○
河上丈太郎君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、過日行なわれました
池田内閣総理大臣の
所信表明の
演説に関しまして、若干の
質問をいたしたいと存じます。
質問の第一点は、
国会の解散についてのことでございます。
社会党は、
さきに、
政府に対して、
災害対策、
公務員給与の改善、
ILO条約批准などの
案件を処理するために、すみやかに
臨時国会を開くことを
要求いたしたのでありまするが、幸いに
政府はこれに応じてここに
臨時国会を開かれたのでございます。
社会党としては、これらの
案件をすみやかに処理するために、
補正予算その他の
審議については、
自民党との話し合いの上で、これを促進する用意があることを再三にわたって明らかにしてまいったのでありまするが、きょう私は本壇上を借りまして、いま一度同様の
趣旨を繰り返すものでございます。幸いに、先日の本
会議における
総理の御
演説におきまして、
総理は、
補正予算、
ILOその他の
案件をすみやかに
審議を尽くされたいと述べておられるのでございます。さらに
田中大蔵大臣は、
補正予算にすみやかに御賛同あらんことをお願いいたします、と述べられておるのであります。したがいまして、
補正予算をはじめとする諸
案件をすみやかに
成立させることについては、
自民党と
社会党との間に全く
意見が一致しておるのであります。(
拍手)さらにまた
総理は、正々堂々と事を決すると述べておられまするが、これまた私
たちの希望するところであるのでございます。
社会党としては、
補正予算その他の
案件成立後、
内閣不信任案を出して、
池田内閣と対決する決意を固めておるのでございます。(
拍手)これこそ正々堂々の
態度であると私
たちは信じておるのでございます。
このように、
国会解散に至るまでの
段取りについて、
自民党と
社会党との
意見は一致しておるのでありまするから、今後の
国会の運営は、その
段取りに従って進められるが当然であると私は思うのでございます。私は、ここで、
池田総理に対し、以上のような
段取りで事をはかるよう提案するものでございます。
一部の報道によりますると、
政府は、
補正予算その他の
案件の
審議に入ることなく、この
代表質問の途中、または終了後解散する計画があるとのことでありまするが、これではこの
臨時国会を開いた意義が全くなくなり、
さきに
総理が本院に対して要請されたこととは全く相反する結果になるのではないかと思われるのであります。(
拍手)まことに筋の通らない話でございます。
社会党が
反対する
案件は警察官を導入しても押し通そうとするのに、
社会党がその
成立に協力しようとする
案件は、
政府みずからこれを提案し、すみやかな
成立を要請しているにもかかわらず、われとわが手で
国会を解散することによってその
成立を妨げるというのでは、
社会党はもちろん、
国民も納得できないところでございます。(
拍手)
そこで、
総理に次のことを
お尋ねしたいのである。
総理は、
補正予算その他の
案件の
成立を待たずに
国会を解散するつもりであるかどうかということであります。
総理は、
補正予算その他の
案件を今
国会中に
成立させたいと思っているのであるかどうかという、この二点について明確なる御
答弁をお願いしておきたいのであります。(
拍手)
質問の第二点は、
国会の
正常化についてでございます。いま一番大きな問題であると思いまするので、
総理の所見を
お尋ねいたしたいと思うのでございます。
国会正常化の本来の
趣旨というものは、
憲法に規定されておる
国権の
最高機関としての
国会の
権威を高め、
国民の
国会に対する
信頼を強めることにあります。私の見るところをもってしまするならば、これには
三つの
条件があると
考えるのでございます。
第一の
条件は、きれいな
選挙によって
議員が選ばれてくることであると思うのであります。(
拍手)いわゆる正常なる
国会を基礎づける
条件というものは、
選挙が公平に行なわれて、きれいな
選挙で
議員が選ばれてくることが一番大切である、こう
考えまするが、この点について私は
二つの事実を指摘いたしたいと思うのであります。
昨年の
参議院選挙を前にいたしましての
通常国会において、
自民党政府は
選挙法改正案を提案いたしましたが、その
政府案に対し、
