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1963-02-15 第43回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月十五日(金曜日)    午前十時二十三分開会   —————————————   委員の異動  二月十五日   辞任      補欠選任    安井  謙君  植垣弥一郎君    米田 正文君  田中 清一君    後藤 養隆君  竹中 垣夫君    小山邦太郎君  西田 信一君    林   塩君  市川 房枝君   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木内 四郎君    理事            大谷藤之助君            川上 為治君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            北村  暢君            横川 正市君            小平 芳平君            田畑 金光君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            太田 正孝君            加藤 武徳君            木村篤太郎君            草葉 隆圃君            小林 英三君            小林 武治君            小柳 牧衞君            小山邦太郎君            木暮武太夫君            古池 信三君            河野 謙三君            郡  祐一君            田中 清一君            竹中 恒夫君            館  哲二君            西田 信一君            松野 孝一君            丸茂 重貞君            吉江 勝保君            稲葉 誠一君            瀬谷 英行君            戸叶  武君            豊瀬 禎一君            羽生 三七君            藤田藤太郎君            松本 賢一君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君            北條 雋八君            森 八三一君            向井 長年君            須藤 五郎君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 中垣 國男君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 西村 英一君    農 林 大 臣 重政 誠之君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    郵 政 大 臣 小沢久太郎君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    建 設 大 臣 河野 一郎君    自 治 大 臣 篠田 弘作君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 近藤 鶴代君    国 務 大 臣 志賀健次郎君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    内閣法制局第一    部長      山内 一夫君    総理府総務長官 徳安 実蔵君    総理府特別地域    連絡局長    大竹 民陟君    防衛庁参事官  麻生  茂君    経済企画庁調整    局長      山本 重信君    経済企画庁総合    開発局長    大来佐武郎君    科学技術庁長官    官房長     森崎 久寿君    科学技術庁研究    調整局長    芥川 輝孝君    科学技術庁原子    力局長     島村 武久君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省条約局長 中川  融君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省銀行局長 大月  高君    厚生大臣官房会    計課長     今村  譲君    厚生省環境衛生    局長      五十風義明君    農林政務次官  大谷 贇雄君    農林大臣官房長 林田悠紀夫君    労働省労政局長 堀  秀夫君    労働省労働基準    局長      大島  靖君    建設政務次官  松沢 雄蔵君    建設省道路局長 平井  学君    自治省財政局長 奧野 誠亮君    自治省税務局長 柴田  護君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十七年度一般会計補正予算  (第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十七年度特別会計補正予算  (特第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十七年度政府関係機関補正予  算(機第2号)(内閣提出、衆議院  送付)   —————————————
  2. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  本日、林塩君及び安井謙君がそれぞれ辞任され、その補欠として市川房枝君及び植垣弥一郎君がそれぞれ選任されました。   —————————————
  3. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)、昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)、昭和三十七年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三案を一括して議題とし、昨日に引き続き質疑を行ないます。森八三一君。
  4. 森八三一

    ○森八三一君 私は、時間がきわめて短いので、災害対策の問題にしぼって政府のお考えを承りたいと存じます。  その第一は当面の対策でございます。今度の雪害豪雪被害は、北海道から九州まで、きわめて広範な地域に及んでおりまするし、その中でも、北陸、山陰方面を中心といたしまして、十数の府県には災害救助法発動をみておるというようにも承ります。きわめて激甚な災害である、広範な災害であるというように言えるかと思います。そこで、政府におきましても、いち早く災害対策基本法根拠を求めまして、建設大臣本部長とする雪害対策本部を設置されまして、打つべき諸般の対策を順次進めておられまするのでありますが、ただ、今までの対策だけでは、必ずしも今度の災害対処するものとしては十分ではないのではないかという感じを持ちます。最近における災害の大きなものとしては、有史以来の災害であったといわれておりまする昭和三十四年の伊勢湾台風がその例かと思います。この際には、臨時国会が召集せられまして、二十七にわたる対策特別立法をせられました。さらに、その法律を具体的に実施、運営して参りまするために入り用予算も同時に可決せられまして取り組んで参ったのであります。私も、伊勢湾台風激甚地住民の一人といたしまして、その当時における政府国会の非常にあたたかい思いやりのある施策に対しましては、衷心感激をいたしておったのであります。私、そういうようなみずからの体験を通しまして、災害対策考えなければならぬ基本的な態度といたしましては、何といたしましても、被災者並び被災地域におきまする民心の安定をはかるということが第一要諦であり、同時にまた、その関係者をして自力復興精進をするという意欲を喚起する、高揚するということが最大政治のねらいでなければならぬと思う。これを考えて参りますると、昭知三十六年に御承知災害対策基本法が制定せられまして、いち早く打つべき手を打つような行政措置が進められるように相成っております。引き続いて昨年の九月六日には、激甚災害対処するための特別の財政援助等に関する法律も制定をせられました。伊勢湾台風当時のように、わざわざ臨事国会を設けませんでも、それぞれ政府の善処によって行政的な措置ができるというような建前がとられている。ところが、今申しまするように、今次の雪害が非常に広範であり、しかも激甚であるという事態にかんがみまして、打つべき手は順次打たれてはおりますが、国会が議決をいたしておりまする昨年の九月六日の激甚災害に対する政府特別財政措置という法律が今もって発動をしておらぬというように思うのであります。これは、申し上げまするように、民心の安定、自力復興精進をするという意欲を喚起するためには、すみやかに発動をすべきであるというように私は考えるのであります。本日のどの新聞でありましたか、朝刊を拝見いたしますると、本部要請で、総理のところにおきましても、この法律発動するとかせぬとかいうことで何か研究が進んでいるやに伝えているのでありますが、こそは、ちゅうちょせずに、一刻も早くこの法律発動をすべきであるというように私は考える一人でありますが、これに対する政府の所信をまずお伺いをいたします。
  5. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えいたします。  激甚災害特別財政援助法は、御承知のとおり、公共土木施設農林水産業施設その他の施設災害に対する高率補助をきめているわけでございますが、現在は、除雪その他、異常の降雪によりまして雪が降っておりますので、それに対応するための諸施策政府地方公共団体もあわせて全力をあげて当たっているわけでありますが、この法律に基づく被害額というものは、調査中でございますし、各府県地方公共団体からの調査報告を待っており、また各省も、係官現地に派遣をして、これが被害等に対しては調査中であります。まあこれが一番大きくなる可能性がありますのは、これからの融雪時における災害その他に対する見込みが現在のところ立っておりませんので、これが非常に被害が大きくなるということになれば、地方の出先の決定を見て、基準が定められておりますので、これらによって発動すべきときには当然発動すべきでありますが、現在まだそのような大きな公共土木災害農林漁業施設災害というものは出ておりませんので、現在のところ、その推移を見ておるというような状況でございます。必要があれば発動することは当然でございます。
  6. 森八三一

    ○森八三一君 そういうようなお答えがあるだろうと私も予測しておったのでありますが、私の手元に、現地のほうから訴えられて参ります、これはもちろん信憑性があるかどうかという点については、私は必ずしもそのままうのみにはいたしませんが、しかし、相当の具体的な数字を示してのお話を承っておるのであります。お話しありましたように、ようやくにして幹線の交通が開けた、あるいは通信も、主要な地点だけの通信が回復したという程度でございまして、今大蔵大臣お話のように、一たび奥地に足を運びますれば、今もろて雪の中に埋もれておるというような状態でありますために、詳細な被害額というものを調査するということには参りません。参りませんことは私もよく了解をいたしております。いたしておりますが、私の手元に、すでに具体的な相当信憑性のおける数字が提示されておる。政府のほうで鋭意御調査を願っておるとすれば、この法律に基づく一応の限度にすでに達しておるというものが相当にあろうと思うのです。調査を待たなければということではなくて、私申し上げまするように、災害対策の一番の基本的な政治をとるべき態度としては、まずもって民心の安定をはかり、そして来たるべき復興精進をするという意欲をかき立てるということが一番私は最大のねらいでなければならぬと思うのです。そのためには、打つべき手を早く打ってやるということは、安心をしてほんとうにやっていける、こういうような意欲をかき立てるということになるのですから、大蔵大臣は新潟県の御出身でございまして、もうおそらく私のところ以上に現地状況というものは刻々報告が来ておると思いまするし、予算関係もございますので、各省のこの時点における取りまとめということも御承知になっておると思うのです。そこで、お話のようなことであるといたしますれば、政府のほうでおつかみになっておる数字は一体どういう数字になっておるのか。それが激甚災害特例法発動するに至っておらぬという程度調査しか進んでおらぬとすれば、これは、むしろその調査が怠慢であるというように私は申し上げてもいいんじゃないか。私の手元に集まっておる数字すら、すでに相当の額に達しておる。発動する限界も来ておるというように思いますので、もしまだその限界が来ておらぬというのなら、今日の時点において調査の結果はどうなっておるのか。特に、私は農林大臣の御出席をいただいておりますので、農林災害等につきましては、新聞にも具体的な数字が出ておるのですね。すでにこの法律発動を求むべきときが来ておると思います。ですから、農林大臣といたしましても、当然これは本部長に対しまして、この法律発動要請されてしかるべきときと思いますが、そういうような手続を一体おやりになっておるのか、なっておらぬのか。私は、中央防災会議会長である総理大臣が、すみやかにこの法律発動をすべしということを御命令になってしかるべきじゃないかと思っておるが、もしそれがないとすれば、関係各省から当然そういう要請があってしかるべきだと、こう思うのです。数字はどうなっておりますか。お話をいただきたい。
  7. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ご承知のとおり、河野建設大臣災害本部長とする災害対策本部ができておりまして、各省は、時々刻々各地方公共団体連絡をとりながら、あなたが今申されたように、いろいろな事態対処いたしまして、応急的な措置は遺憾なきを期しておるわけでございます。激甚災害の指定は、御承知のとおり、被害が起きてから、その被害の規模、程度等によって発動せられるものでありまして、現在予測せられるものは、なだれ、地すべり、また、積雪によって橋が落ちたり、いろいろな公共施設に対する被害予測をせられるわけでありますが、最も大きいのは、融雪時における災害となるわけであります。でありますから、政府は、地方公共団体との連絡を密にしながら、応急災害対策等、現在の法律でできることはできるだけ早く措置をするという態勢をとっておりまして、各地方公共団体等から出て参りましたもの、先ほど申し上げましたとおり、出てくるだけ待っておらないで、各省としては、災害対策本部からの出張ということで、係官が全部現地に出ておるわけであります。大蔵省も、御承知公共事業を担当しております宮崎調査官を主にして現地に出向いて、積極的な態度をとっておるわけでありまして、公共土木災害農林漁業災害の各府県地方公共団体からの報告は現在災害本部集計をいたし、適切な措置を今とっておるわけでありまして、私の手元で、どの府県どの個所がどの程度になっておるということは、もう少し時間がたってから御報告を申し上げたいと、こう考えております。
  8. 森八三一

    ○森八三一君 私の申し上げますのは、確たる数字をまとめるのには、この災害の実況にかんがみまして、相当の時間と手間を要すると思うのです。思いまするが、一刻も早く、せっかく国会が昨年の九月にこういう特別法を制定したことでもございますので、この制定した法律発動せしめる、そして地方の自治体にいたしましても、関係住民にいたしましても、政府にたよらずに、自力で個々に打ち込んでいくという意欲をかき立てるためには、せっかくできておる法律を、まとまってからというようなのんべんだらりとでなしに、そのつどそのつどまとまった数字根拠にして発動せしめていくという態度をとってしかるべきではないかと思うのです。これは、全部まとまる時期を待っておりますれば、来年度、四月、五月の新年度を迎えなければ、融雪時期は終わりませんので、私はまとまらないと思うのです。そんなゆうちょうなことでなしに、現時点でわかっておる数字をもとにしてこの法律発動すべきであると思いますが、そういう手続をおとりになる意思があるかどうかということです。
  9. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 現在、被害額につきましては、内閣審議室で早急にまとめておりますが、公共土木施設中現在までに判明しておる十一カ所については、非常に少ない数字であり、二千五百万円となっております。農林漁業関係概算数字二百五億九千七百万円、これは非常に大きな数字が出ております。これらに対しましては、天災融資法発動その他各般の措置考えられるわけでございますが、被害に対しましては、法律に適合することをこまかく積算をすることができませんので、後ほど御答弁を申し上げようと思っておりましたが、応急的に、すべてのものが解決をしなければ金を送らない、また措置をしないというようなことでは困りますので、少なくともつなぎ融資的なものに対しては万全の措置を行ないたいということで、きょうの閣議でも決定をしたのでありますが、交付税の繰り上げ支給というようなことで、十四県に対して約三十億近い、二十八億九千万円だと思いますが、こういう繰り上げ支給等をやっておるわけでございまして、少なくとも現地住民に対していささかの不安もないように、また、公共土木施設その他の災害復旧に対してもしかるべく直ちに措置をする、そして時間の推移を待ちながら、これに対して法律上の措置等を十分に考えながら最後の締めくくりをつけていくというような態勢をとっておりますので、過去の例よりも非常に前向きで、少なくとも現地住民にいささかでも不安を与えないということに対しては、政府も積極的な態度をとっておるわけでございます。
  10. 森八三一

    ○森八三一君 私も最初に、ほんとうにスピーディに手を打っていただいておるということを申し上げておる。しかし、せっかく昨年の九月にこういう法律を作られたのですから、この法律に適合する時点であれば、そのつどこの法律根拠を求めての手を打つべきではないか、それがなぜ打てぬかということをお尋ねしておるのです。お打ちになる意思があるかないかということなんです。
  11. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほども申し上げておりますように、今集計をいたしておりますし、実際上の問題に対しては措置をいたしております。これが最終的に激甚災害特別法の適用を受けるかどうかという問題は、今度国の補助率が高まるわけでありますので、それは事業全体がわからなくても、おおむねの推定がつく場合には、当然発動せられるわけでありますので、政府は自動的に発動するというような考え方でおりますので、お説と何ら変わらないと思います。ただ、今度の激甚災害というものは、予測せられるものが非常に大きいから、いつでも政府激甚災害特別法発動するのだというふうに周知徹底せしめておいたほうがいいんじゃないかというようなお考えでございますが、当然この法律基準に適合する事態に対しては、自動的に発動するという考えでございますので、お説と何ら変わらないというふうに考えております。
  12. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますると、調査の結果、数字がまとまって参りまして、この法律の規定する限界に来たときには、いつまでもこの法律発動して対処をするという精神と承りますが、それでよろしゅうございましょうか。——そういたしますると、法律発動いたしましても、その法律に基づいて行なわれる具体的な事業の推進に必要な予算的な裏づけがございませんと、これは地方公共団体にしても、住民の諸君にしても、から手形をちょうだいしたようなことになって、またそこで問題が起きる、こう思うのです。でございますので、今お話しのように、当面対策としては繰り上げ融資をするとかなんとかかんとかというようなことでこれはけっこうだと思います。がしかし、いやしくも一つの法律根拠を求めて発動をした限りにおいては、そのことのために入り用予算というものは整備されておらなければならぬと思うのですね。といたしますると、昨日も資料をちょうだいいたしたのでありまするが、昭和三十七年度の予備費はもうほとんど使い果たしてしまって、残額もその用途については大体の見込みが立っておるということだそうでありますので、これはもう当てにならぬということになる。昭和三十八年度に入りましても、この予算の編成は昨年の十二月に完了したわけでありますので、この豪雪ということを予測しての予備費なんということは、おそらく私は実際の問題としては大蔵大臣の頭の中にもなかったと思うのです。通常の九月等におきまする台風なんかについては、過去の経験にかんがみまして、おおむねのことは考えていらっしゃるとか、あるいは六、七月の集中豪雨も、これは前例がございますので、それに取り組む予備費等はある程度御考慮になったと思いますが、この豪雪に対する予測ということは、これはおそらくだれ一人も考えたことじゃないと思うのです。といたしますると、そこで法律発動したけれども、具体的にその裏づけをなす予算措置がないのではないかという問題に私心配が起きる、こうなりますので、すみやかにその予算措置をとるべきではないか、こういう私は考えで、もっと具体的に申しますれば、三次の補正をやるなり何かというような行動があってしかるべきではないかと思うのでありますす。そのことについてはどうお考えでございましょう。
  13. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 前にも申し上げましたが、現在予備費は二十億弱残っておりますし、またお説のとおり、今度の豪雪対策につきましても、一般会計からの財政支出が二十億以内ではまかなえないのではないかというようなところにウエートを置いての御発言と思いますが、先ほどから申し上げておりますとおり、財政資金を直ちに交付をしなければならない問題は、公共土木災害等に対しては幾らなのか、それから天災融資法等融資段階において解決せらるべきものもありますてそれから地方公共団体の負担における面に対しては、特別交付税の繰り上げ支給、増額その他種々な対策財政上必要でございまして、現在一般会計でまかなうべきものを予測概算いたします場合には、現在の三十七年度予算各省分移、流用その他既定経費の中でまかなっておるわけでありますし、二月、三月を予測しましても、まかない得るというふうな考え方を今とっております。これはこまかい数字をおおむね概算をしました結果、そう判断をしておるわけでありますが、ただ既定経費内でまかなうだけではなく、先ほど申し上げたとおり、二十億弱の予備費もございますので、予備費で支出すべきものは当然支出していくという考え方でございますし、三十八年度の予算には二百億の予備費を計上いたしておりますので、これは九月、十月の台風災害当てにしたものであるというものではなく、三十八年度の予算が成立すれば、当然四月一日からの必要なものに対しては予備費支出が行なえるわけでありますので、現在の状態では、一般会計における補正予算を組まなければならないという考えには立っておりません。しかし、るから、あす温度が非常に急上昇し、公共土木災害が大きく起きた場合どうするかということでありますが、そのような事態が参ったという場合には、必要な経費として当然計上すべきであるという事態が起これば、政府はこれに対処する用意はございます。
  14. 森八三一

    ○森八三一君 今、昭和三十七年度の予備費二十億、確かにちょうだいしております資料にもございまするが、その付記を見ますと、使用残額財政法三十五条第三項のただし書きの規定による大蔵大臣の指定する経費等に使用される予定が立っている、こう書いてあって、なるほど十九億九千万円残っておりますけれども、これは全部もう大蔵省提出資料によりますと、予定が立っている、こういうことなんですね。一般経費のほうから緊急対策については始末ができる。これはもちろん余裕があると思います。がしかし、これはあくまでも応急対策のことでありまして、激甚災害に対する財政援助に関する法律が具体的に発動する段階になりますと、そういうような一般経費からのやりくりということだけでは済まされないという問題が起こると思います。伊勢湾台風のときにいたしましても、予算が成立するまではお話のようなことでやりくりをして対処をしてきたのですけれども、それでは手に負えないので、相当額の予算を組んでこれに取り組んだ。そのために関係者といたしましても非常に安心をして、今日のように早期に復旧が完成をした事実があるのです。ですから、来年度は二百億の予備費があるとおっしゃいましても、その予備費を使い果たしてしまうと、またぞろ国会の開かれておらぬときに災害が来るという、こういうことになりますので、予備費でございますから予定はありませんけれども、しかし、私は常識的には、この予備費は今回の豪雪というものを考えての予備費ではないということは言えると思います。これは水かけ論で、そんなことはないとおっしゃれば、建前は予備費ですから、どうでも言えましょうけれども実態としてはそういうものではなかったと私は考える。といたしますれば、国会の開かれているうちに予算的な措置を講じておきますことが他日に備えることになるのじゃないかと私は思いますが、そういう措置を講ずる必要があると思いますが、いかがお考えですか。
  15. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三十七年度の予備費も三十八年度同様二百億ありますことは御承知のとおりでございますが、現在約百八十億円の支出が終わってございます。この中の一番大きなものは災害対策費でありまして、公共事業関係費でございますことも御承知のとおりでございますが、今残っております十九億四千万円、正確な数字はそうだと思います。十九億四千万円、この予備費の使用状況を見ますときに、これに対してはもうすでに大蔵省で内容を全部きめておるのだというような御発言でございましたが、そのような考えはございません。適法に支出が必要なものに対しては、これから考えていくつもりでございまして、義務的経費の中で、裁判費の問題、それから退職手当費等については、若干予備費の支出が予測をせられるわけでありますが、その大半においてはこれがまだ使用を決定しておるわけではございませんので、これが災害に対して必要であれば支出をすることはもとよりでございます。先ほど申し上げたとおり、各省既定経典、防衛庁の既定経費等でまかなっているわけでありまして、もう二月も半ばでありますので、二月、三月、今年度の見通しを立てますと、一般会計予備費三十七年度分で政府が支出をしなければならない降雪に関連する経費は、おおむねまかなっていけるのじゃないかというような考え方で見通しを立てているわけであります。先ほど申し上げたとおり、特別交付税及び交付税の繰り上げ支給、その他万全の措置をとっております。特に特別交付税については、現在三百億円の未交付分がございますし、今年度は災害も非常に少なく、豪雪府県に対する処置は十分可能であるという建前をとっておるわけであります。だがしかし、来年度の予備費は三百億あるのだから、予備費は今年度第三次の補正考え予備費を組んでおけばいいじゃないかということでありますが、これは予測をせられるというような事態予備費を組むということは、財政法上の問題もございますし、予算編成後に起きた事由に基づいた、いわゆる適確な支出ということが明らかにならなければ、補正予算が提出できないという原則でありますので、現在残っておる予備費でおおむねまかなえるという考えに立っておる現在としては、第三次の予備費の計上を主とした補正予算を提出しなくても済むのではないかという以外、申し上げられないのであります。
  16. 森八三一

