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1963-06-13 第43回国会 参議院 外務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月十三日(木曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岡崎 真一君    理事            井上 清一君            草葉 隆圓君            長谷川 仁君            森 元治郎君    委員            青柳 秀夫君           大野木秀次郎君            木内 四郎君            杉原 荒太君            山本 利壽君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            石田 次男君            曾祢  益君            野坂 参三君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君   政府委員    外務大臣官房長 湯川 盛夫君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省条約局長 中川  融君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   —————————————   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○千九百六十二年の国際小麦協定の締  結について承認を求めるの件(内閣  提出) ○日本国アメリカ合衆国との間の領  事条約締結について承認を求める  の件(内閣提出) ○千九百六十二年の国際コーヒー協定  の締結について承認を求めるの件  (内閣提出)   —————————————
  2. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) ただいまから外務委員会開会いたします。  この際、参考人出席要求がございますので、お諮りいたします。国際情勢等に関する調査のため、原子力潜水艦寄港問題等に関する件について参考人から意見を聴取してはいかがかと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 御異議ないと認めます。では、さよう決定いたしました。なお、参考人の人選、時期、手続等に関しましては、委員長及び理事に御一任を願いたいと存じます。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 御異議ないと認めます。では、さよう決定いたしました。   —————————————
  5. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 次に、千九百六十二年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の領事条約締結について承認を求めるの件、千九百六十二年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件、以上三件を一括して議題に供します。  質疑のある方は順次御質問を願います。
  6. 森元治郎

    森元治郎君 大臣に今三つ条約協定に関連する御質問をしようと思うのですが、その前に、エキストラとしてひとつ伺いたいと思います。  韓国漁船拿捕事件、黙って見ていると、あなたが幾らにやにや笑っても、向こうのほうじゃしっぺい返ししてひどい。最近は李ラインの外でも捕獲されているが、どういう強硬な態度で交渉されているのか、その見通しをちょっとおっしゃって下さい。
  7. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 最近、静かでありました朝鮮海峡に不幸な事件が二つ起こりまして、私どもとしては、日韓の間の現に事実上のいろいろの関係がございますが、そういうことの根底に、やはり日本人と韓国人との間の理解といいますか、信頼というものがだんだん固まって参っていくことによりまして、今まで頻発しておりました事件が終息し、平穏な事態に返るということを期待しておりましたし、また、事態の推移がそのような方向に行きつつありましたので、希望をつないでおったわけでございますが、最近、御指摘のように二つの事件が起こりました。起こりました報道を受けましてから、すぐ先方にも厳重に抗議をいたしておるわけでございまして、これはまだ日韓の間の信頼理解というものが十分でないことを示す証左でございまして、私どもといたしましても、一そう心を戒めて、こういうことが再発することのないように最善を尽くさにゃいかぬと思っておりますし、今御指摘の問題につきましては、早速厳重に抗議をいたして、先方の善処を待っておるという状況です。
  8. 森元治郎

    森元治郎君 われわれが、この国会でもさんざん日韓との話し合いはすべきでないし、やったって、とても距離が遠くて話にならないのだ、日本のためにならないのだというような質問をしばしばしたわけですが、私はこの一つのことを見ても、向こうには本気で、大臣がおっしゃるような信頼感を深めていこうというような気は毛頭ないのだというふうに判断するが、その辺の判断は甘くないのですか。
  9. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私といたしましては、最近韓国人日本に対する考え方、評価というものを私どもが感じますのは、だいぶ変わりつつあるというように、いろいろな事例から考えられるわけでございまして、たまたまこういう不幸な事件が起こったからといって、森先生が御指摘のように、向こうは本気でないのだというふうに私は毛頭とっていないのでございます。先方理解信頼国民の間に浸透して参りますには、むずかしい問題でございますから今後相当時間もかかるし、いろいろな経緯もあることと拝察するのでございまして、こういうことがあったから直ちに本気でないのだというようなことは、私は毛頭考えておりません。いよいよ理解の増進に努めるのが私の勤めだと思いますし、また、そういうことによって理解は深まりつつあると私は判断いたしております。
  10. 森元治郎

    森元治郎君 向こうが本気でないという判断ならば、とにかく拿捕したものはすみやかに返す。そして証拠を見せるということが必要だと思うので、これは厳重に政府としてはやってもらいたいことと、向こうの誠意の判断するものさしとしてぜひこれはやるべきだと思う。ちょうど今度の交渉があんなふうにうまくまとまったが、やればそのぐらいのまじめな気持だったと思うんで、気持だけではだめで、具体的にやるなら、今度の場合はだれが見ても不当拿捕であることは当然でありますから、厳重に要求することと、向こうは本気でないという大臣判断ならば、釈放すべきであるし、陳謝すべきであるし、実を示すべきだと思うのです。そういうふうにひとつやってもらいたいと思う。
  11. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わかりました。
  12. 森元治郎

