○奥むめお君 私は、上程されました
特定産業振興臨時指貫
法案に対して、消費者の
立場から、
総理、
通産大臣、
公取委員長に
質問をするものでございます。
安くてよい製品がどんどん
外国から入って参ります。また、
外国の
資本が金利の高い
日本目がけてどんどん入って参ります。舶来品に弱い
日本の
国民目当てに、目新しい品が優秀なデザインと巨大な宣伝広告を伴ってどんどん入ってくるのですから、ひとたまりもなく撹乱せられるおそれがあると思うのであります。
事業欲と営利を事としている
企業家に愛国を説くことは、太によって魚を求めるようなものであるとしても、
世界経済に伍する
日本の
経済基盤をこの際固めるために、
国民全体が現在置かれている
日本経済のむずかしさを思わなければならないと思いますし、官民ともに根本的に改めなければならぬことが多々あると思うのでありますが、これこそ本
法案の前提とするべきものではなかいと思います。
総理はこの点で何を訴えようとしていらっしゃいましょう。一例を申しますと、外車が安くて格好のいいのがどんどん入ってくる。セールスマンとしては、もうけが多ければそれでよろしいのです。どうして高くて好まれない
日本車を売りに回らなきゃならぬか。こういう場合を
考えますだけでも、なかなか問題は困難だと思うので、
総理のお
考えを、第一にこの点から伺いたいのでございます。
また、この
法案で
特定産業に指定されたものには、
自動車、
特殊鋼、石油化学等がございますが、これらは大衆の生活に非常に
関係の深いもので、新
産業として出てきたものでございますから、この
法案がどう
運用されるか、この
法案がうまくいくかいかないかということに多大の関心を寄せざるを得ないのでございます。長い封鎖
経済と官庁権力に依存して温室にあった
日本の
産業が、この種蒔別
措置を約束せられるからといって、やすやすと同調してくれるものでしょうか。
合併によって、社長、重役などという、うれしい
地位を失うのもいやでしょうし、もうけを、あるいは損失を明るみに出すのもいやでしょうし、出資や
融資をしている
金融機関の系統
産業に対する思惑もまちまちでしょうし、それらの
会社の
従業員の労働条件もいろいろでしょうから、問題はここからも起こると思われます。これらのことは、交渉過程で有利な交換条件を求められることが明らかでありますまいか。よけいな金も要るでしょう。しかし、一向に
考えられてない消費者側からいっても、この
法案が生活にどうはね返ってくるか、最も不安を感ずるところでございます。所得倍増計画のアフターケア作業、つまり手直し作業が学者や行政庁の間で進められていますが、この人たちは紙の土だけで手直しをしていてそれで済むんですが、
国民大衆は、国の政策のよし悪しを日々の生活の中で受け取らなきゃなりません。また、そのしわ寄せを受けて苦しんできたのでございます。今度の
法案もまた画期的な
法案で、その結果が
国民生活に及ぼす点、きわめて広いから、しわ寄せをまたまた受けるのでないかという不安を
国民は抱かざるを得ないのでございます。で、長い間の苦労で、
国民は新しく
法律ができるたびに、これがわれわれの生活にどうはね返ってくるか、またいじめられるのじゃないかという不安を持つ習慣をつけました。そして自分で暮らしを守らなきゃならぬという、そういう
考えを持たざるを得ないようにしてきているのでございます。ですから、今度の
法案に対してもたいへんな不安を持っている
国民が少なくないのですから、
総理から、
法案の進め方や、または行政指導のやり方などを、不安解消のためにぜひ示していただきたい。これが第二の
質問でございます。
たとえばこの
法律が成功いたしまして、
日本の
産業が
国際競争力を身につけて、品質向上、価格の低下が行わなれるものであろうか、行わなれたときに、また私らがあべこべに苦労させられるのじゃないかという、この不安を
考えるときに、現実、
国際競争力に耐えることを急ぐあまり、輸出
貿易の
振興をはかるために、出血輸出の穴埋めが
国内にはね返って、
国民に
犠牲と負担をかけていることも、これは何としても避けてもらわなければならないわけですが、現状は必ずしもそうでありません。
総理は、こういう問題をどうお
考えになっていらっしゃいますか。消費者行政が
世界じゅうで最もおくれている
日本では、新しい
法律ができるたびに、
政府としては、これを消費者を守る
法律にしたい、守る
法律をこの道から切り開きたいと
考えるべきであると思いますけれども、今はそういうことは望んでも無理らしい。で、
世界に誇る
生産力の高度化、
経済の
成長も、物価高でかえって
国民を苦しめていることがわかったからこそ、
総理大臣が最も熱心に値下げの音頭をとられるようになったのだろうと思います。また、事実そうだと思います。たとえば牛乳、これはでき過ぎるから
政府が買い上げております。ところが、それほどでき過ぎて
政府が買い上げてお蔵へしまうくらいだったなら、なぜ
国民に安い牛乳を飲ませないのか。
市場の牛乳価格を
引き下げる
努力は
政府はいたしません。先ほど石油の問題のお話が出ましたから省きますが、ステンレス等の
特殊鋼の場合にも、台所用品、また石油化学ではプラスチック製品、洗剤、
