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1963-02-21 第43回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月二十一日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席分科員    主査 中村三之丞君       伊藤  幟君    仮谷 忠男君       松浦周太郎君    石田 宥全君       加藤 清二君    川俣 清音君       島本 虎三君    田中 武夫君       横山 利秋君    兼務 久保田 豊君 兼務 田口 誠治君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         経済企画政務次         官       舘林三喜男君         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   吉岡 英一君         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房会計課         長)      佐藤 二郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    山本 重信君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  大來佐武郎君         総理府事務官         (経済企画庁水         資源局長)   崎谷 武男君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      五十嵐義明君         農 林 技 官         (農地局長)  任田 新治君         通商産業事務官         (大臣官房長) 渡邊彌榮司君         通商産業事務官         (大臣官房会計         課長)     赤澤 璋一君         通商産業事務官         (通商局長)  松村 敬一君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川出 千速君         通商産業事務官         (石炭局長)  中野 正一君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      塚本 敏夫君         中小企業庁長官 樋詰 誠明君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    加藤 悌次君         通商産業事務官         (中小企業庁指         導部長)    影山 衞司君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   田代 一正君         通商産業事務官         (企業局立地政         策課長)    馬場 一也君         通商産業事務官         (企業局立地指         導課長)    大久保一郎君         通商産業事務官         (企業局工業用         水課長)    柴崎 芳三君         建 設 技 官         (計画局地域計         画局長)    池田 廸弘君     ————————————— 二月二十一日  分科員石田宥全君加藤清二君、高田富之君及  び田中幾三郎委員辞任につき、その補欠とし  て島本虎三君、田中武夫君、横山利秋君及び玉  置一徳君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員島本虎三君、田中武夫君、横山利秋君及  び玉置一徳委員辞任につき、その補欠として  石田宥全君高田富之君、加藤清二君及び受田  新吉君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員受田新吉委員辞任につき、その補欠と  して田中幾三郎君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  第一分科員久保田豊君及び第四分科員田口誠治  君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十八年度一般会計予算経済企画庁及び  通商産業省所管  昭和三十八年度特別会計予算通商産業省所管      ————◇—————
  2. 中村三之丞

    中村主査 これより会議を開きます。  昭和三十八年度一般会計予算及び同特別会計予算中、通商産業省所管を議題といたします。  質疑を続行いたします。  川俣清音君。
  3. 川俣清音

    川俣分科員 主として工業用水並びに電力の問題と非鉄金属の問題、三点を取り上げたいと思うのです。  まず最初工業用水の問題を取り上げたいと思います。  通産省は約三年にわたって工業用水確保重要項目にあげて国に予算要求をしておられるわけですが、はたして目的通りあるいは計画通り確保されておるかどうかといいますと、必ずしも自信がないであろうと思いますし、実績また、むしろ経済の成長に追いつかなかった。計画自体もずさんであった、というよりも、見通しが甘かったという点も出てきているんじゃないかと思いますが、この予算の消化による効果についてどのような見解を持っておられますか、お伺いいたしたいと思います。
  4. 福田一

    福田国務大臣 お説の通り工業用水の問題は、重大な政策の項目といたしまして、過去三年来通産省としてはその確保努力をいたして参っておるわけでございます。もちろん、これは川俣さんも御案内の通り、こういう重要項目といいましても、通産省には数多いことでもございますので、いろいろの項目をにらみながら予算の編成もはかる必要がございますので、あるいは工業用水の面を特に考えておいでになるお方から見れば、十分でないというような御批判も受けるかと存ずるのでありますが、まあ通産省としてはずいぶん努力をいたしておるつもりでありまして、今年度の予算に比べて、来年度は約四割以上増の予算もつけておるような次第でございます。  詳しいことにつきましては政府委員から答弁をいたさせたいと思います。
  5. 柴崎芳三

    柴崎説明員 ただいままでの工業用水に対します補助金投下並びに給水能力増加状況につきまして御説明申し上げます。  補助金は、三十一年度から国から出すことになりまして、この年度におきましては一億八千万円というベースで出発いたしましたが、累年増加いたしまして、三十七年度には三十七億、さらに三十八年度の予算では約五十三億というベースに急増しておるわけでございます。従いまして、現在までの投下実績を合計いたしますと、三十七年度までで九十三億、これに五十三億を加えますと百四十数億という数字になる予定でございます。  一方、給水能力増加状況は、三十一年度当時に約百万トン、九十六万九千トンございました。それが、累年増加いたしまして、三十七年度末におきましては三百四十万トン程度に増加する予定でございまして、今年度三十八年度予算で取り上げました新規工事対象給水量は約百八十万トンでございます。従いまして、合計五百二十万トンというものが三十八年度末におきまして完成する予定でございます。需要に対しましてはまだ非常に足りませんが、一応順調に推移しておるという状況でございます。
  6. 川俣清音

    川俣分科員 今答弁されたような状態でございますが、要望に対する手当がまだ五〇%に達しておらないであろうと思われます。そこで、どうして一体予算補助効率を上げていくかということについて、従来は予算的措置がなかったということで苦慮されておったのですが、今後は、もう三十一年から経過しておるのですから、これがどれだけ効果をあげるかということに力を入れなければならなくなってきたと思うのです。今大臣説明のように、予算は確かに、期待通りとは言えないかもしれませんけれども、裏づけができてきた。予算裏づけができたのだが、はたしてその予算通り効果があがったかどうかということになると、何と言いましても水であるがために期待通りいかないのだということで逃げてしまっておられるような傾向があるのですね。御承知通り日本は水に恵まれておりましたがために、今日まで水に対する関心が非常に薄かったということも一つの原因でしょう。また、作業家企業家自体におきましても、水というものは何とかなるんだということで、水は今まで重要なコストの中に入れてなかった。原料に匹敵するだけの用意をしておかなければならないにもかかわらず、いろんな合理化やあるいは近代化ということで設備等については相当の進捗率を見せておりながら、その最も欠くべからざるものであるところの水に対する手当というものについて、作業家企業家最初から少し無関心であり過ぎた。いよいよ窮屈になってきてあわててこれを重要に取り扱ってきたというのが過去の経過だと思うのです。それだけに、予算は確かにふえて参りましたけれども、——私、これで予算が十分だ、こう言うのじゃないのです。十分じゃないですよ。しかし、問題は、そうじゃなくて、この予算をどう効率的に使用するかということです。単に補助ということで、自分の方でやるのじゃない、補助だからということで、積極的な開拓について、怠慢とまではいかないにしても、手当が十分でないのじゃないか、こう思うのです。水資源公団補助をする、そういうことで人におんぶして確保しようという格好でしょう。みずからの開拓じゃない。みずからの計画じゃないのです。従って、確保できないということになる。みずからの計画であれば、これは確保できたであろうと思いますよ。人におんぶしている。いや管轄が別だからとかいうこともありましょうけれども、水がもう重要な原料になって参りますと、通産省みずからが開拓方針を立てなければならぬ。この方針でやってくれなければみずからやらざるを得ないのだというところに追い込まれておるということを認識しておられるかどうか。この点、大臣一つ答弁願いたいと思います。
  7. 福田一

    福田国務大臣 仰せの通り予算を取っただけでは意味がないのでありまして、予算をどれだけ効率的に使うかということも含めて大きな行政と言わなければなりません。そういう点から考えてみますと、直接やっておりますれば、確かに効果は、監督その他も十分行き届きますが、府県とかあるいはまたそういう市とかいうものを通じてやっている場合に、いささか間接的になる傾きもございます。従いまして、通産省としては、あなたのおっしゃるような点をよく認識して、十分監督を厳重にして、効果をあげるように努力いたしたいと考えておる次第であります。
  8. 川俣清音

    川俣分科員 そういう答弁に終わるのであれば、これは私はここで取り上げただけじゃ足りないのですね。工業生産の発展については通産省責任を持っておられる。従って、原料に等しい状態になった水については、やはり重大な関心をもう少し深めていかなければならないであろう、こう思うのです。従いまして、単に水の供給ばかりではなくして、水を多量に使う場合には必ず汚水という形になって参るわけですから、給水すると同呼に、汚水処理についても通産省はやはり責任を負わなければならぬということになる。  もう一つの問題は、これはなかなか問題なんで、あなた方も苦慮されておると思うのですが、地下水であれ、伏流水であれ、名づけられるものはそれぞれあるにしても、これらはみんな共有のものなんですね。たとえば、ビルにいたしましても、ビル所有権というものは地下にも及ぶ。その地下の水はその所有に属するというふうに考えられますけれども、中の地下水というものは必ず移動しておるわけです。従って、水というものは共有なものなんです。だれかの占有にすると、だれかが不足をするという結果になる。それだけに、やはりこれは、上水道にいたしましても、工業用水にいたしましても、共同の水ですから、共同確保しなければならないだけに、通産省としてはなかなか積極的にこの水の問題を打開することに困難な事情があることは十分察しますけれども、もう一段と工業用水につきましては努力を払わないと、そこから産業の破綻が生まれてくるのではないかと思うのです。今にして手をつけておかないと、その場合になっても、これはなかなか限られたる水でありますだけに、新しい開拓方法を講じない限りにおきましては奪い合いの結果になりますだけに、今にして一段の考慮をしておかなければならぬじゃないか、こう思うのです。  そこで、何かの方策がなければならぬと思うのですが、確保のためにどんな研究をしておられますか、お尊ねしておきます。これは事務当局でもけっこうです。
  9. 柴崎芳三

    柴崎説明員 工業用水の絶対量か非常に窮屈であるという点は、現実その通りでございまして、それに対する方法といたしまして、水資源開発公団を中心にいたします水資源開発が現在進んでおりますことは御承知通りでございますが、それ以外に、通産省プロパーの問題といたしまして、実は二つばかり重要問題を取り上げているわけでございます。その一つは、水源は上流でのみ取るものではなくて、一番最後に海に放出する、その河口の段階で一つこれを貯水いたしまして使えば、上流に迷惑を及ぼさないで水量が相当確保できるのではないかということで、河口湖の建設という問題を取り上げまして、三十八年度予算に一個所予算をつけております。これが成功いたしますと、各地に応用されまして、非常に大きな効果が出るのではないかと思います。もう一点は、使用者側におきまして、工業用水に対して、水は無制限にあるのだから無制限に使ってもよろしいという考え方を至急改めてもらいまして、水使用合理化を徹底的にやろうということで、これもやはり水使用合理化につきまして指導所をつくり、あるいは指導班をつくって、各企業と意見を交換しつつ合理化へ進むということでこの費用も予算化してございまして、現在その三点につきまして大いに進めておるというのが実情でございます。
  10. 川俣清音

    川俣分科員 さらに、もっと上流の水を確保しておかないといけないと思うのですよ。ところが、水資源公団は、御承知のように、流れてきた水をどこかでキャッチするという形になるのですね。余った場合はやはり放流する。そういうときに、もっと上流の水の措置については、従来からやや無関心であったのではないか。最近は、これはむずかしいことになりますが、拡大方式をとりまして、山の中に湛水をさせ、あるいは縦穴をつくって一時そこへとめておいて、徐々に伏流水として下流へ流すという方法をも考えられてきておったわけです。最も水の利用の価値の高いのはやはり工業用水だと思うのです。これはもちろん水道等もそうでありましょう。上水道等もそうでありましょうが、工業用水及び上水道と組んでと申しまするか、こういう新しい開拓にもう一段と力を入れていかなければならないのではないか。これは開拓ですから、なかなか一朝一夕にはできるものではありませんので、開拓について今から計画を立てる必要があるのではないか。大臣、どうでしょうか。
  11. 福田一

    福田国務大臣 そういう意味で、いずれにいたしましても、工業と水というものは不可分な関係にございますから、水をいかに利用するかということは、これは重大な工業振興一つの大きな柱でもあると私は考えますから、そういうことについて調査をすることについては、われわれとしても今後も十分努力いたしたいと考えます。
  12. 川俣清音

    川俣分科員 通産統計月報を拝見いたしますると、電力の問題でございますが、水力発電出水率が出ておりますが、たとえば三十七年の十月は七五・九で、三十六年の十月は一一一・八・あるいは三十七年の六月と三十六年の六月と比較いたしましてもだいぶ開きがある。これは数字そのものにとらわれるわけではありませんけれども、三十七年の五月が九六・九、六月が一一二・七、七月が一〇三・八、八月が九三・一となっております。あるいは九月になりますと八一・二と下がり、十月には七五・九と下がって、出水率変動が非常に激しいわけでございます。これらの変動が激しいために、発電力に非常な影響を与えておるということになると思うのです。これを影響を与えないような処置をとることによって、水力発電価値をもっと高めることができるのじゃないか。あれだけの膨大な設備をして、そして出水率が悪いために発電力が低下しておるということは、ああいう膨大な固定資産に対して回収率が悪いということになって、コスト高になるということになると思うのです。従って、これに対する対策を講じてやらなければならないのではないか。電力会社がみずから講ずるのか、あるいは国全体として講ずるのか、問題はあると思いまするけれども、問題がここに一つあると思うのです。並びに、上流治山関係が悪いために、土砂が詰まりまして、ダムの効率が非常に低下しておるという問題も起こってくる。従って、上流治山と申しますか、出水力を常時平穏にと申しますか、高低のないような出水力にすることが不可能かと言えば、必ずしも不可能ではないと思うのです。その意味において、先ほど申し上げたような拡大方式などをとることが、工業用水ばかりではなくして、電力会社の上にも効率的な水の需要というものを確保できるゆえんじゃないか。そういう意味で、工業用水課長ですから電力のことは別でしょうけれども、両面からその問題を……。  第四分科から迎えに来ていますから、この程度で打ち切りまして、あとは保留しておきます。
  13. 福田一

    福田国務大臣 電力用水とあわせて飲料水灌漑用水工業用水面等考慮しながら効率的に水を使う必要がある、そのために何らかの対策なりあるいは施設をしてはどうかという御質問だと思うのでありますが、これはごもっともなお考えであると思います。これまでもその種の考え方で進めてきておりますが、今後も十分に一つそういう面で遺漏のないような措置をとって参りたいと思います。
  14. 中村三之丞

  15. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 時間があまりありませんから、簡単に二、三のおもな点を、主として貿易自由化の問題についてお尋ねいたします。  第一にお聞きしたいのは、今度のIMFの八条国移行の勧告に対しまして、日本側のこれに対する対策というものは全般として非常におくれているのじゃないかと思われるわけですが、今月の十四日の閣僚会議でも大体のスケジュールがきまったようでありますが、それを新聞で拝見をしますると、大体において、この十九日からのガット理事会で、日本としてはガットの十一条国に移行するという宣言をするといいますか、通告といいますか、これをやる、それから、今後輸入制限を必要とする品目については、残存輸入制限方式をとる、ウエーバーはとらない、こういうことから、さらに、この五月のガット閣僚会議へ新しい残存輸入制限品目リストを大体提出をする、それで、残存輸入制限品目自由化計画については、秋のガット総会説明する、こういうような大体の方針がきまったようでありますが、その点はどうなっていますか。
  16. 松村敬一

    松村(敬)政府委員 ただいまの点につきまして、実は、十四日の閣僚審議会は、当時ジュネーブから帰っておりました青木大使いろいろ報告がございまして、それに関していろいろ関係大臣の間で御議論、御討議になったというような趣旨の会合が持たれたと承知しております。従いまして、今お話のございましたような、政府のやり方ということがきまったわけではございませんで、当日の官房長官談話にございましたように、二月のガット理事会におきまして、日本が十二条国から十一条国に変わったということについて宣言をいたすということだけがきまりましたわけでございます。  ただいま御指摘の点につきまして二、三申し上げますと、残存品目リストを出すということは、これはガットの決議できまっておるわけでございまして、これは今度日本が十一条国になりましたからということだけではございませんで、従来から現在日本の残っておる残存輸入制限リストというのは一応提出しておったわけでございます。ところが、今度は、十一条国になりますと、そういう輸入制限ガット上認められない形になりますので、ガットの認めております輸入制限、たとえば武器でございますとかあるいは麻薬とか、そういうような特殊のものはもともとガット輸入制限をしてさしつかえないことになっておりますので、そういうものを除きましたガットとして認められない品目についてのリストは、これは早晩提出をいたさなければならないことになっておりますので、これはいつかは出さなければならない。しかし、できれば、われわれの方といたしましては、四月にもかなりの品目自由化されるものもあると思いますので、なるべく整理がされましてからあと提出をいたした方がいいのではないか、こういうことを考えておるわけでございます。  それから、もう一つの御指摘自由化計画提出というようなことにつきましては、これは、ガットにおきまして日本残存輸入制限がいろいろ問題になります場合に、締約国から日本政府に対して、今後どういうふうに自由化を進めるか、その計画を出してほしいという要求があることも十分予想されるわけでございますが、しかし、この自由化計画というものをあまりはっきりした形で出しまして、いろいろ国内的に講じようと思います対策がその国際的に出しました計画によって束縛されてしまうということも望ましくないと思いますので、できれば自由化計画のまとまりました形の提出というのは避けられれば避けたいというふうにこちらでは考えておるわけであります。しかし、これは、締約国の方で問題になり、非常に強い要求がございました場合には、あるいは提出いたさなければならないかもしれない、こういうことでございます。従来ほかの国がガットでそういう自由化計画提出を求められました場合に、西ドイツは、かなりばく然とした形ではございますが、一応の自由化計画を出しておりますが、ほかの国は必ずしも非常にきちんとした自由化計画を出しておるわけでもございません。その点は、ほかの国がほとんど八条国に移行いたしました現在といたしましては、日本に対する風当たりが非常に強くて、自由化計画提出という要求がほかの国に対するよりも強いということも考えられますので、あるいは出す必要が起こってくるかもしれませんけれども、あらかじめ出すのだということをきめることは避けたい、そういうふうに考えております。
  17. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 今、五月のガット閣僚会議ですか、そういったところへは自由化計画というものをはっきりした形で出すか出さないかということは非常な考慮を要するところだと思うのですが、いずれにしても、今の日本の現状から見て、非常に加盟諸国に比べていわゆる自由化計画がおくれておるわけですね。従って、実際は各国からこれに対する非常に強い要請が来ることも明らかであり、そういう中で日本が下手をすれば国際的に孤立していくということも当然考えなければならぬ。ですから、計画をはっきりガット閣僚会議なり何なりに出す出さないにかかわらず、これは早急に自由化計画は進めていかなければならぬ、こう思うのでありますが、それについて、政府の方としては大体来年の九月のIMF総会にははっきりした八条国移行宣言をするということを新聞では伝えておるわけです。それまでには、今の八八%程度でとどまる、これは他の国が黙っておるわけがないと思うのであります。従って、相当な、少なくとも西欧各国のやっておるように、九七、八まではいかないまでも、九四、五までの自由化計画というものはどうしてもしなければならぬというふうに思うのですが、これらに対する大体のめどは今ついておると思うのですが、どうなんです。いつどういう品目について大体どういう手順で自由化をしていくということですね。これは何といってもやはり通産省品目に関する限り一番中心になろうかと思うのですが、これも今検討中でございますというようなことでは、もう今日は済まないと思うのですが、ただ、非常に関係影響の大きいことですから、今ここですぐ明確に言えるかどうかわかりませんが、少なくとも、この四月までにはどのくらいのものについては何%ぐらいのものは八八からふやしていく、あるいは十二月にはどのくらいにするか、あるいは来年はどの程度自由化率にしていくということくらいは計画がなくてはならぬ。品目について二百五十四品目。今お話がありましたように、政府貿易品目といいますか、こういったものは約四十品目ばかりあるようですが、これはその方がいいといたしましても、農産物の八十四品目のうち、政府貿易品目の四品目を除いたあとのものはどういうふうにやっていくのかということくらいは、この際やはりある程度明らかにした方がいいのではないかというふうに思うのですが、この点大臣どうですか。非常に交渉の機微に触れる問題であるから、なるべくそれまでは伏せておいて、そして進み工合によってというお考えもあるでしょうけれども、直接そういう品目を指示するか、あるいはパーセントで何か指示するか、何らかの形で、対外的にもそういうものを指示し、あるいは対内的にもある程度のめどを明らかにすることが、私はこの際やはりすべてのものをはっきり進めて割り切っていく上においていいのではないかと思うのです。そうでないと、国内の今の情勢からしますると、まだまだ政府にねばって食いついたら自由化は相当延びるだろうとか、おれのところだけは何とかなるだろうとか、こういういろいろの思惑が非常に強くなってくると同時に、政府自体も、こういう自由化のはっきりした計画を持たないことには、これを裏づけしていく産業政策も何も立たないと思う。ごまかして通すというなら別ですけれども、そうは事態は進まないと思うのですが、この点は大臣どうです。
  18. 福田一

    福田国務大臣 今御質問の中にもありましたように、この種の問題については、物事をはっきり割り切っていくことがいいかどうかという点に一つの問題があると思います。大体の考え方からいたしますならば、いかなる品目にいたしましても、要するに、国際競争力をつけて自由化をしていくという方向で国内的には指導をいたし、また施策をいたさねばならないと思っております。しかし、国際的に見てみますと、相手の国からまだ何らの発言も今一応ないときに、こういうふうに計画をしてこういうふうに進めますというようなことを明らかにすることは、日本産業がそれに制約をされるおそれもある。そしてまた、発表した後にそれができないと、違約をしたというようなことも言われるおそれがあります。もちろん、世界の各国がいわゆる八条国に移行する場合において、このような明確な態度を全部示してやったかというと、今事務当局も申し上げた通り、必ずしもそうでございません。そこで、日本といたしましては、もちろん自由化の方向で進めていくということはわれわれとしても明らかにいたして参りたいと思いますけれども、何月に何をやるとか、何月にはどうしますというようなことは、来年の八月とか九月のIMFの総会等においてはある程度は言わないわけにはいかないかもしれぬが、今の時点においてそれを明らかにする必要はないのではないか。ただし、そう申し上げるのは、外に対しての発言、外に対してはそうでありますが、国内的には、いかなる産業についてもこまかく調べておりますから、もうどんどん自由化をしていくという建前で極力競争力をつけるように、あるいは力をつけるように指導もいたし、そしてまた、施策もそういう方向で進めて参りたい、かように考えておるわけでございます。
  19. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 と申しますのは、今の点は、国際的にも影響が多いことですから、そう簡単には言えないと思いますけれども、まだまだ日本では、自由化ということが、何とかがんばれば、泣きつけば何とかなるのじゃないかという空気が実際には国内に相当あるわけですね。これは政府もあるいはそうじゃないか。業者の方から大きな陳情でも来てやると、じきにふらふらして、やるつもりのものを変更する。もちろんこういうことも実情をつかんでその上においてやることは当然でありますけれども、まだそういう点があるのではないか。しかし、どうも、今の国際情勢その他を見ると、そんなことでふらふらしておって、はたしてうまくいくかどうかということが非常に心配になるわけで、私は、やはり、そういう点については、どういう形式をとるかということは非常にむずかしい問題でありますが、政府としては、国内的にはある程度明確なめどを与えて、そして、そのめどに耐えるような産業政策なり何なりをもっと責任を持って立てる、そうして同時に関係業者にもその政府の施策と相対応して早急にそういう体制がとれるような努力をさせるというめどをこの際つけることが必要ではないかという点から、今申し上げたわけです。  もう一点お聞きしたいのは、ウエーバーはとらぬで残存輸入制限方式をとる、つまり、これは、ガットの場から言えば、非合法の輸入制限を二国間の交渉によってまとめていく、大体においてこういうことになろうと思うのです。それではたして、世界各国というか、加盟国が望んでおるようないわゆる自由化率、まあ少なくとも九五%以上ということになりましょうけれども、そういうものがうまくできますか。各国間でいろいろ事情が違ってくる。そういう中で、二国、いわゆる相対的なあれによりましてやることによって、総体としてガットの場で加盟国全体から袋だたきにあうようなことがないような方式がはたしてとれるかどうか、そういう結果がはたして出るかどうかということが疑問になるわけですが、この点については政府としてはどのような見通しをお持ちになっておるのか、具体的に、といっても限度がありましょうけれども、ある程度明らかにできればしていただきたいと思うわけです。
  20. 福田一

    福田国務大臣 お説のような御心配はありがたい次第でありますが、これは予測でございますから、予測と申し上げるよりいたし方がないと思うのでありますが、今までのところでは日本は八八%自由化をした。九〇%と言っておきながら八八%であったというおもな原因は、石油製品が自由化できなかったというところに一番大きな原因があったわけでございます。いずれにいたしましても、日本が非常な努力をしたということは各国も認めておるわけでございます。それから、今御指摘のように、日本がもっと自由化をしなければいかぬじゃないかということは、各国があるいは言うかもしれませんけれども、しかし、そう言っておる各国日本に対してどういう措置をしておるかといいますと、それぞれの国々が差別待遇をいたしております。これは、自由化をしておるけれども、日本に対してはこういうふうにするという差別待遇をしております。それからまた、いわゆる自主規制というものを相当やらせておる国もあります。こちらの方でも自主規制をしておるのでありますが、そういうような自主規制をさしたり差別待遇をしておるのに、日本だけは門戸を開放して何でもどんどん入れろと言うのは、国際的に見ても無理な発言だと私は思っておるのであります。これは、事情を分けて明らかに説明をすれば、各国ともよく理解してくれると思うのであります。しかし、そういうことを申し上げることは、自由化の速度をゆるめるためにやっておるのではありません。自由化というのは、いわゆる貿易の一つの手段としてそういうふうにしていこうということでありますが、貿易というのは、あなたも御承知通り、売手と買手の問題でありますから、向こうの方がこっちの品物をなるべく買わないように制限を加える、そして相手は日本に対しては幾らでも買え、これは、私は、商売ですから、それは困りますよと言える当然の権利があると思うのであります。だから、そういう意味から言って、こういうふうに自主規制をさしたり差別待遇をしておる国に対しましては、二国間でもって交渉をしても、その交渉はけしからぬということは相手としても一言えないと思う。私は、そういう意味から言って、それほど国際的に、日本が今考えておるような方式をとったからといって、またわれわれ自身が自由化をするという気持をもって今対処しておる以上は、そんなに国際的に孤立するということはあり得ないと考えておるわけでございます。
  21. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 そうすると、大臣の見通しとしては、ガットの加盟各国、欧米各国がいろいろ日本に対して差別待遇をしておる、あるいは自主規制をアメリカのごときは大きく要求しておる、だから、二国間の自由化の交渉過程でこういう差別待遇はとり得るという見通しですか。この点はどうなんですか。相当に数はあるようです。ベネルックスが三十八、フランスが百四十七、イタリアが百十八、オーストリアが百七十八、ポルトガルが九百八十三品目のいわゆる差別待遇をやっておる。アメリカが三十四品目ですかの自主規制を日本に求めておる。こういうふうな状態を、いわゆる残存輸入制限方式でやることによって、同時にとっていこう、こういうお考えで、またとり得るというめどがあってこれをやるというわけですか、どうなんですか。
  22. 福田一

    福田国務大臣 私は、そういう制限を順次減らしていく、向こうが減らしていけばこっちも減らしていく、そういう方式でやっていきたいと思っております。とれるかどうかは、向こうがとらなければしょうがない。そのかわり、向こうが自主規制を要求するなら、こっちが自由化をした場合も、あなたの方でも自主規制をして下さいという要求もできると思うし、そういう要求で対抗していく、こういう考え方でございます。それができるかどうかということは、これは商売のことでありますからやってみなければわかりません。しかし、それをやったからといって、国際的に日本が孤立するはずはないのじゃないか。相手がやることをこっちもやってくれと言っているのに、日本だけがけしからぬという、そういう国際世論が起きるはずがない。ですから、その点では孤立することはないと思いますが、考え方としては、順次これをなくして、お互いが何らの制限なしに自由な貿易を進めるようにしていったらいいのではないか、そういう方向で政策を進めて参りたい、かように考えているわけであります。
  23. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 今の、欧米各国がおもですが、これのいわゆる差別待遇なり自主規制の要請なり、こういうものに対して、ガット残存輸入制限方式で交渉することによって日本が何か従来と比べて特に有利な点があるのかどうか。こういう向こうの差別待遇なり自主規制をなくさす上で、今度の八条国なり十一条国移行を承認する、そういう中でやることによって、従来よりは何か日本が有利な地位に立つ、はっきり言えば、向こうの差別待遇なり自主規制の要請なりをこっちがぶち破っていく有利な条件なり理由なり、そういうものができてきたのかどうかということが一点。  もう一点は、あなたは、相手が差別待遇なり自主規制を日本要求するならば、日本もそういう国に対しては差別待遇なり自主規制をやったらいいではないかというようなお考えを述べたと新聞は伝えている。これに対しては相当に反対もあるわけです。その反対というのはどうかというと、日本が自主規制を受けた品目は、差別待遇の方はそうでなくても、多くは、何というか、だっと、売って向こうの市場を撹乱した、つまり前科者の商品についてそういうものが言われている例が多い、ところが、日本がこれから向こうに差別待遇を求めようとするものはそういうものがないから、従って、これを同等に扱ってやっていくということについては、かえって日本はそういう点で不利な立場になりはしないかという心配から来ているようです。  私のお聞きしたいのは、今度の十一条国移行という前提の中でやるそういう二国間の交渉ということが、従来とどこか日本にとって有利な点が出てきているのかどうかという点。もし、この十一条国移行と前提とした交渉で、向こうがなお差別待遇なり自主規制を要求するなら、日本もそれを報復的にやっていくという方式を貫くのかどうか。この二点をはっきりお答え願いたい。
  24. 福田一

