運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1963-12-12 第45回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年十二月十二日(木曜日)    午前十時十八分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 櫻内 義雄君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       安藤  覺君    井出一太郎君       井村 重雄君    稻葉  修君       今松 治郎君    植木庚子郎君       江崎 真澄君    小川 半次君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    重政 誠之君       周東 英雄君    田澤 吉郎君       中曽根康弘君    古井 喜實君       古川 丈吉君    保科善四郎君       松浦周太郎君    松野 頼三君       山本 勝市君    赤松  勇君       淡谷 悠藏君    石田 宥全君       川村 継義君    小松  幹君       高田 富之君    堂森 芳夫君       野原  覺君    細谷 治嘉君       山口丈太郎君    山花 秀雄君       横路 節雄君    今澄  勇君       小平  忠君    永末 英一君       川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         人事院総裁   佐藤 達夫君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君  委員外出席者         文部事務官         (管理局長)  杉江  清君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 十二月十二日  委員加藤清二君辞任につき、その補欠として赤  松勇君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十八年度一般会計補正予算(第2号)  昭和三十八年度特別会計補正予算(特第2号)  昭和三十八年度政府関係機関補正予算(機第2  号)      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十八年度一般会計補正予算(第2号)、昭和三十八年度特別会計補正予算(特第2号)、昭和三十八年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三案を一括して議題となし、これより質疑に入ります。  赤松勇君。
  3. 赤松勇

    赤松委員 定足数は…。
  4. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 定足数はあります。(「与党は出てないじゃないか」と呼ぶ者あり)定足数には達しておりますから、直ちに質疑をお願いいたします。
  5. 赤松勇

    赤松委員 私は諸般の質問の前に、ぜひ池田総理にただしておきたいことがあるのであります。  それは、自由民主党も私ども日本社会党もともに議会政治を尊重いたしまして、そしてより権威のある議会政治を確立したい、その念願に燃えておることは、私は共通の念願であろうと思うのであります。したがいまして、国民から信頼をされ、より高い権威ある議会政治を確立せんとするならば、まずその基本となるものは、言うまでもなく政府姿勢であると同時に、与党態度でございます。また公明なる選挙を行なうということが基本にならなければなりません。ところが先般の総選挙におきまして非常に棄権が多うございました。この棄権が多いということは、もちろんいろいろな原因があると思うのでありますけれども一つには、政局のイニシアチブを握る与党みずからが、きわめて醜悪な派閥選挙に終始をした。これは言うまでもなく私自身意見でなしに、全国民の批判の的になっておるのであります。私は、こういうような選挙がさらにたび重なってまいりますると、議会政治の威信を傷つけ、ひいてはファッショ政治を誘発する原因になる、かように考えておりますが、この際内閣総理大臣のこの問題に対する態度をお聞きしたい、かように思います。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 さきの選挙につきまして、お互いに同志が応援し合うということは、これはあり得ることでございます。お話派閥選挙ということが当たるかどうか、私は必ずしもそうは言えない。ただその根本におきまして、わが党にいわゆる派閥があるということは、これは私も認めております。したがいまして、党の近代化のために組織調査会を設けまして、いわゆる派閥というものを自分はなくそうといたしておるのであります。選挙直前に答申が出たので、その選挙に十分な効果をあげ得なかったことは遺憾でございますが、今後におきまして党の近代化をはかり、ほんとうにりっぱな近代政党として進むべく、いま努力を進めておるのであります。
  7. 赤松勇

    赤松委員 次に総理にお聞きしたいのは、総選挙が終わりまして、その得票数の結果を見ますると、日本社会党は百万票その票が伸びておるわけであります。ところが自民党は三十一万票減票になっております。その総選挙の結果、日本社会党河上委員長は、憲法改悪を阻止するために必要な三分の一の数を取ることができなかったという反省の上に立ちまして、率直に敗北であった、このように謙虚に反省をしております。しかるに総理は、この間の本会議におけるあなたの所信表明におきまして「所得倍増計画を通じて完全雇用国民生活の向上を目ざす高度福祉国家の建設は、国民各位の変わらぬ支持を得ました。」こういうように言っておられます。もちろん多数をとられたのでありますから、多数の支持を得られたことは、これは言うまでもないことでありますけれども、少なくとも選挙のたびに自民党自身の票が減っていく。今度の選挙では社会党自身議席数におきまして前回選挙よりは一名減になっておりますけれども、百万票伸びておるわけであります。こういう点については、もちろんこれは、私は現在の定員数選挙区制その他に問題があると思うのでありますけれども、少なくともこの選挙の結果については、総理はどのように反省されておりますか。これをお聞きしておきたいと思います。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 各政党得票数につきましての計算の根拠をまだ見ておりませんが、御承知のとおり前回選挙におきましては、わが党は三百九十名程度の公認をいたしたのであります。今回は公認をよほどしぼりまして、そうして大体四十人近い公認が減っております。こういう関係から、無所属のうちで、われわれがもし公認をしておったならばわが党に入るものが、公認せなかったということでわが党の票に入れないと、あなたの言うような票が出るかもしれません。その点は今日私まだ十分調査しておりませんが、無所属の人の票を入れたならば、そう私は減ってはいないのじゃないかと思います。ただ問題は、わが党の者であってたまたま無所属として立候補した人を入れますと二百九十何名、これはわが国憲政史上でも例の少ない数でございまして、私は所信表明で申し上げたごとく、国民大多数がわが党を支持してくださっておる、これは言い得ると思います。
  9. 赤松勇

    赤松委員 権威ある、そうして国民の信頼する国会お互いにつくるためには、その国会構成が問題になるわけであります。言うまでもなく、民主主義原則から申しまして、第一党が議長をとり、あるいはそれぞれ案分比例によりまして多数の常任委員長のいすを占めることはもとより当然であります。しこうして案分比例によって第二党が副議長をとり、そしてその数に応じて常任委員長をとっていくということも、もとよりこれは常識であるのであります。  今度の新しい国会を迎えるにあたりまして、わが党はこの民主主義原則に従って、自民党に対してこれを要求しました。ところがついに自民党社会党要求を拒否し、あるいは民社党の要求を拒否いたしまして、一党独裁的な国会構成を行なったことは、はなはだ遺憾にたえないところでありますが、この問題については、総理はどのようにお考えでございますか。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 議会運営につきましては、多数党がその運営責任立場にありますので、私は、この点はあなたとは意見を異にいたしております。わが党で議長、副議長あるいは委員長をとることが適当であるという考えでございます。ただ問題は、ほんとう議会が正常化し、ほんとうに真剣に議事運営をよくやっていこうという気持ちで、そしてそれが議事運営にもあらわれてくる場合におきましては、これはまた話し合いでいろいろのことも考えられると思いますが、まだその情勢ができていない。私はそういう情勢をつくりたいという気持ちを持っておるのであります。やはりお互いにうまくやっていこうという実績があらわれてきたならば、またこれは話し合いで相談する場合もあるかと思いますが、ただいまのところは、もうしばらくわが党の責任におきまして議会運営をやっていこうという考えでおるのであります。
  11. 赤松勇

    赤松委員 私は、そういう考え方が官僚的であり、一党独裁的な考え方であると思うのであります。と申しますのは、しばらく見て、そして野党側が何か反省をすればそのときは考え直すのだという考え方は、非常に思い上がった官僚的な考え方であると思います。民主主義原則というものは池田総理個人がつくるものでなしに、すでに民主主義原則というものは、憲法によってあるいは国会法によってきめられておる。そして民主主義原則というものは、言うまでもなく数の配分によって民主的に国会構成されていくという筋道でなければならぬわけであります。もし私どもが副議長をとり、あるいは常任委員長をとりまして、その国会運営にもしも指弾をされるような行為のあった場合には、池田総理個人がこれを批判するのでなしに、国民みずからがこれを批判すると思うのであります。それをあなた自身判断でもってその一千万人以上の支持を得ている政党議会構成参加をさせないという態度は、明らかに私は非民主的な、官僚的な、独裁的な考えであると思うのでございますが、この点についてはいかがでございますか。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、あなたの御質問に対しましては、ただいまの答えで十分だと思います。われわれの責任におきまして、憲法精神に沿って運営していきたいという考えでございます。
  13. 赤松勇

    赤松委員 時間がありませんので、この問題は他日に譲りまして、私は次に外交上の問題につきまして、若干お尋ねしたいと思うのであります。  総理は、わが党の本会議における代表質問に対しまして、次のように答えておられる。ケネディ大統領の理想である平和への新しい天地をつくる考えは、ケ大統領の死後でも変わっていないし、世界は、話し合い平和共存方向で進むと思う、またそのように努力をしたい、このような答弁をされておるわけであります。  そこで、一口に平和共存と申しましても、この内容は多岐多様にわたっておると思うのであります。もとより、その精神は、世界が平和のために、ともに譲り合い、ともに話し合って、理解し合って共存していくということであるのでありますけれども、一体、いまの対米依存政策の中で、そして一方におきましては、対アメリカとの貿易関係その他が悪化する中において、首相考えておりれる平和共存政策というものは一体どういうものであるか。そのビジョンなり、あなたのイメージというものを。この際、明らかにしていただきたいと思います。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 この平和共存というのは、日本アメリカとの関係をいっているのではないのでございまして、もちろん日本アメリカとも平和共存していかなければなりませんが、平和共存ということばは、いまの東西間の問題だと思うのであります。  しこうして、東西間の関係平和共存ということが打ち出されたのは、やはりケネディ大統領並びにフルシチョフの会談から出てきておることでございます。この平和共存ということは、お互い東西が、イデオロギーの違いはございますけれども、違いにもかかわらず、話し合いによって、ともにその平和を増進するようにしていこう、こういうことでございます。われわれは、その意味において自由国家群の一員でございますから、この平和共存をこの上とも進めていくためには、やはり自由国家群での団結を強固にし、そしてその団結の力によってお互いソ連共産圏側とも誠意をもって話し合っていこう、こういうことをいっておるのであります。
  15. 赤松勇

    赤松委員 いまの答弁を基礎といたしまして、それでは問題をあとに残しまして、まず第一に聞きたいのは、きょう外電報道によりましても、あるいは先般来の新聞の報道によりましても、すでに外務省あたりはこのことを検討しておるようでありますが、御承知のようにフランスドゴール大統領カンボジア並びベトナム中立化について大胆にその外交路線を進めていく、さらに中華人民共和国に対しましても、正常なる国交をつくるための努力をするということが、本日の外電にも報ぜられておるわけであります。  そして、東南アジアにおける、なかんずくインドシナにおけるところの中立化の要望というものは、これは首相向こうへ参られましてよく現地の空気に触れられたと思うのでありますけれども一つは、非同盟国中心とする中立化方向をたどりたい、いま一つは、かつて日本軍国主義東南アジアを侵略した、この東南アジア及びインドシナに対する侵略に対しまして非常に大きな危惧を持っておるわけであります。現にカンボジアシアヌーク元首は、十一月二十四日に、イギリスソ連両国に対しまして、インドシナ休戦ジュネーブ会議参加国によるカンボジア中立保障国際会議召集を要請しております。またインドシナ休戦ジュネーブ会議は、一九五四年、アメリカソ連イギリスフランス、中国、ラオスカンボジア南北ベトナムの九カ国で構成をされ、一九六二年のラオス中立に関するジュネーブ会議は、以上の九カ国のほかに、インド、ビルマ、タイ、カナダ、ポーランドの十四カ国で構成されておりますが、いずれも日本参加国になっていないわけであります。インドシネ問題の平和的解決日本が全く無関係な現状である、言いかえれば、アジアに対する外交が不在になっておるというように私ども判断するわけでありますが、この点についてはいかがでございますか。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 インドシナの安定と繁栄につきまして、私どもは重大な関心を持っておりますことは申すまでもないことでございますが、戦後のインドシナ問題の処理にあたりまして、各種の国際会議が持たれましたが、その当時の景況におきまして、わが国招請を受ける立場になかったのでございます。近い将来におきましてそういう会議が開かれてわが国招請状が出るか出ないか、まだその点はさだかでございません。しかし、将来わが国参加を求められるというようになりますれば、十分考慮いたしまして、積極的た姿勢で臨まなければならぬと思っております。
  17. 赤松勇

    赤松委員 このことは、要するに、日本軍国主義帝国主義の形でアジアに対する指導権を確立していくか、それとも首相の言われましたような平和共存の線に沿い、いわゆる中立路線で進んでいくかという決定的な問題であると思うのであります。  いま外務大臣お話を聞きますと、まだ招請されていないのだ、招請されていないということは日本は無視されているということです。つまり、その場合は二つあると思う。一つは、日本アメリカ軍事同盟を結んで、いばアメリカの庇護のもとにあるということから、いわゆる中立を目ざすこれらのブロックが、意識的に日本を排除しておるのか、あるいはそうでなしに、日本は頼むに足らぬということからこういうブロックを自主的につくっておるのか、いずれかであると私は思うのでありますが、どちらにしましても、日本は大国である、そしてアジアにおけるイニシアチブをとらなければならぬということを首相はしょっちゅう言っておるのでありますけれども、こういうような重要なインドシナにおけるブロックから締め出しを食わされて、招請も受けていないということは一体どういうことですか。私は、招請をされれば検討をするという態度でなしに、むしろ、こういうようなカンボジアラオス中立を目ざす、こういう会議にこそ、ブロックにこそ、日本は積極的に働きかけて、そして参加をするような、そういう外交政策を展開すべきである、こういうように思うのであります。向こうから要請が将来来たならばこれを検討したい、こういう答弁では私ども納得できません。重ねて外務大臣は、これらのカンボジアラオスその他の中立に関する会議に積極的に参加する意意があるのかどうか、これを私はもう一度お尋ねしたいと思います。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申し上げましたように、近い将来においてそういう会議が開かれるという状況にはないと判断いたしております。しかしながら、現実の課題となってまいりますならば、積極的に参加しなければならないものと考えています。
  19. 赤松勇

    赤松委員 非常に不満でありますけれども次に進みたいと思います。  そこで、今日のアジア情勢を平和に導くためには、一切の緊張の要因を取り除くということが最も重要であることは言うまでもないことであります。その意味日本アジア外交アジアの平和を考える以上、インドシナ中立化による緊張緩和、それから中華人民共和国との外交交渉と並んで南北朝鮮対立緩和への努力が必要であるというように私ども考えておるわけであります。そこで、日韓会談というものはこういう方向に反しておる。南北朝鮮対立の激化、緊張をさらに醸成することになるというように判断をしております。そこで総理は、アジア平和外交日本がリーダーシップをとるという大局的な観点から、この際日韓会談を中止をして、そして南北朝鮮統一のための間接的な努力を払う、あるいは中華人民共和国との正常なる外交関係を確立する、インドシナに対しましては、先ほど申し上げましたように中立化方向をたどる。そして非武装地帯設定のために努力をしていく。これが私は平和憲法のもとにある日本がとらなければならぬ当然の外交路線ではないか、こういうように考えております。そこで、日韓会談について首相はいまどのような段階にあるのか、日韓会談交渉段階はどのような段階であるか、またこれを妥結するについてどのような見通し、その時期、内容、条件、そういったものについてこの際国民の前にこれを明らかにしていただきたいと思うのであります。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 日韓会談における交渉のおもなる点は、御承知のとおり請求権の問題、あるいは在日韓国人法的地位の問題、あるいは李ライン問題等々ございますが、そのうちおもなるものの請求権につきましては、一応の話し合いのめどはついております。法的地位の問題も大体まとまりかけておりますが、李ライン問題を中心とした漁業水域の問題がいま交渉の重点になっているわけでございます。御承知のとおり、韓国におきましても軍事政権から民主政権への移行の問題等もありますし、また漁業問題は両国漁民に重大な関係もあることで、なかなか早急な妥結はまだ見ておりませんが、鋭意専門委員の間で話をいたしておるのでございます。私は、従来申し上げておりますごとく、日韓問題はあらゆる懸案を一括同時解決しなければいかぬという基本方針で進んでいっております。したがいまして、いま残る大きい漁業問題が話がつけば、大体いくのではないか、一括同時解決できるのじゃないかと思います。ただその時期の問題につきましては、また内容の点につきましては、やはり相手方の立場もあることでございますから、いつどうこうということはお答えできませんが、私は誠意をもって、そしてあせらずに、地道に、とにかく将来累を残さないように円満な妥結をはかっていくよう努力を続けておる次第でございます。
  21. 赤松勇

    赤松委員 むろん私どもは先ほど申し上げましたように日韓会談そのものはいまやるべきではない、将来南北統一後に行なうべきであるという基本的な態度を堅持しておりますが、しかしいま首相がおっしゃったように、漁業問題が当面非常に重要な問題になっておるわけであります。これは専管水域を十二海里あるいは四十海里とするという問題、さらに十二海里の専管水域に二十八海里の共同規制水域を設けるという問題、また漁業協力借款を加えるというような問題があるわけであります。特に共同規制水域の問題につきましては、事実上韓国側にその水域管理権を永久的に渡すことになるのじゃないかということで、政府部内におきましても強い反対があるということを聞いておりますが、いまの首相答弁だけでは私ども納得がまいりません。漁業問題が解決をすれば日韓会談はそれでおおむね妥結をする状態になるというお話でありますが、一体この専管水域の問題さらに共同規制水域の問題についての日本政府基本的な態度原則というものが私はやはりあると思います。外交交渉をする以上は、ここまでは譲れないという原則は私はあると思います。そういう点をこの際明らかにしていただきたいと思います。——総理答弁を求めます。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 専管水域十二海里は、われわれは日本基本的考え方として持っております。その水域外の問題につきましては、ただいま交渉中でございまして、日本最後の線はどうだとかこうだとかいうことをいま申し上げるのは少し早いかと思います。
  23. 赤松勇

    赤松委員 おそらくそういう答弁が行なわれるのじゃないかと私も予期しておりましたが、こういう問題はもちろん外交折衝の問題でありますから、ある程度秘密を要することもあり得るわけであります。しかし事は、いま総理がおっしゃったように、日韓会談のいわば最後に残された基本的な問題になっておるという観点から申しまするならば、むしろ政府態度をこの際明らかにして、国民の前にその日韓交渉の経緯を明らかにしていくということが政府の義務であると私は思うのでありますけれども、この点につきましてもさらに次の機会に究明したいと思います。  続いて私は請求権の問題についてお聞きしたいと思うのであります。請求権経済協力の形に改め、いわゆる千八百億円の政府による供与のほかに三億円以上の民間借款政府保証を行なうということがいわれておるわけであります。顧みますると、かつてわが党が現にこの予算委員会におきましてもその論戦を展開いたしまして、そして強く反対をいたしましたが、あなたたちは私ども反対を押し切って、ベトナム賠償をやったわけであります。百四十億四千万円、ほかに二十七億円の借款という形で国民の血税が払われておる。しかもベトナム状態は私が説明するまでもなく今日あのような状態になっておるのであります。そこで日韓交渉における経済協力内容請求権に対する考え方政府はさらに明確にする必要があると私は思うのであります。  さらにこの際、大野自民党総裁が来たる十七日に民政移管大統領就任式に列席するということをいわれておりますけれども、その目的、内容日韓交渉との関係をこの際明らかにしていただきたい。おそらく単に大野総裁は、民政移管大統領就任式のお祝いに行くのだという答弁があると思うのでありますけれども、それだけでないということは、私自身でなしに、新聞記者の諸君も、あるいは国民の中におきましても、もう常識としてそれが考えられておるわけでありますが。この際むしろこの大野氏の訪韓について大胆率直に総理の口から、実はこういう任務を帯びて行くのだということを明らかにされたほうが、私は全体の国民の期待にこたえる上からいっていいのではないか、こう思うので、この点をお聞きしておきたいと思います。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 大野総裁韓国を訪問されることは、大統領就任式のお祝いに行かれるのであります。行かれた場合においてどういう話をするかということは、これは将来の問題で、こちらからこういう話をしてくださいと言うことは、私はいま考えておりません。ただ、向こうから言われたときにおれは全然知らぬと答えるかどうかは、その雰囲気によって異なると思いますが、目的は大統領就任式のお祝いに行かれるのが目的でございます。
  25. 赤松勇

    赤松委員 総理はその所信の表明において、「開放経済体制に移行するわが国経済が、新しい国際環境に適応しつつ着実に発展していくため、政府は、民間の協力を得て、輸出の安定的拡大、海運その他貿易外収支の改善等長期にわたる国際収支の均衡維持に最善の努力を傾注するつもりであります。」このように所信の表明をされておるのであります。そこで、私はこの問題についてお尋ねしたいと思いますが、わが国の貿易において対米貿易は圧倒的に大きな比重を占めてまいりました。昭和三十七年度を見ましても、輸出の総額は四十九億ドルのうち、対米輸出は十四億ドル、二八・五%、輸入は総額五十六億ドルのうち、アメリカからは十八億ドル、三二・一%というような大きな比重を占めております。しかも輸入超過の不均衡の状態になっておることは、総理承知のとおりであります。ところが、対米輸出は、最近の例で言えば、鉄鋼ダンピング問題をはじめいろいろな問題が発生をしております。綿製品についても、五年前から自主規制が行なおれ、賦課金、関税の引き上げなどの問題が、これはおりに触れて出ておるわけであります。この鉄鋼ダンピングの問題、あるいは綿製品についての輸入数量の制限の動きの問題、あるいは賦課金の問題、こういう問題は一々私がここで説明申し上げるまでもなく、十分御案内のとおりと思うのでございまするが、こういうように、ドル防衛の立場からアメリカ日本の商品に対しまして、これを締め出そうとしておる。これに対しまして日本政府としては、アメリカに対して基本的にはどういう態度でもって臨んでおるのか、また将来臨もうとしておるのか、このことをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 日本の貿易上、アメリカ合衆国の占むる比重は、お話のとおり、非常に大きいのでございますが、その占むる割合は年々減ってまいっております。三一、二%からいまお話しのように二七、八%、そうしてまた年によって違いますが、輸出入の不均衡もかなり最近は是正されつつあります。いま日本の貿易は、御了承のとおり、EECができましてから以後五、六年のうちに、ヨーロッパとの貿易はほとんど倍を越えるという非常なウエートを占めつつあるのであります。やはり日本の貿易政策といたしましては、東南アジアあるいは低開発国に援助を通じましての拡大をはかり、そうしてまたその次には、工業国であるヨーロッパに目を向けていかなければいかぬ、これが私は関心事であって、アメリカとは、従来の関係がありますから、これはだんだん伸びていくととは期待しておりまするが、力の入れどころとしてはやはり東南アジア、低開発国、ヨーロッパということにもっと目を向けていきたい、そうしてそれが効果があると思うのであります。いまお話しの鉄鋼ダンピングとか、あるいは綿製品、それからまた輸入綿製品にかける賦課金、この賦課金は、従来二、三回起こってまいりましたが、これはいつも立ち消えになっております。それから綿製品の問題は、大体満足すべきというほどではございませんが、まあまあというところで解決いたしております。鉄鋼ダンピングの問題も、問題がございましたが、一応済みました。これはドル防衛の問題でなしに、アメリカ日本との貿易関係が他の国に比べて非常にウエートが大きく、交渉が密接である関係上いろいろ起こってくる。しかしこれは、常に両者誠意を持って解決しておるのであります。私は、今後アメリカ日本との関係におきましても、アメリカとカナダほどではございませんが、とにかくアメリカとしても、日本はカナダに次ぐアメリカの輸出国でございます。こういう関係を見まして、一昨年ケネディ大統領との会談におきまして、六人の経済閣僚懇談会——来年はこれまた二人加わりまして、こういう会議というものはあまり例を見ない。アメリカとカナダとの間にはございますけれども、こういう大規模のものじゃないと思います。それだけやはり日米関係の密接さ、あるいはまた今後非常に重要な問題として両国関心を持っておるところで、この会談を通じましてアメリカ日本との貿易関係、また貿易のみならず財政、金融の問題、そうしてまたひいては低開発国への両者の協力等々万般のことを話し合って、そうして両国関係経済協力を一そう深めていきたいという気持ちを持っております。
  27. 赤松勇

    赤松委員 ここで総理の口から、対米貿易はだんだん後退している、それから低開発地域並びに東南アジアに対して資本輸出という形において輸出を伸ばしていく、なおEECに対する輸出量が非常にふえたというお話を聞きました。私は、東南アジア並びに低開発国に対する資本輸出という形、これがだんだん、日本のいわゆる軍事力の確立とうらはらの関係で進められていく危険を感じておるわけでありますけれども、そのことは別としまして、EECがはたして恒久的な日本の販売市場になるかどうか、これもやはり私は問題があると思うのであります。そこでいわゆる大陸経済との関係をどうするかということを、私はその問題と関連して聞きたいと思いますが、その前に、こうしたいまのような対アメリカとの情勢の中で、国際収支は、経常収支の赤を資本収支の黒すなわち借金で補って、ようやく総合収支のしりを合わしているのが現在の実情であります。そういう政策自体に基本的心問題があるが、その点はしばらくおくとして、最近はアメリカの利子平衡税等一連のドル防衛措置によって、資本調達が非常に困難になってきた。また軍事援助の削減、あるいは低開発国援助など、わが国の負担は相当大きなものになることが予想されるわけであります。こう考えてまいりますると、日米経済関係に十分な検討を加えるとともに、いわゆる東西貿易をこの際積極的に推進されることが必然的に要請されると思います。すでにカナダは中ソ向けの小麦の大量延べ払い輸出を行ない、アメリカ自身も、御承知のように小麦の輸出に積極性を示しております。私は、池田総理は対米貿易関係の現状から、将来、また現在、東西貿易に関してココムにとらわれることなく自主的にこれを取り組んで、そして日本経済の自立と発展のためにスケールの大きな経済政策を、あるいは貿易政策をとる考えはないかどうか、この点をお尋ねしておきたいと思います。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 チンコムの協定は、自由国家辞令体の協定でございますから、これは守っていかなければなりません。しかし、その範囲も、だんだん少なくなっていくことは御承知のとおりでございます。しこうして、またお話のとおり、東西貿易につきましては、私は、従来から言っておりますように、政経分離の考えのもとにどしどし積極的に進めておるのでございます。日本と中共との貿易も、年々相当ふえてまいっております。毎年往復で四千万ドル程度ふえておるような状況でございます。また、ソ連との関係も、御承知のおり、往復で今年は大体二億ドルをこえるんじゃないかという状況でございます。また、ソ連の衛星国におきましても、たびたび各国から使節団が来まして、船舶その他の輸出の協定ができております。私は、コマーシャルベースならばどこの国ともどんどん貿易をふやしていこうという基本方針を実現しておるのであります。
  29. 赤松勇

