○武藤山治君 ただいま
少数意見報告にもございましたように、今回上程されました
国民金融公庫の出
資金の増額の問題は、旧地主に特別二十億円の
ワクで特に低利の融資をしようとする
法案であります。昨年の通常
国会に
提出されましたが、すでに満一年以上経過するも成立をしなかった
法案であります。満一年間たなざらしにされたというこの事実は、本
法案がいかに不当、不合理な
法案であるかを如実に物語るものであります。
旧地主団体が長い間働きかけ、特に自民党の党内にその指導的圧力グループができ上がり、与党・
政府はいかんともしがたく、特に昨年七月、
参議院選挙を前にして、旧地主勢力を有利に使おうと
考え、本
法案を
提出したものと断定してはばからないものであります。今日すでに
参議院選挙も終わり、地方選挙も終わり、利益誘導の必要が当面なくなったのであるから、本
法案は廃案にしてもよいのではないか。
総理大臣にお尋ねをいたしますが、あなたは是が非でも本
法案を成立させたいと思っているのか、現在の心境を聞きたいのであります。
第二は、旧地主が主張する補償問題については、
昭和二十八年十二月二十三日最高裁判所の判決で、「その当時の
経済状態に見合った合理的な補償額と収益に基づく合理的な算出による
報償金まで交付されたものである」といっておるのであります。すなわち、
政府が、今
国会でしばしば言明している旧地主に
報償を
考えているという態度は、最高裁判所判決にも反するのであります。(
拍手)すでに
報償金は払われているのでありますから、総理大臣、あなたは現時点においても何らかの旧地主に
報償を出すような
考えを持っているのか、この点を明らかにしてもらいたいのであります。
第三は、
報償金を出す合理的、科学的根拠がないため、しばしば予算委員会、
大蔵委員会におきましても、政治的配慮ということばで
答弁をしてきたのでありますが、政治的配慮とは、その具体的
内容は一体何でありますか、政治的配慮の
内容を具体的に明らかにしてもらいたいのであります。
第四は、今回の二十億円の融資案は、うるさいからその団体に何か包み金を出してやれば少々おとなしくなるだろう、黙るだろう、あたかも暴力団に襲われたとき、一升あげて金一封包んで、穏やかにしてくれというのにも似ているように思えるのであります。かかる態度は、一国の総理大臣のとるべき姿ではないと私は思うのであります。そこで、
池田総理にお尋ねをいたしますが、
憲法第十四条の精神を守り、正義のために勇気をもって破邪顕正の決断はできないものか。圧力グループに反省をさせる勇気を期待するのでありますが、総理大臣にその勇気のほどをお尋ねしたいのであります。(
拍手)
次に、
大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、
大蔵大臣は、二月四日、予算委員会において、高田富之
議員の質問に答え、本
法案は「
農地被
買収者の
生業資金及び育英
資金等に関する融資措置を新しく法
改正する云々」と答えております。育英
資金も融資するのか。予算委員会の
答弁が間違っているとするならば、本議場を通じて間違いを明らかに訂正すべきでありますが、
大蔵大臣の御
見解を承りたい。
第二点は、融資対象は旧地主何名くらいを一体対象にしておるのか。融資基準はどのような
内容を持っておるのか。
第三点、
国民金融公庫は通常貸し付け
金利は年九分でございますが、今回の貸し付けは六分五厘という特別優遇措置でありますから、九分と六分五厘との差額二分五厘は当然旧地主に対する
報償という性格を持つと思いますが、
大蔵大臣は
報償と
考えるかどうか。もし
報償と
考えないとするならば、
報償という概念の中身を明らかにお示しをいただきたいのであります。
第四は、あなたは旧地主の心情や、政治的配慮から
本案を
提出したというが、旧地主の心情が正義に反し、横車であり、不合理だと認識しないのか、この心情が当然
報償するに値する心情であると現時点においても認識をしておるのか、大臣の心がまえをお聞きしたいのであります。
次に、農林大臣にお尋ねいたしますが、現在の……(「農林大臣がいないぞ」と呼び、その他
発言する者あり)農林大臣も通告をいたしておりますから、出席を求めます。――農林大臣にお尋ねいたしますが、現在の農政、さらに今後の農政を推進するために、
