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1963-10-23 第44回国会 参議院 本会議 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年十月二十三日(水曜日)    午前十時二十分開議   ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第五号   昭和三十八年十月二十三日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件   (第三日)   ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 国務大臣演説に関   する件(第三日)   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件(第三日)、  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。加瀬完君。   〔加瀬完登壇拍手
  3. 加瀬完

    加瀬完君 私は、日本社会党を代表し、総理並びに関係閣僚に以下数点について質問をいたします。  質問の前に、まず一点、総理にただしたいことがございます。昨日、わが党の木村議員から、総理の「今国会は短期間でありますが、正しい民主主義の基盤に立って、すみやかに審議を尽くされ、正々堂々と事を決して国民の信頼と期待にこたえられることを切望する次第であります」、こういう所信の表明に関しまして質問がありました。しかし、御答弁は、はなはだ不明確でありました。そこで、重ねてお尋ねをいたします。「審議を尽くされ」とはどういうことをお考えであられたのか。「正々堂々と事を決し」とはどういう意味を込められておったのか。また、本日解散とのうわさがあるが、本日解散をするのか。解散するとなると、審議を尽くされ」という総理所信表明とは違ってくるので、この間の事情の変化についてまずお答えをいただきます。  おそらく正確な御答弁は得られないと思いますので、解散があるものと考えまして、今までの総理の諸政策をもあわせて質問をいたします。  質問の第一点は、物価の特に低所得階層に対する影響についてであります。総理は、かつて、高度成長政策説明の中で、「貧困、病気、失業等成長の陰に残された同胞にあたたかい配慮がなければならない。このため低所得者に対する施策を進める、」こう、その所信を表明されたことがありました。しかしながら、今日の物価状態は、この配慮が認められるでありましょうか。物価上昇寄与率は、食料費雑費で八〇%を占め、低所得層手取り分支出に対する割合、すなわち消費性向は二九・八と支出超過を示し、赤字額は、三十六年の三千三百六十九円から、三十七年は四千七十四円と、増加の一途をたどっております。この間の事情は、人口問題審議会が、「コンビナートはできたが地域住民の福祉は忘れられている。社会保障の充実と保健福祉がおくれている。農業都市小零細企業対策がない、」こう指摘をしているとおりであります。さらに、この傾向年ごとに激しくなりました。黒字調査でも、三十五年、三十六年、三十七年、各年ごとに、マイナス三・六、マイナス二二・四、マイナス一八・〇と、前年に比して赤字増加は著しいものがございます。これに対しまして、高所得層は、消費性向が八三・五、七一・七と、ますます黒字増加を示しております。このため、低所得層と高所得層所得格差はますます大きくなりまして、決して総理の言うように、高度成長が、所得格差賃金格差を少なくしたことにはならないのであります。  おそらく総理は、そのひずみの底にあるものは、ほんの一部分であるとお答えになろうかと思いますので、さらにつけ加えます。高度成長政策によりまして所得がはるかに増加しているということは、はなはだ事実に反するわけでございます。物価上昇のために、消費支出が可処分所得をはるかにはみ出している階層は、全世帯数の二七・二%、六百十四万世帯であります。総人口の二六・六%、二千四百七十九万人になります。全人口の四分の一が、収入では消費をまかなえないということは、正しい経済政策とは言われません。この低所得層業種構成は、勤労者四二・四%、農漁業者二四・五%等であります。勤労者の中には、零細企業臨時工、日雇いが大部分であります。このことは、経済政策のうち特に中小企業政策農漁業対策がないということでございます。この人たちは、働かないから食えないのではありません、働いても食えないのであります。かつて総理は、貧乏人は麦を食えとおっしゃいましたけれども、いまや貧乏人は、麦を食うことすらもできない状態にございます。公共料金は上がりました。バスも、ふろも、タクシー料金も、水道料金も軒並みに上がっております。成長の陰に取り残された同胞に対するあたたかい配慮を、池田政策は、どこに、だれに施したのでありますか、明確にお答えをいただきます。(拍手)  伺いたいその二は、厚生白書によりますと、低所得層は、食料費支出の大半を奪われるのに反しまして、高所得層支出は、雑費、特に教育費支出を増大させております。いま教育費の小学校における一人当たり父兄負担額を見ますと、都市では、富裕家庭は三万六千四十一円、貧困家庭は一万七百二十九円であります。月額負担は、大都市では二千五百八十三円、農村は九百七十円であります。教育費家庭負担高校進学率関係は、東京都の資料によりますと、月額三千五百円の千代田区は九〇%、二千八百円の文京区は七五%、千六百円の荒川区は五〇%、千三百円の足立区は四〇%と、家庭負担の多寡が入学率を左右いたしております。物価値上がりは、低所得層には食料費支出がかさむために、教育費支出をはばむことになります。結果といたしまして、能力がありましても、教育機会から脱落せざるを得なくなります。富裕者は、教育機会と境遇を独占するのに反しまして、貧困家庭の子女は、教育権利を剥奪されているわけでございます。最近の刑法犯少年生活程度を見ましても、低所得層が全体の六〇%を占めております。また某県における中学校の貧困のための不就学生徒は、一・三%にも及んでおります。政府は、この事実を御認識なさっておられるか、また、どういう責任をお感じになっておられるか、伺いたいのであります。  質問の第二点は、減税についてであります。今までの政府減税は、ほとんどが企業減税でありました。このたびも一般国民減税と言っておりますけれども、その重点をどこに置くかは、はなはだ不明瞭であります。そこで、明確に庶民の減税であるという方針であるならば、具体的な御説明を求めたいのであります。税制調査会も、租税特別措置は、所得の多い者ほど高率の税を負担する原則を乱し、納税意欲を鈍らせるから、縮小すべきであると、こう指摘をいたしております。  まず、この租税特別措置法について伺います。昭和三十三年八百七億でありました租税特別措置減免額は、三十四年一千五億、三十五年千二百二十七億、三十六年千四百九十五億、三十七年千六百九十五億円と、毎年増加をいたしております。特に、少なくも利子の非課税の百億、貸し倒れ準備金の百十五億、価格変動準備金の百十億、輸出控除の百億、退職引き当て金の百三十億等は、当然廃止または整理をさるべきものだと思いますが、政府のお考えはいかがでございますか。理由は、あまりにも特別措置は、特定の会社の利益を擁護し過ぎているからであります。ただいま申し上げました準備金引き当て金の適用されております業種は、電力会社九社、損保会社二十社、このうち、上位十社が保険料収入の七五%を占めております。銑鉄会社四十二社、上位七社で生産の九七%、貿易会社三千百六十二社、上位十社で四三・七%をそれぞれ独占をいたしておるのであります。一部の独占資本のためという非難を弁解をする余地はないのであります。このように担税力のある者が免税をされ、担税力のない者、所得税でも事業税でも、更正決定だの見込み課税だのとやられましては、納税意欲を鈍らす最大の原因となるわけであります。まことに不合理そのものとなりました租税特別措置法を改廃する考えはないか、あらためて伺いたいのであります。  次に、政府企業減税より先に所得税減税を優先させると言いましても、所得税減税だけでは必ずしも一般庶民減税とはならないのであります。問題は住民税であります。具体例をあげます。前回所得税減税分県民税引き上げに充当するという施策が行なわれました、その県民税引き上げ率は、給与所得者につきましては、独身の場合は十五万円の者一五〇・四%の引き上げ率でございます。三十万円の者一二四・三%、標準家族の場合は五十万円で八二%、七十万円で五二・二%、百万円で三〇・六%、二百万円で五・九%、二千万円はマイナスの〇・七%となっております。高額所得者ほど引き上げ率が低いのであります。超高額所得者減税をされているのでございます。貧乏人は増税、金持ちは減税、これでは、課税原則であります応能性は後退をいたしまして、応益原則だけを重視することとなり、はなはだ不合理であります。  次に、市町村民税であります。本文方式課税をされない場合でも、ただし書き方式では二千円以上も課税をされております。某市では、給与所得三十万円の場合、本文では四百四十円が二千七百九十円、六・三倍であります。事業所得の田畑一町三反、収入二十六万の場合、本文三百円は千九百円、これまた六・三倍であります。徳島県N市の本文に対する課税比率をあげますと、三十万円で六・三倍、四十万円で二・六倍、五十万円で二・三倍、七十万円で二・二倍、百万円で二・〇倍、このように低額者に強く、高額者に軽いのであります。この傾向は、ただし書き市町村適用の全部の傾向であります。したがって、この住民税ただし書きをやめない限り、低所得層の税制上の保護は成りたたないのであります。この不合理は、来年度よりは是正されると考えてよろしいか、伺います。ただし、市町村ただし書きを採用せざるを得ない原因は、地方財源の不足にあります。税制調査会抽出調査でも、北海道の士別市は八〇・一%をただし書き収入に仰いでおります。ほとんどのただし書き町村は、六、七〇%をこれによって増収しているのであります。ただし書きを廃止するためには、ただし書き分減収補てんがなされなければなりません。この具体的な数字を示していただきます。  なお、固定資産税評価額をかえて、昨日の自治大臣の御答弁のように、全体の税額負担が変わらないような御答弁は、私どもは、うなずけません。固定資産税増収分住民税減収分を補てんするという考えがないかどうか、承ります。  また、所得税減税分は、今日の法律によりますと住民税への影響を遮断されております。旧に返して、所得税減税されれば当然その減税分住民税に響くような方法はとれないものかどうか、この点も伺います。  質問の第三は、農業問題であります。政府の強調する高度成長計画は、農村に対する二重構造のゆがみをますます大きくいたしております。