○和泉覚君 私は、公明会を代表いたしまして、先般行なわれた
所信表明につき、
総理並びに
関係大臣に若干の
質問をいたします。
質問の第一点は、本臨時
国会の
召集の意義についてであります。巷間すでに本二十三日をもって
解散を断行すると伝えられております。池田
総理はその
所信表明の中で、「補正予算をこれに関連する諸法案をすみやかに
審議を尽くされ、正々堂々と事を決して、
国民の信頼と期待にこたえられることを切望する」と述べております。われわれもまた、今
国会の意義が補正予算案その他懸案事項の
審議にあると理解しております。ところが、
総理は、さる日の
答弁において、
審議は尽くしてとは言ったが、通してくれとは言わなかったと言い、
解散は憲法第七条によって適当な時期を
考えて行なうと、きわめて高い調子で言明されたのであります。このことは一体何を意味するものでありましょうか。今日までの段階でも、
総理の言われる
審議を尽くしてということになるのでしょうか。ただいまも
審議をしているではないかというようなことばもありましたが、しからば打ち切るということはないのかどうか。国政
審議という本来の使命に立ち戻った上で、
総理の明快なる
答弁を望むものであります。この点については、きのうも、また、ただいまも
質問がありましたが、何ゆえか
総理は
答弁を避けているように見受けられるのであります。したがって、重ねて
質問するものであります。
次に、衆議院の
解散問題についてでありますが、現在の
国民の世論は、衆議院
解散の大義名分に多くの疑念を持っております。党利党略に基づく国政の混乱を心から憂えているのであります。その一端をあげれば、池田
内閣に対する最大の関心事は
所得倍増政策の失敗であり、
物価値上がりに伴う
生活の困難であります。ゆえに
政府は、少なくとも、明年度予算をはじめ、
経済政策の大綱を発表して、しかる後に民意を問わんとして
解散するのが、
国民大衆に納得できる民主政治としての常道であります。それを現時点において
解散すれば、全
国民の目は、明年度予算の性格、方向から完全にそらされるばかりでなく、予算編成が党利党略に動かされる非常識な公約によって大きくゆがめられ、結果は
国民大衆の
福祉とかけ離れたものになるのではないかということであります。すなわち、口で
民主主義を唱えても、見せかけの
民主主義におちいることを心から憂えるものであります。さらに、最近の世論調査では、池田
内閣の
所得倍増政策の失敗をあげ、
生活が苦しくなった、このため池田
内閣の支持票が低下したことを示しております。その反面、それが直ちに
社会党支持に回ることでないことも明らかにしておるのであります。
政党政治のもとにあって、
国民大衆が真に支持する
政党に迷うことは全くの不幸であります。このような情勢のもとに、あえて
解散の強行に対し、
国民は、党利党略のための大義名分のない
解散ではないかと非常に慨嘆しておる次第であります。したがって、今日の時点においては、少なくとも、提出案件、懸案事項の
審議に全力を注ぎ、もって
国民大衆の期待にこたえることが焦眉の急でありますが、
総理としてどのように
考えておられるのか承りたいのであります。
次に経済問題でありますが、
総理は、「過去三年間の
高度成長により
所得倍増は一両年早く達成が可能となったので、この計画上のゆとりを利用して、従来工業に振り向けてきたところの
施策の
重点を、立ちおくれておるところの
農業、中小企業に移して、近代化の強力な措置を講じて、産業間に調和のとれた健全な経済発展をはかる」と述べられました。確かにこの三年間、農家は他との
収入格差増大に悩み抜き、中小企業は金融引き締めで苦しみ通してきております。
総理のこの発言は、はからずもこれを認め、今までの
施策が明らかに大資本優先の
成長政策であって、
国民の過半数を占めるところの
農業、漁業、中小企業を、
政策上、三年間、二の次とした
考え方で来たことを、告白したものであると解せざるを得ないのでありますが、この点をいかが
考えておられますか。この大衆犠牲を具体的に今後どう救済していく所存でありますか。
農業に対しては、基本法の定める方向に向かって財政と金融の力を結集してこれに当たると言い、中小企業にも、財政
資金の確保等、抜本的措置を講ずると言っているが、現在、全国銀行の中小企業向けの貸し出し残額は二一%程度であり、
政府機関の貸し出し額は、実に中小企業金融総額の一〇%にすぎないのであります。
農業、中小企業の大事な柱は金融であります。今後、
施策の
重点を
農業等に移すというならば、一体この金融措置についてどの程度まで
引き上げていかれるのか、
政府の構想を
数字をあげて具体的に
国民に明示されたいのであります。また、
農業の大敵の
一つは天災であります。今年春の長雨被害、西
日本の豪雨禍等、大打撃でありましたが、その復旧といい、被害克服といい、ほとんど農家自身に背負わされ、見るべき
政策上の救済は行き届かなかったのであります。これにかんがみ、天災融資法をはじめ、
関係法令の抜本的充実整備をお
考えになっているのかどうか、お伺いするものであります。
次に、
物価対策でありますが、
総理は、
所得倍増の成功を自画自賛しておられる反面で、「
消費者
物価がひとり上昇基調を示していることはゆるがせにできません」と言っておられます。そして、この
消費者
