○今
松委員 ただいまより第二
分科会における
審議の
経過並びに結果について御
報告いたします。
第二
分科会は、
昭和三十八年度総
予算中、外務省、文部省、厚生省及び
労働省所管でありまして、二月十八日より本日まで、日曜を除き九日間、きわめて熱心に
慎重審議を重ねて参りました。まず十八日には
各省所管予算の
説明を聴取し、二十日から
質疑に入り、本日
質疑は終了いたしたのであります。
質疑の内容はそれぞれの
行政諸般に及びきわめて広範にわたりますので、ここには若干の問題を御紹介するにとどめ、その詳細は
会議録に譲りたいと思います。
外交問題に関する
質疑について申し上げます。
一つは、
さきの
日韓交渉で合意を見た
経済協力は
平和条約第四条(a)項の対
日請求権にかわるものであるとの
政府の
見解は、
日韓条約には明文化するか、また、
平和条約第四条において対
日請求権は
韓国及び
韓国民とに分けて
権利を認めているから、たとい
条約で
韓国民の
請求権の
放棄をうたっても、多数国間で締結された
平和条約が優先し、
韓国民の
私的権利を封ずることはできないのではないか、二は、かつて対
韓交渉において在
韓邦人資産を主張した
経緯があったはずだが、
日韓正常化の
条約が締結されると、実質上
私有財産に対する
権利を
国家が
放棄し、
国民を拘束する効果を持つことになるが、
憲法二十九条には、
公共のために
私有財産を用いる場合正当な
補償が行なわれなければならないとの
規定があるが、この
規定との
関係はどうか、なお、
条約上
国民の対
韓請求権の
放棄はいかに扱うか、三として、在
台湾資産の
わが国の
請求権は、
日華条約第三条で、特別取りきめを行なうことになっているが、
中国との
交渉はどういう状況にあるか、以上の
質疑に対し、
政府側より、
韓国に対する
経済援助で
平和条約第四条(a)項の対
日請求権が
処理されたものであるとの趣旨は、当然
条約に織り込まれる、また、国であれ
国民であれ、
請求権は
政府間で取りきめるよう
条約できめられているから、
韓国民の
請求権も解決したことになる、ただし、理論的には、三権分立が確立している国では
政府が
条約で
裁判所を拘束するような取りきめはできないから、個人がその
請求権を
相手国の
裁判所に提訴する道はあり得るが、
国家間の
条約に反して
裁判所が返還を認めるようなことは、常識としては
考えられない、二、在
韓資産に対する
請求権は、もともと、
平和条約(b)項、軍令三十三号で
放棄したものである、従って、
条約にあえて入れる必要があるか、あるいは
条約に入れるにしてもその扱いはまだきまっていない、また、在
韓資産は、特殊な環境のもとに置かれていたときに締結された
平和条約に基づくものであるから、
憲法二十九条にいう
公共の目的のため使用した
私有財産であるとは解釈できないが、政治的に重要な事柄であると同時に、広範にわたる戦争による被害に対する
補償一般に通ずる問題でもあり、国の
財政力とも関連する問題と
考えるとの
答弁がありました。
なお、現在動揺している
韓国の政情に対する
政府の
見解並びに
交渉の
方針、
日韓漁業交渉の問題、
ノーチラス潜水艦寄港の問題、
海外移住の問題等々、重要な
質疑が取り上げられました。
次に、
文教政策に関する
質疑について申し上げます。
一つは、最近の激しい
経済変動で
貧困自治体は地域的に偏在するようになり、
義務教育関係は
国庫負担二分の一の原則が貫かれているから、これら
貧困な
自治体にとって
教育費の
過重負担を招き、
教育費にしわ寄せされるおそれがあり、逼迫した
財政状態に置かれており、準要
保護児童生徒に対する
学用品等の
援護率が五%から七%に引き上げられただけで、
貧困団体のこれら
児童生徒に対しては
援護の手が十分届くとは言えないのではないか、また、
ミルク給食が全
児童、
生徒を対象として新たに実施されるが、
完全給食を行なっている場合は要
保護児童は無料であるのに、
完全給食を行なっていない学校や
筑豊地区のごとく
給食施設の
補助金すら返納した最近の例が示すように、
完全給食の行なえない市町村のこれら
児童生徒から
ミルク代を徴収することは筋が通らないではないか、二は、
高校急増対策の当初
計画、
進学率六〇%は六一・八%に改定されたが、三十六年度の
実績では六四・八%と、すでに
改定計画との間に三%のズレができていること、また、
改定計画による
募集人員より
入学希望者が八万人もオーバーしていること、さらには、もともと一割すし詰めの
計画の上に、最近東京都の五千人増募の
計画変更の例が出てきたことなど、これではたして中学浪人は出ないと言えるか、再度
