運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1963-02-14 第43回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月十四日(木曜日)    午前十時三十一分開会     —————————————   委員の異動  二月七日   辞任      補欠選任    秋山 長造君  松本 賢一君  二月八日   辞任      補欠選任    大竹平八郎君  森 八三一君  二月十三日   辞任      補欠選任    杉原 荒太君  丸茂 重貞君  二月十四日   辞任      補欠選任    近藤 信一君  吉田 法晴君    小林 篤一君  林   塩君    田上 松衞君  向井 長年君     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木内 四郎君    理事            大谷藤之助君            川上 為治君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            北村  暢君            横川 正市君            小平 芳平君            田畑 金光君    委員            井上 清一君            太田 正孝君            加藤 武徳君            木村篤太郎君            草葉 隆圓君            小林 英三君            小林 武治君            小柳 牧衞君            小山邦太郎君            木暮武太夫君            古池 信三君            河野 謙三君            館  哲二君            松野 孝一君            丸茂 重貞君            吉江 勝保君            稲葉 誠一君            大倉 精一君            瀬谷 英行君            戸叶  武君            羽生 三七君            藤田藤太郎君            松木 賢一君            山本伊三郎君            吉田 法晴君            鈴木 一弘君            北條 雋八君            森 八三一君            林   塩君            向井 長年君            須藤 五郎君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 中垣 國男君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 西村 英一君    農 林 大 臣 重政 誠之君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    郵 政 大 臣 小沢久太郎君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    建 設 大 臣 河野 一郎君    自 治 大 臣 篠田 弘作君    国 務 大 臣 志賀健次郎君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    総理府総務長官 徳安 實藏君    経済企画庁調整    局長      山本 重信君    経済企画庁総合    開発局長    大来佐武郎君    経済企画庁水資    源局長     崎谷 武男君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    大蔵政務次官  池田 清志君    大蔵省主計局長 石野 信一君    厚生大臣官房会    計課長     今村  譲君    厚生省児童局長 黒木 利克君    農林省畜産局長 村田 豊三君    通商産業省石炭    局長      中野 正一君    中小企業庁長官 樋詰 誠明君    中小企業庁指導    部長      影山 衛司君    運輸省海運局長 辻  章男君    運輸省港湾局長 比田  正君    労働省職業安定    局長      三治 重信君    建設省河川局長 山内 一郎君    建設省道路局長 平井  学君    自治省財政局長 奧野 誠亮君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    日本国有鉄道副    総裁      吾孫子 豊君   参考人    商工組合中央金    庫理事長    北野 重雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十七年度一般会計補正予算  (第2号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和三十七年度特別会計補正予算  (特第2号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和三十七年度政府関係機関補正予  算(機第2号)(内閣提出衆議院  送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。去る七日、秋山長造君が辞任せられ、その補欠として松本賢一君が選任せられました。翌八日、大竹平八郎君が辞任せられ、その補欠として森八三一君が選任せられました。十三日、杉原荒太君が辞任せられ、その補欠として丸茂市貞君が選任せられました。また、本日小林篤一君及び近藤信一君がそれぞれ辞任せられ、その補欠として林塩君及び吉田法晴君がそれぞれ選任せられました。     —————————————
  3. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)昭和三十七年度政府関係機関予算(機第2号)以上三案を一括して議題といたします。  三案は去る八日、衆議院から送付されまして、本付託になっておりますので、念のため申し上げておきます。  三案の取り扱いにつきまして、委員長及び理事打合会において協議いたしましたそのおもな内容について御報告いたします。  一、補正予算三案は本日及び明日の二日間で議了する。  二、質疑時間は二百九十分とし、その各会派への割り当ては、自由民主党百十分、社会党百八分、公明会二十七分、第二院クラブ民主社会党それぞれ十八分及び共産党九分とする。  三、質疑順位社会党自由民主党社会党公明会、第二院クラブ民主社会党社会党社会党共産党自由民主党社会党とする。  以上でございます。ただいま報告のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。それではこれより質擬に入ります。戸叶武君。
  5. 戸叶武

    戸叶武君 私は日本社会党を代表し、池田首相外交及び経済政策について質問いたします。  池田首相は、ヨーロッパを訪問以来、日本自由陣営の三本の柱の一つとして強固な協力体制を作るべきだということを強調しております。この三本の柱でありますが、ケネディ大統領も日ごろアメリカ、西欧、日本を三つの柱と同一の意味を説いておりますが、この池田首相の言う三本の柱とケネディ大統領の三本の柱とは同じ意味を持つものかどうか、また、先般訪日したギルパトリック米国国防次官は二月七日、帰国に際して、日本極東の地域で自由諸国の柱になっておることを確認したと声明しております。その彼が確認した自由諸国の柱、その意味はどういう意味を持つか。このことについて池田さんにお尋ねいたします。
  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は施政演説で、アメリカヨーロッパ、それからアジアにおける日本を三本の柱と言っております。しかし、ケネディ大統領が三本の柱と言われたことについて私は存じません。したがって、ケネディ大統領がどういう意味で言われたか、それはここでお答えする範囲ではないと思います。ただ、アイゼンハワー前大統領が一月十四日の雑誌にそういう意味のことを誓いておる。またギルパトリックアジアにおける日本地位が非常に強いということを言われたというお話でございます。これはギルパトリックの御意見でございます。私は批判がましいことは申しませんが、とにかく、アジアにおける日本というものに対しまして、アジア諸国が非常に日本の発展に対して驚異と、またそれにならっていこうという努力をしているということは、私も東南アジア旅行で感知したところでございます。
  7. 戸叶武

    戸叶武君 池田首相は、キューバ危機また中印国境紛争等をめぐりまして、これらの事実を指さしながら、単なる平和への要請や中立主義の思想がいかに非現実的であるかを立証する、こういう世界観の上に立って外交政策を押し進めているようでありますが、私は昨年十月二十二日キューバ危機に直面したときに、ちょうどワシントンにおりまして、ケネディ大統領演説も聞きましたが、あの危機に際してケネディ大統領が取った態度というものは、ソ連やキューバ指導者を攻撃すると同時に、それだけでなく、フルシチョフと話し合おう、また国連安保理事会において話し合いの場を持とう、そういう理性は失わなかったところに今日における米ソの歩み寄りというふうなものも出ているのです。また、中印国境紛争も、セイロンを中心としたアジア・アフリカの中立六カ国のあっせんによって、あのむずかしい問題すらも解決の曙光というものが見出されているのであります。これを見れば、この中立外交というものが池田さんが見るのと違って、きわめて現実的に具体的に効果をあげていると思われるのですが、あくまでも池田さんはこの世界の流れに逆らって、日本だけはそうはいかない、そういう考え方でもって外交政策を押し進めようとしているのでしょうか。
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、日本外交政策中立主義ではいかぬ、やはり日本の安全のためにアメリカ安保体制を作っていくことが必要だ、こういう意味からキューバ事件、あるいは中印国境紛争が起こる前から言っておるのでございます。しこうして、日本中立主義を取らないが、話し合いによって国連を通じて平和的にことを処理するということにつきましては、何らほかの方と変わっておりません。
  9. 戸叶武

    戸叶武君 私は一番心配なのは、アメリカケネディ大統領アジアに対する偏見と、池田首相の前から言っているのだというような、そうした世界の動きに即応しない対米従属の硬直した外交政策、こういうものが私は非常に危険なところへきているのじゃないかと思うのです。ケネディ大統領は十二月三日のあのケネディ発言の際にも、現在アジアにとって非常な危険な時期であるというような、グレート・デンジャーという認識の上に立ってアメリカアジア政策を押し進めているのであります。これに私たちが従属するならば、このケネディ感情の中に埋没するならば、日本外交独自性を失っていくならば、このアジア政策に対してきわめてあぶない冒険政策に導かれる危険性があるのです。この前にも池田首相は、ラオス、南ベトナム、中印国境にいろいろな問題があるが、しかし必ずしもアメリカと一緒の態度外交を進めないのだということを一応言っておりますけれども、今のような話を聞いて、ますます池田さんの硬直した外交というものに対してあぶなつかしさを感ずるのですが、この世界の変動に対応するだけの柔軟性池田さんは持とうとしないのか、それを承りたい。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今の戸叶さんのお話は、十年あまり前に、日本安保条約あるいは平和条約を結んだならば極東が不安で危機がくると言っておられました。しかし、われわれはあなた方のそういう議論は賛成できず、われわれは平和条約を結び、安保条約を結んで今日の日本の安全をきたしておるのであります。今からもう十数年前からお考えが変わっております、われわれと。しかしわれわれの考えがいいということは、私は今の情勢からいって、私は国民はこれを是認していると思うのであります。何も硬直した考えではございません。日本独自の考え方で、どういうふうに外交をしたら極東の平和、世界の平和に貢献できるかという独自的な考え方で進んできているのであります。
  11. 戸叶武

    戸叶武君 池田さんは話を十数年前にそらそうとしておりますが、私はキューバ危機以後における今日の問題を池田さんに聞こうとしているんです。あの十二月二十一日の参議院の予算委員会においても、私はケネディ発言コンテインなり、ブリベントなりを問題にしたのは、封じ込めと訳するのが正しいとか、封じ込めと訳するのがごまかしだと、そういう言葉や翻訳の点を問題にしたのではないのです。あのケネディ演説の中に表われているものは、われわれの一つの大問題はアジア共産主義の拡張をどのようにしてコンテインするかの問題です。具体的に西ヨーロッパNATOを通じ、東南アジアでSEATOを通じて行なっているコンテイン、また同様に韓国及び中華民国すなわち台湾の政権ですが、に対する約束を果たしているこのことを、アメリカパートナーとしての日本がどのような役割を果たしてくれるか、こういうケネディは率直な呼びかけだと思うのであります。これに対して日本は具体的に回答を示さなければならないと思いますが、池田さんはどういう回答をいたしておりますか。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 十二月三日のケネディ大統領昼食会における発言について、日本に対して回答を求めておりません。回答しておりません。ただ回答しなくても、日本アジアにおける共産主義拡大については、これを阻止するために、できるだけ憲法上その他の関係で与えられたことについて日本は協力するということを向こうは感知しております。また共産主義拡大を阻止することは、われわれ外交政策としてとっているところでございます。
  13. 戸叶武

    戸叶武君 ケネディ大統領年頭教書は、減税案税制改革によって国内を固め、一方NATO中心とする自由防衛組織を強化し、共産主義進出の阻止をはかることを明らかにしております。減税は三年間に百三十五億ドルであります。またドル防衛のため軍事援助三億ドル減、経済援助一億五千万ドル減であります。このアメリカ世界政策に即応して、今アメリカ日本に求めているのは、国際舞台で建設的な役割アメリカパートナーとしての日本が果たしてくれという呼びかけを現実に行なっているのであります。回答を行なう必要がないとかあるとかでなく、これだけの呼びかけがあったのに対して、回答を持ち合わせないということは、一国の総理大臣としての不見識であります。アメリカで具体的に日本に要請している日韓会談早期妥結は、この前にアメリカケネディ大統領選挙のあった直後に池田さんが行ったときから引き続いてケネディが呼びかけております。昨年も十月十八日に佐藤榮作氏と会ったときにすらこの問題を呼びかけております。その次に十三月三日のケネディ発言となり、そういうふうに年頭教書に至るまで一貫して私は呼びかけていると思うんです。その行方というものは、日韓会談足がかりとして、日本日本台湾南鮮、ここにNEAT結成足がかりを作ろうとしていることは明らかであるということが一般の識者の見ているところであります。池田さんは私は存じないというかもしれませんけれども、そういう意味において日韓会談早期妥結を急ぐということは非常に重大だと思いますが、池田さんはどういう考えを持っておりますか。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 自由国家群の強力な一員といたしまして、ことにわれわれは、低開発国——東南アジア諸国経済開発につきましては、アメリカその他の自由国家群の方々と協力して援助しているのであります。こういうことはいわゆるパートナーシップと言えましょう、しかしこれは日本の独自の考えでいっている、アメリカにもアメリカ考えがございましょう。しかしそれぞれ一致して低開発国開発努力しているのであります。  なおまた日韓問題につきましては、御承知のとおりケネディ大統領の就任後起こった問題ではございません。もう十年前からこの問題——すなわち日韓正常化をやろうということは、日本政府の既定の方針でございます。ケネディ大統領から言われたからやっているとかなんとかという問題ではないのであります。そういうことはやはり日本国自体として考えていくべきだ、私はそういう立場で議論していきたいと思います。
  15. 戸叶武

    戸叶武君 私は池田さんに、まだ低開発国の問題は質問しておらないのですが、池田さんは巧みに焦点をぼかして低開発国のほうに、裏道のほうに逃げ込もうとしておりますが、私は日韓会談ほど、最近の外交の中で不明朗なものはないと思うのであります。池田さんはわかっているかしれない、大平さんはわかっているかしれないが、国民の大部分は、最近東京を襲っているスモッグの中で鼻をつままれておるような状態で、さっぱりわからない。私はこの機会にこの霧を切り払って国民の前に、日韓会談というものはこういうものなんだ、こういうふうな過程を経て、こう変わって来たということを、池田さんなり大平さんなりから、国会を通じて発言してもらわないと、朝鮮のほうではわかっている、アメリカのほうではわかっているけれども東京のどまん中ではわからないというのでは、これはたいへんなことでございますから、この機会に、私は詳細に御説明を願いたいと思います。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま総理大臣が申されたとおり、この問題は十年来の懸案でございまして、数々の努力が過去においてなされたのでございますが、遺憾ながら今日に至るまで妥結を見るに至っていないわけでございます。  それで問題は、国交正常化をすべきか、すべからざるかという大前提の問題になりますと、私どもは今日の事態は、両国にとりまして不幸かつ不自然な状態であるから、でき得べくんば国交正常化の道を切り開くべく努力すべきであるという立場に立っているわけでございまして、しからば国交正常化を目指すといたしますると、その前提といたしまして、戸叶さんも御承知のように、数々の懸案があるわけでございまして、この懸案に妥当な解決をもたらしまして、国交正常化前提に横たわる障害物を除去しなければならぬわけでございます。で、今までの努力は、その懸案をどのように消化し、解決して参るかということに集中いたしているわけでございます。で、その懸案の中で、それぞれの懸案に軽重の別はございませんけれども、特に請求権の問題あるいは漁業問題等は世人から異常な関心をもってみられているわけでございまして、で、こういう懸案をどの懸案から先に手がけて参るかということは、交渉の進め方の技術問題でございまして、私どもといたしましては、第六次予備折衝以来まず最初請求権の問題に取り組んだわけでございます。請求権の問題というのは、御案内のように平和条約におきまして、日韓双方で取りきめをすることになっているわけでございまして、この問題をどう片づけるかという方法論として、御案内のように法律的な根拠があり、かつ事実関係立証されるものに限ろうじゃないかということで、去年以来鋭意そういう方法によって解決ができるか、できないか、検討して参ったのでございまするが、不幸にいたしまして、日韓双方の間には法律問題として、法律論に大きな見解相違がございます。  まず最初日韓併合という問題の評価自体が、もう根本的に違っているわけでございまするし、わが国が持っておる実定法の効力というものに対しましての評価も、日韓双方には根本的な見解の引違があるわけでございまして、こういう方法によって請求権を片づけようという場合に、共通の当盤、すなわち法律解釈の上におきましては少なくとも一致したものがなければ、この方法によって請求権を片づければいいということはできないのでございます。  なお、事実問題でございますが、十数年たっておりまするので、事実関係証拠書類が散逸したものもございましょうし、また、放逸したものをどういう方法で推定するかという推定の方法につきましても、また日韓の間に大きな見解相違があることが判明いたしたわけでございます。したがいまして、こういう問題は、法律的根拠、かつ事実の立証等を待ちまして問題を解決しようといたしましても、これは不可能、また不可能に近いものでなかろうかということに相なりましたので、去年の秋以来いろいろ工夫をこらしまして、この問題を解決する現実に可能な方法といたしましては、請求権を、請求権の実体を通じて解決するということでなくて、これは別な考え方でいかざるを得ないのではないか。すなわち、わが国は旧宗主国として、また隣邦といたしまして、韓国の将来、日韓関係の将来の展望に立ちまして経済協力をする、そういうことを先方に示し、その随伴的な結果として、先方は対日請求権がないんだということを、なくなったのであるということを確認するということによって平和条約に要請されておりまする請求権の処理をしようというのが私ども考え方でございまして、この考え方につきましては、先方大筋において同意を示して参りまして、先般衆議院でも申し上げましたように、無償三億、有償二億ドルというものを十年間に考えるということで一応の経過的な合意を見ておるわけでございます。もっともこれは、日韓問題は全懸案を一括して同時に解決するという基本方針をとっておりまするので、この問題は、全体の懸案が片づきまして、双方正常化前提に横たわる全部の問題について合意を見るまでは法的拘束力を持つものでございませんけれども、しかし、一応そういった了解がただいま得られておるわけでございます。  なお、細目につきましてはなお検討中でございます。その他の漁業問題、法的地位問題等につきましては、今せっかく分科会を開きまして双方見解調整に努めているというのが現段階の、ただいままでの経過及び現状はそうなっておるわけでございます。
  17. 戸叶武

    戸叶武君 大平外務大臣としては、とにかく今までにない誠意を持った説明だと思います。しかし、まだ霧は完全に晴れておりません。これは、推理小説ではありませんが、どうもいろいろな複雑なものが入り組んでおるのでありまして、一番最初に私は池田さんにお尋ねするのでありますが、この日韓問題というものは、日朝間における国交正常化というために行なわれている交渉だと思うのでありますが、今、大平外務大臣の話によると、請求権問題、漁業問題から入ってはみたが、なかなかこれではらちがあかないので、将来の展望に即して、そして一括して同時に問題を解決すると、それで、経済協力という形で大筋了解を取りつけたということでありますが、その当事者の間においては、大筋において了解をしたといっても、この問題は背後における国民感情というものもあるのでありまして、世論のいろんな批判も受けるのでありますから、そういうことに対して十分私はしっかりした理論的根拠を持たなければいけないと思うのですが、第一にお尋ねいたしますが、日韓会談中心課題というものは、やはり対日財産請求権の問題だと思います。対日財産請求権の問題を経済協力という形にすり変えて、それでこの朝鮮における人民が納得するというふうに池田さんなり大平さんはお考えですか。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 双方国民の納得の上に立って、その理解を得て全懸案の終息をはかって参らなければならぬということは、お示しのとおり、私はそういう基本の信念に立ってやっておるわけでございます。問題は、先ほど私が申し上げましたように、しからばそれをどういう方法によって解決するかという方法論になりますると、先ほど申し上げましたように、法律的根拠がはっきりし、事実関係立証可能なものだとしてやるのが一番ベストな方法だと思います。私どもも鋭意その方法によって結論を見出すべく努力いたしたのでございまするけれども、事実の立証法律解釈が根本的に相対立したものでございまして、こういう方法によっては、この問題を解釈することができない。もしりっぱな方法があって、これは可能だという方法があれば、いつでも私はそれを採用するにやぶさかでございませんけれども、私どもとしては、そういう方法によって請求権問題を片づけることは、これはもう不可能であるという判断に立ったわけでございまするので、経済協力という方法を別途講ずることによって、この問題はもう請求権というものはなくなったんだというように双方合意すること以外に、この問題は解決する方法は私はないと判断して、そういう方法で今妥結をはかるべく努力をしておるという実情でございます。
  19. 戸叶武

    戸叶武君 今、政府日韓会談の行き方というものは、本質論を無視して、そうして解決方法論という名でもってこの裏道から入ろうとしておりますが、このことは、私は、外交を取り扱う上において、あとで必ず問題が起きると思うのであります。そこで、最近韓国の崔徳新外務部長官は、二月十一日の記者会見で、日韓会談は、現在請求権問題が無償三億ドル、政府借款二億ドル、民間ベース一億ドルという線で山を越えたと発表しております。この表現はなかなか含みのある表現だと思いますが、外務大臣、そのようなことになっておりますか。
  20. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 無償三億ドル、有償二億ドル、十年間に考えるということ、あわせて対韓債権四千五百七十三万ドル、ああいうものは一定期間に御返済を願うということにつきまして合意をいたしておるわけでございますが、まだ細目、すなわち協定上どういう文言にするか、あるいは焦げつき債権の返済期間を何年間にするかというような点については、まだ完全な合意に達していませんので、今双方で協議中でございます。  それから最後に、戸叶先生が言われました一億ドルの借款という点につきましては、双方合意いたしておるわけじゃございません。ただ、日韓の間におきましては、貿易が御承知のように往復一億三、四千万ドルございます。わが国が普通の貿易上の延べ払いその他の信用供与もございまするし、民間の企業進出もございまするし、こういうことは、私どもは相当額は、将来わが国、民間において考えられるであろうという観測は、先方にも申し上げてございまするけれども、そしてそれはおそらく一億ドルや二億ドルではなく、もっとたくさんあるんじゃなかろうか、こう思いまするが、最後に一億ドル以上の云々というような点は、双方合意しておるわけではございません。事実は民間側でやられることでございまするので、相当額のものになるだろうということは予想いたしております。
  21. 戸叶武

