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1963-02-07 第43回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月七日(木曜日)    午前十時十九分開議  出席委員    委員長 塚原 俊郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 安藤  覺君    理事 野田 卯一君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    井出一太郎君       伊藤  幟君    稻葉  修君       今松 治郎君    宇野 宗佑君       植木庚子郎君    上村千一郎君       尾関 義一君    金子 一平君       亀岡 高夫君    菅野和太郎君       櫻内 義雄君    周東 英雄君       田中伊三次君    中曽根康弘君       灘尾 弘吉君    丹羽 兵助君       羽田武嗣郎君    船田  中君       前田 義雄君    松浦周太郎君       松野 頼三君    松本 俊一君       松山千惠子君    山口 好一君       山本 猛夫君    吉田 重延君       米山 恒治君    有馬 輝武君       淡谷 悠藏君    石田 宥全君       加藤 清二君    角屋堅次郎君       川村 継義君    木原津與志君       小松  幹君    高田 富之君       滝井 義高君    堂森 芳夫君       野原  覺君    村山 喜一君       山口丈太郎君    横路 節雄君       佐々木良作君    田中幾三郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 中垣 國男君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 西村 英一君         農 林 大 臣 重政 誠之君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 小沢久太郎君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         自 治 大 臣 篠田 弘作君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 近藤 鶴代君         国 務 大 臣 志賀健次郎君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法政局長官 林  修三君         総理府総務長官 徳安 實藏君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    山本 重信君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (理財局長)  稲益  繁君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月七日  委員伊藤幟君、江崎真澄君、倉石忠雄君、小坂  善太郎君、正示啓次郎君、中曽根康弘君、丹羽  兵助君、保科善四郎君、山口好一君、山本猛夫  君、小松幹君、高田富之君、山花秀雄君及び渡  辺惣蔵辞任につき、その補欠として西村直己  君、宇野宗佑君、金子一平君、米山恒治君、前  田義雄君、尾関義一君、中村三之丞君、吉田重  延君、上村千一郎君、松山千惠子君、有馬輝武  君、村山喜一君、角屋堅次郎君、及び滝井義高  君が議長の指名委員に選任された。 同日  委員宇野宗佑君及び上村千一郎辞任につき、  その補欠として江崎真澄君及び山口好一君が議  長の指名委員に選任された。 二月七日  理事保科善四郎君同日理事辞任につき、その補  欠として安藤覺君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)  昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)  昭和三十七年度政府関係機関補正予算(機第2  号)      ————◇—————
  2. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事保科善四郎君より理事辞任いたしたい旨の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 塚原俊郎

    塚原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  つきましては、これよりその補欠選任を行ないたいと思いますが、これは委員長において指名いたすことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 塚原俊郎

    塚原委員長 御異議なしと認めます。よって、理事安藤覺君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)、昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)、昭和三十七年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  佐々木良作君。
  6. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 私は、質問に先だちまして、まず今次の雪害対策について衆参両院において三党の共同決議が行なわれ、政府もまた懸命の努力を払わんとしておられることに対しまして敬意を表するものであります。同時に、わが民社党は、その早急な対策実現のために、三十七年度予算補正によって、その財源措置をとることを要求する態度をここに明らかにいたしておきます。  昨日の山口君並びに楯君の質問に対しまして、政府は、いまだ調査の段階であること、当分は予備費でまかない得ること等を明らかにいたして、新たな補正措置をとることを否定されておるようであります。いずれは来年度予算補正でこれを補わざるを得ないのでありましょうが、のど元過ぎて雪の冷たさを忘れないように、タイムリーな措置がとられるように、重ねて財源措置早急実現をまず要望いたしておきたいと存じます。  質問に入りますが、けさの各新聞は、IMF理事会が、昨日、日本に対するいわゆる八条国移行勧告の採決を行なったことを報じておりまするが、これに対する政府態度をこの際なるべく具体的に明らかにしていただきたいと思います。  従って、まず第一に、この問題に対する政府基本的態度を示していただきたい。さらに第二番目には、ガット十一条国移行手続を含む今後の貿易自由化計画日程について、具体的にこの際明らかにしていただきたいと思います。
  7. 田中角榮

    田中国務大臣 ただいまお示しがございましたように、昨晩十二時から今朝三時までかかりまして、IMF理事会において、対日八条国移行勧告の件について審議が行なわれまして、今朝の五時に原案通り採択をいたしたわけでございます。これの公電が入りましたので、今朝大蔵大臣談話を発表いたしまして、政府基本的態度を明らかにいたしたわけでございます。大臣談話につきましては、お読みしましようか。——御要求がありますので申し上げます。   国際通貨基金は、昨二月六日の理事会において、昨年十一月に行なわれた対日年次協議に関する基金事務局報告書審議した結果、「日本の残存する輸入制限国際収支上の理由のためには必要ではないと信ずる。また、経常貿易外支払に対する制限撤廃を要請する。」という趣旨の決議採択した。   わが国は、昭和二十七年に国際通貨基金に加盟して以来、十カ年以上にわたり、基金協定第十四条(戦後の過渡期)の規定により、輸入及び経常貿易外取引のための支払に対する為替制限の存続を認められてきたのであるが、最近のわが国国際経済社会における地位の重要性にかんがみ、また、貿易及び為替自由化が究極的にわが国経済の正常な発展のため望ましいことを考慮し、この決議を受け入れることとした。これはわが国貿易為替自由化過程において画期的な意味をもつものである。   政府としては、今後は、現在までに達成した貿易及び為替自由化成果の上に立って、さらにこれを着実に推進して行く所存であり、この基本的方針の下に国内経済体制整備を促進し、なるべく早い時期に基金協定第八条の義務を受諾したいと考えている。   今後、わが国が、激烈な国際競争場裏において、経常取引について為替管理の手段に訴えることなく、よく国際収支の均衡及び円の対外価値を維持しつつ経済の成長を実現して行くためには、財政金融政策をはじめ諸政策を健全に運営して行くことはもちろんであるが、特に、政府としては、諸外国の対日差別待遇撤廃を強力に促進するとともに、輸出力の増強を第一義とする諸施策を推進して参る所存である。これに呼応して、民間各界におかれても、この機会に決意を新たにされて、企業経営合理化対外競争力強化に更に努められるとともに、輸出の振興に一層の努力をされることを特に切望する。  以上でございます。  なお、御質問にございました手続でございますが、政府は、このIMF勧告に対して、これを受け入れるという基本的な態度を明らかにいたしましたが、手続としては、IMF理事会採択決議ガットに通報せられるわけでございます。ガットは、二月の中旬に行なわれます理事会において、これらの問題はまず第一に取り上げると思います。このガット会議におけるわが国態度をいかにするかということにつきましては、きょうから政府部内の意見を早急にまとめたいと考えておるわけでございます。ガットの場、すなわち二月中旬に十一条国移行というガットの問題がありますので、この問題に対しての政府態度を二月に明らかにするか、その後は五月にもう一回会議がございますが、そこでやるかは検討中でございますが、できるだけ早い機会ということを考えますと、二月中旬に行なわれる会議日本の基本的な態度を明らかにしなければならないだろうという考え方に立っておるわけでございます。
  8. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 大体二月の理事会におきましてガットの十一条国移行手続をとられるというふうに理解してよろしゅうございますか。そうして、そうするならば、多分これと五月の理事会との関連におきまして、自由化品目の一そうの拡充を内容とする自由化計画も提示されなければならぬと思いますが、そういう方針でおられますかどうか。
  9. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申上げまししたように、ガット理事会が二月の中旬に行なわれますし、しかも十一条国移行というのは、これはもう不可避の問題であって、自動的に移行しなければならないという問題でありますので、日本政府としては、現在まだ政府部内の意見調整中ではございますが、先ほども申し上げましたように、この場で態度を明らかにすることがいいのではないかと思います。しかし、十一条国移行後の種々な問題につきましては、御承知西ドイツフランスの例は、これから相当長い期間を要して実際上八条国移行という事実を解決した面もございますが、日本としては、総理がたびたび国会でも言明いたしておりますように、自由化に対応して参るという基本的な態度でありますので、それまでにできるだけ早く政府部内の意見をまとめるだけではなく、産業界金融界その他民間有識者意見も十分徴しながら、遺憾なき方向をきめて、ここで政府の基本的な考え方だけは明らかにすべきだと考えておるわけであります。
  10. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 今の大蔵大臣お話でありますが、たびたびの総理大臣の言明によりまして、この方向は、非常に前から確たる方針を掲げておられるように感じておりましたが、なお政府部内で調整という問題でありまして、大へん何だかこの際になってもたついておる感を受けるわけでありますが、そのような感じがあるのかないのか、重ねて伺いたい。  それからさらにもう一つは、IMF関係貿易外経常取引問題について、具体的に自由化日程をどのように立てておられるか。海外渡航映画、運輸、保険、投資収益などの問題は、今の八条国移行の問題とともにIMF自身の問題でありまするから、先ほど貿易自由化の問題はガット関係で、まあ両輪のようなものでありますけれども、このIMF関係貿易外経常取引の問題はもう大体見当がついておって、たとえば海外渡航はいつごろからどれくらいの制限でとか、あるいは映画関係はどうだとかいう方針が大体きまっておるのではなかろうかと思いますが、その基本的な方針並びに大体の日程をこの際明らかにされたい。きょうの新聞におきまして、おそらく国民は必ず政府がこの方針をとることだろうということをはっきり承知すると思います。そのことは同時にすぐに具体的な日程が裏づけになっておると、こういうふうに思っておりまするので、この辺でその方法を明らかにしていただきたいと思います。
  11. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げましたように、八条国移行採択が行なわれたわけでありますし、日本政府もこれを受け入れる基本的態度を明らかにいたしたわけでございます。でありますから、貿易為替自由化は原則としては行なわなければならないわけでありますが、資本取引の問題その他、八条国移行後といえども、各国間との話し合いによって残存制限が行なわれておるのが例でありますので、何でもかんでもすべてを直ちに自由化をするというような考えには立っておらないわけであります。基本的に自由化体制を一そう促進して参らなければならないということであります。しかし、国内産業体制整備の問題もありますし、種々な問題につきましては、政府部内において鋭意調整を行ない、産業界自体のこれに対応する体制整備等を進めるとともに、自由化を一段と進めて参るということであります。  貿易外の問題について御質問がございましたが、現在映画なり、日本投資をせられた果実の送金その他に対して、昨年は投資に対する送金につきましては二年を六カ月にしたわけでありますが、直ちにこれを全廃するのかというと、諸外国のかつての例もございますし、方向としては自由化を進めるということでありますが、具体的な問題については、早急に政府部内で結論を出したいという考えでございます。では何もきまっておらぬのかということになると、また御質問があるかもわかりませんので、海外渡航問題一つを例にとって、一体いつごろから日本人の海外渡航解除するのかということになりますと、私の現在の考えでは、来年の春くらいからは制限撤廃をされる、また、しなければならないだろうということを考えておるわけであります。
  12. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 本来私は予定をしておらなかった問題で、特に本日の新聞におきましてこの事態が発生いたしましたので、つけ加えた質問であります。従いまして、時間をとることを避けるために私は簡単にいきたいと思うのでありますが、きょうの新聞の各紙の一面をごらんになりますと、もっともっと具体的に内容が、政府としては、大体こういう方針でいくであろう、特に先ほど渡航の問題や映画蓄積円の問題や、それらの問題については相当具体的なスケジュールが内定しておるかのごとき印象を国民にすでに与えております。国会に対しましては今のような抽象的なお話でありながら、おそらく役所部内である程度方針が内定しておって、それを新聞社を通じて適当な方法で話がされながら、国会でその方針が明らかにされないということは、むしろ非常に国会軽視考え方であり、同時に責任回避の現われとして私は遺憾にたえないところであります。従って私は、本日の新聞において大体明らかにされておるような内容について、政府としては、そのような日程でいくのかいかぬのか、特にここの点とここの点においては、新聞紙はこのような報道をしておるけれども、この辺についてはこういう疑問の点、問題点があるとかというこの辺の日程スケジュールを一日も早く国民の前に明らかにされんことを特に要望いたしておきたいと思います。  それからこの政治日程の問題とは別に、このような、今お話にありましたような基本的態度をとられることについて、具体的にすぐに、この予算委員会においても社会党の同僚議員等からいろいろの角度から質問をされておりまするけれども、特に二点の問題は早急に問題化してくると思いまするので、重ねて御所見だけを伺っておきたいと思います。  まず、これまでのところ、貿易自由化方向として進めるけれども、同時に必要部門産業におきましては関税の引き上げによって適当な温存措置をとっていくということが大体普通に考えられておったと思います。しかし、伝えられるところによりますと、来年あたり関税の一律引き下げ実施機運にあるというふうに聞いておりまするが、もしそれがほんとであるとするならば、輸入制限解除関税引き下げという二重の苦しみが両方から一挙にがさつと日本産業を吹き回す大きなあらしとなってくると思いまするが、しかしながら、現在までの態度からいたしますと、政府部内におきましては、まだ基本的な、このような自由化方向を強めるための経済二重構造発展的解消の問題や、それから中小企業農林水産業近代化の問題についても、きわめて準備は不十分でありまして、従って、体質の改善などはまだほとんど具体的な成果をおさめておりません。このような状態のところに、申し上げましたような輸入制限解除関税引き下げという両面あらしが一挙に来年あたりから吹きまくるとするならば、相当に覚悟をきめていかなければ、ただいまのような基本的態度は私は決定し得ないと思います。これらにつきましてのお考え対策のほど、決心のほどをお示し願いたい。  それから第二点は、資本自由化の問題というのがすぐ具体的な日程に上って参ります。格別に日米通商航海条約改定の問題は具体化段階にまで来つつあると思いますが、この資本自由化の問題で一番大きな関係を持ってくるのはアメリカとの関係である。第一番目の自由化の問題におきましても、多分二国間の個別交渉に移されて、そして日程が、ガットの十一条国移行の後におきましては、おそらく二国間の協定で具体的に進められるだろうと思いまするが、その場合の相手国も、一番大きな影響を持ってくるのはアメリカとなって参ります。このような意味で、二番目の資本自由化の問題は、また、御承知のように外資導入はしたし、というて国内産業資本は保護したし、そこに非常に大きな両面からの問題を深刻に持ち続けるわけでありまするが、この第二番目の資本自由化の問題についてどういう方針をとられるのか。第一番目の関税両面からの動きに対してどういう具体的方針をとられるのか、簡単に一つ方針をお伺いいたしたい。
  13. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど申し上げましたように、八条国移行勧告採択につきましては、政府は、これを基本的に受け入れる態勢をとりました。しかし、八条国移行宣言は、IMF勧告によって直ちに発効するものでないことは御承知通りでございます。これが受け入れに対して基本的な態勢政府としてはきめたわけでありますし、国の内外に明らかにしたわけでございますが、先ほどから言われましたように、これが実際的な八条国移行につきましては、前提条件として、国内産業整備とか、また法制上の整備とか、いろいろなものがあるわけでありまして、これらの整備を行ないながら、八条国移行宣言の時期を政府で決定をして、日本政府の自主的な見解に基づいて八条国移行宣言がなされ、効力を発生するわけでございます。でありますから、過去の例から見まして、これが採択をせられてから八条国移行が実際に行なわれた例としては、西ドイツのように三年もかかったこともございますし、またフランスのような例もございますが、三年前、五年前、十年前と今日とは事情も違いますので、日本は三年、五年も八条国移行宣言を延ばすなどということは考えられないわけでありまして、可及的すみやかに国内体制整備を行ないながら八条国移行宣言を行なう、また行なう適切な時期を考慮するということになるわけでございます。  それから、これが自由化方針を決定することによって、関税一括引き下げという基本姿勢をとっておるし、また八条国に移行するということで貿易上の自由化も一緒に行なわれるので、大へんな圧力になるのではないかという問題は、御説の通りでございまして、これらを調整するために、また調整が十分とられた後に八条国移行宣言の時期を選ぶわけでございます。なお、八条国の移行した後といえども、御承知緊急関税その他各国との間に相談をしながら、国際的慣例に従っての関税操作は行ない得るわけでございまして、これらの問題に対して、お説のように国内産業に大へんなしわが行かないように配慮をしなければならぬことはもちろんでありまして、政府も、そのような問題に対しては十分配慮をいたしております。でありますから、先ほど民間産業有識人との意見調整も十分行ないながらということを申し上げておるわけでございます。なお、国内整備に対する法制等も、きょう基本態度を発表いたしただけでありますので、この国会ですべての国内法整備ができるかと申し上げると、なかなか時期的にもむずかしいので、お互い意見調整を十分しながら、次の通常国会等目途にしながら、各般の法制整備等考えて参らなければならないであろうと予測せられるわけであります。  それから資本取引の問題につきましては、IMFBPリーズンなしと判定をいたしましても、資本取引の規制に対して相当程度の弾力的な運用がなされるということは、これは各国の例でございますので、日本も例外ではないという考えをとっておるわけでございます。  簡単に申し上げろということでありますから、いずれできるだけ近い機会をとらえて、これらの問題を具体的に国民の前に、国会を通じて明らかにしたいと思います。この八条国移行宣言受諾したというだけをもって、あしたからでも自由化になるんじゃないかというような考え方で、産業界の混乱も考えられますので、政府としては、できるだけすみやかに各項目にわたって、おおむね政府目途としておる時期、方法その他に対しても明らかにすることが務めだと思いますので、そのように考えておるわけでございます。
  14. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 この八条国移行勧告に伴う今後の政治日程及び特別に問題が出てきますところの関税の一律引き下げ貿易自由化日程との関連日米通商航海条約改定過程で最も大きく問題になり得る資本自由化の問題、これらに対しまして、大へん失礼でありますけれども、ほとんど期待した答弁が本日得られなかったことは、私はまことに遺憾であります。大蔵大臣からも今お話がありましたように、これらの問題については、政府受諾の基本的な態度をきめるならば、受諾の基本的な態度の発表と同時に、国民に大体のスケジュールと行くべき方向を、今の基本的方針のような抽象的なものでなくて、具体的なものをみんな期待しておるわけでありますから、一日も早くその政府態度を明らかにされることを重ねて要望しておきたいと思います。私どもは、民族産業を守り、かつ経済の二重構造を打開し、勤労国民生活水準向上基盤として、その上に自由化体制というものは築くべきものでありますので、八条国移行は、この基盤建設自主的方針を少しでも侵害するようなものであってはならない、こういう観点に立って政府が万全の措置をとられることを特に要望いたしておきたいと存じます。  なおもう一つ、私は昭和三十三年秋の臨時国会におきまして、わが国外貨保有の中に占める金準備が少な過ぎるという点を、おそらくこの国会で初めて指摘をいたしまして、同時にドル過信を戒めて、それ以来ずっと毎年度の予算審議に際しまして、こういう角度からわが国経済政策自主性強化を主張し続けて参りました。大体池田総理あるいは池田大蔵大臣の時分から相当な強気な発言がありまして、むしろ私の心配はあるいは杞憂に過ぎたような観もなきにしもあらずだったと考えます。しかしながら、アメリカ・ドルの防衛政策も、アメリカ国際収支改善の問題も、今日なお決して楽観すべき状態には立ち至っておらないと私は考えます。むしろ、今度の一九六四年度の予算教書が採用いたしておりますところの百十九億ドルの赤字、向こう三年間で行なおうとする百三十五億ドルの減税などのいわゆる新景気政策は、ケネディの教書が将来への投資であると非常に強く強調いたしておるにもかかわりませず、相当に大きな危険を伴った、まあ大げさな表現をもってしますと、一九三〇年代におけるルーズベルトの実験にも匹敵する、のるかそるかのかけでさえあるという見解も成り立つのではないか。かてて加えて、御承知のようなイギリスのEEC加盟失敗や、強引なドゴール外交の不安というものが、世界経済に現在まで君臨いたしておりますところの英来の指導的地位に対しまして、何らかの変化をもたらす可能性を、私は決して否定し切れる状態ではないと感じます。従って、このような情勢でありまするから、国際金融界におきましても、本年のドルの前途に対しまして相当に大きく注目をいたしておると存じます。ところが、一方わが国の三十八年度一般会計予算並びに財政投融資計画は、それぞれ前年度の比率におきまして一七・四%、二二・六%という大幅な増でありまして、特に財政資金の対民間収支は三千七百五十億円という戦後最高の払い超を見込んでおる超大型のものでありまして、これらに対しまして一般からインフレあるいは国際収支の悪化という問題について、こういう方針に対して不安視する向きがあることは、総理は非常に強気で否定はされまするけれども、これは私はまた当然の批判でもあろうかと考えます。従って、三十八年度予算審議あたりましては、アメリカの景気政策が失敗するかもしれないという問題についての吟味を行なって、そしてこれに対してわが国の三十八年度予算が指向しておりますような景気政策にどんな影響がくるであろうか、こういう問題について具体的に総理の所見をただして、三十八年度の日本経済政策に対する批判を行ないたいと私は考えて、ほんとうは準備もしたのであります。しかしながら、御承知のように昨年からことしにかけましての補正から来年度予算に関する問題の中で、石炭問題というものを非常に大きくクローズ・アップいたして参っておりまするが、この石炭問題をクローズ・アップすることはけっこうでありまするけれども、同時に総合エネルギー対策の観点から見ると、はなはだしい混乱を引き起こす危険性を私は感じておりまするので、本日の質問の大きな時間をこの問題にとらざるを得ないわけであります。従いまして、今申し上げましたようなアメリカの新景気政策とその吟味、さらにそれが日本経済施策に対する影響等についての問題をここで十分掘り下げることができないわけでありまして、まことに遺憾とするわけであります。しかしながら、私は、もし万一アメリカ国際収支に危険が訪れて参りまするならば、当然にIMFに救援を求めて参るのでありましょうが、もしその際に、日本国際収支にも問題が生じたとするならば、IMFはもちろん、当のアメリカからも日本は援助を受けることが不可能であることは言を待ちませんので、従って、これもまた杞憂であり過ぎるかもしれませんけれども、この辺に対する心配と検討をし続けておかなければならない、こういうふうに考えるわけであります。従いまして、私は、アメリカのドル防衛政策国際収支の不安の問題は、ことしもなお続くであろうということを前提といたしまして、そのような観点から申し上げましたような配慮を行なうということが、年初にあたって、日本経済指導者としての大きな一つの関心事でなければならぬ、こう思うのでありまするが、総理大臣の率直なお考えだけをお聞きいたしまして、先に進みたいと思います。
  15. 池田勇人

    池田国務大臣 昭和三十七年並びに六年におきまする世界の経済は、おおむね横ばいあるいは沈滞の状況でございます。アメリカにおきましてもそうでございますし、ヨーロッパ諸国におきましても、一九六二年は六一年に比べまして生産の伸びようが落ちております。しかし、物価や賃金はかなり上がっておるのであります。生産性の伸びよりも賃金の上がり方がおおむね多いようです。こういう事態に対処いたしまして、アメリカにおきましては、お話のような状況になっております。私は、ヨーロッパにおきましても、イギリスはやはりアメリカ方法を継いでいくのじゃないかと思います。その他の国におきましても、どちらかといったら、やはり景気政策的に出ると私は考えております。従いまして、アメリカだけをおとりになりましたが、私は、一九六三年度は全体といたしまして大体上向きにいくのじゃないか。そして今度アメリカの平年度百三十五億、この減税に対してのいろいろな批判はございましょうが、アメリカとしてこの態度をとったということは、おおむねアメリカ国民の納得するところじゃないかと思います。そこで、アメリカが非常にインフレになるとかいうふうなことは、私は、まだ今ここでとやこう言うのはあれで、アメリカとしては当然のとるべき策と思っております。それがアメリカのドルにどれだけ影響するかという問題でありますが、アメリカのドル防衛ということは、アメリカ自身のみならず、フランスを初めとしてヨーロッパ諸国が、アメリカのドル価値維持ということにつきましては非常な協力をいたしておりますので、従来佐々木さんは、この問題について特に御検討が深いようでありますが、私は、今のところ、ドルとかポンドの不安があると断定することは早過ぎる。そうあってはならないし、そして各国が、そうあってはならないということに非常な努力を続けていっておりますから、私は、全体としておおむね上昇過程をとるものと見ておるのであります。ただ、われわれといたしましては、この世界の情勢を常に見ながら、弾力的に財政経済政策を検討していかなければならぬことはもちろんでございます。大体見通しは今申し上げた通りで、こういう前提に立ちまして、金融政策に遺憾なきを期したいと思います。
  16. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 最初に質問申し上げました際の問題のように、日本自由化方向に対して今度相当大幅な数歩前進を行なう態度を決定せられることになる。それから同時に、今申し上げましたように、アメリカ経済の問題というのは、決してアメリカ経済の問題だけではなくて、総理がいつでも言われますように、自由諸国の連帯性のもとでとられつつある政策だと存じます。しかしながら、その自由経済諸国の連帯性の中でとられつつある政策の中に、御承知のような大国的な立場でもって、総理相当強力にこれに対する、どう言いますか、共同の歩調をとられようという姿勢をとられておると思います。政策としては、一つ方向として私は十分成り立ち得ると思うのでありまするけれども、私どもが心配の気持が離れ切らないのは、御承知のように国際金融というものが、私が言うまでもなく総理自身が十分に御承知のように、非常に外交政策関連をしながらいろいろな動きを示すものであります。格別、今度のヨーロッパにおけるドゴールの動きなんというものは、一々今度どのような態度アメリカのドル防衛政策に対する、言うならば、こわもての態度を外交方針でどういう方法で打ち出すかもしれないという危険は、ヨーロッパ自身でも持っておる問題であります。従って、自由経済諸国でありますから、連帯性が強化をされて、その方向にまっしぐらに行くだろう、そう簡単にもお考えになっておられぬと思いますけれども、その辺の動きは、われわれから見ておりますと、池田内閣、池田総理のとられておる方針に対しまして、やはり相当な不安がつきまとって離れぬわけであります。これらに対しましては、観念的な問題ではなくて、私は、時々刻々に具体的な問題と関連をさせながら、十分に国民に浸透されるように説明を願いたいと思いますし、われわれ野党に対しましても、われわれ野党との政策が違いましても、具体的な内容を示しながら協力を求められる態度を続けていただきたいと思います。特に先ほど申し上げましたフランスの動きについて特別なお感じは持っておられませんか、お感じだけをお聞かせ願いたいと思います。
  17. 池田勇人

    池田国務大臣 えてして外交関係経済関係が非常に密接であるというお話でございます。私はその点も考えます。しかし、また別に金融関係の人、国防その他の外交関係以外に別のいわゆるルートがあると言って私はいいと思うのであります。それは、イギリスがEEC参加をしないというときに、ポンド不安を唱える向きがありまして、一時ポンドが下がりかけましたが、しかしヨーロッパ各国は、やはりポンドの地位の重要性にかんがみまして、これに非常に協力を与えて、そうしてそれ以前よりもちょっと上向きにすぐ回復した。こういう各国の金融マンの協力ということは、これは単なる外交ということに沿う場合もありますが、それ以外のルートで協力するということが私は見られるのであります。この点は、私は自由国家群の一つの強いところだと思います。しこうしてまた、フランスのドゴールがああいう態度をとって、フランス中央銀行がどういうふうに出ているかというと、今イギリスの問題でも申し上げましたごとく、アメリカのドル防衛あるいはポンドの価値維持につきましては、フランス相当の協力をしているということは、私は、アメリカ人、イギリス人からも聞いておるのでございます。外交が非常にあれだからといって、国際金融もそれと一緒のように動くのだということは、一がいには言えないのであって、逆の方向もある。これがやはり国際金融市場の特性だと自分は考えております。
  18. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 くどいようでありますけれども、ヨーロッパにおけるドゴール政府というのは相当な問題でありまして、胸の中に何があるかわからぬような、爆弾を抱いたドゴールのような感じで見られておる向きが多いと思います。ヨーロッパのある経済誌なんかにいたしましても、ドゴールが特に英米のヨーロッパ大陸に対する支配力を排除するという方向のために何をやるかわからない。たとえば万一フランスの思っておる、アメリカ・ドルの金引き揚げというようなものが行なわれたような場合には、どういう事態が起こり得るであろうか。なかなか起こり得ないかもしれないけれども、全然考えの外に置いていい問題ではなかろうというような批判を加えておる向きもあります。その辺につきましての質疑応答をいたしましても、おそらく水かけ論になりましょうから、私はこれはこの辺にとどめます。そして私の申し上げるのも、決してそうなるというのではありませんで、あくまでも、日本経済を預かっておられる総理はその辺の問題についても十分な配慮をされながら政策を進めていただきたいという注文をつけておるわけでありますので、ずいぶん長い間国際金融の観点からドル不安の問題をいつでも出し続けておりまするけれども、一つ、今年度もなおその問題の続くであろうという感じを持っておる者も相当ありまするので、御配慮をいただきながら政策の推進をお願いいたしたいと思います。  この問題はこれで切りますが、もう一つ、エネルギー政策に入る前に、議会政治の姿勢を正す意味総理にお伺いいたしたいと思います。  池田総理は岸内閣のあとを襲われたのでありますが、岸内閣は、何ゆえ、どういう理由で、崩壊したといいますか、退陣いたしたのか。三十五年七月の岸内閣退陣の理由は何であったか、あらためて池田総理からお伺いいたしたいと思います。
  19. 池田勇人

