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1963-06-04 第43回国会 衆議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月四日(火曜日)     午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 塚原 俊郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 安藤  覺君    理事 川俣 清音君 理事 楯 兼次郎君    理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    井出一太郎君       今松 治郎君    植木庚子郎君       浦野 幸男君    小沢 辰男君       尾関 義一君    亀岡 高夫君       仮谷 忠男君    倉石 忠雄君       小坂善太郎君    齋藤 憲三君       櫻内 義雄君    正示啓次郎君       周東 英雄君    田澤 吉郎君       竹山祐太郎君    中村三之丞君       灘尾 弘吉君    羽田武嗣郎君       藤井 勝志君    船田  中君       保科善四郎君    前田 義雄君       松浦周太郎君    松野 頼三君       松本 俊一君    山口 好一君       淡谷 悠藏君    石田 宥全君       加藤 清二君    川村 継義君       木原津與志君    高田 富之君       堂森 芳夫君    中村 重光君       野原  覺君    堀  昌雄君       前田榮之助君    村上 喜一君       山花 秀雄君    山口丈太郎君       横路 節雄君    渡辺 惣蔵君       佐々木良作君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中垣 國男君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 西村 英一君         農 林 大 臣 重政 誠之君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 小沢久太郎君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 篠田 弘作君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 志賀健次郎君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         総理府総務長官 徳安 實藏君         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         警察庁長官   江口 俊男君         防衛施設庁長官 林  一夫君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         食糧庁長官   大澤  融君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       石田 礼助君         日本電信電話公         社総裁     大橋 八郎君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 六月四日  委員今松治郎君、尾関義一君、北澤直吉君、倉  石忠雄君、正示啓次郎君、田澤吉郎君、田中伊  三次君、中村三之丞君、西村直己君、羽田武嗣  郎君、船田中君、保科善四郎君、松浦周太郎君  、松本俊一君、山口好一君、山本猛夫君、石田  宥全君小松幹君、島上善五郎君、横路節雄君、  渡辺惣蔵君及び受田新吉辞任につき、その補  欠として小沢辰男君、山口喜久一郎君、藤井勝  志君佐伯宗義君、菅野和太郎君、楢橋渡君、  亀岡高夫君竹山祐太郎君、浦野幸男君、首藤  新八君、齋藤憲三君、中島茂喜君、中山マサ君、  松田鐵蔵君、渡邊良夫君、前田義雄君、村上喜  一君、中村重光君、堂森芳夫君、前田榮之助君、  堀昌雄君及び佐々木良作君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員浦野幸男君、小沢辰男君、亀岡高夫君、竹  山祐太郎君、藤井勝志君及び前田義雄辞任に  つき、その補欠として西村直己君、今松治郎君、  高崎達之助君、中村三之丞君、水田三喜男君及  び加藤鐐五郎君が議長指名委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  予算実施状況に関する件  昭和三十八年度予算の補正を求める動議(川俣  清音君外十五名提出)      ————◇—————
  2. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  川俣清音君。
  3. 川俣清音

    川俣委員 私はこの際主として農産物価格並びに流通についてお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、外務大臣の御都合もございますようですから、まず第一に外務大臣並びに農林大臣お尋ねをいたしたいと思います。  それは、第一回世界食糧会議が、国連食糧農業機関FAOの後援で、三日から十三日間、世界百カ国から一千人以上の代表が出席してワシントンで開かれております。この会議は、世界食糧飢餓栄養不足の問題を解決するための大がかりな活動の一つとして取り上げられる問題でございまして、三日の開会式には、ケネディアメリカ大統領ウ・タント国連事務総長並びにインド大統領が演説をし、会議中は、英国の有名な歴史学者であるトインビー教授や、あるいはフリーマン米農務省長官ウッズ世銀総裁等が参列をいたしまして、各国政府学者権威者によって会議をされる予定でございますが、これに対して日本はどんな態度で参加するのかを明らかにしてほしいと思うのであります。  なお、この会議日本が果たすべき国際的な役割り、並びに、これに関連して国内対策が当然講じられなければならないと存じますが、その所信をもあわせて明らかにしてほしいと思います。
  4. 重政誠之

    重政国務大臣 今回の世界食糧会議は、御承知のとおりに、飢餓救済運動が行なわれてから三年目の食糧会議であります。米国政府招請をして行なわれたものでありますが、私ども考えでは、この食糧会議使命が、いまお述べになりましたとおりに、飢餓救済中心としての会議でありまして、食糧問題の重大性を認識してその解決に努力しようというのがその目的であると心得ておるのでありますが、私どもといたしましては、いま開発途上にあります、ことばは悪いのでありますが、いわば後進国、そういう国々に日本農業の発展とその経過を十分に説明をいたしまして、彼らに参考となり、彼らに指針を与えるということが非常にいいことではないか、こう考えておるのでありまして、会議でも、日本農業発達史というのがやはり中心議題一つとして取り上げられるようでございます。  そこで、私ども国内の問題といたしましては、御承知のとおりに、われわれの農業技術をさらに高度化いたしまして、日本農業は、いまやっております選択的拡大、あるいは農業体質改善構造改善事業というようなものをさらに強力に推し進めていきまして、日本農業生産性を拡大する、そうして高度の農業生産をやっていく、こういう方向に進まなければならぬ、こう考えておる次第でございます。
  5. 大平正芳

    大平国務大臣 いま農林大臣からあらましお話がありましたとおりでございますが、御案内のように、この会議FAOの主催で、アメリカ政府招請という形で行なわれるものでございますが、政府間の会議ではなくて、各国民間委員会民間の団体、協会のグループ、あるいは大学、学会、科学者言論界指導者、そういった方々が個人の資格で参加するものでございまして、直接予算的にも政府関係ございません。ただ、いま農林大臣が言われましたとおり、政府としても関心を持ち、支持を惜しまないつもりでおりますので、青田参議院議員以下御出席方々に対しましては、可能な限り便宜をはかりたいと考えております。
  6. 川俣清音

    川俣委員 それはそれまでにいたしまして、次に、農産物価格の問題についてお尋ねをすると同時に、流通機構についてもお尋ねをしなければならぬと思います。  第一には、生鮮食料、特に野菜等値上がりに対してその対策があるのかどうか。特にまた、魚介類に対する需要が依然として旺盛であるが、その対策はどんなことを考えられておりますか。また、食肉類需要増に対して対策が十分立てられておらないのではないかという生産者側批判も行なわれておりますが、これらの食肉生産並びに価格対策についてお尋ねをしなければならぬと存じます。  また、市乳をはじめ乳製品需要は決して減退をしていないのにかかわらず、メーカーは最近しきりに需要が限度に来ていると称して農林省のいわゆる成長農業に相当なブレーキをかけているように思われますが、その対策はどうでありますか。  この四点についてお尋ねをいたしたいと存じます。
  7. 重政誠之

    重政国務大臣 非常な広範な事項を一括しての御質問でございますが、ごくその要点をひとつお答えをいたしたいと思います。  まず野菜についての問題でありますが、野菜は、現在のところは価格は大体落ちついておるわけでございます。野菜値上がりがむやみにしないように、あるいは野菜がときによって暴落をして生産者に迷惑をかけるというようなことのないようにいたしますために、大消費地、まず京浜地方、あるいは大阪もそうでありますが、まず京浜地方出荷せられますトマトキュウリカンラン等につきまして指定生産地をつくりまして、それから東京市場横浜市場にそういうトマトキュウリカンランというようなものが出るように連係をつけまして、そうして、生産者のほうも安心してつくれる、と同時に、消費者のほうにとっても、これで出荷が適切に行なわれてその価格暴騰等がないようにということをまず第一に考えておるわけであります。タマネギにつきましては、御承知のとおり、先年来、ここ五カ年の価格を下回るような場合におきましては、その一定の価格を補給するという制度をつくっております。今回カンランにつきましても、同様な方式で価格差の補給をするという制度実施を近くいたすことにいたしておるわけであります。その他一般の野菜につきましては、まず第一に出荷調整をやるという方法をとっておることは、従来とも同様であるわけでありまして、これは魚につきましても同様でありますが、卸売り市場の改革をやろう、あるいは手数料の問題、あるいはせりの問題でありますとか、いろいろその機構上の問題及び取引方法問題等について幾多改善を要する問題があろう、こう考えまして、農林省におきましては、これらの問題を改善するために、生鮮食料品流通機構改善の本部を設けまして、目下検討いたしておりますが、近くこれも成案を得ることができる、こう考えておる次第であります。  さらに、魚につきましては、御承知のとおり、生産地には冷蔵庫を順次増設いたしております。あるいはまた、輸送についても冷蔵貨車を三十八年度予算にも計上をいたしました。消費地においても大冷蔵庫を建設いたしまして、市場出荷せられます荷物の調整をこの冷蔵庫によってやろうというようなことを考える、あるいは物的施設についても予算を計上して、その改善をはかることにいたしておるわけであります。  なお、肉につきましては、御承知のとおりに、生産地方食肉処理施設を設けて、そうして大市場への出荷についての取引改善方法を講ずる、あるいは中都市にもそういったような施設を設けまして取引合理化をはかる、こういう施設を今年度からいたすことになっております。  なお、牛乳につきましては、御承知のとおりに、年々消費生産も増大をいたしておるのでありますが、昨年は夏場の気候のかげんでその消費減退をいたしたわけであります。一五%の生産増に対して消費も一五%の消費増と見込んでおったものが、天候のかげんで少し涼しかったという関係上、七%くらいの消費増にしかならなかった。そこで、生産消費バランスが合わないので、ああいう値下げ問題等が起こったわけでありますが、これは学校給食等に回すとか、あるいは乳製品買い上げ等によりまして、御承知のとおりに、農林省といたしましても値下げに対してある程度の復元をいたしたというようなわけになっておる次第であります。将来におきましても、学校給食も奨励し、本年度におきましてはたしか二十二万石を学校給食消費するようになっておると考えておるわけでありますが、できるだけ生産消費バランスを合わすように考えていきたい、こう考えておる次第であります。  なお、肉につきましては、御承知のとおりに、牛肉のほうは大体やや弱含みでありますが、豚肉の需給のバランスが七、八月にどうも合わないというようなことが想像されますので、先般新聞にも発表いたしましたとおり、豚肉三千トンを緊急輸入をする手配をいたしておるわけであります。それによりまして豚肉値段も落ちついてまいることと考えておる次第であります。
  8. 川俣清音

    川俣委員 いまの答弁を聞いておりますと、非常におざなりでありまして、これによって消費者の不安を除く農林省態度とはなかなか理解しがたいと思うのであります。農林大臣説明は、その程度のことでありまするならばだれでもみな知っておることであって、知っておるからそれでは価格に対する不安がないかというと、農林省は言うことは言うけれどもさっぱりやらないのではないかという批判が起こっておるのではないかと思うのです。そこで、もっと具体的な施策がなければならぬと思います。  経済企画庁長官お尋ねしますけれども昭和三十二年の卸売り物価の指数を見ますると、戦前を基準にいたしまして、卸売り物価は、戦前昭和九年及び十一年を一といたしまして、三六八・八。消費者物価は当時の三十二年は三〇八・九だった。すなわち、卸売り物価のほうが三六八・八で、消費者物価は三〇八・九であった。それが、三十六年になりますると、卸売り物価が三五五・七で、消費者物価が三四五・〇と、消費者物価のほうが非常に上がってきております。さらに、三十八年の二月の資料を見ますると、卸売り物価は三五三・八で、消費者物価は逆に三八七・一と、卸売り物価よりも消費者物価のほうが戦前に比べまして非常に値上がりが高いわけでございます。これは、国民生活の上に大きな影響を与えておる消費者物価をこのままにしておいてよろしいとは何人も言えないであろうと思う。消費者あるいは国民生活の上から言って物価の上昇を押えなければならないという要請が強い。政府もまた、これに対して対策を講じなければならない、そう言われておるのでありますけれども対策があるのかないのか。立てなければならないと言われておりますが、立てないならば別ですが、立てると言うからには、はっきりしたものがなければならぬと思います。企画庁長官の御答弁を願います。
  9. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 消費者物価値上がりが非常に著しいということは御指摘のとおりでございまして、ことに、ここ二、三年毎年六%に近い値上がりがあるということは、国民生活に脅威を与えるものでもあり、また、昨日も御指摘がございましたように、貯蓄その他いろいろな点において好ましからざる影響を持っておると思います。ことに、昨今の消費者物価値上がりを検討いたしますと、先ほど御指摘もございましたが、需要の増加及びその構造変化に比較的すぐに即応し得ないところの第一次産業産品と申しますか、農水産等の産品にそれが著しいわけでございまして、このことが非常に昨今目立つようになりまして以来、農林省においてもいろいろなことをお考えいただいて、本来、この一次産業所得の格差が相当著しく、低い産業でありますから、本来の観点から申せば、どちらかと言えば、この階層の所得をふやすということに農林行政の主点が置かれることは私は当然だと思うのでありますけれども、それと同時に、また消費者的な観点からも農林省においていろいろ施策考え、また実施をしてもらっておるわけでございます。もちろん、国全体といたしまして、政府全体といたしましては、昨年の三月以来、総合対策を立て、あるいは生鮮食料品閣僚懇談会をしばしば開き、また昨今は関係各省連絡協議会もいたしております。一つ一つ問題を取り上げて対処いたしておるつもりでありますけれども、何分にもこの第一次産業産品というものが急速には需要の量及び内容の変化に即応しがたいこと、並びに、何と申しても、生産技術の進歩がございますけれども、やはり農地というものが消費地から遠くなりつつある、また、どっちかと言えば減る傾向にあるわけでございますから、私ども一生懸命やっておるつもりでありますけれども、なかなか思うように結果があらわれてこない。決して放置してよいと考えておるわけではないわけでございます。
  10. 川俣清音

    川俣委員 これも答弁にならない。閣僚懇談会を開いたところが、かえって値上がりした。対策を立てたところが、対策を協議したところが値が上がったということになると、これは対策じゃないじゃないですか。農産物価格と申しますか、あるいは生鮮食料、この価格を押えなければならない。これは生産地価格が上がっているのじゃないですよ。消費地価格が上がっている。消費地価格が上がったということについては、これは流通機構の問題です。対策を立てられるごとに価格が押えられないで上がっていくということは、政府責任であると思うのです。放任しておいて上がったというならば、これは政府責任じゃないでしょうが、対策を立てたところ上がったというならばこれは政府責任ではないでしょうか。この点、企画庁長官農林大臣にお伺いいたします。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに流通機構にいろいろ問題があることは御指摘のとおりでございますし、また、消費者価格の上がりがそのまま生産者手取りになっていないということもそのとおりでございます。しかし、たとえば、昭和三十二年の産地価格を一〇〇といたしました場合に、三十六年には一六〇くらいに産地価格が上がっております。そのときに消費者価格は一三四・九くらいでございまして、三十七年には、生産者産地価格が一六八、消費者価格が一六四くらいということでございますので、全く手取りになっていないというわけではむろんございません。消費者価格が上がって生産者価格が上がっておるというところまでは私は確かであろうと思います。ただ、中間の流通機構においてその帰属すべき利潤が相当消されておるということは事実であろうと思います。
  12. 重政誠之

    重政国務大臣 流通機構改善につきましては、先ほども申し上げましたとおり、現在までもいろいろやっておるのでありますが、中央卸売り市場取引改善、あるいは手数料関係、あるいは仲買い人の数の問題とか、いろいろ問題があるわけであります。これらを検討いたしておるわけでありますが、近く成案を得ましてこれを合理的にいたしたい、こう考えておるのであります。  さらに、小売りのほうにつきましては、御承知のとおり、標準品小売り店を設けてやっており、公設小売り市場も近く設けることができるところもあると思うのでありますが、関西におきましては、非常にたくさん公設小売り市場がありますが、東京地方にはないから、これはできるだけつくりたい、こう考えておるわけであります。そういう点につきましてもできるだけ努力はいたしておるわけでありまして、流通機構改善につきましても、従来やっておりますことのほかに、近くその成案を得てさらに改善をいたしていく、こういう考えを持っておるわけであります。
  13. 川俣清音

    川俣委員 流通機構について二、三お尋ねしたいと思うのですが、東京中央卸売り市場市場を見ますと、三十五年に築地市場では一億七千八百十六万トンであったのが、三十七年には一億九千九百八十五万トンに、かなり伸びております。特に、淀橋におきましては、昭和三十五年が一億九千二百四十二万トンであったのが、二億九百三万トンに伸びてきております。かなり集荷状態はよくなっておるのでありますが、しかしながら、これを単価で見ますると、三十五年が築地市場キロ当たり二十七円であったものが、昭和三十七年には年間三十七円に高騰してきております。特に、この七市場で見ますると、かつては築地及び神田市場キロ当たり単価が高かったのであります。足立であるとか淀橋は比較的単価が安かったのでありますが、三十七年になりますると、だんだん築地神田と同じような単価になりつつあります。集荷量がふえて単価が上がるという傾向にあるわけです。  そこで、これは東京市場だけではまかない切れないのではないか。むしろ、埼玉であるとか、あるいは千葉であるとか、あるいは神奈川に、東京経済圏として、これらの近県に、あるいは大阪でありますならば大阪近県に、やはり中央卸売り市場というものを設ける必要があるのではないか。これほど広域経済の中で生活をしなければならない現状におきましては、やはり広域的な経済考えていかなければならないのではないかと思う。それを東京都という行政区域の中で市場操作をしようとするところに、流通機構一つの欠陥が出てきたのではないか。すでに東京人口が過剰になると同時に、東京へさらに集中されてきておるわけです。これらの過大人口をかかえて、しかも広域経済の中で市場経営しなければならないのでありますから、市場対策もまた広域経済的な市場の配置をする必要があるのではないか。農林省はこのくらいのことは考えられたことがありますかどうか。また、企業庁は考えられたことがありますかどうか。なぜ考えなかったか。検討されておるならば当然考慮されておるはずだと思いますが、この点についての御意見を伺いたい。
  14. 重政誠之

    重政国務大臣 私はこういうふうに考えております。中央卸売り市場というものは、その重大な使命一つは、公正なる価格形声をする場であるということであります。実際を見てみますと、東日本東京中央卸売り市場値段というものが標準になりまして、ずっと地方の中都市市場がみんなその値段中心にして形成せられておる。西日本大阪市場中心にしてその値段標準として値段がずっと形成せられておるというのが実情であります。そこで、最も重要なることは、東京及び大阪中央卸売り市場価格形成が公正に行なわれるような仕組みをするということが一つの大きな改善の問題である、こういうふうに私は考えておる次第であります。ただいま川俣委員のお述べになりました、東京周辺市場もやはりこれを東京中央卸売り市場の一環として考えるべきではないかという御指摘でありますが、これは私は、自然にそういうふうになっていくと思うのであります。何といたしましても、東京のごとく全人口の一割を包容しておるようなこういう大都市におきましては、やはり東京中央卸売り市場というものが当然重大な問題であり、それが中心になっていくということは考えられる。そこで、それではいまの七つの市場だけで野菜市場はいいかといえば、これは私は問題があると思う。この東京中央卸売り市場については、だんだん人口がふえていき、交通の関係等もありまして、荷さばき等関係から、あるいは集荷関係もあるでありましょうが、そういうような関係からさらにその分場をふやしていくという必要があれば、これは大いに考えなければならぬ、こういうふうに私は考えておる次第であります。
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 具体的にはただいま農林大臣の言われたとおりであると思いますけれども、むろん、主産地を形成するというような意味では、大都市周辺にそういう行政的な区域関係なくそういうものが必要であろうというふうに考えております。
  16. 川俣清音

    川俣委員 農林大臣でも企画庁長官でも大蔵大臣でも、とにかくお考え願わなければならぬのは、集荷にあれだけの時間をかけなければならぬということ。神田市場へ行ってごらんなさい。生産地から持ってきて、あの市場近くへ行ってから、距離にしては短いけれども市場まで運ぶに一時間もかかっておる。さらにこれを卸しから小売り店まで持っていく時間というものは、距離が短いにかかわらず、時間的に大きなロスをし、経費をかけておる。こういうことが是正されない限り、生産者価格消費者価格の開きが大きくなることはやむを得ないのではないかと思われる。これにメスを入れないで価格対策は立たないと思う。したがって、だんだん神田市場及び築地市場集荷量が減ってきておる。ほかの市場に比べて集荷量の伸び率が少ない。単価が高いのにかかわらず、運輸上の制約を受けて集荷量が減ってきておるわけです。高級品でなければ神田市場及び築地市場には運ばない。一般市民向きな大衆向きな野菜は、神田市場なり築地市場へ持っていくと、多くの時間と多くの人件費をかけなければならないために、持っていかなくなって、きている。これが値上がりの大きな原因になっているのじゃないですか。  はなはだしくなると、これは国鉄というよりも運輸省にお尋ねしなければならぬですが、運輸大臣おられませんから大蔵大臣に聞いておいてほしい。千葉から農民が自家用の軽トラックで共同出荷したところが、運輸業法違反だということでつかまったというのです。農民が共同出荷をする。これは、農協の共同出荷でありますならば、あるいは法人格を持った出荷でありまするならば自家用車でもいいわけです。農民自体が、自分の荷物だけでは不足だから、隣近所の者で共同で市場へ持って行こうとすることが、運輸業法違反だそうです。人のものを運ぶから営業だと言うのです。これはどうなんです。どっちが一体大切なんです。消資生活の安定をはからなければならないというのが基本になるのか、運輸業法というトラック業者を擁護することが目的なのか、このけじめをつけなければ対策は立たないと思う。これは一例ですよ。農民が共同生活をして隣のものを運んでやりましょうというのは、公序良俗に反しないじゃないですか。だれにも損害を与えないじゃないですか。それを取り締まるのですよ。何のために取り締まらなければならぬか。見たところが、ごっちゃになってはいかぬからということで、この荷物は甲、この荷物は乙とつけておった。これはおのおの五人のものの営業運搬だと言う。農村で営業だなんと考えて運搬しておりません。持っていくならば隣のものも市場へ持っていってやろうという好意じゃないですか。親切じゃありませんか。しかもそれが国民生活にプラスになることじゃないですか。これが一体なぜ違反なんです。これが営業ですか。これは農民の共同生活から来る問題ですよ。もしも運輸業法がそういうものまで取り締まるというならば、これをやめなければならぬでしょう。運輸大臣の問題ではなくて政府全体の問題ですよ。企画庁長官、どうですか。
  17. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の常識では、反復して利益を得る目的を持って行なわれない限り、そういうものを営業と考えるべきではないと思います。
  18. 川俣清音

    川俣委員 そのとおりだと思うのです。なぜそれじゃ陸運局は一体こういうことを取り締まるのです。陸運局へただしますると、われわれの先輩がわざわざ来て、こういうものを取り締まってもらわなければ営業はできないからと言ってこられたというのです。先輩が来てというのです。国鉄なり運輸省の先輩のトラック業者が、運輸省の陸運局へ圧力をかけて、ああいうものを取り締まれと言うのです。国鉄の人、どうです、総裁。陸運局の先輩が言ってくるという。先輩というのは運送業者ですよ。
  19. 石田礼助

    石田説明員 お答えいたします。  それはどうも国鉄総裁のコントロールの及ぶところじゃないのです。参考には承っておきまするが、答弁の範囲内でないと存じます。
  20. 川俣清音

    川俣委員 総裁、もう一度その点……。あなたはいま総裁になったばかりですけれども、国鉄の退職者がトラック業者の重役にたくさん入っておるのです。したがって、陸運局の先輩なんです。権限じゃないではない。自分たちの部下なんです。退職さした者が、単に退職じゃないのです。就職を国鉄は運輸業者にあるいは私鉄にあっせんしているのです。きのう楯君が問題にしたように、近江鉄道に、あるいは駿豆鉄道にみんな国鉄から入っているのですよ。国鉄の事業を妨害されておるのですよ、自分の部下をやって。年々で百六十人ぐらい部下を各運送業者やあるいは私鉄に出しておるじゃないですか。したがって、陸運局では先輩と称するのです。先輩が来て取り締まれと言うものですから、取り締まらざるを得ません、こう言うのです。大蔵大臣、どうですか。
  21. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど企画庁長官が答えましたとおり、営業を目的としておらないものを取り締まる、しかも、あなたがいま言われたとおり、法律の条章によって取り締まるのではなく、先輩が来たから。さようなことはないと思いますが、そういうことがあれば厳重にそういう方面を取り締まります。
  22. 川俣清音

    川俣委員 そうでなければ物価対策は講ぜられないと言うのです。大蔵大臣も農村におられて御存じでしょう。隣近所でお互いに共同して助け合うというのが農村の美風ですよ。それがなくなったらたいへんなことですよ。それで共同出荷をしようというものに対して制約をする。もしも自分のところだけならば、これは運搬できないです。隣の者と共同でやる。それについては、金銭的な営業をやったかどうかは別にいたしまして、お互いにきょうは運んでもらうならばあしたは手伝いに行こうとかという、そういう報酬はあるでしょう。しかしながら、これは営業じゃないですよ。運搬してもらったのにかかわるその代償として労務を提供するということはあり得るでしょう。それは無償でないというところまでいくでしょう。そういう形式の問題ではなしに、どうして一体国民生活の安定をはかるかということが基本になっておらなければならないだろう。常に営業を主体にした業務じゃないのです。農林省は協業をすすめたり共同出荷をすすめておるのです。この障害になっておるようなことを、これをそのままに見のがしておったのでは、流通機構対策もできないであろう。  もう一つは、いよいよ時間がないから先ほどに戻りますけれども、この交通難のときにあたって、魚であればこれは築地市場が最も好適地であります。大衆野菜等は、できるだけ運搬経費をかけないように、輸送経費をかけないような方法をとらざるを得ないであろうし、また、そこから小売り店に運ぶにも、輸送費のかからないようなところを選ばざるを得ないであろうと思うのです。そういうところに適切な市場があることによって、もっと公平な、——いわゆる公正なと大臣の言うのは、そういう流通経費をできるだけかけないことが公正な流通機構だと私は信ずる。そういうところへ目をつけられたらどうですかと私は言っておる。農林省は何千何万の機構を持っているのですから、私一人の頭よりももっと進んだ機構を持っておるのでありますから、これくらいの対策を講ぜられないわけはないじゃないですか。何も研究もしないで、対策は立てます、ことばだけのことに終わってしまうのじゃないか。だから、私はあえて具体的にこの問題を提起したのですが、どうですか。埼玉なり、あるいは千葉の東京の入口なり、埼玉の東京の入り口なり、入り口と言ったって別に県境とかいう意味ではないのです。比較的集荷のロスのかからないところに設ける。それからまた、小売り店に運ぶにも、比較的交通の困難な場所でないところを選ぶ必要があるのであって、一体、東京のように異常な膨張をしたからには、そういう道路の整備もできておらないわけです。今後されるでありましょうけれども、されるにいたしましても、神田市場及び築地市場というのはもう限度に達している。都内にたくさんつくれというのではないのです。もう少し広域経済の上から市場というものを考えなければならぬところに来ておるのではないか、こう指摘しておるのです。この点農林大臣はいかがお考えになりますか。
  23. 重政誠之

