○光村甚助君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま上程されました
郵便貯金法の一部を
改正する
法律案につきまして、
池田内閣総理大臣並びに
関係大臣に対し、若干の
質問をいたそうとするものであります。
今回のこの
改正法案の
趣旨は、郵便貯金の利率を
法律事項としておくと、
政府の金利政策遂行が円滑に行ないがたいので、この利率を法定することをやめ、これを
政令事項とすることによって、容易に、自由に改定し得るようにしようというのであります。
わが国の郵便貯金事業は、
明治八年事業創始以来、約九十年の歴史を持ち、
国民大衆の唯一の貯蓄機関として、世界に類例を見ない目ざましい
発展を遂げてきたものでありまして、今日におきましては、口座数二億一千七百万件、現在高一兆五千数百億の巨額に達しております。そうして、その果たしております役割は、財政投融資の最大の原資として、国の財政資金の造成に寄与するとともに、また、通貨政策として
国民の購買力の吸収という大きな使命を果たしつつ、
国民大衆の零細な貯蓄機関として全
国民に親しまれているものであります。日本の郵便貯金がこのように発達いたしました原因は、全国津々浦々にわたって散在している一万五千以上もの郵便局を通じて行なわれている官営事業であって、しかもその利率が安定しているからであります。すなわち、利率は現在
法律によって
規定され、
国会の
審議を経た
法律によってでなければ改定できないようにして、
国民大衆の利益を擁護し、本年度予算におきましても、実に一千九百億もの純増を確保することになっております。今回の
改正は、
政府が必要と認めた場合には、
政令によっていつでも
改正ができることとするもので、預金者の立場からすれば、たいへんな悪条件を押しつけられる改悪をあえていたそうとするものであります。
私は、現在官営事業として運営せられている郵便貯金事業や簡易保険事業のあり方について、根本的に大きな不満を抱いているものであります。すなわち、最近におきましては、郵便貯金も、簡易保険も、同業者としての銀行、保険会社と全く同じ市場で、対等の立場において競争させられているにもかかわらず、一方においては、それが国営事業であるために、国家目的遂行のための制約を受け、非常な悪条件のもとに運営せられておるのであります。たとえば、貯金や保険の最高額が五十万円に制限され、利率または保険料率の相違、集積せられた資金の運用面における制約等に現われております。官業なるがゆえに民業を圧迫してはいけないという戦前から行なわれた配慮が、社会事情、
経済事情の急変によって市場を全く同じくするに至りまました今日におきましても、なおそのまま当然のこととして固執されてきているのでありまして、最近、
国会において
審議せられた両事業
関係の数々の法
改正は、官業に対し不当に課せられた悪条件を是正し、一歩々々民業に近づけようとする一連の
改正であったことは、すでに御承知のとおりであります。一方においては、本年度予算におきましても、郵便貯金で一千九百億の純増を、簡易保険で一千六百億の積み立てを達成せなければならないのでありますが、最近の世相においては、従来のように、官業であるから、郵便局が扱うからというだけでは、奨励、募集は困難でありまして、預金者、加入者の納得のいく契約
内容として、
利用者への配慮、利益の還元方策が十分に講じられたものでないと、幾ら郵政職員が努力しても、その実績をあげがたいのであります。
今回の
改正におきましても、あるいは
政府の言うごとく、弾力ある
政令によることとし、利率を上げる場合もあると言うかもしれませんが、最近の日銀の数次にわたる公定歩合の引き下げを見た
国民大衆としては、さなきだに貨幣価値が年を経るに従って下落する方向にあります上に、さらに利率までも
政令によって今後引き下げる方向のみに進むと
考えられるとき、
国民の貯蓄意欲はとみに減退し、土地の買いあさり、奢侈、賭博等の
方面に浪費される傾向を助長することは、火を見るよりも明らかであります。池田
総理は、よく外国の低金利を口にせられておるようでありますが、主要国におきましても、なるほど公定歩合は低率でございますが、預金者への金利サービスの比率は割合に高くなっているのであります。日本におきましては、諸外国のごとく、生活水準が高く、かつ社会保障の行き届いた国とは、おのずから異なるのでありまして、零細なる
国民貯蓄にはあたたかい手を差し伸べてこれを保護することが、現在の日本の
国情からして、適当な措置と
考えるのでありますが、いかがにお
考えになっておられますか。
また、この郵便貯金の預金者に対するサービスとして郵政省の希望している貸付
制度についても、それが財政投融資の原資の確保に支障を来たすものとして
反対しておられるようでありますが、郵便貯金の長期預金者にわずか一万とか二万とか貸し出す
制度が、本年度の財投の
規模一兆一千億を脅かすようなことになるとは
考えられないのでありますが、この点、
総理大臣のお
考えをお伺いしたい。
以上述べましたような官業に対する不合理な取り扱いに対し、今後いかように対処されようとしておられますか。また、預金者に対する配慮の点については、その一例として、預金者貸付
