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1963-10-21 第44回国会 衆議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年十月二十一日(月曜日)     —————————————  議事日程 第三号   昭和三十八年十月二十一日     午後二時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑     午後二時八分開議
  2. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑
  3. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。河上丈太郎君。   〔河上丈太郎君登壇〕
  4. 河上丈太郎

    河上丈太郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、過日行なわれました池田内閣総理大臣所信表明演説に関しまして、若干の質問をいたしたいと存じます。  質問の第一点は、国会の解散についてのことでございます。  社会党は、さきに、政府に対して、災害対策公務員給与の改善、ILO条約批准などの案件を処理するために、すみやかに臨時国会を開くことを要求いたしたのでありまするが、幸いに政府はこれに応じてここに臨時国会を開かれたのでございます。社会党としては、これらの案件をすみやかに処理するために、補正予算その他の審議については、自民党との話し合いの上で、これを促進する用意があることを再三にわたって明らかにしてまいったのでありまするが、きょう私は本壇上を借りまして、いま一度同様の趣旨を繰り返すものでございます。幸いに、先日の本会議における総理の御演説におきまして、総理は、補正予算ILOその他の案件をすみやかに審議を尽くされたいと述べておられるのでございます。さらに田中大蔵大臣は、補正予算にすみやかに御賛同あらんことをお願いいたします、と述べられておるのであります。したがいまして、補正予算をはじめとする諸案件をすみやかに成立させることについては、自民党社会党との間に全く意見が一致しておるのであります。(拍手)さらにまた総理は、正々堂々と事を決すると述べておられまするが、これまた私たちの希望するところであるのでございます。社会党としては、補正予算その他の案件成立後、内閣不信任案を出して、池田内閣と対決する決意を固めておるのでございます。(拍手)これこそ正々堂々の態度であると私たちは信じておるのでございます。  このように、国会解散に至るまでの段取りについて、自民党社会党との意見は一致しておるのでありまするから、今後の国会の運営は、その段取りに従って進められるが当然であると私は思うのでございます。私は、ここで、池田総理に対し、以上のような段取りで事をはかるよう提案するものでございます。  一部の報道によりますると、政府は、補正予算その他の案件審議に入ることなく、この代表質問の途中、または終了後解散する計画があるとのことでありまするが、これではこの臨時国会を開いた意義が全くなくなり、さき総理が本院に対して要請されたこととは全く相反する結果になるのではないかと思われるのであります。(拍手)まことに筋の通らない話でございます。社会党反対する案件は警察官を導入しても押し通そうとするのに、社会党がその成立に協力しようとする案件は、政府みずからこれを提案し、すみやかな成立を要請しているにもかかわらず、われとわが手で国会を解散することによってその成立を妨げるというのでは、社会党はもちろん、国民も納得できないところでございます。(拍手)  そこで、総理に次のことをお尋ねしたいのである。総理は、補正予算その他の案件成立を待たずに国会を解散するつもりであるかどうかということであります。総理は、補正予算その他の案件を今国会中に成立させたいと思っているのであるかどうかという、この二点について明確なる御答弁をお願いしておきたいのであります。(拍手)  質問の第二点は、国会正常化についてでございます。いま一番大きな問題であると思いまするので、総理の所見をお尋ねいたしたいと思うのでございます。  国会正常化の本来の趣旨というものは、憲法に規定されておる国権最高機関としての国会権威を高め、国民国会に対する信頼を強めることにあります。私の見るところをもってしまするならば、これには三つ条件があると考えるのでございます。  第一の条件は、きれいな選挙によって議員が選ばれてくることであると思うのであります。(拍手)いわゆる正常なる国会を基礎づける条件というものは、選挙が公平に行なわれて、きれいな選挙議員が選ばれてくることが一番大切である、こう考えまするが、この点について私は二つの事実を指摘いたしたいと思うのであります。  昨年の参議院選挙を前にいたしましての通常国会において、自民党政府選挙法改正案を提案いたしましたが、その政府案に対し、与党である自民党反対をして、これを骨抜きにする修正案を出したのに対し、野党である社会党政府案を支持いたしたのでございます。このようなことは、まことにかつてないできごとでございまするけれども、要するに、これまでの不正腐敗選挙に対する国民の強い批判にこたえて、政府原案が若干これを取り締まろうとするに対し、自民党がこれに反対したからであるのでございます。これはまことに残念なことでありまするけれども、事実でございます。  もう一つの例は、本年四月の東京都知事選挙において発生いたしましたにせ証紙事件でございます。(拍手)この事件につきまして、検察当局が明らかにした事実は、自民党本部のある職員が多額の金を動かしてにせ証紙をつくり、罪に問われたということでございます。  私は、この二つの事実を自民党批判するために引用したのではございません。私は一国会議員として、このような事態を真剣に憂えざるを得ないからであるのでございます。(拍手不正腐敗選挙が半ば公然と行なわれ、それによって当選する議員がふえ、その頭数をそろえて多数になれば何でも押し通せるというようなことになったとするならば、国会国民信頼を全く失い、民主政治そのものが危機にさらされるのではなかろうかと私は心配にたえないのでございます。(拍手)この根本に触れることなくして、いたずらに国会正常化を唱えてみても、それはから念仏に終わるのではないかと私は思うのでございます。  そこで、私が総理にお伺いいたしたいことは、総理不正腐敗選挙をなくし、きれいな選挙を行なうためにどういう具体的な措置をとるつもりでおいでになるのかどうかということでございます。近く総選挙も行なわれまするので、この点に対する総理考え方を明確に国民にお示しくださることを心からお願いいたす次第でございます。(拍手)  国会権威を高める第二の条件というものは、国会において与野党の論議が十分に尽くされて、国民が納得する形で政治が運営されることでございます。国会討論の場であり、国民がわれわれに一票を投じて国会に送り出したのは国政審議のためであって、ボタンを押すためではないのでございます。(拍手少数野党が登院し、討論に参加し、政府与党批判するというのは、その言論の自由が保障され、その言論によって政府施策に一定の影響を与えてこそ初めて意味があるのでございます。  最近五カ年間の国会運営を振り返ってみますると、警職法、新安保条約政防法という三つの大きな事件が起こっております。そのうち新安保条約はかろうじて成立いたしましたが、他の二つはいずれも廃案となったのでございます。衆参両議院において三分の一の議席しか持たぬ社会党が、どうして多数の自民党相手に回してこれらの法案の成立を食いとめることができたかといいまするならば、それは、一にかかって、国民諸君社会党に対する支持が三分の一という単なる数字をはるかに上回って強かったからであろうと私は思うのでございます。