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説明員(橘武夫君) 水産庁
関係の
法案といたしましては、
漁港法の一部を
改正する
法律案、それから
沿岸漁業等振興法案、二件を御
審議いただくわけでございますが、そのうち
漁港法の一部を
改正する
法律案のほうは、先ほど
提案理由の御
説明にもありましたように、
内容は簡潔なものでございまして、中心は、
特定第三種の
漁港につきましての
漁港修築事業を行ないます場合の
負担率を、従来の五割から六割に上げるということを中心とするものでございます。この
特定第三種と申しますのは、御
承知かと思いますが、
漁港法で、
漁港を第一種、第二種、第三種、第四種というように、
漁港の種類を機能によって分けております。その第三種と申しますのは、
漁港の中では比較的大きな、
全国的に利用される
漁港でございます。その
全国的に利用される
漁港のうち、さらに
水産業の
振興という立場から、特に重要なものを政令で指定することになっておりまして、その指定されましたものを
特定第三種
漁港と申しております。現在政令で指定されております港というのは八つでございます。青森県の八戸、宮城県の塩釜、千葉県の銚子、神奈川県の三崎、静岡県の焼津、
山口県の下関、福岡県の博多、長崎県の長崎、この八つでございますが、こういう港につきましての国の
修築事業につきましての
負担率を、従来の五割から六割に引き上げようというのが
改正の
趣旨でございます。
なお、この
改正を行ないますに加えまして、もう一ヵ所、
漁港審議会につきましての
規定に
改正を加えまして、従来
審議会委員九人のうちの一人として
水産庁長官が
委員として入っておりました。諮問をいたす側の、行政当局側の
水産庁長官が、
委員会のメンバーとしてこの
審議に参加し、その決定の表決に参加するという形が、従来の
審議会の
運営から申しまして、必ずしも適切ではないというふうに考えられますので、この際、
水産庁長官というものを
漁港審議会の
委員からはずそうというのが、もう一つの
改正の
趣旨でございます。
漁港法の
改正の
内容はそういうことでございまして、ここで特に事務的に詳しく補足して御
説明申し上げることも、今の段階ではないと思いますので、御質疑の段階で逐次詳細に御
説明を申し上げたいと思います。
もう一つ、
沿岸漁業等振興法案でございますが、これにつきましては、お配りいたしました
沿岸漁業等振興法案関係資料という資料の終わりのほう、ページ数にいたしますと、三十七ページ以下でございます。これに事務的な補足の
説明の
趣旨を印刷してございますので、これによりまして、事務的な
補足説明を申し上げたいというふうに思います。
法案の全体の構成でございますが、第一条から第七条までというのが、
沿岸漁業等に関する国の基本的な
施策の
方向づけの基本的なことを書いてございます。それの
方向に従いましてどういう具体的な
施策を講ずるかということが、第八条以下に書いてございます。大きく言えば、その二つからなっていると言えるわけでございます。
以下、各条文について御
説明申し上げますと、第一条は、
法律の
目的を明らかにしているわけでございまして、最近における
国民経済の成長の中で、
漁業の
経営体の大部分を占める
沿岸漁業は、ほかの
産業と比較しまして、
生産性もまた
従事者の
生活水準もかなり低い位置にあるということです。特に
中小漁業は
経営の面から申しましても非常に不振なあるいはまた不安定なものが多いのが
現状でございます。なお、そういう傾向がさらに
拡大されるというふうな憂いもございますので、その解決を進めますため、この
法律においては、
国民経済の
成長発展と社会
生活の進歩
向上に即応いたしまして、
沿岸漁業等の
生産性の
向上、その
従事者の
福祉の
増進、その他、
沿岸漁業等の
近代化と
合理化に関しまして必要な
施策を講ずることによりまして、
沿岸漁業等の
発展を
促進し、あわせてその
従事者が他
産業従事者と均衡する
生活を営むことを期することができることを目途としまして、それによりまして
沿岸漁業等の
従事者の地位の
向上をはかることを、この
法律案の
目的としているわけでございます。
第二条は、この
法律の
対象となるべき「
沿岸漁業等」というものを定義しているわけでございます。ここに「等」と書きましたのは、本来、
沿岸漁業のほか、
中小漁業というものも含めて考えておりますので、特に「等」という字をつけたわけでございます。その二つを引っくるめまして、「
