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鈴木強君 私は、ただいま
議題となりました「
職業安定法及び
緊急失業対策法の一部を改正する
法律審」について、院議に基づき、
社会労働委員会における審議の経過を
中間報告せんとするものでございます。
本
法律案が、
内閣から当院へ予備
審査のため送付されましたのは去る二月十三日でありますが、
社会労働委員会に予備
審査のため付託されましたのは、実に約三カ月後の五月七日であります。また、
衆議院送付案が本委員会に付託されるに至りましたのは、わずかに六日前の六月二十三日であります。
委員会におきましては、自民党側理事の申し入れもありましたので、協議の結果、六月二十五日大橋労働大臣から提案理由の説明を聞きました。私といたしましては、さきに付託されました諸法案とともに、順次鋭意審議を進めんとしておりましたのに、突如として本
法律案の審議について
中間報告を求められるに至りましたが、率直に申し上げまして、ただいまも申し述べましたように、本
法律案は、委員会におきましては提案理由の説明を聞いただけで、全く審議を行なっておりませんので、
中間報告をせよと言うのは、全くむちゃな話でありまして、(拍手)どのような
報告をしてよいのか戸惑うとともに、はなはだ遺憾に存じます。しかしながら、私は私見をはさまず、ありのままをここに
報告することにいたします。
まず、本
法律案の概要を申し上げます。本
法律案は、政府側の説明によりますと、わが国の雇用失業情勢が、産業経済の発展に伴って相当に変化し、また、失業対策事業の就労者が一般の職場へはなかなか転出しがたく、固定化、老齢化の傾向にあること等にかんがみ、中高年令失業者等に対し、職業訓練、職業指導等を行なって、その就職を促進するとともに、これらの措置によっても、なお就職し得ない失業者等を、失業対策事業に就労せしめるため、
職業安定法及び
緊急失業対策法の一部を改正しようとするものであります。
本
法律案の要旨は、
まず、
職業安定法の一部を改正して、
第一に、中高年令または就職困難な失業者に対し、労働大臣が定める計画に従って、就職促進指導官による職業指導、職業紹介、公共職業訓練、職場適応訓練等の就職促進措置を行なうこと。
第二に、国または都道府県は、右の措置を受けている失業者で失業保険の給付を受けていない者に対し、就職指導手当または訓練手当を支給すること。
次に、
緊急失業対策法の一部を改正して、
第一に、失業対策事業は、失業者の技能、体力等を考慮し、これにふさわしい事業の種目を選ぶこととし、労働大臣が事業の種目、規模等を定めるにあたっては、あらかじめ地方公共団体の長の意見を聞くこと。また、失業対策事業を失業者就労事業及び高齢失業者等就労事業の二種類とすること。
第二に、失業者就労事業に公共職業安定所が紹介する失業者は、原則として、
職業安定法による就職促進措置を受けてもなお就職できないものとし、現在失業対策事業に就労している君は、経過措置により引き続き失業者就労事業に紹介すること。
第三に、失業者就労事業の失業者に対する賃金は、労働大臣が失業対策事業賃金審議会の意見を聞いて定めるものとし、現行のいわゆる低率賃金方式を改めて、同一地域の類似の作業に従事する労働者の賃金を考慮し、地域別に作業内容に応じて定めること。また、夏期または年末に臨時に支払われる賃金について特別の定めをすること。
第四に、失業者就労事業の事業主体は、事業の適正な運営をはかるため、労働大臣が定める基準に従い、運営管理規定を定めること。
第五に、高年令またはこれに類する体力の失業者に就業の機会を与えるため、国または地方公共団体等は高齢失業者等就労事業を実施するものとし、その事業種目の選定、運営等については、高年令者等の特性を十分考慮し、賃金についても特別の配慮を行なうこと。等であります。
本
法律案は、衆議院において施行期日の一部を修正されました。すなわち、附則第一条中、「
職業安定法第二十六条の改正規定、この
法律による改正後の
緊急失業対策法第三章の二の規定及び附則第三条の規定」の施行期日「
昭和三十八年四月一日」を「公布の日」に修正せられたのであります。
次に、本
法律案の審議に関する
社会労働委員会並びに同委員長及び理事打合会の経過について申し上げます。
六月二十四日午前及び午後の二回にわたって、委員長及び理事打合会を開きました。
衆議院送付の本
法律案が当委員会に付託されました翌日であります。当委員会は、毎週火曜日に厚生関係、同じく木曜日に労働関係の審議を行なうことを通例とする申し合わせでありますが、自民党側の