    池田国務大臣 岸内閣の退陣のあれは、岸総理が、自分は引退する、こういうことを声明なすったのが理由であると思います。
  20. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 いやになったから勝手にやめるというようなわがままがそう簡単に許されていいとは私は思いません。岸総理は、総選挙を通じて、自民党総裁として、こういう政策を行なおうということを国民に約束してその信任を得たいということが、少なくとも第二次岸内閣の組閣の根拠、政党内閣制を採用しておるわが国の政権担当の理論的根拠となっておるはずだと思います。内閣を担当する場合には、国民の信任を受けたか受けぬかということを相当に形式的に主張し、政策を行なう場合に、われわれは国民の負託にこたえ、国民の信任を得ておるのであるからやってもいいと言われる。しかしながら、退陣をするときには、わしゃいやになったからやめるということで、勝手にやめられるということでは、少し理屈が合わないのではなかろうか。民主主義、特に政党内閣制の建前をとっております場合には、退陣には、政策で行き結まったなら、この政策で行き詰まった、他の理由であるならば、この理由だということを明らかにいたしまして、政党とともに政権を担当する姿勢を正すことが筋ではなかろうかと思いまするが、あの当時、岸内閣は安保強行の責任をとられたのだ、あるいは安保政策強行の問題が岸内閣崩壊の理由だ、こういうふうに伝えられ、世間でもそう信じておるのでありまするけれども、そのような状態であったと総理はお考えになるのか、これらの問題とは全然別に、いわゆる派閥問題等で閣内・党内の統一が困難であったということのために退陣をされたのか、その辺はどうお考えになっておるか、重ねてお伺いいたしたいと思います。
  21. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、岸前総理の退陣の理由につきましてはこれをきわめておりません。どういう判断のもとに総裁を辞任するということを言われたか、いろんな事情があったとは思いますが、岸さんがこういう理由でやめられたと、私はここで池田として申し上げることは差し控えたいと思います。
  22. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 責任政党内閣制の前提といたしまして、それならば、政権の移動についての基本的なお考えをお伺いいたしたい。
  23. 池田勇人

    池田国務大臣 国民の世論によってきまることと思います。それの端的な表明は、総選挙を必要といたします。従いまして、私が自民党総裁を引き継ぎましてから、私は解散をいたしました。そうして、政策を掲げて世論に問うたのであります。これが常道だと思います。
  24. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 担当される場合はそうでしょう。やめられる場合は勝手にやめていいということですか。
  25. 池田勇人

    池田国務大臣 勝手にやめるというのじゃございません。やはり、やめる理由がなければなりません。
  26. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 政党内閣制のもとにおきまして、そう簡単に総理自身の勝手は許されません。政党内閣制というのは、政党自身が内閣を組織して、そして政党が選挙において約束した政策を実施することが前提になっておる。やめるならば、こういう理由で約束した政策ができなくなったとか、政策の変更が必要になったとかいうことが国民に同じように理解と納得の上でなされるべきだと思います。総選挙においてと言われますけれども、やめる総選挙というものはやったことがない。重ねて御所見をお伺いいたしたい。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 政党本位で選挙をいたします。従いまして、政党の政策を実行することは当然です。しかし、総裁は、やはり健康上の理由もありましょうし、党内の問題もありましょうし、それは、政策が実行できなければ、いかなる場合でも総裁はやめる、こういうことにはいかない。それは、どこの国でも、政党政治をやっているイギリスなんかでも、これはイーデン氏がマクミランに引き継いだときもそういう理由で内閣の更迭が行なわれたのであります。
  28. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 岸さんは健康上の理由でやめられたとは、おそらく日本人のうちだれも信じておる者はありません。それから、今イーデンのやめられた話をいたされましたけれども、世界じゅうの普通の国を見てごらんなさい、そんなところはほとんどありはしません。アイク政権でも、ケネディ政権でも、今度のマクミラン政権でも、あるいはアデナウアー政権でも、おのおのみずからの政党と運命をともにする政権であるということは常識になっております。従って、おそらく彼らが内閣の責任者の地位を退くときは原則として他の政党に政権が移行することを意味するというふうに私ども考えております。しかるに、日本におきましては、自由民主党の内閣は十数年にわたって継続いたしております。しかしながら、同じ政党、自由民主党の歴代内閣は、おそらく四年も持ったためしはございません。岸さんだけではございませんで、自由民主党という政党で政権をとっておられながら、その総理大臣という約束の政策を施行する者は、長くて三年、四年持ったためしがないというのは、おそらく日本だけの特殊例でありましょう。おそらく、総理は、そう言えば、あんた方社会・民社党の勢力が小さ過ぎて、反対党に政権が渡せないということを理由にされると思います。私はそれも決して否定するものではありません。しかしながら、反対党が政権をとるということと同時に、政権を担当しておる政党と、それから政権を担当しておる政党の代表者の内閣というものが密接不可分でなければならぬということは、当然の話でありまして、別の話ではございません。従いまして、池田総理は、自由民主党内閣は十数年も政権を継続担当しておるけれども、なぜ、自由民主党の歴代内閣は長くても三年持つか持たぬかで内閣自身が退陣をし、更迭しなければならないか、この特殊事情はどこにあるとお考えになりますか。
  29. 池田勇人

    池田国務大臣 ほとんど三分の二近い国民がわれわれを支持しておるということが一番の理由でございます。そして、あまりにも与党と野党が開き過ぎるということでございます。そしてまた、今の、総裁と党が一体でなければいかぬということは、必ずしもそうはなっていない。たとえば、先のことを言ってはあれでありますが、アデナウアー氏が引かれたときに、ドイツは総選挙をするかどうかは疑問と思います。あなたのお聞きにならんとする点が私まだはっきりとれないのですが、どこをお聞きになろうとしているのでしょうか。
  30. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 具体的に申し上げまじょう。私がこれから聞こうとする、たとえばエネルギー政策に対しまして、岸内閣は岸内閣の立場で新長期経済計画なるものを立てられた。石炭対策で七千二百万トンの計画を立てられた。しかしながら、これは自民党内閣でありますから、自由民主党自身が国民に約束して、その施行を自由民主党の名において岸内閣という政権担当者を通じて約束したものであります。ところが、何の理由かわけのわからぬ理由で岸内閣は退陣せられて、池田内閣が誕生された。池田内閣が誕生されれば、同じ自由民主党という母体でありながら、今度は、所得倍増政策という観点に立たれて、エネルギー政策の基本は、経済的な基盤強化経済競争力を養うという意味で、たとえば電力につきましても、これまでの石炭中心では経済的に工合が悪いんだ、だから重油専焼の火力をつくった方がよろしいという方針のもとに指導された。しかしながら、岸内閣の長期政策というのがいつ捨てられたのか、いつ改められたのか、そのためにだれが責任をとったのか、ちっともその辺は明らかではない。しかしながら、石炭関係者は、七千二百万トンの岸内閣のときの計画を一応強制せられ、その方針が自由民主党内閣であるがゆえに継続すると思っている。どこからも別に違ったと言われたためしはないし、これは悪かったから改めますと言って責任をとった者はありません。同様に、今度所得倍増計画で違った政策を立てられたが、今度はまた石炭の産業の安定という建前から別な政策をとられようといたしておる。私は、具体的なこまごまとした政策に対しまして、時々刻々に相当の変わり方のあるのは当然でありますし、そうでなければならぬと思う。しかしながら、いやしくも政党責任内閣制というものは、普通の常識で言うならば、政党がみずからの政策を実施するために責任を持って内閣をつくるということだ。その政党が責任をもってつくった内閣が、その内閣の総理の勝手気ままによって二年か三年で次々にやめられて、そしてそのしりをふく者がないということでありますならば、ここらに無責任時代の一番基本的な根源があるような気がするわけであります。池田総理は、今どこに質問の焦点があるかわからぬと言われましたが、責任内閣制という基本的な立場をお考えになりますならば、自由民主党というものが国民の信任を得ているならば、死なぬ限り、あるいは特別なからだの事情がない限り、本来ならば、総裁がずっと継続して政権を担当されて、党の総裁と内閣の総理一緒の形で、国民向けに約束した政策の責任をとられるのが筋であります。それが次々にたらい回しされることによって、選挙に約束した責任と、政策を施行する責任とが別々になり、やめるときは勝手ということならば、どうにも示しがつかぬ。その状態がほんとうは今の現状でありまして、私は、これが日本の政治の根本的な特徴であり、ウィークポイントではないか、こう思うのであります。重ねて池田総理の御所見を承りたい。
  31. 池田勇人

    池田国務大臣 経済の目標とか、あるいは意欲的にこうありたいというので声明することはありますけれども、これは生きものでございますから、それによってその通りにいかないからといって、内閣責任制というわけにもいかぬ。ものごとはその事の軽重によって判断すべきだと思います。たとえば、所得十年以内の倍増としたときに、予定よりも倍ぐらいもいった、それは初めの見込みが悪いんだから内閣やめろという声は、まだ世論としては私は聞かない。その通り経済が動くか動かぬかということで、一応の目標でございますから、だから責任内閣制でそれはやめろ、ほかの反対党に渡せということは、どうも机の上の議論じゃないかと私は思います。こういう問題は、やはり世論のきめるべき問題だ。私は、岸内閣のときの通産大臣として、五千五百万トンの計画は立てたことがございますが、七千何百万トンというのは、寡聞にして聞いておりません。とにかく、一体に、経済の目標とかこういうものは、その通りにいかないからといって、内閣自体が責任を負ってやめるほどの問題ではないでしょう。それより、問題は、経済自体が非常に困った状態になるというときには、約束のいかんにかかわらず、内閣は引くことはありましょう。だから、これは総体的に考うべき問題だと思います。
  32. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 内閣がやめるほどの問題でないと言われるが、そのときにはやめられずに、もっとわけのわからぬ理由でやめられるところに、無責任時代の原因があると指摘しておるわけであります。私は、問題を先に急ぎたいと思いまするから、まあまあ繰り返すことはいたしません。しかしながら、池田総理は、政党内閣制というものに対する基本的なお考え方について不十分だという気持を私は持たざるを得ないのであります。本来、政権担当政党というものは、ほんとうは、総理大臣と総裁とが一本であって、そうして、国民の信託を受けた政党のその政策を実施するのが総理大臣だ。ほんとうは、国政の転換は政権を担当する政党の交代によってやるというのが議会制民主主義の建前でありまするし、責任内閣制の建前である。それが、政権担当の政党は自由民主党に限ったような状態になっておるときに、政策とはほとんど無関係に、無責任な政権の移動が繰り返されておるという現状は、決していいことではない。少なくとも、政権を退くとき場合には、退く理由が国民に明らかになるような形で退かれなければならない。担当するときも責任を持つのであるならば、退くときもまた責任を持つものでなければならぬことは言うまでもないということを言っているわけであります。最近におきまする状態は、おのおのの政権移動がほとんど政策とは無関係の状態で行なわれておる。政策と無関係で内閣の移動が行なわれるということと、政党内閣制ということとは、完全に矛盾であります。もし自由民主党が近代的な単一政党というのでありまするならば、政策と密接不可分に内閣の出処進退をきめていただきたい。それができない自由民主党であるというならば、それは近代的な政党とは言いがたいものでありまして、むしろ、私は、政党内閣をつくる資格を失うものだ、こういうふうに思わざるを得ないのであります。政権の授受にあたって、政策の裏づけをもって折り目・けじめをはっきりと立てて、責任を明らかにするところに、国民から政治に対する信頼の原因が出てくる。最近におけるところの国政に対する非常な批判が国の政治に対する国民の不信感とさえなっておる一つの原因に、あらゆる政策や出処進退、内閣あるいは官僚の行き来、政策の裏づけを持ったその行き来に対しまして具体的な責任の裏づけをはっきりしておらないというところに一つの大きな原因があるというふうに考えざるを得ないからであります。私は、池田総理がどう言われましょうとも、外国各国の民主政治の状態をごらんになるならば、一つの政党が十年も十五年も続いておりながら、しかも、一つの政党であるのにもかかわらず内閣の寿命は二年か三年だというのは、日本だけの特殊事例だということがおわかりになろうかと思います。この辺に対する十分なる反省を自民党総裁として行なわれることを強く要望をいたしておきたいと存じます。  時間がありませんから、エネルギー政策の問題に入って参りたいと思います。  先ほど、岸内閣の長期経済政策に対する石炭政策の数量に対しまして、池田さんは知らぬと言われましたけれども、それならば、今度の石炭対策は総合エネルギー政策の一環として立てられたものか、それとも当面の不況産業打開という考え方で今度の石炭対策を立てられたのか、この石炭対策の取り組み方について、政府の姿勢について総理のお考えをお聞かせ願いたい。
  33. 池田勇人

    池田国務大臣 当面の石炭対策を主題にいたしまして、総合エネルギーの問題を頭に入れながら立てられたものと私は了解いたしております。
  34. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 有澤報告は明らかに長期の石炭安定対策を要求いたしたものであります。従いまして、もしそうであるといたしますならば、池田内閣は、組閣当初、看板政策であるところの所得倍増政策というものを立てられまして、この中で合理的なエネルギー体制の確立を強調されておりまするから、もし長期的な考え方があるとするならば、池田所得倍増計画中のエネルギー政策と、今次石炭政策との関係が当然に出てこなければならぬと思います。  経企長官にお伺いをいたしますが、今総理はいいかげんな答弁で、具体的な当面の政策であるような、長期の政策であるようなお話であります。所得倍増計画というのは経企で数字の裏づけをされました。そして、目標年次の昭和四十五年度には石炭換算で三億三千万トンのエネルギー総需要がその中に見込まれておったし、そして、これによると、エネルギー別の供給力では、発電設備を約二・九倍にするとか、石油処理能力では、これを約三・二倍にするとか、そういう成長政策をとられて、四十五年度におけるエネルギー構成比率も、水力が幾ら、石炭が幾ら、油が幾らというような具体的な数字まで示された計画を出されておる。そのような長期の所得倍増計画を裏づけとして、それとの関連総理は言われるのでありますが、今度の石炭政策を樹立するのにあたりまして、経済企画庁では、この計画を変更されたのか、これとの関連で石炭政策を検討されたのか、お聞かせを願いたい。
  35. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 所得倍増計画では、目標年次昭和四十五年の石炭の国内生産を五千五百万トンと考えておるわけでございます。従って、その点につきましては、このたびの石炭対策が志向するものと所得倍増計画の考え方とは合致いたしております。それ以上のものを国が消費しなければならないというふうには、所得倍増計画も、あるいは石炭対策考えておらないわけでございますから、五千五百万トンに関します限り、問題はないと思うのであります。おそらく、御指摘の点は、所得倍増計画に考えられております基本は、やはりエネルギーというものは消費者の自由選択にまかせること、これが第一義的な考え方であること、そうして、それが趨勢としては固体から流体に移っていくということも、世界各国におきましてそれが趨勢でありますから、わが国といえどもその例外ではないであろう、こういう二つの考え方は、確かに、おっしゃいますように、所得倍増計画でとっております。そこで、しかし、他方で石炭という問題が問題として出てきたわけでございますから、私ども考えますと、やはり、経済政策は、所得倍増計画に考えておること、それでよろしいのでありますが、さらにより差し迫った国家的な要請が別個に出てきて、これはいわば公共の福祉とでも申すべきものの考え方かと思いますが、それに対しては、若干の経済原則もそれとの調整において考えなければならない、こういうことに事柄が発展してきたものである、さような認識をいたしております。しかし、基本的には、幸いにして五千五百万トンということは両方で一致して考えておることでございますので、倍増計画に申すところのエネルギー対策をそれによって変更する必要があるというふうにはなってきておらない、このように認識しております。
  36. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 そうすると、宮澤さん、重ねてお聞きいたしますが、所得倍増計画中のエネルギー総合政策ですね、これを今度の石炭政策を立てられるときに具体的に数字で検討されましたか。
  37. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、目標年次におきまして五千五百万トンというふうに考えておりますが、数字が非常に異なってくるということが起これば、私ども困る。しかし、それが幸いにしてそうでなかったという意味において、両者は連関を持っておるわけであります。
  38. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 再検討をされたかと聞いておる。だから、もし検討をされたならば、数字をもってお示しを願いたい。石炭の五千五百万トンだけではありません。総合エネルギー政策でありますから、先ほど申し上げましたように、水力が大体幾ら、石炭が大体幾ら、油が大体幾ら、この構成バランスを盛った目標年次の計画があったはずであります。石炭が五千五百万トンとしても、その動きは相当に比率は変わってとなければなりませんけれども、それなら、その計画は修正をされたのですか。
  39. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 問題はその石炭でございますから、これだけが計画の基本で動かなければ、あとのものは動く必要はないわけで、従って、倍増計画そのものが修正されるということはなかったわけであります。
  40. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 それならば、石炭をほうっておいても、火力用炭は普通の具体的な数字でいくはずであって、新しい対策と修正は要らぬはずじゃないですか。もし所得倍増計画に従って政策を進めておるとするならば、たとえば、火力用炭ならば、三十八年度、ことしは千八百万トン程度、昨年ならば千七百万トン程度ということになっておる。その修正を行なおうとするのが今度の石炭対策でしょう。それはどういうことなんですか。それを修正するならば、総合エネルギー政策の所得倍増計画の一部は修正ということになるはずじゃないですか。だから、具体的な当面の石炭対策だけを中心として立てられたのか、総合エネルギー政策の観点に立ってバランスをとられたのか、いずれかということを聞いているのです。
  41. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、所得倍増計画では、目標年次四十五年度において御指摘のようなエネルギーの構成比を考えておるわけでございまして、その中間の時点においてどういう姿をとるかということは、示すべくもありませんから、示していないわけでございます。非常に厳密に申しますならば、このたびのように電力・鉄鋼等に石炭の引取量の増加を願うとかなんとかいうことは、おそらくそういうおのおのの産業においては、最初に予期しておられなかったことでありますから、それなりでの計画の変更は必要でございましょう。しかし、量から見て、また、昭和四十五年というものを目標に大まかにものを考えておるところの大局的な見地から見て、この程度のことで所得倍増計画が変わったのではないかとおっしゃるほどのことはないというように認識をいたします。
  42. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 所得倍増計画のエネルギー政策も、将来実施が予想せられるエネルギーの輸入及び使用の自由化を考慮し、各種エネルギーの経済性を中心とする供給構成を基本として、そうして、供給の安定的確保、雇用問題等の総合的な見地から調整を加えてエネルギーの供給計画を作成するという、まことにりっぱな作文が書いてある。この作文通りに行なわれておるならば、特別の石炭政策というようなものは今度必要でなかったはずだ。その作文が作文で終わっており、具体的な裏づけを欠いておったところに今度の問題がある。それならば、所得倍増計画の中のエネルギー政策というものは、単なる見通し、当たるも八卦当たらぬも八卦の目標年次における見通しの数字をそろばんではじいただけであって、それは計画ではない、こういうことになるのでありますが、計画ではないというふうに解してよろしゅうございますか。
  43. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それでは、問題を分けて申し上げますが、倍増計画は一つの見通しであります。そうしてまた、それに従って全般の経済政策が行なわれるべきであるという考え方を示した意味では、計画と申しても差しつかえないと思います。御指摘の点は、この倍増計画が立てられましたときに、石炭の問題が今度のような形で取り上げられざるを得なかったということを十分予知しておったか、こういうことをおっしゃっておられると思います。倍増計画は、先ほど申しましたように、燃料が固体から流体に動いていくということは、これはもう必然的な趨勢であるという認識は持っておりますので、従って、石炭産業というものがだんだんとその勢いを失っていくであろうというような大局的な認識は持っておりました。しかし、それが今般のような形で問題が取り上げられるということは、もとより予知すべくもなかったと思います。そこで、問題は、先ほど申し上げましたように、こういう形で石炭の問題を国の要請として取り上げざるを得なかった、その限りにおいて消費者の自由選択というものが完全には行なわれないではないか、そういう御指摘であれば、私はまさにその通りであると思います。それは、しかし、国全体の大きな要請、公共の福祉といったような考え方経済政策の一部が奉仕をした、そういうことにすぎないと思います。
  44. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 総合計画というものが当たるも八卦当たらぬも八卦的なえらい先の五年も十年も先の数字を並べてみるということだけならば文句はありません。しかしながら、少なくとも総合計画という銘を打つ限り、そういうものではないはずであります。石が流体のエネルギーに変わるであろうみたいな話で、それで計画と言い得るか。むしろ、そのような方針があるから、たとえば、電力におきましては、御承知のように、今度石炭をたけたけと言ったところで、今年から来年にかけてできる発電所で、現実には、ほとんど全部、そのような方針があったから重油をたく、重油専焼の火力になっておる。重油専焼の火力になっておりながら、今度は石炭をたけと言うのだ。それで、計画の変更もなければ何もなかった、そんなものはちょこちょこっと具体的な問題が出るだけだというふうに言ってあなたは逃げられるのですか。大きな政策が石炭と重油との関係で、発電所の計画は少なくともやろうと思ってから三年間くらいかかる。そいつが一ぺんにぐらぐらしよるのに、計画の変更ではありませんということでいいのですか。
  45. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 かりに、所得倍増計画に考えておるところのエネルギー政策の趨勢はかくかくであるから、従って電力会社あるいは鉄鋼会社によけいに石炭を引き取ってくれというような政策は困るというふろに私どもが申しましたならば、石炭問題の解決というのはできなくなるということは、私は明らかだと思うのです。目標年次の五千五百万トンという基本的な線がくずれない限り、私どもはある程度そういう経済政策というものは国家目的に奉仕すべきものであると考えるのであります。
  46. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 えらい力まれるが、あなたのところでこれまでやられたのは、具体的な切ったり張ったりする数字の作業だけしかやっておられないじゃありませんか。数字の作業だけでもって計画と言い得るかということを言っている。もし総合エネルギー計画がスムースにいっておるのならば、今ばたばたあわてふためいて、具体的な石炭のやり方について大きな政策を立てるとか立てないとか、あわてる必要はないでしょう。同時にまた、石炭が今度は流体にかわるという話でありまするけれども、そういう方向を見届けて、そしてそれを中心とする政策が次々に立てられておったならば、現在の石油の混乱はないはずです。去年からことしにかけての石油の混乱というものは重要な段階に来ておるではありませんか。同時にまた、その石炭と石油とを前提として、それを燃料として使っておる電力計画も大変更をしようとするような大きな変更段階に今来ておるではないですか。国の計画を達成するために協力するのがあたりまえだと言われるが、あたりまえだといって、それなら、これまで違った方向の指導をされておった責任は一体どうするのか。これまで電気会社に対して油をたけと指導されていたことになっているのだ、池田内閣では。今度は石炭をたけと言われるのだ。それを国家的な大きな損失とはお考えになりませんか。設備の変更、それらに対する責任はどうするのだということで、協力するのはあたりまえじゃないか、国民はおれの方についてこい、ついてこない者の方が悪いのだというものの言い方は、宮澤さん、少し言い過ぎではありませんか。
  47. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一向にそういうことを申しておらないのであります。エネルギー政策に関する限り、高くてカロリーの低い石炭をたけということはロスではないかとおっしゃいますから、私はその通りだと思います。しかし、エネルギー政策だけが国の政策の全部ではないということを申し上げておるだけであります。
  48. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 エネルギー政策だけが国の政策であるとだれが言いました。エネルギー政策も国の政策ではありませんか。今総合エネルギー政策を立てると言っているのに、エネルギー政策だけが国の政策ではないからエネルギー政策は犠牲にしてもいいと言われるのか。石炭産業対策もエネルギー政策ではありませんか。それはどういう意味で言われたのだ。
  49. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、この石炭問題というむずかしい問題を解決する上において、国のあらゆる面で何がしかの犠牲をおのおのが払っていかなければ問題が解決いたさないという認識に立っておると申しておるのであります。
  50. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 だから、電力に石炭をたくなとだれも言っているのじゃないじゃないですか。これまで電力にたとえば重油をたけという指導をしておいて、今度は石炭をたけという政策に変更することに対して、いかにも国民が協力義務を達成してないような言動を弄されている。政策を立てて指導をされた責任をあなたちっとも感じておられないのか。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろ聞いておりますと、前提として、所得倍増計画というものに対しての認識の相違があると思うのです。これは佐々木さんも御存じと思いますが、ちょうど二年くらい前に所得倍増が問題になり、あれを昭和三十五年の十二月に決定するときに、この計画というのは単なる見通しでございまして、この通りには参りませんということは総説で書いているわけでございます。単なる見通し。全部が全部とは言いませんが、あれが計画であるといって、一々、毎年こういうようになり、しかも、石炭の内容が、粘結炭がどうだとか、あるいはその他の分が、火力用炭がどうだとかいうふうなところまでもとの通りにいくということを言っているのじゃないのです。だから、計画といっても、あるいは見通し、こういうようにお考えいただきたい。  そうして、初めの御質問の、今回の五千五百万トンと所得倍増計画の分とどうかということですが、私の考えは、まず第一は、やはり石炭産業をどうやっていこうかということが主であって、そうして、これが倍増計画とどういうような関係があるか、それもやはり見通しでいったと思います。こういうことです。  それから、火力発電に対しての石油を、重油をたけ、今度は石炭をたけ、こういうふうにいかにも非常に政策が変わったように言っておられるかもわかりませんが、そうじゃないので、われわれは、なるべく石炭をたいてもらいたいということは、もう所得倍増計画のボイラー規制法のときからわかっておる。そうして、昭和三十四年から五年にかけての前の石炭問題のときに、ボイラー規制法を続けていきますと言って、しかし、三十八年度からは、これはボイラー規制法が大体やめるようにいくだろう、こうなって、そのときに、三十五年の末から六年にかけての火力発電の設備をどうするかという問題のときに、将来のことを考えると重油専焼の工場を設けてもいいだろう、しかし、それは地域別に通産省の方で許可する、そういうことで例外的に認めておるのでございまして、前は重油をたけ、今度は石炭をたけ、こういったわけではないのでありまして、ボイラー規制法の解除になると予想される三十八年度から後の発電の準備のときには、重油専焼も置いてみるということを例外的に認めた。今後におきましても、重油を使うな、石炭をたけというのではない。やはり、両方、重油・石炭混焼の分につきましては、なるべく石炭をたいていただきたい、そうして、そのためには、こちらの方でその損失をある程度埋めましょう、こう言っているのであって、左から右、右から左といったわけではないということと、所得倍増計画というものについての政府の認識を再度申し上げておきます。
  52. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 所得倍増政策中のエネルギー政策は、確かに、先ほど申し上げましたように、目標年次におきまして、石炭換算で三億三千万トンのエネルギー総需要となっている。そうして、それはちょうど所得倍増と同じように、あの当時の出発年次から見ますと倍増的な内容を持っているわけであります。従いまして、おそらく倍増計画の裏づけ的な数字のはじきがされ、そうして大体こうなるだろうという見当をつけられたのだということの認識は私も同様であります。しかしながら、経済企画庁長官の今のお話によりますというと、それがいかにも具体的な総合エネルギー政策、総合エネルギー計画のごとき観を呈して説明をされるから、計画であるならば具体的な内容を持っておるはずではないか、具体的な政策の裏づけを一つも持たずにおって、大体の見当をつけたものを、それを計画のごとき説明をされるというところに矛盾があるではないかという点を指摘しているわけであります。  いろいろ説明をされますけれども、これは社会党の諸君も自由民主党の諸君も御存じのように、今大体本質的には総合エネルギー政策というものは欠けておる。宮澤さんがどう言われたって、数字のそろばんをいいかげんに算術的にはじいてぎゅうぎゅうせられても、総合エネルギー政策と名のうつものはありませんぞ。よろしゅうございますか。従って、それであるからこそ、先ほど申し上げましたように、石炭の混乱が出てきておるし、石炭が工合が悪ければ油がよさそうなはずだのにかかわらず、昨年の暮れからことしにかけての油の混乱はまた相当な大きなものではありませんか。それのあおりを食らいながら電力もまた一つの大きな転換期に直面しているような状態に相なっておる。この三本の柱の具体的な方針がなくて、エネルギー総合政策とは言えないのではないか。御承知のように、今、三つの産業、エネルギー産業は、むしろ、てんでんばらばらに、おのおのおれが一番犠牲になっている、御国のためにはおれの産業をうまくやらなければだめなんだと、愛国者ばかりにてんでんばらばらの主張をやっておりながら、これに対する具体的な基本的な指導性を欠いておるところに、エネルギー政策の根本的な混迷があるわけだ。しかも、御承知のように、今EECやその他の国際的な動きの中で、エネルギー共同市場実現という動きが、現実の政治日程に上っていることを御存じでしょう。エネルギー共同市場実現という具体的な政治日程が世界の動きの中にあるのにかかわらず、一つの国の日本の国内において、総合エネルギー政策らしいものが全然ない。私は、一日も早くエネルギー政策の基本的な方針を立てられることを要望する。エネルギー政策の基本を立てられた後に、それにあわせて、石炭産業安定化のための政策はこういうふうな位置づけで、こういうやり方でやるのだという総合政策を立てるのでなければ、ほんとうの安定した石炭産業を実現することは不可能だということを言っておるわけであります。従いまして、私は、まずこの問題については、現在総合エネルギー政策が欠けておるのに持ってきて、当面の石炭問題があまりに大きく出てきたものだから、それに一生懸命取りかかっておるうちに、もう一つの、もっと重要な柱であるところの石油関係も電力関係も、このために混迷を来たしつつあることを十分御了承願って、一日も早く総合計画を立てられることを要望するものであります。  なお、エネルギー総合政策関連をいたしまして、政策内容的な吟味に入る前に、ちょっと数字を聞いておきたいのでありますが、総合エネルギー政策の基本的な問題というのは、なるべく総合エネルギーのコストが世界競争力に耐えるようなものでなければならぬというのは、池田さんの基本でもあるし、有澤報告の基本でもありましょう。そういう観点に立ったときに、エネルギー資源である残されておる日本の水力、それから今現実に掘られておる石炭、持ってこられておる油、この三つないし四つは、おのおののコストが国際的に見て高いのか安いのか、どの辺の位置にあるとお考えになりますか。電力料金も含めて見当をどうつけておられるのか、経済企画庁長官、お伺いいたしたい。
  53. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、私大体記憶しておるところでは、石炭問題にしますと、これは日本は高うございます。これはわかり切ったことでございます。それから石油、重油の点につきましては、日本は割に安うございます。重油はことに安いと言えましょう、いろいろな事情があるから。それから最後に電力の問題でございますが、これは平均電力料、電灯その他のものにつきましては、私は、国際的に日本は高くはない、こういう確信を持っております。そこで、水力をどうするかという問題、日本の得意な水力電気になりますと、これは御承知通り佐々木さんが専門でございますが、最近の電力料は、発電設備その他補償問題を入れますと、非常に高い。だから、昔は水主火従、こうやって水力を主にしておりましたが、このごろはもう火力発電の方が非常に安くなった。ことに五十万キロぐらいの発電所になりますと、重油専焼なら三円を割るという状況でございます。そういうことで、一がいには言えませんが、石炭は日本は非常に高い。重油はいろいろなところで世界的に見たら安い。電力は今のところ世界的な平均よりも安い。ことに、今後日本が三十五万キロあるいは五十万キロをやるならば、世界のどこの国よりも電力は安くなると考えております。
  54. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 佐々木委員からお求めがございましたので、資料として差し上げてございます。
  55. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 この数字を見ましても、大体今総理お話のごとくであります。しかしながら、油というものは、御承知のように国際商品でありますから、日本だけが特別に安いということではないと思います。むしろ、日本だけが特別にいい条件にあるとは見がたいと思います。石炭の条件も、火力用燃料としてのエネルギーの世界的な水準から見ると、コストは安くない。油も、同様に日本の状況は必ずしもよくない。ただ、お話のありましたように、平均電力料金で見ますと、まあまあせいぜい日本の場合は五円二、三十銭、従って比較的安いと思います。これは比較的安いのだが、比較的安いといっても、本来燃料から見ると、条件は、今のように石炭も油も悪いのにかかわらず——それから日本の水力の建設金利も決して安くはないですな。建設の金利も安くはないし、たく原料である石炭も油も安くない。にもかかわらず、宮澤さん、何で電力料金が国際的に安いとお思いになりますか。
  56. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、従来水力の開発地点が相当ありまして、そうして、そういう償却の行き届いた設備によるところの発電量が相当にある、こういうことがやはり基本にあるというふうに考えております。
  57. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 そうすると、おそらく今後の水力は安くないということになりますな。
  58. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは明らかにそのような傾向が現われております。
  59. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 そうすると、エネルギー総合政策の中で、エネルギー総合コストを高からしめないようにしようと思うならば、石炭も高い、油も高い、今後の水力も高くなるということになれば、これは相当政策をとらない限り、エネルギーの総合コストは高まるという結果に相なりますね。  それからもう一つ、これは認識を新たにしていただくために、総理にも聞いておいていただきたいが、確かに過去の水力を食い詰めておるから、一応安いです。しかしながら、もう一つの大きな原因は、平均電力料金では五円三十銭ぐらいで安いが、国民生活に直結しておるところの家庭用の電灯電力というものは安くないのです。宮澤さん御承知通りでしょう。アメリカに比べてもイギリスに比べても、世界各国の大体のところを見まして、平均の電力料金は日本は必ずしも高くない。しかし、国民生活に直結するところの電力料金は相当高い。日本ならば大体十一円、大かた十二円です。高い。してみると、エネルギー政策の中の電力料金政策は、ほんとうは話がとんちんかんだ。アメリカやイギリスの国民は、もっと安い電力を使って日常生活をしておるのにかかわらず、池田さんの自慢にもかかわらず、国民所得がそれほど向上したとは思われない日本国民は、もっと高いエネルギー代価を払って生活をしておるということになる。従って、その結果、国民の日常生活の犠牲の上に立って、大口産業用電力を安くしておるということだ。大口産業用の電力を——宮澤さんは先ほど国民が国の政策のために協力するのはあたりまえだみたいなことを言われたが、国民生活、一般庶民の生活は国際水準よりもはるかに大きな犠牲を払って、大産業、大企業の産業基盤強化のために協力しておる結果が、平均電力料金としては国際的に見て高くないという結果になっておる。従って、この面は早急に是正されなければならぬ立場にありますね。アメリカ人よりも日本人の方がよけい電力料金を払っていいということにはならぬはずですから。従って、この面も是正されなければならぬとするならば、過去の水力を食い詰めた点からいうても、今後エネルギー・コストは上昇こそすれ、最も強力なる政策をとらない限り、総合的な電力料金はもちろんのこと、エネルギーの総合コストは上昇の一途をたどり、そうしてそのことのために、あなたの今度の三十八年度の経済政策大綱であるところの、国際競争力をつくるために、今度の一年間で経済を安定し実力をつけようとする政策は、ここからくずれてくる危険性を持っておる。従って、私は、エネルギー政策だけが国の政策ではありませんみたいな経済企画庁長官の考え方というものは、よほどたたき直してもらわなければ、ほんとうのあなたの作文の今度の三十八年度経済大綱に盛られておるような地力を日本経済につけることは不可能だと私は思う。十分御反省を願いたい。  なお、ついでに、時間もだんだん迫ってきますが、お聞きいたしたいが、総合エネルギーの問題を取り上げる場合には、当然に今電力が中心の柱になってきます。従って、この問題を取り上げられる場合には、巷間にちょいちょい再々編成といううわさが出ていることは御承知通りでありますが、おそらく政府はこの問題にも答える意味で、通産省の中に電力審議会というものを設けて結論を急いでおられる。従って、これを聞いたところで、その結論待ちだと言われるに違いない。しかしながら、経済企画庁長官は、昨年の東北電力料金の値上げに際しまして、再々編成の必要性に触れられたように承っておりますが、どういう観点で、どこに問題があって、その再々編成問題に触れられたのか、念のため伺いたいと思います。
  60. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨年、東北電力の料金値上げを検討しております過程において具体的に突き当たった問題は、よく御承知通り、只見川の水系の電力の利用の問題であったわけでございます。ああいう利用の仕方をいたしておりましたので、東北、東京とも非常に経済的な電力の分け方ができていないということを考えておりました。その前に、それは広域運営によって解決をするという話があったのでありますけれども、それが具体的には、私どもがこうあり得るのではないかというふうには行なわれていなかった。そのことが、具体的に私がああいうことを申しました契機でありますけれども、なお同時に、もっと長期的に考えますならば、先ほどから御指摘のように、わが国の電力は水力から火力に移行していくということも、趨勢としては避けられないことでありますし、さらにこのごろは、火力も相当大きなものができるようになった、また、ハイ・ボルテージの送電ということも可能になりつつあるというふうにも聞くわけでございます。従いまして、今までのように、水力を中心にしたところのわが国の電力の各地区の割り方というものは、そういう技術的な進歩もあって再検討に値するのではないか。こういうことを申したわけでございます。幸いにして東京、東北の場合には、その後東京、東北、電発三者による調整協議会ができまして、只見の電力の割り方を非常に上手に改めていただきましたので、東京にとっても東北にとっても、これは非常に経理上の負担の軽減になったということが出て参りました。従って、その両者に関する限り、あるいは只見の水系に関する限り、私どもは今の状態には満足をいたしております。しかしながら、その他の、申しました将来に起こり得る、おそらく起こるであろう技術的な進歩に伴うところの問題は、やはり残っておる、広域運営その他の形でさらに改善をしていっていただくことが望ましいということは、いまだに考えております。
  61. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 再々編成という問題はたびたび頭を出すわけでありますが、いろいろな意味で政治的なにおいが非常に強いのを私は遺憾とするわけであります。従って、重ねてお伺いしたいのでありますが、問題はいろいろあるのでありますけれども、九つの電力会社の中の経営の格差があることは、御承知通りです。経営の格差是正ということが一つの問題であることも事実であります。同時にまた、電力料金その他の供給条件が、地域によって格差があるということも一つの問題であります。この経営格差の是正という問題が焦点に取り上げられる場合と、それから料金その他の需給条件の地域差の是正という問題が焦点に取り上げられる場合と、その取り上げ方によって再々編成の方向はほんとうは非常に違ってきます。そしてまた、企業形態の問題に触れる場合には、前者のような観点を中心にする場合には、むしろ私企業形態を前提として、私企業形態の安定化の方向を目ざす方向が出てくるのと、もう一つは、逆に後者の問題を中心に考える場合には、企業形態の中に国家権力の介入強化方向がもっと強く出てくる方向とがありまして、御承知のように、再々編成の方向は、目的を今のようなどこに置くかによって、その方向が月とスッポンほど違ってくるような状態に相なる。経済企画庁長官は、もしこの問題を取り上げられたとするならば、今後の方向としては、今申し上げましたところの経営格差是正か、あるいは料金その他の供給条件の地域格差の是正か、どこに集点を置かれるか。形態としては、国家権力の介入強化方向を意図されるのか、あるいは私企業形態を前提としての安定化を考えられるのか、いずれの方向が妥当とお考えになりますか、お考えをお聞かせ願いたい。
  62. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、本来私が有権的にお答えすべきことではないのでございますが、どう考えるかと仰せられますので、考えていることを申し上げるわけでございますが、やはり国家権力がより強く介入するような形での再編成というものは、私ども望ましくないと思います。もとより一定の限度、すなわち、電源開発株式会社等が相当コストの高い部分について国の援助を受けながら開発するということは、これは従来やっておりますし、それでよろしいと思うのでございますが、それ以上に国家権力が介入して電力の再編成をどうこうするということは、適当なことでないというふうに考えておるのであります。そういたしますと、仰せのように、地域格差の是正がもう一つうまくできないではないかという問題は確かに残ります。しかし、この点は、先ほど申しましたような発電、送配電における技術の進歩によって、現在の状態は徐々にではあるが改善されていく方向にある、このような認識を持っております。
  63. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 残った問題を、それを前提にして、石炭問題を少し具体的にお伺いいたしたいのでありますが、念のために総理にお伺いいたします。  今、経済企画庁長官は、方向としては、個人的意見ながら、九電力を中心とする電力再々編成の問題については、むしろ私企業形態の安定化の方向考えたいということでありますから、おそらく国管とか国営とかいう方向でなしに、現在の私企業形態で現状をともかく持っていきたいというお考えのように承りますが、方向としては、総理もそのようにお考えになっておりますか。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、電力再々編成をやるかどうかにつきましては、自分の意見を言ったことはございませんし、また、この問題につきまして、内閣総理大臣として意見を言うことは差し控えたいと思います。
  65. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 ついでに通産大臣にお伺いいたしますが、同じような問題で電源開発会社というのがございます。通産大臣も御承知のように、私ども、ずいぶん通産大臣や大蔵大臣と骨を折ってつくった会社でありますが、大体当初目的では、十年くらいで電源開発の重要なものをやろうということでやった。目的はおそらく一二〇%達成された。私は妙なことを言うようでありますが、政府の似たような公団だとか、あるいは特殊会社だとかいうもののつくられた中で、当初目的を越えて成果を上げたのは、大体電発一つだというくらいにほんとうは思っておるわけであります。しかしながら、大体当初の目的を達成したことは事実であります。従って、今電源開発会社自身にも大きな不安がつきまとっておるし、電力業界にも大きな不安がつきまとっておるのでありますが、電源開発会社の今後の方向について、これは別に有権的な結論をお聞きしようとするのではありませんけれども、通産大臣として、どういう方向に持っていくのがよいのであろうか、大体目的を達成したんだから、この辺で解散でもしてやり直した方がいいのか、継続させるならばどういう方向でこれを持っていくのがベターだとお考えになりますか、お考えをお聞かせ願いたい。
  66. 福田一

