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1963-01-31 第43回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年一月三十一日(木曜日)     午前十時十二分開議  出席委員    委員長 塚原俊郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 野田 卯一君    理事 川俣 清音君 理事 楯 兼次郎君    理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    安藤  覺君       井出一太郎君    池田 清志君       今松 治郎君    植木庚子郎君       仮谷 忠男君    倉石 忠雄君       小坂善太郎君    櫻内 義雄君       正示啓次郎君    周東 英雄君       田中伊三次君    中村三之丞君       灘尾 弘吉君    羽田武嗣郎君       藤本 捨助君    船田  中君       古川 丈吉君    松浦周太郎君       松野 頼三君    松木 俊一君       石田 宥全君    加藤 清二君       川村 継義君    木原津與志君       小松  幹君    野原  覺君       武藤 山治君    山花 秀雄君       山口丈太郎君    春日 一幸君       佐々木良作君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 中垣 國男君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 西村 英一君         農 林 大 臣 重政 誠之君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 小沢久太郎君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         自 治 大 臣 篠田 弘作君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 近藤 鶴代君         国 務 大 臣 志賀健次郎君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         総理府総務長官 徳安 實藏君         防衛庁参事官         (経理局長)  上田 克郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    山本 重信君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (理財局長)  稲益  繁君         建設政務次官  松澤 雄藏君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 一月三十一日  委員稻葉修君、羽田武嗣郎君及び堂森芳夫君辞  任につき、その補欠として倉石忠雄君、古川丈  吉君及び武藤山治君が議長の指名で委員に選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十八年度一般会計予算  昭和三十八年度特別会計予算  昭和三十八年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 塚原俊郎

    ○塚原委員長 これより会議を開きます。  昭和三十八年度一般会計予算昭和三十八年度特別会計予算昭和三十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  小松幹君。
  3. 小松幹

    小松委員 私は、社会党を代表して、特に経済外交なりあるいは国内経済のことについて、総理そのほかの閣僚に質問をしたいと思いますが、まず第一番に、最近の特に国際経済として問題になるのは、イギリスEEC加盟フランスドゴール大統領の拒否によって加盟することができなかったという事実であります。これに対して、総理は、一応できるという立場をとり、あるいはさらに大きく期待をいたしておったと思うわけでありますが、ところが、突然EEC加盟ができないということになって参りましたが、これに対する政府考え方をまず聞きたいと思います。  その前に、ドゴール大統領のとったこの態度について、総理はどういう判断をし、どういうお考えを持っておるか、まずそのことをお伺いします。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 EECの発展、強化につれて、イギリスがこれに加入するという企ては、御承知通り、以前から行なわれ、実際に交渉を開始しておったのでありますが、その間におきましても、EEC内におきまして、ベネルックス、イタリア、ドイツ・フランスと、おのおのそのイギリス加盟についての賛成の度合いが違っておる  ことは、みな知っておったのであります。昨年の九月、十月、いよいよ交渉がやまに入ったときに、大がいの人が、イギリスの加入が可能であろうと見ておった。また、ドゴール氏も拒否する態度でなかったということは、世界の人々みな認めているところであります。ただ、交渉の経過において、英連邦の特に農産物に対する態度等によりまして、今回交渉が一応中断されるということに相なったのでございます。  そこで、ドゴール大統領のこの態度についての批判と申しますか、そのことは、私は日本国総理としては差し控えたいと思います。今度これが全部今後も中断してしまうか、あるいはまたいろいろな話が持ち上がるか、しばらく様子を見なければならぬ問題だと思います。
  5. 小松幹

    小松委員 ドゴール大統領に対する考え方は別にいたしましても、私は、今日の事態が突然変異で起こったのではないと思うのです。あなたは、昨年の末ヨーロッパにも行かれて、その事情がおわかりのはずだ。今日フランスがどうして英国を拒否したか。新しい一つ政治分野あるいは核武装の上において独立していこうとする考え方があると思うのです。そうなれば、そういう点を少なくとも欧州に行った者は見取り切って、ある程度の危惧を持って帰る、そしてそれに対応する日本の国のかまえというものも相当考えておかねばならぬと思う。それが、何らの判断もかまえもなく、ただ、アメリカケネディパートナーシップでいこういこうと言うから、これはいいことだというわけで、すらすらとついていく、さあ拒否されて今日何の判断もできない、まあ様子を見よう、こういう考えでいかれておる総理自主性のなさというものを私は悲しむのであります。今の世界の少なくとも一級の指導者は、そうした面に対して相当突っ込んだ見識とめがねを持っているわけなんです。全くめくらケネディに手を引かれてついて回るような態度をしないと思うのです。私はドゴールのとった態度がいかんにかかわらず、フランス自主性というか、あるいは相当アメリカからいじめられるかもしれない、あるいはEECの他の五カ国からも相当難くせがつくかもしれない、しかし、自分の思った一つ外交なり経済なりの所信に向かって邁進するその自主性というものは、高く評価しなければならぬと思う。そうした場合に、今の日本考えて、このEEC対策はどういうような判断でかまえていこうとお考えになっているのか、ここの段階において決定的なことは時を見ると言いましょうが、一応の判断があると思うのです。その判断についてお伺いしたい。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれとしては、イギリスが入った場合も考え、また、入らない場合も考えなければなりません。ただ、一番重要な問題は、EEC外向きでいくかどうかということが問題でございます。私は、今イギリスが入らないから、必ずしもEECが内向きで、対外的に非常に厳格な制度を加えるというふうなことは、今のハルシュタイン委員長のもとにおきましてはないと思います。入る入らぬの問題と、EEC外向きでいくかいかぬかという問題とは、別の問題でございます。従って、イギリスが入らないからEEC外向きにならぬというわけのものではございません。私は、EEC態度としては、今後やはり世界貿易自由化の方に進んでいくのが当然の行き方だと考えております。
  7. 小松幹

    小松委員 外向きか内向きかの問題はあると思いますが、私は、むしろEECは相当今まででも封鎖的であり、あるいは障壁をつくって独善の方向もあっただろうと思いますが、やはり内向きだと思うのです。この点、六カ国の内部にわたっても、ここしばらくは、EEC経済なりそのやり方というものは、日本にそのまま門戸を開放してくれるようなやさしさではないと私は思う。むしろフランスでも差別的な気持が多くあるし、他の国も、今後は、ミシン混合関税を見てもわかるように、やはり日本輸出体制に対しても相当シビアにかかってくる、決して外向きに向いてこないと思う。アメリカが言うならば、あるいはアメリカの手が差し伸べられれば相当外向きになってくれるであろうという期待総理も持っておると思いますが、そういう甘い期待EECに立ち向かうということは、日本のいわゆる経済外交というものが失敗をする、こういうふうに私は考えるのですが、その点はやはり外向きの方に向いておるとお思いですかどうですか。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 世界の流れが示すがごとく、貿易自由化方向に向かっておることは確かでございます。しこうして、EECが内向きであるという考え方は私はとりません。これは、現に、EECが一九五八年に結成され、そのときから日本との貿易は七割程度ふえておるのであります。しかも、日本に対しまする制限品目も、御承知通りフランスが昨年二百六十から百五十に減らしております。イタリアの方も半減程度制限品目を減らしておるのであります。しかもまた、私は、ドゴール大統領にいたしましても、またイタリアにいたしましても、決して日本に対する差別待遇をふやし日本を苦しめようというふうな気持は毛頭持ってないことを確信いたしております。
  9. 小松幹

    小松委員 そういう期待に対してはあえて私は云々するものじゃありませんけれども、現実のEEC日本貿易などを考えてみますと、繊維にしてもしかり、先ほどのミシンにしてもしかり、あるいは化学製品自主規制の問題にしても、相当強く日本にはのしかかってきている。もっと言えば、これは、ドゴールあたり日本などはそんなに問題にしていない。むしろアフリカのかつての自分植民地、あるいは新興アフリカに対してこそ向いておれ、日本に対して外向いておるというような判断はどこを押しても出てこないのです。この点、見解の相違でありましょうが、相当考えねばならぬと思います。  そこで、私は、ドゴール自主性外交をやってのけたという事のよしあしは別として、翻って日本池田総理外交というものを見るときに、これは批判がましいことでありますけれども、少しあなたは一流にあこがれ過ぎておるんじゃなかろうか。何か西洋づきがしたというようなことが言われておりますけれども、自己を高く背伸びさして考えているのではないか。そして、施政方針などを見ると、世界の平和と繁栄を、日本を加えて三本の柱で支えていくというようなことをおくめんもなくおっしっておる。しかし、日本経済が、中進型というか先進国ではないけれども、先進国にだんだん追いついていって、先進資本主義型になってきた、言うならばやっとイタリア並みになりかけたというような段階まで来たところで、世界繁栄を支えるのは三本の柱で、その一本は日本だなんというようなことをぬけぬけと施政演説でおっしゃるというのは、少し自己を背伸びし過ぎる。それはけっこうでしょう。けっこうですけれども、経済外交においては案外自主性がなくなって失敗するんじゃないか、こういう点が私は非常に危惧されるのです。やはり、あなたの大国趣味のしからしむるところと思うのです。もちろん、日本民族といっても私は未来は大きく青年として残されておると思うのです。今、老大国アメリカイギリスのような、経済が成長し切って爛熟し切った、成長率もだんだん下がってしまうような資本主義の老大国ではない。未来をかかえておるけれども、今の段階において世界をリードする力、平和と繁栄とを支えている三本の柱の一本だというような考え方をもって処置するということは、かえって追従外交になってしまう。今の池田内閣の姿を見ると、アメリカケネディの言う通りというか、追従になっておる。パートナー・シップというか、パートナーと言われたら、何だかほんとにアメリカと手をつないで一緒にアベックでいかれるような気持に、ほんわかほんわかなっておると思う。そのほんわかほんわかなっておることは、それは一人の個人趣味でもいいと思う。ところが、私は、個人趣味日本の運営というものはいかれないと思うのです。この点について、あなたはやはり世界の平和と繁栄を支える柱は日本アメリカ西欧だというようなおこがましい考えを持っておるのかどうか、その辺を再度お伺いします。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 私が言っておるのみならず、世界の人は皆そう思っておるのでございます。今月十四日のUSニュースにアイゼンハワーがそのことを言っており、また、昨年もプラウダが八月に、三つ経済団体、今にこの三つが争うだろうと、やはり三つを出しておる。私が一人で言っているのではない。世界の人がそう見ている。われわれもその自信を持っていこう、これは当然のことじゃありますまいか、日本民族として。
  11. 小松幹

    小松委員 自信というても、プラウダが言うたからそれでさっそく自信ができたという。ところが、プラウダの言うのは、その三国が必ず内部争いをして繁栄の中で争いをしていくだろうという見方をしている。世界経済を支えていくなんということはだれも言ってない。むしろ、ドゴールは何と言っているか。ドゴールは、西欧中共アメリカが支えていくんじゃないかと、むしろ中共の方をとっておるじゃありませんか。ドゴール自身はそう言っている。あなたが一番好んで入ろうというOECDの主体的な力を持とうとしているフランスが、日本を問題にしていないで、しかも、中共の方が三本の柱として将来問題になろう、こう言っているのですから、まあ、その辺のところは、どうも自信過剰というよりも、私は、ただそういうスタイルをとっているだけで、ほんとうの自信も何もないでそういうことを言っておるのだろうと思うのです。  それで、日本外交でどういうところで損をしているか。たとえば、ソ連向け石油パイプ輸出規制あるいは原子力潜水艦ノーチラス号寄港する問題、こんな問題に対しては、何の反応もなければ、何の抗弁もない。はいはいと言っているだけだ。それで、やっと今まで既成分八幡製鉄が約束している五千万トンですか、それだけはとにかくソ連に売るけれども、あとはもうやめてしまう。あるいは中共の延べ払いについてもだんだん押えて、いわゆるアメリカの言うなりになっている。こういうような姿を見たときに、どうもケネディづきがして追従しているのじゃないかということを、私は国民の側から見て心配する。何も池田さんがケネディに追い回されていると思わぬけれども、どうも日本外交アメリカに振り回された、ケネディ追従している外交だ、こういうような印象を持っておるのですが、(「印象じゃない、事実だ」と呼ぶ者あり)これは事実としても考えられる。先ほどのパイプの問題とか、私は、こういう点について、どうもアメリカ追従しておるように国民から思われておるがそうではないと、今言うた具体的な石油管の問題とかあるいは原子力潜水艦の問題とか、こういう問題について、ここでこの席上からはっきり、自主性のある態度を表明してもらいたい。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 自信喪失小松さんの方じゃございますまいか。われわれは、はっきり、日本の利益のために全体からどうやるべきかということを自主的に考えてやっておるわけでございます。
  13. 小松幹

    小松委員 そういう紋切り型の答弁では承知なりません。先ほど私は例を言ったのです。アメリカ潜水艦日本寄港する問題についてあなたはどういう態度をとりますか、それから、ソ連向け石油管、そういう問題に対してどういう態度をとっていくのか、アメリカの言うなりになるのかどうかということをはっきり言って下さいと言っている。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカの言うことが日本のためになり、日本に差しつかえなければ、安全保障条約日本の安全を保障しておる立場から、これは原子力潜水艦を入れる、何ら差しつかえございません。これはわれわれが自主的にきめることでございます。  それからまた、ソ連への油送管につきましては、まだ日本としては態度をきめておりません。申し出のあったNATOにおいてもまだ態度をきめていないのでありますから、われわれは、世界自由国家群の申し合わせその他を参考にして、日本でこれをきめるわけであります。
  15. 小松幹

    小松委員 ソ連向けの問題はまだきめてない、ところが、原子力潜水艦の問題はきめておると、はっきりおっしゃいましたが、一体、原子力潜水艦の問題というのは、単なる原子力潜水艦寄港問題につながっていない。原子力潜水艦は、近距離あるいは中距離ミサイルを持っておるところの、いわゆる移動基地なんです。アメリカの特に考えていることは、大陸間弾道弾によるところの長距離ミサイル爆撃原子爆撃アメリカが一手に握るんだ、その引き金はアメリカが握るんだ、そのほかのイギリスあるいはNATOの国あるいは日本にも、これは基地を持たない移動基地原子力ミサイル攻撃ができる原子力潜水艦の配置をするという建前で、今日NATOイギリスに全部やっている。その一環として日本に来ているわけなんです。そういういわゆる原子力ミサイル武装を、基地は少しは移動するかもしれぬ、船だから少しは移動するかもしれぬけれども、新しいこの原爆核戦力としての一つ原子力潜水艦をあなたは持つとおっしゃるわけなんですか。その点についてはっきりした見通しを承りたい。単なる、日本寄港する、ちょこっと観光船が入ってくるというような考え方を持っておると、とんでもない大間違いになる。これはもう世界を見ればわかる。原子力潜水艦は、ミサイルを持って、それが核戦力を保有したという形にみななっているのです。その辺のところをどう考えるか。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 きのう本席から、今問題になっております原子力推進力とする潜水艦核装備をしていないということをはっきり申し上げたわけでございまして、御了承いただきます。
  17. 小松幹

    小松委員 核武装をしていないということは、それは今瞬間の問題であって、今の世界の常識は、原子力潜水艦にはすべて、ポラリスしかり、あるいはノーチラスというのはもう古いのでしょう、ポラリス型のミサイル、いわゆる中距離弾道弾短距離弾道弾をみな載せてあるということになっている。それが核戦力になっておる。ドゴールはそれをきらって、新しく核戦力としては別個なものを持つと言って、ドゴールはひじ鉄を食わした。ドゴールの今日のはっきりした態度というものは、独自の核戦力を持つということで、今その分かれ目なんですよ、実際のところは。イギリスNATOも、その核戦力は、大陸間弾道弾はもはやアメリカだけ、私たちはポラリス潜水艦なりあるいは地上兵力だけでよろしい、ポラリス潜水艦移動基地だけでよろしいという一つの取り引をイギリスなどはしておるのだ。マクミランはアメリカからその判こをもらって、EEC加盟さしてもらう一つ手形とした。ドゴールはこの手形に判を押さない。ドゴールは、あくまでも核武装フランス自体自分でやるんだという考え方を持っているわけです。そこに今のフランス外交が違ってきている。この中で、日本は、新しくポラリス潜水艦によって、これは核武装をするという一つの道を選ぶ入口なんです、導入門なんです。この点についてどう判断をしているのか、外務大臣にお伺いしたい。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 やはり、きのうの答弁でも申し上げましたように、ポラリス潜水艦が入るということになりますと事前協議の対象になりますから、これは別の問題でございまして、今問題になっております潜水艦はそういう核装備をしたものではないということでございますので、問題を一般化されないように、限定されて御質疑をいただきたいと思います。
  19. 小松幹

    小松委員 私は、政府がそういうような答弁をすれば、それ以上は今後の問題として残しますが、いわゆる原子力潜水艦によって核武装が戦力化していく、そのきっかけがここに寄港という問題になっている。日本には、まだ核武装宣言をしていないから、どうしても、寄港とか、あるいはちょっと寄るんだとか、あるいは基地を貸してくれという形で来ておるけれども、大まかな線は、やはり新しい核武装への一環としての行為にあることは間違いないと思うのです。政府見解が違いますから、これ以上申しませんが、将来の問題として残されておると思います。  そこで、私は、日本政府自主性があるかないか、あるいはNATOの国が自主性があるかないかということについて、ここにおもしろい資料を読み上げますから、池田総理の御判定をお願いしたいと思う。  アメリカ上院議員マンスフィールド氏など実情調査団グループの四氏がフルブライト上院外交委員長に提出した事情報告書というものがある。西欧事情調査の中の一項、対中共貿易の項で、これはアメリカ上院議員外交委員長報告した報告の中です。西欧共産貿易は拡大している、——NATOの国あるいはEECの国と共産貿易は拡大していると判定している。さて、日本共産貿易は一体どうなのか、この点についてのお考えを承ります。二番目は、米政府共産圏との通商上果たしているいわゆる禁制は西欧にはない、だから西欧は勝手に共産貿易を自由にやっているということを確認したと言っている。その次は、西欧戦略物資輸出の阻止は一応意思としては一緒になっているけれども、さて何が戦略物資かということになるとめいめいまちまちで、アメリカ考えているような、これが戦略物資だというような判定はせぬで、おのおのの国が勝手な考え方中共貿易共産貿易を進めている、こういうことも報告されています。しかし、西欧通商制限によって共産圏内経済基盤を弱めるような見解には賛成しない、——いいですか。西欧通商制限によって共産圏経済基盤を弱めるような見解はとっていない。要は共存共栄体制をとっているというわけですね。アメリカはどっちかというと共産圏にセーブして基盤を弱めようとする考えを持っているけれども、西欧諸国はそれと違う。むしろ西欧諸国共産圏との共存共栄で、経済基盤は弱めようと思っていない。こういうようなことを報告されている。だから、アメリカ共産貿易考え直さなければいけない、通商を阻害している現行手続を改めて、アメリカ共産貿易をするように拡大していかねばならぬと、上院外交委員長報告しているのですが、これはアメリカ西欧事情報告しているのですから、よもやその調査には誤りはないと思いますが、この点について日本はどういう考えを持っているのか。アメリカ考え西欧考えはこれだけずれておる。共産圏貿易というものは、あなたは、政治経済は別ものだと、こう口では言いますよ。ところが、口では言いながら、あなた自身政治経済一緒になってアメリカ追従しておるが、西欧諸国は、政治経済は別じゃないと口では言いながら、内容は、裏では、経済経済政治政治、別々にやっている。これははっきりしている。西欧は言うこととすることが違うのです。ところが、同じ言うこととすることが違っても、日本の場合は何もやらない。政治外交は別々だから、経済経済、やりますと言うけれども、アメリカからちょっとサゼスチョンを受ければすぐやらない。ここに西欧諸国の対共産貿易日本の対共産貿易との考え方が根本的に狂っておると思いますが、この点について総理のお考え、御判断をお伺いしたいのです。
  20. 池田勇人

  21. 小松幹

    小松委員 日本もそういう態度をしている、西欧と同じような態度をしておるというならば、あなたはもう少し経済外交を、共産貿易をどんどんやればいいじゃないか。すぐに延べ払いをセーブしてみたり、あるいは、アメリカから言われれば、どういう共産貿易の計画があってもそれを中途でやめてみたりするが、そういうところはどうなんですか。中共貿易の延べ払いあたりはどんどんやって、拡大していく考えがあるのですか。前向きという言葉をよく使われるが、中共貿易あるいはソ連貿易に対してどういう前向き考え方、行動をとろうとしておるか、ここではっきりおっしゃっていただきたい。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 日本ソ連との貿易は、御承知通り、年々拡大していっておるじゃありませんか。しかも、ソ連日本との貿易におきましては、もう契約面では日本が二億五千万ドルくらいの延べ払いになっておるのであります。これは西欧並み以上じゃありますまいか。それから、中共との貿易につきましても、中共は小麦その他をカナダ、濠州あるいは最近ではフランスからも入れておりますが、西欧に対しては中共はどういうふうな延べ払いですか。小麦でも、二五%、三〇%の前金と、九カ月あるいは長くなっても一年の延べ払いじゃありませんか。日本のこの前約束した塩安は、もう初めからあと払いで、二年間じゃございませんか。私は、これを見ても、ヨーロッパ以上に日本中共に対してやっておる、こう言うのでございます。事実がこれを証明しておる。ヨーロッパ中共にやっている以上に、塩安なんかは日本中共にフェーバーを与えておるということは、事実が証明しておるじゃありませんか。
  23. 小松幹

