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1963-01-30 第43回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年一月三十日(水曜日)     午前十時十三分開議  出席委員    委員長 塚原 俊郎君    理事 青木  正君 理事 赤澤 正道君    理事 野田 卯一君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    安藤  覺君       井出一太郎君    池田 清志君       稻葉  修君    今松 治郎君       植木庚子郎君    仮谷 忠男君       北澤 直吉君    小坂善太郎君       櫻内 義雄君    正示啓次郎君       周東 英雄君    田中伊三次君       中村三之丞君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    羽田武嗣郎君       藤本 捨助君    船田  中君       松浦周太郎君    松野 頼三君       松本 俊一君    山口 好一君       山本 猛夫君    淡谷 悠藏君       石田 宥全君    加藤 清二君       川村 継義君    木原津與志君       小松  幹君    高田 富之君       堂森 芳夫君    野原  覺君       山花 秀雄君    山口丈太郎君       春日 一幸君    佐々木良作君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 中垣 國男君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 西村 英一君         農 林 大 臣 重政 誠之君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 小沢久太郎君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 篠田 弘作君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 近藤 鶴代君         国 務 大 臣 志賀健次郎君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         総理府総務長官 徳安 實藏君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    山本 重信君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (理財局長)  稲益  繁君  委員外出席者         日本国有鉄道         副総裁     吾孫子 豊君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 一月三十日  委員倉石忠雄君及び西村榮一君辞任につき、そ  の補欠として稻葉修君及び春日一幸君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十八年度一般会計予算  昭和三十八年度特別会計予算  昭和三十八年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより会議を開きます。  昭和三十八年度一般会計予算昭和三十八年度特別会計予算昭和三十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  堂森芳夫君。
  3. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、三十八年度予算案に関連しまして、主として経済、財政の問題について質問をいたしたいと思いますが、その前に、今回主として北陸地方を襲っております豪雪被害について、その被害が、日々非常な勢いで被害状況が増加している。このように報道されておりますので、総理大臣以下関係大臣質疑をまず行ないたいと存ずるわけであります。  すでに新聞に報道されておりますように、北陸だけではございませんが、全国ですでに七十六人の死者を出しておるのであります。しかも、私が集めました資料でも、その被害は実に甚大でありまして、たとえば最も雪のひどい北陸地方でありますが、石川県では百億をこえる被害である、あるいは福井県でも百億をこえる、あるいは富山県ではすでに六、七十億以上の被害があるというふうに、北陸地方には甚大な影響が起こっておるのであります。しかも、交通は全く途絶いたしておりまして、特に生鮮食料品であるとか、あるいは医療品などの欠乏もはなはだしく、特に交通の途絶いたしました地域には人心の不安が起こっておる、こういう状態であるのであります。しかも、交通機関でありますが、私鉄はもちろん、国鉄においてすらも、すでに十日間も麻痺状態にある。こういうような状態になっておるのであります。すでに災害基本法が一昨年の国会におきまして通過いたしましたが、しかしながら、この災害基本法にうたっておりまするところの、同法第十一条におきまして中央防災会議を設置することになっておるのであります。はたしていつこの中央防災会議というものは設置されたのでありますか、その構成はどうなっておるのでありますか、担当の責任者であります総務長官にまず御答弁願いたい、このように存ずるわけであります。——総務長官はどうしたんですか。きのうの新聞では、建設大臣本部長になられた、こういうことになっておるのでありますが、総務長官がおらぬようでありますから、建設大臣にお願い申し上げたい、こう思います。
  4. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、昨日から中央本部を設置いたしまして、今総務長官は、副本部長としてその会議に出ております。私も今までその会議におったのでございますが、ただいまお尋ねの件は事務的なことでございますので、後刻、書面でよろしければ申し上げますし、また、副本部長が出て参りましたら、お答えすることにいたしたいと思います。
  5. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、前もって総務長官にも出席を要求いたしておったのでありますが、きわめて遺憾と思いますので、早急に総務長官を呼んでいただきたい、このように思うわけであります。
  6. 塚原俊郎

    塚原委員長 堂森君に申し上げますが、ただいま総務長官防災会議に入っておりまして、私の手元には、十時十五分までには出席するということでありますが、もうすでに十九分でありますから、ただちに連絡をとります。
  7. 堂森芳夫

    堂森委員 しからば、総理大臣お尋ねをいたしますが、災害基本法におきまして、中央防災会議というものはただちに設置されまして、一たん災害が起きたときには、ただちに非常対策本部を設けるということになっておるのでありますが、しからば、いつ中央防災会議をおつくりになったのか、御答弁を願いたい。これはきわめて重要であります。ただ法律ができただけであって、そういう基本的な構想はできていない、こういうことになるならば、これはきわめて遺憾であります。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 災害基本法にあります通り施行の日より防災会議ができることになっております。従いまして、ただいま委員長お話し通り会議を開いて対策を講じておるのであります。
  9. 堂森芳夫

    堂森委員 しからば、そうしたきわめて重要な点でありますが、後ほど総務長官出席されましてから、私は尋ねたいと存ずるものであります。  今回の豪雪による災害によりまして、国鉄がすでに十日以上もその機能を完全に麻痺しておる、こういうことはきわめて重大なことであります。国鉄が絶えず日常茶飯事のごとく常に多くの事故を起こしておる。これは重大な問題であるわけでありますが、この際、総理大臣は、国鉄に関しまして根本的に国鉄機能というものについて再検討をすべき時期がきておる、こういうふうに私は考えますが、その点についてどのようにお考えであるかということであります。  もう一つは、さらに財政的な措置であります。すなわち膨大な被害が起こっておる。こういうような際に、今後直ちに応急措置を必要とするでありましょう。あるいはまた応急ではなしに、復旧のいろいろな手当が必要なことは当然でありますが、すでに予備費というものはきわめて少額になっておる、このように私は知っておるのでありますが、しからばその膨大な被害に対しまして、池田総理は第三の補正予算を組む意思があるかないか、こういうことにつきまして私はお尋ねをいたしたい、こう思うわけであります。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 今回の豪雪は過去にその例を見ないほどの災害でございまして、これに対しましては万全の措置をとりたいと考えております。ただ、国鉄が十日間も麻痺したということにつきましては、今後こういう問題につきましての検討対策は根本的に講じる必要があると考えております。  なお、今回の豪雪による災害のために補正予算を組む気持があるかというお話でございますが、御承知通り相当被害があると思います。しかし、これは金融的なものでいくか、あるいは一般会計予算的な措置をとるかということは、まだ被害状況を見てからでないと何とも言えないのでございます。補正予算を組むか組まぬかということは、被害の実態によっての判断でございます。今後十分調査いたしまして善処いたしたいと思います。
  11. 堂森芳夫

    堂森委員 重ねて総理大臣お尋ねいたしますが、もちろん金融的な措置も必要でありましょう。しかし、雪というものは、降ったための、積もったための被害ももちろん膨大なものでありますが、さらにこれが雪解け期に入りますと、河川のはんらんが起こって参りまして、当然公共事業費等におきましても膨大な被害が出てくるということは、従来の例に照らしましても、これは断じて軽視できないということが予想されるのであります。しからば、ただいまの答弁におきまして、池田総理大臣は、必要とあれは補正予算を組んでいく、こういう意思である、こういうふうに私は理解していいのでございますか、重ねてお尋ねをいたすのであります。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 補正予算を組むか組まないかというそのこと自体が問題ではない。災害被害がどれだけであって、どういう措置をとるかということが問題なんでございます。従いまして、お話しのように雪解けその他によって洪水その他が出てくることを予想しなければなりません。しこうしてそれが対策も前もってとらなければならぬ。そういうことをいたしまして後にどうするか、補正予算を組むこと自体が政治じゃない、どういう措置をするかということが問題なんでございます。
  13. 塚原俊郎

    塚原委員長 堂森君に申し上げます。総務長官がおいでになりましたから……。
  14. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは、総理にこれ以上私は質疑をすることをあとに延ばしまして、総務長官出席でありますので、少しく基本法に関連しまして質疑を続けてみたいと思うのであります。  災害対策基本法には、第十一条におきまして中央防災会議というものを設置しなければならぬ、こういうことになっておりますが、いつ設置して、その構成はどうなっておるのでありますか、私はまずこの点を承りたい、こう思います。
  15. 徳安實藏

    徳安政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、この基本法施行になりまして間もなく、総理大臣の御指名によりまして防災会議委員がきまりまして、初会合を開いておるのでありますが、その日は、ちょっとここに私は記録を持っておりませんので、もし必要でございましたら、あとからお答えいたしたいと思いますが、そうあまり間のない期間防災会議が開かれておりまして、順次活動を開始いたしております。
  16. 堂森芳夫

    堂森委員 構成はどうですか。
  17. 徳安實藏

    徳安政府委員 構成は、閣僚以外は、日赤の社長と、それから日銀総裁がお入りになっておりまして、あとは十五名ぐらいが閣僚でございます。これも名簿はあとから差し上げることにいたしたいと思います。
  18. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいま総務長官は、私はうそを言っておられると思うのです。今日まで、ごく最近まで、これはほうってあった、こういうふうに知っておるのであります。日にちがはっきりお答えできぬ、こういうお話でありますが、総務長官として、それはきわめて怠慢であると私は思うのであります。しかも災害対策基本法におきまして、第十一条には、「防災基本計画を作成し、及びその実施を推進すること。」こうなっておるのでありますが、どのような防災計画を持っておるのか、この点も承っておきたいと思うのであります。
  19. 徳安實藏

    徳安政府委員 基本法施行されましたけれども激甚法の方が御承知のように次の国会継続審議になりまして、それができませんと働くことができないような状態であったのでありますが、ようやくあの激甚法が先国会で通過いたしましたので、直ちにそれによって防災会議活動をするということになったわけでございます。ただいま第一回の会合の日取りを調べておりますから、あとから御報告申し上げますが、委員日銀総裁と日本赤十字社の社長を入れまして十七名、あと十五名は閣僚でございます。防災会議の職務につきましては、もちろんたくさんございますけれども、第一回の会合をしまして以来、あるいは激甚災害に対する指定などにつきましても、そうおくれないように努力いたしまして、すでに発表して、それぞれの手続をとっておりますことは御承知通りでありまして、ただ、いろいろな法律あるいは政令等関係もございまして、第一回のことでありましたために、先般の激甚災害指定等にも多少の時日は要しましたけれども、しかし活発に働いておりますことだけは、一つ御了承いただきたいと思います。
  20. 堂森芳夫

    堂森委員 しからば、さらに総務長官お尋ねをいたしますが、基本法の十三条におきまして、「中央防災会議は、その所掌事務に関し、関係行政機関の長及び関係地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関指定公共機関及び指定地方公共機関並びにその他の関係者に対し、資料の提出、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる。」と、こうなっておるのであります。たとえば今回の雪害に際しまして、各府県知事自衛隊出動要請いたしておるのであります。これは本来ならば中央防災会議が、常にふだんから防衛庁の長官との間に密な連絡があって、こういう場合には自衛隊を出してもらいたい、こういうふだんからの計画がなければならぬのであります。そういうふうな連絡を密にしておったかどうか、それはしておったとおっしゃるでしょう。しかし、実際には知事がこれを要請しておるのであります。中央防災会議は一体何をしておるのでありますか。この点、御答弁を願いたいと思います。
  21. 徳安實藏

    徳安政府委員 ただいまの御質問でございますが、防衛関係におきまして、あるいは自衛隊出動要請する等のことにつきましては、現段階の法制上の建前から申しますと、知事がやはりそこの責任において要請をするようなことになっておるわけでございます。ただ中央防災会議といたしましては、各省庁間の調整をいたしましたり、あるいはそうした連絡等につきましては、強力にこれを推進いたしましたり、また資料を求めたりは始終いたしておるわけでございまして、今回の災害につきましても、各地方知事、あるいは市町村等にも連絡をとりまして、中央防災会議で設置すべきことで要請される面があれば、すみやかに連絡をとってほしいということを電報で連絡もしてございまして、そして自衛隊等に対するそうした要請につきましても、やはり私の方にも、こういう要請をしておるからという御連絡もございますので、私の方もこれに協力をいたしておるというような状態でございます。
  22. 堂森芳夫

    堂森委員 時間の関係もありますので、私はこの雪害対策につきまして、各関係大臣に具体的に質問をいたしてみたいと思うのであります。  まず大蔵大臣お尋ねをいたしますが、基本法の第九十三条並びに九十四条に、市町村災害応急措置に要した費用、たとえば道路の除雪とか、あるいは雪おろしとか、そういう費用に対して国がその費用の全部もしくは一部を補助することができるとなっておるのであります。このような今回の積雪によるそうした費用というものは、自治体においても莫大なものがあるわけでありますが、このような費用に対して政府はどのような方針でおられるのか。基本法のこの精神に照らして、これを全部国が見ていくつもりであるか、あるいはその一部を見ていかれるつもりであるか、この点を明らかにしたいと思うのであります。
  23. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから答弁を申し上げておりますように、本部が発足をいたしまして現在会議中でありますし、各都道府県及び市町村からの被害状況等も、おいおい政府に向かって報告がせられるわけであります。なお大きな災害は、先ほども申された通り、三月、四月の融雪時における融雪災害ということになるわけでありますが、それまでに至る間の除雪の問題また応急的な問題、いろいろな問題がありますが、市町村でできないものに対しては、府県がこれを補助をしたり、また国が特別交付税の制度を活用する等によって、お互いが十分連絡をとりながら手厚い処置をとって参るという基本的な態度をとっておるわけであります。先ほど総理から御答弁がありましたが、予備費の残も二十億弱ありますし、また、これからの融雪災害その他豪雪による災害に対しては、事業費算定等を急ぎながら、現在まだ特別交付税の残もありますので、十分地方自治体との連絡をとりながら遺憾なきを期して参りたい、こういう考えでございます。
  24. 堂森芳夫

    堂森委員 私が今大蔵大臣お尋ねしましたのは、除雪雪おろし等に関するそうした費用を国が全部またはその一部を見ることができると、こういうことになっておるが、これはどうか、こういうことであります。さらに、ただいま答弁になりましたが、当然市中銀行融資に対して政府がこれのめんどうを見ていく、あるいは国民金融公庫であるとか中小企業金融公庫、あるいは商工中金、こういう方面に対しても、当然大蔵大臣めんどうを見ていかねばならぬと思うのでありますが、もう一度お尋ねしますけれども、さっきの点とあわせて御答弁を願いたい、こう思います。
  25. 田中角榮