与党である
自民党が
反対をして、これを骨抜きにする
修正案を出したのに対し、
野党である
社会党が
政府案を支持いたしたのでございます。このようなことは、まことにかつてない
できごとでございまするけれども、要するに、これまでの
不正腐敗選挙に対する
国民の強い
批判にこたえて、
政府原案が若干これを取り締まろうとするに対し、
自民党がこれに
反対したからであるのでございます。これはまことに残念なことでありまするけれども、事実でございます。
もう
一つの例は、本年四月の
東京都知事選挙において発生いたしましたにせ
証紙の
事件でございます。(
拍手)この
事件につきまして、
検察当局が明らかにした事実は、
自民党本部のある職員が多額の金を動かしてにせ
証紙をつくり、罪に問われたということでございます。
私は、この
二つの事実を
自民党を
批判するために引用したのではございません。私は一
国会議員として、このような
事態を真剣に憂えざるを得ないからであるのでございます。(
拍手)
不正腐敗の
選挙が半ば公然と行なわれ、それによって当選する
議員がふえ、その頭数をそろえて多数になれば何でも押し通せるというようなことになったとするならば、
国会は
国民の
信頼を全く失い、
民主政治そのものが危機にさらされるのではなかろうかと私は心配にたえないのでございます。(
拍手)この
根本に触れることなくして、いたずらに
国会正常化を唱えてみても、それはから
念仏に終わるのではないかと私は思うのでございます。
そこで、私が
総理にお伺いいたしたいことは、
総理は
不正腐敗の
選挙をなくし、きれいな
選挙を行なうためにどういう具体的な措置をとるつもりで
おいでになるのかどうかということでございます。近く総
選挙も行なわれまするので、この点に対する
総理の
考え方を明確に
国民にお示しくださることを心からお願いいたす次第でございます。(
拍手)
国会の
権威を高める第二の
条件というものは、
国会において与
野党の論議が十分に尽くされて、
国民が納得する形で
政治が運営されることでございます。
国会は
討論の場であり、
国民がわれわれに一票を投じて
国会に送り出したのは
国政審議のためであって、
ボタンを押すためではないのでございます。(
拍手)
少数野党が登院し、
討論に参加し、
政府与党を
批判するというのは、その
言論の自由が保障され、その
言論によって
政府の
施策に一定の影響を与えてこそ初めて
意味があるのでございます。
最近五カ年間の
国会運営を振り返ってみますると、警職法、新
安保条約、
政防法という
三つの大きな
事件が起こっております。そのうち新
安保条約はかろうじて
成立いたしましたが、他の
二つはいずれも廃案となったのでございます。衆参両議院において三分の一の
議席しか持たぬ
社会党が、どうして多数の
自民党を
相手に回してこれらの法案の
成立を食いとめることができたかといいまするならば、それは、一にかかって、
国民諸君の
社会党に対する支持が三分の一という単なる
数字をはるかに上回って強かったからであろうと私は思うのでございます。(
拍手)
政治というものは
生きものであると私は思います。
国会はすべての制度と同じように固定した器であるのでございます。その器の中に動きの激しい
生きものを成長させるためには、その器の中が十分に柔軟でなければなりません。その器の中にストップ・ウォッチだの押し
ボタンだのと、妙なハイカラな機械ばかりを備えつけていても、
政治という
生きものが順調に成長するという
保証はどこにもありません。(
拍手)むしろ、それは角をためて牛を殺す結果に終わるだけでございます。
多数決というものが
国会運営の唯一絶対の
原理だと
総理はお
考えになっておるのであるかどうか、押し
ボタン装置を取りつけるならば、
国会は
正常化するとお
考えになっているかどうかと私は
お尋ねをいたしたいのでございます。
最近におきまするところのヨーロッパの
政治学といたしましては、
民主主義というものの
考え方に、非常に大きな変化が起こっておるのでございます。
民主主義というものを、多数の
政治であるという
考えから脱却して、いまは
民主主義というのは、
議論を尽くす
政治であるというのが、イギリスにおけるところの
政治の
原理であるのでございます。(
拍手)しかるに、今日までの議会においては、
言論の自由を制限して、そうして