    小松委員 西欧中共貿易を進めておるということは、その量においてすぐれております。日本は量がすぐれておりません。先ほど例にあげた塩安を二年あと払いでやったという、それは一つのケースでありましょう。それはあながち否定するケースじゃないと思いますが、シナは、日本に一番近い、しかも六億の民があるという、日本にしては大きなマーケットである。この市場をかかえておる日本が、塩安を二年あと払いにしたからそれで西欧よりも進んでおると言うが、そのトータル、総量を見て下さい。私は、今日日本が開拓する余地はたくさんあると思う。前向きになればどんな開拓もできると思う。今までは、少なくともこの二、三年間は、あなたは前向きではなくして、しり込みをしておる。アメリカの鼻息をうかがいながら共産貿易を進めておるということが言われるわけですが、この点についてもう少し御反省を願いたい。ここであなたがソ連貿易中共貿易は相当やるような気がまえの雰囲気を見せましたから、その雰囲気が将来ただ雰囲気だけで終わるのか、やる気があるのか。お互い答弁なり言いわけなりで過ごしていく政治じゃだめだと思うのです。少なくとも、そういう判断で、よし積極的に自分もやろう、何もアメリカケネディに気がねすることはないじゃないか、西欧諸国でもやっておるじゃないかということで判断すれば、判断の紙一重は、すぐにもう貿易拡大ができていくと思うのです。その辺、中共貿易に前向きの姿勢がほしいと思うわけです。  次に、私は、総理施政演説をちょっと見ましたところが、施政演説の中に、これは大して取り上げることでもないと思いますが、一国の運命を決するものは保有する金の分量でない、こういうようにせっかくつけ加えておるのです。何も施政演説に一国の運命を決するものは金保有の分量ではないというようなことを経済上つけ加えるほどのこともないと思うのですが、あえてこれをつけ加えたというところに、私は、池田さんの何か言いのがれがあるのじゃないか、金の保有が少ないからという自己苛責が何ぼかあるのじゃないかと思うのですが、私は、金の保有ということにもっと重要な関心を持っておる。今日アメリカ経済政策で一番困っておるのは何か、苦しみ抜いておるのは何かといえば、世界通貨であるドルの不足です。ケネディがノイローゼになるまで心配しておるのは、米ドルが、世界のマネーとして、IMFの通貨としても今日まで少なくとも世界を支配してきたが、その米ドルが全く毎年々々不足して、出ていくということです。ドルが不足するだけならまあいいけれども、それに伴って金が出ていく。もうことしあたりも金が流出しておる。いわゆるアメリカの短期資本に乗っかっての金の流出というものは、もはや数年前から、ことしになってからも三千万ドルくらいは金が流出しております。ことしもケネディがあんなえらい景気いい減税政策をとっておりますけれども、ことしの国際収支というものは、おそらく二十億ドルくらいの赤字になるであろう。ドル不足、金の流出ということが今日アメリカをほんとうに心配させて、ばたばたさせておる。これが、ドルが不足しないで、金が流れていかなかったら、アメリカは悠々たるものです。それが今日そうはいかない。ここを一番世界の問題として考えねばならぬ。ドルが国際通貨として命脈を今日まで金によって保有されながらも続けておる。最近は世界通貨という問題が起こっております。これは、IMFを通じたり、あるいはIMFではなくてNATO諸国を通じてでも、もうドルあるいはポンドにかわって新しい世界通貨というものをこしらえなければ、ポンドやあるいはドルにたよっておっては世界通貨は持ち得ない、金は少なくとも西欧EECに集まっておる、そういう観点から、このドル問題あるいは新しい貨幣の問題が相当論議されておるだけに、米ドル防衛あるいは金の流出の問題が非常に問題化しておるときに、なぜ日本の一国のエコノミスト政治家として自負しておるところの池田さんが、金の保有なんていうものはどうでもいいのだというようなことを施政演説でぽんぽん言うのか。これは私は経済の時代逆行だと思うのです。言いわけにしても、これはちょっとおかしいと思うのです。今金が一番大事なときです。金本位ではないから、金そのものが大事というよりも、金の流出が問題になっておるときに、日本経済で金の保有なんかはどうでもいいのだ、人づくりさえやれば世界経済は持てるのだというような、なまじっかのことをおっしゃっておる。問題は、人づくりといっても、世界経済池田さんの人づくりでは持てませんよ。やはり、ドル、金です。あなたはどういう意味で金の保有はどうでもいいのだとおっしゃったのか。世界経済からずれておるのじゃありませんか。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 施政演説全体をお読み下さればおわかりになると思います。私は、領土や金よりも、国民の努力、決意が必要であるということを強調したのであります。
  25. 小松幹

    小松委員 答えになりませんよ。施政演説によってそれを強調したことはいいが、金の保有はどうでもいいというようなことと、今世界経済の底を流れておるものは金の流出とドル不足だ、この観点とあなたの観点とはずれておる。ずれておるのか、それとも、やはり同じなのか、その辺をどう考えておるのか。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 ずれてもおりません。施政演説全体をごらん下さい。
  27. 小松幹

    小松委員 施政演説全体なら、施政演説全体は人づくりなんですよ。(笑声)これはもう、あなたは、経済のことはおれにまかせておけ、それができたからあとは人づくりだといって、人づくりばかりしか言っていない。あとは何も言っていない。その一項の中で——それが主体的なものではありませんよ。金の保有はどうでもいいという書き方をしておる。(「けしからぬ」と呼ぶ者あり)これは事の善悪ではない。けしからぬという声があるが、別にけしからぬという善悪ではない。善悪ではないけれども、エコノミストとして、世界経済日本考えていこうという場合に、金の保有はどうでもいいのだ、ドル不足はどうでもいいのだというような考え方があるということは、私は、あなたは世界経済を知らぬと思う。あなたは日本経済についてはうまいけれども、世界経済についてはピンぼけしておると思う。その点はどうなんですか。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 ぼけておりません。私は、一国の運命を決するものは、領土や金ではなしに、国民の決意、努力が重要なのだということを言っておるのであります。それによって金は獲得し得られる、根本は努力だ、こういうことです。
  29. 小松幹

    小松委員 もちろん、あなたの精神主義を私は否定しません。人づくりも否定しませんよ。しかし、今の世界経済で問題になっておるのは、ドル不足であり、その裏の金の流出であるということを考えたときに、なぜ日本政治において金の保有はどうでもいいという書き方をするのか。そこの点を、あなたはペースをこっちのペースに持ってきている。私は人づくりのペースでものを言っておるのではない。金づくりのペースだ。金づくりは大蔵大臣がうまいそうですけれども、(笑声)別の世界経済の点をあなたに聞いておる。そこらの点をどう判断されてああいう文句を書いたのですか。これは官房長官が書いたからああいうことを書いたのか、どうですか。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 私の施政演説のある文句に、国民大多数は異議を唱えないと思います。一国の運命を決するものは、金が多いからというのじゃない、国民の決意と努力が根本なんだということを言っておるのであります。
  31. 小松幹

    小松委員 精神主義を私は聞いているのじゃないのです。施政演説一環の中に、金の保有はどうでも問題にはならぬと——しかし、問題にはならぬと投げ捨てればいい、これも黙っておればいいのですけれども、わざわざ施政演説に投げ捨てたと言うことは、あなたは世界経済とどうマッチした考え方を持っているのか、金に対する考え、ドルの問題については何らの判断もしていないのか。第一それではあなたは金はもうこれ以上ふやさぬでいいと思っているのですか、どうなんですか。ドル通貨だけにぶら下がっていれば、それでもうIMFに行って金を借りればいいと思っているのですか。それだけで唯々諾々としているのですか。金の保有というものはどうでもいいのですか。西欧諸国は、この数年前からEECはどんどん金をためてきた。そのためにアメリカの金の流出が出たのです。あなたはどう考えているのですか。その辺のところの経済的な観点はどうなんです。経済の問題として聞いているのです。人づくりを聞いているのじゃない。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 施政演説におきましても十八億ドルの金を保有するようになった。もちろん金も大切です。しかし一国の運命というものは、金があるから、外貨があるからといって、一国はそれでいいというものじゃないのだ、そのもとをなす国民の努力、決意が大切だということを言っておるのであります。何も精神主義でも何でもございません。これはこうあるべきなんです。
  33. 小松幹

    小松委員 そこであなたのその施政演説の趣旨は、私はかまわぬです。それは私は何も否定いたしませんよ。日本の一国の運命というものは人間の魂が、人間の肉体が、領土が、人民がきわめていくのです。そんなことはわかり切っていることじゃありませんか。わかり切っているけれども、施政の中には経済も入ってくるわけです。人手づくりだけが施政じゃありませんよ。金づくりもあるのです。その金づくりも含めながら言っている施政演説の中に、金はどうでもいいんだ、こういう言い方をするというのは、どうもあなたはちょっと間違っておる。間違っていると言うか、しもうた、ミスだったと、そういうことは書く必要がなかったことなんで、あれを見たら、何もそういう言いわけをするほどのこともないわけなんです。ミスでありましょうけれども、そんな、わざわざ書かぬでもいいようなものをあれに書いてあるから、私はあなたの経済的な常識を疑うたわけです。日本経済はうまいけれども、世界経済はさっぱり知らぬのじゃなというふうに思ったわけなんです。これは官房長官が原案をつくったから、官房長官のミスかもしれませんから、その次に進みましょう。  そこで、あなたは国内経済になると、これは高姿勢になってきますが、総理は、今日まで高度成長、所得倍増政策をやって三年目になって、私はたびたび高度成長政策はどうも行きつ戻りつして失敗しているんじゃないか、こういうようにも言ったが、今日三年目を迎えて、相当ジグザグ行進をやってきた点から考えて、もはやこれについていろいろ論議をするほどのこともないと思うのです。ただおかしいことには、所得倍増、高度成長を言い放ってきた池田さんが、ことしごろになったらさっぱり高度成長の高の字も言わない。倍増の倍の字も言わないで、安定成長と静かなる固めの経済、こういうように豹変をしてきている。最初はえらい威勢がよかったけれども、三年たつと、静かに固めをしていくんだと言う。そして安定成長だ、こう言っている。それはそれでいい、何も否定はしませんけれども、私は、高度成長政策は幾分これは反省もしておる——私は善悪よりも反省が大事だと思うのです。その点、池田総理がどう倍増計画なるものに対して反省をしているか、こういうことをお伺いしたい。同時に、私は、もはやこれは完全にだめだ、こんなものはだめだという考えはないですよ。しかし、倍増計画はこの辺で少し変更した方がいいんじゃないかと思うのですが、まず総理考え方を聞きたいと思います。それから経済企画庁長官の考え方を聞きたいと思います。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 所得倍増計画は予定以上にいっております。従いまして、今は予定以上にいったところを地固めしょうとしておるのであります。倍増計画の一環で着々私は実績を上げていると考えております。
  35. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨日もちょっと触れたわけでございますが、倍増計画の過去の進み方を見ますと、昭和三十四年度ごろから昨年度まで、国民の消費水準は大体年間にいたしまして毎年六%ぐらいずつ上がっております。これは物価の騰貴を差し引きましたととろの実質的な消費水準の上昇でございます。このことは、明らかに大勢としては国民の消費水準が向上したということを示すものと考えます。  その内容について分析をいたしますと、五分位層の各層について見ましても、層の下の方ほど所得の上がりが大きいわけであります。また、常雇用三十人以上と以下に賃金所得者を分けました場合に、小さな方、三十人以下の給与所得の上がりの方がはるかに大きい。いずれをとりましても、所得の低い層の所得の伸びが相当顕著に大きいということでございます。従って、過去数年間の趨勢を見ますと、実質的な所得水準が上がり、しかもそれが格差の縮小という形で現われておる。これはどう考えましても、私は、成功しておると申すよりほかないと思っております。
  36. 小松幹

    小松委員 そこでこれを変更する意思がないかあるかということをお尋ねしておるわけですが、けちをつけると変更したくなくなるものでありますから、もう今からそんなにけちをつけたってしょうがないが、とにかく最初は暴走した、そして調整段階、そして停滞の段階と、だんだん不規則成長を今日まで遂げてきた。だから内容的に、トータルからいえばある程度成長はしておるかもしれません。しかし、これはトータルとして、先ほど言った国民が成長したのであって、それを計画した為政者は何もベースに乗っておらぬ。成長したのは、設備投資をやったそのものが、あるいは国民が成長を遂げたのであって、それを計画した者は別個にあった。その計画した者が、人民の、大衆の成長に合わせて計画の変更をしていくことは私は素直な気持で当然であると思う。そういう面から、私は、けちをつけて変えろと言えば、けちをつけられたから変えぬのだというような居直り強盗みたいな気持になるから、別にけちはつけませんけれども、もはやこの辺で変えた方がいいのではないか。そうでなければ経済の自由化体制、あるいは関税、農業の体制もいろいろ変わってくると思う。そういう中で三年、四年前考えたスケジュールでこのまま倍増計画を推していくということは、この倍増計画は何もならぬと思う。私は資料を持っておりますが、倍増計画は三、四年前持ったままで、毎年予算委員会のときに引っぱり出すぐらいで、それが何の経済の足しにもなっていない。ただ答弁用にそれを持ってくるだけだ。それではほんとうの、そばに置いておくところの倍増計画としては無意味だ。あるいは無意味だと言えば言い過ぎがあるかもしれぬけれども、この辺でもう少し生産態勢にある者、産業人にも、あるいは為政者にも、あるいはエコノミストにも、あるいはお役人にも、政治家にもわかって、しかもあすの生産態勢のために役に立つ倍増計画——倍増計画と言えばおかしいから、経済計画というものをこの辺で考え、つくり直すということは、私は当然だと思うのです。その点について経済企画庁長官、素直な気持でどうあなたはお考えになるのか、おっしゃっていただきたいと思います。
  37. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前段におっしゃいましたことは、全くその通りだと思います。国民の創造力がこれだけの経済成長を可能にした、それ以外の何ものでもないと思いますので、その通り考えております。倍増計画はそれに対してある程度のめどを与え、最近の言葉で申せば、そのビジョンを与えたという役割を持っておったと思うのであります。そこで明らかに、しかし最初の数年で計画を上回って国民経済が成長したというのが現時点の姿でございます。そして取り残されたところの倍増計画は、今でも政府におきましても、あるいは一般産業におきましても、長期計画を立てますときに、勢いその参考に供されるということでございまして、時代おくれなものが参考に供されるということは困るではないかと小松さんがおっしゃいますことは、私どももその通りに思います。そこで、ただいま私どもは、ともかく過去数年間実績の出ましたところで、何ゆえに計画と実績がこういうふうに離れたであろうか、そういう分析をいたす義務は少なくともあると考えまして、その仕事をすでに始めております。これは過去にさかのぼりまして、何ゆえに計画をそれほど実績が上回ったかということの分析をいたしております。これは、分析を完結いたしますのにほぼ十カ月くらいかかると考えております。そこで、そういう分析をいたしますと、それは、しからば将来どういう方向を示すかという結果が勢い分析の結果として出てくることは当然であろうと思っております。その場合に、その時点においてあらためて分析の結果を将来に向かって投射することがはたして適当であるか、ないか、こういう計画そのものは必然的にその正確度には限界がございます。申し上げるまでもないことだと思いますが、限界がございます。そういう限界を国民各位に承知していただいた上で、なおそれをお示しすることがそのときの環境において適当であるかどうか。たとえて申しますと、経済界にいろいろな問題が非常に多いような場合には、そういうことをそのときに出すことは適当でないということがございましょうし、また経済界が落ちついておるというときには、そういう正確度について説明を申し上げた上で、研究の結果を国民に見ていただくということがまた必要であるという場合もあると思います。それは、その時点においてやはり考えるべきことだというふうに思いまして、ただいまは過去のすでに実績の示されました部分についての分析に着手をいたしておるという状況でございます。
  38. 小松幹

    小松委員 過去の実績について調査すれば、当然その実績の結果、それをアフター・ケアしていかねばならぬというような問題も起こってくると思いますが、私は単なるアフター・ケア的なこの数字の当たりよりも、抜本的に、自由化を迎えて、ここで経済計画というものを建て直していくことの方が正しい、オーソドックスなやり方だと思っておるのです。その点は、企画庁なり政治の主宰者の方の考えに待つ以外にないと思います。  そこで、私は次に進んで関税問題に移りたいと思います。昨年十二月ワシントンで開かれた日米合同貿易経済委員会の席上で、日本代表——これは大平さん初め六閣僚が行かれたが、日本もガットの関税一括引き下げ交渉にどうするかという判断——ケネディの質問でありますが、ケネディが言わぬ先にこっちがするするっと態度を表明して入っていきましたが、アメリカ通商拡大法に伴うEECの接近という、このケネディ政策はそのままするするっと入っていくことがいいのかどうかという問題なのです。私は少し軽率じゃないかと思うのです。だれにも相談しないで、閣僚にも相談していないのですよ。これは池田さんの判定で、六閣僚にただ口伝えでするするっと入っていった。アメリカでも通商拡大法をつくったときには、これはもう大問題で、そうしてアメリカの議会を通すときでも、それを通すためにはケネディは相当他の法案を犠牲にしてこの通商拡大法を通過さして、やれやれ、これで一つケネディのフロンティア政策をやっていこうというような考え方に立って出た。ところが、日本の場合には何ら閣僚にも相談しない。議会にも何にも相談しない。唐突にアメリカから言われたら、するするっといって、オーケー。あまりにも軽率だと思うが、この辺、大平外務大臣並びに総理大臣、どう判断をしておりますか。
  39. 大平正芳

    大平国務大臣 小松委員も御案内のように、先進各国の最近の傾向は、貿易の自由化と関税の引き下げを通じまして拡大の方向に持っていこうという大きな潮流でございます。従いまして、日本がこれから孤立するというようなことになりますと、わが国の経済の将来にとってゆゆしい問題でございますので、わが国としても主体的に考えまして、進んでこれに参加して、わが国の主張を十分反映せしめる必要があると判断して入る決意をいたしておるわけでございます。  それから、けさほど御論議がございました英国のEEC加盟交渉が中断状況になりましたが、これは関税の面からみますと、御案内のようにEEC条項、すなわちアメリカと英国を含めたEEC諸国の輸出世界全体の八〇%以上を占めるようなものは関税をなくしていこうといういわゆるEEC条項は、当面の事態これを強行することができなくなったということは認めなければならぬと思います。そうなればなるほど、関税一括引き下げ交渉というもののウエートは世界経済の中で強まってくると思うのでございまして、私どもはこの事態に処して、なお一そう関税一括引き下げ交渉に対しましては、重大な関心を持ち、周到な用意を持って臨む必要があると考えております。
  40. 小松幹

    小松委員 私は、二つの問題点を持っておるわけです。一つは、今まで日本国民は、日米の最恵国待遇の取りきめというアメリカ関税の引き下げの恩典を受けるだけという形で報告もされ、そういうような考え方でやった。しかし、アメリカからいわゆる恩典を受けるからには、何らかの代償を払わなければならぬということも当然考えねばならぬ。こういうことをすれば——ただ関税一括引き下げだから、いいところだけ、甘い汁だけ日本が吸うんだというような考え方外交を進めていく——甘い汁を吸わせてもらうかわりに代償を払わねばならぬ。その日本の代償は何かということを一応判断するだけの余裕と時間的ゆとりがなくてはならぬのです。少なくとも日本がいわゆる世界外交の場に出た場合には、今大平さんが言われたように、関税の一括——一括とは言わぬでも、大幅の引き下げということは世界的な傾向であるという。だれがそういう傾向をつくったのであるか、アメリカがつくったのじゃないですか。EECそのものの中は関税は下がっておりますよ。しかし、それはあくまでも封鎖経済において、自分たちの中だけのお互いの中だけで下げるのであって、一歩EECの外に出れば、むしろ私は関税は障壁を持っておると思う。それをアメリカがぶち破っていこうとする。そのぶち破っていくのはなぜか。アメリカでもイギリスでも、もはや資本主義の老大国なんです。成長力を、何ぼ馬にニンジンを食わせるように馬力を出そうとしたって、アメリカだってイギリスだって、もはやこの成長率というものはそう上がるもんじゃない。もう資本主義が行き詰まっておる。マーケットをぶち破ってでも開拓していくというその意欲が出たから、ここに関税を一括引き下げてでも、このEECをぶち破って中に入らなければというアメリカのドル防衛からくるあせりなんです。イギリスのいわゆる沈滞した空気からのあせりなんです。EECそのものは、何も関税を引き下げるという動きじゃない。むしろ関税をかけて、自分たちの繁栄自分たちの成長というものを楽しもうという、モンロー主義みたいな考え方にも立っておる。それをアメリカケネディあるいはマクミランが、そういう情勢をつくっておるだけの話であって、そういう情勢が何も世界の大勢だというように割り切ってしまって——それはいいですよ、割り切るのもいいでしょう。アメリカイギリスの大勢がそれでいい。ところがどうですか、やはりどこからかひじ鉄を食らったじゃありませんか、そんなに簡単にアメリカイギリス考えておる自分たちのシェアの拡大か、あるいはアメリカのドル防衛のためにただむちゃくちゃになぐり込みをかけるような関税一括引き下げというものに同調してはこない。EECそのものは関税引き下げというものをそれほど好ましく思っておるかどうかわからないのです。だから、ここで一歩下がって、それに対する日本の代償、お返しは何かということを考えて、もう少し、軽率に扱わないで、もう一歩下がって考えるべきではなかったかと私は思うのです、外交折衝として。ただ日米経済合同委員会があるから、お前行くから、今度こういう問題が出るからこういうふうに返事してこいというような——かりそめにも関税一括引き下げというような問題は、これはどこの国だって大問題なんですよ。現にカナダあたりでも、日本とカナダとの貿易交渉をやってみても、やはり将来関税の一括引き下げということは一物あるわけなんです。カナダ政府が持っておるところの農産物の小麦を日本にどういうような格好で入れてくれるだろうか、あるいはマンガン、いわゆる非鉄金属のマンガンを日本がどういう格好で入れてくれるだろうか、それをうまく日本が入れてくれれば、日本のOECDの加入にも賛成しましょう、あるいは関税一括引き下げにも同調しましょうという、腹に一物があってカナダも同調しているわけなんです。日本には腹に一物がないじゃないですか。何もないで国民に犠牲をかけるということを承知の上で、ただもう関税引き下げは世界の大勢である、趨勢であるから、バスに乗りおくれるようになってはならぬというのでどんどん軽い返事をしておる。そういう基本的な外交態度では私はいかぬと思うのです。もう少し世界経済の大勢を見て、カナダがどんな判断をしておるのか、もし関税一括引き下げをしたならば、東南アジアのいわゆる農業国の第三のクラスに入るところの後進地がどんな考えを持っておるのか、おそらくガットにおいても、後進地域が日本に対して門戸開放を迫ってくるでしょう。そのときに門戸開放をし切るかどうかということを考えてごらんなさい。日本が東南アジアのいわゆる第一次産業である農産物等を——もう現にバナナでも、砂糖でも問題があるでしょう。そういう後進国の第一次産業がもうすぐぶつかってくる。日本だけが甘い汁を吸うて、そうしてアメリカの関税の恩典、最恵国待遇を受けてぬくぬくとそれでもうけていこうという考え方は甘いと思うのです。やはりお返しがあるわけです。アメリカのお返しもあるでしょう。中進国のお返しもあるでしょう。あるいは後進国からのはね返りもあるでしょう。そんなことを考えたならば、軽々に関税一括引き下げというものに、バスに乗りおくれぬ式に乗っかっていくということは軽率な外交であると私は思う。それがいい悪いの前に、もう少し閣議でも十分討論する、そうして国民にアピールをする、議会にもアピールをして、その上で瀬を踏んで、日本の関税一括引き下げというものが今の日本経済でいいのか悪いのか、どういうはね返りがあるのかということを十分討議した末に返事をしてもおそくはない。私は、この前大平さんが行って返事をしたことが、今考えてみたら、あまり早まったな、そんなに早く返事をせぬでもよかった、どうせEECは中でごちゃごちゃするのだから、返事を半年引き延ばしておっても問題はなかったと今でも思うわけです。こういう点が、一カ月前に返事をしたからどうこうというのじゃなくて、そういう政治のやり方ですね、閣僚が六人と池田さんだけ相談して、こういう大問題をすっときめて、イエス・マン式に返事をするという考え方は私は誤まっておると思う。この点池田総理のお考えを聞きたい。
  41. 池田勇人

