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1963-03-25 第43回国会 参議院 予算委員会第一分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月二十五日(月曜日)    午前十時二十七分開会     ————————————— 昭和三十八年三月二十日予算委員長に おいて、左の通り分科担当委員を指 名した。            大谷藤之助君            川上 為治君            木内 四郎君            木村篤太郎君            小林 武治君            小柳 牧衞君            吉江 勝保君            稲葉 誠一君            岡田 宗司君            千葉  信君     —————————————  出席者は左の通り。    主査      千葉  信君    委員            大谷藤之助君            川上 為治君            木内 四郎君            小柳 牧衞君            稲葉 誠一君            岡田 宗司君   担当委員外委員            田中  一君   国務大臣    法 務 大 臣 中垣 國男君    国 務 大 臣 篠田 弘作君   政府委員    警察庁長官官房    長       後藤田正晴君    警察庁刑事局長 宮地 直邦君    宮内庁次長   瓜生 順良君    皇室経済主管  小畑  忠君    法務大臣官房経    理部長     新谷 正夫君    法務大臣官房司    法法制調査部長 津田  実君    法務省民事局長 平賀 健太君    法務省刑事局長 竹内 寿平君    法務省矯正局長 大沢 一郎君    法務省保護局長 武内 孝之君    法務省入国管理    局長      小川清四郎君    公安調査庁長官 斎藤 三郎君    公安調査庁次長 関   之君   最高裁判所長官代理者    最高裁判所事務    総局事務総長  下村 三郎君    最高裁判所事務    総局経理局長  岩野  徹君    最高裁判所事務    総局刑事局長  樋口  勝君   説明員    法務省人権擁護    局総務課長   小泉 初男君    会計検査院事務    総局事務総長  上村 照昌君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○主査及び副主査互選昭和三十八年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十八年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十八年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     —————————————   〔年長者小柳牧衞主査席に着く〕
  2. 小柳牧衞

    小柳牧衞君 ただいまから予算委員会第一分科会を開会いたします。  本院規則第七十五条によりまして、年長のゆえをもって、私が正副主査選挙管理を行ないます。  これより正副主査互選を行ないますが、互選は、投票によらず、選挙管理者にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小柳牧衞

    小柳牧衞君 御異議ないと認めます。  それでは、主査千葉信君、副主査吉江勝保君を指名いたします。     —————————————   〔千葉信主査席に着く〕
  4. 千葉信

    主査千葉信君) ただいま皆様方の御推薦によりまして、主査を勤めることになりました。皆様方の御協力をいただきまして職責を全ういたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、審査に入ります前に、議事の進め方についてお諮りいたします。  本分科会所管は、昭和三十八年度一般会計、同特別会計、同政府関係機関予算中、皇室費国会裁判所会計検査院内閣及び総理府のうち防衛庁、経済企画庁、科学技術庁を除く部分及び法務省並びに他の分科会所管に属しないものを審査することになっております。  議事を進める都合上、主査といたしましては、本日午前、皇室費及び会計検査院、午後、法務省及び裁判所、明二十六日は、午前、国会、午後、内閣及び総理府という順序で進めていきたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 千葉信

    主査千葉信君) 御異議ないと認めます。  なお、来たる二十七日午後開会する委員会主査報告を行なうことになっておりますので、御了承願いたいと存じます。     —————————————
  6. 千葉信

    主査千葉信君) それでは、昭和三十八年度予算中、まず皇室費を議題とし、説明を聴取することにいたしたいと存じます。  それでは、小畑皇室経済主管から説明をお願いします。
  7. 小畑忠

    政府委員小畑忠君) 昭和三十八年度皇室費歳出予算について、その概要を御説明いたします。  本歳出予算に計上いたしました金額は、九億一千四百三十六万円でありまして、その内訳は、内廷費六千万円、宮廷費八億三千三百二十一万円、皇族費二千一百十五万円であります。  これを前年度予算に比較いたしますと、三億九千六百七十六万八千円の増加となっております。  そのおもなものについて、事項別に申し述べますと、内廷費は、皇室経済法第四条の規定に基づき同法施行法第七条に規定する定額を計上いたすことになっておりますが、本年度は、前年度に比較いたしまして、二百万円の増加となっております。  これは、内廷費定額五千八百万円を、本年度において、六千万円に増額改定することを予定いたしていることによるものでありまして、これに伴う皇室経済法施行法の一部改正法律案は、今次国会提出いたし、御審議を願っております。  宮廷費は、内廷費以外の宮廷に必要な経費を計上いたしたものでありまして、その内容といたしましては、皇室の公的御活動に必要な経費五千三百九十二万一千円、皇居造営準備に必要な経費二億九百七十七万四千円、皇居東側地区整備に必要な経費二億八千五百八十四万五千円、その他皇室用財産管理等に必要な経費二億八千三百六十七万円でありまして、前年度に比較いたしますと、約三億九千二百万円の増加となっております。  皇族費は、皇室経済法第六条の規定に基づき同法施行法第八条に規定する定額によって計算した額を計上いたすことになっておりますが、前年度より二百二十五万円の増加となっております。  これは、内廷費と同様に定額の改定を予定いたしておりまして、年額算定基礎となる定額四百二十万円を、本年度から四百七十万円に増額改定することによるものであります。  これに伴う改正法律案は、今次国会提出いたし、御審議願っております。  以上をもちまして、昭和三十八年度皇室費歳出予算概要説明を終わります。  よろしく御審議あらんことをお願いいたします。
  8. 千葉信

    主査千葉信君) それでは、ただいまの説明に対しまして、質疑のおありの方は、順次御発言をお願いします。
  9. 岡田宗司

    岡田宗司君 皇居造営関係についてお伺いしたいと思います。  この一般会計歳出予算目明細書のうちに皇居造営関連施設整備費として一億八千二百七十二万六千円、皇居造営関係費として千六百五十一万九千円と計上されておりますが、この皇居造営は本年から、三十八年度から着工されることになるわけですか。
  10. 小畑忠

    政府委員小畑忠君) 三十八年度に入っておりますのは、まだ工事の実体関係には入っておりませんので、当初の予定からいたしまして三十七年度中、つまり本年度一ぱい基本設計実施を終わりまして、明年度からは実施設計とあわせまして、予定地内のいろいろな建物の撤去でございますとかというふうなことが入っておりまして、そのうちで二重橋のかけかえあたりは大きな金額になっておりますけれども、宮殿造営自体本体にはまだ三十八年度からは入らないわけであります。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 皇居造営関係費千六百五十一万円というのは、これは実施設計等に要する費用ですか。
  12. 小畑忠

    政府委員小畑忠君) 細目に入っております皇居造営関連施設整備費は、施設関係経費が一億八千二百七十二万六千円でございまして、設計に伴います設計謝金等は、六の項目の諸謝金のうちに皇居造営関係謝金というのがございますが、この謝金のうちに皇居造営関係のこの設計関係謝金が入っているわけでございます。でございますから、皇居造営準備関係といたしましては、設計関係の諸謝金と、先ほど先生がおっしゃいました皇居造営関係費のうちの、庁費と、それから皇居造営関連施設整備費施設関係経費が入っているわけでございます。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 本年中に二重橋のかけかえをやるということになるわけですが、あれは、この皇居造営関連施設整備費のうちから支出されることになるわけですか。それは金額はどれくらいになりますか。
  14. 小畑忠

    政府委員小畑忠君) 皇居造営関連施設整備費の一億八千二百七十二万六千円のうち、二重橋かけかえ関係が一億二千八百三十三万四千円、それから周辺の庭園の整備関係が六百七十八万五千円、それから建物整備関係が四千七百六十万七千円、こういうふうに内容が分かれております。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、今年中に実施設計を終わり、それから関連施設整備を終えて、三十九年度からいよいよ造営に着手する、こういうことになるわけですか。
  16. 小畑忠

    政府委員小畑忠君) 仰せのとおりでございます。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、これは実施設計ができないと、確実なことはわからぬかもしれませんけれども、大体何年計画で、そうしてその費用は今のところどれくらいに大体見積もられておりますか。
  18. 小畑忠

    政府委員小畑忠君) 実際の経費が、実施設計が終わりますと、本体のほうに入るわけでございますけれども一、三十九、四十、四十一というふうなことで、四十一年度に完成をもくろみまして全体の計画を進めている次第でございますが、全体の経費といたしましては、ただいま仰せられましたように、実施設計が終わりませんと、総体の金額が出て参らないわけでございまますけれども、この前やりました試案のようなものがございまして、そのときの関係から推測いたしますと、大体九十二、三億というふうな見当で考えている次第でございます。
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 この九十二、三億というのはなんですね、造営だけですか。さらに必要とする関連施設等も含めてですか。
  20. 小畑忠

    政府委員小畑忠君) この九十二、三億の関係は、建物それから付帯施設関係、それからまた、大きくは、この中に地下の駐車場なんかも全部入れまして、九十二、三億というふうな金額を想定いたしたわけでございますが、その中の宮殿の官舎その他の関係は別になっております。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 よく国民の献金といいますか、寄付金といいますか、そういうものの話が出るのですけれども、そのほうはどういうふうになっておりますか。
  22. 小畑忠

    政府委員小畑忠君) ただいまのところで、国民からの寄付と申しますか、それは国庫のほうに入りまして、それで皇居造営経費は別に歳出でもって計上しまして支出する、こういう建前になっておりまして、ただいまのところ、二千数百万円の金額に上っておりますけれども、実施設計が完成いたしませんと、全体のスケールもわからない次第でございますけれども、出て参りました国民からの純真な御寄付関係は、そのお出しになりました方々意思を尊重いたしまして、それにふさわしい何らかの関係経費を割り当てまして、そうして、これが国民からの寄付の分であるというふうな気持がはっきり出るようなことにいたしたいというふうに考えております。
  23. 岡田宗司

    岡田宗司君 よく寄付金ということになりますというと、ほんとうのボランタリーのものばかりでなくて、まあ今度の皇居造営のような場合には、団体とかあるいは各県あたりで競って、そしてかなり寄付金募集運動を強力に行なって、寄付金集めの競争というふうなことも起こりかねないものだと思うのですけれども、宮内庁としてはそういうことに対してどうお考えですか。
  24. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 皇居造営関連しての寄付金のことにつきましては、皇居造営審議会昭和三十四年開かれました際に、この問題について特に御答申がございまして、寄付は、これはこの皇居造営国費をもってやるという建前でいくべきだけれども、ほんとう誠意をもって自発的に出される弊害のない寄付金については、これは受けてよろしい、その際弊害のないようにしなければならないという御答申がございました。その御精神を受けまして、この寄付金のことにつきましては、強制にわたったり、あるいは特にずっと宣伝して集めて歩いたり、あるいは寄付をすることによって何か寄付をしているほうの宣伝とか、そういうようなことに利用されるようなふうの弊害のないふうにというように考えまして、各県のほうの知事のところにも、そういう趣旨のものだからということで、特に書面も出し、会議の際にも説明をいたしておるわけでございます。したがって、ほんとう誠意に基づく自発的なもの、この気持まで押えることは感心しない、それは受けるということでありますが、何か先生のおっしゃったように、進んで強制的に集めて歩くというようなことはしないということで考えておるわけでございます。
  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 この問題は、今まだ実際に造営が始まっておらないから、別にそれほど大がかりな募金等も行なわれませんが、しかし、いよいよ造営が始まるということになって、それがいろいろな形で報道されますというと、自然また今弊害としてあげられたようなことが起こり得る可能性が出てくるのじゃないか。ことにこれに便乗いたしましていろいろ自己宣伝に使うというふうなことが今まで皇居造営以外のことでも非常に多かったので、そういう点については、宮内庁としても、私はまた政府としても、十分にそれらの点について警戒をすると同時に、そういうことのないようにしていかなければならぬと、こう考えておるのですが、その点について、宮内庁としてはやはり十分考慮されるだろうと思いますが、どうでしょうか。
  26. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 今の御趣旨の点は十分考慮していきたいと思っております。今までの二千数百万円集まっておりますものは、これもたくさんの方で、しかも金額のわずかなのが多いのでございます。その中で、ときによるとお返ししたのもございます。何か、今言われたように弊害があるような、何かこう集めて歩いたようなものがございまして、これはこの寄付を受ける趣旨に反するのだから、失礼だけれどもひとつ受け取れないというのでお返しした例もございます。将来のことにつきましても、そういうような弊害を伴うようなものにつきましてはやはりお返しをする、受けないということをはっきりすれば、そういう弊害も防げるのじゃないかと思いまするし、なお、これは国費をもって建てるのを建前としておる、ほんとう誠意のあふれておられるのをお断わりするのも不人情だからお受けするというので、どちらかといえば、そう積極的でないその精神を一そう堅持して、弊害のないように努めたいと思っております。
  27. 岡田宗司

    岡田宗司君 三十九、四十、四十一年度の三カ年で造営を完成する計画になっております。その金額が今のところほぼ九十二、三億と見積もられているわけですが、これは来年度予算の際に継続費として政府のほうへ要求されますか。
  28. 小畑忠

    政府委員小畑忠君) ただいまのところは、各年ごとに分けまして提出いたしたいというふうに考えておりますけれども、明年度、なお大蔵当局ともよくその辺につきまして相談をいたしましてお願いいたしたいと、こう考えております。
  29. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ一つ建物中心として、その関連整備のことも入れまして九十二、三億というと、とにかく非常にりっぱなものになろうかと思われるわけですけれども、これらの単価等がたとえばどれくらいになるものでしょうか。たとえば皇居建物単価ですが、どれくらいに見積もられておるのでしょうか。
  30. 小畑忠

    政府委員小畑忠君) これもまだ実施設計が済んでおりませんので、正確なことば何でございますけれども、ただいまの関係では、総延べ面積が二万四千五百七平方メートルということで、坪数に換算いたしますと、七千四百十三坪というふうなことになっておりまして、表御座所関係宮殿部を分けましてそれぞれ設計が行なわれておる次第でございますが、この建物は、一般建物よりは、ただいま先生もおっしゃいましたように、あまりほかに例のない大きな建物で、天井その他の関係も相当高くなるというふうな要素も入りまして、そうした関係を考えますと、大体常識的には坪当たり六十七万円というふうなことに相なる次第でございます。
  31. 木内四郎

    木内四郎君 ちょっと関連して、今度造営される皇居見積もり九十二、三億という話だったですけれども、それは、この前に試みに計画をお立てになったものを基礎として、その当時の物価によられた見積もりだと思うのです。今度また設計ほんとうにおやりになる場合には多少変わることもあり得るし、また、物価も最近変動しておりますから、相当今後実際の場合には移動があるというふうに了解するのですが、いかがでしょうか。
  32. 小畑忠

    政府委員小畑忠君) ただいま先生のおっしゃいましたとおりでございまして、現在の時点におきまして試算いたしました結果が九十二、三億円でございまして、その後のいろいろな経済状勢の変化によりましては、多少それより上回るというふうなことも出て参る、こう考えております。
  33. 千葉信

    主査千葉信君) ただいま担当委員外委員田中一君から発言を求められておりますので、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 千葉信

    主査千葉信君) 異議ないと認めます。田中一君。
  35. 田中一

    担当委員外委員田中一君) 私は、皇居造営の問題について、本質的にこの性格をまず伺いたいのです。  御承知のように、各国とも、諸外国の例を引いてもわかるように、一応国事中心地点中心地と申しますか、あるいは中心一つ記念的な、歴史的なものを持っておりますけれども、今回造営しようという皇居とは何かということなんです。天皇家の居室、住宅をお建てになるという気持なのか。あるいは、国事を行なうところの象徴天皇としてのものをお建てになろうとするのか。また、今日の憲法にある主権在民という思想からくるところの、国民象徴であるところの、国の象徴であるところの天皇並びに国民という関連から、国民的宮殿造営しようとするのか。その点が明らかでないわけなんです。むろん、総合されたものをつくるのだということならば、それでもって一言で尽きますけれども、今日ある憲法の立法の精神から、どういうものを考えておるのか。それが一つの問題です。  それから、これに関連する立地条件の問題です。私ども、同じ明治生まれの人間として、ことに私など東京に少年時代おったものだから、天皇とはよく街路で会っておったものです、摂政時代には。家が近かった関係で。それだけに近親感を持っております。ことに、われわれは、天皇制そのものに対しては賛成でございます。今日の憲法を守るという意味におきましても、認めておる。しかし、最近の傾向として、どうも天皇を利用する形が、たとえば憲法調査会の中におきましても、ほのほの見えておる発言を聞いているわけなんです。だれかが政治的に——天皇は政治は行なわない、しかし、政治的に天皇を利用するという空気が出てきているのじゃなかろうか。それで、ことに今度の皇居造営については、皇居宮殿か、あるいは天皇家住宅か。それがやはり国民の前に明らかに表明され、そして国民が共感を持って、国民の税金というものを、一つ記念館として、民族の記念として永劫に残すというような意気込みを持って、相当大規模な資金を投入しても一向差しつかえないのじゃないか。これによって日本の民主主義というもの、天皇家国民との間の紐帯がもっと緊密に太くなる、そして直接つながるというような形のものが望ましいのではないかというような自分の意見を持っているわけなんです。  で、まず最初に伺いたいのは、前段言ったように、この宮殿というものの性格、これは何かということです。伺っておきます。
  36. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 今のお尋ねの問題につきましては、皇居造営審議会の際にも、その際、明らかにされておりますが、皇居というものは何か。皇居という中には、天皇陛下のお住居という部分が一部ある。それから天皇陛下が国の象徴として国の公の行事をなさるというほうの宮殿というものがある。お住居というものと宮殿というものを分けて一応考える。お住居関係につきましては、これはすでに一昨年の十一月に吹上御苑というところに吹上御所というものができまして、これは金額としては約二億円でございますが、そう豪華なものではございません。宮殿は、国の象徴として公の国の行事をなさる。それが性格でございまして、単に皇室の私的なものではない。国の象徴で、国民の総意に基づいて国の象徴としておられるその天皇陛下が、いろいろ外国からこの国の象徴に敬意を表しに来られる方がありますから、そういうような方にお会いになる、また、もてなしをする、そういうような儀式を行なう、この儀式憲法七条にありまするように、国民のために行なわれるという条文になっておりまして、国民のために儀式を行なわれる、そういうような場所というものが必要になって参ります。その他象徴としての御活動をなさる公の場所として宮殿が必要である。現在は仮宮殿で、以前の宮内省建物だったその三階を一時使っておられる。いろいろ外国関係もふえ、また、いろいろな儀式をする際にも、今、先生おっしゃったように、できるだけ各方面の方がそれに参列されるほうがいいのですが、場所が狭いと皆さんがそうおいでになれない。ここで新しい宮殿を早くつくったほうがいいということで今進んでおるわけでありまして、宮殿をつくる場合におきましても、そういうようなことを頭に入れまして設計を考えてもらっておるわけでございます。
  37. 田中一

    担当委員外委員田中一君) まあそうあるべきだと思います。しかし、なぜもっと、皇室経済審議会というのですか、何というのですか、私はあまり皇室関係はわからぬけれども、国民に知らしめるということが一番大事だと思うんです。いろいろ最近、たとえば皇太子殿下美智子妃殿下の問題にしても、いろいろ国民とあまりに近づき過ぎるというか、プライバシーまで侵すようなことが往々にあるのじゃなかろうかという不安を持っておりますが、そういうことからまた、あなた方宮内庁におられる方々が、国民天皇との間のじゃま者になるという傾向が、一面、逆な作用を生んで出てくるのじゃないかという心配も持っておるわけです。また、一方、憲法調査会では、天皇制問題についてもいろいろな議論が活発に行なわれておる——私どもは参加しておりませんけれども、行なわれております。そこで、性格は民族的な、国民的なものである。かつまた、住居のほうは別に吹上御殿を作っているということが明らかになりました。なったならば、これはいわば国民のものです、この宮殿というものは。決して宮内庁が、あなた方の意思、あるいは宮内庁関連する審議会なり何なりでもって、そこだけできめるべきものじゃないということを私は明らかにしなきゃならぬと思うんです。天皇家御自身の住居の問題ならば、これは差しつかえありません。われわれがわれわれのうちを作ると同じことです。しかし、少なくとも民族的な宮殿というものを作るならば、もっとはっきり国民の前にその姿を出して、計画を示されなきやならぬと思う。せんだって、十二月二十七日に、読売新聞が、一応新宮殿設計ができたと、こういう報告をしております。審議会国民の代表が、あるいは代表的な立場の人が集まって審議しているんだから、それは即国民だというものじゃないんです。こういうものを突如として発表される。で、たとえば立地条件を考えてみるんです。天皇家のお住居として、吹上御殿が御住居であるということになり、かつまた、今度の宮殿が民族的な、国民的な宮殿であるというならば、もう一歩進んで考うべきものは立地条件の問題なんです。東京は、冬になればスモッグ、それから自動車のはんらんによって起こるところの排気ガス、これはもう、私も一年に一ぺんぐらい宮中に伺っているけれども、宮中というか、皇居に伺っているけれども、あの中のそれはもう全部砂利敷きで、風があった場合などはたいへんなものです。砂塵もうもうたるものでしょう。はたしてそれが天皇家のお住居として適当かということになりますと、問題がございます。そういう点も十分考えられたんでしょうね。また宮殿に、たとえば今度でき上がるところの大きな宮殿に対して多くの人が参集する場合にも、とてもこれはもうたいへんなことです。おそらく、人数によりますけれども、時刻の二時間ぐらい前から受け付けをしなければ間に合わぬような時代がもう直ちに参ります。その審議会なり何なり、これを検討されている機関で十分に立地条件をお考えになったでしょうね。その点はどうですか。
  38. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この皇居造営審議会の際に、いろいろこまかくお考えになりましたが、皇居造営審議会性格を申しますと、皇居造営審議会は、昭和三十四年に開かれて、いろいろこまかい点を検討されて答申をなされましたが、その構成は、国会議員の方が十名で、これは、各党の御推薦の方がお出になっておったわけです。それから各新聞、言論関係方々、それから都市計画の専門の方とか、建築のほうの専門の方、そういうふうに二十五名の方がお集まりになって、いろいろ御検討になったわけです。  この立地条件の問題についても、これは、まず最初にいろいろ御意見を出して研究いたされまして、場所的に、もとの焼けた宮殿の跡へ作るのがいいかどうか、もっとほかにいい場所がないかというようなこともいろいろお話しになっております。で、いろいろ検討いたしてみましても、たとえば一部に、富士山麓あたりどうかというような説もあったようですが、   〔主査退席、主査代理小柳牧衞君着席〕 しかし、その場合においても、宮殿だけが移ったのでは非常に不便だ。やはり政府の機関、それから外国の大公使館なんかもそこへ行けば、またこれは別ですけれども、やはりそれは実際問題として簡単にいかない。目下、そうなると、東京付近でとなると、場所を探してみましたが、結局なかなか適当な所はないので、やはりもとあった所が結局いいんじゃないかということで、そこへおさまったと。その際も、しかし陛下のお住居については、これは別個の所へ持とうと、ここは空気が悪いのではないかというお話もありましたんですが、その空気の関係につきましては、専門家にいろいろ調査してもらいまして、この吹上御苑の今吹上御所を作りましたあたりですと、空気の汚染度がちょうど郊外の石神井あたりと同じ、皇居でもずっとお堀の近いところはもっとよごれている。だんだんあそこは木があったりして、まん中のほうへ行きますと、汚染度というのはずっと少なくなっている。これは、理想的といえば、もっとそれはきれいな所がございます。青梅あたりと比較すると悪いのですけれども、石神井あたりの汚染度で、特に悪いということでもないからということ、なおどこか適当な所があればというので、これも検討されましたが、なかなかちょっと適当な所がない。結局それほど悪くもないのだから、ではお住居も吹上御苑のところがいいのじゃないかと、結局そういうふうにおさまったわけでありまして、立地条件関係も、いろいろ審議会で御研究になりました結果の御答申を得て、その御答申精神によって、われわれとしてば実施に進んでいるわけでございます。
  39. 田中一

    担当委員外委員田中一君) 宮中にある三殿は、これは天皇家のものですか。天皇家に属するものなんでしょうね。あの賢所、皇霊殿、神殿といいますか、この三つのお宮は。
  40. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 賢所、皇霊殿、それから神殿、これを三殿と申しておりますが、これは普通の国有財産ではございませんので、天皇陛下のほうに属しているわけでございます。
  41. 田中一

    担当委員外委員田中一君) 各国の宮殿を見ましても、やはりその民族の象徴としての姿を世界の人類に見せているわけです。今回、かつての御殿のあった所に、まあ明治宮殿のあった所へお作りになろうということになりますと、当然国民並びに、観光客、というと語弊がありますけれども、やはり自由に中へ入れるようになるんでございましょうね。
  42. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 宮殿については、自由にお入りになるというようには考えておりません。ここでいろいろ外国関係の接伴の行事ですとか儀式がある。やはりその場所にしょっちゅう人がのぞき込んでいるという状態は、これは、宮殿としての機能から見まして感心いたしません。しかし、差しつかえのないときに、現在でも皇居参観というので、毎日午前午後千人くらいを限度として、その範囲でありますと、受け付けて御案内して、見ていただいておりますが、そういうように、行事に差しつかえのない場合に、これをいろいろ見ていただくというようなことは、これは当然考えなくちゃいかぬと思っております。
  43. 田中一

