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1963-02-11 第43回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月十一日(月曜日)    午前十時十五分開議  出席委員    委員長 塚原 俊郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 安藤  覺君    理事 野田 卯一君 理事 辻原 弘市君       井出一太郎君    稻葉  修君       今松 治郎君    植木庚子郎君       尾関 義一君    仮谷 忠男君       北澤 直吉君    櫻内 義雄君       正示啓次郎君    周東 英雄君       田澤 吉郎君    田中伊三次君       中村三之丞君    西村 直己君       船田  中君    松本 俊一君       山口 好一君    山手 滿男君       山本 猛夫君    淡谷 悠藏君       石田 宥全君    勝澤 芳雄君       高田 富之君    田中 武夫君       堂森 芳夫君    永井勝次郎君       山口丈太郎君    山花 秀雄君       佐々木良作君    田中幾三郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中垣 國男君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         厚 生 大 臣 西村 英一君         農 林 大 臣 重政 誠之君         通商産業大臣  福田  一君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣法制局長官 林  修三君         公正取引委員会         委員長     佐藤  基君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    山本 重信君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      五十嵐義明君         農林事務官         (大臣官房長) 林田悠起夫君         農林事務官         (農政局長)  齋藤  誠君         食糧庁長官   大澤  融君         中小企業庁長官 樋詰 誠明君  委員外出席者         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    中西 一郎君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月十一日  委員久保田円次君、松浦周太郎君、松野頼三君、  小松幹君、田中武夫君、芳賀貢君及び横路節雄  君辞任につき、その補欠として仮谷忠男君、山  手滿男君、田澤吉郎君、勝澤芳雄君、野原覺君、  渡辺惣蔵君及び永井勝次郎君が議長の指名で委  員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十八年度一般会計予算  昭和三十八年度特別会計予算  昭和三十八年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより会議を開きます。  昭和三十八年度一般会計予算昭和三十八年度特別会計予算昭和三十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  石田宥全君
  3. 石田宥全

    石田(宥)委員 私はきょう主として農業団体の再編成の問題について政府所見をただしたいと思うのでありますが、その前に、日本農業の基本的な問題について関係大臣所見をただしたいと思うのであります。  一昨日も本委員会で御議論がありましたように、農業人口が地すべり的に減少をいたしております。これは農業に対する危機感が非常に深く、かつ強まって参りました。これには、昭和三十五年に池田総理農業人口六割削減論というようなことを打ち出されたことが日本じゅう農民に重大なショックを与えて、何か農業というものに希望も期待も持てないような絶望感を与えたことはぬぐうべからざる事実だと思うのであります。しかるに、農林大臣は、先般高田委員質問に答えられまして、農業人口は十年後には一〇%か一五%に激減するであろうという答弁を行なわれたのであります。私は、これは農林大臣としてはまことに軽率きわまる発言であろうと思うのでありまして、若い感受性の強い青少年に対して、農業人口が十年後には全人口の一〇%か一五%に激減するであろうというような発言というものは、これは及ぼすところの影響きわめて甚大であり、かつ深刻であると考えるのでありまして、この点は、再びかような軽率な発言を行なわれないように、まず冒頭に一つ警告を申し上げておく次第であります。  次に、御質問を申し上げたいのでありますが、こういう発言関連をいたしまして、特に農民絶望感を与えておる問題点をまず指摘したいと思うのでありますが、先般も指摘されたように、農業従事者所得と他産業従事者所得格差がますます拡大している。さらに、その上に、税金の面で、これは大蔵大臣所管ではございませんけれども、農民には非常に大きな問題でありますが、昨年も一昨年も地方税法改正が行なわれまして、所得税を納入することのできないような低所得階層、特に農民階層税負担が非常に重くなっておる。住民税が非常に多くなっておる。昨年の改正では、御承知のように、年額所得百五十万円を境といたしまして、住民税所得割は〇・八%のものが二%に引き上げられ、それから、最高の五・六%のものが四%に引き下げられ、高額所得者住民税所得割は激減され、〇・八%のものが二%という二・五倍くらいに増額をされ、さらに、昨年、農民感情としては、わずかなことであるけれども、春の田植酒と秋の稲刈り酒の免税が取りやめられる、こういうような事態になった。ところが、今度は、これは自治大臣きょう来ておりませんから大蔵大臣一つ含んでおいていただきたいのでありますが、三十九年度から固定資産の評価変えが行なわれる。従来は収益の還元方式で評価されておりまするから、大よそ水田は一反歩三万七千円くらい、ところが、売買実例価格ということになりますると、これはとんでもない高いものになって、大体三倍くらいになる。十二、三万円になる。そのことを見越しまして、もう法務省関係では登録税が五倍ぐらいに上がっておるのですね。こういうふうに、この周囲の環境を見ると、何か農業というものに絶望感を感ぜしめるような条件を政府は次から次へとつくっている。その上に、先ほど指摘いたしましたように、農業人口は半分になるとか、今日相当激減しておるにもかかわらず、さらにまた半分になるというような発言農林大臣によって行なわれるということが、農業農民に対する危機感を増大する最大のものであろうと思うのでありますが、私は、きょうは実はそういうことで警告を発しながら、基本的な問題を掘り下げたいと思うのであります。  政府は、農業基本法にいうところの選択的拡大におきまして、麦については、もはや大・裸麦は余って困るから作付を転換しろということで、二十万町歩くらいもう作付が転換されておる。法律は幸いにして私どもの努力でこれを廃案に追い込みましたけれども、相当な転換が行なわれておる。今日、畜産果樹成長作目であるということで、あらゆる面で政府はこれを助長しようとしておられるのであるが、今行なわれておる構造改善計画の中で、一体畜産果樹とその他の作目のこの計画の中におけるパーセンテージがどのくらいであるか、一つ農林大臣にお伺いをしたい。
  4. 重政誠之

    重政国務大臣 先般の農業就業人口の問題でおしかりを受けたわけですが、あの当時もはっきり申し上げた通りでありまして、一割ないし一割五分というのは、総人口九千五百万について私は言ったのでありまして、それは、就業人口について考えてみても、政府の立てておる倍増計画から言っても、ちょうど私が言ったと同じことになっておるわけであります。もっと正確に申しますと、倍増計画では、三十一年ないし三十三年の平均、これを基準にしておりますが、就業人口が千五百二十四万人、これが今日昭和三十六年に千三百三万人になっておるのです。これが倍増計画昭和四十五年に千五十万人ということになっておる。ちょうどそれに私が申し上げたのが当たるわけであります。一千万人から千二、三面万人のところになるでありましょう、こう言ったのでありまして、これはあらためて一つはっきりと申し上げておきます。  それから、構造改善について、果樹及び畜産生長部門においてどの程度生産のあれを見ておるか、こういう御質問でございますが、果樹は、御承知通りに、これも正確なことは申せません。果樹消費趨勢から考えてみますと、果樹につきましては、十年後におきましても、リンゴを除きましては、現在の生産の増強の趨勢から考えれば、十年後においてもまだ足らないだろう。柑橘のごときものは最もそうであります。リンゴになりますと、現在のような生産趨勢というものは、幾らかこれは考えないと、十年後には需給のバランスがくずれるようなことになりはしないか、こう考えておる。それは生産の伸びが非常に多いからであります。われわれの推算によりますと、三十四年を一〇〇といたしますというと、十年後には畜産が三〇〇になる、三倍になるであろう、それから果実が二一六余りになるだろう、こういう一応の推算を立てておるわけであります。これらを見合いまして生産を進めていこう、こういう考えであります。
  5. 石田宥全

    石田(宥)委員 政府側に御注意を願いたいのでありますが、私は前段で少し長く申し上げましたけれども、今度は質問要旨を簡潔に述べますから、政府側も、質問をしないことに御答弁にならないように、質問をしたことに対して簡潔に一つ答弁をするように、委員長から御注意を願いたいと思います。
  6. 塚原俊郎

    塚原委員長 政府側に申し上げますが、質問にのみ答えるようにお願いいたしたいと思います。
  7. 石田宥全

    石田(宥)委員 大臣質問したことに答えていないのです。選択的拡大で、今度の構造改善事業の中で、一体畜産果樹とその他のものがどういう割合で計画をされておるか。これは、市町村が自主的にきめたなどと言われるけれども、実はその事業を承認するかしないかは全部農林省でやっておるので、農林省責任なしとしないのです。そこで、そのパーセンテージを聞いておるのです。おわかりにならなければ、私の方はわかっておるのですよ。
  8. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 数字でございますから、私から答弁させていただきます。  一般地域におきまする作目数でございますが、これは一地域で平均して二作目くらい取り上げております。それをパーセンテージで全国的に見ますると、畜産が四二%くらいでございまして、そのうち酪農が二三%、それから、その次に大きく占めますのが果樹でございまして、これが二一・七%、それから、その次が水稲を作目とするものが一七・二%、それから、養蚕が九・二%、蔬菜が五・六%、以下それ以外の作目になっております。
  9. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこで、選択的拡大の問題でお尋ねしたいのでありますが、政府は、先ほど大臣が申されましたように、将来の成長作目畜産果樹である、こう言っておられる。ところが、今そのように政府は指導しようとしておられるようであるけれども、現実に問題となることは、米については生産費及び所得補償方式という算定基準が明らかになっておる。ところが、畜産物価格安定法による畜産物基準価格生産費及び所得補償方式という算定方式をとっておらない。従って、果樹畜産成長作目として奨励をなさろうとしても、米の方は生産費及び所得補償方式で一応の安定を見ておるが、その他のものについては同様の算定方式がとられていないところに農民の不安がある。しかも、政府の一部には、むしろ米にとっておるところの生産費及び所得補償方式の方を変えて、むしろ米の方を下げようという意図を持っておる人たちがあることを私は知っておる。農林大臣は、一体、米にとっておる算定方式が正しいとお考えになるのか、畜産物価格安定法にいうところの基準価格なるもの、すなわち生産費及び所得補償方式によらないものが正しいとお考えになっておるのか、どっちの方へ統一されようとしておられるかを簡潔に一つ答弁を願いたい。
  10. 重政誠之

    重政国務大臣 原則といたしましては、農安法に定めておる支持価格算定方式というものが私は適当であると考えておる。ただ、米につきましては、これは御承知通りにきわめて重大な農産物であり、かつ食糧品であります。農家所得形成上におきましても、きわめてこれは重大なものでありますから、特に生産費所得補償方式を採用する、こういうことになっておると思うのでありまして、私は、これを農安法価格算定方式に改めるという考えは持っておりません。
  11. 石田宥全

    石田(宥)委員 農安法支持価格が正しいというお考えであると、これはやはり米に対してとっておるところの生産費及び所得補償方式をとらないという態度が明らかでありますが、そうなりますと、幾ら畜産果樹奨励なさっても、農民の側から見れば、生産費のほかに自家労賃というものが適正に評価されるところの作目の方を選定するのが当然であります。そういうことになると、政府農業基本法にうたっておる選択的拡大方針というものは、一方においては価格の面においてはそれを不利益にしておいて、そして不利益なものを奨励するという、そういう矛盾が起こってくる。その矛盾一体どう解決されようとしておるか。
  12. 重政誠之

    重政国務大臣 これは、私がしばしば申し上げます通りに、豚肉にいたしましても、鶏の肉にいたしましても、畜産品のすべてのものにいたしましても、これは商品であります。商品でありますから、需給関係によって価格形成をされるという、この原則をどうしても取り入れなければ私はいかぬと思う。生産費所得補償方式というもので、この消費需給関係を別にして価格形成をするということを、すべての畜産物農産物その他のものについてやりますれば、これは、価格というものが、まあ極端に言えば架空な価格になってしまう、こういうことになるのでありますから、やはり価格形成というものの原則需給原則による、これが私は適当であろうと思う。これは商品性から来ることだろうと思うのです。ただ、しかし、それでいいかといえば、農産品畜産品等についてはそれでは困る、こういうのでありますから、一定の価格支持を行ないまして、それ以下には下がらない、これは政府責任を持って価格を維持いたしますという政策をとっていくのが適当だろう、こう私は考えます。
  13. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういたしますと、主食とその他の農産物ではウエートが違うので、主食については普通の商品とは別な扱いをするのだ、こういうことですね。
  14. 重政誠之

    重政国務大臣 私はそういうふうに考えております。
  15. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういうことになると、これは日本農業混乱をする。さっき私が指摘いたしましたように、奨励するものは自家労賃が適正に評価されないで、そうして、奨励しないものの方がむしろ自家労賃も適正に評価されるところの算定方式が行なわれるというところに、ここに私は今の日本農業混乱一つがあると思うのです。  次に、私は先を急ぎますので伺いたいのでありますが、この選択的拡大というものは、なるほど抽象論としては非常に正しいと思う。需要拡大するものは生産を増大する、需要の減退するものは生産を転換していく、こういう点において抽象論として私は正しいと思うんですね。しかし、そこで、実際の問題になると今のような問題が起こってくる。もう一つの問題は貿易自由化の問題ですね。この問題との関連をどう一体大臣はお考えになるか。
  16. 重政誠之

    重政国務大臣 御指摘の通りに、米の値段とその他の農畜産物値段というものが、価格形成政府が扱っております方式を変えておりますから、そこに若干の現状としてはむずかしさはあるのでありますけれども、であるから、畜産製品にいたしましても、大いにこの生産技術の改良をするなり、あるいは生産合理化をはかるなり、そういうことによりましてコストをダウンをして、そうして農家所得をふやしていかなければならぬ、こう考えておるのであります。それがために、この農業体質改善、つまり、畜産について言いましても、多頭飼育をやって、市場を目当てに生産をやらしていく、こういう方向に向かっておるわけであります。従来のような副業生産というのはもう成り立たない、こういうふうな考えで進めておるわけであります。  貿易自由化の問題は、これは国際貿易上の趨勢であり、また日本のような資源の乏しい国は、貿易を振興しなければ食っていけない国でありますから、日本のためにも、貿易自由化を促進するということは、もちろん国策として当然やらなければならぬ。その場合において、農林畜産物であるからこれは別扱いにするんだというわけには、私は参らないと思う。だから、できるだけ国際競争に伍していけるような状態に日本農畜産物を置かなければならないけれども、これは急速には参りません。あるいはまた、近き将来にはそういうことにはならないものもあると思う。そういうものにつきましては、日本の農村のために、また畜産業農民のために、例外的措置をとっていかなければならぬ、私はこういうふうに考えておるのであります。これは日本だけではありません。イギリスがEECに入ることについて、フランスとの間においていろいろの問題が起こった、これも農業の問題からであります。みんな農業が根本のむずかしい問題になっておる。これは日本だけではありませんが、できるだけの努力をいたして、貿易自由化という国策に沿うて農業もいかなければならぬ。どうしてもできないもの、あるいは近き将来にできないものというのは、例外的措置をとって、自由化をしないということにいくよりほかはない、こう考えております。
  17. 石田宥全

    石田(宥)委員 政府は、貿易自由化されても、八条国に移行をしても、砂糖と乳製品自由化はしないのだということを、総理大臣以下各大臣がしばしば言明をされておる。しかるに、最近になって情勢が変わってきておる。今農林大臣答弁で大体政府のお考えが明らかになったのでありますが、さて、そこで、先ほど伺ったところによると、今、構造改善事業については、畜産については四二・二%、果樹については二一・七%程度、米については一七・二%程度というふうに、畜産の方に圧倒的なウエートがかかっておる。これが政府のまた方針でもある。ところが、こういうふうに畜産成長作目として積極的に保護奨励措置をなさっておるときにあたって、これは外務大臣に伺いたいのでありますが、大平外務大臣は、アサヒイブニングニュースメッセージを送られまして、これはごらんになっておると思うのでありますが、こういうふうに大きな顔写真入りで出ておる。その中でこういうふうに述べておられるのであります。「最近、貿易と観光を通じて、ニュージーランド日本とはますます接近している。これは、全く当然である。なぜなら、ニュージーランドは、第一義的にいって、羊毛、蛋白食糧たる食肉酪農製品、ミルク、バター、チーズ並びにカゼイン、ラクトーゼ等生産国であるが、日本は、これらの畜産物の着実に増大する市場をなすものである。」、こういうことを述べておられる。日本では畜産成長作目だといって積極的に畜産奨励している。ところが、外務大臣は、日本畜産物の有力な市場であるということを主張しておられるわけです。その間の価格について、実は政府の口から述べてもらうことが一番いいと思うのでありますが、時間がありませんから私はここにそういう煩を省きますが、およそ、畜産にいたしまするならば、代表的なものは、最近ニュージーランドから入っておるマトンでありますが、マトンは、日本豚肉価格が百グラム七十五円から八十円するときに、マトンの肉の最上で百グラム三十円程度です。半分以下です。これは、好ききらいはあるけれども、食肉としては最上のもの。それが豚肉の半分以下で入ります。また、おとといの本委員会でも、これは農林大臣からもお話がありましたように、脱脂粉乳は、日本が一トン三十万六千円であるが、外国製品は五万六千七百円だ、こういうふうに大臣の口からも言われておりまするように、これはてんで比較にならない。乳製品は、半分以下、三分の一。こういう値段のものを、日本市場として大いに歓迎するという態勢をとられるとするならば、今四二%をこえて畜産物成長作目だとして奨励をしておられるものを、外国のそういう安い乳製品食肉によって頭をたたくという、ここに私は日本農業の最も重大な危機感が伏在しておると思うのです。一体大平外務大臣のこういう問題に対して、メッセージメッセージとして、これは外務大臣の真意をただしたいと思うのです。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 御案内のように、ニュージーランドは、豪州と並びましてわが国最大顧客でして、一人頭の日本製品輸入量は一、二を争っておる顧客でございます。なお、石田さんも御承知のように、去年の十月にはニュージーランドとの通商協定改定議定書が発効いたしまして、三十五条の援用も撤回になったことも御承知通りでございまして、アサヒイブニングニュースニュージーランド特集号を御編集になるという場合に、先方から総理大臣、それから貿易大臣で副総理大臣をされている方もメッセージを寄せられておりますので、私としても、こういう日本最大顧客でございますので、メッセージを差し上げた次第でございます。今、問題の乳製品につきましては、年に消長はございましても、漸増の方向をとっておることは御案内通りでございまして、私は私の立場から、ニュージーランド日本との貿易関係は多角的な拡大を希求いたしておるわけです。問題は、今せっかく育成の途上にある畜産物について、野放しに日本市場を開放するというようなことをしてはゆゆしい問題じゃないか、私もその通りに存ずるわけでございますので、這般の事情につきましては、農林省と連絡をとりながら、日本農業基本政策展開にあたりまして、また、その展開を通じまして、こういった多角的な貿易拡大の素地がだんだんと固まって参るように期待いたしておるわけでございまして、外務省としては、無制限に門戸を開放いたしましてどんどんこれを進めるというような乱暴なことでなくて、農林省の方の御政策と相呼応いたしまして、可能な範囲で多角的な拡大の道を講じていきたいという気持です。
  19. 石田宥全

    石田(宥)委員 いずれにいたしましても、そういう外務省方針から、最近、日本では、畜産奨励する、牛乳は下がる、豚肉はすでにもう経験済み、その上にオーストラリアニュージーランド乳製品がどんどん入ってきておるじゃないですか。神戸では、六甲バターがオーストラリア畜産局と原料、技術の提携をやって、ナチュラル・チーズというものを売り出しておるし、東京でも新世乳業が同じようなことを、これはデンマークとやっている。こういうことで大幅に輸入がふえてきておる。ところが国内を見ると、そういう情勢の中になお畜産奨励しておる。畜産奨励しながら、今度は飼料はどうか。三十キロのふすまは一俵五百九十九円であったのを、四月一日からは六百十七円に値上げをする。これはずいぶん大蔵省の諸君が飼料値上げを強力に農林省に圧力をかけたといわれておるのでありますが、牛乳は下がる、食肉は下がる、外国から安いものは入る、えさは高くする。一体何です、これは。こういうところに農業危機感があり、農政混乱がある。大蔵大臣、どうですか、一体。これは四月一日から予定されておるけれども、牛乳は下がる、食肉は下がる中で飼料を上げなければならないなどという無慈悲な政策をおやめになって、四月一日からのふすまの値上げは当分取りやめにされる御用意はありませんか。
  20. 田中武夫

    田中国務大臣 豪雪対策地における飼料の緊急の輸送その他に対しては十分の配慮をいたしておりますが、四月一日から値上げを行なうかどうかについては、農林大臣とも十分相談をしながらやって参りたい、こう考えます。
  21. 石田宥全

    石田(宥)委員 これはすでに予算の中でそういう措置が行なわれておりますので、これはぜひ再検討を願いたい。農林大臣も強力に、日本畜産奨励しながら飼料を上げるなどという、そういう矛盾した政策はおやめになるように、大蔵大臣と二人でゆっくり御相談になって、まだ四月一日までには日がありますから、これは取りやめをするように私は強く要望申し上げておく。  次に先へ進みます。これは経済企画庁長官に伺いますが、日本の主要農産物外国に依存するものがどの程度あるとお考えになっておりますか。
  22. 重政誠之

    重政国務大臣 大ざっぱに申しまして、外国に依存いたしております飼料、約五百万トンだろうと思うのです。国内の自給飼料が五百万トン、外国に依存するものが約五百万トンではないかと思うのです。これは正確な数字ではありませんが、大ざっぱに申します。そうして、その値段が三億ドルを少々上回るのじゃないかと思うのです。正確に御必要がありますれば、また事務当局をして申し上げさせます。
  23. 石田宥全

    石田(宥)委員 どうもよけいなことばかり答弁をされるので時間を食ってかなわぬのですが、私から申し上げます。小麦は、日本外国依存度は六四%、大豆は七三%、砂糖は九〇%、トウモロコシは九五%、こういうふうに日本農業というものは外国に依存しておるわけです。そこでさらに今度畜産物を大幅に外国に依存する、こういうことになって、しかも貿易自由化することになると、おおよそ日本農産物というものは国際価格より高いのですから、安い外国のものに依存をする。貿易自由化の建前もあるからというので、外国にどんどん依存してごらんなさい、日本農業を否定することにならないか。私は、日本政府日本農業を否定するような方向を今とっておるじゃないかと思う。一体否定するという基本的な方向を依然として進めるのかどうか、これは一つ農林大臣外務大臣とに、外交の関係もありますから簡潔に承りたい。
  24. 重政誠之

