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1963-10-23 第44回国会 衆議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

  2. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員選挙  裁判官訴追委員及び同予備員選挙
  3. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 裁判官弾劾裁判所裁判員が一名、同予備員が二名、裁判官訴追委員が二名、同予備員が二名、それぞれ欠員となっておりますので、この際その選挙を行ないます。
  4. 竹下登

    竹下登君 裁判官弾劾裁判所裁判員、同予備員裁判官訴追委員、同予備員選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられ、各予備員職務を行なう順序については議長において定められんことを望みます。
  5. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 竹下登君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。  議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員舘林三喜男君を、  同予備員に    大高  康君  逢澤  寛君 を指名いたします。  なお、予備員職務を行なう順序は、大高康君を第一順位、逢澤寛君を第二順位といたします。  また、裁判官訴追委員に    宇田 國榮君  大上  司君 を、  同予備員に    小澤 太郎君  高橋清一郎君 を指名いたします。  なお、予備員職務を行なう順位は、小澤太郎君を第一順位高橋清一郎君を第二順位といたします。      ————◇—————
  7. 清瀬一郎

  8. 竹下登

    竹下登君 臨時司法制度調査会委員外十四委員選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
  9. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 竹下登君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。  議長は、臨時司法制度調査会委員山田彌一君を指名いたします。  次に、検察官適格審査会委員毛利松平君を指名いたします。  また、有馬英治君を羽田武嗣郎君の予備委員に、金子一平君を毛利松平君の予備委員に指名いたします。  次に、国土総合開発審議会委員に    大久保武雄君  藤原 節夫君 を指名いたします。  次に、離島振興対策審議会委員に    高橋  等君  櫻内 義雄君 を指名いたします。  次に、国土開発縦貫自動車道建設審議会委員に    藤山愛一郎君  三木 武夫君 を指名いたします。  次に、台風襲地帯対策審議会委員保岡武久君を指名いたします。  首都圏整備審議会委員小平久雄君を指名いたします。  日本ユネスコ国内委員会委員小笠公韶君を指名いたします。  飼料需給安定審議会委員に    坂田 英一君  谷垣 專一君    本名  武君  日野 吉夫君    湯山  勇君 を指名いたします。  海岸砂地地帯農業振興対策審議会委員に    木村 守江君  古井 喜實君    大森 玉木君  栗林 三郎君    稻村 隆一君 を指名いたします。  湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員に    中村 幸八君  佐藤洋之助君    加藤 高藏君  實川 清之君    野口 忠夫君 を指名いたします。  畑地農業改良促進対策審議会委員に    松浦周太郎君  羽田武嗣郎君    内田 常雄君  東海林 稔君    久保 三郎君 を指名いたします。  積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員に    内藤  隆君  柳谷清三郎君    田澤 吉郎君  堂森 芳夫君    永井勝次郎君 を指名いたします。  鉄道建設審議会委員に    前尾繁三郎君  藤山愛一郎君    三木 武夫君  石田 博英君 を指名いたします。      ————◇—————  公正取引委員会委員任命につき同意を求めるの件
  11. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) おはかりいたします。  内閣から、公正取引委員会委員菊池淳一君を任命いたしたいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。      ————◇————— 国務大臣演説に対する質疑            (前会の続)
  13. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) これより国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。勝間田清一君。   〔発言する者あり〕
  14. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 静粛に願います。   〔勝間田清一君登壇〕
  15. 勝間田清一

    勝間田清一君 私は、日本社会党を代表し、過般行なわれた池田総理所信表明に関連し、経済高度成長政策、特に物価問題を中心とする重要な諸政策について、池田総理大臣に対して質問をいたしたいと思います。(拍手)  内閣が政局を担当いたし、いわゆる所得倍増政策なるものを実施に移しましたのは昭和三十六年度以降のことであります。しかし、日本経済は、昭和三十二年、三年の深刻ななべ底時代を経過いたしまして、三十四年及び三十五年にはついに一〇%をこえるほどの総生産の伸びを示し、三十六年度はまさにその最盛期にあたっていたのであります。したがって、昭和三十六年度の異常な成長力も、倍増政策の結果ではなくて、ただ池田内閣の成立と日本経済勃興期とが時期的にたまたま一致したにすぎない偶然の結果にほかならなかったのであります。(拍手)  しかし、この偶然の結果は、日本国民にとって幸福であったのではなく、むしろ日本の深刻な矛盾と不安を招来したという点において、きわめて不幸な結果であったと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  昭和三十六年春わが党が正しく指摘したとおりに、日本経済がみずからの力で旺盛な上昇過程をたどっている最中においては、政府としては、むしろ安定成長に目標を置いて、経済を過熱におとしいれることなく、刺激的な財政金融政策を厳に慎みつつ、最小限度エネルギー産業国営化資金計画委員会を設置する等、経済を正しく計画、指導することこそが、重要であったのであります。(拍手)また、誤った高度成長政策が当初からはらんでいた物価料金高騰国際収支の破綻、中小企業及び農業の著しい立ちおくれ、そして所得の著しい格差拡大懸念に対して、あらかじめ万全の処置をとっておくことこそが、国民に奉仕する政府最大責任であったのであります。(拍手池田内閣は、こうしたまじめな政治的責任を果たさなかったのみならず、かえって燃え上がる火に油を注ぎ、その上なお風であおり立てるがごとき無謀きわまる政治を行なってまいったのであります。(拍手)最近、経済審議会がいわゆる倍増計画の再検討をいたしておりますが、その結論の中で、設備投資の行き過ぎを指摘いたし、その原因といたして、政府誘導力の不足と景気調整策の非弾力性にきびしい批判を加えている点は、池田内閣としても深刻に自己批判すべきところであると考えるのであります。また、池田内閣は、過去三カ年間、財政に、金融に、また税制政策におきまして独占資本利益にのみ奉仕して、一貫して国民大衆利益生活犠牲にして顧みなかった態度は、断じて許し得ざるところであると思うのであります。(拍手)  いずれにせよ、今日の事実が証明するように、操短率二割五分以上の数字に示された過剰設備の累積は、無政府的な設備投資の結果であります。預金金利をはるかに上回り、三年たってもなおとどまるところを知らない物価料金騰貴は、何にも増して池田内閣経済政策失敗を物語るものであります。(拍手中小企業農業の著しい立ちおくれと、いまなお一千万人の低所得階層が社会の底辺にあえぎ苦しみつつあることは、池田内閣倍増政策がだれのものであったか、その階級的本質を遺憾なく暴露するものであると思うのであります。(拍手)そして、いまや外国からの借り入れによって、ようやくつじつまを合わせている国際収支の不安、てこ入れてこ入れを加えようとしても、なおかつ立ち直ろうとしない慢性的な株価の暴落は、池田内閣のよって立つ資本主義経済そのもの基礎を今日ゆり動かしておるのであります。こうした重大な事実を総理は今日どのように反省するのであろうか、自画自賛ではなくて、深く自己反省すべきところであろうと思うのであります。(拍手)  私は高度成長政策失敗を具体的に表徴して、いま日本経済を、あるいは国民を最も苦しめている物価料金の未曾有の値上がりについて、さらに質問を続けてみたいのであります。  所得倍増政策が取り上げられて以来、ことし六月までに消費者物価は実に二割二分二厘の高騰を示したのであります。これを年度別に見るならば、昭和三十六年は六分二厘、三十七年は六分七厘、そして本年はおそらく八分以上に達するでありましょう。しかも、この傾向は、最近の外麦値上がり、砂糖の値上がり、さらにはタクシー、バス料金引き上げ懸念定期券改定等の諸問題を考えるならば、その上昇傾向はとどまるところを知らないのであります。  申すまでもなく、三年間に二割二分二厘の物価値上がりは、三年前の千円札が今日は七百七十八円に値下がりしたことを意味するのであります。貯蓄増強中央委員会調査によりまするならば、日本国民はその世帯の七割八分が何らかの形で貯蓄をいたしておるのでありますが、その大部分は十万円ないし二十万円程度の零細な貯蓄であります。したがって、もしこれらの善良な国民が、十万円を、金利の最も高いと思われる銀行の一年定期に入れたといたしましても、三カ年間の利息は一万五千六百円でありまするから、物価値上がりによる貨幣価値の低下二万二千二百円と差し引きいたしまするならば、これらの国民は、貯金をしても、なおかつ池田内閣によって五千七百円損をさせられたのであります。