業家の態度というものではないように思われるわけでございます。そういたしますと、それが当然、輸入の原材料にも響きますし、各方面に影響がくるわけでございますから、そういう不自然な状態が長く続くということは、もちろんいけませんし、また、続くことはしょせんはなかろう。何かそういう傾向に対しては、政府としては、それは健全な姿じゃないぞという警告を発する必要がある、こういうふうに考えましたのが、そう申し上げました動機でございます。
  154. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 動議はよくわかりましたが、そうすると、そういう情勢になってきたというのはいつごろわかったのですか。
  155. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 実は生産がどうも少し高過ぎる。高過ぎるということは、夏過ぎましたころから感じておったわけでございます。そこで、しかし、製品在庫もふえておるごとであるから、これは一時的な現象ではなかろうかと思って見ておりました期間が一、二カ月ございます。しかし、十月になりましても、そういう趨勢がやまないばかりでなく、むしろ続くような傾向にございますので、これは、十月の統計がわかりますのは十一月の少しあとになってからでございますけれども、そろそろ、そういうことを申さなければならないということを感じたわけでございます。
  156. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、衆議院の選挙をやっているときにも、そういうふうなことは十分、政府としてはわかっていたわけですね。
  157. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは正確に申しますと、必ずしもそうではないのでございまして、もう少し様子を見よう、もう少し見ようと思いながら、たまたま実は私はOECDの会議に参ったりしておりまして、帰りまして、なお情勢が変わらないものでございますから、そろそろ、こういうことを申さなくちゃいけないというふうに感じたわけでございます。
  158. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 ドラスチックな対策を打たなければならないかもしれないからだ、このとおりの言葉を使ったかどうかは別として、ここで言う、あなたのドラスチックな対策というのは、具体的に何を意味しているのですか。
  159. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういう言葉を使ったと記憶いたします。早目に警戒をしておかないと、先へ行ってドラスチックなことをしなければならなくなるから、そういう言葉を使ったように記憶いたしますが、それは、たとえば過去二回、景気調整があったわけでございます。三十四年、三十六年の秋でございますか、たびたび公定歩合を続けて上げるとか、あるいは企業間の信用が事実上非常に膨張するような形で金融引き締めという形をとると、そういったような、いわば極端な方向転換を、当時は輸入担保率の引き上げなどもいたしましたけれども、極端な方向転換を突然ある時点からするということは、これはもうできれば避けなければならないことで、そういうことをしたくないという意味を申しております。
  160. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、このドラスチックな対策を打つ前の手段として早目に預金準備率の引き上げ等も行なわれた、こう理解してよろしいわけですか。
  161. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私自身は預金準備率の引き上げに直接関与はいたしておりませんけれども、たとえば、あのようなことはそういう効果があるというふうに考えております。
  162. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。先ほど、在庫が減らない、ふえておる、それにもかかわらず生産水産は落ちないと言われた。その原因はどういうところにあるとお考えですか。これは私の考えは過去において設備拡張をした、それを稼働化してき、動かなさければならぬ、それは遊ばしておくと資本コストが高くなる、さっきの長官の答弁は、そういうことは資本にとってもうからないことであるのに、そういうことが行なわれているのはおかしいと思うというお話ですが、そうやらなければ利潤を確保できないというので、無理にやっていると、それはまあ現時点ではですよ。それが将来に禍根を残すであろうから移さなければならぬという意見と思うのですけれども、現時点では、そうしなければ今まで投資したものを遊ばしておくことはできない。それは完成した、稼働化しなければならぬ、そういうところにあるのじゃないか。そうすると、過去の設備の行き過ぎということが、ここに、いま言ったような形で矛盾が出てきたのではないかと思うのですが、この点についてはどうお考えになりますか。
  163. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私は木村委員のおっしゃいましたことを一がいに否定する気持はございません。そういうこと、過去におけるいわゆる企業の過剰投資ということの結果がここに出てきておるということも一つの原因であろうと思います。それからまた金融機関等を含めまして、いわゆる系列によるところのシェアの競争、シェア争いといったようなものにも関係があると思いますし、またあるいは、最近はメーカーが直接販売に乗り出すというような傾向もあったり、スーパーマーケットというようなものがございましたりいたしまして、しかしこういう流通機構のほかに新しい流通機構ができかかっておって、両者が併存しておる、併存と申しますか、両方のものがあって、その両方のパイプが品物が詰まるというようなことになれば、従来よりも非常に流通在庫はふえるわけでございますから、そういうことまで関係があるかもしれないとも思いますが、先ほどおあげになりましたことも確かに一つの理由だと思います。
  164. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 その宮澤長官のいわれるドラスチックな対策というのは具体的にどういうことんなですか。
  165. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私が申し上げましたのは、そういうことを避けたいので、早目に警告を出したいと申しましたので、先刻申しましたように、過去何回かの景気調整が行なわれましたような、相次ぐ公定歩合の引き上げでありますとか、極端な輸入担保率の引き上げ、あるいはまた当時は輸入の相当な部分が自由化されておりませんでしたから、実質上、行政上の配慮で輸入をとめるというようなこともある程度可能でございましたし、全体として突然赤信号を出して方向転換を強いるといったようなこと、一般をきして言ったつもりであります。
  166. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、今の段階で、もうそういうふうな、あなたのいう公定歩合の引き上げだとか、そういうふうないろいろなドラスチックな対策を立てなくてよろしいという段階にあると、こう見ていいんですか。
  167. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 元来、預金準備率にいたしましても、公定歩合にいたしましても、そういうような金融上の操作というものは、本来もっと自由に、あまりこだわりなく、そのつど事態に応じて行なわるべきだと、実は私は考えておりますわけで、それ自身がいつやる、やらぬといったような政治問題になったりするのはほんとうの姿でないと考えておりますので、過日準備率の引き上げが行なわれましたが、その後の推移を見ておられて、中央銀行なりなんなりがそのつど適切な手を打たれるということは、私はちっとも排除することはない。そういうことをあまり政治的に気がねをするとかなんとかということでなくて、ごく自然の成り行きに従って打つべき手があればそのときに打っていけばいいのではないか、そういう環境をつくっておきたいという程度考えております。
  168. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 国際収支が予想外に悪化してきたということを言っておられますね。これは十月の十人目に、総理は所信表明演説の中で、国際収支は「総合収支では年度間を通じてほぼ均衡を維持し得るものと確信をいたす次第であります。」、こう言っているのですがね、十月十人目、本会議で。これとの関係はどうなんです。
  169. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 九月の末に外貨予算を決定いたしましたときに、下期の国際収支の見通しをしておるわけでございますが、それによりますと、大体均衡するという考え方に立ってきておったわけであります。しかし、その後輸入の動向、あるいは資本取引の投資関係などを見ておりますと、どうもそれがそのように必ずしもなっていかない。今年度は、御承知のように、年度末に最後の九千万ドルの借金を返すことになっておるわけでございますから、これはもとより最初から前提されておることでございますけれども、それだけにその分だけがよけいな負担になるということで、ただいま収支均衡するであろうという見通しをどの程度に変えなければならぬかということを申し上げる用意はございませんけれども、ある程度年度にも若干の赤字が出るかもしれない、明年度はさらにその赤字が相当政策努力をしてももう少しふえるということは、この程度のことは覚悟しなければならぬのではないかと、こう思います。
  170. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 時間の関係で慎みますが、あなたは、二軍構造解消のための農業中小企業近代化についてきめ手になる対策はあるか、こういう問いに対して、そう言われると特別な対策は見当たらないと正直に言っているわけですね。通産大臣、それから農林大臣、中小企業近代化農業近代化、これは所得倍増計画が達成される昭和四十五年、それまでにどういうような近代化をやろうという、そういう具体的な対策を持っておるわけですか。
  171. 福田一