たとえば、政府の指導による某県の農業改造モデル地区の実態は、大型農家八十戸のために所有耕地を減反する農村工家と称する小農が二百四十五戸、この小零細農に対しましては補償もなければ転業の明確な見通しも与えておりません。工業農家といっても、そこに来る工場もきまっておりませんければ、農地を捨てたあとの収入の道も講じられておりません。このままでは全くの小農の切り捨てでございます。農民が、政府の抜本的な農業政策の確立を今日ほど望んでいるときはございません。ですから、私どもはこの事態の解決のために国会召集を要求をいたしましたが、召集はおくれました。しかも解散によりまして、十二分な審議を与えようともいたしておりません。宮澤企画庁長官総理に進言をいたしまして、今後は経済政策重点を低所得部門、特に農業等に置くと言われましても、また政府がこれを取り上げるとおっしゃられましても、選挙政策以外の何ものともわれわれ国民は受け取るわけにはいかないのであります。(拍手)  そこで端的に伺います。その一つ農業基本政策でございます。政府農業年次報告でも、農業では生活はできないということは明らかでございます。こういう事態に対処いたしまして、社会党農民憲章を策定いたし、農政の方向を示しました。政府農業基本法を抜本的に改正いたしまして、真実、農民を救済するお考えがないかどうか、総理並びに農林大臣に伺います。  その二は、貿易の自由化農業についてであります。政府は、すでに農産物並びにその加工品について大幅な自由化を行ないました。このことは、わが国農業に深刻な打撃を受け、また受ける心配を生じつつあります。たとえばチキン戦争によって締め出されたアメリカのブロイラーわが国ブロイラーを圧迫し、さらに牛肉や豚肉にも影響を与えようとしております。砂糖にいたしましても、突然の自由化は、今まで政府甘味資源対策を検討中といっておったにもかかわらず、抜き打ちに断行をされまして、甘味生産業者は路頭に迷っております。かような政府態度では、農畜産物自由化もまた心配になってこざるを得ないのであります。農畜産物自由化に対する確固たる方針を承りたいのであります。さらに、支持価格制度についてどういう考えをお持ちかもあわせて伺います。  その三は、農業労働力の確保であります。農林大臣は、カナダ小麦ソ連輸出に対しまして日本への支障を心配したと、新聞は伝えております。主食糧外国依存に求め、またまた余剰農産物受け入れ計画を行なうのではないか、こういう心配もございます。この点についてお答えをいただきます。国民主要食糧がかように不安定な状態にあることは重大な問題であります。われわれが主張をしておりますとおり、農産物自給度向上は、この際あらためて認識をされなければならないと思うのであります。しかし、農業の発展をはかり、農産物自給度向上をはかる上において大きな問題は、農業労働力の問題であります。政府農業労働力現状をどう把握をし、その原因をどこに求め、そしていかなる対策を講じようとしておるのか、農林大臣に御所見を伺いたいのであります。  その四は、国有林野の開放であります。本年六月国有林野の活用についての農林次官通達が行なわれました。さらに、総理も青森県での一日内閣において、大幅に開放すると公言をされました。わが党は国有林野の開放問題について公開質問状を出しているわけでございますが、しかし、それらについては御答弁がございません。はなはだ残念であります。あらためてこの機会に、この問題に対する政府方針総理並びに農林大臣より承りたいと思います。  質問の第四はILOについてであります。ILO八七号を本国会で必ず通すとの政府の声明は、またくずれようといたしております。今後どう処置するのか。しかも、たびたびこのような態度ILOを扱いまして、対外信用の失墜に対する責任をどうお考えになるのか、承りたいのであります。申すまでもなくILO労働者保護目的であります。したがいまして、設置理由にも「戦争の原因は、劣悪なる労働条件による、不正、困苦、窮乏による社会不安であり、これは事前に除去されねばならない。」、こうございます。また、フィラデルフィア官一言にも、「一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である。結社の自由、完全雇傭の促進はILOの厳粛な義務でもる。」とも述べられております。さらに、この権利は、ILOの第十九条八項に、「いかなる場合にも、勧告の採択又は加盟国による条約批准は、条約又は勧告に規定された条件よりも関係労働者にとって有利な条件を確保している法律、裁決、慣行又は協約に影響を及ぼすものとみなされてはならない。」と規定されていることも、御承知のとおりでございます。したがって、どういう理由にもあれ、労働者既得権、身分上の条件、待遇上の条件組合活動の表現、行動、結社等自由等と、批准と、てんびんにかけられて、もろもろの労働者権利が剥奪されるものではあり得ないわけでございます。これについての御見解もあわせて承ります。一部に取りざたされておりまするように、批准に便乗をいたしまして国内法を改悪、労働者活動に制限をするというようなことは絶対にないのか、総理の明言を得たいのであります。  また、十四回もの勧告を受けていることは、国際的に見てきわめて不名誉なことであります。これ以上の批准引き延ばしということは、国際信義上許されないと思いますが、この点についても総理所信を承ります。  さらに、労働者の慣行上の権利は当然尊重さるべきものと了解してよろしいか。以上三点についてお答えをいただきます。  質問の第五点は、公明選挙についてであります。総理は、選挙公明化につきまして、候補者の自粛を望むとおっしゃられました。しかし、選挙をよごしているものはもちろん候補者でありましょうけれども候補者をそうさせている他の二つの原因というものをわれわれは忘れることはできません。一つは、政党選挙資金経理であります。二つは、政府並びに政党選違挙反に対する不感症であります。  まず最初の選挙資金の問題でありますが、選挙法をどのように改正いたしましても、政治資金の規制をもっと厳格にいたしませんでは、選挙法は全くのざる法でございます。たとえば、三十四年下半期自民党献金は十七億八千万円、三十五年下半期は十八億九千万円、これは選挙のあった年であります。選挙のなかった三十五年上半期は四億五千万円。そうすると、三十五年の下半期との差の十四億四千万円は選挙のために使われた金とみなされるわけであります。しかし、十四億四千万円は選挙費用としては届け出られておりません。届け出がなかったならば、その内容がどんなに選挙に使われても違反ではない、これで政治資金の規正ができますか。前回の総選挙のときの旧十日会の選挙費用は一億五千万円、支出の内訳は、組織活動費川島正次郎二千六十万円、田中龍夫千五十万円、福田赳夫千三十万円、宣伝広報費田中龍夫五百五十万円、川島正次郎四百五万円、福田赳夫二百九十五万円、遊説費福田赳夫四百十万円、川島正次郎三百六十万円、調査費田中龍夫三百八十万円、福田赳夫三百四十五万円等であります。すなわち、川島氏は合計二千八百五十五万円、福田氏は二千三百万円、田中氏は二千七百七十五万円、こうなります。ところが、川島氏以下の選挙収入には、この金額は入っておりません。その後の支出報告にも全然ありません。すなわち、派閥の親分は幹部にどんぶり勘定で金を渡し、その金はどう使われてもかまわない、これで政治資金の規正ができますか。  次に、派閥選挙費用の使われ方、すなわちどう使われているかにも問題があります。前の総選挙の宏池会を見ると、政治活動費二億一千五百万円、選挙費用は九千万円。内訳は、援助費、百万円ずつ岸本義廣外三十四名、組織活動費、六百万円黒金泰美、百万円ずつ川上晋外十七名、仮支出、百万円ずつ小金義照外十八名、これらは全部選挙費用として届け出られているものであります。選挙費用でありますから、個人の選挙費用報告収入に入っていなければ違反であります。しかし、全部入っておりません。この点は、刑事局長も「そのとおりなら違反である」と委員会答弁されております。しかし、現状は、黒金さんは黙って六百万円を受け取り、その金がどう使われたかの報告がなくても、違反には問わない。これで選挙の取り締まりをしたということがいえますか。法律上は厳然たる違反を全然取り締まらなかった政府責任を、この際明らかにしていただきます。また、来たる総選挙にも同様のことをするのかどうか、あわせて伺います。  さらに、総理に伺いますが、新聞で伝、えられているように、名目派閥の解消だけではなくて、このようなわけのわからない支出の根源であります派閥資金集めをやめる法的措置をおとりにならなければ、公明選挙は実現をいたしません。これについてのお考えがあるかどうかを伺います。  資金受け入れ方にも問題があります。前回の総選挙における献金は、自民党に対しまして、電気事業連合会、都市銀行有志日本証券連合会石油連盟日本精糖工業会私鉄経営者協会日本造船工業会全国乗用自動車協会製鉄会社等が、五千万、一億という大口献金者であります。この献金者は、いずれも政府に、補助金財政投融資免税輸入許可等関係者であります。政府政策と特に利害関係の深いものから献金を受けることの弊害は申すまでもないことでございます。これらから献金を受けないという新たなる御覚悟がおありかどうか、あわせて伺います。  公明選挙についての質問の第二点は、選挙公明化のためには、政府及び政党の領袖みずからがその政治姿勢を正すべきではないかという点であります。そこで私は、あらためて次のようなことが政府並びに与党として許されるかどうかを伺います。  東京都知事選はがき横流し事件の主犯である肥後らは、川島国務大臣と特殊の関係にある。しかも、千葉県知事選のにせ検印機等違反事件に関しては、川島氏の秘書根本米太郎氏が資金を出している。さらに、肥後らへの選挙謝礼金二百万円は、総理官邸内の川島長官室川島長官同席で渡されている。にせ証紙の印刷ブローカー三沢美照は篠田前国務大臣の元秘書である。にせ証紙の貼付並びに発覚後の証拠隠滅の作業は、広瀬ビルの元国家公安委員長選挙を管理する自治大臣事務所で行なわれている。東京千葉等知事選で、演説妨害反対泡沫候補への資金提供選挙用はがき買い取り等は、東京プリンス・ホテルの川島事務所根本秘書官が行なっている。
  4. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 加瀬君、時間が超過いたしております。
  5. 加瀬完

    加瀬完君(続) こういうことは天下周知の事実であります。そこで、御手洗辰雄氏は、「謀略と不浄な金による選挙」と、この選挙をきめつけました。こういう選挙を行ないました自民党人たちに対しまして、自民党総裁である総理はどうお考えになるか。さらに、この人たちは、法務大臣に伺いますが、参考人としてお取り調べになったのか、被疑者としてお取り調べになったのかも伺います。
  6. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 約束の時間が過ぎております。
  7. 加瀬完

