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1963-02-26 第43回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月二十六日(火曜日)    午前十時十一分開議  出席分科員    主査 今松 治郎君       安藤  覺君    倉成  正君       小坂善太郎君    田中伊三次君       松本 俊一君    木原津與志君       辻原 弘市君    堂森 芳夫君       楢崎弥之助君    西村 関一君    兼務 野原  覺君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務政務次官  飯塚 定輔君         外務事務官         (大臣官房長) 湯川 盛夫君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     佐藤 正二君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (経済協力局         長)      甲斐文比古君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         外務事務官         (移住局長)  高木 廣一君  分科員外出席者         外務事務官         (アメリカ局安         全保障課長)  高橋正太郎君         大蔵事務官         (主計官)   田代 一正君     ————————————— 二月二十六日  委員分科員淡谷悠藏委員辞任につき、その補  欠として楢崎弥之助君が委員長指名分科員  に選任された。 同日  分科員楢崎弥之助委員辞任につき、その補欠  として西村関一君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員西村関一委員辞任につき、その補欠と  して淡谷悠藏君が委員長指名分科員に選任  された。 同日  第一分科員野原覺君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十八年度一般会計予算外務省、文部省、  厚生省及び労働省所管昭和三十八年度特別会計  予算厚生省及び労働省所管      ————◇—————
  2. 今松治郎

    ○今松主査 これより会議を開きます。  昭和三十八年度一般会計予算中、外務省所管を議題といたします。  質疑を許します。野原覺君。
  3. 野原覺

    野原(覺)分科員 外務大臣にお尋ねをしたいと思うわけでございますが、すでに新聞が報道しておりますように、前の韓国中央情報部長でございました金鍾泌氏がきのうの夕方日本に入ってこられたようであります。金鍾泌氏が中央情報部長をおやめになられるにあたっては、いろいろな情報が流れておるのでございますが、その金鍾泌氏が何をもって今の段階日本に来られたのであるのか、その目的は何でございますか、しかもどういう資格日本に入ってこられたのでございますか、承りたいと思うのであります。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 昨日韓国の代表部から、金鍾泌氏外二名の随員の方の入国を認めてもらいたい、こういう話がございました。資格は何でも移動大使だということでございました。一週間程度の滞在を認めてもらいたい、そういうことを言うてきまして、日本政府としては、今まで韓国は他の国交のある国々と取り扱い上特別に差別をいたしておりません。従って、私どもとしてはけっこうでございましょうという御返事を申し上げたわけで、どういう目的日本に来られたか、それは伺っておりません。
  5. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、金鍾泌氏といえば、あなたが財産請求権の問題で、大平金会談であのような妥結を見た日韓会談を促進する中心人物朴政権の中で金鍾泌氏ぐらい日韓会談促進論者はなかったろうと私は思います。あなたが最もたよりにしていた人物日本に来たのでございますから、しかも朴議長代行という資格で、特命全権巡回大使ということでもございますと、当然外務大臣としては金鍾泌氏と会見されることが今までの経過からいっても筋ではなかろうかと私どもは思うのでございますが、会見をなさる御意思があるのでございますか、承りたい。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 私の方から会見申し入れ意図はございません。
  7. 野原覺

    野原(覺)分科員 どういうわけで意図がないのでしょう。私がただいま申し上げましたように、朴議長代行といったような巡回大使でございましょう。それにあなたがお会いにならない。しかも金鍾泌氏はあなたとの間にあのような請求権問題の妥結を見た方であります。なぜお会いにならぬのですか、理由があるのでございますか、承りたい。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 政府の正規の資格を持ち、使命を持ってわが国にお申し出がある場合は、どの国であろうと私は会います。しかし今回の場合は先方から何らの申し入れもございませんし、私ども特にお目にかかりたいと申し出るつもりもございません。
  9. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、金鍾泌氏が会見を申し込んできた場合には会おう、そしてその会う場合も、それは外務大臣巡回大使金鍾泌氏の公式会談という形でお会いになるわけでございますか。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 申し入れがございませんので、そういうことは考えておりません。
  11. 野原覺

    野原(覺)分科員 申し入れがあった場合にはどうなさいますか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 申し入れがあった場合には、お申し入れ趣旨を吟味いたしまして検討してみます。
  13. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、公式会談ということもあり得るわけでございますか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 先方からまだ申し入れがございませんので、申し入れがあったときに——どういう趣旨先方が会いたいということを申し出るんだろうと思います。だからそのときに検討すればいいことだと思います。現在は何もないのですから……。
  15. 野原覺

    野原(覺)分科員 そこで外務大臣にお伺いいたしますが、冒頭申し上げたように、金鍾泌氏は今度巡回大使で世界の各国を訪問されるようでありますけれども韓国政情からながめた場合に事実上の亡命ではないかと、こう各新聞が報道しておるのであります。これは外務大臣がよく御承知だろうと思う。あなたが今日日韓会談の重大な交渉を進めておられるのに、韓国政情を分析しないで交渉されるわけはないのでございますから、そこら辺の事情はよく御承知であろうと思うのであります。どういうわけで、あの第二の実力者とまでいわれて、朴議長の右の片腕とまでいわれた金鍾泌氏が突如下野しなければならなかったのか、日韓会談を促進されるあなたとしては、これは大きな関心を持ってながめていらっしゃるはずであります。どういうわけで金鍾泌氏は下野したのでございますか、これを承りたい。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国政情は私どもとしては無関心であり得ないわけでございまして、終始注視はいたしております。しかし金鍾泌氏がどういう事情で下野せざるを得なかったかというようなことにつきましては韓国の問題でございまして、私がこう見るんだというようなことを申し上げるのは不謹慎だと思います。
  17. 野原覺

    野原(覺)分科員 あなたに金鍾泌論をやれとか、金鍾泌が下野したことについての価値判断、批判をせよということをお尋ねしておるのではないのであります。あなたが会談をした相手人物であります。どういうわけで金さんが中央情報部長をおやめになられたのかという事情ですね、あなたの知り得る限りの事情、それを私はお聞きしておるのであります。これは御答弁願いたいと思う。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国は、野原さんも御承知のように、今民政移管過程にあるわけでございます。政党づくりをやっておる過程でございます。その間におこった一つの事件であるというように私は見ておるわけでございます。
  19. 野原覺

    野原(覺)分科員 ではお尋ねいたしますが、韓国政情は安定しておるというのが今月の十八日までの池田総理の答弁であります。あなたもそういったような考え方交渉してこられておるのでございますが、韓国政情というものをどのようにごらんになっておられるのか。たとえばきのう、きょうの新聞によれば、朴議長大統領に出馬しない、こういうのであります。そうして実力者金鍾泌氏は、民主共和党準備委員長すらやめて下野せざるを得ないというのでは、一体韓国政権をあすだれがどういう形で担当するのかということについての見通し、ここら辺の御見解を私どもは知りたいのであります。一体外務大臣はどう考えておるのか。依然として今日もなお韓国政情は安定しておると見ておられますかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 軍事政権は成立以来これは暫定政権であってやがて、民政に移管するのだということを内外に宣明いたしておりまして、その線に沿って今民政に脱皮する準備をいたしておるわけでございます。そしてその限りにおきまして、私は正しい方向底韓国政情が向いておると考えておるわけでございます。  政権の安定という問題は、これは相対的な問題でございまして、絶対な安定政権なんというのはどこにもありません。私どもは、私ども交渉し、またおつき合いをしている国々政治の安定を望みますけれども、しかしこれはそれぞれの国の置かれた状況のもとにおいて政治を運営させておるわけでございます。私ども相手国に対する礼譲として、相手国政情は不安定じゃないかというようなことを、日本外務大臣が申し上げるなんということは、これは非常に不謹慎なことである。その政権が退陣する瞬間まで、私どもは正しい姿勢でおつき合いするのが、日本の外交の姿でなければならぬと思います。
  21. 野原覺

    野原(覺)分科員 私はその点はあなたと見解を異にいたします。あなたは日本国民を代表して、国家を代表して日韓会談の重大な交渉をしておるわけです。国民に対して相手の国の政情が安定しておるか、不安定であるかということを示すことが不謹慎ですか。国民に対して最も忠実なことじゃございませんか。一体安定しておるのか、不安定なのか、外務大臣はどう考えているかということを国民に明らかに示すべきだと私は思う。私はそれが不謹慎だということにはならぬと思うのであります。  それではあなたにお伺いいたしますが、朴議長大統領に出馬しないということは、これは確実になったのでございますか。これはどうお考えでございます。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 それは韓国におきまして韓国がきめることでございまして、私どもが論評する問題ではないと思います。
  23. 野原覺

    野原(覺)分科員 もし大統領に出馬しないということになりますと、朴政権相手交渉してきたこの日韓会談は、やはり重大な事態に直面するのではなかろうかと私は思うのです。そこでお伺いいたしますが、この朴政権というのは、けさ新聞は、すべての新聞が、大統領には出ないのだ、九つの条件をすべての野党が承認をする、これを条件朴議長大統領には出ないのだ、こう報道しておる。そうなって参りますと、朴政権というのは、遺憾ながらこれは暫定政権です。民政に移管したしますと新しい大統領がきまるわけです。朴議長と違った人が、だれ、がなるかわかりませんけれども、新しい大統領に任命をされる、そうして新しい国会が構成をされるということになろうと思うのであります。そうなっていくことが今日ただいま明らかになったのです。これは一週間ほど前から大体その方向は明らかになってきておるのですね。このようにして、朴政権が遺憾ながら暫定政権だ、こういうことになることが旨らかになってでも、なお朴政権との間に日韓会談をお続けになるのかどうか、この暫定政権との間に、朴を相手にこの日韓会談妥結調印批准までもお進めになるのでございますかどうか、この点を承りたい。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 民政軍事政権が移管するということは、軍事政権自身がいっておることなんでございます。そうしてその民政に移されたあと大統領は自分がなるのだという約束はされていないはずなんです。問題は、政党活動が許されて、民主的な手続を経て韓国大統領もきまり、内閣もきまってくることでございましょう。そういうことは、もう初めから軍事政権というのは暫定政権民政移管をやるのだということを内外に宣明しておるわけで、その通りやっておるわけなんでございます。私どももそれを承知の上で、軍事政権というのは暫定政権である、民政移管へのつなぎの政権であるということを承知の上で、日韓交渉というのはやってきたのでございます。現在の段階において、それでは今後どうするのか、今までの姿勢をちっとも変えるつもりはございません。
  25. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、現在の段階でもなお日韓会談妥結調印批准朴政権との間に結びたい、こういう御意見でございますか。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 私ども妥結調印にいく前に、まず御案内のように、たくさんの問題があるわけでございます。国交正常化前提としてたくさん消化しなければならない問題があるわけでございまして、これはどういう姿であるべきか、両国民が納得する消化の方法を考えなければならぬわけでございまして、それを鋭意やっておるわけでございます。そうしてそれができ上がった段階が、朴さんが政権の座にあるときなのか、あるいはそのあとなのか、そういうことは、今私は考えておりません。問題の懸案の追及、究明、解決ということは、どうあるべきかということを鋭意やっておるわけでございまして、それが今私ども課題であると心得ておるわけです。
  27. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、朴政権との間で、望み得べくんば日韓会談一括解決をしたい、調印もしたい、それからできるならば、新しい国会韓国に発足する以前に朴議長のもとで批准もしたい、こういう御意思ではなかったのですか。あなたが、今日まで国会で答弁されたのは、軍事政権との間に妥結調印批准まで持っていかなければならぬのだという非常にお急ぎの気持で、あの請求権妥結をやったんでしょう。もし次の民政に移管してからでもやれるのだというならば、ああいう拙速な、平和条約四条を頭から無視してかかるような、ああいう妥結の仕方というものはあり得べきものではなかろうと私どもは思う。ああいうことをやったのは、やはり民政に移管したのではなかなか問題の解決ができないのではなかろうか、非常に親日的な、会談を促進しようという機運が盛り上がった朴政権相手妥結することがよいのではなかろうかというのでやったのではございませんか。いかがですか。この点もう一度念を押してお伺いいたしたい。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど私が答弁申し上げた通りでございまして、私ども懸案を両国民が納得するような姿で解決すべく努力をいたしておるわけでございます。それがもう私どもの一〇〇%のただいまの課題であるということでやってきております。
  29. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、朴政権との間に、かりに財産請求権の問題を初め、漁業問題一切が妥結をした、調印もして、批准もした、こうなって参ります。あるいは批准まではいかないとしても、妥結調印という時点が来たといたします。そうなりますと、今度朴議長は新しい大統領には就任をしないということを声明をする、これはもう明らかです。朴議長が新大統領に就任しないということになればだれかが新しい大統領につく。それで今度は軍事政権じゃないのですね。人民に基礎を置いた国会ができる。こうなって参りまして、新しい国会なり新しい大統領が、朴議長日本政府との間に取り結んだ日韓会談については承認しない、こういう意思表示をすることもあり得るわけです。その場合にはこの日韓会談というものはどうなるのでございましょうか。やはり韓国というのは朴議長から民政に連続して続いておるものであるから、幾ら新大統領、新国会が承認しないという意思表示をしても朴議長との間に妥結調印したことは有効であるという見解をおとりになるのでございましょうか。新大統領、新国会から承認できないという意思表示がなされた場合には、あなたが朴政権との間にかりに妥結調印したとしても、私は日韓会談の前途というものは容易でないように思うのです。そこら辺の見解を承っておきたいと思います。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓の間はいかにかして不自然な状態を解消いたしまして、正常化に持って参らなければならぬという立場に私どもは立っておるわけでございます。その前提としてもろもろの厄介な懸案があるから、これは国民が納得する筋道で解決するにはどうしたらいいかということは、日夜私の頭を離れない懸案でございます。従いまして、韓国政情のいかんにかかわらず、日本としては鋭意その検討を進め、先方誠意を持って臨む限り、これを相手といたしまして交渉いたすのは当然の私の任務だと思うわけでございます。その結果がどうなるかということにつきまして、目下私はそういうことは考えていないわけでございます。
  31. 野原覺