    国務大臣(福田一君) 四十去年までにどういうふうに中小企業の問題を解決していくかという御質問考えるのでありますが、私は、中小企業のいまの問題は、大企業中小企業との間にいわゆる生産性が非常に劣っておる。それが犬らに解消しない段階、むしろそれは開きそうな段階に来ておりますので、中小企業基本法というものをつくってその方向を明らかにしたわけでありますが、要は、やはり生産性を向上させて、そしてそこに働いておる人たちのいわゆる所得増大等をはかるというような形において、大企業中小企業との間の格差ができるだけなくなるような方途を講ずる、こういうことであると考えております。  それをそれでは実現するにはどういう方法があるかということになれば、もちろんこれは予算の問題もありましょうし、金融面も税制面も、また場合によっては金融のうちでは金利の問題もあるだろうし、特に税制の問題につきましては、いわゆる企業の基礎を鍛えていくというような式の税制の改正というようなことも必要になるでありましょう。いろいろの政策があります。そういうものを総合的に実現しながら、格差を解消するように努力をしていく、そしてできるだけその格差をなくしていく、こういうふうに考えておるわけであります。
  172. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 近代化の方向につきましては、まあすでに農業基本法にうたっておりますけれども、これの進め方が非常におそいわけでございます。ですから、私はこれを急速に進めていきたい。ことに、御承知のように、農業機械化というような面で相当日本農業というものを進めていっておりますけれども、大きい機械等を入れるには、その基盤が十分でございません。あるいはまた、畜産、あるいは果樹、そういう方面に向けるにつきましても、基盤が整っておりません。せっかく近代化の方向へ向けようといたしましても、向けるだけの素地が十分でない、こういうことがございますから、基盤を相当その方向へ向けるように整えていかなきゃならぬ。ことに、土地の、耕地の自立経営の拡大化、あるいは集団化というようなことから考えましても、圃場の大々的整理というようなことを考え、あるいは草地造成というようなことも考えて、その方向へ持っていかなくちゃならぬ。それからまた、何といたしましても、農家、漁業家、林業家の生活を安定させなくちゃなりませんけれども、再々お話しのように、他産業になかなか追いつけないような現状、あるいはまた開放経済下において、日本の農産物に対するしわ寄せといいますか、こういうことも考えますときに、日本の農山漁家の体質を改善していく、そういうことで構造改善事業に着手しておりますけれども、いろいろこれに対する欠陥もございます。そういう面も是正して、当然構造改善を進めなくちゃならぬ問題でございますから、そうして生産性を向上して、生産コストを安くしていくということも考えなくちゃならない。ことにまた、最近問題になっております流通関係、あるいは価格の面、こういう面にも十分手を加えていかにやならぬし、あるいは金融方面につきましても、長期低利の金融等を潤沢にいたしまして、あるいは簡素化して、そういう基盤をつくり、その裏打ちをしていきますならば、私は近代化の方向へ数年後にはずっと進んでいく。残念ながらまだ十分その基盤ができておらない、こういうことでございまするから、これを急速、また強力に進めていきたい、こう考えております。
  173. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 お話はよく聞きましたがね。すると、昭和四十五年の産業構造計画が終わるまでに、いま言った近代化をやるのに一体幾らの資金が要るというふうに見ているのですか、お二人は。
  174. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 倍増計画のときに農業の伸び率あるいはまた計画等も出ておりますけれども、いまその数字は承知しません。現在どれくらいそれに裏づけが要るかということは目下検討中でございます。
  175. 福田一