多数決の原則だけを押しつけようとするところに、今日までの
国会の
正常化を害する
最大の
原因があると私は
考えるのであります。(
拍手)
国会の
権威を高める第三の
条件は、
国会が
行政府の
施策を
国民とともに監視し、
不正腐敗を糾弾し、かってな運用を抑制することでございます。ところが、最近の
国会を見ますると、
自民党政府は、
社会党という
野党がいる
国会ではできるだけ知らせまいとし、
自民党は
自民党で、できるだけ
委任立法を行なって、
行政府の
独断専行を許す幅を広げようとしているのでございます。もしもこういう
傾向が続くならば、
国会は
行政府のつくり出した既成事実に
あとで
めくら判を押すという単なるおしゃべりの場所に変化してしまうのであります。
国会は
国権の
最高機関という
憲法の規定は、一片の空文と化するでありましょう。
野党の第一の任務は、
政府与党を
批判することであり、それが
民主政治の長所である。その
野党の
批判がうるさいといって国政の重要なる
案件を
国会に持ち出さず、それをまた
与党が
委任立法によって合法化するというようなことをすれば、
与党はみずからの手で首を絞める愚をおかすことになるのではないかと思うのでございます。(
拍手)
そこで、
総理に私が
お尋ねをいたしたいことは、
行政府に対する
国会の
監査機能を強化することは望ましいことと
考えられておるのかどうか、
委任立法によって
行政権の拡大を合法化する
傾向は、
国会の地位を弱めるから好ましくないと
考えるかどうかということでございます。
質問の第三点は、
政府の
所得倍増政策についてでございます。この問題につきましては、
あとで勝間田君が
数字等詳しく申しますので、簡単に私は触れていきたい、こう
考えるのでございます。
池田内閣は、三年前の総
選挙にあたって、
所得倍増ということを
政策として掲げ、二百九十の多数の
議席を獲得いたしたのでございます。それから三年たった今日、
国民が実感をもって味わっているのは
物価の
値上がりが第一であり、第二は収入の格差が広がり過ぎているということであり、第三は社会的不安が増大したといろ、われわれが三悪
倍増と申していることであるのであります。(
拍手)
もともと
所得倍増政策の出発のときから、私
たちは、
総理に向かって、
物価値上がりを
警告いたしておったのでありまするけれども、
総理は、
経済のことはおれにまかせろ、ぐずぐず言うなという
態度で
国会の
答弁をされていたのでございます。ところが、今日から
考えてみるならば、私
たちの
警告が正しく、
総理の自信がくずれていると私は判断をするのでございます。(
拍手)
その後間もなく、
物価は上がり、
国民の不安が大きくなると、
政府はしきりに
物価対策というふうな文章を発表しておりまするが、この間の
総理の御
演説を伺いましても、いろいろ
数字を並べて弁解しておりまするけれども、しかし、それで
物価が下がったという話は
一つも聞いていないのでございます。(
拍手)
国民は千万言の
物価対策を聞くよりも、
現実に
物価が下がることを
要求しているのであろうと思うのであります。(
拍手)ところが、
総理は、
国民の切実なる
要求に直面しながら、この一両年の間に
物価問題を解決するなどと、すこぶるのんきなことを言われておるのであります。二年後において
物価は安定してくるけれども、ことしや来年は大衆が苦しんでいることを見ぬふりをして
おいでになるという
態度は、どうも私には解せないのでございます。
物価の上がりますることは、これは
自然現象ではございません。したがって、
物価を、
自民党政府の
政策が正しくありとするならば、必ず下げることができると私は思うのでございます。(
拍手)過日私自身といたしましては、
政府が二千億の
減税をするのに、なぜ
消費者の生活を守るために
間接消費税の
減税にそれを充てないのかと私は疑問に思っておるのでございます。
そこで、
総理に
お尋ねしたいのは、
物価の上がることはやむを得ないと
考えておるのかどうか。
物価が上がったのは、何か
総理のお話では、
国民に
責任があるがごとくに言われておりまするけれども、私
たちは、
国民に
責任はないので、むしろ
自民党政府の
責任だと
考えておりまするけれども、
総理は一度その点についてはっきり御
答弁をいただきたい、こう
考えるのである。(