    担当委員外委員田中一君) どの国でも、その宮殿の機能を阻害するような案内の仕方はしておりません。しかし、外郭だけは常に親しめて、写真機を持って行って写真とるぐらいは自由にできるということは各国の姿です。そんなに、何といいますか、巡査といいますかがおって、一々許可を受けて入って行くなんという所はないのです。天皇家御自身の御住居ならば、これはやむを得ぬと思います。これは、個人の住居は侵せません。しかしながら、国民的な宮殿であるというならば、当然見せるべきです。どの門からでもどんどん入るような程度までに開放すべきです。そうして今の賢所その他三殿は天皇御自身の所有に属するものであり、かつまた、天皇が信仰をなすっている神殿であられるならば、吹上御殿の、御殿といいますか、御所といいますか、その付近に私は移築すべきであると思います。飛行機で日本の国の象徴である宮殿を見にいくのじゃないのです。みんな歩いていくわけなのです。汽車へ乗っていくわけじゃありません。それが日本の宮殿だけが日に何人しか見せないとか、外郭ですよ、宮殿の機能を阻害するような内部の問題を言っているのじゃない、外観だけでも見ることができないなんていうのは国民的宮殿じゃない。もっと国の象徴というものは国民と近づけなければならない。二重橋も、その他の御門も全部開放してある程度までは自由に入って、そうしてこれから質問しますけれども、おそらく象徴される建築美というものも、その中に織り込んでいる伝統というものも、精神というものもすべて世界各国の人類に知らしめることが一番必要なんです。いかに平和を愛する民族であるかということを知らしめるべきなんです。日本の皇居と申しますか、いわゆる宮城と申しますか、俗に言っている宮城は、かつての戦国時代の城砦建築の姿をそのまま持っているわけです。あれは城です。全部戦国時代の思想をそのまま受け継いでおる。明治宮殿は、御承知のように、天皇制よりも、専制から憲法政治になりましたけれども、一応天皇の大権というものが存在したころの宮殿であり、かつまたその城砦なんです。その城砦をお建てになるならば、当然自由に国民にあるいは世界の人類に常に触れしめるというような方途がとられなければ、やはりかつての明治憲法下の天皇と申しません、宮殿というものにならざるを得ないわけです、その点どう考えておりますか。
  44. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) このようにという御意見、しかし、機能は損するということは、これはもしないのは当然だという御意見、根本から言えばそう違いはないと思います。ただ外国宮殿のいろいろ参観の模様なんかも調査をしてもらったのを聞いておりますけれども、現在使っておられる宮殿の場合、そう自由に入れているところはないようです。ただ使っておられないときに、もっとたくさんの人に自由に一応やはり承認を得て入っているようですけれども、承認を得て入って見ておられる。ただ宮殿によりますと、すぐに市街地に面しておって普通の道路から自由に見えるというのがございます。これはほんとうの自由ですけれども、そうでないものはやはりそこの機能を守るために必要な規制はされておるということを一応報告は受けておりますけれども、日本だけ外国と違って特に厳重な規制をするというような考えではございませんですが、やはり機能を考えてそこなわないようなふうにという考慮からある程度の規制ということは、これは各国ともやっているから当然だろうと考えられるわけであります。新しい宮殿ができる際のことにつきましても、あすこのもとのところにできますが、皇居前の広場からもある程度ちょっとわかる、実際屋根の程度ぐらいはわかる、外から見る目にもわかる、こういうような考慮もされて設計をされております。なお、今おっしゃったように、ある程度の規制はもちろん必要でしょうけれども、参観ということについても、これはやはり十分考えていく。それによって国民的なそういう儀典を行なう場所というものについて、国民のだれにも知っていただくということは必要だろうと思います。
  45. 田中一

    担当委員外委員田中一君) はっきり私の言っておることを聞いていただきたいと思う。宮殿の内部をそうだれでも開放して見せるということを言っておるのじゃない。外観だけでも印象にとめておきたいということを言っておるのです。大体今の宮城というものはこれは武家時代、戦争時代の遺物なんです。しかし、これも一つ記念物として文化財としてこれは当然認めます。だから二重橋なり、各御門から自由に入れるような姿にすべきであるということを言っておるのです。日本だけが屋根くらい見えるようにしてやるということは、あなた自身の考え方は、まだ特権的な意識を持っておるからそういうことを言っておるのです。国民のものじゃありませんか。天皇家予算を差し上げて天皇御自身のお住居をつくり、それを見たいというのじゃないのです。民族的な宮殿というもの、これは国民の税金でやっておる。自分の税金で建てたうちくらい見たっていいじゃありませんか。その際にははっきりと各御門を開放して外観は見せるくらいの設備はするでしょうねと伺っておるのです。広場から屋根くらい見えるでしょうというようなことは主権在民という姿からはほど遠いものです。なぜ国民の手によって作られた宮殿国民が見ちゃならないかということです。そんなことありません。それは象徴天皇国事を行なうところ、国としての行事をいろいろ行なうことになるところというなら国民のものずばりですよ。当然そういう性格を持っておる宮殿なら自由に外観だけでも見られるような設備をなさるのでしょうね、そういう方法をおとりになるのでしょうねと伺っておる。あなたの言葉でいくと、答弁でいくと——室内の問題、内部なんかどこの国だって勝手に見せやしませんよ。やはり一応見なければならぬ目的を明らかにして案内してくれています。私もずいぶん見て歩いています。しかし、それを言っておるのじゃありません。どこの国でも外観すら見せない、宮殿の姿すら見せない国はないです。だから最初から天皇家のお住居かあるいは国事を行なう宮殿かということを伺っておるのであって、陛下の吹上御苑を見せる必要もなければわれわれも要求はいたしません。宮殿であるならば、今あなたが説明しておるような宮殿であるならば、当然その宮殿部分が見られるような通路は開放すべきであると思います。大体江戸城というものは武家時代の城砦なんですよ。平和国家の象徴じゃないのです。しかし、これも先ほど言っておるように、文化財として非常に貴重なものですから、私はあれに対して手を施してあれをどうするこうするということは賛成じゃございません。貴重な文化財として残すべきです。しかし、そこに宮殿建てられる以上、それを見物できるというようなことは開放しなければならぬと言っておるのです。それが一つの問題です。当然のことです。自分の自由になる金でもってつくるのじゃないのです。国民の力でつくる、国民のものです。まだあなた方、天皇家宮内庁におられるあなた方がまだ国民宮内庁との間にじゃま者になっているというものじゃ困るのです。なぜ見ちゃいけないのですか、なぜ広場から屋根だけは見せてやろうというような考え方を持っておられるのですか。
  46. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 先生私の申し上げたことを幾らか誤解なさったように思うのでございますが、宮殿を見せてはいけないというふうには絶対に考えておりません。やはり、一般国民の方に見ていただくということは、これは必要なことであると思うのですが、ただ、いろんな、たとえばあそこの正門を自由にあけて、人が自由に、普通の通路と同じように自由に入ってこられるというようなふうにすることは、やはりこれは無理だと思います。これはいろいろ、たとえば信任状の奉呈で、馬車で正門から入ってこられるとか、お客さんが自動車で入ってこられるとか、いろいろな国内の行事がある場合に、お客の方が入ってこられる、その場合に、普通の方も一緒にそこらあたりに自由に通ってこられるというようなことでは、やはりその機能ということから、機能上しょうがない。そこで、ある程度の規制をして、常に差しつかえないときにおいては、参観をしていただく、自由に通路のようにしては、これは機能上無理だろうと思うのです。その点は、何か見せないというつもりで言っているかのようにおとりになったとすれば、私の表現がまずかったので、そういうのじゃなくて、参観をしていただく。それにはやはり、その機能を損じないような規制のもとに参観をしていただくというような考えでおります。
  47. 田中一

    担当委員外委員田中一君) それじゃ建て場所が悪いのです。御承知のように、今どきになれば、何百人、何千人となく宮城広場に集まって、宮城を望見しているのです。国民がそこまで非常に親しんでいるわけです。そこに建てる以上、当然自由に開放して、通すべきです。それを、もしも何か行事があった場合には云々、行事があったときには、それはできないでしょう。交通整理もしなければならない。そうでない場合には、自由に開放すべきだと言うのです。行事のないときにだけ出てくるわけではございません。地方の人にしても——モスクワに行っても、クレムリンに対して、もうそれこそ陸続と辺境から民衆が出てきて見せております。せめて外観だけでも見て帰りたいのが事実なんです。赤い広場へ行ってみてもそうです。たいへんな人です。これはどこでもそうです。バッキンガムへ行ってもそうです。どこへ行ったってそうです。あなたよく知っているじゃありませんか。それすら望見できないということになると、これは民族の宮殿じゃなくして、何か特権的な意識があなた方にあるから、そういうことになるのじゃないかと思う。そういうことは考えておらないのですか。制限する必要も何にもないと思うのです。
  48. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) ここで無責任に、そのとおりにいたします、と言いましても、実際問題として宮殿の機能を考えますると、やはりある程度の制限は、これはやむを得ないというお答えを繰り返すほかはやむを得ないのでございまするが、しかし、われわれが何か特権的なふうに考えているかというような御質問に対しては、これはそういうふうに考えているのじゃございませんで、われわれとしては、現在の憲法精神というものは十分わかっているつもりでございます。国民の総意に基づく象徴として、天皇はいろいろ行事をなさるわけですから、その国民の総意というものが那辺にあるかということを、非常にわれわれは考えているのです。国民の中にはいろいろの考え方の方がございます。結局、全体を見た場合に、どこが国民の総意に最も沿うところであるかということを考えながら進んでおるつもりでございまして、現在のところ、国民の総意としてはここらあたりだ、ここらあたりだろうということを判断して、いろいろやっているわけで、われわれが独断に陥らないようにということは、常に反省をしておる次第でございます。
  49. 田中一

    担当委員外委員田中一君) 国民の総意云々という突き進んだ御説明がありましたが、国民の総意をどういう工合に認識しているのです、宮殿に対する国民の総意ということは。私が申し上げていることは、その国民の総意のうちの一部分であるというふうに解釈なさって、言っているのでしょうと思いますが、ほかにどういう解釈がございますか。それをひとつ説明していただきたいと思います。
  50. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この皇居造営審議会のときにも、いろいろ意見がありまして、その際にも結局宮殿性格から見て、その部分についての参観の話が出ました。これはやはり参観を認める。しかし、今先生がおっしゃるように、自由に開放して通行するというような御意見ではなかったものですから、そういうようなところから、いろいろな方が集まられてそうおっしゃっていますから、一般の参観について十分考えるということは、これはもうわれわれとしても考えていこうと思っておりますが、そこにある程度の規制ということは、秩序を保っていくための規制ということは必要である。一方一般の方が見たいという場面だけ考えますと、自由に入れたほうがいい。また、行事の効果からいいますと、そこが非常に雑踏しているようなところへ、いろいろお客が来られるとか、いろいろ行事の方が来られるという場合に、宮殿らしい感じがしない。儀式的な感じがそこなわれるというようなことで、普通の儀式場なんかの場合には、ある程度の秩序を保つための規制が必要であるというようなことだと思います。そういうところから一般の総意はそういうことではないかなとわれわれは考えております。
  51. 田中一

    担当委員外委員田中一君) あなたの答弁が、原則としては開放いたします。しかし、こういうかくかくの場合には、いろいろ状態によっては規制しなければならぬのだという答弁が来るまでは、私は納得しない。原則的には、当然、国民宮殿でありますから、開放いたします。しかしながら、いろいろ行事もございます、なにもございます。その場合には、遺憾ながらできないのだ、ということでなくては、私は満足しないのです。  それから総意ということには、いろいろ解釈があるでしょう。ことに現在の機構は、国会議員も入っているから、それでいいのだ、ということではなかろうと思うのです。むろん国会議員は、国民の代表でございます。しかし、なお、国民層から一般国民を参画させるという道はあるだろうと思う。憲法調査会にいたしましても、本質は日本の最高の法律です。われわれはそれに参加しておりませんけれども、その中でのいろいろな論議を聞いていると、はなはだ憂うべきものがあるのではなかろうかという一つの恐怖感をわれわれは感ずるわけです。   〔主査代理小柳牧衞君退席、主査着席〕  そこで、そういう答弁があなたにできなければ、これはもうやむを得ませんが、原則としては開放すべきであるし、かつまた開放するのだ。しかし、当然いろいろな行事その他で宮殿を使われるときには、国民というか、大衆には規制しなければならないのだということが原則でなければ、国民宮殿ではございません。国民の税金で作っているのです。国民がその宮殿の姿を望見できないような、——はるかにでもいいのです。姿が見えるということが一番親しみやすいものなのです。それすら見ることができないということでは、やはりそういうことをきめられた皇居造営審議会——何か私詳しく存じませんけれども、そういう頭に何かが残っているからです。当然これは、日本の憲法から見た場合には、ああ、あれが自分たちの税金で作った宮殿だということくらいの立地条件がなくてはならないのです。そうお考えになりませんか。原則として開放されるのだ、支障があった場合には見られないのだということにならなければ、特権階級の金持ちから金を出してもらって作ったらいいのです。
  52. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) これは国の、国民のための宮殿でございます。しかし、これは見物をするためのというよりも、やはり国民のために象徴としていろいろ行事をなさる、その行事そのものは国民のために行なわれるものでありまして、そういう場所という意味で、国民のためになる建物ということで、しかし、まあその国民のためにどういうところになっているかということも、一般の方もごらんになることが必要でございましょうから、したがって、日とか時間とかそういうようなものをきめて、そして参観していただく。一方、国民のために行なわれる行事が、ほんとう国民のためになるような効果を上げないではいけない。そこでわれわれのほうとしては、どの程度に考えるかということがあるわけでございまして、そのあたりは、お考えいただければ御理解がつくのではないかと思います。  なお、皇居開放論ということがございましたのに関連して、やはり宮殿を作る場所については、自由に入るということは、これは感心しない。国民のために行なわれる行事の効果のことを考えると感心しないのですが、それとは別の東側の地区については、園遊会なんか行なわれる場所でございますが、これなんかたまに行なわれる。それ以外の、そういうような宮中行事のない場合には、東側地区十万坪については一般に公開をする。これは自由に入って、自由に見ていい。これは公園風に木を植え、庭を作って、一般国民の方のレクリエーションのためにしようというようなことも、皇居造営審議会の御答申にございましたので、まあ一部は、これはもう先生おっしゃるように自由にやりますが、宮殿の敷地については、やはり宮殿の機能から見て、そう簡単に自由に出たり入ったりしてはやはり感心しないというようなところが普通の考えではなかろうかと、われわれは考えるのであります。
  53. 田中一

    担当委員外委員田中一君) これは平行線ですから、おのおの主観を持って考えるでしょうけれども、私はそう考えておらない。  それから天皇家の三殿というのですか、三宮というのですか、この賢所その他のお庭は、あの現在のままにおかれるつもりなんですか。あの全体の敷地は、これは国のものですわね、たしか。そうでしたね。国有財産でしたね。
  54. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 現在の三殿のあります土地は、皇室用財産である国有財産であります。そのところに陛下の神事等なされる場所としての三殿がございまするが、三殿は国有財産になっております。この三殿はちょうど吹上御苑と続いているところ、ちょっと道路を隔ておりますが、一般宮殿部分とは違っておりまして、広い意味の吹上御苑でございます。これについては、現在の建物もしっかりしておりますし、この部分を他に移すというような考えはございません。
  55. 田中一

    担当委員外委員田中一君) あそこは何万坪ありましたかね。
  56. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この中全体をざっと見ますと三十万坪であります。
  57. 田中一

    担当委員外委員田中一君) そのうち、今度の宮殿部分、まあその他付属機関もございましょうが、そういうものと、それから吹上御所と言いましょうか、今天皇家がお使いになっている敷地はどのくらいの比率になりますか。
  58. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 大まかに言いますると、開放しようかという東側地区にはその三分の一、十万坪ぐらいでございます。それから西の丸地区というのが今度宮殿ができますとか、現在宮内庁などがありますとか、ずっとそういったところがまた三分の一ぐらいになると思います。あとの三分の一が吹上御苑地区で、そのちょうど西の丸の、よく園遊会などにおいでになりますと裏側になりますけれども、それが吹上御苑地区でございますけれども、大まかに申しますと、そういうことになります。
  59. 田中一

    担当委員外委員田中一君) そうすると、十万坪に宮内庁宮殿などが建てられるということですね。今まで園遊会などやったことのある広場、あの一帯ですか。
  60. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その園遊会などがありましたあの場所だけですと、たしか二万何千坪になりますけれども、一帯をずっと行きまして、紅葉山あたりを考えていくと、十万坪ぐらいあるのではないかと思います。
  61. 田中一

    担当委員外委員田中一君) ますます僕は不適格地じゃなかろうかという心配を持つわけなんですよ。三十万坪のうち、宮殿並びに宮殿の補助機関等も入れてその十万坪を一つだけ通路をきめて開放したって一向差しつかえないと思うのですよ。遠くから望見できるように、遠くからといっても、そばで見えるようにして一向差しつかえないと思う。これはああして御門もたくさんあるのですから、通路をきめれば一向差しつかえない。とにかく原則として開放するのだという原則が立たなければ、国民のほうは納得しないですよ。いかにおっしゃっても、特殊な方でないのです。憲法できめられた天皇の生活、お仕事があるだけなんです。三分の一の十万坪を開放しようというならば、それに引き続いて宮殿の姿が見えるところまで開放するのは当然だと思うのです。  それから今の三殿の問題は、私はそれが十万坪、吹上御所関係入れて天皇家のお使いになるところは十万坪なければならぬのだということになっていれば、それも一つでよろしゅうございましょう。しかし、私は不満足です。まだまだ過去のむろん伝統はとうといけれども、日本の憲法では、信教の自由というものはこれは明らかに認めておるのです。天皇家がどういう信仰をお持ちになろうとも、これは自由でございます。と同時に、われわれがいかなる信仰を持とうとも自由です。天皇の信仰なさっていらっしゃる宗教ならば天皇御自身で持つべきであって、十万坪の敷地は現在のままの姿のものがそれでいいのだという考え方は、やっぱりまだ何か割り切れないものがあるのです。日本の新しい憲法が生まれる。日本が新しい民主国家として十何年問続いてここへ来ております。この際、宮殿造営を機会に、ほんとう天皇御自身が踏み切って新しい国家を作るのだという強い御決意が僕はあるのではないかと思うのですよ。またそれをじゃましている者もいるのじゃないかと思うのです。どうも今まで伺っているところでは、私は納得できないものをたくさん持っています。  それから、問題は具体的な問題に入りますけれども、吉村順三といいましたね、この設計をした人は。これはどういう経緯で吉村順三君が設計するようになったのか。それから様式ですね、様式等は、構造、様式その他がどういう経緯でどういうものを——これは私写真を見ているのですがね、そういう工合に作られたか。これも非常に私ども国民としては重大な関心を持っているのです。やはり日本は日本古来の建築様式、伝統的な日本民族のどういうものが最適と決定されたか。少なくともそういうものをやはり国民に十分に浸透させ、そして国民の納得いくものにすべきだと思うのです。まあ御承知のように、京都に作る今度の国際会議場にしても、国民の全部から設計競技でこれを集めているわけです。むろん決定するのはその審査員なり、あるいは最後の決定というものは、その事業を遂行する国なら国にあるでしょうけれども、どうしてこういう形のものが選ばれたかということをひとつお話し願いたいと思うのです。あなたはきっと、それは皇居造営審議会答申でございます、決定でございます、こう言って逃げられるだろうけれども、それには国会議員も入っておりますと言って、私の発言にブレーキをかけるようなことを言いたいだろうけれども、そういうものじゃないのですよ。私は単なるほんとうに純粋な国民として考える場合に、なせこういうものが特定なる人に頼まれたか、依頼されたか。少なくとも、これは大きく国民の前に知らしめて決定さるべきであるというふうに考えられるのですが、その点はどうですか。
  62. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この宮殿設計に関しては、どういうふうにやるかという問題について、私ども皇居造営審議会でも話もありましたが、その際に、さらにいろいろな専門の人の意見を十分に聞いてそれでやるようにという話もありまして、それで専門と見られる方、特に一流の方十名の建築方面の専門の大学の教授だとか名誉教授、そういう方が多いわけですけれども、民間の設計事務所をやっている方もありました。そういう方のいろいろ意見を聞いて、いよいよほんとう設計するにはどうしたらいいか、それで競争によることはどうか、競争はやはり宮殿の性質上むずかしいのじゃないか、どういうふうにしてどう使っていくかというその使い方の問題については、普通じゃなかなかわかりにくいわけです。しょっちゅうそれを実際に使う立場の人と接触しながら相談をしてやらないと、実際はできない。で、競争といってやっても、これは無理だ、それではどうするか、役所の技術者がやるという、こういう意見もありましたが、役所の技術者がやると、どうも役所風になっちまう。これは現在の建築のほんとうの一流の学者じゃありませんから、やはりだれか適当な人に設計の指導を願うことにしたらいいだろうという皆さんの御意見——その十人の中に吉村順三さんもおられたわけですけれども、で、結局皆さんの御意見を、聞きながら、吉村順三さんがいいんじゃないか。そう特にお年をとっておられる方でもない。非常に有名な方がほかにもございますけれども、ほんとうに働き盛りの元気な五十代の方で、この方がいいんじゃないか。この方は、今までの建築の実績から見て、西洋建築、日本建築両方を扱っておられて、アメリカのほうで日本建築のようなものを作られる場合も、吉村さんが何かやられたようなこともあったり、で、両方の面をこの方はわかっている。特に日本建築の面もよくわかっておられるので、この方がいいのじゃないか。まあこの方は現在芸術大学の教授でありますので、それじゃ非常にこの方の御指導を願いながらやっていく。しかし、それに顧問として内田祥三博士、関野博士、それから当時の建設省の建築研究所の竹山博士、そういう方が顧問につき、役所の陣営もこれに一緒になって加わって進めていこうというので、進んで参ったわけであります。吉村先生設計の指導者として進んでこられたのは、そういう経緯でございます。  それから今お尋ねの、それじゃ設計の場合の構造とか、そういうものについてはどういうふうに考えてきたかということですが、ここにまあ設計を行なうにあたりましての基本的な条件として考えてきた点がございまするが、四点ばかりありますが、その第一点は、宮殿は家的な行事の行なわれるところであり、対外的にも対内的にも象徴的な意味を持つものとして格調の高いものであること、品格のあるもので、普通の劇場だとかホテルとは違った性格がありまするから、そういう用途に合った格調を備えたもの、品格を持ったものであること。それから第二番目に、宮殿はこの昭和という時代にできる一つ建物ですが、昭和時代の現代の建築としての典型的なよさをやはり持ったものであること。それから第三に、宮殿は新しい技術と材料の中に伝統の美しさを十分に生かしたものであること。宮殿としての伝統の美しさというもの、それを十分に生かすが、その実施する場合の材料とか技術とかいうものは、新しいものを加えてやっていくということであります。それからその次に、宮殿は威厳ということよりも親愛、親しまれていくということ、荘重ということよりも平易平明、明るい、親しみやすいことと、まあ意味はちょっと似て参りますが、そういうようなことを十分考えて、国民に親しまれるものであることというような、抽象的に言いますと、そういうようなこと、そういうようなことを考えながら設計を進めていただいたのであります。
  63. 田中一

    担当委員外委員田中一君) まあそれはいろいろお考えになって、今の考え方というものは大体私もいいと思います、今のお考えならば。ただ、あまり平面的にやって、たいへんな労働力ですね、これ。これをもう一通りやるには——通りといっても、どこを無理しても入口はたくさんあるわけじゃないでしょうから、一本ぐらいしか入口はないでしょうけれども、これじゃ表から見えませんよ、全然、こういう構造では。広場からは全然見えないのですよ。平屋建てのものじゃ見えないのですよ。それから、決定された様式というのは、これはもう決定されたものですか。それとも、今後とも検討されるべき余地はあるのですか。どういう日本のまあ古典といいますか、伝統的な日本建築のよさをとったのか。まあ今あなたの言っている昭和時代の建築様式だといって新しいものを作ろうとされる意図もあるように聞いておりますが、どういうものをとっているのですか。
  64. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) これは今申し上げたようなことでございまするが、建物としては、日本の伝統的な美しさというので、屋根がずっとついております。西洋建築でありますと、そういう屋根のついたのがありませんけれども、しかし、そういう作り方については、普通の以前の明治宮殿のヒノキ作りのこういうずっと高い屋根でできておったのとも、ごらんになりますと形が違います。そこに現代の昭和の建築としての一つの新しいものを考えられていくということにもとれるので、どれをまねしたというわけではない。昭和の建築として、日本的な昭和の建築というようなことで設計のほうは考えていただいたものということでございます。
  65. 田中一

    担当委員外委員田中一君) これはあなたかつて痛い思いをしたことの経験がおありだと思いますけれども、東宮御所の建築の際に、大体積算された予定価格というものが八千万くらいのところを一万円で入札した例を御存じでしたね。八千何百万という予算を持っているにかかわらず、一万円の入札をした。そして一万円の入札に対しては、法律的に言えば、これはできるわけなんです。最低入札制をとっているのですから、当時は、それをとうとう政治的にそれを圧殺して、除外して、そして新しい組織によって東宮御所ができ上がったということは御承知ですね。ああいう姿をどうごらんになりますか。
  66. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 東宮御所の場合には、一万円事件というのがございましたが、この宮殿の場合に、東宮御所に限って言いますと、あの場合に国会の議決を経た予算で作ろう——国会の議決を経ての予算というのは、これはまあ結局国民の皆様の力で作っていただくということに結局なるわけなんです。その際に、一万円の、その方がほとんど作られると、国の予算で作られた関係がなくなってしまう。今の皇室のあり方として感心しないというふうにわれわれは考えました。結局、あのときの模様は、御存じのように、結局一応その一万円の関係のは取り下げて、競争入札参加をされた七社が共同請負ということで、共同であの建物を作られたということで、まあ結局おさまりはおさまりましたのですが、そういうことで、やはり新しい宮殿につきましても、やはり国民の皆様の力でできていくということが建前で、したがって皇居造営審議会の御答申にも、要するに国費をもって作るのが建前だ、しかし、まあ寄付については、ぜひ寄付したいという方のほんとう誠意に基づく弊害のないものについては、これはその気持を全然受けないのも不人情であるから、受けていくということは例外的なものとしてそれを考えるというような御答申がありましたのも、そういう精神であると思います。
  67. 田中一

    担当委員外委員田中一君) この設計の問題、それから施工の問題、この二つの問題がまた新しくこういうことになると、国民が、その専門家がわあわあ立ち上がってくるわけなんですね。設計が、造営審議会ですかで、そういう決定をされて、これがもう不動なものだというなら、今さら私はどうこう言いません。ただ、もう少し親切に国民の前にこれを全部さらけ出す。そうして、批判を受ける。批判は自由ですよ。批判さしたほうがいいのです。そういうことはとりたいのです。ことに施工の場合でもですね、東宮御所をやったと同じように、共同請負方式によってやはり何人かの共同で選ばれたという形でやらないと、また政治的にもごちゃごちゃといろいろな形の策動が行なわれてくるのですよ。名誉を心得ていますからね。一億や二億損してもこれをやりたいという人が出てくるのですよ。そういうものが正しい姿じゃないと思う。これはやはり東宮御所の入札のいき方というものが多分にありますよ。今度まあ会計法を変えて、あれ以後というものは、政府もこりたものだから、とうとう会計法を変えて、今度は最低入札の人が落札じゃないということになりましたから、あの危険はなくなりましたけれども、それでも、あれやこれやと来るものなんですよ。私はこれだけはほんとうに施工面で優秀な人たちを五つなり六つなり、たとえば今の東宮御所方式でもって誠心誠意いいものを国民のために作るのだというようなことにするような方途を、造営審議会のほうでも持たねばならぬと思うのです。また持つべきだと思うのです。その点はどういう見解を持っていますか。
  68. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 今度の宮殿設計ができて、それから請負に出すという段階になった場合、東宮御所のような、ああいうまたおもしろくないような現象が起きても困りますので、結局どうするかということは、ここでまだ決定的に申し上げるところまで来ておりませんけれども、しかし、一流のしっかりしたところの建設業会社の方が皆さん参加できるような——参加して、それぞれの業者のそれぞれいい面を持っておれば、いい面を生かして、先ほどちょっと申し上げましたように、昭和の建築としては典型的なものができるように考えていくというふうに考えたらどうかと現在は考えております。
  69. 田中一