    重政国務大臣 御承知のとおりに、野菜について申しましても、いわゆる旅ものというものが消費量の半分以上も市場にあるわけでありまして、とうていその隣接府県だけではまかない切れないという事情にあるのです。その隣接する県の集荷及びその輸送について便利なところに市場を設けるべきではないかという御趣意と理解をいたしますが、それは御説のとおりであります。それは、先ほども申しましたとおり、いまは市場が五つ六つありますが、さらにこれは御趣意のような観点から検討いたしまして、市場をさらに増加する必要があれば増加をいたしたい、こう考えておるわけであります。  なお、現在の中央卸売り市場、すなわち神田市場及び築地市場が狭いということは、これはもうそのとおりなのです。大体、築地市場あたりでも、人口五百万を前提としてできた市場でありますから、現在のごとく一千万をこえるというような人口を養う市場としては、狭いことはわかっておるのです。そこで、先年来適当なところに大市場を建設しようというのでいろいろ検討いたしておるのでありますが、なかなか急にはそれがまいりません。しかし、それができぬからこのままでいくといっても、さばきがつかないものでありますから、昨年それぞれ関係省なり都にも相談をいたしまして、築地市場の拡張を実は考えておるわけであります。本年度あたりからこれを数千坪の拡張をいたしまして、そして臨時暫定措置としてそれに施設を講じる、こういうふうな手段に出ておるわけであります。
  24. 川俣清音

    川俣委員 いずれにいたしましても、ますます都市人口が集中し、生産者人口は減ってくる、一方また野菜等生産基盤である農地がだんだん縮小されていく、こういう中において、放任しておきますならばこの傾向はますます激化するであろうと思われる。現に、東京郊外の蔬菜地を見てまいりましたところ、来年から固定資産の評価がえが行なわれるというのです。従来の固定資産は、御承知のように、政府の方針によって収益還元をしておったわけです。収益価格をもって評価をいたしておったのでありますが、来年から今度は売買価格をもって評価をするというふうに変わってくるわけです。もしも売買価格で評価されるならば、あえで野菜づくりをするのは損だ。   〔委員長退席、青木委員長代理着   席〕 あき地にしておれば、将来宅地になるということで、むしろ評価が上がっていく。野菜をつくるために、農地だということで、現に農地だということで野菜による収益評価をして、安くなる。どうせつくっておってもつくらなくても売買価格だということになると、むしろつくっていないほうが宅地として適地になる。なぜかというと、うねを立て耕地にするよりも、むしろ草を植えて地ならしをしておいたほうが、宅地価格として売るには値が張るというのです。そういうことで、あえて空地をつくっていくような政策をおとりになるということは、野菜生鮮食料、しかも大都市に近いこれらの生鮮食料生産地をだんだん縮小していくことになるのじゃないかと思いますが、大蔵大臣、どうでしょうか。これは自治省の問題ですが、大蔵省としては税に関しては無関心ではおれないと思いますので……。
  25. 田中角榮

    田中国務大臣 野菜値上がりは、先ほどから述べられておりますとおり、生産の不振、流通機構問題等に主因があるのでございまして、土地の問題が大きな原因になっておるとは考えておりません。ただいま言われましたように、評価額を三十九度からどうするかという問題につきましては、御承知のとおり、税法上時価に近い地価ということにななっておりますが、現在の課税標準価格は非常に低いのであります。特に各地方別において非常にアンバランスがありますので、これらを是正しようということでございますが、これが増収をはかるためを目的といたしておるのではないのでありますので、税率の低下その他によって現在の不均衡、アンバランスを是正するという方向で、いま制調査会で検討をいたしておるのでありまして、これが改善に対しては、現在よりもより合理的であるという考え方に立って改正がはかられるものと考えております。
  26. 川俣清音

    川俣委員 この問題はあとでまた触れることにいたしますが、農産物価格というのは土地価格に非常に制約を受けることは、資本主義機構における経済の原則であります。生産基盤でありまする土地価格が上がりますならば、当然それから生産されまする農産物価格が上がるというのは、資本主義経済の中においてはそういう傾向をとることは当然でなければならない。  次に、それはあと回しにいたしまして、この際時間がなくなってまいりましたのでお尋ねをいたしたいと思いますが、いよいよ米及び麦の価格を決定しなければならない時期になってまいりました。すでに法律に基づきましても六月中には麦価格を決定しなければなりませんでしょうし、米価は少なくとも七月の上旬に決定しなければならない。むしろ作付以前に米価を決定するというのが従来の慣習であり、また、予約米価を実行いたしていきますためには、七月の上旬に決定しなければならないのでございますから、すでに農林省はその米価決定並びに麦価決定の方針ができておることと存じます。もう六月ですから、方針が立てられなければならない。今月の末に麦価庭きめ、間もなく米価をきめなければならないといたしますならば、すでに方針が打ち立てられておるはずだと思います。そうして、作業が始まっておると思います。農林省はどのようだ方針を立てられ、どの程度の作業が進捗いたしておりますか、この際お尋ねいたしたいと思います。
  27. 重政誠之

    重政国務大臣 御承知のとおりに、生産者米価の決定は米価審議会の意見を聞いてやらなければならないわけであります。したがって、その算定の方法等につきましても、毎年これは米価審議会の御意見を拝聴いたしてきめておるような次第であります。でありますから、私どもといたしましては、三十八年度産米の生産者米価決定の方針と申しますか、そのやり方というようなものにつきまして、確定したものは持っておらないわけであります。なお、御承知のように、三十七年の生産費調査というものの集計がまだできておりません。現在のところでは、それのみでなく、あるいは物価指数の問題でありますとか、あるいは都市の製造工業の賃金の問題でありますとかいうような、重要な要素になるものもあるわけであります。そういうことで、お述べになりましたように、どうしても七月の上旬になるのではないか、こういうふうに考えております。
  28. 川俣清音

    川俣委員 米価審議会の意見を聞かなければ政府の方針は立たないのだ、まことにもっともな所信でございます。しかしながら、もう米価審会は十数年続いておりますけれども、米価審議会の意見をいれて作業されたのはただ一回だけです。あとはみんな政府の方針どおりです。ただ単に諮問しただけであります。一回ありますから、一回もというわけにはいきませんけれども、米審の意見をいれられて作業をされましたのは一回だけです。あと十数回というものは、米審の意見というものをいつも尊重するという言葉は聞いておりますけれども、そのとおりに実行されたことはかつてないのです。今度もまた米審を開いて意見を聞いてそれから方針を立てるのだということでございますけれども、米審をいつお開きになる予定ですか。それから、米審を開いて決定してから作業をするということになると、従来の農林省機構全力をあげて徹夜でやりましても三週間以上かかるはずであります。それじゃ米審をいつお開きになる予定ですか。
  29. 重政誠之

    重政国務大臣 御指摘のとおりに、麦価は六月中に決定しなければなりませんので、六月の下旬に麦価のために米審を開く、大体こういう予定でおります。米のほうは、先ほども申しましたとおりに、生産費調査が六月の下旬から七月上旬へかけてその結果が出てくると思いますので、それを予定いたしまして、七月の上旬に米審を開きたい、こういうふうに考えておるわけであります。仰せのとおりに、その米審にいかがいたしましょうかということを初めから聞いて、それから算定をいたすというわけにはまいりません。これはもう御承知のとおりでありまして、私どもは、生産費調査が出てき、あるいは都市の製造工業の労賃、あるいは物価指数というようなものがみんな出てまいりますと、従来からの例もございますことでありますから、一応の試算はいたす、こういう行き方になっておるわけであります。
  30. 川俣清音

    川俣委員 だんだんぼろが出てきたと思うのです。政府の方針が大体きまったのではないか、立てられなければならないのではないか、こういうお尋ねに対して、米審の意見を聞かない限り方針が立たないという答弁であったわけです。今度は、そうではなくして、大体七月の上旬に米価を決定しなければならないから、作業はやるんだけれども、作業の資料が十分でないから、整い次第作業に入る、こう言う。作業はできますよ。政府の方針がきまらないために作業ができないではないですか。方針がきまれば作業に着手できるのです。方針がきまらないから作業ができない。政府全体は別にして、農林大臣として米価決定の方針が立てられなければ、あなたが立てなければ、下部機構は作業に入れない。したがって、従来のような方式で算定をするという方針を立てられておるのか、あるいは従来の方式はやめて新しい方式によるという方針を立てられておるのか、どちらなんですか。どっちかでなければならぬ。
  31. 重政誠之

    重政国務大臣 私の表現があるいは悪かったかもわかりませんが、私は米審の意見を聞かないと方針を立てることはできないと言ったのではないのでありまして、米審の意見を聞かなければなりませんから、意見を聞く前に政府の方針を決定をするわけにはまいりません、こういうつもりで私は申し上げたわけであります。大体、私ども考えといたしましては、三十八年産米の生産者米価の算定にあたりましては、おおむね従来のやり方を踏襲してまいりたい、こういうふうに考えてはおるわけでありますが、これはもちろん米審の御意見も聞かなければなりません。そうして決定することであります。
  32. 川俣清音

    川俣委員 だんだんどうもあいまいなんですが、わかったようでわからない答弁をされておると思うのです。   〔青木委員長代理退席、委員長着   席〕 政府の方針がきまり、それが実行されるかどうかということになると、米審の意見を聞かなければならないということになると思う。方針がきまらない以上、作業ができない。どんなに有能な食糧庁の職員がおりましても、大臣の腹がどっち向いているかわからないときに、作業ができますか。やれば大臣におこられるでしょう。おれの方針に従わない者は首切りだということになるだろうと思いますよ。あなたの方針がきまらないのに、作業ができるわけはないでしょう。そこで、政府の方針は別にして、所管官庁でありまする農林省は、農林大臣はどのような方針をもって作業を進めようといたしておりますか、すでに腹がきまっておるでしょう、こうお尋ねしておるのです。そこで、その方式はいろいろあるでありましょうが、従来のような方式で算出するのか、あるいは、できるだけ米価を安く押えなければならないから、方式内容を変えようというお考えでおるのか、だんだんと問いただしていかなければならぬと思うのですが、一体どうなんですか。
  33. 重政誠之

    重政国務大臣 先ほどお答え申し上げましたとおりに、私の考えは、おおむね従来の方針に従って算定をいたしたい、こう考えておるのであります。でありますが、昨年の米審のいろいろの御注文もあるわけでありますから、それらをいま検討いたしておるわけでありまして、正直のところ、今日ただいまどういう方針で算定をしようという腹はきまっておりません。
  34. 川俣清音

    川俣委員 だんだん、大臣、苦しくなってきたと思うのですが、去年の米審から約一年たちます。答申に基づいてそれの意見を大いに参酌して立てようということでありますならば、一年間でありまするから、当然検討されておってしかるべきなんです。米審の意見を尊重するというたてまえでありまするならば、米審の意見というものを取り上げるべきものか、はたしてこれを採用できるものかという検討は、一年間にできてなきゃならぬはずです。これからやりますなんということは、おそ過ぎるじゃないですか。そうじゃないですか。常識で考えてそうでしょう。一年間かかってできないものが、この半月でできるわけはないでしょう。  そこで、大臣、お気の毒ですけれども、少し問い詰めなければならぬのですが、一体昨年どおりの方式で農林省としてはどこを変えていかなければならないとお考えになっておりますか。この点をお尋ねしたい。
  35. 重政誠之

    重政国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、まだどこをどうしようとかなんとかというようなことは考えておりません。おおむね前年の方式を踏襲していきたい、こういうふうに考えておるのであります。
  36. 川俣清音

    川俣委員 そういたしますると、従来の方針というのは、米価審議会でかつて決定いたしました生産費及び所得補償方式による算定方法だ、基本的にはこう理解をしてよろしゅうございますか。
  37. 重政誠之

    重政国務大臣 大体そういうことになろうかと思います。
  38. 川俣清音

    川俣委員 なろうかというのは人ごとの話であります。農林大臣責任者であるから、こうしたい、あるいはしたくないとかというような返事でなければならぬ。そうなるであろうかというのは第三者の答弁なんです。責任者として、こうしたい、したいができるかできないかわからぬ、こういうことになると能力の問題だということになりますが、こうしたいのかしたくないのか。そうなるであろうなんということは、責任者としての答弁ではないと思う。したいのだ、あるいはするつもりだ、こういう御答弁でなければならぬと思う。三十八年度の米価は従来の方針どおりだ、こういうことでございますか。従来の方針というのは、一分一厘違えてはならないという意味でないことは理解いたします。基本でありまする生産費及び所得補償方式による、これが食管法の規定するいわゆる米価算定の基準、いわゆる再生産を確保しなければならないという食管法に基づく計算の方式だ、これが基本だ、こう理解してよろしいんじゃないでしょうか。
  39. 重政誠之

    重政国務大臣 先ほど申しましたとおり、私の希望といいますか、考えは、おおむね従来の方式によってやりたい、こう考えておるわけであります。
  40. 川俣清音

    川俣委員 やりたいが、何か障害があるという不安があるのでございますか。この点をお尋ねしたい。
  41. 重政誠之

    重政国務大臣 これは、昨年の米審でもいろいろの御注文もついておることでありますから、それらを十分にあれ以来検討はいたしておりますが、そういうことを十分に考えまして、最終的に腹をきめなければならぬ、こう考えておるのであります。現在のところではまだその腹はきめておらぬ、こういうことを申し上げておるのであります。
  42. 川俣清音

    川俣委員 腹というのは、政治的な配慮だろうと思うのです。どういうところに押えようかというのは、これは腹だろうと思います。これは農林省の者は予測できないところだと思います。腹は別にいたしまして、計算はこういう計算でなければならぬということは、それは腹の問題じゃない。そろばんの問題、機械の問題なんです。機械を使うからには、方針がなければ機械は動かない。おれの腹を察して動けなんという機械はないんです。どんな有能な役人といえども、おれの腹を察して動けなんといっても、動ける者はないと思う。そこで、方針というものがなければならぬはずだ。いまはっきり方針を言えないというのは、腹がきまらないのではなく、その作業の結果幾ら米価が出てくるか、さてそれでは政府部内が承知するであろうか、あるいは国会のほうから攻撃してくるであろうかということが考慮されるから、腹がきまらないんだ、こういうのならばわかりますよ。農業団体、農民団体から突き上げを食うであろうし、大蔵省からは制約は受けるであろうし、その作業で計算してみても、一体出た額によってはこれは大臣としてなかなかのみかねるという意味ならば、よくわかりますが、基本方針がまだきまらないというような意味の腹がきまらないということでありまするならば、これはいつ米審が開かれるかわからぬということになる。現にあなたのほうでは作業しておるんですよ。方針がきまらないで作業したならば、方針が変わるごとにこの作業というものは全部むだですよ。参考にはなるが、勉強にはなったかもしれぬが、行政官庁としてはむだなことをやったということになる。大蔵大臣に聞いてごらんなさい。徹夜をして、超勤を払って、そうして作業をさせておいて、それがむだになるというような行政がありますか。これも中間経費として消費者に負担させられるんです。消費者はむだな経費を負担しなければならぬ。赤字だと大蔵大臣は言うんです。これも赤字の大きな原因なんです。方針がふらつくことによってむだな労力を提供しておる。民間じゃそんなことはありませんよ。方針というものがきまって作業をする。その作業というのは、有効ならしめるための作業でなければならぬ。それはいつでも消費者にかぶせることができる、政府にかぶせることができるから、このくらいの赤字は何でもないというので作業をやられたんじゃたまるものじゃない。いま現に作業されつつある。大臣は知らないかもしれぬが、作業している。この案をつくれば大臣に気に入れられるか、この案をつくれば大臣から反対されるかと、くよくよしながら作業している。むだな作業ですよ。大臣、はっきりとこの方針だということを明示してもらいたい。
  43. 重政誠之

    重政国務大臣 川俣さんは何もかも御承知の上でいろいろ言っておられるのでありますが、私の腹をきめるのは、先ほども申しましたとおり、生産費調査の結果が出てまいりますのが七月の月初め前後であろうと思いますから、七月の初旬に米審を開くつもりでおります。それまでに私は腹をきめればいいのであって、いまからその腹をきめておかなければならぬという理屈はない。だから、少し御無理じゃないですか。いまから私の方針を言わそうといっても、きまってないんだから。  それから、事務当局がいろいろやっておることがむだだと、まるで中間経費みたようなおことばでありますが、これは、御承知のとおり、そうではありません。腹をきめてからそろばんをはじけば三週間かかると仰せになったとおりであります。方針としては、従来の例もあることでありますから、私の希望としてはおおむねそうありたいということを申し上げておる。事務当局においてもそういうことでいろいろの準備をいたしておることであろうと思います。私はよく知りませんが、それがむだであるというようなことを言われるのは、まことに心外にたえないです。
  44. 川俣清音

    川俣委員 私もむだなことをさせたくないというところから質問しているんです。いまやっていることがおそらく有効になるであろう、有効になるというのは大臣の方針のもとで作業しているから有効になるのであるという期待をしているわけです。無効になれなんて言っておるのじゃない。難儀して作業して、むだだというようなことを言えるわけもないし、あの熱心さにはほだされるわけですから、それを有効にしなければならぬ。腹がきまらないのだからそれが無効だということになっては困る、こういうことなんです。そうじゃないですか。あなたの部下があれほど熱心に作業しているものを、むだにならならないようにしなければならないであろう。そこで、方針を明らかにしてはどうですか。それなら勇ましくさらに努力を払うであろう、こういうことなんです。最終の価格については、これは行政の領域ではない。最終の価格については、閣議決定もしなければならぬであろうし、大蔵省と折衝もしなければならぬであろうし、田中さんが目を光らせているからには、なかなか作業したからといってもおいそれとは承知しないであろうことはよく承知いたします。最後の価格決定についての腹はきまらないということはよく理解しますけれども、方針がきまらないなんということはどこにあるんですか。これ以上突っ込みませんがね。  そこで、それであればあるほど、早く米審を開かなければならないということになると思うんですが、どうですか。七月の初めになるべく早く開いて、いろいろと意見を聞きながらその作業が順調に進むようにすることが私は必要じゃないかと思います。ときには、臨時作業をする者を外部から雇い入れたり、あるいは外に作業を依頼しなければならぬような事態が従来も起こってきている。これも事務人件費の中の経費に入るわけだ。急激にやればやるほど、自分だけの機構ではこなし切れないで外部へ委託しなければならない。しかも、外部は機密を要するために厳重な監督のもとにしなければならないということで、これも大きな経費を要している点なんです。これも中間経費に入るんですよ、いまの特別会計では。これはあとで論じます。こういうように外部へ発注することも経費に入る。食糧庁の機構では不十分た、——不十分じゃないんですよ。もっと早く方針がきまるならば十分能力を発揮できる。  この際大蔵大臣お尋ねしますけれども農林省の統計調査部の集計は大体二月ごろまでに終わることになっておりますが、これはだんだん延び延びになって、三月ごろ終わったようでございます。これも、現地の調査に当たる者は削減できませんけれども、最近の計算機械の発達によりまして、集計事務などは機械化さるべきものであろうと思います。また、食糧庁におきましても、現に米の検査というものはなかなか機械を使いましても不十分でありますから、現地のいわゆる実務職員は減らすわけにはいかないでありましょうけれども、集計、連絡というようなものにつきましては、これは民間においてはかなりの機械化が進んでおるわけで、そういういわゆる農林省の統計の集計などについては、昔で言えばそろばん一級でなければできない二級でなければできないというようなことよりも、もっと集計事務についてはスピードを上げることによって、一月中に集計ができないわけはないのです。いまの計算機械の発達によりましてできるはずです。そういうところに大蔵省が金を惜しんでおるために事務人件費がいたずらにかさむのではないかということも考えますが、大蔵大臣、どうでしょうか。
  45. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、食管問題につきましては非常に長い歴史があるわけでありまして、この制度そのものは、食糧が非常に不足しておるときに国民に食糧を的確に配給するという考えのもとにつくられたものでありますが、現在は事情も違っております。しかも、食管の赤字が非常に大きくなり、財政負担の度合いも非常に大きいのでありますし、経済的にも財政的にも、これらの問題に対して新しい角度から衆知を集めて検討すべきであるということで、この国会に対して食管問題調査会をつくって検討していただきたいと言っておるのでございますが、まだその法律案が提案に至らないわけであります。この食管問題は、ただに大蔵省だけの問題というよりも、国民全体の問題として、これが合理化をはかりながらこの制度設立の目的を生かさなければならぬ、このように考えておるのでありまして、大蔵省は何でも削るというので、そういう考えから機械化やより合理的な計算を行なうための作業を阻害しておるような事実はありません。もし適当な機械があるということであれば、積極的に私のほうでも協力してまいりたい、このように考えておるわけであります。
  46. 川俣清音

    川俣委員 最後の答弁だけでいいのでありまして、集計事務等は、最近の電子計算機等の計算によりまして、方針がきまれば計算はもっと簡単に早くできる。できた結果によって政治的判断をするということは、これはあとの問題です。少なくとも方式がきまり、そして計算が早くできるということが、政府の方針を決定する上にも必要であろう、こういう考えを大臣に述べて、その御返事を得たいと思ったわけでございます。  何と言いましても、今日の米は、国民の総所得の上からも、また農業経営全体から見ましても、国民の消費経済から見ましても、最近の消費傾向というものは確かに米麦に対してはかなりウエートが減りつつありまするものの、なお重要な主食であることについては間違いのない事実であります。これは、食糧統計から見ましても、なおやはり依然として、退勢にあるとはいいながら、国民の主食の大宗をなしておるということについては間違いのない事実であります。したがって、これが国民経済に及ぼす影響というものは、単に農民側ばかりでなく、消費者側、一般経済界に対しましても大きな影響を持つものであるだけに、早く三十八年度の米価の見通しをつけるということが国民経済全体の上に必要なことなのです。腹がきまらないからというわけで延ばすわけにはいかない。国民経済にとって重要な農産物であります。それだけに、作業能率が上がるようなことをひとつ考慮しなければならないであろう、これは大蔵大臣に方針を出せなんということを言うのじゃないけれども、作業能率を上げるようなことは大蔵省が考えなければならぬであろう、こういうことだけ申し上げたのです。  そこで、農林大臣お尋ねしますけれども、去年の米審でいろいろな意見が出たそうでありますが、これを私どもも知らないわけではございませんけれども、一体どこを取り上げなければならないと思っておられますか。米審の意見のうちでどこを取り上げなければならないとお考えになっておりますか。
  47. 大澤融

    ○大澤政府委員 昨年の米審でいろいろ御意見の出たところでございますけれども、たとえば、適正限界の農家、これをどういうふうに考えたらいいかというような問題、あるいはまた農家の生産性、あるいは逆に他産業生産性の上がり、これを米価の中にどういうふうに取り込んだらいいのかというような問題等につきまして、あるいはまた、賃金の取り方を、五人以上の規模のものがいいのか、あるいは三十人以上のものをとるのがいいのか、農業とあまりに経営形態が変わっている五百人以上というようなものはとるべきではないのじゃないかというような、いろいろな御意見があったわけです。そういう点について、ことしの米価算定ではどういうふうに考えたらいいかというようなことを私ども検討しておるのでございます。
  48. 川俣清音

    川俣委員 かつて農林省では、御用学者ということばを使うことはどうかと思いまするけれども、教えを受けまして、いわゆる標準偏差なる方式をとるならばあまり米価に大きな変動を与えないで済むであろう、これが最上の案だということで、学者のいわば誤った見解に基づいて作業を進めてまいりましたところ、昨年から今年にわたって行き詰まったという結果が起きてきている。これは御用学者の教えられるところによりますために将来を誤らしめた結果だと、私はそう思うのです。大臣、首を振っていますけれども、そうなんです。御用学者などを使うからこういう誤りを来たすのでありまして、われわれ野党の意見をいれておりますならばこんな誤ったことにならなかったと、はなはだ遺憾に思うのでありますけれども、それは別にいたしまして、農林大臣、あなたのところの農林統計調査部の調べておりますところでは、労賃を換算するに雇用労賃をもって換算をいたしておる。この雇用労賃が、昨年の資料によりますと、まだこれは盗み見ただけでありますから、おおよそと、こういう表現を使いますけれども、三十六年と三十七年の資料によりますと、雇用労賃が約倍になっておる。そうなってまいりますと、いわゆる製造工業の一人以上の規模あるいは五人以上の規模あるいは三十人以上の規模というものを使うことが農村の実態に即しておるかどうかということが疑問にもなってきておるだろうと思います。そういう意味でまだ腹がきまらないということであればよく理解はできるのですが、大体、生産費及び所得補償方式というのは、生産費は償わなければならぬ、それに、農民の生活費から言って、再生産を確保する上から言って、所得の均衡をはかっていかなければならない、農業基本法の示すところ、他産業並みの所得を農民に得さしめるという点からいたしましても、あるいは従来の米価審議会の意向からいたしましても、都市との所得の均衡をはからなければならないというところから、所得補償方式が加えられておるわけでございますが、この生産費計算におきましても著しい経費の暴騰が出てきておるわけでございます。特に、最近の農林統計を見ますると、家計費よりもさらに進んで経営費の上昇率が高いわけであります。家計費でありまするならば、農民の場合は生活を切り詰めて家計費をまかなうということもかつてはあったのでありますが、いまはなかなかなくなってきておりますが、家計費の方はまだ弾力性がある。ところが、経営費になりますると、弾力性のないものであります。これを当然償うものでなければならないと思います。そうでしょうな。この点どうでしょう、大臣。御答弁願いたいと思います。
  49. 重政誠之