    重政国務大臣 日本農業を否定するような方向をとってやっておると言われるのは、これは、石田先生、よくおわかりになって大きく言っておられるのだと思う。私はいまだかつてそういうことをやったことはない。本委員会でも、本会議においても、貿易自由化が将来進むにしても、現在の時点におきましては、米麦及び乳製品というようなもの、あるいはさらに進んでは肉類のようなものは、これは現時点におきましては自由化するわけには参りませんと、私は昨年十二月のアメリカとの経済合同会議においても、あるいは本年一月のカナダとの合同会議においても、その点は強く主張をして理解を深めたということを申し上げておるのでありまして、まことに今お述べになりました矛盾するような事態を御心配されることはよくわかるのですが、そんなことは私は絶対やりません。そうしてまた、いまだかつてやっておりません。そのことをこの答弁を通じて国民の皆さんに明らかにしておきます。
  25. 大平正芳

    大平国務大臣 その問題につきましては、農林大臣と全く見解を同一にいたしております。
  26. 石田宥全

    石田(宥)委員 次にやはり選択的拡大との関連でありますが、先ほど私が申し上げましたような構造改善事業の中における米に対するウエート畜産物の半分以下、畜産物が四二・二%であるのに対して米は一七・二%しかない。これが政府方針のようであります。米についての需給関係でありますが、これは簡潔に、最近国民の米に対する需要が漸次伸びておるのでありますが、昭和三十年以降における米の一人当たりの一年間の需要量を数字だけを農林大臣から承りたい。
  27. 重政誠之

    重政国務大臣 数字にわたりますから政府委員から答弁いたさせます。——今数字を持ってきておらぬそうですから、あとからすぐお示しいたします。
  28. 石田宥全

    石田(宥)委員 それは私知っているのですよ。たとえば昭和三十年には、人口一人当たりの純食糧は、玄米で一一〇・六キロなんです。三十一年には一一一・五キロ、それが年々増大いたしまして三十六年には一一六・五キロにふえておる。米の一人当たりの需要というものはどんどんふえているわけです。それとうらはらに、食糧用の外国小麦の輸入が大幅に減じておる。たとえば三十三年に二百九万六千トンの輸入小麦が、三十七年には百六十六万四千トン、こういうふうに激減をしておる。この米の消費というものと、パンやうどんの消費というものに対して、国民の大部分が誤った認識をしておる。何かパンの需要がどんどん伸びて、米の需要が減るかのような考えを大部分の人たちが持っておる。だから、私はこの点を明らかにしなければならないと考えたんです。  そこでこれは池田総理大臣もかつて委員会でしばしば述べておられますし、前の河野農林大臣もしばしば述べておられるのでありますが、国際分業がだんだん進んで参りまして、米というものは東南アジアに依存すべきだ、日本はもっと技術の高い別な換金作物によるべきものだということを、しばしば言っておられるのでありますが、これについて大体重政農林大臣も同様のお考えだと思うのでありますけれども、さらにここではっきりしてもらいたいと思います。
  29. 重政誠之

    重政国務大臣 日本が東南アジア諸国との経済提携を緊密にしていこうということであれば、どうしても貿易を伸長しなければならぬ。理屈を言ってみたところで、つくったものを買ってくれなければ意味をなさない。これはもうあたりまえのことだと思うのです。ところが、南方諸国というのは多くは農業国である。農業国であるから、そこでそのつくった農産物を、相なるべくは日本で買うことができるような状態にするのがよろしい。そこで、日本では高度の技術を利用して品質のよい農畜産品をつくることに心がけなければならぬというのが、おそらく前農林大臣あるいは総理大臣が述べられたとすれば、そういう趣旨であろうと私は拝察をいたすわけであります。そこで、私も考え方はそういう考え方を持っておるのでありますが、しかし、まず第一にやるべきことは、衝突をしない作物を向こうでつくらすということである。現に、御承知通りに、三、四年前にトウモロコシをタイにつくることを奨励して、現在では三、四十万トンもすでに輸入をして、年々輸入の量がふえておるという状況である。これは一つの例でありますが、そういう行き方にすべきものである。ところが、米について一体どうかと申しますと、私は、おそらく南方の米を輸入してみたところで、国民はそれほど食わないであろうと思うのであります。やはり日本の米は品質もいいし、うまいというので、どうしても内地米を食うであろうと思うのであります。そういう意味からいたしましても、理論としては一応そういうような考え方もできますけれども、現実の問題としてはそういうことはできない。のみならず、米は、御承知通りに、わが国農産物の大宗でありまして、また農家所得形成する重大な農産品である。そういうような関係からいたしまして、日本の米作を減じて外米輸入政策をとるということはできません。私はやるつもりは断じてない。
  30. 石田宥全

    石田(宥)委員 経済企画庁長官に伺いますが、先ほど、どうも農林大臣答弁が時間がかかり過ぎるものだから、私の方から米の需給関係などを申し述べたのでありますか、将来の国民の米の需要の問題、パンその他の需要関係というようなものについては、一体どのようにお考えになっておりますか。
  31. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 米の消費がいっとき減りかかってきたわけでありますけれども、大勢として、これ以上非常に減っていく、そうして小麦の消費が非常にふえていくといったような大勢ではないように思われます。
  32. 石田宥全

    石田(宥)委員 実は予定しておる質問事項が多いので、あまり時間を食いたくないのでありますけれども、ただ、こういう点だけは指摘しておきたいと思うのです。韓国米とか、台湾米とか、あるいは東南アジアの米は非常に安い。だからそれらの国に米の方は依存した方がいいじゃないかという議論がよく行なわれるのです。今、農林大臣は、食味その他の点で必ずしもそう一辺倒にはいかないという御答弁でありますから、それはその通りであると思うのでありますが、最近の東南アジアにおける米の需給関係というものは、そう安易に東南アジアの米に依存するということのできない情勢になってきておるということであります。これはある学者の所論でありますが、東南アジアの米の需要は今後二十年間に二倍ぐらいになるであろうと、こう言っておる。ところが成長率は年に一・八八%ぐらいで、二十年たっても四〇%ぐらいしか伸びないのではないか。そういうことになると、ビルマ、タイ、南ベトナムは輸出国でありますが、台湾はすでに輸出国ではなくなっておる。韓国などは、これ以上日本輸入するということは、韓国人民から米を取り上げることになる。こういう情勢になって、その東南アジアに米を依存するということは非常に危険であるということを、これは私の方から指摘しておきます。  そこでもう一点、これは大平外務大臣に伺いたいのでありますが、昨年の五月十五日から十八日までの間、外務省でアジア太平洋公館長会議というものが開かれておる。そこで、先ほどから議論をいたしております国際分業の問題も問題になりまして、畜産物乳製品オーストラリアニュージーランドに依存すべきであるし、米は東南アジアに依存すべきであって、日本農業基本法は再検討をしなければならぬということに意見の一致を見たということが伝えられておるわけです。一体、昨年の五月十五日から開かれたアジア太平洋公館長会議というものは、どういう問題が中心になって議題になったのか。今申し上げましたような日本農業に根本的な影響を与えるような事項については、どういう取り組み方をされたのであるか。そうしてその結果、農業基本法を再検討しなければならないということに意見の一致を見たということは、どういう事情があったのか、これを一つ詳しくお述べをいただきたい。
  33. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘の去年の五月、東京で、太平洋地域に駐在いたします大使、総領事等が集まりまして、それぞれの任地の経済情勢を報告して、その国と日本との間の政治関係、経済関係について説明する機会を持ったわけでございます。その際、豪州、ニュージーランド等太平洋地域に駐在しおります公館長から、これら諸国では特に酪農品の値段が安い、またそれらの国は日本との貿易拡大の要望も強い。従って、こうした国の特産品をわが国の需要に対応して加えて参るということは考えらるべきことであるということの報告がありましたことは事実でございます。しかしながら、これはあくまでも農業基本法を再検討せなければならぬということではなくて、まともに農業基本法の精神にのっとりつつ、こういった問題に対して検討の余地はあるまいかという報告でございまして、その公館長会議におきまして、農業基本法を再検討せなければならぬという結論を出したということではないわけでございます。あくまでもこれらの地域との多角的な貿易拡大について工夫の余地はないか、こういうことでございました。
  34. 石田宥全

    石田(宥)委員 時間がございませんから、これ以上あまり繰り返しませんが、そのときの会議の記録ですね、今の大平外務大臣の御答弁では、農業基本法も再検討をした方がいいのではないかということであったように伺えるのでありまして、そういうことになると、今日自由民主党の中にも、農業基本法は再検討すべきではないかという意見が一部に行なわれておりますので、そこで私どもは、もちろん今成立しておりまする農業基本法に対しては、これは反対でございますので、従って、これには重大な関心を持たざるを得ないのでありますが、あとでけっこうでありますけれども、そのときの記録を一つわれわれの手元にお届け願いたいと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  35. 大平正芳

    大平国務大臣 農業基本法の再検討というのじゃなくて、農業基本法の精神にのっとりつつ工夫をこらす余地はないかということで、私の申し上げたのが正確でございますが、御要望がございますので、報告書は後ほど差し上げます。
  36. 石田宥全

    石田(宥)委員 それでは先へ進みます。  次に、農業団体の再編成の問題について、農林大臣所見をただしたいと思うのでありますが、政府は、さきに農業基本法を制定いたしました。農業基本法の制定にあたって、当然農業団体の再編成というものが議題に上らなければならないはずであったと思うのでありますが、どういう理由で農業基本法制定の際に農業団体の再編成問題が議題とならなかったのか、あるいは議題になったけれども、結論として表面に出なかったのか、この間の事情を承りたいと思います。
  37. 重政誠之

    重政国務大臣 その問題は、私は実は経緯を詳細に承知いたしておりませんから、どういう経緯で農業団体の問題を農業基本法に取り入れてないかということについては、十分に承知しておりません。
  38. 石田宥全

    石田(宥)委員 農業基本法の制定当時、大臣でおられなかったわけでありますから、詳しいととは御承知ないといたしましても、最近構造改善事業をお進めになるにあたって、現在の農業団体が、たとえば農協にいたしましても、貸し出しの限度額等の点で問題があり、あるいはまた最終的には農協の理事の個人責任を追及される等の事態があって、金融の制度がありましても、農民の手元には融資が及ばないというような不合理な点がたくさんあると思うのでありますが、現在大臣は農協を中心とする農業団体の再編成について、いかようなお考えをお持ちでありますか。
  39. 重政誠之

    重政国務大臣 御指摘のような点も、実はあるやに私は聞いておるわけであります。しかし、一方から考えてみますというと、御承知通りに、構造改善事業を近代化資金でやろう、その金は農協の金でありますから、いわば政府は利子補給だけして、金は農協の金でやるのでありますから、自然農協の方としては、自分の気に入ったところに金を回す。であるから、要るところに金がいかないというようなことが起こるのも一面無理からぬ点もあると私は考えたのであります。そこで御承知通りに、今度は構造改善事業は、新金融制度一本で、政府の資金を直にこれに回さなければ進展しない、少なくとも進展するのに障害がある。こう考えましたので、低利長期の新金融制度を創設いたすことにいたしたことは御承知通りであります。農業再編成の問題は、いろいろ私は問題があろうと思うのでありますから、全面的の問題といたしましては、十分に検討をいたすつもりでおります。しかし、具体的の問題といたしましては、必要に応じまして、制度の改正ということよりか運用の改善という方向で今やっておるわけであります。
  40. 石田宥全

    石田(宥)委員 大臣の御意見のように、これから新しい酒を古い革袋に盛るような時代であることは大臣承知通りで、これは大いに検討されるということでありますから、あとでもう少し具体的にお尋ねを申し上げたいと思いますが、この問題は非常に重大な問題でありまして、しばしば過去においても問題になっておる。昭和三十年には、ある国会議員が再編成についての案を発表いたしまして、物議をかもしたことがあります。自来河野農林大臣が一、二回、小さな問題でありますけれども、再編成について触れられておりますけれども、ついに国会の場では論議が行なわれなかったのでありますが、私は、今申しましたような都合で、すでにこの農業というものが今日の段階にまで進んできたときに、さらに体質改善をやろうというときに、いつまでも今のような農業団体のあり方であってはならないと考えるのでありまして、以下順次御質問を申し上げたいと思うのであります。  まず第一に、農業会議所、この問題にちょっと触れておかなければならないと思います。この農業会議所、末端は農業委員会になっておって、一つの法律によってこれはできて運営されておるのでありますが、昨年の六月に行なわれました参議院議員の選挙にあたりまして、かなり広範な選挙違反事件が摘発を受けておるわけであります。これは一体どれくらいの府県に及んで、どの程度人たちがすでに検挙をされ、あるいはまた起訴をされておるか、これは大臣おわかりだと思いますので、ここで御発表を願いたいと思います。
  41. 重政誠之

    重政国務大臣 選挙違反事件の関係者は七十八名であります。その内訳は、全国農業会議所の職員が七名、都道府県の農業会議所の職員が三十五名であります。そしてその他のものが三十六名、こういうことになっておるようであります。府県数は三十県です。
  42. 石田宥全

    石田(宥)委員 ただいま御報告がありましたように、農業会議所を中心といたしまして三十県といいますと、ほとんど全国に影響を及ぼしておる。しかも農業会議所の事務の中心になっておる人たちがこれに関係をし、各府県の事務局長クラスの諸君が全部関係をいたしているのでありまして、昨年半年くらいの間は完全にその機能が麻輝いたしておったことは大臣承知通りであります。なぜ一体こういうふうな事態が起こったとお考えになりますか。私は、農業会議所というものが本来の使命を失って、かつての農地改革後における農地委員会当時におきまする事態と、今日の事態では情勢が一変いたしまして、ほとんど本来的な使命観に徹していないのではないか。そういうところからこういう事態を起こすのじゃないか。農業会議所というようなもの、あるいは農業会議というようなものが、農林省の外郭的な存在として、農林省のPR的な存在となることにも問題はあるけれども、しかしまだ恕すべき点がある。しかるに一党一派のかいらいと成り下がって、全国にこの違反を起こすというようなことは、これは国民の断じて許すべからざるところである。われわれ農民としてはとうていこれは許すことができません。一体こういう事態を起こしておるのに、本年度予算では十三億数千万円で、かなり予算は増額をされておるわけでありますが、私は農林大臣の感覚を疑わざるを得ないのです。ことに最近は会議所を中心といたしまして人事の異動が行なわれておるわけでありますが、その人事の異動にあたって、こういう事態を生ぜしめたところの責任がどの程度に明らかになったか。これを一つお伺いをしたいと思うのであります。
  43. 重政誠之

    重政国務大臣 御承知通りに、農業会議所は、土地改良法でありますとか、あるいは農地法に関係する仕事、並びに農政の運動をするということがその目的になっておるわけであります。選挙の運動をやるということは決してその目的でないことは明らかでありまして、会議所として、あるいは農業委員会として選挙運動をやったような形跡は実はないように思っております。すなわち、決議をして、その決議でやったということはないようでありまして、これはやはり個人的な立場においてやったことと思うのでありますが、いずれにいたしましても、それはまことに遺憾なことであると考えておるのであります。自後そういうことのないように、十分に気をつけさせなければならぬと思っております。  人事異動につきましては、その点は私はまだ承知いたしておりません。
  44. 石田宥全

    石田(宥)委員 大臣もお認めになっておりまするように全く醜態と言わざるを得ません。この醜態を引き起こしたことに対する政府の指導監督上の責任もまたきわめて重大であると言わなきゃなりません。一体その責任はだれが負うのです。また、今人事のことについては御承知になっておらないということでありますが、いやしくも全国で三十の県に関係があって、その事務の中心に立つ人たち、しかも、その中心の人はこういうことを言っておる。私個人でやったのではないのだ、会議所の機関がやっているのだと、取り調べに対してそういうことを言っておる。また、われわれがこれを外部から見ても、三十の県にまたがって、事務の中心になる人たちが全部関係しておって、正式な会議を開いて、そこで選挙運動をやるということに対して、これは個人の責任だとは私は断じて言わせない。しかもその会長は国会議員じゃないですか。その会長たる国会議員は一体何の責任も感じていないのか。私ども全くこれは奇怪千万と言わざるを得ない。会長は、これに対して一体どういう気持でおるのか、大臣にはおわかりないかもしれぬけれども、指導監督の立場から、農林大臣はこれに対していかなる方針で臨まれるおつもりであるか。私はここで刑事事件をかれこれ言おうとは思いません。それは裁判所がさばくでしょう。しかし、国の膨大な予算を使っておるその組織が、一派閥の一人のための選挙運動に携わって、三十の県にわたって違反者を出して、半年にわたって機能を麻痺状態に陥れた、その政治責任を私は問わなければならないと思うのです。これを一つ明らかにしてもらいたい。
  45. 重政誠之

    重政国務大臣 会長としても責任は感じておられると思います。私どもといたしましては、まだこの事件も十分に落着しておるということでもないようでありますし、農業団体のことでありますから、自主的のお考えも十分承ってみたりいたしまして善処をいたしたい、こういうふうに考えております。
  46. 石田宥全

    石田(宥)委員 全く指導監督上の責任を感じておられないような答弁でございまして、はなはだ不満でありますけれども、実は時間の都合がございまして、これから農協の問題に入りたいと思いますので、これはぜひ大臣として善処するように要望を申し上げて次に移りたいと思います。  さて、農協の問題でございますが、農協というものについては、すでに大臣もお考えになっておられると思うのでありますが、本来この農業協同組合というものは、生産点における協同組織として発足したものであろうと思う。しかるに、その生産点における協同活動というものはきわめて困難なので、ついに販売、購買というようなところにいき、さらに最近では運送の問題とかあるいは観光事業にまで手を出すようになっておる。私はこれは邪道であろうと思うのでありますが、一体大臣はいかようにお考えになっておりますか。これについては、実はこの法律が国会で審議されましたときに、当時の農林大臣は、提案理由の説明の中にこう言っておる。「わが国農業の零細経営からくる不利益を補い、協同の力によって、経営の合理化生産性の向上をはかってまいることが緊要であります。」こう言っております。私はその通りだと思う。ところが、今日の農協は、その生産点における協同化というものがきわめて困難であるがために、安易な道を進んでしまっておるというところに、根本的に方針を誤った、方向を誤ったものであると考えるのでありますが、いかがでしょうか。
  47. 重政誠之

    重政国務大臣 根本の協同組合の精神は、石田先生ただいまお述べの通りだろうと私は思うのであります。それが観光事業を経営しておるというようなお話でありますが、私はよく承知いたしておりません。よく調査をいたしまして、またお答えをする機会がありましたらお答えをいたします。
  48. 石田宥全

    石田(宥)委員 大臣承知通り、農協法の第八条には、農協の行なう事業の目的を明らかにしておる。それには、「組合は、その行う事業によってその組合員及び会員(以下この章において組合員と総称する。)のために最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を行ってはならない。」こう規定されておる。私はそれは当然だと思うのです。ところが、最近の農協の運営を見ますと、農業団体、農協のための活動が強くなって、農民のための活動、農協法第八条の趣旨を全くじゅうりんしたような運営が行なわれておるのではないか、こう考えるのであります。私は多くのことを申し上げる前に、ここで農村の青年の、きわめて短い文章でありますけれども、農協に対する批判が率直に述べられておりますので、これを読んでみまして、それについて質問を発展させたいと思うのであります。これは、農業共同経営をやっておる農民が、共同経営と農協について述べておるのであります。「農民による農民のための農協ということがよくいわれる。しかし農協の飼料が高いという事実は一体何を示すだろうか。価格はこれ以上絶対に安くならないといっていた飼料が農協以外から私たちが飼料を入れ安価に導入するようになってから何故急に値下げをしたり売込みのために値引きをしたりするのだろう。絶対に安くならないものならいくら私たちが他から買入するようになっても値下げはできぬのが普通である。又安くなるものなら何故私たちの要求をきき入れなかったのだろう。農民のための農協であるならば暴利をとることは許されない。農民が利用することによって農協の発展はなされねばならない。しかるに農民が農協を利用することがむしろ不利益となるのはどこに原因しているのだろう。それは単協自体の責任とはいえない。むしろそれを支配しているところの県経済連、全購連に対する問題として考えねばならない。現在農協は零細農家の接する流通組織を合理化するだめの自主的な組織であるとされている。しかし現実には自主的に組織されたところの農協が農民から離れ自立化し結局その機能において商人資本の一変形に転化しているのではないか。そして更には独占資本の農民収奪からこれに対抗して農民を保護する立場にありながら、独占資本の農民収奪機構の一部となっているといわれるようなこともあながち誤りではなかろう。広大な消費市場としての農民。自主的に組織されたというものの、そして全国的な組織をもつ農協といえどもその末端、個々の農家にいたってはもはや自主的な組織として自らの農協を運営する能力に欠けていたのではないか。独占資本の値をつけるままに買わされ収奪され価格機構を分析することは考えられなかった。それとも各農協にそのような考え方があろうともそれを強力に発展させるために経済連や全購連はどれだけの努力をしたか。末端農家の声は途中において遮断され抹消されてはいないか。」中を中断いたしまして、「農協を利用することが共同経営にとって不利であるからだ。農協が共同経営の進展した今日において、もし共同経営に対して従来の零細農家に対すると同様の態度で接するならば、もはや農協の存在は意味ないのである。共同経営の進展と共に農協は必然的にその体質改善を余儀なくされる。否、その改善なくして、少くとも共同経営に対して農協存在の意義が失われるであろう。共同化における農民は、もはや以前のような無気力な無批判な農民ではないのである。農協を自主的な組織として運営すべく参加するが、ここに従来の農協と新しい農協との考え方の対立が生じる。各地における特殊農協或はこれに類する共同体の設立はこれを実証するものである。ここにおいて現在の農協は必らずしも農民の利益を保護していなかったことを知り農協が共同経営をも農協組合員としていくためにはその体質改善がなされなければならないことを切実に感じる。そして中間利潤を排除できないのみならず、商人資本が農協に入り込み農協の機能が商人資本化しているかぎり農協は共同経営にとっては利する組織とはいい難いであろう。」こう指摘しているのであります。  ここでいろいろな問題が指摘されると思うのでありますが、まず第一に、単協があまりにも弱体であるということであります。これは大臣も御承知でありますから、私は多くを申し上げませんが、少なくも最近の単位農協の経済力の弱さというものは、農民に対して経営改善の資金をまかない得る力を持たない。同時に、単協の職員はきわめて低賃金である。最近ではほとんどまじめに農協の仕事をしておるとは言いがたい。ここに私は資料を持っておるのでありますが、農協人の平均ベースは一万一千五百七十五円です。こういう給与でどれだけの人を抱えることができるか。最近の単協の実情を見ますと、一万円ベースではほとんど満足に自分の職務をやろうとしない。どこへ行けば月給が二万円になる、どこへ行けば二万五千円もらえるといって、目をほかへ向けて、自分の仕事に熱心になれない。昨年一年で大体一七%くらいの職員がほかへ転出をしておる、こういう実態ではないですか。もっと単協の経済力を強化し、単協職員の給与を引き上げることが先決問題であろうと思うが、大臣はどうお考えになりますか。同時に、いかなる措置をとるべきであるとお考えになりますか。
  49. 重政誠之