(拍手)したがって、若いときに働いて、老後は年金恩給あるいはわずかなたくわえで、ささやかながらもその余生を楽しもうといたしましている年とった方々や、生命保険簡易保険で不慮の災害にあらかじめ備えようとしている善良な多くの国民から、池田内閣最後の希望を奪い、命の綱を断つ、まことに残酷きわまりない政治をやってまいったのであります。(拍手)  わが党は、このような人たちのために生活保護費引き上げはもちろん、年金恩給物価値上がりに見合って、これを適正化し、特に無拠出年金の年齢を六十五歳に引き下げ大幅増額を当然すべきであると考えるのであります。池田総理は一昨日の答弁におきまして、もし社会党政権ができれば一冷蔵庫に入れられるだろうと言われたのであります。私をして言わしむるならば、池田内閣政治のもとにおいては、これら善良な国民にとっては、まさに神もない、仏もない生き地獄であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  物価騰貴は、さらに資本蓄積の源泉である貯蓄をすでに減少させていること。さらに、物価騰貴が、不健全な土地投資証券投資を誘発し、さらには、輸入増大、輸出不振の根本原因をなしているととは、いまさら指摘するまでもないのであります。問題は、こうした物価料金値上がり原因池田総理がどう認識しているか、また、その原因に対して、どのような具体的な政策を用意しているかということであります。  池田総理は、今日までに、物価料金騰貴について幾つかの見解を述べられておるのであります。その一つは、高度成長にはある程度物価料金騰貴はやむを得ないという見解であります。その二つは、物価は上がっても、それ以上に所得が上がればいいではないかという考え方であります。その三は、消費者物価は上がっても、卸売り物価が安定しているから心配はないという見方であります。その四は、最近選挙気がまえになってから特に強調しだしたことで、それは生産性のおくれている中小企業農業サービス業等における賃金が上がったからで、これは革命的な中小企業対策農業政策で解決するという主張であります。そしてもう一つ主張は、所得が伸びて需要構造が変わったのに、供給事情や、流通機構が整備されていないからだという御主張であります。  以上は、池田総理がいろいろの場所で、いろいろの形で述べられたことを私が寄せ集めたものでありますが、私がこれらの発言を要約してみまするならば、池田総理の考えの中には重要な三つの点が含まれていると思うのであります。  その一つは、総理は、消費者物価値上がり高度成長のもとではやむを得ないし、また、それ以上所得を上げればいいのだろうという、値上げ容認態度がその根本にあるということであります。したがって、今日まで政府物価対策をしばしば公約しながらも、何らの実際の効果をあげ得なかった根本理由がここに私はあると思うのであります。(拍手)  たとえば、三十七年の一月十九日に、第四十回国会所信表明において、池田総理はこう言っておるのであります。生産性向上流通秩序の改善によって、物価は遠からず上昇傾向を食いとめ得ると確信しております。これが総理の三十七年一月の所信表明であります。また本年二月、予算委員会において、本年は二・八%程度物価上昇率に押える方針でありますと公約したことは、賢明な皆さんのよく記憶せられるところであると考えるのであります。こうした再々にわたる重大な国民への公約が一再ならずじゅうりんされ、裏切られてきた根本理由は、まさに物価は上がってもやむを得ないという考え方池田総理根本にあるからにほかならないのであります。(拍手)  第二は、独占企業が支配している卸売り物価が安定さすえすればこれを引き下げる必要はないという、資本家中心の誤った考え方池田総理は持っておるということであります。数字をもって説明いたしまするならば、昭和三十五年を一〇〇といたしまして、昭和三十七年度は労働者実質賃金は一〇九・五であります。労働生産性は一一四・八を示しておるのであります。したがって、総理宣伝してやまないところの自由主義経済が、真に自由な経済でありまするならば、卸売り物価は当然に下げらるべきでありまして、これを妨げておるのがすなわち独占利潤をむさぼっておる独占資本と、その代表者である池田総理だと私は考えるのであります。(拍手)  最後に、池田総理考え方の中には、中小企業サービス業における労働者賃金値上がりと、需要構造の変化、すなわち国民がサンマからマグロに移ったようにぜいたくになったという、国民責任を転嫁しようとする態度が常にひそんでおることであります。(拍手)したがって、私は物価料金値上がり原因とその対策につきまして、わが党の見解を明らかにしながら、池田総理所信をさらに追及いたしたいと思うのであります。(拍手)  第一は、池田内閣財政金融政策物価騰貴との密接な関係であります。私は、まず信用インフレ財政インフレ物価騰貴根本原因をなしていることを強く指摘いたしたいのであります。(拍手)たとえば三十六年度以来、年々三兆七、八千億円に及ぶ膨大な民間設備投資、六千億円を突破する在庫投資等が行なわれてきたのでありますが、これらのばく大な資本は、自己資本預金等の健全な資金によってまかなわれたのではございません。結局において日本銀行券の増発となってあらわれていることは、日本銀行券発行高の最近数カ年の異常な推移、さらに、たとえば最近八月の対前年同月比二八・五に見られるように、相当の高率を示している事実がこれを証明いたしておると思うのであります。(拍手)また、ことしから政府が新たに採用した政府保証債を広く日銀の買いオペレーションの対象にするやり方につきましても、公社債発行気がまえの政府態度と相まちまして、インフレへの危険を常に内包していることはきわめて重大であります。  また、政府健全財政主義をとっていると宣伝しながらも、事実は単なる形式上のことでありまして、政府は、年々膨大な自然増収を、しかもこの自然増収は、その多くの部分物価騰貴による名目所得増大原因するものでありまするけれども、自然増収を調整することなくして、その年の新たな財源にこれを引き当てて新規需要をつくり出しているという事実は、インフレーション誘発の立場から見てきわめて見のがすことのできない問題であります。(拍手フランスは、去る九月十二日以来、財政金融から流通機構改革に至るまで、広範、かつ、徹底した物価政策を断行しているのでありまするが、その中で、特に歳入の自然増新規追加支出財源とすることの弊害に注目して、これをまず中止したという事実は、わが日本においてこそ重視すべきことであったのであります。  それにつきましても、ここ数日来、池田総理並びに三木政調会長が、一面物価騰貴抑制公約しながら、他面において、二千億減税、一世帯住宅、一万円の年金制度、さらには五カ年五兆円の道路計画、そのための公債発行と、けっこうずくめの無責任なる宣伝をいたしておるのであります。もとより、減税住宅道路年金もきわめて重大でありまして、従来池田内閣政策によって犠牲にされていたこれらの政策は、万難を排して断行しなければならないことは明らかでありましょう。しかし、これと同時に重要な事柄は、これらの諸政策物価騰貴抑制政策とをどう両立させるかということが、今日の政治最大責任なのであります。(拍手)すなわち、今日大切な事柄は、こうした積極政策物価政策とを両立させる、責任ある政治国民は期待いたしておるのであります。  私は、物価騰貴に基づく名目所得増大が、累進課税のもとで増税にならぬように、大幅な所得税調整措置を講ずると同時に、千数百億円にのぼる租税特別措置法を改廃し、防衛五カ年計画を中止し、過剰投資を抑制し金利政策の改正をも含む金融制度改革等一連財政金融措置があって、初めてインフレなき住宅道路年金及び実質的大衆減税が可能であると確信いたすものであります。(拍手池田総理は、物価安定のためにいかなる財政上、金融上の措置をとられるのであろうか、また、道路住宅建設資金公債を発行するのか発行しないのか、この際、明確に御答弁を願いたいのであります。  私は、ここ数年来にわかに顕著になってまいった擬制資本のはんらん、これを放置している政府無為無策を指摘せざるを得ません。地価の値上がりをねらった膨大な資本投下、株や信託に殺到して、いまは額面を割るような悲劇を演じておるところのこれら滞留した資本、イルミネーション、ラジオ、テレビ、さては町にはんらんしておるばく大な広告、いずれも非生産的な擬制資本の横行であります。これが重大な今日の物価騰貴インフレ助長原因をなしていることは明らかであります。(拍手)私は、過大な広告を規制する税法上の措置を講じ、金利政策の適正をはかると同時に、それと関連して健全な証券市場の育成をはかり、空閑地税土地価格差益税の創設と、大規模な宅地造成政策があってしかるべきであると考えるものであります。(拍手池田総理は、これらの諸政策についていかなる考え方を持っておるのであろうか、特に土地価格を抑制するいかなる具体策を用意されておるのであろうか、この際明らかにいたしてほしいと思うのであります。  いずれにせよ、物価騰貴最大原因が、政府財政金融にわたるインフレ政策にあることは、厳然たる事実であります。したがって、この際、政府は、高度成長政策のから宣伝をやめて、まず金融財政を正常化し、投機を厳に抑制し、インフレ助長の根源を断ち切り、安定政策に一大転換いたしまして物価安定の基礎を確立することが、国民に対する第一の責任であると考えるのであります。  第二に指摘したい事柄は、管理価格引き下げの問題であります。生産がわずか数社によって独占されている工業製品、たとえば鉄鋼、アルミ、板ガラス、ビール等が、生産性向上に見合って当然その価格引き下げねばならないにもかかわらず、独占によって価格を維持し、あるいは引き上げているという事実は、渡邊公取委員長の言をかりるまでもなく、わが党が早くから指摘し、かつ警告いたしてまいったところであります。  現在、カルテル行為を容認いたし、あるいは助長している法律は、四十にのぼっております。全産業にわたってカルテルが形成できる仕組みになっているのであります。しかもこの傾向は、昭和三十四年度以降ににわかに激増し、池田内閣高度成長政策の柱となっておるのでありまして、本年三月末現在においては、協定数九百五十四件、協定事項二千五件、業種の数は実に二百十三業種にわたっておるのであります。もとよりこれ以外にやみカルテルが存在いたしまして、さらに重要なことは、政府行政勧告によって、独禁法は全く骨抜き同様になっておることであります。(拍手池田総理卸売り価格引き下げに不熱心な理由は、もはや明白であります。わが党は、独禁法を強化し、さらにこれが補完法として、独占企業経理公開の義務を負わしめ、管理価格国民の声によって引き下げむるような制度主張いたしておるのであります。