    重政国務大臣 まだそれらの数字を十分私は検討いたしておりませんから、ここではっきりどうということを申し上げかねますが、常識的に考えまして、物価も上がっておる、したがって、ただいまお述べになりましたような経営費も若干増高をいたしておることと想像できるのであります。そういうようなことから考えまして、三十八年度産米の生産者価格というものは若干の値上がりはすることであろうということは想像をいたしております。
  50. 川俣清音

    川俣委員 米価も若干値上がりをせざるを得ないであろうということですが、結論を急ぎますが、私どもの計算から見ますると、おそらく八%から一〇%の米価の値上がりが必至であろうと思います。政治的配慮を加えないで、計算上八%から一〇%の米価の値上がりが算出されるのではないか、計算されるのではないかと思います。それをどうして押えようかというのが、いま農林省の苦労の種になっておるのではないでしょうか。御同情申し上げますが、計算はそうなってくる。これは、農林省に長くおり、食糧庁に長くおって計算した人であるならば想像できると思う。私ですら計算ができるのに、あなた方長年食糧庁のめしを食っておってできないはずはない。大臣もおそらく米価については無関心でないので、それくらいの見当はつけておられると思いますが、大蔵大臣及び企画庁長官はどうお考えになりましょうか。
  51. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから農林大臣がお答えいたしておりますように、農林省の試算ができましたら大蔵省とも相談があるのでありますし、私たちも、これが財政に及ぼす影響甚大であり、また国民生活そのものに対する影響も非常に大きいし、消費者米価そのものに対する影響もありまするし、これらの問題に対しては無関心などということではありませんが、農林省の作業の進行によりまして合議を受けつつ、また米審の意見を十分お聞きをした後決定をしたい、このように考えております。
  52. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一方において、農民の所得との関係、それから米以外の農産物価格形成との関係がございますし、他方で消費者消費支出との関連がございますので、私といたしましては非常に重大な関心を持っております。もとより、財政上の見地も大蔵大臣が述べられたとおりでございます。重大な関心を持っておりますが、農林省でいろいろ御検討中でございますので、ただいま意見を申し上げることは差し控えたいと思います。
  53. 川俣清音

    川俣委員 物価の上昇、労賃の上昇が米価にはね返るような計算方式になっておる以上、これらの統計から見まして、当然米価の上にあらわれてくる影響というものが八%ないし一〇%あるであろうということが想定できる。これは政府の資料からいってできる、こういうことであります。価格としてどれくらいにするかということは、これはまた米審のときに問題になるでありましょうが、この際、大蔵大臣に一言だけお聞きしておきますが、いわゆる政府中間経費並びに小売り経費というものは、石当たりと申しますか、百五十キロ当たりの中間経費がだんだん増加しつつあります。これを抑制しない限り、あるいはこれに対して何らかの分解作用を行なわない限り、生産費が幾ら下がりましても、中間経費というものがこのとおり上がっておりまするならば、やはり依然として赤字というものは続くであろうということが想定されます。特に金利の部門につきましては——一体、この金利というものは行政費であるべきなのか、あるいは大蔵省の税務署の費用というものは税金でまかなうべきものではないこともちろんでございましょう。食糧庁の事務人件費も大きな行政費であります。ただ米、麦、その他農産物というふうに割り当てをいたして分散いたしておりまするけれども、米が持たなければならない問題とは限らないと思うのです。事務人件費にいたしましても、あるいは保管料についても同様です。昭和三十五年の米をまだ食糧庁は持っておるのですよ。一体、なぜこんなものを保管しておかなければいけないか、金利をかけて倉庫料を払ってなぜ保管しておかなければならぬか。三十六年の米がたくさん残っておる。なぜ、こんなものを倉庫に入れておかなければならぬか。倉庫料を払い、金利を払っておかなければならぬのか、行政上の必要だと思います。こういう行政上の必要から起こってきた、しかも腐敗に近いほどになっておる、あるいは腐敗対策を講じて経費をかけて保管しておるものを、消費者が負担しなければならない、まずく保管しておったものを消費者が負担しなければならないなどということは、納得できないはずですよ。これはみんな中間経費として赤字に加えることができるものだから、平然としておるんじゃないかと私は誤解をする、正解なんですけれどもね。  こういう点からも、みずからの政府中間経費というものに対して、検討を加えなければならぬであろう。ただ赤字を検討せいじゃなくて、みずから招いたところの赤字というものに対する責任を痛感しなければならぬのじゃないか、こう思うのですが、大蔵大臣どうですか。
  54. 田中角榮

    田中国務大臣 個々の問題に対しては議論の存するところでありますが、先ほど申し上げておりますとおり、現行食管制度そのものに対して財政負担の意義、また国民経済の上から見た問題等種々ありますことは御承知のとおりでありまして、これはもう一つずつの問題を議論することもさることながら、食管制度に対してより高い立場で、より広い視野で衆知を集めて検討していただくということが、私は一番早道であり、最も適切な処置である、このように考えておるのであります。  食管の問題に対しては、川俣さんは非常に御専門でありますから、いろいろ御承知でありましょうが、政府はこれらの問題を一つずつ解明していくよりも、より以上な財政負担をしておるということだけは申し上げられると思うわけであります。
  55. 川俣清音

    川俣委員 そこが問題です。財政負担をしておるというけれども、みずからこれに対して検討をしないでおって、出てきた総体の、昔のどんぶり勘定の残存をみな赤字ということにしておいて、それで財政負担だ、こう言われまするけれども、初めから財政負担しなければならぬものは財政負担をする。金利でかけなければならぬものはかける。その他のものはかけないと、明瞭にしておいたらどうですか。総体で出して財政負担だということは、財政をむしろ紊乱させることの要因になっておると思うのです。これは統制経済から間接統制へ移りましても、かかる経費というものは石当り千円を下らないのです。そうすると五百億の金になるのです。直接統制をやっておって五百億の金を財政負担することが悪いならば、間接統制ができないということになる。全くの放任をするか、放任をしたならば、日本経済に与える影響というものは、一千億や二千億ではないという結果になってくるのであろうと思います。そういうところからいっても、これはやはり筋道を立てて、こういう経費というものは初めから財政負担をしなければならぬのだ、これは行政費だ、これは何だ、食管会計なるものについて小倉君がおった時代にやかましく言って、ようやく勘定項目を設けましたけれども、これも官庁勘定項目でありまして、実態の勘定項目ではない。お互いに米、麦を分担しなければならぬ、実態にかかる経費ではないが、負担させている。おまえはこのくらい負担をせい、おまえはこのくらい負担をせいということで負担をかけられた多数の負担率なんです。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着   席〕 米価にかかる経費なんというものは、仮装の負担費ですよ。計算上の負担費で、実際にかかった負担費じゃない、経費じゃない。そういうどんぶり的な勘定をしておいて、大福帳勘定をしておいて、これは財政負担が大き過ぎるなんということは、元をたださずに形式だけを論じるものだと思いますから、十分検討を願いたいし、米審につきましては、大蔵大臣も急いで作業をさせまして、早く日本経済の見通しを、財界であろうと、農業界であろうと、日本全体の経済影響する米価につきましては、早く方針を立てて、世の中に指示を与えることが適当ではないかと思いますから、この点についてさらに大蔵大臣の見解を聞きまして——大蔵大臣を総理大垣代理としてお聞きしますから、ひとつ御答弁を願いたい。
  56. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから申し上げておりまするとおり、食管問題に対して、財政当局としての大蔵省の理解やいろいろな意見はあります。ありますし、できるだけ大蔵省式なものの考え方で聞いていただきたいのでございますが、しかし米価の決定その他につきましては、米審の議を経るという制度になっておりますし、現在、昭和三十八年産米に対してようやくこれからいろいろな問題を検討してまいり、また近く決定をしなければならないのでありまして、その過程において、いまあなたがたが述べられたようなことも十分述べられるわけでありますし、またわれわれも呼ばれて、そこで大蔵省の考え方も十分述べた後、米価が決定せられ、財政負担もおのずからきまるのでございますから、ひとつ食管制度そのものに対して前向きに御検討を賜わるようにお願いを申し上げたいと思います。
  57. 川俣清音

    川俣委員 早く決定するという点については……。
  58. 田中角榮

    田中国務大臣 私たちも早いにしくはないのでございます。ただこの問題は、早くやれということよりも、非常にめんどうな問題である。その及ぼす影響が非常に大きいということで、早く決定しなければならないということは、あなたも私たちも皆そう考えておりますが、早く決定できないのは、それだけ重大であるということをよくひとつ御理解を賜わりたいと思います。
  59. 川俣清音

    川俣委員 米審をいつ開くか、これだけ伺って終わりますから……。
  60. 重政誠之

    重政国務大臣 米審を開く時期は、先ほども申し上げましたとおり、今月の中、下旬に麦価決定のための米審を開きます。  米価に関する米審は、生産費調査の結果が出てまいりますのが七月の初めと予定せられますので、七月の上旬、できるだけ早い機会に開きたい、こういうふうな考えを持っておるのであります。
  61. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 加藤清二君。
  62. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、この際、社会党を代表し、与党の委員の皆さんの御協力を得まして、ただいま上程されておりまする特定産業振興法、中小企業基本法、新産業都市建設促進法にかかわるところの地区設定等に関しまして質問をしたいと存じます。  申し上げますまでもなく、貿易の自由化、関税一括引き下げ等々、国際経済環境はこのところ急激な変化をもたらしているようでございます。これがための環境の整備、特に輸出振興、国内産業構造の整備拡充ということは目下の急務でございますが、それに対して政府施策は、準備が万全であるかないか。日本産業を守り、よりよく発展させるところの準備は整っているかどうか。貿易が自由化されまして、はたして国民は、安いものが買えるようになるかならないか。物価高に苦しむ国民は、貿易の自由化によって、より安いものを買いたい、こういう念願をいたしておりますが、その期待にこたえることができるかできないか等々の問題についてお尋ねをしたいと存じます。  この際私は、問題を国内と国外に分けてお尋ねいたしますが、その前提条件と相なっておりますところのガット、IMF八条国への移行、OECDの加盟等は、一体いつの時期に行なわれようとしていらっしゃるのか、まず外務大臣お尋ねをいたします。
  63. 大平正芳

    大平国務大臣 ガットの関税引き下げ交渉は、先般閣僚会議で、対立を見ておりましたEECとアメリカとの間に妥協ができまして、ことしの八月までに関税の引き下げ交渉の規則をつくろう、それに基づきまして、明年五月までに貿易促進委員会の手で作案をしてまいろうという手順を踏んでおるわけでございます。OECDについきましては、いま先方から、日本政府とのコンサルテーションのために来日を見ておりますが、御案内のように、OECD加盟の大前提になりますOECDというクラブの組織運営のコードでございますとか、あるいはOECDの三つの目的、すなわち経済の成長でございますとか、あるいは貿易を拡大するとか、あるいは後進国の援助を促進するとかという三大目的にからんだ従来の決定、決議、この二つの受諾の問題が前提としてあるわけでございますが、これはただいままで検討いたしたところ、何ら支障がございませんし、加盟についての大前提として受諾してよろしいと判断いたしております。問題は、経常的な資本取引と資本自体の移動の自由化の問題につきまして、どの程度の留保が必要であるかということがこれからの課題になるけわでございまして、いま、せっかくOECD当局と、東京におきましてきのうから交渉が開始されておるわけでございます。これが済みまして、OECD当局に報告がありましてから日本の加盟招請までに一定の期間がかかるわけでございます。もっとも、加盟するとなりますと、国会の承認を得なければなりませんので、最終的な加盟がいつごろになるかは、いまにわかにまだ論断できない段階になっておるわけでございます。しかし、すべての手続は、比較的順調に進捗を見ておると申し上げて差しつかえなかろうと思います。  IMF八条国移行の問題につきましては、大蔵大臣から御答弁があると思います。
  64. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のIMFの八条国移行勧告を二月に受けまして、政府はこれに対して基本的にこれに応ずるという姿勢を明らかにいたしておるわけでございます。しかし、貿易為替の自由化が急速に要請をせられるわけでありますので、国内法の手続等もありまして、次の臨時国会があれば臨時国会でありますし、三十九年度予算を審議をする通常国会で各種の案件が成立を見るということでありますと、来年の四月以降とういことにおおむね予想せられるわけであります。
  65. 加藤清二

    加藤(清)委員 御承知のIMF、ガット、OECDに参加するということになりますと、必然的に資本取引の自由、貿易外取引の自由、あるいは直接投資によるところの株の取得の自由、円交換の自由等々が行なわれると予想されますが、それについての諸準備は、はたして万全であるかどうか。もしこれに早期加盟をするとするならば、いまガットの批准の時期だけは承りましたが、IMFとOECDの批准の時期は、あいまいもことして、いまの外務大臣答弁ではわかりません。そこで、諸準備はよろしきや。もし加盟するとするならば、批准はいつの国会に行なわれまするや、この点について。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 準備は、早くやりますと一応夏じゅうにできますが、しかしOECDの関係は夏休みに入りますので、日本側の態度決定が八月というようなことになりますと、おそらくこれは秋になると思うのでございます。秋となりますと、これは臨時国会がないと加盟につきまして御承認を仰ぐわけに参りませんので、臨時国会がないとなれば、通常国会にいかざるを得ないと判断いたしております。先ほど申しましたように、そういう先行きの見通しがまだはっきりいたしておりませんから、いつになるかはっきり申し上げることはできませんが、しかし、先ほど申しましたように、準備は順調にいっておりますし、OECD側もきわめて好意的でございますので、大きな因難なく準備は進捗していくものと思うわけでございまして、今国会ではちょっと間に合いかねると考えております。
  67. 加藤清二

    加藤(清)委員 貿易自由化の直前にあたりまして、その期待とはうらはらな問題が出来したわけでございます。すなわち対米綿製品交渉でございまするが、貿易が自由化されるということは、売り買いが自由に行なわれることとだれしも心得ているわけでございます。にもかかわりませず、アメリカへの綿製品をはじめとするその他の労働集約的製品は、常に制限制限を受けているわけでございます。そのよい例が綿製品の交渉でございます。はたして貿易の自由化はほんとうに日本に自由をもたらしているのか、もしもたらしたとしても、その自由は買いの自由であって、売りの自由はないではないか、こういう疑念を国民ひとしく持つと同時に、業界はこのことを非常に憂えているわけでございます。対米綿製品交渉は一体どう相なりましたか、通産大臣、特にこれは外務大臣にもお尋ねしたいところでございます。
  68. 福田一

    ○福田国務大臣 お答えをいたします。  貿易の自由化ということをやっても、こちらが売ろうとした場合に、向こうのほうがいわゆる制限をしたのでは自由化の効果が十分に発揮できないではないか、こういう御趣旨と解するのであります。その点まことにごもっともな御意見なのでございまして、貿易を自由化するという言葉から判断をいたしますならば、お互いに自由に貿易をする、売り買いとも自由であるというのが原則、当然のことでなければなりません。ただしかしながら、日本の場合において、これがお説のような形になっておらないというのは、御存じのように、日本が戦争に負けたあとで経済が非常に急迫をいたし、日本の輸出などというものはほとんど考えられなかった時代から、今日では驚異的な量の増大がもたらされておるわけであります。そういうときにあたって日本がどんどん輸出をいたしますと、一方これを受ける側からいえば、やはり自分のところの同様の業種が非常に困るというような場合が起きますと、相手国にはやはりそこに政治的な問題が起こり経済的な問題が起こる、場合によっては日本品は買いたくないというような動きさえ出てくる。そういうようなことがありました場合に、あくまでも自由だからどんどん買え、こう言うと、そこで衝突が起きて、あるいは国際的にもうまくないという変な事態が起きることをおもんぱかって、対米あるいは対カナダの関係におきましては、特にそこいらがおもなところでありますが、ある程度いわゆる自主規制ということをやってきておるわけであります。  また、今度はイギリス、EECの関係におきましても、日本に対してガットに入っておるとかおらぬとかいうようなことから、三十五条援用の問題やら、いろいろなことのいろいろな経緯があって、日本に対して差別的な待遇をやっておることも事実でございます。しかし、これはわれわれとしては非常に遺憾でありますから、あらゆる機会をとらえて、たとえば昨年の暮れの米閣僚との会議におきましても、またカナダの閣僚を迎えての閣僚会議におきましても、あるいは池田総理が欧州へ参られました場合においても、あらゆる機会をとらえてそういう差別待遇をやめてもらいたいということを強く主張し、順次これが好転をしておることも認めていただけると思うのであります。そういうようなことであるけれども、まだいわゆる差別待遇が残っておるということも事実でございまして、この点はわれわれの最も遺憾とするところでありますので、あらゆる機会をとらえて、私たちはこの差別待遇の撤廃ということを強力に主張いたしてきておるわけであります。  そこで、ここに綿製品の問題が出てまいりましたが、これは、御承知のように、いままではアメリカと日本の二国間の協定でやっておったのでありますが、今度は国際協定に変わったわけであります。その変わったことしから、アメリカのほうでは日本の輸出がアメリカの市場を撹乱しておるのだという第三条を理由にして、そうして日本に対して非常に強力な制限を加えようといたしてまいりました。そこで私たちは、そういうようなやり方については何としても承知ができないというので、強くアメリカに対して要望した結果、今度は、それならば第四条の二国間の話し合いに移して話をしようではないか、こういうことに相なりまして、その後いろいろの経緯もございましたけれども、まあことしは去年と同じ据え置きの量できめよう、来年度においては三%ふやしましょう、再来年度は五%ふやしましょう、こういう原則がきまりました。そうして、ことしは去年と同じだという形でございますが、同じといっても、アメリカの解釈する同じということと日本の規定の適用の考え方とが幾ぶんまだ相違をしておりますので、大綱においてはきまりましたけれども、まだ一、二の雑品の取り扱いの問題並びにコールチン地に関する問題、この二つの問題について最後の詰めをやっておるというわけでございまして、大体においては話がまとまりつつあるというのが現実の事態であることは加藤委員が十分御承知のところでございます。  御承知のように、こういう綿製品が延びたという裏には、両国の経済的、政治的問題がやはり裏にひそんでおるということも大きな事実でございますし、また、この綿製品協定の条文の解釈についていろいろの意見が分かれておって、確定しておらなかったということがもう一つの要件でもあるし、また、アメリカがいままでに日本品に対して制限を加えておるそのやり方と、日本がこれに対して解釈するやり方とが違っておったというような、いろいろの事態がございましたために、今日まで非常に長引いておりますが、大体においていま大筋でまとまって、もうしばらくして妥結を見ることになるであろう、こういうことに相なっておると存ずるのであります。
  69. 大平正芳

    大平国務大臣 いま通産大臣からるるお話がございましたとおりでございます。加藤さんが言われるように、売り買いの自由が自由化の終局の目標でなければならぬことは当然でございまするし、たまたま綿製品問題に言及されて不当な措置についての御批判がございましたが、一方アメリカ側から申しますと、やはり同じような苦情があるわけでございます。自動車でございますとか重化学機械でございますとかいうようなものにつきまして、向こうが非常に関心を持っておるものをまだ日本が自由化していないという苦情もあるわけでございまして、これは日本側に苦情があるばかりでなく、諸外国にも日本に対して苦情があるわけでございます。問題は、こういった現実の問題を終局の目標に照らしてどのように自由化の目標に近づけてまいるかという現実の努力が私どもの仕事であると考えております。特に綿製品につきましては、ちょうど日本の石炭産業のように、アメリカ政府にとりましてもたいへんやっかいな産業であるようでございまして、七つの項目にわたってこの産業助成というのを特に国会が取り上げなければならぬような一つの性格を持った産業であるわけで、したがって、この交渉もたいへん難航をきわめましたことは御承知のとおりでございますが、双方の理解と協力によりまして、ようやくいま通産大臣が言われたような終局の段階までともかくも来ておるわけでございまして、残った技術的な問題が若干ございまするのと、それから長期取りきめでございまするから、五年間この規制のもとにあるわけでございまするから、今後問題を残さないように、長期取りきめとの関連におきまして、はっきりとした解釈は解釈として立てておかなければならぬというような問題もございますので、若干時間がかかっておりますけれども、私どもはその結果にともかく一応楽観いたしておるわけでございます。
  70. 加藤清二

    加藤(清)委員 新しく制度が変われば双方に苦情があるのは当然なんです。それが政治問題であり経済問題であるわけなんです。したがって、日本の国会においても熱心にこれを討議するわけなんです。だから私は、経過だけが聞きたいわけじゃない。問題は、今後ほとんど一〇〇%に近い自由化をしようとしているやさきに、アメリカ側は日本に買いの自由を要求しておきながら、今度日本が向こうへ売る場合には、制限を加えてきているというところに問題があるわけなんです。一例を申し上げれば綿製品、一例を申し上げますれば、先般日本の某会社が発電機の入札をして一番札で落ちたわけなんです。ところがこれがオミットされて、一番最高価格を入れたアメリカの会社に、最終的には発注されたという事実もあるわけなんです。こうなってまいりますると、何のために入札させたかという問題よりも、何がゆえに一番札が拒否されなければならないかという問題を考えてみなければならない。と、理由はしごく簡単なんです。ドル防衛の問題と自国産業の防衛の問題であると理由を述べているわけなんです。自由にする自由にすると、自由のグループへ入る、そういうクラブや機関に入るというても、ほとんどすべての相手国は、自国産業の擁護と自国の経済を防衛するということが主体になっているわけです。さすれば、日本の自由化もそこにポイントを置き、そこに出発点を置いて研究を進めていかなければならぬ、準備を進めていかなければならぬ、こういうことに相なるわけなんです。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着   席〕だから、大前提として私はそれをお尋ねしたわけでございまするが、はたして日本政府としては、日本産業をよりよく守り、日本経済をより発展させるところにほんとうのポイントを置いて貿易の自由化を進めているのか、あるいは要求されたのでやむなく牛に連れられて善光寺参りをしているのか、ここらあたりをはっきりとしていただかないと、いかれっぱなしの結果を招来することに相なるわけなんです。特に外務省、大蔵省の官僚の態度は、いずれあとで順番に述べていきまするけれども、必ずしもそれに含致していない、全幅の信頼をおくことができないという具体的事実を私はたくさん持っておる。もう一度外務大臣の信念を承りたい。
  71. 大平正芳

    大平国務大臣 戦後の国際経済一つの国際協力によっていろいろの問題をスムーズに打開解決していこうという趨勢にありますことは、加藤さん御承知のとおりで、ございます。IMF、ガットあるいはOECDというような国際的な機構影響力というものが、各国経済に相当の影響力を持っておりますことも事実でございます。こういう国際的な潮流から孤立いたしまして日本があるということは望ましくないと思うのでございまして、私どもといたしましては、関税交渉にも欣然参加する、あるいはIMF八条国の移行も甘受する、あるいはOECDにも進んで参加しようという意欲を示しておりますことは御理解いただけると思うのでございます。しかしこれは、坐して利得があるばかりではございませんで、相当苦しい試練であることも当然御理解いただけると思うのでございます。多少の試練でございましても、それを踏み越えて、国際的な潮流とウマを合わした経済施策の運営展開というものをはかってまいらねばならぬということを基本の方針といたしておるわけでございます。また一方、私は別にアメリカを弁護するつもりはございませんけれども、綿製品の問題あるいは先方の政府の買い付けにつきましての御指摘がございましたが、もちろんあなたが御指摘される通り、好ましくないことに違いはないのでございますが、先方は先方でまた日本側に言い分があるということは、先ほど申し上げたとおりでございまして、たとえばバイ・アメリカンにいたしましても、アメリカ政府は原則として外国のものを買うのは自由でございます。しかし一定の条件を付して、ドル防衛政策のたてまえから、暫定的に一定の規制を国外への発注につきまして、あるいは国内の物の購入につきまして加えていることも事実でございますが、しかし、現実にそれじゃ日本政府は外国のものを買い、外国の工事人に請け負わせているかというと、そういうことをしていないわけでございますから、アメリカ側に言わせれば、お前のほうはバイ・ジャパニーズ政策をとっておりながら、どうして例外的なバイ・アメリカン政策にだけ文句を言うのだということも先方は言うわけでございます。したがって、これは好ましいことではございませんけれども、そういう問題は双方にあるので、そういう双方にある問題をしんぼう強く解きほぐしていくのがわれわれの仕事じゃないか、一方だけをいろいろ非難するのは当たらぬと私は思うわけでございます。したがいまして、原則には必ず例外が伴うわけでございますが、そういった例外を最小限度にとどめるように努力していく、しかもそれは国際的な潮流におくれないようにやってまいるという決意、そういう意欲で進んでおるということを御了解いただきたいと思います。
  72. 加藤清二

    加藤(清)委員 あくまであなたは日本の大臣でいらっしゃるわけでございます。日本の大臣であるということを忘れることなく交渉に臨んでいただきたいものだと存じます。  この際私は、総理から官房長官にお尋ねしたいのですが、おられませんので、いらっしゃる大臣に質問を先にいたします。
  73. 塚原俊郎

    塚原委員長 官房長官ばただいま議運に入っておりますから、終わり次第来ると思います。
  74. 加藤清二

    加藤(清)委員 そこで問題を国外と国内に分けて御質附いたしますが、まず国内問題として、この貿易の自由化に対処しなければならない諸案件のうち、金融、税制、価格構造、レーバー・ダンピング、企業規模の強化、中小企業の格差是正等々がございます。  そこで、第一番に金融についてお尋ねいたしますが、大企業と中小企業との格差是正が基本法の根本でございます。ところが実際のこの金融金利の問題は、格差を拡大強化する、そういう方向に相なっておると存じます。第一番に金融のうちの金利、これが高いのか安いのか。私の考えでは金利が高く、賃金が安いというのが日本経済の最大の特徴であると思っておりますが、大蔵大臣日本の金利ははたして高いのか安いのか、この点、簡潔に。
  75. 田中角榮

