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1963-02-21 第43回国会 参議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月二十一日(木曜日)    午前十時十五分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     岡崎 真一君    理事            井上 清一君            草葉 隆圓君            長谷川 仁君            森 元治郎君    委員            青柳 秀夫君            鹿島守之助君            木内 四郎君            杉原 荒太君            岡田 宗司君            加藤シヅエ君            羽生 三七君            佐藤 尚武君            曾祢  益君            野坂 参三君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    外 務 大 臣 大平 正芳君   政府委員    内閣法制局長官 林  修三君    内閣法制局第一    部長      山内 一夫君    外務政務次官  飯塚 定輔君    外務大臣官房長 湯川 盛夫君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省条約局長 中川  融君    外務省国際連合    局長      高橋  覚君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   説明員    外務省アメリカ    局外務参事官  竹内 春海君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (国際情勢に関する件)   ―――――――――――――
  2. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) ただいまから本日の外務委員会を開会いたします。  ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止
  3. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それじゃ速記をつけて下さい。  本日は、国際情勢等に関する調査を議題といたします。  当面の国際問題について池田総理においで願いました。各派からの御質疑の要求がございますので、御質問になります方は順次御発言を願います。
  4. 森元治郎

    森元治郎君 きょうは、日韓問題について総理に御意見を伺いたいと思います。  総理は十八日の衆議院外務委員会で、朴最高会議議長は厳然として存在しておるし、朴政権は安定しておりますと、胸を張ってお答えになった。その日に朴議長は、条件付ではありますが、民政不参加声明を出しました。そらして、中三日置いて、きのうになりますると、最も実力者と言われる、また日韓会談推進者である金情報部長が、一切の公職から引いて野に下る、こういうふうなことになりまして、御承知のように、韓国政界もきわめて動揺をして、政局が大きく転換をする情勢にあります。総理は依然として朴政権は安定していると見るのか、この大転換ほんとう動きはどこにあるのか、こういう点、まず、政府認識についてお伺いをいたします。
  5. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 一昨年五月の軍事革命以来、朴政権韓国の強力な政権として今日まで来ておるのであります。しこうして、この軍事政権は、皆さんがお考えになったように、ただいま民政移管準備をいたしておるのであります。まず憲法を制定いたしまして、そうして民政移管準備をしておる。この機会において、民政移管前提にいたしまして、軍事政権にいろいろ異動が起こるということは、これは当然なことでございます。また、政党政治になる場合におきまして、政党の組織の段階におきまして、いろいろ、何と申しますか、政党指導者がかわるということも、これはあり得ることでございます。これは私は民主主義の根をおろす場合の一つの苦しみだと思う。そういうことがあるからといって、韓国代表朴政権であるということに動きはない、そこで今お話しのように、朴議長が大統領に立つか立たぬかということは、軍政から民政移管への一つ動きでございまして、これによって韓国代表する政権であるとかないとか、また、民政移管の場合においていろいろな問題が起こったからといって、これが不安定だというふうに断ずることはいかがか。もちろん向こう政情につきまして細心の注意はいたしますが、こういうことがあったからといって、しかも、それが民政移管への初めの予定の行動をとっておる、これがどうだとかこうだとか言うことは、私は少し行き過ぎじゃないかと思います。
  6. 森元治郎

    森元治郎君 根本認識において、たいへんな間違いをしていると思うのは、今回の動きの底を流れているものをよく見なければならぬと思う。そこでは国民軍事政権に対する反対、その内外政治の失政はもちろん、力による暗いスパイ政治のような軍事独裁政権に対する反対という民衆気持民論、これに屈服したのが、今回の朴政権の、どだい崩れかかろうとする実態だろうと思うのです。この点いかがですか。
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、軍事政権から民主主義政治に変わっていくときにはこういうことは起こり得ることである。それが非常に悪いとかなんとかいう問題でなしに、革命政権から一般の民主政治に移るときには、こういうことは起こり得ることだと私は考えておるのであります。しこうして、この収拾をどうするかということは、これは韓国民考えであるのであります。そこで、われわれが韓国政情の変わり方によって、もうこれは相手にならぬとか、これはいいんだとかいう批評を加えて、両国民の望んでおる日韓交渉について方針を変えるということは、私のとらないところであります。
  8. 森元治郎

    森元治郎君 池田内閣は、この日韓交渉をこの朴政権、この軍事政権、この政権でこそまとめられるのだ、これをおいてはほかにないのだということで、大いに促進をやりました。あなたの党内にも促進委員会もできるし、大いに鞭撻をして今日まで来たのです。ところが、その政権というものは、もはや金さんの離脱あるいは民政不参加、これが大体の情勢では承認をされそうな状況であります。こうなってきますると、この政権でまとめようとした当初の目標が大きく狂う。池田内閣のねらいが狂ったと言わなければならぬと思うのです。この点についてはいかがですか。
  9. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ねらいが狂ったとおっしゃっても、日韓正常化というものは、十数年前からわれわれは念願しておるのであります。たまたま李承晩政権のときには相手にしてくれなかったのですが、軍事政権の前の張勉内閣からだんだんそれが盛り上がってきまして、そうして話し合いを進めておるのであります。私は、日韓国民正常化に対するこの悲願を、この願いを実現する場合において、それが民主政権であろうが、軍事政権であろうが、とにかく、あせりはいたしませんが、できるだけ早く正常化をしようというのは私は当然のことだと思う。しかも、朴議長声明の九カ条におきましても、日韓正常化をやっていきたい、こう言っているじゃございませんか。私は、その問題については韓国国民の大多数が支持しておると思います。
  10. 森元治郎

    森元治郎君 十数年来と言うけれども日韓交渉ですよ。この交渉、この国交正常化という政府交渉相手としても、これをおいてほかにはないのだ、こういう意気込みでやってきたねらいがはずれたということはお認めになれると思う。そして、できれば民政移管前にこれをまとめ上げたいという、このねらいもはずれてしまった。こうなれば、いやしくも政治をとっておる総理としては、責任を感じなければならぬと思うのです、われわれとしては。まして大平外務大臣合意を取りつけた。一つ合意事項――合意文書とか言われるが、金情報部長と取りつけた。こういうものは一体どういうふうになっておるか。宙に浮いてしまうのではないか。効力があるのかないのか。私は効力がなくなってしまうと思う。そこでお伺いしたいのは、このねらいがはずれて、民政移管前に調印までに持っていこうとした――われわれにもそういう構想をいろいろな機会政府から流されておる、そのねらいは完全にはずれたと思う。一体責任をどうとられるかということが一つ。私は責任をとらなければならぬと思う。また、金・大卒合意事項というものは一体どういうことになるのか。政府官房長官に言わせれば、有効だというようなことを言っておりまするが、もはやきょうより――すなわちきのうですね、きょうより一切の公職を退いて外遊するという人と、この人との約束が有効であるということはなくて、歴史的事実、文書の上に、日韓交渉史に残るヒストリカル・ファクトとして記録されるにすぎない紙の上のものだと思うのですが、その点はどうですか。
  11. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) われわれは朴政権以外にないと言った覚えはございません。また、朴政権だけでございます、韓国代表するのは。だから、朴政権に限らず、その前の張勉内閣のとき、また李承晩のときから日韓交渉を、日韓国交正常化をやろう、これはもう周知の事実でございます。十数年前から正常化努力していこう。ただ相手がこれについてこなかっただけであります。それに向かって進んだのは張勉内閣、そうしてその次の朴政権でございます。だから、これを相手にするよりほかない、それからまた、民政移管前にこれをやり上げる、私はそんなことを言った覚えはございません。交渉というのは、いつまでにやろうというのではございません。したがいまして、私は国会におきましても、あせらずなるべく早くと、こう言っておるのであります。いつまでにやらなければいかぬ、そういうようなことは考えたことはございません。また、大平外務大臣金情報部長は、これは両方の当事者として話をしたのです。公式のものではございません。ただ、予備折衝の場合において、向こう政府代表とこちらの代表とが折衝中において、大平金会談のことを折衝に出して一応合意をしたということは事実でございます。しかし、これはあくまで韓国政府日本政府との話し合いでございます。しかし、これは協定を結んだわけでもない、会談交渉中の一つのファクトでございます。しかし、これが両国間で有効になるかならぬかということは、条約で、あるいは協定によってきまることでございます。これを有効とか無効とか言うのは早過ぎると思います。
  12. 森元治郎

    森元治郎君 十八日の夕方黒金官房長官は、この大平金合意は有効である、こういうふうな記者団会見で話をしていますが、この点はいかがですか。
  13. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今折衝中でございますから、一つの事実でございます。情報部長外務大臣とが合意した、これは正式の条約上のあれではございません。日韓両者政府代表間におきまして大平金情報部長との合意が討議せられまして、一応の合意になったということは事実でございます。
  14. 森元治郎

    森元治郎君 私は、今回朴政権があのままの軍事政権を維持できなくなってきたのは、やはり民論反対に服したのだ、こういうふうに私たちは判断をしますし、実際の動きもそうでありまするから、依然として面子上、今までやってきた交渉相手に対しての批判を避けるのあまり、朴政権となお会談を紡げるということは間違いである、これは勝間田君も衆議院総理に尋ねておりましたが、軍事政権民衆反対する軍事政権へのてこ入れである、内政干渉にもとられる、民衆にきらわれるおそれがあるからこれは中止すべきであるというのは当然であります。実際問題として、交渉はできなと思います。依然、この朴議長とともに交渉をおやりになるつもりですか。私は交渉はできないと思います、交渉は。交渉継続できないと思います。私は、中止をしたほうがほんとう日鮮民衆友好関係の樹立に役立つのだと思います。いかがですか。
  15. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はその考えはとりません。やはり朴政権があります。そうして今交渉しております。向こうの、民政移管によりまする一時的のごたごたがあるから、せっかく今までやりかけた交渉を、しかも両国民の願っている正常化交渉をやめるということは、私はよくないと思います。
  16. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと関連して。そこでちょっと疑問に思うことは、かりに今総理のおっしゃるようなことで事を進められるとしても、事実問題として、韓国からだれかが来たり、日本から――まあ日本から行くことはめったにないでしょうが、実際交渉ということが事実上の継続として続けられるというそういう条件があるのかどうかということ、私は、こんな条件の中で韓国のだれかしかるべき代表が来て、そうして従来の会談継続してさらに進展させようというような、そういう条件は存在しておらぬと思います。また、そんなところで何か来た人があるとしても、非常に権威のないことになるし、日本としても受け答えに困るだろうと思う。だから、いい悪いという問題は別として、事実上そういう継続性が今後ともあり得るのかどうか、客観的な――私は主観は一切とりません。――そういう客観的な情勢判断の上から、少しそれは継続されることはむずかしいのではないかと思います。事実判断をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  17. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、今交渉が事実上進展しないというふうには考えておりません。このこと自体は、日韓国民の大多数がやはり正常化を望んでおることでございます。だから、民政移管へのごたごたがあるからといって、これが全然だめになるのだということは考えておりませんが、あくまでわれわれの切望する日韓正常化に向かって努力を続けていくべきだと考えております。
  18. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、そういう期待なり希望はわかりますが、じゃ、どういう人がどういう資格で来るかというようなことは現実に起こり得るでしょうか。近い機会に、どうでしょうか。
  19. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、今のところそういうことは起こり得ないと思います。先ほど言ったように、朴政権が全然なくなってしまって、そうして考え方の違う政権が今すぐできるとは私は思っておりません。先ほども申し上げておるように、朴政権軍事政権民政に移管する過渡期の状態でございます。それは私は朴議長声明にもありますとおりで、日韓交渉は続けていくということを前提にしておるあれを見ましても、しかも、また韓国民衆がそのことに対して非常に反対しておるとも聞いていないのでございます。私は、その進行の度がどの程度進んでいるかということは別問題でございます。交渉はやはり続けていくべきだ、また韓国もそういうふうに考えておると思います。
  20. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと誤解があるようですが、私のほうは、朴政権が倒れて新しい人が出てくるということを言っているのじゃないのであります。そうでなしに、今の政権下において、この状況の中で、さらにだれかが朴議長代表して来てこの会談継続するような条件が存続しておるかどうかということを言うので、倒れたあとのことはまた別問題でして、今の条件下の問題を言っているわけです。
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今予備交渉を持っておりまして、きょうの午後もあるわけでございまして、代表団はこっちにおるわけでございまして、私ども交渉上別に支障はないわけです。ただ、新しい政治会談ということで、先方から代表団のほかに日本に来るという計画は、今ないようでございます。しかし、実質上の交渉については手順上何ら支障のない状況です。
  22. 森元治郎