    赤松委員 コマーシャルベースならばどこの国とも積極的に貿易をしたい、これは私は首相の非常に新しい発言だと、こういうように受け取りたいと思います。そして、その線に沿うてソ連並びに中国、朝鮮との貿易を進めていただきたいと思います。この中国に対しましては、倉敷のビニロンプラントだけでなくて、経済界の要望している各種プラントの長期延べ払い輸出を積極的に認めていく方針はございませんか。いかがでございますか。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 コマーシャルベースでございますれば共産圏との間の貿易も進めてまいるということは、いま総理がお示しになったとおりでございます。問題は、日本の資本市場が非常に強大になってまいりまして、政府の輸出金融、延べ払い金融に対する補完的な役割りも必要でないようになりますれば、だんだんと貿易はコマーシャルベースで伸びていくと思うのでございますが、現状は、延べ払い金融につきましては政府がめんどうを見なければならないという立場にございます。したがって、政府としては自由圏、共産圏全体をにらみまして、バランスのとれた延べ払い金融を考えてまいらなければなりませんので、共産圏に片寄るということも許されない実情にございます。這般の事情を考慮しながら、適正に輸出金融を、能力を配分して貿易の全体の伸展ということにつとめてまいりたいと考えております。  いま御指摘の中共向けのプラントでございますが、ただいままでのところ、倉敷につきましてはこれを認めたのでございまして、その次の問題をどうするかという問題は、いま申しましたような延べ払い金融全体の自由圏、共産圏を通じての配分との関連において慎重に考えておる段階です。
  31. 赤松勇

    赤松委員 おそらく総理は御存じだと思うのですが、中国向けの最近の輸出の状況を見ますると、一九六二年ではフランスが四千三百三十万ドル、イタリアが千九百万ドル、イギリスが二千四百十万ドル、日本が三千八百五十万ドル。ところが、六三年になりまして非常にふえております。ふえ方は、特にフランスが多い。フランスは、年間四千三百三十万ドルが、すでに一月から六月までに四千七十万ドルというようにふえておるわけです。これはフランスだけではありません。イタリアの場合もイギリスの場合もふえている。私は、ドゴールが、きょうの外電にありましたように、中国との間に正常な国交関係を結びたいという積極的な姿勢をとり始めたのは、決して理由のないことではない。こういうような、フランスの経済の利益を背景として動き出したのだというように理解をしておるわけでありますけれども、すでに御承知のように、財界の共同調査機関である日本経済調査協議会におきましては、九月の二十七日、わが国も共産圏貿易に対して自主的に取り組み、有利な商談は積極的に進めるのが当然である、こういう趣旨の報告書を出しております。この協議会は、経団連、経済同友会、日本商工会議所、日本貿易会など財界四団体が中心となり、学界、官界の有志が加わって、民間最大の調査機関といわれておるのであります。また、イギリスの対中貿易のそれを見ますと、エロル商相は、本年四月十九日、ボート・オブ・トレード・ジャーナルで、ココム禁輸などの輸出制限はすでにとり得ない、東西貿易の特色を長期安定、正常化させるために政府間協定が必要である、こういうことを強調しております。また、その他の対中貿易、フランスはいま申しましたような状態、イタリアはモンテカチーニ社を中心に化学工業プラントを輸出しておる。オランダもベルギーも、やはり非常に積極的に取り組んでいるわけであります。そこで、首相は、コマーシャルベースならばその貿易を積極的にいずれの国といえども伸ばしていきたい、こういう御答弁がございましたが、ここでいまの総理の御発言をさらに積極的に現実化し、発展させるために、政府間貿易協定の締結の用意があるかどうか。もう一つは、政府の貿易使節団、これを中国もしくはソ連に派遣する意思があるかどうか。このことを総理にお尋ねしたいと思います。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 ソ連あるいは中国に、貿易使節団はいままでも行っておりますことは御承知のとおりでございます。これは民間の立場で行っておるのであります。私は、そういうことは貿易増進のたてまえからいってけっこうだと思います。
  33. 赤松勇

    赤松委員 私は、池田総理考え方というもの、つまり、おのれをむなしゅうして国家民族のためにという一昨日の演説が、ドゴール大統領のような、あのようにフランスの国家民族のために、おのれをむなしゅうして積極的なフランスの発展のためにという姿勢のないことをはなはだ遺憾と存じます。先ほどの答弁といまの非常に消極的な答弁を聞きまして、前者に賛成し、後者に対しましては国民とともに失望を禁じ得ないのであります。  もう一つこの際聞いておきたいのですが、この対ソ貿易の中で非常に重要なのは、シベリア開発の問題であると思うのであります。私は昨年ソ連に参りまして、社会党の代表団の団長としてソ連側のネステロフ商工会議所の議長と会いました。そしてその際ネステロフ議長が私に申しましたのは、シベリア開発についていま西独からも、イギリスからも、イタリアからもその要請がある、しかし、われわれとしては、ミコヤン氏が日本に参りまして、そして日本の工業の水準を見て、日本の技術、資本、労働力をもってシベリアの開発をやってもらいたいという結論に実は達したのだ、そしてイルクーツクからナホトカまでの石油輸送のパイプラインが完成すれば、石油の対日輸出は年間四万トンは可能である、鉄鉱石については、 モスクワに近いクルスク地方で最近大鉱脈が発見されて、埋蔵量は推定三百億トンだ、したがって、ソ連としてはこの大鉱脈だけで現存鉄鉱石は十分だ、だからシベリアを開発して日本が必要なものはどんどん日本に持っていったらいいじゃないかということを言っておりました。すでにシベリアをごらんになった財界の諸君たちも、そのシベリアの広大なことにはみんながびっくりしておりました。これは総理もそのシベリアを視察された財界の代表とお会いになったと思うのでありますけれども、その広大なこと満州の比ではありません。しかも、あの無限の荒野に地下資源が眠っている。大森林が——私はモスクワから飛行機に乗りましたが、百四十人乗りの世界一速いジェット機だといわれるものでハバロフスクまで八時間、行けども行けども荒野です。日本の国内で、いや失対事業打ち切りだ、炭鉱離職者だなんということを言っておりますけれども、シベリア開発に積極的に取り組んで、そうしてあそこに労働力を持っていくとすれば、数百万人の労働力を持っていったって二階から目薬なんですよ。あなたはなぜそういうスケールの大きな日本の将来というものを考えて——もっと積極的な、対ソ貿易というだけでなしに、ソ連との間にすみやかに平和条約を締結する。そして北方漁業の問題も基本的にこれを解決していく。あるいはシベリアを含む開発について長期間にわたる、数十年、数百年にわたる長期の展望を持って取り組んでいく。私は、いま言ったように、だんだん後退していくアメリカとの間にちょっぴり貿易を結んで、それがだんだんだんだん後退していくというような状態でなしに、この際、いま申し上げましたシベリア開発を含む積極的な大陸経済、朝鮮を含む大陸経済との結合、こういうものをひとつ真剣にお考えになったらどうですか。私は、南北朝鮮が統一をされる、そうすれば釜山と下関との間に海底トンネルのできることは夢じゃないと思うのです。シベリアから沿海州にかけて循環道路のできることは、私は夢じゃないと思います。日本海はいわばアジアの庭園になるわけです。泉水になる。そういう大きな構想の中で、現にソ連が、たとえばパイプラインの問題にしても日本に注文する。そうすると日本は、アメリカに気がねをしながらそのパイプラインは八幡がこれを引き受ける。そうすると、アメリカのほうにちらりちらりと目を見やりながら右顧左べんする。現に私、ここに切り抜きを持っておりますけれども、毎日新聞の記事に、アメリカは、八幡製鉄がパイプをソ連に輸出してもよい、これを許す、こういう記事が載っておる。私はこれは一体どこのだれにアメリカがこの輸出を許すのかと思って見たら、なに日本の輸出を許してよい、こう書いてある。いかに対米依存度が強いかということを私はこの一事をもって知りましたが、この際思いを新たにされて、そうして目をもっと——シベリア開発は地球の改造です。これは一地域の開発じゃありません。地球の改造です。しかもソ連は積極的にこれを日本と一緒にやろう、こう言っている。したがって私は、この問題に限ってでも政府が使節団を送って、そうして向こう基本的な話し合いをやる、そういうことができないのかどうか。ネステロフ氏が、日本政府はそろばんを知りませんねということを何度も何度も言いました。  それからついでに言っておきますが、ここに河野さんはおられぬけれども、あのコンブと抑留者の問題についても、日本社会党はちゃんとした提案を持って、そうしてイシコフ漁業大臣に私は二日間会いました。私ども代表団五名は二日間会った。その際にソ連政府が明らかにしたのは——もちろん河野さんや高碕さんの非常な御努力に対しましては私ども感謝いたします。しかし、日本政府ソ連交渉する場合に、コマーシャルベースの問題だけが論議されて、北海道漁民の生活実態なんというものは、これが全然明らかにされていない。私どもは、シベリアに抑留されておった北海道の漁民の一軒々々の世帯、その家族構成、そういったものを全部調べて、その詳しいデータを向こうへ示して、そうして即時釈放を要求したんです。コンブの問題にいたしましても、もとより平和条約ができておりませんから、サンフランシスコ平和条約によって日本は放棄をしました、そのためにあのような悲劇が生まれたわけでありますが、まあそのことはしばらくといたしましても、この問題についても私どもは四種類の、四つの提案をしたわけです。その一つがこの春実現したわけであります。首相は、社会党というのは非常に現実性がないというようなことをおっしゃいますけれども自民党政府のなし得ないことを社会党自身がやってきた。現に、大日本水産会の中地常務理事に聞いてごらんなさい。電話でもって私のところに、あのコンブ採取に関する協定の、その会議に先立ってソ連側は、日本社会党をはじめ日本の民主団体の非常な努力によって今日こういう会議を持つことができたんだ、これを忘れないでくれということを智頭明らかにしたと言っておりました。このように私どもも私ども立場で、池田内閣でできない分野においては非常に積極的に努力をしておりまが、そのことはともかくとして、このシベリア開発を含む大陸経済との結合、それによる日本経済の自立と発展、この大きな構想をこの際総理の口から明らかにしていただきたい。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 先般訪米の際、ジョンソン新大統領の招宴におきまして、私はミコヤン副首相と二、三十分にわたって話し合いました。ちょうどあなたがいまここでおっしゃったようなことをミコヤン副首相は言っておりました。ただ、違う点は二つあります。それは、日本の労働者をシベリアへ入れようというようなことは毛頭考えておらぬ。そうしてまた、私が提案した、平和条約を早く結びたければ択捉、国後を返しなさい、こう言ったところが、これは反対だ、こう言っております。まあ、択捉、国後の問題につきましては、私は話をいたしましたが、そういう点があるわけです。いまの日本の労働者をどうこうということは毛頭考えておりませんし、択捉、国後を返そうということは考えていないようです。
  35. 赤松勇

    赤松委員 歯舞、色丹は……。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 歯舞、色丹は、もう平和条約がなにすれば当然でありますが、その前提として私は択捉、国後は返すべきだということを言った、その点違います。そして先般も申し上げたと思いますが、ソ連の経済政策は、かなりいわゆるマルクス・レーニン主義とは変わって現実的になりつつあります。ミコヤンも、あなたと同じように、シベリア開発、またソ連全体のいわゆる経済開発を考えておるのだ。そのあとで、日本も非常によくいっているじゃないかというようなことも言っておりましたが、私はこう申しました。それは開発に協力する、しかし、何ぶんにもどんどん何億ドルの輸出といっても、延べ払いが主では困るのだ、そしてまた、日本があなたのところの物を買おうと言ったって、なかなか値段の点、その他品物の点でそうはいかぬ、だから、君のほうは買いたいだろうけれども、買うのには買うだけのひとつ情勢をつくってもらいたい、こういうことを私はミコヤンに言ったのでございます。ソ連につきましては、現実的な経済外交、国内工業、農業の発展を非常に企図して、そして日本の技術あるいは資本の導入を考えておるようでございます。私はいろいろ話をいたしましたが、ミヤコン副首相が願っているような大規模な協力は、いまのところ日本は、キャッシュ・デリバリーならいいですけれども、延べ払いということになると、向こうの言うとおりにはなかなかいきにくいのじゃないか。しかし、やはり前向きで貿易をしていくということには変わりはございません。(赤松委員「使節団は……。」と呼ぶ)使節団は、先ほど答えましたとおりに、民間の人がおいでになるのは、何らこれをとめる理由はございません。また、お話のとおり、先般行かれました二回にわたる使節団の報告も私は聞いております。
  37. 赤松勇

    赤松委員 平和条約の問題についてはどうですか。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申上げましたように、択捉、国後、日本固有の領土を返してくれればやりますけれども、そこまではまだ向こうがいっていないようでございます。
  39. 赤松勇

    赤松委員 それはひとつ平和条約を締結するという過程において交渉されたらいかがででございますか。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 いまの私の答えでおわかりいただけると思います。固有の領土を返してくれることが前提でございます。それを返す返さぬということが疑問のうちは、われわれとしては平和条約を結ぶわけにはいきません。
  41. 赤松勇

    赤松委員 非常に不満でございますけれども、時間がございませんので、次に進みたいと思うのであります。  なお、もう一つ総理にぜひお聞きしておきたいのは、沿岸貿易の問題です。これは御承知のように、シベリアでは季節的にいろいろなものが不足するわけでございます。御承知のように、北海道に参りましても、それから北陸に参りましても、山陰に参りましても、沿岸貿易をぜひやりたい。で、ネステロフ議長と話し合ったときに、ナホトカに貿易局の出張所を設ける、したがってそのナホトカの貿易局の出張所で沿岸貿易についてはいろいろ話をしたい。非常にこの点は積極的です。ところが、積極的ではあるけれども日本側の体制というものができていない。したがいまして、私は野菜、果実その他たくさん輸出をするものがあると思うのです。これをやれば特に北陸、北海道の諸君、あるいは山陰地方の住民の諸君の非常に大きな利益になると思うのでありますけれども、これについて何か具体的にこれをお進めになる考えはないでございましょうか。
  42. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、コマーシャルベースでの貿易は、それが沿岸貿易であろうと何であろうと、われわれは進めていきたいと考えております。
  43. 赤松勇

    赤松委員 なおこの際、総理は本会議におきまして、非常に文学的な表現で、しかも非常に宗教的情操あふるる演説をされたわけです。それを御紹介申し上げますと、「宗教的な情操とこれにささえられた敬虔な人生観が特に重要であります。偉大なあるものに近づこうとする願い、天職を遂行する使命感、利害得失を越えて働き抜く真摯な心、これこそ世界の中で将来日本民族がより高く評価されるゆえんであります。」こういうように演説をされまして、私も全く同感を禁じ得なかったわけでありますけれども、その首相のことばがただ演説だけに終わったのじゃ私は困ると思うのであります。この「宗教的な情操とこれにささえられた敬虔な人生観」、それは御承知のようにただいま日本の国内には六十万人の朝鮮人が住んでおります。これは私がいまさら御説明するまでもなく、賀屋法務大臣がおられまして、当時賀屋法務大臣は戦時内閣の閣僚をされておりましてよく御存じだと思うのでございますけれども、朝鮮人が日本に喜んで積極的に移住してきたわけではないのであります。かなりたくさんな人が徴用されあるいは軍事動員をされまして、そうして日本帝国主義戦争、いわゆる軍国主義のために犠牲になっておるわけであります。そのことはしばらくおくといたしましても、私は人道上の問題から、日本と朝鮮との長い歴史を考えて、現存朝鮮にいる親兄弟あるいは日本にいる親兄弟、こうした人が里帰りもできない、墓参りもできない、会うことができない、こんな悲劇は、総理あるでありましょうか。これはあなたが言う宗教的な情操、敬虔な人生観、これがはたして許すでありましょうか。私はこういう問題はイデオロギーを入れてはいけないと思う。ところが、商売をやる場合はイデオロギーじゃない、コマーシャルベースだとおっしゃった。経済がそうであるならば、いわんや親子の問題、血縁の問題、そういう人道上の問題はイデオロギーが入ってはならぬと思います。思想が入ってはならぬと思います。私はフリーパスで自由に往来をさせろというような乱暴な議論をしておるわけではないのであります。いま申し上げましたように、朝鮮人と日本人、朝鮮と日本との長い歴史的な関係、特に日本が朝鮮を統治し、そうしていろんな犠牲を要求した、戦争においてもたくんさな犠牲を要求した、その罪の償いと申しまするか、あるいはそれに対するところの補いと申しまするか、そういう意味から申しましても、一定条件のもとに、この親子の対面とか墓参りとか、そういったものは、私は当然許されるべきだと思うのです。いま世界人権週間でございますけれども世界人権宣言をあなたに紹介するまでもなく、この人権宣言の中には、「すべての人は、法の前に平等であり、また、いかなる差別待遇もなしに法の平等な保護を受ける権利を有する。すべての人は、この宣言に違反するいかなる差別に対しても、また、このような差別のいかなる教唆に対しても、平等な保護を受ける権利を有する。」「何人も、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上もしくは他の意見国民的もしくは社会的出身、財産、門地、または他の地位といったいかなる種類の差別も受けることなしに、この宣言に掲げられたすべての権利と自由とを享有する。なお、個人の属する国または地域が、独立地域であると、信託統治地域であると、非自治地域であると、その何らかの主権制限の下にあるとを問わず、その国または地域の政治上、管轄上または国際上の地位にもとづくいかなる差別も設けてはならない。」これが世界人権宣言のすなわち第七条と二条であります。この朝鮮人、または現に朝鮮にはたくさんな日本婦人も住んでおりますが、この往来について、ひとつこの際、総理の口から、このことについての態度を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 北鮮の方々が帰国したいという場合におきましては、御承知のとおり、両国の赤十字社のあっせんによりまして、すでに八万人もお帰りになっておるような状況でございます。今後におきましても、ぜひ帰りたいということならば、われわれはお帰しすることにやぶさかではございません。ただ、二国間においての入国その他の問題につきましては、やはり法律的問題もございますので、詳しくは法務大臣よりお答えすることにいたします。
  45. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 お尋ねの問題につきましては、いま総理からお答えがありましたように、出国の問題は大体希望どおりに認めておりまして、これは人権宣言やまた国際慣例に大体会っておると思うのでございます。入国につきましては、世界人権宣言も自由には認めていないと思います。また、どの国もそうでございまして、そういう問題には移民条約とか特別の条約を結びまして、両国の利害の調節をやっている、これが世界の国際的慣例だと思います。実情を申し上げますと、多少あの運動にも誤解があるようでございます。従来、終戦以来国内における南北朝鮮の人々は非常に圧迫されていると言われる向きもありますが、現に百万以上の人がどんどん自由に終戦後帰っております。それからまた、御承知のように、数年来、北朝鮮帰還の問題で八万以上、希望者はみな帰しております。圧迫されている、国内に閉じ込めておくというようなことは、全然これは誤解だろうと思います。ございません。  それからまた、ほかの国民と差別待遇をしている、これも全然差別待遇はいたしておりませんのみならず、むしろいろいろな点で事実上優待をしておるのじゃないかという意見もあるようでございます。たいへん誤解があるようでございます。それで、正当に出国の希望がある者は大体そういたしておりまするし、また、入国を認めてよろしい場合には、むろん入国を認めております。そういう点は、いずれの国民ともちっとも区別はいたしておらない次第でございます。さよう御承知願いたいと思います。
  46. 赤松勇

    赤松委員 賀屋法務大臣は、私がかようなことを申し上げるのはなんでございますけれども、戦争中閣僚の席におられまして、朝鮮人を徴用しあるいは軍事動員をされました責任者の一人であります。私は、いまの答弁を聞きまして、出ることは自由である、入ることについても、これは一定の手続をとって入れてある、こういうことを申しておられますけれども、実際問題としましては韓国から入ってきているのはやみで入ってきている。朝鮮人として日本に入国することは法律上禁ぜられておるわけです。特に、先ほど申し上げましたように、日本と朝鮮との関係から申しまして——中国、北ベトナムに対しても、パスポートを出しているではありませんか。どうして朝鮮人だけには出さないのですか。差別をしていないと言うけれども、現実に差別されておるじゃありませんか。私はもっと人道的な立場から考えてやってもらいたいと思うのであります。私は、たとえば北ベトナムあるいは中国並みに扱う場合——これは総理よく聞いておいていただきたいと思うのでありますけれども、それは日本政府で好ましくないと思えばときには制限することもできるわけなんです。何も無制限で、パスポートなしで行ったり来たりさせろというようなことを私は言っておるのではない。したがって、日本に六十万人も朝鮮人がいる、その朝鮮人が故郷に帰って墓参りをしたい、あるいは祖先の霊を慰めたい、親、兄弟と会いたいという場合に、行くことは自由だ、幾らでも行かしてやる、行ったらもう帰ってこれないじゃありませんか。もっと人間としての答弁をしてもらいたいと思う。
  47. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 帰還の問題につきまして、朝鮮の人々には特別に便宜を与えていると思うのでございます。先に申し上げましたように、終戦後百何十万でございますか、非常に大きな数の人を希望に応じて送還もいたしております。それからいまの北鮮に八万以上の人が帰り、また現に帰りつつある人もおります。これなども自由帰還のたてまえでございますが、日本からは財政援助もいたし、いろいろやっている。これはほかの国に対して見ないなにをいたしております。それから日本の内地におります場合にも、たとえば義務教育につきまして、日本の小学校、中学校に入りたいという場合には、ほかの国には認めませんが、認めておる場合も多いようでございます。それから生活保護にしましても、ほかの外国人はその利益に浴しておりませんが、在留鮮人には認めている。そういう点につきましては、相当意を用いている点がございます。それから往来につきましても、別に帰る場合に特別にとめた理由はございません。特に北鮮との自由往来を主張する人は、北鮮人に差別をするということを申しておりますが、私が承知しておるところでは、そういう理由で入国を申し立ててこれをとめた例はないのであります。そういう申し立てがまだないのでございます。そういう実情もございまして、決して差別待遇をしたり、日本に閉じ込めておくなどということは、非常な誤解ではないかと思っております。
  48. 赤松勇

    赤松委員 まだ入国の申し立てがないという話でございます。入国の申し立てをすればもちろん検討するという意味でございましょう。私は十二時十八分までが持ち時間だそうでございますが、まだ問題はたくさんございますので、ただこの一点だけ申し上げ、さらにこの問題については、賀屋法務大臣と法務委員会で十分論議したいと思います。  在日朝鮮人の国籍別の構成を申し上げますと、これは昭和三十七年の八月現在ですが、北朝鮮が三十七万五千百二十四、それから韓国籍が十九万四千五十四、計五十六万九千百七十八になっております。続いて首相はやはり演説の中で、「目前の利益を追い、安易に流れる気風は、厳に戒むべきであります。三たび国政をゆだねられた私は、責任の重大さに身の引き締まる思いであります。私はいま、おのれをむなしゅうして、国家のため、民族のためにすべてをささげることを願うものであります。私は、自由と平和を守る人々にとっては、信頼に値する友となり、敵意と陰謀をもって自由と平和を脅かす力に対しては、信念と勇気をもってこれを排除する決意であります。」こういうように所信を表明されまして、私もまことに力強く感じておるわけでありますが、そこでお尋ねしたいのは沖縄の問題であります。  これは本年二月二十八日の午後四時過ぎ発生いたしました事件でございまして、那覇市の国場有仁の長男秀夫君という十三歳の上山中学の一年生の子供が、アメリカ海兵隊第三マリン師団上等兵ロナルド・ジャクソンの操縦する大型トラックによって轢殺をされた事件であります。すなわち、青信号で約十五人の学童が横断をしておる際に、一番後方におったこの国場君がひかれて死んだ。ところが軍法会議で無罪の判決が下ったわけであります。私は当時法務委員会でこれを取り上げまして、徳安長官に質問をし、そしてその判決文を取り寄せるよう要求しました。ところがアメリカ軍の拒否にあいまして、判決文はついに日本政府の手に渡らなかったのであります。判決文さえ日本政府の手に渡らなかった。それで徳安長官は、こう言って私にあやまった。先方にはもう何べんも繰り返して早くそうした資料を入手するようということを話してございますし、外務省にも私どもから、できるだけ外交ルートを通じて入手できるように重ねて頼んであるのでありますけれども、とうとうそれができませんでしたから、ひとつお許しを願いたい、こういう答弁をしておる。それから、向こうには民裁判所というのがあります。民裁判所が裁判権を沖縄住民に関する限りは持っておるようなかっこうになっておる。ところが、実はこれは持っていない。非常に大きな例外規定があって、大幅な裁量権は現地のアメリカの支配者に与えられて、そしていろいろな不利益な事件が起きておるわけです。一九四八年から一九五八年までに、十年間に百十二件の補償が請求されたけれども、そのうちわずか十五件が処理をされただけで、あとはうやむやになっております。百十二件の補償が請求されたけれども、十五件が処理されて、うやむやになっておる。特に私は憤慨にたえないのは、総理、沖縄で五になる少女が強姦されております。強姦し、そしてこれを殺してしまった事件がある。由美子さん事件、この由美子さん事件の損害賠償請求額が百六十一万円であったけれども、実際に補償された額は二十四万円。それから薬きょう拾いに部隊内に入って殺された悦子さん事件というのがある。この悦子さん事件の賠償請求額は百七十万円であったけれども、すべて過失責任ということで却下され、そして全然この請求に対する救済の手が伸べられていないわけです。平和条約第三条によってどうにもならぬということを政府は言う。ところが総理府設置法によりますと、明らかに「特別地域連絡局において、左の事務をつかさどる。」という中で第二に「南方地域に滞在する日本国民の保護に関する事務を行うこと。」ということが明らかに書いてある。平和条約第三条で保護ができなければ、なぜ外国に居住する日本人としてこれを保護しないのでありますか。民裁判所という裁判所があるけれども、例外規定が大幅に設けられて、実際には日本人の手で裁判ができない。これはアメリカの国内で批判が起きておるのですよ。アメリカの国内で、日本に駐留する米国軍人が罪を犯した場合、日本の裁判所はあまり軽過ぎる。その刑罰が軽過ぎるということが、アメリカの国内で問題になっておるじゃありませんか。しかるにわが党の和田氏の質問に対しまして、総理はどういう答弁をしておるか。沖縄の民生安定は日米協力して推進したい、これがあなたの答弁です。沖縄の民生安定は日米協力して推進したいと思います。——これは日米協力しておりますか。これは何ですか。沖縄は日本人ですよ。潜在主権、顕在主権の問題はあるにしても、そういう片々たる法律の問題じゃない。おのれをむなしゅうして、国家、民族のためにと言うならば、なぜむなしゅうしてアメリカと断固として交渉しないか。あなたは、自由と平和を侵す人々にとっては、信頼に値する友となり、自由と平和を脅かす力に対しては、盲従と屈辱の徒に陥っておる。もう一ぺん言いましょう。自由と平和を侵す人々にとっては、信頼に値する友だ、自由と平和を脅かす力に対しては、盲従と屈辱の徒に陥っておる。おのれをむなしゅうして民族のためにすべてをささげることを、あなたはいま忠実に実行しなさい。私はこれを法務委員会で取り上げて、徳安長官に対して何度も何度も進言したけれども、外務省は一体何をやっておるか。これは内閣全体の責任なんです。沖縄ではこの事件でどれだけ憤慨しておるか。おかあさん方のデモが起きたじゃありませんか。こういうように日本人の五つになる少女が強姦をされて殺される。しかもそれがうやむやになってしまう。沖縄で上山中学の子供の書いた作文をあなたはよく耳に入れておきなさい。この作文、上山中学生の作文、これは琉球新報に発表されておる。上山中学生の作文には「規則を守れというから守った、その規則を守ったものが殺され、規則を破ったものが無罪になる、もうおとなの言うことは信用しない、沖縄の子は豚の子か」こう書いてある。これが国場君の友だちが書いた作文だ。私はこういう点はほんとうに民族的な問題として考えてもらいたい。どうですか。総理総理……。(発言する者あり)何だ、重大な問題だ。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 具体的な案件でございますので、所管の外務大臣から……。
  50. 赤松勇

