○秋山長造君 今の
市川さんの御質問とダブるのですけれ
ども、これはまあ少し別な角度から御質問したいと思います。
最初、自治法で
監査委員制度ができたときから見ますと、これは法文の上でも相当充実してきたし、それからまた
地方団体の実態から見ましても、
事務局の整備を初めとして、相当一応充実してきたことは、これは認めます。それから同時に、今度の
改正案で、さらにそれを何とか
強化していこうという態度をとられておることも、これは十分了とするのですが、ただしかし
監査委員制度——
現行の
監査委員制度というものが、もうここらでひとつ頭打ちになっておるのじゃ、ないかという感じがするのです。と言いますのは、今まで必置でなかった町村あたりを必置にするとかというようなことは、これは大きな前進であろうと思うが、すでに必置になって、いる
府県だとか、市だとかいうようなところの
監査制度というものは、もうちょっと限界点にきているのじゃないかという気がするのです。それはどういうことかと言いますと、
一つには
監査委員の選任の
手続ということからもきていると思うのですが、それからまた、
監査委員に選ばれる人が大体もう県なり、市役所なりに長年勤めておった、前の会計課長だとか何とかいうような人が退職後、理事者側の配慮によって、この
監査委員で老後の生活の保障もある程度してもらうというようなことになっている例が非常に多いと思うのですが、ここに出ている資料なんかを見ましても、公務員の前歴を持った人が非常に多い。しかもよその役所に勤めておった人ならいいけれ
ども、大体その役所へ勤めておった人が多いと思う。そういう
関係もありまして、どうしても気分的に、そもそもその就任したときからして理事者側に対して非常に遠慮、気がねがあるわけなんです。率直に言いますと、
監査委員にしてもらったことを恩に着ているんです。ですからやはり、ほかの点が幾ら充実しても、肝心のぴりっとした
監査がやれぬのです。それはもう
市川さんのおっしゃるとおりなんです。だから悪くいえばなれ合いというようなことをやられるということになる、それが
一つ。それからさらに、それでもまだ、制度の上で
監査委員というものに相当
権限の裏づけがあればいいのですけれ
ども、
権限にしても、ただ
監査の報告をするだけで、じゃあここが悪いからどうしろといって、それに対してその措置した結果を
監査のほうへ逆に報告しろと——これがないのですから、報告のしっぱなしなんですよ。だから理事者側が黙殺すれば「はい、それまでよ」ということになってしまう、その点が
一つ。
それからもう
一つは、
事務局を充実されることは非常にけっこうだと思うのだけれ
ども、
事務局の
職員の
身分が別に別個の、会計検査院のように独立したものじゃないのです。やはり知事の部局なり、あるいは市長の部局なりの人が暫時
監査事務局へ勤めるわけですから、だからあんまり
監査で張り切ってやっておくと、今度その理事者側の部局へ帰ったときにかたきを討たれるわけなんですよ。あいつは
監査のときにいばりやがったから、今度はだめだと、こうやられる。それは
ほんとうに大きいんですよ。ですから適当にお茶を濁すということになってしまう。これはもう僕の言うのは間違いじゃないと思う。もう実態はそうなっていると思うんですよ。ですから
監査委員の
権限なり、選任の方法なり、あるいは具体的に選任される人の問題と、それから
事務局の
職員の
身分上の保障がないということと、二つがあるために、もう頭打ちになっていると思うのですね。それで今、
市川さんのおっしゃるとおりの例が、大なり小なりもうどこにもあると思うのです。だから、たとえば
住民がこの
監査請求をやったような場合、それは事あれかしのような
事件屋みたいな人も中にはおりますから、そういう人からやたらに
監査請求ばかり出されて、それを一々本気で取り上げておっても、これはかなわぬけれ
ども、しかしそればかりじゃないので、まじめな
監査請求が出ているにもかかわらず、
監査委員がそれをまるでもみ消すような立場になってしまって、いいかげんにお茶を濁して、いや何にもない、不正はないというようなことの結論を出してしまう。そうすると納得ができぬ。だけど、それじゃ納得できぬならば裁判所に訴えたらいいじゃないかと、こう言うけれ
ども、なかなかこの
監査請求に不満を持って、その行政訴訟を起こすという能力が一体今の
地方住民にあるかどうかというと、これはないですよ。だから、結局はもう幾ら言うてみてもいかぬのだ、要するに泣く子と地頭には勝てぬのだ、しようがないと、こういうことで泣き寝入りをするよりしようがないというケースが非常に多いと思うのです、特に小さい
団体になりますと。だから、そこのところ、まあ
事務局の充実もよろしい、それから
代表監査委員を作ることもいいです。それはそういうこともけっこうですけれ
ども、やはりもう
一つ今申し上げたような点に何かぴりっとしたところがないと、どうもかなめの抜けた扇子みたいなことになってしまって、
監査委員制度というものは、それはけっこうなことではあるが、どうもこう、肝心なところでしりが抜けるということになるのです。そこで、それは一般論ですけれ
ども、具体的にお尋ねしますが、百九十九条の九項ですね、これは
現行法で、別に
改正されていないのですが、九項に
監査委員は
監査報告すると同時に、それに添えて意見を
提出することができるという
規定がありますね。それで、これなんかを、ただ意見の
提出ということでなしに、もう少しついでにこの実質的な
強化という
意味で、たとえば勧告をすることができるというようにするとか、あるいは意見ならば意見を
提出したのに対しても、その理事者側が
監査委員から
提出された意見に対しては受け答えをしなきゃいかぬ。つまり
監査委員から意見を受けたことについては、何らかの行政上の措置を、良心的な首長ならばやるだろうと思う。そのやった措置の経過あるいは結果を
監査委員に逆に報告しなきゃならぬ、あるいは通知しなきやならねとか、何かそういう
規定を私は一カ条入れてもらいたいと思うのですよ。それがあれば、選任方法がどうであろうとも、また選ばれる人が、かりにその役所へ長年勤めておったような人で、その首長の息のかかったような人であっても、この一カ条を足場にして、今よりはもう少しぴりっとした
監査がやれるのじゃないかという気がするのですがね。これだけの大
改正をやられるならば、なぜ九項というものをもう少し
強化されなかったかということをお尋ねしたいのです。この資料では九項は(略)と書いてあるのですけれ
ども、私は、この点が
監査制度の一番勘どころだと思うのですが、
当局の御見解をお伺いしたい。