    ○福田国務大臣 お答えいたします。  その前に、佐々木さんから専門的な立場で総合エネルギーの問題でるるお話がございましたので、私からも一言だけ申し上げておきたいと思うのであります。これは、誤解を生ずるから申し上げておきたいと思うのでありますけれども、エネルギーの問題というのは、今非常に変化が激しいのでございまして、御承知のように、昔、十年も二十年も同じような形でエネルギーが供給されておった時期と、今日のように科学の進歩、技術の進歩で非常に移り変わりが早い時代とでは、私は、総合エネルギーの対策を立てるといっても、そこに差異がなければならない、こう思うのであります。そういうような意味で、エネルギー自体、今日われわれはいわゆる原子力発電というようなことはまだ実用化されておらないと考えておりますけれども、今後私たちが、今お話しのような電気と石炭と油というようなものでエネルギーを考えておっても、この一年の後に、あるいは二年の後に原子力発電が実用化されないとは言えないと思う。そうすると、今ここで計画を立てておりましても、将来やはりその計画自体に大きな変化があって、それでは実際何をしておったのかと、こういうような御質問をまた受ける事態が起きないとは言えないと思うのでございます。これは単に予想でございますから、そうなると申し上げておるのではありませんが、そこに私はエネルギー問題のむずかしさがひそんでおるのだと、こう考えておるのでありまして、従って、石炭の問題を今度処理いたしました場合においては、そういうような事態が起きる場合も想定して、起きても、石炭については五千五百万トンあくまでも確保して、いわゆる労働問題の解決をはかり、また、そこに働いておられる人たちの安定的な職場をそこに一応求めるのだ、こういう方針を打ち出しておるのでございます。従って、油と電気との関係につきましても、今後油がもっと安く、もっと多量に生産されたらどうなるかというようなこともございますし、いろいろそういう過程考えていくと、これはなかなかむずかしい問題になる。これは、もう佐々木さんのような専門家はおわかりになっておられることと思いますけれども、こういう事情においてこういうお話があって、いかにも政府が何かそういうことに自信がないような考え方を持たれることは、私は国民にとってもやはり不幸だと思うので、これはもうあなたに申し上げておるというよりは、私は国民の皆さんにむしろ訴えたい気持で申し上げておるのでありますが、私たちとしては、あらゆる角度から現在考えられる知恵をしぼって計画は立てますけれども、これは、すべて一応の見通しがかなり入ってくるということだけは、やはりどうしても御了解を願っておかねばならないかと思うのであります。  そこで、私に対する御質問でありますが、今後電源開発株式会社はどうするかというお話であります。私たちが電源開発株式会社をつくることについて非常に苦労をいたしまして、そうしてこれができ上がったことはお説の通りでございます。しかし、その後の経過を見てみますと、確かに当初計画した計画はほとんど実現をしたといっても差しつかえない、あるいはあなたのおっしゃる通り、十二分にやったといっても差しつかえないと思います。しかし、日本にはまだまだエネルギー、特に電気に依存するところは多いのであります。電気といいますか、火力も含めての意味でありますが、そういう場合においては、やはり水力発電というもの、特にピーク時における電力を必要といたしますので、国内に残っておる水系のうちには、相当高価にはなるかもしれませんが、治山治水というような問題も加えて考えた場合には、総合的に見て、まだ開発をすべき地点がないとはいえないと私は思っております。しかし、そういうものがあるからといりて、それだけで電源開発株式会社の目的が十分達成できるとは思っておりません。もとより電源開発株式会社は、御承知のようにつくった電源を各九電力に分けるということも認めておられるのでありますが、しかし、現実の姿から見ますと、佐久間にいたしましても、あるいはまたその他におきましても、送電線等を持ってやはり相当広域運営の一翼をになっておると思うのでありまして、これを解体することが、かえって九電力の中に争いを起こし、あるいはまた無用の混乱を起こさないともいえないと思うのでありまして、一応私たちは、こういうことも考慮しながら、電源開発の国内における使命というものについては、やはり審議会等において十分研究をしてもらうつもりでおります。ただし、これはもう日本の運命ではなくて、世界の動きでございますけれども、一国だけの経済ということはあり得ないのでありまして、だんだん各国との間の経済を緊密にしていくという必要もございますし、電源開発株式会社自体の使命というものから考えてみましても、国内だけに目を向けておるべきときではないのでありまして、海外において電源開発をするような場合に、日本が持っておりますところの技術を十分に海外に出していくということも大きな使命であると考えておりますので、今日までにもそういうようなことをやらせてはおります。やってもおりますが、今後一そうそういう点において強力にその施策を進めさせるように指導をいたしたいと考えておるわけでございます。
  67. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 時間がだんだん迫って参りまするので、簡単に所見を述べながら、質問を展開していきたいと思いまするから、一つなるべく簡潔な御答弁でお願いをいたしたいと思います。  先ほどの電力会社、特に電源開発会社の問題につきましては、通産大臣の御所見もありましたが、私は、もうこの辺でそろそろもっと大きな多目的ダム、格別、お話しのありましたような国土保全を中心といたしまして、農業用水あるいは工業用水に電力を加えるような多目的ダムの建設に、相当目的を変更しても乗り出したらどうか、多分大蔵大臣あたりも反対ではなかろうと思いまするので、一つ十分な御検討をお願い申し上げたいと思います。  格別、この問題につきましては、御承知のように、国土省等の考え方もございまするけれども、河川の改修等を見ましても、役所が国土省的な形で直接やる場合には、目的が非常に広くなりまして、非常に防衛的なやり方にならざるを得ない。積極的な方法をとることは非常に困難でありまするから、その辺の御考慮を一つわずらわしたいと存じまするし、さらにあとに述べるような意味におきまして、石炭火力の問題について、同様に電源開発会社的なものでこれを開拓するという工夫もありましょうから、お考えを願いたい。  第三番には、お話しのような海外の建設に対しまして、もっと積極的な推進ということもあり得ましょう。このような意味で、大きな多目的ダムの建設や、火力、特に石炭火力の開発、それに海外電力の開発等に、電源開発会社の性格変更をしながら方向をきめられてはどうか、参考的な御意見を申し上げながら、御検討をわずらわしたいと思います。  次に、石炭政策を中心にお伺いをいたしたいと思います。  通産大臣の所管でございまするからお伺いいたしますが、今度の石炭対策は、主として電力用の燃料を大幅に上げるということを中心に立てざるを得ない状態で立てられておりまするが、特別、石炭の需要拡大の問題の中で、電力用炭を増加するということが中心の、まあまあ可能性のある方法のように感ぜられております。その場合には、電力コストの上昇を当然に来たすのでありまするが、これに対する措置は、料金あるいは電力コストを上げないようにというのが有澤報告の結論でもございまするので、どのような方針考えられておるか、端的にお答え願いたいと思います。
  68. 福田一

    ○福田国務大臣 お答えをいたします。  石炭を使ういわゆる消費者といいますか、そういう面から考えてみますと、油の経済性、あるいは便利なこと、軽い等々、いろいろの理由によりまして、一般のエネルギーの需要はどうしても油の方へ向かう可能性がありますから、やはり石炭をどうしても使ってもらうということになれば、比較的政府の意図の徹底できる電力とか、セメントとか、鉄鋼とかいうところへ重点を指向せざるを得ないことは、あなたのお説の通りでございます。特に電気の場合が一番使わせやすいというとおかしいが、使ってもらいやすいことになりますので、そういう方向において需要の確保に努力をいたしておるのであります。その場合に、石炭のいわゆるエネルギー・コストが高いために、電力料金に及ぼす影響ということを御指摘になっておるのはごもっともと思うのでありますが、私たちといたしましては、これについては、いわゆる関税の還付という御承知のような措置をとりまして、そうして電力に十分使ってもらうようにしようという考え方であります。もちろん、その場合において、電力が損失を受けるのは幾らであるか、また、その損失を完全にカバーしておらなければ電力料金にはね返るのではないかというお考えがあるかと思うのでありますが、しかし、電力会社というのは、一応公益事業でもございますので、いろいろのこともあろうし、また、企業の合理化等も今までやってもらいましたけれども、今後も一つ企業の合理化をやってもらって、できるだけそういう意味でその損失を吸収してもらって、電力料金の方へあまり影響のないように処置をするように指導をいたして参りたい、かように考えておるわけであります。
  69. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 三十八年度におきましては、二百五十万トンをプラスして二千五十万トンを火力にたけ、大体こういう計画の内容が伝わっておることは、御承知通りであります。現在の火力設備の現状から見まして、これがほんとうにたけるかどうかというのが、今度の石炭産業の安定化政策のおそらく肝心のかなめになろうかと思います。御承知のように、二百五十万トンの炭をたく、特にそれを増加してたくということは相当の問題でありまして、三十八年度に運転を開始するところの火力発電所は三百三十万キロもありますけれども、そのうちの二百五十万キロというのは重油専焼の設備でできております。従って、新たにふやして二百五十万トンたくというのは相当の問題でございます。従って、幾ら協力要請といいましても、先ほどの再々編成の問題のときにも経企長官からお話がありましたように、現在内閣としては、大体電力会社の私企業形態は今のままにしておいて、少なくともことしや来年においてはそのままにしておいて、そのような石炭消費の目的を達成しようというお考えであろうかと思いますけれども、御承知のように、私企業経営者としての電力業者に協力を求めても、その限界がはっきりあると存じます。この限界を越えてといいますか、二百五十万トンを消費させるための何らかの強制的な措置をお考えになっておられるかどうか。四十年以降になりますと、新しい石炭の火力発電所でもつくらなければこれは消化できない段取りに相なりますが、新しく四十年以降については火力発電所、特に石炭火力発電所を建設するのか、その石炭火力発電所の建設も、また私企業経営者に対して協力要請をしてやるのか、その場合の財政的な裏づけを考慮されての計画であるのかどうか、簡単にお答え願いたい。
  70. 福田一

    ○福田国務大臣 お答えをいたします。  お説の通り、この問題は、電力業者としても相当な問題であり、また、これは強制し得るものでもないのであります。そこで、政府といたしましては、今言いましたような措置をとることによって幾部分——三十八年度においては大部分でありますが、一応補償するという形をとるから、ぜひ二百五十万トンよけい石炭を使ってもらいたいということについて要請をいたしました。そうして電力業界においていろいろ相談した結果、そういうような措置をとってもらうのならば応じましょう、こういうことで実は話がついておるのでありますが、お説の通り、三十八年度にできる火力発電所は、石油専焼が非常に多うございますので、混焼率を、石炭をよけいたくというような非常な不便もございますが、とにかく協力をしてくれることになりました。それから四十年、四十一年等においてだんだん石炭をたくことを要請しておるのでありますが、その場合においては、何といっても混焼の火力をやること、それから地元等における専焼火力ということも問題になりましょう。そういう場合においても、経済性がある意味で無視されておるのでありますから、政府といたしましても、これが電力料金にはね返らないように考えていきます場合には、ある程度財政資金等の裏づけというか、供給等も考慮をしていかなければ困難ではないかと私は考えております。そのような意味で指導をいたして参りたいと思っております。
  71. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 先ほどの総合エネルギー政策の場合に申し上げましたように、との辺で具体的な石炭政策を、今政府が出されておるような有澤報告を中心としてやろうとする場合には、相当長期の心がまえと見通しと準備がなければ、これは不可能であります。従って、私は、当面の思いつきでやるのか、基本的にやろうとするならば、総合エネルギー政策の裏づけを持って行なわなければ不可能だという点を特に指摘いたしたわけであります。特に今申し上げましたように、私企業経営者におきましては協力の限界がある。特別に経済ベースに乗らないところの火力をたこうとするのならば、新しく四十年以降になりますと建設しなければならぬというわけでありますから、はっきりとその財政的な裏づけが前提となってのみ、この計画は安全性を持ってくる。時間的な余裕がありませんので、追及をやめますけれども、四十年以降になったらどうせ今の内閣は続いておるわけはないから、まあまあそのときはそのときだみたいな話でありますと、石炭産業の今の安定化政策は根底からくつがえされることを御了承願いながら、政策の裏づけをお願いいたしたいと思います。  それから、電力業者に対する強制はしないと言われますけれども、鉄鋼やセメント等への協力要請と、ほんとうは私企業でありますから同じでなければならぬ。しかし、実際には相当な径庭がありますことは御承知通り。それを通産大臣は今公益事業だからということでありますけれども、公益事業は公益事業としても、私企業であることは事実であります。従って、私が特に石炭問題の中で電力問題を取り上げますのは、同じように二百五十万トンの石炭の増加消費を電力に要請されておりますが、同様な性格で、たとえば鉄鋼におきましても、七百万トン計画に対して百十万トンよけい使ってくれ、百十万トンの増加消費を要請されておるはずでありますが、鉄鋼の現状はとてもそれをのみそうにないと私は考える。鉄鋼業界のこれに対するこたえ方も非常に冷淡な状態でありますことは御承知通り。そうすると、はやここに百十万トンの穴があいてこざるを得ないということになると思います。その百十万トンの穴もあく。同じような私企業への要請であるなら、電力にのみ半強制的な——これは言葉が悪かったならば御訂正を願ってもけっこうでありますが、立場は同じように私企業への紳士的協力を要請しながら、裏におきましては、いろいろな意味での行政的報復手段みたいなものを裏づけにした官僚統制的な強制が行なわれる危険性が非常にあることを、私は指摘いたしておきます。おそらくことしくらいなところは泣き寝入りするでありましょうけれども、問題は決して解決されるものではありません。石炭の需要確保のためには、この辺に対して基本的な再考慮を必要とすることを指摘するものであります。  さらに、石炭問題の第二番目といたしまして、これは今度どうせ法案が出ましたから、具体的に質問を申し上げたいと思いますけれども、合理化臨時措置法の改正を用意されておりますが、その合理化措置法の中で基準価格の設定を考慮されておるやに承ります。基準価格の設定ということは、従来の標準価格では炭価の安定という目的が達成できないから、基準価格を採用されるのでありましょうけれども、この基準価格というものを少し今度は厳格にやろうとするならば、当然にこれはかつての公定価格的な形になってくると思います。今予想されておるところの基準価格という制度は、大体標準価格の焼き直し程度のものを考えられておるのか、あるいは公定価格的な相当内容を持った、強制力を持ったものをお考えになっておるのか、見当をお聞かせ願いたい。
  72. 福田一