    ○森八三一君 時間がございませんので、これ以上申し上げませんが、予備費残額十九億は、これはこの資料が間違っておるということであればそれはけっこうです。けっこうですが、指定する経費等に使用される予定が立っておる、こういうふうに明確に書いておるのです。そうすると、今大臣のお答えと、ちょうだいいたしておる資料と食い違っておる。しかし、予定が立っておると、こう書いてあるので、事実残額はないと理解せざるを得ない。だから、そういうことを申し上げるのです。  それから、必ずしも私ここですぐ御回答をちょうだいしようとは思いませんが、とにもかくにも激甚災害に対する財政援助等に関する法律発動されることは予測してよいと思うのです。そういう御意思と伺っておる。そういたしますというと、三十八年度の予算にいたしましても、必ずしも私は問題がないわけではないと思うのです。ですから、こだわる必要はないので、国会の開会中に、打つべき手はちゃんと打って、法律裏づけをしていただきまして、ほんとう関係者が安心をしてここに取り組んでいける裏づけをしっかりやっていただきたいという希望を申し上げておきます。  それから、時間がございませんので、最後にお伺いいたしたいのですが、この災害は、今回の豪雪ということはまれに見た事件でありますが、年々歳々、集中豪雨だとか、あるいは台風災害がひっきりなしに来ておるというのが現状なんです。いつも災害が起きますると、その災害のあとを追いかけて、その復興のために貴重な国費を使っておる。これはやむを得ないことでございますので、それをとやかく申すのではございませんけれども、もう少し前向きにこういう災害というものを根本的に排除していくというような配慮がとられてしかるべきではないか。そのためにいろいろ考えていらっしゃると思います。私はかってこの委員会におきましてもお尋ねをいたしたことがあります。原子力等につきましても、平和利用ということが盛んに言われております。だから、この科学の進歩というものを利用いたしますれば、集中豪雨だとか、台風だとか、そういうものを排除し得るようなことに持っていけるのではないか。ところが、積極的にそういう問題にちっとも取り組んでいらっしゃらないことを非常に残念に思う。これはむずかしいことですから、一ぺんに解決される問題でばございませんけれども、わが国のように年々歳々災害を受けざるを得ないという宿命的な地位における国といたしましては、そういう問題に取り組んでいくべきではないかということを申し上げたんですが、その当時中曽根科学技術庁長官は、非常に長時間大演説の答弁をなさったことがあります。アメリカではドライアイスを台風の目に打ち込んで、これを分散せしめておるというようなお話からずっと始まって、かなりうんちくを傾けての御答弁がありました。そういうことに将来は取り組んでいきたいという趣旨でお答えが結ばれているのであります。その後そういうことが具体的にとられてくることを期待しておったのでありますが、予算的にも一向それが出ておらぬ。これは非常に残念に思うんですが、今後総理、一体こういう問題とどういうふうに取り組んでいかれるおつもりでございますか。私は日本の国といたしましては、なけなしの財政のことでございますから、すぐとは申しませんが、これは国際的にも私は条約を作る等の必要が起きてくると思うんです。そういう問題にこの時点で取り組んでいく芽を出していくということが、非常に必要なように考えるのでございますが、いかがでございますか。
  17. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 防災に対しては御承知のとおりでありまして、三十八年度予算の中で防災科学というものに重点を置き、防災研究所等の経費を計上いたしておるわけでございまして、豪雪を前にして、政府がこれらの問題に対して科学的な調査研究を行なうだけではなく、防災対策を根本的に立てようという考えがあることだけは御理解賜わりたいと思います。  なお、予算の上におきましても、今までは災害に対しては起きた結果を見まして、これが原形復旧だけを中心にいたしておりましたが、御承知のとおり、防災費用を非常に大きく計上するとともに、改良復旧に重点を置いて、再び災害が起こらないようなことを考えておるわけでございます。昭和二十七、八年までは、年々、年間平均千億に及ぶ災害がありましたが、その後の防災対策及び改良復旧、いわゆる原形復旧に重点を置かない長期的な公共投資等の方法をとりましたために、年々災害が減っておるということは、公共施設に対する国の施策が前向きであるということによるわけでございます。しかし、雪の問題に対しては、今までいろいろな、風も波もそれから霜もひょうも災害でありましたが、雪だけは全国三分の二に降るということで、多少雪に対する考え方法律上の規定も不備であったと思いますが、せっかく今災害対策本部でもこれらの問題に対する法制上の態度、またそれから政府としてあらゆる財政法規の上における雪というものに対して新しい視野、新しい立場に立ってひとつ取り組んでおるのでありますので、お説のような施策は開けるものと、また開かなければならないという基本的な態度を持っております。
  18. 森八三一

    ○森八三一君 時間が参りましたので、これで私の質問を終わりますが、どうかひとつ今後の災害に取り組む態度といたしまして、起きた災害の跡始末だとかあるいは改良復旧の程度ではなくて、災害それ自体の原因を排除するということのために私は格段の努力をしていただきたいと思います。科学の発達の世の中におきまして、不可能な問題では私ないように思いますので、そういう面に、非常に困難な財政下ではありまするけれども、格別にひとつ御尽力をいただきたいということを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  19. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 森委員の質疑は終了いたしました。   —————————————
  20. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいま委員の変更がございました。米田正文君が辞任せられて、その補欠として田中清一君が選任せられました。   —————————————
  21. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に、田畑金光君の質疑に入りたいと思います。田畑金光君。
  22. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は三十七年度第二次予算補正に関連して、二、三の問題についてまずお尋ねしたいと思います。  最初防衛問題についてお尋ねいたしますが、一昨年七月池田総理渡米の際、米原子力潜水艦の日本寄港問題について池田・ケネディ会談においては、日本の国情にそぐわないから時期尚早としてたな上げされたと聞いております。しかるに今回のアメリカの要請に対し、政府は簡単に要請に応ずるという態度にきまったようでございますが、この急激な態度変更について、その事情を池田総理からまず承ります。
  23. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 原子力によって動く潜水艦の日本寄港問題につきましては、お話のとおり、先年そういうお話があったわけです。当時といたしましては、いろいろな点を考慮いたしまして検討を要する問題だとしておりました。しかしその後、原子力の平和利用というものはよほど普遍的になりまして、ことにわが国におきましても原子力を推進力とする船の建造計画も立てると、こういうふうに時代が変わって参りました。私は原子力を推進力とする艦船、これは差しつかえないものと考えるようになったのでございます。したがいまして、それによるいろいろな災害等につきまして十分考慮した上、アメリカの原子力潜水艦の寄港は差しつかえないものと考える次第でございます。また、各国に入港しております状況を見ましても、そうこれを断わらなければならぬという理由を見出せない、こう結論に達したのであります。
  24. 田畑金光

    ○田畑金光君 昨年の八月、私がこの問題で当時の藤枝防衛庁長官にお尋ねいたしましたときに、長官は、一昨年、すなわち池田総理渡米の際に話に出たということはだんだん承っておる。その節、特殊な日本の国民の感情があるので、賛成しがたいという話し合いが行なわれたと聞いておるので、今後とも十分そういうような日本の国民感情等も考えてこの問題とは取り組んで参りたい、こういう当時の藤枝長官の答弁でございましたが、国民感情等については、もう受け入れてもよろしい、そういうように総理としては判断されて、この際寄港を受けることに踏み切られたのかどうか、この辺もあわせて承りたいわけです。
  25. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ただいまお答えしたとおりでございます。日本におきましても原子力を推進力とする艦船の計画を始めるという状態になってきておるのでございます。一がいに原子力なるがゆえにこれを断わるという理由は、世界の情勢から見ても、私は適当でないと考える次第であります。
  26. 田畑金光

    ○田畑金光君 外務大臣にお尋ねしますが、今回の原子力潜水艦の日本寄港は新聞等の伝うるところによれば、日本側の招請に基づいて来てもらうのだと、こういうように書いておりますが、外国電報等によれば、そういう心づもりでこれと取り組んでおられるのか、それともアメリカ側から頼まれて、寄港さしてくれ、その頼みにこたえて、よろしいという返事をなさるのか、明らかにしていただきたい。
  27. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 一月九日あたり、先方から御相談がございましたので、安全の問題、損害の補償等の問題について満足すべき状況になれば考えましょうということでございまして、私どものほうから招請するものではなくて、先方からお話がありましたので、これに応じて、今、総理が御答弁申し上げたようなことで考えておるわけでございます。
  28. 田畑金光

    ○田畑金光君 寄港の目的は何でございますか。
  29. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先方のただいままで申しておるところでは、兵員の休養ということのようでございます。
  30. 田畑金光

    ○田畑金光君 先ほど総理の御答弁にありましたように、政府は危険防止とか損害補償措置等について明確な取りきめができれば認める、こういうようなお話でございますが、危険防止や損害賠償措置等について、今どういうような話し合いが進行中なのか。
  31. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 政府部内で、安全の問題、損害補償の問題につきまして詳しい問題点を整理いたしまして、先方に照会をいたしまして、きのう、安全の問題について一部先方から回答が来ております。それで政府部内で今検討いたしておるわけであります。損害補償の問題についての回答は未着でございます。
  32. 田畑金光

    ○田畑金光君 安全の確保措置について向こうから回答が来たというわけですが、差しつかえない限度においてどういう内容なのか御説明願いたい。
  33. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 今政府部内で話し合いを進めておりますので、ある段階が参りましたら申し上げようと思っておりますが、私もまだ詳細にわたって見ておりませんので、検討を終えた上で御発表申し上げるようにいたします。
  34. 田畑金光

    ○田畑金光君 安全の問題等については、先般原子力委員会からもアメリカ原子力潜水艦の日本寄港問題については原子力委員会とも相談してくれ、こういう申し入れが外務省にあったと聞いておりますが、原子力委員会等の意見も国内的にはお聞きになるのかどうか。
  35. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 十分お打ち合わせはいたしております。
  36. 田畑金光

    ○田畑金光君 そうしますと、原子力委員会の結論等を聞いて、それを尊重して進められる、こういう意味ですか。
  37. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) さようでございます。
  38. 田畑金光

    ○田畑金光君 危険防止であるとか、損害補償等について、まだ一般的な国際法は成立していないと私は聞いておりますが、今回この問題を処理するにあたっては、日米間に新たな協定や取りきめでも結んで、その上に立って受け入れるという御趣旨なのかどうか。
  39. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 原子力潜水艦の寄港はただいままで百回以上欧州の港や太平洋沿岸の港等に寄港いたしておりますが、すでに申し上げておりますとおり、安全上問題があったとは聞いておりません。そしてあらゆる場合に必ずしもアメリカとの間に協定を結んでおる事実はございません。わが国といたしましては、今せっかく検討中でございまして、その検討の結果を待ちまして取りきめをする必要があるかないかきめたいと思っておるわけでございます。
  40. 田畑金光

    ○田畑金光君 新たな取りきめをするかしないかも含めて今検討中というわけですが、かりに日米関係の現在のこの種問題に対する取りきめは、この日米行政協定に基づく措置だと思いますが、今、日米行政協定による、たとえば事故の起きた場合の責任の保障、これ等でこれら問題は解決できるのかどうか。
  41. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 現行の行政協定の中で始末がつくものか、新たな取りきめが要るかという問題は、先方の回答を受けまして当方で検討いたしまして、その要否をきめたいと思っております。
  42. 田畑金光

    ○田畑金光君 それは結論を急がるるつもりなのかどうか。その結論を待って明確な危険防止あるいは安全について、あるいは損害補償について十分な措置が講ぜられるまでは向こうには寄港については返答しないというのかどうか。
  43. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 満足すべき状況にまで検討しなければならないと思っております。
  44. 田畑金光

    ○田畑金光君 日本政府としては、それらの問題について明確な結論が出なければ認めない、こういうことですね。
  45. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) さような心組みでおります。
  46. 田畑金光

    ○田畑金光君 政府は、今回の原子力潜水艦寄港については核兵器でないから事前協議の必要はない、むしろ慣例上日本政府に事前に相談があったことで十分これは面子が保たれたというような態度でおられるわけです。最近の政府態度がこのように急に変わってきたということは、私たちとして非常に不安な感じを禁じ得ません。二年前には池田総理は断わっておられるわけです。キューバ危機を乗り切ったあとのケネディ大統領の自信、西側陣営も日本も含めてみんな一緒におれの方向についてこい、こういう態度がいろいろな面に強く出ているような印象をわれわれは持つわけです。わが国に対してはソ連に対する油送管の禁輸、日中貿易に対する牽制がなされた。ヨーロッパにおいては、御承知のように、ケネディ大統領とドゴールとの政策上の衝突が出ているわけです。私は日本政府の最近におけるアメリカに追随的な態度を見ておりますと、原子力潜水艦の寄港はやがてポラリス潜水艦についても認めるという態度になっていくんじゃないか、こういう心配を持つわけですが、池田総理のひとつ見解を承っておきます。
  47. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ポラリス潜水艦の寄港を認めないということはたびたび申し上げておるところでございます。そしてノーテラス型のものを入れるということは、先ほど答えたとおりでありまして、事柄が違ってきておるのであります。私はその点を一緒に考えられるということは、杞憂といいますか、取り越し苦労ではないかと思います。
  48. 田畑金光

    ○田畑金光君 杞憂であり、取り越し苦労であるかもしれませんが、二伸前には原子力潜水艦の寄港も国民感情その他を考慮して認めない、こういう方針に出られた政府が、今日はまるきり何でもないような気持でこれを受け入れられる。私はまた二年後の情勢の変化に応じてはアメリカの核兵器の持ち込み、あるいはまた、今度はポラリス潜水艦の日本寄港の問題等についても、日米安保条約あるいは行政協定の建前から見て協議事項ではあるが、やがてはこれを受け入れる情勢というような問題が考えられないとも保証できぬ。これは将来にわたって今の確信ある発言は大丈夫だというお話であるのかどうか、池田総理、重ねて御答弁をお願いします。
  49. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 重ね重ね答弁したとおりでございます。ことに原子力に対する考え方は変わってきておるでしょう。平和利用というものがよほど行き渡っておる。昨年一号炉も発火いたしましたし、また、最初から言っておりますように、原子力を推進力とするような艦船の建造計画も日本で立てられ始めた。こういう状態のときに、核兵器というものはこれは絶対に持ちません、原子力を利用しての艦船というものについていつまでも古い考え方でおったんでは、日本人の何といいますか、進歩的な考え方として私はとるべきではない、進んでこういうものは啓発する必要があるという気持を持っております。しかし、それとは反対に核兵器というものについては、これはもう根本が違うのでありますから、その点の誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  50. 田畑金光

    ○田畑金光君 私はそこでもう一つ総理の所見を承りたいわけでありますが、今回カナダで起きた核武装問題に端を発した政変というものは、われわれにとって非常な注目すべき問題だと思います。従来政府は、政策として自衛隊は核武装しない、核兵器は持ち込まないという態度をとっております。これに対しわれわれは、これを米国との取りきめで何らかの機会に、明文化する必要がありはせぬか、こういうことをしばしば申し上げてきましたが、政府は日米の協力関係は相互信頼の信義の上に立っているから、核兵器を持ち込まないという日本の立場は当然米国は理解しておるものと信ずる、こういう態度でこられたわけです。カナダは御承知のように、西欧諸国の有力な一員であり、NATOの一員であり、また、米国とは相互防衛協定を結び、あたかも日本と同じ立場に立っておる一つの国です。ジーフェンベーカー首相は軍縮委員会において東西の歩み寄りをはかり、軍縮、核実験停止と国際政局の場においては平和的な努力を続けた人であります。ところが、今回明るみに出たように、一年以上の間秘密の軍事交渉が持たれて、カナダ国内にある米国提供のボマーク及びジェット迎撃隊の核武装化を認めるように、アメリカが強く圧力を加えたというのも事実のようであります。一年近くも秘密軍事交渉が持たれたけれども、これが話がまとまらない。議会で問題となって、御承知のように、内閣がこの問題を中心についに不信任を食い、解散する、こういうことになったわけです。私は同じようなことが将来日本にも起きないとも限らぬ、こういうことを心配するわけです。今の池田総理の答弁が、将来にわたってそうであるとするならば、この際私は、米国とは何らかの機会に核兵器の持ち込みあるいは日本の核武装せぬという取りきめ等は結ぶべきだ、こう考えますが、池田総理の所見を承っておきます。
  51. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) カナダはNATOの一員であり、そしてNATO部内における核兵器を持つ、持たないにつきましては、いろいろ各国によって違っております。持ちたいというところを持たさないといったり、いろいろな事例があります。しかし、日本とアメリカとの関係は、もう核兵器が事前協議で、日本の意見を聞き尊重するということになっておるから、取りきめされておる。したがって、先般参りました国防次長のギルパトリック、日本には核兵器を持ち込まないと向こうは言っておる。しかも事前協議がはっきりしているじゃないか、私はこれで十分だと思います。
  52. 田畑金光

    ○田畑金光君 先ほど申し上げましたカナダのこの政局の動きについて、池田総理はどのように見ておられますか。
  53. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) カナダは一昨年か昨年の券の総選挙で政局不安定と申しますか、絶対多数という強力な政治体制ができていなかったことは御承知のとおりであります。しこうして、第三者のキャスチング・ボートを持っておる三十名ばかりの党派の去就によっていろいろ変わってくるのであります。そこで私は、ジーフェンベーカーといたしましては、政局の安定のために乾坤一擲の手を打とうとしているのではないかと思います。しかし、あまり外国の政情のことについての批判は、私はいたしたくないと思っております。
  54. 田畑金光

    ○田畑金光君 そこで私は同じく中共の核保有あるいは核爆発の問題についてお尋ねしますが、総理も、あるいはまた防衛庁長官も、実験は早くて一、二年、実用化は十年後であろう、こういうことを言って、いかにも楽観しておられるようであるが、これに対する何らの対策もないように国民としては見ておるわけでありますが、こういう見方をする根拠について、この際ひとつ長官から承りたい。
  55. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 中共の核実験につきましては、ただいまお話しのとおり、早くてここ一、二年のうちに行なわれるであろうという観測は有力であります。しかし、御指摘のとおり、よしんば最初の核実験が行なわれましても、有効な核兵器に整備されるまでは、アメリカ、ソ連の実績から見ましても十年はかかるであろうという観測の上に立っておるのであります。したがって、防衛庁といたしましては、今すぐに核実験をやるというような情報が伝わりましても、極東の戦略体制に格別の変化は起こるとも思わないし、また、日本の防衛政策に影響があるとも思っておりません。
  56. 田畑金光

    ○田畑金光君 中共の核爆発ということになってきますと、それだけでも、私はアジア諸国に対し、あるいは日本の国民に対する心理的な影響というものが非常に大きいのじゃなかろうか、こう見ますが、長官はどう考えられますか。
  57. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 現実に核実験が行なわれるということがいよいよ確実になりますれば、いろいろ心理的な影響もありましょう。しかし、相当後のことでございまするから、今からあわてていろいろせんさくしたり、また対策を立てる必要はないと考えておるわけであります。
  58. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は、時間も制限されておるので、詳しく申し上げることができぬことを残念に思いますが、つい最近の某総合雑誌に、ある評論家がこういうことを書いております。中国の核武装に関連して日本に及ぼす影響として、中国が核武装すれば日本自身の核武装を要求する。少くともこれを承認する声が日ましに強くなると思う。日本の核武装を誘い出すという点では、中国の核武装は、アメリカ、ソビエト、イギリス、フランスの核武装と本質的に違う意味を含んでおる。この要求が国民の間から起こり始めたら、何人もこれに抗し得ない。——こういう恐ろしい予言をしておる評論家もおるわけです。憲法調査会の答申も今年は出されようとする時期になってきております。日本も小型の戦術的核兵器を持つことは憲法違反でないというのは保守党内閣の一貫してとってきた態度であります。こういう情勢を考えましたときに、私は、中共の核保有、核爆発の問題について国防の最高責任者である池田総理が外交あるいは防衛政策の面で何ら考えていないということはこれは理解できませんが、総理のひとつ率直な御意見を承りたい。
  59. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) いろいろな憶測が中共の核爆発実験ひいては中共の核武装というものについて論じられておるようであります。私も、国内、国外におきましていろいろのそういう質問を聞きました。しかし、実際問題として、今防衛庁長官がお答えしたとおり、これは北京に実験炉を一つ持っておることは確かであります。あるいはほかに三、四カ所持っておるとうわさされております。核爆発の実験は、この一、三回、二、三回はやるでしょう。しかし、核武装ということになりますと、よほどの問題でございます。もちろん二、三人非常に優秀な学者がいるということは聞いておりますけれども、原材料その他につきましてたいへんなことを要するのであります。そこで、中共自体でそういうことができるか、あるいはソ連の力を借らなければならぬかということにつきまして、いろいろ問題があるのであります。大勢としては、やはり中共自体としては核武装はなかなかむずかしいのじゃないかという説が多いようであります。こういう点から見まして、いわゆる中共が核爆発をいつやるか、それもきまらぬし、しかも爆発をやったからといって核武装には相当の年月を要する。しかも、原材料というものが中共でどうかという問題がある。いたずらにおそれてどうこうするよりも、われわれは日米安保条約、これによって日本の安全を保障できると確信しておるのであります。いたずらにいろいろな風評によりましてどうするかああするかということは、私はそういう議論をとらない。
  60. 田畑金光