農地改革の評価というものは非常に重要な意義があるのであります。そこで、農林大臣は
農地改革の成果をどのように評価しておるか、これが一つ。
第二に、旧地主に
報償を
意味する特別融資をすることによって、農民相互間の感情的摩擦や対立意識を増成し、農村民主化、協同化の障害になるのではないかと
考えられるが、農林大臣の御所見はいかん。
第三は、最高裁判決は補償と
報償金の支払いがなされたと述べているが、当時の反当たりの
報償と補償との比率を明らかにしてもらいたい。
報償が幾らで補償が幾らであったかという、当時の反別当たりの金額か、比率を出してもらいたい。
次に、法務大臣にお尋ねいたしますが、
憲法第十四条には、
国民すべて法のもとに平等の
取り扱いをしなければならないという精神がうたわれております。この中に
社会的身分という概念が出ておりますが、この
社会的身分の中に旧地主という概念は入るのか入らないのか。入るとするならば、そういう
社会的身分の違いによって、九分で融資すべき
国民金融公庫から六分五厘の融資を受けるということは、他の
一般の零細業者と相対的に比較をした際には差別待遇と思われるが、法務大臣は差別と
考えないかどうか。
次に、最高裁判所の判決から見て、今回の提案は一体妥当な処置、適当な処置だと大臣はお
考えになるかどうか。
次に、厚生大臣にお尋ねをいたします。
大蔵大臣は
報償だといって、われわれが追及をすると、これはそういう
意味も含まれてはおるが社会政策的な施策だ、処置だ、こういって
答弁をいたしておりますが、社会保障的処置だと一体
考えられるかどうか、厚生大臣の
見解を承りたいのであります。もし地主に特別融資をするのが社会保障的政策だというならば、社会保障の定義をひとつ厚生大臣にお示しを願いたいのであります。(
拍手)
次に、労働大臣にお尋ねをいたします。
大蔵大臣は育英
資金も貸し出すような
答弁を予算委員会で三回にわたっていたしておりますが、その後
大蔵委員会においてわが党の
広瀬議員の追及に会って、それは間違いであるような
答弁をいたしておるのであります。農村の過剰人口を教育によって都会に進出せしめ、農村に滞留する過剰人口をはかすために、旧地主の次三男に大いに教育をさせようというねらいから、育英
資金の融資を
考えたものと私は推察するのでありますが、農家の特に旧地主の次三男対策として、こういう教育育英制度というものをはずされて一体いいのかどうか、労働大臣の
立場からその
見解をひとつ承っておきたいのであります。特に労働市場を他に求めようとする施策の一つが消えるのでありますから、労働市場の
立場から大臣はどのような御
見解を持つかを承りたいのであります。
次に、通産大臣にお尋ねをします。
国民金融公庫の状態で零細業者に十分の貸し付けを行なうことができない、現在申し込みのおそらく六割から七割しか借り受けができないように、
国民金融公庫資金は欠乏いたしておるのであります。旧地主に六分五厘で貸せる
資金があるならば、零細小規模事業者に対しても六分五厘で貸してやってはいかがなものでありましょうか。特に六分五厘の融資ということは、日歩一銭七厘八毛であります。今日の大企業が融資を受けておる
金利は日歩一銭七厘程度でありますから、零細業者が年九分で借りるということは、これから比較した際に、非常に高い
金利であります。
所得の少ない、収益の少ない零細企業に高い
金利の融資をするということは、施策がさかさまでありますから、これが是正をする
考えはないか、通産大臣の御所見を承りたいのであります。
簡単に、あと
少数意見の
報告者に最後に御質問をいたしますから、少々ごしんぼう願いたいと思うのであります。
少数意見の
報告者の堀
議員にお尋ねをいたします。
憲法第十四条に規定する法のもとの平等の規定と、本
法案の精神というものは、私は相反すると思いますが、
憲法違反の疑いありやいなやという点をひとつお尋ねをいたします。
第二は、今回の処置は旧地主に対する
報償だと思うが、
報告者の
見解はいかがでありましょうか。
第三には、旧地主への二十億の今回の措置というものは、外地残置財産やその他多くの戦時戦後を通じての
国民大衆と公平な
立場で処理をすべきであろうと思いますが、これらの点についての堀
議員の御
見解を承りたいと思います。
たいへん失礼をいたしました。(
拍手)
〔
堀昌雄君
登壇〕