    田中国務大臣 雪害費用に対しましては、先ほど申し上げました通り、国、都道府県市町村十分連絡をとりながら、これが負担に対しては、災害基本法精神にのっとって手厚い処置をいたしたいという考えでございます。  それから雪が降り始めました当時から今日に至る約十日間、非常に大きな豪雪災害でありますし、特にそのために交通途絶等がありまして、手形の交換その他もできない事実がありますので、その現実を前提にして、不渡り手形等に対する処分も実情に即して十分慎重に配慮をするように、ある一定期間の猶予を置くようにということを、関係機関考え方を通じてございます。  なお中小企業金融につきましては、中小企業公庫に現在まだ三十七年度の予算がありますので、これを豪雪地に対しては特別配慮をするようにということを言っておりますし、なお豪雪地帯に対して特別な要求があれば、あとからめんどうを見るということにして、現在百億程度の三公庫に対する追加融資考えておりますので、そういうものも、豪雪地帯に対して重点的にこれを行なうようにということを要請してあります。なお引き続いて中小企業向け買いオペレーションを百億程度行なおうという考えでありますので、この問題も加味しながら、現在の資金を重点的に活用して豪雪地帯に遺憾なきを期すようにということを通じてございます。そのほかに、市中金融機関相互銀行信用金庫等につきましても、豪雪地帯の特別な事態に対処して十分の配慮をしてもらうような要請を行なってございます。  なお、地方公共団体その他につきましても、資金運用部資金財務局を通じて流すことの処置を第一段としていたしてございます。北陸財務局に対して二億円、中国、東北に対して一億円、計四億円の短期の資金手当をいたしましたが、新潟に対しては、関東財務局に今年度分の手持ちがまだ三億ございますので、これを一つ早急に充てて措置をするように、なお必要があれば追加融資考えるという大蔵省の考え方を出先に十分指示いたしてございます。
  26. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいま大蔵大臣からいろいろな答弁がありましたが、私は、ただいま御説明になったような金額では、なかなかこの被害が甚大でありますから、きわめて少額である、こういうふうに思うのであります一段と御努力を願いたい、こう思うわけであります。  そこで、次に運輸大臣お尋ねをいたしますが、雪が積もり始めてから十日間も国鉄がほとんど麻痺状態になっておる。しかも、この北陸あるいは新潟地区というのは、あるいは東京、あるいは名古屋、阪神地方、こういう地域とは北陸線あるいは上越、信越、こういうような国鉄線路で結ばれておるわけでありますが、これがほとんど麻痺状態になっておって、食料品、あるいはさらに経済上、産業上から言いましても、多くの重要な問題が起こっておるのであります。そこで、一体今までどのような国鉄機能を回復させるための努力をしてこられたのであるか、あるいは今後これらの豪雪地帯における国鉄の今後の復旧というものはいつごろになれば大体これができ得る見通しであるか、御答弁を願いたい、こう思うわけであります。
  27. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 お答え申し上げます。この一月以来の豪雪につきまして、被害者地方に対する点につきましては、まことに遺憾にたえません。今日三十日現在におきます不通区間は、北陸本線、すなわち敦賀−大聖寺間及び七支線となっております七それから各駅に抑留されておりました旅客列車は、二十八日以後皆無になりました。それから貨車につきましては、現在なお相当数抑留車が残っておるのは、はなはだ残念でありますが、一日もすみやかにそれを解消するように努力いたしております。  それから次に、除雪状況について申し上げますが、十二日以降、職員、ことに自衛隊人夫等延べ人員約二十五万人を動員いたしまして、除雪車は八十数両を運転して除雪努力して参ったのであります。旅客貨物輸送対策といたしましては、線路開通に極力努力いたしておるところでありますが、当面は生活必需物資緊急貨物、すなわち貿易品であるとか、そういうような緊急の貨物及びローカル列車輸送に重点を置きまして、長距離の直通列車がいまだ開通いたしませんことは、はなはだ遺憾であります。順次開通せしむべく努力いたしております。今後の輸送対策といたしましては、まず操車場機能を十分に発揮すべく、操車能力の回復をはかることを第一とし、迂回輸送を強力に実施いたしまして、雪害地区に発着する貨物輸送を確保する所存であります。なお、私どもといたしましては、陸の道が可能になるならば、海運、船を利用して貨物を運ぶようなことも今研究いたしております。  それから私鉄につきましては、雪害地において約十社がありますが、全部被害を受けておりまして、その営業区間の約七割が不通になっておりますが、国鉄と同様に除雪開通に努めておるのが現況でございます。  その他詳細なる不通個所、その後の開通状況その他等は、国鉄の副総裁をして答弁いたさせます。
  28. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 御説明申し上げます。ただいま運輸大臣から御答弁のありましたことで概要は尽されておると思うのでございまするが、今回の雪害は、実は国鉄始まって以来の大量の降雪でございまして、そのために主要幹線の運転が阻害されるようになりまして、大へん皆様方にも御迷惑をおかけ申し上げておることは申しわけないと思っておりまするが、私どもといたしまして、先ほど運輸大臣からも御答弁のございました通り自衛隊の隊員にも御出動を願いまして、現在配置いたしております全人力といたしましては、約二万五千の職員人夫また自衛隊の方々にお手伝いいただきまして、全力をあげてまず本線の開通努力をいたしておる最中でございます。ただ、ただいまも御答弁にございましたように、北陸本線の方では、敦賀と大聖寺の間が、まだ作業用の列車をようやく通せる程度でございまして、まだ普通の営業列車を通せる状態になっておりません。しかし、北陸線の方は、幸いに昨日までの天候状況もそれほど悪くございませんので、これはこのままの天候が続きますれば、比較的早く作業も進捗できるのではないかと思っておりまするが、現在富山、金沢方面に対する輸送につきましては、幸いに高山線が通っておりますので、これを通しまして必要最小限度の輸送はやっておりまするし、また、ただいま申し上げましたように、作業用の列車はどうにか通せる状況でございますので、関西方面からの救援の事業用物資、あるいはまた自衛隊輸送等は、敦賀方面からも入れ得る状況になっておる次第でございます。一方、新潟付近は、これはまた昨日も大へんな降雪がございまして、大量の降雪があり、ただいまもなお降雪が続いておる状況でございまして、これは上越の小出−長岡間、長岡周辺、この付近の除雪作業に今全力をあげておるような次第でございます。ただ、この新潟方面に対しましても、磐越西線は通っておりますので、必要最小限度の輸送は、磐越西線を迂回いたしまして、必要な補給をやっておるというような状況でございます。  今後の見通しでございますが、これは実は率直に申し上げまして、これ以上雪がどの程度降るかということにやはり左右されますので、降雪が減って参りますれば、かなり早く本線の開通もでき、従ってまた、それにつながる支線の開通も可能であるかと思いまするが、今朝私がこっちらへ出て参ります直前に聞いて参りました天気予報によりますと、さらにまた相当量の降雪がある見込みであるというような予報でございますので、心を痛めておるような次第でございまするが、ただいま申し上げましたように、国鉄といたしましてはもちろんのこと、各方面の御協力を得まして、全力をあげて一刻も早く輸送の障害を打破するべく努力いたしておりますので、何とぞ御了承願いたいと存じます。
  29. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいまの運輸大臣及び国鉄総裁答弁を聞いておりまして、雪がこれから降ってくる、どのように降るかわからぬので、見通しはわからぬ、こういうふうな答弁であります。きわめて遺憾と思うのであります。運輸大臣に重ねて要望しておきますが、非常災害対策本部と密に連絡をされまして、自衛隊等出動ももっと大量に投入いたしまして、一日も早くその復旧のために努力されたいと思うのであります。  そこで、私は、もう一つ重要な点につきまして、河野建設大臣お尋ねをいたすものであります。豪雪による家屋の倒壊並びに半壊の損傷が非常に多いのであります。これに対して緊急の処置をとらねばならぬのでありますが、政府はどのようなお考えを持っておられるのでありますか。住宅の半壊、倒壊、こういうものに対する考え方お尋ねしたい、こう思うわけであります。
  30. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほど総理からも御答弁申し上げておりますように、こうした災害につきましては、政府といたしましては、万全を期してこれが応急処置を講ずるという基本の方針に基づきまして、住宅につきましても、倒壊家屋、それらの復旧に要する資材、資金というものについては、遅滞なくこれを協力申し上げる。半壊についてももちろんその通りでございます。ただし、何分現地の実情が御承知のようなことでございますから、私といたしましては、すみやかに現地の実情を調査いたしまして万遺憾なきを期して参りたい、できるだけのことは要するにする、やれることはやって差し上げるという所存でこれが応急処置を講じたい、こう考えております。
  31. 堂森芳夫

    堂森委員 建設大臣答弁でありますが、おそらく政府は、公営住宅の割当とか、個人住宅の建設の融資について努力する、こういうことも含まれると思うのでありますが、しかし、半壊というような被害が最も多いのであります。ところが、今日では、こういうような半壊のような被害に対しては融資をする道が全くと言っていいほど閉ざされておるのであります。このような被害に対して、もっと具体的に、そういう大ざっぱな御答弁ではなしに、どういうふうな処置をして参るかということも答弁願いたい、こう思います。
  32. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、住宅金融公庫から融資の道がございますから、必要とあらば、もしくは今お話しのような事態がございますれば、その方面からの融資をあっせんいたしまして遺憾のないようにいたす。特に私は、農村の住宅については改造を奨励して参るということで、今回の予算の中にもそういうことを考えております。この道もこういう機会に大いにやってもらいたい、こう考えております。
  33. 堂森芳夫

    堂森委員 最後に通産大臣お尋ねをいたしますが、通産大臣北陸の出身でありますから、もちろんよく御存じでありますが、特に北陸地方は絹、人絹あるいは化学繊維、こういう方面の企業地帯でありまして、多くの問題が起こっておることは御承知通りであります。従って、もちろん大企業だけではありません、零細企業等が甚大な影響を受けておるのでありますが、こういう方面に対して具体的にどのような対策をおとりになっておられますか、またこれからとって参るか、この点をお尋ねしておきたいと思うのであります。
  34. 福田一

    ○福田国務大臣 お説の通り北陸地方は特に繊維産業の盛んなところでございますので、通産省といたしましては、各通産局をして雪害状況をしさいに調査させておるわけでございます。そうしてその報告を待って、なすべきことは次々に手を打っていきたいと考えておりますが、まず第一に、何といっても大事なことは金融の問題でございますので、昨日の閣議においても、そういう面から特に金融の対策について万全を期してもらいたいという発言をいたしておりまして、閣議においてもこれを了承され、また、大蔵大臣から先ほど答弁のあったような措置をとっていただくことになったわけであります。同時にまた、私たち通産省の立場から考えますと、繊維産業のうちには輸出産業が特に多い、また、輸出産業でなくても、納期がおくれますとすぐクレームがついてくるということがあります。特にまた、外国向けの品物におきましては、一日汽車が不通であったために、船がもう出てしまったというような事態も起きるわけでありまして、そういうこと等も考えると、輸出に対するクレームがついてくることも考えなければなりません。今度の雪は、御承知のように、いまだかつてこういう事例がなかったからでありまするが、そういう点を考えてみまして、そういうクレーム等の問題も起きるということを考慮いたしまして、そういうような輸出品に対し、あるいはまた国内のものについても、必要があれば通産局長をして、これは天災というか、雪害によって、どうしてもやむを得ずこういう事態が起きたのであるという証明を出させることにいたしまして、それによってこういう意味のいわゆる繊維産業に対する救済の手も伸べていかなければならぬ、かように考えてその指示をいたしたような次第でございます。  なお、金融問題につきましては、先ほども申し上げてある通りでございますが、これについては、繊維産業にはまた特殊の事情もございますので、そういう問題もよく調べた上で措置をするようにいたしたいと考えております。
  35. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がございませんから、最後に、政府に、この数十年ぶりといわれる豪雪に対して万遺憾なき対策を講じられますように要望をいたしまして、次の問題に移りたいと思うのであります。  そこで、私は、まず総理大臣に伺いたいのであります。  先般、本会議で、同僚の柳田議員から原子力潜水艦の寄港問題について質問が行なわれたのであります。その際、総理大臣は、よく検討して態度をきめたい、このような答弁があったと私は記憶いたしておるのであります。ところが、昨日の新聞報道を見ますと、いよいよ政府は、アメリカの原子力潜水艦の寄港については、これに同意する態度にきまった、そのような方向で国会においても答弁をするんだ、このような意味の記事が掲載されておるのであります。新聞が報道しておりますように、政府はそのような態度におきめになったのかどうか、まず総理大臣から承りたいと思うのであります。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 別にこの問題について関係閣僚会議を開いたわけではございません。しかし、私いろいろ考えまして、あのときにも申し上げましたごとく、ポラリスが来るというのなら別でございますが、船舶、艦船の推進力が原子力であるからといって、これを一がいに拒否するということは妥当でない、やはり自由国家群として、しかもまた、アメリカと安保条約によってやっておるときに、アメリカの潜水艦が、推進力が原子力なるがゆえに寄港させないということは、ただいまの状況からしてはよくない、来さしてもいいのじゃないか、ただ、条件としまして、放射能の処理の問題、あるいは危険防止とか、あるいはもしそれによって被害をこうむった場合の損害賠償というふうな点は今後検討しなければならぬ、私はこういう考えでおるのであります。外務大臣には、外務大臣の意見もそうでございますが、私は一応支障ないと言ったのであります。政府で決定したというのも、こういう意向で外務大臣と私の意見が合ったという程度でございます。
  37. 堂森芳夫

    堂森委員 しからば、私は外務大臣お尋ねをいたします。ただいまの総理大臣の御答弁では、外務大臣の意見と総理の意見が一致したんだ、こういうお話でございましたが、この新聞に報道されております記事を読んでみますと、今日は原子力の船の時代であって、わが国も原子力の商船を建造しよう、こういう時代であるから、原子力潜水艦を日本に寄港させることは妥当であろう、こういうふうにお考えになっておるのでありますか。外務大臣の御答弁を願いたい、こう思います。
  38. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今総理大臣から御答弁がございました通り、艦船の推進力として原子力を利用するということは、その後だんだん普及いたしております。その普及の過程を通じまして、これによって安全上問題があったということは聞いていないわけでございます。現にノーテラス型の原子力潜水艦が、欧州各国におきましては英、独、白、伊、それから豪州等寄港いたしておるようでございますが、問題があったということは聞いていないわけでございます。今総理大臣からお話がありました通り、安全上特に注意すべきことがあるかないか、そういった点を今検討いたしておるわけでございまして、そういうことに支障がない限り、寄港に支障はないものと考えております。
  39. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣お尋ねをいたしますが、原子力船、商船と原子力の潜水艦とは、私は全く違うものだと思うのでありますが、どのようにお考えでございますか。
  40. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それは構造や機能は違っておるものと、私もくろうとではございませんけれども、そう思います。
  41. 堂森芳夫

    堂森委員 しからば、原子力潜水艦は原子力兵器でありますか、兵器でないですか。この点、見解を承りたいと思います。
  42. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私ども承知しておるところでは、原子力潜水艦に、ポラリス型とノーテラス型と二つあるということでございまして、今問題になっておるのは後者の方でございます。
  43. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣は、ノーテラス型は原子兵器でないというお考えでございますか。
  44. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いずれも推進力として、動力として原子力を使っていると承知しております。
  45. 堂森芳夫

    堂森委員 これは外務大臣答弁がおかしいです。原子力潜水艦が——もちろん、核分裂によるエネルギーが船を動かすことくらいはだれでもわかることであります。しからば、核分裂によるエネルギーによって動く潜水艦は、ノーテラス型であろうとポラリス型であろうと、原子兵器であることは間違いがないと私は思うのでありますが、いかがでございますか。ただ、ポラリス型は中距離弾道弾を持っているということであります。それだけの違いであって、原子兵器でないということは言えないと思うのでありますが、外務大臣、いかがでありますか。
  46. 大平正芳

    ○大平国務大臣 兵器に間違いはございませんけれども、問題は、核装備をしているかどうかという点が問題の焦点でございまして、私ども承知している範囲におきましては、今問題になっておる潜水艦には、核装備がないということでございます。
  47. 堂森芳夫

    堂森委員 もちろん、私が質問を続けていきます経過でいろいろと聞きますが、ノーテラス型の潜水艦は原子兵器である、こういうふうに考えられるのですか、そうでないのですか、もう一ぺん確かめておきたいと思います。
  48. 林修三

    ○林(修)政府委員 これはいわゆる核兵器、原子兵器という定義にもよりますが、核兵器という問題につきましては、かねて安保条約改定の際にもこれは十分御議論のあったととろでございまして、安保条約に基づきます交換公文におきまして、装備における重大な変更ということについては、いわゆる核兵器というものが主として対象になるのだ、かようにあの当時お答えしております。その場合の核兵器とは何ぞやという問題につきましては、当時防衛庁より文書にして、これは当時の委員会に提出されております。従って、十分御承知と思いますけれども、そのときの核兵器というのは、要するに核分裂反応あるいは核融合反応により人あるいは物を殺傷破壊するような用途をする兵器である、こういうものが核兵器、あるいはそれに密着した発射装置というようなことを当時お答えしておるわけでございます。別な言葉で言えば、中距離弾道弾あるいは長距離弾道弾の発射装置、そういうようなことでお答えしているはずであります。従いまして、原子兵器という定義にもよりますけれども、原子力を推進力のみに使うものはいわゆる核兵器ではない、かように従来考えておりまして、これはある意味においては一つの普遍的な定義ではないかと考えております。
  49. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、法制長官答弁を聞いておりまして、それはあなたは詭弁であります。原子力によって動く潜水艦がなぜ原子兵器でないのですか。私は新安保条約の審議の当時から覚えております。原子兵器は絶対持ち込まないということは、政府はそういう答弁をいたしておることは、あなたの御指摘の通りであります。核分裂のエネルギーによって動く潜水艦が、かりにポラリス型でなくても、原子兵器でない、どうしてそういう定義ができますか。重ねて答弁願います。
  50. 林修三

    ○林(修)政府委員 安保条約の改定の際に、いわゆる交換公文がつくられまして、いわゆる装備の重大な変更というものにつきましては、いわゆる事前協議の対象になったことは御承知通りでございます。その場合の装備の重大な変更とは何を意味するかということについては、核兵器ということが主たる内容であるとお答えしたことも、これも御承知のことだと思います。しからば、その場合に、核兵器とは何ぞやという問題がもちろん議論になるわけでございまして、その当時、政府といたしまして、あるいは文書で実はお出ししてあるはずでございますが、その核兵器の定義をいたしております。その場合に、今申しましたように、これはある程度諸外国の文献等も調査して防衛庁でつくったものでございますけれども、いわゆる核分裂あるいは核融合反応を推進力に使うというものは、あそこでいう核兵器には入らない、それは広い意味で原子力を使うものでございまして、軍艦が原子力で動くというものを広い意味で原子兵器といえば、それは一つの言い方だと思いますけれども、普通の観念としては、いわゆる核兵器というのは、そうでなくて、殺傷用の武器として核爆発反応あるいは核融合反応を使うものである、かように考えるべきである、そういう意味であの当時お答えしてあるわけであります。
  51. 堂森芳夫

    堂森委員 かつて政府は、もちろん池田内閣ではありませんが、オネスト・ジョン、正直太郎を日本に持ってくるときにも、弾頭をつけていないから核兵器でない、こういう詭弁をもってごまかしておったのが、かつての政府の態度であります。  しからば、議論を進めて参りますが、もちろん、法制長官が今答弁になりましたように、核兵器を持ち込む際には、安保条約の交換公文によって事前協議をしなければならぬ、こういうことになっておるのでありますが、しからば、入ってくるであろうと予想されますところの原子力潜水艦がノーチラス型であるか、あるいはポラリス型であるか、そんなことは一々日本の政府がそれを知る、そういう事由がございますか。外務大臣に私はお尋ねしたいと思うのであります。いかがでありますか。
  52. 大平正芳

    ○大平国務大臣 米国政府が、今問題になっておりまする原子力を推進力とする潜水艦はノーチラス型であるということ、従って、安保条約上の事前協議の対象にはならない、米国軍艦にすべて適用されておりまする現行の地位協定に基づいて入港を許されるものであるというように、米国政府のスポークスマンも語っておりまして、私どもはそれを信頼いたしております。
  53. 堂森芳夫

    堂森委員 新聞の報道を見ておりますと、アメリカ側では、日本の政府の招請があらばこれに喜んで応ずる、こういうふうに書いております。こういう点につきまして、政府は招請をしておられるのでありますか。あるいは向こうからこちらに寄港したいという申し出があったのでありますか。この点御答弁を願いたいと思います。
  54. 大平正芳

