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1963-05-24 第43回国会 参議院 科学技術振興対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年五月二十四日(金曜日)    午後一時三十一分開会     —————————————  出席者は左の通り    委員長     田上 松衞君    理事            大谷藤之助君            小林  武君    委員            上原 正吉君            江藤  智君            平島 敏夫君            丸茂 重貞君            野上  元君            光村 甚助君            牛田  寛君   政府委員    科学技術政務次    官       内田 常雄君    科学技術庁長官    官房長     森崎 久壽君    科学技術庁原子    力局長     島村 武久君    運輸省船舶局長 藤野  淳君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   説明員    科学技術庁原子    力局次長    村田  浩君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本原子力船開発事業団法案(内閣  提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 田上松衞

    委員長田上松衞君) ただいまか科学技術振興対策特別委員会を開会いたします。  日本原子力船開発事業団法案について、前回に引き続いて質疑を行なますす。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 牛田寛

    牛田寛君 前回、はっきり結論を伺えなかった点があるので、これからお伺いしたいと思いますが、原子力船乗組員の問題です。民間からもあるいは官庁の関係からも、各分野の方々を乗り組ませるというふうに伺っておったのですが、大体どういう方面から乗組員を乗り組ませるかということについての御計画をひとつお伺いしたいと思います。
  4. 藤野淳

    政府委員藤野淳君) 原子力船の第一船の乗組員につきましては、政府職員船員である者、それから民間会社で現在船員である者の中から編成をいたしたいと思っておるわけです。
  5. 牛田寛

    牛田寛君 乗組員の数は百二十三名と伺っておりますが、その内訳は。
  6. 藤野淳

    政府委員藤野淳君) 乗組員は七十人でよろしいんでございますけれども、将来の養成訓練を含めますと、百二十五人ぐらいになるのでございます。
  7. 牛田寛

    牛田寛君 その乗組員任務といいますか、作業の内容、いわゆるどういう任務のために村名、どういう目的のために何名、また、その目的のためには政府職員はどのぐらい、民間からはどのぐらい乗せるというふうな御計画はおありなんでしょうか。
  8. 藤野淳

    政府委員藤野淳君) 原子力船に乗り組みます船員職務別の配分は、一応持っておりまするけれども、船員任務といたしましては、直接原子力船運航いたしますための人数、それから、将来原子力船乗組員としての必要な運航技術を身につけますために必要な養成訓練を受ける目的で乗っておる船員というふうに分かれるわけでございます。しかし、何人がどう、何人がどうということの一応の案はございますけれども、目的は、そういう目的で乗り組むわけでございます。
  9. 牛田寛

    牛田寛君 目的の点は了解いたしますが、そういう目的のために、政府職員としてどのくらいの者をこういう仕事に充てるとか、民間からは何名ぐらいをこういう仕事に充てるという御計画があるかどうか、それを伺っておるわけであります。
  10. 藤野淳

    政府委員藤野淳君) 原子力船が完成いたしまして運航いたしますためには、相当まだ年月がございまするので、ただいまのところ、民開からは何人政府職員の中から何人というふうな人数分けにつきましては、まだ決定をいたしておりませんし、また、案もございません。まあ目的は、将来原子力船運航に必要な技能を身につけた船員養成するのが目的でございまするので、精神といたしましては、広く民間から募集いたしまして、それに必要な政府職員を加え、混合チーム乗組員を編成いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  11. 牛田寛

    牛田寛君 この運航本来の職務に従事する者は大体政府職員でお充てになる考えですか。  それから、いわゆる訓練ですね、あるいは原子炉のいろいろなデータをとるための実験というようなことも必要となるでありましょうが、そういう実験のための技術者養成訓練ということも、あるいは実験のための直接の要員というようなことも考えられるわけですが、運航直接の仕事に携わる者も民間から入れられるのか、あるいは訓練実験要員だけに限られるのか、その辺のお見通しはいかがでしょうか。
  12. 藤野淳

    政府委員藤野淳君) 民間から派遣された船員をどういう職務に従事させ、政府職員であった者をどのような職務に従事させるかという区分につきましては、何ら考えていないわけでございます。これはもう日本原子力船運航技術基礎固めをするというのが目的でございますので、ただいま、出身によって戦勝配置をあらかじめきめるということは考えておりません。  なお、原子力船に乗り組みまして、技術的な実験と申しますか、あるいは運航のいろいろな技術的な研究に従事するという面につきましては、これは船員となる者の中に当然研究というものを含んでいるわけでございます。原子力船設計、あるいは建造技術に直結した技術研究あるいは調査、あるいは実験等につきましては、それぞれのそういう研究員を乗り込ませて実験をする計画でございます。
  13. 牛田寛

    牛田寛君 今私が御質問申し上げました趣旨は、結局今度の原子船建造目的が、もちろん原子力船自体の将来の経済性実現性の問題の一つ実験船であるという意味がもちろんあるわけですが、それと同時に、技術者養成ということが含まれておるというふうに伺っておるわけです。それで、将来は当然民間原子力船を持つ、その場合の乗組員養成するという目的はおありでありましょうか。そうすれば、民間から、かなりそういうふうな原子力船を動かしていくということについてのいろいろな技術に習熟させる、そういう要員が必要になるだろう、かなり大幅に民間から入れるのではないかというふうに想像されるわけです。ですから百二十五名中の大体どれくらい、が民間から入れられることになるのか、また、そういうことが必要になるのではないかというようなお考えがおありなのではないか、そう思ってお伺いするわけです。
  14. 藤野淳

    政府委員藤野淳君) ただいまの御意見のとおり、原子力船乗組員養成訓練をいたしますことは、将来民間ベース原子力船建造されるということを見越してやるわけでございまして、したがいまして、乗組員の構成につきましては、民間のほうから採用する乗組員が相当の割合を占めようということになるのは、これは当然でなかろうかと思います。政府職員といたしましては、将来原子力船が所定の実験航海を終えまして、おそらく適当な政府機関に配属されるということになるだろうと思いますので、そのことを考慮して必要な数の政府職員は当然養成をしておく必要があるという見地から、政府職員船員の中から選んで乗り組ませるという必要も起こるというわけでございます。
  15. 牛田寛

    牛田寛君 ちょっと私の質問に対する答弁にはなっていないのじゃないかと思います。今伺いますと、運航の純粋な作業に対する乗組員が七十名ぐらい、あと訓練あるいは実験目的で五十名ぐらいというふうに伺いましたが、その中で、大体どのくらいの民間人を入れるか、こういうことなんです。
  16. 藤野淳

    政府委員藤野淳君) お答えが少し角度が違いまして申しわけありません。百二十五人のうち七十人を直接この船を運航する人間といたしますと、五十五人がこれは原子力船設計建造、あるいに舶用原子炉の実際の研究のために乗って、実際のデータをとり、実際の研究をするということになっております。この乗組員の七十名でございまするけれども、原子力船を動かすために必要な最少の人間は一体どれぐらいであろうかということになりますると、私は、七十人は要らないと思います。現在の一般の商船におきましても乗組員はどんどん減りつつある時代でございますし、高度なオートメーションの装置を持っております原子力船につきましては、ただ乗り組んで運航いたしますだけの人数といたしますると、これだけの人数は要らないと思います。この中に将来の商業ベース建造される原子力船に乗り組んで原子力船運航する人間養成訓練ということを含んでこのような人数になっているわけでございます。先ほど申し上げましたお答えは、やや間違っておりましたので、訂正いたしますを伺ったのですが、とにかく政府職員もあるいは民間からも人を乗り組ませるという形で船が動くわけでありますが、その場合に、それらの人々の身分関係はどういうふうに扱われる御予定でしょうか。
  17. 藤野淳

    政府委員藤野淳君) 身分関係につきましては、一応新しい事業団人間になるわけでございますけれども、それが政府職員であった者、それで現在事業団にいる者、あるいは民間船会社におった者ということによりまして、身分とか待遇とか、あるいは労働条件その他につきまして、多少趣が変わってくる点はございまするけれども、この点につきましては、何ら支障を起こさないように、万全の措置を講じたい、かように考えている次第でございます。
  18. 牛田寛

    牛田寛君 私が御質問申し上げるのは、政府職員事業団所属の船に、これは実験運航期間として二年あるように伺ったわけでありますが、その間に、政府職員乗組員の場合は政府職員、たとえば運輸省職員であれば運輸省職員のままの形で乗り組ませるのか、それから民間人たちが乗り組んだ場合には、事業団職員として扱われるのか、そういう形をどうおとりになるのか、それを伺いたいのです。
  19. 藤野淳