(拍手)  政治というものは生きものであると私は思います。国会はすべての制度と同じように固定した器であるのでございます。その器の中に動きの激しい生きものを成長させるためには、その器の中が十分に柔軟でなければなりません。その器の中にストップ・ウォッチだの押しボタンだのと、妙なハイカラな機械ばかりを備えつけていても、政治という生きものが順調に成長するという保証はどこにもありません。(拍手)むしろ、それは角をためて牛を殺す結果に終わるだけでございます。多数決というものが国会運営の唯一絶対の原理だと総理はお考えになっておるのであるかどうか、押しボタン装置を取りつけるならば、国会正常化するとお考えになっているかどうかと私はお尋ねをいたしたいのでございます。  最近におきまするところのヨーロッパの政治学といたしましては、民主主義というものの考え方に、非常に大きな変化が起こっておるのでございます。民主主義というものを、多数の政治であるという考えから脱却して、いまは民主主義というのは、議論を尽くす政治であるというのが、イギリスにおけるところの政治原理であるのでございます。(拍手)しかるに、今日までの議会においては、言論の自由を制限して、そうして多数決の原則だけを押しつけようとするところに、今日までの国会正常化を害する最大原因があると私は考えるのであります。(拍手)  国会権威を高める第三の条件は、国会行政府施策国民とともに監視し、不正腐敗を糾弾し、かってな運用を抑制することでございます。ところが、最近の国会を見ますると、自民党政府は、社会党という野党がいる国会ではできるだけ知らせまいとし、自民党自民党で、できるだけ委任立法を行なって、行政府独断専行を許す幅を広げようとしているのでございます。もしもこういう傾向が続くならば、国会行政府のつくり出した既成事実にあとめくら判を押すという単なるおしゃべりの場所に変化してしまうのであります。国会国権最高機関という憲法の規定は、一片の空文と化するでありましょう。野党の第一の任務は、政府与党批判することであり、それが民主政治の長所である。その野党批判がうるさいといって国政の重要なる案件国会に持ち出さず、それをまた与党委任立法によって合法化するというようなことをすれば、与党はみずからの手で首を絞める愚をおかすことになるのではないかと思うのでございます。(拍手)  そこで、総理に私がお尋ねをいたしたいことは、行政府に対する国会監査機能を強化することは望ましいことと考えられておるのかどうか、委任立法によって行政権の拡大を合法化する傾向は、国会の地位を弱めるから好ましくないと考えるかどうかということでございます。  質問の第三点は、政府所得倍増政策についてでございます。この問題につきましては、あとで勝間田君が数字等詳しく申しますので、簡単に私は触れていきたい、こう考えるのでございます。  池田内閣は、三年前の総選挙にあたって、所得倍増ということを政策として掲げ、二百九十の多数の議席を獲得いたしたのでございます。それから三年たった今日、国民が実感をもって味わっているのは物価値上がりが第一であり、第二は収入の格差が広がり過ぎているということであり、第三は社会的不安が増大したといろ、われわれが三悪倍増と申していることであるのであります。(拍手)  もともと所得倍増政策の出発のときから、私たちは、総理に向かって、物価値上がり警告いたしておったのでありまするけれども、総理は、経済のことはおれにまかせろ、ぐずぐず言うなという態度国会答弁をされていたのでございます。ところが、今日から考えてみるならば、私たち警告が正しく、総理の自信がくずれていると私は判断をするのでございます。(拍手)  その後間もなく、物価は上がり、国民の不安が大きくなると、政府はしきりに物価対策というふうな文章を発表しておりまするが、この間の総理の御演説を伺いましても、いろいろ数字を並べて弁解しておりまするけれども、しかし、それで物価が下がったという話は一つも聞いていないのでございます。(拍手国民は千万言の物価対策を聞くよりも、現実物価が下がることを要求しているのであろうと思うのであります。(拍手)ところが、総理は、国民の切実なる要求に直面しながら、この一両年の間に物価問題を解決するなどと、すこぶるのんきなことを言われておるのであります。二年後において物価は安定してくるけれども、ことしや来年は大衆が苦しんでいることを見ぬふりをしておいでになるという態度は、どうも私には解せないのでございます。物価の上がりますることは、これは自然現象ではございません。したがって、物価を、自民党政府政策が正しくありとするならば、必ず下げることができると私は思うのでございます。(拍手)過日私自身といたしましては、政府が二千億の減税をするのに、なぜ消費者の生活を守るために間接消費税減税にそれを充てないのかと私は疑問に思っておるのでございます。  そこで、総理お尋ねしたいのは、物価の上がることはやむを得ないと考えておるのかどうか。物価が上がったのは、何か総理のお話では、国民責任があるがごとくに言われておりまするけれども、私たちは、国民責任はないので、むしろ自民党政府責任だと考えておりまするけれども、総理は一度その点についてはっきり御答弁をいただきたい、こう考えるのである。(拍手)  この三年間、物価は上がって少しも下がっていないのでございます。池田内閣がこれを解決するために今度やろうとしておりまするけれども、どんなに物価問題に対し説明をいたしましても、数字をあげて議論をいたしましても、現実に下がらなかったら意味がないのであります。総理に申し上げたいことは、私は、政権を持っているのでありませんから、力を持っているのでありませんから、したがって、物価現実に下げていただきさえするならば、国民は喜んで池田君の政策に賛成するであろうと思うのであります。しかるに、物価が少しも下がらず上がるばかり、上がる理由を説明しておるだけであって、将来はああなるであろう、こうなるであろう、こうやるのだということのただ約束だけであって……(「から念仏だよ」と呼ぶ者あり)から念仏である、私はこう言わざるを得ないのであります。(拍手)  質問の第四点は、人つくり政策についてであります。  所得倍増政策がもたらした害悪は、しかしながら物価値上がりに尽きていないのであります。所得倍増政策最大害悪というものは、それが金銭万能主義の横行する世の中を生み出し、富はつくり出されたが、一番大事な人間は見失われたというところにあるのでございます。この十年間に国民所得はずいぶんふえましたけれども、犯罪の件数も非常に大きくなっているということを、私は過日札幌でもって指摘いたしたのでありまするが、ことに最近における青少年の非行が激増しておることは総理も認めておるところであり、これでは政府施策人つくりどころか、人こわしに終わっていることを示していると私は思うのでございます。(拍手)こういうふうな状態を起こした原因は何かというならば、要するに、政治の姿勢が根本的に間違っているからだと私は思うのでございます。国民自民党政府のやり方をよく見ております。原子力潜水艦は来てくださいと言ったり、土地や株を持って遊んで暮らす者には税金を軽くしたり、選挙をやれば不正腐散の選挙で罪に問われる者が出るというありさまをよく知っておるのでございます。このような自民党政府が、いかに口で道徳教育の充実を国民に説教いたしましても、どうもぴんとこないと私も思うのでございます。(拍手道義の確立というものは、みずから道義を実現することにありと私は信じておるのであります。(拍手)説教することではないのである。みずから範を示し、みずからこれを行なうところに、道義を高める根本の力があると私は信じておるのであります。(拍手)  総理は、演説の中で、祖国愛に目ざめ、国家、社会、人類に奉仕する青少年を育成することが人つくりの基本であると、非常にりっぱなことを申されておりますが、こういうふうな考えを実現する一つの範をみずから示していただきたい、こう私は考えるのでございます。