    ○田畑金光君 池田総理態度は、中共何するものぞといういわば傲岸な態度であり、万事を日米安保条約に依存するというようなことでは、国民としては不安を禁じ得ないということを申し上げているわけであります。衆議院の予算委員会でも、与党の井出さんが、中共というトラを野に放して一体軍縮は可能と思うか、また、停止協定も中共というものを考慮の中に入れなければ無意味だろう、国連総会で中共の加入を重要事項として指定することだけにきゅうきゅうとしているだけで、いつまでもそんな態度が許されるだろうかという趣旨の質問をしておりますが、私も同感です。この際、保守党内閣も、中共政策についてはもっと前向きで、独自の立場に立って、いろいろ今後予想される諸情勢にも対応をして、外交的な面における措置等も具体的に進めるべき段階にきていやせぬか。万事日米安保条約に依存する、それで大丈夫だ、こういうことは日本の平和と安全を維持する責任のある内閣としてとるべき措置でないと思いますが、総理の見解を承りたい。
  61. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 事柄を、国防の問題と一般外交の基本方針の問題と事柄を別に考えなければならない。今、核兵器の問題並びに核武装の問題についてお答えしたのであります。しからば、中共が持たなければソ連が幾つ持っても大丈夫、中共が持ったらたいへんだ、こうお考えになることはいかがと思うのであります。したがって、核武装、核爆発実験についての質問に対しては、そういうふうにお答えしているのであります。ただ、問題は、ソ連並びに中共との外交関係につきましては、たびたび申し上げておりますように、善隣友好の関係で進みたい、これが根本であります。ただ、問題は、日本としては台湾政府と条約を結んでいる関係上、しかもまた片一方では本土にああいう膨大な政権があること等から考え、これは国際的に重要問題として各国がそれの解決をはかるということが一番策を得たものである、こう考えて国連でやっているのであります。核爆発の問題と外交の問題とは別に考えるべき筋合いの問題と考えます。
  62. 田畑金光

    ○田畑金光君 時間がありませんので、深く追及することができないのは残念でございますが、防衛庁長官に。一月十九日の日米安保協議会のあと新聞記者に発表されておりますが、今後のわが国の防衛は自主的な防衛を進めていく。自主的防衛というのはどういうことですか。
  63. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 御承知のとおり、アメリカの対日軍事援助費はだんだん減少して参りまして、さきのケネディ予算教書によりましても、前年度に比しまして、これは世界全体でございますが、三億減になっております。まだその内容がはっきりいたしませんが、こういう情勢下におきまして、今後もアメリカから最小限度の援助は期待いたしまするが、自衛隊の装備はできるだけ国産化を推進いたしまして、自主的にまたこれを充足整備いたしたい考えでございまして、それが私どもの自主防衛の構想であります。
  64. 田畑金光

    ○田畑金光君 第二次防衛計画の中で、アメリカの援助額は毎年百八十億、計九百億を予定しておりますが、それは計画どおりアメリカは援助するというのか、それも変更するというのか、どういうことですか。
  65. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 昨年私が渡米いたしましてマクナマラ国防長官と会談いたしました際に、従来約束した援助は必ず実行する、また、将来新規のものについては従来どおりにいかないかもしれぬという話でございました。したがって、三十八年度は第三年度を迎えるわけでありますが、三十八年度分までは、これは約束済みのものが大部分でございまするから、ほとんど影響はないと思うのであります。ただ、三十九年度以降はどのような内容になってきまするか、アメリカの予算編成の推移などを見ながら検討をして参りたいと思いまするが、重大な変化がないように現在のところでは考えておるわけであります。
  66. 田畑金光

    ○田畑金光君 三十八年度まではとにかくとして、三十九年度以降はこれから話し合いがなされる。そうしますと、たとえば三十九年度以降予算化される予定のバッジあるいはホーク、ナイキ等についてはこれからどの程度の援助額かわからぬということになれば、第二次防衛計画そのものを再検討しなければならぬ時期に少なくとも三十九年度は遭遇すると思うのですが、どうですか。
  67. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) ナイキ、ホーク、それからバッジはまだきまりませんが、ナイキとホークの問題は目下アメリカと交渉中でございまして、対日軍事援助と申しましても、装備一つ一つについて違うのでございます、経費の分担が。したがって、今後交渉して参らぬというとどういう影響があるかはっきりいたさぬのであります。
  68. 田畑金光

    ○田畑金光君 私の聞いている趣旨は、であるからして、三十九年度以降については第二次防衛計画については再検討しなくちゃならぬ場合も起こり得る、こういうことになるわけですね。
  69. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 三十九年度以降の対日軍事援助の具体的の内容がわかりませんので、三十九年度以降の第二的整備計画を変更するかどうか、ただいま申し上げかねる段階でございます。
  70. 田畑金光

    ○田畑金光君 おかしいじゃありませんか。三十九年度以降についてはどうなるか、アメリカとこれから話をするのだから、したがって三十九年度以降の第二次計画についても再検討は少なくともしなければならぬ段階にくると思うのすがどうですかと聞いておるのです。
  71. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 具体的な内容がわかり次第検討いたします。
  72. 田畑金光

    ○田畑金光君 時間がないので、この程度でこれはやめまして、次に沖繩問題について二、三お尋ねしたいと思うのです。  沖繩援助に対する日本政府財政支出が年々ふえてきていることはけっこうですが、予算の執行状況を見ると、ことしの予算が七〇%の七億一千二百万まだ未消化の状況です。これはどういう理由でしょうか。
  73. 徳安實藏

    政府委員徳安実蔵君) お答えいたします。  三十六年度までは、日本の援助は、教員を派遣いたしますとか、あるいは技術者を派遣いたしますとか、お医者さんを派遣する等の処置をいたしておるわけであります。またものによりまして物を贈与する援助をいたしております。三十七年度からは、そういう援助をいたしまする一面におきまして、経済援助金を画こうの琉球政府予算の中に組み入れまして、向こうで事業をやります面にも援助するということになります。これは初めての試みでございましたので、施政権を持っておりまするアメリカ側とも合意に達する必要がありまするために、昨年の六月四日からアメリカ側にも案を提示いたしまして協議をいたしたわけでございますが、たいへんこの間にひまがとれまして、ようやく十二月の七日に日本とアメリカ側と琉球政府との三者の間に意見の一致を見ました。自来、会計検査のことでございますとか、あるいは事業を推進いたします諸手続の問題等につきまして鋭意話し合いを続けまして、今日ではようやく軌道に乗ったわけであります。かように長い時間がかかりましたために、七億一千余万円の三十七年度の予算の施行が延びておるわけでございますが、しかし、この覚書は本年限りではございますけれども、明年度に対しましてもあまり不都合の発見せない限り継続して更新しながらその契約を守っていくという了解ができておりますので、来年度からはそうたくさんの繰り延べばなかろうと考えております。ただ、御承知のように、日本のは会計年度が四月一日でございままするし、向こうは七月一日が会計年度でありますために、三月間のここに、三月間のここにズレがございます。今後におきましても、このズレを何とかやはり私のほうで繰り越し明許を与えなければならぬかと考えておりますが、以上のような関係で施行がおくれておりますことはまことに遺憾ではございましたが、今後はさようなことはないと思いますので、御了承いただきたいと思います。
  74. 田畑金光

    ○田畑金光君 池田総理にお尋ねしますが、今お話しのように、覚書交渉でも昨年の六月から十二月までかかっておるわけです。これはすなわち日本政府による沖繩の援助が米国の沖繩に対する施政権と抵触するというそういう考え方から高等弁務官が異議を差しはさんでその承認がおくれ、今日までこのように延びておるわけですね。施政権返還、自主権拡大について、昨年のケネディの沖繩新政策発表以来、何か前進するものがあるかと思ったら、この体たらくです。池田総理の御見解を承りたい。
  75. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) なかなかこういう問題は一朝にいくものではございません。高い政治的立場に立ちまして両方理解を深めていくことが必要でございます。私は、ずっと長い目で見まして、昨年のケネディ大統領の発言のごとく、日本とアメリカとは沖繩に対しまして共同していろんな施設をしようという機運が相当わいてきつつある。それがまた実行に移され、非常に喜ばしいことと思います。ただ、こういう機運がわいたからといって、施政権の返還につきましてわれわれはほっておくという意味ではございません。施政権返還を前提にいたしまして日・米・沖繩、この三者が相談し合って、そうして沖繩の方々の民生の安定向上をはかっていく、これが一番大事な今の仕事であると考えております。
  76. 田畑金光

    ○田畑金光君 沖繩で今日重大な問題となっておりまする講和発効前の補償問題については、どのような経過をたどり、どのような見通しなのか。
  77. 徳安實藏

    政府委員徳安実蔵君) この補償につきましては、昭和三十三年三月に沖繩に補償獲得期成会が結成されまして、現地におきまして米側との交渉が続けられております。三十五年の十一月に至りまして、昭和二十五年七日一日から講和発効の昭和二十七年四月二十七日までの土地に関する支払いを行なう旨が高等弁務官から発表されました。その金額は明示はされておりませんが、おおよそ五百十万二千ドル程度ではないかと言われておりまして、今日までに百十三万六千ドルが支払われております。次いで昭和三十六年四月に米・琉合同委員会が設けられまして、その補償問題を審議したわけでありますが、その結果、三十七年三月に同委員会から補償の内容や金額を付した報告書が高等弁務官の手元に答申されまして、高等弁務官は、昨年十月にこの報告書に署名して本国政府に送達いたしております。この米琉合同委員会が答申いたしました損失額は二千百七十八万四千ドルでございまして、そのうち人身侵害に対するものは八十三万一千ドルでございます。以上のような経過でございます。
  78. 田畑金光

    ○田畑金光君 その経過は私も承知しておりますが、アメリカ議会における取り扱いがどのように進んでいるかということをお尋ねしているわです。
  79. 徳安實藏

    政府委員徳安実蔵君) 以上が現地における状況でございますが、先ほど申し上げましたように、昨年の十月に報告書が署名されまして米本国政府に送達されておりますので、その後におきまして井上上院議員が同様な権限法案を提出されるべく、今努力されておるそうでございまして、その後における米議会側の関係につきましては、まだ正確な情報は入手いたしておりません。
  80. 田畑金光

    ○田畑金光君 こういう問題については、日本政府としても当然授助し、協力すべきだと思いますが、外務大臣はどのようにこういうような問題については取り扱いをなされようとするお気持ですか。
  81. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) すでに申し上げておりますとおり、今、日米間におきまして、東京に大きな問題について協議会を開こう、現地には日米琉技術協議会を開くということで、今そのメンバー等の選考に当たっておる段階でございまして、御指摘のような問題を含めましてこういう機構を通じて相互の理解と、行政機能の点について円滑に進めて参るつもりでございます。
  82. 田畑金光

    ○田畑金光君 いや、私の申し上げているのは、すでに高等弁務官も賛成して本国政府に伝達しているわけです。これが本国政府並びに本国議会の問題になっているわけで、そういう段階において日本外務省は側面的な援助、あるいはこの問題を正規に取り上げて援助すべきだと思うが、どういう方針なのか。
  83. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私どもが接触を保っておりますのは、米国政府並びにその出先でございまして、そういう外交チャンネルにつきましては、終始緊張した態度をもって臨みまして、今の大きな政策が機敏に展開できるようにやって参らなければなりませんし、すでにそういう意味において緊密な連絡を常時とっているわけでございます。
  84. 田畑金光

    ○田畑金光君 時間がきたようでありますので、その他多くの問題がありますが、やむを得ません。  そこで最後に、これは通産大臣から経過と内容を御報告願いたい。並びに総理の見解を承りたいわけですが、本日の新聞によりますと、またまた米国がわが国の綿製品輸出について非常な規制を加えてきておるようです。昨年も御承知のように賦課金問題を中心として日米間の大きな経済外交の焦点になったのがこの問題でございます。再びまた米国はわが国の綿製品輸出について大きな制約を加える態度に出てきているようです。まことに遺憾なことだといわなければなりません。これについて通産大臣から内容と経過の御報告を願うとともに、今後の見通しをお伺いしたいと思っております。  同時に私は、池田総理にお尋ねしたいことは、IMFの八条国移行の問題もすでに勧告をされ、現実にわが国は来年の夏以降に金の面からの自由化を進めなければならない。加えて、ガット十一条に基づく物の面からの自由化も進めなければならなくなってきた。こういう段階において、あなたの非常に大きな野望であり構想である自由化、わが国の経済の拡大、大いにこれはけっこうでございますが、そう主張している政府の方針に、一番大事な相手国であるアメリカにおいては、このような、毎年同じような輸入制限をやってきているわけです。これはまことにわれわれといたしましては残念なことであって、こういう問題について池田総理はどういう方針で解決をされようとする気持があるのか、時間があれば詳しくお尋ねしたいわけでございますが、質問の時間もきましたので、残念でございますが、ひとつこの際、明確な池田総理考え方も承っておきたい。最初にひとつ通産大臣の報告を願います。
  85. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えをいたします。御承知のように本年の一月一日から日米間におきまして国際綿製品長期取りきめが発効いたしまして、期間は五カ年でございます。その発効と同時に、今回米側が長期取りきめの第三条セーフガード条項におきまして、市場撹乱のおそれがあるとして三十六品目、一次製品十七品目、二次製品十九品目について輸出規制を要求して参りました。米側が市場撹乱の理由としては、非常に日本の製品が安いとか、あるいはまた、御承知のように非常に昨年は輸出が増加している。それがアメリカの国内産業に非常な打撃を与えるということを理由にいたしております。これに対しまして日本は四品目、すなわち、コーマギンガム、カードギンガム、別珍、ピロケース等につきまして、これらは米国の生産額の一〇%以上に当たるものであるから、あるいはアメリカの言われるように市場撹乱のおそれがあるということになるかもしれないが、その他については、それほど大きな影響があるはずはないじゃないかというような意味合いにおきまして、そのアメリカの要求の撤回を要請した次第であります。この要請に対しまして、米国におきましては、今月の初めにこの回答をする予定でございましたが、御承知のように、昨日その回答を寄せて参ったわけであります。これはすでに新聞紙上においてももうおわかりのことと思いますが、大体六二年度の日米協定のワクは、一次製品は一億二千五百五十万平方ヤードでございました。二次製品は三千八百八万一千ドルでございます。これに対しまして、実績は一次製品が一億三千八百九十五万六千平方ヤード、二次製品におきまして二千九百四万ドルということになっておりますが、これに対して回答を寄せて参りました分は、一次製品について一億二千八十万五千平方ヤード、二次製品については二千九百八十七万二千ドルというわけであります。これは相当去年のワクと比較いたしまして、一次製品につきましてもこれは相当の減少となっておりますが、特に二次製品は二割方下回っております。特にまたそのほかにおきまして、別珍を特に量を減らしております。それからそれぞれいろいろの品目があるのでありますが、そのワクをラウンドでたくさんにして参りますというと、そのワクに従って制限を受けるということになります。それをワクを少なくしておけば彼此融通ができますから便利な点もあるのですが、ワクの取り方もいささかこまかくしてきておるというような不利もございます。こういうような状況でございますので、これは私、通産省といたしましては、昨日来外務省とも打ち合わせをいたしまして対策についていろいろ考究いたしました結果、御承知のように十九日にはガットの理事会がございます。そこで、青木大使をしてこういうことでは非常に困るということを一応述べさせますと同時に、こういうような向こうの提案がありましたけれども、われわれとしては今後も根気よくやはりアメリカに対して要求を撤回し、日本の言い分を聞いてもらうように協力方を要請をいたす所存であります。大体期限は、ほんとうはこの協定は、こういうような向こうから話が出ました場合には、三月一日でもって期限が切れるということになっておりますが、これについてはアメリカでも三月一日以降においても交渉を継続するという意図を明らかにいたしておるようなわけであります。これについてまあ総理からお話があると思いますが、私らといたしましては、日米間の関係は、やはりいろいろの意味において非常に友好的に処理をいたしていくことが大局的に正しい、こういう観点に立っておるのでございまして、しかもこれは、いわゆる貿易でございますから、一つの商品取引というか、商売ということになります。そうすればアメリカにはアメリカの事情があり、日本には日本の事情があるのでありますから、商売の問題は、私はこれは両方に事情があるから、それを買手、売手の関係においてお互いに意見が違ってくるのは、これは私は原則的にやむを得ないと思う。しかし、大きくそれを変えていくということになりますというと、これは商売の関係という面から見てもやはり非常にわれわれとしては納得いたしかねる面があるということで、日本側の主張を強く向こうに要望をいたしておるようなわけでありまして、今後もひとつ根気よく、あくまでも日本の主張を通してもらいたいということを、根強く主張を続けて参りたい、かように考えておる次第であります。
  86. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 通産大臣の答えで足りていると思いますが、根本的に申しますと、やはり向こうの態度をとやこうこう前に、自分の国の態度考えなければならない。したがいまして、私が自由化を唱えておるのは、日本が向こうの態度を非難する前に、まず自分を顧みてみろ。自分は自由化せずに輸入を大幅に制限しておる、これじゃ相手にならないというのが世界の常識じゃないか。そこで八八%まで自由化いたしました。これをきっかけにイギリスとも通商航海条約が結ばれ、ガット三十五条を撤回する。また最近ベネルックスあるいは続いてフランスも撤回する気運に向かいつつあります。こういう状態でございます。アメリカ、カナダは三十五条を援用しておりません。自由に入る。だから、これを、国の事情によりまして、ある程度日本と話し合いで、日本が自主規制するのもやむを得ないかもしれない。しかし、向こうに言わせれば、日本なんかアメリカの自動車なんか入れていないじゃないか、こういうこともあるのでございます。これはお互いに有無相通じ、そうしてお互いに相手の立場を了解しながら貿易自由化を広げていく、だんだんとそういうふうにやっていかなければならぬものと思います。したがいまして、お話の昨年の綿花に対する輸出補助金があるから綿織物の輸入に対して賦課金をかけるというのも新聞で取り上げました。これもやはり話し合いの上で撤回いたしました。アメリカと日本との貿易は、日本の輸出は年々伸びておる。昨年はおととしに比べて三割近く伸びておると思います。こういうだんだん全体として貿易をふやしていくという線で話し合い、お互いの理解の上に貿易を進めていこうというのが私の従来からの主張であるのであります。
  87. 田畑金光

    ○田畑金光君 一つ希望だけ。
  88. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 希望だけですか。
  89. 田畑金光

    ○田畑金光君 ええ。まあ総理の言われることもよくわかりますが、ただ私最後にお願いしたいことは、日米関係の貿易の推移は、確かにお話しのように昨年わが国の輸出も伸びておりますが、しかし、全体としてはまだ日本は入超の国であるわけです。ことにまた、米国の綿花は綿花総輸出量の二二%を日本が輸入しておるというのが、たとえばこれは一九六〇年の実績を見ますと、そうなっておるわけです。しかもまた、日本の米国に対する綿花製品の輸出というものが、米国の国内綿製品生産のわずか一%前後にすぎない、こういうことを考えるならば、私は池田総理の言われることも一理はあるが、しかし、日米関係の貿易じりを見ると、入超のわが国であり、また国内の経済力その他から見ても、今回のような綿製品に対する大きな規制というものは納得がいかぬわけです。これについてはさらに私は政府で善処されることを強く要望して、私の質問を終わることにいたします。
  90. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 田畑君の質疑は終了いたしました。これにて休憩し、午後一時より正確に再開いたします。    午前十一時五十七分休憩    ————・————    午後一時十二分開会
  91. 木内四郎

    委員長木内四郎君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。山本伊三郎君。
  92. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 経済企画庁長官は……。
  93. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 今すぐ参ります。
  94. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、まず最初に、第二次補正予算関係して、産投会計繰り入れの問題について、総理並びに大蔵大臣にお伺いいたしたいと思います。  まず、大蔵大臣にお伺いいたしますが、昭和三十七年度の第二次補正予算以後における新規財源は幾らくらいの予定でございますか。
  95. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 千三百六十億だと思います。
  96. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それの積算基礎、計算基礎を伺います。
  97. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 技術的な面については政府委員をして答弁せしめますが、三十七年度の税の徴収実積を見まして、十分可能な見積もりをいたしたわけであります。
  98. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 財政法第二十八条による報告はあるのですが、今言われたものでなくて、もう少し計算の基礎をはっきりと、あなたでなくてもいいから……。
  99. 松井直行

