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1963-02-13 第43回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月十三日(水曜日)委員会におい て、次の通り分科員及び主査選任した。  第一分科会皇室費国会裁判所会計検査  院、内閣総理府経済企画庁を除く)、法務  省及び大蔵省所管並びに他の分科会所管以外  の事項)    主査 櫻内 義雄君       青木  正君    井出一太郎君       植木庚子郎君    正示啓次郎君       西村 直己君    船田  中君       山口 好一君    川村 継義君       野原  覺君    山花 秀雄君       横路 節雄君  第二分科会外務省文部省厚生省及び労働  省所管)    主査 今松 治郎君       安藤  覺君    江崎 真澄君       倉成  正君    小坂善太郎君       田中伊三次君    灘尾 弘吉君       松本 俊一君    淡谷 悠藏君       木原津與志君    辻原 弘市君       堂森 芳夫君    佐々木良作君  第三分科会経済企画庁農林省及び通商産業  省所管)    主査 中村三之丞君       相川 勝六君    赤澤 正道君       仮谷 忠男君    菅野和太郎君       周東 英雄君    野田 卯一君       松野 頼三君    石田 宥全君       加藤 清二君    川俣 清音君       高田 富之君    田中幾三郎君  第四分科会運輸省郵政省建設省及び自治  省所管)    主査 羽田武嗣郎君       愛知 揆一君    稻葉  修君       尾関 義一君    北澤 直吉君       田澤 吉郎君    塚原 俊郎君       松浦周太郎君    小松  幹君       楯 兼次郎君    山口丈太郎君       渡辺 惣蔵君 ————————————————————— 昭和三十八年二月十三日(水曜日)    午前十時十七分開議  出席委員    委員長 塚原 俊郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 安藤  覺君    理事 野田 卯一君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    井出一太郎君       井村 重雄君    今松 治郎君       植木庚子郎君    尾関 義一君       仮谷 忠男君    北澤 直吉君       倉成  正君    櫻内 義雄君       正示啓次郎君    田澤 吉郎君       田中伊三次君    中村三之丞君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       羽田武嗣郎君    船田  中君       松野 頼三君    松本 俊一君       山口 好一君    山手 滿男君       足鹿  覺君    淡谷 悠藏君       大原  亨君    加藤 清二君       木原津與志君    高田 富之君       滝井 義高君    堂森 芳夫君       野原  覺君    武藤 山治君       山口丈太郎君    田中幾三郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 西村 榮一君         農 林 大 臣 重政 誠之君         通商産業大臣  福田  一君         郵 政 大 臣 小沢久太郎君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         自 治 大 臣 篠田 弘作君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 近藤 鶴代君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         総理府総務長官 徳安 實藏君         総理府事務官         (特別地域連絡         局長)     大竹 民陟君         公正取引委員会         委員長     佐藤  基君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君  委員外出席者         会計検査院事務         総長      上村 照昌君         日本国有鉄道副         総裁      吾孫子 豊君         日本国有鉄道理         事       河村  勝君         日本電信電話公         社総裁     大橋 八郎君         日本電信電話公         社職員局長   本多 元吉君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月十三日  委員高橋清一郎君、山手滿男君、吉田重延君、  川村継義君、木原津與志君小松幹君及び渡辺  惣蔵辞任につき、その補欠として菅野和太郎  君、松浦周太郎君、井村重雄君、足鹿覺君、滝  井義高君、大原亨君及び武藤山治君が議長の指  名で委員選任された。 同日  委員井村重雄君、足鹿覺君、大原亨君、滝井義  高君及び武藤山治辞任につき、その補欠とし  て稻葉修君、川村継義君、小松幹君、木原津與  志君及び渡辺惣蔵君が議長の指名で委員選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科員及び分科会主査選任  昭和三十八年度一般会計予算  昭和三十八年度特別会計予算  昭和三十八年度政府関係機関予算  公述人選定の件      ————◇—————
  2. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより会議を開きます。  この際、分科会主査選任の件について申し上げます。  昨日、分科会の区分については従前通りとし、主査選任については委員長に御一任願ったのでありますが、この際主査を指名いたします。  第一分科会皇室費国会裁判所会計検査院内閣総理府経済企画庁を除く)、法務省及び大蔵省所管並びに他の分科会所管以外の事項主査櫻内義雄君。  第二分科会外務省文部省厚生省及び労働省所管主査今松治郎君。  第三分科会経済企画庁農林省及び通商産業省所管主査中村三之丞君。  第四分科会運輸省郵政省建設省及び自治省所管主査羽田武嗣郎君。  以上であります。  なお、分科員の配置は公報によって御了承下さい。      ————◇—————
  3. 塚原俊郎

    塚原委員長 次に、昭和三十八年度一般会計予算昭和三十八年度特別会計予算昭和三十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  滝井義高君。
  4. 滝井義高

    滝井委員 きょう私は主として沖繩の問題について関係大臣質問をいたしたいと思います。  御存じ通り日本はソ連というお山アメリカというお山の中間の谷間にあります。そして、ときどきこの二つお山で打ち上げられる核爆発実験の死の灰をかぶって苦脳しております。ところが、さらに、その表面的なそういう苦脳のほかに、この日本列島は内部的に非常な苦悶を持っております。それは南と北にあります。北の方の苦悶は、すなわちソビエトというお山に通じておる千島です。南の方の苦悶は、アメリカというお山に通じておる沖繩苦悶です。私は、千島苦悶はしばらくおくとして、きょうは南における苦悶、すなわち、領土的な一つ盲点を形成している沖繩について関係大臣質問をしてみたいと思うわけです。  この二つの面にはいろいろの矛盾が現われておりますが、特に南の沖繩という盲点においては、アメリカ極東政策が露骨に浮き彫りをされております。同時に、一面日本の対米外交の弱さを露呈しておるわけです。  この沖繩についてまず第一に私が外務大臣にお尋ねをいたしたいのは、平和条約の第三条国連憲章の七十七条との関係でございます。すなわち、平和条約三条で、われわれはアメリカがあそこに信託統治提案をすることを同意をしたし、その間、信託統治提案をする間、暫時の間、合衆国が沖繩立法司法行政三権の全部を行使することを許しております。同時に、一方、国連憲章の七十七条では、信託統治制度に関する条件と申しますか、それが規定をされておるわけです。この七十七条と平和条約三条との関係を一体どういうように政府としては考えておるのかということなのですが、これをまず第一に外務大臣見解としてお示し願いたいと思うのです。
  5. 大平正芳

    大平国務大臣 今御指摘のように、三条によりまして信託統治に付する場合に、第七十七条によりまして、「第二次世界大戦の結果として敵国から分離される地域」というものが対象になる、こういう関係にあるものと思います。
  6. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今の七十七条の一項のロですね、「第二次世界大戦の結果として敵国から分離される地域」ということで、これがいわば沖繩になった、こういうことなんですね。そうしますと、アメリカから言えば敵国日本から沖繩分離をされたことになるわけですが、沖繩は一体日本国から分離をされたでしょうか。
  7. 大平正芳

    大平国務大臣 平和条約解釈といたしましても、主権日本にあると思うわけでございます。ただいま物理的には分離されておるということだろうと思います。
  8. 滝井義高

    滝井委員 物理的には沖繩日本から分離をされたというけれども、そこには潜在主権はあります、こうなりますと、日本から分離されたものに潜在主権が一体ついていけるという、そういう理論が一貫をしますかね。そこには日本人である沖繩人がおります。そうして、そこにわれわれは潜在主権も持っております。その潜在主権というのは、この領土処分権について日本同意を得なければこの沖繩処分をすることができませんよ、こういうことが、いわばダレスの言う潜在主権です。これはもう中川条約局長が昨年の予算委員会で私に明確に答弁をいたしております。そうしますと、一体これは沖繩日本から分離されたものですか。分離されておる、そういうように一貫して割り切ることができますか。
  9. 中川融

    中川政府委員 この分離という言葉でございますが、分離という場合に、完全に主権まで分離するということももちろんあり得るわけでございます。しかしながら、今の沖繩のように、潜在主権だけは日本に留保してある、しかしながら、行政司法立法三権はことごとくアメリカに渡してある、こういうような状態もやはりこの分離の中に入ると解すべきじゃないか。と申しますのはサンフランシスコ会議平和条約起草者でありますアメリカ全権説明によりましても、この三条によりまして沖繩信託統治に付されるときには七十七条b項によって付されることになるであろうという説明をしております。それから、われわれといたしましては、やはりそういう解釈でこれが信託統治に付せられることになるであろう、将来もし付せられる場合、さように解釈しておる次第でございます。
  10. 滝井義高

    滝井委員 それならば、この七十七条のハの場合、「施政について責任を負う国によって自発的に右の制度の下におかれる地域」、これだって、沖繩は当てはまるのですよ。「施政について責任を負う国によつて自発的に右の制度の下におかれる」ということは、これはアメリカによって置かれる。そのときに、同時に日本沖繩信託統治に与えるということに同意をしておるわけですから、ロだって解釈できるわけです。そういう点になると、イよりかロの方が筋が通る。
  11. 中川融

    中川政府委員 滝井委員の御指摘通りでございまして、このC項で、施政について責任を負う国によって自発的に信託統治のもとに置かれる地域という項目もあるわけでございまして、平和条約三条アメリカ権利を得て、その権利を得たアメリカが自発的に沖繩信託統治のもとに置くというような観念構成も不可能ではないと思うのでございますが、しかし、この場合におきましても、アメリカは、要するに、まず三条によりまして施政権を得て、その施政権のもとにある地域を自発的に信託統治のもとに置くという構成には、ちょっとやはり三条解釈としても少しギャップがあるように思うのでございます。しかし、もちろん、しいて読めばそれが読めないことはないのでございますが、bかcかということになりました場合に、はたしてどちらによって具体的に信託統治協定が結ばれるかという問題はあり得るわけであります。しかし、先ほど申しましたように、条約会議におきまして、この施設に付する権利を与えられるアメリカ全権が申しましたところでは、このb項によって付せられることになるであろうと言っておりますので、将来アメリカが付する場合には、その全権の言いました通り、むしろb項によるのではないか、こう推定いたしておるわけであります。
  12. 滝井義高

    滝井委員 今あなたも御指摘になりましたが、このハ、C項ということですか、これでも考えられるというくらいに、沖繩信託統治というものは国連憲章に照らしてみるとなかなかはっきりしないところがあるわけです。いわんや、国連憲章の七十六条の信託統治基本目的に照らしてみますと、これは、信託統治をやったならば、その信託統治をやった地域というものは必然的に将来独立国になっていく、こういう基本的な精神信託統治目的なんですよ。ところが、沖繩は、これは今まで日本国領土であったし、日本と一体になって政治が行なわれておって、そこに自治または独立に向かい住民が漸進的に発達することを促進するなんという要素というものは、日本沖繩をがっちり持っておったときにはなかったわけでしょう。いわば、信託統治目的というか、本質にも沖繩は合致していなかったわけです。この点はどうですか。
  13. 中川融

    中川政府委員 滝井委員の御指摘の点、われわれも非常に同感を覚える点はあるのでございまして、沖繩自体というものは、日本の一部でありまして、今さら何も信託統治に付せなければならぬような地位にはないわけでございますが、しかし、敗戦に伴う講和の条件の一環として、信託統治に付することもあり得るという平和条約三条規定日本は受諾せざるを得なかったのでございます。しかして、もし信託統治に付せられた場合には、ただいま御指摘になりましたような七十六条による基本目的に従って信託統治協定が作られるということは当然であると思うのでございますが、全然敗戦というような事実がない場合に、沖繩自体日本から引き離して信託統治に付するだけの必要があるか、あるいはそういう実態が沖繩にあるのかという点につきましては、全く御同感考えておるところでございます。
  14. 滝井義高

    滝井委員 大体私の考え同感であることがはっきりしてきた。そうしますと、将来沖繩日本に完全に復帰させる道を開いておくような、一時的な権道的な信託統治制度の利用というものは、結論的に言うとこれは制度の乱用なんです。しかも、政治的な目的を粉飾をしてやった、こういうことです。いわば法的に非常に疑問のあるのがこの平和条約三条における沖繩信託統治の概念です。これは、今の本質論から言っても、私と同じだということになれば、大体そういうことになるのです。これで第一の私の質問については政府条約局長見解と私の見解とが大体軌を一にしたわけです。ここが軌を一にすれば、それから先非常に質問が進めやすくなるのですから、そこで、軌を一にした。  次に、その質問に入りますが、ケネディ大統領が昨年の三月十九日にいわゆる沖繩の新政策に伴う声明を発表したわけです。その中にどういうことが書いてあるかというと、こういうことが書いてあるのです。「私は、琉球日本本土の一部であることを認めるもので、自由世界安全保障上の考慮が、沖繩が完全に日本主権のもとへ復帰することを許す日を待望している。それまでの間は、すべての関係者が寛容と相互理解精神で対処しなければならない事態にある。」と述べております。そうしますと、この声明は、「私は、琉球日本本土の一部であることを認めるもので、」ということになりますと、信託統治における沖繩日本から分離をしたという理論が、これでアメリカ側によって否定されたことになるわけです。これははっきりしてきたわけです。大統領声明ですから。さいぜんの、第二次世界大戦の結果として敵国から分離される地域という、この分離をされたということが、アメリカによって否定されたわけです。日本領土の一部であるとはっきり声明でうたったわけです。そうしますと、沖繩信託統治にするということが平和条約三条のいわば大前提であったわけです。そして、信託統治にするんだが、暫時間アメリカ沖繩の領域と国民に対して立法司法行政三権を行使する、こうなっておったわけです。ところが、もうこれは信託統治をしませんと表明をしたわけです。そう解していいですか。この声明を、信託統治しないという表明に解していいですね。
  15. 中川融

    中川政府委員 アメリカ大統領の昨年の声明は、日本潜在主権沖繩にあるんだということをあらためて確認しておるわけでございます。これは、従来から、アイゼンハワー大統領のときから同じような方針をずっとアメリカ政府はとっておる、それを再確認したわけでございますが、信託統治に付さないということまではっきり言っておりません。しかし、これは、アメリカ政府方針として信託統治に付する考えはないんだ、少なくとも今のところはないんだということは、別途はっきりしておるのでございまして、われわれは、アメリカ信託統治に付するようなことは考えていないと考えております。
  16. 滝井義高

    滝井委員 信託統治をやることを前提にして三権を許しておったわけです。ところが、信託統治にやらずに日本領土であるということになれば、日本アメリカに、端的に、率直に、沖繩を返してもらうという要求が出てくるわけです。今までは、日本沖繩返還要求する権利がありやなしやという論争が、予算委員会でも外務委員会でも行なわれたのです。当時、小坂さんの外務大臣時代にも行なわれました。そのときに、小坂さん等の答弁は、日本返還請求権がないという答弁をしたのです。ところが、今度沖繩信託統治しないということになれば、しかも日本領土であるということを認めたのですから、アメリカ信託統治をするからこそ沖繩に暫定的に三権を行使することができたんだが、それを信託統治をしないということ、三条目的を否定するからには、これは日本に返さなければならぬ。こういう事態になると、今度は明らかに返還請求権が、客観的な情勢の変化によって、アメリカの内部の変化によって出てくることになると思う。政府返還請求をやる意思があるのかどうか。これはもう明らかに条約的にそういうものが出てきたと私は解するのです。
  17. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカ沖繩平和条約信託統治にする権利はありますが、信託統治にしなければならないというようには平和条約はうたってございません。従って、滝井先生のように、信託統治にしないから返せという立論は直ちに出てこないと思います。
  18. 滝井義高

    滝井委員 そのことは、日本返還請求権がないという結論も出てこないはずです。今までは日本返還請求権がありませんという答弁小坂さん初めしてきた。今のあなたの答弁だと、どっちかはっきりしなくなる。返還請求権は今度はあるんですね。この事態になったら、昨年の三月十九日のケネディ声明契機として、その点どうです。アイクのときにもそういうことを言っておったというけれども、アイクのときには必ずしも明確でなかった。今度は大統領のいわゆる沖繩の新政策というその沖繩に関連してこれは明確になってきたわけです。そうしますと、当然これは返還請求権あり、こう解釈して差しつかえないでしょう。どうですか、やはりないですか。
  19. 大平正芳

    大平国務大臣 法律的に当然返還請求権が出てくるものとは解釈できないと思います。しかし、政治論として返還請求というのはあり得るわけでございますし、現にそういう要求は、たびたびアメリカ側要請いたしておることは御案内の通りです。
  20. 滝井義高

    滝井委員 今まで小坂さんは返還請求権がないという答弁をしてきた。今あなたは政治的にはあると言う。政治的にものができるということは、法律的な裏づけがないとなかなか強くならない。だから、法律的な根拠をお互いがとっていかなければならぬ。それはどうしてかというと、フランスのある学者が批評してこう言っている。対日平和条約三条は、実際に併合することを避けながら、併合に伴う利益は手中におさめようという技巧の巧妙さの点で他に比を見ないものである、それは暫定的状態であり、おそるべき形相をしたかの法律的怪物一つである、こう言っておる。これは、併合しない、日本国から分離しない、しかし、実際の状態は、暫定的な状態を置いて、それで実質効果は全部分離したと同じものをおさめておる。いわばダレスの巧妙な法律的な怪物なんです。この怪物をわれわれは退治しなければいかぬ。この怪物を退治するためには、やはり、アメリカケネディ声明をとらえて、法律上の要求をわれわれはやらなければならぬ。今のあなたの答弁を見てみますと、政府は何か米国の権利を温存することにきゅうきゅうとしているごとくに見える。御存じ通り国会は何回にわたって沖繩返還の決議をしたかわかりませんよ。この国会すなわち国民意思外交上に表わしていくというのが大平外交の本道でなければならぬ。路線でなければならぬ。そうなると、アメリカケネディ声明が、日本本土の一部である、こう言ったからには、それに食いついて、返してもらわなければいかぬことになるわけです。これはどうですか。政治的に返還権があるということははっきりした。この声明契機として、法律的にどういうことになるか。法律的にはありませんか。条約的にはありませんか。
  21. 中川融

    中川政府委員 この問題も、前々からよく論議されたところでございますが、平和条約三条書き方から見ますと、アメリカ信託統治に付する提案をすることができる、そういう提案をした場合には、日本がこれを受諾しなければならない、同意する、そういう提案が行なわれ可決されるまでの間は、アメリカ立法司法行政三権の全部及び一部を持つといった書き方でございまして、これは、片一方が要するに大原則であって、それまでの間臨時に一時的に施政権を行なうんだという書き方ではないのでございまして、やはり条文のすなおな読み方としては、アメリカがそのような提案をした場合には日本同意する、そういう提案が可決される、——いつ可決されるかは書いてありませんが、そういうときまでは、これはアメリカ施政権を全面的に持つんだ、こういう書き方でございます。従って、アメリカ信託統治に付さない今、アメリカ政府がそういう考えを持っていないといたしましても、それからすぐに全部三条が御破算になって、日本権利として主権の回復を要求する、条約上の権利として要求し得るという解釈はやはり無理であろうと政府としては考えておるのでございます。しかし、一方外交的に、日本アメリカとの友好関係にかんがみまして、ぜひ施政権返還をやってもらいたい、要するに、外交上・政治上の要請として前々からやっていることは、ただいま大臣の言われた通りでございます。
  22. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、条約上の解釈としては無理だが、外交上・政治要請をしておる、こういうことです。あなたのような解釈三条についてすると、信託統治をやらずに永久に長期にわたって沖繩を支配することができるのですか。そういう解釈は明らかに平和条約精神に反している。これは、すなおに読んだら、小学校の生徒でも、信託統治にするまでの間暫定的にやるという解釈ですよ。それでは、アメリカ信託統治にするかしないかの態度を明らかにせずにだらだらっといったら、無限永遠にこれはやってもいいのですか。そういうことがこの三条から出てくるのですか。
  23. 中川融

    中川政府委員 条文解釈といたしましては、いつまでにしなければならないという規定がないのでございますから、日本としていつまでにしない場合にはもう無効だぞということは、やはり言えないのではないかと思います。しかしながら、別途、外交上の問題、政治上の問題としてこの施政権返還ということが言い得ることは、これまた当然でございまして、現にアメリカも、ケネディ声明にあります通り、極東の状況が緩和すれば必ず日本に返すと言っておるのでありますから、これは、むしろ法律問題を離れて政治上の問題として取り上げられておる段階でございます。日本として、一日も早くそういう事態の来ることをアメリカと交渉して実現したい、かような方針で進んでおるわけでございます。
  24. 滝井義高

    滝井委員 その考え方はあまりにも政治的、軍事的過ぎるのです。一体、安全保障上の考慮がサンフランシスコ平和条約三条のどこに入っていますか。極東の状態が緩和したら返すのだという、そういう軍事上の条項が一体三条のどこに入っていますか。こういう解釈が、いわばアメリカというお山に通じておる、南の果ての沖繩の苦悩、日本列島の南端における苦悩なんです。すなわち、池田内閣の対米外交の弱さがそこに露骨に現われておるのですよ。こういうように、ケネディ声明以後における沖繩解釈平和条約三条の情勢というものは、私は変わってきていると思うのです。変わってきているのを、あえてあなた方が今まで通りに目をつぶしていくということは、非常にけしからぬと思うのです。  時間がありませんから次に入っていきますが、そうしますと、今までの二点の問題から考えていくと、こういうことになるのです。結論的に言うと、サンフランシスコ平和条約沖繩の放棄を規定しなかったのです。将来の信託統治アメリカの単独支配を規定したのです。これははっきりしておる。そして、ダレスは、日本に残存主権があると言明をしたのです。しかし、アメリカ日本、いずれも信託統治は望んでいないのです。日本も望んでいない。アメリカも望んでいない。国連もそれを要求していない。住民は日本復帰を希望している。そうすると、一体何が残るかというと、沖繩にはアメリカの単独支配だけが残るのです。この単独支配が法律怪物なんです。だから、この単独支配をやめさせてもらわなければならぬ。やめさせてもらう一番早い方法は、返してもらう方が一番いい。ところが、アメリカが単独支配をやる中で、歴史的にずっと見ると、いかに三条を曲げて解釈した見解をとり、しかもその見解にあなた方が同調しておるかというと、米海軍長官は沖繩の無期限管理を言明しました。これはもう昭和二十八年、一九五三年に言明した。それから、ダレスも、アメリカは戦略的見地から沖繩を保持するということを昭和二十八年に言っております。それから、アイゼンハワー大統領も、無期限使用を、一九五五年、昭和三十年の予算教書にうたいました。同時に、戦略的必要がなくなれば日本返還すると、こう言っているのです。アメリカが単独支配をするということを理由にする裏づけになるような言明というのはそういうことですが、それは、さいぜんから申しますように、平和条約三条規定の中には表面に絶対現われていないことなんです。従って、アメリカは、信託統治というときに、一つの大きな国連憲章制度的な信託統治の乱用をやった。そして、その後、ダレスみずからも日本国土の一部であるという声明をしながらも、依然としてその声明を裏切るような、その声明に沿わないような措置をとってきておるということです。そこで、その結果どういうことが今出てきておるかというと、沖繩の住民は、アメリカ人並みに扱われるのか、日本人的に扱われるのか、それとも植民地あるいは占領地の住民の扱いに甘んずるのか、——沖繩におけるアメリカ施政はいろいろ変化をしておる。変化をしておるが、依然として単独支配、しかもそれが陸軍の管理下に置かれておるということだけは変わっていないのです。そうすると、これはこの前も一ぺん質問をした。もう一ぺん先の質問上やりますが、沖繩人日本人であるという証明を、一つ国民にわかりやすく、沖繩人も納得のいくようにして下さい。
  25. 中川融

    中川政府委員 沖繩日本潜在主権を持っておることは、ただいままでもはっきりしておる通りでございます。その結果といたしまして、あそこにおられる住民の方々は日本の国籍を持っておられるということも、これは、日本政府のみならず、アメリカ政府もはっきり認めておるのでございます。その端的な現れといたしましては、アメリカ裁判所におきまして、沖繩の住民がアメリカ市民であるということを理由といたしまして訴えを起こしたことがあるのでありますが、その判決に、沖繩の住民は日本国民であって、アメリカ市民それ自体ではないという判決があったのでございまして、これによっても、アメリカ考え方として、沖繩住民が日本国籍を持っておるということははっきりしておるのでございます。なお、その裁判所におきまして引用いたしました文書がございますが、アメリカの国務省の法律顧問が出しました文書を引用いたしまして、沖繩の住民が日本国籍を持っておるのだということを述べておるのでございます。
  26. 滝井義高

    滝井委員 今の御答弁ですが、これは昨年私質問して、あなたは今の通り答えた。一九五四年アメリカのホノルルの裁判所において、沖繩人が外人の住民登録をやらずに罰せられた、そのときに国務省の法律顧問から意見書を裁判所に出して、沖繩アメリカ領土ではないし、アメリカの市民ではない、こういうことで、これは日本人だ、こういうことになった。それはアメリカ国内の問題です。では日本の国内はどうだという質問に対して、今あなたはお答えになりませんでしたが、一九五二年の四月十九日に日本の法務省民事局の通牒で、沖繩人日本国籍を有する、この二点で、沖繩人日本人であるということをあなたは証明したわけです。日本の国内において戸籍を日本がやっておる。それから、アメリカにおいて裁判でアメリカ人でないという結論が出た。それならば、一体両国の間に日本人であるという確認があるか、こういうことなんです。大平さん、一体、日本外交当局とアメリカの国務省当局との間に、沖繩人は明らかに日本人であるという公文を取りかわしておりますか。
  27. 大平正芳

    大平国務大臣 きわめて当然のことでございますので、別にそういう書簡の交換というようなことはいたしておりません。
  28. 滝井義高

    滝井委員 あなたはきわめて当然のことだと言うけれども、あなたの方の外務省はそれをくれといって文書を出したのですよ。出したけれども、アメリカはくれなかったのです。文書を出したのです。当然のことだと言うが、これが当然のことにならないのですよ。あとでだんだん当然のことでないような状態を証明しますが、文書を出したでしょう、中川さん。
  29. 中川融

    中川政府委員 これは、ただいまここで問題になりました、アメリカ裁判所におきまして引用された国務省の法律顧問の意見書というものの中に、その当時の外務次官からアメリカ政府に対しまして、沖繩住民が日本国籍を持っているということを確認してもらいたいという要請があった、その要請に対してアメリカ国務省としては、その通りであると考えておるのだ、こういう文書を裁判所に通達しておるのでございます。この外務次官の照会に対しまする返事というものは、その当時の記録を見てみますけれども、実は見当たらないのでございます。しかしながら、その回答は、今言ったような形でわれわれはアメリカ政府考え方を知っておるわけでございます。
  30. 滝井義高

    滝井委員 大平さん、今言われた通り、一九五二年に日本の外務次官が、沖繩人日本の国籍を持っておることを確認してもらいたいという公文書を出したんです。ところが、アメリカは何にも言ってこないんです。だから、あなたはこれは当然のことだとおっしゃるけれども、日本の外務次官は当然のことをわざわざ出したんですから、だから、これは当然のことでないと考えておったんです。それはどういう文書を出したか、その文書を一つ出してみて下さい。一体、一九五二年当時の外務次官はどういう文書を出しましたか。これは秘密でも何でもないんですから、これはあとの質問にも関連しますから、文書をちょっと読み上げて下さい。向こうの回答はないでしょうが……。
  31. 中川融

