○五島虎雄君 私は、わが党の同僚
議員である
大原君のあとに続きまして、——ただいま
議題となっておりまする
職業安定法及び
緊急失業対策法の一部を
改正する
法律案は、去る六月十八日の社会
労働常任
委員会における
秋田大助
委員長と
自民党議員の
政治的犯罪行為ともいわるべき行動によりまして本
会議上程となったのでありますが、この経過より照らしまして、まさに不法であり、そうして不存在であるということは、昨夜以来ここに三十数時間にわたって、この問題を中心としていろいろの問題が展開されてまいりましたので、これによって明らかであろうと思います。したがって、存在せざる
議題に対して
討論すること自体が、そもそも無意味であろうと思うのであります。しかしながら、この際、せっかくの機会でもございますから、
政府案の矛盾をつき、及び
自民党のでたらめさに対しまして、この際、
日本社会党を代表して、論及しておきたいと思うのでございます。(
拍手)
この
法律案は、ただいま
自民党の
井村議員が申されましたように、去る二月十三日
衆議院に
提出されたのでありまするが、全国的に全く大きな反響を呼び起こした
法律案でございまして、
衆議院における最重要
法案の一つとして取り扱われてまいったものでございます。
この
法案の第一の問題点は、
労働省が
社会保障制度審議会に諮問することを故意に怠って、そうして
衆議院に提案したことが、その第一の問題点でございます。そもそも、
失業問題あるいは
失業対策事業の問題が、
賃金問題や
雇用に関係することはもちろんでございますが、
社会保障とも重大な関連を持っているのでございます。御
承知のとおり、
失業という事態は、
労働者個人の責任ではありません。社会的な責任であります。
政府の
雇用政策上の問題であるのであります。このような観点からするならば、
政府が
失業者に対しまして、
賃金問題あるいは
雇用問題、
社会保障問題の全面にわたって懇切なる
施策を講ずる必要のあることは当然のことでございましょう。これは「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」との
憲法第二十五条の精神でもあるからであります。したがいまして、
政府が
失業対策事業の検討を要するとするならば、
雇用審議会にはもちろんのこと、
社会保障制度審議会にもまた諮問する必要があるわけであります。
政府は、この
手続を無視いたしまして、
法案を国会に直接提案してまいったのでありますが、われわれは、このような
手続上不備な
法案はすみやかに
撤回されまして、
社会保障制度審議会にあらためて諮問することを要求してまいったのであります。
社会保障制度審議会設置法の第二条に、明らかに、内閣
総理大臣は「
社会保障に関する企画、立法又は運営の大綱に関しては、あらかじめ、
審議会の意見を求めなければならない。」と明確に規定してあります。けれども、
政府は、
失業問題は
雇用問題であって、
社会保障問題ではないから、
社会保障制度審議会に諮問する必要はないと主張しておりますが、これは大きな誤りでなかろうかと思うのであります。
第二の問題は、
労働省が
雇用情勢の分析と見通しを誤っていることであります。御
承知のように、
池田内閣の所得倍増論、高度経済成長
政策は失敗しました。その失敗によって最も重大な犠牲を受け、大きな負担をこうむっているのは国民大衆であり、
労働者大衆であります。
池田内閣の経済
政策の破綻の最も顕著な表現は過剰生産であります。各企業はこの事態に対処するために操短を行ない、それに伴って人員整理を強行しておるのであります。また、
自由化政策の結果といたしまして、国際競争力を強化するための措置といたしまして、企業の集中、独占の傾向を強めており、特定産業振興
法案に見るごとく、独禁法の緩和も真剣に推し進めてまいっております。この結果、過剰人員の整理がすでに深刻な傾向として出てきておるのは御
承知のとおりであります。IMF八条国への移行勧告が採択され、
わが国の
自由化率は八八%から九〇%に高められることとなりますが、
わが国産業の国際競争力の培養要請と相まった
雇用と
賃金面への圧力は一そう強められることになるでございましょう。このような国内、国際
情勢の一連の動きは、結局
労働情勢、
雇用情勢の深刻化を伴うものでありまして、
政府はこの
情勢の深刻化について全く配慮しておりません。われわれは、
政府に対し、
雇用情勢の動きを真剣に考慮し、
労働者のために懇切な
雇用政策を要求するものであります。
第三点としての問題は、第二の問題と直接関連するものでありますが、この
改正法案が実施されることは、潜在
失業者の拡大再生産に役立つのみであるということでございます。周知のように、
臨時工や
社外工は常に不安定な
雇用状態のもとに置かれ、
賃金は低く、
労働条件は全く悪いのでありまして、これをわれわれは不
安定雇用を呼んでおるのでありますが、
昭和三十六年三月現在で、月収一万円以下の
労働者は五百九十九万人で、
わが国全
労働者の二七・一の多きに相当いたしますが、この月収一万円の中には、臨時給や残業手当も含まれているという計算に相なるものでありますから、平均
基準月収は八千円から九千円、この程度となるのでありまして、これは人事院が構成いたしました男子青年独身の標準生計費一万九百六十円と比較いたしましても、いかに低
賃金であるかということがおわかりになるだろうと思います。しかも、この五百九十九万人の
労働者は、単に独身者だけではございません。家計の担当者もおります。この見地からいうならば、一万円以下の
賃金労働者は、
雇用労働者というよりもむしろ半