    ○大平国務大臣 米国政府は、日本政府に対しまして、原子力推進潜水艦は従来世界各地を歴訪しておりますので、日本の寄港につきましても、日本がそれを受け入れていただければありがたいという通報はございました。そこで、先ほど総理大臣が申し上げました通り、今までわれわれは、この寄港によりまして問題があったということは聞いておりません。しかし、大事を踏みまして、安全上留意すべきことをよく確かめまして、その上で日本政府が受け入れるかどうかということをアメリカ政府にお答えする心組みでおるわけです。
  55. 堂森芳夫

    堂森委員 日本から招請をしておるのかどうかということを聞いておるのであります。
  56. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういう調査をした上で日本が招請するかどうか、日本政府としてきめたいと思っております。
  57. 堂森芳夫

    堂森委員 もちろん、アメリカ側から原子力潜水艦が来るというのは、これは別に日本に散歩に来るわけではないのであります。われわれ国民といたしましては、そうした原子力潜水艦が来るということには、いろいろな意味で大きな関心を持つことは当然であります。従って、政府は、何がゆえにこのような原子力潜水艦を、もし被害がないならば、何かのそういう災害というものが起きぬのであるならば、招請をしたい、こういうことになるのであるか。私は、これはきわめて重大なことだと思うのでありますが、大体各国において、原子力船の港での出入りということは、何か普通行なわれておるように外務大臣は言っておられますが、ほんとうにそうでございますか、この点、あなたはいろいろお調べになっているのでございますか、この点もあわせて御答弁願いたいと思います。
  58. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど私がお答え申し上げましたように、私ども調べてみますと、英国、オランダ、フランス、西独、イタリア、ベルギー、フィリピン、濠州に寄港しておるということは明らかになっておりまして、別段この寄港によりまして問題があるということは承知いたしておりません。
  59. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいまあげられました国々は特別な協定を結んでおって、たとえばイギリスとアメリカの間には、ポラリス型の潜水艦が入ることを同意する、こういう条約が結ばれておるようであります。私は、このような例、あるいはその他のことは知っておりますが、日本には原子力船を入れた例が今までにございますか、いかがでありますか。
  60. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御指摘のように、イギリスにつきましては、ポラリスの潜水艦の寄港を認める協定があるように聞いております。その他の国は、NETO条約でカバーされておるわけでございますが、この原子力潜水艦の寄港につきまして一体特別な協定があるのかどうかという点は、ただいま調査中でございます。わが国に関しましては、先ほど申しましたように、安保条約の地位協定によりまして、原子力を推進力とする潜水艦でありまして核装備のないものは、安保条約上日本の港に寄港できる建前になっております。
  61. 堂森芳夫

    堂森委員 しからば、外務大臣に重ねてお尋ねをいたしますが、原子力潜水艦というものは——これはもちろん、この世の中には絶対ということはないことは私もわかるわけでありますが、しからば、原子力船あるいは潜水艦というものによって海水が汚染される危険というものはほとんどない、こういう考え方に立っておられるのでありますか、この点を承りたいと思います。
  62. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ただいままで特にそういう点で問題になったことは聞いていないということ、先ほど私が申し上げた通りでございますが、ただいま政府におきまして、そういう安全上の問題を目下検討しておるという段階です。
  63. 堂森芳夫

    堂森委員 原子力を動力とする船舶につきまして、一九六〇年でありますか、ロンドンにおきまして、約五十の国が集まった国際会議が開かれました。そして海上人命安全条約というものがつくられたのであります。しかし、この条約は原子力商船を対象としたもので、各国は入港する原子力船に安全保障に関する確約をとる、それでもなお不安がある場合は、その入港を拒否できるの二点を骨子としたものであります。しかし、この条約にはアメリカは賛成したけれども、ソ連側が反対をして、ついにこれは実際上の効力を発効していない。また、一九六二年にブリュッセルにおきまして、同じく五十ぐらいの国が参集して、原子力船の運航者の責任に関する条約、こういうものがつくられたのでありまして、この条約は、主として原子力船が災害を起こした場合の損害補償を規定したものでありまして、一億ドルまでを運航者が補償することになっておる。同条約には米ソ両国とも反対をして、ついに、国際会議で両条約とも採択されながら、実際上の効力を発生するまでに至っていないのであります。  われわれは、原子力の潜水艦、かりにノーチラス型であっても、原子兵器であるという建前をとるべきである、こういうふうにはっきりした態度で臨むべきであるということを主張するものでありますが、かりに譲って、あなた方政府が言うように原子兵器ではない、従って、安全保障条約の交換公文にうたわれておる事前協議の対象にならぬとしても、国際的にもこれが認められてといいますか、常識としてそういうことをしよう、こういう傾向になっていない、国際的な、国際条約としての何か効力のない、またそういうところまでいっていない、こういう問題を何がゆえにわが国が先ばしってしなければならないのか、非常に了解に苦しむところであります。こういう点につきましてあなたの答弁を願いたい、こう思います。
  64. 大平正芳

    ○大平国務大臣 わが国の安全は、御案内のように、日米安全保障条約を根幹として守られておるわけでございまして、私どもは、この同盟国との間に結びました条約、それをささえている精神に忠実でなければならぬと思うわけでございまして、安全上特別の問題がなければ、太平洋艦隊の一部である原子力の潜水艦の寄港を認めるということは、支障がないばかりか、それを快く受け入れるという態度であらねばならぬと考えております。
  65. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、ただいままでの質疑応答を通じまして、もっと明確にしておかねばならぬ点があると思うのであります。この原子力潜水艦の寄港ということについては、わが日本の政府の方から招請をするのか、あるいは向こうから要請されたのであるか、こういうことについて、もう一度はっきりした御答弁を願いたい、こう思います。
  66. 大平正芳

    ○大平国務大臣 向こうから、安保条約上の事前協議ではなくて、その事前協議の対象になっていないものにつきましても、慣例上、日本政府に事前に御相談があるという慣行になっておりまして、それに従いまして御相談があったわけでございまして、私どもは、たびたび申し上げますように、安全上の問題につきまして特別の問題がなければ受け入れるということを米国政府に申し上げるつもりでございまして、今その調査をしておるという段階です。
  67. 堂森芳夫

    堂森委員 大平外務大臣の御答弁でありますと、日本が招請する、こういうことでございますね、そのように私は受け取るのであります。
  68. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今の問題を検討した上で、差しつかえなければ受け入れますということを申し上げるつもりです。
  69. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、日本は害がないから招請する、これでは理由にならぬと思う。どういう理由で原子力潜水艦を招請するのでありますか。われわれは、ノーチラス型であるとあなたは言っておられますが、そんなことはだれも保証するものはございません。しかも、軍の作戦なんというものはそういうものではないことは、これは常識でわかることであります。どういうわけで、どういう理由で招請されるのでありますか。害がないから招請する、そんなことは理由になりません。
  70. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申し上げましたように、太平洋艦隊の一部として近海を行動いたしておるわけでございまして、私どもは、この安保条約によりまして、米国と安全保障上の条約を結んで日本の安全を守っておるわけでございまして、それを守る力の一部である太平洋艦隊にそういう艦船がある。それが日本の港に寄港していけないなどということは、私は言えないと思うわけでございまして、安全上の問題に別段支障がなければ、そういう行動の過程におきまして日本の港に寄港するということは差しつかえないと考えております。
  71. 堂森芳夫

    堂森委員 先刻からの大平外務大臣答弁を聞いておりますと、やはり日本から招請をして、そして安保条約のうたっておる精神からいって、日本が招請するのだ、こういうふうに受け取るのでありますが、これはきわめて重大なことであります。何とあなたが抗弁されましても、これは明らかに原子兵器であります。そうして、これは原子兵器であって、しかも汚染する危険があるということも、これは否定し得ないところであります。いろんな意味できわめて重大でありますが、政府に向かって私は厳重な抗議を申し入れまして、私のこの点の質問を終わりたい、こう思うわけであります。  まず、私は総理大臣にお伺いいたしますが、先般の二十三日の本会議におきまして、施政演説で総理大臣は、秋を待たずしてわが国の経済は好況に転ずるであろうと、こういうふうな転ずることを確信いたしております。きわめて強固な確信のもとに演説をいたしておられるのであります。もちろん、わが国の国民で、国の経済が好況になるということを希望しない者はだれひとりないことは当然であります。しかしながら、かつて池田総理大臣は、この予算委員会の席上で、たとえば三十七年度の予算を審議する際におきまして、あなたは所得倍増計画というものを謳歌されました。そしてその答弁席から、十年間に所得は倍にいたします、あるいは物価は横ばいで上がりません、まあいろいろな点を強調されたのであります。今日はすでに、このあなたの当時のそうした態度というもの、あるいは政策としての所得倍増政策というものが、多くの点で破綻を来たしておるということは、私は否定し得ないと思うのであります。  そこで、総理大臣に重ねてお伺いします。先般の本会議の席上で、秋を待たずして好況に転ずると確信する、こういう演説をいたしておられますが、今でもそのようにお考えでございますか、重ねてお伺いしたいと思います。
  72. 池田勇人

    池田国務大臣 施政演説で、本年の秋を待たずして景気が好転するという確信があります、その通りに今も考えております。
  73. 堂森芳夫

    堂森委員 しからば池田総理大臣は、こまかい説明はけっこうでありますが、どういうような根拠から秋を待たずして好況に転ずるとお考えでございますか、伺いたいと思います。
  74. 池田勇人

    池田国務大臣 三十七年度のそれは、御承知通り行き過ぎた設備投資、またそれに関連しての金融の梗塞等がございまして、四・数%の上昇にとどまりました。しかし、大体調整過程が済みまして、そして設備は控え目になる、片一方の金融は、三十六年度が非常に引き揚げ超過だったのが、三十七年度になりましては相当の散布超過になって、金融はゆるんできております。そうして預金も相当増加してきております。今の状態では大体底をついたという気持が財界にもあり、一般もそう認めております。三十八年度の予算をごらん下さいますとおわかりのように、非常な健全かつ積極的予算でございます。これが御審議を願った上四月から施行されるということになれば、政府の投資、いわゆる政府財貨サービスというものは実は相当な額になっておるのであります。三十七年度が総生産十八兆八千億、三十八年度は二十兆三千億で、一兆五千億ほどふえておりますが、政府の財貨サービスというものは五千億余りもふえております。総生産のふえる一兆五千億の三分の一も政府の財貨サービスがふえるということは画期的なことなんです。それが四月ごろから動き出す。そうしてまた個人消費も一〇%伸びると予想しております。また、そのくらいいくでしょう。これは御承知通り、三十二年、三年等は一〇%いっておりませんけれども、三十五年、六年、七年は一二、三%いっている。一五%とか一三%という数字は、賃金の上昇によりまして、所得の増加によりましていっておるのでありますが、個人消費というものは、今年の賃金がそう上がらなくても、雇用数もふえておりますし、相当減るにしても一〇%ぐらいはいく、こういうことを考えますと、金融もゆるんできた、政府の財貨サービスも相当多い、画期的に多い。そうして消費も一〇%伸びる。こうなってきますと、景気というものは案外早く動き出すものなんです。私ばかりの意見でなしに、民間におきましても、今年の景気の予想をあれしますと、上期は横ばいである、下期になってよくなるというのは、だれが見てもそういうことなんです。私も私自身いろいろ検討し、しかもまた三十七年のような調整期から今度は少し伸びることを考えなければいかぬというので、今のこういう予算をつくったわけなんです。私は、秋を待たずして、今申し上げたような点から好況に向かうという確信を持っております。
  75. 堂森芳夫

    堂森委員 企画庁長官お尋ねいたしますが、配付になっておりますところの三十八年度の経済見通しと経済運営の基本的態度、こういう資料をいただきましたが、私はこれに従って質問をしたいと思います。あなたは企画庁の長官として、三十七年度は景気の調整期であった、そして三十八年度は地固めの年である、こういうふうに書いておるのであります七地固めの年であるということは、そう簡単に——私は言葉のあやで言っておるわけではないのであります。三十八年度は、いろいろな施策をして地固めの年になるのだ、こういうふうに言っておられると思うのでありますが、そのようにお考えでありますか。
  76. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういうふうに考えております。
  77. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、総理が言われるように、秋を待たずして好況に転ずる、これはきわめて積極的な好況になる、こういう意味にわれわれは解釈すべきであると思うのであります。しかるに企画庁長官は、三十八年度は底固めの年である、こういうふうに言っておられるのでありますが、非常に違うと思うのであります。重ねて企画庁長官総理のお答えとは違うと思われませんか、いかがでありますか。
  78. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 別段矛盾を感じておりませんので、先ほど総理答弁をされましたように、この際国民経済全体の、社会投資と申しますか、先行投資をしていくということが今年度の財政の一つの課題でございますが、それによって将来への伸び、発展をはかるとともに、そこから、その他の原因もございますが、経済が夏ごろからだんだん浮揚力を得て、そして三十九年度に向かって順調に上昇カーブを描く、こういうことでございますので、その間の矛盾を別段感じておりません。
  79. 堂森芳夫

    堂森委員 総理大臣に伺いますが、三十八年度は秋を待たずして好況に転ずる、こういうのと、三十八年度はいろいろの財政支出その他によって、秋ごろになるとだんだん景気は上向くであろう、こういう見通しを企画庁長官は言っておられるのでありますが、好況に転ずるというそのようなきわめて手放しの明るいようなお考え方と私は違うと思うのであります。われわれは、そういうあなたの御意見に対して、相当心配といいますか、そういうふうな考え方を持っておるのであります。くどいようでありますが、重ねて答弁を願いたい、こう思います。
  80. 池田勇人

    池田国務大臣 地固めのときだからよくならないというのは、私は考えが間違っておると思う。地固めすることによって上昇が出てくるのであります。これが日本人のいわゆる創造力のあるところです。施政演説にも申しておりますように、政府、民間の施策よろしきを得て——得ればと言っておりますが、得て、そうして前向きに地固めをしながら上向きにいくんだ、それがいく確信があるということを言っておるのであります。批判はいかようにもできましょうが、政府はその方針でいっておるのであります。
  81. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、池田内閣総理大臣がきわめて楽観的にものを見られておるという危惧を持つ、こういうふうに申し上げたいのであります。  そこで企画庁長官お尋ねをいたしまするが、昭和三十七年、昨年の十一月二十二日の新聞の報道でありますが、企画庁の原案と申しますか、基礎的な考え方と申しますか、三十八年度の経済の見通しと経済運営の基本的態度、こういうものを大体大筋でまとめた、こういうふうに報道されておりまして、三十八年度は名目上で七%台、実質で五・五%台くらいを確保したい、こういうことが書いてありました。しかし対策が後手に回ってくると景気停滞は予想外に長引いて、成長率はさらに低下していって、おそらく名目は六%くらい、実質は四%台に落ち込む、こういうふうに指摘しておる、こういうふうに新聞が書いておりましたが、当時のことはその通りでございましたか、この点まず承りたいと思います。
  82. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 十一月ごろであったかと思いますが、いろいろな作業をいたしておりまして、当時三十八年度の予算の見通しも、今日のごとくはっきりいたしておりませんでした。経済界全体の機械受注等の動きも必ずしも明確でございませんでした。作業の過程においてそういうふうに考えたことも確かにございます。
  83. 堂森芳夫

    堂森委員 そういうような考え方であった、こういうことだと御答弁になったと思うのであります。しかるに予算案ができまして十二月三十日に発表され、われわれに配付されておるものを見ますると、すでに名目は八%、実質は六%、こういうふうになっておるのでありますが、このように短期間の間に成長率の数字を引き上げておる。これは一体どういうことでありますか。もちろんあなたはいろいろと答弁をされるでありましょう。この点をまず承りたいと思います。
  84. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お手元にお持ちの資料にもございますように、その後の経済の動きを見ておりますと、三つの要因があるわけでございまして、一つは、私ども考えておりましたように、予算及び財政投融資の形でどれほどの先行投資、社会投資ができるかという要素、もう一つは、国民の消費がどういう傾向をたどるであろうかという要素、もう一つは、輸出の伸びがどういうことになるであろうか。その後しばらくの経緯を見ておりますと、そのうちの予算、財政投融資についてはすでに既知数となって現われております。輸出の伸びについても、おそらくただいまから見通し得る限り決して悲観する必要はない。消費については、未知数の部分が多うございますけれども、過去の経験から考えましてやはり一割程度の伸びは期待をして無理でない、こういう三つのいわば経済を持ち上げます要素が、大体私どもが当時予想いたしましたよりもいい形で出てきておりますので、ただいまのところは、そこで申し上げました、お手元にありますような考え方にまずまず大局的に間違いはなかろう、こういうふうに考えるに至っております。
  85. 堂森芳夫