    ○福田国務大臣 今やっております標準価格程度のものを考えておるわけでございます。
  73. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 標準価格程度のものであるとするならば、標準価格というものは、もう取引の終わった年度末にようやくきめられるかきめられないくらいでありまして、炭価の安定にはほとんど効果を持っておりません。従って、その程度のものであるならば、今度の国会でも焦点になっておりますところの石炭の安定化政策に対して、おそらく将来的な見通しは私は暗たんたるものがあると思います。その点に対する反省を求めるものでありまするが、同時に、それにもかかわらず、要綱で承知するだけでありますが、電力用炭の確保については、電力用炭のための精算会社法というものを出されようとしておる。この精算会社法の中で、報告義務を課して、その報告義務は相当こまかく、都合によってはカロリー別、銘柄別あるいは消費地別くらいにこまかい取引の価格の報告義務を求められるという話を聞いております。しかも、その報告義務は単なる報告ではなくて、当然に基準価格を維持するための手段であり、基準価格を相当に下回って取引された場合には、その基準価格に近づかしめるための事実上の値上げ勧告を行ない得る権限が合理化改正法には残されておる。従って、最も悪意に解釈するならば、臨時措置法の改正法という根本法においてはまあまあ標準価格の焼き直しみたいなぼうっとしたもので、毒にも薬にもならぬくらいのものをつけて、しかしながら、手段としては、基準価格を非常に下回った場合には、通産大臣は値上げの要請をでき得るという権限だけを留保している。しかしながら、それの実際の発動は、電力用炭についてのみ報告義務の形で、明細な、厳格な内容を求められて、そして基準価格的な価格の強制を電力にのみ行ない得る可能性が出てくると思いますが、通産大臣は、この際、電力用炭にのみ特別のそのような強制措置はとらない、むしろ電力へのそのようなしわ寄せはしないという言明ができますか。
  74. 福田一

    ○福田国務大臣 ただいま法案の内容を作成中でございますから、ここで明言することは避けますが、しかし、私は、そういう考え方であの法律をつくる意思はないのでありまして、従来のいわゆる、今一応千二百円引きという形で炭価をきめておりますが、その形において今各電力会社においても取引をいたしておるのであります。しかしながら、今度そういうような会社をつくって、いわゆる経理を明らかにすると言いますか、どういうような売買が電力会社との間に行なわれているかということを一応計算するというか、報告をさせることになりますけれども、その場合において、私はやはり炭価というものはある程度安定させる。そんなにむやみに安い炭価にしておいたのでは、私は石炭鉱業の合理化というものはないと思います。だから、常識的に考えてみて、非常に安いというようなものがあれば。炭価を引き上げるということも、やはり勧告をする場合があり得ると思います。と同時に、今度はまた石炭の単価が非常に高くなってしまうというような場合、そんなことはまあないと思いますが、そういう場合においても、やはりこれは何らかの形において安定さしていくということが必要と考えておるわけでありまして、今御心配のような点については、法案作成にあたりまして十分注意をいたして参りたいと思います。
  75. 塚原俊郎

    塚原委員長 佐々木君に申し上げますが、申し合わせの時間が経過いたしましたので、結論をお急ぎ願いたいと思います。
  76. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 急いでやります。  先ほど総合エネルギー政策でちょっと触れましたけれども、石油関係では、昨年の暮れあたりに、標準価格をつくっても実際政治的な値引き取引が行なわれて、これは意味をなさぬから、この標準価格をさえもやめようじゃないか、標準価格撤廃説さえ出ておると聞いております。一方におきまして、石炭の場合には、標準価格では工合が悪いから、もっと具体的な基準価格を設定しようとせられておる。私は完全に一律であることを要請するものでありませんが、バランスあるエネルギー政策をとられんことを要望するわけであります。  なお、先ほどの負担増を補う措置として石油関税の還付の問題を出されましたので、大蔵大臣に端的にお伺いをいたしたいと思います。  予算書によりますというと、大体今度の石油関税の値上げで五十六、七億、それの中から電力、鉄鋼などへ還付額を大体十五億程度と考えられておるらしい。そうすると、電力というのは十二億程度になりますか、それでもって今度の負担増がまかない得るか、この問題は相当に問題があろうかと思います。しかしながら、まあまあことしあたりそれが出たところで十億か二十億か、大したことはなかろうと思いますが、そもそも石油関税の還付というやり方で、石炭をたくための、言うならば報償措置のようなものをこういう制度でやっていいかどうか。御承知のように火力というものは出水率及び電力需用という非常に不確定な要素を持っておるものでありますから、それによって火力をたいたり、消したりするわけであります。そうすると、重油にいたしましても、石炭にいたしましても、そこに非常に変化が出てくる。そういう状態であるのであります。同時にまた、石炭をたくことに協力すればするほど重油をたくことは減るわけでありますので、従って、石炭をたくことに協力すればするほど報償的な形の還付金額は減る。何のことはない、何だかこう寄せたり引いたりしておると、大蔵省の頭のいいところはわかるかもしれませんが、われわれから見ると、さっぱりわけがわからぬ。石炭をよけいたけといって、石炭をよけいたかせたら、その報償金みたいなものが減っていくというような、まことに奇妙な制度である。しかも、御承知のように、先ほど来四十五年度という基準年度を見ますと、その場合、予定通りに石炭をよけいたけということになりますと、それはおそらく負担増は百五、六十億をこえるというそろばんが出ましょう。その百五、六十億をこすような負担増に対して、五、六十億しか財源がないような還付でこれを補なうというのは、どう考えてみても話がおかしい。このくらいのところで電力の負担増を何とかしょうということは、もう一つさかのぼって考えるならば、また電力に対する石炭需要の要請増加割当も、ほんとうに長期の見通しを持ってたかせようという要件ではないのではあるまいか。ほんとうにたかせて、しかも有澤報告通りにコストの上昇を来たさせないような行政措置をとるというので、その手段が戻し税だということであるとするならば、どうしてもつじつまが合わなくなってくる。戻し税という制度でない、根本的な制度でもって、負担増をはっきりと処置するという方針をとられて、そうして石炭安定化政策に資しようとせられるのか、石炭の需要確保も、まあまあことしぐらいのところで、先はまだまだどうでもいいわというぐらいのところで出発されておるのか、石炭産業従事者は、今度の計画の内容を具体的に見れば見るほど非常に不安定な感じを持たざるを得ない。同様な意味におきまして、それを使わせられる電力会社の方も非常に不安を禁じ得ないわけでありますから、そういうような観点から、この石油の関税の還付という方法は根本的に再吟味される意思ありやなきや、大蔵大臣にお伺いいたしたいと思います。
  77. 田中角榮

    田中国務大臣 関税率引き上げにより戻税の幅を広げたわけでありますが、この問題に対してはいろいろな議論がありますことは、申される通りであります。またこの戻税という措置そのものが非常に特別の措置でありまして、このようなものを他の産業に及ぼすというような考え方を大蔵省としては持っておりません。ただ、なぜこのような措置をとったかというと、石炭産業の危機打開という前国会からの非常に重要な段階を前にして、特別財源をつくって石炭産業に対しての措置を行なうということにつきまして、かかる措置をとったわけであります。今年度電力に戻税する分は、おおむね二十億と考えられるわけでありますが、三十七年、八年というような状態においては、石炭を増量してたく分に対しての補償的な問題は解決すると思います。  なお、電力業界と通産省との間にも十分意思の疎通をはかり、協力的態勢のもとに電力業界もこれを受けておるわけであります。しかし、あなたが今言われた通り、将来の石炭をどのようにして電力にたかせるかという問題、また電力が法律その他でもってたかなければならないというような状態が出た場合、一体その差額をどのような方向で補償し、補てんをするのかという問題は、先ほどの電発の問題等もありましたが、政府部内においても慎重に考慮をいたしております。また、全国的な送電線の問題はどうするとか、これから私企業形態でもって開発不可能である——ペイ・ラインから遠いという電力一千万キロに対して、電発を利用するのか、どのような資金的措置をとるのかという電源開発そのものに対する問題もありますし、また九電力自体のこれからの開発の問題もありますので、それらとあわせて、あなたが先ほどから言っておられるいわゆる総合エネルギー対策という線を検討し、それにあわせてこれらの問題を解決するということで、こまかく政府部内でも検討いたしておりますが この戻税措置は、三十八年度の予算編成に対して、また前回の臨時国会から石炭企業に対して政府がとらなければならないやむを得ざる措置として行なったわけでございます。
  78. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 時間がありませんので、最後のこの発言で終わりたいと思います。結局、結論を得ないようでありますが、端的に意見を申し上げておきたいと思います。  今の石油関税の戻税というようなものは、今度の場合でもせいぜい十億見当の補てんということになる。しかもこの手続たるや、御承知のように非常にこんがらがったものであります。むしろ、この手続をやるための人件費で十億やそこら食ってしまうのではあるまいかと思われるほど、手続はまことに煩瑣なものであります。しかも、その目的たるや、今言いましたように、石炭をたけばたくほど減っていくみたいな、実に不可解なものでありますので、根本的な吟味をされんことを望みます。もし石油関税等の関税財源措置に充てられるならば、私は、はっきりと一般会計にほうり込んで、一般会計の中から、今度はむしろ石炭産業安定のためにははっきりと価格差補給金的な制度を考えられて、そして、他の産業とのバランスもあろうけれども、石炭産業の安定という看板を言う通りに実施するならば、そのような確固たる政策を立てられることが、何よりも誤解を解消し、そうして石炭産業並びにエネルギー関係の安定化のために必要だと思いますので、言われるような御検討を特にお願いを申し上げたいと思います。  さらに最後に、電力用炭を確保するという問題を中心に、石炭の需要確保の問題について、私は率直に、私企業の九電力に対しまして、だれが責任を持って、どこに損がどう行くのかわからぬようなやり方で増加石炭を食わせるということは、責任の所在を最も不明確ならしめ、電力も石炭を混迷に陥る危険性があるので、そのような方針は一日も早くやめられて、根本的に、はっきりと責任の所在が明確になるような政策を立てられんことを望みます。そのためには、私は、原則としては、新らしくふやすところの石炭、増加石炭に対しましては、これを国家あるいは国家に類するような責任の所在の特別法人をこしらえて、大体原則的には産炭地発電になろうと思いますけれども、言うならば、電発あるいは第二電発的な機構でもってその責任を完全に消化するという方針を打ち立てられ、それによって料金が上がるならば、その料金の上がる面に対しては、建設費やその他の方法でもって政府が直接にめんどうを見て、電力料金のコストを上げないという措置を講ぜられて、そうして電力界における責任と石炭消費のための火力発電という責任とを、はっきりと分けられる措置考えられんことを提案をいたします。同時に、電力会社のコスト低下という問題は、最初の話のように緊急の問題でありますから、私は原則として、九電力業者が今の企業形態であります限り、火力用の燃料というものについては、従来通りにコストを力いっぱい引き下げるためには、重油あるいは原油を中心とする技術的な改良を力いっぱいやれるような、企業努力が十分にやれるような措置を講ぜられたい。そういう方針で力いっぱいコストを下げる。片一方において、石炭をたかなければならぬのを、政府の責任をもって、これだけは電気に石炭をたいて、はっきりとこれを消化する。そうしてコストが一般のエネルギーコストの上昇にはね返らないように、政府の段取りを責任を持って立てる。こういう建前で責任を明らかにする措置を早急に立てられて、そうして初めてこの石炭政策の裏づけができると思いますので、そのような措置を一日も早く立てられんことを強く要望申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  79. 塚原俊郎

    塚原委員長 午後は一時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ————◇—————    午後一時五十七分開議
  80. 塚原俊郎

    塚原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十七年度補正予算三案に対する質疑を続行いたします。  横路節雄君。
  81. 横路節雄

    ○横路委員 池田総理にお尋ねしますが、けさ午前八時半から約二時間近くにわたって、総理は今回来朝されているギルパトリック、アメリカの国防次官と懇談されているわけです。このことにつきましては、第二次防衛計画との関係で非常な関連もございますし、それで、この際一つ委員会を通じて、総理とギルパトリック国防次官との間に一体どういう話をされたのか、合意に達した点があれば、その点について一つお尋ねしたいと思うわけです。いずれこの問題は、あとで防衛庁長官にもお尋ねします。
  82. 池田勇人

    池田国務大臣 今朝八時半から十時まで約一時間半、ギルパトリック国防次官と話をいたしました。その内容につきましては、主としてアメリカ政府の見たキューバ以後の国際情勢の説明、そうしてまた、アメリカ政府態度の説明が過半を占めております。日本との関係につきましては、安保条約の趣旨に沿い、お互いに日本の防衛について協力し合おう。そうしてまた、経済的にもいろいろ今後密接な話を続けていこう。自分が今回ここに来たのは、イタリアあるいは西ドイツヘの旅行の途中であり、やはり先般は防衛庁長官がアメリカに来られていろいろ話をした。数カ月たったから自分がこちらに来て関係大臣、ことに私と話をしたいというので来られた、こういうことでございます。
  83. 横路節雄

    ○横路委員 国防次官のギルパトリック氏は、アメリカにおいては中共封じ込め戦略の権威である。中共問題について、新聞の伝えるところによれば、中共に対する評価が日本は甘過ぎるのではないか、こういうように新聞では伝えているわけです。その点につきまして、今朝の会談では、中共に対するところの池田内閣のとっている方針アメリカの今日とられている方針、そういう点について指摘はなかったのかどうか、その点についてお尋ねしておきます。
  84. 池田勇人

    池田国務大臣 私からは中共の問題は一切出ません。向こうからは、極東の情勢につきまして、中共という言葉が一つぐらいあったかとも思いますが、中共と日本との関係、あるいは中共の核兵器の問題、これは一切出ません。
  85. 横路節雄

    ○横路委員 私は、今の池田内閣の方針は、アメリカ相当程度満足を与えていると思うのです。それはなぜかといいますと、これは去年の八月五日の各新聞に一斉に報道されたのですが、防衛庁としては陸上、海上、航空の統合作戦を強化して円滑にするために、統合戦略教範というのをまとめた。この中に「核による攻撃に対しては米軍の間髪入れぬ核報復力に依存しており、核兵器の持ち込みには弾力的態度をとっている。」弾力的な態度をとっているというのは、これはまあ新聞の書き方であります。しかし、三十五年にこの場所で、日米安全保障条約について私どもといろいろ議論した場合において、当時の自民党内閣、岸内閣としては、このアメリカの核兵器の持ち込みについてはしごくあいまいである。私はこれから指摘をしたいと思うわけです。それはどういう点にあるかといえば、今日すでにアメリカの極東戦略体制の一環として、沖縄に核弾頭付のナイキ・ハーキュリーズが設置をされている。さらにメースBがすでに設置をされている。さらに今度は、ジェット戦闘機の核弾頭付戦術爆撃機F105型がすでに配置をされている。すでに沖縄核兵器によって全島を装備されておるのであります。この点については、池田総理、何か、それははなはだ遺憾である、潜在主権が及んでいるのだから遺憾であるとか言ったことがありますか。全部黙認しているではありませんか。こういう態度は、今私が指摘をした去年の八月五日の新聞に全部報ぜられている。防衛庁が統合戦略教範をまとめたときにおける一貫した態度として、核攻撃に対しては米国の間髪を入れぬ核報復力に依存をしている。こういう点からいって、池田内閣のアメリカに対する核攻撃力に依存している態度は明確だと思うのです。この点について、総理、何かアメリカ側に対して、核兵器によって沖縄全島をそういう基地にすることははなはだ遺憾であるとか、そういうことについて言ったことがありますか。それを受け入れているではありませんか。これは、アメリカ側としてはしごく満足をしていることだと私は思うのです。
  86. 池田勇人

    池田国務大臣 沖縄にアメリカの施政権があるので、これは施政権をアメリカが持っているその当然の帰結だと思います。これは全体的には、ソ連であろうとあるいはアメリカであろうとイギリスであろうと、核実験禁止と同時に、核兵器を使わないようにということはわれわれの悲願でございます。沖縄に施政権を持って、そしてアメリカがその施政権に基づいていろいろな装備をすることは、これはとやこう言う筋合いのものじゃありますまい。
  87. 横路節雄

    ○横路委員 ただいま神戸に第七艦隊の航空母艦キティホーク八万トンが入っておるのです。これは三十七年の十月に完成したばかりの新造艦で、搭載の艦載攻撃機は約百機です。これは私先ほど防衛庁で調べたわけです。このうちにある攻撃機でA3Dダグラス・スカイウォーリアー、これは核兵器を含む大型の爆弾を持つ攻撃用の爆撃機です。さらにそれに積んでいるA4D2N、これはダグラス・スカイホーク、攻撃用の軽撃弾機ですが、これはスパローを積んでおります。スパローは核弾頭可能であります。池田総理、この点についてあなたの方は、第七艦隊の八万トンの空母のキティホークに核兵器が積んであるじゃないか、どうなんだと言ったことはないでしょう。言ったことはないじゃないですか。第七艦隊は、御存じのように無制限に別に連絡しなくてもはいれるが、全部こういうように装備をやっているわけです。この点について、池田内閣としては何か在日米軍に対して、そういうことはいかぬじゃないか、どうなっているんだと聞いたことありますか。
  88. 池田勇人

    池田国務大臣 たびたび申し上げておるがごとく、何艦隊であろうと核兵器の持ち込みはわれわれはお断わりする、こう言っておるのであります。  御例示されました問題につきましては、関係当局よりお答えさせます。
  89. 横路節雄

    ○横路委員 それじゃ防衛庁長官、一つ答弁して下さい。関係当局ってあなただ。あなた調べたことありますか。
  90. 志賀健次郎

    ○志賀国務大臣 ただいまのお尋ねのことは十分承知いたしておりませんので、後刻調査をしまして申し上げます。
  91. 横路節雄

    ○横路委員 一体私たちは、日米の安保条約締結の際に、いわゆる地位協定で、第七艦隊入港に際しては、核兵器を持ち入まれてもこれを査察することはできないではないか、こういうように言っていたのです。現に、これはけさ私は調べたのです。神戸に八万トンの空母のキティホークが入っているじゃないか。このそれぞれの艦上攻撃機に全部核兵器を、核弾頭付の爆弾を持っているじゃないか。どうなんです、長官。
  92. 志賀健次郎

    ○志賀国務大臣 専門的なことでございまするから、防衛局長から答弁いたさせます。
  93. 横路節雄

    ○横路委員 防衛庁の長官、私もこの点についてあいまいなことを聞いてはいかぬと思いまして、世界で一番権威のある——これは国会図書館から借りてきたのです。航空年艦で「ジェーン」という一九六〇年から六一年にかけてイギリスで発行したものです。全部調べたのです。これは核弾頭がついていますよ。防衛庁の長官にお尋ねしますが、あなたの方では査察をしましたか。第七艦隊について、この空母のキティホークについて、核弾頭がついているとかいないとかいうことを確かめましたか、そのことを聞いております。
  94. 志賀健次郎

    ○志賀国務大臣 これは従来からわれわれは固く約束をいたしておるのでありますが、核兵器は絶対に持ち込みしないという約束をいたしておるのでございまするから、アメリカを信頼いたしておるのであります。従って、キティホークが核弾頭を持っておるとは思いません。   〔発言する者あり〕
  95. 塚原俊郎

    塚原委員長 静粛に願います。
  96. 横路節雄

    ○横路委員 長官にお尋ねしますが、ただアメリカを信頼しているだけですか。何か特に確かめましたか。長官に確かめましたかと聞いているのです。長官、一つ答弁してくれ。確かめましたか。
  97. 志賀健次郎

    ○志賀国務大臣 これは確かめるまでもなく、従来から固い約束をいたしておるのでありまするから、絶対に核兵器は持ち込んでおらないと固く信ずるのであります。
  98. 横路節雄

    ○横路委員 長官にお尋ねしますが、私の聞いているのは、確かめましたかと聞いているんだ。その答弁をして下さい。確かめましたか。
  99. 志賀健次郎

    ○志賀国務大臣 信頼いたしておるのでありまするから、あらためて調査をする必要がないのであります。
  100. 横路節雄

    ○横路委員 長官、あなたの答弁は違うのです。査察する権能がないから確かめることができません。あなた、何を言うのです。信頼を置いておるから確かめないのではないのです。じゃ私あなたに聞くけれども、今度は、確かめる権能がありますか。
  101. 志賀健次郎

    ○志賀国務大臣 これは外交ルートを通じてやることでございまして、防衛庁長官の所管以外のことでございます。   〔発言する者多し〕
  102. 塚原俊郎

    塚原委員長 発言が聞き取りにくいので、不規則発言は御遠慮願います。
  103. 横路節雄

    ○横路委員 防衛庁長官、それはだれの権限ですか。確かめることはだれの権限です。あなたにお尋ねします。それじゃ確かめることにだれが権能を持っているのですか。それはだれです。
  104. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、日米両国間で持ち込まないという外交上のかたい約束でございますから、確かめることはいたしません。
  105. 横路節雄

    ○横路委員 いや、総理大臣先ほどお答えのように、防衛庁長官は確かめるのは私の権限ではない、ほかの人だと言うから、それはだれですかと聞いている。総理大臣、それはだれですか。
  106. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、今総理からお答えいたしました通りに、安保条約の付属の事前協議の交換文書で、事前協議の範囲をきめておるわけでありまして、それ以外のものについては、地位協定に基づいて施設区域を提供しておるわけで、その施設区域に出入することにつきましては、先ほど横路委員がおっしゃった通り手続になっております。従いまして、これに基づいて、これは国際間の約束でございますから、一方が一方を強権的に検査し、査察するというようなことは約束しておりません。従いまして、そういうことはやらないわけであります。これは結局国家間の信頼問題だと思います。で、先ほど防衛庁長官が自分の権限でないとおっしゃった意味は、ほかに権限があるという意味でおっしゃったわけではないと私は思います。
  107. 横路節雄

    ○横路委員 防衛庁の長官にお尋ねしますが、在日米軍について、これもあなたの方の資料で調べたのです。いいですか。私がここで言うことは、一切私の資料ではないです。あなたの方から提示してもらった資料でやる。まずここで問題になるのは、これは総理に最初に聞いておいてもらいたいが、グアム島には第三航空師団のB47を主体とした戦略空軍があります。これもやはり核装備をしているのであります。沖縄しかり、グアム島しかりです。ところが青森県の三沢の基地の第三十九航空師団はF101、F102がある。横田基地の第四十一航空師団はF102が主たる装備である。このF102については、ファルコンという空対空のミサイルが装備されている。いいですか、志賀長官、このF102に装備されているファルコン、この空対空のミサイルは核装備をしているのです。この事実はどうですか。
  108. 志賀健次郎

    ○志賀国務大臣 ただいまのお尋ねにつきましては、核を装備いたしておりません。
  109. 横路節雄

    ○横路委員 それでは長官、あなたは、今度は自信を持って、核装備をしていないと言われた。それは調べたのですか。長官にお尋ねします。
  110. 志賀健次郎

    ○志賀国務大臣 先ほど総理からもお答えがあり、また法制局長官からもお話がありまして、これは相互信頼の上に立って、持ち込まないということにきめてあるのでございますから、これを信頼いたしているのであります。従って持ち込んではおりません。
  111. 横路節雄

    ○横路委員 長官、あなたは何を言っているのですか。あなたの方ではないけれども、防衛年鑑にこう書いてある。毎年防衛庁を通じて防衛年鑑が出されている。この中に各国のミサイルの状況について詳細に出ているのです。この中に空対空のミサイル、ファルコンはちゃんと核装備をすると書いてあるじゃないですか。  もう一つあなたに言っておくけれども、板付基地の第四十一航空師団はF100Dが主装備である。F100Dについては、これも同様にブルパップという空対地のミサイルで核装備をしているではありませんか。こればかりではない。先ほどあなたに指摘をしたジェーンという航空年鑑、これは世界で最高の権威がある。これにもちゃんと記載してある。あなたは、その板付における第四十一航空師団のF104D、これについては核装備をしていない、あるいは三澤の基地の第三十九航空師団のF102については核装備していない、空対地についてはないということは何で確かめたのですか。
  112. 志賀健次郎

    ○志賀国務大臣 御承知通り、ミサイルには核装備をするものと普通弾頭と二種類ございまして、核を装備しないミサイルと承知いたしているのであります。
  113. 横路節雄

    ○横路委員 総理、お聞きのように、ただ在日米軍を信頼する以外にないと言っている。しかし、先ほど私が指摘をしましたように、神戸に今入港している航空母艦キティホーク八万トンは、去年の十月に就航したばかりで、第七艦隊が全部核装備をしていることは明らかなんです。そればかりではない。今私が指摘をしたように、青森県の三澤の基地や、横田の基地や、板付の基地について、すでに空対地のミサイルについてはそれぞれ核装備をしている。核装備をしていなければわざわざこういう年鑑に御丁寧に書く必要はない。どうせこういう年鑑も、ジェーンという航空年鑑その他からこれを転載しているのです。今のこの激しいアメリカの極東戦略におけるいわゆる核の戦略体制の中で、そんな甘い考えで、アメリカに信を置いているからそれでいいのだ、こういうような考えでおやりになっているということは、言うなれば、アメリカの言いなりに盲従しているということ以外に私はないと思うのです。しかし、きょうはこのことが主たる目的ではありませんから、この核装備の問題はこの程度にして、次に移りますけれども、池田内閣のこういうやり方では、国民は、ごまかし以外に何ものもない、こういうように感ずると思います。  そこで長官に、その次です。あなたもギルパトリック氏に会っているわけで、そのときに当然いわゆる日本の自衛隊に対する軍事援助の削減の話があったと思うが、その削減の話があったかどうか。削減の話があったその場合における防衛第二次計画については、これを修正しなければならないと思う。修正しなければ日本国自体の負担が増してくる。この点についてはどうなっていますか。会談では、お話の点はどうなっていますか。
  114. 志賀健次郎

    ○志賀国務大臣 会談におきまして、援助費の削減の問題についてあらためて話はなかったのであります。ただ、私が昨年の十一月に渡米いたしましてマクナマラ国防長官と会談しました際に、従来アメリカ日本に対して約束した分については完全に履行するけれども、新規のものについてはあまり期待されては困るというお話がございまして、その話を昨日確認というか、話し合っただけでございまして、具体的に削減の問題については触れなかったのでございます。従って、今後の二次防の問題でございますが、アメリカの六四年の予算の編成の推移などを見なければ、アメリカ日本に対する援助の中に含まれておる規模がどういうものであるか全然把握できないのでございまして、今後の状況を見た上で検討いたしたいのでございます。
  115. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、第二次防衛計画については別に修正しなくてもいい、日本の今までの既定方針通りの防衛費で間に合う、こういう意味ですね。あとで防衛計画の変更があったり、あとで増額修正があると大へんですよ。
  116. 志賀健次郎

    ○志賀国務大臣 ただいま申し上げたように、アメリカの対日援助の内容が全然不明でございまして、おそらく今年の八月以降にならなければ日本に対する援助の内容というものは把握できないと思うのであります。それらを見た上で検討したいと思うのでありまして、ただいまここで、修正しないとか、あるいはするとか、そういうことは申し上げるような段階ではございません。
  117. 横路節雄

    ○横路委員 長官に次に、お尋ねしますが、第二次防衛計画のうちで非常に大きいのは、F104Jの戦闘機の配置の問題、それからナイキ、ホークのミサイルの問題、そのうちのナイキ・アジャックスについての一個大隊は、去年の十一月一日から東京周辺に行なわれているわけだが、ナイキの第二大隊については、何年にどこに置くのか、あわせて聞いておきます。ホークの二個大隊については、何年にどこに置くのか、こういう点を一つ長官から明らかにしていただきたいと思います。
  118. 志賀健次郎

    ○志賀国務大臣 ナイキ大隊は、四十年度を目途に北九州北区に設置するように目下検討中でございます。またホークの大隊につきましては、三十九年——四十一年にわたりまして、北海道並びに関東地区に建設する計画を目下研究中でございます。従って場所はまだきまっておりません。
  119. 横路節雄

    ○横路委員 長官にお尋ねしますが、ロッキード戦闘機F104Jについては、二百機ということで国会では審議をしたはずです。ところがこのごろ、第三次防衛計画との関係、あるいは航空会社との関係等において、このF104Jのロッキード戦闘機は百機ないし五十機さらに追加生産をさせてもらいたいというような要求があるように聞いている。この点は二百機で打ち切るというように国会で答弁しているが、その点はどうですか。
  120. 志賀健次郎

    ○志賀国務大臣 ただいまのお尋ねのF104ジェット戦闘機の追加生産については、私全然聞いておりません。
  121. 横路節雄

    ○横路委員 それでは長官、聞いてないというなら、しないのですね、その点、明確にして下さい。しないのですね。国会では二百機でとどめるということで承認を得てあるのだが、その点はしないですね、明確にしてもらいたいのです。
  122. 志賀健次郎

    ○志賀国務大臣 ただいま申し上げた通りでございまして、将来のことはわかりませんが、当初計画した通り、二百機生産に全力を傾倒いたしておる次第でございます。
  123. 横路節雄