    戸叶武君 崔外交部長の無償三億ドル、政府借款二億ドル、民間ベース一億ドル、この線を大体御確認のようでありますが、池田外交の最近における失敗というものは、こういうところにいろんなつまづきを具体的に出しているのでありまして、私たちがガリオア・エロアの問題、タイ特別円処理の問題のときにおいても当惑したのでありますが、あのときにも、タイ国における国民感情ということを理由といたしまして、拙劣にタイ特別円処理の問題に対して政府は逃げ込んでおるのであります。百五十億円の、無償五十四億円、有償九十六億円、この日タイ間で協定を行なって批准までした問題でありまして、あのときには、条約の明文上「投資、及びクレジット」とまで明確に書いてあったのにもかかわらず、タイの国民感情が許さないからというので、その後昭和三十六年十一月、池田首相がタイを訪問した際に、何ら外務省とも打ち合わせをしないのでしょう。あっさりとサリット首相に無償で支払うということを放言し、そして政府はそのしりぬぐいを、国会の承認を求めたのですが、私はこの辺に、もうすでに前に失敗していることだから、一度やったことは二度やっても一向さしつかえないという伏線があって、こういう含みを持ってこうい丁ことを推し進めているのかもしれませんが、大平外務大臣はおとぼけがうまいようですけれども、大体そういうような失敗を繰り返さないつもりで話は進めているのですか。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 能力の限りを尽くしまして、国民に御納得のいくようにするにはいかにしたらいいかということに、日夜苦吟しながら努力をいたしておるわけでございます。
  23. 戸叶武

    戸叶武君 問題はあちら側だけでなく、日本人の国民感情ということをもう少し日本の外務大臣だから知っておくことが必要だと思うのです。池田さんが、三十七年に入ってから、外務、大蔵両省に対して、請求権の問題で具体的な調査を命じたときに、大蔵省で調べたのは、一千六百万ドル、すなわち二千万ドル以下であり、外務省においては五千万ドル程度であったのであります。その後、韓国側の七億ドルないし六億ドルという請求と、金額に大きな開きがあるというので、いろいろな歩み寄りをやって今日に至ったのでありますが、日本国民感情として、政府でもって法律的な根拠なりあるいは正確な証拠書類なりの具備しているものは、大蔵省の調べだと二千万ドル以下、外務省の調べだと五千万ドル程度だと言われたやつが、いつの間にか韓国側のベースの上にだけ乗って、そうして今日のような段階にきた。このことは、韓国に行ってから、あの大ぶろしきの大野副総裁ですら、大平というやつはとんでもねえことをしちゃって、それがみんなテープレコーダーにとられているじゃないかと慨嘆したと、新聞のゴシップも飛んでおりますが、もう過ぎ去ったことは政府としては仕方がないと思っているのでしょうけれども、この辺に、日韓会談早期妥結の推進者としての大平外務大臣なり大野自民党副総裁なりの責任というものは、私は非常に大きいと思うのですが、大平さんはどうお考えですか。
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 非常に重大な責任を持っておると思います。
  25. 戸叶武

    戸叶武君 これは大平さんに聞くのじゃなくて、池田さんにやはり聞くのがほんとうでした。どうも失礼しました。  池田さんの親書を持って大野副総裁は韓国にまかり出たのでありますが、あの大野副総裁の親善使節というものは、いかなる資格によってこの日韓交渉の中において重大な役割を果たしたのでしょうか。自民党の総裁であり池田内閣の総理大臣である池田さんにお尋ねいたします。
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大野副総裁は、個人の資格で日韓親善増進のために訪問されたのであります。
  27. 戸叶武

    戸叶武君 個人の資格といったって、自民党の副総裁、実力者、それから池田総理の親書を持参している。こういう昔からお墨つきというのがありまして、お墨つきを持って韓国にまかり出たからには、池田さんの責任が重大であるということを大平さんと同じように認めなくちゃいかぬと思います。池田さんの親書を持って行った大野副総裁は、韓国から日本に帰って、羽田空港におりたとたんに新聞記者の方に、日韓会談は朴軍事政権のもとに早期妥結を急ぐべきである、民政移管後になると、政党が結成され、議会が復活されてむずかしくなるからという談話を発表しております。この副総裁談話に対して、個人の資格だからといって池田さんはそれを否認するか、また、それと見解が異なるものか、その点を明らかにしてもらいたい。
  28. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大野副総裁の発言は十分承知しておりませんが、私といたしましては、できるだけ早く日韓正常化を実らしたいという気持は前から申し上げておるとおりでございます。
  29. 戸叶武

    戸叶武君 できるだけ早くというのは、八月の民政移管後じゃなくて、この非合法手段によって政権を獲得した朴電撃政権のもとにおいて早期妥結を急ぐ、そういう見解ですか。
  30. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は韓国の政権のいかんということは問わない。それが国を代表するものであれば、軍事政権のときにできればそのとき、また民政移管のときにできれば民政移管のとき、こういう考え方を持っております。向こうの相手がどういう政権でなければならぬという気持を私は持っておりません。
  31. 戸叶武

    戸叶武君 おかしなことを聞く。池田さんはいつでもソ連なり中国を攻撃するときには全体主義国家だからと言って攻撃し、われわれ自由陣営とか民主国家群とかいう言葉でもって言いますが、そういう軍事的な手段によって非合法政権を獲得している、隣にそういう非常事態が起きても、ノーマルな状態でなくても、何でもいいからその政権なら相手にするというお考えのようですが、これがやはり私は将来において問題を必ず起こすと思うのです。朝日新聞で長谷部忠君のような比較的穏健な良識者といわれる人でも、朴軍事政権は非合法手段で政権を取った暫定的な過渡的政権であるから、本年八月民政移管後に日韓会談を行なうべきであるという説を提唱しております。この考え方は長谷部君だけじゃなく——われわれの考え方とも若干違っておりますが——ある日本の有識者の私は政府に対する警告だと思いますが、こういう警告に対して池田さんは耳をどの程度傾けておりますか。
  32. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御意見としては聞いております。しかし、そのとおりにいくかいかぬかは、まだこれからの交渉によってきまることであります。
  33. 戸叶武

    戸叶武君 これは私は前の大野さんの発言といい、池田さんの発言といい、われわれが議会政治を認めていく建前において、非常に私はあぶない指導者をわれわれは持っておると思うのです。大野さんの発言が新聞に載ったことが韓国側に伝わったときに、日韓会談はいかに早期に妥結したとしても、民政移管後において政党ができ、国会が開かれたときにおいて、何だそのようないきさつでもって日韓会談妥結したかということになれば、国民感情として、主権者としての人民に理解なしに、どさくさの軍事政権となれ合いでもってこの話はまとめたのだといって、必ず私はこの日韓会談というものは打ち砕かれると思うのです。少なくとも政治が異常な状態にあるときに、その異常な状態に対して冷静にそれを見守るだけの観察力がなければ、外交を推し進めてかえってそれが百年のあやまちを犯すことになると思いますが、池田さんどうですか。現実に今日の韓国の混乱はどうですか。
  34. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどお答えしたところに尽きると思います。
  35. 戸叶武

    戸叶武君 国民は非常にあぶながっていると思います。きのうきょうの新聞をごらんなさい。金さんが一切の公職をやめるとかやめないとかいう話だけじゃなく、中心人物である朴さんも大統領に出ない、出られないというような意見すらも出ております。こういう不安定な政権を相手に、そうしてそこで日韓会談を作り上げて、そのときの政府を相手にして作ったのだから仕方がないという形においてもの笑いになるような外交だけは、日本総理大臣並びに外務大臣は断じてしてはいけません。国民は許しません。これは大切なことです。やはり私は、できるならば大野副総裁をこの席に招いて、どういういきさつであの市大なときにおける役割を果たし、そしてあのような発言を行なったか、この大野発言というものは必ず尾を引いて、朝鮮において私は大問題になると思います。そういう日韓会談における重要な役割をした大野副総裁に対して池田首相はあくまでも責任をとらぬというのですか。
  36. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 責任の問題じゃないと思います。大野さんは個人で行かれて、そうして日韓関係友好親善に努力するつもりで行かれたのであります。私はこれによって友好関係が増進されたと考えておるのであります。
  37. 戸叶武

    戸叶武君 これは、この日韓会談の過程においてもう一つ考えなければならぬのは朝鮮のオーソリティの問題です。私たちは、古くさい主権論の論争に時を費そうというのではありませんが、政府は、韓国朝鮮半島における地位をどのように認めているか。条約にどう規定するつもりか。請求権の及ぶ地域の問題並びに北朝鮮への帰還問題で、日韓の主張が今日まででも大きく食い違っておるのです。この調整をどうするつもりか。今まで政府の答弁によると、一九四八年十二月十二日の国連総会の決議を根拠として、大韓民国は唯一の合法政権であるというような規定を行なっておりますが、事実問題として、何人も大韓民国は全朝鮮を代表する唯一の正統政権であるということは認めがたいものがあるのであります。現実的な処理として請求権問題をどういうふうに処理しようとするか、それを承りたい。
  38. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、平和条約四条で日韓の間で請求権の処理をすることに、取りきめをやるということになっておるわけでございまして、私どもはそれをくみましてその問題の解決に当たっておるわけであります。で大韓民国の実効的な管理が南朝鮮に限られておるという事実は十分念頭に置いてやってみるわけでございます。
  39. 戸叶武

    戸叶武君 これは条約を作るときの技術だけの問題じゃなくて、台湾との日華議定書の場合においても、外務省ではあのときは西村条約局長が非常に骨を折ったと思いますが、あのときにたしか台湾、澎湖島という、今の国民政府の統治地域に制約して、そうして協定を作ったと思います。そういうような方式でやるのかどうか、政府はいろいろ考えておると思いますが、われわれは朝鮮民族の悲願というものが南北朝鮮の統一を目ざしておる。この統一を阻害するような形においてこの日韓会談をもっていくということは、あとで朝鮮半島をして東洋のバルカンにするような紛争の渦の中にぶち込んでいくような役割日本はする結果になると思うし、また、韓国憲法において明らかに全朝鮮にわたる主権というものを明記しているのであります。今度のこの日韓会談のやり方いかんによっては、主権に対する制約ということも起きるのでありますが、それに対しては現実的にどういう形で調整しようとしておりますか。
  40. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) われわれも朝鮮半島の統一ということを希求することにおいては人後に落ちないものでございます。しかしながら、これは朝鮮の問題でございます。御承知のように、国連方式によって統一をはかるか、国連の介入を許さないかという二つの方式で南北の間に意見の杆格があるということは、戸叶君御承知のとおりであります。しかし、これはあくまでも朝鮮半島の問題であります。私どもといたしましては、現実国連の決議で認められ、五十七カ国によって承認されている大韓民国政府というものを相手にいたしまして、今ある不自然の状態を解消して双方の互恵の関係を結びたいということを念願しているわけでございまして、このことは南北の朝鮮の統一を阻害するとは決して思っておらないのでありまして、むしろ今ある状態を改善しておくことが統一にとりまして、非常に積極的な貢献があるものと思うわけでございまして、そういう南北の朝鮮の分裂の問題は、これは世界情勢そのものからそういう結果を来たしているわけでありまして、私どもが行なう会議がこの統一を阻害するなどということは、私はいわれなき非難でございます。そういう責任転嫁の議論には、私どもとしてはくみするわけには参りません。
  41. 戸叶武

    戸叶武君 条約技術からいっても、これは台湾の問題と違って非常にむずかしくなるのだと思いますが、池田総理大臣はどういうふうな御見解ですか。
  42. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおり、日華条約につきましてもいろいろ考慮をいたしたような状態でございます。また、韓国におきましても今の現状から見まして、いろいろ想をめぐらして、そうして両者で納得するような方向で解決いたしたいと思います。
  43. 戸叶武

    戸叶武君 どうも池田さんも、大平さんの返事も、声も内容も低くて聞きとれないのですが、結論的に私は民政移管後でなければ、どんなに早くやろうとしても事実できないという認定のしにもう政府も立たざるを得なくなったと思いますから、これはまた別な機会にいたします。そこで池田さんの一番生命としている高度経済成長政策でありますが、これは完全に行き詰まって……。
  44. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。戸叶君がほかの質問に移りそうでありますので、一言だけお伺いいたします。  今の日韓会談問題で、朴議長が大統領選挙に出るかどうかということに関連して、韓国の内情は必ずしも安定したものではありません。そこで池田内閣は、多年の懸案である日韓会談をこの機会にやりたいという気持は、立場の違いはあってもわかりますけれども、しかし、一日を争うそういう早急性はないと思います。様子を十分見た上でも、少しも日韓の、総理の言われる親善を妨げるものではないと思います。十分その意味では内政のあり方というものを検討されて、その上で事を進められてもいい条件であろうと思います。そんな早急性はありません。そこで、やって失敗すれば池田内閣の責任だからけっこうじゃないかというような、そういう議論を私たちは少しもしようとは思わないので、むしろ与党とか野党という立場を離れてまじめな意味でもう少し様子をごらんになったほうがいいじゃないかという気がいたしますので、この機会韓国の内政と関連をしてしばらく様子をごらんになる意思はないかどうか、ひとつ総理の所見を承らしていただきたい。
  45. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) われわれは韓国が安定し、伸びていくことを、政治的にも経済的にも望んでおります。したがって、私はほかの機会に申し上げたと思いますが、決してこれをあせってはおりません。あせってはおりませんけれども、なるべく早くやりたい、急いではおります。これが私の気持であるのであります。ただ問題は、その日その日に出ます新聞記事を見て、ああでもないこうでもないという磯論は私は取れないのであります。やはり様子を長い目で見ながら着実にあせらずに、そうしてできるだけ早い機会に、こういうことで進んでおるのであります。
  46. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一度……。総理に申し上げておきますが、その日その日の新聞を見てどうこうということじゃないので、ずっと一貫した韓国の政情の不安定ということは、日韓問題で私たちの念頭にあるわけです。毎日の新聞を見て、それで私の所見がああなったりこうなったり、そういうことではないのでありますから、これは回答を求めませんが、これは総理、誤解のないようにお願いします。
  47. 戸叶武

    戸叶武君 私は、日韓問題は、大体池田内閣の命取りになるもので、これはガンと同じに連鎖反応が必ず起きますから、池田内閣の生命も長くても来年まででしょうから、早く死のうとするならばお急ぎもけっこうだと思いますけれども国民がこれは非常に迷惑すると思います。  そこでもう一つ池田内閣のガンは、やはり経済政策のつまづきだと思います。一本調子な高度経済成長政策というものが非常な行き詰まりを来たしたので、それでこれをどういうふうに打開するかという点を今池田内閣は模索中であって、貿易振興第一ということを一応掲げておりますが、との程度の輸出振興第一なのか、その点を承りたい。
  48. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 高度成長政策が行き詰まりだというふうなお考えならば、私が説明いたしましても意味はないと思います。私は、大体これは満点ではございませんが、将来振り返って見て、私のとった経済高度成長政策というものは、そういうあなた方がおっしゃるように失敗だったとは私は思っていないのでございます。満点ではございませんが、とにかく日本の歩むべき道を歩んできたと私は考えます。したがって、今後の問題は、生産設備が非常にできておる、生産力があるのでございますから、これを国内の健全な消費に向けることはもちろんでございますが、国際収支の関係上、どうしてもやはり輸出増加によって日本の経済をもう一段と大きいものにしていかなければならぬと考えております。  で、輸出増強政策といたしましては、政府としていろいろな政策をとらなければなりません。税制上におきましても、また、金融上におきましても、また、財政上におきましてもいろいろ方策を講じなければなりませんが、しかし、何といっても自由主義経済のもとにおきましては、経済の基盤が強化されて、そうして経済に当たる人々の心がまえが一番大切だと思うのであります。政府といたしましては、そういう気持を民間の方が持っていただくように、努力していただくようにあらゆる措置を講じ、また、その情勢次第によって今後起こるべき必要な施策に対して対処する心がまえで進んでおるのであります。
  49. 戸叶武

    戸叶武君 ひとつ企画庁長官、それから通産大臣から。
  50. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま総理から答弁があったとおりでございますが、失敗成功という点につきましては、過去数年間国民の実質所得がほぼ六%以上毎年伸びております。しかもその伸び方が、いわゆる格差の解消のほうに向かって伸びておる。それは所得の五分位層で考えましても、下のほうほど伸びが大きゅうございますし、また、企業において三十人以下、三十人以上の常雇用を分けてみますと、小さい企業のほうが伸びが大きい、かなりその点顕著でございますから、大局的に見て私は経済政策として誤っていないと考えております。  輸出振興策につきましては、ただいま総理が述べられたとおりでございますが、とりわけ私どもとしては、対外的にはやはり対日差別の撤廃でありますとか、秩序ある輸出、そういうようなことに従来より以上に力を注ぐべきだと考えます。
  51. 福田一

    国務大臣(福田一君) ただいま総理と企画庁長官から述べられたところで尽きておると思いますが、われわれの立場からしますというと、中小企業に与える影響等も十分考慮いたさなければなりません。そういう観点から見て、われわれとしては滞貨をどういうふうにしていったらいいか。また、設備をどういうふうに今後稼働させるようにすべきか等の問題も含めて研究し、また、今後は輸出においては、場合によっては輸出入銀行のいわゆる短期延べ払いのこの制度というもの等も活用いたしまして、ある程度輸出をそういう面でも国内の滞貨を払拭するために活用していってはどうかというような考え方もとっておるわけでございます。
  52. 戸叶武

    戸叶武君 大蔵大臣にお尋ねします。貿易の自由化は八八%から九〇%へとだんだん移行していくのに際し、この八条国へ移行しようとしておりますが、あなたはなるべく早い機会にということを言っておりますが、その早い機会にというのは来年九月にIMFの総会が東京で開かれる以前を意味するのでしょうが、何日ごろになりますか。
  53. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 八条国に移行しなければならないということにつきましては政府もしばしば申し上げておりますが、御承知のように、国内産業体制の整備もございますし、それに対応して法制上の整備その他もございますので、今年中に移行するということはむずかしいというふうに考えられるわけであります。おおむね来年中という考え方でございます。来年の九月にはIMFの総会及び世銀の総会が東京で行なわれる予定がほぼ確定いたしておりますので、その時期までには自由化体制を整えながら、八条国移行の実費的なわが国考え方を明らかにしていかなければならないと、このように考えております。
  54. 戸叶武

    戸叶武君 その以前に外相なり、また、もう十一年もたった日米通商航海条約や通商拡大法など米国との関係というものを調整しなければならないと思いますが、それはいつごろまでにやりますか。
  55. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 御承知のとおり、米国との関係は密接不可分のものでありますから、この問題につきましてはことし、この十九日にガットの理事会がございますが、そこで日本態度も明らかにいたされるわけでありますので、これを契機にして政府部内の意見を調整をしながら、諸般の問題について討議をすると同町に、交渉を進めて参らなければならないと、このように考えております。
  56. 戸叶武

    戸叶武君 非自由化のものが一二%になっておるが、その中で品目としては二百工十四品目残っておるのでありますが、酪農製品のような農作物、自動車、電子計算機というような国際競争力が弱いのは、相当な期間自由化が困難だと思いますが、この二百五十四を百品目程度に減らすという場合に、残る百品目のおもなるものはどういうものですか。
  57. 福田一

    国務大臣(福田一君) 百品目という数字がどこから出てきたか存じませんが、われわれといたしましては、すでに八八%の自由化を達成いたしまして、これに対して諸外国とも一応日本が非常な努力をしてここまでやったということを認めております。そこで今後の自由化の考え方でございますが、御承知のように、外国は自由化をしておるといっても、それぞれ日本に対しては制限を、差別待遇を欧米各国は相当しております。また、アメリカにしてもカナダにしても、日本に対しては自主規制というのを相当やっておることは御承知のとおりでございます。こういうような状態において、われわれが今後自由化をいたしていく場合にも、これらの点をにらみ合わして考えていくべきでございまして、そういう意味からいって、もちろんわれわれは自由化をしていくという方向には努力をいたします。個々の品目についても順次それを進めて参りますが、そういう各国との状況をよくにらみ合わしてやっていくということでございますので、ただいまのところ、百品目残すとかあるいは百工十品目残すとかあるいはこの自由化をするのが百品目だというきめ方はいたしておらないわけでございます。
  58. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ちょっと関連。ちょっとタイミングがおくれたのですが、先ほど経済企画庁長官が五分位によると低所得者のほうがいわゆる所得の率が伸びておるという御答弁でございましたが、私のデータが違うかどうか知りませんが、三十六年度による五分位層を見ますると、第一では九・三%、第二では一〇・四%、第三では一〇・七%、第四では一一・一%、上になるほど伸びておるようにデータが出ておるのですが、今の御答弁とちょっと食い違うので、お教え願いたいと思います。
  59. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 必要がございましたら統計局の家計調査の資料を後ほど差し上げたいと存じますが、一番最近のところを申し上げますが、三十七年の一月から九月まで、第一分位一九・一%、一番上の第五分位九・五%であります。平均いたしますと、確かに第一分位より第二分位が多少高い節もございますが、上と下を比べますと、いずれの場合も第一分位のほうが高いということは言えると思います。いずれ資料は差し上げます。
  60. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あしたまたくわしく質問いたしますが、先ほどの答弁の印象を受けますと、三十七年度はなるほどまだ最後は出ておりません。まだ年度半ばで出ておりませんが、いわゆる完全統計をとった三十六年度の五分位でいくと、いわゆる正確な数字からいうと、やはり上のほうが上がっておる。これはもう事実出されておる。したがって、そういう答弁は非常に印象的に下のほうが上がっておるのだというから私は質問しておる。その点はあしたともかく尋ねますけれども、データを出していただきたい。
  61. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) データをお出しいたします。三十六年だけが平均に比べて第一分位が低いのでありまして、三十四、三十五、三十七、いずれも平均よりも第一分位が高い、こういうことでございます。
  62. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 平均との問題はまたやりますけれども、いわゆる各五分位によって見ますとやはり下のほうが低いですよ。この点はまたあしたやりますけれども戸叶先生にも相済まぬからここでおきます。
  63. 戸叶武