    政府委員藤野淳君) この点につきましては、原子力船に乗り組むその目的が、直接原子力船運航するということと、将来の事業団を離れた原子力船運航の場合、それから将来民間建造いたします原子力船運航、いろいろなことを考えますと、原子力船の第一船に乗り組む乗組員の将来は、これは派遣元に帰るというのが建前でおりまするので、二年間実験運航を終わりました場合には、民間会社から派遣された者は、それぞれのもとへ帰るというのが建前考えているわけでございます。なお、政府職員につきましては、政府職員身分を離れて事業団にかわるものもございましょうし、政府職員のままで派遣されてこの第一船に乗るということも考えられると思うわけであります。七十人が全部事業団職員で構成しなければならぬというふうには考えていないわけでございます。そういうふうに考えております。  なお、これはまだ数年間ございますので、今、牛田先生のおっしゃるような御趣旨が、どのような御趣旨かよくわかりませんけれども、目的がこの原子力船運航に必要な技術を習得するための目的でございまするので、最善の方法をとりたい、かように考えている次第でございます。
  20. 牛田寛

    牛田寛君 私が御質問申し上げる趣旨は、先日伺いました原子力船乗組員事業団所属の船に乗っている場合は事業団職員としての扱いを受ける、もし運輸省の所管になった場合には運輸省職員になるというようなことが起こった場合に、いわゆる社会保障の問題ですね、船員保険であるとか、あるいは公務員の共済組合適用を受けるとか、そういうような問題が、いろいろめんどうなことが起こるのじゃないか。ですから、そういう点で身分扱いをどうなさるのかということです。もし、その過渡期において乗組員身分的に、将来の原子力船開発のためにいろいろ働いておった人が、そういうふうな所属変更等のために犠牲が起こるようなことがあってはまずい。そういうふうな問題を円滑に遂行なさるためには、やはりこういう行き方であれば心配ないというような保障が必要なんじゃないか。それがないと、やはり乗組員を募集しても、みんな喜んで安心して原子力船乗組員になれないという問題が起こるのじゃないか。結局は、原子力船というものの円滑な推進に支障を起こす一つの原因にもなりかねない、そういう観点からお伺いしているわけです。
  21. 田上松衞

    委員長田上松衞君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  22. 田上松衞

    委員長田上松衞君) 速記をつけて。
  23. 藤野淳

    政府委員藤野淳君) ただいま牛田先生の御質問は、民間会社からくる船員もあるし、それから政府職員から出向する船員もあるし、身分関係が変わってきまするので、その間、社会保障という点において支障が起こるおそれはないかという御質問でございます。民間会社から事業団に出向いたしまして、原子力船に乗り組みます船員におきましては、民間会社会社同士転籍という場合と同じでございまして、船員保険による社会保障は継続されるものだというふうに考えております。なお、政府職員であります船員事業団に出向し、また復帰するということがあるわけでございます。この場合は、政府職員共済組合による社会保障がございますが、新しく船員になりますると、事業団になりますと、船員保険を受けるわけです。この間の手続の問題があるわけでございますが、この間、社会保障空白にならないように適当な措置をいたしたいと思います。
  24. 島村武久

    政府委員島村武久君) 政府職員である船員がこの事業団に出向いたしましたときの社会保障関係の問題につきましては、今、船舶局長からお答え申し上げたとおりでございますが、その前の御質問で、ちょっとはっきりしなかったような点がございますので、私からあらためて御説明申し上げます。  お手元に差し出してございます資料にございますとおり、この船を動かしますために乗り組みます者は七十五名、あと四十五名ないし五十名程度訓練員等を収容する能力を持っておるわけでございます。この船を動かしますに必要な職員身分は、政府職員であった者あるいは民間から来た者、そのいかんにかかわらず、その事業団の船として運航いたします間は、事業団職員として、その身分によって行動をするわけでございます。ただ、約五十名の訓練員につきましては、これは事業団職員である場合もあるし、民間から委託を受けて訓練をするというような形、あるいは政府から委託して訓練するという場合もありますので、この者の身分はきまっていない。しかしながら、繰り返して申しますと、七十五名の乗組員のほうは、運輸省から来ております者も、動かしている間は事業団身分でございます。民間会社からくる場合もございますけれども、いずれにいたしましても、事業団の船として運航する間は、七十五名のほうは事業団職員たる身分によって行動する、そういうふうにお考えいただきたいと思います。
  25. 牛田寛

    牛田寛君 そうしますと、七十五名の乗組員に対しては、事業団所属の間は、これは船員法適用を受けるわけですね。
  26. 島村武久

    政府委員島村武久君) 乗組員につきましては、船を動かすに必要な人間でございまして、船に乗り組むわけでございますから、当然さようになるわけでございます。
  27. 牛田寛

    牛田寛君 そうしますと、先日伺いましたような問題が一部残ると、こういうふうに考えられるわけですが…。
  28. 島村武久

    政府委員島村武久君) 先ほど船舶局長から御返事申し上げましたように、民間の者でございますと、同じように船員保険を受けておったと考えられますので、会社間の転籍の問題と同じで、何ら問題はございません。また政府職員であった者が事業団で船に乗り込みますときには、政府職員は御承知のとおり共済組合によって保障が受けられているものですから、共済組合から船員保険への移り変わりの問題が生じます。その者が運輸省にまた戻るといたしますと、今度は船員保険から共済組合へというような手続の問題がございます。しかしながら、その間において空白を生じないように、移り変わりをうまくやりさえいたしますれば、何ら支障はない、こういうふうに考えているわけであります。
  29. 牛田寛

    牛田寛君 そこで、移り変わり空白をどう埋めるかということについて、やはり心配が起こってくるのじゃないか。ですから、こういうふうにすれば心配ないという、はっきりした方法を具体的に示されないと、やはり職員のほうに不安を残すのではないかと思いますけれども、その辺はどうですか。
  30. 島村武久

    政府委員島村武久君) それは何も事業団、あるいは原子力船に限った問題でございませんで、政府職員がやめてすぐ民間会社の船乗りになるという場合にも往々生ずる問題でございまして、格別特に問題であるというふうには考えておりませんが、御指摘の点もございますしいたしますので、そこは完全に空白は生じないように、十分注意してやりたいと考えております。
  31. 牛田寛

    牛田寛君 次に、経済性の問題について若干お伺いしたいと思うのですが、原子力船用動力炉燃料コストの問題でございます。  まず問題になりますのは、その炉の型式によりましてやはり燃料が変わってくるのではないかと思います。現在伺っておりますところでは、軽水冷却炉をお使いになる。ただし、加圧水型であるか沸騰水型であるかは、まだ決定しておらないというふうに承っておりますが、そのような炉の形が変わった場合に、燃料の質、いわゆる濃縮程度であるとか、あるいはその場合の量、同じ出力を出すのに燃料装荷量が変わってくるものかどうか、その点について具体的に伺いたい。
  32. 島村武久

    政府委員島村武久君) 現在の段階におきまして、加圧水型か沸騰水型かということによって燃料コストにどのような変化があるかというようなことにつきましては、一がいに申し上げられない点があると思います。同じ加圧水型にいたしましても、その設計をどのようにするかというような問題にも影響されるところが多いものでございますから、そのような意味におきましての比較というものは十分になされてもおりませんし、また、過去においての例等もないことでございますので、詳細な点を今から申し上げるわけにはいかぬと思います。まあ一般的な試算の過程におきまして、何らかの数字があったかどうか、その点、担当いたしました者からお答えさせたいと思います。
  33. 村田浩

    説明員村田浩君) 御質問は、同じ軽水炉の中でも加圧水型の炉を積む場合と、それから沸騰水型の炉を積む場合で燃料に違いが出てくるのではないかと、こういうことだと思いますが、いずれも軽水型でございますので、燃料要素、それは会社々々によって若干の設計上の特色がございますけれども、本質には現在酸化ウランのペレットというものを使いまして、それをステンレス・スティールのチューブの中に納めたそういうものを束にしまして、炉心に装荷するという形をとっております。御指摘のように、加圧水型の場合でございますと、沸騰水型の場合に比べまして、通常若干濃縮度が高いものが使われておるようでございます。しかしながら、それも炉心寿命等との関連におきまして、必ずしも一定しておるものではございませんで、これまた設計等によってかなりの幅で違って参ります。ただ、われわれ試算などいたしました際に、およそ使いましたのは、加圧水型の場合には、大ざっぱにいって、濃縮度で約四%ぐらい、それから沸騰水型で申しますと、これもごく大ざっぱにいいまして、約三%ぐらいのウラン二三五を含んでおる、こういう意味でございます。もちろん実際の炉になりますと、たとえばサバンナ号あたりの実際を見ますと、これは加圧水型炉でございますけれども、四・四%ぐらいのものを使っておるようでございます。それは、そういう実例があるということでございまして、加圧水型は四・四%でなければいけないという厳格なものではございません。
  34. 牛田寛

    牛田寛君 その場合、装荷すべき量、たとえば今度の出力は一万キロですね、一万キロワットの出力を出す場合に 大体どれぐらいの装荷量が必要なのか。その点はいかがでしょう。
  35. 村田浩