    森元治郎君 そこで、アジア公館長会議に関連して二、三お伺いしたいのですが、この十一日から開かれていますが、大臣のごあいさつ新聞で読んだところを見ると、外務大臣が自分の部下の大使あるいは総領事に対する訓辞みたいなものであるのかと思ったところが、公館長会議に御出席になった他省大臣通産大臣が御祝辞を述べているみたいな感じを受けるのです。私は昔から外務省関係——内田外交時代から外務省のことを知っておる  のですが、こういう大臣の朝日新聞の切り抜きを読んで、夕方一ぱい飲みな  がらも驚いたのですが、「このような観点から最も必要なことは本省と在外公館連絡をいっそう緊密に保ち、相互の理解を深めることにより、確固たる方針をもって外交を推進してゆくことである。」、外交をやっているのは大卒外務大臣なんです。外務大臣方針に従って出先が動くんで、緊密な連絡——平等で連絡をとったりそれから理解を深めると、理解なんか、あなたが命令すればいいんですよ、大臣の訓令で、たるんでおると。そうすれば、向うがたるんでおりませんということを言ってくるでしょう。そこで話し合って次の段階になってくる。私はこれは心がまえがなってないというのです。それは何かというと、これは池田内閣全体の問題だが、自由化問題に頭を突っ込んでいて、ベネルックス、EEC、OECD、IMFとか、高い自由化問題に対する話や、これについての国内的に言えば国際競争力の強化とか、そういうことに頭が行ってて、東南アジアなんかの場合には手が及んでないという証拠だと思うのです。しかも、今OECDが問題になっていますが、OECDの目標は経済成長、貿易の拡張と低開発国援助をやっていくのだという三つの柱を打ち出している。その柱の一つになっている低開発国、その地域であるアジア、こういう問題に目が行き届いていないというのでは、単なるOECDというワクに入ることばかりで、いなかの人は近ごろはゴルフ・クラブのほかに、どんないなかに行ってもロータリー・クラブというバッジをつけている。横文字の会合が好きなんです。そこに入ることばかりやっている。だから、私は行き届かないのじゃないか。池田内閣の次の内閣をしょった人はひどいです。勝手なこと、うまいことばかり言っちゃって、あとはどうするのですか。容易じゃないと思う、国際的に。  私が伺いたいのは、大臣東南アジアに対してさっぱり外交担当者として十分な指示が行っていないということ。それが証拠に、新聞座談会やあるいは総領事大使なんかの新聞社座談会を見ると、勝手な気炎を上げている。第三者に言っているのじゃなくて、大臣に言っていると私は思うので、大臣東南アジアにさっぱりやるべきことをやっていないということを感ずるのですが、原則論からひとつ。
  13. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私の新聞に報道されました訓示に言及をされましたが、式次第というものがございまして、一応開会あいさつがあるわけでございまして、こういうあいさつをどうだと持ってきたから、それで読んでおいたわけでございます。そのあと、最初開会の日一日懇談に充てまして、隔意なく話し合ったわけでございまして、私の外交に対する考え方東南アジア外交に対する考え方というようなものを、ざっくばらんに、しろうとながらお話しをし、御批判もしてもらわなければいかんし、注文もつけなければいかんし、現地の公館長諸君にも考えてもらわなければいかんというような点につきまして、一日かけてやりましたわけでございまして、したがって、あの冒頭に行なわれた訓示の調子で一貫して祝辞的な会議であると評価されないようにひとつお願いしたいと思います。  それから、東南アジアに対する考え方でございますが、原則論というお話でございまして、森さんも御承知のように、たびたび本委員会でも御論議になり、私も申し上げておりますように、日本外交というのは、軍事外交というようなものは過去になりまして、平和愛好国民として世界に責任を持って協力する道は、経済協力を一段と格調の高いものにし、実効性の上るものにしていくということにあるわけでございまして、東南アジアは私どもの永遠の隣邦でございまして、お互いにいやだから別れようというわけに参らない宿命を持っておるわけでございますので、したがって、この経済協力東南アジアが重点でなければならんということはよく心得ております。現に、今までの経済協力の実績を見ましても、約六割強は東南アジアに注がれておるわけでございます。今御案内のように、しかし経済協力という広い計画を持つ以前に、わが国は敗戦処理といたしまして賠償——十億ドルあまりの賠償実行に移されておるわけでございます。幸いにこの賠償もビルマの再検討を契機としまして一応懸案が片づいたわけでございます。したがって、この賠償の忠実な実行ということのほうに、ただいままでは力点が置かれておったのでございますが、一九六九年にインドネシアの賠償が終了するということを起点としまして、それから先、賠償を交換としてやっておりました経済協力的な施策というものは、本来の経済協力プロパーの仕事に置きかえて参らなければならないわけでございまして、これをどのように国策として推進して参るか、その規模はどういうものでなければならぬか、そうして、それは日本経済計画の中でどういう市民権を与えられるべきものであるか、そうしてそれを実行する方法はどのようにしてやるかということにつきまして、今私も部内におきまして鋭意検討を進めておるわけでございまして、今あるがままの経済協力という、賠償のわき役の座を占めております経済協力というものが、直ちに今日本東南アジアに対する経済協力であるというようにおとりいただかないで、これは本格的の経済協力もいよいよ今鋭意やっておるという段階でございます。したがいまして、東南アジア方面にありまする公館長諸君からは種々不満が出ております。これは当然のことであると思うのでありまして、公館長諸君要望不満、そういうものは私どもも予想していることでございまするし、これをどう打解するかということが私どもの今日の課題であるということに間違いはないわけでございますが、本格的な作業に入っておるということでございまして、この展開というものに御期待いただくとともに、いろいろ貴重な示唆もお願いしたいし、御協力をお願いしたいと思っております。
  14. 森元治郎