    田中国務大臣 私が御説明申し上げるまでもなく、国際金利に比べて非常に高いということは事実であります。
  76. 加藤清二

    加藤(清)委員 よく御認識でございます。日本銀行の外国経済統計年報によりますれば、日銀の公定歩合が第一に高い。アメリカは三分であるのに対して日本は六分以上になっている。ときに八分であったこともある。倍以上でございます。イギリスは大体四分前後で動いているようでございます。西ドイツもイギリスよりももっと安いところで動いているようでございます。先進国の中で六分という金利をとっているのは日本ひとりのようでございます。ところが市中金利を見ますと、なおそれ以上に高いのでございます。市中金利は最高八分から九分近いところまでいっている。先般の予算委員会で討議しました結果、大蔵大臣は国際金利にさや寄せすることが必要であるというので、たいへん御努力をいただいてその功績もあるようでございますが、この状態でもって円交換の自由あるいは投資の自由等々が行なわれると相なりますと、はたしてこのままでけっこうでございましょうか。
  77. 田中角榮

    田中国務大臣 貿易為替の自由化及び資本の自由化体制に対応しまして、国内的な対応策をとらなければならないということは事実でありまして、御承知のとおり、あらゆる角度からこれが対応策を講じておるわけでございます。その一つとして金融環境の正常化も行なっておりますし、国際金利にさや寄せ策も行なっております。なおオーバーローン解消の問題とか、公社債市場の育成強化の問題とか、資本調達市場等の整備に対しても努力を続けておる次第であります。金利につきましては、先ほど申されたとおり、確かにアメリカは公定歩合年利三分でございますし、それから西ドイツ、イギリス等も三分ないしは四分でありまして、日本はこの間の公定歩合の引き下げで五分八厘四毛にようやくなったわけでございます。しかし中小企業等の金利はまだ高い。特に歩積み、両建て等の特殊な事情もありまして、実質金利が高いということは御指摘のとおりでございますので、これを、自由化に対応して産業体制の確立を急ぎますために、正常な金利化に努力を続けておるわけであります。
  78. 加藤清二

    加藤(清)委員 将来に向かって日銀の公定歩合はどうするつもりでございますか、と同時に、市中銀行の貸し出し金利をどうするおつもりでございますか。
  79. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、これは日本の特殊事情にあるわけであります。金利等は一方的に安くするわけにはいかないのでありまして、需要と供給のバランスの上に金利が生まれるわけであります。でありますから、日本の中小企業、特に日本の企業は戦後活発な発展を遂げてまいったのでありまして、金利か安くなるよりも−そうなれば非常にいいことであるが、必要なときに必要な資金量をひとつ確保したい、これがいままでの非常に強い要請であります。それだけ需要が旺盛なわけであります。でありますが、御承知のとおり資本と借り入れ金との比率が非常に悪い日本でありますし、資本蓄積がいまだしの状況でありますので、これらの産業資金は、ほとんどが市中銀行により、市中銀行また日銀によりまして手当をいたしましてまいりましたので、日銀の問題としてオーバーローン解消というのがまずまっ先に取り上げられた問題でございます。戦前はどうかというと、戦前は日歩九厘というときもありました。戦後日歩一銭というときもございました。ちょうど経済成長がどんどんと進んでまいりますと、昭和二十三、四年から一銭二厘になり一銭五厘になり、一番高いときは二銭六、七厘だと思います。長期金利も三銭二厘、三銭三厘というものがありましたが、現在長期金利は二銭五厘か二銭六厘というふうにだんだん低下しておるのでありまして、これは結局日本人の考え方、日本の企業がだんだんと安定化しつつあるということでありまして、一挙にこれを国際金利にさや寄せするということは、これは至難の問題でありますが、いずれにしても貿易為替の自由化に対応して、国際金利までにできるだけ早い機会に持っていくように、政府も金融機関も、また企業者自身が過多な借り入れによって事業拡張をしないように十分調整をはかりつつ、国際金利へのさや寄せをはかってまいりたい、このように考えます。
  80. 加藤清二

    加藤(清)委員 国際金利にさや寄せをすることを、なるべく早期に行なわれるよう努力するというその大蔵大臣の言やまことによしとして、次に論を進めますが、どんなにそれを期待していらしても、問題は資金の需要と供給、すなわち資金を量政府がどれほど用意するかというところにポイントがかかってくるわけでございます。そこでお尋ねせんければならぬことは、政府がまず一番に準備する資金量、それは大企業と中小企業とに分けますると、中小企業はどの程度与えられておるのでございましょうか。
  81. 田中角榮

    田中国務大臣 中小企業金融につきましては、中小企業基本法の制定もいま急いでおりますし、特に政府も意を用いておるところでございます。中小企業そのものが体質改善になり、企業が安定しないと日本の輸出産業そのものも伸びないのでありますから、日本の民族的な産業形態として、これが育成強化を願っておるわけでございます。中小企業というものは非常に多様でありまして、日本の中小企業というものは世界じゅうに例がないのであります。それだけ日本の中小企業の持つウエートが非常に高いというわけでありまして、昔は非常に高い金利を使っておりましたし、三、四年前は三銭くらいの金を使っておったわけですが、だんだんとよくなり、現在は二銭五、六厘ですが、その上なお歩積み、両建てというプウス・アルファがついておりますから、確かに負担も多いと思います。これは信用度によって普通の民間金融機関が貸せる場合には、大きな企業よりも安定性のない中小企業に対しては金利に差がつくこともまたやむを得ないといういままでの状態でございましたが、今度貿易・為替の自由化ということを前提にして考えますと、そのような状態で放置をするわけにはいきませんので、政府関係機関の強化をはかったりして中小企業の合理的な資金の貸し出し金利も下げていきたい、また金利負担を除去するように政府はあらゆる角度から検討を進めておるわけであります。
  82. 加藤清二

    加藤(清)委員 大臣よく御存じのとおり、企業数からいきますると、大企業は一八%程度しかないわけなんです。八〇何%が中小企業なんですね。生産数量から見ましても、高度成長で生産が伸びた伸びたと申しまするけれども、その六〇%以上、七〇%近いものは中小企業でつくっているわけなんです。ところが、政府が与えておりまするこれに対する資金量というものは、わずか一割以下なんですね、九%何がしなんです。これでは中小企業金融が逼迫するのは当然なんです。そこで片やどうかということ、銀行それ自体は、中小企業をそんなに引き締めておきながら、結果から見るとオーバーローン、たということになっている。一体どこへそんなに余分に貸したかと調べるまでもなく、これはわずか一〇%から一八%にしか足りないところの大企業へ、大企業へとその金が流れているわけなんです。流れた結果は、帳じりはオーバーローンで、工場のほうでは過重投資、設備が余り過ぎて遊休設備、その結果操短ときた。労働者は首切りときた。コストはといったら、遊休設備まで見なければならぬから生産コストは上がったという、そこで物価が上がったということなんです。そのしわ寄せば労働者と国民に寄せられておる、こういうことなんです。片方にだけ厚くして、片方八十何%の中小企業にはたいへん薄うしていらっしゃる。これではたして政府責任が全うできたと言えるか。おっしゃるように中小企業の強化育成、これができるのかできぬのか。ことばではできるでしょう。具体的事実において、将来何%くらいその需要を満たすかというとこが聞きたい。
  83. 田中角榮

    田中国務大臣 加藤さんも専門でありますから、政府が非常に努力をしておる、私は特に去年から努力をして実効があがっておるというとこはお認めであろうと思います。
  84. 加藤清二

    加藤(清)委員 努力は認めます。
  85. 田中角榮

    田中国務大臣 でありますから、三年、五年前三銭何厘というものが二銭六厘なり二銭五厘なり二銭三厘になっておるでありますし、コールも六銭、七銭というものが二銭台になっておるのでありますから、金融は正常化されつつあるということはお認めいただけると思います。ただ貿易・為林の自由化のテンポと中小企業の体質改善、いわゆる金利負担というような問題が時を同じくして並行していけるかというころに大きな問題があると思いまして、政府もそこに思いをいたしておるのでございます。  もう一つは、大企業に集中投資が行なわれておるという考え方でございますが、これは昔のように独占企業とか大企業とかという観念ではなく、すなおな目で見ていただかなければならなぬと思う。大企業というのは、御承知のとおり国際競争力をつけて、日本の輸出産業の一線に立っておるものでありますし、しかもその大企業というものが、表面で見ると大企業でありますが、これが下請まで一本に結びますと、中小企業イコール大企業である。御承知の石炭産業そのものを見ましても、また十八次造船の繰り上げを行ないましたときに、造船企業というものを考えますと非常に大きな企業というようになりますが、造船企業に金融をすることによって、また金融が安定をすることによって、二百万に及ぶ中小企業その他が潤うのだ、またこれが全く一体の業態であるということを考えまして、大企業中心であるというような考え方よりも、中小企業に必要な資金を低利で、国際金利に近い金利で供給できるような金融環境の整備をできるだけ早い機会に実現をしたいということでいま努力をいたしておるのでありまして、その努力の最も大きなものは、皆さんからいろいろなことを言われましたが、三十八年度の税制改正において、預金利子や配当等に対しても軽減をいたしましたために、資金も大いに伸びたわけであります。あの当時は、こういう税制上の優遇措置をしても貯蓄は伸びないといわれましたが、戦後最高に貯蓄は伸びました。やはり資金源というものが潤沢になっていくことが大前提でありまして、これらの施策もあわせて行ないながら中小企業の金融環境の整備をはかって衣いりたいということでございます。
  86. 加藤清二

    加藤(清)委員 時間を能率的にやるために、仕事は効率をあげなければなりませんが、われわれは能率をあげなければならぬですから、質問のポイントだけを答えていただくようにひとつお願いします。  問題は、私の尋ねているのは、中小企業に対して資金需要は旺盛である、それに対して政府はこの資金世をどれだけ確保するか、こういうのです。将来それをどれだけ伸ばすかということを聞いているわけです。簡単でいい。
  87. 田中角榮

    田中国務大臣 必要な量だけ確保すべきでございますが、しかし中小企業というのは、あなたの御存じのとおり、大企業に対して制約をしたり調整をしたりするのとは違いまして、数が非常に多く、業態が多種でありますから、無計画にこれの要求をそのまま全部満たしていったら日本経済は一体どこへいくかわからないので、やはり中小企業が国際競争力にたえながら貿易の自由化、為替の自由化というものに即応していける体制の範囲で当然資金の確保ははからなければならぬ、このように考えます。
  88. 加藤清二

    加藤(清)委員 何%と聞きたいのですが、それは言えないでしょう。言えないが、貿易の自由化に即応する、そのためには設備の老朽化、これを直さなければならぬですね。そのために必要資金は出す、こうおっしゃったのですね。さよう確認をいたしまして次へ進めますが、確かに政府の努力は認めます。特に歩積み、両建ての問題については、すでに御調査の上、雑誌等で発表していらっしゃるようですね。しかし、歩積み、両建て、中小企業に対する市中銀行のこの過酷な手段は、遺憾ながらあの発表のようには具体的事実はなっていないということを私は知っている。歩積み、両建ては、さなきだに高い金利を一そう高くする裏金利まで取られる、しかも資金量を削られる、こういう結果になっているわけです。この歩積み、両建てと、もう一つ大事なことは、過大な担保設定、百万円を借りるのに五百万円以上の値打ちのある担保を持たないと貸さないという、すでにこれが解除される時期がきてもこの担保を凍結させるというこの態度、これははたしてよろしいかどうか。この結果は、老朽化を改めるのではなくして、倒産が続出していくという結果を生じているわけです。中小企業が倒産続出するやさきに、銀行で倒産したというためしは聞いたことがない。いかに銀行がもうけているかの証拠である。御堂筋のごときはほんの四キロ足らずのところに百行支店が出ている。かどというかどは全部取っている。まさにこれは百鬼夜行と言わなければならぬ。これでいいのか。
  89. 田中角榮

    田中国務大臣 金融機関が独占的な立場において不当な利得を得てはならないということで、過去十カ月、十一ヵ月間相当な手を打っておりますこともひとつ御理解賜われると思います。十月から引き続いて六ヵ月間に四回の公定歩合の引き下げが行なわれ、しかも貸し出し金利、標準金利等に対しての引き下げが行なわれましたが、預金金利を引き下げないで現行のまま据え置いておるという事実を見ても、いままでのような保護的な、鎖国的な立場で金融機関があぐらをかいておれるというような時代ではないということを、金融機関自身にも強く通じてあるわけであります。  それから中小企業の問題につきましては、あなたが言われるとおりであります。私自身も十分配慮をいたしておるわけでありますし、しかも歩積み、両建てというものがだんだんとなくなっていくと同時に、次の問題として、過大な担保を取っておる。三百万円の貸し出しのものがすでに最後に三十万円しか残らなくとも担保を解除しないというような問題、それから三千万円は貸し出すけれども、千五百万円は指定するものに、全然縁もゆかりもないものにその銀行から貸し付けてくれと言われるとか、こういういろいろな問題があることも承知いたしておりますので、この問題に対しては私も内容を知っております、ちょうどあなたぐらい知っておるのです。でありますから、これらの問題を具体的に一つずつ解決をして、金融の正常化をいまはかりつつあるのでありますから、暫時お待ちいただければ、あなたが言うような状況にだんだんなると思います。
  90. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は大臣の良識をほんとうに信頼している。保守党を信頼するのは野党としてはいいことじゃないかもしれぬけれども、私は大蔵大臣の良識だけは信頼している。特に田中大臣は信頼している。ぜひひとつしっかりやってもらいたいと思う。  ところで、特定産業振興法をほんとうに実行に移すには、金融機関の協力がないとできないと思う。昔軍隊今銀行ですね。なぜかならば、産業界の上にどっかりと重しをしているのは金融なんです。金融界が横っちょを向いたら、産業設備はどうにもならない。なぜかならば、いままですでに入っちゃっている。資本が入っているのじゃない。銀行管理と同じようにみんな重役が入ってきているのです。さてそこで、通産大臣としては特振法を実現するにあたって、金融機関の協力が得られるのか得られないのか。これはポイントなんです、大臣。
  91. 福田一

    ○福田国務大臣 いろいろの経緯はございましたけれども、銀行においても、いわゆる国際競争力強化のためにする産業設備の問題等については、御承知のように基準決定については討議に参加するし、またきまった以上はできるだけの留意をして、そしてそれに沿うようにするということを法律できめております。もちろんこれは提案されただけでございますが、その審議の過程においていわゆる特定産業に対しての理解を銀行当局も十分持ってもらったと私たちは考えておるわけであります。
  92. 加藤清二

    加藤(清)委員 次に、ほんとうは総理か官房長官に聞きたいことなんですけれども大蔵大臣に質問を続けます。  私は、税はあくまで公平でなければならぬ、かように存じております。その考え方が間違いであるかないかを承りたいと同時に、今日の大企業と中小企業と比較して、はたして税は公平に行なわれているかいないか、この点。
  93. 田中角榮

    田中国務大臣 税負担の公平は税の原則でありますから、あなたの言うとおりでございます。しかし、(加藤(清)委員「そのしかしがいかぬ」と呼ぶ)しかしが実際論なんです。税負担の公平という議論が議論の上の、また数字の上だけのものでないのでありまして、これが貿易の自由化というような大きな問題に対処して、日本国民自体が、こうすることがより合理的だというような考え方が税負担の公平の範疇にあるものだ、こういう考え方もひとりお考えになっていただきたいのであります。  それから大企業と中小企業の問題、これには議論の上では、現行税法は差別をするものではありませんから、負担は当然同一だと申し上げる以外にないのでありますが、実際のものを考えますと、百万円の売り上げをしている中小企業は、脱税などというよりも全くすべてが明るみに出るということと、大企業は機構が非常に複雑であるために捕促しがたいものがあるということから見ると、あなたが言わんとすることに対しても何かわかるような気もいたします。
  94. 加藤清二

    加藤(清)委員 何かわかるじゃなしに、ようわかっていらっしゃるはずでございます。私は、税は公平であらねばならぬというのは、今日では大蔵省の理念ではあるのかもしれないけれども、具体的事実はその逆であって、是正でなくして格差の拡大がますます行なわれている、かように見ておるのでございます。たとえば租税特別措置法という税の恩典がございます。この金額は一体年間幾らでございますか、その種類は幾つくらいありますか、その二点だけ。
  95. 田中角榮

    田中国務大臣 こまかい数字の問題は事務当局をして答えさせますが、中小企業と大企業との間に租税特別措置の問題に対して差別をしておるというようなことは、三十八年度の税制改正の条項を見ていただけばおわかりになるとおり、そのような事実はありせまん。
  96. 加藤清二

    加藤(清)委員 租税特別措置法によって免除を受ける金額は年間大体二千億程度あるはずですね。この前の予算委員会で出ている。そうでしょう。ところが、中小企業にこの恩典が与えられるというのはわずか三つしかない。貸し倒れ準備金、価格差変動準備金、特別償却、この三つしかないはずなんです。それ以外にあったら承りたい。中小企業が受ける恩典の金額は一割以下なんです。企業数は八〇何%ありながら、税で受ける恩典は一割以下なんです。私の言うこと違いますか。違っておったら是正してください。
  97. 田中角榮

    田中国務大臣 税のこまかい問題につきましては、政府委員をして答弁せしめますが、納税しておる額もそのくらいの開きがあると思いますし、しかも、そういう議論よりも、大企業に対してということを固定してお考えのようでありますが、大企業に行なっておる税制も、実際は中小企業にも、その傘下にある企業にも、それによって利益が与えられておるんだということもひとつお考えいただきたいと思います。
  98. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは納税の面をちょっと調べてみましょう。  所得税を納める員数の八〇%以上は給料生活者でございます。そのまた六〇%は五十万円以下の所得者でございます。これはあなたのほうの統計に出ているのですから、そのとおりでしょう。ところで今度は中小企業、大企業が納めるところの法人税を一ぺん調べてみましょう。そうしますと、これはおもしろい結果になっている。表面上は大企業が多くて中小企業のほうが少なうなっている。すなわち大企業は百分の三十八納めるのに対して、中小企業は百分の三十三、こういうことになっている。ところが大企業にはちゃんと抜け道がつくってある。配当税率が一〇%下げれるようになっている。、だから百分の二十八しか納めない、こういう結果が出てくる。ところが中小企業のほうは一体どういうことになっているか、この配当税率なんというものはきょうだい会社には与えられない、上場株を持っているところにのみ与えられるんだから。逆にどうかというと、保留課税が一割余分にかけられることになる。したがって百分の四十三かけられる結果になっておる。私の言うことは間違いですか。間違いであったら指摘してください。そうでしょう。集計は、大企業が百分の二十八、中小企業は百分の四十三、こういう結果が出てくるわけです。間違いであったならば今後私は納めません。
  99. 泉美之松

    ○泉政府委員 お答えいたします。  先ほどお話のございました租税特別措置法による三十八年度の減収見込み額は、お話しのとおり千九百六十四億円でございまして、約二千億でございます。それから租税特別措置の種類は、いろいろございますが、私どもが現在租税特別措置といたしておりますものは約三十二でございます。ただ、そのうちにおきましては、最近の企業会計の発達に伴いまして費用性の認められますもの、あるいは評価性の引き当て金として考えらるべきもの等がございまして、これらの点につきましては、費用性の程度あるいは評価の程度について問題があるので、租税特別措置といたしておりますが、必ずしも全部が全部単なる恩典というべきものでなくして、企業会計の発展に伴いまして当然恒久法に取り入れるべきようなものもございます。これらの点につきましては、現在税制調査会において検討をいただきまして、税法の整備においてこれを整理する考えでございます。  それからお話の中小企業と大企業との場合の税負担の問題でございますが、中小企業も大法人も、配当をいたしますと、その配当分に対しましては同じように、大法人の場合は二八%、中小法人の場合は三三%の税率が二四%に軽減されるのでございまして、その点では変わりない。ただ、大法人のほうが配当性向が強いのに対しまして、中小法人の場合は配当性向が低い。その場合、個人に対する所得税の課税の実現がおくれますので、留保所得課税をいたしておる。こういう関係にあるのでございまして、私どもは現在の税率でその間のバランスはとれていると考えておる次第でございます。
  100. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなた、そうおっしゃるけれども、そこにおってください。それだったらはっきりやりましょう。同じように法律はできておる。そのとおりです。しかし、中小企業はその恩典を受けることができないようになっているのです。なぜかならば、きょうだい会社は株に配当するよりは設備のほうに金を使わなければならぬのです。配当するなどというところまでもうかっていないんだ。だから、せっかくそういう恩典があっても、中小企業はこの恩典に浴することができないようになっているということなんです。言うなれば、ツルにごちそうをするのに、つぼでやればいいのに、さらでごちそうを出しておるのと一緒なんです。そんなものは食べられないですよ。食べられるというなら、あなた、中小企業を一ぺん経営してごらんなさい。一番ようわかる。うそだと思ったら、大蔵省のお役人をやめて中小企業の経営者になってごらんなさい。一番ようわかる。それは、ここでは言いのがれをせんならぬから、何とか言いのがれをするでしょう。けれども、私はあくまで具体的事実を言っているんだ。理論ではないのです。哲学でもない。特に総理大臣も大蔵大臣も、企業減税を主眼にことしは減税した、企業の蓄積が浅いからそれを助けるためにした、こうおっしゃっている。企業の保留を多くするために、資本利子税、配当課税を減税したと言うていらっしゃるのですが、はたしてこれも均分に行なわれているのかいないのかを聞きたいのですが、あなた、中小企業に対する保留課税、せめてこれを軽くする気持ちはございませんか。これは一割余分にかかりますよ。これは大企業にはないのです。中小企業にのみ一割ある。これを軽減するか、ないしは保留に対する軽減措置の適用範囲を拡大するということでも中小企業は助かると思う。ほんとうに総理やあなたの言われるように企業の蓄積を大きくして中小企業を近代化するのだという御意見であったならば、当然これはしてしかるべきだと思う。二千億になんなんとするところの減税は、二八%しか納めない大企業にほとんど与えられている。これでは格差がますます広がる一方ではないか。
  101. 田中角榮

    田中国務大臣 業種間格差をいま縮めるように努力しているのでありますし、しかも今度の三十八年度の税制改正におきましても、同族等に対しまして特別な配慮をいたしましたし、同族そのものが、いままでの税の考え方では、特定の人が持っているということでより高い税率で考えられておったのでありますが、私は、同族の実態を見るときに、中小企業というものは、一般に株を公開できるようになるまでは、同族や親戚や友人知己が持つ以外には資本が集まらないから、やむを得ずこういうことをやっているので、実態に合うように減税等を行なおうということで、三十八年度一部行なったわけでありますし、三十九年度に対しては、特に貿易・為替の自由化に対応して、中小企業の設備の近代化や給与基盤の確保を急いでいるのでありますから、あなたの言った特定の問題がどのように解決するかは別にしまして、中小企業の育成強化という線に沿って、税制調査会の答申も待ちながら配慮してまいりたいという基本的な姿勢には変わりありません。
  102. 加藤清二

    加藤(清)委員 次に、中小企業にもだんだん、ございまして、五人以下の小規模企業というのがある。これに対してどうなっているか。大臣御存じのとおりでしょう。これもかわいそうなものですよ。大企業の社長の月給はどれだけもらっても経費ということになる。ところが五人以下の中小企業の大将は手に汗して働くのだ。これは勤労するのだ。ところが、これは勤労控除がないのですね。勤労控除が全然ない。片一方の社長の月給は経費として差っ引かれていく。片一方のほうは勤労控除もなしで、したがってそこに働く従業員、これは一体どういうことになる。専従者の所得は月一万円月給もらうと税金を取られる。月一万円で、付加価値税でいかれるから二千円近くなる。付加価値税を勘定してごらんなさい。うそは言いませんよ。うそ言うのはそっちですよ。これは月収一万円で二千円近く取られる。かわいそうでしょう。これを何とかする気はありませんか。
  103. 田中角榮

    田中国務大臣 少人数を使用している事業者、例をあげてみますと、大工とか左官屋とか、しかもそれらの事業主が道具を持っているというような問題もありますし、これらの問題を税制上どう優遇するかという問題に対しては検討いたしております。この問題に対しては、私、去年大蔵省に参りましてから、こういう問題を絶えず、あなたがいまここで言われているぐらいの熱意を持ってやっているわけです。そういう意味で、学者や税法の大家は、こういう問題の実情に対しては多少事実認識が足りなかったのではないかといわれるような面もあります。ありますが、私の思想そのものは、あなたが十分御承知でありますので、あなたが考えている程度以上に大いに努力をいたしているということだけ申し上げておきます。
  104. 加藤清二

    加藤(清)委員 次に、物価構造の問題についてお尋ねしたいのですが、卸売り物価とか小売り物価とか盛んに論議されておりますので、それはいて、私は一物一価でなければならぬと思うのです。物の値段は一物一価でなければならぬ。一つの物は一つ値段であってほしい。ところが、この価格が同町刻において同一場所において、国内販売は高く、輸出は安く、こうなっている。FOBは安く、国内卸しは高く、この価格構造の観念を打破しないことには輸出振興にはなりません。レーバーダンピング、チープレーバーのそしりを免れることはできないと思うのです。例をとるまでもなく、たとえば時計にしてもそうです。一万円前後で売られております内地時計、これはFOBにいたしますと平均価格は千五百円なのです。硫安一かます、十貫目俵は内地売りは八百四十円のようでございますけれども、朝鮮へ売ったら七百円台、台湾へ売ったら六百円台、こういうことになっておる。セメントまたしかりでございます。カメラまたしかりでございます。つまり、輸出のときは安くして国内には高く売って、そこで国民からはでんともうける。輸出の場合はやむなく国際プライスでやらなければならぬ。外国値を知らないところの内地の人には高く売られておる。こういう具体的事実、これについて一体経済企画庁の長官はどう考えておられるか。
  105. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 原則としてはそういうことは非常に好ましくないことであります。国内消費者の立場からももとよりでありますが、対外的な観点からも非常に好ましくないことでございます。ただ、申し上げるまでもないことでございますけれども、ときとしてたとえばセールス・タックスのようなものが御承知のようにございまして、これは輸出する場合に抜かれていくということは諸外国でもあるわけでございますが、そういうことでない人為的ないまのような現象というものは、内外ともに好ましくないことだと考えております。
  106. 加藤清二