拍手)
この三年間、
物価は上がって少しも下がっていないのでございます。
池田内閣がこれを解決するために今度やろうとしておりまするけれども、どんなに
物価問題に対し説明をいたしましても、
数字をあげて
議論をいたしましても、
現実に下がらなかったら
意味がないのであります。
総理に申し上げたいことは、私は、
政権を持っているのでありませんから、力を持っているのでありませんから、したがって、
物価を
現実に下げていただきさえするならば、
国民は喜んで
池田君の
政策に賛成するであろうと思うのであります。しかるに、
物価が少しも下がらず上がるばかり、上がる
理由を説明しておるだけであって、将来はああなるであろう、こうなるであろう、こうやるのだということの
ただ約束だけであって……(「から
念仏だよ」と呼ぶ者あり)から
念仏である、私はこう言わざるを得ないのであります。(
拍手)
質問の第四点は、
人つくり政策についてであります。
所得倍増政策がもたらした
害悪は、しかしながら
物価値上がりに尽きていないのであります。
所得倍増政策の
最大の
害悪というものは、それが
金銭万能主義の横行する世の中を生み出し、富はつくり出されたが、一番大事な人間は見失われたというところにあるのでございます。この十年間に
国民所得はずいぶんふえましたけれども、
犯罪の件数も非常に大きくなっているということを、私は過日札幌でもって指摘いたしたのでありまするが、ことに最近における
青少年の非行が激増しておることは
総理も認めておるところであり、これでは
政府の
施策は
人つくりどころか、人こわしに終わっていることを示していると私は思うのでございます。(
拍手)こういうふうな状態を起こした
原因は何かというならば、要するに、
政治の姿勢が
根本的に間違っているからだと私は思うのでございます。
国民は
自民党政府のやり方をよく見ております。
原子力潜水艦は来てくださいと言ったり、土地や株を持って遊んで暮らす者には税金を軽くしたり、
選挙をやれば不正腐散の
選挙で罪に問われる者が出るというありさまをよく知っておるのでございます。このような
自民党政府が、いかに口で
道徳教育の充実を
国民に説教いたしましても、どうもぴんとこないと私も思うのでございます。(
拍手)
道義の確立というものは、みずから
道義を実現することにありと私は信じておるのであります。(
拍手)説教することではないのである。みずから範を示し、みずからこれを行なうところに、
道義を高める
根本の力があると私は信じておるのであります。(
拍手)
総理は、
演説の中で、
祖国愛に目ざめ、国家、社会、人類に奉仕する
青少年を育成することが
人つくりの基本であると、非常にりっぱなことを申されておりますが、こういうふうな
考えを実現する
一つの範をみずから示していただきたい、こう私は
考えるのでございます。ところが、いまやっておりまする
政府の
政策、いろいろのことというものは、必ずしもこうではないように私は思うのでございます。
この前の
国会におきまして、
東京都知事選挙におけるところの
不正証紙の
事件に関し八百板君が
質問し、
池田総理がこれに
答弁をした際にあたって、私は非常に遺憾に
考えたことがあるのでございます。それは何かというならば、
自民党のこの
犯罪の
主宰者といわれておるところの
松崎という人がおられますが、
池田さんは、その名を言わずして、
松崎それがしと言われたことを聞いたときに、私は非常に不愉快に感じました。何か知らぬけれども、
責任を回避するような態勢というのが私に見えて、残念にたえなかったのでございます。(
拍手)
国民全体が非常に関心を持つあの大きな
選挙において、あれだけの大きないわゆる
不正行為が行なわれた。それが自分の党の有力なる人であり、また有力なる幹部が検事さんのお取り調べを受けるというふうな
事態のあったときに、それに対して
ほんとうの
責任をどう感ぜられているかというふうなことが片りんも見えなかったことを私は残念にたえないのでございます。(
拍手)私は、
ほんとうに
青少年をよくする道というものは、範をたれることにあろうと
考えるのであります。
質問の第五点は、当面外交上の大きな焦点となっておる
日韓会談と
原子力潜水艦の
寄港についてでございます。
日韓会談につきましては、すでに昨年本院において、私が交渉をおやめになったらどうだと強く