    説明員村田浩君) 原子力第一船の出力は、約一万馬力という予定でございますが、これは軸馬力でございますので、搭載されます原子炉熱出力は、およそ三万五千キロワットぐらいのものになろうかと思います。三が五千キロワットぐらいの炉の場合に必要な燃料の量は、もちろん御指摘のとおり、濃縮度によりまして違いますが、試算いたしました数字で申し上げますと、三七五%ぐらいのものを初めに入れましたときに必要な量は、全体で約二千六百キロぐらいの量になろうかと思います。
  36. 牛田寛

    牛田寛君 大体その程度試算をなさって、燃料コストといいますか、燃料費がこれぐらいかかるというふうな見当は、おつけになっておると思うんですけれども、結局原子力船実現性は、燃料コストなり動力コストに問題がかかっていると思いますが、重油燃料コストと比較して、どのような結果をお出しになっておるのか。いわゆる重油燃料コストですね、大体引き合う可能性がおありなのかどうか。また、それがあるとすれば、大体いつごろになるというような見通しも伺いたいと思います。
  37. 村田浩

    説明員村田浩君) これからの日本原子力船開発事業団が建設いたしましょうと考えております第一船の場合についてまず申し上げます。  これは、おおよその規模等がわかっておりますので、その範囲で試算いたしたわけでございますが、この第一船は、この計画にも出ておりますように、海洋観測船というような実験をいたします特殊な目的の非商業船でございますので、特に燃料費がどうこうということが商業船と違って大きな問題にはならないわけでございますが、したがって、そういう船において重油を使った場合はどうかという試算は、ちょっと事実上やりにくい面もあるわけでございますけれども、それをあえて一応試算いたしました結果は、次のようになっております。  原子力船の場合には、燃料としまして、先ほど申し上げましたように、濃縮度の三・七五%くらいの濃縮ウランを約総量で二千六百キロばかり使いまして、この燃料が、これまた推定でございますが、約二年間そのまま使えるという推定のもとに計算いたし、それは燃料そのもの費用あるいは加工費のみでなくて、この燃料が使われました後に、工場に送りまして再処理いたしますが、そういった関係費用も全部突っ込みまして計算いたしてみましたところでは、大体年間この原子力船の必要な燃料費は約一億六千万円見当になろうかと思います。これに対しまして、もしここで考えられております軸馬力約一万馬力ぐらいの海洋観測船を、在来型、つまり重油をたくそういうボイラーを備えた船でつくりました場合に、どのくらい燃料費がかかるかということでございますが、これもいろいろ仮定がございまして、計算かなりそれによって違って出て参りますが、かりに年間稼働率を六〇%というような相当荷い率で考えまして計算いたしますと、年間重油費用、これはおおよそ一億二千万円くらいになろうかと思います。したがいまして、この原子力船、ここに考えられております原子力海洋観測船について、在来型と比較いたしますと、燃料としましては原子力のほうがやや高い推定ができる、こういうことになっております。
  38. 牛田寛

    牛田寛君 アメリカサバンナ号一は、かなり期間運航を行なっておるわけでございますが、サバンナ号についての経験なり、データなりは、どういうふうになっておるか、その辺はお持ちじゃないでしょうか。
  39. 村田浩

    説明員村田浩君) サバンナ号も、御承知のとおりいわゆるデモンストレーションを主体としました実験目的商船でございますので、完全な意味では商業船とは申されないわけでございますが、サバンナ号につきまして、詳しくアメリカ側数字をはじいて出したものはございませんので、当方で入手しますデータに基づいて概算いたしてみたものがございます。それによりますと、途中省略いたしますが、結果だけ申し上げますと、サバンナ号の一場合、サバンナ号では軸馬力二万二千馬力でございまして、われわれの考えております海洋観測船の倍以上の出力を持っておるわけでございますが、それだけに燃料費もかさみまして、原子燃料を使いました場合には、年間燃料費が約二億八千万円程度になろうかと推定されます。これは計算だきでございます。同様の船をかりに重油だきでつくったといたしますとどうなるかということでございますが、これも稼働率等をどう見るかということで非常に違って参りますので、はなはだ試算がやりにくいわけでございますけれども、これまた先ほどと同じように稼働率年間六〇%というような、かなり高い仮定でいたしてみますと、年間重油費用が二億二、三千万円ということになるのではないかというように試算されております。ただし、これはいずれもこちらで勝手に試算いたしたものでございまして、アメリカ側の発表いたしたものではございません。
  40. 牛田寛

    牛田寛君 アメリカ側データというものは、日本では調査できないものでしょうか。
  41. 村田浩

    説明員村田浩君) サバンナ号につきましては、その設計の概要あるいは装置の機能等につきまして、いろいろ資料が出ておりますし、わがほうも入手しておりますが、私ども、同じサバンナ号原子力でやった場合と、それから重油だきでやった場合との、燃料費の比較というものを特に行ないましたデータは、入手いたしておりません。
  42. 牛田寛

    牛田寛君 もう少し突っ込んで伺いたいんですが、燃料コストばかりじゃなくて、原子力船経済性というものを考えた場合には、動力炉全体ですね。たとえば動力炉の管理、維持あるいは二年間に一回でありましょうが、燃料の交換であるとか、あるいは放射性物質の処理であるとか、あるいはそれらの作業に必要な施設、また、その施設に必要な人員、技術者、そういうものもひっくるめて、一つの総合的ないわゆる原子炉を動力としたための普通の重油だきボイラーなどと比べてプラスした費用がかかる、いわゆる動力コストですね、原子炉としての動力コスト、それから重油ボイラーを動力源にした場合の動力コストと、そういうものの比較は、当然検討されなければ、原子力船経済性ということも判定がつかないのではないかというふうに、私どもしろうと考えでそう思うわけですが、その点についての、これは詳細な具体的なデータは将来の問題に属すると思いますが、現在の経験なりから推して、どの程度のものであるかということは、推定されてよいと思うのですが、その点についてのデータあるいは試算は、なさっておるでしょうか。
  43. 島村武久

    政府委員島村武久君) おっしゃいますとおりに、原子力船経済性ということを考えます場合には先ほど来お尋ねの燃料コスト以外に、先般の委員会でお尋ねのございました船価、建造費自体の問題もございますし、さらに、ただいまおっしゃいましたように、燃料取りかえの経費でありますとか、あるいはこれは陸上の発電炉と同じような問題として、使用燃料の再処理の問題であるとかいろいろ考えなければならぬ要素はたくさんあるわけであります。一般的に申しますと、陸上の発電炉は建設費は高いけれども燃料費のほうが、原子炉のほうが安くなるので、そこに採算性、経済性というものが出てきて、今日ではもうコンパラブルな段階であるというようなことがいえるわけでございますが、先ほど来申し上げておりますような数字によって判断いたしますと、現段階におきましては、単に建造費が原子力船のほうが高いばかりでなく、燃料費においても若干原子力船のほうが高いという数字になっております。したがって、さらにそれに対して燃料取りかえの設備であるとかいうようなことを加算して参りますと、ますます原子力船のほうが今日では経済性がないとこういうことになるわけでございます。ただ問題は、現在考えております第一船あるいはサバンナ号というような例は、いずれも試験船的な意味を持ったものでございまして、ほんとうの意味原子力船在来船とを比較するような条件にないというふうに考えるわけでございます。つまり原子力船であるところの特徴を十分に生かしましたような船ができた場合を想定いたしますと、これが在来船に対してどういうことになるのかというような目で比較しなければ、ほんとうの比較にならない。ところが原子力船の場合には、速力にいたしましても、在来船より非常に早いということが考えられるわけであります。もちろん現在考えております第一船は、在来船よりも早く走るように設計はいたしておりませんので、そういう意味におきまして、比較はむずかしいのでございますが、この原子力船が実用船ということになります場合には、当然二十ノット以上出さなければ原子力船というものの価値がないということにもなり、また、大型にするということによって原子力炉を搭載し、原子炉を推進動力として用いることの意義があるわけです。現在のところ、それに対応するところの油だきの船がない。つまり二十ノット以上を出す商船というものは、なかなかむずかしくて経済的にならぬというようなことで、たいていの在来船はスピードに限界がある。つまり、ないものと比べなければならぬというところにむずかしさがあるわけでございます。私どもといたしましては、したがいましてこのような試験船の時代においては、かなり高くなるけれども、これがほんとうに実用に供された暁においては、大きな期待が持てるのじゃないかというような期待を抱いておるわけであります。この点について例をあげて申しますと、アメリカ原子力委員会及び海運局が四万三千トンのタンカーというものを想定いたしまして比較いたしました資料では、燃料費在来船の七割程度になるというような数字を出しております。前回委員会で申し上げましたように、今世界で試算がいろいろに行なわれておりまして、この試算が一番正しいというようなことではございませんけれども、例を申し上げますれば、そういうようなこともあるという意味で申し上げたわけです。なお、お尋ねもございますので、原子燃料を使用することにより、特別に増加する設備費がどのくらいかかるか、あるいは維持管理費がどのようなものが特別にかかるかという点につきましては、村田次長からお答え申し上げます。
  44. 村田浩