    国務大臣(福田一君) 四十五年までにどれだけの金が要るか、いわゆる予算面においてあるいは金融面において要るかというようなことは、これは私つまびらかにいたしておりませんが、ただし、考え方として、そういう大きな計画を立てましても、外界の環境がやはり変わってくることもありましょうから、私たちとしてさしあたり予算編成において、来年あるいは再来年というような一応の目標を立てながら、その間において問題の処理をはかっていく、そうして足りないところはまた何らかの財源を見つけながら進んでいく、こういうふうに相なると思いますが、全体としての計画はいまのところ私自身まだ持っておりません。
  176. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それじゃ全く同じじゃないですか。行き当たりばったりみたいなものじゃないですか。近代化計画というなら、しかもそれが所得倍増計画と関連しておるなら、これは農林大臣も通産大臣もその程度のことは一つのビジョンとして当然考えていかなければならぬのじゃないですか。何だか少したよりないですね。そうすると、宮澤さんの言われた、特別に対策は見当たらないと、こういうのはどうですか。それはやっぱり結論になるようですね。
  177. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) まさか私もそこで発言を終わったつもりでございませんでしたので、もし書いてあることがそこで終わっておりましたら、何かの都合で終わっているのだと思います。その次に私が申しましたことは、いずれにしても当面の問題はやはり金融の問題であろう。したがって、中小企業について申せば、高度化にしても、近代化にしても、協業化をはかるにしても、いずれにしても中小企業がほしいと思う理屈の通った金融はつけてあげる。金利も安いにこしたことはないが、それをしなければならないであろう。そのためには中小公庫でありますとか、商工中金でありますとか、そういうところの資金量をふやすことも大切だが、なお中小企業者が持っておるところの価値のある手形はこれが現金化できるような仕組みを考えなければならないだろう、こういうことを申しました。それから、農業につきましては、やはり同じく金融と金利の問題であって、これは農林漁業金融公庫の金の活用のしかた、その金利の制限について考えなければならないであろう、そういうことを申したように記憶しております。いまもそう思っておりますが、これらのことは通産及び農林両省で、三十九年度予算編成との関連で相当具体的に準備をお進めになっておられます。
  178. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いまの話を聞くと、ちっとも、具体性といっても、ただそのときに個別的にやっているだけで、一つの太い線を貫いて、一体資本主義社会の中でどうやって農業近代化するとか、中小企業近代化するという具体性というか、一つの一貫性というものはないのじゃないですか。ただ来年のことは来年、再来年は再来年と、こういう程度にすぎないのじゃないですかね。  それじゃ私は少し十分でないという感じがしますが、問題は所得倍増計画の問題に切りかえていきたい、こう思うのですが、東洋経済の夏季号に、経済企画庁の総合計画局長向坂正男氏が、「所得倍増計画アフターケア」という論文を書いているわけですね。この中の最後のところにこういうようなことが書いてあります。「倍増計画物価についての研究は不十分で、一ページ半ばかり作文があるだけである。」、こう書いてあるのですが、所得倍増計画の中での物価問題が不十分であったというのは、これはこの前私の質問にも宮澤さん認めましたね。どうして不十分だったのですか。
  179. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 当時の事情を私も直接にはつまびらかにいたしませんが、ある程度計画のスタートを時間的に多少急いだような経緯があった由であります。そこで、物価というふうなものについて特別の、あれはみんな分科会を設けまして検討いたすのでございますが、特別の分科会を設けて検討いたしたようなこともございませんで、一般的に、大企業の製品は投資が進むにつれて下がるであろう、生産性の向上につれて下がるであろう。それから、中小企業のものには一部上がるものがあるかもしれないし、サービス業については所得格差が縮まればおそらく上がるであろう。しかし、それらのものは国民経済全体とすれば大体両方で相殺をする関係に立つのではないか。そういう想定でものごとを考えておったようであります。いまから考えますと、この想定は、成長が早かったこととも関連をいたしまして、はなはだ楽観的と申しますか、そういう想・定であったと思います。そこで、中間報告の段階では、今度は物価のための特別の分科会をつくりまして、この問題を検討いたしました。また、新しく先に向かって計画考えますときには、もとよりそういうふうにいたすつもりでございます。
  180. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 三十七年の一月十九日、二年くらい前なんですが、池田総理が所信表明演説で、物価についてどういうことを言ったか、これは記憶していますか。
  181. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) まことにおそれ入りますが、特定のその部分は記憶しておりませんので、御質問に関連があれば御教示を受けたいと思います。
  182. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 しかし、これは所得倍増計画が始まって物価が上がりかけてきたときで、非常に重要な時期じゃないですか。池田総理はこう言っております。「物価は、わが国経済近代化による生産性の向上と流通秩序の改善によって、私は遠からずその上昇傾向を食いとめ得ると確信いたしております。」、三十七年一月十九日、こう言っておりますよ。(「いつでもあんなことを言っている」と呼ぶ者あり)いつでもあんなことを言っているのでしょうが、ほんとうに遠からず物価の上昇を食いとめ得ると確信していらっしゃるのですか、どうなんですか。
  183. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そのころには、消費者物価の上がりというものが成長に伴う過渡的な摩擦的な、ごく短期の現象であって、成長がある程度沈静すればこればなくなるだろうという認識を政府として持っておったようでございます。で、私はいまになって回顧いたしますと、その認識は誤りであった、むしろそういう認識を持っておる。したがって、この問題にはあまり真正面から対処しなくてもいいのではないかと、むしろ多少肯定的と申しますか、幾らかそういうものの考え方があったように思います。いまになって回顧いたしますと、そういう認識というものは認識としても正しくないし、事態の処理のためにも好ましいものではなかったというふうに私は考えます。   〔理事斎藤昇君退席、委員長着席〕
  184. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 やはり宮澤さんは参議院議員だけあって正直だと、こういうふうに思うわけです。  そこで、問題はまたもう一つの問題になるのですが、今年の三月二十日、私の予算委員会における質問で、あなたはこういうふうに言っているじゃないですか。二・八%という数字について、私は消費者物価の上がりについてお聞きしましたね。そうしたら、「年間を通じて五%とか六%という消費者物価の上がりがあるということは、これは政治としてまずい政治だと思います。」とあなたは答えておりますね。その後どうなっておりますか、その消費者物価の値上がりは。
  185. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 当時「まずい政治だ」と申し上げたような方向に残念ながら進んでおります。
  186. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そういうふうに言われると、問題をまた別な形に私は聞いていきたいと、こう思うのですが、二・八%に押えたということ、これはほんとうに二・八%で消費者物価の上昇が押えられるというふうに考えたのか、あるいはそうじゃなくて、別の一つの政策的な意図があって二・八%というふうに押えたのですか、どうやって二・八%という数字が出てきたのですか。
  187. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 経済見通しをつくりますときに、いつでも消費者物価の見方と、それから給与といいますか、消費といいますか、その上がり方の二つの要素が問題になるわけでございます。つまり、政府としてこれだけの消費者物価の上がりを考えておるということを申しますと、それは必ず国民経済全体の中にそういう観念が組み込まれるといいますか、ビルトインされるわけでございます。それから、給与につきましてもやはりそういう傾きがございます。そこで、ある程度政策努力を取り入れましたような形でそういうものの見通しをことに消費者物価はいたすのでございますが、どうもそういう形ではよくございませんので、三十九年度の見通しについては、私はこのまま自然に何もせずに放置されて推移したときの姿と、あるべき姿−あるべき姿と申しますのは政策努力によってあるべきという意味でございます、その姿と、二つを併記して経済見通しと運営の基本態度を述べたいと、昨日木村委員に申し上げたのでございますが、それも実はそのような動機からでございます。
  188. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、現在消費者物価が上がっていることが経済の健全な発展と国民生活の向上を阻害しておる、こういうふうに考えてよろしいのでしょうか。
  189. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは年率で少なくとも金利水準に近いような消費者物価の上がりがある。ただいまのところは、それに近いものがあるわけでございますが、これは経済の健全な発展にとっても、国民生活の維持にとっても、私は有害だと考えます。
  190. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いまの私の文句は、どこにあるか御存じですか。これは自由民主党の十一月十二日、の私ども社会党の物価に対する公開質問状に対する回答ですよ。その中で自由民主党は物価は「経済の健全な発展と、国民生活の向上を阻害しているとは考えない。」とこう言っているんですよ。これは誤りですね。
  191. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 前後の関係がはっきりわかりませんけれども、六%とか七%とかいう消費者物価の値上がりが毎年行なわれるということは、私は疑いもなく経済の健全な発展と国民生活にとって害があると思います。
  192. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、私ども社会党の正式な公開質問に対して、全くあなたの考えと違うようなことを回答しているのじゃないですか。これを見てくださいよ。「自由民主」という本がありますよ。あれを私は国会図書館に頼んでコピーしてもらったんですが。「社会党の公開質問状に対する回答」「三八、一一、一二、自由民主党、消費者物価は必ず安定させる」、この中でそのことがはっきり書いてある。こういう公党として無責任なことをやっちゃいかぬと思う。あなたはわりあいになかなか正直だから、そのことをすなおに認めるわけですね。自由民主党という政党は、そんなことを認めないんじゃないですか。いいかげんなことを書いて国民を瞞着させるものじゃないですか。総裁はきょうはいないからなんですが、実際いかぬですよ、こんなことは。  そこで、また問題があると思いますが、消費者物価の上がり方の、消費者物価指数のとり方の問題です。これは池田さんが所得倍増計画を始めてから三十六年一月になってから物価指数のとり方を変えましたね。どういうわけでこれは変えたのですか。前とどういうふうに違うのです。
  193. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それはおそらくこういうことであると思います。いまの消費者物価指数のとり方は、比較的最近、具体的にはいまおっしゃいました、ちょうど昭和三十六年のある時点でございますが、そのときの現実に行なわれました国民生活、これは何万世帯かを調べるわけでございますが、そのパターンをとりまして、そしてそのときに消費されておったものが現在なら幾らになっておる。一年前は幾らであった、こういうそのときの生活のパターンが、今日までそのまま続いておる、こういう前提のもとに現在の総理府統計局による消費者物価指数というものができておるわけでございます。そこで、この数年わが国の国民生活の内容は、かなり著しく変化をいたしましたし、また、新しい製品なども出ておりますから、ある程度は生活のパターンが変わってきたものを、ある時点では新しくとらなければならないという問題がございますので、最近それが行なわれましたのが、たしか三十六の暮れ、秋ごろであったかと思います。ただいまそれでやっておるわけでございます。
  194. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それは池田さんが倍増計画になってから、あまり物価が上がり過ぎるというふうに印象を与えてはいけないからというので、下がったものを見つけようというので、下がったものを見つけてきて、これに加えたんじゃないですか。ラジオとかテレビとか、カメラとか、耐久消費財を加え、下がったものを加えて全体を平均すると、上がったものと減殺されるというふうに、これは消費者物価のとり方を変えたのじゃないですか。そういうふうに耐久消費財は毎月買うのじゃないでしょう。もしそれをとるならば、家屋の新築とかその他のものだって、そういうものも当然その中に入ってこなければならない。しかも、この食料費だって、みなが外食する場合のものなんかはずしちゃったんですよ。外食なんかはずしちゃった。外食は高いですからね。そういうものをはずしちゃって、安いもの安いものを見つけてきて、消費者物価指数のとり方をやっているんじゃないですか。
  195. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは全くそうではないのでございまして、その三十六年の何月かの時点における全国の何万という世帯について、現実にその月に何をどう買い、どうい消費をしたということを全部とったわけでございます。ですから、数多い中には、ラジオを買ったうちもあるでございましょうし、また円タクに何回乗ったという家もあるでございましょう。そういうものを現実あったままをそのままとってまいったわけでございます。ですから、ただいまおっしゃるのとは全く違うわけでございます。
  196. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それでは今度は大蔵大臣に聞くわけですけれども、通貨価値というのは、あなたの考える通貨価値というものはどういうものでしょうか。
  197. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 質問のあれですが、日本の通貨価値ということと国際通貨価値という二つの問題がありますが、質問の焦点をもっとはっきり……。
  198. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 だから、通貨価値というのは、国内の通貨価値、購買力と為替相場のほうと、二つの面にあらわれる、こういうふうに承ってよろしいかという意味です。
  199. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そのとおりです。
  200. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、銀行へ預金をしている、貯金をしている、あるいは生命保険、公社債、こういうようなものを買っている、あるいは恩給、こういう人々が三年前に十万ならば十万貯金した。いまになってそれを引き出すという場合には、その十万円は、物価が二割上がっていれば十万円の価値はないのだ、それよりも通貨の価値は下がっているのだ、こういうふうに考えていいわけですか。
  201. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 物価が上がり、インフレが高進をすれば、通貨価値が下がるということは事実であります。
  202. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 しからば、十月二十二日に参議院の本会議で木村さんが質問したときに、池田総理は、そういうような形のものが全部で十兆ぐらいある。それが全部合わせると十兆ですか、十兆になる。それが三年間に二割下がれば二兆円は国民は損をしたことになるじゃないかということを、はっきり質問をしているわけですね。総理は何と答えているかというと、ここに議事録がありますが、「貨幣価値の問題につきまして変な議論をしておられましたが、まず貨幣価値というもので一番考えなければならぬものは為替相場でございまして、」云々ということを言っておりますね。為替相場が大事であるということは認めます。だけれども、現実に十兆円ならば十兆円のそういう預貯金にしろ、公社債にしろ、生命保険があるとすれば、物価の値上がりによって国民はそれだけ損をしたというか、通貨の価値が減ったということが事実じゃないのですか、だれが考えても。いいわけでしょう、あなたの今の答弁からすればね。
  203. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 具体的に言えば、確かに戦前に一万円の金を預金して現在一万円の払い戻しを受ける場合は、その預金者は金額の面においては貯蓄したものを払い戻されたわけでありますから、実質的な価値においては相当の低下を来たしております。
  204. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 戦前一万円傾けたことを聞いているのではないのですよ。三年前に預けたものは、池田内閣所得倍増計画によって物価が二割上がれば、それだけ損するということになるのじゃないですか。これは算術から出てくるので、そんなことはあたりまえです。しかも、わが党を代表して木村さんが質問をされたのに対して、総理が変な議論だというようなことを国会で答えているのは実にけしからぬ。そんないいかげんなことばかり言ってごまかしている。  そこで、また話を別にします。それでは、総理は十二月十一日にわが党の大和さんが本会議で言ったときに、エンゲル係数の話をしましたね。エンゲル係数は、昭和三十四年度の四二・四が三九となって云々ということを言っておりますね。この数字はどこから持ってきたのですか。
  205. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは確かに三九というふうに私も記憶をいたしておりますので、総理府の統計局が国の全世帯につきまして調査をいたしておる数字でございます。
  206. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 もう少し説明してください。三九なんてどこにありますか。
  207. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 申し上げますが、昨年度昭和三十七年度三八・九、逆にさかのぼって申し上げます。その前の年が三九・七、その前の年が四一・二、四二・三、四三・五、四四・三、年をさかのぼりまするとそういう数字であります。
  208. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 大蔵省税制調査会に対して課税最低限と標準生計費、これをきめるための資料を提出しましたね。これによるというと、このあれですか、標準生計費というのはどういうふうに見ているのですか。
  209. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 四人世帯で四三・七五となります。
  210. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 標準生計費というのは、具体的にどうやって計算して出したのかと聞いておるのです。
  211. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 主税局から答弁します。
  212. 山下元利