    福田国務大臣 今までは日本はまだ国際的にも貿易の関係では一人前ではなかったが、今度八条国に移行することによって初めて一人前になる。今までは未成年だったが、今度は成年になったといえば、やはり相手の日本に対する認識も違ってくるのではないか、こういう意味で、いい素地ができた、こう考えているわけでありまして、成年になったという立場において、向こうの方もまた認めてくれるし、こちらの言い分もよくわかってくれるようになるであろうという意味では、効果があるだろうと考えております。  それから、今向こうが自主規制をしているから、こっちも自主規制を要望してはどうかということは、私は確かに申しておりますし、そういうふうにすべきだと思っております。あなたのお話だと、そういうものは日本に全然ないじゃないかというようなことでありますが、私は必ずしもそうとは思いません。日本の業界を混乱させるものが、貿易の門戸を開き自由化をした場合に全然ないとも思っておりません。場合によって、物によってはあり得ると考えております。しかし、それらのことは今後の問題でございますから、私は、事務当局に、そういうことがあった場合にはこの問題はこういうふうに処理するというふうによく調べておきなさいと言うて、今調査を命じておるという段階でありますけれども、私は何もないとは考えてはおりません。そしてまた、そういうことを言うことによって、何も日本が孤立すべきはずはない。国際世論というものはそんなものじゃないと私は考えておるわけであります。
  25. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 もう一点この品目についてもっとお伺いしますが、つまり、政府の貿易品目といいますか、お話のありました武器とか禁輸品とかそういうものが約四十品目、それから、農産物が約八十四品目、特に農畜産物の自由化についてはその影響も非常に大きい。しかし、同時に、日本がこれから取り組んでいくところは、大体において、欧米各国もさることながら、未開発国が多い。そうすると、そういう方からの農畜産物に対する日本への自由化要求というものは非常に大きい。しかも、ある程度入れなければ、日本の工産物はそういうところに出にくい。こういういろいろな関係があるわけですね。従って、やはり一番処理のむずかしいのは農畜産物だ、大体においてこう思うのです。  そうすると、大体政府で、新聞で言う通りかどうかわかりませんけれども、今世界の情勢から見て、きっちり百品目に整理する必要はないかもしれぬが、少なくともその近くのものを残して、あとの五十品目程度のものは大体自由化しなければならぬということになってくると思うのであります。その場合に、今の政府貿易品目の四十品目、八十四品目、大体両方合わせまして百二十品目くらいでしょうが、これらをどう扱っていくかということは、日本の今後の貿易をどう伸ばしていくかということについての非常に大きなポイントであるし、同時に、日本の国内にも非常に大きな影響があると思うのですが、これらについては、あなたの所管じゃないかもしれぬが、通産省としてはどう考えておるか、この点をお聞かせいただきたい。
  26. 福田一

    福田国務大臣 そういうような仰せの通り品目がございますが、大体、自由化といっても、何も一年で全部やってしまうというわけではございません。二年でも、三年、四年、五年でもかけて、そういう農産物関係のものでも体質が改善され、そうして自由化されるような方向にわれわれとしては施策は努力をしていかなければならぬ。これは私の所管ではありませんけれども、おそらく農林省でもそういうふうに考えておいでになるだろう。一年後にしたら非常な影響があっても、三年なり五年なりたった後にはできるという計画があろうかと思います。私ども具体的な問題は申し上げることはできませんが、国の施策という面から見れば、たとい農産物であろうとも・順次やはり自由化をするように、そのもの自体にいわゆる競争力をつけるような施策を今後強力に推し進めていく、そうして順次自由化をしていく、この方針だけは私は変わらないのじゃないかと考えておるのであります。直ちにやるという意味ではございません。一年後にやるという意味ではありません。そういう方向で持っていかなければいかぬじゃないか、こう申し上げたわけであります。
  27. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 その点については、おかしい話ですが、通産省と農林省とはかなり見解にずれが出てくるのだろうと思う。農林省の方から言えば、やはり国内の農畜産業の保護ということが中心になる。通産省の方から言えば、そういう未開発国に対して二次工業品なり何なりをどんどん出していくということが中心になる。その見返りには向こうの一次産品を入れるということをしなければ、こっちのものが出せない、こういう関係になります。非常にむずかしいところだと思うのですが、これらの点については、われわれが新聞で見るところは、どうもそういう点のウマが政府全体として合っていないのではないか。通産省通産省で、出す方ばかりを考えてやっている。農林省は、来られては困るから守る方ばかりをやっている。こういう点で、統一した見解だけではなくて、これは、いずれにしても、はっきりした貿易上の方針と、それを裏づけるやはりはっきりした産業政策なり農畜産政策がなければできない仕事であります。そういう点でのずれが非常に目立つわけですが、この点は特に一つ御注意をいただきたいと思うのであります。  その次に、時間がありませんから、いろいろお聞きしたいのですが、一つ大きな問題としてお聞きしておきたいのは、政府は、今ガットが提唱しております例の五ヵ年間五〇%の一律関税引き下げの交渉に大体参加する、こういうお考えのようですが、これに対する具体的なあれはどうなっておるのですか。お聞きをいたしたいと思う。
  28. 福田一

    福田国務大臣 仰せの通り、これに参加することにきめております。しかし、参加した場合において、そこでどういう主張をするか、どういうふうにまとまっていくかということは、今後の問題だと考えているわけであります。
  29. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 これは自由化が始まって以来の日本の関税政策の方向とは全く相反した非常に画期的なことになろうかと思うのであります。従来、政府自由化に即応する関税政策というのは、どっちかと言えば保護関税的な性格が非常に多いわけです。下げたものも品目の上ではありますけれども、これはほとんど実際に影響のないもので、上げたものの方が大体において多いわけです。ですから、全体の関税の水準というものは非常に上がっているわけです。つまり、為替の面で制約ができなくなったから、関税の面で上げていこう、今まではこういうことです。ところが、今度はこれが世界の大勢からそうはいかなくなって、五カ年間一〇%ずつの引き下げをやっていこう、こういう提案です。そして、一年に一〇%ずつの全般的な一括引き下げをやっていこう、こういうわけです。その中で特に、はっきりしたことはわかりませんけれども、各国の特殊事情を考えて一定割当、——これは輸入総額の一〇%程度のようです。これについては引き下げの除外品目というものをつくって、これをリザーブ・リストに載せて、引き下げの時期をだんだん延ばしていく、特に未開発国等については多くのいろいろの例外を認めていこうというふうなのが今の構想のようですが、これを実際におやりになるということになると、自由化を進めてこられた過程でとられた関税政策とは全くの逆の方向へ行くわけです。従って、もしこれをやるとするならば、これに対して、政府としては、いわゆる関税を上げることによって国内産業自由化を保護していこうというのが、今度は逆の方向に行くのですから、つまり、切りかえ時に対します何らか具体的な関税にかわる保護政策というものが当然打たれなければならぬ。ほかの国では多少こういうこともやっているわけです。と同時に、一時的な保護政策ではだめであって、やはり、こういう関税を下げていっても十分に対抗のできるような産業政策といいますか、そういうものの裏づけがここで強力になされなければならぬと考えるわけです。特に重化学工業ないしは中小企業ないしは特に農畜産業、この三つについては、しっかりした政策がなければたえられないと思う。つまり、今までの為替の面での保護がなくなって、今度は関税の面で保護しようといったら、これもだめだということになるわけですから、よほどこれに対する具体的な政府としての裏づけ施策がなければやっていけないのではないか。もちろん、今のあなたの方で出しているいろいろの、独占強化法案にしましても、あるいは中小企業基本法案にしましても、あるいは農業基本法にしても、抽象的にはそういうものに対処する一つの政策だということは言えるでしょう。言えるでしょうが、あの程度のものでこういう現実の年々一〇%の引き下げに対処していけるだけの全般的ものがあるのかというと、私はこれではまだ不十分なように思うわけです。産業別にもっときめのこまかい、応急対策と恒久の産業政策というものの裏づけがなければできないと私は思いますが、そういうことの裏づけがどうもあまり見えない中で、世界の大勢がこうだからこれでいこう、できればその中でリザーブ・リストの方へよけい日本の品物を載せてもらおうという程度のお考えじゃないかと思うのです。今の世界の大勢から見て、そんなこそくな手段でこの問題に対処できるかどうかというと、私はどうも疑問だと思う。こういう点について政府としてはどのようにお考えになり、どのように事実上の検討を進めておられるのか。これは非常に複雑でしかも重要な問題ですが、一つお聞かせをいただきたいと思う。
  30. 福田一

    福田国務大臣 お説の通り、この問題は一つの大きな重要な問題であります。ただ、しかし、どうも私たち、新聞関係も含めてですが、何か問題が起きると、それがあすからでも実現されるように思ってみたり何かいたしまして、いたずらに不安な感じだけでものを見ていく必要は、私はないと思っております。やはり政策というものは、全体の動きをにらみながら、大体の推移をよく見守って、どうなっていくかということを考えてみなければならぬと思います。今度の場合におきまして、関税を五〇%五年間に引き下げるというものの考え方は、できるだけ世界の貿易を進めていく、その場合には関税障壁というものをなくしてやるのがいいのだという原則からまず出発をいたしておるのでありますから、われわれはその原則に反対をする必要は毛頭ないと思うのであります。しかしながら、それぞれの国にはそれぞれの実情があるわけであります。私は、これを主張されておるたとえばアメリカにしてもカナダにしても、それぞれの国の事情があると思う。原則は原則としまして、これに自由主義国家群のたくさんの国が集まって今から相談をしようというので、何も閣僚会議が始まったからそのときからスタートを切るというわけではありません。これには、一年の余裕を見るか、二年の余裕を見るか、いつから始めるかという問題もあるでしょう。それから、五〇%引き下げる場合に、リザーブ・リストに一〇%というものは一応載る、それは認めるというようなことを言うておることも、なかなか画一的にはできないということを最初から提唱者も考えておる。だからこそリザーブ・リストというものをつくるのである。しかも、五〇%の引き下げといっても、場合によっては、率を五年間に引き下げるやり方は、品物によっては、あるいは最初は五%引き下げておいて、おしまいの方へいって、最後の、五年目のときに五%というやり方をしても、平均一〇%にいくようになるでしょう。やり方はいろいろあると思います。しかし、効果をどういうふうにしてあげていくかという問題でありますから、われわれとしては全体としてそれに賛成をして協力するけれども、そこのやり方というものはこれからきめていくわけであります。そして、そのきめる段階において、日本の実情をよく見ながらやってい「きますが、それを見ながら・特殊のそれぞれの産業について、それならばこれはこうしなければいかぬ、これはああしなければいかぬという政策が、ここでまた国内的に出てくるわけです。国際的にまだそういうような具体的な案がないうちに、これをこうする、あれをああするというような策はなかなか立てにくいと私は思う。しかし、現則として、関税が全部なくなってもりっぱに競争ができるように産業体制を持っていくというのは、私はこれは原則であろうと思っております。そういうふうに政治の方向の施策を持っていくべきだと思う。そういう意味では、われわれは今後も一般的に見て努力をいたして参りますけれども、この関税会議とにらみ合わした政策というものは、関税会議の動向をよくにらみながら国内の政策をやっていって、それで何もおくれることはないんじゃないか。私たちとして、今きまらないうちから、こうするああするということは、ちょっと申し上げにくい面も出てくるかと思っておるわけであります。
  31. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 その点については、まだきまらないといえばきまらないので、英国のEEC参加が流れたというような関係からだいぶ混乱をしておるようですから、まだ具体的な提案はないにしても、しかし、いずれ、ネゴシエーションといいますか、そういう会議が持たれることは必至の情勢になっている。従って、日本側として、これに対して、腹をきめたというか、腰を据えた対策の検討ということが今一番必要なときではなかろうか。新聞等で見ると、できるだけリザーブ・リストをよけい取ってやろうというようなことをお考えになっておるようだが、そういう態度ではなかなかこれからのあれに対して私はうまく適応ができないんじゃないかというふうに考えますので、この点も一つ十分御研究をいただきたい。  さらに、これに連関して問題になるのは、最近、政府でおつくりになっている関税制度の中に、いろいろ保護関税制度があるわけですね。たとえば、緊急関税制度だとか、関税の割当制度であるとか、あるいは混合関税制度であるとか、あるいは季節関税制度、いろいろこういうものがある。これは通産省の御所管じゃないでしょうけれども、こういうものが、今申しましたような一括引き下げという中で、今度これが世界的に存続ができるのかどうか、あるいは、できるとすれば、日本としてはこれをどう評価して、どういうふうにこれを長い目で見て漸進的に始末していくかということをもう考える時期ではないかと思うのですが、この点はどうでしょう。
  32. 松村敬一

    松村(敬)政府委員 ただいまの、関税一括引き下げが世界的に行なわれます場合に、緊急関税制度あるいは関税割当制度等が維持できるのかどうかという御質問でございますが、これは、各国におきましても、緊急の場合のための緊急関税あるいは特殊な産業を一時的に保護するというような意味における関税割当制度はございますので、今度の一括引き下げをいたしましても、それと矛盾をして廃止する必要があることにはならないと考えておるわけでございます。ただ、御指摘のように、自由化をしながら関税引き下げをいたしますということは、非常にむずかしい問題でございますので、関税引き下げの影響等をよく考えます場合に、今の緊急関税あるいは関税割当制度とどういうふうに結びつけて一括引き下げに対処できるか、そういうことを品目別に十分研究をいたす必要があると思う次第であります。
  33. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 時間がありませんから、通産大臣にもう一点だけお伺いいたしますが、今度は、この貿易の自由化が進む中で、日米通商航海条約の関係や、あるいはOECDの関係その他から、資本取引の自由化ということが当然問題になってくる。いろいろ問題はありますけれども、そのうちで日本として一番考えなければならぬのは、長期資本といいますか、これの流入、特に経営参加を目的とする株式の外国資本による取得の問題、それから合弁会社の問題、それから向こうの会社の支店・出張所の問題、こういう問題が非常に大きな問題になろうかと思うのであります。これは、欧米各国等も、相当こういうことについては、今までは資本が足りないからというのでどんどんこれを許しておりましたけれども、最近ではこれらについて非常にいろいろ問題が出て、むずかしい局面を起こしておるようであります。日本では、間接の長期資本についてはかなり今まで積極的にやってきましたけれども、問題は、これから直接の長期資本といいますか、これの流入にどう対処するかということが非常に問題だと思うのであります。これはおそらく今の情勢から言えば、非常に大きな勢いでアメリカあたりのものが入ってくるのではないかというようなことも考えられるわけであります。特に果実としての利潤・利子等の送金が自由化されるということになれば、私は相当よけい入ってくるのじゃないかと思う。EECあたりの実際の経験では、一昨年、六一年ですか、入ってきた長期資本の総額が十五億ドルくらいで、わが国も果実の送金が八億七千万ドルにもなっておるという報告もある。そういったことから、国内のいろいろな産業というものが非常に圧迫をされる。形は各国の輸出であるけれども、内容は、要するに、アメリカの製品の輸出であるというような場合が非常によけいになって、問題になっておるようであります。これに対して、日本としては、直接長期資本といいますか、これの流入にどう対処するかということが、私は非常に大きな問題であると思うのです。これに対してはどのようにお考えになっておるか、お聞かせいただきたいと思う。
  34. 福田一

    福田国務大臣 その問題も、われわれとしては非常に重要な問題の一つとして考えておるわけでありますが、しかし、私は、一般論から言って、欧米の場合と、あるいはカナダの場合と、日本の場合はいささか違うと思います。どういうふうに違うかというと、欧州とアメリカ、欧州とカナダという場合は、これは非常に密接な関係がありまして、すでに従来でも資本は米国資本がずいぶん出ていっております。そういうような相当量のものが出ておりますが、日本の場合において考えてみますと、確かにアメリカの資本が入ってきてもおりますけれども、しかし、概して今まではそれほど弊害のないものが入ってきている。まあチェックしておりますから、弊害のないものを入れておったわけです。アメリカの資本が入ってきたというだけで毛ぎらいする必要はない。イギリスの資本が入ってきたというだけで毛ぎらいする必要はない。日本の資本もどんどん出る、向こうも来なさい、こっちも出るということになって、ほんとうは一番バランスがとれるわけであります。しかし、現在の日本の立場から見てみますと、まだ資本も足りませんから、いい資本ならばむしろ入ってきてもらった方がいいわけであります。私は、そういう意味では決して毛ぎらいをする必要はないと考えております。しかし、今あなたの御指摘のあったような、いわゆる日本産業に特に影響を与えるようなものが無制限に入ることを認めるかということになると、これはそういうわけには参りません。これは今までもチェックしておりましたが、今後も一つこういう問題については十分研究をしなければならない。今度いわゆる八条国移行に伴いまして、経常収支の面から輸入制限というものができないのだ、いわゆる自由化にそれを要請されるということになって参りますと、資本の果実等の送金も自由になるということにもなりますから、いろいろここにわれわれとして研究しなければならない問題があると思います。従いまして、今後私たちとしては、ここしばらくの間日本経済の動き等も見、推移を見ながら研究して参りまして、大体暮れくらいまでには何らかの具体策を考えてみることになるか、こう思っておるわけであります。今まだわれわれとしてこうするというような案を持っておるわけではございません。大体そういう趣旨でこの問題を見ていきたい。あまり神経質にならない、といって日本産業影響のあるものをぼんやり見ているというようなことのないようにという考え方でやって参りたい、こう考えておるわけであります。
  35. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 今の点は非常に重要な問題ですから、今すぐ今の段階で私は具体的な結論を出してどうというのは、今の政府のかまえなり、全体の中ではちょっと無理じゃないかというふうにも思いますが、これは非常に重要な問題で、資本が足りないから外国の資本をどんどん入れたらいいじゃないかという考え方が片方にありますけれども、これは性質が違うわけです。間接の長期資本とは、やはり日本の国民経済なり産業に与える性質が非常に違いますので、これは特に慎重に願いたい。今までの大臣のスーパ一マーケット等に対するいろいろなお答えを見ておりますと、ケース・バイ・ケースでよく見て今のところは対処する、こういうことですが、そういうことではいけないんじゃないか、もっと早くはっきりした方向というものを出していくことがぜひ必要だと思いますので、御検討いただきたいと思います。  時間がありませんから、企画庁に、私はいろいろなところを聞きたいのですが、二問だけ聞きます。  企画庁が所管しておるようですが、OECD、これの参加を総理大臣が非常に言われて、企画庁の長官がこれをやって、ことしの暮れかあるいは来年あたりにはこれに正式参加をする、こういうことのようですが、このOECDに日本が参加することによって出てくる日本経済にとってのプラス・マイナスはどういうものですか。こういう点を明確に一つお示しいただきたいと思う。
  36. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 OECDは、実は経済企画庁の所管というわけではないのでございまして、たまたま宮澤企画庁長官が閣僚会議に出られましたので、そのようにおとりになったかと思いますが、実際は、窓口は外務省が中心になりましていろいろ交渉をいたしております。従いまして、詳細のことにつきましては、私から申し上げるよりは、外務省から申し上げる方が筋ではないかと思います。しかし、一応、私今承知しております範囲で申し上げたいと思います。  ただいま、加入についての手続でございますが、各国日本加盟に対する態度を、いろいろな角度で打診中でございます。おそらく比較的近い機会に最終的な結論が出ると思います。多分、その際には、何らかの手続によって日本が加盟の希望を伝える、あるいは正式の手続をとるということが行なわれることになろうかと思います。そうして、秋に閣僚理事会がございますので、そのときまでに順調に話が進めば、そのときに加盟決定という可能性があるのではないかと予想されます。  その際のOECD加盟の日本にとっての利害得失でございますが、OECDはもともとヨーロッパの各国一つ共同体として出てきたわけでございますけれども、最近では、アメリカ、カナダも加盟しておりまして、いわば自由主義国家群の中の大きなものがそれに事実上参加をして参っておるわけでございます。そのOECDの活動の中で、ただいままで一番活発に動いておりますのは、低開発国に対する経済援助、いわゆるDACでございまして、日本は、そのOECDの下部機構でありますDACにはすでに加盟をいたしておるわけでございます。そして、国際的な観点から、日本経済の許す範囲で、従来も後進国援助につきまして国際的な協力を続けて参っておるわけでございます。今後もこの重要性はますますふえるとも減ることはないと思いますので、日本としてはそのDACの場における協力をますます強めていくことになろうかと思います。その立場だけから見ましても、DACでいろいろ国際的な協力をしております以上は、上部機構でありますOECDの正式のメンバーになるということは、いろいろな意味から必要でございまして、発言力をそれだけ強める結果を期待しておるわけでございます。  それから、なお、OECDの活動分野は、そのDACのほかにも、経済政策委員会とか貿易委員会その他、おそらく十数の小委員会がございまして、いずれも国際的な協力を経済面あるいは技術等の面でいたしておるのでございます。日本としても、ようやく国際的に一人前になり、いずれは八条国に移行して国際的にも一本立ちのつき合いができる状態になりつつございますので、OECDにもこの際加盟をすることが日本の国際的地位を高める。それから、さらにまた、非常に現実的になりますが、貿易の面でも、とかく日本は従来ヨーロッパ各国からは警戒の目をもって見られておるわけでありますが、OECDに加盟することによりまして、日本の立場をそれらの国々に従来よりももっとよく徹底して認識してもらうことができるということも十分期待できる、このように考える次第でございます。  最初に申し上げましたように、企画庁の直接の所管でございませんので、大へんに抽象的な答弁で恐縮でございますけれども、一応御説明を終わります。
  37. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 午後に企画庁の長官が出られるそうですから私は、残余の質問を保留して、これで一応打ち切ります。
  38. 中村三之丞

    中村主査 この際川俣清音君の保留質問を許します。川俣清音君。
  39. 川俣清音

    川俣分科員 前回に引き続きまして、発電力の問題についてもう一度確かめておきたいと思います。  電力料金が引き上げられますると、産業影響するところ非常に大きいわけで、また、国民生活の上にも大きな打撃を与え、物価の上昇を招く結果になるのでありますが、そこで、最近は水力電気よりも火力電気にかなり移行しておるようですが、水力電気のコストの中で、重要な点は何かというと、先ほど申し上げましたように、膨大な設備をかけた貯水能力が堆石、堆砂、堆土によって効率が下がるためにコスト高になるということが明らかでございます。私、時間がありませんからるる述べませんが、現状におきましても、これは建設省の資料でございますが、山形県の梵字川の梵字堤防のようなものは九一%の堆砂率がある。効率が〇・九%です。特に発電所に非常に影響を与えておる黒部川なども、黒部ダムの有効貯水量が非常に変化しております。ことに、仙人谷のごときは、一九四五年の夏ごろまで非常に低下いたしまして、このときに豪雨があったので、土砂吐きから土砂を吐いたためにまた有効度が上がったということになっておりますが、土砂吐きから吐きますると非常に被害が大きくなってくるわけであります。電力会社から言えば、電力事業団から言いまするならば、土砂吐きによって効率を高めたいということもあるでありましょうけれども、その前に、やはり土砂の堆積のないような防備が必要であろうと思うのです。御承知のように、一番日本でも有数な水源の安定いたしておりまする長野県の三浦ダムですが、これは木曾川系統ですけれども、御承知のように、日本で一番堆砂率が少ないのです。〇・七ですね。もう大体二〇%、三〇%、多いところになると、先ほど申し上げましたように、岐阜県木曾川水系に属する大井ダムのようなところでは、やはり七二%程度の堆砂があるわけです。その上流の三浦ダム、三浦湖と申しますか、これは一番安定したダムなんですが、その上が結局林相がいいということになっている。林相がいい、土砂が流出しない、このために堆積が少ない、こういう水源地の林相を完備させることが必要なんだと思いますが、これは農林省の所管になるわけですけれども、通産省といたしましても、やはりあれだけの設備をかけた、固定資産の非常にかかるダムを建設する場合には、やはり上流の水源地の安定を計画しなければならぬ。認可される場合でも、こういう安定性を見きわめた上で許可を与えないというと、せっかく許可はしたけれども所定の発電力が得られないという結果になってくるのです。そういうところから火力発電にとかわってくるのでしょうが、せっかくあるところの水力を活用することも必要であろうと思う。将来の日本の水を有効に使うという意味からも、重油等による火力発電などよりも、つくられたダムが有効に働くということを心がけていかなければ、コスト高になってしまう。コストの安いはずの水力発電コスト高になるということは、この土砂の堆積によることが一番大きい原因だと思うのですが、大臣はこの点についてどうお考えになりますか。
  40. 福田一

    福田国務大臣 御説の通り、ダムが堆石によってあるいは堆砂によってその効果をなくしますと、最初予定した通り効率があがりませんから、これを防ぐことは非常に大事でございます。従いまして、保安林とかあるいは砂防工事というようなものは十分考えなければいけない。また、電力関係から言いましても、そういう意味で、関係方面に、特に農林省その他に協力を求めるべき筋合いのものだと考えております。
  41. 川俣清音

    川俣分科員 これはやはり計画が悪いのだと思うのです。ダムをつくるのと相待って上流の安定策を同時に講じていかなければならぬ。ダムはつくる、上流の方は農林省がやれでは、それはもう効率が落ちることはその通りなんです。やはり、ダムを計画するとなれば、これは七年計画とかあるいは五年計画、十年計画でやるでしょうが、それと相待って、あるいはそれよりも進んで先に上流の安定策を講じて、せっかくつくられたダムの効率が低下しないように施策を講じて、それから許可するということにならなければ、あせってただつくっただけではだめだと言うのです。それがすぐコストになってくるというと、産業界にあるいは国民生活に及ぼす影響が高いわけです。そのコストの中にはダムの効率が入るわけです。御承知のように、電力料金の査定にあたってはダムの効率が一番大きなウエートになっている。一般の産業界あるいは国民から言って、土砂の堆積があるから料金が上がるのだというようなことは、とても容認できるものじゃないのです。打つべきことをやらないでおって、その被害を需用者が負わなければならないというようなことは、これは通産省の行政がよくない。ほんとうに必要なコストでないのです。要らざるコストを需用者が背負わなければならぬということは、これは通産省にお返ししなければならない問題だと思うのです。いつでも電力料金の査定の場合に、計画の発電量などというものを基礎にして電力料金をきめておりますか、きめていないでしょう。現に発電された発電力を基本にしている。計画じゃない。計画のときには、こういう計画だ、コストは幾らになる、こうやっておりますが、そのコストはいつでも使われない。そういう意味で、料金の査定にあたりましても、やはり常時電力会社等におきましても、上流状態というものを、自分の責任もあるという考え方に立たなければならない。そうしてすみやかに、あるいはそれ以前に山相、林相の整備あるいは砂防工事等を同時に進めるということをやっていかなければならない。それはやはり通産省責任だと思う。どうですか。
  42. 福田一

    福田国務大臣 電気料金の認定にあたりましては、大体お説の通りのことでいたしておりますが、電気料金が当初予定したような効率の上がった、すなわち低廉な電気料金でなくなるということは、やはり工業には大きな影響がございます。従いまして、今後ダム等を建設するにあたっても、また現在建設されておるダムにつきましても、お説のような施設を進めることについて努力をいたして参りたいと考える次第であります。
  43. 川俣清音

    川俣分科員 電力については、もう一問で終わりますが、一体堆砂、堆石、堆土のために効率が下がった責任通産省が負うか、政府が負うか、あるいは電力会社が負うか、これを需要者にかぶせるというコスト算定はすべきじゃないと思うのです。国民自体に責任はない。産業界にもない。電力会社であるか、あるいは行政をしておられまする政府であるか、当然どこかが責任を負わなければならない。これをどうお感じになりますか。だれか、どこかが責任を明らかにしないと、この問題は解決しないのです。これは私は毎年政府に質問しているのですけれども、安易に電力料金の値上げで問題を処理しよう、とするわけです。私、かつて同じく木曾川の上流でありますが、濁川ダムというところに行きましたが、これは一滴の水もない。むしろダムの堰堤よりも土砂の方が幾らか高いのです。水がたまるどころじゃない。そういう状態で、もう発電所も撤回したようです。これは関西電力です。あれだけ金をかけた発電装置を撤去しなければならないというような事態が起きておる。それがみんなコストに入っておる。発電所をつくって、発電能力がなくなったものまでコストに入らなければならないという、これはどこかでこの問題を解決しないと、安易に公共料金の安定をはかるのだといいましても、こういう問題が起きておりますと、どこかで解決してやらないというと、みな消費者にかぶってこなければならないと思うのです。どこかで一つ責任を果たしてほしいと思う。
  44. 福田一

