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1963-06-25 第43回国会 参議院 外務委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月二十五日(火曜日)    午前十時五十一分開会   ―――――――――――――    委員異動  六月二十四日   辞任      補欠選任    佐藤 尚武君  森 八三一君  六月二十五日   辞任      補欠選任    野村吉三郎君  西田 信一君    佐多 忠隆君  戸叶  武君    森 八三一君  佐藤 尚武君   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     岡崎 真一君    理事            井上 清一君            岡田 宗司君    委員            青柳 秀夫君           大野木秀次郎君            杉原 荒太君            西田 信一君            山本 利壽君            加藤シヅエ君            戸叶  武君            羽生 三七君            森 元治郎君            森 八三一君            曾祢  益君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君    農 林 大 臣 重政 誠之君   政府委員    外務政務次官  飯塚 定輔君    外務大臣官房長 湯川 盛夫君    外務省移住局長 高木 広一君    農林省農政局長 斎藤  誠君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○千九百六十二年の国際小麦協定の締  結について承認を求めるの件(内閣  提出) ○日本国アメリカ合衆国との間の領  事条約締結について承認を求める  の件(内閣提出) ○所得に対する租税に関する二重課税  の回避及び脱税防止のための日本  国とマラヤ連邦との間の条約締結  について承認を求めるの件(内閣送  付、予備審査) ○海外移住事業団法案内閣提出、衆  議院送付)   ―――――――――――――
  2. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  この際、委員異動につきまして御報告申し上げます。昨日付をもって、委員佐藤尚武君が辞任せられ、その補欠として森八三一君が委員に選任されました。本日付をもって、委員佐多忠隆君が辞任され、その補欠として戸叶武君が委員に選任されました。   ―――――――――――――
  3. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 千九百六十二年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件は、前回委員会において質疑を終了しておりますので、これより討論に入りたいと思います。御意見のあります方は、賛否を明らかにしてお述べを願いたいと思います。――別に御発言もないようでありますが、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  千九百六十二年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  5. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 全会一致であります。よって本件は、全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。   ―――――――――――――
  6. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 次に、日本国アメリカ合衆国との間の領事条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件は、前回委員会において質疑を終了しておりますので、これより討論に入ります。御意見のあります方は、賛否を明らかにしてお述べを願いとうございます。――別に御意見もないようでありますが、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  日本国アメリカ合衆国との間の領事条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  8. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 全会一致であります。よって本件は、全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。   ―――――――――――――
  10. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国マラヤ連邦との間の条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。提案理由説明を聴取いたします。大事外務大臣
  11. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま議題となりました「所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国マラヤ連邦との間の条約締結について承認を求めるの件」につきまして、提案理由を御説明  いたします。  政府は、マラヤ連邦との間で所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための条約締結交渉昭和三十七年四月以来行なって参りましたところ、今般交渉が妥結を見るに至りましたので、去る六月四日クアラ・ランプールにおいて、わが方在マラヤ連邦大隈大使マラヤ側タン・シュー・シン大蔵大臣との間で署名を行なったものであります。  この条約は、十八カ条からなり、従来わが国アジア諸国との間に締結した租税条約とほぼ同様の内容を有するものでありますが、マラヤ連邦の税制及び国内事情から次のような特徴を持っております。すなわち、船舶、航空機の運用から生ずる所得は、全額相互免税としております。配当については、他の諸条約と同様一五%の軽減税率とし、親子会社間のものであるときは一〇%の軽減税率としており、使用料については、相互免税としております。さらにマラヤ連邦創始産業所得税免除)法の規定に基づいて免除されたマラヤ連邦租税の額は、日本で総合課税する場合に、マラヤ連邦で支払われたものとみなして、日本の税額から控除することとしております。また、教授、留学生、短期旅行者等に対して広い範囲で免税を認めることとしております。  マラヤ連邦国内産業開発のために借入金形態による外資の導入を重視しておらず、第三国との租税条約締結交渉においても、利子課税についての軽減税率を認めない方針をとっておりますので、この条約においては、利子軽減税率または免税規定を設けないことといたしました。  マラヤ連邦は、わが国にとって主要な原材料供給国として、わが国の同連邦からの輸入の額も東南アジア諸国中最高であり、また、わが国から同連邦への企業進出船舶寄港等も多いところ、この租税条約締結によって二重課税回避し、これらの経済交流が一そう円滑に促進されるものと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。   ―――――――――――――
  12. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 次に、海外移住事業団法案を問題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。  ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止
  13. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 速記を始めて下さい。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  14. 戸叶武

    戸叶武君 私は先般提案趣旨説明のあった海外移住事業団法について、政府に対し若干の質問を行ないます。本法案は、海外移住に対する政府の新しい考え方の上に立って移住行政の刷新を期するため、具体的には従来移住行政というものが各省のなわ張り争い等によってばらばらであったのを、その移住行政一元化そうとするところがねらいのようでございますが、今までの海外移住実務機関であった日本海外移住振興株式会社日本海外協会連合会業務を統合し、特殊法人海外移住事業団を設立するに至るものと思われますが、これに対する政府の御見解を承りたいと思います。
  15. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 移住政策はたいへんむずかしい問題でございまするのみならず、最近の移住は、実績に徴するに、萎靡不振をきわめておるという状況でございまして、政府におきましては海外移住審議会に諮問いたしまして、移住政策打開についての御答申を求めたわけでございます。その御答申を基礎にいたしまして、今御指摘されたような移住行政機構の改編に着手いたしまして、その第一歩として事業団を作るということについて今御審議をいただいておるわけでございます。で、そのねらいとするところは、移住実務機関というものを、答申でお示しになりましたように、一元化するということでございます。そして、これを特殊法人とするこのことは、そこに勤務する職員の地位、処遇等も安定して参りますし、今までありました在来の二つ機関の重複というような点も解消して参りますので、それだけの効果が期待できると思うのでございますが、さらに私は政府方針といたしまして、そのような機会に、この移住の世話をするという仕事は、本来これは権力行政の分野に属する仕事ではない、一つサービスである、したがって、このサービスをめぐって各省の間でいろいろ権限のトラブルが続くなんていうことは、非常にこれは移住者にとって御迷惑なことでございまするし、役所の名誉になるととではないと思うのでございます。したがって、移住事業団というものをりっぱに作り上げて、これが育つに従いまして、私どものほらはもとより、農林省その他関係省もできるだけこの移住事業団のほうに仕事を移していって、役所といたしましては最小限度の監督をする。しかし、移住基本方針というものにつきましては外務省中心でありまして、各省の希望を導入いたしまして大きな方針をきめて、それを移住事業団に指示して、指示を受けた移住事業団としては、自主的に、かつ責任を持って遂行するといろ体制に持っていきたい、こういうことを基本方針にしてこれを発足させたいというのが、私ども基本考え方でございます。
  16. 戸叶武

    戸叶武君 大平さんの言われる御趣旨はごもっともと思いますが、特に移住行政一元化を目ざして海外移住事業団業務の統合をやったと言われるその御趣旨は、私たち賛成でありますが、しかしながら、この移住行政というものは、今日本だけでなく、移住問題の行き詰まりからしまして、ヨーロッパ各国においても、たとえば移住者を多く出しているイタリアやオランダのようなところにおきましても、あるいはスペインのようなところにおきましても、日本以上にやはり深刻にものを考えてこの移住政策の転換に直面していると思うのです。そういうときにあたりまして、政府みずからが移住政策とは何ぞやという問題を新しい角度から検討しなければならない段階にあるので、審議会においてもそういう基本問題から取っ組んでやはり答申も出していると私は思うのであります。したがって、この法案を出すまでの経緯を見ましても、外務省といたしましては、三つの法案を出すか、あるいは二つ法案にするか、いろいろ私は検討されたと思うのでありますが、政府として、当初移住基本法なり移住援護法、あるいは移住事業団法、三位一体の構想を持ってこれを出そうかという考えもあったように漏れ承っておりますが、そういう基本的なことはあと回しにいたしまして、今当面の行き詰まり打開の必要から、あるいは予算措置の必要からという形で、この事業団法を出してきたように思われるのですが、政府考え方並びにその経緯はどらなっておるのでしょうか。
  17. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 移住政策基本理念といいますか、道標というものは、先ほど私が申し上げましたように、移住審議会の御答申に出ておるわけでございまして、私ども拝見いたしまして、非常にすぐれた考え方が盛り込まれておると思うのでございまして、私どもはこれを道標として移住政策を展開して参りたいと考えております。したがって、今御指摘のように、移住基本法と申しますか、移住法と申しますか、基本的な法律制定をお願いいたしまして、この政策理念法制化していくということがまずなさるべきことに違いないと思うのでございます。したがって、政府におきましても、この政策理念法制化について一応の案を持っております。しかし、これはあくまでも移住審議会答申法制化でございまして、移住審議会答申自体は、すでに公表されておりますし、また、お手元にも差し上げておるわけでございまして、これを法律の文言でどう具体化して参るかということが残されておるにすぎないわけでございます。基本理念は、答申に示された方針に変わりはないわけでございます。そして、これの法制化につきまして、今各省ともお話をいたしておる段階でございまして、次の国会にはこれをあわせて御審議いただくようにいたしたいと思っております。ただ、事業団の設立を急ぎましたゆえんは、今御指摘のように、三十八年度の予算編成段階になりまして、取り急ぎ予算を編成する上におきまして、実施実務機構は、御答申に示されたように、とりあえずこれを一元化していこうということの政策を先行してきめておかないと予算が組めませんでしたので、このほうだけを先に取り出して御審議をいただいているわけでございます。移住法制の全体の構造というものは、今お示しのように、基本法的なものも含めまして、追って御審議を願うようにいたしたい、しかし、その実体は、答申に示されておる以上のものでもなく、以下のものでもないというように考えます。
  18. 戸叶武

    戸叶武君 移住基本法は次の国会提出するという答弁一つ、もう一つは、移住基本法理念は、審議会答申に盛られているような内容法制化するものである、そういうふうに受け取れる答弁でございますが、いずれにしても、今日における海外移住政策基本理念というものは、現実の国際情勢なり、世界的な技術革新に伴う経済変動期における日本自体産業並びに経済構造の変化にも即応するような態勢のもとにおいて、この理念というものが作り上げられつつあるものだと私は思います。すなわち、従来のようないわゆる移民政策でなく、労働力の単なる移動でなくて、開発能力海外への進出移動によって国際協力を作り上げるというところにねらいがあるのだと思いますが、問題は、今、足元に火がついておるところのこの移住の不振の問題です。この問題に対する掘り下げなり、自己批判というものが、あの答申を見ましても、私は、非常に本質的な追及というものがなされていない。むしろ回避されている。今までの実践団体の、この二つ事業体のなわ張り争いだけが、この移住の不振を招いたのでなくって、私は昨年の末にヨーロッパに三度目の旅行をいたしましたが、欧州経済共同体の発展に沿うて、労働力不足から、イタリア等におきましても、移民海外に出すよりも、むしろ海外に出ておる人たちを呼び返そうというような態勢だし、スペインのごときも、EEC加盟六カ国外にありまするけれども、やはりその労働力というものを欧州共同体の中へ投入しなければならないという情勢、この六カ国外にあるデンマークのごときも、労働力不足、特に農業労働力不足というものが、一九五五年から一九六一年までに、あのような理想的な農業国といわれている国においても、三〇%の所得並びに賃金のアンバランスから、農業労働者というものが都市並びに他産業に流れて行ってしまって、この対策をどうするかという深刻な悩みの上に立っておる。日本池田高度経済成長政策に伴って、やはり日本農民というものが六割ないし七割、十年間に減るということを政府では予見してたいのです。そういう状態のもとにおいて、日本農業構造というものが基本的にゆすぶられていき、若に青少年の労働力というものがなだれを打って都市に吸収されていくという現状において、この移民の不振というものが出てくるのは当然だと思いますが、政府当局におきましては、この、特に昨年度において落ち込んだところの移住の不振、せいぜい、少なくとも一万人なり八千人の移住を考えていたのに、二千人そこそこ、その五分の一程度までに落ち込んだというこの急激なる変動、これは単にブラジルのインフレのためだとか、ドミニカ移民の失敗だとかいうことだけの、あるいは今までの役所仕事が、外郭団体がだらしがなかったということだけじゃない。その問題に対して政府はどういうふうな、答申書だけに問題を転嫁しないで、政府みずから、どういうような形において、この問題を掘り下げて見詰めているか、それを承りたいと思います。
  19. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 答申にもお示しがありまするように、移住というのは、あくまでも自発的なものでなければならぬわけでございまして、政府のほらで移住に対する計画をきめて、一つ動員目標を立ててやるという性質のものではないと思うのでございます。あくまでも移住者本人の自発的な発意と情熱が移住を結果させることになるわけでございまして、政府基本方針として、これはあくまでも自発的なものである、そういう意図を持った方々政府として可能なサービスをしていくというのが基本だと思うのでございます。したがって、この移住者の多寡をきめるという力は、政府にはないと思います。ただ、今御指摘がございましたように、国内経済が成長いたしまして、労働力の全体としての需要が大きくなり、あるいは地域的にもいろいろな労働力不足を訴えるというような事態が起こっておりますことは、御承知のとおりでございまして、そのために、移住者が内地で十分、より高い生活ができるというような事情になりましたことも、移住への意欲を減殺するに役立ったということは、一応想定されるわけでございまして、その経済成長そのものは、今御指摘のように、技術革新時代にあってこれは避けがたい構造的な変革の時期にあるわけでございまして、これをとめていくということも無理だと思うのでございます。したがいまして、そういった事情移住を制約しておった状況になっておったということは、御指摘のとおり、いなめないと思うのでございます。こういう状況のもとで、しからば移住をどら展開していくかという問題でございますが、これはやはり国民自体の自発的な奮起に待たなければならぬわけでございます。そのためには、政府のなし得ることというのは、過去においてそれが十分でなかったうらみはあると思うのでございますが、移住地事情あるいは移住地経済をめぐるもろもろの条件、それから移住先の国の政策、そういった点につきましてのインフォーメーションを広く国民一般に普及するような努力を通じて、新しいフロンティアを求めるという意欲が刺激されるという意味で、私どもは一段とこの正確なインフォーメーションの提供ということに力をいたしますならば、わが国国民が持っている潜在的な能力を具現する場を新しく求めようという意欲も、また刺激されてくるのではないかと思うのでございまして、過去の移住政策を回顧いたしまして、こういった方面に努力が足らなかったということ、それから、移住地調査という点は、個々の移住者にこれを求めるわけには参りませんが、政府といたしまして、公的な力で十分事前調査というものを徹底的にして、それを正確に知らして差し上げるというような努力をやりますならば、今後の移住政策には新しい新生面が出てくるのではないかと期待されるのでございます。最近私どもが伺ったところによりますと、必ずしも、日本において食い詰めたから行くというようなことでなくて、相当自覚を持った移住者方々が出てきているという好ましい現象も出てきているわけでございます。こういった政府努力によりまして、そういう方々の自発的な移住意欲というものを高揚して参るように持っていくべきではないかと、私は考えております。
  20. 戸叶武

    戸叶武君 大平さんの移住政策に対するお考え方というものは、きわめてすなおな一つ考え方でありますが、それだけに、非常に私たちは、外務省のような移住政策考え方は一番無難で非難を受けないけれども、これは品行方正内容のない、アンビシアスなものを持たない、一つ秀才型の青年――そういう青年移民なんかには行きませんよ――もっとアンビシアス意欲をもってこのフロンティア精神というものは私は作り上げられるものだと思います。ここで今、外務省農林省のなわ張り争いというものは、私は非常にもっと深刻な、時代考え方の上にギャップがあるのではないかと思うのは、外務省のほらは少しあか抜けしておりまして、これはホワイト・カラーのものの考え方で、移民というものは私はやはりどっちかと申しますれば、後進地域に、未開地といわれるところに、ほんとうにぶち込んでいく闘魂がなければ、この移住という成果というものは上がらないんじゃないかと思うのです。今のような移住がふるわないようなときに、外務省がどっちかといえばこの指導権を握って指導しているところに、いよいよ、さっき大平さんが心配したような萎靡沈滞現象が現われてきたのではないかと思うのですけれども、そういうふうに、この国民自体の自発的な奮起を待たねばならない、ごもっともです。それから、政府が引きずるのじゃないということを言いたいと思うのでしょうが、しかし、この技術革新経済変動に伴って、国内において若い労働力というものが農村から都市に流れ込むというようなときに、非常に好条件でもって雇用が拡大しているというときに、より優秀な者を中南米の、特に南米の新天地に入れようとするときに、それに対する対策というものは、現地の状態を正確に知らせるという程度だけでは、なかなか私はその移住政策というものは伸びないんじゃないかと思うのです。私はそこいらに、農林省の今までの考え方というものは少し泥くさいところがありますけれども、大体移住というものは泥くささが相当つきまとっているのです。昔のいわゆる泥くさい大陸移民時代とは違うということはわかるし、現在のブラジル等で要求しているのは、初期の移民といわれた時代移住者たちと違って、もっと近代農業技術を身につけたような人をほしい。それから、そういう農民だけでなくて、造船その他の企業進出においても相当の成果を上げられているように、そういう面も伸ばしたい。いろいろな面があると思います。しかし、私は今の、当面の問題に問題をしぼって言いますが、移住事業団が統合することになったところの、今まであった二つ団体というものの今までのやり方というものは、どこへ行っても非難を浴びせられないところはないのです。人間がでたらめで、やっていることがだらしがなくて、国内にあったら、あんな問題はとうに引き揚げられていると思う。これはどこでも迷惑しているのです。そのしりぬぐいもできない、それで仕方がなしに、ここらで陥没さして、ほおかむりして、新しく出直してこようというのが今度の事業団現実だと思いますが、あとからも会計検査の手なんかに入ってから、いかにだらしなかったかということは、もう問題をなまで取り扱えなくなった時期に――来年か再来年にどしどし出てくると私は思いますが、こんな形で、だらしない上にほおかむりだけしていくというやり方は、幾ら積み上げていってもそこからいいものは出てこないのではないか。この際私は、そうした事業団なり何なりが出発するときは、厳しい自己批判の上に立ってやらないと、サービスとは言うけれども、外地における移住政策に対して、ややもすると、外務官僚というものは冷淡だ、秀才だが冷たい、とにかくそういう印象が非常に強いのです。私はこのことは言いづらいことだけれども、率直に外務省人たちに考え直してもらわないと、白い手で移住政策は行なわれないのです。やはり泥まみれになっていかなければ、一つフロンティア精神なんというものは私は伸びないと思うのです。そういう点からいきまして、大平さんの見識なり人格というものは私は相当尊敬しておるほらで、どっちかといえば、外務省の中で一番荒削りの面を持っておると思いますが、どらも今のお話なんか聞いておると、やはりしりつぼみの外交だなという感じしか受け取れないのです。衆議院段階でも、相当田原氏なんかもずいぶん言いづらいことを言っておるようですが、私はもっとなまの材料を持っていますから、今後矢つぎばやにそういうものは出していきたいと思いますけれども、もう人間の問題――人つくりと池田さんも言っておるのですけれども、偽善的な、体裁的な、形式的な、見てくれ的な人間が中心では、移住政策は失敗する。ほんとうにこの問題に対して情熱を傾けていく人を中心に据えるということをほんとうに外務省でも農林省でも考え直さないと、これから現地からもう引き揚げられてしまうと思う。問題は――三十七年度の問題にしぼりますが、政府は一万名から八千名を予定したところが、二千二百一名に減少した。その減少した原因の一つに、日本の国際的な波動の中の一つでありますが、高度経済成長政策のもとにおける農村からの労働力都市に流入して、移民のほらに向けられなかったというのが第一の理由であって、第二の理由は、やはりブラジルのインフレや、ドミニカ移民の失敗の問題の心理的影響、第三がやはりお体裁だけはできておっても、ほんとうに受け身の形において、消極的な形において自発的な意思に対して協力するというようなへっぴり腰の移住政策、私はこれが三位一体となって不振の原因を作ったと思うのですが、大平さんはどのようにこれを考えておりますか。さっきのお話は抽象的ですが、もっと具体的に掘り下げてもらいたい。この問題を中心としてやはり問題の展開が出てくると思います。
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 高度経済成長に伴う労働力の相体的な不足という状況は、戸叶先出御指摘のとおり、最大の原因であったと思いまするし、なお、御指摘のように、ドミニカの移民政策の不始末、これも心理的な影響として深刻に響いたと思うわけでございます。御指摘のとおりでございますが、最後の点で、ホワイト・ハンドじゃいかぬ、もっと泥くさくということでございますが、私は、移民政策というのは本来ホワイト・カラーのもてあそぶところではなくて、あなたが御指摘のとおり、移民という仕事に生涯をかけてやるという人、人の問題だという御指摘は、そのとおりだと思うのでございます。その熱意に欠けるところがあって今日のような事態を来たしておると申し上げなければならぬことを、きわめて遺憾とするわけでございます。  それから、在来の移住担当機関の運営ということについていろいろな問題がありますことも、私どもも承知いたしております。もともと、こういう公営という一つの経営の方式というものには、それに内在する、本来もう避けがたい非能率性があるわけでございまして、これはひとり移住関係の事業、実施機構だけを責めるわけにいかないと思います。能率の点から申しましても、モラルの点から申しましても、こういう事業形態には、えてして、そういう弊害を伴うものでございまして、われわれが見ておりまする移住実施機関というものも、その例外ではないと思うのでございます。そこで今御指摘のように、そこに人的な核心が要るわけでございまして、そういう情熱を持った清新な人材をもって、しかも自主的に責任を持ってやっていただくという態勢に今度いたしたいということで御提案申し上げているわけでございます。今までの弊害を可能な限りためるために、私も最善の努力をいたすべきと思うわけでございます。そのことは同時に、政府が一生懸命にならなければいかんわけでございますが、政府の一生懸命になり方が問題だと思うのでございます。一から十まで官庁的なコントロールをするなんという在来の役所のやり方では、とてもいかんと思うのでございます。やはり問題は、事業団を作りました以上は、事業団に責任を持たせる、自主的に弾力的に活発な活動をやらすような環境を作ってやらないといかんと思うのでございまして、はしの上げ下げまで一々役所が干渉するようなことはいかんわけでございます。したがって、私は、外務省というところはできるだけ移住の実務から手を引くべきだと思うのです。こういうことは専門の方々にまかすという気持にならぬといかん。外務省がそのようにすることによって、ほかの省もまた外務省の真意を理解していただいて、事業団の育成に御協力いただくことになると思うのでございます。他の省にいろいろ私どもが注文をつける前に、まず外務省自体が一ぺんここで顔を洗って出直すというようにやりたいという趣旨のものも、今、先生が言われた人の問題に帰するのじゃないか。そして同時に、その情熱を持った人が十分自主的に活動ができるような環境を作るためには、政府としては、はしの上げ下げまで一々干渉するようなことをしないということが大事だと私は思います。
  22. 戸叶武