    戸叶武君 貿易の問題で、やはり為替制限の撤廃ということが当面の問題に当然なってくると思うのでありますが、この問題に対して政府はどういう処置を行なうか。現在国際的な関税一括引き下げということは、EEC加盟に失敗したイギリスを中心としてアメリカと結んで私は急速に展開されてくると思いますが、政府としては、OECDに来年の三、四月ごろ入るのですか、ことしですか、OECDにいつ入ろうとしているのですか。  それから今まで政府は、自由化を関税政策でカバーしようとしていたが、それはもうくずれてきた、これに対してどう対処しようとしておるか、そういうことをお聞きします。
  64. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 便宜OECDの分についてだけ私から申し上げますが、昨年の募れの閣僚会議で、わが国としてOECDに、より十全の参画をいたしたいという希望を口頭で私から表明をいたしました。その前に、総理大臣が訪問されました各国に対してはそういう意向を表明され、さらに在外公館を通じてその他の国にもそういう意向を表明をいたしておるわけでございます。その後、EECのイギリスの問題などもございましたが、今日のところ関係各国すべてと申し上げてよろしいかと思いますが、わが国のOECDへの加盟に対して好意的でございますから、おそらくは今年の秋あるいは暮れに近い閣僚会議等で、わが国は何らかの形で、おそらくは全面的な加盟ということが可能なんではないか、ただいまのところはそう予測をいたしております。
  65. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 御承知のとおり、IMFの八条国移行勧告によりまして為替制限は順次撤廃されていかなければならないことは、御承知のとおりでございますが、先ほども申し上げましたように、アメリカとの交渉、それからガットの場における日本の実情の説明、それからこれの諸制度の整備等を——これらの事態に処して体制整備を行なっていきたいと考えております。  それから関税の問題でございますが、関税の一括引き下げにつきましては、総理からもしばしば政府基本方針を申し述べておりますように、一括引き下げに応じていくという体制でございます。特にイギリスのEEC加盟の中断をいたした結果、アメリカが御承知のとおりの関税一括引き下げを提唱いたしておりますし、EFTA諸国に対する交渉、接触も非常に激しくなっておりますが、わが国としては、関税一括引き下げの基本態度をきめて、ガットの場その他において十分諸外国と連絡をとりながら順次引き下げの方向に対処して参りたいと、このように考えております。
  66. 戸叶武

    戸叶武君 この貿易の問題でヨーロッパのEECでも一番の悩みになっておるのは、やはり各国における農業保護政策の調整だと思いますが、世界的な経済変動のあらしの中にあって、日本の立ちおくれている農業をどういう形において防衛していくか。特に今乳価問題等が問題になっておりますが、酪農製品に与える影響というものは非常に大きいと思いますが、農林大臣にこの機会に御見解を承りたい。
  67. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) 御意見のとおりでありますが、現在の段階におきましては、酪農製品について自由化するということは、非常に困難だと考えます。しかし、いつまでも現状でいくわけには参りませんから、酪農経営自体の体質の改善を急速にやるつもりでおるのであります。それがためには第一に、飼料問題について牧草を七割以上飼料として食わすような方向に向かって進もう、それがために必要とあれば国有林も開放しよう、こういう決心をいたしておるわけでございます。
  68. 戸叶武

    戸叶武君 どうも私の質問の的がはずれているようですが……私の質問に対する答えの的がはずれているようですが、私の質問もあるいははずれていたかもしれませんが、どうも重政さんはときどき的をはずすのが名人ですからもっと具体的に質問します。昨年私は、世界の農業国においては先進国と言われているデンマークをたずねて、デンマークの農業協同組合の中心の人々に会いましたが、デンマークのような国でも一九五五年から一九六一年の間に農業における生産所得並びに賃金が大体において工業部門から見ると三〇%落ち込んでしまった。それが直接影響があって、そして農業労働者というものはなだれを打って工業部門に流れ込んでしまって、経営規模の大きいデンマークとしては危機に見舞われておる。これに対する処置として、イギリスではこの農業に対する補助金政策が国の予算の五%から出て問題になっているが、デンマークにおいてはそれを上回る六%の補助金を出して、そして具体的な政策を通じて乳牛一頭幾らというふうな補助金も出して、この酪農製品の輸出というものをささえているということを聞きましたが、こういうふうに各国で悩んでいる問題なんです。まあ人のことだなんて——今度は日本がたいへんなんですよ、重政さん、あなたのことではなくて、酪農製品全体に対して、今の乳価の問題に対してずいぶんでたらめやっているじゃありませんか。時間がないからあまりこまかく聞くこともできないと思うのだが、とにかくはっきりもう少し言って下さい。
  69. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) 的をはずしたつもりはないのです。結局生産のコスト・ダウンをやらなければ国際的に競争するわけには参らないから、そこでその根本は何といっても飼料である。原料に向かう生乳のコストを一面においてはダウンしなければならない。その根本を私はまあ申し上げたわけでありまして、別に的をはずしたつもりはないのです。
  70. 戸叶武

    戸叶武君 今当面問題になっている乳価の問題でもそうでしょう。政府は簡単にこれを政府で買い上げれば何とかなるのだということでもって買い上げをやる。在庫過剰であるからこれを買い上げれば何とかなるんだというふうにやってみても、事実上その政府自体として在庫製品がどれだけ過剰になっているかということも正確につかまれないで、事実はそれほど過剰になっていない模様でありますが、そういうふうに政府の施策というものが非常にどじを踏んでいるのじゃないかと思う点が一点。それから乳価というものはどこの国の統計を見ましても、生産農民の手から離れた価格が倍以上の値で消費者の手に渡っているというようなことはないのです。日本ではそれが三倍にもたっているのです。こういう矛盾というものに対して正確なデータをもって、たとえば乳牛を買ってそれを養ってその費用が幾らかかるとか、その輸送費がどうだとか、メーカーのところにおいて低温殺菌その他の処理がどうだとか、あるいは一般の家庭に配達するところの輸送費はどうだとか、そういうデータをもって正確に私は生産者の手取りはどれだけ、メーカーはどう、それから末端の消費者に手渡すための配給機構はどれだけのものを取ったらいいかということを出さなくちゃいかぬということを、もう何年かかかってやっていますが、ひとつ農林大臣に、この次は聞くと前には言っておったんですから、答えて下さい。
  71. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) 乳製品の買い上げを畜産振興事業団で今回二十億現にやらしているわけであります。これは在庫数量によって買い上げをやるのではないことは御承知のとおりでありまして、畜産物の価格安定法の示すところによりまして、乳製品の価格支持をやっております。その価格より低下して、さらに低下する傾向が大きいという場合に買い上げをやるのでありまして、今回の買い上げもそういうわけでありまして、在庫の調査もできております。しかし、在庫があるから直ちに買い上げるというわけには参らないわけでありまして、価格が下落をいたしましたから、買い上げる、そこで自然に在庫も減り、値段も正当価格を維持することができると思うのであります。そういうことになりますと、原料乳の値下げというようなこともこれは停止することができる、こういうのでやっておるのであります。二十億の買い上げをいたします際に、これ以上奨励金の減額はさせない、いたしませんということの誓約をとりました。それと同時に、すでに一円ないし二円の奨励金の減額をいたしておりますものは、すみやかに減額前の状態に復するということを強く要請をいたしております。乳製品の買い上げは御承知のとおり、二、二千も工場、倉庫が全国にある中から買うのでありますから、相当受け渡しあるいは代金の支払い等について時日がかかるのでありますが、二月の終わりまでにはこれを何とか完了いたしたいと考えております。その上で三月の初旬にはさらに私は製造会社に対して乳価の復元を交渉をいたす決心でおるわけであります。それから御承知のとおりに、生乳の価格は一升五十二円ときめられておりますが、これもやはり畜安法によりまして、その審議会で検討してきめられておるものでありまして、これは生産費その他諸般の条件を十分に検討された結果そういうことになっておるわけであります。今日の問題はその五十二円でなくして、その上に七円なり、あるいは六円なりの奨励金が各社から出されております、それが減額せられたということが問題になっておるわけであります。
  72. 戸叶武

    戸叶武君 これは世界じゅうどこを旅行したって、日本のようなインチキ牛乳のはんらんしているところはありません。自動車のはんらんは世界じゅうどこもはんらんしておりますけれども日本ほど何とか色をつけたごまかし牛乳のはんらんしているところはないんです。こういうようなところに、私は日本の酪農の健全なる発展というものを阻害するのは、非常に農政が行き届いていないからだと思うんですが、この中で在庫調査はできているというお話がありましたから、ここであらためて、業者なんかは百億ぐらいあるなどと言って、でたらめを言っていたようですが、農林省では正確に実態を把握したようですから、それを御説明願います。
  73. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) これは私も数字を持っておりませんが、大体の在庫の量というものはわかっておることと思いますから、後ほどひとつお知らせをいたします。
  74. 村田豊三

    政府委員(村田豊三君) 牛乳並びに乳製品の在庫調査は、統計法に基づきまして農林省統計調査部が全国的に調査を実施いたしております。その調査のほかに、畜産局が直接乳製品メーカーから業務報告といたしまして在庫の報告を求めております。その両方の調査並びに報告を突き合わせまして、大体今回の乳製品の在庫は、生乳に換算いたしまして十数万トンに達するという結果を確認いたしておる次第であります。
  75. 戸叶武

    戸叶武君 生乳に換算して現在どれだけ買い入れを行なったか、またはどれだけ買い入れを行なえる見込みか。
  76. 村田豊三

    政府委員(村田豊三君) 先ほど農林大臣から申し上げました、今回の畜産振興事業団によります買い入れは、乳製品メーカーの申し込みによって事業団が買い上げるという建前になっております。したがって、政府の側から、これだけ買ってやるからこれだけ持ってこいという建前になっていないことは、戸叶先生御承知のとおりであります。したがいまして、今回大よそ二十億という目安を政府は立てまして、ただいま乳製品メーカーの申し込みを受けつつございまして、すでに申し込みの締め切りをいたしましたけれども、それによりますると、全脂練乳、脱脂練乳、脱脂粉乳合わせまして、大体トン数にしまして一万一、二千トンという数量に相なります。
  77. 戸叶武

    戸叶武君 雪印六億、明治五億、森永四億、協同乳業一億、ほか三億六千万、そんなような大体買い上げをする予定ですか。
  78. 村田豊三

    政府委員(村田豊三君) ただいま各社別の申し込み、最終的なものの確認をいたしておりまするが、金額的に十八億五千万円ちょっとになると承知をいたしております。
  79. 戸叶武

    戸叶武君 この動きを見ても、在庫が非常に多いんだという宣伝は当たってないので、むしろ業者側の動きからこの騒ぎを起こしているのは、貿易自由化に備えて価格を引き下げよう、その犠牲を生産者のほうへ転嫁しようという動きがこうなっていると思うのです。せっかく伸びかかった日本の酪農に従事しているところの生産農民というものの打撃というものが一番大きいのにもかかわらず、業者だけをめんどう見ようというやり方からこういうことが起きていると思うのですが、ここで私は農林大臣にお尋ねしますが、もう一つ世界の農業政策というものは、単なる主要農作物の価格支持とか価格安定政策とかいう部分的な問題でなくて、池田さんの言ういわゆる高度経済成長政策、これは世界の趨勢です。池田さんの言っているのは、それは悪いというのじゃない。それに伴うもろもろのでこぼこを池田さんはかまわないで暴走しているから、とにかくひき逃げだけはよしてくれというのがわれわれの要求なんです。今どこの国でも農業というものが成長率において三分の一くらいに落ち込んでいる。これをどうやって生産基盤を培養し、あるいは近代化し、そして所得格差をなくさせ、労働に従事する人の生産費を償ってやり、また妥当な賃金を作り上げていこういうのが今の農業政策の基本だと思う。それがためにも、私は国家がもっと農業政策に愛情を持って犠牲を払わなくちゃいけない。西ドイツにおいて一九五五年に、今の大統領のリュプケ博士が食糧・農林大臣のときに農業基本法ができましたけれども、そのできた翌年にグリーン・レポートなり、グリーン・プランができましたときに、一九五六年には農林予算というものが一・八倍、約二倍近く伸びている。一九五七年には三・五倍、二倍半に伸びている。日本においては伸びていない。見せかけ農業であって、そうしてきわだったところにいろいろな何とかプラントを作るとか、モデル地区を作るとか言って騒ぎ回っているだけであって、実際においてこの落ち込んでいる農業生産基盤を高めて、そうして他産業との格差をすぼめていくという農業基本法の大眼目というものは、施策の中に生かされてきていない。私はこんなに愛情のない農業政策をやっている国はどこに行ってもないと思うのですけれども、農林予算というものは国の予算に比してどの程度になったか、国の予算と対比してどの程度のパーセンテージをとっているか、それをひとつ農林大臣から伺いたい。
  80. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) 三十八年度の一般会計の予算では、前年度に比べまして三十数億円の増となっておりますが、しかし、これは実質的に申しますと、前年度の経費で減となるものが食管会計繰り入れで百七十五億、災害復旧事業で七十三億等がありますので、これらを考えますと、実質的には三百億程度増加をいたしておると思うのであります。それから金融の面におきましては、新たに低利長期の金融制度を設けることにいたしまして、この面におきましては三百億円を低利長期の金融制度で運用することになっておるわけであります。金融の面におきましては、相当に前年に比べて増加をいたしておるような状態であります。
  81. 戸叶武

    戸叶武君 労働大臣が先ほどおらなかったのですが、参りましたか。
  82. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ちょっと申し上げますが、実は御了解を得て今公労協と会見中ということでありますので、どうしますか、あとにしますか、保留される……。先にほかの大臣というわけにいきませんか。
  83. 戸叶武

    戸叶武君 それでは、ひとつ総理大臣が何でも御承知だから……。  やはりこの貿易の自由化で一番問題になっているのは、外国で日本の低賃金を問題にしているのです。池田さんは、ヨーロッパに行っても、各所において、日本は低賃金じゃない、低賃金じゃないと言って説き回ったらしいが、なかなか向こうでは了解しないようですが、そのいきさつをひとつ承りたい。
  84. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本の低賃金問題は、数年前は国際的に相当の問題であったことはお話しのとおりでございます。最近、外国からいろいろ日本の経済事情、ことに労働事情をお調べになった方々は、必ずしも日本は低賃金じゃない。もちろん中小企業その他の小企業の労務者の賃金は、これは低うございますが、組織労働者、大産業の労働者の賃金というものは、その会社の福利施設等を考えれば、大体イタリア並みに大企業のほうは行っておるのではないかということが国際的に認められております。まず一番初めにそれを言い出したのは、昨年の初め参りましたイギリスのロンドン商工会議所の会頭だったかと思います。また、昨年の暮れにアメリカ経済開発委員会の三人が参りましたときも、前とはよほど認識が変わってきたようでございます。また、私がエアハルト氏に会いましたときも、前に日本に行ったときと事情はよほど変わってきているということをエアハルト経済相も言っております。大企業のほうの分は大体イタリア並みに行っておるのではないか。ただ、これは比較問題でございますが、イタリアがドイツ、イギリスとどうかということになりますと、イタリアはイギリス、ドイツに比べれば相当低い。そんならイギリス、ドイツはアメリカに比べたらどうかということになれば、これまた相当低いのであります。これはやはり比較論でございまして、少なくとも日本の労働賃金の上昇率等を考えると、昔とは違ってよほど低賃金問題に対しましての国際的認識は変わってきたと私は考えております。
  85. 戸叶武

    戸叶武君 日本の有力な労働組合の中でも、ウォルター・ルーサー氏の提案によって、賃金共同調査センターというものを設置することになったようですが、来月四日から発足するということですが、これは労働団体にのみまかせないで、政府のほうにおいてもそういうかまえを持つかどうか、それを承りたい。
  86. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 労働省におきましても、賃金につきまして特に新しい施策を考えていると私は聞いておるのであります。また、そうすべきだと思っております。
  87. 戸叶武

    戸叶武君 こまかいことはあとで労働大臣が帰ってきてからに質問を回すことにいたします。  そこでこの池田内閣の最近における財政金融政策を見ますると、やはり減税の問題に対しても、アメリカでも大幅な減税を行なっているのに、減税よりも池田さんは資本の蓄積のほうが大切だと言うし、公共投資のほうへもっと振り向けるべきだというような形において、税制調査会の報告というものを今度ほど踏みにじられたことはないと思うのでございますが、それにはやはり池田内閣としての一個の信念があってのやり方だと思いますけれども総理大臣並びに大蔵大臣から詳細に御見解を承りたい。
  88. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 減税につきましては、前に申し上げておりますように、内閣は年々減税を行なっているわけでございまして、本年度も平年度五百四十億円に及ぶ減税を行なって、今、法律案その他国会に御審議を求めているわけでございます。税制につきましては、内閣に税制調査会を新たに設けまして、昨年度で一応終わりました税制調査会の仕事を、今度新しい観点に立ちまして、これから三カ年くらいにわたって税制各般にわたっての答申を求めているわけでございます。今度の税制調査会の答申は、御承知のとおり、一般減税を行なうことを勧告いたしましたが、あわせて産業上の問題等に対しても配慮をすることを勧告いたしているわけでございます。しかも、この答申の時期は、三十八年度の財源がまだ確定をしない時期に行なわれたわけでございますが、政府はその後諸般の情勢を十分勘案をしました結果、税制調査会の答中を尊重し、しかも、産業政策その他につきましては、自由化その他、先ほども発言がございましたが、八条国移行等の諸条件を十分勘案をいたしまして、政策減税においては一歩進めた減税を行なったわけでございます。
  89. 戸叶武

    戸叶武君 総理はいかなる御見解ですか。
  90. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大蔵大臣の答えたとおりです。
  91. 戸叶武