    森元治郎君 大臣は、在外公館の連中の要求不満という言葉を使われましたが、これは、ある大使は、本国政府のほうが有言不実行だという。これは政府に対する不信任ですね。お話を聞くと、目下鋭意本格的検討中で、東南アジア経済協力について——こんなことはこの国会の初っぱなに、総理大臣演説にも、記者会見のときにもお触れになっているので、これは当然大きな筋が根本にできなければならぬ。それが経済協力の点もケース・バイ・ケースで、出たところ勝負でやっていく、苦しくなってくれば金がないということで逃げ切っておるので、これは私は在外公館長内閣に対する不信任だと思うのです。そうして大いにやらなければならんと言いながら、公館長会議大臣は、予算の、国の能力に応じた援助、あるいは財政規模範囲内でというような抽象的なことを話しておるようです。そとでもそういうような話ですが、伺いたいのは、東南アジアの場合に能力に応じた経済協力財政規模範囲内ということはどういうことかというのが一点。  それから昭和三十五年でしたが、海外経済協力基金というものができて、たぶん今まで百六十五区くらいの出資がなされていると思うのです。三十八年度はなかったから、やはり百六十五億くらいだったと思うが、しかも実行額というのはごく少ないんです。十八億くらいでしょう。そんなような少ない状態である。こんなことで、一体協力基金を作って三年もたっていて、一体何しているのかということ。  第三点は、こういう問題は時間がかかりますから縮めて御質問いたしますが、第三点は、外債発行ということを大臣は言っておられるのですね。これは開発銀行ですかの、外債発行した金を調達するその構想ですが、経済協力基金を一体どうするのか、なぜ外債発行するか、これは政府方針なのか、大臣個人のお考えなのかという原則だけを伺っておきたい。
  15. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 経済協力規模という問題でございますが、御承知のように、現在は輸銀経済協力基金等政府資金を出しまして、それに市中銀行のタイ・アップを部分的にもらってやっておるわけでございますが、御案内のように、日本高金利国でございまして、しかも、市中金融の助力を得るということになりますと、なお高金利になることは御承知のとおりでございます。いわゆるコマーシャル・ベースの輸出金融等につきましては、どうにかまかないがつくのでございますけれども経済協力という名においてやる場合には相当弾力的な措置を講じなければならん。そうなれば、資金コストの安い円資金というものを相当豊かに政府が確保しなければならんわけでございます。遠い将来はいざ知らず、現在の状態におきましてはそうでございます。八年たち、十年たち、二十年たった暁を見ますと、民間のほうに力がつきまして、民間自身企業自体能力に応じて経済協力をするという場面が考えられるわけでございますが、今、日本のどの企業をとってみましても、経済協力に割愛する自己資金力というものはきわめて乏しいものだと思います。したがって、全部政府にかかっておるというのが現状でございます。したがって、現状判断いたしますと、どうしても政府財政計画の中で経済協力用円資金というものを、しかも、それは財政で調達しないと、先ほど申しましたような資金コストが高いわけでございますから、どうしても財政計画の問題に問題が還元されるわけでございます。したがって、私の言うのは、今日のような状況のもとにおきましては、財政というものを最大の給源としなければならんということなんだから、あまり景気のいい議論はできないので、財政の中でどれだけの経済協力資金を確保するか、言いかえれば、日本財政計画の中で経済協力というのはどれだけの市民権を与えられるかということが第一の問題でございますということを申し上げたわけでございます。  それから第二点として、経済協力基金がせっかく設けられまして、一向に動きが鈍いということも森さんの御指摘のとおりでございまして、百六十九億の政府資金がありますにかかわらず、今日まで二十二億しか出ていないということも御指摘のとおりでございます。これにつきましては、一体どこに原因があるのかというところを究明しておりまして、要するに、輸銀経済協力基金業務分野といいますか、これがどうも判然といたしていない。したがって、一つ案件で、たとえば輸銀融資申請を出す、そうすると何カ月もかかって審査をして、これはやっぱり輸銀じゃない、協力基金じゃないでしょうかということになる。これは非常なエネルギーのロスなんで、こういうことは困るというので、四月の下旬に輸銀協力基金が話し合いまして一応の取りきめをいたしたのでございます。その取りきめの一つは、理事連絡会というものを設けること、そうして、申請がある案件連絡会にかけまして、そうしてこれは輸銀、これは経済協力基金というようにきめよう、しからば、きめる基準は何かというと、十年以上の長期の協力というようなものは、経済協力のほうにやってもらう、それから延べ払い案件などにつきまして、外資所要分三〇%をこえるようなものは経済協力基金のほうに回そう、こういう一応の基準を作りまして過去四回連絡会が開かれております。これによって相当私は打開ができるのではないかと思っておりますが、ただ、直接借款——政府が直接責任をもってやって、政府輸銀を通じてやっている対印借款、パキスタンの借款などというような性質のものは、これは連絡会議業務調整の対象にしないということになっております。一応そういうことでやらしてみまして、なお御指摘のように事態が改善されないということになれば、もっと進んだ措置を考えなければならぬと思っております。  それから、第三点の外債の問題でございますが、多少誤まって報道されておるのを遺憾とするわけでございますが、冒頭に申しましたように、円資金を調達する、しかも、それはもう財政資金でなければ今の段階ではいけないのだという状況のもとにおいて考えられることは、第一に申しましたように、財政計画の中で経済協力用円資金というものを最大限確保する道を考えなければいかぬということでございます。一方私がサゼストしましたのは、今ニューヨーク、ロンドン、西独等市場相当日本外債が応募されております。対日信用というのは私どもの想像以上に強いように思うわけでございまして、御承知のように、電力借款鉄鋼借款、あるいは開銀自体借款、こういったものが成約されて実行に移されておりますことは御案内のとおりでございます。したがって、今まで財政投融資計画におきまして、電力であるとか、鉄鋼であるとかいう基幹産業に割愛いたしておりました財政資金というようなものは、可能な限り外債によって御調達いただいてちっとも差しつかえないのではないか。そういたしますと、今一兆円をこえておる財政投融資計画というものの中であぐらをかいておる基幹産業に対する所要投資額は、そこでおなかが一部すいてきますから、そういった金は、中小企業なり農村なりあるいは経済協力なりに回す弾力がそこで生まれてくるのではないか、こういうことが一つ考えるべき方法じゃないかということを申し上げたわけでございます。しかし、森さんが御指摘のように、これは私個人意見でございまして、政府でそのようにすることにきまったわけではございません。今からそういう方向財務当局にも十分折衝いたしまして、私の念願とするところは、財政による経済協力用円資金というものを最大限取るべく努力をしていくということでございます。その一つ方法としてそういうことも考えられるじゃないかということを申し上げた次第でございます。
  16. 森元治郎