要求をいたしましたが、
政府はそれを聞き入れることなく、会談を続行しておったのでございます。このたびの
総理の
演説においても、
日韓国交の
正常化が強調されておるのであります。
朝鮮問題についての
社会党の
政策ははっきりしております。それは、
朝鮮が
南北に分裂している今日、
南北いずれかの
政権を全
朝鮮を代表する
正統政府と認めこれと正式の
国交を樹立することには
反対であるということでございます。当面は、
南北両
朝鮮との文化、
経済の交流を拡大して、全面的、正式の
国交は、
南北統一後に
統一政府との間に樹立せよというのでございます。
総理は、
韓国は隣の国であるから仲よくしなければならぬとこの間
記者会見で申されておりまするが、それなら私は
総理にお伺いいたしたいのであるが、一体北
朝鮮はお隣でないのであるかどうかということであるのでございます。
また、
自民党の一部には、
韓国が共産化するのを防ぐためには、
日本が
援助しなければならぬという
議論があると聞いておりまするが、これはつい最近の歴史から何ものをも学ばない
議論であると思うのでございます。
アメリカは
韓国に対しすでに五十億ドルになんなんとする
援助を与えましたが、それをもってもなお
李承晩の亡命、クーデターの突発という
事態が起こっているのでございます。その上
日本がかりに五億ドル何がしの
援助を与えたとしても、
韓国の
政情が安定する
保証は一体どこにあるのでありましょう。外国の
援助がなければ共産化するというような国は、たとえ外国の
援助があっても共産化するということは、中国の蒋介石、キューバの
バチスタ政権の末路が何よりも雄弁に証明しているではございませんか。(
拍手)
昨年、私は、本院において、
日韓会談について
政府を追及いたしました際、
南ベトナム賠償の例を引き、腐敗した、民衆から遊離した
政権への
援助は、
国民の血税の乱費に終わることを
警告をいたしたのでございます。それから一年たって、現在、
南ベトナムでは、仏教徒がみずから火に投じて自殺をして
ゴ政権に抗議するというふうな痛ましい
事態が相次いで起こっております。
社会党の強い
反対を押し切って行なわれた
南ベトナムへの二百億円の
賠償は、一体どこへ行ったのでございましょうか。(
拍手)
日韓正常化は、この
南ベトナム賠償の実に九倍に及ぶところの一千八百億円というばく大な額を要するものでございます。しかも、その
相手側の
政権といえば、
軍事政権下の
選挙において
野党に過半数の票を奪われるというほど民衆に強固なる基礎を持たない
政権ではございませんか。(
拍手)それを
相手にして重大なる
案件を処理しようとするようなことは、はたして正しいかどうかということを疑わなければならないのでございます。
私は、そういう立場からいたしまして
総理に
お尋ねしたいことは、
南ベトナム賠償は
南ベトナムの
政情を安定させたかどうか、また、その
賠償はどのように有効に使われたのかどうか、
韓国への
援助によって同国の
政情が安定するという
保証は一体どこにあるのか、こういうふうな
質問を私はいたすのでございます。
次に、
アメリカの
原子力潜水艦寄港問題に関し、若干
お尋ねいたしたいのでございます。
第一は
核戦略上の観点からでございます。
さきに、私は、本院において、
総理に対し
沖繩は
核武装されておるかどうかと
お尋ねしましたところが、
総理は
沖繩は
核武装している事実を認めました。そこで、私は
総理に対し、
アメリカに向かって
沖繩の
核武装に抗議をし、その撤去を
要求するようにしてはどうかと
お尋ねいたしましたけれども、
総理はこれを拒否いたしたのでございます。また、かねがね、
社会党は
自民党に対し、
日本の
非核武装宣言を出すように数回にわたって
申し入れましたが、
自民党は将来のことについて手を縛られたくないということで、毎回拒絶しておられるのでございます。他方、
自民党政府は、
防御用小型の
核兵器を持つことは違憲ではないという
意見をとっておるのでございます。これらの事実を総合してみますというと、
自民党政府は、
国際舞台では
核兵器禁止などと美しいことばを並べながら、
日本については将来
核武装をねらっているのではないかという疑問が
国民の中に起こっておるのでございます。(
拍手)もしもそうでないとするならば、以下の
質問にお答えをいただきたいのでございます。