    戸叶武君 やはり予算編成権が伝統的に大蔵大臣にあるという習慣があるので、経済に強い総理大臣も大蔵大臣に譲ったのでしょうが、実費的においては実際池田さんともう一人政調会長の圧力によって、結局大蔵大臣の意思というよりは、大衆に対して愛情を注ぐところの方式でなくて、独占資本に奉仕するような式の財政金融政策というものが大体作り上げられたのですが、今この不景気、行き詰まりというのを打開するためには、大衆の基盤というものをもっと育てなければならないので、エアハルトが言うように、大衆購買力というものが国民経済発展の基礎にならなければならない。それには減税を行なって中産階級の負担をもっと少なくしなければいけない。それから、社会保障を確立して、労働者の立場を強め、賃金をもっと高めて、物価に追いつくようにしなければならない。落ち込んでいるこの農業に対してもっと積極的な資本投下をやらなければならない。こういうことが、これは資本主義国ばかりでなく、ソ連においても、中国においても大きな反省となって今大転回をなされておるときに、池田内閣だけが逆コースをたどっておるんですが、そこで日韓会談というもので私たちは一番心配なのは、六割からの農民がいるところの韓国の停滞、混迷、その不安定なところで、アメリカの政策というものが共炭主義に対する防衛という形だけで押し込んでいるから、経済的な復興をおくらせてしまったんです。アメリカが今まで韓国に対して手をやいたのは、今まで軍事的な経済的な援助が、独裁政権を取り巻くところの腐敗政治家によって乱されて、何にもならなかったという会計検査院の報告もあるし、ケネディ大統領選挙において、納税者にこれ以上の負担を、多額の軍事援助を支払わせるようなことはしないという約束もあるし、にっちもさっちも行かなくなったので、池田さんが日本がうまく行っておる、あまり宣伝するものだから、そんなにうまく行っておるんならある程度君のほうに肩がわりするというような羽目に陥ったような、池田さんは今、弁慶立ち往生という形に来ておると思うのですが、私は、池田さんはそれで済むかもしれませんが、こんなことでもって日韓会談に首を突っ込んでしまったら、これは大化の改新の前の蘇我氏の腐敗政治と同じく、必ず私はそれに対する抵抗は生まれてくると思うのです。あの任那府を中心とする日本の軍部の腐敗、堕落。それから今のボス勢力というものが南鮮の腐敗政治と結んで日本の失敗。これこそ日本における大きな革命を誘導したような事例もあるのです。私は今三韓経営における日本の失敗、日韓合併における日本の失敗、それ以上の失敗を今ここでやって、これが海外派兵のきっかけとなり、憲法改正の導火線となるようなことがあってはならぬと思いますので、池田さんに対して、日韓会議はしばらくやめろ、そんな不安定な形において、もうあぶなくてあぶなくてだれも見ていられない。噴火山上にある。少なくとも八月の民政移管以前においてつまらないことをやるとやけどをする。国民が迷惑をする。池川内閣の命取りは早いほどいいかもしれないが、国民が迷惑しては困る。あとでおそらく問題を起こす。そういう点から、私は池田内閣総理大臣並びに外務大臣に対して、軽率なまねをするとたいへんなことになりますよという警告を発しながら、決意のほどを祈りたい。
  92. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) われわれは、日本の国情並びに世界の情勢を考えながら、これが最善であるということを決意してやっておるのであります。御議論は昔からいろいろございますが、外交上の問題あるいは財政の問題、しかし、われわれは国民とともに、いいと信ずることは断固としてやるという考えで進んでおるのでございます。
  93. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 戸叶君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  94. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいま委員の変更がございました。  田上松衞君が辞任せられ、その補欠として向井長年君が選任せられました。     —————————————
  95. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次は小柳牧衞君。質疑を願います。
  96. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 私は自由民主党を代表いたしまして、補正予算並びに当面の問題について若干のお尋ねをいたしたいと思います。  まず第一に、大蔵大臣にお尋ねいたしたいことは、三十七年度は、今回とで二回の補正予算をやった。その金額におきましても、当初予算に比較いたしまして五・六%、かなりの金額を計上することに相なったのであります。申すまでもなく、補正予算は、必要やむを得ざるもので、例外的なことであります。したがって、これの編成等には十分の注意を要すると存ずるのであります。しかるに、最近少なくとも一、二回は、補正予算を組むということが例のようになっております。これは、やむを得ざるものでありまするから、仕方がないと言えばそれまででありますけれども、予算制度の本旨にかんがみますると、あるいは財政の将来について考えまするというと、慎重にやらなければならぬことはもちろんでございます。のみならず、昨年財政法の第二十九条を改正いたしまして、やや考え方を異にしておるわけであります。したがって、世間では、あるいは補正予算というものは非常に安易な考えをもって編成をされるのではないか、また、編成並びに審議等においても同じような流れでやるのではないかというような疑惑がないわけでもございません。また、はなはだしきに至っては、予算編成のいろいろ予算獲得の波乱中にあってそれらのことを考え補正予算を予想するのだというような酷評すらもあるのでありますが、かくのごときことがあっては、わが国の予算制度に大きなおそれを与えるものと思うのであります。補正予算編成についての責任にある大蔵大臣のこれに対する所信を率直にお伺いいたしたいと存じます。
  97. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 予算は、御承知のとおり、憲法、財政法を基調としてあくまでも厳正に編成を行なうべきことはもちろんでございます。特に補正予算につきましては、予算編成後のやむを得ざる理由に基づいたものに限るべきであるという財政法の趣旨にのっとって、必要やむを得ざるもの以外に補正予算を組むべきでないという基本的な考え方に対しては、政府は厳にこれを守っているわけでございます。今度提案いたしました第二次補正予算も、その大半は、御承知のとおり義務的経費の年度内における不足分を補てんするものでございますし、産投会計に繰り入れます三百五十億の資金が問題にせられておると思いますが、先ほどからるる申し述べておりますとおり、日本の産業、日本の経済そのものを見るときに、有史上非常に困難な時期に逢着をいたしておりまして、それも施策を誤るならば、まさに民族将来にはかり知れない混乱とマイナスをもたらすおそれが多分にあるのでありまして、これらの事実に十分注視をし配慮をしなければならないことは、御承知のとおりでございます。産業投資特別会計は、対米債務支払等の関係もございまして資金はほとんど枯渇の状態でございまして、これらに対応する体制を政府としては当然国民のためにも整備すべきことはもちろんでございまして、財政法二十九条の規定に基づきまして産業投資特別会計への繰り入れをはかったわけでございまして、今度御審議を願っております第二次補正予算は、財政法を厳に守っておることはもちろんでございますが、将来補正予算に対して財政法上の字句や条文を広義に解釈したり、乱に流れるようなことがあってはならないという基本的な態度を堅持している次第でございます。
  98. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 補正予算の財源は、多くの場合においては自然増収であります。したがって、自然増収があるならば将来減税の財源にすべきである、また、補正予算においても減税をやっても差しつかえないじゃないかと、こういうような見方もあるようでありますが、減税補正予算との財源等の関係について大蔵大臣のお答えを願います。
  99. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 自然増収につきましては減税をすべきであるという議論が存することも私も承知をいたしておりますし、また、政府はたびたび申し上げておりますとおり、減税に重点的な態度をとっておりますことも御承知のとおりでございます。この内閣は特に減税内閣とも言われるようでありまして、過去一兆円余に上る減税を行ない、しかもその七〇%に及ぶものは所得税中心減税を行なって参ったわけでございます。昨年度まで両三年にわたり税制調査会で一応結論が出ましたが、先ほど申し述べましたとおり、新しく内閣の税制調査会を拡充強化いたしまして、これから両三年にわたって日本の税制そのものを抜本的に検討していただく。もちろん、この中には減税中心として政府が重点を置いておりますことは、言うを待たないわけでございます。その意味で、今度の提出いたしております三十八年度の予算におきましては五百四十億平年度減税を行なっておりますし、特に三十七年度は大幅な減税を行なったわけでございます。なお、産業投資特例会計等に繰り入れる資金も、減税とひとしく日本の現在としては重要な資金繰り入れでございますので、減税については、来年度、来々年度とこれからも政府態度を堅持していきますことでありますので、今年度の第二次補正については、産業投資特別会計の繰り入れを含めて三十七年度中に必要な経費について補正するにとどめたわけでございます。
  100. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 今度の補正予算におきまして、地方交付税の引当の額が確保されております。御承知のように、今回の雪害は、実にかつてない災害を与えておるのであります。地方それぞれにおいてかなり多くの負担を受けておるのであります。自治体におきましては、この際どうしても交付税、特に特別交付税等の増額をみな要求しておるのでありますが、今回の補正予算におきまして、少なくとも相当額の交付税の見通しがついたわけでありますが、交付税につきましてまず第一にお尋ねしたいことは、特別交付税、それは従来も一定のワクがありましてそれによって配分しておったの、でありますが、今回のこの雪害に際会いたしまして、特別交付税をどんなふうに配付するお見込みでありまするか。また、それらの財源について十分な用意があるのであるか、また、普通交付税との比率を変更してワクを拡大して特別交付税を配付するお考えがありますか、その点についてお尋ねいたす次第であります。
  101. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 今回の豪雪は、非常に町村財政にも大きな影響を及ぼしております。そこで、第一次、第二次の補正によりまして特別交付税は二百九十三億計上されたわけでありますが、その後の豪雪の状況にかんがみまして、明年度に繰り越した普通交付税の中から二十二億円を本年度雪害のために使う特別交付税として本年度分に回したわけであります。現在のところ、それ以上の特別交付税の増額は必要がないと、こう考えております。
  102. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 ただいまのお答えによりますると、そうすると、特別交付税の財源は少しも増しておらぬと、こういうお考えでございますか。
  103. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) ただいま申し上げましたように、先般の閣議におきまして、来年度に流用さるべき百二十二億円の普通交付税の中から、特に豪雪地帯に対する特別措置をするために、特別交付税として二十二億今年度使うべきワクを作ったわけでございます。でありますから、第一次、第二次補正後において二十二億の特別交付税がふえておるわけでございます。
  104. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 次に、普通交付税についてお尋ねいたしたいと思うのですが、普通交付税におきましては、例の測定単位につきまして寒冷補正というのがありますが、従来それによって配付しておるのでありまするが、寒冷補正というものはどういうことをねらっておるのか、また、内容はどうであるか、その点をお聞きしたいと思います。
  105. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 積雪寒冷に対しては、普通交付税に盛り込んでみておるわけであります。ところが、年度によりまして非常に寒冷の度が強かったり積雪の度が強かった場合には、途中において補正をいたします。ちょうど昭和三十六年度と昭和三十七年度では、三十七年度におきまして相当大幅な補正をいたしております。今回も、この豪雪の状況にかんがみまして、そういうふうに実情に応じてやっていきたいと、こういうふうに考えております。
  106. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 寒冷補正というのは、そうすると、寒冷の場合だけでなく、積雪の場合も考慮に入れるというのでありますか。今、市町村の当局者は、個々に豪雪補正を追加してもらいたいという要望もありまするが、しかし、従来の寒冷補正ということは、同時に豪雪も含んでおるのか、どういう処理をやっておられますか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  107. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 除雪とか雪の屋根おろしとか、そういう場合には普通交付税におきましても補正をするのでありますけれども、今回のような特別の豪雪の場合には、特別交付税で処理をしたい、こういうことであります。
  108. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 そうすると、特別交付税は、先ほどのように二十数億の財源を追加したというのであって、普通交付税におきましては、従来どおり寒冷ということを基準として例年どおり配付する、こういうので豪雪を見込んでおらないというように考えられますが、その点はどうでしょうか。
  109. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 豪雪の分は見込んでおりませんけれども、普通の雪の関係として交付税において二十四億ほどみておるわけであります。したがいまして、それを今回のような非常な豪雪あるいはまた特別の寒冷というような場合には配付したい、こういう考えであります。
  110. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 雪のために自治体が非常な負担を受けておるということは想像にかたくないのでありまするが、従来、これに対しまして、今お話のあったように、交付税で大体まかなうようにしておりまするが、私が二、三自分で調べたところによりまするというと、交付税あるいは特別交付税、そういうもので雪に関係するためにおいて増額される額というものが、市町村の雪に対して支出したものの半分もしくは三分の一にすぎないということでありまするが、自治省におきましては、雪のために自治体が支出する額と、雪のために基準として交付したる交付税、特別交付税の総額を、どういう割合になっておるか、もしお調べになっておりましたらお示しを願いたいと思います。
  111. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 雪の被害につきましては、現在のところ普通交付税の繰り上げ交付をいたしております。そこで、二月の四日に、新潟、富山、石川、福井に対しまして繰り上げ交付をいたしましたが、さらに、本日、災害対策本部と相談をいたしまして、調査団が派遣されました秋田、山形、福島、それから岐阜、京都、兵庫、鳥取、島根、広島、山口と、この十県に対しましても繰り上げ交付をすることにして、できる限り地方の財政がこの雪のために特に非常に困ることのないように配慮しておるわけでありまして、それ以上のことは、先ほど申しましたように、特別交付税で処置していく。そこで、特別交付税も今年度三十五億増加しておりまして、昨年度に比較いたしまして比較的災害がことしは少なかったわけでございます。そういう関係上、十分まかなえるものと、こういうふうに考えております。
  112. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 交付税の配付の時期並びに取り扱い等については、この次にお尋ねしようと思ったんですが、先に承りまして感謝いたす次第であります。  その前に、先ほどお尋ねしたことは、市町村において雪のために要する経費と、国でもって交付するところの特別、普通の総額と、どういう割合になっておるのか、おそらくはそれではとうてい市町村がやっていけないんじゃないか、こういうふうに思うのであって、それについて詳しいお調べあったらお示しを願いたいし、もしなお調べておらなければ、将来の政策の基本としてお調べをいただきたいと思うのであって、その点をお尋ねいたす次第であります。
  113. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 今回のような豪雪が将来もし続くということであれば、もちろんそういう措置をしなければなりませんが、従来のような場合は、先ほど申し上げましたように、それほど十分な措置というものは講じていないということでございます。
  114. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 雪に対しまして十分な認識をもって財政措置を十分にやっていただきたいという希望を述べまして、次に建設大臣にお尋ねいたしたいと思います。  今度の災害につきまして、建設関係のものは非常な大きな被害を受けて、また、将来に対してその復旧等に最も考慮しなければなりませんが、建設省におきましては、いち早くこれらについて除雪その他の処置を督励されまして相当の効果を上げておりまするが、一そうこの点について御留意をしていただいて、無雪道路を多くしてそうして交通の完璧を期するように、また、これに要する経費は補助なりその他についても十分の処置をしていただきたいと思うのでありますが、当面の緊急な雪害対策としてどういうお考えを持っておりまするか、建設大臣のお考えを承りたい。
  115. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知のとおり、今回の雪が、従来あまりたくさん降りませんところに降りましたために、思わざる災害を与えておる。したがいまして、従来でございましたらば、積雪地方は、比較的道幅を広くいたしますなり、また、舗装等も早めにやっておりますが、それが新潟の場合でもおくれておるわけでございます。したがって、この雪の対策といたしましては、まず道路交通をすみやかに開設すると同時に、三条の町を中心としたあの一連の中小都市について道幅の狭いところまで除雪する。かくいたしまして、ここらの燕、三条その他の地方には地方の中小企業が非常に発達いたしておりますので、これらの中小企業の交通途絶によって受ける損害をなるべく少なくするということに配慮しておるわけでございます。その他、鉄道、郵便、一級国道等につきましては、おおむね予定とは申しませんけれども、私参りましてから、そういう日程どおりに除雪は進行いたしておるというのが現状だと思います。
  116. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 日本の法令におきまして、雪の問題というものがほとんど最近まで出てこなかったということは、私はむしろ不思議に思うのでありまするが、建設土木の面におきましてもその例に漏れないと私は思います。たとえば道路法を見ましても、あるいは河川法を見ましても、あるいはまた、都市計画法を見ましても、ほとんど雪という字はないくらいであります。もちろん、道路法には雪の何か雪よけのようなものについてあるのですが、また道路構造令によりますというと、珍しく「飛雪」という言葉——飛ぶ雪というのがあります。しかし、降雪とかあるいは積雪という文字はございません。側溝という文字は方々にあるのですが、流雪溝という文字は探してもありません。また、都市計画におきまして雪の問題を考えなければ、これは非常なまずいことだと思うのです。もちろん、都市計画は地方の状況によって地方で裁断するのですから、必ずしも建設省だけでもありませんが、これまた非常に不思議なのであって、都市計画法施行令の二十一条を見ますと、綿密に防風、防火、防砂、防潮、あらゆる防というものを羅列して、それの処置を考えておるが、防雪という文字がないということは、全くそれを示すものでございます。こういうのを数え来たりまするというと、ほとんど建設土木の面につきましては雪というものを非常に軽く見ておるか、あるいは忘れておるのじゃないかと思うのでありまするが、今回の豪雪に際しまして、建設大臣であり、災害本部の長でおられるところの河野氏が、率先、軽装吹雪を冒して、現地を視察されたということは、従来例のないことで、心から敬意を表するのですが、しかし、その意気とその情熱をもって、従来、建設土木のほうに雪という文字がほとんど見当たらないような法制の抜本的改正を決意されることを望んでやまないのでありまするが、この点について河野大臣の御所見を承りたいと思います。
  117. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お話のとおりでございますが、ただ一つ三十二年、積雪寒冷地に対する法律が一本ございますが、しかしこれとても、お話のとおり、これによって何がしかの補助金をどうするこうするという程度でありまして、お話のとおりでございます。そこで、ただ考えなければなりませんことは、この雪の害が積雪常襲の地帯におきましては、すでにそれぞれにおきまして、ある程度自衛の道が講ぜられておりまして、その害が、同じ雪が降りましてもその配慮があるところと、ないところは非常に違います。たとえばなだれ等の害にいたしましても、今回の調査の結果によりましても、従来雪をあまり経験いたしませんために、山の伐採等についても皆伐をいたしておる。ところが、これだけ雪が降ってみると、山林の伐採にももう少し配慮していればよかったというようなことが、各地に出てきておるわけであります。そこで、これを法律の用語として、法律上の対象として取り上げる場合に、どういうふうに取り上げていくか。ただ雪の量できめるわけにも参りませんし、非常にそこに困難をきわめておりますが、すでに政府におきましては、各省の間に、この雪を法律上どの程度どう取り上げるかということについては目下検討をいたしております。いずれまあ、私の対策本部がそういう役目とは考えませんけれども、幸いそれぞれの機関の者が集まりまして、またこの経験を持っておりますものでありまするから、各省の連絡会議等について検討をして、その結論が出ましたらば、総理大臣にひとつお願い申し上げようということで、せっかく検討中でありますことを申し上げます。
  118. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 次に、路線の選定についてお伺いいたしたいのでありまするが、北海道、九州は別といたしまして、本州の路線の選定を見ますというと、いずれも北から南にわたりまして並行線で、いわゆる縦貫の道路に重きを置いているのであります。これはわが国の地形から申しましても、また経済の流れから申しましても、もう一つは、道路法制定の当時からも、また伝統から考えましても、やむを得ないということは了承いたしますけれども、またこれが必ずしも不当であるとは申しませんが、縦貫の道路があるならば、横断の道路もお考えになってしかるべきものであり、また場合によっては、横断ということが一そう重要な意義をもっていると思われる点さえあるのでありますが、今日いわゆる道路革命と申しましょうか、第三の道路と言われておりますところの高速自動車道路の路線の選定を見ましても、全部が青森より発して、そうして下関に至る。いわゆる文字どおり縦貫の高速道路でございます。この際に、横断というものを考えなければ、私は公平を欠き、国運の進展に沿わないものと思うのであります。ことに本州は、いわゆる表日本と裏日本との非常に格差があるのでありますし、いわんや、今日のような雪のあった場合に、一本の高速自動車道路があり、しかも、それが手ぎわよく除雪されるというならば、緊急の事態をずいぶん緩和しただろうと思うんです。要するに、路線の選定が縦貫に重点を置いて、横断に重点を置いてないということは、この際、大いに改めなければならぬと思うのでありまして、私どもが多年主張しております東京−新潟間の高速道路が一本あったら、大へん今度の災害にも役立ったろうと思いますし、また、世間で言われているところの仙台−秋田間、あるいは名古屋−福井間、さらに進んでは清水港より直江津に至る路線がもし除雪がされ、そうして高速に運転できるということであったならば、この問題についても非常に寄与するところが多かったと思いますけれども、また表日本と裏日本との格差の是正にも役立つと思うのでありますが、要するに横断高速道路についての大臣の御所見を承りたいと思います。
  119. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 私も、今回の雪害地を視察いたして参りました経験から申しまして、たとえて申しますれば、飛騨の高山線というようなものは、従来あまり重視せられておりませんでしたが、高度五百メートル程度のところで本州を横断いたしておりまして、この道が今回の雪害に非常に役立ったことは、御承知のとおりであります。従来、道路は既設のものを中心にして間々考えられた場合が多いのでございまして、それが一級、二級国道、県道に指定されておりますのが今日までの状況でございます。明年はぜひ第二次道路五カ年計画を新たに設定いたしたい。この機会に道路行政について抜本的な改定をいたしたい、同時に今お示しになりましたようなことにつきましても十分、配慮するとともに、各府県道につきましても全面的に検討いたしたいと考えておりますが、ただいまお示しになりました点につきましても、私ども全然同感でございます。そういう角度で検討いたしたいと考えております。
  120. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 ただいまお話しのとおり、少なくも本州においては、横断の路線が必要であるということは、今お答えのとおりであります。幸い新たに五カ年計画を作られるならば、この点を十分に考慮していただきたいと思います。私は縦断をよせというのではない。縦断と並んで横断の道路を十分によくするということに、日本の国策上、より留意していただきたいと思います。  最後に、私は総理大臣に雪の問題について御所見を承りたいと思います。先ほどごく簡単に申し上げましたが、実は日本の国策において雪ぐらい盲点に置かれているものはないと思うんです。ずいぶん明治以来たくさんの法令が出ておりますが、おそらくは、このうちから雪という活字を拾ったならば、まあ形容いたしますならば、暁天の星といっていいくらいです。幸い、先ほどの建設大臣のお話にあったように、災害の基本法もでき、さらに雪の特別措置法もできておりまして、非常にけっこうなことと思いまするが、これを基準として、円に対しての国策を勇敢に実行していただきたいと思います。  それで、これは単に土木だけではございません。各方面にわたっておりまするし、また雪の研究というものが実にどうも十分でない。たとえば北海道大学における「寒さと雪の研究」はおそらく世界的だと思うのです。しかしながら降る雪あるいは積もる雪ということについては研究がないので、つまり寒さと雪を研究することによって——これを解決する基本であるということはもちろんでありまするが、われわれの言うのは雪の社会的の関係、また民生安定の立場における雪のことなんです。これが国策に取り入れられなければなりませんが、明治以来、不幸にしてこの問題はほとんど取り入れていない。最近ようよう取り入れられるようになった。ところが日本は御承知のように、面積におきましては五九%の地域に雪が降るのであります。これに住んでおるところの人口が二九・九%という相当多数の国民があり、しかもこの国民は雪と戦い、雪に埋もれて、そうして黙々として長い間、ほとんど先祖以来国民としての義務を果たしてきたものであるということを考えまするならば、これらの人に対しては文明の恵沢に浴せしめるなり、また、あたたかい政治を行なうなり、そうしてまた経済的に申しまするならば国民全部が格差をなくして、その日を楽しんで生活し得るようにするということが、まことに必要なことと思うのであります。しかし今申しましたように、土木におきまして、あるいはまた地方制度におきまして、あるいはまた、きょうは申しませんでしたが、厚生の問題、あるいは教育の問題等々、ずいぶん関連するところがありまするから、幸い今度、雪に対するところの特別措置法もできております。もちろん、これは時限立法でありまするが、恒久対策といたしまして雪の問題を取り上げ、そうしてまた時代に沿うような国策をここに樹立していただきたいと思うのであります。先般わが参議院におきましては、各派共同提議にかかるところの決議案もやっておりまするし、従来幾たびも雪に対してはいろいろ意見を申し述べておるのでありまするが、このかつてない大雪を見、しかも今の特別措置法というようなものができた、あるいはまた災害基本法もできたというような機会に、日本法制全体にわたって再検討すると同時に、研究機関を充実いたしまして、そうして雪に関するかつてない大国策を樹立せられんことを切に希望するものでありまするが、これについての総理の御所見を承りたいと思います。
  121. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 小柳さんのお話、全部まことにごもっともでございます。今回の豪雪に対しまする対策を至急講じますると同時に、恒久的な研究、対策を続けていきたいと思います。
  122. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 雪の問題についてはもう少し述べたいのでありまするが、これは災害委員会等でお尋ねすることといたしまして、本日の私の質問はこれで終わりといたします。
  123. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 小柳委員質疑は終了いたしました。  これにて休憩し、午後一時四十五分より再開いたします。    午後零時四十四分休憩      —————・—————    午後二時開会
  124. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 休憩前に引き続き質疑を行ないます。  この際、お諮りいたします。  ただいまから吉田法晴君の質疑に入りますが、同君の質疑商工組合中央金庫北野理事長の出席を求められました。よって、北野重雄君を参考人として出席を求むることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  126. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 吉田法晴君、質疑を願います。
  127. 吉田法晴