    中川政府委員 私は、今その文書の写しを持っておりませんが、その内容は、平和条約三条によって日本施政から切り離された沖繩の住民は、依然として日本国籍を持っておると考えておるが、アメリカ政府もその通り考えておるか、こういう内容の照会でございます。
  32. 滝井義高

    滝井委員 その後、文書の返事をくれなかったので、あなたの方は催促したことがありますか。必要だからこそ請求したわけでしょう。返事も何にもくれないんです。日米対等ですよ。お互いにパートナーシップをもってやろうというのに、こっちが手紙を出したら返事くらいくれなければ、そんな友情はないですよ。返事もくれぬような友だちかと、こうなるわけです。こういう状態です。  そこで、さらに私はアメリカの文書で沖繩人日本人であるかどうかがますますわからなくなるような証明をだんだんしてみたいと思うんです。たくさんありますが、時間があれですから、おもな一、二点をやってみますと、平和条約三条をごらんになると、「合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、」と、こうありますね。わざわざ領域のほかに住民を書いておるんです。そうしますと、普通は三権は領域だけでけっこうです。アメリカ合衆国は領水を含むこれらの諸島の領域に対して立法司法行政三権を行使するということになれば、それでけっこうできるわけです。ここに一体何のために住民というものがあるのか。領域及び住民とある。この住民とは一体何なのか。
  33. 中川融

    中川政府委員 平和条約三条に、領域及び住民というふうに書いてあることは事実でございます。領域に対して施政権を行使すると同時に、そこに住んでおる住民の方々に対して統治権を及ぼすという意味ではっきり書いたのだと思うのでございます。住民は、その字の通り、そこに住んでおる人々ということであると考えます。
  34. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、滝井義高という本土の日本人が沖繩に一時的に行く、あるいは中国人が沖繩に行く、アメリカ人が沖繩に行く、在来の沖繩人もおる、これは全部この住民になるわけですね。
  35. 中川融

    中川政府委員 普通、条約におきまして住民と申します際には、そこに本籍を有する人というのが普通の用語であります。従って、平和条約におきまして住民という場合も、やはりそこに本籍を有し、そこに住んでおる人というのが通常の解釈でございます。しかし、理論的に申せば、その地域に対して施政権を及ぼすことの効果といたしまして、その地域に一時的に滞在する人、外国人でありましても、あるいは日本本土の人でありましても、こういう人たちに対しても、その地域を統治する主権者として、権限ある政府として、やはり施政権を及ぼすということは当然あり得るわけでございまして、必ずしも本籍のある人だけに限った意味でもないと思います。普通の住民の解釈といたしましては、やはり籍がそこにあるということが普通の観念でございます。
  36. 滝井義高

    滝井委員 この場合はどうですか。この場合は、今のような解釈で言うと、そこに本籍があって、そうして永住しておる人ということになると、沖繩人ですね。この解釈沖繩人でしょう。
  37. 中川融

    中川政府委員 三条に書いてある住民といたしましては、やはりそのように通常の意味に解釈するのが適当でないかと思います。
  38. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは沖繩人です。そうすると、これは滝井義高という本土の日本人が沖繩に行った場合と対象は別なんです。それは今の解釈と一致したわけです。そうしますと、その証明が今度はっきりできてくるわけです。それは、米民政府の命令の形式で琉球政府章典というのがある。この琉球政府章典では、この住民を琉球住民、——いわゆる沖繩住民ですね。あなたの言う沖繩住民です。私の言う沖繩住民です。これは琉球の戸籍簿にその出生及び氏名の記載されておる自然人、これは第三条一項にあります。これなんです。そうしますと、琉球の戸籍簿に出生及び氏名の記載されておる自然人というと、私たちは載っていない。滝井義高という日本人は載っていない。だから、従って、沖繩人という日本人は、本土の滝井義高という日本人とは全部相似形ではない。同じではないのです。そこに違うものがあるわけです。幾何学的に言えば違うものがある。だからこういう形が出てきておる。わかりやすく言うとそうです。これは法律論的に展開するとややこしくなるからやめます。属地的とか属人的統治権なんていうむずかしい問題になって、予算委員会では、時間が先にかかるからやめておきます。そういう違ったものです。  だから、それが具体的にどういうところに現われてきたかというと、ケネディ声明に現われてきた。どういう工合に現われてきておるかというと、ケネディ声明でも、沖繩人日本人であると割り切っていない。三月十九日のあの画期的な沖繩政策におけるケネディ声明でどういう工合に現われてきたかというと、調査団の報告は、アメリカ施政を続けることが軍事上絶対に必要であることと、琉球住民と特に書いてあるが、琉球住民の希望、すなわち、日本国民であることを認められ、日本でなら享受できる経済及び社会福祉上の利益を受け云々と、こう書いておる。従って、ケネディ声明においても、琉球住民が日本国民であることを認められることを希望するわけです。だから、まだ日本国民と認められていない。これが一つ。これは一番わかりやすいところです。  もう一つあります。それは下院の軍事委員会です。この下院の軍事委員会の公聴会の証言録です。一九六二年の五月九日から十日にわたって下院の軍事委員会の公聴会が開かれた。そこで、国務省を代表して、政治問題担当のジョンソン国務次官補の証言がある。その証言がふるっておるのです。どう言っておるか。こう言っておる。そこで、心理的な問題としては、彼ら自身が、アメリカ人でもなければ日本人でもなく、そうかといって自分自身を独立国琉球諸島の琉球人とも考えていない点にあると言えよう、彼らが旅行するとき、高等弁務官は旅行用書類を渡すが、これは旅券でなく、海外の税関や移民関係の役人がこれを見て、君は一体日本人なのかアメリカ人なのかと不思議そうに尋ねることになる、この問いに対して彼らは、いや私はどちらでもない、私は琉球人であり、これが琉球当局の旅行用書類であると答えることになる、こう言っているのです。これをアメリカの権威あるジョンソン国務次官補が国会で証言しているのですよ。  あるいは、もっと権威のあるケネディ自身も、日本国民であることを認められることを希望していると、こう言っているのです。まだ認めていない。認められることを希望している。  こういう点から、沖繩人が明らかに日本人であるという確信と自信を大平さんがお持ちならば、この際、私はアメリカに公文書でもらってもらいたいと思う。沖繩人日本人であるとアメリカ国務省は確認をいたしますということをまずもらってもらいたい。もらえますか。
  39. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど私が申しました通り、きわめて当然のことでございますので、そういう文書をわざわざかわすという必要はないと思います。
  40. 滝井義高

    滝井委員 そういう答弁を木で鼻をくくったような答弁と言うのです。一片の誠意も一片の愛国の情熱も感じられない。そこにあるものは、いわば、弱々しい、アメリカに何かしっぽを振っているような外交のニュアンスしか出てきていない。もう少しはっきりした態度をとったらどうですか。日本人であるという確信をしておるならば、日本人であるという証明をくれと言っていいんじゃないですか。  だんだんその弱さをもう少しはっきりさしていきたいと思うのです。こういうように、日本人であるということがなかなかはっきりしないのです。向こうの人もそう言っている。アメリカ人自身が言っているんですから、知らないのは何とかだけだということになる。知らないのは大平さんだけということになるかもしれない。  そこで、そういう今のような状態ですが、ケネディ大統領沖繩の新行政命令に伴う大統領声明を出して以後におけるアメリカ国会における沖繩の予算上その他の問題は、どういうように一体取り扱われておりますか。外務大臣としてはアメリカ内部の情勢をどう見ておりますか。
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 大きな前進を見ておると思います。御承知のように、プライス法改正、海外援助費の審議の結果、沖繩に対する支出が倍になっておるということは、当初アメリカ政府が計画いたしました数額までに及ばなかったにいたしましても、前年度に比べまして倍増いたしておりますということは、大きな前進であると思います。
  42. 滝井義高

    滝井委員 アメリカ政府要求した計画の数字までにはいかなかったけれども、大きな前進であると言うが、日本国会状態から考えて、政府提案をした原案を、しかも外交的に非常に微妙な案件を、大幅にアメリカ国会が削減をするという、その背景ですね。その背景について、一体アメリカの上院なり下院における議論の過程等を見てどういうお感じを持っておりますか。
  43. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカ政府が当初希望した水準にまでいかなかったということは、私どもとしてきわめて遺憾でございますけれども、しかし、最終的にきまりました結果が前年度の倍になっておるということ自体は、前進であると評価いたしております。
  44. 滝井義高

    滝井委員 問題は数字の問題ではないわけです。二千五百万ドルなら二千五百万ドルのプライス法の改正を要求して、そしてそれが半分の千二百万ドルしか認められなかったということは、これは異常なことなんです。一体、その議論の過程というものはどういうところに問題があったのですか。二千五百万ドルのプライス法の改正案を要求して、それが半分以下の千二百万ドルに削られた。なるほど、プライス法は、かつては六百万ドルが最高限度だった。それから言えば倍になった。しかし、削られた側から言えば、倍以上のものを削られているんですね。このアメリカ内部というものは、一体どういうところにこれを削らなければならない理由があったのですか。日本政府としてはそれをどう評価しているのですか。
  45. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカ国会内部におきましていろんな論議がありましたことは、伺っておるわけでございますが、それを論評するのはいかがかと思います。私は、沖繩の経済並びに民生が順便にかつ安定的に発展していくことがほんとうのしあわせだと思うのでございまして、沖繩経済が新しい仕事をどれだけ有効に消化できるかというような観点から見まして、援助費が多ければ多いほどいいと直ちに論断することは無理があろうと思うのでございます。問題は、沖繩の現実に立脚いたしまして、実のある民生の向上、経済の開発というものが効率的に行なわれていくという観点から、どの程度の沖繩に対する援助費の投入が経済的に見て効果的であるかということは、アメリカ当局においても御判断されたことと思うのでございまするし、わが国といたしまして沖繩に三回も調査団を出しまして検討いたしましたのも、やはりそういった観点からいたしまして沖繩人の身になって、援助費が効果的に使われるということに主眼を置いて考えておりましたゆえんもそこにあると思うのでございます。
  46. 滝井義高

    滝井委員 大臣は、沖繩の援助が消化できるような受け入れ態勢があるかどうか、そして、やられた額の大小が問題でない、問題は、それがどう効率的に経済的に住民の福祉の向上ができるような方向に使われていくかが問題なんだ、だから日本も調査団を三回もやったんだというようなことを言っているが、私の答弁には答えていないのです。二千五百万ドルの要求が千二百万ドルに削られたその背景というものは一体どこにあるのですかと、こういうことを言っておる。  そうすると、今の答弁はこうですか。沖繩の現実が二千五百万ドルを受け入れ態勢にないんだ、だから千二百万ドルに削られた、こういう解釈ですか。そういう単純な解釈なんですか。
  47. 大平正芳

    大平国務大臣 ワシントンの国会における論議を評価し論評するということは御遠慮いたしたいと思いますと、先ほど申し上げたのでございます。これは、おそらく、アメリカが今日置かれた状況におきまして、海外授助政策アメリカの財政政策等々から判断いたしまして、結論としてわれわれに示されたような金額になったものと思うわけでございますが、その考慮の一つとして、沖繩の有効な消化能力というようなことも一つの観点であったのではないかということを申し上げたのです。
  48. 滝井義高

    滝井委員 私はどうしてそういうことを言うかというと、何も沖繩の援助はアメリカだけがやるわけじゃない。われわれの血のにじむような税金も出すわけです。従って、アメリカ沖繩における経済援助の資金の出し方、そしてその議論の経過の発展、こういうものが、やはり外交をやる上においては日本国会においても当然議論をされなければならぬ。それを議論をせずして、何かあつものにこりてなますを吹くような、はれものに当たるような、そういう態度ではいかぬと思うのです。アメリカの内部ではこうだ、アメリカの内部ではこういう議論があったということを、やっぱり率直に外務省としては調査をして国会表明する義務があると思うのです。何がゆえにアメリカ国会が二千五百万ドルのプライス法の要求に対して千二百万ドルにしたのか、あるいは支出権限法において大幅な削減をなぜやらなければならなかったかということ、これを明らかにしてもらわなければいかぬと思うのです。それはあなたの義務ですよ。われわれは政府に向かって、アメリカ大使まで置き、情報機関を持っておる日本政府に対して、持たない野党としては当然聞く権利があるのですよ。それをつんぼさじきに置いて、国会沖繩の予算を審議しようといったって、それは木によって魚を求めるたぐいです。とても不可能です。率直に批判をして悪いことないのですから。アメリカの議会の批判を見てごらんなさい。サーモンドという議員がこういうことを言っておるのですよ。なぜ琉球諸島を日本に引き渡そうとしているのか、日本はこれを放棄した、これらの島が再び日本に戻る根拠は何もないと述べて、そして、同時にまた沖繩における日本国旗掲揚についても反対をしている。池田さんが一昨年の六月に行ってケネディと話し合って持って帰ったたった一つの成果は、祝祭日に沖繩の公共の建物に日本国旗を掲げるというこれ一つだったじゃないですか。そのたった一つの成果についても、サーモンド議員は、あんなもの立てさせる必要はない、こうおっしゃっておる。アメリカの議会でそう言っているのですから。それから、同時に、あなたが日本人だと口をすっぱくして言っていらっしゃるその沖繩人についても、アメリカの高官は、あれは日本人であるかどうかわからぬ、アメリカ人であるかどうかもわからぬ、こういうことを平気で言っているでしょう。日本だけが、アメリカの内部の議会でどう論議されたか、そういうことの経過について外務省政治的な見解さえも率直に述べることができないようなことでは、沖繩返還なんか百年河清を待つにひとしいですよ。  まあアメリカの内部の状態は、なかなかもの言えばくちびる寒しになるらしいですから、これ以上言いませんが、それならば、一体、ケネディ政策以後における沖繩内部の情勢はどういう工合に財政的にあるいは政治的に変化しておりますか。これは日本国民がおるのですから……。
  49. 大平正芳

    大平国務大臣 去年の三月のケネディ声明、これは画期的なものであったと私どもは思っております。潜在主権をはっきり認めたばかりでなく、将来日本に復帰する場合の困難を減殺するという意味におきまして、日本と協力いたしまして住民の福祉向上に努力しようということが明らかに宣明されたわけでございます。で、これは沖繩住民にも大きな希望を与えたものと思うのでございます。その後沖繩には立法院の選挙もございましたが、こういう全体の方向に向かって沖繩の前進をはかっていこうという政策を掲げた党が勝利をおさめておるということも、沖繩住民が全体としてこの方向を支持しておると判断して差しつかえないことと思います。
  50. 滝井義高

    滝井委員 選挙のことが出ましたが、昨年の立法院の選挙で、与党の自由民主党が二十二の議席から十八に減りましたね。そして、野党の社大党が四から七、社会党がゼロから一、こういうふうに野党の方が前進したわけですね。沖繩自身のとり方は、与党の方は一歩前進したと言うし、野党は期待はずれと言い、あるいは、人民党のごときは、軍事基地の永久化の意図が露骨に現われたと、いろいろ批判はあるようです。  沖繩の内部の情勢はそれくらいにして、先に進みます。今度は日本のことです。  それならば、お尋ねをいたします。ケネディ新政策以来、日本内部においてもいろいろ変化をしてきました。特に顕著な日本内部の変化というものは、池田・ケネディ会談以降は、予算的にも相当の前進を見てきたんです。ところが、どうも、予算的に前進をしたけれども、いろいろ調べてみると、なかなかわからない点がたくさん出てきておる。そこで、そのわからない点からまず聞いていきますが、まず第一にお尋ねをいたしたいのは、これは会計検査院長にお尋ねしますが、昭和三十六年度の決算を見てみますと、三十六年度の歳出予算、沖繩関係費総額は五億一千九百二十九万八千円でございます。そして、歳出予算の現額は五億五千九百四十六万四千円ですが、翌年度の繰越額は三億四千四百五十七万六千円で、約四割のものが繰り越されているわけです。会計検査院長、この約四割近くのものが繰り越された理由というものは、会計検査をした結果どういうところにあったのか、御説明を願いたい。
  51. 上村照昌

    ○上村会計検査院説明員 お答えいたします。  決算の関係がただいま御質問のようになっておるわけでございますが、その繰越額の三億四千四百万円のおもなものは、疎開船対馬丸遭難学童及び援護法適用戦闘協力死没者経費というものが二億四千四百万円ありまして、一番おもなものでございますが、これは、この金を給付する場合に、基礎資料の調査が十分行き届かなかったということで繰り越しになったものでございます。
  52. 滝井義高

    滝井委員 それだけですか。それから尋ねていきましょう。今御説明いただきました疎開船対馬丸遭難学童及び援護法適用外戦闘協力死没者経費二億四千四百七十四万円は基礎調査ができてないと言う。こういう基礎調査さえもできていないものに金を出すことになるのですか。これは、大蔵大臣、こういう基礎調査のできていないものに金を出すのですか。今地主の補償が問題になっておるが、一億八千九百万円の調査費を計上して、綿密な実態調査やその他の調査をやって、その上で金を出します、こういうことなんです。ところが、沖繩についてはそういう基礎調査も何もやらずに大蔵省は予算を組むのですか。これは少なくとも、いわば援護法における遺族と同じ待遇を、この人たちにはそれに近い待遇をやろうというのですよ。基礎調査もできていないものにやる、これは今どうなっておりますか。全部支払われてしまいましたか。会計検査院にちょっとお尋ねします。
  53. 上村照昌

    ○上村会計検査院説明員 ただいま私が申し上げました基礎調査と申し上げますのは、金を出す段階の基礎調査という意味でございまして、全然基礎調査がなっていない、こういう意味で申し上げたわけではございません。その後繰越額が出されたかどうかということは、私はちょっと承知いたしておりませんので……。
  54. 滝井義高

    滝井委員 会計検査はやらないですか。決算で繰り越されて、そうして三十七年ですよ。もう三十七年も終わろうとしているわけです。今、大体、対馬丸の遭難者なり、それから援護法の適用外の戦闘協力死歿者の遺族にこの金は渡ったのか渡らないのかということです。これもお調べになっているわけでしょう。
  55. 上村照昌

    ○上村会計検査院説明員 検査は、御承知のように、毎月私の方に計算書が出てくるわけでございまして、出ておれば調べればわかりますが、ちょっと私手元ですぐわりませんので、そうお答え申し上げたわけであります。
  56. 滝井義高

    滝井委員 だれかわかっておる人いないですか。
  57. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 ただいまの見舞金の問題でございますけれども、三十六年度予算で、約二億四千万円でございましたか、計上してございます。御案内のように、沖繩では昭和二十年の三月ころから陸上戦闘が行なわれまして、非常に特殊な状態で多数の者が戦死したわけでございます。そこで、見舞金を計上いたしました。予想が大体一万二千人程度でございまして、援護法の弔慰金と見合いまして、一人二万円というふうな予定はしておったわけでございます。ところが、申請書が出て参りましてそれを精査いたしましたところ、その中には援護法自身を適用した方が適当ではないかというふうな案件が相当見つかったわけでございまして、全般的に申請書を検討をし直してみようという考えを持ちました。その結果、支給がおくれて参ったわけでございますが、今日では、それを繰り越しを明許していただきまして、大体予定通り仕事が完了いたしまして、この年度末には全部仕事を終わるという状態になっているわけであります。
  58. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この二億四千四百七十四万というものは三十七年度末には完了してしまう、こういうことですね。わかりました。それでいいです。  それならば、会計検査院の事務総長さんに伺いますが、本土と沖繩間のマイクロ回線設定援助費九千五百七十五万九千円というのが繰り越されていますね。これはどうですか。ものが現在できておりますか。行ってみれば、できておれば鉄塔が立っておるはずですが。
  59. 上村照昌

    ○上村会計検査院説明員 繰り越されておるのが今できておるかどうかということでございますが、三十七年度の関係でございまして、詳細は十分わかりませんが、鉄塔は何か立っておるということを、私どもの方で行ってみた場合に見ておるようでございますが、ちょっと詳細はわかりかねます。
  60. 滝井義高

    滝井委員 電電公社の総裁にお尋ねします。昨年これは私一応お尋ねをしたわけです。これは現在どういうことになっておりますか。三十六年度もこの経費は繰り越し明許をとっております。三十七年度も繰り越し明許をとっております。こういうように沖繩関係は最近繰り越し明許が非常に多くなってきたわけです。ケネディ声明以来、日本アメリカとはパートナーシップをもって友情を発揮して対等の立場でやるのだ、こういう声明以来、沖繩政策というものは前進をしておるはずだと思ったのだが、三十五年以前の方がすらすらいって、今の方が、こういう金は出すけれどもその金ははっきりしないのです。繰り越し明許になっておる。こういう状態ですが、この内容を一つかいつまんで要約して御説明願いたいと思います。
  61. 大橋八郎

    大橋説明員 お答え申し上げます。  電電公社といたしましては、委託を受けて工事の進捗をやっておるわけでございまして、予算がどういうふうに使われておるということは、実は私どもの方の仕事ではないのでございます。ただ、この際申し上げておきたいことは、御承知のあの法律通りました三十六年に、三十六年の八月一日付で、内閣の会計課長と私どもの方の施設局長との間に、電気通信設備の設置の委託に関する契約書というものができておりまして、それに基づきまして、その中には、着工は三十六年八月一日、完成は三十八年の三月三十一日ということになっておるわけでございます。ところが、一方、沖繩の電電公社が自分で工事をいたします沖繩島内の鉄塔とかあるいは局舎、これらの工事が、沖繩の方の都合によって四カ月あまりおくれたのでございます。いま一つ、この工事の施行に関する細目協定、これは私の方の公社と沖繩の公社との間に締結をする細目協定であります。いま一つ、設備の譲与に関する覚書というもの、両公社と内閣の係官との間の三者でつくる覚書の締結が、だんだん沖繩の方の内部の事情等のためにおくれて参りました。結局、三十七年の九月下旬にこの三者の覚書というものができました。その細目の覚書によりまして、結局、最初の三十八年の三月末日までに完了するということが、三十八年十一月三日付最終試験完了の日と定める、こういうふうにその覚書で定められましたので、今日はまだ進行の途中にあるわけであります。
  62. 滝井義高

    滝井委員 昨年の答弁と違ってきました。昨年の答弁は、電電公社の受託勘定の中に国の負担経費を入れる、それから、電電公社が資材を持つ、こういうことで沖繩の内部にもこれをつくってやることになっておる。昨年の答弁では、沖繩の電電公社にはつくらせることにはなっていなかった。おかしいじゃないですか。昨年はあなたの方がつくるということであったはずですがね。
  63. 大橋八郎

    大橋説明員 沖繩島で沖繩の電電公社が担当して自分の方の金でつくるものは、向こうの建物、鉄塔等のものであります。これは初めから予定されたものであります。それができないと、その中に入れる設備その他も入れることができませんので、向こうの建物がおくれたために自然おくれてきたということが一つ、先ほど申し上げました通りです。それから、一方、覚書によっていろいろな協定をする事柄もあり、細目等につきましても、両方の完全な意思の一致を見るまでに少し時間がかかり過ぎましたので、私どもの公社で委託を受けてやる工事そのものも自然着工その他がおくれた、こういうことで、最初の予定よりも約六、七カ月おくれる結果になった、こういうことでございます。
  64. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、日本政府負担分の三十六年と三十七年の経費は一億八千二百万円程度ですね。これは一体どうするのです。これはあなたの方の受託勘定に入っているのですよ。これは沖繩のいろいろ建設をする経費としてあなたの方の受託勘定に日本政府は入れてやったのですよ。ところが、沖繩で鉄塔も局舎もみな建てて、こちらが機械だけ持っていってやるというなら、一億八千二百万円の金は要らぬことになります。去年は、そういう建設の経費としてあなたの方の受託勘定にこれを入れるという説明だったのですよ。また、予算の説明でもそういうことになっているはずです。
  65. 大橋八郎

    大橋説明員 日本側の鹿児島もしくは奄美大島の工事について、これはもちろん当然私の方の経費でやるわけであります。公社の予算の中に入っているわけです。しかしながら、沖繩の方の日本側の建物の中に入れる機械等は、私の方から機械として向こうへ贈与することになっております。その機械を使いまして、この建設工事に要する費用等は総理府の予算の中に組まれまして、それを総理府と電電公社との委託契約によって、私の方が委託を受けて工事を進捗する、こういう建前になっております。
  66. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、総経費は幾らかかりますか。
  67. 徳安實藏

    徳安政府委員 お答えをいたします。  マイクロウエーブの関係の予算でございますが、一億八千百九十二万二千円、これが二カ年度にわたる政府の負担の金額でございます。現在までに支出いたしておりますものが、三十六年度分はもうすでに全部支出済みでございまして、三十七年度分の八千三百九十七万一千円のうち、五千三百二十七万五千円はすでに本年中に支出される見込みでございまして、残額の三千六十九万六千円につきましては、次年度において繰り越し使用をお認めいただけるように手続中でございます。
  68. 滝井義高

    滝井委員 建設の総経費は幾らかかるかというのです。
  69. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 ただいま長官が御説明になりました日本政府の負担のほかに、日本電信電話公社が御負担になる、これはいろいろな資材を新品価格に見積もったものであるそうでございますが、一億三千六百万円程度でございます。そのほかに琉球電電公社、沖繩にあります電電公社が七千二百万円を持つ、それの合計が総経費でございます。
  70. 滝井義高

    滝井委員 総計は幾らになりますかというのです。三十六年のときには十億三千九百万円、これは沖繩分、日本分全部加えてこれだけかかります。ところが今度は、ことしわれわれがもらった予算の説明書を見ると、十億七千万円に数字が違ってきているのですね。総経費は実質的には一体幾らかかるかというのです。
  71. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 私どもが正確に承知をいたしておりますのは、政府予算に計上してあります先ほどの額と、それから琉球の電電公社が持ちます七千二百万円でございますが、そのほか、日本電信電話公社が負担されます分につきましては、これは現金ではございません、古い品物の新品見積もり価格でございますから、その価格をどういうふうに御承知になりましたか、ちょっと私どもその辺を承知しておりません。
  72. 滝井義高

    滝井委員 一体総経費が幾らかかるかもわからずに予算をやっている、そんなばかなことはないですよ。マイクロウエーブというのは、全部一貫して有機的につながっているものですよ。つながっているものを、日本政府の負担分のところだけ知っておって、あとは総経費が幾らかかるかも知らぬようなことでは、予算の執行はできぬじゃないですか。しかも、今の発言の中にあったように、電電公社が物で一億三千六百万円の物をやりますね。これは中古をやるというわけでしょう。古い品物を、廃品を撤収品をやるというわけでしょう。その撤収品をやって、今の言葉では、それを新品の価格に見積もるというのです。こんなことが許されるのですか、大蔵大臣。幾ら沖繩にやるといったって、日本の中古を持ってきて、沖繩の電電公社の設備に据え付けます、しかも、その価格は新品で見積もります、こんなばかなことがありますか、どうですか。
  73. 田中角榮

    田中国務大臣 各省にまたがっておりますし、具体問題でありますから、政府委員をして答弁せしめます。
  74. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 私が今電電公社の負担分というふうに申しましたのに、誤りがあったようでございまして、申しわけございませんでした。申しました一億三千六百万、これは日本電信電話公社の現物負担分だそうでございまして、そのほかに、六億八千万円程度の負担があるそうでございます。それから琉球電信電話公社の負担分が七千二百万円だというふうに申し上げましたが、これは当初の琉球電信電話公社の負担分は四千百万円の予定であったわけでございます。その後、工事等が追加されまして、ただいま申しました七千二百万円に増額しておるということでございます。
  75. 滝井義高