物価上昇の内容は、サービス料金の値上げにあることをはっきりと認められておるようであります。
政府がいままでとってきた計画を遂行すれば、サービス料金の値上がりがあらゆる
物価に
影響して
消費者
物価が上がることは、経済の専門家である
総理には初めからわかっておられたはずであります。しかるに、過去三年間、この点に口をつぐんでこられたのは、一体どうしたわけでありましょうか。労働省の家計調査では、
生活が楽になったという者はわずか七%と報じられております。したがって、
物価対策は、大切な
国民の家計を中心にした
消費者
物価対策について、承知で無視してきたと言わざるを得ないのであります。
国民総
生産三七%、
物価上昇率二三%の差し引き計算の
説明は、明らかに筋違いであります。なぜならば、
国民所得は平均の問題であり、
消費者
物価は
国民の大半である低
所得の人々の
生活費を強く圧迫するものであるからであります。
消費者
物価の値上がりがサービス料金から来ることを認められた以上は、ではこれをどのように合理化するか、また、どのように埋め合わせて矛盾を解決していく
方針なのか、そして、
国民の家計を安定させるためにどんな
方針をお持ちであるか、この点をはっきり示していただきたいのであります。また、これについて、「ここ一両年の間に必ず
物価問題を解決すべく最善の努力を傾ける」と言っておられますが、一体、一両年と言われる根拠は何であられるか。一両年はいままでどおり
生活費の
増加に耐えていけということでありましょうか。具体的には、
公共料金、食料品、サービス料金、家賃、
教育費等、これら上がりやすいものをどう取り扱っていく御
方針でしょうか、具体的に
お答えをお願いいたしたいのであります。
次に、
減税について
総理並びに大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、
総理も大蔵大臣も、税金は軽減合理化されておるといっております。その実、
国民総
所得に対するところの税負担率をみると、ここ数年来、横ばいの
状態であることは御承知のとおりでありましょう。すなわち、
昭和三十五年度は二一・九%であり、三十六年度は二〇・七%であり、三十七年度は二二・二%、三十八年度は二一・五%でありまして、しかも、個人に厚く、法人に薄い現行
税制では、また、
消費生活の
物価高の現況のもとでは、決して
減税を誇示するところの内容ではないのであります。その上、自然増収という美名に隠れた取り過ぎがあるのであります。経済の
成長率は高かったが、それによって
物価上昇を引き起こしたり、
所得分配の不平等を強めたりしているのが実情であります。
国民にとっては、この点こそが不安なのであり、
政府の
経済政策の欠陥もここに集中的に現われている以上、勤労大衆の
所得税を思い切り下げ、地方税に対しても十分
配慮を加え、個人の税負担を真に軽減することが急務であるとはお
考えになりませんでしょうか。本年度の自然増収見込みは六千億ということであります。明らかにこれは取り過ぎであり、実質的の増税ではありませんか。これに対して平年度二千億の
減税といえば、さも善政のごとく聞こえるのでありますが、六千億に対して二千億で、はたして善政といえるでありましょうか。これがまた合理化といえるでありましょうか。これではまるで見せかけの
減税にすぎないといわれてもしかたがないと思います。二千億
減税したならば、来年度の税負担率は一体何%と大臣は見通しておいでになりますか。これが二一%ならば、それは今までどおりであって、少しも
減税の名に値しないものであると思うものであります。この点をはっきりとお示し願いたいと思います。
税制調査会の
報告では、明白に大企業のほうが中小企業より税負担率は軽いといっております。このように、問題は税体系そのものにあります。たとえば青色申告を使った場合、後日、税務署から
更正決定がくる。その場合、専従者の給与の控除は、法人の場合は訂正
増加して引いてくれるが、個人の場合は申告の際の予定額そのまましか引いてくれません。それよりも多い実際額は認めないのであります。そうして更正税額は、はね上がるのが結論でありますから、法人にはゆるく、個人にはきつくなるのであります。そして、大企業ほど助かるのであります、それはほんの一例にすぎませんが、このように、税体系そのものに問題の骨があります。
税制自体を抜本的に改正しなければ真の
国民に対する
減税は成り立たないのであります。この点、
政府はどのようにお
考えになっておられるのでありましょうか、お尋ねしたいと思います。
最後に、
選挙の問題でございますが、
選挙といえば
違反と答えるといわれております。これが今までの実情であります。すでに、各地とも、
違反文書、ポスター等が目にあまっております。各種の団体の宴会つき会合が、はでに行なわれております。金が乱れ飛んでおります。いろいろのうわさが、ちまたにあふれております。この際、私は、今まで
政府がキャッチしているそうした事前の
違反行為の大要を、ここに
報告せられんことを求めるものであります。それとともに、
違反取り締まりに対するところの
政府の見解と
態度とを、
解散寸前のただいま
国民に明示されんことを望んで、私の
質問を終わる次第であります。以上。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