    野原(覺)分科員 私がお尋ねしておるのは、新しい大統領によって否認されることもあり得るという事態をやはり考えておく必要があると思う。民政に完全に移管するのは七月か八月かわかりませんが、かりに八月だといたしますと、朴議長韓国を代表する資格は八月までなんです。そうなれば新大統領ができるわけですね。ところが今非常に日韓会談をあせっておられます。何とかしてまとめようとなさっておる。ところが朴議長との間に妥結調印をしても、今度は次の大統領によって承認されないという事態も予測できると思いますが、これは私の思い過ごしでしょうか。そういうことも予測されないことはない。大臣はどう考えます。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓国民の間に正常化への熱意がある限り、私はそういう事態を予想しておりません。
  33. 野原覺

    野原(覺)分科員 いよいよもってあなたは冒険的にこの日韓会談をまとめようとしておられる。非常に危険きわまりないのですね。私どもは、非常に日韓会談は重大でございますから、あらゆる事態をやはり予測していなければならぬという見解をとります。特に韓国においてはしかりです。これがその他のはっきり政情の安定したアメリカであるとかイギリスであるとかという国ならばいざ知らず、まことに目まぐるしい——あす一体どう韓国政局が動くかということはだれにもわからぬのです。全く世界じゅうの人にわからぬのです。けさの読売新聞編集手帳のところにはパチンコの玉のような政局だと表現しておりましたが、実に目まぐるしいのですね。そういうところで朴政権との間であなたは依然として交渉を継続し、熱心に交渉を進めようとしておりますけれども、これは一体民政移管をしたらどうなるかわかったものじゃありませんよ。そのことを念頭に入れなければならぬと私は思う。だから民政へ移管するまではこの会談をしばらく中断したらどうか。そのことがむだ骨を折らないことでもあるし、日本国民日本国家に対する忠誠なやり方ではなかろうかと私ども考えるのですが、この点はいかがですか。それでもあなたは、あとがどうなろうとやるのだ、新しい大統領から否認された、新しい国会から認められないという事態が来たらそのときまでのことだ、こういう投げやりの気持交渉を進められておるとしか私どもには受け取れないのでございますが、いかがですか。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓関係がこのような状態であってはならぬ、正常化に持っていかなければならぬというのが、私は両国民大多数の願望だろうと思うのでございます。私どもはその願望を背景にいたしまして日韓国交正常化の道を直脅し、これを切り開いていくにはどうすればいいかということをどの瞬間においても考えておかなければならぬというのが、外務大臣の当然の責任だと私は思うのでございます。日韓国民がそういう誠意を持っている限り、私は今あなたがお示しになられたような事態は予想しないで、このむずかしい懸案解決ということに一歩でも前進していくように努力して参らなければならぬと思います。
  35. 野原覺

    野原(覺)分科員 あなたは私の申した事態を予想しないでなさる、こういうのでございますが、そういう事態が起こったら、あなたは、政府はどういう責任をおとりになりますか。これは仮定のことだからといってあなたはあるいはお逃げになるかもしれない。しかしこの仮定は私は単なる仮定ではないと思う。かりに仮定にしても、そういう事態が起こったならば重大な責任が私は生ずると思う。承っておきたい。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、日韓国民の間に正常化への熱意がある限り私はそういう事態は予想いたしておりません。
  37. 野原覺

    野原(覺)分科員 韓国民衆朴議長金鍾泌氏と同じ考えを持っているという保証はどこにありますか。あなたは何をもって韓国国民にあの朴・金ライン会談妥結意図があるとお考えになっていらっしゃるのですか。韓国の世論が、金鍾泌氏が持ってきたあの請求権のあの妥結の仕方、あれをあなたは韓国国民が必ず承認する、そういう成算がおありですか。あなたとメモを取りかわした金鍾泌は追い出されたではありませんか。今東京に来ておりますけれども、これは事実上の下野です。亡命ですよ。しかもあなたはその金鍾泌氏を信頼し、その金鍾泌氏とメモまでかわして、サインまでして、大野伴睦さんが韓国に行ってそのサイン金鍾泌から突きつけられて驚いて、もしこのことを日本政府が守らないならば国際信義大平外務大臣は大へんなことになると池田総理に復命したと報道している新聞もあるのです。あなたが最も信頼した金鍾泌氏はいかがですか。今日、中央情報部長を追われるやいなや、汚職、疑獄の中に包まれているじゃありませんか。金鍾泌の右腕であった幹部は監獄にほうり込まれたはありませんか。ウォーカー・ヒルの事件パチンコ事件、自動車の問題、証券業界の過熱問題と、民主共和党の軍資金をつくるのだというので大へん汚職をやったという疑いが今日朴議長最高会議に出て、そうして新たに任命された中央情報部長が摘発に乗り出しておるでしょう。その金氏が今東京に来ておる。そういう者を相手にあなた方は交渉してきたのであります。金鍾泌氏が交渉したことが韓国国民に信頼されるとお考えですか。韓国政治家民衆は朴氏や金氏が考えておるような日韓会談妥結を必ず承認してくれるとお考えであるならば、その理由を承っておきたいです。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、日韓国民の間に正常化への瀬望熱意がある限り、私は今あなたが御指摘したような事態は予想しないのであります。それでまた政党活動が許されて各政党が結成される、そしてその政党綱領ができるというときには、韓国民日韓問題の正常化熱意願望を持っている限り、政党綱領に形成され化体されてくるだろうと思います。このことはけっこうなことなんで、軍事政権がになっておった日韓問題というものは広い平面において政党活動にささえられるようになるわけでありまして、これは民政移管の当然の道行きなのであります。私どもは再々申しますように日韓国民がこれを願望しておる限り、あなたが予想されるような事態にはならぬというように私は考えております。
  39. 野原覺

    野原(覺)分科員 あなたが非常に甘い分析で、そうして私どもの素朴な言葉でいえばふてくされたような考え日韓会談を進めておられるとしか思われぬのであります。もっとまじめに日韓会談というものをお考えになるならば、今あなたのそういった考え方、そういった思い上がりというものをおやめになられた方がよかろうと思う。私ども日韓会談というのは、池田総理がかつて申しましたように、日韓国民友好親善のためにこの会談を進めておるというのが、従来の政府の一貫した見解であったと思うのであります。日韓国民友好親善のための会談ならば、これは日韓国民から支持される会談でなければならぬ。ところが日韓国民意思とは、何によってこれは表われるかといえば、議会によって表われるのであります。韓国では新しい国会はまだ発足していない。その発足は間もない、こういわれておるのであります。そうならば、新しい国会が発足するまでこの日韓会談をしばらく中断をする。完全にやめろとは言いません。あなた方は日韓会談をまとめたいのでございましょうから、これはなさったらよいけれども、少なくとも韓国国民意思韓国人民意思というものは国会に集約されるのでございますから、暫定政権の朴との間に功をあせらないで、むしろ事ごとに頭を打ってきておる今日の事態からいいましても、私は新しい大統領が決定し、新しい憲法によって新しい国会が発足してからこの会談をお続けになるということが日本国民に対する最も忠実な行き方ではなかろうか、こう思うのであります。いかがでございますか。軍事政権暫定政権の朴さんの運命は、もう風前のともしびです。これはおやめになるのです。大統領に出馬しないと、きのう声明をした。そういう、大統領にも出ないという人間を相手に、なおあなたはこの交渉をお続けになりますか。これは先ほどあなたが御答弁になりましたけれども、この点は明確でない。大統領に出ないということは明らかであっても、朴を相手交渉を続けるのだ、その理由をもう一度はっきりおっしゃっていただきたい。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 野原さんのおっしゃるように、かりにいたしましても、日韓の間の問題というのは残るわけであります。この問題をどのように解きほぐしていくかということは私ども責任でございまして、私どもはどの瞬間においてもその究明を怠ってはならぬと思うわけでございます。そしてその究明の道程におきまして、先方がそれに熱意を持って応じてくる以上、私どもは、いや、もうここで中断するんだというぞんざいな態度はとれません。
  41. 野原覺

    野原(覺)分科員 あなたが朴政権との間に交渉を持たれて朴政権との間に取りきめられたことが、ことごとく新国会、新大統領で拒否された場合には、あなたは責任をとってもらわなければなりません。これは軽率であります。金鍾泌に対するものの見方というものが全く徹底していないでしょう。金鍾泌という人物がどういう人物であるか、これはすぐれた人物であるには違いないでございましょうけれども中央情報部長を追い出されるやいなや、汚職、疑獄の摘発の渦中に巻き込まれるというようなそういう方を相手にして、あなたは重大なお取りきめをなさっておるわけですね。これに対しても私は外務大臣責任問題は残ってきょうと思うのです。おそらく私はあの財産請求権平和条約四条を無視した取りきめというものは、新しい韓国国会であのままの形で承認されるとはどうも考えられない。承認されればけっこうであります。漁業問題は、民政移管してから継続ということになるかもしれません。しかしかりに、あなたが今取りきめた財産請求権の問題が承認されない。こういうことは承認できない、もっと日本韓国に対して多額の財産請求に応じなければならぬのだというような意見が出てきた場合には、いや、これは金鍾泌との間の会談で取りきめたんだ。これは朴政権が認めておった予備折衝において確認したんだといって突っ張りますか。韓国からそう出てきて、この財産請求権の取りきめは白紙に返せ、こういう決議を国会でされないとも限らないのですが、そのときには、いや、これは韓国の前の政権から続いておる、朴政権が取りきめたことであるからといって突っ張られますか、その点はいかがですか。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓の間には御案内のようにたくさん懸案がございまして、その一つ一つについて国民が納得するような解決の方式はないものかと苦心いたしておるわけでございます。問題の請求権の問題にいたしましても、これは非常に厄介な問題だからもうお手あげでさわらないのだということになれば、国交正常化にならないわけでございまして、国交正常化をやろうとする場合に、いかにかしてその懸案に妥当な解決をはかって参らなければいかぬ、私どもはそういう立場に立っておるわけでございますが、その請求権問題にいたしましても、ここで一つ一つ取り上げてみても野原さんが御理解のように大へんむずかしい問題でございまして、私はこういう方式で解決するより以外に分別はなかろうということで、大綱において先方の同意も得たわけでございます。日韓国交正常化をこいねがう方々は、おそらくだれが考えてみても、私は二国間でこの問題を当事者同士が片づけようとする場合に、こういう方式以外に道はないんじゃないかと思っております。それでそのことは、静かにものを考えていただいたら、私はだんだんと両国民の間に御理解をいただけるものと思うわけでございまして、重ねて恐縮でございますが、野原さんが言われるような事態は私は予想しないわけでございます。
  43. 野原覺

    野原(覺)分科員 予想しないということでございますけれども、必ずその事態は参ると思います。私どもはその事態には、単なるあなたの政治責任じゃない、池田内閣は重大な政治責任国民に対してとってもらわなければならぬということを申し上げて私の質問を終りたいと思うのであります。
  44. 今松治郎