    説明員(山下元利君) お答え申し上げます。家計調査の対象となります勤労世帯の中から、有業人員一人でかつ夫婦または夫婦と子で構成いたします勤労世帯を抽出いたしまして、これについて世帯主の年齢別のモードを求めまして、そのモードに属する世帯について夫婦及び子の平均年齢を算出し、ざらにこれらの夫婦の年齢に比準して一人世帯の年齢を想定して、世帯の年齢別家族構成をきめました。それから消費支出金額は、成年男子の必要栄養量を二千五百カロリーといたしまして、これをとることのできる簡素な食料による献立を作成し、これによる食料費をエンゲル係数で除して計算してございます。
  213. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 食料費を成年男子、一体、一人当たり幾らに見ているのですか。
  214. 山下元利

    説明員(山下元利君) 二千五百カロリーでございます。
  215. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 カロリーじゃない、費用。
  216. 山下元利

    説明員(山下元利君) 食料費でございますか。
  217. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 食費。質素な食料による献立とは、具体的に何なのか。
  218. 山下元利

    説明員(山下元利君) 食料費は、それぞれ一人別に計算いたしませんで、それぞれ一人世帯、二人世帯でいたしておりますが、五人世帯、夫婦、子供三人の標準世帯におきましては三千六百八十二円と計算しています。
  219. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 一日幾らかと聞いているのですよ。
  220. 山下元利

    説明員(山下元利君) 大体一人一日百五十円見当になろうかと思います。
  221. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 百五十円というのは朝、昼、晩全部入って百五十円ですか。何を食べるのですか、百五十円で、一日。具体的に内容を話してくださいよ。
  222. 山下元利

    説明員(山下元利君) 先ほど申しましたとおり、二千五百カロリーとるための最も簡素な食料……。
  223. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 中身を言ってくださいよ。
  224. 山下元利

    説明員(山下元利君) 中身につきましては、国立栄養研究所のほうに依頼いたしまして献立を作成いたしております。
  225. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 これは鯨の肉とか白菜とか、そんな安いものばかり集めてきたのじゃないですか。こま切れ、鯨、菜っぱ、白菜、こんなもの、値上がり率が低いものばかり集めてきて、そうして一日でお米も入って百五十円で生活できるんですか。こういうような非常に低い生計費をわざととってきているんじゃないですか。これは人事院勧告で使った食料費と違うでしょう、労働大臣どうですか。
  226. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) はっきり記憶いたしておりませんが、ちょっと違うように思います。
  227. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それじゃ、いま言った大蔵省が出した資料ね、大臣持っているでしょう、大蔵省税制調査会へ出した資料だ。この付表にあるのが、食料費とエンゲル係数なんか全部書いてありますね…−。あるわけですよ、僕はもらったんだから。大臣に上げてくださいよ、大臣に聞くんだから。その五人世帯を見てごらんなさい。エンゲル係数が四七・四八になっていますよ。四人世帯が四三・八〇%ですよ。こうやってエンゲル係数だんだん上がっているじゃありませんか。総理が言うように、エンゲル係数が下がったから、家計がよくなったなんて、事実と違うじゃないですか。
  228. 山下元利

    説明員(山下元利君) それぞれ標準世帯は年齢別に世帯主四十二歳、妻三十八歳、そのうち子供が十二、十一、四歳、このような構成になっておりまして、このような基礎に基づいて計算いたしておるのでございます。
  229. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 エンゲル係数を聞いているのだ。
  230. 山下元利

    説明員(山下元利君) それもそういう世帯においてのエンゲル係数でございます。
  231. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 だからそのエンゲル係数、説明してごらんなさいよ。  じゃ、最後にしますが、そうすると、エンゲル係数が四人世帯では四三・八〇、五人世帯では四七・四八、ぐんと上がっていくわけですよ。そこにあるでしょう。それから物価問題懇談会が、最近の物価問題に関する報告を出しておるわけです。そのうしろに表がついておるわけですね、その表は配らないわけですよ、国会議員に、ほかのものだけ配ってあるけれども。これを見ますと、五分位の表を見てみましても、一分位のエンゲル係数がずっと高い、上へいけばいくほどずっと高くなっていく、こういう数字があらわれておるわけです。これは一番しまいの3の7という表です。3の6という表を見ると、「五分位階級別勤労者世帯の収入と支出」という表があります、物価問題懇談会で出した表で。これを見てごらんなさい。五分位のうち第一分位はみんな赤字ですよ。三十七年が赤字、三千五百二十九円、いまのは平均です。三十七年上半期平均四千百四十五円赤字、三十八年上半期の平均が五千七百三十八円赤字、第一分位はこうやって赤字がふえておるわけです。しかも、第二分位もそれぞれ収入が減っています。そうでしょう。第二分位、第三分位、第四分位まで収入が減っています。第五分位だけが収入が上がっておるわけです。これが国民生活の実態になっているのじゃないか。だから高額の所得者は収入がふえているけれども、そうでない所得の人は、こうやって赤字がふえておるということです。これがいまの国民生活の実態なんです。それをごまかして、いかにも景気がいいとか何とかかんとか言っておるということが、これは池田内閣の非常な欺瞞性が、そこにあらわれておると思うのです。ここで時間が来ましたから、私はきょうはこれでやめます。  そこで最後に、企画庁長官に責任を持ってもらいたいのですが、池田総理が、所得倍増計画の後に、衆参両院あるいは予算委員会その他で、いろいろ統計を引っぱっているわけです。その統計の出所を明らかにしてもらいたい。同時に、総理は一部分だけ、都合のいいところだけぽっと引っぱってくるわけですが、そうじゃなくて、その統計の全体を全部出してもらいたいのです。私どもは、それに基づいて、十分池田内閣の……、池田総理は、うそを申しませんというようなことを言っておるけれども、国民生活の実態をごまかしたり、うそのような数字をたくさん並べているということを明らかにしたいと思うわけです。そのものをはっきり、すぐというわけにいきませんから、近いうちに出して下さい。総理が衆参両院の予算委員会その他で述べた数字、その根拠、出典、全体の数字、全部出して下さい。それを私は要求しまして、私の質問を時間が来ましたから、これで終わりにします。
  232. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 稲葉君の質疑は終了しました。
  233. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に大倉精一君。
  234. 大倉精一