    戸叶武君 大平さんが、外務省みずから顔を洗って出直すというまでの思い詰めた決意をされているのですから、相当いい顔になって出てくると思いますけれども、これはいずれにしても、それ自体、取りようによってはいいけれども、片方においては、なるたけ責任をとらない方法で、自主的という名前で、その自主的団体たるべき事業団の人事の問題が問題になりますけれども、今までの既存の二つ団体のでたらめだったのは、古手官僚のこれは眠りどころで、全く食いつぶしをやられてしまった。そして、その取り巻きというのは人を見る目がないから、茶坊主的な内地の食い詰め的なものが集まって、そして結局さんざん食い荒らされてしまった。こういうような態勢で再び自主的な形においてでたらめをやられた日には、国は目も当てられない。そこらが私が一番心配するところなんです。外務省なり農林省がずいぶん長い間のいがみ合いみたいなことは、ほんとうは移民には御迷惑だけれども外務省亀手を引くからほかも手を引けという形で、しかも、その自主的な責任の主体となるべきところの事業団のスタッフというものが前の二団体のようなことになってしまったら、今度は一体だれが責任をとるか。外務大臣だけが、監督だから、責任は全部とることになるでしょうが、そのときには大平さんは外務大臣でなくなってしまう。私は日本移住政策にはこういう悪循環が今後つきまとうのじゃないかと思います。  そこで私は今の海外移住の現状について大臣から承りたいのですが、今、人によっていろいろ、また役所の統計においても全部違いますが、ラテン・アメリカ――中南米が主のようですが、中南米だけでも七十万の日本海外移住者があるというふうに聞いておりますが、海外移住者の数は現在どうなっておるか、一、二、三、四、五くらいのおもだったところはどうなっておるか、これをお知らせをいただきたいと思います。
  23. 高木広一

    政府委員(高木広一君) 大ざっぱに申しまして、南米に五十万おります。それから、北米、カナダを入れまして四十四、五万。南米五十万のうち、ブラジルが四十三万余りおります。それから、ペルーが五万おります。それから、アルゼンチンが一万三千ないし五千、これは二世も入れます。それから、パラグァイに六千、これはほとんど全部戦後行った者でございます。それから、ボリビアが約二千ぐらいおります。それから、最近は参りませんが、メキシコが六千ばかり、まあ大ざっぱに申しますと、こんなところでございます。
  24. 戸叶武

    戸叶武君 その数字を見ましても、とにかくブラジルが非常な比重を持っているわけですが、ブラジルは御承知のように混血の世界であり、二十一世紀の国ではないかと言われているほどの一つの混沌としながらも前進している国家ですが、その中へ海外移住者が三十七年度には二千二百一名、ブラジルだけじゃないでしょうけれども海外移住者が全体で二千二百一名、そのらち三百八十六名は沖繩県人、その二千二百一名中の呼び寄せ移民が八百五十一名、公募自営が五百六十、公募雇用が四百六十四という微々たるものでありますが、ブラジルには一体三十七年度にはどのくらい行っておりますか。
  25. 高木広一

    政府委員(高木広一君) ブラジルには、渡航費貸付の移住者は千八百三十名行っております。
  26. 戸叶武

    戸叶武君 その千人百二十名のうちにおける呼び寄せ移民といいますか、縁故移民はどのくらいですか。
  27. 高木広一

    政府委員(高木広一君) ちょっと今即席で申せませんが、約八割強と考えていただきたいと思います。
  28. 戸叶武

    戸叶武君 これを聞いてもすぐわかるのですが、現地に行っても、移民の一番安全なのは呼び寄せ移民である、緑故移民であるということも現地の人は強調してくるのです。今まで程度の低かったと言われている時代ブラジルにみんな入って行っても、長い間どろぼう一人いなかった、人殺し一人いなかった。それが戦後になったら変な者が出てきた。日本人というのは昔は尊敬されていた。とにかくブラジルへ出稼ぎに行くような人は日本の最低の層であろうと言われる者の中に、どろぼう一人出ない、人殺し一人出ない、こんなモラルの高い国民というのはどこにあろうかと言われるくらい尊敬されてきた。ところが、戦後においては、洋服なんかりっぱなものを着てくるけれども、非常にラフで、すぐ人の首を絞めてしまったり、あるいは銀行へ入って強盗をやったり、それで、ほかで驚いてしまって、これでどういう選定をやっているのだろう。選定というよりは、日本の戦後における荒廃がそこに反映しているのだと思いますが、そういう関係から、しっかりとした縁故移民でもって移民は送ってもらいたい、それから、単身でなくて、なるたけなら家族単位で送ってもらいたい、若者でも奥さんと一緒に来られるようにしてもらいたいというのが、みん、異口同音のこれらの人たちの要望です。そういう形において、ブラジルあたりには今では非常にコロニアルの組織が発達し、またコチア産業組合を初めとして、いろいろな農業協同組合の基盤というものもできて、私は、日本の農協のボス支配から見ると、ずっとりっぱな協同組合ができてきていると思うのです。そういうところにおいて活動の場というものはずっと広がってきておるのです。そういうところの一つの受け入れ態勢というものができてきているのですから、そういうところとの結びつきというものを重視していくことが、日本移住を振興きせる上において一番手っとり早い、一番能率的なやり方ではないかと思いますが、外務大臣はどうお考えですか。
  29. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり心得ております。
  30. 戸叶武

    戸叶武君 ところが、今度のいわゆる移住者の八割までが農業移民であり、去年あたりの移住者の八割までが呼び寄せ移民であるというふうな現状にあるのにもかかわらず、この海外移住事業団は外務大臣の専管ということになっております。これはおそらく私は、外務省農林省だというのじゃなくて、とにかく外国に移住者が出ていくことであるし、外地のことであるから、だからこれは外務大臣の監督ということにしようということになったのかと思いますが、この辺の事情は、私よりも本人の大平さんが一番詳しいと思いますが、どういう経緯でそうなったんでしょうか。
  31. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私、経緯は詳しく存じませんが、移住審議会答申で、多数の方がそういう説であったので、そのようになったと聞いておるわけでございします。  私の考え方といたしましては、移住行政外務省になければならぬとは考えておりません。今御指摘のように、政府一つですから、どこにあっても私はいいと思うのでございまして、外務省がどうしても専管の権限を取らなければならぬのだというようなやぼったい考えは毛頭ございません。ただ、この御答申で多数の説がそうであったということであれば、私どものほうとしても最善を尽さねばなるまいと思っているわけでございまして、そこには権限をむさぼり取るというような根性は毛頭ないのでございます。非常に虚心たんかいでございます。
  32. 戸叶武

    戸叶武君 大平さんの心境からいえば、そのとおりだと思います。しかし外務大臣、農林大臣の了解事項といいますか、今年の二月一日に行なわれた了解によると、一、海外移住事業団の監督は外務省一本で行なう。二、事業団と別に農業者の海外移住に関し農協等が行なう移住者の募集、選考、訓練の監督は農林省が行なうと、こういう了解に達したということですが、前のほうはわかりましたが、二のほうのこの了解は何を意味するのですか。
  33. 高木広一

    政府委員(高木広一君) 海外移住推進あるいは援助に関して国が行なうべき一般的な努力事業団を通じて行なう。しかしながら、民間の活動も大いに活用しなければいけない。国内におきましても、また先ほど戸叶先生がおっしゃいましたように、現地における民間の活動も大いに活用して、タイアップしていかなければいけない。そういう意味におきまして、国内で農協が農村の立場から特殊に移住を推進する仕事もあり得る。農協は民間団体でございますが、これの監督官庁は農林省でございます。これは農林大臣が行なら、こういうことでございます。
  34. 戸叶武

    戸叶武君 これと農林省設置法の農政局の事務、すなわち第九条二十の「農業者の海外移住に関し、その募集、選考及び教育並びに移住地調査を行なう」という、それとの関係はどうなっておるのでしょうか。
  35. 高木広一

    政府委員(高木広一君) 海外移住をいたします場合、ほとんど全部の方が従来では農業移民として出て参ります。実際は農業移民でなくても、便宜上農業移住者という形で出ていく場合が多々ございます。大体従来見ておりますと、都市から半分、農村から半分ということでございます。農村にいる農業者は、これは農協に関係をしているわけでございます。それから、都市から参ります者の中には、農村から流れ出て都市生活をしておられる、農業と離れた、かつて農業の経験あった人、あるいは自分の家は農村であるけれども、自分は何ら関係がないというような方々が、あるいは農業者として、あるいは技術者として海外に出て行くわけであります。したがって、農協の範疇の農業者につきましては、これは当然農林省の設置法のとおり、農林省の管轄でございます。しかし、都市から出て行く者については、これは当然農林省の関係外でございますから、事業団が行なう、こういうふうに考えております。
  36. 戸叶武

    戸叶武君 さっき読みましたが、「農業者の海外移住に関し、その募集、選考及び教育並びに移住地調査を行なう」、この「移住地調査を行なう」まで全部生きているわけですか。
  37. 高木広一

    政府委員(高木広一君) これは農林省の設置法の解釈自身は私存じませんが、従来の経緯を申しますと、海外移住地心調査は、外務省農林省両方から参りまして、外務省が団長になります。これは大蔵省の要求であります。一本で行かなければいかぬということで団長になりまして、農業県の専門家がこれについて、そして移住地のいろいろの農業調査をやったり、あるいはほかの省からも加わって、広い調査を行ならということでございまして、それを行なうことが今の設置法のあれではないかと思います。
  38. 戸叶武

    戸叶武君 今までの慣例はそのとおりと思います。問題は、事業団ができてからのことがこの法案をめぐっての論議でありますが、今度事業団ができた場合においてはどうなるのですか。
  39. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この農林省外務省の間の関係の分析でございますが、私はこのようにまあ了解しておるのでございます。  この移住政策というのが、今まだ進展の過程にあるわけでございます。ですから、今度出しました事業団の法によって、これが最終的にちゃんとなるわけではなくて、これは一つの改善の方途だと思っておるわけでございます。移住を振興させていくという目的に対して、どういう手段が考えらるべきか、それは考えなきゃならぬたくさんの問題があると思うのでございます。今日、事業団を発足させるにあたりましては、御承知のように、農林省の設置法というのがありまして、農林省農林省の権限を持っておる。この事業団法の制定にあわせて農林省の設置法の改正案を御提案申し上げているわけではございませんで、農林省農林省として固有の権限を持っておりまするし、それぞれ予算を持って移住地方に配賦いたしておる状況でございまして、そこを一元化して参るというところまでまだ参っていないということは、戸叶さんも御認識いただけると思うのでございます。今度事業団ができますと、私の願いとするところは、この事業団が自主的に責任を持ってきびきびやってもらいたい、したがって、役所の干渉はできるだけ少なくしていくほうがよろしいという考え方でいきたいと私は考えておるわけでございます。したがって、この事業団が生まれまして、これはまあ相当働けるじゃないか、相当信頼ができるじゃないか、きびきびやるじゃないかという信用を、この事業団自体が打ち立てて参りますと、農林省にいたしましても、外務省にいたしましても、この事業団移住のことは原則としてまかせていいじゃないかという空気になると思うのでございます。そうなって参りますと、本来の移住行政が地についてくると思うのでございますが、今までまだ過渡期でございまして、法律もそうなっておりますし、予算もそうなっておりまするし、今これを全部一元化して参るというまでには、まだ至っていないわけでございます。これは外務省に対する信用の度合いの問題もありましょうし、事業団が一体どんなものになるのかということのしんが万事のもとになっておると思うのでございます。それで、今度は信用ができるようなものができますと、だんだんと移住行政機構というものが一元化の方向に行くんじゃないか、農林省も理解をしていただけるのじゃないかと思っております。しかし、今度できたものがまた依然として旧態依然たるもので、どうにも使いものにならぬということになれば、またこれは外務省が専管するなどということは、もう一ぺん考え直さなきゃいかぬというようなことになると思うのでございまして、問題は、この事業団を丹精をこめて作りまして、これが信用を得るようなりっぱな活動の実績を示すように一応みんな努力してみようじゃないかというのが、今の段階における考え方でございまして、この成長の度合いにより、信用の度合いによりまして、今後政府移住行政機構としてどうあるべきかということを考える目安になってくるのじゃないかと思って、当面この事業団をりっぱなものに仕上げるということに努力の焦点を置いてやっていきたいと思っております。
  40. 戸叶武

    戸叶武君 大平さんのような配慮を持って運営されれば、あるいはうまくいくかと思いますが、一元化というものを打ち出したが、実態は今一元化の過程にあるのであって、その一元化ができ上がるまでの間とに、今のような事業団のあり方だと、よほどりっぱな人が中心にあってしっかりやっていかないと、私は大体もみつぶされちゃうと思うのです。これは運営の面が一番重要だと思うのですが、そういう形において、まあ大平さんが外務大臣である限りにおいては、今までの慣例もあり、そういうことをいろいろ生かそうともするでしょうが、しかし問題は、この一元化を目ざしているが、一元化の今過程にあるんだというこの事実の上に立って見るときに、海外移住のために政府各省から出されている今の予算というものが非常に問題になってくるのでありますが、現在政府から、海外移住に関する予算は、外務省移住局関係だけでなくて、農林省なりあるいは建設省なり、労働省なり、いろいろのところから出ているようですが、大体それはどんなふうになっておりますか。
  41. 高木広一

    政府委員(高木広一君) 外務省予算だけ申し上げます。外務省予算は、昭和三十七年度は、移住振興費総額十三億八千六百万円でございます。これが昭和三十八年度は十億五千七百万円になっております。表面三億減ったように見えますが、実は昨年度の渡航費貸付金が約六億使わずにこちらへ移ってきておりますので正味十六億、実質的には三億の増になっております。そのらち、渡航費貸付金というのが、これは現在八千名と予定しておるのでございます。実際はこれより少ないかと思いますが、一応われわれとしては、八千名の計算で六億六千三百万円が渡航費貸付金、それから、移住者仕度費補助金というものが、同じく八千名に対するものと考えまして、五千万円、それから移住促進補助金として、都道府県、地方海外協会と合わせまして七千百万円、それから、その他海外移住事業団交付金は七億七千七百万円を予定しております。そうして、全体的に申しますと、その人件費は、従来移住会社の人件費は補助金ベースでございませんでしたが、今度は事業団に一括されましたので、含めまして海協連全部合わせまして約三億ばかりだと考えております。これは人件費及び庁費を入れまして、そうしてそれ以外は、現地におきます移住者援護のための費用、たとえば営農のためのトラックとか人夫等を用意する。アマゾンあたりだと学校、病院間等のボートまで用意する。こういう関係の費用でございます。
  42. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) 農林省で計上しております移住関係の予算につきまして御説明申し上げます。三十八年度におきまして一億四千万円の予算を計上いたしておりまして、そのうち、本省の移住関係の経費、あるいは講習費等を約三百五十万円計上いたしております。それ以外は、一億三千七百万円程度のものはいずれも補助金でございまして、これは府県に対する補助金と、それから農業移住に関係のある団体に対する補助金でございます。この中で約半分の七千四百万円は、これは各府県に拓植基金という制度を設けております。約三十七協会ございます。この拓植基金で、移住しようとする人が財産を整理し、あるいは移住のための質金調達をする場合に農協から金を借りるといった際に、基金が債務保証をするわけでございますから、その基金造成のための補助金として、今申し上げました七千四百万円を計上いたしました。その残りの六千三百万円が、これが今申し上げました都道府県に対する補助金、海外協会あるいは農協関係の移住に関する活動の補助金、そういったものを計上いたしているわけでございます。
  43. 戸叶武

    戸叶武君 外務省農林省のだけは承っているのですが、移住行政の一本化と言うからには、その他の各省にわたるものも一応外務大臣のところへ今度は監督なり統括がざれるのじゃないかと思いますが、大平外務大臣が言われているように、今過渡的な段階にあるのは事実でありますけれども、今度は予算の概算要求期にだんだん入ってきますけれども、来年度からは、そういう予算関係も各省との連絡の上に立って外務省が全部総括してやれるようになるのですか。それとも、今までの、外務省なり農林省なり労働省なりあるいは建設省なりがやり来たった方式を踏襲していって、その上に調整を行なうのですか。その関係はどうなるのですか。
  44. 高木広一