    森元治郎君 この海外経済協力に対する腹づもりがあっても、非常に行動がおそいのです。今ここで外債発行について大臣アイデアとして公にされたので、政府アイデアではない、しかし外債ということを言い出した以上、これは開発銀行外債ということになるのですか。それから、どのくらいの金を、金の話だから額が問題になりますね、どれだけで何千万ドルとか、あるいは西ドイツとか、市場は一体どの辺を頭に、これもアイデアとして動いておるのか、大平外債構想をひとつ。
  17. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私は外債専門家ではございませんが、今森さんいみじくも言われるように、私アイデアとして言ったのです。現在電力とか、鉄鋼とか、開銀とか、輸銀とか、海外経済協力基金は、まだ輸銀債債券発行の道を与えてませんが、開銀にはあります。電力等は現にやっておりますし、それから大阪等の公共的な事業に対してマルク債を出しているとかいうことが行なわれているわけでございまして、そして私が冒頭に申しましたように、金融市場における対日信用というものは相当高い。発行価額を現に相当上回っておりますし、したがいまして、外債発行ということには相当期待が持てるのではないか。そして基幹産業にできるだけそういうような道をひとつ考えてくれぬか、取っておきのトラの子の財政資金は、そういう能力のない方面経済協力も加えてそういう方面に流すようなアイデアでいくべきじゃないか。アイデアを私は申し上げたので、どこで幾ら何千万ドルというようなところまで私は的確に考えておるのではございません。そのように政府心がまえがきまりますと、それぞれ各機関が動きましてやってくれるでございましょう、それには相当期待が持てるのではないかと思っております。
  18. 森元治郎

    森元治郎君 それは国会中にでも、閣議でひとつ、これだけ公になった以上持ち出せますか。
  19. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この八月末が例によって概算要求のタイミングになるわけです。そこで来年度の財政計画と関連して、経済協力にどのようにひとつ私どもがこれからやって参るかということをきめなければいけませんから、概算要求に関連いたしまして、経済協力基金というものの確保の道につきましては、今御指摘のように、政府として何らかの決定をしてかからなければならぬという心組みでおるわけでございまして、当然そういう手順を踏んで、大きな問題、基本的な問題でございますから、単なる事務的な、はさみとのり式でやるべき性質のものではないので、政府としてちゃんときめて予算編成に臨むという態勢に持っていきたいと私は考えております。
  20. 森元治郎

    森元治郎君 ちょっと参考のために外債のことを承りたいのだが、戦後は三回くらいやったと思うのです。電電公社とか、開銀あるいは大阪関係マルク御母衣ダムですか、そんなものがどのくらいの額になって——項目ですね。それから、今までの未返済の外債があると思うのです。それの一々銘柄を聞いていたんでは時間がないから、その銘柄の数というものがわかったら、だれかそういうものちょっと——それでは資料でけっこうです。
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 資料で出します。
  22. 森元治郎

    森元治郎君 それから、今大卒さんの話を聞くと、やはり在外公館大平大臣に対する不信任的要望不満が高まったというのは、海外経済協力基金一つとっても、運用で輸銀との連絡をじかにやるとか、円資金の獲得に努力するという今の段階では、出先が、政府は何をしておるかと言うところに、出先のほうに軍配が上がると思う。そこで出先の心配の一つは、賠償も終わったし、どうなんだ、今のところ賠償——戦争で人の国の頭をひっぱたいておいて金を払って、それで経済協力ということで過ごしている。そして、だんだんそこでどうするかという気持が強くなってきている。そこで出先のほうとしては、いわゆるアメリカやソ連並みに無償とか贈与とかという経済協力も必要なんではなかろうか、ここまで思い詰めた一つの希望だと思うのです。これに対するお考えと、それから、日本幾らやったって、経済成長がありますからとほら吹くから、東南アジアいなかのほうの人は、そんなに金があるなら少し回してくれと言うのですね。回してくれと言われれば、財政規模で出せないと、こういうことだから不信任を受ける。そこで援助について二国間方式とかあるいはみんなでやろうじゃないか、あるいは地域別でいこうじゃないかというようなものによっても分け方があるだろうと思う。大平さんは、何かの新聞でちょっと見たのだが、アメリカさんの評判の悪いところは日本のほうでちょうだいして、そこにはおれのほうの経済協力でやるとうまいことを言ったって、アメリカさんの評判は全部悪いのですね。全部ちょうだいするということになるのだが、その返のところをひとつ、重大問題だから、具体的に。
  23. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 在外公館長の皆さんからは不信任は受けておりません。衆議院でかつて受けましたけれども在外公館、わが光栄ある外務省には下剋上はございません。むしろ非常にベターと見ていると承知いたしております。  それから、現地の不満というのは、私無理からぬことだと思うのでございます。御承知のように、今の政府、与党をとってみましても、非常に経済協力には熱心なんです。関係各省みんな——大蔵省を含めまして経済協力については前向きに考えてくれておるので、私は非常にしあわせだと思っております。それからいつも御反対される野党の方も、経済協力については私はオブジェクションをお持ちでないというように判断しております。これはひが目ではないかと思います。それから、民間のほうをとってみますと、民間のほうは、これは日本の生産力が非常に伸びて参りまして、過剰生産ぎみになるものも部分的には出ておるという状況にあるばかりでなく、日本の経済人というのは、非常にその点私どもよりずっとアクチブなんでございます。したがって、政治の領域におきましても、経済の領域におきましても、この問題につきましては、非常にみんな前向きの積極的な姿勢をおとりいただいておるわけでございます。これは、私として非常にしあわせなことと思っております。たとえば、そういう空気があるものでございますから、総理大臣がテレビで対談をした場合も、不可能を可能にしてまでやるのだというようなことを言われますが、やはり現地のほうでは、総理大臣がそう言っておるのだから、もうすぐ円資金調達のメカニズムなんというものを一応踏まえての判断よりも、素朴な感じとして、日本はもっとやってしかるべきじゃないかという空気が起こるのは私当然だと思うのでございます。しかし、これを実際、現実に賠償と並行し、あるいは賠償と置きかえて本格的にやって参る上におきましては、先ほど申しましたように、いろいろな手順が要るわけでございます。それを非常な寛容と理解を持ってやっていただくほど、それほど東南アジアの皆さんが日本理解があるかというと、そうじゃございません。したがって、今公館長諸君から言われておるような不満というふうなものは、私はよく理解できると申し上げたのは、そういう認識からでございます。しかし、だからそれで公館長諸君自身にも今言った経済協力の手順というものについては理解をしていただかなければいかぬわけでございますから、そういう過程におきまして不当な期待を起こすということは、これまた東南アジア経済外交一つの盲点だと思うわけでございますから、関係国と十分理解し合って、対政府間の間には、間然するところのない理解を持って進めていくように配慮して参る、そのように各国政府にも私から申し上げているわけでございます。  それから、その方式について、バイラテラルなものがいいか、マルティラテラルなものがいいか、あるいは別にどのような接近の仕方があるかというお尋ねでございますが、これは各国事情が違いまして、インドやパキスタンのように確立したコンソーシャムな方式によっていく、そうして、政府側の仕事もそういう方式に即応してもうだんだん完熟してきているというところもございまするし、インドネシアのように、どんなことがあってもコンソーシャムはいやだ、バイラテラルであくまでもいくんだという国もありまするし、ジョイント・ベンチャーは賛成だという国もあるし、反対だという国もありますから、これは一がいにこの場合は日本としてこういう方式でやるんだというようにきめてかかることはできないと思うのでございまして、これは双方の事情を究明した上で、ワーカブルな仕組みを考えていくべきだと思います。
  24. 森元治郎

