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国務大臣(
池田勇人君) このたびの総
選挙において、与党たる自由民主党は、
国民大多数の根強い
支持を得て、私は、三たび
内閣首班の重責をになうこととなりました。
政策論議に終始した
選挙と
国民の厳粛な審判を通じ、私は、われわれの
政策が
国民各位の信任を得たことを喜ぶとともに、今後とも
国民の声に耳を傾けつつ、
勇気をもって
国政に当たる決心であります。
総
選挙において公約した
重要政策は、
明年度予算の編成を中核として、すみやかに
具体的方策を決定し、
国会の
審議をお
願いするよう鋭意準備を急いでおります。今
国会では、当面急を要する
災害対策、
公務員給与の
引き上げ等に必要な
補正予算と、これに関連する諸
案件を提出し、御
審議を願うことといたしました。したがって、この際は、当面の問題について
所信を述べるにとどめたいと存じます。
私は、先般
外務大臣を伴い、故
ケネディ大統領の葬儀に参列し、
国民を代表して、心から哀悼の意をささげてまいりました。
過去十数年の長きにわたり、冷戦の不安のうちに
動揺を続けた
世界情勢がようやく落ちつきのきざしを示し、平和への希望の光がさし始めたやさきだけに、
米大統領の不慮の死は全
世界に強い驚きと不安を与えました。
大統領個人の
勇気と
指導力を惜しむ心は、瞬時にして、全
世界の平和と将来への憂慮に変わり、この時ほど、
東西問の平和への
願いが身近に感じられたことはなかったのであります。しかるに、
米国民は、すでに新
大統領の
指導を中心に雄々しく立ち上がりつつあります。中南米の盟友も、ヨーロッパの友邦も、
アジアの
指導者も、そして
共産圏の首脳も、故人が理想とした平和の新天地に向かって、歩調をそろえて前進することを、ひとしく故
大統領のひつぎの前に誓ったことと私は確信いたしております。
世界が平和に対する期待を強めていることは疑いをいれぬ事実であります。しかし、それは一国や二国のすぐれた着想や熱意によってのみ確保されるものではなく、
世界全体の
体制によってささえられ、守られなければならないものであります。これを真に実りあるものとするために、われわれは、何よりもまず米国をはじめとする
自由諸国との団結を強固なものとしなければなりません。滞米中、ジョンソン新
大統領と会談し、
日米両国の
協力関係は、前
大統領の死によって何ら変更するものでないことはもとより、今後ますます緊密の度を加えるべきことを相互に確認いたしました。したがって、
両国閣僚間の
合同委員会も、できるだけ早い機会に開催することに意見の一致をみたのであります。
アジアにおいては、いまなお不安と
動揺の様相が
あとを断つに至っておりません。
情勢は依然流動的であります。
わが国としては、
アジアの安定と
繁栄に寄与するため、独自の
方策を力強く積極的に進めていくつもりであります。特に、
民主政治への第一歩を踏み出した
隣邦韓国については、その前途を祝福し、多年の懸案である
国交正常化を実現するよう、さらに交渉を促進する
決意であります。
所得倍増計画を通じて
完全雇用と
国民生活の
向上を目ざす
高度福祉国家の建設は、
国民各位の変わらぬ
支持を得ました。したがって私は、引き続き、
経済の健全な
成長を基調とし、過去の実績と将来の動向を十分考慮しつつ、
消費者物価の安定、
社会資本の充実、
社会保障の強化、
減税等、一連の
施策を公約に従って一そう強力に実行していく考えであります。とりわけ、立ちおくれの目立つ
農業、
中小企業、
サービス業の
近代化については、革新的な
方策を講ずるため、
財政金融の総力をあげてこれに立ち向かう
決意であります。(
拍手)
消費者物価については、今後とも
財政金融政策の適切な運用をはかり、低
生産性部門の
生産性の
向上、
労働力流動化の
促進等、各般の
措置を強力に講じ、
成長過程の中で基本的な解決をはかってまいります。その間、
公共料金その他
政府の規制し得る範囲のものは、極力その
引き上げを抑止する等、果敢な
応急措置を講ずる
決意であります。また、
開放経済体制に移行する
わが国経済が、新しい
国際環境に適応しつつ着実に
発展していくため、
政府は、
民間の
協力を得て、輸出の
安定的拡大、海運その他
貿易外収支の
改善等、長期にわたる
国際収支の
均衡維持に
最善の
努力を傾注するつもりであります。
先般、
三池炭鉱と
東海道本線において
重大事故が相次いで起こり、多数の
犠牲者を出しましたことは、まことに遺憾なことであります。
政府は、
死没者に対し弔意を表するとともに、
傷病者の医療、遺家族の援護、その他当面の
対策に万全を期しております。私は、このような惨事が再び起こらぬよう、その原因を徹底的に探求し、何ものにもまして
人命を尊重する心がまえで、
労使双方の
努力と相まって、適切にして細心な
施策を強力に推進する
覚悟であります。
人命の尊重と自由の原則は、
暴力の
否定の上にこそ築かれねばなりません。一部分子による
テロ行為がいまなお
あとを断たぬことは、きわめて残念であります。私は、
国民の間に芽ばえている「小さな
親切運動」などを助長するとともに、
暴力否定の
気風をさらに強く喚起し、法を無視するものに対しては断固たる態度で臨むなど必要な
措置をとる
決意であります。
以上の風潮から見て、心の再建が、ますます重大な問題となってまいりました。英和と愛情と意思の三つが
均衡を保って完成された人格こそ、
人つくりの窮極の
目標であります。このためには、宗教的な情操とこれにささえられた敬虔な
人生観が特に重要であります。(
拍手)偉大なあるものに近づこうとする
願い、天職を遂行する
使命感、
利害得失をこえて働き抜く真摯な心、これこそ
世界の中で将来
日本民族がより高く評価されるゆえんであります。
政府は、この
目標を達成するため、
環境の整備には
一段の
努力をいたす
覚悟であります。
私が初めて
内閣を組織して以来、すでに三年有余、その間紆余曲折はありましたが、
国づくりの諸
施策とその根幹をなす
人つくりに
努力を重ねてまいりました。この
努力は、
国民各位の
協力によって
相当の成果をあげつつあると確信いたしております。しかし、歴史は常に
進歩と
発展を求めてやみません。われわれの幸福は、手をこまねいて得られるものではなく、不断の創意とたゆみなき
努力、多数の
人々の強い
協力によってのみ得られるものであります。いたずらに目前の利益を追い、安易に流れる
気風は、厳に
戒むべきであります。
三たび
国政をゆだねられた私は、責任の重大さに身の引き締まる思いであります。私はいま、おのれをむなしうして、
国家のため、
民族のためにすべてをささげることを願うものであります。私は、自由と平和を守る
人々にとっては、信頼に値する友となり、敵意と陰謀をもって自由と平和を脅かす力に対しては、信念と
勇気をもってこれを排除する
決意であります。疾病や貧困、犯罪や
暴力に対しても、仮借なき戦いを進めねばなりません。
いかなる政党に属しておろうとも、われわれ
政治家は、
国家と
民族に対して、その幸福と
進歩のために奉仕する共通の義務を負うものであります。(
拍手)
国会は、そのための神聖な場所であります。ここからは、憎悪や確執、分裂や闘争ではなく、公正なる討議、
勇気ある決断、いさぎよい
協力が生み出されねばならないと存じます。かくてこそ、われわれは、
議会政治の真価を発揮し、
内外のいかなる事態にも対処する力を持ち得ると信じます。
私は
国民各位の御支援を切望してやまない次第でございます。(
拍手)
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