(拍手)  第三に指摘したいことは、政府が三年前の総選挙終了直後から、公約を破って、郵便料金をはじめとして、一連料金、さらには米価を引き上げたということが、物価騰貴最大原因になっていることを反省しなければならぬということであります。(拍手)しかも、電気や鉄道料金引き上げの中で、表面赤字理由としながらも、事実は新規拡張のための資金を調達する手段としてこれを利用したことは、辞し得ないことであります。(拍手電力会社は、赤字理由にいたしまして、ばく大な国家資金を使いながらも、なおあの困窮している石炭を引き取ることにさえ、快くこれを引き受けようとしなかったのであります。本年土半期法人所得十大長者番付の中で、第一が東電、第二が関西電力、第九が中部電力であったことを、料金引き上げられた国民は永久に忘れることはできないでありましょう。(拍手)  もし、政府がほんとうに物価を下げ、あるいは安定させようというのでありますならば、来たるべき通常国会においては、大衆所得税を大幅に減税すると同時に、間接税を大幅に引き下げ、その引き下げた金額を確実に小売り価格に反映させるような処置をとるべきであります。(拍手)また、政府は、たとえばフランス政府が率先してたばこ一袋一・四〇フランから一・三五フランに、あるいはガソリン一リットルを一サンチーム、それぞれ引き下げたと同様に、大衆たばこをはじめとして、政府関係物資をみずから率先引き下げるべきだと私は考えるのであります。(拍手)  なお、この際特に私は、具体的な質問を二、三池田総理にいたしたいと思います。  その一つは、総理は、ガソリン税の引き上げをもって道路費の一部に充てようといたしております。ガソリンそのものの値上がりはもちろん、いま懸案になっているタクシー料金バス料金は値上げ必至と思いますが、ガソリン税を引き上げてどうしてこれらの料金を押えることができるのかをまずお尋ねいたしたいのであります。  もう一つ聞きたいことは、去る国会において、家賃地代統制の法律を廃止する法案を提出されまして、わが社会党によって幸いに廃案になりましたが、これを再提出するつもりであるかどうか。また、来年四月から、固定資産税の評価がえの名のもとに、これを引き上げようといたしておるのであります。すなわち、家賃地代を放任し、固定資産税を引き上げて、どうして家賃地代を下げることができるかどうかを承りたいのであります。(拍手)  もう一つ私はお尋ねをしたいのであります。本年は麦作は世界的に不作であります。特に、最近のソ連の小麦買い付けば、国際市場に重大な影響さえ及ぼしておるのであります。わが国も、長雨等によりまして大量の買い付けを行なわねばならぬのでありまするけれども、今日その買い付けばきわめて不調なる状態にあることを私は遺憾に思うのであります。したがって、国内においても小麦及び飼料等の値段は、当然今日値上がりの気配を示しておるのであります。小麦、飼料等の輸入及び価格対策に対する具体案をお示し願いたいのであります。(拍手)  物価値上がり原因について第四に指摘したいことは、需要構造の変化と、これに見合った供給や流通機構が整備されていなかったこと、中小企業や農漁業、あるいはサービス業等の近代化が著しく立ちおくれていることでありまして、この点は政府の指摘するとおりだと思うのであります。しかしながら、このことは、むしろ高度成長政策の美名に隠れて、流通政策中小企業対策、農漁業対策犠牲にされていたという事実を証明する以外の何ものでもないのであります。(拍手)  大東京都の都政は、戦後十八年間、自民党によって担当されてまいりました。世界の大都市を見れば明らかなとおりに、一面、副都市を建設して都市の過大化を防ぐと同時に、他面においては、都市をめぐって生鮮食料品の供給地帯を設定し、計画栽培と価格安定を都市と農村相互で契約し、必要なる運搬、冷蔵、加工の施設を設けて、合理的な市場組織を持っているのが世界の常識であります。ひとり東京のみにこうした機構、組織ができないのは、自民党政策の怠慢であると私は指摘せざるを得ない。(拍手)  総理はまた、今日あらためて革命的な中小企業対策農業対策を実行すると公言いたしておるのでありまするけれども、はたして何をおやりになるのであろうか、私の聞きたいのは具体的な内容なのであります。(拍手)  わが党は中小企業基本法の成立に協力いたしました。その際強く主張したように、中小企業そのものに対する金融上、税制上、また組織上の抜本的施策を講じて、その近代化を飛躍的に発展させると同時に、どうしても大企業から受けているところの圧迫を排除する政策、すなわち、経済の民主化政策が絶対不可欠であると確信といたすのであります。独禁法を強化し、下請代金支払い保護法が空文化されておりますけれども、これを実効あるものに改正し、歩積み、両建て、これを厳に禁止し、百貨店の進出を制限し、スーパーマーケットは、零細な商店の共同のものにのみこれを限定する等の措置を講ずることが必要であると思うのであります。(拍手)  農業の近代化につきましても、政府は、現在の農業基本法と、それに基づく構造改善事業を根本的に改めない限り、その目的を達成し得ないことは、すでに農業者が改善事業返上の機運にあることによっても明白であります。  わが党は、さきに農民憲章を発表いたしたのでありまするが、国の力による大規模な農業基盤の整備、国庫の負担による全国的な農業機械センターの設置、災害復旧資金は無利子、その他の営農資金は三分五厘の融資体制の確立、そして不足払い制度を含むところの生産費と所得を補償する農畜産物の価格体系の確立という、四本の政策を柱とする農業の協同化と機械化を実行することと、憲法で保障された健康にして文化的な生活を営む権利を農民に保障することこそが、真に農業の近代化であると確信いたして疑わぬのであります。(拍手)  物価料金値上がり原因について最後に指摘したい事柄は、政府政策独占資本生産中心政策であって、消費者たる国民のための政治がなかったことであります。すでに先進国は消費者保護の立場に立って、必要な行政上の機構や民主的な組織を確立し、料金物価等の決定に家庭婦人を積極的に参加させるとか、過大な広告を制限するばかりでなく、商品の値打ちや利用の方法が正しく判断できる施設を設けるとか、いわば買わされる社会を、正しく買える社会に改善するために、あらゆる消費者保護の政策がとられているのであります。池田内閣のもとにおいては、不幸にしてこの政治がなかったのであります。生産あって生活なし、これが池田内閣高度成長政策の実体であります。(拍手)  私は、以上五項目にわたって、物価料金値上がり原因とその対策について、わが党の見解を述べながら、総理の具体的施策を質問いたしたのでありまするが、これを要するに、病気になれば熱が出る、ちょうど同じように、物価料金値上がりは、過去三カ年間にわたる池田内閣高度成長政策失敗からきた日本経済の病気そのものを表徴する重大な危険信号であると確信いたすのであります。(拍手)したがって、われわれ日本国民は、まさに政策を一大転換するために自民党池田内閣と訣別するときが到来したと思うのであります。(拍手)そして賢明な国民は、池田内閣高度成長政策の本質を見抜き、厳正苛烈な批判を加えるであろうことを確信するものであります。(拍手)  しかも、池田総理は、わが党河上委員長が今国会召集の意義の重大性を強調し、解散前に補正予算、ILO条約批准、中小企業の年末金融等の当面の重要施策を審議いたしまして、国民の要望にこたえるべきこと、そしてわが党もまたこれに協力することを公約したにもかかわらず、党利党略あって国会なく、権力あって国民なく、ひたすら池田内閣の保身のために謀略解散を計画しているに至っては、許し得ざることであると確信いたすのであります。(拍手)いまこそ池田内閣は総辞職すべきであります。(拍手)  私は、総理所信を問い、再質問を留保し、私の質問を終わる次第であります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  16. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。  だいぶ長い時間の御弁論でございましたが、私に対する質疑はあまりないようでございます。質疑とせられた問題につきまして、まずお答えいたします。  所得倍増ということは、政治家のかけ声なんかでできるものではないのであります。所得倍増は政治家のかけ声でできるものではございません。(拍手)勝間田君も長い議会政治を経てこられました。昭和二十四年からわが党内閣日本経済は立ち直りました。二十五年の自由主義経済——為替相場の決定後、日本国民の、他の国民に見ざる非常な創造力、勤勉によりまして、二十四年以来年とともに生産は増加し、所得はどんどんふえていったのでございます。(拍手)私をして言わしむれば、昭和三十年ごろからの伸びも、昭和二十四年からの伸びも、ほとんど変わりはない。私は、この日本人のエネルギー、勤勉を信頼して、いままで倍増以上にやってこれたが、この高いレベルにおいても、今後十年間に倍増になりますから、いままでどおりやりましょうと言ったのでございます。(拍手)しこうして、私の考え方国民は御協力くださいまして、倍増が十年以内にできそうになったのであります。これを国民の不幸と言うととは、何ということばかと思います。(拍手)われわれの生活水準が上がり、そうして国力が伸び、世界の絶大なる信用を受けていることは、一部の人はいざ知らず、大部分国民は非常に喜び、また、世界の自由国家は、頼みがいがある日本として喜んでおるではありませんか。共産主義国でも、日本はよくやっておるというので、日本を畏敬するようになったではありませんか。(拍手)  私は、御質問の点でこれから答えまするが、日本がただいま信用インフレだとおっしゃるが、信用インフレということは、一部の考え方の違った人はおっしゃるかもわかりません。日本経済は健全な発展をいたしておるのであります。設備投資ができたから生産が伸びて、輸出がふえておるじゃありませんか。設備投資がどんどんできたから卸売り物価も上がらぬじゃありませんか。(拍手)皆さん、在庫投資がふえたから、国民所得がふえたではありませんか。どこにインフレ傾向がございますか。(拍手)  また、日本銀行銀行券が最近、去年から比べて二千億円ふえた。一昨日現在で日本銀行銀行券は一兆三千九百億ですか、前年より二千億円ふえましたが、貸し出しはどうです。貸し出しは前年の一兆三千九百億から、いまでは一兆一千億に、二千億円ばかり減っておる。これを信用インフレというのはことばが違うか、考え方が誤っておるかでございます。(拍手)私はつけ加えて申し上げますが、日本銀行のいまの銀行券一兆三千億ないし一兆四千億は、世界のどこの国に比べても、総生産と中央銀行銀行券の割合は、フランスやイタリアの半分でございますよ。