    重政国務大臣 さしあたりの問題といたしましては、単協の合併を促進いたすことが一番有効適切であろうと考えまして、これをやっておるわけであります。合併をいたしますと、区域が拡大をせられ、その基礎も強くなって参りますので、ただいまお述べになりましたような御要望に沿うことができる、これが第一前提であろう、こういうふうに考えて、せっかく合併促進に努力をいたしておる次第であります。
  50. 石田宥全

    石田(宥)委員 合併の促進はけっこうでありますが、それに対しては、もう現実に農協みずからがいろいろの合併を進めておる。私はそれは当然のことだと思うのであります。ところが、ある地方では、県連合会や中央の諸君が、これを阻害をしておるという事実がある。同時にまた、合併を促進するにあたって一番大きな問題は、赤字と黒字の問題、こういう問題に対する政府のバック・アップが足らないのではないか、赤字と黒字の関係について、もっと積極的に政治的な配慮が必要ではないかと考えるのでありますが、いかがでございましょうか。
  51. 重政誠之

    重政国務大臣 合併につきまして一番問題になりますのは、ただいま御指摘になりました赤字、黒字の問題であります。でありますが、これは町村合併でも同じことでありまして、それが一番困難な問題でありますが、しかし、その必要性を十分に組合員が認識せられ、われわれも認識してもらうように努めまして、その合併を促進いたして参りたい、こういうふうに考えてやっておるわけであります。
  52. 石田宥全

    石田(宥)委員 単協がそのように経済力も貧弱であり、陣容もまた同様でありますが、それに引きかえまして、県連合会や全国連合会を見ますると、これはまことにゆうゆうたるものがございまして、たとえば、これはほかの県のことは御遠慮申し上げますけれども、新潟県のこの経済連を一つとってみましても、資産の会計が十四億一千百七十八万六千円、昭和三十六年度末の当期利益金が六千二百九十五万五千円という状態、それから新年においてはもっと大きくなりまして、資産の合計が百七十八億三千二百万円、当期利益金が一億七千百二十六万八千円という実情であります。全国連はさらに大きいのでありますが、こういうふうに単協は栄養失調の状態に置かれているのに、連合会はゆうゆうたる資産を持っている。全国連合会はもりと大きくなっている。これらの資産は一体どこから吸い上げたのか、いろいろな形、いろいろな制度、いろいろなことで吸い上げられるけれども、結局これは農民のふところから吸い上げたものではないか。そうして連合会が大きくなればなるほど、その機構は官僚化して、非農民的な感覚のもとに運営されている。中央においては、もはや農民的な感覚というものは見るべくもない。そうして一企業体として営利を追求しておるのじゃないか。私は、そういうところに、一体制度上の欠陥か、あるいは機構上の欠陥か、あるいは運営上の欠陥か、こういう点を、もっと農林省はこの深刻な問題と真剣に取り組まなければならないと思うのでありますが、大臣はいかがですか。
  53. 重政誠之

    重政国務大臣 いろいろ御指摘になりましたように、農協の現状については、いろいろ検討すべき問題が少なくないだろうと私も思っておるのでありますが、制度上の欠陥というよりか、むしろ終戦後における経営者の精神的な問題が多分にあるのじゃないかとも私は思うのでありまして、これはなかなか簡単な問題ではございませんが、制度につきましても、また農協の精神に沿って運営をいかにして進めるかというようなことにつきましても、十分に検討をいたすつもりでおります。
  54. 石田宥全

    石田(宥)委員 農業協同組合が農民に対する最大のサービスをしなければならないという法律のもとにできて、運営されて、そうして農林大臣並びに地方の府県知事は行政上の監督をする。中央会は指導監査を受け持っておる。しかるに、現状は、先ほど私が指摘した通りであろうと思うのであります。そういうふうに、農協は農民のための農協でなければならないのにかかわらず、連合会は連合会オンリーで、単協でどうなろうと連合会さえよければよいという運用をする。全国連は全国連オンリーで、連合会なんかどうなったってかまわないという運営が行なわれておるのじゃないか。  最近農政上のいろいろな大問題が出て参りましたので、農政活動がずいぶん盛んになって参りました。最近行なわれておる農政活動が、はたして農民のための農政活動をやっておるかどうか、私は大きな疑問を持たざるを得ない。これを私は具体的な例をあげて一つ御指摘を申し上げたいと思うのでありますが、昨年の春、農災法の一部改正法案が出されました。これに対して、与党である自由民主党は、党議でこの改正案を決定されたはずです。ところが、農協議員と称する一部の集団、しかも、それは自由民主党の中の一集団のために、これが廃案に追い込まれてしまった。自由民主党のだらしなさもさることながら、一体農協というものが、あの当時、農災法をつぶすために二千万円の政治資金を集めておるといわれているのです。もちろん、あの農災法の改正案は、私どもも不十分な改正であるから賛成はいたしがたいものであるけれども、しかしながら、農民にとっては一歩前進ではないか。しかるに、農協が二千万円の政治資金を集めて、これをつぶしたということになる。ところが、共済組合は、また防戦これ努めて相当の金を使ったでしょう。かりにそれも二千万円も使ったとすれば、四千万円の政治資金が集められ、そしてこの法案がつぶされたのであります。ところが、一体その金はどこから集めたと大臣はお考えになりますか。今日生活に困窮して、農業農民に見切りをつけて、絶望を感じておる農民のふところから吸い上げられた金ではないか。農民のふところから吸い上げられた金で、お互いに団体間の争いをやられてたまるかということだ。大臣所見を聞きたい。
  55. 重政誠之

    重政国務大臣 私は、二千万円か何ぼかの金を農協が使ってあの法案を廃案にすることをやったかどうかということは、その事実は存じません。存じませんが、そういうことをやるということは賛成をいたしがたいところであります。もしそういう事態がありますれば、十分に関係者に対して私も注意を促さなければならぬと考えるのでありますが、あの法案は、衆議院におきましては修正可決をせられ、そして参議院にいって継続審議になって、それから先の臨時国会で廃案になった経過のように承知をいたしております。ほってはおけませんので、あの法案は、ぜひ今国会で皆様の御協力を得て成立をせしめたい、こう考えておるのでありますが、団体間においても十分に協議せしめ、また自民党内部においても、特別委員会を設けて今協議をいたしておるところであります。おそらく近く協議がまとまって提案の運びになる、こう考えておる次第であります。
  56. 石田宥全

    石田(宥)委員 先ほど私が指摘いたしましたように、どうも農業団体が中央では完全な経営体となり、企業体となっておるのではないか。企業体ということになると、おのずからみずからの営利を追求するようになって参ります。営利を追求するようになると、農民の農協が農民の資金によって農民を搾取するという態勢になってきておるのではないか。たとえば全購連の飼料の問題は、先ほど私が朗読いたしました一青年の手記にも出ておりますが、全購連は膨大な工場をつくって、昨年また八億もかけて川崎に飼料工場をつくりました。ところが、その農民の資本によってできた工場からつくられた飼料が、末端にいくと日本配合飼料株式会社という営利会社の飼料と同じ値段であって、むしろサービスは悪い、こういうことが指摘されておるのであります。しかも、大臣承知のように、制度ふすまの四〇%は全購連にいっておるじゃないですか。全購連のふすまは現在五百九十九円でいっております。しかし、日本配合飼料株式会社は七百六、七十円のふすまを使っておるのです。そうしてつくった配合飼料が、末端では同じ値段農民に届くということでは、これは一体何を物語るのですか。私はいろいろな点を質問したいけれども、もう時間がなくなりましたから、質問する時間がございませんが、一体それはどういうことだと大臣考えられるか。一方では五百九十九円のふすまを使っておるのです。一方では七百六、七十円のふすまを使っておるのです。そうして制度ふすまの四〇%は全購連がもらっておるのです。そして末端では同じ値段で売って、農協の方がむしろサービスが悪いということは、一体何を物語るか、端的に簡潔に答弁を願いたい。
  57. 重政誠之

    重政国務大臣 ふすま問題について、ただいま石田さんの御指摘になりましたようなお話は、私も耳にいたしております。そこで、この問題につきましては、今のお話の通り、末端では同じような値段農家にいくというようなことがあっては意味をなさない。私もそう思う。でありますから、はたしてそれがすべて現実であるならば、何とかこれは考えるべきものであろう、こういうふうに私は考えております。
  58. 塚原俊郎

    塚原委員長 石田君に申し上げますが、申し合わせの時間が経過しておりますので、結論をお急ぎ願いたいと思います。
  59. 石田宥全

    石田(宥)委員 結論に入りたいと思いますが、この問題は、最近若干値下げをいたしておるのでありますけれども、私は、そこで、もう一点重大な問題を指摘しなければならないのでありますが、全国の農協の役員諸君が一つの役員のポストについておるというのなら、まだ話はわかる。しかし、きわめて数多くのととろにまたがっておって——私は月給が高い安いは言いたくないのだけれども、月給を二十六万円ももらって、六五%の退職手当がついて、三カ月以上の期末手当が入ると、トップ・クラスの諸君の月給は四十九万四千円になりますよ。農民に聞かせたら、一体これは何と考えるでしょう。四十九万四千円ですよ。しかし、それ一つで専念するならこれはわかるのです。いかに数多くのものにまたがっておるかということは、大臣大体御承知だと思うのだけれども、私はこではないのです。実際は土地の買収に対する対価の問題であります。補償という言葉は、自創法にも書いてございません。買収土地に対する対価の問題を基準にして書いてあります。しかし、その農地が公共の用に供されるために、強制買収されたのですから、これに対する補償が適正であるかどうかという憲法の二十九条の問題から議論をされまして、御承知通り、最高裁の四回にわたる判決におきましても、農地の対価は憲法二十九条に言う正当なる補償であると正確に表現されておるのであります。いかなる取引においても対価というものはあります。売買においては、財産移転に対する代金の支払いが対価です。交換においても、物を与えるから、そのかわりの物権をこちらに取得するという、いわゆる交換物権の対象になるものは対価にひとしいものです。雇用についても、これは労務に服することを約束して報酬をもらうことが雇用契約。これは対価と書いてなくて、報酬と書いてありますけれども、実質は対価であります。請負もしかり。ある仕事の完成することを約束して、これに対する報酬をもらうことが請負契約だというここは、ちゃんと民法に書いてある。ですから、ある提供物に対する対価をとるというのがほんとうの本質であって、補償というのは、憲法においてそうきめられておったから、適正な補償であるかどうかということで、補償という言葉が使われてきた。  そこで、私はお伺いいたしますが、最近、過去四回における判決のもとにおいては、補償はどうしてもできないから、報償という言葉を生み出して参りました。しかし、まず伺っておきたいのは、この農地買収におけるすべての代金というものは、すでに決済されておると思うのですが、未決済の部分がありますかどうか、大蔵大臣にお伺いしたい。
  60. 田中武夫

    田中国務大臣 最高裁判例にも明らかでありますように、農地被買収者に対する対価は、政府としては支払われておるということは法律的に確定しておると考えております。
  61. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 その対価は、政府の支払いについては全部支払い済みでありましょう。
  62. 田中武夫

    田中国務大臣 先ほど申し上げました通り政府が当時買い上げたものに対しては支払われております。
  63. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 そこで農地を提供し、その対価を受領してすでに取引が結了しておる、そういうものに対して、さらに何ものかを出そうというところに問題点があります。米の奨励金ならば、供出する前に奨励金というものをやるのですから、これはプラス・アルファでいいでありましょう。しかしものの決済が済んでから、何もそこに欠点もないのに、正当な代金が払われておるのに、これに対する何ものかを追加しようというような考え方は、取引の上においては私は許されないと思う。済んだあとで、あれは安かったからもう少し代金をもらいたいなんという取引があったならば、取引の経済秩序というものは保たれません。すでに政府が買い上げをして、代金が払われていて済んでおるのに、なおかつそれに対する何らかの手当と申しますか、報償といいますかをしなければならぬというところに問題があるのですが、先般来の委員会において補償と報償とは一体どう違うのかということに対しては、私はまだ明らかに聞いておりません。私の言葉でいえば補償とは言わない、対価。対価と報償とは一体どう違うのか。
  64. 田中武夫

    田中国務大臣 補償とは、あなたも先ほどから言われております通り、憲法上明らかなものであり、また法律上も明らかなものであります。報償とは、私が前回も申し上げた通り、対価イコールというものではありませんが、要約して申し上げますと、賠償または補償とは明らかに違うものでございまして、義務的な性格のものではないというふうに申し上げておるわけであります。国の政策に対する協力または貢献、それから国の自由なる発意により、また国が報いる意味での措置というような意味で、補償とは明らかに違いますが、報償に対しては常識的な定義を申し上げておるわけであります。
  65. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 それではこう伺っておきましょう。国民が自創法によって、自作農創設特別措置法によって法律を守って国家と取引をした、当然やるべきことをやった国民に対して、何らかの報いをしようというのが今回の構想である、そういうふうに承っておいてよろしいですね。
  66. 田中武夫

    田中国務大臣 当時の農地問題につきましては、何回か申し上げております通り、自作農創設という建前において、占領軍メモに基づいて政府が立法を行ない、農地を国が買い上げて、自作農創設のためにこれを分配したということであります。これが対価については、最高裁の判例にもあります通り、国は法律に基づく正規の対価を支払っておるわけであります。政府もこれを確認をし、議会においてもたびたび申し上げておる通りでございますが、その後十数年間にわたるこの問題に対する世論の動向、また前回にも申し上げましたが、自作農創設という基本的な考えに基づいて行なわれたものでありますが、その後昭和二十九年だと思いますが、この法律改正によって、自作農として受けた農地であっても、他に売り渡すことができるようになりましたし、現在まだ国が買い取ったまま、農地として自作農創設に対処して売り渡しをしておらないもの等もありまして、これらの状況を十分しんしゃくをした後、何らかの報償を必要とするのではないかという考え方に立ちましたわけであります。しかし、何らかの報償をするにしても、基礎調査、実態調査、特に世論調査等に重点を置いて、しかる後に結論を得たいということで、三十八年度予算に調査費の計上を行なったわけであります。
  67. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 そこに問題があるのであります。適正な対価で取引して済んだあとに、なおかつ跡始末をしなければならぬ、特に旧地主だけに限ってこういう措置をとらなければならぬかというところに問題があるわけであります。先般来も社会党の各議員から非常に有益な、何ゆえにこれのみを取り上げて一つの戦後処理のような考え方においてやるのかという、これは最も焦点をついた議論であると私は伺いました。ある新聞もこう書いております。「衆議院予算委員会の農地報償問答はさっぱりわからない。この問題は、すでに最高裁から農地改革は正当だとの判決が出て、政府も補償は考えていないと、なんどか言明した。それが旧地主団体や、これにシリをたたかれた党内の関係議員に突きあげられ、またまた調査費として一億八千九百万円を計上した」、さらに飛んで、「すでに内閣の調査会で答申ずみの問題に、また二億近い金をかけて、なにを調査するつもりか。」、これが私は世論ではないかと思います。こういう疑点があるからここに深い問題が起こってくる。ことに法律的根拠から言っても、取引の通念から言っても、取引が完全に完了した後において手直しをしなければならぬという必要がどこにあるか、ここに問題がある。ですから私どもは、この点については、社会党の議員諸君も申されたように、日本の戦争によって犠牲になった一切の国民に対するある程度の生活保障といいますか、援護といいますか、その後の変化において措置をしなければならぬというのならば話はわかるけれども、こういうはっきりと取引が完了されたものについて特に政府が配慮する必要がどこにあるかという、この新聞に書いてある通り、これは私は世論であると思うのです。そこでこの自作農創設特別措置法の対価というものは、最低価格をきめたのではなくて最高価格をきめたことは御承知通りですね。読んでみるまでもありますまい。六条の三項には、「前項の対価は、当該農地につき地租法による賃貸価格があるときは、田にあっては当該賃貸価格に四十」、省略しまして、「畑にあっては当該賃貸価格に四十八を乗じて得た額の範囲内においてこれを定め、」、こう書いてあるので、最高価格をきめたので、最低価格をきめたのではないのです。  そこで一つの疑問は、今度の出す報償によって、ここできめられたところの最低の対価をきめて、なおその上にいかなる名目にしろプラス・アルファをするということは、これは計算しなければわかりませんけれども、場合によってはこの法律の違反になります。この法律は今廃止されてありませんけれども、当時の趣旨はそうでありますから、その法の趣旨を破って十数年後にその時の政策なり法律の趣旨に反することをやるということならば、日本の法治国たる資格は私はなくなると思うのです。  そこで、判決によって私は伺いますが、昭和二十八年十二月二十三日最高裁判所大法廷の判決によりますと、もちろんこれは最終的には適正な価格であると決定しておりますが、その前に、この反当の相当額をきめたというのは、自作収益価格によったんでしょう。自分で耕作する者は、それから生ずる産物の価格を積算をいたしまして、そうして反当価格をきめたんです。耕作者についてはそうなんです。ところが、地主についてはどういうことになっていますか。地主については小作料を取って賃貸しをする、そのときには利益がふえるんですね。   〔安藤委員長代理退席、委員長着   席〕 利益がふえるわけですから、その利潤だけは余分に見てやらなければならないというので、その利潤を地主についてはさらに追加しなければならぬという法律の規定がある。自創法の十三条三項、四項、農地所有者に対してはその農地の面積に応じ、特定の基準による報償金が交付される。ここにあなたの今までおっしゃる報償金という言葉が明らかに出てきました。耕作者に対しては反当生産による米価を積算して反当の価格をきめ、地主については小作料を取るから、収益が多いんだからして、それについては特別の報償金を払わなければならぬ。報償金とは何ぞやといったんで二百二十円ということをここに規制してある。そうしますると、すでにこの自創法による農地買収のときに耕作者に対する反当価格は適正である。さらに、地主に対しては報償金二百二十円をプラスして支払ってあるのに、今日なおかっこの報償金という言葉々使って何らかの措置をしようというのはどういうわけですか。
  68. 田中武夫

    田中国務大臣 分けてお考えいただきたいのでありますが、最高裁の判例にもあります通り、憲法二十九条第三項に基づく正当な補償措置は政府は行なっておりますということは明らかにいたしております。  なお、今般の三十八年度の予算に計上しました農地被買収者等に対する調査費は、明らかに憲法の規定に基づく国家補償ではなく、いわゆる義務的な行為ではありません。先ほども申し上げた通り、国家に功績があったり、また国の意思に基づいてこれを一方的な立場から何らかの処置をしなければならないような場合があったときに、これを補償とは別に報償と考えた。またこの農地被買収者に対しましては、何らかの報償を行なう必要があるというふうに思われますので——思いますというふうには言っておりません、思われますが、なお、これらの大きな問題を解決するには基礎調査も必要でありますし、実態調査も必要でありますし、なおあなたが今おっしゃっておるような世論、また新聞やマスコミ等でいろいろなことが書かれておりますが、これが世論ではないかというような、すなわち、あなたが言われる世論の存するところを十分に調査をしなければ結論を出すわけにはいかないという建前に立って、これが調査を慎重に行なうために調査費を計上したのでございまして、憲法二十九条三項による補償とは明らかに違うものであるということを申し上げておるわけであります。  なお、先ほどあなたが言われた自作農創設特別措置法の第六条、第十三条の事項に違反するじゃないかというようなお話でございますが、これは政府が一方的に行政措置等で行なえばそのような問題があるかもわかりませんが、仮定の問題として申し上げるのですが、この三十八年度予算に計上した調査の結果、何らかの報償の措置を必要とするという結論に政府がなった場合でも、これは当然立法段階において国会の審議を経、国会の議決に基づくのでございますので、法律は二十三年、当時の自作農創設特別措置法の第六条と異なられた法律が制定をせられても、この法律の条項に背反するものではありません。
  69. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 もう一度申し上げておきますが、農地の買収対価は対価、そのほかに一定の基準によって報償金は報償金、対価プラス報償金というものを地主に交付しておるわけであります。  そこで最高裁の判決も、結論で、「このように、前記買収対価の外に、地主としての収益に基き合理的に算出された報償金をも交付されるのであるから、買収農地の所有者に対する補償が不当であるという理由を認めることはできない。」というので、ここで対価は対価だけでも耕作者の方は正当である、補償ということは報償金もなお含めておるのであるから、なおさら正当であるという判決です。ですから、あなたは、それは地主の権利に基づいて、請求に基づいてやるものではない、こちらからプレゼントするものであるという意味のことを言いますが、そうしますと、もっとはっきりしておきますと、今度のあなた方の想定しておる報償金なるものは、考えられておる報償金なるものは、対価の一部ではないですね。前の対価の一部でもないし、前の対価に対する追加金でもないし、前のは決済されておるのだ、今度は新しく政府が何らかの必要があれば報償金をこちらからやるのだ、こういうことですね。
  70. 田中武夫

    田中国務大臣 もう御答弁申し上げることもないと思いますが、あなたの言われる通りでございます。農地解放に対しては、最高裁の判例もございます通り、国の憲法上、法律上の義務は全く完了しておるという建前に立っております。  先ほど申し上げた通り、国の政策に対する協力または貢献に対し、国の自由なる発意により、国がこれらの事象に対して報いる意味での措置を必要な場合は考えておるのでありますから、未払い対価に対してこれを追加払いするというような考えのないことは、政府がたびたび明らかにいたしておるところでございます。  もっとこの報償ということに対して申し上げるとすれば、必ずしも金銭の給付を意味せず、物品の提供、表彰等も報償の中に含まれることは言うをまたないわけであります。
  71. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 それではっきりといたしました。それでは農地の報償に全然関係のないところの政府の措置である。  そこで、先般来出てきた農地だけをなぜ特別扱いにして、他の国家に対して貢献のあったもしくは犠牲になった者を救わないかという議論が当然に出てくる。これはあなたの今の御答弁によってはっきりしましたから、議論は新しくまたそこからスタートしなければなりませんね。  それではもう一つお伺いしますが、あの当時と前後して漁業法の改正が行なわれました。漁業法の改正では、従来の漁業権というものを一切白紙にして免許許可権というものによって新しく許可する。漁民には漁業補償権というものをやって、涙金のようなものをやっています。これは私は非常に悪法であったと思うのです。農地の解放は、その土地に住みついて、その土地に汗と血をもって耕作しておるのですから、その耕作者に対しては所有権をやって自作農にしたい。これは労働と生活と土地との間における密接な関係がありますから、地主からこれを買い取って自作農をつくるということは、ほんとうに農業に従事する者にその田地田畑を与えるのですから、これは理屈も通るし当然であろうと思うのです。漁業の場合は数十年、数百年、数千年もその地元の海岸に住みついて、その海の水を利用して家族が食べておった、いわば陸でいう耕作者です。海面の耕作者です。ところがその海面の耕作権、漁業権を逆に今度は奪い取って、そうして資本家なり企業家でもできるような免許をしたことは私は逆であったと思う。そこに長く住みついて、小船を持っても、大船を持っても、網を持っても、先祖代々その海岸で漁業権によって生活しておった。そこに免許許可権をつくっていった。もし旧地主の問題が起こるならば、旧漁業者の問題が起こってこないかと思うが、どうですか。
  72. 田中武夫