    説明員村田浩君) 原子力船在来船と価格の上で最も大きく違って参りますのは、原子炉の価格と、それに対応します在来船の場合のボイラーの価格の違いであります。ここで考えられております比較的小型の原子力船の場合で申し上げますと、もし軸馬力約一万馬力程度のボイラーを据えつけるとしますと、その価格はおよそ一億円見当ではなかろうかと存じます。それに対しまして、原子炉でございますと、先ほど申し上げましたように、三万五千キロワットの熱出力を持ちます原子炉の価格は、およそ十七億円ぐらいになろうかと思います。したがいまして、そのボイラーと原子炉とだけを比較いたしますと、非常に大きな違いがあるということになっております。それから、特に原子力にいたしましたために付帯設備として新たにいろいろのものが必要であろう、そういったようなものがどのくらいかかるかという御質問でございますが、原子力船の場合に特にこれが必要と考えておりますものは、原子燃料を、先ほど申しました例で言いますと、二年に一度、サバンナの場合は一応設計では三年に 一度となっているようでございますが、とにかく二年に一回とか三年に一回は燃料を取りかえる必要がございます。逆のほうからいいますと、二年ないし三年は燃料を全然取りかえる必要がないわけでございます。二年ないし三年目に取りかえます際には、サバンナの場合でもそうでございますが、日本でつくります原子力船の場合でも、特別な燃料の交換装置を設けました港に寄りまして、そこで取りかえるという計画でございます。したがいまして、その港には燃料を交換する施設というようなものが特に新たに設けられねばならないわけでございましてこの価格が新たに必要なわけでございますが、第一船につきましての試算しました範囲で申し上げますと、この価格はおおよそ四億円程度になろうかと考えております。しかしながら、この燃料の取りかえ施設は、単に原子力第一船だけに使うわけではございませんで、特定の港に装置いたしましたならば、どんな原子力船が入ってきましても一応使えるわけでございますので、将来原子力の第二船、第三船等々というものができます際にも、そこに入れましてこの取りかえ設備を使って燃料を取りかえるということになりますので、四億円見当をすべて第一船にふっかけて考えるというのは、少し常識的でないのではなかろうかと思います。それから管理費といいましょうか、維持費といいましょうか、そういう面で、原子力船にしましたために特によけいにかかるようなものは何かと申しますと、現段階におきましては、原子力船の場合には損害補償の保険をかけなくてはいけないことになっております。普通の船でも保険はかけなくちゃいけないわけでございますが、それに加えまして、万々一に原子力災害が生じたような場合の補償の万全を期すために、原子力損害賠償措置を講ずることを法律で規定しております。そのために特に保険料を払わなければならぬわけでございますが、試算によりますと、第一船の場合には、その保険料は一心およそ年間六千万円程度になろうかと推定いたします。これはまあ現在の保険料率等から算定した数字でございます。
  45. 牛田寛

    牛田寛君 まあ私もあまりこまかい技術的な問題は全くわからないといっていいわけでございますが、原子力船の第一船が実験船として建造されるわけですね。そうしますと、ただいまの御説明では、第一船をつくることによって経済性見通しが立てば、第二船は民間の経済ベースで船ができ上がっていくんだろうと、そういう基本的な見通し、お考えの上に実験船がつくられて、実験をやっていくということになるわけでありますから、経済性ということを全く無視なさっているとは思いませんけれども、むしろ経済性ということを非常に重要な部分に置いて実験を進めておいでになる必要があるのではないか。それがありませんと、せっかく第一船をつくっても、九年たったあとで、経済ベースに乗った第二船の建造ということが、実現ができなくなるのじゃないか。そういうおそれが十分考えられると思う。ですから、そういう意味で伺っているわけなんでありますが、少なくとも、もう今年の後半から基本的な設計の段階に入る、あるいは炉の建造もメーカーを決めて着手されるというようなスケジュールに伺っておるわけでありますから、そういうことから考えても、ただいままあ一例としておっしゃったことだと思うのですが、燃料の交換の施設だとかいうだけのものでなくて、、原子炉の付属設備はたくさんある。そういうものの故障していく問題もあるでしょうし、いろいろそういう特殊な非常に危険性の伴った設備であるだけに、装置などの安全性という面からも考慮しなければならないし、そういう面で維持費がかさんでくるのじゃないか、そういうふうな基本的な検討が十分なされておるかどうかという点の実情をお伺いしたわけです。もう具体的に設計の段階に入っておるわけでありますから、これまでに、もうすでに原子力船については、かなりの検討がなされてきたと伺っておりますから、したがって、そういうふうな経済性の面についても、こまかい技術的の観点の上から積み上げておいでになったデータを、はたして現在お持ちであるかどうか、その点をむしろ当局としては国民の前に明らかにされる必要があるのではないかと私は考えるわけであります。その点の現状、具体的なお答えを伺いたい、こう思うわけなんです。
  46. 島村武久

    政府委員島村武久君) 毎回申し上げておりますように、原子力船に対する技術的な研究と並行いたしまして、経済性というようなことにつきましても、過去数年間いろいろな専門家をわずらわして検討を続けてきたわけでございます。ただいま申し上げましたような幾多の数字は、その間の過程におきまして出てきた数字でもございますし、程度の問題はあるいはあろうかと思いますけれども、牛田委員がおっしゃいましたような試算、検討というものは、私どもといたしましては、十分やってきたつもりでおります。ただ、その結果どういうことになったかということにつきましては、冒頭にも申し上げましたように、今日の段階では、世界いずれの国におきましても、原子力船のほうが有利である、経済性があるという結論には到達いたしておりません。十年ぐらい先になるというのが一般的な見方でございますし、私どももそういった点について、そういうような考えが、いろいろやりました結果、大体妥当な考え方だというふうに考えておるわけであります。その根拠の一々につきましての数字は、振り返ってみますると、国民の前に明らかにしたというような記憶はちょっとございませんけれども、その結論自体につきましては、原子力委員会といたしましては、長期計画の中でも原子力船に関する見通しとして述べておるわけでございます。私どもが今日第一船の建造に着手したいということで、かような法案の御審議を願っておりますのも、もうすでに原子力船経済性に合うようになったからということでもございませんし、また、この建造を通じまして経済性に関するいろいろなデータも新しく得られることは事実でございますけれども、特に経済性というものを実証したいという気持でつくると申しまするよりは、むしろ建造技術、あるいは運航技術を身につけたいということのほうが大きいわけでございます。むしろ原子力船のほうが有利な将来というものは、一般的な陸上炉も含めまして、原子炉技術の向上、進歩が、だんだんに経済性に合うように持っていく、また燃料に関するいろいろな研究技術の向上というものと相待ちまして、将来はきっと安くなる、しかもそれを大型に、高速にすることによって、在来船では得られない利点が得られるという見通しを持って行なっておるわけでございます。なお、この第一船自体について申しますと、先ほど御説明申し上げましたように、確かに建造費のみならず、燃料費も高いわけでございます。それでは、できたときにその船を使うのが一般の船よりも高いから、ばからしいから使わないかということになりますと、私どもはさようには考えていないわけでございます。維持管理の費用燃料費も含めまして若干高くなることはございましても、原子力船であることによる利点が別途あるものでございますから、十分役に立つというふうな考えでおるわけでございます。
  47. 牛田寛

    牛田寛君 原子力船の必要性はもう私も十分認めておるつもりでございますし、世界の趨勢といたしまして、原子力船開発を推進する方向に向かっていることも周知の事実でございます。これは今申し上げるまでもなく、日本は海運という問題が重要な問題でございますし、特に船舶の性能ということは海運の生命でもございますから、そういう立場から考えても原子力船開発ということがたいへん大切であることは、これはもう異論のないところだと思います、しかし、どこまでも技術開発経済性を無視したのでは意味がないわけでありまして、そういう点で、私は今経済性の問題について少しこまかく御質問申し上げているわけなんですが、いかに原子炉技術が発達して、りっぱな原子炉ができましても、採算ベースに乗ってこなければ、民間船会社としては自分の自力で建造しようなどということは、これは言い出さないのじゃないか、特に現在のような、まあこれから十年後にはどうなるかわかりませんけれども、海運の不況の時代に、はたして経済性の実際的の証拠、データがあがっておらないものを、ただ何となく経済ベースに乗るであろうというようなことで、ただ現在の第一船が動いたというだけで、はたして第二船を民間会社が喜んで自分の資金でつくるかということになると、私はこれははなはだ疑問であると思う。ですから、第二船以後は民間ベース建造できるような方向に持っていくためには、やはり経済性というものの実験あるいはデータを集積するというような、積極的な意図をもっていかないと、第一船の建造の意図が、全く無意味だとは申し上げませんが、かなり意味なものになってしまうのではないかというふうに私どもは懸念をするわけです。そういうわけで今お伺いしたのですが、そういう点の第一船を建造する責任を事業団のほうで持つわけでしょうが、どの程度まで経済性の実績を明らかにするだけの責任をお持ちになるのか、今までのお話では、その辺がはなはだばく然としておりまして、今のところは全く経済ベースには乗らないけれども、将来は乗るであろうという話であるからというようなことでは、はなはだたよりがないように私どもは感ずるのですが、その点についてお伺いいたします。
  48. 藤野淳

