○斎藤昇君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま
議題となっております
昭和三十八
年度一般会計予算ほか二案に対し、
賛成の意を表するものであります。
私は、冒頭、本
年度予算の編成にあたり果たされました
政府の努力と、その英知に対しまして、心から敬意を表したいと思うのであります。率直に申しまして、本
年度の
予算案ほど問題のない
予算案は少ないと言われているのであります。とかくの
論議を展開されております野党の皆さんにおかれましても、内心は、今回の
予算案に対し、大筋においては賛意を表しておられることと思う次第でございます。新聞報道は、
予算案の
委員会審議には、さしたる
論議が見られなかった。あるいはまた、野党筋の勉強不足、突っ込み不足を伝える向きもあったのでありますが、これは野党諸君に対しまして、はなはだ礼を失する評言であります。それは決して勉強不足や突っ込み不足によるものではなく、来
年度予算案そのものが当を得、格好の
内容を持ったものであり、
政府の諸
施策おおむねそのよろしきを得ているからであると、私は
考えます。しかも、わが党の公約は余すところなく盛り込まれており、大多数の
国民諸君が本
予算案に双手をあげて賛意を表しておりまする以上、
反対の鋭鋒もまた鈍らざるを得なくなったものと断じます。
私は、かく観じまするがゆえに、野党諸君の
反対論に正面切って反駁するおとな気なさを避けたいと存ずるのでございまするが、
討論の性質上、いささか反論を試みつつ、本
予算案に
賛成するゆえんを明らかにいたしたいと存じます。
わが国が現在当面する重要問題といたしまして、
産業体制の整備による輸出
振興、
社会資本の
充実、
社会保障の確立による各種格差の是正、いわゆる人つくりの目的を達成するための文教
政策の拡充等があげられているのであります。このたび編成されました
予算案は、右のような眼目に基づき、健全なる
均衡財政を堅持しつつ、積極的な
財政投融資計画を打ち出したのが特徴の一つであります。すなわち、二兆八千五百億円の
一般会計予算案は、前
年度比一七・四%の増、一兆一千九十七億に上る財投
計画の前
年度比率は二二・六%の増となっているのであります。野党の諸君は、このような積極性ある
予算案に対し、それはインフレに通ずる道であるということを指摘されるのでありますが、
国民所得に占める
一般会計予算の比率は一七・一%で、昨
年度の一六・九%に比し、その間甲乙はありません。
予算規模は、広く
国民所得との勘案の上に確定されるべきものでありまして、
予算総額がふえたからといって、直ちにインフレ論を持ち出すことは、軽率のそしりを免れないと思うのであります。
財投
計画の
増加率二二・六%という
数字は、確かに相当の
伸びといわねばなりません。しかし、その大部分は、道路、港湾、住宅、環境衛生設備の整備費に当てられており、これは
わが国経済活動の
基盤をつちかい、
国民の生活
水準を向上させるために不可欠のものばかりでありまして、むしろ少なきに失するのではないかとさえ思われるのであります。適度の
景気刺激となるべしとの好感をもって
一般に迎えられておりますることは、御
承知のとおりであります。決してインフレの要因となるものとは
考えられません。
この際、一言いたしたいと存じまするのは、野党の一部の諸君の中には、本
年度の財投
計画に対して、これが「大
資本を擁護し、大
資本に奉仕するもの」と称されていることの誤謬であります。このようなことは、一部諸君の、他を論難される際に使用される慣用語となっておりまして、あえて反論に及ぶまいと思われるのでありますが、ややともすると大衆を誤らしめるおそれなしとはいたしません。あえてここに一言いたしたいと思う次第であります。財投
計画中、大
産業といわれる
基盤産業、輸出
産業関係は、わずか一五%であります。しかも、これは、
わが国が
自由化の波を乗り切り、輸出を
振興するための最小限の
措置でありまして、しかも、これら基幹
産業の隆衰は、直ちに多数の
関係中小企業や労働者に波及いたして参るのでありまして、
国民生活全般にも大きく
影響を及ぼすものであります。このことを
考えまするならば、むしろ、これこそが
中小企業労働者を含めた
日本の
産業の
基盤を強化するゆえんと
考えなければなりません。それだけにまた、財投
計画の対象となる
産業の
関係者は、それだけの社会的自覚を痛めることもとより必要でありますが、これをもって大
資本に奉仕する
政策ということは、これは事実を知らないものと言わなければなりません。まして、財投の大部分である道路、港湾、住宅費その他の
公共投資をもって
資本家に奉仕するものなりというに至っては、全く論外と申さなければならないと存じます。来
年度予算案は、現下の
経済情勢に見合いまして賢明に編成され、各般の分野にわたって適切な
施策を講じたものと言わなければならないと思うのであります。
また、来
年度予算は、これを一口に申し上げまするならば、
公共投資、
社会保障、文教並びに
科学技術振興をいわゆる三本の柱として編成されたものであることは、御
承知のとおりであります。
公共事業関係費は、災害復旧費を除き、
一般会計で四千五百六十億円余、三十七
年度当初
予算に比し二〇・六%の
増加率を見せているのであります。さらに
財政投融資として三千億円が計上されております。これを加えますれば、実に総計七千五百億円が公共