    加瀬完君(続) しかもなお、国家公安委員会並びに法務大臣は、こういう点を、国会を通じて、違反事実を国民中間報告をする義務があると思いますが、この国会を通じて御報告を願いたいのであります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答えいたします。  国会審議の場でございます。ただいませっかく熱心に審議が行なわれております。しこうして、御質問解散の件につきましては、常に言っておりますように、憲法の規定に従いまして、内閣の助言と承認によって行なうことで、これはいつでも内閣責任でやり得るのでございます。これは、過去の歴史を見ておわかりになると思います。ただいまはせっかく熱心に審議が行なわれておるということを申し上げます。  次に、所得倍増と低賃金者への影響、私は、所得倍増ということは、低所得者のために、これを急速にその所得増加を来たそうというのが目的でございます。したがいまして、あなたの数字はどうかと思いますが、きのうの木村君の質問に対しまして企画庁長官が答えておりますあれをごらん下さったらわかると思いますが、重ねて申し上げましょう。とにかく国民実質所得は、物価が上がったのを差し引いても、三十四年以後三カ年間に三四%上がっております。私はこの事実が証明すると思います。そうして食費は、何とか言っておられますが、エンゲル係数は三十四年は四〇以上だったのでありますが、いま四〇以下になっておるという、この事実がはっきり証明しております。また、こまかに申し上げますればいろいろありますが、これは他の機会速記録をごらん下さればわかると思います。また、所得倍増の結果から申しまして、いわゆる生活保護基準も、三十四年には東京都で基準の四人家族で八千六百円だったのであります。三年後の今日、一万四千二百円、とにかく物価は二割ぐらいしか上がっておりませんが、生活保護基準は六割以上上がっておるのであります。所得倍増のおかげでございます。なお、この生活保護基準ばかりでなしに国民健康保険におきましても、低所得者の保険料を軽減しておりますし、また、福祉年金の引き上げとか、失業対策の拡充とか、あらゆるボーダーラインに対しまするあたたかい手を伸ばし、また、育英資金におきましても非常な拡大をしておることは、予算書をごらん下さればよくおわかりと思います。  なお、農業に対してのお考え農業では生活ができぬ、よくおわかりいただいたと思います。三年前に私はそう言ったのであります。それで、農業基本法を制定して、今までやって参りましたが、今度からは画期的に、農業のいわゆる近代化を、革新的な近代化をやろうというのでございます。したがいまして、今までにおきましても農業所得はかなり上がっております。都市勤労世帯に対しまして今まで低かったのがだんだん近寄りつつあります。ことに、いま日雇い労務者のことが出ておりましたが、非農業に対しての日雇い労務者は、三年間で三割近くしか上がっておりませんが、農業に従事しております臨時日雇いの人は、三十四年に比べて六割以上上がっているじゃございませんか。いかに農業がよくなったかということがおわかりいただけましょう。私は今後ますますこれをよくしていくつもりでございます。  なお、国有林の開放に対しましては、その土地の事情によりまして積極的に国有林を開放していくということは、池田内閣の基本方針でございます。  またILO条約批准につきましても、国内法の整備とともに、できるだけ早くこれを批准したいと考えておるのであります。  なお、公明選挙につきまして、政治資金等いろいろの御質問がございましたが、私は先般来国民協会を設けまして政治資金公明化をはかり、これに努力いたしております。そうして選挙はできるだけ公正に、明るい選挙をいたしたいと、努力を続けておるのであります。  なお、減税につきまして、企業減税とか所得税とか言っておられますが、これは大蔵大臣がお答えすると思いますが、臨時租税措置法なんかで産業発達のために租税をある程度軽減することは、租税の原則でございます。そうして大企業も、中小企業も、あるいは農業も、国全体として有機的関係があるのであります。大企業が伸びて国力がだんだん進んでいけば、大企業の従業者のみならず、農民、中小企業もともどもに発展していくのが、国の経済の有機的運営であることをお考えになれば、おわかりになると思います。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  9. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 加瀬さんの御質問に対してお答え申し上げます。  在来は企業減税を中心にやっているのであって、所得税に対しては非常に薄いという御質問でございましたが、財政演説で申し述べましたとおり、過去に一兆一千五百億にのぼる減税をいたしましたが、その九〇%に近いものが所得税減税であるという事実をもってみましても、この内閣所得税中心の減税をやってきたということは事実であります。  それから第二点は、企業、輸出振興、貯蓄等の独占企業を中心とした租税特別措置法について、改廃の意思があるかということでございますが、今、総理が述べられましたとおり、租税負担の公平の原則もありますし、いろいろな意味から考えまして、これらの特別措置がなくても、日本の産業、日本の経済がりっぱにやっていけるような日本をつくることが目標であります。しかし、ここで申し上げておきたいことは、日本貿易依存の国であります。これは私が言うまでもなく、明治初年から、日本の生糸やお茶のみを輸出をして、われわれ九千六、七百万の民族がここまで生きてきたのではないのであります。御承知のとおり、戦後の管理通貨の日本の貨幣、いわゆる外国に対する裏づけは何によってやっているかといいますと、国際収支の問題であります。いわゆる日本貿易が伸びて、外貨の裏づけがあるかないかによって、日本の経済はきまるのであります。お互いが今、公共投資をやろうとか、また文教の拡充をやろうとか、お互いの実質賃金を伸ばそうとか言っても、一にかかって国際収支にあることはおわかりのとおりであります。国際収支を前提としないでわれわれの生活をレベルアップしようなどということは、これは夢であって、実現性はないのであります。そういう意味におきまして、日本貿易を伸ばすために、御承知の、来年の春を目標にしまして、IMF八条国に移行し、ガットにおける関税一括引き下げに前向きの態勢で臨むという、しかもOECDに加盟して資本の自由化をはかろうということは、こういうふうないわゆる貿易・為替の自由化体制を進めなければ、日本の輸出は伸びないのであります。自分が貿易・為替の不自由化をやっておって、しかも外国に日本の物を買えと言っても、言い得てできないのであります。でありますから、開放経済体制に向かいまして、産業の基盤拡充のため、また、資本蓄積のため、種々の特例を行なうことで、所得税減税と同じ目的を達成しなければならないのであります。皆さんは、ただ所得税だけを減税すれば一般国民生活が楽になると言っておりますが、しかし開放経済に向かいまして、日本の産業が——日本の基幹産業が現在の石炭企業や海運企業のようにみんななってしまった場合に、一体、生活の源泉は守れるでしょうか。この事実を無視して日本の経済対策は成り立たないのであります。そういう意味におきまして、開放体制下において、この特別措置につきましては、これを改廃するというよりも、一部強化をせざるを得ない状態にあることは、御承知のとおりであります。しかも、そうすることによって、お互いの開放体制に対処するりっぱな国際競争力ができて、やがてわれわれの将来は約束をせられ、実質賃金が上がり、生活がレベルアップせられるのだという事実を、お考えいただきたいと思います。その意味におきまして、所得税減税を進めますとともに、これら特別措置におきましても適切な減税を行なって参りたい、かように考えます。   〔国務大臣早川崇君登壇拍手
  10. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 第一の御質問は、府県民税の不合理の問題でございます。昨年度の税制改正におきまして、府県民税は二%及び四%の二段階税率といたしたのでありまして、これが低所得者に対して不公平ではないか、こういう御意見であります。しかし、昨年度におけるこの改正は、国と都道府県の間における税源配分の一環として行なわれておるのでありまして、所得税と道府県民税の総合負担では、改正前に比べまして、低所得者層ほど負担が軽減されておるのであります。また、道府県民税におきましては、国税と違いまして、特に道府県の住民税につきましては、その税率はむしろ、われわれといたしましては、比例税率によることが望ましいと考えておりまして、改正前のような累進税率を採用することは、自治のたてまえ上われわれとしては採用する考えがございません。  第二番目の御質問は、住民税ただし書き方式の廃止を実際行なうのか。これは、昨日もお答え申しましたように、市町村民税につきましては、多年の懸案でございまするので、ただし書き方式を、二カ年の間にこれを本文方式に統一いたしたいと思います。そういたしまして、三百億円近い画期的な住民税の軽減を実現するわけであります。なお、それに伴いまして、全国の市町村の八割がただし書き方式をとっておりまするので、これによって生ずる財政の穴埋めにつきましては、一〇〇%これが完全に補てんする措置を講じたいと、かように思っておりまするので、御了承願いたいと思います。  なお、この住民税減税の穴埋めを固定資産税の増収によって充当するのではないか。——そういう考えは全然ございません。昨日もお答え申し上げましたように、固定資産の再評価ということと、どれだけ固定資産税全体を取るかということは、私といたしましては別個に考えておりまして、農地の固定資産はもちろんのこと、その他の償却資産、また山林の固定資産、住宅あるいはまた宅地というようなものの若干のアンバランスは、是正をすることになろうかと思いまするが、全体といたしまして、固定資産税の総額は上げないのでありますから、その点は、はっきりこの機会に申し上げておきたいと思います。  最後に、にせ証紙事件でございますが、これは、すでに司直の手のほうに移っておりますので、われわれとしては、そのほうに御一任する考えでございまして、公明選挙につきましては、われわれといたしましては、最善の努力をして選挙公明化をはかりたい、かように考えております。(拍手)   〔国務大臣赤城宗徳君登壇拍手