    政府委員藤野淳君) 原子力局長から先ほどお答え申し上げましたが、運輸省といたしまして原子力船第一船を試験船として建造をいたしますその目的はなへんにあるかという問題、これは将来原子力船商業ベース建造され、運航される将来を、これは当然考えてのことでございます。ただいま海運の面におきましては、海上輸送の様相が非常に変わって参りまして、商船におきましては大型化という問題、それから専用船化という問題、それから高速化、スピードが早くなる、この三つの非常に著しい変化が現われております。また、将来海上輸送構造がどのように変わって参りますか、十年先を的確に予想することは非常に困難でございますけれども、原子力船の性質といたしまして、普通の商船と異なる点は、普通の商船でありますと、高速化というためには非常に金がかかる。原子力局長が申しましたように、二十ノットをこえる貨物船ということになりますと、ほとんどもう経済的に成り立たないというのが現状であると考えてよろしいと思いますが、原子力舶用炉になりますると、大型になればなるほど馬力当たりの建造費が安くなるという特性がございまするし、将来大規模な原料輸送が非常に大きな船によって行なわれます場合には、おのずから馬力も大きくなるわけでございますので、これには舶用炉がその存在価値を発揮するのではなかろうかということを考えます。また、製品輸送がどの程度に発展するかわかりませんけれども、十分に運賃負担力のある高級貨物が、高速をもって輸送されるということになりますと、これは当然原子力船によって運ぶほうがはるかに有利な時代がくるのではなかろうかというように考えます。また、舶用炉につれましては、日進月歩の時代でございまするので、十年先にどのような高性能の舶用炉ができて参りますか、私どもは十分今よりもコストの安い炉ができるのではないかというふうに考えております。なお、それでは比較的小型な、また原子力船としてはきわめて不経済な船型である観測船を建造する理由はどこにあるかということを申し上げますと、全体の建造価格は大型船に比べますともちろん安いわけでございます。また、相当長年月にわたりまして科学者、技術者実験室並びに机上におきましてさまざまな研究あるいは調査をして参りましたが、はたしてそれらの研究が、実践に対してどのような価値があるかということになりますと、実際に設計したものが実際に搭載されて、船になって動くということは、これはそういうものをつくってみるということが重要でございまして、いろいろな技術の発達過程を考えましても、設計したものが実際に作動をし、使用されて、設計の基準が正しかったかどうかということが実証されることが必要でございますので、その貴重な実証の経験を通して技術が次第に発展していくものというふうに考えますので、日進月歩の時代に、いいものができるまで待つということではなく、現在の段階におきまして、現在の最高の知識をもって実物をつくって、これを運航し、動かしてみて、そうしてさらに飛躍の土台にするということが必要だということは、これは御承知のとおりでございますので、そういう見地から第一船の建造を比較的安い負担において建造し、それからの飛躍に備えたいという気持でございます。
  49. 牛田寛

    牛田寛君 私のお伺いしておりますのは、事業団法が出ておりまして、事業団がこれからどういうふうにやっていくかということの御説明を承っておりますが、私の考えが誤っておったらまた教えていただきたいと思いますが、事業団は、まずその第一船を建造してこれを動かすというところに重点がある。まずその仕事が終われば事業団は解散する、簡単にいえばこういうわけです。それで、先ほどから伺っておりますが、将来は十分経済性に見合う、こういうわけでございますが、結局経済性のある原子力船を実現しますためには、これはやってみなきやわからない。この経済性に見合うだろうというのは、今までのお話ですと、希望なり、想像なりの立場でございまして、実際にこれこれの船型でこれだけのものをつくっても、これだけの出力を出して船を動かせば、この船は経済性に見合った船というわけではないわけですね。それで、じゃどうすればいいかと申しますと、私の考えとしましては、結局現在の知識をもとにして、大ざっぱな一つ推定ができるわけです。実際に船を動かされまして、炉をつくって船を動かしてごらんになって、そして総合的な立場からの経済性データが出て参ります。それと予想とが当然食い違ってくる。その場合に、どの点を修正すればもっと経済性がよくなるかというような問題が十分に分析されて参りませんと、そういうものからの積み上げができて参りませんと、結局ものになる船ができないのではないか。ところが原子力船事業団仕事の内容を拝見しますと、ただいま申し上げましたとおりで、船をつくって動かす、その間に乗組員技術の習得をさせる。その間にいろいろな技術的な問題に対して習熟させるということがどうも中心的な問題になっておるようでありまして、その経済性の面を分析し、それを修正し、経済的な観点から技術を結びついた一つの結論というものを導き出していくという作業がはたして責任を持って実際に行なわれるかどうかという点について十分でないのではないかというふうに、今までの御説明では、私どもが理解するわけなんです。そうしますと、結局は、なるほどこれは経済性を実現するための一つ実験船というお話はわかる。意図もわかりますが、結果においては、科学的な一つの結果が得られないのではないかという懸念を持つわけです。で、そのような一つの最初の予想とは、実験してみたら違った、その点を修正していくという、絶えずそういうふうな経済性に立っての技術の分析、そういうものをおやりになるのは、どこでおやりになるか、その点を伺いたい。
  50. 島村武久

    政府委員島村武久君) 私どもの答弁の要領が少し正直過ぎて、気持を率直に申し過ぎておるのかもしれませんので、誤解を得やすいようなことになったのかと思うのでございますけれども、今おっしゃいましたようなことは、当然事業団としても大きな問題として検討していかなければならない問題だと考えております。ただ、先ほど来申し上げておりますのは、よそがやっておるから、十年くらい先になったら太刀打ちできるようになる、原子力船のほうが有利になるといっておるから、われわれもそう思っておるということではございませんで、私どものほうでもそのような計算をまたやって、そのことも確かにそうだという確信を持っておるということを申し上げたのでございますが、これもやや控え目な言い方でございまして、もしかりに経済性を実証するためにとにかくつくってみるのだ、計算の上でできたものを実証してみるのだということでございましたならば、高速大型の実験船をつくってやるということが一番いいわけでございます。そのためには、現在までの勉強いたしました結果から申しますと、少なくとも二十六、七ノットの早さくらいのものを目指して、それをつくるならば、在来船よりは有利になるということも考えられる。また何の用に使う船をつくるかという問題にいたしましても、タンカーにするとか、貨客船にするとか、鉱石専用船にするとか、いろいろな案を検討したわけでございますが、何分にも原子炉を搭載した船を動かすということは初めてのことでございますので、しかも、それを大きく国費によってやらなきゃいけない今の実情から考えますと、いかに私どもが高速大型の船でやったほうがいいと考えましても、相当な、何と申しますか、負担をかけなきゃならぬ問題がございます。堅実に考えますならば、やはり二十数ノットというのは一応第一船としてはあきらめて、十七、八ノットのところをまず目標にし、船の大きさも八万トン、十万トンとかということでなくてやってみたいということになったわけでございます。しかしながら、そういう気持をあまり率直に申し述べましたために、いかにも経済性について全然無関心であるような印象をお持ちになったとしますと、はなはだ答弁がへただったことになるわけでございます。事業団といたしましては、将来に備えて、十分そのような点も考えて参るつもりにいたしております。
  51. 牛田寛

    牛田寛君 私は決して経済性に無関心でおやりになっているとは、露ほども思いません。その点に私はだいぶ問題があるように思う。少なくとも実験第一船について六十億の金をかける、その中の七五%は国の費用、もし、今お話がありましたように、やはり経済性の実際のデータをとるためには、やはり高速の大型の商船なり、あるいは直接の目的を持った船型の船の建造ということを考えたほうが、より実現性があるというお考えであるならば、現在事業団が発足するばかりになっておりまして、第一船の型がきまっておりますから、それを私は云々するわけじゃありませんが、やはりその方向に進めることが、私は、結局日本の海運のためにも、日本の将来の経済の発展のためにも、それは必要な問題ではないかというふうに考えるわけです。この点については、前にも一度お伺いした問題でございますけれども、重複するかもしれませんけれども、ただいまは、原子炉なり原子動力なりの経済の問題を少しこまかく伺った上からも、そういう問題を積み上げていけば、そういう方向の結論に達するのではないかと私は今承知しているわけなんですが、伝え聞くところによりますと、イギリスでも、あるいはノルウェーあるいは西ドイツあたりでも、やはりそういうふうなタンカー船であるとか、あるいは大型貨物船とかというものをつくろうというふうな行き方になっているように伺っておりますが、そういう点からも、これからの原子力船開発の方向というものの持っていき方が大事ではないかと思って……。今お話を伺いますと、予算があまり取れないので、やむを得ずこのような形になったというふうに受け取れないのでもないですが、そういうふうな、予算の面から十分でなかったためにということも多少考えられると思います、全般的ではないとしても。そういうことのために日本原子力船開発の方向が中途半端なものになるようでは、結局将来を考えれば、国の大きな損失になるのではないか。極端な言い方をすれば、六十億が、へたをすれば、むだになるとは申しませんが、大きく考えればロスになるのではないかという懸念もあるわけであります。その点について将来のお考え方は……。
  52. 島村武久

