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1963-05-31 第43回国会 衆議院 文教委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年五月三十一日(金曜日)    午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 小澤佐重喜君 理事 長谷川 峻君    理事 八木 徹雄君 理事 小林 信一君    理事 村山 喜一君 理事 山中 吾郎君       中村庸一郎君    松山千惠子君       南  好雄君    米田 吉盛君       杉山元治郎君    高津 正道君       三木 喜夫君    谷口善太郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君  出席政府委員         文部事務官         (大臣官房長) 蒲生 芳郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (社会教育局         長)      齋藤  正君         文部事務官         (体育局長)  前田 充明君  委員外出席者         文部事務官         (初等中等教育         局教科書課長) 諸沢 正道君         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 本日の会議に付した案件  義務教育学校教科用図書無償措置に関す  る法律案内閣提出第一〇九号)  体育及び宗教に関する件      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  この際御報告いたします。過日の委員会において委員長に一任になっておりました義務教育学校教科用図書無償措置に関する法律案参考人の人選につきまして、次のとおり決定いたしましたのでお知らせいたします。その氏名を申し上げます。大阪書籍株式会社取締役社長前田隆一君、株式会社三重教科書特約供給所取締役社長別所信一君、名古屋市教育委員会事務局教務部長辻晃一君、静岡県教育委員会教育長鈴木健一君、日本出版労働組合協議会委員長豊田匡介君、東京教育大学教授安藤尭雄君、渋谷区立大向小学校校長近藤修博君、練馬区立開進第一中学校教諭本多公栄君、元教科書編著者徳武敏夫君、以上であります。      ————◇—————
  3. 床次徳二