    ○今松主査 堂森芳夫君。
  45. 堂森芳夫

    堂森分科員 外務大臣にお伺いいたしますが、一月三十日の予算委員会における総括質問で、わが国へのアメリカ政府からノーチラス型の潜水艦の寄港問題について私は質問をいたしたのであります。当時大平外務大臣は、わが国は原子力船を建造する計画を持っておるような段階にきておる際、核兵器を持っていないノーチラス型の潜水艦は原子力兵器とはわれわれは考えないのであって、従ってもちろん新しい安全保障条約の事前協議の対象にはならない、向こうの政府からの要請によってわれわれは大体これを承認する考え方である、こういうふうに答弁になったと思うのであります。池田総理大臣もまだそういう方針を決定したわけではないが、大体大平外務大臣あるいは関係の大臣と話をそういう方向に持っていっておるのだ、こういう答弁があったのは御記憶だと思うのであります。われわれはこれに対していろいろと外務当局あるいは政府に向かってわれわれの見解を述べて質問を展開したわけであります。その際外務大臣は、アメリカ政府に向かって安全という立場から質問書を提出して、向こうから何らかの返答があった、こういうふうな意味の答弁もあったかと思うのであります。新聞には返答があったということがきわめて簡単でありますが報道されておりますが、どのような質問書を提出してどのような返答があったのか、まず承りたい、こういうふうに考えるわけであります。
  46. 高橋正太郎

    ○高橋説明員 お答え申し上げます。現在までの経緯といたしましては、先ほど先生の御指摘の通りに、本年の初頭に在京アメリカ大使から口頭で外務大臣に意向の打診がございまして、よりより協議いたしました結果、問題点を取りまとめて二月二日にアメリカ側にこれを照会いたしました。大きく申し上げますと、安全性の問題と事故時の補償の問題、この二点について照会をいたしました。二月十四日にアメリカ側から安全性の点についてのみ一部回答を得たわけでございます。その内容につきましては、前々から御答弁してございます通りに、まだ政府部内で検討中でございますので、折りを見て御披露できるかということになっております。
  47. 堂森芳夫

    堂森分科員 外務大臣、それはどういうわけで発表できないのですか。よりより協議中ということはどういうことですか。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 きわめてテクニカルなことでございますので、原子力委員会その他で今検討してもらっております。それから、先ほど御答弁いたしましたように、まだ補償の方のお答えがきておりませんので、その方も受けまして検討した上でお答えするようにいたしたいと思います。
  49. 堂森芳夫

    堂森分科員 アメリカ政府にどういう返答をするかということをきめよう、こういうわけでございますか。保障書はきていないんですね。  そこで、私はどうしても伺わなければなりませんが、先般来いろいろな報道機関にも、ノーチラス型の潜水艦といえども、やはり対潜水艦の原子力兵器としての核兵器をどんどん積んでおって、これが対潜水艦的な重要な作戦行動をやっておる、こういうことが盛んに新聞にも報道されておるのであります。これはアメリカ政府がそういうことを発表しておるのであります。そうしますと、このノーチラス型の潜水艦といえども——この前の予算委員会でも私は、ノーチラス型といえども断じて原子力兵器であると言ったら、あなたの方は、いや、そうではない、こういうような答弁が法制局長官からもあって、政府としては断じてこれは原子力兵器ではない、こういう断定を下しておられるようであります。こういう点について、大平外務大臣、どうお考えになりますか。やはり変わりませんか。あるいは新聞で発表されておるように、これはもう完全に原子兵器をどんどん積んで作戦行動をやっておるのだ、こういうふうにお考えになりますか。
  50. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカの申すことを信頼しておるわけでありまして、安保条約におきまして、核兵器の持ち込みということは御案内のように事前協議の対象になっておりますが、事前協議の要請はございません。そしてアメリカの説明は核兵器ではないということでございます。それを御信頼いたしておるわけであります。
  51. 堂森芳夫

    堂森分科員 外務大臣アメリカ側を信頼しておる、こういう答弁でありますが、私はそんなわけにいかないと思う。国民の一人々々に聞いてごらんなさい。聞くわけにもいかないでしょうが、そういう政府の答弁で安全だという考え方を持つことは、これは不可能だと思う。当然みなだれも心配しておるのは常識で考えられると思うのであります。  しからば先に進めますが、これは外務大臣だけの考え方あるいは検討だけではもちろんきめられないでしょうが、ノーチラス型が日本に寄港した場合に、危検はないという考え方に立って今いろいろと話を進めておられるのですか、危険もあり得るという考え方でありますか、この点について伺っておきます。
  52. 大平正芳

    大平国務大臣 たびたび御答弁申し上げておりますように、ただいままで百回以上大西洋、太平洋水域の各港に寄港いたした実績がありまして、その個々の場所において全然問題がないわけであります。従って私は安全だと思いますけれども、しかし念のために専門家にアメリカ側に御照会申し上げた材料を御検討いただいて、国民に御安心していただくようにしようと思っておるわけです。
  53. 堂森芳夫

    堂森分科員 私はそう簡単にいかないと思う。たとえばあなたのところで出している各国原子力情報、これは一九六〇年の十一月二十九日付在英大野大使の報告、こういう文書がこれに載せられております。そしてアメリカあるいはイギリスにおいては、原子力船あるいは原子力潜水艦が寄港するような港においては、しかも人口の密集地帯においては、集団的な計画的な退避訓練その他いろいろなことが行なわれている、こまかい報告ですが、そういうことが書かれておるのであります。日本の場合どこに入るのか、これはもちろんいろいろな港に入ってくるでありましょう。そうすると、これはそう簡単にはいかないと思う。あなたのところの出先の大使館においても、アメリカ、イギリスにおいてはいろいろな災害を予想して退避の訓練もしている、こういうことを書いておるのであります。あなたがおっしゃるように、今まで百回以上なかったからそれは安全だということはそう簡単に言えないのです。従って、かりにこれが原子兵器でないとしましても、なるほど安全保障条約上は日本に入ってくることは、あなたのおっしゃるように、かりに事前協議の対象にならなくても、こう断定しても危険は非常にあるわけでございます。この点いかがですか。
  54. 大平正芳

    大平国務大臣 私はそういうことはないと思いますけれども、念のために専門家に所定の資料を御検討いただいて国民に御安心いただくような措置を講じていきたいと思っております。
  55. 堂森芳夫

    堂森分科員 大平さんあなたはそんなことないと非常に簡単におっしゃいますが、そう簡単に考えられますか。それはあなたむちゃですよ。
  56. 高橋正太郎

    ○高橋説明員 ただいま堂森先生御指摘の各国原子力情報でございますけれども、これはその情報自体にも載っております通りに、昭和三十五年の秋でございますが、シシリー島で原子力船の安全シンポジウムというのが開催されまして、当時イギリス大使館におりましたわが方の科学アタッシェがこれに参加をいたしまして、そのときに原子力船の運航に伴う安全問題について、いろいろ各国の代表の発言を集めて、その中に今先生御指摘のように、現在アメリカとかイギリスでは、最大限度の可能の事故が生じたときには、最大被曝許容量以下にそれを押えるために、特定の港の特定の場所について集団避難その他の方法の検討が行なわれている模様である——いるようであるというようにそのときの観測を書いてきておるわけでございまして、これは実際に集団避難が行なわれておるということではないと思っておりますけれども、この点はまだ現在詳細に出所その他を検討しておる次第でございますが、これから判断されますところは、検討が行なわれるようであるという報告であります。
  57. 堂森芳夫

    堂森分科員 もちろん米英両国においては人口の密集地帯においては、集団的な避難その他のいろいろな事柄を行なうべきであるという意見が、学者の間にはいろいろ行なわれておる、こういうことであります。それはやはり危険があるということであります。  それから外務大臣に申し上げておきますが、原子力船というものはもちろんこの向こうからの回答、私が読みました回答では、廃棄物は日本の港においては捨てない、こう書いておるようであります。しかしかりにそういうことをしないとしても、船というものはどこで衝突があるかわからないのであります。しかも御承知だと思うのでありますが、これが衝突した場合には非常に大きな災害が起きることがありましょう。あるいは幸い非常に軽微な危険程度の災害で済む場合もありましょう。あるいは非常に大きな汚染を来たすような事故となることもあるのであります。こういう多くの危険のあることであります。これを簡単に、向こうがこれは危険がないというからそれでいいんだ、こういうふうな外務大臣考え方は、非常に納得できないのでありまして、しかも非常に軽率な答弁をしておられると思うのであります。これは何も向こうが言うから安全であります、向こうが保証しておるから安全であります、向こうを信頼しております——しかも日本側が原子力潜水艦の中に立ち入ることは同意できないという返答がきておるでしょう。しかも保証書は来ていない。全く向こうにまかせ切りで、あなたまかせ、こういうような態度で原子力潜水艦の寄港問題を取り扱ってもらっては国民は納得できない。きわめてこれは重要な問題でありますから、外務大臣としてはもっともっと慎重な態度で臨んでもらわなければいかぬ、こういうことを私はまず申し上げておきたいと思います。時間がありませんから次の問題に移りますが、移住局長おられますね。戦後の海外移住の大まかなところでありますが、二十八年以来今日まで、年度別にどのくらいの人が海外に移住しておるのか、大体の傾向でいいですから説明を願いたいと思います。
  58. 高木廣一

    ○高木政府委員 申し上げます。政府渡航費貸付移住者年度別のトータルは、昭和二十七年が五十四名、二十八年が千四百九十八名、二十九年三千七百四十一名、三十年三千五百十四名、三十一年六千百六十八名、三十二年七千四百三十九名、三十三年度が七千六百六名、三十四年七千六百十名、三十五年八千三百八十六名、三十六年六千二百六十三名、そうして三十七年度はこの三月で終わるわけですが、約二千名をこす。合計で五万数千名ということでございます。
  59. 堂森芳夫

    堂森分科員 そうしますと大体昭和二十八年から多数の移住者諸君が出ていくようになった。そうして三十一年、三十二年、三十三年、三十四年、三十五年、三十六年は大体六千名から七千名の方が貸付で出ておられる、こういうことですね。ところが三十七年は二千名程度であろう、こういうふうな答弁ですが、これはどういうわけでこんなに減ってきたのでありますか。
  60. 高木廣一

    ○高木政府委員 いろいろ理由がございますが、一番大きい理由はやはり国内におきます労働力の不足、特に都市ばかりでなくて農村からはなはだしい人口が都市に流出して非常な不足を来たしておるということ、それから一昨年暮れから昨年の初めにかけましてのドミニカからの集団帰国、これが移住に対する相当の打撃になっていると思います。こういうようなこと等が原因になっておると思います。
  61. 堂森芳夫

    堂森分科員 それはあなたがおっしゃるようなこともありましょうが、そこで大体この移住関係の予算というものは、たとえばあなたのところで海外協会、海協連ですか、これとかあるいは今度事業団に出すとか、あるいはこれに関連した公務員諸君の給与であるとか、いろんなもの、あるいは農林省関係でもありますが、大体総額でどれくらいの予算になっておりますか。外務省関係だけでもいいです。
  62. 高木廣一