沿岸漁業等」ということで、国がこれに特に総合的な対策を講じようという建前で、この
法律案を作成しているわけでございます。この場合、「
沿岸漁業」というものの定義として、政令で定める小型の
漁船を使用して行なう水産動植物の採捕あるいは
漁船を使用しないで行なうコンブあるいはノリの採取のようなものもございますが、この場合、政令で定める小型の
漁船というのは、現在おおむね十トン程度の
漁船というものを、
沿岸漁業の
漁船の
範囲として考えております。また
中小漁業者というものの
範囲として考えておりますものといたしましては、同じく政令で、常時使用する
漁船の
合計総トン数が千トン以下であって、しかも常時使用する
従事者の数が三百人に達しない程度の
漁業者を
中小漁業者として、この
法律の
対象に考えて参りたいというふうに予定しております。
第三条におきまして、第一条の
目的を達成いたしますために、国が
沿岸漁業等につきまして必要な
施策を講ずべきことと、その
施策の
方向づけを八つの項目をあげて
規定しているわけでございます。
各項目について御
説明を申し上げますと、第一号は、
沿岸漁業等の
対象とする
水産資源の
維持増大について
規定しております。
沿岸漁業などにおきましても、他の
漁業の場合と同じく資源の問題というものはきわめて重要な問題でございます。その資源に見合った適正な資源の利用というものを進めて参り、さらにふ化放流を行なって、この資源の積極的な増殖をはかって参るということによりまして、
沿岸漁業等の
対象となるべき
水産資源の
維持増大をはかるべきであるということを
規定いたしましたのが、第一号でございます。
第二号は、
沿岸漁業等の
生産性の
向上ということを着眼した
規定でございまして、この
従事者の
生活水準の低さの基本、要因の一つは、
生産性の低さにあるということは、皆さん御存じのとおりでございますので、こういうような
現状にかんがみまして、特に
生産基盤であります
漁港及び漁場の
整備を進め、また漁撈
技術、養殖
技術などの
生産技術等につきまして、その
向上をはかって参るための必要な
施策を講ずべきであるということを明らかにしたものでございます。
第三号は、
経営の
近代化ということに着眼した
規定でございまして、
沿岸漁業の
生産性の
向上をはかって参りますためには、やはり
経営規模が非常に零細であったり、その
経営が非常に非近代的なやり方で行なられているようなものにつきましては、この
生産性の
向上をはかって参るということの困難もございますので、漁場の利用方法の
合理化をはかりながら、所有
漁船の
大型化を逐次進めて参るというような形で、
経営規模を
拡大し、また集団操業など、そういうふうな
生産行程につきましての
協業化というようなものも逐次
促進して参る。また一本釣のようなかなり零細な、非常に
技術として古いおくれた段階の
技術から、逐次網
漁業あるいは養殖
漁業というような
生産性の高い
漁業に転換をはかって参る。また漁撈装備の
近代化を進めて参るというようなことによりまして、
経営の
近代化をはかるべきことを定めておるわけであります。
第四号は、以上の
生産段階に対しまして、流通加工の段階についての
規定でございまして、流通の
合理化、加工、
需要の
増進、価格の安定ということを主眼にして
規定しているものでございます。その重要な手段といたしましては、協同組合の行ないます共販
事業を進めて参る、また冷蔵庫のような水産物の保蔵
施設あるいは冷蔵自動車のような運搬
施設を
整備いたします。また市場その他水産物の取引を
近代化し、またカン詰業その他の水産加工業の
振興をはかること、さらに魚価安定基金でありますとか、
漁業生産調整組合
制度でありますとか、そういうような
制度を活用することによりまして水産物の
生産流通の調整をはかること等によりまして、必要な
施策を講ずべきことを
規定しているものでございます。
それから第五号は、こういう
漁業と切り離せない災害との関連におきまして、
漁業の災害に対する抵抗力の
増加と申しますか、災害の場合の
経営の安定ということについてきめたものでございまして、そういう自然的
条件によって非常に
漁業経営が不安になるということを防止する手段として、災害による損失の合理的な補てんなど必要な
施策を講ずべきことを定めたものでございます。
次の第六号は、以上のような経済的、物的の面からの
経営の
合理化、
近代化というものと、そういう
条件を進めることと並行いたしまして、むしろ
漁業を行なう人の面から、その主体的側面としての人の問題について