ところが、いまやっておりまする政府政策、いろいろのことというものは、必ずしもこうではないように私は思うのでございます。  この前の国会におきまして、東京都知事選挙におけるところの不正証紙事件に関し八百板君が質問し、池田総理がこれに答弁をした際にあたって、私は非常に遺憾に考えたことがあるのでございます。それは何かというならば、自民党のこの犯罪主宰者といわれておるところの松崎という人がおられますが、池田さんは、その名を言わずして、松崎それがしと言われたことを聞いたときに、私は非常に不愉快に感じました。何か知らぬけれども、責任を回避するような態勢というのが私に見えて、残念にたえなかったのでございます。(拍手国民全体が非常に関心を持つあの大きな選挙において、あれだけの大きないわゆる不正行為が行なわれた。それが自分の党の有力なる人であり、また有力なる幹部が検事さんのお取り調べを受けるというふうな事態のあったときに、それに対してほんとう責任をどう感ぜられているかというふうなことが片りんも見えなかったことを私は残念にたえないのでございます。(拍手)私は、ほんとう青少年をよくする道というものは、範をたれることにあろうと考えるのであります。  質問の第五点は、当面外交上の大きな焦点となっておる日韓会談原子力潜水艦寄港についてでございます。  日韓会談につきましては、すでに昨年本院において、私が交渉をおやめになったらどうだと強く要求をいたしましたが、政府はそれを聞き入れることなく、会談を続行しておったのでございます。このたびの総理演説においても、日韓国交正常化が強調されておるのであります。朝鮮問題についての社会党政策ははっきりしております。それは、朝鮮南北に分裂している今日、南北いずれかの政権を全朝鮮を代表する正統政府と認めこれと正式の国交を樹立することには反対であるということでございます。当面は、南北朝鮮との文化、経済の交流を拡大して、全面的、正式の国交は、南北統一後に統一政府との間に樹立せよというのでございます。  総理は、韓国は隣の国であるから仲よくしなければならぬとこの間記者会見で申されておりまするが、それなら私は総理にお伺いいたしたいのであるが、一体北朝鮮はお隣でないのであるかどうかということであるのでございます。  また、自民党の一部には、韓国が共産化するのを防ぐためには、日本援助しなければならぬという議論があると聞いておりまするが、これはつい最近の歴史から何ものをも学ばない議論であると思うのでございます。アメリカ韓国に対しすでに五十億ドルになんなんとする援助を与えましたが、それをもってもなお李承晩の亡命、クーデターの突発という事態が起こっているのでございます。その上日本がかりに五億ドル何がしの援助を与えたとしても、韓国政情が安定する保証は一体どこにあるのでありましょう。外国の援助がなければ共産化するというような国は、たとえ外国の援助があっても共産化するということは、中国の蒋介石、キューバのバチスタ政権の末路が何よりも雄弁に証明しているではございませんか。(拍手)  昨年、私は、本院において、日韓会談について政府を追及いたしました際、南ベトナム賠償の例を引き、腐敗した、民衆から遊離した政権への援助は、国民の血税の乱費に終わることを警告をいたしたのでございます。それから一年たって、現在、南ベトナムでは、仏教徒がみずから火に投じて自殺をしてゴ政権に抗議するというふうな痛ましい事態が相次いで起こっております。社会党の強い反対を押し切って行なわれた南ベトナムへの二百億円の賠償は、一体どこへ行ったのでございましょうか。(拍手日韓正常化は、この南ベトナム賠償の実に九倍に及ぶところの一千八百億円というばく大な額を要するものでございます。しかも、その相手側政権といえば、軍事政権下選挙において野党に過半数の票を奪われるというほど民衆に強固なる基礎を持たない政権ではございませんか。(拍手)それを相手にして重大なる案件を処理しようとするようなことは、はたして正しいかどうかということを疑わなければならないのでございます。  私は、そういう立場からいたしまして総理お尋ねしたいことは、南ベトナム賠償南ベトナム政情を安定させたかどうか、また、その賠償はどのように有効に使われたのかどうか、韓国への援助によって同国の政情が安定するという保証は一体どこにあるのか、こういうふうな質問を私はいたすのでございます。  次に、アメリカ原子力潜水艦寄港問題に関し、若干お尋ねいたしたいのでございます。  第一は核戦略上の観点からでございます。さきに、私は、本院において、総理に対し沖繩核武装されておるかどうかとお尋ねしましたところが、総理沖繩核武装している事実を認めました。そこで、私は総理に対し、アメリカに向かって沖繩核武装に抗議をし、その撤去を要求するようにしてはどうかとお尋ねいたしましたけれども、総理はこれを拒否いたしたのでございます。また、かねがね、社会党自民党に対し、日本非核武装宣言を出すように数回にわたって申し入れましたが、自民党は将来のことについて手を縛られたくないということで、毎回拒絶しておられるのでございます。他方、自民党政府は、防御用小型核兵器を持つことは違憲ではないという意見をとっておるのでございます。これらの事実を総合してみますというと、自民党政府は、国際舞台では核兵器禁止などと美しいことばを並べながら、日本については将来核武装をねらっているのではないかという疑問が国民の中に起こっておるのでございます。(拍手)もしもそうでないとするならば、以下の質問にお答えをいただきたいのでございます。  将来のことを縛りたくないというのは、将来は日本核武装するということなのか。もし将来も絶対に核武装をしないというならば、あっさり社会党の提案を受け入れて、非核武装宣言をやってはどうかとお尋ねをいたしたいのでございます。(拍手)また、沖繩核武装に抗議して、その撤去を要求しないのかどうかと、これをお尋ねしたいのでございます。  原子力潜水艦寄港申し入れと相前後して、原爆搭載機F105Dの日本配備が発表されましたが、この二つの兵器が原水爆を使用するものであることは政府も認めております。ただ日本へ来るときは核兵器を持ってこないんだと言っているにすぎません。総理は過日の演説においても、核兵器を装備しない限りという条件をつけておるので、それでは総理お尋ねいたしたいのでありまするが、核兵器を持っているかどうかという検査を日本政府はやる権利があるかどうかということでございます。(拍手)もし日本政府が検査ができないというならば、一体だれが核兵器がないということを保証するのでございますか。アメリカ原子力潜水艦日本寄港しなければ日本の安全は保てないのか、なぜ保てないのか、この点をお尋ねいたしたいのでございます。  第二は、安全性の観点からでございます。原子力潜水艦寄港については、日本学術会議は、専門家の学者を集めて討議した結果、その安全性に疑問があるからその寄港は望ましくないという態度を明らかにいたしておるのでございます。これを裏書きするかのように、政府は、原子力潜水艦寄港に際し事故が起きた場合には、その放射能防護対策というものを作成しておるのでございます。デンマークは北大西洋条約加盟国でありまするけれども、原子力潜水艦寄港に対してははっきりこれを拒絶しているのでございます。ところが総理は、原子力潜水艦寄港安全保障条約に照らして当然のことであると過日も述べておるのでございます。これはアメリカ政府の言い分と全く同じであります。原子力潜水艦寄港についてアメリカ側から申し入れがあってから現在まで、それがぐずぐずしてきた最大理由というものは、要するに国民がこんな物騒なものは来てもらっては迷惑だと思っているからであると思うのであります。(拍手)ところが、この国民の当然の気持ちに対し池田総理は、アメリカ政府と口を合わせて安保条約をかさに着て寄港を受け入れようというのでございます。デンマークは東京の半分くらいの人口しかない小国でありまするけれども、原子力潜水艦寄港はきっぱりと拒絶しているのでございます。