    担当委員外委員田中一君) 設計協議設計ということにならないと同じように、施工のほうもそうした形をとらないわけですね。
  70. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 今ここでどうとちょっと申し上げかねるわけですが、その中身は、部分的に分けて競争入札でやる方法もある。そうでなくて、全体を共同請負でやる方法もあるとか、いろいろあります。しかし、もし——仮定としてお聞き願いたい、きまっておりませんから、もし共同請負という方法でも、全体がそうなるのではない。部分的にはこまかいところで競争入札が伴ってくると思います。そういう場合、良識によっての入札ということは、これは何もそれをきらう必要はないと思います。そこあたり、どういう方針でいるときまっておるようにおとりにならぬように、その点はこれから検討していかなければならぬ問題でございます。気持を申し上げた程度でございます。
  71. 田中一

    担当委員外委員田中一君) この国会議事堂は、御承知のとおり、当時日本の国産品で全部作ろうという考え方があって、一、二外国の材料を使っておりますが、今度の宮殿の場合は、建築材料、それから工法その他昭和宮殿に似合わしいようなあらゆる世界のものを取り上げてやろうという考えですか。それとも、議事堂は二十何年かかりましたが、これを作ったのと同じように、国産を中心として日本の優秀な建築材料、工法等を取り入れてやるというお考えですか、どっちですか。
  72. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この宮殿造営につきましては、できるだけ国産のものを使ってやるという方針でございまして、これも先ほどの皇居造営審議会の御答申の中にも、その点がうたわれておりますが、その精神でやって参ります。
  73. 田中一

    担当委員外委員田中一君) 建築材料や建築設備の見本じゃございませんから、自由濶達にやっていいと思うのですが、ともかく決定されて作る以上、もう少し国民に全貌を常に知らしめるということが必要だろうと思うのです。少なくともまだ特権意識というものが、あらゆる面に抜け切らぬものがたくさんあります。私ども心配するのは、旧明治憲法に基づくような天皇制に持っていくことは、国民の大部分は望んでおらないということを私自身は考えております。また、現行憲法がある限り、これに従うのが、憲法に明らかなように、天皇にしても、われわれ国会議員にしても、総理大臣にしても、あらゆるものが現在の憲法に従って、これを普及、宣伝と申しますか、啓蒙さす。啓蒙するということがわれわれの義務なんです。それをあなた方が途中におって——途中におってというか、壁になってはばむということはないであろうと思うけれども、今度できる宮殿造営に対して不十分だと思うのです。こういうことは言いたくない。言いたくないけれども、どうもまだ瓜生さんとしては、個人の考えと違うかもしれないけれども、今の考え方を伺うと、どうもすっきりと国民のものになり切れないということを感ずるのです。これは危険です。したがって、今後推移を見てからまたいろいろ伺いますけれども、きょうは時間もなくて不十分だけれども、私は今回のこの造営についての、ただ審議会に聞けばいいんだ、政府の力に圧倒されがちな大学教授やそれらのアカデミックな学者などだけを入れて、一応方針をきめるならそれでいいんだということじゃなく、もっと低い層——と言っては語弊があるけれども、もっと広い層の、そういうところに参加できない国民の層の声も聞きながらやるべきであると僕は考えるわけです。皇室の問題、特に宮殿の問題等を国会で論議するにしても、まだまだ言いたいことがあるけれども、あまり言うと誤解を受けて困るから言い切れないものもあります。あなたのほうも、言いたいことがあるけれどもやはり言い切れないものがあると思うのです。天皇とわれわれ国民とは、もっと近づけることです。どうかひとつ新しい構想で、今後の新宮殿造営については、私は一国民の立場で申し上げたわけですけれども、十分に納得させるような方法をおとり下さい。この宮殿造営について、すぐに天皇に対する批判が出てくると思うのです。あまりあなた方が、あまり特別な人たちだけがこれを押し切ろうとすると、出てくるものなんです。権力に大衆、民衆は弱いです。しかし、権力に常に戦う準備もあるのが民衆なんです。つまらない刺激をすべきものではない。天皇は常に大衆の味方であるという立場を守るように、どうか長官も次長もその心組みでやってもらいたいと思うのです。きょうはこれでやめます。
  74. 岡田宗司

    岡田宗司君 次長に、ちょっと別な問題ですが、実は美智子妃の流産されたことについての宮内庁の発表ですね、あれについてちょっとお聞きしたいのです。あの発表は、私読みまして、たいへん異例な発表だと思うのです。それはあの発表のうちに、生理的なものでなくて、かなり精神的なことが原因のように私どもに読みとれるような発表があったと思うのですが、宮内庁はそういう精神的なことが主たる原因で流産になられたというようにお考えの上でああいう発表をされたのですか。
  75. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 新聞のあれは、ちょうどそのときは長官の定例会見の際で、その際に宇佐美長官から発表されたことは聞いておりますが、この御流産のことについては、医者にいろいろ聞きますと、原因というものはなかなか実際医者にはわからないものだそうでございまして、いろいろあることで、なかなかつかみにくいわけですけれども、その際に、いろいろ報道関係のほうでも、何か精神的なことではないかということも聞いておられたそうです。そういう点については、実はちょうどその前、例の小説「美智子さま」の問題でいろいろ問題になりましたあとでございましたし、事実そういうようないろいろなことが、精神的にこのいやな影響を殿下にお与えしたようなことがあるやにも思うが、あるいはそれは原因の一つにも考えられるかもしれないというようなことを長官が話されたのであります。そういうような点は、いろいろ推測してみますると、やはり原因の一つにはあるかもしれないということは考えられるのであります。
  76. 岡田宗司

    岡田宗司君 実はあの発表がありましたあと、ある新聞に、この精神的影響を与えたと見られるような、たとえば今あなたがあげられました小説とそのほか幾つかあげておるわけなんですね。これは新聞社のほうでたぶん推測してそういうふうに書かれたのだろうと思うのですよ。しかし、ああいうふうな発表が行なわれて、まあ外で書かれましたものが影響を与えたということが宮内庁長官のほうからも原因の一つに数え上げられますというと、今後皇室関係記事等の関係において、いろいろの問題が起こるのじゃないかと思うのです。もちろんプライバシーを侵すようなことは、これは私は書いたほうに責任があるし、慎まなければならぬことであると思うのですよ。しかし、ああいうふうな発表があってから、特にこの問題について、いわゆる自粛の形で、しかし実際には自粛の形ではなく、取り扱ってくれるなというふうなことで言論のほうに臨まれるということになりますというと、これは言論の自由に対して一つの圧迫になりかねないと思うのです。そういうような点について、あの問題との関連をどういうふうにお考えになり、また、将来皇室記事について、宮内庁のほうではどういう態度でお臨みになるか、それをお伺いしたい。
  77. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この皇室に関しまするいろいろの記事は、新聞、雑誌等に数多く最近載せられております。特に雑誌類のほうにいろいろ載っております。この全体についてとやかく言うのではないので、現在の皇室国民ほんとうに親しまれていかれるのが大切だ。しかし、国民のほうも、皇室の現状というものをどういうふうだろうかお知りになりたいという気持もあります。そういう点、いたずらに隠すべきではないので、その適当な部分については、これはわれわれのほうでもいろいろお話しもし、それをまた材料にして新聞、雑誌に書くようにもなっているのです。その大部分についてとやかく言うことはないのですけれども、ごく一部分に、いろいろ揣摩憶測をして事実と相当違うような、想像をたくましゅうして、いろいろ迷惑されるようなことが書いてあるものもある。特に、この実名小説というふうなものになりますると、その方の名前が出、周囲の人にもいろいろ迷惑が出る。小説ですから、これは事実の記録ではないので、これはフィクションです、こういうふうにもし言いましても、読まれる方は実録のように思っておりまして、それを非常に誤解をされる。要するに、雷かれた方についていろいろ揣摩憶測をして迷惑される。場合によると、それは部分的に見ますると、小説風にいろいろ書かれている部分でも、女性の立場から見ると、非常にいやな思いをされるような部分も書かれてあるというような、そういうようなこと、そういうようなことは、これは感心しないわけであります。したがって、まあ例の小説「美智子さま」につきましては、その掲載している雑誌社につきましても、これはよしてほしい、やめてほしいということを申し入れをして、雑誌社のほうでもそれを聞き入れられて、すでに準備している分のところでもストップにする。印刷に回しているところだけは、今度のところは特にどうということはないつもりだから、そこだけはなにして、それでそこでストップされたということがございます。なお、雑誌協会というものがございまするが、雑誌協会でもこの問題を取り上げられまして、雑誌協会の理事会において、今後やはりこういうことは、皇族さんでない他の方の場合についてもいろいろ考えられるけれども、どうもこのプライバシーの点については、一そう慎重にやっていこう。要するに、相手方に迷惑を与えるような書き方は感心しないというのが雑誌のほうの倫理綱領にあるのです。あるけれども、それを守らない者があるから、将来この倫理綱領を十分守るようにしようじゃないかということが理事会できめられた。何か総会というものも最近あったようですけれども、そういうところでも取り上げられたようであります。宮内庁としたしましては、冒頭に申し上げましたように、もう一切記事を書いてもらっては困るというようなことではないのであります。しかし、そういう倫理綱領にたがうようなことを書かれることは、皇室の方であろうと、また一般の方であろうと、それは慎んでもらわなければならぬという点で、特にそういう点は強調いたしておるような次第であります。
  78. 岡田宗司

    岡田宗司君 今の御返事で、私まだ納得のできないものがあるのですが、実は宮内庁長官が記者会見でああいうことを言われたということですが、これは記者のほうからいろいろ聞かれてお答えになったというお話ですけれども、宮内庁長官がああいうふうな答えをされたということは、宮内庁長官の自分のつまり推測というか、あるいは、多分ああいう記事が精神的に影響を与えて流産の原因になったのだろうということなのか、それとも、美智子妃があれでたいへん迷惑したということを何らかの形で宮内庁長官のほうにすでに通じられておって、そのためにああいうような発表になったのか。そこは、私あの発表についてだいぶ違うと思うのです。ああいうことを宮内庁長官が発表されたからには、やはり相当な根拠があると思いますが、その点はいかがですか。
  79. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) それは、やはり相当の根拠があって申したわけであります。
  80. 岡田宗司

    岡田宗司君 もちろん、ああいうことは、私どもとしても、書く人のほうものぞき見趣味みたいなものがこのごろ週刊雑誌ではやりますので、こういうことはないほうがいいと思いますしいたしますが、そのために、皇室関係記事が、たとえば皇室の発表以外にはあまり触れないほうがいいとか、あるいはまた、写真なんかについても、宮内庁から発表するもの以外は載せないほうがいいというようなことになっていくと、これは先ほど田中君の言われましたような国民との親しみというものがいよいよ薄くなってしまって、昔と同じように、皇室関係の記事というものはこれは宮内庁の発表に従って、それを報道していればいいのだということになりかねないと思うのです。最近、全体の傾向として、どうもこれはどこがそういうふうに計らっておるのか知りませんけれども、だんだんに再び皇室というものが、あるいは天皇家というものが、国民から離れた存在になりつつあるような傾向を示しておる。私どもは、そういう点から考えると、今度の宮内庁長官の発表が、皇室関係に対する記事、写真その他の報道について、やはりかなり制限を与える、実質的に制限するような方向にいくのではないか、また、それを意図して発表されたのではないか、こういうふうに思うのですが、まあそういうような意図のもとに行なわれましたとは言わぬでしょうけれども、私どもにはそう考えられるのですが、今後の宮内庁の報道に対する態度というものはどういう基本方針でやっていかれるか、それをお伺いしたいわけです。
  81. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 報道に関しましては、われわれといたしまして厳に特に留意いたしておるわけでございまして、皇室国民の親しさを増していかれるということ、これは、現在の憲法の第一条にあります国民の総意に基づいて象徴としてあられるところの天皇陛下のお立場からみて、そうあるべきである。それが離れていくというふうなことになりますれば、これは決してよろしいことではないのでありまして、われわれのやり方がまずいために離れられていくというようなことにもしなるならば、われわれとしては非常に責任を感じなければいけないわけでございます。で、そういうような点では、皇室に関しますることにつきましては、従来とも差しつかえのないものにつきましては、できるだけ発表という形、あるいは発表という形でなくても、いろいろお会いした際にお話をするというような形で発表して、いわゆる発表以外のものは一切書いてもらっちゃ困ると、そういうような気持でいるわけじゃございません。冒頭に申しましたように、新聞、雑誌以外の大部分については、そういうことはないのであります。一部分にそういうものがある。なお、大部分の良識を持っている編集者のなさっているところについては、今までのようにおやりになって何も差しつかえはないわけであります。われわれとしても、さらにそういうような方のほうで必要とされる材料についてはまた提供して、国民の皆さんが皇室のあり方についてお知りになる、また、お知りになることによって親しさを増していかれるということの実現することを考えているわけであります。ただ、倫理綱領に抵触するようなものは、あくまでも、皇室のことに関するだけでなくて、一般の方についても同様で、これはもう慎んでいただきたいというような気持でおるわけであります。
  82. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあそういうふうにお考えになっておればいいのですけれども、どうも今度の宮内庁長官の発表については、あの小説その他二、三から受けられたショックといいますか、影響ということを取り上げて、一般化して、そうして今後皇室関係の記事を何かこうある一定の方向に導こう、そういうチャンスに使ったような私どもは印象を受けたのですがね。ある報道陣の人も、私に、どうもそういう気がするということを言っておりましたが、そういうことがあれば、やはりこれは日本において許されておる言論、報道の自由に対して抵触してくることになりますので、今後こういうような問題があるいは全然起こらないとも言えないと思うのですが、それが全体を何か押えていくために使われるというようなことのないように、個々の問題として解決されることはこれはやむを得ないと思うのですけれども、たまたまそれを取り上げて、全体としてそういう印象を与える、そうして、皇室関係の報道の自由に対して何かこう一方的なリードをする体制を漸次固めるというようなそういう印象を与えないようにしてもらいたいということをこの際申し上げておきたいと思います。
  83. 千葉信

    主査千葉信君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  84. 千葉信

    主査千葉信君) では、速記を起こして。  それでは、以上をもちまして皇室費に対する質疑は終了したものと認めます。     —————————————
  85. 千葉信

    主査千葉信君) 次に、会計検査院所管を議題とし、まず、説明を聴取することにいたします。
  86. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 昭和三十八年度会計検査院所管歳出予算について御説明申し上げます。  昭和三十八年度会計検査院所管一般会計歳出予算の要求額は、九億四千二百二十六万二千円でありまして、これは、会計検査院が日本国憲法第九十条及び会計検査院法の規定に基づいて会計検査を行なうために必要な経費であります。  今、要求額のおもなものについて申し上げますと、職員千百九十二人分の俸給、給与、手当等として、七億七千三万一千円を計上いたしましたが、これは、要求額の八二%に当っております。職員を現地に派遣し実施について検査するための旅費として八千百四十万一千円を計上いたしましたが、このうちには南米方面及び沖繩方面の実地検査を実施するための旅費二百十二万九千円が含まれております。事務上必要な備品、消耗品、通信運搬、印刷製本、光熱水料等の庁費関係経費として四千五百二万八千円を計上いたしました。庁舎等の増築に必要な経費として四千二百三十四万七千円を計上いたしました。なお、調査官六人を増員し、検査を強化することといたしました。  次に、ただいま申し上げました昭和三十八年度歳出予算要求額九億四千二百二十六万二千円を前年度予算額八億一千六百八十六万八千円に比較いたしますと、一億二千五百三十九万四千円の増加となっておりますが、そのおもなものについて申し上げますと、職員の俸給、給与、手当等において七千六百六万五千円、実地検査の旅費において二百七万円、庁費関係経費において四百三十八万二千円、庁舎等の増築に必要な経費において四千二百三十四万七千円の増加となっております。  以上、はなはだ簡単でございますが、昭和三十八年度会計検査院所管一般会計歳出予算要求額の概要の御説明を終わります。よろしく御審議のほどお願いいたします。
  87. 千葉信

    主査千葉信君) それでは、ただいまの説明に対しまして御質疑のおありの方は順次御発言をお願いいたします。
  88. 木内四郎

    木内四郎君 ちょっと伺いますが、これはちょっと異例な説明だと思うのだが、あなたのほうの要求額の八二%だけが計上されていると書いてありますね。これはどういう意味ですか。
  89. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) ただいま読みましたのは、ちょっと誤解があるかもしれませんが、八二%に当たっておりますというのは、職員関係経費が全体の予算の八三%に当たっているという趣旨であります。
  90. 木内四郎

    木内四郎君 それならわかります。
  91. 岡田宗司

    岡田宗司君 前年度予算が八億一千六百八十六万八千円で、本年度はそれに一億二千五百三十九万四千円ふえているということになっておるが、そのうち職員の俸給等が七千六百万円で、この実地検査の旅費、これも宿賃が上がったり何かでふえている。それから庁舎等の増築の経費でも、これは古いのを建て直したりするのに必要なんでしょうが、これで見ますと、調査官は六人ふえているけれども、実際には仕事の規模はあまり大きくなっていない、こう解釈していいのですか。
  92. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) ふえましたのは、私のほうのやる仕事は検査が主体でございますが、調査官が六名ふえたわけですが、それほど強化になるかどうかということになると、お話のとおりだと思います。それから、実地検査旅費が二百七万ふえておりますが、これも全体から見るとそうたいしたことはございませんので、同じかどうかとおっしゃいますと、ふえたということですが、まあこれでことしはやっていきたい、こういうふうに考えております。
  93. 岡田宗司

    岡田宗司君 実際に予算の規模は年々非常にふえていっているのですがね。そうすれば、ほんとうを言うと、予算の規模と同じくらい拡張していかなければ、検査のなにが徹底できないわけなんだ。予算の規模は年々ふえていくけれども、会計検査院のほうの規模もそれから仕事の内容もふえないということになると、実は会計検査の機能が低下していると、こう言えると思うのですが、どうでしょう。
  94. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 予算の全体の規模がふえたのに応じて、ふえなければならぬということも確かにお説だと思いますが、一致したならば、大体それととんとんだというふうになるかならぬかという議論だと思いますが、私のほうといたしましては、予算の要求は、旅費にいたしましても今度は七千万幾らということでございますが、一応の要求といたしましては九千四百万ばかり要求したわけでございますが、大蔵省のほうで全体の国家財政の関係上二百万円ばかりしか認められぬということで、やむを得ず了承しておるわけでございます。
  95. 岡田宗司

    岡田宗司君 会計検査院報告を見ますというと、ずいぶん不当支出だとか何か多いので、あれは氷山の一角だろうと思う。もっと広く検査が行なわれれば、もっとああいうものを発見することができるだろうと私は思うのです。で、まあ今の陣容でもっと能率を上げてということも考えられるけれども、なかなかそう全部の予算についてあるいは全国にわたってやるといってもできるものじゃありませんから、やはりこれは根本的に会計検査機能を充実するということは、もっと政府自体としても考えなければならぬことだと思っておるのですね。会計検査院の機能が拡充され充実されて、そうして不当支出や何かがどんどんもっと発見されていくならば、たとえば今の予算を倍にして人間をさらにふやしたとしても、それだけペイする。あるいはもっとそれ以上に得することだと思うのですがね。そういう点で、私はもっと会計検査院の機能の拡充をやらなければならぬと考えておるのですけれども、そういう点について、会計検査院は、まあ多少ずつふやしていくのだというような消極的な考え方に立っておるのじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  96. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 検査院の機能を拡充する方法といたしまして、根本的の問題はもちろんあろうかと思いますが、われわれ考えておりますのは、人員の増加とそれから旅費予算の増額ということで実質的には検査が相当いくのじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございますが、方法といたしましては、たとえば一挙に三百人も人員をふやしてやるほうがいいか、これを六人はちょっと少ないと思いますが、相当の人数をふやして能率が上がるような仕組みで順次やっていってふやすほうがいいか、まあいろいろ議論はあろうかと思いますが、私のほうの考えといたしましては、どちらかといいますと、一挙に三百人も四百人もふやすよりは、ある程度の人数をふやしていって、順次機能を上げながらやっていくほうが全般的に機能が上がるのじゃないかろうかというふうな考え方を持っておるわけであります。それだからといって、この六人がちょうどいいという趣旨じゃございませんけれども。
  97. 岡田宗司

    岡田宗司君 会計検査院では、新しく入ってきた人なんかの訓練といいますか、教育というか、それから古い人たちにさらにより高度ななにをさせるための再訓練というか研修というか、そういう制度はどうなっておりますか。
  98. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 私のほうのうちで、一応新入の職員が入りますと、それらの人たちに一定期間訓練をする。それだけでは足りませんので、古い人にもこれは実地検査とあまり重ならないように、一月から三月の適当な期間を選びまして訓練をして検査が向上できるように努力はしているわけでございます。
  99. 岡田宗司

    岡田宗司君 それで効果は目に見えているのですか。目に見えて現われてきておりますか。
  100. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 直接、訓練の効果が現われているかどうかとおっしゃると、ちょっとなかなか判定がむずかしいと思いますが、私のうちの職員は、終戦前は三百名くらいで非常に少なかったわけですが、その後、現在ことしの予算で千百九十二名というふうになるわけでございますが、終戦後急激にふえたわけでございますが、ふえた当時は多少いろいろ問題がありましたけれども、現在はそのふえた人間の能力を相当発揮する程度にはなっているということは申し上げられると思います。
  101. 岡田宗司

    岡田宗司君 とにかく予算の規模がこういうふうに大きくなって、そうして、会計検査院は、つぼはそうふえるわけじゃないけれども、それにしても押えていくつぼというものは相当あるだろうと思うのですが、毎年何というかそこをはずして抜かっている点も多数あるのじゃないかというふうに思われるのですが、とにかく毎年出てくる報告を見ておりますと、全くどうも浜の真砂と何とかは尽きないというような工合に、同じようなことが盛んに繰り返されているが、あれは、もう少し検査機能を強化していくというと、かなり防げるものがあるのじゃないですか。
  102. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 今の浜の真砂云々というお話は、たびたびそういうようなお話を聞くこともございますが、われわれのほうとしては一生懸命やっているつもりでございます。  それから国会方面にもいろいろ御議論がございましたので、いろいろ私のほうの規定から見ましても是正改善の処置をそういうふうな方面に相当力を伸ばしていくべきじゃないかというようなことで、三十六年度の検査では多少そういう点も力を伸ばしてきまして、八件ばかり各省に改善意見を出したということになっているわけでございます。
  103. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから、たとえば公安調査庁なんかの予算で私どもが国会で質問いたしましても全然答えないものがたくさんあるのですね。ああいうものは、一体会計検査院の検査というのはどういうふうに行なっているのですか。
  104. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) おそらく、公安調査庁の関係といいますと、調査委託費の関係じゃないかと思いますが、各省で扱われる事項が機密に属するというようなものにつきましては、扱いといたしましてわれわれのほうに計算証明として書類をとるわけでございますが、詳細なものをとると機密上困るということで、事実どれだけになったかというような点がわかる簡単な、私のほうで簡易証明と申しておりますが、そういう形で証明をとっておりまして、実地検査に行きましたときにその内容の詳細を聴取するという建前を機密のものについてはとっております。
  105. 岡田宗司

    岡田宗司君 時たま機密のものについて内容に立ち入った調査をやることはあるのですか。
  106. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 照会をしたということはちょっと聞いておりませんが、調べるのはある程度、ある程度といいますか、向こうに着きましてわれわれのできる範囲を調査いたしているわけであります。
  107. 岡田宗司

    岡田宗司君 ほとんど使いっぱなしで、そこの責任者が勝手に使って、あとはどうなっても、あとは機密に属するんだからということでろくな報告もしないで検査も受けない、こういうことになると、そこいらでは相当乱費も行なわれるし、不当支出も行なわれているんじゃないかと思うのです。これはもう少し何か会計検査院のほうで規制する方法を考えられませんかね。
  108. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 全体の建前といたしましては、先ほど申し上げた建前によらざるを得ないんじゃないかというふうに考えるわけであります。  それから検査がそういう関係でルーズになっておるんじゃないかということですが、これは私のほうといたしましてはルーズになっているとは実は考えておらないわけでございますが、金を渡した先の実際のことまではこれは検査としても行きませんし、そういう関係でどうであろうかという御批判はあろうかと思いますが、私のほうではまあ実際やっているつもりでいるわけでございますが、これも御意見もございますので、できるだけ十分調査していきたい、こういうふうに考えております。
  109. 岡田宗司

    岡田宗司君 三十八年度なら三十八年度予算のうちで、そういうふうな金ですね、あなた方が機密に属するがゆえに詳細な検査ができないという金額は、総額でどれくらいになっておりますか。
  110. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) これは、累計になっておりませんで、しかも三十八年度関係でなく、三十六年度しか資料がありませんので、三十六年度でひとつ……。  内閣のほうの関係が一億八千六百余方円、それから総理府関係が九億六千五百余万円でございます。それから法務省関係が、これは公安調査庁の関係も入っておりますが五億七千百余万円、それから外務省のほうの関係が十二億五千三百余万円という数字になっております。
  111. 岡田宗司

    岡田宗司君 防衛庁は。
  112. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 防衛のほうの関係は、簡易証明をいたしておりません。
  113. 岡田宗司

