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説明員(
村田浩君)
原子炉の事故に関連しまして、まず最初に申し上げておきたいと思いますことは、
原子炉の
技術は今日非常に進歩しました。しかし、万が一何らかのために事故を起こしました際に生ずる災害の潜在的
可能性ということを考慮しまして、非常に
原子炉そのものも頑健につくってあるということでございます。一例を先ほど申し上げました三万五千キロワットぐらいの
軽水型
原子炉について申し上げますと、おおよそその構造は、直径が約二メートル、高さが約六メートルぐらいの茶筒の格好をしたような円筒型の圧力容器の中に、
燃料を先ほど申しますように二千六百キログラムぐらい入れまして、それを圧力のある水で冷やしておるわけでございますが、その際の圧力容器も、大体厚さは鋼で百ミリ——十センチをこえるくらいの厚さのものでございます。内部に保ち得る圧力は、
設計で約百五十気圧の、十分こわれないというような強さのものを使うようにいたしております。中で使われます水の圧力は百気圧ぐらいのものでありますから、五割増しぐらいの、がんじょうなものにいたしてある。こういうふうに非常に厳重な圧力容器の中に入れられたものを、さらにそこから出てきます熱で蒸気を発生いたします蒸気発生機あるいは熱交換機と呼ばれるものを含めまして、格納容器——コンテナというものに納めて、そのコンテナは大体
原子炉の容器の重さが四十二、三トンといたしますと、格納容器の重さは百数十トンぐらいの重さのものでございまして、その外と中とでは完全な気密が保たれるようにいたしまして、そうして格納容器から出入りいたしますパイプ等のつけ根等から絶対に内部の空気が漏れないようにするという構造を採用する等の厳重な気密を達成し得るようにいたしております。こういうふうに非常に厳重になっておるわけでございますが、にもかかわらず、万が一何らかのことで事故が起こった際にはどういうふうにしてこれを防ぎとめるかという点につきましても、さらに何重かの安全装置を施してあるわけでございます。
まず第一に申し上げておきたいことは、第一船に
原子力委員会が
軽水型
原子炉を搭載する方針をとりました
一つの理由は、現在世界的にいろいろと型式の違います
原子炉が
開発されておりますけれども、
軽水型
原子炉はその特性としまして、負の温度係数という特性がございまして、
原子炉の中の活動が盛んになって温度が上がるようになりますと、これを自動的に自分の特性として押えていくというような特性を持っておる。今日
開発されております世界の各炉の中でも、特性的に見ても非常に安全な炉の
一つに属しておるという点も考慮に入っておるわけでございます。まあ事故を起こします際に、これは普通は制御棒で制御しておりまして、その制御棒は自動装置になっておりますから、決してそれが働かぬということはあり得ないと思うのでございますけれども、しかし、万一そのコントロールしております制御棒が何らかのことでこじれまして動かぬというようなことになりましたときにも、炉を非常装置でとめます。緊急停止といいましょうか、そういう装置がつけてございます。たとえばボロン球とかボロン液を非常の際には炉の中に注入して、炉を緊急にとめてしまうというような装置もできるようになっております。それからまた、何らかのことでパイプなどが大きく切断いたしまして、炉の中にあります熱い水が一挙に失われてしまうといった場合には、
燃料の熱がそれだけ上がってきまして、
燃料の要素が溶けまして、内部にある放射能が漏れてくるというおそれがございますから、そういった際には、これまた自動的に緊急冷却装置というのが働きまして、その熱の上がりつつある
燃料要素に自動的に水を注ぎかけてその熱を奪ってしまうというような装置も
考えられておるわけございます。さらにそれに加えまして、万一働突などで非常に船体が大きくやられるというようなことを考慮いたしまして、衝撃には特に十分にたえるような船体構造、船格構造をとるようにいたしております。先ほど申しました炉及び蒸気発生機を格納しておりますコンテナの外側には、これをがっちりと船体と結びつけます特殊な構造を設けまして、万一ぶつかった際にも、よほどのことがない限り
原子炉の部屋まで、被害が及ぶことのないように
設計いたすようになっております。さらに、不幸にしまして
原子炉はこわれなくても、船体に大きな傷がつきまして船が沈んでしまったという場合に、
原子炉が海の中に入りまして、何らかのまた大きな事故を起こすというようなことがあるかもしれません。そういった場合にもさらに備えまして、先ほど気密につくってありますと申し上げました格納容器が海底に沈みまして、ある
程度内外の圧力差が違って参りますと、自動的にギアが働きまして、海の水が炉の中に入ってくるということによりまして、さらに
原子炉から出る熱をうまい工合に冷やして取る、それによって炉の中の
燃料が漏れて放射能が漏れることのないようにするというような、以上申し上げましたのは幾つかの例でございますが、このように何重もの厳重な安全装置を施し船を動かすというふうな
考え方でおります。