    赤松委員 ノーノー。だめです。私が聞いておるのは、民裁判所はあるけれども、それは大幅に例外規定が設けられて、日本人の生命財産が守られていないということを私は言っておる。  それならば私はさらに聞きましょう。一月に日米合同委員会が開かれるでしょう。その日米合同委員会でこれを持ち出すかどうか。沖縄人の生命、財産を保障する問題について、これを保護する問題について、あなたは持ち、出すか持ち出さないか、それだけ。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 事態をよく検討いたしまして結論を出します。
  52. 赤松勇

    赤松委員 私は、この答弁を聞いたら沖縄の人は実際がっかりすると思うんですよ。おのれをむなしゅうして、国家、民族のために……、実際恥ずかしいよ。もう一ぺん読みましょうか。(「聞いたよ」と呼ぶ者あり)何べんでも教えて、やるよ。「私は、自由と平和を守る人々にとっては、信頼に値する友となり、敵意と陰謀をもって自由と平和を脅かす力に対しては、信念と勇気をもってこれを排除する」これは敵意と陰謀を持っておるだろう。何が自由と平和なんだ。五つの少女が強姦されて、それで指をくわえて見ておる。それが日本人か。日本政府か。池田内閣はどこの内閣なんだ。外務大臣答弁しなさい。
  53. 大平正芳

    大平国務大臣 赤松さん御承知のように、わが国が敗戦の結果、沖縄は平和条約によりましてアメリカに施政権をゆだねたわけでございまして、このことは、私どもが敗戦の十字架として背負い切っていかなければならぬものだと思うのでございます。自然、施政権をゆだねた場合におきまして、わが国が、いま御指摘のようなもろもろの不幸な事件に対して、有権的に関与する道がないわけでございます。もとよりわが国としても行政的に、政治的に最善を尽くしますけれども、そういった問題について有権的にわが国政府立場で処理する道がないということは、赤松さんも御承知のとおりでございます。問題は、総理が本会議でも言われましたように、日米協力してこの事態は打開せなければならぬわけでございまして、アメリカが、究極におきまして潜在主権を日本に認め、やがて日本に返すんだが、返す場合の困難をできるだけ減殺すべくお互いに協力しようという去年の三月のケネディ声明を信頼いたしまして、私どもは、非常な忍耐と努力をもちまして、漸次事態を改善していくように努力いたしておるわけでございまして、あなたが御指摘されるような不幸な事件が今後起こらないようにするためにも、日米協力はあくまでも進めてまいらなければならぬものだと私は考えておるわけでございます。
  54. 赤松勇

    赤松委員 協力じゃない、盲従じゃないか、何を言っているんだ。  時間がありませんので、残念ながらその問題はさらに委員会でやりたいと思います。  次に、私は大蔵大臣に聞いておきたいのは、高度経済成長政策の結果、大企業並びに中企業はその恩恵を受けたけれども、しかし、系列下請関係からはずれた中小企業、零細企業は苦境を続け、昭和三十七年度以降、中小企業の倒産は高水準のまま推移して、本年十一月には、これまでの月間最高記録である三十二年七月の三百三件を上回っている。一方、消費者物価は高騰を続けておる。今日、高度成長経済政策の矛盾は各方面から鋭く指摘をされておりますが、しかも、わが国はいよいよ本格的な開放経済の体制に入る段階になった。こういうむずかしい事態に、一体総理はどう対処されるか。  もう一つは、国際収支の悪化はすでに顕著である。早ければ三十八年度、おそくとも三十九年度には赤字が出るといわれている。日本銀行は本年度に公定歩合の引き上げ、あるいは預金準備率の引き上げ等と、金融引き締めの措置をやる、こういう意見がすでに出ております。この二点について、総理はどのようにお考えでございましょうか。
  55. 田中角榮

    ○田中国務大臣 中小企業の問題につきましては、倒産をした例について十分検討しておりますが、正常な状態において倒産をしておるというような例は少ないのであります。なお、中小企業対策、それから農山漁村対策というような問題につきましては、三十九年度の予算編成の最重点施策として手厚い考慮をしておりますので、いままで恩恵が少なかったとあなたが言われた部面に対しては、これから重点的な施策をいたすつもりでございます。  それから国際収支の見通しにつきましては、来年の三月の年度末に、国際収支の不安が起こるというような状態にはありません。しかし、開放経済に向かうのでありますから、長期拡大・安定的な国際収支対策をいま鋭意行なっておるわけでございます。また、今年度の景気見通しや国際収支の問題につきましては、御承知のとおり、予算編成の当初は、名目八・一%、実質六・一%の成長率をめどにしてまいったわけでございますが、その後、多少景気が政府が当初見通したようなものよりも高い水準にありますので、これを政府考えておりますような安定的な成長にとどめ、それによって国際収支も安定を期するために諸般の施策を行なっておるのであります。
  56. 赤松勇

    赤松委員 倒産の資料についてたくさんありますけれども、もう時間がございません。ただ、私はこの際聞いておきたいのは、中小企業向けの融資状況ですけれども、これは絶対額はふえております。しかし、その構成比で見ますると、これが年々減っております。たとえば昨年は四八・九%、三十八年の八月には四六・一%というように減っているわけです。来年度はその構成比を大体どれくらいのものにしていこうと考えているのか、これをひとつお尋ねしておきたい。
  57. 田中角榮

    ○田中国務大臣 中小企業関係政府三公庫の資金を拡大するとともに、中小企業専門金融機関の内容を整備してまいり、あわせて、御承知のとおり、選挙前から地方銀行等において中小企業に貸し付けながら短期の切りかえ形式をもって対処しておりましたようなものに対しては、事実に即応をした貸し出しを認めるという方向をとっておりますし、なお、都市銀行その他における中小企業に対する貸し出し比率を現在より以上に高めていきたいという考え方を持って、強く行政指導を行なっておるわけであります、ただ、過般行なわれました準備率引き上げにも見られますように、今年度の上半期から現在までに至る間に、異常な貸し出しという面が都市銀行において一部あります。それは生産が非常に上がりましたために、生産に対する滞貨融資的なものがありますので、それらのものに対しての引き締めを行なう目的を持っておるわけでありまして、今年下期及び来年度の中小企業に対する金融に対しては、私が今申し上げたより以上の線で現在検討いたしておりますし、特に総理大臣から、中小企業金融対策に対しては画期的な処置を行なうべしという命令も受けておりますので、これに対応すべく努力中であります。
  58. 赤松勇

    赤松委員 特に画期的なというところに力が入ったわけですけれども、その画期的なものをいろいろ財政金融の面から聞きたいのですが、すでに時間がありません。残念でありますが、住宅問題あるいは税制の問題、年々ふえる生活保護の問題、あるいは公害問題と地域住民の生活福祉の問題、それから地方財政の問題、あるいは物価問題、原子力潜水艦の問題などたくさんございますが、これは時間がありませんから省略いたしまして、ここで二、三点聞いておきたいことがあるわけであります。  それは、総理は、経済が成長して国民全体が非常によくなっている、こういうようにおっしゃっておりますが、一体日本国内に二万円以下の所得、つまり自民党政府に忘れられた人たちと言いますか、この人たちがどれくらいおるとお考えでしょうか。現にわが党の和田氏の質問に対しまして、個人所得が世界で二十三番目だから日本の地位が二十三番目という考え方はおかしいというように本会議できめつけられましたが、私は、名目所得は確かに上がっておると思います。しかし、問題は生活水準の問題でありますけれども、この生活水準について、一体国民のどれだけの部分が、今日なお食うや食わずのいわゆる貧民階層として存在しておるか。これは、おそらく総理としては、このことが前提になければ政治はやれないと思います。これが前提にならなければ——昭和三十九年度の予算編成の、これは根幹をなす問題です。しょせん政治は国民生活の安定でありますから、私は、総理の頭の中にはちゃんとそのことが数学として描かれておると思うのであります。非常に数字に詳しい総理でございますから、ひとつそのことを数字をもってお示しを願いたい。所得二万円以下の人が日本にどれくらいおるか、これはいかがでございますか。
  59. 田中角榮

    ○田中国務大臣 課税人口が千八百万人でございますが、二万円以下のものに対していま調べておりますから、調べてお答えをいたします。
  60. 赤松勇

    赤松委員 税金じゃないですよ。私の言っているのは、所得二万円以下の人がいまどれくらいおるか。おそらく総理はそのことをちゃんと頭の中に入れて政治をやっていらっしゃるでしょう。昭和三十八年度の予算編成の場合にも、そういう人たちのことがちゃんと頭の中に描かれながら予算編成が行なわれておる、こういうように思うので、一体日本の国にはもう貧民階層はなくなったのか、あるとすれば一体どれくらいあるのか、これは池田内閣の政治の責任だと思いますので、そのことを明らかにしていただきたいと思うのです。税金の問題じゃないのです。
  61. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いま赤松さんが言われました数字を調べております。いまの段階におきまして、課税人口は千八百万でありますので、その残余が税を納めておらない階級でありますが、そのうち二万円以下のものを調べてお答えを申し上げます、こう申し上げたのであります。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 私の記憶では、いわゆる雇用労務者で月一万円以下の人は、昭和三十四年には七百万ちょっとこえておりました。それが三十七年には、半分よりちょっと上の三百六十万になっております。それから自主営業者も、大体年十二万円以下の人、これも三、四年間で半分近くに減っておるのであります。これは二万円のところとか一万五千円とか、正確には見ておりませんが、とにかく雇用労務者関係では、一万円以下の者が七百万人をこえておったのが、三百六十万、半分くらいになっているということは、最近の経済の成長のあれでしょう。そこで、本会議でも、物価が上がったんじゃないか、こう言われますが、所得のふえたその何分の一しか消費者物価は上がっていない、そこで生活水準はよくなった。しかも、いわゆる食費やその他が上がったといっても、エンゲル係数は全面的で三九になっている。三十四年に比べて、四二・四が三九になっている。三・四のエンゲル係数の引き下がりということは、相当生活が楽になったと見ております。また都会におきましては、大体三六から七くらいのところまでいっている。これは先進国並みに近いんじゃないかという気持ちです。
  63. 赤松勇

    赤松委員 遺憾ながら政府発表の数字といまの総理の数字とは違っております。総理府統計局の家計調査によりますと、本年五月の勤労者世帯の平均実収入は四万七千四十円、実支出は四万三千七百二円で、黒字になっていると報告されておりますけれども、しかし、この統計の基礎をなしているのは、調査世帯の構成が低所得者層を不当に少なくして、そして勤労者世帯の生活実態を正しく反映した統計でないことを第一に私は指摘しなければならぬわけであります。これは統計をつくった内閣統計局が一番よく知っていると思うのです。低所得者の抽出を非常に少なくしておりますから、こういう結果が出てくる。それでいまエンゲル係数の話が出ましたが、数字のお好きな総理でありますから、私もエンゲル係数をひとつ引用したいと思うのでありますが、三十七年度の厚生白書——厚生大臣おられますから、厚生大臣、よく聞いてくださいよ。厚生白書によりすまと、二万円以下の階層は、全国世帯数の二七・二%、六百十四万世帯、二千四百七十九万人、それから雇用労働者についてだけ見ても、昨年四月に実施した労働省の特定条件賃金調査によると、一万円未満の労働者が全体の二一・五%、一万円から二万円の労働者が全体の三九・八%、こういうことになっておる。これは労働省の特定条件賃金調査。つまり雇用労働者の半分以上、五二・三%が二万円以下の賃金で働いている。その数はおよそ一千万人なんです。これが先進国並みと言えますか。いまだんだん先進国に近づきつつあるという総理の御答弁でありますけれども、明らかに政府の統計は、いまの総理答弁が誤っているということを物語っておる。それからエンゲル係数を見てみますと、本年五月の調査によりますと、一万円から一万五千円未満の世帯で五二%、それから一万五千円から二万円未満の世帯で四六・一%、二万円から二万五千円未満の世帯で四八・九%、だんだん上がっていっておる。このことは消費者物価の高騰に対して政府がいかに強弁、弁解しようとも、月収二万円前後の勤労者の世帯、それ以下の低所得音階層に属する国民の一人一人が、きのうもきょうもあすも明らかに苦しい生活のどん底に追い込まれておるということを立証しておるわけであります。総理府統計局の数字も、労働省の統計も、明らかにこういう数字を出しておる。私は、この階は自民党政府に忘れられた人たち、つまり政治が不在する階層だ。この階層には政治の手が全然伸べられておりません。私は、池田内閣が高度成長経済政策で全体の経済が高まった、こう言っておりますけれども、その陰にこういう人たち、すなわち二万円以下の人が、厚生省の発表によれば二千五百万人、これらの多くの人たちが社会のどん底で取り残されておるということを忘れないでいただきたいと思います。これについて、昭和三十八年度の予算の中では、これらの階層に対する救済をどのようにしようとするのか、その点をお伺いしたいと思います。
  64. 田中角榮

    ○田中国務大臣 三十五年度の統計しかありませんので、申し上げますと、就業人口の総数が四千五百二十九万人であります。四千五百二十九万人のうち、昭和三十五年で年収三十万円以下の者が二千四百万人でありますが、それからおおむね一〇%以上ずつ上がっておりますので、逆算をして、概算でありますが、おおむねあなたが言った二万円以下が一千万人というような数字が出ると思います。しかし、それらの人々は、十五歳から二十五歳までの新しく就業せられた人々の数を見ますと、おおむねそれに合致をするわけでありまして、これが社会保障の対象としてすぐ問題になるというふうには結論できないと思います。しかし、社会保障に対しては、御承知のとおり、年間一八%ないし二二%もこれが給付を上げたりいろいろな施策を行なっておりますので、来年度の予算に対しても、これらの問題に対しては積極的な配慮をする予定であります。
  65. 赤松勇

    赤松委員 社会保障の対象にならぬという答弁であります。このことをよく社会党は記憶をいたしまして、そうして国民に正しく伝えたいと思います。  なお、本会議におきまして、原爆裁判の問題に関連して、わが党の質問に対しまして池田総理の御答弁がございました。その御答弁によりますと、原爆被爆者に対しては医療その他の措置は適切に講じている、このように答弁をされております。ここで特に広島が選挙区である総理にお考えを願いたいと思うのでありますけれども、現在、原爆被爆者に対しましては、昭和三十二年に原子爆弾被爆者の医療等に関する法律という法律がございますが、医療給付だけなんですよ、それは。あとは生活保護でもってやっているわけなんですね。だから、やはり私はこの際総理考えていただきたいのは、この援護法——生活のめんどうを見る、生活を保護するという援護法、被爆者に対する援護法、これをつくる意思があるかないか。特にまた、この医療給付につきましても非常に不十分でございまして、いまどれくらいにそれが行なわれておるかといえば、大体最近三カ年の検査成績を言いますと、一般検査は三十六年で十二万二千六百八十六人、それが三十七年になって十七万人にふえております。年々ふえつつあるのです、この被爆者が。あとからあとから病気が出てまいりますから、だんだんふえつつある。それからこれに対する手当はどうか。これに対する手当はどうかといえば、医療給付でもって大体一カ月、二週間以上入院した者に対しまして、入院雑費として二千円です。それから外来患者ですね、外来患者の交通費は、これはたしか五百円だと思います。そうすると、バス代にもならないわけですね。こういう状態でありまして、長崎、広島におきましては、医療保護を受けておるといいながら、実は医療保護も十分受けていない。いわんや生活保護は十分行なわれていない。ですから、医療保護も、それから生活保護も含めて、ひとつ援護法をおつくりになる意思はないかどうか。これはひとつ思い切ってやってください。いかがですか。
  66. 池田勇人

    池田国務大臣 原爆被害者につきましては、医療をただいま主にしております。しこうして地域的に区別をしておることも、承知いたしておるのであります。だんだん原爆被害者の数もその後の調査でふえるやに聞いておりまするが、今後被爆者について医療関係以外にどれだけ広げていくかということは、他のやはり戦災による被害者等との関係もございますので、十分検討してでないと、いま結論を申し上げるわけにいきません。
  67. 赤松勇

    赤松委員 東京地裁の判決は、御承知のように、その最後に、高度成長経済下にあって、この程度の人の援護ができないはずはない、これは明らかに政治の貧困を物語るものである、これが判決文の最後ですよ、東京地裁の。私は、非常にきびしい判決だと思うのです。これは国民の声でありますから……。高度成長経済政策下において、この程度の人の援護ができないということは政治の貧困だ、こう言っています。どうぞこのことをよく考えていただきたいと思います。  さらに、いよいよ憲法調査会の答申案が準備をされ、おそらく来年の三月ごろ答申をされる段階になると思うのであります。従来総理は、この憲法問題については、国民世論の動向を見て、そうしてきめたい、こういうふうにおっしゃっております。そこで、この憲法調査会の結論が出たならば、総理はどのようにこれを扱うのか。  もう一点は、昭和四十五年には再び日米安保条約の改定の時期がやってまいります。この際に、いまは片務的な条約ですが、これを双務的な軍事同盟に切りかえることを考えておるのかどうか。これは憲法問題と関連して非常に重要な問題でありますから、この際以上二点を御答弁願いたいと思います。
  68. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法調査会の答申が出ましたら、その取り扱いにつきまして結論を出したいと思います。  また、昭和四十五年の日米安保条約改正につきてましての憲法関係は、いまお答えする段階ではございません。
  69. 赤松勇

    赤松委員 憲法調査会の結論が出たら出た段階において検討するということでございますけれども、もうすでに三月ごろにはこの調査会の結論が出る。したがって、国権の最高機関である国会におきまして、この調再会の結論をこのように扱いたいという意思表示をされることは、私は国民に対する義務であると思うので、重ねてお尋ねいたします。
  70. 池田勇人

    池田国務大臣 来年の三月出ますかどうか、まだはっきりしておりません。また、それまでに毛相当時間があることでございますから、よく検討いたしまして結論を出したいと思います。
  71. 赤松勇

    赤松委員 要するに、いつ出るかわからない、出たときに検討するといういまの首相の御答弁は、憲法問題についてある一種の意図を隠蔽しておると思うのです。これは明らかに昭和四十五年の安保改定期にこれを双務的な軍事同盟に切りかえていく、それまでに日本軍国主義を完成していく、そのために憲法を変えていく、これは私は、池田内閣というよりも、日本の保守勢力全体のビジョンであると思います。その意味におきまして、首相がそのことを隠されておるなら隠されておるでよろしい、私はこれ以上追及をいたしません。  残念ながら、なお中小企業の問題その他数点質問を残しました。約束どおり、私は十八分までが制限時間でございますから、まだ申し上げたいことがたくさんございますけれども最後に、来年度の昭和三十九年度の予算編成に関する、たとえば建設大臣がいろいろ公共投資に関する公約をしておる、それから一方におきましては金融の引き締めなどを行なおうとしておる、あるいは予算の規模を縮小しようとしておる、その関係をどのように調整していくのか、こういういわば三十九年度予算編成の根幹をなす問題について、遺憾ながら質問ができませんでしたけれども、私は、来年度予算編成にあたって、高度成長経済政策というものをある程度修正していくのかどうか、これをお尋ねして私の質問を終わりたいと思います。
  72. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知のとおり、三十五年度から十年所得倍増というのを始めました。そうすると、予想以上にずっといっております。したがいまして、三十七年からもう相当成長のピッチは下がっております。その前年の三十六年に比べまして、三十七年というのは実質的に半分以下になっておる。三十八年も、三十六年に比べまして半分程度、こうなっております。高度経済成長政策は、十年間を見通しながら適正にやっていっておる。三十五年、三十六年に比べれば、いまはその進み方は半分程度、それ以下になっております。もう修正と申しますか、変わってきておる。これがいわゆる弾力的経済政策でございます。三十九年度におきましても、こういう三十五、三十六を見、また落ちた三十七、三十八年の情勢を見ながら、適正な十年倍増計画を達成するようにやっていきたい、こういう考えでおります。
  73. 赤松勇

    赤松委員 じゃ私の質問はこれで終わります。
  74. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて赤松勇君の質疑は終わりました。  午後一時二十分から再開することといたしますが、午後の辻原弘市君の質問に対しましては、総理大臣、大蔵大臣、文部大臣、厚生大臣、通産大臣、給与担当大臣、経済企画庁長官、自治大臣、人事院総裁、以上が要求されておりますから、以上は間違いなくおそろいを願う。しかも、それ以外の人は必要ありませんから、これだけは間違いなくそろえていただくように。なお、これが大体午後三時までですから、続いて三時から四時半までに対しましては、総理大臣、外務大臣、大蔵大臣、文部大臣、通産大臣、労働大臣、経済企画庁長官、防衛庁長官、以上をひとつそろえていただくようにいたしたいと思います。  暫時休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ————◇—————    午後一時二十九分開議
  75. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十八年度補正予算三案に対する質疑を続行いたします。  辻原弘市君
  76. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は、社会党を代表いたしまして、ただいまから物価対策の問題につきまして、また当面しておりまする補正の重要項目である公務員の給与改善に関連をいたしまして、賃金の問題その他若干の問題につきまして、総理並びに担当大臣に対して、その所信を伺ってまいりたいと思います。  最初に、総理に私は伺いますが、ただいま提案をせられておる補正予算は、解散前に政府から提出をせられたものであります。特にその補正の項目を見ますると、公務員給与の改善、また災害政策等、緊急にして重要なものがその中に織り込まれておるのでありますから、政府としても、またわれわれ国会においても、すみやかにその審議に当たるということが当然でなければならぬと思うのであります。したがって、過ぐる臨時国会に提出をせられました際に、わが党といたしましては、この補正予算の性格にかんがみて、野党としての各般の主張はあるが、すみやかにその審議に当たってこれを決定する、そういう態度を表明いたしまして、政府なり与党に対して審議方の協力を申し入れたのであります。ところが、提出をいたしました政府みずからが、そのわれわれの当然の態度を無視して国会解散の挙に出たということは、これは私はまことに暴挙と言わなければならぬと思うのであります。世論がそのあり方を決して支持はしてなかったと思う。何がゆえにみずから提出をした補正予算を審議しないで解散を行なったのか、この点について、私は、国会審議のあり方、また憲政の常道という立場から考えて、きわめて重大な問題でありまするから、審議の冒頭にあたりまして総理からその見解を承っておきたいと思います。
  77. 池田勇人

    池田国務大臣 さきの国会で補正予算を出し、御審議を願ったのでございますが、当時の状況、またそれ以前の各党の状況を見まして、私は、やはりあの際解散をして、そうして早く世論の動向を見て、そして年内に補正予算を上げる、このほうが来年度の予算の編成その他につきましても好都合と考えたわけでございます。
  78. 辻原弘市

    ○辻原委員 議論をしようとは思いませんけれども総理のただいまの見解ではわれわれは納得することはできないのであります。なぜならば、当時を振り返って考えてみれば、社会党としては、数日の審議においてこれを決定するということについて確約を与党のほうに申し出たはずであります。当時の状況から考えて、数日を争って解散をしなければならぬという、そういった全般の情勢にはたかったと私は判断をする。だから、総理が当時の各般の状態というその意味はわれわれには了解はしがたい。しいてあげるならば、これは与党の党利党略の上から、あえて重大な補正審議をそでにして解散を断行したということを考えられる。それ以外に理由はないと思うのであります。今後は、少なくとも私は、こういうまことに無責任な、まことに党利党略に終始するがごとき態度というものをぜひ改めてもらいたい。それについては総理はどうお考えになるか、考えてもらいたいと思います。
  79. 池田勇人

    池田国務大臣 国政全般をあずかっておる私といたしましては、過去並びに現在、将来を見通して適正な判断をいたすべきことは当然でございます。私はその趣旨で解散をいたしたのであります。
  80. 辻原弘市

    ○辻原委員 総理に物価の問題についてお伺いをいたしますが、最近の消費者物価の動向は、政府のしばしばの言明、対策にもかかわらず、さらに一段の騰貴を見せております。最近の政府の統計を見ましても、すでに全都市における消費物価の値上がりは、昨年の九月に対比をしてみましても、八%を九月においてオーバーしておるのであります。おそらく例年の例から考えてみれば、年末、さらには新年度にはこれ以上の騰貴、一割をこえる騰貴が見られるのじゃないかということをわれわれは心配いたしておるのでありますが、これはひるがえって政府の当初の見込みから考えてみれば、すでに二倍をこえる騰貴率である。まことにこれは驚くべきことと申さなければなりません。結局は、何ら今日まで政府の施策において物価抑制の策が講ぜられなかった、何ら実効があがっておらない、こうわれわれは断定せざるを得ないのであって、まことにこれは遺憾しごくであります。一体今日なお高騰に高騰を続けるこの物価の動向に対して総理はいかにお考えになるか、まずその点を承りたいと思います。
  81. 池田勇人

    池田国務大臣 日本の経済が先進国型に近寄り、近代化していき、また労賃の格差がだんだん少なくなっていく場合におきまして、消費者物価の上がることは、これはある程度避けられないことでございます。しかし、これは避けられないといっても、ほっておくべき筋合いのものではございません。上がるにしても、できるだけこれを押えていくことはわれわれの方針で、昨年の春ごろからいろいろ手を尽くしておるのでございます。まだその効果が十分にあがっていないことは遺憾でございます。したがいまして、私といたしましては、この上がっている原因が、やはり農業あるいは中小企業、サービス部門での生産性の向上が十分でないのでございますから、こういう方面にもっと力を入れて、そして先ほど来申し上げますように、二両年において一応の安定を見るという方向にいま努力をしておる次第でございます。
  82. 辻原弘市

    ○辻原委員 いま総理は、一両年で物価の安定を期する考えである、こういうふうに言われたわけでありますが、この言葉は、総選挙直前、それから総選挙の中においてしばしば国民に公約をしてきたことであります。その、一年で物価を引き下げるということについて、言葉としては簡単であるが、これは従来の政府の施策から見まして、少なくとも物価騰貴は三十六年以降急激に続いているわけでありますから、その三年間に何ら見るべきものはなかった。それが急に一年にしてこの高騰を押えられるというのには、よほど強力な施策がなければいかぬと思いますが、今日この席上において、総理は一年で物価を引き下げるということがあらためて国民に対して明言ができますか、私はこれをはっきり承っておきたいと思います。
  83. 池田勇人