    田中国務大臣 いつも申し上げております通り、農地の問題に対しては何らかの報償を必要と思われるが、しかし、すべての決定は三十八年度の予算に計上しました調査費の執行によりまして、いわゆる基礎調査、実態調査、世論調査等を行ないました結果国会の審議を経るのでありますから、もうすでに政府は報償することをきめているんだ、いわゆる自民党がお考えになっております補償法案、報償法案というものを前提として、すべてのものの議論を進めておられるようでありますが、あげてこの三点に及ぶ調査を慎重に行なうということを、昭和三十八年度の予算に計上しておる調査費は意味しておるのでありますから、そういう意味では、一つ政府の真意を御理解賜わりたいと存じます。  それから、なお、第二の問題として漁業権の問題がございましたが、漁業権がメモ・ケースのものであったのか、また政府がどのような方向のために法律の提案をしたのかはつまびらかにいたしませんが、ただいまあなたがお述べになられました漁業法の方向がどうあっても、これらの問題と農地に対する調査費を計上したことが一体不離なものだとは考えておりません。
  73. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 漁業法の場合においては、一切の漁業権を白紙に返して、新しく免許許可によって漁業を許すというので、免許可料の問題が漁民の間で非常に問題になったことは明らかでしょう。いわゆる漁場解放に近いよろなことをやって、あまつさえ漁民から免許料、許可料を取る。非常に逆なことをやっている。これが非常な世論の反撃にあって二年間でやめましたね。ですから農地だけをやるのならば、ほかの、国に対する功労者、犠牲者、協力者等もやらなければならぬが、当面農地改革と同じような運命のもとにあって生活に苦しんだこれらの漁民に対しても、何らかの漁業報償というものを考えるのならば考えるべきではないか。御意見いかがですか。
  74. 田中武夫

    田中国務大臣 日本が有史以来初めて外国に負けたのでありますから、その状態においていろいろな革命的な措置がとられたという事実に対しては、お互いに国民として認められるわけであります。同時に当時は天皇権に優先するもの、日本の憲法に優先すると明確に国民の前にも明らかにせられた連合軍最高司令官が存在しておったのでありますし、当時われわれも国会議員でありましたが、国会の時計をとめても法律を通せと言われたことはあります。このような事態でいろいろな施策が行なわれたわけであり、いろいろな諸制度の一大変革が行なわれたことも事実でありますが、今日の結果において、占領軍の功罪は別にしまして、日本がこのような復興を遂げ、われわれの時代によりよき日本をつくって次代の国民に渡し得るというような見通しがつくほどの経済発展がもたらされたという事実も、十分わかるわけであります。私は政府が憲法の定める行政の責任者として、これらの問題に対しどう対処すべきかは、憲法、法律の定めるところによって、法律上補償を必要とするものに対しては補償は当然すべきであります。これはのがれることができないと思いますし、また補償を必要とするものに対しては、農地に対する最高裁の判決にも明らかであるように、政府は今まで各種の問題に対して補償の措置をとって参り、またこの措置に基づいて予算的措置も行なって参ったわけであります。でありまして、法律上の問題と政治的な問題、また国民感情の存するところを十分見きわめつつ、財政の許す範囲内において、より豊かな愛情を持った基本的な態度で、国が隆昌に向かった場合、徐々にこれらの問題を解決していかなければならない。政治的な、基本的な気持においても持たなければならぬということは、西ドイツがいかにして補償措置をやったか、イタリア等がどういうふうな状態で今日を築き上げておるかという例に徴するまでもなく、それは政治の基本的な問題であると考えております。でありますが、あなたが先ほどから御質問になっております農地補償という問題と、農地報償という問題に対しては、明らかに政府は補償という憲法上、法律上の義務に対しては、もうすでに完了いたしております。  第二の精神面である報償の問題に対しては、これから調査を行なって、国民の世論のおもむくところに従い、しかるのち、なお国会の議決を経たのち行なう必要がある場合には行なわなければならないでしょうということを、すなおに申し上げておるわけであります。  その次には、農地の問題に調査費を計上したならば、漁業の問題その他に対しても調査費を計上せよということではありませんが、同じく報償の道を考えなければならないじゃないかというお考えでありますが、現在政府は、ただいま御発言になられた漁業の問題に対してつまびらかにいたしておりませんし、報償の必要があるかないかということに対してもさだかな結論を持っておりません。
  75. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 あなたは長々と御答弁なさったけれども、そこに問題があるわけです。その裏はみなわかっておるんですよ、ほかの委員諸君も。この問題が持ち上がった楽屋というものは、みんなわかっておるわけです。だからまあ裏から暴露戦術でやる手もありますし、いろいろそれはありましょうけれども、私は、そういうことを言っておったんでは、ただあなたの答弁は法的でなくて随筆的なような答弁になるから私がここで判例を持ち出してはっきりとしておきたいというのは、楽屋のことはみな知っているわけです、そういうことは。そこで、その広い愛情をもってあなたがなされるとおっしゃるから、そこにまた新しい問題が出てくるのですよ。旧地主のみが国家に協力したんじゃない。旧地主のみが犠牲になったんではない。もっとかわいそうな犠牲者もあるし、もっと強力に国家に協力した人もあるのです。ですから、これだけを取り出して、あなたの言う賞与的にいわゆるほうびをやる、感謝をするんだという気持を旧地主にのみ表そうとするから問題が起こるんですよ。ですから私は、これは対価の一部になるのかならないのかと聞いたら、対価の一部にはならないとあなたもはっきりおっしゃった。しかし、先ほど申しましたように、自創法の地価の決定というものは、対価の決定というものは最高を示したのですから、その法律がなくなった今日、ほうびであろうと報償であろうとお礼であろうと、その法の網をくぐり抜けてやるようなことは、政治として正しい姿勢ではないのではないか。法律を守るということは、これは必要なくなったからやめたたけであって、悪法であったからやめたわけじゃないのですから、この法律は。ですから、この法の趣旨というものは、たとい死んでなくなっておろうとも、むしろこの法こそ国家に貢献をしておるかもしれません。ですから、この法こそ国家に貢献し、この法によって日本の農地改革ができたんですから、むしろこの法の精神というものは法が廃止されても私は脈々として生きていると思う。しかるに、その法にきめられた以外のことを、言葉はあなたの言う通り賞与であろうとほうびであろうと、すでに地主に対しては報償金というほうびをやってあるのですから、反当二百二十円というものを。それを何らかの形でなお旧地主に報いようとすることは、私は厳密にいえばやはり旧法律の違反でもあると思うし、精神からいえば、私はこういう尊い法律の精神をじゅうりんするものであって、正しい政治ではないと思う。今おっしゃったように、あなたは、これはほうびであって、別に対価ではないとおっしゃるから、ここの議論をスタートにして、私はまたこれから政策問題としていろいろな問題が起こってくるであろうということを申し上げて、この問題は大体そこで結論をつけておきます。  外務大臣にお尋ねいたしますが、対韓請求権の問題は、もうこの国会でも耳がタコになるぐらい論議されて、そして質問のごとにこの問題は出てくるが、私は私の法律感覚によってどうしても満足のできないことがあなたの答弁の中にも、総理の答弁の中にも出てくるのです。というのは前々回の国会、小坂外務大臣のときには、ある程度請求権というものの存在を認めて、相殺思想の考えのもとに請求権問題を扱っていくんだ、こうおっしゃったので、相殺思想とは何ぞ——相殺ということは、差し引きですね。差し引き勘定の思想だ、こういうのですね。私は当時、相殺ということはかくかくの金の債権があって、かくかくの債権が相手にあるからしてこれと対等額において相殺するのが相殺なんだ、それを相殺思想というのは一体どういうわけだと言ったところが、相殺はできないんだ、はっきり金額はわからぬから。ですから相殺はすることはできないが、相殺をするという考えを根拠に置いて請求権問題を解決していくと、こう言っておる。私は国と国との債権が明らかでない場合には、外交上やむを得ないと思う。政治的にはこれもやむを得ないかと思う。しかし、根拠になる債権がわかっておろうとわからないであろうと、ともかく存在しておるということは明らかですし、この間も春日議員の、アメリカの解釈によってもある程度満たされたということはある程度相殺された、差引された、満たされたということを法的にいうならば、請求権は相殺されたという考えのもとに、という口上書の意味でありました。それならば、そういう思想でいきまするならば、この請求権問題の相殺関係は、金額と法的根拠、事実関係が明らかでなくとも、ある程度そこに何らかの金額というものが生まれてくるわけです。すなわち、金額をきめるにあたっては根拠があるわけです、はっきりした根拠ではないけれども。相殺の考えのもとにおいてやるということは、やはり請求権中心に問題を片づけていくのですから。ところが、今回は、あなたの答弁によりますと、経済援助だ、請求権は全然関係ないのだ、こうしばしばおっしゃる。そうすると伺いたいのは、経済援助がもとであって、請求権問題は全然除外視するのだということになりますと、経済援助の中に出てくる金額は、一体どういうところから算定されてくるのですか。差引勘定でいくのならば、お前のところはこう言うけれどもこれだけしかないのだ、こういって、そこはお互いに歩み寄って、ここらで一つ日本からはこれだけよけいに出そう、こう出てきますけれども、請求権を全然度外視して、何にも触れずに経済援助の問題を考えて、経済援助の問題が片づいたならば随伴的に請求権の問題は消えていくのだ、こう言う。すこぶる私としてはふに落ちない。一体、相殺勘定、請求権を全然度外視して経済援助の金額というものはどういうところにポイントを置き、どういうところに基礎を置いて出てきたのですか。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 この間も申し上げました通り、経済協力と請求権との間には関係はないわけでございます。経済協力をどれだけやるかということは、わが国の財政的な対外支払い能力というものを勘案いたしまして、韓国にこの程度供与するということが適当だというように考えておるわけでございまして、根拠といえばそれだけでございます。ただ、今田中さんがおっしゃったように、われわれの思考の過程におきまして、何がしか、何か請求権の実体なるものが把握できる道がないか、何かこちらの軍令の解釈上も、米国の解釈が出ておりますようにある程度満たされたものと思われるという、その程度はどういうものかということを模索いたしまして、われわれがそれを把握したいと思って努力をいたしたわけでございまするけれども、たびたび私が申し上げます通り、そういう実体を捕捉する場合の法律的な立場、解釈というもの並びに事実関係というもの、その事実関係を推定いたしますにつきましても、その推定の方法、そういうことで両者がどうしても折り合わないわけでございまして、そういう思想を導入して何らかの解決をやろうということは、百年河清を待つにひとしいというように私ども判断いたしまして、全然別個の考え方に立つようになったのだ。で、私ども今立っておる立場は、繰り返し申し上げますけれども、経済協力をやるということでございまして、その経済協力は請求権とは関係がないという立場。ただ、そういうことによりまして請求権の問題は片づくのだということになればけっこうだということで、今話し合いを進めておるわけでございます。平和条約におきましては、どういう方法によって請求権を処理せよとは書いてないわけでございまして、経済協力を受けることによりまして、韓国が請求権を主張されない、あるいはなきものと認めるということになりましても、それはりっぱな請求権処理の方法であろうと私は考えています。
  77. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 請求権問題で交渉を進めれば、平行線でいつまでも話がつかない、外交上、日本と韓国との国交は回復しなければならぬという大きな目的がある、そのためには経済援助方式をとる。これは、外交方式としては私としてもわからぬわけじゃありません。われわれも私法的に問題を片づけるときには、幾らもそういう問題はあります。根拠がなくとも、いろいろ話し合いをして金額をきめるという点もありますが、しかし、全然根拠がなくて金額をきめるということは、私はあり得ないと思う。あなたは、今、日本の経済力と日本の財政の状況によってきめるのだということになりますと、そうすると、日本の方が一方的に、これだけしか財布の中に金がないから、これだけしかやらないのだという方式ではなかろうと私は思うのだ。むしろ向こうから、何に基づいたにしろ、あるいは賠償方式に基づいたにしろ、請求権に基づいたにしろ、何にしろ国交回復料としての請求は向こうからあったのじゃないですか。こっちできめられるのですか。こっちできめたとしたら、私は多過ぎると思うのですね。大蔵大臣もござるけれども、こっちからやるのだったら、なるべく包み金で済ましてもらいたいものだと私は思う。あなたは、日本の経済力によってこっちで決定できるというのでありますならば、それじゃやはり根拠を示してもらいたい。ここに百円しかないから、三十円やったら多いから十円やろうということもありましょうし、おのずから日本の経済力というものはあります。私は真相はそうじゃないと思うのですね。向こうから国交回復、こっちからもしたいし、向こうもするという意思があって、国交回復をするについては何らか経済援助をしてもらいたいという、向こうからむしろ額を示して請求が来て、日本の経済財政状態を勘案してきめたというのが真相じゃないですか、どうですか。
  78. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいままでの御質問は、根拠は何だというお尋ねでございましたから、財政能力に応じてはじき出した金額でございます、こう申し上げたのですが、田中さんが御指摘されるように、当然先方からも要求がございまして、今私どもが大筋において合意している金額より多額の要求がございまして、御指摘の通り、わが国の財政能力を勘案しながら先方にも譲歩していただきまして、この程度でどうだろうかということになっておるわけです。それはおっしゃる通りです。
  79. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 そこで私は、今から言ってはちょっとおそいかもしれぬけれども、あなたの折衝の仕方は、少し国交回復を急がれたせいかもしれぬけれども、ちょっとまずかったのではないかと私は思う。というのは、日本の国内において対韓請求権の処理をしなければならぬ問題、漁業問題、その他幾多の問題があります。これは韓国の方も、請求権は煙のごとく随伴的に消えるというけれども、そうじゃない。やはり外交文書をつくるときには、君の方の債権は請求しないかわりに、日本に対しても請求しないようにしなければならぬとかなんとか、おのおのの国内向けの債権なりあるいはトラブルの処理というものを考慮しなければなりませんよ。日本の国内においてもそうです。在外資産の問題についても、先般来いろいろ各議員から質問がありますが、あなたの言うように、簡単なわけには私はいかないと思うのです。たとえば今の日本の韓国に対する請求権は、総理は、あるときには米軍によって没収されたのだ、だからどうにもならないのだ、こう言うし、あるときは平和条約の四条の(b)項によって日本が放棄したのだ、こう言うし、一体日本の対韓請求権ができないのならできないでよろしいが、できない原因はどこにあるか。日本が四条(b)項によって、日本の意思によって、たとい無理であっても、脅迫ならともかくも、日本も一国ですから、やむを得ぬというときには日本の意思が働きます。その日本の意思が働いて、条約という文書に調印しなければならぬ、こういうことで、私は第一次的には、日本の対韓請求権の放棄というものは、日本の国家の意思によるものであるということを第一に考える。第二に、もし米軍が没収したという不法行為によって日本の対韓請求権が消滅したとするならば、アメリカの不法行為に対する日本の損害賠償請求権はあるはずである。そうでしょう。アメリカといえども、日本の財産を没収してのほほんをきめれば、強盗と同じじゃありませんか。私は、アメリカに対してやはり日本の国民が請求権があると思います。思いますが、しかし、それはやはり平和条約の四条に調印することによって、それすら請求することが困難になっておる。おそらくできませんよ。あの法条がなければ、日本の個人がアメリカに向かって請求できるかもしれません。けれども、第一は、日本の意思によって対韓請求権というものが任意に放棄されておる。そうでないとするならば、アメリカの没収行為による、不法行為による損害の請求権というものも、これもできなくなったというのは、究極的には、日本が平和条約に調印をしたがために、日本の対韓請求権というものは喪失したのである、私はこう考えますが、どうですか、なくなったのは政府責任じゃないですか。
  80. 大平正芳

    大平国務大臣 政治論としては、今田中さんおっしゃる通りだと思います。わが国が国際社会に復帰する場合に、サンフランシスコ平和条約というものを受諾調印いたしまして復帰したわけであります。これは、政府がそのように決意したに違いないわけであります。平和条約をひもといてみますと、日本に有利な面もあれば、不利な面もございまするし、今御指摘の在韓米軍が没収した行為を認めざるを得なかったということは、これは返す返すも残念なことでございますけれども、全体として、国際社会に復帰する場合にこのような平和条約を認めたということは、あなたのおっしゃる通り政府がやったことに違いございません。問題は、平和条約の条件を受諾した以上、わが国として国際法的には何も米国に対して請求権もございませんし、主張し得る立場にないと私は思います。  問題は、そのように決意した政府が対韓財産をお持ちになっておった方々に対する責任があるかないかという問題になりまするが、私どもといたしましては、政府が自発的に決意したわけではないから、敗戦国としてやむを得ず受諾したことでございますから、ただいままで責任はございませんということを申し上げてきたわけでございます。先ほど大蔵大臣が申し上げました通り、実定法上政府責任があるものは回避すべきものではないと思いますけれども、私どもは、この問題につきましては、実定法上日本政府責任があるとは思うておりません。政治論として政府に何がしか責任のようなものがあるということは、今御指摘の通りでございまして、そういう犠牲をこうむられた方々に対する配慮は、政府として誠心誠意やらなければならぬ問題であろうと思いまして、先般も給付金等支給法で引揚者に対する措置を講じたのも、そういう精神の現われだと思います。
  81. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 それは非常にむずかしい問題ですよ。日本とアメリカと平和条約を結ぶ。敗戦国としてやむを得ない。そうすれば、平和条約はこっちの何らの意思がなくて、無理やりに向こうにさせられたということになりますよ。平和条約の条項を読んで、日本の全権なりあるいは大使なりが判を押したことじゃありませんか、やむを得ず。それじゃ、あなたは平和条約を結んだのは不可抗力と言うのですか。進んで日本が平和条約に調印したのじゃないですか。そこで、あなたのおっしゃる通り、不可抗力で、手をやり無理やりにサインさせられたというなら別ですよ。交渉して、その交渉の積み上げによって平和条約に調印したわけです。ですから、春日委員もこの間しつこく非常に詳細にわたって伺っておりましたけれども、少なくとも平和条約の四条の(b)項というものは、日本の意思によって日本の韓国に対する請求権を喪失したのだ。それから、没収されたということを言ったから、没収されたならば、没収に対する損害賠償請求権もできなくなったではないか、こう言っておるのですよ。そうすると、敗戦国としてやむを得ないということはどういう程度ですか。
  82. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど私申し上げましたように、平和条約の中にはアメリカその他が賠償を請求しないとか、いろいろ日本政府からの利害から判断いたしまして有利である面もございます。それから今御指摘のように、在韓財産、在鮮財産の没収なんということは、これは日本政府として受諾しにくいものであったに違いないと思います。しかし全一体として、平和条約というものは、日本政府としてこの機会に踏み切るべきだと判断して受諾したことと思うのでございます。私の申し上げる意味は、日本が、その当時の日本の立場として、敗戦国の立場として、もっと有利な交渉をやりまして、そういった瑕瑾がないように平和条約を結ぶべきであったということは言えると思うのでございますけれども、そういう立場に日本がなかったということは、非常な不幸な状況であったということでございます。
  83. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 そうおっしゃるけれども、私は、これはどこまでも日本の意思に基づく平和条約の締結ということを考えておりますが、まああなたは、日本の対韓請求権についての問題の残ることをおそれてそう抗弁なさるから、それはそれで伺っておくが、私は私の主張をここでいたしておきます。  今伺いましたのは、ほかの委員の諸君は、日本の財産権の放棄だから、憲法の二十九条に反するから補償しろという議論をしております。私の立場は違う。私は、日本の全権大使なるものは、日本の権力を行使する公務員だ、その公務員が平和条約に調印することによって、日本の個人の対韓請求権を失ったとすれば、国家賠償法の第一条によって、これは当然国に責任があると思う。補償の問題じゃないですよ。国家公務員の権力の行使に当たって、あの点だけをはねつければよかった。唯々諾々ではないかもしれないけれども、よろしい、放棄しましょうという調印をしたから、全権大使、吉田さんであろうとだれであろうと、国家公務員の権力の行使に当たって、日本の財産権に損害を与えたのであるから、国家賠償法の第一条によって、この請求権者に国家に対する賠償請求権がある。補償じゃないです。国民の権利です。また賠償法の四条によって民法の適用をしておりまするから、国家自身が不法行為によって国民の請求権を喪失したとするならば、これまたこの規定によっても、国家に賠償の責任はある。私はこういう主張をいたしておきますし、今後おそらくこの問題は残るであろうと思いまするけれども、あなたから、どうもそうですと言われたんじゃ、これは判決をとって、こっちが勝つわけですから、そこまであなたに認諾させようとは思いませんけれども、そういう考えのもとに、私は憲法の補償でなくて、賠償法による国民の請求権というものはそこに残ると思いますから、その問題を考慮に入れて、今の経済援助の問題を片づけるときに、はたして入れておったかどうかという問題。  それからもう一つ申し上げますと、これはちょっと話がそれるかもしれませんけれども、竹島の問題を領土問題として扱っておりまするけれども、領土は日本の領土でありまするけれども、財産権からいえばだれかのものに違いない。この問題も念頭におかなければなりません。領土をとったからといって、日本の領土問題は片づくかもしれませんけれども、個人が——五箇村のあの竹島という島における鉱区の権利を持っておる人がある。これは法務省よく御存じでしょうけれども、その鉱区を持っておる辻某なる者が、政府が竹島を取り戻さないのは政府の怠慢である。政府の怠慢であるから、政府がその損害を補償すべきであるというので、五億円の請求訴訟を起こしまして、裁判になりましたけれども、去年の十一月にこれは政府の方で勝ちました。私も法的には義務はないと思うのです。政治的責任はあるけれども、個人の財産までそこで守って、こうこうさせてやろうという法律的責任はないから、この裁判所の判決というものは、私は政府が勝つのは当然だと思う。思いまするが、しかし判決の中にこういうことが書いてある。「本件において、原告が」原告というのは今の鉱業権者ですが、「日韓両国間の国際紛争上の被害者であり、犠牲者であることは明らかである。それ故、たとえ現行法上は政府に原告に対する関係において韓国による竹島の占拠を排除し、原告の権利を回復するためのなんらかの措置をとるべき法的義務を認めることができないとしても、これによって原告が」つまり国民が「こうむった損失の補償という問題は政策上の問題として考えられてよい問題であるかもしれないし、あるいは政府の処置のいかんによっては」しかしやり方によっては——よろしいですか、とこが大事なところです。やり方によっては、「憲法第二十九条第三項との関連においてひとつの法律問題ともなりえないでもないかもしれない。」ですから、竹島の問題は領土問題であると同時に、個人の財産関係を含んでおりますから、片づける上においては、漁業問題も同様です。幾多の損害をこうむった者もおりますから、これらのものを含めて、それで韓国に対する請求権ありとする私のような考え方も含めて韓国に対する経済援助の額を決定するにあらざれば、この問題の上にまだプラス幾らかを政府が国内的措置として出さなければならぬこともありますから、ですから、私は対韓国問題を片づけるのには、前向きばかりではなしに、うしろの国内も見てやらなければならぬ、こう思いますが、いかがですか。
  84. 大平正芳