    床次委員長 次に社会教育体育及び宗教に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。長谷川峻君。
  4. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 この際に文部大臣並びに文部省当局に御見解をお尋ねしたいと思います。  明年のオリンピックを控えて、政府並びに国民一般もようやくオリンピック熱というものが盛り上がろうとしております。これは、オリンピックの精神に基づいても、アマチュアリズムの確立、これが根本原則であるのでありますが、日本の場合こうしたアマチュアリズムというものがとかく終戦後軽視されておる。これは私は文教立場からしても非常に残念なことだと思っておる一人であります。というのは、個人的なことを申し上げて恐縮ですが、終戦の当時、明治神富野球場が、従来は六大学野球殿堂として使われておりましたが、食糧事情が悪いために、あそこがイモ畑になり、学生諸君は食うや食わずの時代でありました。しかし私は国民並びに青少年の敗戦の後のじめじめした空気を一掃して元気をつけるシンボルとしてでも、六大学野球明治神宮球場で開かせたい。そうしたならば学生諸君は腹は減っておってもバットを振るだろうし、飛ぶ白球は青空高く上がって、それが国民を打ちひしがれた敗北感から立ち直らせ、いささかでも意気を高揚する役に立つのじゃなかろうか。その中にまたアマチュアリズムがある。こういうたてまえから当時の文部大臣にお願い申し上げ、それを聞きつけた小野三千麿氏あたりが、大洗におりましたところの飛田穂洲氏をたずねていって、そこでやり出したのが六大学野球の復活であります。これは古橋が水泳のレコードをつくったこと以上に、全国の学生青少年諸君に非常に大きなモラルの向上と、アマチュアリズムの自然のうちの感化力を与え、今日の野球の復興の原因をなしていると思う。私は関係者立場からアマチュアリズムの問題は特に注目しておったのであります。文部大臣は非常にスポーツに対して御関心が深いが、今日競馬においてレスリングにおいてあるいはボクシングにおいて、いわんや野球において、全割がほとんど職業的なもの、これがテレビを通じ新聞を通じ、じゃんじゃんとやられるところに、それもしかたがないものにしろ、どこかでアマチュアリズムというものを一方に高揚させなければならぬ。文部大臣はそういう気持ちから、たった一ついままで残っておった秩父宮ラグビー場を御自分で御視察されて、あのラグビー関係者がこういう職業化時代に、選手諸君並びにOBの諸君自分たちラグビー場をつくり、維持経世に苦心しておる姿を見られて、非常に感涙にむせばれ、大蔵大臣と一緒に予算折衝に熱心に当たられた。これがあのラグビー場をして今日すばらしいものにし、そしてあのラグビー場の中に、具体的に大臣を感服させたのは広告がない。広告をとれば収入になるので、至るところの職業関係は全部広告をとっておりますが、六大草野球場であるところの明治神宮ラグビー場だけは広告がない。こういうところにいささかでも私はアマチュアリズムを高揚する、そういう伝統だけは残しておきたいという気持ちを持っておるものであります。ところが不幸にしてその明治神宮が、アマチュアリズム殿堂として国民が寄付を申し上げ、国有財産文部省あたりが中へ入って、終戦直後安く払い下げたにかかわらず、何と驚くなかれ、第一球場である六大学球場に対してさえも職業野球がこれをやっている。その上に第二球場というものまでつくって、これを職業化していくということは、しかもそのそばには今日どんどんつくっておりますが、すばらしいところのオリンピック陸上競技場、十万人入るところの競技場ができつつある。そのそば職業野球場ができていくということは——オリンピックアマチュアリズム、そしてそれに巨費をかけている。一方は職業野球場がすぐそばにできていくということは、私は平仄が合わぬのではなかろうか、わかりやすいことでPRしないことには、国民なり青少年気持ちの上に感化を及ぼすものがないではないか。そういう意味からいいまして、私は文部大臣から、いわゆる文教の総責任者とされまして、こういう精神的な面、アマチュアリズムの高揚、具体的に出ておるのは、この明治神宮という国民崇敬のメッカであるアマチュアスポーツ殿堂が、そういうふうにオリンピック競技場そばにありながら汚されていくというように私は思われるのですが、このことに対する御見解と、さらにまた将来のいろいろな問題に対してお扱いされるところの御態度について、この際に御解明いただくならしあわせと思います。
  5. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 これは現実問題としては非常に悩みの多い課題だと存じますが、私も個人的にはアマチュアスポーツを愛する一人でございまして、長谷川さんのおっしゃる御趣旨はことごとく同感でございます。ただ文部省という立場で、これを行政課題として法律的に考えました場合、ただぼう然として時代の推移を静観するほかに手がないという実情かと思うわけであります。まさしく御指摘のとおり、野球にしろ、水泳にしろ、あるいは陸上競技等にいたしましても、アマチュアスポーツのための純粋のものが正しく堅持をされていくということは、アマチュアスポーツマンのことごとく例外なしの念願だろうと思います。そういう意味で、できることならば、野球場にしましても、今度のメインスタジアムになります陸上競技場はもちろんのこと、今度の第二球場の問題にいたしましても、できれば純粋な状態で維持されてほしいと念願するであろうところのアマチュアスポーツマンの願いにこたえるという課題一つあろうかと思うわけでありますが、さてしかし先ほど申し上げましたように、現実問題といたしますと、概念論としては、あるいは法律論としては、何ともいたし方のない状態であることをスポーツ愛好者の一人という個人的立場において遺憾に存ずるのであります。  将来にわたって、しからばこれをいま申し上げたアマチュアスポーツという立場からどうするかということにつきましては、思いつきのことしかございませんけれども宗教法人明治神宮というものが食っていかねばならぬ。食うための手段としていわば緊急避難的な合法手続によって職業野球等との契約を結ぶということは禁止するわけにはまいりませんが、宗教法人そのものを国の立場経済的援助を加えたりすることは許されないことですから、それとは全然別個に、あたかも国立競技場宗教法人明治神宮から土地を国の立場において買収し、そうして国の施設としてあのメインスタジアムを今日まで維持してきた。国際オリンピックに備えてさらに拡張工事も国の責任においてやり、アマチュアスポーツ殿堂として拡大維持していこうとしておる。それと同じ考え方野球場等につきましても、国の立場明治神宮をどうするということとは別個に、陸上競技場式運営、しかたをする課題が提供されるという時期になったのではないかというふうに感じるわけでございますが、さりとてそれに対して具体的に年次的な見通しのもとにどうしようという考えがあるわけではございません。気持ちだけを申し上げれば、私は率直に以上のように感じております。
  6. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 大庭はアマチュアスポーツに対して非常に御関心をお持ちになっている。しかし今度の問題が出た場合には、法律的にあるいは制度的にどうにもならぬことである、こういう御答弁でありますが、私はその制度的、法律的あるいは宗教法人の扱い等々の問題からして限界のあることはわかっております。しかしこれは文教百年の、あるいは青少年対策百年の——アマチュアリズムというものがいかに、オリンピックという一つ世界的行事を見てさえも大事なものであるか、永遠につながるものであるかというたてまえからいたしますれば、これはまだまだ方法は残されているのではなかろうか。ということは、職業的な問題の場合は、それは何も、実をいうとああいうところまで入って借りる、多額な金を出してつくったものを御提供申し上げるという必要はなくて、因縁のないところから幾らでも商売で買えばいいという、そういうことなどに対する積極的な干渉というものがあってしかるべきではないか。これは私は国民世論によって支持されると思う。いわんやあの明治神宮外苑というものは、ごらんください、私は朝六時、七時に毎朝のように行っているのですが、五時になりますと絵面館の前のあの緑の芝生は、朝五時から東京都内商店街諸君によって草野球が一日じゅう行なわれている。こういうことで、ほかにスポーツ施設がないからという口実になるかもしれませんが、維持管理の上からもまずいものがあるのではなかろうか。外苑というものは、あるいは明治神宮一木一草というものは、当時の国民性もありますが、全国民が御寄付申し上げた。一木一草、青年団が来てあれを植えて帰ったものです。しかもそれを終戦後、文部省などが中に入ってこれを安く買い上げ、安く明治神宮奉賛会に払い下げするごあっせんを申し上げた。であるから日本的な、国民的な世論の春景があれば、その当時の奉賛会の方々にも御勧告を申し上げることもできるし、それによってまた明治神宮というものが国民崇敬の中に生きることもできる、私はこう思いますので、ぜひともこれはあらゆる手段を尽くされて、どこがフランチャイズするとか、どこがそれに対抗するとかいうようなそういう微々たる話はいたしません。青年アマチュアリズムというものはいかに大事であるか、ずっと光というものを続けるのが文部省であり、法制的にできないでも、努力していくというところがわれわれのつとめであるというところを積極的にひとつお示しいただくような、万全の御手配をこの際特にお願い申し上げたい。  このあとでほかの委員も御質問されるそうでありますが、やはり実情というものを、こういう委員会諸君みんなで一ぺんああいうところを拝見して、だんだん議論を積み重ねていって、アマチュアリズム伝統というものはぜひとも守る努力を国会としていたしたいという気持を持っておることも申し添えまして、御要望申し上げる次第であります。
  7. 床次徳二