    吉田法晴君 池田内閣の一枚看板であります所得倍増計画は、過剰な設備投資、物価の値上がり、国際収支の悪化をもたらしましたが、こういう景気の行き過ぎ、過度の成長政策の失敗にあわてた政府は、一連の景気調整策を打ち出した結果、企業別にいいますと、中小企業へ、業種別にいいますと、石炭や鉄鋼に、及びその関連産業に不況と所得倍増計画の失敗のしわ寄せがたされたと言えます。これを反面からいえば、池田内閣の経済政策は金融機関や大企業中心の政策であって、今後もそういう方向で政策が進められると考えられます。しかしながら、日本の経済の健全な発達と雇用対策からいっても、中小企業や不況産業の再編強化が絶対に必要であります。政府は今国会に中小企業基本法案を初め、これに対する関連法案あるいは石炭関係法案、また、自由化に対処するための国際競争力強化法案などを提案し、あるいは提案しようとしていますが、問題は、これら法案が成立したのみでは、いわゆる経済的弱者を救済することにはならぬと考えられます。特に北九州における石炭、鉄鋼等、さらには、その関連産業も関連製造業、小売商業等は、その地域的な特性もあって、不況のしあ寄せが特に著しいものがあります。これらの観点から池田総理に次の諸点について、基本的な構想を伺いたいのでありますが、第一は、中小企業に対する金融政策をどのようにするのか。市中銀行は中小企業に対する貸し出しを渋っているようですし、政府の中小企業関係金融機関の中小企業向けの貸し出しをもっと大幅に増加する用意があるかどうか。第二は、鉄鋼等の不況のあおりを食っている下請関係業者への対策をどうするのか。たとえば受注の安定や不良債権の免税等、受注の安定と税法上の優遇措置について、どういうように配慮をするのか。第三は、小売商を中心とする中小商業者の育成をどうするか。スーパー・マーケットの問題あるいは百貨店との関係について、何らかの調整措置を考えなければならぬと思うが、その点についてどう考えるか。第四は、石炭の離職対策はもちろんであるけれども、中小企業の離職者に対しても、何らかの優遇措置を考える必要があると考えられるがどうか。この四点について総理の御所見を承りたいと思います。
  128. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 四点の問題につきましては、大蔵大臣からお答えしたほうが御満足いくかと思います。  大体の考え方につきまして申し上げてみたいと思います。中小企業育成につきまして、根本はやっぱり中小企業が組合組織によって強化していく、もう一つは、やっぱり金融面でこれを調整していく、こう二つがおもなるものだと思います。中小企業の金融面に対しましては、過去十年間相当進歩をみてておるのでありす。また、三公庫に対しましての融資もふえております。また、保険公庫に対しましての出資等もふやしまして、中小企業への金融の措置につきましては、できるだけの措置をいたしております。なお一般の予算以外におきましても、買いオペだとか、あるいは特別融資によりまして、金融の円滑化をはかっていっておるのであります。鉄鋼等不況産業の下請、これは最近になって出てきたようでございますが、大体鉄鋼の不況もやっぱり底入れかと思います。したがいまして、私は製鉄関係の輸出を増進することによって、早くこの底入れをし、そうして好況に向かうように努力をしていきたいと思っております。中小企業全体の育成の関係につきましては、お話の中小企業基本法を制定いたしまして、対策の万全を期したいと思います。また、石炭対策によりまして、炭鉱離職者の分につきましては、相当の処置を法律できめておる。しかし、これの関連の中小企業並びに産炭地方面における農業その他につきましても、事態に即応いたしまして、対策を今研究中であるのであります。
  129. 吉田法晴

    吉田法晴君 こまかく通産大臣、大蔵大臣等、関係大臣に伺って参りたいと存じますが、石炭あるいは産炭地の関連産業については、あるいは売掛代金等について特別の融資をするとか、あるいは保証の限度額を引き上げるとか論議がなされておりますし、社会党についても、特別交付金を合理化事磐田を通じて交付をしてもらいたい——これは、自民党で考えられる融資に対して、政府資金を出してもらいたいという点について、あるいは炭鉱周辺の零細企業に対して、何らかの資金援助ができないか、あるいは、のれん代を出さないかという構想もございますが、その他販売あるいは荷役、機帆船等の海運業に対しては、ほとんど考慮がなされておらぬ、こう考えるのでありますが、炭鉱の関連産業として、産炭地のいわば地元の一部でありますけれども、同様の措置を石炭の販売あるいは荷役、機帆船等の海運業についても考える用意はないのか、この点を通産大臣にお尋ねしたいと思います。こまかな真意、それから影響等については、御存じのところで伺いたいと思います。
  130. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えをいたします。  石炭の販売あるいはまた海運関係の問題につきましてもも相当苦しい事態もあることは了承しておりますが、といって、石炭産業と同じような取り扱いをするということになりますと、ほかへめ影響その他いろいろの問題がございますので、同様の措置ということは、これは困難であると思っております。しかしながら、そういう場合において転業その他をされるとか、何らかの場合そういうような措置をされる場合には、金融面その他において十分考慮をしていくようにいたしたいと考えております。
  131. 吉田法晴

    吉田法晴君 石炭産業同様の云々というお話でございますが、産炭地における関連廃業の売掛代金等については、これは現に論議がなされ、あるいは何らかの措置を講じておられると思うのです。販売あるいは荷役、海運等については、これは直接の関連であります。山がつぶれていく、あるいは取り扱い量が減っていくということで問題があることは御存じのところです。いわば炭鉱関連産業の一つとして準じた取り扱いがもう少し具体的にできないかということを、金融だけでなしに、あるいは保険公庫の限度額の引き上げ等々、具体的に施策をせられようとする考えはないか、こういうことをお尋ねしたわけです。重ねて御答弁いただきたいと思います。
  132. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 海運、荷役等の問題について、たとえばそれが面接炭鉱との間に売掛金があるというような場合は、もちろんこれは前にあなたがおっしゃったような趣旨と同様に、救済措置を講ずる場合には同等の取り扱いになると思います。ただ、これがどうしても転業を余儀なくされるとか、あるいは船を必要としなくなったような場合に、そういうものを補償するというようなことまでやるということになりますというと、ほかの業種の関係等も出て参りますので、これはそう簡単にはお答えをすることはできないと思いますが、しかし、石炭に関連をしておる産業として、そういうような苦しい立場にあられるものについては、まあ法の許す限りにおいて、また、われわれとしても行政的にもできるだけのことは考慮をして差し上げるようにいたしたいと考えております。
  133. 吉田法晴

    吉田法晴君 その点は要望をつけ加えておきますが、石炭の関連産業として、あるいは売掛代金について、あるいは保証の限度額の引き上げ等について論議がなされております。炭鉱関連産業の一つとしての石炭販売入あるいは海運、荷役等を含んでその関連産業としての範囲に入れて当然お考えいただきたいと思います。要望をいたしておきます。  運輸大臣にお尋ねをいたしますが、機帆船立るいは荷役業等、海運業者の関連については、先刻御承知だと思うのでありますが、いかなる対策をお持ちなのかお伺いをいたしたいと思います。
  134. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 石炭合理化に伴いまして、港の労務者等に人員の整理が行なわれるということはある程度やむを得ぬと思っておりますが、私どもは幸か不幸か、その荷物、石炭に限らず、ほかの荷物が非常に幅湊いたしておりますので、そのほうへ転用せしむるよう努力いたしております。
  135. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあ実態をあまりよく御存じないようですが、石炭を運搬をしておりました機帆船等も、いつの間にか半減をし、あるいは百隻を切るというような実態、仕事の絶対量も減っているのですが、そこで、労働者の問題も、あるいは機帆船等これに従事いたしますものの存立それ自身が非常な危機に——漸次漸減され、これに対して何らの措置も講ぜられておらぬわけです。ですから、これに対してどういう対策を持っておられるか。北海道の石炭については、石炭専用船等の施策がございましたが、九州については、これはそういうことを進めるとかえって機帆船業者の倒産と申しますか、あるいは壊滅的打撃を与えますから、特別な工夫をなさる必要があろうと思うのです。重ねて運輸大臣の御所見を伺いたい。
  136. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。  ただいま申し上げましたように、そういう門司であるとか、若松であるとか、石炭を専門にしておる小機帆船業者に対しましては、なかなか困難な問題がありますが、そのほかの荷物の荷役に転用するとか、配置を変えてもらうようにあっせんするとかいうことをいたしていきたいと考えております。
  137. 吉田法晴

    吉田法晴君 何らの具体策がないようですが、論戦をしておりましたら時間がたちますから、次の問題に移りますが、労働大臣に、石炭それから鉄鋼の関連産業の不況に伴います中小企業、あるいは今問題になった機帆船あるいは港湾労働者等の失業状態あるいは生活困窮状態に対処する具体策を承りたい。先般石炭の離職者同様の措置を講じてもらいたいという陳情があったこと、お受け願って御存じのところでございます。これは構造的な問題もございますし、門司等の港の整備に伴って出てくる問題等もございます。中心は石炭関連あるいは鉄鋼関連産業、労働大臣の所見を承りたい。
  138. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 北九州地方におきまする失業者のうち、炭鉱離職者につきましては、炭鉱離職者臨時措置法等に基づきまして、特に手厚い対策が行なわれておるのは申すまでもございませんが、それ以外に鉄鋼業者にも相当の失業者がございます。これらの他の産業の離職者につきましても、広域職業紹介を初めとする職業紹介及び職業訓練を積極的に推進いたしまして、また、就職資金の貸付、身元保証、移転費用の支給、移転就職者用住宅の貸付など、雇用促進華美団の行ないまする再就職援助業務を積極的に活用いたしまして、それらの離職者の再就職をはかりたいと思っております。
  139. 吉田法晴

    吉田法晴君 今問題になりました石炭あるいは鉄鋼関連産業あるいは機帆船、港湾に従事いたしますものの児童対策について厚生大臣、これは具体的な状態をここで詳しく述べる時間もございませんし、御存じのところであろうと思いますが、厚生大臣の保育、教育等についての対策を承りたい。
  140. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) お答えいたします。  離職者の最もその場合に気をつけなければならぬのは、児童保育について欠けるところがある、子供さんの世話ができないということが、最も注意しなければならぬところでございます。しかしながら、北九州におきましても、児童相談所あるいは養護施設あるいは保育所と、そういったようなものもあるわけでございまして、それを強化いたしまして、児童の福祉に欠けるところのないようにいたしたいと思います。ことに、今回の炭鉱の閉山によりまして——会社が経営をいたしておりまする児童保育所が三十八カ所ほどあります。しかし、それで経営者がなくなりましたならば、それを市町村に移し、公営の保育所にいたしまして、それに対して十分措置をいたして参りたい、かように考えておる次第でございます。
  141. 吉田法晴

    吉田法晴君 通産大臣、先ほど総理の答弁を聞いておられたと思いますけれども、受注の安定策についてあまり具体的なものがございません。これは地方紙においては受注の安定策について考えられるところがあるということで大きく報ぜられておる点でもございますが、もう少し具体的に考えられているところがあれば——なければあれですが、承りたい。
  142. 福田一

    国務大臣(福田一君) 下請企業の受注をふやすというには、何といっても親企業が活発に動くようにならなければいけないわけでありますから、そういうことになりますというと、日本の産業をどういうふうにしてもっと景気をつけていくというか、設備を全部稼働するような工夫をするかということに連なっていくと思うのであります。このことにつきましては、午前中にもちょっと触れておりましたが、私たちは一面において輸出振興というようなことも大いに考えていかなければならぬ。その輸出の場合におきましても、場合によっては中期の延べ払いのような趣旨も取り入れていく必要があるのではないか、そういうことも考慮したいということも言っておるようなわけでありますが、しかし、総理がお話しになりましたとおり、景気はもう大体われわれとしても今が底である。そして、今確かに下請は苦しいのでありますが、特に鉄鋼については価格の問題等々もありますけれども、これから順次秋にかけて上向いていくような段階になる、かように考えております。そこで、その間においては非常に苦しい事態、特に金融面で苦しいと思いますので、先般来もいろいろの話を聞いておりましたので、今回いわゆる中小企業向けの財政資金の投入にあたりましては、北九州方面に対しても特設の実は措置を講じて、ほかよりも特に厚く資金の配分をしておるというふうな実情もございまして、われわれとしては、その苦しさをよく認識しながら、できるだけの措置をとっていきたいと考えておる次第であります。
  143. 吉田法晴

    吉田法晴君 もう少し具体的に受注の安定について保護策があるのかと思ったら、そこは触れないで、ほかのことをお述べになりました。これは関係者は非常に関心を持って見ているところでございます。注文をした、注文を受けたから金融の道が講ぜられる、金を借りたところが、あとでその注文票を再検討をして削る、こういうふうな事態が行なわれる、それに対して何ら政府は応援しない、こういう疑問もあります。それから、ある程度の注文のとにかく平均化ですね、あるいは行政指導でできる面もあろうかと思いますが、今の答弁以上のものはお考えになっておらぬのですか、重ねてお聞きいたします。
  144. 福田一

    国務大臣(福田一君) 何らかの行政措置で下請企業に仕事を出させるということは、これはちょっと私は、行政指導といっても、やはりこれは、いわゆる自由主義経済といいますか、私企業でありますから、それに対して、注文を出しておいてやれ、こういうことを言うのは、いささか行き過ぎになるのではないかと私たちは考えておりますが、しかし、そういう面で非常に困っておるから、まあ何かそういうことで、仕事もできるだけ取って、そしてそういう仕事を回してやるようにしてはどうかというような、いわゆる具体的じゃなくて、方針としてのあれは、それはやっております。実はそういうことも考えております。しかし、そういうことがなければ——仕事がなければいけない。しかし、われわれが今聞いておるのは、過去において相当な仕事をやっているのに、今仕事がなくて、そして金繰り等で非常に因っているから、そこのところをまず第一に考えてもらいたい、それからその次に仕事も考えてもらいたい、そういうことでありますから、金繰りの問題については、特に北九州等は、石炭その他困っておりますから、商工中金を初め、そういうところでいわゆる資金の追加をいたします場合のときに考慮をして、まあ商工中金あたりは五億、よそだと二、三億程度でいいところを、五、六億出すというふうに——これで足れりと申し上げておるのではありませんが、そういうふうに手厚い、いわゆる例年よりは手厚い手段は講じて、そうして苦痛を緩和するような方途を講じておるわけでございます。
  145. 北村暢

    ○北村暢君 関連。私は今の吉田委員の質問に関連して、鉄鋼産業の不況というのは、これは相当将来に向かって問題があるのじゃないか。それでまあ吉田委員もこれについて具体的に下請に関連して質問をしているわけなんですが、通産大臣の答弁では、ことしの秋になったら景気も上昇するだろうから、親企業がよくならなければ下請もよくならないのだ——そういう一般的なことでは、答弁にならないのじゃないかと思うのです。吉田委員の質問しているのは、やはり鉄鋼産業というものに関連して具体的にお伺いしておるんですから、秋になってそれじゃあ鉄鋼産業は景気がよくなって下請がどんどん仕事ができるという見通しに立っておるのかどうか。私は、鉄鋼産業の今の状態は、そう簡単に、秋になったら景気がよくなったからといって、景気回復見通しに沿って鉄鋼産業がどんどん今の不況というものを克服できる、こういうようなことには簡単にはいかないのじゃないか。しかも、下請の場合は——これは親企業はある程度事業を縮小しても何とかかんとかやっていけるでしょうけれども、下請はもう親企業から仕事がこなければ休まなければならないということに直ちに直面するわけなんですね。融通性というものがないわけなんです。したがって、金融面を考慮されるのもわかるけれども、この鉄鋼産業に対しての具体的なやはり行政指導なり何なりというものをどういうふうに考えておられるのかということなんですから、一般の景気がよくなるからそのうちよくなるだろう、こういう程度の答弁では、私は非常に不親切じゃないか、このように思いまするので、これに関連して、ひとつ所管大臣から、もう少しあたたかい身のある答弁をお願いいたしたい、このように思います。
  146. 福田一

    国務大臣(福田一君) 一般論といたしまして、また経済のあれから言いまして、親企業に注文が——何というか、仕事がないのに、下請へ仕事をできるだけ出せということを言うわけにはいきません。しかしながら、われわれとしては、親企業といわゆる下請企業との関係は、これはやはり密接な相関関係があるわけですから、たとえば、今後少しよくなったときに、親企業はどんどん注文しても、そのときには中小企業はつぶれてなくなったというようなことになってしまっては、親企業は成り立たない。そういうことはもちろんわかっておりますので、できるだけそういう意味で、もし仕事があるような場合でも、先行き注文があれば、なるべくこうならしてでも仕事を出してやる、そういうような工夫をしてひとつ考えてやってもらいたいというような意味の行政指導はもちろんやるつもりでおります。ただ、あなたの仰せになった、また吉田さんのおっしゃっておられるのは、一体、鉄鋼産業というものは、今のところ不景気で、下請が困っておられる、これに対して政府としては今直ちに何らかの具体策があるか、こういうお話だと思うのです。私は、こういうような経済の問題は、これはもう大蔵大臣あるいは総理からお答えするのがほんとうかと思いますけれども、いわゆる輸出を振興するとか、あるいは国内の予算面における公共投資をふやすとか、あるいは財政投融資によって無気を刺激するとか等々、一方においては個人の消費面にたよるとか、いろいろなものがあるでしょう。そういうこともあるでしょうが、私がそう申し上げておるのは、本年度においても相当程度の公共資金等も出しております。御承知のように、鉄鋼産業におきまして二割ぐらいは——これは建築関係の仕事、あるいは道路とか、そういう面に使う鉄骨等が二割ぐらいを占めておりますが、そういう面においては、少なくとも、予算が通過すれば、ある程度の見通しが立ってきますから、これが一つの刺激になってくるのじゃないかということも考えております。それから、今大体の空気を見ておりましても、いろいろの面でやはり秋口には景気がよくなるのではないかということを考えて、それならば今のうちに準備をして材料を作っておこう、こういう空気もあるし、またそういう考え方で会社を経営しても、たくさんやらなければあまり弊害は起きないと思うので、そういうやり方でもやれると思う。そういうことを通じて、できるだけ下請のほうに仕事をならして出してやるような工夫をしてもらいたいと思っているのです。やれとは言えないのです。それはわれわれが私企業に干渉することになりますから、やれとは言えない。そういう意味で、もちろんわれわれは努力しますということを申し上げておるわけでありまして、われわれとしては、できる範囲内において極力中小企業者、特にまた下請の人たちの苦労もひとつ救ってあげたい。特に、今一番困っていられるのは、やはり金融関係であろうと思う。この間も私、九州に行っていろいろ聞いてみますと、金融で弱ってしまうのだというようなお話もありますが、そういう点も含めて、今回の措置等は、北九州その他いわゆる鉄鋼関係のものについては考慮して配分もした、こういうことも申し上げておるのでありまして、何もしないというわけではありませんが、しかし、それでは、政府が大きな注文を出してみるとか、あるいはまた何かする、そういうことはなかなかむずかしかろうと思います。しかし、私が申し上げておるのは、鉄鋼等については相当滞貨もありますので、こういうものは、インドその他におきましても、ぜひひとつ延べ払いで売ってもらいたいという意見もあります。こういうこともひとつこの際考えてみてもいいんじゃないかというようなことも考えておる。そうすれば、それがまた回ってきますから、その分だけ金が回るということになれば、見込み生産もできるということが言えるわけであります。こういうことも実は考慮をいたしておるわけでありまして、けさの経済閣僚会議におきましても、そういう発言を私はいたしました。あなたの非常に御心配になっておることを、実は私も非常に心配をいたしておりまして、そういうことを特に発言をして閣僚の了承を得ておるということでありまして、何らやらないという意味ではないのでありますから、御了承を願いたいと思うのであります。
  147. 吉田法晴

    吉田法晴君 次は金融の問題ですが、先ほど通産大臣は、五、六億の重点配分というお話でしたが、中小企業の金融ワクについては二百億の内定があったようでありますけれども、まあ北九州だけからいっても十億という通産局長からの要望も出ておる。二百億では足らぬのではなかろうか。それから歩積み、両建の問題については、その後大蔵省からも調査されたようですが、この代理貸しの場合に四割あるいは五割になっておるという実情はおわかりになっておると思う。借りかえというようなことができなくても、商工中金等を通じての融資ワクの拡大、あるいは重点配分、あるいは保険公庫への融資あるいはワクの拡大、それから償還期限の延長、猶予の問題、それから保険公庫の資金ワクの拡大について論議なされておるようでありますが、七百万円を千五百万円という保証限度の引き上げの要望、あるいは保険率の引き上げ——炭鉱関連産業については九〇%という論議がなされておるようであります。これらの点について、大蔵大臣の方針と申しますか、所見を承りたいと思います。
  148. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 中小企業につきましては、御承知のとおり、一−三月対策といたしまして、政府関係中小金融三機関に対し百億円の資金の追加を行なったほか、百億円に及ぶ中小企業向け買いオペレーションをいたしております。なお、そのほかに、先日の閣議報告のとおり、政府関係中小金融三機関の貸付ワクを二十億円追加しております。三十八年度の財政投融資計画でも、政府関係中小金融三機関に対して格段の資金増額をはかっておることは、御承知のとおりでございます。特に産炭地その他の関係中小企業に対しましては、毎度お答えをいたしておりますとおり、特殊事態に対処して、転換資金その他の資金融通に対しては万全の配慮を行なっておるわけでございます。  それから信用保証の問題につきましては、今お説がありましたし、なお地元中小企業団体等からもそのような御要請がございますが、これらの問題に対しては慎重に考慮して参りたいという段階でございます。
  149. 吉田法晴

    吉田法晴君 慎重に考慮するというのでは、これは措置にもならなければ、施策にもならぬと思うのです。具体的に承りたいところでありましたが、あなたとこまかく論議をしておるとあれですから、商工中金の理事長に来ていただいておりますから伺いたいのですけれども、先ほど通産大臣は、五、六億の重点配分というお話でしたが、かつての要望は、通産局長は十億、それから現地の支店からは五億の要望があったということですが、その重点配分の問題、それから窓口と申しますか、これは信用組合を通じなければ窓口が開けぬということですが、信用金庫等窓口をあけていただかぬと、実際に金を預かる、あるいは貸付の調査を願う等については、これは直接行ってやらなければならない、こういう不便もございます。急速にこの窓口の改善等については措置を願わなければならぬと思うのでありますが、その資金ワクの問題と、それから窓口改善について御所見を伺いたい。
  150. 北野重雄