  11. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私の関係についてお答えいたします。  第一番目に、農業基本法を抜本的に改正しないか、こういう御質問でございます。社会党農民憲章も拝見しましたが、聞くべき点もございますが、根本的に社会主義農業というような考え方のもとに共同化を非常に進めておるようでございます。しかし、農業基本法の根本的な考え方は、自立自家経営農業を助長していこう、こういう根本の立場に立っておりまして、国の農業に関する政策の長期的目標を定めて、新しい農政の方向を示したものでありまして、政府といたしましても、この目標達成のために、農業生産の選択的拡大とか、あるいは生産性の向上農業生産の増大、あるいは農業構造の改善、あるいは農産物価格の安定と流通の合理化、農業所得の確保、農業従事者の福祉向上等々、この基本法に従って施策を進めておるわけでございます。この施策は、私は当を得ておると思いまするし、これらの総合的推進をはかってまいる所存でありますので、農業基本法を改正する考えは持っておりません。  貿易自由化農産物とをどうするかということでございます。申すまでもなく、日本農産物生産コストは、世界的に高いのであります。でありますので、これを一挙に、あるいは急激に、ことに穀物あるいは酪農品等を自由化するということは、これは非常に困難であります。その他の農産物等につきましては、関税率の調整とか財政負担等、必要な措置を講じつつ自由化するものもありまするし、あるいは、自由化をして、同時にそういう措置をとりながら体質を改善していく、こういう考え方もあります。いずれにいたしましても、貿易自由化は世界経済の大勢でもありまするし、日本としても、その線に沿うて行くべきものでございますけれどもわが国農林水産業としては、この国際経済情勢の動向に即応できるように、農林水産業の近代化を促進することが必要であります。なお、自由化につきましては、生産、流通、加工の各段階にわたって各般の施策を積極的に講じて、国内の関係競争力を増強していく、これと見合って適当に自由化していくという考えでございます。  第三に、農業従事者が減っておるけれども、これに対してどういう考えを持っているかということでございます。一言で言いますならば、農業労働力が減っても、それでやっていけるというように態勢を整えていくことが、根本の問題と思います。しかしながら、現在の段階におきましては、農業労働力は、その地方において季節的には非常に不足しますので、それを補うと、いうような方法につきまして、それぞれの措置をとっているわけでございます。根本的には、少ない労働力によっても、農業の近代化あるいは合理化をはかって農業生産性を高める、農業構造改善の考え方もこの基礎に立っているわけであります。  なお、ついででありますが、次代を背負う農業後継者の養成等につきましても、非常に重大でありますので、農林省といたしまして、農村青少年に対する研修及び講習を充実強化するとともに、経営伝習農場などに一おきまして、近代的生産教育施設を拡充すること、農村青少年の国及び都道府県段階の技術研究、先進国農業留学、研修等、青少年の技術研修活動を助長するための措置をとっております。  国有林の開放の問題でございますが、これは総理からも答弁がございました。国有林野の活用につきましては、今までは主として、開拓事業としての農用地の造成のために開放を行なっておったのであります。しかし、最近におきまする農業の動向に対応しまして、農業生産基盤の整備のため、特に農業構造改善等のため、あるいは草地造成等のために必要な国有林野につきましては、国土保全その他国有林野の使命達成に支障のない限り、積極的にその活用をはかることといたしております。また、林業のための国有林野の活用につきましては、従来から地元農山村の振興をはかるため、部分林の設定等を行なってきたところでございますが、特に最近におきまする林業振興の必要性にかんがみまして、その施策の一環として、農業の場合と同様な考え方に立ちまして、国有林の積極的活用をはかるべく、現在具体的方策について検討し、また進めております。(拍手)   〔国務大臣賀屋興宣君登壇拍手
  12. 賀屋興宣

    国務大臣(賀屋興宣君) お答え申し上げます。  公明選挙につきましては、総理よりお答えがございましたように、法務当局といたしましても、十分に選挙が公明に行なわれまするよう、取り締まりにつきましても、関係当局と力を合わせまして十分にやる所存でございます。ただいま事前運動的なことが行なわれるような状況もございまして、事前といえども、あまり悪質で目にあまるものがあります場合は、取り締まりの手を伸ばすにちゅうちょをいたさないつもりでございまして、すべて公明に公平に、不偏不党に、取り締まりの方針を十分に徹底するつもりである次第でございます。  また、政治資金につきましてお話がございましたが、ただいま各方面にいろいろな説もございまして、選挙制度審議会におきましても、個人の寄付を原則として、会社や労働組合その他の団体からのものは規制するというような意見もございまするし、また、自民党の党内におきましても、いわゆる三木調査会等におきまして、個人後援会につきましては、同一人については、法人個人ともに年間最高三十万円にしますとか、いろいろの説もございます。これらにつきましては考究すべき点も多々ございますので、十分な研究の上適当な結論を得ましてから、必要ならば法的措置も講じてまいる、かように考えている次第でございます。なお、東京千葉等選挙につきまして、いわゆる横流し事件、これらにつきましてのお話がございましたが、この事件につきましては、法務当局としましては、中垣前法務大臣国会において申し上げたことと存じますが、きわめて厳正に公平にこれが措置を終わりまして、ただいま公判が係属中でございます七公判係属中でございますから、何びとが参考人もしくは被疑者として調べられた、そのほかそれらの事件の内容につきまして申し上げますことは、刑事訴訟法の精神にも反すると思いますので、ただいまは一切申し上げないととにいたします。(拍手)   —————————————
  13. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 和泉覚君。   〔和泉覚君登壇拍手
  14. 和泉覚

    ○和泉覚君 私は、公明会を代表いたしまして、先般行なわれた所信表明につき、総理並びに関係大臣に若干の質問をいたします。  質問の第一点は、本臨時国会召集の意義についてであります。巷間すでに本二十三日をもって解散を断行すると伝えられております。池田総理はその所信表明の中で、「補正予算をこれに関連する諸法案をすみやかに審議を尽くされ、正々堂々と事を決して、国民の信頼と期待にこたえられることを切望する」と述べております。われわれもまた、今国会の意義が補正予算案その他懸案事項の審議にあると理解しております。ところが、総理は、さる日の答弁において、審議は尽くしてとは言ったが、通してくれとは言わなかったと言い、解散は憲法第七条によって適当な時期を考えて行なうと、きわめて高い調子で言明されたのであります。このことは一体何を意味するものでありましょうか。今日までの段階でも、総理の言われる審議を尽くしてということになるのでしょうか。ただいまも審議をしているではないかというようなことばもありましたが、しからば打ち切るということはないのかどうか。国政審議という本来の使命に立ち戻った上で、総理の明快なる答弁を望むものであります。この点については、きのうも、また、ただいまも質問がありましたが、何ゆえか総理答弁を避けているように見受けられるのであります。したがって、重ねて質問するものであります。  次に、衆議院の解散問題についてでありますが、現在の国民の世論は、衆議院解散の大義名分に多くの疑念を持っております。党利党略に基づく国政の混乱を心から憂えているのであります。その一端をあげれば、池田内閣に対する最大の関心事は所得倍増政策の失敗であり、物価値上がりに伴う生活の困難であります。ゆえに政府は、少なくとも、明年度予算をはじめ、経済政策の大綱を発表して、しかる後に民意を問わんとして解散するのが、国民大衆に納得できる民主政治としての常道であります。それを現時点において解散すれば、全国民の目は、明年度予算の性格、方向から完全にそらされるばかりでなく、予算編成が党利党略に動かされる非常識な公約によって大きくゆがめられ、結果は国民大衆の福祉とかけ離れたものになるのではないかということであります。すなわち、口で民主主義を唱えても、見せかけの民主主義におちいることを心から憂えるものであります。さらに、最近の世論調査では、池田内閣所得倍増政策の失敗をあげ、生活が苦しくなった、このため池田内閣の支持票が低下したことを示しております。その反面、それが直ちに社会党支持に回ることでないことも明らかにしておるのであります。政党政治のもとにあって、国民大衆が真に支持する政党に迷うことは全くの不幸であります。このような情勢のもとに、あえて解散の強行に対し、国民は、党利党略のための大義名分のない解散ではないかと非常に慨嘆しておる次第であります。したがって、今日の時点においては、少なくとも、提出案件、懸案事項の審議に全力を注ぎ、もって国民大衆の期待にこたえることが焦眉の急でありますが、総理としてどのように考えておられるのか承りたいのであります。  次に経済問題でありますが、総理は、「過去三年間の高度成長により所得倍増は一両年早く達成が可能となったので、この計画上のゆとりを利用して、従来工業に振り向けてきたところの施策重点を、立ちおくれておるところの農業、中小企業に移して、近代化の強力な措置を講じて、産業間に調和のとれた健全な経済発展をはかる」と述べられました。確かにこの三年間、農家は他との収入格差増大に悩み抜き、中小企業は金融引き締めで苦しみ通してきております。総理のこの発言は、はからずもこれを認め、今までの施策が明らかに大資本優先の成長政策であって、国民の過半数を占めるところの農業、漁業、中小企業を、政策上、三年間、二の次とした考え方で来たことを、告白したものであると解せざるを得ないのでありますが、この点をいかが考えておられますか。この大衆犠牲を具体的に今後どう救済していく所存でありますか。農業に対しては、基本法の定める方向に向かって財政と金融の力を結集してこれに当たると言い、中小企業にも、財政資金の確保等、抜本的措置を講ずると言っているが、現在、全国銀行の中小企業向けの貸し出し残額は二一%程度であり、政府機関の貸し出し額は、実に中小企業金融総額の一〇%にすぎないのであります。農業、中小企業の大事な柱は金融であります。今後、施策重点農業等に移すというならば、一体この金融措置についてどの程度まで引き上げていかれるのか、政府の構想を数字をあげて具体的に国民に明示されたいのであります。また、農業の大敵の一つは天災であります。今年春の長雨被害、西日本の豪雨禍等、大打撃でありましたが、その復旧といい、被害克服といい、ほとんど農家自身に背負わされ、見るべき政策上の救済は行き届かなかったのであります。これにかんがみ、天災融資法をはじめ、関係法令の抜本的充実整備をお考えになっているのかどうか、お伺いするものであります。  次に、物価対策でありますが、総理は、所得倍増の成功を自画自賛しておられる反面で、「消費物価がひとり上昇基調を示していることはゆるがせにできません」と言っておられます。