    大平国務大臣 在鮮財産の所有者の賠償を要求する権利につきまして、田中さんの御見解は承っておきます。  それから竹島問題につきましては、私ども正常化に関連いたしまして、竹島の帰属をどうするかということでせっかく交渉をいたしておる今の段階でございます。鉱業権者の政策問題まで私はまだ立ち入っていないわけでございます。さよう御承知願いたいと思います。しかし今全体の御注意といたしまして、前向きばかりでなく、そういうもろもろの問題を十分踏まえた上で慎重にやれという御注意に対しましては、その通り拝聴いたしまして、注意いたしたいと思います。
  85. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 ですから、私は金額の決定にあたっても、なおこれに関連する国費が幾多要ってくるであろうと思うから、それらの国内的のことも考えて韓国に対する援助を考えないと、日本の当面の財政問題だけを考えて向こうに金を渡すのだということでは、跡始末をするときに困るから、念のために申し上げておくわけです。  それから、あなたには二月二日の春日議員に対する答弁で、韓国の日本に対する請求権、韓国と同国民との間の問題は、同国政府の問題でございまして、私どもは関知するところでないと言う。韓国の日本に対する請求権が、あなたの言う通り随伴的に自然に消滅するわけがない。やはり交渉の中で、債権は消滅するが、自分の国の方の国民の債権は日本に請求してはならないぞということを入れなければ、あとで問題が起こりますよ。だから、韓国の中における韓国人と政府の問題は関知するところではないということでは、日韓交渉がきれいに片づくことにはならない。たとえば、これは法制局長官に伺ってもいいが、韓国人が日本に不動産を持っているとか、あるいは日本によって不法行為をされたとか、韓国人が日本に対する債権を持っておる場合に、韓国人が日本人を相手どって訴訟を起こす場合には、法令によって、不法行為ならば行為地法でしょう、日本の国内法によるでしょう。行為地法によってその請求を向こうの韓国人からもしやってくる場合に、自分のお父さんが殺された、これに対する損害賠償をしたいのだというときには、日本の内地で韓国人が殺害を受けたということになると、不法行為を行なった日本の行為地法、日本の法律によって、日本人なり日本の国家が賠償しなければならぬ。その場合には、民事訴訟法によって被告の住所地が裁判管轄ですから、日本に裁判を起こしてきますよ。また起こしてくることもあり得る。ですから、そういうことを日韓交渉妥結の後に国内問題とせずして、国際問題ではありませんけれども、韓国人と日本国民との間になお係争が幾つも起こるというようなことは好ましからざることですから、請求権問題を随伴的にこれは消滅するのだというような、そんなことでなしに、消滅するけれども、その請求権は各国において、日本日本、韓国は韓国においてこれを処理するという一つの取りきめをやっておかなければ、やはりあとにしこりが残っていくのではないか、国民との間にも、国との間にもそういうことが起こるのではないか。ですから、韓国の中のことは韓国の勝手にしろということでなしに、それらのことも一つ考慮に入れてやらなければならぬから、請求権問題というのは、経済問題を解決すると同時に、随伴的に解決をする、あるいは総理の言う通りに、請求権問題は、経済協定の変形であるというような、そんな大ざっぱな言葉を使わずに、やはり請求権という問題は、これは経済問題と切り離して、これに随伴して消滅するのである、消えていくという意味ではなしにやっていただきたいと思う。またそうしなければならないと思うが、お考えはどうですか。随伴的という言葉を使っておるから、どうもそういう疑惑が起こってくるわけです。
  86. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもいろいろ御説明申し上げておりますが、言葉が足らないのかもしれませんけれども、一括して一体解決をするということを申し上げておるわけでございまして、今あなたが言われているような問題も、あとに問題を残さないように解決しなければならぬ。それだけの保障をとっておかないと解決に持っていけないと思っております。
  87. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 それでは、外務大臣はもうよろしい。あなたに対する質問は、これで終わります。  次にもう一点、沿岸漁業の振興についてお伺いしたいのですが、特に最近工場の汚水、それから下水、ひどいのは、ふん尿の海上投棄というようなことで、沿岸漁業者との間に非常に紛争を巻き起こしておって、ノリ、アワビ、貝類、それからフノリ、そういうようなものがほとんど全滅に瀕しつつあります。そこで、先般これに対する対策の会が持たれまして、私もその会へ参ったのであります。それによりますと、こういうふうに書いてあります。ことにふん尿処理の問題ですが、どういう結果を来たしておるかというと、第一には、分散したふん尿が潮流に乗って沿岸付近に漂着し、岩礁等に付着し、その岩礁等を生活源とする海草類及びアワビ、サザエ、ウニ、ナマコ等の生息成長を妨げることが第一種共同漁業権漁業の侵害となっている。それからまた、そのほか投棄されたふん塊、きたない話ですけれども、これもやはり処理しなければならない問題ですから。かたまりですね、ふん塊がそのまま群塊となって、今度は大きな群をなして、かたまりとなって海底に沈澱した場合がある。きたない話をして、お昼前で気の毒ですけれども、これは漁民の生活問題ですから。そういうことで非常に漁業権が侵害されておる。これは清掃法にも、海岸から二百メートル以内に投棄してはならないというような規定もありますけれども、そういうことでは、大潮流に乗ったふん塊が遠方からでもくるわけです。ですから、これはどうしても処理をしないと、非常な問題が起こる。そこで、私はこの会に出たときに、これは、政府に陳情してもおそらくだめだろう。しかし、法の改正もやってもらわなければならない。清掃法の改正、それから水質汚濁二法案、あれの改正もやってもらわなければならない。がしかし、それだけでは手ぬるいと困るから、私は仮処分によって、横浜市なり東京都なりに東京湾の中にふん尿を投棄すべからずという仮処分をとる、そして法律によって捨てられぬようにしてしまう。その方法をとったらどうだろうと言ったら、それをやりましょうということになっておる。そうすると、一方はそれで行政処分じゃないですから、事実行為だから、漁業権の侵害になるという因果関係が疎明されたならば、そこへ捨ててはならぬという仮処分がとれると思うのです。そうなると、今度は陸上は大騒ぎになる。陸上は大騒ぎになりますから、この問題は急速に厚生省、農林省あるいは企画庁、これが一体になって処理しなければならぬと思いますが、企画庁の長官、水質汚濁についてはあなたの方はだいぶお調べになっておるらしい。それと屎尿投棄のようなことと、それから工場の汚水の流出、そういうようなこととはどういう関係になりますか、一つ答弁を願いたい。
  88. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘の問題は、水質保全法によりますと、御承知通り、工場、事業場等から排出いたすもの、あるいは最終処理場がございます場合には、いわゆる屎尿も公的な下水道を通って川に放出されるわけでございますが、そういうようなものにつきましては、水質保全の対象に当然なるわけでありまして、すでに水質を検査いたします河川につきましては、三十足らずの水系を指定して検査をいたしておりますし、さらにそのうち数河川について、淀川、木曾川、江戸川でございますか、水質の基準を設定いたしたわけでございます。しかし御指摘のような問題が確かにございますのは、それは水質保全法によりまして、河川から放流されるところの水の汚濁についてそのような規定をいたしておるわけでありますが、直接海上にと申します場合には、清掃法の対象になってしまうわけでありまして、その点は、所管の厚生省と私どもとの間で十分実質的な行政上の連絡、協議をしながらやってきておるわけでございます。御指摘のような問題が確かに存在いたします。
  89. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 清掃法によりますと、「特別清掃地域若しくは季節的清掃地域又はこれらの地域の地先海面(海岸から二百メートル以内に限る。)において汚物を捨てること。」これは清掃法によって規制されておりますけれども、これくらいのことでは、沿岸漁業の保護にならないのですね。またこの法律があったからといって、三百メートル先へ捨てても、それが満潮のときにまた海岸に押し寄せてくるという場合には、屎尿投棄と漁業権の侵害ということとの間に因果関係が当然出てきますから、知らずにやれば別問題ですけれども、一度か二度忠告して、なおかつそれをやるということであれば、これも捨ててはならぬという漁業者の仮処分申請の法的措置がとれると思うのです。そこで、これは、あなたの方は清掃法でものを片づけるということですから、陸から海に捨てても片づけたことになるかもしれない。陸をきれいにして、海の中、川の中へ捨ててもいいかもしれないが、そうしますと一番困るのは農林大臣、水産庁、沿岸漁業の権利者というものは浮かばれないわけですね。私の言うような強制処置をとって、横浜市も館山も東京都も千葉市も全部相手取って屎尿投棄すべからずという仮処分をとれば、これは別問題ですけれども、大きな仕事ですから。そうしないというと、農林大臣、今のそのふん塊が岸にやってきて、あなたの方で沿岸漁業振興法を幾ら法律でつくっても、事実的にそういう被害が来るのです。ですから、今度の振興法では、こういう沿岸の水産資源保護についてのあなたの方のお考えはどうですか、この汚水、屎尿を含めて。何も規定がないように私は思うのです。
  90. 重政誠之

    重政国務大臣 御指摘の問題は、非常に困ったことでありますが、御指摘の通りに、これは結局陸上において処分をしてもらう。自然、浄化装置をやるとか、下水道の完備をやるとかということに待たなければ、一応は東京湾などは、東京湾内ではふん尿の廃棄をしてはならぬということになっておるのでありますが、途中でやはり船の底を抜けば、わからないうちに出るということで、なかなか法令で取り締まってみても、それはやり切れない。そこで、結局陸上の施設の完備をすみやかにしてもらう、こういうことよりほかにないと思います。現実の問題としては、そういう事例があるのでありますから、私どもの方の沿岸の漁業の構造改善は、御承知通り、漁場の保全とか、あるいは養殖とかいうようなことを主体にしてやっておるわけでありますが、その一番の問題は、養殖が御指摘の通り因るわけでありますから、これは潮流の関係その他を考えて、そういう地点を避けて養殖事業をやる場所をきめていくという方向で現在はやっておるのであります。しかし、そういうような場合は絶無とも限りませんが、一応私どもは、そういうようなものが流れてくるというような場所は避けてやる、こういうつもりで構造改善計画を進めておる次第であります。
  91. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 これは屎尿海上投棄による対策委員会というのは全国的にできておりまして、これに対する対策を非常に苦心してやっておりますから、特に沿岸漁業についてのことを中心に申し上げましたけれども、陸上におきましても、やはり清掃法なり汚物の処理ということは、オリンピックを前に控えて環境衛生、観光等にも非常に深い関係を持っておるのですから、これは一つ深刻に——今伺っても、企画庁は、水質汚濁の調査だけであって、地域をきめて調査をしておる。それから厚生省は、清掃法によって掃除をすることに対する規制をする。それから農林省は、被害のあることを知りながら、農林省の手でもってはどうも直接にはいきにくい。こういうようなことでは、国全体のことを考えて、沿岸の漁業だけでなく、環境の衛生からあらゆる衛生一切を含めて、これは各省に分けてやっていくべき問題でなくして、何かこれは一本にした調査なり対策を立てることにしていただかないと、ほんとうの被害も、あるいは外面も体面もなくなるのではないか、かように思いますから、一つ三省の間で連絡を緊密にとって、十分対策を講ぜられんことを要望いたします。
  92. 西村英一

    西村国務大臣 清掃法は、昭和二十九年ですか、ずいぶん前にできた法律で、だいぶいろいろ社会的な事情も変わってきておるようです。今申しましたように、いろいろな問題が起こりますが、とにかく終局には、もうこれは地上設備を、尿屎にいたしましてもごみの施設にいたしましても、しなければならぬというので、政府は明年からこれにいよいよ真剣に取り組んで整備を早くしたい、かようなことでやっておるわけであります。暫定的な処置につきましては、各省と連絡をとりまして、漁民も困らないようにしたいと思います。
  93. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 この問題は、漁業権といえば私権の侵害に関することですから、その捨てるという行為のために、つまり公共団体なりあるいは清掃業者なりとの間に非常なトラブルが起こって、損害賠償で片づけたところもだいぶあります。これからもやはりそういう方面へも交渉するなり、法的措置をとって、とめさせる方法はしなければならぬ。同時に、一面やはり国の政治に関する面もあって、非常に複雑した問題ですけれども、そういう両面作戦を立ててこの対策委員会というものはやっておるようですから、十分に御考慮を願って、今後の対策を立てていただきたい、かように申し上げます。  私の質問はこれで終わります。
  94. 塚原俊郎

    塚原委員長 午後二時二十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時二十八分休憩      ————◇—————    午後二時三十一分開議
  95. 塚原俊郎

    塚原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十八年度総予算に対する質疑を続行いたします。  永井勝次郎君。
  96. 永井勝次郎

    ○永井委員 最初に大平外務大臣にお尋ねをいたしたいと存じます。  今朝、済州島南東二百四十キロ付近に起こりましたわが国漁船の韓国警備艇による拿捕の事件は、われわれ国民にとっては寝耳に水のできごとであったと思うのであります。ことに、この海域を生活の場として期待しております沿岸の漁民にとりましては大きなショックであったと思うのであります。両国の国交正常化の交渉が進んで両国の上に明るい夜明けが来るであろうと期待していたやさきでありますだけに、私は問題は深刻であると思うのでありますが、この事件について概要を明らかにしていただきたいと思います。
  97. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま御指摘の、韓国警備艇による日本船拿捕事件でございますが、本日の午前九時三十分海上保安庁に問い合わせましたところ、概要次の通りでございます。  第十五進栄丸、これは、底びき、八十三トン、乗組員十一名、福岡市の新日本漁業株式会社に属する船でございます。これは、本十一日午前三時四十五分、北緯三十二度五十一・五分、東経百二十七度四十八分、——これはもとより推定でございますが、におきまして、韓国警備艇八百六十五号により拿捕されました。拿捕に先だちまして、乗組員四名は巡視船に避難いたしました。現場には海上保安庁巡視船「よしの」がおります。なお、本日早朝、第百七十七明石丸、これも底びき漁船でございまして、乗組員十二名、これが韓国警備艇により十一日午前九時ごろ拿捕されたのでありますが、詳細は目下調査中でございます。  以上、二つの漁船の拿捕につきまして、本日十二時十分に外務省に韓国代表部の係官を招きまして、とりあえず口頭によりまして厳重抗議を行ないましたが、追って文書によりあらためて抗議をする予定でございます。
  98. 永井勝次郎

    ○永井委員 両国の国交親善の取り運びは、両国の間に条約が締結され批准されたら、そのとき両国の間の幕がおりて親善関係ができる、それまでは今のような対立関係だ、寸分も許さない、こういうような、手の裏をひっくり返したように、条約前と条約後と、こういうような区分があるのかどうか。少なくも、条約が取り結ばれるという過程の中には、両国の親善関係、こういうものの土台の上に、具体的な取りきめ、こういうことが運ばれるのが外交の通例ではないかと思いますが、その点はいかがでありますか。
  99. 大平正芳

    大平国務大臣 私も永井委員と見解をひとしゅうするものでございまして、国交正常化前といえども、そういう話し合いが今続けられておるわけでございますので、こういう事件が起こりますことは、きわめて両国のために遺憾だと思うのでございまして、従来、政府といたしましては、文書をもちまして抗議をすると同時に、賠償請求権も留保いたしてあるわけでございまして、私どもとしては、しかしながら、今御指摘のように、この段階におきましてこういう事件が起こるということは、きわめて遺憾であると思います。
  100. 永井勝次郎

    ○永井委員 事態がここに来て遺憾であるというような壁にぶつかりますことは、外交上、見通しなり、取り運びなり、あるいは手続において非常な欠くるところがあったのではないか。われわれ社会党は、こういういろいろな問題を内容としまして、日韓会談は今の時点においては取り結ぶべきではない、両国の会談を運ぶ前提としては、李ラインのような、国際法を無視した無法な一方的な考え方の上に立っておるこういう問題を整理して、両方が合法的に友好的に問題を運べる土俵をまずつくって、両国がその土俵の上で問題を処理すべきだと考えるのでありまして、この季ラインの問題は、日韓会談を取り運ぶ前提条件として、出発前の問題として解決する問題ではなかったか、こう思うのであります。それがずるずると中に入って、そうして、むずかしい問題をほおかぶりして、一方的に問題を引き回されて、うしろの方でだれかにネジを巻かれているのかは知りませんけれども、そういうような形で、そうして次々とこういうような問題が具体的に出てくる。われわれが指摘した通りの事例が具体的になってくる。こういうことは外務大臣としてどのようにお考えになっていますか。外交上の手ぎわが非常にまずいのではないかとわれわれは思うのでありますが、この点はいかがでございますか。
  101. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘の通り、李ラインその他の懸案を片づけることを前提として国交の正常化をはかりたいと努力いたしておるのでございまして、仰せの通りやっているわけです。
  102. 永井勝次郎

    ○永井委員 しかし、そういたしますと、たとえば、竹島の問題はこれは国際裁判で裁判するのだ、あるいは、今運んでおる五億ドルの問題が解決すれば請求権その他漁業権の問題も好意的に解決するだろうというのは、はかないこれは願望であり、期待ではないのですか。具体的にそういう問題が交渉の間において取り運ばれたのかどうか、取り運んでいたとするならば、どのような合意の段階まで来ていたのか、そうして、このような事態が起こるのはどういう関係において起こるのか、これを明らかにしていただきたいと思います。  さらに、今韓国は選挙を控えておる。それで、漁業権の問題については与党も野党も断じて日本には譲らないんだ、譲るというようなことを言えば選挙にならないんだ、こういうような韓国の国民感情というものがここにある、こういうことがわれわれは伝えられておるのでありますが、そういうような国民的感情あるいは意図の背景の上に立って、両国の間に今まで漁業権の問題、季ラインの問題等はどの程度の話を一体詰められたのか、そうして、どの程度の段階まで問題が来ているのか、そうして、そういう段階の中で今回のような事件はどのようにして起こったのか、これを国民が納得するように御解明を願いたいと思います。
  103. 大平正芳

    大平国務大臣 御案内のように、日韓の間にはたくさんの懸案があるわけでございまして、その懸案を一括して同時に解決して国交正常化に道を開こう、こういうわけで努力いたしておるわけでございます。どういう懸案から先にやるか、これは交渉技術上の問題でございまして、どれが先でなければならぬという性質のものではなかろうと思います。しかし、最終的な解決は同時に一括してやりたい、こういうことで臨んでおるわけでございます。従って、ただいままで請求権につきまして大筋の合意があると申しましたのは、これは交渉過程上の一応の合意でございまして、最終的な解決できめるまでは何らの拘束力を持つものではございません。  それから、御指摘の漁業問題につきましては、ようやく本格的な討議が始まったばかりでございまして、双方の見解には相当な開きがございますが、先般もこの席で申し上げました通り、今の段階で、韓国側の主張がこうであり、われわれの方の主張がこうであると詳細に申し上げる自由がないことは、お許しをいただきたいと思います。ただ、この間申し上げましたように、私どもといたしましては大筋にこういう考え方で臨んでおりますということは申し上げたわけでございまして、先方側といたしましても、私どもと相当の距離がございますが、新しい漁業協定というようなものをつくりまして、漁船の安全操業を確保したいという気持は持たれておるようでございますが、それをどのように具体化して参るかということにつきましては、彼我の間に相当の距離がございまして、鋭意今それを詰めにかかっておるわけでございます。  第三の、にもかかわりませずこういう事件が勃発するということでございますが、それはどういう理由で勃発するかということは、私には先方の意図がはっきりいたさないわけでございます。こういう段階におきましてこういう事件が起こることは、両国にとって非常に不幸なことであるという意味で、きわめて遺憾に存じておるということでございます。
  104. 永井勝次郎

    ○永井委員 遺憾であるというだけでは済まされない問題だと思います。向こうの出方がこちらでは全然予測がつかないのだということでは、私は、外交は政府におまかせできないと思うのであります。日本は、李ラインというものを認める、こういうことはないのです。認めないという前提に立っておると思う。認める認めないという問題がやはり両国の間にあるいは国際法上若干の疑義かあるというような、こういう問題ならばとにかく、公海のところに一線を引いて、ここが李ラインだ、こういうような一方的な勝手気ままなやり方に対しては、私は、両国の会談の前提条件としてこういうものをまず整理して、そうして、合法的に両国が共通の土俵というものをつくって、その上で会談が出発する、これが順序だと思う。ところが、大臣の今のお話を聞きますと、この請求権五億ドルその他の問題は、もうどんどん部分的に合意に達した、一番日本の国民としてもまた国の権威から言いましてもはっきりさせなければならないこれらの重要な問題が、今ようやく会談に入ったところだ、こういうようなことは、順序が逆になっておりませんか。さか立ちしておりませんか。一方的な向こうの御注文は全部取りつけて整理させて、そして、これからわが方の意見をちょびりちょびり遠慮がちに出すのだ、そしてこういう事態がどんどん起こってくるのだ、これじゃ国民は納得できないと思う。何のために五億の理由ない負担をわれわれがかぶせられなければならないかという点についても、国民は納得できないと私は思う。ことに、沿岸漁民は、国交の回復の問題はとにかく、われわれの漁民の生活を守るために漁業権の問題だけは何がなんでもはっきりさせてほしい、これが漁民の願いではないか。それが期待ではなかったか。その一番の期待が、全く、今から話しが始まる、これでは、私は、日韓会談というものは、わが党が言っていましたように、今の段階においてなすべきではない、こういうことが正当な主張であるということが明らかであろうと思うのであります。大臣はこれらの問題についてどういうふうにお考えになるか。沿岸漁民や日本の国民のこの会談にかけていた期待というものに対して、内部から、政府から声明された内容ではなしに、具体的な両国間の紛議という形においてその内容がこういうふうに暴露されてきた。一方的にこれは押しまくられているのだという事実が明らかになってきた。これは私は重大であると思うのですが、大臣いかがでございますか。
  105. 大平正芳