    森元治郎君 有償、無償は……。
  25. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それから無償援助というものを、一定のワクを考えて機動的にやるべきじゃないかという意見は、自民党のほうからも要請がございますし、きのうの公館長会議でもそういう要望があったわけでございまして、たとえばオーストラリアは百億円程度のものは出るんだ、日本にもそういう必要があるのじゃなかろうか、そういう規模のものでなくて、もっと大きなものを考えるべきじゃないかというサゼスチョンはちょうだいいたしているわけでございます。そうして世界全体の経済協力方向としては、森さん御案内のように、だんだんと長期になり、低利になり、しかも無利子というようなところまで来ている面もありまして、全体の傾向といたしまして、そういう方向日本だけ遂行していくというわけのものでもございません。したがって、財政資金の重要性というものは、ますますこういう角度から大事になっていくと思うのでございます。したがって、日本が無償援助に一定の金額を確保するかどうかという問題は、これはまた予算編成の問題になりますので、今後十分検討してみたいと思います。  それからアメリカとの分野でございまして、アメリカが不評な部分は日本でやらしてくれなんて言うた覚えは全然私はございません。私がアメリカに申し上げたのは、アメリカのように低金利の国、それからお金持ちの国に右へならえで、日本のような高金利の貧乏な国が、一から十まで一緒にやって参るということは、なかなか困難だと、したがって、一つ考え方として、あまり利益を生まない、そうして長期にわたって返済が期待できないパブリック・ワークスというような系統のものはアメリカが大量の資金で考えられ、われわれのほうは、もっとミドル・サイズ、スモール・サイズの企業で、しかもそれをやることによって非常に資本が欠乏している低開発国としては早天の慈雨のように喜ばれるプロジェクト、それで、それは資本が欠乏している国は資本効率が高いのだから、そんなに長くなければならぬという性質のものでもなかろう、プロジェクト・バイ・プロジェクトで考えてやれるものもまたずいぶんあるのじゃないか。したがってそういう分野調整というものが大まかにできないものでしょうかという相談は持ちかけたことがあります、一つのアイディアとして。先方検討してみるとは言っておりまするけれども、あなたのほうが不要なところは日本がやるからというふうなことは、私は申し上げたことはありません。
  26. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 海外援助のかけ声はえらい大きいのですけれども、どうも先ほどから御議論になっておるところを聞いてもそうですけれども、まだなかなか実効が上がってないというか、援助を受ける立場にある国々の期待にこたえられないような状況にあるわけであります。私どもも非常に重要な問題と思いますので、この問題について的確に知りたいと思うのですけれども日本は一体どのくらい対外援助をしておるか。どういう機関を通じて、どういう方法でやっておるのかということを、どうも私ども十分つかめておらぬわけです。それで、これは一体どのくらいやっておるのか、どうかという形でやっておるのか。それから日本ではどういう機関でやっておるのか。そういうことについて、これも今すぐここで御答弁ということもなにでしょうから、資料がございましたら、まとめて提出していただきたいと思います。
  27. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 承知しました。
  28. 曾禰益