    福田国務大臣 そういうことは好ましいことではないのでありますが、しかし、ダムを建設する場合にあたりましては、このダムは大体何年間どれくらいの水を湛水できるかということを査定をいたしまして、そしてその査定に基づいて大体認可をしておると思うのであります。その場合に、堆積量が予定よりは早くなったという場合において効率が落ちてくる。すなわち、電気料金に影響を与えるということになると思います。ところが、堆積量が大きくなる原因は、いろいろあると思うのでありますが、たとえば暴風雨、災害等がございますと、上流の土砂がうんと出てきて、そして堆積する場合がある。これは自然的な原因によるものもございますから、これをどこで責任を持っていくというのもなかなかむずかしかろうと思うのであります。しかし一応そういうような災害がないという仮定であれば、大体予定のごとく進めなければならない。それだけダムの生命を延ばしていかなければならないわけです。そのときに上流の砂防堰堤を少し怠っておる、あるいはまた林相をよくすることを怠っておったということになりますと、これはある程度国としての問題もあるかもしれぬし、場合によっては、通産省としてもそういうことをよく言わなかったというような問題も起きるかもしれません。しかし、その認定は、私はなかなかむずかしい問題に相なろうかと思うのであります。そこで、そういうことを消費者に責任をかけて、電力料金でカバーしちやいかぬとおっしゃることはよくわかるのでありますが、われわれとしては、十分注意しまして、なるべくダムに堆積がないように、むしろ、予定よりは堆積が少なかったという場合、これは電力料金にいい結果を及ぼしておるわけなんでありますから、そういうふうに持っていけるように努力をさして行きたいと思うのでありまして、それはやはり具体的な問題で、ここはこういうことをすべきである、当然なすべかりしことをなさざることがあったということでございませんと、なかなかそこは具体的に結論を出しにくいと思う。一般論で申しますと、今私が申し上げたようなことに相なろうかと思っておるわけでございます。
  45. 川俣清音

    川俣分科員 時間がないので——私は時間があれば、資料がございますから、一々あげて聞きますが、今日本全国で計画通り発電力確保されておるのは、二、三よりほかないのです。これが六〇%以上だと、大臣答弁通りでいいのですが、あるいは七〇%以上だったならば、これは例外だと言えるかもしれない。例外の方が九十何%ということであるならば、これは例外じゃないのです。認められないのです。従って、一つ一つのことを議論しておると時間がかかりますが、私がここで言いたいのは、通産省は安易に料金値上げ等によって今までこれをカバーして参りましたものですから、電力会社の反省も足りないし、政府の反省も足りなかったと思うのです。このように電力料金はもう上げることができないのだということになってきますと、何らかの方法を講じてやらなければならないということになるだろう。そういう積極的な方策が生まれてくると思う。安易に料金の値上げによってカバーしていくならば、いつまでもこの問題は解決しないのじゃないか、こういう意味大臣にあえて質問をしておるのです。これは従来もなかなかやり切れなかった問題ですから、あなたに期待するところ非常に大きいのですよ。それで質問しておるわけなんです。  次に非鉄金属の問題で、日本産業のうちで早くから民間で開発されたものに銅山がございます。これによって日本の財閥が生まれましたり、日本産業界の発展に大きな寄与をしたわけですが、今では石炭に次ぐ斜陽族のように思われておりますことは、まことに残念だと思うのでございます。   〔主査退席、仮谷主査代理着席〕  そこで政府が積極的な開発のために探鉱融資事業団をつくられて、これに大いに助力をしようという方針を立てられたのであります。これでは不十分でないかということが一つあるのですが、その前に、こういう基幹産業と言いますか、第一次産業では、金利が相当大きな影響を与えるわけです。工業その他の製造工業と違いまして、基幹産業では、基幹産業であるほど金利が非常な大きなウエートを占めるわけなんです。そこでどれくらいな融資の金利をお考えになっておるか、この点一つ明らかにしてほしい。
  46. 川出千速

    ○川出政府委員 探鉱融資事業団の融資規模は、出資が二億でございまして、資金運用部からの借り入れが十三億、合計十五億円の融資規模になっております。資金運用部からの借り入れば六分五厘のコストがかかることになっております。出資が二億でございますので、現在金利について相談中でございますが、大体七分五厘見当を考えておるわけであります。
  47. 川俣清音

    川俣分科員 七分五厘というのは、貸付金利が七分五厘ですか。最終の、いわゆる鉱山に貸し付ける金利が七分五厘ということでしょうね。
  48. 川出千速

    ○川出政府委員 その通りでございまして、鉱山が借りる金利が七分五厘見当ということでございます。
  49. 川俣清音

    川俣分科員 通産大臣、加工業であるとか製造工業というものは、何かの形で金利を生むようなことが可能なんですね。製造過程あるいは生産過程において、どこかの場所でそれだけの金利を生むようなコストにできるわけです。ところが、単純な鉱山ですから、どこにその七分五厘のコストをかけるかといっても、全部すぐそのままでかかってくるということになって、せっかくの構想がなかなかうまくいかないのじゃないかという不安を私ども持つのです。もちろん、その事業をやっておる人は、なお持つだろうと思うのです。やはり基幹産業についてはもう少し低利にしなければ、せっかくの意味をなさないのではないか、こう思うのです。大臣、どうですか。
  50. 福田一

    福田国務大臣 金利は確かにこの生産コストの大きな要素を占めて一おります。特に、今御指摘になりましたように、鉱物資源のようなものは、その金利をほかに転嫁する工夫が非常にむずかしいことはお説の通りだと思うのであります。従って、これはできるだけ低金利のものを融資してやるのが望ましいことであるということは御指摘通りと思っておるのであります。しかし、この金利政策というものは、これは御承知のようにいろいろな問題に影響もございますし、もちろん、たとえば六分五厘くらいまで下げたらどうかというくらいであれば、これはもう可能な範囲と認めますけれども、それ以上の問題になりますと、これはまた大きな全般としての問題も出て参ります。こういうことからいえば、まだいささか高いではないかという御趣旨はよくわかるのでございまして、   〔仮谷主査代理退席、主査着席〕 将来はなるべく低金利のように、一つもう一そう金利を下げるように努力いたしたい、かように考えておるわけであります。今回は、御承知のように初めてこういう制度をつくりまして、一つ十分効果を上げ、また、あるいは実施をした上でどういう結果が出てくるかというようなこともよく検討をいたしました上で、今後の方策として対処して参りたい、かように考えておるわけでございます。
  51. 川俣清音

    川俣分科員 普通の工業設備でありますと、でき上がりますと、すぐ償却に入り得られるのです。鉱山というのは、御承知通り、探鉱が進めば進むほど、毎年固定資産がふえていく、年々ふえていく、年々改修していく、年々新築していくというような格好になっていく。それだけに資本の回転率が非常に悪いために、金利というものが非常に重く感じられるのであろうと思われます。少なくとも今の大臣のお話のような六分五厘まで引き下げていかなければ、この探鉱事業団の活用ができないのではないか、せっかくの意図が十分達成されないのではないかというふうに思うのであります。これは結局、貿易の自由化に伴って探鉱の成績を上げてコスト・ダウンをしようということがねらいなんだと思います。対抗すべき相手は金利と対抗する。こちらの金利が高ければ競争すること自体が無理なんですね。そういう一つの問題がある。それがどこかで消化できないのが鉱山の本質であることは局長は十分おわかりだ。これを知らなければ局長は勤まらないわけだ。私が時間をかけて説明する要はないのです。いかにして金利を下げていくか。下げていかなければ探鉱事業団をつくった意味がないし、政府出資の二億の価値も生まれてこないし、あるいは資金運用部資金の運用も生まれてこないと思うのです。そういう意味一つ一段の工夫を願いたいと思います。  もう一つ進んで、私、かつて佐藤榮作通産大臣のときに話したことがあります。むしろ日本の鉱業でいえば、おもにこれは銅でしょうが、電気銅の価格が世界市場からいって不安定なところに鉱山経営の困難性が生まれてくるわけです。かつて二十五万のところまで下がったこともありましょうが、今ちょっと古いかもしれませんが、建値が二十八万八千くらいですか、これが三十万とかいうことになると、日本の小鉱山も非常に活況を呈してくるだろうと思います。活況を呈して参りますると、コストをFげるという工夫もまたおのずから生まれてくると思うのです。そういう意味で、できた製品を農産物価格安定法のように、買い取りの事業団、事業団を幾つもつくることはどうかと思いますが、そのことは別として、買い取りの事業団ができること、並びに輸入されて参りまする電気銅を買い入れる事業団が外国品を買い入れる、あるいは国内品を賢い入れて、プールして市場に出すという操作をすべきではないかと思うのです。そうすると、関税の定率主義で割合に固定化する関税政策をとることよりも、世界の市場ににらみ合った買い入れができまするし、また一定価格によって買い入れるということで、国内の常時安定した価格が生まれてくるということによって、非常に不安定な鉱山を一定の目標で経営をするという安定策も生まれてくるのではないかと思うのです。こういう基幹産業は、価格が安定することが第一の条件だと思うのです。そういう意味で、探鉱に補助をする、新しく探鉱していくことに補助を与えることも一つ方法だけれども、むしろそれよりも、一定の価格を支持して、一定の価格で買い上げてやるから、自力で採算の合うような計画を立てろという方が実情に合うのではないかと思うのです。この点についてどうお考えですか。
  52. 川出千速

    ○川出政府委員 銅の問題につきまして、支持価格制度あるいは需給安定のために特別の制度を設けたらどうかという御意見は前からございました。実は今度の探鉱融資事業団のもとになりました答申がございましたが、鉱業審議会でもその問題を議論をいたしました。価格安定あるいは支持価格制度というものについて、今の賢い取り機関も中に入れまして討議をしたわけでございますが、そのときの結論といたしましては、どうも相当の統制になる、流通機構を含めまして強度の統制になるという意見が委員の間に強うございまして、それはもう少し慎重に考えなければいけないということで見送られた経緯がございます。それで、需要業界と地金を生産する化産者と協力体制ということが基本ではないか。これはなかなかむずかしい問題でございまして、そういうことによって実質上価格の安定をはかることを研究したらどうかという御意見もありまして、現在その方向で研究している段階でございます。
  53. 川俣清音

    川俣分科員 将来銅の値段が下がるということを見越して、電線の製造業者あるいはそれを材料としての製造工業家などは、できるだけ下がる方がいいという期待を持っていることは事実だと思います。しかし、日本の大きな電線メーカーもありまするけれども、それを材料にして加工していく製造業者が非常に多いわけであります。これらが常に破産をいたしましたり、あるいは工場がつぶれたりするようなことは、非常に原料の価格が不安定だからだと思うんです。そこに一気に投機的にもうけて、あるいは投機的な輸出をするというようなことになって、市場を撹乱するような非難を国際的にも受けることになると思う。やはり安定した原料で、価格が安定した材料で輸出を講じていく、あるいは国内産業を発展させていくことが考えられなければならぬ。ある程度、時には安いことだけをねらっていくことが、全体の上に必ずしも好ましくないのではないかと思うのです。もしもこれが国際市場に価格が支配されるとなったならば、電線を使うところのメーカーが浮き沈みして、非常に混乱を受けるであろうと思う。加工ですから、ある糧度の埋め合わせばできないことはないですけれども、非常に原料の価格が不安定だということによって、電線業者であれ、あるいはこれを利用する業者が非常な不安定になることは明らかなことです。従って、ストックがあった場合には、製造によってもうけるのではなくて、価格の変動で、投機でもうけようとするような傾向が出て参りますなら、産業界のために決して私は好ましい状態ではないと思うのです。従って、どこにそういう議論があったのか存じませんけれども、この前の佐藤通産大臣のときにそういうことがあったのです。政治的に日本の将来の産業をどこに持っていくかという方針がきまらなければ—— 方向ですよ、価格でなくて、方向をきめることが必要だと思うんです。これが必ずしも統制だとかなんとかいうことはないと思う。これは中小企業者のためにも特に私はそうあるべきだと思う。物価を安定させることが政府責任だと私は思う。価格が高くなったら必ず文句が出てくる。従って、ある程度のところに安定させるという任務を鉱山局長が持たれて、そうして業界並びに需要者側と折衝されることが、今の局長の立場じゃないかと私は思う。どうでしょうか。
  54. 川出千速

    ○川出政府委員 ただいまの御趣旨の通りに、探鉱して参ります場合にも、あるいは設備近代化をして鉱山の体質改善をして参ります場合にも、需給の安定、あるいは価格の安定が先決であろうかと思います。価格がきわめて不安定であり、需給がまた不安定であるとすれば、安心して体質の改善もしていけないということは事実だろうと思います。そのための方策としては、買い取り機関的な方法があるかと思いますが、そのほかにもいろいろな対策があるかと存じます。たとえば関税制度の弾力的な運用ということもその一つでありましょう。需要者と鉱山業界、これは銅の場合には特に沿革が古うございまして、話し合いの余地が十分にあるわけでありまして、必要とあれば法的裏づけ毛も必要と思いますけれども、そういう点はあわせて考慮したいと考えますが、御説の通り、需給、価格の安定が非常に大切なことだと思います。
  55. 川俣清音

    川俣分科員 事業団をつくるときには、大体の目標は、需給の安定、価格の安定を主眼として探鉱融資事業団をつくるんだということでしょう。それでは目的が十分達成できないのではないか。もう一歩前進する必要があるのではないかという質問なんです。せっかく融資をするのだったら、それが回収できるように、あるいは回収できないにしても、その効果が現われるようなものでなければならぬ。価格が不安定なら、融資を受ける人も少ないでありましょうし、その効果も現われてこないことはあまりにも明瞭なんです。ですから、価格が安定することによって可能な鉱山もありましょうし、あるいは不可能な鉱山もありましょう。それではなおとても価格が見合わないという鉱山もありましょう。それは一時休山することもやむを得ない。この価格で絶対に上げ下げはあってはならないということまでは言えませんけれども、この幅の間で可能な採掘の方法を講ずべきだという指示を与えることが、安定さ、せることであると同時に、それを受ける需要家側におきましても、一番安定した経営が立つのではないか。そういう両面からもう一度検討してほしいということです。せっかくことし出したのですから、これを否決して新しくやれとまでは言わない。おそらく一年たったならば反省されることとは思いますけれども、今のうちからもう一度——かつて検討された問題でもある公です。私どもが提起して検討された問題ではあるけれども、もう一歩進んで御検討願いたい。形式的の答弁じゃなく……。
  56. 福田一

    福田国務大臣 御説のお考えも、確かに一つの方策であるということについては私も同意しております。十分検討させていただきたいと思います。
  57. 中村三之丞

  58. 島本虎三

    島本分科員 私は、公害除去の問題に重点を置いて、通産大臣のこれに対する決意を順次聞いていきたいと思います。  まず、その前に、厚生省が来ておりますから伺いたいと思います。  最近、十二月ごろまでの間に、スモッグの問題が都民を悩ましまして、そのほかにまだそれだけじゃなしに、騒音や水質汚濁の問題などについて手に余って、まだ十分対策もできないような状態に放置されておるようです。こういうことはまことに遺憾だと思いますが、このうちでも、ことにスモッグの問題については、ロンドン型とかロスアンゼルス型とか、いろいろ言われております。とにかく不快な殺人スモッグであるということの一語に尽きるのじゃないか、こういうように思います。この正体について厚生省の方では的確に調べてあるはずですが、それをこの際明らかにしてもらいたいと思います。
  59. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 スモッグの問題につきましては、先先も御指摘になりましたように、昨年の十一月、十二月、本年の一月、かなりの影響を持つ結果を私ども承知いたしておるわけでございますが、気象庁の方で測定いたしました結果では、十一月には視程二度のものが四日、十二月にはやはり視程二度のものが十九日、それから一月には七日と記憶いたしております。そういうような状況でいわゆるスモッグの状態が見られたわけでございます。  その内容といたしましては、まだ学問的に検討され尽くしていない部分があるわけでございますが、もちろん、そのおもな原因となりますものはばい煙と排気ガスが考えられるわけでございまして、ばい煙の中でスモッグに大きな影響を及ぼしますのは、すす、粉塵、亜硫酸ガスというようなものが考えられます。また自動車の排気ガスにつきましては、まだまだ私ども検討の段階でございますが、それから出ます一酸化炭素あるいは酸化窒素というようなものが影響を持っておると考えられるわけでございます。  なお、ただいま申し上げました日本の二度程度のスモッグを諸外国の例と比較いたしましての強さと申しますか、濃度と申しますか、私ども、十二月に測定いたしました資料を手元に持っておりますが、それによりますと、亜硫酸ガスの量にいたしまして、百万分の一PPMの単位で申し上げますが、十二月の十七日が一日平均〇・一三六PPM、十八日が〇・一一八PPMということで、大体〇・一三PPM程度のものでございまして、これは一九五二年にロンドンで五日間続きまして、非常に大きな影響を及ぼしたといわれておりますロンドンのスモッグの場合の〇・七五程度と比較いたしまして、まだ幸いにその状態にまではなっていない。しかし、私どもとしては十分警戒をして、これを改善していきたいという気持でこれらの成績を承知している次第でございます。
  60. 島本虎三

    島本分科員 そうすると、厚生省の方としては、このスモッグの正体を明らかにして、それはばい煙と排気ガスによるものであるという結果、いろいろ対策を講じられておると思いますが、厚生省の対策だけで、国民に不安を与えないような十分な措置ができておりますか、まだですか、この点だけ明らかにしておきたいと思います。
  61. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 先生御承知のように、昨年の十二月一日から一部施行されましたいわゆるばい煙規制法は、私ども厚生省と通産省との共管でございまして、これは年度内にぜひその他の政令等をきめていただきまして、だんだんとフルに動かして参りたい。このばい煙規制法の施行によりまして、ぜひともこのスモッグの状態、その他ばい煙によりますいろいろな被害をこれ以上増大しないように、またさらにこれを減少していくように努力して参りたいと考えておるわけでございます。もちろん、これは私ども厚生省だけの問題ではございません。通産省の所管しておられます大きな企業体の御協力を得まして、ぜひとも双方の立場からこの法律の施行を十分に円滑に実施して参りまして対策の万全を期したい、かように考えております。
  62. 島本虎三

    島本分科員 これは大臣もおわかりの通りなんですが、この原因として気象庁が明らかにしたところによりますと、大体ばい煙、排気ガスによるところの影響が多いということが明らかにされているようです。そういたしますと、いろいろな点でばい煙の発生源は燃料によるものであるというようなことになるのじゃないか。そういたしますと、当然集塵装置と浮遊粉塵集塵装置というようなものが、機械並びにいろいろな工業施設の一環として今後重要な一つの施設になるのじゃないか。それと同時に、燃料から発生する亜硫酸ガスを防ぐ技術的な方法が現在考えられているのかいないのか。また発電所や製練所、こういうようなところはコストを考えると幾分手ぬるいような施策にはなるかもしれないけれども、十分この点は石炭から重油に変わったりして考えられておりますが、その結果によっても、こういう亜硫酸ガス発生の根源をなしているような点があるのじゃないか、こういうようにも思われるわけです。この集塵装置と、それから浮遊粉塵集塵装置と、それから亜硫酸ガスの発生を制限するという方法は、通産省では具体的に考えて指導しておりますか。この点、大臣としての御意見を今までの経験からはっきりこの際発表願いたいと思います。
  63. 福田一

    福田国務大臣 お説のように、公害の問題は環境衛生の面から見まして非常に大きな問題でありますが、また一面、絶対煙を出さない、あるいはばい煙も一つも出さないというのが望ましいことであることは明瞭であります。といって、そういうことを言っておっては工業はできなくなってしまう。そこで、どこで調和をはかるかということだろうと思うのです。この二つの問題、いわゆる環境をよくしていくという問題と工業を興すという問題をどういう点で調和をはかって、人体に有害にならないように考えていくかということだろうと思うのであります、しからば、人体に影響を与えるのはどの程度のものであるという確たる一つのめどというものを厚生省の方でつくってもらわなければならぬ、それと同時に、それはわからないまでも、今言われたようなばい煙のちりを集めるというようなことについては、これは装置その他はできると思いますが、たく燃料はどういうものをやるか、それが亜硫酸ガスにどのくらはなってどうなるか。亜硫酸ガスが大気の中にどの程度出れば悪いのか、こういうことをやはり科学的に一応調査してみなければならぬと思うのでございます。そういう観点に立ってこの問題の処理をいたさねばなりませんが、これについてまず第一に必要なことは、やはり具体的な調査だと思います。実際にどれくらい影響があるかという調査が基礎をなすのだ。こういうことについては、工業技術院におきまして、通産省としても非常に重要な問題として取り上げまして、ただいまいろいろ研究をいたしておる段階でございます。しかし、考え方として、どういうふうにしてその公害を防いでいくかという考え方でこの問題の処理に当たっていきたいと考えております。
  64. 島本虎三

    島本分科員 科学的な調査ができたならば、大臣としては、それを産業の面に取り入れて、国民に害を与えないような方針を明確に打ち出して、それによって指導されますか。
  65. 福田一

    福田国務大臣 私は、政治の目的は、私たちが平和に、そして安定した、しかも文化的な生活が営めるようにすることが根本の要義だと考えております。その場合に、生命を脅かす問題があったとき、これを放置していいとは考えられませんので、科学的にこの限度はこういうことがどうして必要だということになれば、もちろん通産省としても取り上げて処置していきたいと考えております。
  66. 島本虎三

    島本分科員 人体に与える影響は、たとえば亜硫酸ガス、自動車の排気ガスなんかの場合のは、ある程度明確になっているのじゃないかと思います。こういうような点も、まだまだ調査の段階で結論が出ていないはずはないと思うのです。厚生省の方ではこの点いかがですか。
  67. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 こういったガスあるいは粉塵の人体に及ぼす影響につきましては、従来ある程度研究成績がございましてとえば亜硫酸ガスと呼吸器系統の疾患との相関性というようなことについても、幾つかのデータがあるわけでございます。しかし、私どもとしては、なおこの点につきましては、因果関係まで突き詰めましたさらに適確な資料を得たいということで、この点は厚生省といたしましてもただいま研究を続けておるわけでございます。
  68. 島本虎三

    島本分科員 ことに排気ガスに至っては、自動車が動くことによって、それを交通整理をしておる巡査の職業病の原因じゃないかといわれるほど影響が大きくなって、もうすでに町中で自動車の交通整理はでき得ない状態になっている。それでまだ結論が出ないなどということは、厚生省として少し怠慢じゃないかと思う。現に東京付近から発した——東京だけじゃない、札幌でも、神戸を中心にした向こうの地帯でも、北九州でも、こういうようなものが発生している。ロンドン型じゃなく、ロスアンゼルス型である。工場のばい煙と排気ガスによるものだということが明確になって、その対策はもうすでに考えられ、工業的にこれがコストの高いということの影響で、まだ取り入れられるかどうかはわからない、取り入れられるならばこれをやってもよろしいという結論が、ちゃんと出ていると聞いているのです。厚生省の国立公衆衛生院方面でも結論で出ていると聞いております。はたして今通産大臣が言ったように結論が出ていな  い、わからない段階なのか、この点はっきりして下さい。
  69. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 国立公衆衛生院では、今例にあげられました一酸化炭素の排気ガスによる増加あるいはその影響ということにつきましては、もちろんある程度のデータは持っております。系統的、季節的に完備された成績ではございませんけれども、それがどの程度出て、また御指摘になりました交通整理の巡査のヘモグロビンにどの程度影響があるかということにつきましては、ある程度の成績を持っておるわけでございます。この排気ガスそのものが、都市におきまして、住宅あるいは商業、工業地区に与える影響、あるいは自動車の台数その他のいろんな要素を含めましてどのような成績を持ち、それがどういうふうにそこに働く人々に影響しておるかというような、非常に詳細な系統的なデータにつきましては、残念ながらございません。そこで、私どもは、昭和三十五年以来、実は排気ガスの測定方法について三年間にわたって検討を続けて参ったわけでございます。その結果、排気ガスにつきまして、自動的にこれを測定記録する装置を設計、製作する見通しがつきましたので、これを実は来年度の予算で三台整備いたしまして、東京において実際に排気ガスの排出状況等を系統的に調べたいということで、その検討をいたして参るつもりでございます。従いまして、全然ないというわけではございませんが、さらに検討したいという範囲が非常に広いということを申し上げておきます。
  70. 島本虎三

    島本分科員 自動車の排気ガスの点だけにしぼっていってみましても、いろいろ外国ではすでに法によってこれを取り入れるように指導し、それを行なわしているところもあると聞いておるのですが、日本の方ではようやく自動車の排気ガスに対して測定の見通しがついたので、二、三台買って調査しようという段階のようです。しかし、その間、東京都内だけでも八十八万台もの自動車が現にあり、その排気ガスからくる青いもや、これによって慢性気管支炎がふえたというようなこともはっきりデーターにいわれているし、ことに自動車の通る京浜国道では、肺ガンの発生率が非常に高くなって、死亡率もあの辺は一帯に高いということも調査されているようだし、交通巡査の身体に与える影響、こういうものもはっきりそれぞれ調べられておる。これに対してはやはり徹底的な対策が必要なんです。その対策一つとして、こんなものは二十万円もかけたならば、煙をそのまま出さないで、大して害のないような、いわゆる集塵というか、排塵というか、言葉はわかりませんが、それを取りつけることによって消化できる、ただ、それによるとコストが合わなくなるおそれがあるので、通産省の方では発表には二の足を踏んでいる、こういうことのようです。やはりコストの点を考えるのだったら、進んであなたの方でいろいろ補助をやってもいいのじゃないかと思います。一番大事なのは、今大臣が言ったように、国民の生命ですし、また平和ですから、そのことを考えたならば、この辺で踏み切って、そういうデータがわかった以上、二十万円でも何万円でも、かかっただけ補助してもいいから、十分対策を練って、それによってこういう排気ガスを出さないようにそれを取りつけさせるという対策が、一番進んだやり方じゃないかと思うのです。事は簡単なんです。国立の公衆衛生院でもそういうような調査の結果が出ておるようです。それとあわせて見て、これからやるのじゃなくて、できたものから順番に取り入れていって、そして国民に青い空を見させ、長生きさせるような方法を、厚生省と一緒に通産大臣も大いに研究して、促進してやってもらいたいと思うのです。自動車の排気ガスの問題、除去の施設の問題、補助の問題とからんで、一大英断のほしいところなんですが、この点についていかがですか。
  71. 福田一

    福田国務大臣 先ほど来厚生省の方からも答弁がございましたが、実を言うと、その原因並びにその影響というものは必ずしもはっきりはしておりません。しかし、悪いだろうということだけはこれは明瞭でございます。お説のロスアンゼルスにも私は去年行ったのですが、行ってみると、確かに目が痛いですね。どういうわけなんだと言ったら、排気ガスだと言う。聞いてみると、一九六四年の末までには何らかの処置をしなければいくまいと言っておる。あそこでもまだ一、二年先のことで、そこまで進んでいないわけです。しかしながら、よそが進んでいないからといってほうっておいていいというわけじゃございませんので、私の方では、あなた方が御心配になるようなことがあろうかと考えまして、来年度の予算でも約七百万円この問題に調査費をつけて、どういう影響があるかということを三十八年度において調査をするということにいたしております。そういうことは悪いのだから、最初から案をつくってどんどんやったらいいじゃないか、こういうようなことでありますが、やはり自動車を使う人の自由を制限することになり、また、これに経済的な影響を与える問題でありますから、やはりこういう原因でこういう結果が出る、こういうような事情を明らかにした上でなければ、個人に経済影響を与えるようなことを簡単にきめていくわけにもいきません。だから、やはり一応われわれとしては、世界的に何か調査があって、何台動くとこういう排気ガスが出て、どういう影響が人体にあるという数字が出ておれば、日本における東京都で何台自動車が動いているかということさえ調べれば、すぐ出るのでずが、そこまでいっていない。八十万台なら悪いのか。百万台なら悪いか、一台の排気ガスといっても、小型車もあれば、大型車もあれば、トラックもあれば、いろいろあります。そういうものを総合してみて、一日の間にどれくらいの排気ガスが出るとどういう影響があるかというようなことが、世界的に公認された数字があれば、これは排気ガスの量さえ調べればいいのですが、事実はそこまではいっていない。排気ガスが悪いということは調べてあります。しかし、どの程度空気の中にそれが入ったら悪いかということは、まだはっきりしていないのじゃないかと思っているわけです。たとえば広野を一台の自動車が走ったから、その排気ガスであそこのところは有害だということにはならぬ。これは極端な例ですが……。そこら辺の具体的な数字というものが出ておれば、こういうふうに具体的に悪いのだから、これは一台の自動車に二十万円かかるか三十万円かかるかしりませんが、何らかのものをつけなくちゃいかぬのだという法令を出さなければいかぬと思います、やらせるという以上はそうなると、個人の自由を束縛する、経済的な影響を与える、これは大きくはそういうことにもなりますから、事情を明らかにすることが第一だ、こう私は申し上げておるわけで、あなたの御趣旨に反対しているわけじゃございません。そういうことを考えて、それが明らかになったらすぐつけられるように、自動車の排気ガスからどういうふうにして毒をなくするようにしたらよいかというので、三十八年の予算で調査にかかります、こう申し上げておるわけです。
  72. 島本虎三