    池田国務大臣 関税一括引き下げという趣旨は、前からわれわれは基本方針として持っておるのであります。ただ一括引き下げの旗じるしのもとにわが国経済考えて、ガットの場でどういうふうな折衝をするかということは別個のもので、それは腹づもりがなければいけません。何でもかんでも一括引き下げ、そういうしろうと的な考え方ではございません。その方針のもとに日本立場をどう主張していくかという腹があってから一括引き下げにわれわれは賛意を表しておるのであります。何も軽率にやったわけではございません。十分前後を考えてやっております。
  42. 小松幹

    小松委員 十分考えておるなら筋を通してもらいたいと思うのです。今度の予算編成でも、どうなんですか、関税一括引き下げはまあ未来のこととしても、それならばそれに対応するだけの考えから予算編成をせねばならぬ。石油関税に二%をかけて関税障壁を——外国に行っては関税引き下げを言いながら、国内の今度の政策では関税を引き上げておるじゃないですか。石油関税を引き上げておる。同時に今度は砂糖、これは農林大臣にも聞くが、農林大臣は盛んに関税を高くしろ、高くしろと言っておる。やることは関税を引き上げること、池田さんは関税引き下げはもとから考えておるのだと言いながら、現実にやっている政治は何ですか。関税を引き下げようという政治をやっておるのか、引き上げようという政治をやっておるのか、むしろ引き上げようという政策しかやってないじゃないですか。農林大臣、あなたはどういう建前で砂糖の自由化に対処して関税を引き上げようという立場をとっていますか、関税を引き下げてくれという立場をとっておりますか、その点はっきりしていただきたい。
  43. 重政誠之

    ○重政国務大臣 八条国移行の問題も両三年後には実現するかもしらぬという情勢であり、貿易の自由化というのは、わが国としては国策としてますますやらなければならぬという情勢になっております。そこで私といたしましては、国内の甘味資源の企業並びにその原料生産の農民諸君が、そういう場合に用意するために、今から本気でその政策を実行していかなければならぬ。そうしなければ、そういう場合に逢着したときに非常に困ったことになる。こう考えまして、私は、ここ三年なり五年の間には、少なくともカンショ・バレイショ澱粉あるいはまたビート、カンシャというようなものに対する対策を十分講ずる、こういう意味におきまして消費税の関税振りかえを考えておったのであります。
  44. 小松幹

    小松委員 農林大臣、結局関税を引き下げるような方向でなくして、関税を上げてくれ、上げてくれと言っておるのでしょう。消費税を関税に振りかえるか、あるいは二重関税をしてくれ、おそらく一月十八日に閣議できまったのは関税の引き上げです。石油関税と同じに砂糖の関税の引き上げの方針なんです。そうなれば、池田さんどうなんですか、あなたは関税の引き下げは世界の大勢だ、わしももとから考えておるのだと言いながら、現実に突き上げられてきて、やっておることは関税の引き上げじゃありませんか。関税を引き下げるということはどこにも出てきておらない。そういう大勢を考えたときに、そこの自己矛盾というものを一体どう解釈したらいいか、もう少し筋を通してもらいたい。出たとこ勝負でなく、筋を通したらどう解釈するのですか、池田総理お答え願いたい。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 関税一括引き下げの原則のもとにおきましても、国内事情によってこれを上げ下げすることは当然のことであります。私は、石油関税は、石炭鉱業関係からこの際上げてしかるべきと考えております。また砂糖につきましても、今後自由化した場合におきまして、今のところは相当原糖が高うございます。五セントをこえる五セント半くらいでございますから、関税の問題は起こりませんが、将来三セントとかあるいは三セントを割るというような場合におきましては、これは関税の引き上げを、一括引き下げの方針のもとでもやっていかなければならぬ、これが日本経済を守るわれわれとしての立場でございます。一括引き下げだからいかなる場合でも上げていかぬというような考え方は少しとらわれ過ぎで、一国の経済をあずかる者としてはとらないところであります。
  46. 小松幹

    小松委員 私は何も一括引き下げだから日本の関税を全部引き下げろ、そんな幼稚なことを言っているのじゃない。日本の場合には、農業、工業が非常におくれておる。日本の非鉄鉱業なんというものは非常におくれておって話にならぬ。世界貿易自由化の大勢においても話にならぬでしょう。しかし、自由化は一応いいとしても、関税障壁を求めなければ、これは一ぺんにノックアウトです。農業でも私はそういうことになると思う。それから重化学工業は漸次競争力ができると思いますが、重化学工業でも、私は相当問題が出ると思う。これは最近でも相当化学品の関税をかけなければならぬということになっている。あるいは国内体制の整備もありましょうけれども、自由化の促進に対してさらに関税引き下げをやるというようなことは、バランスからいうと、危険なものが日本に多いということなんです。それは観念的には関税は引き下げる、私は関税なしでもいいと思う。ところが観念的じゃない。日本の場合には、特に私は相対的に関税引き下げよりも引き上げの方に動く率が大きいと言うんです。そういうことから考えたら、いわゆる持ち出しの方が大きい。受け取りよりもこっちのいわゆる犠牲の方が大きい。特に日本は、自由化と関税引き下げと一ぺんに両方がおっかぶさってきた段階においては相当困難性があるんだ。特に農林大臣は、先ほど甘味資源の日本の農業対策が進んだらと言うけれども、今の体制日本の甘味資源、あるいはてん菜にしても、あるいはブドウ糖にしても、カンシャ糖にしても、これはもう三年たったって、四年たったって対抗できませんよ。これは今の小さな日本の段々畑の農業構造の中では、とうてい甘味資源というものは関税なくしては立ち上がれません。将来三年か五年したら、関税をのけて、裸で外国の砂糖と競争できるようになる、農林大臣、そんなけちな考えを言ったらだめです。見通しははっきりしている。できないのです。幾らあなたが構造改善事業を進めたからといって、砂糖を二、三年先に関税を引き下げるような段階にはならないのです。どこかに犠牲を持たなければならぬ。そうならば、はっきり筋を通すべきなんです。何も中途半端なことを言わないで、どうせ砂糖など関税を求めなければならぬというなら、ならぬと——これは大蔵省どうなんです。農林大臣と大蔵大臣の間でだいぶ論争があり、話がちぐはぐになっている。大蔵大臣はどっちの方なんですか。関税引き下げの方なんですか、引き上げの方なんですか。
  47. 田中角榮

    田中国務大臣 砂糖関税の問題で御質問がありましたが、先ほど総理大臣及び外務大臣からお答えがありました一括引き下げに対する基本的な態度に対しても申し上げます。  関税一括引き下げの問題は、御承知通り、一昨年秋のガットの大臣会議で提案をせられた問題でありまして、政府は、その後、わが日本も自由化に対処して、また関税問題に対しては、基本的な姿勢としては一括関税引き下げに賛成をするということを明らかにいたしておるわけであります。その理由は、先ほどから申された通りEECの域外諸国に対する関税障壁を打破する問題もありましょうし、それよりも基本的な日本の関税に対する問題点は、日本貿易依存の国である、ここに一つの大きな問題があるわけです。これは明治初年から百年間の歴史を申し上げるまでもなく、日本の財産というものは貿易による蓄積財産である。こういうことを考えてみるまでもなく、貿易依存の日本の状況から考えると、よそから要求せられるというだけではなく、できるだけ早い機会に自由化の体制を整備して、貿易は自由化すという方向でいかなければ、日本経済、産業、生活の安定は期せられないという基本的な考えに立って、関税及び自由化に対処しておることは御承知通りであります。その意味で、関税一括引き下げに対しては前向きの姿勢で対処する、こういうことを考えておるわけであります。  しかし、それらの基本的な姿勢はただいま申し上げたようでありますが、日本の産業自体を考えてみると、関税引き下げというよりも引き上げるような問題、特に砂糖のような問題があるじゃないか。これと引き下げとの問題に対しては相反するではないかという問題に対して御質問をしておられますが、これは先ほどから総理大臣が答弁をされておるように、緊急関税制度の問題、国内の産業保護の問題等に対して適時適切に関税制度を活用するということは、世界各国で認められておるのでありまして、砂糖の消費税を一時関税に振りかえたり、タリフ・クォーター制度の採用等をすることが関税一括引き下げという基本的姿勢に相反するものであり、これと全然別な問題であるというふうに考えるのは少し行き過ぎだと考えます。もう緊急関税その他は国内産業保護の段階において弾力的に運用せらるべきであることは当然でありますので、先ほど農林大臣が申された通り、現在は国際糖価が非常に高いのでありますから、関税振りかえという問題に対して両者の間で意見を調整し、近く審議会の意見も聞きたいという段階でございますが、ある場合においては緊急関税制度を活用し、ある場合においては関税引き上げ、引き下げを弾力的に行なうということを考えておるわけであります。
  48. 小松幹

    小松委員 大臣があとで言った、適時適切に関税を操作していくというのは、これは関税のあたりまえの操作で、あたりまえのことなんです。それをやっていけばいい。ところが貿易自由化はそれでいいとして、関税を引き下げるということは、私は現段階において、国際分業の方向に足を速むれば、日本は工業国家間の水平分業のうちで労働集約的な商品の生産に特定化されてくると思う。労働集約的な商品、たとえばトランジスター・ラジオとか、あるいはミシンだとか、家内工業、手先が器用だからいわゆる手先を使うような工業に集約されてくる。資本が違うんだ。アメリカイギリスの資本と違ってくるんだ。重化学工業、重工業政策には基本的にだんだん矛盾してくる可能性があるわけなんです。それを乗り越えていくためには、後進国が先進国に追いついていくのには、身を防御しながら関税の上げたり下げたりの運用によって徐々に貿易拡大の歩みを進めていく、後進国ほどそれが必要なんです。中進国はまだ必要なんです。もう老大成して、何もかにも、資本も何も大きい企業があって、もはや内輪だけでは片手、指一本動かせばいいのだ、こういうものは外に出なければならぬ。大きいアメリカイギリスとかいうところは、もはや資本も何も大きい姿で外国にどんどん出ていかなければならぬ。そうなった場合には、関税引き下げもいいでしょう。しかし、日本のように、後進国的な要素を多分に持っておるところの国がこれをやったならば、アメリカからいうたら、なに、日本がこしらえた建設機械なんというものは必要なのか、そういうことになる。日本がこしらえれば、まあ香港フラワーズじゃないが、香港から来れば花ぐらいなものだ、日本から来ればトランジスター・ラジオかあるいは指先を使う竹細工だ、こういうものになってしまうのじゃないですか。私はそう思うのだ。ここに私は後進国と中進国と先進国とのバランスがある場合には、あながち関税一括引き下げで裸になってのうのうとしていくことが、分野において非常にこわいものがある。よほど気をつけなければ、労働集約的な商品の生産の国家として成り下がるか、あるいは相当抵抗を受ける可能性もあると思う。同時に、今度は日本中進国でもある。今度は後進国から、追いもするけれどもあとから追われもする。後進国はどんどん追ってくる。熱帯地の農産物については後進国は強い要求を持っておる。輸入規制関税の国内引き下げ、ガットの議題にはすでになっておる。こういう点から考えたときに、第一、バナナはもう日本の業者なんてあてになりませんよ、これはもうユナイテッド・フルーツ株式会社なんというものが入ってくれば、資本金二億ドルの会社がさあっと入ってきたら、そこらのちょぼちょぼの輸入業者なんていうのは、吹けば飛ぶよな将棋の駒じゃないけれども、話になりませんよ、実際問題として。(笑声)あるいは紅茶、あるいは油脂、こういうものが大資本でどんどん入ってくれば、ほんとうに日本の産業というものは、もう何らか障壁を求めなければならぬ。関税障壁以外にないじゃないですか。こういういわゆる後進国からでも——後進国といっても、資本は別なところからでしょうけれども、そういうところから、熱帯地からでも農産物がどんどんくる。紅茶、油脂あるいは砂糖、バナナというものがどんどんくるという情勢になるということならば、ここでわれわれは、貿易自由化に対して、さらに関税引き下げに対してはよほど慎重な態度を持たなければ、ただ単に関税一括引き下げは世界の大勢だ、私はもとから言っているんだ、その方がいいんだというペーパー・プランでは、のしていけないと思う。これは現実にぶち当たったら、もうこれも引き上げ、これも引き上げと、言うこととすることは、みな反対になりますよ。これも引き上げだ、これも引き上げだ。後進国からくるやつは全部引き上げになる。先進国からくるのも引き上げになってしまう。何もかも関税は国内体制としては引き上げの体制にいかない限りは、日本はなかなかむずかしい。第一、自動車の産業は——大体農産物なんていうのは、砂糖などは貿易自由化のペースじゃありませんよ。池田さんはどうして自動車と砂糖を入れかえたのですか。アメリカだって砂糖は自由化していませんよ。それであるのに、日本は砂糖を自由化している。そうして自動車工業の方の自由化を引き延ばしている。ほんとうからいえばさかさまじゃありませんか。池田さんどうですか。世界の大勢は、自動車の方を関税引き下げすることが大勢ですか、砂糖の方を引き下げすることが大勢ですか。世界の大勢からすればどうなんですか。あなたはどう判断しますか。お答えを願いたい。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 自由化と関税引き下げの問題、これは関連し、また対策として両方頭に置いてやらなければなりません。しかし、わが国の今の自動車工業の点から申しまして、今これを自由化するということは適当でない。砂糖という問題につきましては、甘味資源を保護しながら自由化していくことが、私は、日本のために必要であり、また適切だと考えております。
  50. 小松幹

    小松委員 世界の大勢なりアメリカの意向は、工業製品である自動車の方を自由化しようというのが、あなたが言う一つ世界の大勢でしょう。ところが、あなたは、どうも自動車工業をできないから、砂糖に振りかえたんだということになるわけです。砂糖と自動車を振りかえたんです。犠牲を受けたのは砂糖なんだ。日本の農業国民が犠牲を受けておる。犠牲を受けようとしておるのだ。こういう点からくれば、あなたのいわゆる自由化体制なりあるいは関税一括引き下げというものは、どうもちぐはぐが多いのです。ちぐはぐは、これは当然起こるでしょう。それはもう仕方がないのです。だから、ちぐはぐの起こることを私はとやかく言いません。しかし、関税一括引き下げというものを軽々しく考え、しかも安易に考えて、世界の大勢だからといって、へいへいとだれにも相談せぬで、あなたの一存で、わしがいいといえば何でもできるのだと、オールマイティ式な考え方からそういう判断をされたのでは、国民こそいい迷惑だ。やはり関税引き下げの方向はよほど慎重にやってもらいたい。現在においても、相当の関税の問題があっても、ミシンにしても、雑貨、繊維あるいは軽工業なども、日本国民の生きる勢いで関税障壁を乗り越えて、冠ECの中にどんどん入っております。あるいはセンシティブなど、外国の差別待遇なども乗り越えてやっておる。米国は関税の引き下げに同調しておるのかというと、むしろ、アメリカ自主規制、綿織物などの自主規制、海産物などの自主規制の方をしいてきている。こういうことから考えたならば、関税一括引き下げというようなことにあまり魅力を持たないで、それよりも現実にひっかかっている問題、アメリカがバイ・アメリカンあるいはシップ・アメリカン、いや自主規制、こういうものを現実にやってきておる。これに向かってまつ正面から抗議をし、ぶつかっていく、あるいはフランスEEC差別待遇をしておることにまつ正面からぶつかっていく。そうしてそれの障害を取り除いていく、たとえばEECにおける障害が日本の低賃金であるというならば、ただ行ってパンフレットを配って——あんなパンフレフトを見ると、日本の労働事情だの賃金事情などのパンフレットを、ようあんなものを西洋国じゅうに持って回ったと思う。私たちが見ると、全くナンセンスみたいな賃金事情を持って回って言いわけをしているよりも、現実に日本の労働賃金をほんとうに上げようということの方にウエートをかけて、そこから差別待遇をぶち破っていくというような、もっとオーソドックスな戦法で堂々とこの関税障壁を乗り切っていくだけのこれが、私は池田さんのいう人づくりの根底ではないかと思う。人づくりというのは、あっちこっちにおべっかを使うたり、適当なパンフレットをつくって、日本の賃金はイタリア並みですよと人から言われて、そうして何とか頼むからなんという、そういう卑屈な外交をするよりも、もっとオーソドックスに日本の賃金を上げて、日本の労働者の賃金を上げて、そうして差別待遇をそこの面からぶち破っていくような、ILO条約の批准を早くして、そうしてそういう法的な根拠で文句をとやかく言われないようにするとか——ILO条約の批准なんというのは今でもできるじゃないですか。そういう国内法規や国内体制というものは一つもとらないでおいて、ただ賃金事情なんという。パンフレットを持っていって、みすぼらしい。パンフレットで外交交渉をするという、そういうみみっちい考えそのものが、私はおかしいと思う。そういうことを関税一括引き下げに対してはもう少し考慮してやるべきである。もう少し日本のほんとうの体制考えながら正々堂々と、オーソドックスに関税に乗り出していく、そういうふうにしてもらいたい。総理のお考えをお伺いしたい。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 ガット三十五条の撤廃、あるいは制限品目の廃止、あるいは減少等々、片一方では対等の立場になるよう努力をしておることは、御承知通りであります。着々その効果を表わしつつあるのであります。しこうしてまた、わが国のこれ以上の発展は、やはり関税障壁をできるだけ少なくすることが、わが国としてはいいのであります。その方針に進んでいっておるのであります。  なお、パンフレットの問題でございますが、これはみみっちいとかなんとかいうのではなしに、日本の実情を彼らに知ってもらうということで、私は相当の効果を上げたと考えております。
  52. 大平正芳

    大平国務大臣 御発言、いろいろ事例をあげまして、関税一括引き下げ交渉に臨むには慎重な態度でやれという仰せでございまして、一々ごもっともでございます。私どもも一括引き下げ交渉がどういうスケールにおいて行なわれるか、ごく少数の国によって壟断されては因りますので、ガット加盟国のできるだけ多くの国が参加可能なような方式で、そうしてまた、あなたが御指摘されたような各国それぞれの事情を持っておりますので、どういう範囲にまでわが国の利益のために留保条項がとれるかというような点につきましては、綿密な検討を遂げ、周到な用意をもって臨むつもりでございますので、あなたが言われたように、オーソドックスの方法で堂々とやれというお仰せの通り用意をいたしておるわけです。
  53. 小松幹