    ○横路委員 この問題は、第三次防衛計画の中で、F104Jについては五百キロ爆弾を搭載できる、航行距離は四千キロメートルに及ぶという。そうすると、第三次防衛計画の中では、戦術原爆攻撃機に十分かえる可能性がある。従って私どもは、最初から二百機の生産であるという国会で論議をした点については、それを確認しておきたいと思うのです。  次に、私は長官にもう一つ聞いておきたいのですが、一つここで具体的に答弁してもらいたいのは、いわゆるバッジの問題です。この問題についてはあとで資料を読み上げてもいいが、まさに今三社が、東芝、日本電気あるいは伊藤忠、そういうところが入って、再びロッキード・グラマンと同じ競争をやっているのですよ。そこで、私はバッジについてお尋ねをしたいのですが、これはあなたのアメリカ側との交渉によると、七月一日からアメリカの新しい会計年度が始まるから、六月末にはこのバッジについていずれの社のものを採用するかをきめたいと、こういうようにアメリカ側に回答している。そこで、あなたの方からいただいた資料は、一応総額が二百八十一億円、このうち日本側の負担は百六十五億、米側の負担は百十六億となっているが、しかし今東芝を通じてやっている、第五空軍が推進をしているこのバッジは、約四百億になんなんとしている。これは、きのうは国防次官との間に話がなくても、以前においてやっておるわけだから、当然このバッジは、将来ロッキード、グラマン戦闘機の機種選定と同じ問題になることは明らかだから、経過を一つ明らかにしておいてもらいたいと思う。いつやるのか、総額は幾らか、そういう点です。
  124. 志賀健次郎

    ○志賀国務大臣 ただいま御指摘のように、でき得るならば今年の六月中にでも最終的な結論を得たいと私は考えまして、目下努力をいたしておるのでございますが、非常に複雑なものでございまして、しかも三社のバッジ・システムというものは、いずれも完成いたしておらないのであります。三社のシステムが完成いたしておりますれば、そこに調査団を派遣して、三つのシステムを比較検討すればすぐに結論が出るのでございますが、このシステムのいずれもが具体的に機械化されておりません。ロッキード、グラマンのときと同じように実物がないのでございます。電子計算機でいろいろな数字を積み重ねて、そうしていろいろな長短を比較検討しなければ結論が出ないものでございまして、非常に時日を要し、また慎重を期さなければならぬのでございまして、私は六月末あたりまでには一応の結論を出したいと鋭意努力いたしておるのでありますが、あるいはそれ以上におくれる場合も予想いたしておるのであります。もとより慎重を期してその結論をつけたいと、目下検討努力を重ねておる最中でございます。
  125. 横路節雄

    ○横路委員 バッジについての調査団が九月の十六日から十月の二十八日までアメリカに行って、あなたからすぐ報告書を出すようにというので、帰国してから、十一月六日から十一月十三日まで鎌倉で作業をした。報告書内容はGE、東芝です。GEのみが九十点で、あとは零点、または零点以下、こういうので、十一月二十六日の空幕の部長会議及び十一月二十九日、十一月三十日両日の内局会議で非常に反対を食って、もう一回報告書を書き直せということになった。きょう私は防衛問題が主でありませんから指摘をしておきますが、あなたの方の内局では、これはアメリカの第五空軍、アメリカの海軍、海兵隊、こういうようになって、非常にこの問題はもめているのですよ。しかもあなたの方ではWS委員会というのをつくって、その中で相当議論している。私は今から指摘をしておきますが、これは第二のグラマン戦闘機その他と同じような問題になりますよ。しかも四百億ですから。しかも四百億についてあなたの方ではこれを三式用意をしようとしている。四百億で三式といえば千二百億円です。千二百億円といえばちょうどグラマン、ロッキード戦闘機のときの約四億八千万の二百機の九百六十億と該当するのです。  私は防衛問題をお尋ねしたいと思いますが、予定の時間もありますから、これから日韓会談についてお尋ねをしておきます。大平外務大臣にお尋ねします。今度から主としてあなたにお尋ねしたいと思います。  去年の十二月の臨時国会における予算委員会で黒田、岡田、木原三氏の質問、それからこの委員会が始まりましてから、勝間田、それから春日、野原、木原の諸氏からの質問、私はたんねんに会議録を余さず全部読んでみました。そこで、私はあなたにお尋ねをしたいのだが、今度合意に達したという——あなたが大平外務大臣の外交演説として本会議で言われている。この構想の大筋は「昨年末までに両国間で合意を見ております。」本会議の答弁ですが、今回合意に達した無償三億ドル、有償二億ドルについてお尋ねをしますが、無償三億ドルを算定した基礎は一体何なんでしょうか。どんなに会議録を読んでも、ここにおける委員質問を聞いてもわからないのです。三億ドルをおきめになったその根拠は何なんです。
  126. 大平正芳

    ○大平国務大臣 別に積算の根拠があるわけでございませんで、隣邦に対しまして、わが国の財政能力、対外支払い能力を勘案いたしまして、この程度が可能であろう、また適当であろうという判断でいたしたわけであります。
  127. 横路節雄

    ○横路委員 大平外務大臣、それであなたはこの委員会の質疑を通じて国民の前に、日韓会談については無償三億ドル、有償二億ドルについて合意に達したのですか。こういうことで国民は理解するでしょうか。私は、今あなたに無償三億ドルの根拠は何ですかと聞いた。別に根拠はありません。今の日本経済の能力から推して三億ドルが適当だと思った、こういうわけだ。そうしますとこれはあれですか、もう一度、何べんもお尋ねしますが、三億ドルについては積算の根拠はないわけですね。積算の根拠がないならないと言ってくれればいいです。
  128. 大平正芳

    ○大平国務大臣 積算の根拠はございません。
  129. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると総理大臣、これは世間で、日本語で言うどんぶり勘定、つかみ金、積算の根拠はない、これは普通はどんぶり勘定というのです。しかし、よくもこういう——総理大臣は、経済的には日本の政治界においては第一人者だと自他ともに許しているはずだ。そうじゃないですか。あなた自身そう思っておるでしょう。われわれはどう思っているか別だけれども……。その総理大臣、どうなんですか。総理大臣、三億ドルの積算の根拠は何か。いやそんなものはない、どんぶり勘定だ。よくもそれで、池田さんあなたは大蔵大臣を長いことおやりになって、今度総理大臣をお勤めになっていますね。これでいいのですか。積算の根拠はない、どんぶり勘定である……。
  130. 池田勇人

    池田国務大臣 積算の根拠はないということを、すぐ何もなしにとおとりになってはいけません。積算の根拠はないということの前に、大平外務大臣は、もう今までたびたび法律的根拠のあるものとして話を進めたのだけれども、向こうの言い分も相当あるし、そうしてこちらの言い分もあるし、具体的にこの問題で、たとえば朝鮮銀行の本店にある日本銀行券がどうだとか、あるいは朝鮮銀行の日本にある財産の問題をどうするとか、いろいろな、いわゆる日本予算をつくるような積算の根拠はございませんが、向こうの要求、また両国の正常化、あるいは日本支払い能力等々から考えまして、この程度が必要であり可能であると考えた。その積算の根拠というものは、いろいろな方法がございます。普通こちらで予算を立てるような積算の根拠はなかなかできない。それはもうあなたも御存じの通り、外交交渉、ことに賠償とか、こういう問題、分離国家の問題なんかをどういう計算でいこう、ああいう計算でいこうということは、なかなか困難で、これはもう外交上の事例からそれがあるわけでございます。フィリピンにいたしましても、あるいはまたインドネシアにいたしましても、またアメリカがフィリピンにやりました問題等につきましても、いわゆるこちらで言う予算その他、大蔵省なんかで言う国内的の積算の根拠というものは、なかなかこういう問題はできにくい、こういうことなのでございまして、気まぐれにやるとかなんとかいう、いわゆる悪い意味のどんぶり勘定というのではございません。その点は一つ御了承願いたいと思います。
  131. 横路節雄

    ○横路委員 いや、総理にお尋ねしますが、今あなたのお答えの中にいろいろな計算があるという、いろいろな計算、どうやって三億ドルはじいたのです。今あなたのお答えの中に、三億ドルをはじいたのにはいろいろな計算があるという、いろいろな計算を一つお話をしていただきたい。これはぜひ国民の前に明らかにしてもらわなければ困るのです。そういう意味ですよ。
  132. 池田勇人

    池田国務大臣 これは八項目をごらんになりましても、いろいろ計算の仕方があるのです。ここで政府は言っておりませんけれども、七千万ドルとかあるいは一億二千万ドルという数字も出ましょうし、あるいはやり方によったら、向こうの言うインフレとかなんとかの問題をやりますと、相当のものになるでしょう。そういういろいろな計算の方法はございますという——三億ドルを出す計算の方法というのではございませんよ。交渉の間においていろいろな計算の仕方があると、こういうのでございますよ。三億ドルの計算のあれではございませんよ。
  133. 横路節雄

    ○横路委員 それでは、今あなたは三億ドルについて私がお尋ねをしたのに、いろいろな計算があると言ったのは三億ドルの中に含まれておるものではない、それは全然無関係ではありませんか。全然関係のないことを言っているじゃないですか。今あなたの答弁はそうじゃないですか。三億ドルについて積算の根拠は何があるのですかと聞いている。もう一度一つ総理から答弁していただきたい。
  134. 池田勇人

    池田国務大臣 三億ドルの積算の根拠といって、ここに申し上げるほどのものはございません。ただいろいろな計算の方法で、あるいは三億ドル以上の計算も出てくるかもわかりません。もし向こうの言う通りにしたならば、もっともっと出るでしょう。いろいろな計算の仕方はございますが、三億ドルというもののもとをなすものは何かといったら、いろいろな計算からいっても、なかなかまとまりにくいから、日本支払能力から考え、また両国親善のために前向きに必要な金額として合意したのが三億ドル、こういうことであるのであります。計算の仕方は、こうなったら三億ドル、こうなったら四億ドル、こういう計算をして三億ドルと、これが正しい根拠だからといってきめたのではないんですよ。
  135. 横路節雄

    ○横路委員 この点は、これは池田さんとしてはばかに自信がないじゃないですか。三億ドルについて積算の根拠を示してもらいたいというのです。これは何も社会党が言っているばかりではないのです。国民全体が言っているんですよ。各新聞とも、そう書いてあるじゃないですか。だからここでぜひ三億ドルについての積算の根拠を示してもらいたい。いや全くありません、あれは適当にやったのです。どんぶり勘定です、横路君の言う通りです。それでもいいですよ。それではあなたの答弁にならないでしょう。国民はひとしく、三億ドルというのは何で積算をしたのかと聞いているんです。答弁をして下さい。
  136. 池田勇人

    池田国務大臣 この正常化につきまして、どれだけ経済協力をするかということにつきましては、両方の意見があるわけでございます。それは御承知でございましょう。私や外務大臣が、向こうさんがこう言った、こちらからこう言ったということをここで言うことは、外交全体の交渉の上からとるべきでないから申しません。しかし、ほんとうに協定いたしまして、批准をする場合におきましての御審議を願うときには、われわれのことに至った経過をくわしく申し上げなければならぬことは当然でございます。交渉の経過中に、向こうがこう言った、こっちがこう言ったということを言うのは、今まだ早過ぎると思います。しこうして、自信があるとかないとかいう問題ではございません。すなわち、外交交渉につきまして両方の言い分を考え、そうしてこちらの言い分もこれをとる、あれをとるということもございまするが、国交正常化の大所高所の上から、こうしたならば両方の意見が一致するというところで、経過的に三億ドルと、今一応の内定をいたしておるわけでございます。
  137. 横路節雄

    ○横路委員 私はあなたに経過を聞いているんじゃないんです。国会で無償三億ドルについて合意に達したということを言ってなければいいんです。言っているではありませんか。本会議でも言い、ここでも言っているじゃないですか。私は経過を聞いているんじゃない。経過についてはあとで聞きますよ。三億ドルときめた積算の根拠は何かと言っているんです。国民は納得しないと言っている。だから明らかにしなさいと、こう言っている。根拠がなければないと、あなた、そう言ったらいいでしょう。あるんですか。
  138. 池田勇人

    池田国務大臣 根拠を総括的に申し上げまするならば、日本支払い能力と日韓国交正常化のためには三億ドルが適当だ、これが根拠でございます。
  139. 横路節雄

    ○横路委員 池田さん、それは日本語で言えばどんぶり勘定なんです。私はこれから一つずつお尋ねをしていきます。  そこで、この問題は、私の質問の最後に重ねてまたお尋ねをしますが、大卒外務大臣にお尋ねします。この三億ドルについては、これは円とかドルでやるのか、それとも資本財とか役務でやるのか、そういう点についてまだどなたも聞いてないようですから、その点明らかにしてもらいたい。
  140. 大平正芳

    ○大平国務大臣 わが国の生産物と役務でございます。
  141. 横路節雄

    ○横路委員 そこで、私はあなたにお尋ねをしたいのですが、そうすると、今外務大臣のおっしゃるように、この三億ドルについては生産財または役務の提供である。そこで、あなたは勝間田氏にこう言っているのであります。経済協力の無償三億ドル、有償二億ドルということは、平和条約第四条にいう請求権の問題とは全く無関係ですと言っている。この点確認しておきたいんです。これは外務大臣にここでぜひ一つお答えいただきたい。
  142. 大平正芳

    ○大平国務大臣 平和条約第四条は、日韓の間で請求権の取りきめをやるということをうたってあるわけでございまして、日本が韓国に対しまして経済協力をするということとは無関係でございます。
  143. 横路節雄

    ○横路委員 それではっきりしたわけですが、そうすると、経済協力の無償三億ドル、有償二億ドルの問題が片づいても、平和条約第四条にいう請求権は残るわけですね。残りますね、無関係だから。どうなんです。
  144. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そのこと自体は、今申し上げました通り関係でございます。ただ、そういうことをやることによって、第四条の請求権の処理はついたということを両国で確認することによって、平和条約が要請いたしておりまする請求権の処理をいたすということになるわけでございます。
  145. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、外務大臣、これは平和条約第四条にいう交渉ではないんですね。今度の経済協力は、平和条約第四条にいう交渉ではないんですね、無関係だと言うんだから。無関係であるならば、この経済協力の問題は、平和条約第四条に基づく請求権の問題の解決にはならない。平和条約第四条にいう請求権の交渉とは別ですね。この点だけ明らかにしておいてもらいたい。
  146. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日韓交渉の一つの任務に、平和条約第四条の請求権の処理があるわけでございまして、私どもは何とかこの処理をやりたいと心がけて参ったわけでございます。横路委員も御承知のように、平和条約については、請求権の処理をいかなる方法においてやるべしとは書いてないわけでありまして、どういう方法によろうが、この処理は両国で取りきめてやりなさい、こういうことになっておるわけでございます。私どもは、いろいろ苦心いたしまして、この問題を片づけるのにいろいろな方法考えられるが、私どもの主張しておりますように、韓国に対しまして将来に向かって経済協力をするという日本の友情を示すことによって、先方が平和条約四条にいう請求権は主張しない、これは私どもの方はなくなったものと心得ます、こう言うことによってその処理が完結すると私どもは考えております。
  147. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、大平外務大臣にお尋ねしますが、日本政府と韓国政府の間では、無償三億ドル、有償二億ドルの経済協力を得ることによって、平和条約第四条にいう請求権は放棄したということを韓国政府は確認をしているのですね。これは一番大事な問題ですよ。
  148. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ただいま予備折衝におきまして、請求権の処理が完結したということをどういう表現でやるかということについて打ち合わせをいたしておるわけでございます。私が本会議でも本委員会でも申し上げましたように、一応経過的に両国の間で合意を見ておりますということは、大筋において、今私が申し上げましたような意味において合意を見ておるわけでございまして、こまかい問題は若干請求権にからんでございますけれども、そういった問題を鋭意片づけるとともに、表現上の問題も、両国で合意を見て完結に持っていきたいということを申し上げておるわけでございまして、放棄したという言葉を使うか、主張しないという言葉を使うか、あるいは解決したと確認するというような言葉を使うか、そういったことについてただいま予備折衝の場でせっかく相談をしておるという状況です。
  149. 横路節雄

    ○横路委員 私がこの問題をお尋ねしているのは、平和条約第四条にいう請求権の問題とは全く無関係だとあなたは答弁している。そうすると、今回の経済協力は、平和条約第四条にいう請求権とは無関係だということになれば、平和条約第四条にいう請求権はいつまでも残る。残るのです。残らないといっても残るのだから、そこで、私は今あなたにお尋ねしておるのだが、今回の大平・金会談あるいは日韓会談におけるそれぞれの首席会談では、三億ドル、二億ドルの問題を取り上げて、韓国としては、平和条約第四条にいう請求権を放棄するということを確認しておるのかどうかというのです。その点ですよ。その点をはっきりしてもらいたいのです。反射的に主張しないとか、随伴的に主張しないとか、そんなことはいいのです。そんなことでは条約は成り立たないのだから、だから、韓国側は、平和条約第四条にいう請求権は放棄したということを明確に書くことを確認しておるのかどうかということを聞いておるのです。
  150. 大平正芳

    ○大平国務大臣 わが国経済協力をすることによって、平和条約四条にいうところの請求権の処理はついた、先方もそういう方法で処理をつけるのだということに合意いたしております。ただいま横路さんが御指摘されるように、それをどういう文言で表現すべきかという技術問題を相談いたしておるということです。
  151. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣にお尋ねしますが、それはどういう文言でやるかということを聞いているのではないのです。あなたの方では今処理したことを含むという、処理したことを含むといえば、平和条約第四条の請求権は放棄しなければ含まれない。だから私が聞いているのは、韓国は放棄することに同意をしたのでしょうねと聞いているのだ。そうでなければ、文言があなたの言う、反射的に主張しないとか、随伴的に主張しないなんて、そんなものは条約に成り立たないから、だから韓国側としては平和条約第四条にいう請求権はこれで放棄をしたのだということを交換公文で書くのか何で書くのか知らぬが、その点は明確になっているのですかと、その点を聞いているのだ。
  152. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まあ外交は、横路さんも御案内のように、双方の国民のいろいろ微妙な感情もございますので、どのような表現にするかということは、両国関係者といたしましては、それ相当の苦心をいたしておるわけでございまするが、平和条約第四条にいうところの請求権は最終的に解決して、再び持ち出すことがないという確認をとらなければ、私は私の職責上日韓交渉を進めるわけにいかぬと思います。従いまして、そういう最終的な完結を期すべくせっかく努力いたしておるわけでございまして、その大筋は、今申しましたような方法において先方も合意をいたしておりまして、それに随伴いたしました細目あるいは表現という問題を今相談いたしておるのだということでございます。
  153. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣、私があなたにお尋ねしているのは、請求権の問題の金額が幾らか含まれているというのであれば別なんです。平和条約第四条にいう請求権の問題の解決のための金額は経済協力の中には全然含まれていない。また三億ドル、二億ドルは、三億ドルにりいてはこれは資本生産財並びに役務提供だと言う。ですから問題は残るのです。  総理大臣にお尋ねしますが、総理大臣、この経済協力三億ドル、二億ドルについてやっても、平和条約第四条にいう両国政府間では解決するかもしれない、しかし韓国民法人の日本政府、韓国民法人の日本国民並びに日本法人に対するこの請求権は残るではありませんか。経済協力に基づいて平和条約第四条はそれとは断然別のものであるという政府側の答弁、さらに生産財、役務であるという答弁からすれば、両国政府間は放棄するということであるいは合意に達しても、韓国民日本政府、韓国法人の日本国、こういう相互の間の請求権は残るではありませんか。だから私は聞いているのです。この点はどうですか。
  154. 池田勇人

    池田国務大臣 国と国との約束でございますから、韓国と韓国民との間は韓国で整理なさいましょう。そこで、この平和条約第四条と今度の日韓の外交折衝での問題で、別だとか一緒だとか、それによって随伴するとかいうのは、結局は平和条約第四条の請求権というものはなくなるのだ、これははっきりするのでございます。そういうふうに文章を書きます。で、今、向こうが放棄するということになると書くか、あるいは解決したと書くか、こういうことは、外交技術上やはり両国民の気持を考えながら適当に、全然残らないような文章で今度御審議いただくようになると思います。
  155. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣に重ねてお尋ねしますが、そうすると請求しないということは、韓国としては請求権問題は解決をしたというよりは、これは放棄ですね。請求権問題は解決をしない。平和条約第四条にいう請求権の問題は、これは解決しないのですよ。解決したなどという考え方はとんでもないことです。解決をしたのではなくて、この三億ドル、二億ドルをやることによって、これによって、韓国側としては日本に対する請求権は放棄したのだということにならなければ、本問題の基本的な解決にはならないのです。この点はどうですか。
  156. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今後再びそういう問題を韓国から持ち出さないということ、最終的に解決したものと認めるということになるわけでございまして、あなたが御心配するような事態はありません。
  157. 横路節雄

    ○横路委員 今の外務大臣の答弁は、・二度と韓国側は平和条約第四条にいう請求権は持ち出さない、持ち出さないということは放棄したということになる、そうですね。持ち出さないということは放棄したわけですね。その点もう一ぺん一つ確認しておきたい。
  158. 大平正芳

    ○大平国務大臣 最終的に完結させるということになるわけでございますから、あなたが御心配するように、将来また持ち出してくるというようなことをしたのでは、私の方の仕事になりませんので、そういうことはいたさないつもりです。
  159. 横路節雄

    ○横路委員 次に、総理に今の問題でお尋ねしたい点があるのです。私は一月一日の日本経済の小汀氏と総理との対談会です。総理はこう言っておるのです。「みんなは「請求権問題」「請求権問題」といっており、私も国会で請求権問題は法的根拠のあるもののみと言っていましたが、これでは後ろ向きですよ。後ろ向きの外交は今ははやらない。一年間、外交の勉強をしてやっとわかってきましたが、外交はやっぱり前向きでなければならない。今後どうやっていったら、日韓関係がよくなり、日韓両国が繁栄するか、それを外交交渉で考えるべきなのであって、昔の罪ほろぼしとかいうことは二の次ですよ。私が法律的根拠があるものだけ、といったのはまだ外交のことがよくわからなかったときの話ですよ。」あなたはよくも国会でないときはぬけぬけとこういうことを言いますね。国会では一昨年十一月の池田・朴会談で、法的根拠のあるものに限る、こういうように確認をしておいて、ことしの元日になると新聞で、日本経済などあまり読まないとあなた思ったのか、——そこで総理に聞きたいのです。「昔の罪ほろぼしとかいうことは二の次ですよ。」というのはどういう意味なんです。
  160. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、この法律的根拠があるとかなんとかいうことになりますと、やってみて話がまとまらないのです。こうじゃ、ああじゃと言っておったのでは、両国の親善関係の増進になりませんから、昔のことは一つ忘れて、それよりも前向きに進んでいきましょう、こういう意味なのでございます。そこで、私と朴議長との間で、一応法律的根拠と、こういうので話がつくと思ったところがつかない。よく考えてみますと、両国間でああいう場合に法律的根拠だけ、しかも事実関係が非常にむずかしくなったときに、これで解決ができると思ったのは、私も朴氏もまだ外交になれぬところだったと私は考えて、そして前向きで、とにかく両方ともよくいくように、こう言ったのでございます。前向きで親善関係を増進していこう、民のために、という気持にかわってきたわけでございます。
  161. 横路節雄

    ○横路委員 私があなたに聞いているのは、あなたが「昔の罪ほろぼしとかいうことは二の次ですよ。」これはどういう意味なんですか。
  162. 池田勇人

    池田国務大臣 昔、日本があそこを強力に合併したとかなんとか、いろんな言い分はございましょう。そういうことを直せ、悪かったとか、よかったとか、そういうことはもう忘れてと、こういう意味でございます。
  163. 横路節雄

    ○横路委員 池田総理、あなたのその考え方が今に韓国側にはね返って大問題になりますよ。あなたは今何と言ったんです。日本がかつて韓国と合併したときああだこうだと言うが、そういうことの論議ではない。これからの日韓両国をどうしたらいいかといういわゆる経済協力が前向きの関係だと言っている。あなたはよく人づくりと言っているじゃありませんか。今韓国で何が問題なんです。朴政権は一時的なものですよ。韓国民は何と言っているのです。池田総理日本の韓国に対する基本的な、道義的な原則を忘れている、日韓合併によって植民地支配をして韓国人を苦しめたときのことを忘れている、韓国人は今度池田内閣の経済援助、経済協力ということは日本の帝国主義の再来と心配している、こう言うのです。いや、あなたはお笑いになっているが、それがいかぬのですよ。一体あなたの心の中には、日本がかつて帝国主義時代に、韓国に対するところの植民地的な扱いに対する基本的な、道義的なその原則、はなはだ済まなかった、こういう気持が一つもないじゃないですか。あなたは「昔の罪ほろぼしとかいうことは二の次ですよ。」と言っているじゃないですか。あなたに幾分かそういう気持があるのですか。ありますか。なければこそ、こういう表現をしているのです。これは大問題で、これは新聞に出たことですが、私が取り上げたのだから、取り消されたらどうですか。取り消しなさい。
  164. 池田勇人

    池田国務大臣 昔のとやこういうことにとらわれておったら、両国民が前向きで手が握っていけない。昔のことは一つ忘れてと、こういうことでございます。それは忘れっちまうと言ったって、人間だからそういうわけにいかない。しかし、それを根に置いてやったのではいかぬから、前向きを主にしていきましょう、昔のことにとらわれずにという意味でございます。
  165. 横路節雄

    ○横路委員 池田総理、それはあなたの日韓会談に対する基本的な考え方の誤りです。今、韓国民は何を言っているかというと、まず池田総理池田内閣は、日本が韓国を合併した韓国の植民地時代について扱った取り扱い、この長い間、三十六年間にわたる苦しみ、一言も済まなかったとか、どうしだいとかいう気持はないではないか、こう言っているのです。こういう気持が、あなたの、昔の罪滅ぼしとかということは二の次ですよという、そういう表現に出ているわけです。こういうことでは、なるほど朴政権はあなたとの間に適当なときにこの日韓会談について調印するかもしれないが、こういう昔の罪滅ぼしは二の次だという今のあなたのその態度を貫く限り、韓国民は今回の日韓会談には絶対反対しますよ。  そこで、次に私はお尋ねをしたい。これは外務大臣にお尋ねしますが、その前に、総理、もう一ぺん聞いておきますが、今の話のところで、あなたは、第四条にいう請求権問題は経済協力で解決をする。しかし私は、この問題は、もう一ぺん言います、日本と韓国との間の両方政府間における問題は解決をするでしょう。しかし韓国民日本政府、韓国法人の日本国、韓国人の日本国民、法人、韓国法人の日本国民日本法人等に対しては、今の経済協力は生産財である、役務である、そうしてこの経済協力の中には、平和条約第四条にいう請求権の問題、金額は一つも含まれていない。こういう立場からすれば、両国間で解決をしても、その韓国人、法人を含んでの請求権は、私は将来ともに残ると思う。この点についての総理の見解はどうですか。
  166. 池田勇人

    池田国務大臣 国際的慣例から申しましても、こういうものについて、たとえば日本政府あるいは日本国民に対しての韓国政府並びに韓国民の請求権はなくなることが通例でございます。またそういうふうに条約文は書かなければなりません。
  167. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、今の総理の答弁は、そういうことがなくなるように条約については書くというわけですね。  そこで、私はその点との関係で、外務大臣にちょっとお尋ねしておきます。これは条約でいくのですか、協定でいくのですか、共同宣言でいくのですか、何でいくのですか。一番中心になる平和条約第四条の請求権放棄の問題です。
  168. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それはただいませっかく交渉中でございまして、それに盛るべき実態をつくりつつある段階でございまして、これにどういう衣を着せるかという問題につきましては、まだ突き詰めてこういう形式にいたしたいとまで政府できめておるわけではございませんで、実態の煮詰まりを待ちまして適切な方式を考えたいと思っています。
  169. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣、これはあなたがたびたび本委員会で答弁しているように、請求権の問題も解決をする、竹島の問題も解決をする、漁業問題も解決をする、それから法的地位の問題も解決をする、そういうのが一括して解決をされる、そういうものになるのですね。明らかにしておいていただきたい。
  170. 大平正芳