高野、
徳永両理事から、「二十五日火曜日の委員会は厚生関係を審議する日であるが、これをやめて、労働関係の審議を行なうこと。すでに本
審査のため付託されております
内閣提出の労働災害の防止に関する
法律案、失業保険法の一部を改正する
法律案並びに議員発議の労働関係六
法律案に先んじて、本
法律案を審議することとしたい。また、今後会期末まで火曜日及び木曜日のほか連日委員会を開くことといたしたい」との申し出がありましたが、社会党側の阿
具根、
藤田両理事から、「火曜日に厚生関係を審議する通例を特に変える理由を了解しがたい。今後通例の委員会開会日について検討することは考慮してもよいが、連日委員会を開くことには
賛成できない」との意見が述べられ、調整ができませんでしたので、一たん
休憩いたしました。再開後、自民党側の理事から、「二十五日の委員会では、厚生、労働両省関係の審議を行なうこととしたい」との申し出がありましたが、社会党側の理事と意見が一致するに至らなかったのであります。
なお、同日、自民党側の理事である
高野、
徳永の両委員から、「二十五日午前十時開会の
社会労働委員会において、本
法律案を
議題とされるように」との申し入れがなされました。翌六月二十五日、委員会の開会前に委員長及び理事打合会を二回にわたり開きましたが、自民党側の理事から、「本日の委員会において、公報掲載の案件に追加して本
法律案の審議を行なうことといたしたい」との申し出があり、社会党側の理事から「本
法律案について十分な審議を約束するならば、本日、本
法律案の提案理由の説明を聞いても差しつかえはないが、確約できるか。また、明水曜日及び明後木曜日に委員会を開いて、労働関係法案を順次審議し、木曜日の委員会散会後に今後の審議
日程について打ち合わせをしたい」との答えがありました。一たん
休憩後、再び打ち合せを行ないましたが、依然として双方の主張が強く、なかなか意見が一致しなかったのであります。しかしながら、委員長として誠心誠意双方の意見の調整に努力いたしました結果、同日開会の委員会において老人福祉法案について
質疑を行なった後、大橋労働大臣から本
法律案について提案理由の説明を聴取することにいたしました。このことは先ほど私が申し上げましたとおりでございます。
なお、同日自民党側の理事である
高野、
徳永両委員から、「明六月二十六日午前十時から
社会労働委員会を開会し、本
法律案を
審査されんことを」との申し入れがなされました。
次いで、六月二十六日午後、二回にわたり委員長及び理事打合会を開きましたが、自民党側理事から、「明二十七日の委員会においては本
法律案のみを審議し、今後、連日委員会を開き、三十日は日曜日であるが、委員会を開いて、本
法律案に対する
質疑を打ち切り、
討論採決を行なって、七月一日開会見込みの本
会議に上程できるようにいたしたい」との申し出があり、これに対して社会党側の理事から、「委員会の開会日数を増加して審議を促進することには同意してもよいが、本
法律案の
採決日を六月三十日に予定することには
反対である」との反論があり、
休憩後も双方の意見が一致するに至らなかったのであります。なお、自民党側の理事である
高野、
徳永両委員から、「本日すみやかに
社会労働委員会を開会し、本
法律案を
議題として審議されるように」との申し入れがなされましたが、右のような委員長及び理事打合会の経過にかんがみ、このような状況において委員会を開きましても円満な審議の促進を望みがたく、また、委員長及び理事打合会の閉会が午後四時四十九分になりましたので、委員会は開けなかったのであります。
次いで、二十七日、委員会開会前に委員長及び理事打合会を二回にわたり開きましたところが、自民党側の理事から、「今後、連日委員会を開いて本
法律案のみを審議することといたしたい」との申し出があり、これに対し、社会党側の理事から、「本
法律案より前に当委員会に付託されている労働関係の諸法案、すなわち
内閣提出の労働災害の防止に関する
法律案、失業保険法の一部を改正する
法律案を順次審議すべきであって、本
法律案のみを優先的に審議することには同意できない」との反論があり、
休憩後も双方の意見が一致するに至らず、すでに時間は午後七時四十五分にもなりましたので、ついに委員会を開会するに至らなかったのであります。その際、自民党所属の
高野、
徳永、
紅露、
竹中、
丸茂、
山本、
鹿島、
横山、
亀井、加藤各委員の連署をもって、本
法律案を