    森元治郎君 どうも総理大臣外務大臣の御答弁はぬるい、きょうだけをほおかぶりで通せばいいという感じを受けるのですが、私はこの日韓交渉朝鮮民衆の了解はとれないと思う。朴政権反対というのは、その政策にも私は反対が含んでいると思う。ということは、今、交渉の具体的な例をとっても、たとえば請求権の問題、個人の請求権はとれに含まれていない。つかみ勘定で経済協力という形で有償、無償の供与をすることによって、請求権は消えるのだ、こういうような取りきめをしたいと言っておりますが、さあ協定ができてみた、あけてみた、ところが自分は日本に賃金の未払い、もらう分が残っている、いろんな預貯金もある、これは返ってこない、こういうことになって一体韓国の人が納得するかどうかということが一つ。また、領土の問題にしても、韓国憲法、これをまともに読んでいる民衆は、その力は全朝鮮に及んでいるのだと思っている。ところが、協定によれば、大平さんの言葉でありまするが、勝間田君の質問に答えて、何らかの形で施政権は三十八度線以南にとどまるのだという旨を書きたい、どういうふうに書くかということはこれからの問題であるが、書きたい。要するに、韓国というものは半分しかないのだ。こういうことが一体民衆に納得されるかどうか。この交渉内容を見てもそうなんです。しかも、民政移管という具体的事実が出て参りますと、一体民衆はどんな気持日韓交渉に持っているかといえば、その一つの現われは、三十六年二月三日に出た、民議院決議をされた対日復交四原則などというものは、よくこの間の軍部以外の、朴政権以外の、選挙によって選ばれた国民代表の人々の気持を現わしていると思うのです。これをごらんになれば、   一、正式国交重要懸案解決、特  に日本の占領による損害と苦痛の清  算終了後とする。   一、対日国交はまず制限国交から  始め、漸進的に全面国交へ進展させ  る。   一、平和ライン国防及び水産資  源の保護並びに漁民の保護が尊重さ  れ、守護されねばならない。   一、現行の通商以外の日韓経済協  力は正式国交開始後、国家統制のも  とに国内産業が侵されない範囲での  み許される。  という、これは民衆代表である民議院決議であります。こういうのが民衆の心であります。ですから、あなたはこの朴政権によって官僚的テクニックをもって協定を作り、あやふやな請求権の処理をして、民政に移管された場合、民衆は黙っておりますかどうか。これはたいへんなことになる。せっかく協定を結んで朝鮮国民反発を買い、憎しみを買う結果になって、日韓友好には一つプラスにならないと思う。条約内容がそういうあやふやな、えらい人同士の、上の人同士の、裏で法律解釈などを織りまぜてわけのわからないことをきめるということは、とんでもないと思います。反発を買うと思うのです、これは民衆の。だから、私は朴政権交渉ができないほうが、民衆相互関係において、両方民衆にとってプラスだとしたら、会談中止をするほうがほんとう日韓友好に役立つのだと思うのです。
  23. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 森先生の今御指摘になったように、日韓の間の問題というのは非常にむずかしいし、それからまた、韓国内部におきましてもいろいろな御議論があることは御指摘のとおりでございます。だから、こういうめんどうなことだからこれはこの際やるべきでないというお立場に立てば、それは一つの私は立場だろうと思うのでございますけれども、私どもとしては、非常にそういうむずかしい問題ではあるけれども日韓の間の正常化というのは、いつかだれかこれはやり遂げなければならん課題だと思うのでございます。そういう困難なことは十分頭に置いて、いかにすれば正常化への道が発見できるかということを、日本政府としても瞬時も忘れず努力しなければならんと思うのでございまして、私どもは、そういう困難なことをよく承知の上で、それをどう割り切っていく道が発見できるかできないかというところで苦心をいたしておるわけでございます。めんどうだからやめたほうがいいというような考え方には、私ども立っていないということでございます。
  24. 森元治郎

    森元治郎君 それでは総理に、一体交渉は現政権のもとで、さらに朴議長議長にとどまる限りは続けていく、そして近い機会にまた正式会議でも開いていくのだ、こういうことですか、事態を静観し、しばらく待とうというのか、この点だけをちょっと。
  25. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 代表部がこっちにありまして、両全権は正常化努力を続けてきたのであります。この努力は今後とも続けていく考えでございます。
  26. 森元治郎

    森元治郎君 私は、努力を続けることは、先ほど申したとおり、決してこの日韓交渉、今やってる政府朴政権との間の交渉実態を見ても、これは国交正常化にはプラスにならない、こういうふうに考えまするので、これはやめるべきだということを申し上げて、この点を終わりたいと思います。  あと一つだけ伺って私の持ち時間を終わりたいと思いますが、ほんとう両方の国の国交をよくするということは、やはり南北両鮮の統一に向けて日本があらゆる点から努力をしてやる長い時間をかけてもこれが一番おそくて早い道だろうと思うのです。御承知のように、韓国は二千五百万ぐらいの人口で兵隊さんが六十万もおる。国の予算も六〇年あたりは三割四分、六一年は二割七分ぐらいの国防予算をつぎ込んでいる。失業者は三百万ぐらいもあると言われ、米どころで米がない。こういうふうな事態朝鮮、どこにそれは原因があるかというと、いたずらに北の国に向かって対抗意識を燃やす。これをまたあおり立てる。こういうことがいけないので、南北融和への力をかしてやるということが日本ほんとうの行き方だと思います。そこで法律的なことになりまするが、この日韓交渉をやるときに北朝鮮を除外されておりますが、私は一向法律的にも除外される理由はないのじゃなやかと思います。それは平和条約第四条による「当局」の問題でありますが、政府は、過去の平和条約平和条約相手国国連決議などによって「当局」というのは韓国だということを言っておりますが、私は、北朝鮮にある一つ権威、これを入れても一向差しつかえないと思う。三者会談をやったってかまわないだろう。日韓北鮮当局、――現在北鮮は、北鮮権政一つ当局であります。政府も言っておるとおり、これは当局であります。南鮮当局北鮮当局と話することは一向差しつかえないのじゃないか、こういうふうに思います。時間がないから、ためてやりますから、ひとつメモして下さい。たくさんしゃべって、一つしか答えないのでは困ります。  そこでもう一つは、二つ朝鮮を認めるというようなことは困る。朝鮮独立一つ朝鮮だ。だから、北鮮と何らかの交渉を持つことはおかしいと言うけれども、一体北鮮朝鮮休戦協定国連軍はちゃんとやっているじゃありませんか。日本とは朝鮮人北朝鮮帰還協定も結んでいる。国連では一九五四年、朝鮮協定の翌年、朝鮮統一促進のためにジュネーヴで会議をやっている。米、英、ソ、仏、そしてまた韓国北朝鮮代表も参加した会議もやっている。国連では毎回南北朝鮮統一実現のために国連努力をしている。十五回の総会――一九六〇年の総会にもその問題が起こって、北朝鮮国連の招請によって、国連から呼ばれて国連総会に出ると約束している。しかし、とうとう出る機会は、国連総会期限満了で出られなかったけれども、そういうふうに、いろいろな場合に北鮮というものと南鮮というものと同等扱いをしている。同等当局扱いをして、こうやって引っばっておるのです。日本だけです、二つ韓国朝鮮などという古い国際法のことを引っぱり出しているのは。そういうことじゃないかと思います。  それから、小さいことで、条約局長答弁が一番適当かとも思いまするが、なぜ第四条には「当局」と書いて、カッコして「南鮮においては韓国」と書かないのです。これは、当時南北朝鮮――講和条約草案作成中は南北朝鮮は戦争をやっていましたので、さすがのダレスさんもその事実を否定するわけにはいかないので、当局ということでがまんをしたのだろうと思います。それから、なぜここに政府と書かないで、またなぜこの第四条にレジティメイトという言葉が入らないか。韓国だけで、これだけがただ一つ朝鮮だという強い主張を通すならば、条約文のどこかに正当なるという字が入るべきだと思うが、それがないし、ガバメントという字もない。当局というかわりにガバメントという字もない。したがって、平和条約北朝鮮を必ずしも疎外しているものではないと思うのです。東大教授の高野さんの本を読んでも、その他の人の大体の意見でありまするが、朝鮮独立した新国家実現をした。条約相手国その他からその独立国韓国、大韓民国と思われるけれども、しかし最終の、ほんとうの意味の確定にはならないということを言っておりますが、これはもうわれわれが見るとおりでありますから、一向心配なく南北朝鮮当局日本会談して差しつかえない。私は一歩譲歩して、もし問題があれば、向こうがいやだ、南鮮がいやだ、あるいは北鮮がいやだ――北鮮はやると言うのですからいやではないでしょうが、南鮮がいやだということ、これはありましょう。しかし、法的にも私は三者会談をやって一向差しつかえない。また、政治的にもできるはずだ。ほんとう一つ朝鮮を作る工作はこれでやる。北鮮が言うから何でもかんでも反対するということは、間違いじゃないか。これをもって質問を終わります。
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 南北朝鮮統一はわれわれも願うところでございます。したがいまして、国連におきましても、国連監視のもとに自由な選挙を行なうべきであるということを言っておるのであります。しかし、それが実現できない。私は今の、国際的にはやはり韓国朝鮮における唯一の合法政府と見ることが適当であると考えております。したがいまして、実例から申しましても、五十六カ国が韓国を承認している。これがやっぱり国際の世論を示すものだと思います。五十六カ国が承認している。そうして、北鮮のほうは共産系の十五カ国だけです。しこうして、国連においても、一九四八年十二月十二日のあのことは各国これを心得べしと、こう言っているのでございます。私は、国際的には韓国が唯一の合法政府考えることが至当であると思っておるのであります。また、休戦協定をやるときに国連相手になった。これは軍事上の取り扱いでございまして、その国の承認とか承認でないという問題とは、別問題と思います。
  28. 森元治郎

    森元治郎君 それではちょっと引けないんだけれども、あなた合法政府とかなんとか年じゅうアロウアブル・ガバメントは合法であるという言葉をお用いになりますが、朝鮮人が多数住んでいる地域で選挙をやった、この種の選挙をやった、この種の一つの合法政府と言って、非常に割り引いておるのですよ。ダレスはサンフランシスコの会議において、朝鮮についてどういう言葉をしばしばつかったかといえば、朝鮮は現在半自由、半独立である、こういうことを言っていることは、あなたはあそこに参加して通訳でお聞きになったでしょう、イヤホーンがなければ無理かもしれないけれども。そんなに合法政府ということだけでわれわれを押しくるめようとしても現実はだめです。よくあなた方五十六カ国と十何カ国と、数が多いほうが尊い国で値段が高くて、数が少ないほうが安い国だと言うけれども、そんなことは関係ない。国の承認関係でありますから、好きなものは北をとる、きらいなものは南をとる。何も数が多いことは、これは選挙じゃないんですから……。こういう私は総理答弁は承服できません。ほかの問題についてちょっと答弁して下さい。
  29. 中川融