    ○高木政府委員 外務省だけで、その中には移住者の渡航費貸付も全部含めてですが、三十七年度は約十三億円の移住振興費用を計上してあるわけです。
  63. 堂森芳夫

    堂森分科員 三十七年度はそうでしょう。そうしますと、三十八年度は十四億くらいになるでしょう。そういうふうにあなたのところの説明書には書いてあるわけですが、労働省からも労働者を海外に送る、あるいは農林省からも派米青年団の団体だとかいろいろありますね。いろいろなものを加えると、おそらく二十億くらいの金額には、一切がっさいの費用を含めるとなるのじゃないか、こういうふうに私は考えるのであります。そこで二十億もお金を使って、しかも今までは六千名、七千名の人たちが海外に出た、これがぐっと減って、二千名に満たない、こういうことはあなたがおっしゃいました国内における労働力が非常に不足してきておる。あるいはまたドミニカ等における移住の、これはあなた方の非常な責任があるのですが、そうした集団帰国の問題、あるいはまた御承知のようにブラジルを初めラテン・アメリカ諸国では、インフレが非常に進行しておる。経済的にも多くの不利な問題がある。あるいはクーデターが各国にあって、政治的な不安もある。いろいろなこともあると思うのでありますが、一つはやはり移住に関する外務省あるいは政府というものの、これは金はけっこう使っておるけれども、そうした移住の行政というか、あるいは移住政策というか、あるいは機構の内部とかそういうものに多くの問題があると私は思うのであります。  実は私、去年の秋、列国議会同盟会議に行く機会がありましたので、五十日ほどラテン・アメリカ日本の移民諸君が行ってコロニーをつくっておられる個所を三十六ケ所見たのであります。そうして現地のいろいろな人たちと、小屋みたいなところが多いのですが、そういうところにも泊って彼らといろいろ懇談をする機会も毎日のようにあったわけでありますが、現地の人たちの意見を聞きましても、あるいは私が見た結論から申しましても、必ずしも日本の国内における労働力の不足というもの、あるいは向こうにおける政治的な、経済的ないろいろな困難な事情があるというようなことだけではなしに、私はやはり日本の国内の、特に外務省ですよ、大平さんよく聞いておいて下さいよ。移住を推進しておる外務省に大きな責任があるということです。よく頭においてもらいたいと思うのです。時間がありませんからあまり詳しく聞けませんが、第一、私が南米に五十日ほど行ってきたということだけで、私のところにあなたのところの、たとえば海協連というものはこういうものだ、こういう団体はこうだという怪文書が毎日くるのです。そして外務省というものは、言うては悪いですが、御殿女中みたいなお役人ばかりおって、ものすごい派閥抗争をやっておる。派閥抗争が主体となって、移住行政というものはあっちに向いておるのです。これが大きな原因となっておる。しかも農林省と外務省とけんかばかりしておる。たとえばブラジルにグァタパラという移住地があるでしょう。これなんか百年戦争と言うのです。何だというと、外務省と農林省とけんかばかりしていて、五年もきまらなかった。これは百年戦争の一つの産物であると言っておった。現地の諸君はそう言っておるのです。百年戦争、これは外務省と農林省となわ張り争いをやっておる。農林省が行くと、外務省が横やりを入れる。そしてあなた方の出先の領事館あるいは大使館のそういう連中はそれをじゃまする。今度外務省がやると、農林省がそれをじゃまするということで、いろいろそういうことで、日本の移住者が向こうに行って——それからの移住という考え方は、戦前と今日とでは完全に変わってきたのでありましょう。私は少し調べてみたのですが、明治二十何年かに初めて日本の移民がチリーに始まって、そしてその後ブラジルに移民の諸君が行くようになった。それは過去においては俗に棄民と言った、完全に捨てたんです。日本の移民が多いときは必ず日本の農村恐慌のときに大量に行く、そして幾らか農村が助かったときには移民が減ってきておる。そしてこの日本の先輩たちが明治以来非常な苦労をして、そして命を捨て、栄養失調になりあるいはマラリアになり、いろいろな現地における地方病によって倒れておる、あるいは飢餓によって倒れておるというように、非常な苦労をしてきた。昔の明治時代あるいは大正時代における棄民そういう時代があったことは事実であります。今日はそんなことは当然あり得べからざることでありまして、またあってはなりません。  そこで私は移住局長にお尋ねしますが、大体移住に関連して地方、中央あるいは出先で計算しますと、移住に関係した人は一体幾らぐらいおりますか。大体でいいですが、言って下さい。
  64. 高木廣一

    ○高木政府委員 海外協会連合会が本部五十数名、在外をあわせまして全部で百五、六十名だと思います。それから移住会社がそれより少し少ない数で、それから国内の方はこれは民間団体でございまして、政府といたしましは、地方海外協会にごくわずかでございますが、専従職員の補助を半分しております。各県に平均三名の予定で外務省関係としてはやっておる次第でございます。それだけの数であります。  今の点でちょっと先生に御説明をしておかぬといけないと思いましたのは、さっき十三億と申しましたが、あの予算の九億までは移住者の渡航費貸付であります。それからあと数億は海外におきます日本人の移住援護費用、たとえば学校をつくったり、病院あるいは診療所をつくったり、場合によればトラックターとかジープを提供するとかいうことが大部分でございます。なおこれは毎年行った移住者だけを世話するのではなくて、場合によれば戦前から行っておる移住者までこの援護の対象になっている次第でございます。そういう点から考えますと、必ずしもこの金額は多くないというふうに考えられますので、先生の御理解を深めておきたいと思います。  人員といたしましては、ただいま申しましたような数で、その大部分は国外でございます。ブラジルだけでも御承知の通り日本の二十三倍もございますところに、現地に百十数名、海協にいたしましても百工、三十名ということで、非常に実は少ない数でございまして、それも従来は海外協会連合会は民間団体であるという関係で、給与基準も非常に低いのでありまして、そういう点で、今度の事業団の構想は、これに法的な資格を与えて、その身分を安定せしめることによって、移住に真剣に熱情をささげる人を集めたい。海外移住者の推進は役所よりも何よりも、移住のお世話をする方々が中心になるわけでございまして、そういうことで実は今度の事業団法が考えられておりますことと、先ほど先生は、外務省と農林省は始終けんかしておるということを言われた、確かにその点がございます。この点につきましても、役人が海外移住を世話するといったってとてもできないことであります。どんなに長くても三年、四年、五年もおれば長い方でございます。しかしながら海外移住は、日本から送り出しまして、行って、その先何年も何年も人のつながりで世話していかなければいけない。こういう立場から、事業団に優秀な人を入れ、農業の専門家、衛生の専門家、あるいは教育、経済、こういう関係の人を全部事業団に入れて、ここで待遇をしっかりさせて、移住の推進に熱情をささげ、一生をささげる人を養っていく、役所は大きな方針だけを各省寄ってきめて、そして事業団に授ける、あとはもう事業団の方から頼まれれば役所もお世話する程度のことでいくべきであるとわれわれは考えておる次第であります。
  65. 堂森芳夫

    堂森分科員 時間がありませんので、いろいろ申し上げたいのですが……。移住局長、こうですよ。さっきおっしゃっただけでも数百名の人が携わっておるわけでしょう。百五十、百五十、何百というのですから、もう四、五百になります。四、五百ということは、家族を加えると、四人家族でも二千人でしょう。二千人の人がかかっておって、ことしは二千人も送れぬという。これはやはり問題があると思うのです。あなたの言うことはへ理屈です。前から行っておる人の世話をします、移住者には金を貸しますから、それで十四億も要るのだという。それはあたりまえです。大切な国費です。しかし外務省予算は、一万人、八千人の予定をしておるでしょう。二千人の予定ではないでしょう。八千人を送るという予定ですよ。ことしは八千人、一万人送る予定だが、二千人に満たないと書いてある。あなたの方の資料にそう書いてある。十二月には大体予定としては五千人送る予定であったが、現在のところ千六百十四名しか行っていない、こう書いてある。これはあなたのところからもらった資料です。そうして二千名の人がかかって二千名足らずの人を送っておる、実際はこういうことになっておるわけですね。家族をまぜれば、四百名の職員がおれば四人家族でも千六百人の人がおる。一方また向こうに千六百名の人が行っておる。この千六百名というのは家族をまぜてでしょう。そうじゃないですか。世帯主だけではないでしょう。いかがですか。
  66. 高木廣一

    ○高木政府委員 今の千六百名というのは、移住者の数をおっしゃっておりますか、世話をする者でございますか。
  67. 堂森芳夫

    堂森分科員 いや、あなたの統計を見ますと、昨年の十二月に千六百十四名移住しておる。五千名の予定である。ところが日本の内地あるいは海外をまぜて移住関係の仕事に携わっておる人たちが、あなたの説明では四、五百名ある。百五十、百五十でしょう。移住振興と海協連と百五十名くらいあるという話です。それだけでも三百名ということですから、多数の人が携わっておって、こういうふうに少ない移住者しかないということは非常に問題がある、こういうことを私は申し上げておるのです。
  68. 高木廣一

    ○高木政府委員 ただいまの点ちょっと誤解があるように思いますので訂正いたしたいと思うのですが、さきに申しました数は海外を合わせて全部でございます。従って海外協会連合会自身といたしましては、本部は百名にならないわけです。会社も合わせましてせいぜい百五十名以内であります。それからあと地方は、海外協会連合会の専従職員、非常に低い給与の人ですが、これが一県平均三名でございますから、四十三県あるとして百二、三十名両方合わせて二百四、五十名くらい、今の地方海協に出しております専従職員は女の子もおれば若い男の子もおりますから、家族の数を合わせましてもそんな大きい数にはならないと思います。
  69. 今松治郎

    ○今松主査 結論をお急ぎ願います。
  70. 堂森芳夫

    堂森分科員 そこで、これは現地で聞いた話ですが、ある移住地では移住振興からも設備費に何かをもらっておる。ところがまた海協連の方からも、何かこういうものをお前の方にやろう。そうすると二重になるというのです。それは困るというと、いや、おれの方はもう予算も通って、もらってもらわぬと困るのだ、よそへ回すわけにいかぬのだ一ほんとうですよ、そういうつまらない浪費が各地で行なわれておる、こういうことであります。あなたはそれだから今度移住事業団をつくってやるのだ、こうおっしゃると思うのでありますが、しかしこれはたとえば開拓連が入ってないのでしょう。移住振興と海協連を二つ合わして事業団をつくる。開拓連が入らぬのですよ。これはまた外におって、名前を言いますと平川一派が、今度は事業団とものすごい競争です。それが全部海外移住者に当たってくるのです。それが今度は移住振興にまた猛烈なブレーキになってくるのです。あなた、よくお考えにならなければいけませんよ。外務大臣、人ごとじゃないのですよ。十何億も金を使って、そして移住振興の中ではがたがたとまた派閥が起こる。私のところにある人がきのうも来ました。全部ばらしてやるから先生言ってくれというが、私は国会で人の名前まであげて、そんな人の名誉を傷つけるようなことはしませんけれども、それほど移住関係のいろいろな機構の中に多くの問題があるということをあなたは考えられないかということです。  そういうことで、移住事業団の法律も出て国会で審議を進める、そして発足する、この発足する際にぜひとも私は要望しておきたいことは、やはりその人事です。これは非常に慎重にやってもらわねばならぬ。しかも何閥、何々閥という派閥が何かあるそうです。これは政党の中と一緒で、師団長がだいぶおるという話です。そしてずいぶん中で暗闘があるということであります。そういう古い弊害をこの事業団が発足するときにきれいにしないと、これはあなたがおっしゃるように、日本は労働力が足らぬから行かぬのだ、あるいは向こうの政情、経済事情が悪いから行かぬのだ、そういうことじゃないと思うのです。やはり向こうに行って、パイオニアとして向こうでやりたいという人はたくさんおりますよ。それがあなた方の方の主管省としての外務省あるいは農林省がいがみ合いしていて、全部地方へそれが移って、地方のそういう仕事をしておる人たちに不安動揺を与えておるのです。そして心から向こうの事情をよく説明して、行きたい人をうまく指導していく、そういう能力に欠けておるということですよ。そういうことを私は警告しまして、私の質問を終わります。
  71. 今松治郎

  72. 木原津與志

    ○木原分科員 私は、時間の関係がありますので、簡単に問題をしぼって外務大臣にお尋ねいたします。  それは、外交運営の基礎になっておる情報収集の点であります。今月二十日の京城から某新聞の特派員が寄せた通信の中で、韓国朴政権が崩壊し、金鍾泌が退陣する、その底にある理由について、三つの観測を寄せておる。第一は、朴政権に対するアメリカの信頼度も全くなくなってしまった。そのためにアメリカが朴軍事政権の退陣を求めて圧力を加えたということが第一。第二番目には、韓国の軍部が朴正熈最高委員長に対する暗殺の計画を持っておったということ。さらに第三番目には、韓国軍事政権内部から圧力が加わった。すなわち、今月の中旬ごろ、この革命政権の一方の有力者である金東河の海兵隊の一部が金鍾泌氏を暗殺しようとした。そこで金鍾泌氏は命からがらようやく逃げたのだ。この点については米軍の有力筋も確認しておる。こういうように、朴、金退陣には、アメリカと、韓国軍部と、そして革命政権の内部からの大きな圧力、この三つによって退陣をせざるを得なくなったのだ、こういうような情勢の報告がきておるが、この点について外務省はどう考えられるか。外務省がキャッチされておる情報について、外務大臣から詳細にお答えを願いたい。この情報が真実かどうかという点について。
  73. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう情報を伺っておりません。
  74. 木原津與志

    ○木原分科員 今のは聞こえなかったが、伺っていないということですか。——一体外務省は、御承知のように韓国には代表部も何も置いてないのだが、そうすると日韓会談の基礎になっているいろいろな韓国内部の情勢についての情報というか、そういうものは、あなた方はどういう筋からとらえて、そしてそれを参考にして外交の運営をやっておられるのか。代表部がないからわれわれも不安でならないのだが、あなたは今私が言ったことを伺っていないということならば、一体どういう筋からの情報を基礎にして外交をやっておられるか、その点をお聞きしたい。
  75. 大平正芳

    大平国務大臣 外務省が直接入手するものといたしましては、御案内のように時おり政府の関係官を派遣いたしまして見聞したところを聴取いたしております。それから各新聞社の関係、各国の大公使館等の観察等につきましてはできるだけちょうだいいたしまして、判断の材料にいたしております。
  76. 木原津與志