デンマークの何倍も大きい人口を持つ日本において、しかも口を開けば日本は大国だという池田総理が、アメリカ政府と同じ立場に立って、日本国民に向かって原子力潜水艦寄港を受け入れようということは合点がいかないことでございます。(拍手日本国の総理大臣は日本の学者の言い分に耳を傾け、日本国民の気持ちを代表し、外国に対しものを言うことが、その役目ではないかと私は思うのであります。(拍手)そうすることが、日本ほんとうに国際社会に尊敬される道ではないかと私は想像するのでございます。  それにつきまして総理に次のことをお尋ねいたしたい。総理は、日本の学者の言い分とアメリカ政府の言い分と、どっちを信用するのか。(拍手アメリカ政府に対し原子力潜水艦寄港を断わり、F105Dの撤去を要求するか、もしそうしないというならば、なぜかというその理由を明らかにしていただきたいのでございます。  私の質問を以上で終わりまするが、最後に一言総理お尋ねしたいことがあるのでございます  総理は、先日の記者会見におきまして、物価値上がりで生活に苦しんでおるという声が圧倒的に強くなっているというある新聞の世論調査の結果を疑わしいときめつけ、政治家は声なき声を聞くと答えられました。声なき声ということばは、三年以前に安保闘争のさなかに国民の激しい非難とその退陣要求の前に立たされた岸君が、居すわりを正当化しようとして使ったことばでございます。ところが、その後間もなく岸内閣は崩壊し、声なき声は岸内閣の退陣を要求したということがみずから立証されたのであります。ところで、声なき声は、聞く人によって各人各様その都合のよいように聞こえますが、声ある声はだれが聞いても同じであります。政治の場面においての声ある声というば選挙の結果であると私は思うのでございます。  私は、英国の政治が非常に高い水準になっておる一つ理由というものは、総選挙と総選挙の間におけるところの補欠選挙があること、その補欠選挙は単なる技術的選挙ではなくして、政治的性格を持っている選挙でございます。総選挙にあたって政権をつくった政府に対しての国民の世論の動向というものが、補欠選挙によって察知されるのでございます。それによって政府考えを直そうとし、国民もそれによって政府要求しようとするのが、英国における補欠選挙政治的意義でございます。これが英国の政治をささえている一つの力だと、こう考える。ところが、日本におきましては、残念でありまするけれども、三年たって、今日まで衆議院の補欠選挙一つもないのです。したがって、政府に対する国民の世論の姿というものを察知する機会というものが今日も与えられない。しかしながら、幸いのことに、この間において参議院の半数改選の選挙と、この四月に統一選挙が行なわれました。これこそ英国における補欠選挙の性格を持つ政治選挙であると私は判断をいたすのでございます。  私は、昨年の国会におきまして、池田さんに向かってお尋ねをいたしました。この間の参議院選挙というものは、池田さんは現内閣に対する国民信頼選挙と言われているけれども、私はそうは考えない。なぜかというならば、自民党がとった総投票数というものが、全国区においては四割七分、地方区において四割八分、自民党の候補者のとった総投票数は、全投票数の過半数以下なんですよ。半分に足らないのです。これで毛なお現内閣は国民が支持しているとなぜお考えになるかと池田さんに私はお尋ねをしたのです。ところが、池田総理はこの演壇で、河上とは政治的見解を異にすると、私の質問をけったのでございます。しかしながら、ことしの四月の選挙におきましてもこの現状はもっと露骨にあらわれていると思うのでございます。都道府県会議員の数をごらんください。自民党は現有勢力を百名減じ、社会党は、九十九名ふえておるのでございます。(拍手)この選挙の結果というものは、先ほど申したとおり、政治的性格を持っておる選挙考えまするから、現内閣に対する批判選挙であったと私は言いたいのでございます。(拍手)  いわゆる政治家というものは、国民の世論の動向というものに敏感であることが大切であると私は信ずるのでございます。(拍手)四月に行なわれた選挙をごらんくだい。池田さんが全国の知事の選挙に応援をされた地区が六つございます。それは、北海道と岩手県と東京と大阪と福岡と大分でございます。ところが、その六つの中で三つ社会党が勝ったではありませんか。(拍手)その間に行なわれておりまする市長の選挙において、社会党は横浜に勝ち、大阪に勝ち、北九州に勝っておるではありませんか。(拍手)ことに北九州の市長選挙においては、池田さんは閣僚を多数引き連れて応援に来られたのですよ。憲法発布以来、一国の総理大臣が一市長の選挙に閣僚を連れて応援に来るなんかという例は、ただこの機会が初めてでございますよ。(拍手)それだけの応援をしたにもかかわらず、池田君の応援した人は落選しているではありませんか。社会党が勝っておるではありませんか。(拍手)これらの選挙にあらわれておる国民の動向というものに、政権の座にある人は鋭敏でなくてはならぬと私は信ずるものでございます。(拍手)これは何かと言うならば、三年前において池田さんは所得倍増をひっさげて勝ったのですよ。ところが、それがうまくいかない。それがために国民に現内閣に対する不満が起こっておる。不満のあらわれが参議院選挙にあらわれ、地方選挙にあらわれたと私は言いたいのであります。(拍手)私は、池田総理が、この日本国民の動向に謙虚に耳を傾ける必要があると思うのです。声なき声は、これこそ声ある声であると私は言いたいのであります。  池田さんに最後に申し上げたい。この選挙を通じてあらわれたる国民の声に謙虚に耳を傾けて、政策の転換をすべきであるということを強く申し上げて、私の質問を終わる次第であります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  5. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答えいたします。  御質問の第一点は、国会解散問題でございます。社会党は、解散に追い込むと以前から言っておられました。世論も大体そういうふうになってきつつあります。しかし、いつ解散するかということは、私の助言によって、憲法七条でやるのでございます。したがって、どういう場合にやるかといったら、やはり国会において論議を尽くしつつ、審議の状況によって私が決断いたします。(拍手)  (「予算はどうした」と呼ぶ者あり)私は予算の審議を願っただけで、今国会にどうしても通さなければ解散しませんとは言っておりません。審議の状況を見まして、適当なときに解散いたします。どうぞ、あなた方が追い込むと言っておられるのですから、その時期につきましては、しばらく慎重にお考え願いたい。  また、国会権威を高めるためには、やはり選挙はりっぱな選挙でなければならぬことは当然でございます。したがいまして、選挙制度の改正とかあるいは公明選挙運動の徹底等をはかりますが、何といたしましてもやはり政治家みずからが姿勢を正し、国民一人一人が民主主義の本義によって行動することが最も望ましいことであると考えるのであります。  また、議会政治運営につきましていろいろお話がございましたが、私は議会の運営につきましては寛容と忍耐、話し合いの政治でいくと言っております。もちろん少数の意見は尊重いたしまするが、多数決の原則は民主主義の本義でございまするから、議論を尽くして、結果は多数決によるのであります。あなたのように、民主主義の原則は議論をするんだ、こう言っておられますが、議論だけでは、これは結論は出ません。議論の上、多数決によって決定するのであります。(拍手)  また、いままでの国会の状況を見ますると、その運営その他が不十分でございます。よくございません。少数党が暴力をふるう場合がございました。審議を拒否する場合もありました。また、審議に入っても牛歩戦術等、世界の各国にない変な事態が起こることは、われわれはこれを改めなければなりません。