  8. 高津正道

    高津委員 いま長谷川委員から御指摘がありましたが、神宮の第二球場国鉄球団が進出してくる、二十四億円を投じてそこを増改築するというのでありますが、その金額から見れば、それは新築するほどの大きい金額であります。そうして出てきて七十回も試合をやるということになりますと、いま東都大学野球連盟があそこを使っておりますが、それを非常に圧迫する結果にならないか。文部当局はこれをどのように見られますか。
  9. 前田充明

    前田(充)政府委員 第二球場の現在の使用状況は、年間おおむね百七十日くらいだそうでございます。そういたしまして社会人野球に三〇%、それから東都大学に三〇%、イースタン・リーグに三〇%、アマチュア軟式野球に一〇%ということでございます。これは神宮の側の方のお話でございますが、そういたしますと、大体七〇%程度が完全なアマチュア野球に使われております。  それから今後、改修後どんなふうに一体使われるかということについて当局に伺ってみますと、大体国鉄球団高津先生お話のように七十日くらい、それからその他の社会人野球学生野球等におおむね百日くらい、こういうような話を伺っております。そういたしますと、プロ野球が四〇%で、社会人学生等が六〇%ということになりますので、ある程度お説のようにアマチュア野球が幾ぶん圧迫を受けるというようになるのではないかというような予想が、ごく最近伺ったところによりまして感じられるのでございます。
  10. 高津正道

    高津委員 それは夜と昼と合わせての話ですか。夜を職業野球が使い、アマチュアのほうは昼に回してそれとの比率をいったのですか。
  11. 前田充明

    前田(充)政府委員 今度の改修されるものが、第一球場のように夜も行なわれるようになるかどうか、ちょっと私どものほうの調査がまだ完全でないと思いますが、大体日数として、国鉄球団が七十日、社会人野球学生野球等が百日、こういうような報告を受けております。
  12. 高津正道

    高津委員 むろんテレビが入るので、フジテレビと産経新聞とが契約当事者になっておりますから、ナイターがおもになるわけです。そうすれば、そのナイターをやる準備の時間というものは、私、専門語を知りませんけれども、午後四時ごろからナイターのために入ってきますね。始まる前のけいこも見たいし、だから夜やるからといってもその日一日つぶれるわけです。それはあなたの言うパーセンテージには載っていないと思うのです。第一球場実例を見ましても、東映が入ってその試合を変更しなくてはならなくなったという実例はいままでもたくさん出ております。だからその比率がそのまま通用するものかどうか。
  13. 前田充明

    前田(充)政府委員 ただいまの使用見込みというのは昼だけということであり、夜四時くらいからナイターのための準備をするから昼間なかなかむずかしくなるであろうというような点につきましては、私もその辺、準備等にどういう時間がかかるかという点についてはまだ調査いたしておりませんので、よくわかりませんが、神宮側の申します御意見によりますと、社会人野球学生野球に約百日を使うというお話でございましたので、それである程度アマチュア野球が抑制されてくるであろうというふうに感じて、いま申し上げたのであります。もしナイターの分がこれに入っておらなくて、昼間だけ使うのと同じようにできないとなれば、もっと抑制されるわけでございますが、私のいま調べた感じでは、百日は一応学生野球にも使うということを言っておりますので、それを信用すればいま申し上げたような考え方になるのではないかというふうに思うのでございます。いずれにいたしましても、ある程度はアマチュア野球が抑制されることは事実であろうと思っております。
  14. 高津正道

    高津委員 その百日はアマチュアのためにとってある、アマチュアが使えるのだ、それは契約書に入っておるのですか。
  15. 前田充明

    前田(充)政府委員 それについては私、存じておらないのであります。
  16. 高津正道

    高津委員 昨年、東映フライヤーズ神宮第一球場を使用することになりまして、学生野球すなわち六大学リーグ試合を優先させるという約束になっておったわけです。ところが事実は東映球団開幕試合のために六大学リーグの春の開幕が一週間おくれる結果になりました。そのことはもう一度その後にもあったのであります。だからそういう点からいえば、少々というのでない、非常にアマチュア野球圧迫してくる。東都リーグも結局出ていかねばならない、そこはもう使えないことになるわけでありまして、それは非常に大きな問題だと思うのです。文部省はそれをどういうふうにお考えになるのですか。
  17. 前田充明