そして、この消費物価上昇の内容は、サービス料金の値上げにあることをはっきりと認められておるようであります。政府がいままでとってきた計画を遂行すれば、サービス料金の値上がりがあらゆる物価影響して消費物価が上がることは、経済の専門家である総理には初めからわかっておられたはずであります。しかるに、過去三年間、この点に口をつぐんでこられたのは、一体どうしたわけでありましょうか。労働省の家計調査では、生活が楽になったという者はわずか七%と報じられております。したがって、物価対策は、大切な国民の家計を中心にした消費物価対策について、承知で無視してきたと言わざるを得ないのであります。国民生産三七%、物価上昇率二三%の差し引き計算の説明は、明らかに筋違いであります。なぜならば、国民所得は平均の問題であり、消費物価国民の大半である低所得の人々の生活費を強く圧迫するものであるからであります。消費物価の値上がりがサービス料金から来ることを認められた以上は、ではこれをどのように合理化するか、また、どのように埋め合わせて矛盾を解決していく方針なのか、そして、国民の家計を安定させるためにどんな方針をお持ちであるか、この点をはっきり示していただきたいのであります。また、これについて、「ここ一両年の間に必ず物価問題を解決すべく最善の努力を傾ける」と言っておられますが、一体、一両年と言われる根拠は何であられるか。一両年はいままでどおり生活費の増加に耐えていけということでありましょうか。具体的には、公共料金、食料品、サービス料金、家賃、教育費等、これら上がりやすいものをどう取り扱っていく御方針でしょうか、具体的にお答えをお願いいたしたいのであります。  次に、減税について総理並びに大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、総理も大蔵大臣も、税金は軽減合理化されておるといっております。その実、国民所得に対するところの税負担率をみると、ここ数年来、横ばいの状態であることは御承知のとおりでありましょう。すなわち、昭和三十五年度は二一・九%であり、三十六年度は二〇・七%であり、三十七年度は二二・二%、三十八年度は二一・五%でありまして、しかも、個人に厚く、法人に薄い現行税制では、また、消費生活物価高の現況のもとでは、決して減税を誇示するところの内容ではないのであります。その上、自然増収という美名に隠れた取り過ぎがあるのであります。経済の成長率は高かったが、それによって物価上昇を引き起こしたり、所得分配の不平等を強めたりしているのが実情であります。国民にとっては、この点こそが不安なのであり、政府経済政策の欠陥もここに集中的に現われている以上、勤労大衆の所得税を思い切り下げ、地方税に対しても十分配慮を加え、個人の税負担を真に軽減することが急務であるとはお考えになりませんでしょうか。本年度の自然増収見込みは六千億ということであります。明らかにこれは取り過ぎであり、実質的の増税ではありませんか。これに対して平年度二千億の減税といえば、さも善政のごとく聞こえるのでありますが、六千億に対して二千億で、はたして善政といえるでありましょうか。これがまた合理化といえるでありましょうか。これではまるで見せかけの減税にすぎないといわれてもしかたがないと思います。二千億減税したならば、来年度の税負担率は一体何%と大臣は見通しておいでになりますか。これが二一%ならば、それは今までどおりであって、少しも減税の名に値しないものであると思うものであります。この点をはっきりとお示し願いたいと思います。税制調査会報告では、明白に大企業のほうが中小企業より税負担率は軽いといっております。このように、問題は税体系そのものにあります。たとえば青色申告を使った場合、後日、税務署から更正決定がくる。その場合、専従者の給与の控除は、法人の場合は訂正増加して引いてくれるが、個人の場合は申告の際の予定額そのまましか引いてくれません。それよりも多い実際額は認めないのであります。そうして更正税額は、はね上がるのが結論でありますから、法人にはゆるく、個人にはきつくなるのであります。そして、大企業ほど助かるのであります、それはほんの一例にすぎませんが、このように、税体系そのものに問題の骨があります。税制自体を抜本的に改正しなければ真の国民に対する減税は成り立たないのであります。この点、政府はどのようにお考えになっておられるのでありましょうか、お尋ねしたいと思います。  最後に、選挙の問題でございますが、選挙といえば違反と答えるといわれております。これが今までの実情であります。すでに、各地とも、違反文書、ポスター等が目にあまっております。各種の団体の宴会つき会合が、はでに行なわれております。金が乱れ飛んでおります。いろいろのうわさが、ちまたにあふれております。この際、私は、今まで政府がキャッチしているそうした事前の違反行為の大要を、ここに報告せられんことを求めるものであります。それとともに、違反取り締まりに対するところの政府の見解と態度とを、解散寸前のただいま国民に明示されんことを望んで、私の質問を終わる次第であります。以上。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  15. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。  解散の問題につきましては、先ほど来申し上げておるとおり、第一の野党である社会党も今国会解散に追い込むと言っておる。世論も大体そういうふうなようでございます。私は、このいま問題になっております私どもの掲げる所得倍増あるいは外交政策等々、先般の所信表明で、国民の批判に訴えると私は申しておるのであります。私は、この機会、いわゆる清新な気持ちをもって今後の政治に当たる、そうして各党の政策を中心に、近い機会解散していくことが適当である、こう考えておるのであります。それで、大義名分があるとかないとかいうお話でありますが、いまくらい大義名分のあることは、いままでの解散に比べて非常に大義名分がある。私は、特に所信国民の批判に訴える、これは大義名分があると私は考えるのであります。  次に、農業や中小企業を第二次的の問題と考えたということは、これは誤りであります。私は、所得倍増のときも、十年間のうちに農業の人は半分になりますという警告を与えました。中小企業もやらなければならぬというので、農業基本法や中小企業基本法をやっておる。これは国民全体が、国民の持っておる創造力、活力を、どんどん自由に生かしていこうという場合におきまして、走り方の速い人、走り方のおそい人があることは、当然であります。そこで、所得倍増をやりますと、走り方の速い人はどんどん行く。こういうことで、農業、中小企業は考えなければいかぬということは前から思っておるのであります。しこうして、今までの状況を見まして、そうしておくれたほうの部門——総体的に見ましておくれてはおりません。総体的に農業のほうも勤労者世帯に近寄っております。農業のほうも相当よくなっている。中小企業のほうも相当よくなっております。しかも、それをもっとよくして差を少なくしようというのが、所得倍増関係であります。農業の近代化をどうするかということにつきましては、もうこれは、いままで言っておりますとおり、土地改良とか経営規模の拡大であるとか、あるいは設備の充実、近代化等々、政府としてほんとうに融資その他指導で、せなければならないことはたくさんございます。それを画期的な方法でやっていこう、そうして農民の方々も、従来のやり方にとらわれず新しい農業を打ち立てていく。先ほど来ありましたが、農業では立っていかぬ、これは当然のことでありますから、立っていくような農業にしなければいかぬということが、私は近代化を革新的にやるということであるのであります。本年度の予算に出てくると思います。いままでにもやってまいりましたが、それ以上にやっていきたいと考えております。  なお、消費物価引き上げは、サービス料の値上げだけではございません。もちろん、私立学校の先生の給与が上がっております。授業料が五割ないし七、八割上がっております。そうしてまた映画の観覧料も上がっております。床屋さんも上がりました。洗たく屋さんも上がりました。床屋さんの近代化をどうするか、なかなかむずかしゅうございます。しかし、洗たく屋さんにつきましては、赤羽あるいは北九州でやっておりますように、合同してやれば相当値下がりができる。しかし、既存の業者の立場もございますので、その点の勘案も十分やらなければならない。また、山形のある市におきましては、一括してやって、いままでの洗たく業者は取り次ぎだけ、これでも相当よくなる。こういうことにつきまして、もっと政府国民も知恵をしぼっていくべきだと思います。消費物価の上昇は、サービス料金だけではございません。農業あるいは中小企業の近代化のおくれておるのも、相当の原因です。嗜好の変化も、原因でございます。所得増加によりますいわゆる需要の増加も、原因であります。いろんな点がございますので、政府としては、あらゆる方法をとっていきたい、しかもまた、池田は一両年のうちに下がると、安定する——、私は消費物価はそう下がらないと思います。ただ問題は、上がり方を適度にしていくということでございます。日本の経済が近代化するために、もしそれ物価が下がったならば一お答え申し上げますが、もしそれ物価が下がったらどうなりましょうか。物価が下がって、消費物価がどんどん下がっていったらどうなるでしょう、日本の経済は。私はそれだから、下がるのが心配だから、上がり方を合理化して、少なくする。この前も申し上げたと思いますが、大体日本の歩んできた道を見ましても、また、アメリカその他の先進国を見ましても、GNP、いわゆる国民生産の……名目で上がる、実質でございません、名目で上がる国民生産の、大体三%ぐらいの消費物価の上がり方ならば、世界の学者、日本の学者でも、それは当然の上がり方と言っております。しかし、日本状態は、昭和三十四年、三十五年、三十六年と、一五%の実質、名目で二〇%の上昇をいたしました。二〇%の上昇を三年問続けて参りましたから、その結果が五、六%に出ておるのであります。私が一両年で下がるというのは、大体今年の状況は、名目の国民生産が一二、三%いくんではないかと思います。初めは八、九%の予定でございましたが、上期の終わりごろから下期にかけて、鉱工業生産が相当伸びてまいりました。非常に伸びてまいりました。そうすると、私は予定よりも一二、三%のGNPの増加じゃないかと思います。また米もよろしゅうございます、いろいろな点がありますので、そうなってまいりますると、いわゆる今までの一般の学説から申しますると、GNPの増加の三%ということになりますと、今までのように三年間二〇%以上の名目増加、実質一四、五%というもののあとを受けて、ぐんと上がってまいりましたが、今後は、いわゆる経済の成長が、あんな急激なものでなくなってまいりますから、消費物価の上がり方が少なくなる、ということを言っておるのであります。