    説明員(松井直行君) 第一次補正後の一般会計租税収入は二兆九百六十三億、それに今度の第二次補正予算、これが八百二十一億でございますので、当初に対しまして千三百六十二億——今、大蔵大臣からお答え申したとおりでございます。第二次補正予算の八百二十一億の内訳は、源泉徴収で二百七十億、申告所得税で二百一億、法人税で三百五十億、こう相なっておりますが、算出の根基は、今までの税収の実績並びに今後の推移につきまして、生産、物価、賃金、雇用その他、それぞれ当初予算に組みましたときと比較いたしまして、どのくらい伸びているかというのを積算の根基にいたしております。たとえば課税年度ベース、これは特に法人税について重要でありますが、生産、物価の相乗、それから所得率を掛けました総合によりますと、第一次補正予算のときには、前年度に対して一〇四・五、第二次補正のときには一〇八・七、こういう工合にいたしまして、所得税、法人税の伸びの根兼を経済指標の伸びに求めまして積算いたしたものでございます。
  100. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、かりに第三次補正をやらないとすれば、今言われた千三百六十三億というものは、来年度の、これは公債償還の費用に半分やられるといたしましても、それだけのものはある、こういうことですか。
  101. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 補正予算を組まなければ、剰余財源になるわけでございますが、第一次、第二次補正予算で歳出歳入に立っておりますので、三十七年度予算第一次、第三次を通じて歳出として使用されるわけであります。
  102. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、これだけの新規財源があれば、あえて第三次補正雪害対策費として組んでもいけるのじゃないですか。
  103. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ただいま申し上げました租税の自然増収千三百六十三億につきましては、もうすでに歳出の内訳をきめまして、第一次補正としては、すでにもう国会の議決を得て支出いたしておりますし、第二次補正に対しては、ただいま御審議を願っておりますので、これが国会できめられた歳出に充てられておるわけであります。
  104. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ちょっとピントが合わぬのですが、来年度のいわゆる一般財源に組み入れられる財源が幾らあるか。
  105. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 来年度というのは、すなわち、三十八年度につきましては、現在提出をいたしております三十八年度総予算案の歳出に計上せられておる金額を歳入として定めておるわけであります。三十七年度の補正予算の財源は、現在御審議を願っておりますから、その余になお自然増収が生じたる場合は、三十八年度に使用されるのではなく、三十九年度所要財源として繰り入れられるわけでございます。
  106. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その額は幾らですか。
  107. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 現在のところ、千三百六十三億でありまして、まあ第二次補正予算までの財源は、確定的に国会の御審議を求めておるわけでありまして、残余のものにつきましては、全然使い切ってしまうということではありませんが、三十六年度、三十五年度のような、自然増収は大幅に見込まれないと思いますが、実際上、幾ばくかの租税収入は三十九年度に繰り越されると思います。
  108. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 僕の尋ねておるのは、三十八年度に予定しておる組み入れの決定でなくして、それ以上の新規財源があるかどうかということを実は聞いておるのです。
  109. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三十八年度は三十八年度予算で計上いたしております歳入のほか、多くを期待することはむずかしいだろうというふうに考えております。
  110. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 多くを期待できないということを言われるが、それは一体見積れないのかどうか、幾らあるか、どれくらいのものがあるかということを私は聞きたい。
  111. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 分けてお答えいたしますが、三十七度の問題は、現在提出をいたしております第二次補正予算までの財源は歳入として見込んでおるわけでございますが、残余の問題につきましては決算数字がまだ三月三十一日にならなければ締め切れないのでございますので、あとからになりますし、三十八年度のものにつきましては、三十八年度予算の歳入に見積もっておりますもののほかは、経済の見通しその他によって歳入見積もりの上から考えて、大きく自然増収を期待できないという考えに立って申し上げておるわけであります。
  112. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 押し問答になりますがね。それが今後の財政運用に大きくわれわれとしては響くということで、そういうものが大きく見積もれないけれども、大体大蔵当局は相当まあ計算しておられると思うので、その点をひとつ明らかにしていただきたいというのが私の質問の要旨なんです。
  113. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三十八度の剰余財源がどのくらい見込まれるかということは、これは三十八年度の予算等を執行いたしました結果、経済がどのように伸びていくかということによって考えられるわけでありまして、現在の状態では三十八年度の財源につきましては、三十八年度予算案の歳入として見積っておる範囲での歳入が確保できるということでありまして、残余のものに対して予測をすることはできない状態でございます。
  114. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ本論に入りますが、実は過去二回産投会計への繰り入れがされておるのですね、三十一年と三十五年とね。その実情を見ると、本年の場合は繰り越し財源が非常に窮屈になってくるという見通しの際に、三百五十億という産投会計への繰り入れというものはわれわれとしては無理である、こういう考え方で質問しておるのですが、その点は前の繰り入れをしたときの財政状態と本年度の状態とを比較してどう考えられておるか。
  115. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 産投会計へ繰り入れましたものにつきましての財政法上の根拠は、二十九条の改正を行なっておりますので適法であるということは御承知のとおりでございます。なお三百五十億のうち三十九年度に使われるものとして予定をせらるるということで、少し多過ぎるんじゃないかという御議論であろうと思いますが、御承知のとおり産投会計の原資はもう使い切っておりますし、自由化、八条国への移行、関税一括引き下げ、そのような事態対処して、より産投会計の資金が必要になるであろうということも容易にうなずけるわけでございまして、弾力的な態度でこれら産業対策対処していかなければならないという政府施策上当然必要と認めて、産投会計への繰り入れをお願いしておるわけであります。
  116. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 お尋ねしないことまで答弁されたんですが、この前の国会で、なるほど財政法上二十九条の改正によって違法性かどうかという疑義は一応解かれたということを言われておるんですが、法律上の違法性という点は一応別としても、そのときの財政運用において妥当であるか、妥当でないかということは別問題だと思う。今言われましたように、産投会計は非常に資金が枯渇したということを言われておりますが、これは昨年の国会で問題になりましたがガリオア・エロアの対米債務の問題がやはり影響しておるんじゃないかと思う。そこで私はそういう抽象的な質問ではなくして、しからば産投会計の十二月における試算表と申しますか、バランス・シートをちょっと知らせていただきたい。
  117. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 産投の十二月現在における貸借対照表につきましては、事務当局が持っておれば、直ちに申し上げますが、もし今間に合わないようでありましたら、後刻早急に取り調べて御報告申し上げます。
  118. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 十二月末の数字が今手元にございませんので、三十七年度末の予定額でよろしゅうございましょうか。
  119. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはだめだ。
  120. 石野信一

    政府委員(石野信一君) それでは後ほど……。三十七年度末の予定額でございますが、どうしても十二月末でございましたら、あとで調製をいたしまして……。こまかいものですから、一々読み上げてもいかがかと思いますので、何か要点だけをお聞きいただけば……。
  121. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 三十七年度末というのは、どういうことですか。
  122. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 三月末の見込みでございます。
  123. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ちょっと言って下さい。出資金から。
  124. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 出資金ですか——五千七自二十六億。
  125. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 おもだったもの、こちらから言いますからね、農林漁業は。
  126. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 出資金ですか——五百六十六億。
  127. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それから住宅金融公庫は。
  128. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 住宅金融公庫は三百三十五億。
  129. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それから日本住宅公団。
  130. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 住宅公団は四百三十七億。
  131. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それから輸出入銀行。
  132. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 九百八十三億。
  133. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それから開発銀行。
  134. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 二千三百三十九億。
  135. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それで貸付金のほうをひとつ。
  136. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 貸付金の合計が五百十五億。
  137. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 開発銀行は。
  138. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 貸付金は開発銀行が四百五億。
  139. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それから電源開発。
  140. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 九十七億。
  141. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それから預託金は。
  142. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 預託金というのは、国庫金ですか。
  143. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 バランス・シートに出ていましよう。
  144. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 国庫金が三百九十五億。
  145. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 こちらから資料を要求しておかなかったのが悪いかと思うんですが、これはもう直接第二次補正関係のある資料ですから、やはり用意をしていただいておいたほうがよかったと思うんですが、まあこれを見て、これは三十七年度末の見込額ですね、見込額が大体そういう程度でゆくと思うんですが、こういうバランス・シートを見まして、相当出資金が出ておるんです。それを大蔵大臣はもうほとんど資金がないというこについては、この産投会計の運用上にも相当問題があるのじゃないかと思うのです。皆さん方くろうとであるから案外気づかれないのですが、この出資金については、出資金としてそのままもう回収もされずにずっと積もっていくという形になるのですね。この点はどうですか。
  146. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 産投会計の出資につきましては、政策上の要請によって、年度で御審議を得ながら出資を漸次増額いたしておるわけであります。
  147. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはわかっておるのです。漸次その増額をするのですが、年々これは累積していくのです。これは、国民の税金で実は組み入れてやられておる。そういう人のところに、三百五十億という金を、はっきりとまだその使途はわからないのに、三十七年度の財源から組み入れていこうと、こういうまあ案ですね。そこに私は問題があると思う。減税についてもいろいろ問題があります、雪害についてもいろいろ問題があるときに、三十八年度においてこれが消化されるというものではない、全部が。後年度にこれを繰り越していこうと、こういうのですね。しかも、財政運用上は三十九年度以後は非常に困ったという見通しもあるのですね。その中で、これを無理して三百五十億の産投会計の繰り入れについては、われわれとしては納得できない。経済基盤の強化とか、いろいろ政策上の要請があるといわれますけれども、もっと緊急した財政要求というものはやはり国の中にあると思う。そういう点を大蔵大臣はどう思っておられるか——というよりも、むしろ総理大臣に聞きたいと思うのです。たばこをのまれるところでございますが、せっかくですが、どうぞ御答弁を。
  148. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は、山本さんすでに御承知のとおり、財政法の許す範囲内におきましては、自然増収その他をなるべく早く使うことがいいんじゃないかという個人的考え方を持っておるわけであります。したがいまして、いろいろ国会では議論がございましたが、昭和三十二年度の予算には、今の一般会計の剰余見込み金を国会の審議によりまして産投会計へ入れたのが、私の石橋内閣の大蔵大臣の時代でございます。その後三十五年にもありましたが、私は、今の状態から申しまして、一般会計でもこれだけのものは、ことに今自由化の問題、産業基盤の強化、あるいは輸出の増進等々があるときには、やはりいつでも使い得るような措置をとっておいたほうがいい、こういう考え方を持っておるのであります。しかも、三十九年度の予算について非常にむずかしいと、こういうことがあるようでございますが、私は、根本的に、そのときの剰余金を翌翌年度の国債償還に半分充てるということについては検討すべき余地があるということを、従来から私は思っておるのであります。しこうして、今回の補正予算は、そういう意味は別といたしましても、最近の経済あるいは国際経済の状況から申して、産投会計へ繰り入れて、輸出の増進、産業基盤の強化に使い得るような措置をとることが財政上必要であると、こう考えておるのであります。
  149. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 われわれの意見と全く反対ですが、戦後日本の産業が非常に荒廃したときに政府の資金によって産業を復興し軌道に乗せるということについては、産投会計については、産業投資特別会計についてはわれわれ認めても、今日やはり皆さん方が主張する自由主義経済、やはり民間の資金によってそれはやっぱり助長していくということが私は原則だと思う。今総理は、ますますそういうものを積み立てていくのだ、投入していくのだと言われることは、一方においては利潤を追求しておるところには相当利潤がいっておるのに、なぜ税金から、政府資金によってそういうところに、経済基盤の強化という名によってそうたくさん入れなきゃならぬか。それで、雪害で困っておる向きがたくさんあるのですから。しかも、これは三十六年度に必要ないのです。三十九年度以降に相当の額を回そうというのに、その政府措置については私は納得できない。この点、どうです。
  150. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 産業投資特別会計につきましては、三十七年度の五百二十三億円に比べて、三十八年度は六百三十四億円というような大きな政府出資を行なっております。これは政策的にこのような出資が漸次年々多くなっていくという必要からくるものであることは、この予算に計上しておりますものを見てもおわかりのとおりであります。しかし、同時に、この六百三十四億円という前年度対比百億円以上に及ぶ産投融資の出資を行なっておりましても、なお産業政策その他、特に石炭や海運やその他の政策上から見ますと、これではまだ足らないじゃないかという議論も国会に多々ございますことも御承知のとおりであります。その上に、なお自由化、八条国移行その他の状況から考えましても、三十六年よりも三十七年、七年よりも八年、八年よりも九年と、ますます産投会計への出資も要求せらるる状況であることもお認めいただけると思います。  で、今、三十七年度の財源で他に必要な歳出も予定せらるるのに、なぜ三十九年度に使う産投へ入れたかということでありますが、今まで政府が国民のために、また国民の要請にこたえながら、歳出として組まなければならないものとして考えておりますものは、第一次、第二次補正予算の歳出項目に明らかにいたしておるところでありまして、残余のものに対して産投会計に繰り入れるということでございます。  で、豪雪の問題に対してはどうかと、こういうことでございますが、豪雪に対しましては、先ほどもるる申し述べておりますとおり、三十七年度の既定経費の運用及び三十七年度にまだ使い残してございます予備費の使用、及び交付税、特別交付金等によりまして、十分に配慮をいたしますという確信のもとで申し上げておりますので、あなたの御質問と政府考えが違うところはないというふうに考えております。
  151. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 違うところがあるのです。三十八年度の予算から、御存じのように四百九十七億という組み入れをやられることが、まあ予算書には出ておりますね。昨年は二百三十億。したがって、私の言いたいのは、ほかの、私じゃない、国民にわかりやすう言うてもらいたい。もしそういうものを三十九年度以降に必要ならば、三十八年度の財政状態を見て、三十九年度の予算にそういうものを盛ってもいいんじゃないか、こういう私の主張なんです。三十八年度に使うならば、私はまあこれで、反対は反対でも、また主張するところは変わりますけれども、三十八年度には使わない。三十九年度以降に使うならば、三十九年度の予算にまた新規そういう産投会計の組み入れ予算を盛られたらどうかと、こういうことです。
  152. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知のとおり、もう産投原資というものは、三十九年度を待たずして三十八年度の計画で使い切ってしまうわけでございます。でありますから、今の立場でそのまま数字をごらんになれば、三十九年度にそのまま移しかえられるわけじゃないかと。また、われわれも、今三十八年度の予算案を御審議を願っておるのでありますから、三十八年度の産投の問題につきましては御審議を願っておる予算で十分間に合いますという態度をとっておりますが、御質問の中にもありますけれども、非常にテンポの早い経済の状態考えてみますときに、また八条国への移行の時期等によって、国内産業に対する対策が可及的すみやかに繰り上げて行なわなければならないような事態になることも容易に考えられますので、今の状態においては九十三億を除くもの、三十九年度にそのまま移されるというような考えになるわけでありますが、三十八年度の必要な度合いによって使わないということではないのでございますから、過去の例を徴していただいて十分御理解賜われると存じます。
  153. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いろいろとるる説明されますが、納得はできない。そうすると、何ですか、今大蔵大臣言われましたが、もし必要に応じたら、三十八年度の需要に応じてはこれは使うという、こういうことですか。
  154. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 使うということを今申し上げることは、昭和三十八年度の予算を御審議願っておるのでございますから、そのようなことを申し上げることはいかがかと思いますが、国会の議決があれば当然使われるものであります。
  155. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その場合、ひとつ財政法でお教え願いたいのですが、その場合、九十三億のこれが一応きまればいいのですが、その他の残余については三十八年度に費消するときは国会の議決を要する、こういうことですか。
  156. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 産投会計からの出資が必要であるような法律その他が国会で議決をせられる場合には、当然取りくずしができるというふうに考えております。
  157. 石野信一

    政府委員(石野信一君) ちょっと補足して……。ただいまの資金から産投特別会計への歳入に入れられまして、産投会計の支出としてこれを使うわけでございますから、予算がまた必要になるわけでございます、
  158. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 僕は、そうすると、産投会計で一応三百五十億、三十八年度は九十三億、その残額について費消する場合には国会の議決は必要か、これだけ聞いておるのですか。
  159. 石野信一

    政府委員(石野信一君) ただいま申し上げましたように、予算として国会の議決が必要になるわけでございます。補正予算が出るわけでございます、産投会計の。
  160. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その点が、産投会計へ入れたやつを、今度またそれを費消するときには補正予算というのはどういう形に出るのですか。
  161. 石野信一

    政府委員(石野信一君) ただいまこの予算で資金に受け入れるわけでありますが、それで三十八年度で将来出資が必要だというようなことになりました場合には、産投会計でその資金から歳入に受け入れて、そして産投会計の歳出として出資を行なう、そういう意味において産業投資特別会計の補正予算が必要であり、その予算国会の議決を経て成立する、こういうことになるわけでございます。
  162. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そういう手続をとられることはわかりましたが、その場合、産投会計に一度組み入れてしまうと、これは産投会計の範囲内においての補正予算。したがって、これは幾ら国費の都合によっても、もう一般財源にはこれはかえられないということも明らかですね。
  163. 石野信一

