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久保田豊君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となっておりまする
政府提出の
中小企業基本法案に反対をいたし、わが党
提出の
修正案に賛成の
討論を試みようとするものであります。
私は五つの点に分けて議論を展開してまいりたいと思います。
私どもが
政府提出のこの
法案に反対しまする第一の理由は、この
政府の
法律案は、基本法といたしましては、
法律的に見ましても、
内容形式ともにきわめて不十分であり、あいまいであって、基本法の役をしないということであります。
政府は、この
中小企業基本法はこれらの
中小企業者のいくべき方向を明らかにし、またこれに対しまする
政府の
施策の基本的原則を示したものだと言っております。私どももぜひ名実ともにそうあってほしいと思うのであります。しかしそのためには、いまこの
法案にあらわれましたように、単に美しい抽象語を並べただけでは、これは問題の解決になりません。少なくとも
中小企業者の大多数がこの
法律を見まして、
政府の意図するところがどこにあるか、こういう点が具体的に読み取れる程度のものが必要であります。そういう観点からいたしますると、わが党が
提出いたしておりまする十一章、七十九条にわたる程度の、わが党案程度のものはぜひこの際に必要であるのであります。(
拍手)
政府提案の七章、三十三条、しかもそれはほとんど美しいことばだけでありまして、具体的に何も示されておりません。特に
政府案の最大の欠点は、いわゆるこれからの
政策の勘どころと称する点がほとんどすべて省かれたり、あるいはぼかされたりしていることであります。それなるがゆえに、大多数の
中小企業者団体の本
法案に対する批判といたしましては、
政府原案のとおりでは困る、社会党の
中小企業法案の骨子をとって
修正の上、ぜひこの国会において成立をさしてもらいたいというのが切実な願いであります。(
拍手)
こういう観点から、さすがの自民党の皆さんも、今回ついに六項目の点について、きわめて不十分でありましたけれども、与党の単独
修正という、いまだかつてなかったようなきわめて異例の処置をとったのはここに理由があるかと思うのであります。しかしながら、この六項目の
修正だけでは
法律の体をなしません。私どもはこの観点から本
法案に反対をいたし、少なくとも、いま社会党が
提出いたしました
修正案程度のものをこれに加えることが、この
法案をして真に
中小企業の憲法たらしめる唯一の道であり、
中小企業大衆の要望にこたえる唯一の道であろうと考えるのであります。
第二の反対の理由は何かと申しますと、
政府の本
法案に対しまする取り組み方がきわめて消極的でありまして、いわゆる腰が抜けているということであります。
御承知のとおり、
中小企業問題の持ちまする
経済的意味は、
国民経済全体の立場から見ましても、きわめて大きなものがあります。しかも、
中小企業の
関係する
範囲はきわめて広範で、複雑であります。したがいまして、これを行政的観点から見ましても、単に通産省の各部局にわたるだけでなく、他省にわたる分が非常にたくさんあるのであります。したがいまして、この
中小企業基本法の方向を実行してまいろうというには、これを実行する、担当するところの行政部局が、よほど大きな権限を持ち、十分な人員を持たなければ何にもならないのであります。
しかしながら、いわゆる
政府案におきましては、単にこれは通産省の中の
中小企業庁という、小さなセクションがこれを担当する部門になっております。こういうことでは、これは何にもなりません。しかも、さっきお話のありましたとおり、通産省自体の各部局は、ほとんど大
企業の出店であります。その中で小さな
中小企業庁というようなものが担当しても、これは憲法が泣くだけであります。あまつさえ、ことしからこの
法案を、
中小企業憲法を実行するという
政府が、
中小企業庁の定員は何名ですか。わずかに百六十三名で、地方には手足がほとんどありません。しかも、予算はといいますと、昨年度に比べますと、四十数億を増しておりますけれども、他省に計上された分まで含めて、全部で百十四億であります。これで約三百三十万の
事業所にわたる
中小企業者に対する行政が、少なくとも新しい方向を持った行政ができるはずがありません。まさに
政府の態度は、いわゆる
中小企業憲法という美名を掲げて、その実は腰が抜けて、初めからやる気がない、こういうことになろうかと思うのであります。(
拍手)私はこの点からも反対をせざるを得ないと思うのであります。この点につきまして、わが党は、今日
提出しました
修正案の中で、はっきり
中小企業省を
設置するか、あるいはそこまでは与党の立場で困難ならば、
中小企業専任の国務大臣程度を置くべきであるという主張を掲げてまいった点は、自民党の皆さんとしてもよくおわかりのことであります。こういう片ちんばなやり方では、いかに
中小企業基本法をやっても、自民党の皆さんは初めからやる気がない、こう評せられても文句の言いようがなかろうと思うのであります。
第三の反対点は何かといいますと、この
法案には中身は何にもないということであります。
御承知のとおり、この
法案に規定してありますのは、これからの
中小企業政策の原則をうたいましたところの抽象的な訓示規定であります。これがすべて実体法になってこなければ意味をなしません。ところが、本年度このいわゆる基本法の念願する実体法として
政府が出してきたのがわずかに十一の
法律であります。そのうちで六つまではいわゆる手続法でありまして、意味をなしません。五つだけがわずかに実体法であります。しかも、審議過程で明らかになりましたのは、
政府はこれ以上つくる計画はいまのところ用意はないというのであります。私どもの党が検討したところによりますと、本
法案を完全に
実施するためには、少なくとも五十近くの実体法が必要であります。それに対してわずかに五つばかりのごまかしの実体法でやろうというのでは、これまた全く羊頭を掲げて狗肉を売るというものであります。(
拍手)
そのほか、この
法案には実体法と同時に当然これを裏づけるところの、いわゆる
中小企業の
生産性を
拡大するところの
目標がない、その
目標を裏づけてくる具体的な
政策がなくてはならぬ、また、これを実行する
実施計画がなくてはならぬ、ところが、こういうものは何にもないというのであります。いや、あるにはあるんであります。ことしの予算を見ますと、今日あらわれたところのものは、
政府の考えているものはきわめてみみっちいものであります、しみったれたものであります。たとえば、一例をとってみますと、本
法案に
関係する
中小企業向けの特別減税が三つあります。ところが、これによるところの減税総額は本年度五十一億にとどまります。特に零細
企業約二百五十万に対しては八億の減税であります。こういうのがこの
中小企業基本法の具体的な
内容であります。
さらに、たとえば持ち株会社をつくりまして、これに対する
政府の出資はわずかに六億、これによって持ち株会社として
政府が育成をするものは年にわずかに七十ないしはせいぜい百であります。
対象になりますいわゆる五百万以上の
企業は、
政府の言うとおりにしましても、これが約二万あります。一年間に百ないしは七十ずつ持ち株会社をつくってやって、これが真の
中小企業の育成になりましょうか。こういう低い水準でやっておるのであります。これが本
法案の具体的実態であります。まさに羊頭を掲げて狗肉を売るというか、あるいは世間でよくスズメの涙といいます、もっと下卑たことばでは二階からしょんべんというのがあります。本
法案はまさに二階からしょんべん程度の
法案であると申さざるを得ないのであります。(
拍手)