○相澤重明君 私は、
日本社会党を代表いたし、
海運業の
再建整備及び
外航船舶建造融資利子補給のいわゆる海運二
法案に対し、反対の討論を行なわんとするものであります。
海運業は、基幹産業として、
わが国経済の
発展のため重要であることは論を待たないところであり、
国際的な視野の中で
わが国海運の位置づけを
考えるならば、船舶造船、港運事業、労働対策等、
海運業及び関連産業全体について前向きの施策を樹立しない限り、
国際競争力の培養はおろか、取り残されていくことは、火を見るより明らかであります。今日の
海運業の不況をもたらしたものは、歴代保守党の海運政策の貧困そのものにあるのであります。同時にまた、業界自体、十年に一度は戦争があり、戦争があればもうかるのだ、こういう前時代的な感覚や、あるいはまた、景気が悪く、困ってくると、政治力を
利用すれば何とかなるという他力本願的、こういうものが、過去におけるところの造船疑獄事件、これはまだ
国民に耳新しいことである。こういうことが、いわゆる今日のこの不況をもたらしておるのであります。今日、
世界の産業構造の変革から見るならば、いかなる国といえども対外競争力がその国の産業の
発展の基本になることは、これはもうみんなよく知っているのであります。ところが、残念ながらわが海運界は、構造的な変化に対する対応した相対的な対策が立てられていないから、これが海運界をして前向きに立ち直らせることができなかった原因になっておるのであります。
第一に、本
法案の中で
政府が
考えている海運界に対する
考えは、過去の借金の利子を猶予してやる、あるいは今後の新しい造船に対する利子
補給を行ない、
海運業の集約化と企業の自立体制確立を期しているのでありますが、保有船五十万トン、用船を合わせて百万トン以上にという骨子でありますが、基準百万トンについても実は数字的な根拠がないのであります。そういうふうなことにかかわらず、
政府はそれを必須
条件として、これに従わない船主の将来については何ら対策を
考えておらぬ。こんな一方的なことはないのであります。船の所有量は海運経営上業務別に適正化をはかるべきである。いやしくもこの法律を通して官僚統制を強化するような、そういうような
考え方、あるいは労使の中に強く介入するようなことは、厳に慎まなければならぬのであります。一たんその方途を誤れば収拾のつかない波乱が起きることは、はっきりしているのであります。
第二は、今回の
法案では、海運界の
意見というよりは、七人
委員会という人たちによってこの草案が作られて、その人たちが中心に作ったのであります。金融界、いわゆるこの金融界といわれる銀行屋さんです。銀行が主導権を握るのでありますから、企業の立ち直り、対外競争力の培養強化というよりは、借金を取り上げることに夢中になる。それが主眼となり、
国民の血税はいわゆる金融資本家を太らせるだけに終わってしまうおそれがあるのであります。
第三は、今回の集約化により、従業員の過剰をどうするかということについて、その対策というものを全く持っておらないのであります。従業員の不安は取り除かれていないのであります。業界は金融資本の命ずるこの圧迫によって
合理化を強行し、
合理化は従業員の首切りということに通じていくのであります。働こうと思ったところで職のない多くの人々のいるその中へ、さらに
合理化という名によって首切りを行なって、多くの失業者を製造することになっちゃたまりません。
政府は、国の宝である働く人々に不安のないように、失業させないという保証を行なうべきであります。
第四は、
政府の
考える外航船舶を中心のグループ別集約でありますが、内航及び港湾、あるいはオーナー問題、あるいは高船価対策、不経済船対策、こういう重要な根本問題ができておらない、手をつけておらないのであり、数年後の収拾すべからざる混乱を巻き起こすことは決定的であります。
第五は、海運企業基盤強化のため積み取り比率及び収益の増大をはかることが重要なことであります。
政府の
外交問題として、シップ・
アメリカンに代表される
アメリカ海運政策、あるいは新興海運国の台頭等について、十分なる配慮がされておらない。いわゆる先ほどお話がありました対米屈辱のような形ではよくならない。盟外船による定期航路の混乱を防止し、海運の秩序を維持するためには、海上運送法の
改正を行なうことが先決であります。わが
日本社会党は、このために海上運送法の一部を
改正する
法律案を提案しているのでありますから、どうか各派の皆さんの御賛同をいただきたい。このような措置が行なわれない限り、海運二
法案は全く意味がないのであります。
以上の点をもちまして私の反対討論を終わります。(
拍手)
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