合成繊維、また
自動車など、直接消費者に
関係のある商品が管理価格などの
影響を受けることになった場合に、現在でも物価
対策で困っている
政府が、消費者
対策をどのようにしていくつもりであるか伺いたい。予想されるように、
独占を許し、
市場支配的な体制を認める限り、物価
対策、消費者政策は成り立たぬと思うのですが、
総理のお
考えを聞きたい。
また、
貿易自由化に備えて
国際競争力を強めるためには、この
法案だけをたよりにしていては甘いのではないか。
日本の金利が非常に高くて、しかも、借入金が多い。金利を払うのに追われているようなものである。これは税制の
改正その他によりまして、社内留保を認めて自己
資本の蓄積には税金の
対象にしないという取り扱い方もあると思います。公定歩合を上げたり下げたり、下げたり上げたりのこの変動、これなども、いかにもぶざまで、
日本の
産業活動をじゃましていると思います。
政府は近く外資法を
改正して、ほとんど無制限に外資を入れたり、
外国のスーパーまで自由に入れるようにすると言われておりますが、基本的には外資には何らかの手を打つ必要があるのでありませんか。
次に
通産大臣にお伺いいたします。三十三年に
独禁法改正をもくろまれたときに、関連するところの大きい
中小企業者や消費者、
農民、
労働者、各般の者を集めて
意見を
法案作成過程でお聞きになりましたが、今度は全然
意見を聞いていない。公聴会を開く御意思がおありかどうか。また、官僚
統制と言われることをおそれてフランスやイタリアの
協調方式をとったと聞くのでありますが、あちらのほうでは、
協調方式というのは、千人余りもの各界の代表者を、
農民も、
労働者も、商業者も、消費者も、いろいろな方面の代表者を入れて民主的に協議しながら
意見をまとめては、
法案作成の仕事を進めていると聞いておりますが、
日本はここまでなぜ取り入れなかったか伺いたいのであります。この
法案によれば、特定
業種のトップ
企業の優遇が行なわれることになりますが、意欲的な
企業でも、二流や小
規模なものは、差別を受けて、やがて整理される運命にあると思わねばならないのでしょうか。最近の輸出増加は、
中小企業や
中小企業から
発展した
企業の涙ぐましい
努力に負うところが大きいのです。今後の
成長業種において、既存の大
企業を保護することで、新進
企業の進出を実質的に押えるのでは、結局国策上にもマイナスになりはしませんか。これはまた、自由
経済に反し、消費者の選択の自由権利を局限する結果にもなると思うのですが、
通産大臣はいかがお
考えですか。
通産省はいろいろな消費者行政の
法律を持っております。たとえば、品質表示法またはメートル法、そのほかいろいろ日常生活に
関係深い一連の
法律初め、これらがメーカーや流通部門の業者優先に行なわれていることを思いますと、この
特定産業の
臨時措置法も消費者の
利益などは考慮されていないのではないか、こう
考えられます。
本
法案は、
企業の数を減らして
寡占体制を作ろうとしているのですが、
寡占の望ましい
規模はどれくらいと
通産大臣ほお
考えになるか。また、
寡占の結果、
独占価格ができるおそれが多いと思うのですが、いかがでしょう。
この
法案そのものが
自由化時代に逆行するものであるのですから、いたずらに特定
業種の保護政策にならないように、ワクをはずれた
企業にも、うき目を見せないように、あくまで
国際競争力の培養の見地に立って本案の
運用に当たられたいと要望するものであります。
また、かかる
法案が
政府の基本方策であるとしましたならば、今
政府が
提案している
中小企業基本
法案は、実質的には
企業整理された
中小企業の社会的救済を
考えているにすぎないのではないか、あるいは、その結果は、
最後のしわ寄せが消費者にまた転嫁されるのではないかという不安が感じられます。そうだとしたならば、自由
経済の原則にも反するし、消費者の権利である選択の自由を局限することになるかと思いますが、御
見解はいかがでございましょうか。
なお、公正
取引委員長にお伺いいたしますのは、
公取は
通産省に実をとられた形で、風穴どころか、なきにひとしいものになりはせぬかと心配いたします。しかし、
貿易、
為替はもとより、
資本取引の
自由化さえ近いと言われるときに、
独禁法は、
日本の国のために
外国の不当な進出を断固阻止する役目を果たさねばなりません。その反面、
国内の各種の
独占的また不当
行為を取り締まることが
公取にまかせられている
独占禁止法の
中心題目でありますが、
一般消費者の
利益を守ることに結局このことはなるのですから、
公取の使命はますます重大と言わなければなりません。また、本案の
運用面では、
通産省や
産業界の出過ぎを押えることも必要です。消費生活を守る唯一の
法律としての
独占禁止法がいよいよ真剣勝負で立ち上がらねばならぬときは今だと思いますが、
公取委員長から、この
法案に対する心がまえと
独禁法の今後の
運用面について具体的に承りたいと思うものでございます。
以上です。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