    政府委員(中川融君) 今、森委員からお尋ねの、平和条約第四条にどうして政府とかあるいは正当政府とかいう言葉を使わないで、施政を行なう当局、オーソリティという言葉をつかったかというお尋ねであります。これはもちろん平和条約日本が参画して起草をしたものではございません。連合国が起草したものを、いわば日本は受身の形で承認をしたわけでございますので、どういう意図で施政当局という言葉をつかったかということはつまびらかにしないのでありますが、これが政府を意味するものであるということは、ただいま森委員が御指摘になりました、サンフランシスコ会議でのアメリカ代表ダレス氏の話でもはっきりしておるのでございまして、韓国政府と大韓民国政府が半分独立だという話もあったけれども、これに権利を与えるということを言っておるのでありまして、その意味では、これが政府を意味し、しかも承認し得る政府を意味し、具体的には大韓民国政府だということはダレスの演説からも明らかでございます。なお、この「施政を行っている当局」という文字を使いましたのは、そのほかにも国連憲章の八十一条というのがございまして――これは信託統治の規定でございますが、信託統治を作る際には信託統治協定を結ばなければいかぬ、その中には「施政を行う当局を指定しなければならない。」――これもオーソリティーでありますが、「当局を指定しなければならない。」、その当局は一または二以上の国家である、あるいは国連自体である、そういうことが書いてあるのであります。これで見ましても、当局という言葉はやはり国家あるいは政府というものを考えておるということは国連憲章でも例があるのでございまして、したがって、平和条約でもやはり当局という言葉をつかったのではないかと思います。以上、法律的な御説明を申し上げました。
  30. 森元治郎

    森元治郎君 答弁漏れ。北鮮当局日本との話し合いは一向差しつかえないじゃないかという、この点についての御答弁が漏れておりますが。
  31. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) われわれは、先ほど来申し上げておりますとおりに、国際的には韓国が唯一の合法政府だ、こういう考えを持っておりますので、北鮮交渉する気は今のところございません。
  32. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいま総理の御答弁を伺っておりますというと、とにかく朴政権は存在しておる、今いろいろな事態が起こっておるのは、これは民政への過渡期に起こるところの現象にほかならない、こういうような考え方で、朴政権は依然として韓国における強力な政権であり、また日本交渉相手方として決してとるに足らないようなものじゃない、こういうお考え方であります。そしてここに代表団がいるしするから、やはり予備交渉を続けていくのだ、こういうような考え方に立っておる。そしてその予備交渉を続けていくことがこの会談を続けていくことだというふうに私どもには考えられるのですが、その予備交渉なんかを続けていくのでありますが、予備交渉の一体今後の大きい問題は何にあるとお考えですか。
  33. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) たびたび申し上げておりますごとく、日韓交渉のおもなる問題は、請求権の問題、漁業権の問題、日本における韓国人の法的地位の問題、竹島という領土問題等がおもなものでございます。われわれは、この四つの問題を同時解決ということで会談を進めていっております。
  34. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 その四つのうち、いわゆる請求権の問題については、大平・金氏の会談によって大体のめどがついたというふうにお考えになっておるようで、あとは細目だろうと思うのでありますが、漁業あるいは竹島というような非常にむずかしい問題がこの予備交渉の過程において行なわれることになるわけでございます。そういたしますと、この漁業問題でございますが、実はいましばらく前に、前に日本に参りましてそうして大卒外相と交渉しておりました金氏が、李ラインには固執しない、こういうことを声明した。そうすると、外務省は直ちに歓迎する意味の談話を出した。そうすると今度は間もなく金氏が、いやそんなこと言った覚えないのだというような意味の取り消しをやっておる、こういうような状態。そうしてみるというと、朴政権における唯一の実力者でもあったと言ったほうがいいのですが、この金氏が李ラインについてこういうような見解の動揺を示したということは、私は韓国内の情勢が、漁業問題の解決については朴政権考えているふうにはいかないということを示しているのではないかと思う。そういたしますというと、この代表団との間に漁業交渉予備交渉をいたしましても、その結果が直ちに――韓国のほうにおいて技術的にまとまりました話でさえなかなか容易に韓国民が納得するという状況にもならんだろうし、また韓国代表する政府も、今のような動揺の状態を続けておりましては、予備交渉がたとえ進んで何らかの結論に達したとしても、それが直ちに両国の間の話し合いがまとまるという工合にはならぬのじゃないか、いつひっくり返されるかわからないような事態が起こるのじゃないかというふうに考えられます。そうすると、予備交渉を幾らやっても、韓国政権がはっきりしたものにならないうちは、また、その政権の性質が日本側においてもはっきりわからないうちは、予備交渉なんかを続けていっても、実質上、結果がまとまらないということになるのじゃないかと思うのです。まあお続けになることは勝手ですけれども、また、それはあなたがたが格好を取りつくろうためにおやりになるのでしょうけれども、しかし、実際の正常化は一歩も進まないという結果になるのじゃないか、私どもそう思うのですが、この予備交渉韓国における政情の不安との関係、そしてその予備交渉の結果が、はたしてほんとうにまとまり得る見込みを持つものかどうか、その点について総理の御見解を承りたい。
  35. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来申し上げておりますとおり、われわれは、あらゆる機会をとらえて、できるだけ早く国交正常化したいという異常な熱意と誠意を持っておるのであります。今、民政移管のときに、向こう政情が変動しつつあるということは、われわれ予期しているところであります。だからといって、すぐ不安だとか何だとか言って、せっかくのこの交渉を打ち切る気持はございません。代表部はあくまで韓国代表部でございますから、韓国内の世論その他を頭に入れて交渉に入りましょう、われわれもこちらの国民気持をくんで交渉を続けていくといったことは当然のことじゃございますまいか。
  36. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 あなたのお考えでは、予備交渉を続けていくということは、これは変わりない、それを続けていくんだ、こういうお考えでありますけれども、それは予備交渉はいくらお続けになっても、政情が不安で政権が動揺しているといたしますならば、その結果についてまとまる見込みというものは非常にむずかしいんじゃないかと私は思うのであります。こういうような状況のもとにおいて予備交渉を続けられるより、場合によりますと、向こうのほうで、自国の政情はそういうふうに動揺しておりますから、方針がきまらないで、向こう側のほうで予備交渉を、あるいはやめないまでも一時停止をする、新しい向こうのほうからの指示、訓令があるまでは停止するという状況も起こり得ると思うのでありますが、そういうような場合にも、こちら側のほうは積極的に、さあまとめるんだ、交渉を進めるんだと、そういうお考えで進めるおつもりですか。
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) まとまることがむずかしいということと、まとめようとして努力するということとは別問題であります。われわれは、むずかしいでございましょう、それは初めからわかっております。むずかしいけれども正常化ということは両国家のために必要だとこういうので、むずかしいところを努力しておるのであります。向こうもそのつもりできておるのであります。そこで、今向こうの国の国情がどうだとか、しばらくこれを打ち切ろうとか、中断しようということで来たらどうするかということ、そんなことは私は今考えるべきことじゃないと思う。
  38. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まとめようとすることと、それからまとまるかまとまらないかということはこれは別、こういうお話でございますけれども、まとめようとする努力は、あなたとすればやはり実らせたいとお考えになっていると思う。実らせるには、やはりそれが成熟し、それが成就するための条件というものがなければならぬ。その条件を無視してこれを進めて参りますというと、かえって悪い結果を来たす。そしてそれがうまくいかなかった場合には、将来弔う一度やり直すのにかえって非常な困難を来たす場合も起こるわけです。だからして、私は、あなたが異常な熱意を持っておやりになっておるということは、これはあなたお変えにならないでもよろしいのであります。また、そういうつもりで貫かれるのでありましょうけれども、しかし幾らそうおやりになっても、現在の状態では、あなたが昨年の暮れ、つまり金氏がこちらへ来られたときに大卒さんと話をして、そうしてそのときの状況から見たまとまり工合、そして大体において本年の上半期にはまとまるであろうという見通しを持っておられたときと今日とでは、あなたの熱意が同じであっても、あるいはもっと以上の熱意を燃やされておったとしても、私は違うと思う。去年の十二月ごろにあなたがお持ちになっておったまとまるめどと、それから、今日韓国の政情がああいう事態になっておるのについて、まとまる時期のめどと違いになっておるか、おらないか。違いになっておるとするならば、どの程度までそれが延びたとお考えになるのか、その点を明らかにしていただきたい。
  39. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いついつまでにやるということを私が考えておるならば、それは期限が延びることはございますが、私は、誠意を持ってあせらずにできるだけ早く言っておるのであります。しこうして、こういう問題はなかなかむずかしい問題と初めから私はわかっておるわけです。したがいまして、政情がとう変わったから何カ月延びるということは、私は一度も計算したことはございません。
  40. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 何カ月というふうに、期限についてどのくらいとは言わないまでも、昨年の十月にあなたが見通されたのと、今日あなたが見通されるのとでは、違いがなければならぬと思う。あなたの熱意が異常であっても、違いがあると見るのが至当だろうと思います。何カ月とは申しませんが、明らかに延びたと思われるのですが、あなたはそのまとまるめどがかなり延びた、むずかしい条件が加わった、こういうふうにお考えになっておるかどうか。
  41. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 延びるということは、一つの期限があると考えるときに延びる延びない。私は非常にこれはむずかしい問題だから、そうなかなかおいそれとまとまるものではないと初めから思っております。だから、あせらずにやるのです、こう言っておるのです。いろんな問題が起こって参りましょう。これは政情がどうこう言うのではございません。交渉の漁業権の内容でも、なかなかむずかしいと思います。竹島の問題でもそうです。法的地位の問題でもそうです。なかなかむずかしいいろんなことが起こるということは、やはり外交交渉のときに腹に入れておかないといかぬ。だから、あせらずにやります、こう言っておるのです。いろんなむずかしい問題が起こることは予期しております。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 関連。先ほどちょっとお尋ねいたしましたが、実際問題として交渉継続されるかどうがということについて外務大臣から、こちらに代表部があるからというお話がありまして、それは代表部があるから、ときどき何か話があるかもしれませんが、実際問題として、私は格好をつけるだけだと思います。あちらもおそらく確固たる決意を持って、大統領のいわゆるほんとうの意味の代理、代表として熱意を持って本格的に取り組んでくるという形でやれるとは思わないし、日本も、総理でも外務大臣でも、これで本格的に取り組むという姿勢になれるかどうか。格好はつけておやりになっている。ですから、私の言うのは、政変がかりにあるかないかということではなしに、今の大統領のもとにおいても、実質上これは停止状態と同じだと、そういう判断をしておるわけです。ですから、継続されるという場合に、社会党と政府との違いは別として、かりに継続される場合にも、政情が安定してあらためておやりになる場合もあるでしょう。そうでなしに、今の状況の中ならば、私は面子や格好なんかにこだわるのではなしに、しばらく情勢を見られる、そのほうが正しいと思います。かりにおやりになっても、全然権威のないもので、あとからかりに政変があって新しい政権ができた場合、それを承認するかどうか、それすら疑問です。もっとそういう場合の政府立場というものは困ることになるのではないでしょうか。ですから、政府のお立場をかれこれそんたくをしてわれわれが言う必要はないことですが、むしろこんな場合にはしばらく様子を見られる、静観をする。打ち切るということを今即時言われるということは困難だと思います。外交交渉上、現実上それは権威のないやりとりになりますから、様子を見られることが賢明だと思いますが、御所見をお伺いします。
  43. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどから申し上げましたごとく、日韓国交正常化はわれわれの非常に念願しておるところであります。向こう政情がどうこう言って、これを格好だけということを言うべきものではございません。考えるべきものではないのです。われわれは誠意を持ってあくまでできるだけ早く妥結に努力する、これが私日本国民としての立場だと思います。向こう政情がどうこうだから、これは形式的だ、意味をなさぬというふうなことは、私としては絶対に考えないところであります。
  44. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今の韓国政情がかなり動揺しておって、非常に目まぐるしい変化をしておるわけです。この韓国政情日本との外交交渉に影響を持つということは、これは当然だろうと思いますが、従来韓国政情についていろいろとお話を承りたいと申しますというと、外務省のほうでは、向こう代表部がないので的確な情報が得られない、こういうことをよく言われております。また総理外務大臣も、向こう政情については新聞で承知をして云々というようなことも言われたと思う。そういたしますと、こういうふうに目まぐるしい韓国情勢の変化のあるときに、向こう情勢ということを日本政府において的確に把握しつつやるのが、これが私は常識だと思う。ところが代表部がなくて、そうして的確な情勢をつかめないというような事態において、この交渉を行なうということは、より交渉日本側にとりまして不安定になると思うのです。で、そういう点からいたしまして、私はやはりもし韓国日本代表部を持っておるならば、当然日本が今の状態においてもまず韓国代表部を持つことを要求し、そうして向こう政情も十分に把握のできる状態にする。つまり代表部を置くということは、やはり対等の立場に立つということになるわけでありますが、まずその問題を解決してでなければ、私はどうも今の政情不安、非常に目まぐるしい変化をする韓国との交渉ということは、非常に不適当だと思うのですが、この代表部の問題は今たな上げにされておるようでありますが、この問題についてどういうふうにお考えになっておるのか、それをお伺いしたい。
  45. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 岡田先生が御指摘のとおり、われわれがソウルに代表部を持っていないということは、いろいろな不便がございます。特に変動する韓国の国内情勢を把握する場合にも限界がありますことは、御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましても、代表部を持ちたいということで、先方に再三お話をいたしておるのでございますが、ただいままでの先方の返事は、国交正常化という本体の仕事を早くまとめましょう、もしその段階において代表部を置くということになれば、もう日本はこれで目的を達したからということで国交正常化への努力の弛緩を来たすというようにとられても困るから、本体のほうの仕事を進めましょうという態度でございまして、先方の応諾を得るに至っていないということは非常に遺憾でございますが、実情はそうなっております。
  46. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまのお話ですと、いよいよこういうような政情の変化の目まぐるしいときに代表部を持っておるということが必要だと思うのです。しかも、総理のお話ですというと、自分はあせらずにそうしてじっくりとやる、相当むずかしい問題もあるので、期限はつけないでじっくりやるというお話であります。その間にこういう政情の変化があるということになると、いよいよ韓国の態度を日本政府としてはっきりとしたものをつかんでやっていかなければならぬ必要があると思う。それですから、私はまず、今予備交渉などを進めるよりも、むしろここでその予備交渉を中断して、そうしてもっと日本韓国との間に適当な話し合いのできるようにするためには、対等の立場に立つという意味も含めて、代表部の設置の問題をまず解決をして、それを韓国に承認さして、しかる後にこの交渉をするなり何なりするということも考えられるわけであります。私は韓国日本代表部を持たない、対等の立場に立たない交渉というものは、これはどうも、戦争の直後日本が降伏をしてそうして平和条約を結ぶというような過程でありましたら、これはやむを得ないのでありますけれども、今日の状況としては、まことに不可解でもあるし、また日本としてとるべき筋合いではないと思うのでありますが、この韓国代表部問題が、これは内容予備交渉よりもまず先であるし、これをいれない限り、日本側としても韓国の動揺する政情を的確につかめないのでありますから、この交渉というものは日本側にとっていわばかなり不的確なものになるし、不利になる場合も考えられるわけであります。したがって、この交渉を一応打ち切って、そうしてまた時期を見てあらためてやる。その際に、まず対等の立場に立ち、われわれも今後の交渉を的確な基礎に基づいて行なわれるように、代表部の問題から解決をしていくという方向にいかれたらどうかと思うのであります。そういうような観点からいたしましても、先ほど森君の言われたように、今日この際打ち切ったほうがいいんじゃないかと思うのですが、総理並びに外相がこの代表部問題について今後どういう方針をおとりになるか、それをお伺いしたい。
  47. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本代表部がソウルにあることは望ましい、ベターであります。しかし、われわれは今回の交渉におきまして、代表部を置くことを前提として交渉を始めたのではございません。したがいまして、代表部の設置につきましては、できるだけ交渉を進めますが、それができるまではこの予備交渉を打ち切るという考えは、今までのわれわれの態度からして、とるわけには参りません。今までどおりで、代表部の設置についてはこちらから要求すると同時に、予備交渉は進めていきたいと思います。
  48. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 代表部の問題が韓国政情をつかむ上に非常に必要だということは、前々から総理も、あるいは大平外務大臣も繰り返して言われているところであります。そういたしますと、こういうような政情のときにそれがない。それがないでもって進めていくということが支障になるとお考えにならぬのですか。交渉を進める場合に支障なしとお考えになるかどうか。
  49. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは御指摘のように、政情の把握に狂うところがあるということは率直に認めます。それで先方とも話をいたしているのでございますが、ただいまの先方の応答は、先ほど申し上げたとおりでございます。しかしながら、私どものほうから、一定期間政府の方々に行ってもらって韓国について勉強するということにつきましては、先方も理解を示しまして、数回そういうこともいたしておりますし、今後必要に応じましては、そういう道を開いていきたいと思います。
  50. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまのお話でございますというと、代表部の問題については、今すぐに置くことを望めもしないし、交渉はしているというふうに受け取らたれのでありますけれども、実際に的確な政情をつかむことができないでこの問題を進めていくということは、政府自身の態度も、この日韓正常化の問題について、非常にあやふやにならざるを得ないと思うのであります。だから、韓国政情がネコの目のように変わると同時に、こちら側の外務省も、あるいは外務大臣も、いろんな談話を出したり、声明を出したりして、振り回されている格好であります。これはまことに国民としておそらく懸念にたえないところだと思うのであります。そういたしますと、やはり政府韓国政情を的確につかむという必要を私はやはりこの際一そうはっきりさしていかなければならぬと思うのでありますが、国民に疑惑を与えないためにも、やはりこの問題について、もっと政府としては真剣に取っ組んでいくべきではないか。また、今のこういう韓国政情のもとに政府が、総理大臣の言うように、異常な熱意を持って進めていく。しかも、実際においては、予備交渉においてもまとまらぬし、また、向こう政情いかんにおいては、予備交渉でまとまったものも、それがどうなるのやらわからぬというような事態が起こってくる。政府が言っているところも、請求権問題が全部解決したと言ってから、今度は個人の請求権問題が飛び出してくるというようなことで、国民が、そういうような問題の取りきめがあったとしても、非常な疑惑を持つようなことが次から次へと起こってくるのであります。ですから、これは今こういうような政情不安のときに、政府が今のような態度で幾ら熱意を持って進めていっても、その結果というものは、日本国民の疑惑を一そう深めるだけだと思うのであります。一体なぜこんなときにどんどん進めていくのか、何の必要があってこういうときに進めるのか、この国民の疑惑をあかすわけにはいかぬと思うのであります。私は、この交渉自体がこういう事態に差しかかった場合には、国民の疑惑を受けるようなことは政府としてはすべきではない。私は、日本国民がいささかたりとも疑惑を持つようなことをしゃにむに進めていくというような態度を政府がとることは、この際おやめになって、国民が疑惑を持たないようにするためには、まずこの政情不安の状況のもとにおいては打ち切る以外にはないと思います。そうして、あらためて政府は、政情が安定しあるいはほかの条件が整ってきて、場合によりましては、先ほど森君の指摘しましたように、日本韓国北朝鮮と三国の話し合いのでき得るような事態も生ずるようなこともあろうかと思います。私は、そういうようなふうになりまして、日韓の問題について国民の疑惑を持たないような時期まであなたのほうの交渉を事実上ずらしていくとか、あるいは停止するなりすべきではないかと思うのですが、もう一度その点をお伺いしたいのであります。
  51. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 向こうに振り回されておるとか、あるいは国民に疑惑を持たれるとか言われますが、私はそう考えておりません。われわれこそ、韓国のこの政情不安といいますか、民政移管につきましての向こうの悩みに対してこちらが一喜一憂してはいけない、やはり既定の方針でがっちり向こうと組んで正常化に向かって進むべきものだと、私はこう考えております。一喜一憂することが私は両国家のためによくない、こう考えております。
  52. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 あなたは一喜一憂されないでもいいのですけれども国民は、一喜一憂じゃなくて、非常に疑惑を深めるだけであります。疑惑を深めるばかりのことを、あなたが一喜一憂しないでやっていかれても、その結果はうまくいくことがないのです。だから、国民の疑惑を解くようなことをやっていかれないで、深めるようなことばっかりやっているのですから、私は外交交渉の裏に国民の疑惑があるということは、これは政府としては一掃すべきだと思うのですが、政府の今のやり方では、ますます深めるばかりだと思うのですが、この国民の疑惑を解く方法としては、総理はいかなるお考えをお持ちになっておりますか。
  53. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは疑惑という言葉が私は当てはまらぬ。朝鮮政情不安と申しますか、民政移管のときにいろいろごたごたすることにつきましては、私は同情をしております。同情はいたします。うまくいくことを願っております。しかし、このことによって日韓交渉に疑惑があるというふうな気持は、それは国民は持っておらぬと思います。そこで、一喜一憂すべからず、がっちり前後の様子を考えながら、そうして適当な交渉の進展をはかるということは、私は国民の希望するところだと思います。
  54. 曾禰益

