○志賀(義)
委員 そういうふうに絶対確信と言われますと、昨年十一月十日のあなたと私との問答をここで読み上げてみましょう。渡辺道夫という男です。「共産党の中央
委員会勤務の宇田慎
一郎に対して、途中で」途中でというのは公安調査庁が
関係してしくじったのですが、「途中で関東興信所渡辺道夫という人物が出ました。これは私
どもの判断では、どうも公安調査庁の人間ではないのですね。どうでしょう、警察じゃありませんか。」と私が聞きましたのに対しまして、あなたは、「「アカハタ」を拝見しましたが、警察の者だという報告はどこからも聞いておりません。」そこで私が、「そうですが、報告がきませんか。
〔志賀(義)
委員、三輪
説明員に写真を示す〕
渡辺道夫というのは、写真をとるときに後日証拠が残っちゃいかぬというので目をつぶったのです。こういうようなことは、局長くらいになると一々覚えがないかもしれませんが、人相に覚えございませんか。」お答えとして、「ただいま御呈示になりました写真は、「アカハタ」にたしか載っておりましたけれ
ども、私が見知る男ではございません。」私がさらに「警察にないというのは、お調べになった結果ないと言われるのか、まだ調べてないのか、調べたけれ
どもまだその調べが終わっていないのか、その三つのうちどれに当たりましょう。」それでお答えとして、「警察という御指摘でございますれば、私の方が積極的に調べるのでございますけれ
ども、私の方で警察だと判断される材料も、こざいませんし、格別調査を命じてはおりません。」こういうことなんです。しかし、私
どもの調べたところでは、ただいま申し上げた
通り、神奈川県警の鈴木英夫警部補であります。こうなりますと、これはきわめて重大ですね。石黒の背後にこの人がおる。この人は関東興信所のこの事件もあります。まだそのほかにもこの人の
関係したこともあるのでございます。私
どもいろいろ調べておるのでございますが、鈴木英夫警部補の生年月日、本籍、現住所、家族、それから全部調べました。経歴も私
ども調べました。現に神奈川県に籍を置いておると思われる人がこういうふうに東京におる。それで写真までも私は示しておる。そういう人物がいないと言われると、これはまた大へんなことになります。今申し上げた
通り、少なくとも
住民票でこういう人がおります。この人を調べてみて、この坂井七郎という実在の人物が、私はそんなこと見たことがない——そこでその写真を示したら、みんな確かにこの人だと確認する。その警部補がいた。これは一体どう解釈できますか。これは現代版の忍びの者ではありませんか。私は、決していつもここで架空なことを
質問したことはございません。本人の写真は戸高公徳の場合もちゃんとお示しをしたのです。それを当時の警察庁長官は
最後まで知らぬ存ぜぬ。警察庁にいますよ、警察大学校にいますよ、これでも調べられない。どうしてこういうことをなさるのか。そこで私は、
法務省の方でこの坂井七郎という人物を至急に正確にお調べ願いたいと思います。
それで警察庁に
お尋ねしますが、この三月十八日、と申しますと、きのうでございますが、あなたの部下がここをたずねているのです。何にも御存じないようなことをおっしゃるけれ
ども、警察の方がこの大塚の五十嵐アパートに行っておられるのですよ。つまりあなたは、昨年十一月十日に私が法務
委員会で言ったときに何にもお調べにならなかったが、少なくともここまでくれば、菅生事件といい、島根県警の文書といい、これは続出するスパイ事件の一つだと私は思う。共産党の歴史を見ますと、こういうふうにスパイ事件をやられるときには、とかく日本にとって不祥事件が起こります。大森で銀行ギャング事件が起こったときには、戦争へぐっと入っております。それから下山総裁が殺され、松川事件が起こったあとでは、朝鮮で戦争が起こっております。どちらも共産党の幹部が、また共産党がそれを
理由に弾圧されております。私
どもは、こういう経験がありますので、今度は事の起こらない前に
法務大臣にお目にかかって申し上げ、また警察庁長官にもお話ししたのです。こういうことが今日までの経過です。そうしてこの坂井七郎こと鈴木警部補は、約一年にわたって今申した石黒義成を利用してスパイ活動をやらせ、そして今度は、先日申し上げたようなでっち上げ事件を行なっているのです。横浜市磯子区磯子町百六十七、ここからの送付とこの坂井七郎と