将来のことを縛りたくないというのは、将来は
日本を
核武装するということなのか。もし将来も絶対に
核武装をしないというならば、あっさり
社会党の提案を受け入れて、
非核武装宣言をやってはどうかと
お尋ねをいたしたいのでございます。(
拍手)また、
沖繩の
核武装に抗議して、その撤去を
要求しないのかどうかと、これを
お尋ねしたいのでございます。
原子力潜水艦の
寄港申し入れと相前後して、
原爆搭載機F105Dの
日本配備が発表されましたが、この
二つの兵器が原水爆を使用するものであることは
政府も認めております。ただ
日本へ来るときは
核兵器を持ってこないんだと言っているにすぎません。
総理は過日の
演説においても、
核兵器を装備しない限りという
条件をつけておるので、それでは
総理に
お尋ねいたしたいのでありまするが、
核兵器を持っているかどうかという検査を
日本政府はやる権利があるかどうかということでございます。(
拍手)もし
日本政府が検査ができないというならば、一体だれが
核兵器がないということを
保証するのでございますか。
アメリカの
原子力潜水艦が
日本へ
寄港しなければ
日本の安全は保てないのか、なぜ保てないのか、この点を
お尋ねいたしたいのでございます。
第二は、
安全性の観点からでございます。
原子力潜水艦の
寄港については、
日本学術会議は、
専門家の学者を集めて討議した結果、その
安全性に疑問があるからその
寄港は望ましくないという
態度を明らかにいたしておるのでございます。これを裏書きするかのように、
政府は、
原子力潜水艦の
寄港に際し事故が起きた場合には、その
放射能防護対策というものを作成しておるのでございます。デンマークは
北大西洋条約の
加盟国でありまするけれども、
原子力潜水艦の
寄港に対してははっきりこれを拒絶しているのでございます。ところが
総理は、
原子力潜水艦の
寄港は
安全保障条約に照らして当然のことであると過日も述べておるのでございます。これは
アメリカ政府の言い分と全く同じであります。
原子力潜水艦の
寄港について
アメリカ側から
申し入れがあってから現在まで、それがぐずぐずしてきた
最大の
理由というものは、要するに
国民がこんな物騒なものは来てもらっては迷惑だと思っているからであると思うのであります。(
拍手)ところが、この
国民の当然の気持ちに対し
池田総理は、
アメリカ政府と口を合わせて
安保条約をかさに着て
寄港を受け入れようというのでございます。デンマークは東京の半分くらいの人口しかない小国でありまするけれども、
原子力潜水艦の
寄港はきっぱりと拒絶しているのでございます。デンマークの何倍も大きい人口を持つ
日本において、しかも口を開けば
日本は大国だという
池田総理が、
アメリカ政府と同じ立場に立って、
日本国民に向かって
原子力潜水艦の
寄港を受け入れようということは合点がいかないことでございます。(
拍手)
日本国の
総理大臣は
日本の学者の言い分に耳を傾け、
日本国民の気持ちを代表し、外国に対しものを言うことが、その役目ではないかと私は思うのであります。(
拍手)そうすることが、
日本が
ほんとうに国際社会に尊敬される道ではないかと私は想像するのでございます。
それにつきまして
総理に次のことを
お尋ねいたしたい。
総理は、
日本の学者の言い分と
アメリカ政府の言い分と、どっちを信用するのか。(
拍手)
アメリカ政府に対し
原子力潜水艦の
寄港を断わり、F105Dの撤去を
要求するか、もしそうしないというならば、なぜかというその
理由を明らかにしていただきたいのでございます。
私の
質問を以上で終わりまするが、最後に一言
総理に
お尋ねしたいことがあるのでございます
総理は、先日の
記者会見におきまして、
物価値上がりで生活に苦しんでおるという声が圧倒的に強くなっているというある新聞の世論調査の結果を疑わしいときめつけ、
政治家は声なき声を聞くと答えられました。声なき声ということばは、三年以前に安保闘争のさなかに
国民の激しい非難とその退陣
要求の前に立たされた岸君が、居すわりを正当化しようとして使ったことばでございます。ところが、その後間もなく岸内閣は崩壊し、声なき声は岸内閣の退陣を
要求したということがみずから立証されたのであります。ところで、声なき声は、聞く人によって各人各様その都合のよいように聞こえますが、声ある声はだれが聞いても同じであります。