    参考人(北野重雄君) お答えいたします。  先ほど来、通産大臣からもお答えがございましたが、このたび政府から財政投融資の追加をいただきました三十億、これにつきましては、雪害関係ももちろんございますけれども、特に北九州のような鉄鋼あるいは、石炭関係から非常に不振に陥っておりますお気の毒な状態にあります中小企業関係につきまして、特に重点的に配分するようにいたしておりまして、たえず八幡支店とも連絡をいたしまして、きめこまかく融資の緊要度に応じて有効に貸付をするように考えております。  第二の御質問の、信用金庫を商工中金の代理店にすることでございますが、これにつきましては、商工中金法によりまして、主務大臣の認可を受ければ代理店に指定できるわけでございます。一部の信用金庫から現に御要望もございますが、この問題につきましては、信用金庫業界並びに主務官庁その他関係の方面とよく御相談をいたしまして、信用金庫を代理店に指定できるように検討を進めたいというふうに考えております。
  151. 吉田法晴

    吉田法晴君 次は、通産大臣、中小企業庁長官に、中小企業の、近代化、合理化の具体策について。  これは、炭鉱関連産業、あるいは鉄鋼関連産業については体質的な問題がございましょうが、体質改善という意味で、近代化、合理化が問題になると思うのですが、社会党から、おくれて中小企業基本法及び関連法案が提出されておりますけれども、北九州からは、老朽機械の買い上げ、あるいは機械の貸与、あるいは機械工業等第二次加工業の育成指導のため中小企業の技術センターの設置等について強い要望が出ておりますが、具体的に構想を承りたいと思います。
  152. 福田一

    国務大臣(福田一君) 中小企業の近代化、合理化等の育成措置といたしましては、御承知のように、今日まで、各府県を通じまして近代化資金を補助金として出しております。三十五億円出しておりましたが、今度の予算におきましては、貸付といたしまして、方法は変えましたけれども、四十一億円出す。それからその他協業化等の団地その他の問題等を含めまして、共同化をするために二十三億円余の予算を今度組んでおるわけでございます。中小企業基本法を今度出しまして、これに関連して約八つの法案を提出する予定でございますが、一部提出もいたしておりますけれども、その中において、私たちは、日本の中小企業が持っております特異性をよく認識しつつ、これを育成して、近代化し、強化して、そしてその存立の基礎を固くしていくような方途をとるわけであります。  が、今仰せになりましたような問題につきましては、これは順を追ってやらしていただくわけでございまして、今漸く基本法を出し、もちろんこれはおそきに失するではないかとおしかりを受けるかもしれませんですが、われわれとしては、この問題を前向きで解決しようとして、いよいよ本腰を入れたわけでございますが、そこで、今御指摘になったような数点の問題につきましては、できるだけ御趣旨に沿うように今後も努力をいたしたいと思いますが、今回の予算においては、その全部を措置しておるというわけには参らないと思うのでございます。
  153. 吉田法晴

    吉田法晴君 中小企業基本法、あるいはその関連法案の中で、この商業関係は少し軽視をされているのではないか、こういう批判もございますが、特に問題になっておりますのは、スーパーの進出、それから百貨店の問題。で、スーパーの規制を、小売商業調整特別措置法の強化でやられる、あるいは百貨店法の強化でやられるのか、あるいは新規立法でするのか、具体的に所見を承りたいし、それから北九州でこういう問題があります。今まで五十万以下の市ですから、千五百平米が百貨店法の基準。ところが、これは、五十万以上百万をこす都市になりますと三千平米ということになります。そうすると、今までの百貨店で、百貨店法にいう百貨店でなくなるものが出てきます。スーパーの規制の方法がないのと一緒に、百貨店自身もこれは規制の対象にならぬということで、流通秩序の波乱が考えられないわけではない。こういう問題がございますが、これらの点について、通産大臣、あるいは中小企業庁長官、どういう工合に考えておられますか。
  154. 福田一

    国務大臣(福田一君) 中小企業の中で商業部門を軽視しておりはしないかという御質問であると思いますが、私たちは決してそういうような考えはございません。特に、商業方面におきましても、今度予算で商業の協業化等による団地の育成等にも力を入れることにいたしております。  また、今御質問のございました北九州が今度百万都市にでもなるというと、前の基準と違って、いわゆる百貨店法の適用が違ってくるはずだ、これに対する措置はどうか、ということでございますが、これについては、ただいまどういうふうな措置をしていいか、実際にそういう場合にどうしたらいいのかということは研究をさせております。  それから今度はスーパー・マーケットの問題でございますが、これは、日本にもう相当程度、数もふえてきてはおりますけれども、しかし、スーパー・マーケットというものはどういうものなんだ、スーパー・ストアとの関係はどうなっておるのだ、また、スーパー・マーケットというものはどれくらいの人を使い、あるいはどれくらいの面積で、どういうものを言うのだ、扱っているものはどういうものがスーパー・マーケットになるか、というようなことになりますと、アメリカでもいろいろ意見があります。日本解釈は、必ずしも今一定しておらないのであります。しかし、そういうものが事実あることは、御承知、御案内のとおりであります。  そこで、これについては、われわれとしても、十分注意を払い、また小売業者を擁護するという必要があります。われわれの今考えておりますことは、そういうスーパー・マーケットの普及等の問題もありまして、小売業ができるだけ共同してそういうような施設を作って、そうして協業化して自分の権益を守るような措置を、その地域地域でやってはどうだろうか、それについては、国としても相当な金融なり、その他の便宜をはかるようにしたい、こう考えておるわけであります。  しからば、そういう場合において、スーパー・マーケットに関する法制を作って、そうしてこれを何らかの形で規制するということはどうか、ということに相なると思うのでありますが、これは、先ほども申し上げましたとおり、スーパー・マーケットというものの定義、また、今はスーパー・マーケットといいますと、一応の基準でいいますと、食品を扱って、そうして買いものかごにずっと自分で食品を集めてきて、出口のところで金を払う、こういう形です。まあしかし、出口のところにちゃんと機械設備でも作っておいてやるのがスーパー・マーケットなのか、そこに番人がいれば、それでスーパー・マーケットになるのか、この問題については、法制をきめる段階においては、まだまだ調査をしてみる必要がございますので、これらの点は、あなたの仰せになったとおり、これは重要な問題でございますので、通産省としては十分研究をいたしまして、将来にわたって万遺憾なきを期していきたい、こういう考えで調査をいたしておる段階でございます。  なお、海外からのスーパー・マーケットの進出につきましては、これはもう、この間私のほうで大阪へ人を出して、いろいろ研究させてみましたが、ただ一社だけ、セーフ・ウェイというのが住友と一緒になってやろうといっておりますが、これも、小売業者に金を貸して、その人がもしスーパー・マーケットをやった場合には、今度は住友とセーフ・ウェイで作った合弁会社から品物を買うという義務を負わせるようにする程度にとどめて、全国的にスーパー・マーケットを作るという計画はないということが明らかになっておるわけであります。そういうわけでありまして、今後もそういう点は十分注意をいたして参りたいと思います。
  155. 吉田法晴

    吉田法晴君 せっかく中小企業庁長官も出ていただいていることでありますから、今の問題を含んで……。  中小企業対策について通雄大臣から承りましたが、百貨店の問題について。スーパーの問題については鋭意検討中だということですが、何らかの施策が必要であるということはお認めいただきました。それからスーパー・マーケットあるいは百貨店に対抗し得る小売商の協業云々という基本線が出たわけです。そこで、対抗し得るまで、三千平米云々というふうに基準の変更をしないで、従来の千五百平米というものを基準にするということが、実際問題として必要ではないかという感じがするわけであります。以上の論議に対して、中小企業庁長官から補足的に所見を承りたい。
  156. 樋詰誠明

    政府委員(樋詰誠明君) スーパーを取り締まらないかというようなお話でございますが、御承知のように、スーパーは百貨店に比べて非常に規模が小さいのでございまして、大体百坪から百五十坪ぐらいというのが大部分でございます。そこで、その程度のものを規制するということがいいかどうか、それからまた、先ほど大臣が申し上げましたように、小売の方々が集まって共同してスーパー・マーケットを経営なさるようにということで、今指導をしているわけでございますが、こういう際にも、自縄自縛みたいな格好で、片一方で大きくなれと言っておきながら、非常に厳格な線をしいておいて縛るということも、非常に技術的にはむずかしいのじゃないだろうかということで、検討はいろいろいたしておりますが、どういう方法で規制するかということについては、これはまだ何ら結論を得ておらないわけでございます。ただ、先ほどからいろいろお話がございました、大資本が進出をするというようなことで、小売商との間に現実紛争が起こる、この紛争は、必ずしも建物ができて店を開いてからの紛争でなくてもいいんでございまして、どうも進出しそうだ、それじゃ困るということで、関係の小売商が知事にあっせん調停を申し入れるということをすれば、それだけで、紛争があるということで、あっせん調停ができるというふうに解釈をいたしておりますので、大体現行の小売商業調整法をうまく活用していくということであれば、当面の間、小売の方々に格別の御迷惑はかけなくて済むんではないか、そういうふうに考えております。  それから百貨店は、これは私の所管ではなくて、企業局のほうの所管で、企業局のほうで今いろいろやっておられますが、今まで聞いたところによりますと、むしろ地方の現在ある百貨店法の適用を受けているというような方々あたりは、都市が大きくなることによって百貨店でなくなるというよりも、むしろ百貨店としてやはり自分は法的の規制は受けても、百貨店法にいういわゆる百貨店なんだ、そのかわり行儀はちゃんと守りますから、というようなことでやるほうが、お客さんの信用も博して、やりやすいといったような気持も持っておられるというふうにも承っておりますが、この点につきましては、現在企業局のほうで、百万都市の誕生と、それに伴う北九州市における百貨店の取り扱いをどうするかということについて鋭意検討を進めております。
  157. 吉田法晴

    吉田法晴君 小売商の近代化、合理化について、先ほど協業云々という点が通産大臣からもお話しになりましたが、これは、ある県で、小規模事業金融公社という形式をとって、この小売商の近代化、合理化に資しようという動きがあるようであります。これを全国的に作らせるように行政指導するつもりはないかどうか、伺いたい。
  158. 福田一

    国務大臣(福田一君) ちょっと御質問の趣旨をよく了解いたしかねたのでございますが……。
  159. 吉田法晴

    吉田法晴君 金融の形態が、小規模事業金融公社というものを作ったりしている県があるが、そういうものを、全国的な方法として、あるいは指導するなり、政府考えたことはないかということです。
  160. 福田一

    国務大臣(福田一君) 県によってそういうものを作っておるところもあることは聞いておりますが、われわれといたしましては、ただいまのところ、そういうものをよけい作らせるように行政指導をする考えは持っておりません。
  161. 吉田法晴

    吉田法晴君 税制の問題について、大蔵大臣と通産大臣に承るのですが、不良債権については課税しないようにしてもらいたいという要望があります。あるいは徴収猶予を、これは年度末におきまして徴税期に入りますので、考えてもらいたい、あるいは延滞料の免除を実現してもらいたい、大企業偏重の税制制度、租税特別措置法等は撤廃して、家族の自家労賃を認めてもらいたい、あるいは標準家族六十万円の免税を実現してもらいたい、法人税率の一五%から四〇%の累進税率を適用してもらいたい、あるいは事業税の撤廃、住民税の公平合理化について税法上考慮してもらいたい、こういう税制面での希望が出ておりますが、大蔵大臣、通産大臣から御所見を承りたい。
  162. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。  産炭地域におきます石炭鉱業の不振のための同地域内の企業者の不良債権の貸し倒れの処理という問題につきましては、昨年の十一月、関係各国税局長に対しまして、地方の実情に合うように弾力的に取り扱うようにということを指示しております。それから関係各国税局におきましては、貸し倒れの認定等、具体的な基準を定めまして各税務署の署長に指示をいたし、市町村長や商工会議所等とも連絡を密にいたしまして、積極的にこれらの実情に即した円滑な運営をはかっております。  それからお問いの中にありました国税徴収上の措置をしてもらいたいということでありますが、御承知のように、国税通則法の四章の第四十六条の二項の三号、五号等を援用いたしまして、資金繰りの困難である場合とか、それから事情やむを得ず休廃止した場合とかというものにつきましては、納税の猶予ということを現地において適切に行なうように措置いたしているわけでございます。それから滞納処分等につきましても、直ちに換価するというようなことでなく、実情に合うように、これも国税通則法に規定がございますので、これらの問題に対しても特に配意をいたしているわけでございます。  それから、租税特別措置法は大企業向けであって、中小企業には恩典が少ないというようなお説でございますが、御承知のように、産業の助成、企業の体質改善、技術の振興、設備の近代化というような面に沿って租税特別措置法が運用されておりまして、これらが大企業に偏しておって、中小企業に対しては恩典が少ないということはないわけでございます。それから中小企業だけに対しましても、中小企業者の有するもののうち、特定の合理化機械等につきまして特別の償却を認めておりますし、また、今国会にお願いをいたしております改正におきましても、中小企業者の建物、機械等について、特に五年間、三分の一の割増し償却を認めるというような特例を開いておりますので、中小企業に対する税制しの優遇措置、その他の問題に対しては、万遺憾なきを期して参るという態度でございます。
  163. 吉田法晴

    吉田法晴君 大蔵大臣は石炭関係の中小企業とおっしゃいましたけれども、先ほどから問題にしておりますのは、石炭販売あるいは海運荷役等、地域的には離れておっても、実際には関連をしておるもの。それから、鉄鋼関係は三割操短をいたしまして、下請関係は七割、九割という生産減になっておる。関連中小企業について同様の措置を講じてもらいたいという要望を含んで質問いたしたわけです。休廃止になったところについては御説明がございましたが、そういういわば倒産寸前すれすれのところをいっておる産業について、猶予あるいは延滞料の免除等について考えてもらたい、あるいは不良債権については課税しないように取り扱ってもらいたい、こういう要望を付して申し上げております。これらの点について再答弁願います。
  164. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 産炭地における中小企業につきましては、先ほど申し上げましたとおり、国会における審議等に対しても、特にこれに応ずる態勢をとっておることを明らかにいたしたわけでございますし、また、これが関連の中小企業につきましても、先ほど申し上げましたように、国税通則法及び徴収法等の特例を認めて、これが運用に遺憾なきを期すという建前について、出先国税局及び税務署長等にも通達をいたしてございます。特にこれが適正を期するために、商工会議所及び市町村長等とも緊密な連絡をとりながら遺憾なきを期しておるということを申し上げておるわけであります。
  165. 吉田法晴

    吉田法晴君 石炭だけでなく、鉄鋼関連産業についてもそういう手配をした、こういう答弁と了解してよろしゅうございますか、大蔵大臣。
  166. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 石炭関連の産業——石炭不況ということにつきまして、石炭企業が不況であるという原因をもって影響の及ぶものに対しては、先ほど申し上げたような措置を行なっておるわけでございます。それから、先ほどから申し上げておりますように、通則法及び徴収法等の運用に関しては、これはただに石炭関連産業だけでなく、全般的な方々に対してとられる措置でございますが、これが運用に対しては、特に慎重な配慮をするようにということをつけ加えて措置いたしておるわけであります。
  167. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと念を押してくどくなるようですけれども、そうすると、石炭関連産業については、地元だけでなくて、あるいは石炭販売、あるいは運輸等についても、これは石炭関連産業として同様の取り扱いをする方針だ。それから国税通則法あるいは徴収法による取り扱いは、これは石炭関連産業だけではないから、全般的に同様に取り扱う、あるいはそれは特に鉄鋼関連産業で三割操短から七割九割の操短をしておるものについては同様に取り扱う、こういう答弁と理解してよろしゅうございますか。
  168. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) そのとおりであります。
  169. 吉田法晴

    吉田法晴君 次は、労働大臣にお尋ねをするところでありますが、中小企業の離職者は一時的には出ないし、一企業当たりにすれば大量ではありませんが、鉄鋼不況、あるいは石炭斜陽のために、あるいは関連産業からの失業者が二万をすでにこしているのです。その二万をこします北九州地帯と申し上げましょうか、大半は中小企業からの失業者でありますが、この対策については、石炭や金属工業に準じた対策を講じてもらいたい、講ずべきではないかという有力な意見がございますが、これについで労働大臣はどのように考えておられるか、承りたい。具体的な、あるいは職業紹介の広域化とか訓練とか、その他の点については、私から言わなくても、所管事項ですから、御存じのところです。具体的に承りたい。
  170. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 炭鉱離職者につきましては特別の措置を講じておりますが、これは、これらの離職者が政府の策定します合理化計画に基づいて発生してきておる点、さらにそれの就職につきましては、特別困難な事情があるということでかような措置をとっておるわけでございます。しかしながら、北九州におきましては、その他の離職者も大量に発生しておることはただいま御指摘のとおりでございまして、この地帯につきましては、失業者の多発地帯として、特に労働省としても、職業紹介におきましては特別な取り扱いをいたすことにいたしておるのであります。すなわち、これらの地帯におきましては、広域職業紹介等によりまして、優先的に紹介を行ない、また、職業訓練につきましても、重点的な地域と考えておりまするし、また、これらの地帯からの就職者に対しましては、移転就職者用の宿舎の貸与、それから移転費用の支給と、雇用促進事業団の行なう援助業務を積極的に活用いたして参るつもりでございます。
  171. 吉田法晴

    吉田法晴君 以上で私の質問は大体終わるわけでありますが、労働大臣せっかくおいでになっていただきましたから、当面の問題についてお尋ねをいたしたい。三公社五現業の労働者の賃金は、物価、生計費の高騰に応じて、当然上げらるべきでありますが、政府は、誠意をもって団体交渉に応じ、給与の引き上げについて応ずる用意があるかどうか、労働大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
  172. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 三公社並びに五現業の給与問題につきましては、昨年の秋以来、各企業体におきまして、それぞれ団体交渉をいたしておるのでございまして、政府といたしましては、これらの機関の理事者に対しましては、常に誠意をもって交渉に対し、できるだけ自主的、円満裏に問題を解決するように希望をいたしておるところであります。
  173. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 関連して。  労働大臣に公労協問題でちょっとお伺いしますが、昨日出されました回答の内容をちょっと御説明願いたい。
  174. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) ただいままで私の聞いておりますところでは、各企業体のうち、組合に対して回答をいたしたところでは、その内容は、一般的なベース・アップはこの際行なわない、しかしながら、初任給等においては、民間に比較して非常格差があるようであるから、これを是正する意味において初任給を六百円引き上げる、自後在職期間一年を経過することに百円ずつ低下させる、つまり二年目のものは五百円、三年目のものは四百円、そして六年目までのものを逓減的に増給する、こういう内容だと承知しております。
  175. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 今、労働大臣から内容の御答弁がありましたのですが、そのような回答は、今言われましたけれども、初任給を六百円上げますけれども、自後六年目にはこれはゼロになってしまう、あしたの一つの問題を控えてこういうものを出すことは、かえって事態を悪化させるという原因を作ったと思うのです。しろうとでもわかりますよ。もちろんベース・アップでないということは言われましたけれども、初任給を引き上げたと言われるけれども、これは全く私はそういうことを言いたくないけれども、ごまかしの初任給の引き上げですよ。直後順々に上がっていくというのならまだしものこと、自後それがだんだんと減殺されていくということは、全く少しでも賃金理論を知っている者——知らない者でもそういうものは納得できませんが、先ほど労働大臣は、誠意をもって団体交渉に当たるということを言っておったけれども、誠意じゃないです、逆の誠意、この点についてどうお考えですか。
  176. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 各理事者におきまして、団体交渉の過程において、それぞれの段階でいろいろな考えを出されることは当然であると思います。私は、今度の問題につきましては、なおこの上とも団体交渉は継続して、そして円満な妥結に到達されるものと、かように考えております。
  177. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 労働大臣の答弁は非常に謹厳で、誠意もあるような答弁ですが、郵政大臣おいでですか。
  178. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 郵政大臣は、質疑がなかったものですから、今他のほうの……。
  179. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ労働大臣にもう一ぺん伺いますが、自後団体交渉を続けるということはわかりました。しかし、一体あしたの問題を控えて、やはり政府としては、何らか大衆に納得されるような動きというものが私は必要じゃないかと思うのです。これが出なければ、また、こういうものを出されることは、労働者一般から見ると、非常に憤慨すると思うのですが、その点について政府考えをお聞かせいただきたいと思います。
  180. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) あしたを控えてこういう回答が出されておるということが誠意がないではないかというふうな御意見のように承わりましたが、しかしながら、あしたを控えましてこういう回答が出ているという点に、やはり誠意の一端が認められるのではないかというふうな考え方もあり得るのじゃないかと私は考えております。
  181. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一つ、これで終わりますが、あれが出されたのが当局の誠意であるという労働大臣の見方ですが、少なくとも労働大臣は労働行政の専門家だと私は思う。また、賃金の問題についても、相当研究されておると思いますから、あえて先ほどの質問をしたのですが、一般の賃金を知る者については、ああいうものを出されたら、かえって私は刺激するという考え方でいるのです。新聞紙上で追い詰められて、何かひとつ誠意を示そうとして出されたかもしれませんが、郵政当局がおりませんから、あなたを追及しても仕方がないと思いますから、私は最後に希望ですが、そういうお心持であれば、十分ひとつ労働省としても考えた措置を今後続けてもらいたい、こういう希望を述べておきます。この点についてちょっと。
  182. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 団体交渉につきましては、各企業体が引き続き当たられることと存じますが、ただいまお述べになりましたことにつきましては、労働省といたしましても十分頭に入れまして、今後さような考えでできるだけいたしたいと思っております。
  183. 吉田法晴