    池田国務大臣 一両年と言っておるのでございます。そして、私は消費者物価を下げるとは言っておりません。消費者物価を下げるということは、非常にこれはむずかしい。しかもまた、経済の進歩において消費者物価を下げるということは私はとるべきでないと思います。ただ、安定さす、そしてその安定の程度はどうかと申しますると、やはりいままで外国でもいっておられますが、とにかく生産が相当伸びていくときにおいて、またその経済が構造変化して近代化していくにおきましては、いわゆる名目的の総生産の伸びる三分の一とかあるいは四分の一程度の消費者物価の値上がりは、妥当とは言いませんが、避けられないという考え方は一般にしております。私は、そういう意味におきまして、消費者物価を下げるということは、これは私としてはとりません。なかなか下げられるものではない。これは、もし消費者物価を下げるとかあるいはくぎづけにするということになりますともちょうど日本で申しますと、昭和三十二年から、三十三年のときは、生産は伸びない、そして物価は下がる、こういうことは即不景気ということになってくるのでございますから、私は消費者物価を下げるということは言っておりません。安定する、しかも、これは一両年のうち、一、二年のうちに安定する、そして安定というのはどうかといったならば、大体総生産の伸びの三分の一とか四分の一程度でいくことが、私は大体安定だと思います。
  84. 辻原弘市

    ○辻原委員 あなたがいままで言われたことは、きょうここでおっしゃったことはだいぶん意味が違う。それは、物価は一年以内に下げる、こう発表されているのです。それは誤りだったのですか。一両年という言葉のニュアンスと一年以内ということばと、また、引き下げるということと安定ということとは、私は大いに意味が違うと思うのです。だから、その点をもう少し明瞭にひとつおっしゃっていただきたい。
  85. 池田勇人

    池田国務大臣 一年間において物価を下げるという報道があったとすれば、私の真意ではございません。二両年において物価の安定をさす、こう私は言っておるのであります。ここではっきり申し上げます。
  86. 辻原弘市

    ○辻原委員 前々回の総選挙のときにも、いわゆる所得倍増というのが、月給二倍になるのじゃないかという、素朴な期待感を国民に与え、失望さした。また、今日国民の非常な問題である物価の問題についても、これはいま総理は真意ではなかったがと答えられたけれども、当時の大新聞その他にも、明らかにあなたの談話として、あるいは政府の方針として、一年以内に物価を下げる、これは公然と載っておった、また、おそらく国民がそれに対して期待をしておったのであるけれども、ただいまの総理の言明によって、物価の安定策はいずこやと大きな失望を感ずると思うのであります。要するに、政府としては、当面の物価を安定するという施策については、実効があがっておらないと同時に、積極的な意欲を持っておらぬ、私はこういうふうに考えるのであります。  そこで、私は参考に宮澤さんにちょっと聞いておきたいのだが、最近の物価の上昇率について、各月々間の動向を資料によってひとつ御報告を願いたい。
  87. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 消費者物価につきまして、全都市の数字を申し上げることにいたしますが、本年の一月あたりから申し上げます。一月には前年同月に対比いたしまして六・〇%高、以下二月から七・一高、七・八高、七・四高、七・六高、九・〇高、八・三高、六・九高、九・〇高、十月現在で七・八高になっております。
  88. 辻原弘市

    ○辻原委員 この各月々間における騰貴率を見ましても、これは先ほど私が申しましたように、毎月々若干の変動はありましても、非常に鋭い騰貴のカーブをたどっているということは明瞭であります。したがって、この一年間におけるこれだけの騰貴率を押えていくためには、強力な物価対策が必要であるということは申すまでもない。そこで私どもといたしましては、昨年の通常国会の際にも、具体的な、特に消費者を保護するための物価対策の機関を創設することを提案いたしました。まあそれが契機となったのでありましょうが、内閣の中に物価懇談会が生まれ、その物価懇談会が去る九日に一応の結論を出した。その内容を検討いたしてみますると、おおむねわれわれ社会党が今日まで政府に具体的な施策を迫ったものがほとんど織り込まれておるのであります。しかも、この懇談会はおそらく可能な限りにおいて各界の有識者を集めておやりになったものでありましょう。その結論でありまするから、当然政府としては具体的内容を全体として尊重してやることは申すまでもないところであろうと思います。ところが、先日来の本会議等の答弁を聞いておりますると、どうもこの懇談会の意見等を積極的に推進するという気魄が政府のあれには見られないのであります。そこで、私は、あらためてこの点について総理並びに宮澤長官にその見解とまた今後の決意を伺っておかなければならぬ、かように考えておるのでありまするが、全体としてこの意見を全面的に尊重し、直ちに実施に移す用意がありまするかどうか、この点であります。まず総理からその決意のほどを伺いたい。
  89. 池田勇人

    池田国務大臣 物価懇談会の答申は九日でございまして、まだ私十分読んでおりませんが、大体の方向は企画庁長官から聞いております。原則といたしまして、あの線に沿ってできるだけ早い機会に実行に移したいと考えております。これ全部そのとおりというわけにはまだ結論は出しておりまませんが、大体においてあの趣旨、方針に向かって進んでいきたいと考えております。
  90. 辻原弘市

    ○辻原委員 宮澤長官にこの機会に伺いたいのですが、この懇談会の構成、権限というものはどうなっておりますか。
  91. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 懇談会は、一橋大学の名誉教授中山伊知郎氏を座長といたしまして、学者、評論家等ほぼこの問題について中立的な立場にあると思われる方々、御婦人を含めまして十人余りで構成をいたしました。過去二カ月、ほぼ三カ月でございますが、三カ月間に十四回ほど毎週会議を開いてもらいました。これは、私が、この問題について経済企画庁長官としてどういうふうに対処すべきかということにつきまして、問題の過去の分析、これからの見通し及び政府としてとるべき長期、短期の対策について提言をしてもらいたい、こういうことでお願いをいたしました。今週の月曜日に、十四回の会合の後、私あてに結論を報告をしてもらったわけでございます。私といたしましては、これをできるだけ早い機会に閣議に報告をいたしたい、こう考えております。
  92. 辻原弘市

    ○辻原委員 総理が、この懇談会の意見については、全面的というわけにはいかぬけれども、できるだけ尊重をしてまいりたい——これでは非常に抽象的であって、いままだ閣議にも報告されていないというようなマンマンデーでありますから、いまここで徹底的に議論をするわけにはいきませんけれども、しかし問題は、どう取り組もうかという、私先ほども申し上げました気魄であります。これほど重要な問題でありながら、いまだに閣議にも報告されておらない、検討もされておらないということでは怠慢に過ぎると思うし、また、いまの構成、権限を聞けば、こう言っては失礼でございますけれども、一経済企画庁長官の諮問機関とまではいかない単なる懇談会的なもので、いわゆる全般の世論を背景にした物価行政をやろうというそのところに、何がしか歯の抜けたものを私は感ずるのであります。したがって、ここで私が提案いたしたいことは、総合的な物価行政でありますから、これをさらに強化をする、その強化は、構成の上においても、直接日常生活をしている消費者等の代表あるいは労働者等の代表をも加えて、しかも、そこで出した結論は一応聞きおきます。いいものがあればとりましょうといったようなていのものではなくて、これに対して少なくとも政府を拘束し得るような勧告権等を持たす、そういう強力なひとつ物価対策の機関、こうしたものにすることが、現在のいわゆる物価対策の重要性から考えて、私はきわめて適切な措置であると思うし、国民もまたこのことを待望しておると思うのであります。そういう用意がありますかどうか。必要あれば法制的に行政的に権限、構成を強化する、これを検討する用意がありまするかどうか、ひとつこれは総理それから担当大臣御両人から承りたいと思います。
  93. 池田勇人

    池田国務大臣 御意見の点を今後検討してみたいと思います。
  94. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 報告がなされましたのが今週の月曜日の午後でございまして、翌日が施政演説の日でございましたために、普通の状態で閣議が行なわれなかった、そういうわけであったわけでございます。できるだけ早い機会に閣議に報告をいたします。要は、そういう状態でございますので、私がいま政府を代表して申し上げることはいかがかと思いますけれども、ここに書かれておりますこと、なかんずく公共料金をめぐる提言につきましては、全面的に尊重をして実施をしてもらいたい、私としては、閣議でそういう決定があることを希望しておるわけであります。  先ほど総理が言われました意味は、私そんたくをいたしますのに、実は、この報告がなされます以前に、ことしの夏ごろから経済閣僚懇縫合の間で持ち越されております問題が一件ございます。それは東京におけるタクシーの値上げに関する問題でございまして、これは東京の周辺を含めまして、東京以外の全国各地にすでに一つ高いレベルで料金の改定がなされておりますために、それとのかなり明確な不均衡を生じておるわけでございます。したがって、この点については、これより以前に生じておった問題でございますから、別途処置をする必要があるのではなかろうか、こういうことを一つ考えております。
  95. 辻原弘市

    ○辻原委員 総理からお答えになりましたからよいのでありますが、私が後段に申しましたのは提案であります。構成において、また権限において、これを強化する意思がないか。総理はその意見を参酌して検討してみたい、こういうことであります。私は、具体的に、構成の中に消費者の代表を入れる、さらに法制的必要があるならば、これを法制化する、さらには権限としては、政府を拘束し得る勧告権等を付与する、こういう具体的内容を申しておるのでありますが、その点について、宮澤長官も、もちろん総理の見解でありますから、私の提案に対して賛意を表されたと理解をしていいと思いますが、いま一度答弁を願います。
  96. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 総理が検討をするという御意見でございますから、私も検討をいたします。
  97. 辻原弘市

    ○辻原委員 公共料金の例外の問題について、私はお尋ねをしなかったのであるが、先に答えられましたけれども、いまあえて宮澤長官が東京のタクシーの問題をあげられたからには、それを除いて、いわゆる懇談会が答申をしておる各般の問題は、すべてこれは着実に実行する、こういうふうに受け取ってよろしいか。
  98. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私としては、そういうことを心から念願をいたしておるわけでございます。  一つ問題がございますのは、この報告書には、一年間ストップをして、残余の措置については一年後に検討するということが書かれてあるわけでございます。そこで、その検討の内容とははたしていかなるものであろうか、また、万一その間に経営ができないで倒産をするような企業が生じた場合にはどうなるであろうかというようなことに多少問題が残っておりますけれども、私としては、そういうことを閣議できめられることを念願いたしておるわけでございます。
  99. 辻原弘市

    ○辻原委員 この懇談会の意見書はきわめて具体的であります。集約をして五項目、当面必要な施策については十四項目に分けて、それぞれその実行を迫っているわけだから、それらを全部ひっくるめてやるということに相なりますと、帰結するところは、これは総理に伺いたいのでありますが、従来やっておった、いわゆる池田内閣の高度成長政策というものを大幅に修正をしなければ、これら各般の政策は実行できないと私は考える。これは常識であります。その点を懇談会が指摘をしておるわけでありますが、したがって、いままでのお答えによって、少なくとも東京のタクシー以外の問題は、これは全体としてひっくるめて尊重していきたい、実行に移していきたいとおっしゃるのでありますから、従来の政策を転換をする、こういうふうに理解をしてよろしいか。同時に、このことは、最近の金融政策を見ましても、政府が今日までとってきたいわゆる低金利政策が事実上大幅に修正せられようとしておる、また現にその具体的な事柄が行なわれようとしておる、その両面から考えてみて、当然いままでのような高度成長政策というものは大幅に転換をしておる、こういうふうにわれわれは受け取るのでありますが、そう理解してよろしいか、この点は総理から伺いたい。
  100. 池田勇人

    池田国務大臣 物価問題懇談会を法制的にやることに賛成したというようなお話ですが、まだ賛成はしておらないのであります。あなたの意見を検討してみようというだけでありまして、賛成とおとりにならないようにお願いいたしたいと思う。  それから、高度経済成長政策あるいは低金利政策を修正するかということでございます。私は高度経済成長というものの定義がわからないのですが、少なくとも過去の例を申しますと、三十四年、三十五年、三十六年は名目二〇%程度、あるいは実質一四、五%程度の上昇を見たのでございます。三十七年につきましては、御承知のとおり、当初は名目六・一%、実質四・一%程度をやる。これは三十五、三十六年に比べたらよほど違っておるわけです。三分の一かあるいは半分以下になっておる。もうそこで、高度成長の行き過ぎた分は三十七年度で相当抑えてきておるわけです。それから三十八年度におきましても、御承知のとおり、名目八%、実質五%程度だと思いますが、そういうように相当いっているので、三十四、五、六の高度成長とはよほど変ってきておるのでございますよ。高度成長というのがもし実質一五%程度のものならば、三十七年、三十八年、ずっと変わってきておるわけです。低金利政策とおっしゃるけれども、三十五年のころの公定歩合と——それから一時三十六年に上げまして、そして三十七年にまた下げてきておる。低金利政策、公定歩合につきましても、経済の動きによって非常に高低しておるわけですよ。これは経済の実態に沿うように、国際収支の状況を考えながら、弾力的にやっておるので、池田内閣は高度経済成長をまだ墨守しておるとお考えになっておるのは、三十七年、三十八年度の日本の歩みをごらんにならない議論ではありますまいか。そこで、私は前から申しておりますように、十年あるいは十年以内に所得倍増をやっていくのだ、いまの状態では十年よりもちょっと早くできそうだ、こう言っておるのでございまして、経済政策というものは、池田内閣は高度経済成長、一五%の実質を死守しようなんということはとうてい考えておりません。もう三十七年からそうやっておるということは、辻原さんもこの国会の審議でごらんになっていることと思います。そういうことでございますから、やはり世界情勢日本の経済の実態等を見ながら、私は適切に成長政策あるいは金利政策をやっておるのでございまして、十年の倍増ということは私は続けてまいりますが、その間におけるいろいろな成長率とか金利政策というもりは、国際収支の状況等を見ながらやっていっておるわけでございます。
  101. 辻原弘市

    ○辻原委員 いま総理が述べられたこと自体、これはもう政策の転換じゃありませんか。従来の放漫に過ぎた大企業中心にした設備投資、これが高度成長のいわゆる推進役を果たしてきたのでありますから、懇談会の結論にも、設備投資の水準というものは、少なくとも向こう一カ年は現存の水準にとどめるべきであるという結論を出しておる。また、いま総理が言われたように、三十七年、八年、この両年の方向というものは、成長率を抑制するという方向をとってきた、こうおっしゃっておるその点から考えてみても、明らかに当初総理が言われておった、いわゆる所得倍増、高度成長政策というものは、修正をされつつあると理解をする以外にないじゃないかと私は判断するのでありますが、その点はそうではありませんか。
  102. 池田勇人

    池田国務大臣 そうではないのでございます。それはあなたもすでに御承知のとおり、十年所得倍増といったら、七・二%が累積していけばいいのだ。しかし、当初の三年間は九%、これが私の方針だった。しかし、自由主義経済のもとでございますから、私の想像以上に、名目二〇%近く、実質一四、五%いったのです。これは政府がやれやれと言ったんじゃない。政府は九%程度三年間続けていって、そうしてその後の様子を見よう、こう言っていることは、あなたも御承知のとおりです。しかし、それがたまたま実質一四、五%、名目二〇%いったから、三十七年度から成長率を押え、そうして国際収支等から金利をいろいろ動かしておるのであります。初めの私の政策の十年の倍増というのは、着々効果をあげておるのであります。決して政策を変えたわけじゃございません。だから、その私の政策を自由主義経済のもとにおいて調整しながらやっている、この政策に変わりはございません。
  103. 辻原弘市

    ○辻原委員 それならば私は一つ伺いたいのでありますが、その所得倍増政策を十年にして達成をする。先ほど、国民所得の見合いにおいて、物価は引き下げるとは言っておらない、安定させるのだ、こう言っているのです。それじゃあなたの考えられる所得の倍増計画の中において、安定させるという物価の水準というものは那辺に考えられておるのでありまするか、それを私は国民に明示をしてもらいたい。引き下げるのじゃない、安定させるのだ、ことばはいろいろ使いようがあるが、ともかく安い物価のもとで安定した生活をしたいというのが国民の願いであるわけですから、あなたが安定をさすというのは、所得等との見合いにおいて、どこを水準に考えられておるか、その点を私は明らかにしておいてもらいたいと思う。
  104. 池田勇人

    池田国務大臣 ほかの国の例を引いてみますと、アメリカが大体日本人の所得の一人当たり六倍半ございます。物価が大体、日本を一〇〇にしまして、消費者物価が二百五、六十だと思っております。それから日本人の一人当たりの所得の三倍近くありますイギリス、ドイツ、フランス等におきましては、消費者物価は、日本の消費者物価の大体六割ないし七割の平均の上でございます。  そこで、日本アメリカまで行かなくても、せめて先進国のイギリス、ドイツ、フランス等に近寄るためには、ある程度消費者物価は上がらなければなりますまい。消費者物価が上がるということは、生産性のおくれているところをうんと上げれば、生産性が上昇すれば上がり方が少ない。しかし、生産性が上昇するよりも、賃金のほうが非常に上がってきますと、生産性の向上でそれを吸収できないところに、物価の上がりということがあるわけでございます。そこで、物価は上がらないほうがいいのだという原則もありますけれども、しかし、物価が上がらないということと、国民生活が非常に近代化し向上するということ、どっちをとるかという問題があるわけでございます。たとえば、私は選挙中も申しましたが、昭和二十四年には、私が前年に大蔵大臣になりまして、お米は四千三百円にいたしました。しかし、そのときは、前年が三千数百円であった。一石四千三百円の米がいま一万三千円になりました。三倍になりました。それだけ消費者物価は上がってきておるわけです。しかし、その四千三百円のときがよろしゅうございましょうか。徐徐にずっと上がっていって、お米が一万三千円であっても、テレビ、ラジオも備えつけ、あるいはそのうち電気冷蔵庫も備えつけられる。レジャームードはどうかと思いますが、教育、あらゆる方面で非常に上がっている。この状態を、やはり四千三百円の米代のとき、昭和二十四年の池田の初めての大蔵大臣のときがいいかということを、私は国民に訴えました。  そこで、上がることを悪とは私は考えません。問題は、日本の経済、国民生活近代化し、上昇していって、物価のある程度の上がりも吸収して、生活内容がよくなることを望む。そうしてその限度は、国際収支が長い目で見てやはり赤字にならない、これが国民経済の運営基本でございます。物価を下げるということは、それ自体は非常に耳に入りいいようでございますが、下げた場合のわれわれの生活水準がどうなるかということを考えますと、私は過去の歩みを見て、そうして徐々に先進国並みにいって、そうしてわれわれの生活がフランスイギリス、ドイツ——もうイタリアをここ二、三年ではこえるのじゃないかと私は思います。そういうことに持っていこうというのが私の経済政策でございます。日本国民の勤勉と英知と努力、あるいは政策がよければ、これはむずかしいことではない、これが私の経済政策でございます。
  105. 辻原弘市

    ○辻原委員 問題は、物価と所得というもののバランスがとれていないという日本の実態であるから、今日国民が生活に困っているわけです。いま言われたように、アメリカに比較をして最低六分の一、ヨーロッパ先進諸国の三分の一、そういった生活水準、所得水準にある日本において、物価騰貴がヨーロッパにおいて最もインフレ的傾向を心配されておるイタリアよりもはるかにオーバーをしておる。いわゆる所得というものと、それから物価の騰貴の歩み、テンポというものとが、全然バランスがとれておらぬ。あなたの言うように、いわゆる生活水準を上げていくためには、若干の消費者物価の値上がりというものはやむを得ないのだ、そういう議論もあるでしょう。確かにそれは一つの議論だと思う。ところが、現実の日本状態というのは、所得の上がる率というものよりは、物価の騰貴率がはるかに足が早い。非常に大きい。ここに問題があるわけだから、心なくともあなたの議論に立ってみても、物価抑制、引き下げということは、これはぜひやらなければならぬ問題であると私は思う。だから、先に行って将来所得が向上したときには物価がそれにバランスがとれて安定するのだということでは、現実の国民生活を守るということにはならない。そこにわれわれが当面いわゆる物価政策の緊急政策というものが必要だということのゆえんがあるわけです。この点についてはどうですか。
  106. 池田勇人

    池田国務大臣 その点を考えて言っておるのであります。あなたは所得の上がりよりも消費者物価の上がりが早いとおっしゃるが、私はそうは考えておりません。池田内閣ができましてからの状況を見ますと、統計はそうはいっていない。そうして平均ではいかぬ、部分的に見なければいかぬというお話でございますが、内閣調査の五分位表を見ましても、必ずしも下のほうが非常に苦しいというわけのものではありません。収入にいたしましても、四年前の一万三千円程度のものが一万九千何百円に、第一分位も、最下位分もなっております。そうして全体の数字も、もうすでに私が申し上げておるとおり、さきの特別国会の施政演説で言っております。実質これだけ上がった、ただ問題は、三十八年度において急激に上がった、あとがやはり上がっておるということが心配なのでございます。そこで、物価懇談会を設け、その他政府が、物価上昇の原因である農業、中小企業のいわゆる生産性がまだ相対的に低いということ、これを直して物価の上がりをモデレートにしたい、こういうことが私の政策であるのであります。
  107. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間をかけて、いま総理が言われたことに私は反駁をしたいのでありますが、それだけの時間の余裕がない。たとえば総理、今度の人事院勧告、これはあとで議論いたしますが、人事院勧告を見ても、勧告書それ自体、物価の騰貴は七・四%ですね。これは四月に時点を下げて七・四%としておる。ところが、公務員給与の引き上げ率は六・七%、政府がやっておる、政府がきめた、今回出されておる公務員の給与改善、だから公務員だけの現状を見ても、あなたの言われるように物価の騰貴を上回って賃金が上がっているとは、これは考えられません。総理、これはどうなんですか。
  108. 池田勇人

    池田国務大臣 賃金と物価というものは長い間で考えなければいけません。たとえば生産性の問題と賃金の問題につきましても、一時はそれは生産性を賃金がこえる場合もありましょう。しかし、ずっと前から比べてみると、大体つり合っていっておるとかいうようなことで考えるのであって、一時的の問題だけでどうこういうことではありません。日本の経済は悠久でございます。発展はずっと続いて発展しなければならぬ。一時的の数字だけでとやこう言うべきものではない。長い目で見てもらわなければならぬ。私は、国民の給与の上げ率は人事院の調査が適当としてこれを組んでおるのであります。
  109. 辻原弘市

    ○辻原委員 一時的の数字ではありませんよ。去年もそうだったでしょう。去年の引き上げ率はたしか六・八%、物価はそれを上回っていたはずです。決して私は一時的な数字を申しておるのではない。部分々々をとらえてみた場合に、総理の言ううように物価を上回って所得が大幅に——もちろんそれは向上しているところもあるでしょう。しかし、それは全体ではない。特に低所得の階層においては、それははるかに物価を下回っているというのが現状なんです。しかし、これは時間がありませんから、私は総理の御説明に対してはただ承服ができない。現実はそうではない。しかも、総理府統計によるこのパーセントというのは、根本的に問題があるんです。実際これはわれわれの個々の家庭を見れば、消費者物価の中のたとえば生鮮食料品にしても、その値上がり率は六〇%や七%や一割ではない。早い話が、最近のたとえば豚肉の騰貴なんかを、たしか二カ月くらい前に百グラム当たり店先で調べたことがありますが、五十円であったものが今日では八十円まで上がっている。六割の騰貴じゃありませんか。だから、実質的に国民生活に与えている影響というものは、総理府統計のごときものではないのであります。しかし、私は、そういうような議論をしては相対的議論になりますから、政府の持っている資料に基づいてやっておる。それにしても、決して賃金は物価を上回って引き上げられているということは当たらないのであります。そのことは、後日またわれわれは数字を具体的に示して総理にお尋ねをする機会があるかと思いますから、これは省略をいたしますけれども、ともかくただいまのお考えによってみては、一体消費者物価をどうしようというのかということがどうも明瞭でありません。ただ経済の政策については長い目で見てくれということでありますが、今日物価の騰貴ということは、長い目で見られない段階にきておるから、われわれは早く当面の具体策をやれ、こう言っておるのであります。そこで、その当面の具体策の二、三について、これは簡潔でよろしいから、要するにやるかやらぬかをひとつお答えを願っておきたいと思います。  その第一は、設備投資の抑制であります。これは懇談会の意見どおり、少なくとも向こう一年間は現状の程度にとどめる、その原則は確立をせられますか。  それから第二には、先ほども宮澤長官が言われておりましたが、公共料金を最低向こう一年間は引き上げないということは、これは私は、公共料金の値上がりあるいは値下げという問題ではなくて、物価全体に与えるムード的な影響というものは実に大きいと思う。そういう意味で、われわれはこれを強調しているわけです。向こう一年間、少なくとも政府みずからが許可、認可権を持っておる公共料金については絶対上げたいんだということは、物価騰貴の中で、騰貴が次の騰貴を生むという悪循環的ムードを断ち切る、私は火消しの役割の第一義的なものであると考えておる。そういう意味で、例外を設けちゃいかぬ。少なくともそういう原則を確認をして、たとえ一つの例外であろうとも、これは向こう一年間は何とかひとつがまんをしていただくということでなければ、この物価騰貴の火を消していくことは私は不可能だと思う。そういうムードづくりを政府みずからがやる、そういう決意が必要だと思う。私は、懇談会の御意見というものも、そういう決意を政府に要請しているものであると思う。特にその懇談会の答申の中に次のようなことが書かれておる。それは、物価問題というのはきわめて政治的問題である、だからこれを断行していくためには、強力ないわゆる政治的な実行力と決断と政府の確固たる信念、施策がなければいけない、これを要請するということが書かれておるわけでありますが、私はまさにそのとおりであろうと思う。いまこの物価騰貴の中で、不必要なものまでがこのムードの中で引き上げが行なわれておるといった現状は、経済の政策を離れて、一つの物価騰貴という悪感情から生まれておるものである。だから、それに対しては何とか押えていくんだ、引き下げるんだという、私はなみなみならぬ政府の決意と実行力が必要であると思う。そういう実行力と、また、公共料金その他に対しては、いまも申しましたように、これは大きな役割を果たすのでありますから、断々固としてこれは引き上げない、こういう決意が望まれると思うのでありますが、いま一度お答えを願いたい。同時に、タクシーの問題は、本会議でも言われたし、またいまも言われておるのでありますが、公共料金としての例外はこれがただ一つであるか。往々にして例外は次の例外を生む、例外が例外でなくなるということが世の中には多いのでありますから、そういうことに相なってはこれは何ら意味がないと思う。東京のタクシーの問題一つが例外だとここで明言できますかどうか、いま一度お答えを願いたい。
  110. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 設備投資につきまして、確かに懇談会はそういう勧告をいたしておりますので、おそらく今年の第三・四半期、十月から十二月までのただいまの時点でございますが、設備投資が年率にいたしまして四兆一、二千億あるかと思いますが、明年の設備投資の額もそれをなるべく上回らないようなところに押えたい、そういう政策目標を持っております。また、そのように財政金融が運営されるべきであるというふうに考えておるわけであります。  公共料金の問題につきましては、確かに効果は、辻原委員の仰せられましたように、一つの政治的な決断が一般の心理に及ぼすところの影響が大切であるというふうに考えますので、タクシーの問題は別にいたしまして、一年後の処置をいかにするかということも考えなければなりませんが、心がまえとしては、ただいま仰せられましたようなことで私としてはやってまいりたい、そう思っております。
  111. 辻原弘市