失業労働者と見ることが適当であると思います。さらに、中小零細企業の低
賃金の状態についても、まことに劣悪なる状態があります。
労働省はこういう
実態については目をおおうという態度をとっておるのでございますが、このような態度が、
雇用情勢の無視とともに、失対
打ち切りの
構想に連なるものであります。現在の
雇用情勢の中で考えるとき、
政府の
改正案は、潜在
失業の拡大再生産をするものでありまして、絶対にわれわれは容認することはできません。
第四の問題は、この
法改正の
前提としては、完全
雇用、最低
賃金制の
確立、
社会保障の拡充等の基本条件の整備が先決でなければなりません。この基本条件の必要性については、すでに社会
労働常任
委員会の席上におきまして、大橋
労働大臣がはっきりと
答弁をされておりますけれども、今回の法の
改正には、この
前提を全然忘れ去って
改正案が
提出されておるということは重大問題であります。いまこの
改正法案に直接関係のある失対
労働者は三十五万人と称されておりますが、その家族は百十万人もおられるのであります。また、八百万人から一千万人と称するところの不完全
失業者もおります。これらの八百万人、一千万人の不完全
失業者は、いつの日に完全
失業者の群れに入るかわからないような脆弱な生活状態にあるということをわれわれは忘れることはできません。
諸君も忘れてもらいたくないと思うのであります。(
拍手)彼らは常に生活の脅威にさらされまして、常に
失業者の群れに転落する要素を持っておりますから、この
法律の
改正は数千万の国民に重大なる影響を持つ
法律案といわなければなりませんから、重大なる
法律案であります。一朝一夕にして、単にわっと手をあげて、わっと叫んで
法律にするようなことでは相ならぬと思うのであります。(
拍手)
昨年五月、福永
労働大臣が失対
打ち切りの方針を発表されましてから今日まで、八人の失対
労働者が自殺をしておられるのであります。これは生活苦と将来への不安が原因であるといわれておるのであります。失対
労働者ばかりではございません。
政府の
政策を実施しなければならない立場に立たされておるところの
労働省の出先である浜松の職安の
労働課長永田象一君がとうとう
政府と
労働者の板ばさみになりまして、この間、みずからとうとい命を捨てていかれました。これは
政府の飽くなき
労働者に対するところの弾圧の結果ではございませんでしょうか。われわれは、かかる事実を直視することによって、今回提案されておりまするところの
職安法及び
失業対策法の一部
改正法律案は真剣に慎重に、検討に検討を加えて、さいぜん申しましたように、最低
賃金の問題、完全
雇用の問題、
社会保障制度の問題等々総合的に考慮いたしまして、そうしてりっぱな
法律案を策定しなければならないということを今日まで主張いたしてまいったのであります。
ところが、あの地方選挙のあとから、自由民主党及び
秋田大助
委員長は、ことに力を注いで、この
法律案をいつ押し通すか、いつ押し通すかというようなことばっかりをねらってまいられたのであります。あるときは定例日ではないのに職権をもってわれわれを招集されたりしました。あるときは厚生省関係の
法律案とともに
労働省関係のこの失対法をも上程されまして、そうしてわれわれに
審議を強要されたのであります。こういうような行動が積み重なりまして、いよいよ六月十八日は最高潮に達したのであります。六月十七日の
新聞の夕刊を読みますと、皆さんもお読みになったかと思いまするけれども、
自民党は失対法を強行する、そのために進軍をするんだ、こういうようなことが書いてありました。したがって、六月十八日の十時前にわれわれが第十二
委員室に行ってみますると、おかしいことに、われわれは数年来社会
労働常任委員として活動いたしておりまするけれども、一回も見たこともないように、十時前に自由民主党の委員が全部勢ぞろいをいたして待っておるわけです。そうして十時四分になると、
委員長が来られました。われわれは
理事会を開いて今後の
議事運営を話し合おうじゃないかといって
委員長に相談いたしますと、
委員長は次第次第によけられまして、部屋のすみに行かれまして、そうして話し合おうじゃないか、話し合おうじゃないかと言っておりますると、やおら机の上に
秋田大助
委員長が乗られまして、そうして急に、突然に片手をあげられますと、自由民主党の
議員連中が万歳と言うんです。何のことやらさっぱりわからない。そうすると、今度は口をぱくぱくされたのです。そうすると、
議員の連中が万歳と言われました。そうしてわずか一分間のうちに部屋を抜けて出られたわけであります。そうしてあとで
新聞の情報によりますると、この失対法の
質疑を打ち切る
動議を出した、そうして
質疑終了をやった、そうしてまたこの
法律案の修正もやった、こういうようなことに相なっておるのであります。この実情をわれわれは国民とともに真剣に考えてみなければならないと思います。したがって、六月十八日のこの
委員会における
採決は、こういうようなことは絶対に存在いたしておりませんから、私は同僚
諸君に訴えますが、こういうような
法律は真剣に検討することがよろしい、数千万人の国民に影響するようなこういう重大な
法律案はすみやかにこれを
撤回されまして、そうして平和状態に回復され、われわれとともに知識をしぼりあって、国民の幸福のために今後努力されることを要望いたしまして、
討論を終わらんとするものであります。
御清聴を感謝いたします。(
拍手)
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討論終局の
動議(
竹山祐太郎君外
二十二名
提出)