    ○大倉精一君 私は、最後の質問者でありまするが、年末を控えて国民の諸君が非常に心配しておりまする二つの事態に対しまして、この際、ただしてみたいと思います。  すなわち第一は、郵政省の労使関係の問題であり、一つは国鉄の労使関係の問題であります。時間がありませんので、端的に御質問を申し上げまするので、答弁は誠意を持ってなされるようお願いしたいと思います。  新聞等によると、この事態に対しまして、当局側も、組合側も、責任は相手側にありと、こういうことを主張して譲られぬようでありますが、組合側はとにかくとして、郵政行政をあずかる郵政大臣や、あるいはまた国鉄当局が、組合と同列になって、責任は相手にありと、こういって無策に日を過ごす、こういうことは許されぬと私は思っております。  そこで、まずこの問題の査問に入る前に、念のために責任の所在を明らかにしたいと存じますけれども、郵政省の問題は、当然これは郵政行政をあずかっておる郵政大臣、国鉄の問題は、国鉄の総裁並びに監督の責任ある運輸大臣、この方々にあると思うのでありまするけれども、念のために、まずこれをひとつお伺いをいたします。
  235. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) ただいまお説のとおりでございます。
  236. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 大倉さんの御趣旨のとおり、国鉄に関しましては国鉄総裁、いな運輸大臣に全責任があると存じます。
  237. 大倉精一

    ○大倉精一君 それでは、全責任のある郵政大臣にまずお伺いしますけれども、この事態に対しまして、話し合いをしておるのか、あるいはしていないのか、話し合いをしていなければ、その理由はどういう理由であるか、これをまず明らかにしてもらいたいと思います。
  238. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) この問題につきまして、まず労資の紛争によって、この年末の繁忙期に国民の皆様に御迷惑をかけていることにつきまして、私としまして、まことに遺憾に存じております。話し合いをしておるかどうかという端的な御質問でございましたが、これにつきまして、若干の説明を加えてお答えを申し上げたいと存じます。  私は、かように考えております。事業の運営というものは、もとより労使が相協力してやらねばならぬことは、いまさら申し上げるまでもないのでございます。しかしながら一面におきまして、事業というものは、やはり経営の衝に当たる者、そうして一方、労働組合のいわゆる労働者、それぞれ役割があると思うのであります。このお互いの職分というものを尊重し合って、そうして協力をしていって、初めて事業を円満に運行できるのじゃないか、さように私は考えておるわけでございます。もちろんそういう場合に、経営者は、労働者の職分、権限を尊重し、また、労働者は経営者の職分、権限を尊重するというところに、事業の健全な発展の基礎があると思います。今回の問題は、御承知のとおり、すでに団体交渉という問題になったのでありまするが、その際に、特定郵便局問題という、経営者の職分に属する、いわゆる管理運営に属する事項を、この団体交渉の中に取り入れて、そうして組合が、そのほか三十数項目の要求を出されまして、そうしてこの問題が解決しなければ、ほかの問題がかりに妥結しても、この争議の態勢はくずさない、こういう強硬な態度でこられたわけであります。  で、私はこの特定局問題は、管理運営の事項であるから、これは、団体交渉から切り離して、こういう問題は、別途に研究すべき問題であると思う。年末の繁忙期であるから、その他の経済問題あるいは労働条件に関する問題については、十分に団体交渉をして話し合いましょう、こういうことを何度となく組合側に申し入れでおるのでありまするけれども、組合の側では、それを聞き入れてもらえないのでございまして、はなはだ私としまして遺憾に存じておる、こういうのが現状でございます。
  239. 大倉精一

    ○大倉精一君 そうしますと、いま話し合いをしていないのですか。つまり、いまあなたがおっしゃることは——私は、きょうは、問題の中身へは入ろうとしませんが、あなたは、組合のほうはおれの言うことを聞いてくれぬとおっしゃる、組合のほうは、おれの言うことを大臣は聞いてくれぬと、こういうことが問題なんでしょう。しかしこれは、話し合いをしなければ、一体いつになったら解決するか、初めに、全責任は私にあると、こういうお話ですが、郵政業務がとまったならば、これは郵政行政をあずかっておいでになる古池さんが、全責任をとってもらわなければならぬ。どうしても解決する能力がなければ、別途に責任をとることを考えてもらわなければならぬ、こういう事態が発生するわけですね。だから、中身はとにかくとして、この際、話し合いをしなければならぬのだが、今の説明によると、話し合いもできていないということは、どこに一体ネックがあるのですか。これをひとつ聞かしてもらいたい。
  240. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) 大体の今日までの経緯は、ただいま御説明申し上げましたが、去る十二月三日に組合側と私が会見をいたしましたその際に、組合側は、ただいま申しました、この事項を撤回しない限りは、自余の問題に入ることはできない、こう言って席を立って帰られたのであります。で、私としましては、それは因る、この問題は切り離して、他の問題について団体交渉をしましょうということを再三言っております。そうして、いま事務当局の間におきましては、組合側とは絶えず接触を保ちながら、いろいろと話はしておりまするけれども、この問題がネックになっておりまして、今日団体交渉は行き詰まっておる、こういうのが現状でございます。
  241. 大倉精一

    ○大倉精一君 私も中身はよくわかりませんけれども、私がわからぬから、国民もわからぬわけですね。ですから、いまあなたのおっしゃっておることは、郵便物がとまっておる理由には国民の前にはならぬわけです。  そこで、こういう問題につきましては、いろいろ歴史的な背景があるわけですね。私が聞いておるところによりますると、二十三年までは、この問題は団体交渉の対象事項になっておったと聞いております。さらにまた、その団体交渉においては、特定局舎は国有という原則をお互いに確認をしておる、こういう歴史的な事実があるわけですね。さらにまた、ことしの三月二十二日まで管理運営の団交の玄関論争というのじゃなくて、この問題は、別途にひとつ労使協議をやろうじゃないか、これもきまっておったようですね、これもきまっておった。ざらにまた、そういうことは歴代の郵政大臣の村上さん、田中さん、鈴木善幸さん、迫水さん、なくなった手島さん、代々の大臣も、そういう慣行をおやりになったということも聞いております。さらにまた、昨年末に手島大臣は、労使間の小委員会をつくろうという提案までなされて、小委員会において、ずっとこのことを労使でやってきた。ところが、三月二十二日はちょうど春闘の最中であったので、継続交渉をしようということで継続交渉中にかかわらず、古池さんになってから突如として方針、態度を変更されて、一方的に通達を出された、こういう事実を私は聞いております。これは事実ですか。
  242. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) ただいまお話のございました点につきましては、組合側の事態に対する認識と、われわれ経営者側の認識とがやはり食い違っておると存じます。と申しまするのは、組合側では、かような問題を従来団体交渉によって解決してきたと、こういつておられまするし、私どものほうでは、これは組合側と意見の交換をして、そうして組合の意見の中で、もっともなことはわれわれが取り入れて実行している、こういうふうにわれわれは考えておるのでありまして、そこに両者の間の行き違いと申しましょうか、認識の相違があったと、こう私は考えております。
  243. 大倉精一