    ○辻原委員 したがって、公共料金の例外は東京のタクシーの場合に限るというふうに、私はいまの御答弁を理解をいたします。  次に、この意見書の中に、われわれも、今日の物価体系の中で物価が下がらない一つの重大な要因が、大企業を中心にした独占的な価格、これにあるということを指摘をしておったのでありますが、この懇談会の意見に、自由なる価格を阻害する要因を排除すべきだ、表現は違いますけれども、私は同じことだと思う。そこで、この自由なる価格を阻害をしている要因とは一体何であるかを考えてみれば、まず第一に、これは今日の独禁法運用のあり方に問題があると思います。調べてみますと、独禁法の例外措置は、二十八年以降今日に至る間に約四十の例外がございます。これは法的にとられた措置であるが、同時に、そういった合法的なもの、さらには非合法的なものを合わすと、膨大なものに私はのぼるのではないかと思う。したがって、この際、これら合法、非合法を問わず、本来の独禁法の趣旨に従って、いわゆるカルテル行為等はこれは最小限度に、中小企業その他おくれているそういった部面の育成に資する場合は例外として、それ以外大企業が持っておるところの価格を維持し、あるいは独占的なものにするといったような、そういう大企業本位のカルテル行為は、これは法律行為によってもいま一度検討して、本来の独禁法運用の姿勢にこの際改めるべきではないか、かように思うのでありますが、これも従来の経緯から見て政府の決断を要する問題である、きわめて重要な問題でありますが、同時にまた、保守党の立場においてはなかなかむずかしい点もあろうかと思うが、われわれは、それを行なわなければ、重要な物資についての国民の待望する、いわゆる価格値下げという問題は実現できないと考えておる。したがって、独禁法をいま私が申したような形に、本来の姿に取り戻す用意があるかどうかを明瞭にひとつ長官から伺いたい。
  112. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大企業のみならず、銀行などに対しましても、自由な価格の形成を妨げる行為が協定によってあるということについては、遠慮なく公正取引委員会の調査なり指摘なりが行なわれるべきだというふうに考えております。  輸出の問題は、これは輸出秩序の問題がございますからやや別でございますけれども、当然そういうふうに運営されるべきものであると思いますし、また、すでに私どもから公正取引委員会に対して調査等を依頼した事例もございます。
  113. 辻原弘市

    ○辻原委員 次に、物価騰貴の原因の中で現実にかなり大きな役割を果たしているものに、私は土地の問題があると思う。この点は、これは毎国会いろいろ議論をしておるが、さっぱり政府においてはこの地価騰貴を抑制するという具体案が出ない。宅地問題の審議会でも検討しているということであるが、一向に具体策としてはあらわれてこない。ことしは懇談会の意見も出たのであるから、投機的な土地取引等に対しては、これは思い切って法的な措置なり行政指導を強化して、少なくとも常識上あり得ないような土地の騰貴を政府責任、国の責任において抑制すべきである。その点について、たとえば空間地課税等の強力な措置をとる用意がおありになりますかどうか、私はこの機会に承っておきたいと思います。
  114. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 幾つかの措置を講ずべきだと思うわけであります。たとえば、先買い権の制度でありますとか、あるいは土地収用手続の改正並びに収用価格のきめ方の改正等がその第一であると思います。また、金融機関等に対して、いわゆる投機の対象となるような土地に対しての貸し出しについては抑制をしてもらう、こういうような行政指導、あるいは税法では空間地課税も考えられるわけでございます。たとえば、ただいま土地についての譲渡所得の特例が御承知のようにあるわけでございますが、それが投機のために行なわれるというふうに考えられるような短期の売買については、そのような譲渡所得の特例をはたして認めるべきであるかどうかというような問題もあると思います。それらのことをあわせて検討いたすべきものと考えております。
  115. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこで、いま一つ重要な問題である流通改善の問題の中で一つだけお尋ねしておきたい。  これはちょうど総選挙の直前であったと思いますが、新聞に、スーパーマーケットを政府は推進し奨励するということが出ておりました。一般的に言えば、確かにわれわれもそれに同感の意を表するのであるが、しかし、これでは非常に問題があります。というのは、現に各地方都市においてスーパーの進出によって小売商店その他零細企業が脅かされている姿がある。したがって、スーパーについての取り扱いは、少なくとも、大資本による、あるいは外来資本等によるいたずらなるスーパーの奨励は厳戒すべきであると思う。そして、これは中小企業、零細企業の育成策とあわせて考えるべき問題であると思う。特に小売商店等の零細企業が今日経営難にあえいでおるということは周知の事実でありますから、したがって、これの共同化によるスーパー等については、政府は積極的に各般の保護政策と奨励策を講じて推進すべきである。同時に、大資本によるスーパーの進出というものは、最近の状況をながめておりますと、都会における百貨店資本が姿を変えてあらわれたり、あるいは剰余的な資本を持った投機的な企業として行なわれておる例も少なくないと思う。そういった点から、少なくとも小売商店等の保護を考慮して、このスーパーによる消費と生産との直結方式というものを考えていくべきであると思うが、そういう具体案をお持ちであるかどうか。これは通産省にも関係がありますから、その点について明瞭に承っておきたい。
  116. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  ただいまの御趣旨にはわれわれも賛成でありまして、そのような措置をとってまいっております。たとえば、外国からの大型のスーパーマーケットが入ってくることについてはチェックした例もございます。今後の対策につきましては、ただいまいろいろ予算関係等にも出しておりまして、おおむね先生のおっしゃるような趣旨に基づいていま施策をやっておる次第であります。
  117. 辻原弘市

    ○辻原委員 さらに突っ込んで具体的に承りたいのでありまするが、時間も相当経過いたしましたので、物価の問題については以上の点にとどめておき、後日さらに詳細な点は承りたいと思います。  次に、私は給与の問題について承りたいのでありまするが、これはもう例年繰り返す、全く政府態度についてわれわれも不満だらけでありますが、特に、今回の公務員給与についての人事院の勧告を、実施時期の点において踏みにじっておるということは、これはきわめて重要な問題である。勧告について尊重いたしますというのは政府の紋切り型答弁でありまするが、一向に尊重しておらぬ。なぜ、人事院が調査に基づいてきわめて科学的にやった、一般的に科学的にやったというこの人事院勧告すら尊重しなかったか、私はこの点について総理の見解を承りたい。
  118. 池田勇人

    池田国務大臣 人事院勧告の内容につきまして検討し、また、この実施につきましては、国家財政あるいは地方財政等各般のことを考えまして、昨年と同様十月一日よりやることにいたしたのであります。いろいろ議論はございましょうが、私はいまの状況からこれが適当であると考えたのであります。
  119. 辻原弘市

    ○辻原委員 先ほど総理も述べられたように、わが国の所得水準というものは、これはヨーロッパ先進諸国に比較をしてもその三分の一にしか達しておらぬというきわめて低い状態にある。しかも、特に公務員は民間の給与に比較をしてみても絶えずそれを下回っておるというのが現状である。それを最低是正をしようとして人事院が勧告をした。この勧告を勧告どおりに実施できないということは、これは、いろいろ議論を言われましょうとも、政府がいかに給与の問題あるいは公務員に対する処遇等に冷淡であるかというそしりを免れまいと思います。そういう意味で、ひとつ担当大臣からもこの点についての所感を承っておきたい。
  120. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 国家公務員法におきまして人事院の勧告を尊重すべしという趣旨が述べられておりますことは、給与の勧告を実施するにあたりましては、内容のみならず、その時期についても勧告を尊重するという意味であると心得ております。かような趣旨からいたしまして、今回の実施にあたりましては政府といたしましてもその趣旨で万全の努力をいたしたのでございまするが、何分にも、先ほど総理大臣から申し上げましたような事情によりにまして、実施時期について御批判をいただくような結果になりましたことは、遺憾であると考えます。
  121. 辻原弘市

    ○辻原委員 大橋さん、あなたはいまと同じ答弁を昨年の私の質問に対してもやっているのです。進歩がないのです。去年も、実施時期をずらしたということについてはまことに遺憾であります、——遺憾ならば、なぜあなたは閣議において、少なくとも国家公務員法に定められておるとおり尊重しないのか。私はそういう怠慢ではいけないと言うのです。ここではそう答えれば一応時間が過ぎて終わるかもしれぬ。しかし、そんなことでは、国民がまた公務員が、あなた方の要求している能率をもって公の奉仕者だということに専念をするという気がまえができませんよ、それは。今日公務員から団交権あるいは罷業権等をちゃんと取り去っているのでしょう。そのかわりの人事院であるわけだから、せめてそこが答申したものについては、——しかも大幅なものではない。今日、六・七%や八%引き上げなんということは、だれが常識的に考えてみたって、これは本格的な給与改善ではないのですよ。それをしも、五月実施を十月にずらすなんということは、これは大へんな値切り方だと思う。もう少し責任を感じなさい。あなたは来年も同じことを言うかもしれぬ。だから、あえて私はこのことを今日言っておきますが、もう一度、あなたは閣議においてどういう努力をしましたか、はっきりその点を申していただきたい。
  122. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この問題につきましては、私ばかりでなく、閣僚のすべてが、特に関係大臣が集まりまして、百方努力をいたしたわけでございます。
  123. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこまでの努力をしたということをここでおっしゃるなら、どうですか、いまからでもおそくはない。実施時期について、少なくとも人事院勧告どおり、ないしはそれに近づけるという努力に対して、あなたは賛意を表されますか。どうですか、その点は。あなた個人として。
  124. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいま予算案がすでに提案をされておりますので、政府といたしましては、この提案に基づいて御審議をいただきたいという考えでございます。
  125. 辻原弘市

    ○辻原委員 どうも、総理とそれから担当大臣のことばを聞けば、予算の関連云々ということがございました。大蔵大臣、あなたが反対されたのですか。その点をひとつ明瞭にしてもらいたい。
  126. 田中角榮

    ○田中国務大臣 閣議で十分検討の上全員の決定であります。
  127. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは切実な問題です。幾ら努力をしたと言ったって、その努力の結果が具体的にあらわれなければ、これは絵に書いたもちで何にもなりません。しかし、これは水かけ論でありますから、いまここで多くをいたしません。  そこで、私は、これは責任は人事院にもあると思う。人事院総裁はお見えになっておりますか。——去年もあなた方は四月調査、五月実施を勧告して、そうして十月までこれは切られてしまった。科学的というあなた方の意見は全くここでつじつまが合わぬのですよ。少なくとも四月調査が五月から実施をされて初めて論理的に筋が通る。これは私は去年議論をいたしておりますから本日はその議論はいたしませんけれども、だれが考えても、四月の時点において調査をしたのだから五月から実施をしなければ民間給与との差を埋めることができないというのは常識なんです。それを、同じことを二年も繰り返されて、一体人事院の面目がどこにありますか。そういうことだから絶えず人事院の改組の問題が出るのです。一体、人事院総裁としては、二カ年も続いてそういうことをやられるならわれわれはその職にたえない、そういうことを言ったことがありますか。それほどの責任を負わなければだめなんですよ。便々として、ああそうでございますか、十月実施よろしゅうございます。そういう態度では、どこに公務員の保護機関たるの面目がありますか。私はこの席上において人事院総裁責任のある答弁を聞きたい。
  128. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 お答え申し上げます。  筋道の問題としては、まさに先生のおっしゃるとおりであります。したがいまして、私どもは、勧告の当面の責任者として、われわれが責任を持ってあらゆる努力を傾けて勧告を申し上げたその勧告の実現を何とかしてそのまま実現させたいという努力をすることはあたりまえのことでありまして、いまもおことばにありましたように、すでに数回苦い経験を経ておる次第であります。したがって、ことにことしは、少なくとも人事院としてはこのままの形で勧告が法案となりますようにあらゆる努力を重ねたわけであります。今後も、国会の御審議によってこれがきまることでございますし、われわれの勧告の趣旨を了とせられまして、りっぱな御裁断を賜わるように心からお願いをいたす次第でございます。
  129. 辻原弘市

    ○辻原委員 いま初めての問題なら、ああさようですかと私も申し上げたいのである。ところが、さっきも言ったように、去年と全く同じことをここで繰り返しておる。努力というものは、去年はこうであったが、ことしにおいては全面的とはいかぬでもこれだけの努力の結果があったという実績がなければ、われわれはその努力を認めることはできない。たとえば、それがいいというのではありませんけれども、あなた方の力で、去年も十月実施だった、諸般の事柄はあるが、今年はせめてその実施を一カ月ないし二カ月、これを勧告どおりに近づけるという努力が今日の提案の中にあるならば、私どもは認めるにやぶさかでない。しかし、何にもないじゃないですか。何にもないということは、二カ年続いてあなた方は無視されたということなのです。そこまで無視されるならという決意がなければいかぬと私は言うのですよ。それがないではありませんか。それが何にもないところに、あなた方の怠慢を私は責めるのです。まあ、しかし、私はここであなたに辞職をしろということを要求するのではありません。この点について十分考えていただきたい。  そこで、少し具体的に伺っておきたいと思うが、六・七%という引き上げ率は、私は物価のところでも議論をいたしましたように、現状から見てこれはきわめて不満であります。きわめて低い。あなた方の勧告書を見ましても、本年四月における物価騰貴率は前年同月と対比して七・四%と述べておる。しかも実施の時期がずれた今日におきましては、いまの時限において八%全都市においては上回っておる。十二月末、一月はおそらく一割を上回る物価騰貴があるであろうと考えられる。そういう時期にわずか六・七%の引き上げ率でもって事足れりということは、私は、給与改善について人事院それ自体まことに冷淡であると申さなければならぬ。所見を承りたいと思います。
  130. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 本年四月の調査による民間と公務員との格差は七・五%ございます。したがいまして、その格差を埋めるべく今度の勧告を申し上げまして、本俸においては六・七%になっておりますけれども、その他の給与の上昇を合わせまして七・五%になるということに結論はなるわけであります。したがって、物価の上昇とも見合っておると申し上げてよろしいかと思います。
  131. 辻原弘市

    ○辻原委員 その点についても議論があります。あなたが言われておるのは、その後における昇給等々との関係において事実上そういうことになるという説明であろうと思うが、しかし、あなた方がとられておる調査の方式にも問題があると同時に、民間給与のその後の上昇ということも考えたならば、これは、いまあなたが説明されたように官民格差の七・五%が完全に埋まっておるとは私は考えない。しかし、それは議論でありますから別の機会にいたしたいと思う。  そこで、官民格差を埋めるということを主体にしてこれは従来もやっておるし、今度の場合もそうだと思うのでありますが、ここで私は人事院にも政府にも根本的に考えてもらわなければならぬ問題があると思う。それは、現に人事院も勧告するにあたって生計費の実態調査をやっておるはずなのです。ところが、物価騰貴あるいは生計費の新たなる支出増、こういうものは勧告をする給与体系にはほとんど影響を来たしておらない。そのことは全然考慮されておらない。全然ということばは多少違うかもわからない。初任給だけは影響を来たしておるが、その他についてはほとんど生計費というものは考えられておらない。今日、給与改善の声、給与引き上げの声が公務員をはじめ労働者の中から強くあらわれておるのは、いまの経済状態、社会情勢の中で、せめてこの物価騰貴に追いついていただけなければ生活を守っていくことができない、これがその中心であります。とするならば、少なくともその生計費の実態を勘案をした給与改善が行なわれなければならぬと私は理解する。それが、官民格差だけをとってやるということは、これは少なくとも時宜に適した処置ではないと思う。その点、人事院総裁はどう考えられますか。
  132. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 申すまでもなく生計費は、たとえば民間の給与の中に当然織り込まれておる、あるいは反映しておると考えてよろしいと思いますので、私どもとしては、原則はあくまでも民間給与と公務員の給与とを比較して、その格差を埋めるというたてまえを貫いておるわけであります。ただ、そのささえといたしまして、これはもう御承知であろうと思いますが、高校卒の試験採用の初任給のところでなお標準生計費をにらみまして、そこに適当な調整を加えて、万遺憾なきを期しておる、こういうたてまえにしておる次第でございます。
  133. 辻原弘市

    ○辻原委員 論理的には人事院の勧告は合わないのですよ。生計費をとるなら、少なくとも生計費のファクターというものを何がしかの形であらわされなければならない。しかし、それを便宜的に初任給だけこの生計費をとるということが体系上矛盾をするのです。それは政治的な意味合いはわかる。民間給与における初任給の引き上げというものは大幅でありますから、だから公務員その他の初任給を大幅に引き上げなければバランスがとれないということはわかる。しかし、これは雇用という当面の問題であって、その生活を守るという給与それ自体から生じたものではない。そこに問題がある。それがやり得るならば、初任給に加味できるならば、初任給以外の各体系においてもそれを考慮できるはずである。それを考慮したいところに、給与改善が生計費の実態を離れた全くめちゃくちゃなものになっている現状があるのです。  たとえば、一例を申し上げてみましょう、現行賃金の中であなた方がとられた十八歳独身の生計費の実態一万二千五百円。それが初任給の格づけで一万二千四百円。これは非常に近い。ところが、その後世帯構成がだんだんふえていく。たとえば五人のいわゆる標準世帯等をとってみた場合に、これはこういう例をあげてみましょう。たとえば自動車の運転手をやっておられる公務員、五人世帯で二万七千四百円、労働省の労働研究所の調査によれば、必要生計費はその場合には五万五千四百円となっておる。さらに、四十三歳の人の例を申し上げてみると、五人の世帯構成において生計費は総理府の調査によっても四万七千四百円。それに対してこの人の給与は二万六千七百円。生計費の約半分の給与というのが実態である。  職階給だからそれでいいではないかという議論をあなた方はされるかもわからぬが、しかし、今日の物価騰貴は、たびたび繰り返すように、政治上の配慮としてはそれに即応させていかなければならぬとすれば、もっと生計費の実態というものを加味した給与勧告というものをあなた方が行なう必要がある。この点についてはどう考えられますか。これは、いま総理はおりませんが、ひとつ給与担当大臣なり大蔵大臣にも見解を聞いておきたい。これは重要な問題です。
  134. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これはたいへんな根本問題であろうと思いますが、私どもは、先ほど申しましたようなたてまえから、高校卒の初任給のところで標準生計費を見合って、そしてスタートのところでそれを一つの基準にする。したがってまたその影響は多少上下に及ぶわけでありますけれども、それで適切な結論を得られ得るものとい求まで信じております。しかし、これはたいへんな根本問題でございますから、なお今後もいろいろ検討は重ねるつもりでございます。しかし、ただいまのところでは、従来どおりこれでやっておりまして、これに不合理な点はないと確信をいたしております。
  135. 辻原弘市

    ○辻原委員 ぜひ私は真剣にこの問題と取り組んでもらいたいと思う。先ほど総理は、物価は引き下げではなくて安定というように言われたが、二両年というのは、これを年限的な時間的なあれとするとどれだけになるかは本日の答弁では明瞭ではありませんが、ともかく当分は物価引き下げということはなかなか不可能だというふうに私は聞いた。そうならば、これは当分の間物価騰貴は続くと見なければならぬ。とするならば、いまから二十年前あるいは十七、八年前の終戦直後のインフレ当時を振り返ってみて、そのときには異常なインフレに対する一つの防衛的措置が給与の上にもとられておったと思う。何がしかやはりこの物価騰貴の中ではそういった要素が加味されてしかるべきだと思う、恒久的な措置は別としても、暫定的においても。だから、そのことを十分検討してもらいたいと思うが、同時に、これは本俸の給与体系だけの問題ではなくて、たとえば家族手当の問題等は、これは戦時中の指貫として生まれたのであるけれども、あのインフレ当時においては、その後の運用においていろいろ考慮されてきた。ところが、昭和二十四年以降これは六百円、四百円というそのままの据えっぱなし。何ら今日家族手当の用をなしておらぬ。少なくとも物価騰貴を勘案するとか、あるいは公務員の給与改善が必要だとかとあなた方がお考えになるならば、なぜこういう問題も今回手をつけなかったか。私は非常に遺憾しごくだと思う。一時、昭和二十四年以前に、私は数字はいま明確に持っておりませんが、記憶によれば、千二百円を上回った家族手当の時代があったと思う。過去においてすらそういう例があったのであるから、今日の物価騰貴の中で、しかも、総理が常に言われる、一般的な生活水準が向上しておるということ、——私もある面においてはそれは認める。そういう点から、幼児の養育にしても、あるいは学齢児童その他進学子弟にしても、最近の教育費その他の支出はばく大なものがある。もちろん独身者が比較的楽な生活をしていると私は決して申しませんが、いわゆる世帯主、扶養家族を持っておるいわゆる中堅層以上の人々の公務員の生活の苦しさというものは、これはたいへんなものがある。そういう点を少しでもカバーしようというあたたかい配慮があるならば、なぜ一体今回家族手当の改善を持ち出さなかったか、私はこれをひとつ人事院総裁に承りたいと思う。
  136. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 一応ごもっともと申しますか、一応どころではないのでありまして、私どもは、この勧告をいたしまするにあたっては、いま御指摘の点をも十分検討、考究いたしました。ただ、しかし、きわめて簡単に結論だけを申し上げますと、何ぶん私どもの作業は民間を上回ろうというようなことはできません。先ほど申しましば、七・五の中で操作するのが筋合いだというふうに考えておりますことから、家族手当、扶養手当のほうを増しますると、結局今度は本俸のほうにそれだけの犠牲がかぶってくるという、そのあちらを立てるかこちらを立てるかというような問題もあのまして、ずいぶん苦慮をいたしましたけれども、結論は、ただいま御勧告申し上げたような形にいたした次第でございます。
  137. 辻原弘市

    ○辻原委員 少なくとも、私は、人事院のあり方としては、たびたび申すように、これは保護機関です。いまの答弁というのはあまりにも事務的過ぎる。しかも、あなた方がやっておられるいわゆる実態調査というものは、私もいままでいろいろ調べて知っておりまするが、民間給与の格差の問題だって、これが絶対的なものじゃないでしょう。たとえば民間の場合には厚生としていわゆる社宅等の支給があるが、あなた方の調査には社宅なんていうものは出てきておらぬでしょう。そういうものも民間の場合の要素としてある。いろいろな目に見えない優遇措置というものは民間の場合にはあるが、公務員の場合には法律で定められた以外のものはないのです。各企業企業によっていろいろな対策を講じておる。それを、全部ぴしっと民間給与をこの七・五%というような比率において比較しようということ自体に無理がある。もっと悪口を言えば、これはあとで合わした数字なんですよ。ですから、少し新しい施策をやったからといって、文句を言う者はだれもいないのです。なぜそういうことを大胆にいまの時期におやりにならぬか。それによって政府が文句を言えば、これは私は国民が人事院を支持すると思う。だから、それらの点については、時宜に適しない、私は非常に遺憾であると思います。  それから、参考に一つ聞いておきたいと思うが、初任給のとり方において、十一月の東京都の人事委員会の勧告と、それからあなた方が勧告されたあれとには、初任給において相当数字上相違があると思うのです。これはどういう理由に基づくのですか。調査のやり方が違うのですか。
  138. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 その点は、昨年も違いが出ておりまして、どういうわけだろうということでわれわれとしては非常に慎重にその辺を検討したのでありますが、結局、大きく申しますというと、調査の時期が、われわれのほうは四月現在で調べておりますのに対しまして、東京都のほうでは五月で調べておるというような、いろいろ事情があるようでございます。したがいまして、私どものほうの調べに手落ちがあったり、抜かりがあったり、誤りがあったというふうには絶対に考えておりません。
  139. 辻原弘市

    ○辻原委員 総裁、これは大幅過ぎるのですよ。一万二千五百円に対し、東京都が同じ調査をやったら一万三千八百円。だから、かりに四月と五月のズレがあったって、常識的に、こんなに違わぬはずですよ。こんなに違うのはたいへんですよ。勧告の実施の時期をいままでずらしたということになったら、実施との大幅な相違が出てくるのですよ。常識ではそうでしょう。一カ月において千三百円違う。五カ月になると六、七千円の違いが初任給において出てくるということはたいへんなことです。しかも、全国的に金をかけてやっているあなた方の調査が、毎年下回るということは、合点がいかぬです。こういうところにも問題がありまけ。しかし、これは数字の問題でありますから、議論はいたしません。正確を期することと、それから、少なくとも東京都の数字を否定する根拠がないならば、あなた方はそのあとの数字をとったらよろしかろう。是正したらよろしかろう。そういうふうにやってもらいたいと思います。  だんだん時間がなくなってまいりましたので、こまかい点は省略いたします。一つこれは人事院総裁にも政府にも聞いておきたいのでありまするが、政府は、勧告の実施時期を値切る一つの口実に、予算編制の時期ということを申しておるように考えるが、一体、人事院としては、こういうような勧告の時期というものが適切であると考えているか、しからずと考えているか。われわれの望むことは、実態と離れないようにということです。しかも、いまは、電子計算機その他がりっぱにでき上がって、きわめて短い時間に調査が完了できる、そういう時代なんですから、昔ながら四月に調査したやつが三カ月も四カ月もかからなければ結論が出ないなんということは、これはおそ過ぎるのですよ。時間があれば、少なくともそれぞれの月における給与実態というものをあなた方が把握しているか、私は聞いてみたいと思ったのです。しかし、それはまた別の機会にいたしましょう。しかし、三カ月もかからなければこんな調査ができ上がらない、こういうことでは常に実態とかけ離れるのです。それでは随時適切な人事院の役割りというものは果たせません。この点についてはあなたはどういうふうにお考えになるか。
  140. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これはたいへんな大問題であることは、昨年以来——私は昨年就任いたしましたから昨年以来でありますが、何とか適切な方法はないかということで検討は続けております。ただ、予算の編成との関係をおっしゃいますと、現在の八月勧告というのもわりあいに筋が合うのでありまして、各省の予算の予定経費の要求がちょうど八月の末ということになっておりますから、来年度の予算に関する限りにおきましては法制的に筋が合っている。そういう長所というか利点もございます。しかし、いまお話しのように、いかにもさかのぼり方が激しすぎやしないかということは、実際、これは、われわれがいろいろ努力して勧告どおりということをお願いするにつきましても、その辺何とかもう少しいかぬかということを、率直に申し上げまして感じておるわけであります。しかし、この勧告をやります以上は信頼のされるものでなければならないということになりますと、やはり基礎の資料というものは絶対に確実なものでなければならぬ。御承知のように、ただいまの調査は、六千数百の事業所について二十八万人の従業者を対象として克明に調べているわけでありますから、その集計のためにどうしても数カ月はかかる。この規格を落とさずにそれをやるためには、電子計算機その他あるいは人海戦術的なことも考えられましょうけれども、その辺のところに大きな制約がございまして、何か適切ないい案はないかということで、検討は続けております。
  141. 辻原弘市