    小松委員 私は、次に、予算の問題について大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  常識的に言えば、今まで財源が非常に少ない少ない、こう言われておったわけなんですけれども、ふたを開けてみたら、たっぷり財源はあったわ、むしろ過剰ぐらいに出てきた。何もこれは打ち出の小づちじゃあるまいから、あるべくして出たんでしょうけれども、まあそれは下がってくるよりもいいでしょう。ところが、私は、消費者米価の引き上げというものがそこに出てきた要素には、消費者米価を引き上げたから、食管会計のそういうものをせぬでもよかったということで、一つの財源の穴埋めができておると思うのです。それから去年は第一次補正、第二次も災害対策が相当出たと思うので、それで、ことしは災害対策は三百億くらい当初予算では減っておるわけです。あれやこれや考えた場合に、そこに財源があったともいわれますけれども、それでたっぷり予算がついた。それだけじゃない、最も高度成長したという三十六年度の二千六百億の余剰金あるいは自然増収などもあって、四千億以上の財源を持って切り盛りをしたのですから、これはだれが大臣になっても——言い方はおかしいけれども、世間には角栄ベースでどんどん切り盛りしたというように、大へん調子のいいことを言われていて、それはいいでしょう。いいでしょうけれども、これぐらい財源があれば、これはだれだって、しろうとでも予算編成できますよ。そんなものむずかしい問題じゃありはせぬ。ふところから、こっちの手からもこっちの手からも出せば、財源はなんぼでもある格好になっておる。だから、各大臣がえらい大蔵大臣に借りを感じておるかもしれぬけれども、何も借りを感ずることはないのです、初めからあったのですから。最初に大蔵省の内示のとき、隠しておる財源もたくさんある。その他の項とかいうところでたくさん、三百億も五百億も隠しておる。そうして各大臣にひもをつけて貸しをして、うまいことやっております。それは内輪のことだからいいでしょう。だから、そういう予算の編成をしたから、私はとかく筋が一本抜けておると思うのです。きのう、おとといの大蔵大臣の答弁を聞いていると、なるほど一つの泣きどころというところは言っておると思う。さわりのところはなかなかうまいことを言っておると思うのです。しかし、一本筋が抜けておる。肝心かなめな筋が抜けておる。私は、今からこの予算編成の筋の抜けたところを申し上げます。  これだけ物価はどんどん上がるんですよ。数字を示す必要はないでしょう。物価は上がってきた。否定しようが肯定しようが、とにかく上がってきた。そして自然増収がこれだけあるというのに、所得税の減税というものを——やらぬとは言わぬですよ、ちょっぴり、半分だけ切った。これは意味がない。ほんとうに筋を通すならば、ちゃんとまとめて、まんじゅうなら単位があると思う。まんじゅうを半分切ってくれるなんというやり方というものはないわけです。一つくれるか、三つくれるか、二つやるなんというのもおかしいでしょう。やはり日本の場合だったら奇数でしょうね。お見舞に行くのに、九百五十円のお見舞を包むより、やはり一括千円のお見舞を包むのがあたりまえでしょう。それをこの段階において所得税を、しかも、それが内閣が諮問したところの調査会から、ほんとうにぎりぎりの、物価が上がったから、その分だけのわずかな所得税の引き下げという答申をされたものだったら、これは一括のむべきです。半分のむとか、半分じゃない、百億くらい切るとか、みみっちいですね。あなたのポケットから八百億も千億もほらほらと出た中から、この所得税百億、百二十億をちびっと削って、ちょうどお見舞金を九百五十円包んだようなものだ。こういうところが筋が通っておらぬというのです。私は、何もお見舞に九百五十円くれようが、八百三十円くれようが、下げたのですから、不足は言われませんけれども、そういう筋の通らぬ予算編成をしたら、これはいかぬ。それはほんとうに浪花節になってしまう。今後はやはりこういう筋の通らぬ減税などをすべきものじゃありませんよ。そして物価が上がったんだから、金利あるいは配当金利の五分引き下げ、それはそれなりに筋が通っているでしょう。私たちが言う見方は、今度は階級的にものを見るから、少し見方が違うですね。金持ちには減税をして、こっちには減税せぬじゃないかということは、これは私たち社会党があなたに大衆の立場から階級的にものを言うた場合には、そういうことが言えると思う。しかし、予算編成者がやる場合には、やはりどこか筋がぴしっと通っておらなければいかぬ。  もう一つ筋の通らぬことは、第二次補正をしたのに、産業投資特別会計についでだからといって新しく百三十七億別に継ぎ足していますね。これは三十九年度に使うつもりかなんか知らぬですけれども、そういういわゆる当座のはっきりした予算使用目的がなくて、金があるから一緒にたな上げしておけ、こういう産業投資特別会計の取り扱い方をしておる。こういう点は、まことに私たち筋が通らぬと思う。あなたはどういうお考えなんですか。今二つ言うた、減税の問題と産業投資特別会計の第二次補正の繰り上げ、この点についてどうお考えになっているか。私は筋が通らぬ、こう言っておるのです。あなたは……。
  54. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  予算に対してはおほめをいただきまして、まことにありがとうございました。この三十八年度の予算というものが、非常に微妙な段階に対処した予算でありますから、慎重な態度で組まなければならないということは、私もその通り考えて、十分の配慮をいたし、インフレ予算にもならないように、またデフレ予算にもならないように、先ほども言われました世界的な、外から押し寄せてくるあらしに対してお互い日本人が立ち上がっていけるように、対応していけるようにということをこまかく配慮して、ようやくにして来年度予算案を編成いたしたわけであります。  その中で二つ筋が通っておらぬというのでありますが、これは比較論の問題でありまして、非常に財源もあり、余裕たっぷりに組めたのじゃないか、そういうことであるならば、減税も何も答申の二分の一程度、三分の二程度にしないで、まるまるつけた方がいいという、大衆わかりのいいような御質問でありますが、それだけ予算の中には要らない予算というものは組んでないわけであります。また、先ほどから申された通り、自由化に対応し、関税問題に対応する国内産業の整備等に対しては、まだまだ三十八年度の予算に盛ったものだけで足れりなどと考えておらないわけであります。そういうふうに一ぱい一ぱいに組んだ予算の中で、減税に対して充てられた金額が少ないか多いかというふうに考えていただかなければならないわけでありまして、五百四十億平年度減税に対しましては、議論はあるところでありますが、内閣の税制調査会の答申を十分尊重いたして、一般減税に対しても配慮するとともに、先ほどからあなたが一時間有余にわたって述べられておる日本の産業体制、自由化に対応する体制をとるために、これが一つの産業のてこ入れというようなものではなく、日本自身の運命をきめるのだ、こういうものに対する施策を減税政策としても行なわなければならないことは、論を待たないところであります。私は、そういう意味で、一般減税及び政策減税相半ばして行なったわけでありまして、三十八年度の予算のワクの中における減税の規模はおおむね適切であるという考え方に立っておるわけであります。これはただ三十八年度の問題だけではなく、三十七年度まで行なわれた歴年の減税実績の問題、これから内閣の税制調査会を中心にして答申を求めながら、減税に対する政府の基本的な考え方、こういうものをあわせて検討していただけば、少なくとも、十分満足のいけるものではないとしても、現状においては誠意を持った減税を行なった、国民もこれを認めていただけるという状態を認識しておるのでありまして、筋が通っておらないなどという考え方は持っておらないわけであります。  それから第二の、産業投資特別会計に対する三百五十億の資金繰り入れの問題につきましては、御承知通り、三十七年度の産業投資特別会計の資金を使い切っておりますし、産業政策その他から見ましても、産投の原資がますます必要になることは御承知通りであります。でありますので、三十七年度の自然増収の財源内において繰り込める財源が確保せられる状態でありましたので、これを第二次補正として、三十八年度以降、三十九年度にまたがっての原資として投入することは財政法上差しつかえない。また、ある意味からいって、先ほどからあなたが申し述べられておるような産業体制の実情を考えれば、時宜を得た処置である、こう考えておるわけであります。
  55. 小松幹

    小松委員 この前からたびたび聞くが、最後は産業体制の整備だからという泣き落としになっておると思います。だから、私は、泣き落としは泣き落としでもいいけれども、これだけの財源を持っておるのだ、四千億からの財源があるというならば、そうしてもっと言えば、消費者米価など上げぬで、むしろ一般会計から出していくべきものである、それを消費者米価まで上げて、そこにプールする金まで持っていくならば、せめて所得税のささやかなる答申案の線ぐらいは、私は、守っていくことが正しい姿勢、政治の姿だと思います。そういうことをやらないで、半分にちょびって、そうして足して二で割るというけれども、足さぬで二で割っているのだ、あなたは。足して二で割るならいいが、足さぬで二で割っている。そういうような形にしている。しかも、産業投資特別会計には来年度、再来年度の三十九年度までにわたってこの金を取り上げて、そうしてのうのうとしておる。予算単年度主義というのは、あなたはどういうように考えているんですか。あなたは、きのうかおとといか聞いたところ、予算単年度だから、ことしあるのは単年度だから、使っててしまわなければ損だから、早う一括たな上げしてやれというような言い方をした。あなたの答弁を新聞か何かで見たら、私の理屈があるのだ、ことしじゅうの自然増収だから、全部ことし使ってしまうのがあたりまえだ、これが予算単年度主義だ、こういうような言い方をしている。あなたは、ほんとうに予算単年度主義というものはそんなものですか。
  56. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  どうもばらばらで、その時期その時期の御発言をもとにして議論をされると、今のような議論になるわけでありまして、私も一昨日の御質問に対しては明確に答弁をしております。それは、今度の予算は、三十七年度の財源を目一ぱい食ってしまったので、三十九年度に繰り延べるような財源がないじゃないか、こういうやり方は無責任なやり方であってという御質問でありましたから、そういう見方で御質問をいただければ、予算の単年度制という問題を引き合いに出して理屈を申し述べるわけではありませんが、必要な項目があるのでありますし、ちょうど当該年度における経常収入で見積もりができるのでありますので、それをもって充てたにすぎないのであってというふうに答弁をいたしたわけであります。また、きょうの御質問は、全然別な角度から御質問をしておられるわけでありまして、これほどよけいあるならば、産投に回さず減税をしろ、こういうお話でありますが、私は、一昨日の答弁及び今日の答弁においては何ら食い違いもありませんし、そのときの御質問に対して答えておるにすぎないしわけであります。それから、産投会計に先行きの原資として入れることよりも、減税をより重点的に先行さすべきだ、こういう御意見に対しては、これは、私たちもこの問題に対しては十分検討し、いずれが優先をすべきかという比較論に対しても慎重な検討を加えたわけでありますが、減税に対しては、先ほども申し上げた通り、三十七年度まで一兆一千億にも上る減税を行ない、その七〇%は所得税減税を行なっておるのでありますし、また、内閣に税制調査会をつくり、来年度から三年間にわたって答申を求めながら、税制の抜本改正を行ない、これが一般的な減税に対しても基本的な姿勢をくずすというよりも、むしろ積極的に行なうものだ、しかもこれを行なうためにも、産業体制の整備や合理化をはからなければならない、これが前提である。でありますから、今年半年ないし一年待っていただくものが、倍にも二倍にも返るように、まず基盤の整備強化をはかるべきが優先する、こういう観点に立っておることをるる申し述べておるのでありまして、これは予算の編成の状況から考えまして、三十八年度予算規模の中で、答申の線も尊重しながら、減税に対しても誠意ある態度をとったことをお認めいただきたいと思います。
  57. 小松幹

    小松委員 もう一つお伺いします。あなたは先ほど、非常に積極的な、自由化に対処して産業体制を整備しながら、相当財源があったからこういうところに金を使ったのだから、まあかんべんしてくれという言い方だと私は思いますが、それはそれでいいでしょうが、それならば、終戦後の農地被買収者の補償あるいは報償ですか、そんなものはどういう観点からくるのですか。そういうのは、今あなたの言ったのとちょっと矛盾しているのじゃないですか。これはどういう観点でそういうことをやろうとするのですか。むしろ十七年も前のうしろ向きをやるのですが、少なくとも農地買収の問題は、憲法においてもはっきり合憲であり、裁判においても合法であり、金も払っておる、こういうことが出ておる。にもかかわらず、そういうことがやられている。これも筋が通らぬ。あなたの言う前向きでやるということならば、私はそれをとやかく言わない。産業体制をどういうふうな格好にしょうが、それは予算があるなら仕方がないと思っている。それはそれでいいが、十七年前のうしろ向きをどうしてやるのか、そこにどういう筋を立てておるか。
  58. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  御承知のように、議院内閣制であり、政党政治でありますから、党と政府の間で予算に対して折衝を行ない、意思の統一をはかり、公約の実現等に対してもある程度の責任を持つことは、これは当然だと思います。これはかつて片山内閣の場合でも同じことでありまして、その意味で、私たちが与党の政策、公約というものを完全に無視し得る状態にないということは、政党人として御理解願えると思います。では、与党がきめれば何でもやるのかということでありますが、これは財政法、憲法の規定によって、予算の最終的編成の責任は内閣にあることは、これまた当然のことでありますので、予算編成の過程において、与党と内閣との意思の疎通をはかりながら、最終的決定は内閣が行なったわけであります。なお、この農地被買収者に対する問題については、総理が本会議の議場を通じて明らかにしておりますように、農地被買収者の報償に関しては何らかの処置をとる必要があるのではないか、しかし、いろいろな問題に対しては実情調査を必要とするのでというので、それで調査費を計上したにすぎないわけであります。
  59. 小松幹

    小松委員 農地被買収者に対する報償の調査費が組まれておりますが、それではそういううしろ向き政治をやるならば、たとえば海外引揚者の在外資産の補償も当然出てくるでしょう、あるいは東京、大阪等の爆撃による国内被害者、こういう問題も当然起こってくるでしょう。こういうものとのバランスというものを、どういうふうな考え方から考えているか。ただ陳情に来たから、上がったから、圧力団体として出たから、これをやるのか。いわゆる政党政治というものはそういうものなのかどうか、その辺をどう考えているか。また、そういう具体的なものに対してはやるのかやらぬのか。
  60. 田中角榮

    田中国務大臣 政党政治でありますから、政党がきめたことに対して何でもやるというのではないということだけは、明らかに前提として申し上げております。しかし、農地被買収者の問題につきましては、報償するとか、報償の内容に対してこうしなければならない、かくかくの内容をもって行なうというような決定は、政府は行なっておりません。先ほど申し上げましたように、何らかの報償を必要とすると思うが、これに対しては実態調査を必要とするということで、その後の農地被買収者の実態を調査してから後何らかの結論が出されるものでありまして、これらの調査費を計上したこと自体が全くのうしろ向きであるというふうには考えておらないわけであります。しかも、農地被買収者に対しての調査費を計上したから、在外財産の問題その他の問題に対しては一切何でも補償するのか、こういう御質問でありますが、引揚者の在外財産等に対しては、すでに三十二年でありますか、五百億に近い措置を行なっております。その後の戦災者の問題、その他の問題をすべてひっくるめて一体補償するのかというようなお話でありますが、そういう考え方は全然ありません。戦いに敗れた民族が立ち上がっていくために、どのような状態で国が補償し報償していかなければならないかというのは、おのずから限界もあり軽量もあるのでありまして、これらの問題がすべて——農地補償の問題に対してよしんばある時期において報償という問題が何らか考えられると仮定しても、それをもってすべての問題が引き続いて補償、報償の対象になるとは全然考えておりません。
  61. 小松幹

    小松委員 いかなる政治も、政党政治にあっては、内閣を形成すれば、国民に対しては平等——悪平等では必要ないですが、施政に対しては平等でなくてはならない。そういう平等の立場からすれば、戦争被害というものは、あるいは終戦後の被害というものは、もちろん軍人、遺家族等も大きな被害を受けた。われわれも被害を受けた。ところが、海外におった者は、その在外資産というものを放棄して帰った。こういうことからすれば、せんじ詰めれば、農地補償と同じような問題にくるのじゃないか。だれもそれをやらない、こういうように言い切って、こっちはやる、こっちはやらない。農地補償は、安くても金で買うたでしょう。しかし、在外財産はただ捨てて帰ったんですよ。千円しか持って帰らぬですよ。そういうものについて調査していくことは、政治の公平の原則ではないか。同時に、戦災者、あるいは戦災によって親も兄弟もすべてを失って、孤児院に投げ込まれたいわゆる孤児もあるわけです。こういう家も親も一緒に失った戦災孤児あたりは、一体どういうような体制で報償してくれるのか。孤児院に入れてそのままじゃないですか。そういうのが中学校や高等学校に今行く段階になっているが、そういう者に対してどういう施策をしてくれているのか。そういうことをやらないで、圧力団体として農地被買収者が集まったから、それで何千億という金を出すというようなことを予約手形、約手を切るということは——約手を切ってもよろしい。いいけれども、政治は公平でなくちゃならぬ。それならば、親を失い、家も失った戦災孤児にはこうするのだ、海外において千円札だけ持って帰った在外資産についてはこうするのだ、こういう筋の通った、国民に対してはっきりわかるような形にして、調査を進めるなり、あるいはやるなりすべきである。それが絶対悪であり、最悪のものであるということを——人間がすることであり、政党内閣でも与党のすることが全部悪いなんということを私は言っているのではない。少なくとも公平の原則からすれば、何だ、それならば、今度おれが圧力を加えていけば、引揚者が全部圧力を加えていけば、自民党はこの次はあるいはおれのところを出すかもしれぬ、こういうような陳情政治を盛り上げるような姿であってはならぬと思う。ここで、農地被買収者の問題が出たから、政治の公平でここでけりをつけるならば、すべてにわたって一応調査をして、国内の戦災、国外の引揚者の問題、在外資産の問題、こういうものをひっくるめてうしろ向き調査するならば、私はそれはそれなりに筋が通ると思う。こういうような筋の通ったやり方をしてもらいたいと思うのです。池田総理、この点についてはどうお考えになりますか。
  62. 田中角榮

    田中国務大臣 小松さんも非常にものわかりのいい方でありますし、しかも政治に対して公平でなければいかない、その原則は、私もその通り考えておりますし、政治家も当然そうであらねばなりません。私が先ほど申し上げました通り、戦後処理という問題に対して一線を画すために、あらゆる問題に対して補償、報償をするかしないかは別にして、ある意味における調査をした方がいいじゃないかという考えは、一つの新しい提案であり考え方であります。私も、ある時期においてそういうことが必要であるかもしれないということはわかりますし、しかも、西ドイツのようにそういうものに対して線を引いておる国もありますから、こういう提案に対しては、内閣でまた別な角度から考えることであろうと思いますが、私が財政当局者として申し上げましたのは、すべての問題に対して何でもかんでもみなやるということでは財政の健全性が持てるわけではありませんし、長い悠久な人生、お互いに国家を形成していくのでありますから、ある時期において泣かなければならない問題もありますし、犠牲になっている問題もあります。しかし、それはわれわれの長い人生の中で、また国家財政が許す範囲内において、その軽重によって国が報償、補償の道を講じておることは、これはもう戦後十七年間に、あらゆる意味で絶対反対であったという軍人恩給の問題も復活いたしましたし、また今度の予算で、未亡人加給という問題に対しても、十分でないにしても、政府は誠意をもってこれは国民にこたえておるわけであります。でありますが、それがいよいよもって何でもかんでもみなやらなければならないという理論には通じないと思う。やはりそのときにおける財政の状況、施策の重点というものに順位を付しながら、国民の理解を求めながら、一歩々々前進体制をとらなければならぬということでありますので、私が申し上げましたことは、すべての問題を農地補償の問題から惹起し、引き続いていくものではないというふうにお答えをしたわけでございます。
  63. 小松幹

    小松委員 その問題はそれにしまして、先ほどの産業投資特別会計の繰り入れの問題でございます。財政法は先年当たっておりますから、財政法上においては、皆さんの方では繰り入れについては文句はないだろうという姿勢でありましょうけれども、私は、財政法上の技術的な——もはや三年前言ったことと今日言うことは、私は私なりに違って言っておりますが、しかし、はっきり三十九年度まで使うというような予算を、幾ら補正であろうが、なぜ組むのか。この点は、予算単年度主義というものはまだ消えておらないと思う。それを財政法上で少し当たったから、金があって余っておるから、三十九年度まで使うところの資金を確保するのだということはどうかと思うのです。予算単年度主義と三十九年度の問題とどう考えておるか、その点一言だけ。
  64. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  一般会計から産投会計への資金に繰り入れるということは、単年度主義に背反するものでは全然なく、財政法の規定違反でないという解釈であります。それから事実問題から申し上げると、御承知通り、先ほどから議論しておりますように、関税の一括引き下げ、自由化に対応する国内産業の体制の問題、それからいろいろ石炭の問題、海運の問題その他の例を引くまでもなく、産業投資特別会計の資金がより拡充強化をせらるべきであり、その必要性が今日以後においてますます重要視されておる事実はお認めであろうと思うわけであります。そういう意味で、三十七年度で先ほど申し上げた通り資金を使い切っておりますので、これが弾力的に、また適時適切な施策を遺憾なく行なうためにも、三十七年度財源を産投会計に繰り入れることは必要であるという認識に立って行なったわけであります。
  65. 小松幹

    小松委員 ここで総理にお伺いしますが、最近、私は資料を大蔵省からとりましたところが、膨大な繰り越し明許費というのが額にして九千億、今度のいわゆる一般会計の中で三分の一は繰り越される。去年は二兆四千億くらいな金でしたが、その二兆四千億の金の中で九千億の金が時間的に繰り越されておるということ。繰り越し明許費が膨大にある。この点は、予算単年度主義から来る——そういうことを心っておれば、しまいには人件費だけがことしで、あとは全部来年々々に繰り越していって、繰り越し明許費だけになって、今度は繰り越し明許費を審査せねばならぬようになってしまうと思う。三分の一です。九千億繰り越しですよ。今言った産業投資特別会計の百何十億を来年、再来年に繰り越したということ、そういうことくらいなものじゃない。これは予算単年度主義から来ると大へんな問題だと思う。中身がないのです。今審議している予算の中身の三分の一は全部来年です。来年やるのです。そういうようなことをやっているのですが、大蔵省の資料をあとで各省にいってもらいますけれども、総理これはどうなんですか。
  66. 池田勇人