    ○大平国務大臣 さようでございます。
  171. 横路節雄

    ○横路委員 それでは次に私は外務大臣にお尋ねをしますが、大平外務大臣は、一月二十九日、勝間田氏の質問に答えて、平和条約にいう討議の対象は韓国政府であると答えておりますが、これで間違いございませんか。平和条約第四条に言う討議の対象は韓国政府である、おそらく韓国政府のみである、こういう意味だったのだろうと思うのですが、その点明らかにしてもらいたい。
  172. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その通りです。
  173. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、今私の質問で確認されたことは、平和条約第四条にいう討議の対象は韓国政府のみである、こういう答えである。その次にあなたはこう言っているわけです。さらに勝間田氏の質問に答えて、これは春日君との関係もございますが、平和条約と北鮮のオーソリティ、当局とは関係がございません。平和条約にいうオーソリティは、先ほど私が申し上げたように、韓国が支配している領域というものに平和条約の領域の限界性があるわけでございまして、平和条約にうたわれているオーソリティというものは北鮮のオーソリティではありません。こう言っていますね。そうすると、平和条約第四条にいう請求権の問題は韓国のみがその対象だから、これで一切解決したわけなんですね。もう一度聞きますよ。あなたは今私に、平和条約第四条にいう討議の対象は韓国政府のみである、そうして平和条約第四条にいう当局は北鮮は含まれていない。そう言えば、これで平和条約第四条にいう請求権の問題は一切解決をしたということになるのですか。
  174. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私どもは、当面韓国を相手国といたしまして、平和条約四条にいう請求権の処理等を交渉いたしておるわけでございまして、そして、それは韓国が現に支配している地域に地域的限界がある、こういうことでございます。
  175. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣、もう一ぺん聞きますが、平和条約第四条にいう請求権の討議の対象は韓国政府のみなんですね。そうすると、平和条約第四条にいう請求権の問題は、あなたの解釈からすればこれで終わったことになるではありませんか。あなたは韓国政府のみだ、こう言うのだから……。平和条約第四条にいう請求権討議の対象は韓国政府のみだというならば、これで終わったことになるではありませんか。ならないですか。どうなんですか。
  176. 大平正芳

    ○大平国務大臣 北鮮のオーソリティは、日本と今交渉する立場にはございませんで、ただいま韓国のみを相手にいたしまして請求権の処理等をやっておるということでございます。
  177. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣、もっとあなた丁寧に、もう一ぺん聞きますよ。あなたは、平和条約第四条にいう請求権の討議の対象は韓国政府のみだと言っている。のみだと……。あと何があるのですか。私は今わざわざのみという言葉をつけたじゃないですか。韓国政府のみだ。あと一体何があるのですか。平和条約第四条にいう請求権討議の対象は韓国政府のみだ。あなたはそうだと言う。あと何があるのです。あと何かありますか。のみだというのはばかりだという意味だ。あなたは何を言っているのですか。
  178. 大平正芳

    ○大平国務大臣 つまり、韓国が現に支配している地域に地域的限界を置いて、私どもは今この交渉を進めておる。そしてその限りにおきまして、韓国政府が唯一の交渉相手であると思います。
  179. 横路節雄

    ○横路委員 あなたの言うのは、三十八度以南については韓国政府が討議の対象だというのでしょう。そういう意味ですか。だから三十八度以北については討議すべき対象がまだ残っている、こういう意味なんでしょう。だから、財産権の相互の権利義務が残っている、こういう意味なんですか。その点をはっきり言って下さい。
  180. 大平正芳

    ○大平国務大臣 韓国が現に支配している地域につきまして問題の交渉をやっておるわけでございまして、支配していない地域のことには触れていないわけでございまして、それは白紙の状態であるということです。
  181. 横路節雄

    ○横路委員 それでは北緯三十八度以北については日本の財産権、それから相手国日本に対する請求権は残っている、こういう意味ですね。これはどうなんです。あなたの話を聞いていてはっきりしませんよ。これははっきりした方がいいですよ。
  182. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それは未解決の状態で残っておると思います。ただ念のために申し上げておきますが、この場合は、北鮮地域に対しましては軍令三十三号が及んでいないということを御承知願いたいと思います。
  183. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、この点は将来の問題ですからもう一ぺんはっきり聞いておきたいと思うのですが、平和条約第四条にいう請求権の問題、北緯三十八度以南については韓国政府のみを対象にしてやっています、北緯三十八度以北については韓国政府の領域ではないから、従って別途、こう言うんですね。その辺をはっきりして下さい。あとで総理に立ってもらいますが、総理の方がまだはっきりしているけれども、あなたの言うことははっきりしない。こんな速記録は日本文になりませんよ。
  184. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そのように心得てけっこうです。
  185. 横路節雄

    ○横路委員 詳しくもう一ぺん言って下さい。
  186. 大平正芳

    ○大平国務大臣 現に韓国が支配しておる地域における問題を対象といたしまして交渉をやっておるということでございます。北につきましては未解決の状態でございますから、日本政府としてまだ白紙でございます。
  187. 横路節雄

    ○横路委員 それでは大平外務大臣に聞きますが、三十八度以北については日本の財産権の請求、また相手国日本に対する請求権は残っている、権利義務は残っている。そうすると、北緯三十八度以北を現に支配しているのはどういう政権ですか。これは何と考えているか外務大臣に聞かなければならない。
  188. 大平正芳

    ○大平国務大臣 北鮮に政権がありまして、韓国が支配している以外の地域を支配しているという事実は、私ども念頭に置いてやっております。
  189. 横路節雄

    ○横路委員 それでは外務大臣にお尋ねしますが、現に北緯、三十八度以北については朝鮮人民民主主義共和国が支配しているという事実は知っていますと言う。そうすると、北緯三十八度以北については、日本の財産権の請求、請求があれば払わなければならぬという権利義務からすれば、現に支配している政権だから、平和条約第四条にいう北緯三十八度以北のその討議の対象は朝鮮人民民主主義共和国になりますね。どうなんです、そうなるでしょう、今あなたはそう答弁したんだ。
  190. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私が答弁を申し上げたのは、現に韓国政府が支配している地域を地域的限界と心得て交渉をやっておるということでございます。北鮮にオーソリティがあるということは私どもも承知いたしておりまするが、北鮮と日本との間にはまだ関係がございませんので、討議をするというような段階ではございません。
  191. 横路節雄

    ○横路委員 それでは外務大臣にお尋ねしますが、今あなたの答弁を聞いていると、平和条約第四条に言う北緯三十八度以北については、いわゆる北朝鮮について現に支配している政権があることは知っていますと答弁された。なお、三十八度以北については、当然日本としての財産権の権利義務は残っているということも答弁された。  その次に私がお尋ねしたいのは、昭和三十四年十一月二十五日、この外務委員会でやったベトナムに対する賠償は、現に北緯十七度以北については、ホー・チミン政権が支配している、しかしあなたの方では、ベトナムについては唯一正統な政府であるといって、北ベトナムに対する賠償も含んで支払った。そうすると、今あなたの言う平和条約第四条の点からいけば、かつて岸内閣時代、しかし自民党内閣ということでは変わらぬ。この自民党内閣が、北緯十七度以北については現に支配している政権があるのにかかわらず、その南ベトナムの政府に対して全ベトナムを代表する政府としていわゆる賠償の支払いをやった、これは間違いだったですね。外務大臣、どうですか。
  192. 池田勇人

    池田国務大臣 ベトナムに対する態度と朝鮮に対する態度は違っております。あのときのベトナムに対しましては、われわれは南ベトナム政府と申しますか、われわれが交渉相手にした政府が全ベトナムを支配している、こういうことで取り扱っておるのであります。しかも平和条約にはそういう立場で調印いたしておるのであります。しこうして朝鮮につきましての今国連の取り扱い等につきましては、韓国というものが全部の朝鮮を支配しておるものと取り扱っておりません。その取り扱いにわれわれは同調しておるのであります。三十八度線以南の韓国を合法政府として認めておるのでございます。南北でも、ベトナム政府と韓国政府とが支配する地域をわれわれは変えて考えておるのであります。
  193. 横路節雄

    ○横路委員 しかし、総理の、ベトナム政府はいわゆる全ベトナムを支配しているから調印した、これはうそですよ。岸総理はそういうことを答弁していないのですよ。岸総理はこう言っているのです。私は岸総理の言う通りもう一ぺん言ってみますから……。訂正ですか。
  194. 池田勇人

    池田国務大臣 ベトナム政府が全部のベトナムの代表である、こういう意味で言っておるのであります。支配する、支配せぬのことではございません。ベトナム政府が全ベトナムを代表しておる、こうやったのであります。
  195. 横路節雄

    ○横路委員 総理、岸総理はこう言ったんですよ。当時の岸総理大臣は、ベトナム政府はベトナムに対する唯一正統な政府である、しかし、現に休戦協定その他によってベトナム政府が北緯十七度以南を支配しているということは厳たる事実です、こう言っておる。それならば、今大平外務大臣は、今度の平和条約第四条にいう交渉では、韓国政府は北緯三十八度以南を支配している政府であるから払ったんだ、しかし北緯三十八度以北については朝鮮人民民主主義共和国という現に支配している政権があるから、日本としてはこれに対する権利義務は残る。これでは一貫していないではありませんか。
  196. 池田勇人

    池田国務大臣 私は建前として言っておるのであります。南ベトナム政府が全ベトナムを代表するものとしてわれわれは取り扱っておるのであります。しからば先ほど申し上げましたごとく、韓国は三十八度線以南ではないか、それをベトナムと違って取り扱うのはどういう意味か、こうおっしゃると思いましたから、韓国というものは国連の決議によりまして、三十八度線以南は合法政権として認められておる。だから、国連決議によってわれわれはベトナムとは別の取り扱いでいっております、こう言っておるのであります。
  197. 横路節雄

    ○横路委員 総理あなたは、ベトナム政府は代表している、それなら韓国政府も言っておるじゃありませんか。韓国政府も、今度新たになった大韓民国の憲法でも全部そうですよ。韓国は唯一の正統政府である、全領域にわたっている、そう言っているじゃないですか。代表していると支配していることとは違うではありませんか。当時岸総理は、南ベトナム政府は、明らかに北緯十七度以北には現に支配している他の政権があると、こう言っているではありませんか。北緯十七度以北に現に支配している他の政権があることを認めておって、そうして、なぜ一体ベトナムの賠償は全土に支払いを及ぼし、今度は、平和条約第四条にいうこの請求権は三十七度以南だと言うならば、今度が正しければ前のが間違いだ、前のが正しければ今度が間違いなんだ、どっちなんです。
  198. 池田勇人

    池田国務大臣 前のも今度のも正しいのであります。岸さんも言われたように、ベトナム政府というものは、一部において他の政権があるけれども、われわれが交渉相手にしているベトナム政府が全ベトナムを代表しているものとして取り扱ってやる、こう実ははっきり言っている。そのときから朝鮮の南北の問題はあったのであります。従いまして、朝鮮の南北問題はありますが、韓国というものは現に三十八度線以南を支配しているものとして、われわれは国連でも認めております。そしてまた交渉の場合におきまして、外務大臣が言っているように、現実に三十八度線以南を支配している韓国としてわれわれは交渉しておるのであります。韓国が全朝鮮を支配しているということをどういう意図で言っておられるか知りませんが、われわれは現に三十八度線以南を支配している韓国として、しかも国連で唯一の政府と認められておる韓国を相手にしてやっておるのであります。
  199. 横路節雄

    ○横路委員 しかし総理大臣、この問題はどう考えても、あなたは少し自分の論理がおかしくありませんか。北緯十七度以北については、ジュネーブの休戦協定で明らかに現実的に支配しておる政権を認めているのです。この問題については、政府態度は終始一貫をしていない。しかし、これはいずれ外務委員会その他の方で徹底的に追及なさると思う。  そこで私は、外務大臣にこれから少し詳細にお尋ねをしたい。それは韓国の対日請求権、この問題は、まだここではただ大まかの議論をしただけで、一つもわかっていませんから、ここで私はあなたにお尋ねしたいのだが、まずこれは大蔵大臣の所管ですから、大蔵大臣にお尋ねします。なぜならば、今度の第四条にいう請求権問題で、請求権問題に対する主席代表というのは大蔵省なんですよ。忘れないでおいて下さい。ほかの省ではないですから。  そこでまず第一番目に、との請求権問題について大蔵省で試算をした北緯三十八度以南における国有財産、公有財産、私有財産は幾らであると踏んだのか、その点についてお尋ねします。きょうは予算委員会で、第二次補正とはいっても総括なんだから、一つ大蔵大臣、時間がないのだから答弁して下さい。
  200. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知通り韓国にある財産は、米軍が接収し、日本がこれを最後に認めたのでありまして、その間における三十八度線以南の国有財産の台帳は、昭和二十年、終戦当時の国有財産台帳に載っておるもの以外はないと思います。
  201. 横路節雄

    ○横路委員 大蔵大臣、大体試算をして幾らになったんですか。あなたの方ではこれを正式に日韓会談で出したことはありませんか。あるでしょう、正式に。
  202. 田中角榮

    田中国務大臣 全然そういうものを提示した事実はありません。
  203. 横路節雄

    ○横路委員 それでは、資料があるから、あとでその資料を出して聞きます。  次に、これは大蔵大臣か外務大臣か、どちらでもいいです。韓国の対日請求権の八項目の内容について聞きます。  第一は、「朝鮮銀行を通じて搬出された地金と地銀の返還を請求する。本項の請求は、一九〇九年から一九四五年までの期間中に日本が朝鮮銀行を通じて搬出していったものである。」これにについて請求する。この点について、今まで政府態度はどうであったわけですか。これは外務大臣でしょうね。
  204. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今御指摘の事実は歴然といたしております。ただ、この搬出が合法であるかどうかという点について見解を異にいたしておるわけでございまして、本委員会でも申し上げました通りに、先方はわが国の実定法の効力を認めませんので、朝鮮銀行法によりまして正当な対価を払って搬出したことも合法的でないと主張いたしておりますし、当方は、それは合法的な処理であるということで、法律論で見解を異にいたしております。
  205. 横路節雄

    ○横路委員 それでは返還の理由がないというのが政府の答弁です。私は相手方の答弁はあとで聞きますが、政府の答弁はそうである。  その次に第二項「一九四五年八月九日現在の日本政府の対朝鮮総督府債務の弁済を請求する。本項に含まれる内容の一部は次の通り。(1)逓信局関係(a)郵便貯金、振替貯金、為替貯金等(b)国債及び貯蓄債券等(e)朝鮮簡易生命保険及び郵便年金関係(d)海外為替貯金及び債券」、これは日本の試算によると幾らになったのですか、外務大臣。
  206. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これはなかなか事実の立証がむずかしい問題でございまして、南北の推定、あるいは日本人、韓国人の間の区分等々につきまして両方の見解が一致いたしませんので、どのような金額になったかということは、両方で見解が一致いたしておる事実はございません。
  207. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣、私がお尋ねしているのは、相手方の見解を聞いているのでないのです。相手側は要求してきたのです。だから日本政府としてはこれは幾らと見たのですかと聞いておる。——郵政大臣おりますか。郵政大臣、これは郵政省では一体幾らと見ておるのですか。
  208. 小沢久太郎

    ○小沢国務大臣 この問題につきましては、ただいま交渉が微妙な段階に達しておりますので、差し控えた方がよろしい、そういうふうに考える次第でございます。
  209. 横路節雄

    ○横路委員 郵政大臣にお尋ねしますが、そうすると、今両国の交渉関係が微妙だから言えない、いずれ適当なときには言える、こういう意味ですか。
  210. 小沢久太郎

    ○小沢国務大臣 言える段階になりましたら発表いたしたいと思っております。
  211. 横路節雄

    ○横路委員 郵政大臣、今言える段階になったら言えるということは、あなたの方では数的な根拠はあるのですね。数的な根拠があるから、言える段階がきたら言える。もう十何年交渉しているのだから、ここで出して下さい。これは出さなければだめです。
  212. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私は、この間勝間田先生その他の御質疑がございました際にも申し上げたのでございまして、横路さんがおっしゃるように、この請求権の問題というのは、両国民が大へん関心を持っておる問題でございまするし、従いまして、請求権の実体はどういうものであったか、そしてそれに対する法律解釈は双方においてどういう解釈がとられておったか、あるいは事実の立証関係におきまして双方の見解はこのように違っておったというような事実は、この委員会でお約束いたしました通り、交渉の進み工合を見ましてやりたいということをここで申し上げたわけでございます。ただいま交渉は続けられておりますし、この請求権の実体につきまして双方の見解を詳細にわたって国会で申し上げるということは、交渉に微妙な影響があることをはかりかねませんので、私はその時期まで恐縮でございますがお待ちを願いたいということを申し上げておるのです。
  213. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣、それではだめですよ。なぜだめかというと、問題は二つある。一つは、今度の経済協力の三億ドルの内容の中に請求権の問題が幾ら含まれているかということであれば、なるほど全体的な問題としてここで出せないかもしれません。しかし、あなたがたびたび言っておるように、まず第一点は、経済協力と請求権の問題とは無関係です。その次に、経済協力の三億ドル、——二億ドルは別にして、三億ドルの中には請求権の金額は一切含まれていません、こう言っておる。しかも、ここで今数字がないというならばともかく、郵政大臣がこの八項目の中の第二項の逓信局関係の(a)(b)(c)(d)の四項目については、数字はあるけれども、交渉のいろいろな内容にわたるから出せないと言う。こんなばかな話はない。これは、委員長、どうしても出してもらわなければだめですよ。
  214. 大平正芳

    ○大平国務大臣 出さないと言っているわけではないのでございます。時期を見て出しますということをお約束いたしておるのです。ただいま横路さんがおっしゃった前段の、請求権と経済協力は関係がないということ、そして無償経済協力の中に請求権分が含まれていないということも、あなたがおっしゃった通りでありまして、その点は十分私も承知いたしております。従いまして、そういう資料が経済協力と関係ないことはよく承知をいたしておりますが、せっかく交渉が継続中でございますので、双方の明らかな見解の相違をぶちまけるということはしばらく御遠慮いただきたいということです。
  215. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣、それでは了解できないですよ。なぜならば、去年の予算委員会で、あなた御承知のように、ガリオア・エロアの問題についても資料を詳細に出しているじゃありませんか。タイ特別円の問題についても出しているじゃありませんか。しかも、今あなたがここで、八項目については経済協力三億ドルの中に含んでいるから出せないとか、こういうのではない、八項目についての請求権の金額は三億ドルの中に一切含まれていないと言う。それではだめですよ、出しなさいよ。
  216. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たびたび申し上げておりますように、出さないと言っているわけじゃないのです。出す時期を、適切な時期を選ばせていただきたいということです。
  217. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣、すでに二十九日から始まっているのです。二十九、三十、三十一と、きょうは七日ですから、十日間。出しなさいよ。数字がないというのならともかく、出せる数字があると郵政大臣今言ったわけですから、絶対これは今答弁してもらわなければ困る。  委員長、答弁しないというのならば、暫時休憩して、数字について出してもらいたい。だめですよ。
  218. 塚原俊郎

    塚原委員長 休憩はいたしません。質問をして下さい。答えております。どんどん質問を続けて下さい。
  219. 横路節雄

    ○横路委員 答えていないです。
  220. 塚原俊郎

    塚原委員長 時が来ればと申しております。時が来ればと申しておりますから、どんどん質問して下さい。納得のいくまで質問をして下さい。
  221. 横路節雄

    ○横路委員 郵政大臣にお尋ねします。数字はあるのですね。今あなたはそう言ったのだから、数字はあるのですね。数字があるならば、今出せるじゃないですか。
  222. 小沢久太郎

    ○小沢国務大臣 先ほども申し上げました通り、発表の段階になりますれば発表いたしたいと思います。
  223. 横路節雄

    ○横路委員 委員長、それではだめですよ。これから私は八項目について一つずつお尋ねしたいと思っておる。お尋ねしたいと思っておるのに、答弁できないとは一体何です。  それでは、もう一つ別な問題を聞いて、どうしてもそれで答弁できなければ、これは一つ善処してもらわなければ困る。  労働大臣にお尋ねします。労働大臣にお尋ねしますが、この八項目のうちの第五項目に、——読んでみます。「韓国法人又は韓国自然人の日本国又は日本国民に対する日本国債、公債、日本銀行券、被徴用韓人の未収金、補償金及びその他の請求権の弁済を請求する。」、そして、「本項の一部は下記の事項を含む。」ということで、(1)(2)(3)として、三番目に、「被徴用韓人未収金」、これはどうなっておりますか、労働大臣。
  224. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御質問は未収金の金額についてであるかと心得ますが、この金額は、日韓交渉におきますいわゆる請求権の問題に関連をいたしておりますので、外務省の希望もございまして、発表を差し控えさせていただきたいと思います。
  225. 横路節雄

    ○横路委員 委員長、だめですよ。そういうことがありますか。だめですよ。   〔発言する者、離席する者あり〕
  226. 塚原俊郎

    塚原委員長 席に着いて下さい。お静かに願います。自席に着いて下さい。  横路君に申し上げますが、決して出さないと言っておるのではないと私は考えております。納得のいくまで質問して下さい。質問を続行願います。
  227. 横路節雄

    ○横路委員 あなたが納得いくまで質問しなさいと言うから、私は納得いくまで聞きますよ。いいですか、納得いくまで。
  228. 塚原俊郎

    塚原委員長 時間の制限があります。
  229. 横路節雄

    ○横路委員 そんなことはない。私はそれでは納得のいくまで聞きます。
  230. 塚原俊郎

    塚原委員長 納得のできるように質問して下さい。
  231. 横路節雄

    ○横路委員 何を言っているんだ。
  232. 塚原俊郎

    塚原委員長 質問を続行して下さい。
  233. 横路節雄

    ○横路委員 納得のいくまで聞きますよ。何を言っていますか。  労働大臣にお尋ねをしますよ、納得のいくまで聞けと言うんだから。   〔発言する者あり〕
  234. 塚原俊郎

    塚原委員長 御静粛に願います。
  235. 横路節雄

    ○横路委員 この問題は、韓国の被徴用者の未収金については、あなたの方では金額でわかっているのだから、ここで出しなさい。労働大臣、あなた知っているんだから言いなさい。
  236. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この問題は、先ほど申し上げました理由によりまして、ここで申し上げることを差し控えさしていただきたいと思います。
  237. 横路節雄

    ○横路委員 労働大臣、あなたこれを法務局に供託しているだろう。この金額、どこの法務局に供託しているのか、それを言いなさい。法務局に供託しているじゃないか。なぜそれが答弁できないんだ。全部答弁しなさい。あなた言ったから、あなたが一番正直だ。
  238. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいま御指摘の金につきましては、政府といたしましては、終戦後直ちに関係各事業主に対しまして、未払い金のうち金銭及び有価証券についてはすみやかに供託手続をとること、事業主が通帳を保管しておる郵便貯金については、供託のためその通帳を郵政省貯金局へ引き渡すこと、かような措置をとるように事業主を指導いたしました。そして未払い賃金等の散逸の防止に努めた次第なのでございます。なお、未払い賃金等の債権者各人別金額等につきましては、事業所の焼失、解散、資料の散逸などによりまして、全部を正確に把握することはなかなか困難でございます。しかしながら、この数字につきましては、先ほど申し上げましたるごとく、目下外交交渉中であり、交渉の重大な点に関係をいたす問題でございまするので、ここで申し上げることを控えさしていただいておる次第でございます。
  239. 横路節雄

    ○横路委員 委員長、これでは納得できないです。あなたは納得のできるまで聞けと言うから、納得するまでやります。納得できないですよ。なぜならば、これは法務局に供託しているだろう。どこの法務局に供託しているんだ。法務大臣どうだ。いや、それよりは、労働大臣、あなたの方で金額についてここで明らかにしなさい。今の答弁ではだめですよ。郵政大臣よりはちょっと良心的だけれども、だめですよ、労働大臣。
  240. 池田勇人

    池田国務大臣 横路さんの問題は八項目にわたっております。また、八項目のうちのいろいろな問題がお聞きになりたいと思うのでございますが、たびたび申し上げましたごとく、われわれは、平和条約第四条のいわゆる請求権の問題、漁業権の問題、竹島問題あるいは法的地位の問題、全体として円満妥結にいくことを祈念して努力しておるのであります。しこうして、一応の請求権の問題は片づきましたが、先ほど来申し上げましたごとく、個々の問題につきましてのわれわれの資料はございますが、その資料通りにはいかない。向こうがそれを承知しないときに、向こうの承知しないものをここへ今出してやるということは、私はまだ時期が早いと思います。いずれは、この問題はやはりあらためて、調印が済んだあとには批准をいただかなければいけない、そのときに一つ十分御審議願いたいと思います。しかし、なお要求がございますので、大体全体の交渉の目鼻がつきましたときには、私は出すように努力いたしたいと思いますが、案件を今全体として交渉しているときに、お互いの言い分をさらけ出して、そうして他の問題に悪影響があることは、外交交渉上避けるべき問題と思います。だから、日韓交渉につきまして御審議を願うときはもちろん出しますが、それ以前におきましても、適当なときには出したいと思います。これが意見の一致したものならよろしゅうございますけれども、事実関係、法律関係が厄介なものを、今ここで日本の試算はこうだといって議論するということは、外交をうまくやっていく上において、私は百害あって一利ないと思います。
  241. 横路節雄

    ○横路委員 だめですよ。あなたは事実関係が一致をしたら出すような話だけれども、事実関係が一致するはずがないじゃないですか。大体問題の性質が違うじゃありませんか。なぜ違うかというと、再三私が聞いているように、無償援助三億ドルは平和条約第四条にいう請求権の問題とは全く無関係ですというのが第一点。第二の点は、無償援助三億ドルの中には請求権の問題は何ら含まれていませんと、こう言っているじゃないですか。それならば、平和条約第四条にいう請求権の問題は別の問題なんだから、だから出しなさいよ。なぜ出せないのですか。出さなければだめですよ。
  242. 池田勇人

    池田国務大臣 今度の三億ドルのうちに請求権の個々の問題は無関係と申しておりますが、この三億ドルとか二億ドルの問題も漁業権の問題も一体として考えるべき問題であります。従いまして、三億ドルのうちにおきましても、四千七百万ドルのいわゆる債権、この債権の問題につきましても、まだこれから折衝しなければならない。従って、お互いに意見の一致に至らなかった問題をここに出して、この問題がどうだとかこうだとか言うことは、交渉全体をまとめる上におきまして、私はとるべき策ではないと思います。今の徴用労働者に対する人数とか供託金額を今議論したり、あるいは簡易保険、郵便のあれを議論したり、そうしてそれが南朝鮮の人か北朝鮮の人かわからないというときに、これを出して議論するということは、まだ早過ぎるので、全体の問題を一括して議論願いたいと私は考えております。
  243. 横路節雄

    ○横路委員 そういうことないですよ。外務大臣、韓国側の八項目の要求について、大蔵省で数字を発表したことはないですか。一度もないですか。財産権請求の問題について、金額について発表したことはないですか。それを一つ言ってごらんなさい。
  244. 大平正芳

    ○大平国務大臣 大蔵省のみならず、政府全体でそういうことをした覚えはありません。
  245. 横路節雄

    ○横路委員 それでは、一体これはどうなんです。いいですか、これはそのままの資料ですよ。これは当時あなたの方で各新聞社に配った、タイプで打ったものをそのまま今私は持っているんですよ。私は読んでみますから。あなたは、大蔵省でも外務省でも出したことないと言うが、そうではないのです。  昭和二十八年十月二十二日、外務省情報文化局、日韓会談に関する林外務省情報文化局長の談話、日韓会談は昨日不幸にして不調に終った、これは韓国側の予定の計画のようである、——全部読むことはやめて、あとで速記に載せておきますけれども、会談の議題は、一、漁業の問題、二、日韓国交樹立、三、日本における朝鮮人約六十万の地位、四、請求権の問題がある、請求権の問題は若干説明を要する、すなわち、日本側は、戦争前韓国にあった日本の公有財産は平和条約により韓国がこれを取得することは認めるが、日本国民が持っていた私有財産、終戦時の価格で約百二十ないし百四十億円に対してはクレームを有すると主張する、これに対して韓国側は、日本における財産約九十ないし百二十億円にクレームを持つという、——日本に対する財産権。この双方の主張の間に立って政治的に解決する方法として両方のクレームを相殺しようという提案がある、これは事実上二十ないし四十億円を韓国のために放棄することになる、この案は昨年の日韓首席代表間の非公式会談において梁韓国代表が提案したものである、日本側としては、日韓間の友好関係樹立のため、今回この案を真剣に研究するにやぶさかでないことを明らかにした、しかるに、驚くべきことには、日本側が本案を考慮せんとするや、韓国代表梁氏はかかる提案をしたことはないと主張し、さらに進んで、日本人は在韓私有財産に対し一切のクレームを認められない、反対に韓国の在日財産のみに対して韓国のクレームがあり得ると強弁した、これは実際においては日本は韓国に対して約百億円を支払うべしということになる、こう昭和二十八年の十月二十二日に発表しているじゃないか。九十億ないし百二十億と言っているじゃないか。韓国側は日本の財産と相互相殺しようと言っているじゃないか。九十億といったら幾らなんです。二千五百万ドルじゃないですか。百二十億として三千三百万ドルじゃないですか。大蔵大臣、いいですか。大蔵省が試算をした数字は千四百ないし千五百万ドルなんだ。それを、外務省から泣きを入れられて、二千五百万ドルと踏んだ数字がここに出ておるじゃないですか。委員長、こういうように昭和二十七年には八項目の要求があった。それを今ここで発表できないとは一体どういうんです。だめですよ。こういう発表をしているじゃないか。これは明らかにあなたの方でタイプに打って外務省で各新聞記者へ出してやったものじゃないか。ここにあるじゃないですか。これはだめですよ。出して下さい。出しているじゃないか。出したものがあるじゃないか。
  246. 大平正芳