    前田(充)政府委員 基本的な考え方につきましては、先ほど来大臣お話し申し上げたとおりでございますが、私ども、初めこの神宮で予定されたときは、あまり学生野球圧迫されないでいたというのが、だんだんやっているうちにますますそれがきつくなってくるということは、一般的に申してもないではないことでございます。もしそういうことになるということになれば、まことに私どもとしては、先ほど来のお話のとおり残念なことであると考えざるを得ないと思います。
  18. 高津正道

    高津委員 第一球場では、そういうようなアマチュアが非常に侵されるような弊害があらわれた。第二球場ではそういうことはないんだ、こういう論理は私にはわからぬですね、そういう論理はないわけですから。非常にアマチュアリズムを侵すことになるだろうという長谷川委員質問はちっとも解消されていないのです。それに対して文部省はどういう手を打たれるのか、それをもっと聞いておきたいです。
  19. 前田充明

    前田(充)政府委員 ただいまの、実際に起きた神宮球場に対しての具体的な対策というものは、まだ私どもとしてははっきりできておらないと正直に申し上げたいと思います。この第二野球場の問題がはっきり先般新聞にも出、私どももそれでさっそく神宮に、学生野球等は非常に圧迫されるのかということについて実は聞いたわけでございますが、その際も、学生野球はできるだけ守っていくんだというようなお考えは原則的にお話しがあり、日数にいたしましても、今日申し上げましたような報告がございましたものですから、将来だんだんそうならないという契約もいたしておるわけではございませんし、保証もいたしておるわけではございませんが、私どもとしては、できるだけ学生野球がこれ以上に圧迫を受けないことを希望はいたしておるわけでございます。具体的にそのための折衝を、それじゃ契約をしてくれるかどうかというようなことまでいたしてはおりません。
  20. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 関連して。六大学野球でさえも、第一球場が、球団が入っているために延ばされている。ところがそういう六大学のような純真なアマチュアスポーツというものを待望するならば、最近は職業野球があまり強いものですから、だんだんすたれている、これも見のがせません。一方、若き時代がこれにかわろうとしているのが東都大学です。せんだっては国学院大学が優勝した。この連中は球場がないわけです。そして、学生スポーツですから、土曜、日曜に試合をしなければならないけれども、そのときはほとんどあいていない。そっちうろうろ、こっちうろうろしながらやっている姿、そういうものを第二球場ができるときに救済されるならいざ知らず、片方はますます圧迫されるようなかっこうにき、いままでうろうろしているようなかっこうが全然解消されないで、ますます激しくなるというようなことでは、どうしてもまずいと思う。制度的に契約当事者ではありませんからおわかりにならないという気持ちはわかりますけれども、私はこういうものを御認識いただいて、やはりいろいろな線からお当たりいただきながら、漸次そうした不安を解消してもらう努力こそお願い申し上げたい。東都大学野球場はありません。しかもこれがどんどん伸びている。私はそういう純真なアマチュアリズムが伸びるその機会を育成していくような方向をお手配願いたいということを関連で申し上げます。
  21. 高津正道

    高津委員 第一球場の場合は六大学リーグがみずからこしらえたものですな。しかし、それでさえプロ野球が入ってきて六大学を非常に困らせておる。今度は、第二のほうは東都大学野球連盟がこしらえて明治神宮へ寄進するというような形でなしに、二十四億円という金をかけて自分がつくるのですからね。興行権を持っておる。その主導権を握るわけですね。今度はもっと荒っぽいことになるのではないか、こういうことが憂えられるのです。あなたはそういう憂いなしとやはり言われますか。
  22. 前田充明

    前田(充)政府委員 第一球場と比較の点から申せば確かにお話のとおりでございます。したがって将来プロ野球がますます盛んになってまいりますれば、ふえないということはもちろん保証することはできないとは存じます。したがって私どもとしてはそういうことにならないように、ただいま長谷川先生お話もございましたのですが、いろいろ努力はいたしたいと思いますけれども、基本的な考え方としてただいま大臣が申し上げたような点から申しまして、相当困難も多いのではないかというような感じがいたす次第でございます。
  23. 高津正道