私は来たるべき選挙におきましては、この国会運営を適正にするために国民に訴える考えでございます。  また、行政府への国会の監査、批判等は憲法上当然に与えられたことでございまするから、どうぞお互いに遠慮なしに批判をしてまいりましょう。  次に、経済の成長でございますが、これは所得倍増は失敗したとか、あるいは格差が倍増だとか、いろんなことを言っておられますが、私は数字をもって先般も説明したとおりでございます。日本の国力の増進は、世界の歴史にどこの民族にもないほどの増加をいたしておるのであります。(拍手)三年間に国民総生産が十二兆五千億から二十一兆円になるということは、どこの国に、どこの歴史にございましたでしょう。(拍手)しかも、ある程度の物価は、消費者物価は上がりましたが、卸売り物価は上がっておりません。したがって、実質の国民所得、一人当たりの物価値上がりを差し引いた実質所得は、昭和三十四年から、私の内閣ができた前年から、いまに比べまして三四%実質所得が上がっているじゃありませんか。(拍手物価が上がったとかなんとかいっても、実質所得が上がっておるのであります。また、河上さんなんかがいろいろ言っておられました初任給の給与、最低賃金の問題につきまして、三、四年ごろは非常にやかましい問題になっておりましたが、四年前の中学卒業生の俸給は四千五、六百円だったのが、いまは一万円近くになっておるじゃありませんか。(拍手)高等学校の卒業生もしかり。しかも、私は申し上げまするが、賃金格差は縮まっておるじゃありませんか。賃金格差は縮まっておる。三十人以下の中小企業に働いておられまする労働者の賃金は、大企業に働いておられる、五百人以上の大工場に働いておられる賃金を一〇〇といたしますると、昭和三十四年の、私が内閣を組織する前は一〇〇に対して何ぼでございます。四四、半分以下でございます。それがいまは、去年は四四が五七に上がっております。ことしは六〇まで上がっておる。(拍手)この事実は何とお考えになりますか。また、全国都市勤労者の五分位表を見ても、三十四年に比べて三十七年は、第一、一番下の階級の上がり方が一番上じゃありませんか。その次がまた二番目に上がっている。大所得者は上がってない、ということは、内閣の統計をごらんくださればよくわかることでございます。(拍手)また、農家の所得も、都市の世帯に比べて、三十四年に比べて上がっておるじゃございませんか。また他の機会にお答え申し上げますが、格差もなくなり、実質所得もふえ、そうして、世界二番目にテレビ、ラジオを享受し、そうして、物価が上がっても、所得がうんと上がって実質所得がふえている。こんなことは、あなたならとやこうおっしゃるが、日本国民の大部分、そうして世界の人のほとんど全部は、所得倍増は大成功だと言っておることを、はっきり内外に申し上げておきます。(拍手)  また、犯罪件数についての御質問でございまするが、御承知のとおり、道路が狭くて自動車が非常にふえました関係上、交通関係の犯罪件数は非常にふえましたが、いわゆる財産犯罪、すなわち詐欺、横領、窃盗、殺人等は十年前から横ばいで、ふえておりません。一人当たりにしたら減っている。ただ、私は交通事犯につきましても、この犯罪がずっと減るように、いまの施設の改良その他をやっておるのであります。今後社会資本の増加と取り締まりの強化と、そうして国民全部が交通違反をなくするよう努力するならば、私は交通犯罪も減ってくることは必定と考えております。(拍手)  次に、人つくりの問題につきましては、所信表明で申し上げましたごとく、また、ただいまも申し上げましたごとく、われわれ政治家、ことに私がまず姿勢を正すことにつとめております。(拍手)私は組閣以来これに向かって努力をし、そうして人つくりは、国民一人一人が自分の問題として努力することでございます。政府は、その国民の努力を続けていかれるように、あるいは家庭教育に、学校教育に、社会教育に、いろんなその方面での環境を極力つくっていきますことは、所信表明で申し上げたとおりでございます。  次に、朝鮮韓国問題でございまするが、韓国日本とは歴史的に、地理的に、文化的に、あらゆる方面で最も近い関係にあるのであります。私は、この国交正常化することは、日本人のみならず、韓国人もこれを熱望しておるという確信を持っております。しこうして、私は、この正常化の問題は、国民多数がわが党を支持することによってはっきり近いうちにあらわれると思います。(拍手)  なお、近所のものと仲よくしよう、これは私の念願でございます。しかし仲よくしようにも、北鮮は国際的にどういう立場になっておりますか。もしそれ、北鮮が国連監視のもとに統一選挙をするならば、統一選挙に応ずるならば——国連監視のもとに、私は朝鮮南北統一は直ちにできると思うのでございますが、それを断わるのはどこでございますか。北鮮ではございませんか。しかもまた、北鮮は、われわれ百十何カ国が認めておる、世界ほとんど全部が認めておりまする国連の権威を認めていない。朝鮮問題について討議をしようとしても、これを拒否しているのは北鮮ではございませんか。もっと北鮮がほんとうにわれわれの相手になるように、国連の意思に従い、そして世界の人が望んでいるような方向に進んだら、私は善隣関係を結びたいと考えておるのであります。(拍手)  沖繩問題につきまして申し上げまするが、これは私は前から言っておりますごとく、沖繩の施政権を一日も早く日本に返してもらうことでございます。ケネディ大統領も、行く行くは返すとはっきり約束しております。これを早く返してもらうためには、やはり日米間が協力の体制をますます強化することによって一日も早く施政権が返るということは、これは常識じゃありますまいか。論拠のないことを言い、そうして、いたずらに人を非難するということでは事は成就するものではございません。どうぞ、日米関係のこの上ともの緊密強化をはかるならば、私は施政権返還が、それだけ早くなることをはっきり申し上げておきます。(拍手)  また、原子力潜水艦の問題につきましても、申し上げておるとおりでございます。これは潜水艦の推進力が原子力であるということだけで、ポラリス潜水艦とは違いまして、核武装をしていないのであります。核武装をしていない。それなら核武装検査するかというと、われわれは日米関係の、お互いに信頼しておる立場でございますからそういうことはないと思います。しかもまた、原子力潜水艦は、世界のほとんどの自由国家群は自由に出入りを認めておるのであります。安全性も過去七年間証明せられておるのであります。安保条約によりまして私はこれが日本への寄港は当然である。ただ、われわれ日本国民は核爆発につきましての特別の関心を持っておりまするから、日本国民が安心して受け入れられるような情勢と説明をいまいたすべく交渉しておるのであります。もちろん学者の意見は聞きます。それが日本であろうと外国であろうと、そうして最も権威ある学者の多数の意見を聞くことは当然でございますが、曲学阿世と申しますとどうかわかりませんが、誤った先入主で政策的に反対する人の分は、これは聞いたら、国をあずかる私としては、国民に対して忠実でございません。(拍手)りっぱな意見は、内外ともに聞くことにやぶさかではございません。  また、核武装はいたしません。したがって、非核武装宣言の要は日本にありません。いまごろ問題になっている、中共が核武装しないように、非常にお仲のいい社会党ならば、どうぞこれをおっしゃっていただければけっこうだと思います。(拍手)  次に、選挙の結果についてのお話でございます。どこで勝ったとか、どこで勝ったとかおっしゃいますが、あなたの議論は、私にはよくわかりません。私は、国民にもわからぬのじゃないかと思いますが、あなたの議論は、いつかは国民が正しい判決を出すと思います。私は、北九州とか、あるいは大分とか、あるいはどこで勝ったとか言わずに、全体としてもっと三分の一の壁を越えて、あわよくば政権がとれるような社会党になってもらいたい。(拍手)いまのあなたの議論のように非現実的で——日本全体をおあずけいたしまするから、国民信頼するような政党になってもらうことを、心から願っておきます。(拍手)私は、そういう意味であなた方が成長されることを、心から願っておる次第でございます。(拍手)     —————————————