    池田国務大臣 予算の性質上繰り越し得る場合もありますので、これはやはり予算審議におきましてはっきりそれを明示して、そして御承認を得ることになっておるのであります。これは財政法上規定がございます。各費目につきましてのことにつきましては、財政当局からお答えさせます。
  67. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  財政法十四条の三項で繰り越し明許制度がありますことは御承知通りでございます。これが予算の内容から見まして非常に膨大な数字になっておるということも御指摘の通りであります。今年度の予算で約八千九百五十一億四千八百万円という数字が繰り越し明許になっておるわけであります。三十七年度は八千十八億、それから三十六年度は六千五百四十五億、三十五年度は五千九百八十八億、非常に大きな数字であります。しかし、これは御承知通り非常に議論のあるところでありまして、憲法上また財政法上の基本的な問題にも触れる問題もありますが、一つには会計年度が四月から三月までであるということで、国会の議決が三月三十一日をめどにして行なわれる場合、一般的地方の問題等に対しては、御承知通り六月県会、新規の事業に対しては九月県会というような制度になっておりますので、この繰り越し明許の制度が必要になりましたのは、敷地が話がまとまらなかったとか、それから公共事業、路道その他の法線が決定をしなかったとか、企画設計に対して結論が出なかったとか、またきめた工事に対して設計変更が行なわれるとか、その後の事由に基づいて実施を行なうまでに対してはいろいろ問題が起きるわけであります。北海道その他東北豪雪地帯等においては、雪が早く降って間に合わないというような問題もありますし、十月から十一月、十二月で間に合うつもりで予算執行を行なったのが、十一月雪が降ったために、三月三十一日会計年度までにできないという問題もありますので、こういう明許費制度をとっておるわけであります。しかしこの繰り越し明許の額そのものが全部繰り越されるというのではないわけであります。実際上どの程度繰り越されておるかというと、残ったもの八千億に対して六、七%というものが大体繰り越されております。あとから数字をもって御説明申してもいいのでありますが、まあ国際収支の改善等によって繰り延べを少しはかったというような場合は特別でありますが、こういう場合においても、公共事業で五百億程度の繰り延べを行なったというようなものは、おおむね明許費の項の中から出ておるわけでありまして、その意味において明許費制度も必要でありますし、これがただ乱に流れて、単年度制度を犯すというようになっては、これはもういけないことでありますので、法律で定める範囲内において事情やむを得ざるものに対してのみ繰り越しを認めておるという事情でございます。
  68. 小松幹

    小松委員 この繰り越し明許費の問題……。
  69. 塚原俊郎

    ○塚原委員長 小松君に申し上げますが、申し合わせの時間が参りましたので、結論をお急ぎ願いたいと思います。
  70. 小松幹

    小松委員 今大蔵大臣が言った程度の実情も私はわからぬことはない。けれども予算単年度主義を変えて、三年度主義あるいは会計年度を変えるというテーマなら別です。しかし今日あまりにやすきについておる。とにかく予算をとればいいんだ、予算をとればやるのは来年でも再来年でもやれるのだ、こういうようにいわゆる官僚機構がもうすべてそうなってきておる。だからもう何でも繰り越し明許費で繰り越して繰り越して、予算をとるときだけはやっさもっさ大蔵省に泣きを入れていく、けれどもとったあとはのらりくらりと二年でも三年でも延ばしておるというような情勢もなきにしもあらず、現実においてもこれは災害復旧などは、三年前のを復旧するとかいうような場合には——災害復旧なとはなかなかせかれておりますけれども、そうでないものは実にマンマンデー式になっておる。だからその集積が——今日表ではうまいことをつくっておる。大蔵省の主計局から出しておるところの対民間収支の揚げ超か散超かというようなのはうまくバランスが出てきている。出てきているけれども、実際は内容は違う。中がしり抜けになっておる。全部予算はしり抜けして、三分の一あるいは四分の一がしり抜けしていっている。そのことが行政の非能率化にもなる。同時に行政の非能率化だけではなくして、いわゆる補助金などはきわめて不正な、今度会計検査院から十八億の不当、不正支出が指摘されておりますが、こういう一つの原因にもなっておるのです。それとこれとは趣旨は違いますけれども、そういうことが勝手にやられていいならば、別に財政法に予算単年度主義をとる必要はない。ところが一応予算単年度主義をとって、繰り越しというものははっきりして、繰り越し明許費を通すようにしたのが、もう繰り越し明許費というのがあたりまえのことになって、どんどんしりが抜けておるということは、これは予算問題として大問題だと思うのです。少々、十億か五億の問題ではなくして、予算運営上の大問題だと思うのです。この点について私は将来の問題としてこれは残さなければならぬと思いますが、池田総理にお伺いしますが、こういう予算運営上の問題、どういう御判断を持っているのか、外国あたりでは単年度をこわして、事業年度にしておるところもあるわけなんです。ここら辺のことについて、どういう判断をされるのか。これをこのままずるずるにいくという態勢なのか、一応ここでストップをかげて、何らか態勢をやり直すのか、あるいは予算単年度主義をやめて、年度を事業年度に改めていくか、こういうようなことを考えていく段階がきているのではないかと思いますが、この点どう判断されておられますか。
  71. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど申し上げました三十四年度の実績を見ますと、明許制度による金額は五千百八十一億でありますが、その中で実際に繰り越されたものは三百二十四億円であります。それから三十五年度は、五千九百億のうち三百九十九億円であります。三十六年度は、六千五百億のうち六百十億であります。この率は六%、六%、九%というような、金額にしては小さい問題でありますが、予算単年度という問題に対しては、確かに問題もありますので、財政当局としてもこの辺に対しては十分今検討をいたしております。しかし、これはやり方としては、単年度制度を変えるというよりも、正式な継続費制度を認めるかとか、それからもう一つは、こういう特殊な公共事業に対しては今までのように予算が決定をしてから企画設計を行なったり、用地買収を行なったりしておるのが例でありますが、建設省等で、前年度においておおむねその用地法線等が決定をしないものは、もう予算をつけないというようなことをすればいいじゃないかという議論もあります。こういう議論を法制上進めていくと、完全に単年度はくずれるという意見にもなりますし、いわゆる支出負担行為や債務負担行為というものの併用をどこまでやることによってこれらの問題が解決するのか。東京のように、オリンピックの問題等、実際は予算の配賦をし、法線がきまっても用地買収に応じないというような問題がありますので、これらの繰り越しが行なわれておるわけでありまして、これらの問題に対しては、財政当局としても十分検討いたしております。
  72. 池田勇人

    池田国務大臣 単年度主義はやはり憲法上からもきております。私は、これは続けていくべきだと思います。予算制度でアメリカ式の支出許容制度等々各国いろいろ事情がございますが、やはり日本といたしましては今の制度を守っていく。しこうしてお話しのように、繰り越し明許の分は事情やむを得ざる程度にできるだけ少なくするという方針でいくことは、私は同感であるのであります。やはり支出の事情等からくる問題でございます。いたずらに乱に流れるということはよくないと考えます。
  73. 小松幹

    小松委員 いたずらに流れる、いたずらに流れておるというように私は感じますが、問題は、産業投資特別会計においても、政府がそういうようにみずから一線に立ってそういうようなことをやるから、下右へならえで、全部繰り越し明許費にやっていけば何もそうあわてぬでもいいじゃないかという格好になると思うのです。この点についての十分の御配慮をいただきたい。  最後に、私は、災害の問題を一言だけ言っておきたいと思います。今河野建設大臣が行っておりますけれども、ことしは災害が去年よりもないと思って予算を少なくしたけれども、こういうように大雪の災害があれば、相当の被害が出る。これがうまくいけばいいが、また夏から秋にわたって災害が起こらぬとも限らぬ。こういう問題について、予算はどういうふうに配慮してあるのかどうか。その辺の災害対策の予算の、今度の雪害対策だけにとってでも、どういう配慮をしてあるか、一つお聞かせ下さい。
  74. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  昨日申し上げました通り、現在は豪雪で交通途絶というような状態であり、一番大きな公共災害は、御承知通り融雪時において起こる可能性があるわけであります。これに対しては、例年通り二百億の予備費を計上いたしておりますので、予備費の活用、及び地方に対しても、いまだ交付をせざるもの二百数十億の特別交付税の残もございますし、これらの問題を加味しながら、融雪災害に対しても豪雪災害に対しても対処して参りたいというふうに考えております。
  75. 小松幹

    小松委員 これで終わります。
  76. 塚原俊郎

    ○塚原委員長 午後は一時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      ————◇—————    午後一時三十九分開議
  77. 塚原俊郎

    ○塚原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十八年度総予算に対する質疑を続行いたします。  川俣清音君。
  78. 川俣清音

    ○川俣委員 私は、主として農業問題に関して政府の所見をただしたいと思うのでありますが、質問の前提を申し上げますと、どうも池田さんは、従来合理主義者として、非常に合理的にものを処理されてきたのでありますが、最近円熟されてか、庭いじりをされるようになりましたり、人づくりをするということになって、やはり年のせいでもないでしょうが、情緒がわいてきた、こう判断をいたしまして、私もある程度理詰めでは参りまするけれども、最後のところは幾らか情愛を示しまして、逃げ道ぐらいは見つけてあげよう、こういうつもりで質問をいたしたいと存じます。  そこで、これは総理並びに農林大臣にお聞きしたいのですが、農業構造改善事業というものが非常に大きな旗を立てられて行進をされておるものでありまするから、世間の期待も非常に大きいようでありまするけれども、これが受け入れられないような状態が起きております。昨年の十一月の全国町村長の会長会議並びにその前に開かれました議長会におきましても、構造改善事業の返上論が起こっております。これはどういう理由で起こったか、どういう理由で返上するのか、社会党は反対ですけれども、町村長は反対でもないが受け入れかねる、こういう返上論のようでございまするが、なぜでございましょうか。どういうふうに認識しておられますか。総理大臣並びに農林大臣にお聞きしたいと思います。
  79. 重政誠之

    ○重政国務大臣 昨年の十一月ごろでありましたか、川俣さんが今お述べになりましたようなことが若干パイロット地区についてあったわけです。それは思うに期間が非常に短い。すなわち昨年初めて始めまして期間が短いということと、それからパイロット地区でありますから、そこでほかの地区の手本になるような構造改善もやらねばならぬ。それにはどうも自分のところはそう短期間に計画を立ててやるというわけにも参らぬ、こういうことが原因であろうと思ったのであります。その後になりまして、町村長会議がありまして、これは御承知通りに、構造改善事業は強力に推進をしなければならぬという決議もされたようなわけであります。現状ではどうかと申しますと、九十のうちで十三くらいがパイロット地区としての計画は進んでいけないというので、しかしそれでやめてしまったのではございません。一般の地区と同様に、一般の構造改善の地区に指定をせられておるわけでありますから、ただいまのお話のように、これを返上するとかなんとかいうようなことでは今日はございません。
  80. 川俣清音

    ○川俣委員 大蔵大臣にお聞きしますが、どうも私の見るところでは、パイロット地区を初めとして七千五百万の事業を目標にした。パイロット地区、一般構造改善町村等がなかなか予算が消化できないような状態にあるのではないかと思います。このように消化できない対策を農林省が考えるのは当然だと思いますが、大蔵省はどのようにお考えになって対処されるつもりでありますか。
  81. 田中角榮

    田中国務大臣 三十七年度予算では、パイロット地区九十二、一般地域が二百市町村ということでありますが、これが実施の状況は、三〇%程度というような状況もありますが、三十八年度につきましては、三百市町村を新たに追加をいたしております。これが資金的な問題については、今度御承知の農業経営改善資金の制度をつくりましたりしまして、長期低利の金のめんどうを見るということ、もう一つは、これは予算は市町村別になっておりますが、広域的に隣接町村と合わせて計画を進めるというようなことも考えておりますし、もう一つは、市町村財政ということで財政需要の基礎算定をしますときに、これを含めるというようなことで、これらの新しい施策に対しては、地元がこれを消化できるような体制を整えてやらなければいかぬということに重点的な配意をいたしておるわけであります。
  82. 川俣清音

    ○川俣委員 今の答弁が農林大臣の答弁ならわかるんですよ。実際は、農林省は八〇%程度計画ができたと発表しておることは事実です。しかし予算の消化の状態をごらんなさい。融資にいたしましても、三十七年度の消化率を見ますと、とても八〇%などいかないようです。金の動きをごらんなさい。それは農林省は計画ができたから進むであろうという算定です。あなたの方からいえば、年度内にどれだけ消化できるかできないかということを見なければならないと思う。これは農林省があまりやりませんでしたというわけにはいかぬでしょうから、できるだけそれは水増しをしても、できたような格好をしなければならないと思う。しかし財政の面からいって消化できておるのかどうか。三十八年度計画をする上に、一体どこが問題になって消化できないのかどうか。やはり理由を確かめてそれを打開しなければならないと思うのです。総理大臣、そうじゃないですか。
  83. 池田勇人

    池田国務大臣 お説ごもっともだと思います。
  84. 川俣清音

    ○川俣委員 それでは自治省にお伺いしたいのですけれども、町村から農業構造改善をやりまして、事業を遂行して、とかく取り残されておる農村の経済発展のためにいろいろ苦労して、初めのころは、パイロット地区にいたしましても、一般地区にいたしましても、かなり運動をして獲得をしたような傾向がありました。ところが実際やってみると、うまくいかないということで、ことにことしの統一選挙を前にして失敗をしたのではうまくない、次の選挙に影響するということで、かなり慎重になってきているためか、かなりやはり計画を練り直したりいたしまして、あるいは返上的な練り直しあるいは実態に合わせるための練り直しをいたしまして、なかなかうまく進行していないようです。これを自治省の面として、自治省の立場からどのようにお考えになっておりますか。町村としては非常に大きな目標を掲げて自治体が運営されておるわけですが、自治省の立場でこれがどの程度進行しそうに思われますかどうか、その点をお尋ねいたしたい。
  85. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 農業構造の改善事業が、大体においてうまくいっているのです。ところが、うまくいっていない面もあるわけです。そこで自治省としましては、政府の分担すべきところと地方自治体の分担とをはっきりしまして、政府は主として計画その他をやり、実施機関として自治体がやる。従来農林省から、パイロット・ファームを、農業改善事業をやるという場合には五割の補助が出ておる。しかしそれをやるためには、大きなトラクターを入れなくてはならない。農道等におきましても必要以上に広げるというような場合で、地方の負担が非常に多くかかってきた。そこで自治省としましては、いろいろの関係者と相談した結果、むしろ府県の方に交付税を渡して、府県から実際に農業改善事業をやっておる町村に対してその交付税を渡す、こういうような方法にいたしまして、今年度の予算からそういう方向にいくと思いますが、非常に改善されるだろう、こう考えております。
  86. 川俣清音

    ○川俣委員 自治大臣、これは農林省の計画ではあるけれども、実施団体はあなた方の監督のもとにある、指導のもとにある市町村なんです。これは人ごとではないのです。市町村にとりましては運命をかけてこれをやろうといたしておるわけです。それだけに今度の地方選挙にも非常に影響するということをおそれておるほど重要に考えられておる。これは人ごとじゃないのです。農林省の所管だなんて思ったら大間違いです。実施責任は自治省にあるのです。何かうまくいくでありましょうなんて、人ごとみたいなことじゃおかしいのです。
  87. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 別に私は人ごとだと思っておりません。自分のことだと思って一生懸命やっております。うまくいくだろうということは、将来のことであるからだろうと言ったのでありまして、自信を聞かれれば、うまくいかせます。こういうことであります。そのためには、三十七年度等において事業費のオーバーしたものについては特別交付税等において見る。それから将来の問題につきましては、今言ったように、かりに交付税をよけい出しましても、交付税はひもつきにできないから、それによって農業改善事業を行なわない場合もある。そこで、その交付税を府県の方に渡して、農業構造改善事業を行なう者に対して、それを特定のものとして特に配付する、こういうような考えであります。あなたと私とちっとも変わっておりませんから、どうか御安心願います。
  88. 川俣清音

    ○川俣委員 それでは重ねて自治大臣にお尋ねいたします。  一体、農業構造改善というものについて理解の仕方が、町村によって非常にまちまちだし、また、政府の宣伝もまちまちなんです。一つはどういうことが言われているか。なぜ農業構造改善事業をやるのかというと、これからの農業はもうかる農業、企業農業に変わっていかなければならないのだから、すなわち企業農業というのは、市場金利を払ってもそれを消化して、なお利潤を生むような企業農業に変わっていかなければならないのだからして、今度は農村がうまくいってもうかるのだから、そのために犠牲を払って市町村がやってはどうか、こういうふうな宣伝が行なわれております。あなた方も地方に行くと、これからの農業はもうかる農業をやらせるのだからしっかりやれと、こういうことを言っているのじゃないですか。特にそういうことを言うのです。ところが、農業自体というもの、農産物というものは、一体もうかる対象物として生産できるものかどうかということについて、疑問も何も持たない。国民の衣食住にかかわる重要な生活必需品については、これをもうけの対象にするということはどこの世界においても困難だ。一時的にもうかることはありましょう。ある期間投機的にもうかることはありましょうけれども、これを一つの定業として、農業としてもうかるなんということは許されることが不可能なのだ。国民経済はこれを許さない。政府がどんなにもうけさせようと思いましても、国民経済はこれを許さない。従って農産物につきましては、良質なものを安価に提供させるということでなければならぬはずなんです。安価に豊富に良質なものを提供させる。そうして国民生活、国民経済活動を活発ならしめたいというのが農民の果たすべき役割だと、私はそう理解する。従って、そこから利潤を生み出して、相当な市場金利を払って生産できるというものではないと思うのです。それではそのまま放任しておいてよろしいかといえば、そういうわけにはいかないということで、農林省ではこれから講ずべき農業施策として、消費者並みの生活水準、所得水準を得られるように改善をするんだということで逃げておるのです。その通りだと思うのです。ところが、それではなかなか魅力がないものですから、もうかる農業——総理大臣もときどきこれからの農業はもうかる農業でなければならぬ、商品生産農業だから、もうかるんだ、特に、自民党のおえらい方々は、地方に行ってそういう宣伝をなされます。しかし、一方、生鮮食料品が高くなると、何で押えないんだと、押えてくる。これは当然なことです。従って、いかに消費者といえども、国民経済であろうとも、自分並みな、人並みな生活をさせる程度まで農業生産を上げていかなければ、最後には減産になってきまして、自分の上につばを吐くようなことになりますから、人並みな生活は与えるという施策はとらなければならないとは思うのですよ。それを、さももうかるような農業に仕立てていくんだなんていうところに誤りがあるし、やれないというところが出てくる。北海道の農業は御承知のように、初めから商品生産の農業です。これはアメリカ農業を輸入したのでありますから、初めから商品生産農業です。しかし今なぜ商品生産的企業農業というものに北海道の農民はおそれをなしておるかというと、非常に投機的である。一時非常によかった。たとえば、自治大臣知っておる通り、青エンドウをやりました。あるいはハッカをやりました。一時的な、一年、二年というもうけはあったでしょうが、あと惨たんたるものになりましたために、危険な農業は拒否されておるのが北海道の実情じゃないですか。やはり安定した農業へ切りかえていこうというのが、自治大臣の郷里の傾向だと私は見るのです。果樹にいたしましてもどうです。青森よりも北海道に先に果樹が入ってきた、リンゴが入ってきた。クラーク博士が持ってきたのです。従って、国内の消費ができませんものですから、北海道のリンゴは、最初は輸出です。中国またはソ連領に輸出するという計画であれはやってきた。輸出というものは、うまくいかないときには破産に瀕するものですから、国内需要をどうして開拓するかというように切りかえていった。ところが、北海道のような寒地では、果樹というものは貯蔵には耐え得るけれども、見場が悪いということで、内地需要が非常に減ってきて、青森のリンゴにかわってきたわけです。それらの歴史を見て、いたずらにただ農民をおだてて、これからもうかる農業だから金を借りてやったらどうか。もうかる農業だったら金を借りてやりますよ。政府から援助を受けないでも、もうかるものであれば、あえて借りないでも、自己資金を調達しまして、あるいは借り入れしまして、自分の責任でやれるでしょうが、そうじゃないのですよ。自分の生活程度を人並みの生活程度まで引き上げるのでありますから、そこに政府の補助や助成というものが必要になってくる。もうかる農業であったら何も助成とか補助なんかする必要はないはずです。もうかるところまでいけないのだからして人並みの生活をさせなければならぬ。農業生産を上げていかなければならぬのだからして、普通水準を得られるように、普通の他産業並みな所得の得られるようなところまで農業の生産も上げていこう、こういうことなんでしょう。私はそう理解するのですが、総理大臣はどうですか。
  89. 池田勇人

    池田国務大臣 大体そういうことです。ただ、もうからないというのでなくて、もうかりにくい、こういう気持でおるわけです。もうからないものときまっておるわけじゃございません。現に私の国におけるミカンなんかというものは、金を借りてやって相当もうかってきて、今相当な成績を上げております。農業全部がもうからないんだというのではなくて、もうかりにくい、ほかの職業よりもなかなか困難だということはあなたと同じです。しかし、初めから企業として成り立たぬ、もうからないものだとは私は考えません。
  90. 川俣清音