    島本分科員 七百万円くらいでは十分な調査もできないのではないかと思います。つけないよりはいいですが……。それでも一年間ではっきりデータがわかるように、大いに指導してやってもらいたいと思う。それと、厚生省の方で聞いたら、三千五百万円ほどの新しい予算をつけたから、これでやりたいのだそうです。三千五百万円に七百万円足したって四千二百万円、その程度では足りないのじゃないかと思いますが、池田さんもあなたも日本を大国並みに扱っておるのですが、アメリカの方では四十一億もかけて調査もし、ある程度データも出たといっているのです。そういうふうな点は、軍事的な問題と別ですから、そういうふうなデータは幾らでもちょうだいしてきて、これと相いれるようなものは、その資料によって早くこっちの方の対策をねってもらう方がいいのじゃないか、こういうふうに思いますので、そういうような点万全を期しておいてもらいたいと思う。ことに大臣も知っているように、駐留軍の人が東京へ来ると東京ぜんそくとか、横浜へ駐留している人は横浜ぜんそく、それから京浜国道辺の人は肺、ガンの発生率が高いとか、また東京都内の人は慢性気管支炎が排気ガスをうんと吸う場所には多いとか、いろいろ言われる。そういうような特殊地帯に限ってはっきりしていることですから、調べればわかるのじゃないか。調べるテンポの問題なのです。この点、厚生省と一緒になって徹底的に調べて、この問題を産業企業の面でも取り入れさして、そしてこういうふうな公害除去の点を技術的に可能な点から義務的に付加していって、どうしてもだめな場合は、大臣得意の補助によったり、いろいろな融資によったりしてやったらいいわけでございましょうから、やはり何といったって人の命の方を先に考えなければいけないと思います。この点重大なる決断を要するところだと思います。今後、私もこういうふうな点を研究さしていただきましたで、いつでもここへきてやりますから、一つこういうような点は大いに促進をやってもらいたいと思います。大臣、よろしゅうございますか。
  73. 福田一

    福田国務大臣 この問題は、確かに人体に影響を与えることでありますから、重要な問題で、御研究願うことは非常にありがたいことでありますし、われわれもあなたにおくれないように、施政の方をやっておる方も大いにがんばっていきたいと思います。
  74. 島本虎三

    島本分科員 それと同時に、最近四日市で——これは通産大臣か厚生省か、どっちでもいいですが、亜硫酸、ガスの発生による被害で、ぜんそくが激しくなった、これは数万円の治療費を使用しておる、こういうことが訴えられておるわけなんです。一つ一つの調査そのものが不完全だといううちに、病人は年間に薬を、買うだけに五、六万円かかっておりますが、こういうような対策分立てておかないといけないと思います。四日市の場合は、ことにあの辺はコンビナートの皆さん関心の高い場所ですから、この点も十分考えて、対策をしなければいけないと思います。厚生省ではこういうような事態を十分知っておりますか。
  75. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 四日市の事情につきましては、ある程度私ども承知いたしております。また、市当局も、この問題に非常に大きな関心を持ちまして、健康診断等を実施しておるようでございますが、私どもの方からも係官を派遣いたしまして、現地の事情も調査いたしております。また、来年度におきましては、新しく第二次の地域指定を考えておりますので、その対象の一つというようなことも、四日前については考えておるわけでございます。
  76. 島本虎三

    島本分科員 この四日市の場合なんかことに大事だと思うのは、あの辺に誘致した工業が、野放しにこういうような排気、ガスその他ばい煙を排出しておる、こういうようなことが言われておるのですが、これは通産大臣ですが、新産業都市建設促進法によって今度新しくこういうような都市が建設された場合に持ってくる工業、こういうものは、いわゆる公害といわれる汚水の問題、それから騒音の問題、それから今言ったようなスモッグを含めた排気ガス、ばい煙の問題、こういうものを十分除去するような措置を考えた上で、こういう計画を進めなければならないと思うのです。今までに新産業都市建設促進法なんかでは、こういうような点を十分取り入れて指導しておられますかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  77. 福田一

    福田国務大臣 新産業都市の法律は、今施行されまして、これから具体的にどこを指定するかということをきめておるわけでありまして、新産業都市の法律のうちにおいては、まだその点研究しておらないと思いますが、たといその新産業都市の法律でそういうことがきめてあろうとなかろうと、今言ったように、人体に影響を具体的に及ぼすという事実が明らかになった場合においては、われわれとしては、当然それは考えて措置をいたしていかなければならぬ、かように考えております。
  78. 島本虎三

    島本分科員 そうすると、現在ある法律は、ばい煙排出規制法、こういう法律と水質関係二法案、この三つぐらいしかないようです。水質保全二法の場合には、これは通産省関係になっておるが、窓口は企画庁になっております。しかし、この問題にはまだまだ研究や行政指導の不足があるようなのです。しかし、それと同時に、ばい煙の問題なんかも、現在の場合、中小企業や家庭用のばい煙なんかは全然度外視されております。大企業のうちでも特定のもの、たとえば電力なんかのやつは除外されておる。こういうようになってみますと、これはもうある一定の大きい企業だけに適用されるような状態だとすると、抜け道が方々にあるようです。それから起こされるようないろいろな被害なんかは、これから調査する段階じゃなくて、四日市なんかは、もうすでに具体的に現われている。こういうような問題を考えて、今度企業の出した被害、こういうようなものがはっきりデータによってわかった場合には、無過失賠償制を原則として、こういうような補償の問題も十分考えた上で、これを進めるべきじゃないかと思うのです。そうでないと、工業は幾らで毛計画的にやっていって、その辺に住む住民は、騒音の問題だとか、水の問題だとか、またはこのばい煙の問題で、四六時中悩まされるようなことになって、どこに青い空々見れるのか、こういうような声が当然嘆息として出されるのじゃないか、こういうふうに思います。企業の出した、はっきりしたデータによってわかった被害に対しては、無過失賠償制の原則を確認の上に、これを指導すべきじゃないか、こういうふうに思いますが、この点に対して大臣はどういうふうにお考えでございましょうか。
  79. 福田一

    福田国務大臣 十分研究したいと思います。
  80. 島本虎三

    島本分科員 十分研究するということは、すると、これはやるということですか。
  81. 福田一

    福田国務大臣 研究は研究でございますから、十分研究いたしたいと思います。
  82. 島本虎三

    島本分科員 そういうふうにうまい答弁ばかりしないで、誠意を少しここへ出してみて下さい。被害がはっきりわかったならば、その点では当然住民に対して——住民を対象としての産業ですから、それが逆に住民に被害を与えているということがわかったならば、それはやはり無過失賠償くらいの原則を立てておいてやって、そうして企業を指道することが、これからの近代的な感覚を持ったところの指道だと思うのです。この点十分研究して対処するくらいだったら、大臣はあなたでなくてもだれでも言えるのじゃないかと思うのです。あなたでなければできない、あなたでなければ言えないような、誠意のある、あたたかい答弁をこの際出してみて下さい。
  83. 福田一

    福田国務大臣 私は、何も情愛がないとか、そういうことを考えないというわけではありません。しかし、無過失損害賠償というような問題になりますと、それはなかなか法体系の面から見ましても、取り入れるということについていろいろな問題もありましょう。また、過去においてそういうようなことをやっておった、認可をして、そうしてやっておったのに、急にそういう事態が出てきたから、その責任を全部事業に負わせようということになったら、そこにもまた問題が出てくるでしょう。そういうことがありますから、その場合、その賠償の責任をどの程度に認めたらいいかということもいろいろあるでしょう。私は、そういう意味で、法制上においても、また実際の適用の場合においても、やはり具体的に十分研究しなければいかぬ、こう思っておるわけです。それだから、私は、これから研究をしたい、勉強をしたい、こう申し上げておるわけであります。
  84. 島本虎三

    島本分科員 大臣は、これはやはり本会議式な答弁だけではだめなんです。本会議ではそれでけっこうだと思うのですが、ここではもう少し、そういうような原因がわかったならば、あなたの意思の通りやりますと、これは河野さんみたいに一つやってみて下さいよ。そういうふうに原因がわかって、損害を与えているとわかったのだから、それならばすぐ対処しなさい。その場合、企業を停止するのも方法だろうし、それに対して損害を十分見てやるのも方法だろうし、いろいろあるだろうが、その原因がわかって結果が出たのだから、その原因が出た以上、それに対して対処するのはあたりまえなんですから、そういうようなことによってやはり住民に期間的に長く被害を与えておくべきじゃない〜思うのです。わかったなら、その原則を取り入れる、このくらい強い決意をこの場所で示しておいてもらって、私は次へ進めたいと思うのですが、それはよろしゅうございますか。
  85. 福田一

    福田国務大臣 具体的にそういう事実があれば、それに対処していかなければならないということは、もちろん政治でありますから当然であります。しかし、その場合に、そういう原則を確立して、そうして全部どういうふうにしてやっていくかというやり方の問題がいろいろあろうかと思う。そういうことは、私の方ではさまっておらないことを、簡単に何でもできるできるというようなことを言って国民をだますような発言は、私はしたくないと思っております。
  86. 中村三之丞

    中村主査 ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  87. 中村三之丞

    中村主査 速記を始めて。
  88. 島本虎三

    島本分科員 そうしたならば、現在無過失賠償制を取り入れているようないろいろな例が、国内にあるのかないのか、それを一つ大臣の方から、また関係当局からでもいいですが、それを発表してもらいたいと思います。
  89. 馬場一也

    ○馬場説明員 現在、法制上無過失賠償責任として制度化しておりますものは、われわれの知っておりますのは、原子力関係でたしかあったかと思います。それで、ただいまお話のございましたこういう産業公害の関係でございますが、実は、たとえばばい煙の被害ということでございますが、一つ一つのばい煙によって全体の環境が汚染をされまして、住民の社会環境なり生活なりにいろいろ被害があるという体質的な関係は、確かにその通りなんでございますけれども、具体的には、一つ一つのばい煙を出します工場なりあるいはその施設なりの個々の企業のばい煙が、具体的に一人々々の被害にどういうように特定して結びついておるかということが、こういうばい煙のような事象になりますと非常に因果関係がはっきりいたしませんので、それで、このばい煙規制法のような、体質的なばい煙の被害という事態に着目をいたしまして、そういう施設の非常に多い地方におきましてはその施設ごとに一定の排出——これ以上排出してはならないという一定の基準を設けまして、一つ一つの工場にそれを守ってもらう、そのことによって全体の環境を守り、ばい煙の被害をできるだけ少なくいたすということによって事態を解決するというのが、こういう産業公害行政の体質ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。一つ一つの具体的な被害の重さと、一つ一つの工場の出す具体的なばい煙の被害との結びつきがはっきりいたさない、全体的には非常にその関係が大きいという事態でございますので、ばい煙規制法あるいは水質保全法のような法律で一般的に基準を設けて処置していくという制度でございます。
  90. 島本虎三

    島本分科員 従って、今度は、政府が進んでこれを指導し、新たに今度これをやろうとしている新産業都市建設促進法によって、いわゆるこつらの法律によってやっていく部門に対して、産業公害を完全に除去するような、こういうような方法を完全に取り入れているかと言ったら、入れていないと言うから、それだけだったならば、今後は野放図に国民に害毒を流すばかりでは困るから、今のような無過失賠償制を取り入れて、その安全を期してやるということは当然だと思う。それに対して考えられないということはないと思うが、そうですから、大臣もこの際はっきりして下さい。
  91. 馬場一也

    ○馬場説明員 新産業都市等で、これから新しい工業地帯と申しますか、あるいは工業都市ができて参りますと、当然そこに工場がたくさん建つわけでございますから、こういう公害問題の発生する機会が多くなるわけであります。こういう新しい町づくりと申しますか、工業地帯づくりをやりますような新産業都市建設法の建前からいたしますと、むしろ、今までのような無秩序なと申しますか、無計画な都市づくりと申しますよりは、ある程度その工場地帯と住民の住居地帯というようなものとの間に、はっきり初めから計画を立てて、公害ができるだけ及ばないようにするというような配慮と計画を持って新産業都市づくりをやっていくということが、新産業都市建設促進法の一番大事なポイントであろうと思うわけでございます。しかし、そうは申しましても、やはり大きな工業地帯ができ上がりますと、何もなかった時代よりは、確かに公害の問題は多く発生するチャンスがあるわけであります。もしそういう度合いが現在の既成工業地帯と同様な状態に近づきましたら、その地域の状況に応じまして、今度はその地域をばい煙規制地域ということで指定いたしまして、この規制法による規制を行なっていけばよろしい、かように考えておるわけでございます。新しい町づくりの場合には、むしろ初めからそういう公害の起こるチャンスが少ないようにという配慮をしてやっていくということが、新産法の立場から申しますと、むしろそちらの方が本質ではなかろうかと考えておるわけであります。新産業都市建設促進法でいろいろ都市が指定されますと、その地域におきまして、御承知のように、法律に基づいて建設基本計画というものをつくるわけでございますが、その地方にはどれくらい工業を持ってくるか、人口がどれくらいふえるかというようなことを基準にいたしまして、十分環境のいい住居地帯をどの程度にとるか、工場地帯をどの程度に配るかというようなものを土台にして町づくりをやっていくような建前に、新産法の場合はなっておるわけであります。そうした秩序のある町づくりを初めから考えて参りますと、かりに初めから工場が建ち並んだ場合には、同じような工業地帯が隣にもあってごちゃごちゃ建っているよりも、具体的な公害の出方の度合いが少ないというように考えられるわけでございます。もし工場ができてばい煙の壁がふえますれば、今度はばい煙規制法によってやるということも考えられるわけであります。その根っ子のところからある程度措置をしてかかるということも、新産法では当然考えられているのじゃなかろうかというように考えております。
  92. 島本虎三

    島本分科員 だから、ばい煙くらいなものなら、集塵装置というようなものによって九六、七%まで取り除かれるのです。おそらく九九%くらいまで可能なんです。けれども、浮遊粉塵用の集塵装置になると、ものすごくスぺ−スと金がかかる。だからそれを産業に取り入れたら、コストが合わない。従って、それまでやれない。しかしながら、やったならばきれいな空気にすることができる。従って、あなた方が指導をする場合、補助か何かによってこういうような点も十分考えてやりなさい。これはやればやれるのです。そういう指導をやればやれるのだけれども、それをやっていないと言うのです。従って、こういう点を十分考えてやるべきだし、こういうことをやるように法できめておいたらなおいいじゃないかと言うのです。こういうようなことをやっていないのです。
  93. 馬場一也

    ○馬場説明員 おっしゃる通りでございまして、実はばい煙規制法では、この取り締まり基準を設けまして、法律的に規制をやる地域は、前に申し上げましたように限られておりますが、そのほかの地域でございましても、一般に大きな工場ができますとそういうばい煙が出ますから、そういうものもできるだけ少なくいたしますように、ただいまおっしゃいましたような集塵装置をつけるというようなものに対しましては、この法律によりまして全国一円——指定地域でございましょうとございますまいと、全国一円、そういうようなものに対しましては、地方税である固定資産税を免税する措置を講じております。かつまた、ただいま大蔵省と話し合い中でございますが、今度の税制改正でそういうものの耐用年数を短縮するというような助成の措置を講じまして、この措置は全国一円にやるつもりで準備をいたしておるわけでございます。それは、ばい煙規制法の方にそういう手当がしてあるわけでございます。そうして、そういう助成措置につきましては、指定地域であるとないとを問わず、手当をするようにいたしておるわけであります。かつまた、それをつけます企業が非常に中小企業でございます場合には、中小企業振興資金等助成法の対象といたしまして、そういうものが取りつけやすいように、できるだけ国もしくは府県が無利子の貸付を行なうということで、そういう助成をやっていきたいというふうに、助成の方は全国一円に考えておるということでございます。
  94. 島本虎三

    島本分科員 もう一つだけ。燃料から発生する、亜硫酸ガスを防ぐ、こういうような方法については、国立衛生試験所ですか、その方面では、こういうふうなデータもある程度整っているのです。けれども、企業にこれを取り入れた場合には、採算上これはなかなか重荷だというので、やっていないでしょう。そこで、新しい新産業都市のあの法律によって、そういうふうな場所にこれを改めて入れて指導すべ寺であって、そういうような害は住民に一切流さないということで指導してこそ、新しいいわゆる新産業都市といわれる都市の建設になると思うのです。そういうふうな点、全然肝心なところが抜かれてある。それに対しては現に法的に何も手当はしていないでしょう。亜硫酸ガスに対してのこういうふうな手当はしていますか。
  95. 馬場一也

    ○馬場説明員 ばい煙につきましては、ただいまのような集塵装置をつけることによって問題の大部分が解決するわけでございますが、御指摘のございました、ばい煙と一緒に出て参ります亜硫酸ガスをできるだけ濃度を薄めて出すという装置につきましては、先生おっしゃいましたように、技術的にどういうふうにしてそれを薄くするかということは、まだ非常に未解決の分野が多うございまして、先ほど来研究所のお話が出ましたが、現在工業技術院の試験所におきましても、その亜硫酸ガスの濃度を薄めるための技術としてどうやったらいいかということを検討中であるわけであります。従いまして、亜硫酸ガスにつきましては、集塵装置をつけたらいいというような的確な処方せんがまだ遺憾ながらございません。ただ、そういう亜硫酸ガスの出るような施設をつくります場合には、できるだけ住居地帯等から離すとか・あるいはできるだけそういうような技術の開発に努めまして、さらに、また、できるだけ薄めて出すというような方向に技術の開発を重ね、そのように企業を指導いたして参りたい。そういうものが見つかりましたならば、それを企業の中に取り入れますについては、ただいま申し上げましたようなばい煙の措置と同様の優遇措置を、税制上、資金上講じていきたい、かように考えておる次第であります。
  96. 島本虎三

    島本分科員 どうもまことに残念で残念でしょうがないのですが、もしそうだった場合には、現在の法律でやれるのだったら、今の新しく出たばい煙規制法の罰則で十分であるかどうかということを考えてみてもわかるのです。あの十万円以下ぐらいの罰則で——そんなものだったら、自由にやって、十万円納めて一年ほうっておいた方が得だ、こう考える悪質なものはないまでも、そういうことができるわけです。もしそうだった場合には、あまり罰金が少なくてもなんだから、進んで操業停止くらいまで強化していきましょう、これくらいでいいと思うのです。現行法律でそれを規制することができるならば、やはり操業停止くらいまで強化するという決意も必要だと思うのです。こういうふうな点十分考えていますか。
  97. 馬場一也

    ○馬場説明員 ばい煙規制法によりまして指定地域になりました地域におきまして、ただいま申しましたように、排出基準という一定の取り締まり基準をつくるわけでございます。これにもし違反して、それ以上のばい煙を出しました場合には、法律によりますと、それに対して施設を改善すべしという命令を出せることになっております。さらにまた、その改善命令が十分に守られないというような場合には、法律上その施設の使用停止を命ずることができるというところまで法律的には準備はでさているわけでございます。もちろん、そういうことになりませんように、十分指導をまずいたしまして、さらにまた、それを守られるようにまず施設の改善をやらせるということで実施していきたいと思いますけれども、法律的には、それが守られない場合には使用停止までいける建前にはなっております。
  98. 島本虎三

    島本分科員 それでは要請をいたしておきますが、こういうような問題は、新たに日本に発生した問題ではなくて、今まで世界のどこでもこういうような問題が発色して、工業が発展すると、必然的にこういうような問題がそれと一緒に発生するのです。産業の振興を考えると同時に、国民に害を与えている公害の除去というものも考えてこそ、近代的な企業産業だと言えると思うのです。その責任の立場にある通産大臣は、その点ではまことに適格なりっぱな方だ、こういうように私はきょうここで言っておきたかったのですけれども、まだ言う段階でもないようですから、十分研究されまして、この点万全を期していただきたいことを心からお願い申し上げまして、やめます。
  99. 福田一

    福田国務大臣 私は、あなたの御意見と一つも違ったことを言っているわけじゃない。公害、いわゆる環境衛生の問題と、片一方において工業を振興するという問題と、この二つをどこで調和させるか、両方とも目的を達しなければいけない、そういう意味で研究していきたい、こう申し上げておるので、あなたの御趣旨にちっとも反対しておるのではありませんから、念のために申し上げておきます。
  100. 中村三之丞

  101. 横山利秋

    横山分科員 時間がおそくなって恐縮ですけれども、私の質問は、中小企業問題について、直接大臣の所管ではないけれども、しかし、大臣が骨を折ってもらわなければ困ることばかりを申し上げて、御意見を伺いたいと思うのであります。時間がございませんから、質問は、きわめて現象的な問題の取り上げ方をいたしますけれども、それはそれなりに法的な裏づけがあり、問題が深く存しておることだということを御記憶願います。  まず窮一の質問は、商売屋へ税務署が夜行って調査する、そういうことは妥当ではない。言うまでもなく、税法においては、夜明けから日没まで——夜明けはまだ行かぬでしょうけれども、大体日没まで、役所の定時間までということになっておる。そうでなければ税務職員には超過勤務手当を払わなければならぬのです。ところが、調査に行く。夜間調査に行っていいところと悪いところとある。夜間調査に行っていいところは、バー、キャバレー、旅館、この辺ならお客の込み工合というものがありますから、これはしようがない。けれども、それを理由にして、また夜わざわざ調査にお行きになる。こういうことは、商売屋にとってはまことに迷惑千万だ。税務職員の夜間調査を通産大臣としてどうお考えになるか。
  102. 福田一

    福田国務大臣 原則として好ましくないと存じます。
  103. 横山利秋

    横山分科員 全くあなたの所見の通りだと思うのです。ところが、今、三月十五日が確定申告です。今度の確定申告は、御存じのように、国税と県税と住民税、全部一緒に一つの税務署に申告をしろ、これは親切にやってやるんだ、こういうわけです。そのために、あらゆる全国の税務署に納税者が抑しかけるわけです。三月十五日、確定期になりますと、税務署はごった返すわけです。従って、その前後にありましては税務職員は大へん忙しい。大へん忙しいということになると、こういうことがまた大へん多くなるわけなんであります。従って、通産大臣として——大蔵大臣じゃありませんよ、通産大臣として、納税者の立場、特に中小企業者です、大企業は夜調べようとしてもできませんから、夜店を開いておる中小企業の立場から、この際、善処なさるべきだと思うのですがいかがですか。
  104. 福田一

    福田国務大臣 あなたは大蔵関係のことも詳しいし、税のことも専門的に勉強しておられるようでありますが、私、実はそういうところまで、どの程度の弊害が出ておるかわかりません。しかし、一、二の例は聞いておりますので、通産大臣の立場で私が大蔵大臣に、そういうことを注意する通達でも出せということは言えます。言ってもいいと思うけれども、私が直接にどうせい、こうせいと言うわけにはいかないと思います。
  105. 横山利秋

    横山分科員 私は初めから言っているように、あなたの直接の所管ではないけれども、通産大臣に中小企業問題の担当者としてがんばってもらわなければならぬことをこれから次々と列挙していくわけですから、あなたに通牒を出してくれというわけじゃない。大蔵大臣に、こういう点は不穏当であり、しかるべき配慮を望むということを言って下さいと言っているのですが、いかがですか。
  106. 福田一

    福田国務大臣 私は今の御説ごもっともだと思いますから、大蔵大臣にその旨通知したいと思いますが、これは横山さんに、こういうときには、税務署の者もここへ呼んでおいて、あわせて質問をしていただくと非常に便利なんで、特にお願いをいたしておきます。
  107. 横山利秋

    横山分科員 私は深く通産大臣を信頼しておるものですから……。そういうお話ですと、これから約三十分の間に十人くらいの各省の人を呼ばなければならぬ。  次は労働力の確保という点であります。私は名古屋でありますが、何も名古屋ばかりでなく、大都市はほとんどそうでありますが、全国へ人探しに出かけるのであります。中学校出なんかは、去年の暮れごろから中小企業者が話し合って、私どものところですと九州に出かけます。九州に人探しに行って、向こうから職業紹介所の人が来ようものなら、飲ませる、食わせる、みやげを持たせる、大へんなものであります。もう一つ、せるがあるのでありますが、それは他言をはばかりますけれども、そのくらいのことをいたしまして、それで子供が来ない。人手が足りないのに、九州にはまた大へん人手が余っておるのであります。言うまでもなく、中高年令層が余っておる。ところが、ではそういう人たちを押しつけられて中小企業者がほんとうにうまくやれるかというと、そうもいきません。そこで、労働力の再配置、特に中小企業の業界に対する労働力の配置という点については、通産大臣としては何らかの御工夫や御努力があってしかるべきだと思いますが、今までどんなことをしていただきましたか、参考のためにお伺いいたしたい。
  108. 福田一

    福田国務大臣 中小企業者が共同して、たとえば従業員のために宿舎をつくる、あるいはそういうような施設をした場合においては、融資その他の面でめんどうを見る、こういうようなことも実はいたしております。それからまた、労働省に連絡いたしまして、中小企業者の方にもできる限り高校卒業生等を回すような方途も講じてもらいたい。県の方で、各県ともそれでやっておると思いますが、方々に出かけて県自体がそういうことをするようにもわれわれは勧奨いたしておりますが、特に具体的に配置転換をするようなふうでの態度はまだとっておりません。
  109. 横山利秋

    横山分科員 これは子供の立場から見ますと、寄らば大樹の陰と昔から言いますけれども、中小企業のところに行くといいんだよ、君がとにかく一つのことをやってみるというなら、大企業へ行ってそろばんの片棒になるよりも、中小企業に入って思う存分自分の力をためしてみろ、こうは言って勧めておるわけであります。けれども、実際問題としては、これは基本法の中で議論すべきことではありましょうけれども、中小企業に入っていくことの魅力というものを政治的につけてやらなければ、子供は、それなら東京に行って、名古屋に行って、一つ中小企業に入って力一ぱい働いてみようという気にはなかなかならぬものであります。そういう状況の中で、なおかつ中小企業の中に労働力を十分とはいかないまでも配置するためには、国や県、市、地方自治体等の並々ならぬ協力がなくてはならぬと思います。私ども少し過当なサービスと言うのでありますけれども、今の中小企業業界で子供を探すために使っておる金は莫大なものがあります。また、その時間は莫大なものがあるのであります。何としてもこれは大臣の非常な熱意をもって——本年はもうおそいくらいでありますけれども、まだまだ日本産業の発展上中小企業に対する適切な労働力の配置ということは必要でありますから、格段の御工夫が願いたいと考えるのでありますが、もう一回御意見を伺いたいと思います。
  110. 福田一

    福田国務大臣 労働省にも連絡いたしまして、また格段の努力をいたしたいと思います。
  111. 横山利秋

    横山分科員 第三番目は金融の問題なんであります。今もそこでばか話をしておったわけでありますが、大蔵省所管の国民金融公庫と、それから通産省は中小企業金融公庫、商工中金はこっちじゃないかと言っておったのですが、あなたの管轄かどうか知りませんが、商工中金でも、歩積み、両建とはっきり言ったら怒るかもしれませんが、実際問題としては、割引商工債券を二割から三割買えというのが普通のことになっておる。去年の秋でしたか、私は、一体商工中金というのは、金を借りるところか貸すところか、どっちだと言って、善意で糾弾したことがあるわけであります。こういうようなことがいかぬというわけで——最近におきましては、この歩積み、両建の実績はどのくらい行なわれておるのか。私の知っておりますある信用金庫では五割から七割であります。百万円借りるには、五十万円か七十万円まで定期に積まなくては百万円借りられないのでありますから、結局ほんとうに借りられるのはたった三十万円で、百万円の金利を払っていくという、ばかげたことが実際行なわれておる。何でそんなことをするのだと言いましたら、余談でありますけれども、自分のところの信用金庫は日陰で認可されておる、町のまん中でない郡部で認可されておるのだから、これだけのことをやらなければどうしてもやっていけません、ないはずないと言ったら、そんな中小企業へ貸すよりも、高利で大きいところへ貸した方がもうかる、ざっくばらんな話、こういうのであります。あまりにも最近の歩積み、両建はひど過ぎる。私は、中小企業者の立場からいって、通産大臣としてこの歩積み、両建はがんとして是正をはかってもらわなければならぬ。それに付帯して第二番目には、今の商工中金は商工債券を売るということを宿命的に負っておるのですから、それを売らなくてもいいような方法を考えたらどうか。今まで組合金融でありますから、国民金融公庫と中小企業金融公庫とは商工中金は違うのだと言っていたけれども、なぜ一緒にしてはいけないのか、ここまで踏み切ってはどうなのかと私は考えます。第三番目に、それと関連をして、中小企業金融公庫では年九分です。団結せよ団結せよと言って、団結をして商工中金へ行けば九分三厘です。ここにも理屈の上で矛盾がある。それはなぜかということは、私もあなたも百も承知の上ですけれども、中小企業者団結せよ、団結すれば銭が借りやすい、借りやすいところの金利が九分三厘で、一人で借りれば九分、こういうところに本質的な問題があるから、この際、一つ商工中金は性格を変えたらどうか。ビルディングもりっぱになったのですから、中身も少し変えたらどうか、こういうふうに考えるのですが、いかがでしょう。
  112. 福田一