規定したものでございます。こういうふうな
漁業の
合理化、
近代化を進めて参るのも、要はそれを
推進して参る人間の問題だというふうに考えられますので、
沿岸漁業等についていたします教育でございますとか、あるいは
試験研究、さらに
改良普及事業でありますとか、そういうものを
充実することによりまして、
漁業従事者の資質を
向上させ、近代的な
沿岸漁業等の
従事者としてふさわしい者を
養成して参る。さらには進んで
沿岸漁業等をもっと漁村の青年に魅力のある
産業として形成していくということによりまして、りっぱな人材が確保できるようにするというのがこの
趣旨でございます。
それから第七号は、そういうふうな
漁業の
合理化、
近代化ということに密接に関連いたします
従事者の家計の安定の問題、さらにその
従事者及び子弟の転職の問題について定めたものでございまして、
漁業所得によってほかの
産業の
従事者と均衡する
生活を営むことができるようにすることがもちろん第一義として望ましく、そのために上に上げましたような各般の
施策を講じて参るわけでございますが、
漁業の
経営の具体的
内容によりまして、あるいはその置かれた
条件によりまして、それを期待することの非常に困難なものにつきましては、職業訓練あるいは職業紹介の
事業を
充実いたしますとか、あるいは漁村地方における
農業、工業等、
産業を
振興いたしますとか、必要な
施策を講ずることによりまして、その
従事者が他の
産業に転換する機会というものを十分に与えまして、その所得を増大して、一方では兼業、副業という形での家計の安定に資するとともに、さらに進んでは他の
産業に転ずることの機会をも増して参るようにしたいというのがこの
趣旨でございます。
そのような形で各般の総合的な
施策を講ずることによりまして、
沿岸漁業等の
発展と
従事者の地位の
向上を期しているわけでございますけれども、
従事者の
福祉を
増進いたしますためには、単にそういう企業の中の
施策だけでは尽くされない面がありますので、なお八号で残された
事項といたしまして、その
漁業なり漁村を取りまく環境としての道路、医療、電気などの文化
施設の
整備、また家庭
生活の
改善でございますとか、労働
関係の
近代化等、
福祉の
増進をはかって参りたいということを
規定したわけでございます。
以上申し述べましたような国の
施策は、
沿岸漁業等の特殊性から申しまして、その行なわれます地域の自然的、経済的、社会的な諸
条件を考慮して、具体的に適合する形で進めて参ることが必要でありますことは申すまでもないことでありまして、その
趣旨を第三条の第二項で
規定しているわけでございます。
そういうふうな国の
施策と相応じまして、第四条におきまして、地方公共団体がこれに準じて
施策を講ずるように努めなければならないということで、地方公共団体にも大いにこの
方向での
促進を期待しているわけでございます。
それから第五条におきまして、
政府はそのような方針を
実施するために必要な法制上及び
財政上の
措置を講じなければならないという旨を
規定しているわけでございます。
さらに第六条におきましては、そういうふうに国なり地方公共団体が
施策を進めて参ることはもちろんでございます。こういう
施策を講ずるにあたって、
沿岸漁業の
従事者自身、またその
組織する団体が自主的に大いに努力して参ることを大いに期待する必要がございますので、そういう自主的な努力を助長することを旨として、ただいまのような
施策をむしろそれに即応する形で、それを
促進する形で国なり地方公共団体が
施策を講ずべきであるということを第六条で
規定しているわけでございます。
それから第七条におきまして、
沿岸漁業等につきまして国が講じました
施策につきまして、毎年
国会に年次報告を提出する、またさらに今後講じようとする
施策につきましても、その報告において明らかにするということを定めております。
これがこの
法案の前半の国の基本的政策について
規定したものでございます。
以下その後半、第八条以下で、そういうふうな基本的方針に基づきまして、国が講ずべき具体的な
施策を重点的に列挙しているわけでございます。
お配りしてございます資料の四十六ページの一番うしろの行に「以下第九条から第十一条まで」と印刷してございますが、これは「第八条から」というのの誤りでございまして、恐縮でございますが、御訂正を願いたいと思います。その八条以下で具体的な
施策について
規定しているわけでございますが、そのまず第八条は、こういう零細な
経営規模の
沿岸漁業に対しまして、その
漁業の構造を
改善するための