    加藤(清)委員 好ましくないところの具体的事実が戦後ずっと行なわれてきたわけであります。そうして貿易の自由化を迎えたわけでございます。アメリカが先ごろ制限するといいました。一つには向こうの事情でございますが、一つにはこっちの事情があるわけなんです。すなわちアメリカヘワンダラー・ブラウス、テンダラー洋服、むちゃくちゃな値段だ。そういうことが行なわれている事実を好ましくないとお考えであるならば、あなた、経済企画庁の長官になられてもうずいぶん日にちがたっております、これに対する対策いかん。
  107. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 よってきたるところはいろいろあると思います。御承知のことだと思いますから申し上げませんけれども、しかし、そういうことは国外からもいろいろに批判も受け、また私ども日本人自身としてもいろいろな反省をしておりますから、過去に起こったような著しい事例というものはだいぶ影をひそめてきた。鉄鋼について若干の問題がまだあるようでございますけれども、これもいろいろな議論が起こりまして、だんだんとなくなってきておる。その他のものについても、私なくなってきておるように思います。
  108. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは百年河清を待つにひとしい、だんだん少なくなってきておるじゃあ……。経済企画庁の長官として好ましくないとお考えであるならば、それに対する対策を立てられてしかるべきなんだ。なぜ私がこれを強調しなければならぬかといえば、外務大臣は米綿交渉で非常に苦労していらっしゃる。米綿だけじゃない。アメリカにおいては百六十品目も日本の品物を制限している。その理由の一致する点は、常にテープ・レーバー、レーバー・ダンピングである。だからこそアメリカ国内の業者を困らせる原因になるんだ、こう言うておる。EEC諸国はどうか。貿易は自由化になるというけれども、三十五条の援用をやっておる。なぜそうか。自由化だ、自由化だと言いながら、日本商品に対しては制限品目をイタリアのごときは三百六十品目もやっているでしょう。なぜそれをやるか。それはレーバー・ダンピングである、ソーシャル・ダンピングである、ラッシュする、これが原因なのです。その原因を除去することはもはや国家的な任務である。貿易自由化の前夜にあたって、組織や規約は全部自由になったけれども、片っ端から制限されておるではございませんか。それを除去するために努力するのがあなたの任務である。そこで官房長官見えましたから——さっきから待っていたのです。官房長官は総理の代理としてこれをどう考えておるか。
  109. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その前にちょっと補足して申し上げるわけでございますけれども、仰せのとおりそういうことは好ましくないことであると思います。ただ現在幾らかもっともだと思われる理由が一つ、二つございます。  その一つは、これは間もなくやめるわけでございますけれども、御承知のように税法上輸出所得の控除がございます。これが一つ、そういうことをやはり可能にする理由だと思います。もう一つは、金融上の問題がございます。これは先ほど御指摘になったとおりでございます。もう一つは、製造者として外国にある意味で市場の開拓、確保をいたしたいというふうに考えるのはもっともなことだということも一点ございます。操業度の問題などは純然たる国内問題でございますけれども、そのような幾らかもっともだと思われる理由がございますので、全部そういうことがいけないといって行政措置などをしてにわかにとめるべきものではない、こう考えておるわけでございますけれども、原則の問題としてそういうことは好ましくないとおっしゃることは、私もさように考えております。
  110. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 いま経済企画庁長官のお答えしたとおりでございます。
  111. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは今度は大蔵大臣と通産大臣にお尋ねいたしまするが、特振法が行なわれて企業が合同する、合併する、そうして外国の大企業と対抗していく、こういうことでございます。それはけっこうでしょう。しかし、そのおかげで国内物価、特に輸出安く国内高いというこの現象は、これで解消しますか。どうです、通産大臣。
  112. 福田一

    ○福田国務大臣 この輸出入の問題というのは相互に相手のあってやっておることでありますし、また先ほども長官が申し上げたように、PRの意味でやる場合もあるし、いろいろのことはあります。ありますが、われわれは特定産業振興法によっていわゆる規模の大きい一つのものができ上がって、そうして大規模生産をやっていったというような場合において、国際競争力がついたと思えば、その商品についてもちろんそこで自由化をいたします。自由化をするということは、国内でその日本産業がつくったものを高く売ろうとすれば、今度は自由化していますから、すぐ海外から安い品物が入ってくるわけであります。したがって、私はそういう特定産業振興法によって大規模の産業ができたからといって、国内価格が高くなるというようなことは絶対にあり得ないと考えておるわけでございます。
  113. 加藤清二

    加藤(清)委員 高くなるという問題よりも、経済は高度成長をする、生産性が向上する、さすれば物価は安くならなくてはならぬ。大量の輸入に備えて、日本物価が高過ぎる、だから貿易が自由化をされるというと、日本の企業は倒れるものが生じてくるのではないか、それゆえに企業合同、合併しましょう、こういうことなんでしょう。そこではたして安くなるかどうかということを聞いておるのであって、高くなりませんだけでは困るのです。
  114. 福田一

    ○福田国務大臣 もちろん私たちは、そういうふうによい品物を安くするための法律である、こう考えておるのでありまして、規模を拡大して生産をするという場合、メリットが出てきて、そのメリットを不当につり上げるというか、メリットを無視したような場合においては、政府としては、御承知のように金融その他の面においていろいろの恩典を与えておるんですよ。しかもまた一方においては公正取引委員会というものがちゃんと控えておって、そうしてわれわれはこれで十分にそういう面の措置を見てもらうつもりでおるのでありますから、独占禁止法というものを十分に活用してもらうつもりでおるのでありますから、そういうことは絶対にあり得ない、かように考えておるわけでございます。
  115. 加藤清二

    加藤(清)委員 経済企画庁の長官にお尋ねしますが、独占とか寡占が進めば進むほど、生産性が向上しても国内価格は安くならないという具体的事実を私は知っていることを非常に残念に思うのです。そこで企業が合同し、合併して生産性が向上したらはたして国内物価は安くなるかならないか、また安くするよう努力すべきだと思うが、企画庁の長官はどうお考えになっておりますか。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般的に申して、独占というものが価格のある程度以上の引き下げにあまり貢献しないということは事実であると思います。寡占の場合には、その寡占が幾つ、いかなる状態において行なわれているかということによると思いますから、一般的に判断はできないと思います。ただ特定産業振興法の意図しておりますような程度の企業の専門化あるいは協業化または合併といったようなものは、わが国の現在の状態に照らして考えます限り、明らかに国内生産費の下降に寄与するものと考えます。
  117. 加藤清二

    加藤(清)委員 戦後、あなたたちよく御存じでしょう、ビールの生産というのは非常に伸びましたですね。ところが値段が安くなってないですね。安くなった分は減税分なんです。減税は三十円安くなったけれども、なおその分も値段に食っちゃっているわけです。三十円減税しておいて三十円安くしてない。七円安くしただけで、二十三円食っちゃっている。びん代が高い、こう言うけれども、何がびん代がそんなに高くなっているものですか、冗談じゃないですよ。  その次に、先ほど申し上げました国内価格を高くしてFOBは安くしているというこの銘柄を見ると、それが何と独占度の高いものほどそういうことをやっているんですね。そうでしょう。時計、どうです。四社しかやってない。肥料もそうでしょう。トランジスター、セメント、みなそうなんです。なぜそうなるかといえば、これは独占度の高いものほど談合が容易なんです。だから価格カルテルが容易に行なわれるんです。したがって、国内へは高く売りましょう、こういうことになる。ナイロンだってそうだ、ナイロンの原価計算を一ぺんやってごらんなさいよ。一体あれは幾らでできるというんですか。そのかわりナイロン会社の株価、時計会社の株価というものは、どんなに増資しようが、権利落ちになろうが、価格は五百円以上、こういうことになっているんです。十倍以上になっておる。もうかっておる証拠です。もうかっておるのはどこでもうけておるか、輸出でもうけたのじゃない、国民に高く売って国民から収奪したのだ。そうでしょう。そういうことが今日行なわれているわけなんです。で、経済企画庁に聞くと、それはいけないということも知って期待はしているようだ。だから安くしなければならぬと期待はしているようだが、その具体的努力というものをどういうことをおやりになったんですか。勧告でもなさったんですか、呼んでしかりでもなさったんですか。何ぞおやりになったことがあったらひとつ承っておきたい。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どういう仰せでありますか、たとえば具体的に申し上げますと、化学工業の製品でありますとか、あるいは鉄鋼の製品でありますとか、そういうものはこの十何年の間に相当に下がっておるわけでございます。これはもう御存じのとおりでありますから、明らかに生産性が進んで価格が下がっておるということは事実であります。  それから輸出と国内価格との問題については、先ほど申し上げましたとおりでありまして、幾つかの無理からぬという事情も確かにあったわけで、したがって行政的にはあまりきつい措置をいたしませんでしたが、それらのうちで、たとえば輸出所得控除のようなものはだんだんとなくなりつつある、また一般的な慣行としても、国外からの批判も受けて、そういうことはほぼなくなりつつあると考えます。ビールについて申しますならば、御承知のように、毎年何割という需要が伸びてきたわけでありまして、もしこれを償却の行き届いていないところ、の設備を持って、つまり設備を新設してまかなうといたしましたならば、ただいまのビールの価格というものはもっとかなり高いものになったであろう、そのことは戦後に新設された一つないし二つのビール会社のコストをごらんになりますと明らかだと思います。
  119. 加藤清二

    加藤(清)委員 次に、貿易の自由化にあたって整備しなければならぬのは、労働賃金の問題、すなわちテープ・レーバー、レーバー・ダンピングといわれるこのネックでございますが、労働大臣は一体日本の賃金水準を世界の工業先進国と比べてみて高いと思っていらっしゃるのか、安いと思っていらっしゃるのか。近ごろは賃金を上げるのはいけないという空気が盛んに経団連、日経連あたりで言われるようでございますが、世界の先進国と比べてみたならば、特に工業先進国と比べてみたら、日本の賃金水準はどうなっているか。
  120. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日本の賃金水準は、全体として比較をいたしてみますると、アメリカ、イギリス、ドイツ等に比べますと相当低目になっております。イタリアあたりが、欧米のうちではわりあいに日本と違いのないところであるという状況であります。
  121. 加藤清二

    加藤(清)委員 お説のとおりでございます。ほとんどが、これは労働省と、それからILOの統計に見ましても、アメリカの十分の一、時にちょっと高いもので七分の一、ドイツ、イギリス等の大体半分程度ということになっているわけでございまして、決して高いほうではございません。しかし、それは国外との問題なんです。ところが、国内の問題でこの賃金の格差が非常に大きいですね。例を五十人以下の工場と千人以上とでとってみますると、五十人以下の企業所の労働者の得る賃金は、千人以上の四四%にしか満たない、そうでしょう。ところでこれが西独は八一%になっているわけなんです。それから百人から五十人までの部をとってみますと、千人以上を一〇〇として日本の百人から五十人までは六二%、これがドイツは八二%、アメリカとドイツは大体とんとん、こういうことになっておるようでございます。つまり大と中小との賃金の格差が非常に大きいということでございます。これを総理も外相もテープ・レーバーだの何だのと言われると、いいえそうではありません、こういう答弁を外国に行ってもなさるようでございますが、どんなに抗弁してみても、これはILOの統計に出ちゃっているんですね。結局、中小企業に働く勤労者は非常にみじめな給料である、それをさして世界の人はテープ・レーバー、レーバー・ダンピングである、こう言うているわけであります。これが輸出のネックになっているわけなんです。これについて労働大臣はどうお考えでございましょう。
  122. 大橋武夫

    大橋国務大臣 仰せのごとく、日本におきましては、規模別の賃金格差というものは外国に比べましてかなり程度がひどいと思います。ただ、この状態も経済成長に伴いまして、労働力の需給関係が逐次変わってまいりましたために、最近におきましては漸次その格差が減少しつつありまして、これは三十七年の統計でございますが、五百人以上の賃金を一〇〇といたしますと、百人以上が七七・六、三十人以上が六六・七、五人以上が五七・〇、こういうふうに逐次改善をいたしつつございます。
  123. 加藤清二

    加藤(清)委員 労働大臣のおっしゃるとおり、企業規模によるところの賃金の格差は徐々ではあるけれども縮まりつつある。それは確かにあなたの努力でしょう。と同時に労働運動のしからしむるゆえんであると思うわけで、ここに労働運動の意義があると私は思うわけでございます。  さてその次に、そういう給料の低い、つまり賃金格差のあるところの事業所に働く労働者に対する社会保障の制度はどうか、こう調べてみますると、さて厚生大臣と労働大臣に承らなければなりませんが、厚生大臣、よろしゅうございますか。——それじゃ、もう少し呼び水を出しましょうか。たとえば五人以下の小規模企業に対してここにもどえらい大きな格差があるのですね。たとえて言うと、健康保険、失業保険、厚生年金、これは労働省やあるいは厚生省が働く勤務者に与えられたところの最も重要な恩恵でございます。これを小規模企業に恩恵が与えられているかいないか、どうなんです。
  124. 塚原俊郎

    塚原委員長 加藤君、時間が経過しましたから、そろそろ結論にお入りください。
  125. 西村英一

    西村国務大臣 中小企業のうちでも五人未満の事業所には、いまの健康保険、厚生年金保険の強制適用がないわけです。しかし、任意加入制度のあれがありますから、現在でも五人未満のところは相当に加入しております。また政府としても、五人未満でも安定していれば、これはなるべく行政指導で加入させるように努めております。
  126. 加藤清二

    加藤(清)委員 私が申し上げますまでもなく、五人以下ではほとんど国民健康保険、国民年金にたよらねばならぬことになる。あなたのおっしゃるとおり強制適用はないのです。こうなりますると、片や給付は全額、だから病気になってお医者さんにかかれば、健康保険に入っておれば全額無償でいけるわけなんです。ところが片一方はそうじゃないでしょう。国民健康保険のほうは自己持ちになっておるほうが多い。それから今度は掛け金のほうはどうか。健康保険のほうであれば企業主がかけられる。これは必要経費で落とせるわけなんです。ところが五人以下のほうはそうじゃない、自分で負担していかなければならない。給与が少ない上になお社会保障が少ない。踏んだりけったりというのはこのことなんです。社会保障制度審議会の答申は、この五人以下の零細企業に対しても気の毒だから適用せいというておるはずなんです。それが適用されていない、これはどういうわけなんです。労働大臣と両方にお答え願いたい。
  127. 西村英一

    西村国務大臣 十分検討する価値があるので検討いたしております。ただ、御案内のように五人未満の企業はほんとうに零細企業でございまして、なかなか企業が安定しないし、また従事員の出入りがはなはだしい、なかなか捕捉しがたいところがあるのでございます。しかし努力して——制度といたしましても強制にするかどうかということは慎重な考慮を要します。しかし行政指導で十分やっておりますし、現在も相当に任意加入で入っております。しかし、ことしは行政指導でもっと加入をおすすめするつもりをいたしております。制度については将来検討いたします。
  128. 加藤清二

    加藤(清)委員 だんだん結論を急ぎます。  以上述べましたように、かくのごとく外国と日本との比較をしてみますると格差がある。日本だけを調べてみますると、大企業と中小企業と零細企業にはこんなに格差がある。それはほとんど政府施策のしからしむるゆえんと言わねばならぬ。そこで結果がどうなっているかというと、これはおもしろいです。近ごろこういうことがあるのです。皆さんのところへもそうでしょうけれども、私のところへも三月に就職を頼みに来るんです。労働運動の大きらいなお百姓さんが、自分のむすこさんが学校を卒業するというので就職を頼みに来る。何と言われるかというと、なるべく会社の大きいところで、なるべく労働組合のしっかりしたところを頼みますと言われる。あれ、あんた労働運動大きらいなはずじゃなかったか、どういうわけでござんすかというと、それはあんたむすこがなも、就職するようになれば、これはまた違うわなもとおっしゃる。それはわが子を持ってみれば、やはり会社の安定した、賃金のいいところがいいに違いない。ここの委員諸君や大臣の皆様の御子弟で、われこそは中小企業へという人が何人あるでしょう。中小企業庁の長官といえども自分のむすこを中小企業につとめさせようとは思わぬでしょう。ここに問題があるわけです。自分のむすこをほんとうに就職させたいというような中小企業、嫁が喜んで来る農村、これをつくることが政治の任務じゃないでしょうか。それを怠っていて、中小企業の指導育成強化をします、貿易の準備はこれで足れりなんていったって、なかなかできることじゃございません。ぜひこの点をひとつがんばっていただきたい。  最後にただいま運動中の新産業都市の問題について二、三御質問して結論にしたいと存じます。
  129. 塚原俊郎

    塚原委員長 だいぶ時間が経過いたしておりますから、簡潔に願います。
  130. 加藤清二

    加藤(清)委員 だから一括にやりましょう。  この新産業都市、これを設定するにあたりまして国の保護は一体どれだけあるか、指定地区、これは目標五十年までに何カ所行なうか、三十八年度には何カ所どの程度、いつの時期に行なわれるか、これをひとつ経企庁の長官に……。
  131. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年の末に当面、と申しますのは三十八年度という意味でございますが、新産業都市の指定は十カ所程度ということを要請大臣の間で、各省の間で決定いたしておりますので、したがって十カ所前後という指定をこの際いたしたいと思っております。国の保護につきましては、財政、金融、起債、税制等々と法律に書いてございますので、省略をいたしますが、そういう方針でおります。
  132. 加藤清二

    加藤(清)委員 時期はいつ、十のうちの決定とか、発表の時期はいつ行なわれますか。
  133. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ごろ指定を申請いたしたい意思を持っておる四十数カ所につきまして、かなり長いことかかりまして関係各省で事情の聴取を終わりました。その資料をただいま指数等を付して整備をいたしております。したがって資料が整備いたしますと、各要請大臣が御自分の立場から適当と思われるところをお選びになるはずでありまして、各省の関係大臣の意思のそろいましたものはそのとおりでありましょうし、なお多少その間に調整を要すれば、経済企画庁長官調整をいたしまして、総理大臣が指定をする。その時期はなるべくすみやかにと考えておりますので、七月の早々にでもできればいたしたいと考えて、事務を急がせております。
  134. 加藤清二

    加藤(清)委員 この新産業都市建設促進法によりますと、地区別産業構造、業種別の構造、あるいは地区別伸長率等々はどうなっておるのでございましょうか。
  135. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 はなはだ恐縮でございますが、御質問の意味がはっきりいたしませんので。
  136. 加藤清二

    加藤(清)委員 新産業都市建設促進法、さしあたって十きめるとおっしゃいましたね。希望は四十数カ所あるとおっしゃった。最終末までには一体どのぐらい指定なさるつもりか知らぬけれども、そうしますと、ここに当然のことながら、その産業構造というものが描かれて、そうしてきめていきなさるのか、そうでなしに陳情だけをみてきめていきなさるかによって変わるわけですが、経済企画庁のことでございますから、全体の構造があるでございましょう。その構造を満たすために甲地区、乙地区、丙地区、こうおきめになるでしょう。その場合の全体の構造があるとするならば、一体時はいつごろまでに完成させるつもりか。地区別の産業構造はどうなるか、たとえば東北とか、近畿とか、九州とか、北海道とかあるでしょうが、それはいまの構造の何倍程度伸ばすつもりであるか。業種別には何をどれだけ伸ばすか、地区別伸長率はどうなるのか、こういうことですが、それはあるかないか。あれば簡単に、時間がないですから抜き取り式でいいです。
  137. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わかりました。それば、基本になりますのは全国総合開発計画で、ございますが、昨年末に関係大臣の間できめました考え方の中で、その総合開発計画の中で、まず過密地域をはずそうということを考えておるわけでございます。それから整備地域につきましては、原則としては行なわないが、しかし行なうこともある。それからどっちかといえば臨海工業地帯がおもになるであろう。しかし、絶対に内陸を排除するという意味ではない。したがって、臨海性工業がおもになると考えますけれども、そればかりではなく、機械工業などのようなものも考える。それから、目標年次における出荷額を三千億以上なら三千億以上というふうに押える。そういったようなことをいろいろ考えておるわけでありまして、地区的には、この法律の意図しておりますところが、国会の御審議等の経緯にかんがみますと、地域格差の是正ということに大きな主眼を法律が置いておりますので、なるべく後進地域に厚く、先進地域に薄く、将来の総合開発並びにわが国の工業開発の拠点を新産業都市に求める、大体こういう構想でありまして、出荷額等を種類に分けて数字的にお示しいたしますことはかりに申し上げられましても、事実上実現性、現実性に乏しいと思いますから、たいして重点を置いておりません。
  138. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、なぜこういうことを申し上げますかというと、同じ日本という地域において、通産省においては工業立地政策の基礎として、工業適正配置構造というものを持っていらっしゃるはずなんです。と同時に、今度特振興法によって、またぞろ企業構造のある程度の改革が行なわれるわけであります。同じ地区に、描こうとするその構造が違っていては、迷惑するのは地元でございます。したがって、この点をよく御検討を願わなければなりませんが、時間がございませんから、それは別の委員会お尋ねすることとします。  最後に官房長官、あなたにひとつお尋ねしたいのですが、これの最終決定は総理だと思います。特に私は、総理のところまで持ち込まれるのではないかと思われます。それは議員、市長、県知事のみならず、大ものといわれる方々までがこれに殺到しているからです。わが田に水を引こうというので、えらい陳情合戦、せり合いで、ただいま陳情中ということでございます。したがって、ほんとうに決定される基準は、科学的なものであるのか、あるいは大ものが言えばその無理が通るのか、その辺のところを。
  139. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 かわってお答えいたします。  お話のとおりに、この決定は内閣総理大臣がいたすのでありまして、経済企画庁長官の補佐によりまして、要請大臣と申しますか、関係大臣の意見を総合した上で、内閣総理大臣が決定する、かような仕組みになっております。私ども期待いたしますことは、経済企画庁長官のところでおまとめ願って、そのまま通るようにと期待をいたしておる次第でございます。
  140. 加藤清二

    加藤(清)委員 手続のことはわかりましたが、決定の基準ですね。これは科学的なものでおきめになるのか、大ものが押せば無理が通るのかということなんで、国鉄の場合でもそうでございまするが、大ものが言うと新幹線が曲がるのですね。曲がって赤字になって、総裁は首になる。そのしりぬぐいは税金で行なわれるというのじゃ、国民はたまったものじゃない。このしりぬぐいが、地元が行なうだけならばよろしゅうございますが、所得税で八〇%以上負担させられている、いわゆる勤労所得者が持たされなければならぬということになると、問題はますます大きくなるわけなんです。そこで、大ものの無理が通ると、とにかく鉄道が曲がるのですから、今後そういうことのないように、特にあなたに申し上げておくが、あなた自身も、中央に直結する政治でなければならぬということを、選挙演説でおっしゃっております。中央に直結する、自分の系統の者が県知事をやっておったら、そこへは許してやる、しからざれば許さぬということになれば、これは血税を私有化するものであって、政治はやみと言わなければならぬ。やみの政治でなしに、ガラス張りの政治が行なわれまするよう申し上げまして、私の質問を終わります。
  141. 塚原俊郎

    塚原委員長 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時五十八分休憩      ————◇—————    午後四時二十二分開議
  142. 塚原俊郎

    塚原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  予算実施状況に関する件について質疑を続行いたします。野原覺君。
  143. 野原覺

    ○野原(覺)委員 昨日の予算委員会におきまして、私どもの党の島上議員が選挙違反に関して質問をいたしたのであります。そこで、私も、これに引き続きまして若干お尋ねをいたしたいのでございますが、まず、国家公安委員長お尋ねをいたします。  今回の東京都の知事選挙によって逮捕された者は何人であるのか、その内訳は、にせ証紙で何名、はがきの買い取りで何名、買収、供応、それからやじ妨害、その他、五項目に分けて、逮捕の人数を明らかにしていただきたいと思うのであります。−公安委員長が来るまで待ちます。これは質問通告いたしておりますから……。
  144. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 これは五月二十日現在でございますが、買収ゼロ、しかし、その後においてあるいは出ておるかもしれませんが、二十日現在では買収がゼロ、自由妨害が件数二十件、人員二十五人、戸別訪問件数十二件、人員二十人、文書違反四十五件、六十五人、その他十四件三十七人、合計九十一件の百四十七人、こういうふうになっております。
  145. 野原覺

    ○野原(覺)委員 法務大臣にお尋ねいたしますが、その中で、起訴されたものは何人でございますか。できるならば、このにせ証紙とはがきにつきましては、最も悪質でございまするから、起訴された者の氏名及び起訴事実、これを明らかにしてもらいたい。
  146. 中垣國男