    高津委員 いま局長努力はいたしたい、こう言われるが、何らかの措置を講ずるというのでなければ努力にならぬですがね。これに対していま長谷川委員と私が述べたような点について、そういう弊害の起こらないように努力する、努力するというのは何らかの措置に出るのでなければ意味がないと思うのです。何らかの措置にこれから出られるのかどうか、そこを聞いて次の質問に移りたいのです。
  24. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 具体的に何らかの措置をするかいなか、するとすればそれは内容は何だという意味では、ただいき申し上げる材料は持ち合わせません。ただ気持ちとしましては、長谷川さんの御質問にお答え申し上げましたように、アマチュアスポーツというものを健全に発達せしめていく、その手段としての、野球でいうならば野球場というものを、現にあるものは先ほど来お話が出ましたように、なるべくアマチュアスポーツが阻害されないように運営できないものかという事柄、さらに抜本的には、法律制度の上から現にあるものを、たとえば職業野球等に利用させること、そのことを禁止制限ができない、その結果が圧迫することになってアマチュアスポーツ場そのものがなくなる、もしくは不便になるということであるならば、それが何ともできないものであるならば、他にそういうスポーツの場を国の責任において、もしくは公共団体責任において提供するという課題があろうかと思います。それも考えていかねばならない一つ課題と思います。しからばいつから着手してどうだということまではむろん申し上げられませんけれども、それ以外にちょっといま申し上げる材料がないように私は思うのであります。いま話題になっております神宮の第二球場——第一球場も問題としては同じことと思いますが、それについて宗教法人明治神宮自分のものとして持っているがゆえに、宗教法人として行ない得る公益事業もしくは公益事業に関連するところの許された一種の営利事業ということであるならば、法律的にはそれが可能だとしても、宗教法人明治神宮の信者の立場において、宗教法人それ自体の財産運営について、信徒としての御見解もあろうかとも思うわけであります。明治神宮そのものの沿革に顧みて、本来信徒がいかにあるべきかと念じておる姿とマッチする方向に動いている結果が、いまのようなお話になっておるかどうかということを、宗教法人みずからの問題として再検討される課題としても注意が喚起されねばならないのではなかろうか、それとあわせまして国、公共団体立場からアマチュアスポーツに今後いかなる具体的対策をもって臨むかという問題、たとえばさっき申し上げたような課題があろうかと一応考えるのでございまして、しからば具体的にどうするつもりだとお尋ねにあずかりましても、これ以上はちょっといま申し上げる種がございません。
  25. 高津正道

    高津委員 文部大臣がそれだけ留意しておられるということには私は敬意を表します。ところで、明治神宮宗教法人の指定を文部大臣から受けております。しかし、それと営利性の関係、そこについて考えてみますと、あそこにはおサルさんの汽車ぽっぽがありますが、これは有料であります。それから夏になって、神宮絵画館の前のプールで子供が遊びますが、それも有料であります。それからあの大広場に十面の野球場があって、一時間二千円ずつとって、それは一カ月前から申し込まねばいけないということで、それから大きな収入があがっております。それからまた、明治記念館が都内でも指折りの結婚式場として使用され、大きい収入があるはずです。テニス・コートもたくさんあって、それらからも使用料をかせいでおります。昨年の東映明治神宮へ出した金は概算三千万円だといわれますが、大臣のことばでは、明治神宮とても生きるためにやむなく営業するのだ——生きるためにそんなに金が要るものであろうか。今度また第二球場から大きな、数千万円の金があがっていくわけであるが、生きるためにそんなに必要なものであると、常識上お考えになりますか。
  26. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ちょっともうけの程度が推定できないわけでございますけれども水泳場等の運営は——小中学校の生徒もあそこを利用しております。ある程度の料金をとるということは妥当であるかと思います。金額の多寡ははっきり知りませんが、その金額に基づいての批判はいろいろと別途あろうかと思います。たとえば宗教法人が幼稚園、学校等を経営する、あるいは保育所を経営するときに、無料の場合もありましょうが、多くは一応妥当な料金を取って利用さしている。それと同じように考え得る範囲内におきましては有料の施設を提供しますことも、宗教法人の行なう事業として一応考えられることでなかろうかと思います。結婚式場等、あるいは草野球場の使用等全部の収入が宗教法人明治神宮の生きるための経費と見合ってどうであるかという会計経理上の検討をしたことがございませんので、いまのお尋ねに対しましてはお答えする資料を持ち合わせません。お許しをいただきたいと思います。一般論としましては、今日、明治神宮に限りませず、宗教法人が法人としての目的を達するに必要な、また関連しました事業を行なう、その観点に立ってある程度の営利的な事業を行なうことも、社会通念的には認められておるではなかろうか、かように感ずるわけでございまして、先刻長谷川さんのお尋ねにお答えしましたとおり、そのことの適否は、まず第一義的には、宗教法人信徒考え方によって判断さるべきものではなかろうか。程度がはなはだしく逸脱いたしまして、宗教法人本来の存在の趣旨にまで影響するような弊害がある、それほどの営利事業というものは行なうべき性質のものじゃないと思われますので、その程度の問題については、国の立場でも所轄庁たる都道府県の立場でも検討さるべき問題が残ろうかと思いますけれども明治神宮のそのもののいま具体的に行なっております諸事業が適当であるかどうかのお尋ねには、確定的にはちょっとお答え申し上げかねますことを御了承いただきます。
  27. 高津正道