    ○辻原委員 私がそのことを申したからといって、それが来年の勧告をずらしたというようなことになるとたいへんですから、そういうことは絶対ないように。  それから、最後に私は総裁に承っておきたいと思うのですが、少なくとも四月調査以降今日に至るまで、物価騰貴の現況から考えて、民間との格差はさらに一段と広がっておると思うが、いまの時限においてどの程度であるか、これは時間がありませんから簡単にお答え願いたい。そこで、その上に立って、明年の勧告はどうされるか。すみやかにお出しになるかどうか。法によれば五%の増でありますから、私の勘では上回っているのじゃないかと思います。そういう意味から言って、来年の勧告はすみやかに、私が先ほどから述べましたような欠点を補備して当然出さなければならぬと思う。次期勧告を早期におやりになる御決心がありますか、この点を承りたい。
  142. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいま申し上げましたとおり、われわれのほうは確定な事実をつかんだ上で行動するというたてまえに徹しております関係上、ただいまの民間給与がどうなっておるということを責任を持ってここで申し上げるだけの資料は、これは当然ないわけであります。ただ、消費者物価が多少上がっておるのではないかというようなことは、常にフォローして、目を離さずに見守っておるわけであります。したがいまして、来年勧告をすることになりますかなりませんか、そういうようなことにつきましては、またそのときの調査の結果によって善処をするほかはないということでございます。
  143. 辻原弘市

    ○辻原委員 一点、具体的に聞いておきたいのですが、寒冷地石炭、薪炭手当については十二月に勧告をするという人事院の話がありましたが、これはその用意がありますか。その内容は確定をいたしましたか。この機会にひとつ発表を願いたい。
  144. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 寒冷地等の問題は、これは従来懸案として慎重に検討を続けてまいっておりますが、まだ十二月に勧告を申し上げるというようなことは申し上げた覚えもございませんし、また、そのつもりでございますということをここで言明申し上げるまでのところにも至っておりません、しかし、概括的に申しますと、何とかしなければなるまいという心がまえを持って、——これはまだ人事院会議を経たわけでもありませんから私の心組みだけを申し上げるわけでありますけれども、そういう前向きの形で検討を続けておるということでございます。
  145. 辻原弘市

    ○辻原委員 その名のように、寒冷地石炭、薪炭でございますから、ぽかぽか陽気になって石炭手当でもないのです。十二月という月は、おそらく寒地においてはこれはもうすでに冬季に入っているまっただ中、その時期をはずして勧告をしたって、これは本年の役には立ちません。そういう意味で、いま幸い前向きでというお話がありましたから、これ以上申し上げませんが、すみやかに引き上げの勧告を行なうべきであるということを要望いたします。  たくさんの問題を具体的に聞きたいのでありますが、時間もございませんから、この機会に文部大臣と自治大臣に簡潔にお答えになっていただきたい。それは、地方公務員、教職員に対する措置であります。例年の例を見ると、国家公務員の給与が決定をいたしました後に、かなりずれて地方公務員の措置が行なわれる。その原因は、それぞれの公共団体における準備、それから、もう一つは財源措置、この二つであります。そこで、それらの点については、国家公務員の支給と符節を合わせてやられるような、そういう地方に対する具体的な方策というものを、それぞれの省において立てておられるか、この点の具体策をお聞きしたいのであります。たとえば、自治省は各公共団体に対して、すみやかに、時期を失しないようにやれという通達、文部省も同様ですが、あるいは財源の措置、そういうことについておやりになっているかどうか、この点を明らかにしておいていただきたい。
  146. 早川崇

    ○早川国務大臣 国次公務員に準じて地方公務員のベースアップをやりますと三百八十八億円、義務教育負担をのけましで要るわけであります。そのうち交付団体が二百八十五億円。今回御審議願っております補正予算に伴う法律案が成立いたしますと三百九億円の交付税が増額になります。法律が通り次第通達を出しまして、御趣旨に沿うよう努力したいと思っております。
  147. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お答えいたします。  この案件が決定いたしましたら、直ちに地方に通達いたしまして、おくれないようにやらせるつもりであります。
  148. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間がありませんので、できるだけすみやかに完結をいたしたいと思います。  文部大臣にこの給与の問題に関連して一つだけ承っておきたい。これはいずれ近い機会に根本的に私は検討しなければならぬ重要問題だと思いますが、それは、最近の人口動態から考えての、いわゆる僻地教育という問題である。私は、個人意見としましても、ここらで再検討すべき段階だと思っております。その一つの具体案として、こういう方法を文部省は検討される用意がないか。ということは、単なる手当等においては、いわゆる僻地においての教育充足等も今日困難な問題になっている。したがって、大幅に年限加算をするとか、あるいは特別号俸制度をとるとかいったような抜本策を検討して実施に移すことが適切ではないかと考えます。それについて検討される用意はありますか。簡単に聞いておきます。
  149. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 僻地教育の改善充実につきまして、これは大きな課題であるということは申すまでもないことであります。いろいろな角度から検討をいたさなければならないと思うのであります。特にまた、お話しになりました教職員の給与の角度から改善をするということも確かに一つの方法であろうかと考える次第であります。現在は、辻原さんよく御承知のとおりに、僻地手当というものを出しておるわけであります。お話のとおりに、一般的に僻地に勤務する教員に対しまして特別な加俸をするというような問題も、今後の検討問題であろうかと思うのであります。ただいまのところ、これをすぐに採用するというふうな結論には到達いたしておりませんが、僻地教育全体の問題といたしまして、十分検討いたしたいと存じます。
  150. 辻原弘市

    ○辻原委員 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、最近公務員の共済組合の掛け金引き上げの問題がちらほら出ているようでありますが、それは事実でありますか。そういう考えがあるのですか。国家公務員の共済組合掛け金引き上げの問題。
  151. 田中角榮

    ○田中国務大臣 まだこまかい問題に対してはつまびらかにしておりませんが、概括的な議論からいたしますと、このごろ退職をしてから非常に生存年齢が伸びておりますので、現在の掛け金のままでいくと、原資に不足を来たすのではないかというような考え方があることだけ承知をいたしておりますが、掛け金の引き上げという具体的な問題に対しては、まだ私の段階までまいっておりません。
  152. 辻原弘市

    ○辻原委員 大蔵大臣、こまかい点をまだ御存じないようであるから、私は政府委員に聞く時間がありませんので意見を申し上げておきます。これはかつて大蔵委員会でも決議があります。それは、旧恩給当時のいわゆる整理資源と称されている金があるはずなんです。その金を明瞭にして、当然連合会に引き継がなければならない。ところが、それが今日行なわれておらない。もう一つの問題点は、整理資源が一体何ぼあるかということも、これを明らかにした上で措置すべきだ、こう大蔵委員会で決議したにかかわらず、いまだに明らかになっておらない。これは、当然、引き上げるということを出す前に、いまあなたが言われたように、財源が不足するかしないかは整理資源をつまびらかにしないとこれは言えないことなんだ。しかも、この整理資源は当然引き継がれて繰り入れしなければならぬ。だから、全部総ざらい、それを明瞭にして一括繰り入れをして、しかる後に検討すべき問題だ。だから、引き上げは抑えるべきだ。われわれは、いま明瞭にわかりませんけれども、少なくとも整理資源が引き継がれるならば引き上げる必要はないかと思います。そうするのが当然である。だから、恩給時代のいわゆる千分の二十から四十四に引き上げて、さらに引き上げるということになると、給与の問題も関連をいたしますけれども、非常な負担になります。だから、それらの点について大蔵大臣としては十分検討して、極力抑制するという方針を考えてもらいたい。お考えだけを承りたい。
  153. 田中角榮

    ○田中国務大臣 理論的には、三十四年に共済組合になったわけでありますが、整理資源そのものと負担金の問題と直接な関連があるとは考えておりません。しかし、現在三十四年現在における事態を調査いたしておるわけでありますし、これが調査が終わりましたならば、整理資源とあなたが言われる三十四年までのものに対しては全額漸次繰り入れるということになっておりますので、これらの問題については現在調査の結果を待って処置することになると思います。
  154. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は最後一つだけお尋ねしますが、これは本会議においてわが党の和田国際局長が質問をいたしましたし、また先刻赤松委員質問いたしました原爆被災者に対する問題であります。時間があれば判決文についての所見も承りたいと思ったのでありますが、それは省略をいたしまして、先刻総理は、現存ある医療給付以上については、その他戦災者等の問題をも検討した上でなければどうするかは言えぬというお答えであった。これは戦災者のみならず、いわゆる戦時災害を受けたすべての人を含むと私は思うのでありますが、その中で、たとえば引き揚げ者あるいは旧地下等の問題についてはすでに調査会が設けられて、その調査の結果に基づいてどうするということの結論を出そうという段階にある。わが国の裁判が、国際法上原爆投棄は違法なりとして、しかも、その末尾においては、先ほど赤松委員も申されたように、法的な解釈は別として、今日のこの被爆者に対しては政府また国みずからが積極的にその処遇措置を考えるべきであるという結論を下しておる点にかんがみ、何らかの措置を必要とすると私は思うのであります。その際に、少なくとも旧地主あるいは引き揚げ者等におやりになったような、正確な調査をして、その上でやつという調査会の設置等は、これは当然私はやってしかるべきものではないかと思うが、そういう具体案をおやりになるお考えはないか。これは総理と所管大臣に承りたい。同時に、先ほども話が出たのでありますが、現在の医療給付はきわめて極限された範囲であります。原爆という古今未曾有のおそるべき被害を受けて、今日長期にわたって苦しんでおる方々に対して、少なくともその生活等の援護にまでそのワクを広げなければならぬということは、これは国民の何人といえども認めるところだろう私は思う。そういう意味において、政府においてすみやかにその方向に向かって踏み切っていただきたいということを私は強く要望するものであります。この答弁を承りまして私の質問を終わりたいと思います。
  155. 池田勇人

    池田国務大臣 被爆者の療養につきまして、いままで法律に基づいてやっております。その療養関係の問題については、今後検討していきたいと思います。
  156. 小林武治

    ○小林国務大臣 医療問題につきましては、やはり特別に被爆者の範囲を広げる、あるいは、いま療養手当を出しておりますが、この手当の所得制限を撤廃する、こういうようないろいろのことをいま考えて措置をいたしております。しかして、これから生活援護の問題になりますと、先ほど総理から申し上げましたように、他のいろいろの権衡等もありますので、検討をいたしたい。(「調査会」と呼ぶ者あり)その点も検討いたしたいと思っております。
  157. 辻原弘市

    ○辻原委員 終わります。
  158. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 辻原君の質疑は終了いたしました。  次に、永末英一君の質疑に入ります。永末英一君の発言を許します。永末君。
  159. 永末英一

    ○永末委員 最初に総理にお伺いしたいのでありますが、総選挙国民が主権者としてその主権に基づく行為をする重要な機会であります。したがって、この総選挙によって国の歩みを決定する非常に重要な機会であります。したがって、国民の多数の者はこの総選挙参加をするようにするということは、これは解散する首相責任だと私は思うのです。総選挙の結果投薬率が意外に低かったといわれておりますが、総選挙の投票率が低いということについて、総理が総選挙に臨む態度について欠けるところがあったのではないかと思いますが、総理はどのようにお考えですか。
  160. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろ原因はあると思いますが、前回に比べて投票率の減っているのは主として大都市並びにその付近。地方のほうはふえているところも多いのでございます。そこで、いまの休日であるか休日でないか、あるいは六時を八時まで延ばしたこと、その他いろいろの点もあると思いますが、私は、低くなったといってもやはり相当の投票率でございまして、まあ大体この程度かと考えております。
  161. 永末英一

    ○永末委員 総選挙のときに国の新しい歩みがきまるのであって、人心一新というのは、いわば新しい心で新しい政治をやる、これが総選挙の一番の根本義だと思うのです。ところで、池田総理は、その総選挙に対する問題のありかというものをやはり十分に国民に知らせる義務があったと思う。総選挙の投票率は悪かったけれども、その次にアメリカ大統領ケネディさんが暗殺をされて、日本の週刊誌はこれの特集記事をつくりましたところ、非常な売れ行きを見せたといわれております。すなわちす、総選挙では、総理大臣の今回の施政方針演説によりますと、政策論議が十分にやられた、こういう御認識でございますが、その背後に、日本の平和と安全に関する不安の念というものが国民にあったと思う。この点について問題のありかを総理大臣は十分知らせなかった、こういうところに大きな原因があったのではないかと私は思いますが、総理大臣はどうお考えか。
  162. 池田勇人

    池田国務大臣 日本国民大多数は、われわれの主張する、いわゆる日米安保条約体制のもとで平和と安全が確保できると信じております。
  163. 永末英一

    ○永末委員 特に総選挙中に、総則大臣は、選挙が終わったら閣僚はそのままやるのだということを放送された。これはまさに、おのれをむなしゅうして虚心たんかいに主権者の批判を受けるのが総選挙、しかるにかかわらず、いまのようなことを批判を受けるその最中に言うということは、不謹慎きわまりないものだとわれわれは考えますが、総理大臣はそう思われませんか。
  164. 池田勇人

    池田国務大臣 そういうことを聞かれるものですから答える。私のほうから初めからやったわけじゃない。かえますかかえませんかと言われたときに、知りませんと言うことよりも、大体私の考え方はこのままでいきたいという気持ちを持ったから、正直に答えたのであります。聞かれないのに、自分はかえないと言ったわけじゃございません。
  165. 永末英一

    ○永末委員 聞かれても、やはりもっと白紙の態度で臨むという態度のほうが、私は総選挙を迎える政党のあり方としては正しいと思うのです。そういういわば仕組んだ態度選挙に立ち向かうということは、やはり国民に何か成り行きに対して予感を与える、こういうような結果を来たらしたのではないか。  私は、この際一つお聞きしておきたいのは、選挙中にわが党から、いわゆる超党派外交の基礎づくりについて提案をいたしました。池田首相はこれを断わりました。私どもは、少なくとも、この激しい国際情勢のもとにおいて、日本の国が外に立ち向かう場合には、せめて最低限だけでも一本にする必要があると考える。したがって、超党派外交というのは、外交方針の微細にわたるまで一致せよと言うのではございません。もちろん意見の相違はございます。しかし、少なくとも政府が知っている情報をそれぞれの野党に知らせるとか、あるいはまたそれらの問題についての党首会談を行なうとか、その最低限の基礎をつくる態度、これが特に責任者である首相に望ましいとわれわれは考えて提案をいたしました。あなたはこれ々断わった。その真意はどこにありますか。
  166. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、機会あるごとに、与党と野党の考え方が百八十度違っている、ことに外交、国防、教育問題等につきまして、重要案件について違っていることはまことに遺憾なことだ、こう考えおるのであります。また、それを演説その他にも言っております。その場合に、外交問題を超党派でやろうといって、できるんでございましょうか。できることとできぬことと——大体九十度の間でこう行っておるのなら、足して二で割るということもありましょうけれども、百八十度違っているときに話し合いということは、私は望んでおりますけれども、できないことであります。あなたのほうとなら、わりに近いところがありますから、これは、できるかもわかりません。(笑声)いまの状態で、これは無理じゃございますまいか。ちょうど、何と申しますか、単独審議の問題にいたしましても、本会議にお入りにならぬ場合に、できないじゃございませんか。私は、国会運営責任を持つのでございますけれども、物理的に入らないときに、単独審議はやらぬということは言えぬと同じように、いまのように百八十度違っているときに、なかなかそれがむずかしいから私は言っている。理想としてはやりたいという気持ちはございます。
  167. 永末英一

    ○永末委員 私どもの申し上げておるのは、何も、外交方針を一本にするために三党がやるんだ、こういうことを申し上げているのじゃないのです。その基礎づくりだけは、あなたのほうがその気にならなければできない。いまのところ表面上百八十度違うかもしれませんけれども、どっちもみな日本人である。そうして国会与党と野党とでつくられておる。あなたの今回の施政方針演説の中にも、いさぎよい協力が国会運営には必要だと言っておる。与党が野党に求めるのなら、まず与党もまたいさぎよい協力をする姿勢が必要だ。この点、どういうふうに考えるか。
  168. 池田勇人

    池田国務大臣 国会の通常につきましても、そういう気持で行っております。また、外交の問題につきましても、われわれはできるだけ協力したいと思いまして、先般の国連の総会に野党のほうからもおいでいただいたらどうですかというここを外務大臣から申し込ましておるのであります。しかし、やはり実現しないのであります。いろいろの事情はございましょうが、心がまえといたしましては、国連総会に野党の方も御一緒に願えませんかということを申し入れたことも、やはりこれは協力したいという事実を示すものでございます。われわれといたしましては、協力体制を常に進めていきたいという念願は持っております。
  169. 永末英一

    ○永末委員 首相は、いま、念願を持っておるということでございますが、そのように今後も努力をしていくと承ってよろしいか。
  170. 池田勇人

    池田国務大臣 努力をしてまいります。来年の国連総会には、できれば民社党なんかも御一緒に行ってもらっていいかと思います。そういう態度を私はとりたいと思っております。
  171. 永末英一

    ○永末委員 首相は、今回の施政方針演説の中で、米国をはじめとする自由諸国との団結を強固なものとすることをその外交方針の基本としておられるようでございます。しかし、一体、自由諸国というものが一色に塗りつぶされて、一色に動いているとお考えかどうか、伺いたい。
  172. 池田勇人

    池田国務大臣 一色にという、その一色がなにでございますが、全体といたしましては、やはり自由主義陣営というものは一つ方向に行っております。それは、やはりソ連側のほうでも、赤一色かと申しても、赤にもいろいろの度合いがございまして、どちらかというと、いまは東西関係におきましても、同じ色の系統ではございますが、その間にいろいろな違いが出てきておるということは、いまの世界東西間の現状であることは御承知だと思います。
  173. 永末英一

    ○永末委員 自由圏にもいろいろな違いがある、このことは当然でありまして、ちょうどけさの新聞に一斉に発表されたのでありますが、フランス政府は中共と国交回復をするという方針を決して、これから動くようでございます。いままではまだ、そういう決定がありはしないかという程度のところで論議が行なわれましたが、一応、きょうの段階では、そういう方針をきめて動いてくるだろうということは、これは一般の常識になっている。このフランスが、いままでの自由諸国との関連から見ますと一歩を進んだ態度に出てきておる、このことを首相はどう判断されますか。
  174. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、そういうことがあるかないか、まだここではっきり申し上げられません。外電だけによりまして、こういう重要な問題につきまして私の考えを言うことは早いと思います。
  175. 永末英一

    ○永末委員 首相は国際情勢が動いている一つ一つをのっぴきならぬ事実まで見てそれから判断しよう。これは慎重でいいかもしれませんけれども国民のほうが知りたいのは、動いている情勢の中で日本としては一体どういう主張をしていくのだろうか、つまり問題が明らかになってから判断するのではなく、われわれもまた一つの主張を持って国際場裏に立ち向かわねばならぬのではないか、こういう気持ちを持っておると思うのです。たとえばフランスが中共を承認いたしますと、アフリカにおけるフランス系統の新興国は大体同調すると考えられておる。中共に対して小麦を売っているカナダもまた中共に対していわば近しい気持ちを抱いていると思います。中共の国連加盟の問題がおそらく来年度国連に上程される場合には、すでにオーストラリアも賛成すると言っている、インドも言っている。こういう動きつつあるときに、新しい年を迎えようとするにあたって、なおこれらの国々の状態がわかるまでは、日本意見を言わないという角度で首相はお臨みですか、伺いたい。
  176. 池田勇人

    池田国務大臣 あなたのいまのお話も、やっぱり来年の国連での問題を言っておられるわけでございましょう。フランスがどうこうということはきまらない。きまった場合において、アフリカのフランス系の十一、二カ国はどうするかはこれからの問題でございます。私は、あなたのいまおっしゃったようなことはずっと前から考えております。そういう事態はずっと頭には描いておりますが、いまそれによって日本政府としてどうするかというここは、私は早過ぎると思います。いろんな事態は考えておる。自分の考えを聞かれたらすぐ言うべきかといったら、これはなかなか言えぬ場合もございます。事情はあなたに負けないようにずっと勉強はいたしております。
  177. 永末英一

    ○永末委員 私の申し上げたいのは、いまの首相が言われたように、それぞれの国がどうかするところを見て判断するというのではなくて、中国の国連加盟の問題は、すでに池田内閣が成立以来、数回にわたってこの国会でも相当論議をされ、そのたびに池田内閣としてはその方針を打ち出さずにきた問題です。しかも、それがいよいよ現実化しつつある段階にあたっても、まだそういう態度をおとりかどうか、それにつけ加えて言われることばはないかどうかということを伺っておる。
  178. 池田勇人

    池田国務大臣 中共の問題は世界の平和、ことにアジアの問題に重大な関係がございますから、われわれは国連において正々堂々とこれを決するのだ、これは初めから言っていることであります。しかもそのことは、あなた方のお考えのようなことは、国連においてきめる世界的重大な問題だということで答えになっているわけでございます。だから次の、いま六一、六二、六三年度、中共の加盟問題につきましては、その差が、棄権を十一票か十二票を除きまして、十二、三票の差でございます。四十何票と五十七票でございます。こういうのがどう動きますかということにつきましては、今後の情勢を見なければなりません。われわれはあはくまで世界の大勢を見、またどういうようにいったほうが世界の大勢を動かすかということを常に検討いたしているのであります。
  179. 永末英一

    ○永末委員 中共の問題とともに、特に日本の近辺におけるアジアの後進国に対するいわゆる経済協力の問題は、いまの重要な問題だと思います。しかし、政府のこれに対する姿勢は、協力をするんだというだけであって、一体どういうかまえで、どういう性格で、どこをどうするかということは固まっていないように思われる。しかし、それでは一体日本経済がどんどん発展しつつあるときに、その方向と性格とをはっきりさせなければ、国民のほうも不安でいけないと思う。もしそういう点についてきまっていないとしたら、とんでもない話だけれども、きまっているとすればこの際それを明らかにしていただきたい。
  180. 池田勇人

    池田国務大臣 東南アジアに対しましては、いろいろな方法がございます。たとえばコロンボ会議のあれによるもの、そうしてまた各国別に、たとえばインドとかパキスタンに対しましては共同融資の方法をとっております。またインドネシアに対しましては、IMFのいわゆる緊急援助という方向もございます。また、こういう列国関係より別に、日本といたしましては、独自にプラント輸出あるいは技術交流等、あるいは留学生の招致、あるいは医療関係その他で日本独自でやっておるのであります。だから、あらゆる方法を通じて列国と協調し、あるいは日本ひとりで経済、文化、教育各方面にわたってやっておるわけでございます。こういうことは今後も十分われわれの国力の許す範囲内で、許さないところまでもやりたいくらいな気持ちでおる、将来を見越して。そういう考えでいっております。
  181. 永末英一

    ○永末委員 オールべたぼれであれば、だれもほれてくれないのであって、私が伺いたいのは、いま首相も触れましたように、性格上、やはり近隣諸国といってもいろいろあると思います。われわれの国の周辺にごく近しい国、これは特殊な関係がそれぞれある。さらにまた、いまおっしゃったようにインドなりパキスタン、コンソシアムをつくってやっておる。これは特に西欧諸国が参加しておるから独自でやれない面があるのであります。さらに賠償関係できずなを持っておるところもあると思う。ところが、いままで政府がやってきましたのは、全部これ商業ベースに乗るような形でないとできないということで、海外経済協力資金の扱い方もほとんど動いていないような状態になっております。みなやりたいかもしれないけれども、その中で一体経済ベースでなくてもやれる点を考える余地はないのか、どうかこの点を伺いたい。
  182. 池田勇人

    池田国務大臣 それは、アメリカケネディ大統領の平和部隊とか、あるいは特殊の権限を大統領に与えてやるという制度がございまして、日本でもそういうことをやったらどうかという考え方もありますし、また東南アジアの各地においては、そういうことを望んでおるようであります。しかし、それよりもまず向こうの受け入れ態勢も考えなきゃなりません。いまお話しの賠償にいたしましても、インドネシアとフィリピンはよほど賠償の支払いの状況が違っております。受け入れ態勢がまだできておりません。そうして、いまの海外経済援助というものは輸出入銀行のそれよりも少しかたくなっております。こういう問題をいままでのように二つに分けて置くか、あるいは一緒にするかという問題もございましょう。さらに進んで、いま申し上げましたように、一定の金額を総理が預かって、そうして、ことに留学生の問題、医療の問題等でやる方法もどうかということは議論もありまするが、まだ具体的には進んでおりません。   〔委員長退席、青木委員長代理着   席〕
  183. 永末英一

    ○永末委員 具体的に進んでいないというお話でございましたが、この問題は緊急を要する。日本の国の方針を特に近隣諸国に示す大きな問題だと思います。首相は、それを含みながら近隣諸国には旅行されたと思うのです。これは、通常予算が出るころには方針をきめられる予定ですか、いかがですか。
  184. 池田勇人

    池田国務大臣 たとえば、商業ベースでない医療の問題でございます。インドにおける救らい事業、これなんかは民間でやっております。私は個人の資格でネール首相と話しまして、そうして民間でやる。これを日本政府の金でやったがいいか、民間のいわゆる寄付でやったがいいかということになると、私は民間の寄付のほうが非常にいいと思う。だからそういうことに、アメリカがこうやっておるからといってすぐあれせずに、金はやはり民間で集めるとか、いろいろな方法があると思うのでございます。こういうことは受け入れる国の気持ちもございますので、政府の予算でやることがいいか、あるいは政府の勧奨によって民間でやるほうがいいか、たとえば留学生の問題なんか、インドネシアはいま賠償で留学生がきておりますが、来年からその分はなくなる。そうした場合に、今度予算でこちらの経費で見るかという問題がございます。しかし、一がいにこれは政府でやるとか、民間でやるとかいうことは分けられません。やはり事態に沿いながらいろいろ手を尽くしていくべきだと思います。
  185. 永末英一

    ○永末委員 今回の総選挙の結果、首相は所得倍増政策支持を受けた、こいいう御見解に立っておられるようです。しかしながら、高度経済成長政策をやったところ、農業や中小企業やサービス業には立ちおくれが生じたからアフターケアをやる。アフターケアというのは病気がなおってからやる、なおりかけて正常に戻るときにやるのである。私どもの見ておるところでは、病気が進行しておる最中だと思う。病気が進行しておる。つまり、あなたの与えられた薬によって病気がいまあからさまに出てきた、あなたはそうお考えになりませんか。
  186. 池田勇人

