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衆議院議員(
永井勝太郎君) 日本社会党
提出中小企業基本法案について、
提出者を代表し我が党案と
政府案を比較し、その
提案の
理由及び
内容の
概要を御
説明申し上げます。
今さら申し上げるまでもなく、今日、
中小企業は、
わが国経済の中で圧倒的多数を占めており、かつまた生産、流通等の面においてもきわめて重要な役割を果たしているのであります。にもかかわらず、
中小企業と大
企業との間に大きな
格差が存在し、
中小企業の
経営はつねに不安定な、困窮した状態にあります。
このような現状の中で、
政府は依然として大
企業本位の
財政金融政策を
推進し、またせっかくの独禁法も有名無実のものとし、不当な独占支配を容認しているのであります。さらに最近は、
自由化を
理由とする大
企業の
合理化、吸収
合併並びに縦の系列支配を
促進し、その
目的に沿わない
中小企業は
政策のうち外に放置し、弱肉強食の冷酷な
競争の中でその整理、淘汰を考えているといっても過言ではないのであります。
今回
政府が
提出した
中小企業基本法案も、この意図に沿ったもので、大
企業のための
中小企業基本法案であります。
このため
中小企業者は、明日の
経営、将来の
生活設計に大きな不安を抱き、全く希望を喪失してしまっているのであります。
そこで、
中小企業を今日の窮状から救い出し、大
企業との間の
格差を是正して、安定した将来に希望の持てる近代的な
経営に引き上げるには、どうしてもこの際抜本的な基本
政策を打ち立てる必要があるのであります。そして一元化された強力な
行政機関のもとで、かかる基本
政策を
推進せねばならないことは、今日ほど緊急を要することはないのであります。
これが本
法律案を
提出する
理由であります。
次に、そのおもなる
内容を御
説明いたします、まず初めに、本案は
中小企業政策の基本となるべき
目標として、いわゆる
国民経済の二重構造の解消と経済の民主化、自主的な協同化、個々の
中小企業者に対する積極的な
助成、
中小企業労働者の所得増大、さらには
中小企業者、労働者、農民相互間の調和の五つの柱を明確に提示し、以下具体的な
政策、機構に及んでいるのでありまして、この点
産業構造の
高度化、
産業の
国際競争力の
強化を強調するだけで、肝心の大
企業の不当独占の排除、経済の民主化を忘れた
政府の基本
法案と根本的に異なるのであります。
次に、具体的な
内容について申し上げますと、第一は、本案に
規定される抜本的な総合
政策を
実施するには、大
企業の代弁機関と化しつつある通産省の一部局としての
中小企業庁ではとうてい不可能であります。そこで新たに中小企省を
設置し、通産省と対等の立場において、強力に
中小企業者の利益を擁護せんとするものであります。
政府案がこの当然の問題を故意に回避しているのはきわめて遺憾であります。
第二は、
中小企業者の範囲でありますが、上は
従業員三百人、
資本金三千万円に押え、下は特に
従業員十人、百万円を勤労
事業者として分離し、
政策の恩恵が中
企業に偏せず、小
企業、零細
企業にも十分に浸透するよう考慮しているのであります。
第三は、
中小企業の
組織についてであります、
中小企業の
経営を
近代化し、
発展させて大
企業と対等の
地位に引き上げるには、協同化が必要であります、本案は特に一章を設けて、在来の多種多様な
組織を協同組合に統一し、強制や統制を排し、あくまで自主的協同を
組織原則としているのであります。そして、その設立を簡易にし、これに国が積極的な
助成措置を講ずることによって、協同組合に入ったほうが、
中小企業にとって有利になるような条件を作り上げ、もって
組織化を
促進していくべきだとしているのであります。
政府案が、この
組織の問題に一言もふれていないのはまことに奇異の感を抱かせるものであります。
第四は、大
企業との関係についてであります。今日の
中小企業の困窮は、大
企業からの圧迫、進出によるところが大きいのであります。そこで本案は、
中小企業に適切な
事業分野に、大
企業がむやみに進出することを規制し、官公需の発注についても大
企業のひとり占めを排除して、
中小企業に一定割合を
確保することにしておるのであります。また下請
企業に対する大
企業の不公正な取引行為を厳に取り締り、さらに
中小企業の協同
組織による
団体交渉権を確立し、大
企業と対等の
地位を
確保するよう努めているのであります。さらに
中小企業者の
地位を補強するため、特に
中小企業調整
委員会を設立し、大
企業との間の一切の紛争を
中小企業者に有利に処理し、一方的な泣き寝入りの現状を是正することにしております、
政府案が、対大
企業との関係是正について
配慮していないのは、今日の
中小企業問題がいずこにあるかという根本を忘れた論議だと断言せざるを得ないのであります。
第五は、零細な勤労
事業者に対する
政策についてであります。本案は特にこれを別ワクのものとして、
組織、