    高津委員 職業野球がおもになるわけですが、第一球場、第二球場、そのようなものを明治神宮が二つ持ち、そうして、一方は後楽園、こちらは明治神宮外苑、そういうように第二の後楽園化してしまう、こういうことをどうお考えになりますか。
  28. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ちょっと明快にお答えいたしかねますが、程度の問題であろうかと思います。個人的な気分は別途持たないわけではございませんけれども宗教法人を統括しております文部省という立場においてものごとを申し上げる限りにおいては、現状を確実に把握して十分検討を加えませんと、結論的に申し上げるべきではなかろう、こういうふうに思いますので、いまの御質問に対しましては、決定的なお答えはひとつ差し控えることを、ごかんべきいただきたいと思うのであります。ただ、感じだけから一応申し上げますれば、できれば、長谷川さんの御質問にもございましたように、あそこは、従来の沿革から申しましても、アマチュアスポーツ殿堂としての第一球場であり、また体をなしておりませんけれども、第二球場と通称されながら純然たるアマチュアのためにこれが活用されて最近に至っておることは事実であります。しからば第一球場について東映と特殊な契約宗教法人明治神宮が結んだことそれ自体けしからぬというべきかどうかということになりますと、所轄庁といたしましても、それに立ち入ってかれこれ申し上げるということではなかろう。問題は、程度の問題として、国民的な立場で客観的に妥当性を欠くに至っておるかどうかという判断は、いま申し上げましたように、確定的に申し上げかねる。第一次的には、まずもって信徒みずからが、宗教法人明治神宮らしき所管財産運営の限度内であるかどうかを厳粛に考えらるべき問題ではないか、私はかように思います。
  29. 高津正道

    高津委員 文部大臣としても考えておるが、第一段階においては信徒が、宗教法人明治神宮のあり方としていいか悪いかを考える、そういうことまで暗示され明言されたのでありますが、非常にけっこうだと思います。実は篠原宗務課長が——前に寺院があまり観光化しているというので、営利との関係について議会で問題になった場合に、その人の見解が明らかにされておるのです。これは「宗教法人の解釈」という印刷物にもなっているわけですが、それをちょっと読んでみますと、「宗教法人は営利を目的とする営利法人と全く対照的な存在で、収益を生ずる事業は宗教法人の目的に反しない限りにおいてのみできる」、これは全くもっともだと思います。だから営利は第二義的なものであることはもちろんとして、その第二義的な営利でやれるものを篠原課長が列挙しておるのですが、その例としては出版物、保育、慈善聖業、軽度のといいますか、学校法人にならない教育事業、軽度の農畜産業などをあげておるのです。そんなことはかまわぬ、こう言うのです。ところが東映やあるいはいまの第二球場の問題、これはずいぶん度の過ぎたものではなかろうかとだれも思うのですが、その点は、宗教法人を認可しておられるあなたの文部大臣という立場からはどうお考えになりますか。
  30. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 その点はもう少し検討させていただきます。ただ思いつきを一応申し上げますならば、たとえば職業スポーツと一応認識されます事柄の中でも、相撲のごときは、財団法人相撲協会は民法の公益法人の形によって運営されておる。ところが職業野球の場合は、私の承知する限りでは全部株式会社であると思います。両法上の営利法人たる職業野球団と、明治神宮所管の営造物ないしは財産を利用させる契約を結ぶというところに、同じ職業スポーツでも形式的に差異がちょっとあろうかと思いますが、これとても理論的に究明すれば、明治神智は営利法人と一切の契約ができないというわけでもないと思いますので、その点だけからかれこれも申せないであろう。要はアマチュアスポーツ殿堂ということを前提に一応考えて、長谷川さんの御指摘のとおり影響を受けることは当然と思いますが、その程度いかん、さらにまた契約に基づくところの収益が、宗教法人それ自体の収支関係とのにらみ合いにおいて度が過ぎたものであるかどうか、営利性そのものが第一義的になっておるかどうかということは程度問題であろうかと思われますので、先刻来お答え申し上げましたように、結論的なことをいまちょっと申し上げかねますけれども、気分的に申せば、できれば、避けられるものなら避けたほうが、信徒気持ちをそんたくいたしましても、あるいは国民的な立場での感じを率直に一応言うとしますならば、望ましくない一つのケースではなかろうか。断定的には、その実態を把握しまして、宗教法人法の趣旨に照らしていかがであるかということになりませんと、責任ある答弁になりかねると思います。そのことはちょっといま申し上げかねるということでごかんべんをいただきたいと思います。
  31. 高津正道

