○丸茂重貞君 麻薬犯罪は、これはその被害の及ぶ範囲を
考えれば公敵の第一号だと私は
考えます。したがいまして、これに対する犯罪は、いかにきびしくしても、きびし過ぎることはないというふうに
考えております。私の個人的見解からすれば、今回改正される取締法でも、まだまだ量刑が不足だというふうに
考えますが、今日はその問題をはずれましてですね、今のような麻薬犯罪に対する徹底的な糾明をしてほしいという要望なりが当然出て参りますが、峻烈な追及が副作用的に出てきまする現状について、これがたまたま憂うべき現象になると非常に困りますので、その点について当局側の御意向をお聞きしたり、またお願いしておくつもりでございます。
その第一は、何としても麻薬犯罪を根絶させる一番効果的なものは、先ほども
藤田委員が触れられたように、密輸入されるところの麻薬を根絶させることが一番近道だ、こういうふうに
考えます。したがって、何としても当局は、この密輸入を根絶させるように全
努力を払ってもらいたい。ところがなかなかその効果は願っても、遅々として上がらないという
実情にありますと、その
取り締まりの影響がはからないところに、当局の予期しないところに副作用的な現象が出てきているという点を私はこれから指摘したいと思います。この前の
委員会における説明にもありましたように、密輸の薬を徹底的に取り締まっていきますと、
中毒患者が手に入れにくくなるものだから、それが必然的に医療機関に殺到して、そこから薬を入れようとする
傾向がだんだん強くなる。したがって、医療機関としても、従来よりも一そうその点について警戒をしなければならない、これは当然のことだと私は思います。ところが現実にこの
傾向は、すでにある
程度出てきておりますが、それに伴って憂うべき
傾向は、今まで医療機関が、いわゆるいつでも警察当局の資料に、この前私が指摘しましたように、医師ないし医療従業員の犯罪が非常に多いのだというような資料をいただいておりますが、その犯罪事実を些細に検討してみますと、たった一回
中毒患者に頼まれて、注射を打った者までも、刑事犯として取り扱われている。
統計上は犯罪者として取り扱われている。それがために、非常に数が多くなっているということです。この前私が指摘しましたように、検察当局、警察当局にもまだ
一つの迷信がある、どういう迷信かというと、医者ならば
中毒患者を一目見ればわかるはずだという迷信があるのですね。これはあくまでも迷信なんですから、今日事実上、上層部から下層部を指導する場合に、この点を注意していただきたい。相当熟練した医者でも、初めての
中毒患者を見破るなんというのはなかなかむずかしいんですよ。ところが実際
中毒患者にだまされて、医療機関で注射をして、警察に呼ばれて調べられたような場合、頭から知っていて打ったというふうに調べられる事実があるわけです。これはしろうと
考えとして無理からぬことだと思いますが、
中毒患者だけはなかなか、それはある
程度進んだ
患者なら別ですが、そうでないものを一見して見破るということは、相当熟練した医者でもできないのです。したがって一回ぐらい来て、腹が痛い痛いと言って、麻薬の注射を打ったというのが、常に知っていて打ったという誤認の上に調査などされないように、これは厳に私はお願いしておきます。従来は
中毒患者として発見すれぱ当局に届けます。ところが
中毒患者を届けたからと言って、身柄拘束をされるわけでも何でもない、届けられた者が、ふんまんやる方なく医療機関に来て大声で文句を言う、それに対して警察の保護を頼んでも、十分な保護をしてくれないという
実情があった、そういう
実情が長年習慣的にあったものですから、今でも医療機関というものは、うっかり届け出て、そのしっぺ返しが自分のところにきてはかなわない。言いかえますれば、従来の習慣的な
事情からすれば、警察が自分のほうを緊急に、即刻に守ってくれなかったということ事態があるわけですね。
この点はひとつ、ぜひとも当局におかれては、
事情を十分了承、察知していただいて、単に一回だまされて打ったものを刑事犯として峻烈に取れ締まるのだというようなことがたいように、ひとつお取り計らい願いたい。そういたしませんと、今医療機関の中には、
あとからいろいろ申し上げますが、もう麻薬は、ひとつ
取り扱いはやめようじゃないかという機運が非常に盛り上がってきております。このことは、私は麻薬
取り締まりというものは、いかに峻巌であってもいいと思いますが、副作用的な現象として出てきたことを、得々として麻薬検挙例の中に、医療従事者の犯罪をあげておられる、医療従事者の犯罪というものは、警察当局からみれば、赤子の手をひねるごときものです。というのは、毎年幾ら買って、毎年幾ら
患者に使ったかということは、毎年収支を報告しているわけですから、その面から大した犯罪が行なわれる筋合いのものではありません。例外は
一つ、二つあったようですが、
一般的に言って、そうひどい犯罪が行なわれるわけじゃない、そういう赤子の手をひねるようなことに全力を注いだような検挙成績をもって、事足れりとしていただきたくない、これは私はぜひともお願いをいたします。そういたしませんと、はからないところに、とんでもない副作用が出まして、医者が麻薬を取り扱わないということになったら、これは
患者の被害は甚大なものです。今、よりよりその専門団体が
考えておりますことは、これは麻薬を打ち、注射をする必要があるような
患者については、お役所みたいなところで、これはもう麻薬はおれのところにないから、役所に行って一式そこで注射してもらえというふうにやったら、麻薬については、われわれはせいせいしてやれるのではないかということまで話し合っております。これが
実情でございます。そこで手心を加えるという意味では毛頭ありません。専門団体でも、この点については昨年、今年と一そう厳格なる指導をやっておられるようですが、その間のいろいろの意思の疎通が欠けたために調べられた、不当であったと、一回ごまかされたために、まるで犯罪者扱いで、ひどい扱いを受けたというような声がしばしばあります。こういう点はぜひとも今後警察当局、あるいは検察当局でも、いろいろ
事情を考慮されたい、このように私はお願いをいたします。
さて、そこで今度もやはり
中毒患者を発見したならば、医療機関が届け出ます。そうした場合に、一体どういうふうな御処置を
厚生省の麻薬係、あるいは警察当局はとっていただくか。それからひとつお伺いいたします。