    滝井委員 従って、三十六年当時の見積もりは総額十億三千九百万円で、沖繩の負担分の鉄塔なり局舎が四千百万円だった。ところが、その後、沖繩負担分の四千百万が七千二百万になったのだ、こういうことに御説明になったわけです。そうしまして、同時に、物の方は、電電公社が法律で資材を供与することになっておるわけですね。その資材を供与する一億三千六百万円は、撤収した古い品物である。しかし、これを新品の価格に見積もって予算を計上する。沖繩だからといって、日本政府沖繩に新しい電電公社をつくろうというのに、古い撤収品を持ってきて、それを新品の価格に見積もって予算を計上するなんて、そんな予算の計上の仕方がありますか。
  76. 大橋八郎

    大橋説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘の、公社が現物で提供いたしました物の価格についての話でありますが、これは予算に計上したものではございませんで、現物でただ贈与した、こういうことになりますので、予算面に表われておるものではございません。ただ、そのときに、中古のものをやるのであるが、かりにこれを新しいものを買うとすれば一億三千六百万円程度のものになるという、参考のための説明資料として、ここに今まで説明されておるわけでございます。これは予算に計上したものではございません。
  77. 滝井義高

    滝井委員 それは納得できかねます。物を提供するというのは法律でやるのですよ。それはなるほど、法律は廃品回収したようなものをやって悪いとは書いておりません。書いておりませんけれども、少なくとも沖繩に提供して、そしてその価格を幾らに見積もるかというのに、廃品、撤去品を持ってきて、その価格は一億三千六百万円になりますという、こういうばかなことはないですよ。こういうことを平然と許されるのですか。
  78. 田中角榮

    田中国務大臣 今滝井さんが言われる通りでありますが、政府が計上いたしました予算に関しては、電電が仕事をそのまま引き受けてやるわけでありますし、電電が現物供与する分に対しては、政府が一般会計でもって予算を計上して電電にやっておるのではなく、電電が現に保有しておるものを供与するわけでありまして、計算をどういうふうに見積もるといっても、これは一般会計から補てんをしておるのではないのでありますから、数字上の問題だけであります。
  79. 滝井義高

    滝井委員 それは数字上の問題だけにしても、やはり予算の総額というのが——マイクロウエーブというのは、日本だけつくったって、沖繩にできなければだめなんだから、沖繩にもできて、鹿児島から奄美大島にできて、お互いに交流ができなければだめなんで、その総額が十億七千万円かかりますという説明があったわけですよ。その十億七千万円かかるうちに、資材というものは一億三千六百万円程度を電電公社が負担をします、こうなっておるわけです。一体その処理はどこになるかというと、事業外支出として処理される。きちっとした金になって出てきているわけです。だから、これは古い品物をやるのだといえば、それを新品価格で見積もる必要はない。それだったら古い価格で見積もったらいいじゃないですか。それをあたかも大きなものであるかのごとく見せかける、こういう欺瞞的な政治はやめるべきだと思う。しかも、日本国政府がかわいいわれわれの沖繩同胞にやるのですから、それだったら、何か日本がいかにも莫大な援助をしておるのだという、そういう見せかけの政治はやめるべきだと私は思う。こういう点は私は非常に不愉快だと思うのです。こういうところは、会計検査をもう少しきちっとやって——大蔵省から出ておるあれは、もちろん公文書とはいわないかもしれぬけれども、国の予算といって代議士がみんな読んでおるものにはちゃんと書いてあるのですからね。こういう点はもう少し十分注意をしてもらっておかぬと困ります。この問題はこのくらいにして、次に移ります。  これは荒木文部大臣ですが、沖繩の三十七年度の南方同胞援護会補助金という中に、教科書の贈与として千八百四十七万六千円を計上しておるわけです。一体この贈与というのは、これは日本昭和三十七年に計上をした七億円ですね、義務教育諸学校において昭和三十八年四月一日から入学する子供には、一年生に限って教科書を無償で贈与しますというものに対応するものなのか、それとも、低所得階層の小中学校の生徒に対して、本土と同様に教科書なり学用品を無料でやろうとする経費なのか、これはどっちなんですか。
  80. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答えいたします。  七億円に見合うものであります。
  81. 滝井義高

    滝井委員 七億円に見合うものだとすると、これは一年生に限って無償でやるという経費ですね。それに間違いないですね。
  82. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 今のお話はちょっと違います。本土では一年生に給与するというその裏づけとしては七億円でございますが、沖繩では、すでに御案内の通り、一年から六年まで一緒にやりたいという希望を持っておりまして、従って、本土は一年生だけでございますけれども、沖繩の方は一年から六年まで一ぺんにやるという内容に見合うことになります。国内の予算として見ました場合にどうなるかというさっきのお尋ねのことだとすれば、七億円に見合うものだ、こう申し上げることに間違いはないのですけれども、中身は、本土と沖繩とは結果的には違っておるということであります。
  83. 滝井義高

    滝井委員 これは少しこまかいところですから、主計局長にお尋ねしますが、三十七年の予算の説明によりますと、低所得世帯の小中学校に対して、ほぼ本土と同様に教科書、学用品等を贈与するために、南方同胞援護会の補助金の中に計上しているので、荒木さんの言うのとはこれは違うのですがね。
  84. 石野信一

    ○石野政府委員 お尋ねの通り、三十七年度の分は、今の準要保護等の児童に対する分でございます。文部大臣がお答えになりましたのは、三十八年度分とちょっと間違えたんじゃないかと思うのですが、その辺はまた……。
  85. 滝井義高

    滝井委員 答弁が食い違っております。これは荒木さん、しっかり答えてもらわぬといかぬところですよ。対米関係ですからね。横の大平さん非常に神経質になっておるところだから、しっかり答えてもらわなければならぬが、千八百四十八万六千円というものが、主計局長答弁によれば、三十七年度分は、日本内地と同じように準要保護児童、いわゆる低所得階層にやるためのものだ、こういう答弁です。そうしますと、三十七年における沖繩の予算の中には、三十八年四月一日からの子供に教科書を無償でやるという経費はないことになるのです。こうわれわれは理解しておるのですが、あなたの今の答弁では、これは七億に見合うものだということになると、七億というのは、三十八年四月一日からやるものなんですからね。だから三十七年に計上しておるのです。食い違ったわけです。
  86. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。  食い違っております。それはちょっと弁解させていただきますが、本土では、予算としては三十七年度予算に組んだものを、三十八年度に使用するということで、一年ずれるものですから、その間ちょっと私の理解の混乱がございました。間違っておりました。
  87. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三十七年度分の千八百四十八万は準要保護児童だ。そこで今度は、三十八年の予算で一体どの項に一その教科書の無償でやる分は、日本の三十七年の七億に見合う分と三十八年の二十七億に見合う分が計上されておらなければやれないことになるわけです。それは沖繩のどこに計上してありますか。
  88. 石野信一

    ○石野政府委員 三十八年度では、三十九年の四月から一年生から三年生に対する教科書の無償供与を一応予定して四千二百四十七万一千円を計上いたしております。南方同胞援護会の援助費に計上をしております。
  89. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今アメリカから——アメリカというか、沖繩から要望をしておる、三十八年四月一日の一年から六年までに無償で配布をしたいという予算がないわけです。これは大蔵大臣、文部大臣、どういう工合にしてあげますか。
  90. 石野信一

    ○石野政府委員 私ども聞いておりますところでは、今アメリカの方との交渉で、三十八年度から一年生から六年生までを、三分の一日本の方の負担で、三分の二を先方の負担でやってもらえないかというような話があるようでございます。従いまして、それを三十八年度で今申したような予算を組んでありますが、もし三分の一ということになりますと、金額としては今の四千二百万円よりは少なくなるわけでございますが、これは政府全体としてどういうふうに扱いますか、予算の問題等を含めて、どういうふうに処理するかを目下検討中であります。
  91. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三十九年四月一日から予定をしておる四千二百四十七万円を、とりあえず三十九年でなくて、三十八年の四月一日から入学する沖繩の児童に対して、一年から六年までを無料にしましょう、こういう沖繩政府なりアメリカの民政府要請にこたえようというのが、日本の池田内閣沖繩に対する教科書の政策ですか、こう理解してさしつかえないのですか。ちょっとこれは政治的ですから、どちらか一つはっきりお答え下さい。
  92. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 先ほど来論議されておりますように、沖繩島民は日本人であるという自覚を持っております。条約上の解釈等のことは一応別といたしまして、現実に日本の国内法が直接適用されておらない状態におきましても、なおかつ、なるべく本土並みのことをやってあげたいものだと、一般論としては考えるわけであります。そういうことで、日本の国内、本土的な予算措置からいいますれば、沖繩関係も三十七年度の問題として、沖繩自身が予算措置をするのが、もし同じ法律が適用されるとすれば、そうあるべかりしものですけれども、そうでなくて、予算の盛り方としては、一年おくれて沖繩の方ではなるわけであります。ですけれども、本土が三十八年度から現実に小学校一年の無償給与が実現しまする限りは、発足はできるだけ一緒でありたいと向こうも思うし、こっちもできればそうしたいと思うわけであります。そういう意味からいたしまして、沖繩の方が本土と違って、しょっぱなから一年から六年まで無償給与にしたいという希望そのものは、かれこれ言うべきことじゃない、けっこうだと申すべき事柄だと思います。従って、沖繩のその希望を実現するために、何とか処置できるものならばしたいというのが、先ほど来からの御説明であります。
  93. 滝井義高

    滝井委員 措置したいというのはわかるのだが、予算審議ですからね。予算審議だから、一つ、きょう文部大臣、大蔵大臣二人いらっしゃるのだから、はっきりしてもらわないと、出す経費がないのですよ。あなたがここで大蔵大臣の了承を得ずに勝手にそういう答弁をしたって納得できないところなんです。大蔵省が押えているところですから……。  そこで、これは三十九年の四月一日からの分を回すとすれば、三十九年の予算を今度は補正してもらわなければならぬことになるわけです。あるいは予備費で必ずその分だけは充当しますという言明をもらっておかないと、荒木さん、これはあとで大へんなことになります。その点を一つはっきりしておいて下さい。
  94. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど主計局長から申し上げました通りアメリカ側は三分の二を負担して、三十八年四月一日から行ないたいという意思表示がありますし、それにこたえようという態勢に対しては、先ほど申し上げました通り精神的には、文部大臣が言う通り、いいことでありますから、できるだけ御協力をいたしたいという考えはございますが、今予算審議の問題で御質問いただいておるのでありますし、現在まだ政府としては結論が出ておりません。向こうの申し入れを受けておるという状態でありますので、検討中と御答弁申し上げておるわけであります。
  95. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、それではどうもちょっと困るのです、検討中では。はっきり一つしてもらわなければならぬ。どうですか、これははっきりしてもらいたいのです。あなたの政治的な勇断で、荒木さんも非常に要望しておるし、あなたも検討と言わずに、こたえるならこたえる。しかも、その三分の一は四千二百万程度あれば——何か聞くところによると、三十万ドル全部で要るのだ、日本の負担分三分の一の十万ドルくらいでいいということになれば、三千五、六百万円あればいいのです。だから四千二百万を流用して、あとで来年度分は予備費か何かでやるならやる、こういう考え方をやるということになれば、それから先の技術上の問題は、何も社会党だからといってけしからぬじゃないかというようなことは申しませんから、一つ……。
  96. 田中角榮

    田中国務大臣 これにこたえたいということは、先ほど申しておる通りでありますが、予算は未成立の状態でありまして、これが成立してから移流用その他でもってということになれば、移流用の措置でできるわけでございますが、今ここで——まだ政府の最終的態度が決定しておりませんから、ここで私が言明をすれば、決定になります。決定をすると、内容変更という問題もございますし、そういう問題もありますので、まだ政府状態としては、こたえたいという基本的な考えは文部大臣が申し上げた通りでありますが、予算書に計上してあります予算の現状におきましては、本件に対しては未確定でありますので、このまま御審議を進めていただきたい、こういうふうに分けて申し上げておるのです。
  97. 塚原俊郎

    塚原委員長 滝井君に申し上げます。申し合わせの時間が経過いたしましたので、結論をお急ぎ願います。
  98. 滝井義高

    滝井委員 以心伝心、よくわかりました。沖繩の住民が日本人であるという確信のもとに立って、荒木文部大臣の御答弁があったわけですが、そこで問題は、沖繩の教育方針です。予算書を見てみますと、日本沖繩との間には多く人的交流を行なう予算というものがずいぶん計上されております。しかし、教育というものは、池田総理も人づくりで言われるように、やはり施設があり、そしてその児童を指導する教師、人の問題があります。同時に、その施設と人が一体になって教育をしていく教育内容の問題があるわけです。ところが、沖繩日本との間の交流というものは、人的交流は多いけれども、文教設備に対するお金というものは出ていない。設備に対する金は一文も出ていない。これは一体どうして出せないかということが一つ。  それからいま一つは、沖繩における教育方針というものは、日本の学校教育法なり教育基本法にのっとってやられておるのかどうかということです。沖繩人日本人であるとするならば、当然そうあるべきだと思いますが、その二点に対する文部大臣一つ見解を承っておきたいと思うのです。
  99. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申します。  沖繩の教育の実態は、日本法律が直接適用される形でないことは言うまでもないのですけれども、学校教育法、教育基本法、その他の法制は、すでに御案内と思いますが、日本の本土とほとんど同じ内容で行なわれております。また、教科書にいたしましても、文部省で検定しました教科書の中から、沖繩の教育委員会が選定をいたしまして使用いたしております。従って、形式は別としまして、実質的にはほとんど同じだと申し上げても差しつかえない状態だと思います。その上に、今御指摘通り、人的交流を通じまして、たとえば指導員の派遣、それを向こうでも喜んで受け入れまして、指導を受けながら教師が教育に従事しておる。さらには育英関係におきましても、日本から贈与をいたしましてやっておることも、これまた御案内のごとくであります。そういうことで、内容的には以上申し上げる通りであります。  施設、設備について、お話のように、特に日本から援助をいたしていないのでございますが、これは向こう側が受けたくないとか、こっち側がやりたくないとかいうことでなくて、問題としますと、沖繩政府、さらには弁務官なんかとの連絡の上で、現実問題として、ケース・バイ・ケースで解決しながら積み重ねていくという今までの足取りでございまして、そこまでたどり着き得ないでおるということでありまして、やらない考えではございません。
  100. 滝井義高

    滝井委員 時間がきましたが、ちょうど一番大事なところになってきたわけですが、もう仕方がないですから、最後に、一番重要なところをお尋ねします。文部省は一応けっこうでございます。  そうしますと、沖繩のこの予算を見ますと、この一月になってから莫大な繰り越し明許を国会に提出しておるわけです。三十七年度の沖繩援助経費、三十八年度への繰り越し明許が、沖繩の十億ばかりの援助金の中で、七億一千二百九十万九千円も繰り越し明許している。それから三十八年度の総理府所管の予算を見ても、重要な経費は軒並みに繰り越明許をとっておるわけです。一体どうしてこんなに政府としては繰り越し明許をとらなければならぬのかということです。これを一つ、まず明らかにしておいてもらいたいと思います。
  101. 田中角榮

    田中国務大臣 沖繩の問題につきましては、日本の会計年度、それからアメリカ政府の会計年度が違うということ、それから沖繩が、それに合わせて、日本の地方財政計画を立てるように、三カ所における予算というものを合わせて使わなければならないというところに相当問題があるし、今まだ弁務官官制度もありますから、一つ一つチェックを受けるというような問題があると思います。私も、この予算編成に際して、沖繩に対してより積極的な前向きな態勢を日本政府が示すためには、内地の予算と同じように、繰り越し明許というような、一つずつのその会計債務も、支出に対しても、そういう制度を続けていく方がいいのか、ある意味において沖繩の自主性を尊重するために、一括交付制度というようなものがとり得るのかというような問題に対して、相当慎重な検討をいたしたわけでありますが、現在の予算の建前から言いますと、内容別に全部国会の御審議を求めるという制度をとっておりますので、年度内に行なえないという問題に対しては、当然明許制度を活用しておる、また繰り越しも非常に多いということであって、誠意が実際の問題としては通じないではないかということにもなりますし、沖繩住民の福祉向上のためには何らかの方法をもっと考えてやらなければならぬというような問題に対しては、財政当局としても検討いたしております。
  102. 滝井義高

    滝井委員 それだけの説明だけでは、この三十八年度予算を審議する答弁としては納得ができないわけです。現実に十億ばかりの予算をお組みになって、その中で三十七年度において七億も繰り越し明許をしなければならぬ。しかも、これは、沖繩の経済開発の重要な項目が全部軒並みに繰り越しているのです。そうして、そういう莫大な繰り越し明許を持ちながら、今年、大平さんではないけれども、アメリカも倍にしました、日本も倍にしました、こういうことで、十九億八千八百万円のうち、十三億八千四百万円を援助費として沖繩にやるのですからね、沖繩琉球政府に。そうすると、そのほとんどのものが軒並みに繰り越し明許になっている。現実に三十七年度から三十八年度に七億の繰り越し明許があり、その上にまた十八億、十九億を積み上げて、その中で、十三億というものはほとんど全部が繰り越し明許になっていく、こういうことは、幾ら沖繩がわれわれと同胞であるといったって、こんなでたらめな予算の組み方はないですよ。しかも、その経費については、昨年会計検査をやると言ったが、一体会計検査が行なわれておるかどうかということです。それから、聞くところによると、沖繩との間に琉球諸島に対する援助金に関する覚書というものをつくっておる、こういうことになっておるわけです。まず、会計検査が行なわれておるかどうか、それから琉球諸島に対する援助金に関する覚書の内容はどういうものか、ここで一つ明らかにしてもらいたいと思うのです。
  103. 徳安實藏

    徳安政府委員 お答えいたします。  三十七年度の予算が大へん施行がおくれておりますことは、実は三十七年度から初めて向こうの予算に、日本政府の金を入れて仕事をするということになったものでありますから、アメリカ日本関係あるいは琉球政府との関係に、ただいまお話しのような覚書の交換をする必要がございました。その覚書の交換のために非常に時間を費やしまして、ようやく覚書ができましたのが昨年の十二月でございます。その以前に金をやりますことは危険でございますから、そうしたものがはっきりしません限りは出すわけに参りませんでした。その後、私どもはやはり日本の予算をやるものでありますから、会計検査等につきましてもできるだけ内地と同様な処置をとりたいという考え方で、書式等も向こうに交渉しておるわけでございましたが、向こうの考え方と私どもの日本考え方が少し行き違いがございまして、その施行に伴いますいろんな書類にもまた日をとりまして、ようやく先般その点について意見が一致したような状態でございます。さような関係から三十七年度の予算が非常におくれて参りまして、先方は七月一日からの予算開始期になっております関係から、できることなら六月の三十日まで一ぱい日本の方の三十七年度の予算を使わしてほしいという琉球政府要請もございましたので、この書類の上について正確な見当がつきかねておりましたために、予算提出のときには、三十七年度のものを一応来年度の予算、つまり、六月三十日の沖繩の会計年度一ぱいに使えるような処置を便宜とらしていただいたという考え方でございます。これは、アメリカ側にも私参りましてしばしば折衝したのでございますが、最初が肝心で、ここではっきりとどちらも誤解のないようにきめておけば、三十八年度からの予算は最初からするすると使用できるわけであるから、最初だから一つがまんしてくれということでございまして、いろいろな手続の関係上、覚書がおくれたということが最大の原因でございます。なお、三十八年度は、今日から明許をお願いしておりますのは、今申し上げましたように、日本では四月一日からでございますが、向こうにこの金が組み入れられますのは、七月一日に予算年度に入るものでございますから、当然三月おくれるわけでございまして、そういう幅を持たせて——予算の開始期が違うものですから、むしろ初めから明許をしておいた方がよかろうということでやっておるわけでございます。  予算の施行に対する会計につきましては、会計検査院の方から御報告があると思いますが、三十七年度の事業に対しましては、先ほど申し上げましたような関係で、まだ工事が始まっていないものがほとんど大部分という状態でございますから、おそらくは会計検査の手続も整っていないかと思います。
  104. 滝井義高

    滝井委員 覚書の内容を発表してもらいたい。
  105. 徳安實藏

    徳安政府委員 それでは覚書の大綱につきましては、ただいま局長から御説明するようにいたします。
  106. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 覚書の大要を申し上げますが、最初には向こうに交付する・総額を書いてございます。たとえば金の支払い方法でございます。ドルであるか円であるかというような問題、あるいは琉球政府が仕事をしようとする場合に、あらかじめ事業計画を添えて日本側の承認を求めてもらいたいというような問題、あるいは金の支払いの時期、清算払い、概算払いというような問題、あるいは事業の進行状況の報告をしてもらいたいというようなこと、あるいは必要な場合にはこちらから技術専門家を派遣する、あるいは事業の終了後報告書をもらう、あるいは会計検査日本側として行なう、あるいはまた援助金によって生じたものを目的以外に使ってもらっては困る、そういうふうな内容を持ちました覚書でございます。
  107. 滝井義高

    滝井委員 できればその内容をあとで一つの文書で出してもらいたいと思うのです。  それから、一体こういう覚書というものは、今会計検査の問題も出ましたが、恒久的にこれはずっともうその覚書でいくものなのですか。それとも、毎年々々アメリカ側なり沖繩側と日本政府とやることになるのかということ、それからそれと関連をして、大平さんの方に伺いますが、日米協議委員会というものをおつくりになることになったわけです。これは昨年ライシャワー大使とあなたとの間に話し合いができた。その沖繩における技術協議委員会とこの日本における日米協議委員会が、沖繩の技術的なことをやる、こういうのが新聞に出ておったのですが、当然この覚書のこういうものを大きくカバーをしながら、大局的に日本アメリカ日本沖繩とのこの三角関係、こういうものを処理するというのは、それによってやられるのだと思うのですが、これもあなたの本会議場の演説の中には、新聞を見ると、そこらあたりがはっきりしていないのですけれども、あなたの外交演説の草稿の中には、設けることが書いてあるわけですね。この構想、これと今の覚書の関係、それから同時に構成ですね。現地においてはキヤラウエイ高等弁務官が一番主宰者になるのだが、施政権者のキヤラウエイのもとにおいては、日本の出先の人や琉球政府というものは御前会議になる可能性がある。御前会議になってしまう。この日米琉三つの間の予算の執行、もろもろの交渉を円滑にやるためには、やはりこの日米間の協議委員会なり現地における技術協議委員会というものが、有効適切に政治的に、外交的に動かなければならぬと思うのです。こういう点に対する大平外務大臣見解一つ詳細に御説明願いたいと思うのです。  それから、さいぜんの覚書の内容を文書で出してもらうことを再びお願いして、これで私は終わります。
  108. 徳安實藏

    徳安政府委員 お答え申し上げます。  覚書につきましては、特連局長琉球政府の内政局長との間に覚書を交換することになっております。これは一年限りで更新することになっておりますが、しかし、両者の話し合いで不都合なことがございますとか、非常に大きな欠陥が生じない限りは、継続して更新していこうという話し合いになっておるのでございます。
  109. 大平正芳

    大平国務大臣 外交演説でも申し上げました通り、旧臘来沖繩に対する協力の関係を御相談するために、東京に日米協議委員会、那覇に日米琉技術協議委員会というものをつくろうじゃないかということで、今それをどう具体化して参るか、そのメンバーをどのようにするかということを私どもで検討中でございまして、なるべく近いうちにそのようにいたしたいと思っております。  それから、先ほどの覚書と今度つくります協議会との関係でございますが、三者の協力関係を明確にし、かつ、公正を期することは、いかなる場合にも考えておかなければならぬことでございます。せっかく日琉の間で、今総務長官からお話がございましたような覚書がかわされておるわけでございまして、私どもは、そういうことについては、これを尊重して公正を期していかなければならぬと思います。
  110. 滝井義高

    滝井委員 大臣、私いろいろ御質問申し上げました沖繩の問題というのは、今あなた方の答弁からもおわかりのように、非常に大きな隘路が横たわっておるわけです。そして、沖繩条約上なり法律上の地位というものも必ずしも明確でございません。かつて沖繩は怒りの島だといわれたのです。基地反対で沖繩はみんなずいぶん沸騰しておった。ところが、だんだん今度、怒りの島が基地の島沖繩になった。そして今はどうなっておるかというと、基地に依存をする島沖繩になった。基地に依存をしなければ沖繩が生きていけないということは、沖繩アメリカが根をおろし始めたということなんです。大平外務大臣、これはよほどふんどしを締め直して、田中大蔵大臣は、予算の支出その他についてはやはり相当姿勢を正し、えりを正してアメリカ当局と折衝をして、そしてほんとうに沖繩がすみやかに日本に帰れるような態勢をあなた方は勇気をもってやらぬと、悔いを千載に残すことになると思うのです。そういう点について、私はせっかくの御努力を要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  111. 塚原俊郎

    塚原委員長 大原亨君。   〔委員長退席、青木委員長代理着席〕
  112. 大原亨

    大原委員 最初に、三公社五現業の今問題となっております労使関係につきまして御質問をいたします。  公労協の労使関係の問題は、毎年春の時期にいろいろと混乱を起こします。しかも、この問題は、国際的にも非常に大きな影響を持ち、ILO八十七号条約の批准に関連いたしておることからも、きわめて重大な問題であると私は思います。しかしながら、三公社五現業各当局のこの労使関係に対処する姿勢や、あるいは政府全体の考え方の中に、欠陥をたくさん持っておるということから、この問題がこじれて参りますと、不当な混乱を招く結果になります。従って、公労協における労使関係を正常化するために、特に十五日を前にいたしまして、昨日の団交で、政府側の一部の態度表明があったようでございますので、それらの問題を中心といたしましても、三公社五現業の当局あるいは労働大臣、官房長官、大蔵大臣、各省大臣に対しまして、それぞれ質問をいたしたいと思います。  第一番目は、今日までの交渉経過についてでございますが、これは郵政大臣にお尋ねをいたしたいと思うのです。一人々々お尋ねしたいのですが、これは時間の関係もございますから……。今までの交渉では、昨日の問題から見てみましても、郵政省の態度はきわめて重大でございますから、郵政大臣に一応集中的に質問いたしますが、要求書は大体いつごろ出て、どのような交渉をして、どのような回答をしたのか、これを簡潔に御答弁いただきます。
  113. 小沢久太郎

    ○小沢国務大臣 ただいま御質問の件につきましては、昨年十一月全逓から、組合員一人当たり六千円の賃上げの要求がありました。それから、全特定から五千円、郵政労組から五千円賃上げの要求がございました。その後今日まで団体交渉を続けてきたわけでございますけれども、昨日になりまして、当省といたしましては、昨日の団体交渉におきまして、全職員に対しましてベース・アップは行なわないけれども、本年四月から高校卒業者の初任給を六百円引き上げるとともに、約五万七千人の若い職員に対しまして六百円から百円の間の俸給の引き上げを行なうことを内容とする具体案を組合に示したわけであります。
  114. 大原亨

    大原委員 郵政大臣にお尋ねいたします。昨年の十一月に要求書が出ましてから、この問題につきまして何回団体交渉をお持ちになりましたか。
  115. 小沢久太郎

    ○小沢国務大臣 年末にかけまして三回団交をやりました。
  116. 大原亨

    大原委員 郵政大臣初め三公社五現業の当局は、昨年の春闘における仲裁裁定に際しまして、仲裁裁定を了承しているはずですが、いかがですか。仲裁裁定を承認いたして妥結をしたと思いますけれども、いかがですか。
  117. 小沢久太郎

