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小松委員 私は、二つの問題点を持っておるわけです。
一つは、今まで
日本国民は、日米の最恵国待遇の取りきめという
アメリカ関税の引き下げの恩典を受けるだけという形で
報告もされ、そういうような
考え方でやった。しかし、
アメリカからいわゆる恩典を受けるからには、何らかの代償を払わなければならぬということも当然
考えねばならぬ。こういうことをすれば
——ただ関税一括引き下げだから、いいところだけ、甘い汁だけ
日本が吸うんだというような
考え方で
外交を進めていく
——甘い汁を吸わせてもらうかわりに代償を払わねばならぬ。その
日本の代償は何かということを一応
判断するだけの余裕と時間的ゆとりがなくてはならぬのです。少なくとも
日本がいわゆる
世界外交の場に出た場合には、今
大平さんが言われたように、関税の一括
——一括とは言わぬでも、大幅の引き下げということは
世界的な傾向であるという。だれがそういう傾向をつくったのであるか、
アメリカがつくったのじゃないですか。
EECそのものの中は関税は下がっておりますよ。しかし、それはあくまでも封鎖
経済において、
自分たちの中だけのお互いの中だけで下げるのであって、一歩
EECの外に出れば、むしろ私は関税は障壁を持っておると思う。それを
アメリカがぶち破っていこうとする。そのぶち破っていくのはなぜか。
アメリカでも
イギリスでも、もはや
資本主義の老
大国なんです。成長力を、何ぼ馬にニンジンを食わせるように馬力を出そうとしたって、
アメリカだって
イギリスだって、もはやこの
成長率というものはそう上がるもんじゃない。もう
資本主義が行き詰まっておる。マーケットをぶち破ってでも開拓していくというその意欲が出たから、ここに関税を一括引き下げてでも、この
EECをぶち破って中に入らなければという
アメリカのドル防衛からくるあせりなんです。
イギリスのいわゆる沈滞した空気からのあせりなんです。
EECそのものは、何も関税を引き下げるという動きじゃない。むしろ関税をかけて、
自分たちの
繁栄と
自分たちの成長というものを楽しもうという、モンロー主義みたいな
考え方にも立っておる。それを
アメリカの
ケネディあるいはマクミランが、そういう情勢をつくっておるだけの話であって、そういう情勢が何も
世界の大勢だというように割り切ってしまって
——それはいいですよ、割り切るのもいいでしょう。
アメリカ、
イギリスの大勢がそれでいい。ところがどうですか、やはりどこからかひじ鉄を食らったじゃありませんか、そんなに簡単に
アメリカや
イギリスの
考えておる
自分たちのシェアの拡大か、あるいは
アメリカのドル防衛のためにただむちゃくちゃになぐり込みをかけるような関税一括引き下げというものに同調してはこない。
EECそのものは関税引き下げというものをそれほど好ましく思っておるかどうかわからないのです。だから、ここで一歩下がって、それに対する
日本の代償、お返しは何かということを
考えて、もう少し、軽率に扱わないで、もう一歩下がって
考えるべきではなかったかと私は思うのです、
外交折衝として。ただ日米
経済合同
委員会があるから、お前行くから、今度こういう問題が出るからこういうふうに返事してこいというような
——かりそめにも関税一括引き下げというような問題は、これはどこの国だって大問題なんですよ。現にカナダあたりでも、
日本とカナダとの
貿易交渉をやってみても、やはり将来関税の一括引き下げということは一物あるわけなんです。カナダ
政府が持っておるところの農産物の小麦を
日本にどういうような格好で入れてくれるだろうか、あるいはマンガン、いわゆる非鉄金属のマンガンを
日本がどういう格好で入れてくれるだろうか、それをうまく
日本が入れてくれれば、
日本のOECDの加入にも賛成しましょう、あるいは関税一括引き下げにも同調しましょうという、腹に一物があってカナダも同調しているわけなんです。
日本には腹に一物がないじゃないですか。何もないで
国民に犠牲をかけるということを
承知の上で、ただもう関税引き下げは
世界の大勢である、趨勢であるから、バスに乗りおくれるようになってはならぬというのでどんどん軽い返事をしておる。そういう基本的な
外交の
態度では私はいかぬと思うのです。もう少し
世界の
経済の大勢を見て、カナダがどんな
判断をしておるのか、もし関税一括引き下げをしたならば、東南アジアのいわゆる農業国の第三のクラスに入るところの後進地がどんな
考えを持っておるのか、おそらくガットにおいても、後進地域が
日本に対して門戸開放を迫ってくるでしょう。そのときに門戸開放をし切るかどうかということを
考えてごらんなさい。
日本が東南アジアのいわゆる第一次産業である農産物等を
——もう現にバナナでも、砂糖でも問題があるでしょう。そういう後進国の第一次産業がもうすぐぶつかってくる。
日本だけが甘い汁を吸うて、そうして
アメリカの関税の恩典、最恵国待遇を受けてぬくぬくとそれでもうけていこうという
考え方は甘いと思うのです。やはりお返しがあるわけです。
アメリカのお返しもあるでしょう。
中進国のお返しもあるでしょう。あるいは後進国からのはね返りもあるでしょう。そんなことを
考えたならば、軽々に関税一括引き下げというものに、バスに乗りおくれぬ式に乗っかっていくということは軽率な
外交であると私は思う。それがいい悪いの前に、もう少し閣議でも十分討論する、そうして
国民にアピールをする、議会にもアピールをして、その上で瀬を踏んで、
日本の関税一括引き下げというものが今の
日本の
経済でいいのか悪いのか、どういうはね返りがあるのかということを十分討議した末に返事をしてもおそくはない。私は、この前
大平さんが行って返事をしたことが、今
考えてみたら、あまり早まったな、そんなに早く返事をせぬでもよかった、どうせ
EECは中でごちゃごちゃするのだから、返事を半年引き延ばしておっても問題はなかったと今でも思うわけです。こういう点が、一カ月前に返事をしたからどうこうというのじゃなくて、そういう
政治のやり方ですね、閣僚が六人と
池田さんだけ相談して、こういう大問題をすっときめて、イエス・マン式に返事をするという
考え方は私は誤まっておると思う。この点
池田総理のお
考えを聞きたい。