    ○曾祢益君 関連して質問さしていただきたいのですが、ちょっと今の外務大臣外債構想ですね、アイデア。非常に僕はおもしろいと思うのです。ぜひひとつ政府の中で研究していただきたい。それに関連して伺いたいのですけれども、今おっしゃった電力債とか、大きな基幹産業なり、大きなパブリック・ユーティリティの債券発行ですね。外債発行を主として考えて、そのほかにやはり借款もあると思うのですが、こういうものを考えておられるのかどうか。  それからもう一つは、一方においてはそういうところでは現にやっておることでもあるし、ある意味では外国のそういう証券市場に、いわば日本相当大きな重要な産業の少なくとも間接投資の一種になる債券なり、借款はむしろ開放していい、こういうことも一面においてお考えになっておると思います。そうなってくると、今度は今のIMFの八条国移行の問題からは、投資の問題は直接にはそこまで来ませんけれども、特にOECDの問題に関連してこの委員会でもさらに論議されることとは思いますけれども、むしろそっちの方面からかなり投資の自由化ということがある程度相当要求されておると思うのです。また、これに関しては、やはり対外経済をつかさどる外務大臣としては、そっちの面も考えなければいけない。そういう場合に、従来どうも日本考え方が、直接投資のほうは非常にこわがるというところがありまして、それは少し考え方がけちくさいような気もする。同時に、基幹産業に対してまで直接投資を開放していいのかどうか。本質的の基幹産業ではないけれども、そういう一種のクリティカルな、センシティヴな産業としてのたとえば自動車、あるいは石油化学、そういうものについては、少なくとも今成長の過程にあるのだから、そういうものについては、少なくとも一時的にせよ、外国の直接投資はある程度シャット・アウトする必要がある。そういうような全体の資本なり、自由化という線に沿いながら、今の構想をどういうふうにして位置づけていかれるのか。日本財政資金方面からいうと、外務大臣の考えのように今までの既成観念だけでは、なかなか東南アジア、その他の外国のほうに援助資金を取れないのですね。だから、一つのいいアイデアとして、むしろ日本の自力がついている、自分が外に出て行って外国市場から金を借りられるやつはむしろ奨励して、そして浮いたやつを政府の息のかかったと言うか、国際的に息の強い対外援助に回す。これは非常におもしろいと思うのです。それとうらはらとしての日本の資本取引に対するリベラリゼーション資本の自由化の限界、それとの関連をどう考えられるか。アイディアの段階でけっこうですが、この際ひとつ伺いたいと思います。
  29. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 曾祢さんも御指摘のように、OECDとの話し合いでは、OECD自体が直接投資に対する自由化の構想をまだ持っていない。したがって、今すでに加盟しておる国におきましても、二、三の国では相当制約をしている国もありますが、それは見のがされておるわけでございます。したがって、今度のOECD加盟につきまして、日本に対して特に注文をつけるという立場にOECDはないという意味において、日本は留保の必要はないということを申し上げておるわけでございます。しかし、だからといって、このままの状態でいいかというと、これはあなたが御指摘のように、戦時中の統制的な法規がだいぶまだその残渣が残っておりますし、また、その法規ばかりでなく、国民も官吏もわれわれも含めて、われわれの観念自体がまだ十分エンライトンされていないと思う。したがいまして、直接投資に対する規制をどうするかという問題、自由化をどうするかという問題は、御指摘のように、これから新しい感覚で世界の潮流を見ながら、日本として考えるべき問題だと思います。ただ、今御指摘の難点になるのは、いわゆる株式の取得ということでございまして、今私が申し上げておる外債というのは、これは社会債の発行でございまして、それで日本の今の感覚をもってしても、社債は条件が有利でございますれば、そして外国の金融市場がそれに応募していただければ、これはどんどん出すという気持は十分あるわけでございます。ただ、事株式の取得ということになると、今基幹産業の体制との関連におきましてどう考えるかということは、十分検討せなければいかぬが、しかし、これとても、今までの感覚でいいとは私は考えておりません。
  30. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 関連。今の株式の取得の問題ですけれども、これは新しい感覚で考えると言われるのは、私はいいことと思います。ただEEC、につきましても、この問題で新しい事態が起こっておるわけです。たとえば、アメリカの資本がどんどんとEECの諸国の中に入っていく。フランスなどでは、そのためにかなり摩擦が起こっておるし、たとえばアメリカ資本によって支配される経営が、だいぶ出てきておる。自動車産業なんかも、そういうことがでてきておるということで問題が起ってきます。日本が直接投資、特に株式取得、それと経営権との関係について新しい考え方をするのはいいけれども、その上にもう一つ、今EECに見られるような新しい問題が起こってきておるということも含めて十分に検討していただかないと、とにかく強大なアメリカの資本が入ってきます。そして傍若無人にやりますというと、協力しようとしていても協力できなくなるという事態も起こってきます。国民のいろいろ感情とかなんとかいうものも、そこにまた別のものが生まれてくることにもなろうと思うので、十分に慎重に検討していただかなければならぬと思います。これで終わります。
  31. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 当然だと思います。
  32. 森元治郎

    森元治郎君 そこで、経済協力に関連して原則の問題ですが、一口に言うと、すぐ西側陣営強化のためといううたい文句がつくのですね、この経済協力の場合に。ところが西ドイツが中共にまでも入ってくる、東南アジア地域にもどんどん経済協力では入ってきますが、西ドイツの場合には、政治的な理念に関連して経済援助を云々するということには力点を置かない、こいう原則が立ってるようなんですね。私はやはり経済協力の場合には、あまりに極端な今のような、西側陣営に協力することが陣営を強化し共産主義の進出を防ぐのだというようなことでは、ほんとうの経済協力、世界平和にならんと思うのですが、この点大臣はどういうふうに考えておりますか。
  33. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政府として、今まで経済協力については、低開発国に対して、先進国の責任として、応分の御協力は申し上げるというような心組みで来ておるわけでございまして、それにどのような政治的な解釈を加え、また力点の置きどころをどうするかまで、まだ経済協力自体が賠償の陰に隠れて始まったばかりでございまして、確たる原則を打ち立てておるという段階ではないのでございます。ただ、現地の公館長会議なんかの諸君は、軍事的援助はできない、また軍事援助はすべきでない、そういう国是に立脚いたしますと、経済援助日本の対外外交の柱になり、軸になるのだ、そして日本外交自体が自由陣営との結束という点にいかりをおろしてやっている以上、経済協力もそうあるべきじゃないか、もっと旗幟を鮮明にしてやるべきであるという希望が述べられておるわけでございまして、問題は、私どもは今から考案する本格的な経済協力というものにつきましては、御指摘のようなことも含めて十分練って、日本の根幹的な外交政策の柱として、りっぱなものを打ち立てていきたいと思うわけでございまして、もっと弾力を持つべきじゃないかという御議論も十分拝聴した上で、これからの政策樹立について考えてみたいと思います。
  34. 森元治郎