    ○小沢国務大臣 了承しております。
  118. 大原亨

    大原委員 その中にも繰り返して申し述べてありますが、三公社五現業の仲裁書には全部出ておりますけれども、とにかく三公社五現業の労使関係は、団体交渉について当局は誠意をもって応じていない、これはきわめて遺憾である、こういう意味のことが端的に述べてあるのであります。そうして、公労委の兼子会長は、仲裁裁定の妥結にあたりまして、異例の記者発表をいたしましてその点を重ねて指摘いたしております。つまり、三公社五現業の労使関係においては団体交渉権が保障されている。しかし、ストライキ権がない。制限をされた団体交渉ですけれども、しかし、正常に行なわれるということが基本でなければならないのに、団体交渉がわずか一、二回で、しかも重要な予算案が通ってしまうという段階を迎えるというふうなことは、きわめて怠慢であると思う。そういう点で、仲裁裁定を了承しておられるけれども、その点は……。私の申し上げる全逓やその他の問題は、国際的にも影響ある問題ですけれども、当事者としてきわめて怠慢であると思うが、いかがですか。   〔青木委員長代理退席、赤澤委員長代理着席〕
  119. 小沢久太郎

    ○小沢国務大臣 われわれの方は誠意をもって団交を続けてきたわけでございます。
  120. 大原亨

    大原委員 それではお尋ねいたします。ベアをしない、賃上げをしない、こういう方針を回答されたということですけれども、それはどういう根拠においてされたのですか。
  121. 小沢久太郎

    ○小沢国務大臣 物価の値上がりが微弱でございまして、賃上げするまでに至らないというようなことでございます。
  122. 大原亨

    大原委員 それではきわめて誠意のない答弁ですから、私は、郵政大臣一つ集中的に質問いたします。  三公社五現業では、従業員労働者の賃金を決定する法律の根拠や基準、こういうものはどうなっておりますか。
  123. 小沢久太郎

    ○小沢国務大臣 郵政職員の給与につきましては、五現業職員につきましては、給与の基本法であるところの給与特別法というものがございまして、それにおきまして、職員の給与は、一般公務員の給与及び民間給与その他の事情を考慮しつつ定めなければならないという規定がございますが、それによってしているわけでございます。
  124. 大原亨

    大原委員 昨年春の妥結の仲裁裁定の主文と理由書がございますが、その主文の裏づけとなる理由書におきましては、この措置によって、つまり、昨年の賃上げの仲裁裁定の措置によって、公務員給与と公共企業体等の職員の賃金との従来からの関係はおおむね考慮されたものと見ることができよう、つまり、このことは、昨年の仲裁裁定によって、一昨年の人事院勧告によるベース改定——この問題はあとで触れますけれども、それと大体見合う賃金になるという、そういう考え方において昨年の仲裁裁定が出されまして、六%、千三百六十円が出されたのですが、それによって初めて公務員とのバランスをとったというのです。その後、御承知のように、去年の五月の人事院勧告がございまして、給与法の改正案が出されているわけです。それは七・九%の賃金上昇であります。そういうことから考えてみまして、そこにはあなたが示された基準の法律となるべき条項の国家公務員という点から考えてみましても、すでに差ができておるじゃありませんか。昨年仲裁裁定を承認をされたことと矛盾をするじゃありませんか。そういうことをやっておるから、労使関係が次から次へといろいろな問題が発生するのです。公労協の賃金については、もう少し確固たる態度をとらなければ、そこにおられる大蔵大臣とか政府に対して、予算上の問題についていろいろ遠慮せられるのだろうけれども、おかしいじゃないですか。もう少し筋の通った態度をとらなければならぬ。矛盾しておらぬですか。
  125. 小沢久太郎

    ○小沢国務大臣 ただいまの御質問の御趣旨でございますけれども、その裁定を実施した場合の結果としては、公務員との関係が考慮されたということになるという事実を指摘したことでございまして、この解釈は、われわれといたしましては、従来からの関係についてのものでございまして、将来の方向については何ら触れているものではないというふうに解釈しているものでございます。
  126. 大原亨

    大原委員 そんな答弁ないですよ。将来については触れていないけれども、しかしながら、昨年の仲裁裁定において公務員とのバランスのとれた後において、人事院勧告があったのでしょう。そうすると、今私が申し上げたように、三公社五現業の職員の賃金の基準は、公務員や民間賃金やその他の事情によってきめるとあなたは答弁したじゃないですか。そういうことから考えてみても、あなたのいわゆるベース改定、賃上げを認めないというようなゼロ回答というのは、筋が通らないじゃないですか、納得させることはできないじゃないですか。そういう点を言っているのです。
  127. 小沢久太郎

    ○小沢国務大臣 われわれは、先ほど申し上げましたような裁定の解釈によりましてやっておるわけでございまして、たとえば今度公務員の賃上げがございましても、われわれの方の賃金と支障を来たすことはないというふうな考えでございます。
  128. 大原亨

    大原委員 そんなことだったら、大臣はだれでもできますよ。そんな答弁でいくんだったら、議事は進行しませんよ。もう一回言いますよ。私はちゃんと分けて言っておる。昨年の仲裁裁定で公務員とのバランスをとったという。その後人事院勧告があって、七・一%から九・一%まで、七・九%平均の平年度賃上げが勧告されて、給与法ができておる。実施時期については問題があるけれども、できておる。そういう一つの賃金決定の基準だけを考えてみたところで、その法律を守っておらぬのはあなたじゃないか。三公社五現業の当局は、特にきのうはあなたの方が団体交渉をやっておるようだけれども、あなたの方は法律を守っておらぬじゃないか。そういうことをしたのでは、公共性ということを言ったって、これは納得できませんよ。いかがです。
  129. 小沢久太郎

    ○小沢国務大臣 先ほども申し上げました通り、結果といたしまして、公務員との関係が考慮されたということにはなっておりますけれども、将来に対してこれをどうということはないという関係でやっておるわけでございます。
  130. 大原亨

    大原委員 そんなあなたの答弁はないですよ。何回繰り返しても同じだけれども、公労協の従業員の賃金を決定する基準は、法律によって、公務員と民間給与と……。(発言する者あり)うしろから言っているからだめじゃないですか、聞こえないから。いいですか。私が言ってからやったらいい。公務員の賃金と民間給与、物価その他の事情、そういうものによって決定するという法律をきめておいて、公務員の賃金一つだけを取り上げておるけれども、公務員の賃金を考えてみたって、あなたのところの職員は、公労協の現業職員であると一緒に、公務員の身分を持っておる。そういういろいろ政治的な規制もしておるのだ。そういうものに対して公務員よりも低い賃金をやることは違法ではないか。法律に違反をしないか。その中身を言っているんです。
  131. 小沢久太郎

    ○小沢国務大臣 私の方で決定いたしまして、公務員の給料が上がりましても、私の方の給料が低いということはございません。
  132. 大原亨

    大原委員 あなたの今さっきの答弁では、去年の仲裁裁定というものは、今までの、その当時までの公務員とのバランスをとったのだ、こうあなたは言ったわけだ。しかし、それ以後のことについては約束はいたしておりませんと言った。それはそうかもしれない。しかしながら、あなたが言われたように、公労協の従業員の賃金の決定の原則は三つほどあげてある。それは当然ですよ。それが公共性というものなんだ。公共性というものは、そういうものを含めておる。公共の福祉というものは、そういう内容を含んでおる。憲法の論議はですよ。だから、それは法律を無視しておる。あなたのところは公務員の賃金——身分は公務員です。そういう従業員に対して、筋の通らない、法律に違反したことをやっておるじゃないか。誠意がないじゃないか。公務員の給与ということははっきり書いてあるのですよ。その公務員の給与が、人事院勧告でいろいろ不満があり、論議があるけれども、ベース改定されようとする。そういう法律の事実があるのに、あなたはそれを無視してやるということは、あなたのつくっている法律に違反をしはしないか。
  133. 小沢久太郎

    ○小沢国務大臣 先ほども申し上げましたように、法律違反はしてございません。
  134. 大原亨

    大原委員 理由を言いなさいよ。私の質問に対しまして、内容的な答弁をしなさいよ。そうでなかったら大臣の資格はありませんよ。あなたは郵政大臣をやめたらどうですか。内容的な答弁をしなさい。あなたは大蔵大臣がにらんでおるから、ちょっと遠慮してそういうことを言っておるのじゃないか。それじゃ、あとでまたやりますよ。  官房長官にお尋ねいたしますが、大体、公労協、三公社五現業の労使関係というものは、今私が指摘いたしましたように、当事者能力がないのです。これは春闘における春闘相場とか、あるいは日経連とか、あるいは財界のにらみがあって、ゼロ回答しろというふうな大きな圧力もある。あるいは政府全体のそういう方針もあるだろう。これは労働大臣にお尋ねいたしますが、労働政策は中立性だと言いながら、法律に違反をしたことをやっておる。それは当事者能力がないということなんです。それをカバーするのは大蔵大臣であり、総理大臣であり、それらのかなめの役割は官房長官、窓口は官房長官になっているようだけれども、官房長官としては、公労協のそういう要求に対しましては、私は妥当な、だれが考えてみても妥当な結論を出さないと、結局、生活賃金の問題について権利をじゅうりんされれば労働基本権の問題、生存権の問題にかかってくる。ILO八十七号条約の批准の問題もその通りです。そういう観点から、きわめて大切な、国内問題だけでなしに、大切な国際的な問題でもあるわけですが、官房長官は、公労協の賃金引き上げについて交渉されておるようでありますけれども、どのような御見解をお持ちになっておりますか。
  135. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 お答え申しますが、今郵政を初めといたしまして、各公労協おのおの団体交渉をいたしております。これは自主的にお互いにお話し合いになっておりますので、しかも私どもといたしましては、各当局ともに、かなり誠意のある態度で団体交渉に当たっておられ、今交渉中でございますので、とかくの批判がましいことは申したくございませんが、相互に誠意を持って団体交渉に当たられるように願っておる次第でございます。
  136. 大原亨

    大原委員 労働大臣にお尋ねをいたしますが、これは公労法に関係する法律上の問題で、管轄は労働大臣の管轄ですけれども、私が郵政大臣指摘をいたしまして、三公社五現業のどの法律にも、大体同じように、公務員の賃金と民間給与とその他の事情、物価等を勘案してやるということになっておるわけです。これは妥当な考え方です。法律になっておりますけれども、その法律を守ってないというところに——守ってないというのは、公務員の問題について一つだけはっきりしておる問題を言ったわけですが、あとで逐次質問をいたしますが、そういうことでは労使関係の正常化はできないのじゃないか、当局のそういう法律解釈というものは、きわめて誠意がなくて、法律違反をしておるのじゃないか、こういう点についての御見解を明らかにしていただきたい。一つ格調の高い答弁をして下さい。
  137. 大橋武夫

    大橋国務大臣 三公社五現業、ことに五現業につきましては、給与について根拠となる法規があるわけでございますが、この法規の解釈につきましては、それぞれ主務大臣において当たられるべきものでございまして、政府といたしましても、各大臣とも法規を正しく解釈し、正しく運用されておるものと考えております。
  138. 大原亨

    大原委員 それでは大蔵大臣にお尋ねするのですが、大蔵大臣にどういう立場でお尋ねするかというと、財政当局というよりも、専売局がございますね。印刷や造幣等がございますね。あなたは五現業関係の監督大臣です。まず大蔵省みずからの足元のことなんですけれども、大蔵大臣としましては、そういう今論議いたしました問題につきましてどういう御見解をお持ちになっているのか承りたいと思います。
  139. 田中角榮

    田中国務大臣 三公社五現業の職員の給与につきましては、公共企業体等労働関係法規に基づきまして、団体交渉、あっせん、調停あるいは仲裁という制度がありますので、これが活用せられて決定をいたしておるわけでございます。  大蔵省の専売関係や現業に関しましては私が団体交渉の当事者であります。現業に対しては私が責任者でありますので、十分に公務員の給与その他を勘案しまして、適正な配慮を行なうという基本線を堅持をいたしております。
  140. 大原亨

    大原委員 それでは、大蔵大臣に財政当局の責任者としての質問をいたしますが、やはり予算が非常な重大な段階に来まして、一たん決定いたしますとなかなか問題はあとに残るのであります。補正予算ということになるでしょうが、そこでやはり問題は、私が指摘をいたしましたように、職員の賃金を決定する基準を法律で定めながら、これは一応だれも納得できる最低の基準でありながら、しかもその法律を、全部の答弁がはっきりいたしておりまするように、これを無視いたしておるわけです。このことははっきりいたしておる。無視しておるわけです。これは、結局は予算上財政上の問題があると思うのです。そのことを遠慮して言わない。もう一つは、日経連その他の賃金政策の問題があると思います。これは、賢明な大蔵大臣はうなずいておられますから、その点も了承されていると思いますが、そこで問題は、一つ法律論ですけれども、当事者能力を与えるようにあなたが活を入れなければいけません。というのは、法律の修正や補正を当然するような賃金交渉の結果が出てきた場合に、そういう交渉に当局が誠意を持って応じた場合に、当然予算上の措置をとる責任が、団体交渉において妥結したものに対してはある、そのように思いますが、あなたの見解を伺いたい。
  141. 田中角榮

    田中国務大臣 政府は、給与に対しても前向きの考えででありますことは、たびたび明らかにいたしております。でありますから、人事院勧告に対しましても、尊重の建前をとっておりますし、裁定その他に対しても、過去何回か完全実施の線を打ち出しているわけでございます。しかし、実質的な問題を申し上げますと、政府も、何も法律違反を行なうような意思は毛頭ありませんし、できるだけ合理的な賃金体系のもとで決定をしてもらいたいという姿勢であることは、御理解賜わりたいと思います。しかし、戦後の諸法規、諸制度は完備をしつつありますが、やはり新しい制度でありまして、特に民間給与と公務員給与と三公社五現業等の給与には何らかの関連性を持たせるということが原則になっております。でありますから、あなたが今言われた通り、予算案も審議中ではないか、予算が通ってしまってからであれば、仲裁が出た場合でも、これを完全実施するという場合当然補正予算を組まなければならぬじゃないか、そういう二重の手続をするよりも、理想的な面からいえば、予算がきまる、概算要求をする八月三十一日からの予算編成の過程において来年度からの給与が確定をすることがより理想的であることは、私どももそう考えておりますが、春闘の結果を見て人事院の勧告が出される、人事院の勧告がなされたことによってまた仲裁がというようなことで、関連があるために、いわゆる均衡を保たなければならないという配慮のもとに、時期的にいつでも今のような時期になる。これは、予算の提出期とちぐはぐになるという問題はありますので、将来の合理的な運営として、これらの問題をどう調和していくかという問題に対しては、お互い労使の間でも十分検討していかなければならぬ問題だし、一つづつ片づけていかなければならぬ問題だと思います。また裁定その他に対して、また裁定までいかなくとも、団体交渉でまとまったというものに対しては、当然政府としてもその責任を果たすべく諸般の措置を考慮したいと考えます。
  142. 大原亨

    大原委員 労働大臣質問いたしますが、私が大蔵大臣質問いたしました点で答えられてない部面はこういう点です。つまり三公社五現業におきまして、労使関係で団体交渉の結果妥結いたしました賃金協定というものが出て参りましたならば、予算の変更を要する場合においては、当然法律的に、あるいは政治的にも政府はこれを修正すべきものであるこういうことは、労働協約の法律的な効力の問題として定説でありますけれども、労働大臣の御見解を伺いたい。
  143. 大橋武夫

    大橋国務大臣 労使当事者が自主的団体交渉によりまして妥結した協定の内容が、予算上・資金上不可能な資金の支出を内容とするものでありますときは、公労法第十六条の定めによりまして、国会の議決を求めることになるわけでございますし、国会の承認があった場合においては、当然所要の措置を講ずることになると考えます。
  144. 大原亨

    大原委員 そういう片面の、あるいは消極的な答弁をなさる見解を持つから、自主交渉が進まない。自主交渉が進まないものですから、ますます労使関係が混乱をする。そこで、私が言っているのは、団体交渉とこれに基づく労働協約の法律的な効力というものは、国会に対してはそうですけれども、これは何回も議論されたことですが、基本的な問題ですから言うわけですが、そういう労働協約で妥結をされたものは、行政府が当然に法律案、予算案、特に予算案を修正して国会提案する。これを国会においてどうするかという問題については、国会の自主的な審議にまかせるわけですけれども、行政府としての政府は、当然にそのことを出すのだ、こういう全体の考え方の統一ができておらないと、政治的な圧力やその他において、この当事者の能力というものが非常に問題を生じて不信を招く、そういうことで混乱すると思うのですが、その点をもう一度労働大臣の方から答弁して下さい。
  145. 大橋武夫

    大橋国務大臣 法律規定は、先ほど申し上げました通りになっております。あとはこの法律の運用をする場合にあたっての政府考え方でございますが、これはやはりそのときの協定の内容なり、またその際における諸般の情勢なりをもとにして、政府政治的な責任を持って判断して、行動するのがよかろうと思います。
  146. 大原亨

    大原委員 そういう解釈は当たらずといえども遠からずというのですが、しかし、これは時間がありませんから、大切ですが、蒸し返しません。あなたの解釈は、憲法の二十八条から出発いたしまして、労使関係の問題、労働法、公労法からいいまして、労働協約の締結権の法律的な効力の問題に至りますと、もとへ返ってきて、場合によれば、行政府当局の態度いかんによっては、基本的な人権、労働基本権の侵害ということになる。だから、国会へ何回も提案いたしまして否決になりましても、政府は団体交渉の結果である協定に基づいてその原案を国会提案するという法律上、あるいは政治上の責任があるわけです。そこで問題は、官房長官を窓口とする一つの大きな団体交渉、三公社五現業の団体交渉になると思うのですが、かつて、大平さん見えておりませんが、大平官房長官のときに、一昨年でありましたが、三公社五現業との団体交渉におきまして、大平さんが当時の石田労働大臣と連絡をとりながら窓口になったときに、団体交渉の中で一千円を回答したことがございます。そういうことがございますけれども、官房長官として、あなたはもう少ししっかりした態度でこの団体交渉に臨んでもらいたい。所見はいかがですか。見解一つ聞かして下さい。
  147. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 今窓口というお話がございましたが、実質的に交渉なさいますのは、郵政大臣なり関係の方々でありまして、私どもはよく番頭といわれ、あらゆることを持ってこられますけれども、あらゆる方にお目にかかり、いろいろお話も伺い、お取り次ぎもし、何とかこれがうまくまとまりますようにお手伝いをしておるような次第でありまして、今後ともにお手伝いの範囲内におきまして誠意を尽くして参りたい、かように考えます。
  148. 大原亨

    大原委員 それでは官房長官に重ねて質問いたしますが、三公社五現業職員の給与の基準に関する法律におきましては、その他の事情ということで、物価等を解釈上は入れて考えるわけであります。昨年の仲裁裁定を見ましても、仲裁裁定を出して、ベース改定を若干やったけれども、しかし過去一年間において六%も物価が上がっておる。実質的に賃金が引き下がっておるので、まことに遺憾である、こういう理由書もあるわけです。昭和三十七年、去年一カ年間で物価は大体六%は上昇しておるわけです。その物価の上昇をもやはり加味しながらやらないと、実質賃金は——たとえば家賃等はべらぼうに上がっておるわけですが、実質賃金は逆に低下する、こういうふうに思いますけれども、官房長官のそれに対する理解の程度を一つお示しを願いたい。
  149. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 ただいまの御質問でありますが、御要求につきましても、各企業体におきまして、労使双方が現在置かれております経済状況なり、あるいは企業の状況なり、いろいろお考えになって、自主的に交渉されて御決定になるべきものだと思います。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕 昨日からまた団体交渉が始まりましたばかりでございますから、今その金額、内容について私どもがこれを批評することは差し控えさせていただきたいと思います。
  150. 大原亨

    大原委員 郵政大臣にお尋ねいたしますが、給与の基準につきましては、民間賃金ということがございますね、民間賃金の上昇につきましては、どのように過去一年間にあったか、こういう点についてあなたは資料をお持ちだと思うから、一つ答弁いただきたい。
  151. 小沢久太郎

    ○小沢国務大臣 民間賃金の上昇は、昨年十一月末までに三%程度の上昇を見ておるわけでございます。
  152. 大原亨

    大原委員 この三%という民間賃金の上昇率につきましての議論は、私はいたしませんが、三%の賃金の上昇率を認めたわけでありますが、労働大臣にお尋ねいたしますが、労働大臣は、先般の山花委員質問に対しまして、賃金水準は、本来国民所得の水準と照応するものでございますから、今後も経済成長を達成する過程において、それに見合った改善方向をはかっていくよう努めるのが労働省の労働政策方針であると御答弁なさっておる。国民経済の成長率、つまり池田さんは所得倍増を言う前には、十年間に月給二倍論ということを言ったわけです。これは少なくとも平均七%を下らないような賃上げをいたしまして、二倍になるわけですが、しかし物価が上がりましたら、元も子もないのですから、これは当然実質賃金で考えていかなければなりません。つまりそういう考え方の、やや私どもが理解できました当時の一面は、つまり賃金水準等を上昇させることによって国民経済のひずみを是正していく、減税や物価やいろいろの総合政策もあるわけですが、賃金についてはそういうふうに考えるのだという、基本的なそういう考え方が当初あったはずです。所得倍増政策、経済成長政策が行き詰まって、今不況段階であります。これは失敗いたしておるわけですけれども、しかし経済成長がある、あるいは民間の賃金が三%上昇したと郵政大臣は言っておりますが、そういう点から言いまして、たとえば国民経済の成長ということになれば、経済企画庁の資料によりますと、昨年の第一・四半期のも出ておりますが、国民所得の面でありますと、大体一四%ですか、これは違っておりますか、一年間に相当な国民所得の増大がなされておるわけです。そういう点から考えてみまして、民間賃金と国民所得、経済成長の観点から考えてみましても、政策上の議論につきましては一応おきますけれども、当然このことも考慮をして公労協の賃金の水準を決定すべきである、そう思いますけれども、あなたが御答弁になっておる考え方や、あるいは公労法の精神に従ってのあなたの、労働大臣見解一つ明らかにしていただきたい。
  153. 大橋武夫

    大橋国務大臣 一般論といたしましては、賃金の水準というものは、経済の成長に即応いたしまして改善されるべきものだと考えております。しかしながら、当面問題になっておりまする公労協の団体交渉は、目下進行中でございまするので、この際におきましてこれについて具体的な意見を申し上げることは、差し控えさしていただきたいと存じます。
  154. 大原亨

    大原委員 それでは、公務員の賃金との関係、あるいは民間給与との関係、これは郵政大臣は三%上昇、こういうことを御答弁になりましたが、あるいは物価の上昇、実質賃金の低下、国民所得の上昇、こういう観点から見てみまして、給与に関する法律は、三公社五現業ともそれぞれそういう方針を決定いたしておるわけでございまするから、そういう点で、労働者の方、国民の側が納得できるようなそういう賃金水準の引き上げをやるということはきわめて当然のことであり、かつ公平な政治のあり方であると私は思うのであります。郵政大臣は、今まで逐次質問いたしましても、全然中身のある答弁をいたしません。従って、逐次三公社五現業に対しまして質問をやって参りまするが、国鉄は、今後の自主交渉において、公共企業体国鉄職員の賃金のあり方についてどのようにお考えになっておるか、そういう点を一つ明らかにしてもらいたい。
  155. 河村勝

    ○河村説明員 現在団体交渉を継続中でございますので、事柄の性質上、今後どういうことを言うかという答弁はいたしかねますので、御了承をいただきたいと思います。
  156. 大原亨

    大原委員 国鉄も落第だ。  その次、電電公社の職員の給与に対する見解を明らかにして下さい。
  157. 本多元吉

    ○本多説明員 私どもの給与の基準につきましては、公社法の三十条にございますように、先ほど郵政大臣からお話しございましたような、公務員、民間の給与その他の事情を勘案して給与を考えていくということになっておりますが、当面の賃上げの問題につきまして、私の方も昨日組合側に回答いたしました。昨秋来交渉を重ねて参りまして、検討中でございましたが、昨日回答いたしました。それは、公社は職員の賃金引き上げ、及びこれに関連する要求について慎重に検討して参りましたが、公社財政の現状い及びその他の事情を考慮した結果、遺憾ながら要求には応ぜられないと判断いたしました。しかしながら、最近の情勢から見て一部初任給引き上げの必要性は認められますので、昭和三十八年四月一日以降、中学卒初任給から高校卒初任給までを一律六百円引き上げ、それ以上の号俸については、一号俸ごとに百円を減じた額を現行基本給に加算するよう基本給の改正を行ないたいと考えます。かように昨日回答した次第でございます。
  158. 大原亨

    大原委員 ちょっと電電公社、あなたの方は、今の回答をお聞きいたしておりますと、財政上の理由等というように言っておられますが、それでゼロ回答ということで、六千円の要求に対してそうですが、ちょっと質問するのだが、電電公社は、資本利益率は幾らですか。
  159. 本多元吉

    ○本多説明員 今、そういう資本利益率としての数字を持っておりませんが、私どもの方は、御承知のように電信電話の拡充に対する国民の方々の要請というものが非常に熾烈なものでございまして、料金面におきまして、こういう拡充の点についての建設財源というような点についても御配慮をいただいていると思うのでございます。そういう点で、私ども利益と申しますか、損益勘定上のそういういわゆる利益というものがございましても、これを資本勘定に繰り入れまして、建設財源としてやって参っているわけでございます。そういうわけで、賃金の方を考えるということは財政上できない状態でございます。
  160. 大原亨

    大原委員 電電公社の資本利益率は、国際的に見てみると七%から八%ぐらいだが、日本の電電公社は二五%です。べらぼうにもうかっているわけだ。欲にはきりがないという言葉があるけれども、大体生産性が上がって資本の利益率が上がっていくと、大体電話料金を下げることが一つ、これは国民に還元するのです。それは資本主義のモラルからいったって当然のことです。もう一つは、やはり拡大再生産に使うのです。もう一つは、従業員の賃金を引き上げるのです。こういうことは常識ですよ。あなたの方が誠意を持って団体交渉に当たって、あなたのところだけでも、三公社五現業、特に電電公社の法律、公務員の給与や民間賃金や物価その他の情勢に応じて賃金をきめるということが守られることになれば、これは率先垂範ということになって、財政上の理由も、これは操作の問題でできるわけですから、これは模範を示すことになります。あなたのところは何におびえてそういうことをやっているのか。あなたの答弁は首尾一貫しない。財政上の事情といったって、これは欲にはきりがないのだ。あなたの方がそういう賃上げに対してはっきりした見解を持てば、これは大蔵大臣はおそらくうなずかれると思う。電電公社にお尋ねする。
  161. 本多元吉

    ○本多説明員 お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、いわゆる利益と申しましても、私ども料金を国会で御審議いただきました際に、この点について、今後の電信電話施設の拡充についての財源としての御配慮をいただいてやっていただいたわけなのでございまして、私どもは、やはりこういうものにつきまして、あるいは職員の方への還元というものでございましょうし、しかし、また同時に、国民各層に対して、利用者の各層の方々に対してこれを還元して、いくというとも非常に大切なことである、かように考えているわけでございます。
  162. 大原亨