少な過ぎるとも多過ぎません。日本経済が他国と比べて違うことは、日本銀行券が、ドイツやフランスやイタリアの国民生産に比べて少ないことと、日本の国債がこれらの国々に比べて少ないことが日本の特徴であるのであります。(拍手)  あえて申し上げましょう。フランスが一週間前に非常な強力なデフレ政策をとりました。また、イタリアも四、五日前にかなりリラの流出からデフレ政策をとっております。しかし、イタリア、フランスの状況と日本の状況を比較してごらんになったら、おわかりでございましょう。フランスは、四年前にフランの切り下げをいたしました。その後においても、消費者物価が上がるのみならず、卸売り物価が最近どんどん上がっているじゃありませんか。イタリアもしかり。しかくデフレ政策をとらなければならぬようなイタリアとフランスの状況でございますが、日本においては、その必要は全然ございません。(拍手)私は、今までの政策がよかったことを示すものであると、最近のフランス、イタリアの、この一週間、二週間の動きを見ながら、やっぱり日本人は偉いと感謝しておる次第でございます。(拍手)  次に、三木君との質疑応答でございますが、三木君の政策はわが党の政策でございます。私は当然これによって前へ進んでいくことは、これはもう国民公約してさしつかえのないことであります。  次に、物価安定についての施策でございます。これは生産性向上して生産をどんどん伸ばしていくと同時に、流通機構の画期的改善をはかり、実質金利を低下して、健全な財政経済で進んでいくならば、物価の安定はできるのであります。卸売り物価はもちろん、私は、物価を下げて国民を塗炭の苦しみに置くよりも、適当な消費者物価は、国民労働に対する値打ちが上がることでございますから、ある程度適正な消費者物価が上がることは、先進国に向かっていく日本として、ある程度はやむを得ぬ。しかし、いままでのような上がり方は急激でございますから、これを押えることは当然であるのであります。(拍手)  なお、国債の発行につきましては、将来はいざ知らず、今年や三十九年度におきまして、一般会計の財源に充つるための国債は発行しなくても、やはりいままでどおり健全財政で進んでいって国家の繁栄と民福が実現できると思います。  次に、土地問題につきましては、やはり産業、人口の地方分散と同時に、宅地造成が必要であることはお話のとおり。  また、ガソリン税の増税につきましては、ただいまのところ考えておりません。  バス料金、ハイヤー料金につきまして、公営バス料金は、たとえば東京都のごとく人件費が相当経費の半分以上を占めておるときには、人件費を引き下げるとか合理化をしなければ、直ちにバス料金を上げることを認めるわけにはまいりません。合理化をはかるべきだと思います。  また、質問にはございませんが答えますが、タクシー、ハイヤーにつきましては、二十七年、十年前から上げておりません。合理化によっていままではやってきたのでございまするが、人件費の増加と、そして交通の困難なために能率があがらぬから、いまにおきましてこれは検討中でございますが、あくまで合理性を持たしていきたいと思います。(拍手)  また、家賃統制令の撤廃につきましては、御承知のとおり、家賃統制令は昭和二十五年の九月に三十坪以下の土地の統制でございます。十何年も前の統制をこのいまの時代に置いておくことはいかがなものかと思います。少しは頭の切りかえが必要じゃないかと思います。(拍手)  なお、いま固定資産税の評価がえはいたしておりますが、固定資産税の増収は全く考えておりません。  なお小麦、えさの問題につきましては、外国市場の状況、運賃の値上がり等を考えまして、適時適切な措置を考える予定でございます。  次に、中小企業あるいは農業の近代化につきましての御質問でございますが、大体お話の点と似ておるところがありまするが、しかし根本的な考え方が違う。われわれはあくまで自由主義経済のもとに中小企業の近代化、生産の増強をやると同時に、工場の集団化、あるいは指導訓練、技術の強化等をやると同時に、実質金利引き下げと、そして中小企業への政府の助成金、減税等、各般の措置をやってまいります。また農業につきましても、土地改良、経営規模、技術の革新、機械化、あるいは低金利の貸し付け等々で画期的な措置を講ずる考えであるのであります。(拍手)  これを要するに、勝間田君の質問は、社会主義統制経済のもとに立っての質問、御意見であるのであります。われわれはあくまで国民の創造力と国民の努力によって、りっぱな福祉国家を資本主義経済のもとに、自由主義経済のもとにつくろうとしておるのでございますから、考え方がかなり違っております。やむを得ませんが、とにかく私はここにあえて申し上げます。私らの政策は、いわゆる国民によりよい職場を持ってもらい、より能率の高い仕事をしてもらうということがわれわれの仕事でございます。だから、よりりっぱな職場、より能率の高いようにやってもらうことがわれわれの考え方でございます。しかし、数多い者の中には非常に早く歩く人もありますし、また歩きのおそい人もおられます。われわれ政府は、早く歩く人の分はなるべく早くしないように、けつまずかないように、おそい人にはなるべく助成して、早くお歩きになるようにするのがわれわれの政策でございます。(拍手)社会主義統制経済はわれわれのとらないところであることをはっきり申し上げておきます。(拍手)   〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
  17. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど勝間田さんの御引用になりました所得倍増計画のいわゆるアフターケアでございますが、この作業は、本年四月ごろから、経済審議会が百人余りの学者を中心とするグループに委嘱をいたしまして、そうしてただいま各分科会の報告が大体出そろいまして、統一報告の草案が書かれつつございます。これはアフターケアでございますから、先ほど勝間田さんのおっしゃいましたように、かなりきびしい批判と反省が加えられております。それは御指摘のとおりでございます。  それにもかかわりませず、この報告草案は、その冒頭において、高度成長に対する評価を次のように述べております。「倍増計画の究極の目標は、国民生活向上と完全雇用の達成にあるが、計画策定後の日本経済は、高度成長を通じてこの目標を実現する方向に進んでいる。」こう書いてございます。(拍手)  次に、高度成長の意義につきましては、「産業構造の高度化、雇用の近代化並びに個人の実質所得や消費の大幅な増加など、経済発展の基本方向に沿った大きな成果があらわれ、また設備の近代化によって供給力が増大し、国際競争力も強化されたことは、将来の経済成長の基盤をつちかう上に大きな意義を持っている。」  この作業は、勝間田さん御自身が御引用になりましたものでございますので、その公正のことについてはお認めいただけると思います。(拍手)     —————————————
  18. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 山花秀雄君。   〔山花秀雄君登壇〕
  19. 山花秀雄

    ○山花秀雄君 去る十八日、本院において行なわれました池田総理大臣はじめ大卒外務大臣、田中大蔵大臣等、政府の本国会に対する所信表明に、私は日本社会党を代表いたしまして質問をいたすものであります。(拍手)  池田総理は、来たるべき総選挙を意識されて演説をされたと存じますが、内政、外交、経済、特に国民生活に直結する物価の抑制、減税等に至っては、まことにもってけっこうずくめ所信を披瀝されました。しかしこれは、絵に描いたモチということわざがありますが、まさにそのとおりと私は受け取りました。(拍手)私だけではございません。新聞、テレビ、ラジオ等々を通じて、多くの国民大衆が私と同じような感慨を抱いたのではなかろうかと思うておるのであります。(拍手)ただ、残念に存じましたことは、すべてよき政策を羅列はされたにもかかわらず、同胞沖繩や小笠原住民が心より念願されております沖繩、小笠原の祖国復帰のことに一言も言及されなかったことについては、私は国民とともに大なる不満を申すものであります。(拍手)  わが日本社会党は、昭和三十五年施行の総選挙に際して、池田総理国民所得倍増論を打ち出したときに、一本くぎをさしておきました。よもやあなたはお忘れでないと存じますが、すなわち、国民所得倍増もはなはだけっこうであるが、物価安定の基礎の上にこれを打ち立てなければ、とんでもないことになると口をすっぱくして申したのであります。あれから池田内閣三カ年の政治の実績は、人事院の勧告を三年連続してやらなければならないほど物価高騰してまいったことは、総理も十分御承知のとおりであります。先ほど勝間田同僚からもお話がございましたが、重複いたしますが、とにかくあなたの耳に十分入れないと、なかなかあなたは承服いたしませんから、重複したことを申し上げます。(拍手)  昭和三十六年度には六・二%上がりました。昭和三十七年度は六・七%、三十八年、現在時点においては七%を上回り、大体八%になる騰貴の趨勢を示しておることは、これは政府の諸関係機関においても発表されておるので明らかであります。私が言うのではございません。政府の諸機関でこれを発表しておるのであります。本年初頭の予算委員会や本会議議場において、わが党代表質問に、池田総理は、三十六、七年度は高度の経済成長政策上やむを得ない現象であったが、三十八年度はどんな事態が起きても物価は二・八%以上には上げないし、また押え得る自信があるとあなたは大みえを切ったではありませんか。(拍手)しかるに、今日の事態は、最近の年度で最高の物価値上がりを来たし、物価安定政策は完全に失敗しておるのにもかかわらず、いささかの反省もなく、相変わらずの強気で、物価高騰を抑制し、ここ一両年の間に必ず物価問題を解決すべく最善の努力を傾ける覚悟でありますとあなたは言われておりますが、国民大衆は、しばしばのあなたのうそに、またかという政治不信を高めております。(拍手)  最近、有力新聞紙で池田内閣所得倍増政策の成否についてアンケートを集めましたところ、所得は確かにふえました、だが生活は逆に苦しくなりました、その理由は、物価所得の増したのよりもさらに追い越すほどの値上がりでとてもやり切れません、という回答が圧倒的に多いことは総理も御承知のとおりであります。しかるに、この事実に目をつぶってそれを否定されるような言動を表明されたと承りますが、われわれ政治家は、素朴な国民大衆の声であってもその声は天の声、神の声と傾聴すべきと思いますが、池田総理は、この国民大衆の声を再び否定されるかいなやということをここではっきりお伺いしたいのであります。