いろいろ不敏ではございますが、各国の例、日本の状況等を考えまして、私は自信を持って、一両年のうちに物価の上がり方がモデレートになるということを、ここで、はっきり申し上げておきたいと思うのであります。  なお、物価の上がり方につきましての押え方は、いわめる貿易自由化とか、緊急輸入とか、あるいは野菜その他の生鮮食料品の生産増加等と流通機構の改善等、幾多の方法がございます。私はそういう方法をかね合わせて、あらゆる努力をいたすことを、ここで申し上げます。  なお、減税の問題につきましては大蔵大臣から答えると思いますが、この六千億の自然増収というものは、昭和三十九年度でございます。三十八年度は予算で出しておりますように、今までが千二百億円ばかりの増収がございました。今後もある程度生産の伸びによってあるかもわかりませんが、六千億とか六千五百億は、三十九年度でございます。その分をどう減税に持っていくか、社会保障にどう持っていくか、あるいは公共事業にどう持っていくか、ことに住宅にどう持っていくか、社会保障にどう持っていくかということでありますから、減税も大事、社会保障も大事、文教、人つくりも大事、いろいろな点をかね合わせまして、私は国民の世論に沿って、りっぱな三十九年度の予算をつくる考えでおることをお答え申し上げまして、終わります。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  16. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 和泉さんにお答えいたします。  まず第一番目は、中小企業及び農業の金融の問題でありますが、中小企業及び農業金融に対して格段の改善拡充をはかってまいりたいと考えます。特に、中小企業の三十八年度の政府関係機関の融資ワクにつきまして申し上げますと、千三百三億円でありましたものが、財政資金を四百億追加いたしまして、千七百三億円という、年末金融をも合わせて、画期的な原資を確保いたしておるわけであります。  それから、税の問題を第二にお答えいたしますが、御承知のとおり、また、お説のとおり、昭和二十五年以来、国民所得に対する税負担率は、国税、地方税合わせて、おおむね二〇%前後ということを続けておるわけでございます。減税をするといっても、二〇%程度という国民生産に対する比率が変わらないからというお話でございますが、しかし、実質では国民所得は二・六倍、名目で四・二倍にもなっておるのでありますので、実質的に賃金は非常にふえておる。所得はふえておって、その二〇%という限度で税が納められておるのでありますので、実際問題からいいますと、税負担の力は非常に大きく伸びておるということになるわけであります。しかも、先ほど申し上げましたとおり、二十五年以来一兆一千五百億円にのぼる減税をやっておりまして、その大半は所得税減税を行なっておるということでありますので、できるだけこの二〇%という限度をこさないという線は確保してまいらなければならないというふうに考えております。なお、政府におきましては、来年度においてさらに二千億に近い減税を今考えておるわけでありまして、国民の税負担の軽減を実質的にはかってまいりたいと、このように考えております。  それから、自然増収の問題に対しては、いま総理からもお答えになりましたが、租税収入のいわゆる自然増収は、経済が成長しまして、国民所得消費増加をした結果として生ずるものでありますので、一がいに税金の取り過ぎであるということは適当ではないと考えるわけであります。しかしながら、経済の成長が続く場合におきましては、税をそのままにしておきますと、租税収入の弾力性が働きまして、国民所得に対する租税負担率の上昇がもたらされるわけでありますので、こういう傾向に対しては、適時適切なる減税を行なっていくという従来の方針をとっているわけであります。  それから、自然増収、まあ来年度六千億を予想せられるのではないかという問題でありますが、今申し上げたとおり、約六千億と見込まれるものに対して、二千億に近い減税考えておりますし、なお、財政需要の緊急性、総理が今申されたとおり、歳出に使ったほうがより国民のためになるか、減税を行なったほうがより国民のためになるかという、バランスをとりながら重点的に処理してまいりたい、このように考えているわけであります。(拍手
  17. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 内閣総理大臣から、答弁の補足があります。池田内閣総理大臣。   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 選挙違反についての御質問の答えが抜けておりましたので、お答え申し上げます。  選挙違反につきましては、先般来、内閣におきましても、事前運動の取り締まりに万全を期するよう指令いたしました。選挙の適正でないと思われるいわゆる事前運動につきましては、相当の警告をいたしておるのであります。なお、また、選挙になりましたならば、公明選挙運動等、あらゆる方法を尽くしまして違反の防止につとめ、また、違反のあった場合には、厳正公平に峻烈に私は取り締まっていきたいと考えております。(拍手)   —————————————
  19. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 加賀山之雄君。   〔加賀山之雄君登壇拍手
  20. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 私は、政府に対し、外交、国防、教育等に関する問題の二、三について、この際、政府の見解をただしておきたいと思います。  言うまでもなく、本院におきましては解散もなく、あくまでも冷静に国本となる諸問題と取り組み、国家国民の将来に誤りなからしむる重大な責任を持つものであります。総理大臣並びに外務大臣が相次いで外遊され、自由世界の三本の柱という、わが国の新しい地歩について、実感を深めて帰られまして、これを過日の所信表明の冒頭に述べられました。わが国が自由国家群の一員として、いな、総理所信によれば、すでに今日は一本の柱ということで、特にアメリカ合衆国との提携を密にしつつ、その責任を果たしていくという外交の基調は、政府しばしばの言明にもあるとおり、不変のものであると考えるものでありますが、総理はこれをあらためて強く意識されると同時に、あわせて国民の自信と自覚を促されたものと思うのであります。  そこで、私は第一に総理大臣に伺いたいことは、日米両国間の相互協力及び安全保障条約について、今後政府はいかなる考えを持って、いかに処していこうとするかということであります。   〔議長退席、副議長着席〕 同条約第十条第二項によれば、同条約が効力を発生してから十年を経過すれば、すなわち一九七〇年六月二十三日以降は、締約国のいずれもが相手方に対して条約の終了を通告することができ、そうしてその後一年を経過すれば同条約は効力を失うということになっている。国内では、条約修正論もあれば、左翼陣営には廃棄通告運動の形勢さえあらわれております。端的にいって、国民一般は、この条約の重要性や効能について深い関心を欠くのが実情ではなかろうかと思うであります。大卒外相が地方で、国民が国防について関心が薄いということばを漏らされましたが、まさにそのとおり、広く国際情勢や国防について正しい認識を欠いているのが現状と言わねばなりません。総理はこれをいわれなき批判と軽く片づけておられますが、現下の国際情勢下で、軍備を持たぬわが国の安全を保持する上において、ほとんど唯一のよりどころとも考えられる、重大な意義を有するのが本条約であることから考えまして、今日においてすでに数年後に迫った本条約の将来について論ずることは、まだその時期が早過ぎるということになりましょうか。今後の国際情勢待ちということで、うやむやにしておけますか。政府はもちろん十年後の廃棄通告などは考えていないと思いますが、この際、総理大臣の御所信のほどを確かめておきたいと思います。  また、政府は何ゆえにもっとこれを広く正しく啓蒙し、今次予想される総選挙の重大な争点とする等のことを考えないのか、あわせて御答弁願いたいと思います。  次に、原子力潜水艦の寄港問題について。同条約に基づく基地協定第五条で、日本政府として寄港を認める条約上の義務を負っているのではないかと思いますが、いかがでありますか。すでにじんぜん半歳余、慎重に調査中ということでありますが、万一、国土や国民に災害の危険があるものならば、なぜ早くお断わりにならぬのか。もし、しからざる場合は、何ゆえに条約上の義務として相手国に応諾の通告をなさらないのか。アメリカの有力な新聞の特派員が、「アメリカの国民の間には、日本人は汽車賃を払わずに、あるいは子供の半額切符で自由世界を乗り回そうとしているのではないかという印象さえ出ている、」と報道しておりますが、もちろん、こうした言説をわれわれはそれほど意にとめようと思いませんが、冒頭の、三本の柱とか、日本はもっとおのれの実力を知るべきだ、ということばは、裏を返せば、もっと自由陣営のために自信を持ってぴしぴしやってくれ、という要望とも受け取られるのであって、その信頼と期待を総理がみずから体験して来られたものと思うのでありまし七、その信頼や期待にこたえなかった場合、相手方に与える失望や、ひいては軽侮の念は、一段と強いものがあることを覚悟せねばならぬと思います。一体いつになったら国民の納得のいく調査ができますか。これは大平外務大臣からお答えいただきたいと思います。  第二に、北方領土問題に関して、ソ連との平和条約締結の可能性について総理大臣のお考えを伺いたいと思います。キューバ問題から核実験停止条約の成立と、米ソの間には緊張緩和が見られ、世界平和への希望もうっすらと感ぜられるのでありますが、この問を縫って、逆に中ソの間には、ただならぬ雲行きが現われ、このためにわが国を初め、アジアの諸国においては、外交運営上かえって複雑さを増してきたことは事実でありましょう。わが国とソ連との間ではまだ平和条約の締結もなく、領土問題が片づいておりません。故鳩山首相とブルガーニン・ソ連首相との共同宣言においては、「両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する」ということが明記されております。すでに七年の星霜をけみしました。池田首相は、一九六一年十二月八日付、フルシチョフ首相あての書簡で、固有の領土に対する正当な主張を堂々と開陳しておられるのでありますが、その後、経過はいかが相なっておるでありましょうか。漁夫の送還、貝殻島周辺のコンブ採取に関する取りきめ等、ソ連の態度に著しい変化が見られ、国交正常化に一歩を進めてきていると思うのでありますが、この際、領土問題を解決して、日ソ両国間のわだかまりを一掃し、国民全部の悲願を達成する好機とは考えられないでありましょうか。