    ○木原分科員 今さら韓国代表部を置いていないことについて、あなた方をいろいろ責めてみたところでもうしょうがないのだが、ただ情報の確認についてのみお尋ねします。一月の十四日に韓国駐在のアメリカのバーガー大使が韓国の金顕哲首相と会談をして、そして二千五百万ドルの追加援助と余剰農産物の導入を確約した。しかもこの裏には朴正照の引退を条件としてそういう申し入れをしたということが伝えられております。しかもこの点は韓国新聞にも公表されておるが、この点のいきさつはどうです。
  77. 大平正芳

    大平国務大臣 そういういきさつは伺っておりません。
  78. 木原津與志

    ○木原分科員 そういう重大なことをあなた方知らずに日韓会談をやるから、いろいろなことを議会でわれわれが言わなければならないのです。しかもこのときは、この会談の内容は一般に公表されているのですよ。公表されておるのを当面の外務大臣が知らぬなんというようなことでは、これは私は聞き捨てにならぬと思う。もう一ぺん、知っておるか、知ってないか、答えて下さい。
  79. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国政府からもアメリカ政府からもそういうことを日本に伝えてくる筋合いのものではないと思います。私ども公式にそういう通報は受けておりません。
  80. 木原津與志

    ○木原分科員 韓国内部のことだから通告する筋合いのものでないですよ。しかしいやしくも日韓会談を今あなた方がやっておるのだから、特にアメリカが朴軍事政権に対してどういう態度をとっておるかということは、これはもうあなた当然日本外務省として、日本の外交筋としては、これは関心を持って注目しておかなければならぬ問題じゃありませんか。しかもアメリカのバーガー大使とそうして総理の金顕哲との間のコミュニケで出ておるのですよ。それをあなた知らぬじゃ話にならぬじゃないか。  それではこの点はどうですか。この朴正煕が民政に参加しないということを発表したその直前には、アメリカ韓国に対する見返り資金と援助外貨の使用を朴に許可しなかった。しかも余剰農産物の放出も承認をしないというような措置をとって、暗に朴の引退を要求したという事実があるのですが、この点はどうです。これも知らないのですか。どうですか。
  81. 大平正芳

    大平国務大臣 承知いたしておりません。
  82. 木原津與志

    ○木原分科員 日本外務大臣は何も知らない。驚いた。それならこの点はどうですか韓国の朴国防相が一月の中旬朴正照最高委員長と会うて、君が引退しなければ殺してしまうということを言うて、そうしてあの朴正煕引退の決意をうながしたという、これは米軍でも確認しているというが、これも外務省は知らないのですか。どうです。
  83. 大平正芳

    大平国務大臣 よく承知いたしておりません。
  84. 木原津與志

    ○木原分科員 驚いた。それではこれも知らないのでしょうね。今月の初めごろ金東河の傘下の海兵隊の武装の兵隊約二十人が金鍾泌を暗殺するために金鍾泌邸を襲ったという事実、これもあなたの方は知らないのですか。京城の方からちゃんとそういうことがあったということをある新聞——しかも新聞というても権威ある通信社ですよ。通信社の特派員からの連絡がこっちにきておるのですが、それも知らないのですか。どうです。
  85. 大平正芳

    大平国務大臣 木原さんが私に御質問されますのは、日本政府の確認し、確信を持ったことを言えということでございます。日本政府として直接に情報の収集はやっておりませんので、私ども確信を持ってあなたに答えるというわけには参りません。
  86. 木原津與志

    ○木原分科員 確信を持って私に答える答えぬの問題じゃないのだ。私がこれをあなたに聞くのは、韓国政権、今あなた方がやっておる、やりつつあるこの日韓会談相手方の政権というのはすでにこういう状態になっておるのだということを外務省交渉の一方である日本側がこれを知らぬ、知らずに外交をやるということはまことにぶざまきわまる。最高責任者である朴議長並びにそれと連なって現在のあなた方が外交をやっておる政権実力者金鍾泌、この人たちが退陣を迫られて、革命の軍部から、引退しなければ殺すといって暗殺されようとしておるというような事実は、一応あなた方も知っておって、そうしてそれに対する対策を立てるということが、これが外交の本筋じゃなかろうかと思う。相手方の政権が一体どういう状態であるのかということを知らないで、めくらめっぽうに善隣友好というような看板だけを掲げて外交をやろうということは、それでは国民は納得しないんじゃないか。すでに一番致命的なことは、よその国の暗殺はどうでもいい、よその国の政権担当者に対する暗殺というようなことは一応おくとしても、すでにこの軍部のよってもって立っておる筋であるアメリカから見放されて、この朴も金も退陣をしろ、そうして民政移管の方途を講じろといわれておる。こういう状態を無視して日韓会談をあくまでも進行していくのだというあなた方の態度は私どもはどうしても納得ができないのです。この点どうですか。
  87. 大平正芳

    大平国務大臣 たびたび申し上げておりますように、軍事政権はやがて民政に衣がえするのだということを内外に公約いたしておるわけです。私どもは今韓国に起こっておる事態は、その民政移管への道程に起こる波乱であると評価いたしておるけわでございます。一国が国家の統一を守りながら困難な民主化の道程を歩むということは容易ならぬことであると思います。いろいろな事件があるようでございまするが、方向といたしまして、韓国は民主化の方向に歩を進めておるというように私どもは見ておるわけであります。
  88. 木原津與志

    ○木原分科員 民主化の方向に歩を進めておるというならば、何もアメリカが朴や金に圧力を加えて退陣を要求するという線は出てこようはずはないと私どもは判断せざるを得ないのです。これがまた常識だろうと思う。すでにアメリカがバーガー大使を通じて、退陣をしなければ援助資金もやらない、援助物資もやらないという圧力を加えたがために、朴も金も退陣せざるを得なくなってきておる。こういう事実を見てみれば、この政権相手にして、外交交渉をやってみても、いかなる妥結がそこに生まれても、その妥結民政移管後承認される性質のものじゃないということは、これはもう子供でもわかっておることなんです。これをあえてあなた方は一ぺんやりかかったのだから、しゃにむにそこにしがみつくというような態度は、もうすでに相手方の事情がこう明らかになってからは改めなければいけない。何でもかんでも一ぺんやり出したら、子供のしょんべんみたいにもうとめられないのだ、こういうようなことで一国の外交をあやつっていくというような態度は、これはいけません。そうして今言うように、これははっきりしたソウルからの、古い通信でなくて、二十日、まだ一週間たたない、五日か六日前の金と朴の退陣の背景を詳しく説明して、通信してきておることも、あなた方は知らぬと言う。知らぬのじゃないでしょう。知っているのだ。知っておって、何でもとぼけるにしかずというので、とぼけて答弁をしないのですよ。私はそう思うのですが、どうですか。知らぬはずがないと思う、知っているでしょう。
  89. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、容易ならぬ大仕事を韓国民が苦悶の中でやっておるわけでございまして、その一々の事件を取り上げて、隣国の日本としてとやかく論評することは、私は不謹慎だと思います。私どもは、大きな方向においてこれは民主化への苦しみであるという意味で、同情と理解を持っていかなければならぬと思います。  それから日韓交渉でございますが、これは先ほども野原さんにお答え申し上げましたように、日韓の間にそれにもかかわらず懸案が残っておるわけでございまして、これをそのままにしておいて国交正常化を急ぐ必要はないというお立場もあるでしょう。しかし、いかにしてこの道を切り開いて、道をなだらかにして正常化へ通ずる道はないかということを究明して、国民が納得するような道を発見して参るという努力は、あらゆる瞬間においても外務大臣として私は忘れてはならぬ責任だと思うわけでございます。そういう懸案打開への努力というものは、私は尊いものであると思います。そして、日韓両国の間に国交正常化すべきであるという願望がある限り、私は、われわれの努力はそれ相当の評価を受けるに違いないと思うわけでございまして、こういう願望が具体化して参ることを私も希求しておるわけでございます。韓国が今困難な民主化の過程にあるからまあしばらく交渉やめようじゃないかというようなことは、私ども考えていないわけでございます。先方誠意をもって臨んでくる限り、どんな状態におきましても、こういう歴史的な課題につきましては誠意をもって当たるが当然の外交当局の姿勢でなければならぬと思っております。若干、あなたとその点について見解を異にするのを非常に遺憾に思います。
  90. 木原津與志

    ○木原分科員 あなたは私が相手国政情をとやかく批判するというふうにおっしゃっておりますが、私は何も韓国政情を批判するというようなことではないのです。こういう事実がこの政権の中にあるが、そういう事実を外務省はしっかり把握して外交の交渉をやっておるのかということを聞いておる。何も相手方が民主化の大道への苦しみをなめておるとか、そんなことを聞いておるのじゃない。こういう事実が起こっておるが、それをあなた方は知っておるかどうか、知った上で交渉をしておるかということを、事実の確認をこの場で私は質問しておるわけなのです。それには何にも答えないで、つべこべあなたはおっしゃるけれども、それはあなたの考え違いだ、私は事実をあなた方は知っておるのかということを聞いておる。そうしたら知らないと言う。知らないはずはない。あなたが知っておって知らぬと言うから、マイクが飛んじゃった。マイクさえ知っておるじゃないですか。あなたが知らぬはずがない。どうです、もう一ぺん……。
  91. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、私としてはできるだけの手筋を通じまして情報の正確な把握に努力いたしております。そのことは御案内の通りでございます。私がここで申し上げますことは、いやしくも国会の答弁でございますから、政府として確信を持って、微細な点まで確認した上で答えなければ相済まぬわけでございまして、そういう意味で、私は単なる情報をちょうだいしたからといって、それをここであなたにお答えするというわけには参らぬことは御了承いただけると思います。
  92. 木原津與志

    ○木原分科員 違うよ。僕は何もでたらめを言っているのじゃないのだ。こうちゃんと、「朴・金退陣に三つの圧力、軍部は暗殺も決意、日韓交渉、暴露された独断推進」という見出しで、新聞にソウル二十日発某特派員と——某じゃないのです。名前をあげてはっきり書いてあるけれども、名前はここで読みません。軍部は暗殺も決意という、こういう新聞が出ているのを、あなた方は知らぬはずはない。見ているのだ。見たならば、当然あなた方が事前にそういう情報をキャッチしているならばともかくも、もし今あなたの言われるようにキャッチしておらぬというのだったら、そういう情報が真実であるかどうか、少なくとも大新聞の特派員が現地から出しておる通信ですから、当然あなた方としては、これについてはもう事実の真否について調査をされたはずなんです。国民はこれを読んでいるのです。読んでいるから、外交の当面の責任者である政府当局は、これに対するどういう考え方をもって外交をやっておるのかということは、当然これを読んだ一般国民は知りたいのだ。だから国民の知りたいことを、私が代弁してあなたに聞いている。これすら知らぬと答えたのでは、これは審議にならぬじゃないですか。よもやそういうようなぐうたらな態度で、あなた方は外交交渉をやっているのじゃないと私は思う。大卒さんともあろうものが、あらゆる情報をしっかり収集されて——特にこの予算を見てごらんなさい。こういうような情報を収集するための予算が、本省のが六億七千万円ですよ。それから在外公館の予算、外交運営の充実に必要な経費七億三千万円、十数億の金を使っている。在外公館と本省の十四億の金を使って情報を収集して、そうしてこれからの外交の交渉の万全を期そうというのでしょう。これだけ金を使っておって、そうしてこれくらいのことを確認もしていない、知らないというのでは、もう今度の予算の七億とか六億とか、これは返上しなさい。必要ないですよ。そういうようなことでは、予算を食いつぶすのと一緒じゃありませんか。おそらくそういうようなことはないと思う。ただあなたがたがずるいから、何でもかんでもとぼけてさえおれば、三十分で木原は終わるからというので、とぼけている。確認してやって下さいよ。いよいよ知らぬというのだったら、あと時間がきましたから質問はやめますが、知らぬじゃ済みません。
  93. 大平正芳

    大平国務大臣 日本情報網は政府全体として、きわめて弱い状態にあることは御承知の通りでございまして、私どもはじみちにこれを拡充して参らなければならぬと思いまして、毎年若干ずつ情報収集の費用を国会に要請したしておるわけでございます。従いまして、貴重な国費を有効に使いまして、木原先生おっしゃるように、情報の正確なキャッチ、それからもとより評価判断というものに遺憾ないように、最善を尽くさなければいかぬと思います。その限りにおきまして、私どもは乏しきながら努力をいたしておるわけでございます。ただその場合の、われわれ日本政府としてこのようにとって、この評価はこのように評価いたしておりますということを、一々国会でお答えする自由を持たぬわけでございますが、ただ全体の評価として、私は韓国政情につきましては、非常に容易ならぬ民主化過程を歩んでおると思うわけでございまして、今御指摘のような一つ一つの事件は、そういう過程において起こった事件であるかのように評価して、かようにお答えをいたしたわけでございます。
  94. 木原津與志