    政府委員(高木広一君) 従来のあれを申しますと、農林省は今御説明のあったような予算がございますが、建設省がやはり産業開発青年隊に出しているのです。これは海外の費用は、外務省海外協会連合会の予算としてついておりまして、それ以外の省には移住関係の予算はございません。それで来年度からの予算につきましては、移住についての一般的な推進として事業団が一本になっていきますから、事業団予算につきましては、関係各省基本方針を御相談して、そこから予算も出てくると思います。基本方針を授け、事業団のほらでいろいろ事業計画を作り、そしてそれをもとにして予算案というのが出てくる、これが基礎になっていくと思います。それから、まだ農協関係が移住推進を現在やっておりますから、それは農林省に依然としてつくんだろうと思います。なおそれ以外に、たとえば炭鉱離職者の場合、これは本年度からすでに行なわれておるわけでありますが、炭鉱離職者で海外移住せられる方には、一家族約二十万円余りの移住促進費用といいましょうか、こういう補助金がつくことになりました。また、農林省のほうは、内地開発の方々海外移住せられる場合に、やはりそれと似たような補助金が行なわれる。これは、それぞれの炭鉱離職者とかあるいは農業者の事情に応じての各省それぞれの施策でございまして、こういうものは今後とも独立していくのではなかろうかと思います。
  45. 戸叶武

    戸叶武君 森さんがお待ちですし、私はまだ質問がだいぶ残っておりますが、午前中に大臣に質問したいという御希望を持っておいでですから、私の質問は一応ここで途中で中断いたしまして、森さんの質問にかわってもらいたいと思います。今の問題に関連しても、まだ私は質問したい点があるということだけを保留しておきます。
  46. 森八三一

    ○森八三一君 ただいままで戸叶委員と大臣の間に質疑応答がありまして、それを聞いておりまして非常に奇異に感ずるのです。と申し上げまするのは、移住政策については、これは国として立てるのですから、これは一本のものであって、各省がどうこうというものではないと思うのです。その国策に準じて各省がそれぞれ行政的な立場で仕事をおやりになる。それは別に外務省がどうこうしようというものではないということが大臣のお答えではっきりした。ただ、実務を今回の事業団法において一元化しよう、こういうごとのように承りますが、そう理解していいんですか。
  47. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) さようでございます。
  48. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますと、事業団の行なら実務の一元化というものの一体内容はどういうものなのか。非常に大切な移住仕事が、国として毛非常に力を入れていらしゃいますにもかかわりませず、最近だんだんと不振をきわめておる。その原因が、今の戸叶委員の御質問に対する大臣のお答えでは、非常に国内産業経済が高度に成長してきた、その結果として労働力が枯渇をすると申しまするか、移動をした結果、移住のほらに振り向けられるであろう労働力というものが、非常に減ってきた。もう一つは、人選が必ずしも適切ではなかったというようなことなんかあげられておりますが、私はむしろこの移住業務が非常に不振をきわめておりますゆえんのものは、現地の実態調査というものが必ずしも十分ではなかった。端的に申しますれば、非常にまずかったという点が一つ言えると思うのです。  それから第二の点は、ほとんど九十何パーセントのものが過去におきましては農業移住であります。農業移住でありますから、現地に行ったあと農業経営がりっぱに生々発展していくということでなければならぬ。それが、計画の不備だとか、あるいはそういうような情勢に達しまする間における資金の手当が非常にちぐはぐであった、あるいは営農についての指導について万全の対策というものに欠けるものがあったということのほらが、むしろ移住仕事、特に過去における実績が農業移住というものが九十数パーセントを占めておるという実績から考えて参りますると、そういうことではなかったかと思うのです。といたしますると、事業団が設立せられて、私の申し上げまするようなことが移住の不振をきわめてきた一つの大きな内容のものであるといたしますれば、その解明がなされなければ移住仕事を発展せしめていくというわけには参らぬと思うのです。実務を一元化するということでそういうことが達せられるとお考えかどうか、私は農業移住であります限りにおいては、やほり専門的な技能を持った人が一貫してそのことのめんどうを見てという立場をとりませんと、たとえばお役所的に渡航費を貸付するとか、一定金額の資金を貸付するということで、ほうりっぱなしにしてしまうということでは、この成功を期するというわけにはいかぬと思う。そこで、お尋ねいたしました事業団が、国策として樹立をされておる移民政策を受けて、各関係省庁が行政的にそれを推進していく。それは別に統制をしたり干渉をしたりはしない。ただ、その後に生まれてくる実務について一元化する。その実務について一元化する場合に、今申し上げましたようなことが、私は移住の一番大きな険路であったと思うのです。不成功の原因であったと思うのです。そのことをこの事業団がつつがなくやっていけるという確信が持てるのかどうか。そのことを解明しなければ、ただ形の上で二つ機関一つにするということだけでは、私は目的を達するというわけにいかぬと思う。その点はどうなんでしょう。
  49. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、事業団で実務機構を一元化するという方針ですが、これはまだ十分できておりませんで、先ほど申しましたように、これは中央機構だけ一応でき上がるわけでございまして、地方のほらをどうするかという問題は、今後の問題になると思うのでございます。そして事業団と一緒に一元化してやるほうがいいというような空気にだんだんなってくれば、これは一元化の実が上がってくると思うのでございますが、これは今からの事業団の作り方、活の入れ方によると思うのでございます。しかし、今御指摘のように、調査にいたしましても、営農指導にいたしましても、一体それでは今度できる事業団が十全な能力を持って十分やれるかどうかということにつきましては、私は確たる確信があるかというと、それは今私はございません。問題は、事業団にそういう有為な人材をできるだけ包容いたしまして、役所が心配しなくてもできるような状態になることが理想でございますけれども、しかし、限られた予算、要員の中ではたしてそれができるかというと、確信が持てません。したがって、政府といたしましては、各省の関係の技術的な能力を御援助いただきまして移住の推進に当たるべきものと思うのでございます。これは将来の問題といたしまして、だんだん事業団がりっぱに育ち、これをもう少し拡大して、もっと十全な能力を持たすようにしようというようにいくのか、それとも、やはり足りないところは政府が助けるんだから、小ぢんまりした陣容でやれというのか、事業団に対する政策のきめ方によると思うのでございます。ただいまのところ、ともかく一応中央の機構を一元化して清新なる人材をもって再発足させてみたい、そして、これがひとつ事業体としてりっぱに育つような指導をしてみたいというのが私のただいまの気持でございます。
  50. 森八三一

    ○森八三一君 大臣のお気持はわかりますが、どうも今までの過去の歴史を振り返って見ますると、法律なり規定なりというもので何々が一元化するとか、何々が衝に当たるということがきまりますると、ともすると、実力がないのに権限だけを振り回していくというきらいがなかったわけではないと思うのですね。今回の非常に重要な移住のことにつきましては、お話のように、将来においては、事業団が国策を受けて各省の行ないまするそれぞれの行政をしっかり把握して、そして、窓口一本で行く姿をとることが好ましいとは思いますけれども、その好ましい姿を完成することに急なるあまり、あるいは力むないのに余分な権限を振り回すということになりますると、これはたいへんな問題が起きると思うのです。これは実際問題としてその調節はなかなか私はむずかしいと思うのです。その辺をどう処理するかということが、かかって今後のこの法律の制定後における移住の実績を上げ得るかどうかということに私はつながってくると思うのですね。このことは、決して私は架空な理論を申し上げておるのではなくて、今回の事業団というものが、二つの組織を一本化して一つの統一したものにしようということについてです。その前提は、もう歴史のある二つ機関があるのですから、その機関が今までどういうことをやってきたかということを聞いてみたり、また、現地に移住をいたしまして、非常に営々として働いて成功をして帰ってこられた諸君に会ってお話を聞きましても、今私の心配するようなことが、現にもう現われておるのですね。これはもう事例をあげますれば、私が今ここに資料として持っておりますものだけでも、相当にあるのです。そういうことがまた繰り返される危険を私憂うるのですね。そういう点を矯正していくと申しまするか、将来の理想というものについて私の異議はございません。ございませんが、その理想に達するまでの間にそういう問題が起きる可能性がある、そのことが結局理想を破壊していくということにつながってくる、こら思うのです。その調節をどうお考えになりますか。具体的な問題です。
  51. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のとおりでございまして、組織を一元化したからそれで問題が片づいたとは決して思いませんし、問題のこれこそスタートだと思うのでございます。そして、これが一元化の形式的な権限を持っただけで実が上がらぬというような事態になりますと、事業団自体を考え直さなければならぬことは当然でございまして、今お示しのような呼吸で、事業団の育成指導に当たらなければならぬと思います。それからもう一つ、私はその事業団が育成されて、りっぱに働くようになって、これが全責任を持つということは理想でございますが、全責任という意味は、移住者について全責任を持つということは大それた考えでございまして、これは現地のよき市民になるわけでございますから、現地政府政策もまた勘案せにゃなりませんし、したがって、これをやるのはできるだけ補完的に、足らないところを助けてやるという意味のものでなければならぬ、移住者の運命はわれわれが背負ったなんていう気負った感じを持たれたら非常に迷惑でございます。そういう点も考えながら、より懸命に指導をやらなければならぬと思います。
  52. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますと、大臣のお気持よくわかりますが、この法律が成立して実施の段階に入りました暁には、国策を受けて各省庁がそれぞれの立場で行政的に分担して移住行政はお進めになる、そのことを受けて海協連が今度は事業団になりますから、事業団で行なうことになる、それから、過去において経験を持ち、りっぱな成果を上げているそれぞれの団体も、各所管省庁の御指導のもとにそれを行なっていく、事業団はそのことを補完すると申しますか、援助していくと申しますか、アドヴァイスしていくという立場に立つのだと、こういうふうに理解してよろしいかどうか。
  53. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この事業団に示す基本方針は、この法律にもありますように、各省が集まりまして、政府として一本の方針をきめまして、事業団に指示して自主的にやらすというのが基本の構想になっているわけでございます。で、事業団が排他的に、移住のことは全部一元化されたのだから、おれのほらでやる仕事だと言っても、これはできるものではございませんで、御指摘のように、各種の民間の団体、農協その他こういう問題をやっているところがあるわけでございまして、したがって、そういう団体事業団が協力して、こういう事業団という組織の団体になりまして、移住費の貸付はおれのほうでやりますと、それではあなたのほうでやって下さいということになりますが、これは将来の問題として、事業団と一緒になってやろうじゃないかということになりますか、これは私はこの事業団が、先ほど申し上げました信用を得られるかどらかの問題だと思うのでありまして、役所が初めからきめてかかるべき性質のものではないと私は思います。問題は移住の振興でございますから、それに寄与するような工合に賢明に運営されなければならないわけでございまして、これが排他的に、いろいろ人を押しのけておれだけだというふうな指導は、絶対にしてはならないと思います。
  54. 森八三一

    ○森八三一君 抽象的には今のお話でわからないわけでもありませんけれども、恒久的な規定として、一貫してあるいは一元化して実務をやるのだということに規定されますと、その権限は非常に強くおおいかぶさってくることになると思うのです。  そこで具体的な例をあげますと、かつてサンパウロの農拓協のほうで、政府承認を受けて千七、八百戸くらいの農業移住者を受け入れたいということが、向こうの組織と向こうの政府の間で話が進んで、そのことについて日本側のしかるべき団体に打ち合わせがあった。そういう点について、これは海協連が直接手がけたものではないから、そういうものはよろしくないというような動きもあったやに承るわけですが、もし初めから海協連に、今度は事業団になりますけれども事業団にそういう話が持ち込まれておったとすれば、これは自分の事業だからということで、ここでスムーズにいったかもしれない。そういうことが一元化とかなんとかということによって将来発生する危険を感ずるのですが、そこで私は今お尋ねいたしましたように、そういうような実力が各省なり各団体の協力によってでき上がることを期待いたします。期待いたしまするが、そのできることを急ぐために、圧力をかけて変なことをやるというようなことになると、たいへんなことになる。今一例をあげましたようなことでございます。そこで、そういうような実体が備わる間は、それぞれ実力を持った、経険を持った団体が、移住のことについてはもちろんこれは国の政策、直接監督を受ける官庁の指揮命令なり御指導の範囲を出るものではございませんが、その範囲で行ならいろいろな業務につきましては、むしろそれを援助してやるというような立場に立つ、そのことが将来大成するゆえんであると思うわけです。どうも日本人の通弊として、一つの権力の座にすわるというと、それを振り回してしまって、そうして変な格好のものが起きがちです。ですから、私は繰り返してお尋ねいたしますが、事業団というものは、各省庁の国策に準拠して行なら移住のことについて、それを援助をしていくという立場に立つ――同時にまた、自分自身が直接におやりになることは、これはもうあたりまえでありますが――という業務がいわゆる事業団一元化される実務の内容である、こういうように了解したいのですが、よろしゅうございますか。
  55. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 非常にすぐれた御見識を伺って、私も非常にうれしく存ずるのです。  私は、外交をやる場合には、今、森さんが言われたような考え方でおるわけです。たとえば、外務省には霞ケ関に外交が一元化されなければならぬという信念があるのです。しかし、それは外務省が排他的に、外交はおれがこの手でやるのだというようなことでは、その実は上がらぬので、各省はもとより、民間におきましても、十分国際マインデッドになっていただくようにサービスをすることによって、初めて外交の声望が上がるのだということを、かねがね外務省の諸君に私はきびしく訓示いたしておるわけでございます。そして、移住につきましても、今事業団の運営、指導にあたりましても、そういうことでいかなければ実は上がらぬと思います。仰せのとおりの考え方、呼吸で指導に当たらなければならぬものだと思います。
  56. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますると、これは別に私は各省庁のなわ張り争いをどうこうということを考えて申すのではございませんけれども戸叶委員も御質問のございました、今までの経過が農業移住が九〇%を占めておるということからでありましょう。今回の法律提案に関連いたしまして、外務大臣と農林大臣との間に覚書が成立しておる。同時にまた、国会の議決を経て、各省の部局等についての分担事務についても、それぞれ設置法によってきめられておる。この二つの間に文字の上に現われておるものを見ますると、多少相違があるように思うのです。設置法は、これは国会の議決を経たものでありますから、かれこれ申すわけには参らない。両大臣間の覚書というものは、これは別に国会の議決を経たものでございません。両大臣間のお心持がここに帰一をしたということであって、今後そういう方針でやろうということであろうと思う。そのことがいいか悪いかということでなしに、その間に、文字の上に現われておるものを見るというと、相違があると思うのであります。しかし、この相違は、今私のお尋ねいたしました、大臣の非常に大乗的立場に立ってこの移住仕事を推進していこうとする気持ですね、その気持が貫かれて参りますれば、私は、こんな文字に書かれたものはあってもたいして論ずることはありません。お答えになったようなそのお気持が実際の行政の面を通じてずっと浸透して参りますれば、それでもう目的は達成されまするし、変なことは起きませんと思いますので、それでけっこうと思いますが、ただ、文字の上に出ておるものがとかく大臣の気持じゃなしに、下のほうに行って事務的に扱われるときには、こういうものが振りかざされて、どうだこうだというような議論が起きる場合が多いですからね。そこで、この設置法の九条というものと両大臣の覚書というものとの間に違いのありますことは、やはり設置法にきめられておる国会の議決を経たものが、これはやはり外的には、外部に向かっては意味を持つのだと、こう理解をすべきであろうと思いますが、そういうことでよろしゅうございますか。
  57. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 当然そうでございます。農林省設置法の改正案を御提案申し上げておるわけじゃございませんで、農林省にそういう固有の権限があることは当然だと考えております。  ただ私は、政治の問題として考えますのに、移住政策というものは一つの進展の過程にある。で、今の体制全体を評価いたしまして、これで国会承認を経ておるからこれがベストであるというように、政治の問題として自由に考えてみた場合に、必ずしもこれがベストであるとは思いません。問題は、移住の振興をはかるということをどうしてやるかという政治の問題があるわけでございまして、それで一応手初めとしてこういうことをやってみておるわけでございまして、これをうまく運用していきまして、農林省初め各省と呼吸が合いまして、もっとうまい仕組みを考えよう、場合によっては外務省からはずしたらいいじゃないかという議論があってもいいと思うのでございます。ただ問題は、移住振興が円滑に行なわれていくことが目的でございますので、その目的に沿うようにできるだけ自由濶達に考えていくというようにありたいものだと思っておるわけでございます。そうして権限というような問題を問題にするようになると、これはあまりいい状況じゃございませんで、もう農林大臣とお話ししたような気持でやっていけば、ぞごなくやっていける、またそうしなければならぬと私は思っております。
  58. 森八三一

    ○森八三一君 まあ、大臣間ではそういうことはちっとも問題になることではないと思うんです、これは。けれども、実務をいたしまするそれぞれの省庁に属する職員の皆様になると、やはり一つ規定というものが表面に出てきて論議される場合が多いということをしばしば経験をしておりますので、今大臣のお話しのように、私は、何も事業団法を作ることがいいとかなんとかということでなしに、移住仕事が円滑に進められて、移住者移住先において、その地域の方なりその国の方々に対して、経済的にも文化的にも社会的にも貢献をする、そうしてその行った人も生活の安定を得るということでございますれば、それでもう目的を達するんですから、何も書いたものがどうこうということではございませんけれども、そういう気持というものは、両大臣お並びですけれども、大臣間では十分了解されておっても、一々そんなことを大臣が指図なさるわけではないので、それを受けてやる政府の職員といたしましては、やはり書いたものに出ているところをすなおに日本文として受け取ってやる以外に手はないと思うんですね。その場合に、今申し上げましたように、両大臣間のお打ち合わせに基づく覚書というものと、設置法に基づく規定というものとの間に、文字の上から見ますと、違ったものがある。この違ったものがあるということが、他日問題を起こしてはなりませんので、そこで私前段申し上げましたように、国策に基づく移住につきましては、各省庁がそれぞれの行政を通してやるんだ。そのことに対して事業団が十分援助を与え、アドヴァイスをしていくということであって、それを事業団が、おれの関門を通らなければいけないといったようなことをやらぬということではっきりはいたすのでありますけれども、前段のほらではっきりしたものが、あとのほうで書いたものが違っていると問題を起こす、こういう心配を持ちますので、前段の質問で尽きてはおりますけれども、念のためにお伺いしたのでございますが、これは前段のお答えが優先をする、そういう精神で行なわれるんだということで了解をいたします。そういたしますると、この事業団の行なう業務というものが二十一条以下に規定されていると思うんです。二十一条の「事業団は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。」というところに、今大臣からお答えを願いましたようなことについて、項を設けての明示はないんです。ただ、第十一号に「前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するため必要な業務を行なう」、ここに包括されてくることになると思うんです。事業団が直接国策に基づく移住の実務をやっていくということは、二十一条の一項の一号から九号までですかにずっと規定をされる、そうして十号にもう一項ございまして、最後の十一号に、このほかに、移住目的を達成するために必要な業務を行なうと、その中に、各省庁の行なう行政のもとに進められて参りまする団体等の行ないまする移住実務についてこの事業団が援助をし、助言をしていくというようなことは、この十一号に入るものというように理解をすべきであろうと思いますが、そうでございませんと、大臣の非常にあたたかいお話はございましても、事業団業務はこれだけだからそんなことはできぬということになっちゃたいへんなんでございまして、そんなばかげたことはないと思いますが、規定の上から申しますると、十一号に、民間それぞれの団体がその所管する監督官庁の御指導のもとに行なう移住業務について支援をしそれと協調して行なうという意味がこの十一号に入ってきておるんだと了解しなければ、大臣のお答えと平仄が合わない、こうなると思うんでございますが、そうでございましょうか。
  59. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私はむしろ一号から十一号まで全部を通じた思想だと思うんでございます。こういうことをやるについて各民間の団体もいろいろとやられるわけでございますので、それに対して援助することも、一号から十一号に限定しなくても、これ全体の業務をやる場合に、そういうあなたがお示しになったようなサービス精神でやらなければいけないと思うんでございます。十一号に限定する必要はないと思います。
  60. 森八三一