    ○曾祢益君 初めに、日韓問題について伺います。まあ私どもは初めから、日韓会談はこれを進めるべきである。そうしてその中ですべての懸案を同時に一括解決し、それからむろん懸案の内容においても、たとえば請求権問題等についても、筋を立てた解決をする。竹島問題、李承晩ラインについてもむろんそうでありまするが、そういう内容の妥当性。第三には、この会談の目的が韓国ほんとうの民主化と安定ということをねらうものであるから、この会談内容として、やはり政局の安定と民主化ということを要求するのが当然であります。そういう条件を作りつつ話を進めていく、これがわれわれの考えであるわけであります。  最近の韓国の事情を見ると、大統領出馬を朴議長がやめた、あるいは金鍾泌が政界から引退する。いろいろの事情はございますが、私は基本的に言うならば、これらのごたごたがあったからといって、隣の国のごたごたに乗じて会談を打ち切れというような態度は、私はとるべきでない。何となれば、韓国の野党の諸君でも、基本的には日韓会談をやるべきである、国交調整に努力すべきである、内容にはお互いの思惑が違うにせよ、そういう態度をとっておる。わがほうから打ち切れというような、ごたごたにつけ込んだようなやり方は間違っておる、かように考える。しかしながら、同時に、私があげました三つの要件の中で、やはり民主化と安定に注意しつつやっていかなければならぬということから言うならば、今総理大臣がいろいろ言っておられますけれども、少なくとも、軍政下においてやった場合には、まあ朴議長が大統領になる、あるいは軍事革命主体勢力なるものが衣をかえてやはり議会で多数を占めるというような、そういう一つのいわば保証人があればこそ、あるいは軍政下といえども協定を作るという一つの望みを持ってやっておられたと思う。現実には、そのことのよしあしは別として、私はむしろある意味では、今の韓国の民主化は、これは一つの民主化の悩みであり、胎動であって、軍事独裁政権がつぶれていくので、いい面もあると思いますけれども政府立場からいうと、逆に、協定を作った場合の、あとの議会ができてからあとの保証人がなくなりはせぬかという、ある一つの、大きな事情の変遷といいますか、これが起こっている。したがって、われわれの側から、今政府に打ち切れと、そういうことを言うべきではなくて、これは交渉を続けられるのが政府責任ですけれども、ただ、その場合に、一体どれだけのめどがあるか。民政移管はいずれ行なわれるでありましょう。民主化の胎動があるのに、その今の政権とやった場合に、だれがそのことを保証するのか。これについては、やはりこれからの交渉には特に慎重を要することだけは、私は議論の余地はない。したがって、少なくとも向こうとの間に、これからの交渉については、一体政局が安定し、民政移管後どういうふうになるかということについての相当の見通しを持って、その見通しのもとに交渉を進められるということが当然であるし、あるいはまた逆に言うならば、少なくとも交渉を進め、日本政府の態度としては、かりに民政移管前に妥結ができても、少なくともその妥結のできたことを選挙に訴えて大統領なり国会ができるのでありましょうから、その国会における批准といいますか、承認ということが少なくとも要件となるような形で交渉を進め、妥結するということは、私はこれは日本国として当然することであり、それくらいのギャランティなしに、今きわめて流動している政権のもとに、とにかく何でもかんでも早く、民政移管するとうるさいから、やってしまうというようなあせりからやってはならない。確かに民論も起こってくることは、今の独裁政権よりも、日本に対しても譲りにくい点はあるでしょうけれども、しかし、それは日韓両国の大局から見るならば、やはり民意に即応したバック・アップということなしに協定を作るということは、これは砂上の楼閣であるということを考えなければならぬ。さように考えますので、その点に対する社会党諸君のあれには悪いけれども、そろいうことに対する一喜一憂なり、あるいはその場のがれの答弁でなく、国民と世界に向かってはっきりした総理の態度をひとつ示していただきたい。
  55. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は曾祢さんの御意見よくわかります。大体そういう気持が私の頭の中にあるのでございます。それで、これは将来永久に日韓国交日鮮提携のもとをなすものでございますから、場当たりで安易な方法でいくべきでないということは当然なことでございます。
  56. 曾禰益