  6. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 三木武夫君。   〔三木武夫君登壇〕
  7. 三木武夫

    ○三木武夫君 私は、自由民主党を代表して、重要と思われる諸問題について、池田総理に若干の質問をいたしたいと存じます。  まず第一の質問は、健全な議会政治の育成に対する総理の見解であります。  およそ、与党たると野党たるとを問わず、われわれが守らなければならぬのは、健全な議会政治であることは言うまでもない。(拍手)それは、われわれ共通の責任でもあるわけでございます。そのためには、二大政党制のよさが発揮されなければならぬと私は思う。近く解散必至の情勢ではありますが、選挙のときにおいても、両党の政策の基本が、あまりにもかけ離れておるということでございます。したがって、冷静な判断を下そうという国民は、おそらく戸惑いするに違いないと思うのであります。われわれ自民党が、外交に自由世界との協調を主張すれば、社会党は、左寄りの中立政策を主張する。われわれ自民党が、国防は日米安保条約と自衛隊を軸に、国の安全を確保せんとするのに対し、社会党は、日米安保条約の破棄、自衛隊の廃止を主張する。われわれが、教育を政治の場から中立地帯に置こうとするのに対し、社会党は、教育を政治闘争の場に巻き込もうとする。(拍手)これでは二大政党のものの考え方に距離があり過ぎるのである。いわゆる共通の広場というものが二大政党の中に全くないということである。したがって、非常なる混乱を予想せずして円滑な政権の交代ができない、これが健全な議会政治の姿でないことはだれの目にも明らかである。(拍手)  由来、健全な議会政治には、外交、国防、教育のごとき、国家国民の運命に関する諸問題は、政党政派の利害を越えて協力し合うというよい慣習が生まれたければならないのであります。(拍手)しかし、議会はもちろん自民党の一人相撲ではとれない。われわれは多年の政権に心おごることなく、絶えずみずからも反省を加えなければならぬことは言うまでもありません。自民党の近代化の努力もそのあらわれである。今後われわれは思い切って党の脱皮をはかる必要があると考えております。と同時に、社会党国民政党として、現実的にものを考える政党に歩み寄ってもらわなければ困るということである。(拍手)議会政治原理は革命の原理ではありません。漸進的改良の原理が議会政治原理なのであります。(拍手)すでに西ヨーロッパ諸国の社会党や労働党はそうなっているのであります。社会党は西ヨーロッパ並みの賃金を要求いたしますが、われわれが望みたいことは、西ヨーロッパ並みの社会党になってもらいたいということであります。(拍手)そうすれば二大政党間に共通の広場ができて、二大政党制の妙味が発揮できることは明らかでございます。  池田総理は内閣の首班であると同時に、最大政党の総裁として、野党の委員長とともに健全な議会政治育成の最高責任者の一人であります。国会法を改正して国会の秩序と能率を高めることも必要であるが、と同時に、より根本的な、健全な議会政治の育成のために、今後何をなさんとするのか、総理の見解を伺っておきたいのでございます。(拍手)  第二は、戦争と平和に対する総理の見解であります。  河上委員長の質問を拝聴していますと、原子力潜水艦寄港問題に関連して、世の中を戦争派と平和派に分けて、自民党がこれほど核武装をしないということを繰り返して言っているにかかわらず、将来するがごとき疑惑を国民に与えて、いかにも自民党を戦争派に仕立てようとされて、自分だけが平和主義の旗を振りかざしておるような口吻は、これは全く事実を曲げるものであるといわなければなりません。(拍手)もうやがて二十一世紀が来る。この若い世代の人々にしあわせの世紀を約束することがわれわれの責任であり、だれが今日戦争を望んでいる者があるでありましょうか。特に原爆、水爆が発明された今日、戦争をのろい、平和を希望することは、生きんとする人類共通の願いなのであります。だれもこれに対しては、例外はあるとは思われない。ことさら戦争派と平和派に分けようとする態度は、真に平和を求めるものの態度だとは私は思わない。(拍手)  平和は、まず、すべての人の心の中に宿らなければならない。平和達成の手段もまた平和的でなければならぬことです。(拍手)闘争で平和はかちとれるものではない。目的は手段を正当化するものではない、この点については、社会党にもとくと考えてもらいたいと思うのでございます。(拍手)私は、社会党が戦争の党であると言っておるのではない。しかし、はっきりしておきたいことは、自民党は、手段も目的も平和の政党であり、平和を最も希求し、努力している政党であるということであります。(拍手)  われわれは、主張し続けてきた核実験停止協定もようやく実現を見、さらに進んで、製造も、貯蔵も、運搬も禁止するところまで持っていかなければなりません。さらに、紆余曲折はあるにしても、年月はかかるとしても、全面軍縮に向かってわれわれが努力をするということが、今日、われわれの大きな責任だと思うのでございます。(拍手)われわれのように被爆国民であり、平和憲法を持つわが国は、世界政治の場において、このような世界の平和を確立するために、国際世論喚起の先頭に立つくらいの平和への情熱が必要だと私は考えるのであります。(拍手)このためには超党派外交も可能でありましょう。池田総理の決意はいかがであるか、承っておきたいのであります。(拍手)  また、欧州正面の平和は維持されても、アジア、中近東、アフリカ等の新興諸国は不安定の政情を続け、常に局地戦争の舞台になる危険を持っていると見なければなりません。その不安定の原因は貧困であります。貧困は人類共通の敵として、それを克服するために人類は共通の責任を持っていることは明らかであります。池田総理は、かつてライスバンクの構想を示し、また、数回にわたって東南アジア諸国を歴訪し、最近もまたアジア諸国を歴訪されたのでありますから、少なくとも東南アジアとの協力提携には、新たなる構想が浮かばれたことと思うのであります。この際、それを御披瀝願いたいと思うのでございます。(拍手)アジア諸国との提携協力は日本外交最大の課題であるから、承っておきたいのでごいます。  第三の質問は、福祉国家の建設に関する諸問題でございます。  池田総理は、去る十八日の本会議所信表明演説において、高度の福祉国家建設を決意すると述べられました。今日の日本政治が目ざす方向は、まさしく、総理の御指摘のとおりだとわれわれは存じます。しかし、福祉国家は、単に政府だけでつくられる問題ではなく、国民のすべての人々が参与するんだという意識が生まれることが大切であります。そういう意味で、その骨組み、その未来像はどういうものであるかを承っておきたいのであります。  西ヨーロッパ諸国は、すでに池田首相の言われるような、高度な福祉国家になり、しかも、それは社会主義の土壌にではなくして、資本主義の土壌の中に栄えていることを、われわれは注目しなければならぬということでございます。(拍手)百年前のマルクスの予言も全く当たらないし、資本主義は必然的に社会主義に移行するという徴候も、事実もないということであります。(拍手)やはり今日の福祉国家は、公共の利益との調和をはかりながら、自由経済の原則ということが繁栄の世界の本流であるということであります。社会主義でなければ福祉国家は建設できないなどという一部の考えを、総理は啓蒙する必要があると私は思うのであります。(拍手)いかがであるか、総理の見解を承っておきたいのであります。  福祉国家という以上は、国民がひとしく豊かにならなくてはならないということでございます。