    福田国務大臣 歩積み、両建の問題、それから金利の問題、全くあなたと同意見でございまして、この点は、閣議においても私は二回くらい発言いたしておると思います。そうして大蔵大臣も、これは何としてもやめさせねばいけないということで、歩積み、両建の問題は研究をいたしてくれておると思います。金利の問題は、予算編成のときにもいろいろ努力をいたしてみたのでありますが、今のところ、まだ御期待に沿い得ないことは非常に残念であります。将来、これはあなたの仰せの通り、商工中金は金利が高いということは、ぜひやめさせるべきであると考えておる次第であります。
  113. 横山利秋

    横山分科員 もう一つ、今度は具体的な問題で恐縮なんですが、まだ商工委員会に上程がされていないそうでありますが、中小企業投資育成株式会社法案というものが出ておるそうです。私は、自分の選挙区のことを言うわけではないけれども、この案を見ますと、東京、大阪に会社を二つ設立するというのです。私は名古屋につくってくれと言うのじゃないですよ。しかし、どうして全国で一つでいかないか、これがまず大前提です。こういう投資会社をつくることの是非論は、時間がないからやめますけれども、今このような複数制に立ってつくるとしたら、名古屋がわいわい言っているから名古屋だ、今度は福岡だ、今度は北海道だ、どんどんこの投資育成株式会社をつくっていかなければならぬ。なぜそんなにたくさんつくらなければならぬのか。これは売った買ったの問題じゃない。それは株を引き受けてやる問題だから、そうきょういってあした引き受けてくれるわけではない。調査期間があるし……。東京に本店を置いて、大阪に支店を置いたら、大阪の人が因るという筋合いの問題ではないと思います。との問題については、少し政治的過ぎるのではないか。従って、東京、大阪しかつくらぬといえば、それなら横山さん、早稻田さん、あなた方は一体どうしているのだ、あなた方みたいなえらい人がおって、なぜ名古屋につくってもらえないか、こういうことになってくる。それでは問題は政治的なことになってしまうのであります。こういうことは好ましくないと思って、この問題については、初めから一つの方が望ましい。そのことの方がやはり経済的にもうまくいくし、きょういってすぐ引き受ける問題ではないのだから、一つにすべきだと言っておったのですが、おかしなことに、東京、大阪、名古屋はといったら、名古屋はない。横山さん、あなたは一体国会で何をしておるのだ、こういうことでは政治はよくない。(「政治献金が少ないんだよ」と呼ぶ者あり)少ないが、そういうことでまた大臣はお働きになる方でもないと、私は深く御信頼しているわけであります。どんなものですか。
  114. 福田一

    福田国務大臣 投資育成会社を一つにしてもいいではないかということでございますが、これは実はアメリカなどで今盛んにやっておりまして、各地にあるわけであります。日本は初めて取り入れるのでありますから、一つで一ぺん経験してみるのもいいが、二つで経験するのもいいし、三つで経験するのもいいし、私は、それはそのやり方の問題だと思います。今回は二つということで一応きめたのは、東京はどうしても一つは置かなければならぬ。そうなると、経済中心だから、大阪にも置かなければならぬ。そうなれば、名古屋だって同じではないか、名古屋に置くと、福岡だ、今あなたのおっしゃる通りです。だんだんふえていく。もし将来効率があれば、ふえた方がいいと思いますが、一つの方がいいではないかということになれば、いろいろ問題があると思います。それは、やはりこういうのは各府県において実情を知っている。あるいは出資の関係その他から見ても、これは何も国だけの金でやるわけではないのですから、今の一応の考え方は、そういう意味において、資金の関係等においてもありますし、それからやはり実情に応じて運営していくという意味からいいますと、商工中金とか中小企業金融公庫なども、東京に置いておいてやればいいのではないかということにもなりますけれども、やはり各支店をどんどんふやしてくれということになります。出張所でいいではないか、いや支店にしてくれ、こういうことになるのは、やはり実情を把握するという意味で、必要になってくると思うのであります。だから、これはむしろ数の多い方がいいのではないかとは思っております。しかし、というて、予算もありますし、いろいろな関係もありますので、今度は一応二つということにしております。しかし、名古屋の方で大へん御希望のあることもありますし、横山さんのような優秀なお方がおいでになって、そういうことを言われてお困りになってはあれかもしれませんので、そこいらはどうなっておりますか、その後の経緯等も十分見た上で私としては対処して参りたい、こう思っております。
  115. 横山利秋

    横山分科員 どうも大臣の御説明が私にはぴんとこないのです。というのは、中小企業金融公庫の支店や出張所がたくさんふえていくのだから、これもふえたっていいだろうというのは、これは質の問題が違う。これは二つあるということは、二つの独立した投資株式会社があるということです。そうすると、たとえば二つにした場合に、名古屋で、それじゃおれのところで増資を引き受けてもらおうというところは、東京におい頼むというのか、大阪におい頼むというのか、あるいはどっちに頼んでもよろしいというのですか、どうなんですか。これはどっちに頼んでもいいのでしょう。そうすると、東京も大阪も両方とも名古屋に押しかけてきて、おれの方で引き受けてやるという競争になりますね。どうですか。
  116. 加藤悌次

    加藤(悌)政府委員 お答えいたします。  名古屋につきましては、今先生御指摘のように、地元が大へんな熱の入れ方でございまして、私ども実は当初から名古屋も入れたいというような感じでおったわけでございます。現在のところ、最終的に決定されたのは、東京と大阪ということになっております。そこで、今のこういった場合に名古屋がどちらに入るかということなんですが、私ども、この会社が今後仕事をやっていく場合に、大体東と西に二つつくりましたけれども、その業務の区域は、適当な地域で全国を二分いたしまして、東京はそれから以北、大阪はそれから以南ということで、かりに東京の投資会社に対して宮城県の中小企業の方から投資をしてほしいといった御要望がある場合は、それを取り上げるというふうに考えておるわけであります。ただ、東と西のどの線で切るかということにつきましては、名古屋の問題もございまして、まだ最終的にはきめておらないようなわけでございます。
  117. 横山利秋

    横山分科員 何でその管轄を分けなければならぬのでしょうかね。私は原案それ自身もちょっとおかしいと思うのだけれども、名古屋の人が東京で増資を引き受けてもらったって、大阪の投資会社に行ったって、別に差しつかえないじゃないですか。どうしても名古屋の人間は東京の投資会社に行かなければならぬという理由はないでしょう。株式市場と同じような問題ではありませんか。名古屋の人が大阪の株式市場に行って株を買ったっていいじゃありませんか。何で分けなければならぬのですか。
  118. 加藤悌次

    加藤(悌)政府委員 今先生の御指摘のような考え方もあるかとも存じますが、とりあえず当初二、三つくりまして、区域も一応分けまして、あと運用の実際を見て今後の制度の運用を考えていったらどうだ、こういうふうに考えておるわけであります。
  119. 横山利秋

    横山分科員 ですから、私はいかぬと言うのですよ。主査もよくおわかりでありましょう。こういうことをやると、全くおかしなことばかり起こってくる。だから投資会社は一つでよろしい。一つにして、そこらへ支店を置いて、わしのところの会社の株を引き受けてちょうだい、そして支店で審査して、東京で認可する、こういう普通順当なやり方をとればいい。それを、それは大阪だ、東京だというものだから、政治的におかしな問題が起こるというのです。先ほど大臣のお話では、大へん含みのある御好意のあるお話で、経過を見て考えるということでしたね、大臣。私は理論的に一つだと言っているのだけれども、私の気持をどう察してくれたのか、大臣は、経過を見てよく考えるから、まあまあ、こうおっしゃっているのですが、そういうお話だったら次に移りたいと思うのですが、どうですか。
  120. 福田一

    福田国務大臣 私としては、先ほど申し上げたように、御要望等もございまして、いろいろのこともあるようでありますから、やはり経過を見て善処するということにしておいていただきたいと思います。
  121. 横山利秋

    横山分科員 経過というのは、法案審査の経過ですか。
  122. 福田一

    福田国務大臣 すべてを含めてでございます。
  123. 横山利秋

    横山分科員 それでは繰り返し、この点については、この法案の内容に私どもは根本的な問題があると思うけれども、少しで本是正しようとするならば、言うことを聞いていただかなければならぬ、これを強く要望しておきます。  その次に、時間がなくてほんの一問だけでやめますが、一体通産大臣として、会社が労働者から金をとって社内預金をさして、私設金融機関をやって、その金を動かして商売をやっているということをどうお考えになりますか。今、問題の社内預金はおそらく一兆円といわれておりますね。しかも、金利は一割、一割二分ですから、労働者としては、おらが会社へ貯金した方がいいとは思う。思うけれども、最近の炭鉱なんかでは、社内預金を返してもらえぬのですよ。大正炭鑛に至っては、三十七年七月十日に退職金の一部三千万円を支払う約束でありましたが、びた一文も支払えない。白炭高松におきましては半カ月で一億五千万円、社内麺金の半額近くが短期間でようやく引き出されました。古河大峰同じく。こういうように社内預、金を立てて、その金を銀行へ預けないで会社が自分で運用してやっておる。これは私設金融機関だ、不特定多数だから、これは出資及び預金に関する法律に抵触するおそれがあるということが、われわれの中では論争の焦点になっておった。けれども、大蔵省では、疑いはあるが、今までのところは実害がなかったから、まあまあということであったのです。ところが、実害がどんどん出てくるのです。この点については、会社運営上、また労使の紛争をなるべく少なくする意味において、長期の立場に立てば、社内預金については一定の制限をなすべきである、こういうふうに考えますが、通産大臣としての御意見を伺いたいのです。
  124. 福田一

    福田国務大臣 御承知のように、貸借は個人同士で自由意思でやるということは認めておる。不特定多数でなければ、これも文句は言えないわけであります。従って、今までは大蔵省でもそれを認めるというか、禁止はいたしておらないのでありますが、一般論としては、私は、今のところまだ大きな弊害は出てきておらないと思う。あなたのおっしゃったような石炭等の問題では、確かにそういう弊害があることはよくわかります。そこで、こういう場合にどうしたらよいかということについては、行政措置でやれるか、法律でやるか、なかなかむずかしい問題でありますので、今後研究をさしていただきたいと思います。
  125. 横山利秋

    横山分科員 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律というものがあるのです。そして労働基準法では、きちんと労働協約としてやっているものはともかく、ほかのものはやってはいかぬことになっておる。大体金融というものは、前に何とかいうおじさんが大へん悪いことをしまして、天下の大問題になりましたが、金融ということについては、非常に制限がやかましいのであります。やかましいから、こういう法律ができて、何人も法律で許された以外に業として不特定多数の人から金を預かってはいかぬことになっておる。たくさんの労働者を雇っているのですから、それが不特定多数といえるかいえないかについては議論の余地がある。けれども、今石炭を中心にして出ていますように、実際問題として社内預金を使い込んでしまって、その社内預金の元本が返済できない、元金保証ができないという状態が続出をしておるときに、まあ社内預金はしょうがないじゃないかということは、もう許されなくなっておるわけです。これはもう労使関係の紛争が今後増大するおそれが多いのでありますから、通産大臣として、何らかこの社内預金についての規制を加えるべきであるというふうに私は考えるのであります。いかがでございますか、もう一度あなたの御意見を伺いたい。
  126. 福田一

    福田国務大臣 この問題はいろいろありますが、自分のところの社内の労務者ということでございますから、ある意味でいえば特定ともいえるわけであります。そういう意味でいえば、そこに今まで禁止されなかった理由も求められるのじゃないかと思うのですが、しかし、事は弊害の問題が出てくるので、ほうっておいていいというわけにもいきませんから、これはどういうふうに処置していいか、研究をしてみたいと思います。
  127. 横山利秋

    横山分科員 それでは最後に、これは感想じみた御質問で恐縮ですが、先ほど労働力を確保する方法を考えると言いましたが、その中の一つの手段として、中小企業労働者のための厚生福祉施設というものを大へん重視されるようになりました。これはあなたの所管外の労働省や厚生省や建設省等の各省で、わが田へ水を引くようなやり方で、福祉施設がどんどんと行なわれておるのです。私がちょっと調べたものによりましても、まず第一に雇用促進事業団の福祉施設、年金福祉事業団の福祉施設、公庫の産業労働者住宅、中小企業振興資金のもの、厚生保険積立金還元融資のもの、特定分譲住宅、中高層、都道府県のやっているもの、多少ニュアンスの相違はありますけれども、何と八つくらいあるのですよ。中小企業者が自分のところの労働者のためにうちを建ててやるとか、給食設備を一緒につくるという場合に、八つくらいある。全くこれは何ともならぬ。どこかに政府の統一窓口、相談所くらいなものができてこなければならぬと言われる。私は、中小企業のためにジョロがたくさんできていくことを必ずしもいかぬと言うわけではない。言うわけではないけれども、今基本法が議論される機会をもって、一つ、このような各省が自分勝手にいろいろつくるものを、ジョロをなるべくまとめてみたら、もっと中小企業者がわかりやすく、もっと恩恵が受けられて、もっと迅速にされるのではないか。私の知っている中小企業者は、横山さん、ここがいけなかったら、今度はあっちをやってみる、ここで認可されなかったら、今度はこっちをやってみるから頼む、こういう言い方であります。まことに、国民の税金、あるいは厚生年金、あるいは国民年金の税金で、こういうふうにジョロがたくさんできて、各省が競い合って、いわゆる過当競争をやって、国の税金をむだに使っておる。中小企業者としても、それで非常に難渋しておるということはつまらぬことだと思いますが、大臣の御感想なり御意見はいかがでございますか。
  128. 福田一

    福田国務大臣 通産省としましては、そういうようなそれぞれの機関に連絡をしまして、少なくとも条件等は同じようにしてもらいたいというようなことも、指導というか、連絡はしております。ただ、あなたのおっしゃる意味は、それとは違うのでありまして、中小企業にそういう金が出るなら、それはプールしておいて、そしてそこで一定の条件をきめて、そこへさえ行けば中小企業者が金を借りられるようにしたらどうか、こういう御意見だと思うのであります。これは確かにみんな不便を感じておりますから、中小企業庁あたりで何かうまい工夫があるか、研究さしてみようと思います。
  129. 田中武夫

    田中(武)分科員 関連して。実は私はきょうは予算委員でなく、傍聴しておったのですが、先ほど来の島本君、それから横山君の質問に対する答弁を聞いておると、一口言いたぐなったので、ちょっと関連します。  まず、最初島本君に対する答弁に関連してでありますけれども、公害の問題です。無過失責任のことについて質問しておったのに対して、答弁があいまいであったと思うのです。先ほど何か課長答弁しておったように、原子力災害補償法は無過失責任を認めております。しかし、それだけでなく、とうの昔から、最高裁でなく、まだ大審院と言っておった時分から、無過失責任ということは判例が出ているのです。「信玄旗かけの松事件」というのを御存じですか。従って、法律的通念としては、もう無過失責任というものは成り立っておるのですよ。それに対して、まだとやかくの御答弁をしているのはどうなんです。なんでしたら、あらためて大審院の判例を私お示ししましようか。だから、それをはっきりして下さい。
  130. 福田一

    福田国務大臣 私は、無過失責任の問題がないと申し上げておるのではありません。それを適用すべきかどうかという問題について、いろいろの問題があるから、そういうことは研究してみなければならない。一体公害があった、あるいはばい煙でそういうものが出たというときに、責任はみんなその工場にあるとか、あるいはその関係工場全部煙を出しているものに適用するのか、そういうことをいろいろやってみますと、具体的にその適用においていろいろ問題がある。それがまだぽっきり具体化しておらないので、やはり物事というのは実行できなければだめですから、それはもうあなたもおわかり願えると思う。私は原則を否定しているのではない。そういうことについてやるが、これは無過失責任で全部やれと言われるから、そのやり方の問題がいろいろある、まだそこまで研究が進んでいない、だから、それは今のところ申し上げられない、こう言っておるのでありまして、無過失責任の問題は、私は否定したつもりで御答弁を申し上げたつもりではないわけでございます。
  131. 田中武夫

    田中(武)分科員 具体的な話し合いがっかなければ、これは裁判所においてやることだと思うのです。しかし、すでにそういった立法例もあり、判例もある。従って、行政指導にあたっては、無過失責任という上に立ってすべきではないか、そう言っているのです。今日のような社会状態の中だったら、いわゆる公の害、公害は、大きな企業あるいは社会機構の中から当然出てくる問題なんです。それは当然民法上の過失を原因とするということでなくして、無過失の場合も賠償の責任があるのだという上に立って指導したい、そういうような御答弁をいただきたいわけです。実際問題は裁判所の問題になるでしょう。
  132. 福田一

    福田国務大臣 お言葉ですが、なかなかそこにむずかしいことがあろうかと思う。たとえばどこか非常に離れたところへ工場を一つつくった。その付近には住民は百人とか二百人しかいない。しかし、煙が出れば公害がやはりある。だから、そこの、工場についても、やはりそういう施設をしたり、何かあった場合、全部責任を負え、こういうふうな考え方になるのか、あるいは一定地域内にどれだけの煙が出たらどういう影響があって、そのときはどうしたらいいか、そういう区分というか、具体的に実施する場合の問題が私はあろうかと思うのであります。私はそこのところを言うて、慎重に答弁をいたしておるのでありまして、何も公害があるのをいいじゃないかというような感じではない。そこはあなたと私は同じだろうと思うのです。その具体化の問題でまだはっきりつかめていない、そういうときに、それは無過失だから何でもやるのだというようなことを言えと島本さんが言われたような感じがしたので、あまりそこまで言うのは遠慮申し上げたいという気持で御答弁をいたしております。御了解を願いたいと思います。
  133. 田中武夫

    田中(武)分科員 それじゃばい煙規制法の問題に関連して言いますが、あのときに、ばい煙だけではいけないという意見をわれわれは言ったのです。しかし、ばい煙は規制法ができたのです。ところが、実際運用にあたって、東京都の条例が先にあるのですよ。そして、規制法で指定する政令の方が基準が下なんです。御存じでしょう。きょうは資料を持ってきていないけれども、そうなっているのです。そうすると、東京都内においては、法律ができたので、むしろ緩和せられたということになるのです。スモッグ等があれだけやかましく言われておるときに、これはどういうことなんです。法律と条例と競合したときには、当然法律が優先するわけです。そうすると、東京都は、今までの都条例できめておるよりも緩和せられたことになるのですが、どうなんですか。
  134. 福田一

    福田国務大臣 私は実は勉強しておりませんで、まことに恐縮ですが、その問題は、立法のときの問題じゃなかろうかと思います。法律をつくるときに、この法律をつくると逆に緩和されるじゃないか、こういうことが明らかにされたとしますね。それが善悪どうであるかという議論はもちろんあるでありましょうが、それをどういうふうにきめるかということは、やはり議会の承認ということになってくるかと思います。そういう承認をした議員はけしからぬ、そういうことをやったのはけしからぬということはどうかと思いますが、やはり法律を制定した以上は、法律に従うより仕方がない、こう思うのであります。そういうわけだから、それは因るから、今後法律を改正した方がいいという御意見であれば、おっしゃる通りだと思いますが、いやしくも法律をきめた以上は、どうにもちょっと仕方がないのではないか、こういう感じを持っております。
  135. 中村三之丞

    中村主査 田中君、もう一問でやめて下さい。
  136. 田中武夫

    田中(武)分科員 それでは、時間がないようだから、申し上げます。これは政令事項なんですよ。省令事項なんです。
  137. 福田一

    福田国務大臣 あなたは法律のようにおっしゃたから……。
  138. 田中武夫

    田中(武)分科員 もとは法律なんです。ばい煙規制法に基づく政令によって規制する、それが条例より下なんです。だから、当然あなたがおっしゃるように、立法のときに東京都の方からも言うべきだったと思うのです。できてしまってから、うちの方が上なんで、これを執行してもらったらうちは因るのだ、こういう議論が起きておる。あなたは御存じのはずですが、ここらが一つ問題なんです。もう一つは、ばい煙規制法じゃなくして、これを広げていって公害規制というように持っていくべきではないか、こういう理論で申し上げておるわけなんです。  時間がありませんから、もう一つ、社内預金の問題ですが、これは大臣よく御存じだろうが、労働基準法の条文は時間がないから申し上げませんが、中に、ともかく労働者を代表するものとの間に労働協約で認めたらいいということになっているのです。ただし、かくかくの条件だということになっている。だから、そういう条件々付して労働基準局へ届け出るわけなんです。この基準法が直る前は許可制だったのです。ところが、基準法が直って届出制になっておる。だから、そのこと自体違法でもなければ、いいわけなんです。ただ問題は、そういうことをして社内預金を受け取っておいて、その会社が分散をしたり倒れたりした場合に、賃金や退職金には先取り特権があるのです。ところが、預金については保護がないのです。それを申し上げておるわけなんです。そういうように答弁してもらいたかったのを言わなかったから、私がかわって答弁した。以上です。
  139. 横山利秋

    横山分科員 希望を申し上げて……。  今私が数々質問をいたしましたのは、通産大臣の所管ではないですけれども、特に考えてもらいたいことを二、三列挙したわけであります。実のところ申しますと、たとえばタクシー、トラックの認可の問題まで大企業対中小企業の問題があり、あるいはお米屋さんのマージンの問題やら、あるいはそのほか例をとれば枚挙にいとまがない。各省の問題で中小企業の問題があるのです。それらの問題は、通産大臣として直接的に管轄ではないから、御発言をなさらない場合が多いと思われるのですけれども、そういう状況でありますから、実は中小企業省を設置したらどうかという意見も、そこはかとなく、やはり私どもも国会へ提案するというしかけになって参りました。法律をつくるつくらないは別といたしまして、今日全国の中小企業者が擢んでおりますのは、だれか一人、中小企業オンリーとは言わないけれども、中小企業の立場になってしっかりとした発旨をし、目々見はっておっていただく人がありそうなものだ、またあってしかるべきだ、農林省があり労働省があって、農民と労働者のことを考えておるように、中小企業者の問題をいかなる省のいかなる問題といわないで、それに目を光らせてもらいたいというのが、今の声だと私は思うわけであります。きわめて率直な言い方をいたしましたが、その意味で二、三の例を引用したのでありますが、大臣はそういう声にこたえて今後の行政を運営していただきたい、こういうふうに希望をいたしまして、大臣の御意見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  140. 福田一

    福田国務大臣 実は中小企業省の問題になりますと、これはいささかわれわれとちょっと感覚が違うところがございまして、中小企業というものの分野を確定して、その仕事の内容等が確定できますと、確かに中小企業省をつくるということは意味があるのでありますが、私たちは、中小企業というものは、ある意味で地続きになっていて、どこの層をとっていくかというような感触でこの問題を解決していく。これだけは中小企業の仕事で、ほかのものはだめだ、そういう考え方で中小企業を見ておらないわけであります。そこに一つの議論の余地はございますが、しかし、今あなたが仰せになった、いつでも中小企業の立場に立って発言をする。非常に困っているところがあったり、不便なところがあったら、そこをよくめんどうを見る人があってしかるべきじゃないかという御意見には、全幅的に賛成であります。気がついたときには、いかなる場合においても、閣議でもどこでも私は言うておるつもりでありますが、もしそういうような面がございましたら、一ついろいろ教えていただいて、効果を上げるようにしていきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
  141. 中村三之丞

    中村主査 以上で通商産業省所管に対する質疑は一応終了いたしました。  午後は三時から再開し、経済企画庁に対する質疑を行なうことといたします。  暫時休憩いたします。    午後二時六分休憩      ————◇—————    午後三時七分開議
  142. 中村三之丞

    中村主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十八年度一般会計予算中、経済企画庁所管を議題といたします。  これより質疑に入ります。田口誠治君。
  143. 田口誠治

    田口(誠)分科員 時間の関係もございますので、私は新産業都市建設促進法並びに低開発地域工業開発促進法をめぐる諸問題についてお伺いをいたしたいと思い思います。  池田内閣は経済成長計画をいたしまして、新産業都市あるいは低開発地域を指定して、日本経済発展をいたそうという考え方の上に立って法案を出したわけでございます。そこでまず第一にお伺いをいたしたいことは、新産業都市建設促進法に基づく脂定はいまだになされておりませんけれども、聞くところによりますと、当初から全国に十カ所ぐらい指定をして、日本の基幹産業を発展させる、こういう考え方でこの法案が出されたようでございます。ところが審議の過程におきまして、わが党から、特にこの法案の今後の推進過程において必要なことを考えてみましたときに、政府の考えておるところの太平洋沿いに十カ所くらいの大規模な産業都市を構成するということだけでは、その他の地域の開発が非常におくれて格差ができていく、こういうことから、百万、百五十万という都市の構成ではいけない、やはり内陸地帯にも新産業都市の指定を行なって地域の路展をさせ、ひいては経済発展に寄与させるようにしなければならない、こういう考え方の上に立ちまして、附帯決議、修正案を出して決定を見たおけでございます。御承知通りその修正案の内容の最も重要なことは、雇用の安定事項と、もう一つは、大規模な都市ということになりますと一定の地域に制限されますので、内陸地帯の発展もやらなければならないということから、相当規模ということで、六、七十万から八十万というような都市を構成するという考えの上に立って内容の修正を行なって、四十国会で通過させたわけでございますが、その後政府の方ではいろいろ調査をされまして、どこに指定するかということについて検討を加えられているようでございまするが、ただ私はここで非常に疑問に思い、また不満に考えますることは、政府の出したところの原案が修正されまして、言いかえますなれば、大規模ということが相当規模ということに修正されたことにおいて、政府考え方が大きく変わってきたということから、何とか政府の考えて一おった原案の線に沿って指定を行ないたいという考え方を持たれたと思うわけでございますが、どこへ相談されたか知りませんけれども、「新産業都市の区域の指定に関する当面の運用基本方針」というのをおつくりになっておるわけでございます。この内容を拝見をいたしますると、臨海性工業開発中心になっておって、指定も臨海工業地帯に重点が置かれていくということになっておりまするから、内陸地帯の指定ということは望まれないというように判断もされるわけです。  それで私はまず第一にお伺いをいたしたいことは、この当面の運用基本方針はどういうような経緯をたどっておつくりになったのか、まずこれをお伺いいたしたいと思います。
  144. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御答弁の順序がちょっと逆になるかもしれませんが、内陸地帯には新産業都市を置かないという考え方を、各要請大臣が意思統一をして持っておるかといいますと、そういうことはございません。ことに、一般に臨海工業地帯を考えますと、製鉄業であるとかあるいは石油化学であるとか、いわゆるコンビナートに属するものは臨海工業地帯がいいということは、これは原料、製品の輸送その他の関係から申せるわけでございましょうけれども、わが国のこれから五年なり七年なりの先をぼんやり考えてみましても、そうあっちこっちにそういう製鉄業、石油化学ができるということでもなかろうと思うわけでございます。むしろ機械工業その他、臨海でなくてもいいような種類の産業が伸びるというととも望ましいことだというふうに私自身は考えるわけでございます。臨海でなければいかぬという基本的な意思の統一があるというわけでは、現在のところございません。  そこで、この基本方針でございますが、これは指定を希望される各地方から必要な資料などを出してもらう必要がございましたので、それをいたします際に、大体どういう基本方針で考えていくかという問題を関係の各省で相談いたしまして、一案を得て地方産業開発審議会にかけたわけでございます。その結果として、ただいま仰せになりました基本方針というものを一応定めた、こういうことでございまして、確かに考え方の重点は臨海性工業開発中心だというところまでは申しておりますけれども、それに限る、内陸的なものは排除するというような思想ではないわけでございます。
  145. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そこで私はただいまの長官からのお答えは、お答えとしてお聞きをしておきますが、当面の基本方針の1、2、3、4を読んでみまして、先ほど私が申し上げたことがそのまま実行に移されるのではないかという非常な心配があるので、なお突っ込んで質問を申し上げたいと思います。  これはお手元にあると思いますが、この運用の基本方針の一は「工業開発中心として、総合的な都市的機能をもった産業都市が形成される可能性のある区域を、新産業都市の区域として指定するものとするが、当面、臨海性工業開発中心とするものに指定の重点をおくものとする。」、2は「新産業都市の区域の指定は、全国総合開発計画にいう開発地域を優先するものとする。」、3、「新産業都市の区域の指定の数は、おおむね10ケ所程度とする。」、4、「新産業都市の区域の指定を申請しようとする区域を対象として、申請書の提出が行なわれる前に、あらかじめ、法第9条に基づく基礎調査を行なうものとする。」、こう書いてありますが、このうちの2、3の項を見ますと、もう臨海工業地帯でなければならないという印象を受けますし、それから十カ所程度とするということになりますと、内陸地帯は指定がこないのではないか、こういう心配がされるわけです。それでこの項目は、今長官が御答弁なすったように、この運用の基本方針の2、3にかかわらず、内陸地帯にも置くのだということと、それからおおむね十カ所程度とするということは、十カ所ということにはこだわらないのだ、十五カ所でも二十カ所でも指定をするのだというように、先ほどの御答弁を、この運用方針の2、3項を見て判断を下させていただいても間違いございませんか、その点を一つ確認をしておきたいと思います。
  146. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこまで仰せになりますと、多少私どもの考えておりますことと違うのでございまして、運用方針にございますように、臨海性工業開発中心とするものに重点を置くということは、あくまで重点の置き方はそうでございますけれども、一つのそういう予断を持って各地から出て参りました資料を検討すると、もう内陸はどっちみち考えないのだとまで申しているものではございません。重点は臨海といたしましても、内陸もあり得ることである。それからおおむね十カ所程度とするということは、あまりこだわらぬか、二十カ所もやるかとおっしゃいますと、それについては、私自身はやはりかなりこだわりたい気持を持っておるわけでございます。各地方のデータを見まして、実はただいま、作業は今月の初めから出ましたデータに基づきまして、午前中と午後と一カ所ずつ各地方からお出を願って、各省集まってお話を聞かせてもらっておるわけでございます。一日置きにやっておりますから、四月一ぱいかかるかと思いますが、そういうヒヤリングが終わりましたあと、要請大臣が集まりまして、ヒヤリングの結果を検討しながら大体どことどこ、あるいは何カ所というような基本的な意思統一をいたさなければなりません。私どもの役所はその取りまとめ役みたいな法制の建前になっておるわけでございますが、各要請大臣がおのおの意見を当然お持ちになるわけでございますから、私だけの意見が唯一の意見というわけではないのでありますけれども、あまり総花的になってはいけないということは、衆議院の御決議にもございます。どれをもって総花的というかということは、要するに量的な問題でございましょうが、やはり相当の公共投資を先行してやっていくということを考えて参りますと、そう二十もございましたのでは、重点的な投資はやはり困難であろうというふうに考えておるわけでございまして、おおむね十カ所程度というのは——多少の幅は持っております、持っておりますが、二十というようなことにたりますと、将来の運用が危惧されるわけでございますので、各省でこの意思統一を運用方針としていたしました通り、ある程度の幅を持った十カ所程度ということを考えておるわけでございます。
  147. 田口誠治