    ○木原分科員 最後ですからやめますが、何でもかんでもとぼけてしまって、あなたは答えない悪い癖がある。しかしいずれにしても外交運営の充実に必要な経費として、本省の経費が六億七千万円、これは主として情報予算だろうと思う。それから在外公館の充実に必要な経費が七億三千万円、それで十四億。幾ら予算を組めば、もっと的確な情報がとれるか、私らはわからぬけれども、少なくとも十四億という金を情報に使ってそうしてとるのだったら、もう少し勉強して、われわれが国会でちょっと聞いてでも、あれはこうだ、それはこうだ、あなたの持ってきているそれはこうなんだという工合に説明をしなければ、予算を使うかいはないじゃありませんか。何も知らぬ、知らぬ。あれを聞いたって知らぬ。言いもせぬ民主化がどうだとか、あるいはよその国の政情の批判がどうだとか、そういうようなことでは予算審議になりませんよ。私は今の予算をあなた方が情報収集の費用として十四億組んでおられるから、それに伴って質問したわけなんです。もしあなたがはっきりこうこうだということを言えば、これはむしろ十四億よりもっとふやしてもいいですよ。しかし、そんなことさえ情報をとっておらぬようだったら、これは削ってしまいなさい。時間がきましたから……。
  95. 今松治郎

  96. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私はまず第一番に、ただいまの木原委員の質問に関連をしたしまして、政府日韓会談に対する見込み違いと申しますか、そういうについて最初お伺いしておきたい思います。  三十六年の五月五日から十二日にかけて、野田ミッションが訪韓したわけです。そのときには伊関局長もついていかれた。そうして帰ってこられて、非常に安泰である、政情安定しておると発表したそのやさきに、四日後の五月十六日には、軍事クーデターが起こった。また昨年の十二月の中旬には大野ミッションが行かれ、そうしてこれまた帰ってきて、朴・金ラインは安定しておるという発表があったすぐ後に、一月には政情にわかにこんとんとなって、しかも二月十八日の外務委員会の審議においては、池田総理が、朴政権は厳然として存在しておると言明をされておる。ちょうどそのころ朴さんは、九条件を出して、もう引退をするということを発表しておった時期、こういう今までの経過について、明らかにこれは見込み違いがずっと続いておったわけですが、そういう点で、外務省として、いろいろ見込み違いがございましたということをここで言えますか、まずそれをお伺いしたい。
  97. 大平正芳

    大平国務大臣 こういう答弁をすると、またふてくされておるとおしかりを受けるかもしれませんが、私ども予言者でございませんから、先のことは的確にわかりません。どういうことに将来、それぞれの国がどういう過程をたどっていくかというようなことについて、的確に予言するわけには参りません。ただ今日まで、今御指摘のように韓国政情について、われわれの方の立場において予想通りいかなかったということは、卒直に認めなければならぬと思います。ただ私が申し上げておりますのは、こういった転移は全体として大きく内外に約束した民主化の道程に起こった事件だというように見ておるということを申し上げておるわけでございます。
  98. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ただいま、自分たちが思っておったようにはいかなかったということは、見込み違いがございましたということですね。
  99. 大平正芳

    大平国務大臣 社会事象でございますから、的確に将来を予想するというようなことは、私にはできぬと思うのであります。可能な限り努力しなければなりませんけれども、遺憾ながら人知の限界がございますから、なかなかそういうことは望むべくして得られないことと思います。しかし楢崎さんも御指摘のように、できるだけ的確につかんでいく努力はしなければならぬと思います。
  100. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 こういう外交交渉は、一応の見通しを立ててやる国家百年の計です。長い先のことはわからぬから、どうしようもないじゃないかということでは、外務省としての責任は一体どうなるのですか。われわれは、かねてあらゆる国会の審議を通じて、韓国政情不安をいろいろ具体的に、政府に対して追及をして参っておったわけですが、それが一々その通りになってきておるわけです。われわれの見通しは立っておる、しかし政府の方の見通しは全然狂っておる、こういうことでございます。どうなんですか。
  101. 大平正芳

    大平国務大臣 私はどうもあなたとちょっと見解を異にするのです。というのは、安定していないじゃないか、安定してから外交交渉というのはやればいいじゃないかというような御立言は、ちょっと無理だろうと思うのであります。先ほども申しましたように、どの政権も不安定なうちにあるわけでございます。先進国といえどもそうでございます。三年なり四年なりの期限をもって政権を担当いたして、総選挙に問わなければならぬのでございまして、政権というのは総体的に不安定なものです。それでちゃんと安定してからやるといったら、外交交渉ということでございます。総体的に不安定な場合が常態だとすれば、その常態を前提にいたしまして、どのように問題を解きほぐしていくかという努力をするのが、私は現実の外交じゃないかと思います。韓国におきましても、それにもかかわらず、今問題は日韓の間にたくさんあるのだ、その問題をどう解きほぐしていくか、両国民の善意に対してどうこたえられるかということを究明して参るということは、寸時も怠ってはいけない仕事だと存じまして、やっておるわけでございまして、相手方の国内事情によりまして、一々日本の外交的な姿勢を変えるということこそ、私は国民の期待に沿わないゆえんだと考えておるわけです。
  102. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 見通しが違っておったというお答えがありましたから、いずれきょう午後もわが党の緊急質問がありますので、この問題はこれで一応やめて、次に移りたいと思います。  おもに日韓漁業交渉のうち、李ラインと関連をして、拿捕された漁船の問題についてお尋ねしたいと思うのです。拿捕漁船についての韓国に対する損害賠償請求権は留保されておりますか、これをもう一度再確認をしておきたいと思います。
  103. 大平正芳

    大平国務大臣 事件が起こったたびごとに、個々のケースについて賠償請求権は留保してございます。
  104. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 韓国に対して賠償請求権を留保されておるということは、国内的に見れば拿捕された船主あるいは乗り込んでおる漁夫のいろいろな利益の損失、それらについての損失補償が、同時にそのうらはらの問題として存在しておるということについては、どう思いますか。
  105. 大平正芳

    大平国務大臣 外交交渉におきまして、私ども先方に対して賠償請求権を留保してあるという状況のもとで、ただいま漁業問題についての討議は始めておるわけでございまして、この問題は、漁業交渉という過程におきまして、どのように解決するか、解決の目安を見出していきたいと思っておるわけでございます。その解決の姿を見ないと、今御指摘のような問題に言及することは、この段階では差し控えさしていただきたい。
  106. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 政府韓国に対して、拿捕漁船の損害賠償の請求権があるということは、そういう損害賠償の外交交渉は個人ではできないから、国がかわって行なっていらっしゃる。だから国がそういう賠償請求権を留保しておる。あるということは、裏返せば、国内的にはそういった関係者に損失補償の問題がある、そうでしょう。それを聞いておるのです。現実の姿がどう解決されるかは、まずしばらく別として、国内的には、そういった損害を受けた船主なり、漁夫の人たちに、損失補償問題がある、論理的にこうならなくてはおかしいではありませんか。
  107. 大平正芳

    大平国務大臣 せっかく交渉の一環として、この問題を取り上げていこうといたしておるわけでございまして、そのまとまりを見ないと、今御指摘のような問題について、確たる御返答はできないと思います。
  108. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それはおかしいではありませんか。損害賠償の問題がどう片づくか見ないと、国内的な損失補償の問題があるかないかもわからぬとおっしゃるのですか。国としては、損害賠償の請求権はあるという建前でいっていらっしゃるのでしょう。そうするとその裏の問題として、日本として国内のそういった人たちに損失補償をするということが、うらはらの問題でなくてはおかしいではありませんか。それがあるかどうかを聞いておるのです。損失補償の問題をどう解決なさるかを私は今問うていないのです。あるかどうかを聞いておるのです。そういう問題があるから、損害賠償の請求ができるのでしょう。実際に国内の国民の一部の人が、そういう損失を受けておるから、交渉をやっていらっしゃるし、請求権を保留していらっしゃるのだから、当然そういう船主や漁夫の人に、損失補償の問題があることは事実でしょう。それがわからぬというのはおかしいではありませんか。それが今言えないというのはおかしいじゃないですか。どう解決なさるかということを聞いていない。あるかないかということを聞いている。
  109. 大平正芳

    大平国務大臣 解決した姿を見ていただいて、国内的な問題が起こるかどうかということは、その時点で考えるべきだと思います。
  110. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それはおかしいじゃないですか、全然おかしいじゃないですか。損害賠償を国家が請求しておるでしょう。請求権があると言っていらっしゃるでしょう。請求権があるということは、何に基づいてあるのですか。実際に日本の李ラインに出漁しておる漁船の船主なり、あるいは漁夫の損害があるから、その事実のもとにあなたは請求権があるとおっしゃっておる。請求権韓国に対してあるということは、国内的には損失補償の問題があることではないですか。おかしいじゃないですか。論理が一貫しないじゃないですか。それは大臣、今までの木原委員の質問に対する答弁と違って、のらりくらりではだめです。これははっきりしてもらわなければだめです。
  111. 大平正芳

    大平国務大臣 賠償権を留保してあるわけです。そういう姿で今漁業交渉に臨んでおるわけでございますので、このまとまりを見た上で、国内的な問題は政府として起こるかどうか、これを判断したいと思うわけでございます。
  112. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは今まで抑留家族に払われた見舞金というものは、どういう性格ですか。損害賠償の一部として支払うということを、閣議決定しているじゃないですか。これはどうなるのですか。
  113. 大平正芳

    大平国務大臣 政府は現に起こった事態に対して、国民を保護する上に、できるだけの手を内政上講じなければならぬ立場にあるわけでございまして、そういう立場から出漁漁民に対しまして手当をされたものと思います。
  114. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 閣議決定では、見舞金は損害賠償の一部として支払うということを明確にきめていらっしゃるでしょう。それは御存じないのですか。
  115. 中川融

    ○中川政府委員 ただいま御指摘の点は、そのような閣議決定になっておることを承知しております。
  116. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは大臣の答弁と違うじゃないですか。
  117. 中川融

    ○中川政府委員 大臣の御答弁と違ってはいないのでありまして、政府韓国に対して損害賠償請求権を留保しております。従ってこれは外交交渉によって損害請求の要求をして、もちろんそれによって韓国から、この損害補償は取るという考えでいるわけであります。そういうものが実現いたしましたら、その中からその分は差し引く、こういう考えで閣議決定ができておると思います。
  118. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 向こうから損害賠償に値するものをもし取れたら、補償をする。もし放棄をすれば補償しない、こういうお答えですか、今のお答えは。
  119. 中川融

    ○中川政府委員 今の閣議決定に基づく内払いの金は、すでに漁民の方々に渡っておるわけであります。従ってもしも将来万一韓国から金が取れない際に、それをもとへ戻すというようなことは、もちろん政府考えておらないわけでございまして、お渡ししたものはもうそれで打ち切りでありますが、もし将来韓国から補償金が取れたら、その分だけは差し引いて、あとの分を漁民の方に差し上げる、お分けをする、こういう考えでおるわけでございます。
  120. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 おかしいですね。それでは質問を変えて順序よくやっていきますと、この拿捕漁船の損害賠償の問題は、平和条約四条とは関係がないのですね。関係ないこの問題を、平和条約四条に基づく請求権の問題の中の、船舶小委員会の議題とされておるのはなぜですか。
  121. 中川融

    ○中川政府委員 平和条約発効後におきまして、漁船の拿捕に基づく日本の損害というものは、これはもちろん平和条約第四条の問題ではないわでございます。しかしながら日韓間で漁業取りきめができます際に、これは非常に密接な関係がある問題でございまして、従ってこれは便宜漁業小委員会で一括して話をしようという考えでおるわけでございまして、なるほど平和条約それ自体に基づくものではございません。しかしながらいわゆる日韓間の漁業取りきめ自体も、必ずしも平和条約自体に基づいておるという観念でやっておるわけではないのでありまして、いわば戦後処理の一つの大きな問題として取り上げておるわけでございます。従って今の漁船補償の問題も一緒に取り上げて、一向差しつかえないと考えておるわけでございます。
  122. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 大平大臣は昨年九月二日の外務委員会では、請求権問題の中の一環として、この損害賠償問題を頭に入れながら解決をしていくという答弁を、戸叶委員にされている。ことしの二月二日の予算委員会では、野原委員の質問に対して、今度は漁業交渉の一環としてこれを解決していく、そういうふうに答弁が変わりました。それはいわゆる請求権問題が、ああいう形でどんぶり勘定で一応の合意に達したから、この拿捕漁船の損害賠償問題がそれに含まれていないから、今度は漁業交渉の方に持ってこられた。そこでまず二月二十九日当第二分科会で、田中委員の質問に大臣は答えられておるわけですが、この損害賠償請求問題は平和条約とは関係がないから、これは別にあとに残してでも解決をすると池田総理は答弁されておりますけれども、そういうことは考えておりませんと大臣は言われました。その点についてはどう思いますか。
  123. 大平正芳