審査するため、六月二十八日午前十時から委員会を開会するよう、参議院規則第三十八条策二項により委員会開会要求書が委員長あてに
提出されましたので、私は各興奮に諮り、昨二十八日午前十時から委員長及び理事打合会、同十時三十分から委員会の開会の手続をとり、委員会の
会議に付する案件として、「労働災害の防止に関する
法律案(閣法第百十二号)(
衆議院送付)、失業保険法の一部を改正する
法律案(閣法第百十七号)(
衆議院送付)、
職業安定法及び
緊急失業対策法の一部を改正する
法律案(閣法第八十九号)(
衆議院送付)並びに労働情勢に関する調査」を定め、公報に掲載いたしました。
昨二十八日は、午前十時より委員長及び理事打合会を招集いたしましたが、定刻を過ぎても自民党側の理事の出席がなく、午前十時三十分過ぎになって、自民党側より暫時開会延期方の連絡がもたらされましたので、御家庭の御都合もおありのことと考え、この要請をいれてお待ちすることにいたしました。ところが、同日午後六時半に至り、なお自民党側の理事の出席がなく、正規の委員長、理事打合会並びに
社会労働委員会を開会することができなかったのであります。委員長といたしましては、やむなく午後七時過ぎ、自民、社会面党側の理事を初め、社労委員になっていただいております公明会の
小平委員、民主社会党の村尾委員、第二院クラブの林委員にも御出席を願って、懇談会を開き、二十八日の経過について御説明を申し上げました。その席上、自民党を除く各委員から、期せずして、本日自民党は
中間報告を行なうのではないかという風説が飛んでいるが、そのようなことがあってはならないとの意見の開陳がなされました。
なお、この懇談会に先だち、私は参議院の役員として、重宗
議長に面会を求め、午後四時四十五分から十五分間、
社会労働委員会の経過について説明を申し上げるとともに、
議長の善処をお願いいたしました。
以上、委員長及び理事打合会を中心にして経過を申し上げましたが、同じようなことを繰り返しておりましたので、おわかりにくかったかとも思います。
結論的に申し上げますと、六月二十三日に
衆議院送付の本
法律案が当委員会に付託されましたときには、すでに労働関係の
法律案としては、
内閣提出の労働災害の防止に関する
法律案、失業保険法の一部を改正する
法律案、並びに議員発議による六
法律案、すなわち、労働基準法の一部を改正する
法律案、じん肺法の一部を改正する
法律案、炭鉱労働者遺族補償特例法案、最低賃金法の一部を改正する
法律案、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する
法律を廃止する
法律案、中高年齢者雇用促進法案、これらが本
審査のため当委員会に付託されておったのであります。
このような中で、自民党側理事は、議員発議の六
法律案はもちろん、先に付託された
内閣提出の労働災害の防止に関する
法律案、失業保険法の一部を改正する
法律案をそのままにしておいて、まっ先に、あとから送られて参りました本
法律案のみを審議をすべしという意見でございました。しかも、連日委員会を開き、六月三十日の委員会で本
法律案の
討論採決を行ない、七月一日の本
会議に上程することを終始主張して、一歩も譲らなかったのであります。これに対して社会党側理事は、「労働関係では、すでに
内閣提出の二
法律案と議員発議の六
法律案が本
法律案より前に当委員会に本
審査のために付託されているのでありますから、委員会に付託された
順序に従い、少なくとも労災、失保、失対の順に審議を行なうこと、会期は七月六日まであるのであるから、この間において衆議院同様参考人の意見聴取等も考えて審議の
日程を作るべきであって、六月三十日に議了しようというがごときむちゃな言い分には
反対せざるを得ない」と、終始主張して譲らなかったのであります。このように両党の意見が全く平行線をたどったため、委員長としては、委員会を開会しても、とうてい円満な委員会の運営は期しがたいと考え、委員会の開会はできなかったのであります。特に二十八日の委員会は、成規の手続を経た自民党委員の要求であるにもかかわらず、自民党理事の委員長理事打合会への御出席がないために、委員長及び理事打合会を初め
社会労働委員会の開会ができなかったのであります。
かくのごとく、
社会労働委員会におきましては、
職業安定法及び
緊急失業対策法の一部を改正する
法律案につきましては、提案理由の説明を聞いたのみで、一回の
質疑も行なっていないことを重ねて申し上げまして、
報告を終わります。(拍手)