    田口(誠)分科員 いずれにいたしましても、この法案は日本工業を発展させ、経済発展に寄与させることが目的になっておりますので、全国的にこの地域の指定を按分いたしまして、全国各地から必要な製品を生産をし、そうして現在飽和状態になっておる輸送密度の解消も、相当産業が発展をいたしましても支障のないというようなことも考えつつ、この指定というものは行なわなければならないわけでございまして、ただ単に臨海工業地帯、特に太平洋沿岸沿いだけに重点を置くということになりますと、今日ですら輸送面では飽和状態に相なっておりまして、輸送密度というものが、何とかしなければならないというような現状でございますので、私は、企画庁といたしましては、そういうような総合的な判断の上に立っておそらく検討されておると思うので、あとから意見は意見として申し上げまするが、そういう意味での考え方の上に立って私は質問をいたしておるようなわけです。そこで、現在新産業都市の指定を申請してきておる地域、県は何カ所くらいでございますか。
  148. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 個所にいたしまして四十三でございます。府県にいたしますと、たしか北海道が四カ所、広島が二カ所、ない県もございますので三十九県でございます。個所は四十三カ所でございます。
  149. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それで臨海工業地帯と申しましても、必ずしも太平洋沿岸ということに限ってはおりません。日本海の沿岸沿いも含んでおるわけなのですが、そうしますと、総合的な計画をいたしまするときには、表日本と裏日本にこういう重工業の地帯をつくった場合には、加工的な産業をどこに置くかということになりますと、必然的に内陸地帯に置かなければならない、こういうことに相なってくると思うわけであります。従って、新産業都市を構成する場合の最も絶対的な必要条件といたしましては、やはり港湾があり、交通の便が可能であり、水資源が十分である、この三つの条件が絶対必要条件に相なっております。そこで、指定をいたしました場合には、優先的にまず輸送網の整備をしなければならない、こういうことになりますると、裏日本と表日本、言いかえまするならば、私どもの地域からいきますと、東海経済ブロックと、北陸経済ブロックに置いた場合に、加工的な産業を発展させようとすると、その中に入っておる内陸地帯に加工的な産業を発展させて、裏と表と、輸送網、道路の整備というようなこともしなければならないと思うわけです。そういうことから、私は、およそ企画庁の方で構想を描いておられる現在の指定地域だけでは足らないと思うわけなんです。きょう御質問申し上げましても、どこどこを指定する予定であるという御答弁がないと思いまするので、私はその質問はいたしませんが、構想はもうできておるようです。それで、四月終わればおそらく指定され、これが発表される段階になろうと思うのですが、そういうときに、この運用基本方針に基づいて十カ所ということになりますると、県で三十九、四十三カ所も申請しておるということにたりますると、相当内陸地帯で申請をしておるところがあると思うのです。大きな不満を抱いて、今度省の方へいろいろと運動することになろうと思いまするが、そういうことから、十カ所ということにはこだわらないんだ、十カ所以上もあり得るんだということ、十カ所以上は五つあるか十あるか、その点は明確に示していただくことがむずかしいと思いまするけれども、十カ所にこだわらないんだ、十カ所以上もあるのだということは、この際言質をいただくことはできると思いますが、どうでございますか。
  150. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど裏日本のことについて言及をなさったわけでございます。確かに私どもも、どうしましても、ただいままでの熟度から考えますと、表日本側に適格地がありやすいというのは事実でございます。かりに五年なり七年なり先のことを考え、また、この法律が地域格差是正のための拠点を設けるという考え方をしておることもございまして、裏日本に何とかして適地を見つけたいという意思は持っております。それから東北とか九州、地域格差の大きいところにもなるべく適地を求めたいという気持があるわけでございます。そういう点では、田口委員のおっしゃておられますことはよくわかります。そういう気持は持っております。ただこの十カ所というのは、ある程度幅を持って私自身は考えておるわけでございますが、しかし二十になりましたら十カ所程度というわけにはどうも参らないと思いますし、また現実の予算の割り振りを考えましても、相当の投資をするとすれば、やはりそう多くてはやりがたい、実効を上げにくいと考えておりますので、多少の幅は持っておるというところまでは申し上げることができると思  います。
  151. 田口誠治

    田口(誠)分科員 ただいまの御答弁では、十カ所にこだわっておらない、多少の幅を持っておるという答弁でございましたが、それは今日私の質問に対して二十カ所やるとか、三十カ所やるというような答弁があれば、どっと各地から陳情運動責めされるから、ちょっときょうのところではそういう答弁をいただくことはできないと思いますけれども、私は、ただいまの御答弁から、まあ十カ所にはこだわらないんだ、それ以上あるんだというように認識をさしていただきます。  そこで、そうなりますと先ほど来私が申しましたように、重工業の場合は、現在のところでは太平洋岸沿いにずっとできておるわけなんですが、やはり産業を発展させようといたしますれば、重工業だけではだめなんですね。加工工業も発展させなければならない、こういうことになるわけでございます。そうしますれば、現在あるところの重工業地帯をそのまま新産業都市に指定をして、そうして発展をさせるということはできますけれども、、軽工業あるいは加工工業地帯にするというようなことは、なかなかむずかしいので、それはどこかに求めなければいかぬ。求めようとすればやはり内陸地帯へ求めなければならない、こういうことに必然的になると思います。従って、ここでお伺いをいたしたいことは、私がただいま申しましたように、重工業本位だけではいけない。やはり加工工業、軽工業も同時に発展をさせることが、日本経済を発展さすことであるという、このことについては同意見であるのか、相違があるのか、ちょっと承っておきたいと思います。
  152. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 拠点という考え方は、やはりただいま御指摘のような考え方に立っておると思います。かりに臨海性工業を拠点として、それがただいま仰せられましたような各種の産業に、またその新産業都市の周辺に伝播していく、そういう考え方が拠点という考え方でございますから、当然仰せになりましたようなことは考えております。また冒頭に申し上げましたように、あえて臨海地帯のみに限る、それ以外は排除するという意味ではないと申し上げましたのも、そうあっちこっちにいわゆる重化学工業ができるという見通しでもございませんし、またそれが全面的にいいのかどうかという問題もあるわけでありますから、それだけに限って、それ以外のものはどうでもいいというのではなくて、むしろ中には機械工業などの内陸的なものもございますかもしれませんし、また重化学工業を拠点にしてそういう加工業などが発展していくということは、むしろ法律のねらっておるところでございますから、ただいまのお考えに別段私ども変わった、異論を持っておるわけではございません。
  153. 田口誠治

    田口(誠)分科員 ただいまのお答えは、ちょっと回りくどいお答えになっておりましたが、私の申し上げたことと相違がないというように受け取ってよろしいのですか。
  154. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御質問も非常にストレートではございませんでしたから、私の返事も多少ストレートでなかったので何でございましたが……。
  155. 田口誠治

    田口(誠)分科員 私は当然、私の先ほど申しましたことを回りくどく御回答があったものと解釈をいたしておきます。  そこで、全国広うございますが、私はやはり自分の地元の方が一番明るうございまして、中部の経済圏内が一番詳しいわけなんです。それで中部の場合を考えてみますと、名古屋を中心といたしまして、周囲の各県がそれぞれの立場において、それぞれの計画によって経済発展に寄与いたしておるわけなんです。そこで問題は、新産業都市の法案の出ましたときに、大規模の都市という打ち出し方でいきますと、名古屋という大都市があれば、岐阜県の場合は岐阜、羽島、大垣を中心に新産業都市の指定を申請をしても、近くに名古屋という大都市があってだめじゃないかということもあり得るから、そうしてまた重工業だけではだめなんだから、軽工業も発展させなければならないし、加工工業も絶対必要であるから、そういうことも考え合わせ、また雇用の面も考え合わせまして、そうして相当規模ということに改正をいたしたわけなんです。従って、相当規模ということになりますれば、名古屋という大都市があって毛岐阜県の場合はよろしいということに必然的になるわけでございまして、そういうようなことから——特に私は当然いろいろな条件から考えまして、岐阜県が申請した場合には、一番最初に指定を受けられる条件を整えておるところだ、こういうように自分には思っておるわけなんでございます。ただそう思っておりましたけれども、この運用基本方針の二、三を見ますと、おおむね十カ所だ、臨海工業地帯だ、こういうような打ち出し方がしてありますと、これはなかなかむずかしい面もあるんじゃないかというような憂えをするわけなんです。それで率直に申し上げまして、私は中部の経済発展というのは、関東、関西の中間にありまして、臨海工業地帯のみならず、内陸地帯も、交通、運輸の関係は、新産業都市に指定されるされぬにかかわらず、道路網の整備、輸送網の整備というのは、これは当然つくられてもおりますし、今後これをなお改良してもらわなければならない面があるわけなんです。そうしてやはり日本経済を発展させようといたしますれば、一番の中枢部であるところの中部の経済圏をほうっておいて、日本経済を発展さすということは、なかなか技術的にむずかしいと思うわけです。こういうようなことから、中部の経済圏の発展ということは、やはり大きく政府としても意を置いていただかなくてはならないと思いますし、特に裏日本との関係を考えてみましても、私は岐阜でございますが、岐阜県の立場で申しましても、名古屋から北陸へ通ずるところの重要な基幹道路というものは、これは必要であり、そういうようなことから、まず第一本としては、岐阜−高岡線の国道も、今改良工事が進んでおるようなわけでございますし、これだけでは私は足りないと思いますが、そういうようなことから——、時間がありませんので、あまり外まわりをやっておっては、私の言おうとすることが言えませんので先を急ぎますが、とにかく名古屋を中心とするところの中部の経済圏の発展ということは、やはり日本経済の発展の中枢部であって、これをおろそかにして日本経済を発展さすということは、なかなかむずかしいということをまず頭に置いていただきたいと思います。  それから岐阜県の方からも、岐阜、大垣、羽島の三市と、それから二十七町六村を含めた新産業都市の申請が出ておるわけなのです。それで、私はただ手前みそで申し上げるわけではございませんが、ただいま申しましたように、中部を日本経済発展の中枢部として、今後発展をさせなければならないという点から、政治家として考えてみましても、内陸地帯であるけれども、岐阜県の新産業都市の申請を大きく取り上げる必要があるというように私は判断をいたしておるわけなのです。特に交通網にいたしましても、現在のように輸送量が多くなって、非常に荷動きがひんぱんに行なわれるようになりました今日においては、現在あるところの道路だけでは足りない面もございますけれども、やはり一番重要な条件の一つになっておる交通の関係を考えましても、岐阜県の場合は全く条件に合っております。それから水の関係は、水資源は、これはどこへいっても自慢ができるので、大垣を中心として非常にいい水が豊富にあるところでございまして、そしてどんなに工場を誘致いたしましても、やはり水に不足するというようなことは——南の方へいきますと、若干そういう点が憂慮されて、岐阜の方から水をもらってこなければいかぬというような意見も出ているくらいでありますから、そういうことは融通し合うといたしましても、岐阜県自体といたしましては、水の問題につきましては、これはもう絶対的に豊富であるわけです。そして、特に雇用の面はどうかと申しますれば、用は、今非常に所得の低い農民がたくさんおり、ただいま申しましたところの三市二十七町六村では、四万町歩ほどございますか、こういう広い平野の中に農地を持っておるわけでございますが、しかし、こういう農地を持っておりましても、現在の日本の農業政策の状態では、非常に農業所得というものが低くて、そして次男、三男というものはどこかへ出かせぎに行なくてはならないという現状でございますから、どこの地点へどのような大工場がきましても、雇用を確保するというようなことは、これはもうほんとうに楽々とできるといういい条件々備えておるわけなんです。しかも、今日この広い農地を持っておりまして、農民所得が低い今日において、何とか農民所得を増大する方法はないかといって、毎年々々国会では、委員会等でいろいろやってはおりますけれども、抜本的な施策がとられておりませんので、私はやはり農業の所得を発展させようといたしましても、どうしても新産業都市の指定を受けて、ここへ多くの工場を誘致し、そして道路網を拡充強化することにおいて、やはり農民の要望していることを満たすことができ得ると思うのですが、これは、農地局長もお見えになりますが、農業の発展というような面につきましても、私は今の新産業都市の指定は、岐阜県の場合は絶対に必要だと思う。これは、岐阜県の場合と言うと語弊があるかもしれませんけれども、こういう広い農地を持っているところ、所得の低い農民のたくさんいるところでは、やはり新産業都市の指定を受けて、多くの工業を建設することが絶対必要ではないか、こういうように考えておるのですが、農民の立場の上に立っても、また農民所得を増大するという一つ考え方の上に立っても、絶対必要であるという私のこの主張に対して、農地関係の局長さんから、一言お伺いいたしたいと思うわけです。
  156. 任田新治

    任田政府委員 ただいま御指摘の問題でございますが、岐阜、大垣、羽島のあの地帯におきましては、一般的に標高は低い濃尾平野の中心地でございます。従って、われわれどもの所管しておりますところの土地改良事業は、従来から、排水に主眼を履きました排水工事が活発であり、また区画整理も、従来相当活発に行なわれて参ったのでありますが、あの地域の産業というものは非常に活発になって参りまして、現在ではその地域の農地転用というものが、相当早いテンポで行なわれておるわけであります。それぞれ様相が変わって参っておるわけでありますので、われわれとしては、これが農地から早く工場に転換されていく、あるいは宅地として転換されていくということになりますと、区画整理あるいは排水事業の中止もやむないというふうには思っておりますが、一方御承知通り、低所得の農家におきまして、幾らかでも兼業によって所得を上げるということにつきましては、単に大垣、岐阜、羽島の地域のみならず、国全体として、その地域々々においての特殊事情によって、この点はやむを得ないことではないかというふうに思っておるわけであります。大体の状況としては、われわれはそのように考えております。
  157. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それで結論的には、新産業都市の指定を受けさせて、周囲の農民所得を増大させることを好ましいと考えておられる、こういうことなんですね。
  158. 任田新治

    任田政府委員 ただいま御指摘の問題でございますが、先ほど宮澤長官もおっしゃいました通り、全国四十三地区につきまして、それぞれ要請大臣の担当で現在調査を続けておるわけでありまして、全体の姿からいいまして、岐阜、大垣、羽島の地域がどの程度の地位にあるかということは、調査の結果でなければ申し上げられないのじゃないか、かように思います。
  159. 田口誠治

    田口(誠)分科員 大体日本の農業政策というのはむずかしいということは、もうだれも言っていることであって、これは議論のないことなんです。従って現在の状態の中で、農民所得を増大させ、農民の要求に沿うような政策をとろうとするには、今のところでは、これならよろしいという政策が見つかって実施されておらないわけなんです。そういうような状態だから、私は新産業都市の指定を行なって、工場を誘致し、農民の子弟たらが近くの工場通って収入を得るということ、そしてまた、都市の周囲の農村は、農作物一つとらえてみましても、相当有利に販売も行なうことができ得るというようなことを考えてみれば、農地局としても、そういうことが好ましいというように御答弁のあるのが私は当然であろうと思いまするけれども、先ほど長官が何だか回りくどいような、渋ったような答弁をされているので、農地局の方でずばりとくると、何だか省内で工合が悪いというようなことを遠慮して、局長はずばりとした答弁をされておらないと思いまするけれども、やはり日本の農業を発展さしたり、農民所得を増大させ、経済を発展さすということについて、こういう場においては、それぞれの持ち前を堂々と発表をしていただく公務員でなければならないと私は思うのです。従って私は、今のところでは、民主化されておるといっても、なかなかそういう点においてむずかしさはあろうと思うので、一つの政治問題であるから、なかなか官庁においでになる局長さんあたりが私らの質問にひっかかって答弁をするというようなことになったら大へんだというようなことを頭に置いておられるから、どうもわけのわからぬような答弁になっておるが、実際に農民所得を増大さすことに取り組んでおられるのなら、私の申し上げたことに対してノーという答えは出ないと思うんですが、もう一度その点だけ、イエスかノーかだけでもいいから、あまりしかられぬ程度でもよろしいから、しっかりしたあなたの腹一ぱいのところを一つ言ってもらいたいと思います。
  160. 任田新治

    任田政府委員 この新産業都市に指定する一つの基準、特に農林省の関係の基準といたしましては、われわれ最も大きく考えておる問題といたしまして、国営、県営の土地改良事業が実施され、しかも最近実施され、ないしは実施中のものであるというようなことがありますと、農業それ自体のために国が助成をする、ないしはあと押しをしておる事業が別の目的に転換されていくわけでありますので、その点からの問題といたしまして、非常に農林省としては重視しておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、あの地域においては相当活発な灌漑排水事業が行なわれておりますので、そういう点も考えますと、全国的にこの四十三地区のうちどの程度の位置につくか、あるかということについては、今私としましては、調査の結果が出て参りませんので、明快にお答えすることは困難であろうと思います。
  161. 田口誠治

    田口(誠)分科員 農業関係については、またの機会に私は質問したり討論をしてみたいと思います。時間の催促がございましたので、エチケットを守ります。  そこで私は、今までの質疑応答では何だかつかみどころがないわけなんです。つかみどころがないというのは、私の主張しておることはなるほどという考え方はお持ちになりまするけれども、やはり一つ考え方を持っておられるので、ここに私が持っておりまするような基準の基本方針をつくってもおられ、それでそういうことにこだわっておられるから、明快な答弁がいただけぬと思うのですが、大体この基準というものは、これは審議会にはかけられておりまするけれども、おそらく、審議会にかけたりいろいろする前に、今与党は自民党でありますから、自民党の政調の了解ぐらいは何事も得て省の方ではやっておいでになりますけれども、この運用基本方針だけはおそらく政調へかかっておらぬと思うのです。そうでしょう。自民党の政調へもかかっておらぬようなものは、おそらく相当の反発もきて、これはつくってみてもこの通りはできません。従って私は、質疑応答しておると時間が長くなりまするから、私の方から一方的に申し上げます。というのは、臨海工業地帝に重点を置くことについての必要性ということを私は認めます。ところが、一つの例を引いてみますると、現在臨海工業地帯にあるところの重工業は、相当の設備投資を行なって、大規模な工場をつくっておりまするけれども、全部機械は動いておらないわけです。こういうところも、それは新産業都市の指定はしてもらわなければいかぬけれども、このような状態であるから、私はこういうところへだけ新産業都市の指定をして日本の重工業を発展させようとすることは、これは将来大きな誤りを来たすのではないか、かように考えておりまするし、重工業の発展と同時に、軽工業、加工工業の発展は絶対的に必要であるということからいきましても、私の先ほど来の主張がわかっていただけるだろうと思います。特に中部経済圏内は、これは東西の経済圏の中間にありまして、中部の経済圏を無視して日本経済を発展さすということは、これはやはり交通輸送その他いろいろの面においても絶対的に不可能であります。それから、裏日本に新産業都市を建設したり、低開発地域を指定しようといたしますれば、どうしても、頼んでも岐阜県を通らしてもらわねばならぬということになるのです。こういう地理的な条件を岐阜県は有しておりまするし、水の面につきましては、くどくは申し上げませんけれども、全く日本一と私は主張したいくらい水資源の豊富なところでございまして、そうして単なる水資源というようなことだけでなしに、その他の雇用の関係、それから農地の保有関係、こういうような面も絶対的にこの基準にかなうところの条件を備えておると思うのです。  それで、委員長、ここで質問を打ち切りますが、私一つだけ申し上げたいと思いますのは、この新産業都市を建設するということで日本経済を発展させようとすると、やはり輸送網を拡充強化しなくてはなりませんが、現在日本の実態を見ますると、岐阜から名古屋の国道を見ましても、もう自動車で一ぱいで、自転車や単車に乗っておっても自動車からちょっと見にくいくらいなんです。特にその道路を徒歩で歩いたりしておったら、危険でもう歩くことができないわけなんです。だから、一方通行でもう一本新設して、一方通行の道路網を建設しなければならないというような状態にあるわけなんですが、これは中部地区だけではありません。私は、いろいろな方法はあろうと思いますけれども、建設省といたしましても、やはり百年の大計を立てて、先進国に見られるように、二階建、三階建の道路をつくって、そうして一方通行を行なうというようなことの構想をやる必要が絶対にあるのじゃないか。特に、今度の雪害地の状態を見ますると、幾ら除雪しようといたしましても、雪の置き場がないということなんです。こういうことを考えてみますると、やはり道路の交差くらいではない、二重三重に道路をつくるということは絶対必要であろうと思いまするし、諸外国のようにたくさんの面積を持っておりませんので、狭いこの日本の土地で、そら鉄道だ、道路だといって田地田畑をくずされるということは、農民にとっても非常に苦痛でありまするから、私は、思い切ってこの際二階建、三階建の道路網をつくりまして、そうして今後日本産業がどんなに搭達しても、どんなに輸送量がふえても、輸送密度が飽和状態を来たさないという百年の大計のもとにやって承らわなくてはならないと思うのです。特に中部地区の関係を見ましてはこの点を痛感するわけでございまするが、こういう点につきまして建設省の御意見を承って、ただいま私の申しました岐阜県の諸条件を勘案をしていただき、新産業都市の指定は、おそらく十の中へは含まれておると思いますが、もし含まっておらなければ、十にこだわらないということでございますから、ぜひ入れていただいて、中部の経済の発展が即東西の経済発展に寄与できるような体制をこの際つくってもらいたい。こういうことを要望して、まず建設省の方から一つ答弁をいただき、私の質問を終わりたいと思います。
  162. 池田廸弘

    ○池田説明員 ただいまの御意見につきましては、その必要性も十分考えられますので、十分に今後検討して参りたいと思います。   〔主査退席、仮谷主査代理着席〕
  163. 仮谷忠男

    ○仮谷主査代理 島本虎三君。
  164. 島本虎三

    島本分科員 大体水の話が進んでおりますので、私の場合も水に関係して、長官初めそれぞれの立場にある人にお伺いしたいと思います。  まず、長官にお伺いする前に事務当局の方から、昭和三十四年以来施行されております水質保全二法、これが実施されて五年になっておりますが、今までの経過について御発表順いたいと思います。
  165. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 今のお話の水質二法でございますが、これは三十四年に施行されて、それ以来企画庁で各省討議いたしまして、各水域ごとに水質の調査をしております。ただいままでに二十八水域について一応調査を完了いたしております。この二十八水域と申しますのは、一応水質調査の基本計画では、四十五年までに百二十一水域を調査することになっております。そのうちの一番最初に、Aランクといたしまして四十二水域をきめたわけであります。四十二水域のうちの二十八水域、大体毎年七水域ずつを調査して参ったのでありますが、三十八水域を調査し、一応完了いたしました。そのうちの江戸川と淀川、木曾川、この三水域につきまして、三十七年中に水系を指定し、水質の基準を設定いたしました。一部は三十八年です。この江戸川、木曾川、淀川につきましてようやく基準を設定したわけでございますが、そのほかの水系につきましては、実は調査が相当先になされて、その後いろいろなデータを解析したりしてやっているわけであります。たとえば石狩川と空知川の合流点とか、夕張川の合流点とかは調査しておりますけれども、石狩川と空知川の合流点から上の方は、これは十四年に調査いたしました。三十四年に調査したものを、いまだに水興の基準設定ができないということは、これは一つの例でございますけれども、石狩川につきまして、言葉は悪いのですが、加害産業と被害の産業がある。その場合に、石狩川につきましては、水質の問題でございますが、これと加害の関係その他につきましては、学者先生方の間にも非常に議論がありまして——三十四年の調査、それに基づくデータを学者先生の間でも十分に勉強していかだいて、いろいろな議論がありまして、これはもうすでに過去六回の部会を開いております。ことしの三月くらいには七回目の部会でありますが、これは専門家に審議していだく場でございます。三月には七回目の専門部会を開きまして、できればこれで水質基準の設定までこぎつけたい、かようなことでございます。  石狩川につきまして一例としてお話しいたしましたが、そのほか遠賀川とか渡良瀬川とか、荒川、これは隅田川でございますが、これらにつきましては、現在部会で検討を続けておりまして、近く水質基準設定の運びになると考えております。
  166. 島本虎三

    島本分科員 基準を設定し、基準の設定が決定した場合に、これを今度どういうふうにして実施していくわけですか、その実施の方法についてこの際具体的に説明してもらいたい。
  167. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 水質保全法で水質の基準が決定いたしますと、若干の余裕期間を置きまして、今度は工場排水法なり、その他この水質基準法でもってきめました基準の実際のエンフォースをはかる段取りになります。この予備期間を置きますのは、もちろん水質基準をきめたのは、既設の工場がございますので、この排水からくる害を除く設備にはかなり金もかかりますし、工事期間も要します。従いまして、大体半年くらいの余裕期間を置いておるわけであります。このできました水質基準を半年くらいで守っていくように、除害設備をつくって、それからあとは工場排水法の領域になりますから、工場排水法で、水を使う設備の届け出をしたり、それが審査を受けまして、工合の悪いときには改善命令が出たり、あるいはもっと除害の計画をはっきりするように要求したり、こういうことになっております。
  168. 島本虎三

    島本分科員 予備期間を置いて工場に注意をして、それから審査を受けて改善して、完全に直って害を及ぼさないきれいな水が出るまでの間には何年くらいかかるのですか。
  169. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 近ごろの水質をよくする機械は非常に発達して参りまして、もちろん金のかかることでございますが、水質基準ができまして、予備期間の間に一応そういう除害設備を完成いたしまして、予備期間が過ぎたあとは企画庁で発表いたしました水質基準を守っていく、こういうことになっております。
  170. 島本虎三