    岡田宗司君 わかりました。
  114. 小柳牧衞

    小柳牧衞君 ただいまも質問があったわけですが、検査方法ですね、いろいろ御研究になっておると思うのですが、しかし、従来のやり方を見ますると、たとえば土木について申せば、施行官庁のいわゆる竣工検査と同じようなことをやっておる。これも一つ必要なことでしょうけれども、そういうことだけじゃなく、もっと大きな視野に立って全体的にそのものを見るとかいうことが必要じゃないか。要するに、検査方法が竣工検査とは違うんだというふうに思っておりまするが、そういうことについての検査の方法、また、それが不十分であれば、研修等の方法において吏員をそういうふうに養成するということについてのお考えを伺いたいと思います。
  115. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 私のほうの検査といたしましては、今の工事につきましては竣工検査と同じようなことをやるのは当然だと思いますが、私のほうの職責から申し上げれば、そういう検査をすると同時に、そういうものをなくするということがこれは根本だと思いますので、研修方法なり、あるいはいろいろのそこの関係、出てくる不当の事態の原因とか、そういうものを十分調査して、これを除去していくということに努力しなければならぬと思います。今までもやっておりましたが、今の工事関係のほうは必ずしも十分にいっていない面もございますので、これはことしもそういう目でやっていきたい、かように考えております。
  116. 小柳牧衞

    小柳牧衞君 そういうようなことについては十分研修等によってやらなければならぬと思うのですが、そういう研修をするような一つの手段として、人事の交流といいますか、検査をする人と検査を受ける人との交換をしなければ、まあわれわれの体験と言ってはおかしいんですけれども、たいてい会計検査院はこんなことをするんだというようなことは前もってわかりますから、そういうようなこともわかってもいいことなんですけれども、わからぬこともまた検査するというようにするには、検査する人と検査を受ける人との交流を考えなければ完全じゃないと思いますが、そういうような方法をやっておるのでしょうか。
  117. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 部分的には交流をやっておったこともあります。現在もごくわずかやっておりますが、交流を私のほうで否定するわけではありませんけれども、実際問題としてなかなかむずかしいということでございます。
  118. 小柳牧衞

    小柳牧衞君 言葉は非常に悪いようですけれども、露骨に申しまするならば、会計検査院がやるようなことは、行政庁のほうから言うと、もう何でもないというようになれておるような傾向が私は多分にあると思う。でありまするから、実地に検査されても、いわゆる急所がはずれておる。たとえば土木にしましても、くい打ちの長さがどうだとか、のりがどうだとか、盛り土がどうだとか、そういうようなことは言われましょうが、あまり痛くないところなんだ。もっと大きな問題に触れて取っ組んでやってもらわなければ、ほんとう憲法上認められておる会計検査院の使命としては、何かしら少し権威がないような気がする。そういう点については、どういうお考えで進んでおられますか。
  119. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 私どもとして、今おっしゃるほど極端なというふうには私ども考えておりませんけれども、われわれのほうでいろいろ知ることと知らないことと、これはもちろん検査する場合にあると思いますが、なるべく十分知るように心がけて、そうして検査を徹底していくということはこれはもちろん必要だと思いますので、御意見等も十分参考にいたしまして。今後検査を徹底していくということに努めたい、かように考えております。
  120. 小柳牧衞

    小柳牧衞君 この点は、今ここで簡単に申し上げるわけにもいきませんし、御意見も承るわけにいかぬと思いますが、非常に大きな関係のある問題だと思いますから、十分にひとつ御検討を願いたい。われわれもまた十分考えまして愚見を申し上げる機会もあるかとも思うのですが、そういうようなふうに実際はなるのじゃなかろうかと思いますが、十分にお考えを願いたいと思う。  それから、話はまた飛びまするが、職員の海外の視察というものはどうなっておりますか。従来もやっておりますが、実際海外に行きますると、これは会計検査院だけじゃなく、むしろ大蔵省の予算関係の人に来てもらいたいという声が非常に多いようですが、要するに、海外における検査等はどうなっておるのか。今度の予算を見ますると、南米方面及び沖繩方面の実地検査ということになっておりますが、南米だけあげたのはどういうことか。ほかにはないのか。
  121. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 今年の予算は南米と沖繩ということになっておりますが、予算上はもう少し大きいものを要求しておるわけでございますが、認められたのはこの二本でございまして、南米のほうの関係は、主として移住会社の関係が非常に問題になっておるわけでございますので、現地を検査してみたいということで考えておるわけであります。それから沖繩のほうの関係があがっておりますが、これは三十七年度の分につきまして大体検査ができるということになっておりますので、これも検査してやっていきたい、かように考えております。  それから外国のほうの関係は、昨年はウイーンの国際会議等もありまして、それに出まして、欧州方面の在外公館を回ったという状況でございます。
  122. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今お聞きしていた中で、会計検査院が簡易検査というのですか、これをやれるという根拠、これはどういうふうになっておりますか。規則ですか。
  123. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 検査といたしましては書面検査もやるという建前になっておるわけですが、書面検査のほうで大体どういうものをとるかということは、私のほうの関係できめることになっております。一般にきめまして、そうして、それではどうしても工合が悪いという場合には、相手方の官庁の申請なり、あるいはわれわれのほうから積極的にこういうものは別の様式で計算証明してよろしいというような形にできる仕組みになっておって、簡易証明の分は、相手方のほうから申請がありましてそういうような簡易な扱い方をやっていく、こういうことでございます。
  124. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今の公安調査庁関係はどういうわけで簡易証明の扱いで認められておるのでしょうか。
  125. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 抽象的に申し上げますと、公安調査庁のほうで機密に属するということで簡易証明にしてくれということで、簡単な、証明上は取り扱いをやっております。
  126. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 機密といっても、日本の場合には国家機密の保護法というものはないわけでしょう。そこにどうして機密が出てくるのでしょうか。
  127. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 機密ということは非常にむずかしい問題でございますが、公安調査庁のほうでこの取り扱いについては機密に属するということで、はたしてこれが機密に属するか属さぬかということを根本的に議論しますと、もちろんいろいろ議論があろうかと思いますが、われわれのほうも公安調査庁のおっしゃる点を認めまして、機密に属するからということで一応簡易証明にしてやっておる。ただし、先ほど申し上げましたように、実地検査ではその内容を、これはだれもかれもというわけではございませんけれども、特定の人が行って十分調査する、こういう形をとっております。
  128. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 公安調査庁が、なぜ機密に属するようなことをやっているんですか。
  129. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) これは、私のほうから、なぜ機密に属するようなことをやっているだろうかということを、ちょっと申し上げにくいと思いますが。
  130. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これで終わりますが、公安調査庁から機密に属するからそういう簡易証明でやってくれと言われると、あなたのほうではそれをうのみにするのですか。それが現実に機密であるかどうかというようなこと、会計検査院の検査活動というものを制限してもよろしいかどうかということをどうやって判断するのですか。
  131. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 私のほうでうのみにしているかとおっしゃいますと、うのみにしているわけじゃないと言わざるを得ないと思いますが、公安調査庁のほうで、調査委託費はこういうふうに使う、そういうものの形を全体の姿を出すのは困る、こうおっしゃるわけです。そうおっしゃって、私のほうで、それは機密に属さないということは、なかなか実際問題として言えないわけでございます。そういう関係で、私のほうとしても、うのみというわけじゃございませんが、公安調査庁の言われることを認めまして、機密に属するものということでそういう扱いをしておるわけであります。
  132. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 公安調査庁が実態を明らかにされると困るというのですかね。どういうわけで困るのでしょうか。別に困らないと思うのです、公安調査庁がやっている活動を明らかにしたって、どういうわけで困るのでしょうか。会計検査院としては、その点については何かお考えになりませんか。
  133. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 考え方によると、困るのだ困らぬのだという考え方はもちろんあると思うのでありますが、われわれのほうは、一応公安調査庁が困るとおっしゃるし、それをしいて困らぬのだというふうに言うことも実際問題としてあれだし、それから検査のほうから見ましても、簡易証明にはしておりましても、実地検査のとき見るということでございますので、そういうふうになっているわけでございます。
  134. 千葉信

    主査千葉信君) 以上をもちまして会計検査院所管は終了したものと認めます。  これにて暫時休憩し、午後二時再開いたします。    午後零時四十九分休憩      —————・—————    午後二時十二分開会
  135. 千葉信

    主査千葉信君) これより予算委員会第一分科会を再開いたします。  まず、法務省所管を議題とし、説明を聴取することにいたしたいと存じます。中垣法務大臣。
  136. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) ただいま議題となりました昭和三十八年度法務省所管予算内容につきまして、大要を御説明申し上げます。  昭和三十八年度歳出予算予定経費要求額は四百二十二億二千六百二十四万円であります。このほかに官庁営繕費として建設省所管予算中に法務本省第二新館新営工事費五百万円が計上されております。前年度当初予算額三百六十九億六千九百八万七千円に比して、法務省所管分は五十二億五千七百十五万三千円の増額となっております。なお、補正後予算額三百七十七億七千七百五十六万五千円に比較して四十四億四千八百六十七万五千円の増額となっております。  増額分の内訳を大別して御説明いたしますと、第一に、人件費関係の三十五億八千五百二十六万四千円であります。これは、予定されております公務員給与ベースの改定に伴う増額分及び昇給等原資としての職員俸給等の増額分がおもなものでありますが、そのほかに検事、副検事、検察事務官、登記関係職員、入国審査官等三百五十五名の増員、(別に北鮮帰還業務関係職員四十五名の減員があります)に伴う所要人件費が含まれております。  第二、営繕施設費の六億四千六百三万五千円であります。これには、従来建設省所管に計上されておりました官庁営繕費(法務局、検察庁等)が、法務省所管として計上されたことによる増額分が含まれております。  第三は、その他一般事務費としての十億二千五百八十五万四千円であります。これは、事務量の増加に対応して増額されたもののほか、積算単価の是正及び事務能率器具その他の備品の整備等事務の質的改善に伴う増額分があります。特に、このうち増額されたおもなる事項経費について申し上げますと、一、暴力犯罪対策等法秩序の確立の一環としまして、暴力・公安検察の強化をはかるための検察体制の拡充強化経費、不法出入国者取り締まり体制の確立のための入国管理関係の情報収集等経費、及び破壊活動調査機能の充実のための団体調査経費の増額分として五千七百二万九千円があります。二、戦後激増しております麻薬禍に対する対策の一環としまして、東京ほか二地検に検事三名、事務官六名を増員するほか、麻薬犯罪取り締まり体制の整備強化に要する経費、矯正施設に収容された麻薬中毒者の処遇の適正をはかるための治療器具費、施設並びに麻薬犯罪対策研究に要する経費の増額分として四千三百四十五万七千円があります。三、非行宵少年対策としまして、青少年検察、少年院の教化活動、少年鑑別、保護観察、少年非行予防対策の研究等の充実強化をはかる経費の増額分として一億三千三百二十五万二千円があります。四、道路交通法違反、業務上過失致死傷事件等の交通事件が逐年激増しておりますので、地方検察庁に副検事十五名、事務官四十五名を増員して、その機能の強化をはかるほか、交通検察取り締まり経費の充実をはかるための増額分として八千八百十一万三千円があります。五、矯正関係収容者の処遇改善経費としまして、収容者に支給する作業等賞与金、菜代、衛生薬品の単価の増額等に伴う増加分として一億四千九百四十万一千円があります。六、現在刑務所被収容者に対して行なわれております刑務作業を充実するため、紙細工等の低格作業を出所後の更生に役立つ有用作業に切りかえることに要する機械器具の整備及び原材料購入に要する経費の増額分として九千四百九十三万三千円があります。七、本年四月に実施予定されております地方選挙の公正を期するため、適正な検察を行なう必要がありますので、これに要する経費として、五千七百七十二万五千円を新たに計上しました。  次に、増員三百五十五名の内容としましては、一、麻薬犯罪取り締まり体制の強化として検事三名、検察事務官六名、計九名。二、交通事件の増加に対処して事務処理機能を充実強化するため副検事十五名、検察事務官四十五名、計六十名。三、非行青少年対策を強化するため三十名。1、少年院教化活動の充実、教官二十名、2、少年鑑別所鑑別業務の充実、鑑別技官十名。四、登記台帳事件の増加に対処して、その事務処理を円滑適正化するため、法務事務官二百名。五、羽田入国管理事務所における出入国者の増加に対処して、その出入国審査業務を適正、迅速化するため入国審査官十二名、入国警備官七名、計十九名。六、その他の入国管理事務所出張所新設に対処して入国審査官四名、入国警備官二名、計六名。七、正規出入国審査業務の増加に対処して、その事務処理を適正迅速化するため入国審査官二十五名。八、国連犯罪防止アジア地域研修所庁舎管理要員として労務職員五名。九、熊本地方公安庁調査局舎管理員として労務職員(守衛)一名となっております。  次に、おもなる事項の経費について概略を御説明申し上げます。第一に、外国人登録法に基づき、在日外国人の登録及び指紋採取の事務を処理するために要する経費として一億一千百三十二万四千円。第二、法務局、地方法務局において登記、台帳供託、戸籍等の事務を処理するために要する経費として六億二千六百十六万九千円、第三に、検察庁において処理する一般刑事事件その他各種犯罪事件の直接検察活動に要する経費として六億四百三十七万七千円、第四に、拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院の昭和三十八年度一日平均収容予定人員の合計七万九千七百四十人の衣食、医療及び就労等に要する経費として五十五億五千百八十二万五千円、第五に、犯罪者予防更生法、更生緊急保護法及び執行猶予者保護観察法に基づき、刑余者及び執行猶予者を補導監督し、これを更生せしめるための補導援護に要する経費として五億九千百万七千円、第六に、出入国管理令に基づき、不法入国者等の調査及び審査事務を処理し、また退去を強制される者の護送、収容、送還に必要な衣食、医療等に要する経費として八千百四十一万三千円、第七に、公安調査庁において処理する破壊活動防止のための調査活動等に要する経費として七億六百五十四万円、第八に、検察庁、法務局等の庁舎及び刑務所、少年院等収容施設の新営、整備に要する経費として二十一億七千八百十二万五千円、がそれぞれ計上されております。  以上が法務省所管歳出予算予定経費要求の大要でありますが、このほか静岡刑務所の移転に伴う施設取得にかかる総額七億四千二百万円の国庫債務負担行為を要求しております。  最後に、当省主管歳入予算について一言御説明申し上げます。昭和三十八年度法務省主管歳入予算額は百二十億二千四百七十六万三千円でありまして、前年度予算額七十九億二千二百五十九万九千円に比し、四十一億二百十六万四千円の増額となっております。これは、過去の実績等を基礎として算出したものでありまして、増額となったおもなものは、罰金及び没収金と刑務作業収入であります。  以上が昭和三十八年度予算概要でございます。
  137. 千葉信

    主査千葉信君) 次に、裁判所所管を議題とし、説明を聴取することにいたしたいと存じます。下村最高裁事務総長。
  138. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者(下村三郎君)   昭和三十八年度裁判所所管予定経費要求額について、御説明申し上げます。  第一に、昭和三十八年度裁判所所管予定経費要求額の総額は二百十一億九千六百三十七万二千円でありまして、これを前年度予算額百九十億八千三百四十七万五千円に比較いたしますと、差引二十一億一千二百八十九万七千円の増加になっております。この増加額の内訳を大別して申し上げますと、一、人件費において十五億四千五十八万五千円、二、営繕に必要な経費において二億九千五百七十九万八千円、三、裁判に直接必要な経費において一億五千百八十一万七千円、四、その他、一般司法行政事務を行なうために必要な旅費、庁費等において一億二千四百六十九万七千円であります。  第三として、昭和三十八年度予定経費要求額のうちおもな事項について御説明申し上げます。  一は、裁判の適正迅速な処理に必要な経費であります。近時、事件の増加と複雑化の著しい東京・大阪その他の大都市の裁判の適正と迅速化をはかるための裁判官等の増員と、裁判事務処理の能率向上のための機械化に要する経費として、(一)、裁判官十五人すなわち判事十人、判事補五人を増員するために必要な人件費二千百六十四万三千円、(二)、裁判所書記官二十五人を増員するに必要な人件費六百三十五万六千円、(三)、検証用自動車十台の購入費八百二十万円、(四)、事務能率器具の購入費六千七百六十六万五千円、合計一億三百八十六万四千円が計上されました。  二は、補助機構の充実に必要な経費であります。裁判所書記官、家庭裁判所調査官の事務量の増加に伴い、現在裁判所書記官、家庭裁判所調査官の事務を恒常的に取り扱っている裁判所書記官補、家庭裁判所調査官補等の定員を裁判所書記官、家庭裁判所調査官の定員へそれぞれ組みかえ、裁判官の補助機構を合理的に再編するために必要な経費として、(一)、裁判所書記官補、裁判所事務官の定員を裁判所書記官の定員へ組みかえ、一千六十六人、五千五百六十七万八千円、(二)、家庭裁判所調査官補の定員を家庭裁判所調査官の定員へ組みかえ、三十四人、百七十七万八千円が計上されました。  三は、交通事件処理の円滑化に必要な経費であります。激増する交通事件を迅速に処理するため、特に、交通事件の頻発を予想せられる東京外十都市の簡易裁判所及び家庭裁判所において交通切符制による即日処理を実施するために必要な経費として、(一)、簡易裁判所の交通事件処理につき簡易裁判所判事十人、裁判所書記官十五人、裁判所事務官二十人、の増員に要する人件費二千九十六万七千円、(二)、家庭裁判所の少年の交通事件処理につき判事補五人、裁判所書記官十五人、家庭裁判所調査官六十五人、裁判所事務官二十人の増員に要する人件費三千二百五十九ガ二千円が計上されました。  なお、このほか東京に交通裁判所一カ所増設するに必要な経費が後に述べます営繕に必要な経費の中に計上されました。  四は、裁判費であります。これは裁判に直接必要な経費でありまして、国選弁護人の報酬、証人、鑑定人、調停委員等の旅費、日当その他裁判に直接必要な旅費、庁費等として十七億八千三百八十八万三千円が計上されました。  五は、国選弁護人の報酬の増額であります。国選弁護人の報酬の現行基準額、たとえば地裁一件五千七百円を約一割、たとえば地裁一件六千二百円に増額するに必要な経費として千六百三十五万七千円が計上されました。  六は、営繕に必要な経費であります。(一)、裁判所庁舎の継続工事二十一庁、新規工事二十六庁の新営工事費として十七億八千二百九十九万二千円、(二)、その他法廷の増築、裁判所庁舎の補修等の施設整備費として二億五千八百万円、(三)、営繕事務費として四千六十三万六千円、合計二十億八千百六十二万八千円が計上されました。  右のほか、営繕に必要な経費として、(四)、庁舎新営に伴う敷地買収のための不動産購入費すなわち換地清算金を含むもの、三千八十六万六千円が計上されております。  以上が昭和三十八年度裁判所所管予定経費要求額の大要でございます。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  139. 千葉信

    主査千葉信君) それでは、議題を進めて参ります便宜上、法務省及び裁判所所管を一括して質疑を行なうことにいたします。  ただいま御出席の方々は、説明を終わりました中垣法務大臣及び下村最高裁事務総長、法務省から竹内刑事局長、平賀民事局長、大沢矯正局長、新谷経理部長、斎藤公安調査庁長官、小川入国管理局長、関公安調査庁次長、池田人権擁護局調査課長、最高裁よりは岩野最高裁経理局長、樋口最高裁刑事局長及び篠田国家公安委員長らが出席されております。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  140. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 きょうは質問を大きく分けて三つ。最初は法務関係予算というか、行政の問題についてです。第二が吉田石松氏の事件を中心とした刑事補償の問題です。それから第三が最高裁の裁判官の任用の問題です。その間に国家公安委員長せっかくおいで下さったので、選挙違反の関連についてちょっとお聞きをしたいと、こういうように考えております。  そこで、予算関係の中でちょっと二、三お伺いしたいのですが、それは今いただいたこの要求説明書の十六ページ、第七の公安調査庁において処理する破壊活動防止のための調査活動等に要する経費として、七億六百五十四万円が計上されておるわけですが、これは法務委員会における三十八年度予算案と要求額比較表の中で見ると、第一のところで、(三)に破壊活動調査機能の充実として七億九百十六万六千円と記載されているのですが、これは金額がちょっと違うのはどういうわけですか。
  141. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) ただいま御質問の昭和三十八年度法務省所管必要予定経費説明書という中にございます、十六ページの第七でございますが、七億六百五十四万円の数字と前に御説明いたしました数字が食い違うじゃないかという御質問でございます。内容に若干差異がございますのは、公安調査庁付属機関として公安調査庁の研修所がございます。その関係経費等が含まれておる場合と、そうでない場合の差異等が出ておるのでございまして、大きなところにおきましては、どちらも含まれておるのでございます。
  142. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この公安調査庁の、この七に書いてある経費は、いわゆる調査活動費だと思うのですが、これがここ四、五年ですね、もっと詳細にいえば三十七年からできたわけですが、二十七年からこの調査活動費がふえてきておる状況、これをちょっと御説明願いたいと思います。
  143. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) お答えを申し上げます。二十七年は中途で発足いたしましたので、変則的でございますが、五千五百万円、年間に直して一億ぐらいの金額でございます。それが漸次ふえて参りまして、三十七年度は五億六千七百万円というような数字になっております。ふえて参りましたのは、理由は漸次調査対象もふえて参りまするし、調査も困難になって参りましたので、それまで窮屈でございましたのを、漸次増額をお認めいただいた、かように存じております。
  144. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、三十一年ごろは一億九千二百万ですね、それが三十二年になって三億一千六百万、三十三年が四億、端数はちょっとありますが、三十四年が四億五千万、三十五年が五億三千万円、三十六年も五億三千万円、三十七年が五億六千七百万円、今度が七億六百五十四万円、三十七年度と三十八年度との間の開きが非常に大きいのですが、これは何か特別の具体的な理由があるのですか。
  145. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 三十七年度でお認めいただきましたのは五億六千万円で、本年度予算額は、三十八年度は三千万円の増、こういうことになっております。
  146. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 公安調査庁の昭和三十八年度一般会計予算のこの横書きのものの三百十五ページを見ますと、「8」のところに「団体等調査旅費」というのがあるのですが、六千八百五十二万七千円。それから「9」のところの「公安調査官調査活動費」五億九千七百六十九万四千円、こうあるのですが、この「8」と「9」とは、これは違うのですか。
  147. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 「団体等調査旅費」は旅費でございます。それから調査活動費は、旅費以外の調査に要する費用、かようになっております。
  148. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、約六億の金は現実にはどういうふうに配分されて使われるのですか。
  149. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) これまでの実績等もございますので、必要に応じまして、各地方局、公安局並びに本庁でそれぞれ必要額を配分して使用しております。
  150. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 必要に応じて使うのにきまっているのですが、何だって必要でなくって使う金はないと思うのですが、その分け方は各ブロックごとの公安局ですか、ありますね。あるいは各県に公安調査局があるわけですね。これらに対してこれは配分をするんですか。
  151. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) そのとおりでございます。各公安局にまとめておきまして、公安局からその管内の地方局——このブロックの公安局が監督官庁という関係になりますので、さようなことにいたしております。
  152. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、各県の公安調査局にこのうちから幾ら金が行くかということは、これは今の段階ではわからないんですか、わかるんですか、あるいは、わかるけれども発表できないとか、いろいろ答えがあると思うんですが、そこはどうなっておるんでしょうか。
  153. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 大体、従来の実績等もございますので、従来の比率に応じて配分するということになろうかと存じております。
  154. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、従来の実績というようなことの配分の具体的な状況、これは委員会に御報告願えるものですか。
  155. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 調査活動費の実績と申しますか、実際にどの局に幾ら行ったかということは委員会でもちょっと申し上げかねます。ただ、本庁で幾ら使ったか、各公安局——八つの公安局がございまするが、その公安局に幾ら配分したかということ、それから、その下の府県にございまする地方局に総額において幾ら配分したかということは御報告申し上げております。
  156. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっとはっきりしないんですが、そうすると各地方局へ幾ら金が行ったかということは報告できるというんですか。幾ら行くかという計画は発表できない、こういうんですか。ちょっと私の聞き方が悪かったかもわかりませんが。
  157. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 八つの公安局に総額幾ら行ったか、それから、その下にありまする地方局に総額幾ら行ったかということは御報告申し上げております。
  158. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは三十七年度の具体的な金は幾ら行ったかということと、それから三十八年度でこの配分をどういうふうにするのかということ、これは一、二の例を引いてちょっと説明していただけませんか。
  159. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 三十五年度の例で申しますると、三十五年度の調査活動費の総額は……
  160. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 三十五年じゃなくて、三十七年はわからないですか。
  161. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 三十七年度で申しますると、総額五億六千七百万円でございますが、その配布計画——まだ年度が全部済んでおりませんから計画でございますが、本庁が一億七千五百万円、ブロックの八つの公安局の総額が二億二千七百万円、地方公安調査局が一億六千四百万円、かような数字でございます。
  162. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その公安調査庁の公安調査官、これが人数がふえてきた経過をちょっと説明して下さい。
  163. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 開庁の昭和二十七年度が、調査官だけで申しますると千三百十二人、それが二十八年度は同数でございます。それから二十九年度も同数でございます。それから三十年度も同数でございます。三十一年度が若干ふえまして千三百五十二名、それから三十二年度も同数でございます。三十三年度も同数でございます。三十四年度も同数でございます。三十五年度も同数でございます。それから三十六年度が若干ふえまして千三百八十五名、それから三十七年度が若干増員になりまして千五百十名、こういう数字になっております。
  164. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、三十七年度と、三十八年度を比べると、公安調査官の数はふえないわけですね。ふえないで金が三千万円ふえている、こういうことになると思うんですが、官の説明は何だかこう対象がふえてきたとか、内容が複雑になってきたとかいうことを言われたと思うんですが、対象というのは具体的にどういうのが対象になって、どうしてそれが複雑になってきたんですか。
  165. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 公安調査庁が対象といたしておりますのは、左が五つ、右が五つの団体を対象団体といたして調査をいたしております。左の団体のうち日本共産党その他でございますが、日本共産党が非常に党勢拡大に尽力しておられる。それからまたその活動が活発になっている。それからまたその活動の防衛と申しますか、非常に秘匿される程度が強くなっております。かような点から非常に調査が困難になって参っている次第でございます。
  166. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃこれは法務大臣、人権擁護委員会の今度の予算説明、特にこの前十一月に概算要求の説明を受けたわけですが、そうすると、その法務省関係の中で、第一が暴力犯罪対策、大きくわけて第二が非行青少年対策、第三が交通事件処理、第四が法務行政の充実強化、こうなっておって、第四の中の一が登記事務、二が収容者の処遇の改善、第三が刑務作業の充実、四がその他と、こうなっているわけですね。「基本的人権擁護の伸長のため」という云々は、法務行政の中の一、二、三、四とあって、第四点の中の一番しまいのところで、しかも「その他」の項に入っているわけですね。これはどういうのですか。法務省としては人権擁護というふうなことはもう必要がないというのか。どういうふうに考えておられるんですか。
  167. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 法務省といたしましては、人権擁護の問題につきましては、非常に重要視いたしておりまして、昭和三十八年度の主要事項の中には当然のこととして取り上げているわけでございまして、一例を申し上げますと、その人権擁護委員活動に要しまする実費弁償金の問題でございますが、これを年間一人当たり千五百円を増額をいたしまして、従来千五百円であったものを三千円に引き上げて提案をいたしまして御審議を願っているわけでございます。この一事を御理解をいただきましても、法務省としましては人権擁護活動につきましては、非常に力を入れているということをわかっていただけると思います。
  168. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今の人権擁護の専従職員は、昭和二十八年度以降どういうふうになっておりますか。
  169. 小泉初男