政府はこの際、強固な意思をもってこの問題の解決に当たる意思はないか、御所信を聞きたいと思います。  外交問題の最後に、中ソの対立激化以来、中国大陸からわが国への働きかけも無視することはできません。アメリカがソ連邦に小麦の輸出を承認するようになった今日の情勢下、わが国が中国大陸にビニロン・プラントを民間ベースで輸出することをとやかくいうことはないと思いますが、ただ考えなければならないことは、自由陣営中においても隣国中の隣国、戦争終局時以来、特に相互の友好と信頼を高めて参っておる国民政府との関係であります。大陸反攻云々という、国民政府の心臓に響くような総理の言説が伝わっておりますが、この微妙な外交場裏において、自由世界の指導的立場をもって任ずるからには、その場その場の思いつきでなく、それぞれの国々に与える心理的影響を十二分に考慮されて、わが国の外交を誤りなく処理していっていただきたい。これは私のお願いであります。  次に、内政に関しまして私が第一に取り上げたいことは、青少年対策に関する問題であります。いわゆる所得倍増計画が異常な速度で経済の伸展をもたらした反面、こまかい配慮の欠除や手順の誤りから、国民経済ないし生活の中にひずみや欠陥を生じたことはいなみ得ないことであります。農業や中小企業の立ちおくれ、金融政策のとまどい、消費物価の予想外の急騰を招来したことなどは、これであります。これら経済面における欠陥は、誠意をもって収拾するという政府の言明に一応信頼をおくとしても、ここで看過できないのは、国民の精神生活面におけるひずみであります。現下、極端な利己主義や一時的享楽を追う風潮が国内に横溢して、これがきわめて悪い影響を青年子女に与えておることは、何人もこれを否定できません。しかもこの風潮は、おもむくところ、青少年の犯罪増加となり、それがさらに低年齢化、悪質化へと、急ピッチで進んでおります。数字から見ても、戦前四万人台だった刑法犯少年が、触法少年を含めれば、今日は約二十二万人と称せられ、犯罪率から見ましても一〇・八と、成人の犯罪率をはるかに凌駕したのである。おそるべきことと言わねばなりません。青少年対策については、政府所管の協議会もあれば、岸内閣当時の「青年に夢を」から始まって、施政演説ごとに取り上げられなかったことはありません。こうした、たび重なる所信表明にもかかわらず、今日まで一向にこれといった施策が実現されていないのであります。かろうじてユースホステルとか青年の家等がわずかに増設された程度である。これは一体どういうことでありますか。今回、池田総理大臣が述べられたところも、依然として具体性を欠くうらみがあります。この際、総理のみならず、各閣僚は力を合わせてこの問題と取り組み、政府施策を集中して最善を尽くすべき問題であると思いますが、総理所信はいかがでありますか。この問題の根源はまことに深く、多岐にわたります。日教組や社会党の諸君は、これをきわめてあっさりと、「資本主義文化に内在する腐敗性にある」と片づけておる。しかく簡単なものでありましょうか。あいにく共産圏には適当な資料が公にされていないのですが、ソ連においても犯罪少年もおれば、フリガーンと称するいわゆる与太者がいることは、周知のことである。何も自由主義や資本主義の特産物ではありません。しいて言えば、国が豊かになればなるほど、経済が成長すればするほど、この傾向は助長され、したがってその対策は重大性を増すと言えるでありましょう。したがって、政府は、経済成長に力を注ぐことに比例して、いな、それ以上強力な政策を打ち立てて、この問題に対処せねばならぬと思うのであります。池田首相にこの問題についての御決意について重ねて御所信を承りたいと思います。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  21. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答えいたします。  外交問題につきまして、日米相互協力、ことに安全保障条約の持続に対しての御質問、これは私は昨日も申し上げましたごとく、この安保体制を現状からいって変更する事情一つもございません。この方針で進んでいきたいと思います。  次に北方領土の問題、お話のとおり、コンブの採取、あるいは漁夫の帰還等々、非常に日ソ関係はよくなってまいりました。昨日も申し上げましたごとく、十九日の新聞には、日ソ関係は青信号、非常に前向きになったといっておりますが、私は、お話のフルシチョフ首相に対しまして数度の書簡をいたしました。まだ両者の間に話し合いに進む段階に至っておりません。また、向こうからこっちへ来ております大使に会いましていろいろ探ってみましても、なかなかいまのところではむずかしい。しかし、これをうっかり早くやって、そうして、何と申しますか、かえって将来にじゃますることがあってもいけません。厳然たる態度でこの問題を今後解決していきたいと考えております。  また、中国との関係につきましては、これは誤報でございまして、外人の新聞記者会見、また所信表明にもはっきり述べておるとおりでございます。  また、教育問題につきまして、いろいろ御心配、まことにごもっともでございます。できるだけの努力をいたしております。——できるだけではございません。全力をこれにあげたい、それが私の人つくり政策でございます。何と申しましても、家庭、学校、職域におきまして、あらゆる施設、あらゆる方法を講じなければなりません。政府におきましても、先般来設けておりまする青少年問題協議会の拡充のみならず、私自身が人つくりの協議会をつくって、いろいろのお知恵を借り、また政府施策にもこれをどしどし出していくことを、ここでお答えいたしておきます。(拍手)   〔国務大臣大平正芳君登壇拍手
  22. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) お答えいたします。  日米両国が安保条約を軸といたしましてきわめて緊密な防衛協力の関係にあることは、御案内のとおりでございまして、米国の軍隊の一部をなす原子力潜水艦、それが核兵器を搭載しない限りにおきまして、日本が寄港を認めるのは、お説のとおり、当然と心得ております。政府はそれについて厘毫の逡巡もいたしておらないつもりでございます。ただ問題は、安全性につきまして若干の不安がございますので、アメリカの理解を得まして、いまその解明に努めておるわけでございまして、私ども国民に対して責任が持てるという心証を得られれば、この問題の最終処理をいたすことは当然だと考えております。(拍手)   —————————————
  23. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 永末英一君。   〔永末英一君登壇拍手
  24. 永末英一

    ○永末英一君 私は、池田首相の所信に対し、民主社会党を代表いたしまして、今国会最後の代表質問、また、私の本院における最後の質問をいたしたいと存じます。  池田内閣の一枚看板であります所得倍増政策の三年間に、国民生産貿易総額、国民一人当たりの平均所得は、いずれも増加をいたしました。池田首相は、この結果を見て大いに満足のようでありますが、しかし、もっと重要なことが忘れられているのであります。それは、政治であります。経済の高度成長に当然伴う産業構造の変化、社会の変動に対して、調整を行なうのが、政治の固有の役割りであります。繁栄の中の貧困という現象を来たさないように、最初から対策を持つのが政治の役目です。経済に目を奪われ、政治を忘れた池田首相の施政に、反省することはないか、まずお伺いをいたしたい。  池田式高度成長政策は、格差の是正というラッパを鳴らしておりまするが、中小企業や農業は、先行き不安のまま二の次にされております。特にその欠陥は物価にあらわれているのであります。首相は、消費物価の上昇についてあれやこれやの原因をあげておりますが、それは現象を並べるだけでありまして、事の本質に触れない皮相な見解と言わなければなりません。池田式所得倍増政策は、財政投資、信用創造を中軸とする金融刺激政策を本質といたしております。したがって、貨幣量の増大はきわめて著しいものがあります。酒を大いに飲ませておいて、血圧が上がったのは、どこか身体におかしい点があるからだという説明では、一体だれが納得するでありましょう。首相は、物価上昇原因が自分の政策にあることを、この際、国民の前に認めるべきであると思いますが、どうですか。  この物価上昇庶民生活に与えた影響はまことに残酷であります。わが国人口の一割以上をカバーする月収二万円以下の低所得世帯は、消費物価の値上がりによって生活破壊にさらされております。現に、生活必需品である野菜に対してすら、実質購入量が減少してきているほどであります。貯金引き出し、売り食い、借金、内職、これらの国民に対して、もう一両年待てというのでありますが、そんなに待てるものかどうか、お考えをお聞かせ願いたい。  税金を払える階層におきましても、池田施政はむざんであります。池田内閣の成立時には、給与所得者を中心として一千三百万でありました所得税納税者は、三十九年度には二千万をこえるありさまであります。納税者がふえたことは国民の暮らしが楽になったからだと、よもや首相はお考えになりますまい。課税最低限が国民の標準生計費を下回り、国民に赤字生活をさせてまで収奪しているのが現行税制であります。企業減税だの所得減税だのと言っているときではございません。大幅に諸控除を引き上げ課税人員を圧縮すべきであると考えますが、首相のお考えはいかがでありますか。  所得倍増計画を推進する「てこ」として、政府財政投融資計画を使ってまいりました。財政支出と財政投資との比率を見ましても、わが国は、米英独仏と比べまして二倍から四倍に達しております。いかにわが国の財政が大資本本位に組み立てられているかということが明瞭であります。この際、私は、財政投融資計画は、まず国民生活の基盤を培養強化することを中心に組みかえを行なうべきであると考えます。特に、資金運用部資金や簡保資金は、零細な大衆資金である性格からいたしましても、右の目的に使用を限定すべきであります。さらに、一般会計から産投会計に繰り入れたり、国債は発行しないといいながら、政府機関などに政府保証債の発行を許したり、また、ここに野方図に出資したりするやり方をやめて、予算の責任を明確化し、潜在的インフレ要因を多くる手段を中止すべきであります。首相は、こうした方法をとる御意思があるかどうか、伺いたい。  私は、最近、社会主義インター大会におきまして、各国の民主社会主義政党の指導者たちや、また、アメリカでケネディ司法長官をはじめ、ケネディ政権のブレーンと、意見の交換を行なって参りましたが、これらを通して次のような印象を得ました。中ソの決裂、さらに部分核停条約の成立という、第二次世界大戦後における画期的事件は、世界情勢を大きく変容しようといたしております。ソ連の融和的態度によって、全面的核戦争の脅威は著しく緩和されたと各国は判断をいたしておりまするが、共産中国に対しては、どう対処すべきかについては、まだ固まった状態ではございません。