    政府委員(石野信一君) そのとおりでございます。
  164. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 時間が進みましたので、この問題についてはこれで終わりますが、財政法二十九条を改正したのだからということを大蔵大臣さっき言われましたけれども、私は時間がないから、二十九年度以降のいろいろの経済成長の問題とかなにかを言われておりましたけれども、言いませんけれども、私は非常に国家の財政というものが行き詰まってくるという考えから、今質問したのです。大蔵大臣は心配ないのだというようなきわめて元気な答弁ですが、私はもう来年、おそらく三十八年の財政運営の上から必ずこれは出てくると思うのです。この点につきましては、われわれはこれについてはもう全く反対です。で、過去二回やっておられますけれども、法律がそういうふうに変えられたからこれはもう幾らやってもいいのだ、池田総理は、金が残ったらみなここへ入れたらいいのだという、こういう言い方はわれわれとしては納得できない。この点について、大蔵大臣、どうですか。
  165. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えをいたします。違法でなければ妥当性がなくてもよろしいなどという考えは、事財政に関しては絶対にとっておりません。違法性がないばかりではなく、いわゆる違法性というよりも適法であって、特に妥当であり、重点的な国の要請にこたえなければならないという財政法上の根本的な理念に基づいて財政処理をいたしておりますことを申し上げておきます。特に産投会計に繰り入れたものに対しても、政府は重点的な国民の要請にこたえるためということでありまして、要らないものを、妥当性のないものを繰り入れたというような考えには全然立っておりません。
  166. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これはこれで終わりますが、先ほど総理の答弁とちょっとニュアンスが違うのですがね、そんなことを追及したってしょうがないから、これでやめます。  次に、減税の問題について。今度総額五百四十億の減税予算が出て参りましたが、この所得税の減税についての内容を見ますると、税制調査会の答申とかいうものは私はきょうは触れません、もう衆議院で盛んに言われておりますから。しかし、この物価の上昇から見ると、減税効果というものが実際どう現われておるかということについて私は非常に疑問を持っておるんです。なぜ所得税についてはもっと重点的に考えられなかったかどうか、この点をひとつまず……。
  167. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 減税につきましては、政府は連年重点を置いて減税を行なっております。なお、所得税につきましては、過去において一兆円にも上る減税のうち、その七割は所得税の減税であり、特に低所得者の階層に対する減税に重点を置いて行なっておりましたことは御承知のとおりでございます。今年度から内閣に税制調査会を設けまして、これから将来の日本の税制のあり方、その他根本的な問題も含めて御検討願っておるわけでございますが、三十八年度予算編成に際しましても、三十八年度に行なわなければならない減税に対する答申を求めたわけでございまして、税制調査会が答申をした答申に対しては、政府はこれを尊重するという建前で、答申の線に沿って減税を行なったわけでございます。平年度五百四十億円程度でございます。
  168. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 尊重ということは便利な言葉ですから、こんなものは気にいたしませんが、この今回の減税案で見ますると、所得税の減税総額は平年度で三百三十億、それから配当所得の源泉徴収率の引き下げで平年度八十九億、初年度百二十五億になっておりますが、池田さんは、今株式証券は大衆化しておるということを本会議でも言われましたが、そういうことでなくして、五分位によって低所得者においてどれほどの株式所有者の層があるかということを調査されたかどうか。これは総理でなくても、企画庁長官でも、われと思わん者は答弁してもらってけっこうです。
  169. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 資産の調査を一般にさしておりませんので、五分位について株式投資がどのくらいあるかということはおそらく調査をいたしておりません。私は存じませんです。
  170. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 総理は、今株式証券が一般化しておる、したがって、配当所得源泉徴収率を税率を下げてもこれは均霑するのだというようなことを言われておるのですが、総理はどういうっもりでそういうことを言われたか。
  171. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 配当所得の減泉徴収について一〇%従来徴収しておったのを、今度五%に源泉の徴収税率を下げたのでございます。これはもともと総合所得税を納める方につきましては、一〇%源泉徴収しておりまするが、その徴収した税額は総合税額から引くのでございます。だから総合所得税を納める方については減税になりません。よろしゅうございますか。それから総合所得を納めていない方、これは源泉を徴収いたしますが、総合所得税を納めていない人は申請をすれば、それを戻してくれるわけです。払い戻す。それならば、もし私が総合所得税を納めておらずに源泉所得税を取られ、申請すればそれを戻してくれる、取ったやつを。今まで一〇%取っておったのを今度は五%取るんですから、戻す分は五%で同じことなんだ。ただ、そこへ徴収減その他が出るということは、零細階級の人が源泉で取られっぱなしになっている、そこで相当税が上がってきておる。だからそういうものは私は本筋として取るべき筋合いのものではないのではないか。私の考え方は、配当所得について所得税を源泉で取るということはいかがなものだろうか。ことに大衆化しておる株式で、申請すれば返すものを税務署でまず取ってしまう、どうでしょうか、こういうやり方は。私はそこにも本質的に問題かあると思う。農家の人が株を持っていると、配当の一割取られますよ。しかし、その農家の人は税務署に行って申請すれば返してくれるが、一応取っておくというやり方、私はこの税制については。そこで初年度だから百二十億出ておりますが、平年度だったら八十九億、これは一割取るのが五%になりますから初年度相当大きく出ている。これがほんとうの減税かどうか。とにかくしかし、税の公平化からいってこれは変えなきゃならぬということで、減税以前の問題として考えておったことなんです。大金持ちの人は、申告して所得税を納めるので、その申告によって、源泉で徴収された税は返してもらえることになる。農民や小さい月給取りの人がたまたま株を持ったら、源泉で取られたのを還付申請すれば返してもらえるが、しなければ取りっぱなしですよ。そういうところは改めなきゃならぬのじゃないかというのが私の考え方であるんだから、初年度はたくさん出ているわけです。二百四十七億のうちで百二十億、半分は初年度の減税、これは実際減税じゃなくて、取るべからざるものを、納税者が申告しないために政府の歳入になっているのがあるんだということをお考えになっていただきたい。
  172. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 専門家の立場からいろいろ配当所得税の講義をされましたが、いずれにいたしましても、減税案として八十九億は出ておる。そうすると分離課税だから、総合課税のほうにはそういうものは影響ない。そういう分離課税のかかる人については、これはいわゆる低所得階級の人だ、こういう断定でこれをお考えになるんですか。
  173. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 株式の配当というものは分離課税じゃございません。総合課税でございます。ただ、そこで問題になるのは投資信託、投資信託は半分あるいは七、八割が株で、あとはコールとか社債を持っておる。この部分については総合のしょうがない、無品名ですから。だから、その分が私は相当平年度の八十九億の減税のうちに入っておると思う、投資信託は無記名ですから。それで一〇%が五%になるから、総合しようがないから相当減税が出てくる。しかし一般の記名配当につきましては、これは総合課税の建前ですから、もちろん投資信託のほうも総合課税の建前ですが、名前がわからないから取りようがないということなんです。ただ、株式では総合課税でございますよ、建前は、だから源泉で取る取らぬによって税が違うべきものじゃない。もし違うとすれば申請がないから、ネコババという言葉は悪いですが、税務署、大蔵省で取ったまま、もう一つ減税が起こるというのは、投資信託は無記名で総合のしょうがないからというので、ネセリイの結果であるのであります。株式の配当の問題につきましては、投資信託の総合の問題がございます。しかし一般の記名の株式の分につきましては、源泉で取って返すか、あるいは源泉で一側取るのを五%取るだけで、返すときに五%返すかという問題、ただ、その間において零細の所得者は、総合課税のかからぬ人は申請をしない、めんどうかどうかしらぬが申請しないというので、国庫の収入になっている。配当所得で記名式のものにつきましては、これは減税というのは国庫の収入が減るというだけで、建前としては変わってないと思う。
  174. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると非常に矛盾がまたそこに出てくるのです。そういう税だからといいますが、しからば、そういう税であれば、そういうものはあなたもそんなものは取らないでもいい、こういう説であれば、そういうものは除外して、それだけの額を所得税のほうで考えていったらいいじゃないか、こういうことも考えられるのですね。それはどうですか。
  175. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 御質問の趣旨がよくわかりませんが、とにかく株式の源泉徴収というのは、これはシャウプ勧告からやってきておるのであります。昔はこういうものはなかった。シャウプの勧告からこういうことをやり、外国でもある程度やっておりますが、これは徴収の便宜がいいからで、まあ主税局をもって言わしむれば、配当所得一万円までは資料を出さなくてもいい、資料を出さなければそのままで総合ができない。だから相当の金額が、一万円以下の配当金額はみな抜けていくから、一ぺん源泉で取っておいたらどうだということは、徴税技術上においてはあるかもしれません。したがって、外国でもそういうことをやつている国もありましょう。しかし、理論的に申しますと、株式の源泉徴収の理論はどこにあるかといえば、理論がたい。徴収の便宜と、それから何と申しますか、一万円以下は資料を出すのがたいへんだから、それで抜けたのをある程度取りたいという徴税技術上の結果であって、負担の公平の原則からいったならば、税法上の理論はない。そういう点から一応各国でもやっている。一ぺんにこれをなくしますと、収入減が一ぺんに出てくるというので、なかなか徐々にでないとできないというのが、今の現状でございます。
  176. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いろいろい言われますが納得できない。もしあなたの言われる考え方でやるならば、所得税で減税しても、同じように一般庶民に影響する減税効果というものは同じになるのではありませんか。あなたが言われるように、そういう農家とか、あるいは一般庶民に大きく影響をする税であるというような印象を私は受けておる。それでなければ別ですよ。そういう意味で私は質問をしておるが、そういうものであるならば、所得税の減税であったほうが、一般的にやはり減税効果があるのではないかという素朴な考え方が起こってくる。その点の説明がない。
  177. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 一万円の配当があります。そのときには、今の制度だったら、源泉で一割取られますから千円。それを今後は、千円取られるのを五百円しか取られないようになるから、総合所得税を納めない人は、今まで千円の取られっばなし、今後は五百円の取られっばなしになる。しかし、その人が申請すれば、今まで千円戻るのが今後は五百円しか戻らなくなり、この点では個人の負担は変わらない。しかし申請せざる場合においては、それだけ負担が軽くなる。今回の税制改正で減収額がふえるというのはこれを言っておる。
  178. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あなたは専門家だから、専門家という形でいろいろ話をされるのですが、私の言っているのは、先ほど企画庁長官に言ったように、所得税で減税すれば、一般の庶民階級に対する減税効果というものが現われてくるが、こういう特殊な配当所得というものでやると、一部に限定される。特に印象は、そういう相当富裕な人たちが株式を持っている証券を持っているという印象があるから、そういうものを八十九億もやるならば、それだけの財源はやはり一般の所得税のほうで減税したらどうか、こういうことを言っている。それに対する説明をしてもらったらいいです。
  179. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 富裕階級の人は、総合所得税を一納めておられます。総合所得税を納めておられる方につきましては、株式の配当については手取りは同じです。減税になっておりません。
  180. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その点がピントが合わないのです。私の言うことが間違いであれば間違いだと言ってもらっていいのですが、私の言っていることはわかっていると思う。いずれにいたしましても、これは国民に対しての減税なんだから、だれかがこれによって恩典を受けているということはわかる。減税効果は受けているのです。ただ、私はやる方法として、やはり低位所得者に対する減税効果というものは、所得税で減税したほうがいいじゃないか、こういうのですが、それに対して配当所得についての理由だけ言われますけれども、私の言うことには答えておられない。
  181. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほども申し上げておりますように、この政府は減税内閣と言われておりますように、連年減税を行なっております。一兆一千億にわたる減税のうち、約八千億は所得税減税を行なっております。で、減税は一年ぽっきりのものではありませんで、過去においてもずっとやって参るとともに、去年において一応税制調査会の期限が切れましたので、今度は先ほど申し上げたとおり、税制のあり方そのものから根本的に三カ年の長期にわたって調査会で検討していただいておるわけでありまして、このたびの減税でも、御承知のとおり所得税減税をやっております。同時に株式に対する減税については、国民のもう六割が株式を持っておるということでありまして、この株式の配当所得に対する減税がもう特定の者に対する減税であるという考え自体が実情に合わざるものではないかと思います。同時にもう一つ政策的に先ほどから申し上げておりますように、自由化、八条国移行というような、国際経済社会の一員として立ち上がっていかなければならない日本の実態を見ますときに、資本蓄積がいかに重大であるか。日本の企業の一番弱いのは何かというと、自己資金と借入金の非常にアンバランスにありますので、自己資金を拡充しなければならない、その比率を上げなきゃならぬということは、これは産業人の利益を守ったり、国民一部の利益を守ることではなく、日本人自体がこれらの問題を解決していかなければならないということでありますので、所得税減税の重要さ、優先しなければならぬということは、あなたの言われるとおり、政府も第一義に考えておりますが、そのほかの政策的な減税を必要とするという立場から考えますと、三十八年度の減税規模は、また減税を行なった内容に対しては、おおむね妥当なものである。なお、所得税の減税等に対しましては答申を待ちながら、来年度、再来年度、これから国民の蓄財と相まってどんどんと行なっていくという政府の基本姿勢を明らかにいたしておりますので、何ら矛盾はないというふうに考えております。
  182. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ具体的に聞きましょう。この「改正案による所得税の課税最低限に関する調」というのをもらっておるんです。大体、平均、扶養家族四人ということで見ますると、この場合現行では四十一万六千八百円、改正案、平年分で四十四万五千八百八十九円、こういう数字が出されておる。でそうする、と平年分の差が二万九千二十九円。ところが政府の発表するこの消費物価の値上がりを見ますると、これはたまたまあるいはこうなったのかしりませんが六・八%を、先ほど申しましたこまかいかしりませんが五分位の階層の平均の消費支出三万五千八百七十二円、これは月額ですが、これを年にかえまして計算いたしますと、六・八%じゃなしに金額にしたこの平均の消費支出の上昇の金額は三万九千二百六十八円になる。そうすると減税でこの最低限を二万九千上げてもらっても、消費物価があれだけ上がると、これはもう減税効果はないという私の判断でございますが、間違いであるかどうか。
  183. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 税金の問題でございますから、大蔵大臣がお答えになるかと思いますが、このただいま三万五千八百七十二円とおっしゃいました数字は、どれをおっしゃいましたか、ちょっとおそれ入りますが聞かせていただきたい。
  184. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 三十六年度平均五分位階級別勤労者世帯一カ月間の収入と支出全都市、それです。
  185. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 三十六年度……。
  186. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 はあ。
  187. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御質問の趣旨がよく理解できないのですが、減税につきましては、夫婦子供三人までの数字を例にとって申しますと、物価の値上がりが二・八%というふうに見込んでおりますので、それ以下の所得者については当然減税幅が物価の値上がりよりもカバーをして余りがありますという計算でございます。ただいまの問題に対しては、それ以外の人たちに対しましては、他の政策上の減税その他もありますので、あなたが今宵われた低所得者に対する物価の値上がり支出増分に対しては十分カバーしているという考えに立っております。
  188. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはね。私はまあこういう癖かしりませんが、そういう抽象的な答弁では気に入らぬ。私は私なりの計算をしたのです。あなたは三人の扶養家族と言いますが、四人のほうが私はまだ減税効果がいいというところの例をとっているんです。三人だったらまだひどくなるのですよ。四人というのは、まだいい条件のところをとっているんですよ。基礎控除が、扶養控除が大きいから。
  189. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 減税幅及び物価その他支出に対する問題は技術問題でありますので、政府委員から答弁いたさせます。
  190. 松井直行

    説明員(松井直行君) 三十七年から三十八年度への消費物価の値上がりと、それから三十八年度実施しようといたしております税制改正によって、そうした物価の値上がりによる実質所得の減をカバーできないかどうかという御質問だと思います。で、税制調査会がまさに議論の対象にいたしましたゆえんは、税金は本来ならば実質所得について幾ら負担すべきかというのがほんとうであるにかかわらず、名目所得に税金がかかってくるのじゃないか、そうして名目所得が上がりますと、累進課税が働きます。したがってその名目の上昇分に累進がかかるだけ重くなりはしないか、調整するとすれば、そういう部分の調整が必要ではないか、こういう立論の論議だったと思います。そこで、三十七年度から三十八年度への名目の伸びこれを一〇六%それから消費物価の伸びを一〇二・八%、こういたしまして、今のような考え方に基づいていろいろ試算いたしてみますと、独身者、夫婦、夫婦子一人、夫婦子二人、夫婦子三人、いずれの階層につきましても、三十七年度の実質負担をまあベースにして三十八年度の今言いました消費物価の伸び二・八%、名目所得の伸び六%、こういう経済企画庁の見通しを仮定いたしまして、今度の税制改正をやった結果、先ほど言いました実質的に負担増になる部分は救われるかどうかということを試算いたしてみますときには、いずれも課税最低限を上回ったところまで調整できる計算になっております。すなわち、独身者につきましては、十四万三千円の課税最低限のところを六十八万円まで、夫婦の場合は八十一万円まで、夫婦、子一人のときには百十二万、夫婦、子二人のときには百十六万、夫婦、子三人のときには百二十一万まで。今度の税制改正によりまして、名目所得に累進がかかることによって負担増になると目される部分がすべて救済されることになっております。そういう納税者が、一体、独身者、夫婦、あるいは夫婦、子供三人のうち、何パーセントくらいおるかということを試算いたしますと、合計で納税者のうちの大体九割六分というものは、こういう方法によりまし二来年度は二・八%の消費物価の上昇に伴う実質増になるかもしれないと思われる部分の救済はこれで可能になるという計算でございます。
  191. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはそういうものを言われても、データがないと言えないのですが、三十八年度の消費物価の上昇の見通しをいろいろと言われました。それは経済企画庁が出しておる二・八%というもの、それでやっているのですか。
  192. 松井直行

    説明員(松井直行君) すべて仮定の計算の前提数字は、経済企画庁の数字をもとにやりました。
  193. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃだめなんですよ。少なくともこの三十六年度のこれは、もう消費者支出、それから、それに対する平均の実収入、こういうものはデータが出ておる。少なくとも、かりにそういうものを出すにしても、私の言ったような、こういう過去における実績にのっとった一つの計算、試算というものをやるべきだと思う。今私が言いました数字について反駁をして、間違いなら間違いと言ってほしいという質問を私はしておる。あなたのほうについての経済、消費物価の上昇の見通しとか、そういうものはあとでやりますけれども、私の試算したのはそうなるのです。これは政府が発表しておるところのすべての数字をとっております。私が作ったんじゃないのです。それによると、先ほど申しましたように、消費物価の騰貴は二万九千二百六十八円、それから最低限の引き上げられたのは二万九千二十九円、物価のほうが二百あまり上回っておる。これが間違いであるかどうかということを尋ねている。間違いならば、私は間違いの根拠を示してもらいたい、こういうのです。
  194. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ減税ということは、世界各国でも、名目所得に対する減税でありますが、あなたは税に対する理論上の問題よりも、実質的な減税ということで御議論を進めておりますし、また、私も理論上の問題でお答えしょうというのではなく、実質的な問題に対して先ほどからお答えをしておるわけでございますが、政府予算も、また、経済見通し、物価の値上がり、国民消費の支出増等というものに対しては、経済企画庁の数字がありますから、この数字に準拠してあらゆる作業を進めておるわけであります。私たちの計算では、これは先ほど政府委員をして答弁申し上げましたとおり、カバーをしておるという考えに立っておるわけであります。それから政府の税制調査会から答申を受けましたものと、政府が今度行なった所得税減税の差につきましても十分検討いたしましたが、先ほど答弁申し上げたとおり、十分物価の値上がり等はカバーでき得る。しかも、その数は九五%余の大よその人たちを救済し得るという観点に立っておるわけであります。
  195. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは私は、もうこれ以上私の試算によって追及するということは困らせることになるかと思いますから、やめますが、一ぺん検討してもらいたい。先ほど大蔵大臣は理論上の問題と言われました。税制上の理論の問題は、本を読んだらわかるのです。政治というものは、実情を考えて減税をやらなければいけないと思うのです。その意味において私は言っているのですから、その点も私は最後に言っておきたいと思います。  次に、時間がだいぶ過ぎましたので、地方税の問題ですが、今度は地方税については、電気ガス税については若干考えておられるようですが、すでに国会に出されたのかどうか、これをひとつ聞きたい。
  196. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) すでに提案してあります。
  197. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこで、電気ガス税の問題については、まだ見ておりませんが、大体うわさに聞いておるのですが、それは一応別途にして、今度国税の所得税が、これは問題にならぬのですが、一応減税されたのですが、地方税におきまして住民税の減税はなぜやらぬのか、その点をひとつ。
  198. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 住民税の減税は、すでに昨年の減税によりまして、今年度分百三十億を合わせ、二百四十二億の減税をやることになっております。
  199. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 昨年は、減税は数字の上でやっているけれども、県民税は低所得者で上がっているじゃないですか。
  200. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 今二百四十二億と言ったのは百三十億の間違いでございます。
  201. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 先ほどちょっと言いましたが、この県民税は、相当低所得者に大きい増税になっていると思う。現在私は、もう抽象的に言うのいやですから、私は例を出します。課税所得が月三万円、年額三十六万円の人が、県民税において、昨年の旧法と新法との間の差額はどれだけありますか。
  202. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 大体倍ぐらいと思いますが、詳しくは事務局をして答弁させます。
  203. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 県民税は、昨年の改正で国税から委譲を受けましたので、御質問の想定のもとに計算をいたしますと詳しい前提が要りますけれども、大体その程度のところで、県民税だけ考えますと、大体倍近くなっているだろうと思います。
  204. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこで、これは税金を出す側から見ると、国税であろうと地方税であろうと、やはり自分の所得から出すのですから、これは地方税だから税金でないとは言えない。そこで私は、先ほど所得税のときに申しましたけれども、実質所得ということから考えると、実際のところはもう減税になっておらない、所得税についても。それがこの前の第四十回通常国会における減税の問題の起こったときに、国税の所得税を減税するから、地方税が少々上がっても、なおかつ総合すると減税になっておるという説明があったのです。ところが、実際われわれ自身が税を負担する場合には、相当地方税が上がっておるので、非常に税金に苦しんでおる層が相当あります。したがって、倍上がっておるということになると、私は、どうも所得税で減税されたもの以上に、税総額は、国税、地方税を通ずると、もっとやはり負担が多くなっておる、減税になっておらないと見るのですが、その点はどうですか。
  205. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) これは、この問題は先般の臨時国会におきましても非常に議論をされたところでありますが、昨印度におきまして、大体地方税を百八十億委譲いたしまして、そのかわりに所得税を六百四十億減税をし、差引計算の上では減税になっておるし、事実また減税になっておるのでありますけれども、急に住民税が高くなったために、非常に受ける印象が悪くて、ちっとも減税になっていないじゃないかというような議論が非常に起こりました。自治省としましては、地方に自主財源を与えるための処置として、一方において所得税を減らし、一方においてまた住民税をふやしたのでありますけれども、それが非常に大きな問題になった。しかし、私も非常に高いと思っておりましたが、計算をしてみたら、やはり差引高くないと、そういうようなことであります。
  206. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それで、まあ計算は、国会資料から見ると、昨年の減税のときのこの参考資料では出しておるのです。おるのですが、私先ほど総理なり大蔵大臣に言ったように、その計算というものはどういう数字でやっておられるか知りませんが、名目所得というものは、これはもう物価が上昇するときには相当上がってくるのです。したがって、地方税がああいう状態で上げられると、実際の減税効果というものはないし、地方税の上がったということだけが大きい負担になっているというのです。したがって、私は結論的に申しますが、そういう状態にあって、県民税が比例して多く上がったんだから、せめてそういうものをカバーする意味においての地方住民税所得割については考慮すべきでないか、これが私の質問の要点なんです。
  207. 柴田護

