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鈴木強君 私は、日本社会党を代表して、ただいま
議題となりました
電話加入権質に関する
臨時特例法の一部を改正する
法律案に対し、各派共同提案になる附帯決議を付して賛成をいたします。
まず、その附帯決議案文を披露いたします。
電話加入権質に関する
臨時特例法の一部を改正する
法律案に対する附帯決議(案)
政府並びに
日本電信電話公社は、左に掲げる
事項の実施につとむべきである。
記
一、電話拡充計画をさらに強化して積滞の解消に努め、もつて
電話加入権質の制度を早期に廃止し得るよう努力すること。
二、本法が適正に運用されるよう十分な周知と積極的な
指導を行うこと。
以下、その理由を申し述べます。
第一には、
電話加入権質に関する
臨時特例法は、
昭和三十三年五月六日公布、同年八月五日より施行されて今日に至っております。そもそも
電話加入権を
質権の
目的とすることは、公衆電気通信法第三十八条第四項の
規定によって固く禁止されていたのでありますが、
中小企業者等の
電話加入者の要望にかんがみて、その
金融に資するとともに、その保護をはかるため、一定の条件のもとに五年間の期限を限定して、
電話加入権を
質権の
目的とすることを認めることとして本法が制定されたのであります。
五年前
臨時特例法が第二十八国会に提案されたとき、五カ年間の時限立法としたことの理由として、郵政省は電信電話五カ年計画の進捗に伴い、大都市においても電話の市価が著しく下落したところが多く、その他のところでも急速に下落の傾向にあり、このまま推移すれば電話の市価はなくなるであろう。だから五年間たてば
加入権質に関する
臨時特例法は必要がなくなるとのことであったのです。しかし、今日申し込んでもつかない電話の数は百六万個にも達しておるのが
実情で、当初の目標はみごとにはずれていることを知らなければなりません。今翻って見るとき、当時の提案理由は
根拠薄弱のものであったと言わなければならず、当局はみずからの
発言に強く反省すべきであると思います。
この
法律の不必要となる時期は、市場における電話のやみ相場がなくなるときであり、このときは加入電話の需要供給のバランスがとれる時期だと信じます。現在のところ、公社の計画によりますと、第四次五カ年計画の終了する
昭和四十七年度になって初めて、申し込めば三カ月以内に引ける電話になるのだそうです。これではまことになまぬるいことで、国民の納得するところではないと思います。したがって、政府と
電電公社当局は、さらに特段の工夫をこらして、加入者電話の拡充計画を強化し、積滞の解消に努めるべきであり、そして、なるべく早く需給のバランスがとれて、
電話加入権質の制度が廃止できるよう、大いに努力していただきたいのであります。
第二は、本法の適正なる
運営についてであります。本法制定当時も論ぜられましたように、一歩運用を誤まるならば、かえって
中小企業者を不幸に陥れ、百害あって一利なしの結果を招来するであろうということでありました。特に、
法律第二条のただし書きによる、民法第五百条の
規定による債権者に代位することを認めたことについて問題が生ずるであろうとの予測であったと考えます。
今五カ年間における運用
状況の
実態を見るに、われわれが非常に心配しておりましたような点が幾つか出てきておると思います。すなわち、一般
個人は
質権者にはなれないが、
債務者には自由になれるのでございます。そこで、
金融業者が
債務者になって
質権法に定められた
金融機関等から金を借り受けて、これを
電話加入者に転貸し、そのかわり
電話加入権を
資金の出資者たる
金融機関に質入れさせればいいことになるのでありまして、この点が一部悪質な町の
金融業者に悪用される結果となっていると思うのであります。
また、この
法律の
趣旨を理解しないために、また何か
加入権を質に
設定するということは、日本人の慣習として気がひけるというか、そういうふうなこともありまして、つい町の
金融業者などのところに行って、判こをまかして、よろしくお顔いしますということで、
手続その他は一任をして、
質権の
設定をするような加入者があると思います。
そういう方々が、不幸にして代位弁済等のために、自分の知らない間に、
電話加入権が第三者に移っておった、こういう事例もあるのでありまして、ここに私は、本法の運用を誤まるならば非常に問題を生ずるであろう、こういう点、強く感ずるのでございます。
委員会の
質疑を通じて、
電電公社におきましても、本法制定の
趣旨を理解して、少しでも
中小企業のためになるようにという考え方から、諸般のPR対策をやっておるようでございますが、それにもかかわらず、このような
事態があるということは、まことに遺憾なことと思います。したがって、今後さらに十年間の長きにわたって
臨時特例法という名に反するような長期間の延長がなされるわけでありますから、第三次、第四次の五カ年計画によって約一千万の電話がふえるでありましよう。したがって、公社の推定をしておりますような、
昭和四十年になりますと、
質権の
設定数が下降線をたどるだろうということも、多少私は無理があるのではないかと思います。したがって、件数もかなりふえるのではないかとも思われますから、どうかひとつ、附帯決議の第二項にありますように、政府当局も
電電公社当局も、思い切った、この本件の周知に対する対策を立てていただいて、本法がかりそめにもわれわれの意図する方向でない方向に行かないように、ひとつ御配意をいただきたいと思います。
それから三つ目には、この
業務は約九十九万件、百万件の多きに達しております。この五年間に、この
業務量の増大によって、
電電公社の要員
関係にもかなり問題が出ていると私は思います。なかなか定員を要求しても、大蔵省の査定の中で大体三分の二程度しか認められないということで、
仕事がふえても人がふえないという現象が出てきております。そういう中で、ますます増大するややこしい
法律手続を要する
加入権質の運用については、かなり負担が重くなるのではないかと私は思います。
で、この
委員会でも、資料その他についても私たちはできるだけ知りたかったのでありますが、なかなか手が回らない点もあったでありましよう。必ずしもわれわれが期待するような資料が全部出たとは思いません。したがって、そういう
意味から言っても、
法律を制定した以上は、その
法律の精神が適正に運用されるようにするのが当然であります。そのために、私は必要な要員措置や裏付けになる諸経費というものは当然見られなければならないと思いますので、ひとつそういう点も含めて、要員対策等について、ぜひひとつ十分な適正な配置ができますように、要するに、
事業量に見合う要員措置ができますように、郵政並びに公社当局の格段のひとつ御配慮をお顔いしておきたいと思います。
なお最後に、この
法律案の中で一つ欠けている点は、私は何といっても、
貸付資金を政府が別ワクで何かしら
設定をして、そうして非常に簡単に、しかも便利に、気やすくの
加入権を質に提供して金が融資できるような
方法を考えてもらいたいと思います。
先ほど郵政政務次官から、この点につきましては、ごもっともであるからひとつ十分検討するというお答えもいただいておりますので、その
趣旨を十分生かされて御研究をし、一日も早くそういうふうな別ワクの
資金を
中小企業者のために特に作っていただくように私は強く希望いたしまして、賛成の討論を終わります。