    ○川俣委員 そこに私と違いがあるのです。ミカンも、これは需要が拡大されていって、輸出が行なわれておるところにまだ拡大の余地があるから、拡大の余地があるときにはある程度もうかり得るのです。(「それは一般企業だって同じです」と呼ぶ者あり)しかし一般企業というのは初めから一つの計画をして、採算が立つか立たないかということで企業が始まるのです。ミカンをやる場合でも、大根を植える場合でも、これが非常にもうかるから、大根を植えるのだ、もうかるから米を植えるのだというわけには必ずしもいっていないのです。自分の持っておる労力を、どこへどういうように発揮して所得をあげるかというところから行なうものでありまして、初めからもうかる——それじゃもうかる農業だけをやってごらんなさい。池田さん、あなただって——ミカンをみんなやってごらんなさい、来年みな下がったらどうしますか。ミカンというのはもうかるものだからやれと言われて、いつでも政府の言う通りやって、豚を飼えと言われて豚を飼って、豚の値が下がった、もうかるのだから豚を飼え。やったら損した、破産をしたという。経済力の浅いものに、もうかるのだということで無理な金の算段をさせるところに農業の破綻がむしろくるのです。私はそう思うのです。まあそれまでいくとあなたは困るでしょうからこの程度にしておきます。  そこで農業構造改善を進めていく上に障害になっている点を除かなければいかぬと思うのです。どこに障害があるか。これは従来の行政区域ですよ。経済活動は必ずしも旧来の行政区域の中だけでするのじゃないのです。最近、近代産業の発達に伴いまして、旧来の行政区域を脱しなければならぬ問題がたくさん出てきている。郡にしても、町にしても、県にしてもそうなんです。単に私は合併せいというものじゃありません。構造改善を進めていく上に一番大きな問題になるのは、この区域なんです。土地改良であろうと販売機構にいたしましても、みんなそうなんです。これを解決していくのでなければ、金は貸すつもりなんだから、あるいはこうするつもりなんだから、それはもうかるのだからといったって、十分活動のできない区域内に押し込めておいて、活動せい、努力せい、こう言われても努力の限界があるわけです。これについてどう農林大臣お考えになりますか。
  91. 重政誠之

    ○重政国務大臣 ただいまの御説はまことにごもっともです。構造改善を行なうにいたしましても、理想的に申しますれば、やはり経済圏というものを頭に描いてやらなければならぬと私も思うのです。そこで農林省といたしましても、そういう意味において今調査をいたしております。それから構造改善事業を許可、認可するにいたしましても、やはり相なるべくは数カ町村が集団的に同時に構造改善をやるようにしむけて参っておるわけであります。経済圏を考えなければならぬということはいろいろな意味においてあるわけなんであります。現に果樹園の造成等につきましては、御承知通りに果樹振興法がありまして、これによって果樹地帯もそれぞれ指定をせられております。やはりこういったような配慮がなければいけないと思うのであります。最も重要なるものは、市場の関係等を見なければいかぬということは、すなわち今日の農業というものは市場生産、こういうことに変わってきておることは御承知通りであります。
  92. 川俣清音

    ○川俣委員 これも不十分ですが、一体、町村というのは川であるとかあるいは一定の境がありますが、農業をやっていく上においてはそういうものが境にはならないのです。土壌の境はあります。土質の分布の境はありますけれども、人間がきめた境界があるときに、隣村までやる方が経営上よろしいという場合に、隣村だからということで——あなた果樹振興法を見てごらんなさい、町村単位になっている。町村単位で何町歩以上でなければならぬ、こうなっているじゃありませんか、そうでしょう。経済というものを考えていないのです。今の行政機構ではやむを得ないでしょうけれども、考えておられないのです。それがネックになっている。そればかりでないですよ。農林省自体が総合されたものがないじゃありませんか。このごろようやく園芸局をつくったりしましたけれども、総合的にやるので農政局をつくった、こう言いますけれども、土地というものに対する利用度というものは、どうして土地の利用度を高めていくかということになりまして、牧野であろうと、山林であろうと、耕地であろうと、一体に考えていかなければならぬはずなんです。そうじゃないですか。それを片方は農地法だ、牧野法だ、森林法だということで、みずから制度的に擬制的に区画をつくっている。犯してはならないという法律があるわけであります。これは人ごとではない、自治省の問題ではない、農林省自体がこの問題を解決しなければならない。農業基本法を出して、これからの農業は畜産もやるのでしょう。畜産ということになりますと山へ相当入って参ります。さらに上へ行くと林地になります。林業政策をどうするのだ、ここまで一貫して考えなければ構造改善事業の達成ができないはずなんです。いや米麦はだめなんだから酪農をやれ、果樹をやれ。果樹、酪農はいずれも山へ近くなってくる。里より遠くなっていくわけです。反対に生鮮食料品はだんだん町へ近づいてくるでしょうけれども、こういう酪農であるとかあるいは果樹であるとかいうものは、土地価格の安いととろに発展をしていくわけです。そうすると林地の競争は必ず起こるわけです。林業をどうするのだという基本的態度がなしに、いやこちらだけでうまくやりますよと言ったって、それはうまくいかないはずなんです。この点どうですか。
  93. 重政誠之

    ○重政国務大臣 御承知通りに、農林省の分課は縦割になっておるのです。そこで、ただいまお述べになったように、個々別々にやったのでは構造改善事業はうまくいかないことは、今お話しの通りであります。そこで省内にこれを総合する一つの組織をつくりまして、そこでいろんな問題を即決するような仕組みを考えて今やっているわけなんであります。  山林、林野につきましては、いろいろお述べになりましたが、これも実情はその通りであります。元来七割以上をわが国は山林、林野に持っているのでありますから、これをいかに利用するかということを考えなければ、とうてい日本の農業経営というようなものがうまくいかないことはわかっております。でありますから、その林野の用途に応じまして、そこは森林経営をしたがいいか、あるいは酪農を経営するための草地にしたがいいかというようなことは、具体的に土地の事情に応じまして林野の開放もいたしたい、こういう考えで準備を進めておるわけであります。
  94. 川俣清音

    ○川俣委員 農林大臣は、言われることはもっともだと、一々反駁されると思うためかどうか、賛成される。しかし賛成するからにはやる意思がない賛成というものは無価値なものです。実行しようとする意思がなくて賛成するということは、非常に無責任なことなんです。総理大臣、そうでしょう。賛成するからには実行しようとする意欲がなければならぬ。私はそう思うのです。意欲があって初めて人づくりも可能なので、意欲のないものはどんなものをやったって価値がないですよ。そこで林業についても農林漁業基本問題調査会が案を出しまして、二年半以上経過しているのですよ。それに対してまだ答案ができないということは、怠慢なわけじゃないでしょうけど、いろいろ問題があるということで延びている。総合性がないじゃないか。人にはやれやれと言うけれども、みずからやらなければならぬ問題をやらないでおいて、ただ人にだけ勤めたのでは、農業構造改善というものはうまくいかぬだろう。わが農林省もこうやるから、君らもやったらどうだ、こういうことでなければならぬ。こういうことをやるともうかるから、やったらどうだ、こういう無責任なことであってはいけないのじゃないか、私はそう思う。これは農林省のためにもならない。もう一度御答弁を願います。
  95. 重政誠之

    ○重政国務大臣 ちょっとお話が混乱をしておるのじゃないかと思ったのですが、今の調査会をつくって答申が出ておるのをやらぬではないかとおっしゃるのは、これは森林関係の基本法の制定の問題じゃないかと思うのです。そうでしょう。これは、念のために申し上げれば、先ほど来申しました農業基本法による構造改善とは、関連はありますが、林野の基本法ができないから農業構造改善事業ができないということは、これはちょっと私はそうは思わないのですが。  そこで、森林についての基本法がもう二年もたってまだできないではないか、怠慢ではないかというおしかりをこうむったわけでありますが、実はそれほどこれはむずかしい問題なんです。これは川俣さん、よく御存じの上で言っておられると思うのでありますが、御承知通りに、これは約一千町歩余りの民有林のうちで、相当多くの部分というのは、ほんの十町歩以下の零細な森林の経営になっておる。多くは農家がこれを持っておるというような実情になっておりますので、この森林基本法というものを大っぴらに振り回していくのがいいかどうかということについて、専門家もいろいろ御意見があるようであります。それはそれといたしまして、実際それでは農業基本法で御答申を受けておるような事項について、たとえば基幹林道の問題でありますとか、そういうような重要な問題につきましては、これは基本法ができるとできぬにかかわらず、私どもは着々と予算化をいたし、その事業は推進をいたしておる次第であります。
  96. 川俣清音

    ○川俣委員 私はこの問題はこの程度にとどめたいが、もう一点だけお聞きしておきます。農林漁業基本問題調査会に諮問されたのは、総合的に農林漁業振興策を問われたのであって、耕作の農業はどうとか、あるいは漁業はどうとかという個別に諮問されたのではない。総合的に農林漁業を発展させるにはどうするかという意見を求めておるのです。それに対して、ただ部分的に、専門的に分科会を開いて、別々な答申にはなっておりますけれども、それが総合されたもの、その総合の上に立って農業構造改善事業というものは打ち立てられていったわけです。林業は別だ、畜産は別だ、こういうのじゃないのです。日本の領土なんです。日本の土地なんです。これをどうして高度利用をして、国民経済を発展さしていくかという観点に立って農業構造改善事業というものは進んでいるわけです。いや、こっちは林地だから侵してはならないのだ、これは牧野だからだめなんだ、こういうのじゃないのでしょう。総合的にどうして土地の利用度を高めて、経済的な価値を高めていくかということなんでしょう。従って、答申があってから二年半になるのです。あなたがいる間、そう長いとともないと思いますけれども、いる間に、一つこれぐらいのことは達成できなければ、長い間農林省におられた責任は、私は達成できないと思うのです。まあその程度にして、次に進みます。  大臣は、消費者米価を上げたときに、これからうまい米を食わせるのだ、今まではまずい米であって、今度はうまい米を食わせるのだ、こういうことを言っておられたのですね。じゃ、構造改善を進めていく上に、うまい米というものは必要なのかどうかということを聞きたいので聞くのですよ。離れているわけではない。一体、農林大臣は、うまい米というものが農林省の規定の中にあるのかないのか、うまい米というのと上級米というものとが同じなのか違うのか、どうお考えになっていますか。この点お聞きします。
  97. 重政誠之

    ○重政国務大臣 食味は、個人的なと申しますか、それぞれ人によっても違うし、それからまた料理の仕方によっても違うし、たとえばすし米に使う、すし米に適当の米が、普通にたいてうまいとも限らない。これはそれぞれ個人的な差異というものが非常にありますから、なかなかむずかしい問題であります。でありますが、上等の米とうまい米というのは、むろん一致はしておりません。一致はしておりませんが、上等の米は、常識的に言えばいわゆるうまい米、こういうことになると思うのです。
  98. 川俣清音

    ○川俣委員 農林大臣、農林省の行政の中に、うまい米というのと上質米というのと違う取り扱い方をしているのか、これに対する規定があるかどうかとお聞きしたのです。
  99. 重政誠之

    ○重政国務大臣 農林省の法規の中にそういうものはおそらくないだろうと思うのです。でありますが、産米の奨励の上におきましては、やはり個人的な差異はありますけれども、良質の米を奨励するというので農事試験場が今日までいろいろやっております。
  100. 川俣清音

    ○川俣委員 農林大臣、「時の法令」という、官報に準ずるようなものがありますが、これにあなたの部下で米のエキスパートである松元君が、うまい米と上質米とは同じなんだ、上質米はうまい米になるのだ、こういう説明をしておられます。ところが、一方、あなたの指導のもとにあるところの農業改良普及員並びに試験場等は、今日本調査の対象になる品種は三百種類くらいありますか、その中で奨励されているではないですか。奨励品種がある。どういうものを奨励しているかというと、米の非常に不足なときには多収穫のものを奨励し、最近では、むしろうまいもの、質もよく食味もあるものを奨励しておられる。施策にしてこれに予算をつけておるのですよ。予算処置をとっておられるのですよ。そうすると、一方には農産物検査法がありまして、これは上等米でないのです。上質米ではないのですよ。御承知通り、この検査は質をはかっておるのではないのです。整粒歩合だとか混合率、ほかのもの、雑物が入っていないとか、乾燥度合いであるとか、水分であるとか、つやであるとか、そういうものを基準にして、一等米、二等米というものをつくっておるのです。内容の質の問題ではないのです。内容の質の問題を取り扱っておりますのは、試験場並びに農業改良普及員をしてやらしておるのです。所管が違うと、そういう良質なものがないんだ。上等米、上級米はうまい米だというようなことは食糧庁が言うのです。試験場へ行って聞いてごらんなさい、それは違うと言う。それをもっと正確に言いましょうか。作物統計に、ここにあるでしょう。たとえば、東北でハツニシキという秋田の米などは、これは品質が上で食味は良です。それから、あなたの方の岡山の方から言いますると、岡山でつくっている旭というのがございます。これは、品質は上の下、食味はやや良です。従って、これは作付面積はだんだん減少をしてきている、こう言うことができる。今度は埼玉の例をとってみますと、農林二十五号が一番多いようですけれども、これは、品質は中の上、食味は良なんです、ですから、質と食味というものは、試験場から見た判定、すし屋とかなんとかでなくて、みずからあなた方の試験場で判断してつけておるのです。ただ食糧庁はこれを知らないだけなんです。だからあなたも知らない。あなたは食糧庁の大臣じゃありませんよ。試験場をも所管している。改良普及員も所管しておられる。が、しかし、ただ問題になって参りまするのは、収量を目的として、多収を目的として米作を奨励していくのか、質を重んじて奨励をしていくのか。質を重んじていけば、これは量は減ります。この試験成績から見ても、収量は減るのです。比較的良質なもの、食味の高いものということになりますると、病虫害に弱いという結果が出てくる。あなたの告示の中で、これは上等だといって価格をつけているのがあるでしょう。大臣の名前で、これは特別の値段で買うのだ、いいものだ、うまいものだということで値段を別に上げているでしょう。告示しているでしょう。それは酒米じゃないですか。酒米は良質米で普通の食糧よりももっと程度の高いものでなければならないといって、価格をわざわざ上げている。一石当たり二千三百円くらい高く買っている。そうでしょう。あなた告示しているでしょう。こういういいものもあるのだということをあなたは告示しているのですよ。それは、すし米にして食おうと、精白度が同じであれば、酒米はうまいにきまっています。うまくないようなものでありますならば酒米には不適だ。だから、うまい米はあるのですよ。全国みんな酒米だけつくったということになるとどうなるかというと、日本の今の生産額八千万石あるいは九千万石ある収量は、おそらく五千万石台に減るであろう。一体どっちをとられるか。いや、米などはもうつくってもらわぬでもいい、あるいは、輸入食糧にたよるのだ、こういうことになれば別でありますけれども、おそらく構造改善事業の中にも米作の一部はなければならぬという考えでしょうから、どちらを一体やらせるつもりか、そういうことに方針がないじゃないですか。ただ、消費者の方へいけば、うまい米を食わせるのだからこれをどうだ、こう言うだけですよ。うまい米を食わせるのだといって消費者に説明するからには、私の方でうまい米をつくるのだという計画を立てなければならぬはずだと思う。そうじゃないですか。それで採算がとれない場合にはどうするかという手が次に打たれなければならぬと思う。私はそう思うが、大臣はどうですか。
  101. 重政誠之

    ○重政国務大臣 いろいろお話しになりましたが、試験場で、食味がどうとか、質の点はむろんわかりますが、そういうことを言っても、一々試験場の言うことがその通りであるというわけにも私はいかないのじゃないかと思うのです。そういう食味の問題は個人差が非常にございますから。ただ、しかし、一般的に十人のうちで六、七、八人もそれがいいのだと言えば、それはいいのだということにおそらくなっておるのだと思うのであります。それで、私が申しますのは、食味は個人差がいろいろございますから、はっきりとこれがうまい米だといって、ことに、政府としてこれを推奨するといいますか、これがそうなんだというようなことは、よほど慎重を要さなければいかぬと思うのです。しかし、常識的に言えば、やはり質のいい米は大体うまいとせられておる、こういうふうに常識的に私は考えておるのです。  それから、いい米をつくれば収量が少なくなるというお話で、酒米の例もございましたが、現在の食管制度では、御承知通りに、酒米に持っていく雄町も、今のお話の旭も、これは値段は同じことなんです。ただその間の等級の差の買い値の違いはございますが、政府の買い上げる値段は同じことでございます。でありますけれども、方向といたしましては、やはり、消費者の御要求は、うまい米でいい米、少々金は高くかかっても、いい米がいいというような機運が相当にある。これは、国民の所得が非常にふえて、そういうことになっていっておるのだろうと私は思うのです。そこで、だんだんに米も往年の産米改良増殖といったような方向に今後は向かっていくのではないか、こういうふうに考えておるのであります。決定的にそっちへ向かっていくようにするためには、やはりそういういい米は、銘柄によって買い値の差異をつけるところまでいかなければ、収量は少ないのでありますから、なかなかそうはいかないと思うのでありますが、それは今後の食管制度の問題として十分に検討すべき問題である、こういうふうに考えております。
  102. 川俣清音

    ○川俣委員 そういうことを言って消費者をだますおそれがあるわけです。今食糧庁の説明によりますると、特選米は精白度が高く、ぬか切れ、胚芽の残存度が低く、粒ぞろい等の形質のいいもの、形のいいもの、——形のいいものというのは選別のいいもの、選別機に二回も三回もかけてたくさんのくず米を出し、選別したものは等級が上だ、こういうことなんです。できた収量からいいのと悪いのと分けたものが良質米だ、こういう説明になる。従って、いわゆる食ぜんに供する米というものは、収量の割合からいうと少なくなってくる、こういうわけなんです。流通性の伴う、飼料でなくて人間の食ぜんに供せられるものは、数量が減ってくる、こういう結果になる。そうなんでしょう。食糧庁の説明はそうなんです。だから、早く言えば、うまいものを食わせるのだということで、これはただ値上げの材料に使っただけなんです。値上げの材料に使った。もっと説明しましょうか。これは一等米、二等米を充てると、こう言うのでしょう。従来も一等米、二等米はあったのですよ。今までは一等米から四等米までを平均して価格をきめておった。今度は、普通米は三等米、四等米だと、こう言うのです。一等米、二等米は特選米だ。値上げのやり方、ごまかし方と言いましょうか、それだけじゃないですか。内容的にはない。むしろ、普通米というものは、今までいい米も入っておったのを、今度は、いい米はやめだぞ、悪い米で普通米を出して、価格は少し上げたんだ。内容的にはこういうことなんでしょう。わからないようですからもう少し詳しく言いましょう。一体、普通米は農林省や政府は一二%より上げないと言っているが、これはうそですよ。もしこれがうそだということだったら告示を取り消しなさい。一二%以上上げているですから。たとえば、甲地域、今まで八百七十円が、十二月一日から九百七十五円でしょう。これは一二%〇七の上げ方です。まあ〇七だから一二%だと言ってもいいでしょう。乙地域は、八百五十円から九百五十五円に上げたんですから、一二%三五です。それから乙ダッシュ地域は一二%五、丙地域は一二%六五、丙ダッシュが一二%八、特定地域は一二%九六です。これは平均いたしましても一二%三七くらいになるのじゃないでしょうか。三七くらいだから四捨五入だと言うけれども、農林省は四捨五入されてもいいでしょうけれども、消費者から言えば一銭でも安いことがよろしいのです。ほんとうに消費生活を考えるならば、四捨五入は逆にこれは捨ててもらいたい。だから、九百五十五円じゃなくて、一二%でよければもう少し下げることができるわけだ。さらに、特選米に至りましては、一四%だというけれども、これもみんなうそですよ。特選米の値上がりを見ますと、甲地域では一九%、乙地域で一九・四一、丙地域では一九・八八です。特定地域では二〇%三七です。平均して農林省は一四%の値上げと言っておりますが、私どもの計算によりますと、一五・八七になります。これはお認めになりますか。値上げのために少しごまかしましたが、どうぞよろしくと、こういうわけですか。
  103. 重政誠之

    ○重政国務大臣 ちょっと、計数のことでありますから、どういう御計算をなさっておられるか、一つあとでまた資料をいただきまして十分に検討いたしますが、決してそういうことになっておりません。特選米を入れましても、私の方の計算では一三%半前後、それよりちょっと多いくらいの計算になっております。  それから、普通米が一二%をこえておるではないかというお話でありますが、これは、先ほどもお述べになりましたように、端数の整理を事務の方でいたしましたので、若干一二%より出ておることは事実であります。
  104. 川俣清音

    ○川俣委員 普通米で端数が出て、特選米でも端数が出て、端数を削ってそれで計算して一四%にならない、こういうことかもしれません。  しかし、大臣、それでは、あなたも納得がいくように、もう少し詳しく話をしましよう。今地方から送られてくる米は、一等米ないし二等米です。三等米、四等米は送らせないで、一等米、二等米、特選米用のものだけを輸送させておるのです。倉庫を見てごらんなさい。輸送実績を見てごらんなさい。きのう、おととい、土曜日の実績を見ましても、一等米、二等米が多いのです。ほとんど特選米です。ところが、このあなたの算定の基礎は、普通米に対して二割くらいより特選米がないという算定なんです。ところが、現在は特選米が相当出回っておるわけです。倉庫から見ますると、二割どころじゃない、四割出回っておる。行き先がどこかわかりませんよ。出荷を見ますると、普通米に対して四割出回っておるわけです。計算をするときには二割より見なかったけれども、四割出るということになりまするならば、上がるでしょう。計算が上がっていかなければならぬ。特選米は二割だ、その算定の結果は一三・幾らだ、こう言うのでしょう。二割より出ないという計算なんです。出ていた計算じゃないです。それじゃごまかしじゃないですか。現に出ているのに出ていないんだ、食わしているのに食わしていないんだ、上げる方からいけば、うまいものを食わすには豊富に食わしておると説明する、値上がりの分は食わしていないんだ、こういう説明になる。これはごまかしじゃないですか。
  105. 重政誠之