    説明員(小泉初男君) 総務課長の小泉でございます。専従職員の数を申し上げますと、本省並びに各法務局通じまして合計百七十名、これは二十八年度以降現在まで変わりございません。
  170. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは二十八年度以降各法務局の管内の専従職員は二十八年度が百五十五人でしょう。これが今三十七年度が百五十四人ですね。それから局の人、法務省の中の人権擁護局は昭和二十四年度に定員が二十四名だったのが今は十六名に減っているのじゃないのですか。法務省の人権擁護局はどうですか。
  171. 小泉初男

    説明員(小泉初男君) 二十四年度当時の定員がその後の行政整理の際に減員がございまして、一たん十三名まで落ちまして、三十五年度に三名の増員で十六名という定員になっております。
  172. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、各局の人権擁護の職員の数は今私が言ったようにさっぱりふえていない。昭和二十八年から同じでしょう。しかも人権擁護局、法務省の中のこれは、行政整理があったかどうか整理があったとしても減っているでしょう。今あなたの言われたのも、まだ率直に言ってこっちの聞きたいところを十分答えられていないと思います。それは十六人いる中でもいわゆる併任者が六人もいるのじゃないんですか。
  173. 小泉初男

    説明員(小泉初男君) ただいまの申し上げました十六名は併任を含んでおりません。
  174. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それではまあそれはそれとして、もう一つお尋ねするのですが、人権擁護委員が三千円というのはこれは何ですか、年間ですか。
  175. 小泉初男

    説明員(小泉初男君) 年間の単価でございます。
  176. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 月にそうすると幾らですか。三百円にならぬでしょう。二百幾らでしょう。それで法務大臣は倍にした倍にしたといかにも人権擁護をやっているようなことを言われるが、それはおかしいですよ。だから問題は、検察、法務行政全体の動きが公安調査庁の充実だとか、公安警察の充実という方向へうんと力が入って金をふやして、今は人権擁護なんというものは法務行政の中の一番ビリかすのところのしかもその他の中に入っている。そうでしょう。これを見て下さいよ。これは概算要求書があると思いますが、きょうは持ってこなかったかもしれませんが、十一月一日の法務委員会のあれを見てもわかるのです。こういうのは少し筋がおかしいと思うのですよ。  それからもう一つ別なことでお尋ねするのですが、裁判官の充実、充足状況というのは、これは今どういうふうになっているか。
  177. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者(下村三郎君) 現在の裁判官の定員は全部で二千四百七名ございますが、昭和三十七年、昨年の十二月現在におきましては欠員は六十九名、その内訳を申し上げますと、判事が三十名、判事補が十三名簡易裁判所判事が二十六名でございます。その後多少月がたっておりますので、この欠員はもう少しふえておりますと思いますが、大体八十名くらいじゃないかと思います。はなはだ不確かなことを申し上げますが、日々欠員あるいは任命される者が異動がございますので、大体それくらいのところと考えております。
  178. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その三十八年度の判事、判事補、書記高等裁判所の概算要求と大蔵省で認めたもの、これはどういうふうになっておりますか。
  179. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者(下村三郎君) 昭和三十八年度予算要求の重要項目といたしまして、訴訟の適正及び迅速化を第一にあげまして、特に事件の多い八大都市の地方裁判所における事件の審理期間を従来の二分の一にするために判事二十四名、判事補三十一名、書記官百十五名、合計いたしまして百七十名の増員を要求いたしました。またこのほかに交通事件処理のための簡易裁判所判事三十五名、書記官五十名、事務官七十八名、少年交通事件の処理として判事補二十名、家庭裁判所調査官百九十二名、書記官五十二名、事務官六十六名、家庭事件の適正円滑のための家庭裁判所調査官の増員五十名、要員の増員四百十五名、その他合計して千二百八十二名の増員を要求いたしました。折衝を重ねました結果として判事十名、判事補十名、簡易裁判所判事十名、書記官五十五名、高等裁判所調査官二名、家庭裁判所調査官六十五名、事務官、官庁の管理要員等が九十名、合計二百四十二名の定員の増加が認められたわけでございます。
  180. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、千二百八十三名の要求をして二百四十二名、約二割の充足だ、そういうことになるわけですか、大ざっぱに言って。
  181. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者(下村三郎君) はあ。
  182. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今のは私は公安調査庁問題、人権擁護の問題、裁判所の裁判官の充足の問題、この三つの例を取り上げたわけですが、これだけでも大体日本の法務行政といいますか、それが進んでおる方向というものがよくわかると私は思うのです。だから、たとえば破壊活動調査機能の充実として法務省が概算要求したのが九億二千七百七十六万二千円です。それで予算で認められたのが七億九百十六万六千円、約八割、その方向で予算が認められておるわけです。基本的人権擁護の伸長として要求したのが一億三千四百二十四万八千円です。認められたのが約半分の六千五十三万四千円です。裁判官の充足については、これは角度は少し違うかもわかりませんが、人数でいけば要求の二割しか認めてないわけです。こういうような法務行政のあり方は、何か少し方向が違っている、というと語弊がありますが、ゆがんでいるという印象を私は持つのですが、どうでしょうか法務大臣。
  183. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 裁判官の補充問題につきましては、事務総長からもお答えがあるかと思うのでありますが、これは給源等の問題もありまして、なかなか定員をそう極端にふやしましても人を得られない、そういうこと等も相当な問題になっておるかのごとく私は聞いております。  それから人権擁護問題につきましての予算の概算要求に対しまして、決定額が少なかったということは、私も実は同感でございまして、これはもう少し十分調査をして、そうして将来はそういうことにもう少し力を入れるような、そういう法務行政が好ましいというふうに実は考えております。  公安調査庁の問題につきましては、御承知のとおりに、仕事の性質と申しますか、業務内容というものが非常に長年にわたっての継続的なそういう要素等もありますので、これをやはり調査等の効果のある強化をしていこうといたしますと、御提案をしておりますような、そういう結果になるのではないかと思います。いずれにいたしましても、裁判の迅速な処理を見ていく上からも、裁判官の増員あるいは司法書記官等の増員ということは、私が考えまして、もう少しなすべきものだと実は考えております。ただし、この問題につきましては、任用また待遇等の問題も相当にいろんな角度から検討いたしまして、いま少し判事等の採用ができやすいような、そういう諸条件も解決していかなければならないものではないかと思います。  人権擁護のほうの問題は、法務省の内局の問題よりも、全国に指名されております人権擁護委員活動ということを、今年度は真剣に取り上げまして、若干法務省の定員、あるいはそういう内局の問題よりも、全国におります人権擁護委員活動、こういうものを効果的に動かすべきである、こういう考え方等もありまして、こういう措置になったと考えておるのでございます。
  184. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者(下村三郎君) 現在裁判が非常に遅延しているというふうにいわれておりまして、これにはいろいろ原因もございますが、そのうちで裁判官の不足というのが非常に重要な原因と考えられておるわけでございます。それでありまするから、私たちといたしましてはできるだけ裁判官を増員し、それに伴って補助機構をも充実したいというふうに考えているわけでございますが、何分にも最近は、裁判官を希望する者が非常に少ないものでございますから、その増員に苦慮しておるわけでございます。裁判官の希望者が少ないという原因、これもまたいろいろあると思いますが、待遇等の問題も相当重要な原因であろうかと思うのであります。  私から申し上げるまでもなく、昨年の九月以来内閣に置かれました臨時司法制度調査会で、そういう訴訟遅延を解消する一つの方法として、裁判官の任用、待遇の問題が審議されておるわけでございます。いずれはその結果によって、そういう問題は相当解決できるのではないかと思っておるわけでございます。ただしかし、それにはまた相当の日時がかかると思われますので、私たちといたしましては、その結論いかんにかかわらず、できるだけ裁判官を希望する者が多いように、いろいろな努力はいたしておるつもりでございます。一応お答え申し上げます。
  185. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 公安調査庁にお伺いするのですが、破防法の指定団体の指定ですね、これはいつごろしたのですか。
  186. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 日本共産党につきましては、開庁後間もなく指定されたというふうに聞いております。それから学生団体につきましては、三十四、五年ごろのように聞いております。それから右翼団体につきましては、それぞれいろいろな事件が発生いたし、それらに応じまして、いろいろおそい団体もございますし早い団体もございます。さように承知いたしております。
  187. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 朝鮮総連は、いつ指定したのですか。
  188. 関之

    政府委員(関之君) これは、たしか昭和三十一年か二年のころかと存じます。
  189. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今でも、その指定し続けたと同じ状態でのその必要性があるのですか、たとえば朝鮮総連について。
  190. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 朝鮮総連につきましては、必要があると存じております。
  191. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 具体的なその根拠はどういうところにありますか。
  192. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 私から申し上げるまでもないことだと存じまするが、朝鮮総連は、昭和二十六年、七年ごろに、その当時在日朝鮮人民主統一戦線でございますか、さような名前の団体がございまして、祖防委とか祖防隊とかいうものを内包しまして、各地で破壊事件が発生いたしております。それに非常に関係が深いと思わざるを得ない状況にあります。その後民戦と称する団体は、昭和三十年の五月かと思いますが、全国の代議員の大会を開いて、一たん解散をいたしましたが、その代議員が、すぐそのまま現在の在日朝鮮人総連合会を結成し、団体構成員も、また財産も、そのまま承継いたしておりまして、同じ、発展的解消——同一性があるように存じております。その後の動向も、依然としてやはり全然危険がないというふうには認められませんので、今日においても調査の必要ありと、かように存じております。
  193. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日韓会談に関連して、特に朝鮮総連に対する調査を強化していると、こういうふうなことはあるのでしょうか。
  194. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) さようなことは考えておりません。
  195. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは警察なり、あるいは法務省の刑事局長にお尋ねするのですが、朝鮮総連の本部が火事になった。去年は茨城県の学校が火事になった。ことしまた二月ですか、王子の朝鮮人学校が火事になった、こういう事件があるんですが、そのことについて警察のほうではどの程度調べておられますか。
  196. 宮地直邦

    政府委員(宮地直邦君) 第一の朝鮮会館の火災は昭和三十六年の六月に起こっております。これはいまだ捜査中の事件でございます。結論を見ておりません。第二の茨城県の朝鮮中高等学校の火災につきましては、これは三月一日に発生いたしておりますが、これにつきましては、炊事婦等の失火の疑いを持ちまして、すでに事件を送致いたしておるのであります。それから、今御指摘の三月七日の王子の朝鮮人の中高等学校の火災につきましては、目下捜査中でございますが、これは御承知のように昼間の火災でございますので、割合にすみやかな期間内にその捜査上の一応の結論を得るものと存じておるのでございます。
  197. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務省当局にお尋ねするんですが、ここ二、三年来韓国から日本に入ってくる人がどの程度あったんでしょうか。どういう目的で入ってきているんでしょうか。これは入管でわかるわけですか。
  198. 小川清四郎

    政府委員小川清四郎君) ただいまの御質問に対してお答えを申し上げます。  御質問の点は、正規入国並びに不正規入国、密入国あわせての御質問と了解いたしまして、まず正規入国数を申し上げます。最近の数字は、昭和三十五年におきまして一千二百三十五名入っております。ところが、御承知のように、李承晩政府の崩壊という事件がございましたことと関連しておると推察されるのでございますが、翌年の三十六年には二千百五名が入っております。それから昨年の三十七年におきましては二千三百四十二名でございます。本年は一、二月、二カ月間で六百二十五人ございますが、これはまだはっきりはいたしません。それから、その渡航目的でございますが、大体全体の六五%がいわゆる商取引、市場視察等を目的といたしております。商用の目的でございます。その他一五%が技術習得の目的、その他の目的は近親の訪問、芸能関係、報道関係等々を合わせまして残りの一七%、全体の六五%が商用、技術習得その他一五%、それから近親訪問等々一七%と、こういう数字になっております。次に、密入国関係でございますが……
  199. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 密入国はいいです。そうすると、入ってくる目的ですね、この中にいわゆる特務機関的なものが相当日本に入っているということが一部言われておるんですがね。そういうことについては入管ではわからないわけですか。
  200. 小川清四郎

    政府委員小川清四郎君) 私どものほうでは、一応仮入国許可の申請を受け付けまして、事前に審査と申しますか、クリアランスを行なって参っておりますので、そういうふうなものは私どもとしては存じておりません。
  201. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、公安調査庁では左翼関係中心にやっているとこう思うんですが、いろいろ資料を公安調査庁で出しているわけですね。私は国会図書館へ行って調べたんですが、公安調査庁はほとんど国会図書館に資料を送らないわけです。古いものはありますが、新しいものは四、五年ほとんど送っておりません。国会図書館でも非常に憤慨していたわけです。日本共産党の現状だけは送ってくるんですが、日本の右翼の現状というのを調査した相当厚い本、七百ページぐらいの厚い本を公安調査庁で出した。そのことが新聞に写真入りで載ったことがあります。それを私どものほうの、これはあとから岡田さんが質問されると思いますが、ぜひ手にほしいというので、国会図書館を通じて要求した。どこへかけ合っていいのかさっぱりわからない。あっちだこっちだというので、まあ何時間もかかって、一たんは国会図書館に納入します、国会議員にお見せします、ということを約束したわけです。ところが、あとになってきて、いやそれは結局出せないことになりましたと言って断わってきた事実がある。そういうようなことは、一体公安調査庁としては具体的なそのことの報告を受けてお聞きですか。
  202. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 前の法務委員会稲葉委員から、国会図書館にあまり刊行物を送ってないじゃないかという御指摘がございました。調査いたしましたところ、なるほど昭和三十二年以降ですか、あまり送っていないようでございます。だんだん調査いたしましたところ、職員の更迭等がございまして、法務省国会図書館支部のほうに若干送っておりまするが、それでもまだ十分に送っていないということがわかりました。それで、今もちろん国会図書館法で機密にわたるものは出さなくてもよろしいということになっておりますし、また、さようにいたさなければならないと見ておりますが、秘密以外のものは送るように、たいへん時間がおくれて申しわけございませんが、送る手はずをいたしておりますが、その名簿等の要求がございましたので、いずれお手元に差し上げたいと思っております。  今お尋ねの右翼団体の調査に関する刊行物があるのではないかという御指摘ございます。しかし、これは調査官の調査の資料のために部外秘として、秘密の書類として作ったものでありまして、これはまことに遺憾ながら、どういう経路から出たものであるか存じませんが、私どもといたしましては、これは国会図書館にも差し上げることができない、かように存じております。
  203. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 左翼の関係だけはちゃんとその現状と称して出版物を外部に出しておるわけでしょう、公安調査庁は。そうして右翼のものになると、それはあると、写真入りで新聞に出たんでしょう。しかも、それは国会議員にも出せないというのはどういうところにあるんですか。
  204. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) お尋ねの点、ごもっともとは存じまするが、日本共産党の現状は、あれは公然の資料によって作りましたものでございまして、たとえば御指摘の刊行物、右翼に関する刊行物は非公然の資料等も入っておりますので、これはちょっと外に出せない、かように存じております。
  205. 岡田宗司

    岡田宗司君 関連して。その右翼に関する調査資料を要求したのは私なんです。私が国会図書館を通じて要求をいたしましたところが、あるのかないのかわからぬ。まあ七カ所くらい変わりまして、そうしてしまいには出さない、こういうことです。そのときの私に対する何とかという人の態度の横柄なことといったら、まことに私もどなりつけたくなるくらいでした。そういうようなことで、私もあなたのほうにそれがあるが、部外秘だということを知ったんです。しかし、左翼のほうは公然と出す、右翼のほうのは出さない、非公然の資料があるから出さない、こういう理屈ですけれども、私それは変だと思うのですよ。とにかく日本における右翼の運動というものは、やはり国民に対して非常な不安を与えているわけです。たとえば浅沼暗殺事件があり、さらにその後には嶋中中央公論社社長の家を襲撃して、そしてお手伝いさんを殺した事件もございます。さらに下っては三無事件がある。また最近でも、私のほうの衆議院議員の岡田春夫君が国会で質問したことに対して、ひんぴんとして脅迫状が送られる。一昨日も東京選挙が始まりました、そうすると八重洲口の前で右翼団体の青年が暴行しておる。こういうふうに右翼の活動というものはやはり相当活発であって、しかも、それが社会的に一つの不安を与えていることは事実なんです。公安調査庁はそれを調べておられるわけでありますが、非公然資料にしろ何にしろ、そういうふうに調査されたものを発表しないということは私はおかしいと思う。その大部の資料が発表されなくても、たとえば右翼運動の年々の概況、そして動向というものぐらい発表されたっていいんじゃないですか。それさえ発表しないというのはまことに私どもは不可解にたえない。今、稲葉君からも指摘がありましたように、左翼のほうは公然の資料か何か知らぬけれども分厚なものを発表して、しかもこれは相当出ておりますし、また同時にそれは報告されて出ておるわけです。ところが右翼のほうは概況も発表しないというようなことは、これは私は公安調査庁が右翼、左翼町方の破壊活動を取り締まるそのためにたくさん予算をとっておる。しかもあなた方は国会に対してもそういうものを発表しないということは、私どもはなはだけしからぬことだと思うのですが、その点どうお考えになりますか。
  206. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) お求めに対しまして、公安調査庁の職員がたいへん失礼な態度をとったとすれば申しわけないと存じます。ただ、御指摘のように私どもといたしましては、右も左も同じように破壊活動に当たる団体については調査いたします。決して差別は置いていないつもりでございます。また左翼についてだけ現状を発表して、右翼について現状を発表しておらぬのはおかしいじゃないか、これはごもっともと存じますので、今後十分考慮いたしたいと思います。ただ御指摘の刊行物は、秘密の資料を含んでおりますが、これはさような右と左を区別するという意味合いでなくて、外部に出さないということを御理解願いたいと存じます。
  207. 岡田宗司

    岡田宗司君 右翼の活動の概況についてほんとうに発表するつもりですか、念を押しておきますね。
  208. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) ただいま私どもの調査いたしておりまするのは五団体でございます。これについては発表について考慮いたしたい、かように存じております。
  209. 岡田宗司

    岡田宗司君 それは五団体なら五団体の活動についてあなた方調査されているけれども、その五団体がそういう活動をしているということは、やはり右翼全体が日本において相当いろいろ動いておるということを背景にしているわけでしょう。だから右翼全体の運動の一部としての五団体の活動をあなた方は調査されているわけです。だから私はやはり右翼の全体の活動、それの動向というものを発表し、しかも、あなた方が調査している五団体についても発表されるというふうならば、これは当然だと思うのですが、そういうふうな発表をされるのかどうか、これを伺いたいのです。
  210. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) お尋ねの右翼という言葉でございまするが、非常に世間では広く解する方もおありのようでございまするが、私どもはやはり破壊活動防止法の観点から右翼という問題をとらえておりまして、結局強い反共的立場をとり、その立場から強い主張を出し、また、ときには破壊活動に出るようなおそれのあるものが右翼である、かように存じておりまして、一般に使われておる右翼とは若干そこに趣を異にしておるのではないか、しかし、それがまた破防法としての私どもの立場ではないかとかように存じております。
  211. 岡田宗司

    岡田宗司君 では、私右翼の問題について少しお尋ねしますが、たとえば川南豊作氏らの事件ですね、ああいうようなことについては、公安調査庁としてはすでにずっと調査を続けておったんですか。そうしてあれが暴露されて事前に挫折したわけでありますが、それは公安調査庁の活動の結果そういうふうな状況になったのかどうか、まずこれをお伺いいたします。
  212. 関之

    政府委員(関之君) お答えいたします。例の三無事件の問題でありまするが、これはごく事件の起きる一年くらい前でありましょうか、若干の動きがあることを一応は探知いたしておりまして、注意はしておりました。しかし、その後事態がああいうふうな展開に相なったということにつきましては、これは率直に申しまして、私のほうの調査より刑事事件的な警察のほうの調査のほうが機微に触れております。そして私のほうは大体の動向としてはわかって、そうして若干のものを検察庁その他に提供はいたしておきました。こういうような実情にあるのでございまして、全部が全部公安調査庁の団体調査という点から見て、全部を調べたかどうかというと、事実はそのような次第でございます。  それからあの事件でございますが、これは公安調査庁の立場からいたしますと、団体の活動として行なわれたかいなかということが問題になるわけでありまして、いろいろその後の調査をいたしてみましたところが、たとえば、あすこにも団体名が三つ四つ顔を出して参ります。いずれも団体の活動、団体の意思決定によって活動をいたしたということはどうも認められないような実情でありまして、結局それぞれの個人が個人的な立場−団体としての活動はどうもそこに破防法上認めがたい現状にある、こういうのが私どもの現段階における判断でございます。
  213. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、公安調査庁の右翼に対する調査というものは、まことにたよりないものだと言わなければならない。今その対象として調べておるのは五団体と言われましたが、その五団体は何と何の団体でしょうか。まずそれをお伺いしたい。
  214. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) お尋ねでございまするから申し上げますが、大日愛国党、護国団、それから日本青年連盟……。
  215. 千葉信

    主査千葉信君) もっと大きな市で。
  216. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 日本青年連盟、それから治安確立同志会、それから全アジア反共青年連盟、この五つでございます。
  217. 岡田宗司

    岡田宗司君 たとえばその五つの団体の所属員が、しかもその所属の団体の行動としてではなくて、他の同志を語らっていろいろ活動をする、特にそれが他人の生命に対して危害を及ぼすような活動をするようことが明らかになっておっても、それは団体の行動でない限りは、公安調査庁としてはそれに対してずっと調査を続けないことになるのですね。それじゃ一体公安調査庁は右翼を取り締まろうということについて、何ら役に立たぬじゃありませんか、どうなんでしょう、その点。
  218. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) この五つの団体の構成員が、他の団体の者と団体的結合を結んで破壊活動に出るおそれがあるというような場合には、調査をするにやぶさかでございません。
  219. 岡田宗司

    岡田宗司君 私が言っているのは、他の団体と結んでじゃなくて、その団体の構成員が単独に他の個人と相はかっていろいろやるというような場合もあり得るでしょう。それから擬装的にそこから脱退して、そうしてやるということも起こっておるでしょう。そういうようなことは常に右翼団体としては、右翼の運動としてあり得ることなんです。特に一人一殺主義の流れをくむ思想をとる人々においては、そういう場合が相当あると思うのです。それらに対しては公安調査庁は全然手をつけないのか、あるいはそれは調査の対象から初めから除外しておるのか、その点をお伺いしたい。
  220. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 五つの団体を対象にしておると申し上げまして、そのとおりでございますが、その他にも何どきでも必要に応じて調査体制をとり得るようなふうに監視をしておる団体の数はそのほかにも二十ぐらいございます。そのほか今までの経験によりますると、われわれの視線外からいろんなテロ事件等が起きておりますので、広く一般の情報等につきましてもできるだけ注意を払いまして、さような数人でも団体というふうに認められるようなことになりますれば、いつでも調査ができるように注意をいたしております。
  221. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、さっき私がお伺いしたときに、五団体ということをはっきり言われて、そうして右翼全体の動きと非常に違うんだということを言われておった。つまり破防法に基づいて活動しておる者の調査ということでありますけれども、今の話ですと、もっと一般に広くやらなければ目的が達せられないことになるんじゃないんですか。あなたも今そのことを認めたような御発言になっているんですが、どうでしょう、その点。
  222. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 破防法二十七条にいう正式の調査ではございませんが、動向には注意をいたしております。
  223. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、破防法に基づかないものでも調査ができるわけですね。しかも、その破防法に基づく団体は常に調査の対象になっておるがゆえにその団体は動かない。しかしながらそれに関係ある個人が、あるいはまた擬装的に脱退した者が動いておるということも対象にして差しつかえないわけですね。そうして、それを対象にしなければ実際に効果が達成されないと私は思うんですが、そういう点について右翼の調査活動の対象をもっと広いものにして、そうしていろいろなテロ事件の起こるのを未然に防ぐ上に役に立てようというふうにお考えになっておりませんか。
  224. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) どういうふうにお答えしていいかちょっととまどっておるのでございますが、二十七条にいう正式の調査ではございませんが、動向等につきまして十分注意いたしまして、従来の経験によるわれわれの注意しておらない面からいろんな不祥事件が起きるという点につきましては、十分それを防止するように注意いたしております。
  225. 岡田宗司

    岡田宗司君 まああなたのほうでは、右翼と左翼と両方破壊活動については調査しておるということですが、あなたのほうには全部で千八百十五人おるわけですか。
  226. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 全職員は千八百十四人で、そのうち公安調査官が千五百十名でございます。
  227. 岡田宗司

    岡田宗司君 その千五百十名で、右翼のほうと左翼のほうの調査に当たっておる人の割合はどれくらいになっておりますか。
  228. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) お答えいたします。千五百十名中右翼を担当しております者が二百九十四名でございます。そのほかにも右翼と左翼と両方兼務しておるというようなものも数十名ございます。
  229. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、約千五百名のうち三百名近く、二割ですね、あとは主として左翼、そうしてたまにそのうちの者が両方兼務している、こういうことなんですか。
  230. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) そのように存じております。
  231. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは非常におかしいと思うのですよ。とにかくこの前の浅沼事件以来、右翼は非常な問題を起こしております。今日でも相当問題があるわけだし、またいつああいうようなテロ活動をやるかわからないような事態にある。それに今聞くというと、せいぜい五分の一を割り当てているだけなんです。私はこれじゃなかなか右翼の活動についての調査は行き届かないと思う。どうして一体そういうふうな割合にしているのですか。私はそんなことだからいろいろな事件をあとから追っかけ回さなければならぬようなことになっていると思うのです。右翼に対してあなた方少し遠慮し過ぎているのじゃないですか。
  232. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 先ほども申し上げましたように、別に遠慮しているということはございませんで、右も左も同じような観点から調査すべきと思います。ただ対象者の数が非常に違いますので、結局そういった数になるというふうに私は考えております。
  233. 岡田宗司

