○阪上安太郎君 私は、
社会党を代表いたしまして、ただいま
趣旨説明のありました
地方行政連絡会議法案について
質問をいたします。
戦後、
わが国の地方自治は、憲法の保障するところとなりまして、一応、自治の
ていさいというものを整えておるようでございます。が、しかし、
財政的にはむしろ中央集権の度合いが強くなり、そのことのため、自治体は地方自治の本旨に基づく固有の事務をわずかに三割程度しか実施できないような
状態で、地域住民と結びつくところの独自の仕事ができないため、自治行政の特色と妙味を発揮することはできないのであります。そして七割を占める国からの委任事務に追い回されているというような実情でございます。このようにいたしまして、
財政中央集権はますます
強化され、都道府県知事や市町村長、こういった人々は、国の委任事務につながるひもつき財源獲得のためにうき身をやつす、こういった情けない姿でございます。
いまや、地方自治体は、国の出先
機関としての役割りが主となって、本来の地方自治事務というものは従となり、このため地方自治に対する住民の不信が高まって、そのおもむくどころは地方自治に対する住民の無関心となるのであります。このことは、今回の統一地方選挙の投票率が戦後最低であることが明白に物語っているのでありまして、このところ地方自治は真におそるべき危機に直面いたしておるのでございます。自民党がこの統一地方選挙で、いわゆる中央に直結する地方自治を公約、強調いたしましたことは、ますます中央集権制への疑惑を
国民に与え、地方自治軽視の風潮を誘い、ひいては
政府部内にもこの地方自治軽視の風潮が広がりまして、
官僚の独善的な地方支配が露骨になりつつあることは、これはまことに遺憾でございます。(
拍手)
このような
財政中央集権制の
弊害が露呈されつつあるときに、さらに憂うべきいま一つの傾向が、実は頭をもたげてきたのでございます。それは最近、広域行政に名をかり、行政中央集権制が復活している事実でございます。
財政中央集権制でもって、先刻申し上げましたように、地方自治が三割自治のみすばらしい姿になっておるときに、さらに行政中央集権制の台頭によりまして、自治体固有の
権限が剥奪されようといたしておるのでございます。こうなっては、もはや
わが国の地方自治というものは
戦前の市町村制であるとか、あるいはまた府県制に逆戻りをすることになり、
わが国民主主義の根底がくつがえされるおそれなしとしないのでございます。
私は、以上申し述べましたような見地より、本
法案につきまして
総理並びに自治
大臣の
見解をただしたいのでございます。
まず
総理にお伺いいたします。
最近地域間の格差是正、あるいはまた大都市における人口と産業の過度
集中の排除、地域における雇用の安定・こういったことのために地域開発が重大な
施策となってきております。そうして、これに対応する広域行政制度の確立が各方面で問題となっているのであります。ところが、これに対し
政府部内では各種の
機関が重複いたしまして、まちまちの方向をたどっている。すなわち、臨時行政調査会では地方庁案、その部会では地方行
政府案、また地方制度調査会では道州制案、首都圏整備委員会におきましては首都圏庁案、自治省では事業団と二、三府県の
合併案、そしてこの
地方行政連絡会議法案、
総理府では近畿圏整備
法案、そうしてそれにさらに加えまして建設省では、建設省設置法の一部
改正でもって出先
機関の
強化を期しております。河川法の
改正で府県固有の
権限を剥奪しようといたしております。農林省では、さきに設置法の一部
改正でもって、これまた出先
機関の
強化をはかり、そのほかに水資源公団法であるとか新産業都市建設促進法であるとか、低開発地域工業開発促進法であるとか、こういったものに基づく広域制度等々、全く不統一、無方針の限りでございまして、しかも、
法案作成の過程におきましては、各省のなわ張り争いがわざわいいたしまして、その結果、
法案は支離滅裂、まことに醜態の限りでございます。地方自治というえさをハゲタカが寄ってたかって食い荒らしているというような姿でございます。(
拍手)しかも、その方向はおそるべき地方自治の否定であり、官治行政への移行でございます。
一体
総理は、この
状態にどう対処されるつもりでございますか。その善処の方法をこの際、明らかにせられたいのであります。(
拍手)また地方自治擁護のたてまえより、広域行政制度の
あり方に対する
基本方針というものを、この際、明らかにせられたいのでございます。
次に、自治
大臣にお伺いいたします。この
法律案は、自治省三年来の宿願であったのでありまして、そしてそれが日の目を見たのがようやく今日であります。ところがこれを見ますると、当初の構想からはるかに後退いたしております。連絡
会議は決議
機関でもなく、審議
機関でもなく、単なる話し合いの場所にすぎず、これでは俗に言うところの、めしを食う会合に終わるのであります。一体、なぜこのような
骨抜き法案を
提出されたのでありますか。また、この程度の
法律で所期の目的を達成することがはたしてできるのでありましょうか。この点をまずお伺いいたしたいのであります。
次に、この
法律案提出までの三年来の経過よりして、地方制度調査会の答申、例の道州制へのワン・ステップにするという
意見もございます。このことは、地方自治体でも真剣に心配いたしておるところでございます。
大臣は、参議院の委員会におきまして、この
法案は実施してうまくいかなかったら別の方法を考える、このように答えておられるのでありますが、一体別の方法とは何でありましょうか、あるいはこのことは何を意味するのか、あわせてこの際お答え願いたいのでございます。
さらに、この
法案が広域行政制度としてたいした役割を果たすとは考えられないにもかかわらず、それでもなおこのようにして提案してきたのは、結局、各省の例のハゲタカによる地方自治侵害を食いとめようとするねらいなのかどうか、賛否の
態度に大きく
影響いたしますので、ひとつ率直にお答え願いたいと存じます。(
拍手)
また、最近閣僚が各地において府県
合併を強調し、
合併こそが唯一の広域行政制度である、こういうような印象づけをいたしておるのであります。自治省もこれに追随いたしまして、例の二、三
合併に踏み切った様子でございますが、これはあまりにも軽卒である。そもそも、憲法が承認する地方公共団体というものは、地方自治法にいう普通地方公共団体としての都道府県、市町村等であって、特別区であるとか財産区であるとか一部事務組合、こういったものは
法律が認めたものであります。そこで、この
基礎的な団体である市町村や都道府県の
合併というものを、一部財界だけの意向により、あるいはまた
関係自治体とその住民の意思をはからずして、中央
政府の一方的な意思によって押しつけようとする
態度こそは、地方自治の本旨にもとる
態度であります。(
拍手)
大臣の
所見を承りたいのでございます。
また、広域行政制度の
あり方として、現在の都道府県の主権というものをそのままに認めながら、府県連合ないし市町村連合等の共同処理方式をとって、それに特別地方公共団体としての
法人格を与えて、下世話にいうならばEECの国内版といったようなものを構想して、住民自治と広域行政との調整をはかるべきだと考えるのでありますが、一体この点はどうか、大胆にひとつ篠田
大臣の
所見を伺いたいのであります。
最後に、最近の広域行政が産業基盤の整備に偏向いたしまして、住民の生活基盤の整備がおろそかになり、交通地獄でありますとか、あるいはスモッグの災害であるとか、水飢餓であるとか、凶悪犯罪等の続出であるとか、まさに住民生活が危機に瀕しておるのでございますが、地方自治本来の目的が無視されている点に留意して、産業開発上の見地よりの九ブロック地域割りにこだわることなく、より
効果的なブロック割りとする考えはないかどうか、このことをお伺いいたしまして、
質問を終わりたいと存じます。(
拍手)
〔国務
大臣池田勇人君
登壇〕