    ○中垣国務大臣 お答えいたします。  にせ証紙事件におきまして、東京都知事並びに福岡県知事の選挙にあたりまして起訴された者の氏名をまず申し上げます。政党事務職員松崎長作、株式会社照文社代表取締役三沢美照、(「罪名は」と呼ぶ者あり)あとで申し上げます。株式会社照文社取締役永里一朗、株式会社照文社取締役入倉邦雄。  この四名につきましての起訴事実の要旨を申し上げます。  松崎、三沢、永里、入倉は、昭和三十八年四月十七日施行の東京都知事選挙に際し、同選挙の候補者東竜太郎の選挙運動者飯田新太郎らとともに、同選挙の法定枚数をこえる東候補の選挙運動用ポスターを作成掲示するため、同候補者の法定枚数のポスターに貼付使用する東京都選挙管理委員会の証紙を偽造しようと考え、松崎において、同年三月二十四日ごろ、飯田より入手した右証紙を見本として三沢に交付し、三沢において、これに基づいて右証紙の地紋部分と文字部分の各図案を準備し、入倉、永里においてそれぞれ製版業者にその亜鉛凸版を作成させた上、同年四月五日ごろから翌六日ごろまでの間に、入倉が、東京都台東区車坂町四十五番地有限会社教潤社において、同会社社長伊藤静をして、かねて用意したA模造紙約千枚に印刷させて、公記号である前記証紙約一万六千枚を作成、偽造したものであります。それらの証拠に基づいて起訴した次第であります。罪名及び罰条は、公記号偽造、刑法第百六十六条第一項、第六十条であります。  次に、同じ起訴氏名を申し上げますと、地方公務員飯田新太郎、会社役員石井荘司、会社役員福岡喜一、会社員木下崇俊。  公訴事実の概要を申し上げます。  飲田は、昭和三十八年四月十七日施行の東京都知事選挙に際し、候補者東竜太郎の選挙運動をしていた者であるが、松崎、三沢、永里、入倉らとともに、東候補に当選を得しめるため、同候補の選挙運動ポスターを多数人に依頼し、法定枚数をこえて掲示しようと考え、同年三月二十四日ごろ、飯田において、右証紙を見本として松崎を介して三沢に交付し、三沢はこれに基づいて右証紙の地紋部分と文字部分の各図案を準備し、入倉、永里はそれぞれ製版業者にその亜鉛凸版を作成させた上、同年四月五日ごろから翌六日ごろまでの間に、入倉が、東京都台東区車坂町四十五番地有限会社教潤社において、同会社社長伊藤静をして、かねて用意したA模造紙約千枚に印刷させて、公記号である前記証紙約一万六千枚を作成、偽造した上、同月七日ごろから同月十一日ごろまでの間、東京都中央区日本橋三丁目二番地広瀬ビル三階安井謙事務所外一カ所で、前記偽造の証紙を飯田において石井、木下らとともに同候補者の選挙運動用ポスター合計約八千枚に貼付し、さらに、福岡とともに同人を介し、右ポスターのうち約三百枚を、同月十三日東京都千代田区平河町二丁目七番地、自由民主党本部において、情を知らない選挙運動者に対し、東京都内に掲示することを依頼して一括して引し渡して交付し、偽造の東京都選挙管理委員会の記号を使用するとともに、前記法定外文書を頒布したものであります。右の罪名でありますが、公記号偽造、刑法第百六十六条第一項、第六十条、それから偽造公記号使用、刑法第百六十六条第二項、第六十条、公職選挙法違反、公職選挙法第百四十二条第一項第三号、第二百四十三条第三号、刑法第六十条等に基づいて起訴したものであります。
  147. 野原覺

    ○野原(覺)委員 ただいまの起訴事実の中で、中心となって主として活躍をされたのは松崎長作ではなかろうかと思うのであります。これは新聞もそのように報道しておるわけでございます。そこで、私はお伺いをいたしますが、松崎長作氏はどういう資格で東選挙事務所に関係をしたのかということであります。いかがですか。
  148. 中垣國男

    ○中垣国務大臣 お答えいたします。  松崎長作は、自民党本部事務局全国組織委員会事務主任、そういう肩書きにおきましてこの選挙に関連したものであります。
  149. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、法務大臣にお伺いいたしますが、この松崎長作氏は、東氏の選挙運動については単なる第三者ではない、これは東事務所の東候補の選挙運動員であると私は思うのでございますが、いかがですか。
  150. 中垣國男

    ○中垣国務大臣 松崎長作は政党の事務職員として関係したものでありまして、東の運動員ということに確定することはできないのではないかと思います。
  151. 野原覺

    ○野原(覺)委員 その点は、第一線の捜査をされておる検事の見解でございますか、それとも法務大臣中垣個人の独断でございますか、いかがですか。これをはっきりしておきたいと思う。あなたは徹底的に捜査をするかといえば、私は徹底的に調べます、こう言いますけれども、ややともすればその辺がきわめて不明確なんです。だから、私は、松崎長作が自民党から東氏の選挙事務所に派遣されたものである、このように伺っておるのでございますが、これはいかがですか。
  152. 中垣國男

    ○中垣国務大臣 お答えいたします。  松崎長作は、政党の、つまり自由民主党の選挙対策委員会の連絡をいたしておった者でありまして、東候補のための運動員とか委員とかではございません。
  153. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この点は、私はもっと明確にしたいと思うのであります。いまこのことでここで問答いたしておりますと、いたずらに時間が経過いたしますから、私はおきますけれども、かりに法務大臣、この松崎長作が第三者でないということになりますと、松崎長作氏が偽造いたしましたにせ証紙の偽造行使に要した費用は、第三者の使った費用ではない、選挙運動員の使った費用ということになるのであります。私は、この点はきわめて重要な点ではなかろうかと思う。だから尋ねたのでございますが、これは単に法務大臣がこの国会で答弁した事柄、それで終わるのではなくて、私は、第一線の検事諸君が捜査をしておることでございますから、この点についてはこれ以上は触れません。  そこで、お尋ねをいたしますが、にせ証紙の偽造行使に要した費用あるいははがきの買い取りに用いられたお金の高、これについては新聞その他いろいろうわさが流れておるのでございますが、これは相当捜査は進んでおると私は思う。どれだけの金額が動いておるのか、これは捜査中のことでありますから、言えなという答弁が出るかもわからないけれども、大体のことは明らかにしてもらいたい。国民はこの問題に大きな関心を持っておるから、この件については注目しておるのです。したがって、どれだけの金額が動いたも一のであるか、ひとつ明らかにしていただきたい。いまの段階でけっこうですから……。
  154. 中垣國男

    ○中垣国務大臣 にせ証紙偽造に関する金額の問題等につきましては、ただいま捜査中でございますので、的確な数字を申し上げることは差し控えたいと思います。
  155. 野原覺

    ○野原(覺)委員 捜査中であるということであれば、私ども捜査を妨害してはいけませんから、きょうのところは私は追及はいたしません。しかし、これは徹底的に究明されなければならぬと思うのであります。  そこで、どこからこの金が出されたかということが、やはり問題になってきておると思うのであります。私は、この点についてもおそらく捜査中であるということだろうと思うのでございますが、金が出されたということになると、ある特定の個人か金を出したというのが一つ考えられる。もう一つは、松崎長作は自民党の事務局のかなりの役職についておられた方でありますから、自民党の候補者の選挙でもございますから、自民党の経理からこの金が出たということも考えられましょう。もう一つは、東候補の選挙事務所から金が出されたのではなかろうかということも考えられるのであります。だから、この点についても捜査中でございますから、私は、これ以上は、捜査の妨害はしたくないから、この点についてもおきますけれども、しかし、ぜひお伺いしておかなければならぬことは、かりに自民党から金が出されておるということになれば、責任はだれが負わなければならぬと法務大臣は考えておりますか。
  156. 中垣國男

    ○中垣国務大臣 お答えいたします。  これらの資金につきましては、厳正公平な立場から目下調査中でございますから、明らかになった上でお答えをいたします。  ただいま仮定の問題についてのことでありますが、政党はそれぞれ会計の責任者というものがあるのでありますから、もし仮定のようなことがありましたならば、当然その責任というものは直接に会計の責任者が負うべきものだろうと思います。ただ、この問題は非常に誤解を生むおそれがありますので、仮定の問題につきまして私がここではっきりしたことを申し上げるということもどうかと思いますので、どこまでも仮定の問題としての入お答えをいたします。
  157. 野原覺

    ○野原(覺)委員 仮定の問題ということであれば、私はそれでも納得いたしますけれども、あなたがただいま責任があると言ったことは、これは単に党内における地位上の責任ではなくて、刑事責任も私は入ると思う。だから、私は法務大臣にお尋ねをしたのです。この点はいかがですか。
  158. 中垣國男

    ○中垣国務大臣 お答えいたします。  そういうことを含めまして、資金関係を捜査追及しておる段階でございますので、そういうことを明らかにしてから、真相を皆さんに御報告を申し上げたい、かように考えております。
  159. 野原覺

    ○野原(覺)委員 きょうは総理が出席されておりませんので、総裁である総理にお尋ねができないことをきわめて残念に思うのでございますが、自民党の中に刷新同志会というのか、刷新同盟というのか、そういう一つの集団があるようであります。私は新聞で拝見いたしましたが、この刷新同盟すら、自民党の中の一つのグループでございましょうが、この方々すらも、幹事長と総務会長は今回の選挙については当然責任をとるべきだということを公言しておるのであります。はっきり声明をしておるのであります。きょうは総理がおりませんから、この点は触れることができませんでしたが、そういう観点で、かりに自民党の経理から金が出されておるということになれば、私はその責任は重大になってくると思うのであります。これは会計だけではない、幹事長だけでもないのです。総裁の責任に発展しなければならぬかと思うのであります。  そこで、第二の点も、これは仮定ということになりましょうが、東候補の選挙事務所から金が出されておるとすれば、私は、当然にこの選挙は無効だと思う。東候補の事務所からにせ証紙の偽造行使の金、それからはがきの買い取りの金、そういうものが出されておるとすれば、この選挙は当然無効でなければならぬと思う。法務大臣の見解を承りたい。
  160. 中垣國男

    ○中垣国務大臣 選挙費の使用に関しましては、出納責任者は候補者別の報告をする義務があるわけであります。したがいまして、選挙の資金、いわゆる選挙の経費としてかかりましたそういう資金の問題につきまして、東候補から出ているかどうか、そういうことは私の立場でここで言明できる事柄ではございません。そういうことを含めまして調査しているのでありますから、仮定の問題ということをおっしゃいましたけれども、そのことが直ちに選挙の全般を無効にすることになるかどうかは、これは選挙管理委員会なり裁判所なりできめてもらう問題ではなかろうかと考えております。
  161. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この点は、法務大臣としても明確な見解を私は示すべきだと思う。選挙の法規からいって、選挙の事務所からこの種の金が出たならば、当然これは選挙の費用に計上されなければならぬ。おそらく選挙の費用には計上していないに違いない。にせ証紙偽造の金として計上しているわけはないのであります。しかも、これはどう考えても、私は、東の選挙事務所から出ておれば当然選挙無効だ、こう考えるのでございますが、これらも仮定のことという前提でありますから、これ以上は追及いたしませんが、けさの新聞でございましたか、東京都の岡安元副知事が逮捕されておるのであります。相当これは重要なかぎを握る人物と新聞は報じておるのでございますが、国家公安委員長にお伺いいたしますが、この逮捕の理由は何でございますか。
  162. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 私は、先般の本会議で社会党の猪俣議員もおっしゃいましたように、直接逮捕をするとかさせるとか、その理由をただすとか、そういう立場に私はおりません。私は国家公安委員会委員長として会議を主宰するといいますか、そういう立場におるのでありまして、一々そういう報告は受けておりません。これは法務省の管轄でございます。
  163. 野原覺

    ○野原(覺)委員 それじゃ逮捕の理由を法務大臣にお伺いいたします。
  164. 中垣國男

    ○中垣国務大臣 東派の選挙違反の追及中に、関連いたしまして、買収行為をしたという疑いが濃くなってまいりましたので、逮捕して捜査中であります。
  165. 野原覺

    ○野原(覺)委員 その買収は、にせ証紙なりはがきの買い取りに関連があるかどうかも捜査中であろうと思いまするから、私は、この点についてもきょうはこれ以上追及はいたしませんが、この問題で最後に法務大臣に申し上げておきたいことは、あなたは、昨日島上委員の質問なり要望に対して、指揮権は断じて発動しない、徹底的に捜査をするということをここで公約されたのであります。このことに対して私どもは大きな信頼を実は持つのであります。いま国民がどういうことを言っておるかというと、これは自民党の首脳部なりあるいは現職の閣僚なり、そういう大物政治家に累が及ぶということになると、また握りつぶしされるのではなかろうかという疑惑を国民が持っておる。私は、この疑惑が大きくなるというと、これは大きな政治不信になろうと思うのであります。そういう意味で、今日中垣法務大臣の責任は実に重大だと思う。民主政治を確立するために、あるいはまた法の権威を守り抜くために、あなたは断じてこの捜査をゆるめてはならぬのであります。もう一度私は御決意のほどを承っておきたいと思うのであります。
  166. 中垣國男

    ○中垣国務大臣 お答えいたします。  ただいま捜査の途中にあるわけでございますから、私といたしましては、衆議院の本会議並びに参議院の本会議、先日の予算委員会等におきましてたびたび申し上げておるのでありますが、統一地方選挙の選挙違反に対しましては徹庭的にこれの取り締まりをする、しかも、違反者に対しましては厳重な捜査をするということを、もうたびたび閣議等でも申し合わされ、また総理大臣、それぞれの関係大臣があらゆる機会にこう声明をしてきておるのでありまして、今度の東京都知事の選挙違反に対しまして、捜査の段階で指揮権を発動するのではなかろうかというようなことは考えておりません。また、そういうことをしてはならぬと考えております。厳正公平にどこまでも追及いたしまして、真相を明らかにしたい、かように考えております。
  167. 野原覺

    ○野原(覺)委員 指揮権発動につきましては、私どもはつい最近苦い経験を持っておるから申したのであります。これはひとつ徹底的に捜査をしてもらいたいことを要望しておきたいと思うのであります。  次に、私は、沖繩の問題で若干お尋ねをいたしたいと思いますが、まず、総理府の総務長官にお尋ねをいたします。  あなたは、つい最近マッキューン民政官といろいろ会談を持たれたようでありますが、その民政官との会談の中身は何でございますか、お尋ねいたします。
  168. 徳安實藏

    徳安政府委員 お答えいたします。  沖繩の民政官と会見をいたしましたその席におきまして話をいたしましたことは、日本が沖繩政府に対しまして援助を行なっておりまするその予算の範囲において、早くこれを施行されまして、遅滞なく工事が進みますようにお願いをし、また話し合いもいたしました。あるいは渡航する場合におきまして、現在では外地の取り扱いを受けておりますために、当方から参りまする者が許可を受けるのに非常に時間を要しております。こういうものをできるだけ簡素化してもらいたいという話もいたしました。あるいはまた、アメリカと日本との間に昨年来から話し合いがございまして、委員会東京に持ち、あるいは沖繩の現地には技術委員会を持つという話し合いができておりますが、これもまだ出発いたしておりません。これは外務省を通じ、アメリカ側に早く誕生いたしますように交渉しておるのでありますが、まだ日取り等も決定しておりませんので、民政官が来られたのを幸いに、大使側とも御相談の上で早く出発ができますようにということも話をいたしました。いろいろの問題がございましたので、取りまぜて話をしたのでありますが、雑談、懇談でございますから、別に速記をとったわけでもございませんし、秩序正しく交渉的に話したわけではございませんので、忘れておる点もあるかもしれませんが、おおよそそういうような点につきまして話し合いをいたしたわけでございます。
  169. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、会談の中身のおもなものは、沖繩に対する日本経済援助、こういうことになろうかと思うのであります。  そこで、私は端的にお伺いをいたしますが、一体沖繩の経済援助の責任はアメリカにあるのですか。日本にあるのですか。今日沖繩の人々がたいへん困っておるから、これは日本の本土から日本が援助しなければならないということは、私ども道義的によく理解ができます。しかし、今日アメリカが法的に施政権を行使しておる。アメリカが統治権を行なっておる。立法、司法、行政の三権を行なっておる。そうなれば、沖繩の人々の生活に対する第一次の責任はアメリカでございますか、日本でございますかという疑問が出てくるのであります。これは総務長官はどう考えますか。
  170. 徳安實藏

    徳安政府委員 ただいまお話しのように、もちろん施政権を向こうが持っておりますから、一次的な責任がアメリカにあることは当然でございます。
  171. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、沖繩に対する日本経済援助はアメリカに対する経済援助なんだ、アメリカの援助の肩がわりをしておる、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  172. 徳安實藏

    徳安政府委員 アメリカの大統領と日本の総理大臣の共同声明が出まして、日本の領土であり、いずれは日本に返すべき沖繩でございますから、そういう機会を早からしめるためにも、また、そういうときに、日本本土と沖繩とがすべての富の点、文化の点等におきましてあまり隔てがあってもいけないということで、日本でも協力してほしいという話がございまして、共同声明にもそれがうたわれておるわけであります。その趣旨によりまして、日本も、日本国民であり、日本の国土でありますことには相違ないわけでありますから、そういう時期の早まるように、また同時に、そうして私ども同胞が本土とあまり格差のある段階にならぬようにできるだけの協力の手を差し伸べるという気持ちで援助を与えておるわけであります。
  173. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総務長官は非常に重要な御答弁をなさったのです。沖繩に対して経済援助をやれば施政権が早く返る、これはどういう理屈ですか。私はわからない。施政権の返還と経済援助の関連というものは、一体どうあなたは理解しておりますか。施政権を早く返してもらうために経済援助をやると、こう言うのですか。沖繩の人々の生活が困っておるから、これを見殺しにできないから、助けるんだ。助ける責任はアメリカです。私は、日本が現実に助けておることをいけないとは言わない。言わないけれども、第一の責任はアメリカです。もし日本に沖繩の人々の生活を見れというならば、アメリカは施政権を返しなさい。アメリカは日本にそういうことを言う資格はないのですよ。今日はアメリカは沖繩の人々の全生活のめんどうを見なければならぬのです。それに、昭和三十八年度は、大蔵大臣承知のように、何億円という予算を計上して援助をしておる。去年もこういう援助をしておる。この援助の本質及び援助の理由というものが、どうも私どもは納得ができないのですよ。施政権返還のために援助は必要でございますと、あなたは御答弁になられましたが、そうですか。援助をすれば施政権が早く返るのですか。
  174. 徳安實藏

    徳安政府委員 ただいま私の申し上げたことが、あるいはことばが足らなかったかもしれませんし、あるいは言い足らなかったかもしれません。別に援助しましたから施政権が日本に帰ってくるのが早まるんだという考えではございませんが、いずれは返るべきものという考え方は双方持っておるわけでございまして、そういう雰囲気、また返りましたときにあまり格差があってはいけないから協力しようというようなことが両国の共同声明等にもあらわれておりまして、その趣旨によって私どもは援助をしておるということでございますが、その外交的な問題等につきましては、ひとつ外務大臣のほうから御説明をいただいたほうが適当かと思います。
  175. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は外務大臣お尋ねいたします。  外務大臣承知のように、この国会は——今次国会ではなしに、日本の衆参両院です——再三再四沖繩の施政権返還について決議をあげたわけです。この決議に対して、日本の外務省は具体的にアメリカと交渉をしてこられましたか。この決議に対して、アメリカに対してこういう決議があがったからということで、どういうことをやってこられましたか。国会の決議だから、当然私は施政権の返還をアメリカに要求すべきだと思う。これを承りたいのです。
  176. 大平正芳

    大平国務大臣 そのつどアメリカ側に国会の決議の趣旨を伝達をいたしてございます。
  177. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そのつど伝達したというのは、国会の決議を渡したというだけですか。私が聞いておるのは、交渉しておるかと聞いておる。国会で決議をいたしましたというので、その文書を手渡した、こういうことでございますか、交渉はしていないのですか、いかがですか。
  178. 大平正芳

    大平国務大臣 これは野原さんも御承知のように、日米首脳会談のつど、施政権の返還の悲願につきましては先方の考慮を求めておるわけでございまするし、国会の決議等につきましても、そのつど伝達を申し上げてあるということでございます。
  179. 野原覺

    ○野原(覺)委員 首脳会談のつどお話しをしておる、それからあなた自身も交渉しておる、国会が決議をあげたんだから、真剣に交渉しておる、こういうことですか、お尋ねします。
  180. 大平正芳

    大平国務大臣 さようでございます。
  181. 野原覺

    ○野原(覺)委員 その交渉は首脳会談のつどだということでございますが、私はここで重要な書類を手にしたのです。一九六二年六月十四日、アメリカ上院の軍事委員会の証言録です。いいかげん答弁をしちゃいけません。あるいは私が読み上げるこの答弁がいいかげん答弁であるかどうか、これをはっきりしていきたいと思う。ジョンソンといえば国務次官補でしょう。特に極東担当の方です。このジョンソンはこういうことを言っておる。アメリカは二つの声明をケネディ・池田会談によって出しました、その一つは、軍事上の必要がある限り沖繩は返さない、必要がなくなったら日本に返す、これはアメリカの考えです、こう言ったら、上院議員のソルトンストールという人が質問をしたのです。それでははっきり返還のときがわかるまでは交渉はなかったし、交渉中のものもないし、将来交渉することもないか、こう聞いたのです。返還についてはアメリカの態度はそれだ、それならば返還については日本と交渉をするとか、いま交渉中だとか、将来交渉があるということは断じてないのかと言ったら、ジョンソンがこう言っておる。これまで何の交渉も行なわれていない。一体ジョンソンのこの証言は間違いですか。あなたは交渉しておると言う。私はここに持ってきたのです。これは米議会の沖繩論議をずっとまとめております。軍事から予算から沖繩に関する論議を一切まとめてある。見てみると、日本から交渉があったという記事は一つもない。責任者のジョンソンが何の交渉も行なわれていないと言っておる。これは間違いですか。あなたは交渉をほんとうにやっておるのですか。これははっきりしてもらいたい。
  182. 大平正芳

    大平国務大臣 施政権返還問題を議題として交渉するというような機会はいままでございませんでした。ただ、私の申し上げておりますように、あらゆる機会をとらえまして日本国民の願望は先方に精力的に伝えておかなければならぬという政府責任を感じまして、そのように処置いたしておるわけでございます。これを交渉と呼ぶか、あるいは先方にわれわれの要望の伝達というように呼ぶかは、これは見る人の主観によると思うのでございますが、私どもといたしましては、日本国民の施政権返還への悲願ということに対しまして、事あるごとにアメリカ側に要請する労は懈怠してはならぬと考えております。
  183. 野原覺

    ○野原(覺)委員 じゃ外務大臣お尋ねしますが、あなた返還交渉しておるというならば、返還の見通しがあなたにあるでしょう。返還の見通しについて承りたい。
  184. 大平正芳

    大平国務大臣 日本国内の返還への願望というものを累次伝えてまいっておるわけでございますが、御案内のように、去年の三月にはケネディ声明が出てまいりまして、アメリカは、沖繩ははっきり日本の領土の一部と認めておりまするし、また、これから行なうであろう日米協力によりまする沖繩の経済の復興、援助という問題も、日本に返す場合の困難を減殺していくためにやるんだということが出てきておるわけでございまして、私どもはこういう努力を積み重ねてまいりまして、あわせて日米間の理解と信頼というものが深まってまいることによって、施政権の本格的な返還ということが具現してまいるように努力してまいらなければならぬと思うわけでございます。それではいつ本格的な返還になるかというようなことは、事日米間の信頼、協力の度合いにかかりまするし、これからの私どもの努力にかかるわけでございまして、一日も早からんことを庶幾しつつ努力を続けてまいるべきものと心得ております。
  185. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私はいいかげん答弁をされちゃ困るのだ、貴重な時間でございますから。いまだかつてケネディは返還するのへの字も言っていない。ケネディは日本に潜在主権があるということは言ったのです。ただそれだけなんです。お願いをすれば返還ができるかのごとき口ぶりでございますが、外務大臣、あなたは本気でそう考えておりますか。本気で考えておるとすれば、たいへんなことですよ。一体アメリカは沖繩を軍事基地として手放さない限り、沖繩の返還はないんだ、こう考えてまいりますと、私ばお尋ねいたしますが、アメリカが沖繩を軍事基地とする理由、これを軍事基地として必要とする理由はどうお考えですか。外務大臣、この点は大事な点です。アメリカはどういうわけで手放さないとあなたはお考えですか、これを承っておきたい。
  186. 大平正芳

    大平国務大臣 これはたびたび御答弁申し上げておりますように、アメリカ側の考え方は、極東に緊張が続く限り沖繩を保持したいという意向でありますことは、たびたびお答え申し上げたとおりでございます。
  187. 野原覺

    ○野原(覺)委員 極東に脅威が存する限り沖繩は返さない、これは安保条約の審議のときにずいぶん議論をしたのですがね。これはもう一ぺん蒸し返さなくちゃならなくなってきた。一体極東の脅威とは何ですか、外務大臣。極東の脅威が存する限り、アメリカは返さぬ。極東の脅威とは一体何ですか、これを承っておきたい。
  188. 大平正芳

    大平国務大臣 極東の脅威とは申し上げてないわけでございまして、極東に緊張が続く間というように私どもは了解いたしておるわけでございまして、緊張の度合いというものは、 アメリカ当局が判断すべき問題だと思います。
  189. 野原覺

    ○野原(覺)委員 では極東の緊張の度合いでけっこうです。極東の緊張の度合いとは、いま沖繩を返さない緊張の度合いとは何ですか、具体的に。
  190. 大平正芳

    大平国務大臣 施政権を保持いたしておりますアメリカが、沖繩を保持する必要を感ずる程度の緊張だと思います。
  191. 野原覺

    ○野原(覺)委員 具体的に何かと聞いておるのですよ。それじゃ、私お尋ねいたしますが、アメリカは自由主義国家の最も尤たるものだ。自由主義国家アメリカと同じ自由主義国家を脅威とは感じないでしょうね。アメリカが沖繩を手放さないその事態というものは——これはあなたは脅威ということばを使わないけれども、緊張でもよろしい。その緊張がある。その緊張とは何かと聞いておるのです。緊張とは何ですか。アメリカがそう考えておるその対象は何ですか。あなたは日本外務大臣ですよ。日本外務大臣で、安保条約をあなたは結んでこられておるのだ。しかも、あなたは沖繩については返してくれとお願いをしておる。けれどもアメリカは返さぬのだ。こういう重要なことでございますから、あいまいな答弁は許しません。はっきりしてもらいたい。具体的には何ですか、それは。
  192. 大平正芳

    大平国務大臣 これはアメリカの判断でございまして、私は軍事専門家じゃございませんし、アメリカの判断の内面に立ち入って私が判断し、国会で御答弁するという筋合いのものではないと思います。
  193. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あなたは日本外務大臣でしょう。日本の外交についてはあなたが交渉の責任者でしょう。どう考えますか。では日本の国民はだれに尋ねたらいいのですか。これは日本の国会ですよ。ばかにしないでください。何というあなたは人をばかにした答弁をやるのだ。日本の国会は、事外交に関しては外務大臣に聞く以外にないじゃないですか。私はアメリカでないから知らない、そういうばかな答弁が一体ありますか。アメリカは極東の緊張の事態だと、こう言う。その極東の緊張の事態のある限り沖繩を手放さないのだというならば、日本外務大臣として、極東の緊張の事態と、アメリカが考えていることはこういうことだという、私は外務大臣の見解を聞いているのだ。それはいかがですか。
  194. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカといたしましては、案ずるに、みずからの戦力を充実いたしまして戦争を抑制する、戦争抑制力をつちかい、維持していくということで世界の戦略が進められておるように思うのでございます。たびたびアメリカ政府も言明いたしておるとおり、戦後寸土といえども侵略をしたことはない、自分たちは終始平和を守り、戦争を抑制するのだ、これがアメリカの国防方針であるというように伺っておるわけでございまして、私どもは、アメリカがそういう基本方針にのっとって世界の各地にみずからの軍隊を置きまして、戦争抑制への努力をいたしておるものと思うのでございまして、どういう地点にどういう兵備を配備しておくことがこの戦争抑制に寄与するかということは、アメリカの戦略の本部が決定することでございます。日本政府といたしまして希望いたしておりますことは、いうところの緊張というものが漸次緩和してまいりまして、沖繩を保持する必要がなくなる日が一日も早くあるようにということを願望いたしておるということでございます。
  195. 野原覺