    大平国務大臣 その点は戦後に起こった問題でございまして、平和条約の四条とは関係ございません。問題は李ラインに伴って起こった事件でありまして、この問題を解決する場といたしましては、漁業交渉の場で解決いたしたいということで進んでおるわけです。
  124. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 池田総理は、この日韓交渉が成立した場合は、新しい問題としてこの損害賠償の問題あるいは国内の損失補償の問題をからめて、問題を解決するという答弁を十八日の日にやっておるのですよ。あなたの考えはこの漁業交渉の一環として解決していくというお考えですか。どうですか。
  125. 大平正芳

    大平国務大臣 漁業交渉の一環として、この際片づけたいと思っておるわけです。
  126. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、池田総理がしばしばいわれておりますように、いわゆる日韓交渉一括解決の中に、この問題の解決も含みますか。
  127. 大平正芳

    大平国務大臣 そのようにいたしたいと思います。
  128. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、今の大臣の答弁と総理大臣の答弁は違いますがね。池田総理はこう言われております。「これは平和条約以外の問題でございます。しこうして、外国の日本国民に対しまする不法行為による損害賠償を、わが国政府が直ちにそれを賠償しなければならぬという法の建前になっていないということを御参考に申し上げます。従いまして、日韓交渉解決したあとに、新しい問題として検討いたします。」どうですか。「日韓交渉解決してあとに、新しい問題として検討いたします。」 今の外務大臣のお答えと違うように思いますけれども……。
  129. 大平正芳

    大平国務大臣 それは平和条約四条の問題でないということを言われた通り、私どももそういう問題ではないと心得て、しかしこれも一日も早く解決した方がいいわけでありまして、せっかく漁業交渉という場があるわけでありまして、その一環として解決いたしたい、こういうことで努力いたしておるわけでございます。総理があるいは日韓交渉後と言われたという速記でございますが、そういう時期を待たないでも、こういう場面で解決に努力をするのが正当ではないかと思います。こういう一切の問題を残さないようにして、国交正常化をはかるべきだと私は思っております。
  130. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私は今の外務大臣のお答えの方がほんとうではなかろうかと思うのです。そうすると今外務大臣のお答えが、拿捕漁船の損害賠償の解決も含めないと一括解決にはならない、つまり日韓交渉一括解決の中には、この拿捕漁船の損害賠償問題の解決も含まなければならない、そういうお答えを得たわけですが、そうすると総理大臣がこれは一括解決の中に含まず、あとで新しく検討するというお考えと、完全に違いますけれども、どうでしょうか。
  131. 大平正芳

    大平国務大臣 私におまかせいただけるものと思います。
  132. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私におまかせいただけると思いますといって、総理大臣が言われたことですよ、あとに残すというのは。総理の言われたことが間違いで、あなたの言われたことが政府の方針ですか。
  133. 大平正芳

    大平国務大臣 おそらくは総理は、国内に対する補償の問題を言われたのではないかと思いますが、こういう一切の懸案をなくした上で、正常化をはかるべきものであるという基本観念においては、私は一致しておると思います。
  134. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それではその点は外務大臣の言われる通り、一括解決の中に含むという態度で臨む、つまり日韓交渉解決し、調印が行なわれるという段階では、この拿捕漁船の損害賠償の問題も片づくということですね。ただ手続的に、それに基づいて国内における損失補償の問題は、事務的にはあとに残るかもしれない、こういうふうに解釈していいわけですね。
  135. 大平正芳

    大平国務大臣 そのように考えます。
  136. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 今外務大臣から明確にお答えを得たわけです。そうしますと、先ほどの問題に戻りますけれども、損害賠償請求権の問題は、あなた方の得意の解決で、どんぶり勘定で親善友好の関係からこれが解決したものと認めるというような、はっきり金額をもらわなくても、そういう解決がもしあった場合に、国内の損失の補償の問題は私は厳然として残ると思うのですが、どうでしょうか。
  137. 大平正芳

    大平国務大臣 それは拿捕漁船に関してですか。
  138. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうです。
  139. 大平正芳

    大平国務大臣 だから総理もそこの答弁でおっしゃっております通り、外国の不法な行為によって拿捕されたという事実に基づいて、直ちに政府に賠償責任が起こるかどうかということについては、これは別問題だということを言っておるわけでございます。私どもが今やろうとしておる仕事は、韓国に対しまして賠償請求権は留保してあるわけでございますから、この問題は外交交渉で打開の道を発見していきたいと申し上げているわけでございます。一応国内補償の問題とは別問題であると思います。
  140. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 これは韓国に対する損害賠償請求の問題がうまくいかない場合でも、国内的には損失補償するのがあたりまえでしょう。そうではないですか。不法な李ラインの存在によってこの問題が起こっておるとき、政府は一貫して李ラインの不法性を主張して、請求権を留保されておるのだから、これは日本国民が受けた損失補償するのがあたりまえじゃないでしょうか。
  141. 大平正芳

    大平国務大臣 今御答弁申し上げました通り、冷ややかな法律の論理からいえば、外国政府の不法行為によりまして受けた日本国民の損害に対しまして、直ちに日本政府の賠償責任は出てこない。しかしこれは法律問題というよりは、私は政治問題だと思うのでございまして、そういう角度から、そういう場合にどうするかという政治問題は残ると思うわけでございますが、あなたの御質問が、あくまでも法律的な土俵においてということでございますならば、直ちにはそういう結論は出てこない、こういうことを申し上げておるのでございます。
  142. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 李ラインの問題で、政府韓国に損害賠償の請求権があるというその根拠は、条約局長、聞いておって下さい、これは三つあると思うのです。一つは条約、一つは国際慣習、三番目には国際司法裁判所の判例に基づく法の一般原則、こういうふうに分けられておる。そうすると韓国の場合には、条約がないのです。わが国が韓国に対して李ラインの問題で、拿捕漁船の損害賠償を請求する根拠というのは、一般的な国際慣習あるいは国際司法裁判所の判例に基づく法の一般原則だと思うのです。そういう慣習、そういう考え方から損害賠償請求をしておるとするならば、国内的にもそういう考えで損失補償をやるというのが当然じゃないですか。昭和二十九年三月一日のビキニの第五福竜丸のどきには、損害賠償を取られて、そうして補償されましたですね。どうでしょうかね。
  143. 大平正芳

    大平国務大臣 私はあなたのおっしゃった気持はよくわかるのです。それで問題は、純法律論としては直ちに政府に賠償責任は出てこないのだ、しかし政治問題は残るのだということを申し上げておるわけであります。
  144. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 損失補償をやるつもりかやらぬつもりか、今の政府考え方として。
  145. 大平正芳

    大平国務大臣 これは政治問題でございまして、とくと考えなければならぬ問題だと思います。
  146. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 拿捕の問題は、李ラインが設定される前から、一九四七年から起こっておるのです。もう二十年たちます。それでまだ損失補償をするかどうかの方針がきまらないのですか。どうなんでしょう。
  147. 大平正芳

    大平国務大臣 現在の政府に与えられた法制上の権限から申しまして、直ちに賠償責任は出てこないということでございまして、事実におきまして国会方面からも、賠償とまでいかなくても、見舞金を出したらどうだという御相談は、政府としてもたびたび受けておるわけでございまするし、外務の当局にも御検討を再三わずらわした問題でございます。しかし現在の法制の上から申しますと、政府責任というのは直ちに出てこないので、今にこの問題が解決していないことを非常に遺憾に思うております。そこでこの問題は、国内の政治問題として私は生きておると思うわけでございまして、何らかの措置を真剣に検討してみなければならぬ問題だとは思いますが、しかしあなたがおっしゃるように、政府はちゃんと賠償責任があるじゃないかと断定されますと、法律的には直ちにさような結論は出ないということを申し上げるにすぎないわけです。
  148. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 最後です。法律的にやり合いすれば、また国家賠償法の問題もございましょう。政府が当然やるべき交渉を怠っておったのだから、これは本来平和条約に基づく交渉とは別個の問題であるはずです。しかしたまたま実際問題としては、現在の平和条約に基づく日韓交渉過程解決せざるを得ないという立場をとっておられると思うのです。しかしこれは本質的には関係ないから、ずっと以前から、この拿捕問題が起こったときから、政府は当然韓国とやり合いをして、そこで紛争が解決しない場合には、国際司法裁なりに訴える手段も残っておったはずです。それを今までずっとやっていないのでしょう。当然これは政府責任でしょう、今まで長引いておったというのは。一体責任をお感じになっておられるかどうか、その点はどうでしょう。ずっと懸案で、国連に訴える場も当然ありながら、こんな不当な不法な問題を、今までずっと引き延ばされておった政府責任を、一体どのようにお考えになりますか。
  149. 大平正芳

    大平国務大臣 私はあなたと気持は全然同じでございます。これは非常に困難な日韓関係でございまして、こういう問題を早く片づけなければならぬことは当然のことでございまして、そういう観点に立ちまして、日韓の間にこういう問題の話し合いがつくように今せっかく努力いたしておるわけでございます。
  150. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 きょうの御答弁は実に私どもは不満です。政府の今の態度は話にならぬと思うのです。これは平和条約と関係ないのだから、当然損失補償を船主なり漁民にやるという建前で臨んで、そして実際問題の解決はいろいろありましょう。しかし建前としてはそういう建前でいかなくては、責任がどこにあるかわからぬようになるではありませんか。私はきょうの答弁ははなはだ不満足であるし、池田総理大臣外務大臣のお考えの相違点も残っておるし、時間もありませんからきょうはこれで終わりますけれども、十分この点は考えてやってもらいたい、このように要望して質問を終わります。
  151. 今松治郎

    ○今松主査 西村関一君。
  152. 西村関一

    西村(関)分科員 本日は原子力潜水艦の寄港の問題と、南ベトナムへの医療団派遣要請について、お伺いいたしたいと思って参りました。原子力潜水艦の寄港問題につきましては、同僚の堂森委員から若干の質問があったように伺いましたが、時間が三十分に限られておりますので、どちらを中心に御質問をしようかと実は迷っている次第でございますが、非常に緊急を要します——両方とも緊急を要する問題ではございますけれども、前段の問題からお伺いをいたしたいと思います。ベトナム医療団派遣の問題につきましては、もし時間があれば若干触れるかもわかりませんけれども、主として原子力潜水艦の寄港問題についてお伺いいたしたいと思います。  先ほど私は他の委員会に出ておりましたので、堂森委員の質問、また大臣その他政府委員の御答弁につきまして伺っておりませんが、漏れ聞くところによりますと、今回のアメリカが要請しているところの原子力潜水艦は核兵器を装備してない、こういう御答弁であったようでございますが、その通りでございますか。
  153. 大平正芳

    大平国務大臣 そのように先方から通知を受けております。
  154. 西村関一

    西村(関)分科員 一九六一年十一月二日のフライトという雑誌によりますと、ポラリス型原子力潜水艦はもちろんのこと、これは中距離弾道弾、ミサイル核弾頭を装備いたしておるのでございますが、今回伝えられておりますところのノーチラス号型のポラリス型でない原子力潜水艦もまた、核弾頭付の魚雷や爆雷を装備している、その最も代表的なものがサブロックと呼ばれるところのものだ、こういうふうに書いてあるのでございまして、原子力潜水艦専用の強力なロケット魚雷というものをつけておる、またつけていないといっても、それはっけられるということが、専門家の見解として述べられておるのでございます。またアメリカの専門雑誌のミサイル・アンド・ロケット、一九六二年の七月三十日号を見ますと、その写真まで出ておる。私はその写真を見ましたが、きょうは突然で準備して持って参ることができませんでしたが、そういうような性能の一部も公表されておるのでございます。この雑誌によりますと、サブロックは十七番目の原子力潜水艦のスレッシャー号以降には、装備しておるということがはっきり出ておるのでございます。また私がここに持って参りましたアメリカ合衆国の原子力委員会、国防省、ロス・アラモス科学研究所から出しておりまする「原子兵器の効果」、これは武谷三男、中村誠太郎その他の人々によって共訳されている本でございますが、これによりますと、間もなく九周年の記念日を迎えようとしておりますビキニのアメリカの核実験に際しまして、サブロックの実験がなされた。これが核爆発をすれば、爆心から一キロメートル以内の艦船に致命的な損傷を与えることが、ビキニのベーカー実験で確かめられておるということが、この書物の中に書いてあるのでございます。このときは多量の海水が吹き上げられて、すさまじいばかりの放射能の雨が降ってきた。これも実験済みのことでございます。こういったようなことから考えまして、このたび入港が伝えられておるところの原子力潜水艦が、全然核装備をしていないということは、だれも保障することができないと思うのでございます。入港した場合に、艦内に立ち入って日本側が検査をする自由もおそらくなかろうと思いますが、その点につきまして政府は一体どのような保障の基盤に立って、これは核装備をしてない潜水艦であるから、考慮の余地があるのだというふうにお考えになるか、これらの点について御所見を承りたいと思います。
  155. 大平正芳