関係はないのでしょうか、どうでしょうか。そういう点も一つお調べになる必要があろうと思うのであります。
事柄自体は不発に終わりましたから、あるいは大森銀行ギャング事件、あるいは下山総裁事件、松川事件のように、世間の耳目を聳動するに至らないでおさめることができました。いいですか、この石黒という男は、今度のでっち上げ事件の脚本百八十ページくらいのものを毎日暗記しておったのです。それでこの石黒という男は孤児であります。本人は孤児と申しております。もう少し詳しい事情もあるようでございますが、成長期を少年鑑別所、それから私立の矯正院などで過ごしたということであります。こういう青年の弱点を利用して、警察がこれをスパイに利用するなどということは、人間を悪い道から救って正しい道につかせるという警察法の本旨からいっても、絶対にしてはならないはずです。現に私
どもの党員で、矯正院においてこの男を矯正するために全力をあげた者もいるのです。共産党がこの不幸な少年を助けようとするときに、警察が逆にこれをスパイに使う、何ということです。
もう少し申しましょう。今度の事件が奇想天外でないことは、石黒が石川県から母危篤の電報で呼び返され、途中で共産党に拉致されるというくだりで事が始まっているのでありますが、石黒は下谷北署から、きわめて計画的に、あれほどの凶器を持って忍び込んだ事件を在庁略式命令で罰金二万円で済まされ、その罰金はどこからきているのかわからぬ、こういう事件であります。それで母危篤の電報を打って——石川県羽咋市本町の板金水道工事の本多工務店というところにしばらく勤めておりました。これは今の鈴木警部補から行けと言われた、こういうこともいわれております。そうして母危篤の電報は、調べてみますと、一月九日にちゃんと打たれております。それで、あなたは今重大な事件とかなんとかいうことで開き直ったようなことをおっしゃったけれ
ども、柴田正子、柴田勝代、傷害を受けた勝代さんとそのお姉さん、石黒が坂井こと鈴木警部補と
関係を持っておったことは、この二人の女性もはっきり知っております。こういうことであります。
まだ幾らもあるのでございますが、この鈴木英夫警部補は、
法務省の名をかたったり、興信所だというにせの看板を上げたり、偽名を使ったり、
法務省の役人の名をかたるどころか、これはどういう
関係にあるのかはっきりしませんけれ
ども、こういう
住民票、こういう記載のあるようなことまでする。あなたは先ほど神奈川県警が、東京に来てこういう活動をやることはないと言われました。現にこの前言われたから、もうちょっとあなたの方にセンスがあったら、渡辺道夫、鈴木英夫警部補を神奈川県警の方に帰すとか、どこか本職に帰すとかするのが常識でしょう、それをどうしてこりずにこんなものに使うのですか。日本の警察はそれほどまずいのですか。児戯に、類するというか、何ともはや粗雑なやり方ですね。
なお、大臣と
刑事局長に申し上げておきますが、この坂井七郎なる人物の奥さんのトクさんという方、このトクさんというのは東京には転入しておりません。ずっと亀田町に住んでいるということも判明しておるのであります。
それでもう一度重ねて大臣に伺いますが、公安調査庁では、自分の氏名、官職を他の官庁、特に警察に使用させることがあるかどうか。先ほどあなたはないと言われたが、事実こういうことがあるのでありますから、これは一体どういうことか、これをよくお調べいただきたいと思うのであります。警察も公安調査庁も、とうてい常識では判断のできないことでございます。私
ども努力しまして、事件は——どれほどいろいろな工作をやり、いろいろのことを計画しておったに違いありません。そのうちの児戯に類することを一つ未然に防いだからよろしいものの——
法務大臣にお伺いしたいのでございますが、ここまで申し上げたら、一つ事態を徹底的に明らかにしていただけますかどうか。ことに警察庁の
管轄の役人が、あなたの方の所管の人物の
住民票その他のあるところで居住しておった。しかも、私が
質問したその日に、坂井七郎という名刺をはがしてどこかへ行ってしまった。こういうことがあるのです。一つ十分お調べいただけますかどうか、お答え願いたいと存じます。