    島本分科員 守っていくまでの間に何年くらい要しますか、大体わかるでしょう。
  171. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 答えが足りなかったようでございますけれども、要するに余裕期間というのは、その間に設備をする、ですから、半年たてば企画庁の発表しました基準に従う、こういうことでございます。
  172. 島本虎三

    島本分科員 どうもあいまいなところなんです。半年くらいというのは最低限度だけれども、それ以上の余裕期間というのはあり得るわけです。ですから、半年だけが余裕期間なんだというのだったら、それからやっていくのですが、大体それくらいですから、それ以上の余裕期間もあるのじゃないか。工場の排水口を調べて、今度はいろいろと審査をして、改善命令を出して、改善するまでの期間を何年くらいか認めてあるのじゃないか。またすぐやれというなら、すぐそれに応じなければ工場をストップさせるのだ、こういうことならいいのです。そういう期間が全然わからないでいて、ただ工場だけにやらせるのだったら、百年河清を待つような結果になるのじゃないか。しり抜けになってしまうのでは困る。だから、その期間について、どのくらいかかったならば完全にその法的な措置——相手も納得させ、機械も改善させ、法に関係のないような水を流すことのでまる余裕期間、ちゃんとこれだけあったならば完全にできますというその期間はどれほどか、三年なり四年なり五年なり、または一年なりというのがあるはずです。ないのですか。
  173. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 今の工場排水法は、薬品をつくっております工場は厚生省とか、酒をつくっております工場は大蔵省とか、そういうふうに主務大臣がそれぞれ分かれておりますが、主として通産大臣でございます。主務大臣は企画庁が水質保全法できめました水質基準を守るということになっておりまして、それを、工場排水法で今度は主務大臣監督していくわけでございます。おっしゃるように、半年くらいの余裕期間で水質基準をちゃんと守っていくだろうと企画庁は思っておるだろうけれども、主務大臣が実際問題としてはもっと余裕期間を認めてあるのじゃなかろうかというお話でありますけれども、私どもとしては、水質基準を企画庁できめました場合に、今度は工場排水法の方で一応エンフォースはできる。あまりのんべんだらりといつまでも除害設備をつくらない場合には、被害は現実にあるわけでございますから、水質基準は、もとより被害と加害とありますから、言葉は当たりませんが、妥協するようなことはないと思います。ですから、水質基準がきまったあと、いつまでも余裕期間のような形でやっておる場合には、当然被害者の方から苦情が出て参りますし、主務大臣としても、そういうことはさせておくわけにはいかぬ、こういうことだと考えております。
  174. 島本虎三

    島本分科員 わかったようでわからないようで困るのです。結局は水質保全の二法案についての実施の窓口は、通産省ではないのです。私も通産省なら通産省で、この前午前中にやってしまったのです。それは経済企画庁だというのです。どうもわけがわからないけれども、そういうふうになっているらしいのです。そうだった場合には、法の要件として長官を通して監督するよりしようがないことになるでしょう。そうなった場合には、通産省通産省関係でそれを規制してやっていく、厚生省の関係は厚生省の関係でそれでは足りないとか何とかいってやっていく、そのほかに国有鉄道の関係までも何かいろいろあるらしい。もちろん建設省がある、農林省がある、いろいろあって利害が輻湊しておる。従って、この窓をあまり関係のない経済企画庁に置いて、頭脳聡明なる経済企画庁長官がここに任命されて、これを実施するようになっておるのです。この点がいろんな点で狂ってしまったらとんでもないことになるのです。それで、今いろいろそっちの方に聞いてみたのですが、どうもあなたの答弁だけだったら、せっかく基準をきめて実施するようになっても、実施するようにきまって何年後かにこれが実施されることになったら、依然としてこれはあいまいになってくるおそれがあるのじゃないか、やってもやっても悪いような基準だったら、出さない方がいいのです。きまった以上は、はっきり、これはこういうようになっているから、何年以内にどうしなさい。この水質保全二法案に対しては、世上しり抜けとか、かご抜けとか、いろいろ世評がありますけれども、曲がりなりにもこれができて、結局窓口ができて、これをちゃんと取り締まるようになった以上、そこを通して完全にやらなければならないのに、あなたの方でもこの二年なら二年、一年なら一年以内にこれは完全に規制するのだ、こういうような一つのめどを立てていないとだめだと思うのです。この窓口である長官は、現在それぞれデータの整った河川があるようです。また整っていない調査中の河川もあるようです。それから全然手をつけていなくても、被害が起きて、それから初めて調査をして、その被害の点においてはある程度まで是正をさした場所もあるようです。水質二法の窓口になった企画庁が依然としていろいろな河川をやって、三川だけは結論が出たけれども、現在まだ結論が出ない重要河川が山ほどある。しかしながら、それが出ても具体的にどうするのだというところまでまだいっていない。こういうのだったら、はなはだ心細いのではないか。やっぱり産業公害を排除するということは、これは近代企業一つの要諦なのです。その重大な点を握って、各省はそれぞれ利害が相反しているために、大きい立場からこれを統一してがっちりやっていくのがあなたの方の責任ではなかろうか。今の答弁でおわかりの通りなんですが、これをどのようにして今後規制していくおつもりですか。   〔仮谷主査代理退席、主査着席〕
  175. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの御質問を伺っておりますと、いかにもごもっともで、私自身が不勉強であるということを非常に恥ずかしく思うわけであります。どういうことでそういうことがきちっといっておらないのであるか、それが行政上の不備であるか、法律上の不備であるか、権限の調整ができておらないのであるか、実は非常にす直に申しまして、私も今まで存じませんでしたので、そういうことはいずれにしてもよろしくないことでございますから、きちんと法律の建前が守れるように、私自身ももう少しよく事情を聞きまして、善処をいたさなければならないと思います。
  176. 島本虎三

    島本分科員 これは重大な問題ですから、ぜひ善処してもらいたい。これ以上追及してもしようがありませんので、あとは善処を要望するだけです。ことにわれわれの方としては、いろいろな問題が出てきております中で、産業公害といわれるものに対しては、他の世界の列国の先進都市と言われるところでは、みんなそういうものをもう加味してやっておるわけです。従って、もういかに優秀な工場であっても、その工場を維持し、能率を上げるためにばい煙を山ほど出して、国民に害を与えるなんということはしておらぬ。それにまた、パルプ会社であっても、それを自分の採算に合わないからといって何でも流してしまって、必要なものだけやる、こういうようなことは近来あまり歓迎されなくなった。企業の採算と同時に、この産業公害という点に対する開眼ということで、だいぶきつくなってきておるわけです。それと同時に、自動車でさえも排気ガスの問題で、これは都民にだいぶ影響があるということで世論が大きくなってきておる。今度産業公害というような点の一つの大きな問題は水なんです。これからいろいろな点で水というものは相当大きな問題で、これはもちろん企業内だけで解決できる問題ではないのです。これを大きく指導する必要があると思うのです。  それで、今度新産業都市の建設促進法、これの指定について今までいろいろやっておりますが、この指定についても、現在まだ水に対する規制というのがしり抜けになっておるのではないか。この点は大臣からも十分各省に通じて、こういうようなことでせっかく産業を育成しても、育成される産業は立っても、それによって国民が害毒を受けるようなやり方では片ちんばですから、こういうことは完全に規制しなければならない。これができるのはおそらくあなたの立場だけだと思います。それぞれ農林省は農林省でちゃんと農民を守り、農政を実施する、それと同時に建設省は建設省、厚生省は厚生省、いろいろありますが、それぞれ違いますから、ここで自分らの権益を守るというのはなにですけれども、利益を擁護するためには必ずしも意見が一致するとは限らないのです。大きな立場から見て指導できるのは、おそらく企画庁のあなたの立場だ。従って、今これから勉強するというならば大いにけっこうで、やっていただかなければならないと思います。  それから新産業都市の建設促進法の指定をする場合に、工業公害ということは現在入っておりませんが、除去するようにして、これを指導していかなければならないし、また法的に不備なところは、これを新たに追加して、こういうような点を十分守っていかなければならないと思います。これに対して御意見を伺いたいと思います。
  177. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 よくわかりましたし、啓発を受けました。水質二法が目途としておるところが行政上の遅滞その他によって守られていないとすれば、当然これは正さなければならないと思いますし、また新産業都市の指定がさらにそういう害の発生によけい加担をするということであってはならないと思いますから、十分注意をいたします。
  178. 島本虎三

    島本分科員 それで、次にお願いしたいのですが、先ほど政府の方からいろいろデータの発表がございましたが、その中で、今加害、被害の問題でそれぞれ問題があるけれども、石狩川については三十四年から調査を開始していたというのです。この調査のやり方も相当問題だと思います。一つ聞いておいてもらいたいのは、昭和三十四年に調査したといいますが、この調査をしたところはどっちの方で、どういうふうな組織でやったか知りません。あの漁民が水質汚濁によってこうむる被害が大きいものでございますから、別にこれを待っていても百年河清を待つようなものだとして、北大の方に調査を委託してやった結果、調査はちゃんと結論が出ておるというのです。北大の方の調査は結論が出ておるのに、国の方が、指定してやっておる方の結論がまだ出ないということになると、これは現に三十億の水揚げが不足し、それによって損害を受けておるというデータが出ておるのです。それで漁民は納得しないのです。北大の方で、これはちゃんとデータができたといっております。そして、これに対してのはっきりした水質の問題については、いつでもこれは提示できるといっております。もしそうした場合には、これは調査でございますから、調査の方法が違う場合はまだしも、皆さんの方でそれを参考にでもして、早くこの結論を出すのでなければならないと思います。石狩川の調査は百年河清を待つような調子でやっていたらとんでもないことになる、こういうように思います。三十四年からやったにしても、三十四、五、六、七、もう四年済んでいることになります。これはもう少しピッチを上げないとだめじゃないかと思います。そこで、この場合、水質汚濁防止に関する完全な実施の点は、長官の方からやると言われましたから、それはいいとして、現在それに対していろいろ被害が増大して、石狩川の漁民四千五百二十五名の人がそれぞれ各協同組合を通じて、三十億の被害を受けたが、まだこれはどこへ請求していいのか、どうしてこれはやっていっていいのか、自分たちの生活もどうしてやっていいのかわからない。道庁へ行っても、道の方では、この水質基準の設定を待っているということで、どうにもできなくて困っておるのです。もうすでに漁民の中でも、二千五百二十四名の人から陳情が山ほどきております。これを見ていただきます。悲惨なものです。こういうような状態の中で、基準ができ上がらないこれを全部やってみたら三十億の被害があった、こういうふうな場合には、これは重大なことです。これは急がなければならないと同時に、こういうような被害に対しては、今のところどこへも持っていきようがないのです。これをどういうふうにしてやったらいいでしょうか。長官、これに対して御意見がありましたら伺いたいと思います。
  179. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先に政府委員からまず答弁をいたします。
  180. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 石狩川の問題につきましては、先生のお話の三十億という数字は、石狩川全体だと思います。これは石狩川の、先ほどお話に出ました空知川の合流点から上の方、それからその次の夕張川の合流点から上、それからその下、こう三つに分かれて実は調査して参っておりますが、一番上流の方が一番問題でございます。これは、旭川市の上流の方は大した工場もございませんし、問題はございませんが、旭川から下流になりますと、旭川の下水道自体の問題があります。そのほかにパルプ工場とか、化学工場とかあります。こういう工場の排水のほかに、旭川の下水道が入って参ります。これで確かに水生菌がふえておる。水生菌がふえたために、サケの稚魚のえさが少なくなるというような問題がございますので、サケの減産ということが確かに出ております。同時にこれは石狩川全部を通じてでございますけれども、水がよごれましたために、サケの肉がくさくなって特定のところにしか売れない、こういうようなこともいわれております。ただ現実にその原因になっておる水生菌、工場の排水をどの程度規制していくか、規制をしていくやり方は、生物化学的に酸素要求量、BODで規制をする、こういうことで規制していくわけであります。ところが水生菌とBODの関係は、今先生、北大のお話が出ましたが、これは学者によって非常にむずかしい問題であります。私どもこの三十四年の調査のデータが上がって参りまして以来、いろいろな専門家、学者のそれぞれの研究をお願いしておるわけです。何しろこの水質の問題、ことに水生菌の問題、それとBODの関係といったようなものは、学問の分野では今まで開拓は全然されていませんで、学者の中でも、なかなか自信を持ってこうだと断定される方はあまりないというのが私どもの聞いておるところでございますが、そういう水生菌とBODの関係が非常にむずかしい問題でございますので、単純に今までのほかのわかり切った原因と結果というようなものを解析して、それではBODをこのくらいにしたらよかろうというようなことで水質基準をきめるということになる。石狩川の水生菌については、三十四年以来何回かの専門部会を開いて、十分に検討をお願いし、最近ようやく全体の方向といたしまして、BODを大体このくらいにしたら被害はうんと少なくなるというようなところが出て参りそうでございます。この年度末にはもう一回部会を開いて、できればそれで水質基準まで持っていきたい、かように考えております。
  181. 島本虎三

    島本分科員 今の点は、今年末ですか、今年度末ですか。
  182. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 三月に第七回の部会を開く予定をしております。それでまとまりますれば今年度末ということになります。  それから、申し足りませんでしたが、石狩川の下流部につきましては、このAの最上流部が終わりましてから、同じ専門員の方々に、人は若干変わると思いますが、お願いしまして、下流部をやっていくわけであります。
  183. 島本虎三

    島本分科員 そういうような場合には、特に現実の状態をゆっくり把握しておいて調査してもらいたいと思うのです。  サケの問題はその通りです。ただ、サケの問題は、漁民も最近ではだいぶあきらめているのです。しかし、石狩川はまだ依然として原始河川なんです。災害が起こる河川なんです。今度の融雪の災害もまだ予定されている。気象庁から指定される洪水のおそれのある川の一つになっておる。集中豪雨を受けても必ず被害がある。あそこの川は、川が大水になって流されると、川底を含めて一回全部大掃除になっているような川なんです。ところが、そういうふうになっていても、サケやマスや、こういうものに対しては今おっしゃった通りですからいいのですが、サケやマスのたぐいじゃなく、どのようなきたない水にでも耐えて、どのような汚水の中でも育っていけるというヤツメウナギがあるのです。このヤツメウナギが最近住まなくなったのです。そして漁師が何もとれなくなったままに網をひいてやってみたら、大きいコールタールのようなかたまり、油のかたまりのようなのが、底の方からヤツメウナギのかわりに入ってくるというのです。これではとても商売にならないから、自分らの生活をやるために、もう総計してみたら三十億だというのです。これは漁業協同組合も、水揚げ壁が、去年までやったもの、ことしになってとれないもの、その差額が三十億だという。そういうふうにしてやってみますと、水の表面だけ見たりするよりも、現実の問題は漁師の生活なんです。そういうようなことで、もう底の方はそういうふうになっている、いつも洗われているはずなのに、網をさしてみると、そういうコールタールのような油のかたまりが依然として流れてきている。上の方には工場があって、そこから何してもいいように現在はやっている。被害を受けるのは農民に漁民です。これは、やはり百年河清を待つように、これからやるというのではおそうございます。幸いに三月に結論を出すというならば、そのころまでは十分待てるだろうと思います。そして、水が清いといわれておったこの石狩川に少なくとも生きものが住める程度にはちゃんとやらないと、あの水は幾ら利用してもいいだけ豊富ですから、工業用水としても幾らでも使える水ですから、そういう点を十分考えて今後指導するのでなければ、これはとんでもないことになるのではないかと思うのです。現在の状態でもそういうような状態です。もっともっと漁師の点からいえば、言うことは山ほどあります。書いてもあります。しかし、この汚水には最も強いヤツメウナギでさえ最近住めなくなったような状態で、これを調査してもデータが出ない。少なくとも三月に出るならまことにけっこうですから、それまでにはっきり出してやって、漁民に納得できるように、これは長官としても今後指導してやってもらいたい、こういうように思うわけであります。私どもの方としては、それをやるということですから、これ以上追及する何ものもございません。三月までにこの基準を出していただきたい。もう一つ長官にお願いしておきたいのは、行政的に、今最南の頭脳でやって、これならば間違いなくどちらにも左右されないで結論を出せる、これなら実施できるというのを企画庁が持っておる。ところが、農林省と建設省、厚生省、それぞれ国民を衛生的に守る立場と産業を進展させる立場と、通産省を含めてそれぞれ変わってくるので、これを統一してやっていかなければならないのがあなたなんです。しかしながら巷間伝えるところによると、あまりにも各省が大き過ぎて、企画庁がいかにやっても、この統制ができないおそれがあるのではないか、全然これがしり抜けになってしまうおそれがあるのではないかと心配されておる。長官はやるということですから、あなたの誠意と熱意をあくまでも信じて、これは早く結論を出していかれるように、私は心からお願いしておきたいと思います。そうしてこの三十億の補償ということが今問題になっておる。農業や漁業の構造改革、そういったようなものもありますけれども、それにも乗れないで困っておるというような状態ですから、それも考えてもらわなければいけないと思います。もう一回、長官のこれに対するはっきりした決意を伺いまして、私はやめたいと思います。決意を伺いたいと思います。
  184. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 よくわかりました。法律の所期しております目的がちゃんと行政上できますように全幅の努力をいたします。
  185. 島本虎三