    政府委員島村武久君) 決して六十億以上の予算をこの計画のためにさくに対して、国の予算が取れないということではございませんで、原子力委員会がこの計画を立てましてから、予算要求をいたしましたわけでございますので、そういうような関係にはないわけでございます。私が申し上げましたのは、日本技術水準、原子力研究の全般あるいは産業の実体、いろいろな、点から考えまして、直接経済性の比較検討に役立つようにするのには、高速の大型船をつくったほうがいいという見方ができるけれども、総合判定としては、いささか専門家の間でも、いきなりそれに取りつくには冒険的な要素があるというところから、議論を尽くしました結果が、こういう方向が一番いいという結論に到達したわけでございます。国費がこれ以上さけないからというだけの理由で、もっといいやり方があるのに、あきらめたというわけでは決してないわけでございます。しかも、今申しましたように、原子力船だけの研究ということでなくて、原子力船経済性なんかに一番大きく寄与いたしますのは、陸上も含めまして原子炉あるいは燃料というものの技術の進歩ということも非常に大きく貢献するわけでございます。私どもといたしましては、現段階で着手いたしますのは、このような方向が一番いいし、また、その後におきましては、当然にもうほんとうに実用船にすぐ結びつき得る時代となるという考え方をとっておるわけでございます。
  53. 牛田寛

    牛田寛君 次に、安全性の問題について若干お伺いしたいと思います。  原子力は非常に有利な動力源でありますと同時に、放射能という危険性を伴っているわけでございます。原子力災害、事故というような問題が、大きな問題になってくることは当然考えられる。今、原子力潜水艦の寄港の問題で、だいぶ騒がれておりますけれども、結局思想的、政治的な問題をこえて、国民が不安に思う点は、結局その原子力災害、事故、そのための放射線の問題にしぼられてくると私は思うのです。この点については、原子力船も共通の問題を持っておるわけであります。その点についてどの程度の認識をなさっているかお伺いしたいと思うのですが、まず原子炉の事故としては、原子炉自体の事故が考えられます。それからもう一つは、衝突その他船が沈没した、船が破壊したということから起こってくるところの事故もございます。そういうような場合も考えられますが、原子炉自体の事故についての危険性というものを、どの程度に把握されているか。この点についてちょっとつけ加えさしていただきますが、今いわゆる舶用原子炉——潜水艦の場合でもそうでありますが——そういう原子炉の事故による災害、危険性というものの実体が、これは非常に専門的になりますので、常識的にはあまりわかっておらないわけです。ですから、ある面においては非常に必要以上な恐怖を抱く場合もありますし、ある場合においては、無知なために、むしろ大胆過ぎる、危険をあまり考えない、無視して物事を議論する場合も出て参ります。どうしてもこの原子力の平和利用というもの、健全に開発されていくためには、危険性は危険性なりに、国民が科学的に正しく理解していくことが必要だし、そういう点についての正しいPR、知識を与えるということが大切じゃないかと思う。そういう点で、少なくとも船に積んだ場合、事故というものがどういう種類のものがどういうふうに起こるのかということについて、現在どの程度までわかっているのか、具体的にお伺いしたいと思うのです。まず、原子炉自体の事故についてお伺いしたい。
  54. 島村武久

    政府委員島村武久君) 技術的な面からは村田次長からお答え申し上げますが、まず最初に、考え方が問題になると思うのであります。原子力基本法ができまして、わが国で原子力に手をつけて参りますときに、観念的には大きく議論されたのでございますけれども、日本原子力船のみならず、原子力全般の研究開発、これをやっていきます場合の大前提といたしまして、とにかく放射能の害を受けないようにするということ、これが一番大きく取り上げられ、基本法にも書かれておるところでございます。その後私どものとって参りました態度というものは、あるいは見方によりますと非常に鋭敏過ぎるほどにその点につきまして十分な注意を払い、かつまた法制的にも、また研究面からしても、非常に大きくこの問題を考えてきております。その態度は原子力船についても変わるところがないわけであります。一般によく伝えられますように、衝突したら原子炉が爆発してというような言い方もされておりますけれども、本来的に申しまして、われわれは爆発というような現象が起こることはないと。問題は、やはり放射能が、平常時あるいは事故の場合においてどの程度に漏れるか、それを漏れなくするにはどのようにしたらいいかという点にしぼられておるわけでございまして、それらの点につきましては、われわれとしては絶対にそういうことがないようにという前提に立ってものを考えていくといういき方をとっておるわけでございます。  お尋ねの原子炉自体の事故あるいは原子炉自体が故障等のためにいたむという以外に、外からの問題に対してどのような配慮が技術的になされ得るかという点につきまして、今日では十分にそのものを整備をし、かつ防ぎ得る道があると考えられておるわけでありますが、技術的には村田次長からお答え申し上げます。
  55. 村田浩

    説明員村田浩君) 原子炉の事故に関連しまして、まず最初に申し上げておきたいと思いますことは、原子炉技術は今日非常に進歩しました。しかし、万が一何らかのために事故を起こしました際に生ずる災害の潜在的可能性ということを考慮しまして、非常に原子炉そのものも頑健につくってあるということでございます。一例を先ほど申し上げました三万五千キロワットぐらいの軽水原子炉について申し上げますと、おおよそその構造は、直径が約二メートル、高さが約六メートルぐらいの茶筒の格好をしたような円筒型の圧力容器の中に、燃料を先ほど申しますように二千六百キログラムぐらい入れまして、それを圧力のある水で冷やしておるわけでございますが、その際の圧力容器も、大体厚さは鋼で百ミリ——十センチをこえるくらいの厚さのものでございます。内部に保ち得る圧力は、設計で約百五十気圧の、十分こわれないというような強さのものを使うようにいたしております。中で使われます水の圧力は百気圧ぐらいのものでありますから、五割増しぐらいの、がんじょうなものにいたしてある。こういうふうに非常に厳重な圧力容器の中に入れられたものを、さらにそこから出てきます熱で蒸気を発生いたします蒸気発生機あるいは熱交換機と呼ばれるものを含めまして、格納容器——コンテナというものに納めて、そのコンテナは大体原子炉の容器の重さが四十二、三トンといたしますと、格納容器の重さは百数十トンぐらいの重さのものでございまして、その外と中とでは完全な気密が保たれるようにいたしまして、そうして格納容器から出入りいたしますパイプ等のつけ根等から絶対に内部の空気が漏れないようにするという構造を採用する等の厳重な気密を達成し得るようにいたしております。こういうふうに非常に厳重になっておるわけでございますが、にもかかわらず、万が一何らかのことで事故が起こった際にはどういうふうにしてこれを防ぎとめるかという点につきましても、さらに何重かの安全装置を施してあるわけでございます。  まず第一に申し上げておきたいことは、第一船に原子力委員会が軽水原子炉を搭載する方針をとりました一つの理由は、現在世界的にいろいろと型式の違います原子炉開発されておりますけれども、軽水原子炉はその特性としまして、負の温度係数という特性がございまして、原子炉の中の活動が盛んになって温度が上がるようになりますと、これを自動的に自分の特性として押えていくというような特性を持っておる。今日開発されております世界の各炉の中でも、特性的に見ても非常に安全な炉の一つに属しておるという点も考慮に入っておるわけでございます。まあ事故を起こします際に、これは普通は制御棒で制御しておりまして、その制御棒は自動装置になっておりますから、決してそれが働かぬということはあり得ないと思うのでございますけれども、しかし、万一そのコントロールしております制御棒が何らかのことでこじれまして動かぬというようなことになりましたときにも、炉を非常装置でとめます。緊急停止といいましょうか、そういう装置がつけてございます。たとえばボロン球とかボロン液を非常の際には炉の中に注入して、炉を緊急にとめてしまうというような装置もできるようになっております。それからまた、何らかのことでパイプなどが大きく切断いたしまして、炉の中にあります熱い水が一挙に失われてしまうといった場合には、燃料の熱がそれだけ上がってきまして、燃料の要素が溶けまして、内部にある放射能が漏れてくるというおそれがございますから、そういった際には、これまた自動的に緊急冷却装置というのが働きまして、その熱の上がりつつある燃料要素に自動的に水を注ぎかけてその熱を奪ってしまうというような装置も考えられておるわけございます。さらにそれに加えまして、万一働突などで非常に船体が大きくやられるというようなことを考慮いたしまして、衝撃には特に十分にたえるような船体構造、船格構造をとるようにいたしております。先ほど申しました炉及び蒸気発生機を格納しておりますコンテナの外側には、これをがっちりと船体と結びつけます特殊な構造を設けまして、万一ぶつかった際にも、よほどのことがない限り原子炉の部屋まで、被害が及ぶことのないように設計いたすようになっております。さらに、不幸にしまして原子炉はこわれなくても、船体に大きな傷がつきまして船が沈んでしまったという場合に、原子炉が海の中に入りまして、何らかのまた大きな事故を起こすというようなことがあるかもしれません。そういった場合にもさらに備えまして、先ほど気密につくってありますと申し上げました格納容器が海底に沈みまして、ある程度内外の圧力差が違って参りますと、自動的にギアが働きまして、海の水が炉の中に入ってくるということによりまして、さらに原子炉から出る熱をうまい工合に冷やして取る、それによって炉の中の燃料が漏れて放射能が漏れることのないようにするというような、以上申し上げましたのは幾つかの例でございますが、このように何重もの厳重な安全装置を施し船を動かすというふうな考え方でおります。
  56. 牛田寛