    大原委員 その答弁では全然納得できません。そういうことをやって労働者や国民が納得できますか。できません。  そこで、質問をいろいろとこれから三公社五現業にやって参りますと、これは時間がかかりますから、あと回しにいたしますが、今までの質疑応答の中で明らかなことは、昨年、約三カ月前に要求書が出て、しかも団体交渉をやる意思もなければ、ほとんどそういう自主的な解決能力もないように見られる。私が法律に基づいて質問いたしましたことや、経済事情に基づいて質問をいたしましたことにつきましては、郵政大臣初め全く答弁ができない。これでは労働者の基本的な人権や権利を保障するという民主主義の根本の問題について問題が起きるのは当然です。  そこで、時間の関係もありますから、私はILO八十七号条約に関連をいたしましてお尋ねいたします。昨年の六月、結社の自由委員会におきまして採択をされました六十六次報告に関連をいたしまして、つまり百七十九号事件、この問題に対する結社の自由委員会の勧告が、理事会において満場一致採択になったのであります。十五日の実力行使を前にいたしまして、私はあとで逐次名前をあげてもよろしいのですが、当局によりましては、厳重処罰するということになっている。そういうことを発表している当局者がある。自分の当事者としての能力や、あるいはやるべきことについて法律に基づいてやっておかないで、そういうことを放棄したものが従業員を処分するなんということはもってのほかである。そのもってのほかであるということを、ILOの昨年の理事会におきまして、結社の自由委員会の勧告を満場一致採択いたしておりますが、そのF項にはこういうふうに述べておる。当該条約批准の意向表明に関連をして、右の批准まで、条約に含まれている諸原則に逆行するような一切の措置をとることを避け、特に労働組合活動による一切の逮捕、解雇、あるいは懲戒をしないよう努力することを日本政府要求すること、このことが満場一致採択になっている。この八十七号条約批准において、公労法四条三項、地公労法五条三項その他、つまり公共企業体の従業員の団結権を制限をしていることが日本の賃金水準を低めておる大きな一つの要因である、その制限を取っ払えということで、しばしば十二回にわたってILOは勧告をいたしておるわけですが、その勧告に付随をいたしまして、F項で勧告に追加をいたしまして、このような逮捕や解雇や懲戒をするということは不当であるということを日本政府に注意を喚起いたしております。このことは八十七号条約批准にも関係いたすと思いますけれども、これに対する労働大臣見解一つ明らかにしていただきたい。
  163. 大橋武夫

    大橋国務大臣 いわゆる勧告のF項につきましては、これは日本に現存する現行法の運用を否認する意味のものではない、従って、現行法による処分を何ら制限したものではないというふうに解釈をいたしておりました。そういう趣旨で、今回の勧告中からはこのF項も削除されたのではないかと思っております。
  164. 大原亨

    大原委員 労働大臣は御承知ありませんが、本年の二月十九日には、結社の自由委員会が開かれます。そこでこういう事実問題を審議しながらこの問題が議論されるわけですけれども、それまで政府はできるだけ何とか言いのがれの措置を講じようといたしております。これは外務大臣にもあとで聞きたいけれども、とにかくあなたが小さな声で言われたように、結社の自由委員会理事会の総会におきまして、日本の代表が、たしか青木公使だったと思いますが、そういう事情を述べたのです。しかしながら、私が申し上げました結社の自由委員会の勧告というものは、八十七号条約を批准する以前において、逮捕とか解雇とか、あるいは懲戒というふうなものを、権利を不当に制限しているのですから、そういうことをやってはなりませんよというふうに注意を喚起いたしておるわけです。従って、今言われたような小さな釈明というものは、国際的には全然承認をされておらぬわけです。そうでしょう。いかがですか。そのことを、発言を含めて、満場一致、労使、政府、全部の外国の代表は、この理事会において、結社の自由委員会のこの勧告を承認をいたしております。
  165. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私どもは、現在の日本の国内法をこれは否認する意味ではない、こういうふうに考えております。単なる正当なる組合活動、あるいは正当なる団体行動を理由として逮捕、監禁、処罰というようなことは、もともと日本の国内法にも規定いたしてありません。従って、日本の国内法に対する問題ではない、こういうふうに考えております。
  166. 大原亨

    大原委員 その問題になりますと、これは社労委員会一つみっちりやりたいと思いますが、八十七号条約と九十八号条約関係になって参ります。九十八号条約はすでに批准をいたしております。批准をいたしております条約に抵触する公労法、関係法規というものは、日本法律からいっても当然無効です。条約が優位なんです。従って、その議論をいたしますと長くなりますから、私は端折っておきます。法制局長官お見えになっておらぬが、そのことは、憲法二十八条は、労働三権を公務員やあるいは公共企業体の労働者に対しても保障している。そこで、人事院勧告やあるいは団体交渉というものがある、仲裁裁定もある。そういう問題に返って参りまして、日本の憲法体系からいってもそうですが、ILOにおける国際常識からいってもそうです。そういう観点から見てみまして、ILOの八十七号条約に違反をする、すでに批准いたしました九十八号条約に違反をする、憲法二十八条に違反する。つまり、私が今まで質疑応答いたして参りましたことから明らかなように、政府は公務員、特に公共企業体の職員の賃金に対する法律すらも実施していないことは明らかである。自主交渉する能力と誠意がない。意思がない。官房長官も、大平官房長官のときには一千円回答を出された。出されたけれども、これは、当然政府全体の責任という意味で政治的に処理されたと思うのですが、そういうことは黒金官房長官はやっておられない。黒金官房長官は、石炭手当の問題その他から非常に戸惑うておられる。ドジョウのように、あちらへ行ったり、こちらへ行ったりしてはっきりしない。こういうことであって、こういうことのままで、予算の最終段階において、しかも重大なる段階において、こういう問題で当事者としての能力を欠いておるままにおいて、逮捕とか監禁とか解雇とか、あるいは懲戒がなされることは、ILOの精神から見てきわめて遺憾である。私が申し上げました二月十九日の結社の自由委員会には、おそらく労働代表等もこの実情について報告をいたすでありましょう。あるいは実際に代表者を派遣するということもいわれております。そういうことになりますと、日本の恥部が——労働者の権利と生活の問題は一体のものであるというふうに考えておる、そういう国際常識、民主主義の基準、常識、そういうものをじゅうりんすることになって、ますますILO八十七号条約批准の問題が、経済外交の面においても、あらゆる面において、日本が幾ら口でうまいことを言っても、低賃金労働の裏づけになる。そういうことになって、経済外交の面においても、国民経済の上におきましても、私ははかり知れない損害を及ぼすと思う。そういう点で、私は政府政治的にもこういう賃金問題について善処して、悪循環を繰り返さないことが大切であると思うけれども、労働大臣は、労働法規のそういう解釈あるいは適用の当事者ではなくして、監督者である。そういう立場において、あなたの見解をお聞かせいただきたいと思います。
  167. 大橋武夫

    大橋国務大臣 公共企業体に関する法規、あるいはまた現業公務員の給与に関する法規等には、いろいろ給与を決定すべき基準となる事柄が定められてあります。これは国内法でございますから、実際の給与はこの法律の趣旨に従って定めらるべきことは当然でございます。しかし、その給与がいかにして定められるかということを考えてみますと、手続といたしましては、団体交渉においてできるだけ話を詰めていく。そして団体交渉でどうしても話がまとまらない場合におきましては、調停、仲裁というような手続がきめられておるわけでございまして、これらの手続が最終的に終わった場合においては、常に給与というものはこの法規の準則に従ってきめられたものである、私はこう考えてよかろうと思うのでございます。先ほど来申し上げましたごとく、手続はまだほんの初期でございまして団体交渉の進行中でございますから、これについてこれ以上申し上げることは差し控えたいと存じます。
  168. 大原亨

    大原委員 外務大臣にお尋ねします。  ILOの問題にも関連をいたしまして、今まで非常に抽象的にILOで議論されておったし、決議されておりましたが、事実問題に逢着したわけです。そういう今までの賃金交渉、自主交渉の経過から、十五日の統一行動を目前にいたしまして、いろいろな処罰等が予測されるということがいわれておる。それがILOに返って参りまして、日本のILOに対する基本的な態度の問題や権利の問題や賃金の問題にはね返ってくることは当然であります。あなたは大所、高所から日韓会談云々と言われておりますが、大所、高所から見て、経済外交の観点から見て、これについてははっきりした見解を持って事態を収拾すべきであると思いますが、そういう大所、高所からいかがですか。あなたは前に官房長官をやっておられたのだから、非常な理解者だと思う。
  169. 大平正芳

    大平国務大臣 労働大臣を御信頼申し上げております。
  170. 大原亨

    大原委員 何を答弁されたのか、ドジョウやナマズみたいな答弁で、どこをつかんでいいかわからない。  それでは郵政大臣や三公社五現業の責任者に私の見解を述べて警告しておきます。それに対して見解を伺います。  つまり今までのような自主交渉も、予算の重大な段階においてなお成熟してない。誠意を示していないし、自主的な法律に従った態度を示していない。そのことの結果いろいろ悪循環をいたしまして、処罰問題も起きてくるでありましょう。しかし、そういうことは悪循環であって、日本の国際的な民主主義や、あるいは労働運動を理解させる上からも、私どもはきわめて重大な問題であると思う。従って、そういう処分の問題等については、当事者としての能力を欠いているもの、あるいは法律を無視するようなそういう立場にありながら、一方的にそういう処分をするというようなことはきわめて不当である。従って、そのことは社会労働委員会等におきまして逐次詳細に議論をいたしたいと存じますけれども、そういう私の見解に対しまして、特に異論があれば一つ郵政大臣その他から答弁してもらいたい。
  171. 小沢久太郎

    ○小沢国務大臣 われわれといたしましては、誠意を持ってこれまでやってきたのでございまして、そういう事態の起こらぬことを望む次第でございます。
  172. 大原亨

    大原委員 この問題は、あとで他の委員会でやることにいたしまして、特に要望いたしておきますが、大蔵大臣は財政当局でありますから、三公社五現業の中で専売や印刷やその他を持っておられます。従ってこの事態の収拾に対しましては、十分誠意を持ってやっていただきたい。これは要望でありまするが、記録にとどめたいと思いまするから、大蔵大臣の御見解を聞かしていただきたい。
  173. 田中角榮

    田中国務大臣 三公社五現業の給与問題につきましては、政府は誠意を持って解決に当たる所存であります。
  174. 大原亨

    大原委員 それでは次の問題ですが、世に言うところの戦後補償の問題がしばしば議論になりました。そこで、私は政治の公平の原則から、あるいは法律上の問題点から逐次質問をいたしたいと思うのですが、高田委員から地主補償の問題についていろいろと質問がありまして、その後各委員から質問がございましたが、これについては長い時間をとりませんけれども、あなたはこの戦後補償における親玉というか、親分であります。総責任者みたいな、実質上の責任者みたいに言われておりますけれども、あなたの御答弁によりますと、いろいろと今日まで変わって参りました。つまり補償ではなくして報償である、受ける側が権利や議論を主張することはできないと思う、あるいは報償ということの中には、金ばかりじゃなく、物やあるいは表彰なども含まれておる、精神的なものも含まれておる、あるいは一般の家庭よりよりよい生活をしている旧地主には金を出さない、こういういろいろなことが議論になりましたが、二千八百五十億円も金を使う。これは厚生大臣見解も聞きたいと思いますが、最高三百万円も金を使うということについて、これは血税でありますから、そういう使い方につきましては、新聞その他国民の中から、地主関係以外の人人から、今の政治の現状等から考えてみまして非難ごうごうであります。これは連日の新聞等がそれを示しておりますが、最終的に地主補償の問題はどういうふうに処理されるのですか。今まであなたの答弁はいろいろに変わっておるけれども、国会責任の持てる、国民によく理解できる見解を、簡明に一つ表明して下さい。
  175. 田中角榮

    田中国務大臣 これは私の見解ではなく、政府見解であります。政府は、農地被買収者の問題につきましては、たびたび申し上げております通り、三十八年度予算にその調査費一億九千余万円を計上いたしたわけであります。この調査の目的は、基礎調査、世論調査、実態調査、これらの問題を十分調査をしなければならないという考えに立っておるわけであります。なぜこれらの調査を必要とするかといいますと、工藤調査会で一応の調査が行なわれましたが、これは一部分に対してピック・アップして調査を行なったということであって、調査に万全を期しておらない、不十分であったと認められるわけでございます。それから今あなたが言われましたように、世論の上ではこれに対する反対の御意見もありますし、また国民がどの程度この問題の処理に関心を持ち、納得をしておるかというような問題に対しても重点を置いて調査を行ない、これが調査の結果を待って政府は何らかの措置をとる必要があるならば、ということを申し上げておるのでありまして、政府は、自由民主党が今一部に発表いたしております二千八百五十億の交付金法案をそのまま認めるとか、これを前提にしておるとかという意思は決定いたしておりません。
  176. 大原亨

    大原委員 大蔵大臣、地主補償につきまして方法はいろいろあるのですが、二千八百五十億円、最高三百万円、こういうふうな報償にいたしましても、そういうことはないのですね。
  177. 田中角榮

    田中国務大臣 私は政府考えを明らかにいたしておるのでありまして、何度かお答えを申し上げました通り、今度の予算で審議を願っておりますものは、明らかに調査を目的とした調査費でありまして、これが報償の内容そのものに対しては決定いたしておりません。
  178. 大原亨

    大原委員 この地主補償法案は、政府提案されるのですか。議員提案なんですか。
  179. 田中角榮

    田中国務大臣 地主というよりも、農地被買収者と言っておるわけでありますが、農地被買収者に対しての具体的処置は、現在全く未定でありまして、政府提案するとか、政府提案しないとかいうことが問題になっておるような状態ではございません。あなたの御質問は、現在自由民主党が考えておられる問題に対して、政府提案をするのか、議員提案をするのか、もうすでに提案することは事実であるが、その提案権をいずれに置くかというような前提を置いての御質問でありますが、政府は、何らかの報償をとる必要があると思うが、なお調査を必要とするので、というところまでしか決定いたしておりませんので、報償の内容についての具体的な措置は、全然現在考えておりません。
  180. 大原亨

    大原委員 地主補償法案は、政府といたしましては、今国会には提案しないですね。
  181. 田中角榮

    田中国務大臣 政府として提案する意思はありません。
  182. 大原亨

    大原委員 時間も迫って参りましたから、逐次やりますが、在外資産の問題につきましての法律関係です。これはずっと質問を用意いたしておったわけですが、ずばり外務大臣にお尋ねいたします。  まず最初に法律問題です。つまり日韓会談によりまして、韓国人の在日財産の請求権を基礎にいたしまして、大平式どんぶり勘定で大所高所から経済協力、こういうことになったわけですね。それで、日本人の韓国その他外地におきまする、会社であれ、あるいは個人であれ、そういう財産は国際法上没収できないのですが、議論を端折るために、今までの御答弁のように、アメリカの軍令三十三号によって、日本は国といたしましては放棄いたしておるわけです。しかしながら、国内法の問題はまだ残っておるわけです。国内法におきましては、不可侵のそういう財産権を国が勝手に放棄をいたしました。しかし、放棄をさせられました個人の立場というものは残っておって、しかも日韓交渉におきましては、言うならば、これは韓国側の財産請求権に対する担保になっているわけです。相殺されているわけです。そういう私の法律見解に対しまして、大平外務大臣の御見解をお聞かせ願いたい。国民はそういう疑問を持っているのである。法律的にもその考え方は正しいように思う。
  183. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘の軍令三十三号によりまして、米軍がわが国の、またわが国民の在鮮財産を没収した。そして、それは米韓協定によりまして韓国に渡されたという事実を、その効果を日本政府として承認いたしたわけでございます。従って、この問題につきましては、国際法的に日本側に何らの権利がないわけでございます。今問題は、国内的に政府国民との間の権利義務関係云々のお話がございましたが、米軍によりましてこの措置が行なわれたわけでございまして、政府がいたしたわけでございませんので、私どもといたしましては、これに対して補償の責任があるものとは思っておりません。
  184. 大原亨

    大原委員 私は、法律的に法理論として申し上げているのですよ。つまり韓国側の財産請求権を計算に入れて、経済協力というものをどんぶり勘定で三億ドル、二億ドルというふうにやっているのです。それで請求権問題は解消しようというわけだけれども、それに見合う日本人の財産権というものは、これは国際法上も憲法上も不可侵です。その点を勝手に政府が取り上げてはいけないのだ。交渉の過程からいっても、当然担保になっているわけです。そういう法律問題が残っておる、財産問題が残っておる。こういうことを法律上の議論といたしまして私の見解を申し上げたのですが、担保になっておるそういう日本人の財産権を勝手に無視するということは、これはできないであろう。これは大蔵大臣にも関係がありますが、それは外務大臣として当然でしょう。日韓会談を進めてこられたのですから、担保にされた日本人の財産は計算に入れて、日本の側はこれだけ、向こう側はこれだけ、大所高所からどんぶり勘定でこれだけ、こういうことになった。ですから、これは当然法理論的に問題が残っているでしょう。こう言っている。
  185. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど御答弁申し上げた通りでございまして、今御指摘の経済協力は、請求権とは関係がないわけでございます。今法律論として、政府法律的な義務があるかどうかということでございますが、私どもの見解では、政府法律上の義務はない、ただ政治的な問題といたしまして、長い間つちかわれた財産を失われた方々に対する配慮は、政治の問題として考えなければならぬことでございまして、先般も御指摘申し上げました通り、引揚者に対しましては給付金を差し上げるというような配慮をいたしておるわけでございます。
  186. 大原亨

    大原委員 もう一つ観点をかえてやりますが、つまり日本人の在外財産というものは、結局は日本政府アメリカに対しまして放棄させられた、放棄した、こういう関係ですが、放棄をした日本政府は、そういう財産権、所有権を持っている個人や法人に対して、結局肩がわりをして責任を負うことになる。これは憲法の精神でもあるし、国際法の精神である。この点いかがですか。
  187. 大平正芳

    大平国務大臣 法律論としては、私はそのように考えておりません。
  188. 大原亨

    大原委員 なぜです。理由を言ってごらんなさい。
  189. 大平正芳

    大平国務大臣 たびたび申し上げております通り、これは米軍が没収して、米韓協定によって韓国に米軍が与えたわけでございまして、そういう行為の効果を日本政府平和条約において認めざるを得なかったわけでございまして、日本政府が行なった行為ではございませんので、法律論といたしましては、大原さんにくみすることはできません。
  190. 大原亨

    大原委員 それでは、あなたは接収と没収を一緒にされているわけだが、アメリカ軍がそういうふうに勝手なことをやったんだったら、アメリカの軍隊がやったんだったら、没収された日本の個人、法人は、その損害賠償をアメリカ政府要求するのですか、そういう建前ですか。
  191. 大平正芳

    大平国務大臣 平和条約におきまして、日本側はそれに対しまして、それを承認することにいたした、認めることになったわけでございまして、アメリカ側に対して請求権はないものと思います。
  192. 大原亨

    大原委員 だから、私が言ったのは、結局は日本政府の行為によって放棄したのでしょう。そうすると、私有財産は尊重されなければならぬのですから、日本政府がその財産権を持っておる個人や法人に対しまして当然責任を負うべきでしょう。いかがですか。
  193. 大平正芳

    大平国務大臣 日本政府の行為でなくして、米軍の行為でございますので、法律論といたしましては、私は日本政府責任はないと思います。
  194. 大原亨

    大原委員 あなたは、米軍の行為だけれども、日本政府平和条約においてそれを協定したというのですよ。その米軍の行為を承認したなら、そのときから日本政府は——しかも日韓交渉においては、向こうの請求権の問題に見合いながら、こちら側の財産請求権の問題を計算したわけですよ。だから、それは担保になっているわけでしょう。従って、そういうことから考えてみまして、日本政府責任がないと言ったら、引揚者等、在外資産を残したそういう人々は、政治の公平の原則からいったって了承できませんよ。いかがですか。
  195. 大平正芳

    大平国務大臣 純法律論としてのお尋ねでございますので、法律的に政府責任はないと申し上げておるわけです。
  196. 大原亨

    大原委員 政府の行為によって財産権がなくなったんだ。政府アメリカのやった行為を承認したんだ。従って、政府がその責任を持つべきである、こう思う。この問題については、三百代言みたいなことではいけない。あなたに似合わぬことだ。もうはっきり理屈にならぬ。そうでしょう。これは絶対納得できませんよ。つまり国策移民とか一億総動員とかいうことで、満蒙その他へ開拓者ということで行ったわけで。財産を売り払って、向こうで農機具やその他財産を投資したわけだ。そういうことで、からだはすっぱりになっておるのだ。だから、その問題については、公平の原則から言って、地主補償なんかで二千八百五十億円も戦後処理と称してやるというようなことから考えみたら、幾らでも問題が出る。公平の原則から考えてみて、二千八百五十億円もの金を地主補償にするというようなことなら、大所高所から見るとほかに幾らでも問題が出てくる。そういう点について大蔵大臣はどう考えますか。
  197. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどからるる申し述べております通り政府提案する意思はないかというから、提案する意思はありません、二千八百五十億円はどうだ、それは考えておりませんと、明らかにいたしておりますから、これは一つ、そういう前提で——幾ら田中が言っても自民党の圧力でのむのだろう、こういう前提でもって言っておられますが、いやしくも政府を代表しての見解を述べておるのでありますから、私の言は御信用賜わりたいと存じます。  それから、先ほど外務大臣答弁いたしておりますが、法律的な問題につきましては私も答弁をいたしたことはございますが、大蔵大臣として申し上げるのは、引揚者その他に対しては財政の許す範囲内において国が道義的責任を負わなければならないといういうような問題、また、敗戦によって国民が受けた被害に対して、できる限り誠意を持った措置は今までいたしておるわけでございます。例をあげて申し上げますと、軍人恩給の問題がしかりでありますし、在外資産に対しても、引揚者に対しても三十二年法律百九号によって支給をいたしておりますし、小笠原諸島からの引揚者に対しての慰謝も、法律によって国会意思をきめていただいて、二十九年から三十一年に見舞金を支払っておりますし、戦傷病者及び戦没者遺族の問題に対しても、御承知の戦傷病者戦没者遺族等援護法によって、国会の意志の命ずるままに財政措置を行なっております。なお、未帰還者留守家族の問題につきましても、二十八年法律百六十一号によって措置いたしておりますし、未帰還者の問題につきましても、三十四年法律七号によって弔慰料として支給済みでございますし、なお、原爆被爆者についても、昭和三十二年法律四十一号をもつて、原子爆弾被爆者等の医療等に関する法律等によって行なっております。その後、議員立法か何かであったかと思いますが、例の回収貴金属の問題等に対しても還元をするとか、いろいろな戦後の処理は行なっておりますし、特に、引揚者に対しましては、内閣に設けられた調査会の答申に基づきまして、その答申通りの措置を行なっておりますので、財政当局としては一応処理済みであるというふうな考えを持っております。
  198. 大原亨

    大原委員 ただ、私は、国民の常識から考えてみて、三百万円にも達するような、一回もう済んでおる問題につきましてもう一回調査するなどというふうな、しかも一方では二千八百五十億円といわれておるのですが、そういう問題について二回もダブって、一億八千万円も調査費を計上しておられる。そういうこと等から、当然その法案の内容が問題になるわけです。従って、非難ごうごうたる地主補償の問題について、あなたは、いわゆる軍人関係、公務員関係、権力関係の補償の問題を言われたけれども、非戦闘員の戦争被害、こういうものについてどう考えるのかという問題が出てくるわけです。いうところの戦後賠償に便乗いたしまして、そういうふうな地主賠償が圧力で党利党略のためにまかり通るというふうなことは、私は国民の立場から言って絶対に許すことができない。こういうことを、私どもといたしましては、国会議員の責任といたしまして明らかにしておきたい。  もう一つ、これは厚生大臣質問いたしますが、厚生大臣は、地主補償の問題について巨大な金額が流布されておるけれども、これに対してどういう見解を持っておるか、特に社会保障の観点からお答えいただきたい。ついでに、時間の関係があるから、第二点といたしまして、いわゆる戦争未亡人に対する一時金の法律案はいつお出しになるのか、この二つの点についてお答えを願いたい。
  199. 西村榮一

    西村国務大臣 厚生大臣として地主補償の問題をどう考えるかということでございますが、これはもう大蔵大臣がたびたび政府を代表しまして答弁をいたしましたように、調査をするということで、国務大臣として調査費については賛成をいたしたようなわけでございます。  しこうして、未亡人の問題ですが、未亡人は、当時置かれておった非常に気の毒な特殊な事情もありますので、未亡人に対して交付金を支給しようということで、政府部内で検討中でございます。従いまして、提案の時期等はまだ全くきまっておりません。ただいま検討中でございます。
  200. 大原亨

    大原委員 検討中というのは非常にお苦しいと思うのですが、しかし、検討中々々々では納得できませんが、次に質問を進めます。  私は、そういう戦後補償の問題で、やはり一番大きな社会問題の一つは、社会保障の観点、人道上の観点からする施策だと思うのですが、その中でも、やはり、大蔵大臣も御答弁になりましたが、原爆被災者の問題だと思うのです。この問題は、世界でただ一回しか被爆の経験がない、そういう被爆国民として原水爆を禁止するんだということを、池田総理大臣初めしばしば言っておる。そういうことから考えてみましても、被爆の実際の悲惨さというものについて、これは実際上は政府の皆さん方においても十分知ってないんじゃないかと思われる点がたくさんある。今までの立法の中に、昭和三十二年に原爆医療法を提案されまして、これが今日まで逐次改正されて、皆さんの努力によって国民の声を反映されまして、十一億円が医療面についてはあるわけです。しかしながら、被爆の実際については、大蔵大臣も厚生大臣もごらんになったことがありますか。実際に広島や長崎の原爆病院へ行ってごらんなさい。とても人間として見るに忍びないと思うのです。  私は科学技術庁の長官にお尋ねするわけですが、科学技術庁は、文部大臣と厚生大臣との間で問題になりましたときに、放射線影響医学研究所というのを科学技術庁に設置されて、そういう原爆実験の問題も含めて、いろいろと調査をし、対策を立てられた。広島、長崎に落ちた原爆の被害の実相というものは、科学的にどういうものであるか、こういう点について、近藤科学技術庁長官から、一つ科学的な知恵のあるところを御答弁願いたい。
  201. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 ただいまお尋ねのございました千葉にあります放医研は、御承知の通り、放射線障害に関する調査研究を行なうということを大きな使命として生まれたものでございます。その一環として放射線による障害の治療研究もしております。この治療研究の対象といたしましては、各種の原因による放射線障害者が相当いたしますので、原爆被害者も含まれ、現に放医研の病院は原爆医療法に基づく指定病院になっており、過去においても数名の患者が受診しておるわけでございます。で、この病院の利用ということについて、広島、長崎のような場所で被害を受けられました方が御利用下さるということがきわめて少ないのでございますので、そういう御意向がございましたら、ただいま申しましたような立場に立って十分処置をいたしておるつもりでございますけれども、PRが足りないのでしょうか、それとも土地柄のせいでございましょうか、案外放医研それ自体にはそういう患者の方が今日まであまりたくさん見えておりません。従いまして、放医研の方の医師が国立第一病院の方へ出向いて参りまして、定期的に診断をいたして、たしか年五、六十人の方々に対しての診断を行なっていると思っております。それから、なお、そのほかに、障害評価の基準を与えるために、広島と長崎の原爆による被曝線量の調査をABCCと協力をいたしまして十分に果たしていくように、治療に資していくようにという努力をいたしておるわけでございます。
  202. 大原亨