この時期にこそ、アジアに位置する日本は、経済の成長をほめられたからといって、大国日本だなどと、うぬぼれないで、自主独立の外交路線をはっきりさせることが、アジアの、ひいては世界平和のために特に必要であると思います。この観点から、政府の外交のやり方について、自主性喪失の六点について首相の所信をお伺いしたい。  第一、アメリカは中共なしでもやっていけるかもしれません。しかし、わが国は、五千年来中国とは切っても切れない仲であります。アメリカが封じ込め政策を是としても、日本がそのワク内だけに跼蹐していたのでは、一体どうなりますか。対中国態度にもっと自主性を持つ必要があると考えます。たとえば、中共がわれわれの反対にもかかわらず核爆発を行なったとすれば、その時期をとらえ七ジュネーブ軍縮会議の一員に加えるとか、国連の代表権を与えるとか、中共が国際社会の表舞台に上れるようアメリカに政策転換を要請する意思は、政府にないか、お伺いしたい。  第二に、政府はこれまで国連中心の外交を大きな柱だといってまいりました。われわれは、国連の究極的目標を世界政府的機能を果たすところに置いておりまするが、現在は、日本の主張点を明らかにするフォーラムとしてこれを活用すべきであると考えております。ところが、政府にはこのような積極的な姿勢が見られません。たとえば、池田内閣の成立以来、国連において成立した三百九十四件の決議案件中、日本が提案いたしましたものは、共同の形でわずか十八件にすぎません。決議案への意欲に関する限り、全く受動的であったといわざるを得ません。国連は、オリンピックとは異なり、参加するだけでは意味がないのです。政府の国連中心外交とは、よそさまの発意に従うだけのものか、明らかにしていただきたい。  第三、核兵器という反人間的なものの絶滅は全人類の共通の願いであります。特に被爆国であるわれわれ日本人といたしましては、常にその主張の先頭に立つべきです。ところが、政府は、部分核停条約が八月五日に成立したにもかかわらず、やっと八月十四日に、五十番目を過ぎて署名いたしました。イの一番に署名して日本のこれまでの主張を裏書きせよと、われわれが政府にすすめましたが、十日もおくれたことによって、世界の人々からも日本の熱意について疑われるような結果を招いたことは、何としても了承できない。首相は、この点について国民に何と釈明をされるか、お尋ねをいたしたい。  第四、アメリカのドル防衛政策は、アメリカ経済を守るためには必至のものであり、特に、経済力のある国に対しては、無償軍事援助を打ち切る方針は不動のものであります。したがって、日本経済に対するアメリカからの期待はきわめて大きいのです。しかし、これは日本国民にとってまことに重大な問題であります。敵地に近接した軍事基地の意義は大きく変化したことをアメリカ国防省でも認めておりますが、このような情勢の変化の中で、池田首相は相変わらず、安保条約のもと、国力国情に応じた防衛力の漸増を行なうと言っております。しかも、政府部内では自主防衛が語られているのが現状であります。安保体制下の自主というのは形容矛盾もはなはだしいと国民は疑っております。自主を言うためには、まず安保体制そのものの方向転換を行なわなければならないと、われわれは考えておりまするが、池田首相にいたしましても、この際、自主の名で何を一体、国民に要求するかを明らかにする義務があると思いますが、どうですか。  最後に、政府は安保条約のもと、アメリカ原子力潜水艦の寄港は当然だと言っております。しかしながら、政府はまず核爆発に対する国民の感情を的確に把握すべきであります。いたずらにこの問題を原子力エンジンの安全性の調査に名をかりて遷延いたしておりますることは、かえって日米友好にも大きな阻害の原因となっております。アメリカの国防省筋も日本の自主的決定を求めているのでありまして、外交における自主性とは、何よりもまず国民の立場に立って初めて生まれてくるものであるとわれわれは考えますが、首相は、すみやかにアメリカ政府に対し、日本国民の感情を説明して、寄港問題を打ち切る意思はないか伺いたい。  池田首相は世論に従って解散をきめると言っております。解散、総選挙は、民主政治にとって最も重要な問題であります。したがって、それが何を争点にして争われるかは明確にされなくてはなりません。池田政権の延命策として世論の名が用いられるならば、とんでもない話であります。国民の立場に立ってわれわれのあげた争点に対し、首相の明確な答弁を要求して、質問を終わります。(拍手
  25. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 池田は今までの施策について反省をしているかどうかという御質問ですが、私は、はっきり申し上げます。今までの政策全部について、それがよくても悪くても、政治家というものは常に反省し、そうして国家の隆盛と国民の幸福を願うことが、政治家のつとめでございます。私は姿勢を正しくして常に日々反省し、日々国家の隆昌を祈念しておるのであります。そうして私は今までの政策に誤りがない、基本として誤りはない。しかし、いろいろな事情において全部が満点というわけには参りません。したがいまして、自分はこういう考えでこうやっておりますということを国民に訴えております。常に訴えております。したがって、物価上昇のみならず、外交その他の問題、全部われわれの責任でやっております。何も逃げたり隠れたりする必要はございません。正々堂々とやっているではありませんか。  また、物価が下がるとか、何か待ってくれとか、そんなことではございません。物価の上がる原因を訴え、そうして今後の政策を言っておるのであります。実質所得も上がり、消費支出も上がっております。私はこの点をお考え願い、また、社会保障、いろいろ国づくりも他の国に見られないほど急ピッチでいっていることは、国民も認めて下さると思います。  また、財政投融資につきましていろいろお話があったようでございますが、これは全体をお考え下さればよくおわかりと思います。しかし私は、今後におきましては、所信表明で言っておるように、もっともっと、いわゆる手の届きにくかった農業、中小企業に、画期的、革新的な近代措置をとるということを申し上げておるのであります。  次に、外交問題につきましては、いろいろお話がございましたが、もう少し全体を見てお話を願いたい。中共についてわれわれは締め出し方策をとっていないことは、よくおわかりでしょう。以前も、池田内閣ができるまでは政経不可分といって、相手にしてくれなかったのが、今はどうですか。この変化を見てもらいたい。  また、第二の、核爆発を中共が行なったときに、どういう方針をとるかということを、今あなたがお聞きになって、一国の総理が答えられますか。私は答えるべきではございません。そういうことがあるかないかわからない。われわれは、ただここでこういう核爆発の実験を、地下を除いての実験をやったときに、世界の世論が中共に向かって、フランスに対すると同様、そういうことをすべきにあらずと、われわれは言うべきである。われわれは今この核爆発をやったらどうするかということは、これは二の次で、議論すべき問題とは思いません。したがって答えません。また国連中心の外交におきまして、日本の地位が最近どれだけ上がってきたかということは、先進国とか、あるいはAA諸国にお聞き下さったらわかりましょう。それは提案の件数が多いとか少ないとかをもってとやこう言うわけではございません。その点はよくお考え願いたいと思います。  また、核停止が一日二日おくれたということを私は問題にすべきではない。日本は、よく世界の事情を見ながら適当な措置をとっているのであります。  また、その次のドル防衛につきましては、極力協力いたします。私は、経済的にも、日米の関係は非常に密接でございます。また、ドル防衛につきましては、日本のみならず、ヨーロッパ諸国も、極力これに協力するという立場をはっきりしておるのであります。われわれは、自由国家群の一員として、ことに日米関係から考えまして、ドル防衛には協力いたしたい。しかし、それは日本の利益を主体にして考えておることであるのであります。また、安保体制と自主性、安保体制をやったから外交上自主ができないと言ったなら、自由国家群に自主外交をどこがやっておりますか。世界の情勢をごらん下さったらおわかりと思います。また、自主外交につきまして、いろいろございますが、原子力の問題等につきましては、われわれは、世界の情勢と日本の立場をよく考えて、国民の納得いく方法で自主的にきめる覚悟でおるのであります。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  26. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 永末さんの私に対する質問は二点であります。  その一点は、標準生計費に食い込む所得税最低限を定めている税制を改める必要がある、大幅に減税をせよ、こういうお話でございます。政府は、御承知のとおり、中小所得者の税負担の軽減には常に配慮をいたしておるところでございまして、過去の税制改正に際しましても、減税重点所得税減税に置いてまいったわけであります。特に課税最低限の引き上げによる中小所得者所得税負担の軽減をはかってきたところでございます。その結果、現在の所得税課税最低限は、おおむね標準生計費をカバーいたしておりまして、生計費に食い込んだ課税最低限を定めておるとは考えておらないわけであります。しかし、永末さんの御発言もございますし、来年度の税制改正にあたりましては、財政事情の許す限り、課税最低限を大幅に引き上げ所得税の負担軽減をはかる所存でございます。その際、納税人員の急増している給与所得者所得税負担の軽減につきましても、十分配意をいたしてまいりたいと考えます。  第二は、財政投融資の計画を抜本的に改めるということはないか、こういうことでございます。その改めよという理由に対しましては、国民生活基盤培養強化を中心にして組みかえよということでございますが、現在、三十八年度の財政投融資計画一兆一千九十七億円の内訳を見られるとおわかりと思いますが、住宅、生活環境整備、厚生福祉施設、文教施設、中小企業、農林漁業に四九・一%、五千四百四十五億円、それから国土保全、災害復旧、道路、運輸、通信、地域開発に三三・五%、三千七百二十一億、残余のわずか七・三%というようなものが輸出振興に振り向けられておりますし、基幹産業に振り向けられておるものもわずか一〇%であります。こういう状況をごらんになりますと、国民生活の基盤強化、生活向上に資するように財政投融資計画が作られておりますので、三十九年度も、引き続いてこのような基本的方向で組んでまいりたいと、このように考えます。
  27. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十四分散会    ————・————