    森元治郎君 今は、EECとかOECDとか、先ほど申し上げたように、先進工業国との商売の戦いに頭が一ぱいでありまするが、日本としては、何といっても、最終的にはこの東南アジア、自分の足元の国々、おくれた国々の安定、平和、そして経済的な発展、こういうところに、私は日本の一億以上の人口を養い、しかも生活水準を向上さしていくもとは、ここにあると思うので、非常にむずかしいが、この方向でいかなければ日本は立っていかないということを思うのです。  そこで、あと一点伺いたいのは、今ワシントンで世界食糧会議というのをやっていますが、百カ国ぐらい集まって、飢餓からの自由、こういうまことにけっこうな趣旨で協議をされ、来年は国連の貿易開発会議を国連で開かれる。この意味で、私は思うのですが、この辺から世界の平和を解きほごす力強い道になると思うので、中共も、何といっても人口も多いし、食糧生産も多い。しかも人口が多く食糧を必要とするのだが、食糧が思うとおりでない。これはやはり平和にとって一つの残念な不安の種になると思うので、国連の代表権問題とは関係なく、国際農業会議、世界食糧会議のような場には中共の参加も、私は日本あたりが推進者になって引っぱり込むように努力するのがよろしいのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  35. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 世界食糧会議は、森さんも御承知のように、FAOの主催です。したがって、政府は一応関係がないのです。予算的にも、あれはFAOの予算関係者が行なっておるわけでございます。民間の間に、栄養失調と飢餓から不幸な人を救うヴオランタリーな運動を起こすという一つの取りきめをするというよりも、むしろこういう問題に関心を、世界の視聴を集めて大いに世界世論を喚起、啓発しようということでございます。したがって、今国連の正式の機構ではないFAO主催の一つの世界的な世論啓発運動に中共を参加させたらどうかという場合、これはFAOが主催として自発的にやられておる仕組みになっておりますので、各国の政府がそれにいろいろ指示をしたり、注文をつけたりする立場に私はないと思うのでございまして、そういう御意見というのは私のほうも承っておきますけれども、食糧会議の性格自体がさようなものであるということを御理解いただきたいと思います。
  36. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 大臣は十二時までですので、そのつもりでひとつ御質問があります方は……。
  37. 森元治郎

    森元治郎君 FAO主催であることはわかりますが、出ている人は個人の資格みたいなものでしょう。ですから、そういう代表権とか加盟の国にこだわらなくても、話し合いの場で個人として発言をすれば相当の反響を私は呼ぶだろうと思うのです。ぜひそういうふうな面から引っくり返したらいいと思う。むやみに法律論や国民憲章云々とか機構に触れないで、政治家として発言をするいい場だと思うのです。  そこで第二の点は、食糧会議なんかを見ていると、日本に関しては、東南アジアではたいへん食糧が足りないのですね。絶対量が足りないにもかかわらず、一次産品である農産物はうんと買わなければならん。こういう矛盾は、一体日本政府から見た場合、飢餓からの自由というりっぱな方針と、それから、少ないところからそれを買うのだという関係ですね。どんなふうに考えられるか。もっと食べさせる方法があるのじゃないか。買わないで、ほかの国と協力して、アジアの民衆が腹一ぱい食べられるように、インドが米が足りなければ、ビルマからうんとたくさん流れるような道でも作ってやるほうがいいと思うのですがね。経済協力という場合に、物の少ない東南アジアから日本が買わなければならん。これはちょっとおかしいのじゃないかと思うのですがね。通産省の経済協力白書なんか見ても、その間の説明は十分でなかったように見えるのです。ないところから物を買ってしまったんじゃ、いよいよ食うに困る。こういう心配がありますが、その点はどうですか。
  38. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、しかし東南アジアは気候にも恵まれておりますし、それから土地が疲労いたしておりませんし、施すに道をもってすれば、相当の食糧供給源になり得る素質を持っておるのでございます。したがって、御承知のように、タイで成功いたしましたように、トウモロコシを試作する。それの技術指導をしてこれは成功いたしておりますが、今私ども政府では、一体東南アジア地域に、どの国の土壌、気候条件から申しましてどういう作物が適当しておるか、しかも、それはわが国の農業政策との関連におきまして、わが国が今他国から、御承知のように、小麦等を大量に輸入いたしておりますが、これができ得れば、東南アジアから相当量を輸入し得るような供給力を先方に与えるためには、ほおっておいたらできませんので、農業技術の援助、器材の援助、試験の協力、そういった方面を開拓すべきじゃないかということで、今各省ベースでいろいろ検討いたしておるわけでございまして、御指摘のような方向日本がやる上におきましては、もとより現地の事情も十分承知しなければなりませんが、同時に、日本の一番大きな農業政策との関連というものを十分考えた上で、どういう分野がどういう地域に開発可能かという点、それにはどういう協力をすべきかという点を克明に検討し、組み立てていくべきものと思います。一方世界的な問題といたしましては、この間関税一括引き下げのときにもありましたように、一次産品の問題というのは、これは普通のトレードの問題というよりは、やはり世界的な商品協定というようなものでいかなければなるまい、関税政策だけで片づけられる問題ではないじゃないかということが一般に理解され、そうしてそのために特別の委員会が設置されるということでございまして、商品協定という政策分野が世界的の一つの行動となりつつあるわけでございまして、これには日本も積極的に参加し、今御審議いただいております小麦にいたしましても、コーヒーにいたしましても、そのはしりでございますが、十分のヴォイスを持って東南アジア地域の、今言った食糧不足という事態も頭に置いて活動をすべきものと思います。
  39. 羽生三七