    ○大倉精一君 私はそういう中身に入ろうと思いませんが、そういう認識の相違を解きほぐす努力はやっておいでになったんですか。その努力なしに、これは認識が違うのだ、おまえのほうとおれのほうと考え方が違うのだ、違うからしかたがない、どうにでもせいというのでは、これは事態の解決になりません。その認識の相違について、どういう努力をされておりますか。
  244. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) この問題につきましては、私の所信を常に申し上げまして、組合側の御意見は十分に伺って、そうしてわれわれがもっともだと思うことは、それを取り入れて、今後ももちろんやるつもりである、十分にそういう点は組合側もお考えを願いたいということで、あらゆる機会に、私はさように申しておるわけであります。
  245. 大倉精一

    ○大倉精一君 先ほど事務当局がいろいろ話し合いをしている、こういうお話がありましたが、こういう重大な問題を事務当局にまかして、自分自身で積極的に解決しようという、こういう努力と熱意がなければ、この重大事項は解決しませんよ。ですから、私はどうも、さっきのこと並びにいろいろ組合から聞いたところによりまするというと、事務当局にまかして、あなたは団交の表面に立たれない、こういうことを聞いておるのですが、いま、そういうふうになっているのですか。
  246. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) 事務当局にまかしておるというわけではございません。私が事務当局を指揮命令をしてやっておるわけでございます。
  247. 大倉精一

    ○大倉精一君 もう指揮命令をしておる段階ではないと思うんですね。私は、きょうこうやって最後の質問者として、特にこの問題を取り上げたのは、年末を控えて一刻の猶予もできぬという、こういうせっぱ詰まった問題でありますから、その他一切問題をたな上げして、との問題をお尋ねしておるものであります。もうこの段階で、最高責任者であるあなたが指揮命令を陰からやっておるという段階ではないと思う。みずから陣頭に立って、どうしてもこの問題をきょう直ちにでも解決をするという、こういう努力をする段階にあると思うんですけれども、いかがでございますか。
  248. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) お説のとおり、この問題を一日もすみやかに解決したいという念願は、おそらく大倉さんに私は劣らない考えを持っておると存じます。しかしその解決のしかたは、あくまでも正しい道に従って解決したい、こう私は考えて苦心もし、努力もしておるような次第でございます。
  249. 大倉精一

    ○大倉精一君 そんなことを言っておったら、来年になっても再来年になっても解決しませんよ。あなたは、これが正しい道とお考えになっておる、組合はまた別の道を正しいと思っておいでになる。こう理論が並行しておったら、いつこれが合致するんですか。やっぱり最高責任者、郵政の行政を担当しておいでになるあなたのほうから組合のほうへ近づいていって、そうして話し合いしようじゃないか、こういう積極性がないというと、私はこの問題は解決しないと思う。解決しなければ、迷惑するのはだれだ、国民ですよ。しかも、さらにまた極言をするならば、この事態を解決する能力がないということになれば、これはやっぱり責任をとらなければならぬ、こういう事態まで論議をされるわけなんです。ですから、私はこの際、いま、一方的におやりになったという通達を直ちに撤回せいといってみてもなかなかむずかしいでしょう、むずかしいが、一応保留するなり、あるいは何なりという形でもって、とにかく話し合いをするという窓口、糸口をつける、これがいま焦眉の急であろうと思っております。いかがでしょうか、あなたみずから積極的に解決に努力をする、こういう決意と実際の行動について、ここでひとつ言明してくれませんか、熱意を持っているだけでは解決しません、いかがでしょうか。
  250. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) この解決のために私が非常に苦心もし、熱意を持っておるということはお認めいただいたと思いますが、具体的には今晩どうする、ああするということについては、ここでは私は申し上げられませんが、極力このために努力をいたしますということを大倉さんにこの席でお答え申します。
  251. 大倉精一

    ○大倉精一君 くどいようですけれども、努力は、いままでもしておいでになったと私は思う。思うけれども、いままでの努力では、もうこの段階では足りませんから、画期的な努力をしてもらう、しかも早急にやってもらわないと間に合わない、今晩というのは、これは一例でありまして、早急にあなたみずからが積極的に解決する、この努力と行動を開始する、こうならなければいかぬと思うんですが、そういう用意はおありになりますか。
  252. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) 今後の努力の方法につきましては、しばらく私におまかせをしていただきたいと思います。
  253. 大倉精一

    ○大倉精一君 方法を言っておるわけではないのでありまして、あなたがすみやかに解決するために行動をもってやろう、行動を開始する決意だけで、あぐらをかいておったのでは解決できませんから、今後、年末ももうすぐ迫っておりまするから、そういうことを身をもって努力をするという、こういう決意を、もう一回特にお伺いしたい。国民を安心させてやって下さい。
  254. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) ただいまの御意見は、十分私も承りまして今後努力いたしますが、しからばここで、どんな方法で、それじゃ今晩組合の幹部と会うかどうかとか、そういうことにつきましては私におまかせをいただきたい、こう存じます。
  255. 大倉精一

    ○大倉精一君 それじゃ、あなたがいまここで、それ以上のことを言われないかもしれませんけれども、最高責任者として責任をもって解決をするということは言えますね。そういう工合に私は信用してもよろしゅうございますね。
  256. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) 本問題の解決のために、最善の努力をするということを申し上げます。
  257. 大倉精一

    ○大倉精一君 どうも最後の歯切れが悪いんですけれども、これは努力をすることは当然ですけれども、解決をすると言ってもらいたかったんだが、これはするということであると私は解釈して、そうしてあなたのこれからの努力に期待します。ただし、解決できなければ、その責任はあなたにある。これはしっかりとひとつ、頭に置いてもらいたいと思っております。  それから次には、国鉄の総裁にお伺いをいたしますが、まず第一番に、同じ質問になりますけれども、どうも最近、最高幹部が雲の上に上がってしまっておるから解決がおそいのじゃないかと思っております。たとえば国鉄の団交にいたしましても、いろいろ事情を聞いておりまするというと、かつては総裁みずからが団交の席に出て、陣頭に立って努力をされたと聞いておりますが、新聞を見ますというと、十三日の団交の席上で、「「合理化とはこういうものだ。計画変更は考えられない」と答え、さらに「平和的に解決するよう話し合ってほしい」」と言って、団交の席上を退席になったということが新聞に書いてありますので、国民はこれを読んで、なぜ総裁は、あの団交の席にとどまって、自分でもってこの当面の解決をしてくれないのか、こういう国民の心理があったと思うのです。したがって、いま古池さんに言ったことと同じことでありますけれども、この事態に立って、あなたが自分でもって陣頭に立って、早急にこの問題を解決する、こういうこれから動きをされる、こう決意がおありになるかどうか。おありになるかよりも、そういう決意をしてもらいたい、こういうことを要望するのでありますが、いかがでありますか。
  258. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 大倉さんにお答えいたします。解決をいたしたいということの熱意においては、決して人後に落ちるわけではありません。この間も動力車組合の代表者と会って、いろいろ話をしたのでありますが、あまりに主張がかけ離れておって、もう交渉の余地なしと見たので、私は途中で座を退いたのでありまして、これは熱意があるとかないとかいう問題じゃ全然ない。これはのみそうもないということに見て、実は退却したのであります。どうして一体、そういう工合に考えたかということを一席申し上げぬというとあなたは御了解にならないと思うからして私は申し上げるのだが、いまの国鉄の内部の事情をひとつお話ししたい。  国鉄のいまの台所ですね。ことしあたりは多少のプラスになりますが、来年はプラスマイナス・ゼロですよ。再来年になるというと、三、四百億くらいのマイナスになる。どうしてそうなるか。要するに人件費の増です。人件費というものは、この三、四年の間、一年に一割ずつぐらいふえておる。そうして三十七年度においては人件費が、ほかの勘定に入ったのを入れますと二千七百億くらい、ほとんど全収入の五割です。来年になるというとそれが三千億以上になる。つまり国鉄の台所の一番大きな問題は、収入増よりは支出増ということです。それで支出増の大をなすものは人件費です。そして人件費を合理化するということは、独立採算制のもとにある国鉄から言えば絶対必要なんだ。これがなかったら国鉄は立っていかぬ。その意味からいいまして、できるだけ人件費の合理化をやる。何もこれは首を切るというわけではないのですよ。たとえば今度の動力車労働組合の問題のごときはスチーム・ロコがだんだんなくなる。そして、これにかわって電気機関車とかディーゼル車とか電車とかがふえてくる。それに伴って当然蒸気を前提にした従来の機関区というものを再編成していかなければならない。そしてまた修繕のやり方も変わってくる。それによって、いままでかりに百人使っておったものを六、七十人に減らす。そうして減らし得た人間を輸送量の増強に必要なほうへ回すということで人件費の合理化をしなければならぬ。やはりこれをやらなければ国鉄は立っていかぬ。この問題は、大倉さんに申し上げますが、何もいま急にとっさに起こった問題じゃない。昭和三十六年に大体の計画を立てて、その後事情の変化に応じて、われわれの計画というものをモディファイして、そして組合と交渉して組合を納得させるべく今日まで努力してきた。それでわれわれは合理化をして得た人を解雇しようというのじゃない、配置転換をしようというのだ。要るほうへ人を回して、輸送力の増強を人をふやさないでやっていこう、こういうところにわれわれの合理化があって、これが国鉄が生きるか死ぬかということの大問題なんです。これはどうしてもやらざるを得ぬ。  しかもその配置転換をするについては、実は自分のうちから通っておる人間をほかへ回すというようなことになると、実に気の毒だというようなことで個人的に同情をして、できるだけ迷惑のかからぬようにしてやろう、こういうようなことでやっておるのでありまして、どうも大倉さん、はなはだあなたに申し上げかねるが、どうも交渉はむずかしいですよ。私が自分で出たって、なかなかできるものではない。私は組合員に言うのですよ。そういう事情だからぜひひとつ納得してくれ、そうしてお互いの立場をもってひとつ談判しようじゃないか、平和的に解決しようじゃないか、家庭争議をするのはいかぬ、いわんや行儀が悪いことだけはまっぴらごめんこうむる、こういうことでやってきたのです。で、この問題は、なにか二十日にやろうというのですから……。いままでも極力やっておりますよ。私が自分で出たところで、当局者が出たところで結局帰着するところは一つだ。私が出ることによって解決するというなら、決して自分で出ることにちゅうちょするものではない、その点については、十分御了承を願いたいと思います。
  259. 大倉精一