    池田国務大臣 アフターケアのことばについていろいろ議論しておられるようであります。要は、農業なら農業が悪くなったかと、病気かといったら、そうじゃございません。私は、農業も農業生産は予定どおり、あるいは予定以上にふえておる。しかし、片一方の第二次、第三次のほうの分が非常にふえたからいまの差が出てきたので、農業自体が病気じゃない、農業自体はこれから発展——いまずっと発展しておりますが、もっと構造的に発展していく段階である、こういうことでございます。それが、アフターケアということばを使ったから病気だとかいうことは、実感を見ずに名にとらわれた議論だと思います。
  187. 永末英一

    ○永末委員 私は名を言っているのではなくて、あなたの与えられた薬の中で一番きき過ぎた薬がある。それは何かというと、金つくり政策という名前で行われた一連の政策、すなわち、通貨量を増大せしめて日本経済に刺激を与えて成長をはかってきた、この政策だと私ども思うわけです。ところが、池田内閣のこの政策をとったために、いわゆる成長政策に破綻を来たしたのだというわれわれの意見に対しては、経済企画庁も池田首相も、そんなことはない、物価の値上がり等はこれこれの原因なんだと、あれこれの原因をあげて、通貨量の増大なんかあまり大した問題でないというように印象づけようとされている。しかし、私どもの見る限りにおいては、もし通貨量の増大をいままでとってきたようにやらなければ、もっと経済は違った形でやってきたと思います。全部が通貨量の増大であると申し上げるのではございませんが、通貨量の増大もまた、名前はどっちでもよろしいが、アフターケアをしなければならぬという決意をせしめた一番大きな原因一つであると私ども思いますが、首相はどう思われますか。
  188. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろ議論はございましょう。しかし、終戦後のわが国のこの発展を見て、世界の人もこれを批判しております。また、日本国内におきましても、五年先、十年先ではわかっていただけると思うのであります。通貨量の増大、こうおっしゃいますが、通貨量というのは、これは日本銀行券の発行でありますか、発行残高を言っておられるのですか、あるいは何を言っておられるのかちょっと私にはわかりませんので、もう一回御質問願います。
  189. 永末英一

    ○永末委員 日銀券の発行残高もこの三年間で一倍半に増大していることは首相が一番御存じです。特にこれを基盤にしながら、あなたの政策のもとで、各企業間の信頼がうんと膨張しておる。これを許しておる。さらにまたそれぞれの銀行から貸し出しをしておる。これが非常に多くなっていること、これはみんな認めているのであって、これを全体的に通貨量の増大政策と私どもは申しておりますが、首相はどう考えますか。
  190. 池田勇人

    池田国務大臣 まず第一の通過量の問題でございますが、日本銀行券の発行高一兆三、四千億円、これは私は別にそう多いとは思いません。経済復興をしておりますフランスとかイタリア、あるいはベルギーと比べますと、国民所得の大体一四・五%ぐらいになっております。日本は大体国民所得の——GNPじゃございませんよ、国民所得の九%ぐらいじゃございますまいか。その点で、私は非常に通過量が多いとは考えておりません。そして、貸し出しが非常に多い、こう言っておられますが、日本銀行のいわゆる貸し出しは、過去の状況を見ますと、経済の規模が拡大しながら二千億ばかり減っおります。いわゆる社債の発行等を担保に売りオペ、買いオペをやっておる関係上そうなっておりますが、やはり日本状態が国債並びに社債が非常に少ないし、公社債市場が発展していないというところに一つのひずみがございますが、金融のあれとして、そう貸し出しがふえたというわけのものじゃない。ただ、ここ三、四カ月の状況は相当貸し出しはふえました。そこで、大蔵大臣は最近のような措置をとっておるのでございましょう。これもそのうちに平静になってくると思います。いずれにいたしましても、預金が相当ふえたということ、そして思惑とは申しませんが、金融がそれだけゆるむということになると、貸し出しを銀行は相当ひどくやるようになりますから、ある程度預金準備率の引き上げをやる、こういう調整をやりながらいっておるのです。日本の通貨が非常にふえた、それは経済の伸び方に比べて、私はあなたのような議論にはくみし得ないのであります。
  191. 永末英一

    ○永末委員 全体としてのいわゆる通過量を増大せしめつつ経済に刺激を与えよう、こういう政策がいままでのままでは続けられないというので、預金準備率を引き上げたり、これから公定歩合を引き上げる、あるいは日銀の窓日で規制を加える方式を復活せしめる、また復活を内容としながら新たにやっていく、こういうことが考えられておると思います。そうでなければ、いままでどおりでよければ何らする必要はないのであって、やはりこれは一般的に信用創造であろうと、あるいは通貨量であろうと、全体としてこれを引き締めようとすることがいまの場合必要だと判断されておると思う。そうでなければこういうことはやる必要はないと思う。したがって、いままでの方式を切りかえる、われわれはこういうぐあいに解釈しますが、総理はどういうふうにお考えになりますか。
  192. 池田勇人

    池田国務大臣 いままでの方式とは何ぞやということになるのでありますが、たとえば昨年公定歩合を引き下げ、あるいは預金準備率も引き下げ、高率適用も廃止した。この分からいけば変わっておりますよ。しかし、過去三年間の状況から見ますと、たとえば公定歩合を下げたり上げたり、下げたりいろいろなことをしておるのですから、これをいつを基準にして変えておるかということになりますと、問題がある。しかし、先ほど申し上げましたように、最近の四、五カ月、五、六カ月の預金の増加、それに伴う貸し出しの増加等々は少し行き過ぎがあるのではないかと日銀、大蔵省は考えたのではないかと思います。私も少し貸し出しがふえておると思います。こういうことは常に弾力的にやるべきことであって、方向を変えたとかなんとか言うことは、これは私はどうかと思います。過去十年、十五年ほどごらんになればわかると思います。急にひょっと見て、方向を変えたとお考えですが、私としては長い目でずっとやってきたあとを見ながらやってきておるのであります。これが別にどうこう言うことはございません。   〔委員長着席、青木委員長代理退席〕
  193. 永末英一

    ○永末委員 国内産業に対して、いわゆる金を借りてつじつまを合わそう、こういうことではいまの経済の推移上やり切れなくなったということに対する赤信号だと思う。それは同時に日本経済全体に対しても同じことが言えると私どもは思います。すなわち、国際収支についていろいろ議論がありましたが、この際大蔵大臣に数字をお示し願いたいのは、池田内閣ができましてから、いまのようないわば資本収支の黒字によって国際収支のつじつまを合わそうというので、いろいろな外資導入をむしろ奨励されてこられたと思います。したがって、その外資導入による利子や配当や手数料、特許料というものの支払いがだんだんふくれ上がってきて、これが国際収支に対して悪影響を及ぼしつつある段階にきたとわれわれは判断しておりますが、この数字をひとつ明らかにせられたい。
  194. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御質問がちょっと明確でないと思いますが、現在の国際収支につきましては、来年の三月、いわゆる今年度の年度末には、皆さんが言われるような国際収支の不安がないような適切な施策をとっておりますから、来年三月に対しては安定をしておるということを申し上げていいと思います。それで三十九年度におきましても、国際収支が安定をするような施策を予算編成の基本にして考えておりますので、これからの施策よろしきを得て国際収支の長期拡大・安定的な方向をたどりたいと考えておるわけであります。  それからいまの御質問は、資本流入の状況を数字をもって示せ、こういうふうに言われたと思いますが、それでよろしゅうございますか。
  195. 永末英一

    ○永末委員 外資を導入したために、わが国から支払っておるところの利子や配当、手数料、特許料等があると思うのですね。その額の池田内閣成立以来の趨勢をひとつお示し願いたい。
  196. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私は池田内閣成立後の年次別資本流入の状況を御説明するつもりでおりましたので、利息その他特許料等に対しては、調べてすぐお答えを申し上げます。
  197. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 三十六年度、三十七年度——三十八年度は多少推定が入りますが、三十六年度は手数料が八千六百万ドル、事務所諸経費三千八百万ドル、交互計算六千六百万ドル、特許料一億一千百万ドル、投資収益九億ドル程度でございます。三十七年度は同じく手数料から始めまして、一億一千八百万ドル、四千四百万ドル、九千六百万ドル、一億一千三百万ドル、十一億八千万ドルでございます。三十八年度は推定をするよりほかございませんが、その順序に、一億四千五百万ドル、五千七百万ドル、一億一千三百万ドル、一億三千七百万ドル、十四億二千万ドル、そこらでございます。ただ永末さんのおっしゃいました前提には賛成するという意味ではございません。
  198. 永末英一

    ○永末委員 いまのように、外資導入による支払いは年々増加しておることが明らかになったと思うのです。したがって、いままでとり続けられたような、いわゆる外から金を借りて、そうして日本の経済のてこ入れをしようという政策を一体今後も続けられるつもりかどうか、これをひとつ伺いたい。
  199. 池田勇人

    池田国務大臣 今後続けてまいります。しかし、それには度合いがございます。片一方では東南アジアあるいは低開発国への日本の融資もどんどんやっていく、これが私は日本が国際的に立っていく立場だと思います。借りられれば幾らでも借りるという考えではございません。適正なものはできるだけ借りていく。そうしてその余裕は、それによって海外への発展をやっていく。そしてまたもう一つには、国内の産業の近代化をして、国際競争力を強めていく。これが私の既定の方針でございます。
  200. 永末英一

    ○永末委員 企画庁長官に伺いたいのですが、いまの数字でも、大体二億ドルを突破して三億ドルに近づいてきたと思います。日本の現在の一年間の国際収支の総額から見て、三億ドルに近づいてくるということは、非常な問題を提起しておると思います。首相は、いまのところやめるつもりはない、こういうお話ですが、これが広がってくれば、やはり大きな重圧にになってくる。それを一体どうやって変えていくかということを、いま考えたければならぬ段階だと私は思いますが、経済企画庁長官はどうお考えなのか。
  201. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 優良な外資あるいは技術等が入ってまいりまして、それがわが国の国際競争力、生産力の増大に貢献をしておる限り、また過去において、事実上そういうものはほとんどそういうことのために使われておるわけでございますから、そのための負担があることは当然でございますけれども、その結果、国の生産力、国際競争力が明らかについてきたという限り、またはわが国自身が終戦後自己資本に不足しておったということがございました現状で、私はそれは差しつかえないことであった、むしろそうすべきであったし、これからもそうしていくべきだと思うわけであります。ただ御指摘のように、輸出入は概してバランスしながら、貿易外、ことに海運などで大きな赤字が出ていくということは、これはどうしても改めなければならない現在の国際収支の構成上の問題であると思いますけれども、優良な投資あるいは導入された技術に対する支払いというものは、これはあって当然しかるべきものであるというふうに考えております。
  202. 永末英一

    ○永末委員 国内でも、それぞれの会社が、他人資本に依存している形を改めて、やはり自力のある資本構成にしなければならぬ、こういうぐあいにだんだん考え出しておると思う。同じように日本経済全体としても、やはり自力で立っていくことをまず考えていくという方向でなければいかぬと私は思うのです。いまの総理並びに経企庁長官のお話のように、優良な外資ならまだ借りられる余地があると思いますが、一体計算上どれくらいの貿易の総額のある場合にどの程度払えるということを考えて計画をされますか、伺いたい。
  203. 池田勇人

    池田国務大臣 それは、その国の産業の状況によってきまるものでありまして、たとえばイギリスとかドイツがどうやっているかという問題でございます。企画庁長官が触れました設備投資をやっていくために外資の導入がある場合でございますが、たとえば日本なんかはGNPの大体二〇%から二三・四%の設備投資を毎年やっておる。しかし、イギリスなんかはみな一〇%程度でございます。ドイツは一五・六%です。こう見ると、設備投資をどれだけやっていくかによっても外資導入のあれが違うわけで、自立するとかしないとかいっても、やはり日本ほんとうにこれから将来大きな自立をするためのいまの設備投資その他の分につきまして、ある程度の外資導入をやるということはけっこうじゃございますまいか。それによってこそ、いわゆる低開発国への日本の貢献ができるわけでございます。これを貿易額の何%がいいとか悪いとかということは、そうきめてかかること自体が誤りでございます。たとえば技術の点にいたしましても、ナイロンなんかというものは、技術料の支払いはごく少なうございますが、外貨獲得はそれの何十倍、何百倍と言っていいくらいとっておりますよ。相当なものです。二百億ぐらい輸出しておるのではございませんか。そうやってみますと、これは外貨導入をしたために非常に国際収支がよくなってきた、貢献をしたわけでございますから、一がいに貿易額の何割をどうこうというようなことでは経済の運営を誤ると思います。
  204. 永末英一

    ○永末委員 もちろん、ある分量をあらかじめ考えて計画を立てていく考え方をとらぬというのは、それは一つの方法ですね。そのときに考える、それはそれで考え方としてはあり得ると思うのです。しかし、われわれが心配するのは、これは未来にわたって支払っていくわけだから、一つ一つの事件で借りておると、気がついたときにえらいことになる。そのえらいことになっておるではないかと考えておる人は現にたくさんある。だから池田首相は、池田内閣はまだそういうことを考えぬでよろしいとか——日本の経済復興過程においては、外資も貸してくれなかった時代もございました。借りたほうがいいというので政策を進められてきた気持は私はわかりますよ。わかりますが、これからいよいよ競争が激しくなった場合にもなおこの政策を続けていく——まあ未来永劫なんてございませんが、ここ数年は続けていこうといろ御趣旨だと思いますが、もう一度伺いたいのですが、続けていこうという御趣旨で進められますか。
  205. 池田勇人

    池田国務大臣 問題をこういうようにお考えになったらいいと思います。一般の貿易は大体とんとんと言い得ましょう、起伏はございますが。貿易収支は大体輸出努力によってできる。ただ問題は六、七億ドルにのぼる貿易外の赤字でございます。貿易外の赤字、この内容を調べてみますと、いまお話しのように、利子とか特許料その他の問題——特許料なんかは年限がありますから、これはそう長くは続きません。そしてもう算入も一段落したようでございます。利子は、これは借りておればふえてきましょうが、これもやはり年限がある問題でございます。問題は特許料、利子以外の貿易外の赤字、この原因を調べてみますと、やはり船賃が多いのであります。で、検討いたしました結果、たとえば港湾の使用料とか上屋の使用料なんかを外国の例なんかと比較してみますと、日本は非常に安いのです。そこで私は、いまの港湾あるいは上屋の使用料等につきましては、外国並みに上げていけ、そして日本の船会社が困ればとん税を引き下げろ、こういうので国際収支に貢献をするように、たとえば今年の春からその措置をとったわけであります。それで最も大きい問題は、たとえば船賃でございます。これは戦前は船賃は日本は黒字で、貿易の赤字を埋めておったのでございますが、いまはこれは逆に非常に赤字でございます。三億ドル近く、三億前後の赤字になっておりましょう。これを解消していかなければならぬ。そこで、船舶の増強をはかろうというので、船会社の整理統合をやると同時に、私は、早急に日本船で日本のものを運ぶ、こういうことをいま打ち立ててやっておるわけであります。したがいまして、外国の船を引き受けることもさることながら、日本の船をどんどんつくるようにしろ、こういって私は画期的な方法を講じておる。しかし、これの効果があらわれるのはやはり三、四年後になります。昭和四十一、二年を目途にしまして、私は相当のいわゆる日本船の増加をはかりたい。いまも日本のほうは大体二百七、八十万トンくらいの注文を受けております。これは受け過ぎるくらいになっておるのであります。しかし、ドックその他を増設しまして、この上とも日本の船舶の増強をはかって、貿易外収支の六億ドル、七億ドルの赤字を三、四年のうちに半分以下にしたい、こういう方向で進んでおるのであります。私は心配していないというわけではございません。私が一番心配して想を練っているのでございます。私は心配することよりも、それを是正していくほうに努力を向けておるのであります。
  206. 永末英一

    ○永末委員 いま総理から国際収支改善の方策についての、たくさん考える中の一つだと思いますが、一つのお考えを伺った。しかし、結論するところ、まだ総理の頭の中には、やはり生産を続けながらこれを解消していこうということが考え基本になっておるように思うのです。生産を続けようとすると資金が要るわけです。したがって、話を一番もとに戻して、通貨量というものに対しては一体顧慮されて経済政策を立てられるのかどうか、この点をひとつ結論として伺っておきたい。
  207. 池田勇人

    池田国務大臣 もちろん、私は日本の通貨がほかの国に比べまして少ないということを認めます。それならそれをふやすかといったら、そうまた一ぺんにふやすわけにもいきません。通貨量とか、とにかく一番の問題はやはり国際収支の問題であります。そして国内では通貨量、金利の問題、そして信用の状況、続いては設備の増加、あるいは在庫の問題、それから国民の一般消費、貯蓄等々万般の問題を——通貨量の問題も、一つのわれわれの関心を持つ問題であることは申すまでもないことでございます。
  208. 永末英一

    ○永末委員 その日本の経済の場合、財政が経済に与える影響が非常に多い。この池田内閣が成立いたしましてから、財政規模が年々急激に拡大をしてまいりました。いわばこの財政規模の拡大というのが一般経済に大きな一種の安堵感を与える、さらにまた刺激を与える。これがいわゆる成長政策一つのいしずえになってきたと私どもは見ております。そこで、いまやはり心配をしておられるようですが、財政規模を、来年度の予算を立てるにあたって、いままでのような成長率であっては、これは引き締まらぬとわれわれは考える。財政規模の伸び率をうんと縮小して引き締めていくお考えがあるかどうか伺いたい。
  209. 田中角榮

    ○田中国務大臣 現存昭和三十九年度の予算編成中でありますが、三十九年度の基本的な考え方としては、健全均衡の線を貫いてまいりたいということであります。なお、財政によって経済を全般的に刺激をするような要素を持ってはならないというような考え方であります。
  210. 永末英一

    ○永末委員 この点が一点伺いたいのは、いわゆる減税の問題のとらえ方が、政府は何か税金をまけてやることは恩恵だというような感覚がある。そうではなくて、むしろ国民経済的にとらえるならば、たとえば減税問題は企業減税か所得者減税かというようなワク内でとらえるのではなくて、企業減税をする経済的意味と、所得者減税をやる経済的意味とが違うと思うのです。しかも、首相が先ほどから明らかにせられておるとおりに、消費者物価の動向については一両年中に安定をさせようというのであって、ことばをかえて言えば、これをとどめるということは言っておられないわけであります。だといたしますと、いまの場合一番国民生活に重要な問題であるのは、やはり可処分所得の幅を増大せしめるということが、政治に対する国民の信頼感を一番高めるゆえんだと私は思います。その意味合いでは、減税というのは国民にとっては所得者減税の意味に感じておる。それを、そのワク内で、いや企業者減税から所得者減税かと言われたのでは、裏切られたような気持ちになるわけである。所得者減税をぴしゃっとやるということをこの際言明していただきたい。
  211. 田中角榮

    ○田中国務大臣 総理大臣が言明をされたように、平年度二千億円を下らないという基本的方針を定めておるわけであります。なお、現在税制調査会で検討しておりますので、これが答申を待って最終的に決定をいたしたいと考えておりますが、まず第一番目には所得税の減税を考えております。これを最も大きな柱としておりますことは御承知のとおりであります。  第二には、来年四月一日を期してのIMFの八条国に移行するのでありますから、開放経済に対処して国際競争力をつけなければならない。それは一企業の問題ではなく、そうすることによってのみ日本お互いの生活のレベルアップもでき、また物価の安定にも資するという考え方に立って、これが企業減税も第二の問題として考えております。  また、先ほどからあなたが言われたとおり、外資にたよるな、たよらなければ、それじゃいまのままでいいのかというと、そういうことではありません。日本の生産をもっと上げなければなりませんし、もっとコストダウンをしなければなりませんし、そうして輸出を伸ばすことによってのみ国際収支の安定があるのでありますから、自己資本比率が戦前に比べて非常に低い現状を打開するために、いかにすれば自己資本比率を上げることができるかというような問題に対しても、主点を置いて検討いたしておるわけであります。
  212. 永末英一

    ○永末委員 なかなか言明がないようでありますが、企業減税で必要なのは中小企業の場合だと私は思う。いまの開放経済ということを理由にして企業減税を考えていくというのは、いわゆる開放経済に立ち向かう日本の大企業に対して、一体税制政策でそんなに見る必要があるのかどうか。この辺が私は一番の勘どころだと思うのです。しかし、池田内閣が成立して以来納税者の構造が変わってきたとわれわれは見ておる。この際ひとつ、所得税の納税者が過去三年間どういう趨勢をたどってきたかを明らかにしていただきたい。
  213. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほどの発言に対して補足をいたしますと、所得税につきましては、所得税の納税人口が千八百万人にもなんなんとする現状でありますので、所得最低限の引き上げを重点的に考えておりますし、第二の企業減税につきましては、中小企業を対象にした、重点を置いた減税を考えておるわけであります。
  214. 永末英一

    ○永末委員 どの程度の課税最低限に引き上げた場合に課税人員が減るかということは、これは問題であると思う。どの程度まで圧縮されるつもりでありますか。
  215. 田中角榮

    ○田中国務大臣 現在まだ税制調査会の答申がありませんので、その答申を待って申し上げたいと考えておりますが、千五百万、千七百万、千八百万と納税人口がふえておるわけであります。これを年収四十八万円まで引き上げることによって相当程度の納税人口が減るという考え方でありますし、しかも今年度の納税人口よりもどの程度減るかという問題に対して、現在事務当局をして検討せしめております。
  216. 永末英一

    ○永末委員 総理にこの点伺いたいのですが、あなたが内閣をつくられたときには、所得税の納税者は一千万人をちょっとこえるくらいでした。いま大蔵大臣が説明しましたように千八百万人になる、こういう話ですが、新たに池田内閣ができてから所得税を払わされるに至ったのは、大体勤労所得者が大部分だと思うのです。そうしますと、実入りがよくなって税金を払うならば文句はないと思うのですが、そうではなくて税金を払わされるということになると、やはり税制に誤りがある、経済政策に誤りがある、こういう感覚になると私ども思います。首相として、課税人員がこんなに急激に増加することに対してどうお考えか伺いたい。
  217. 池田勇人

    池田国務大臣 池田内閣ができる前は、中学校を卒業した人は、大体初任給四千五百円から四千八百円、いまは一万円でございます。高等学校を出られた人が七千円程度、それがいまは月二万三千円でございます。こうなってきますから、非常に納税者がふえてくるのでございます。そこで私は、やはり負担の公平から申しまして、いま千八百が人——まだ正確な数字は聞いておりませんが、千八百万人の納税者は、やはり下のほうは相当下がるように、また最近の卒業生ばかりでなしに、いまの年四十八万円の人は、普通の五人世帯の分ならば免税しよう、昨年までは四十二万六千円だった、こういうようにして納税者を減らすということよりも、やはり負担の均衡、実際の生活状況から考えていくわけです。いま所得税減税とか企業減税とか言っておられますが、大体日本の租税の状況を見ますと、個人の納めますいわゆる源泉課税と申告納税で、たとえば源泉課税が四千六百億、申告納税、事業所得が千七、八百億、合わせて六千億税度でございます。法人のほうは七千六百億円からもう八千億をこえましょう。大体昔から個人のほうが多かったのですが、このごろ法人が非常に多くなりました。  そこで企業減税についてということでありますが、これはやはり大法人もございますが、中小企業の法人が多いのです。個人経営と同じようなものが法人の経営になっておりますから、こういうものも考えなければならぬ。したがいまして、私はいまの状況から申しまして、中小企業に対しましては、その近代化をはかるために融資の点を考える、そしてまた金利の点を考える、第三番目には、やはり減税のことを考えなければいかぬ、私は選挙中にこう言っております。中小企業の関係におきましては、これは法人であろうが個人であろうが、大体六百億円程度の減税をやるようにしていけ、これは主税局長に私は指示いたしました。所得税の減税と中小企業での法人税の減税で六百億円程度、よろしゅうございますか。法人税の小さい企業につきましても、いわゆる資産の特別償却をふやすとか、あるいは中小企業は同族会社でありますから、留保所得に対する課税を減免するとか、それからまた税率にしても、三八の税率を三三にしておったと思いますが、この二百万円というものを三百万円なり四百万円に上げて、中小企業を特に減税するとか、いろいろな方法をとりまして、選挙のときには六百億円程度の中小企業関係の減税をすると国民に私自身公約いたしました。それを大蔵当局に指示しております。そういうことで、企業減税とか所得税減税とか議論が去年くらいから出てまいりましたが、私は頭が古いのかもわかりませんが、企業減税とか所得税減税とか議論することはどうか、実際を見てもらいたい、こう思っているのでございます。それから法人税の予算は七千六百億円ですが、実収入は、ことしの決算は八千億円をこえましょう。もうこのままでいったら法人税は一兆円になりはしないですか、大かた一兆円になりましょう。そういうことを考えて、そこで企業減税と法人税の減税は、相当部分中小企業の減税でございます。だから私は、いまごろのはやりことばに反抗するようで恐縮でございますが、所得税減税とか企業減税ということばはどうかと思います。実際に沿うようないわゆる減税方法を考えたいと思います。
  218. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほどの御質問にありました人員に対してお答えを申し上げます。現行の税法でまいりますと、三十八年度に実際に税を納める人たちが千八百七十万人と推定されるわけでありますが、現行法のまま来年度にまいりますと、二千二十万人ということになるわけであります。これが四十八万円まで課税最低限を引き上げるといたしますと、改正後は百七十二万人減って、千八百四十八万人と概算されるわけであります。
  219. 永末英一

    ○永末委員 私の申し上げたいのは、企業減税がいかぬと言っておるわけじゃない。特に中小企業のほうは減税をしてもらわなければ、自己資本を蓄積して自分たちの経営の回転に資していく、あるいは自分たちの経営規模の拡大発展に資さなくちゃならぬ、こういう立場だから、これは減税すべきなんです。しかし、同時にまたそれとからみ合わせて、企業減税や所得者減税をごちゃごちゃさしてはという話は、問題の本質が間違っておるのであって、私の言いたいのは、所得者減税という問題の中には、生活費に食い込んでおる、最低生活費に食い込んでまでやっておるではないか。ことしの三月やったでしょう、いろいろな問題があった、足して二で割るような決定をやって、わずかではございますが、税制調査会が出した答申案から見ても、課税最低限がまだまだそれより下回っておったことをやった。こういうやり方を国民は非常に不安に思っておる。したがって、いま伝えられる税制調査会が四十八万幾ら出しましたが、それにこだわりなく、もっと上にきめたらどうですか。そういう意思はありませんか。
  220. 田中角榮