    ○森八三一君 全体を通じて各号にそういう精神が全部含まれておるんだというように、この規定精神が盛り込まれておるというのでございますれば、一応形式論ではございますが、明瞭になりました。  そうしますると、三十七条でありますが、「事業団は、外務大臣が監督する。」、そうして「外務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団に対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。」、これはもう当然事業団の管轄は外務省に置かれるわけでありますから、外務大臣がその衝に当たられますることは当然でありますけれども、今まで戸叶委員もおっしゃいましたし、私も申し上げましたように、お互いといたしましては、ほんとうになめらかにこの移住業務が進展をいたしますることを期待する、その実行の段階におきましては、それぞれ国策に準拠して各省庁がそのことを担当しておるんですから、この事業団に対して「業務に関し監督上必要な命令をすることができる。」という場合には、その命令――これは政府が行なわれることを外務大臣がおやりになるんですから、閣内において意見の不統一があったり、違った命令が出ようとは思いません。思いませんけれども、農業移住というものがほとんど大半を占めておるという実況でございますれば、この命令を発せられまする場合に、農林大臣の管轄下における諸団体がほんとうに実績をあげてやっておるという事実とそごを来たすような命令が出るということはあり得ないとは思いまするけれども、そういう点は別段これは覚書にも出ておりませんが、実際問題としてはよく打ち合わせの上おやりになるということは了解いたしまするけれども、文字の上には出ておりませんが、そういうふうに了解してよろしいのでございましょうか。
  61. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この法律の二十三条に「外務大臣は、毎事業年度、事業団業務について基本方針を定め、当該事業年度の開始前に、これを事業団に指示するものとする。」、これを受けまして四十一条の二項に、「外務大臣は、次の場合には、あらかじめ、関係各大臣に協議しなければならない。」、「第二十三条の規定により基本方針を定めようとするとき。」と、これがいわゆる政府としての一本の運営上の適用の基本方針でございまして、ここで十分協議を遂げて、政府としての一本の基本方針をもちまして事業団の監督に臨むわけでございまして、このワク内から出るというようなことは絶対にありません。
  62. 森八三一

    ○森八三一君 今お話しの、事業開始前に云々というところには、外務大臣が基本方針を定めて事業団に指示ずる、その指示する前提として関係各省に協議をするということが四十一条の第二項の「外務大臣は、次の場合には、あらかじめ、関係各大臣に協議しなければならない。」、これはわかります。二十三条の「基本方針を定めようとするとき。」でございます。私の申し上げますのは、三十七条の発動については、そういう明文がないということを申し上げておるのです。二十三条の、開始前に基本方針を定めて指示するというときには、ちぐはぐになってはいけませんから、それぞれ関係各省で打ち合わせの上で善処していただく、これはよくわかりました。わかりますが、三十七条の場合には、触れていらっしゃらない。この場合も、大臣のお気持は、当然これは内容的には触れておると思うのです。そんなばかげたことはございませんので、当然だとは思いますが、明文の上には出ておらない。それは実体的にはそう扱うのだ、そう理解してよろしいのですか。
  63. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 当然そうでございますし、各省大臣もそういう権限を持って指示されているような場合には、また相談をしていただくことになっております。当然これをしながらやっていただくわけでございます。
  64. 森八三一

    ○森八三一君 だいぶ時間もおそくなって御迷惑をかけるといけませんから、一応私は基本的な問題について大臣のお気持ははっきり伺いましたので、この運営については、今お話があったように、目的は移住がなめらかにいけばいいのですから、そうした相手国の国民にすなおに喜んでもらえるようになればいいのですから、そのためには、事業団が何か権限の上にあぐらをかいて独善的な行為になると、今までの海協連の実績に徴してたいへんな問題になる。そういうことがあってはいけないので、むしろ事業団は、関係各省とのお打ち合わせの上で、外務大臣から諸般の指揮なり指示が出る。それを受けて各省庁の行なっておりまする移住実務の指導を妨げないように、実務機関がなめらかに業務を進展せしめて参りますために、必要な援助、助言をしていくというもっと高い立場に立つと、おれが立たなければというなわ張り根性を事業団が起こしたら、過去の経験から申しましても、農業移住なる場合には、どうしても最後まで見届けてやるという親切さがなければできるものではございませんし、現地における各種の民間団体とのつながりがなければ、これはとうてい成功するものでないと思うのです。それはブラジルにおける成功の実情を見ましても、コチアの産業組合等の場合、最初は非常に薄給で気の毒のように思いましたが、四年間の訓練期間を経ますれば、それぞれ向こうの組合からも融資を受けて土地を購入して独立をし、りっぱな成果を上げておるという事例を見ましても、送出する団体が最後まで血の通った指導をする、それから現地の各団体との間にほんとうにしっかりした連絡を持つということが私は移住の成功の基本的なものだと思うのです。それには、形式的に何人送り出せばいいというような姿のものであってはならないということを感じますので、その辺のことについて遺憾なきを期していただきたいと希望を申し上げまして質問を終わります。
  65. 曾禰益

    ○曾祢益君 最近、日本経済の異常な成長等の事情もございましたし、また、一方においては、ドミニカ移民の失敗等もあって、政府も、国民のその期待に反するような海外移住の非常な不振な事態があったのを契機に、移住審議会でも、今までの移住という観念を相当根本的にこの際考え直そうじゃないかというような答申もなされ、またあわせて、かねて懸案であったいろいろ、少なくとも実務指導機関といいますか、それの一元化はある程度この際やるべきだというバックでこの移住事業団法案が提案されたのだと思うのです。私は必ずしも、原理、原則にとらわれて、まず移住に関する基本法なり何かが出てからそれに沿うてこういう事業団を作れとまでは申し上げませんけれども、しかし、これだけの機会に、少なくとも実務指導機関一元化に踏み切るにあたって、今外務大臣のお話にもあった、この法案そのものが移住審議会答申の外でもなく、それ以上のものでもなければ、それ以下のものでもないと言われた、これはよくわかるのですけれども、どうもその点がまだ踏み切りが足りないような感じがするのです。お話によると、衆議院の附帯決議もございまして、次の通常国会には移住基本法的なものをお出しになる、しかも、その骨格も大体できているようなお話ですけれども、本来ならそれを伺って、必ずしも審議会答申だけでなくて、それを参酌した政府一体としての基本方針を伺って、その上に第一の法案としての事業団審議をするのがほんとうじゃないかと思うのです。これは単にそういう原理的なことを申し上げるだけじゃなくて、どらも多少調べてみると答申そのものがまだまだ非常に不徹的なのではないか。したがって、政府移住というものに対する考え方についても、一面においては、従来のものから新しく脱皮していこうという面は、過渡的な時代であるから、ある意味では当然かとも思うのですけれども、棄民とか、単に労働力移動というようなことじゃないという方面を強調しながら、まだ農業者の定着というような今までの観念に相当やはり移住の重点を置いておるし、置き過ぎているじゃないかという点が非常にばらばらだという感じがするわけです。たとえば、政府から出資したものはないのですけれども、もしこの際、一応移住審議会答申そのものに即して言うと、まず根本理念としては、要するに、先ほど申し上げたように、単なる労働力移動ではなく、開発能力の現地移動である、あるいは国民海外に創造的な活動の場を与える、そうして相手国の開発にも協力し、世界の福祉にも貢献し、同時に、日本日本人の声価を高める。これはいいことばかり並べ過ぎたような感じがする。その限りにおいては、大体新しい方向へ行こうということもよくわかる。全く同感でございます。しかし、同じ答申の中で、それじゃ今度は「移住者の定義」というところを見ると、やはり定着の目的での渡航者を原則とする。これはもう従来の観念からしてそのとおりだろうと思いますけれども、同時に、一定期間生活の本拠を移すいわゆる準移住者――についても、類似性がある場合には移住政策の対象に加える。定着ということを言っておきながら、一時的にも本拠を移すものは大体対象に加える。そこがどうもあまりすっきりしないような感じがする。特に一番重要な点と思われるのは、国際的な面においては、移住というものが、対外援助政策の面を持っていることをうたっておって、たいへんけっこうだと思いますが、「対外援助政策としては、経済協力、技術協力政策等と並列、協調の関係に立つ」、――「並列、協調の関係に立つ」と言って、そこから先の総合ということについては完全に逃げておる。どうなるのか。経済協力という観点から、やはり単なる農業者中心の定住主義ではなく、そこに総合していこうということなのか、それとも根本理念でうたっておることがハイカラ過ぎて、現実の姿としてはやはり農業者の定住中心でいくということなのか。そこら辺のことが、海外移住もある、外においては海外経済協力の面もある、別に技術協力がある、ただ並列、並記しただけで何らの総合性もないのじゃないかという感じがする。それから以下が、この点は特にあとで農林大臣にも伺いたいと思っておるのですが、一体政府移住政策基本方針というのは、答申は何を言っておるかというと、「移住政策は、国内における経済構造変動に伴う諸施策と密接な関連をもって推進せらるべきである。」、そんなことは、雨が降るときは天気が悪いのと同じことで、あたりまえのことなんです。問題は、これだけの経済構造の変革があり、しかも、日本の農業政策の一番大きな基本方針として農業経済構造改善を最重点として国内でやろうというときに、そういう中から見たら、一体海外移住というものはどの程度のウエートをとるか。これだけのことを浮き彫りにしてこそ、私は積極的、建設的な意義があるのじゃないか。まるで政府答申した審議会に文句を言っておるのじゃございませんが、外務大臣が、それ以上でもなければそれ以下でもないと言われる、しかも、基本方針のアウト・ラインをお示しにならないので、実はせっかくここまで来て仏作って魂入れざる感がしてならないわけです。そこで、いろいろ自分の意見ばかり申し上げて恐縮でありますが、私の申し上げたいのは、やはり非常に基本方針が、棄民だとかあるいは単なる労働力移動だとか、その土地に移っておる農民にあれをただ与える、国内の何といいますか、経済、社会の条件から外に押し出していくという観念から脱却しようとしつつも、それがまだ非常にその点が脱却し切ってないのじゃないか。私はその意味で、まず外務大臣には、この際竿頭一歩を進めて、一体もっと海外経済協力という観点ならその観点から、定住であろうが短期であろうが、やはりそういう観点に焦点を合わした移住ということを考えていくことも一つの行き方じゃないか。あるいは、むしろそういうことでなくて、経済協力というのを、きれいごとじゃなくて、日本のむしろ海外に対する一つの発展なんだ、海外経済発展の一つ現象としてとらえるならば、特に、やれ農業者だ、やれ今度は技術者だという考え方もおかしいのであって、主として労働力の移転ということを考えずに、やはりこれは商業あるいはプラント輸出、一種の企業進出、それから海運、航空あるいはさらに続いては今後保険事業等も海外進出するとか、そういう海外経済進出という観点からやはり総合的に考えられていいのじゃないかというような気がする。そういう点に全部総合して、なおかつそれでもこの移住という問題について私は位置づけがあっていいと思うのです。単なる従来の観念にとらわれないで、しかし、何か一向にその総合のほらはせずに、お化粧がえだけして、新しく海外移住だ、海外フロンティアを発見する。まるでケネディばりの平和部隊でいくなら、これはむしろはっきり海外経済協力ということを主にして、向こうに日本人が居ついてしまっているというようなことは、大量の日本人を向こうに移住させて、定着させて、向こうの国民として送り込むというような面は、非常にもう薄れている。それと短期に行くのとは、もう質の違いじゃなくて、滞在の時間の違いだというふうに、対外経済のほうに焦点を合わしてもいいんじゃないかという気もするのです。そういう点のあれは一体どうなっているのか、これが伺いたいのです。特に、やはり労働の移住という点だけは、非常に短期でもこの中に取り上げているようです。だから、西ドイツに行く炭鉱労働者、あるいはアメリカの短期移民移民じゃない、農民ですね、農業。これなんか、実際おそらく移民的なセンスで考えること自身がおかしいんだと思うんですけれども、ほんの短期間で勉強してくるということだろうと思うのです。こういうものは、ちゃんといわゆる移住の中に、短期的な移住――短期移住者というのはずいぶんおかしなことで、短期移住者と永住者と分けてある。無理やりにこの中に入れてある。そういう点が非常にはっきりしてないように思うのです。そこでやっぱり何とかうまいことを言うけれども、依然として移住というものを、過剰労働力を何かお化粧だけし直して外国に出すんだという面がまだまだ非常に残っているんじゃないか。この法案にはないかもしれない。審議会答申も脱却してない。政府の施策も、おそらく最近まで振興会社等がやっておった事業も、そういうことになるんじゃないか、こういうふうな気がするわけです。そとで、外務大臣からは、そういうほんとうに基本的に考え直した観点に立っても、なおかつ、特に南米の特定な国では、確かに日本国民が農業その他の事業で、ある種の新しいオポチュニティを与えられることがあるわけですから、そういうもので移住ということを従来の慣習を尊重しながら、やはり移住政策というもの、移住振興事業というものを特別のワクを作って、こういうふうにやっていく必要があるというふうに、はっきり経済協力その他からどういうふうに分けていくんだということについて、基本的なお考えをまず伺いたい。
  66. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 移住政策がどらあるべきかということにつきましては、私は私なりに、曾祢先生は曾祢先生なりの私は考えがあると思うのです。ただ、現時点で、移住に関心を持たれ、御経験を持たれた各界の方々が、移住審議会というところで長い間検討いたしまして、それを集大成した一つ答申というものがあるわけでありまして、これにいろいろ批判がありましょうけれども、私は現時点における移住政策として権威あるものとして尊重せなければならぬ一つ答申であると考えておるわけでございまして、これについて一々の点を見てみますといろいろ御意見があろうと思いますけれども政府政策基盤としては、せっかく御答申がありましたこの答申というものに沿っていくのが一番デモクラティックなんじゃないかというような考え方一つあるわけでございます。  それから、海外経済協力の問題と全然別に考えておるわけでございます。ここにもありますように、「移住者の定義」で今御指摘がありましたように、定着性という点を根源にして移住者を考えておるわけでございまして、定着しない者につきましては、経済協力、技術協力の範疇で政府は考えておるわけでございます。しかし、この定着性を持ちました移住者も、御指摘のように、技術的な要請も強いし、それから、場合によっては、企業という形で、そういう装いを持って行く場合もありましょうし、それは相当厚みのあるものに、時代の進展とともになっていくのじゃないかと思いますけれども移住政策の立脚点は、あくまで定着性にあるのだということで割り切っているわけでございまして、先生の御指摘される短期的な問題は、技術協力、経済協力という広い別な範疇問題として考えているわけでございます。しかし、御指摘のように、移住政策海外協力、経済協力政策というものがそれぞれ別個に走っていいものであるかというと、そういうものではないのでありまして、これはさらに組み合わされて、日本民族の海外進出ということに寄与するように仕組まれなければならないことは当然でございますけれども、この移住政策は、海外経済協力政策も含めたような、そういう野心的なものでなくて、あくまで定着性を持った海外進出であるという考え方でできておるわけでございます。
  67. 曾禰益

    ○曾祢益君 私も、最初申し上げましたように、何も審議会のこの答申に進歩性がないとか言っているわけではなくて、大いに、今までから考えると、相当清水の舞台から飛びおりたというか、あるいは情勢がしからしめたのか知りませんが、いいところもある。だがしかし、やはり海外経済協力、あるいは平和部隊的な思想というふうな点から見ると、まだまだ脱皮しておらぬのではないか。だから、この法案は、何といっても今までのあれに新しい焦点を合わせながら、まあとりあえず実務指導機関の統合をやってしまえという非常に現実的な立場で出されたと思うのです。ことに、外務大臣としては、あまり対外経済協力と移住と一本にして全部海外活動の方面は総合してなんていうと、ちょっとどうも国内にはいろいろのレジスタンスもあろうし、適当にそのつど的にやっていこうという気持もあろうと存じます。これはしかし将来の問題としては、相当答申は一歩を前進しているようだけれども、大切な点でまだまだ逃げている点が非常に多いと思うのです。まああとで、今後ともさらに外務大臣に伺いますけれども、農林大臣が非常にお待ちのようですから、まず農林大臣のほらに先に基本的な問題だけを伺いたいと思います。  もうすでに私の前段に申し上げたことに尽きるのですけれども、私はやはり特に農林大臣及び農林省、それから農業関係の方に相当お考え願いたいと思うのは、むろん私自身も、海外にそういう一つの夢を与えていくことが、今後とも非常にいいのではないか。つまり、南米の地に開拓移民というような形で行く。一つのそういうものを作っておくということの必要性に反対ではありません。ただ、そのウエートの置き方ですね。かつての日本農民の土地に対するかつえから、何で毛かんでも、あまり海外に土地があるということをやや誇大に宣伝して、事実はその準備、受け入れ態勢調査その他が非常に不備である、こういうことも非常にあったわけなんです。しかも、今日本の農業の構造の根本的な改革、変化が起こっておるわけですね。約三年前に池田さんが言った、約四割の農民がおそらく農業から離れていく。悪口を言えば、四割の貧農切り捨てだと非常に物議をかもしましたけれども、事実はやっぱり年に六十万なり、相当多くの農民が農業から離れていく。そういう状態で、一方においては、せっかく中南米諸国、パラグァイその他と移住協定を作っても、事実はそのクォータをとうてい埋めることはできないというくらい、何といいますか、応募者が非常に少ない。そこで、日本農業構造の改善の場合、むろん農業からほかの産業に移っていく、あるいは農村から都会に移るというような多くの人口に対していろいろの積極的な受け入れ体制、これを政府を中心にこれからおやりになる。そういう面から見て、一体日本でそういう農業における就職の状態の変化なりに対する対応措置をやっておられるのに、その観点から見て、海外のいわゆる従来の移住というようなものにどれほどのウェートを置いておるのか、量的に一体どれほど期待できるか。それから、たとえばドミニカの場合なんかは、これが失敗してからあとで、外務省のほうの調査にもあるように、一体あんなレベルの低いところに、どだいカリブ海の一番経済レベルの低いところに大体農地を買ってやろうとしたのが間違いだと言っておりますけれども、しかし、これは南米どこへ行ってもややそのきらいがあるのです。南米におけるいわゆるインディオと同じくらいに生活レベルを落として、これからの日本の、しかも相当優秀な、向こうへ行って働けるような、また向こうが期待するような若い優秀な労働経済力が一体そういうところに行くのかどうか。それを行かせるためには、非常に多くの社会資本その他の投下が必要であることは、これはもちろんであります。そうすると、一体国内における対策の貧困を、何か外に行けばちゃんともっといい生活ができるだろうというふうに、内における政策の貧困を、悪く言えばカモフラージュするために、外にこういうやつがあるぞと言う海外移住というものを使うという結果が出てはならない。むろんかりに年に一万から二万くらいの日本農民が行けるようなりっぱな条件があるなら、それはけっこうです。しかし、それにしたって、大量的に海外に持って行って、しかも、ほんとうに日本農民のために、相手国のためになるようなことには、とてもいかぬのじゃないか。そのために、資金の効率的なあれからいっても、むしろ国内でそれをどこかにリセット、吸収してしまったほらがベターであるということがあるのじゃないか。この際、今までの惰性で考えないで、ほんとうに新しい日本経済構造経済発展と、国内における大いにあなた方が意欲を持っておやりになろうとする、またその価値のある農業構造改善の面から見ても、なおかつ海外移住に対してこれほどのウェートを当然置くべきであるというような明確なことをお考えになっているかどうか。基本の問題ですから、ひとつ大臣のお考えを伺いたいと思います。
  68. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) 私は、海外移民ということは非常に大切なことだと思っておるのです。これは農林大臣としての立場だけでなしに、国としては非常に力を入れてやらなければならぬ。貿易を拡大するといっても、日本人がそこにおるところにはどんどん拡大をしていくのが、どうも今までの例のように思うのであります。これは日本人だけではなく、各国民がたくさん移住しておるところとの間の関係というものが非常に密接になっている。そういう意味から考えまして、日本としてはどうしても海外移住というものは力を入れてやらなければならぬと考えておる。ところが、現実日本の今の海外移住の姿というのは、先ほど来森委員からも述べられましたように、また皆さん方のお考えになっておりますように、農業移民というものが大半であるというのが現実でありますが、私は、もう少し移住政策は進めなければいかぬと、こう考えておる。でありますが、現実の姿は、今農業移民が主たるものである。しからば、わずかな農業移民というものを出して、それが一体今やっております農業構造改善にどれだけの役に立つと考えておるかという御質問であろうと思うのでありますが、これは御承知のように、移民というのは家族をあげて外国に移るのでありますから、負債整理もあろうし、いろんな問題があるわけでありますが、そういうものを片づけて行くのでありますから、移住先ではたしてうまくいくのであろうかということは、みんな不安を持っておる。でありますから、この移住、ことに農業移民が発展をいたしますためには、どうしても移住先において、そこの生活状態なり社会状態と申しますか、そういうようなものが非常に有望であるという姿が国内へやはり映ってこなければいけない。いろいろ外務大臣からもお話があったことと思いますが、そのために移住先における営農の指導等につきましても、これは現在よりもっともっと、この事業団ができますれば、専門家も事業団の中に入って、そして向こうで営農の仕事を専門的にやって、なるほど移住先は有望である、そういうことになって初めて国内農民諸君が移住を実行いたすわけであります。農民諸君のうちに移住をしたいと潜在的に考えておる諸君は私は少なくないと思うのであります。そこで現状はたいしたことも出ておらぬのだから、構造改善なんかやっておるなら、移住なんかたいしてウエートはないじゃないかというふうにお考えかもしれませんが、現実はそういうこともあるかもしれませんが、これではいけない、こう私は考えておるのであります。そうして、かりにそのウエートが、現在におきましては構造改善についてのウエートがさほど大きくないといたしましても、元来が日本では、御承知のとおりに、農業に就業する人口が多過ぎるのであります。これは第二次、第三次産業に、国内においてその方面に収容してもらうということはまことにけっこうなことであります。と同時に、海外の方面でも、これが移住をするということは、国内構造改善の面から考えましても、きわめてこれはけっこうなことであるわけでありますから、私といたしましては、農業移民として海外へ出ていきたいというような方々に対しましては、安心をしてひとつ海外で農業経営がやれるようなふうに全力をあげてやりたいと、こういうふうに考えておるわけであります。  なお先ほど、これはよけいなことかもしれませんが、経済協力のお話がございましたが、これは外務大臣の御答弁のとおりに、移民はあくまでも定着ということを考えてやっておると、これはそのとおりであります。そうしてまた、海外協力で三年なり五年なり出ていく者と、海外に定着する意図を持って行かれる者との間には、現実の問題として非常な準備の差もあり、心がまえも違うわけでありますから、この経済協力で三年、五年と行く者を、今の定着移民と同一に考えるということは、検討の余地があると、こう私は考えておるものであります。私どものところでもずいぶんアフリカなりその他インドなりの方面に経済協力をいたしますために、技術者も送り、米の増産等について非常に寄与いたしております。いたしておりますが、これを直ちに移民と同一に取り扱うわけに本質的に私はいかないというような気がいたしておるわけであります。つけ加えて申し上げておきます。
  69. 曾禰益