    堂森委員 経済の成長を促す要因は、設備投資も一つの大きなファクターでございましょう。在庫投資もその一つの大きなファクターでありましょう、あるいはさっきもあげられましたような輸出の点であります。あるいは個人消費、政府の財政支出、こういうものがあげられると思うのでありますが、この見通しにも詳しく書かれておる通りであります。  そこで、個人消費が来年度も順調に伸びて一〇%くらいの増加になるであろう、こういうふうに見通しにも書かれておるのでありますが、私はこの個人消費の伸びというものがはたしてそのように楽観ができるかどうか、あるいはまた個人消費というものがわが国の経済を、なるほど落ち込むことを防ぐファクターになるかも知れないが、景気を上向きにしていくというようなファクターとしては私は必ずしも考えられぬのではないかという気持を持っておるのであります。  そこで私は通産大臣に伺いますが、今月の十九日の新聞報道でありますが、通産省発表の全国百貨店売り上げ、こういう数字が報道されておるのであります。この数字を見ますると、十二月の百貨店における売り上げは、昨年と比較しますると非常に落ちておる。もちろん十二月はボーナス月というわけでありますから、前月よりは伸びることは通例のことでありますが、三十七年の全国百貨店の売上高は六千七百九十六億円で、前年の五千八百何がし億円に比べ約一六・八%ぐらいの増加である。三十五年の二〇%以上の増や所得倍増計画のスタートで盛んな消費意欲を見せた三十六年の二四・三%増と比べると、増加率が非常に下がってきておる。こまかい数字は省略いたしますが、百貨店の売り上げというものが非常に鈍ってきておる。こういうことをあなたの省では発表されておりますが、こういう点から考えましても——私はもちろん百貨店だけの売上高の数字をもって云々する意図はありませんが、こういう点と、個人消費の伸び、こういうものについてあなたの御見解を承りたい、こう思うわけであります。
  86. 福田一

    ○福田国務大臣 お説の通り、百貨店の売り上げが昨年に比べて伸びが少なかったということは事実でございます。しかし、私は堂森さんのお考えについて考えておるのでありますが、実を言うと、景気の動向というものは、一般に非常に敏感なものがあるのでありまして、昨年は御承知のように景気調整をやりました。そして昨年の暮れくらいまでのみんなの感じは、はたしてどんな予算ができるだろう、また将来どうなるのだろうかという見通しについても、あるいはことし——去年から見て来年は、まああんまり景気がよくならぬのじゃないだろうかという感覚を多分に一般の人が持っておったと思う。そうなりますと自然とちょっと入ったものでも少しはよけい残しておこうかというような感じでいきます。ところが今日になりまして、先ほど総理からも御説明がございましたし、企画庁長官からもお話がありましたが、ずっと大体景気の動向としては上向きになるというような数字的な基礎も、現に予算面で出てきております。  それからまた、輸出関係等を見てみても、われわれはこれはあるいは一時下がるのじゃないかと思っておったのが、数字で見てみるとなかなか下がらない、なかなか順調に伸びておる、こういうようなことが出てきておりますし、それから一方われわれから見まして、先ほどあなたが仰せになった在庫が非常に問題なのであります。在庫にも原料といわゆる製品在庫とございますが、原料在庫はほとんど食ってしまっておる。それから今度一方において、製品在庫の方もことしの三月くらいで底をつく。もう今順次減って底をついておる。そうなりますと、今度はどうしても製品在庫も少しはつくらなければいかぬからというので、そういうような景気の見通しについて、今鉱工業全体としては一つもう少し積極的にやろうという気がまえに入っております。気がまえに入っておるが、それじゃすぐあしたからふえるかというと、そうはいきません。やはり三カ月なり半年なりの準備があって、そこで今度ぐっと具体的な結果が出てくるわけです。そこが総理も秋口から好転するであろうと言われる実は基礎的な資料であるとわれわれは考えておるのでありまして、そういう意味からいって、去年百貨店の売り上げが少なかったというか、伸び率が少なかったということだけで、今年の景気の動向をあまり悲観的に見る必要はないのじゃないか。かように考えておるわけであります。
  87. 堂森芳夫

    堂森委員 通産大臣にさらに伺いますが、本月の十七日に本省で全国の地方通産局長会議を開いておられるのであります。この日におきまして、いずれの局長も口をそろえて言っておることは、全体として景気調整策の手直しが行なわれたにもかかわらず、鉱工業生産は停滞し、在庫は高水準で経済活動がにぶい。設備投資の鈍化から景気回復力は弱く、このために不況の影響は生産流通面からさらに消費、雇用面にも及んでおる。こういうふうないろいろな報告をなされておるのでありまして、いずれの局長の報告を見ましても、不況というものが消費面にまでだんだん及んでおる、こういう報告をされておるのであります。これはあなたの出先の地方の局が実際に国民の末端において、本省ではなしに地方において実際に把握しておるところの実情は、私はこうだと思うのであります。不況が消費面にも及んできておる、こういう報告をしておるのでありますが、あなたはどのようにお考えでございますか。
  88. 福田一

    ○福田国務大臣 お説の通り、局長会議においては、局長からそういうような説明があったことも事実でありますが、しかしそれは、すべて経済の動きというのは、消費の面とか、そういう面におきましては常にあとからあとから出てくるのであります。非常に景気がよくなったから、すぐ消費が伸びるかというとそうではありません。ある一定限度の景気が続いたあとに消費の急上昇が起こり、それから今度は景気が一応調整期に入っておりますと、今度は将来は伸びると思っても一応は底をずっと歩んでいくというふうに、どうしても私は景気動向というものは、鉱工業の動きよりあとあとになって影響が現われてくると思うのでありまして、ちょうど昨年は御承知のように、景気調整期といいますか、調整策をとっておりました実情等もございますので、その影響がずっと今続いております。大体三月ごろまではそういうふうなことでいくだろうと実は私も考えておるのであります。しかし先ほども申し上げましたように、在庫等もだんだん底をついてくるようになったし、それから来年度予算の内容を見ましても、あるいはまたそれに伴う消費の動向、いわゆる給料等の値上がりに伴う消費の動向、あるいはレジャー・ブームといいますか、一つの空気がございますが、これがなお続いていくというような空気等々を見てみますと、これは在庫も少なくなっておりますから、鉱工業生産が動き出すという気配を今示しておる。しかし、それでは今そういう気配があるから急に景気がよくなるかというと、準備過程が要りますから、やはり半年くらいたった秋口くらいから景気が上るのだ。従って私は、消費の面に及んでいるということはもう事実であるけれども、それだからといって来年の消費が非常に悪くなる、あるいはわれわれが見込んでおるような消費がないということにはならないのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  89. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、消費が落ちるなどということを言っておるのではないのであります。いろいろ申されましたが、政府の見通しを見ましても、景気をささえていく要因の最も大きなものは、個人消費の支出である、こう言っておられるのであります。しかしそれには政府が言っているように、景気をささえるような要因となり得るかどうか、それは私はそう楽観できないのではないか、こういうことを言っておるのであります。  そこで、個人消費を高める要因というのは、もちろん賃金の上昇が一つの大きな理由でありましょう。あるいはまた減税が行なわれるということも一つの、すなわち可処分所得がふえていく、こういうことであろうと思うのであります。あるいはまた社会保障ということが行なわれ、よくなっていく、こういうことも一つの大きな個人消費支出をふやす要因でありましょう。次に大事なのが物価安定であります。これらのいろいろな要因が重なって、個人消費はどんどんふえていく、こういうことであろうと思うのでありますが、先般の本会議におきまして、自由民主党の政調会長の賀屋議員がたしか質問されたと思うのでありますが、賃金のストップをすべきである、こういうふうな意味の質問をされたのでありますが、池田総理は、たしかそれにそうだ、こういうふうな答弁をされたように思っておりますが、その通りでございますか、総理大臣に伺いたいと思います。
  90. 池田勇人

    池田国務大臣 私は労働者の賃金をストップしょうなんという考えは毛頭持っておりません。ただ生産性の向上に見合った堅実な賃金の上昇が望ましいと言っておるのでございます。そういうことを私はいまだかつて言ったことはございません。考えたこともございません。
  91. 堂森芳夫

    堂森委員 しかしながら総理大臣は、わが党の代表の質問に対して、日本の国の物価上昇の原因は、賃金の上昇によるコスト・インフレであるというような意味のことをたしか答弁しておられました。そして困っているのは大企業であって、勤労者は困っていない。こういうような意味の答弁もされましたが、やはりそのようにお考えでございますか。もっとも本会議の席上において聞いておった私の記憶でありますから、間違いがあるならばけっこうでありますが、この点も重ねて御答弁を願いたいと思います。
  92. 池田勇人

    池田国務大臣 物価の上昇につきまして、卸売と小売並びに消費者物価の問題がございます。労働賃金の上昇が一番影響するのは卸売でございます。卸売は、施政演説で言ったように、弱含み、横ばいであります。これでおわかりになると思います。ただ、問題の消費者物価につきましては、これは中小企業その他自由職業等における賃金の上昇というものが消費者物価、小売物価に影響することは、実例が示しておる通りでございます。だから、事を分けて考えなければいかぬと思います。ただ生産が横ばいになり、賃金は上がっている、そこで大企業の経営者はかなり困っておるということは言える。そういう考えを私持っております。しかし、今のコスト・インフレというのは生産性と賃金の上昇との関係で、困る困らないよりも根本的の経済理論の問題です。だから、生産性の向上よりも長く引き続いて労働賃金の上昇が上回って続いていくということになると、コスト・インフレが心配だ、こういうことを言っておるのであります。
  93. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますると、昨年も公務員の給与がアップになりました。また春闘と申しまして、労働組合の諸君は大幅の賃金のアップを要求しておるのでありますが、しからば賃金は三十八年度においてはもっと上げるべきである、こういうふうに総理大臣はお考えでありますか。あるいは公務員給与につきましては、もちろんこれは政府が行なうものでありますが、どのようなお考えでありますか。消費の支出増とも非常に関係の深いことでありますから、御答弁を願いたいと思います。
  94. 池田勇人

    池田国務大臣 昨日も総評の幹部と会いまして、春闘あるいは公務員の大幅な給与引き上げということを言われておりましたから、日本経済の健全な発展のためには、そしてお互いに安定した経済を望むならば、無理な賃金の引き上げは私は賛成できない、こう言ったのであります。モデレートな、合理的な上昇ならやむを得ない、思いついた行き方はお互い国民全般のためによくないと言っておきました。公務員の給与につきましては、御承知通り、民間の給与に準じていくのでございますが、民間の給与がそう上からなければ公務員の給与もそう上がらないと思っております。
  95. 堂森芳夫

    堂森委員 総理は、公務員の給与は民間給与が上がれば上げなければならぬ、こういうふうに答弁されたと私は理解するのであります。そこで私は個人消費のことに関連しまして、消費生活に関連しまして企画庁長官お尋ねをいたしたいのであります。  昨年の末にあなたの役所で昭和三十七年度版の国民生活白書というものを発表されておるのであります。その題名は、景気調整下の国民生活と生活革新の現段階という名がついております。この白書の内容でありますが、景気調整下の、いわゆる不景気下においても個人消費はどんどん上がってきた、従って、このような調整下でも個人消費が上がってきて、しかも高度化、多角化してきた、こういうことが盛んにPRされてありますが、私はいろいろな意味でこの白書には問題があると思うのであります。たとえばこの白書の対象になっておる、あなた方がPRしておられるところの重要な点の一つは、所得の少ない人と多い人との格差が縮まってきた、そうして所得の少ない人たちほど支出が多角化して、よくなってきた、こう言っておられるのであります。しかしこの階層の対象であります五分位であります。第一から第五までと分けてやっておられます。しかしこれを見まして私が思うのは、この対象外にある人たちの問題であります。今日生活保護世帯は、大体六十一万世帯前後であろうと思います。さらにこれに近いボーダー・ラインの世帯は百万をこえるのではないか、こういわれております。あるいはもっと多いと言う人もあります。少ないと言う人もございましょう。ともかく相当数の方々がおる。こういろ人たちが一体こういう調整下あるいは消費者物価の急激な上昇、こういうものによってどういう影響を受けておるのかということは、全然除外されておるのであります。そうするとこういう所得の少ない要保護者あるいはそれに近い人たちが、政府のこうした調査の対象になっていないということは、一体どういうわけでございますか、私は伺いたいのであります。
  96. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ちょうどいい機会であると思いますので申し上げるわけでございますが、せんだってから経済の高度成長に伴って所得の格差が広がりつつあるというお説をしばしば承るわけでございますが、しかしその点は、五分位の階層について考えてみましても、昭和三十四年から昨年まで所得の伸びが著しいのは、一番低い方の階層ほど著しいわけでございます。それから常雇用三十人以下の小企業と三十人以上の企業について考えましても、やはり賃金の伸びは、小さい企業の雇用者ほど伸びが大きい、しかもそういう下の方と申しますか、下の階層の伸びが企業別にも、五分位別にも、はるかに上の者よりも大きいということ、及び三十四年から昨年まで、物価騰貴を除きましたネットの国民消費水準でございますが、毎年六%ぐらい上がっておるわけでございますから、高度成長に伴って所得の格差が大きくなりつつあるという御説は、統計についてみます限り私は誤りであるというふうに考えております。これは総理府の統計局の家計調査、農林省の農家経済調査等で明らかであろうと思います。  それで五分位のお話でございますが、ボーダー・ライン以下の階層の消費生活が五分位の一番下の層に入っていないということはないのでございまして、これは全部入っておるわけでございます。おそらく御指摘の点は、低額所得者と申しますか、経済の伸長に伴って平均的に所得が伸びない人々についていわれたのだと思いますが、それを五分位の一番下の階層に統計的には入っておるわけでございます。そういう層に対する施策としては、やはり生活保護基準の引き上げでありますとか、あるいは国民年金、社会保険等々、このたびの予算でも措置がとられておりますが、そういう形で、グループからあまりおくれないように所得を上げていく、そういう政府の施策によってそういうことをやっていくということであると考えます。またそういうふうになされておると考えますので、それが五分位の中に入っておらないということはないわけだと思います。
  97. 堂森芳夫

    堂森委員 それはあなた、間違いでございます。東京における生活保護世帯の五人家族で一体標準幾らもらいますか。御答弁願いたいと思います。
  98. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 つまびらかにいたしませんが、私の今申し上げた限りのことは誤っておらないはずでございます。
  99. 堂森芳夫

    堂森委員 企画庁長官答弁は間違っております。断じてそういうことはありません。まあきょうは私はその方面の質問をするわけではございませんから後に譲りたいと思いますが、個人消費というものが、そのように、物価の安定というような重要な問題等も——もちろん消費者物価の指数でありますが、そういうものも上がっていく、いろんな要素を加えて、池田総理大臣がおっしゃるように必ずしもこの個人消費支出が秋を待たずして好況に転ずるような大きなファクターにはなり得ないだろう、こういうふうに私は考えるわけであります。  そこで、時間がございませんから私はもう終わりたいと思いますけれども、自分の質問の大部分ができなくなって参りました。そこで、企画庁長官お尋ねいたしますが、来年度の予算政府財政支出は約六千億近い増になる、こういうふうに考えるのであります。そして、あなたの方では、この政府財政支出六千億弱の増加によって経済成長が三%くらいは増加するであろう、こういうふうに言われておるのであります。そこで、私は、来年の操業率といいますか、操業度ですね、鉱工業の操業度というものが一体どれくらいになってくるか、ことしはどれくらいであるというふうに考えておられるか、この点をまず御答弁を願いたい、こう思います。
  100. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 非常に正確に申しますと、操業度がはっきりつかめております一番最近の数字は、昨年の第三・四半期の終わりでございます。その場合の製造工業の全平均の操業度は八〇%をちょっと切ったところ、七九・何%であったと考えております。高いものも低いものもございますが、平均でそのくらいであったと思います。その後、ただいまのところ、三月ばかりあとでございますが、大きな動きはそれからなかったように考えます。今年の見通しでございますが、機械受注その他から考えますと、八〇%をこえていくという程度のことは申し上げても間違いじゃないと考えます。
  101. 堂森芳夫

    堂森委員 あなたのところの人たちの意見では、三十七年度は大体あなたのおっしゃる通り七九くらいでございましょう、しかし、八年度は操業度は下がるんではないか、七五、六になっていくのではないか、こういうふうに見通しを言っておられますが、あなたの間違いでございませんか。重ねて答弁を願います。
  102. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、一方において新規の設備投資がどれくらいあるであろうかということに当然関連をいたすわけでございますが、私ども、今年の設備投資を、御承知のように昨年より大きいとは考えておりませんので、それから、全体の傾向、鉱工業生産の伸び等の考え方は御承知通りでございますから、操業度がそれより下がるということは論理的にあり得ないはずでありまして、そういうことを私の役所で責任を持って申し上げたことはないと思うのであります。
  103. 塚原俊郎

    塚原委員長 堂森君に申し上げます。申し合わせの時間が経過いたしましたので、結論をお急ぎ願いたいと存じます。
  104. 堂森芳夫

    堂森委員 企画庁の調整局長はおられますか。   〔発言する者あり〕
  105. 塚原俊郎

    塚原委員長 不規則発言を禁じます。
  106. 堂森芳夫

    堂森委員 先刻企画庁長官答弁されましたように、来年度の操業度はそのように大きくぐっと伸びるという見通しと、あなたは事務的に考えられましてそのように考えておられますか。この点伺いたいと思います。
  107. 山本重信