    政府委員(柴田護君) お話のような点も考えまして、もうすでに改正済みでございますが、昭和三十八年度におきましては、市町村民税について、課税所得七十万円以下のものについて税率を引き下げます。大体一割くらいの軽減をはかっております。
  208. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一ぺんそこのところを詳しく。
  209. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 税法改正がすでに済んでおりますのであれでございますが、三十八年度から、市町村民税について、課税所得七十万円以下のものにつきまして税率を引き下げております。大体平均して一割程度の軽減をはかっております。
  210. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは地方税の徴収技術としてのことで、まあ本年度からそれが一そう効果を現わすと、こういう意味ですね。しかし、あなたらは机上でやっておられますが、実際給料袋をもらう人から見ると、そうではないのです。ことに三十六年、三十七年においては、すでに物価が高く上がっている。それに相当して名目賃金が上がることは当然なんです。同じ生活程度を維持するためには名目賃金が上がる。それが全部税の対象になっている。課税所得総額に皆入ってくる。そういうことを考えると、実際には金額においては減税になっておらない。この点の感覚をどう持っておられるかということなんです。それが理論じゃなしに、実際の減税の効果ということについて話しているのですが、自治大臣、その点の感覚はわかりますか。
  211. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 地方財政全体の問題とにらみ合わせて、できる限りの減税をはかって参ったのであります。物価と賃金との比較は、別に数字があると思いますが、私自身は、地方におきまして物価の上がり方が賃金の上昇よりも大きいとは考えておらない。
  212. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 考えておらない根拠をひとつ示してもらいたい。
  213. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 根拠は、あとで数字を見ましてからお知らせいたします。
  214. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 だんだんと時間が長引きますのは、大体地方税の問題で質問するということを知っておられたと思うのですが、私の思うとおりの答弁をすればすらすらいくのですが、どうもその答弁があいまいであるのでこうなるのですよ。  それで、私は思うのに、三十六年の地方税法の改正によって、所得割りについては第二方式に移行した、それによって国税の所得税が減税されても、地方税の所得割りについては、住民税の所得割りについては、これが影響——減税効果は出てなかった、減税が実にならなかった、ここに問題がある。したがって、私は、まあ時間の制約がありますから、地方財政の問題に触れますが、一昨日ですか昨日ですか、三十八年度の地方財政計画をもらったのですが、相当収入増になっておると思うのです。また、地方税収の増になっておるのですが、三十三年から——三十年から言いたいのですが、時間がかかりますから、三十三年にしておきましょう。やや地方財政が好転したというときからの地方財政の収入総額と支出総額、これはどうなっておりますか。
  215. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 三士二年度の地方財政上の歳入総額は一兆五千億でございます。
  216. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう少々下の数字まで……。
  217. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 一兆五千四十二億五千万円でございます。三十六年度の決算額では、二兆五千百十五億円ということになっております。なお、三十一年度と三十三年度の平均に対する伸び率で申し上げますと、一八一%で、ございます。歳出は、三士二年度が一兆四千五百五十五億七千九百万円、それに対しまして三十六年度は二兆三千九百十億八千万円でありまして、やはり三十一年度から三年度までの平均に対しまして、一七九%になっております。
  218. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 三十年から聞かなかったのですが、地方財政の現状を見ますと、三十年までが非常に悪かったというととが出ている。歳入総額は一兆一千六百三十一億九千万円、支出が一兆一千七百六十一億九千七百万円、これ以後はすべて黒字に——三十一年度もやや赤字になっている。三十二年度まではずっと悪かったのですが、三十三年度程度から回復している。三十六年度に至っては、先ほど言われたように、相当財政状態は好転していることは数字でもって明らかだと思う。そうすれば、私は、年々国税三税の対象になる地方交付税相当伸びるのだから、この際、やはりあれほど倍以上も上がったという答弁ですから——倍以上とは言わない、倍くらいと言っておりますが、これに対して、あの比例税を少しやはりこの際変えるべきだと思っておる。この点自治大臣はどうお考えでございますか。
  219. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 御指摘のとおり、地方財政がだんだん好転しているということは事実でございます。しかしながら一方におきまして、地方行政の状況を見ますと、いろいろな学校の問題にしましても、屎尿処理の問題にしましても、その他いろいろの問題がまだ非常に低い状態にあるわけでありまして、言いかえれば、地方としてはしなければならない仕事が非常に多いというわけであります。そこで本来ならば電気ガス税の問題にいたしましても、これは地方税の軽減でいくべきであったかと思いますが、そういう地方の行政の程度の低いという状況から、特にたばこ消費税をもちまして、その補てんをいたしておるような状態でございます。
  220. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ言いますが、なるほど地方行政水準がこれではいかないということはわかります。しかし、この支出の状態を見ますると、これは私が言うと、また間違いだと言われたらいけませんので、聞きますけれども、今言いました年度におけるほんとう地方住民に福祉になる社会労働施設費、保健衛生費と土木費と比較して数字を出して下さい。三士三年から三十四年、三十五年、三十六年と、その上昇率を出して下さい。まず金額を。
  221. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 先ほど三十三年度の数字を申し上げましたので、今それを基礎にして申し上げますと……。
  222. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 土木と社会労働施設費と、保健衛生費三つでいいです。
  223. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) ちょっと実額を持っておりませんので、伸び率だけでございますので、御了承いただきたいと思いますが、昭和二十四年度を一〇〇といたしますと、土木費で六六二、社会労働施設費で六七三、保健衛生費で四四九であります。  なお歳入、歳出の伸び率を申し上げますと、六三一ということになっておりまして、若干土木及び社会労働施設費の伸び率がいいという程度でございます。
  224. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは比較の仕方について私は異議があるのですが、数字を申します。数字を言うと時間がかかるのですが、三十三年度における土木費については二千二百三十二億、社会労働においては千五百三十九億、保健衛生費についてはわずかに三百七十九億、こういうことでけたが違うのです。したがってこの上昇率を六七三、六六二と言われますけれども、私としてはどうも、あなたのほうの数字を示さぬので、これは論議ができないのですが、非常に不安です。地方税の増収が年々増加しておるのに、産業基盤に相当地方税が使われておるのは、土木費及び御承知のように国庫の負担の伴った事業が多いのですから、そういうものに多く出されておって、ほんとう住民の福祉に必要な社会労働費なり、保健衛生費については、私は絶対額においては問題にならぬと思います。ただ三十七年度においては、保健衛生費については相当大きな、率においては相当の増額がされておることは、これはもうわかるのです。これはもう、都市の清掃が行き詰まったものですから、せっぱ詰まってこれだけの措置をとられたのですが、絶対額から言うと、問題にならぬ。私はそういう意味において、もし先ほど自治大臣が言われたように、地方行政の水準が非常に住民の福祉のために云々と言われましたけれども、こういう財政上から見ると、われわれでは納得できないところがあるのです。そういうことから考えると、むしろこういう公共事業費については、もっと国庫で負担すれば、地方財政については私はいける道があるんじゃないかと思う。この点について、私は自治大臣の所見といいますか、それを聞いてみたいと思います。
  225. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 御指摘のように屎尿処理であるとかあるいはその他環境衛生的な問題、そういうものに対するこの費用とまた事業の完成の度合いというものは非常におくれておるということは事実であります。しかしこれは、従来とも各地方団体が、そういうことよりも道路であるとかあるいはその他いろいろな自分の直接生活に影響する問題について、どうしてもそれを先にやろうとする傾向があったために、こういうものが非常におくれてきました。しかし最近——一番大きな問題は屎尿処理の問題でありますが、そういう環境衛生とかあるいは文化施設あるいは労働関係といったものに対して、各市町村も非常に力を入れて参るようになり、また自治省といたしましても、そういう面についての、いわゆる予算の投入について非常にこれをバック・アップするということになりましたので、御指摘のように、ことしからはそういう面は非常に多くなりました。こういうことです。
  226. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはどういう数字で、そういうことを判断されておるか知りませんが、前から経費上から見ると、そのウエートはだんだん今申しました土木費に重点がおかれてきた数字が出ておるのです。三十年度における土木費の総額は千四百五十六億、そのときの社会労働費用が千二百七十二億、保健衛生は三百四十億、それが三十六年——三十七年はまだ完成しておりませんが、三十六年では土木費は四千四百八十八億、そうして社会労働はその半分の二千三百四十六億、保健衛生は六百十二億ですよ。こういう工合に、あなたが言われるより、むしろ前のほうが、以前のほうが社会労働とか保健衛生に相当ウエートを強くおいておるのですよ。あなたは先ほど、前からずっと土木に力を入れるような傾向があると言うけれども、数字から言うと、それは逆なんですが、その点どうなんですか。
  227. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 御承知のとおり、いろいろ経済が伸びあるいは生活が伸びていきます。自動車の数もどんどんふえていく。また輸送も小型のものから大型のものに移っていくということから申しまして、自動車の増加あるいはまたその回数の頻繁というものに伴って、道路は道幅も広く、そうして、そういうものに対する出費が非常に多くなるということは、これは事実であります。それから今のところ、教育の対策も非常に不十分でございます。しかしながら先ほど申しましたように、文化生活をやるということになってくれば、下水の設備であるとか、屎尿の処理であるとか、そういう問題に力を入れていかなければならぬということは御指摘のとおりであります。したがって、私は昨年七月自治大臣になったわけですから、今後は大いにその方面に力を入れていきたい、こう考えております。
  228. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 また、いずれ三十八年度予算の審議のときに、その点はひとつ十分やろうと思います。  時間がないので次に移りますが、消費者物価の問題、きのうですか、企画庁長官から非常に物知りの答弁があったのですが、三十一年から三十七年までの物価の上昇率、これは調べておくということでありますので、私は無理な質問をしているとは思わんのですが、それをちょっと知らせていただきたい。ちょっと言っておきますけれども、指数と対年度比率一緒に入れて下さい。
  229. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 三十一年からとおっしゃいましたが、消費者物価を全都市で。
  230. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 総合だけでいいです。
  231. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 総合でございますけれども、全都市で申し上げますが、三十一年が一一六・四、これが前年に比べて……。
  232. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 三十五年を基準として一〇〇として出ておりませんか。
  233. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それはですね、このときは実は二十六年を一〇〇としておりますので、それでございましたら、恐縮でございますが、三十三年からになっておりますがいかがですか。
  234. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ああよい。
  235. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) よろしゅうございますか。——一〇三・二でございます、実績は。それから三十四年が一〇四・九、三十五年が一〇一、三十六年が一〇七・三、三十七年が一一三・六、これは見込みで、ございますが、そういう数字でよろしいんですね。
  236. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは年度別ですか、暦年ですか。
  237. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 年度でございます。
  238. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 比率……。
  239. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 対前年比率ですか、三十三年から申し上げますが九九・六。前の年より下がったわけでございます。
  240. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 上昇率ですよ。
  241. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 九九・六、その次は一〇一・六になります。三十四年でございます。
  242. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それを割ったら率が出るでしょう。
  243. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) すぐ出ます。三十五年が一〇三・八、三十六年が一〇六・二、三十七年は御承知のように私ども一〇五・九ということを考えております。
  244. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 資料を前にもらっておいたらよかったのですが、ちょっと食い違いがあるんですが、まあそれはいいでしょう。それでこれは総理府統計局が出している率ですから、これは間違いないと思うのです。それで実はもうすでに統計ができているのですか。経済企画庁は、そういうものを持っておらなかったかもしれませんけれども、これによりますと、三十五年を一〇〇として三十一年からずっと三十七年の十二月まで出ております。これは暦年でございますけれども、年度ではちょっと変わりますけれども、それによりますと、三十一年については年の上昇率をいいますと、三十一年は〇・三、これは総合ですよ。それから三十二年は三・一、これは三十二年の景気変動で三・一と上がっております。それから三十三年は〇・四です。三十四年は一、三十五年は急に三・六、三十六年は五・三、三十七年はこの前発表されたように六・八です。これは私は、池田さんに皮肉で決して言うのではありませんが、三十四年までは大体一%前後、三十三年は〇・四ということで、三十二年から見ると下がってマイナスになっている。これは今言われたとおりです。なぜこういう工合に上がったか、私は決して所得倍増経済政策を出されたからどうこうという皮肉なことは言いませんけれども、三十五年たまたま池田さがん内閣を組織された後ずっと上がってきているんです。まだインフレとは言えませんが、三十六年は六・八%、食糧については八・一%と相当な上昇率を示しているんです。これは一体どういう原因によるか、ひとつみんなにわかるように御説明願いたい。
  245. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいまの何でございますね、年末とその一年前の数字で。十二月末と比べる。
  246. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ええそう。
  247. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは企画庁長官がいっているように時期によって、とりょうによっていろいろ出てきますが、いずれにいたしましても、三十五年から上がってきたのは、その原因は何かといったら、所得が非常にふえたからだ。三十五年から。所得倍増計画、三十四年もふえましたが、三十五年、三十六年と非常にふえました。所得がふえ、雇用が増大いたしました。そうして生活水準が非常に上がってきました。たとえば問題の賃金をごらん下すってもわかります。三十五年の春闘は、今までにない賃金の上がりよう、三十六年もそうでございます。今、賃金の上がりようを見ますと、三十七年は大体秋には前年に比べて一二%上がっております。三十六年三十五年に比べて一〇%をこえております、賃金の上がりようが。そして三十五年は、三十四年に比べて一〇%まではいっておりませんが、七%くらい上がっておる。賃金がどんどん上がってきました。所得がふえてきました。雇用も増大いたしました。生活水準が上がって参りました。サービス料も上がって参りました。これで消費者物価が上がる。  そこで問題は、一国の経済をいわゆる国際競争力から申しまして一番大事なのは、国際的に見て大事なのは、卸売物価でございます。卸売物価は上がっておりません。これが日本の輸出がだんだん伸びていくことで、国際的信用はそれで上がっておる。しかし国内の消費者物価というものは、生活水準が上がって消費がふえて、雇用が増大して、そうしてみんなその生活内容が変わって参りますと、消費者物価は上がらざるを得ない。たとえば新聞代を見ましても、十年前に比べますととんでもない上がりょう。二倍半から三倍。雑誌にいたしましても教育内容、映画料金、何からいっても、もう格段の相違が出てきておるのであります。授業料にいたしましてもそう。これが生活内容の上昇。  これは日本だけではございません。最近非常に景気がいいといわれておるイタリア、ヨーロッパで一番無気がいい。これは卸売物価も上がり賃金も一〇%以上がっております、最近の状態。そうして消費者物価もどんどん上がっておる。これが経済の現象。非常に生活水準が低く押さえられていた日本の国民の生活水準が、所得倍増によって所得がふえ、サービスがよくなる。そうして生活内容の上昇したところの結果でございます。これは徐々にこれをおさめていかなければならない。だから、だんだん所得の伸びが安定した伸びようになりますと、消費者物価の上昇も落ちついてくるのであります。  個々の問題について、ずっと調べておりますが、生活内容の上昇とサービスの上昇、これは経済の原則でございまして、こういうことの上がり方をなるべく少なくしようというので、私どもは努力いたしておるのでございます。
  248. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 どうも、聞いておるとそぐわないのですね。所得がふえても、物価が上がるというと実質的には生活の改善をすることができない。われわれ一般の素朴な考え方では、やはり所得が上がって物価が上がらないために生活改善というものはできるのであって、それがために物価が上がってしまえば、実質的な所得というものはふえないということになるのですが、この点はどうなんですか。どうも私はわからない。
  249. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) そこで申し上げておるように、所得の上がり方よりも消費者物価が上になっては困ると、こういうことです。だから、所得の上がりようよりも、消費者物価の上がりょうが少ないこと。そうしてまた、消費者物価の内容が非常に上昇していく。こういうことなんです。月給取りの月給ばかり上がって、野菜も米代も何も上がらないようなこと。中小企業や農民はどうでもいい。月給がどんどん上がって所得が上がればいいということでは、これはわれわれのような国民政党は困る。月給取りが月給が上がり賃金が上がれば、それに従って農民やあるいは中小企業のサービス料も上がっていく。ただ問題は、生活費の上界が所得の上昇を上回っちゃいかぬということと、そうして消費の内容が、消費者物価が安くても、新聞が四ページや六ページでは文化生活がいきますまい。それが八ページ、あるいは十二ページに新聞がなるときには、これは百二、三十円のものが三百五、六十円になるのは仕方がないのじゃございませんでしょうか。今までのように、白黒の映画ばっかりで国民ががまんするよりも、ワイドのカラーのも一のがいいのではございますまいか。私はそういうことを考えると、問題は、生活の内容がどうなっているか、しかも内容がよくなったからといって、月給が上がるより消費者物価が上になっちゃ困るということでございます。私は、そういう点はまだ、日本人の良識によって、努力によって、所得は上がってきておるけれども、卸売物価は上がらない。そうして国際的競争力がある。消費者物価の上がりょうも所得の上がりようの、五、六年分をとってみますと、三分の一程度でございます。内容は非常によくなっている。これはやっぱり、あなた方はどうおっしゃるかわかりませんが、外国の人は奇跡だといってほめておるようでございます。
  250. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 関連して。ただいま池田さんのお話があったわけですが、池田さんは去年欧州に行ってこられたのですから、欧州の今日までの状態というのはよく見聞を深めてこられたと私は思うのです。しかし、欧州の最近十年間ぐらいの経済の動向を見ておりますと、生産性の上昇、それから賃金の上昇を同じにして、物価を横ばいにするというのを大原則にして、OECから出発してEECに発展し、イタリアはヴァノーニ計画によって、西ドイツに次ぐ二番目の経済国になってきたわけです。今の、池田さんの言う理屈は少し私は違うように思うのです。それじゃ、日本の生産性と賃金の上昇を見てみると、三十年をたとえば一〇〇にして、生産性は一六〇幾つに三十六年にはなっている。そして、賃金は、三十人以上の製造業で名目一五八、物価の値上がりによって実質的には一三二、こういう事態になっているわけです。そういたしますと、今の池田さんの理論と欧州の各国がとっていることとはどうなるかということを、私はお聞きしたいわけです。ですから、そのような現状と、それから日本の高度経済成長だといわれる非常に過大な設備投資が行なわれ、生産の条件は非常に高まりました。生産力そのものは高まった。高まったけれども、池田さんよく言われるように、国民総生産の、貿易に回るのは、大体一〇%から一一%なんだと、こう池田さんはいつも言われる。各国も日本も大体そのようだと私は思う。ところが、国民総生産の九〇%は、国内需要を高めることによって、生産と消費のバランスがとれなければならぬ。たとえば、貿易の問題にいたしましても、こちらから輸出する、だけで事がおさまるわけじゃない。輸出すればしただけ日本が輸入して、それで、需要の中で消化するという条件があって、初めて私は輸出というものが伸びていくと思う。そういう理屈になって参りますと、今不況下の日本はどうです。需要がむしろおくれて、生産力が、生産設備が七〇%そこらしか動いてないじゃないですか。生産と消費のアンバランス、不況という段階ではないですか。どうして生産と消費のバランスをとるかという中で、たとえば、物価の値上がりを押える、国民の生活が向上して生産と消費のバランスをとっていくという今日の政治の大原則という問題がここにあるのではないかと私は思う。そうだと考えてみると、池田さんの、所得も上がった、雇用も上がった、賃金も上がった、だから物価が上がるのは当然だというこの言い方じゃ、政治的に足らないものがあるのではないか、私はそう思うのです。所見をお伺いしたい。
  251. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 別の機会に申し上げてもよろしゅうございますが、今の生産性と賃金の問題も、三十年をおとりになるからいけない。もう少し近いところ、三十五年をおとりになったならば、三十六年の五月ごろから相当賃金は上がってきまして、生産性よりも賃金の上昇はおおむね毎月伸びております。三十七年の一、二カ月が、生産性の向上のほうが賃金の上昇より伸びておりますが、三十五年、三十六年を基準とされると、最近の二年は生産性向上よりも賃金の上昇が上になっている。これはたいへんな問題です。ドイツは、それが四年から五年ぐらい前から起こっている。だからドイツのこのごろの生産は伸びますまい。あなたが不景気と言われる日本の総生産の伸びが四、五%、ドイツはこのごろ四%ぐらい、おととし、さきおととしの日本の伸び率に比べたら三分の一です。五、六年前から、生産性向上より賃金の上昇のほうが上だった。イギリスは二%から一%ぐらいの総生産の上昇で、非常な不況に悩んでいる。今度イギリスは切りかえる、こういう状態です。そうして今度去年の夏ごろからのイタリアの上昇は、今日の日本のあれとよく似ている。お話のとおり私は、輸出というものは、日本は総生産の一割程度、最近はドイツではこれが非常に生産が落ちておりますが、輸出で一五、六%、イギリスが一四、五%、日本はフランスやイタリアと大体同じで、一割ぐらい、これはもっと伸ばさなければならぬ。しかしそういう状態ですから、国内の健全な消費は私は考えなければならぬ。そうしてまた生産設備の増加によります過剰生産、まあ鉄鋼の七割五分くらいの操業率といったら、世界的にみればいいのでございます。相当動いている。鉄鋼のうちである部分は八七、八%の操業率というのは、世界にない操業率です。アメリカなんか、よくなったといっても五四、五%でございますよ。そういうところからみると、日本は特異な状態でございます。しかし鉄鋼につきましても、輸出はもちろんございますが、国内消費量をもう少しふやそうというのが今度の三十八年度の予算、ことに今御審議を願っております補正予算はそういう主義から出ているのであります。詳しくはまた別の機会に申し上げますが、私の考え方は大体あなたも御納得いただけるのではないか。今外国の数字をお引きになりましたが、その数字の引き方は、年によって違いますが、考え方は、国内の健全消費をやらなければならぬということは、お考えのようでございます。賃金も、生産性に匹敵するように上がるということも、これは私はいいことだと思う。大体似ていると思いますが、ただ、今の数字の違いは、とりょうでございます。
  252. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 僕はこの問題の議論はまた他の機会に譲りますけれども、長い問低賃金で押えられてきた労働者やまた国民の所得購買力が低いところで押えられてきた。これが一年や二年上がったかといって、ことしや去年の年度をとったから、生産性より、同じくらいになったとか、ちょっと上がったということだけで、そういう理論を立てられることは、私はおかしいと思う。しかしいずれあらためてこの議論はします。
  253. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それではもう結論に入りますが、池田さん、僕は先ほどお尋ねしたのは、三十年からずっと企画庁長官が消費者物価の上がり方を説明したのですが、あなたの言われる実質賃金なんか、三十年の場合と比較しますと、三十年というと六・三%実質賃金が上がっているでしょう。ところが三十四年は五・四%に落ちているのですよ。生活内容が上がったからこうなると言われるのはちょっとわれわれからない。しかし時間がないから私は反駁はまた別の機会にしますが、あなたは何か自分のことに固執されていると思うのです。しかし自然の姿でやはりこれを見ていただきたいと私は思うのです。  そこで、来年の消費者物価の上昇の見通し二・八%はどういう根拠で出されたのですか、それをちょっと。
  254. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昭和三十八年度の二・八%ですね。いろいろな方法を用いておりますが、まあ一つは経済活動一般を見まして、そうして過去からの趨勢の伸びを一つは考えております。もう一つは、いろいろございますが、たとえば過去数年間における国民の消費——個人消費でごさいますが、消費と、それから消費者物価指数との問の関連指数を求めまして、それによりますと、大体消費の伸びが一〇の場合に消費者物価の動きが二から三でございますが、そういったようなものをいろいろ総合いたしまして、まず三%足らずという検討をつけたわけでございます。
  255. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、先ほど総理の言われたことと相反するようなわれわれ印象を受けるのです。消費者物価が上がるということは非常にいいような印象を受ける御答弁なんですね。われわれはそうではない。消費者物価というものは押えるべきであると考えておるのですが、池田さんは、非常にこの所得がふえてくると生活内容がよくなって物価が上がるのは当然だと、こう言っておられる。あなたの場合はそうでないのですか。ちょっとこの点は国会の論議では理解できると思いますけれども、一般の国民が聞いたらどうもわからないと思うのですが、ちょっとその点お聞かせいただきたい。