    ○野原(覺)委員 外務大臣、あなたのただいまの答弁の中に、アメリカは戦争を抑制するためということばが出てきました。戦争というものは、自分の国だけでできませんね。相手がいるのです。どこの国との戦争を抑制するために沖繩を基地にするのでございますか。
  196. 大平正芳

    大平国務大臣 過去におきまして、人類の歴史の上におきましてたびたび戦争はありました。今後もないという保障がないとすれば、これをいかにかして抑制するということを考えるのは、国の安全を考える上において当然のことだと思うわけでございまして、どういう国を目当てにして、またどういう戦争を頭に置いてみずからの戦略を考えておるかということにつきまして、私どもよく承知いたしておりません。申し上げますことは、軍備というものは、戦争をするためでなくて、戦争を抑制するためであるとたびたびアメリカ当局も声明をいたしておりますので、それを信頼いたしておるわけであります。
  197. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あなたは戦争を抑制すると言いながら、どこの国との戦争を抑制するか考えていない、そういうぼけた答弁はやめてください。はっきりしておるじゃありませんか。アメリカばはっきり言っておるじゃありませんか。あなただけですよ、はっきり言わぬのは。アメリカは中ソだと言っておるじゃありませんか、はっきり。NATOにいってもそういうことを言っておるじゃありませんか。中ソともし戦うならば、NATOは九十日守れたら理想だ、三十日しか守れないということになったらたいへんだということを言っておるじゃありませんか、アメリカの国防長官が。沖繩だってそうでしょう。これは中ソに対する軍事基地でしょう、沖繩は。それがあなたは言えないのですか。それが言えないような、そういうはれものにさわるような認識で、一体日本外務大臣がつとまりますか。いま沖繩の人々が何を言っているか。一日も早く祖国に復帰したいという、この悲願に燃えておる。それで、アメリカが軍事基地を置いているのだから、アメリカの軍事基地を返してもらう以外に祖国復帰はあり得ないのだから、外務大臣としては、当然、何のためにアメリカが軍事基地を置いておるか、これは中ソに対する戦略・戦術のためにアメリカは沖繩を手放さないのだ、このくらいのことが言えないで、一体あなたはよく外務大臣がつとまりますね。失礼ですけれども。こんなことはだれだってわかったことですよ。私はこれは尋ねる必要もなかったのですけれども、一応聞いてみたのです。  アメリカのステニスという上院議員がこういうことを言っておるのです。沖繩を国連に返すか日本に渡すか等については心配することはないと思うという証言の中で、われわれはこれを太平洋の兵器庫とすべきである、われわれはこれを長期にわたり使用しようとしていることはだれもが知っていることと思う、すでに沖繩の軍事施設に何億ドルも支出していると言ったら、議長のラッセルが、何億ドルではない、それは数十億ドルだと言った。証言録を読んで見るとこう言っておる。、だから、私どもが幾ら国会で施政権の返還決議を上げてみても、一体、当の外務省に施政権を返してもらう熱意がないじゃありませんか。徳安さんという力は純真な方で、正直な方で、懸命になっておられましょうとも、一番悪いのは日本の外務省です。沖繩の祖国復帰についての悪人は、アメリカの国防省と日本の外務省です。これに反論があるなら言ってみなさい、外務大臣。  私は徳安総務長官にお尋ねいたしますが、あなたは、池田総理大臣に六月二十二日の沖繩終えんの日に沖繩に行ってもらおうという計画をお立てになりましたね。そういう計画をお立てになったことはございませんか。お尋ねします。
  198. 徳安實藏

    徳安政府委員 日にちは私もはっきり記憶がございませんが、ちょうど総理にお目にかかりましたときに、官房長官からちょっと話を聞いたとどなたかのお話がありまして、沖繩のほうに総理が一ぺん行ったらどうだというような話があったという話を聞きました。そこで、私は、いや実は私のほうでも機会あるたびに総理に一ぺん来てもらえないかという話を聞いております、しかし、国会もあることでありますし、いろいろな関係でお忙しいでしょうから、言いかねておりましたけれども、もしおいでくださるのでしたらぜひひとつおいで願いたいという話をしたのであります。で、もしおいでくださるのなら、六月二十二日に、——向こうでは、この日は戦争の最終の日と申しますか、牛島中将が自刃した日だそうでありまして、その日を何か沖繩全体のお祭りにしております。そうして、その日に十幾万のなくなった諸君の焼香をしておるということですから、もし行っていただけるならそういうときがいいと思うのですが、しかし国会も開会中ですから、そういうわけにはいかないでしょうね、という話をしただけでございます。総理は、そのときに、行くとも行かぬともおっしゃいませんでした。ただ、それが漏れまして新聞にも出たわけでございますが、別に総理からそのときに意思表示もございませんし、ただ食事上の話し合いとして、まあ私はできれば行ってもらいたいという——いや、そうじゃございません。各方面から来てもらいたいという切なる話がちょいちょいございますので、その話をそういう機会に申し上げたというだけでございます。
  199. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、総務長官のその企画に対しては敬意を表します。しかしながら、あなたの御答弁にございましたように、結果においては行かないことになったのだ。で、この行かないことになったについて、反対したのは外務省だと新聞は書いております。いま沖繩の国民の九五%は祖国復帰の悲願に燃えておるのです。アメリカの基地があって少々物をもらうよりも、われわれは日本に帰りたい、こう言っておるのです。  同時に、この証言の中で、私は読んで驚きましたが、敗戦直後アメリカは沖繩を独立させようとしたとジョンソンが言っておる。朝鮮と同じように日本から離そうとだ。離そうとして行ってみると、祖国日本に対する沖繩の人々の考え方というものはなかなか熾烈なものがあって、これはどうにもならぬ。そこで、その次に考えたのは、祖国復帰を言う者を弾圧する、そういう者を日本と切り離すような指導をしようとしたら、それをやればアメリカの軍事基地自体があぶなくなる。沖繩の人は、十万の人を戦死させて、島田さんをはじめ、あのことを忘れないで、一日も早く日本に帰りたい、われわれはどんなに貧乏してでも日本に帰ることがわれわれの願いだという、これをアメリカが知ったものですから、さすがのアイゼンハワーも、ケネディも、潜在主権と言わざるを得なくなってきた。いいですか、はっきり書いているのです。アメリカはその点は実に国民に正直に証言の中で明らかに言っておる。日本外務大臣だけです、そういうことをごまかすのは。これは一体どこの外務大臣だと私は言いたい。はっきりしておる。  だから、池田総理大臣が行って、日本の国民を代表して、沖繩の人々に対して、戦争がたいへんだったろう、皆さんの祖国復帰については私は日本の総理として日本の本土で一つ全力をあげる、こう言ってみなさい。それはたいへんなことだ。ところが、そういうことを池田さんが言わざるを得なくなるとすれば、アメリカに対してたいへんだと騒いだのが外務省の官僚じゃありませんか。アメリカに対して非常な気がねをいたしまして、刺激するというのでやめたんじゃありませんか。せっかく総務長官が純真に計画したものを、やめたんじゃありませんか。だから私は言っておる。口では施政権返還を首脳会議のたびに交渉しておりますと言うけれども、何にもしていない。国会の決議については何にもやっていない。そして、対米の綿製品輸出をはじめ、F105にしても、原子力潜水艦にしても、気がねばかりして、傍若無人のアメリカに対して、自主的外交が何一つできない。これが残念ながら今日の日本の外交、大平外交なんだ。これが自民党の外交ですよ。  そこで、私は外務大臣にもう一ぺんお聞きいたします。日本の潜在主権が沖繩にある、沖繩の人々には日本の国民だと言うならば、私は沖繩の住民代表に日本の国会の議席を与えたらどうかと思う。政府はどういう見解を持ちますか。これはできないことですか。日本の国会、衆参両院の議席を沖繩の住民の代表に与える、これについて政府は検討したことはございませんか。いかがですか。
  200. 大平正芳

    大平国務大臣 沖繩については、不幸にいたしまして、平和条約三条で、立法、司法、行政の三権のアメリカの行使を日本が認めたということになっておるわけでございまして、それ自体きわめて不幸なことであったと思います。しかし、たびたび申し上げておりますように、日本が敗戦後国際社会に復帰する場合に、どういう条件で国際社会に復帰を許されるかという大局的な判断に立った場合に、平和条約の条項の一つ一つのアイテムにつきまして不満であり忍びがたいところが悶々ございますが、全体として平和条約というのは受諾しかるべしという判断をわれわれの先輩がされまして、平和条約が発効し、日本が国際社会に復帰いたしたわけでございまして、その後の経過を見まして、私は、この選択、この判断は正しかったと思います。その犠牲になった沖繩でございまして、わが外務省が沖繩に対して冷淡であるという野原さんの断定でございますが、私どもはそのような気持ちは毛頭持っていないわけでございまして、日本が国際社会に復帰する場合に沖繩に甘受してもらいましたこの悲痛な運命につきましては、同胞として耐えがたい同情を禁じ得ないものでございます。ただ、御案内のように、有効に成立いたしました国際条約というのは、憲法でも明示してありますとおり、これは尊重されねばならぬわけでございまして、アメリカに施政権の行使を認めました以上は、アメリカの立場というものを十分尊重してかかるのが大国の態度であると思うのでございまして、この折り目正しい態度を通じまして、対米交渉に沖繩問題に対しましては終始当たってまいるのが沖繩の復帰に対しまして近道であると私どもは判断するわけでございます。アメリカの非を打ち、この非を論難するだけで沖繩が返るものでございますれば、これはやさしいわけでございますが、決してそういうものではないわけでございますので、大国民としての襟度と礼譲をもちまして沖繩問題に対しては対処しなければならぬと思うのでございます。その角度から、いま御提示の問題につきましても、そういうことを日本考えるべきかどうかということは、そういう点に判断の主点を置いて考えるべきものと思うのでございます。国会に議席を持たすべきかどうかということは、国会がおきめになる問題でございますけれども日本の沖繩に関する対米外交という点から考えますると、日本人が同胞として非常な親近感、非常な運命共同感を持っておるから直ちにそれはそうすべきであるというように判断してしかるべきかどうかという点については、慎重な配慮が要るのではないかと私は判断いたしております。
  201. 野原覺

    ○野原(覺)委員 なかなかあなたは長々と私の質問に対する言いわけをされたのです。言いわけをなされるならば、私は簡単に言うておきますが、極東における緊張の事態は、一つはアメリカの沖繩軍事基地です。そうしたならば、祖国復帰のためには、極東における緊張の事態を解かなければならぬのです。緊張の事態を解くということは、沖繩の軍事基地をますます強めることではないのです。極東の緊張の事態を解くために、一体日本政府はどれだけのことをしておりますか。そこのところが問題だから私は申し上げましたが、時間の関係もあるので私の質問は本論に入りますけれども、なるほど、沖繩選出議員の国会の議席は国会がきめます。選挙別表できめたらいい。しかし、私ども政府の見解を尋ねておる。政府はどう考えるのでありますか、検討したことはないかと聞いておる。一度も検討したことはないのですか。
  202. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことが話題にのぼりましたこともございますが、先ほど申しましたような見地から、慎重に検討を要する問題であると考えております。
  203. 野原覺

    ○野原(覺)委員 どういうわけで慎重に検討しなければならぬのですか、こんな簡単なことが。潜在主権があるのでしょう。沖繩人は日本の国民でしょう。日本の領土でしょう。ただ統治権がアメリカにあるだけだ。どういうわけで慎重に検討しなければならぬのですか、教えて下さい。
  204. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、私どもは有効に成立した国際条約というものは尊重して忠実に順守していかなければならぬと思うわけでございます。平和条約によりまして三権をアメリカに認めました以上は、あなたが冒頭にも申されましたとおり、アメリカ側に責任があるわけでございまして、したがって、事アメリカ側の施政権に抵触することにつきましては慎重を要するという考えを私は申し上げたわけでございます。これはきわめて消極的であり弱腰ではないかという御批判があろうかと思いますけれども、私どもは決してそう思っていないわけでございます。一たん成立いたしました条約にあくまでも折り目正しく忠実であることが、私は、日本の信用を増し、特に対米信用を増すことであって、それによって沖繩政策の実行というものを容易にし、スムーズにしていく道であると思っておるからでございます。
  205. 野原覺

    ○野原(覺)委員 西ドイツのアデナウアー政府はベルリンの代表に議席を与えておりますね。外務大臣承知のように、西ベルリンは東独の中にある。しかしながら、西ドイツの領土だ、そうして西ドイツの国民だとはっきり言っておる。これは東独の人についてもいま疑義がありますけれども、西ベルリンについてはそうだ。しかも、西ベルリンはアメリカとフランスとイギリス三国の施政権が行なわれておる。共同管理なんだ。沖繩と同じじゃないか。沖繩はアメリカ一国の施政権。西ベルリンは三国の施政権だ。ところが、ベルリンの代表は西ドイツの下院において二十二名、上院において四名、かつては上院議長にベルリンの代表がついておる。同じじゃありませんか。ベルリンの場合と沖繩の場合と違うのですか。あなたの見解を承りたい。
  206. 大平正芳

    大平国務大臣 西ベルリンの代表の国会への参加の問題につきましてとやかく論評を差し控えますが、いま、沖繩の国会参加につきましては、施政権がアメリカにある、それを認めておるという前提に立ちまして、日本側としてはそういう前提で慎重に吟味すべき問題だと思っておるわけでございまして、政府がこれに対して結論を出しておるわけではございません。
  207. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういうところが具体的に言って沖繩に対して冷淡ですよ。徹底した交渉一つろくすっぽやらないで、そうして、一九六一年でございましたか、琉球の立法院が決議をして、内閣総理大臣と衆議院議長に持って来たのです。議席をほしい、ベルリン同様に扱ってくれとお願いに来た。それも政府はほうっております。そういうことがあるなら、なぜ政府は国会に呼びかけないのです。あなた方が呼びかけたことを私は聞いたことがない。もちろん、国会の選挙特別委員会では、選挙別表の中でこれは考えようじゃないかということが与野党の有志の議員で出たことはある。自治庁の長官が閣議で発言をして、この点については考えなければいかぬと言ったら、閣議は了解をして、今後の検討に資しようと言ったきり、二年たってほうっておるのです。やればできるのですよ。これはアメリカは文句を言いませんよ。アメリカが文句を言いましたか。アメリカが文句を言ったら、ベルリンのことを言ってやりなさい。アメリカがちっとでも文句を言うと、あなた方びくびくするのでしょう。ベルリンはどうなんだ、こう言ったらどうですか。ベルリンは認めているじゃないか、なぜ日本の沖繩に議席を与えて悪いのだと、たまには開き直ったらどうですか。一つも自主性がないでしょう。  自主性がないといえば、これは沖繩の問題で最近あったことで外務大臣承知でしょう。沖繩の中学生がこの二月二十八日にアメリカのトラックにひき殺されました。青信号で横断歩道を渡っておったのをアメリカのトラックがひき殺した。そうして、学友がみな青信号でございましたと証言をした。ひき殺したアメリカの上等兵は法廷で何と言ったか。太陽の光で青か赤かわかりませんでした、こう言った。つまり、青か赤かわからなかったのに私は車を走らせました、こう証言したものを、アメリカの軍法会議はこの上等兵を無罪にしたじゃありませんか。そこで、沖繩の学校の校長先生、教職員会の人々、PTAの人々、日ごろじっとおとなしい人々が、たまりかねて、三千名集まってデモをやり、抗議集会を開いて、沖繩人を石ころと思っておるかと言っていま現実に騒いでおるじゃありませんか。これは総務長官よく御承知だ。法務委員会でわが党の赤松議員が二時間にわたってこれは追及しておる。このことに対して、総務長官は、資料が来ない、こう言われた。資料が来ないから手が出ないと言われたのだが、その後資料は来ましたか。そして、その資料が来たならば、さっそく外務省に渡して、外務省は、日本人にあったできごとでございますから、日本政府が保護してやらずにだれが保護しますか。これはさっそく外交交渉すべきなのです。総務長官、資料は来ましたか。
  208. 徳安實藏

    徳安政府委員 この事件が非常に大きくなりましてから、総理府におきましても、向こうから別に報告はございませんでしたけれども、伏せておくわけにまいりませんので、これは外交関係でございますから外務省にお願いをいたしまして、その裁判の経過、判決文でありますが、こういうものを参考にいただきたいという交渉をしていただきました。外務省でもよく御理解願いまして折衝をしていただいたのでありますが、昨日、これは軍事裁判であるからそうしたものは外部には出せないのだという通知が外務省を通じて私どものほうに参りました。残念ながら、そうした関係で、裁判の記録なりあるいは判決文等をちょうだいすることができなかったのであります。これは昨日のことでございますので、そこで、ただいま関係省でこの問題について協議をいたしておる状態でございます。
  209. 野原覺

    ○野原(覺)委員 外務大臣お尋ねしますが、これはどうしますか。抗議をいたしますか。取り上げますか。それとも泣き寝入りいたしますか。いかがですか。
  210. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、施政権が先方にございまして、先方の制度として軍法会議というものが認められて、そこにおける審理の経過を逐一もらうことはできないということでございまして、この段階で、先方がかかる資料を日本側ばかりて、なく外部に出せないということがはっきりいたしました以上、その前提に立ちましていかにすべきか、とくと考えてみっつある段階でございます。と申しますのは、私どものほうも沖繩に官憲が出ておりますし、アメリカとの間には随時話し合いの場を持っておりますので、やかましい問題としてではなく、事実上の問題としてどのように接触してまいるか、考えてみたいといま思っております。
  211. 野原覺

    ○野原(覺)委員 アメリカの施政権がありましょうとも、沖繩は日本の領土、沖繩の人は日本の国民、これはアメリカも認めておる。とすれば、日本の国民である沖繩の人々の人権が侵害をされ、命がむちゃくちゃに扱われておるということに対しては、日本政府が保護してやらねばならぬ責任があると思う。これはいかがですか。外交保護権というものがある。外国における日本人すら日本政府は保護するのでしょう。沖繩は外国ではありません。日本の領土ですよ。ただ施政権が行なわれていないだけです。日本政府に保護する責任があると思いますが、外務大臣、いかがですか。
  212. 大平正芳

    大平国務大臣 われわれは同胞としてあらゆる限りの措置を講じてまいるのは当然のことと思います。
  213. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この問題は真剣に取り上げてもらいたいと思うのです。これだけじゃないのです。沖繩においては非常に人権が侵害をされて塗炭の苦しみに置かれておるのです。日本の外務省が真剣にこれを取り上げて、直ちに外交交渉して抗議なり損害賠償の要求なりすべきなんです。これは当然のことであります。  時間がありませんから労働大臣にお尋ねをいたしますが、ILOの八十七号の批准問題であります。ILOの八十七号につきましては、私は、もうこの時点におきまして、ほんとうに円満に円滑に国会は批准をしなければならぬと思う。自民党が多数決で事を処理するのではなくて、十四回も世界の舞台で恥をさらしてきた八十七号で、池田総理も何回にわたってこれは批准するということを内外に言明しておることでもございますから、円滑に労働者側と政府側が話し合いをして批准ができるようにしなければならない。もしそうでなければ、また片一方が提訴をする、こういうことになろうかと思うのでございますが、労働大臣の所見を承りたいと思うのであります。
  214. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府といたしましては、三月二日に条約批准承認案件及び関係法案を国会に提出してあります。その国会における審議の取り扱い等につきまして政党間の交渉が行なわれておりますことは周知のところでありまして、私も承知をいたしておるのでございます。しかしながら、問題は国会の問題となっておりまするので、折衝の内容等の立ち入ったことにつきましては、私といたしましては関知すべき立場にはないわけでございますが、お述べになりましたるごとく、この際この案件が一日も早く審議の場にのぼり、かつ政党の間の円満な話し合いによりまして処理されることを心から熱望いたしておる次第でございます。
  215. 野原覺

    ○野原(覺)委員 労働大臣のただいまの御言明は、与野党がよく話し合いをして円満に円滑に批准されることが望ましい、こういうことであろうかと思うのであります。  そこで、私は端的にお尋ねをいたしますが、いま与野党の非公式折衝というものが行なわれておるのです。そこで、自民党のほうでは倉石さんなり斎藤さんが窓口になっておりますし、私どものところではILO特別委員会の河野さんが窓口になって、何とかして円滑に批准できないかと非常な苦労をしておるのであります。そこで、私ども考えでは、与党の代表であるこれらの人々は、これは政府の労働大臣であるあなたと話し合いをした上でいろいろな具体的なことを持ち出されておると理解をしておりますが、この辺はいかがですか。
  216. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほども申し上げましたるごとく、問題はいま国会内の問題になっておるのでございまして、政府といたしましては、原案を提出いたしましたる立場から、その政府提出の原案を基礎にしてこれをいかに処理されるかということのお話し合いでございますから、したがいまして、内容につきましては、時々お話を承っておる点もあり、また、承っておらない点もございますが、しかし、政府といたしましては、この折衝がすみやかに終わり、そして話し合いによってまとまりました線が出てまいりました場合においてはできるだけこれを尊重いたしまして、その線でお取りまとめを願いたい、かような気持ちでおるわけでございます。
  217. 野原覺

    ○野原(覺)委員 労働大臣なかなか慎重でございますけれども、あなたは当初円滑なる批准ということをお認めになっておるのでありますから、与野党の話し合いというものは尊重されたほうがよろしい。あなたは政府の原案を出したからといって固執をされておりますというと、これまた八十七号の批准はできない。醜を天下にさらします。このことだけ私は申し上げておきます。  防衛庁長官にお伺いいたしますが、アメリカは、ドル防衛の強化と、それひらアメリカの会計検査院の勧告によって、駐留軍労働者の首切りをまたやろう、こういうことが新聞で報道されておりますが、事実でございますか。承っておきます。
  218. 林一夫

    ○林(一)政府委員 最近米空軍省から在日米空軍に対しまして千五百名程度の人員整理の可能性を検討するようにという指令が出されておることは事実でございます。この点について米軍に照会いたしましたところ、目下検討中でございまして、まだその結果は出ていないということでございます。
  219. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あなたは、五月七日の内閣委員会、それから五月十四日の参議院の社会労働委員会で、そういうことは事実ではない、そういう計画はない、こう答弁をしておりますが、いまの答弁はいささか違いますね。どうなっていますか。
  220. 林一夫

    ○林(一)政府委員 社労で答弁いたしましたときの情報とただいま私が申しました米軍からの指令とは別の問題でございまして、私が申しましたのは、その後に米本国から在日米空軍に指令されたところでございます。そのことについて説明を申し上げておるのであります。そのことにつきまして米軍に照会いたしましたところ、そのような指令があったということは事実であるが、その問題については検討中であって、まだ結果は出していないということでございます。
  221. 野原覺

    ○野原(覺)委員 駐留軍労務者というのは、これは、林長官、防衛庁当局はよく御承知のように、労働大臣も関係がございますからよくお聞き願いたいのでありますけれども、これはたいへん気の毒な方々です。終戦直後は二十数万人おったのが、今日は六万五千人しかいない。十何万人は首切られておる。  そこで、私はお聞きいたしますが、この駐留軍労務者の雇い主はだれですか。アメリカですか、日本政府ですか。
  222. 林一夫

    ○林(一)政府委員 雇用主は日本政府でございます。
  223. 野原覺

    ○野原(覺)委員 日本政府といたしますと、このたくさんの人々が首切られるということに対して、これは傍観はできないと思う。政府は一体どういう対策を講ずるつもりでございますか。
  224. 林一夫

    ○林(一)政府委員 駐留軍従業員の人員整理につきましては、相当多量にある場合においては、防衛施設庁のほうに事前連絡があるのであります。事前連絡がありますので、人員整理要求書が発出する前におきましても、配置転換等につきまして米軍と協議しまして、その整理数の圧縮に努力いたしております。その人員整理要求書が出されてからも、もちろんこれは米軍と十分協議をしまして、配置転換あるいは転任というようなことによりまして、この実出血、整理数を圧縮しておりまして、相当の実績をあげております。今後もそのようなことでこの整理数の圧縮に十分努力をいたしたい、こういうふうに考えております。
  225. 野原覺

    ○野原(覺)委員 圧縮することに自主的に努力されることは日本政府としては当然のことであります。ところが、努力してでもなお首切られた者に対してどうなさいますか。これは自分の意思によってやめたのではない。もしこの労務者が駐留軍の仕事に就労しないということであれば、困るのは日本政府なんです。アメリカの駐留軍なんです。必要なときにはさんざん使っておきながら、もう必要でなくなれば、やめてしまえ、首切りっぱなし、こういうことは雇い主である政府としてはきわめて冷淡だろうと私どもは思う。石炭産業の労働者に対してはああいう対策を講じたのです。ある意味においては石炭産業労働者よりもこれはもっとあたたかい施策の手を伸べてやらなければならぬのではないかと思いますが、いかがですか。
  226. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま申し上げましたように、この人員整理につきましては、米軍と協議しまして、配置転換あるいは転任というようなことによりまして整理人員の圧縮に努力いたしておるのでございまして、やむを得ず整理された場合においては、整理された者についての就職、それらにつきまして、要するに離職者に対する対策を十分講じておるのでございます。これは、御承知のように、離職者に対する臨時措置法というものがございまして、これを中心としまして、これに基づきまして現在中央並びに各地方に離職者対策協議会というものがございます。これが中心となりまして、関係各省が協力しまして、就職のあっせんをするとか、あるいは企業組合の育成をするとか、あらゆる方法を講じて離職者対策の万全を期しておるという次第でございます。
  227. 野原覺