    大平国務大臣 漁業問題につきましては、過去においてもたびたび話があるわけでございまして、今始まったということではないのでございます。ただ、第六次の予備会談におきまして、私どもの方から漁業協定の案を向こうに提示いたしまして、それに対しまして先方の反応をようやく聞く段階になってきておるということでございまして、今日まで漁業問題が討議されなかったということではないわけでございます。  それから、先ほど私が申し上げましたように、どういう懸案から先に片づけていくか、交渉全体の進め方として、これは何から始めても理論上はいいわけでございまするが、彼我の相談によりまして、これから先にやりましょうということをきめてやっておるにすぎないわけでございまして、問題の解決は、一括して同時にやるわけでございまして、その段取りの取り方はきわめて技術的なものだと思うわけでございます。  それから、漁業問題だけを先に片づけて、そして、その次の会談をやることそれ自体の前提として漁業問題を片づけろというお気持はよくわかりますし、私どももそういたしたいわけでございますが、諸懸案を一括して解決しようという態度で今進んでおるわけでございまして、解決は同時にいたしたい、こういうことで鋭意交渉を進めておる次第でございます。
  106. 永井勝次郎

    ○永井委員 われわれが国際法上からも日本の国の国民の生活の実態からも当然主張し実行すべき事柄が、一方の国の一方的な不法行為によってこれが制約されて、そして正当な生業が営まれないでいる。その上に、李ラインと称して、その付近で今まで拿捕されたものが百七十隻、九千六百八トン、二十七人という人、これが現在拿捕されている。そして、李ライン設定後はどのくらいかというと、二百四隻、一万二千百十三トン、二千五百六人、沈没して五人の人が死亡している、こういうような不幸、これは表面に現われた拿捕されたという事態でありますが、こういう事件がありますから、危険でその辺に出漁できないといって差し控えておる経済的な打撃というものは、これは非常に大きなものだと思うのであります。でありますから、両国がこれから親善を回復し友好を取り結んでいくというためには、まず前提条件としてこういう不法なことを取り除いて、そうして正しい土俵の上で会談する、こういうのなら、私が先ほど来言っておるようにわかるのでありますが、外務大臣が言っておるように、こういう拿捕の事件が起こった場合、その個々について話はあったでありましょう。しかし、李ライン全体の問題としてどう扱うか、両国の間で漁業権の問題をどうするか、こういう国交上の問題として取り上げたということは、私はこの会談以外では聞いたことがないのであります。もしあるとするならば、この李ラインの問題、両国の中にわだかまりとなっておる漁業権の問題について、外交の歴史的な過程を一つ、いつから始まっているか、どういうふうになっているか、そういうふうなものがあるなら、概略でいいからお示しを願いたい。拿捕された個々の漁船についての交渉ではございませんよ。
  107. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう厄介な問題があって、それを解決いたしまして両国の漁船の安全操業を確保していきたい、そして朝鮮海域における双方の漁業者が最大の利益を受けるように考えていきたいということを祈念いたしまして今やっておるわけでございまして、これが国交回復への前提条件の一つとなっておりますことは御案内通りでございまして、いかにかしてそれを解きほぐして参りたいというのがわれわれの交渉のねらいでございまして、今永井さんが言われた気持をもちまして交渉に当たっておる次第でございます。  それから、後段の、十年交渉におきましていかなる時期に漁業問題が取り上げられたか、どういう形で取り上げられたかということでございますが、私が申しましたように、第六次会談で、私どもの提案に対しまして先方からの反応が一応来ておりますけれども、これは満足すべきものではございませんので、今なお念査をしておるという段階でございまして、第六次会談以前に漁業問題がどの時点でどのように取り上げられたか、一々私は記憶いたしておりませんから、それはあとで御報告をさしていただくことにいたします。
  108. 永井勝次郎

    ○永井委員 この問題は本日突然に起こった問題でありますけれども、そういう問題とこういう危険性というものがなお多く潜在しておる。日韓会談の交渉の内容には、こういった問題が、表面には出ないけれども潜在しておる。いつそれがどんな形で出るかわからない。こういう危険のある、また自主性を持った日韓会談の進め方でないところに根本の問題がある、こう考えますので、今後、日韓会談ついては、十分この事例に見ましても反省して、再出発の気持で出かけていただきたいと存じます。ただ、新聞で見ますと、日韓会談については分科会を設けてこれからさらに促進をする運びである、こういうようなことが新聞に見えているわけでありますが、今後における日韓会談の運びについて・どのようなスケジュールでお運びになるのか、お示しを願いたいと思います。
  109. 大平正芳

    大平国務大臣 各懸案ごとに分科会を設けまして、問題を煮詰めて参って、煮詰まらぬものは予備交渉に上げて解決するということでございます。その過程がいつごろまでどういう形で続くかということは、私も今にわかに逆賭できませんけれども、私どもは、じみちに各懸案の具体に即して煮詰めて参るという努力をここ当分続けて参るつもりでございます。
  110. 永井勝次郎

    ○永井委員 外交の問題については、どうか自主性を持って、両国国民の長期にわたる親善友好がこの会談を通して親密に結ばれるように、そうして、そのために必要ないろいろな手続そのほかの会談等々は、決して遠慮することなく十分に意を尽くしてやっていただきたい。ほかの方のいろいろな関係に気を配ったり、問題の解決というものはあと回しにしても会談さえ促進すればいいんだ、問題はあとでゆるゆるやろう、こういうようなことだけは断じてやめていただきたいことを警告いたしまして、日韓の本日起こりましたこの不幸な事件につきましては、後日またあらためてわが党の方から追及をいたすこととして、本日はこの程度にとどめておきたいと存じます。  ついででありますから、私は外務大臣にお尋ねいたしますが、安全操業の問題は、北洋においてもずっと続けられておるわけであります。拿捕され、抑留されておる漁民の非常な困窮の状態もおわかりの通りであります。しかし、この問題は、日本が領土権を主張するだけでは解決はしないのでありまして、基本は、両国の国交正常化が先決であると思うが、どういうふうにお考えになっているか。そういう両国の国交正常化ということを抜きにして、何か民間ベースで話し合いすればそういう問題が解決できるような、そういう期待があるのかどうか。最近、開発庁の小西政務次官が、何かおれが引き受けたというようなことで、現地の漁民が大挙上京して、さあソ連の大使に会わして交渉してくれと言ったら、小西政務次官は雲をかすみと逃げて、どこへ行ったんだかわからないというようなことで、せっかく上京した者が戸惑っていたというような話もあるのでありますが、一体、こういう政府の機関にある者が、民間ベースでというようなことで個人的にそういうことをやっておられるのは、外務大臣の方に何か連絡があるのかどうか。そして、この北洋における安全操業に対して、今まで政府はどのような努力を重ねてきたのか、そして、今後どのように努力をされるのか、ここらについてお示しを願いたい。
  111. 大平正芳

    大平国務大臣 昭和三十二年の八月に日本側からソ連側に対しまして暫定協定案を提示いたしまして、交渉してきておるわけでございます。これは、先方側の立場は、北方領土の問題を片づけて平和条約を結ばなければ交渉に応じない、日本が平和条約の締結の用意を示さない限り本件審議に応じられないということでございますが、私どもといたしましては、この海域における漁業者が零細な漁民でございますし、また千島からの引揚者等からなっておりますので、人道的な立場から、この水域における零細漁民のコンブ、帆立貝等の採取を一定の条件のもとに認めてもらいたい。すなわち、北緯四十三度と四十八度との間の海域で四十トン未満の船については安全操業を認めてもらいたいという案を骨子といたしまして交渉を続けて参ってきておるわけでありますが、先方の態度は、今申しましたように、平和条約の締結の用意がない限り応じられないということで今日に至っております。  これまでのところ、政府は、ソ連に日本漁船が拿捕された場合に、必要に応じてそのつど、あるいはまとめて捕獲船の返還要求、抑留船員の即時釈放を厳重に申し入れてきておりまして、同時に漁船損害補償法に基づく特殊保険制度の活用もはかり、抑留者家族に見舞金を交付しておるわけでございます。問題は、今御指摘のように平和条約を結び得る状態にあるかどうかということでございますが、私どもといたしましては、外交演説にも申し上げました通り、北方領土に対する国民の悲願というものは、これを体してやらなければなりませんので、これを安易に妥協するという態度は絶対とり得ないことでございます。しかしながら、一方この海域の零細漁民のことも考えなければなりませんので、水産庁当局等が主体になりまして、代替コンブ漁場の造成とか、あるいは他の漁業への転換というようなことにつきましていろいろ措置をしておることは、永井さん御承知通りでございますし、また先般つくりました北方協会等からの資金の貸付等につきましても配慮いたしておることは、御案内通りであります。根本的な解決というものは平和条約に一切がかかっておるということになりますと、私どもといたしましては、われわれの願望がいれられない限りそういうことが望めませんので、次善の策として、今申したような措置を鋭意講じておるという状態でございます。
  112. 永井勝次郎

    ○永井委員 小西次官の動きは。
  113. 大平正芳

    大平国務大臣 それは私ども関知いたしておりません。
  114. 永井勝次郎

    ○永井委員 時間もありませんので、日韓、北洋における安全操業の問題はその程度として、農林大臣に日ソ漁業の問題についてお尋ねいたしたいと思います。  第七回の日ソ漁業交渉は、本年東京で開く予定になっておるわけでありますが、これはいつから始められる予定でありますか、本年の主要な議題は何であるか、伺いたい。
  115. 重政誠之

    重政国務大臣 三月から開かれる予定になっております。主要な議題は、例年の通りに北方水域におけるサケ、マスの漁獲の問題についてであります。
  116. 永井勝次郎

    ○永井委員 漁獲量については、昨年大体上限、下限の幅で大筋は決定しておるのであって、本年は漁獲量の交渉といってもそう大きな問題はないではないかと思うのでありますが、あるとすればプラス一〇%の可能性がある、この点についての交渉であると思うのでありますが、いかがでありますか。そして、それであるとするならば・一〇%のプラスについて農林大臣はどのような立場でこれを主張し、貫徹されるお考えであるか。
  117. 重政誠之

    重政国務大臣 御承知通りにA地区とB地区とに分かれておりまして、A地区の方は、やはり年々これは漁獲量を交渉することになっております。B地区の方は、ただいまお述べになりましたように、一割限度におきまして増減をする、こういうことになっております。確定をしておりますのは操業の時期でありまして、従来は、漁獲量その他規制問題について話がつかないので出漁することができなかったのでありますが、今年はそれにかかわらず、話がつくつかぬにかかわらず、一定の時期には船を出漁してよろしいということになっております。そういうわけであります。
  118. 永井勝次郎

    ○永井委員 漁業条約によって領海内はこの条約の対象外である、こういうふうにわれわれ了解しておる。ところが、昨年河野大臣が行って取りきめて参りましたB区域におけるこれらの問題は非常にあいまいである。わが方は、ソ連の沿岸については、領海内については交渉の対象から省いておる。わが方だけがこの約条の対象として漁獲量の中に含める、こういう片ちんばな、へんぱな適用になっておると思うのでありますが、漁業条約通り、領海はこの対象外として省く、こういうことが必要であろうと思うのです。その現状における状態はどうなっておるのか。それから、その領海はわが方の自主権でありますから、これはほかの国の干渉を許さない性質のものであろうと思う。この点について明確にする必要があると思う。
  119. 重政誠之

    重政国務大臣 沿岸から何マイル先を領海とするかということは、日本側の主張とソ連側の主張と異なっておりますので、やはり今お述べになりましたような紛淆を来たしておる区域があるかと思うのでありますが、一応私どもといたしましては、昨年締結をせられました漁業協定を基本として交渉をしていく、こういう考えでおるわけであります。
  120. 永井勝次郎

    ○永井委員 それはいいのですが、現在の実行の両国合意の条件というのはどうなっておるのか、そうしてそれに対して農林大臣はどのように対処されようとしておるのか、その点を明確にしていただきたいと思う。
  121. 重政誠之

    重政国務大臣 これは、これから始まらんとするわけでありますから、どういう方針でやるかと言われてもちょっと……。
  122. 永井勝次郎

    ○永井委員 いや、現状はどうなっておるのかということですよ。
  123. 重政誠之

    重政国務大臣 現状は、今私書類を持っておりませんからあれでありますが、たしかA地区が六万トンであったと思いますが、あるいは五万五千トンであったかもしれません。B地区が五万五千トンの一割……。
  124. 永井勝次郎

    ○永井委員 逆ですよ。
  125. 重政誠之

    重政国務大臣 A地区が五万五千トンでB地区が六万トンの一割、こういうのであったと思うのです。それから出漁の時期が、たしか四月か五月何日かになっておりましたが、正確なことは私数字を記憶しておりませんが、それが現状のあれであります。
  126. 永井勝次郎

    ○永井委員 領海がどうだかということがはっきりわからないのですね、今の答弁では……。日本の主張するのは何海里を主張している、向こうはどういうふうに主張している、そこでどういうふうに食い違っておるのだ、そうして現状はこうなっておるのだ・時間がかかりますから、もっと明確にお答えを願いたいと思う。
  127. 重政誠之

    重政国務大臣 これは、御承知通り日本では三海里、向こうは十二海里、こういう主張で相いれないわけであります。この領海を、日ソ両国でどこが適当であるかという話をつけておらないままにA地区、B地区を設定して、漁獲量の決定をし、操業の時期を決定しておるというのが現状だろうと思います。
  128. 永井勝次郎

    ○永井委員 そうしますと、日本の沿岸の側からいえば、わが方は三海里だ、いや、そうではない、そんな狭い地域ではない、お前の領海は十二海里だ、こういうことを主張するのですか。そうしてそのためにわが方は、今度は、ことしの会談では三海里を持ち出して、十二海里ではないのだ、こういうことを主張しようというのですか。
  129. 重政誠之

    重政国務大臣 どこまでを領海とするかということについての協定はいたしておりません。その協定をしないままで現在の漁業協定ができておるわけでありますから、その領海問題を片づけるような考えは持っておりません。
  130. 永井勝次郎

    ○永井委員 領海問題を片づける片づけないは、それはいろいろ国際法上問題はあるでしょうけれども、漁獲量がB地域六万トンとすれば、沿岸三海里とすれば、三海里以内における漁獲量というものはこの計算に入らなくていいのです。入れるべきでないのです。もし十二海里とするなら、十二海里の漁獲量は、日本の領土ですから、これはこの条約の対象とすべきではないことは明らかであります。でありますから、これは不明確であっても、漁獲量にはずいぶん影響するので、沿岸でとれたものが全部B区域における制限漁獲量の中に計算されるということは、われわれの方から言えば心外な事態である、こう思うのです。その点を明確にせよと言うのです。
  131. 重政誠之

    重政国務大臣 A地区、B地区は、昨年もはっきり海域をきめておるわけでありますから、それによってやるよりほかないと思うのですが、今の沿岸問題で、つまりB地区外を多くしてこっちがよけいとろうというようなことを、今どうするというふうにはちょっと申し上げかねるのですが……。
  132. 永井勝次郎

    ○永井委員 農林大臣、私の質問を正確に理解して答弁していただきたいと思うのですが、A区域、B区域の区分が明確にあることは、これは北緯四十五度をもって以北と以南できめているのですから、これははっきりしているのです。B地区は以南なんです。そうしてB区域の中には、沿岸三海里が日本の領海だという主張もありましょう、あるいは十二海里だという主張もありましょうが、その沿岸は、この漁獲量六万トンの対象にはすべきではないのだ。だから日本が主張している三海里というのは、三海里以内でとったものは検査なり、あるいは数量計算の中に入れるべきではないのだ、こう言うのです。ですから、この点をはっきりしなければわが方にとっては非常な不利ではないか、その点がB地区でははっきりしてない。河野さんはそれをあいまいにして持ち帰って、A区域の母船の漁場の漁獲量を確保するために沿岸漁民を犠牲にしている、こういう不満と不平が非常に大きい。そういうことは歴史的にはっきりしているのです。たとえばオホーツクというあの大海域をぽんとぶん投げて、そうして一万トンか一万五千トンの母船の漁獲量を確保するために、あそこの漁場をぶん投げてしまった。こういう歴史もある。それはその地域が沿岸漁民、流し網業者の地域であるから、母船の漁獲量を確保するためにそういうことをやってきた。さらに、去年行って、沿岸のなにをあいまいにして、そうして日本の独立しておる領海内のものまで、六万トンになったということで、六万トンなのかそうでないのかあいまいな中に、昨年は全部これは検査の対象にされておるのであります。それをことしは明確にすべきである、こう言うのです。
  133. 重政誠之

    重政国務大臣 御指摘の御趣旨はよくわかっておるのです。わかっておるのですが、私は今そのB地区になっておる具体的の地図の持ち合わせがないものですから、それではっきり永井さんの言われるように、沿岸三海里以内にその地区が入っておるかどうかということが明確でないのです。それが明確でないからちょっとはっきりよう言わないのですが、それはよく検討しまして、また後ほど申し上げます。
  134. 永井勝次郎

    ○永井委員 地図をよく検討しなければわからないという問題じゃなくて、沿岸三海里はわが方の領海だということ、こんなものは地図を見なくたって、北海道の周回三海里、こんなものがわからなければどうかしている。わからないのは痴呆症患者か何かというぐらいなもので、だれでも常識で小学生でもわかることです。わからなければいいです。  そこで昨年は、これらの定めた漁獲量については両国が検査して、それを守るようにする。こういうことで取り締まりについて両国は合意をしているわけですが、昨年は第一年次だから刺激的でないようにといって、向こうの取締官がわが方の船に乗ってなにしたのですが、ことしはどういうふうになるのですか。やはり昨年と同じような取り締まり方式でおやりになるのですか、どうですか。
  135. 重政誠之

    重政国務大臣 まだそれらの点は決定をいたしておりません。
  136. 永井勝次郎

    ○永井委員 この問題は時間がありませんから、分科会でさらに詳しくしたいと思います。  ただこの際一点お伺いしておきたいと思うのでありますが、マグロ船の許可であります。これは三十七年の八月二日に、マグロ二万トンを新規許可を与えた。鮭鱒関係が百五隻、沿岸振興用が三十隻、底引きは三十隻、まき網が十五隻、既存カツオ・マグロ大型用、こういうふうにいろいろありましょう。そうしてさらに三十七年十二月二十九日に、日本海マス整理転換用としてマグロ十二隻、フィジー島関係が十二隻、沿岸振興用調整分として八隻、こういうのがなにしたのですが、これらの許可については、現地では、これはずいぶん利権的なにおいもあり、非常にいかがわしいやり方だ、こういうふうに言われておるのです。私は、これはいろいろありますが、時間がありませんから、もしなんでしたら分科会でもっと詳しくやりたいと思いますけれども、これらの問題について、どういう基準でこういうような割当がなされておるのか、しっかりした基準があるなら、それをお示し願いたい。
  137. 重政誠之

    重政国務大臣 これは一定の基準を設けて割当をいたしております。ちょうど今水産庁長官その他が、日米加の中間交渉をやっておりまして、ここへ来ておりません。実は私はあまりその方は詳しくないのです。それで、一つ後日にお譲り願いたいと思うのです。今ちょうど日米加の中間の協議会をやっておりますから……。
  138. 永井勝次郎

    ○永井委員 ただ、このマグロの許可関係で、試験用としてあいまいな許可が四隻か五隻あるというのですが、それはあるのですか、伺っておきます。
  139. 重政誠之

    重政国務大臣 私は試験用というのはちょっと記憶がございませんね。これは別の機会にまた十分一つ……。
  140. 永井勝次郎

    ○永井委員 次に、私は通産大臣に中小企業の諸問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  政府は、中小企業基本法をこの国会に提出し、さらに関連法案を幾つかこの国会に出しております。その意味においては、本年の商工委員会は中小企業デーである、こう言ってもよかろうと思うのであります。そこでこういうふうな中小企業の問題をとにもかくにも立法化し、さらに経済的な措置としていろいろ考えていかなければならないという事態になって参りました背景の問題について、大臣はどのようにお考えになっているか。そして少なくとも中小企業でありますから、大企業に対決して中小企業の位置づけをはっきりする必要があると思うのでありますが、その関係はどうであるか。さらに内容として近代化、合理化ということがうたわれておるわけでありますが、そのためには中小企業における二重構造の解消ということが大きな問題であろうと思う。こういう関係をどのようなプロセスによって解消し、そうして将来はそういう層はどうなっていくのか、あるいは工業の関係はどうなのか、商業の関係はどうなのか、零細企業の関係はどうなのか。これはこれから質問をいたします前提条件になりますから、時間がございませんから、あまり時間をかけないで要領よく明快に一つお答えを願いたいと思います。
  141. 福田一

    ○福田国務大臣 お答えをいたします。  中小企業基本法のねらいとするところは、日本における中小企業が持っておる特異性を見ますと、そのよって来たるゆえんは、人口が非常に多いということや、あるいはまた日本が原料において乏しいということ、それからまた生活様式その他がいろいろよそと違っておったというようなことから、長い歴史の過程において今日のような形が生まれてきておるのであります。そこで、その場合において、大企業と中小企業というものの間には、いろいろの意味における差ができておりますが、特に著しい面は、やはり生産性が非常に劣っておるというところに特徴があろうかと思うのであります。この生産性が劣っておるということは、ひいては、中小企業の所得が少ないということであり、また、そこに従事する人たちの生活が十分に守られていないということに相通じてくると思うのでありまして、この生産性が乏しいということを是正していくというのが、一番根本の目的になると思うのであります。  そこで、そういう場合におきましても、中小企業といっても、中のものと、いわゆる零細企業というものとの間にはいろいろの差があることは、永井さんよく御存じの通りでございますが、まず第一には、近代化をし、あるいはまた合理化をはかっていくことによって中小企業のいわゆる大企業との格差の是正をやって、そして生産性の向上をさしていくということを根本としていかなければなりません。そうしていった場合においても、零細企業においては、なかなか今言った目的が達し得ない非常に困難な部面があるかと思われるのであります。しかしながら、そういう方向でやっていって、順次やはり零細企業も救済していくといろ方向に持っていかねばならない、かように考えておるのであります。  そこで、その格差の是正をするという場合において、どういうやり方でやるかというお話でありますが、格差の是正と言っても、一年の間に格差を是正するとか、五年の間にやってしまおうとか、なかなかそうは簡単にいくものではありません。でありますから、これは長い目で見て順次やっていくというよりほかに手がないのでありまして、一挙に格差の是正をやる工夫、方法というものはない。中小企業基本法というのは、その格差の是正の方向を打ち出していく、こういうわけに相なるかと思うのであります。そこで、その方向に従って実体法を順次整備をいたしまして、そして、これを行なっていくことによって順次格差の是正をしていくのでありますが、しかし、その格差の是正をしていくと言っても、先ほど申し上げたように、それでは何年でできるということになると、これをきめてやるというわけにはなかなかいかない。しかしながら、そういう方向づけをして絶えざる努力をしながらその格差の是正をはかり、そして格差の是正を通じて中小企業の経営者並びにそこに働いておられる労務者等の人たち所得の増進、あるいは福利施設の向上というようなものも考えていくというような方向でこの問題を取り扱っていきたい、こう考えておるわけでございます。
  142. 永井勝次郎

