○太田正孝君 ただいま
議長から
報告を求められました
予算委員会における
審査の
経過並びに結果を御
報告申し上げます。
まず、
予算案の中身を申します。次に、委員の
質疑の大要を申します。終わりに
討論採決に及びたいと存じます。
今回
提出されました補正
予算は、公務員
給与の
改善等につきまして、
一般会計において、歳入歳出とも一千二百四十一億八千万円の追加を行なうものであります。その歳出のおもなるものは五つあります。
第一は、公務員
給与の
改善に二百六十一億余万円を計上しています。これは人事院の
勧告に伴う
国家公務員等の
給与の引き上げを行なうこととし、その
実施期日を本年十月一日としております。
第二は、食糧管理
特別会計へ二百五十億円を
繰り入れ、三十八年産米の
政府買い入れ価格の引き上げによる食管勘定の損失を補うこととしています。
第三は、
農業共済再
保険特別会計へ百六億余万円を
繰り入れまして、本年春からの、しとしとと降り続いた長雨による麦の著しい減収に伴う再
保険金の
支払い財源の
不足等に充てようとしています。
第四は、災害復旧
事業につきまして、三百十五億余万円を計上し、本年の災害のみならず、過年災につきましても、復旧工事の進捗をはかることとしております。
第五は、以上の歳出補正
予算の財源として、租税及び印紙収入の自然増収を
繰り入れました関係から、所得税、法人税、酒税の増収を計上したことに伴いまして、その二八・九%、三百八億余万円を
地方交付税交付金の増加分として計上しているのであります。
以上申し上げました補正の結果、三十八
年度一般会計予算総額は、歳入歳出ともに二兆九千七百四十一億九千万円となります。いわば三兆円に手の届く数字であります。今後の補正
予算がない限りにおきましては、これが
昭和三十九
年度予算の
基準となる関係になっております。
次に、
特別会計の補正
予算は、
一般会計予算の補正及び公務員
給与の
改善に関連いたしまして、交付税及び譲与税配付金ほか八つの
特別会計の補正を行なっています。
政府関係機関補正
予算におきましては、日本国有鉄道において、東海道幹線増設費に
不足を生ずることになりますので、鉄道債券の
発行等による資金四百四十三億二千万円を追加するとともに、債務
負担行為百九十九億を追加して工事の進捗をはかることにしております。また、日本電信電話公社につきましては、道路
整備事業等に伴う支障移転工事が増加いたしましたため、電信電話債券の
発行等による資金九十億円を追加したものであります。
さらに、財政投融資につきましても、
地方公共団体に対し、災害復旧
事業費の追加に伴う資金需要の増加に充てるため地方債十五億円、日本国有鉄道に対し三百三十億円、及び日本電信電話公社に対し五十億円の資金を追加することとしております。
これらの補正三案は、去る十二月十四日
衆議院において可決の上、本院に送られたものであります。
予算委員会におきましては、十二月十一日、田中大蔵大臣から
提案理由の
説明を聴取いたしまして、十二月十六日から池田
内閣総理大臣並びに関係各大臣に対して
本案の
質疑を行ないました。
本特別
国会が
衆議院の解散等のあとを受けまして、しかも、
昭和三十九
年度予算編成との間にはさまっておりました関係で、
予算審議に重要な立場にありましたので、しかも、
政府としては、歳出
予算編成の途中であり、歳入に重大関係のある税制調査会の答申が出ておりませんような立場にありますので、いずれの
質疑もこれらの点を考えられてのことであり、その
答弁もまた、
かくのごときものであったことを、御了承願いたいと思います。
質疑のおもなるものについては、これから順を追って申し上げますから、お聞き取りを願いたいと思います。
質疑は、まず来
年度経済の運営、
予算編成の基本方針についてであります。いわく「日本経済の現状は、
消費者物価の上昇、国際収支の赤字をかかえながら、開放経済への移行を行なわねばならないという、相当むずかしい段階に差しかかっている。明
年度経済運営の基本方針として、成長か、物価安定か、国際均衡の回復か、
政府はそのいずれに重点を置こうとするつもりであるか。明
年度予算編成も間近に迫っているが、租税等の自然増収をどう見ているか」との
質疑がありました。これに対し、池田