    ○羽生三七君 私、時間がないようですから一問だけお伺いをいたします。実は、これは先日予算委員会の際に総理と宮澤企画庁長官、それから外務大臣と御同席のところでお伺いしたいと思いましたが、時間の関係で割愛しましたので、ここでお伺いいたします。それは四月の二十六日に宮澤企画庁長官が記者会見でこう言っております。「中共貿易については政府の基本方針を決める必要があり、今後自民党の意見を聞いて外務、通産両省間でまとめることになろう」と言って、そのあとに、中共貿易はこれまでケース・バイ・ケースで取り引きが進められ、基本的な方針がなかった。このためビニロン・プラントの輸出についても現在のようにはっきりしないままで放置されているわけだ。国際情勢は激しく変化するので、政府としての基本方針を確立する必要がある。」と語り、さらに最後に「これを土台として」、わが国の政治外交方針一つとして、「中共貿易に対する政府の姿勢を決めることになろう。」、これは記者会見で正式に宮澤企画庁長官が四月二十六日語っておるわけです。本来、これは宮澤長官が語ったのでありますから、長官にお伺いするのが筋でありますけれども、事外交問題であって、外交の、特に中国に対する基本方針を確立する、国際情勢が激しく流動している際、変化に対応して政府としての基本方針を確立すると、こう言っておるわけです。したがって、それからもうだいぶ時間がたっておりますので、その後どう進められたのか。なおこの問題については、先般、台湾政府の要人が来て横やりもあったようで、そのせいか何か、ちょっと若干停滞しておるようにも見受けられますが、この際ひとつ外務大臣の御方針を承らしていただきます。
  40. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 宮沢君からその談話について御相談を受けたことはないのですけれども、宮沢君が言うように、基本方針をきめるべきであるということ、これは当然のことでございまして、方針がなくては実現性が出てこないと思うわけでございます。私どもといたしましては、たびたび申し上げておりますように、今の段階におきまして、中共貿易につきましては、政経分離の原則に立ちまして、民間ベースで可能な限りやるのだということで進めてきておるわけでございます。そして、その可能な限りという意味は、当然中共ばかりじゃない、共産圏についてそういう考えでございますが、ココムとかチンコムとかいう、日本が参加いたしておりまする国際的な約束、そういうようなものは忠実に守らにゃいかんと思うわけでございまして、これは第一前提になるわけでございますが、しかし、そういう国際的な約束ができていない分野におきまして、いろいろ問題になるケースもあったことは羽生さん御承知のとおりだと思います。しかし、私どもといたしましては、こういう心組みで行っておるわけでございます。すなわち、世界の対共産圏貿易につきましての取引国が普通やる貿易、そういう程度のことを日本がしり込みをする必要はなかろう、といって、日本がそれじゃ大いに旗振って大いにアクチブな役割を果たすということもいかがか。したがって、世界並みといいますか、西欧並みといいますか、そういう一応の公準をとらえて、個々の場合の判断基準にしてきているわけでございまして、現在もそういう考え方の基調に変わりはございません。  問題のブラントにつきましては、たびたび私も申し上げておりますように、中共に対しまして今プラント輸出という実績が世界各国にございませんが、商談が行なわれているというインフォーメーションは受けておりますが、まだ行なわれていない。したがって、世界的にはブラント問題というのは一つの新しい問題になると思うのでございます。そして政府としては、高碕ミッションが行った場合に、この問題はお話があれば聞いておく程度にして下さいと申し上げてあるわけで、したがって、政府がぐずぐずしておって、高碕さんがどうするという問題では私はないと思うのでございます。ただ、新しい問題という角度で、高碕ミッションとの関連ということでなくて、世界的に新しいベースだから、この問題につきましては、政府部内でも各方面意見を聞きながら検討しようじゃないかということで、大蔵、通産、外務、経企、われわれ四人でそういう認識でひとつ各方面の御意見を聞きながらどうすべきか考えてみようじゃないか。一方外務省といたしましては、各国の対中共の商談の進捗状況等につきましては、できるだけのインフォーメーションをとりまして判断の材料にいたしたいと思ってやっておるところでございまして、まだそれをどうするかということをきめているわけじゃございません。そういう段階に今あるということです。
  41. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一点だけ。西欧並みというお話でしたが、これは三月の予算委員会の際、総理大臣から正式に、西欧並み、西欧並みをやや上回る程度と、重ねて念を押しましたが、それに間違いないと、こういう公式な答弁があったわけです。今外務大臣から民間ベースというお話がありましたが、それは民間ではビニロン・プラントで話が進んでおるのです。それに対して政府はどう対処されるか、こういうことです。
  42. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今言ったような事情をいろいろ考えながら、インフォーメーションをできるだけとりながら、政府としていかにすべきかということを今検討中であるということであります。
  43. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 一つだけ簡単に御質問を。  最初に、問題になっておりました海外経済協力に関することですが、これの必要性はだれでも認めているけれども、現実にいろいろな困難性が、阻害要因が多い。その中で財政資金ですが、財政資金という場合でも、今の海外経済協力問題の全体をながめてみますと、まず第一には、基準不足、調査不足というのが根底にあると思います。それだから、海外経済協力に必要な財政資金の場合でも、根本的な準備調査費というものを、これを相当大がかりのものを取って、しっかりした基礎的な調査をする、それが非常に大事なことじゃないかと私はかねがねから考えております。それだから、来年度の予算には、一般にただ海外経済協力のためのというものの中でも、特にこれの基礎的の調査費ですね、これを特に強調して取る必要があるのではないかと私は考えるが、外務大臣意見はどうですか。
  44. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、現在の予算におきましても、通産省におきましても、外務省におきましても、また海外技術協力事業団におきましても、今杉原委員指摘されたような方向で、乏しいながら考えておるわけでございますが、御指摘のように、いろんな協力の事前調査というものに非常に力点を置かなければならぬことであると、現在の程度の考え方ではいけないので、しっかりした事前調査をやるべきであるということは、ようやく政府部内におきましてもそういう認識になってきておりますし、御指摘のように、自民党側におきましても、その点非常な御関心を持たれておりまして、さらに進んで、そういうことをやるについての要員の充足、あるいは留学生の教育、つまり教育協力というような面に特に力を入れてくれというような御希望もございます。そういう方向で、とくと考えて進めてみたいと思います。
  45. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  46. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 速記つけて。  他に御質問もないようでございますから、本日はこの程度で散会いたします。    午度零時分散会    ————————