    山本(重)政府委員 お答えいたします。  操業度につきましては、過去の設備投資がどの程度生産力化するかという問題がございまして、これにつきましてはいろいろな方式で従来から検討をされたこともございます。しかしながら、いろいろな前提を置いて計算をいたしますために、たとえば、設備投資のうちの何割が更新に充てられて、何割が新規の生産能力になるかという率の問題、また、設備投資が行なわれてから生産力化する間のいわゆる懐妊期間、これをどの程度に見るか、こうした前提を置いて計算いたしますので・その前提をちょっと変えますと全く違った結論が出て参るわけでございまして、従いまして、そういう観点からの検討は実は今回はいたしておりません。  それから、一般的な観測といたしましては、過去三年間の設備投資がかなり高水準でございましたので、その一部分は来年も生産力化することは間違いないところでございますので、年度の前半におきましては鉱工業生産がそう急速に上昇する大勢にはないと思いますので、操業度が特に年度の初めから上がっていくというようなことは考えておりません。おそらく弱含みで参るかと思います。しかし、年度の終わりごろには、鉱工業生産の上昇によりまして操業度も若干は上がると見ていいのではないかと思います。ただ、これにつきましては、ただいまの、昨年の九月末の七九・五%という通産省の方の計数が今後どういう経路をとるであろうかということについて、明確な数字は特に出しておりません。
  108. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいまの調整局長答弁は何を言っているかわかりません。私は企画庁長官のそうした操業度が上昇するという見方は間違っていると思います。  時間がございませんから私は結論に入ります。さらに通産大臣にも鉱工業の今後の伸び等につきましても多くの問題があるというわけで質問をいたしたいと思っておりましたが、時間がございませんので、最後に私は総理に伺いたいと思います。  来年度の予算案を見ますると、財政投融資が一兆一千億を上回っております。もちろん一般会計予算は二兆八千五百億であります。その比率は財政投融資一般会計予算の三分の一強でありましょう。この財政投融資計画というものが生まれてきたのは、もちろんそういう名前ではなしに古くからやられておったことは当然でありますが、昭和二十八年度からこれが始まってきた、こういうふうに記憶しておるわけでありますが、従来から、現在もそうでありますが、一兆円をこえるような膨大な予算を持っておる。しかも、傾向として、特に戦後、この財政投融資計画というものによって政府がいろんな融資活動をやる、あるいは投資活動をやる、あるいは事業活動をやる、こういうことがますますふえて参っておるのであります。しかしながら、財政投融資計画というものは議案ではないのであります。参考書類であります。従って、たとえば財政投融資計画の原資を見まするならば、郵便貯金であるとかあるいは年金の積立金であるとか、いろんな零細な国民の資金というものが集められてその原資に向けられておる。たとえば、一兆一千億余の財投の中で原資の配分を見てみますと、六千億をこえるものは運用部資金であります。こういうふうに見ますると、これが国会の議決の対象にはならぬ、こういうふうなことは私はきわめて不合理だと思うのでありますが、総理大臣はこれに対してどのようにお考えでありますか、答弁を願いたいと思います。
  109. 池田勇人

    池田国務大臣 産投会計その他起債等につきましては、御承知通り特別会計として御審議願っておりますし、また、内国債あるいは外債につきましても予算総則で御審議願っております。お話資金運用部の郵便貯金、簡易保険等につきましては、法律に基づきまして運用委員会を設けまして適正な措置をいたしておるのであります。これは、一般の租税その他の歳入による一般会計とは違いまして、金融面で弾力的にいろいろ考えなければならぬ面もございますので、私は今の制度が適当であると考えておるのであります。従いまして、その運用につきましては、国会説明するとか、内容につきましても十分説明をすると同時に、また、予算関係で特に必要なものにつきましては、予算として審議してもらっておる状況でございますので、私は今の制度が適当だと考えております。
  110. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、もちろん、財政投融資資金計画というものが一般会計から捻出されるもの、従って、そういうものといろいろなものが込みになって行なわれておる、それはよく承知いたしております。しかし、資金計画というものは、それ自体は議決の対象になっていないのであります。もちろん、経済というものは生きものでありますから、すべてをというわけにはいきますまいが、財政投融資というものを特別に縛って、たとえば、一般会計あるいは特別会計、政府機関会計、こういうふうに大まかなところでこれはやっぱり議決の対象にしていく。一々そういう計画活動を縛るということは不可能でありましょう。経済の変動によっていろいろそれに対処しなければならぬことはわかるのであります。たとえば、そういう参考資料、こういうものでわれわれに配付されておりますから、この資料を見ましても、きわめてずさんなものがあるのであります。財政法の二十八条によりますと、国が資金を出しておる大法人については、前々年度のいろんな内容というもの、たとえば歳出歳入あるいは債務、そういうものを厳重に報告しなければならぬ、添付しなければならぬ、こう書いてあるのであります。従って、もちろん政府機関もそういう義務があり、添付しなければならぬと書いてあります。しかし、この政府が出資しているいろいろな大法人についても、そうしなければならぬと書いてあるにもかかわらず、たとえば道路公団なんかを見ましょう。そうしますと、日本住宅公団もそうであります。三十八年度事業年度末の見込み貸借対照表はこうこうであると、三十八年のものについては何らここに記載されておりません。しかし、政府機関については、厳重に三十八年度のものが記載されております。これはやはり、参考書類としてきわめて軽く扱っている、こういうところに私は原因があると思うのであります。一々縛れと言うのではございません。従って、財政法の二十八条の違反である、こういうことも私は言えると思うのであります。これは厳重に解釈すれば当然そういう議論が出てくるのであります。不確定な要因があるからといっても、すべて経済には多くの不確定な要因があることは当然であります。これに対して総理大臣はいかがお考えでありますか。重ねて御答弁を願いたいと思います。
  111. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  仰せの通り、財政法二十八条による昭和三十八年度の予算参考書類には三十八年度の損益状況が掲載してございませんが、これは予算決定のときに概定をいたしておりますが、御承知通り状況でありまして、設置法その他でもって、昭和三十八年度のものはおおむね三月三十一日以前に所管大臣の認可を得るということで、現在の状態ではこまかく事業計画を策定することがちょっと時間的に間に合わなかったために掲載をしなかったわけでありまして、例年の例もありますので、御了解賜わりたい、こう感じておるわけであります。
  112. 堂森芳夫

    堂森委員 もう時間でございますから終わりますが、政府としてはこれは当然考えるべきであります。資金源の大部分は零細な国民の資金が集められている。それが政府機関では厳重に書かれている。こういうふうな事業団、公団というものは三十八年に関しては何も記載していない。これはやはり、参考資料である、議案ではない、議決を要しない、こういうところにこういうものが生まれてくるのであります。私は、政府に警告を発しまして、そういうふうに善処されますように要望しまして、もう時間がございませんから、これをもって私の質問を終わります。
  113. 塚原俊郎

    塚原委員長 午後は一時二十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ————◇—————    午後一時三十六分開議
  114. 塚原俊郎

    塚原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十八年度総予算に対する質疑を続行いたします。  木原津與志君
  115. 木原津與志

    ○木原委員 私は、当面の外交問題、特に日韓交渉を中心にして総理並びに関係閣僚に御質問を申し上げるのでございますが、その前に、午前中の堂森委員質問だ関連いたしまして、原子力潜水艦の日本寄港の問題について最初に外務大臣にただしておきたいと思うのでございます。  先ほど外務大臣は、アメリカの要請によって寄港を認めたいという御答弁でありました。けさの朝日新聞にアメリカの国務省の言明という記事が出ております。国務省の言明の記事を読んでみますと、日本に潜水艦の寄港を認めてもらいたいのは、日本国の要請があったときに招請状を出さない限り原子力潜水艦を外国の港に入港させない政策をとっておる、こういう国務省の言明が載っておりますが、この潜水艦を寄港させるかさせぬかということは、受け入れ国からの招請状を待ってアメリカの方で決定することなんですか、どうでしょう。
  116. 大平正芳

    ○大平国務大臣 こちらから要請するということはいたしておりません。先方からお話がございましたので、先ほど申しましたようなことにつきましてよく調べた上で、安全で心配はないということでございますれば先方の要請を受け入れて差しつかえなかろう、こういう判断でございます。
  117. 木原津與志

    ○木原委員 そうすると、アメリカから寄港させてくれという要請がなければ、こちらから進んで寄港してくれという招請をするのじゃない、こういうことになりますか。
  118. 大平正芳

    ○大平国務大臣 さようでございます。
  119. 木原津與志

    ○木原委員 アメリカは、潜水艦を寄港させてくれということは正式に要請して来たのですか。もし来たとすれば、いつ要請して来たのでしょう。
  120. 大平正芳

    ○大平国務大臣 本年の一月九日、ライシャワー大使から私に対して口頭でそういうお話がありました。
  121. 木原津與志

    ○木原委員 ライシャワー大使から口頭で要請があったのは、寄港の目的だとか、あるいはどの港に寄港したいとか、そういうような具体的な要請があったものかどうか。さらに、その要請にこたえるというそういう行為、そういうことは日米行政協定の中から出てくる作用であるかどうか。その点外務大臣にお伺いしたい。
  122. 大平正芳

    ○大平国務大臣 具体的にどの港にいつというようなお話ではございません。後段の方は、行政協定に基づくものでもございません。このことは、先ほども私が申し上げましたように、事前協議事項ではございませんが、今までの慣例上先方から事前に御相談をいただいておるという性質のものです。
  123. 木原津與志

    ○木原委員 このアメリカ国務省の言明という記事の中には、こう書いてあるのです。「米国政府は、日米行政協定にもとづいて原子力潜水艦を日本に送りたいと考えているが、米国は受入国の政府が招請状を出さない限り、原子力潜水艦を外国の港に入港させない政策をとっている。」、こういう言明がワシントン電で来ておるわけなんです。今あなたは、何も行政協定に基づく寄港の要請じゃないんだと言われますが、アメリカの方では、はっきり、日米行政協定に基づいて——おそらくこの日米行政協定というのは基地使用の協定じゃないかと私は想像するのですが、それに基づいて原子力潜水艦を日本に送りたいと考えておる、こういうことになっておるのです。あなたは日米行政協定と関係はないと言われるのですが、この点はどうなりますか。アメリカの言うことと日本の外務大臣の言うことと違うようだが。
  124. 大平正芳

    ○大平国務大臣 大へん失礼しました。私が申し上げましたのは、つまり、安保条約上の事前協議事項じゃないという意味のことを申し上げので、日米間の行政協定に基づきまして、安保条約全体の運営がはかられておることは御案内の通りでございます。今国務省の御発表が読み上げられましたけれども、私はそれを関知していないのでございまして、私が承知いたしておりますことは、一月九日口頭で申し入れがあったというところから出発をいたしておるわけです。
  125. 木原津與志

    ○木原委員 そうすると、先ほど日米行政協定の基地使用とは関係がないとおっしゃったのは、あなたの間違いですね、はっきり日米行政協定に基づいてアメリカの寄港の要請ということになるわけですね。そういたしますと、安保条約に規定されておる事前協議と寄港とはどういう関係になりますか。潜水艦の寄港との関係、その点明らかにしていただきたい。
  126. 大平正芳

    ○大平国務大臣 重要な装備の変更につきましては事前協議の対象になるということは、木原委員も御承知通りでございまして、私ども、このことは重要な装備の変更とは考えていない。事前協議の対象にはならぬと考えております。
  127. 木原津與志

    ○木原委員 それがちょっと私理解しかねるのです。今までアメリカは原子力潜水艦を日本には全然寄港をさせておらなかったのですね。その寄港しておらなかったのを、今度新たに原子力潜水艦を日本に寄港させる。しかも、その寄港については期限とかなんとか一切ない。一日おっても、一カ月おっても寄港だということになるのです。そういうような重大な、受け入れ国に対して利害関係が非常に深い問題を、どうして事前協議の対象にならない、装備の変更にならないと言うのか、そこのところをもう少し詳しく、その理由と根拠をお示しいただきたい。
  128. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、午前中も私から御説明いたしましたけれども、安全保障条約の改定の際に、御承知のように、日米間の交換公文がございます。これで事前協議の問題を定めております。そこに三つの項目がありまして、配備における重要な変更と、装備における重要な変更と、それから戦闘作戦行動についての基地の使用と、三つあるわけであります。その中の装備における変更というのは何かということを当時いろいろ御質問もありました。また、政府からも積極的に答弁しておりますが、核兵器の装備をすることであるということをお答えいたしておるはずであります。従いまして、この原子力船は、午前中お答えいたしました通りに、一般の定義から言っても核兵器には属さない、これはまたすでに何回か防衛庁からも核兵器の定義はお答えしておるはずでありますが、あの定義には当たらないものである、推進力のみに原子力というものを使う船、これは核兵器には入らない、かように考えられておるわけでございます。従いまして、安保条約改定当時におけるあの交換公文の意味、あの装備における重要な変更には入らないということは、その当時からはっきりしておることでございます。
  129. 木原津與志

    ○木原委員 私どもしろうと考えからすれば、装備の変更ではないという御答弁そのものに納得しかねるのですが、ただし、あなたの今おっしゃるように、核装備だけの問題だというふうにおっしゃると、また問題は別になると思うのです。この潜水艦は原子力で推進されるもの、この原子力潜水艦が核装備をしておらない限り装備の変更にならない、こうあなたはおっしゃるのですが、その点、あなたとともに外務大臣も大事なところですから補足して説明して下さい。
  130. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどお答えいたしました通りに、事前協議条項の交換公文の文章は、御承知通りに、装備における重要な変更ということでございます。つまり、すべての装備の変更ではございません。その場合に、重要な変更とは何かということは、安保条約改定の審議の際にも繰り返して質疑応答がかわされております。それで、その場合の重要な変更とはこういうことであるということで、核兵器を日本に持ち込み、装備する、在日米軍が核兵器によって装備されることであるということは、はっきりお答えしてあることでございます。従って、今回の問題が事前協議の対象になるかどうかということは、原子力潜水艦が核兵器なりやいなやということになってくるわけでございますが、これは、午前中もお答えいたしました通りに、一般の定義から言って、核兵器には属さない。核兵器というのは、これも防衛庁から当時の委員会で文書で出しておったと思います。内閣委員会に文書で出しておったのかわかりませんが、要するに、原子核の分裂または融合反応を破壊力または殺傷力に使う兵器、これを核兵器ということにはっきり言ってございます。これはまた社会一般的な定義であろう、かように考えるわけでございまして、そこに何ら疑問の余地はないと考えております。
  131. 木原津與志

    ○木原委員 私どもはこの寄港がどこになるかは知りませんけれども、日本国じゅう、少なくとも太平洋岸にたくさんの港がある。その港に、どこと言わず、その潜水艦が日本の許諾に基づいて入ってくるというようなことになれば、単に核という質だけの問題でなくて、量の問題、港々に自由に原子力潜水艦が出入りするということ自体、これが重要な装備の変更にどうしてならないのだろうかということを疑問にするわけなんです。外務大臣、いかがですか。
  132. 大平正芳

    ○大平国務大臣 潜水艦を推進する動力として原子力を使うということにすぎないわけでございまして、私は、それは装備における重要な変更であるとは考えておりません。
  133. 木原津與志

    ○木原委員 この装備の変更でなくて、行政協定に基づいて向こうが要求するというものであるならば、なぜその協議を日本が承認せなければならぬということになるのでありましょうか。その点いかがです。
  134. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日米間の信頼関係によりまして、事前協議事項でなくても事前に御相談しようという慣例がございまして、その慣例に忠実であられたものと思います。
  135. 木原津與志

    ○木原委員 そんならば、こう解釈してよろしゅうございますか。原子兵器を積んでない潜水艦ならば、事前に何らの協議なくして、原則として行政協定に基づいて自由に寄港することはできるんだ、しかし、事前に日本に通告をするということは、念のために通告してくるんだ、本来ならば通告せぬでも自由に原子力潜水艦は日本の港に入ってきていいということになるのでございましょうか。その点いかがです。
  136. 大平正芳

    ○大平国務大臣 さようでございます。
  137. 木原津與志

    ○木原委員 あなたはさようでございますと言うていますが、アメリカの国務省そのものが、原子力潜水艦を外国の港に入港させない政策をとっておる、米国はただ受け入れ国の政府が招請状を出したときだけ寄港するので、そのほかのときは外国の港に入港させないという方針をとっておるんだ、こう言明しておるのに、受け入れ国の外務大臣が、別に前もって通告せぬでもいい、自由に原子力さえ積んでなければ入ってきてもいいんだと言うのでは、一体あなたは日本の外務大臣かどこの外務大臣か、私どもにはわからぬのですが、どうです。アメリカの国務省でははっきりそう言っているんですよ。原子力潜水艦は相手国が招請状を出さぬ限りやらないんだ、こう言っている。それを、あなたは、行政協定に基づくのだから、事前協議の対象にならぬから、前もって協議しなくても、通告しなくても自由に入ってもいいんだ、こう言われるのでは、ちょうどアメリカの外務大臣と日本の外務大臣とひつくり返ったような感じがしますが、その点どうでしょう。
  138. 大平正芳

    ○大平国務大臣 安保条約の解釈上、私が申し上げたような結論になると思います。しかし、にもかかわりませず、先方からそういう事前の御相談がありましたので、それに応じて検討しておるということでございます。アメリカ政府がどういう政策をとられるかということは、私からいろいろコメントすべき筋合いのものでないと思います。
  139. 木原津與志

    ○木原委員 そうすると、今の外務大臣の話はちょっとふに落ちないのですが、アメリカの方でどう考えておろうが、日本は、行政協定の建前上、原子力さえ積んでなければ、核さえ積んでなければ勝手に入っていい、こういう解釈をとられておる。しかも、今回の場合、事前通告があったのは、それは念のための通告で、慣例に従った通告だ、こう確認してよろしゅうございますか。それでいいのですか。
  140. 大平正芳

    ○大平国務大臣 通告というよりも、相談を受けたということでございます。
  141. 木原津與志

    ○木原委員 午前中にあなたは堂森委員質疑に答えて、ノーチラス号が入ってくるんだ、ノーチラス号は核兵器を積んでおらぬ、装備してない、こういう趣旨のお答えがあったと私は聞いておりましたが、このノーチラス号に核兵器を装備しておらないということは、日本政府で確認しておられますか。どうです。
  142. 大平正芳