    ○大倉精一君 だいぶ国鉄一家のやりくりの話を聞きましたけれども、今度の問題は幾らよこせ、こんくらよこせということじゃない。最近相次いで起きておる国鉄の事故にかんがみまして、機関車労働組合のほらでは、輸送安全のために要求しておる、見解の相違があるのは当然でしょう、それはたとえば山田常務理事が、これは十二月十四日の毎日新聞に出ておったのでありますけれども、合理化と事故の原因とは何の関係もない、こう言っておられます。おられますが、今度動力車の実際に運転しておる人の中では機関区の統廃合、車両検査のキロ数延長は安全を無視するものだという、こういう見解の全く相対立した意見があるのですね。これは金銭問題じゃない。ですから、これは輸送の安全の根本問題が争点になっているのでありまして、しかも林君は、合理化に反対しないと言っておりますよ。合理化の実施については、お互いに相談をすると言っておる。それを相談しないで一方的にやっているから、これはいけないと、こういうことらしいのです。あまり私は中に入りたくないのですけれども、大事な問題です。あなたはいま人件費を減らすと言っておりますけれども、先ほどから瀬谷君の答弁におきましても合理化合理化、あるいは人が足らぬとか臨時でやるとか言っておりますけれども、一番最後には、安全を確保するのは人間です。その人間に対する投資を怠って、機械設備だけに頼っていくということは非常に危険な問題で、私は、こういう問題にきょうは触れる意思はありませんけれども、いずれまた、委員会等でもいろいろ意見の交換をしようと思っておりますけれども、今度の動力車の問題は、そうではなくて、いわゆる機関区の統廃合なり、あるいは車両検修のキロ数延長というものは非常に危険である、こういう要求なんですよ。しかも機関士というものは、事故が起これば自分の生命がなくなってしまうのです。交通関係の労働者は、特に私は交通の安全——みずからの安全と同時に国民の安全を要求するということは、これは当然であり、むしろ義務である。ですから、いま機関車労働組合の連中が要求しておるのは、交通の安全、みずからの安全もさることながら、この国鉄という大事な機関において国民を安全に輸送をしようという、これがためには、いま国鉄当局のやっておることはいけないのだ、これでしょう。ですから、これはおまえの言うことは間違っておるといって頭から排斥してしまって話に乗らないという、これはいかにも一方的な問題じゃないですか。これはあんたそうおっしゃるなら、私だけがこう言っておるのじゃない、新聞の記事をひとつ紹介しましょう。こういう意見があるんですよ。一般国民の間には、この問題で組合側は特に安全保安の問題をポイントとして初めからいきり立っているのに、当局側は初めからそっぽを向いておるということはどうも解しかねる、これは法大の中島教授が言っております。さらに、また当局の責任者が、ストに入ったあとにも、何でストに入るのかわからぬと言っているのは全く話にならぬと、こう言っておる。さらに続けて、組合も合理化には原則として反対ではないと言っておる。合理化を納得づくでやれないことがおかしい、こういう一般の意見がある。いろいろ違った意見もあるでしょうが、やはり国民の感情としてはそうじゃないかと思う。さらに、また技術革新によれば、いまおっしゃったように、配置転換なり労働条件の変化というのは常識的にも当然なんです。当然だけれども、労働条件をまともに受けとめるのは労働者です。その組合の団体と話し合い、納得させるだけの説得力がなければいかぬと思う。その説得力がなく、あるいは説得する努力もせずに、この問題はむずかしいですよ、むずかしいから私はそこにおってもしかたがないから出てきました、これじゃしようがないでしょう。こういう問題に対して労使間がいま非常に対立しているといいますか、非常にむずかしい問題ですよ、このむずかしい問題を解決するのがあなたの責任であり、経営管理の能力なんです。でありまするから、私は冒頭申し上げたように、昭和二十三年ころまでは総裁みずからが団交の席に立って——二十三年でありましたか、ちょっとよく記憶ありませんが、陣頭に立っておやりになったが、最近では事務当局にまかしておいて、さっき古池さんの言われたように、うしろのほうから指揮しておるということでは問題の早期解決になりません。解決になりませんから、あなたの御意見は御意見として、いまとにかくこういう事態が起こっておるのですから、あなたみずからが陣頭に立って早急にひとつ解決してもらいたい、この努力をしなければ、いつまでたっても平行線になるんじゃありませんか。しかも、年末繁忙期に際して私は非常に心配しておる。ですから、この際、あなたが陣頭に立ってこの問題を解決するという、こういう決意と勇気をお持ちになることを要求したいのですけれども、いかがでしょうか。
  260. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) お答えいたします。国鉄の意図は、つまり動力の近代化ということが根本問題で、決して輸送の安全の危険と引きかえにこれをやろうという意思は毛頭ない、この点はどうかひとつ大倉さんにおいて絶対誤解のないようにお願いする。われわれは輸送の危険までおかして合理化しようなんという考えは全然ないのであります。もしも組合のほうにしてそういう考えを持っておるなら、私はこれは認識をひとつ変えてもらわなければいかね。  それから、さらに、私に陣頭に立ってやれというのですが、問題は、私はこの間組合の代表者に会いましたよ、会いましたら、さっき申し上げたように、どうも主張がすっかり食い違っている、全然もう握手する余地なし。それでどうもこれはいかぬということで、実は見切りをつけてあれしたのですが、二十日にやろうというのですから、あした、あさってですから、その間にひとつ私が出ることにおいて問題の解決がつくということであるなら、決して私としては陣頭に出てやるということをちゅうちょするわけじゃない、その点はひとつ御了承願いたいと思います。
  261. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関連して一つお伺いしたいのですが、いま総裁が、この合理化は決して要員削減だけではないのだし、安全を犠牲にして合理化をやろうという気は毛頭ないとおっしゃいました。そこで私お伺いしたいのですが、先般総武線で衝突事故を起こした運転士は、運転士になってまだ一カ月たつかたたないかの人だ。この話を聞いてみると、いま養成期間が昔よりも短くなっている、要員も不足をしている、養成定員も不足をしている、検修要員も減らそうとしているという事実がある。そうすると、安全をある程度犠牲にしても、人間を浮かそうという意図が合理化政策の中に出ているのではないかということは言えるんじゃないですか。もしそうじゃないというならば、昔に比べれば、たとえば十年前に比べて、養成期間も、あるいは養成定員も不足していないということが言えるんですか、言えるか言えないか、御答弁願えますか、事実はっきりしておりますから。
  262. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 最近のこの運転士などの養成におきまして、非常に期間が短くなったというようなことは、これは昔に比べると私は事実だと思う。しかし、それもいろいろの機械が、たとえば輸送安全装置とかいうようなことでもって、ある程度短くしてもよくはないかというようなことでしたことでありまして、われわれが危険をおかしてやったということは全然ないのであります。  もしも今度の、いま実はこの指導訓練養成の問題について根本的に検討しておるのでありまするが、そういういま言われたようなことが原因であるというなら、これは国鉄としては、人間をふやしても、決して減らすようなことは絶対にしない、こういうことだけは私は誓って申し上げることはできるかと思います。
  263. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 大倉さん、だいぶ時間が過ぎましたから……。
  264. 大倉精一