日本は急速なる経済成長の結果、生産力では世界の五位に入り、まさに世界的な驚異であります。しかし、国民一人当たりの所得では、遺憾ながらまだ二十番目にあるということでございます。物価水準の差を考慮に入れても、他の四つの国に遠く及ばないということでございます。現在の一人当たりの一年間の所得四百五十ドルを千ドル台には持っていく必要があろうと思うのでございます。そのためには、所得の停滞しておる産業とか地域に対して、すなわち、農林漁業、中小企業、地域開発等を特に重視されなければならぬことは、総理の言われるとおりでございます。(拍手)  総理は先日の記者会見で、農業、中小企業に対しては革命的といえる施策を講じたいと発言して、農家や中小企業者の期待を巻き起こしておられます。総理が指摘されるとおり、これからの日本は、農林漁業、中小企業の難問題と取り組むことがまさに政治の焦点であることは間違いがない。国民の八割を占める農林漁業や中小企業が安定せずして日本の安定はない。そういう人たちの生産性と所得を上げなければ、日本経済の均衡のとれた発展は不可能であります。日本経済の成長により、大企業は次第に国際競争力がつき、総理のいうゆとりができてきたのであるから、今後は全力を農林漁業や中小企業の近代化、地域開発に向けて、日本経済のひずみ、すなわち二重構造を解消するために立ち向かわなければならぬという総理の決意に対して、われわれは賛意を表するものでございます。(拍手)  しかし、近代化をどうして進めていくかということは、これは大問題である。農林漁業も中小企業も、まず生産性を高めなければならない。そのためには経営規模も拡大されなければならぬし、新しい機械も導入されなければならぬし、新しい技術も導入されなければなりません。また何をつくるかという選択的な指導もなされなければなりますまい。税負担の軽減もはからなければなりますまい。やらねばならぬことは非常に多いのであります。しかし、個々の経営者は資本力も乏しいのであるから、現在行なっている農林漁業に対する農林漁業構造改善資金や、中小企業のための設備近代化や高度化資金も、思い切って資金のワクをふやし、ものによれば無利子で長期の資金を貸し付けるぐらいの処置を講じなければならぬと思うのであります。(拍手)革命的といわれる総理の農業、中小企業の構想はいかなるものであるか伺っておきたいのであります。(拍手)  さらに、福祉国家という以上は、社会保障制度が充実、拡充されなければならぬことは言うまでもありますまい。わが国の社会保障は近時目ざましい進展を示し、重要な柱はおおむね打ち立てられましたが、いまだその内容は、はなはだ貧弱であります。今後年月をかけて、体制の整備と内容の充実をはからなければならぬことは言うまでもありませんが、少なくとも所得倍増計画の最終年たる昭和四十五年までには、次に述べるくらいの水準までは持っていかなければならぬと思うのでありますが、総理の見解を伺っておきたいのであります。  一つは、国民健康一保険の医療保障を、世帯主と、家族も八割ないし九割に引き上げるということであります。あるいは老齢者、心身障害者、精神病等の特殊の病気は十割給付にするという点であります。また、老齢年金は、現在の平均支給額月三千五百円を一万五千円程度に引き上げなければならぬということでございます。(拍手)福祉年金、遺族年金、障害年金も、おおむね現在の三倍程度に引き上げることが必要だと思うのでございます。また、十八歳未満の子供に対する児童手当を、月三千円程度支給するくらいのことはやらなければならぬと思うのであります。(拍手)育英事業費の規模を思い切って拡大するとともに、貸し付け金を、現在、大学では五千円から八千円という金額になっておるのを、一万ないし一万五千円の貸し付けにして、アルバイトをしないで、家庭が貧しくても、全部能力のある者は教育を受けられるというふうにしなければならぬと思うのでございます。(拍手所得倍増の最終年度には、これくらいのところまでは日本の社会保障を持っていかなければならぬとわれわれは考えますが、総理の見解はいかがでありますか、承っておきたいのであります。  次に、福祉国家は、道路、港湾、治山、治水、下水から公園に至るまで、一連の社会資本が充実をされて、公共の施設が整うことが大切であります。しかし、いずれもがはなはだしく立ちおくれておるということは事実であります。そのおくれを取り戻さなければなりません。そのために、ある程度の建設公債の発行も必要であるというのが今日の国民の感覚であります。(拍手)しかし、公債発行にはタイミングの検討等も必要でありましょうが、社会資本の充実に対する総理の見解をこの機会に承っておきたいのでございます。(拍手)  住宅の建設についても、国民は特に関心を持っております。現在、衣食住の中で一番おくれているのが住宅である。総理は、一世帯一住宅を目標にして努力をしたいという所信の表明がありましたが、これは国民の非常に期待するところである。この期待を裏切らざるよう、極力住宅の建設を強力な推進をしてもらいたいという希望を申し述べておきます。(拍手)  第四に、国民道義に関する問題について、総理お尋ねをいたしたいのであります。  日本国民が勤勉で、活力にあふれ、優秀なる素質の持ち主であることは疑う余地はありません。また、たしなみの深い国民でもあります。しかし、個人の行動と集団の行動との間には、はなはだしく隔たりがあるということであります。それは公徳心、公共に対する責任感の欠除ということが大きな原因であると思うのでございます。総理は、国民生活の向上をはからなければならないという経済の面に対する責任をお持ちになっておると同時に、国民に対する道義的影響力を与えなければならぬという道義面の責任も持っておると私は思う。どうか正直者がばかをみることのないように、勇気を持った社会正義の擁護者になってもらいたい。(拍手)  こういう意味から、善良な国民をまず暴力から守らなければなりません。最近は、いろいろな悪質犯罪が目立って、市民生活を不安におとしいれている面があることは事実であります。婦女子が夜間でも、どこの町でも歩けるようにしてもらいたいというのが、庶民の偽らない願いであります。治安の責任は、政治の第一義的な責任に属するのであります。池田総理は、治安維持に対してどのような見解をお持ちになっておるのか、この機会に御見解を開陳されたいと思うのでございます。  しかし、法律の取り締まりには限界があります。結局は社会道義の問題であります。その根本は、結局教育にある。それには、教えるほうにも問題があると思うのであります。日本の教育界の現状は、健全な姿だとは思われません。教育者が筋肉労働者と同じデモの方式で要求貫徹を期する現在の日教組の組合運動方式は、良識ある国民の共感を買うものではないということであります。(拍手)赤はち巻きでデモの先頭に立つ先生の姿を、父兄も生徒も見たくないに違いないと思うのであります。(拍手)河上委員長は、非行青少年の問題に触れて政府を攻撃されましたけれども、非行青少年問題の背景には、こうした教育の影があるのではないかとわれわれは憂えるものであります。(拍手)教育は政治から独立しなければなりません。日教組は闘争に明け暮れし、政府は日教組対策に忙しい。何か日本の教育というものに狂ったものがあるのではないかと考えざるを得ないのであります。(拍手)教育の本体である青少年が置き去りにされた感じがいたすのでございます。教育者の待遇も思い切って改める必要があると思うが、教育者も、戦後の混乱期の慣行を脱却して、教育者本来の姿に帰るべきではないか。(拍手)そして、本来の使命である教育そのものの充実に立ち向かうべきではないでありましょうか。総理は、日本の教育のあり方について、どういう見解をお持ちか、この機会に承っておきたいのでございます。(拍手)  最後に、解散に対する池田首相の積極的説明を求めたいと思うのでございます。池田首相は、解散は世論だという受け身の態度をとっておいでになる。