計画変更する必要があるのではないか、また、急増
対策の肩がわりをしている私学は、施設費などの
増加のため、入学金の引き上げ、授業料の引き上げが行なわれている、特に、問題としては、入学しない場合に入学金を返さないということが社会問題化しているが、入学金に対して規制
措置を必要としないか。
以上の
質疑に対し、
政府側より、要
保護児童生徒の数は最近の
実績や統計から推して、五%から七%へのワクの拡大によって財政的に裏打ちされたはずである、なお、
国庫負担金二分の一、交付税二分の一の原則は変えないが、
貧困団体には特別交付税によって財政負担の軽減に努めたい、
ミルク給食については、現在
ミルク給食のみを実施している市町村では要
保護児童生徒からも徴収することを建前としていたため、その例にならった事務的な手落ちと思うので、これを補う
措置を講じたい、二、
高校急増対策は、都道府県設置者の
報告をもとにして変更したものである、
改定計画の
募集人員百五十四万九千人は、ごく最近の都道府県教育
委員会調べの
入学希望者数に対し九六%が進学可能となる、この
進学率は、過去の
実績に徴してもこの程度であって、
入学希望者と
募集人員の開きの八万人が直ちに中学浪人を意味しないし、また、若干の不合格者が含まれるとしても、高校教育という立場から判断した場合、教育にたえられない者がすべて入学するという建前をとることには無理がある、また、東京都の
計画変更は、改定事業費のワク外ではあるが、施設等の拡充を伴うものではないと聞いている、従って、現在
計画を変更しなければならないとは
考えない、私学の入学金問題は、私学の特色が自主経営にあるから、私学の自主的判断に待つほかはないが、三十九年度においては入学金問題にも効果のあるような
対策を講じたい、三十八年度においても従来の施策を強化したが、財政投融資二十億円の融資の道を開いたことは一歩前進であるという
答弁がありました。
次に、厚生行政に関する
質疑としては、現在最も緊急を要する
国民生活に直結した諸懸案、すなわち、ばい煙、水の汚染等、産業都市における公害防止の問題、ごみ、屎尿
処理施設整備の問題、僻地や、らい療養所等各施設の医師の充足問題、看護婦、保母など、福祉施設をささえる婦人技術者の養成ないし待遇の問題、
国民健康保険の家族に対する給付の引き上げ問題等々が取り上げられました。
これらの
質疑に対し、
政府は率直に改善すべき問題点を明らかにしながらら、三十八年度に改善された諸
措置、また本年度あるいは次年度以降に実施する年次
計画の構想を示し、積極的に努力したい旨の
答弁があり、きわめて建設的な意見の交換がありました。
最後に、労働行政に関する
質疑について申し上げます。
池田首相は、昨年の訪欧にあたって、
わが国の賃金事情を紹介したパンフレットを各国に配付し、低賃金国ではないと強調したが、現状は、月収一万円以下の労働者が五百九十九万人、全労働者の二七・一%に当たっており、雇用
審議会では、最低生活水準に達しない者を不完全就業者と
規定し、三十六年度は七百三十八万人と推計している、また、
政府の示した時間当たりの欧米との賃金格差は、毎月勤労統計を基礎としたもので、これには全事業所の五〇%に当たる三十人以下の事業所の賃金は統計に含まれていないから、さらにその開きは大きく、欧米並みに近づいているとの根拠は稀薄である、
政府はかかる低賃金、不完全就業の実情を正確に把握し、現在賃金引き上げをチェックしている業者間協定の最低賃金制をやめるべきであり、さらに、すみやかに最低賃金に関するILO二十六号
条約を批准すべきではないかとの
質疑がありました。
これに対し、
政府は、一万円以下の労働者は逐年減少している、三十四年から三カ年間に、千人以上の事業場では、賃金上昇率は一七%、三十人以上では三八%、三十人未満の規模では実に四七%となっており、賃金格差は縮小しているし、
わが国の賃金上昇率は国際的に高いことは外国でも認められている、ILO二十六号
条約はできるだけ早く批准したいし、現在ILO当局と専門的、事務的な
検討を行なっている、また、これに用意するため、現在極力最賃制の拡充強化をはかっている、
政府の勧めている業者間協定方式の最賃制は、業者間だけできまるものではなく、中央・地方の
審議会に諮られるし、労働省の監督を受けるもので、逐年賃金改善に
実績をあげてきているから、最高を押えるとの非難は当たらない、また、不完全就業を改善するためには、経済成長政策を推進することが必要だとの
答弁がありました。
本日
質疑を終了し、
質疑終了後、本
分科会における討論・採決は本
委員会に譲ることに決定した次第であります。
以上をもって
報告を終わります。
(拍手)