    ○大倉精一君 簡単に申しまするけれども、ここまで総裁にいろいろ意見を聞いてまいりまするというと、ますますもって話し合いができないということが私はふしぎと思うのです。私はいま国会議員として質問しておりますけれども、これをかりに新聞で見れば、私は一国民とすれば、ますますおかしいと思います。なぜかといえば、林委員長合理化には賛成である、ただし、保安の確保が大事であると言っておられる。あなたも合理化はしなければならぬが、しかし、保安の問題を犠牲にしようとは思っていない、おかしいじゃないですか、話が一致するじゃありませんか。方法が違うんでしょう、方法が。方法については、あなた方の高いところから、あるいは高邁な技術的立場からお考えになるのと、現実に毎日汽車に乗って、そうしてレールの上を突っ走っている現場の従業員の体験からくる実感ですね、これも織り合わして十分話し合いするということは、これは当然でしょう。でありますが、ここまできて、なおかつ話ができないというのは、何か意地があるんじゃないですか、いきさつがあるんじゃないですか。国民にはそういうことは関係ありませんよ。しかも、さっき申しましたように、いかに合理化しても、保安を確保するのは人間です。人間に対する取り扱い、先ほどあなたがおっしゃったけれども、これはおろそかにしていないとおっしゃるならけっこうだと思う。そうなれば、ますますもって話をする余地があるじゃありませんか。ですから、これはいろいろないきさつがあるでしょう。あるでしょうが、年末を控えて、そういうことは乗り越えて、責任のある国鉄を預かっているあなたのほうから積極的に解決に努力をするという動きを見せてもらいたい。そうでなければ国民は納得できませんよ。さらに、また、この状態で推移をして解決ができない、大混乱が起こった、こうなれば、国鉄を預かっておいでになるあなたの責任はどうするか、やめるばかりが能じゃない。この問題を解決するのだとおっしゃるならば、現実に解決しなければならぬ。こういう点で、もう一回あなたにお伺いしたいのですけれども、さらに続いて運輸大臣にもお伺いするのですけれども、早急に、私は今晩とは言いません、さっき古池さんの言ったように、早急にひとつ話し合いの糸口を見つけて、この際、解決するように、総裁みずからが積極的に動いてもらいたい。運輸大臣は、こういう事態を監督官庁の最高責任者として黙って見ておるという手はないと思う。国鉄の家庭争議をあなた黙って見ておってもしようがない。しかも、いま家庭争議とおっしゃいましたけれども、子供とおとなと同じ意見に立って、あいつはけしからぬからほっておけ、そういうわけにはいかぬのです。やっぱりおやじからやらなければならぬ。そういうことを運輸大臣として黙って見ておるわけにはいかない、どうですか。国鉄の総裁にお伺いいたします。それから運輸大臣に最後に。
  265. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 私は黙って見ておりません。非常な関心を持ちまして、国鉄の代表者の諸君にも、もうすでに会っております。それから、世に国鉄一家とよく言われますが、私は、いい意味におきまして国鉄は一家のような、一家の団らんの風潮を示していただくよう念願して、国鉄代表、すなわち総裁、労組の代表者等が必ず円満裏に解決することを期待し、それを見守っておるのでございまして、これに出ろと言われればもちろん出ます。もうすでに私は本国会の始まる前に、国鉄の労組の代表者十数名に会って意見を交換いたしております。
  266. 大倉精一

    ○大倉精一君 大臣ね、いまそういう御答弁があったが、きわめて抽象的なんだ。三河島事件が起こり、鶴見の事件が起こるというと、すぐ監査命令などやる。今度も、事は労働争議ですけれども、たいへんな事件ですよ。これはたいへんな事件なんだ。これをあなたそういうことを期待しておる、これだけじゃこの事件はおさまらぬですよ、おさまらぬ。これをよく大臣も腹に入れておいてください。あなたはやっぱり鶴見事件と三河島事件と同じようにこの事態を見てもらいたいと思う。  国鉄総裁、さっき私が強く希望したことについて御答弁を願います。
  267. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) まだ二十日まで日がありますので、われわれは、誠意を尽くしてわれわれの立場をよく説明して、そうして家庭争議の起こらぬように最大の努力をいたしたいと存じます。ただ大倉さんに断わっておきますが、この合理化という問題は、国鉄にとっては大問題なんです。これはもう譲るべきところは譲るが、譲るべからざるところは譲ることができない点があるかもしれない、この点はどうぞひとつ御了承願いたい。できるだけ平和裏に解決したいということは、私どもの最も念願するところであります。
  268. 大倉精一

    ○大倉精一君 最後に、もう終わりますけれども、総裁、最後に一つ申し上げたいのだが、譲れぬところは譲れぬ、これはそうかもしれませんが、それだけでは、やはり国鉄を預かる者としてはすべてではないと思うのですね。ですから、やはりそういうむずかしい問題でありまするから、それを説得をし、その事態をおさめるというのがあなたの経営管理者の責任ですよ。できなければ、まあこういう言い方はいかぬかもしれませんけれども、その能力云々ということになるかもしれぬですね。ですから、どうかひとつ人間の問題に最大限に関心を持ち、愛情を持ってもらいたい。あなたはきのうでしたか、幹部を集めて、どんなにりっぱな施設をしても、不注意でもって事故を起こすのではどうにもしかたがないとおっしゃった。逆に考えて、どんなに注意をしても事故が起こるように施設が不完全ではしかたがないと思います。しかも、新聞では小さく出ておりますが、人間の注意力が、方々の事故が起こる前に、未然に防いでいます。ここにもレールの亀裂が出ていたとか、向こうにもレールのひび割れがあった、向こうにも車体にひび割れがいっておった、こういう重大な注意力ですよ。こういう注意力を皆さん方大いに買ってもらいたい。がたんと引っくり返れば新聞に出る、そして注意力が不足している。しかし、それ以上何十倍、何百倍もの国鉄職員の注意力によって防いでいると思います。ですから、機械設備もけっこうでありまするから、人間のほうに向かってうんと注目し、愛情を持ってやってもらえばこの問題は解決できます。人間の間にできたことでありますから解決できますが、その指導力を持ってもらいたい、こういうことを要望して私の質問を終わります。
  269. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 大倉君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして質疑通告者の発言は全部終了いたしました。よって補正予算三案の質疑は終了したものと認めます。  本日はこの程度にいたしまして、明十八日午前十時から委員会を開き、補正予算三案の討論採決を行ないます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時六分散会