(拍手)  今日の時点では、物価政策国民生活中心をなすものであります。過去三カ年の池田内閣の行なった誤れる物価対策に反省なされるやいなや。それから一両年というようなゆうちょうなことではなく、早晩総選挙が終われば、町のちまたに値上げがうわさされておるところの、ただいま勝間田同僚からもお話がありましたように、 ハイヤー、タクシー、バス料金をはじめ、公共料金は不肖池田勇人在職中には絶対に値上げをいたしませんと言明してもらいたいと思います。そうすることによって、不安と猜疑の眼で政治を見ておる国民大衆に安心と信頼感を与えることが首相はじめ政治家全体の任務と考えますが、この際、池田総理所信のほどを明確にお答え願いたいのであります。(拍手)  さらに、物価上昇の背景となっておる信用インフレを規制するため、日銀に通貨発行審議会を設けて、国民各界階層の代表を参加せしめるお考えがありやいなやもあわせて承りたいのであります。  最近土地価格が投機的につり上げられ、一般勤労者は住宅を持つことはほとんど不可能な状態に置かれておる反面、利権に連なる一部の者が、たとえば東海道新幹線の用地買収汚職にも見られますように、労せずしてばく大な利益を得ている姿があらわれているのでありますが、土地投機を一掃して物価安定を促進する考えがありやいなやをお聞きしたい。  総理所信表明の中に、住宅不足問題に触れておられました。特に住宅については一世帯住宅を目標として強力な対策を講じ、できるだけすみやかに住宅難を解消したいといみじくもあなたは言明されたのであります。また二十一日の本院において、自民党を代表して質問されました三木武夫君への答えとして、一世帯住宅は私の公約であり、四十五年までには絶対実現する、政府施策住宅は三百二十万戸、民間で四百六十万戸が建設されるので、一世帯住宅はできる、住宅問題は単なる社会資本の問題でなく、国づくり、人つくりの根本であるとあなたは力説されました。総理も御承知のように、従来歴代内閣が必ず住宅問題解決の点を重要施策として触れておられますが、少しも前進しないのであります。終戦後国民大衆生活中心である衣食住にずいぶん悩んでまいりました。戦後十八年、いまだに住宅問題は深刻な悩みになっております。現在なお三百八十万戸の住宅不足であります。このことは、三百八十万世帯が同居生活や間借り生活という、人生にとってまことにわびしい生活を余儀なくされているのであります。たとえどんなむね割り長屋でも、独立した家屋に住みたいというのは人間生活の本能であります。この本能に満足を与えるのが政治の本質でなくてはなりません。  池田総理にお尋ねしたきことは、先日河野建設大臣が住宅問題解決の施策として、年間政府の建設三十九年度より二十四万四千戸の建設を発表されております。しかしながら、この建設には住宅公債十六億円、宅地公債五十億円という、庶民大衆にはおよそ縁遠い条件が予算要求に加味されていることは御承知のはずであります。私は国民大衆が夢にまで思い詰めておる住宅を、この際政府建設には公債条件をなくしてもらいたいと存じておりますが、いかがなものでしょうか、御答弁願いたいのであります。(拍手)またいま一度政府、民間合わせて七百八十万戸を向こう七カ年、四十五年度で完了されると言明されておりますが、その年度の計画順をこの際明らかにしていただいて、住宅難に悩む国民大衆に安心感を与えてもらいたいのであります。池田総理がほんとうに政府施策七カ年、三百二十万戸の初年度の予算措置を、これならばほんとうにやるらしいという、私どもや国民が納得する予算増額措置をひとつこの際明らかにしていただきたいのであります。  池田総理演説のうちに、明年度よりの減税問題に言及されました。国税、地方税を通じて、平年度二千億程度減税を断行すると言明されました。私はたいへんけっこうなことと存じますが、ここで思い出すことは、三年前の総選挙のときに、やはり国民所得倍増論と同じように、当時一千億ないし一千三百億円程度減税を行なう旨を選挙政策として発表されました。選挙の結果は、引き続き池田内閣の出現を見たのでありますが、選挙後の通常国会、すなわち昭和三十六年度予算では、法人税、所得税中心に一千百三十七億円の減税を見ましたことは御承知のとおりであります。しかしながら、その反面、選挙のときには一言も国民に発表しなかった増税を行なったのであります。すなわちガソリン税をはじめ、税金同様の性格を持つ国鉄運賃、郵便料金等々を中心に約一千億円に近い収奪を国民のふところより行なったのであります。あなたの内閣は当時十分の一減税内閣と批判されたのであります。だが、その十分の一減税も、通常国会終了後、日本医師会と厚生省との間の国民医療費の案件解決は、年間約百億円以上の国民への負担増となって終止符を打ったことは、池田総理よく御存じのところであります。総選挙公約である一千億円以上の減税は、一千億以上に及ぶ増税並びに国民負担増は、結果的には選挙に大きな偽りを発表したことになり、減税額と増税額を計算すれば、差し引きとんとん、ゼロというような結果になったことは御案内のとおりであります。(拍手)これが池田内閣政策であります。このころからあなたはうそつきの代名詞のように言われつつあるということは、あなた自身よく御存じであろうと思うのであります。(拍手)  国税は、以上のような結果に終わりましたが、昭和三十六年度の地方税は、御承知のように住民税及び固定資産税の評価読みかえによりまして著しく増税の結果を来たし、選挙後一年たたないうちに減税政策は逆に増税政策となったのであります。池田総理は、来たるべき総選挙を意識されて二千億円の減税、特に所得税を納め得ない階層にも住民税を軽減いたしますと言明しておりますが、これまた抽象的で、国民が信用し得るに足りる具体的な説明ではございません。巷間伝えられるところでは、これとは逆に固定資産の評価がえを行なって、その結果として固定資産税の大幅増額となり、ひいては地価、地代、間代、家賃等々の値上がりを来たすことは必至であります。ちょうど三十六年の固定資産税値上がりと同じような結果を来たすものであります。この機会に国民各位の疑惑を一掃するために、池田総理は来年度の固定資産の評価がえ増税措置は、万々一私が内閣を再組織する場合でも絶対にいたしませんと、国民に安心を与える言明をしていただきたいのであります。(拍手)私は池田総理が国税、地方税を通じて平年度二千億程度減税をやると言い切った以上、池田総理から、ただいま私の要求したことについて、明確に答えられる当然の義務があると考えるものであります。  次に、税制改正の問題であります。昭和三十八年度の税制改正では、政府は税制調査会の意思を無視して、勤労大衆のための所得税基礎控除、配偶者控除、扶養家族控除の引き上げを小幅に圧縮し、大衆減税額を切り詰めたのであります。その分の減税を配当利子課税に向け、富裕階級に奉仕されたのであります。私は、物価引き下げ国民の税負担軽減を同時に実現する方法といたしまして、酒税、たばこ税、砂糖、塩の消費税、電気、ガス及び物品税、入場税などの間接税の全面にわたる大幅減税を行なうべきと主張するものでありますが、二千億減税の重点をいかなる税目に置くか、この際はっきり答弁を願いたいのであります。(拍手)  一昨日のわが党河上委員長の質問池田総理は答えられて、国民所得昭和三十四年と比べて三四%上がっておる、中学卒の初任給も、四年前の四千四、五百円より一万円にもなり、中小企業労働者賃金は大企業労働者のそれに近づきつつある、このように賃金格差が縮まり、実質所得がふえていることは、国民大多数も認めておる一と、大いに張り切って大みえを切られたのであります。総理は、日本工業技術水準が発達し、現在世界第五位の水準を歩んでいることは御承知と思いますが、国民所得は、あなたの口をかりても、世界第二十位程度であります。工業技術水準が第五位で、国民所得水準が第二十位、しかも国民所得の振り割りがどう振り割られているかという問題であります。日本労働者賃金は、総理の説明によれば、欧州先進国並みになったと自賛されておりますが、私も昨年欧州に参り、特に労働者賃金実態を調べてまいりましたが、欧州のどこへ参りましても、日本労働賃金のような低賃金国は一国もございません。欧州諸国で最低といわれておるイタリア国においても、日本よりはるかに高い労働賃金であります。日本労働賃金は、優秀なる工業技術を保持しながら、後進国家並みの低賃金であるということは、あなた十分銘記すべきであります。(拍手)中学卒業者が一万円程度になったと、得々とされておりますが、それならばなぜ多くの労働者が要求しておる全国一律最低賃金一万円也の法制化ができないのですか。いま思い切って全国一律最低賃金法が確立すれば、さすが反動的な池田内閣であっても、労働行政の真価を高めることができるではございませんか。  すでに労働賃金構造基本調査報告書を見ましても、世帯主を含んで一万円以下で働いている労働者が、全国で五百九十九万人と報告されております。労働省の賃金実態報告書だけではありません。総理府の就業構造基本調査でも、低賃金のことが明らかにされているではありませんか。このようにあまりにも低賃金なるがゆえに、最低生活を保持するために、労働労働時間調査月報によっても明らかでありますごとく、おのれのからだを犠牲にして超過労働を余儀なく甘んじ、労働基準法に定められた週四十八時間労働をこえた五十一時間労働をあえて働かなければ最低生活の維持ができないのが、哀れな日本労働者の低賃金の実態であります。(拍手政治家たるもの心すべきではないでしょうか。この労働者の実態を総理大臣は何と見ているのですか。池田内閣のやってきた高度経済成長政策は、大きな犠牲を勤労大衆に与え、完全な失敗であり、思い切った手直しの段階にきているのであります。この際、従来の面目にとらわれることなく反省されてはいかがですかと私は申し上げたいのであります。(拍手)  私の演説のあと、民主社会党を代表して西尾末廣君が質問をされ、おそらく衆議院は解散になるといわれております。しかしながら、異常天候災害に悩む多くの農民諸君も、人事院の勧告で給与ベースの改定を願う多くの勤労者も、金融行き詰まりの打開策として金融措置をやってもらいたいという全国の多数の中小企業者も、心から本臨時国会召集の最大目的である補正予算に一るの望みをかけておることは、あなた十分御承知であります。この予算審議過程で与野党十分な政策審議を行なって解散すべきが民主政治の本来の姿と存じますが、総理の所見をこの際伺いたいのであります。(拍手)  最後に私がお尋ねいたしたいことは、池田総理の言われる国づくり、人つくりの問題であります。私は、この基本対策は、いろいろの立場から論議されておりますが、われわれ政治家から言うならば、みずからの行ないを規正し、りっぱな政治の歩みをつくり、範を示すべきであります。