    岡田宗司君 対象者の数が違うというけれども、団体の数にすれば、右翼のほうがずっと多いわけです。それから今いったように危険度ということになってくると、直接危害を加えるというようなことが非常に例が多いわけです。今日でもブラック・メールが盛んに行なわれているのですね。そうすると、そういう割合でもってやっていくということは、右翼のほうに非常に結果として寛大になっているのではないですか。あなたの意図する、意図しないにかかわらず、右翼の調査に行き届かないところがあるのじゃないか、こういうふうに私は思うのですがどうでしょうか。
  234. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 団体の数としてはまことに仰せのとおりでございます。しかし団体の構成員の数から申しますと、非常な差がございます。決して右と左を区別して調査をするという考えは毛頭ございません。
  235. 岡田宗司

    岡田宗司君 たとえば個人の政治家等に対する危険度はどっちが大きいです。
  236. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) テロ等の問題につきましては、右翼のほうが多いかと思いまするが、国家全体の基本的政治組織に対する危険性という問題は、また別にあるかと存じます。
  237. 岡田宗司

    岡田宗司君 そのテロ等に対しまして、あなた方はそれくらいの人数でこれを未然に調査をして、そういうことを防ぐことができるとお思いですか。全国に相当数もある。またなるほど左翼の共産党に比べれば、全体の構成メンバーは少ないと思う。しかし、その人たちの行なう活動というものは、質的には非常に強いものがある。そういう場合に、一体今いった三百人くらいで十分に調査して、そうして未然に防ぐことができますか。私は非常に心細いと思うのです。またそれだからこそ右翼の諸君は、かなり公然と濶歩し、また同時に彼らの気に入らない政治家に対して、相当な威圧的態度にも出ている。また不測な事態が起こらぬとも限らないようなこともやっているのじゃないですか。私は公安調査庁としては、特に長官としてはその点について、もうちっと考え直さなければいけないのではないかと思うのですが、どうでしょう。
  238. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 調査体制につきましては、やはりバランスのある調査をやらなければならぬと、かように存じております。現在の情勢下では、現在の調査体制でいたし方がないと、私はかように存じております。
  239. 岡田宗司

    岡田宗司君 いたし方ないと考えているかもしれぬけれども、現に右翼のほうは毎年のように何か起こしているじゃないですか。そしてあなた方はそれに対して何ら未然にそれを防止するような結果を上げておらぬのじゃないですか。それでもそれをそのまま続けていって、なおいたし方ないで済みますか。
  240. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 右翼という観念が非常に広い観念でございまするし、また右翼のいろんな不祥事件というもののうち、破壊活動でないものも相当あるかと存じまして、右翼による破壊活動というものが、今までどれだけあったかと申しますると、これは今まで団体の活動として右翼テロをやったというのは一件もございません。さような状況でございまして、一般的に考えれば、仰せのとおりでございまするが、破防法の運用をする私どもといたしましては、先ほども申し上げましたようなことに相なるかと思っております。
  241. 岡田宗司

    岡田宗司君 あなた法律関係の出身者だから、そういうことを言われますけれども、世間ではそのテロ行為、それが団体として行なわれなかったからといって、右翼をそのままにしておいていい、そういうような活動が起こることを未然に防がなくてもいいのだということじゃ納得しませんよ。私はさっきも申し上げましたように、たとえばそういう団体に属しておっても擬装に脱退して、個人的なテロ行為をやる場合が往々にしてあると思います。山口二矢の場合もそうでしょう。なぜそういうことをもっと厳重に調査をしないのかなということを私は先ほどから申し上げておるのです。あるいは団体としての暗殺行為じゃない、だからこれは破防法にいう破壊活動じゃないのだから、だからそういうものまでわれわれは調査する必要はないのだ、こういうことになったら、一体公安調査庁というのは、右翼全体としての破壊活動に対して何にもしていないということになるんじゃないですか。そうでしょう。私どもはそういうことは公安調査庁が最初できるときに、左と右と両方の破壊活動を調査し、それを未然に防ぐということであるならば、右翼に対しまして、特にこれは今言ったように団体の行動ではないけれども、その団体員たるものが脱退なんぞして、個人的にいろいろやるということの方向をとっておる。ですから、そこいらのところは、もっともっとあなた方としては、右翼の活動というものに対して十分なる警戒を払うべきだと思いますが、どうでしょう。
  242. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 右翼分子による不祥事件というものを避けなければならぬということは仰せのとおりでございます。またお話し中の脱退を擬装したということがはっきりいたしますれば、これは当然擬装でございまして、団体関係があるものでございまして、これに対する規制ということは当然考えなければならぬところと存じます。ただ例にお引きになりました山口二矢につきましては、警察なり、検察庁でお調べの結果、やはり党とは関係ないのだという結論のようでございました。さようになりますれば、私どもの役所としては規制という問題を考慮することができない、かような関係になろうかと存じます。
  243. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、形式的に関係なければ、もうあなたのほうでは調査しない、こういうことですか。
  244. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 先ほど申し上げましたように、できるだけ不祥事件は避けたいというので注意はいたしておりますが、いざほんとうに調査をし、規制するというような段階になりますると、やはり破防法に規定されておるような団体の活動として破壊活動を行ない、かつ将来またその危険性が残っておるということが明らかな場合のみ規制ということが考慮される、こういうことになろうかと存じております。
  245. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほど関次長の三無事件に関する調査の話を聞いたのですけれども、あれは一つの団体であり、そして団体行動としてクーデターをやろうというのだから、団体の破壊活動であることは明白です。で、長官は五団体に限るといっておる。そのあとに、関係があり、そういうおそれのあるところも調査するということになっておると、当然あの団体なんかは対象になってしかるべきだったし、あなた方は右翼全般を眺めながら、そういう団体が新たに発生し、しかもそれが破壊活動を団体的にやるというおそれがあるなら、当然これはあなたも十分に調査して発表しなければならなかったはずだったのに、さっぱりやっておらぬ。そうして警察等のほうがちゃんとやっておる。これでは公安調査官の右翼に対する調査なんというものは全く私どもは信頼するに足らぬ。それからあなたが発表できないというのは、そういう調査について詳しいものが出てないから、あるいはまた出ていても、先ほど何といいますか、公然と発表できないような資料に基づいているということは、何者か右翼のそういう調査を発表することについて反対をする者がある、あるいはまた何かそれを発表することによって、ある特定人が公然と国民の前に明らかにされてくるというようなことから発表しないのじゃありませんか。要するに、あなた方の右翼に対する調査というものはおざなりで、そうして突っ込んでほんとうにそういうような右翼のテロ行為と破壊活動を防止するための調査をやっていないのじゃないかと思わざるを得ないのですが、どうですか。
  246. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 三無事件につきましては三無塾、国史会というような団体が——団体と申しますか、そういうような名称のものが関係があったということは聞いておりましたが、だんだん調査をし、また検察庁でも調べた結果、それは親睦団体的なものであり、あるいは団体性がないということで、結局規制という問題を考慮しないという結果に相なった次第でございます。また調査態度につきましても、私どもは決して他をはばかって調査をおろそかにするということは考えておりません。
  247. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうもいろいろ他をはばかっているような事態もあなたのほうでは秘密にしているから、私どもにはよけいそういうふうに感じられるのです。こういう感じを与えることはどうも公安調査庁としてまずいのじゃないか。とにかく公安調査庁は左ばかりやって、右翼のほうはただつけたりで、表向きさっとなでるだけという感じがしてならない。今私が質問したのに対する答えを聞いていると、本気になって右翼のテロ行為や何かの起こるのを未然に防ぐという体制で、あるいはそういうふうなつもりでやっているかどうか、まことにわれわれ納得できないのです。こういう点についてずいぶん予算も取られているのだし、人も千八百人以上というと相当な役所なんでありますから、もっともっといわゆる右翼のそういう活動についての調査をして、そうして未然にテロ行為の起こることについて、公安調査庁としての機能を発揮したらいいじゃありませんか、どう考えておりますか。
  248. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 本年度予算におきまして、たしか八十数名でございますが、公安調査官の増員が認められました。そのうち三十五名を右翼のほうに回しておりまして、決して私ども右翼の調査をおろそかにするという意思は持っておりませんことを御了解願いたいと思います。
  249. 岡田宗司

    岡田宗司君 新しく三十五名増すというと、たいへん右翼の調査に力を注がれるように見えるのですが、全体を足すと、さっき言ったように一向多くないのです。五分の一程度ですか、これであなたは右翼の調査を大いにやるのだと言われても、全国に三百名の人がばらまかれて、そうして、ない県もあるでしょう。それで十分な調査活動ができるとは思いません。だから地方からどんどん上京して来る者も出てくるのです。そこらのところはもう少しあなた本予算について、これから活動を開始する場合にもっともっとそういう点について考慮を払ったほうがいいのじゃありませんか。私はとにかく公安調査庁の態度、成果については、毎年予算委員会なり決算委員会なりでお伺いしますから、そのつもりでひとつ右翼の調査についてもおざなりでなくやっていただきたい。
  250. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今の右翼の問題は関連しての公安調査庁への質問については、私どもはいずれ法務委員会なり何なりでいろいろな角度から詳細にひとつ質問したいと思います。国家公安委員長が来ておられますので、ちょっとお聞きをしておきたい、こう思うのです。  それは、この前予算委員会で国家公安委員長が、自治大臣として言ったのか、国家公安委員長として言ったのか、中央に直結する政治ということに関連をして、いろいろあなたが説明をされたわけですね。非常に貴重な御意見で、私どものほうは感服したところもあるし、貴重などころか、珍しい意見もあったのですが、そこでお聞きしたいのは、中央に直結する政治ということを言ておるときに、どの程度のことを言った場合に利害誘導になるのでしょうか。
  251. 篠田弘作

    ○国務大臣(篠田弘作君) 中央に直結すれば橋をかけてやる、中央に直結すればこの港を作ってやる、そういう具体的な例をあげて中央に直結しようといった場合には、これは利害誘導になります。しかし、現在は政党政治ですから、自民党の総裁である池田勇人君が選挙の応援に行って、そして元来中央と地方というものは、対抗的な立場にあるものではないんだ、有機的な立場において協力するほうが中央の政治もやりやすい、地方もまた中央と十分に意思を通じてやったほうが地方の発展のためになる、そういう意味の抽象的な議輸であるならば、それは何も利害誘導にたらない、こう考えております。
  252. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、中央政府が自民党だ、だから自民党の知事が出た場合には、たとえば補助金などをもらうのについても有利なんだ、こういうことを説明なりしたならばどうなりますか。
  253. 篠田弘作

    ○国務大臣(篠田弘作君) 補助金をもらうのに有利であるかどうかということは、これは私研究の余地があると思います。国務である以上は、法律に規定されておる補助金であるとか、あるいは交付税であるとか、あるいは災害の場合に特別交付税であるとか、そういうものについて区別をするということは、私はないと考えます。しかしながら、人間の社会でありますから、言わなければわからないことがたくさんあります。先般の予算委員会において私が例を引きましたが、寝てる子を起こして背中をかく法はないという例を引いた、そういう場合でありますから、かりに社会党の知事であった場合に、この前の予算委員会における池田総理の答弁によりますと、その知事さんが在任四カ年中に一ぺんもお目にかかったことがない、向こうからも来なかった、そういう意思の疎通を欠いた場合においては、そこにきめのこまかな何ごとかをやろうとする場合に、あるは十分にお互いに政治の面も通じない、またいろいろな面において欠けるところがあるということは、私はこれは人間社会においてありがちのことである。そういう意味におきまして、政治の面として、特に行政の面においては区別はしないけれども、何らかの政治活動の面においてはそういうことはあり得るんじゃないかということは、これはうなずけるんじゃないか、こういうふうに考えております。
  254. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 人間社会のあり方とかなんとかいうことを聞いているのじゃなくて、だから自民党の知事なり市長なりが出たほうが、中央政府が自由民主党なんだから補助金などももらうのに便利であるとか、たくさんもらえるとか、こういうふうなことを言ったほうがわかりいいわけです。そういうふうなことを言った場合に、一体それは利害誘導と考えていいか、それを聞いているわけです。
  255. 篠田弘作

    ○国務大臣(篠田弘作君) それはどういう補助金であるか、補助金にも数が非常に多いのでありますから、単に抽象的に補助金ももらいやすいぞと言ったぐらいのことでは利害誘導にはならない。選挙の応援でありますから、いずれの党においても非常にオーバーな点があると思いますが、私はそういう応援に行った自民党総裁の個人の発言というものに対して、自治大臣は責任をもって答弁する必要はないと考えます。
  256. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 自治大臣に聞いているのじゃなくて、国家公安委員長としてそれが利害誘導という犯罪にかかわるか、かかわらないかということを聞いているわけです。自治大臣の出席を求めているのじゃないのです。そこで抽象的というのですが、たとえば、ここの橋を直してやるとか、ここの港湾をよくしてやるとか、こういうようなことを言った場合には、利害誘導になる。これははっきりしていいのですね。取りようによってはそういうふうに取れるようなことを言う場合が往々にしてあると思うのですが、そういうふうな場合は利害誘導になる場合もある、こう承ってよろしいでしょうか。
  257. 篠田弘作

    ○国務大臣(篠田弘作君) 特殊的なものについて直接に具体的にしゃべらない限りにおいては、私は利害誘導にはならないと、こういうふうに考えております。
  258. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 抽象論としてはそういうことになるわけですから、それを今ここで押し問答しても始まらぬと思いますが、そこで、国家公安委員長として別なことをお聞きしておきますが、これは国家公安委員長だけに聞くのではなくて、法務大臣、最高裁判所にもお聞きするわけで、問題が刑事補償の問題、吉田石松氏の事件に関連して、刑事補償なり検察制度の問題にかかってくるのですが、吉田石松氏のあの事件が再審を申し立てて、無罪が確定したのですが、あのことについて、国家公安委員長、法務大臣、最高裁判所、おのおのの立場においての少し深みのある感想といいますか、そういうふうなものをぜひお聞かせ願いたい、こう思うわけです。国家公安委員長時間をお急ぎのようですから、それだけ御答弁願ってけっこうですから……。
  259. 篠田弘作

    ○国務大臣(篠田弘作君) 高裁におきまして、最後の判決が無罪となり、検事控訴もないわけでありますから、私はこれが最も適正な判決である、こういう立場に立ちまして、五十年の長い間無実に泣いたこの老人のために、私も一掬の涙を流すことに決してちゅうちょするものではありません。そういう意味におきまして、さばくことのむずかしさというものを非常に感じさせられたわけであります。検察庁あるいは警察といたしましては、すべての条件がそろった場合において、これを検挙して裁判所に送るということは当然なことでありまして、吉田翁の場合も、そういう条件が偶然であるか不運であるかわからないけれども、非常にそろっておったというところに、こういう問題が起こったのであろうと思います。私は、そういう判決が下った以上は、警察の関係ではございませんが、当然刑事補償は法律によって定められているのでありますから、あるべきものである。それも五十年の長い年月でありますから、私は時代に適応した計算の仕方をすべきであると、こう考えております。
  260. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今のお話を聞いていて、この事件に関連して、やはり発端というものは、最初の段階はやはり警察の捜査にあるのです。警察の捜査として、古い事件ですけれども、これにも関連をして、警察当局の捜査自身としてあなたが考えられることはございませんか。
  261. 篠田弘作

    ○国務大臣(篠田弘作君) 古いことでありますから私にはわかりませんが、ちょっとひとつ例を引いてようございますか。
  262. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたの御自由だ。
  263. 篠田弘作

    ○国務大臣(篠田弘作君) そうですか。実はこういうことがあります。私が朝日新聞の横浜支局に勤務しておりましたときに、実は私の弟が火事にあいまして、会計からお金を借りまして、当時の金で約二百五十円ぐらいの金でありましたが、送ろうと思ってポケットに入れておきました。そうすると、その晩に小笠原君という記者と、もう一人の守衛の人が泊まっているその晩に、私の金が宿直室で盗まれた。そうしますと、その次に沼田君という人がまた何か金を持っておりまして、宿直の晩にやはりその小笠原という人とその守衛が同じ宿直の晩にそれが盗まれた。それからその次に、三回目はボーナスの晩でありましたが、やはりポケットに入れて寝ておったやつが、ちょうどその小笠原君と守衛が宿直の晩に盗まれた。そこで加賀町警察から私のところに参りまして、どうも小笠原という君の同僚がおかしいのじゃないか、こういう話をしました。私は初めの一回は、そういうことは絶対ない、二回目はどうかと言うから、二回目はないと言った。三回目のときには、どうもそんなことはないだろうと、こういう返事をした。もちろん、同僚であるから疑っているわけじゃありませんが、その二人の宿直の晩に必ずそれがなくなったということを、非常にまあ警察が疑っておりました。しかし、新聞記者でありますから、そう簡単に引っ張っていくというわけにはいかなかったのであります。いろいろ捜査の裏づけをやっておりました。そうすると、第四回目にやはりその守衛と小笠原君という記者が宿直しておりました。この二人の人は、非常に自分が疑われているということをくやしがりまして、二人が偶然にまた何カ月ぶりかで一緒に宿直になったと、今晩あたりまたきっとどろぼうが入るのじゃないか、入ったら必ずつかまえてやろうというので、寝ないで二人で張り番をしました。そうしてほんとうの犯人をそこでつかまえた、こういう事実がある。ところがその犯人が偶然四回目につかまりましたからよかったものの、つかまらないという場合になりますと、この二人に対する疑惑というものはなかなか同僚といえどもやはり解けないというような問題が世間しばしばあるのであります。したがって、疑わしきは罰せずであるとか、あるいはいろいろなことがいわれるのでありまして、そういうふうにまあ外面的にも証拠のそろった、そうして本人たちも口では弁解できても何にも弁解に対する証拠の裏づけをすることのできないような、そういう人間が運命に立ち入るというか、窮地に陥るということはよくあるのじゃないか、たまたま私は自分の体験をお話したのでありますけれども、そういうようなことがありますと、また現在の警察制度と昔の警察制度というものは相当私は違っておったのじゃないか、こういうことを考えるのであります。そういう意味におきまして、あなたのお尋ねのようなことは、全然皆無であるということは言えないかもしれないが、しかし、警察も検察庁も裁判所も三位一体と申しますか、立場々々の違っておる三者が、どうしてもこれは犯人であるというふうに断定せざるを得なかったそういう偶然の不運というものがそこにあったのじゃないか、私はまあそういうふに考えております。今御発言の警察に手落ちがあったのじゃないかと聞かれますと、五十年前の話は、まだ私は小学校の時代の話でありますから、私はそれに対してはっきりお答えすることはできません。(笑声)
  264. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国家公、安委員長、警察に手落ちがあったとかなんとかということでなくて、こういうふうな事件が起きた場合の発端は、やはり警察の捜査にあるわけです。それをこの人がいろいろな証拠がそろっておったのだから不運だったとか、こういうことで警察の最高責任者が考えていいのでしょうか。そういう人権感覚で一体警察が仕事をやって済むとあなたはお考えになるのですか。非常におかしいじゃないですか。
  265. 篠田弘作