    ○大平国務大臣 アメリカ政府の言われることを信頼いたしております。
  143. 木原津與志

    ○木原委員 たよりないことおびただしい。アメリカが積んでおらぬと言うからそれを信頼するというようなことでは、非常に不安の感がありますね。ところが、アメリカは、ポラリスには核兵器を装備しておる、こういうことをはっきり言うておる。すると、ポラリスを持ってくる場合、ポラリス潜水艦が入港する場合は日本はどうされますか。外務省、政府はどういう態度をとられますか。
  144. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ポラリスが入る場合は、当然これは事前協議の対象になるものでございまして、その前提に立ちまして、日本政府としてはとくと検討しなければならぬ問題だと思います。
  145. 木原津與志

    ○木原委員 ポラリスは中距離弾道弾を装備した最も新鋭のものだということをわれわれも聞いておりますが、このポラリスを寄港させるかどうかということは事前協議の対象になるという言明をされました。  そこで、もう一点念のためにお聞きするのですが、池田さんは、もう就任初めから、日本は核武装をしない、核の持ち込みもしないということをはっきり確約をしておられる。そこで、アメリカがもしここで核装備をしたポラリスを寄港さしてくれと言うような場合においては、これは池田さんの政策上もう当然お断わりになることだろうと思いますが、念のため確認しておきたいと思いますが、この点、総理いかがです。
  146. 池田勇人

    池田国務大臣 変わりはございません。
  147. 木原津與志

    ○木原委員 そうすると、もう一点念のためお尋ねしておきますが、総理がおっしゃる、核兵器は持たない、核の持ち込みもしないということは、核装備した兵器の港に寄港することも含んでおる、こう了解してよろしゅうございますか。
  148. 池田勇人

    池田国務大臣 そう了解して差しつかえございません。
  149. 木原津與志

    ○木原委員 次に、日韓交渉の問題について総理並びに外務大臣大蔵大臣お尋ねいたしたいと思います。  私は、戦後の日本の外交をずっと見て参りまして、日韓交渉くらい、筋の通らない、しかも、屈辱といいますか、屈服といいますか、全く相手方にねじ伏せられたような交渉をやっておられるという感じを持つ外交交渉はないと思う。  まず過去にその最大のものを一つだけ指摘いたしてみますと、これは池田さんの内閣のときにやったことではございませんが、あの昭和三十二年の十二月三十一日、日韓の合意書をつくられたときに、それまで日本が韓国に対して主張してきておった日本の在韓財産の請求権を、アメリカの覚書通りに放棄してしまった。その放棄するにあたりましての合意書を見てみますと、日本は財産請求権を放棄する、そして韓国は抑留しておる日本漁民百数十人を釈放するということが、当時の三十二年十二月三十一日の日韓合意書の中に書いてある。日本人が持っておる韓国に対する財産請求権を放棄して、これを犠牲にして、そうして李ラインで不当に抑留された漁民を釈放してもらう、平たく言えば、漁民を返してくれ、そのかわり日本は韓国に対する財産請求権を放棄します、こういうことを合意書でつくっておる。私は、これはもう最大の韓国に対する屈服だと思う。その当時の、韓国に請求することのできる日本の財産請求権の金額がどれくらいあったかというようなことについては、あとでまた詳細に御説明をお聞きしますが、現在在外財産補償の請求をしておる人たちの話によれば、あれによって犠牲を受けた日本人の引揚者は三十万人、一兆二千億の財産請求権を漁民の返還と引きかえに放棄してしまったということさえ言っておる。私は、これが日韓交渉における第一の屈辱的な合意だろうと思う。  第二の合意は、今回の日韓請求権の合意の問題で、請求権の解消にかえて、さらに日本で韓国の財産請求権を認めて、三億ドルの無償供与及び二億ドルの有償供与、いずれも十カ年を提供することによって、請求権の合意をしたのだ、こういうことを昨日勝間田委員質問にはっきりお答えになった。私は、この請求権の問題を韓国の経済援助ということに切りかえて、これほどたくさんの金員を、有償・無償の金を出して合意をされたということ、これが第二番目の屈辱的な条約の締結だ、こういうふうに考えるのであります。  従いまして、以下この請求権の問題から外務大臣並びに総理の御答弁をいただくわけなんですが、まず、両国の国交の正常化あるいは条約の締結の中において一番最初に前提条件として問題になるのは、その相手国の主権の範囲、特に領土主権の範囲はどうだ、どこまでが領土であるかということが、一切の条約とか協定の締結の中での前提条件になると思うのであります。  そこで、この請求権の問題に関しまして、韓国の支配する政権の範囲は三十八度線以南に限っておる、従って、三十八度線の範囲内における請求権の解決であって、三十八無線以北の、いわゆる北朝鮮人民共和国の請求権とは関係がないということを、これは総理も外相もしばしば当委員会において発言しておられるのでございます。ところが、私、韓国の憲法を読んでみますと、あなた方は韓国の支配する領土は三十八度線以南だというつもりでこの協定を結ぶのだと言っておられますが、韓国の憲法には、韓国が全朝鮮を支配しておる主権だ、こういうことがうたってある。そうすれば、日本だけで、お前と協定を結ぶが、お前との協定の範囲は三十八度線以南だというつもりでも、韓国は、それが全朝鮮を支配しておる主権だから、おれはその全朝鮮の代表者として条約の交渉締結をするんだ、こういう主張になれば、お互いに食い違って、交渉にならないわけなんです。  そこで、外務大臣お尋ねいたしますが、将来もありますが、今までの合意のできたこの請求権の問題については、はっきりその点について韓国はこの合意の内容は三十八度線以南だということを認めて合意書ができておるのか、あるいは日本だけが三十八度線以南と心得て請求権についての合意ができておるものか、その点はっきりしない。その点を一つ外務大臣から交渉締結の前提条件としてはっきりさしていただきたい。
  150. 大平正芳

    ○大平国務大臣 お答えを申し上げる前に、木原さんは前提として三十二年の合意文書なるものを引用されましたが、在韓財産を放棄いたしましたのは、平和条約によりまして連合国に対して放棄したわけでございまして、そのときに、三十二年になって放棄したわけではないと私存じますので、その点はお考え直しを願いたいと思います。  今度の交渉の地域性の問題でございますが、御案内のように、平和条約によりまして日韓間で請求権の処理をしなければならないことになっておるわけでございまして、そこには、現に支配しておる地域という地域性の限界がはっきりうたわれておるわけでございます。私ども、この交渉の当初から、たびたび本議場を通じまして申し上げておる通り、そういう韓国政府が現に支配している地域というものに地域的な限界を置きまして、すべての交渉を続けておるわけでございます。
  151. 木原津與志

    ○木原委員 これは外務大臣からとんでもないことを聞いた。あなた、三十二年の十二月三十日の合意書をごらんになったことがございますか。あの中にはっきり書いてあるじゃありませんか。あの三十二年十二月の合意書は、それまで日韓会談が停滞して開かれなかった。これをどうして正規のルートに乗せて開くかということで、アメリカが仲介に入って合意書をつくったのでしょう。あの合意書の中に、はっきり、日本は今まで主張してきておった請求権を、アメリカの主張の通りに認めて、これを放棄する、そして韓国は抑留漁民を即時釈放をする。そういうことができた暁において、三月十七日を期して日韓会談を再開する。これが合意書の内容じゃありませんか。それならば、抑留漁民を解放してもらうために岸さんが、岸内閣のときに抑留漁民をこっちに帰してもらうために放棄した。それでちゃんと合意書の中に書いてあるじゃありませんか。日本は請求権を放棄をする、韓国は抑留漁民を即時釈放する、そうして両国は三月十七日から日韓会談を再開する。これが三十二年のあの合意書じゃありませんか。あなた考え違いしてはおりませんか。
  152. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私は考え違いをいたしておりません。
  153. 木原津與志

    ○木原委員 当時の外務省の当局者、どなたかおられたら、その点について合意書のできたいきさつを御説明して下さい。
  154. 中川融

    ○中川政府委員 三十二年末の合意の内容でございますが、その内容は、ただいま大卒外務大臣の言われた通りの趣旨のものでございます。今、日本側がこの請求権をそのとき放棄したというような御発言でございましたが、あの合意の際の発表を見ましても、請求権を放棄したというのではないのでありまして、請求権に関して第一回の日韓会談で日本の代表がいたしました発言、主張、これを撤回する、言ったことを撤回すると言ったのでございまして、第一回の際に、日本の代表は、請求権について、その請求権は残っているのだ、日本側の最終的な権利は残っているのだという主張をしたことは事実でございます。しかしながら、これは交渉の初めにおきまして、日本側の主張を有利にするために、いわば交渉上そういう発言をしたのでございます。日本政府といたしましては、その後慎重にこの問題を検討していたのでございますが、その主張にやはり無理がある、交渉技術上した主張ではございますが、いつかはこれはやはりもっと自然な解釈を当然とるべきである。また、平和条約は、当初からそういう解釈で書かれたものであるということを考えていたのでございまして、従って三十二年になりまして、ようようその時期が熟しましたので、そういうことをそのとき申しました。そうしていわゆるそのときの合意ができたわけでございます。しかしながら、これはあくまでも平和条約四条b項の解釈でありまして、四条b項ではっきり、アメリカ軍当局のいたしました日本財産に対する処置を承認しておる。それがどういう意味か、その解釈をいわゆる米軍解釈、米側解釈というものを基礎にして今後日韓間で話を進めていこう、こういう合意でございまして、決してそのときに日本財産を放棄したわけではないのでございます。
  155. 木原津與志

    ○木原委員 講和条約ができたのは昭和二十六年、その講和条約締結以後、外務省、この日韓交渉に当たった人は、日本の韓国に対する財産請求権は講和条約によって日本が放棄したのではない、まだ残っているのだということを、その講和条約成立以後数回にわたってあなた方は主張してきているじゃないですか。そしてこれをアメリカの解釈、覚書に基づいて日本の請求権は放棄したんだという、あのアメリカの覚書をあなた方は承認しないでずっと交渉をやってきておる。最後に三十二年の十二月三十日に初めてアメリカの覚書の趣旨、請求権を放棄したと解釈するということをあなた方は承認されたんじゃないか。それが三十二年の十二月三十日なんだ。そしてその三十二年の十二月三十日の同じ日付の合意書の中に、韓国はその放棄に見合うて抑留しておる日本人漁民百数十名を即時に釈放するという合意書ができているじゃないか。それならばはっきりしているじゃないか。何も講和条約四条b項の解釈を変更をしたのではなくて、この変更したのは抑留漁民を帰してもらう、その引きかえに放棄したということがはっきり文書の中に出ておるじゃないか。  委員長、今この三十二年十二月三十日の合意書について重大な見解の相異があるようですし、これは非常に重要な問題と思いますから、これを当委員会に提出していただきたいと思いますからお取り計らい願いたい。
  156. 塚原俊郎

    塚原委員長 わかりました。
  157. 中川融

    ○中川政府委員 三十二年十二月三十日の日韓の合意は、共同声明といたしましてその当時発表されておるのでございます。ただいま御要望でございますから、共同声明のコピーをとりましてここへ御配付いたしたいと思いますが、若干時間の御猶予を願いたいと思います。
  158. 木原津與志

    ○木原委員 そこで前段の質問に入りますが、今の領土主権の問題、これは相手方、韓国との了解がついておるかどうか。それはついておるとすれば口頭でついておるのか、あるいは文書にしてついておるのか、その点いかがです。
  159. 大平正芳

    ○大平国務大臣 領土条項に触れて文書を取りかわしたり、合意を見ておるとかいうような手順を踏んでおるわけじゃございません。私が申し上げますように、本交渉を始めるにあたりましての基本的態度は、そういう地域的限界を持った交渉であるという前提に立ちまして、すべての懸案の煮詰めにかかっておるということでございます。
  160. 木原津與志

    ○木原委員 今の領土主権の範囲の問題、これは非常に重要なことでございますから、今後の交渉の過程においてでもその点を十分確認をし、お互いに了解しておかないと、これがもし今度の交渉によって妥結を見るというようなことになった場合に、批准の問題になってから非常に大きな問題になろうかと思う。特に私があなたになおこの点についてお聞きして確かめたいのですが、なぜ私がそういうことを今ごろになってくどくあなたに聞くかというと、この間あなたと請求権の問題について合意をされました金鍾泌ですね。この金鍾泌との五億ドルの合意、このあなた方二人の合意が契機となって、日韓問題が急速に、請求権問題は解決したいきさつがあるわけです。ところがその後金鍾泌情報部長が、情報部長と最高委員、それから政党の発起人、共和党の発起人も辞職するというような問題でがたがたいたしまして、その後の新聞情報によりますと、金鍾泌氏がまた翻意してもとの位置に復帰したということでございますが、その当時いろいろ新聞に出たところによりますと、朴正煕と金鍾泌、この二人の中の強固な政権の一つのたがといいますか、これが非常に最近ゆるんできていろんじゃないかということを私どもは察知できるのです。と申しますのは、そのごたごたした当時、軍の最高委員の人たちであった元の総理の宋堯讃並びに柳原植、こういうような人たちが、この革命政府委員を辞任して、そうして辞任するときの声明の中にこういうようなことが書いてある。現在の朴軍事政権は公約に違反をしておるというようなことを公然と発表しておる。特にまた私はここであなたの注意を喚起したいのは、この最高会議の外務委員長であり国防委員長を兼ねておる金東河、この金東河氏が最高委員をやめた今月の二十一日の声明ですが、この二十一日の声明によれば、朴軍事政権は国民を裏切っている、日韓会談は担当する主務官庁が不明だ、こういう声明をしている。あなたと金鍾泌氏との間にできたメモが基本になって、それが契機になって請求権が妥結したかのごとく見えておるにかかわらず、この金東河最高委員、外務委員長ですよ、これは。最高会議のこの外務委員長が、今月の二十一日に日韓会談の主務官庁は何が何だかわからぬのだ、こういうようなことを、爆弾声明とでも言いますか、言っておるのです。私はこれを見たときに、一体韓国の政治情勢というようなものは、これは私どもが日本で云々することじゃありますまいが、少なくとも日韓会談が、請求権において一応の合意をみたといっておるさなかに、当の外務委員長の金東河という人が、外務委員長も国防委員長もやめてしまって、そうしてその人の口から公式に今月の二十一日に、軍事政権は国民を裏切っているんだ、日韓会談を担当する主務官庁がどこにあるかわからぬのだ。こういうようなことを声明するというようなこの状態の中では、一体将来あなたと金鍾泌との、やみ取引とは言いませんが、その一応の合意ができて、その合意が両国間の合意になろうとしておる。これはやがて日韓会談が妥結するということになると、あと批准ということになりましょう。民政に移管して批准ということになった場合に、日韓会談を担当する主務官庁が不明だというようなことを当の外務大臣が言うというようなことで、はたしてこれが円満に批准までこぎつけ得るかどうか。もしこれがその段階においてそういうようなことが批准ができないということになれば、池田内閣の責任、大平さん、あなたはやめねばならないことになるでしょう。責任は重大ですよ。一体こういうような状態の中で、あなた方がこの日韓交渉を急いでおられるというその真意がわからないのです。あなたは今私が指摘した日韓会談を担当する主務官庁は不明だということの声明はお読みになりましたか。もしお読みになりましたら、日本の外務大臣として、交渉の当事者としてどういう感じをなされましたか、お聞きしたい。
  161. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日韓交渉は、日韓両国政府の間の交渉でございまして、御案内のように、東京で予備折衝が行なわれておるわけでございます。金鍾泌氏と私との間の話し合いは、あげて予備交渉にあげまして、とるべきものはとり、捨てるべきものは捨てる、こういうことで進んでおるわけでございまして、相手方は韓国の政府であるということでございまして、韓国の要人が個人的な見解を発表されるということにつきまして、私が責任を負わなければならないという性質のものでないと思います。
  162. 木原津與志

    ○木原委員 もちろん韓国の内部のことにあなた責任を負えということを私は言っておるわけではないのですが、少なくともこういうような政権のあり方ですね、そういうものと、あなた方が八千万の国民を代表して外交交渉をするというそのことが、国民の負託にこたえた外交当事者のする態度であるかどうかということについてあなた方も反省をされて、この会談は、こういうような状態ならばこれはやめなきゃならないのじゃないかというような気持になられるのではないかと私は思うのです。大体一国と一国の一番重大な日韓会談のこの交渉の中で、担当する主務官庁がわからないというようなことを外務大臣が言うというようなことだったら、これは他日この協定を批准するという段階になったら、あれはやみだ、金と大平とが勝手にやみ工作でやったのだから知らぬといって、民政移管された後に否定される、批准を拒否されるというようなことにでもなったら、あなたどうされますか。あなたのために私はそういう措置を心配するわけなんです。
  163. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申しましたように、政府政府との間の話し合いをやっておるわけでございます。
  164. 木原津與志

    ○木原委員 大平さんは政府政府と言っておるが、向こうは、政府はどこにあるかわからないと言っておるのだ。これは向こうの外務大臣が言ってやめたのだから一番確かだろうと思うのです。ほかの者がすてっばちでわからぬと言うのだったら話は何しませんが、外交についての最高の責任者が、おれはこんなものやめた、そうして日韓会談を担当する主務官庁がわからないというようなこと、これでは……。   〔「大平君がやめてもちっともかまわぬじゃないか」と呼ぶ者あり(笑声)〕
  165. 塚原俊郎