    ○永井委員 通産大臣のお話は、事実関係は別として、理論的な論文として書けば、これはわかります。しかし、中小企業の実態の上に立って、この実態をどういうふうに具体的に持っていくかということになると、大臣の御答弁では私は満足はできない。  それでは具体的にお伺いいたしましょう。流通分野、現在小売関係が百三十万、卸売が二十万あります。合計して百五十万。人口九千万でありますから、消費者六十人に対して一戸の割合の商店、一戸四人と仮定いたしますと、一戸の店が十五戸の消費者を対象として生きていかなければならない。こういう数の上における過度の現実がここに厳然としてあります。さらに百五十万の業者のうち、年間の売り上げ百万円以下のものが実に五〇%という数を占めております。さらに年間売り上げ一千万以上、これがわずかに五%、商業の分野におけるこういう数と、こういう零細な実情においてあるわけであります。これが慢性的に過度の競争というものの中であえいでおる実態です。これを長い時間かけてこの格差を是正して、そして安定させる。それでは具体的にどういう手を打って、予算の上ではどう、税金ではどう、金融ではどう、こうやっていけばこれがこういうふうになって、この格差が解消していく、その理論的な解明があったわけですが、その理論を実際の場におろしてどうこれを処理していくか、明快にまず一つ承りたい。今流通分野が革命のときだと言われておりますが、これがどういうふうに解消するか。大臣はそうおっしゃいますけれども、二重構造の解消の一番やりやすい方法は、零細のやつは切り捨てるのだ、これは切り捨ててしまえばなくなるのですから、二重構造はだんだんなくなっていくだろう。そういう荒療治が私は隠されておるのじゃないか、こう心配しますがゆえに、一つ具体的にお示しいただきたい。
  143. 福田一

    ○福田国務大臣 今小売業者を中心にとって御質問でございましたが、私たちは、今日のような経済が非常なスピードをもって進んでいっておることが、一つは零細企業、特にサービス業、小売業等が非常に苦難にあえいでおるゆえんであると思います。しかしながら、そういうものを切り捨てていくというような考え方というものは毛頭持っておりません。また、切り捨てべきものでもないと思うので、これは、私は、永井さんがどういう意味で切わ捨てろとおっしゃっているか——切り捨てろというんじゃない、捨てることになるということをおっしゃったんだと思うのでありますが、そういうような日本の特異な経済の姿というものがまず一つあって、それにまた世界経済が大きく変貌してきておるという、これに拍車をかけるものが今ここに現われてきておりますから、何としてもこの問題をほうっておくことはできない。従って、ある一定の方向づけをもって順次これを助けていくということにしなければなりません。  そこで、小売業などについて考えますならば、やはり協業化といいますか、同業者の組合をつくって、そして金融面のあれをするとか、あるいはその場合に何らかの共同購入をするというようなものの考え方もあるでしょうし、また、同じ地域においては協業化をはかる。たとえば、今盛んにいわれているスーパーマーケット式なものをみんなが共同してやろうというような場合には、国としても大いに金融的にめんどうを見ようというような考え方もございます。また、税の面におきまして、今言ったような小さい人たちの場合においては、いわゆる各種の減税のやり方を特に考えて、そこに従事している人たちの基礎控除率を引き上げるとか、あるいはその他いろいろございますが、そういうような税制面でいろいろ考えていくこともございましょう、等々のことをやりながら、順次その格差の是正に努力をしていく。このままでほうっておいていいとは永井さんもおっしゃらないと思うのでありまして、このままでほうっておいたらなお大へんであります。そこで、少しでもそういうようなものは直していかなければいかぬ。しかし、ここで少しでもというような気持でなく、大きな方向を打ち出しておいて、そして現実にそれに合うような政策をやりながらこれを是正をしていくということが、これが中小企業基本法の目途としておるところでございます。
  144. 永井勝次郎

    ○永井委員 ただいま大臣のおっしゃるようなそういう措置をいたしますには、中小企業関係の予算があまりに少な過ぎます。大臣の夢はあまりに大きく、現実はあまりに僅少であることを嘆かざるを得ないわけでありますが、それはそれといたしまして、そういう零細な小売業者自体の中に、そういう過度の競争、そうして零細性の現実というものがある。そこへ持ってきて、政府の手の入れ方は別として、スーパーマーケットが今どんどん出てきている。中小企業庁の調査によりますと、昨年末現在スーパーマーケットは二千六百八十三ですか、あります。そのうち、年間の売り上げ三億以上が三百八十二あります。さらに今後はどんどん出てこようとする。先ほど来、業者の大会でもありましたが、セーフウエー、これがアメリカにおいて年間一兆近い売り上げがある。これがやってこようとしている。さらに年間二兆近い売り上げをもって、AアンドPが三井物産その他と提携して入ってこようとする。こういうふうに大企業がどんどん小売の業者の中に割り込む、さらに外国資本が割り込む、さらにユナイテッド・フルーツ・カンパニー、これなんかはもう世界じゅうに網を張って、そうして極東フルーツ会社というような表面百八十万くらいの資本金で、こそっとやってきますけれども、この露頭が、百八十万の日本と提携した会社のなにが、どのように伸びてくるかということは驚くべきものです。この会社は、もう気に食わなければ、爆撃機をチャーターしてその国を爆撃するようなことをやっておるわけでありますから、そういうようななにがやってくる。そこへ持ってきて、国内でも大企業が多角経営と称し、あるいは合併と称し、非常な勢いで中小企業の分野に入ってくる。私は、ただでさえ零細業者の数の多いところに、こういうふうに外国資本が入ってくる、巨大資本が入る、あるいは大企業がどんどん入ってくる、さらに花王石鹸を初め大企業は、マスコミに乗せてテレビ、ラジオ、新聞等でどんどん広告をする、そうして広告して、もうそういう有名品は店へ買いに来るんだ、だからお前のうちはその商品を置かせる倉庫がわりに使うんだ、こういうことにしてマージンをどんどん切り捨てていく。あるいはお菓子でいえば、森永のお菓子を置かなければお菓子屋さんの仲間に入れない、こういうことでお菓子を置かざるを得ない。マージンはわずかだ。現金の回収はぴしゃりとしておる。現金の回収がきちっといかなければ、リベートをよこさない。ですから、小さなところの支払いをやめてもそういうところにいく。  今商業の分野を一つとったのですが、そういうふうに、ただでさえ武力のない弱い羊の群れの中に、オオカミのようなのがどんどん入ってくる。それを野放図にほったらかしておいて、そうしてわずかスズメの涙ほどの国の予算で、二重構造を解消するんだ、小売商業を何とかちゃんとするんだ、こんなことを言ったってだれも信用しないわけなんですが、通産大臣、そういう関係をほんとうになにするというならば、経済力の乱用を、無秩序に産業秩序というものが全く破壊されて混乱しておる。こういう秩序をきちっとして、交通整理をする。そうしてまともなものはまともでやる。それぞれの中小企業の領域というものを正しくして、その中に自立している体制、環境をつくる。そうして大臣の言ったような協業、それに必要な物資、税金、こういうものを裏づけとして具体的にこれはやっていくのだ、こういうことでなければ、何かそらごとのようにわれわれには聞こえるのですが、いかがですか。
  145. 福田一

    ○福田国務大臣 永井さんのいろいろ詳しいお話、なかなかごもっともな点があるのでありますが、しかし、私は、こういう面を一つ考えていただかなければならないと思う。ということは、今のいわゆる零細企業という人たちが、一体日本の経済がどんなふうに置かれ、しかもまた、今あなたの仰せになったようないろいろの動きがあるということをどういうふうにキャッチしておるかということ、また、それに基づいてどうしようとしておるか、また、どういう気持になるかということが一番大事だと思うのでありまして、中小企業基本法でも、その中小企業者の自主的な努力というものを中心にして、これを助けて、その助けるために、国としてあるいは県として施策をやるのだということをきめておるのでありまして、中小企業者自身がぼんやりしておるのに、国の施策でもって何かやってやる、こういうのではございません。そこで、今あなたの仰せになった問題も、それにぴったり当てはまってくるのでありまして、今後のいわゆる小売業者というものは、そういうような環境的な事態、外からのいろいろの問題が起きてきておるということをよく自覚して、いわゆる共同化とかあるいは協業化というような精神をもってやってもらわなければならない。そういうことを明らかにする意味においても、またわかってもらう意味でも、中小企業基本法というものの存在価値があるのではないか、そういう方向に持っていくようにしなければいけないということをわれわれは考えておるわけなのでございます。  それから今御説がございましたが、この間も田中議員からもお話がありまして、スーパーマーケットのことについては、ここで御説明をいたしたのでありますが、私たちは手をこまぬいて海外からそういう問題がきておるのをほっておいたわけではないのでございまして、この間も、そういうこともございますので、企業局の次長を大阪の方にやりまして、二社、いわゆる三井、三菱、五綿と申しまして丸紅、東洋棉花、その他商社等に、そういうようないわゆるスーパーマーケットを外国の資本と組んでやる計画があるかどうかということを調査をさせております。これによりますと、今お話がありました、住友とセーフウェーとのいわゆる共同の仕事が一つあるように判明いたしたのでありますが、しかし、そのやり方も、セーフウェーが一兆円よそで売り上げておるかどうかは私つまびらかにいたしませんけれども、日本の重要な都市に全部支店を置いて、そしていわゆるスーパーマーケットをつくって、そこへ全部そういう品物を流してやるというのではないのでありまして、そういうようなことをしたい小売業者があった場合においては、そういうような小売業者に、いわゆる住友の方から、あるいはセーフウェーの方からでも金をある程度出してやる。そのかわり、その金を貸してもらったスーパーマーケットは、仕入れを住友からしてもらいたいというようなことを考えておる。また、スーパーマーケットはいい、いいと言いますけれども、これまたものははやりものでございまして、日本人というものは、何でもすぐはやりものに飛びつきたがるのでありますが、スーパーマーケットの経営は決して楽なものではないのでありまして、スーパーマーケットをやってつぶれたスーパーマーケットもずいぶんあるのであります。御承知のように、スーパーマーケットというのは、食料品が中心でございますが、食料品とか衣料を並べておいて、自分で金を出して、これを私は買いますといって持っていく。ところが、そういうことを申し上げますのは、はなはだ日本のためにも遺憾でありますが、外国でもつぶれておりますから、そういうことはあり得るのでありますが、よくネコババをしてどんどん持っていってしまう、金は入れない、物は持っていく、そういうところがある。いわゆる道徳的によく訓練された国では、スーパーマーケットはうまくいくのでありますが、私は日本も道徳的に相当訓練されているとは思いますけれども、はたしてうまくいくものかどうか、これの保存の方法その他についても、いろいろここにはスーパーマーケット経営のむずかしさがあります。そういうことを知らないで、スーパーマーケットという名前だけやれば売れてもうかる、こういうふうに考えるのもどうかと思います。しかし、今あなたのおっしゃったようなことは、われわれとしては注意しなければなりませんから、今後十分に注意して参る。と同時に、今言いましたように、行政指導なんかで全然できないじゃないかとあるいは言われるかもしれませんけれども、何といったって住友というような大きな会社がやるような場合におきましては、われわれがそういう会社に対してそれまではやらぬでもらいたいというのに、その会社がやるということになれば、われわれとしても、またほかに何らかの考える面もあり得るわけでありまして、これはある程度われわれと協調してやっていってくれるものだ、こう考えているわけでございますので、一つ御了承願いたいと思います。
  146. 永井勝次郎

    ○永井委員 スーパーマーケットの将来性の問題、また評価は別といたしまして、私は、日本の小売業は大きく革命をしなければいけないと思うのです。旧態依然で、これじゃもう今の流通過程における役割を果たせないと思うのです。それはもう「流通革命」という本もごらんになって御存じだと思いますから、釈迦に説法はいたしません。もう国民の生活は、一年を単位にした生活から月を単位にした生活に、月を単位にした生活から一週間を単位にした生活に、こういうふうにスピーディに生活の内容が変わってきている。それに小売商は、こんなに十五軒に一軒の割合で商店が軒を連ねて、今のような安穏な生活なんかできるものじゃない。ですから、これは大きく変わるのはあたりまえだし、スーパーマーケットが伸びてくるのはあたりまえだ。ただ、それをだれがやるかということです。私は、小売業者自身の共同化によってやるべきで、大企業に食い荒らさすべきじゃない、こう思うのであります。そしてまた、中小企業の問題については、アメリカは基準が違うでしょうけれども、登録制によって四割は中小企業、六割は大企業、そしてこの四割の中小企業はどうかというと、いざ戦争という場合には民需を担当する、大企業は一〇〇%軍需を担当する、こういう任務を持って、平素もやり、いざという場合にはそういうふうに切りかえをやる。こういうふうに任務を与えて、そうして張り合いのある仕事をやらしておる。でありますから、大蔵大臣、あなたも非常に中小企業に理解もあり、予算もこれからうんと出してもらわなければならないのですから、聞いておいていただきたい。日本の官公需を中小企業に与えなければならないと宣言的な法律をつくって、あとは知らぬ顔です。アメリカは、そういう法律があったらそれをどう実行するかということです。たとえばここに一つの本を入札する。こういったら、大企業は八十五ドルで納めます、中小企業はこれは百ドルかかります、中小企業の方が一冊について十五ドル高いのです。高くても、政府はその必要量の半分は中小企業に、高い方に百ドルで引き受けさせます。あとの半分については、中小企業に対して、大企業が八十五ドルで納めるのに、お前のところは百ドルだ、十五ドルの開きがある、この十五ドルを何とか縮められないか、こういって、企業はコストの内容に入って、運賃をまけてもらえばこれだけできる、あるいは金融の関係でこうしてもらえばこれだけ安くできる、こういうことで、あらゆる政府の尽くし得る措置を講じて、そうして八十五ドルに引き下げて、八十五ドルであとの半分は引き取るようにする、いろんな援助の措置はする、もしそういう措置ができない場合に、初めて大企業にその半分をやる、これだけの手続とこれだけの愛情のある措置、これだけの行き届いた措置をして、中小企業はきちっとしている。ところが、大臣のように、スーパーマーケットはどうだなんて肩をいからしてやっていったって、これはだめなんです。ですから、具体的にそういうものがあったらそういうふうにやらなければいかぬ。  そこで、大蔵大臣、中小企業の関係の予算が、これほど重要な、九八、九%——いざ戦争というときに、戦争と言うたらなんですが、いざという場合、国民の生活に密着している、それから景気変動にも即応できる。大企業のように、ちょっと不景気になると、生産過剰だ、政府に助けてくれと泣き言を言うような、みみっちい業態ではない、しんぼう強い中小企業だと思うのですが、ここに金融の面、税制の面、それから政府の発注、そういう面において、もっともっと大蔵省が積極的に本気でやれば、私は、中小企業庁関係にも予算をもっとふやせるし、中小企業が自主独立できるような力が与えられる、こう思うのですが、その点についていかがでありますか。
  147. 田中武夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  予算説明書にも書いてございますが、中小企業の一般会計の歳出は百十八億円でありますから、昭和三十七年より二八・二%ぐらいふえております。それに財政投融資計画で千三百十四億円の中小三公庫の資金量の手当をいたしてございます。そのほか、先ほど申し上げたスーパーマーケットの問題につきましても、中小企業高度化資金融通特別会計制度を作ったり、また、その後の問題に対しては、現在あります法律、小売商業調整特別措置法でありますか、こういうものによって、新しい中小企業の協業化や外国資本との提携によるスーパーマーケット等に対しての企業診断、企業指導、その他の措置はとっております。なお、税制改正においても、御承知の中小企業に対する諸般の減税措置を行なおうということで考えておる次第であります。  しかし、いかにしても、御承知通り、中小企業はたくさんな数でありますし、中小企業に対して過去歴代内閣も諸般の政策を進めておりますが、新しい経済分野を考えますときに、中小企業に対して抜本的対策を立てて強力に進めていかなければならないということは、お説の通りであります。私も、三十八年度予算編成に際しては、中小企業の重点的な予算配慮に対しては相当考えたつもりでございますし、特に政府三機関だけではなく、日銀を通じて中小企業を担当しておる金融機関に対する資金供給の道を開くこと、及び買いオペレーションを日銀が行なう場合も、なお政府が国庫余裕金をもって中小企業向けの原資調達についても、各般な角度から十分の配慮をいたしたい、このように考えておるわけであります。
  148. 永井勝次郎

    ○永井委員 私が寡聞であるかもしれませんが、知れる限りにおいては、田中大蔵大臣は相当歯切れのよいそろばん玉をはじいたと思うのであります。それにしては、ことしの予算の中の家族専従者控除に対するそろばん玉のはじき方はあまりにみみっちいのではないか、こう思うのです。青色申告における二十才以上、これがわずか五千円、それから二十才未満も五千円、こういうふうに専従控除に対する——全体として物価が上がり、そうして所得がふえてきているのですから、去年と同じ実収であっても、名目所得はふえていくわけです。そうすると、かからなかったところの層へどんどん新しくかかっていくのですから、もっと税金というものは底上げをしなくてはならぬ。ところが、租税特別措置法はがんとしてあって、年間二千億からの減税をやっておるのに、こういう零細なところを、一万円の答申に対して五千円というのは、これはみみっちいと思うのです。われわれがもう少し力があって、予算委員会で修正すればとにかく、そうでなければ、これが通るでしょう。この中小企業を税の上から、金利の上から、あるいは予算の上から、ほんとうに何とかしなければならないという実態は、ばかでもわかると思うのです。そういう点について、ことしの税金に対する所感を一つ承りたい。
  149. 田中武夫

    田中国務大臣 中小企業につきましては、金融措置、金利の問題、それから税制上の問題等、各般の施策を行なわなければならぬことは、御説の通りでございます。なお、中小企業の将来というものは、現在のような日本の古い歴史と伝統を持つ中小企業の姿だけではいけないであろうということも、御説の通りでございまして、中小企業には必要な金を必要な状態において出すというだけではなく、新しい体制に対応しての中小企業の育成強化という面に対しても、政府が施策を行なわなければならないということも重大であります。その意味において、今度の税制の問題に対して、非常に御理解ある御発言をいただきましてありがたいわけでありますが、政策減税的な面を考慮いたしますときも、中小企業というものの将来に対してどうあるべきかという問題に対しては、大蔵省内においても真剣に検討いたしております。なお、地方税の問題に対しても、将来の中小企業、農業等に関してどうあるべきかということに対しても根本的に考えておりますが、御承知の、ことしからちょうど三年間を目標にしまして、内閣の税制調査会において、日本の産業に対して考えなければならない税制の改正等を諮問をいたしておりますので、今年度においては、永井さんの言われた通り御注文もあると思いますが、来年、来々年というような長期的な見通しにおいて、中小企業の育成に対しても、抜本的な税制のあり方等も配慮いたして参りたい、このように考えます。
  150. 永井勝次郎

    ○永井委員 あと砂糖の問題と肥料の問題について、大蔵大臣、通産大臣にいろいろ伺いたいと思うのです。  そこで、時間がなくなってきましたから、一つだけ、中小企業基本法に関連して、特定産業の国際競争力強化に関する法案、こういう法案ができることになっている。その特定産業の指定は、法律でなく、政令でやるというような便法により、独禁法に穴をあけるという、こういう問題があるのですが、これに対して、この法案の内容とかそういうことの説明は要らない。とにかく中小企業が、今商業分野だけ言ったのですが、下請関係から、零細の関係から、これは金がもうかるとかもうからないとかの問題じゃないのです。中小企業にとっては生きるか死ぬかの問題です。大企業にとってはもうかるかもうからないかの問題です。それほど重要な問題であります。それに、大企業が勝手ほうだいなことができるように、こういう産業秩序を乱す、経済力乱用の条件を整備しようということは、われわれどうも納得いかないのですが、この問題について通産大臣から、独禁法に穴をあけるという点についてどうお考えになるか、それから公取委の委員長には、これに対して一つ性根を据えてがんばっていただきたいと思うのですが、お二人に御意見を承りたい。
  151. 福田一

    ○福田国務大臣 特定産業の国際競争力強化に関する法案というのは、ただいま関係方面と打ち合わせをいたしておる段階でございますから、政府としては、ただいま法案を提出するということは申し上げておるわけではありません。しかし、その考え方といたしまして、今永井さんの言われたのは、二つあると思うのであります。一つは、いわゆる独禁法に対して何かを改正するのじゃないかという趣旨のことと、もう一つは、そういう産業が指定された場合に、それに関係のある中小企業が非常な影響を受けるのじゃないか、こういうことであったと思うのでございます。  まず、私たちが考えておりますことは、自由化やあるいは技術の進歩等に伴いまして、日本の産業のうちには、世界の産業に伍していく上において、何としても協業化、あるいは合理化、あるいは合併その他のことをやった方がいいと思われるものもないわけではありません。そういう場合においてわれわれの考えておるのは、そういうことを業者が主張をし、そういうことを考えた場合においては、これを特定産業に指定するというような方向で今検討をいたしておると承知はいたしております。そういうようなわけでありますから、特にここで官僚統制的なものの考え方をやろうとは思いませんが、そういうようなことをして指定されたものが合併その他のことをやった場合には、独禁法の今の規定に反するというか、独禁法の規定を幾分緩和するというか、そういうような効果が起きてくるかもしれませんが、われわれとしては、独禁法というものが消費者を擁護するという建前でできておる、重大な使命を持っておると思っておりますから、独禁法自体を改正するというような意図はないのであります。今言ったような特殊な事情に対して対処する方法として、ただいま立案を考慮いたしておるという段階でございます。  なお、それが指定された暁において、そういうようなものができるというと、中小企業はもっと痛めつけられはしないか、こういうようなお話でありますが、もともと日本の中小企業は、特定産業、いわゆるそういう大企業に関係のない中小企業と、そういう大企業との下請関係にある中小企業と、またそういうような関係が半々くらいになっておるようなもの、いろいろ考えられるわけでありますが、そういう場合に、大企業に直接関連のあるものについては、これはそういう大きな企業がどんどん伸びていけば伸びていくほど、やはり中小企業はどんどん伸びていくわけでありますから……(永井委員「けっこうです」と呼ぶ)そういうわけでありまして、われわれは十分その面は考慮をいたして処置をいたしたいと思っております。
  152. 佐藤基

