○川村(継)
委員 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
昭和三十八年度
予算の補正を求める動議の提案につき簡単に趣旨
説明を申し述べたいと思います。
現在、
昭和三十八年度
予算が成立して以来、まだようやく二カ月を経過しただけであります。だが、この間に、あるいは公共企業体職員給与の引き上げについての仲裁裁定が行なわれ、あるいは旋風やひょう害、長雨などの災害が相次いで起こり、いずれも緊急に新たなる
予算措置を必要としております。またそれに加え、本来、当初
予算で当然
政府が豪雪災害
対策、石炭離職者
対策と産炭地振興
対策、高校急増
対策等につき、万全の
予算を計上すべきであったのにもかかわらず、それを怠ったために、いま緊急に
予算措置をとらねばならなくなっている問題も続出しております。これらのものは、いずれも一刻も放置できないものでありまして、
政府はすみやかに三十八年度
予算の補正を行ない、これを国会に提出すべきであります。
なおまた、この際申し添えておくべきは、最近の
物価値上がりの速度はまことに急速であり、
国民生活を脅かすことおびただしいものがあるということであります。これに対しては、
政府は公共料金の引き上げを防止することはもとより、
都市ガス、NHKの料金等は、積極的に引き下げる等、
物価安定
対策をすみやかに講ずべきであります。この
物価対策を強く要望して、以下補正要求の要綱について御
説明を申し上げます。
私
どもの要求いたします補正
予算の要綱は、次のようなものであります。
第一は、本年の豪雪被害
対策であります。本年の異常寒波と異常豪雪により、北海道、東北、北陸
地方はもとより、実に九州、四国
地方に至るまで大きな被害を受けたのであります。これに対しては、道路、鉄道軌道、公共
施設や一般家屋の除雪、防雪の費用に対し、国の補助を行なわなければなりません。なだれ等による死傷者に対し、罹災者援護法の立法化により弔慰金、見舞金、医療費、
生活扶助料を支給し、また
生活資金の無利子貸し付けを行なわねばなりません。豪雪、風水害、寒波による果樹、茶、桑等の永年作物の災害復旧に対し、長期低利の融資を行なわねばなりません。また、例年の雪害に対する
対策を根本的に確立するため、雪害
対策総合研究機関を設立すべきであります。このため、一般会計で約百五十億、財政投融資で約五十億の資金が必要であります。
第二は、去る五月二十二日、群馬、埼玉、栃木の三県を襲った旋風及び降ひょうの被害
対策であります。ひょうにより文字どおり農作物は全滅し、あわせて旋風により家屋倒壊は六百数十戸に及び、死傷者ば約二百名に達しております。これに対し、まず
農業経営の立ち直りのため、桑輸送費、夏秋蚕用蚕種代金、桑樹勢回復用肥料、桑病虫害防除薬剤費、蔬菜種苗費及びビニールハウス、畜舎、作業場の復旧費等に国の助成が必要であります。あわせて、
農業共済金を早期に支払うとともに、天災融資法を発動し、また減収分の補てん、住宅復旧費等を含む経営再建費用の融資のため、自創資金のワクを拡大すべきであります。しかして、経営再建により被害農家が再び
農業所得をあげることのできるまでの間のつなぎとして、世帯更生資金、生業資金の貸し付けを拡大すべきであります。旋風による家屋倒壊農家には、新築、補修のための住宅金融公庫融資を行なうべきであります。なお、被害を受けた自治体については、将来災害
対策費を特別交付税で完全補てんすることを決定するとともに、当面普通交付税の繰り上げ支給、税収減による歳入欠陥を補うため財政補てん債の起債ワクを認め、国の財政資金をもってこれを引き受けることが必要であります。以上の
対策のため、一般会計で約五億、財政投融資で約六億の資金が必要であります。
第三は、四月、五月にわたり九州、四国、中国、近畿
地方を襲った雨害により麦、なたね等の農作物が大被害を受けていることに対する
対策であります。被害農家に対しては、
農業共済金を早期に概算払いするとともに、天災融資法を発動し、及び自創資金のワク拡大が必要であります。次の
農業所得のあがるまでの間の生業資金貸し付けが必要であります。また被害麦を等外下の規格で
政府買い上げ対象に含めることがどうしても必要であり、麦価については減収加算を行なうべきであります。また被害農家の次期植えつけのため麦、なたねの種子をあっせんし、その輸送費、事務費を補助すべきであります。以上の
対策のため一般会計で約三億、財政投融資で約二十億の資金が必要であります。
関東三県に及んだ旋風、降ひょう被害の惨状は、さきに本
会議の緊急質問において明らかにされたところでありますが、九州を
中心としてほとんど西