政治の場面においての声ある声というば
選挙の結果であると私は思うのでございます。
私は、英国の
政治が非常に高い水準になっておる
一つの
理由というものは、総
選挙と総
選挙の間におけるところの補欠
選挙があること、その補欠
選挙は単なる技術的
選挙ではなくして、
政治的性格を持っている
選挙でございます。総
選挙にあたって
政権をつくった
政府に対しての
国民の世論の動向というものが、補欠
選挙によって察知されるのでございます。それによって
政府も
考えを直そうとし、
国民もそれによって
政府に
要求しようとするのが、英国における補欠
選挙の
政治的意義でございます。これが英国の
政治をささえている
一つの力だと、こう
考える。ところが、
日本におきましては、残念でありまするけれども、三年たって、今日まで衆議院の補欠
選挙は
一つもないのです。したがって、
政府に対する
国民の世論の姿というものを察知する機会というものが今日も与えられない。しかしながら、幸いのことに、この間において参議院の半数改選の
選挙と、この四月に統一
選挙が行なわれました。これこそ英国における補欠
選挙の性格を持つ
政治的
選挙であると私は判断をいたすのでございます。
私は、昨年の
国会におきまして、
池田さんに向かって
お尋ねをいたしました。この間の
参議院選挙というものは、
池田さんは現内閣に対する
国民の
信頼の
選挙と言われているけれども、私はそうは
考えない。なぜかというならば、
自民党がとった総投票数というものが、全国区においては四割七分、地方区において四割八分、
自民党の候補者のとった総投票数は、全投票数の過半数以下なんですよ。半分に足らないのです。これで毛なお現内閣は
国民が支持しているとなぜお
考えになるかと
池田さんに私は
お尋ねをしたのです。ところが、
池田総理はこの演壇で、河上とは
政治的見解を異にすると、私の
質問をけったのでございます。しかしながら、ことしの四月の
選挙におきましてもこの現状はもっと露骨にあらわれていると思うのでございます。都道府県
会議員の数をごらんください。
自民党は現有勢力を百名減じ、
社会党は、九十九名ふえておるのでございます。(
拍手)この
選挙の結果というものは、先ほど申したとおり、
政治的性格を持っておる
選挙と
考えまするから、現内閣に対する
批判の
選挙であったと私は言いたいのでございます。(
拍手)
いわゆる
政治家というものは、
国民の世論の動向というものに敏感であることが大切であると私は信ずるのでございます。(
拍手)四月に行なわれた
選挙をごらんくだい。
池田さんが全国の知事の
選挙に応援をされた地区が六つございます。それは、北海道と岩手県と東京と大阪と福岡と大分でございます。ところが、その六つの中で
三つは
社会党が勝ったではありませんか。(
拍手)その間に行なわれておりまする市長の
選挙において、
社会党は横浜に勝ち、大阪に勝ち、北九州に勝っておるではありませんか。(
拍手)ことに北九州の市長
選挙においては、
池田さんは閣僚を多数引き連れて応援に来られたのですよ。
憲法発布以来、一国の
総理大臣が一市長の
選挙に閣僚を連れて応援に来るなんかという例は、ただこの機会が初めてでございますよ。(
拍手)それだけの応援をしたにもかかわらず、
池田君の応援した人は落選しているではありませんか。
社会党が勝っておるではありませんか。(
拍手)これらの
選挙にあらわれておる
国民の動向というものに、
政権の座にある人は鋭敏でなくてはならぬと私は信ずるものでございます。(
拍手)これは何かと言うならば、三年前において
池田さんは
所得倍増をひっさげて勝ったのですよ。ところが、それがうまくいかない。それがために
国民に現内閣に対する不満が起こっておる。不満のあらわれが
参議院選挙にあらわれ、地方
選挙にあらわれたと私は言いたいのであります。(
拍手)私は、
池田総理が、この
日本の
国民の動向に謙虚に耳を傾ける必要があると思うのです。声なき声は、これこそ声ある声であると私は言いたいのであります。
池田さんに最後に申し上げたい。この
選挙を通じてあらわれたる
国民の声に謙虚に耳を傾けて、
政策の転換をすべきであるということを強く申し上げて、私の
質問を終わる次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君登壇〕