制度のごときは
考えておられないか。第三番目には、いわゆる最高制限額というものが五十万円になっておりますが、これを無制限に郵便貯金ができるようにする御意思はないかということでございます。先般の新聞の囲み記事を見ますと、某
大臣が、たばこをやめて五十五万円貯金したということが新聞に出ておりますが、現在、郵便貯金は五十万円しかできないことになっている。このように、
大臣でさえも五十五万円の貯金をするくらいです。一般大衆においては、おそらくこういう
法律は私はむだだと思いますので、無制限にいわゆる郵便貯金ができるようにする
制度はお
考えないか。この点をお伺いいたします。
次に、
大蔵大臣にお伺いしたい点は、一般低金利政策遂行の犠牲を、なぜ零細なる郵便貯金者にしわ寄せするかという点であります。今回の
政令委譲によって、
政府は低金利政策遂行のための有力な武器を手に入れることになります。すなわち、銀行預金金利を引き下げる場合、従来のように銀行側の強い要求であった郵便貯金金利の同時引き下げが、もはや
法律改正を要することなく、
政府によって自由に行なえることになり、要すれば、まず郵便貯金金利を引き下げることによって、銀行預金の金利の引き下げを主導することさえもできることになります。全国数千万人の、最も先に保護すべき零細なる
国民の貯蓄を国の低金利政策遂行の手段に使われては、あまりにも弱い者いじめにすぎると言わざるを得ないのであります。
ひるがえって、現在わが国の総貯蓄は二十四兆円に達しており、その半分の十二兆円が普通銀行の占めるところとなっているようでありますが、郵便貯金の一兆五千億はこの八分の一にしか当たらないのでありまして、銀行側にとって実質的に強敵視するに値しない実力であり、したがって、零細な
国民大衆のものは、むしろ銀行預金より優遇してしかるべきものと思うのでありますが、
大蔵大臣はいかにお
考えになっておりますか。
さらに
大蔵大臣にお伺いしたいことは、財政金融政策担当の主管庁としての
大蔵省役人の態度についてであります。現在、資金運用部資金の原資の八〇%は、郵政省の貯金、保険のものと、厚生省の両年金のものの集積でありますが、資金を集めるのは郵政や厚生省がやるのだ、郵政省は一生懸命に貯金の募集や保険の募集をやって集めればいいのだ、それをどこにどう使うか、どのように運用するかは、
大蔵省がやるのだというような思い上がった態度は、今後絶対に許すべきではないと私は思っております。すでに根本的に改むべき時期に来ていると思うのでありますが、この点に対する
大蔵大臣の
所見をあわせてお伺いいたしたいと思います。
大蔵大臣は、郵政
大臣としての御経験もあり、三十九才で郵政
大臣になり、いわゆる貯金や保険の最高制限額の引き上げにも努力された。この人は私は大物になると思ったところが、自民党の政調会長にもなった。ひいて
大蔵大臣にもなった。郵政省にいる時分には、いわゆる貯金や保険の最高制限額の引き上げを主張して、郵政職員を喜ばしておきながら、今度
大蔵大臣になるや、この貯金、保険の最高制限額を押えるとか、あるいは運用の拡大に
反対しておられるようでありますが、
大臣のいすが変わったからといって、あなたの信念があっちに変わり、こっちに変わるようじゃ、私は実際あなたの信念を疑う。池田
総理大臣のように、いわゆる、がんこなら、がんこなりに、
経済のことはおれにまかせろというような一つの信念がなければ、将来田中内閣を夢みるあなたは、実際むずかしいということを、私は御忠告申し上げておきます。
次に、郵政
大臣にお尋ねしたいことは、今回の
改正案によって預金者は非常に不利益をこうむるものと予想されますが、この預金者保護と郵政職員の企業意欲の低下に対して、所管
大臣としてどのような対策をもって対処されようとしているのかお伺いしたい。伝え聞くところによりますと、郵政省としては、
政令委譲の交換条件として預金者貸付
制度を創設しようとしたが、
大蔵省に
反対され、やむを得ず、今回の保険積立金の運用法
改正と交換条件にされたとか聞きます。預金者とは
関係のない保険のほうのわずかな利益と交換条件にさせられた預金者こそ迷惑な話であります。あるいは、
政令が出る前には郵政
審議会に諮って万全を期すると、さっきも言われましたが、この郵政
審議会の委員は、みんな資本家の代表であり、銀行側の代表なんです。こういう人たちに幾ら
政令の前に諮ったところで、零細なる預金者の意向を代表する
審議会とわれわれは言えないのであります。また、
大蔵省と郵政省の力を知っているものにとっては、そのまま郵政
審議会を信用し得ないことは言うを待たないところであります。
戦後ようやく、利率を
法律できめることにより、安定した契約
内容のもとにめざましい
発展をとげてきた郵便貯金事業が、今回の
改正を契機として事業不振に陥るであろうことは、容易に予想されるところでありますが、所管
大臣として、これが対策、及び、この悪法を甘受したのちにおける事業の不振に対し、一体どのような
責任をとられようとされますか、お伺いしたいのであります。
以上の諸点につきまして各
大臣の御
答弁を求めて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