    ○田中国務大臣 答申を待って慎重に検討いたします。
  221. 永末英一

    ○永末委員 われわれはこの点については、税制調査会の課税最低限よりももっと上の線できめるべきだということを考えておりますから、これをからみ合わせてお考えを願いたい。  この際総理一つ伺っておきたいのは、先ほど経企庁長官から公共料金の今後の進め方については、東京のタクシーは別として、あとはひとつ一生懸命努力をします、こういう話でしたが、懸案の問題はほかにもあるのです。しかしこれは、たとえば六大都市のバス賃などはその六大都市の地域における物価水準をきめる問題である。したがって、この問題については、やはり公共料金を上げないという基本方針を打ち出していただくことがやはり値上がりムードを押える重要な問題だと私は思いますが、総理大臣の御所見を伺いたい。
  222. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来申しておりますように、東京のタクシーだけは特別な関係で残しておったので、これは私は考えなければなりませんが、その他の分につきましては、大体あなたと意見が合っておるのじゃないかと思います。とにかく京都なんかで選挙中に、十三円の電車賃を十五円にお上げになったようでございますけれども、しかし全体としては、大体個人企業でございませんから、六大都市の都営、市営のバスについては、何とか方法を考えなければならぬのじゃないか、上げるほうでなしに上げない方法で考えなければならぬのじゃないかということを思っております。まだこれも閣議できめたわけではございません。慎重に考えてみたいと思います。だから、いまの物価問題懇談会の分は、大体において自分はこれを実行していきたいということを答えておるわけでございます。
  223. 永末英一

    ○永末委員 京都の場合のお話がありましたが、京都市議会は決定をいたしましたが、まだ政府は認可を与えていないわけであります。そこでこの問題はやはり問題があるので伺っております。その場合に、特に公共企業体の場合には、十数年前に公共企業体が発足したときに、いわゆる私企業と同じような勘定をとらそうとしながら、実は資本構成を十分に評価しない、あるいはまたそれ以後のいわゆる公共企業に対する債券の発行を認めない、起債の発行にワクをはめておる、こういうことが非常な無理を及ぼしておる。こういう点も一括十分にお考え願いたい。  次に進みます。中小企業の問題でいま総理から大体の方針を伺いました。そこで通産大臣に伺いたいのでありますが、わが党が従来から主張しておりますように、金融関係においては、特に中小企業の資金を確保するために、財政投融資のうち、あるいはまた銀行融資のうち、一定の比率を定めて中小企業に融資をさせるような特別法の制定をしなければ、口で言ったってできないというので主張しておりますが、いわゆる中小企業者に対する資金確保の特別措置法、名前はどうでもよろしいが、そういうもの、あるいは銀行法の改正をしなくちゃならぬ、こういうぐあいに思いますが、通産大臣はどうお考えになりますか。
  224. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。中小企業に対して政府関係金融機関に資金をできるだけ確保するということについて、われわれいま予算面においてもいろいろ努力をいたしておりますし、また、いま市中銀行のお話も出ましたが、市中銀行についても、行政指導のやり方でこれはできるだけ確保するようにはかっていきたいと思いますが、民社党から出しておいでになりまするような案、すなわち一定ワクをきめて、貸し出しの三〇%は——これはたとえばでありますが、三〇%は中小企業に向けなければならないとか、あるいはまた市中銀行の場合においてもそういうようなワクをはめていく、こういうことは、むしろ私は、これは考え方の問題ですから、一つ考え方とは思いますけれども、かえって弾力性をなくするおそれがある。要は、中小企業が必要とする資金を与え得るように努力をしていく。その年その時代における、ときどきにおいてやはり努力をしていくというやり方のほうが、われわれとしては好ましいのではないかというただいまは考えを持っておるわけであります。
  225. 永末英一

    ○永末委員 総理大臣は、財政金融の総力をあげてやる、こういうことを言われておるわけであって、総力をあげても、努力するだけで実効が上がらねば、これはどうにもならぬ。行政措置や行政指導でやれる部面もあるかもしれませんが、法定しなければならぬ面もある。たとえば、中小企業に対しては特に減免税を考えたいというような総理大臣のお話であったけれども、これなどは法定しなければできぬ問題であると思う。そういう御用意があるかどうか。
  226. 福田一

    福田(一)国務大臣 いまおっしゃったのは、減免というおことばですから税の問題ですね。税の問題につきましては、われわれいま相当考えておるのでありまして、さしあたりいわゆる家族専従者控除の大幅な引き上げをはかる、あるいはまた中小企業の機械設備等についての割り増し償却制度をここで考えてみるとか、あるいはまた、中小企業というのは、あなたも御存じのように非常に同族会社的なものが多いのでありますから、同族会社の留保金課税の軽減をはかる、こういうようなことについては、ただいま案を立てて実現をはかろうといたしておるところであります。
  227. 永末英一

    ○永末委員 中小企業に対する税をほかの一般企業よりも安くする点について、大蔵大臣はどういう構想をお持ちか。
  228. 田中角榮

    ○田中国務大臣 総理大臣からたびたび御言明をしておりますように、中小企業に六百億以上というような強い指示もありますし、われわれもそのような方向で検討いたしております。
  229. 永末英一

    ○永末委員 総理大臣に要望しておきます。総力をあげてやってください、中小企業者の期待を裏切らないように。  次へ進みます。アメリカのドル防衛政策はどんどん進行しておるようにわれわれは思います。この前の国会で、総理大臣は、アメリカのドル防衛政策には協力をされると言った。ところが問題は、アメリカのほうはドルのことを考えているのであって、円のことを考えているのではございません。そこで協力の仕方というものに対して、日本経済としては、一体どういう態度政府はとるかを心配しておるわけであります。もし日本経済の要求アメリカ経済の要求とが相反した場合に、池田総理大臣は日本経済の側に立って要求を貫く御意思があるかどうか、伺いたい。
  230. 池田勇人

    池田国務大臣 ドル防衛につきましては、日本ばかりではございません。たとえばパリ・クラブにおきましてみんな申し合わせをしております。ドル価値の防衛をしよう、これは国際的に唯一のキー・カレンシーと申しますか、基本的のあれでございますから、各国ともそういうような気持ちでいっておるのであります。ドルの価値の防衛というのは人ごとではないということがいまの世界の現状であります。こういう意味においてわれわれはドル防衛に協力する、それによって日本の円がどうこうということについては、これは断固われわれも考えなければならぬ。しかしこのことは、アメリカから見ても、自分のドル防衛ができたから円はどうでもいいという気持ちは全然持っておりません。したがいまして、利子平衡税につきましても、私は急遽外務大臣を行かせまして、ケネディ大統領にぼくは長文の手紙を書いて、向こうのジロン外務大臣との話では、日本の経済に深刻な影響を与えるようならば利子平衡税の適用についても除外例を設ける、こういうことははっきり約束しておるのであって、これはドル防衛に協力すると同時に、アメリカは円の防衛に協力するということは当然のことだと考えております。
  231. 永末英一

    ○永末委員 ドル防衛というアメリカ経済の安定を考えながら、アメリカ世界戦略もまた兵器の進歩とともに変わってきたとわれわれは見ております。たとえば十月に行なわれましたアメリカからドイツヘの大空輸作戦というのは、その結果、海外基地を再検討してこれを縮小しよう、こういうような一つのテストであったとわれわれは見ております。それかあらぬか、日本アメリカ軍基地においてもいろいろな問題がごく最近起こってまいりました。このアメリカの戦略は変更してきたと首相並びに防衛庁長官はお考えかどうか、伺いたい。
  232. 池田勇人

    池田国務大臣 戦略とはいかんということでございます。戦略が、東西関係が力の均衡で平和が保てるということが戦略ならば、これは変わりはございません。具体的な問題で、輸送の強化、科学技術の進歩等によりまして、アメリカはいろいろいまの武力の均衡による世界の平和という戦略の上に立っていろいろやっております。このことは、私は前から自分としては聞いておったのでございます。日本の基地がどの程度になるかという具体的な問題はまだ報告を受けておりませんが、そうなることは時代の進歩の結果だと思います。
  233. 永末英一

    ○永末委員 アメリカの戦略批判をやってくれと言ったのではなくて、日本の場合には、たとえば安保体制がつくられたときにアメリカ側が日本要求しておった内容が最近ぐっと変わってきたのではないか、こういうことを私どもは感ずるので、そのことを申し上げたわけです。  ここでひとつ伺いたいのは、アメリカが、今回の国会で、日本に対しても無償軍事援助を打ち切ることをきめました。これはそのまま行なわれると思います。たとえば、すでにきまっておったバッジ・システムの月末の負担分におきましても、最初アメリカのほうが七割五分持ってくれるであろうという期待は、現在のところ五分々々の要求をされておると聞いております。しかも、このアメリカの軍事援助を見込みながら第二次防衛計画が策定されたことは事実であります。この無償軍事援助が打ち切られて、しかも第二次防衛計画を遂行していこうとするならば、その分だけはやはり日本国民の負担によってやっていかねばならぬ。すなわち、第二次防衛計画は改変をしていかねばならぬ、こういう段階にきておると思うのです。この点について、首相並びに防衛庁長官はどういうお考えか、伺いたい。
  234. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 対外援助の削減問題につきまして御指摘の点がございましたが、まだ具体的に結果が出ておりません。本年はたしか二月ごろ内示がございましたが、国会の審議がアメリカでおくれておるのでありまして、大体内示が夏ごろになるのではないかというのが私どもの見方でございまして、内容がはっきりし次第、私どもはいろいろ再検討いたしますが、いまのところ具体的にわかりませんので、第二次防衛計画についての変更はいまのところ考えておらないのであります。
  235. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁長官、アメリカのほうが、軍事援助については打ち切るという方針を行政府がきめて、国会にかけて、アメリカ議会が決定しておる。通告はないかもしれませんが……。そういう事実を踏まえながらいま来年度予算の編成をあなたがやっておられるわけだ。それを二月に通告を受けてからやりますではおそいじゃないですか。そういうことを考えずにいま予算編成をやっておるのですか、伺いたい。
  236. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 御案内のとおり、会計年度も違いますし、また防衛計画の第二次防の実施につきましてもいろいろとアメリカとの関係でズレがありまして、はっきりと、たとえば年度末にわがほうの国は予算を編成いたしますが、先方ではまた事情も違います。バッジ・システムにつきましても、現存話し合いを煮詰めておりまして、近くその内容もはっきりされると思いますが、これにつきましても、先般チャーチの出しました案がございます。すなわち、七月一日以前に確約があったものは必ず出すが、それ以後は出さぬというようなチャーチ案の修正案がございます。十二月五日に両院協議会も一部を修正して通過しておりますが、先ほど申したとおり、具体的な数字はまだ出ておらぬわけであります。この点は御了解いただきたいと思います。
  237. 永末英一

    ○永末委員 行政府の長官としての御答弁ならそれで通るかもしれませんが、当初に申し上げましたとおりに、一体日本の平和と安全はどうなっているのだろうか、現在の政府はどういうかまえにおるのだろうか、その内容がはっきり国民に知らされないままに、国民としてはその点が不安なんです。したがって、私が質問しておりますのは、無償がこないとなれば、わが国でこれをまかなわなくちゃならぬということはあなたはお認めになりますか。それをまず答えてほしい。
  238. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 無償援助が打ち切られた場合には、当然第二次防に実施しなければならない項目につきましては、あるいは有償援助あるいは国産化に切りかえることは当然でございます。
  239. 永末英一

    ○永末委員 その場合に、たとえばややわれわれと立場を同じくしておる西ドイツにおいても、日本の場合にはナイキやあるいはホーク等が、第一回目は無償供与でございましたが、第二回目には買えということになっている、西ドイツではこれを自己生産に訴えよう、こういうことを考えておる。日本の国でいままで伝えられておるところでは、アメリカで生産したものを買おうというかまえでありますけれども、これを一体買ったままでいいのかどうか、あるいはまたこれを生産するとすれば一体そういうものが生産に値するのかどうか、こういうことを真剣に考えなくてはならぬ、こういう御検討はされていないのですか。
  240. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 もちろん日本の国防計画の基本方針から考えましても、日本の経済力あるいは科学技術の面から、こういう点は当然国産に切りかえ得る、あるいはこの点は有償援助しなければ無理だという点は、十分内局におきまして各幕におきましても検討中でございます。
  241. 永末英一

    ○永末委員 池田首相に伺いたいのですが、この三年間国防、平和の問題については私どもが機を見て伺いましても、たとえば昭和三十二年の国防会議の決定はこうである、安保条約のもとではこうだというはなはだ簡単な御答弁しかいただけなかった。世界はいま移り変わりつつある。その移り変わりつつある日本の条件は、いま防衛庁長官が申しましたとおりに、やはり日本国民の金で防衛を考えなくちゃならぬ。その段階に来たと私どもは見ておるわけです。この際、一番近い機会に日本の平和と安全の問題を国民に訴えなければ、国民日本の防衛に対して協力をしないと思う。たとえば自衛隊におきましても、過般汚職問題の一つが発覚いたしましたけれども、一体総理が今度施政方針で言われたとおりに、天職を遂行する使命感というのがどこの職場でも大切ではございますけれども、特に日本国の安全を守ろうとする自衛隊員には一番必要なことだと思う。そのためには、その任務が何であるかということをはっきりさせなくちゃならない。これはいわゆる道徳教育みたいなものではいかぬと思うのです。もっと具体的にこれが与えられなくちゃならぬと思う、同時にこれは国民に与える、その基礎の上につくられるのが私は至当だと思いますが、そういうかまえを池田内閣はされたことがない。あなたが人心一新と言われるからには、日本の平和と安全に関して、池田内閣はどういうことを国民に期待し要望するかということを明らかにされる御意思はあるかないかを伺いた  い。
  242. 池田勇人

    池田国務大臣 問題は二つあると思います。それで、自衛隊に対しまする私は最高の立場におきまして、機会あるごとに防衛庁長官あるいは大学の卒業式等々において自分の所信は部内では徹底さしております。そうして国民の国防に対する考え方、これはいま特にどうこうという全般の措置をとっておりませんが、やはり国会でのいろいろの論議がだんだん国民にも伝わっていくと思います。お話のように、今度アメリカの対外援助というものが相当減ってまいります。たぶん二割程度減ったと思いますが、日本の国防のあり方につきましては、もちろん安保条約を基本としてやり、そうして日本は国力に応じて防衛力の漸増をはかる、この基本をいっておるのでございまするが、まあこういう機会に日本の国防の現状というものを国民に知ってもらうことは、議会を通ずるか、あるいは他の方法でも一つ考えではないかと思います。一応関係当局と検討してみたいと思います。
  243. 永末英一

    ○永末委員 総理大臣からこの問題について相談をして、近い機会にやはり国民に訴えるという、こういう言明がございましたので、期待しております。  次に移ります。池田内閣の方針の大きな柱として人つくりという問題がございました。人つくりもいろいろございますが、私はきょうは学校教育に関する池田総理のお考えを伺って、あと担当大臣に伺いたいと思うのですが、学校教育は国がやっている教育と、いわゆる私立、私のものがやっている教育とございます。しかも大学においては、大学の学生の六割五分は私立大学で教育をされる。また高校におきましても約半数程度は私立において教育をされている。国立なり公立のほうはこれは全額国があるいは地方自治団体が持つのでございますが、この私立方面については、ほとんど今までなすところがないままに推移をしてまいりました。ところがいわゆる高度経済成長政策のために非常に教育に金がかかるようになってまいりまして、各地でいろいろな紛争を起こしております。大学の学生が学校当局と学費値上げの問題でいろいろ交渉するということが、一体人つくりの根本にかなうのかどうか、私どもは心配をいたしております。一体この学校教育、特に私立の学校における教育について、池田総理はどういうことを期待をし、どういう方針をお持ちかを伺いたい。
  244. 池田勇人

    池田国務大臣 お話しのとおりでございまして、大学におきましては大体三分の二近くが、私立学校でございます。策近高等学校におきましても私立の割合が相当ふえてまいっております。まあいままで何もしていないと申されますが、政府といたしましては、私立学校の奨励補助金として六十数億円出して、それを運営しておるのでございます。まだ十分ではもちろんございません。御承知のとおり、この高校全学入校ということもございますが、日本状態は、先進国のそれに比べまして高校への入学率が非常に多いのでございます。ドイツ、フランスイギリスは中学を、義務教育を終えた人の四〇%から四二・三%だと思います。半分以下でございますが、日本なんかは六五・六%いっておりませんか。東京では九〇%、こういう状況で、そうして私立学校はそれに非常にふえてくる。国民、ことは父兄の方々が子弟の教育に熱心だということは非常にいいことでございます。だからわれわれはこの教育の振興をはからなければなりませんが、いまやはり実を申しますと、国のほうで私立学校に対しての関心をもっと持つべきではないか。いま私立中学やあるいは私立高等学校の授業料が非常に高くなっている。高等学校では大体平均三千円でございましょう。しかしこれが、卒業生の半分もいかないイギリスやドイツは、高等学校は月一万円でございます。日本の為替換算にして。アメリカは三万円ぐらいでございます。こういうことになってまいりますと、やはり私立学校の授業料が上がることがさらにまた消費者物価への影響がございます。いや、これは消費者物価に非常に影響があるんです。幼稚園とか中学校とか、あるいは私立高等学校の授業料の増加ということが非常に関係があるのでございます。私は、その点は、教育は伸ばさなければいかぬ。しかし私は、全学入校ということは、これはもう自分としてはやりたいのだけれども、できません。いまでも入学率というものは英、独、仏よりも相当、五割増しくらいにいっている。そこでやはり国として私立学校への援助をもう少しやるべきじゃないか。それから国立大学につきまして、まあこれは理化学方面は別でございますけれども、非常なひどい競争率で、文科系統の者が入るのはどうかというふうな気もしております。これは文部大臣とまだ相談しておりませんが、私は世界情勢、そうしてまたいまの財政状況、それから私立学校の状態から見ますと、何とかしなければいかぬ、こういう気持ちを持って、人つくりに専念する私といたしましては、今度の予算でもこれを考えたい。それならば官立のほうを少しでも上げるかという問題になりますと、これはなかなか多いのでございます。どうもやはり少し官立尊重、私立をあまりしないという気持ちがまだ残っている気がいたしますから、少し考え方を変えていかなければいかぬのじゃないかという気がしております。しかし、これは所管大臣とまだ相談していない、私の気持ちだけでございます。
  245. 永末英一

    ○永末委員 総理から大体の方向は伺いました。一つだけ総理、この高校の全部が入学することはできないと判断されたが、これは努力されたい。子供の数もいろいろあるのですから、それを希望者は全部入れるというのが、私は人つくりの根本だと思います。そのためにいろいろな措置を講じていくのが行政のつとめだと思う。初めからできないということを——できないというのは、校舎が足らぬ、教育者が足らぬ、こういうことでできないということであって、希望者があれば入れ得るようなかまえをとる。もちろんこれは官公立だけでやれる問題ではございません。全部入れるように努力していくのが人つくりの根本の考え方だと私は思いますが、この点だけちょっと総理に伺いたい。
  246. 池田勇人

    池田国務大臣 これはよほど考えものであります。私は一つの例を申し上げます。昨年から技術オリンピックというのに日本参加いたしました。去年はスペインでやりました。そしてことしはアイルランドでやったかと思います。日本から出ますと過半数が金メダルを取ってくる。これは、御承知のとおり二十以下の人です。そうして、行く人はやはり中学校を出て、十五、六歳のときから技術を身に覚えるわけなんです。だから高等学校にみな入るということでなくて、とにかくやすりとかああいうふうなものでも、子供のときからやらぬとなかなか上達しないそうです。そういう点から、全般的の教育を上げるということは賛成でございますけれども、全員入れれば入れるほうがいいんだというふうな画一的な考え方は、私は人つくりじゃないと思う。たとえそれが中学を出ただけであろうと、高等学校を出ただけであろうとも、人つくりの根本は、やはりその人間が自分で自分の職場を開拓するというここが一番大事なことであって、私は何も全部高等学校に入れるとか、全部大学に入れることが理想とまではいかぬ。それはできるだけ多いにこしたことはございませんが、この技術の進歩ということは必ずしも教育と一体とならぬ場合があることもお考え願いまして、やっていきたい。大学を卒業した人が、ことにまた昔の帝大を出た人がみんないいというわけではございません。粒々辛苦、小学校だけでりっぱな方が現にたくさんあるじゃございませんか。その点、私はお考え願いたい。甘きについてはいかぬと思います。
  247. 永末英一

    ○永末委員 文部大臣に伺いたいのですが、国立大学の学生の負担と私立大学の学生の負担、これをひとつ明らかにしていただきたい。
  248. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お答えいたします。ただいまの状況から申しますと、国立大学の学生の負担と私立大学の学生の負担、この点から申せば、私立大学のほうが負担が多い、かように考えております。
  249. 永末英一

    ○永末委員 そんなことは答弁してもらわぬでもみんな知っているわけです。どれだけ多いかということをこの際みんなに明らかにしてほしいということです。
  250. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私はまことに数字に弱いほうでありまして、数字の関係につきましては政府委員から答弁いたさせます。
  251. 杉江清

    ○杉江説明員 授業料について見ますと、国立大学においては一万二千円でございますが、私立学校については最低一万八千円から最高十五万円までございます。
  252. 永末英一

    ○永末委員 文部大臣、国が国立大学の学生一人当たりにどのくらいを支出し、負担し、私立大学にはどれだけ負担しておるか、御存じですか、お答え願いたい。
  253. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 政府委員にお答えをいたさせます。
  254. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 政府委員答弁させないでいいですか。
  255. 永末英一

    ○永末委員 答弁いいです。私から申し上げます。  国は国立大学に一人当たり約三十四万円を支出し、私立大学では約三千円、これはいままでは私立大学はかってに運営せよというふうなことで流れてきた歴史的経過でそうさせておる。しかし、いま池田総理が言われたように、やはり私立大学に対しても同じような青年が同じように教育されていくし、この教育を国としてなおざりにしたのでは、やはり日本全体の発展のためにならない、これは池田総理のお考えです。文部大臣は池田総理のお考えをそのままそのとおりとお認めになりますか。
  256. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 総理大臣のお答えになりましたとおりでございます。
  257. 永末英一

    ○永末委員 いままで私立大学の補助につきましては、少しの法律があって、それにつけ加えてごく少しの補助しかないわけであって、やはりこの際、人つくりを旨とされる池田内閣においては、いままででき上がっております法律、補助率等も引き上げる、予算等もつけ加える、さらにまた、要望されておるものについては、新しい法律を起こしてでもこれをやろう、あるいは税制の面においても、諸外国では、特に私立大学にはそれぞれの会社等からの寄付金、これに対しての減免措置が非常によくとられておる、日本では非常にそれが低いし、また指定もある。こういうワクの中で運営されておる。何もほかに使うのではない、教育のために私企業から渡そうというのでありますから、これら一連の問題について、やる御意思があるかどうかを伺っておきたい。
  258. 田中角榮

    ○田中国務大臣 官立と私立の学校につきましては、御了承のとおり憲法上の規定がございまして、教育及び宗教に対しては国は特別の恩恵を与えてはならないという非常に強いものがあります。でありますから、現行法の成立につきましても相当問題があったわけでありますので、財政上も資金を提供するという現行の制度にしておるわけでありまして、現行法を根本的に改正をするというようなことは憲法上できません。
  259. 永末英一

    ○永末委員 大蔵大臣、そんなことを伺っておるのではない。それは憲法ではそう書いてある。しかし私立学校法が成立しますときにその問題は十分国会で論議されきまったものである。すなわち公の支配に属さない教育に公金を出してはいけないというのが憲法の規定であって、そうして私立学校法であと単行法ができて、それぞれの補助金を出しておる分については公共のためにこれが運営されておるのだというので出しておるのであります。だから憲法の問題をいまさら持ち出されるのは昔の話であって、いまの問題ではない。したがって、そのことを常に思っておりますから、補助金を出そうというときに、それにこだわって、小さな額しか出さぬで申しわけをしておると私は思うのです。この点をもう一ぺん明確にしていただきたい。
  260. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私の理解する範囲におきましては、当時あの法律をつくるということが限度であるという考え方で了承しております。これは、その当時、御承知の靖国神社の問題とか、いろいろな問題が出たわけでありますが、当時の状況としてあの程度になったわけでありまして、これ以上の問題に対しては、現在の段階においては考えられないというふうな考え方でおります。
  261. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 大蔵大臣へのお尋ねでございますが、私の考えを申し上げておきたいと思います。  この問題は、現に私のほうとしましても非常に重要な課題と考えております。御承知のような沿革もあることでありますので、大体大学教育等につきましては国が経営する、また私学は私学として自由にひとつやっていただく、こういうようなたてまえで今日まできておると思うのでありますが、だんだん時勢の推移に伴いまして、最近では特殊の目的につきましては、国が若干の補助をしていることは御承知のとおりであります。それからまた私学振興会等を通じましてだんだん融資の額もふやしてきておる、これも御承知だろうと思うのであります。なおまた税制等につきましても、教育に関して優遇の措置が講ぜられておるということも御承知であろうと思うのでありますが、ただ問題は、現在の私学の状況から申しまして、この程度でいいのか、こういう問題が大きく出てきておるように思うのであります。この私学に対する助成の問題を考えます場合に一つのジレンマがあるように思うのでありまして、助成は大いにすべしということも考えられるわけでありますが、同時に助成を国が行ないました場合に、私学に対する監督は一体どういうふうにしたらよろしいか、この問題が従来からあるわけでございます。自由はどこまでも自由であって、金だけよこせというのでは、現在の日本の制度上はなかなかむずかしい点もあろうかと思いますので、これらの問題につきまして、現在の状況もだんだん重大になっておると思いますので、文部省としては、この問題を真剣に検討してみたいというのがただいまの私どもの心持ちでございます。
  262. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 永末君に申し上げますが……。
  263. 永末英一

    ○永末委員 最後に、これで終わりますから……。要望しておきます。
  264. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 発言を許します。
  265. 永末英一

    ○永末委員 いま総理大臣お聞きのように、文部省はいろいろ真剣に考えておるようです。金を出す大蔵大臣のほうはまだ考え方がちょっと違うように思いますが、十分これは閣内で御相談いただいて、そうして要は信頼の問題である、金を出せば監督しなければならぬ、それなら一体公社、公団はどうなるのかとわれわれは言いたい。したがって、信頼してやはり人つくりのために私立大学も高校もやっていく、これが日本民族の発展になると思いますが、十分御研究をいただいて前進をしていただくように要望して質問を終わります。(拍手)
  266. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて永末英一君の質疑は終了いたしました。  次会は明十三日午前十時から開会いたします。  なお、明日午前は川俣清音君が質疑をすることになっており、出席要求は大蔵大臣、農林大臣、建設大臣、経済企画庁長官、内閣官房長官であります。委員諸君及び政府におかれても、時間を厳守の上御出席相なるよう御注意申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十四分散会