池田総理は、河上委員長のこの問題の質問に答えて、最近犯罪者がとみに増加したことはいなめないが、その大部分は交通違反事件であり、一般犯罪、すなわち破廉恥罪ともいうべき詐欺、窃盗、強盗、殺人等々の凶悪犯罪は横ばいと、事もなげに答弁されておりますが、そんな政治感覚では、責任では、私は国づくり、人つくりは絶対にできないということを申し上げておきたい。(拍手)一昨日の答弁は間違いであった、いや、あれは勇み足であったと、一言反省の意思をお答えになる謙虚な態度がおありになるかどうかをお聞きしたいのであります。(拍手)  政治を正しくするためには選挙を正しくといわれておりますが、総理も御承知のように、三年前の総選挙、昨年の参議院半数選挙、ことしの統一地方選挙、回を重ねるたびに腐敗の度合いはますます濃厚となり、全く世人からひんしゅくを買い、政治の信用がすでに地に落ちたことは、総理も万々御承知のとおりであります。来たるべき総選挙に際して、前回選挙で悪質違反事件に関係し公判進行中の者は公認の線からはずすと、あなたが総裁の自由民主党は決定されました。政治の信用回復のため、まことにけっこうなことと存じておりました。ところが、先ごろ自由民主党より発表されました公認候補者の中に、北海道や大阪に目下公判中の選挙違反者が公々然と名を連ねていることは、まことにもって遺憾千万であります。(拍手)みずからえりを正さずして、どうして政治の純化、よき国づくり、人つくりができましょう。池田総理は、自由民主党の総裁の権限を発揮して、あなたの党、天下の公党自由民主党の名誉のために、日本政治の浄化、発展のために、泣いて馬謖を切る決意があるやいなやをこの際承りたいのであります。それが実行できないようでは、よいことずくめの政策所信表明の形で並べ立てても、口頭禅に終わるであろうということを申し上げまして、私の質問を終わるものであります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  20. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。  御質問の第一点の沖繩返還でございます。これは日本国民全体の悲願でございます。私はもう常にこれを申し上げております。また最近に至っては、総務長官をたびたび出張させまして、この日本への沖繩返還の実現が一日も早からんことを望んでおるのであります。  なお、消費者物価の上昇の問題につきましていろいろお話がございました。先ほど申し上げましたごとく、われわれは統制経済ではない、しかも今回の値上がりは、野菜等の値上がりといわゆる国民賃金の上昇が主でございます。あなたはいま日本賃金をどうこうおっしゃいましたが、毎年春闘その他で相当賃金が上がってはおりませんか。(拍手)相当上がっております。そうしてそれが消費支出の増加でしょう。大体一〇%から、あるいは八%くらいの消費支出の増は、世界各国でも非常に多いほうです。しかし実際は国民の消費支出は、三十六年は三十五年に対して一五%、三十七年は三十六年に対して一五%、こんな消費支出がふえる国がどこにありましょう。これが物価値上がり——春闘だとか計画的な闘争によりまして賃金がどんどん上がれば、消費者の消費がふえ、そして今年なんかにおきましても一〇%ぐらい、世界にその例を見ない消費の増加と思いますが、一〇%では済みません、非常な国民の消費の増、これは国民がよく働いて、私の想像している以上に消費せられるのであります。しかもまた、片一方では、数十年来の寒波のために野菜ができない、長雨その他によりまして天災がさましたり、こういうことで上がっておるのでございますが、いまお話のように、昭和三十八年度は前年に対して八%も上がるようなことはないと、はっきり申し上げておきます。(拍手)  次に、住宅問題でございますが、お話のとおり、非常に必要でございます。過去三十六、三十七、三十八年で二百二十万戸でき上がっております。二百二十万戸のうちでも、民間が百四十二万戸でございます。私は、政府としてできるだけ公営住宅、いろいろなことをやりますが、民間におきましてもいままで以上に住宅をつくられるよう特に希望して、また政府としてもあらゆる面で協力いたしたいと思います。  なお、住宅公債を発行することは、住む人だけを目当てにしておるのではございません。一般大衆から一般金融機関等の引き受け等によって公債を発行するのでございます。  なお、減税につきましては、お話のとおり、三十五年以来三カ年間に三千億ばかりやっております。三十九年度にもやりたいと思いますが、先般間接税中心にいたしましたので、来年度におきましては、所得税、法人税、そして住民税、ことに住民税におきましては、ただし書きにより分を本文方式に改める。一年で改められますか、二年かかりますか、その点は考えなければなりませんが、なるべく早くやりたいと思っております。また、電気ガス税も相当減税するつもりでございます。(発言する者あり)住民税の本文方式を一年でやれとおっしゃるが、一年でやりますと二百四十億円ばかり要る。その財源をどうするか。あなた方のようにあと始末をしない約束ならできますが、そうはなかなかいきません。  なお、固定資産税の評価がえはいたしておりまするが、固定資産税を増徴しようということは全然考えておりません。増徴いたしません。御安心ください。  なお、外国との賃金の比較をおっしゃっておられますが、一時間当たりの日本労働賃金とイタリアとはほとんど同じでございます。しかも福利施設のほうは、こっちがよいと認めております。もちろん、イギリスやドイツに対しましては半分程度でございます。フランスよりは相当低い。しかし、これは何でしょう。日本消費者物価が向こうよりも安い証拠でございます。皆さん、賃金は上げろ、消費者物価は上げてはいかぬということを解決する人は、だれもおりません。賃金が上がれば消費者物価も上がる。だから、アメリカは日本消費者物価の二倍半、イギリスやドイツは日本の六、七割増し。私は、賃金も上げましょう、消費者物価もできるだけ上げないようにしますが、しかし、賃金が上がればある程度上がることは、農民や中小企業や低所得者のことを考えて言っていることを御承知おき願いたいと思います。  なお、最低賃金の問題につきまして私は申し上げましょう。いまから三、四年くらい前に、総評の方々は、最低賃金八千円と言うておったではございませんか。いまは中学校出た人が一万円、しかもあのとろは、三十五年では、最低賃金法の規定の適用を受ける人が三十一万人でございましたが、いまはどうです。今年の九月末は、三十一万人に対して二百五十四万人、とにかく八倍くらいになっておるではございませんか。私は、こういうところからどんどん最低賃金制の問題を全国的に将来考えていきたいと思っております。  なお、選挙違反の問題につきましてのお話でございますが、私は、はっきり申し上げます。第一審、第二審で有罪の判決を受けた人は公認いたしません。ただ、いま係属中のもの、一審の判決を受けない係属中のものまでも公認しないということはどうでしょう、私はそれはとらないのであります。一審、二審の有罪判決を受けた人は公認いたしません。  また、解散の時期等につきましては、もうたびたび言っておるとおり一で、せっかく今熱心に審議中でございますから、これは言わないことにいたしましょう。  次に、長雨対策、災害対策。私は、予備費を活用いたしまして、いわゆる自作農創設資金の問題、災害対策としてはいろいろな措置をいままでいたしておりますし、もし、どうこういった場合には、今後も予備費を使って、お困りにならないような災害対策、長雨対策をはっきり講じてみせます。  なお、人つくり、犯罪防止につきましては、先般来申しておりますとおりでございます。私は申し上げますが、私の言っておることは口頭禅ではございません。お話のように、国民が、どっちが正しいか、どっちが国のためになるかということの結論を出してくださると私は考えておるのであります。(拍手)     —————————————
  21. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 西尾末廣君。   〔西尾末廣君登壇〕
  22. 西尾末廣

    ○西尾末廣君 私は一民主社会党を代表いたしまして、昭和三十五年、安保騒動の中で池田内閣が成立してからの三年間を振り返りながら、衆議院の解散、所得倍増計画中心とする経済政策、外交政策、並びに国会正常化、福祉国家などの諸点について、池田総理のお考えを伺い、あわせて、民主社会党の立場を明らかにしたいと存ずる次第であります。(拍手)  去る十五日、第四十四回臨時国会が召集されましたが、本臨時国会は、第一に、所得倍増計画失敗による最近の物価高について政府にその対策を要求し、第二に、さきの第四十三回通常国会の失対法をめぐる混乱の結果、国民生活に甚大な影響を与える多くの法律案が流産したことについてそのあと始末を行ない、その後公務員に対する人事院勧告も行なわれましたので、これらを中心とする補正予算を成立せしめること、第三に、おくれているILO八十七号条約の批准を一日も早く行なうために開かれた国会であります。(拍手)このような臨時国会の意義にもかかわらず、早期に国会の解散を行なうであろうことが伝えられておりますが、私は、まず、解散の理由について池田総理にその所信をお伺いいたしたいのであります。  旧憲法の時代は、天皇に主権があり、衆議院の解散は、いとも簡単に、天皇の名において行なわれたのであります。しかし、現行憲法では、主権者は国民であります。その主権者から選ばれた衆議院を、憲法第七条によって解散するについては、内閣総理大臣はきわめて慎重、かつ、謙虚でなければなりません。したがって、国家の方向を定める重大な政治問題が惹起し、国民の意思を直接聞かんとする場合、また国会が混乱の極点に達して解散するよりほか道のない場合以外は、軽々に解散してはならないのであります。今日、このような解散を行なうべき大義名分もなく、ありとすれば、自民党の党利党略、池田三選のための解散としか受け取れないのであります。(拍手池田総理は、いかなる大義名分に基づいて国会を解散しようとするのか、この点を御明示願いたいのであります。  わが民社党は、少なくとも、国民生活に必要な補正予算を成立せしめ、ILO八十七号条約の批准だけは済ませて解散すべきであると主張してきたのであるが、総理の所見はいかがでありましょうか。もちろん、わが民社党といたしましても、解散あればこれを受けて立ち、総選挙においてわが党の主張政策国民に訴え、政治の革新に進む積極的な気がまえを持っておることは、いまさら言うまでもないのであります。