    大平国務大臣 安保条約におきまして、日本アメリカも安全保障上の協力はこの仕組みでやりましょうと、おごそかに誓い合っているわけでございます。すべての条約の執行、運用、これはあくまでも相互の信頼の上に立たなければならぬわけでございまして、アメリカ政府が核装備はしていないのだという言明に私は信頼を置きますし、またアメリカは再三日本に核兵器を持ち込むなどということは、毛頭持っていないということを強調されておるわけでございまして、私どもは同盟国のそういったおごそかな約束を信頼いたしておるわけでございます。
  156. 西村関一

    西村(関)分科員 四年前にもアメリカの潜水艦が日本に寄港したいという問題が起こりまして、日本政府は表面上は慎重な態度でこれを断わっておる。その四年後におきましては、これを認めようとなさる点は、一体どういうところに根拠があるのか。当時は国民感情を案じてお断わりになったと伝えられておりますが、現在は原子力潜水艦を入れても、国民感情を刺激するようなこはないというふうにお考えになっておられるのか。また先般一月十九日の第三回日米安全保障協議委員会におきまして、アメリカ側からの要請に対して、政府は質問書をお出しになったようでございますが、その質問書に対しましてどういう答えがきたか。相互信頼ということを外務大臣は仰せになりましたが、その答えのどの点を信頼して、四年前に断わった原子力潜水艦を、今回は入港させようというお考えになりつつあられるのか、その点、お伺いいたしたいと思います。
  157. 大平正芳

    大平国務大臣 原子力を推進力とする艦船というものがだんだん普及して参りましたことは、西村委員も御案内の通りでございます。原子力という語感から受ける国民の印象も、原子力の平和利用が進んで参りますにつれまして、だんだんポピュラーになってきたということは言えるのじゃないかと思うのでございます。わが国でも原子力商船の建造を一つもくろもうじゃないかという、具体的な計画さえ立案されておる実情でございます。一方、問題の原子力潜水艦というようなものが、その後、太平洋水域におきましても、大西洋水域におきましても、たくさんの寄港の実績を持っておりますけれども、今まで危険であった、安全上問題があるということは聞いていないわけでございます。従って、潜水艦の推進力が原子力に待つというだけで、これはいけないのだと判断するのは、いささか無理があるのではなかろうかと思います。従いまして、私どもはこの段階に参りまして、安全上あるいは補償上満足すべき先方のコミットメントがもらえるならば、受け入れても差しつかえないという基本的な態度でおるわけでございます。それで先般、各省協議の上、安全上、補償上気がついたところを、詳しく先方に確かめておったのでございますが、安全上の問題につきましては御返事が参りまして、各省の専門家にお集まりいただいて、今検討いたしておるところでございます。補償の点につきましては、まだ先方から御通知がない状況でございます。しからば、安全上の問題としてどういう質問をして、そしてどういう答えがきたかということでございますが、それは今政府部内でせっかく検討中でございますので、今の段階で本委員会で明らかにするということには参りませんが、いずれすべての検討を終えた上で、お答えすることにいたしたいと思っております。
  158. 西村関一

    西村(関)分科員 平和利用の、一般船舶に動力として原子力を用いるという点につきましては、それにつきましても事故等の起こった場合の安全の保障、あるいは廃棄物に対するところの措置、そういったものが当然問題になるのでございますが、まして潜水艦といえば戦力でございます。私が今さら申すまでもないことでございまして、ただ単に推進力に原子力を用いておるというだけにとどまらずして、これは先ほどアメリカ側の資料を一部紹介いたしましたように、核弾頭を装備することもできる、核ミサイルを装備することもできる、そういうものである。ただ単に運搬用とか補給用とかいうものでなくて、戦力として、そういう広義の戦力ではなくて、狭義の戦力として、核ミサイルを装備し得られるところのものである。アメリカの原子力潜水艦は、その核爆発物の種類、効力の差こそあれ、すべてそういうものが装備されるのだということが、一般の常識になっているのでございます。それにもかかわらず、政府はその点については故意にお触れにならないようなきらいがあるというふうに、私には受け取られて仕方がないのでございます。もちろんその廃棄物の処理等について、十分な安全保障を取りつけるということが必要でございますし、またもし損害があった場合に、その損害の補償についての約束を取りつけるということも必要でございますが、その前に、この原子力潜水艦というものはどういう性質のものであるかということに対する御検討は、おそらく十分になさっていらっしゃるのだと思いますが、それを故意に国民の前におおうておられるというように、私には感ぜられてならないのでございます。  今大臣は、米側からの回答書がきたけれども、目下検討中であって、その内容を現在のところでは発表するわけにはいかないということを言っておられますが、朝日ジャーナルの三月三日号を見ますと、二月十四日に回答書が寄せられた、その内容はまだ明らかでないけれども、おもに危険防止措置だけに限られたものであって、安全保障書の提示はされてない。今の大臣の御答弁とほぼ一致するようなことが書いてございまして、一から五までの項目についてのアメリカ側の回答が、まだ発表されていないけれどもというただし書きのもとに出ておるのでございます。これだけを見ましては、国民は安心感を持ってこの潜水艦の入港に賛意を表することは、おそらく一人もできないと思うのです。その点につきまして目下検討中だということでございますから、なおよく十分にこの検討をしていただきたい。私どもは、そういう危険なもの、いわば自由自在に移動できる軍事基地の役割をいたします、しかも核装備のできる原子力潜水艦というものに対して、これを寄港させるということにつきましては、慎重な上にも慎重な配慮をしていただかなければならぬと思うのでございます。  軍事的、戦略的な問題はその次の問題といたしまして、戦略的な問題からも大きな問題がございますけれども、第一に安全という立場から申しまして、私は一部雑誌に伝えられておりますようなアメリカ側の回答だけで、はたしてこれが安全なものとして認定できるかどうかということに対して、非常に疑問を持つのでございます。その点、大臣におかれましては、どういうような根拠によって、入港、寄港を認める方向に相談をまとめようとしていらっしゃるのであるか。全然白紙だとおっしゃれば、それ以上追及いたしませんけれども、その点、もう一度大臣のお考えを伺いたいと思います。
  159. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申し上げましたように、私どもしろうとでございまして、科学的な知識を持っておりません。政府部内の専門家の御検討を願っておるわけでございまして、安全上支障がないという御判断があれば、そして万一の場合の補償というような点についても満足すべき回答が得られますならば、われわれは承諾して差しつかえないものと心得ております。
  160. 西村関一

    西村(関)分科員 クラウチという人の「原子力船」という書物がございます。これは住田、飯沼両氏が日本語に訳しております。これを私は国会図書館から借り受けて読んだのでありますが、これを見ましても、例の原子力平和利用の原子力船として有名なサバンナ号についての具体的な説明が、この中の第七章に書いてございますが、この平和目的のために原子力を利用いたしておりますサバンナ号にいたしましても、いろいろ問題があるということを述べております。時間がございませんから、その問題点の詳しいことを今ここで申し上げるわけには参りませんが、このサバンナ号と同じ仕組みでもって、現在のポラリス型潜水艦以外の原子力潜水艦は、一時シーウォルフ号が違ったやり方でやりましたが、それは失敗いたしまして、現在はずっとサバンナ号と同じ仕組みの原子力潜水艦が運航しておるということが、この書物の中に書いてございます。しかも、このサバンナ号型の原子艦船が運航しておる中におきましても、液状及び気体状の放射性廃棄物が出るのを避けることができない、公衆衛生上の理由から、サバンナ号は制限海域では、液状及び気体状の放射性廃棄物を船に貯蓄することができるようになっている、こういうことも書いてあるのでございます。公衆衛生上これを外へ捨ててはならないということは、言葉をかえて言うならば、人口の多い都市の近くの海域には、これを捨ててはならないというふうにとっていいものだと考えるのでございますが、平和利用と銘を打つサバンナ号にいたしましても、放射性廃棄物の船上貯蓄は、ある海域に限られているということは一体何を意味するか、これは問わずして明らかでございまして、現に戦略戦術上の目的でつくられているところの原子力艦艇につきましては、水上用、水中用を問わず、運航中の放射性廃棄物の処理につきましては、一切公表されていないのであります。このような未解決の問題を残しておりますものを、そうやすやすと寄港に踏み切られるということにつきましては、しかも相手アメリカ政府側から十分な回答を取りつけることなくして、巷間伝えられておりますような五カ条の回答だけにたよって、しかも不十分な回答に基礎を置いて、寄港に踏み切られるということは、これは国民の生命の安全、生活の保障という点から申しまして、非常に大きな問題がある。戦略上の問題は、今時間がございませんから私は触れませんけれども、これは非常に大きな問題があるということを考えずにおれないのでございます。大臣にお伺いいたしましても、目下専門家の意見を聞いて、衆知を集めて、危険がないということならば、寄港に踏み切ってもいいのだというようなお言葉でございますが、私のようなしろうとがとやかく申し上げましても、大臣はそう耳をお傾けにならぬかもしれませんけれども、やはり国民を代表する議員の一人といたしまして、多分にそういう心配を持っているわけです。しかも、このような権威ある書物によって、私がいささかの勉強をいたしました点から申しまして、非常に心配が多いということを申し上げたいのであります。  なお、営林委員も質問をせられたということでございますが、事故の場合にどうするか。事故は絶対に起こらないという保証はどこにもないのであります。朝日新聞の伝えるところによりますと、アメリカ原子力潜水艦が最近に起こした事故の例、私はこれを一々読み上げる時間がございませんが、一九五九年、一九六〇年、一九六一年、一九六二年と、毎年々々事故を起こしておるのであります。しかも一九六〇年の六月十四日に、真珠湾停泊中に突然火を発して事故を起こしましたサーゴ号、この原子力潜水艦には核弾頭を積んでいたということがはっきり報告せられておるということが、朝日新聞に出ておりました。朝日新聞に出ましたアメリカ原子力潜水艦の事故の報道だけを見ましても、そのほかにもあるかもしれませんが、こういう事故が起こっておる。現にこの「原子力船」というクラウチの本を見ますと、事故が起こった場合のことが出ておるのでございまして、規制措置による安全性確保と想像し得る事故というので出ているところを見ると、その解説の図は、いかにも東京湾に似ている。それを一つの想像し得るところの事故としてここに述べておるのでありまして、絶対に事故が起こらないということは過去の事例から申しましても、専門家の意見に徴しましても、これは保証ができないのであります。もしかりに横須賀とか佐世保とかいうところに、この種の原子力潜水艦が入港して、この間の川崎沖のタンカーの事故のようなことがもし起こった場合にどうなるか、それこそはだえにあわせを生ずるような、想像に絶するような大惨事が起こるのであります。それは起こらないということは、だれも保証することはできないのでございます。  時間が参りましたから、これだけのことを申し上げまして、私の質問は外務委員会あるいは科学技術特別委員会等に残しまして、最後にもう一度大臣のお考えを伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  161. 大平正芳

    大平国務大臣 真剣に御心配をいただいておりますことは、御質問を通じてよくわかります。私どもといたしまましても、十分専門家の御検討を待ちまして、国民の御安心ができるような状況において、受け入れるというようにいたしたいと思っておるわけでございまして、目下鋭意検討さしておるわけでございます。
  162. 今松治郎

    ○今松主査 以上をもちまして、本分科会における質疑は全部終了いたしました。     —————————————
  163. 今松治郎

    ○今松主査 この際、お諮りいたします。  昭和三十八年度一般会計予算中、外務省、文部省、厚生省及び労働省所管昭和三十八年度特別会計予算中、厚生省及び労働省所管についての討論、採決は、先例により、予算委員会に譲ることといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 今松治郎

    ○今松主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  以上をもちまして、本分科会の議事はすべて終了いたしました。  分科員各位の御協力によりまして、円満に議事を進めることができましたことを、深く感謝いたします。  これをもちまして第二分科会を散会いたします。どうもありがとうございました。    午後一時二分散会