    牛田寛君 概要の御説明をいただいたわけでありますけれども、どの原子炉でもただいま御説明になったような安全装置というものは備えて設計されるのが常識だろうと思います。それでもなおかつこういう事故が起こる、あるいはこういう場所は弱点で、比較的安全性の中にも安全性を見ておるけれども、こういう事故が起こったという、その災害の被害はこれくらいだという実例は、世界におありでしょう。
  57. 村田浩

    説明員村田浩君) これまでに現在動力炉としまして世界じゅう合わせますと、陸上の炉が大部分でございますが約百基ばかりございます。そういう百基の動力炉の中で、今日までにいわゆる原子炉で事故と呼ばれるような事故を起こしましたのは二例あるのみでございます。一例はイギリスにおきまして一九五七年の十月に起こりましたウインドスケールの原子炉の事故でございます。それから他の一例は一九六一年の一月に起こりましたアメリカのアイダホホールズ試験場におきます原子炉の事故でございます。イギリスの原子炉はこれは炉の型としましては非常に古い炉でございまして、今日の技術の状況から見ますと、まあ原始的な形の炉ということができるかと思いますが、普通のわれわれの住んでおります空気でもってその炉を冷やすというような型式でございますために、炉の中の燃料が一部破れまして、そこから放射性のガスが出てくる、それが煙突を通じて外部に漏れたという事故でございます。この事故におきましては、一時周辺の牛乳の飲用が禁止されたことはございますけれども、人畜についての被害は一切ございませんでした。  いま一つの事故の例でございますアメリカの場合は、SL一型といいまして、これは小型の軽水型の原子炉でございますが、その目的は、陸軍が遠隔の地に持っていって、原子力発電を行なうために飛行機でも運べるような、分解可能な原子炉開発しております。その一環として、実験目的で使われておった炉でございます。その出力は約三千キロワットくらいのものでございます。この炉が事故を起こしましたのは、通常の運転時に起こしたのではございませんで、報告書等によって承知しますところでは、当時炉を分解しまして、作業員が分解作業をしておりますときに炉の操作を誤りまして、そうして事故を起こした、そのために作業中の三人の人がなくなられたわけでございます。原子炉の事故として動力炉関係で人がなくなったのはこれが唯一の例でございます。当事者がなくなられたものですから、究極的な原因は推察のほかないわけでございますけれども、アメリカ原子力委員会が専門家のチームをつくって調査しました報告によりますと、作業中に作業員のうちのだれか一人が、その作業手続書というのがあるわけでございますが、それに従わないで制御棒を動かしたというようなことがあったために事故が起こったのではないかというふうに報告されております。したがいまして、原子炉の事故としてはまた特殊な事例でございますけれども、そのような場合におきましても、実際に放射能の物質は原子炉の部屋の中でほとんど食いとめられておるようでございます。といいますのは、この原子炉は特に先ほど申しましたように、格納容器というような気密装置を備えておらなかったわけでございまして、ただ普通の建屋に類したものの中に納められておったわけでございますが、普通の建家というものが外への放射能の流出を予想以上によく防いでおるということが報告の中に示されておるようでございます。したがいまして、建家の中で、原子炉のすぐそばで作業しておった人以外には、何ら人畜に被害がなかったように承知しております。  以上の二つがこれまで世界で百基にあります実際に動いております原子炉につきまして起こりました大きな事故でございまして、船の場合には、まだそういうような例は承知しておりません。
  58. 牛田寛

    牛田寛君 概略伺ったわけでありますが、高度な科学や技術を基本にしたいろいろな手段は、事故が起こりますと被害が大きくなってくるのが実情でございます。どんなものでも事故がないということはいえないので、事故があるためにそういういろいろな技術を使わないというような考え方は、これは技術の進歩をはばむものでありますから、私はそういう考えは持ちませんし、むしろ原子力の完全な発達を願いますし、原子炉もどんどん原子力船などに使われることを願っておるわけでありますけれども、そういう点で十分慎重な御検討をお願いしたいと思います。舶用の原子炉でございますから、当然交通上の事故が考えられるわけで、これも潜水艦の問題とからみ合いまして問題にされておりますけれども、これは何も潜水艦がどうとかという問題ではなくて、原子力商船の場合でも起こり得ることで、たとえば船体全体が完全に破壊されるというような最悪の事故の場合に、原子炉の炉体そのものの損傷がどの程度まで防げるものか、それほどの船体の破壊が起こっても、原子炉自体は安全に保てるだけの技術的な保証ができるかどうか、その点について伺います、現在の段階で。
  59. 村田浩

    説明員村田浩君) 先ほど、幾つかの何重にも施した安全装置があると申し上げましたが、ただいま牛田先生の御指摘のように、かりに重大な衝突事故が発生いたしましたと仮定いたしますれば、その原子力船には非常な衝撃があるはずでございまして、そのような衝撃の場合には、原子炉が直ちに間髪を入れず自動的に停止されるような装置になっております。したがいまして、もしその事故によりまして原子炉室まで破損が入ってくるというような場合がかりにありましても、原子炉は完全にとまったような状態になって、運転の状態ではない、そういう形になっておるかと思います。船がこわれてしまうようなときに、なおかつ原子炉が働きまして、そのために原子炉が非常な暴走を起こすというようなことは、まず考えられないのではないかと思います。
  60. 牛田寛

    牛田寛君 原子炉の暴走が防げるということは、今のお話でわかるといたしますが、原子炉内部には放射性物質が含まれておると考えられる。それから冷却系統にもかなり多量な放射性物質がある。そういうものは当然外部に漏れる、あるいは流れ出すということは、技術的には考えられると思いますが、技術的にひとつお答え願いたい。
  61. 村田浩

    説明員村田浩君) そのような仮想的な事故の場合にどのようになるかということは、私どもいわゆる災害評価ということで、一応原子炉の施設を建設します際に、その設計原子炉につきまして、あらゆることを考えまして計算はいたします。それは必ずしもそういうことが生ずるということではなくて、予想はされないけれども、万があるいは人知を越えたようなことが起こった場合にどうなるかというようなことをあらかじめ検討していく目的で、紙上でいたすわけでございますが、この紙上でいたしました結果に基づいて、実際に原子炉を設置する場合の離隔距離なり、あるいは原子力船の場合でございますと、原子力船の係留地点なり、そういったものを考慮してきめていくという考え方をとっております。
  62. 牛田寛

    牛田寛君 そうしますと、技術的にはそういう放射性物質もあるいは外に流れ出すということも考えられないわけではないと、こういうふうに私ども常識的に考えているわけですが、そういう場合もあり得るわけですね。
  63. 村田浩

    説明員村田浩君) 放射性物質が絶対に少しも出ないかということは、これは実際のケースによって見ないとわからぬわけでございますが、御承知のとおりわが国におきましても、原子炉の設置、運転等の規定に基きまして、放射線に対する許容基準というものを設けてございます。絶対にゼロということではなく、その許容基準に即応した規制をいたす、そういう形で考えております。許容基準では、たとえば職業人と申しましょうか、原子炉等を取り扱っておる人でありましたら、一年間に五レムまでの放射線が許容される。それからその周辺におる人々につきましては、年間で一・五レムあるいはわれわれ一般の人にとりましては一年間に〇・五レムというような放射線の許容基準があります。その許容基準と照らし合わせまして、その基準が破られないように措置をいたすということになっております。
  64. 牛田寛