    ○曾祢益君 今申し上げたように、少なくとも協定が今の過渡期にできても、憲法施行といいますか、施行後ですが、民政移管後議会の承認を得る、こういう覚悟で進めていく、かように了解してよろしゅうございますか。
  57. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は考え方としてはわかりますが、向うの議会政治ができるまで待たなければならぬということまでも考えておりません。ただ、向こうの様子を見ましても、いつが将来永久に日韓のためになる時期かということは、自分として交渉の経過を見まして考えていきたいと思います。
  58. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうではなくて、今かりにできても、国会ができてから批准を求める、こういうことは当然じゃないか。むろん今の間に妥結しないで、国会ができてから妥結する場合もありましょう。かりに過渡期においてできた場合においても、先方の国会の批准を求めるのが当然ではないか、こう申し上げておるわけです。
  59. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう考え方もございますが、相手立場考えますので、私の考えとしては、将来永久に日韓の親善が保たれる方法をよく考えてとりたい思っております。
  60. 曾禰益

    ○曾祢益君 いろいろお伺いしたいのですけれども、きょうは時間がありませんので、次の機会日韓問題は回わしまして、もう一つ、核兵器禁止の問題についてお伺いしたいのですが、この国会の劈頭において総理は、「関係国が」――まあ主として米ソですが、「さらに一段の熱意を持って協定成立に達することを、強く要請」する。また外務大臣は、さらに「引き続き積極的働きかけを行なう」、こう言っておられる。これはむろん議会で言っただけでなくて、いろいろあの手この手で主要関係国、米ソ等へ相当働きかけを行なっておられると思うのですが、具体的にどういうことをやっておられるか。ことにその後、御承知のように、これに関連してといいますか、あるいはこのことでないかもしれませんが、中共の核装置の爆発実験が近きにあるというような報道に伴って、いろいろ問題は複雑になっておるし、早く核停協定ができることが、第五、第六の核保有国を新たに作ることを実際上封ずる一番正しい近道だと思うのです。この点については、中共が核武装するから、じゃ、日本も核武装をしようか、そういうとんでもない考えにいくべきではなくて、あくまでも日本の非核武装を貫くという大原則の上に、なおかつ中共の核武装を絶対に阻止しなければならぬ。そのためには、この核実験禁止協定が幸いに最近米ソの間に接近の点もございますので、今のジュネーヴ十八分国会議に非常な努力を傾けて、何とか突破口を作るということが切実に必要なことは御同感だと思うのです。具体的に政府としてはどれほどの、総理大臣の施政方針演説に述べたごとく、いかなる努力をされているかをお示し願いたい。
  61. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御案内のように、核実験禁止の問題につきましては、政府ばかりでなく、各種団体におきましても世界的なアッピールを精力的に続けて参ったわけでありますが、しかしながら、遺憾ながらまだ見るべき成果を上げていないということを考えますと、私どもといたしましては、核保有国、大国の責任が非常に大きいと思うわけでございまして、核保有国を有効に規制するだけの力を持った国際協定というものの成立を期さなければ、実効が上がらないという基本的な立場に立ちまして、国連はもとより、ジュネーヴの軍縮会議におきましても、数次にわたってわが政府の意図するところを累次アッピールを続けてきているわけでございまして、曾祢さんも御承知のように、私どもがアッピールする主体になる場合には、何をおきましても、国連においてわが国の信用と申しますか、わが国に対する評価というものが高まってこなければならぬわけでございまして、一つのことをやるにいたしましても、その基盤になるわが国の信用、評価というものを高めるべく国連対策そのものを考えていかなければならぬわけでございます。幸いにいたしまして、御案内のことと思いますけれども、わが国の国連におけるポジションというものは、年とともに漸次高まりを見せてきておりますし、また、それに対する期待も高まってきておるような背景を持ちまして、今御指摘のような問題につきまして、今日までもやって参りましたが、今後も鋭意続けて参るつもりでございます。
  62. 曾禰益

    ○曾祢益君 そういういろいろ積み重ねなければならないことはわかりますけれども、そういういささか事務的な段階だけでなくて、たとえば日本総理が米ソの両首脳に特別の書簡を出して、そうして直接訴えるというようなことが非常に適切じゃないかと思うのです。アメリカ側から見ても、いわゆる核兵器の分散については非常に大きな悩みを持っている。ソ連のほうからも、率直に言って、中共の核武装には困ったものだと思っておるのが実情じゃないか。その点も考え合わせて、ぜひひとつ、方法論ですから申しませんけれども総理及び外務大臣国民に施政方針で言ったようなことを具体的にやってもらわないと、ごちゃごちゃと国連委員会あたりでやっているのでは、私はつまらないと思う。ぜひひとつ奮起を願いたい。  最後にいま一つだけ伺いますが、少し旧聞ですけれども大平外務大臣も出ていられた、アメリカに行かれたときのケネディ大統領のいわゆる中共封じ込め云々の問題ですが、私はその言葉じりをとらえて、やれ封じ込めと言ったのはあれは封じ込めじゃなくて阻止だと、そういうようなわれわれは単なるあげ足取りであってはならない。同時に政府も、そういう小手先でかわして済ますような問題じゃない。アメリカはアメリカの観点から、よしそれは間違っておっても、中共を含むアジアの共産主義の蔓延――広がることに対して、これをとめよう、こう思っておるのは事実です。私は、日本の多くの諸君は、世界に共産主義がどんどんふえないほうがいいと思っておることは事実だと思う。ただ、問題は、考えられるような、アメリカの言っているような、中共はスターリン主義だ――スターリン哲学、中共は膨張主義だ、そういう面もあるでしょう。確かに中ソ論争を見ればそういう面もありますが、しかし、だからといって、アメリカが今まで考えておったような意味の、ただ国際社会から締め出して、あるいは軍事的にも包囲してしまえばいい、経済的にも何もしないというような考えじゃなくて、アジアにおける共産主義の蔓延等に対して日本としてはどう対処するのがいいのか、こういう問題についての日本の答案といいますか、むしろ建設的なプランというものを、ケネディが言ったことに対して、むしろ池田日本の首相はこうだという、かわすだけでなくて、こっちからひとつ突っ込んでいくというようなところがあっていいんじゃないか。ああいうただかわしてばかりいるような低姿勢では私は因る。積極性がない。そこで、そういったようなアジアにおける中共の問題については、むしろ中共を国際社会に招き入れる。軍縮問題一つ考えてもそうでありましょうし、国連の問題についても私はそうだと思う。加えて、日本と中共との直接の関係一つ見ましても、やはり中共が非常な大きな経済政策の失敗で、農業政策の立て直しに非常な努力をしている場合に、そういう人道的な技術的、経済的な面についてはお助けしてあげる、こういうような立場でひとつ日本の中国政策というものを立てていくべきではないか、こう考えるのですが、ひとつ総理大臣のお考えを伺って、私の質問を終わります。
  63. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) まず御質問二つの点と思いますが、東南アジア等におきまする共産主義の浸透に対しましては、私はさきにアメリカへ行ったとき、あるいはヨーロッパへ行ったときにも、やはり低開発国の方方の生活の安定向上を先進国ははかることが絶対に必要だ、われわれはそのつもりでやっておる、これはもう各国とも同感であるのであります。われわれはこういう方向で今後進んでいきたいと思います。  それからまた、第二段の中共に対する考え方でございます。今国連に加入を認めるか認めないかということは、御承知のとおり、国連で重要案件として今後審議することになっている。ただ、日本と中共とにおきましては、私はやはり承認とかなんとかいう問題でなしに、経済的に関係を深めていきたいという方向でいっておるのであります。実は一昨年でございましたか、農産物の不作ということを聞きまして、ある筋を通しまして相当の穀物を寄付するという考えを持って交渉をしたことがあるのです。これはけられたわけでございますが、貿易におきましても、御承知のとおり、私はできるだけ増進していきたいという考えでいっております。しかし、それだからといって、今すぐ承認問題ということになりますと、これは大きい国際的の問題でございますから、やはり国連で相当審議して決定をすべき問題と考えております。
  64. 曾禰益