    ○国務大臣(篠田弘作君) 現在の警察は刑事訴訟法の趣旨に沿って適正なる捜査をいたしております。その間において、人権のじゅうりんであるとか無理な自白をさせるとか、そういうようなことはいたしておりません。これはあなたも御承知のとおり。五十年前の現在の吉田翁の場合、どういうふうな捜査が行なわれたかということは、私は知らないのであります。
  266. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたのそういうものの考え方が私は基本的におかしいと、こう思うのですがね。そういうふうな、五十年前のことであるとしても、単にそれが証拠がそろっておったのだから不運であったという考え方で警察官は一体いていいかどうか。ことに、国家公安委員長として、あなた自身も政党人の出なわけですよ。その人が、そういうようなものの考え方ですべてが済むということには非常に議論があるのじゃないかと思いますが、ここで押し問答しても切りがないし、あなた自身もほかに用があるということですから、じゃ法務大臣。
  267. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 吉田老人が名古屋の高等裁判所におきまして無罪の確定を見ましたことは、私は喜んでおる一人であります。しかしながら、この問題は、私に非常に深刻ないろいろなことを考えさせられました最近にない問題でございまして、結論から申し上げますと、人をさばくということ、つまり警察、検察、裁判というものが、いかに慎重に、また、用意周到に取り調べなければならないものであるかということを、今さらのように私は痛感をいたしたものであります。上告をしなかった検察庁の当時の主張にもありましたとおりに、非常に古い問題であって、この事件の結果を再びくつがえすような新しい証拠であるとか事実ということは探求しがたいというようなことも述べておったようでありますが、どうあろうとも、あの問題があれで終止符を打たれたということは、私は諸般の情勢を考えまして一番適切な処置をとられたものと思っております。問題は、人間の尊厳の問題につきまして、無罪にはなったけれども、一体こういうことというものが二度もあってはならない。いかなる償いをしても吉田老人に対しては償えるものではない。こういうふうに考えておるのでありまして、私、特に先月の全国検察長会同の席におきまして、検察の証拠の管理保全の問題等については特に非常に慎重な注意をもって取扱っていただきたい。特に検察行政のバック・ボーンとなるような、そういう問題についての心がまえといいますか、これはどこまでもヒューマニズムを突き通していけるような、貫いていけるような、主観的にも客観的にもそういうあり方が望ましいということを実は申し上げたのでありまして、今もそのとおりのことを信じておるわけでありますが、どうかひとつ、警察、検察、裁判所におきまして、かようなことが二度と起きないように、それを願っているだけであります。
  268. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者(下村三郎君) 吉田氏の事件につきましては、私たちも一々記録を精査してよく考えておるわけでございませんので、ことに裁判のことでございますので、裁判官は独立してその良心に従って裁判を行なったことでありますので、私どもといたしましては、裁判というものは今後一そう慎重にやらなければならないという感想を持つわけで、それ以上の所感は差し控えたいと思います。
  269. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、裁判の内容の問題に対してはもちろん批判すべきでありませんから、その点についてお聞きするのじゃないのですが、ちょっと最高裁にお尋ねしたいのは、この一般しろうとの人などが疑問を持ちますのは、たとえば名古屋の高裁の三部へ出したところが却下をされた。同じところの四部へ出したら再審が認められた。しかも四部に対して検事上告か何かあって、そうして最高裁で差し戻しになった。しかも差し戻しになった理由というのが、全く手続上の問題でしょう。新刑訴法を適用してやるか旧刑訴法を適用してやるかということの裁判上の理由、そういう手続の問題で差し戻しになった。それが名古屋の高裁の四部にいったからこういうような形になったので、また三部へいったら、また前のとおりに却下をされるということが常識的に考えられてくるのですね。どうもこういう点が、同じ裁判官でも独立なんだから、かれこれ言うべき筋合いではないのですが、どうもこっちのほうへいけばだめになった、こっちのほうへいけば助かったというようなこと、これは現在の機構としてやむを得ないことですけれども、何か割り切れない感じを一般の人は持っているようですね。こういう点は何か考え方というか、方法というものはないでしょうかね、その点どうなんでしょうか。
  270. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者(下村三郎君) それは今回の事件に限りませんで、一般の事件でもあることでございまして、私たちも社会一般の人がどういうふうに受け取るかということは十分考えなければならぬかと思いまするけれども、やはり裁判官としては、自分の独自の見解で良心に従ってやることでありますから、何とも防ぎようは現在の制度ではないのだろうと思います。
  271. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあ現在の制度のもとでは裁判官独立ですし、自己の良心に従って裁判するのですから、やはり具体的に今のような素朴な疑問というものをどうこうするということはないかとも思うのですがね。これは私どももいろいろ研究したいと、こう思っているのですが、今のこの問題に関連をして、安倍治夫検事ですね、この人がいろいろ活躍したわけですが、これは国会へ、ことに再審の小委員会へ呼ばれたときに、法務省でストップをかけた、出ちゃいけないというようなことを言ったといわれている。現実に十五日には出席をしたけれどもそこでやらなかった、こういう経過がありますね。それはどういう経過なんでしょうか。
  272. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 安倍検事は、現在は法務省の職員といたしまして日々の業務に参加しておるわけでありますが、国会から当初安倍検事に参考人としての出席要求がある旨がわかりましたので、小委員長の林博氏との間に法務省と話し合いをいたしまして、決して出席そのものを拒否するのではないのであるけれども、まだ十分大臣等の意見も聞いていないから、次回にひとつ延ばしていただきたい、延期をしていただきたい、こういうことで、それならそのほうがよかろうという話し合いがつきまして、法務省といたしましては参考人としての安倍検事の出席は延期されたものと実は考えておったようであります。ところが十五日の当日になりまして、安倍検事が出頭をされましたので、せっかく出頭したからこの際意見を述べさしたらどうだうろというような問い合わせが林小委員長のほうから私に直接電話で参りましたので、私はこういうことを申し上げました。先日の衆議院法務委員会においてお答えいたしました情勢というものは、今日はまだ変化が何もないので、もし本人が本日出るということでありましたならば、本人の責任において出欠をきめられたい、こういうふうに申し上げまして、本人は私の意見を了といたしまして、当日出席はしたけれども、参考人としての意見を述べずに次の二十二日の法務委員会に出席をいたしまして、参考人としての意見を陳述をしたのでございます。  それではなぜ十五日のときに延期をば希望したかと申しますと、法務大臣といたしまして、再審制度の問題につきましては、衆議院の法務委員会における再審制度の小委員会等もできておりますし、また吉田老人のあの件以来、非常に新聞等におきましても、国民も関心を持っておりますので、私も非常に重要な関心を持っておるのでございまして、当時私はちょうど二月近くなるかと思いますが、次官、刑事局長等にこの再審制度については法務省としても十分調査をするように、そうして私にその報告をするようにということを報告を求めまして、内部的にこれらの問題が調査が進められていたときであります。  そこで、私はまあ稲葉さん御承知のとおりしろうとでありますから、できることならば、法務省としてせっかく大臣の命令によりまして再審制度についての調査をばしておるのでありますから、そういう報告等も安倍検事が見て、それから自分の意見も取りまぜて述べるようにしてくれるほうが望ましい、そういう私は非常に善意な気持をもちまして、彼に延期をしたほうがよかろう、こういうことであったのでありますけれども、かような再審制度の問題等も非常に時間もかかりますし、まことに重要なのでありますから、一週間やそこらではなかなか法務省の考え方というものをまとめるということは不可能であるというようなことでございましたので、二十二日については延期も阻止もしなかったというのが実情であります。
  273. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、二十二日の前に法務省としての再審制度に対する考え方はまとまっていたのでしょうか、いなかったんですか。
  274. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。  二十二日までには再審制度に対するまとまった考え方というものは出ませんでした。そこで、安倍検事がほんとうに個人の見解を個人の責任でお述べになった、こういうことでございます。
  275. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは法務大臣以下の方に私は心から要望したいのです。それは安倍検事が国会へ出ていろいろ意見を述べられた。そのことによってあの人に対して法務省当局が何らかの不利な取り扱いというか何というか、そういうふうなことを絶対にしないということをぜひこれはお約束願いたいと思います。
  276. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 安倍検事が参考人といたしまして衆議院の法務委員会で述べた内容につきまして、たとえば責任を問うとかその内容が妥当でないとか、そういうようなことは断じていたしません。しかし安倍検事といえども大臣の責任下において日々の業務をば行なう職員でありますから、今後あのようなことがありましたならば、尊前に、直属の上司に対しましてそのような申し入れがあったこと、それに対して、できるならばあらかじめ自分の考え方等を上司に話をいたしまして、そうして円満な理解の中に、そういう場に出席をして意見を述べる、こういう職員として当然とられるべき、何と申しますか、公務員としての道と申しますか、もっとわかりやすく言いますと、紳士的な態度で今後行なっていただきたい、こういう考えを私は持っておりますが、今度の問題につきまして安倍君が不利になるような——地位の問題であるとか、給与と申しますか、さようなことは断じていたす考えは私持っておりません。
  277. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務大臣、時間もおそいですから、できるだけ答弁は要点だけにして下さってけっこうだと思います。  そこで、私がお尋ねしたいのは、大臣が法務大臣になられてから、なかなか新しい感覚で検察行政というものを見ておられる、こう私ははたから見ているのです。  そこで、現在の検察行政のあり方あるいはむしろ検察官のあり方、このことに関連して、あなたが大臣としてしろうとの世界からお入りになって、どういうふうに今お考えになっておられるか、承りたいと、こう思います。
  278. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) まだ大臣に就任いたしまして八カ月しかたっておりませんので、十分御満足のいただけるようなお答えはできないかと思うのでありますが、非常に組織の強い役所でありまして、この組織の一面におきましては、私は非常に敬意を表しておりまして、これは長年伝統によってつちかわれた検察行政の骨組みというものは、なかなか合理的によくできておる、こういう感じを受けます。しかしながら私はよく刑事局長や検事長会議等で申し上げますのは、検察官というものは行政官であるという立場に立って、いかなる問題に対しても個々の検事の裁量権というものをばもっと確立すべきものじゃないか、こういうことを実は申し上げておるのでありまして、卒直に申しますと、起訴不起訴等の問題につきましても、検察官というものは、もっと検事が自己の判断によりまして起訴不起訴が決定されるような、そういう心がまえこそほしいということを、私は実は申し上げておるのであります。  もう一つは、いろいろ法務委員会で、特に稲葉さんからもたびたび指摘をいただいたように、個々の名前はあげませんけれども、あらゆる事件等における証拠の問題その他の問題等におきまして、検事のあり方、またその個々の事件に対する検事のとった処置等につきまして、いろいろ非難をされたり、また御注意をいただいたりしておるのでありますが、そういうこと等に対しましても、私は国会で行なわれましな議論の中で、こういうことはほんとうに検察官というものは十分心得るべきことであるというふうに判断をしたものにつきましては、やはりそれが全国の検事に十分行きわたるような措置をとっております。仕事の内容が、単独に検察庁だけで行なわれる問題よりも、警察によりまして送られてくる問題を措置することがパーセントを申し上げますと多いのでありますから、私は警察とも十分に連絡をとりまして、そうして誤りのない検察行政が行なわれるようにしていきたい、かように考えておるのであります。
  279. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 検察官は一面公益の代表者としての面を持つわけです。それが具体的に犯罪の捜査なりあるいは公判の段階でどういうふうに現わされているのか、また現わされなければならないのか、こういうふうなことについて私はお尋ねしたい、こう思うのです。といいますことは、私どもが今考えておること、現実に一般の人の受けるのは、検察官が有罪を主張することにだけ力を注ぐ伝統的な一つの体系というものが検察官の中にあるわけです。一体こういうことが検察官のあり方としていいことなんだろうか、正しい行き方なんだろうか、こういう点をひとつ中心に考えてお答え願いたいと思うわけです。
  280. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 非常にむずかしいお尋ねでありまして、なかなかこれもまた十分満足をいただけるお答えができないかと思うのでありまするが、先ほど申し上げましたように、警察が送ってきた問題等につきましては、大多数のものが、まあほとんど全部と申し上げたいのでありますが、しかし、ああいう吉田老人のようなことがあったのでありますから、全部とは思いませんけれども、おそらく十万件の件数があるとしましたならば九万九千九百九十幾つといったようなものは、間違いなく私は行なわれておると思うのです。しかしながら、一つも間違いがないかということになりますと、先ほど申しましたような問題があるのでありますから、断じて間違いがございませんと、こういうふうには申し上げられないのであります。  それから公益の代表としての主張の問題でありますが、検事の職責から申しましても、当然罪人を作るということでなくして、問題の真相を明らかにして裁判官にその判決の資料を送るわけでありますから、そういうことは、勢いそういう罪状に関する面の報告なり資料なり書類等が送られておることは、これは職務上当然だろうと思うのです。しかし、私の個人的な希望によりますと、そういう被告人にも非常にいい面があるに違いない、そういういい面等もあわせてもっと強調されるようなそういう検察行政であってほしい、こういうふうに私は考えております。
  281. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 被告人にいい面という言葉の内容はいろいろ問題になると、こう思うのですがね。しかし、その真相を明らかにしていかなければならないとなれば、検察官が手持ちである証拠、これを出すことによって被告人に有利になり、検察陣営がかりに不利になることがあったとしても、それを提出するというのが私は検察官としてのフェアな立場ではないかと、こう考えるわけです。そこはどうでしょうか。
  282. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) お説のとおりであると私信じております。先ほどいい面と申し上げたのでありますが、これは人間が人間をさばくのでありますから、たとえばそういう一つの事件に関係のないような問題であっても、一例を申し上げますと、たとえば選挙違反を行なった、公職選挙法に触れたという場合に、その人が常日ごろ非常にりっぱな人であって、そうしてほとんどすべての社会の人々に尊敬を受けておるというようなこと等は、当然裁判をしていただく被告人の有利な点として私は報告されてもいいものだと考えておるのであります。  それから、ただいま被告にとって非常に有利な証拠等も当然秘匿せずに出すべきものであるという御見解でありますが、私も全く同じ見解に立つものであります。
  283. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務大臣から非常に貴重な御意見があったのですね。刑事局長おられますが、長い間検察行政をやってきて、検察官としての考え方が身についた人から見ると、私はいわば非常に晴天のへきれきと言っては言い過ぎかもしれませんけれども、そういうような御意見だった、こう思うのですね。たとえば松川事件の諏訪メモの問題、あのメモがもっと早く出てくれば、あの事件はもっと早く解決がついたかもしれない。それからこの前委員会で取り上げたと思いますが、福島県における女の人の殺人事件があったですね。これは法務委員会で猪俣さんがやられたのではないかと思いますが、これは、検察庁で証拠を出さなかった。結局出してきたら福島地裁で一審ですか、死刑でしたか終身刑でしたか。それで結局出せと言われて最後にまた出したかして、仙台高裁で無罪になったという事件があります。こういうふうな形になってくると、検察官の今までのやり方というものが、どうもアンフェアだったという印象を与えられるわけです。そうして、今法務大臣の言うように、有利な証拠であっても出すべきだということになってくると、検察官の手持ちの証拠は、可能な限り、というか、出すような方向にひとつ検察官に対して御指導を願いたい、こう思います。いかがでしょうか。
  284. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 検察官に対しましてのただいまのような趣旨徹底の問題でありますが、私はぜひともそのような措置をとって徹底していきたい。そうしてすぐれた伝統は伝統、なおまた改正されるべきところは改正をいたしまして、少しでもよい検察行政になるように心がけていきたいと思います。
  285. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今法務大臣からそういう御意見がありましたから、それ以上つけ加えないで刑事補償の問題に入るわけですが、私どもが現実に扱っておりますと、これは検察官にもよるのですが、たとえばある事件などで示談書などを検事の手元に出す。法廷へ来て検事はその示談書すらなかなか出さないのですよ、しまってしまっているのですよ。最終的にあなたのほうに行っておるから出してくれと言うと、しぶしぶ出すという形が、いかにもアンフェアだという印象を与えられるわけですね。こういう点は十分御注意願いたいと思うわけです。  そこで、刑事補償の問題になるのですが、これはどちらにお聞きするのですか、裁判所のほうへお聞きすべきですか。旧法では一日五円でしたね、そうでしたね。五円の根拠というのはどこにあったのでしょうか。
  286. 樋口勝

    最高裁判所長官代理者(樋口勝君) この五円という金額の出ました根拠につきまして、最高裁の事務局としては必ずしも明確ではございませんので、御説明いたしますとすれば、現行の補償法制定当時の衆議院、参議院、両院におきます政府委員説明によることのほかないと存じます。それによりますと、旧法において一日五円以内の金額を補償することに定められていた根拠、これは実は明確でないのであります。旧刑事訴訟法におきます未決勾留日数を罰金刑に算入いたします場合に、一日を一円と積算した。これは旧刑訴法の五百五十六条にその規定がございます。で、それから違警罪即決例がやはり一日一円と換算していた。当時、また、施行されておりました陪審員の日当が五円であった。それから証人の日当が二円以内、鑑定人の日当が二円以上十円以内であったというようなことがいろいろと考慮されたものと思う、というようなことがこの五円という金額の出た基礎説明として出ておるように思います。
  287. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今証人の日当なり鑑定人なんかの日当などの問題が出てきたんですが、すると証人の日当ですね、これは昭和二十三年には百二十円以内だったんですが、今は千円以内になっていますね。調停委員の日当は昭和二十三年二百円だったものが今七百円になっておるわけですが、この刑事補償の二百円から四百円ということの数字の根拠はどこにあるんでしょうか、現行法は。
  288. 樋口勝

    最高裁判所長官代理者(樋口勝君) これもやはり今の資料によるほかはございませんがそれによりますると、先に申し上げた一日一円という標準が新しい訴訟法では一日二百円となった。それから証人の日当が百二十円、人の日当が三百六十円以内となっていて、それらのつり合い、それから一方賃金の騰貴状況、また旧法の施行当時の昭和七年に比べまして、昭和二十四年五月には一般の工業の男子の賃金が一四九・二倍、また東京小売物価について見ますると、二十四年六月には二六一倍、消費者価格は、米の消費者価格が二十四年四月におきまして二一三・一倍というような倍率になっておる。でこの倍率に従いますと、補償金額は七百五十円から千三百円——五百円ぐらいになる計算である。しかしながらこの賃金に対照しまして、生活費の高騰の著しいということもまた顕著な事実である。で賃金の高騰は生活費の高騰に引きずられておる傾向がありますから、補償金というものは生活費の補償ではない以上、賃金の騰貴率に正確に比例して補償金を引き上げねばならないという理由もない、このようないろいろな観点を総合いたしまして、なおそれに国家財政の状態というようなものも資料にいたしまして現在の補償法の最高額を四百円に定めたというようになっておるようでございます。
  289. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 刑事補償のやはり本質的な問題について従来あまり論議をされておらなかったように考えるんですが、これは国家の不法行為に対する精神的な慰謝料という意味なんですか。あるいはその拘禁によってその期間働くことができなかったという財産的な損害を考えているのか。そこはどういうふうになっているんでしょうか。これは事務総長でもどちらでもけっこうですけれども、要点だけでけっこうです。
  290. 樋口勝

    最高裁判所長官代理者(樋口勝君) 刑事補償は、結局御承知の憲法四十条の規定に根拠を置くというように解せられます。したがって単なるこれは国家の恩恵的な措置ではなくて、法律関係——権利義務の関係である。刑事の補償は拘留または拘禁によります財産上、精神上の損害であるという意味におきましては、民事上の損害賠償あるいは国家賠償法による賠償とその性質を同じくしておるわけでありますが、補償について国家機関の故意または過失を要件としておらないというような点が国家賠償とは違うわけでございまして、一応性質といたしましては、不当な拘留、拘禁によります財産上、精神上の損害というところに実質はあると存じますけれども、国家賠償法との比較において必ずしもそれによってこうむった金額の全範囲を補償するという趣旨ではないのではないかと。その表われが国家賠償法のようにそれぞれの事件の個性によるというよりも、この補償法の第四条に規定してありますようないろいろな情状は考慮いたしますが、一日何円というような定型的な計算方法によりまして、できる限り迅速に効果的な補償を被害者に与える、まあこういうようなところに特色があると考えております。
  291. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いろいろ詳しい説明はありますけれども、時間がおそくなりましたから、もう端的に結論だけをお伺いしたいんですが、結局二百円から四百円というのをきめたのは昭和二十四年ですか。
  292. 樋口勝

    最高裁判所長官代理者(樋口勝君) 新法は昭和二十五年一月一日。
  293. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 昭和二十五年から施行で二百円から四百円ときめているわけですね。そうして、まあ国家の故意、過失があったかは別として、とにかく不当に拘禁をされていた人の補償が、それが証人の日当が今千円以内になっておるとき、調停委員の日当さえ七百円でしょう、それと比べて二百円から四百円、しかも四百円やっているのは非常に少ないでしょう、多くて三百円でしょう、非常にこれはおかしいですね。それで、従来この値上げの問題については今まで起きてないわけですね。このこと自身もうおかしいですね。——まあそれは今ここでそう言うよりも、結論として、これは最高裁判所にお伺いするのか……、この二百円−四百円というものを大幅に引き上げるということを私は当然考えるべきだと、こう思うんですが、その点についてひとつ端的にこれは事務総長のほうからお答え下さいませんかな、結論だけでけっこうですが……。
  294. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者(下村三郎君) いろいろ関係の法規におきまして、たとえば未決勾留日数を罰金に算入するというような規定が刑事訴訟法にございますが、そういうのは今日では一日二百円ということになっておるわけでございまして、その他いろいろ類似の事項について考えてみますと、今日におきましては二百円ないし四百円というのは不当に低い金額であると言うことはできないと思いますけれども、一面におきましては、やはり稲葉委員がおっしゃいますような感じも受けないわけではないのでありまして、この点は慎重に関連の事項と照らし合わせて考究、検討すべきものと考えております。
  295. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 もう少し端的に、こういうようなことはおかしいからもっと上げるべきだという答えがまあ出ないんでしょうかね。やけに遠慮されてる、こう思うんですが、下村さんが言われたのは二百円のことを言われましたが、二百円は労役場留置の場合でしょう。労役場留置というのは、現実に罪を犯して、その結果としての罰金を納められないというのの換算問題で、それと、事件について勾留されて起訴されて、結局無罪確定したという人たちの補償の金額を同じというかスタンダードに置いて考えること自身がおかしいんですよ。だれが見ても僕は逆だと思うんだな。これはやはり依然として国家が、刑事裁判を受けて無罪の確定した人に対して、やはり権利としてじゃなくて、恩恵的なものの考え方が根本にあるからそういう考え方が出てくるんじゃないでしょうか。これはもう少し——たって、証人の日当が百二十円から今は千円になっているでしょう。証人も義務であるし、それは出頭するんですけれども、あそこに出てきて、それはまあいろいろあって、長くしゃべっている方もあるでしょうけれども、その人と具体的に勾留されて精神的なあるいは肉体的な苦痛を受けた人とを比べてみて、証人の日当よりもずっと少ないんだということは、これは常識から見ておかしいですよ。これはもう少しはっきりした御返事できませんか。
  296. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者(下村三郎君) 先ほど刑事局長からも説明いたしましたように、刑事補償法による補償は、故意、過失に基づくものであるかどうかということを問わずに、定型的に額を定めてこれを迅速に補償しようという趣旨のものでございますから、もし現実にまあ国家機関に故意過失があるということになれば、国家賠償法による賠償も請求することができるわけでございまして、そういう意味におきまして、これを非常に高額にするということはまた問題があるのではなかろうかと考えているわけでございます。
  297. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあそういうふうに考えておられるなら、私はきょうは時間がありませんから、別の機会でいろいろこの問題をもう少し追及しますけれども、ちょっと最高裁としては僕はものの考え方が何かこう遠慮をしているような考え方をしているのじゃないか、こう思うのですがね。これは故意、過失を要件としない。故意、過失のある場合には国家賠償法で請求できるんだ。なるほどそうですよ。刑事訴訟法に書いてある。しかし現実に国家賠償法で請求するのにたいへんな手数がかかるでしょう。現実に二年も三年も四年もかかるわけですよ。故意、過失を刑事訴訟法で要件としないといったところで、起訴をされ、勾留をされて、裁判を受けて無罪が確定したということになれば、少なくとも過失の推定ということは考えていいのじゃないですか。これは法律論議になりますからこれ以上しませんけれども、そういうことを考えてみると、もう少し私は最高裁がはっきりした自分で勇気を持ってこの問題を取り上げていい、こう思うのですがね。それ以上のことを言われないのですからしようがありませんけれども、実際問題として、常識的にだれが考えてもおかしいと思うのじゃないですか。あれだけ拘禁されている吉田石松事件のことばかりでなく、一般的に、拘禁されて、そうして非常に苦痛をなめた、そうして無罪になった。この場合に、しかも二百円か四百円で済む。他のものになるとどんどん上がっている。昭和二十五年から十三年間もその金額が据え置きになっている。その問題おかしいのじゃないですか。法務大臣どうですか。
  298. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) これは御承知のとおりに法務大臣の責任といたしましては、裁判所側が必要を認めまして、補償額の引き上げ等を要求をされますならば、私のほうは改正法案を提出するということには、やぶさかではありませんが、先ほど来の裁判所側と稲葉さんとの質疑応答を承っておりまして、これはなかなかいろいろな考え方があるのじゃないかと思うのでありますが、ただ吉田翁に対しましては、特に稲葉さんが言われたような感じを私も非常に強く持つのでありますが、刑事補償は非常に広い意味におきましてあらゆる条件の人が適用を受けるわけでありますから、先ほど来証人の日当千円というようなことも出されましたけれども、これとこれとはまた人によってはたいへん違う内容で当てはめていかなければならないという点もあるかと思います。吉田翁に対しましては、あなたの言われましたように、精神的、肉体的な苦痛であるとか、そういう意味の補償も考えられるべきではないかという感じがいたしておりますけれども、私はいつの場合でもそうでありますが、現行法に最も忠実でなければならない立場に置かれておりますので、裁判所側から要求があれば、そのときにあらためて検討していきたいと考えております。
  299. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 では今の刑事補償の問題はこの程度にして、私も別な機会に御質問をしたいと、こう思うのですが、たとえばアメリカのマサチューセッツ州ですか、これなんかの法律なんか見ますと、「起訴された者は拘禁される直前二年間において拘禁期間と同期間にその通常業務から収益し、または受け取るべかりし額とつり合うものでなければならない。」こういうような規定の仕方をしているわけです。これは財産的な補償という意味を非常に強く考えておるわけです。日本の刑事補償はそういう点が非常にあいまいです。しかも金額の査定の根拠もはっきりしない。これはもう全面的に考え直す必要が私はあると思いますが、これはきょうここでやってもあれですから、また別な機会にやりたいと思います。  最後の私の質問はこういう質問なんです。最高裁判所の判事の任命ですね、この任命の仕方のいろいろな問題点があると、こう思うのですが、法務大臣はこれをどういうふうにお考えでしょうか。憲法七十九条によって最高裁判所の長官でない裁判官を内閣でこれを任命することになっておりますね。これと一体、三権分立のもとにおける、特に司法権の独立ということとの関連をどういうふうにお考えですか、法務大臣からお答え願いたい。
  300. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 認証官である判事には、御承知のとおりに高等裁判所の長官としての判事と、それから最高裁判所の裁判官としての判事と、二つあるわけでございますが、この場合、御指摘のとおりに最高裁判所の判事につきましては、法務大臣が内閣に提案をいたしまして、それを推薦をいたしまして、そして内閣がこれを任命いたしまして、認証式をあげて認証官になるということになっております。そこでこのあり方について、三権分立の建前からどうかということでありますが、私はあまり法律の専門家じゃございませんけれども、発足当時からそのような制度になっておりますので、やはりそのようなあり方のほうが私は望ましい、かように考えております。
  301. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 発足当時からそういう制度になっておると言うけれども、発足当時はちょっと違っていたのですよ。どうですか。発足当時は、裁判官任命諮問委員会の諮問を後で内閣が任命するという形をとっていたのです。それが後に廃止になったのです。そこで、しかし法務大臣というのも政党出身ですね、内閣自身も政党的な色彩が非常に強い、現在の制度のもとにおいては。そうすると、政党的色彩の強い内閣が最高裁判所の裁判官を任命するということが一体妥当なんでしょうかね。そういう点について法務大臣は疑問を持たれたことありませんか。
  302. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) その諮問委員会の廃止になった事情については私よく存じませんけれども、もし必要がございましたら調査部長から答弁させますが、法務大臣が推薦することは、政党出身の法務大臣であり、内閣の与党の政党の大臣としてそこに適当でないのじゃなかろうか。また何らかの疑問を持たないかとのお尋ねでありますが、私は、この問題につきましては、法務大臣は法の執行者、法秩序維持ということについての大責任を負わされておるわけでありますから、最終的には最高裁判所の判決というものに、卒直にいいますと、絶対の敬意を表してその判決に従うべきものだと考えて、さような重大なことを最高裁判所の判事は行なうのでありますから、推薦する法務大臣といたしましては、政党人たるの自覚等に立つ必要はさらさらないのでありまして、いかにしたらりっぱな裁判官に就任してもらえるかという、そういう点から考えまして、特にこれは、単に内閣が任命して認証官になるというだけが最終ではないのでございまして、国民審査というものを受けるわけであります。したがって私は、法曹界の関係者の何ぴとが見ても非常に適当な人物、最も好ましい人物であるという、そういう一つの基準と申しますか、常識的にあまり極端な人事、人々に理解されないような、そういう推薦の仕方等はしてはならないと思います。そういう心がまえに立つ以上、政党出身の法務大臣であっても推薦することは何ら矛盾はないだろう、もし法務大臣が自民党に都合のいいような人を最高裁判所の判事に推薦を申し上げる、そういうことであったら、これは弊害が伴うかと思うのでありますが、そうでない限り不偏不党、ほんとうにだれが見ても当然なるべき人がなるという、そういう形の推薦の仕方であれば、私は一向に今日の制度といえども差しつかえないと思います。
  303. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 下級裁判所の裁判官については、最高裁判所が任命することを認めているわけですから、最高裁判所の裁判官そのものについても最高裁でこれは任命をするという行き方をとっていったほうが、これは三権分立というか純粋な形で問題が処理できるのじゃないでしょうか、そのほうがいいんじゃないでしょうか。これはどういうふうに最高裁当局はお考えなんでしょうか。
  304. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者(下村三郎君) 最高裁判所自体の立場から考えますと、御質問のように、最高裁判所で任命するのが一番便利ということになるかとも思いますが、最高裁判所の判事は内閣で任命するということになっており、これは憲法規定されておりますので、今日においてはどうすることもできないわけでございます。それから、実質的にもやはり三権のそれぞれ抑制均衡というようなことからこれを説明されておりますので、私から申し上げるまでもなく、外国等においてもそういう例があるわけでございますので、これはにわかに改めるということはできないことかと思います。それから任命の方法につきまして、諮問委員会にかけて内閣が任命するか、あるいは内閣自体の責任において任命するかという問題が残るわけでございますが、まあ諮問委員会は第一回の最高裁判所の裁判官任命の際に行なわれただけで、間もなく廃止になってしまいました。その廃止の理由とされておりますところをいろいろ記録等によって見ますと、推薦が形式的に流れるとか、あるいは内閣の責任を不明確なものにするとかいうことの理由があげられているようであります。この形式的になるというのは、おそらくはどういう人を推薦するかということになりますと、なかなかそれらの人についてたくさん人のいる前で、これを批判するということは困難でありますし、また、それぞれ自分の考えた人を推すということになりますと、勢い、そこに多数の人を推薦しなければならないので、結局選択はまた内閣にまかせられるということになるので、そういう意味からいいますと、あまり実益もないということではないかと思うのであります。それで最高裁判所といたしましては、今日におきましては内閣において裁判所というものを十分考えていただきまして、公平な考え方のもとに全責任を持って最高裁判所の判事を任命していただく。こういうことが相当であろうというふうに考えているわけでございます。
  305. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この最高裁の判事の任命の仕方について、私はいろいろな疑問を持ったのですがね。憲法七十九条に関連をして、どうもやはり政党色の強い内閣が任命するということは、それはあとで国民審査があるからと言えばいいとしても、国民審査というのは、事実上ほとんど、これは何といいますか、実質的には役に立っておらないものですから、そうすると、結局、内閣が自分のほうに都合のいいというか、あるいは自分と考えが同じような人をどうしても最高裁判所の裁判官、ことに違憲立法の審査権なんかあるわけですから、そういう人を推薦しようとする動きが実際問題として起きてくるということは、当然過ぎるくらい当然に考えられてくる、こう思うので、憲法にはこういうふうに規定してあるわけですけれども、この点については、いろいろな角度から再検討しなければいけないのじゃないかと私は考えているわけです。そこで法務大臣にお尋ねしたいのですが、何か、現在、最高裁判所の判事の方がどなたか退職をされる。その後任を任命をされるということで、非常にあちこち新聞に出ているわけですね。そうすると、何か法務大臣の推薦した方が、どこかの都合で何か同意を得られなくてだめになったとかなんとか出ておりましたね。今、そういうことをここでお聞きするのは私は妥当ではないというふうに考えますから、これ以上お尋ねしないのですが、ただ一点お尋ねしたいのは、何か今、清原検事総長がアメリカに行っているんですか——アメリカへ行っている。それが帰ってくるまではきめられない。検事総長の愚見を聞いてからきめるのだということが新聞紙上に出ていたのですよ。最高裁判所の裁判官を任命するのに検事総長の意見を聞かなければならぬということば、これは全くおかしい。その間の経過をちょっと御説明願えないでしょうか。
  306. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) この問題につきましては、前段のほうは、これは個人の名前等に触れることになりますからやめますけれども、検事総長が外遊から帰ってきてからきめるといったような考え方は毛頭ございません。検事総長の意見を求める必要もございませんし、当然のことといたしまして検事総長の帰ってくる前に決定をされるだろうと思うのでございますが、全くあれは新聞の誤りであろうと思います。私はさようなことは断じて考えておりません。
  307. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最後に念を押すのは、最高裁判所の裁判官を任命するときには、最高裁判所の裁判官会議にかけてから任命をするのですか。あるいはかけないで内閣の責任で任命してしまうんですか、どういうふうになっておりますか。
  308. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 建前といたしましては最高裁判所の裁判賞会議に公式か非公式かわかりませんけれども、もし現役の裁判官の中から推薦されるような場合には、さようなことがあるかと思うのでありますが、一応は最高裁判所会議に問うことなく、法務大臣が裁判所の意見もよく聞き、各方面の意見をよく聞きまして、そうして名簿を作って内閣に出すわけであります。
  309. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、最高裁判所の裁判官を任命することについては、最高裁判所の裁判官会議の同意を得なければならぬというか、それにかけなければならぬという憲法上の制度的な保障はないわけですね。そうですか。
  310. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) そういう制度にはなっておりません。
  311. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、そういうふうなことで、最高裁判所としては、憲法規定だからというので、憲法を変えようというわけにもいかぬと思いますけれども、最高裁判所裁判官会議にもかけないで、内閣の責任において最高裁判所裁判官がきまっていくということ。これでも最高裁判所としてはもうけっこうでございますということでしょうか。
  312. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者(下村三郎君) 最高裁判所の裁判官任命につきましては、いろいろ今までの歴史がありますようでありますが、一々その経過を文書等において残してあるわけでございませんので、私のこれから申し上げることも、ある程度人から聞いて心得ておるという点も多々あると思いますので、その点は御了解をいただきたいと思うのですが、裁判所としては、どういう裁判官が来られるかということは非常な関心事でありまして、任命の責任は一応内閣にあるわけでございますが、実際最高裁判所にその裁判官が入りまして事件をやっていかれるということになりますと、円滑に裁判がやられるというような状態でなければならないわけでございます。したがって、裁判所としてはそれに対して何らかの意思を表示することが当然ではないかというふうに考えておるわけでございます。それで、もうだいぶ前から法務大臣が大体こういう候補者というふうに選定されました際には、最高裁の長官の意見を聞かれて内閣のほうにそれを推薦されるというふうなことも一つの慣行になっております。それからまた場合によりましては、内閣のほうから私たちのほうに愚見を聞かれるというようなこともあります。それから私どものほうでもいろいろな状況を考えまして、内閣のほうへ意見を言うようなこともあるわけでございますが、しかしこれは慣行としてそういうことが認められておることでありまして、別に法規的な根拠はないわけです。実際上人事が円滑にいき、しかもあとの裁判の運営にもさしつかえがないというような意味から、そういう慣行ができたものと考えております。
  313. 岡田宗司