    吉田法晴君 委員長並びに委員諸氏が、私に最後の質問をする機会を与えられたことを心から感謝しながら、私の質問を終わります。
  184. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 吉田委員質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  185. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に、小平芳平君。
  186. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、水資源の開発について御質問いたしたいと思います。初めに、総理大臣から、池田内閣の水資源開発に対する基本的な政策なり考え方についてお伺いをしたいのであります。  日本の国には水はたくさんあって、夏、から秋には台風で洪水になったり、あるいは冬でも、裏日本では豪雪の被害というような現状にあるわけであります。しかし、一方では、ことしの冬は、東京や神戸では飲料水にも困っている。減水とか断水というような状態にあるわけであります。そこで、工業用水の問題は、地盤沈下となって住民をおそれおののかしているという状態も見られているわけであります。政府としては、こういうような問題をもっぱら地方公共団体にまかしていかれるおつもりか、それとも、総理大臣は責任を持ってこのような水飢饉の解決に当たろうとするおつもりか、お聞きしたい。
  187. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のように、日本は水には非常に恵まれておる国でございます。それだけに、また、水の利用に対しまして関心が薄かったと言えます。その結果が、最近における人口の集中、そうして工業用水の必要性並びに生活水準の向上による一人当たりの水の使用量の増加等々でいろいろ問題が起こっているのであります。したがいまして、この問題を解決すべく内閣を組織してから懸案の水資源開発ということに乗り出して、国会の御賛成を得まして水資源開発法をやり、利根川並びに淀川等の大河川につきまして一応の措置をしたわけでございます。何分にも、この問題は相当の時間と経費と決意を要するものであります。私はこの恵まれた水を今までのようにほとんど、半分も利用しないで流してしまうということは、国策からいってもよくございません。お話しのような点もございますので、今後十分水の利用に対しての施策を推し進めていきたいと考えております。
  188. 小平芳平

    ○小平芳平君 総理大臣から御答弁の内容は、水資源開発公団のことであると思いますが、水資源開発公団ができて一つの前進ではあると思いますが、ダムを継続して三つ建設中だけであるし、またこの水の問題は地方行政庁が管理するというような現在の法律になっておりますが、こういう地方行政庁の管理の上から水利権で争ったり、これはもっと全国的に積極的に政府が乗り出していかなければならない問題ではないかと思いますが、いかがでしょう。
  189. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 河川法はたしか明治時代にできたものだと思います。したがいまして、水資源開発公団の発足と前後いたしまして、この河川法の改正につきましてただいま建設省で検討中でございます。何と申しましても、先ほど申し上げますように、水に対する関心がよほど強まりましたし、これに対する行政も、それと同様にやはり変えていかなければならぬのじゃないかということで検討を続けておるのであります。
  190. 小平芳平

    ○小平芳平君 次は経済企画庁長官から、今総理大臣がお答えのように、河川法の改正、これは建設省ですが、水利権の争いがあるわけですが、水問題の解決の隘路は水利権のほうにあるか、それとも金がなくて隘路になっているか、その点は企画庁でほどのようにごらんになっていらっしゃるか。
  191. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま総理大臣の答弁がございましたように、河川法による河川管理者の問題、これが地方の県の長であるというところに問題があるということについては、小平委員の御指摘のとおりだと存じます。私どもといたしまして、水資源公団が実際に仕事をいたしますときには、関係の各府県の利害の調整をしつつ水資源の総合的な開発をはかるということが、仕事を始めたばかりでございますけれども、そういう趣旨でやっておるわけでございます。そういう調整さえつきますと、まあ金は幾らでもあると申すわけではございませんが、現実に、たとえば関東においては利根川でありますとか、あるいは関西においては琵琶湖でありますとかいうものの開発に必要な資金の確保ということは、私どもさして困難でないと考えますので、やはりこの川は自分の川であるとか、ここの湖は自分の県の湖であるというような、そういう問題が片づいてきますと、非常にあとの仕事がやりやすいというふうに考えております。
  192. 小平芳平

    ○小平芳平君 お金の問題よりも、その水利権の問題にあるということでありますが、大蔵大臣はどのようにお考えでしょうか。
  193. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 水は御承知のとおり、戦後急速に水が必要になって参ったわけであります。今までは水に対しては、治水という面が国の予算の重点になっておりましたが、その後農業利水の問題が起きて参りました。ところが戦後になりまして御承知の都市に人口、産業が過度集中をいたしましたので、水道法及び工業用水法等が制定をせられまして、これが確保がはかられなければならないというふうに非常に生活様式毛変わって参りましたし、水の利用という面が農業利水という問題だけではなく、広範に必要になって参ったのであります。その後、地盤沈下という現象が起こりましたので、これが地下水の汲み上げを規制しているという面で、特に人口の水というものに対してのウエートが強くなったということは御承知のとおりであります。これから産業が発達をして参りますと、水の重要度というものは、今よりさらに増大することは言うを待ちません。日本においてはただの水から、トン当たり十円くらいの水があるのでありますが、世界の主要工業国は、トン当たり十円、二十円という水さえ作らなければならないという現状から考えますと、日本状態では、まだ当分の間合理的開発は行なえる、比較的安い水が得られるということは事実でございます。河川法は明治二十九年制定のものでありまして、戦後これが改正に対して政府はいろいろの努力をしたのでありますが、御承知の内務省から、建設省なり厚生省が分離され、農林省、運輸省その他共管事項が非常に多いということに加えて、戦後の地方自治の制定によりまして、水利権が各地方自治体のほうに移っておるということが、非常に大きな隘路になっておりまして、現在まで戦後十七年間で、河川法のおもな改正は一回しか通っていないと言ってもよいのであって、これが改正が焦眉の急であるということは言うを待たないわけでございます。戦前であっても、例の熊野川の水を流域変更しようということは、軍の力をもってもできなかったというくらいに、水の問題はたいへんな政治問題でございます。現在吉野川の水をどうするかという問題、いわゆる四国三県に分流できるかどうか、琵琶湖の水を中京地帯に引くのか、また阪神地区に重点的に流すのか、これらはもう産業形成上一番大きなポイントをなすものであります。その意味で水資源開発法等を作りまして、現在政府は直轄で行なっておるもの、水資源公団をもって行なわしめるもの、また道府県市町村等をして行なわしめるもの、その他公営企業金融公庫等を作って、これが広範な角度から水の確保に努めておるわけでございまして、河川法の改正が行なわれて、建設大臣に水利権の全部が戻ればすべて解決するものではありません。産業の合理化も長期計画を立てて、これに必要な水の量をまず策定をして、これに合うような水資源の開発の年次計画を立てるべきである、こういうふうに考えるわけであります。
  194. 小平芳平

    ○小平芳平君 大蔵大臣にお尋ねしたいことは、明治二十九年の河川法は古くてまことに扱いにくいと、ここで水利権の問題は、法律改正を主体として抜本的に解決したいという御趣旨はよくわかったのでありますが、お金のほうは心配ないかどうか、水資源の確保のためにはお金のほうは幾らでも出すかどうかということについてお伺いしたい。
  195. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) この機会でありますから、水資源に対して政府が三十八年度にどの程度のことをやっておるかという概要だけ簡単に申し上げます。  国が直轄事業として行なっておりますものに、北上川の湯田ダム、淀川の天ケ瀬ダム等、工事費計上のものが十一ダムございます。それから矢作川矢作ダム等、実施計画調査中のものが五ダムございます。河川総合開発事業として実施中の補助ダムが、小瀬川ダム等工事費計上のものが二十六ダム、勝浦川正木ダム等実施計画調査中のものが十ダムございます。それから水資源開発促進法による水資源開発公団法に基づいて、今公団が事業を計画し、進めておりますのが利根川の矢木沢ダム、それから下久保ダム、それから淀川の高山ダム等でございまして、予算、財政投融資規模に対しては、戦前に比べるべくもなく重点的に行なわれております。直轄、それから補助、多目的ダム、水資源開発公団に対する交付金、同公団財政投融資、工業用水道補助金等、それぞれ増額しており、上水道、工業用水道に対する財政投融資は、三十七年度五百八十億であったものが、三十八年度八百十五億と、大幅にふえておりますが、しかし、この程度の開発でもって日本の水が解決するという問題ではないことはお説のとおりであります。でありますから、大阪等の港湾埋め立てに対しても、約四億マルクの埋め立てを現在考え、西独債一億マルク、すなわち二千五百万ドルに対しては二月中に発行するという状態になっておりますが、この前提条件は、水が得られるかどうかということが条件になっておるという事実に徴しましても、これらの水というものに対しては、まだまだ資金的な面からは相当開発をしなければならないと思います。しかし、水は、先ほど申し上げましたように、まだ日本には金のかからない水もあるのでありまして、先進工業国が、トン十六円、トン二十円、アメリカなどではもっと高いものもありますが、こういうものまで水の間度利用をするということになりますと、外資の導入も仰げるわけであります。投資としても、この水の利用は十分採算が合うということでありますので、一般会計からの投資はもとよりのこと、財政投融資、民間投資、その他資金の活用は、水に対しては十分考え得ると考えております。
  196. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、今ダムについておあげになりましたが、公団の事業猛から見ますと、日本道路公団や住宅公団などのほうが歴史もありますし、はるかに大きな事業量を今日は持っておるわけであります。それに比べて、水資源公団の場合は、まだやっと去年から、あるいは本格的には今年からというような状態でありますが、政府としては、もっと水資源公団あたりにも力を入れて開発を進めていく、事業量もさらに増大させていく、こういうような了解でよろしゅうございますか。
  197. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 水資源公団につきましては、総理大臣から先ほど申されましたとおり、これからの日本の水を開発し、高度に合理的に利用をするということについては、府県単位や町村単位で開発できるものではありませんし、また、広域的に水は確保せられ、運用せられるわけでありますから、私は、将来の水というものに対しては、水資源開発公団が電源開発会社を追っかけて作られた趣旨にものっとりまして、おおむね水の開発の大きな仕事は水資源公団が担当するというふうになると思います。現在は作られたばかりでありますし、東京、大阪という、さしあたって水の必要な所、あわせて中京、それから遠賀川、筑後川水系の問題、日本の四大工業地帯の水資源不足を解消するということが当面の事業として取り上げられているわけであります。  もう一つは、建設省で直轄でやっておったものがそのまま移しかえられておるというわけで、今年度の事業費は非常に少ないと、御指摘のとおりでありますが、これが地方開発の計画が行なわれ、全国水系別に事業を拡大していくべきものでありまして、これが事業量は画期的に拡大をしていくということが言えると思います。
  198. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで、この問題は、大蔵大臣か、あるいは経済企画庁長官にお答え願う問題か、いわゆる水源県といいますか、上流県でありますが、日本でダムの一番多い県はどこか、ちょっと調べなかったのですが、たとえば群馬県とか長野県とか、非常にダムがたくさんできるわけであります。ところが、そうした上流のほうの県ではダムはできるけれども、はたしてその水を下流に持っていかれた場合に、自分のほうの、後進地域として現在呼ばれている地域でありながら、将来にわたって産業の発達が望めないじゃないか。水利権を下流に直通で持っていかれたら、はたして将来どんな産業の発展があり得るかどうか、こういう点について非常に不安にも思っているのじゃないかと思うのです。そういう点についてはいかがでしょうか。
  199. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 基本考え方は、先ほどちょっと申し上げたとおりでございますけれども、さりとて、そういう上流の人たちの持っている権利と申しますか、一つの期待権のようなものは現実にあるわけでありますから、実際問題といたしましては、水はいただくが、しかし、いわゆる総合開発とか何とかいう形で、一方的な、ただとられるだけというような形にならないような配慮を現実に加えませんと、どうしても話がまとまっていかないというのが実情でありますし、また、これは程度問題でございましょうけれども、そういう配慮はやはり具体的にはいたしていくべきもとだと、現実の問題としては考えております。
  200. 小平芳平

    ○小平芳平君 具体的にはそういう配慮をして話がまとまっていることとは思います。思いますが、水問題が解決しがたい、お金はどんどんふやしていくというのに、しかも、東京では依然として断水とか減水というような状態にある、あるいは工業用水の地下水くみ上げで地盤沈下がひどくなる。そういうような現実の結果から見ると、やはりそうした上流県に対する配慮が十分でないから、いつまでたっても話し合いがつかないのではないか、このような結果にはなりませんか。
  201. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま東京の場合を例にあげてお話であったのでありますが、実は東京地方の水は、将来にわたっての需給の問題というのは、水資源審議会でいろいろ検討いたしておるのでございます。一番今問題になっておりますのは、供給のほうもさることでありますが、実は需要の算定というものが非常に幅がございまして、はっきりいたさないというのが当面の問題でございまして、水資源審議会で、いわゆる専門委員に委嘱をいたしまして、将来の需要がどのくらいになるであろうかということを今調べておるところでございます。その上で需給計画を立てるということになるわけでございます。いずれにしても、相当大きな需要の量でありますから、それをいかにして供給するかという水源の問題は、そのときになって非常に明確な形で出てくると思うのであります。そういうときに、やはり従来現実の問題としてやって参りましたような、ある程度の上流県というものについて考慮を払いませんと、それだけ大きな需要に対応するような供給源を見つけることは、おそらくは困難でありますから、お話のように結論としては考えるわけでございます。
  202. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、厚生大臣からお答えを願いたいと思いますが、厚生大臣は飲料水のほうを主務大臣として扱っていらっしゃるわけでありますが、現在東京や神戸に現われているようなこうした水不足に対して、大臣としてどのような手を打っていかれるおつもりか。
  203. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) お答えいたします。大体昭和三十、五年ごろから、雨が東京では非常に少ないので、例の東京の最も大きい水源でありまする小河内、山口、村山の貯水池が一ぱいにならない。そのために三十六年の十月ごろから東京都ではしばしば節水をいたしまして、一番ひどく節水をいたしたのが三十七年の五月ごろ、三五%であります。現在でも約二五%くらいの節水をやっておるのであります。東京都の使用量は、大体のところ一人四百リットルの使用量であります。それで計算をいたしまして一日の使用量は二百九十八万トンくらい要るのです。で、少し足らないのでありまして、今節約をいたしておりまするが、東京都では、われわれのほうと相談をいたしまして緊急対策をとりまして、今年の四月には金町浄水場の増設ができますと、一日九万五千トンの増水ができます。しかしながら、三十九年度に至りましてまた足らなくなります。それは給水人口もふえますし、また対象人口、面積等もふえますので、三十九年度に、その計算でいきまして三百二十五万トンと踏んでおるわけであります。さらに金町の第二次の増水をやりますと、約四十万トンくらいの増水ができるわけでございます。それで一応のしのぎができる。それから先のことは、ただいまいろいろお話がありましたように、水資源公団でもって根本的に水の供給をする、利根川から約百二十万トンくらいの増水をやるように、今せっかく水資源公団で計画をいたしておるところでございます。  神戸にいたしまして本、神戸は最近は節水をいたしておりません。少し雨が降りましたのでこれは今やっておりませんけれども、やはり水は足らないのであります。どうしてもやはり何とかしなければならぬ。大体、神戸の使用量、四十六万トンくらいでございまするが、神戸、尼崎、西宮あたりの付近でございます。今、神戸市で武庫川からの増水をやろうということで、これは緊急にやるということで、約二万五千トンくらいの増水をやるべく準備をいたしておるところでございます。今一番ひどいのが、何と申しましても東京都と神戸市、あの辺が一番ひどいのでありますから緊急対策で行ないたい。かように思っておりまするが、全国的にいたしましては、これは水道といたしましては普及率は非常によくはないのですが、大体人口の、昭和三十六年度の統計で見ますと、全人口の五三%くらいは上水道によっておるようでありまするが、私たちはそれではいけませんから、五カ年計画をもちまして、何とか五カ年の間には総人口の七五%くらいまでは上水道、簡易水道あるいは専用水道等によってまかないたい。かような計画を立てまして、重要政策として一生懸命促進をいたしておる次第でございます。
  204. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣にもう一つお伺いしたいのですが、要するに、大臣のお話はだいぶ、昭和三十九年あるいは四十二年というふうにおっしゃっていらっしゃるわけですが、現実のことしの夏、あるいは来年、再来年というこの現実の問題は相当深刻なんであります。そうして東京都では東京都として取り組んでいらっしゃるわけですが、厚生大臣としては、たとえば起債の問題あるいは上水道に補助金をつけるか、つけないか、そういうような問題について大臣はどのようにお考えでしょうか。
  205. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) お答えします。水道事業は公営事業として今までやってきておりまして、その建設費に対しましては国家が補助を出しておりません。これは料金を適正にいたしまして健全な経営をすれば、一つの公営事業としてりっぱにやっていける事業だと思っているわけでございます。したがいまして、国家としても補助を出しておりません。まあ今後もそういう考えはいたしておりませんが、ただ特別な場合、災害等にあいまして非常に破壊されたというようなときは、これは大蔵大臣のほうとも御相談をしまして補助することはありまするけれども、あくまで公営事業として独立採算制でやっていくという建前がいいんじゃないかと、かように考えている次第であります。
  206. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう一つお伺いしたいことは、起債のワクに心配はないかどうかという点をお伺いしたいのです。大きな上水道事業を地方公共団体が始めた場合に、途中まで建設して、あとで資金が続かないというようなおそれがありはしないかどうか。それからもう一つは、災害のような場合は特別だとおっしゃったのですが、ことしの夏は空前の水飢饉になるのではないかというようなうわさも立っているくらいなんでありますが、何らかの打つ手はないかどうかお尋ねしたい。
  207. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) お答えします。起債の問題につきましては、やはり事業を促進するために、私のほうと自治省と大蔵省と相談をして、万全の措置をとっていきたいと思います。したがいまして、一番水のほうで心配なのは、何と申しましても東京都でございます。東京都でございまするからして、これは今後の問題もありまするけれども、金町の浄水場ができれば、ある程度のしのぎはできる。これは本年の四月に完成する予定でございます。
  208. 小平芳平

    ○小平芳平君 金町ができれば解消するとおっしゃいますけれども現実に神奈川県から相当な水を東京都へ買っているわけです。相当入っているわけですが、神奈川県の新聞を見ると、神奈川県自体も相当水がもうなくなってきた。こうなると、最悪の場合は東京へ送っている水もとめるような事態になるのではないかというふうに出ているわけです。その点はどうですか。
  209. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) お尋ねの神奈川県のほうからの東京都に二十万トン今こちらに送っているものは、当分の間続けるということに聞き及んでおります。
  210. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは送らないと言っておるわけじゃないのですけれども、ただ天気が続くから、雨が降らないからといって、こうした飲み水がないというような状態がいつまで続くかということを非常に不満に思い、不安にも思っておるわけです。一方では宇宙旅行の時代だといわれるのに、一方ではわずか水をくむのに毎日バケツを下げて歩かなければならないというような矛盾が現実に現われてきておるのです。そこで、この問題は地方公共団体まかせでいかれるものかどうか。起債で適正な料金を取っていけば、それでうまくいけるはずだというのが今までの考え方であったのでしょうけれども、今日のような状態というものは、ちょっと予想できなかった状態じゃないかと思うわけですが、それでもよろしいのですか。
  211. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) やはり施設を完備することが第一番でございまして、総理も申しましたように、少しこういうことを怠っておったからこういうふうな節水をしなければならぬことになった。しかも東京につきましては、急激に人口がふえたという事情もあります。それでありまするから、昭和四十二年にはなりまするけれども、利根川からさらに大きい百二十万トンの導水をしようというのですから、今困るから今直ちにと、こういうことはやはりできぬわけです。それは補助金を出しましてもできぬわけでございまするが、したがいまして、応急には応急対策をもって、恒久には恒久対策をもって臨まなければならぬ。非常に、雨も一滴も降らぬ、今後どうするかといえば、現在の状態でございますれば、工事を急ぐことはもちろんでございますけれども、節水をもう少しするというようなことにならないとも限らないのであります。大体われわれの計算で一日一人四百リッターと、こう踏んでおりまするが、その一日の使用量は、やはり外国あたりに比較しますと必ずしも少なくないんです。水をむだにしておるというわけではありませんが、まあドイツであるとか、フランスであるとか、おそらくこれの半分くらいしか水は使っておりません。二百五十リッターくらい。もっともアメリカは相当に日本よりよけい使っておりますが、そういうように万やむを得ないときは、皆の方に御不便ではありましょうが、やはり水を大事に使ってもらう、そうしてとにかくその間に施設を十分しなけりゃならぬ。まあ水道事業の、事業の形態ではなくて、いずれにいたしましても施設を十分しなけりゃならぬということに尽きるんではないかと思っておる次第であります。
  212. 小平芳平

    ○小平芳平君 企画庁長官にもう一度お伺いしますが、やはり施設を至急十分に作らなければならないというわけですが、せっかく水資源公団ができたわけですが、この水資源公団も窓口がいろいろあって、なかなか事業が思うように動けないのか、それともせっかくできた水資源公団だから、少なくとも利根川と淀川はすでに水系が指定されているんだから、早急に、公団ができたればこそ、このように解決ができるんだというようなものがおありかどうか。
  213. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 公団ができますまで、あるいは水資源開発促進法ができますまでの経緯が非常に複雑でございましたために、公団発足の当座いろいろな権限問題でまごつきました。そして今の利根川の問題につきましても、実は最近まで、いわゆる利根の導水路というものを東京都でやるのであるか、公団でやるのであるかというような具体的な問題で相当戸惑ったわけでございますが、これは幸いにして最近に公団がやるということできまりました。あと印旛沼の問題にいたしましても、千葉県との間にいろいろな問題がございますけれども、これもやがて片づくかと思います。したがって、公団に関しまする限り、すなわち利根川、淀川に関しまする限り、そういう窓口としての権限の問題でこれからあまり手間をとることはなかろうと思いますが、水源の問題につきましても、ことに淀川、琵琶湖については問題が残っている。これはしかし窓口云々、官庁内部の権限争いという問題ではないと思います。で、公団が発足をし始めましたので、当初にありましたような権限の調整というものは、大体そのつど、幾らかずつはございましょうけれども大筋では公団がやっていくというようなことで、従来のようなごたごたはあまり繰り返さないで済むだろうと考えております。
  214. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでごたごたは繰り返さないから、もう東京や大阪、京浜あるいは阪神の水は公団ができたから安心だというふうに言えますかどうかとお聞きしているのです。
  215. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは公団の仕事はなかなか長くかかりますので、当面、今年、来年といったようなことになかなか寄与することは事実問題としてむずかしいと思います。それから水源の問題については、先刻申しましたように、問題があるということは御承知のとおりであります。しかし、たとえば東京について考えますと、利根導水路の問題が片づきましたので、これは取水口の問題などは少し残っておりますけれども、しかし片づきましたので、昭和四十二年くらいの時点でおっしゃっていただきますならば.それは先ほどの需給関係も長期計画で確定をいたしまして、まず一応の安定点には達するであろう、しかしこの一、二年のことについて、公団ができたからということを申し上げるのは、これは少しく言い過ぎである、事実はなかなかそう参らないということを率直に考えます。
  216. 小平芳平

