○太田一夫君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま御
報告になりました
地方税法の一部を
改正する
法律案に
反対の意見を申し述べたいと思います。(
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戦後、民主主義の歴史十有八年を経ているとは申しながら、なお民主主義の、とりわけ地方自治の道理に暗く、ともすればその主人公であるべき住民の立場は忘れられがちのありさまであります。地域格差のはなはだしい
地方財政に対しては租税の過重もまたやむなしとなし、住民の
福祉、住民のための行政よりも、国の財政、国の行政の立場を尊重する風潮さえ生じつつあることはまことに残念と申さなければなりません。
このたびの
地方税法の一部
改正法案に関する
政府の
提案理由におきましても、過去数年言われ続けて参りました住民の税負担の
軽減と
合理化を行なうとする方針は消え去り、かわって「
明年度の税収入には大幅な伸びを期待することが困難な状況にあるので、
電気ガス税一%と
国民健康保険税の若干の減税にとどめ、国家的見地から緊要とされる行政水準の向上のために財源を確保しておきたい。」旨の
説明がなされているのであります。このことは、昨年十二月税制調査会が行なった
昭和三十八年度の税制
改正に関する臨時答申の線にもほど遠く、同答申に言われている「物価上昇に伴う低
所得者層の実質的な負担の
増加を調整するために、課税最低限の引き上げその他の減税を行なうべきである。」という考え方さえ無視したものでありまして、今次
政府の所得税法の一部
改正法案と同じく、勤労者階層の生活に対する無理解、無視の
法案と申さなければならないのであります。
地方住民は昨年驚くべく大幅な住民税の引き上げに肝をつぶしたことを思い出していただきたいのであります。なるほど所得税は若干減税となりましたが、二段階比例
税率のおそるべき影響をこうむって、住民税は一挙に数倍に増額され、その上、所得税さえ納め得ない貧困者層にも、すべて同率の所得課税が行なわれたのであります。物価の上昇、名目賃金のアップもありまして、各人の納めるべき諸税はまことに著しい
増加となったことは、各位の御承知の
通りであります。
また、住民税中、市町村民税は、課税に二つの方式があるために、財政貧弱なる
地方団体は、住民にとってははなはだしく不利なるにかかわらず、税収の増徴をはかってただし書き方式を採用し、その上、標準
税率をこえる高率をもって課税している現状にあるのであります。今日、との不当に高いただし書き方式を採用している市町村は全体の八二%に達し、その中の半数は、さらに超過
税率を採用して住民を泣かせているのであります。これを改め、こうした過酷な税制を
改正するのでない限り、地方住民は浮かばれません。地方住民の希望はない。地方自治の発展はあり得ないのであります
政府は、本
改正案において、わずかに
電気ガス税の一%
軽減を行ない、あわせて
国民健康保険税の一部
軽減を行なっていることを強調していますけれども、
電気ガス税の一%
軽減、平年度五十六億円、その減税の大半は大口消費者のものでありまして、低
所得者層にはほとんど無縁のものであります。また、国保税とても、年所得十五万円以上二十万円未満の減税必要の向きには逆に増税となるものでありまして、国民の鶴首して待ち望んだ減税にははるかに遠く、地方住民の要望にこたえ得られないものであることを指摘しなければなりません。(
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さらに注目を要するのは、固定資産税の評価がえの問題であります。
政府は、来たる
昭和三十九年度の固定資産税は、すべて時価評価主義に統一するもののようであります。もし、農地が時価によって評価された場合は、いかなることになるでありましょうか。おそらく田畑の固定資産税は一挙に数倍に増額されるに違いありません。私どもは、従来農地の固定資産税三分の一
軽減の主張をいたして参っておるのでありますが、
政府が農民の長年の念願である農地に対する減税に踏み切れなかったことは、来たるべき大増税の前ぶれとしか考えられないのでありまして、私どもの最も遺憾とするところであります(
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さらに残念に思いますのは、
事業税について一顧だにされなかった点であります。小規模個人
事業者にとってはまさに死活の問題でもありますのに、何ゆえ減税しようとはなされなかったのでありましょうか。二重課税と評され、また専従者控除、基礎控除とも不満足きわまる現状にかんがみますとき、少なくとも最低課税
限度の大幅引き上げくらいは行なうべきであったと考えるのであります。
政府は、担税力少なき者にも課税をする理由に、
地方税は負担分任であるべきだと強観されるのでありますが、住民税といい、農地に対する固定資産税といい、小規模個人
事業税といい、地方住民の生活を著しく脅かすに至っているととは、許さるべきではないと考えますしかも、その地域の経済力が弱く、住民の貧しい貧弱な
地方団体ほど重税を課し、それがさらに地域内経済力を弱化し、そのためにますます増税に陥るというおそるべき悪循環を繰り返していることを、見のがすべきではありません。
地方税とても、公平の原則は貫いてもらわなければ困るのであります。
さらにまた、
政府には、
地方税を減税することはすなわち
地方財政が弱体化することだというがごとき錯覚的意見があるようであります。そのために、減税を要望する声に対し、住民の利益よりも
地方団体の財源の乏しくなることをまっ先に心配するがごとき本末転倒の議論が行なわれていることは、遺憾千万なことであります。(
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さきに、われわれが主張した消防施設税創設のごとく、非課税特例整理のごとく、合理的財源生み出しの方途は多々あるのであります。国と
地方団体との財源調整の見地から見ますならば、地方道路譲与税の増額、
地方交付税率の
増加もなすべきであります。
昭和二十五年以来、
地方税法附則の
規定によりまして行なわれ続けて参りました、株式配当金を受くる者に県民税、市町村民税を大幅に減額して参った特例措置などは、この際、断固廃止に踏み切る英断にいずべきであったと思うのであります。
以上、要するに、
政府今次の
改正案には理想がなく、単に当面の糊塗にしかすぎないものであることに、われわれは大いなる失望と不満を禁ぜざるを得ないのであります。よって、わが党は、
本案に
反対し、
政府がすみやかにその方針を改め、住民長年の要望にこたえる積極的減税の
実施をなされることを強く求めまして、
反対討論といたす次第であります。(
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