    ○重政国務大臣 私は、今一、二等米の輸送が非常に多いかどうかということは承知いたしません。しかし、川俣さんはもう専門家でよくおわかりになっておる通りに、一、二等米というものが四割も出た年が一体ありますか。そんなことはないはずなんです。大体、一、二等米というものは、二割から、幾らよくても二割を少々上回るかというのが私は普通だと思う。そうしてまた、普通米をもらいたいというところには普通米を差し上げておるはずなんです。ただ、こういうことは、今のお話を聞いて私は今思い出したのでありますが、東京とか大阪とかいうような大都市が特選米をたくさんに御要求になるということは想像しておるのです。従って、あるいは一、二等米が足らなくなって、——足らなくなったら断わればいいのですが、しかし、ある限りは一つ差し上げようというので、あるいは輸送を東京なり大阪なりにさしておるのではないかと思うのですが、総量としてはもうきまったものでありますから、そう四割もあるようなことで今の御計算になって一五%幾らというようなのは、私はどうも少し御計算が独善に過ぎるのではないかと思うのです。
  106. 川俣清音

    ○川俣委員 確かにその通りです。私は、これはえさを引いてみたのです。問題はそこからなんです。確かに、今食糧庁が卸に出しておるような状態は、四割を回っておるのですが、これはあなたの言われる通り長くは続かないのですよ。一等米、二等米が、三等米、四等米と比較してみて四割もないのですから、今一時的なことで、うまい米というのは、三月か四月か、せいぜい五月までで、あとは普通米ということになるのです。特選米はなくなるのですよ。ところが、一般の消費者は知らないのです。うまい米を食わせるんだからいつまでも食わしてくれるだろうという期待を持っておるでしょう。まあ七月か八月になったら特選米がなくなるなんということはだれも思っていないんですよ。思っていないとして計算すれば、一六%くらいの値上げになります。食わせなければ値上げにならない。事実その通りです。しかし、そのときには、特選米というものをつくったけれども、もう行き詰まってしまってお手上げだ。普通米だけだ。普通米は、前は一等から四等のものを配給しておったのを、今度は格安な三等、四等に限って値上げをしたということになる。そうすると一二%をこえることになるのです。原価の安いものを平均並みに買ったとして一二%の値上げなんですよ。三等、四等を買ったことにしての一二%じゃない。一等から四等の平均価格に対して一二%の値上げなんです。そうでしょう。そうすると、今度は、安い米といいますか、普通米は質を下げて値上げをした、こういう結果になる。結局は、財政上値上げをするためにだましたというそしりは、夏ごろになったら出てくるであろうと思います。これはほんとうは地方選挙前に出てくれば非常におもしろいのですけれどもね。計算すると、どうも五月までは持ちそうです。もう六月、七月になったらお手上げになる。あなたの計算でいけばそうなる。一等米、二等米はそんなにないのですから。そういうことになると思う。そうすれば、今度は米屋に一等米、二等米を三等米、四等米からつくらせなければならない。歩減りを高めて、選別を高めて、一俵来たやつから何割かをロスに落として、そうして一等米に仕上げる、あるいは二等米に仕上げるという工作が行なわれてくるだろう。そうなったら、もう統制がつかなくなるでしょう。卸をしたのは確かに三等米、四等米だけれども、選別して一等米、二等米をつくるというやり方をする。そうすると、小売業者からおそらく手数料の値上げの問題も起こってくるでしょうし、あるいは統制というものはそこから破綻してくるという結果になる。憂慮すべき事態だと思うのですが、農林大臣は安閑としておられますかどうか、この点をお答え願いたい。
  107. 重政誠之

    ○重政国務大臣 これはもう当初から申しております通り、普通米の配給を請求せられた場合には幾らでも差し上げます、特選米は数量に限りがあるのでありますから、これはないときには断わります、こういうことを言うてあるのでありますから、必ずしも川俣さんの御心配のようなことは私は心配をいたしておらないわけでありまして、それがなくなったから、今度は三等米、四等米をきれいに選別をして特選米にするということは許されないことでありますから、これはそれほど私は心配はしておらない。ないものはないのでありますから。
  108. 川俣清音

    ○川俣委員 ないものはないと言うけれども、では、農民から買っている精白米はどうなんですか。一等米、二等米よりないのですよ。農民がつくっているのは、玄米で出せば、一等から四等、等外までつきますけれども、精白にして出すと、一等米、二等米よりほかはないのです。規格がそれよりないのですよ。四等米からでも五等米からでも、精白度が高く、整粒歩合がよければ一等米になるのですよ。従って、小売の場合におきましてもそういうことが起こるであろうということを示したのですが、よくおわかりにならないようですから、帰って一つ御勉強になれば御理解いけると思います。  そこで、もう一つあるのですよ。これは、大臣、うかつな政策をやっているととんだことになるという一つの例なんです。去年の暮れ、もち米が不足をいたしまして、農林省は相当あわてたじゃないですか。あわてたことは事実でしよう。  総理大臣に聞きますけれども、米価をきめたのは七月十六日です。告示も七月十六日にしている。もち米がどうも集まりそうにないというので、十月の七日に、収穫が終わってから、もち米価格を、さらにかつてのもち米と同じように一俵四百五十円値上げをしたのです。そうして集荷対策をやった。もうすでに植え付けられて収穫が終わってから値上げをした。それまではあわてて集めましたけれども、うまく集まりませんので、外もちを入れた。ところが、外もちを入れましても、日本の嗜好に合いませんし、もちになりませんものですから、約三万トンばかりを加工用に回してしまった。これは、加工用に回したために、内地米のもちの需要が加工用に行くのは幾らか防がれて、幾らか需給がうまくいったとも見られない節はないわけではありませんけれども、相当あわてたわけです。もう来年になりますと、ことしのもち米を食っておりますから、来年の年度持ち越しのもち米が不足になるわけです。最近は、食生活が変わって参りまして、若い層にはもちの消費量が減ったと、こうも見ておるようでございますが、これは、学者や農林省の役人あたりが、もち米なんというものはこれから消費需要が減るんだ、こういうことで、もち米はつくるなという宣伝をしたものなんです。学者なども、余ったときの姿だけを見まして、米価審議会などでも、有名な学者はみんなもち米なんか要らないんだと言っておる。自分たちの言ったことがどんなたたりになって現われてくるかということを意識しない。これは学者の無責任なところなんです。自分がつくらぬものだから、自分と同じような考えで、いや食わないんだと、自分判断でやっておる。そのためにこんな窮屈をしたじゃないですか。やはり、日本の正月ですから、もち米が要らないんだという考え方では、これは政治にならないと思う。量が減ってくることはやむを得ないです。嗜好も変わってくるから減ることもあるでしょう。しかし、最低のものは確保しなければならないと思うのですよ。計画が悪いとこういう失敗が来る。これはもち米ですからいいですけれども、もしも食糧全体にこういう不安を与えたのだったら大へんです。農林大臣、東京のもちのやみ米は幾らだと思いますか。暮れは一升二百円です。いなかでも百七十円、百八十円。不足な事態がこういうやみ米を発生しているのですよ。経企庁官、どうですか、お調べになっておると思うが。
  109. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 うかつでよく存じませんで、調べておきます。
  110. 川俣清音

    ○川俣委員 やみ米の担当は経済企画庁なんです。これは総理府がやっておる。総理府が物価調査をやっておる。農林省もやっておるが、資料は総理府から借りておる。  そこで、もち米はやみはなくなったんだという観念をみなに植え付けているが、もち米は、二百円、農村でも百八十円、百六十円、長野で大体百八十円ですよ。東京の近県だけに非常に値上がりしておるのです。こういう事態は物価を上昇させる刺激になる。おそろしいことだと私は思うのです。もち米にはやみ値はないと思ったが、やみが出てきている。こういう風潮が物価を上げる原因になるのではないかと私はおそれるのですが、総理大臣はあまりおそれませんかどうか。
  111. 池田勇人

    池田国務大臣 従来一般米ともち米との値段の格差がありまして、昨年の暮れはお話のような事態があったかもわかりません。一昨年の暮れ、その前には、またもち米が余るというふうなことがございまして、いろいろ、政府の方としても、もち米についてはどうしようか、こういうことでやっておった。やはりこういう需給の関係なんかは、なかなか前もって確定できないので、今後はそういうことのないように十分注意しなければならぬと思います。
  112. 川俣清音

    ○川俣委員 それでは次に移ります。  大蔵大臣にお聞きしたいのですが、いわゆる旧地主補償と言われておる調査費に一億八千九百万円を出しておる。この積算の基礎を一つ。この調査費の積算の基礎、何に使うためにこれだけの金額になったか。大蔵省は、今まで、各省から出てくる要求に対して、積算の基礎についてずいぶんやかましいのですね。単価を初めといたしまして、積算の基礎を洗って、できるだけ予算の膨張を押えろというやり方を大蔵省はとっておる。私は、必ずしもそれは否定しません、悪いとは言いません。しかし、これだけは別だということはないと思う、予算を取り扱っている上で。一億八千九百万円の調査費の積算の内容、査定されました内容です。
  113. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  各省からの要求に対して大蔵省が対案をつくる過程において、こまかい積算の基礎を明らかにして対案をつくっておることは事実でございます。また、当然そうあるべきだと思います。農地の被買収者調査の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、実態の調査を十分しなければならないということで、一昨年、昨年と、長い間党と政府の間で問題にし、意見を詰めてきたものでございます。党側でも相当大きな数字を持っておったようでございますが、最終段階におきまして、閣議決定の前に、大蔵大臣として、私がただいまの予算に計上してございますような数字を認めたわけでございます。
  114. 川俣清音

    ○川俣委員 何の必要で……。必要であれば出されることは決して異議ないですよ。必要なものに対して支出なさるのは当然な大蔵大臣の任務なんです。何かわからないということで支出されることはないでしょう。これは越権ですよ。理由がわからないで出してくるというのは、会計法上からも越権ですよ。閣議決定であろうと何であろうと、わからないで金を出すということは越権ですよ。何か内容がなければならぬ。一億八千九百万、約二億ですからね。何々を調査しなければならないために必要な経費、何をやるための経費だ、何か根拠がなければならぬはずだと思うのです。積算の基礎がなければならぬ。これを一つ明らかにして下さい。
  115. 田中角榮

    田中国務大臣 農地被買収者のその後の経済的な状態、それから国民世論の調査、それから実態等の問題に対しての調査を行なうために必要と認めたわけであります。
  116. 川俣清音

    ○川俣委員 何のために調査をするのですか。旧地主が、被買収者が非常に困っておるであろうから、因り工合を調査するとか、何か目的がなければならない。その目的に向かって、それを達成するために支出される、これは会計の原則ですから、これもあるだろう、あれもあるだろうからということではないだろう。何と何りために、何には大体幾ら、何には大体幾ら、こういうことだろうと思うのです。私は、大蔵省を善意に解釈して、そうでたらめをやっているのだと思わないだけ信用しておりまするからお聞きするのですよ。信用しないなら聞かないです。そうでたらめじゃないと思うのです。理由があると思うのです。何に幾ら使うのか、この明細を明らかにして下さい。
  117. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどからお答えを申し上げておりますように、農地被買収者問題につきましては、総理が本会議を通じて明らかにいたしましたように、報償に対して何らかの措置を必要とするという考え方に立っておりますが、しかし、これが何らかの処置を具体的に取り上げる前に、前提条件として、当然農地被買収者の実態を調査したり、また、世論でもいろいろな世論がありますから、これらの世論を調査しなければならないということは、これは慎重を期する意味で当然だと考えます。特にこの問題に対しては、御承知通り、工藤調査会という法律に基づく調査会がありまして、この答申にも、戦後十六、七年間たっておる現在で農地被買収者の実態を見る場合、生業資金に困っている者とか、育英資金に困っている者とか、いろいろな事実が答申をせられておりますので、政府としては、これらの実態をきわめるためにも、誠意を持って、また綿密な調査を行なわなければならないことは当然と考えて、調査費の計上を行なったわけであります。
  118. 川俣清音

    ○川俣委員 そうすると、何らかの処置をするために必要な調査費。しかし、その中に使用区分がなければならないでしょう。使途区分がなければならないでしょう。何らかに使うのだからという、そういう支出の仕方がありますか。たとえば、国会で何らかの調査に使うのだからという予算要求をしたときに、あなた応じますか。いかに国会といえども、何らかの調査費に使うのだからでは、目的がはっきりしなければ出さぬと私は思うのですよ。もしそれが例になるとすれば、国会から、何らかの目的達成のために金を出してくれ、こういう要求が出たら、どうしますか。これは、総理大臣といえども、大蔵大臣に何らかのために出してくれという指示権はないと思う。財政法の根拠のないものに対して出せという指示権はないと思う。  そうすると、大蔵大臣が御存じないのだとすれば、指示を与えられた総理大臣にお聞きしたい。何らかの報償、何らかのということで、何だかわからない。こういうことをしたいのだが、それを実施するために、確実にするために必要な経費というなら、それならわかりますよ。何らかなんだ。何らかの報償をするのだでは、何をやるかわからない。何らかの報償というようなことは、これはおかしいじゃないか。これは政治的な苦慮はわかりますよ。政治的な苦慮と会計区分とは見わけをつけなければならぬ。はっきりしなければならない。
  119. 池田勇人

    池田国務大臣 何らかの措置をするから金を出せ、こういうのじゃない。何らかの措置を講ずる必要があるので、そのことをきめるために具体的調査をしたい、こういうことで予算が組まれたのであります。具体的調査というのは何かというと、やはり買収せられた当時の事情、いろいろな事情があると思います。たとえば、昔からずっとおったのが小作に付しておったとか、不在地主とか、あるいは戦争から戻ってまだ取り返す余裕がなかった、いろいろな事情がございます。そしてまた、そういう事情から起こってきて、この前の工藤調査会の答申にありましたように、被買収者で非常にお困りの方がある。どういう点で因っておられるか、あるいは困っておられない人もあるでしょう。そういうこと、あるいはこの問題に対しての世論の調査、これは新聞社その他に頼んでやるのもありましょうし、また、ほかの方法でやるのもありましょう。いろいろな点の具体的事情、そして、その過去の経過等を十分研究した上で何らかの措置をとる必要がある、こういうので具体的調査費用を要求され計上したのでございます。何らかの費用というので取ったわけではございません。
  120. 川俣清音

    ○川俣委員 調査目標がはっきりしなければ費用の支出の方法がないじゃないですか。あれもやる、これもやる、こういうことですけれども、これにはこれだけの経費がかかるということでなければならぬ。たとえば被買収者で非常に生活困窮をしておる者があるとすれば、それはほんとうは厚生省の所管なんだね。厚生省は常にそういうものを調査しなければならないであろうし、それらの責任は厚生省が持っておるわけだ。なぜそういう対象にしなかったのかということも厚生省は考えなければならぬ。厚生大臣、その点はお調べになっておらないですか。
  121. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、農地被買収者問題をめぐる経済的・社会的諸条件、及び農地被買収者の実情等について調査を行なったり、また、委託をしたりということでありまして、一億八千九百万円の内訳としては、調査を委託するために必要な経費として一億八千四百万円、それから調査事項等について説明及び指導等を行なうためのブロック会議出席及び指導旅費二百八十四万三千円、それから報告書作成等に要する印刷・製本等の経費二百十五万七千円というような内訳でありまして、  しかも、ただいま厚生省がということでありましたが、先ほど申した通り、本問題は総理府所管であります。法律に基づく工藤調査会に諮問をいたしておりますし、この諮問に基づく答申が出ておりまして、この答申にこたえる政府態度でもありますので、総理府所管に計上したわけであります。
  122. 川俣清音

    ○川俣委員 それでは、調査会の意向あるいは自民党の綱島調査会の意向等を見ますると、補償を前提にして要求をするのだ、こう言われております。従って、補償を前提とした法律案まで用意されております。いや、補償ではないのだという閣議決定だそうですが、あるいは自民党の総会におきましても、補償じゃなくて報償だ。これは総理大臣に聞きたいのですが、報償であろうと補償であろうと、確かにニュアンスは違います。しかし、何のために報償しなければならぬのか、何のために補償しなければならぬのか。これは終戦処理と申しますか、戦後処理としての問題でしょうか、別な角度から報償なり補償なりされるという考えなのか、戦時処理として、終戦処理として処理しなければならぬのか、これを先に聞きたい。その場合に、一体補償と報償とはどう違うのかということもあわせてお聞きしなければなりませんけれども、まず前提だけ一つ、これは戦後処理なんですか。戦後処理として残された問題としての取り上げ方なのか、そういう角度で調査をするのと、報償を目当てにしての調査というものとは、これは指示の仕方が違ってくる、調査の内容も変わってくる、こう思うのですが……。
  123. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えをいたします。たびたび申し上げておりますように、この調査費は補償を前提といたしておりません。報償について何らかの処置を必要とするので、その前提となる基礎調査その他、こういうふうに明らかにいたしておるわけであります。本問題は、御承知通り与党である自民党との間に長いこと懸案事項として検討、討議をせられた問題でありますが、ただ戦後処理の案件として何らかの報償というふうに政府が踏み切っておるわけではないのであります。慎重を期するために工藤調査会の答申も求めておりますし、なお、前国会に国民金融公庫法の一部改正法律案を政府提案として提案をいたしておりまして、これが子弟に対して育英その他、また企業の問題等に対しても貸付制度を行なうというような一連の問題として考慮をいたしておるわけであります。なぜそのようなことが問題かというと、農地に対して最高裁の判例のあるものに対して補償をするというような考え方では全然なく、この問題を長い期間調査を進めて参りました過程においていろいろな事象が発見をせられております。戦後占領軍メモによって行なわれた第一次、第二次農地解放の実態を見るときに、大きな地主であるというゆえだけをもって土地を解放せしめられたというような問題だけではなく、応召しておった当時の軍人等非常に零細な地主というものが、応召というような事実によって不在地主的な処分を受けたり、また農村の子弟が教育者という立場で隣接町村に勤務をしておるというゆえをもって不在地主としての処分を受けたというような問題、またどうせ第三次農地解放まで行なわれるというような当時の占領軍方面からの風評等によっていろいろな問題等がありましたために、住宅やそういうものまで農業用施設として解放をせられたというような例があります。そういう問題に対して、社会的にまた経済的にどういうような状態であるべきかということを政府としても当然調査をしなければならないというふうな立場でやっておるわけであります。なおその後、この農地解放の問題については、御承知通り自作農創設ということを前提として行なわれたわけでありますが、政府が当時買い上げたものに対して、現在までまだ農地にこれを売り払っておらないものもありますし、その後の地価の高騰その他によって、これは昭和二十九年だと思いますが、御承知の第一次農地解放においては、自作農創設という前提がありましたので、その他の用に転用することを禁じておったのであります。しかし、昭和二十九年、時勢の変転によって、これを自由に第三者に売り渡すこともできるような状態になったわけであります。また、政府が手持ちをしておる国有財産の中で、これらの措置に該当する物件もありますので、こういう問題等をあわせて検討するときに、いろいろな議論が国民の間に現われてくることは、これはやむを得ざることでありますので、政府としても、これほど大きな問題に対して拱手傍観的な立場をとることはできませんので、これが実態を明らかにしなければならないという立場で、与党との調整も終わって、今次工藤調査会の答申を前提にしながら調査費の計上に踏み切ったわけでありまして、その間の事情は御了解願えると思います。
  124. 川俣清音

    ○川俣委員 これだけ世論になってきたということですが、確かに世論になった。一反歩五十円ずつ集めまして五、六億の金が集まっておるわけです。これが運動費に使われるのであるから、いつでも総会になると、その費用の問題が出ておる。どこへ運動費に使ったんだ、何に使ったんだといつも問題になっておる。この前第一会館で大騒ぎを演じたではないか。着服だ、いや着服ではない、自民党のどの派にやったんだ、あの派にやったんだ、もっとまんべんなくやらなければならぬじゃないかと、第一会館でけんかして大騒ぎになったではないですか。運動費が使われて、それが世論になった。こういう見方をするととは……(「汚職だ」と呼ぶ者あり)私は、汚職かどうか、そんなことを今追及するのではない。ただ、世論というものがそういう運動によって起こされたものであって、やむを得ないのだ、これは民主的だ、こういうならば、それも一つ見解でありましょう。  そこで問題は、一体今の地主の感覚の中に、被買収者と言いますけれども、問題はどこにあるかというと、今日の旧地主の困窮にはもう一つ別の問題がある。これは新憲法に基づいての相続権の配分なんです。財産相続について配分しなければならない。これから起こった貧窮度というものが非常に大きいのです。もちろんそれも調査の対象にするのだと言われるかもしれませんが、配分したために困窮になったのだ、これは相続法からくるものなんです。しかし、相続法の被害というか、あるいは戦争中に向こうに行っておって手続ができなかったのだとか、隣村におったのだというようなことでありまするならば、当時の方針は、臨時に隣の村に勤めておった者は救済手段が講じられておった。これは裁判を提起したものはもとにもどっておるはずです。やらないものは権利の上に眠っておったものとして、そういう処理を一般的には受けておる。また、かつての戦争中の債券なども時効になっておるのもたくさんあります。これも戦争に行ったために救済しなければならないとなったら、そういう時効もさかのぼって救済しなければならない問題も起きてくるだろうと思います。どれから手をつけたらいいか、どこへ収拾しなければならないかということになりますと、一億八千九百万円くらいの予算ではとうてい足りないと思う。これはどぶに落ちたようなものです。一ぺん出したらずるずると大蔵省が金を出さなければならないような運命に陥るものだ、おそろしいことだと私は思う。しかし、救済しなければならないということについては、私はあえて反対ではない。それは社会保障を拡充して、社会政策として、かつて地主だったから、かつてどろぼうだったからといって救済しないということはないと思う。それは社会保障的に当然補償してやるべきだ、生活援護としてはやるべきだと思う。生活援護です。それなのに、旧地主であったからということで、財産相続、分配相続したものまでが農地制度の欠陥だと言う。これは農地制度の欠陥ではない。相続法の問題なんです。また税務署もそうなんですよ、あなたの所管の税務署もそうです。分配すると相続税の対象から除くけれども、一括して受けるというと、相続税の課税対象になる。そういうところから、分割するというと、個人の権利が発生してきて、なかなかその当主に戻ってこない。そのために分家とかあるいは二男、三男は割合にいいけれども、長男が困ったという事態が起きてくる。それは農地法の問題ではないのです。農地解放の問題ではないのです。  もう一つは、あんなに安く売ったというけれども、その当時の貨幣価値がそうだったのです。貨幣価値の変動まで責任を負わなければならぬということになったら大へんですよ。補償しなければならぬということになったら大へんなことです。私は秋田県で調べてみたのですが、横手、大曲、湯沢の三税務署の中で、解放された被買収者の十一人が、親からもらった財産を失ってはいけないということで、その金をもとにして山を買っておる人がある。農地にかわるに山林地を買っておる人が十一人おります。その事情までは調べられませんが、とにかく当時山を買った人を調べてみると十一人、その人は、農地は失ったけれども、山林の価格が高くなってきておりまして、失った以上の評価になっておるのです。そうすると、これはもうけたということになるのです。ただ、これからこっちに変わっただけです。そのものをもとにして土地を買ったんなら、そいつも没収するということができるかというと、できないでしょう。経済的に活動のよかった人はそういうこともやっておる。少なくともその金で、他にあるいは宅地を買った人もあるかもしれません。山林を買った人もある。株を買った人もあるでしょう。そういうような個々に調べられるわけはないですよ。現状が困っておるというのなら、これは社会政策的に社会保障の制度で、社会保障を拡充していったらいいでしょう。ほんとうは地主というのは気の毒なんです。生活に困っておっても、どこか家があったり、土地を幾らか持っておって、収入はなくても宅地なんかわずか持っておるものですから、生活援護の対象にならない。実際は生活援護をすべきであるけれども、名目上の宅地を持っておる、名目上の家屋を持っておる、修理もできないようなところを持っておるということで、生活保護の対象にならないという欠陥もありますよ。しかし、それは生活保護の取り扱い方に原因するので、農地補償の問題じゃないのです。そうしたずるずるとどこへ行くかもしれないやみを歩くような金は、健全財政を誇る田中さんとしては、やみを歩く田中さんじゃないはずだと思うので、ここでそういう報償であろうと、補償であろうと、行き先の知らない道に、迷路に迷うことがあってはならないと思うが、この点について調査をするのですか、調査なんてされるのですか、迷路に入る調査なんて……。
  125. 田中角榮