事業に投ぜられることになるわけであります。
政府は、本
予算案の成立とともに、直ちに
予算執行にかかり、これを促進するとともに、その効率的運用をはかる方針を固めておられるのでありますが、四月から六月にかけての払い超を千六百億円程度と見ておられる。これが前
年度同期の約六百億円の増ということに相なります。この結果は、
景気を刺激し、秋を待たずして
景気の
上昇に転ずるものと思われるのであります。
次に、
社会保障についてでありますが、同
関係予算は三千三百十三億円、前
年度に比し二一・七%の増、
一般会計歳出
予算額の前
年度比一七・四%であることを
考えまするならば、文教
予算の
増加率たる二一%とともに相当の
伸びであることを申さなければなりません。
国民健康保険における世帯主の七割給付、生活保護の
充実、
国民年金の
充実、失業
対策の刷新などに格段の
配慮を払い、さらに、児童館の建設、母子休養ホームの新設、老人クラブの助成等々、いわゆる、かゆいところに手の届く
施策が講ぜられているのであります。また、下水道、屎尿処理等いわゆる環境衛生の整備にも思い切った
施策が講ぜられようとしているのであります。
文教
施策につきましては、前
年度に比し約六百億円増の二千五百七億円を計上、高校生急増
対策の推進、道徳教育の徹底、義務教育教科書の無償配布、教職員の資質向上、文教施設の拡充、育英制度の
充実など各般の
施策が講ぜられているのであります。
本
年度予算案を別な角度から見まするならば、それは、当面している
日本の
経済の体質改善のための
予算と申してよかろうと存じます。その端的な現われの幾つかは、農業構造改善の推進、石炭
対策の展開、海運
基盤の整備、
中小企業振興対策等に見ることができると思うのであります。このうち二、三について言及いたしたいと存じます。
まず、
中小企業対策費につきましては、
一般会計において本
年度一挙
倍増を見たのでありますが、来
年度予算におきましてもついに百億円の大台を突破し、百十五億円が計上されることになっております。しかして、その
内容は、
中小企業高度化資金融通特別会計、商業団地、
中小企業投資育成会社、
中小企業センター、管理者・技術者研修等々、各般の
施策を推進するなど、多彩なものとなっているのであります。
政府は、本国会に
中小企業基本
法案を
提出されておりますが、この基本法を足がかりといたしまして、今後流通革命に対処する
中小企業対策のより大きく推進されんことを期待いたすものであります。
農業構造改善には約七十九億円が
一般会計に計上され、農林漁業
金融公庫の融資額五十三億円とともに百三十二億円が準備されておりまして、前
年度に比し三倍近い飛躍的
措置が講ぜられているのであります。
減税問題に一言触れまして私の
討論を終わりたいと思いまするが、当初、世間の一部におきましては、
政府は、本
年度、いわゆる
政策減税のみを行ない、
所得税の
減税を見送るのではないかといわれておったのでありますが、しかしながら、
政府は、いわゆる
政策減税として二百四十七億円のほかに、
所得税、法人税等の
一般減税二百九十五億円を
減税されることに相なったのであります。現在、
資本の蓄積、
社会資本の
充実のため、いわゆる
政策減税は不可避のものであります。この不可避の
政策減税を断行しつつ、なお他面において、
一般減税の
措置を講ぜられました
政府の
配慮は、賞賛に値するものがあると存じます。
さらに
物価問題について一言いたしたいと存じます。
物価は安いことに越したことはございません。しかしながら、
経済の成長をはかり、
国民所得の
増加を策する以上、
物価のある程度の
上昇は不可避であり、また、これを容認せざるを得ない性質のものであると存じます。ことに、
生産性の向上をはかりがたいサービス料金の
上昇は当然のものといわなければ相なりません。要は、
物価上昇と
国民所得の
増加との比率の問題でありますが、過去数年の
国民所得の
増加は
物価の
上昇をはるかに上回っておりますることは、
数字の明らかに明示するところであります。わが党
政府のとっております
経済成長
政策につきましては、
物価の面から
考えましても何ら憂うべきものがないと存じます。ただ問題は、
所得の上界のいまだ少ない者にとって大きな苦痛であることは申すまでもありません。
政府は、つとにこの点に留意し、あるいは
物価対策において、あるいは
社会保障において、あるいは
産業その他のあらゆる
政策において、この点に特に留意し、努力せられて参りましたことは、万民のよく認めるところでありまするが、今後さらに努力を重ねられるとともに、特に大衆生活に
影響の多い
生鮮食料品につきましては、急速に抜本的
対策を立てられまして善処せられんことを要望いたします。
これを要するに、本
年度予算案は、インフレに至ることなく、適宜に
景気を刺激し、
わが国の
経済の長期
安定成長への道を開くとともに、
自由化の波を乗り切り、輸出を伸張させる
基盤をつちかい、
国民の生活
水準の向上と福祉の確保につき、これを絶え間なく前進せしめ、やがては万民豊かな生活と仕合わせな社会を作り上げるわが党の基本
政策に合致するものでございます。
ここに私は、重ねて賛同の意を表し、
討論を終わる次第でございます。(
拍手)
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