  256. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私は別に価値判断を加えて申し上げたわけではなかったのでございますが、先ほど総理の答弁をされましたことは、過去においてこのように消費者物価指数がかなり大きく変動した、これはどういうことに基づくかというお尋ねに対して、何と言っても所得の伸びが大きかった、そうしてそれはともすれば低所得者において伸びが大きかったので、したがって限界消費性向が多い、そういうことから消費者物価指数にそれがはね返ってきた、こういうことを申し上げたわけでございますから、所得水準が上がるということは、それ自身はむろんまことにけっこうなことでございまして、ただその反面消費者物価が上がらなければ、そういう消費者物価は上がらないにこしたことはないのでありますが、ある程度上がることは現実の問題としてそのとおりであったと、そう総理は申し上げたと思うのであります。
  257. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこでこの見通しの問題ですが、これは重要な国民の関心があると思う。昨年三十七年度の予算審議においても、その点藤山企画庁長官だったと思いますが、三%以下で何とか三十七年はいけるだろうというようなお話があったことは記憶しております。しかし十二月から一月にかける東京都における消費者物価の上がり方というのは、三十六年の十二月と三十七年の一月を比較すると一体どうなっておりますか、ちょっと教えて下さい。
  258. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 三十六年度の……。
  259. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ちょうど今の対年度。
  260. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 東京でございますか、全国でございますか。
  261. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 東京しかないでしょう、ありますか、全国都市のやつが。
  262. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 消費者物価は、東京を申し上げますが、三十六年の七月から十二月までの……。
  263. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうじゃない、十二月から年を越して一月にどれだけ……。
  264. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そうですか。三十六年の十二月が東京は一〇九・三でありまして、一月は一一〇・一。それが昨年の十二月は一一四・八であり、今年の一月は一一六・七。その数字でよろしうございますか。
  265. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ええ。それを率に直しますと、昨年の場合十二月から一月にかけて〇・六%、本年の場合は一・七%上がっておる。そういう経過を見ると、昨年が要するに六・八%上がった、ことしは二・八%で押えるのだという、これがどうも私は、一月の東京だけですから、全都市はわかりませんから……。大体同じような傾向でおりますね。この点について経済企画庁の見通しの甘さと申しますか、根拠が私はどうしてもわからない。もう少し納得するように説明してもらいたい。
  266. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 確かに本年の一月の前月に対する動きのほうが一年前のそれよりも少し大きいわけでございます。私ども相当それ警戒を持って見ておりますし、おそらくは全都市については、東京がそうでありますから似たような数字が出てくると思います。心配をいたしておるのでありますが、一つはこの一月を分析いたしますと、東京の場合でございますが、一・七のうちで一・四ぐらいまでは生鮮食料品の値上げによって占められております。この寄与率は実に六〇以上になるかと思いますが、やはりそういうことの反映であったと思うのであります。  一般的に見まして、一年間の消費者物価の上がりを一〇〇といたしました場合に、生鮮食料品の値上げによる部分が大体最近は四〇ぐらいでございます。三五とか四〇という数字でございますから、本年のこの二・八が成功するかどうかということは、やはり一番には生鮮食料品をどうやって安定的に供給するかということにかかると思います。この点は昨年からわかっておりまして、三十八年度の予算編成においても、生産、流通、供給等についていろいろ農林省に施策をお願いしたわけでありますし、また幸いにして昨年の生鮮食料品の窮屈であったことが、農家に対して相当作付面積を結果としてふやさせるような結果になりましたので、ことしの供給状況そのものは私はかなり本来いいものである。農林省でもそう見ておられますし、私どももそう考えておるわけでございます。まあ豪雪その他自然的な条件が目下のところあまりよくございませんけれども、本年一年をただいまから見通します限り、この一番大きな原因であるところの生鮮食料品についてはそう心配することはない。かつて経済全体の動きがまだ比較的静かでございますから、二・八というものは、これは政策目標としても、また現実としても、私はそんな無理なことを考えていないというふうに思っております。
  267. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは自分で書いて自分でほめているようなことですよ。これはどちらが当たるか、これは将来の問題ですがね。  私は一月における東京における消費者物価の上がり方は、いろいろの要因を聞いたのですよ。そんなに経済企画庁長官が言っているような簡単なものではないのですよ。生鮮食料品の流通機構を改正して、改革してやると言いますけれども、そんな簡準なものではない。しかも五項目のこの種目別に見ましても、それだけではないのです、要因は。こういう点で私は納得はできません。そこで、これは池田さんにひとつ最後に聞いておきたいのですが、こういう状態で消費者物価が上がり、税金も減税も先ほど申しましたように、そうわれわれの主張するほども減税されておらない。ますます私は、五分位にいっても、第三以下の人は非常に困ってくる。特に労働者は非常に困ってくると私は思う。こういうときに政府としては、労働対策としてやはりどういう考え方でおられるか。労働大臣ひとつ賃金問題についてお聞きしておきたい。
  268. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 賃金の上昇は最近物価の上昇に比べまして上向きでございまして、実質賃金は逐年向上いたしつつあるように見受けられておるのでございます。労働省といたしましては、賃金の引き上げが労働者の生活を安定させ、また労働力の生産性の向上に貢献するものでありますので、ぜひかような傾向が続いていくことを期待いたしておるわけでございます。そこで労働省といたしましては、特に賃金の水準の全般的な引き上げの最近の顕著な点は、いわゆる産業の二重構造からきます中小企業賃金の低賃金が、雇用条件の改善によりまして、逐次改善せられたことが相当大きな原因になっておるようにも認められまするし、また、このことは労政上助長すべきことであると考えまするので、特に中小企業に対する労務管理対策を強化いたしまして、この部面における労働者の労働条件の改善を進めて参りたいと思っておるのでございます。最低賃金の適用の拡大は、この意味におきまして、特に力をいたさなければならぬ点であると存じておりますので、この方面に大いに力を入れたいと思っております。
  269. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関連。
  270. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 簡単に願います。
  271. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 春闘の第一波というふうに伝えられておりますけれども、関連して質問したいと思います。  総理が、先ほど所得が最近非常にふえておる、一〇%とか、一三%というふうに言われましたけれども、公務員のベース・アップが七%、しかも、五月というのを十月に繰り下げておる。また、これはきのうの新聞でありますけれども、公共企業体の低賃金は事実である、たとえば高校卒の初任給、全逓が一万八百円、国鉄が一万一千円、全電通が一万一千三百円、民間ならば中学校卒業並みである、大都会では、採用してもすぐ民間に横取りされる例もあり、人手不足は埋められない、こういうふうに書いてある。これはきのうの読売新聞の記事でありますけれども、こういう状態の中で公共企業体の職員の賃金の引き上げということが問題になっておりますけれども、全逓に対して示された回答は、初任給を六百円引き上げるというだけの子供だましのものである。初任給六百円の引き上げの金額をかりに妥当と認めたとしても、もし初任給を六百円引き上げるならば、一般的に少なくとも平均二千円以上引き上げなければ、常識的にはこれはつり合いがとれないということになるのでありますけれども、事実上のゼロ回答をやっておる。こういうようなことで、特に郵政省あるいは運輸省が、自分たちのところの職員の労働条件をよいというふうに考えておられるのかどうか。また、こういうことで労務管理が円満に行なえると考えておられるのかどうか。関係大臣の御答弁もこの機会にお伺いしたいと思います。
  272. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 三公社五現業の給与の問題につきましては、ただいま団体交渉中でございます。その結果を待ちたいと思います。
  273. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 政府も誠意を持って答弁されておると僕は思うのです。だけども、私が印象受けるところは、何だか自分らの考え方を擁護しようという立場で、これかやむを得ないといたしますが、そういう印象を受けます。われわれは、そうじゃないのです。反対党であるけれども、やはりいろいろな問題が国民にすべて影響するからやっておるのです。先ほどの物価の問題にいたしましても、どうもあいまいな点も私はあると思うのです。したがって、率直なところ、国民にこういう場所を通じて消費者物価の見通しの問題は言っておく必要があると思う。それがまた賃金にも影響してきますし、各般に影響するのです。労働問題でいささか丁寧に労働大臣は答弁されました。聞かない最低賃金の問題まで言われたのでいいのですが、非常にやはり第三分位から下の実際生活はそうじゃないと私は思う。この点につきまして、やはり政府自体も十分減税も、あるいは物価政策におきましても考えるべきだと思う。こういう点につきまして、総理からひとつ最後に丁寧に御答弁をお願いしたい。
  274. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 減税につきましては、大蔵大臣から先ほど来申しております。われわれも減税というものは、民主政治の一つの大きな柱、一番大きな柱といってもいいくらいに私は考えて従来減税をやっておったのであります。しかるに、減税もさることながら、文教あるいは社会保障制度の拡充、そうしてまた社会資本の充実を今やっておかなければ、取り返しのつかないという財政事情もありますので、今回は五百四十億円でがまんしてもらったのであります。私は全体のことを考えながら、しかも、所得税を納める人は千六、七百万人、所得税を納めない方々のことも考えなければならない。所得税を納めない方々は、地方税を安くすればいいじゃないか、こういうふうに言われますが、地方地方財政事情がある。そこで、所得税の減税をうんとすることもさることながら、文教や社会保障等を考えますと、そう国民の御希望どうりに減税にいかない。全体を見ながら調和のとれた施策を私はやっていこうというのが、今回の予算を提出いたしましたゆえんでございます。万事につきまして、できるだけの気を配りながら、適正な安定成長をはかっていこうというのが私の念願でございます。
  275. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 山本君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  276. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいま委員の変更がありました。  後藤義隆君が辞任され、その補欠として竹中恒夫君が選任されました。   —————————————
  277. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に須藤五郎君、御質問願います。
  278. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、日本共産党を代表して、今回の補正予算に質問をいたしたいと思います。  この補正予算における義務教育費国庫負担金、生活保護費、失業保険費負担金などは、池田経済政策の失政である物価の値上がりを最小限義務的に補てんしただけで、政府の主たる目的は産投会計への三百五十億円の繰り入れであると言わなければならぬと思います。そこでお聞きいたしたいが、政府は、これを三十七年度に補正しなければならない緊要な経費だと言っているが、実体は二十八年度分の経費ではないでしょうか。これは全く財政上のぺてんではないかと考えます。しかも、三百五十億円のうち、数字の上で三十八年度に使うということがはっきりしているのは九十三億円だけです。残りの二百五十七億円は一体何に使われるわけですか。使途がはっきりしていないではありませんか。まず、この点を総理にお聞きしたいと思います。
  279. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 数字の内容でございますから、大蔵大臣から答弁いたさせます。
  280. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御質問ございました三百五十億円についてでございますが、先ほどの御質問にもお答えいたしましたように、自由化を前にした日本の現在の産業を考えますと、この前に石炭のために特別国会さえ開かなければならなかったというような現状に徴しましても、産業政策として産投会計資金を補充いたしておきまして、弾力的運用によって事態対処するということが、政策的にぜひ必要であるという建前に立って、第二次補正予算のうち三百五十億円の産投会計への繰り入れをお願いしておるわけでございます。
  281. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 今の御答弁で大体わかりますように、海運利子補給と称して海運企業に百億円ただでくれてやることが予定されているのではないでしょうか。これをあなたは一体認められるかどうか。また、自由化に備えるとか不況産業へのてこ入れと称して、すべて大企業の補強費に支出を予定しているのではないでしょうか。総理もこれは否定しないだろうと思います。しかし、このほかに重大なことが隠されているのではないでしょうか。政府は日韓会談が妥結をしたら、有償無償の経済援助を毎年百八十億円ずつ朴政権にやることにしておりますが、それにこの産投会計を予定しているのではありませんか。この産投会計の使途不明の二百五十七億円から出そうとしているとしか考えられないではないですか。これを確かめておきたいと思いますので、総理から御答弁を願います。
  282. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 使途につきましての答弁は、大蔵大臣からお答えいたします。
  283. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 二百五十七億円の問題につきましては、財政法の第四十四条の規定によって認められておるところでありまして、その使途は、先ほど申し上げましたような、どうしても産投原資を補てんしておく必要があるという事情でありますので、そのような措置をお願いいたしておるわけでございます。これを日韓交渉等の進展によって、また、日韓交渉等が妥結をすることを予測をしながら、というような御質問でございますが、現在の段階において、そのような特定な支出に充てるという考え方はないことを明らかにいたしておきます。
  284. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたは否定されますが、あなたはそういう答えをしなければいたし方がないのだろうと思いますが、決してそれはそうでないと思うのです。事実は私の言ったようにきっとなるだろうということを私はここで断言しておきたいのです。必ずそういう結果がくるだろう。  次に、産投会計は従来の原資では不足して、一般会計から繰り入れてもなお不足、さらにアメリカから外債を借り入れ、産投公債を発行してまで資金をふやそうとしておりますが、一体産投会計の固有の財源を個渇させた最大の原因は何かということです。それはガリオア・エロアの返済金百五十八億円であることは否定できない事実です。返すべからざるものを返したからではないでしょうか。われわれはすでに大穴があくぞと警告をして参りました。そのとおりに今回なってきたわけです。このように不当な無理算段をしてまで捻出したガリオア・エロア返済金の使途は一体どうなっていますか。これをはっきりしていただきたいと思うのです。使途につきましては、交換公文で東アジアに対する経済援助、もう一つは、日米教育文化交流に使うことになっております。現に政府は、三十七年度予算で七十九億円返済し、三十八年度百五十八億円返済する予算を計上しております。この使途につきましては、交換公文で明瞭に日米両国政府間で協議することとなっておるのだが、これはどうなっておるか。いかなる協議を行ない、いかなる措置をとっておられるか。抽象的ではなく明瞭に私は答えていただきたいと思います。
  285. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 産投資金が非常に不足をしてきたということは、ガリオア・エロアの対米債務の支払いで不足をしてきたわけではないわけであります。三十八年度の産投よりの出資を見ていただければわかるとおり、産投財源はこれによってもう涸渇をいたしておるのでございますし、その他産業政策上必要な事態が予想せられますので、この事態に対応して資金の繰り入れをはかっておるわけでございます。
  286. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まだ答弁が……。
  287. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ガリオア・エロア返済金の使途につきましては、目下米国政府におきまして作案中でございまして、これがまとまりましたら、私のほうと協議に入ることになると思います。
  288. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まだ協議をしていないとおっしゃるのですか。それは一体どういうことですか。それじゃ政府はどういう態度で協議に臨もうとしておるのですか。
  289. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それは、すでに御指摘の交換公文に明瞭にいたしてあるわけでございます。
  290. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それではお答えにならないですよ。外務大臣、もっとまじめに答えたらどうですか。アメリカとの間に話をする場合に、日本の政府はどういう態度を持っているのかということを私は聞いているのです。もっと具体的に答えなさい。
  291. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 交換公文にも明瞭にありますように、アメリカ合衆国政府側の適切な立法措置を前提といたしまして、この協定によって支払いまする資金の大部分を、低開発国に対する経済援助に使うという意図をアメリカ政府が持っているということでございます。御案内のように、この金は日本政府がアメリカに返済したわけでございまして、アメリカ政府がそれをどう使うかということを決定いたすわけでございます。しかしながら、日米両国政府は、東アジア諸国の経済のすみやかな、かつ均衡のとれた発展が、日本国とアメリカ合衆国がともに深い関心を有する地域でありますし、その安定と平和に不可欠であること、並びにこれらの諸国がこのような発展を遂げるためには、その目的に寄与する開発の援助が緊要であることを認めるということを明らかにいたしておるわけでございます。したがいまして、こういう方針に沿いまして、関係各国の表明する意向も十分考慮しながら、この目的に従いまして引き続き協議をしようと、こういうことを交換公文で明瞭にいたしておるわけでございまして、これ以上のものでもこれ以下のものでもないわけでございます。
  292. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは、私から具体的に聞くことにしますが、東アジアの使途は、アメリカの対外援助法に規制され、反共援助資金として使われることになっております。では一体韓国向け使用はどういうふうになっておるのか。南ベトナムへの使用はどうなっているのか。さらにインドへの使用計画があるのかどうか。これについて具体的に答弁をしていただきたい。
  293. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それは冒頭で申し上げましたとおり、今、アメリカ政府で計画中でございまして、それができ上がりましたら御相談があるわけでございまして、どういう内容になっておるかは、私どもまだ伺っておりません。
  294. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは、こういう方向にこの金が使われるということをアメリカから相談を受けた場合は、日本政府は受けて立つわけですか。
  295. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほどの、申し合わせたような精神に沿いまして協議に応ずるつもりでおります。
  296. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 政府は現に予算を計上し、返済しながら、そんな無責任な答弁では私は納得できないのです。現に中印国境問題以来、アメリカ政府は、公然と日本にインド援助を強要し、日本政府も大量の軍用トラックの輸出を認めているではありませんか。このような政策を政府がとり、アメリカの方針もはっきりしていると私は思うのです。もう一度確認しておきますが、日本政府は絶対にインドにこの資金を使用させない方針を、日米協議にあたってとると約束できるかどうか、はっきりと外務大臣に答えてもらいたい。
  297. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど申しましたように、この返済金は、返済いたしますと、アメリカの金でございまして、これをどこに使い、どこに使っちゃならないというように、有権的に日本の政府が要求する資格はないわけでございます。ただ、交換公文で、しかしながら、東アジア諸国の安定並びに繁栄ということは、両国の関心事でございますから、協議しようということに申し合わせたわけでございます。しかも、その先方の御計画をまだ拝見しておりませんので、私どもは今とやかく論評する材料を持っていないわけでございまして、あくまでも交換公文に現われた精神によりまして私どもは対処いたしたいと思っています。
  298. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 時間がありませんから、深く質問することはできませんが、協議するという条項がある限り、日本の意思だって表示することができると思うのです。だから、アメリカからそういう意思表示があった場合に、あなたはどういう態度をとるのかということを私は聞いておるのです。
  299. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 交換公文を通じまして内外に宣明いたしました方針によって対処いたします。
  300. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 さっぱり答えにならないです。  次に、日米文化交流費二千五百万ドル——約九十億円、これがどうなっているのか。この金を基金にしてアメリカの法人団体を日本に作ることになっておるということを聞いておりますが、これは作られたのか、まだ作られていないのか、作られているとするならば、その事業内容はどうなのか。池田内閣は人づくりを看板にしておるが、これはアメリカと民間との関係などというものではなく、日本政府もこの運用に関与することになっているのです。政府の答弁を要求いたします。
  301. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これはもう、ガリオア返済金の使途につきまして、御答弁申し上げましたとおり、目下アメリカ政府側におきまして計画を作案中でございまして、まだ私どもは提示を受けておりません。提示を受けましたら、御相談しようと思っております。
  302. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そんな答弁では納得できません。現に、私立中学校高等校学連合会は、ガリオア返済資金を使用して財団法人私学教育研究所を設立することをきめ、すでに計画書を作っております。この計画善の内容は、自由の教育と称し、日本の中等、高等学校の教師、学生を大量にアメリカに連れて行き、反共とアメリカの反動思想教育をやろうとするものであります。さらに、日米合作で東南アジアの教育団体にまで介入せんとするものであります。これを荒木文部大臣は知っているかどうか。
  303. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。存じません。
  304. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 荒木さん、ここにちゃんと設立趣意書までできているのですよ。あんた知らぬとは言えないのですよ。このことをこれから述べましょう。この研究所の設立には、現に政府——文部省のお歴々が直接参画している事実があります。去年、私立中学校高等学校連合会の石渡修徳高校の校長、大場聖書学院の園長がアメリカでガリオア返済資金の使用についてアメリカ政府と打ち合わせを行なっている。しかも、財団法人私学教育研究所設立計画書を作った小野理事長は、あなたの部下である文部省内藤事務次官と話し合っているではありませんか。こういう事実がちゃんとあるのです。それだけではありません。川島国務大臣、原田大蔵政務次官は、去年九月十九日赤坂の料亭瓢亭で行なわれた私学振興議員懇談会で、この話し合いをしているはずであります。このような事実の進行に、荒木文部大臣は全くのつんぼさじきに置かれているのか、もう一度お聞きしたいと思います。
  305. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。さっき申し上げましたとおり、存じません。お話のごとくんば、公益法人の認可申請が出てくるはずでございましょうが、出ておりません。それ以前に情報を特に集めてあなたと同じように承知する立場にもございません。真実存じません。
  306. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 日教組いびりばかりせずに、もっと注意を向けたらいいでしょう。ちゃんと認可申請が出ているのですよ。ただ、財団法人としての認可は、ことしはおりなかったのです。ちゃんと予算措置までできているのです。認可措置ができなかったから、予算が今度ついてないのです。来年必ず予算をつけるということが約束されておるということを私は聞いているのです。私はちゃんと調べてきました。あなたが知らないとは言わせません。こんなにもはっきりした事実があるのに、あなたはこれを否定するのですか。それは、九十億円が日本人の魂をアメリカに売り渡す資金として、さらに東南アジア人民さえもアメリカに従属させる資金として使われているのです。こういう内容のものだということが国民の前に明らかになることをおそれてあなたは答えないのだ、こういうふうに私は考えます。  最後に、私は重大な問題について池田総理に伺いたいと思います。それは、二月八日アメリカ政府がネバタで核実験を再開したことであります。これは、一九六三年こそ核実験永久完全停止の最初の年にしようとした全世界の平和の願いを踏みにじったものであります。ジュネーブで十八カ国軍縮会議開催四日前、まさにその直前に強行したものであります。私はこれに対して腹から憤激を覚ゆるものでありますが、一体日本政府はこれに抗議したのかしないのか。もししていなかったならば、抗議をするのかしないのか、はっきりと答弁をしてもらいたい。今日の日本の政府態度は、アメリカの脅迫に屈して、核実験の抗議をあいまいにし、国民の目をそらそうとするものであり、原子力潜水艦の寄港を認めて、アメリカの核戦略に従う態度と全く一体のものであり、許すことができません。政府態度は、核実験に反対するどころか、支持する態度ではありませんか。このアメリカの核実験を今こそやめさせなければ、軍縮委員会の努力は水泡に帰し、核実験禁止協定もできず、世界の緊張は激化されるでしょう。三月一日ビキニの忌ましい日を前にして、私は強くアメリカに抗議することを総理に要求し、はっきりした答弁を求めるものであります。
  307. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 核実験禁止は、われわれ日本国民の悲願でございます。私は、ケネディ大統領に直接に会ったときも、強くこれを希望し、そうして要求いたしておるのでございますが、いかんせん、これはソ連等の関係もございまして、われわれの悲願が達成できないことをまことに遺憾に思っております。今後も悲願達成に努力いたしたいと考えております。
  308. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 今核実験禁止をやろうと話し合い、全面軍縮の話し合いをジュネーブでやられようとしているとき、その直前に核実験を再開することは、こういう話し合いを破壊してしまうことです。あなたは人づくり、国づくりを言っているけれども、ほんとうに人づくり、国づくりを希望するならば、まず、人を殺し、国を破壊するような、こういうことをやめさせなければならぬ。それを話し合いの直前にアメリカがやるということは、何事ですか。なぜこれに抗議しないのですか。あなたがほんとうに人づくり、国づくりを信じ、日本の国を愛する人ならば、直ちにアメリカに抗議しなければいけませんよ。なぜ抗議しないのですか。私は抗議するのかしないのかということを聞いているのです。その点はっきりして下さい。
  309. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先ほどお答えしたとおりであります。
  310. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 須藤委員の質疑時間は終了いたしました。  以上をもちまして質疑通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。
  311. 木内四郎