しかしながら、解散の問題は、憲政の運用上きわめて重大であり、憲法第七条による解散権の乱用は、累を後世に残すものでありますから、ここに、あえて総理に対し、あくまで正々堂々、大義名分をもって解散に処すべきことを要請する次第であります。  次に、池田内閣の施策の重点は、何と申しましても所得倍増政策であります。所得倍増政策三カ年の結果、今日残されたものは、国際収支の恒常的な不安定、消費者物価高騰農業中小企業の近代化のおくれと、産業間、企業間の格差拡大であります。これは所得倍増計画失敗であったことを現実に立証しておるものであります。  以下、所得倍増政策失敗順序を追うて明らかにし、同時に、わが党の立場をも明らかにしたいと存ずる次第であります。  所得倍増政策は、本来、去る総選挙において池田総理選挙政策のキャッチフレーズとして打ち出したものであり、これを合理化するために、あとから高度成長政策の理論をつけただけにすぎません。つまり、政策が先にあってキャッチフレーズができたのではなくて、キャッチフレーズが先に出て、政策があとから追いかけているということであろうと思うのであります。ここに一句の無理の根源があると思うのであります。したがって、池田総理所得倍増政策、すなわち、高度成長政策の理論には根本的な誤りがあります。総理は、過日の所信表明演説の中で、過去三年の高度成長によってゆとりができた、このゆとりを活用して、今後は農業中小企業に強力な施策を行なうと述べております。総理のお考えは、所得を倍増するためにはわが国産業経済の発展が必要である、そのためには生産性効率の高い大企業に財政投融資を行ない、大企業の所得を高めるべきである、そうすれば自然にその恩恵が農業中小企業労働者に浸透するものであるという点にあります。この考え方は、かつて、日本産業の発展のためには中小企業の倒産や犠牲が続出してもやむを得ないと放言した考え方と軌を一にするものであります。われわれの考えは、大企業と同時に、農業中小企業の近代化のためにも十分の財政投融資を行なうべきであるという点にあるのであります。今日池田総理は、所得倍増計画のアフターケアとして、農業中小企業の近代化に努力すると述べておられますが、いまごろになってこういうことを言われるのは、政治家としても、経済の専門家としても、まことに不見識なことであります。(拍手)アフターケアを必要とするようになることは、初めから予見し得ることであったのであります。所得倍増政策が今日失敗し、大きな手直しを迫られている最大原因は、このような池田総理根本的なものの考え方の誤りにあった点を私は第一に指摘したいのであります。(拍手)  所得倍増政策第二の失敗は、国際収支の恒常的な不安定であります。現在、経常収支は毎月五千万ドル程度赤字で、これを海外からの金利かせぎの短期資本の流入によってまかない、かろうじて収支のバランスを保っておる不安定な状態であります。しかしながら、このびほう策は、来年の二月ごろには、物価高に加え、ドル防衛措置による利子平衡税の新設、IMF八条国移行、OECD加盟などに伴う経済悪化の条件が集中し、大きな危機に見舞われるであろうことをおそれるのであります。  所得倍増政策第三の失敗は、消費者物価高騰であります。私は、三十五年秋、この壇上で、所得倍増政策物価政策がなく、必ずやこの計画物価倍増を招来するであろうことを警告しておきました。この警告はすでに事実となってあらわれております。すなわち昭和三十五年は三・八%、三十六年は六・二%、三十七年は六・八%、本年は八%物価が上昇するものと予想されます。いや、それ以上になるものと思われます。しかるに池田総理は、昭和三十八年度は消費物価は二・八%上昇に押えると述べられたが、現実はその見通しの誤りを立証しておるではありませんか。さらに総理は、幾多の公一共料金値上げを認可し、物価上昇による世論の批判が激しくなってまいりますと、公共料金値上げ抑制措置とか、物価安定総合対策などを打ち出したが、これらはいずれも立ち消えとなり、物価対策について一度も真剣に取り組んだことはありません。物価問題は、経済的なものであるとともに、心理的な側面を重視せねばなりません。この点、池田総理の考慮が欠除しておる点を私は遺憾とするものであります。(拍手)  わが党は、物価抑制の具体策として、近代化のおくれている中小企業農業サービス業の近代化促進のため、大幅な融資を行なう、大企業製品の価格引き下げる、流通機構を整備して中間経費を削減する、公共料金は絶対上げない、消費者保護のための消費者基本法を制定するなどの対策が必要であると信ずるのであります。  以上あげたところによって所得倍増政策失敗は明らかであります。先日宮澤経企長官が、経済政策担当の責任者として、今日の政策を続ければ、大企業と農業中小企業の格差はますます大きくなるので、この格差是正のため、いまこそ所得倍増政策を手直しして安定成長に切りかえるべきであると池田総理に進言されました。この考えは、すでに三十七年一月、当時の藤山経企長官が経済演説で明らかにしたところであり、宮澤長官も本年六月にすでに明らかにしたところであります。しかるに池田総理は、これに耳をかさず、強引にいままで高度成長政策を推し進めてきたが、いまや情勢上やむを得ずようやくこれを取り入れようとしておるのであります。あやまちを改むるに、はばかることなかれということばがあります。高度成長政策安定成長政策に転換するのであれば、池田総理は、いままでの高度成長政策失敗を率直に認め、これを国民に謝し、高度成長政策安定成長政策に切りかえることを明らかにして、国民の協力を求めるべきではないでしょうか。(拍手)  以上、私の申し上げた意見に対する池田総理の御見解をお伺いいたしたいのであります。  次には、外交問題であります。  本年に入りまして、米英ソの部分的核停条約の調印が行なわれ、今国会にも、同条約の批准案件が提案されております。この部分的核停条約の成功は、世界の平和に一条の光明を与えたものであり、われわれは心からこれを高く評価し、歓迎するものであります。しかし、一方では、中ソ会談が決裂し、アジアの情勢は緊迫した空気に包まれております。部分的核停条約の成功と中ソ会談の決裂の二つは、世界情勢が新しい段階に到達したことを示すものであり、今後のわが国外交の基調を定める上で、きわめて重要な要素であります。この新しい国際情勢に対処して、世界の平和とわが国の安全を守るためには、日本独自の強力な外交の展開と、国論の統一が必要であります。  私は、かねてから、外交論争は水ぎわで打ち切り、超党派外交を行なうべきこと、国論を統一して、強力な世論を背景とした自主独立の外交を進めるべきことをしばしば訴えてまいりました。しかるに、わが国の現状を見ますると、池田内閣、自民党は、向米一辺倒の外交によって、わが国の利益を軽視し、対米追随主義におちいっております。また、野党第一党でありまする社会党は、全く正反対で、積極中立を旗じるしとしながら、その実、共産勢力のお先棒をかつぐような、自主性のない外交路線を主張しておるのであります。(拍手)  池田内閣は、成立以後、国連中心主義の外交を唱え、最近は経済力が充実したとして、大国の仲間入りをしたようなことを言っておられまするが、池田・大平の外交政策の路線の現実は、いわば自主性のない追随外交以外の何ものでもありません。自由陣営内にあって、アメリカを対等の協力者とする外交路線を進めることは、誤りではありません。しかし、日米綿製品の交渉、利子平衡税、原子力潜水艦の寄港問題、沖繩問題、中共問題等について、もっと積極的に日本の立場と利益主張することが必要であると信ずるのであります。(拍手)  特に、アジアの安定と世界の平和に決定的な影響を持つものが中共問題であります。しかるに、総理は、演説の中で、アジアの繁栄と世界の平和に寄与するため、自主的な外交政策を積極的に展開し云々と述べておられますが、現実には、この中共問題に対して何ら積極的な対策を示さず、ひたすら政経分離の原則をたてにして、アメリカの中共封じ込め、中共孤立化政策を従順に実行しているにすぎません。一方、社会党は、米帝国主義は日中両国民共同の敵であるとの立場から、中共の立場をそのまま容認しております。このいずれの考え方も、現在のアジア情勢に即応する現実的なものではなく、また、中共問題を世界の平和に沿う方向で解決し得るものではありません。われわれは、中共の誤れる革命的なイデオロギーと、好戦的な膨張政策やその核武装に反対します。しかし、また半面、中共を孤立に追いやるのではなく、むしろ国連に加盟せしめることによって、国際協力の場に引き入れ、かつ、日中間の経済、技術の交流を通じて中国の農業、人口問題の解決に道を開き、ひいてアジアと世界の平和と安定に寄与せんとするものであります。  また、日韓会談については、基本的に日韓国交の正常化に賛成しつつも、韓国の総選挙の事態と民主化の方向を見きわめながら、実質的な交渉に入ることを政府に強く要望するものであります。  池田総理は、同じく対米協力のたてまえに立ちながら、完全な自主性を貫くドゴールにならい、そして社会党はフルシチョフの現実性に学べ、と言いたいのであります。こうなってこそ、初めてわが国の超党派外交が成り立ち、国家と民族の利益を守る外交が展開できるものと信ずるものであります。  以上の諸点につきまして、池田総理の御見解をお尋ねいたしたいと存ずるのであります。  次に、国会の正常化と議会制民主主義の堅持についてお伺いいたします。  池田総理は、内政問題についても、また外交問題についても、その他困難な問題は、すべてこれを避けて通るという態度をとってこられました。国会の運営についてもまたしかりであります。いままで、総理は、自民党の総裁として、何らき然たる態度を示すことなく、あるときは高圧的に、あるときはもみ手でやみ取引するような与党の態度を是認してきておるのであります。  かつて、安保騒動によって解散された三十五年秋の総選挙中、テレビの三党首会談の際、われわれは、今後いかなる事情があろうとも単独審議はしない、いかなる事情があろうとも審議拒否、実力行使をしないということを国民の前で誓約したのであります。しかるに、その後毎回の国会において、相も変わらず自社両党の激突により議会は混乱し、醜態を暴露し、国民のきびしい糾弾を受けているありさまであります。(拍手)民主憲法のもとにおいては、国会は国権の最高の機関であります。にもかかわらず、このような醜態が改まらないならば、ついに議会政治国民の信頼を失うに至り、やがては右翼のファッショ、左翼の共産革命の気風が台頭するおそれがあります。民主政治の機能を守るためには、何よりもまず国会の正常化が必要であります。国会の正常化は、政策以前の問題であり、民主政治の大前提であります。