構造改善事業というものについて
規定しているわけでございます。これはこの第八条の第二項で
規定しておりますように、
生産性の高い
漁業に転換すること、漁場の利用
関係を
改善して参ることあるいは漁礁を設置したり養殖漁場を造成したり、そういう方法によりまして
生産基盤を
整備し開発する。また、集団操業のための先達
漁船の建造でありますとか、あるいは能率的な
漁具、
漁撈装置の設置でございますとか、そういう
経営を
近代化するための
施設を導入いたしまして、また水産物の冷凍なり冷蔵のための共同利用
施設でございますとか、あるいは水産物の共同加工場でございますとか、そういう流通加工
施設を強化して参るというような手段によりまして、
沿岸漁業の
生産、流通等、広範にわたる
事業を起こしまして、
沿岸漁業の
生産性を高めるように、構造的に
改善することを
目的として考えられたのが
構造改善事業であります。
これにつきましてはすでに御
承知のとおりに、
昭和三十七年度から一部の府県におきましては
事業にすでに着手しております。その他の府県につきましても逐次
計画的に
実施することといたしております。第八条におきましての
都道府県の樹立する
構造改善事業計画あるいはこれに基づきまして
実施する
事業につきまして国が必要な
助言を行なうとともに、経費の補助あるいは
資金の
融通のあっせんなどその
事業が総合的かつ効率的に行なわれるような援助をしなければならないということを
規定しているわけであります。
次に九条につきましては、
沿岸漁業と並びまして
中小漁業の
振興について
規定しておるわけでございます。
中小漁業は
経営規模なり
漁業種類によりましてさまざまな
経営状態になっておるわけであります。概して申し上げますと、かなり
経営の不安定なものが多いのであります。その要因としましてはいろいろな業種ごとに固有な
条件もいろいろ考えられるけれども、概括いたしますと、漁場が不安定であるとか、また
漁船、
漁具漁ろう装置の能率の、比較的大きな
漁業に対しまして能率が落ちるということ、それから水産物の取引
関係が
整備されていないということ、また労働環境がかなり劣っているということなどが、その不安定を来たしている主要な原因と考えられるわけでございます。したがってこのような
不安定要因を除去いたしまして、その
振興をはかる必要があると認められるものを取り上げまして、種々検討を行ない、その
中小漁業者の
経営改善の指針ともいうべき
事項を定めて公表いたしますとともに、その
中小漁業者またはその団体に対しまして必要な
助言、
指導、
資金のあっせんを行なうなど、必要な
措置を講ずべきことを
規定いたしたわけでございます。
それから第十条は、そのような
漁業を進めていきますためには必要な
調査なり、
試験研究というもののの
充実について
規定したわけでございます。そういう
調査なり、
試験研究の重要性というのは当然のことでございますが、特に
沿岸漁業の
構造改善事業でありますとか、
中小漁業の
振興のための
事業を進めていくためには、その前提として、従来以上にそういう
施策を効果的に
実施して参りますための資源
調査、あるいは
試験研究の
推進などの必要性が非常に痛感さてますので、そういうものにつきまして国が他の
試験研究機関と協力してその実を上げ、さらにその
施策を
充実して参りたいということを
規定したものであります。
それから、第十一条は、
水産業につきましての
改良普及事業について
規定したものでございます。従来から
沿岸漁業等につきまして、その
生産性の
向上なり
経営の
近代化並びに
従事者の
生活の
改善をはかるために
改良普及事業が
実施されているわけでございますが、今の
調査なり
試験研究と相待ちまして、その
改良普及事業をさらに強化し、活用いたしていくべきことを十一条で
規定いたしているわけでございます。
最後に、こういうような
施策を進めて参りますためにいろいろな
重要事項を定めていく上につきましては、農林大臣は
中央漁業調整審議会の
意見を聞かなければならないということを
規定いたしたのが第十二条でございます。そのために
審議会の
委員の数をこの
法律案の
実施に伴いまして十名増員いたすということで、附則でそのため
漁業法の
改正を定めているわけでございます。
これが、
法律案の各逐条的な
内容についての御
説明でございますが、なお、これに伴いますいろいろな数字的な資料その他につきましては、現在取りまとめ中でございますので、近くまとまり次第、できるだけ早く御提出申し上げたいというふうに考えております。