日本全域にわたる長雨による農作物の悲惨な被害は、有史以来のものだといわれています。農民は言うに及ばず、
関係団体はぼう然自失、その
対策に苦悩しているのが現状であります。
政府は、これらの
農業災害に対して被害額の収集及び被害状況の捕捉がいまだ完全でないという理由で、この現実を無視することは許されないと思います。早急に対処して、適切な
対策を樹立することこそがその
責任でなければなりません。さきに
政府は、災害
対策基本法を制定いたしました。その目的、制定の趣旨に見ても、当然対処すべきその
対策は樹立されておらねばならないところでありますが、天候異変による
農業災害だという理由で、その応急
対策を等閑視することは許されません。災害を受けた罹災者が、不幸なことでも、高額
所得者であれば、その精神的打撃は別としても、数十万の被害額でも優に回復できる力を保持することができましょうが、
農業所得三十万そこそこの農民大衆にとっては、たとえ数万円の農作物被害であっても、
生活を破壊する一大恐怖であります。したがってこの際、ここに
政府が適切なる
対策と財政金融上の措置を早急に決定するということは、被災農民に希望と安定を、働く勇気と
生産への意欲を与え得る絶好の機会であると確信して、必要最小限度の補正額を計上し、要求するものであります。
第四は、石炭
対策であります。すでに周知のとおり、有沢調査団答申をすら上回る速度で炭鉱労働者の首切りが進んでいます。これに対し、離職者の職業訓練を大幅に増員しなければなりません。雇用促進事業団への国の出資を行ない、離職者の住宅五千戸の建設、離職者の自立営業資金として一口五十万円の長期低利の貸し付け、炭鉱地帯の関連中小企業への売り掛け代金弁済、廃業手当、雇用奨励金、住宅確保奨励金、職業訓練手当の支給等を行なわねばなりません。また雇用促進事業団の行なう寡婦、未亡人
対策に対して国の補助を行なうことも必要であり、産炭地振興のためには産炭地振興事業団へ出資して、工場の新設、拡充等のための土地造成、設備資金の貸し付けを行なうべきであります。そのほか、響灘埋め立て事業十カ年計画の第一年度に着手すべきであります。また鉱害復旧事業費も増額が必要であります。以上の
対策のため、一般会計で約百四十三億、財政投融資で約二十億の資金が必要であります。
第五は、高校急増
対策であります。高校急増
対策については、高校教育の緊要性にかんがみ、
政府施策の不備をつとにわが党が
指摘してきたところでありますが、本年度高校進学率は、
政府の見通し六一・八%を大きく上回り、六六・五%に達しております。それは公立高校においても、特に私立高校においていわゆるすし詰め学級収容の姿をあらわしているものであります。これは教育指導上重大な問題であります。したがって、高校
対策計画の欠陥を是正するとともに、高校進
学者の急増に対し、緊急に公立、私立の高校を増設し、その校地取得、校舎建設に国庫補助を増額するとともに、
関係都道府県へ交付税の増額、起債ワクの拡大を行なわなければなりません。私立高校へは融資の拡大も必要であります。この
対策のため、一般会計で約百七十七億、財政投融資で約百十八億の資金が必要であります。
第六は、三公社五現業職員の給与であります。いわゆる公労協
関係給与についての仲裁裁定を完全
実施するため、各特別会計や
政府関係機関で万全の努力を行なうほか、やはり一般会計から約百二億の資金手当てが必要であります。
以上の各項目を合計いたしまして、一般会計で約五百八十億、財政投融資で約二百十二億の資金が必要であります。そしてこの資金は、一般会計においては、防衛費及びその他反動的諸機関の経費を削減して充当すべきであり、財政投融資においては、資金運用部資金、産投会計資金等の運用を組みかえて充当すべきであります。
言うまでもなく防衛費という経費そのものが、たびたび
指摘しているように、そもそも憲法違反の経費であります。しかもその中で、たとえばF104戦闘機のごときは、その機種採用にあたって幾多の汚職の疑いを持たれたものであり、また最近は、その国産化の結果が相次いで事故を引き起こし、貴重な人命を喪失しております。これではわが国の防衛とは名のみであり、実質は
日本のパイロットの命を犠牲にしてアメリカのロッキード社の利益に奉仕しているにすぎません。しかもその費用は、
日本国民の税金をつぎ込んでいるのであります。かくのごときは全くナンセンスであり、一刻もこれを放置することはできません。
政府は、直ちにF104戦闘機の国産化を打ち切り、それらの経費節約分を財源として、以上に申し述べたような各種の
予算補正の措置をとり、これを国会に提出すべきであります。
これが本動議を提案する理由であります。
よろしく慎重御審議の上、すみやかに可決決定されんことを要望し、本案の提案趣旨の
説明を終わります。