    塚原委員長 不規則発言は御遠慮願います。
  166. 木原津與志

    ○木原委員 どうしても差しつかえないという確信と自信を大臣が持っておられるようですから、その点についての問題はこれで終わりといたします。  次に、私がお聞きしたいことは、昨日、勝間田委員質問に答えて、韓国に対する有償供与二億ドル、無償供与三億ドルという説明の中から、法的根拠のあるものは七千万ドルじゃないかということを勝間田さんがあなたにお尋ねしたときに、法的根拠のあるものは七千万ドルだ、それについては資料もある、こうあなたはお答えになった。そこで私が次の質問に入る前にどうしても必要なんですから、この法的根拠のあるものが七千万ドルだということになれば、その内容は一体どういうものか、その資料を手元に持っておるとおっしゃるのですから、その資料に基づいて、あなたは今提出できればもう説明は要りません。ここに提出されるならば……。しかし、提出されないならば——いずれ提出されるということもおっしゃっておりますから、その提出される時期と、今提出できないというならば、その資料に基づいて、その法的根拠のある韓国の日本に対する財産請求権の内訳、それを一つここではっきりしていただきたい。これは私が聞くんじゃない、国民が聞きたいのですから、いかがです。
  167. 大平正芳

    ○大平国務大臣 七千万ドルということを今言及されましたが、法的根拠のあるものを取りそろえますと七千万ドルになるのだというようなことは、政府は申し上げたことはございません。請求権につきましては、御案内のように法律論が一方にございます。一方に事実立証の問題がございます。従いまして、この二つの要素で、こういう法律的根拠をとればこうなる、こういう事実関係を確実なものと想定すればこうなる、こういうことで計算をいたしますと、たくさんの数字が出てくるわけでございます。従いまして、そういった日韓の間に法律論としてどういう見解の相違があるか、事実の立証推定の方法としてどういう見解の相違があるかというようなことは、これほど問題になったことでございまするから、ある段階におきまして、私どもは皆様に御理解いただく機会を持ちたいと思っておるわけでございます。従いまして、ただいまの段階は、交渉中でございますので、こういった過去の究明に深く入っておりまして、交渉に影響があるというようなことは差し控えなければなりませんので、交渉に影響がないという判断がつきますれば、その段階におきまして、こういうとり方をすればこうなる、こういうとり方をすればこうなるということにつきましては、皆様に開示して御判断をいただくようにいたしたいということをきのう申し上げたわけでございます。  それから第二段の、先方の要求はどれだけか、こういうことでございますが、これはきのう申し上げました通り、八項目の要求がございます。それは、すでにもう新聞に発表されたことでございますが、本委員会に提出せよということでございますので、提出の用意をいたしております。
  168. 木原津與志

    ○木原委員 八項目の韓国の要求については、もうこの前明らかにされましたから、別にあなたにお答えを願わぬでもよろしゅうございます。しかし、ぜひお答えを願いたいのは、その事実関係において立証がつき、さらにまた法律的に根拠のあるものが七千万ドル、これは日本が当然負うべき筋合いのものだということになりましょう。この七千万ドルの内訳ですね、どういうものが幾ら、たとえば預金が幾ら、未払い賃金が幾ら、恩給が幾ら、退職金に見合うそういうようなものが幾ら、これは個人的財産請求権になりますが、そのほかに国としての請求権があれば国の請求権は幾らという内訳  は、これはぜひとも一つ明らかにしていただきたい。あなたの方に資料があるのですから、あるとおっしゃったのだから、明らかにできないはずはないと思う、それを知りたいのです。
  169. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今、私が御答弁申し上げました通り、七千万ドルが、法的根拠を取りそろえて日本側でこう考えておるというようなことを申し上げた記憶は一切ないわけでございまして、たくさんの案があり得るということでございます。前提のとり方によりましていろいろな案がたくさんあるわけなんだということをきのう申し上げたわけでございます。従って、こういうとり方をすればこうなるというようなことは、ある時点においては明らかにいたしましょうと申し上げておるわけでございます。木原さんは、七千万ドルというのは何か政府で一致した見解で、これは日本が払うべきものだと一応きめたというようにおとりになっておるのは、それは大へん誤解でございまして、問題は、答案は幾らでも出るわけでございます。従って、七千万ドルにとらわれられないように一つお願いいたしたいと思います。
  170. 木原津與志

    ○木原委員 外務大臣、その手は食いませんよ。池田さんと朴正煕さんとの間で会談をなさったときに、請求権は法的に根拠のあるものに限るというお話があったはずなんです。それを池田さんはその後の、会談のあとで記者会見をして、その点をはっきりさせられておる。それに基づいて外務省でもいろいろと資料検討されたのでしょう。それが七千万ドル。だから、七千万ドルだと言うから、それを勝間田さんがきのうも、財産請求権というのは金額は七千万ドルじゃないかということを質問した。それに対してあなたが、外務大臣が、七千万ドルについては法的根拠があるし、また事実の確認もできる、資料も持っておりますということをはっきり言われた。私は委員として聞いておった。だから今その点について、あなたが資料をお持ちになっておるというから、ただし、そのときに資料は今は出す時期じゃないとおっしゃったから、それならば私が聞くのは、資料はいつ出されるかということをここで言明をしていただき、さらにまた資料を出すことができなければ、その内訳、今言った韓国の請求権の内訳、七千万ドルでいいですから、一千万、もっとふえてもいいし、幾らでもいい、法的根拠のあるものが幾らあるか。あなたの方の資料にあるものの内訳を委員会でぜひ明らかにしていただきたい、こういうのです。あなたが現にあるというから、私はそれを聞くのです。きのう言ったんだ。議事録を調べてみます。   〔発言する者あり〕
  171. 塚原俊郎

    塚原委員長 御静粛に願います。
  172. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど答弁申し上げた通りでございまして、私は、七千万ドル案について申し上げるということを言った覚えはございません。これはもう無限の答案があり得るわけなんです。従いまして、それはどういう前提に立てばこういう数字になる、どういう法律論を論拠にすればこういう数字になるということは、木原さんも御了解いただけると思うのでございまして、どういう点に見解の相違があり、事実関係の立証においてどういう困難があるか。しかし、困難がありましても、こういう前提に立てばこういう数字になるというようなことにつきましては、後日時期がくれば皆さんに提出いたしますということは、私はお答えいたしたわけでございますが、七千万ドル案につきまして、私は、申し上げるというお約束をいたしたものではございません。
  173. 木原津與志

    ○木原委員 韓国の財産請求権が、法的に根拠のあるものが幾らだということは、外務省に資料がないはずはない。ずっと以前からあるのです。あればこそ、あの昭和二十八年の、久保田発言で日韓会談が決裂をいたしました直後に、外務省で、当時新聞記者に対して声明を出しておる。その中で、これは池田総理が前国会のときに御説明になりましたが、日本の解釈では、韓国の財産請求権は九十億円ないし百二十億円、日本が韓国に対して持っておる財産請求権が百二十億円ないし百四十億円、こういうことで折衝した。その交渉の経過の中であったんだということを、池田総理も、あなたの説明を補足して、この前の臨時国会のときに言っておられるのです。二十八年当時、外務省では、韓国の日本に対する請求権は九十億円ないし百二十億円という主張をしてこられたのですから、この主張は何らの根拠なしにやったものじゃない。おそらくはっきりした資料——今あなたの言われる七千万ドルの資料というのはこのことだろうと思うのです。この資料に基づいて言っておられる。二十八年当時は九十億円ないし百二十億円と外務省が言っておったのが、今度は七千万ドル、こう金額がふえておるから、それならば、おそらくあとからまた追加された資料に基づいて七千万ドルという数字が出たのじゃないかと私は考えますし、さらにまた、二十八年当時の九十億円ないし百二十億円というのが、インフレで、それを少し歩上げをして、そうして七千万ドルになったのかどうかということもなおあなたに聞きたいと思うので、今、その七千万ドルの法的根拠の資料を明らかにしていただきたいということを言うのであります。あとさき違わなければ、あまりあなたにやあやあ言うことはないんだけれども、かつて外務省が発表したものには九十億円ないし百二十億円、日本はそう主張し、さらに日本から韓国に対する請求権は百二十億円ないし百四十億円という主張で対立したんだということを言っておられる。この九十億円ないし百二十億円というのは、先ほどから何回も言いますように、おそらく法的根拠があり、事実の確認ができたものだろうと思うのです。それが今度は、事実の確認ができ、法的根拠のあるものは七千万ドルという数字にはね上がってきたから、その資料をお出しなさいということを言うんだ。あなたが、今の段階においてはどうしても資料は出せないというのであれば、私は無理は申しません。無理は申しませんから、いつごろ出すということを確約したいただきたい。そのかわり、その七千万ドルの資料に基づいて、請求権の金額は、何が幾ら、預金が幾ら、未払い賃金が幾らというふうに項目がありましょう。その項目をこの機会に明らかにしていただきたい。
  174. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たびたび申し上げますように、前提のとり方によって数字がいろいろあるわけでございまして、あなたは七千万ドルに非常に固執されておりすまけれども、七千万ドルということで日本側の見解が統一されたというようなことはないわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、請求権の問題につきまして彼我の主張の相違、立証の困難性等につきましては、十分解明しなければならぬ責任がございますので、私は、交渉に決定的な影響がない時期を見計らいまして御審議をいただくようにいたしたいと思います。
  175. 木原津與志

    ○木原委員 七千万ドルよりほかになお数字のとり方がいろいろある、こうおっしゃいましたね。そのいろいろ全部説明しようじゃありませんか。もう請求権の問題についてかれこれ議論をするのは最後ですよ。だから、何でもかんでも洗いざらいきちっとして、われわれの疑惑なり国民の要望を一つ満たそうではありませんか。そのほかにもいろいろあるのだというのだったら、どういうものがあるか、それを明らかにして下さい。
  176. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今申し上げますように、前提のとり方によって答案が幾つも出るわけでございます。従いまして、私は、交渉に影響がないという時期を見計らいまして御審議をいただこうと思っております。
  177. 木原津與志

    ○木原委員 今法的根拠のあるものが七千万ドルで、しかもそれは資料があるということを、はっきり大臣が言明されたのを私はきのう聞いておるのでありますから、私の聞いたのが間違いかどうか、今速記を取り寄せて確認した上でなおその点についての説明を求めたいと思います。今の点については留保さしていただきます。
  178. 塚原俊郎

    塚原委員長 ただいま調べましたところによりますと、速記は今印刷局の方に回っているそうです。ただいまのところは間に合わないと思いますから、後刻でさましたらごらんになりまして……。また、たくさんあなたの方にも質問者があることでしょうから、どなたがおやりになってもけっこうだと思います。  御質問をお続け願います。
  179. 木原津與志

    ○木原委員 それでは、今の点についての質問は後日に留保いたして、次に進みたいと思います。  そこで、いま一点だけお聞きしたい点は、無償供与三億ドル、有償供与二億ドル、これが十年間だということになっている。そうすると、毎年の無償供与の金額は三千万ドルということになるわけです。その点、そういうことになりますか。
  180. 大平正芳

    ○大平国務大臣 年々均等支払いにするかどうかという点は、最終的にきめたわけではございませんけれども、大体仰せのようなことに、この協定が成立し発効すればそういうことになるのではないかと思います。
  181. 木原津與志

    ○木原委員 そうすれば、この点についてもただしておかなければならぬと思うのですが……。韓国に対する経済援助というのが賠償でないことは、これはもう自他ともに間違いがないと思います。恩恵的な給付ですね。ところが、私、調べてみましたところ、日本が戦争中東南アジア諸国のいろいろと大へん迷惑をかけたフィリピンだとか、インドネシア、ビルマ、べトナム、そういったようなところに対する戦時賠償と私は比べてみたのです。そうしたところ、戦時賠償ですら、フィリピンに対する賠償は年間二千五百万ドル、この二千五百万ドルが最高なのです。賠償でさえ二千五百万ドル一年間に払うということになっておる。それを迷惑も何もかけておらぬ——池田さんの言葉で言えば、これは分裂国家だ。分裂国家の朴政権、独立したお見舞金、こういう名目で——さんざ痛めつけて迷惑をかけたフィリピンやあるいはインドネシア、こういったようなところに毎年最高フィリピンに二千五百万トル払うのを——朴政権の、まあわれわれに言わせれば政権の強化のためですよ。この強化のために、戦時賠償でさえ二千五百万ドルを、韓国に対して三千万ドル、おまけにそれには有償供与がくっついてですよ。このほかにプラスして有償供与がくっつくわけです。こういうようなことをおやりになるということは、これは国民としてはなはだ奇異の感を抱かざるを得ないのでありますが、この点について、あえてそういうような高額の金を毎年々々韓国に援助をされる決意をなさったいきさつを一つお聞きしたい。
  182. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日韓の間に、御案内のように、まだ国交の正常化を見ていないわけでございます。この国交を正常化いたしまして善隣友好の実をあげたいというのが、私どもの立っておりまする根本的な立場でございます。国交正常化をする必要がないのだという論拠に立ちますれば、また話は全然別になると思います。私どもはいかにしてこの国交の正常化をなし遂げたいという希望を持ちまして、鋭意努力をいたしておるわけでございますが、しからば、その国交の正常化を期するためには、言うところの日韓の間に横たわっているもろもろの懸案があるわけでございまして、漁業の問題にいたしましても、竹島の問題にいたしましても、法律的な地位の問題にいたしましても、そして今問題になっておりまする請求権の問題またしかりでございます。こういった懸案の妥当な解決がなければ、国交の正常化というものはあり得ないわけでございまして、私どもは懸案の解決を懸案のためにやっているわけではなくて、すべての懸案を国交正常化との関連におきまして吟味し、でき得べくんば解決の道を見出したいということで今日まで努力してきたわけでございます。  そういう前提に立ちましてお聞き取りいただきたいのでございますが、その場合、もろもろの懸案の中で一つの請求権の問題というものがある。これは木原さんのおっしゃるように、私は、日本人の感情といたしまして、韓国になぜ金を払わなければならないかということについて、十分御納得がいっておるとは思いません。私自身もそう思います。しかしながら、一方韓国側におきましては、日本に対しまして、三十六年の統治を通じましてたくさん有形無形の言い分があることも、またよくわかるのでございます。こういう日本に対するクレームがある。日本側はないということをいつまでも続けておったのでは、これは国交正常化の前提に横たわる懸案の一つさえ解決ができないということになりますると、正常化ということは所期できないわけでございまして、こういった日韓間に非常な落差のある問題につきまして、何かこれを割り切る道がないかということを工夫してみるのは、外務大臣としての私の当然の責任だろうと思うのでございます。  しからば、この請求権の問題を、法律関係、事実関係を明徴にいたしまして解決する道があるかと申しますと、きのうも、井出先生、勝間田先生の御質問に対しまして私が答えました通り法律論といたしまして、彼我の間に非常な見解の相違があるわけでございます。きのうも一例として申しましたように、朝鮮銀行から持ち出しました金地金というものは、朝鮮銀行法によりまして正当な売買をしたものだとわれわれは主張する、先方は、そもそも不当な統治をやっておるのであるから、すべての実定法の根拠を認めないという立場にお立ちになるわけでございまして、双方の間には氷と炭みたいな見解の相違があるわけであります。従いまして、法律的な見解の帰一を見るということは、これはむずかしいといいますよりは、ほとんど不可能ではないかと私どもは判断するわけでございまして、また、それをささえる事実関係につきましても、推定の要素をたくさん加えないと事実関係構成ができない。その推定の方法につきまして、また平行線をたどるという過程を繰り返してきたわけであります。しかしながら、国交の正常化はやり遂げなければならない歴史的な課題であるとすれば、そういった問題をどのように割り切るかということは、一つの方法しか残らぬのじゃないかと思うのです。過去の事実をせんさくするかわりに、将来に向かって日韓両国は相提携して、将来の繁栄と相互の利益をはかろうじゃないか、そのためには、世界全体が今経済協力時代でありまして、先進工業国が後進国の経済開発に応援をいたしている、そういう時代になってきている。従って、わが国が、一番近い隣邦である韓国の経済再建に対しましてある程度の援助を申し上げるということをいたしますから、どうぞ百年河清を待つような請求権論議をいつまでも両国が繰り返しているという愚をやめて、こういう問題は、一方において将来の展望に立って経済協力をすることによって、この問題は解決したのだということを両国で確認したらどうだということの御提案を申し上げまして、大筋において先方も、そういうことにするより以外に解決の道がございませんでしょうという点にまで歩み寄ってきていただいておるわけでございまして、そういう意味合いでわれわれは経済協力考えておるわけでございますが、今、三億ドル、五億ドルという経済協力という問題は非常に過当ではないかという御判断であります。木原委員もお認めのように、これは賠償ではございません。従って、フィリピンやインドネシアとのバランスをとって考えるべき性質のものではないと思うのでありまして、一にかかって日本の財政能力からいたしまして、また、海外支払い能力からいたしまして、許される限度において考えるべきものだと判断いたしまして、きのう申し上げたような数字を考えておるわけでございます。
  183. 木原津與志