内閣総理大臣、田中大蔵大臣より、「所得倍増
計画は、大体十年以内に達成し得る見込みがついたので、成長率はほどほどにして、国内の健全な発展を目ざし、国際収支の均衡をはかっていきたい。明
年度経済成長率などは、まだ固まっていないが、本
年度の実質成長率をこえることはなく、六・五%ないし七・二%ぐらいと考えており、物価は三ないし四%の上昇に押さえたい。そうすると、自然増収は六千五百億円から六千七、八百億円になる見込みで、財政面から経済を刺激しない健全均衡方針で
予算編成に当たる考えである」との
答弁がございました。
質疑はかさねて、「成長率を六ないし七%、物価を三ないし四%に押さえるという前提では、
政府の自然増収の見積もりは高過ぎるのではなかろうか。
政府は、
予算のつじつまを合わせるため、もっと高い成長率を想定するのではないか。それとも、減税を削るとか、外為インベントリーの取りくずしのような方法で財源をつくり出そうと考えているのではないか。総選挙の公約の平
年度二千二百億円の減税を
政府はあくまでくずさぬか。
政府は、揮発油税、軽油引取税の引き上げをはじめ、特別
措置の延長等による増収を見込んでいるが、国民が総選挙で期待したのは、純粋なる
負担の軽減として二千億円ということである。また、国際収支の慢性的赤字化は重大である。この赤字の大半は対米関係から発生したのであり、
政府は、対米赤字
改善に、もっと自主的、積極的に努力する必要がある。米国ド、ル防衛政策を甘く見て、真剣に対処しなかったことは、池田
内閣総理大臣の全く見込み違いであった。明
年度の国際収支については、諸般の対策を講じても、総合収支で二億ドルの赤字と見るのが民間筋の大体一致するところであるが、成長政策にこだわる
政府は、結局、国際収支、物価対策のいずれも解決し得ずに、問題を
昭和四十
年度に押しやることになると思うがどうか」との
質疑であります。これに対し、総理大臣、大蔵大臣、経済企画庁長官から
答弁がありました。いわく、「明
年度の自然増収額は、本
年度の税収が相当よいところへ来ているので、成長率を上げなくとも六千五百億円以上の期待は無理ではない。外為
特例会計の取りくずしのような特別財源に依存することは好ましくないと考えている。減税規模は、公約どおり平
年度二千二百億円以上のものを必ず
実施する。ガソリン税等の引き上げをやるかどうかはまだきまっていないが、これは目的税であり、減税の規模とは別個に考えてもよいと思う。国際収支の
改善については、貿易面ではHEC諸国など工業国貿易の発展をはかり、また、海運の強化をはかるとか、最大の努力を払う所存である。明
年度の総合収支が赤字となることは免れないが、問題は、鉱工業生産水準がだんだん上がってきて、最近、対前年比一六%といったやや異常な高さになったところにある。これもすでに金融政策の面で鎮静
措置を講じておるので、そう神経質になることはない」というのであります。
物価問題につきましては、多数の委員より
質疑がございました。すなわち、いわく、「
政府は物価問題懇談会の答申を尊重するのか。
政府は物価対策に熱意を欠き、物価上昇率
目標として、示すだけで、現実がその比率をこえても、自由経済だからしかたがないと、
責任を民間に負わせようとしてきた。物価が年間六—八%も続騰することを放置するのは、国民生活に損害を与え、経済発展にも有害であるとは思わないか」などの
質疑でございます。これに対して、宮澤経済企画庁長官より、「従来
消費者物価の上昇は、成長過程の摩擦として短期的現象だと認識し、物価対策がやや徹底を欠いていた点は認める。年間六ないし七%と金利を上回るほど物価の連騰することは、経済の発展を妨げ、国民生活の向上に害があると考えるので、物価問題懇談会の答申の主旨を尊重し、物価上昇の抑制には真剣に努力する」旨の
答弁がありました。
次に、地方税減税問題に関する
質疑がありました。すなわち、「住民税の本文方式統一に伴う地方財源補てんをどうするのか。国が地方の個別事情を一々考慮してきめる臨時補給金
制度では、地方
自治を拘束するおそれがあり、補給金をやめて
地方交付税率を引き上げる意思はないか。また、
固定資産の評価がえによって現実に
固定資産税の増徴とならないか」との
質疑でありました。これに対しまして、