    牛田寛君 新しい技術開発する場合には、いろいろな危険、事故が予想されないために、必要以上な心配やあるいは必要以上の対策が講ぜられる場合も、今までの技術の歴史の上にはたくさんあったと思います。したがって、この原子炉開発あるいは原子力船建造の場合にも、当然そういうことが起こってくると思いますが、技術が高度になればなるほど、やはりそういう面は慎重に積み上げていく必要があるのではないか。そういう意味で、そういう問題については政治的な問題に流されないで、ひとつ純粋に技術的な立場から積み上げる方向に、むしろ科学技術庁あたりが中心になって進めていただきたいというのが私の要望でございます。  次に、運輸省関係でございますが、この事故の問題ですね、特に原子力船が、動きますと、ただいま申し上げましたような事故も考えられるわけでありまして、運航管理の面から、原子力船についてはある程度のやはり規制と申しますか、特別な措置をとるとかというようなことも当然考えられてよいのではないかと考えます。その点について、法規の整備なりがどのように行なわれるか、どのようなお考えをお持ちか、概略なり承わりたいと思います。
  65. 藤野淳

    政府委員藤野淳君) 原子力船建造いたしまして、燃料を装荷し試運転をし、実験航海をし、さらにこれを終わりまして、実用に持っていくという場合に、原子力船の安全運航のためにいろいろな施設が要るわけでございます。船自体につきましては、技術的な問題は、ただいま原子力次長からお答えいたしましたが、原子力船に乗り組む乗組員についてはどのような技能のものが必要であるか、職員はどのような資格が必要であるか、船員はどのような資格が必要であるかといったような法的な規制が必要でございますし、また、原子力船が港に入りました場合に、どのような安全管理が必要であるか、また、それを監督をいたしまするのは、港におきましては海上保安庁がするわけでございます。それにつきましては海上保安庁設置法の改正も当然必要になろうと思います。どのような技術的な内容のもので、どの範囲のものであるかという点につきましては、一応いろいろ研究はいたしておりまするが、その原子力船が実際に試運転がされますまでにまだ時日もございまするので、関係各方面と広く連絡協議いたしまして、万全な対策を講じて安全運航が確保できるようなもろもろの対策を、物的な面、法制的な面あるいは人的な面、いろいろな面で整備をいたしたいと、かように考えております。
  66. 牛田寛

    牛田寛君 廃棄物処理の問題でございますが、原子炉の運転については放射性物質の廃棄物が当然伴ってくると思いますが、原子力船第一船においての廃棄物処理の方針はどのようになっておりますか。
  67. 島村武久

    政府委員島村武久君) 廃棄物の点につきましては、原子力船であるからということで特別の考慮は何もいたしておりません。すべて陸上の場合と同じようにやって参るつもりであります。言いかえますと、原子力船が勝手に海の中に放射能を帯びたものを出さない、使用済み燃料はもちろんのことでございますけれども、すべて放射性を帯びたものを海洋あるいは港湾等で出さない。皆持って帰りまして、陸上に揚げる。そして揚げましたあとは陸上炉から出るものと同じように処理するという考えでおります。
  68. 牛田寛

    牛田寛君 サバンナ号などの実例はいかがでしょうか。
  69. 島村武久

    政府委員島村武久君) サバンナ号においても同様の考え方であると承知いたしております。
  70. 牛田寛

    牛田寛君 サバンナ号は海洋投棄はやっておらないのですか。
  71. 島村武久

    政府委員島村武久君) そのとおりに承知しております。
  72. 牛田寛

    牛田寛君 潜水艦の場合は。
  73. 島村武久

    政府委員島村武久君) 潜水艦の問題につきましては、もちろん使用済み燃料がある場合におきましては——放射性を一番多く帯びたものでございますけれども——これはアメリカあるいはソビエトもそうだと思いますけれども、陸上で取りかえ、陸上と申しますか、港湾で特別の装置によって燃料取りかえを行なうわけでございますけれども、原子炉その他によって出て参りますところの放射性廃棄物につきましては、十二海里沖あるいは知れた漁区と申しますか、そういうところ以外あるいは船がほかの船との距離等から考え出されまして、物によって海洋に捨てるということが認められておるというふうに承知しております。
  74. 牛田寛

    牛田寛君 海洋投棄ということも行なわれる場合があると考えられるわけですが、わが国として将来原子力船あるいは潜水艦なり、原子力を動力とした船がふえて参りますと、当然そういう海洋投棄の問題が起こってくる。そういう場合に、特にわが国としては、漁業の問題もございますし、そういう点で国際協定なり、条約を、廃棄物処理に関して結んでいくということも考えられますが、その点についてはどのようにお考えになっておりますか。
  75. 島村武久

    政府委員島村武久君) 仰せのとおりでございまして、陸上炉の場合と違いまして、国際間のことでございますので、広く国際的な取りきめができることは望ましいわけでございます。事実またそのための国際会議等も数回持たれているわけでございますけれども、現在の段階におきましては、まだ急速にそのような条約が国際間で結ばれるというような段階まではきておりません。われわれといたしましては、申すまでもなく、そういうようなことが一日も早く行なわれるということを期待しておりますし、わが国からもそのような会議には人を派遣したりいたしているわけでございます。
  76. 牛田寛

    牛田寛君 わが国としては、原子爆弾によって原子力の災害というものを最も身近に、世界中では一番直接に被害を受けたわけでありますが、したがって、原子力の被害に対する危険性というものは世界中で一番よくわかっている国民です。そういう意味原子力災害を防ぐということは、最も国民の関心事であると思います。それだけにこのいたづらな恐怖を招くことは、原子力の平和利用のために大きな妨げになりますし、事あるごとにそういう問題が出て参ります。そういう意味で、先ほども申し上げましたが、今度の原子力船開発されるにあたりましても、危険性の実体というものを技術的な立場で、科学的な立場で、危険性は危険性なりに明らかにして、そうしてその立場で対策を立てるというふうな方向をひとつ明瞭に打ち出していただきたいことを要望したいわけです。  それからもう一点は、原子力船技術開発されますと、それがそのままその技術は当然原子力潜水艦のようなものに利用されるわけであります。これは科学なり技術なりの宿命でございますが、あくまで原子力は平和のために使わなければならないというのが私たちの理想でありますので、そのように、原子力船についてもその技術が平和利用のためだけに使われるということに対しては、私ども深い関心を持つているわけです。その点については、当然のことでありましょうが、お考えを承っておきたい。
  77. 島村武久

    政府委員島村武久君) この原子力船事業団法案そのものと直接関係ない問題だとは考えたのでございますけれども、そういったような国民的な関心が深い問題とも考えましたので、提案理由の御説明あるいはその他の機会に再三にわたって御説明申し上げたとろでございますけれども、本法案の第一条にも「日本原子力船開発事業団は、原子力基本法の精神にのっとり、」ということを特にうたったようなわけでございます。しかしながら、御指摘のように、この事業団の成果というものは公開されるわけでございますから、それによって得られました技術と申しますものが、かりに民間等にも使えないというようなことは、あるいはないかもしれません。それはほかの科学技術一般の問題と共通の問題としてあるわけでございますが、何よりもそれに対して日本がその技術を軍事に使わない、平和目的以外に充てないというごとの保障、それは原子力基本法にはっきりされておるところでございますので、私どもといたしましては、これの精神、あるいはこの法律が、原子力基本法がゆるがない限りにおきましては、当然そのようなおそれはないというように考えておるわけであります。
  78. 牛田寛

    牛田寛君 最後にもう一点だけお伺いしておきたいと思いますが、先ほどから何べんも繰り返して質問するようですが、原子力第一船後の計画でございますが、現在のところでは、その経済性に対する見通しが立っておらない、しかし、原子力船建造なり実験期間中に、当然またいろいろ条件が変わってくると思います。その間に第二船以後の計画が立てられるものでありますか。やはりそれがありませんと、間にブランクができる。技術者養成訓練のために何人かの人を乗り込ませて訓練する、しかし、訓練するにしても、第一船をつくっただけでは、それっきりになって、結局その技術が死んでしまいます。そういう意味でも、原子力船実験建造期間中に、あるいは第二船それ以後の長期計画が立てられてしかるべきだと思いますが、その点についてのお見通しを伺っておきます。
  79. 島村武久

    政府委員島村武久君) 私どもとしては、決して盲目的な確信によって長期計画考えているわけじゃございませんので、このような第一船を建造運航し終わるころには、当然一般実用船に引き渡しができる、切れ目なくスムーズに推移するというふうに考えているのでありますが、一度長期計画でそうきめたから、状況が変わってそうならなくても、あくまでもそれで押し通すということであってならぬことは当然でございます。何分にもこの計画は、御注意を受けているのでありますが、九年間という非常に長い計画でございますので、この仕事をやって参ります過程におきましての状況の変化その他にはいつも注意を払って、必要とありますれば、現在のそのような考え方あるいは見通しというものを変えて、あらためて原子力船に関する国の計画というものは当然考え直さなければならぬ、決してこだわっているわけじゃございません。御注意のほどは重々考えてやっい参るつもりでございます。
  80. 牛田寛

    牛田寛君 これで質問を終わります。ありがとうございました。
  81. 田上松衞

    委員長田上松衞君) 他に御発言もなければ、本日はこの程度にいたしたいと思います。  これで散会いたします。    午後三時三十四分散会