    高津委員 明治神宮外苑というものは、植物というもので非常に価値が生じておると思うのです。全く国宝的な、大きなうっそうたる樹木がずいぶんあって非常にいいのでありますが、青年館とそれから第二球場との間に、大きい自動車のどんどん通る十何メートルの道路がありますが、その道路のまん中に白線がある。その白線を越えて、その道路に自動車が五列並んでもまだその上をおおうくらいまで伸びた枝がずっとあるのですが、そういう木を移植するということは不可能です。枝をみんな切ってしまわなければ根がつかないですから……。ああいう並んでおる並木、それはどうなるのか。切らねば移すことはできないですよ。切ってしまえば移植できることになるかもしれぬが、全然ものにならなくなる。オリンピックの分も、第一球場も第二球場も非常に近代的なものがりっぱにつくられるかもしれないが、見方によれば、樹木で包むならいいが、それをみんな裸にしてしまうのでは、ある人に言わせれば、刑務所の印象を受ける者もずいぶんあるかもしれぬと思うのです。いま一万五千人入る第二球場を、三万五千人入れるようにするには、幾ら立体化するといっても相当広げなければいけないと私は思います。私は二へんもそこを視察してきたのですが、その樹木がなくなるのかなくならないのか。木を切らねば二階の客席をつくって三万五千人収容に拡張できないだろうと思えるのであります。この公園の美を損するようなことがある場合には、やはり文部大臣は関与する権利があるんだろう。日教組に対するときだけ積極的でなしに、こういう点にも目を配って積極的でなければならぬと思いますが、文化財のようなものをそんなに粗末にして、明治神宮の権宮司とかいろいろな幹部がそういう契約をして、日本の都市美がこわされていくのを文部省は黙って見ている手はない。そういう角度から非常に憂えられますが、その点はいかがでしょう。
  32. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 一般的な気分的な意味合いにおいては、お説ごもっともだと私も拝聴しております。ただ先刻来繰り返し申し上げますように、法治国日本においては、憲法及び宗教法人法等の根拠に基づいてしか、ものが言えないものと心得ますので、慎重を期して結論的なことを申し上げないでおるわけであります。繰り返し申し上げるようですけれども長谷川さんも御指摘のとおり、明治神宮のおい立ち、明治神宮の尊厳なり何なりを考えあわせられて設計されました外苑もろとも、宗教法人明治神宮の所掌するところとなりました以上は、その沿革にかんがみ、あるいは都市美、公園美ということもあわせ考え明治神宮というものがあり得ると思いますので、いま高津さん御指摘の点も、宗教法人明治神宮みずからが、祭神に対する責任立場からも、信徒に対する責任立場からも、おそらく全国民といっていいくらいの寄進に基づいて、明治神宮及び外苑が形成されたことにかんがみましても、それらのいわば数多い信徒気持ちそのものを十分に念頭に置いて、宮司以下は契約をしたりなんかしなければならぬという、宗教法人それ自体の立場における責任があろうかと思う。そのこととして考えますれば、何としましても第一義的には信徒の側において再検討さるべき課題としてまず登場する問題であろう。  さらに繰り返して申し上げましてどうかと思いますけれども、お許しをいただけば、それが宗教法人法の建前に立って、いまの提供されております課題それ自体が適切であるかいなかということは、文部省としても東京都と一緒になりまして検討してまいりたいと思います。
  33. 高津正道

    高津委員 都市公園法では国家の持っている場合は建蔽率は一%にすぎない。こういう場合は二%までは許す。またこういう場合、たとえば動植物園のようなものが入ってきた場合は七%までという、それが最大限です。いま明治神宮の場合は九%になっておると聞いております。こういうのは法律からははみ出ておる。違反しておる。そういう場合でも文部大臣は何とも言えないのだ、厚生大臣も何とも言えないのだ、法律だ法律だと言われるが、法律を持ってこられればこういう法律があってそれには違反しておるんだ、こう私は思いますが、それに対する政府の所見を聞いておきます。
  34. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 建蔽率につきましては、ある程度特殊な場合に例外的な許認可によって免責されるように承知いたしておりますが、所管でございませんので、これまた責任を持って申し上げかねますが、お話のとおり公園というふうな立場からも、あるいは宗教法人の問題にいたしましても、あるいは都市計画等の関連におきましては自治省も関連を持つでございましょうが、お話のとおり政府としての立場から総合的な判断も必要であろうかと思います。いずれにいたしましてもこの問題についての決定的な御返事ができないことをはなはだ恐縮に思いますが、検討さしていただきます。
  35. 高津正道

    高津委員 田中蔵相は、都市の建築の立体化を税制面から助成するという構想を、次の国会に出されるのか、そういう意見を——たとえば新聞の報道によれば、これは五月二十六日の毎日新聞の夕刊でございますが、非常に大きな記事であります。その中に国有財産の管理運用の合理化をはかる構想として、「国有財産を譲渡、貸与した公園内に公園以外の施設をつくることを禁止する。」という意見が将来の構想として述べられておるのです。大蔵大臣もそう考え文部大臣も信者が騒ぐというんじゃないが、信者が明治神官の真のあり方、あまり営利に走ってはいかぬという道が一本あるし、大蔵大臣もそういう構想を持っておるというので政府の意図というものは非常によくわかるのでありますが、一日も早くこの問題をもっとこの委員会においても掘り下げられることを望んで、私の質問を終わります。
  36. 八木徹雄