税制、金融労働福祉、社会保障の全般にわたり、社会
政策的な立場をあわせ考慮しつつ特別の優遇、保護
助成策を提起しているのであります。
政府案が最終段階になって
中小企業者の強い反対にあい、やっと小
規模事業者の定義を付加しただけで、具体的な
政策、なかんずく、
税制、社会保障についてさえ、ふれるところがないのは、零細業者無視もはなはだしいといわざるを得ません。ここに
政府案の零細
企業切り捨ての意図が如実に示されているのであります。
第六は、
商業政策についてであります。従来
政府の
施策は工業に偏し、
商業政策はきわめて欠如しているのであります。このため流通秩序は混乱し、百貨店、スーパー・マーケットの不当進出、メーカー、問屋の乱売、小売市場の乱立など、それでなくとも相互の過当
競争に悩む一般
小売商業者が、より一そう苦境に追い込まれているのであります。そこで、本案は、特に
商業政策の確立を強調し、商品の売通秩序の維持のため、メーカー、卸売業者による直接小売行為の制限、百貨店、スーパー・マーケットの不当進出の規制をはからんとするものであります。同時に他方では、消費者に対するサービスとしての
商業本来の立場から、一般
小売商業者みずからの
経営改善、
近代化を
促進助成することによって、大資本
商業と十分に対抗し得るまでに、その
地位の安定
向上を期しているのであります。
政府案が
商業についてきわめておざなりの一項だけを設けているのは、依然として従来の工業
政策偏重のそしりを免れ得ないのであります。
最後に、
実態に即し適切な
中小企業政策を
実施するために、
政府に対し総合的な
調査を行なわしめ、さらに
中小企業政策に関する基本
計画や
実施計画並びにその
実施状況について
国会に
年次報告する義務を課しているのであります。また、総理府に
中小企業審議会を設け、本法
運用に万遺憾なきを期しているのであります。
以上が本
法律案提出の
理由並びにその
内容の
概要であります。
何とぞ御
審議の上
政府案にかわり我が党案をすみやかに成立さすため御賛成あらんことをお願い申し上げ
提案説明を終わります。
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次に、
中小企業組織法案の
提案理由を御
説明いたします。
本
法律案は、
中小企業基本法案と密接不可分の関連法であり、
中小企業省
設置法案とあわせて、三位一体のものとして、本院に
提出しているのであります。
中小企業に関する
組織は、現在
中小企業団体組織法、
中小企業協同組合法、環境衛生関係営業の
適正化に関する
法律等各種あります。私どもが現存する組合の
実態をみます場合、どれだけ活発に活動しているかはなはだ疑問な組合がきわめて多いのであります。しかも未
組織の
中小企業者がいかに多いか、およそ
中小企業に関係するもののひとしく痛感するところであります。
この
理由は一体にどこにあるのか。
これは
一つには、現行
法律の
規定が
中小企業者の現状に適応しておらないというところからきておるのであります。二つには、一般に仏作って魂入れずという言葉がありますように、
法律は作っても、肝心の
組織化促進の
助成を積極的に行なわない、予算の裏づけがほとんどなされないということのためであります。
最近、
中小企業者は
組織化の必要、協同
事業の必要について切実に目覚めつつあります。そして、現に何らかの
組織、任意
団体に参加するものが多くなって参りました。
ところが、一歩進んで、これらの
法律に基づく組合を作ったり、それに加入したりすることには、きわめて消極的であります。むしろ、魅力がなく、かえってわずらわしいとさえ感じているのであります。
今日、
技術革新に伴う
経済情勢の著しい
変化の中で、
中小企業の
経営を安定させ、その近代的な
発展をはかるには、
中小企業者の団結の
強化、協同化の
促進をはかることが最も
急務とされているのであります。
しかるに、以上のように
中小企業の当面する
課題と現状とは、不幸にも相離反した姿を示しているのであります。そして、この離反をもたらした最大の原因が、
政府の
施策の不備、怠慢にあるということは、何としても遺憾きわまりないことであります。
わが党は、ここに
中小企業基本法案の重要な
一環として、
中小企業組織法案を
提出するゆえんも、実にこの現状を打開せんがためであります。そして
中小企業者の協同化への切実な要望にこたえ、だれもがみずからの自由意志に基づいて、その
業種業態に適応した組合に簡易に参加でき、協同
事業活動のもたらす恩恵に浴することができるよう、国に積極的な
施策の実行を義務づけんとするものであります。さらにまた、これらの
組織に強力な団結権、
団体交渉権を保障することによって、従来の大
企業からの不当な圧迫に対し、それに動じない
中小企業者の強固な、安定した
地位を確立して参ろうとするものであります。
これが、いままでの
中小企業者の
組織に関係する諸
法律を一本化し、
中小企業組織法案として
提案する
理由であります。
次に、本
法律案の