    ○野原(覺)委員 その法律があることは私も知っております。しかし、林さん、この法律は、あなたのいま述べたように、職を失ったあとの緊急措置なんです。再就職の保障にならない。再雇用の保障にならない。したがって、私は、再雇用のための、あるいはそれを保障するところの法案というものを、この際防衛庁でも考えておく必要があろうかと思う。これは検討される必要は確かにありますよ。石炭産業労働者に対してもああいうことをしてきたのですからね。その点はいかがですか。
  228. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま申しましたように、この人員整理の整理者の数を圧縮するということがまず大事なことでございますので、この整理数の圧縮というものに努力しております。やむなく離職、退職された方に対しては、就職あっせんということに力を入れておりまして、それは、ただいま申しましたように、離職者対策協議会というものが中央、地方にございまして、これが中心になりまして、各省において十分協力しまして、就職のあっせんあるいは企業組合の育成ということに努力をいたしておる次第でございます。
  229. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この問題は相当こまかい問題でもございますから、これは内閣委員会あるいは社労委員会等で私はお尋ねをしたいと思うのであります。  最後に、私は荒木文部大臣にお伺いいたします。  荒木文部大臣は、近ごろ、つい最近でございますが、教育委員長と教育長の合同総会においてお話しをされました。新聞によりますと、日教組が——あなたの話すときはいつも日教組です。日教組が教育研究集会というのを持っております。これは世界でない集会です。組合の大会ではない。教育を研究するところの実に画期的な集会を十年ばかりずっと持ってきたのでございますが、この日教組の教研集会は教育制度に対する冒涜行為であって断じて許すことはできないと、驚くべき発言をされておるようでありますが、これは事実でございますか。新聞の報道でございますから、あるいは間違っておるかもわからない。いかがですか。
  230. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。  事実でございます。
  231. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この教育研究集会が許しがたい冒涜行為だと言われたことが事実だとすれば、その理由と根拠をお教え願いたい。
  232. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。  日教組は毎年教研集会を開いております。全国大会で教研集会を開くことをきめまして、それに基づいて開催をいたしておるようであります。その日教組の教研集会は、日教組みずからが言っておりますように、文部省の定めた教育課程を骨抜きにするために教育課程の自主編成をやるのだ、そのことのための教研集会だとみずから申しております。その前提に立って、そういう意味の教研集会が適当ではない、こういう意味のことを私は申したつもりでおります。
  233. 野原覺

    ○野原(覺)委員 文部大臣、あなたはことばを慎重にお使いなさい。あとで失言取り消しと言っては困りますよ。教育課程というのは、今日の法規ではあなたが定めるのですか。文部大臣の定めた教育課程云々とあなたは言われましたが、教育課程をあなたが定める権利がどこに与えられておりますか。
  234. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 新教育課程は、野原さんも御承知のように、小学校が一昨年、中学が昨年、高等学校が今年、文部省が定めました課程に従って教育が行なわれるようになったわけであります。その根拠は、学校教育法第二十条以下に、教科に関することは文部大臣がこれを定めなければならないという権限と責任が明記されております。それに根拠を持って文部大臣が定めておると了解しております。
  235. 野原覺

    ○野原(覺)委員 読んでください。あなたは学校教育法の二十条以下に明記していると言うけれども、その条文を取り寄せてあなた読んでみてください。そんなことは書いてない。
  236. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 ちょっと手元に持ち合わせがございませんので、政府委員または説明員から朗読させます。
  237. 野原覺

    ○野原(覺)委員 いや、あなたが読んでください。待っています。
  238. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 学校教育法第二十条、「小学校の教科に関する事項は、第十七条及び第十八条の規定に従い、監督庁が、これを定める。」
  239. 野原覺

    ○野原(覺)委員 小学校の教科に関する事項ですよ。小学校の教育課程とは違いますよ。あなたは教育上の用語を知っていますか。教育委員長の総会なり教育長の総会でばかなことをおっしゃって、あなたは笑われますよ。教育課程というのと、学校教育法の二十条に書いておる教科に関する事項というのは、用語の中身が全然違うのですよ。しかも、監督庁がこれを定めるとしておるのです。小学校における教科に関する事項を定める監督庁は文部大臣じゃありませんよ。そんな認識をしておって、あなたは三年間文部大臣をつとめてきたのですか。これは教育委員会ですよ。あなたは国立学校については監督庁だ。しかし、地方公務員であるところの小中学校の教員あるいは都道府県立の高等学校の教員に対する監督庁じゃありませんよ。いかがですか。
  240. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど朗読しました学校教育法第二十条、これは小学校だけでありますが、同じ条項が二十条以下に、中学校等についてもございます。それを受けまして、学校教育法施行規則第二十五条、読んでみます。「小学校の教育課程については、この節に定めるもののほか、教育課程の基準として文部大臣が別に公示する小学校学習指導要領によるものとする。」とございます。さらに、二十条及びそれと同趣旨の中学等に関します文部大臣の権限の根拠でありますが、その監督庁は、同じく学校教育法第百六条に、第二十条その他例示しておりますが、第二十条の監督庁は当分の間これを文部大臣とするとございます。
  241. 野原覺

    ○野原(覺)委員 小学校における監督庁、それは当分の間は文部大臣とする、こう言いますけれども、それは教育課程じゃない。あなたは教育課程のもとになるのは学習指導要領だと言う。その学習指導要領は文部大臣が定めることになっておりますけれども、小学校の教育課程は校長が編成するのです。編成権は校長にあるのです。あなたが全国津々浦々の教育課程を編成することはできやしません。教育課程というものは、大都会の子供にはどういう課程で教えたらよいか、農村はどうか、それぞれの学校の地域性、特殊性、そういうものを加味して編成しなければならぬから、校長に編成権を与えておるのです。私はここに福島県の管理規則を持ってきております。福島県だけじゃない。東京都もそう。大阪もそう。学校管理規則というものを都道府県の教育委員会が定めて、教科課程というものは校長がこれを編成するということにしておるのです。いいですか。そういうことをも確かめないで、あなたは文部大臣が教育課程を定める、これを日教組が骨抜きにすると言う。何をもって骨抜きにするという論拠にされるのか、これはわかりませんが、時間がないから、いずれこのことは文教委員会で徹底的に究明します。あなたの方も研究しておいてください。  そこで、私は一点だけあなたに申し上げておきますが、教育公務員特例法の十九条がある。教育公務員特例法の十九条によりますと、教員は研究と修養につとめなければならぬと書いておるのです。だから、教員たちが研究と修養につとめるのは当然でございましょう。日教組は教員の団体である。教員の団体である日教組が研究と修養につとめるために教研集会を持って何がいけないのですか。教育公務員特例法の十九条の精神から言うならば、日教組の教研集会は違法どころか、奨励されなければならぬじゃありませんか。いかがですか、この点。
  242. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。  その前に、先ほど法律の条文を朗読をいたしましたが、すなわち、学校教育法第二十条以下の関係条項でございますが、たとえば第二十条にいうところの教科に関する事項ということには教育課程を含むということは、学者等も一致する見解だと私は承知をいたしております。むろん、いま野原さん御指摘のとおり、小中学校の教育は、特に各地域ごとの地方分権のたてまえでやるのだという基本的なたてまえでございます意味合いにおいて、御指摘のとおり、地方の教育委員会もやはり教育課程の編成について関与することは当然でもありますし、根拠規定もございます。また、学校長が教育課程を編成するという段階もむろんあることを承知いたします。私が申し上げましたのは、およそ義務教育ないしは後期中等教育については、基本的な教科に関すること、その中にむろん教育課程を含む意味合いにおいて、基本的なことは、全国的なことは文部大臣がこれを定めねばならないという権限と責任が与えられている趣旨を申し上げたのであります。そこで、いま御指摘のように、教育公務員特例法にも明記してあることも私は承知いたしております。それ以前に、地方公務員法自体にも、公務員は勉強しなければならぬ、研修に努力しなければならぬということがございます。教職員関係の特例法においてもさらに念を押して、いま御指摘のような規定があることも承知いたします。ですから、そのことは妨げてはならないし、奨励せねばならぬという趣旨も、教育委員会にも課せられておる。その趣旨は、文部大臣に対しても当然課せられておる趣旨だと了解いたします。だから、その限りにおいて、野原さんと私と考え一つも食い違っていない。ただし職員団体たる教員組合というものは、地方公務員法第五十五条以下に明記しておりますとおり、自分たちの勤務条件の維持改善について認められた団体であって、教研活動をするための団体として認められているのじゃない。これはきわめて明瞭であります。ただし事実問題として、教研活動をすることそれ自体を不当なりと私が申し上げるのじゃない。ですけれども、冒頭にお答え申し上げましたとおり、全国大会で定め、かつまた教研集会においても明らかなとおり、文部大臣、文部省が定めた教育課程を骨抜きにするのだという明瞭なる意思を持ってやっておるから、その考え方に立つところの教研集会というものは適当じゃないということを私は警告いたしたつもりでおります。   〔「名答」「明快」と呼ぶ者もあり〕
  243. 野原覺

    ○野原(覺)委員 きわめて明快でないのです。私はここでもう一度お尋ねいたしますが、あなたの考えに迎合しないから、言いかえるならば、文部省の考え方についてこないからけしからぬというのですか。文部省の考えていることを骨抜きにすると言いますけれども、教員というものは、憲法によって研究の自由が与えられておる。文部省の考えとは何か、文部官僚の見解じゃありませんか。机の前にすわって、官僚がいろいろな教育上の考えを出した、それが文部省の見解じゃありませんか。現場の教育者というものは、一人一人の子供に当たって、生きた考え方を持っておる。それをお互いが出し合って、文部省の考えたこの行き方は正しいのかどうかといって研究することが、なぜいかぬのですか。あなたは、文部省から出されたことを金科玉条視して、ついてきたら文句はない。しかしながら文部省がやっていることについて文句ばかり言う、これはいけない、あれはいけないと、さんざん文句ばかり言うからいけないのだ、それが骨抜きだ、こういう考えであるとするならば、あなたは大きな憲法違反と法律違反を犯すのですよ。あなたは教育の官僚支配と政党支配を認めることになりますよ。あなたは自民党の党員です。文部大臣です。だからあなたの考え方についてくる教員は、あなたに言わせれば、優秀教員だ。文部省の官僚の考え考え方を支持してくるところの教員は文句はない。そのための研究会ならよろしいというならば、そんな研究会なら持たぬほうがましです。何のためにそんな研究会を持たなければなりませんか。日本の憲法というものは、学問と研究の自由を与えておる。小中学校の教員にもある。しかもこれらの人々は、自分の子供たちを対象にして、いろいろな教育上のとうとい体験を持っておる。文部省から方針が出る、この方針について意見をかわす、当然のことじゃありませんか。それが骨抜きだ、こういうような考え方をお持ちになることは、これはたいへんなことであります。あなたは憲法違反と教育基本法違反を犯すことになりますよ。だからこういうことは、教育委員長の集会なり教育長の総会でお話をする場合には、もっと慎重にやってもらいたい。とにかくあなたは失言を連続される。お聞きいたしますと、参議院の文教委員会では、ついに最近あなたは陳謝をしたというじゃありませんか。あちらこちらで自民党の代議士諸君にせがまれて、北海道から九州から、至るところ日教組の悪口を演説して回った。その演説して回った言葉が速記になって、この速記を参議院の文教委員会が問題にして、あなたは陳謝をしたというじゃありませんか。文部大臣が陳謝したということは、自民党の議員の皆さん方は知っておりますかね。陳謝したというのだ。私は速記を見たのです。だから、あなたの言われることは勇ましくてはなはだけっこうだけれども、あとで陳謝をしないように、少しは憲法なり法律なりを御勉強されて今後御発言をされるように、私はこのことをあなたに警告をいたしまして、質問を終わります。
  244. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 御警告はありがたくちょうだいをいたします。ところで、私が私の主観で何かしらん言いがかりを言っておるような意味の御発言でございましたが、そういうつもりは毛頭ございません。また文部官僚がほしいままに勝手なことを言っておるということも、むろんございません。憲法違反ないしは教育基本法違反的な趣旨、意味があるとするならば、日教組がそうであります。私が申し上げておりますことは、むろん学問の自由、研究の自由が一般にございますけれども、特に義務教育課程に従事するところの教師は、法律の範囲内において教研の自由があるということは言わずして明らかであります。その法律とは何だというのが、先刻御質問に応じましてお答えしましたとおり、教育課程を含んだ意味において、教科に関することは文部大臣が国民に責任を負う立場において定めろという権限と責任を与えられておる。だから学習指導要領というものが定められておる。先刻朗読いたしましたように、あの施行規則に定めるもの以外、教育課程については学習指導要領に基づいてやらねばならないという趣旨もきわめて明瞭でございます。ですから、主権者たる国民に対して責任を持つ立場から定められておることは、教師は従わねばならない。その基本線の範囲内において研修の自由があるというふうに私は解しておるのでありまして、このことは私の主観でなしに、日本の教育制度、教育基本法ないしは法律が定めておる線そのものが物語っておることを私は申し上げておるつもりであります。
  245. 野原覺

    ○野原(覺)委員 文部大臣は私が答弁も要求をしないのに、委員長答弁の機会を与えたのであります。だから、私はもう一度発言をいたします。
  246. 塚原俊郎

    塚原委員長 野原君にいま一回発言を許します。
  247. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あなたと、ここでいろいろなことばのやりとりで時間を超過して、同僚議員に迷惑をかけたくございませんけれども、あなたは国立学校の任命権者です。国立学校の任命権者は教育公務員特例法の二十条によって研究の機会と設備一切を提供しなければならぬということになっておる。あなたは東京大学に、大阪大学に、国立学校の小学校にどれだけの研究の機会を今日まで提供してきましたか。あなたは特例法違反をやっておるのですよ。あなた方が研究の機会を提供しないから、教員諸君が金を出し合って国語を研究し、算数を研究し、全国の教師が、民主教育のあり方を研究しておるのです。それにあなたがけちをつけておる。私は研究というものは自主的なものでなければならぬと思います。これは自民党の皆さんも考えていただきたいのです。官側が与えた研究は、ほんとうの研究じゃないと思うのです。それが教育公務員特例法の精神なんです。教員は研究と修養につとめなければならぬ、それは自主的な研究でなければならぬ。ところが、大蔵大臣、あなたは五千万円の研究予算を一これは教育研究費として文部省は計上しておる。その五千万円の予算の使い方というものに問題があるのです。荒木文政に協力するところの団体以外は金を出さぬ。これはたいへんなことですよ。憲法が研究の自由を認め、それから自主的研究というものを法律で認めておるのに、自分の気に食わないところの研究団体、社会教育団体には、国会が通したところの金をあなたは出さぬという。あなたが言いたければ、幾らでも私は言いますから、やりなさい。やってよろしい。今夜、夜を徹してでもやりますよ、望むところですから。だから委員長、文部大臣が答弁がなければ、これで終わります。しかし文部大臣が言いたければ、幾らでも材料はありますから、私は出します。
  248. 塚原俊郎

    塚原委員長 以上をもちまして質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  249. 塚原俊郎

    塚原委員長 この際、川俣清音君外十五名から昭和三十八年度予算の補正を求める動議が提出いたされました。  これより本動議を議題とし、議事を進めます。
  250. 塚原俊郎

    塚原委員長 まず動議の趣旨について提出者の説明を求めます。川村継義君。
  251. 川村継義

    ○川村(継)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、昭和三十八年度予算の補正を求める動議の提案につき簡単に趣旨説明を申し述べたいと思います。  現在、昭和三十八年度予算が成立して以来、まだようやく二カ月を経過しただけであります。だが、この間に、あるいは公共企業体職員給与の引き上げについての仲裁裁定が行なわれ、あるいは旋風やひょう害、長雨などの災害が相次いで起こり、いずれも緊急に新たなる予算措置を必要としております。またそれに加え、本来、当初予算で当然政府が豪雪災害対策、石炭離職者対策と産炭地振興対策、高校急増対策等につき、万全の予算を計上すべきであったのにもかかわらず、それを怠ったために、いま緊急に予算措置をとらねばならなくなっている問題も続出しております。これらのものは、いずれも一刻も放置できないものでありまして、政府はすみやかに三十八年度予算の補正を行ない、これを国会に提出すべきであります。  なおまた、この際申し添えておくべきは、最近の物価値上がりの速度はまことに急速であり、国民生活を脅かすことおびただしいものがあるということであります。これに対しては、政府は公共料金の引き上げを防止することはもとより、都市ガス、NHKの料金等は、積極的に引き下げる等、物価安定対策をすみやかに講ずべきであります。この物価対策を強く要望して、以下補正要求の要綱について御説明を申し上げます。  私どもの要求いたします補正予算の要綱は、次のようなものであります。  第一は、本年の豪雪被害対策であります。本年の異常寒波と異常豪雪により、北海道、東北、北陸地方はもとより、実に九州、四国地方に至るまで大きな被害を受けたのであります。これに対しては、道路、鉄道軌道、公共施設や一般家屋の除雪、防雪の費用に対し、国の補助を行なわなければなりません。なだれ等による死傷者に対し、罹災者援護法の立法化により弔慰金、見舞金、医療費、生活扶助料を支給し、また生活資金の無利子貸し付けを行なわねばなりません。豪雪、風水害、寒波による果樹、茶、桑等の永年作物の災害復旧に対し、長期低利の融資を行なわねばなりません。また、例年の雪害に対する対策を根本的に確立するため、雪害対策総合研究機関を設立すべきであります。このため、一般会計で約百五十億、財政投融資で約五十億の資金が必要であります。  第二は、去る五月二十二日、群馬、埼玉、栃木の三県を襲った旋風及び降ひょうの被害対策であります。ひょうにより文字どおり農作物は全滅し、あわせて旋風により家屋倒壊は六百数十戸に及び、死傷者ば約二百名に達しております。これに対し、まず農業経営の立ち直りのため、桑輸送費、夏秋蚕用蚕種代金、桑樹勢回復用肥料、桑病虫害防除薬剤費、蔬菜種苗費及びビニールハウス、畜舎、作業場の復旧費等に国の助成が必要であります。あわせて、農業共済金を早期に支払うとともに、天災融資法を発動し、また減収分の補てん、住宅復旧費等を含む経営再建費用の融資のため、自創資金のワクを拡大すべきであります。しかして、経営再建により被害農家が再び農業所得をあげることのできるまでの間のつなぎとして、世帯更生資金、生業資金の貸し付けを拡大すべきであります。旋風による家屋倒壊農家には、新築、補修のための住宅金融公庫融資を行なうべきであります。なお、被害を受けた自治体については、将来災害対策費を特別交付税で完全補てんすることを決定するとともに、当面普通交付税の繰り上げ支給、税収減による歳入欠陥を補うため財政補てん債の起債ワクを認め、国の財政資金をもってこれを引き受けることが必要であります。以上の対策のため、一般会計で約五億、財政投融資で約六億の資金が必要であります。  第三は、四月、五月にわたり九州、四国、中国、近畿地方を襲った雨害により麦、なたね等の農作物が大被害を受けていることに対する対策であります。被害農家に対しては、農業共済金を早期に概算払いするとともに、天災融資法を発動し、及び自創資金のワク拡大が必要であります。次の農業所得のあがるまでの間の生業資金貸し付けが必要であります。また被害麦を等外下の規格で政府買い上げ対象に含めることがどうしても必要であり、麦価については減収加算を行なうべきであります。また被害農家の次期植えつけのため麦、なたねの種子をあっせんし、その輸送費、事務費を補助すべきであります。以上の対策のため一般会計で約三億、財政投融資で約二十億の資金が必要であります。  関東三県に及んだ旋風、降ひょう被害の惨状は、さきに本会議の緊急質問において明らかにされたところでありますが、九州を中心としてほとんど西日本全域にわたる長雨による農作物の悲惨な被害は、有史以来のものだといわれています。農民は言うに及ばず、関係団体はぼう然自失、その対策に苦悩しているのが現状であります。政府は、これらの農業災害に対して被害額の収集及び被害状況の捕捉がいまだ完全でないという理由で、この現実を無視することは許されないと思います。早急に対処して、適切な対策を樹立することこそがその責任でなければなりません。さきに政府は、災害対策基本法を制定いたしました。その目的、制定の趣旨に見ても、当然対処すべきその対策は樹立されておらねばならないところでありますが、天候異変による農業災害だという理由で、その応急対策を等閑視することは許されません。災害を受けた罹災者が、不幸なことでも、高額所得者であれば、その精神的打撃は別としても、数十万の被害額でも優に回復できる力を保持することができましょうが、農業所得三十万そこそこの農民大衆にとっては、たとえ数万円の農作物被害であっても、生活を破壊する一大恐怖であります。したがってこの際、ここに政府が適切なる対策と財政金融上の措置を早急に決定するということは、被災農民に希望と安定を、働く勇気と生産への意欲を与え得る絶好の機会であると確信して、必要最小限度の補正額を計上し、要求するものであります。  第四は、石炭対策であります。すでに周知のとおり、有沢調査団答申をすら上回る速度で炭鉱労働者の首切りが進んでいます。これに対し、離職者の職業訓練を大幅に増員しなければなりません。雇用促進事業団への国の出資を行ない、離職者の住宅五千戸の建設、離職者の自立営業資金として一口五十万円の長期低利の貸し付け、炭鉱地帯の関連中小企業への売り掛け代金弁済、廃業手当、雇用奨励金、住宅確保奨励金、職業訓練手当の支給等を行なわねばなりません。また雇用促進事業団の行なう寡婦、未亡人対策に対して国の補助を行なうことも必要であり、産炭地振興のためには産炭地振興事業団へ出資して、工場の新設、拡充等のための土地造成、設備資金の貸し付けを行なうべきであります。そのほか、響灘埋め立て事業十カ年計画の第一年度に着手すべきであります。また鉱害復旧事業費も増額が必要であります。以上の対策のため、一般会計で約百四十三億、財政投融資で約二十億の資金が必要であります。  第五は、高校急増対策であります。高校急増対策については、高校教育の緊要性にかんがみ、政府施策の不備をつとにわが党が指摘してきたところでありますが、本年度高校進学率は、政府の見通し六一・八%を大きく上回り、六六・五%に達しております。それは公立高校においても、特に私立高校においていわゆるすし詰め学級収容の姿をあらわしているものであります。これは教育指導上重大な問題であります。したがって、高校対策計画の欠陥を是正するとともに、高校進学者の急増に対し、緊急に公立、私立の高校を増設し、その校地取得、校舎建設に国庫補助を増額するとともに、関係都道府県へ交付税の増額、起債ワクの拡大を行なわなければなりません。私立高校へは融資の拡大も必要であります。この対策のため、一般会計で約百七十七億、財政投融資で約百十八億の資金が必要であります。  第六は、三公社五現業職員の給与であります。いわゆる公労協関係給与についての仲裁裁定を完全実施するため、各特別会計や政府関係機関で万全の努力を行なうほか、やはり一般会計から約百二億の資金手当てが必要であります。  以上の各項目を合計いたしまして、一般会計で約五百八十億、財政投融資で約二百十二億の資金が必要であります。そしてこの資金は、一般会計においては、防衛費及びその他反動的諸機関の経費を削減して充当すべきであり、財政投融資においては、資金運用部資金、産投会計資金等の運用を組みかえて充当すべきであります。  言うまでもなく防衛費という経費そのものが、たびたび指摘しているように、そもそも憲法違反の経費であります。しかもその中で、たとえばF104戦闘機のごときは、その機種採用にあたって幾多の汚職の疑いを持たれたものであり、また最近は、その国産化の結果が相次いで事故を引き起こし、貴重な人命を喪失しております。これではわが国の防衛とは名のみであり、実質は日本のパイロットの命を犠牲にしてアメリカのロッキード社の利益に奉仕しているにすぎません。しかもその費用は、日本国民の税金をつぎ込んでいるのであります。かくのごときは全くナンセンスであり、一刻もこれを放置することはできません。政府は、直ちにF104戦闘機の国産化を打ち切り、それらの経費節約分を財源として、以上に申し述べたような各種の予算補正の措置をとり、これを国会に提出すべきであります。  これが本動議を提案する理由であります。  よろしく慎重御審議の上、すみやかに可決決定されんことを要望し、本案の提案趣旨の説明を終わります。
  252. 塚原俊郎

    塚原委員長 この際、大蔵大臣から発言を求められております。これを許します。田中大蔵大臣
  253. 田中角榮

    田中国務大臣 ただいま豪雪被害対策等の費用に充てるため、昭和三十八年度予算の補正提出要求に関する動議についての御発言がありましたので、この際、一言申し上げます。  豪雪被害、降ひょう等、災害対策につきましては、すでに一部予備費をもってまかなう予定のものもあります。また予備費をもって支出を適当と認めるものにつきましては、調査の結果を待って適切な処置をいたしたいと存じます。     —————————————
  254. 塚原俊郎

    塚原委員長 討論の通告がありますので、これを許します。佐々木良作君。
  255. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 川俣委員外社会党議員提出の昭和三十八年度予算の補正を求める動議は、ただいま御説明がありましたように、第一に豪雪被害対策、第二に旋風及びひょう害対策、第三に長雨災害対策、第四に石炭対策、第五に高校急増対策、第六に三公社五現業の給与費などの追加予算の編成を要求したものでありまして、ただいま大蔵大臣からのお話がありましたけれども、これらはすべて当然の補正予算要求の項目であるばかりでなしに、大体かねてからのわが党、民社党の主張とも一致したものであります。  金額及び期日につきましては、これは必ずしも明示されておりません点、不満ではありますけれども、これはおそらく政府にある予算編成権に敬意を表されたものであろうと考え、私どもは一日も早く政府がこの動議の趣旨に沿った措置をとられんことを強く要望いたしまして、右の動議に賛成の意思を明らかにし、討論にかえます。(拍手)
  256. 塚原俊郎

    塚原委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより川俣清音君外十五名提出の昭和三十八年度予算の編成を求める動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  257. 塚原俊郎

    塚原委員長 起立少数。よって、川俣清音君外十五名提出の動議は否決されました。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十八分散会