    ○曾祢益君 はなはだ不満足ですけれども、時間ですから、打ち切ります。
  65. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 総理大臣外務大臣、おそろいでおいでになっておりますたいへんいい機会でありまするので、私からも一言所見を述べて、両大臣のお考えを伺いたいと思うのであります。それは時局問題でも何でもありません。全く違った問題ではありまするけれども、しかし、日本外交の根本問題と心得ますゆえに、あえてお尋ねを申し上げるわけでございます。  日本国連を外交の基調としておるということは、歴代の内閣が言われておるところであり、また、現内閣もその根本方針に基づいてやっておられることと承知しておりまするけれども、これは当然の話でなければなりません。そしてまた、日本のニューヨークにおきまする代表部は、これまた非常によく活動しておられまして、そして日本国連におきまする地位もだんだん高まって参りまするし、また、参加各国の信頼もふえてきたように見えまするので、これは私はたいへん喜ばしいことと存じておる次第であります。しかしながら、日本があずかっておる、もしくは力を入れている問題というのは、むしろ当面の問題を主としておられるのであって、国連の根本問題には触れておられないといううらみが私はあると思う。現にあると見るわけでございます。何かと申しまするならば、それは、国連での一番大きなものは軍縮の問題でありまして、この軍縮問題については、国連始まって以来、もう十七年にもなりまするが、まだめどがつかないというような、非常な不幸な場面に遭遇しておることでありまするけれども、この軍縮なるものを、世界的の軍縮を実現するということが、いかに世界の平和の維持の上に必要なことであるか、また、人類の福祉のために望ましいことであるかということは、申すまでもございません。そういう大きな問題であるのに、日本はそれに対してひとつも関与もしなければ、貢献もしていないというのが事実でございます。なるほど、ああいう大きないくさをやったあと日本としては武装を解除し、もしくは列国に対する遠慮もありましたろうし、また、列国のほうから言いましても、戦争後直ちに日本を軍縮問題に参加させるなんていう気持も起こらなかったろうと思うのでありまするけれども、もうすでに十何年もたった今日、また国連日本が参加しましてからもう七年目にもなります今日としましては、この根本問題に日本が取り組むということは当然な話であろうと思うのであります。それには、日本としましては、過去膨大な陸軍を持っておった時代もありまするし、海軍も世界で三番目の海軍力を持っておったという、これはめったにない経験を持っていた国でありまするので、そしてまた、現在におきましては武装を解除し、そして全く軍縮という問題については独立、中立の立場に立っておるというのが日本であります。こういう国は、私は、世界中探しましても日本以外にはないだろうと思うのであります。今や日本では、自分たちは武装を解除しておるんだ、であるからして、軍縮の問題などには関与する必要がないとか、全く興味を持ち得ないとかいうような考え方もあるようでありまするけれども、それは非常に間違った考えであって、自分たちが武装を解除しておればこそ、世界全般に対しても、同じように武装を解除をしなければならないのであって、それを達成するということは、日本にとっては非常な大きな役目であろうかと思うのであります。幸いに、ソビエトも、またアメリカもそうでありまするけれども、全面軍縮ということを言い出しております。もちろん、これは口先のことである場合が多いようでありまするけれども、しかしながら、ソビエトも全面軍縮ということを言っているのを幸いとしまして、この全面軍縮を実現させるために日本努力をしなければならぬ。そのためには、今では軍縮会議に入っておりませんけれども日本もこれに参加するという努力をしなければなりますまいけれども、その前に、私は、久しく軍縮から遠ざかっておりまする日本としましては、十分に研究調査をしてかからなければならぬ問題だと思う。それには、今申し上げました昔の経験を持った専門家たちもおりましょうから、この人たちの知恵を借りるということも必要でありましょうし、そういう学者なり経験家なりというものを集めた研究機関を設けるということは、これはどうしても政府が音頭をとらなければできない相談だと思うのでありまして、民間にそれをまかせておくというのでは、らちがあかないように思います。つきましては、日本が軍縮について重要な考えを持つということが根本の問題であり、そしてそのためには、国連の軍縮に直接参加するということ、また、その準備行動として、今申し上げたような研究調査機関を設けるということ、そういうことに対して、政府はこれは急いだ問題ではございませんけれどもほんとうに根本的に考えていかなければならぬ問題であろうと思いまするので、あえて時間をさいていだだいてお尋ねをするわけでございます。
  66. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今、佐藤先生が提起された問題は、平和の問題に関連いたしまして、最大の問題であることは、私どもも同感にたえないところでございます。そこで、先ほど曾祢先生にもお答え申し上げましたように、当面の問題としては、核停の問題がございます。核停の問題の処理が軍縮一般の問題解決への大きな接近になると思います。したがいまして、この分野におきましては、幸いに地下爆発の探知問題で今ようやく歩み寄りの気配が見えておりまして、この帰趨が、今提起された軍縮一般にとって決定的な重要な問題だと思うのでございます。要するに、両陣営の不信感というものの解消ということでございますので、一面に探知技術の発達がこれを助け、同時に米ソ両国も、もとより国内的、財政的の理由から無制限の軍拡ということに対しては、私どもの想像以上に深刻な課題になっているようでございまして、幸いにこの機運が核爆発停止問題で一つの成果をつかみ得たならば、それは軍縮一般に対して大きな手がかりになると思っているわけでございます。一方、それではわが国といたしまして、軍縮一般の問題につきましてどのような姿勢で臨むかということでございますが、正直なところ、ただいまのところ、国連政策というものを振り返って見ますると、わが国としては経済社会理事会を中核としての活動に重点が置かれ、あるいは婦人の地位、その他われわれが持っている陣容で、そして他国の選挙を受けてやらなければいけない関係上、わが国が多数の委員会に顔を出すということも事実不可能でございますので、重点を経済、社会の問題に置いておったわけでございます。したがって、一番大事な軍縮一般の問題についての努力が足らぬじゃないかというおしかりは当然受けなければならないことだと思うのでございます。しかし、私は曾祢さんの御質問にお答え申し上げたとおり、こういう努力を通じまして、やはり国連におけるわが国の地位を高めて参らなければならぬ、そうすることがすべての問題に対する責任に対しまして決定的なことであると存じまして、じみちな努力を重ねてきたわけでございます。したがいまして、軍縮一般の問題が核心的な問題であることはよく承知いたしておるわけでございまして、それを前提として、今御提案がございましたような、まず国連での派手な活動を始める前に、国内におきまして、こういう問題についての調査、考究、分析、判断、そういったものを十分用意をしておけといろ建設的な御提案につきましては、全然同感でございます。そういう方面に私どもも力点を置いて工夫をして参りたいと思います。
  67. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 一言つけ加えて申し上げたいと思いますが、ただいまのお話たいへんけっこうなことだと思うのでございます。核停の問題に対しましてのお考えも、まことに妥当なお考えだと思うのでございます。核停の問題それ自身が軍縮の問題全部でないことは、むろん今お話がございましたとおりでございます。軍縮全般に対しての日本の世界的な大きな役割というものを、ぜひ真剣に考えていただきたいと思うのでございます。そして、日本がちょうど東西両陣営の中間に位しておりますこの地位を利用しまして、米ソの間の考えの食い違い、それらを真剣に取り上げて研究をして、どうしたらばこの間に妥協点を見出すことができるか、両方の陣営を全面軍縮のほうに引っぱっていくことができるかということについて真剣な御研究を願う、こういうことにお願いしたいと思います。
  68. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お考えますことにごもっともでございます。十分御意見を心得まして、努力したいと存じます。
  69. 野坂參三

    ○野坂参三君 残念ながら、私の質問の時間はもうなくなったのです。参議院といえば良識の府と言われております。良識といえば民主主義のことだと思いますけれども民主主義といえば、少数派の意見を十分述べさして、それにも時間を十分与える、これが民主主義のルールの一つだと思います。ところが、こうした国の運命に関するような問題が論議されるときにもわずか五分。今曾祢君と話しましたけれども、少数派としてわずかに五分、十分、これはあまりにひどいじゃないか。ですから、私は、これは総理大臣に、質問じゃありません。委員長、理事の皆様及び同僚委員がこの問題についてもう少し考えていただきたい、こういうことをまず申し上げて、日韓問題についていろいろ申し上げたいことがありますし、お聞きしたいこともありますけれども、これは略します。ただ、一、二の点、時間内で質問したいと思います。  それは、十八日の衆議院外務委員会の問答の中で、総理朴政権について、この政権は不安定政権だとは見ていない、いたずらに右顧左眄すべきではない、また続いて、朴政府は安定しているものとしてやっている。これが三日前でございます。こういうふうに言われております。お聞きしたいのは、第一に、今も、この瞬間においても、やはり同じように考えておられるのか、朴政権はりっぱな安定政権であると、こういうふうに考えておられるのかどうか。第二には、もし考えておられないとするならば、池田総理外務大臣は重大な見通しの間違い、誤算、政治的な重大な誤りを犯した、こう見てもいいのじゃないかと思います。第三には、今のこの事態において、韓国政情の見通し、こまかい点は私聞きたくはありません、どういう見通しを持たれておりますかどうか。まず、その三点だけをお聞きしたいと思います。
  70. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 韓国朴政権は安定政権と心得ております。したがって、われわれはこれと交渉することはあやまちだったとは思いません。そうして、現在の韓国政情は、民政移管の問題のいろいろな困難な事情がございましょう。これはわれわれは十分同情と好意を持ってやっていかなければならぬと思っております。
  71. 野坂參三

    ○野坂参三君 見通しについて、もう少し具体的にお話しになって下さい。安定であるかどうかをわれわれは知りたいと思います。
  72. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 他国の政情につきましては、一国の総理がとやかく言うべき筋合いではないと思います。
  73. 野坂參三

    ○野坂参三君 外務大臣にお尋ねいたします。
  74. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私は評論家ではございませんから、政情の分析、判断ということを私十分に申し上げる立場にないわけでございます。ただ私は、総理も申し上げましたとおり、今の段階は民主化への苦悶だと思うのでございます。政府に対して反対する意見が活発に出ておるということは、これまた民主化への道程を韓国は苦悶のうちに踏みつつあると思うわけでございまして、現在の方向は、内外に公約いたしました民主化への道程であると判断いたしております。しからば、今後の見通しはどうかということでございますが、これもまた、私は予言者ではございませんから、先にどうなるかということを申し上げる自信はございませんけれども、今日の事態は流動いたしておりますし、また、相当の民主化への苦悶はなお続くものと思います。一日も早くこういった事態の困難を克服されまして、民主主義政治の基盤ができることをこいねがっております。
  75. 野坂參三

    ○野坂参三君 もう時間が来ましたが、もう一度お聞きしたいのは、だれが見ても、常識的にも、今の韓国政権が安定していると考えないと思うのです。池田さんも腹の中ではそう思っておられると思います。あの朴が政権から離れ、大平外務大臣交渉相手の金は政界から退いている。一体どういう政府ができるか、だれも見通しがつかないと思います。こういう事態をまだ安定と考えておられるというようなことをここで言われること自体に、私は根本的な問題があると思うのです。先ほど岡田君が、この問題について疑惑があると言われたが、疑惑という言葉よりも、国民は大きな不信を持っているということです。今の政府にあのような外交をずっとやらしていいのだろうか、日本は一体どこに持っていかれるのだろうか、こういう深刻な不安があるのです。こういう問題はあなたはお考えになるべきです。しかも、千八百億のあの膨大な金、あれをただでやるのです、あの朴政権に。血なまぐさい政権、それがもう倒れて、またこれと続けて交渉を始めるということに国民は重大な不安を持っております。この点だけを私は申し上げて、私の質問を打ち切ります。
  76. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 外務大臣がお残りになりますから、外務大臣に対する質問がありましたら……。
  77. 森元治郎

    森元治郎君 佐藤委員質問に関連して。  あなたが地下核爆発実験に触れた御答弁をなさったから、一点だけ聞きたいのですが、この米ソ間の核爆発実験協定、これについての交渉については日本はあずかり知っているのかどうか。ということは、北海道に封印地震計――黒い箱を設置するということをケネディ大統領が話した、ソビエトとの往復書簡の中で。そこで、当然日本には連絡があったことと思うのですが、いかがですか。
  78. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 連絡はありません。これは、たとえば北海道というように、例示的に言われたことのようでございまして、米ソ間の話し合いによりまして、北海道に特に置こうということがございますれば、正式に日本政府に要請するであろうということでございます。
  79. 森元治郎

    森元治郎君 それで、私おかしいと思うのは、あのフルシチョフとケネディとが、去年の暮れから今年の一月初めにかけて三回の往復文書があったわけです。交渉が、三回の往復書簡が。その中で、ケネディさんは、北海道、インド、パキスタン、こういう名前をメンションしている。ところがフルシチョフの手紙を見ると、これに答えて、 やはり同じく日本、パキスタン、インドの名前をあげながら、それにダッショをして、ナチュラリーという英語で始まって、関係国の承諾を得てと、ていねいに書いてある。ケネディさんのほうには書いてない。これはおそらく行政協定の第八条だったかと思いますが、地震計の設置というような協定があります。おそらくそれがあるので、日本政府にあらかじめ連絡をした、協議はしないまでも連絡をしているから、だから、関係国の承認を得て、という言葉が入っていないのかなと思ったのだが、もし連絡もなし、ただ思いつきで、他国の領土をソビエトとの交渉の中で取り上げるということは非礼ではないかと思うが、どうですか。
  80. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どものほうから問い合わせましたところ、私が先ほど答えたように、あれは、たとえば、ということで申し上げたのでございまして、確定的なものではございません。確定的になって参りましたならば、日本政府に正式に御相談申し上げるというお答えでありました。
  81. 森元治郎