    ○曾祢益君 両大臣に念のために申し上げますけれども、私は政策あるいは政府の取り扱い措置として、永住――いわゆる移住ですね、それと短期の経済協力と同じにしろと言ったのではないのです。ただ、今農林大臣のお話で、抽象的には僕も、移住というものを全然もう頭から必要がないとかなんとか暴論を吐いているわけじゃありませんし、私自身も、海外に働きの場を与える、夢を与えるというか、夢だけでなくて現に場を作り出すのに努力しなければならぬ。これは主として日本の過剰労働、特に農村にひどかったと思うのですけれども、過剰労働を日本のほうの都合で主に出すという見方よりも、それは量的に制限があるのだと、それよりも外国に行って働く機会を与える。しかも、単にこっちが働くだけでなくて、相手国に喜ばれ、相手国の開発に協力する。そういうフロンティア精神を加味して、そうして短期であろうと長期であろうと、技術であろうと、経済であろうと、社会開発であろうと、国連であろうと、あるいは東南アジアであろうと、中南米であろうと、もう少しそれに総合した見地からやる。農林省も非常にいい仕事をやっておられる、たとえばインドその他で。何か移民ということだけで特殊扱い――これは、確かに永住者にはごく少数でも非常に懇切にしてやらなければならぬことはおっしゃるとおりです。これもまた必要なことです、たとえ少数でもね。ただ何かこれだけ――経済協力だけ別だという考え方のほうがおくれているのじゃないか。もっとその上に総合する――日本の対外経済協力に対する、あるいは開発途上の国に対する協力というものをぽかんと打ち出して、その中に永住者もあるし、短期もあるし、技術もあるし、農業もあるし、その他というふうに、もう総合する時代がほの見えているような感じがしたから伺うのです。時間があれですから……。
  70. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) ちょっと速記をとめて下ざい。   〔速記中止
  71. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 速記をつけて。
  72. 戸叶武

    戸叶武君 先ほど農林大臣をお待ちしておったのですが、質問している間においでにならなかったので、一、二点質問いたしますが、それはすでに外務大臣の答弁において大体尽されたのですけれども、問題は、今までのこの移住政策の行きがかりからいたしまして、移住者の八、九割は農民、ラテン・アメリカにおける特にブラジルを中心にしての農業移民、農業の移住者が多かったので、そういう関係で、今後この海外移住事業団の監督は外務省一本で行ならという両大臣間の協定といろか、覚書がなされておりますが、それと関連して第二の、事業団と別に、農業者の海外移住に関し農協等が行なら移住者の募集、選考、訓練の監督は農林省が行ならとの了解事項ですね。これと農林省設置法の「農政局の事務」、すなわち第九条にある「農業者の海外移住に関し、その募集、選考及び教育並びに移住地調査を行ならこと。」、これが生きているかという問題に対して、今外務大臣から、この一元化を行なっているが、今までこの一元化を行なうと言いながらも、これは一つの過程も必要であり、そういう点において、十分今までの立場というものを尊重して、そして調整していくというお答えがあったのですが、農林大臣がおりませんでしたから、まあ大平さんは信用のある人だけれども、一方的な発言だけを聞いておっても、これはあとで実施段階に入って必ずもめごとが起きるのです。森さんが指摘しているように、ブラジルにおけるコロニアルやコチア産業等におきまして、日本ブラジルの農協との結びつきにおいて、昨年においては日本移民の一千七百七十七家族の導入許可をブラジル政府からもらっておりますし、また今まで許可を得たもののほか、まだ許可の残りのワクが三千三百三家族もあるのです。そういう問題が割合にスムーズにいかないのは、一方から見ると、また現地に行っても嘆かれるのには、どうも外務省の外郭機関がじゃましておって、自分たち仕事の手柄のようにならないし、農林省のほうはぼけているから、とても問題が片づかないのだと言って業を煮やしているのです。これは大卒さん、行ってびっくりするのですよ。やはり大平さんぐらいもののわかるような人を移住のほうに回してやらないと、今度の移住局長も熱心ですけれども、これは必ず苦しむ。今までラテン・アメリカの外交官が不遇であることと、相当優秀な人が行っていても、中から下はなかなか劣悪な者もありまして、そして移民でも非常に優秀な人と混血の世界の特殊な雰囲気があり、新聞といっても、新聞も上等な新聞ではなくて、明治時代の赤新聞みたいのものも多くて、不必要なトラブルに災いされて、ほんとうの仕事というものができない状態になっている。もうみそとくそが一緒に流れている。そういう混沌の世界において、ものをやっていくのには、ほんとうに大平さんあたりがしっかりしてこれだけのことをやるなら、曾祢さんが言ったように、だいぶいい考えに一歩前進したのだけれども、この女学生の恋文みたいなんじゃだめなんだ。実際しっかりした人を事業団なり何なりに――誰でもこの人ならやっていけるという人を――国鉄の危機において人探しに一生懸命であったように――据えなくちゃだめだ。それから、ラテン・アメリカはほんとうにこれから大切です。私は日本人とドイツ人、ラテン・アメリカの中にくさびを入れていくのは。もう一つのアンシャン・レジームを打ちくずせなかったイベリア半島から出た人たちだけじゃなくて、やはり近代国家を形成していったところのドイツのエネルギー、日本のエネルギーと、最近立ち直ってきたイタリアのエネルギーというものが実際に必要なんです。そういう点において、今までにも曾祢さんが指摘したように、過剰労働のはけ口としての農業移民のまねじゃなくて、現状は、農業移民のウエートが高いというブラジルの新天地で望んでいるのは、ほんとうにもつと高度化された協力者を望んでいる。しかも、アメリカの進歩のための低迷というものが、いろいろなものにあってはね返されている。しかも、その前進に対する意欲というものは強いのです。こういうときに、私は特別、ヨーロッパ地帯から移民というものは、一種の前進的流れがとどまっているようなときに、何かほんとうにここにフロンティア精神を持って協力をしていくというのは第一に人です。その人をほんとうに加えていく、優秀な協力者を入れていくというときに、相当優秀な外交官が配置されて、やはり大平さんが、今言っているような形において、柔軟性を持って、独走しないで、変な御殿女中のような官僚の悪さを出させないでやっていかなくちゃめちゃくちゃになってしまう。そういう点において、どうも農林省でも――農林省は人がいいからずるずる外務省のほらへ巻き込まれちゃって、はいさようですかという形であったんじゃないかと心配している向きもずいぶんあったのですよ。これは私は、しかも農業に対して両者の意見というものが、外務大臣も農林大臣も、一致しているようですが、最近四、五年間に入ったところの農業移民が非常に成功し、歓迎されているのは、古い、程度の低い技術の中に低下をした農民でなくて、農業の近代化に即応して新しい形の農業をとり入れられていくことが、今まで定着した農民に対して新しい息吹きを与えているからなんです。そういうところで、私はほんとうに今の農林省といたしましても、在来の観念じゃなくて、よほどその点は――外務省のほうは少し新しがり屋のいいところもあるのだから、それと泥くささとがくっついて、そして移民政策をしっかり推進させていってもらいたいと思うのですけれども、ひとつやはり変ななわ張り根性は捨てるべきだ。あまり外務省の連中――さっき私も悪口を言ったんだが、ホワイト・カラーなんだから、白い手なんだから、白い手が混血の世界に行ったって、手をひっぱたかれるくらいが落ちだ。こういうところにひとつ農林省としても外務省に協力して、しっかりした新しい形の移住の路線を設定していかなくちゃならないので、もち外務省にまかしたから、外務省は今度は事業団の自主性にまかしから、そのままでものになるか、ならぬものかわからぬでしょうが、みなまかしちゃって責任をとらないようじゃ困るのだから、そういう点で、しっかり今後外務大臣は監督する、監視するぐらいのつもりで、協力体制を進めていく腹があるかどうか。全部城を明け渡して、あと知らぬようじゃ困ると思うので、その点、しっかりあなたの真意を聞きたい。どうも農林大臣見ていると人のいいところばかり出ている。
  73. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) 責任を全部外務大臣に移して、やれやれと思っているわけでは断じてございません。これは農家諸君が住みなれた地を離れて外国に移民をするのでありますから、私どもとしましては、ほんとうに親切に善後措置を行なってあげなければならぬと同時に、向こうへ行って、向こうで――まあ簡単に言えば成功と申しますか、有望なところであるというふうになるように、やはり営農の指導もやり、いろいろの調査もしていかなければ、一カ所で失敗したらそれが全部国内へはね返るわけでありますから、そうしますと、大切な海外移住事業というものに非常に大きな悪影響を及ぼすわけでありますから、私どもは私どもの手の届く範囲におきましては、決して等閑に付するものじゃございません、熱意を持ってこれは進めていく、こういう考えを持っております。
  74. 戸叶武

    戸叶武君 最後に一つ外務大臣にお願いします。それはやはり外務省人たちというのは非常に秀才が多いんですし、洗練きれた人が多いんだが、大体苦労人が足りないんです。そういう点において、特にラテン・アメリカのほうへ行くと、大使でも公使でも領事でも、今までの慣例からいくと、少しくさってしまって力こぶ入れないんですよ。相当に優秀な人でもそうだし、それが大公使だけじゃない。一等書記官に至るまで、奥さんたちは、子供の入学準備のために東京に残らなくちゃならないとかなんとか言って、欧米諸国だとすぐ飛んで行くけれども、大体行きたがらない。そうして遠隔の土地においていろいろな部下や何かを掌握しなくちゃならないようなときにおいて、殺風景な、そうして割合に冷遇されている地域において、どうも全体の融和というものが欠けている向きもある。やはりラテン・アメリカにおける外交官たちに対しては、外務省がもっと私は待遇をよくしてやることと、それから子供の教育なんかに対してはまた別に考えてやって、やはり奥さんたちは一緒にあすこで働けるようにしてやらなくちゃいけない。  それからもう一つは、コロニアルの指導者、世話役、あるいは新聞、それから教育関係の活動しているという人たち、これは必ずしも経済的に恵まれていないんです。全体の感覚が、植民地特有の雰囲気に支配されていく危険性があって、世界的な視野で、今前進している日本というものを、正しく見ていないと思うんです。やはりそういう世の中が、「井の中のカワズ大海を知らず」という形になって現地主義を生んで、かえって私はこっちから行った人との間がうまくいっていない点が随所で見受けられるんです。やはりそういう人たちに対して、外務省なり農林省なり協力して、私は年に一回くらいは交互にやはり招いてやって、新聞記者にも、あるいはコロニアルの世話役にも、あるいは教育活動をしている人たちに、いつでもフレッシュな感覚で活動ができるような思いやりを加えることが必要なんで、ただ一個の移住者を取り扱うんだという形に――移住政策というのは、物の輸出と違うんだから、人間関係なんだから、やはりヒューマニティの問題というものを無視しては、移住関係の成功というものはないと思うんです。そういう点を、今割合に苦労人であるところの大平さんなり重政さんなりそろっているんだから、それを消極面にばかり苦労人にならないで、そうして光を求める方向に私は展開をしていってもらいたいと思うんです。特にアメリカの――曾祢さんも述べましたが――短期農業労働関係、農業労働者の問題ですが、われわれは、メキシカン、あるいはフィリピンの人たちに加わって日本の労働者が困っている時期だから、法眼君がロスアンゼルスの総領事をしているときですが、向こうの農業団体といろいろ折衝して話し合いをつけたこともありますけれども、しかし、何といっても一番困るのは、技術を持っていても、日本人の短期労働者に自動車も運転させない、機械もいじらせない差別待遇、それから、農業労働者が入っていって、まともにいけば三年間で百万くらいは残っております。悪くいっても六、七十万円くらい残るんだけれども、あすこに前に行っているそういう世話役的なボスがばっこしてキャンプなどを作って、高いキャンプ代と食糧代の天引き、ピンはねをやって、しかも、外務省の役人と一度サンフランシスコで私は大げんかをやったけれども、現地に問題が起きても、とにかく現地を踏んで調査に行かないのです。救援の手を差し伸べないのです。これは私はいろいろ、費用も足りないし、人の足りない点もあるのかしれないけれども、やはり短期に外国に行って働いているというような人の問題が起きたならば、そこにすぐ手を差し伸べるような――ちょっとしたぼやでも内地では消防ポンプが走るのですよ、そういう役所が消防ポンプのような走り方をしないのです。これが、私はもう役所の不親切の一番の問題の起こりだと思うのですが、そういう点において、今後、たとえば役所でできなければ労働組合を通じてでも、今度はILO条約の批准の問題、いろいろな問題もありますけれども、やはり国民外交を通じてでも何ででも、アメリカにおける日本の労働者の差別待遇というものをやはりなくさせるような一つの手段を講ずるのが外交であって、大平さんの頭の中から生まれる外交だけじゃなくて、国民全体を動員しての差別、一種の差別観をなくさせていくようにしないと、黒人ですらもあれだけに立ち上がって、とにかくアメリカ内部におけるところのいろいろな矛盾を是正しようとするときに、いつでもアメリカじゃ一番日本の差別待遇が行なわれているのですから、そういうこともこの機会に私は、問題が中南米に注がれておりますけれども、アメリカに一番劣悪な待遇を受けている日本の地帯があるのだということをお忘れなく、とにかくこの事業団においてもお目こぼししないように、その点をつげ加えて配慮してもらいたいことをお願いする次第です。大平さんにひとつ、その点に一言私はごあいさつを……。
  75. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今外交官の責任、外交官の行動について、御批判やら思いやりやらのお示しがありました。私は、御指摘のとおり外交官、今ちょうど日本の外交陣容というのは、形を一応整え得たというようなところで、まだ今後充実していかなければならぬ仕事がたくさんございます。仰せのように、子供の教育であるとか、生活環境の整備というようなことにエネルギーが費消されているような状況で、非常に遺憾でございまして、そういった点に一段の施策が望ましいと考えております。たとえば、アジア公館長会議を東京でやる。それで従来アフリカの公館長会議は現地でやっておりましたが、去年から東京に移しておりまして、これはやはり一応内地の空気、内地をよく知っていただかなければならぬわけでありますので、できるだけそのような機会を提案いたしたいと思っておりますし、でき得れば三年に一度賜暇帰朝を認めてやるというぐらいまでやりたいと思っております。これは予算的に要請いたしておりますが、まだ実現を見ていないわけであります。十分政府としてなすべく――十分でなくも政府としてなすべき最小限度のことはしてあげて、その上できびきびと積極的な活動ができるようにいたしたいと思っておるわけでございます。  それから、私ども外務省に入りまして感じましたことは、仰せのように、苦労人が少ないというか、よく言えば、あまりすれていない方が多々ございます。その点は非常にいいのでございますけれども、苦労が少ないということは、あるいはそういう批評は当たるかもしれません。十分部内の諸君を激励いたしまして、勉強に御精進をいだなければならぬと思っております。  それから、外交は、やはり日本の国力というか、日本の国に対する評価というか、尊敬というか、そういうものがないと動かないわけでございますが、最近しみじみ感じますことは、たとえば、日本に対する関心が世界各国で高まってきているということは言えると思うのです。ある種の尊敬というような気持が、これはうぬぼれかもしれませんけれども、そういった感じを感じることが間々あるわけでございまして、このことは私は現地の諸君に非常に奨励になると思うのでございます。私どもは、内政を充実して、責任ある外交姿勢をとっていくということに勇気づけられまして、外交の衝に当たる諸君も、自信を持ってやっていける雰囲気になりつつあるのではないかと思うのでございます。お示しのような方向で一段と積極的な活動をいたしますように、努力をして激励して参りたいと思います。
  76. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  77. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 速記をつけて。   ―――――――――――――
  78. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) ただいま委員異動がございましたので、御報告を申し上げます。  本日付をもって委員野村吉三郎君が辞任され、その補欠として西田信一君が委員に選任されました。  これをもって、休憩いたします。    午後一時三十七分休憩    ――――・――――    午後二時五十七分開会
  79. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) これより外務委員会を開会いたします。  ただいま委員異動がございましたので、申し上げます。  委員森八三一君が辞任されまして、その補欠として佐藤尚武君が委員に選任されました。   ―――――――――――――
  80. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 午前に引き続きまして、海外移住事業団法案議題といたします。  御質疑のあります方は、順次御発言を願います。
  81. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 外務大臣にお伺いいたします。  海外移住事業団法案についての午前の審議状況をいろいろ承っておりましたのでございますが、また、同僚議員の方たちから非常によいポイントをついた御質疑、それに対する外務大臣の御答弁も伺っておりましたのでございますが、その結果私が感じましたことは、海外移住の問題につきましての日本の根本的な政策というようなものが、現段階国内の情勢及び海外の情勢というものが変わったということに対して、日本の国策としての方針というものが、どうもまだほんとうに、はっきりここにあるとか、こういう点に立つとか、こういうところに  力を入れていかなければならぬとかというような点が、まだ何かあまりはっきりしていらっしゃらないように思われましたのは、たいへん残念だと思います。それで、衆議院でせんだってこの法案審議なさいましたときの附帯決議の中で、なるべく早く「海外移住法」というもので、海外移住基本理念及び振興策を明らかにしたものを次期通常国会提出することというような附帯決議がついておりましたのでございますが、特にこの点につきまして外務当局としてどういうふうなお考えでいらっしゃいますか、承りたいと思うのでございます。
  82. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のとおり、私も日本移住政策というものは確固たる理念に従って遂行されてきたというようには私も考えられません。と申しますのは、海外移住をめぐる世上の受け取り方、観念の中に、たとへば海外日本民族が発展するんだというとらえ方をしている人もございましょうし、また、非常に人口問題がやかましかったときには、過剰人口のはけ口として移住を考えるべきだというよらなとらえ方をされておった方もあると思うのでございますが、政府として、移住政策基本を宣言してこう考えるんだという立法措置は、今までなかったわけでございます。そのときどきの時点に応じて、閣議の決定等で当面の移住政策をどのように推進していくかというようなことを考えられておった事跡は拝見できるのでございますけれども、御指摘のように、移住に対する基本的な立法というようなものが行なわれていなかったことも、これは移住政策に国があまり力を入れていなかったという証左になると思うのでございます。そこで、先般、改正されました海外移住審議会に、海外移住に関する基本的な法律制度の基礎となるべき海外移住及び海外移住行政に対する基本考え方というものの御答申を求めたわけでございます。それが去年の募れの十二月に御答申をいただきましたので、そこで私どもといたしましては、当面、この御答申につきましてはいろんな御批判があろうと思いますけれども、各界の最高の頭脳を集めて作り上げたものでございますので、このお示しを基礎にいたしまして、これからいろいろな施策を進めて参らなければなりませんので、とりあえず実施機構を作り上げていく、その次には今起草いたしておりまするが、お示しのような基本的な立法というものも考えて参る。のみならず、そういった立法措置だけでなく、行政的措置といたしましても、予算的措置といたしましても、可能な限り手段を講じまして、この答申に示されているような方向に移住行政を推進して参るべきものと考えております。
  83. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 大臣の御答弁によりますと、答申案を非常に御参考になって今後基本的な理念政府としてお立てになる準備をしていらっしゃるというふうに了解いたしたわけでございますが、移住の問題と人口政策の問題というものは、非常に今までは密接に考えられて参ったわけでございます。日本国内における人口の動態及び人口の構成というものが、最近非常に変わって参りました。それから、労働力の需要が非常に高まって参ったというようなことでございますから、過去における人口政策の一環としての移住というようなことは、今日では直接そういうふうに扱うことができない状態になって参ったと思うわけでございますが、特にこの人口問題との関連においては、今後理念としてはどういうふうにお取り扱いになるか、その点をまず伺いたいと思います。
  84. 高木広一