    ○佐藤(基)政府委員 国際競争力の強化法案につきましては、ただいま通産省と意見の調整をしておるところであります。私どもといたしましては、この法案におきまして、合併及び合理化カルテルについて、ことに大企業ともいうべき特定産業について非常に大きな例外を設けるということであります。独禁法といたしましては、お話しの通り消費者利益の保護ということが非常に重要な問題でありますので、そういう見地から、この法案というものは、公取委員会としては目下非常に慎重に検討しておるという段階であります。
  153. 永井勝次郎

    ○永井委員 中小企業の関係でもっともっと質問したいのですが、時間がありませんから、砂糖の問題に移ります。  昨年の予算委員会の分科会におきまして、三十四年、三十五年度の価格差益金三十数億円、これを三カ年に分納させるということを決定いたしました。その金をどういうふうに納めるかということについて、分科会で私は尋ねました。当時の河野農林大臣は、この金は三十四年、三十五年度における超過利潤に対する吸い上げであるから、これを三十七年、三十八年、三十九年、こういう後年度の利益の中から出さして、そうしてその中で損金に落とすようなことはいたしません、こういうことを答弁しております。そこで本年はこれをどのように取り扱ったか、農林大臣からお示しを願いたい。
  154. 重政誠之

    重政国務大臣 数字は本年どういうふうになっておるかわかりませんが、お話のように三カ年に分納することにしまして、そうして管理会という社団法人をつくって、そこにその金を納めて、それを内地のビートあるいはカンショというような内地の糖業振興に使う、こういうことになってやっております。
  155. 永井勝次郎

    ○永井委員 そういうことを聞いておるのじゃない。税制上どういうふうに取り扱ったかということです。
  156. 重政誠之

    重政国務大臣 税制上の取り扱いは、ちょっと政府委員から答弁させます。
  157. 中西一郎

    ○中西説明員 お答えいたします。本年一年分として約三億円が大臣の申し上げた甘味資源資金管理会に提出されております。その分は損金算入として取り扱われております。
  158. 永井勝次郎

    ○永井委員 いや、三億は損金算入というけれども、三十七年度に三十数億の金を納める分があるでしょう。その全部を税制上どういうふうに扱ったか。昨年のはっきりした大臣の約束なんですからね、損金に落とさないという。損金に落とすと、三十何億納めたといったって、半分は税金なんですから、実質的には十何億より納めないということなんです。こんなうまい話はない。七十何億あった差益金がだんだん削られて三十何億になり、三十何億を後年度の利益の中から出していく、そしてその半分は損金に落とされる。こんなばかな、消費者や国民をなめた話はないと思う。これは三億だけでなしに、どういうふうに扱ったか、明確にお答え願いたい。
  159. 中西一郎

    ○中西説明員 ただいままでの経過は先ほど申し上げた通りであります。将来につきましては、若干事務的な検討を必要とする点もありますので、将来に向かってはなお大蔵省と懸案になって、現在に至っておるわけでございます。
  160. 永井勝次郎

    ○永井委員 中西部長はなかなか苦しい立場だと思うのですが、去年分科会であなたが答弁しておるところを、河野農林大臣がちょっとと言って話をとって、僕がそこを追及したら、いやそれは損金に落とさないのだ、こうはっきり言ったのです。重政農林大臣なら、本会議の失言を取り消すことがあ・るかもしれませんけれども、河野実力大臣が言ったことで取り消すなんということは、私は認められない。これはさらにこれからまだやるのなら再確認して、明確にこの事を運んでいただきたい。私たちもそれを監視しておる、こういう立場において問題の進行を見守りたいと思います。  そこで経企長官に伺いたいのですが、最近砂糖の小売値段が一キロについて五円ぐらい上がっています。それからミカンのカン詰なんか、最近までは百円でミカン買えたのが、今は二カンより買えない。一カンはもう値上がりしている、こういう実情ですが、砂糖なんかどうして上がったのか。物価は押えるのだ、消費価格は押えるのだと国民に言っておる片端から、こういうふうにものすごい値上がりをするのですが、時間がありませんから、あまり時間をかけないで明確にお答え願いたい。
  161. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、根本的には国際的な糖価がやはり五セント八〇というように倍以上になっております。これがおそらく気分的に反映したものと、それから砂糖の自由化についての政府政策をめぐっての気迷いと、一般的な菓子製造、くだものカン詰用の需要の増大、その辺が原因だと思います。
  162. 永井勝次郎

    ○永井委員 長官はそういうふうに答えるだろうと思っておったらその通り答えた。私は去年まで砂糖の国際価格がこんなに値下がりしておるのに、砂糖が有史以来これだけ下がることがないほど、二セント幾らというほどまで下がっているのに、なぜ国内の砂糖の価格は下がらないのか、国内価格はなぜこんなに硬直しておるのかと聞いたら、当時の大臣は河野農林大臣でしたか、砂糖の仕入れは二年くらい前に仕入れてそれがくるのだから、今の値下がりは今の輸入価格には直接に反映してない、こう言ったんですよ。今の五セント幾らというのは去年の十二月からでしょう。十二月輸入したやつがもう日本の国内の市場に回っているのですか。こういうその場その場の出まかせは私は許せぬと思う。何年も前に、下がるときはちっとも下がらない、上がるときはぴーんと、そうでなくても消費税から、関税から、一キロについて六十二円五十銭というようなひどい税金をわれわれはなめさせられておる。そこに持ってきて政治献金か何かわからないけれども、国内のビート増産なんかひどいものですよ。私は時間があればこれからもっと農林大臣に明確にしてもらいたいと思う。これはかかり放題です。本別に新設した工場なんかトン幾らの値段になっておりますか、おそらく、あそこは八億ぐらいの赤字を出しているんだろう。こう思うのですが、それを政府が買い上げる。一キロについて六十二円五十銭もの税金を払わせた上、ボロもうけをした上にさらにあっちのしくじり、こっちのボロ、こういうものを全部寄せ集めて消費者にぶっかけて、そうして世界がうんと値下がりしてもそんなものは全然国内に響かない、そうして貿易自由化だ、砂糖の自由化だ、国産ビートの何だ、暖地ビートの何だ、何をたわごとを言っているのかとわれわれ消費者は憤慨にたえない。よそのところで、われわれと関係ないところで、経済の条件と違ったベースで問題を処理しておる。これは断じて許せないと思う。長官、一キロで一円違えば百五十万トンで十五億違うのですよ。五円違ったら七十何億というものはボロもうけなんですよ。こんなボロもうけを黙って見過ごすという、こういう放らつな、無責任な政治というものは断じてないと私は思う。  そこで農林大臣、私は貿易自由化の問題については、農林大臣就任以来一番先にお話した。ところが自由化しない、大した息込みで新聞発表されておる。その後総理から言われてしぶしぶですか、やっておるのですが、一体自由化の問題と、国内のビートの問題と、農林大臣はどのように考えておるか、どういうふうに関連さして考えておるか、もし考えているならば——そういうものを国産ビートを増産するにはいろいろの国の施策が必要です。これは認めます。施策は必要でありますけれども、でたらめな、野放図な、このような国内ビートの生産の態勢をそのままにしておいて、そうして足りないところは大蔵省から金を引き出そう、そんなことを言っても世間は通るものではない。その国の予算を要求する前に、これ以上合理化の条件は今ないのだというほど合理化の、あるいは合理的経営の基礎固めをして、その足りない分を要求する、こういうまじめな態度でなければいけないと思うのですが、今国内のビートの増産体制はどうなっているか、そうして国際情勢からもし自由化するというなら、今一番都合のいいときじゃないですか。どうお考えですか。
  163. 重政誠之

    重政国務大臣 本来ならば、御承知通り国際糖価に従って内地の糖価が上下するというのが、私は本来の姿であると思うのであります。ところが、御承知通りに、これは澱粉、従ってカンショ、バレイショ、それから国内のビート、そういうものにみんな影響がありますから、これらを保護するために、御承知通り政府は一キロ百二十一円という値段を出して、そうして大体それを糖価の基準としてやって参っておったのであります。ところが、先ほど長官の話の通りに、三セント余り、時には三セントをくぐるような国際相場であったものが、今日では五セント八〇にもなっておるというのでありますから、そこで最近糖価が上がったわけです。しかし、これはそういうふうに非常に暴騰したから、その値段に比例して上がっておるかというと、そうでもないのです。御承知通りに、現在私の聞いておるところでは、高い糖価で輸入をしたものと安値で約束をしておったものがきているのが、大体半々くらいにきておるという話でありますが、ともあれそういうようなことであります。そこで、この自由化の問題は、私は自由化をできるだけ実行することは適切であると考えておる。ただ国内の甘味資源を十分に保護する態勢を整えて、しかる後に自由化をするのが適切である、こういうふうに考えておるわけであります。  そこで、北海道のビートについていろいろの御指摘がございましたが、私はまじめにやっておるのです。今の本別の大日本工場というものが非常に原料が不足であるということも承知しております。けれども、政府の買い上げは、法律にありますから買い上げるのでありますが、しかしこれは、現実の原料不足による採算によって買うものではないのであります。やはり一定の政府の標準によって買い上げるのでありますから、損は損としてやはり残るのがあるだろうと私は思うのです。いずれにいたしましても原料を供給することが第一でありますから、三十八年度予算にも計上しておりますように、土地改良その他生産合理化を真剣にやる、こういう建前で、たしか二十億前後のものを要求いたしておると思うのであります。生産を増強して原料をふやす、こういうことを第一義といたしましておるわけであります。さらに自由化するにつきましては、政府の買い上げでありますとか、あるいはタリフ・クォータ・システムの採用、あるいは緊急関税の運用、さらに非常に国際糖価が下がるというような場合には、消費税を関税に振りかえるというような措置もとらなければならぬと考えておるのであります。
  164. 塚原俊郎

    塚原委員長 永井君に申し上げますが、申し合わせの時間がだいぶ経過いたしました。十二分過ぎておりますので、結論をお急ぎ願いたいと思います。
  165. 永井勝次郎

    ○永井委員 北海道のビート工場の新設につきましては、私はこの委員会だけではありません。私ばかりでなく、私の同僚がもう何年も前から、政府のやっていることはでたらめだよ、利権でいろいろやっているのかもしれないけれども、少なくともビート増産の常識からは飛び離れたでたらめなやり方をしている、言ってみれば精神分裂症の大臣のやる仕事だ、われわれはそういうように言い続けてきたわけです。そうして去年工場を新設するにあたりましても、今でも原料が不足なのに、二工場を新設したら全体がマイナスになってしまうということを、幾たび注意したか知れない。そのときに、速記録で見たらわかるが、原料は心配ないということを河野農林大臣は言っておるのですよ。原料については心配ない。自民党の田道議員が、原料はどうなんだと質問したら、原料は心配ない——心配ない原料が、二工場つくった結果全体として全部が赤字でしょう。ないところに寄せ集めるから。そうして一つの工場は七億から八億、こういうものが赤字。全体が赤字だ。そうして、もしも世界の国際的な水準である一工場二十四万トン生産基準でこれをやりますならば、現在の生産価格よりもキロ当たり二十円のコスト切り下げができる。大臣、こんなことはばかでもわかるのですよ。あの国際水準の何からこれはちゃんと出ている。今の工場をもっと整理して二十四万トン生産の工場にすれば、一キロについて二十円のコスト・ダウンができる。それをわざわざ工場だけふやして、ちょっぴりちょっぴりと、操業度が八〇%か、あるいは本別の工場なんかは五〇%以下でしょう。そういう操業度をもって、そうしてコストの高い物をつくって、その資料で、こういう状態だから保護がなければだめなんだ、自由化ができない。どこにそういう不まじめな——まじめにやっていても、主観的なまじめと客観的なまじめの評価がありますよ。本人がどんなにまじめだって、やっていることがばかみたいなことなら、これはやっていないと言わざるを得ない。私はもう少しまじめにやらなければいかぬと思う。原料の増産というけれども、原料の増産はどうですか。計画では、三十八年度は三十七年度に比べて実に四七%の増産計画です。そんな飛躍的な増産がどうしてできますか。そういう架空な数字に基づいて工場だけふやしておる。その結末が現在の国産ビートの現状です。さらに輸入関係はどうですか。粗糖の割当を生産能力という架空な設備に対してこう割り当てたものだから、みんなが工場を拡張して、今輸入砂糖の関係では、工場操業度は五〇何%でしょう。六〇%までいかないでしょう。半分ぐらいが遊んでおる。こういう不経済なことをして、その上に世界相場の動きを知らぬ顔しながら、一年間に輸入業者は、少なくもここ二、三年は百億以上、価格差だけでぼろもうけしている。それを、何だかんだといって、二年分過ぎてしまってから、超過利潤の吸い上げだというような査定をしながら、お茶を濁している。いろいろな物資について、超過利潤があるからといって、法律をつくっておるでしょう、特定物資について。コンニャク玉までその対象にしておるでしょう。なぜこの天下衆知の砂糖に対して、成規の手続によってその利潤を吸い上げないか。また国産ビートについては、日甜一社に対して法律をつくって、年間三億何千万というものを吸い上げておるでしょう。それほど行き届いた何をするならば、なぜ輸入糖のこの膨大な超過利潤に対して、法的措置を講じ、あるいは行政的措置によって、もっと国民が納得できるような措置をやらないか。私は、この貿易自由化の問題、ビートの問題あるいは一切の澱粉だとかブドウ糖とか、こんなちょっぴりしたことに名をかりて、そうして膨大な関税と消費税とで一千億近くの税金をあげておる。これは何のために使っていますか。こういうひどい砂糖行政というものは、将来砂糖の残酷物語として出てくるでしょうし、どこの新聞でも、どこの雑誌でも、利権でぷんぷんしている、これが表ざたになったら内閣なんかふっとんでしまうと、これほど言われておる。これだけ天下公知で、これだけ言われておるのに——もう少し常識を持った砂糖行政の統制、糖業政策というものを確立することが必要である。それが今日、消費者が高い税金を払わされていることに対する責任ある態度だと思うのです。生産農民が原料をふやすんだふやすんだと言いながら、どうですか、八年間据え置きされて、そして去年なんかスズメの涙ほどより値上げをしない。それもあっちこっち持って回って、知らん顔の半兵衛、こういう無責任なことで増産なんかできるもんじゃない。一括して答弁を願いたい。  さらに肥料なんか、二十九年から法律をつくってやったでしょう。そうして肥料関係の法律では硫安だけを対象にしている。硫安はどうかというと、昭和二十九年に二百何十万トンの生産だ。現在は硫安はずっと減っているのです。そうしてふえたのは何かというと高度化成でしょう。尿素でしょう。違ったものがぐっとふくれているのです。ところが今でも硫安だ硫安だと言って硫安に名を借りて、そうして膨大な金をこちらに注ぎ込もうとしている。仕事をやって、そうして法律の結果として出たものではなく、また政府の行政の結果として出たものではなくて、合理化を国際的な水準で追求しなかった。最初はコッパース方式でやればそれがコスト・ダウンだ、その次は流体原料でなければだめだと言った。もうそんな時代じゃございません。世界は廃ガス利用の段階までいっている。それを廃ガスは利用させないで、そういう旧式な中で採算のとれるような方法にして、量産だけやって、国内市場価格を守るために外国へダンピングして、そのしりぬぐいを今赤字という名において国民に負担させようとしている。砂糖の問題、肥料の問題一つにしたって、これは実にひど過ぎるやり方だと私は思う。この内容はよくわかっているのですから、私は農林大臣から砂糖の問題、肥料の問題、一括して御答弁を願いたい。それから肥料の問題については、あとで通産大臣からも御答弁願いたい。
  166. 重政誠之

    重政国務大臣 砂糖の問題につきましては、私は貿易自由化に即応して、いろいろの政策の実現を今はかりつつあるわけでありますが、これを機会にお話の通りにすっきりした糖業政策を私は樹立いたしたい、こう念願をいたしておる次第であります。  それから、北海道の工場とビートの生産関連につきましては、計画に従って工場が増設をせられ、生産の体制がその計画を実行するのに対応していかなかったというところに原因があると思うのであります。そこで、先ほども申しました通り、私は計画計画といたしまして、真に実行できる生産量というものを検討をしなければならぬ。そうしてこれに全力を注いで、生産の増強をやって、計画にできるだけ沿うように持っていく、計画に沿うように原料の生産ができるまでは、将来工場の増設ということは待ってもらう。私はこういう決心をいたしておるわけであります。さらには、この工場が九つか十かあるわけでありましょうが、そういうものの統合、合理化をはかっていかなければならぬ、こういうふうに考えて、その方向に進めるつもりでおるわけであります。
  167. 永井勝次郎

    ○永井委員 大臣がそう言うなら、区域指定の問題だってあまりにひど過ぎると思うのです。たとえば今年、ビートの原料を輸送した運賃の問題を言いましょう。十五トン車で本別にできた日糖なんか、ずっと二百何十キロ先のやつを運んで、これが十五トン車一車で十三万四千円かかっているのですよ。なぜこんな運賃までかかえてなにするのか。みんな交錯輸送です。それから北連が北見から新設の十勝清水工場へ一万一千九百八十円、こういうものをかけている。三千円か、あるいはトラックで運べば二千円ぐらいで輸送できるところを、遠いところから交錯輸送するから、こういうばかなことをやっている。そうして八〇%ぐらいの操業率で大赤字を出している。その負担を全部消費者にぶっかける。すっきりやるというんですから、まあお手並拝見をいたしましょう。
  168. 福田一

    ○福田国務大臣 硫安の問題について一言申し上げたいと思うのですが、永井さんのお話だと、非常に会社が合理化もやらなければ、また政府としても何も手を打たなかった、従って非常に今そういうしわ寄せがきたのを、今度は政府が援助しているのはけしからぬというお話でありますが、しかし硫安問題が起きたときには、大体日本の硫安はトン当たり六十四ドルであった、それを今日は五十二ドルまで合理化をいたしております。そうして欧州における硫安の国内平均価格は五十五ドルでありますから、欧州よりはずっと日本の硫安の方が合理化されたことは、あなたがよく御存じの通りだと思う。しかしながら、硫安につきましては、各国がダンピングをいたしますから、輸出をする場合においては、どうしても非常に原価を割るという事情が出てきております。そういうことが今日の硫安問題を大きく引き起こしたわけでありまして、当時六十四ドルであった硫安の合理化をやろうと思ったときには、大体五十二ドルまでやれば十分だという考え方で皆さん方もこれを御了承されておったわけであります。ところが、今度は海外へ輸出するときには、三十六ドルとか七ドルとかいうようなダンピングをせざるを得ないという姿になっておるところに、実は硫安問題の大きな一つの見通しの誤りがあったと思うのであります。また法律自体につきましても、バルクライン方式というものは、上の方の三社の平均をとりまして、そうして国内で使うところの硫安をできるだけ農民の方に安くするというやり方をとって参りました。従って肥料会社は、むしろ今までの形においては、農村のために大いに協力しておったとも言えるわけでありまして、その証拠には、今まで硫安会社は、五十円の株価を全部みな割っておったじゃありませんか。それはもうからないからであります。損しておったからであります。全部そういうふうに会社がもうかれば、みな株価というものは値が上がるものですが、しかしみな五十円を割る程度まできた。今日は少し回復しておりますが、これは株価一般の空気と、また今度ようやく政府が何らかの措置をとったということが一つの大きな理由になっておると思うのでございます。従って、硫安会社が非常にもうけておったとかなんとかいうことに問題があるのではなくて、非常に合理化にも努力し、政府も骨を折ってきたけれども、どうしても海外のダンピングの値段までは合理化ができなかったというところに今日の問題がある。しかも輸出につきましては、国内の価格で買って、そして今度は海外へ実際に売ったのであります。それも安く売ったということになりますから、いわゆる輸出会社に二百二十五億円の赤字が累積をしておる。もちろんこれは全部が全部実質的な赤字というわけにはいきませんが、そのうちの百二十五億円というのは、実質的な赤字であるということは明瞭であります。そこで、その百二十五億円のうちで、今まで税の措置その他によって大体五十二億円ほど措置をいたして参りましたが、まだ七十三億円ほどの赤字がございますので、今後この開発資金をつけてこれを消してしまうということにいたしますと同時に、硫安会社は、あなたが一番よくおわかりだと思いますけれども、だから、硫安はもうからないものだから、ほかの仕事をみなどんどんやり出した。今日において日本の化学工業が非常な過当競争をしておるのは、ある意味においては、硫安会社が非常にもうからないから、何とかよその仕事をやってもうけようという努力をした弊害が、またここに出てきておるとも言えるわけでありまして、パーセンテージからいっても、各会社とも全部硫安を生産する比率はどんどん下がって、だから、今専業硫安会社なんてございません。最高でも全販売価格のうちで三〇%くらいが硫安ということになっておるわけであります。もうほとんど全部が一〇%以下になっている。しかもまた、今後もこの方向をどんどん強化されていくのであります。そういうことから考えてみましても、私は、硫安会社が特に金もうけをしたとか、合理化を怠っておったとかというようなことはない、かなり努力はしたのだけれども、なかなか世界の経済市況についていけなかった、ダンピングについていけなかったということだと思うのでございます。
  169. 永井勝次郎

    ○永井委員 硫安については私はもうけているとは言いません。しかし、硫安の価格を四十三ドルに合理化して値下げしますといって約束したのはだれなのです。業者であり、政府でしょう。今五十二ドルでしょう。四十三ドルの合理化目標まで下がっていないじゃありませんか。そして、今この段階において硫安の合理化資金をここへつぎ込むのですから、今つぎ込む合理化資金というものは、四十三ドルまで値下げしますという約束の目標を追求するのですか、しないのですか。この問題は、委員長がやかましいものですから分科会であらためてすることにいたします。
  170. 塚原俊郎

    塚原委員長 次会は明十二日午前十時より開会することといたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十二分散会