    ○小平芳平君 やはりせっかく公団ができたわけですから、東京の水飢饉の解消くらい、それ一つでもできないような公団では、何のために公団を作ったかということになるんじゃないかと思うのです。少なくともわれわれ部外者から見ていると、水資源開発公団、そんな公団ができて、去年も水がない、今年も水がない、来年も水がない、そういうことでよくがまんできるというふうにもなるんじゃないかと思うのです。応急対策と、それから恒久対策と至急に立てていかなければならないと思います。それからもう一つ、企画庁のほうではこういう問題が提起されておりますが、愛知用水公団は水資源公団に吸収したほうがいいとか、あるいは公団は水系別がいいとか、そういう問題が出ております。私はそうした役所いじりよりも、まず実際の効果を第一にあげていくような方策を講じていただきたいと思うわけですが、さしあたって水の公団が、愛知用水公団と水資源公団とできたわけですが、その間の関係はどのようにお考えか、調整していかれるか。
  217. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 今具体的にこういうことでと申し上げるほどの準備がございませんけれども、と申しますのは、愛知用水公団には世界銀行の借款がついているとか、あるいは豊川地方の問題でありますとかございますので、今どうということを申し上げるまでにいろいろな問題が進んでおりませんけれども、いずれはこれは同じ性質の仕事でございますから、各方面の了解を得て一緒になるのが本筋だろうと思います。
  218. 小平芳平

    ○小平芳平君 建設大臣にお伺いします。先ほど大臣がまだお見えにならないときに、水源県、水が流れてくる水源県や上流県に対して、そのような県では水を下流へ直通で持っていかれると、将来永久に何の産業も発展できないんじゃないかという不安があるのです。そうした後進地域の開発には、交通、特に道路が非常に大事だと思います。たとえば、これは長野県の伊那谷で集中豪雨があって部落ごと移転をした。ところが天龍川沿いへ移転はしたけれども、伊那方面そのものに産業がないから、仮設バラックを建てていただいたのはけっこうなんだが、さっぱり、その生活に不安がつきまとってどうしようもないというような結果にもなっておるわけです、現実に。これで、やはり道路整備については、建設大臣は午前中の委員会でも、来年からは新五カ年計画を準備しているというふうにもおっしゃったのですが、その点についてもう少し具体的に御説明していただきたい。
  219. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知のとおり水利権の問題につきましては、現在の河川法がだいぶ古いものでございますので、それによって各府県間の問題を処理して参りますことは非常に困難でございます。したがって、建設省におきましては今国会に、これが改正案を準備いたしまして、何とか取りまとめたいとして、新しい法律で、従来とかく円滑に参っておりませんのを円滑に参るようにして参るということを考えて、今検討中でございます。多少おくれるかもしれませんが、三月中くらいには提案の運びに至りたい。内容につきましては、いろいろな点において問題がございますけれども、何さま明治以来あまり十分な改正が行なわれておりませんので、各省間の打ち合わせに相当に問題があると思いますが、一応各省の意見を総合したところで提案をして、十分各方面の意見を拝聴して提出いたしたいと考えております。
  220. 小平芳平

    ○小平芳平君 建設大臣にお尋ねしますが、水利権の問題については、河川法の改正をお出しになることがわかりました。  それから次に、道路の整備、特に大都市もそうですけれども、そのような水利権といいましても、実際水を使う権利だけというよりも、問題は、その地方自体がダムができるだけで産業が発達しないということでは非常に困ると思うのです。そこで道路整備についで、どのような態度をお考えか、お聞きしているのです。
  221. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 実は道路につきましても、終戦以来いろいろの角度で新しい道路の考え方がだんだん起こってきているわけであります。しかし私は、これも明後年度、三十九年度予算におきまして、新五カ年計画を策定いたしまして、そうしてできることならば、現在の道路のうちで、一番適当でないと考えられますことは、地方々々で財源がそれぞれ異なっておるような関係から、政府のほうで補助をいたします率は同じであっても、受け入れる態勢が変わる。そこで一級国道、二級国道、主要県道、県道と申しましても、それぞれが規格も一定いたしておりませんし、いろいろばらばらになっております点もございまするし、また国家としては、大きく非常に重要度を加えておりますものでも、地方の財源等の困難なために、工事が進捗を見ないところもあるわけであります。諸般の関係から、現在の一級、二級国道は、相なるべくならば、これを国道として国家において全額これを負担しまして、そうして直轄いたしたい。それから県道以下は、府県にこれを譲りたいということで、現在の負担率を多少変更いたしまして、その間の姿をひとつ、まあすっきりしたと申しますか、はっきり分けてやっていくようにいたしたい。  そういう意味において、これを契機に、現にやっております一級、二級国道並びに主要県道、県道、これらをどういうふうに国と県に分けるかということについても、あらためて検討をし直しまするとともに、近時とみに産業の発展もしくは地方の交通等の関係で、道路の指定等であるいは道路の変更等もしたほうが適当であると考えられる場所等もありますので、もう一ぺん根本的に再検討して、道路網の整備について考えたい。ぜひこれを三十九年度の予算において実現いたしたいと考えて、鋭意研究いたしておるところでございます。
  222. 小平芳平

    ○小平芳平君 で、そうなりました場合には、すでに法律でもきめられておりますところの高速道路も、相当全国的に整備されるものと考えてよろしいですか。
  223. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 本州縦貫道並びにその他九州、これらはいずれも、明年度予算にも調査費を計上しておりますので、これによって準備を進めて参る、十分調査して参る。これはまた、別途その法律に基づいてやります。東京−大阪間本州縦貫道等につきましては、所定のものをそのまま進めて参るというつもりでおります。
  224. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、労働大臣にお伺いいたしますが、時間が、あまり私の時間はありませんので、簡単にお答え願えればいいと思います。簡単に申し上げますが、失対事業について、失対事業を打ち切るのではないかというふうなことが言われるのです。ところが、何十万人の働こうという意思のある、また働く能力のある労働者が、失対事業を打ち切られて、失業者で町に再びほうり出されてしまうというような政策には、当然われわれは反対であります。政府は打ち切らないなら打ち切らないという、はっきりした方向、対策を示していただきたい。
  225. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 失対事業につきましては、御承知のとおりいろいろ批判がございまして、実際失対事業を担当いたしております自治体の当局者などからは、こういう状況では失対事業を打ち切ってもらわなければならないというような意向が相当強く出ておったのであります。しかしながら私どもといたしましては、御指摘のように相当多数の失業者が現実にこの事業に従事いたしておる現在、これを打ち切るということは、とうてい考えられないところでございます。しかし一面において先ほどのような批判なり、また打ち切りの要望なりを放置するわけにも参りません。  そこで、何とか失対事業を存続させまするためには、相当思い切った改善をしなくちゃならぬ。こう考えまして、その改善の方法について専門家をわずらわして、いろいろと調査いたしてもらったわけでございます。それに基づきまして、今回失対事業の改善方策を立てたわけでございまして、これは失対事業の打ち切りではなく、失対事業を存続させるための必要なる改善策である。かように考えておりますから、御承知おき願いたいと思います。
  226. 小平芳平

    ○小平芳平君 その改善策と申されますが、いろいろ意見を聞いたと申されますが、たとえば雇用審議会の答申が出ないうちに予算はきまっているし、あるいはその内容まで、転職職業訓練所には、どういうふうにして何人というふうな予定までしておやりになっているわけですが、そういうような転職訓練と言っても、雇用審議会の答申が出るまででなく、そういう架空のことで予算を組んだり、また規定をしてやっていらっしゃるのではないかというふうに見られるのですが、この点はどうでしょう。
  227. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 本年度予算の編成は、昨年の十二月の末に行なわれたことはお聞き及びのとおりでございます。失対事業の改善に関しましては、昨年の秋に雇用審議会に対して諮問をいたしまして、その後引き続き審議会において審議をされておったのでございます。したがいまして、私どもは昨年夏の予算の要求に際しましては、一応の大ワクの金額を仮定いたしまして、それに基づいて予算の要求を出しております。  しかし、今申しましたごとく、雇用審議会の審議が継続いたしておりまして、十二月の末まで答申が行なわれませんでしたので、この予算の内容を具体的に大蔵省との間で詰めることはできなかったのであります。しかし、予算の編成を終わらなければならぬ時期が差し迫りましたので、昨年の十二月二十五日に、いろいろ審議会のほうとお打ち合わせをいたしました結果、審議会といたしましては、中間答申を出されました。この中間答申は、大体予算編成の基礎となるべき事項を定められたものでございます。そこで、この中間答申を基礎にいたしまして、十二月の末に予算の編成を無事終了いたしたわけでございますが、その後、今年の二月に入りまして、二月四日に、雇用審議会からは最終の答申が出ました。この答申は、諮問の構想につきまして一部分変更を求めておりまするが、大部分は、制度の運用についての意見でございまするので、編成いたしました予算につきましては、これを変更する必要のないものであるということが明らかになっておるわけでございます。
  228. 小平芳平

    ○小平芳平君 労働者の中でも、特に、一方では高度経済成長がありながら、どうしてもその谷間に立つ労働者であると思いますので、そのような無用な不安がないように、また、職業訓練、就職のあっせんといっても、実際には訓練所を作っても、中ががらあきというような結果では何にもならないわけでありますから、十分に効果をあげるように、また、そうした不安のないようにやっていっていただきたいと思います。  次に、総理大臣にお伺いいたしたいことは、ILO八七号条約が批准がおくれていることによって非常に国際信用を失墜したということは、しばしば言われてきていることであります。で、政府としては、どのように持っていかれるおつもりか、お聞きしたい。
  229. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 施政演説で申し上げましたごとく、今国会できるだけ早い機会に御審議願うことにいたしております。なお、批准がおくれたために非常に国際信用を落としたということをよく言われますが、こちらの事情は、大体わかっておるようでございます。私は政府努力もおわかりいただけると思います。しかし、それにいたしましても早いにこしたことはございません。今国会に出す予定で準備いたしております。
  230. 小平芳平

    ○小平芳平君 政府はどのような努力をしていらっしゃるというのが、向こうに了解されているのでしょうか。
  231. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) もうたびたび国会に御審議を願っていることは御承知のとおりでございます。さきの臨時国会には出しませんでしたが、とにかく、国内法と一緒にして出そうという、われわれの気持もわかっていただいておると思います。
  232. 小平芳平

    ○小平芳平君 この問題についても、国会に提出されたことはもう何回かありますけれども、やはり実際の批准は、いまだにできていないわけであります。で、そういう面についても、もともと労働連動は、自由にやっていくのが建前であることはもちろんでありますから、無用な紛争や無用な誤解がないようにやっていかなければならないと思います。  次に、運輸大臣あるいは国鉄総裁にお伺いしたいのですが、国鉄の防災態勢が非常に原始的ではないか、今度の大雪にしても、人夫を大勢頼んで雪かきで線路の雪をかき分けていくということならば、原始時代と何ら変わりはない、もう少し——一方では新幹線の建設があるわけですから、こうした防災態勢、あるいは雪に対する防災態勢も、もっと機械化できないものかどうか、お伺いしたい。
  233. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。最初の降雪に対しましては、どうしても人力を使わざるを得ないのでありまして、その後その人力によって除雪せられた部分につきましては、大いに機械化を、でき得る限りの機械化をやっておるつもりでございます。たとえばロータリー車を多数持っていくとか、除雪車を多数に動かすとか、かなり機械力を用いて、現に若々と除雪の効果をあげつつあります。これで、今度の豪雪というものは、全国未曾有の豪雪ですから、これを機会にさらに除雪機械、その他の防雪施設について考えていきたいと思います。  なお、新幹線とこの豪雪の対策とは、そこに何らの関係がありません。新幹線のいかんによって、豪雪、防雪、防災の施設がおくれたというようなことはありませんから、さよう御了承願います。
  234. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣、そうおっしゃいますけれども、もちろん新幹線と関係はありませんけれども、現場の国鉄の職員の方や除雪作業をやっていらっしゃる方は、それこそ不眠不休の大へんな除雪作業をやっていらっしゃるわけです。除雪車もちゃんと動いているとおっしゃいますが、何台動いておるか。  それからまた、これは現地の人の話でありますが、ある区間の道路を徹夜で守ったために、いち早くバスは開通できたのに、国鉄のほうは、除雪車やそういう点で手ぬるいものだから、無用に大きな災害になったというようなことも言われていたのですが、その間の事情はどうでしょうか。
  235. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 先ほど申しましたように、最初の除雪は、もうどうしても人力によらなければいかぬのでありまして、それ以外に方法がなかったわけですが、その後ロータリー車その他ラッセル車が動くようになりました場合には、全能力を集中いたしましてやったのでございます。ただ道路は、一キロ延びればすぐなにしますが、鉄道は御承知のように、いろいろ構内の操車場のポイントとか信号とか、そういうもの、いろいろな点がございまして、すぐ、さっそくロータリー車を動かすとか、ラッセル車を動かすというようなことは、なかなか困難であるということは小平委員も御了承下さることと思います。  なお、何台のロータリー車が動いたかは、国鉄の副総裁に答弁いたさせます。
  236. 吾孫子豊

    説明員吾孫子豊君) お答え申し上げます。国鉄は今、ラッセル車とかロータリー車とかマックレーンとかいうような、いわゆる除町関係の単価を全体で三百八十六台ほど持っておりまするが、今度の雪害に際しまして、新潟支社の管内で使いましたものは八十二台、金沢の管内で使いましたものは五十九台でございます。それでただいま大臣から御答弁ございましたように、今度の雪が通常の場合と比較にならない豪雪でございましたために、通常の場合でございますれば、これらの機械設備で、列車の運転に大体支障なくできるものでございましたが、あまりに雪が多うございまして、そのためにたとえば豪雪防止のために作っておりました流雪溝——雪を流す溝なんかが、これは鉄道だけの雪ならば大したことはなかったのでありますけれども一般の町のほうの、市内のほうの雪をそこへ捨てられるというようなことで流雪溝が詰まってしまって、十分そういう設備が機能を発揮できなかったというようなこともございましたし、また今度の雪が、市街地等に相当降った関係上、線路のそばに民家等が近接しておりまして、ロータリー車とか、その他の除雪機械がそのまま使えないというような面もありまして、通常の場合よりも、よりよけいに人力にたようなければならないようなことがだいぶ多うございましたのですが、これらの点は、今回の経験を生かしまして、さらに除雪態勢を強化するように努力いたしたいと考えております。
  237. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、もう一つ国鉄の方にお尋ねしたい点は、東海道新幹線の用地買収でいろいろ問題が起きている点を、新聞に報道されたのを私も拝見したわけでありますが、国鉄としては、相当用地買収に無理をなさったんじゃないか。値段をたちまちつり上げた。つり上げたというのは、現地の人がつり上げたということよりも、むしろ国鉄が高く高くと買いあさったというふうにも言われているのですが、いかがですか。
  238. 吾孫子豊

    説明員吾孫子豊君) 新幹線を初め、用地の買収ということにつきましては大へん困難をいたしております。しかし国鉄といたしましては、適正な価格で買収しようと努力いたしますために非常な苦労をしておるわけでございまして、他の土地価格等に比べて、国鉄が高く値段をさしたというようなことはないように考えております。
  239. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう点、いろいろ私も聞いたり、また持っているものもいろいろありますが、もう一つお尋ねしたい点は、国鉄ではそのようにして、とにかく新幹線の用地がほぼ買収が終わるわけですね。今回の予算の補正で終わるように出ているのです。ところが、たとえば同じ東海道線でも、富士駅の改修とか、身延線の改修というようなことは、同じ東海道線でも、もう三十四年から予算がついて、それでいて、いまだにできないというのは、どういうわけです。
  240. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。身延線がおくれておるのは、新幹線の用地その他と関係ありません。ただしかし、予算がついてやれないというのは、身延線の地元の、身延線の用地そのものが、なかなか解決がおくれておるのでおくれておるようなわけでございまして、それもほぼ解決する見込みがつきましたので、進展すると思います。
  241. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうことを、新幹線に関係があるといっているのではなくて、片方では用地を買収してどんどんやるのに、片方では、三十四年来用地買収をしないで、ただ見てるというのは、全然やる気がないかというように考えられてしまうのです。たとえば同じこういう線でも、新宿発の河口湖行き——この列車とか電車ですか、あるいは飯田線にしても、名古屋発上諏訪行きですが、とにかく全部の幹線から、そういうローカルヘ、全部でもないけれども、どんどん乗り入れができるのに、いつまでも富士駅だけできないというのはどうしてか。
  242. 吾孫子豊

    説明員吾孫子豊君) お答え申し上げます。身延線の用地買収、身延線の富士駅に入って参りますところの線路のつけかえの問題に関連いたしまして、用地買収が手間どっておりますことは事実でございますが、今までおくれて参りましたのには、やはりいろいろ理由があったわけでございまして、一つには、地元の土地所有権者の方々との間でもって、線路のつけかえに関連しまして、線路の構造の設計を変更するというような問題が起こって参りましたりいたしまして、そのために当初予定しておった予算よりも、相当額が大きくなるというようなことから、場合によっては、ただいま決定しております路線を、もう一ぺん考え直してみるというようなことも必要なんじゃないかというようなこともございまして、それやこれやで用地の買収も、おくれているようなわけでございますが、地元の方々との御相談を鋭意促進いたしまして、できるだけ早くそれは片づけるようにいたしたいと思っております。  それから、本線から列車を直通させますことは、現在の設備ではできません。ただ、身延線の中の列車の回数をふやすというようなことにつきましては、これまた、強い御希望もございますので、ただいま線内の準急等を増発いたしますことについて、検討をいたしておるような次第でございます。
  243. 小平芳平

    ○小平芳平君 その検討も、もう三十四年から予算がついているから、長過ぎるということを申し上げているのです。  それから次に、経済企画庁長官に、もう一つお伺いしたい点は、新産業都市の指定について、だいぶ新産業部市の指定の希望も、各地域から出ているようでありますし、また、経済企画庁としても、いろいろ準備をなさっていらっしゃるようですが、これはどのような準備をしていつごろ指定になるかということについてお尋ねしたい。
  244. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 要請大臣が、御承知のように数多くございまして、経済企画庁長官一人でございます。そうして、総理大臣のいわば事務局として、事務的な作業を取りまとめながらやっているという立場でございますので、各要請大臣にかわって御答弁申し上げるというわけには参りませんので、ただいまの進行状況を申し上げますと、将来指定を受けるのに必要な資料を提出された個所が四十二カ所ございます。それが大体、一月中に資料が出て参りまして、つい数日前から一カ所一カ所につきまして、現地の方においでをいただいて、詳しく事情を伺っております。大体、一日に午前午後一件ずつくらい、一日おきにやっておりますので、四月末日までヒヤリングがかかると思います。それは各省事務当局一緒になって聞いておるわけでございます。それが済みますと、その上で各省大臣の意思統一をいたしまして、その上で総理大臣に、適当と思うものの指定を要請する、こういうことになると思いますので、事務の進捗から申しまして、やはり五月より多少あとになる、そこらあたりというふうに見通しております。
  245. 小平芳平

    ○小平芳平君 かつて国土総合開発法ができまして、その総合開発法の特定地域の指定がだいぶなされたわけですが、そうして二十数カ所になりますか、特定地域の開発促進ということで指定がなされたわけでありますが、一方ではまた、各地方で地方開発促進法というものを作る。日本全国全部——全部でもないけれども開発促進法の中に入ってしまうというような、また新産業都市の指定も、その二の舞をしはしないか。要するに特定地域の指定をしたからといって、それは若干のものはあるにしても、結局また、新産業都市の指定をしなければならない。新産業都市の指定をしたら、また今度別の法律を作って指定をしなければならない。まるきり日本国中法律と指定で一ぱいになってしまいはしないかというふうにいわれるわけです。そろそろそういうような法律と指定を繰り返すようなことはこの辺で切り上げて、そして少なくとも新産業都市の指定は、もっと何といいますか——何カ所くらい指定されるおつもりか。
  246. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 特定地域を初めといたしまして、ややそういう感がありますことは、御批判のとおりだと思います。そういうことを繰り返したくないというふうに私としては思っております。行政大臣の意思統一をいたしておりませんので、さだかに申し上げるわけには参りませんけれども考え方としては、五年ないし七年先を考えまして、地域格差の是正を主としながら、したがって、どちらかといえば後進地域にややあまいものさしを当てながら、いわゆる選考都市をやって参る。こういう考えで、ことしさしずめ、経過的に十億に近い予算を用意したわけでございますが、そのときに私が一人で考えておりましたことは、十カ所をややこえる程度におさめたい。乱に流れないようにという両院の御決議に沿って参りたいというふうに考えております。
  247. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 小平君の質疑は終了いたしました。  本日は、この程度にいたしまして、明日午前十時から委員会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十二分散会      —————・—————