    ○大平国務大臣 昭和二十八年の十月二十二日に外務省は、その前日、すなわち十月二十一日に決裂いたしました日韓会談の問題点国民に明らかにするために、局長談の形式をもって発表を行なったのでありますが、御質問日本の在韓私有財産及び韓国の対日請求の金額は、その発表の中に含まれているものをさしているものと考えます。当時日韓会談が決裂いたしましたのは、御承知通り、諸懸案、なかんずく請求権の問題につきまして双方の法律的な主張が根本的に対立したためでありまして、その後最近に至って行なわれたような請求権の各項目についての内容・数字についての突き合わせば、いまだ全然行われるに至っていなかったものでございます。従いまして、外務省としては、当時入手し得た諸般の資料に基づき、全くの試算として一応の数字をはじき出しまして、当時における請求権問題に関する日韓双方の考え方を、しいて数字で示せばこういうことになるであろうということを発表に述べたにすぎないのでございまして、問題の数字が日韓会談の交渉の場において双方から実際に持ち出されたわけではございません。  この間私が本委員会にも申し上げました通り、請求権の実体というものをどうして捕捉するかにつきまして非常に苦労をお互いにいたしたわけでございまするが、問題は、どういう法律的な観点に立つか、どういう事実の立証を基礎とするかによりまして、いろいろな数字が、無数の答案があり得るのであるということを繰り返し申し上げたわけでございまして、どれが日本政府として有権的に採択し得る数字であるかということは一回も申し上げたことがないのでございまして、従いまして具体的な何千万ドルというような数字につきまして政府が責任を持って発表したということはないわけでございます。
  247. 横路節雄

    ○横路委員 何を言っていますか。今の話はだめですよ。私もここに持っているのですよ、その当時タイプで打ったそのままのものを。もう一ぺん読んでみますか。請求権の問題は若干説明を要する、そうして、外務省としては、日本国民が持っていた私有財産は終戦時の価格で百二十ないし百四十億、これは韓国にですよ。北側を言っているのじゃないのです。その前にあなたの方で発表した資料があるんですよ。あなたの方でさらに発表した資料がある。しかし、ここでは言っているではありませんか。日本は百二十ないし百四十だ、ところが、韓国側は、日本に対しては九十ないし百二十だ、韓国側は非公式にそれで相殺しようじゃないか、だから日本はそれで考慮しようじゃないか、こうなったというじゃないですか。こういうところでこういうように、新聞記者団に対しては、昭和二十八年十月二十二日の段階で、二千五百万ドルないし三千三百万ドルのこういう数字を発表しておいて、ここで発表できないということはないですよ。これは国会軽視ですよ。こういうことはないです。これは絶対ないです。これは発表してもらわなければだめですよ。これは国会軽視ですよ。こういうものを発表しておいて、これはだめです。
  248. 池田勇人

    池田国務大臣 今外務大臣が説明しましたごとく、日韓会談が決裂したあとにおきまして、今から十年前決裂したあとにおきまして、いろいろ事務当局からしたのでございましょうが、決裂したあとと、その後いろいろ検討しましたあととは、違ってくることは当然でございます。しかも、向こうにおきましては相当の主張をいたしております。そうして、問題をこれからもずっとまとめたくない、日韓会談をまとめないという考え方でいろんな言い合いっこをするのならよろしゅうございますが、まとめようというときには、お互いに刺激しないように、まとまって、そしてあとの説明は十分にいたして、賛成か反対かをいただきます。従いまして、私は、十年前に決裂のときに言ったことをすぐ今出してやるということは、日韓会談をまとめようとするわれわれの気持としては、これは当を得たものではないと考えるのであります。従いまして、御審議願うときに十分御説明いたしまするから、そのときまでお待ち願いたい。また、条約あるいは協定を提案します前におきましても、大体の見通しがつきましたならば、できるだけ早く資料の提出は、私はいたしたいと考えます。
  249. 横路節雄

    ○横路委員 今のお話は、総理大臣、何ですか、決裂したあとで発表した数字は腹立ちまぎれに言ったから間違いだったというのですか。何かそういうようなものの言い方ですよ。決裂したあとで言った数字と今は違う、それは何ですか。外務省というのはそういうところなんですか。腹が立てば金額を大きくするのか小さくするのか。それはどうなんです。そんなばかな話はないですよ。
  250. 池田勇人

    池田国務大臣 そういうふうにおとりになっては困ります。十年前に、まだ細目に入らずに、一応の試算で、向こうの言い分も聞かずに、こっちからの資料も私は十分じゃなかったと思います。その後ずっと検討したのでございます。十年前に決裂したあとに一応の分を出したからといっても、そのときの情勢と今の情勢とは違っております。今はまとめようとして一生懸命になっておる。両方とも協力し合い、また通報し合っていっておるのであります。まとめないという気持ならば、それはいろんなこともできましょうが、われわれはまとめようとしておるのでございますから、そうして、まとまって、あなた方の御賛成を得たいというときには資料を十分そろえてお出しします、こういうことでございます。
  251. 横路節雄

    ○横路委員 じゃ、大平さん、外務大臣にお尋ねしますが、昭和二十八年十月二十一日決裂したときにおける、日本政府というか、外務省というか、大蔵省も入ってのことだろうが、そのときの日本側の主張は、二千五百万ドルないし三千三百万ドルであったということをここで確認しますか。その点は確認しますね。
  252. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど私が御答弁申し上げました通り、各項目にわたりまして渡り合って、煮詰めて、日本政府としてこういう数字を想定したということではないのでございまして、一応見解の隔絶があったという例証として試算的な数字を申し上げたものと思うのでございまして、政府がその金額を採択して交渉に臨むというところまで煮詰まった数字ではなかったと思います。
  253. 横路節雄

    ○横路委員 私は委員長に申し上げますけれども、委員長から注意をして下さい。委員長政府側に注意をして答弁を促さない限り、私は質問できない。なぜならば、私がここに持ってきている材料は、いいかげんなものではない。そのときには外務省がみずからタイプを打って、新聞記者を全部集めて発表した公式のものなんです。それを今何です。そのときこれは政府の発表ではない、政府の試算したものではないなどと言う。私は大体七千万ドルなどという主張には耳をかさない方だ。大蔵省は千五百万ドル、それが、時の大蔵大臣が政治的に配慮して、外務大臣との間に、大体二千五百万ドルでどうかということでこれは踏んだ数字なんです。それまで今ここに否定をされて、交渉決裂したから腹が立ってやったのだろうとか、そういうことで、一体何です。国会で答弁できないとは。一つ委員長の責任において政府側に注意してやって下さいよ。そうでなければ、私はこのまま黙って待っています。   〔辻原委員「議事進行」と呼ぶ〕
  254. 塚原俊郎

    塚原委員長 議事進行ですか。——辻原弘市君。
  255. 辻原弘市

    ○辻原委員 ただいま横路委員が提起いたしました問題は、きょう初めて当委員会に委員の発言として出た問題ではないのであります。これは、過ぐる二十九日のわが党の勝間田委員質問、また、三十日の木原委員質問の際にも、政府に対して、重要な日韓会談の問題の中で従来いろいろな数字を並べられてあった請求権の法的根拠あるものについて、今国会を通じて重要な審議の対象になっている日韓の問題の中で、少なくとも具体的な資料を提出すべきである、こういうことを要求いたしておったのであります。それに対して、外務大臣から、提出をいたします、資料はございますという答弁があった。ところが、その後だんだんこの問題について問いただして参りますと、提出するのやら提出しないのやら、今また横路委員質問に対しては、日韓交渉が妥結した後だとか、あるいは外交上の秘密事項にわたる問題であるとか、支障を来たすとか、いろいろな理由、ごたくを並べて、あくまでも、国民が重要な問題に考えているこの請求権の根拠について、すでに発表しておる政府資料、それに基づく数字すら公表しようとしないのであります。そういうような態度は、われわれ野党委員として了承するわけには参らない。従って、それについて提出するのかしないのか、また、これは各省にもまたがっておりますから、どういう形で当委員会の審議中に取り扱われんとするのか、これらの政府の明確な態度をあらためてまとめていただきたいことと、同時に、われわれは、横路委員の要求いたしております通り、この審議の中で、横路君の質問がそれに関連してなおあと続くようでありますから、少なくとも、今要求の通りに、すみやかに、数字があるのですから、ないものまで出せとは言わないが、あるものだけは取りそろえて提出するよう、あらためて要求をいたしたいと思います。従って、この問題の取り扱いのために、暫時休憩して理事会を開催して協議していただきたい。もし外交上の必要があるならば、秘密会でもけっこうだと思います。これを議事進行として委員長に要求をいたします。
  256. 塚原俊郎

    塚原委員長 ただいま辻原弘市君から、暫時休憩して理事会を開けという動議でございますか、——動議がございました。これの取り扱いについて御意見があったらどうぞ。   〔「採決」「採決せずに委員長善処しろ」と呼び、その他発言する者あり〕
  257. 塚原俊郎

    塚原委員長 ただいま辻原君から、議事進行に関する発言があり、これを動議として扱うように申し出がありました。委員会の審議において、納得がいかないから、見解の相違があるから、そのまま休憩にするというような処置は私としてはとりたくありません。しかし、議場は混乱いたしておりまするので、このままの形で理事会を直ちに開催したいと思います。理事の方は別室に御参集願います。   〔委員長退席、安藤委員長代理着席〕   〔安藤委員長代理退席、委員長着席〕
  258. 塚原俊郎

    塚原委員長 先ほど辻原君から議事進行で要望がありましたが、理事会で協議いたしました結果、この際、議事を進めることにいたします。  大平外務大臣から発言を求められております。これを許します。大平外務大臣。
  259. 大平正芳

    ○大平国務大臣 政府としては、日韓会談のすみやかなる妥結に鋭意努力中である現段階において、いわゆる請求権等に関する資料を今直ちに公表することは差し控えさしてもらいたいが、調印のめどがつきそうになった場合はもちろん、なるべくすみやかな機会に御要求の資料を提出いたしたいと思います。  なお、昭和二十八年当時、外務省情報文化局長談として数字に触れた資料の発表があったことは、事実でございます。
  260. 横路節雄

    ○横路委員 今の問題で、一つは、昭和二十八年十月二十二日に外務省が発表しましたその中には、九十億ないし百二十億円、言いかえたら、二千五百万ドルないし三千三百万ドルという数字が提起されていた。しかも、日本側の私有財産権である百二十億ないし百四十億円、これとの相殺についても提案があった。ですから私は、ここで、千五百万ドルないし三千三百万ドルについて、その当時の段階においては、外務省は、それが韓国側から日本に要求されてある請求権である、韓国自体もそういうふうに認めていたという点については、今の外務大臣の御答弁で私は確認をしておきたいと思うのですが、先ほど外務大臣は、この八項目にわたる請求権については討議をした事実はない、こういうふうに答弁していますね。その通りでございますか。一番最後、ごたごたしたあとで答弁していますよ。
  261. 大平正芳

    ○大平国務大臣 当時の経過を調べてみましたのでございますが、諸懸案、なかんずく請求権の問題につきましては、双方の法律的主張が根本的に対立したためでございまして、最近に至って行なわれたような、請求権各項目についての内容、数字についての突き合わせば全然行なわれるに至っていなかったものであるということが、その後調べました結果判明いたしてございます。
  262. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣の今のお話は、二十八年十月二十一日、交渉が決裂した当時においてそうだったというのですか。今なお、今度妥結に至った無償三億ドルをきめる過程においても、そういう事実関係の討議はしなかったというのですか。それは今はっきりしないのですけれども……。
  263. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今私が申し上げましたのは、昭和二十八年の情報文化局長談が出るまでの過程において、そのような事実はなかったということを申し上げたのです。
  264. 横路節雄

    ○横路委員 今はどうですか。
  265. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これはたびたび私が申し上げておりますように、第六次会談におきましては、各項目につきまして、事実の立証、法律問題等について項目ごとに内容、数字にわたって検討が行なわれたことは事実でございます。
  266. 横路節雄

    ○横路委員 労働大臣、もう一つ聞いておきますが、先ほど私から指摘をしたのですが、この第五項目の被徴用韓人未収金については、法務局に供託してあるでしょう。これは供託してあるのです。この点ちょっとはっきりして下さい。
  267. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 先ほど申し上げましたごとく、事業主に対しまして、供託し、散逸を防止するような措置をとるように指示いたしまして、これによりまして相当部分は供託されておりますが、なお一部未供託と認められるものもございます。
  268. 横路節雄

    ○横路委員 総理大臣、今の労働大臣の答弁、何とお聞きになりましたか。今の労働大臣の答弁は、第五項目における、いわゆる被徴用韓国人の未収金については供託しているのです。供託しているのですよ。そうすると、法律問題としては、今回の日韓会談でどういう妥結をしようとも、平和条約第四条に基づく、先ほど私が申し上げた韓国と日本国との間の請求権問題は解決するかもしれない。しかし、韓国人の日本国、日本法人に対する請求権は消滅しませんよ。消滅しないではありませんか。なぜならば、それぞれの人によってちゃんと供託されているではありませんか。だから私は、先ほど聞いたように、この平和条約第四条に基づくいわゆる請求権問題の本質的な解決ではない。どういうようにあなたの方でこの無償援助三億ドルについてやろうとも、今労働大臣が答弁したように、韓国人の日本国、日本国法人に対するこの請求権は絶対に消滅しないです。これはしないのですよ。これがするというならば、それは全く法律を曲げるものです。これはしません。どうですか。
  269. 池田勇人

    池田国務大臣 そういうことは、今度の条約できめることに相なると思うのであります。従いまして、この条約のきめ方によって、それが消える方向でいくと私は思います。
  270. 横路節雄

    ○横路委員 いやいや、池田さん、これは、だいぶ自信がないようですが、消滅しないです。なぜ消滅しますか。なぜならば、いいですか、無償供与の中に請求権問題の金額がこれこれと入っている、それであれば、今あなたが御指摘のように、第五項目による被徴用韓人未収金について供託していても、あるいはその中に含まれている、供託した分については含んでいるんだ、幾ら幾ら含んでいるんだ、これであれば解決するでしょう。しかし、無償供与については、先ほどからここで答弁がございましたように、生産財並びに役務の提供でございます。従って、法律上は平和条約第四条とは無関係だ。だから、先ほど私がしつこく外務大臣に聞いているように、韓国は請求権を放棄したのですかと聞いた。はっきりしないです。放棄するのかもしれない。しかし、両国間の請求権は消滅するかもしれないが、この点は法務局に供託してあるという厳たる事実——個人の請求権は厳として消えるものではありません。だから、あなたがどんなに日韓会談において妥結の——あるいは協定になるのか、条約になるのか、共同宣言になるのか、何になるのか私はわかりませんが、しかし、これは絶対に消えないです。韓国人の個人の日本国法人に対する請求権は消えません。
  271. 池田勇人

    池田国務大臣 私はそういうことを今度の日韓交渉できめたい。どういうふうにきめるか、消す方法できめます。なお、法律問題につきましては、法制局長官から答えさせますが、私の考え方はそういうことでございます。
  272. 横路節雄

    ○横路委員 実は私も、もっと時間をかけていろいろお尋ねしたい点があるのですけれども、残りの時間もそんなに多くございませんから、今林法制局長官に出てここで答弁してもらうと、時間がそれだけよけいになりますから——しかし、この点は、総理、消えませんよ。この点は残るのです。この点だけは言っておきます。どんなに言っても——これはいずれ法務局を調べれば、総額幾らになるか、だれに対してどうかということははっきりしているのですよ。個人ははっきりしているのだから、消えるものではない。  次は漁業問題についてお尋ねします。  外務大臣にお尋ねをしますが、この漁業問題は、今回の日韓会談における大きな問題です。一括懸案の解決事項の実に重要な問題です。そこで、あなたは、去る一月二十九日の井出氏の質問に答えて、漁業権について、大体二つの点について答弁をされています。一つは、沿岸国に対して最大限十二海里の排他的水域権の設定を認めるということなんです。これはイギリスと北欧との間でいわゆる漁業紛争の解決にやっていることだ、こういう点をあげているわけですが、まず第一番目に、一体李ラインの撤廃、その後いろいろ言われている国防ラインの四十海里、この点については絶対に認めないのだという点を明らかにしてもらいたいことと、それから十二海里でいくのかどうか、まず、この点について明確に答弁をしていただきたいと思う。
  273. 大平正芳

    ○大平国務大臣 漁業問題の討議は、最近始まっておるわけでございまして、彼我の主張を詳細に今申し上げる自由はございませんが、ただいまの段階で申し上げられますことは、今前段で言われた李ラインというものが象徴するように、公海を広範な範囲にわたりまして排他的に、かつ一方的に支配するというようなことはわが方は容認できないということは、たびたび申し上げた通りでございます。それから沿岸国の権利でございまするが、最近の海洋法の趨勢、傾向というものは、私ども尊重して参りたいという心がまえで臨んでおります。
  274. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣、私がお尋ねしておきたい大事な点は、いわゆる新聞に発表になっている、韓国側が李ラインの撤廃はする、しかし、国防ラインとして四十海里の線は厳として譲らない、こういうことを言っているわけだが、この点については絶対に日本側としては承服できない、日本側としてやるのは十二海里だ、こういうことでございますか。その点を明確にしていただきたいのです。
  275. 大平正芳

    ○大平国務大臣 国防ライン云々は、私ども関知しないのでございます。韓国がどういう範囲において警備をして参るかということは、韓国のきめる問題でございまして、日韓の間できめるべき性質のものではないと心得ております。
  276. 横路節雄

    ○横路委員 しかし、外務大臣の今のお話ですと、国防ラインについては日韓両国の協議ではない、それは韓国側がみずからきめるべきだ。そうすると、こういうことになりませんか。十二海里は認めます、李ラインは撤廃します、しかし、国防ラインの四十海里については私の方は一方的にやります、こういうことで、国防ラインの四十海里については日韓両国の協議ではない、国防を定めるのは韓国の自主的なものだから、それは勝手にやりなさい、こういう意味ですか。これは大へんなことですよ。これはどうなんです。はっきりして下さい。この点をはっきりしてもらわなければ困る。
  277. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私がたびたび申し上げておりますように、公海上の海域にわたりまして排他的な権力を行使するということは、私どもとしては、合法的であるとも妥当なものであるとも認められないという立場は、たびたび申し上げておる通りでございます。
  278. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣、今までの漁業問題に対して、韓国側が非常に李ラインに対してこだわっておる点からいけば、李ラインは撤廃する、十二海里は認めますということで、漁業協定は結んだ、それが終わってから、国防はわれわれの自主的なことだ、こう言って、四十海里に対する国防ラインをつくるのではないか、こういう点の懸念はありますよ。だから私は聞いているのです。だから、十二海里以外は日本の漁業権は認めるのだ、公海自由の原則で、こういう意味ですか。それとも、国防ラインについては向こうが自主的にやるのだから仕方がないというのですか、これはこれからの漁業交渉で一番大事なところなんです。はっきりして下さい。あなたの答弁だとはっきりしないのです。
  279. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今言われておりますことは当然のことでございまして、私どもの漁船が公海において安全操業を確保されねばならぬと思っております。
  280. 横路節雄

    ○横路委員 総理、今の大平さんのお話というのははっきりしないです。やっぱり総理でないとうまくないですね。総理にお尋ねしますが、李ラインは撤廃する、十二海里も認めますと協定を結んで、国防ラインはわれわれの自主的なことだ、こう言って、四十海里の国防ラインをつくる可能性だってなきにしもあらず。そこで私は聞いているのですけれども、今の外務大臣の答弁ですと、何かあいまいです。総理から明確に、十二海里以外の国防ラインとかそういうものは認めないと、はっきり一つ答弁をしていただかなければ困る。
  281. 池田勇人

    池田国務大臣 私は国防ラインというものを聞いたことがないのでございますが、どういうラインでございますか、その点がはっきりしないので。大平外務大臣の言うのは、十二海里というものは、これは今のジュネーブで議論になったり、あるいはまた北欧の例から見て、十二海里の向こうの領海を認める。そのほかは公海自由の原則をわれわれは建前としていっておる。国防ラインというのを私はまだ外務大臣からも報告を受けておりません。国防ラインという意味がわからないのです。
  282. 横路節雄

    ○横路委員 今の点は、みんな新聞が報道しているわけです。新聞が報道していますよ。総理だって毎朝お読みになるでしょう。韓国側としては提案をしている。私がはっきりお尋ねしたい点は、十二海里までは認める、それ以外は絶対に認めない、そうして漁業についての漁業権は日本としては確保する、こういうことではっきりいくのですかと聞いている。その点について御答弁いただきたい。
  283. 池田勇人

    池田国務大臣 その点は外務大臣が言っている通りでございます。
  284. 横路節雄

    ○横路委員 どういうのですか。
  285. 池田勇人

    池田国務大臣 外務大臣が言っているように、十二海里というのは、北欧の例、その他ジュネーブの会議で、われわれは大体その線でいこうといたしております。そうすれば公海自由の原則ではございませんか。李ライン、四十海里とかなんとかいうのは、私は有権的に何も聞いたことがございませんので、知らないのです。そういうものは知らないと言っている。やはり公海自由の原則の建前でいく。しからば、どこからが公海かということになりますと、十二海里という説が一応とるべき説じゃないかと外務大臣は言っているのであります。
  286. 横路節雄

    ○横路委員 どうも本来からいえば、請求権問題というのは、一括で解決をするというのが正しいものを、これは逆にいわゆる請求権問題をすりかえて、経済協力で先に金・大卒予備会談できめて、そうしてあとに漁業問題ですから、漁業問題は交渉が非常に苦しくなっているのです。交渉としては逆でしょう。しかし、今総理大臣の言う十二海里ということを基本としていくのだ、こういう建前を一応お聞きをしておいて、外務大臣、これは井出委員に対するあなたの答弁の中で、何か自主規制をやるとかなんとか言っているのですが、あれはどういうことですか。そういうことを言っているのですか、漁業交渉の中で。
  287. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういうことは申しておりません。
  288. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、外務大臣、ここに外政研究会、一九六二年、ナンバー・スリー、私はこれを読んで非常に驚いているのです。これはだれが言っているか。読んでみますよ。「外政研究」外政研究会の第三回定例会です。一九六二年二月十五日、「日韓問題と東南アジアの情勢」これは赤坂プリンス・ホテルで開かれたそのときの講演を収録したものです。「外務省アジア局長伊関」こうなっている。私、これから読んでみます。一体外務大臣にかわってアジア局長といえば重要な責任者である。重要な責任でやった者が、何でこういうことを言っているのです。読んでみますよ。日韓漁業協約問題です。第一点は、向こうが一番重点に考えているのは請求権、こちら側からいたしますと李ラインという問題である。漁業協定を作り李ラインを撤廃するというのが、日本側のこの会談から得る一番大きな利点だ。もう一つは、日本にいる六十万朝鮮人というか、韓国を支持する者、北鮮を支持する者、中立的な者というふうに分かれている、この六十万の地位の問題である。ところが、漁業問題についてこう言っているのであります。結局漁業協定を結んで魚族資源の維持という意味で、魚獲について自主規制をするのは、目下のところは日本側が規制をするわけです。日本側がある地域には入らぬとか、あるいはある地域では入る船の隻数を制限するとか、あるいは年間の魚獲高を制限するとかというふうに、日本側が自分で制限をする。そしてその違反があった場合には、現在は李ラインの中へ入った者は韓国の警察につかまる、そして向こうの裁判を受けて、船は没収され、漁民は大体六カ月程度の刑期をもって刑に服するということになっているが、今後そういう協定をつくって、この区域には入らぬとか、この区域ではこう制限するとかということにして、これに違反した者は、日本が自分で処罰するというようなことにしよう。——ここにあるのです。私もこれを読んでびっくりしたのです。去年の二月十五日。この会長さんは自民党の福田篤泰さんという。わざわざ赤坂のプリンス・ホテルに行って、外務省のアジア局長としてこういうことを言っている。日本協定を結んで自主規制をする、ここには入らない、入る地域については制限する、年間の漁獲高は制限する、もしも違反したら日本側がみずから処罰する、こういうことをつくることで交渉をなすっているのですか。外務大臣、聞いたことがありますか。あなたはそういうことはないと言った。あなたがお読みでなければ、これ貸してあげてもいいです。もう一冊ありますから、貸してあげてもいい。こういうことをやっているのですよ。総理大臣、あなたはお笑いになるけれども、こういうことをやって何が日韓交渉です。外務大臣、答弁して下さい。絶対そういうことがないというならないと言って下さいよ。
  289. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほどの御質問は、大平がそういうことを言ったことがあるかということで、私はそういうことを申し上げたことがないと申し上げたわけです。それは間違いございません。それから今の伊関君の講演でございまするが、私は今横路さんから初めて伺ったわけでございまして、そういうことをされたことと思うのでございますが、私が漁業交渉について本委員会を通じて申し上げておりますことは、今漁業交渉は実質的な討議に入ったばかりでございますので、彼我の主張について詳細に申し上げる自由は持っておりません。差し控えさせていただきたいとお断わり申し上げておるのでございます。しかし、私どもの根本の考え方は、公海自由の原則、そして沿岸国に認められる海洋法上の最近の傾向としては、十二海里説が支持されておる模様だ、従って、われわれはそれを尊重していかにやなるまいという、大きな心がまえについて申し上げたにすぎないわけでございまして、これから漁業交渉は専門家によりまして実質的な討議に入るわけでございますので、現在先方の主張がどうであり、当方の主張がどうであるということは、今申し上げることを差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。しかし、外交に関する限りは私が責任を持っておるわけでございますので、外務省の何局長がどうおっしゃろうと、責任は私が持って処理いたす決意でございますので、御了承いただきたいと思います。
  290. 塚原俊郎

    塚原委員長 横路君に申し上げますが、申し合わせの時間が経過いたしましたので、結論をお急ぎ願います。
  291. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣、今の点は、そういうことをしないというのですか。外交交渉だから言えないとか言うのですが、アジア局長が、これはあなたが外務大臣になる前のことですね。だから、こういう自主規制はしない、十二海里という原則に立って、公海自由の原則でやるんだ、こういう自主規制、ここではどれだけとってはいかぬ、船が入るのはどれだけだ、行ったら処罰する、こういうことをやるのかどうか、この点だけは——私は全然言ってないならば聞かないですよ。言ってないならば聞かないですが、こういうように「日韓問題と東南アジアの情勢」という中で、これも新聞記者を集めて言っておることなのです。しかもこうやって出しているのです。だから、私はあなたにお尋ねをしておる。
  292. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私は、伊関君がどういう状況においてどういう考えで演説をされたか、本人から聞いておりませんけれども、しかし、一般的に申しまして、漁業問題には資源論というのがあるわけでございまして、朝鮮水域におきまして漁業資源がどういう状況にあるか、そしてその資源論に立脚して、日韓双方の漁業者が最大の利益を得るように配慮する技術が、おそらくは専門家の間でいかにあるべきかということを討議されておるものと思うわけでございまして、そういった点につきましては、今後の交渉を見ないと私もただいま判然いたしませんが、交渉全体に臨む大きな心がまえとしては、先ほど申しましたような構想で臨んでおるわけです。
  293. 横路節雄

    ○横路委員 それは外務大臣、一番最初私に答弁された、自主規制はしない、そういう原則に立ってやる、こういうことですね。一番最初はそう答弁されたのですから、そうですね。自主規制というようなことはしないという原則に立ってやる、こういうことなのですね。
  294. 大平正芳

    ○大平国務大臣 自主規制云々について、私がただいままで申し上げたことがないということを申し上げただけでございます。問題は一切の専門的な問題でございますので、今専門家の間で討議が行なわれておるわけでございまして、資源論から立脚してどのような魚獲の方法をとるかというようなことにつきましては、議論があり得ることだろうと私は思っております。
  295. 横路節雄