    委員長木内四郎君) これより直ちに討論に入りたいと思います。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。通告がございますので、これより順次発言を許可いたします。横川正市君。
  312. 横川正市

    ○横川正市君 私は、日本社会党を代表して、昭和三十七年度予算補正二号の三案に反対の討論を申し上げたいと思います。  三十七年度の補正は、前回の補正を含めまして総額一千三百六十五億円で、当初予算の五・六%を示している膨大な額になっておるのであります。しかして、これらが大災害等のために補正したのならばともかく、そうではなくして巨額の補正をするということは、これは予算の執行の建前からいって異常な形と言わなければなりません。政府が当初予算の歳入見積もりであやまちを犯した結果であります。膨大な自然増収を出したために、真に必要な経費予算に組むというのではなくして、この金を使うために補正をするというような、逆な、全く乱雑な財政運営の傾向が見られるわけであります。すなわち、本補正予算の歳出額八百二十一億のうち、義務的経費の補てんに二百六億円を計上されていますが、細部にわたって検対すれば、義務的経費といっても、当初予算の編成がずさんであったために必要とされた経費や、三十八年度に計上されるべき費用が含まれているということであります。残りの大半を占めるのは、産投会計繰り入れ三百五十億円と、地方交付税交付金二百三十七億円でありますが、後者は歳入の増加を計上したはね返りですから、補正の中心は産投の繰り入れにあることは明確であります。財政法二十九条によりますと、補正予算の提出は「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった場合」と明確にうたっております。私が指摘したいのは、本補正予算は看板に偽りがあるわけであります。名は三十七年度の補正予算でありますけれども、その実態は三十八年度予算の前座を務めるものであります。すなわち、今回の補正で繰り入れる三百五十億円を三十八年度に九十三億円支出する構想は、大蔵省の三十八年度予算原案にはなかったはずであります。ところが、三十八年度予算編成の過程で圧力団体や与党政調部会の予算ぶんどり合戦に追い込まれた政府が、財政融資を大幅に拡大し、そのために必要になった融資財源の確保に三十七年度の歳入から九十三億円を回さなければつじつまが合わなくなったという経過は、すでに周知のとおりであります。  以上が本補正予算編成の実際の姿であると思うのでありますが、かりに一歩を譲りまして、政府の説明のごとくに、産投会計の原資不足であるとしても、これは財政法二十九条の「予算作成後に生じた事由」ではなくして、三十七年度本予算編成の際確定していた事実であります。すなわち、その一は、産投会計原資が不足した最大の原因は、何といってもガリオア・エロアの対日援助資金の返済であります。毎年百五十億を上回る返済を産投会計から行なえば、同会計の原資の不足が目に見えることはあたりまえであります。わが党がガリオア・エロアの返済協定審議の際に口をすっぱくして指摘した点でありまして、しかし当時政府は見返り資金の運用益で支払いは十分だと主張いたしたではありませんか。返済開始半年を出ずして原資が不足した、こういう口実で一般会計から巨額の繰り入れをはかっておるのが実態であります。これは結局、一般財源、すなわち税金をもってガリオア・エロアの返済をやっておるということにほかならないと思うのであります。  その二は、特定物資納付金処理特別会計からの繰り入れがなくなった点であります。この会計が三十七年六月四日に廃止されることは、三十七年度予算編成の当時にすでに既定の方針としてきまっていたのであります。これはまたあらかじめわかっていたことであります。  また、その三として、産投会計が資金として持っていた原資がなくなった点であります。三十五年度に繰り入れた資金三百五十億円は、三十六年度に三百億円、三十七年度に百五十億円使われてゼロとなることは、これまた予定されていたところであります。  以上、この原資不足の原因は、いずれも予算編成前に当然予想せられたというよりも、予定された既定の政府方針として行なわるべきものであった、これはもうだれが考えてもそう考えるところだろうと思うのでありしまて、財政法二十九条の要件に合致したものではないと思うのであります。四十回国会において、財政法二十九条を「特に緊要となった経費」と改めた意味について、同条改正の国会審議の際に、わが党の木村禧八郎委員が「補正予算を組む要件を緩和した印象を受けるがどうか」と質問したのに対して、政府は、改正前の「必要避けることのできない」という意味と全く同一で、決して補正予算の要件緩和ではないと答弁をいたしております。しかし、今回の補正は、三十九年度以降に使う金を主たる内容とするもので、「特に緊要」でも、「必要避けることのできないもの」でもないことは明白であります。この具体的な事例に対して、どうお考えでしょうか。これらの点がこの委員会の席上で明らかにされなかったということは、きわめて遺憾だと私は思うのであります。法規の解釈として、例外規定はこれは厳格に解釈をするのが当然であると思います。二十九条がそもそも単一予算主義の例外規定でありますから、その要件はできる限り厳格に規制すべきでありまして、政府の、財政法の改正を悪用して、あたかも自由に補正が組めると解釈することは、問題であると思うのであります。これは、財政政府考えだけでなく、民主的なルールに従って運営することを定めた財政法の建前を無視したやり方であると言わなければなりません。かりに百歩を譲って、資金繰り入れが財政法上認められているとしても、財政政策の立場から、今回の補正にその内容を計上すべきかどうかは、はなはだ疑問とするところであります。  理由は、今回の繰り入れによって三十七年度剰余金は激減いたしております。政府提出の資料により計算すれば、今回補正後の剰余金はほぼ四百億円程度と見込まれております。三十一年度、三十五年度の補正予算で産投会計に繰り入れされたときには、剰余金はそのあとそれぞれ一千一億円、一千二百五十一億円と巨額となったのであります。その限りでは、後年度予算編成を著しく困難ならしめることはなかったのであります。しかし、今回は、その点で全く要件を異にしており、昭和三十九年度予算は著しい編成難に陥るであろうことは、何人も否定し得ないところであります。総理は、三十八年度は景気も回復するから、税収入もふえるから、三十九年度は減税をやり社会資本を拡充しても公債発行をやらずに済むようになるだろうと楽観論を述べておりますけれども、われわれは景気の前途についてはそう楽観的な状態ではないと判断いたしているのであります。冷静に三十九年度の予算考えると、普通財源による予算編成はほとんど不可能であると思われます。このように後年度予算を危殆ならしめるごとき今回の産投繰り入れは、財政政策上失当であると考えるべきであると思います。また、当初予算を含めて五百八十億という巨額なものを本年度産投会計に繰り入れるのでありますが、はたしてそれだけの緊要性があるのかどうか。現在最優先的に経費の必要を迫られておりますのは雪害対策費であります。一般会計予備費はわずかに二十億足らずであります。これこそ当初予算の際予定されていない経費で、財政法第二十九条にいう予算編成後に生じた緊急を要するという要件に該当するものであります。雪害は、衆参の本会議の議決からも当然補正予算を組むべき義務があったのであります。少なくとも、三十八年度に使わない産投会計資金への繰り入れば留保いたしまして、雪害対策に充てると発表することは、これはもう被害地にいる住民の皆さんの現在の不安や苦悩というのを幾らかでも緩和することに役立つことであります。国の政治の姿勢は、そういう方向で正しくとられるべきであると思うのであります。政府が本補正を何と説明いたしましても、これが三十八年度予算の前座で、それと一体となって、特に財政融資を通じて独占資本に奉仕をするものであることは明白であります。池田内閣の政治の姿勢と性格が、この補正(第2号)によって如実に示されたと言っても過言ではないと思うのであります。豪雪被害住民の血の出るような叫びも、私どもはこれをしっかりと耳にいたしまして、全国民の切実なる願いに水をかけた行為と考えるこの予算に対しては、政府に強く反省を求めるところであります。  わが党初め、多くの国民の正当なる主張を入れ、産投会計への繰り入れを減額をいたしまして、雪害対策のために予算を留保し、組みかえを提出すべきであることを強く要求いたしまして、反対討論を終わります。(拍手)
  313. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 小平芳平君。
  314. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、公明会を代表して、ただいま議題となっております昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)外二件に対し、反対の討論をいたします。  今回の補正予算の内容のうち、的なものは別として、反対の理由を、以下簡単に申し述べます。  第一に、最近の予算編成に関してであります。最近は、毎年補正予算が組まれる、どうせ補正が組まれるならば、というわけで、財源の見積もりをほどほどにして、そのときのぶんどり合戦を押えているとさえ批判されているのであります。当初予算の編成は、歳入歳出とも、できるだけ正確にすることが望ましく、さらに予算編成はもっと明るみへ出して、国民の納得のできる形で行なわれなければならないと考えるのであります。  第二には、すでに幾度か議論のかわされてきている産投会計繰り入れの問題であります。今回の補正では、産投会計の繰り入れが三百五十億円であり、昭和三十八年度の繰入額をはるかに上回って三十九年以降に備えた繰り入れをしている点であります。財政法が改正されたので、法律上の問題はないと言われましても、現在の逼迫した生活事情、経済事情から考えて、大衆ははなはだ納得のできないものが残るのであります。  第三には、今回の予算補正の財源は税の自然増収によるものであります。こうした増収による財源は、減税して国民に還元するとか、あるいは社会保障などにもつと優先して力を入れていくべきであると考えます。特に、昭和三十八年度予算案における減税はきわめて不満足のものであります。経済の成長発展に伴って、もっとあたたかい施策を望んでやまないのであります。  第四には、現在もっと緊急な施策を要求する問題が多い点であります。所得倍増のかけ声は、ある部面に、物価が倍増し、あるいは借金倍増となって現われたといわれております。政府は、すみやかに、所得倍増計画の陰に取り残される中小企業、あるいは農漁村等の対策を講じていかなければならないと思います。石炭産業に対しては、産炭地の振興、離職者の援護対策が強く望まれているし、失対労務者もまた、首切り、失対打ち切りの不安に脅かされております。こうした問題は、すみやかに解決していかなければならないと考えます。  さらに重要なのは、北陸方面を中心に襲った豪雪対策であります。補正予算を強く要求する声を政府は押えて、万全の対策を講ずると言っておられますが、当面の復興対策とともに、恒久的な対策をすみやかに樹立し推進しなければならないのであります。さらに、国土全体が豪雨や台風があれば莫大な人命にも及ぶような被害を生ずる危険な状態にあり、一方では、深刻な水飢饉に悩むというような現状にあります。こうした数多くの問題をすみやかに処理できるよう予算措置を講ずべきであると考えます。  以上の理由をもって、反対の討論を終わります。(拍手)   —————————————
  315. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいま委員の変更がございました。小山邦太郎君が辞任され、その補欠として西田信一君が選任されました。   —————————————
  316. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 向井長年君。
  317. 向井長年

    ○向井長年君 私は、政府提出の昭和三十七年度予算第二次補正三案に対して、民主社会党を代表いたしまして、反対の趣旨を明らかにいたしたいと存じます。  政府案に反対する第一の理由は、政府は、何ゆえに財政法の運用を曲解して、多額の産投会計資金への繰り入れを行なったのか、根本的な問題として、この点について了解できないところであります。  政府案は、一般会計予算補正八百二十一億円のうちで、義務的諸経費の不足補てんと、地方交付税交付金の合証約四百七十一億円を除けば、残りの三百五十億円はすべて産投会計資金への繰り入れであり、これが唯一の政策的補正であります。しかも、三百五十億円のうち、本年度内に使われるものは皆無であります。明年度における財政融資原資として九十三億円が使用され、残りの二百五十七億円は蓄積のまま据え置くというのが政府案であります。  私は、本年度における租税収入の自然増加が大幅に増加し、かつ年度内において全く政策的補正歳出をなすべき案件がないというならば、財政法第二十九条第二項に基づく予算修正として、今回の政府案のような産投会計資金への繰り入れも認めないものではありませんが、今回の補正財源となった八百二十一億円の所得税と法人税の自然増収額は、第一次補正財源となった五百四十一億円の租税自然増収分と合算して、本年度の自然増収分の財布の底をはたいた財源の先食い編成といわなければなりません。私は、当面使用のめどもない歳出補正のために、このような貴重なる財源の先食い補正をする政府案を認めることはできないのであります。  次に、政府案に反対する第二の理由は、政府は、今回の補正の機会において当然に果たすべき政策的補正を全く怠っているからであります。政府は、余裕財源があるならば、まず第一に、所得倍増政策失敗の尻ぬぐいとしての政策補強のための補正に当たるべきであります。この意味におきまして、石炭対策、炭鉱離職者対策、高校急増対策予算補正を行なうべきであり、また、政府は、生活保護基準並びに日雇労務者給与を明年度の予算において引き上げる方針を立てている事実にかんがみまして、財源の許す限り、その方針のもとに、年度内よりの繰り上げ実施を行なうべきであります。また、昨年の人事院勧告による公務員給与引き上げの完全実施、これに伴うところの給与水準改定によりますと、管理職にあらざる二十五年以上勤続の中小学校の教職員の給与は非常に不利になるのでありまして、この不合理を是正すべきであります。  なお、第一次補正以後に生じた、補正を必要とする雪害対策問題があります。今回の雪害は、予備費支出でまかなえばいいというような、年中行事的な雪害ではないことは周知のとおりであります。今回の雪害対策は、単なる末端行政の強化で済む問題ではございません。これから雪解け期に向けて、なおも雪害がさらに拡大するおそれが必至となっているのでありまして、雪害対策費は必ず予算補正の対象となすべきであります。したがって、わが民社党は、今回の八百二十一億円の補正の規模はそのまま据え置いて、義務的経費の不足補てんと、地方交付税交付金の金額は政府案どおりにして、産投会計資金への繰り入れは、明年度財政融資計画に予定している九十三億円だけを計上し、残りの二百五十七億円は、先ほど申し上げた年度内のあらゆる政策補正費としてこれを計上し、実施すべきであると強く要請するものであります。  これらの措置がいれられない限りにおいて、第二次補正に対しては、残念ながら賛成することはできません。  以上、反対の趣旨を明らかにして、私の討論を終わります。(拍手)
  318. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 須藤五郎君。
  319. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、日本共産党を代表して、三十七年度補正予算に反対いたします。  政府は、総額八百二十一億円の一般会計補正予算に、義務教育費国庫負担費、生活保護費、失業保険費負担金、国民健康保険助成費など、特に緊要となった経費の不足を補てんしたといっていますが、これは、池田内閣の失政の一つである物価上昇に伴って、最小限義務的に補てんをしたのに過ぎないのであって、必要経費に比べてはるかに少ない金額を補てんしたに過ぎないのであります。  しかし、政府の主たる目的は、これら国民生活の緊要な問題に配慮するところにあるのではなくて、産投会計に三百五十億円を繰り入れるところにあるのであります。しかも、その実体は、三十七年度に使われるのではなくて、三十八年度に使用を予定されている金であり、しかも、その使途がはっきりしているのは、わずか九十三億円に過ぎず、残り二百五十七億円は、政府政治的に使おうとしていることは明らかであります。全く、政府は詐術を専し、国民を欺いて、政府の都合のよいように予算編成をやっているのであり、予算編成権を乱用しているといわなければなりません。  この補正二百五十七億円の使途は、私が質問の中で明らかにしたごとく、一つは、やれ自由化対策、やれ不況産業へのてこ入れと称し、海運企業へ約百億円をただでくれてやり、また、独占資本の補強費であり、さらに重大なことは、日韓会談の早期妥結を予定して、韓国へ有償無償の援助費百八十億円をひねり出そうというものであります。しかも、この三百五十億円の財源は、すべて勤労所得税、申告所得及び中小法人税であって、自然増収と称して、勤労者、中小商工業者からしぼれるだけしぼった税金がその財源となっているのであります。  他方、三十八年度産投会計の歳入としては、従来のような一般会計の繰り入れでは足りず、新しくアメリカからの外貨債受け入れ、政府保証債の発行で穴埋めしようとしております。このようにして、今や産投会計は、国家財政を不健全にし、国民経済を乱す根源になろうとしているだけでなく、アメリカと日本の金融独占資本が肥え太るための伏魔殿になろうとしているのであります。それだけではありません。この伏魔殿からアメリカに支払われるガリオア・エロア返済資金は、私が指摘したごとく、アメリカ大統領ケネディの中国封じ込め政策の資金として使われるものであり、また、日本人の魂を反共とアメリカ反動思想によって侵そうとするものであります。私の質問に対して、政府は、この点で言を左右にして、真相を隠そうとする態度をとったことは、きわめて遺憾であります。つまり、この三十七年度第二次補正予算の基本的性格は、アメリカの要求に基づくガリオア・エロア返済と、大独占資本のための金づくり財政措置を、人民からの収奪した税金によって行なおうとするものであります。  政府は、日本中をおおっているところの、人民の生活、中小企業の困難を無視し、今日何百万労働者が大幅し賃上げと最低賃金制の確立を要求して統一行動を行なっている、この要求に一顧だもせず、特に現在大問題になっている裏日本一帯の大雪害に対する措置を怠っているのであります。私は、これについて、政府に強く反省を求め、反対討論を終わります。
  320. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 以上をもちまして、討論通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより、三案の採決を行ないます。昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)、昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)、昭和三十七年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三案を一括して問題に供します。三案を可決することに賛成の方の御起立を願います。   〔賛成者起立〕
  321. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 多数でございます。よって三案は、多数をもって、可決すべきものと決定いたしました。  なお、三案の議長に提出する審査報告書の作成につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  322. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。さよう決定いたしました。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時六分散会