それゆえに、各党とも従来の行きがかりや党利党略を離れて、国民に信頼される国会の正常化をこの際国民に約束すべきであると存ずるのであります。(拍手)それには、与党であり、第一党であるところの自民党がまず謙虚な気持ちになって、そのイニシアをとるべきであると思うが、総理は、この点についてどうお考えになられますか。この際、全国民に誓約する意味において、所信を明らかにしていただきたいのであります。  最後に、福祉国家の問題について池田総理にお伺いいたします。  総理は、先日の所信表明の結びにおいて、内政においては、農業中小企業の近代化を完成して、生産性所得を高め、ひいては消費者物価根本的解決をはかり、国民の不安を一掃し、かつてない高度の福祉国家を築く決意であると強調しておられます。しかし、かつてない高度の福祉国家を築くということは、いかなる内容を持っておられるのでありますか、はなはだしく抽象的かつオーバーな表現でありまして、理解しがたいのであります。もとより、政治の究極の目的は、全国民に平和で豊かな生活を保障することにあります。その意味において、わが民社党は、立党以来、勤労者の福祉国家建設を政策の基本目標としておるのでありまして、池田総理が、わが党にならって福祉国家建設を云々されることは、まことにけっこうであります。しかしながら、重要なことは、どのような手段方法によって福祉国家を建設するのか、その具体策であります。現在、世界で福祉国家の標本と目されておる国はスウェーデンであります。この国は貧富の格差はきわめて狭く、国民生活日本の四倍の豊かさであります。かつてない高度のという意味は、スウェーデン以上ということになりますが、総理はこのことを御承知の上での御発言でありましょうか。スウェーデンでは、強力な民主的労働組合運動を背景とした民主社会主義の政党が、三十余年の長きにわたって継続的に政権を担当し、ようやく今日の福祉国家を完成したのであります。また、その他の国々においても、民主社会主義政党のイニシアによって福祉国家へと成長しつつあるのであります。しかるに、いまや解散、総選挙を前にして、池田総理が唐突に福祉国家建設のスローガンを強調されるのは、自民党が、はなはだおそまきながらようやく近代的な政党に脱皮しようとする計画がその緒についたばかりであることを思うとき、失礼ながら総理の御発言はすなおには受け取りがたいのであります。  さきに述べましたように、総理は、所得倍増政策において、まず大企業に惜しみなく財政投融資を施し、その結果、ゆとりができたから、これからは農業中小企業の近代化に力を入れるというような考え方をとっておられますが、そのような考え方は、真の福祉国家建設への思想とは一致しないのであります。われわれは、百六十万人の要生活保護者や、千百万人にものぼると推定されるボーダーラインにある低額所得者の生活保障をはかることはもちろん、少なくとも年収六十万円までは所得税を免税する一方、租税特別措置法等による高額所得者に対する手厚い恩典を改廃すること、そして零細企業や耕作農民の苦しい生活を打開することのために財政投融資を活用すること、すなわち、憲法第二十五条が要請しているところの、すべての国民に健康で文化的な生活を保障するということを優先的にすることが、福祉国家建設への道であると信ずるのであります。(拍手)  池田総理は、元来ムードづくりがじょうずであります。総理は、三十五年の総選挙には所得倍増政策一つのムードづくりに成功し、昨年の参議院選挙には、国づくり、人つくりのキャッチフレーズで、まあまあの成績をおさめた。本臨時国会の解散問題も、大義名分のない解散ムードづくりに成功しつつあるのであります。との総理のムードづくりのじょうずな手ぎわを思うとき、この農業中小企業の近代化をはかり、消費者物価根本的解一決をはかるということも、また、かつ七ない高度の福祉国家を築くということばも、結局は、解散、総選挙を前にした単なるムードづくりにすぎないのではないかと疑わざるを得ないのであります。この疑いは決して私ひとりではありません。解散、しょせんは総選挙によって主権者たる国民が真偽を決定してくれることと思うが、この際、  一般国民の納得のいく福祉国家建設の構想を、もっと親切に、具体的に御説明を要求いたします。  以上をもちまして、私の代表質問を終わる次第であります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  23. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。  御質問の第一点は解散問題でございます。  私は、先般来申し上げましたごとく、各党と熱心に衆参両院で政策論議をいたしております。しこうして、この政策論議と解散問題は関連のある問題であり、しかもまた、この解散問題−は将来に向かっての国民考え方を聞かなければなりません。そういう点から、いろいろ理由はございましょうが、まだ解散になっておりませんので、その理由はここで申し上げることはできません。(発言する者あり)もしそういう事態ができたならば、はっきりと申し上げたいと思います。(拍手)  なお、所得倍増計画についての御批判でございまするが、私は、御承知のとおり、所得倍増というのは内閣を組織する一年半前に広島において言っておるのであります。昭和三十四年の二月です。私はこの問題をキャッチフレーズで言ったのではない。キャッチフレーズで言ったのではございません。日本国民のなみなみならぬ努力によりって、敗戦後、倍増ではございません、二十年間に三倍、三倍半の実質増加をしておる。この国民の努力に報いるべく、私は先頭に立って言ったのでございます。キャッチフレーズでもなんでもございません。(拍手)  また、あなたの御質問は、高度成長とか安定成長とかおっしゃいますが、大体高度成長というのは、どういうものを高度成長というのでしょうか。この定義がきまらなければできないのであります。私は、十年間、倍増は七%程度でいくべきだ、しかし初めの三年間は九%でいこうと言ったのが私の経済成長でございます。それが実質的に一五%、名目的二〇数%、これを私一は是認しておりません。私の高度成長というのは、やはり七%、九%を高度成長と言っておるのであります。(発言する者あり)その点をきめずにおいて、外国から見たら七%は高度成長でしょう。九%は超高度成長でしょう、外国から見たら……。私は、これはできる経済成長と言っておるのであります。したがって、超高度成長、一五%とか、名目二〇%以上の成長は、私は言ったことはない。それは超高度成長だから、九%を七%くらいにいまからしでいこうというのであります。この定義をきめずに高度成長といって議論せられても、これは通らぬ議論で、一人の、いわゆるきりきり舞いの議論にすぎないと考えております。(拍手)   なお、国際収支の問題は、いろいろ言っておりまするが、外国の信用はますます高まって、日本の円の価値は安泰でございます。どうぞ御心配ないように。外国人でも日本経済は信用しておるのでございますから、日本経済がどんどん伸びていくときには、外国からお金を借りることも適当でございます。商売がどんどん伸び、仕事がふえるどきに、銀行から金を借りるということは当然のことではありますまいか。借りられるだけの信用があることを喜ばなければなりません。(拍手)  なお、消費者物価につきましても、いろいろお話し申し上げたとおりでございます。  また、外交問題につきまして申し上げまするが、私は、お話のとおりに、外交問題につきましては、国論の統一することを願っております。三木君が言われたように、外交問題、教育問題で百八十度違うことは、まことに遺憾でございます。したがいまして、国連の場においては少なくとも一体となるために、社会党に国連の場においての日本代表を申し込みましたが、断わられたような状態でございます。私はあなたと同じように、国連の場においては一致した態度をとりたいということは同感であるのでございます。  なお、そのほかにつきまして、外交の処理につきまして、追随とかなんとか言っておられまするが、決してそうではございません。あなたは外交の実態を知らないか、さもなければ、色めがねで、実態を見ようとしない議論だと思います。(拍手)  なお、ドゴールに学べという話でございますが、何もドゴールに学ぶ必要はございません。われわれは、国民とともに、ドゴール以上の外交をやるべくいま努力をしておるのでございます。(拍手)  なお、国会運営の非合理性につきましては、お話しのとおりでございます。私は、単独審議をしないことは誓約したのでございますが、そのときに条件がございます。反対党が出席しなかったときには、物理的に単独審議をしなければならぬということは、はっきり申し上げておるのであります。(拍手)だから私は、過去の運営の状態を見まして、国会運営につきまして今後改めなければならぬ、これは今後国民にはっきり訴えたいと思います。あなたと同様に、国会運営の非合理性を国民に訴え、ほんとうに国民の納得のいく議会運営を樹立することが私の念願であるのであります。  福祉国家につきましての定義でございまするが、かつてない福祉国家というのは、私は、日本における福祉国家のみならず、世界における福祉国家のうち、日本が一番よくなることを念願しております。スウェーデンとかノルウェーのあの表面的の福祉国家を見て、これが世界の最高だとおっしゃるのは、いかがなものかと思います。福祉国家が行き過ぎて国民が怠情になり、自殺が多くなるような福祉国家は、日本にはとらないことをはっきり申し上げます。(拍手)  われわれは、かつてない豊かな生活、明るい平和な生活を望んでおるのであります。わが自由民主党は、この福祉国家の建設の先頭に立つことをここで誓います。国民は、必ずやわれわれが先頭に立つ福祉国家の実現に協力してくれることを確信して、私の答えを終わりたいと思います。(拍手
  24. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  25. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) ただいま内閣総理大臣から詔書が発せられた旨伝えられましたから、これを朗読いたします。   〔総員起立〕   日本国憲法第七条により、衆議院を解散する。   〔万歳三唱、拍手〕    時に午後四時二十六分      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         内閣法制局第三         部長      吉國 一郎君         総理府総務長官 野田 武夫君         経済企画庁調整         局長      山本 重信君      ————◇—————