    森元治郎君 連絡はなかったのですか。
  82. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 事前にはございませんでした。
  83. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は、外務大臣にアメリカの日本の綿製品の輸入に対する規制の問題についてお伺いをいたします。これは私ども、あの報道を見ましたときに、アメリカは日本に対しましては盛んに貿易の自由化、それから為替の自由化ということを要求して参りました。そしてまた、アメリカは世界経済への寄与として関税を一括引き下げるというようなことを、その方針として打ち出している。ところが、日本からの綿製品の輸入に関しましては、きわめて強い態度をもって臨んできておるのであります。しかも、アメリカの日本品に対する規制というのは、単に綿製品だけではない。実は前の外務委員会でもって私は外務省に資料を要求いたしまして、きょうここに資料を提出されたのでありますが、これによりましても、金属洋食器、タイプライター・リボン用綿布、体温計、普通板ガラス、ウイルトン・カーペットというようなものが、すでに関税割当、関税引き上げ等によりまして、非常に制限をされておるのであります。そのほか、自主規制という名のもとに、事実上アメリカの輸入をずいぶんわれわれのほうで押さえておるわけであります。まあ今までそういう方針でやってきたんでありますが、ことに綿製品の規制ということになりますというと、これは非常に大きなショックを日本の紡績界に与えました。しかし、それは単に日本の紡績界に与ただけでなくて、日本国民が、一体日本はアメリカに対して非常に低姿勢でいつもアメリカの言うことをよく聞いておるにもかかわりませず、アメリカさんのほうでもってこういうひどい扱いをしてくるということで、ずいぶん国民の間にもアメリカのやり方に対する不信といいますか、それが高まってきておるのであります。おそらく綿製品のような日本としても相当まだ重要な輸出商品が、特にアメリカでこういう扱いを受けたということになりますというと、今後ほかの国においてもそういう扱いがまねられてくるおそれもあります。また、アメリカ自身も綿製品でこの扱いをやって、それを日本政府も泣く泣く承知したということになりますと、今後ほかの商品にも及んでくると思うのであります。単にそればかりではありません。バイ・アメリカン、シップ・アメリカンの方針によりまして、他の方面にも非常に影響が大きいのであります。アメリカの日本に対するこういうような態度というものは、少々日本をなめているのではないかと思う。口には、日本を大切にし、日本と親善関係を進め、経済関係もうまくやっていくのだということを言っておりますし、また一昨年、昨年と二回にわたって、日本からたくさん大臣も出て行って話をしておりますけれども、そのあげくが、これでは、日本国民は、一体日本政府は何をやっているのだ、こういうことになろうと思うのでありますが、大平外務大臣は、この綿製品の規制問題に対してどういう態度をもって対処せられようとするのか。ただ、これを突きつけられて、あわてふためいておるだけであってはならぬと思うのです。また、今後この問題について十分に日本側の意見を入れさせるようでないと、次から次に及んでくるということを考えるときに、これは容易ならぬ問題と思うのですが、この問題に対する大平外務大臣の方針をお聞きしたいのであります。
  84. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 問題を一般的に申し上げる前に、綿製品の問題だけに一応限って申しますと、これは綿製品長期協定というものが去年できまして、ことしの一月から新協定によってやるという国際的な取りきめがございます。それに基づきましてアメリカ政府一つの提案をいたしてきたことは事実でございます。それを中心に今両国の間で論議いたしておるわけでございますが、一つの困難は、綿製品協定の解釈の問題で、彼此の間に解釈の相違がございます。それから、事計数のことでございまして、輸出ベースでとるか輸入ベースでとるか、それから、その細分がどうなっているか、これは両方の算術がうまく合わないのです。したがって、こういう問題は共通の理解に立たなければいけませんし、共通の数字を持たなければいけませんから、今両国でやっておりますことは、そういう基礎的な事実を確認し合おうということでやっております。で、私どもの方針といたしましては、この問題は、かくして得られた客観的なデータを基礎にいたしまして、綿製品協定に対する解釈も帰一いたしまして、二国間の努力によりまして妥結いたしたいという基本の方針、そこに力点を置いてやっております。しかし、事国際取りきめでございまするし、ガットの関係もございますので、場合によってはガットの場において論議していただくような場合があるかもしらぬということは、ガット当局のほうにインフォームいたしておきました。しかしながら、本来外交といたしましては、二国間で円満な解決を見るのが本位でございますので、そこに重点を置いてやっておるというのが今日の段階でございまして、決定的な場合に来ておるわけじゃないので、そういうものを砕いた上で解決をはかって参りたいと思います。  それから、一般的な日米間の貿易問題でございまするが、岡田委員指摘のように、貿易は本来自由でなければいけないし、いろいろな規制を一方的に課してくるというようなことは公正でない、そのとおりでございます。しからば、アメリカ側の今までの態度というものは一体それじゃ理不尽なものかというと、私どもアメリカの態度を、貿易を自由化したいという願望、その努力と、国内のいろいろな困難があるにかかわりませず、アメリカ政府も一生懸命に努力いたしておる事実は認めなければならぬと思います。御指摘のバイ・アメリカンの政策にいたしましても、これは御案内のように、アメリカ政府が品物をその予算で買う場合、原則は自由である、しかし、これは国際収支が逆調である段階において、こういう制限のもとにアメリカ商品あるいはアメリカの工事人に請け負わせるという一つの制限を設けたわけでございます。そういうことはけしからんと言うわけでございますが、しからば、日本立場はどうかというと、日本の場合は百パーセント、バイ・ジャパニーズです。ですから日本品を買わしてやろうとアメリカと交渉しようという場合には、お前のほうはこんなに制約を設けちゃいかぬと言うわけにもいきません。それじゃ日本はどうしているかといえば、日本日本品を買っているということでございますから、本来これはフェアでなければいかぬわけでございまして、ただ、私どもは貿易の自由化の原則というものは、方針としてその立場に立って努力せなければなりませんから、アメリカの政策が不当にアメリカの国内の産業の保護に傾くというようなことになれば、これに対して鼓を鳴らして反省を、是正を求めることは堂々とやらなければならぬと思うわけでございまして、そういう意味の努力は私どももやっておりますし、アメリカ自身も貿易自由化の方向には、わが国に対しましても、これは自由化してくれないかというような要請はあることは当然だと思うわけでございます。しかし、全体として、しからば、対米貿易収支はどうなっておるかと申しますと、去年は十五億ドルでございました。一昨年の三三・二%増になっております。輸入は十六億三千万ドル、一昨年に比し一五・九%の減になって、資本取引を入れますと約二億ドルの黒字を記録いたしておるわけでございます。昨年の対米輸出はわが国の総輸出の三一・三%でございまして、私どもにとって非常に大事な市場でございます。この間に一点の曇りがあっちゃいかぬと思うのでありまして、お互いの努力、お互いの真意、お互いの努力に対しまして正当な評価の上に立ちまして、信頼の上に立ってこの拡大を続けて参らなければならぬと思うのでございます。しかし、御案内のように、アメリカも、日本も、それぞれ国内産業をかかえておりまするから、利害の先鋭な対立があることは、もう御案内のとおりでございまして、これは両政府とも非常に苦心いたしておるところでございます。これは日本ばかりにあるわけじゃなくて、アメリカ側にも非常に深刻な国内問題であることはもちろん御承知のとおりでございます。問題は、早く自由化の線に沿いまして、相互に十分な理解を持ってお互いに話し合いを続けていかなければならぬと考えております。
  85. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 こまかい具体的な個々の交渉の点については私触れませんが、ただいまのお話を伺っておりますと、アメリカと両方努力をしておる、こういうことでございますが、しかし、この綿製品だけで終わるのかどうか。私は今後羊毛製品の問題が起こってくるだろうと思う。他にも波及してくることがあるのじゃないかと思いますが、政府は今後どういうような種類にこれと同じようなことが起こるか、その見通しをお伺いしたい。
  86. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) どういうことが起こってくるかさだかな見通しがございませんけれども、広範な協力関係にある国でありますし、日本の最大の顧客でもありまするので、先ほど申しましたような立場に立ちまして、どういう問題が起こりましても、二国間で話してやりたいと思っております。
  87. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 現実に羊毛製品について起こっておるのじゃないですか。
  88. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のように、羊毛製品につきましては、アメリカの商品の二〇%ないし一七・五%程度に押えたいということが伝えられております。しかし、どのような方法でこの目的を達しようとするのか、私どものほうでまだわかっておりません。また話がありますれば、話し合っていきたいと思います。
  89. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういたしますと、これからも起こってくる可能性があることは、羊毛製品の例を見てもわかるわけです。アメリカは盛んに貿易の自由化ということを言っておるのですけれども、この点についてはかなり頑強に、実は他国には自由化をしい、しかし自国に対しては保護貿易政策の立場から、他国に対して規制を強化する、こういうことになっておるのです。これは根本的にどうも私は許されないのじゃないかと思うのであります。ガット三十五条の問題にいたしましてもそうでございますが、政府としては、こういう際には、やはり単に日本だけでなくて、世界貿易全体にも響く問題であるので、これらはやはり日本政府としては提訴するなり何なりするという根本態度をはっきりきめて、そうしてアメリカに交渉をすべきであるし、それからまた、交渉が不調に終わった場合には提訴する、そうしてこの問題についてはあくまで日本立場を主張していくんだ、単に二国間だけでなくて国際問題として取り上げていくのだという態度をとられるかどうか、それをお伺いしたい。
  90. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 原則として二国間で話し合いをつけていきたいということにあくまで力点を置いてやるつもりであります。万一、不幸にして妥結にならなかったという場合には、仰せのように国際機関に提訴いたしまして、問題を世界世論で御判断いただくという場合もあり得るかもしれませんけれども、私どもといたしましては、あくまで二国間で片づけることが本義であると心得ております。しんぼう強くやるつもりであります。
  91. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 もう一点お伺いいたしますが、これは原子力潜水艦の日本への寄港の問題についてであります。アメリカ政府のほうから原子力潜水艦の日本寄港を求められて参ったその交渉の現段階、どうなっておるのか、お聞かせ願います。
  92. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 本年一月九日にライシャワー大使の来訪を受けまして、原子力潜水艦、ノーテラス型潜水艦の寄港問題について御相談がございました。そこで、私どもとしては、この寄港という問題が安全の角度から見て大丈夫かどうかという点、それから万一損害を受けた場合の補償はどう考えているかという、大まかに言って二点につきまして満足する答えが得られれば、安保条約の建前上から申しましても差しつかえなかろうという判断をしたわけでございます。それで先方に、各省と打ち合わせの上、詳細な質問書を提出いたしまして、安全の問題に関しましては、先般一応の返事が参りましたので、今各省の間で鋭意検討をいたしておるということでございます。それから、補償の問題につきましては、まだ御返事をちょうだいいたしておりません。
  93. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これは日本政府としては、根本的には、その条件がアメリカのほうでのめれば寄港を許す、こういうことになるわけでありますが、アメリカ側は一体いつごろからノーテラス型の原子力潜水艦の寄港をしたいというふうに考えておりますか。
  94. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その点はまだ判然といたしておりません。その前提になるコンホーメーションをやっておる段階です。
  95. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 寄港の申し入れがあったということは、何かやはり寄港についての目的というものがあろうと思うのであります。その目的は、単に原子力潜水艦の補給あるいは乗組員の休養という問題だけかどうか。あるいは他の軍事的目的を持って寄港するということを求められてきているのかどうか。そ  の点はどうでしょうか。
  96. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 兵員の休養と聞いております。
  97. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 とにかく原子力潜水艦は航続距離も長いし、そしてまた、相当な速力を持っているわけであります。何も日本に兵員の休養に寄らなくたって、休養するところはアメリカの西海岸にもあるし、ハワイにもあるし、グアム島にもあるし、いろいろだと思うのでありますけれども、どうも私は単に兵員の休養だけにはとどまらないようなことが考えられるのです。これは私の考えでありますから別といたしまして、先ほどのお話ですと、日米安全保障条約を締結しておるから、それに基づいて許すのだというようなお話でございますが、この潜水艦が日本に入港をするという場合には、この入港は日本政府あるいは日本当局に対して通告があり、また出ていくときには立ち去る、出港するということの通告があるのかどうか。その点は、今までのアメリカの軍艦は、入るときも出るときも通告がないのでありますけれども、通告なしでいつでも勝手に何隻でも入ってこられるものなのかどうか。その点をお伺いしたい。
  98. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 事務当局からその点についてはお答えいたします。
  99. 竹内春海

    説明員(竹内春海君) 通告がございます。
  100. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうすると、入るとき、出るとき、ともに通告があるわけなんですか。
  101. 竹内春海

    説明員(竹内春海君) 両方あると存じます。
  102. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうすれば、このノーテラス型の原子力潜水艦が日本にいる隻数とか時期とかいうことは、常に日本政府には明らかになっておる、こういうことですか。
  103. 竹内春海

    説明員(竹内春海君) そのようになると思います。
  104. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 先ほど日米安全保障条約に基づいて云々というお話であったのでありますが、実は私が心配するのは、単にこの原子力潜水艦が兵員を休養させるために、あるいは補給のために寄港するというのではあまり問題ないかもしれませんが、実は日本には軍事基地がある。アメリカの軍事基地、海軍の基地が、大きいのは横須賀あるいは佐世保にあるわけであります。こういうところに入ってくるアメリカの軍艦というものは、一々日本政府に対して、入る、出るを通告されておらぬし、ことに極東における軍事的緊張があって出動する場合には、おそらく作戦上その他からして、出港等については、何らアメリカ軍が日本に通告をして出ていくことにもなっていないというふうに思います。こういうふうになっておるのですから、原子力潜水艦が、アメリカが今日本に持っておるアメリカの軍事基地に入港するときには、これは一体どういうことになるのですか。先ほど入港の通知があるとか、あるいは出ていくときに通知があるとかいうのは、横浜とかそういうような日本側の港へ入る場合の通告であって、アメリカの軍事基地へ入る場合の通告はあるのかないのか。その点もひとつ明らかにしていただきたい。
  105. 竹内春海