    ○横路委員 総理にお尋ねしますが、これは一九六二年九月二十七日、各新聞に出たことですが、米国会計検査院が九月二十六日議会に提出した報告書の中で、一九五七年から六一年までの五カ年にわたる米国の対韓援助について、この米国の五カ年援助計画は、韓国側が十二億ドルに上る米援助資金を消化できなかったため、同国内に腐敗を生じ、その経済成長を妨げるだけに終わった、この報告は、ケネディ大統領の要請する六三会計年度の対外援助法案が議会で大幅削減のうき目にあい、難航している最中に公表されたもので、同報告はさらに対韓援助について次の諸点を指摘している、こう言っています。失敗の原因の一つは、年二億ドルをこえる援助額を生産性に吸収するための韓国経済の能力、または効果的に運用する韓国政府の能力が欠けていたためである、こういうように言っています。従って、対韓援助計画は、一九六二年から大幅に縮小された、こういうことを言っておるのであります。そこで、こういうように、アメリカにおいても、会計検査院は、この一九五七年から六一年までに及ぶ五カ年にわたる米国の対韓援助計画は、韓国内における腐敗を生む原因になった、こういうように指摘しているじゃありませんか。この点について、総理が韓国に対する経済援助、こういうように踏み切ったのは、アメリカと同じ轍を踏むことになりませんか。総理考えはどうですか。
  296. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、アメリカの会計検査院が議会に報告したことにつきましての批評はいたしません。しかし、昔韓国の政権なり政治に、いろいろな援助その他につきましてよくないことがあったということは、新聞で聞いております。それが革命の一つの大きい原因であったということを私は聞いている。しかし、私は朴議長並びに金前の情報部長と会いましたときに、そういう弊害をためるために、われわれはりっぱな民主主義の政治をこれからやっていくんだ、そういうことのないように努めるんだ、こういうことを言っておりました。だから、私は、会計検査院の報告は知りませんが、腐敗があったということは、新聞その他で聞いておるのであります。
  297. 横路節雄

    ○横路委員 総理、今私の手元に、自由民主党が三十八年一月に全国大会で可決決定を見ました昭和三十八年度の自民党の活動方針がございます。あなたは、いわゆる自民党総裁として、この活動方針について最高の責任があるわけです。この中にこういうことが書いてあります。「今回のキューバ事件により明らかになったように、共産主義勢力は自由主義勢力の間隙に乗じ、何時いかなる場所において攻勢に転ずるかもわからない。この見地からみても日韓の国交を一日も速やかに正常化し、もって共産主義勢力の乗ずる余地をなからしめることは、わが党の重大使命である。」こう言っている。これは自民党のPR版ではないのです。あなたの方の全国大会で、あなたが総裁として決定された活動方針です。そうすると、今回の韓国に対する経済援助、無償三億ドル、有償二億ドル、合計五億ドル、千八百億円にわたる経済援助というものは、言うなれば、韓国をもってして共産主義の乗ずるすきをなからしめるようにする、言いかえたならば、アメリカを指導者とする日本や韓国や台湾の中華民国政府、こういう一環の中において、韓国を反共の軍事体制の中にきちっと入れて、アジアにおける反共の軍事体制を確立しよう、そのためには、この際、わが自民党としては、五億ドルの経済援助を韓国にすることが、いわゆる共産主義勢力の乗ずる余地をなからしめることである、こういう意味ですか。これはほかのものではないのです。あなたの党の大会の運動方針です。
  298. 池田勇人

    池田国務大臣 そういうようにおとりになるのは少し変なんです。われわれは、共産主義の浸透を排除することを、自由国家群の一員として常に考えておるのであります。これは韓国と日本との国交正常化であって、共産主義排除のための国交正常化じゃないのです。これは、施政演説で言っておりますように、韓国と日本とが正常化していないのは不自然だ、両方相寄り相助けて経済の繁栄をしていこうというのが正常化のあれでございます。それから、お互いに共産主義の浸透に対しての防衛ということは、正常化していてもしていなくても、韓国もそうであるし、われわれもそうであるのであります。それだから、これを一緒につなぎ合わすことはおよし願った方がよろしゅうございましょう。
  299. 横路節雄

    ○横路委員 しかし、総理、私がほかの資料を出して言うならば別ですよ。しかし、あなたの方の大会で決定した活動方針に、「日韓交渉早期妥結の促進」という中の最後の結びとしてそうなっている。わざわざそれで結んでいるのです。キューバ事件に見られるように、共産主義勢力は自由主義勢力の間隙に乗じ、いついかなる場所においても攻勢に転ずるかもしれない。これは軍事的な攻勢です。そのために、日韓の国交を一日もすみやかに正常化して、もって共産主義勢力の乗ずる余地をなからしめることなんだ、だから、言いかえたならば、この言葉は、経済援助五億ドルは、いわゆる韓国を反共の軍事体制の中にきちっと位置づけることなんだ、こういう意味ではありませんか。私はそう解釈するのです。
  300. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げた通りに、韓国の繁栄、日本の繁栄があれば、それはよりよく共産主義の浸透を阻止できましょう。しかし、カテゴリーは違う。共産主義に対しての防衛ということは、韓国もそうであり、日本もそうである。フィリピンもみなそうである。その共産主義の浸透を防止しようということとはカテゴリーが違う。われわれは、施政演説で言っておりますように、韓国と手を握り合ってともにともに繁栄しよう。そうして、ともにともに繁栄すれば、その結果として共産主義に対抗する力も出てくるかもわかりませんが、しかし、われわれのやろうとしていることは、第一義的には日韓の正常化であり、ともにともに繁栄しようとしているのであります。そういうようにお読み願いたいと思います。
  301. 横路節雄

    ○横路委員 総理にお尋ねしますが、これは一九六二年の九月九日の韓国新聞に出ていることです。それは、いわゆる米韓相互防衛援助協定が、御承知のように米国と韓国であります。日米安全保障条約と同じであります。しかし、米韓の行政協定については、これはいわゆる韓国側の承認を得ていないわけです。そこで、これはこういうことになっております。今春来、難航を続けてきた韓国・米国両国間の行政協定を結ぶ問題について、韓国とアメリカ政府は今月中に実務者交渉を再開することに合意をして、六日午前九時、ソウルとワシントンで韓国・米国両国の共同声明書を同時に発表した。韓国政府は、今、一つ米韓の行政協定について直ちに調印をしてくれ、ところが、アメリカ側は、これに対して、そうではない、これは民政移管のあとにやるのだ、こういうことに、これは合憲政府樹立後調印という条件をもって、民政移管後調印をするという表現を用いたわけです。この問題は、われわれ日韓会談に反対する者ではなくて、逆に日韓会談についてやや好意的な意見を持っている者でも、このいわゆる日韓のいろいろな問題についての妥結は、これは民政移管後やるのが至当ではないか、こういうように言っているのであります。この点、アメリカにおいてすら、今日の朴軍事政権との間のこういう米韓の行政協定においても、民政移管後と言っている。私は、こういうアメリカ側の態度からいっても、かりに妥結の方針を進める側の立場に立っても、民政移管後にやるということが常識的なことではないか。各新聞におけるそれぞれの政治評論家の言う言い分またそうなんである。私は、今そういう意味でこれを引用しておきましたが、これに対する総理の御答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  302. 池田勇人

    池田国務大臣 行政協定がまとまりまして、調印をいつにし、効力発生をいつにするかという問題は、今後起こるべき問題でございましょうが、われわれは、その発効の時期をいつにするかということよりも、とにかくまとめ上げることに今努力中でございまして、調印あるいは批准の時期を今とやこう言うべき筋合いのものではないと思います。
  303. 横路節雄

    ○横路委員 以上で私の質問を終わります。
  304. 塚原俊郎

    塚原委員長 これにて昭和三十七年度補正予算三案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  305. 塚原俊郎

    塚原委員長 この際、御報告いたします。  辻原弘市君外十五名より、昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)及び昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が、また、佐々木良作君外一名より、昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)、昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)及び昭和三十七年度政府関係機関補正予算(機第2号)の編成替えを求めるの動議がそれぞれ提出いたされました。
  306. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより両動議について順次その趣旨弁明を求めます。  楯兼次郎君。
  307. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました動議の趣旨説明をいたしたいと思います。  次に、案文を朗読いたします。   昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)及び昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)については、政府はこれを撤回し、左記要綱によりすみやかに組替えをなし、再提出することを要求する。   右の動議を提出する。    組替え要綱   一、一般会計第二次補正予算追加額のうち大蔵省所管の産業投資特別会計資金へ繰入れ三百五十億円より二百五十七億円を減額し、これに伴う所要の措置を講ずる。  次に理由を申し上げます。今次北陸地方を中心として起こりました豪雪地帯の被害は、本委員会におきましても質疑を通じて明らかになりましたごとく、日を追うてその被害の甚大さが明らかになって参りました。さらに今後は、私どもが非常に心配をいたしておりますのは、次に起こるなだれ等のために、その被害がさらに累加をされることが予想されるのであります。今次災害が降雪である点にかんがみまして、われわれの留意すべきことは、その被害の比重が個人に多いということであります。これら一連の雪害対策費として政府措置し得べき資金は、本委員会におきまして明らかになりましたごとく、予備費がわずかに二十億円であります。これと、若干の地方特別交付金にすぎないのであります。これではとても適当な、あるいは万全の救済対策というものは望めないと思います。従って、大蔵省所管の産業投資特別会計へ繰り入れ三百五十億円を、三十八年度使用予定九十三億円にとどめまして、残余の二百五十七億円については、自後の財源として留保し、災害対策を初めといたしまして石炭対策あるいは高校急増対策あるいは生活保護基準の引上費等に充当をするというのが動議提出の趣旨でございます。  なお、過日の委員会におきまして、私が御質問を申し上げましたごとく、財政法二十九条の精神からいきましても、この補正予算は反省すべき点がたくさんございます。従って、以上の対策を万全ならしめるために本編成替えを求める動議を提出いたした次第でございます。大方の皆さん方の御賛成をお願いを申し上げまして、提案の趣旨説明を終わります。(拍手)
  308. 塚原俊郎

  309. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)、昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)及び昭和三十七年度政府関係機関補正予算(機第2号)の編成替えを求めるの動議を提出いたします。  まず主文を朗読いたします。   昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)、昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)及び昭和三十七年度政府関係機関補正予算(機第2号)については、政府はこれを撤回し、左記要綱によりすみやかに組替えをなし、再提出することを要求する。   右の動議を提出する。    昭和三十八年二月七日  次にその要旨を説明いたします。  政府提出の昭和三十七年度予算第二次補正に反対をいたしまして、組替動議は左の通りすみやかに再提出するよう要請するものであります。  政府案は、一般会計予算補正において、歳入歳出ともに八百二十一億円余の同額を計上し、歳出補正のうち、唯一の政策補正産業投資特別会計資金への繰り入れ三百五十億円としている点に最大特徴を持っております。この産投会計繰り入れ以外の補正は、すべて当初予算の不足額補てんの事務的補正でありまして、特別会計予算も、これら事務的補正のための手続上の補正にすぎないのであります。しかも、産投会計繰り入れの三百五十億円は、政府資料の予算説明書には、同会計の原資を補完して、将来の出資需要の増大に対処するとともに、今後の産業投資経済情勢等に応じて弾力的に行ない得るようにするための繰り入れであると説明されておるのであります。  すなわち、この三百五十億円は本年度中は一切使用されず、三十八年度には九十三億円が繰り出されて産投会計出資に充てられますが、残金は依然として蓄積されるものであります。もちろんこのような補正予算編成は、三十六年の財政法改正によりまして適法ということにはなったのでありますが、補正予算編成のうちの唯一の政策の柱が、後年度に対する資金繰り越しにあるという補正は、おそらく今回の政府案が最初であります。現在の財政法が単年度財政主義を原則としている以上、このような補正は、本年度予算補正ではなく、むしろ明年度、明後年度予算補正ともいうべきものでありまして、これでは政府みずから財政法の拡大解釈によって予算編成権を乱用し、単年度財政主義の原則をみずから混乱に陥れるものといわざるを得ません。しかも三百五十億円の産投会計資金繰り入れの実質的効果は、産業面で資金需要が起こればいつでもお役に立てますというデモンストレーション的な効果をねらったものであって、予算繰作としては少なくとも三十八年度の最小限必要額だけを同会計に繰り入れ、残りの金額は本年度の決算剰余金として三十九年度一般会計予算の前年度繰越金歳入に計上すれば、三十九年度の産投資金に充当することは可能なはずなのであります。それを何ゆえにあえてこのような三百五十億円繰り入れの措置を講じたか。私は、このような筋の通らない補正は、絶対にやめていただきたいと存ずるのであります。  昨年十二月の臨時国会において成立した第一次補正は、石炭政策と災害復旧対策の経費中心でありまして、他の政策補正を全く見送っております。今回の第二次補正政府が計上している八百二十一億円の財源があれば、政府が三十八年度予算案においてみずから実施しようとしている新政策の一部は、補正財源に基づいて本年度内から開始できるはずであります。今回の第二次補正予算が、明年度予算案と同時に提出された建前からいっても、同一政策事項については、財源の許す限り、本年度内にさかのぼって政策補強をするのが、政府の当然の責任であると存ずるのであります。  私はこの見地に立ちまして、第一に、政府が第一次補正において果たさなかった政策補正を行なうこと、その項目は、お手元に配付されてありまする民主社会党組替要求動議にある通り、石炭対策、炭鉱離職者援護対策、高校急増対策、中高年令教職員の給与の不合理是正並びに生活保護と日雇い登録労務者給与のベースアップであります。これらの内容につきましては、すでに昨年十二月の第一次補正予算採決に際しまして、わが党より提出した政府案組み替え要求動議におきまして、すでに詳細に御説明いたしたので、ここでは詳細の説明を省略させていただきます。  第二に、政策補正をすべき点は、雪害復旧費であります。私どもは政府が今回の雪害につきまして、鋭意復旧に努めておる実情は了解しておりますけれども、今日の雪害については、総理みずから本会議で根本対策を講ずることを言明されたのでありますから、今後相当長期にわたり、しかも相当の広範囲にわたって、除雪作業、なだれ、洪水の予防措置、災害を受けた民間及び公共施設の復旧のための事業を継続しなければなりません。この点につきまして、政府は、必要費用を予備費から支出すればそれで間に合うという事務的の態度を捨てて、雪害復旧対策のプログラムを国民に示し、今後の雪害に備える根本策を、一日も早く確立すべきであると存じます。この意味において、雪害問題は、単に大規模な雪かき作業の域を越えて、民心安定のための政治問題となっていることを政府は銘記すべきであります。  私ども民社党は、以上申し上げた見地に立ちまして、第一に、石炭対策その他、政府が手を触れようとしない政策補正に二百四億円の補正増額。第二に、雪害対策に七十億円の計上。第三に、産投会計資金への繰り入れば明年度に使用する九十三億円だけを計上する。第四に、義務的諸経費の不足額補てんと、地方交付税交付金額を政府通りとして、おおむね政府通りの一般会計予算補正規模の範囲内でこのような組み替えをすることが必要と考えます。  よろしく政府におかれましても、わが党の要求につき考慮されたいと存ずる次第であります。  これで私の政府案組み替え要求動議の説明といたします。
  310. 塚原俊郎

    塚原委員長 以上をもちまして、趣旨弁明は終わりました。     —————————————
  311. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより討論に入ります。  昭和三十七年度補正予算三案及びこれに対する編成替えを求めるの動議二件を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。安藤覺君。
  312. 安藤覺

    安藤委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)、特別会計補正予算(特第2号)及び政府関係機関補正予算(機第2号)の三案に対し賛成の意を表し、日本社会党及び民主社会党提案の編成替えを求める動議に反対をいたすものであります。  今回の補正予算は、一般会計において八百二十一億円の追加歳出が計上せられておりますが、この追加額のうち、産業投資特別会計資金への繰り入れ三百五十億円及び国際連合公債の買い入れ十八億円等の経費を除くほかは、いずれも義務教育費国庫負担金等義務的経費もしくはこれに類する諸経費の過年度不足額及び本年度不足見込み額を補てんするための経費並びに所得税及び法人税の歳入計上に伴う地方交付税交付金等であり、また特別会計におきましては、ただいま申し上げました一般会計における歳出追加に伴いまして、交付税及び譲与税配付金、労働者災害補償並びに失業保険の三特別会計にそれぞれ所要の補正を行なうことといたしているのであります。また、政府関係機関においては、国鉄において目下建設中の東海道幹線の建設費を百六十一億円増額しようとするもので、この経費は資金運用部資金をもってまかなうことといたしているのでございます。  以上申し上げました一般会計における追加額は、いずれも必要欠くべからざる緊要な経費と認められますし、また国鉄における建設費の増加も、東海道幹線工事の進捗状況から見て、これまた緊要なものと認められるのでありまして、本補正三案はいずれも適切妥当なものとして賛意を表する次第であります。しこうしてこの際本三案について一、二の点について私どもの見解を申し添えたいと存ずるのであります。  第一は、産業投資特別会計資金への繰り入れについてであります。補正予算において、後年度の投資に充てるため産投会計資金への繰り入れ措置を講じたことは、過去においてもその例がございましたが、野党の諸君からしばしば、この種の繰り入れば財政法に規定する補正の要因に該当せず、また後年度以降の投資財源を当年度の財源でまかなうことは、年度独立の原則に反するものではないかという趣旨の反対意見が提起されたのでございますが、私どもは、野党諸君の財政法に違反するとの御見解は全く誤りであることをそのつど反論して参ったところでございますが、再度にわたるこの種の論議にかんがみ、過ぐる第四十通常国会において財政法の改正が行なわれ、ここに野党諸君の抱かれた疑義は一掃せられたことは御承知通りであります。従いまして、今回の産投会計資金への繰り入れば、財政法上いささかも疑義の生ずる余地のないところでございます。しかるに、今回の補正措置に対しましても、なお野党の諸君は、財政法上疑義あるかのごとき御議論をいたされていることは、資金というものの性格について十分の認識を持たれない点にその原因があるかと考えられるのであります。また、後年度に使用する財源があるならば、その分を減税に回したらいいではないかとの御主張もございましたが、翻って現下のわが国経済情勢を見まするならば、わが国は今貿易自由化というきびしい経済環境にあり、輸出産業の国際競争力の強化という至上命令をかかえ、他方、道路、港湾、生活環境の整備等、社会資本の充実という強い社会的要請にこたえなければならぬ実情にありまして、財政資金への需要もまたきわめて旺盛なるものが見込まれているのであります。これらの諸要請にこたえることが現下の急務でもあり、このことがまた一そうの国民の利益となるものであると判断せざるを得ないのであります。また、近時国民経済における財政の任務がいよいよ拡大しつつある際、予算の弾力的運営をいたさなければならぬ必要性もきわめて増大いたしておるのでありまして、かような観点に立ちまして、私どもはこの際、産投会計資金の補完のための繰り入れ措置は、まことに時宜を得た適切な措置であると信ずる次第であります。  次は、国際連合公債引き受けについてであります。この公債の発行は、第十六回国連総会の決議に基づくもので、発行額二億ドルのうち、わが国の引き受け分として五百万ドルが計上せられているのであります。申すまでもなく、わが国は国連加入国の有力な一員として世界平和のため最善の努力をいたしております際、国連の財政難からする緊急な要請にこたえることはけだし当然のことと思われますし、また、その引受額五百万ドルも、各国の取き受け状況から見て妥当なものと考える次第であります。  次に、日本社会党提案の編成替えを求める動議について一言申し上げます。  動議の趣旨は、本補正予算、一般会計より産投会計への繰入額三百五十億円のうち二百五十七億円を削減し、この減額を北陸地方の豪雪被害対策費等として留保せんとせられるものであります。このたびの裏日本一帯における豪雪における被害者各位に対しましては、私ども深甚の御同情を禁じ得ないものでありまして、これが対策につきましては万遺漏なきを期さなければならぬことは申すまでもございません。すでに一昨日の衆参両院におきましても、これが諸対策について与野党一致の決議が行なわれましたことは御承知通りでございます。しこうして、また、本委員会における池田総理大臣以下関係各大臣の言明によりましても、政府においては、これが対策等につきましては、まことに手厚く違憾なきを期していることが明白であり、さらに当面の予算措置といたしましては、三十七年度予備費の未使用額その他地方交付税特別交付金をもってこれに充てんとしているのであります。  かようなことを考え合わせてみますとき、被害額がいまだ確定していない現状況下におきましては、当面必要欠くべからざる緊要な諸経費を計上した一般会計補正予算の歳出額を削減する必要はごうもないと認めるものでありまして、本動議には賛成するわけには参らないのであります。  民主社会党提案の動議の内容は、産投会計への繰り入れのうち二百五十七億円を、雪害対策費のほか、三十八年度予算において予定されている生活保護基準等の引き上げ、石炭対策費の補強等を本年一月にさかのぼって施行するための経費に充てようとするものでありますが、日本社会党提案の動議に対する反対の趣旨とほぼ同様の趣旨で反対をいたすものであります。  以上をもちまして私の討論を終わります。(拍手)
  313. 塚原俊郎

    塚原委員長 辻原弘市君。
  314. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)、昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)及び昭和三十七年度政府関係機関補正予算(機第2号)につきまして、政府原案並びに民主社会党の組みかえ案に反対をし、わが社会党提出の組みかえ動議に賛成をする討論をいたすものであります。  補正三案のうち、一般会計は歳入、歳出とも八百二十一億円の追加であります。歳出のうちおもなるものは、産業投資特別会計資金への繰り入れ三百五十億円、義務的経費の不足補てん二百六億円、国際連合公債買入費十八億円、地方交付税交付金二百三十七億円等でありますが、そのうち、経費の性質上最も問題なのは産業投資特別会計への繰り入れであります。従って、私は、この問題に焦点を合わして討論を進めて参りたいと思うのであります。  まず第一の問題は、予算編成の上から考え、かかる補正予算の編成が妥当でありゃいなやという問題であります。三十七年度中に三百五十億円を産投資金に繰り入れましても、資金からの実際の支出は、三十八年度に九十三億、残額はそれ以後に持ち越すのであります。このやり方は、周知のごとく、昭和三十五年度補正予算審議の際、わが党から財政法違反であるとして手きびしく批判、追及をいたしたところであります。その後、政府は財政法第二十九条を改正して、このやり方を合法化しようとしておりますが、なるほど改正すれば違法ではないといいましても、財政法の精神等から考えまして、予算の年度区分を乱すはなはだ無理な、しかも好ましくないやり方であることは明らかであります。後年度の財源が窮屈であるからといって、予算の先取りが許されるとするなれば、これはあえて財政投融資の資金に限りません。土木費にいたしましても、また教育費にしても、どの経費でもそういう主張が許されるはずであります。資金だからできるのだなどという議論は全くの財政技術的な意見にすぎません。いずれにしろ、こういう方式は会計年度の年度区分を乱すものであって、われわれの容認しがたいところであります。しかも私どもは、ただ使わない金をため込んでおくというやり方そのものだけを批判するものではありません。現在財政支出を必要とする部面ははなはだ多岐にわたっておるのでありますから、そういう方面に金を回せというのが私どもの根本主張であります。  しこうして、現段階における最も緊急を要する問題、経費といたしましては、まず雪害対策費をあげなければなりません。未曾有の雪害によって苦んでいる多くの人々の心情に立ってこの災害対策を進めるとともに、その裏づけの全きを期する必要が目下の急務であります。従って、産投会計の資金源か、雪害対策費かという経費の配分が第二の問題となって参るのであります。  本委員会における政府の答弁によりますると、三十七年度は、とりあえず二十億弱の予備費と特別交付税で間に合わせ、また三十八年度も政府の原案のままの予算で何とか糊塗しようといたしているのでありまするが、私どもの推定ばかりではなく、ただいまの雪害各地域の状況から判断をいたしますると、この程度の財政措置でとうてい間に合わないことは全く明白であります。もちろん被害の復旧に総額厳密に幾らを要するかは今後の推移もあることでありまするから、今直ちに確定的に申すわけには参りませんけれども、しかし、年度内に雪害対策を中心とした第三次補正予算を編成して、その万全の備えをつくる、そのための財源を確保するために、この補正予算における産投資金への繰り入れを二百五十七億円削減をするということは、まさに時宜に適した処置であるとわれわれは考えておるのであります。政府がこの第二次補正予算を編成した当時は、確かにまだ豪雪被害は生じていなかったのであります。従って、私どもも、この予算に直接雪害対策費が計上されていないといって今非難するものではございません。しかしながら、未曾有の大雪害が発生して、国民のこれに対する予算要求が強くなりつつある現在において、政府与党といえども、すみやかにその所要経費の総額をまとめ、虚心たんかいに、われわれとともに三十七年度中の予算措置として当然これを補正の中に盛り込むということは、少なくとも私どもの主張において政府与党が反対をすべき何ものもないと考えるのでございます。  さらに第三点として、産業投資特別会計及び財政投融資全般の問題について触れておきたいと思います。今回のように産業投資特別会計への繰り入れが巨額になってきたのは、産投会計の資金源が枯渇しているからにほかなりませんが、この資金源の枯渇は、まさに政府政策そのものに由来しているのであります。その政策とは、すなわちガリオア・エロア返済による毎年度百五十八億円の支出増加と、年間百十億円程度の海運利子徴収猶予による開銀納付金の減少の二つであります。この二つの政策が原因となって、年々三百億近くの一般会計から産投会計への繰り入れを必要とする以上、昨年の国会で、ガリオア・エロアの債務は、大部分見返り資金の運用利益で返済していけるのだと言った政府の答弁がいかにインチキなものであったかが暴露され、この際における対米債務の返済が、いかに国民に大きな負担を与えているかを、政府みずからも反省しなければならぬと思うのであります。  さらに敷衍すれば、資金源の枯渇という問題は、決して産投会計だけの問題ではなく、財政投融資全体の問題であります。この原因の一つとして、本来は当然一般会計の負担でまかなわねばならないもの、たとえば住宅とか生活環境施設の整備とかいう、国民生活に直結するものの相当部分が、一般会計膨張のしわ寄せで財政投融資のワクの中に入り込み、それが財政投融資全体をふくらませ、財源難を招いているという点を指摘することができるのであります。  政府は、これらに対処するため、三十八年度は日銀による買いオペ方式と相待って、政府保証債の発行増大を計画いたしております。しこうしてわが党議員のこの点に対する追及に対して、これは決してインフレを招くものではない、それのみか、国債の新規発行だって考えてよいのだというような答弁をしているのであります。この態度はまことに重大であると申さなければなりません。われわれはもちろん、政府保証債の増発、あるいは国債の新規発行そのものが直ちにインフレであると主張するものではありませんが、しかし、かかる政策を行なうには、おのずから一定の経済的条件が必要であることは申すまでもありません。それにもかかわらず、政府財政金融政策は、このような条件を全く無視して行なわれている点を私どもは問題としているのであります。政策のこのような手放しの態度は、今後の国民経済国民生活に重大な悪影響を与えるものであることを私は最後に指摘をいたしまして、一言つけ加えて討論を終わる次第であります。(拍手)
  315. 塚原俊郎

  316. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 政府提出昭和三十七年度予算第二次補正案に対しまして、わが党は、先ほど同僚田中幾三郎君が説明いたしました通り、返上組みかえを要求するものであります。  理由、内容は、わが党の動議及び田中君の提案説明で明らかでありますから、これを省略いたしまして、政府原案並びに日本社会党組みかえ動議に反対し、わが党案通り、組みかえられんことの意思を表明いたしまして、私の討論にかえます。(拍手)
  317. 塚原俊郎

    塚原委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、辻原弘市君外十五名提出の昭和三十七年度一般会計、同特別会計の補正予算二案につき、撤回のうえ編成替えを求めるの動機について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  318. 塚原俊郎

    塚原委員長 起立少数。よって、辻原弘市君外十五名提出の動議は否決されました。次に、佐々木良作君外一名提出の昭和三十七年度補正予算三案の編成替えを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  319. 塚原俊郎

    塚原委員長 起立少数。よって、佐々木良作君外一名提出の動議は否決されました。  次に、政府提出の昭和三十七年度補正予算三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  320. 塚原俊郎

    塚原委員長 起立多数。よって、昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)、昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)、昭和三十七年度政府関係機関補正予算(機第2号)は、いずれも原案の通り可決いたしました。(拍手)  委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  321. 塚原俊郎

    塚原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は明八日午前十時より開会し、昭和三十八年度総予算に対する質疑を行なうことにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時七分散会