しかし、解散は、積極的意義があるのではないかとわれわれは思うのであります。すでに、議員の任期は三年を経過して、世界の政治経済は急激なテンポで今日動きつつあるのであります。この世界の流動期に対処して、日本もまた高度経済成長によって、日本経済のある程度の拡大の目的を達し、これからは、第二ラウンドともいうべき格差是正、すなわち、農業や中小企業問題と真剣に取り組むところへきたということは、一つ政治の転機である。(拍手)この機会に国会解散して、新しく国民の審判を求め、決意を新たにして重要な諸問題を処理しようということもまた大きな意義を持つものと思いますが、池田首相は、解散に対する見解を国民の前に明らかにしてもらいたいと思うのでございます。  以上をもって、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 三木君のお話、しごく同感の点が多いので、特にお答えしなくてもいいものは省きます。大体お話のとおりに私は考えております。  第一の、健全な議会政治はどうやったらできるか。お話のとおりに、国の大事な外交、防衛、教育の問題が、われわれと社会党とはまさに百八十度違っております。非常に日本国民としては不幸なことでございます。(拍手)もしそれ、われわれが万一政権を失って、いまのような非現実的な考えを持っておられる社会党が万々一政権を取ったならば、それこそ、日本国民は温室から冷蔵庫に入らなければならぬことになるのであります。(拍手)私は、その意味において、先ほど申し上げましたごとく、どこで勝ったとかどうとか言わずに、ほんとう現実的な政策をとらえて、二大政党の妙味をここに発揮されることを常々から要望いたしておるのであります。(拍手)  第二の、平和に対する三木君の考え、まことに同感でございます。核実験の一部停止も、私は、ソ連の平和共存のあらわれであり、われわれ自由主義国が常に平和を外交の第一としておるところにソ連も近寄ってきたことを非常に喜ぶのであります。私は、核実験の一部停止問題を契機といたしまして、所信表明で申しましたごとく、軍事力の均衡水準をずっと下げて、そうしてできるだけ早い機会に完全軍縮をすると同時に、片一方ではお互いに経済を増進して助け合う福祉世界をつくりたいと考えておるのであります。  なお、東南アジアとの協力でございますが、やはり各国ともいろいろ事情がございます。私が今回参りましたフィリピンとかインドネシアにおきましては、それが主として賠償と、その賠償に基づく経済協力にほとんど限られておりましたが、私は、そういう狭い道でなしに、もっと広い広い道で、経済のみならず、教育、文化、各方面に親善の度を加えていき、しこうして、経済におきましては各国事情がございまするが、私は、今後所得倍増計画の進展とともに経済的の協力を一そうふやしていくことを国民に約束いたしたいと思います。  次に、農林あるいは中小企業対策でございますが、所信表明で申し上げましたごとく、いままでの高度成長が大企業のほうの設備に参りまして、中小企業のほうもよくいっておりまするが、徳川時代からのいろいろな点がございまして、これを、革命ということばは悪うございます。近代化、革新、ほんとうに思い切ったことをやっていきたいと思います。(拍手)私は三年前に農民の数が半分になると言ったら非常に非難せられましたが、いまやようやくおわかりいただけました。いまの日本の農業は徳川時代の農業そのままでございます。これを何とかしてあらゆる面から根本的な改革をいたさなければならぬ。農業基本法を設けたのもこれがゆえでございます。中小企業においても、中小企業基本法を設けたのもこの私の考えのあらわれでございます。いまや、農業あるいは中小企業の近代化、革新は、議論でなしに実行でございます。政府の熱意と実行力にかかっております。(拍手)私は、いままでの国民の私に対する期待、信頼を裏切らないよう、ほんとうに中小企業、農業の革新的近代化をやり、そうして国民の安寧福祉の増進に当たりたいと思っております。(拍手)  なお、社会福祉の点につきまして、所得倍増の完成する四十五年にはどうなるか。私は常に申し上げておりますごとく、所得倍増ということは、それ自体が目的ではなので、福祉国家をつくり、社会資本、社会保障、そうして人つくり、国づくり、文教施策が私の政治目標でございます。したがいまして、所得倍増が四十五年を待たずしてでき上がるような場合には、いまの三木さんのお話のようなことは、おおむね実現できるのではないかと考えております。(拍手)われわれはそれに向かって今後ともこん身の努力を国民とともに続けていきたいと考えております。  なお、育英資金の増加につきましては、組閣以来特に力を向けてまいりました。その育英資金を出す範囲の拡大、あるいは貸し付け単価の増加等等、いまではすでに二十六万人、九十一億を出しておりますが、来年におきましては、人つくりの根幹でございますので、従来と同様、あるいはそれ以上に力を入れたいと考えております。(拍手)  また、社会資本の充実でございますが、御存じのとおり、東京におきましてのあの道路、また各地におきまする道路あるいは住宅等々、私は国民がよく存じてくださると思いますが、まだまだ十分ではございません。今後とも社会資本の充実、ことに住宅と道路、港湾につきましては、あらゆる努力、あらゆる力を傾注いたしたいと思います。  住宅問題につきましては、一世帯一住宅、これは私の公約でございます。四十五年までには絶対にやることをはっきり申し上げておきます。(拍手)すでに今でもやっております。三十八年までには二百二十万戸できております。私は、四十五年までに、大体政府のほうで三百二十万戸、民間のほうで四百六十万戸やれば、一世帯一住宅が実現することをここで申し上げておきます。(拍手)  なお、この住宅問題というのは、単に生活の安易とか楽とかいう問題ではございません。人つくり根本をなすのは住宅でございます。やはり親子がほんとうに住みよい住宅におってこそ、人つくりの完成ができるのでございまするから、私は、単に社会保障の問題でなしに、国づくり、人つくり観点からこれを進めていきたいと考えておるのであります。(拍手)  社会正義の擁護につきましては、三木さんと同じでございます。私はあらゆる方法をもってやっていきたい。お話のとおり、これは教育が一番大事でございます。その教育は、家庭教育、学校教育、また職域等のいわゆる社会教育、この三点に重点を置かなければなりません。今まで学校教育においていろいろな欠陥の点があったでしょう。教員に対しまする三木さんのお考えは全く肯綮に当たるものだと思っております。(拍手)しこうして私は、今後におきましても、特に学校教師の地位の向上をはかると同時に教師が自分の地位を自覚してもらう、その職域の重大なことを自覚してもらうよう努力していきたいと考えておるのであります。  次に、解散の問題でございますが、先ほど来申し上げたとおりでございます。時代は動いております。しかも、物価値上がりによって所得倍増に対しまする批判があるようであります。私は、所得倍増について、どちらがよかったか、今後どちらがいいかということを国民に訴えるつもりでございまするが、何と申しましても、やはり議会は審議を尽くすべきところでございます。できるだけ審議を尽くしまして、そうして適当な機会に、憲法七条によって私は解散し、国民にわれわれの政策を訴える考えでございます。しばらく御猶予願いたいと思います。(拍手)      ————◇—————
  9. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) この際、暫時休憩いたします。    午後三時四十八分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         総理府総務長官 野田 武夫君         経済企画庁調整         局長      山本 重信君      ————◇—————