    説明員(竹内春海君) これまで、私どもがアメリカから承知しておるところでは、原子力潜水艦につきましては、日本側に通報があると承知しております。
  106. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 その日本側に通報があるというのは、アメリカの軍事基地として使用されておる横須賀とか佐世保に入る場合も通告があるのかどうか。
  107. 竹内春海

    説明員(竹内春海君) 原子力潜水艦につきましては、そのように承知しております。
  108. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 休養ということだけに、あるいは補給に限られておると言われておりますけれども、もしこの太平洋に何か緊張が起こりまして、そしてアメリカの海軍が活動するような場合に、戦争にいかぬまでも、この前のキューバ事件のときのいわゆる警戒体制というようなことで、実際作戦行動に出るような場合に、この原子力潜水艦は、やはり日本におけるアメリカの軍事基地を中心として活動するということになるのじゃないですか。その点はどういうふうになっておりますか、話し合いはどうなっていますか。
  109. 竹内春海

    説明員(竹内春海君) これは通常の場合においては、ということになっております。
  110. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 通常でない場合は、何ら通告なしで入ってき、そして何ら日本側に通告なしでも活動することができるということになるのじゃないですか。その点。
  111. 中川融

    政府委員(中川融君) ただいまお尋ねのような、戦闘行動に日本の基地から出るという場合には、当然事前協議の対象になるわけでございます。
  112. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私どもはそれを非常におそれておるんです。今、原子力潜水艦が日本へ寄港する、またノーテラス型で核兵器を積んでおらない、こういうことでありますけれども、これが許されるということになると、次に、だんだんにアメリカのほうでもってポラリスを積んだ潜水艦がふえてくる、その次には日本側にそれを要求してくるのではないかということになっておる。しかも、それが単なる寄港でなくて、先ほど言われたように、事前通告があるにせよ、ないにせよ、日本の基地を使うということになって参りますれば、日本に核兵器が置かれたということと同じようなことになってくるわけであります。今日、アメリカ側は、トルコにおける中距離弾道弾、あるいはイタリアの中距離弾道弾の基地を引き揚げるということも行なわれようとしております。そのかわり、トルコに対してはポラリスを載せた潜水艦の基地を求めておるし、また地中海にも求めておる。イタリアは断わったと聞いておりますけれども、そういうふうで、アメリカが新しいその戦略に基づいてポラリス型潜水艦を世界に配置するそのときに、太平洋にもこれを配置するという問題が――今でも配置をしておるわけでありますが、ことに今後それが増加されてくるということになりますと、日本に対してもその配置を要求してくるということも考えられる。その前提として、まずノーテラス型の原子力潜水艦の日本の寄港ということを日本に要求してきたのではないか。これは私がそういうふうに考えておるのでありますが、そういうふうな観点から見ますというと、このノーテラス型原子力潜水艦の日本寄港の問題は、単なる兵員の休養とか補給とかの問題じゃない。こういう戦略に連なる問題と考えざるを得ないのです。私どもは、その際における日本の置かれた危険な地位ということも考えなければなりませんし、日本国民がやはり核兵器に持っておる恐怖、不安、それがやはりこの型の潜水艦が今後ポラリス型の潜水艦にかわるということも予想いたしますというと、非常に危険を感ずるわけであります。その点について外務大臣は将来そういうことがないように、日本政府としてアメリカのほうに保障を取りつける、そしてそれを国民に発表して国民を安心させるだけの用意があるかどうか。私は一番いいのは、このノーテラス型の潜水艦も航続能力も大きいのだし、それから速力も早いのだから、何も日本に、ことさら日本人に不安を与えてまで寄港する必要がないと思うのですが、これはお断わりできないのかどうか。その点ひとつお伺いしたい。
  113. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 安保条約上、これは核兵器じゃございませんので、日本が有権的に断わるということはできません。先方が今までの慣例に従って一応相談、先方から相談を持ちかけてきておるという状況でございます。で、このノーテラス型の潜水艦の寄港問題と、今言うポラリス型の寄港問題とは、全然別でございます。アメリカは日本にポラリスを寄港させるという意思を持っておりません。また万一そういうことが起りましても、これは安保条約の上から申しまして、明らかにこれは事前協議の対象となるわけでございまして、日本政府はただいままで決して核武装はしない、核兵器の持ち込みは許さないという不動の方針をとっておりますことは、御案内のとおりでございます。
  114. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 しかし、この問題については、将来アメリカのほうから、ノーテラス型にかえてポラリスを積んだ潜水艦の寄港を要求してくるのではないか。これは私もそういう懸念を持っておりますし、国民の間にもそういう懸念を持っておるものが多いと思う。だから、そういうことがアメリカ側ではっきりしないならしない、あるいは日本政府としてはそういうことを拒否するなら拒否するというようなことについて、はっきりした取りきめなり何なりを国民に発表して、そして国民からそういう不安と疑念を取り除くというような用意はありませんか。
  115. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政府を御信頼いただきたいのでございますが、アメリカ側はそういう気持を持っておりません。それから、日本政府は核兵器の持ち込みは許さないということを内外に宣明いたしておるわけでありますし、この入港問題というのは、ポラリス型の潜水艦を寄港するという問題は、これは明らかに安保条約の事前協議の対象になるわけでございまして、事前協議を受ける日本政府としては、そういう確立した方針でやっているのだということを御信頼いただきたいと思います。
  116. 森元治郎

    森元治郎君 関連して。さっき政府委員答弁を聞いていると、軍艦、海軍士官の運転する軍艦の基地入港については、ある場合には連絡がなくてもいいような御答弁があったように思うのですが、一切の軍艦というものは、慣例により義務的にその国に向かって許可を求める許可といってもそうむずかしいことじゃありませんが、一つの形式をとって必ずやるものだと思うのですが、どうですか。
  117. 中川融

    政府委員(中川融君) 一般原則としては、ただいま森委員の御指摘のように、国際法上、一国がほかの国に自分の軍艦を派遣するという際には、相手国の同意を一々取りつけなければいけないわけでございます。しかしながら、アメリカとの関係では安保条約がございますので、アメリカの軍艦もしくは軍隊は日本における施設区域を利用できるということになっておることは御承知のとおりでございます。
  118. 森元治郎

    森元治郎君 その場合でも、通告ぐらいは当然……たとえば横須賀港務部というところにあるはずだと思うのですが。
  119. 中川融

    政府委員(中川融君) 安保条約に基きます地位協定の第五条で、アメリカの公船が日本に入る場合のことを書いてございます。それによりますと、開港に入る場合には、通常の場合日本当局に事前に通報するということになっておるわけでございます。しかしこれは開港でございまして、いわゆる軍事基地につきましては、安保条約及び地位協定上は、事前に通報する義務は書いてないわけでございます。しかし、実際問題としては、アメリカ軍の軍事施設には日本の防衛庁の人がおるわけでございまして、事実問題として通報を受けておる、かようなことに相なっております。
  120. 森元治郎

    森元治郎君 これは問題です。大臣、その原子船寄港問題というのは大騒ぎしておりますが、実は先ほど条約局長の御説明のように、一般の場合は国際礼譲として相手国に協力を求める。そこで一昨年池田さんがアメリカに行かれたときにケネディ大統領と会って、その際何かの折に話が出て、うちのほうの新しいのを少し回航してみたいのだ、若い者も遊びたいだろうし、疲れもするだろうから、地球を何周でももぐれるだけの力はあるが、やはりほかのほうがいいのだ、ちょっと上がってみたいがどうかねと言ったら、いらっしゃいと、こういうことがあったから、私は、一応形式をとって、行きたいが呼んで下さいという話し合いを申し入れてきたんだ、こういうふうに私は信じているのですが、いかがですか。
  121. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは一昨年そういう話があったということは聞いておりますけれども、まだ、原子力推進をもってする軍艦というものに対して、国民が受ける感じから申しましても、これはよほど慎重に取り扱わなければならぬというようなお話であったと思うのです。その後、御案内のように、原子力潜水艦が太平洋水域の各港に入って何ら問題になかったということでございまするし、だんだんと国民認識も熟してきたように私ども判断いたしまして、安全ないし補償上満足する状態であれば受け入れて差しつかえないということで、あらためて政府のほうでそう判断いたしておる段階でございます。
  122. 森元治郎

    森元治郎君 呼んだか呼ばないか、いらっしゃいということを総理が言ったか。
  123. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういうことは言ったことありません。
  124. 曾禰益

    ○曾祢益君 資料要求をしたいのですが、日韓に関連して、特に請求権問題に関連してこういう資料を出してもらいたい。つまり、分離国家に対して母国のほうからいわゆる何か援助を出した、そういう点の先例というものをひとつ出してもらいたい。それはしかし、こういう砂をかむようなものでなくて、もっと議員が困っちゃうぐらいの膨大な資料でもけっこうです。まじめな話なんですよ。第一次世界戦争の後にオットマン帝国からいろいろな国が分離した。あるいはオーストリア・ハンガリー帝国が分離した。そういう場合に、いわゆる連合国側になって戦った国、そうでない国、いろいろある。それらの国々と母国との間のいろいろな債権、債務、あるいは公有財産の譲渡、いわゆる譲渡権の問題がどういうことになっているか、当然調べられていると思うのです。ですから、単に贈与ばかりでなくて、そういう点も、第一次世界戦争後に母国から分離した国におけるそういう債権、債務継承とそれから贈与の問題、それから第二次世界戦後に、これは本国と戦ったというようなところは別にして、主として平穏無事に母国から分離していった、たとえば英連邦におけるインド、ビルマその他のこういう分離の場合、それから最近のフランスのアフリカ帝国の解体に伴う例、全部を出せとは言いませんけれども、そういう点から考えて、つまり大平構想をいわばジャスティファイするような何かがあるならば、それもぜひお出し願いたい、こういう意味ですから、これは冗談じゃなくて、こういう表みたいのじゃなくて、もっとりっぱな調書を出して下さい。どうせおありになるだろうと思いますけれども、この次の委員会までにぜひそういう調書をお出し下さい。お願いいたします。
  125. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今の資料の点は、ただいま一応のものがございますが、今曾祢先生の言われたように詳細な点にわたっているかどうか、確信は持てませんが、今外務省にありますものは、さっそく出します。なお、突っ込んで考究すべきものは、また資料を取り寄せるようにいたします。
  126. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 もう一つ日韓関係についての資料ですが、それは大平金会談によって、大体こちらからお金を出して請求権問題は片づいた。全部片づいたのかと思ったら、韓国人の個人の個々の請求権はあるという話が出てきた。そうすると、個々の請求権があるとすれば、どういう種類の請求権か、それは総額どれくらいになるか、その点の資料がありましたら、ないはずはないと思いますので、出していただきたい。
  127. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは衆議際のほうでも、その問題ばかりでなく、全体の請求権実態について御請求がございまして、私どももある段階では出さにゃいかんと思っております。ただ、せっかく交渉中でございますから、交渉の進み工合を見まして、こういう実態であるということは国会のほうへ御提出申し上げるつもりでございますが、その時期については政府側で判断さしていただきたいと、こう思います。
  128. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 とにかくお金の話が片がついて請求権の問題は切りがついた、こういうお話ですから、切りがついちまったら出してもいいのじゃないですか。切りがついたのだと思ったら、今度は個人々々の請求権があるというのですから、個人々々の請求権があるということになってくると、その内容ぐらいはわれわれに知らしてほしい。どれくらいあるのか、どういう種類のものがあるのか、そのくらいのことは知らしてもいいのじゃないか。向こうさんでも、それがどういう種類でどれくらいのものがあるかということをこっちに話をし、こっちでも、それについての算定だとか、あるいはそれに対する態度だとかいうものをきめなければならんでしょうし、もとより請求権の額とか種類とかいうものは大っぴらにしてもいい性質のものじゃないかと思います。事秘密を要するものじゃないと思います。事秘密にしておくというと、今言ったように、すっかり片づいたのだ、いやまだ個人の請求権があるという問題があとになって出てきて、一体何が何だかわからない。ひとつその点は、もう個人の請求権の種類と金額ぐらいは発表していい時期だと思うので、あえて要求する次第です。
  129. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その資料につきましては、交渉状況を見まして、できるだけ早く提出したいと思います。
  130. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 他に御発言もないようでございますから、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十五分散会