    大原委員 私が御質問いたしましたその一つは、放射線の影響を研究する際に、実験の問題もそうですけれども、広島、長崎では実弾が頭上七百メートルに落ちたのだから、そういう原爆による被害、いわゆる原爆の影響を調査されること、実態把握されることは非常に大切だ。これは政策上の問題としても研究の面からいたしましてもそうだ。そういう点でどういう被害があるかということです。これは、そういう運動はなかなか圧力団体にならぬものですから、政治の表面に出てこないわけです。だれもが理解できても、政治の表面に出てこない問題ですが、科学的なそういう認識をPRしてもらいたい、そしてそういうことを明らかにしてもらいたいという観点で御質問いたしました。御答弁いただけますか。
  203. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 ただいまお尋ねになりましたのは、千葉の放医研はどうやっているかということでございました。従いまして、千葉の放医研は、今申しましたように、放射線障害に対する調査研究ということが大きな柱でございまして、実を申しますと、障害者の治療研究ということが主になっておらない性格を持っているわけなのでございます。従いまして、そういう性格から申しますと、現実に出かけていって調べるというよりは、おいでになった方に対しての治療ということはいたすことにはなっております。しかし、また性格を変えて、そういう治療の方面に放医研が十分活動できるようになりました場合に、確かに、仰せの通り、そういう患者の方々に直接接しまして、一の基準と申しましょうか、方針と申しましょうか、そういうものを生み出していくことは大へん必要なことだと思っております。
  204. 大原亨

    大原委員 せっかくたくさん金を出して千葉県の放医研をおつくりになったわけだけれども、実際に原爆被爆者なんかも行かない、こういうことは何かというと、やはりこれは実際には生活の問題があるわけです。この間広島市が調査をいたしておりましたが、広島市の中で失業対策に従事しておる登録者が七千五百名おるけれども、その四一%は原爆被爆者だ、こういわれているわけです。非常に多いわけだ。従って、私はあなたに、放射線その他原爆による影響が人体にどのような障害を及ぼすのかということについて、もう少しPRというか、真相が発表できるようなことを期待いたしたけれども、名前は科学技術庁長官ですが、非科学的な答弁でした。  そこで、厚生大臣質問いたしたいと思いますが、時間も参りましたから私の方から申し上げるのですが、つまり、原爆による被害はどういう点かというと、爆風と、予想できない数千万度の熱風と、それから放射能、ストロンチウム九〇とかセシウム一三七とか、つまり、細胞をこわすわけだ。現在でも、白血病は血液のガンですが、発生者が多くて死んでいる。あるいは一般のガンの発生率が非常に多い。こういうことが示しておるように、生活力も非常に減退しておる。従って、広島市や長崎市や全国の非常な下積みになって生活に呻吟をしている。その損害は、家屋やあるいは家族、全般的に非常に普遍的である。非常に痛い。そういう点では、医療保障だけでは結局できない、こういうことなんです。従って、それに対しましては、医療のための所得保障、医療手当が二千円ありますが、所得制限がございますが、そういう問題の増額や、あるいは通院や入院のために要します家族の生活費等に対する一定限度までの保障や、あるいは内科的な疾患等に対する身体障害者年金や、あるいは、運輸大臣それから国鉄にも関係いたしますが、身体障害者並みにこれを扱うとか、白血病患者、これは不治ですから、そういう人々に対する身体障害者に対するような保障をするとか、そういうきめのこまかい政策は、声は小さくてもやるべき問題がたくさんある。つまり、医療保障の裏づけとなる所得保障の問題は、人道上の見地から考えてもみてもこれは放置できない。ケロイドや放射能の影響で生活力を失って就職できないとか、あるいは結婚を一生棒に振っている人がたくさんある。それが公務員とか軍人関係でないという理由によって放置されておるという実情です。だから、非戦闘員の一般戦災者も総動員法による動員によって出たわけですから、当然戦災者に対する保障の問題もあるわけです。しかし、全般的には、所得保障や医療保障の社会保障を前進させるということが、問題を普遍的に解決するもとです。しかしながら、被爆者の問題については、今東京の地方裁判所において、三人の鑑定人がいわゆる特別弁護人として出て、アメリカ日本に投下した原爆は国際法違反である、そういう観点に立って、その賠償請求権を放棄した日本政府に対して損害補償を要求すべきであるという裁判を起こしている。近く判決がありますが、林法制局長官はアメリカへ行って裁判しろと言っていたが、弁護士やその他の関係で、アメリカへ行って裁判する費用はない。従って、日本政府に対して訴訟が起きておるわけです。こういう問題は、部分的には範囲が狭くても、一ぺんに二つの爆弾で三十万人死に、三十数万人の人が被爆者として残っている。その中で非常に切実な要求を持っている人は、数は少ないけれども、いわば潜在的な発病の可能性がある人です。放射能の影響を受けている人です。従って、私は、そういう問題に対して、法律上の問題、いろいろな問題を議論したかったが、しかしながら、この問題に対して、戦後補償の問題だったら、こういう問題こそ社会保障制度としても前進できるのではないか。その一つは、それまでの特別措置として、当然医療の裏づけとなるような生活保障をすべきである。こういう点を考えますけれども、たとえば低利・長期の融資をやることも一つですが、そういう点も私は総合的に考えなければならぬと思います。戦後補償につきましては大蔵大臣が非常に権威を持ってやっておられますけれども、時間を端折りましたために理由の方が長くなりましたが、見解を明らかにしていただきたい。
  205. 田中角榮

    田中国務大臣 原爆被爆者に対して政府ができる限りの措置を行なわなければならないことは、御説の通りであります。先ほど科学技術庁長官から述べられましたが、三十八年度予算で、放射線医学総合研究所で、医学の問題だけでなく、人体防護の訓練その他いろいろな問題に対して措置をいたしておるわけでありまして、金額は、前年度予算では四億五千万円でありましたが、今年度は五億二千九百万円ということであります。放射能調査研究費については、核爆発等の放射性降下物が環境衛生に及ぼす影響その他あらゆる面から幅を広げて、あなたの今言われたようなしさいな面に対してまで検討しなければならないということも配慮しておるのでありまして、九千百万円の予算を計上しておりますが、これで足れりとは思っておりません。しかし、御承知の通り、私も予算編成当時からこの問題を非常に重視しまして、特に長崎、広島等に対して放射線科設置の必要がないかどうか、これは非常に新しい事象でありまして、日本の医学においても放射線科というのはようやくこのごろから設けられておるという状態でありますが、これは病気の中では非常に陰惨な大へんむずかしい病気であります。全く生命をもうすでに奪われたと同じような状態になるものでありますから、表に出ておる症状だけではなく、これに対してあらゆる社会保障面からの政府の積極的な施策を行なわなければならないという考えに立っておりますので、今の御説を十分体しまして、政府もこの問題に対しては誠意を持った措置を行ないたい、こう考えております。
  206. 大原亨

    大原委員 最後に、私はこのことをあげ足をとるとかいうことではありませんが、昨年の四月四日の田中委員外務委員会質問におきまして、ガリオア・エロアの問題があったときに、アメリカとの債権・債務の関係をこの際清算するのであれば、こういう被爆者の問題についても当然考えるべきではないかという議論が出たのであります。これは国会においてはしばしば出ております。そのとき池田総理大臣はどう御答弁をなさったかといいますと、ガリオア・エロアあるいは外資導入等の対米交渉の際において、アメリカは広島・長崎に原爆を落としたということをざんげして、そのことを常に考慮して考えておるし、言うなれば決してむだ死にではなかったというふうな話です。それとほとんど同じ話です。しかし、そのことは、私は言葉が足りないと思いますけれども、言うなれば、私は外務大臣に対しまして日韓会談のいわゆる日本側の財産担保の問題を言いましたけれども、つまり、対米交渉の担保になっておるわけです。いわばアメリカの今日までの外交の恥部でもあるわけです。従って、こういう問題について私はここであげ足をとろうとはいたしませんけれども、そういう重大な問題でありながら、実際上は圧力運動といたしましてそれがなかなか大きく起きていないために、地域的には部分的であるし、全国に散らばっておるが、声は小さいので大きくならない。今放医研に五億二千万円を科学技術庁の予算に計上しておると言われましたが、そこまで行く人がいない、利用者がいない、こういうことは何かということであります。従って、この戦後補償の問題につきましては、十分そのことを念頭に入れてもらって、法律の議論もございますが、何よりも人道上の立場からこの問題については理解のある善処をしてもらわないと、これは政治に対する信頼を失墜しますよ。地主補償の問題ではいろいろそういう議論をされているが、私はそのことにつきまして強く要望をいたしまして、私のいわゆる戦後処理問題に対する質問を終わりたいと思います。
  207. 塚原俊郎

    塚原委員長 楯君ら関連質疑の申し出があります。これを許します。楯兼次郎君。
  208. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は大原君の三公社・五現業の問題について簡単に関連質問をさしていただきます。  先ほど大原君が言っておりましたように、資金上の拘束によって給与関係における三公社・五現業はすでにこれは有名無実である。政府側はいろいろ御答弁なさいますが、有名無実であるというふうに私は考えておるわけでありまして、この点将来に対する措置をとっていただかなくてはならぬと思いますが、そのことは関連でありますから他の機会に譲りまして、資金があるのに実施をされないものがある。これは六日の本委員会におきまして私が国鉄の問題で質問をいたしたのであります。事は小さい問題でありますが、労使紛争の大きな原因となっておりまして、利用者に将来大きな迷惑を及ぼすと思いますので、この一点だけ質問をいたしたいと思います。  聞くところによりますと、他の国鉄以外の公社は、病気あるいは休んだ者、欠格者を除いては全員昇給をしておる。ところが、先日も申し上げましたように、国鉄の場合は、欠格者を除いてなおかつ何%かは昇給をされない。非常に公平ならざる取り扱いをしておるわけです。この点について、昇給資金がありながら、他の公社は欠格者を除いて全員昇給の対象になりながら、国鉄のみなぜこういう取り扱いをしておるのか、この点でありますが、この点について国鉄の方からまずお答えをいただきたいと思います。
  209. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねのございましたのは、国鉄の昇給のやり方について今労使の間でもとめておりますことについてのお尋ねであると思いますが、国鉄の昇給問題につきましては、団体交渉事項でございますので、現在組合との間でまだいろいろと交渉をいたしておる最中でございますけれども、国鉄自身の昇給の実施方法といたしましては、これは長年の伝統もございまして、単に形式的な、たとえば欠勤日数が何十日以上あるとか、あるいは日鉄法上の懲戒処分を受けたことがあるとか、形式的に明確ないわゆる欠格条件ということのほかに、平素の勤務成績を昇給に際しては勘案いたしまして、いわゆる勤務評定を行なうという方法をとっておるのでございまして、これは私どもといたしまして非常に大切なことであるというふうに考えております。
  210. 楯兼次郎

    ○楯委員 当局には当局の言い分があると思います。そういうやり方を何に利用されておるかという問題は、これはまた他の機会に譲りたいと思いますが、私は、そうむずかしい理論的なことでなくて、同じような三公社・五現業がやってることをなぜ国鉄だけやらないのか。これは、歩調をそろえなければ、国鉄の労働者が、事は小さい問題ではありますが、大きな不満を抱いて紛争の原因になってくるということは、いなめない事実だと思うのです。まあこのことは水かけ論になるからやめておきましょう。  ところで、われわれ予算委員は三十八年度も膨大な資料をもらいました。説明を受けますると、給与費の中には三・八%の昇給資金が見込んであります。その対象は、今私が主張いたしておりまするように、欠格者を除いた全員の予算である、昇給資金である、こういう説明を毎年々々受けてきたわけです。三十八年度もおそらく、そういう考え方、そういう積算の上に立って国鉄の予算は組まれておると思う。もし五%なり六%必要ないとするならば、やらないとするならば、これは予算要求から削っていいと私は思う。もし政府の方でそういうことに固執をされるなら、われわれはこれは予算の修正をここで行ないたい。要らないもの、使わないものを要求する必要はないと思う。これが私は筋だと思う。この点大蔵大臣はどう考えるか。社会党は修正いたしますよ。
  211. 田中角榮

    田中国務大臣 これはまだ団体交渉中でありまして、最終的な結論が出ておりませんので、あなたの言うような議論は、もし最終段階において計上した予算を使わないような状態になった場合、こういうことを仮定しての御質問でありますが、現在団体交渉継続中でありますし、なお仲裁裁定その他の機関による裁定もあるかもわかりませんので、私といたしましては、これが自主的な交渉の推移を見守っておるというところであります。
  212. 楯兼次郎

    ○楯委員 それは、大蔵大臣は副総裁答弁をお聞きになっておらぬ。国鉄の方は、何か知りませんが、非常に重大なことであるので、その線を堅持するとおっしゃっている。ならば、団交の結果云々というあなたの答弁は当たらぬと思う。もしそうであるならば、予算を修正してここへ出してもらいたい、こう思います。
  213. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げました通り、今団交中でありまして、団交の結果は、所管大臣は運輸大臣でございますので、私どもまだ協議も全然ございませんし、現在の大蔵当局といたしましては、予算修正をする必要もなし、考えもございません。
  214. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは、この点は、多くは言いませんので、十分、検討をして善処していただきたい。
  215. 塚原俊郎

    塚原委員長 午後は二時四十分から再開することといたします。  暫時休憩いたします。    午後二時休憩      ————◇—————    午後三時四分開議
  216. 塚原俊郎

    塚原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十八年度総予算に対する質疑を続行いたします。  足鹿覺君。
  217. 足鹿覺

    足鹿委員 私は、農政問題と、これに関連いたします重要な問題につきまして、関係閣僚にお尋ねをいたします。他の同僚委員からも農政問題について前に触れておりますので、できるだけこれと重複を避けてお尋ねをしていきたいと思っておりますが、たまには重複する点もありましても、よろしくお願いをいたします。  さて、第一にお尋ねをいたしたいことは、特定産業の国際競争力の強化に関する臨時措置法、この問題と硫安工業対策、なかんずく政策融資の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります通産大臣と農林大臣、公正取引委員長に主として伺いますので、それぞれ御答弁をわずらわしたいと思います。  いわゆる国際競争力強化法なるものは、第十二次案まで私どもは知っておりますが、その後に新しく発展しておりますかどうか、政府は明十四日、経済閣僚懇談会で検討すると言われておりますが、その最終案についてはどのような構想のものでありますか、また、明日の閣僚懇談会で最終結論を出す御所存でありますかどうか。特に首相の指示に基づいて行なわれると聞いておりますので、主管大臣より御答弁を願いたいと思います。
  218. 福田一

    ○福田国務大臣 明日経済閣僚会議におきまして、今までの経緯その他を報告をいたしまして、政府としての方針について協議をすることになっておりますが、明日どういうふうにきめるか、明日のうちにこうきめる、ああきめるということをきめてこの会議を開いているわけではございません。従いまして、明日きまるかどうかということは、もちろんわかりません。今ここで申し上げるわけにはいかないわけでございます。
  219. 足鹿覺

    足鹿委員 私どもが手にいたしておりますものは、未定稿ではありますが、第十二次案なるものを持っておりますが、大体現在御構想になっておりますものは、この段階のものでありますか、それともなお進んだ、変わったものでありますか。主管大臣としては、そのおもなる構想についてお述べを願いたい。なかんずく、この立法は、いかなる産業への実益を想定する立法であるか。実際的適用の対象となる産業はどういうものが想定されるか。私どもの見解によれば、石油化学産業あるいは鉄鋼産業、肥料産業、農薬産業等が、当面適用の対象に浮かんでくるのではないか、こういうふうに考えられます。その点いかがでありますか。
  220. 福田一

    ○福田国務大臣 第十二次案をお持ちだというわけですが、私、実は今まだ事務当局から案自体はもらっておりません。しかし、考え方といたしましては、あなたのおっしゃるように、業種をあらかじめ想定して考えていくというのではないのでありまして、一応今の考え方といたしましては、業界がそういうことを要望、希望する場合において、それに対して何らかの強化の措置を講じていくようにしようということですから、こちらの方から、役所の方から、これとこれとこれの事業を強化するためにこういう法律をつくる、こういうわけでは建前がないのでございます。
  221. 足鹿覺

    足鹿委員 私の手にしておりますこれによりますと、当初政府が決定権を持つようなものが、申請主義に改められたように聞いております。そしてその内容は、政令によって当該産業を営む者があなたに特定産業の指定を要請したときに定める、こういうふうになっておるように伺っておるのであります。要するに、あなた方が申請をどうぞと言って、手を上げれば、審査をして、政令の基準に照らしてやっていく、こういう構想に改められたと聞いておりますが、そういった場合に、特に化学肥料工業にこの問題を当てはめて考えてみたときに、独占禁止法の除外の道を開く関係が明らかに出てくると思うのであります。現行肥料二法は明年七月期限切れとなり、これにかわる措置としては、私は政府、業界、消費者、つまり、農民を代表する者、この三者が、いかなるものをもってこれにかえるべきかということは、慎重に検討して定めるべきものだと存じますが、もしこの特定産業競争力強化法案が提案をされ、成立でも見るということになりますと、事実において肥料二法にかわるべき立法措置を要するに必要としない、オールマイティで、この国際競争力強化法によって何でもできる、そういう内容になるのでありますから、これに振りかえられる危険性が多分に出てくると思います。農林、通産両大臣は、もしこの国際競争力強化法案の立法を進め、これが成立した暁においては、先のことであるからわからぬとおっしゃればそれまででありますが、要するに、肥料二法にこれを振りかえれば振りかえられるような運用になっておるのです。別に肥料二法にかわる措置は別途に立てますか、それともこれをもってかえていく基本方針でありますか、両大臣よりしかとした態度を御表明願いたい。
  222. 福田一

    ○福田国務大臣 ただいま政府方針を変更したというようなお言葉がございましたが、実は政府はいまだかつて態度を決定したことはございません。通産省の事務当局におきまして、いろいろ各方面の意見を聞いておったことは事実でございますけれども、何も、これもまた通産省としての態度をきめたわけでもございません。そういう段階で一応各方面の意見も聞いておりますので、そこで政府としては、大体そういうことになったから、私から、あす経済閣僚懇談会の席上で従来の経緯を述べて、この問題は相当重要でありますから、政府として今後どういうふうにやっていったらいいかということについて相談をするということになっておるわけでございます。  そこで、もう一つの問題の、この法律ができたならば肥料二法は必要ないじゃないか、こういうような御質問かと思うのでございますが、私たちはこの法律をつくりますのは、御承知のように、自由化を控えまして、日本の産業に力を与えなければいけない、産業を育成していかなければいかぬ、そういう場合に、こういう法律をつくっておいたならばいいのではないかということを考えておるわけでございます。そうして、それをどの産業に当てはめるなどということは、今、法文の上にも私は出てこないと思うのであります。従って、今あなたの御質問の、この法案が万一できたとした場合においても、この法案があれば、二法はもう必要ないじゃないか、こういうようなことになるかどうかということは、私は申し上げる段階ではない。むしろ肥料二法は肥料二法といたしまして、今後われわれとしても、これを存置すべきかどうかということを十分に検討いたすべきである、こう考えておるわけでございます。
  223. 重政誠之

    ○重政国務大臣 特定産業国際競争力強化に関する法律案でありますが、私は、実はただいままでそれの内容について全然承知いたしておりません。その問題を、ただいま通産大臣からお話がありました通りに、明日の経済閣僚懇談会で相談をするということになっておる程度でございます。  それから肥料の問題につきましては、足鹿委員十分御承知の通りに、これは三十九年まで肥料二法は存続いたします。それから四十年以後においてはどうするかということは、十分に検討いたした上でその方策を確立する、こういうことにただいままでなっておるわけであります。でありますから、今いろいろお述べになりましたようなことをどうするということは、現在のところ全然私は考えておりません。
  224. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣は、少し事務当局との連絡がまずいじゃないかと思うのです。農業への影響を検討して、国際競争力強化法に対する農林省の意見なるものが新聞に公表されておるのであります。それによりますと、これはきのうの夕刊、今朝の新聞でありますが、「農業関係で同法の特定産業に指定されると見られるのはまず硫安工業で、指定にともない企業間協定によって価格が期待通り下がらなくなることも考えられる。」云々、そうして「十二日の閣議で重政農相が口火を切って福田通産相に同法案の説明を求めたといわれ、」と伝えておるのであります。これはうそでありますか。あまり私どもをあきめくらにしたような、通り一ぺんの御答弁をされることは慎んでいただきたい。私も架空のことや我を張った意見は申しません。誠実な立場で謙虚に私はお尋ねしておるのでありますから、この点について、両大臣のもう一ぺん誠実な御答弁を願いたい。
  225. 重政誠之

    ○重政国務大臣 私は率直に申し上げておるのでありまして、事務の方も、まだその相談は通産省から受けておらないということを申しております。その新聞記事は、全然どうも私の関知せざるところであるわけでありまして、そういうことはございません。この十四日の経済閣僚懇談会で、重要な問題であるから相談をしようというのは、総理の御発言によってすることになっておるのでありまして、私が何も肥料問題なんか一言も言った覚えはございません。
  226. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいま、総理の御発言によって十四日に経済閣僚懇談会を開くんだという御答弁でありましたが、そうしますと、十二日の閣議において、この問題について通産大臣説明を農林大臣がお求めになり、たまたま話題になって総理の御発言、こういうことになったのでありますか。そうしますと、総理の指示ということは、独禁法にはそれ自体の措置を講じ、この法案はこの法案として成立せしめるべく閣僚懇談会に付議された、そういうふうに理解してよろしいのでありますか。
  227. 福田一

    ○福田国務大臣 農林大臣からは、閣議では一言もこの問題について発言はございません。総理から、この法案はなかなかいろいろな重要な問題も含んでおるから、たまたま十四日には経済閣僚懇談会をやることになっておりますので、その席で、まだ話も聞いていないから、どういう事情になっておるか、通産大臣から意見を聞いて、そして政府としていろいろ相談をしよう、こういうことを発言されただけでございます。
  228. 足鹿覺

    足鹿委員 事態が明らかになりましたので、そこで通産大臣に伺いますが、あす御説明をなさろうとしております案は、以下私が申し述べるような構想のものであるかどうか、念のために。それは特定産業の指定についての条項、特に先ほど述べたような、現在具体的にどういう業種を考えておるのか、その想定なしにこの法律立法する、閣僚懇談会に諮るといっても、想定目標もなしに、こういう重大な独禁法に穴をあける立法考えられるはずはないと思うのであります。従って、どういう御構想のものであるか、それから実施基準の設定については、当該産業、金融業者及び主務大臣は、学識経験者の意見を聞いて、一般消費者、関係中小企業者の意見は聞かない、これに対する規定はないと伝えられております。また、財政金融関係の特別措置については、関税率の調整の問題になり、これはガットの違反のおそれがある点を私は指摘いたします。また、資金の確保、財政融資を考えておる。これはあとで肥料のときにお話いたしますが、赤字処理に百三億、合理化対策に百六億、合わせて二百九億円の政策融資が本年度の財政投融資計画に乗っておる。これが海運の政策融資の口火を切ったものでありますが、これには一応それでも基準となるべき法律も用意されておるようでありますが、肥料の場合等は何らそういうものもない、こういうことであります。これがまた大きな特権を指定産業が受けることになる。果樹への特例を考えておる。特に私がこれから述べんといたします共同行為についてでありますが、この指定された場合、メーカーのカルテル行為は公認される結果になりはしないか。従って、消費者の利益は何によって保護されるのか、この対案が明確でないということであります。また、いま一つ、独禁法に大きな穴をあける点としては、特に第二条であると伝えられております合併条項によって、企業の公正な競争を阻害せず、一般消費者の利益を害しない基準を公表するということになっておりますが、具体的にはどういうことなのか。合併によって公正な競争が阻害され、少数の企業が独占の形式が強化されていった場合に、消費者の利益はどういう形で保護されるのか、そういう点が非常に心配をされておるのであります。この点について、公正取引委員長にこの際御所見を承りたいのでありますが、この場合、共同行為、合併の場合、これらの場合は、もっとも独禁法の適用除外ということになりますと、これは独禁法はあってもなくてもいい存在になってしまいます。それでよろしいのでありますか。公正取引委員長としての御見解があれば、この際承りたい。新聞その他においてはいろいろ取りざたをされておりますが、この国会においてこの際、所信を、以上指摘した点はもちろんのことでありますが、他の点についても、総体的な御所見があれば承っておきたいと思います。
  229. 佐藤基

    ○佐藤(基)政府委員 ただいまお話の国際競争力強化法案につきましては、通産省の事務当局が立案したものを私の方へ持って参りまして、ただいま意見を調整中であります。私どもといたしましては、独禁法の共同行為なり、あるいは合併の規定、この適用排除ということはきわめて重大な問題であります。御承知の通り、独禁法というのは、公正な自由競争を促進して、一般消費者、中小企業者、農民の利益の確保をはかることを目的としておるのでありまして、今度の法案は、そういう点において、われわれとしては非常に重大な問題であるので、ただいま慎重審議しておる次第であります。
  230. 足鹿覺

    足鹿委員 通産大臣に伺いますが、今お聞きの通りであります。あなたの所管しておられる担当官が持って行かれた法案、具体的に共同行為とか、あるいは合併の問題等については、今公正取引委員長は特に重要であるというので慎重検討しておるということであります。公正取引委員会と意見調整のできないものをいきなり閣僚懇談会に持ち込んで、これを結論づける御所存でありますか。現存する独禁法というものを無視し、その機関との事前の意見の完全一致をもって初めてかかる重大法案はきめられるのであって、いかに国際競争力の強化をうたうといいうものの、一部経済界でも相当反対があったとわれわれは聞いておりますが、つまり、官僚統制のにおいがきつい、被害は消費者が受ける、こういう点は明らかであろうと思う。国際競争力を付与してはならないと私は申しませんが、その陰に物価の値上がり、公共料金の値上がり、事実上の増税、そういう中に、さらにこのような立法によって大企業の立場を特定に擁護せんとするがごとき立法を、公正取引委員会との完全な意見の一致を見ずに、独禁法という現存するものに手をつけることは、世論に対する考え方もあって御遠慮なさったかどうかしりませんが、あすの閣僚懇談会というものは、この問題に対してどういう点を——たとえば今問題になっておるような共同行為あるいは企業合併、そうした問題について意見の調整をされるのでありますか。それとも、法案全体の取り扱い方について首相がどういう御意思を伝えられたかしりませんが、どういう閣僚懇談会の性格で、どの点を重点にして検討される所存でありますか。あまりこの問題で時間をとりますと先へいきませんので、この点を明確にしていただけば先にいきます。
  231. 福田一

    ○福田国務大臣 閣僚懇談会の性格というような問題もございますが、これは懇談会でございますから、そういう答弁が当てはまっておるかどうかしりませんが、やはり相談するという意味であります。  それから、あなたはその内容についていろいろ御質問がございましたが、私は、そういうような内容を政府としてきめ、あるいは通産省としてもうすでにきめておるというのなら、今ここにお答えしておいた方がいいかもしれません。しかし、まだ何も政府はきめたわけではございません。どうするとはきめておるわけではありません。従いまして、この段階におきまして、私が何らかの内容について申し上げることは、かえって誤解を生むおそれがあると思うのであります。従って、これは差し控えますが、しかし、あなたが仰せになったような、私たちは何も消費者の利益を害しようとか、あるいはまたほかの政治全般についての大きな影響を与えるという目的ではなくて、産業に力をつけて、そうして自由化、いわゆる世界の経済が進んでおるところの自由化の方向に対処していく必要があるから、そこでこういう法律をつくってはどうかということを今研究をしておる段階であります。その研究しておる段階において、私がこれ以上申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。  また、公取との間に意見を今調整しておることは、公取の委員長が仰せになった通りでございまして、これがどういうふうにきまるか、きまった上で法案がはっきり出たところで、いろいろと御批判なり、または御検討をしていただくようにお願いをいたしたいと思います。
  232. 足鹿覺