    政府委員(高木広一君) その点につきましては、移住審議会の御答申にも、人口問題の解決策としての移住政策ではなくて、人口問題と直接的には結びつけない考え方答申せられておりますし、われわれもそのラインで行きたいと思っております。
  85. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それでは、人口解決策という点には触れないというのが政府のお考えでもあると、こう承知いたしたわけでございますが、過去におきまして、日本移住政策というものは長い歴史を持っていると思いますけれども、その歴史をずっといろいろの段階で見て参りますと、成功でなかったばかりか、非常に指導らしき指導もしていなかった。そしてその結果は、海外移住した方々の犠牲において経過をたどりて、そしてしかも、他の西欧諸国の移住政策に比べて、はなはだ負弱な結果しか見られなかった、こういうふうに私は見るのでございますが、政府としてはそれをどういうふうに見ていらっしゃいますか。
  86. 高木広一

    政府委員(高木広一君) その点は日本が、日本国民が海外へ出ることがヨーロッパよりも非常におくれていたということが根本的の差異だと思います。したがって、その後におきまして、日本海外移住自身につきましても、海外に関する関心が非常に薄かった。移住といも日本民族の発展日本民族が海外へ行ってそのところを縛るという政策といたしましても、それに対する国民の関心も少ないし、政府としても、その関心を十分喚起するという点が少なかったというふうに反省をいたします。
  87. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私は、そういうような見方は、ごく一面の見方であって、決して根本の見方ではないというふうに理解いたします。今までの過去の成績が上がらなかったということは、それは日本がこういうことに手をつけるということは、明治の御維新からの歴史から考えることなんでございますから、時間的な立ちおくれということは、今日もう申すまでもございませんけれども海外移住が始まって、一番おもに力を注いだところはアメリカのカ州だと思いますが、加州の移民状態なんかを見ましても、あるいはハワイ、ホノルル等における移民を見ましても、日本政府としては何もこれに対して指導方針を持っていなかった。海外日本人が発展していくということに対して期待をかけたり、それを保護しないまでも、援助する程度のことさえもしなかったという点が、過去における一番の成功しなかった原因であると私は見るわけでございます。大平外務大臣はほうぼう外国をお回りになって、現地なんかの移民をごらんになって、過去の成功しなかった原因をどういう点に置いていらっしゃるのでございましょうか、伺いたいと思います。
  88. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 非常にむずかしい御質問でございまして、私は加藤先生と同じように、日本人は海外進出に不向きな民族であるとは思っておりません。現に漁業などの例をとって見ましても、これほど七つの海に雄飛している民族はないわけでございまして、あらゆる気候、風土に耐えて、みずからの能力を発揮していき得る能力を持った民族だと思うのでありまして、これが徳川三百年の鎖国政策等で一応海外との間に遮断がされておりましたときにおきましても、歴史上数々の海外に出向いた方々もおられたわけでございますので、民族として海外発展性を十分備えた素質を持っていると思うわけでございます。したがって、明治以来の移住政策が成功であったか失敗であったか、これはその評価は見る人の目によって私はいろいろあろうと思いますけれども、われわれが今の時点が考えまして、もう少し伸びるべきであったのじゃないか、それが十分でないじゃないかという御指摘はそのまま正しいと思うわけでございます。そこでしからば、その原因が何かということは、政府移住政策というものをきめて、そして非常に適切に施策をしたかというと、その点は数々の欠陥があったと思います。根本的には移住地事情海外事情というものを十分周知徹底させるような努力も、きょうの午前中にもございましたように、慨怠しておったというそしりは免れないと思いますし、それから、移住地における移住先政府とその移住者との間の間柄を調整して参る上におきましても、数々の点に手抜かりがあったのではないかと想像するわけでございますが、特に不幸な戦争が介在いたしましたために、せっかく築き上げた移住地におけるのれんというものを全部剥奪されてしまったというような悲劇的なケースも数々起こりまして、一頓挫を来たしたわけでございます。戦後になりまして、日本移住政策を長い目で見るというゆとりがまだなくて、国内の再建に忙しかったという事情もございまして、戦後の日本移住の重要性が、軌道が敷設され、それがたくましく推進されたという形跡を遺憾ながら見ることができないわけでございまして、ただいままでのことは、申し上げてせんないことでございますけれども、そのような経過で、思うにまかせなかったというわけでございますが、今後の問題につきましては、ようやく海外移住ということについて、ここはもとより院外におきましても、熱心な論議がかわされるし、関心も高まって参りましたし、そういう雰囲気を背景にいたしまして、政府としても、先ほど申しましたような施策を次々と精力的にやって参って、この失地をカバーして参らなければならぬと、こう思っております。
  89. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私はもう一つ特に伺いたいと思いますのは、過去の加州移民の問題なんかを振り返って見ましても、日本海外移民ということに対してなれていなかったために、その指導が適切でなかったという点の一つとしては、イタリアその他のほかのヨーロッパの国々から、たとえばアメリカ大陸へ移住してきた場合には、大なり小なりの資本を一緒に持ってくるとか、あるいはそこの土地に定住してから、そこで作り上げましたととろの富というものは、そこにおいて、そして在留の邦人の方たちが自分たちのざらに発展をし信用を増すためにその富を使うというふうになっていたように聞いております。ところが、日本の場合には、海外出かせぎというような名のもとに、出てかせいだ金をどんどん本国へ送金する、あるいは本国で貯蓄をする、このようにして、出先において、そこにおいて富を蓄積してさらに発展させるというような方法を考えなかった、政府も指導しなかった、そこに非常にウイーク・ポイントがあったというようなことを聞いているのでございますけれども、今後はそういう点につきましては事情が全然違うと思いますが、そういうような過去の経験なんかにもかんがみて、全然違った指導の方針というものを立てて参らなければならないと思うので、その点につきまして今後どういうふうに考えていこうと思っていらっしゃいますか。
  90. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この移住審議会答申にもお示しがありまするとおり、移住一つの目的は、移住地における開発に協力するということ、これが中心でなければならぬというお示しもございまするし、それから、総理大臣や私ども海外に参りまして、一世の方々、二世の方々にお目にかかった場合に、まず第一に申し上げておりますことは、あなた方はあなた方の国のよき国民、市民として、市民的義務を忠実に果たして、よき市民になって下さいということを申し上げておるわけでございまして、日本は、海外に雄飛した方々の送金を当てにするというような経済あるいは財政政策をとっているわけじゃ決してございません。もっともっと移住国のためによき市民としてその開発に御協力を願いますということを申し上げておるわけでございますから、こういう考え方でいきまして、今先生が御指摘のように、当然先方でかせいだ金が先方で蓄積され、それが再生産に投資ざれるばかりでなく、拡大生産に向くようにしていただくことは、もう当然のことでございまして、そういう点について、相手国側の政府に、日本移民につきまして何かのディスクリミネーションがあるということは、それは大いに打開して参らなければならぬ考えでございます。ただ、ヨーロッパの方面でも、イタリア等のように、移住者の送金というものが貿易外の受け取りとして非常に大きなアイテムになっている国は現にございます。それは何百万もの人が出ていくわけでございまするから当然でございますし、ニューヨークの人口の三分の一はイタリア人だというのですから、そういうような国ではそういうことを奨励しなくても、あるいは自然にそういうふうになっているのかもしれませんけれども、私どもといたしましては、現地におきまして、そこでりっぱな市民として、自分のためにも、子孫のためにも、生活の基盤を拡充していただくことが一番望ましい、政府もそれに対しまして援助していくべきことは当然だと思っています。
  91. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 外務大臣が外国においでになったときに、向こうにいる日本人たちがそこの土地でりっぱな市民になるように奨励されるという、その御指導の方針はたいへんけっこうだと思います。  そこで、ここにいただいてございます資料の中に、「国別在外日系人数」というのがあるのでございますけれども、これは、たびたび先ほどから御説明があった資料でございますが、ここに出ている数字の中に、北米及びカナダ、それから南米、こんなふうに二つに分けて、この数字の中でどのくらいの割合が向こうの国籍あるいは市民権というようなものを持っているのか、その割合はどんなふうになっているのでございましょうか。
  92. 高木広一

    政府委員(高木広一君) その点は非常にはっきりしないのでございます。第一世の中でも、すでに向こうの国籍をとっておられる人もおられますし、そうでない人もおりますし、――もちろん二世は全部先方の国籍でございます。ここに書きました三十六年十二月というのは、三十四年在外公館調査で、一世、二世、日系人全部を勘定した数字でございます。国籍の点はちょっとはっきりいたしません。その次のページにございますかと思いますが、明治三十二年から昭和十六年までの中南米向けの移住者渡航数というのですが、それを見ていただきますとわかるのですが、ブラジルは戦前、昭和十六年のときに十八万人千名であります。当時昭和十六年ごろのブラジルにおける日系人が二十二万ないし二十三万と言っておりましたが、ネットに行きましたのが十八万八千名でした。戦後ブラジルに行かれた方が約四万強、五万ですから、総計しまして二十三万でございます。それが四十五万になっているのですから、約日系人が倍になった。アメリカのほうは、行った人の数よりも向こうでふえたほうがもっと多いと、こういうふうに思います。
  93. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それから、在外邦人の中で非常に成功して、その土地においても非常に高い社会的地位を持っている方がたくさんあると思います。そういう方と海外移住事業団との協力関係というようなものを具体的にどんなふうにお作りになるのでございますか。
  94. 高木広一

    政府委員(高木広一君) これは、海外の邦人の団体の協力と、それから個人の協力でございます。団体といたしましては、先ほどからもお話がございましたが、たとえばブラジルでは日系ブラジル農業団体がございますし、コチアの産業組合、南伯産業協同組合とかその他がございます。これらが戦後の日本移住者の呼び寄せに非常な貢献をしておるわけでございます。現地におきます日系、あるいは場合によれば純ブラジル系の団体も協力してくれております。養鶏組合――ブラジル人の会長の組合がございます。こういう団体日本移住呼び寄せの協力というものが非常に大事でございますので、事業団は今後と毛現地におきましてこれらの御協力を仰ぐことになると思います。それから、ブラジルの例ばかりでございますが、それ以外に、現地で成功しておられる南米銀行の宮坂さんとか、あるいはブラジルで日伯文化会館の会長をしておられます山本喜誉司さん、こういう方々は、個人的にも移住の推進について御意見日本政府に寄せられ、あるいは先年岸さんが南米に行かれたときに意見を出されたり、積極的た御協力を仰いでおります。北米につきましては、これもけさ話がございました、カルフォルニアの三年間の短期農業青年派遣計画がございますが、これらの立案には、カルフォルニアの日系人の成功者が尽力せられ、また、二世の弁護士が、これまた議会方面に運動するというようなことで、ずいぶん協力していただいております。その関係は非常に深いものがございます。
  95. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 過去のことばかり言うようでございますけれども、もう一つ、過去の移住計画の中で、北米合衆国のほうは、最初差別待遇などで、長い間向こうに行かれた方はたいへん苦心をされたと思いますが、第一次世界戦争のときに、二世の若い方々が向こうの市民として非常な功を立てたこと、それから、第二次世界戦争のときには、キャンプの中に入れられたとか、財産を没収されたりして、いろいろ非常な苦労をされたにもかかわらず、戦後それに対して相当な補償を与えられて、今日はむしろいい地位を獲得されたというような、いろいろな変遷を経て今日に来ていると思います。けれども、一応北米における在留邦人の方々及び二世、三世の方々は、明るい将来を持つよな状態になられていて、これはたいへんに喜ばしいことだと思いますから、こういうようなことは、今後のほかの国への移住にも一つの奨励にもなり、希望の持てることにもなってたいへんに喜ばしいと思いますが、それに引きかえて、カナダの場合は、これは加州と同じような状態でありながら、カナダのほうの日本に対する理解が非常に悪いために、カナダに財産などを持たれた方は、戦争のときの処置及びその後の回復状況というものが非常に悪いと聞いております。このことにつきましては、私、だいぶ前に一度この外務委員会で問題に出したわけでございます。しかし、このことはどうも政府間の交渉ではどうにもならないことで、現地の世論が、国会において何か影響を及ぼすような世論となって働いてもらわなければどうにもならない問題であるということで、そのままになってしまっておるわけでございます。しかし、考えてみますと、やはり現地の世論が起きて、それが国会の動きにならなければ、手続としてはどうにもならないことだろうと思いますけれども、それに対してでも、やはり日本政府としても、もう少し何か現地の世論が興こるうらな運動をするというような方法もあり得るのじゃないかと思いますけれども、何もなさっていらっしゃるように伺わないのでございますが、そういうようなことに対してはどういうふうに考えていらっしゃるのでございましょうか。
  96. 高木広一

    政府委員(高木広一君) 今御質問の点は、実は移住局であずかっております移住政策のもう少し先のほうの、在留邦人に対する措置も、やっておるわけでございます。そうして、全般的には在外邦人の、まあ先生がおっしゃったような問題についても、できるだけ立場を擁護するための積極的な方策をとるということで、あるいは政府に申し入れたり、あるいはその他の方法をとる方針でやっておるわけでございます。ただ、われわれとしては、正面は外交のルートでいくだけで、あまりに内部的に働くことについては限界もございますので、思うようにいかないというようなことはございますと思います。しかし、外務省がやっております仕事で成功している例もございます。これはカナダではございません。たとえばペルーのごときも、同じように、あすこの在留邦人は、戦争のときには一部は北米にまで追放せられ、それから二世で海外へ、よそへ行った者は、戦後ペルーにも行けない。これはペルーの国籍を持っているわけなんですが、行けないというようなことでございましたが、われわれのほうから相当働きかけ、またまつ、すぐな道で働きかけられないので、ペルーなんかの場合に、文化工作、あるいはその後の経済協力ということで、だんだん日本の真意がわかるということで、二世が帰られるようになり、新たに技術関係者も行けるようになりました、まだ移住者は行けないけれども。というようなことでだんだん進みつつあります。カナダにつきましても、日本移住者を入れないというのが建前でございますが、最近では、企業に伴う技術者は移住者として入れてもいいというような、この前のジーフェンベーカーのときの政策の変化がございます。徐々ながら、在留邦人の立場の擁護は進んでおりますが、ある場合にはなかなか思うようにいかないという点は確かにございます。
  97. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私の具体的に伺いたいことは、大体以上のような点でございますが、将来日本の国家としての理念をお立てになります場合には、やはり東南アジア、アフリカ、そういうようなところも全部含めての立案を考えていらっしゃるのでございましょうか、いかがでございますか。
  98. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは、理念としては当然でございます。全地域を差別して考えるものではございません。ただ、現実の問題といたしまして、そういう方面では、日本に対する移住の要請もございませんし、今われわれが別途推進いたして参ります経済協力、技術協力、そういった分野の仕事が当面の問題であるというように承知いたしております。
  99. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 大臣の御答弁ございました経済協力に付随する技術協力、これは非常に重大なことだと思いますので、次の広くカバーした移住法というようなものを考えられます場合には、そういうような点も含めた、はっきりした、そして先の見通しのある理念を持ってお立てになっていただくことを希望いたします。
  100. 戸叶武