概要を御
説明申し上げます。
まず、第一に、本
法律案の定める
中小企業の基本
組織は、協同組合であります。この協同組合は加入・脱退の自由、組合員の権利の平等を原則とし、設立の要件、手続を簡易にし、経済
事業、調整
事業、
団体協約の締結をあわせ行ない得る
組織として考えられておるのであります。また、あくまで自主的な、
中小企業者が喜んで入る
組織を原則とし、強制加入はいかなる場合にもこれを認めていないのであります。
第二に、組合の種類とましては、
事業協同組合、勤労
事業協同組合、協同組合、商店街協同組合、環境衛生協同組合共済協同組合、信用協同組合、
企業協同組合、協同組合連合会を考えています。これによって従来の
事業協同小組合を勤労
事業協同組合に
発展させ、また商工組合を廃止して、新たに下請並びに商店街の両協同組合を設けることいたしました。また今までの
事業協同小組合、環境衛生同業組合、火災共済協同組合、
企業組合、
企業組合は、それぞれ勤労
事業協同組合、環境衛生協同組合、共済協同組合、
企業協同組合に
組織がえすることといたしております。
勤労
事業協同組合は、地区内の勤労
事業者、すなわち、
従業員おおむね十人以下にしてかつ
資本金百万円以下のもの、ただし
商業、
サービス業にあってはおおむね三人以下のものによって、下請協同組合は主として地区内の下請業者によって、商店街協同組合は主として地区内の小売業または
サービス業者五十人以上によって、共済協同組合は一または二以上の
都道府県の区域の全部または全国の区域内の
中小企業者によって
組織され、他の
組織は大体従前どおりであります。
第三にその
事業の
内容につきましては、
事業協同組合、勤労
事業協同組合、下請協同組合、商店街協同組合、環境衛生協同組合の各組合は、経済
事業、調整専業、
団体協約の締結をあわせ行なうものであります。そして
事業協同組合、下請協同組合、環境衛生協同組合が調整
事業を行なう場合には、同一
業種について地区の重複を認めないことといたしておるのであります。
また、共済協同組合は、火災だけでなく、風水害、地震、盗難、交通事故、爆発等による損害をも共済
事業の
対象に加えております。信用協同組合、
企業協同組合の
事業については、従来のとおりであります。第四は調整
事業に関する
事項についてであります。すなわち調整
事業を行なう場合は、不当に差別的でないこと、一般消費者及び関連
事業の利益を不当に害するおそれがないことを一般的な必要要件としております。
さらに、それに加えて、不況カルテルの場合は不況要件を、
合理化カルテルの場合は価格等に不当な影響を及ぼさないことを要件といたしております。
また、調整規程については、
中小企業者のみが加入している組合の場合は届出制で足り、
中小企業者以外のものが加入できる組合の場合は認可制をとることにし、特に価格協定については公正取引
委員会の同意を必要としたのであります。
なお、調整
事業を効果あらしめるために、不況カルテの場合について、アウトサイダー規制命令を出し得ることとしておりますが、
事業停止命令や加入命令は認めておりません。
第五は、
団体協約についてであります。協同組合は
取引条件並びに調整
事業について
団体協約を締結することができ、相手方はこの
団体交渉に対し、応諾する義務があります。そして
団体協約のうち、
取引条件に関するもの、
中小企業者のみが加入している組合の締結したものについては、届出制で足りることといたしました。なおまた、系列別の下請協同組合が、親
事業者との間に
取引条件に関して締結した
団体協約については、その四分の三以上が適用を受ける場合、その親
事業者と
取引関係のある組合員以外の下請業者に対し、一般的拘束力を持つことといたしておるのであります。
第六に、中央会の機構、
運営につきまして、従来の天下り方式を改め、真に民主的な
中小企業者の
組織とするよう
配慮いたしました。すなわち、中央会に正規の
理事会をおき、
理事会は
業務の執行を決する、会長は
理事会の定めるところに従って
業務を行ない、会長事故あるときは
理事がその職務を代理する、といたしたのであります。
第七といたしまして、特に
政府の
助成義務を明記しておるのであります。これは初めに申し上げましたように、せっかくの
組織に関する立派な
法律ができても、協同化を
促進する
政府の
助成措置に欠けるところがあっては、法の効果的な
運用を期することができませんので、
共同施設、福祉厚生
施設に要する経費、組合の事務に要する経費について、国がその一部を
補助することを義務づけたのであります。
また、商店街など協同組合の
設置する街灯の公共性を考え、その電気料金について特別の軽減
措置をとることといたしておるのであります。
その他、細目の
規定につきましては、おおむね従来の
法律の
規定を準用しております。
以上が本
法律案の
提案理由と
内容の
概要であります。
何とぞ、御
審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。