    島本分科員 これで終わります。
  186. 中村三之丞

  187. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 長官に、二、三貿易自由化に連関した基本問題についてお伺いをいたしたいと思いますが、その前に、今の特に水に対する公害についてお答えいただきたいと思いますので、一言だけ私は希望を申し述べておきたいと思うのです。  今お話のあった石狩川もそうでしょうが、実は工業の発展しておるところの各河川はみなそうです。非常に実は因っておるのです。しかも今の水資源に関する二法の中には、これに対する補償のあれもなければ何もない。非常に実は困っておるわけです。かといって、対策を考えるといっても、あの工場から出る汚水なり何なりを全部海に持っていくということは、大へんな金のかかる仕事であります。こういう点から見て、これらについては今までの構想を変えなければだめではないか。私どもは、実はこういう問題をたくさん扱ってきたが、すべてみな特定的な解決をはかって実際にやってきておる。法律がたよりになりませんから、法律でやるわけにはいかない。かといって、これに対するほんとうのわれわれの考え得るような対策をやるということになれば、幾ら金があっても足りません。いかに国家といえども、こういう金を完全に出せるような状態ではない。とすれば補償もできない。かといって、そういう水を全部清浄化することも簡単にはできない。しかも、それによって被害をこうむる連中は、直ちに生活の問題にひっかかってくる。こういう問題です。従って、これらについては、何か今までとは視角を変えた合理的な解決方法を考えなければならぬ段階にきておるのではないかというふうに考えるのであります。この点はあわせて今御研究になると言いますから、ぜひ御研究を願いたい。これは、実は私どもも、今まで十数年非常に苦しみ抜いて、漁民の立場に立ち、あるいは農民の立場に立って、会社なり官庁を相手にして闘争をやってきました。やってきたけれども、なかなかこの問題の解決ということは実際に困難です。しかも今のようにどんどん工場ができていくというようなことになっていく、またでかさなければならぬような状態です。そういうような状態のときに、やはり従来のような解決方法考え方であってはならないと思いますので、この点は、ぜひ一つもっと具体的な現実的な解決策を考えていただきたい。ただ、今までの政府の態度あるいは各企業の態度は、何とかしてごまかして逃げようというだけでありますが、もう今日の段階では逃げられるものではありません。これらについて何らかの合理的な解決をやらなければならぬ。もうこれからは、工業の発展だとか、新産業都市の建設なんていうことはお断わりだということが一般住民の空気です。これではいかぬと思います。ぜひ一つこの点は、新しい視角から実情も調査をされ、従来のように、ただ、一時的に逃げてごまかしておけばいいというような態度ではなく、真剣にお考えをいただきたいと思うのです。これは要望です。  そこで本筋の質問に入りたいと思いますが、最初にお伺いをしておきたいのは、今度のIMFの八条移行、つまりガットの十一条移行ということによりまして、またこれを取り巻くいろいろな問題を総合して考えますと、日本経済は、対外的な関係においては、外との結びつきにおいては、従来と全く質の違った新しい段階にきておると思うのであります。と申しますのは、今までは少なくとも為替の統制ということが、日本産業なり経済の大きな一つの防壁といいますか、保護政策になっておったわけであります。ところが、これが今の世界の情勢その他から見て、今すぐにというわけじゃございませんけれども、少なくとも今の体制では二、三年のうちには、この厚かったいわゆる保護の体制というものを取らざるを得ないようになってきておる。これにかえ得るものは、制度的には、何といいますか、ほかにあるものは関税政策なりだろうと思う。それも、御承知通りガットが五ヵ年間に五〇%の一律引き下げという方策をとってきますと、多少これに対して日本の特殊事情を言って、リザーブ・リストをよけいにとるとか、あるいは実施の方法を何とか調整するということが通ったにいたしましても、従来とは全く違った関係になってくると思うのですが、これらに対する政府なり一般民間の認識はまだ不十分だと思うのであります。この質的な転換ということを日本のすべての人が、政府を初めとしてやはり本気にとらないとこれはいけないことじゃないか、こう考えるのですが、この点についてまず長官のお考えをお伺いいたしておきたいと思うのです。
  188. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 冒頭に、先ほどの島本分科員との関連でお述べになりましたことにつきましては、十分私ども注意いたしまして、これから本格的に取り組んで参ります。  次に、後段にお述べになりました点は、私どもまさにそのように考えております。わが国の農業構造の改善が緒についたばかりでございますので、農産物につきましては、どうしてもこの際自由化ができない、自由化をすることがわが国の全体の利益にならないという種類のものがあると思います。それにつきましては、何らかの形でリザーブをしていかなければならないわけでございますが、工業製品につきましては、これは事柄の性質上、いつまでも輸入制限をしておくというわけには参らないものでありますし、また私ども国内に向かっては、そういう自由化の目標を具体的に立てて、一定のときまでに自由化をするというような企業努力をしてもらわなければならないと思っておるわけでございます。いずれにいたしましても、その両者の場合にかけて、やはりわが国の広く産業全般について新しい心がまえが必要であるというふうに考えております。  それから資本取引の将来に向かっての自由化の問題でございますが、これにつきまして私ども一番心配をしておりますのは、大企業ではございませんで、中小の企業の中で、しかも相当に内容のいいもの、これらが外国からの大資本と争いましたときに、これにのまれてしまうといいますか、食われてしまうというような危険が予知できるわけでございますが、そういうものについては、やはりどういう形かで守っていかなければならないというふうに思っておるわけでありますが、全体を通じまして、ガットの十一条国移管、IMFの勧告、関税の一般的な引き下げ、こういうようなものがわが国の経済全体に非常に大きな影響を及ぼすであろうということについては、久保田分科員指摘のように私も考えております。
  189. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 いろいろお聞きしたいのですが、時間が非常にないですから、具体的に一つお聞きしますが、これはあなたの御主管ではない、外務大臣の御主管だという話だが、しかし、あなたはこの前会議に出られたようですからお聞きいたします。  第一はガットの十一条国移管、IMFの八条国移行の問題に連関して大きく問題になってくるのは、OECDへの加盟の問題であります。これは、この前池田さんが行かれて、あっちこっちの国に大いに働きかけて、池田さん流で言えば、アメリカとEECと日本とこの三本の柱で世界の経済を持っていくのだという大きな自負が土台になって、これを具体化する一歩だ、こういうのですが、実際に考えてOECDにいつ加盟するのか。あるいは加盟した場合に、日本経済なり日本産業にとって具体的にどういうプラスとマイナスがあるのか。抽象的にはいろいろありますけれども、具体的に、これをただ大国意識で、要するに大国というかけ声のために、少し勲章をよけいにしよう、あるいは肩書きをよけいにしようというだけでは困る面も出てくるわけであります。従いまして、OECDに参加するという今の政府方針は、実際には日本経済なり日本産業に具体的にどういうプラスを与えていき、どういうマイナスを与えてくるかというできるだけ正確な計算があった上で当然行なわなければならぬことだと思うのであります。ところが、どうも今まで見ておると、池田内閣の行き方は、そう言っては失礼でありますけれども、冷静な計算ではなくて、何かもっと違った一つのムードづくりをやっているようなことから、場合によれば、これが当たればうまくいく、当たらなければ非常に格好が悪くなるというふうなことになりがちな危険を感ずるのであります。どうか一つ、あなたは担当の大臣かどうか知りませんけれども、OECD問題には一番お深く関係をしておるようでありますから、どういう利害打算の上でOECDに参加するということを決定し、それを進められておるのか、この点をまず第一に明らかにしていただきたいと思います。
  190. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 かりにOECDに全面的な加入ができた場合を想定いたして答弁を申し上げるわけでございますが、OECDではたくさんの委員会がございまして、それがほとんど——ほとんどと申すよりは、事実上毎日でございますが、ハリでいろいろな議題についていろいろな委員会が開かれておるわけでございます。そこで、そういう委員会の討議を通じて、一つは、世界経済の全体の運営の問題がおのずから議論されておるわけでございまするし、また各国の財政経済あるいは貿易などの考え方、内部事情なども意見の交換がされておるわけでございます。しかも、そういうことについてOECDが一切公表をいたしませんために、外部者には、どういうことがどういうふうに議論をされておるのか、現在まで窺知し得ないような状態になっておるわけでございます。そういうところで各国がいろいろ討議をいたしました、いわばその結果のようなものがガットに出て参ったり、あるいはIMFに出て参ったり、あるいはまた、私どもにはある意味で突然にポンドの危機が起こったり、マルクの切り上げが行なわれたりしておるわけでございますが、実はそういう問題も、こういう毎日の各国代表の接触を通じていろいろ議論をされておるに違いないのでありまして、そういう動きというものを外部者は一向に把握することができない。しかもOECD加盟国は、あれだけの国でございますから——最近は米国もカナダも加わりましたので、ほとんど世界の経済運営の主導権を、大体共産圏は別にいたしまして、あそこが持っておるといいますか、あの加盟国の考え方が主導的な役割を演ずる、こういうことであると思います。従って、そこに加盟をするということによって、そういう基本的な意味の調整、あるいは実現ないしはお互いの問題についての意見の交換ができる。これは、目に見えてわかる利点と申しまするよりは、そういう基本的な流れをつくる作業にわが国が参画をするという意味で大きな利益があると考えておるわけであります。また現在DACには、わが国は加盟いたしておるわけでございますから、それとの関係で、OECDの正式加盟国となることによって、低開発国援助の問題についても基本的な政策の議論からやっていけることになると思っているわけでございます。こういう点が、抽象的にではなく、具体的にわが国にとって非常に大きな利益になるであろうというふうにまず考えられるわけでございます。  それでは、しかしそういう機構に加盟いたしましたときに、わが国が新たにどのような義務を負うかという点、つまり負担になると思われる点はどういうことであるかという点が残ります。これにつきましては、従来わが国が加盟国でなかった立場から申しますと、内部で各加盟国がどのような規制に従って、どのような義務を負っておるかということが必ずしも明確でありませんでした。コードがいろいろございまして、おのおののコード、コードに従って、たとえば貿易外の取引はどういうふうに自由にするとか、資本取引についてはどのような方針でいくとかいうコードがあるということがおぼろげながらわかっておったという状態であったと思います。最近多少はっきりして参りました。それによりますと、ある程度までの資本取引の自由化、あるいは貿易外取引の自由化などについてのコードがありまして、国によってそのコードを自発的にほとんど十分に満たしておる国もありますし、また国によっては、たとえばアイスランドとかギリシャとかいうような国でございますが、そういうものから全面的に免除を受けておる国もある。一般的に申しまして、たとえばアメリカなどのように、加入当時米国に存しておったところの制度を一応そのまま残すという条件で加入をいたしたような国もありますようでありまして、具体的に新たにと申します意味は、ガットの十一条国になり、IMFの勧告を受けたという現在のわが国の立場から、新たに非常に大きな負担が加わってくるかといいますと、おそらくそうではあるまい。これはおそらくと申します意味は、コードもコードでございますけれども、毎日の委員会から判例のようにして積み重なっている部分が相当取り扱いの中にあるようでございますから、具体的に過去のそういう累積いたしました判例のようなものを調査いたさないと、ほんとうに正確なことは申し上げにくいわけでありますけれども、まず概略はそのようなものであろうというふうに考えておるわけでございます。
  191. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 今まで日本が、つまりある意味において世界経済から隔絶されたような格好で発展をはかってきた。そういう点から、新しくそういう世界経済のほんとうの心臓部みたいなところに入って、いろいろな情報をとり、意見の交換をし、あるいは政策の調整をする、こういうことがほんとうにできれば、私はある意味においては非常なプラスだ、こう思うのです。しかし問題は、ただ情報や意見の交換ができるということだけでなく、今お話のあったようなIMFの勧告があり、そしてガット十一条国への移行ができたというそういう条件の中で、これは、現実になるのは一年なり幾らかなり相当の時間を要しようと思いますけれども、そういう中で、現実に私はこのOECDに参加することによって、実際日本経済なり産業にとって具体的なプラスがどこにあるかということでありますが、当面問題になるのは、ガットの三十五条の撤廃の問題なり、あるいはそうでなく、今欧米各国日本に行なっておるようないろいろの輸入制限なり、法律なりあるいは協定、条約に基づかないものなり、あるいは自主規制なり、こういうものを取る一つのこれが足がかりになるかどうかということが一つの基準になろうかと思う。これが第一であります。  第二の点は何かというと、低開発国に対して、特に日本は、今のところ大きな貿易市場としてはアメリカなりあるいはEEC、欧州各国、これに進出しようとして非常にねらっておるわけです。しかし、日本が本来出ていかなければならぬのは東南アジアを中心とした低開発国地帯だ、こう思うのであります。私どもはそれ以外にまだ共産圏がある。これの方がはるかに有効であるというふうに見ておりますけれども、これは今の政府と見解が違いますから、必ずしもこの点は強調はいたしません。低開発国は、私は二つの意味でみな片貿易になっておる、こう思うのです。それはアラブ諸国のように、石油なりその他、そういうものが日本へ入ってきて、日本からやるものがあまりないという格好のところ、それから一次産品が多く入ってきまして、日本から売るものが重化学工業品なりその他が多くて、とるものが少ない。こういう点の開発に連関して、日本の輸出貿易なり輸入貿易が調和のある形でもってどこまで伸び得るかというととが、私はこれらの日本経済が大きく伸びる一つのめどだと思うのであります。この二点についてOECDは、私どもの今まで多少いろいろかじり読みしましたり何かした範囲ではあまりプラスにならないのではないか。下手をすると、むしろ今日の米英、特にアメリカあたりの動向からすれば、逆に日本が苦しむような結果になるのではないかというふうな予感さえするわけであります。OECD加盟という場合に具体的にどういう効果を持ち得るという、これらの点について一つ政府の御見解なり見通しをお持ちならばお聞きしたい、こう思うのです。
  192. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず前段の問題につきましては、私は久保田委員が御指摘になりましたような効果があるものというふうに判断をいたしております。それは三十五条の援用でありますとか、あるいはわが国からの輸入規制でありますとか、センシティブ・アイテムでありますとか、そういういろいろないわゆる差別待遇につきましては、昨年総理大臣が欧州各国を歴訪されました結果、各国の態度に変化が見えて参ったわけでございますが、これは何といってもやはり日本経済の最近の姿というものについて先方の国が関心がない、あるいは関心がないがゆえに十分な知識を持っていない、そういうことが基本的な原因であったように思うのであります。何かはっきりわからないが、昔の日本がダンピングをやりましたときと同じような危惧を持っておる。価格についても品質についてもそういう危倶を持っておって、総理大臣がそうでないと言ったからすぐその危惧が解消できるというものでもございませんけれども、やはり総理大臣の訪問を機会に、日本のことについて多少事前に研究をしたというようなことがあったと思いますが、その結果そう心配したものでもないというようなことから、幾らかずつ対日差別待遇を改善していこうという動きが出てきたと思うのであります。しかし、何といっても一度総理大臣が訪問したという程度のことでは、先方の理解もいっときに限るわけでございますから、ほんとうの方法はやはり常時わが国の経済、あるいは財政、為替政策等に起こっておる問題を知らせておく、先方の問いにも答え、またわが方の問題も考え方も述べるという、毎日のそういうお互いの集合体での意見交換というものは、私は非常に効果があると思うわけでございます。つまりそれによって、日本という国は遠いところにある、よく事情のわからない国であるという考え方から、かなり身近なものに感じて、日本経済についての認識を毎日の問題として深めてもらう。このことが必ず事の成り行きとして、そういうことであればそんなに心配する必要はない、危惧することはないということから対日輸入制限というものをやめていってもらう、そういう方向に必然的につながるのでありますから、前段の問題については、まさしく私はそれなどが大いに期待し得る効果であると思っておるわけであります。  後段の問題につきましては、主として一つの委員会でありますDACが従来やっておるわけでありますが、その基本にありますところの低開発国との経済関係をどうするか、ただいま御指摘になりました一次産品の問題などはまさしくそうでございますが、最近第一次産品が、ココアでありますとか、大豆、トウモロコシなど持ち直してきたようでございますが、しかし、その問題を解決しなければ、やはりほんとうに低開発国との経済交流はできない。従来は、わが国は負担を負う方だけをやっておりましたので、その基本の問題までも、もう少し高い次元で議論をすることができなかった。一方で国際連合におきまして、明年は世界貿易会議というものが開かれる。これはおのずから一次産品の問題が議論になると考えるのでありますが、他方ではやはりガットなり——ガットにはそういう国の加盟が少ないわけでございますから、OECDなりでそういう問題を議論していくのが本筋であろうと思うのであります。従って後段の問題についても、そういう意味ではわが国が稗益するところが多いであろう。後進国援助というものを負担と考えるかどうか、それは負担には違いないことでございますけれども、やはりやっていかなければならないものだという認識をしておりますので、その点についてもわが国は稗益するところがあるであろう、こう考えるわけでございます。
  193. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 非常に議論が抽象的になりますが、私どもが心配するのは、先進国に対しましてはOECDでいろいろやりましても、現在の日本に対する差別待遇であるとか、三十五条援用の撤回とか、自主規制の問題、そういうものをとるきっかけにはなるかもわかりませんけれども、しかし、同時に私はこういう問題が出てきやせぬかと思うのです。それは、日本の資本主義国の中での成長率、これは御承知通りちょっとほかに類のないような高い成長率を持っているわけです。これについてはいろいろの国内の矛盾が現に出ておる。あとでまたこの点はお聞きしますけれども、これについては世界各国必ずしも私は正常にとっておるとは考えない。新聞で見ますと、今度のIMF勧告の第三項ですか、あの中でも、要するに安定した経済成長率を維持するように財政経済政策の調整をするように望んでおるわけです。こういう点で、日本の独自の経済成長計画なり何なりというものが、そういう方から抑制されやしないか。片方において自由化というか、いろいろの制限がとられ、片一方そういうことがありゃせぬかということ。もう一つは、低開発国に対する援助なり何なりも、これはやるべきでしょう。やるべきでしょうが、そのやり方なり、それのはね返る犠牲というものを相当考えぬと、具体的にはやっていけないと思う。その場合に、国内のこれによって関係を持つ特に農業とか、あるいは中小企業の一部のものとか、こういうものについての対策というものを考えずに、こういう低開発国と、単にアメリカなり何なり従来の国との肩がわりみたいな格好でだんだんと負担もしょわされてくると、特にそう言ってはあれですけれども、池田さんのように、日本も世界の三本の柱の一本として大国意識と言いますか、こういうものを十分に売り出そうということになると、こういう危険が相当出てくるのではないか。この二点をよほど慎重に考えぬと、国内における、そう言っては失礼ですが、今の池田内閣の一つのムードと言いますか、一つの姿勢と言いますか、根拠不十分なものに乗っかってやるということは、政治家としてはやるべきものじゃない。もう少しじみちな、しっかり基礎をつかんだ、明確なる見通しの基礎に立った世界政策というか、対外政策というものを立てていかなければならないのじゃないか、こう思うのであります。こういう点でどう思われるかという点が一点。  もう一つOECDに加盟することによって、これはいつになるか時期の問題もいろいろ関係して参りましょうけれども、とにかく例の一九六一年十二月十二日の資本移動の自由化に関するコードというもの、これが大体におきまして義務づけられてくるのではないか、こう思うのです。そうしますと、今度のガット十一条国移行で、この点は直接の法律上の日本責任、義務ではありませんけれども、大勢から言えば、いやおうなしに資本移動の自由化ということはある程度せざるを得ない。さらに日米通商航海条約の十二条二項なり七条によりまして、これまた資本移動の自由化をしなければならない。しかも自由化したものにつきましては、これは内国民待遇と言いますか、そういう待遇を保障していかなければならない。それにさらにOECDの自由化コードが加わってきますと、これに対する日本側の対処策というものは、これも日本の国内産業については相当大きな問題になろうと思うのであります。特にそのうちでも重要な問題は、いわゆる長期の資金、資本であります。こういうものの輸入がどんどんやってくることになりますと、今すぐは日本では資本が不十分ですから、ある程度乗っかっていってもいい。しかしながら、今すでに欧州等でぼつぼつ問題になっておるように、アメリカの長期資本がどんどん入ることによりまして、産業秩序なり何なりが非常に向こうに支配されることになる。そうなってくると、今政府がお考えになっている国内でいろいろの経済政策をやろうとしても、そういう外国資本の障害のために政策的な自由を失わざるを得ないというような危険も相当出てくるわけであります。これは欧州の例なんかを見ますと、全体としてプラスになっているか、マイナスになっているか、だいぶんこのごろは疑問になってきているような向きも出てきているようであります。カナダのごときは、そういう意味ではアメリカの長期資本が入り過ぎて、カナダ自体の資本と言いますか、企業というものは伸びにくい段階がもうすでに来ているわけであります。日本のように国際環境が非常に狭くて、ある意味においては不利だと思うのですが、そういう中でこの長期資本のあれがこういう三重のいわゆるプロテクトを受けてどんどん入ってくるということになるということは、私は非常に考えるべきではないかと思う。もちろん、これに対して全然いけないというわけではありませんけれども、これに対してはよほど政府側としてははっきりした見通しなり、具体的な政策を持って対決をしないことには、まあまあ今のところ資本がないから一つ外国の資本を入れたらいいじゃないかというふうなことでは、少なくとも日本の民族的な見地から見たいわゆる日本の大きな経済の発展ということにはならぬじゃないか。これがひいては日本の貿易の収支というようなことにも、表面は日本の貿易であっても内容はそうでないというようなものが——アラブ諸国のごときは現在そうだろうと思う。日本に対しては石油ですから、日本の方がはるかに入超になっております。しかし、あの内容はアラブ諸国の収入に必ずしもなっているかどうかわかりません。おそらくは米英資本の収入になっている。国としてはそれに対する税金ぐらいのものだろう。こういう問題が出てきた場合においては、日本としては非常に重要な問題になってくる。特に米英のこういう長期の直接資本がよけい入ってきた場合においては——少なくとも私ともの見解では、日本経済が将来対外的に伸び得る大きなシェアというものはどこかといえば共産圏地域です。これは何といっても、この地域に対するいわゆる合理的な進出というものは、非常にこの点から阻害をされる。現にそういう傾向がたくさん出ているわけであります。こういう点から見て、私はこの点は政府としては単なる一時の資本不足の解消とかなんとかいうことではなくて、よほど考えるべきではないかと思うのですが、これらに対してはどうお考えになっているのか。また同時に、どういう政策を持ってこう問題に対処されようとしておるのか、お伺いいたしたいと思うのです。
  194. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 相当長期の見通しを必要とするむずかしい大切な問題を御提起になったと思います。  まず前段の問題でございますが、前段については、後進国援助に関してお尋ねがあったわけでございますが、私ども基本的には、わが国が現在までの経済成長をして参り、そして今後設備の更新等々が中小企業中心になされなければならないと考えます。農業については、農業構造改善が進んでいかなければならないと思っておるわけでございます。そういう国全体の経済の基盤の拡大ということを考えますと、わが国の場合、どちらかといえば、少なくとも工業製品については、国内だけではやや供給過剰の状態になってくるであろうというふうに私は考えるわけでございます。その場合に、わが国の経済として適当なマーケットを開いていくとすれば、それは現在一般に後進国といわれておる諸国であると思うのであります。後進国援助は、そういう後進国を助けるという動機にも立っておるわけでございますけれども、もう一つ、やはり将来のわが国の経済の市場というものをそれとの関連で求めていこうという動機がありますことは事実であると思います。ことに賠償の支払いなどがやがて終わりましたあと、これらの地域に対してわが国の主として工業製品をどういうふうに売っていくかということは、先ほど申しましたような経済の見通しが正しいといたしますと——私は正しいと思うのでありますが、非常に大きな問題となって参ると考えるわけでございます。そこで後進国援助をやっていかなければならないと申しました意味には、やはりそういう気持が含んでおりますわけで、これはアメリカがやっておることを国際的な親善関係からわが国が肩がわりをさせられるというふうに考えずに、積極的に将来のわが国の経済の海外への進出のためにやっていくべきものというような基本認識に立っておるわけでございます。そういう意味で先ほどOECDとの関係について申し上げたような次第であったわけでございます。  それから後段の問題は、資本取引に関連をしておったわけでございますが、これはたまたま冒頭に経済自由化との関係で、農業製品についてはどうしても自由化をしてならないものがあると考えると申し上げました点、及び資本取引の自由化について、大企業についてはあまり心配はありませんが、中小企業については何とかして守ってやらなければならないものがあると思いますと申し上げた点、これに関連をいたすわけでございます。OECDのコードによりますと、確かに資本移動の自由化というコードがあるわけで、これは御指摘通りでありますが、ただその中に、たとえば経済、金融、国際収支上必要な場合などにはこのコードの義務について留保してよろしい、あるいは停止をしてよろしい、その場合にはもちろん機構の承認を得るわけでございますけれども、そういう規定がございます。そこで現在OECDに加盟をしておる各国が現実にどの程度の資本移動の自由化をやっておるかという実態、ここらが非常に不明確でございまして、たとえば、御承知のように最近米国の資本がフランスに進出をする、クライスラーがフランスに進出をしようとしたときに、これを押える、押えないということがフランスで大きな問題になったわけでございます。アメリカもフランスものOECD加盟国であって、しかもフランスはこの点について留保をしたということは聞いておりませんので、何ゆえにああいう問題が起こったのだろうかということを実は私ども不思議に思うわけでございます。考えますのに、正式な留保をしていないが、しかし、国内で何か行政措置その他でチェックができるようになっておるのであろう、こう考えるよりほかないわけでございますが、そういう各国経済の運営の実態などというものが、OECDの委員会でやっておればだんだんわかってくるのであろうと考えるわけでございます。従って、OECDに入ったからといって、わが国が自分自身の意思に基づかない資本移動の自由化を新たにしいられるというようなことは、おそらく現実の問題としてはないであろう。これはもう少しケースを調べました上で正確に申さなければならないのでありますが、そういうふうに考えております。  一番最後に仰せになりました、長期資本の移動を自由にした場合に、それが将来のわが国の経済にどういう影響を与えるであろうかという点は、御承知のように、基幹産業についてはある程度のリザベーションをしているわけでありますから、こういうものが握られるということはない。また、たとえば一例でありますが、自動車などについて資本移動の自由化をいたしました場合に、現在販売網を持っておるところのどこかの自動車のメーカーと欧米のメーカーとが資本提携をして、そして日本においていわゆるノック・ダウン方式によって車をつくって、そうして販売網は既存の日本の会社の販売網を利用する、こういうようなことはあり得ることだと思います。しかし他方で、その他の自動車工業はいわゆる国際競争力の強化体制の整備をやって参りますから、一つや二つそういうものがありましても、そんなに心配をすることではなかろう。一番私どもが心配をいたしますのは、大企業ではなく中小企業でございまして、特殊の技術を持って、従来国内でマーケットを持っておったものが、巨大な資本との競争によって一挙にマーケット失うということはあり得ることであって、何とかそれを防いでやらなければならない。そういう意味で、全面的に資本移動の自由化をやってよろしいかということで、私は、中小企業などについては大いに問題がある、よろしいとは言い切れないとただいまのところ考えます。  日米通商航海条約の問題も、まさしく御指摘になった通りでございますが、私は、それは、そういう方針であの条約を読んで運用していくということが必要だというふうに考えておるわけでございます。
  195. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 一番最後の点ですが、特に欧州あたりも、ここ数年来というものは、結局、品物での進出がアメリカとしては困難だというので、資本進出をやったわけですね。この一つの報告を見てみますと、今欧州だけで大体八百四十三のアメリカの企業があるわけです。これによって六一年あたりは十五億ドルくらいの資本投資があって、しかもその果実として八億八千万ドルくらい持っていかれておる。しかも今度欧州から各国に出ておる品物のうちの、物によっては三〇%、物によっては七〇%が、名前はフランスのものであり、西ドイツのものだけれども、実体はアメリカ資本の製品だ。こういう関係が出てきている。こういうところから、最近のドゴールあたりの動向等も、ただ単にアメリカと抽象的に、平板的に提携をするということでは国民経済が食われてしまうというところから、いろいろの動向が出たというふうな観察もあるわけです。日本のように、ある意味におきまして企業実力で非常に少ないところでは、欧州も来るでしょうけれども、主としてアメリカの長期の資本が直接あらゆる面に進出してくる条件が今あろうと思います。しかも、そうした場合においては、単に日本だけの進出ではとどまらない。少なくとも日本中心とするアジアの市場というものに、日本を足場にしたアメリカの資本なり商品というものがどんどん出ていくという関係になりはせぬかということが心配されるわけです。現在までに、正確な数かどうかわかりませんけれども、アメリカの資本が直接に日本へ入ってきている数が、いわゆる会社の経営参加という形の株式投資もありましょうし、あるいは合弁会社という格好もありましょう、あるいは支店その他の格好もありましょう、いろいろの形でもって五百くらいある、こういわれるのです。これは今のところまだ隠密と言いますか、本格的にはなっておらぬ。これが今度十一条国移行その他の問題でひどくなってくると——私は欧州の経済というのはある程度基盤がしっかりしているところがあると思う。日本の敗戦後の経済は、国内限りではあれですけれども、いわば温室育ちで、非常に対外関係その他で脆弱でございます。そういうところへこういう資本がどんどん出てくるということになると、非常に危険ではないか。その場合に、OECDの資本移動の自由化コードというものが、今お話しのように法律上の制約はありますが、一つの条約上の義務としてくるのかどうなのかという点と、それから、これが例の日米通商航海条約とうらはらと言いますか、からみ合うわけでありまして、二重の圧力を持ってくるのではないか、こう思う。そういうことに対して日本側が、今資本がないから、なにがないからというふうなことで、いいかげんなことをやっておくと、いよいよとなったときには、にっちもさっちも動かなくなる。ここらに対して政府としては明確な調査なり何なりを持ってこういうものに立ち向かわないと、入ってしまった、そしていろんな中でその場限りのことでもってやっておると、将来においてはにっちもさっちもいかぬような事態がくるのではないか。今のお話では、OECDの実態が実は外からよくわからない。入ってみて、よくみんなの話を聞いてみて、そして実態をつかみながら対策を立てればいいじゃないかというお話のように聞くわけです。しかし、事態はそんなのんきなものじゃないと思う。自由化のテンポというものは相当急速に、日本の意思いかんにかかわらず、相当外からは強く押しつけられてくるといった情勢に今全体があると思うのです。だから、こういう際に、そういう点について、今までどの程度政府はそういう基礎的な問題についての御研究なり対策を持ってOECDに入ろうというのか。そこが、悪口に聞こえるかもしれませんけれども、単なる大国意識なり、三本足理論みたいなことでやっておられるのでは、国民経済の将来から見ると非常な不安が出てくると思うのですが、この点はどうなんですか。
  196. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、概略のことは、先ほど申し上げましたように、つかんではおるわけでございます。ただ具体的にそれが各国によって、いわゆるコードなるものがどの程度に守られておるかということについては、最近わが国が入りたいという意思表示をいたしましたために少しずつわかって参りました。そして、おそらくただいまごろからでございますが、と申します意味は、日本も正式加盟の意思表示をあらためて口頭ででもしたらどうかというようなことになって参りましたので、そういう雰囲気の中でもう少し実情がはっきりして参ると思います。たとえばガットでございますが、これはちょっと違う話を申し上げるようでございますが、ガットの規約をそのまま読みますと、各国が今やっておりますような残存輸入制限なんというものは一向にどこにもないわけでございまして、こういうことはできるはずがないように規約には書いてございますけれども、実際は各国とも平気で残存輸入制限をやっております。各国おのおの事情がございますから、やはりそれは表面で、あまり規約みたいなきれいごとと申しますか、厳格にはどっちみちいっていないので、そういう点では、先ほど申しましたようにおぼろげには把握をいたし、また現実に入っていけば、さらにもう少し融通のきくことであろうというふうな大局的な観察をいたしておるわけであります。大体そういう観察をいたしました上で、一つ入ってみようかという意思表示をすることによって、もう少しいろいろな条件がはっきりしてくる。大体の範囲はつかんでおるつもりでございます。
  197. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 どうもたよりないが、今日の段階ではやむを得ないと思うのです。しかし、直接の長期資本の輸入の自由化ということについては、私は一つぜひ、政府の方は目先ばかりにとらわれずに、よほど先を見て本格の検討をされ、同時に対策を持ってやられるように強くお願いをいたしておくわけであります。どうも、だれに聞いても、この点についてのはっきりした方針がないように私は思うのであります。どうか一つ、この点はしっかりやっていただきたいと思うのです。間接資本については、今の段階では、まだまだ相当入ってきてもそう心配は私どもなかろう、こう思うのですが、直接の長期資本については、今のうちから相当はっきりしたものを持っておらなければだめだ、こういうふうに思うわけです。  それから最後にもう一点だけお伺いしますが、ガットの十一条国移行に伴いまして、日本はある意味において、世界経済との関係では、従来国内でよろいを看ておったのを、よろいを脱いで裸になるというようなことに大局からいえば結びつくわけです。これはすぐなるかどうかは別として、一応の経過年月を過ぎてなるわけです。そこで一番問題になるものは、私は、やはり日本の国際収支の均衡を維持するということがすべての経済運営の政策の中心になろうかと思うのであります。今までならば、国際収支が少し工合が悪くなって赤字になってくれば、いろいろ国内的に手が打てるわけですね。ところが、これからはそうはいかないわけです。従って、この国際収支、つまりはっきり言えば日本の外貨手持ちを年々どのくらい持っていったらいいのか、その内容はどうするのか、どういうようにして構成したらいいのか。今のようにユーロダラーその他の短期外資をよけい持って、それによってふえたふえたと言っておったって、こんなものはたよりにならぬ、こう思うのであります。従って、これらのはっきりした計画なり見通しなりをお持ちになることが、私は、これからの日本経済政策運営の基本にどうしてもなろうと思う。これについて政府としてはどのように今準備をされ、御研究になっておるのかという点であります。  もう一つ、これと結びついて、この前もお伺いいたして明確なお答えがなかったわけですが、この基礎をなすものは、やはり国民のいわゆる計画経済、成長経済だと思うのであります。政府は、ことしの経済運営の中で、新しい安定成長の地固めをするのだ、こういう表現をされておるが、この前あなたにお聞きした範囲では、これに対する具体的な計画というものはまだ立っておらない、ようやくデータを集め出したくらいなところだ、しかし、それをやってみてもはたしてはっきりした政府計画として提示できるかどうか、これもまだ疑問だ、そこまでは踏み切れないというお話だった。私の心配するのは、こういうふうにガットの十一条国に移行した後においては、一時的な暫定的な救済策はいろいろございましょうけれども、国際収支の均衡維持ということが、日本のような構造の国においては絶対に一つの基準になると思う。その国際収支の外貨手持ちが、内容がどうか、そうしてそれはどの程度にふえていくのか、その基礎をなすところのいわゆる国民計画経済と言いますか、こういったものと結びつけてはっきりしたものを持っておらなければ、少なくとも新しい安定成長なんということは口の先のあれになってしまう。しかも、これから国際収支で失敗をした場合の回復策というものは、今までのように為替統制の中で実行できたようなものでは実際には済まぬと思うのであります。そんななまやさしいものではなくなると思うのであります。この点について、これは主として企画庁がお考えになることだと思うのでありますが、この点、どんなふうにお考えになり、あるいは準備を進めておられるかということを最後にお聞きするわけです。
  198. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは非常に問題でございますけれども、現在十八億ドル余りの外貨を持っておるわけでございます。これで十分かといえば、私は全く十分だとは考えませんので、各国を見ましても、フランスあたりでも三十億ドル余り、イタリアも三十億ドル余りの外貨を持っておるわけでございます。年間の輸入額についてどの程度の外貨を持っておれば心配がないかどうかということを、一般論として申すことは非常にむずかしゅうございますが、たとえばイギリスの場合は三割ちょっと切れたくらいでございます。オランダがやはりその程度、西ドイツは六割くらい持っておるわけでございますが、かりに三割といたしますと、ちょうど三十八年度の輸入が通関ベースで六十億ドルくらいでございますから、十八億ドルというのはまず三割程度になるわけでございます。しかし、どうもそれでよろしいのかというと、私どもそうは考えませんので、多少思い切って輸入をしても別に外貨は心配はないという程度のものは持っておきたい。でございますから、現在の外貨保有、これがこの率程度で十分だとは考えておりません。  それからユーロダラーについてはお説の通りでございまして、最近ユーロダラーの流入が相当ある。これは利子が高いということが基本でございますから、それを少しずつ下げていきまして、昨今もそういう措置をとっておるわけでございますが、なるべくそういう短期のユーロダラーがあまりたまりませんようにいたすべきだと思うわけでございます。そういう措置を最近何度もいたしておるわけでございます。これはあとが非常にこわいものでございますから、なるべく性質のよくない短期の金は奨励をしたくないというような気持を持っておるわけでございます。  昭和四十五年度の目標年次にどのくらいの外貨を持つべきか。三十五億ドルというようなことを計画もし、考えてもおるわけでございますけれども、しかし、それはどういう経緯でそうなるのかということを今しかと申し上げるわけにも参りませんので、今のところはもう少し外貨を持ちたい。それをどういう形で保有するのが適当かと言われますのは、もう少し金を持っているべきじゃないかということを示唆しておられたのかと思いますが、それもやはりもう少し金を持っておった方がいいというような感じはいたしております。  それから所得倍増計画にもお触れになったわけでございますが、これは実はいわゆるアフター・ケアの問題として作業の準備はいたしております。数ヵ月かかって、少なくとも従来の実績計画が何ゆえに乖離したかということについては突き詰めて調べてみるつもりでございまして、その結果、将来にそれがどういう投射をするかということも出て参ると思います。この点については、そのときの国の経済情勢その他にとってプラスの面が多ければ、新しく計画として国民の世論に問うということもいろいろ必要なことであると思いますが、その点はその時点において判断するよりほかないことは先般申し上げた通りでございます。
  199. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 これでやめますが、私は、今の国際収支の均衡という問題が、これからの経済運営の一番基本になると思うのであります。これが今までいろいろの方にお聞きしても、実ははっきりしないのであります。ある意味においては出たとこ勝負でございます。数字は出ておるけれども、その数字を突っ込んでいってみると、はっきりした見通しもない。その内容はどういう構成にしていったらいいのか、それから年々どのくらいをふやしていったらいいのか、そういう点。今日はいろいろと対外関係というものが複雑になっておりますから、そういう複雑の中でも、基本的な国際収支の均衡は発展的にこれを保っていくということが何としても——いろいろ理屈は私どもとしてはあります。ありますけれども、当面の問題としてこれが一番経済運営の基本にならなければならぬと思う。ところが、そういう点については、たとえばことしの経済運営の方針を見ましてもはっきりしないのであります。従って、すべての計画が出たとこ勝負みたいになっている。今まである程度出たとこ勝負で、行き過ぎても引っ込んでも、いよいよとなれば門を締めればいい、こういう手があったんですけれども、今度はそうはいかない。もちろん、ある程度のそういう手段は残ります。当然残さなければならぬと思いますが、少なくとも今までのような気安くいく状態ではなくなる。従って、そういう基本に関しては、政府としてはもっと真剣に取り組んで、こういう点の理解というものを国民一般に徹底させることが安定成長の一番土台じゃないか、こう思うのであります。  これ以上お聞きしてもしようがないと思いますが、その限りにおいては、ある意味においては日本経済条件に大きな質的な変化がきておるわけであります。そういう際ですから、私はぜひ政府も、ただ対外的な、今度のIMFの八条国移行の経過を見ても、実に何と言うか、先の見通しのない、あっちの業者に突っつかれこっちの業者に突っつかれ、そして政府がふらふらしながら今日まできたというような感じがするのであります。どうかこの点は、特に経済企画庁としては真剣にこの問題に取り組んで、明確なめどというか、計画というか、見通しを明らかにすることが、ぜひこの段階では必要ではなかろうか、こう思うのでありますので、特にこの点について繰り返して申し上げて、時間がきましたから私の質問を終わりにいたします。
  200. 中村三之丞

    中村主査 以上で経済企画庁所管に対する質疑は一応終了いたしました。  本日はこの程度にとどめ、明二十二日は午前十時より開会し、農林省に対する質疑を行なうことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十八分散会