    戸叶武君 先ほど、移住政策の問題で、主として日本の立場から御質問をしたのでありますが、私たちはやはり移住者ということを考えるときに、相手側の受け入れ体制はどらかということも十分やはり考慮することが必要だと思うのです。で、私はちょうどアメリカに四回ほど行きましたが、中南米は最初でしたが、この南北アメリカを通じて、特にアメリカの諸大学では日本の研究が特に盛んですが、その中で一番課題になっているのは、やはり日本の明治維新の研究と、それからやはり日本の近代国家の形成の過程、特に後進国家が産業革命を通じて先進国と互角の立場に、短かい間に前進したということが一番問題になっているので、その後進的な国家の中において、アジア、アフリカその他におきましても、どうして日本の明治維新なり、あるいはその後における産業革命を通じての近代国家の形成のような変革が起きないだろうかということが一番の課題になっているということをある学者に聞きましたが、今私たちが中南米を見て、それらの国々の人々が非常に興味を持っているのは、日本に対する特に関心というものは、今われわれは後進地域であるけれども、無限の地下埋蔵資源その他がある、この埋蔵された富を活用して、どうやってわれわれが近代国家として立ち上がれるかというところに非常な私は興味が持たれているということを深く感じたのです。で、そういう点において、たとえばアメリカはですよ、あれだけ経済援助や「進歩のための同感」というケネディのニュー・フロンティアのプランを出しておっても、割合に中南米は――中米は相当アメリカに依存してきておりますが、南米において抵抗があるというので、やはりアメリカとラテン・アメリカの状態が違う。それで非常なギャップがそこにあるんじゃないかと思うのです。で、私たちは、現時点を中心として、農業移民が九割を占めておる――実質的には八割ぐらいですが、農業移民という形で九割を占めておるというところにだけ低迷しておると、今後伸びゆくラテン・アメリカとの結びつきに非常にズレが出るんじゃないか。そこから経済協力の問題、技術協力の問題、あるいは企業進出の問題というものを今後移住問題で十分配慮していかないと、うしろ向きの移住政策になるんじゃないかということをおそれるのです。実際上ブラジルにおいて、一番困った問題は、インフレーションの高進です。しかし、インフレーションの高進がされている中においても割合に安定しているということは、やはり少しくらい金を借りても、事業を起こしていけば何とかなるという相当楽観的な考え方があるから、それはほかの国々と違って、実際上相当設備投資をしていけば、長い目で見れば何とかなるので、それはやはり池田さんのやり方とちょっと似たようなところがあるけれども、そういうものの考え方があるのは事実なんです。これはラテン・アメリカの政治家の派手な面も一つは加わっておりますけれども、しかし、そのインフレの中に、不安定なように見えるが、不安定の中に前進していくところの国がある。そういう中に、ほんとうに不安定の中に安定を求めるというのは、傍観者としての立場を捨てて、ゆすぶられているところの中へ、嵐の中に、台風の中にやはり身体を突っ込んでしまうことが一番楽なんで、それが証拠に、リオデジャネイロにおける造船事業の成功のごときも、問題はあの中に突っ込んじゃって、そうしてどんどん仕事をやっている。仕事をやっているから、それほどインフレというものに対して被害を受けない。しかも、企業の三分の二の給料はブラジルのほうに払わなくちゃならないということになっていても、日本の二世、三世、四世なんかいるから、大部分は日系のこれらの人々を背景として事業を営んでいる。ブラジルにある五十三万人からの日系人というものの基盤というものが、日本企業進出というものの――冒険的な進出ではなくて――安定したひとつの支えになっている。今までは農業移民という形において基盤を作ったが、その基盤の上に新しい企業進出のチャンスを与えておる。で、ブラジルの望んでいるのは、農業移民を受け入れる場面もまだまだあるけれども日本人に多くを期待しているのは、それよりもブラジルが欲していて、今停滞し前進することのできない、この近代国家を作り上げるためのその土台作りを日本に協力してもらいたいという要望が非常に強いのです。それが、今までのどっちかといえば、農林省で力こぶを入れた農業移民というマンネリズム的なことでは、ブラジルの指導階級が要望しているものにマッチしなくなるときが遠からず来る。そこに私は今後の企業移民技術移民経済協力、いろいろの形はありますけれどもブラジルにおいて期待しているものを、ブラジルばかりではなく、中南米諸国で期待しているものを満たすだけの準備体制というものができなければならない。その点においては、外務省は若干夢を持っている。夢だけではない。曾祢さんも先ほど言いましたけれども、腰を据えて、もう日本はほかから若干うらやましがられるところもあるし、国際協力というものを相当積極的にやらなければならないときに、隣近所の火の中へやたらに無駄な浪費をしてよけいなおせっかいに頭を突っ込むことよりも――原爆時代の悲劇は出ても、絶対被害がないのは南米なんです――その安全地帯に、日本民族の一つの理想境を、ラテン・アメリカの人たちと結んで、モデル地区というか、そういうものを作り上げるということの基礎を、やはり私は作り上げる準備がなされなければならないのじゃないか、こういうふうに私は思っている。実際に去年の十月二十二日のキューバ事件が起きたときに、ケネディの演説がなされたときに、私はワシントンに入りましたが、あれからブラジルに飛行機で飛んでいくときに、朝海大使が、世界じゅうで一番危ないところがワシントンになってしまって、一番安全なところが南米になりましたねと、うらやましそうに私たちを送っておりました。これは半分冗談に言ったのだけれども、冗談の中に非常に真理に近いものがある。ヨーロッパがいわゆるEECの問題で、ほんとうにお互いに牽制きれ、拘束されているときに、ラテン・アメリカに必要なものは、ドイツ人や日本人の意志が持っているねばり強さ、技術、そういうものが一番必要なことになっているので、これが入らなければコンクリートは固まらないと同じように、日本はほんとうにセメントの役割を期待されているのじゃないか。そういう点で、もう少し企業移民なり、技術移民なり、経済協力は、遠慮することはないから、もっと思い切ってラテン・アメリカに対して私は積極的な構想を持ってもらいたいと思うのですが、外務大臣はどういうふうなお考えを持っておりますか。
  101. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 実はその経済協力を考える場合に、えてして資本的な協力といいますか、そういう点が力点を置いて考えられがちでございますが、いろいろ私どもも勉強してみますと、実は技術協力というものが案外求められてもおるし、効果的でもあると思うのでございます。先般イギリスのヒューム外相が来られてお話しをいたしましたときにも、当面やはりアフリカに対してわれわれが一番力点を置かなきゃいかぬのは技術協力だということで、まだ資本を組織して企業を組織して運営するという前の段階なんだという意味のお話もありましたのでございます。で、さらに申し上げますと、その技術協力よりもっと深く、教育の協力というか、そういうものが根本になければならぬと。なぜならば、やはりわれわれが経済協力をするにあたりましても、相手国の政府がちゃんとしたモラルを持って、ちゃんとした能率を上げ得る能力がないと話にならぬのでございまして、そういう意味で留学生対策というようなものも力点を置かなければならぬことであると思うのでございます。そういう意味で、経済協力と一口に申しますけれども、今戸叶さんがおっしゃったとおり、非常に幅の広い厚みのあるものになりつつあるわけで、また、そらしなければならぬと思うのでございます。したがって、移住政策は定着性を持った進出でございますが、これとても、単にそういうものでなくて、非常にバラエティに富んだ内容を盛り込んでいかなきゃいかぬ。一口に農業移住者と申しますけれども日本移住者は、それ自体もう相当進んだ農業技術を持っておる方でありますから、そういう意味で、全体として、移住政策にせよ、経済協力にせよ、厚みのあるものでなければならぬというお示しは、私も全く同感に存じます。  それから第二点として、それじゃラテン・アメリカをどう考えておるかということでございますが、実は私、寡聞にしてラテン・アメリカは行ったことがございませんし、よく自信を持って御答弁申し上げるような知識はないわけでございますが、二十一世紀にフット・ライトを浴びる地域じゃなかろうかと人も言い、私どももそんな感じがいたしておるわけでございまして、ラテン・アメリカ政策というのは、日本としても十分これは大きな問題として取っ組んで参らなければならぬ問題だと思います。ただ、現時点において私どもが受ける感じとしては、いかにも何といいますか、きちんとしてないということ、つまりおうようなところはおうようなんですが、どらも筋が立っていないんじゃないかという、何かかんぬきが抜けているような感じがするんですけれども経済協力の面でもなかなか計画どおり参りませんし、その点、若干遺憾な点があるわけでございます。もう少しそこは計画性を持ち、能率性を持ってやっていただければもっと進むのにと思うようなケースが多々感じられるわけでございます。また、それだけに開発する余力があるといえばあるわけでございます。非常にラテン・アメリカは大事だということで見てみますと、案外実際はなかなか思うように進まぬという現実の制約を感じるのでございますけれども、しかし、それだからといって、ラテン・アメリカの重要性が減殺されるわけでは決してないと思うのでございまして、こういった問題をしんぼう強く解きほぐしつつ、ラテン・アメリカ政策という点については、新しい感覚で取っ組んでいかなければならぬ問題だと思います。さてどうするんだということに対しましては、私、まだ十分お答えするような自信ある考えはないのでございますけれども、一応、今の時点において感じておりますことを御答弁申し上げます。
  102. 戸叶武

    戸叶武君 イギリスなりフランスなりは、今までの関係からアフリカというものを無視してはやはりヨーロッパのことを考えられない立場に置かれていると思うんです。そういう点において、私は、アフリカの問題は一番困難な問題だが、イギリスなり、フランスは、手を抜くことが実際上できないと思うんです。で、中近東は、あの貧乏は、ソ連とアメリカの援助の角逐戦、利用の角逐戦から、なかなか簡単には片づかない。そうかといって、東南アジアを見ましても、あの貧窮とあのおくれてる状態というのは、日本の現在持っている富の力やなんかじゃとても――国際的な規模の、国連の責任なりアメリカなりイギリスなり、本腰を入れなければ簡単に入っても埋没してしまう。それから、あなたは御熱心に韓国やタイのことはやりますが、これはむしろ私は――やはり朝鮮の問題を無視はできないと思いますけれども、ただラテン・アメリカで一番問題なのは、近代国家たらんとしているがまねごとで――と言っちゃ悪いかもしれませんが、やはり近代国家の骨格が、ほんとうのナショナリゼーションが完成していないと思うんです、その中で一番欠陥は、大蔵官僚の協力が足りないんですよ。ほんとうは税制なり、金融なり、あるいは保険の事業なり、それからもう一つは郵政の問題なり、そういう税制改革はなされてないし、徴税技術はきちんとしてないし、郵政のシステムがしっかりしてないし、形だけで、都市だけの国家で、実際上つかみどころのないような状態になっている。そういう困難をなし遂げてきた日本の明治以後の奇跡というものは、よその国においては一つの非常な奇跡としていると思うんです。日本人は今までの、三百年の徳川時代の泰平があって、その蓄積の上に明治維新があった。ルネッサンスはなかったとしても、ルネッサンス以上の蓄積があって、近代国家にならなくちゃならぬという刺激を通じていった。けれども、まねごとではやはりその国のほんとうの柱はできないんで、そういう骨組みになるような、私たちは国の運営の面においても、太平洋沿岸における諸国で日本の行っている人はずいぶん役人にもなっておる。それから、ペルーやコロンビアなんかに行ってびっくりしたのは、コロンビアなんかで数学の先生を非常に呼んでいる。日本人の数学の先生のたたき込み教育というか、そういうものを通じてでなければ、やはり教育がしっかりしてこないというので、もう通訳付でもって優秀な先生が招かれている。私はそれを見て、ああ、やはり目に見えないようだけれども、こういう面において向こう側がそういうところを気を使っているんだなあ。ペルーだって、日本人を非常に排斥――拒んでいるように見えるけれども、一番最初になだれ込んだ、とにかく棄民的な移民が流れ込んだけれども、今においては五万人ほどが生活しているが、ブラジルやほかから比較して、もっと高レベルのところへ来ている。そして、たとえば天野芳太郎君みたいな人があそこでフィッシュ・ミール――魚の問題に目をつけて、昨年以来世界一の漁獲高になったと言われるほどのものを作り上げている。それだけでなくて、東大の石田英一郎君のような、あるいは三笠宮のような人を連れて行ってインカの研究をやらせている。アジアとインディオとの結びつき、インカ文明やチャビン文化との結びつき、ミクロネシア文化との結びつき、そういうことの中で非常にインディオの劣等感を払拭して、何か自分たち日本人と先祖がどうも同じらしいぞというような近接感を持っている。それと、一方において西洋諸国の人たちに負けないだけの近代性を持って活動している人がある。そういうところには、やはり日本と結びついていこうというのがずいぶん出てきたと思う。そういうときに、私たちは今農業関係の移民だけにばか力を入れないで、これからやはり、それらの国々で求めているところの数学の先生なり、物理の先生なり、理科の先生なり、お医者さんなり、病院を建てる。そういう形の多角的なくさびをぶち込まないと、いつまでも、しかも日本労働力はもう不足してきているのですから、私は量だけの移民主義だけじゃなくて、もっと質的転換もこのときにおいてなさなければ――それは移民を数を少なくしろと言うのではないが、やはり今以上に移住者を送り込むことが必要だが、その移住者の中に、もっとバラエティに富んだ、そして、少なくともラテン・アメリカで尊敬され、ラテン・アメリカで歓迎されるような魅力に満ちた移住者というものを送り込むような考え方をしていかなくちゃいかぬ。今までの二つ事業体を合わせて、統合して、今までのような形を今度一応調整したという形も、この辺で何かほんとうに新機軸をつけないと、ヨーロッパ自身においても、今の欧州経済共同体も、統一をどういうふうに作り上げるかということに頭が注がれているときだが、そのときにおいてこそ、日本がむしろラテン・アメリカの中に、ラテン・アメリカの求めるものにこたえるような施策というものができなくちゃいけないので、それは外務大臣が言われたように、この移住政策が今後こっちからだけ人を送るというのではなくて、向こうの立場から考え、向こうが何を求めているかというものに対して満たすものでなければいかぬと思うのですが、そういう意味において、日本のお医者さんなり、日本のエンジニアなり、日本のそういう学者なり、あるいは看護婦なり、いろいろのものを求めているところが非常に多いと思うのですが、今までそういうことに対する外務省のほうでは調査とかアンケートとか、向こうの求めているものはどういうところにあるかというものにねらいを立てたような調査みたいなものは持っていないのですか。
  103. 高木広一

    政府委員(高木広一君) 調査ということでございませんで、先方の政府あるいは民間から強く要望してきておりますのは、やはり技術、それから技術に伴う資本と施設、それから今おっしゃった科学者とか先生とか、こういうものが強く要望されております。これは各地でございます。今、先生から御指摘になりましたように、アルゼンチンにおきましても、コロンビアにおきましても、数学の先生とかお医者さん、教授の招聘というようなものが行なわれております。  それから、これはちょっとそれとは直接関係ありますかどうか疑問に思うのですが、ブラジルにございます日本人の数は、ブラジラ六千万の人口のうち一割にならないのですが、教育――大学の教育を受けるという者の数の一三%は日本人なんです。こういう点では、日系人の素質が非常に優秀であり、高いということが言えると思います。  それから、最近におきましては、ブラジル連邦議会の代議士が三名と、それから州――サンパウロ州の代議士が五名。それからアメリカでも、ハワイの最高裁判所のチーフ・ジャスティスとか、相当優秀な者が出ております。こういう意味におきまして、特に南米では日本移住を、単なる労働力じゃなくて、そういうすぐれた移住者が、しかも、技術と資本を持って来る可能性が非常に多いということで、移住を歓迎するという気持が強くて、従来、戦前にはブラジルとの移住協定なんて夢にも考えなかったのですが、先方と話がついてこの協定ができて、これはもう最近上下両院の協賛を得まして近く発効します。  それから、それより一年おくれましたアルゼンチンとの移住協定は、むしろ先方から日本移住を求めたいということで言うてきましたようなわけで、先方の認識が非常に高まっている。それは今先生がおっしゃったようなラインの日本に対する希望が、一番大きな原因でございます。  さっき間違えました。ブラジルにおきます日系人口は一先で、大学における学生の一三%が日系人であります。
  104. 戸叶武

    戸叶武君 それはそのとおりと思います。とにかくもうブラジルの人に言わせると、もうアメリカの半分の人口を持っているのだ、やがて一九七〇年――八〇年にならないうちにとにかく日本の人口を凌駕するだろうと言っております。しかし、そのうちで、今あなたが述べましたように、ブラジルの人に言わせると、大学の二〇%までは日系だと言われているくらいですが、非常に成績もいいし、それから、やはり日本人の移民の特徴は、日本のお母さんというものはみんな私は偉いと思うのですが、やはり親たちは、どんな自分たちが貧乏しても、石にしがみついても子供たちは何とか幸福にしたい、幸福にするきっかけはやはり子供を教育することだという、明治の時代における悲劇的な生涯を送った人ほどそこに強い考え方を私は持っていると思うのです。やはり外国でも一番ほめられるのは、日本人が教育に熱心だというのは、自分と同じような不幸な目に次の世代の者はあわせたくないという形で、一切の犠牲を払って教育に力を注いでいる。そこに私は二世、三世、四世という者がすばらしい伸びを示しているのだと思いますが、現にこの問題は、ブラジルにおける産業構造ですが、一九三二年には白系人というのは第一次産業が九三・五%、ほとんど農業でした。第二次産業というのは二・二%、第三次産業というのは四・二%、それが、一九五八年には、第一次産業が五五%、第二次産業が九・三%、第三次産業は三五・七%、最近の一九六一年には、第一次産業が五〇・六%、第二次産業が一二・七%、第三次産業が三五・七%というふうに、農業を主としたコロニアルを基盤としたこの二世、三世、四世というものが、教育並びに自分たちの親たちの蓄積、そういうものを土台としてどんどん第二次産業、特に第三次産業に前進してきている。これは私はほかの国の移民に見られない一つの大きな特徴を形成していると思うのです。これの層をむだにしてはいけない。これを満たして、そしてそれと日本から行く人を結びつけるということを考えることが配慮されないと、せっかくここまで出てきた芽というものが私は伸び悩んでくるのじゃないかというふうに考えるので、そういう意味において、今のこの段階移住政策というものが、現在が大切だからこれを考えなければいけないと同時に、現在の問題を処理していくと同時に、現在の問題処理の中のみに埋没しないで、明日へのやはり前進の態勢というものをこの機会にやはり作り上げないと、私らの友人の石川君が昔文学青年時分、嘆きながら書いたような「蒼氓」のような、移民屋に食われちゃうような移民を送っているようじゃどうしようもない。そういう形で、私は実際は移住基本法というものを先に出してもらいたかったんだが、しかし、移住基本法の大体のあらましの構想というものは大平さんからも聞いたし、大平さんも少し遠慮している向きもあるが、やはり曾祢さんの言われたように、あの答申が全部じゃないと思うんです。やっぱり、もう少し一つの新機軸を出す。これから日本はこの道を探っていかなくちゃならない。おざなりのあれじゃなくて、やはりよその国にもいろいろろ長所があるんだが、日本人でなければやれないものが、ブラジルなりラテン・アメリカにおける役割があると思う。そういう点で、今度の事業団を作るということがきっかけとなり、そしてその試みと同時に、次の国会には移住基本法を出そうという気がまえを示しているんですが、どうぞ大臣は――このごろ役所の悪い弊風は、大体審議会というのを作って、審議会がやったんだから間違いない、これをどうだというようなことで、隠れみのにしちゃうような危険性があるのだが、そうじゃなくて、やはり大平外務大臣のときにこういう新機軸を作り上げたんだという、一つの蛮勇をふるってもらいたい。これは、転換期においては、やはり日本の今の政治において一番の貧困は、やはり夢がないことだ。構想がないこと、経論がないこと。今こそ私らは、後藤新平さん、大隈さんが持ったような、ああいう今の行き詰まり打開するためには、もっと一つの夢と構想を持った政治をしないと、やはりどうしても――吉田、岸、池田はみんな官僚のくそおもしろくない政治ばかりやっておる。(笑声)こういう空気が出ておると思いますから、池田内閣の中においても異色のある存在だったということを、大平死しても皮残すで、(笑声)ひとつ移住政策を打ち出してもらいたいと思うんです。そういう意味において、第一次産業として今まで農業移住者が中心になっていたのは事実だけれども、これだけに低迷しないで、農林省との調整のことを前に聞きました。調整も必要だが、しかし、それは現地の問題であるが、明日の問題に対して一つの構想を作ってもらいたいと思うんですが、こういうことを大平さんに期待するんですが、期待しなくちゃならないんですが、無理に押しつけなくちゃならないんですが、そういうことをやってもらいたいと思いますが、いかがなものでしょう。
  105. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういう明日の移住政策を作る上におきまして、あらまし御構想をお聞かせいただいたようなわけでございますが、感覚的には私も全然同感でございます。問題は、それをやり遂げる蛮勇があるかどうかの問題でございます。(笑声)もともと低姿勢の大平でございますから、(笑声)御鞭撻によりまして、精一ぱい努力してみたいと思います。
  106. 戸叶武