    ○木原委員 大臣が長々と私に説教されましたが、その説教の趣旨は、要するに、今度の協定の五億ドルというのは、経済援助という名の賠償だ、名前は経済援助だけれども、実際は賠償だと思うて、国民もあきらめてくれと言わんばかりの泣き言ではありませんか。それならば、国民は、すでに不当に国際法に違反して、朝鮮在住三十万の当時の在韓日本人が、終戦後私有財産にして一兆二千億といわれておるこの点について大蔵大臣からまた資料をいただきますが、関係者に言わせれば、十万人の個人財産一兆二千億という財産を、当時アメリカの軍司令官の軍令三十三号によって没収されてしまった。その没収された上に——これは没収か接収か知りませんが、この点についてもあとで外務省の見解をただしますが、それを一九四七年に、一方的に不法に国際法に違反して、アメリカが日本人の財産を接収して、そしてそれを米韓協定によって韓国にそっくりそのままただでやっておるのです。そうして先ほども言いましたように、韓国政府に対する財産請求権を、李ラインによって抑留された気の毒な抑留漁民を釈放してもらうそのカタに、岸内閣が当時放棄してしまった、もう取れなくなったというようないきさつがある。このいきさつに加えて、また五億ドルを税金で国民が負担しなければならぬということになれば、これはガリオア・エロア以上の財産を取られた人たちにとっては二重払い——五億ドルとして千八百億円、人口一人当たり割り当てても、年寄りから赤ん坊に至るまで一人千円の負担じゃありませんか。一兆数千億円の財産を不法に取り上げられて、韓国にそれがただで与えられる。その上五億ドル、一人当たり一千円の負担で韓国に経済援助をする。しかも、それが百年の計においてまことに日本民族にとって喜ばしいことというならばまた格別、何回も申し上げましたように、韓国は南北に分裂して、そうして統一という悲願のもとに立っておる。今ここで朴政権にこういうテコ入れがされるということになれば、永久に朝鮮民族の統一ができないというような状態の中で、いわゆる反共の保険料として払うのだというようなことを、自民党はパンフレットでPRしておられるようでございますが、これではあまり国民がかわいそうだと私は思う。しかも、あなたはきのう、こうして取り上げられた在韓日本人の財産は、政府が取り上げたんじゃない、軍令三十三号によってアメリカが一方的に没収したのだから、その財産の補償をする意思はないということを、はっきり井出委員にもおっしゃっておる。こういう中でこの援助という名の賠償をあえてあなた方がおやりになるということについて、私どもはどうしても納得がいかないわけです。  ついでに、大蔵大臣資料の要求をいたしますが、アメリカが軍事占領と同時に日本の財産を没収した、その没収した財産は、韓国の対日請求権の支払いの場合に考慮するという覚書があるわけなんです。そのために必要なんですから、一体どういう財産、金額幾らぐらいの財産をアメリカが没収したか、その明細について私は以前から聞いておるのですが、その資料の明細を国会に出していただきたい、これは相殺の対象になる債権なんですからということをあなたに要求しておった。あなたは、それは一部はあるけれども、全部はないという前回の答弁でしたが、すでに合意は五億ドルで成立したという段階ですから、もうここに出し惜しみされる必要はないと思う。幾らの財産を当時米軍が接収をしたのか、その点はっきりしていただくし、あなたの手元にある日本人の没収財産の目録を一つお示し願いたい。
  184. 田中角榮

    田中国務大臣 木原さんから、先回の国会だと思いますが、資料を提出する要求があり、私も外務大臣も、できるだけつまびらかになればこれを国会に提出をいたしますということをお答えしてあるわけであります。この在韓財産の明細書というものは一体どこにあるのか、また、これがどこで一番的確なものがつかみ得るのかという問題については、先回も申し上げましたが、韓国政府が一番的確なものを持っておると思いまして、韓国政府側に対してこれが提出を求めておるのでありますが、韓国政府側は日本政府側の要求に応じないわけであります。それからアメリカ軍が当時軍令三十三号によって接収をしたのでありますから、一体これに対してアメリカ軍は適切なものを持っておるということであるならばもらいたいということで、外務省側も調査を進めておるようでありますが、ごく一部のものしかまだこちらへ届いておらないという事実のようであります。それから第三には、当時韓国から引き揚げてきた方々が自発的に集計をしたようなものもありますが、これに対しては、自分のものを自分で申告をしたということであり、現在の段階でこれにどの程度の信憑性を置けばいいかという問題に対しては、さだかな結論を得ておらないわけであります。なお、日韓の問題については交渉妥結と言われますが、現在の外交上の状態では、この問題に対して資料を提出できるような状態ではないように考えているわけであります。
  185. 木原津與志

    ○木原委員 没収日本人財産のリストを、アメリカからか、あるいは韓国政府からとって、これを国会に出してもらわなければ——この財産の金額を韓国の請求権と相殺するということが、アメリカの三十二年の覚書にはっきり書いてある。日本が財産請求権を放棄したということが、韓国の対日請求権の場合に考慮せらるべきだということになっておるわけなんです。それで、リストの上でどれくらいの財産請求権を当時日本は持っておったかということが明らかにならなければ、相殺するにもしようがないわけなんです。それが明らかになったということにならねば、これは終局において請求権の問題の合意はできるはずがないと私は思う。ところが、今あなたもおっしゃるように、どれだけの財産が没収されたのか明らかにならないということになれば、これは全く今度の五億ドルの合意というのは、これは積算の根拠に困るのじゃないかと私は思う。あなたの方でどうしてもそれが明らかにならないということになれば、せっかくあなたの方に没収したもののリストの一部はあるのでしょう、アメリカからきたリストが、あなたは一部あると言っていた。一部でもいいから、一応この委員会に、もう最後ですから、一つその目録をお出し願いたいと思いますが、お出しになるかどうか、もし出すとすればいつまでに出されるか、その点を承りたい。
  186. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  アメリカ側から日本政府に届いておるものはごく一部でありまして、これも大蔵省にあるのではなくて、外務省に保管をいたしておるのであります。一部でありますから、現在の段階において、これを国会に提出する時期ではないというふうに政府側として考えておるわけであります。
  187. 木原津與志

    ○木原委員 現在に至ってもまだ国会に提出する時期ではないとおっしゃるならば、その一部を一体韓国のどこの地域にあった日本の財産であるか、その財産が不動産か動産か、あるいはその他の貴金属か、そういうような分類に基づいて、その点の資料をお出しになることは差しつかえなかろうと思いますが、その点外務大臣どうです。
  188. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いずれ全部の資料を整えました上で、御審議を願うことにいたします。
  189. 木原津與志

    ○木原委員 全部の資料はもう整う見込みがないと言われるのだ。一部の資料はあるけれども、全部がないから、全部のものが整った上で出しますということを昨年から約束してあるのです。それが今日になって、もう両者の間に請求権の合意が一応できて、あとの問題は、その支払い方法だとかあるいは対韓焦げつき債権の問題だとか、そういうような問題だけに問題はもう移ってしまっておる。この段階になってもそれが整わないということになれば、いつまで待っても全部の資料ができるということはもう目安がつきませんから、一部でもいいからあるものを、これは外交文書じゃないと思うので、出して差しつかえなかろうと思う。一部でもいいから出すことを希望するのですが、いかがですか。
  190. 大平正芳

    ○大平国務大臣 政府といたしまして、ある程度まとまれば、出していいと判断いたしますれば出しますけれども、まだその段階ではないということでございます。
  191. 木原津與志

    ○木原委員 本会議で、池田総理にわが党の成田書記長から、請求権を南北とも公平に解決をするために、日・韓・北鮮、この三者の合議によってこれを解決しなければ、韓国だけとの妥結では不都合じゃないかという質問をされたのに対して、総理はそういう意思はないという御答弁がありました。そこで、私はいま一回総理に再考を求めたいのでございますが、われわれがその三者合一でなければ請求権の公平な解決ができないと主張するのは、本来この財産請求権というものは、韓国の主張の中にはいろいろ国家的な請求権も含んでおるようでございますが、これは私は法的に理由に乏しいと思う。本来日本が終戦当時朝鮮人に負うておった債務を、分裂国家になったについて支払いが停止されておるのを個人の債権を清算して支払うということが、この請求権問題の本質であるし、また、財産請求権というものはそういった性質のものであろうかと思うのでございます。そうなれば、今朝鮮は北と南と別れておりますが、統治権の範囲を異にして国籍は違うてはおりますが、この人たちは、いずれも旧朝鮮人として日本国に対して個人的な財産請求権を持っておった人なのだ。この人たちが国籍のいかんにかかわらず日本に財産請求をするということは当然のことだと思う。それならば、総理の言われるように、朝鮮における合法政権は韓国だけだから、韓国としかこの交渉はしない、北鮮はオーソリティということになっておるけれども、まだ国連でも認めておらないオーソリティだから、北鮮との交渉はやらないというお考え方は、これは大きな誤りじゃないか。外務大臣、そう思われるでしょう。これは明らかに個人的な請求権ですから、国籍のいかんにかかわらず支払ってやるべき性質のものであり、また、そうしなければ公平な財産請求権の解決にはならないと思う。先ほどから外務大臣が、事実関係が非常に複雑でわからぬ、立証は困難だと言うのは、北だけを除外して南とだけ交渉をするから、事実関係が明らかにならない。この際、北も南も、国籍のいかんにかかわらず、国連が認めておるとか認めないとかいうようなことでなくて、旧朝鮮人の日本に対する財産請求権を合理的に支払う、支払ってやるという立場に立つならば、むしろこの際、この請求権の解決の問題は、三国が一緒に協議してこそほんとうの解決の方法になる、こういうふうに考えるのでありますが、いかがでしょう。外務大臣並びに総理の御見解を承りたい。
  192. 大平正芳

    ○大平国務大臣 三者会談の問題でございますが、わが国は国連の決議に基づきまして韓国を合法政府として交渉の相手にいたしておりますことは、御案内の通りでございます。一方北と南との間の問題は、朝鮮半島の問題でございますけれども、韓国政府が政治上の問題につきまして北鮮政府と話し合う立場、状況にあると見ることは無理なようでございまして、せっかくの御提案でございますけれども、これは実際的な御提案ではないと私どもは感じております。
  193. 池田勇人

    池田国務大臣 外務大臣の答えた通りです。
  194. 木原津與志

    ○木原委員 それでは、日韓交渉についての残余の質疑は、記録が出るし、さらにまた外務省からの資料が出た上ですることにいたしまして、時間がありませんから、もう二、三問お尋ねいたしたいと思います。
  195. 塚原俊郎

    塚原委員長 念のため申し上げます。木原津與志君の持ち時間はあと十七分でございますから、念のために申し添えます。
  196. 木原津與志

    ○木原委員 総理は、いつも池田内閣の外交の基調は国連中心主義だと宣明されておられる。ところが、最近の外交のやり方を見てみると、これは国連中心主義というようなものとはちょっと逸脱しておるんじゃないかという感がするのであります。  そこで、時間がありませんから、端的にお聞きしたいと思いますが、との間、成田質問の際に、アメリカのキューバ封鎖のときに、日本は何もしなかったんじゃないかという質問に答えて、総理は、日本はアメリカのやったことが適当な措置だということを確認した。こういうような御答弁があった。私はそれを聞いて、これは国連中心主義とはいささか飛躍しておるんじゃないかと思うのであります。国連中心主義というのはどういう外交のやり方か、あとで御説明を聞きますが、当時御承知のように、ソビエトのフルシチョフがミサイルをキューバから撤去しないという事態になったら、おそらく第三次世界戦争の発端になるんじゃなかったろうかという、世界の、大戦後最大の危機だったと私どもは認識しておる。その原因は、アメリカのいわれなき国際法を侵犯した海上封鎖その他の封鎖にあったと思うのであります。これが、アメリカのやったことが正当だということを規定づけたという総理のお言葉でございますから、一つその点について、どういう点が、アメリカのやったことが正当な、国連憲章にも違反しない、国際道義にも違反しない、あるいは国際法にもかのうた行為であったと思われるのか、その点についての御解明をお願いしたい。
  197. 池田勇人

    池田国務大臣 世界の平和を確保するということが最大の目的でございます。東西の力の均衡で世界の平和が維持されておるこの際において、キューバにソ連のミサイル基地が置かれるということは、世界の平和のためによくない、こういうので、アメリカのとった態度を私は是認したのであります。これはアメリカ、中南米はもちろん、自由国家群のおもなる国はみなわれわれと同じ態度をとって、そうして事なきを得たのであります。もちろん、これはアメリカの力もありましょうが、米ソ両国首脳が戦争回避のために忍耐強く努力されたたまものでございます。その点は、私どもは、結果からいって両方ともよかったと考えます。
  198. 木原津與志

    ○木原委員 ソ連がキューバにミサイルの基地を持つということが、世界の平和のために非常に危険なことだという前提に立つとおっしゃった。そうすると、力の均衡という立場からいって、アメリカが、ソ連の封じ込めのために、トルコやイタリアあるいは韓国、そういった他国の領土にミサイルを持つ基地をつくってソ連を包囲するということは、世界の平和にとって脅威にならないという前提に立つのでございますか。
  199. 池田勇人

    池田国務大臣 現に、トルコ等に米国のミサイル基地がありましても、世界の平和は確保されておるではございませんか。しかるに、今新たにキューバに置こうとしたときに戦争が起こりそうになった、いわゆる危険が勃発した。その危険をなくすることによって平和が保たれる、こういうことでございます。
  200. 木原津與志

    ○木原委員 具体的に、こういうような、他国がアメリカの近所でソ連のミサイルの基地を許容するということ自体は、これは国連憲章あるいは国際道義上間違った行為であるということになるのでございましょうか。
  201. 池田勇人

    池田国務大臣 戦争の危険を誘発するということでございます。理論上いい悪いの問題じゃございません。事実問題でございます。
  202. 木原津與志

    ○木原委員 戦争の危険を誘発するということは、これは国連憲章に違反をしたり、あるいは国際法に違反をしたり、あるいはまた国際道義に違反をした措置を一方の強国がとるというようなことが、より以上世界の平和に対する脅威となるのだということはいかがです。
  203. 池田勇人

    池田国務大臣 世界の平和の脅威には、いろいろな場合もございましょう。国際法に従ってやったという場合でも脅威する場合もありましょうし、いろいろな場合があると思います。
  204. 木原津與志

    ○木原委員 少なくとも国連憲章、国連尊重という立場に立って、国連中心主義の外交をやるということがあなたの外交の基調であるとするならば、何としてもまず国連を尊重する、そうして国連憲章を尊重して、これの上にのっとって外交を行なう、その中で世界の平和を求めていくという態度、これが私は国連中心主義であるし、この国連の憲章に違反する国があれば、何国といえどもその違反を指摘して、そうして平和を維持する方向に外交を持っていかれるという態度が、ほんとうのあなたの言われる大国日本の外交の方針じゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  205. 池田勇人

    池田国務大臣 大体、そういうふうにいっておるのであります。アメリカがああいう措置をとったということにつきまして、われわれはその措置を一応是認いたしました。しこうして国連におきましては、この問題を取り上げようとした。これはあたりまえのこと。しかし、それを取り上げる前において、先ほど申し上げました米ソ両国の首脳の良識ある了解のもとにこれが片づきましたので、国連の方では取り下げたことになるのであります。国連中心主義は何ら害していないわけであります。
  206. 木原津與志

    ○木原委員 それならば、あの場合、国連が取り上げたということになれば、あなたはアメリカのとった措置を是認されなかったろうと思いますが、どうです。
  207. 池田勇人

    池田国務大臣 国連が取り上げる前に私はアメリカの措置を是認した。そうして国連でこれを審議することになる、こう思っておったのでありまするが、先ほどお答えした通り状態になったのであります。
  208. 木原津與志

    ○木原委員 あなたの言うことは、もう国連中心主義という看板をおろさなければ——何でもかんでもアメリカの言うことに従うことが国連中心主義だと、こういうような考えをわれわれは持たざるを得ないのであります。  そこで、時間がありませんから、かけ足でやりますが、中国問題ですが、今われわれが一番心配でならぬのは、きのう防衛庁長官もおっしゃいましたが、中国が膨大な軍隊を持っておる。しかもやがて核も保有して、実験もやるだろうということが予想されるというようなことがいわれましたが、こういう非常に日本にとって大きな脅威を感ぜざるを得ないというこのさなかに、ケネディが先般の十二月の三日に、中共封じ込めに協力要請するというような趣旨のことを、日本の五閣僚に日米貿易委員会で発言されたという報道を聞いて、国民は非常にショックを受けたと思うのです。あなたは良識ある政治家として、この封じ込め政策に協力をされるつもりか、そうでないか、その点お聞きしたい。
  209. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、ケネディ大統領が言われたことは、東南アジアにおける共産主義の拡大を阻止しようという言葉だと考えております。私は全く同感でございます。しかし中共と日本との経済関係につきましては、これは漸次発展さしていく。共産主義の東南アジアにおける拡大はアメリカと同じこと。貿易はしていきます。
  210. 木原津與志

    ○木原委員 貿易はやっていくということは、きのうもおっしゃったから、私はその点についてお聞きしませんが、一言だけ最後にただしておきたいのですが、こういうような中共封じ込めの政策をとってみたところで、びょうたる日本がアメリカと協力しても、とてもその脅威を取り去るというようなことは不可能じゃないか、むしろそういう封じ込めというような政策に立脚をしないで、私ども日本のとるべき態度としては、中共を国連の中に入れて、そうして国連のベースの中で将来の軍備縮小、軍備全廃あるいは核非武装、実験の停止、こういうような態度を国連の中に入れてそうしてやっていくということが、日本の安全のためにも良識ある政治家のとらるべき態度であって、いたずらに相手を激発させることによって力で阻止するというようなことは、アジア、極東の平和のためにとらるべき態度じゃないと思うのでございますが、将来のこの中国の代表権問題に対してさような考え方を持っておられるかどうか、その点をお尋ねいたします。
  211. 池田勇人

    池田国務大臣 一昨年の国連総会におきまして、日本の立場は十分世界に表明しております。しこうしてこの問題は、重要問題として、国連で審議されることになっておるのであります。
  212. 塚原俊郎

    塚原委員長 この際、御報告いたすことがございます。  長らく本委員会の委員であり、かつて本委員会の委員長を勤めてくれました三浦一雄君が本日急逝いたされました。まことに痛惜哀悼のきわみであります。ここにつつしんで同君の御冥福をお祈りいたします。  次会は明三十一日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十五分散会