    足鹿委員 いま一問、しつこいようでありますが、伺っておきます。明日の御検討は、される内容についてはこれ以上伺ってみても無理だろうと思うのですが、首相は、今国会に提出すべく意見の調整を閣僚懇談会に命じられたのでありますか、指示をされたのでありますか。
  233. 福田一

    ○福田国務大臣 何も閣僚間に今この問題について異議があったり、意見の対立があるわけではありません。ただいま通産省の事務当局において各方面と連絡をとっておった、その状況について私が報告をして、政府として今後どういうふうにこの問題を取り扱っていくかということを相談しようというわけで、そういう意味で発言をされたわけであります。
  234. 足鹿覺

    足鹿委員 重政農林大臣にいま一度念を押しておきますが、今通産大臣が述べられたようなあすの懇談会のことでありますが、私は率直にそうと受け取っておきましょう。しかしいずれにいたしましても、私が先ほど指摘し、また一部新聞紙にも伝えられておりますように、農業関係で同法の特定産業の指定をイの一番に受けそうなのは化学工業、なかんずく硫安工業であります。これは何人も否定はできないと思うのです。これは影響ないとお考えですか。この点に重大関心を持たれて、今後大いに農業者の、特に硫安等の肥料の消費者である農民の立場が不当に侵害され、不利益をもたらさないような立場に立って、この問題に対処されますかどうか。特にあすの懇談会におけるあなたの御所信等があれば、十二日は何もなかったそうでありますから、この機会に明らかにしていただきたい。
  235. 福田一

    ○福田国務大臣 誤解を生むといけませんから、ちょっと一言だけ申し上げておきますが、先ほども申し上げておりました通り、私たちは指定ということを政府でしょうとしておるのではないのでありまして、その場合においてイニシアチブをとるのは業界という考え方に一応なっておりますから、官がこれを指定せにゃいかぬというやり方ではこの問題は考えておらない。これはもちろんきまったわけではありませんが、あなたが方向としてどういうことをとおっしゃったから、申し上げておるのでありますが、あなたが指定という言葉をお使いになりますと、将来これは官僚統制をやるのじゃないかという誤解を生んでもいけません。もちろん、まだきまってはおりませんけれども、その誤解を解く意味で、一言だけ私は発言させていただいたわけであります。
  236. 重政誠之

    ○重政国務大臣 先ほど申し述べました通りに、私はその案の内容を全然知っておりません。明日の閣僚懇談会では、重要な問題であるから、事務的に進めるだけで、最後になって事務的な案を持ってこられても困るではないか、であるから、どういう方針でやるかというようなことを、閣僚間で一応相談をしてみたらどうかという趣旨であろうと私は受け取っておるのであります。もちろん、足鹿委員のお述べになりました通り、農林大臣といたしましては、肥料の問題は、従来の経過もあることであり、先ほど述べましたように、現に肥料二法が現存をいたしている状態でもありますし、十分に農民に低廉にして、その供給が安定的にできるというこの基本の方針というものは、いかなる場合においても変えるわけには参らぬ、こう私は考えておりますから、その方針に従ってこの問題も十分に検討をいたしたい、こう考えております。
  237. 足鹿覺

    足鹿委員 いま一つ、公正取引委員長に伺っておきますが、私は先ほど申し上げましたように、私の手元には十二次案というものを、未定稿とただし書きつきのものを持っておりますが、現在あなたが事務局に交渉、折衝しておるとおっしゃいました案は、たとえば第何次案で、あなたの御意見によれば、どの点とどの点が目下意見を交換し、折衝し、話し合っておる点であるか、もし明らかにしていただければ、この機会に明らかにしていただきたい。
  238. 佐藤基

    ○佐藤(基)政府委員 私どもが最終の案としてただいま通産省と折衝しておるのは、二月一日の案です。第何次案か存じませんが、二月一日という日にちになっております。そうしてその内容につきましては、先ほど申し上げました、独禁法としてきわめて重要な共同行為なり、合併の規定について、意見の調整をしておる次第であります。
  239. 足鹿覺

    足鹿委員 通産大臣、今お聞きの通りじゃありませんか。二月一日はつまり十二次案です。こういう重大な問題を事務当局まかせで、大臣は、まだそれは事務局の段階だという御答弁は、日ごろの福田さんの御答弁には似つかわしからぬではありませんか。私は打ち切ろうと思いましたが、今の公正取引委員長の御答弁によれば、二月一日現在が、つまり、私が今指摘しておる第十二次案であります。つまり、常識的には最終的な案と理解すべきではありませんか。それを大臣はしらを切るというのはどうかと思いますが、まだ事務局まかせでおるからこれから検討するのだ、そういう態度であってはならぬと私は思います。いやしくも総理から指示を受けて、閣僚が懇談をされるということについては、骨格、内容、相当なものができておる、だからこそ、意見を交換し、固まらないうちに調整すべき点は調整するのだ、こういうことになるのではありませんか。二月一日現在というものは、あなたは御存じないとおっしゃいますか。
  240. 福田一

    ○福田国務大臣 あなたも、その案の中に未定稿と書いてあるということをお認めになっていられるのでありまして、実は事務当局の間で今そういうことを研究しております。私は、事務当局が各方面と連絡しておるということは承知いたしておりますが、どういうような各方面の意見かということも十分考え合わせて、そして態度をきめることが私は正しいと思うのでありまして、こちらの方の態度をきめて押しつけたというのでは、これは私は政治にはならないと思う。だから十分各方面の意見を聞かしておることについては、御了承を賜わりたいと思います。
  241. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣は二月一日案というものは御存じありませんか。
  242. 重政誠之

    ○重政国務大臣 私は全然承知いたしておりません。
  243. 足鹿覺

    足鹿委員 まことにそういうことでは困りますが、まあ御存じないというならば、何をか言わんやであります。だからこそ、この立法構想というものは、官僚統制の復活ではないか、そういう悪法的な性格を持つものではないかといって、比較的擁護される立場に立つであろう経済界すらも、多分に警戒の態度を示しておることは、大臣みずからも御存じ通りであります。本国会提案されるかどうかまだ見通しもつかぬでありましょうが、少なくともこういう重大な法案については、大臣みずからが野人としての立場に立って、そうしてよく判断をされて、その判断の中心として作業をさせられるのが、私は筋だと思うのです。下から上がってくるものをあなたがとやかく指示をされる、閣僚間で調整をする、小さな立法は別でありますが、こういう重大な、経済界に大きな影響をもたらし、消費者に重大な関係を持つ立法については、もっと大臣の見識において御判断になってしかるべきではないか。このことだけを指摘いたしまして、このような立法は御検討になるまでもなく、現独禁法の運用で足りる、私はそういうふうに考えますが、私と所見を異にされますかどうか。どこまでもこの立法を、意見を調整をしてこの国会提案をされるという御決意でありますか、それだけをお聞きしておきます。
  244. 福田一

    ○福田国務大臣 もとより事務当局をしてそういう法案についての意見を聞かしておるというその根本には、先ほども申し上げましたけれども、世界の経済に対応していくために、また自由化をしていくために、日本の産業に力をつける必要がある。それにはこういうような一応の考え方もあり得る。しからばそれを具体的にどうしてやったらいいのかということについては、各方面の意見を聞いてみようということを言うことは、私は少しも差しつかえない。こういうような重要な法案でありますからこそ慎重に検討しておるのでありまして、私が私の方向を最初に打ち出してやるとか、こういうふうにせいと言って、これでもう納得させる、こういうやり方よりは今の方法の方がいいのではないかと考えておるわけでございます。
  245. 足鹿覺

    足鹿委員 この問題であまり時間を食い過ぎましたので先へいきますが、あとでまた大蔵大臣に一括してお尋ねをいたします。  そこで、これとの関連で先ほども申し上げました硫安工業対策と政策融資の問題についてでありますが、政府は暮れに自民党の肥料対策審議会の意見を入れて、百三億の赤字処理の融資を十三カ年賦で、六分五厘で開銀融資を決定し、その利子の差益でもって実質赤字百二十五億を埋める方針を立てて、今国会にもその措置が講ぜられておる。また一方、合理化対策として百六億、十年賦で開銀及び北海道東北開発公庫を通じて融資をし、その金利差をもって実質上の合理化を促進援助する方針を打ち出され、旧ろう肥料審議会懇談会にその経過の御報告がありました。私どもは審議会の正式の開催を求めましたが、今日に至るまでまだその機会を得ておりません。いずれお開きになると思いますが、いかがでありましょうや。詳しくはそれらの機会に譲りたいと思いますが、このような実質の補助金ではなくして、私企業に対して、しかも欠損ではない、利益の多少の段階である企業に対して赤字補てん、企業合理化の融資を通じて事実上の莫大な政策融資が行なわれ出したということは、本年度の予算の特徴の一つであろうと私は思います。そのきっかけをつくったのが、この硫安工業対策の政策融資ではなかったかと、かように理解いたしておるのであります。そこで硫安工業の輸出赤字の原因については、今さら私はこれをさかのぼってくどくどと検討したいと思いません。しかし時点を明らかにしておきますが、第一次合理化計画について、二十八年から三十二年に、生産能力について計画では業界が考え政府の承認を得たものは三百十一万九千トンであったものが四百三十六万二千トンとなり、その差し引きが計画より百二十万トンもオーバーし、これが赤字輸出を余儀なくする滞貨として業界を圧迫した、これは争えない事実であろうと思います。また設備資金関係を見ましても、第一次計画で合理化資金計画が二百三億二百万円であったが、投下実績は六百三億二千八百万円の過剰設備投資となりました。これが金利負担の増大を来たし、さらに赤字の累積の第二のおもなる原因をなしたことも御承知の通りであります。そこで、合理化の目標は、第一次計画ではどうなったかといえば、二十八年トン当たり六十五ドルを五十ドルに下げるという第一次の合理化の目標であったが、これが合理化の達成は、五十五ドル〇五という五ドル余りの未達成額を残したままに第一次計画は終わった。これを四十キロ当たりにいたしますと、二十八年度が九百三十六円だったものが七百九十二円七十銭という、相当の値下がりはあったと思いますが、事実上合理化目標を達成しなかったということがいえると思うのであります。このように考えてみますと、硫安工業の輸出赤字の原因は、今述べたような池田内閣の、あるいはそれ以前の景気過熱政策、高度の経済成長政策が刺激となり、このような一面に過剰投資となり、過剰在庫となり、それを輸出に赤字覚悟で出さざるを得なくなった、しかも硫安二法の規定があって、そういうことになったということになろうかと思います。こういう事情でありまして、これはあとで申しますが、硫安工業の輸出赤字の原因を政府が百二十五億も実質に補てんしなければならないということについては私ども疑念を持たざるを得ない。いわんや第二次合理化計画の三十二年からことしでその年度が終わるわけでありますが、アンモニアの生産能力と生産実績については、生産能力が最終年度において五百四十四万トンの計画に対して、六百九十七万六千トンの実績に明らかなごとく、過剰設備が過剰生産の傾向に拍車を加えております。対外競争力がないにもかかわらずしゃにむに輸出をしなければならぬ。従って赤字がそこにまた出てくる。こういう累積した結果が現われておる。この第二次の場合でも設備投資は四百八十億の計画に対して七百八十五億九千八百万円の巨額に達しておる。三百五億円の過剰投資をしておる。これは合成硫安メーカーが単肥生産にこれだけの投資をしたとは思えない。いわゆる副次生産である。あるいは高度の総合化学産業自体に投資したものだと考えざるを得ない。肥料部門はその一部を形成しておるのにすぎないと思うのでありますが、それはともかくといたしまして、合理化の目標は、当初の合理化目標トン当たり五十四ドルを四十七ドルに第二次の場合に改定をされました。さらにこれを三十六年六月、閣僚会議が開かれまして、四十三ドル四十七セントにされたことは大臣も御承知の通りであります。これが今もって達成できないままにもう最終年度を迎えたわけであります。そこで、肥料工業は斜陽産業だと宣伝されておりますが、では硫安各メーカーの経営状態について大臣はどう見ておられるか。専業八社の配当率は六・三五%であります。兼業八社の配当率は一一・三五%であります。これは三十六年下期の日銀統計によるものでありまして、権威あるものと言わねばなりません。だとするならば、この合理化目標は達成もできない。しかも百二十五億の赤字補てん政策融資を行なう。それのみならず、さらに今度は百六億の合理化資金を本予算に、財政投融資計画の中に織り込んでおられるわけでありますが、一体過去においてこういう実績であり、今度の合理化の百六億の算定基礎をどう押えておられるかということを私はお聞きしたいのでありますが、赤字の問題は一応どのように考えられるか、これも御答弁願いたいのでありますが、中心はこの今度の百六億の、つまり二百六十六億の合理化資金の四〇%、百六億と大まかにお示しになっておりますが、合理化計画はどういうものでありますか。たとえば合理化目標は、四十三ドル四十八セントを三十六年九月の四大臣の会談決定を継続して実施していかれるための百六億の投融資でありますか、新しく合理化計画で政府政策融資をするならば、新しい合理化目標を定めてのことでありますか、合理化の推進力は何によってなさろうとしておりますか、少なくとも業界に対するお義理は私は済んだと思うのです。過去のことを私はあえてここで深く追及する時間を持たぬというのは、以上申し上げた通りでありますが、百二十五億の実質赤字は解消しております。租税減税措置と、特別措置による減税と、今回の金利差とで埋まっております。業界は売掛金二百億だといいますけれども、これは名目であって、政府御存じ通り、実損は百二十五億といわれておる。これはこれで帳消しになれば、将来にわたってのこの業界の怠慢というか、ずさんさというか、自分たちの利益は兼業八社では一一%の配当率を確保しながら、不況といわれる会社においてすらも六%を維持しておるではありませんか。そして合理化自体は自分の会社のことではありませんか。政府は何を目標に今回のおおばんふるまいの政策融資をされたのでありますか。合理化目標は何ドルにして国際競争力に耐え得るような合理化を育成していかれる御所存でありますか、それをはっきりしていただきたい。
  246. 福田一

    ○福田国務大臣 足鹿さんはその方の専門でいられますから、私がいろいろなことを申し上げるのは、かえって失礼にあたる面があるかもしれませんが、しかし私たちのやった措置につきましては、一応ここで申し上げないわけにはいかないかと思うのであります。簡単に申し上げますと、御承知のように肥料二法によりまして、そうして今あなたが仰せになった通りいろいろの経緯があって今日まできましたが、肥料二法の仕組みというものはできるだけ農民に安い肥料を提供するという意味でバルクライン方式というものによって肥料の値段をきめたということは、これはあなた御承知の通りでございます。このバルクライン方式というものは、あなたも御承知の通り、総平均ではございませんで、上の方の優良な、いわゆる割合安くできる優秀会社の工場の数社をとって、そうして、それで平均をとってやっていくというのできまったわけであります。値段をきめておるわけでありますが、従ってあとの十幾工場においては、それより以下の赤字でもって実は肥料を売らなければならないというような形になっておることも、事実あなたが御承知の通りでございます。そういう意味において、肥料会社は今非常にマイナスの面を持っている会社が多かったということは、これはあなたも御承知の通りであります。と同時に、そういうふうにしておきまして輸出会社というものをつくりまして、そうして輸出する場合に、その輸出する肥料は国内できめたバルクライン方式による割合に安い値段といいますか、その値段で仕入れることをいたしておりますから、そうすればだんだん合理化が進めば、赤字は埋まるだろう、まあ何とか輸出の値段も相当またよくなってくることがあるだろうというような考え方で、この肥料二法というものをつくって、そうして実際の実施に移してみたところが、どうであったかというと、欧州あたりでは、今日本は五十二ドルくらいで国内の農民に硫安を提供しておりますが、五十五ドルくらいで、みんな使っておることは御承知の通り。そういうふうに合理化はしていっても、今度は五十五ドルで国内に使わしておきながら、海外については三十五ドルとか三十六ドルでダンピングをする、こういうことをずっと今までやってきたわけであります。その結果、輸出会社は高い値段で肥料を買って、そうして安い値段で輸出をせざるを得ないという期間が今日まで続きまして、その結果が赤字となって、一応表面の赤字が二百二十五億円になった。実質的にそれでは幾らになったかというと、計算してみると百二十五億円だ、こういうことに相なっておるわけであります。そこでこの百二十五億円を一つ……。
  247. 足鹿覺

    足鹿委員 そのものずばりで……。時間がないから。
  248. 福田一

    ○福田国務大臣 いやいや、私も少し申し上げませんと、あなたの御意見だけということになってもあれですから、ちょっとそれはもう少し……。それでありますから、その分を今度埋め合わせるために、百三億の開銀融資をした、こういうことになっております。これはあなた御承知の通り。そこで、後の今度は百六億はどうかということになりますと、今まで私たちはその輸出会社に対して、国内の値段で買ってそうして海外へは安売りした場合の赤字というものを、その輸出会社でプールして残しておく制度をとりましたけれども、今度は、国内で五十二ドルでできたのを三十六ドルに売る、そうすればここに十六ドルの赤字が出ます。それは全部肥料会社が自分で負担せよという、こういうやり方で今後は一切その赤字は見ない、こういう建前をとったわけであります。これは私は肥料会社にとっては、ある意味で非常に苦しい問題であると思うのでありまして、もっともっとやはり合理化をして、できるだけ輸出の値段に近づけるようにしなければなりません。しかしこのダンピングの輸出の値段というものは、海外がそういうダンピングをするのでありますから、国内の問題だけできめられればこれは簡単でありますが、今後どこまで下がっていくか。こっちがたとえば四十六、七ドルまで合理化したときにはもう二十五ドルになったということになると、また大へんな差が開くということもあるでしょう。これはなかなか予測ができないと思います、よそがやるわけで、日本がやるわけじゃございませんから。こういうことがあるわけであります。そこで、そういうことも考えてみると、将来にわたってまだまだ国際競争は激化するかもしれぬから、まあ、もっと合理化をしていかなければいけない。その合理化をする意図はあるかどうかということで大体考えまして、ぜひ合理化をしたいという面もありますから、そこで、今言いましたような資金をつけたわけであります。その資金は、それほど低金利でつけておるというわけではないわけでありますが、しかし、今あなたが仰せになりましたように、肥料会社が六分配当をしておるとか、一割一分の配当をしておる、専業は六分配当したとおっしゃいますけれども、これはもう私釈迦に説法になるようでありますけれども、専業の肥料会社なんというものは日本には存在しておりません。一番多いものでも三〇%硫安をつくっておる。最底のものは一〇%以下ということになっておるのでありまして、三〇%から一〇%までの間の分を含めて一応専業と言っておる。しかし、これは言葉が当てはまっておらない。それが六分の配当をしておるというのは、今言ったように、百二十五億の赤字を輸出会社に積んでおいたからできたわけでありまして、それをもし取りくずして持ってきたならば、配当どころじゃありません。パンクしておったかもしれません。そういう会社があり得たのであります。また一方におきまして、いわゆる兼業の方においても一割一分配当をしておるというけれども、ほかの面でもうける。また一方において、赤字を百二十五億輸出会社にプールしておいたからできたことでございまして、私は正しい姿で見て、これがりっぱな配当である、あるいはいい配当であったということはできないのではないかと考えておるわけでありますが、いずれにいたしましても、今後肥料はまだまだ輸出ダンピングが続くでありましょうから、それに相応する意味で、一つこの合理化をしなければならないという意味合いにおいて今度百六億の合理化資金をまたつけた、こういうわけでございます。
  249. 足鹿覺

    足鹿委員 福田さん、御答弁を願ったことに答えて下さい。要するに、今度の合理化政策融資の期待しておるのは、第二次合理化計画の四十三ドル四十八セントをそのまま踏襲するのか、新しい合理化計画を立てるのか、立てるとすれば何かということ。それからこれは田中大蔵大臣もおいでになりましたから申し上げますが、赤字補てんの分は、開銀合理化融資については北海道東北開発公庫が若干持っておる。二本建であります。これに対しても開銀は大蔵省に対して説明をして、総合的に言えることは政策的にも明確な指針が樹立されており、これに向かって邁進するというものとは判断しにくいと言っております、大蔵省当局に対する開銀の意見として。二が硫安関係合理化工事に開銀融資を適用するならば、一本化さるべきである。北海道東北開発公庫を起用すべきではないと言っておる。なぜこれは二本建になったのか。大蔵省のこれを御承認になった理由はどこにあるのか。最後にそう言って大蔵省に意見を述べておる。第三に、これらの前提条件として硫安価格については需給上、技術上メーカー・メリットはますます低下するものであるとの見方から、これに対しさらに融資を行なうことは良策でないとの結論を出しておると伝えられておるのであります。これは金融機関としては重大な結論だろうと僕は思うのであります。そういう意見を大蔵当局に純粋な立場に立って述べておる。しかるに二本建の融資がきまり、総ワクにして百六億円の融資がすでに実施されんとしておる。しかも今お聞きのように、合理化目標は明確でない。国内価格にしわ寄せをしない、この御言明はまだいただいておりませんが、赤字は出ても知らぬということは御言明になった。業界でそれは対処しなさい、もうこれっ切りですぞ、こういうお話でありますが、それはいいのでありますが、その赤字を国内消費者価格に転嫁しないための保証はどのようにお考えになっておるか、これが私は一つの問題点だろうと思います。今申しましたように、これは私が述べておるのではない。開銀という大蔵大臣の監督下にある国家金融機関が、メーカーのメリットはますます低下する、こういうものに融資することは良策でないと言っておるのですよ。こういう点から言いましても、私どもが一方的な立場に立ったものではなくして、相当、あらゆる角度から資料を集め、各方面の意見を参酌して私どもは申し述べておるのである。いたずらに企業いじめをしておるのではありません。公正な立場に立って議論をしておると思うのでありますが、大蔵大臣は合理化目標も示さない、赤字が出たときには国内に転嫁しないという約束もない。しかも二百九億という大きな政策融資をする、三分の利子差をもってしましても大きな金であります。百億近い補助に当たります。前に租税特別措置による五十数億の措置が講じてありますから、べらぼうなものであります。おおばんぶるまいであります。こういうまるでつかみ分けのような融資でいいのでありますか。少くともメーカー別の合理化目標を明示させ、そうして総合的なこれに対する大蔵省としての責任ある立場で融資をなさるならば——その融資目的が完全に達成できるように、あなたとしては権威ある裁断を下されるべきだと思いますが、その合理化目標についてもお聞きの通りでありますが、これでよろしいのでありますか。
  250. 福田一

    ○福田国務大臣 合理化の目標というものを立てて、そうして産業を育成していくということは、これは今までもやってきたところでありますが、その通りになかなかいかないという場合ももちろんございます。これはやはり物価の問題とか、賃金の問題とか、原料の問題とか、いろいろあるでしょう。しかし、要するに経済というものは生きものでありますから、計画を立てたらぴったりいくかいかないかということになると、これはなかなかむずかしい面もあると私は思います。しかしバルクライン方式によりまして、まだ肥料二法が残っておりますから、今後肥料をこういうふうに合理化をしていく場合には、だんだんこの値段を安くできる、また値段を安くしていくということについては、われわれはも自信を持っておるし、またそうなることは間違いないと思っておるわけでありまして、そのメリットがないとは私は考えません。従って農家に対して今度は高い肥料を買わせる、高い硫安を買わせるというようなことはあり得ない。今後も少なくとも硫安の値段は、今の値段より上がらないということだけは、今のバルク・ライン方式が存在する限りにおいては間違いないと私は考えておるわけであります。
  251. 田中角榮

    田中国務大臣 硫安問題に対して長い間問題になっておりましたことは御承知の通りでございます。私も大蔵大臣就任前は、御承知の自民党の三役と、当時の佐藤、河野、水田、藤山四大臣との間において、何回かこの問題に対して協議が行なわれたわけでありますが、私もまた自民党の三役の一人として、この問題を引き継いで政府側との折衝に当たったこともございます。当時は閣僚間において、この問題を解決するという政府方針がありましたので、この四閣僚の決定に待っておったわけでありますが、依然としてこの問題は解決をしないばかりでなく、赤字はますます増大してくる趨勢にあったことは御承知の通りであります。でありますから、これが特別な救済措置を行ないましたのは、一つは肥料二法が存続しておるということであります。もう一つは、現に輸出企業であって、輸出による赤字を政府が持つとか業者が持たなければならないとかの議論は別として、現実問題として、このままでは企業の再建ができない状態であるというのが第二の理由であります。   〔委員長退席、安藤委員長代理着席〕  第三は、何とかして、この問題に線を引いてやることによって、企業転換というような問題もはからなければなりませんし、特に農業政策上からの問題としても、国内の肥料価格が上がらないという将来の見通しもつけなければなりませんので、ここで政府、業界が一体になって再建のめどを立てるという立場に立って、これが最終的な措置を行なったわけでございます。そのためには、今通産大臣も申したように、これからの設備転換の問題また肥料二法が当然廃止をせられる場合に対しても、より安く良質のものを提供できるような業者の心がまえその他に対して、またこれから生ずる赤字等に対しては業者の責任においてこれを処理するというようなことを十分前提にしまして、四相決定において行なわれた第一次に次いで、最終的な措置を行なったわけであります。開発銀行がどう言っておるか、また私のところまでは報告がありませんが、それは開発銀行の立場で言ったと思います。大蔵大臣の立場は、開発銀行事務当局よりもより高い立場に立っておるということで一つ御理解賜わりたいと思います。  それから開発銀行と東北開発を併用したのはどうかということでありますが、東北開発に対しては、これは私が当時通産大臣との折衝にあたりましたときに、東北開発を使わなければならないというような考え方に対しては幾らか議論がありましたことはありました。これは今まで東北地方及び北海道に肥料会社がありますので、硫安会社がありますので、これらの企業が東北開発から今までもずっと引き続いて融資を受けておるということでありますので、これが最終決定にあたって、東北開発もあわせて使用する。金利の問題に対して多少の問題があるけれども、これは最終決定段階において、よろしゅうございますか、とこう私が念を押したら、通産大臣は、まあやむを得ないですな、こういうところでありましたので、東北開発もそのままの状態で併用したというだけであって、特に北海道東北開発公庫を新しく併用をしたというような考えではございません。それから開発銀行の融資や北海道東北開発公庫の融資も、これから硫安その他の——硫安の設備を改良して、硫安価格を安くするというようなことに重点を置くよりも、転換資金に重点を置くというような考え方で融資の基本態度をきめたわけでございます。  なお、開発銀行がどういうことを言っているかは、一つ取り調べまして、開発銀行が政府の真意を理解しない場合は、なぜ政府がこのような措置をとったのかということに対して意志の疎通をはかっていくつもりであります。
  252. 足鹿覺

    足鹿委員 これは大蔵大臣のお言葉とも思えない御答弁をいただいて私もびっくりしましたが、開発銀行が何を言おうと、成府は政府で高い立場でやるんだ、これは一応大蔵大臣としては上司でありますからお言葉もあろうかと思いますが、具体的にメーカー・メリットはますます低下するものであるとの見方からさらに融資等を行なうことは良策ではないという結論を出しておるというようなことに対しては、少なくとも高い立場であろうと低い立場であろうと、重大な融資の問題を決定する、しかも、政策融資を行なうわけでありますから、事実上は形の変わった補助金を出すのと同じことでありますから、やはり慎重になさる必要があるのではないか、こういうことを私は申し上げておるのであって、おれは高い立場にあるから開発が何を言おうと勝手だというふうにとれるような御答弁は私は非常に遺憾に思います。
  253. 田中角榮