    戸叶武君 長くやっちゃいけませんから最後にしますが、私は昔は非常に窮屈な人間で、名所旧跡どこもあまり見ないことをもって得意としたんですが、去年世界を見て一番びっくりしたのは、やっぱりこれは大衆の時代だ。大正デモクラシーじゃなくて、大衆デモクラシーの時代だ。やはり生産に大衆を動員すると同時に、大衆の購売力なり、大衆の消費なり、大衆のレジャーというものを無視しては今後の経済は成り立たぬという、もう形式的なデモクラシーの時代より、実質的なデモクラシーの時代に入ってきたんだということを感じたんですが、移民の問題とも関連しますが、今のイタリアにおいて、移民という形よりも観光のほうの収入が多くなっちゃって、貿易のアンバランスをささえているものは観光収入であるが、われわれしろうととして、観光収入といっても、イタリアはアメリカのドルがおもに落ちているんではないかと思ったが、とんだ違いで、全くこれはヨーロッパ全体の経済が立ち直ってきて、そうして国境線をみんな越えて家族連れが自動車に乗って、北欧その他の人たちが夏だけでも太陽光線をもっと取って海岸で健康をよくしよう。チロルあたりなんか、あるいはウイーンのあたりでは夏中は休んでもとにかく行く。なだれを打って大衆があそこのイタリアの半島を利用する。この収入が莫大なものであります。来年は実際上ブラジルなんかでも、南米銀行を中心として数年前からオリンピックに来る金を銀行にためておるんです。ところが、日系だけを相手にしようと思ったら、ブラジル銀行の幹部に聞いてみたところが、いやブラジル人が非常に預金してくれる。この機会にオリンピックや日本の景色を見るだけでなく、日本はすばらしく発展したということだから、そこから何か学び取って来なければならない。こういう一つの関心を持って、来年は想像以上に大量のブラジル人たちがやってくる。イタリアがオリンピックを境にして、何と申しますか、観光政策というものの大きな転換を作ったように、日本においても、私は来年のオリンピックを契機として、やはり日本の観光の問題、それからまた移住者のもっと結びつきの問題、こういうことを十分考えられなくちゃならないと思うんです。で、この事業団ができるのを機会に、外務省でやることがふえたなんというけちな根性じゃなくて、やはり海外に活動しているところの移住者、それから移住者の中におけるコロニアルの世話役の人たち、あるいは新聞関係で活動している人たち、あるいは議員さんたち、そういうような人たちをやはり私は呼んで、そういう者が郷土に帰って宣伝をしたり、そうしてみんなと結びつくという形において、日本の硬直した、これでいくんだといけちな満足感、夢のない世界を、オリンピックのかけ橋だうけも問題じゃない、オリンピックというものを通じてゆさぶって、この島国根性のけちくささを脱皮させる作用というものは大きいんじゃないか。事業団の宣伝活動というものも今年で準備を――ほんとうに早く移住基本法なり何なりを作り上げて基本的なのろしをあげると同時に、ただ金があるなしじゃない。やはりアメリカと違って、アメリカは金があるが日本人には知恵があるぞという問題は知恵比べだから、そういう形ののろしをあげていくことが必要だと思うが、やはりあまり間口を広げ過ぎていくと、どこまで行くかわからないから、(笑声)やはり大平さんというものは大卒ムードの元祖ですから、そういう意味において、私は来年のオリンピックというものは、イタリアは実に巧みにつかまえて、あれを中心としてイタリアが――イタリアはそれまで外国人からずいぶんばかにされておって、ほんとうにそれはすばらしい飛躍を示してきたと思うんですが、実際アメリカの人でも五十五ですか六十五ですか、養老年金を受け取るようになった場合においても、半分は、アメリカにいるよりも日本に行ったほうが安上がりで景色はいいし、うまいものも食べられるからというのが多いくらいで、私は金持ちの観光客を呼ぶというよりも、むしろ大衆をやはり引き寄せるという形が一番大切なんじゃないか。そのためには労働組合の交流――ブラジルあたりの労働組合の幹部とか、アメリカでもけちくさく日本移住者を排斥するような労働組合のボス連中を呼んで、アメリカぐらい世界中でいい国はないんだという、そういう人たちは大体日本を見る機会がない。戦争のときに来たような、不健全な来方ですから、そうでなくしたらいいんです。これは移住と直接関係はないと思うんですが、移住の問題をバックするのは、移住というのはじみな問題ですから、じみな問題をバック・アップするんじゃなくて、少し派手な豆まきをしなければ、花火を上げるなりしなければ、とても宣伝にならないと思うのですが、大平さん、もっていかんとしますか。
  107. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私が内閣におりましたときに、レジャー・ブームの問題で一応調べたことがあったのですが、おととしの二月と去年の二月と比較いたしますと、国内における一泊旅行者のケースが一年間に倍になっております。それから、日帰りの旅行者は三倍近くになっていると思います。国内におきまして非常に人間の移動が激しくなっているということはうかがえると思うのでございます。国外からわが国に来ておる方の実数を、私今持っておりませんが、年々歳々ふえておりまして、今観光収入がたしか二億ドル内外になっておると思いますが、これはもう今御指摘のように、欧米各国に比べますと、まだ非常に微々たるものでございますが、オリンピックを契機として大いにワインド・アップしようということでございます。仰せのとおりだと思うのでございまして、一段とこれは活力を入れなければならぬと思います。と同時に、われわれの情報文化局で日本の紹介をやっておるのでございますが、これは外務委員会の先生方にはあるいは差し上げてないものがございますれば差し上げたいと思いますが、おそらくこの青い机の上全部一ぱいになるくらいの、乏しい予算でございますけれども日本紹介をやっておりまするし、それから映画も、この間私も五社の社長さんたちにお目にかかって、引き続き御協力をお願いしたのでございますが、たとえば「名もなく貧しく美しく」なんていうのは、あれを御推奨申し上げて、各所で好評でございます。したがって、移住政策を直接に云々するよりは、することも大事でございますけれども、今言ったような広報活動を通じて日本という国の紹介ということが大事でございます。年々歳々おかげざまで若干予算がふえて参っておりまして、だんだん広報活動も活発になってきておるわけでございまするし、それから、海外の新聞記者を招待すると、それで日本に興味を持っていただき、報道面につきましても努力していただくという、このやり方はだんだん成功しまして、たとえば御承知のワシントン・ポストなんというのは、ついこの間も日本特集号を出しておる。これは何回目かでございますけれども、そのように、今乏しいながら、そういう方面の施策の前進はいたしておるつもりでございます。今後も御鞭撻をいただきまして精力的に進めて参らなければならぬ課題だと考えております。
  108. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。ソビエトや中国の紹介のいろいろ写真なんかを入れたPRの文書というのは、たいへんなものが私に来ているのです。ただ、外務省関係はかつてもらったことがない。外務委員くらいはぜひ、どういうふうに海外に紹介されているのか、今後の参考のために、全部じゃなくてもいいから、代表的なものがあったら、送っていただきたい。それから、来年のオリンピックについてのいろいろな広報活動というようなことでは、予算的には準備されておるのですか。これは今の移住法案には関係ないのですが、ちょうどついでですから。
  109. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たとえばソビエトの問題でございますが、これはレシプロカルな原則で、日本で配布する部数と向こうで配布する部数を同じようにしようじゃないかということでございますけれども、組織が違っておりまして、向こうは政府が直接やる、こちらは民間がやるという、にない手が違っておりまして、なかなからまくバランスがとれないのでございます。しかし、日本は相当大っぴらに広報活動をやられておりますので、こっちも大いにやろうと思って責めておるのでございますけれども、バランスがとれたようになかなかやらしてもらえないという点がございます。しかし、今御指摘のように、今までやっておる広報活動のおもなものにつきましては、先生方にも見ていただくようにいたしたいと思います。  それから、オリンピックの広報でございますが、これはことしの予算にはまだ意識的には出してございませんで、三十九年度の予算編成のときにしようじゃないかと思っております。
  110. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今のに関連して。ちょっと議題からそれるのでございますけれども、今オリンピックを契機として日本の観光としての収入をふやすということについては、いろいろ外務省が中心になって考えていただかなければならないのでございますが、これはこの間ちょっと新聞を見て初めて私気がついたのですが、外国ではいいホテルで必ずダンスをやるわけでございますね。それでダンスをするところがあるわけでございます。宴会にダンスはつきもので、非常に堅実な娯楽としてのダンスというものがあるわけでございます。ところが、日本の風俗営業法か何かの関係で、日本のホテルでは夜おそくダンスができないのでございますか、何かそういうようなことがあって、それで特に何かあまり健康でないような雰囲気の中でダンスをするというような、そういうふうになって、日本というものが外国人に喜ばれる場合には、やはり堅実で、かついい文化であるというところで紹介されたいのでございますけれども、それがだんだんほかの国に、自分の国にいるときには行儀をよくしていなくちゃならないけれども日本に来たら羽目をはずして、特に婦人関係なんかは非常にサービスがよ過ぎるということで喜ばれるということで、私ども非常に迷惑しておるわけでございます。そういうような点で、堅実な面だったら、やはり外国人を相手にする場合だったら、外国の風習を日本に加味して、風俗営業法その他でもって取り締まられている場面をどんなふうにして緩和したらいいかということは、これはやはり外務当局のほうからそういうことを積極的に働きかけていただくべきことじゃないかと思いますけれども、いかがでございますか。
  111. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) かしこまりました。よく検討さしていただきます。
  112. 戸叶武

    戸叶武君 新聞のことですが、やはり大平さん、この前にメキシコの大統領を呼んだときに、日本で大量にメキシコの新聞記者を呼んだのか、あるいは大統領が連れてきたのか、いずれにしても、チャーターした飛行機一ぱいに主として新聞記者が乗ってきた。これでメキシコの一流新聞が日本特集号を積極的に出して、あの前後における日本の宣伝というものはたいへんで、メキシコはどっちかというと、アメリカと日本は結びつきがあるが、いろいろな点においてそれまでは日本を知らなかった層が非常に多かったのだが、あれ以来すばらしい日本ブームを作った。あれなんかはやはり最近の非常なヒットじゃなかったか。ラテン・アメリカ自体というものは、いろいろな長所も欠点もありますが、どっちかというと、派手好みで感情的でお祭り好みです。日本一つ事業団ができたら、思い切ってあの人たちなんかにもおみこしぐらい送ってやるくらいの気持で、そういうお祭り騒ぎというものは、ラテン・アメリカにはそういう特異の雰囲気があるので、日本の花火とか、何か日本人というものは戦争に強くて、とにかくえげつない国民じゃないかという、少し鼻つまみにされた形が過去にはあった。しっかり者だけれども、つき合って見るとおもしろくない。ただ働くだけで金残してがちがちやるのだという今まで先入観が強いものだから、もう少しやはり日本人の持っている明るい面、ユーモラスな面、そういう点をこれから広めていくということが、移民の問題に対しても、やはりスムーズにものを運ぶことになるのじゃないか。そういうようなことも配慮してもらいたい。  もう一つは、中南米諸国の元首なりあるいは元首に通ずる者なり、主要の人たちが来ると、われわれの感覚と違って、日本に行ってやはりプリンスに会うとか、あるいは妃殿下に会うとか、そういうようなものに非常な興味――興味と言っちゃあ悪いが、何といいますかな、私は言葉のつかい方がうまくないが、加藤さん何か……。
  113. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 あこがれ。
  114. 戸叶武

    戸叶武君 そうあこがれを持つ。(笑声)そういうときに、外務省か宮内庁かわからぬが、何だかあの程度の、これはたしかニカラグァの話もありましたが、なかなか会わしてくれない。これは私はイギリスの皇室なんかの外交のうまさというものは、そういうところに――非常に気取った面があるが、そういうところに非常に何とも言えない、向こうのあこがれを満たすような一つの風格が外交の中にあるんですな。日本人は何かこれ資格だとか、相手を見下したらとても日本人ほど始未に負えない国民はない。強そうなやつ、俸そうなやつにはぺこぺこするが、自分より下だと思うと相手にしない。これは今後のわれわれの海外協力において、一番悪い点ですから、そういう点をなるたけ清算してどんな小さな国の指導者といえども、国連じゃあ一票ですから、大小を問わず、やはり将来国連外交というものを展開するためにも、私たちは貧しい国、小さな国ほどいたわり、そして大切にするというような気を外務あたりから――宮内庁にはこの間も反省を求めたが、どうも外務省以上に古ぼけておりますから、そういう点を外務省あたりから新風をとにかく日本の宮内庁あたりにも吹き込んでもらいたい。それを外交上において、若干のやはり外交に使うというんじゃなくっても、そういうところは実際上どこの国においてもそういうふくらみを持った外交というものはあるんですけれども、そういう点もやはり私たちは配慮してもらいたいと思うんですね。
  115. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 招待外交につきましてのお示しでございまして、私どももそういう感覚で外国政府、新聞記者ばかりでなく、実業家も、これは政府で呼ぶのと民間で呼ぶのと――民間のほらも相当活発になっておりますけれども、これを進めてもらわなければいかぬと思っております。  それから、宮廷外交でございますが、実は私も外務大臣になりましてたびたびそういう機会に恵まれるわけでございますが、私たちは実は非常に感心いたしております。東京に五十八ございます実館の大公使の離着任の場合は、必ず皇室でお呼びいただく。まあそのときの御態度は、きわめて真撃な御態度で、皆さんほんとうに感激いたしておりますし、私ども海外へ参りましてお目にかかった方々で、まず最初に話すのが拝謁を仰せつかったときの感激でございます。そういう意味でもう非常に御多忙な日程が組まれておるわけでございまして、私はその点につきましては、案外世間が知らないんじゃないかというふうな感じがするわけで、こんな御無理をお願いしていいのかと思うくらいまで、実はお願いをいたしておるわけでございまして、宮内庁の皆さんたいへんつつましい方で、そういうことも言わないんじゃないかと思っておりますので、一応念のために御報告申し上げておきます。
  116. 戸叶武

    戸叶武君 私の言っているのは逆なんだ。大国にはサービスし過ぎる。私は、無視されているような、どっちかといえば、小さなような国に対して、後進国に対して、思いやりのある、差別感をつけない一つの態度が必要なんで、それが、現に具体的に例をあげると当たりさわりがあるから言えないけれども^そういうことが非常に多いのですよ。これはあなたが知らないのです。あまり例をあげると速記に残るから……。
  117. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いや、差別なくやっておるわけでございます。
  118. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私は法案内容について一つだけお尋ねしたいと思うのです。この法案はいろいろなことを規定してありますが、総合してみますと、要するに、これがほんとうに生きるかどらか、魂の入ったものになるかどうかというのは、私は率直に言って、これは人の問題だと思う。そこでそういう趣旨からひとつお尋ねするのですが、この法案の中に人事について、「理事長及び理事の任期は、四年」とするということがきめてある。これの理由をお尋ねしたい。
  119. 高木広一

    政府委員(高木広一君) これは、従来移住会社なんかは任期が二年でございましたが、二年では短い、理事長は少なくとも四年なければいけないということで四年になっております。ただ監事につきましては二年というふうに短くいたしたわけであります。
  120. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それからもう一つ、役員は再任を妨げずという趣旨規定がありますがね。そのいわゆる再任というのは、それはどういうのです。
  121. 高木広一

    政府委員(高木広一君) これは一期を終って続いて第二期――さらに四年やることも差しつかえないという意味でごございます。
  122. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そこで今の、従来二年だったのを四年にしたのは、倍になっておるけれども、実際四年というのは、私、これはほかのいろいろこの種の事業団などの場合と比べてみて、おそらくはかの場合もこういった規定が多いのじゃないかと思うが、しかし、この移住事業というものの特質から見まして、ことにまた、移住事業と人事との関係というものから見まして、この点は非常に大事な点だと思うのですよ。これは私があえて指摘するまでもない。移住事業というものは、ほかの面と違って非常に困難だ。それと、また長期にわたって苦心経営を積み重ねていかなければ、今までの過去の私の例からしましても、人事がしょっちゅう異動するというようなことは、反省していかなければならぬことだと思うのです。そこで、これは法律規定の仕方としては、ある任期というものはつけるのは、これはやむを得ぬでしょうが、その法律の面からしても、法制の面からしても、そこのところをにらんで規定をしていくべきものだと思う。私今この原案についてとやかく言いませんけれども、しかし、そういう点は、今の再任規定などは、実際の運用面においてよほど注意していかなければならぬことだと思うが、それでそれじゃ、この再任規定の生かし方ですが、これなどは特に外務省としては内面的には確固たる一つ方針を持っておられてしかるべきものだと思うのですよ。あるいはその法律なり政令というような、そういう法令で規定することはむずかしくても、内規的なもの、あまりそのときどきの――今の大平外相のときはこうだった、また次はどうなるということよりも、もう少し一貫性のある、継続性のある方針がほしいものだと私は思う。そこで外務大臣にお尋ねしますが、これの規定そのものでなくて、規定の運用の場合ですね、人事の場合、どういう方針のもとにやっていかれるつもりか、お尋ねしたい。
  123. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 事業団法も、実は政府機関の立法例などの制約を受けまして、一つのひな形的なワクの中でいろいろ工夫したと思うのでございますが、移住事業の特性に応じて、どこまで特性が生かされておるかという点につきましては、御指摘のような問題があると思います。そらして、お示しのように、しかしながら、問題は運営であり、その人を得なければならぬことでございますので、私どもといたしましては、まずこの人選は慎重にやらなければならぬということ、それから、第二点として過去のいきさつがございますので、公正な人を得なければならぬと考えておりまして、どこの省に片寄るというようなことであってはならないと考えております。  第三点として、あまり従来縁のない、今までこの現実移住行政に関係された方でなくて、清新な人材を得なければならぬのじゃないか。それから、今御指摘がありましたように、非常に情熱を傾けてやっていただける熱意があられる方でなければならぬと考えております。ただ問題は、現実にそれじゃあそういう人が得られるかどうかということでございますが、事実すぐれた方がたくさんおるわけでございますけれども、具体的に今日事業団の理事長として一生を捧げてやろうというお気持を現実に持たれた方というのは、そんなにないのでございまして、私ども今人選に苦悶いたしておりますゆえんのものは、そこにあるわけでございますが、したがって、現実に選ばれた方がそれでは百パーセント条件を満たし切ったという人を得られますというようなことを、私まだ申し上げる自信がないわけでございますが、先ほど申しましたような考え方で、慎重に人選を現に進めておるわけでございますが、まだ特定の人というところまで至っていないわけでございます。その特性をにらみまして、何とか今申し上げたような適材を得たいものと、せっかく苦心をいたしておるところでもございます。
  124. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今、外務大臣のおっしゃることは、それはそれとしてよくわかりますが、私が一番主眼点を置いて、外務大臣のお考えを聞きたいと思う点は、規定はこうなっておるけれども、相当つまりじっくり腰を据えて長期にわたってやっていくということの特質の必要性という角度から、そこにウエートを置いて人事の選考をやられるかどうか、別に私は具体的のことを聞いておるわけじゃない。その点だけです。
  125. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) さよう心得て参りたいと思います。
  126. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 本案の質疑は、次回に続行することとし、本日の質疑は、この程度にとどめます。  本日は、これをもって散会いたします。    午後四時三十四分散会    ――――・――――