自治大臣より、「地方税減税の方法は、税制調査会の答申を待ってきめることになるが、かりに住民税を本文方式に統一することとすれば、初
年度二百四十億円、平
年度約三百億円の減収となる。この減収額のある程度を国が期間を限り補てんしようというのであるから、恒久的な
地方交付税でまかなうべきものではない。したがって、交付税率の引き上げは考えていない。
固定資産税については、自然増収的部分を除き、総額としては増徴とならぬよう
措置する」との
答弁がございました。
なお、災害復旧
事業費についての
質疑は、いわく、「三十八
年度災害の公共土木災害は、査定額及び復旧完了の時期はいつになる見込みか。一段と
促進することはできないか。また、治水十カ年
計画の改定は考えていないか」などの
質疑がありました。これに対しまして
建設大臣から、「
昭和三十八年の公共土木災害は、査定は完了していないが、直轄、補助合わせて大体六百七十五億円であり、復旧率は、本
年度三〇%、四カ年で復旧することになっている。復旧率は従来より早くなっている。また、治水十カ年
計画については、
法律の
改正が通れば改定する考えである」という
答弁であります。
農業問題につきましては、成長経済下の革新的近代化政策をめぐるもので、数多くの質問がございましたが、
農業共済再
保険特別会計への
繰り入れにつきまして、「長雨による
被害の額、
農家に支払った共済金の額はどのくらいか。
農業共済について現在の不満を解決するためにどのような方法を考えているか」などの
質疑がございました。これに対しまして、農林大臣から、「長雨による
被害額は約九百八十六億円で、うち、麦の分は五百四十四億円であり、
農家に支払った
保険金の額は、本年産麦で総額百六十億円になっている。長雨以外の分も含めて、麦の補てん割合は二〇%であるが、共済
制度については、三十九
年度から補てん割合を六割に引き上げるととを考えている。掛金も少なくし、小農は除くことも考えている」という
答弁でございました。
食管
特別会計への
繰り入れにつきましての
質疑は、「赤字補てんについて何か別な方法を考えられないのか。
消費者米価を上げることを考えてはいないか」という
質疑でありました。これに対し農林大臣から、「食管
特別会計は、生産者と
消費者と両方の立場を考えてできているが、赤字が毎年ふえる点についてはどうかといわれているので、もっと両者の関係を密着させる方法があろうかと考えて、慎重に検討している」という
答弁でございました。
野党各派から問題とされました公務員
給与につきましての
質疑は、次のごとくであります。
政府は、人事院
勧告を尊重すると言っておきながら、
実施の時期をずらしている。なぜ五月一日から
実施できないのか。また、
給与の引き上げ率も物価の上昇率より低い。物価の事情は考慮されているのかなどであります。これに対しましては、総理大臣、大蔵大臣、労働大臣及び人事院総裁から、こう答えられました。「
実施の時期を十月一日からにしたいのは、国民経済に影響する点を考え、かつ、五月から
実施すれば、
特別会計、
地方公務員の分をも合わせ一千億円をこす
負担となるので、財政上の事情を考え、そのようにしたのである。
人事行政、労働行政の立場から考えれば遺憾であるが、日本経済の現状からやむを得ない」という
答弁でございました。
このほか、日韓交渉の問題、公明選挙推進の問題、所得倍増
計画のアフター・ケア、中小企業、
農業等、低生産部門の近代化の問題、農地
制度、農業補償
制度改正、国有林開放の問題、道路
整備計画改定の問題、国鉄、炭鉱両事故対策の問題、年末を控えて重大化した郵政、国鉄の労働紛争等々、わが国の当面しております内外の重要政策につきまして、広範にわたる数多くの
質疑がございました。それらの詳細は
会議録により御
承知を願いたいと思います。
かくて
質疑を終了し、
討論に入りました。
日本社会党を代表して大倉委員が
反対、自由民主党を代表して平島委員が
賛成、
公明会を代表して鈴木一弘委員が
反対、
民主社会党を代表して高山委員が
反対、共産党を代表して鈴木市藏委員が
反対の旨、それぞれ
意見を表明されました。
次いで、
討論を終局し、
採決に入りました。その結果は、
昭和三十八
年度補正
予算三案は多数をもって可決すべきものと決定いたしたのでございます。
以上御
報告申し上げます。(
拍手)