    岡田宗司君 ちょっと法務大臣にお伺いしますが、私さっき公安調査庁長官に右翼の問題でいろいろ質疑をやったのです。どうも私の感じでは、右翼に対する調査というものは非常になまぬるいと思うのです。たとえば浅沼事件があった、そのあとで世論はずいぶん右翼の行動について、もっときびしく取り締まると同時に右翼の行動というものはなかなか端倪すべからざるものがあるので調査しろと、こういうことであった。ところがその後一年足らずでまた嶋中氏の襲撃事件が起こった。さらにその後三無事件が起こったのです。つまりこういうような一連の事件にかかわらず、事実上公安調査庁は、先ほどの質疑から明らかになったとおり、これは破壊活動防止法の対象でないから、これは対象になった団体だけはやるけれども、あとはそうたいしてやっていないというような印象を受ける。ことに右翼の破壊活動の調査にあたる人数というものも全体の五分の一にすぎない、こういう状況です。私は今の右翼の動きを見ていると、いつ何どき突発的な事故が起こるかわからないような状態にある。国家に対する破壊活動とテロとは違うのだ、むしろ団体としての破壊活動のほうが中心だというように先ほどの答弁から私は印象を受けたのですけれども、しかし右翼は、日本におきましては特に外国の右翼と違いまして、一人一殺主義という、そういう一つの主義というか、伝統があるわけです。だからそれを考えてみますと、今の公安調査庁の右翼に対する調査活動というのは、まことに手ぬるいのじゃないかというふうに考えるのですが、この点、法務大臣いかがお考えでしょうか。
  314. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 先ほどの御質問に対しましての公安調査庁の答弁は、私も聞いておったわけでありますが、岡田さんが御指摘どおりに、右翼に対する調査活動というものはもっと力を入れてやるべきじゃないかという、私も実は全く同じように思っておるのでありまして、現に右翼に対しましての情報収集というものは、私が見たところ非常に効率的に上げられていると思います。そしてまた公安調査庁が力を入れておる点も、私にはいろいろ報告があるわけでありますが、率直に申し上げますと、満足——まあ十分満足ではありませんけれども、非常によく調査活動をいたしておるという感じがいたします。それから人数の問題でございますが、右翼の調査が軽視されておるという、そういう御批判に対しましては、これは人数だけを一つの基準になさってもどうかと思うのでありますけれども、できるだけそういう点につきましても法務大臣としては十分気をつけまして、公安調査庁に督励をいたしまして、御心配のようなことがないように、これからやっていきたいと思います。
  315. 岡田宗司

    岡田宗司君 あなたが法務大臣として公安調査庁をかばわれるのは、これはあなたの職責からしてやむを得ないことだと思うのですが、とにかくもっと活動が十分であったならば、浅沼事件のあとにすぐにああいう嶋中事件なんというものが起こったり、あるいは三無事件がさらに続いて起こったりというようなことも未然に防止できたかもしれないのですね。私は世間に一体どういう印象を与えておるかということをもっと考えていただきたいと思うのです。公安調査庁は左翼に対するいろんな調査を大々的に発表し、それがさらにまた新たに本屋へ翻刻して出るようなことをやっておる。右翼のほうは国会議員が求めてもさっぱり出さない。これじゃ印象として右翼のほうはさっぱりやってないのじゃないか。あなたはこまかい報告をお聞きになっているかもしれませんけれども、公安調査庁はただ法務大臣の直属機関じゃないのです。やはり公の機関です。民主主義の社会におきましては、国民としてもその活動というものに対して、ことに国の治安に関係のある問題ですから見守っております。そこらがどうも公安調査庁の国民に対する責任というようなものをあまり考えておられないのじゃないかと、こう私は思わざるを得ないのです。そこで私は、もう少し公安調査庁というものは右翼について調査を十分にし、しかも、その活動について国民報告し得る範囲は報告すべきだ、こういうふうに思うのですが、法務大臣どうでしょう。
  316. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 国政調査権に基づきまして岡田さんが資料要求をなさっているのでありますから、私はできるだけそういう資料を差し上げることが望ましいと思うのでありまして、よく事情を聞きまして、できるだけそういうことが実現しますように努力をいたします。  それから右翼に対しまして公安調査庁が、警戒の度合いと申しますか、情報収集活動というものが少し左翼よりも軽く扱われているのじゃないかという点につきましては、現在さようなことはございません。しかし、なお御趣旨のように非常に右翼に対しまして公安調査庁の活動というものが重要だと思いますので、督励をいたしまして十分その効果が上がるようにして参りたいと考えております。
  317. 岡田宗司

    岡田宗司君 世間にはどうも右翼に対してはあまりやっていないのじゃないかという印象を与えているという点は、これは御存じでしょうな。その印象をやはりぬぐい去るだけの実績のある活動というものは、これは公安調査庁が多額な予算、しかも会計検査院でも検査のできないような多額な金を使ってやっているのですから、そこらをもっと考えてもらわなければならぬと思うのですよ。これはひとつ関次長も、その点長官にも伝えて、そうして今後よくそういう公安調査庁の活動については世間に疑惑を持たれないようにしてもらいたいと思うのですがね。
  318. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 世間に対しまして公安調査庁の右翼に対する調査活動というものが軽視されているという感じを与えているということはまことにこれは相済みません。これは先ほどから御指摘のとおりにその調査活動等によって得た資料というものが公開されていないというようなことも非常に原因をしているかと思いますので、十分検討をいたしましてそういうことの疑惑も一掃して参りたいと、かように考えております。
  319. 関之

    政府委員(関之君) ただいまの岡田先生のお言葉は長官に申し上げて、われわれ事務当局でも十分に考えてみたいと思っているわけであります。この問題につきましては、実は毎回の国会において御指摘をいただいておりまして、これをさかのぼってみますと、数年前からいつでも同じような御指摘を実はいただいているわけでございます。特に浅沼事件、その後におきまして私どもも現状の認識、たとえば潜在危険がどうかという問題は、全く岡田先生と感を等しうするものでございまして、何とかしてこれを未然に防止することはできないか。いつでも後手後手で、あとから馬場をかけているというふうに見えることばまことに残念なことであります。そういうふうなことから、浅沼事件、それ以後におきましての事件の経過ごとに措置をとって調査体制の強化、そうしてねらいの場所をどういうふうにねらうかという問題については、実は苦心をして参っているわけであります。それで先ほど申しました調査態勢の約三百人が右翼だと申しますが、あとの全部が実は左翼かというと、そういうことはないわけでございまして、その中でたとえば課長とか、局長とかの責任者は両方見て参るわけでございます。特に浅沼事件以後におきましては、左翼を見る者についても、とにかく右翼の問題が耳に入ったならそれを係の者に連絡する、こういうようなふうに、前の植木法務大臣のときにはそういうような方針も決定して、一応三百人という数字が出て参りますけれども、その他の者も調査業務上そういうことが耳に入れば、それぞれの係のほうによく連絡をいたす、そういうことになっておるわけであります。  また、団体でなければ調査庁はもうあとはほったらかしておけというようなふうにお聞きになりまするけれども、その点も、実情の問題としては、要するに、そこにあるテロ的な行為があった。それが個人の背景か団体の背景かは率直に申しまして、調べてみなければわからないのであります。したがって、あるそこに外形的なテロ行為があった。それを一応調べてみることになるわけであります。しこうして、もし団体的背景があるならば、これはもちろん私どもがよく調査をいたし、また個人的な問題になれば、処分の執行に関して犯罪ありと思量するという刑事訴訟法の原則に基づいて、検察庁なり警察庁の捜査機関に連絡する。すべてそういう態勢をしているのでありまして、私どもできるだけ自分の触覚を急所をねらい、ねらいを定めてやっておるのであります。岡田先生もご存じのように、私ども一番の心配は、右翼の問題は、いつどこでだれが何をしておるかわからぬということが実は私どもの苦心するところであります。特定の団体組織にある者がごそごそ動いているということになりますと、これはそこをよく注意しておりますれば、何がしかのことができる。ところが、いつどこでだれが何をしているかわからぬ、こういうようなことが、先ほどお言葉のとおり、私どもいつも職員に注意しているのでありまして、そこをどういうふうにねらうかという点が一番問題がある。何と申しましても、小さい県になりますと、十人の職員が配置状態になりまして、その根本が結局役所の、地方財政の規模というような問題に関連いたしまするが、与えられた予算の範囲内、職員の範囲内においてフルに触覚を伸ばし、協力者体制をそこに作り上げて、そして御期待に沿いたいと、こういうふうに存じているわけでございまして、この問題については、現実的な危険性というものを感じて調査を私どもがしなければならないという考えよりも、あるいは左のほうでも、これのほうが多いかもしれないと実は私自身も存じているわけでありまして、その点は一般世間で調査庁は左ばかりで右はやらぬじゃないかというふうにお感じを持っていただいているのは、まことにやむを得ない点でありまするが、私どもの心情といたしましては、そんなふうにとにかく全庁に号令をかけて、左の者でも、右のほうが耳に入ればそれを係に通報しろというような指示を出しましてやっておる次第ございまして、その点どうぞ御了承いただきたいと思うのであります。
  320. 小柳牧衞

    小柳牧衞君 私は刑務所の移転のことについて、法務当局の御意見を伺いたいと思うんですが、まず第一に危険の防止について承りたいと思うんです。  刑務所は裁判所と同じようにずいぶん古い歴史のある役所であって、監獄と言われた時代を経て今日に及んでいる、いずれも古い建物が非常に多い。さらにまた、その間において、行刑政策の変更等によって非常に不適当な建物になっているものもありましょうし、またもう一つは、その所在地の都市の発達、ことに都市計画によって非常に不適当な土地になっているというようなことからして、全国においてずいぶん刑務所の移転について希望があり、もうすでに着々とやってはおられますが、大体多数の刑務所を改築する場合の順位を定めるとか、実行に移すとか、そういうような一般的の移転改築の当局の御方針を承りたいと思うんです。
  321. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 刑務所の移転問題でございますが、ただいま御質問のございましたように、約六十に及びます刑務所が全国に散在いたしております。古いものは明治の中期あるいはそれ以前からの施設でございまして、施設そのものも非常に朽廃しておるものが多いわけでございます。現在の矯正行政というものにマッチさせますためには、当然施設の内容も改善いたさなければならないのでありまして、事情の許します限りにおきましては逐次そのような措置を講じまして、矯正施設の改善をはかっておるわけでございます。  また一方、ただいまお話のございましたように、都市の発展に伴いまして刑務所の所在の場所が、都市の将来の発展のために支障を生ずるというような場合も多く出て参っておるわけでありまして、こういった場合につきましては、地元の市あるいは県といった地方団体のほうから、刑務所をよそに移転してもらいたいというふうな御要望がたくさん出ているわけでございます。ただいまのところ、昭和三十五年に名古屋の刑務所、それから福岡の刑務所につきまして十億あるいは五億五千万というような国庫債務負担行為を御承認願いまして、これをまず第一着手といたしまして工事を始めておるわけであります。その次に三十六年に滋賀の刑務所につきまして三億、松江の刑務所につきまして一億二千万というふうな、これもやはり国庫債務負担行為の形式によりまして工事を取り進めております。そのほかに、さらに現在問題のございますのは新潟とか浦和、あるいは静岡、徳島、高知、あるいはまた旭川というふうな所が問題に上っているわけですが、静岡につきましては話が具体的に進捗いたしまして、来年度の国庫債務負担行為によりまして、先ほど大臣が説明をいたしましたように七億四千二百万円で一応移転を行ないたいというふうな計画になっている次第でございます。いずれにいたしましても、刑務所の移転につきましては施設そのものの内容からも、またその所在いたしまする場所関係から申しましても、施設の改善をはかり、あるいは移転した上でその施設の充実をはかっていくというふうなことを私どもといたしましても十分に考慮すべきものであると考えまして、特に地元からの御要望がございます際には、その御要望を受けまして、できるだけその趣旨に沿うように努力をして参りたい、かように考えておる次第でございます。
  322. 小柳牧衞

    小柳牧衞君 先ほどの御説明によりましても、今の御答弁によりましても、明印度においては静岡の刑務所の移転を実行するというように予算の面に現われておるようですが、そのほかのものについてはなお調査を進めて、その必要の度合いに応じて実行するというお話であったんですが、幸いにいろいろの調査等が進んで、もう着手し得る状態になったという場合には、さらに予算の許す範囲において追加して実行するというふうになるでしょうか。
  323. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) もちろんお話し合いが具体的に進みまして計画ができ上がりますと、私どもといたしましては積極的にその移転につきましては推進いたしたい考えでございます。  この予算の面から申し上げますと、法務省の営繕費は、来年度全部合計いたしまして約二十九億になっておりますが、そのうち新営の施設費が約二十億でございます。そうして収容施設の関係がそのうちの半分約十億が収容施設に充てられるべき施設費でございます。ところが収容施設が非常にたくさんございます。これは刑務所のみならず、少年院、鑑別所、婦人補導院というような施設もたくさんございまして、それを全部引っくるめまして予算額は十億でございます。この範囲内で逐次改善をはかって参るわけでございますが、刑務所の移転となりますと、金額は非常に多額に上るわけでございます。五億あるいは多いものは十億というふうな金がかかるわけでございまして、なかなか急速にこれを実現するということは、予算関係もございますし、またその移転先の敷地の確定というふうな問題もございまして、なかなか容易には進捗しないわけでございます。話し合いがつき、計画が具体化されますれば、その線に沿って私どもとしてはできるだけすみやかに刑務所の移転問題あるいは施設の改善というふうなことをはかって参りたいというふうに考えております。
  324. 小柳牧衞

    小柳牧衞君 この移転は、政府の政策としてもきわめて急がなければならぬと思うのです。地元としてはずいぶんまたそれを急いでおるというようなところもあるのですが、しかし実際にあたっては、なかなかそう簡単にいかぬということは、今お話のとおりなんですが、それは根本的にいえば財政の問題もありましょうが、事務的にこれを考えてみますると、一つはその調査になかなか手数がかかる。敷地にしてもあるいはその敷地の交通関係あるいは水質の関係だとか、さらにまた実際においては設計する関係、こういうふうなことを、逐次承っておりまするというと、今日の法務省の人員配置は非常に手薄であるというような感じもされるのですが、これらを急速に運ぶには、これらのネックも越えていかなければならぬというふうに思うのが第一点。  第二は、今までのやり方は、大体地元には相当な負担を負わせると同時に、一面敷地等を交換といいますか、等価方式といいますか、やっておるようですが、そういうようなことになりまするというと、いろいろ適当に見合いがつかないとか、あるいはまた縁故払い下げする場合には、法規的な関係が許すかどうかというようなことがあり、一方においては、今申しましたように地方財政の関係もなかなかあるわけなんです。したがって財政面、国と地方との両方の財政面との関係においてもやはり考えなければならぬ、こういうふうなことを考えまするというと、財政面についてある特別の方途を講ずるなり、場合によっては法を改正するなりすることも必要でないかと思うのです。要するに、これを急速に運ぶために、ことに今日のように都市の問題が大きくなって非常に急速な変化を来たしておる際には、できるだけこの問題を早く解決する必要がある。そのためには、第一点としては、これに応ずるだけの調査機能を拡充するということ、第二は、財政的にできるだけ早く解決するような方途を講ずるというようなことが必要じゃないかと思うのですが、この点について法務大臣の御意見を承りたいと思います。
  325. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。小柳さんが先ほど御指摘になりましたように、非常に古い刑務所は明治七、八年というようなのもございまして、できるだけこれらの古い刑務所を改築もしくは移転等をするということは、非常に重要な問題として取り扱っておるわけでございます。なおまた、御指摘のような状況下にある刑務所というものは、今の法務省の作業の状態では、まだ十数年もかかるような気がするのでありまして、それではとても御期待をかなえられないと思いますので、できるだけこれを早く、すべての要望個所を改築、移転等をしてあげたいというふうに実は考えております。従来国庫債務負担行為一点張りのような移転等が行なわれておったのでありますが、これに対しましては三十八年度国費をもちまして敷地を買い上げ、国費をもちまして建物を作っていく、こういうことを初めて三十八年度に実現をいたしまして、今後はできるだけこういう方式を用いて参りたいと考えております。ただ、ただいま御審議をいただいております予算案の中には徳島の刑務所並びに新潟の刑務所移転につきましては、ただいま申し上げましたような方式によりましての移転を考えておるわけでございます。なおまた地方財政等に非常な負担になりましたり、迷惑をかけたりするようなことがないように、大蔵省とも折衝をいたしておりまして、たとえば国庫債務負担行為等もできるだけ短い期間におきまして解決をしていこう、そうして地方財政の圧迫を少しでも負担を軽くしていこう、こういう考え方で進めております。また、現在の法務省の中における調査員と申しますか、営繕課の課員と申しますか、この陣容ではそれだけの速度の早い移転、改築等が不能じゃないかという御指摘でございましたが、全くそのとおりでございまして、非常に重要な面につきましては、いまだに建設省等にこれを委託いたしましてやっておる状況でございますので、こういうことでは法務省といたしましては非常に不便と申しますか、不都合なところもございますので、これも改正していく所存でございます。ただいま要望されておる個所が二十カ所ばかりございますけれども、これをできるだけ四、五年間で全部一応予算の承認をいただくところまでひとつ努力をしていきたい、かように考えております。幸いにこの三十八年度の御審議をいただいております予算の中には、静岡の先ほど経理部長から答弁をいたしました国庫債務負担行為による承認が一つ、それから徳島、網走、新潟等が大体認められておりますので、この速度でいきますならば四、五年間で何とか目鼻がつくのではなかろうか、こういうふうに考えております。
  326. 小柳牧衞

    小柳牧衞君 申すまでもなく、最近都市の発達あるいは産業都市であるとか、あるいは新工業都市であるとか、いろいろ都市については大きな手が打たれている際であります。この際に刑務所の移転ということは一そう急を告げると思いますから、極力この問題の解決に邁進せられんことを切に希望する次第であります。  次に保護観察の問題について……
  327. 岡田宗司

    岡田宗司君 ちょっと私刑務所の移転問題について一つ関連質問をお許し願います。  端的にお伺いしますが、巣鴨の拘置所の移転問題なんですが、中村梅古さんの法務大臣の時代に、地元からえらい強い陳情がありまして、とにかく池袋という所は御承知のように今や東京におきましても副都心格のもので、そこに拘置所があるということが発展を妨げるというので、前からずいぶん強い運動があった。それで中村さんの法務大臣の時代に、どっちともとれるような、しかもかなり希望を与えるような態度を示されたのですが、今のお話を聞いていると、どうも巣鴨の拘置所の移転問題は、まるっきりあなたのほうで忘れてしまっているかのような状況なんですが、巣鴨の拘置所の移転問題について、今当局はどういうお考えですか。それをちょっとお尋ねしたい。
  328. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。ただいま小柳さんにお答えいたしましたのは、たまたま三十八年度の新規の部分を申し上げましたので、巣鴨を無視しておるではないかという御指摘ではなかったかと思うのでありますが、岡田さんも御承知のとおりに、東京都におきまして巣鴨の移転を行なおうといたしますと、移転先の敷地の選定というものが非常にむずかしいのでありまして、法務省といたしましては今努力をいたしまして、まあ、内密というとこれは困るのでありますが、へたなことを言いますと、近辺の地価が上がったり下がったりするそうでございますから、ここでは申し上げませんけれども、大体目標のようなものをきめまして、実は内々交渉いたしておりますから、決して軽視、無視しておりませんので、これもできるだけそういう移転先等のあれが固まりましたならば、少なくとも三十九年度くらいにはそういう予算計上をして参りたいと、かように実は一生懸命になって努力をいたしております。
  329. 岡田宗司

    岡田宗司君 今のお話ですと、できるだけ早く敷地等をきめて、三十九年度には移転のための予算の計上ができるようにしたい、こうおっしゃったのですが、そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  330. 小柳牧衞

    小柳牧衞君 今さら保護監察の重要なことは申すまでもありませんが、しかし、この仕事は非常に困難な仕事であるという、また比較的よけいな経費がかかるというようなことで、従来どうも大体手落ちであったのじゃないかという感じがするのであります。最近だいぶこれに力を入れておられるようでありますけれども、最近の、何といいますか、刑事犯罪なり、あるいは青少年の問題等ずっと通観しますというと、再犯防止はもちろんのこと、犯罪の防止にもっと力を入れることがきわめて重要だと思うのですが、明年度予算についてはこういう点を考慮されて、何かもっと目新しい計画をもって進んでおられますか、その点をお聞きしたいと思います。
  331. 中垣國男

    ○国務大臣(中垣國男君) 保護事業につきましては、三十八年度予算でいろいろ提案をいたしまして御審議をいただいておるわけでありますが、政策的に申し上げますと、一番力を入れておりますのは、全国に約五万の保護司がございますが、この保護司の方々活動によりまして再犯防止ということに力を尽くしたい、こういうことで、保護司に関しましての予算はほとんど法務省の要求どおり大蔵省は認めまして、御提案をいたしておる次第でございます。特に三十八年度におきましては、市町村における保護司の活動というものが、従来経費の面から非常に束縛を受けておりまして、理解のある市町村等におきましては、それでも保護司の活動が再犯防止のために行なわれておったのでありますけれども、市町村財政の貧弱なところでは、保護司の活動がそういう面でなかなか行なわれがたい状態でございましたので、ただいま御審議——まだ法律は通ってはおりませんけれども、これも地方財政法の改正を提案しておるのでございまして、その中に、保護司が保護活動に要します金を市町村が負担いたしましたときに、特別交付税の対象といたしましてこれを国がまかなうような改正を提案いたしまして御審議をいただいておるわけでございます。そういうことができまして条件ができますと、保護司の活動というものは非常に仕事も効果的に活動が行ないやすくなるだろうと期待をしておるのでありまして、あらゆる機会に保護司の方々に、日本の現状におきましての非行青少年対策というものは、法律や制度の問題よりも、むしろそういう保護司の方々活動に待つところが大である、こういう考え方のもとに進めておる次第でございます。そうしてまた、必ず効果が上がるだろうと考えております。
  332. 小柳牧衞

    小柳牧衞君 この問題についていろいろ新しい視野に立って予算を要求されておることは非常に私はけっこうだと思うのですが、従来、実にどうも司法保護司の処遇というものは見るも気の毒な状況であったことは御存じのとおりであります。これはしかし、幸い宗教家であるとか、あるいは篤志家であるとかいうような者がやっておりましたから、どうやらやっておったようですけれども、しかし旅費はもちろんのこと、場合によっては通信費もないというような状況で、非常に困難しておったようです。しかし、ますますこの仕事の発展を期さなければなりませんし、ことに今日、家族制度の変革等によりまして、この問題は別な立場において新しい感覚で処理しなければならぬという面がよけい多くなったので、一そうこの点に力を入れていただきたいと思うのです。幸い今度法律も改正される御予定だそうでありまして、これらの処遇の改善をやっていただけると思うのですが、しかし、地方財政の上から申しますというと、なかなかそう広く——地方からいいますというと比較的縁の遠い仕事のような感じがするものですから、思うようにいかぬというようなこともありましょうから、法務当局としては、進んでこの問題に力を入れていただきたいということを切にお願いをいたしまして私の質問を終わります。
  333. 千葉信

    主査千葉信君) 以上をもちまして法務省及び裁判所所管に関する質疑は終了したものと認めます。  本日はこの程度にいたしまして、明二十六日午前十時に開会いたします。  本日はこれで散会いたします。    午後五時四十七分散会