    田中国務大臣 御質問は二つでありますから、まず第一の問題から申し上げますと、農地被買収者の団体が何か資金等を集めておるようなことでありますが、政府はそのようなことには関知をいたしておりません。しかも、そういうことはもしありとすれば、よろしくないことであって、そういうものの圧力やその他によって党や政府が今次の調査費を計上したのではないということだけは明らかにいたしておきます。  それから第二の問題は、健全財政を誇るということでありましたが、私は誇ってはおりませんが、健全財政で貫いていかなければならないということはもう当然でありますし、国民の税金を預かっている財政の責任者としては、いやしくも厘毫の金でも無為に使ってはならないという基本的な考えは、あなたが今仰せられた通り、基本といたしております。先ほどの御議論は、何か補償もやらないやらないと言って、やることを前提にしておるんじゃないかという立場で論及せられましたが、総理が言われました通り、補償を前提にいたしておりません。しかもあなたが先ほど言われましたように、当時反三百円で受けた者でも、その後の利殖の道いかんによっては財をなしておる者もあるし、また当時物納した者に対してはという逆な面もあるわけでありますが、そういう実態こそ明らかにせられなければならないし、戦後十六、七年間、これらの問題はほとんど政治問題的になって、大きく世論となっておるわけでありますし、また、例年東京に全国から代表者が集まって来まして、相当な費用を使っておるというような事実を見るときに、こういう問題に対しては、やはり責任政治立場からも、あらゆる意味で、またあらゆる角度から検討、調査を行なって終止符を打つべきであります。私は、そういう意味でこれらの問題の実情を国民の前に明らかにし、国民各位のこの問題に対する賛否の動向を明らかにすることも、政治の上、行政の上では必要である。こういう考え方によって調査費を計上いたしたわけであります。
  126. 川俣清音

    ○川俣委員 農地改革によって一面犠牲になったということも、必ずしも言えないわけじゃない。その反面、農地改革によって基礎づけられて、戦後の工業の復興というものが自作農を購買力として肥料工業がいち早く復興いたしましたり、農具を製造するということの工業がいち早く復興いたしました。こういうことは自作農創設が大きな日本経済の発展の基礎をつくったものだと思うのです。戦後各工業界が行き先を誤っておった、農民を対象にする工業がいち早く復興いたしましたことは明らかであります。従って、もしもあの制度がなかった場合には、はたして池田さんが期待するような、日本の産業がこれほど成長したであろうか、成長していなければ田中さんも大蔵大臣にはなっていないであろうし、池田さんは総理大臣にもなれなかったと思います。これらの成長の上に築き上げられたのが今の内閣だ。私は、いい悪いは別にしてそう思う。そういう意味で、この内閣ができたのは農地改革のおかげである。そこで犠牲になった者がいるから助けなければならぬというわけじゃおそらくないと私は思う。そんなことじゃないと思う。  一体地主というものは、土地というものに値打があるのだという考え方なんです。大会に行ってみてごらんなさい。言う人の多くの方は、土地が一番値のあるものだ、土地自体に値があるという考え方が非常に強く印象づけられております。土地というものは、土地自体というものには価値がないのです。これに労働力を加えて、労働価値が加わって物が生産されて、あるいは工場として運営されていく土台になるものではありますけれども、土地そのものに価値があるのではないのです。今日の土地価格というものは、持っている人の努力によったり、勤勉によって生まれてきた土地価格じゃないのです。社会経済国民経済が生み出すところの価値であって、個々の持っている人の価値じゃないのです。それをさも自分が持っておれば今幾らであったであろう、売ってしまったから——当時だって売った人がたくさんある。売ったのはばかをみた、こう言う。そういう人もある。農地改革じゃなくて売った人がある。農地改革より幾らか高く売って、今考えてみるとばかみたと言う。これは個人感情としてはそうであろうけれども、これだけの成長をするとは考えなかった。旧地主でおりまするならば、日本経済というものにおそらくブレーキをかけたでしょう。封建的な考え方、因襲的な考え方を持っておる者が横溢しておったから、経済の成長に大きなブレーキをかけただろうと思う。それを突破して今日来たのであるから、そういう土地価格というものは、日本経済の成長の上から評価される価格であって、成長がとまればまた価格が下がるのですよ。今の値があるのではないのです。そうでしょう。それなのに、気の毒したというのは、土地の移動によって気の毒したのではないのです。そうすれば、旧地主の被買収者だけのためのものではないということなんだ。宅地だってそうです。戦争中強制的に立ちのきさせられた所もたくさんありますよ。これだって、金を払ったり払わなかったり、終戦の直前などは、軍などは払わないでそのままになった例がたくさんありましょう。それは別にしまして、公平であれなんていうのではなくて、土地そのものの価値というものは、日本経済が価値づけてくれているのであるからして、地主の特権ではないんだという考え方をしていかなければならぬだろう、それを誤らしめてはならないと思う。土地に価値があるんだということで誤らしめてはならない。もしもこれを誤らしめるならば、日本の今後の工業政策も成り立ちません。住宅政策も成り立たないでしょう。土地自体に価値があるんだなんて考えたならば、宅地政策というものは全くデッド・ロックになりましょう。鉱業権であろうと同様ですよ。採掘するところに価値があるのであって、土地に価値があるんだという判断をさせましたら、日本の鉱業政策なんて成り立たないでしょう。宅地政策だってそうです。これは気の毒だということと、将来の宅地政策、工業政策を誤らしめてはならないと思うのですよ。その障害の方が大きいと考えなくてはならない。田中さん、どうですか、大体わかっていただいたと思う。
  127. 田中角榮

    田中国務大臣 長年農民運動で鍛え上げられてきただけに非常にうんちくのある御発言をいただきまして、私も大いに勉強になったわけであります。やはりこの問題に対しては、そういう建設的な事実を明らかにする世論もあるのでありますから、そういうものも調査をしたい、こういうことであります。でありまするが、先ほどからも申し上げておりますように、補償を前提としておるのではありません。しかも最高裁の判例も前提といたしております。あなたのような御意見も十分拝聴しなければならないし、また先ほどあなたがいみじくも申された第一次、第二次の農地解放が、それだけの理由によったものでないにしても、世界の歴史を見て、あの混乱に際した日本が、少なくとも今日のようないんしんをきわめる基礎をつくった一因になったであろうということも認められておるわけでありますから、それが経済的に一体どのような稗益をしておるのかといった問題も、政治行政の上では当然考えたり調査をして一向差しつかえないことであるし、またそうすることが功績に報いるゆえんでもあると思うのです。一部また、二十九年法律を改正する当時、特に党で問題になったことを御披露申し上げますと、自作農維持創設資金をつくりますときに、これが他の目的に転用せられるような場合、縁故払い下げとか、買い戻し条件とか、そういうような法律的救済条件があれば、こんな問題は起こらなかったのであろうというような相当専門家の意見も披瀝をせられたのであります。私たちは、当時この問題に対してそう深い見識も持っておりませんでしたし、興味もまた持っておりませんでしたので、今にして思うと、いろいろな手段として尽くさなければならなかったこともあったろうと思うのです。そういう問題を、今日十七年間、十八年間、戦後日本が参った過程において、一体農地被買収者という問題がどういうふうに稗益し、またどういうふうな状態になっておるのだ、生活の変転はどうなっておるのだ、こういう問題をつまびらかにして国民の理解を求むるということも、これは政治上の一つの責任でありますので、政府がすなおな気持で、工藤調査会の答申を前提としながら調査費を計上したのであるということだけは、一つお認めになっていただいて、これがあなたが今言われたように、とんでもないところにいかないように、一つ大いに御協力を賜わりたい、ほんとうに心からそう思っております。
  128. 川俣清音

    ○川俣委員 いろいろ調査がありましょうが、昭和三十三年に農地行政白書というのを農林省が出しております。これによりますと、なぜ農地改革を行なわなければならないか、その犠牲と効果というものをかなり調査して詳しく出してあります。それから、当時救済手段がなかったと言いますけれども、これは農林省の記録に明らかでございますが、おそらく年に三千件、多いときは四千件、通じて一万七、八千件の救済の申請が出ておったと思う。それは農林大臣もみな処理しておるわけです。そのうちで三割ですか、ちょっと記憶がはっきりしませんが、たしか三割程度は救済されておると思う。すなわち、救済されない人もあるし、権利を主張して救済された人もある。ただ救済されない人の例が、ときどき被買収者が集まったときに、おれはこうであったということを言いまするけれども、同一の村の中で救済されている人もあるわけです。救済された人は権利を主張した。権利の上に眠った人もある。眠ったのは気の毒だということも言えないことはないでしょう。女や子供だったために眠ったということもあり得るでしょう。しかし、救済の手段を講じた人もある。そうなってきますと、非常にまちまちです。救済手段を講じた人、講じなかった人、そういうことになりまするというと、これはさっきから申し上げたように、かなり詳しく農林省で——これだけ厚いのですからね。これを総理大臣に読んで聞かせると時間がかかりますし、四十分の時間も厳守されておりますから例を引きません。何といいましても土地価格というものは——地主の感情はよくわかります。おれの持っていた土地があんなに高くなった、惜しいという気持はよくわかります。それと救済とは別だということであります。そこで総理大臣はうまいことを言って、報償ということにしたのでしょうが、この報償だって、総理大臣はそう思わないけれども、総理大臣が報償するというのだから、補償に近いであろうということで、御承知通り、今度一反歩当たり幾らと、臨時に費用を集めているじゃありませんか。総理も踏み切ったそうだから、もう一押しだからということでみな割り当てている。これは大へんな被害を与えている。こういうことで費用を集めて、もしできなかったらこれは詐欺みないなものです。できるという宣伝が行なわれておる。それじゃ、もう少し——もしも負担しないと救済されないというようなことを言っていますよ。資料を見せましょうか。これに参加して運動しないというと、救済の対象にならないのだ、こういう説明をしている。これはどうなんです。私はそんなことまで突っつきたくない。あいまいなことをするために、世を惑わすようなことがあってはならないということだけです。やるような、やらないようなことをして、いたずらに運動費を出さして始末がつかないというようなことは、世の非難を買うばかりでなく、政治の不信を巻き起こすということであろうと思う。そういう意味で、やはり総理大臣、この際はっきり——報償といっても、自民党の中で、あれは補償なんだと言って説明しておる人もおる。いい悪いは別ですよ。いや、補償でないんだというなら、報償というものは補償と全く違うのだということを言明できるなら言明していただきたいし、あいまいにしておかなければならなかったら、あいまいなことでもよろしいけれども、それは世の不信を買うゆえんだということだけ申し上げて、御答弁願っておきます。
  129. 田中角榮

    田中国務大臣 私からあらかじめ申し上げますが、先ほど申し上げましたように、これらを推進するために国民運動的な団体をつくって費用を集めておるということの御発言でありますが、そのような事実があれば、政府はそのような動きによって左右されることは断じてありませんから、この議場を通じて、そういうことのないように一つ厳重に自粛をしていただきたいということを申し上げておきたいと存じます。  それから第二には、今の御発言の中に、費用を出さない人は補償の対象にならないというような御発言がありましたが、私も先ほどから申し上げておるように、補償を前提といたしておりません。報償に対して何らかの措置ということで、実態調査その他基礎調査を行なうのでありますから、将来報償に対して何らかの措置を行なうということがあり得ても、その場合といえども、その費用を拠出しなかったからその対象にならないとか、救済措置が及ばないとか、そのようなことは断じてないことは当然のことであります。こういう機会に明らかにいたしておきたい、こう思います。
  130. 池田勇人

    池田国務大臣 農地被買収者に対する報償、私は、本会議でも、報償とよくわかるように言っております。補償はいたしません。報償につきましては何らかの措置をとる必要があると思われますので、それでこの具体的の調査をこれからして、そうしてどういう報償の措置をとるかということについて検討してみたい、こういうことでございます。
  131. 川俣清音

    ○川俣委員 これはこれだけにしますけれども、それは総理大臣のニュアンスは、補償ではなくて、報償は別だというお考え方かもしれません。一般に受け取られるのは、字引を引きましても、報償と補償とは同じように解釈されておるものがあるわけであります。従って、そういう惑わすようなことがあってはならないということなんです。補償じゃなくて、救済ならば、社会保障的な救済はするのだ、こういうことになれば、これは明確であろうと思います。何か補償の方にも近づいたような、社会政策的な社会保障でもあるような、そこがあいまいだから、いろんな運動が起こってきて、いたずらな騒ぎと、いたずらなる不信の念を起こすような問題が起こってくるのじゃないか。この間も、暮れのころに、第一会館に行って説明した人に聞いてごらんなさい。代議士が行って説明している。今度きまったのは、補償を前提として調査費をとったから、これで一つまず……。それで万歳やっていますよ。万歳やったのは、補償が達成できたと思って万歳やったのです。とにかくあすこをゆるがすだけの万歳をやった。それは目的が達成されたというのろしなんですね。誤解だと言うけれども、誤解して万歳やった。手をあげた万歳じゃなくて、喜びの万歳です。  それじゃ次に移りますが、防衛庁にちょっとお尋ねしたいと思うのですが、防衛庁と、それから大蔵省ですか、三十七年の防衛庁の予算中、食糧費が約八十億ばかりあるのです。その中で、第二次補正のとき、米の値上がり分をどれだけ見込むのかということをお聞きいたしたのですが、一二%ぐらいな値上がりは他の費目から適当にあんばいできるから、あえて補正予算を組まないのだ、こういう説明になっている。それほど防衛庁というものはやりくりできる内容になっておるのかどうか。これは大蔵大臣どうですか。当然補正予算を組まなければならない。金額が少なくとも組まなければならない。なぜ補正予算を組まなかったか。いや、そのくらいのことは幾らでもやりくりできるようになっているのだから、それには及ばない、こういうことです。今度は三十八年度だいぶやかましくなったために、予算を組みか、えてちゃんと食糧費値上がりを見たようですけれども、そういうやりくりがっくんだというのがわからない。防衛庁というものは、どんなことも内部でやりくりがっくらしい。志賀さんは、ずいぶんことしになってから、今度も、昨年の暮れなども、防衛庁の予算はうんととったということで、だいぶ鼻高々だったようですが、そのことはまあいいでしょう。が、こういう幾らでも流用できるようなものをとったということで自慢されたのでは、国会はそれを承認するわけにはいかない、こういうことになると思う。防衛庁長官いかがですか。
  132. 志賀健次郎

    ○志賀国務大臣 仰せの通り、消費者米価が値上がりになれば、食糧費の単価増もしなければならぬと思うのであります。しかし、防衛庁の食糧費の実績を見まするというと、営内に居住する隊員、これは海上自衛隊の者も同様でございますが、大体年間十八日間休暇その他で外で飯を食う。それだけ剰余が出ておるのでありまして、こうした剰余分を予期いたしまして、これをもとにして予算の実行をいたしておるのであります。従って、これで補正しなくても済むという建前から、補正予算に計上しなかったのでございまして、他の費目からやりくりいたしてやっておるのではないのであります。
  133. 上田克郎

    ○上田政府委員 経理局長でございます。ただいまの御説明の十八日見てあると申しますのは、十八日ぐらいは例年欠食があるということで、予算に初めからその分は削除して減額してございますけれども、本年度は、その十八日のほかに若干、現在の段階で約一・五%ぐらいでございますが、欠食率がそれよりもふえているということになっております。
  134. 川俣清音

    ○川俣委員 大蔵大臣、今お聞きのように、初めからそれは計画になって、それだけ食糧費は減っておってもいいのに、水増しであるために、いつでも融通ができるということにもなるのです。十八日なんていうのは今度初めてでしょう。国会でやかましくなったということで、だいぶん苦労して私のところに資料が来ております。前は大体何人ぐらい、これはいつのときには幾らでと、非常に変動が大きいのです。それは欠員もあるでしょう。あるいは今のように演習だからいろいろな行動もあるでしょう。それらの行動については予算がつけられておるでしょう。初めから計画があるはずなんです。変更じゃないですね。それならそれなりの食糧費の予算が組まれていなければならぬはず。しかも小さいんじゃない、八十億ですよ。従って、八十億もあるんだからやりくりができる。ここでは悪いのですけれども、ほんとうは突然米価が値上げになったものですから、補正予算を組むような作業ができなかった。防衛庁はよほど世の中から超然としておると見えまして、米価の値上げのことは突然だった。それだから補正予算の用意ができなかった。らっぱ吹いていればいいと思いましてね。閣議できめていながら、世論のあれだけやかましい中に米価が上がったにもかかわらず、突然であったために、補正予算を組む手続ができなかったという説明なでんす。それほど国民生活と遊離さしておくことはどうであろうか。一方においては、かなり切り詰められた健全財政を主張されておるのに——食糧費だから値上がり率はわずかです。農林省に言わせれば、あの値上がり率はわずかですよ。一二%はわずかだと、こう言いまするけれども、いかにわずかといえども、そういう値上がり率が消化できる防衛庁と、その値上がりを消化できない国民があるのです。だから、防衛庁は国民よりもよほど余裕のあるものだということなのです。三十万円以下の所得の人は、この米の値上がりに耐え得られないことになっておる。もっと資料を出しましょうか。時間がないからやりませんが、おそらく三十万円以下の所得の人で、他の費目と比べて食糧の値上がり率を最も大きいとする家庭は、三三・六八でしたか、八六でしたかある。それほど食糧というものは、三十万円以下の生活者にとっては大きな問題なんです。生鮮食料につきましても、これは総理大臣もう一言ですが、これなども、生鮮食料というものはよほど計画的に生産をしてもらう、安定した生産をさせるということを打ち出していかないと、このごろは、主婦によって家庭経済が営まれておりますが、家庭としては生鮮食料の値上がりを一番窮屈に感ずる。感情的にも、毎日のものですから一番敏感なんです。ダイコンなりあるいはホウレンソウなりが、去年と比べて四〇%ないし七〇%値上がりしておる。四〇%、七〇%は大したことはないと言うかもしれませんが、これは大きいのです。それほど影響を与えておる。これは、やはり米価を上げたために自然に起こってくる一つの問題であると同時に、農業に対する一つの魅力を失なってきたというところから、耕作者が減ってきたということも現実でしょう。他にもっと所得のあるところがあるということも現実でしょう。そういうところから、生鮮食料の値上がりというものについては、これは単に農林大臣でなくして、内閣全体が食糧供給をするという責任を果たしていかなければ、経済の発展はもちろんのこと、社会不安を起こす大きな原因になると私は思うのです。一つ総理大臣、特に関心を求めておきたいと思います。
  135. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の通りでございまして、昨年の春ごろまでは生鮮食料品の非常な値上りで、前年に比べて七割、八割、それから順次低下して参っております。しかし、また今年になりまして、天候関係その他で相当値上がりしつつあり、また北陸等の雪の関係で値上がりはやむを得ぬのじゃないかと心配しております。従いまして、三十八年度の予算につきましても、この生産地を指定して生産の拡大をはかるとか、あるいは輸送、流通面につきましてやるとか、あるいは保存面についてあれするとか、野菜のみならず生鮮食料品全体につきましてできるだけの措置をとるよう、昨年の三月の物価安定総合施策以来、今度の一般予算にもできるだけ計上いたしまして、生鮮食料品の急激な値上がりを防止するように極力努めていきたいと思います。
  136. 塚原俊郎

    ○塚原委員長 次会は明後二月二日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十四分散会