    田中国務大臣 私が申し上げたのは、そのような考え方で申したわけではありません。開発銀行の自主性も尊重いたしておりますし、開発銀行設立の趣意も十分承知をいたしておりますし、これからの開発銀行の資金繰り、採算上の問題も当然所管大臣としては重点を置いて考えておりますが、開発銀行法なるものを考えてみて、しかも政府政策的にこの必要がありと認めた場合には、開発銀行は特殊な機関でありますから、政府の施策によって業務を行なうということは、これは民間銀行と違うわけであります。でありますから、石炭案に対しても、今のような議論からいえばつぶした方がいいという議論になるかもわかりませんが、そういう立場で考えることは、これは民間の金融機関の言うことであって、いやしくも開発銀行の口にすべきことでありません。同時に海運の問題に対しても、同じような政策融資が行なわれておるわけでありまして、これが開発銀行法に基づく資金繰りその他の問題に対しては、政府が一般会計から繰り入れるとか、その他のいろいろな施策を行なうことは、より別な立場でまた検討していくべき問題でありまして、開発銀行が、ただ開発銀行事務当局がそのようなことを開発銀行の意見として言ったからといって、少なくとも当面する肥料問題、特に硫安問題、長いこと懸案であった問題を解決する障害として考える必要はないというふうに認識をしております。
  254. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの肥料融資についての政府の御答弁が、具体的に合理化目標も明確になさらない、しかもメーカー別の合理化計画も具体的に明らかにおっしゃらない。いわばつかみ金同様の印象を受けるような御答弁をされることをまことに遺憾に思います。しかし事実ないならばこれはいたし方ないのでありまして、いつになりましたらそのような大まかな合理化目標がつくものでありますか。それができなければ肥料審議会等にもお諮りにならないのでありますか。ただ合理化目標は、現在は作業困難であるが、いつごろまでにはできる、こういう見当もつかないままにつかみ金のような融資をなさる御所存であり、今後もこういう方法をおとりになるのでありましょうか。これは一つの例をなすものだろうと思う。海運融資の場合は少なくとも法律というものがある。これはないのですよ。中身は何にもなしで、こういう膨大な投融資がきめていかれる。私は非常に悪例となると思うのです。ですから現在ないならない、しかし督励をしてどういうメーカー別合理化目標、その結果がこのような目標達成の一つの具体案がある、こういうことを努力するということもおっしゃらない。これは高い立場から必要と思えば開銀に命じて融資をさせるのだ、企業者も努力しておることは認めなければならぬというようなことだけを御答弁を得るとは私は考えませんでした。これ以上御答弁がなければあえて申し上げません。農民の二十万、三十万の近代化資金に田地、田畑の抵当から保証人からまことにめんどう千万な手続をやるのに比べますと、これはまことに簡単に、中身の伴わない、計画の提出もない。ただ企業努力を信ずるというだけで、これだけの大きな政策融資が行なわれるということについて、消費者たる農民の置かれておる融資上の困難、近代化資金にいたしましても、構造改革資金については三分五厘の道がようやく開けようとしておりますが、どのような苦しい条件にあるかということと対比して、あまりにもこのたびの改策融資の目標の不明確であることを遺憾に思い、もしこの合理化目標が達成されず、国際競争力がこの合理化によって達成できない、輸出産業としての育成の目的が達せられなかったときには、政府責任をあらためて追及をいたします。そのことだけははっきり申し上げて、この問題については時間がありませんから、次に移ります。  農林大臣とそれから文部大臣と……。
  255. 福田一

    ○福田国務大臣 ちょっと一言だけ……。
  256. 足鹿覺

    足鹿委員 あなたの答弁は長くて時間を食ってしようがない。肝心なことを答弁しないで議論ばかりしておる……。
  257. 安藤覺

    安藤委員長代理 答弁はなるべく簡潔に願います。
  258. 福田一

    ○福田国務大臣 合理化の案がないじゃないかというお話でありますが、もちろん合理化について案は一応会社別に考えております。でありますから、そういうことを申し上げると、あなたはだんだん長くなるというので……。
  259. 足鹿覺

    足鹿委員 だから印刷にしてでも出して……。
  260. 福田一

    ○福田国務大臣 印刷ならば、適当な時期に出します。  あなたがおっしゃる意味は、この合理化をやった場合において、あとでどういうことになるのか、農村が影響を受けはしないかということが第一点。もしまた輸出産業としてこれが十分にペイしなくなったときにはどうするのだ、こういう御質問だと思う。われわれは、農民には絶対に迷惑をおかけいたしません。また今の法律で迷惑がかかることにならないじゃないかということをまず申し上げたい。  もう一つは、将来損をしても、輸出産業として立ち行かなくなっても、もうこれ以上いわゆるうしろ向きの融資というようなことはしないということをはっきり明言してあるわけでありまして、今後またこんなようなことをして何度もしりぬぐいをしろと言っても、それはできませんよということを念を押してやっておったということだけをつけ加えさせていただきます。
  261. 足鹿覺

    足鹿委員 では次に移りまして、農林大臣と文部大臣と厚生大臣に相互関連の問題がありますので伺います。厚生大臣はおいでになっておりませんか。——それでは最初に農林大臣と文部大臣に伺います。  御存じのように、本国会でもしばしば問題になりましたように、旧臘十二月十一日でありましたか、乳業四大メーカーが二円前後の一せい基本乳価の引き下げ通告を出したわけです。これに対して農業構造改善事業がスタートしたばかりであり、基幹作目としては四八%の多きに達しておる酪農が計画に盛り込まれておる、二年先には大きな乳の量になって現われてきます。農林省にしても、資料を出せといっても、まだ作業中だといって出しませんが、そういう出鼻にこういう事態が起きるということは非常に遺憾であるというので、農林水産委員会においては慎重審議の結果、去る二月七日、乳価安定対策に関する決議をいたしました。これは超党派の立場で、しかも農林委員長みずからが提案をされ、全会一致で決議されたものでありまして、案文はここにございますが、時間の関係がありますので朗読を省略いたしますが、委員長、全文を速記録に御記載を願うということで御了承を願いたいと思います。
  262. 安藤覺

    安藤委員長代理 承知いたしました。
  263. 足鹿覺

    足鹿委員 一項目だけ、一番重要な点は「乳製品の畜産振興事業団による買入れをすみやかに完了し、乳価値下げを中止する等事態の正常化を図るよう指導すること。なお右の方針に協力しない乳業者に対しては農林漁業金融公庫からの融資を停止する等行政上の措置をも検討すること。」という第一項がございます。政府は、滞貨融資については、滞貨乳製品についての買い上げは近く完了される予定だそうであります。二十億をきめられ、申し込みは十八億五千万とか聞いておりますが、そういう形になっておると思います。いずれにいたしましても、乳製品の滞貨は買い上げがされ、メーカー側の救済はそれで一応終わるということになる。といたしますならば、今度の値下げのおもなる理由が、去年の涼しい夏のために消費が伸びなかった。しかも生産が若干伸びた。従って、なま乳ではけないために乳製品に加工した。それが滞貨したから買え、こういうことであった。その買う条件は、乳価の一方的値下げをストップさせるということが伴わなければ片手落ちではありませんか。これはわれわれはしばしば農林大臣に申し上げた。農林大臣も、公私ともに努力する旨仰せられた。一つのお約束はお果たしになりました、ただいま述べましたように農林水産委員会は、委員長提案でこれの値下げ中止をやり、事態の正常化指導を政府に、政策買い上げしてやれということを決議しておりますが、農林大臣もいろいろと腹をきめて御検討になっておることと思いますが、これの事態の収拾策についてどのような構想があり、どのように御措置になっておりますか、この際明らかにしていただきたいと存じます。
  264. 重政誠之

    ○重政国務大臣 乳価の問題につきましては、本委員会におきましても、あるいは衆参両院の農林水産委員会におきましても、しばしば御質問をいただいておるところであります。今日までも御答弁をいたしております通りに、乳製品の買い上げは今月の末を目途にして完了をいたすべく努力をいたしております。買い上げを決定いたしました際に、製造業者に対しましては、これ以上乳価を値下げをしないこと、さらに奨励金を減額した部分については、できるだけすみやかにもとの状況に復しろ、こういうことを懇談をいたしまして、誓約をいたさしめております。そこで、しからばいつの時期にもとの減額前の形に復せしめるかということが問題だろうと思うのでありますが、これは私の考えでは、一応この乳製品の買い上げ、これはしばしば申します通り、二、三千もある倉庫なり工場から買い上げるのでありますから、その受け渡し、代金の授受等につきましても相当これは手間がかかるのでありまして、今日に至っておるわけであります。二月の終わりまでにはとにかくこれは完了せしめる。そういたしまして初めて、三月の初旬から私はこの問題について、乳製品の買い上げは完了いたしたのでありますから、さらにもとに復するべく、これを懇談をして、農水での御決定のような方向にこれは持っていきたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  265. 足鹿覺

    足鹿委員 今承りますと、すでに買い上げは進んでおるが、今月末に乳製品の買い上げが終わる。終わったときに業界と農林水産委員会の決議第一項の趣旨を実現するように懇談をする。御自信のほどをお示しになりましたので、時間もありませんし、農林大臣の今後の努力の推移を見守っていきたいと思いますが、十分この委員会の決議の趣旨に沿うよう御努力、御善処を願いたいと思います。そこで農林大臣の問題とは、今の酪農の問題とは直接の関係はございませんが、荒木文相にお尋ね申し上げたいことは、本年度三十四億一千四百八十八万円の学校給食が新しく大幅に取り上げられ、アメリカから八万五千三百七十二トンの脱脂粉乳の輸入計画が組まれておることは大臣も御承知の通りでありますが、これはわれわれがしばしば言っておりましたけれども、文部省はなかなか学校給食を本格化することに消極的でありました。努力はしておられましたけれども、このような大きな予算がことしころげ込むとはお考えになっておらなかったようです。どちらかというと消極的な態度であったと思います。いずれにいたしましても、そのこと自体は、けっこうなのでありますが、この八万五千三百七十二トンというものをなま乳に換算をいたしますと五百七十万石、一年間に国内で生産をいたしますものが、去年の実績によりますと、去年の一月から十二月までに千三百万石しか生産がございません。これの四四%に当たる粉乳を放出を受けるわけでありますが、これは国内の酪農家にとっては、この新しい消費拡大の面がすべてアメリカの輸入脱粉に依存するということについては非常に遺憾である。これを長期の展望に立って——いきなりとは申しません。申しませんが、農林省も八億の別な予算を持って学校給食を、なまの牛乳の給食を考えておるのでありますから、   〔安藤委員長代理退席、委員長着席〕 もっとこの政策を統一されまして、現在の学校給食会という会の会法の一部改正というようなことで当面はこの国会提案されておるようでありますが、もっと学校給食機関の充実等を中心に国内産の酪農振興と相通ずるような御構想を各省で連絡をとられてお進めになる必要があるのではないか。これは政府責任を持って選択的拡大だといって進めておる酪農振興のはけ口として非常に重要な問題であろうかと思われます。伝え聞くところによりますと、これはアメリカの品物で安いということがまあ魅力なんだ、これは安いはずであります。余剰農産物のCCCの放出物資であります。これをアメリカの正常な市況からいいますと、大体日本アメリカは、なま乳とか、あるいは加工乳一升に換算しますと、大体平均六十円くらいであります。ですからアメリカのCCC、つまりアメリカの酪農不況を政府政策的に買い上げた脱粉でもって日本の学童に給食をするということは、間接的にアメリカの酪農民の救済を日本の学童給食でやるという結果に残念ながらなるのであります。しかも今お聞きのように、スタートからメーカーは乳価の値下げで挑戦してきておる。これを苦労してわれわれが正常化しようと努力しておるのであります。そういうわけでありますので、将来にわたってこの学校給食については、国内産の牛乳または乳製品等を十カ年計画等のちゃんとした計画のもとに、農林省、あとで申しますが厚生省等と連絡を密にして、そして学童の栄養の充実、保健衛生のためにもぜひやっていただき、それが国内酪農の振興になり、その消費拡大の大きな隘路を打開することに貢献をしていただきたい、かように思うのであります。これは大きな問題でありまして、ぜひこの三大臣が、あとで厚生大臣にお尋ねいたしますが、現在隘路となっておるこの問題を力を合わせておやりになり、それに対する必要な措置は大蔵大臣としてお考えになれば、この酪農問題の前途は光明が出てきますが、しからずんば非常に重大なことになろうかと思うのでありまして、時間がありませんからこまかしいデータや理由づけ等については申し上げません。割愛をいたしますが、この点について荒木文相の御所信のほどを承りたいと存じます。
  266. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申します。足鹿さんの今言われました考え方、御所見、私は一点の異存はありません。ただ現実問題としますと、すでに御案内の通り、一方において児童生徒の学校給食によります体位向上の実績は、数年来の成果に基づきましてきわめて明瞭であります。何としてでもやりたいという要望がございます。その要望にこたうべく国内産の脱脂粉乳、粉乳はもちろんとして、なま牛乳にいたしましても、今おっしゃった通りに、半分の生産量を全部安定して季節の変動にかかわらず提供していただきまするならば、どうやらやれるという分量でございますので、実行的な案としてはちょっと困難だ。同時に価格の点におきましても、父兄負担は多くしたくないという要請もございますために、今申した季節的な変動、不安定性、確実に流れ込んでくるという条件が整備され、価格の点も父兄負担を増加しないでやれるとならば、国内産のなま牛乳を使うことが最も望ましい。児童生徒の保健衛生上の要請からいたしましても、学校給食の目的達成上からも必要なことだと思います。従いまして、お説の通り、農業政策と申しますか、酪農政策、あるいは主食の今後のあり方等につきましての農林省を中心とする基本的なものの考え方に即応して学校給食も考えられるべきものであることは、私は当然のことと心得ます。ただ現状が、繰り返し申しますようですけれども、酪農育成という角度からだけ特に考えられて、夏場アイスクリームが売れれば学校給食のなま牛乳はボイコットされるというふうな実情にありますことをはなはだ残念に思っておるぐらいでございます。さりとて、今申し上げたような学校給食の効果をまざまざと見ながら、財政措置が今までできませんでしたからあきらめておったのですけれども、財政措置ができる以上は一日も早くやりたいというその希望をかなえるためには、おっしゃるような批判もあり得ると思いますけれども、CCCの脱脂粉乳を輸入して当面小中学校全員に飲ませるということで発足するわけですが、国内産の粉乳にいたしましても、なま乳にいたしましても、増産されるに従って確実に提供されるというルートができるに従って、これが輸入量が漸減していく方向をたどるべき課題であることは私も同感であります。
  267. 足鹿覺

    足鹿委員 厚生大臣にこの問題に関連いたしましてぜひお聞き取りを願い、農林、文部、厚生が相一致して、この成長産物といわれ将来を嘱目される牛乳並びに乳製品の消費拡大を阻害する要因の除去についての御決意のほどを承りたい。と申しますのは、現行食品衛生法並びに環境衛生法という二つ関係の深い法律がございます。環境衛生法の問題は時間がありませんので省略をいたして、今日は割愛をいたしますが、食品衛生法及びその関係法令によりますと、製造基準、包装基準がきわめて窮屈に規定されております。そこでこれを緩和するためにたとえば集団飲用の場合であるとか、その他これに準ずる場合、あるいは山間僻地で乳業者の乳が入らないというようなところの場合には、厚生省令に基づく通牒によって緩和の指令が出ておりますけれども、それが原法である食品衛生法に厳重に規定されておりますので、やはり都道府県知事は、その法律の本法に依存をいたしまして、通牒には目をくれない。やはりその既成事実がまかり通っておるというのが実情であります。つまり牛乳は透明な一合びんで包装規格ということになっておる。ところが一合びんは大体御存じのように十二円かかります。四十回が使用限界だという話、四十回でこわれる。ですから償却分一本三十銭は余分なものを消費者は毎日飲んでおる。三百六十五日でありますから、これは大きいのであります。わずか三十銭でありますが、これは大きい。そこで、御存じのように酒は一升びんでどんどん普及しておりますし、外国の場合でもどんどん家庭へ大びんで入っております。日本でも一部業務用その他大量消費の家庭には入っておりますが、今申しましたように、やはり一合びんで入っております。その方がメーカーの利潤率が高いのであります。ところが、労力不足その他によって、このごろ配達もなかなかそう思わしくいかない。そういうような事例がありまして、この際食品衛生法包装規格を緩和して、一升びんなら一升びんあるいは一斗カンなら一斗カンのカン送、ピン詰め等の規格を変更または改正しまして、そうしていきました場合には、先ほど学校給食の例を申し上げましたが、かりに一合びん十円で学校へ入ったといたしますと、これは三円七十銭の補助がありましたから、父兄負担は六円三十銭これを一斗カンでカン送しますと、一合が七円五十銭から八円で済むのであります。文部大臣、こういう点は高いとおっしゃるが、やり方によっては変わるのであります。食品衛生法その他が、非常にまだ牛乳が希少価値の時代の状態がそのままきておりまして、実情に沿わないためにこういう事態が起きておるのでありますから、これを熱気消毒して、そして冷却期間も摂氏十度以下、一たん煮沸してからも十度に下げなければ出せないというような、とにかくうるさい規定を、消費者の立場も考え、食品衛生という立場もありましょうが、必要以上に——集団飲用あるいは学校給食その他家庭でも大量に消費したり、また労力不足、いろいろな点から見ましても、もうここらで一つ食品衛生法を国内の実情に沿うべく改正をして、両々相待って国内乳製品及び牛乳の集団飲用や学校給食や、あるいは家庭の消費者価格を引き下げることによって−今のメーカー対酪農の値段の引き下げは、消費者価格とは別に紛争が起きておるのです。消費価格は変わらない、こういう状態であります。でありますから、やはりそういった点が隘路になっておるのであります。学校給食が四割四分に該当するようなCCCのものを使わねばならないような実情は、遠因はやはりここにもあると思うのであります。御納得がいくと思うのでありますが、この点についてすみやかに厚生大臣の御決断によって、包装規格等の緩和を中心に食品衛生法を改正してもらいたい。その御意思と対策ありやどうかということであります。  いま一つは、これはこの間も農林水産委員会で参考人の意見聴取をやった。そのときに、このごろ市場にはんらんをしておりますものは、普通の白い牛乳ではなくして、色もの、ジュース牛乳、コーヒー牛乳あるいはその他のまぜもののある口あたりのいいものが入っておる。ところが一番少ないものになりますと、これは二〇%の牛乳の含有率で、多くて五〇%であります。これはメーカーが言っておるのであります。何で薄めておるかというと、輸入の脱脂粉乳で薄めて、ごまかしておるというと語弊がありますが、一応の濃度を保っておるというにすぎません。これらのものが、あなた方が駅でお飲みになる場合には、白い牛乳はない。色ものが出ておる。ところが、この色ものあるいはビタホモ牛乳、デラックス牛乳というようないろいろな名前をつけた加工乳が売れておりますが、これに対する規格がない。こういうことで、牛乳そのものは脂肪が三というふうに規定をしておりますが、他のものは野放しであります。そのことが累積して、牛乳そのものの消費を減退し、そしてその業界にはね返ってきておる。これが今回の値下げの原因の一因ともいわれておるのであります。やはり包装規格等を緩和されると同時に、このような食品衛生法の中から見て、内容が、脂肪の栄養含有率等の規制をこういうものにお加えなさる必要があろうかと思うのであります。そのことは、つまり牛乳の飲用を、正規の、あたりまえの普通の牛乳の飲用を増大し、酪農の振興にも相通ずる。また、集団飲用その他にも、単価の引き下げにもなって消費の拡大に通ずる。こういうことになろうかと思うのであります。これは三大臣一つ確たる御方針を、この機会に統一見解をお示しをいただいて、その方へ進んでいただきたいと思いますが、厚生大臣の御所見を承っておきたい。
  268. 西村榮一

    西村国務大臣 牛乳は完全栄養食品でございますので、集団飲用にしましても、また、農村における食生活の改善にいたしましても、厚生省としては、これが普及に努めておるわけでございます。しこうして、今の御指摘のこの非常にきびしい衛生上からの問題があるのではないかということを申しまするが、実は、御承知のように昭和二十六年に乳及び乳製品の成分規格に関する基準をつくりまして、そうして農村における製造、保存等に対する基準をつくり、またそれに対しまして、特例の承認もつくりまして、知事等がやれることにもなっておるのでございます。今聞きますると、学校等の集団飲用につきましての容器の問題ですが、これは厚生大臣ができることになっておりますから、事情を聞きまして、これはそういう場合にはいたしたいと思います。  後段の牛乳混用のいろいろな飲用物でございますが、これは規格はあるのでございますが、おそらく規格を守っていなくて、そういうようなものが市販されておるのじゃなかろうかと思っおるのでありまして、混合の規格はあると思っております。いずれにいたしましても、酪農振興のために、また食改善のために、私は農林大臣等とも連絡をとりまして、そういう不便がありますれば、その事例に即応いたしまして、牛乳の普及には十分努めて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  269. 塚原俊郎

    塚原委員長 足鹿君に申し上げます。申し合わせの時間が経過いたしましたので、結論をお急ぎ願いたいと思います。
  270. 足鹿覺

    足鹿委員 恐縮ですが、もうしばらく御猶予を願いたいと思います。
  271. 塚原俊郎

    塚原委員長 あと一問だけ許します。
  272. 足鹿覺

    足鹿委員 厚生大臣は、先ほど私が申し上げたことに一つ落としておりますが、熱煮沸ですね。これをお認めになるように、食品衛生法の改正にはぜひ考えられたい。低温殺菌などにいたしましても、この節のこと、冷たい牛乳を飲む者はだれもありません。一ぺんやはり沸かして、砂糖を入れて、あるいは自由に飲むのであります。低温処理などというものは、戦後におけるアメリカの少し行き過ぎたハイカラな指導でありまして、いなかの学校へ、農家が熱処理をして、そうして一定の場所で検査をする、そうして学校に持ってきて冷蔵庫へ入れて飲用すればそれでよろしいのであります。こういうふうに考えますと、食品衛生法を全面的に検討して、実情に沿うようにしていただく。それから現行でも包装規格等の緩和の省令が出ておることは、私が指摘した通りでありますが、それでは実行できないのであります。府県を歩いてごらんなさい、ないのでありますから。だから食品衛生法そのものの改正を私はここで御言明を願い、検討をして、そうして実情に沿うようにしていただきたいということが一つであります。この点を御答弁を願いたいのであります。  それからもう時間がないので、農業教育、農村人づくりについて文部大臣にお尋ねをしたい予定でありましたが、これは委員長の御要望もありますし、やめます。また別な機会にやります。  それから、念のために文部大臣にこの機会に申し上げておきますが、安い乳を確保する。国内ではなかなか確保が困難ではないかという御心配もあったようでありますが、われわれは現在牛乳学校給食法案——未定稿でありますけれども、寄り寄り検討しております。その骨子となるものは、いろいろございますが、学校給食には計画的に国内産の牛乳を持っていくということが一つ、それから学校給食に牛乳を供給する生産者団体を登録して、そして責任を持たせるということが非常に必要であろうと思うのであります。これは追ってまた申し上げますが、それと今申しましたカン送の場合、簡易殺菌、冷却不用の措置等の一連のものが必要になってくるのでありまして、なかんずく現在の学校給食会法のようなものではなく、確たる事業団とか公団というようなものにしまして、そして文部省が直轄に近い形でこれを中央で統轄し、これを地方へ指導していく、こういう構想でありますが、まだ未定稿でありますのであえてこれ以上は申し上げません。方法をもってすれば幾らでもあるということは、この際申し上げておきたいと思います。  そこで、最後にお伺いいたしたいのは、構造改善の問題について一問だけ自治大臣にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、構造改善事業については、今度国の五割補助に対して都道府県においては二割のかさ上げをする、市町村には起債の許可をするということになっておる。ところが、実際において現在の構造改善指定地域が、昭和三十七年度において四百九十地区の農林省計画に対して二百四十六地区しか実施計画はございません。この内訳を見ますと、都市近郊が十九、平地農村が百二十四、農山村、つまり山村がかったところ、山村ともつかず平地ともつかぬところが八十四、山村はわずかに二十二であります。それで都市近郊は、規定によって三千百の計画の外になっておりますが、なおやはり十九ある。平地農村中心の構造改善といわれても仕方がない。ところが、日本農村で一番将来農業で精進をする見込みのものは、農山村または山村において最後の最後まで純農村として残り、農業生産にいそしむ立場にあるものだと思うのであります。ところが今度の場合は、これらの負担力の乏しい農村に、山村あるいは農山村において同一の取り扱いであります。これは是正をされる必要があると思うのであります。たとえばその都道府県において、山村等の負担能力のないところにおいては、今度の措置によるまでもなく、都道府県が単独費でもって二割から一割五分の補助をしておる県があります。市町村も補助をしております。そういうところにはもっと全面的に重く、あるいは特に山村等の負担力の乏しい地帯のものには、都道府県の裁量においてこれを増額したときには基準財政需要額としてこれを認め、交付金の対象にするような弾力的運用が私は必要であろうと思うのであります。去る十一月の十四日か五日に、委員会で篠田さんの御言明を得まして、これが具体化することを待っておりましたが、二割のかさ上げ、市町村の起債というものは一応通りましたが、その中の弾力的運用というものがこのままではきわめて実情に沿いがたいと思うのでありまして、これに対する御答弁もお願いいたしたいと思うのであります。
  273. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 農業構造改善事業の農林省の補助が、従来御承知の通り五割であります。これでは少ないというので、地方交付税等において見たわけでありますが、それが必ずしも農業構造改善事業に使われない。そこで、府県に対して二割のかさ上げをして、それを農業構造改善事業をやっておる町村に府県からやるという、そういう方式にしたわけでありますが、今のところ、その二割以上のものをさらにかさ上げするという考えはありません。しかし、財政的にそれではできないというところに対しましては、この単独事業に対して起債を認める、こういう考え方でございます。      ————◇—————
  274. 塚原俊郎

    塚原委員長 この際御報告いたします。  明十四日及び明後十五日の両日は、昭和三十八年度総予算についての公聴会を開会いたします。  なお、公述人の選定につきましては、委員長に御一任願っておりましたが、理事諸君と協議の上、次の通り決定いたしました。三菱銀行頭取宇佐美洵君、東京大学教授武田隆夫君、東京大学教授川野重任君、一橋大学教授木村元一君、東京大学教授大内力君、民主社会主義研究会議事務局長和田耕作君、三井物産社長水上達三君、九州大学教授正田誠一君、以上八名でありますので、御報告いたしておきます。      ————◇—————
  275. 塚原俊郎

    塚原委員長 また、理事会の決定に基づき、来たる十六日土曜日から二十五日まで八日間、分科会において審査を進めることにいたしますから御了承願います。  なお、お諮りいたします。委員の異動に伴う補欠委員分科会所属、分科員辞任及びその補欠等につきましては、委員長に御一任願いたいと思います。  また、分科会における審査において、最高裁判所当局から出席発言の要求がありました場合は、これを承認することとし、委員長においてしかるべく取り計らうことといたしたいと存じます。  以上の件について御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  276. 塚原俊郎

    塚原委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十八分散会