    ○八木(徹)委員 関連して。先ほど来両委員との質疑を聞いておりまして、文部大臣がいわゆるアマチュアスポーツを愛好するかというお気持ち並びに明治神宮外苑アマチュアスポーツ殿堂であるという歴史的な事実そのものに対する波乱、経緯というものは十分に承知いたしておるのでございますが、究極的には、大臣は、われわれの権能においてはどうしようもないのだ、宗教法人明治神宮信徒の良識に期待する以外に解決の道はないのだ、こういうようなお話であったかと思うのであります。そこでいわゆる所轄庁としてのいわゆる法律的権限という立場でいうならば、当然そういうお答えが出てくると思うのでございますけれども、しかしスポーツを担当する文部省という立場、特に戦後アマとプロというものが——私は決してプロというものが国民化活に与える影響、特に健全娯楽として果たす役割あるいは社会教育的な立場に果たす役割というものを決して否定するものではない。これの堅実なる育成というものは、ある意味において行政当局も力をかしていい課題だと思っておりますけれども、しかしプロの進出によってアマが衰微をしていく、押えられていくということは、やはり決して望ましいことではないと思うのであります。その意味で健全なるスポーツというものを“本にこれから先も与えていかなければならない。特にいまわれわれは神君外苑というものを根拠地としてオリンピックというものをやろうとしておるやさきに、そのときに突如としてその中心にプロの進出があるということは、決していい課題ではないと私は思う。それで権限として大臣にどうせよというのではない、しかし大臣はその権能外において、あるいはそういうことは御遠慮願うことが望ましいのではないひというような意思表示というものは、決して行き過ぎではないと思う。その意味で、いままで気持ちとしてやりにくいということはあろうと思いますけれども宗教法人信徒の方々の自覚を促す意味においても、大臣から関係者に対して勧告とか勧奨ということではなくて、いわゆるフランクな立場に立って御再考願う余地はないかどうかということの意思を発表することは、私は行き過ぎではないと思うのでございますが、そういうことをやるお心持ちがあるかどうか、それだけをお聞きしておきたいと思います。
  37. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 いまおっしゃることは事実問題だと思いますが、気持ちがあるかどうかというお尋ねであれば、気持ちだけはございます。
  38. 床次徳二

    床次委員長 この際、委員長より申し上げます。  ただいまの長谷川高津両君の御質疑の件につきましては、国政調査権の権能に基づく調査または審査を行ない、行政当局に対する決議を行なう場合もありますので、理事各位と協議の上、さらに委員会としてあらためてこの問題を取り上げたいと存じます。御了承願います。      ————◇—————
  39. 床次徳二

    床次委員長 次に、義務教育学校教科用図書無償措置に関する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。三木喜夫君。
  40. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 一昨日に引き続きまして、残余の点について御質問いたしたいと思います。なお文部省の答弁で明確でなかった点についてお聞きいたしたいと思います。  私は一昨日は、教科書の採択というものが、県教委で選定され、しかしてその選定の範囲内から採択が行なわれることによって、非常に広領域化し、しかして広領域化するところから業者の中にはその将来を考えて非常に心配が起こっておる。それから湯山委員質問にもありましたように、教師から採択権を奪って、そして実質的な教科書のよくなる方途というものがなお一そうここに放棄されつつある、教科書をよくするという立場に立てば非常に憂慮すべき事態が起こってきておる、このことを申し上げたわけです。本日は、その広領域採択の基礎になるものは、いままで各地区におきまして共同で選定をやってきた、そういうことは最近とみに多くなってきて、そういう実績がそれを示しておるというように諸沢課長の書かれた文章の中にそれが出ておるわけです。そこで私はお聞きいたしたいのですが、この共同選定の方式に至るまでの間、いままで共同の採択が採択関係者によって行なわれてきたこと、これがはたして自然の姿であったかどうかということです。その点について文部省にお聞きいたしたい。
  41. 福田繁

    ○福田政府委員 現在共同採択のやり方といたしましては、大体全国の市町村の八三%程度は共同採択を行なっていると思います。その共同採択を行なうについて自然にこれが行なわれたかどうかというお尋ねでございますが、私どもとしては、この共同採択に至るまでにはいろいろな過程があったと思いますが、共同採択を行なうことの必要性、そういうことを考えてまいりますと、これはやはり、ある一定地域の学校におきましては、同じ教科書を使うということが、教育上からも、あるいはまた子供の場合から考えましても必要なわけでございます。したがいまして、そういう必要性に基づいて終戦後漸次そういう形になってきたというように考えるのでございます。もちろん、その間にありまして、教育委員会等の指導その他も加わったと思いますが、その地域の必要性からそういう問題が出てきている、これはそう理解して差しつかえなかろうと思っております。
  42. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 共同採択の必要性をお聞きしておるのではない。ここにも書いてありますが、共同選定をやってきたパーセンテージが、三十五年度は八二%、三十六年度は八三%、三十七年度はあなたのおっしゃるように八三%を示してきております。これがごく自然な形でできてきたのかどうかということをお尋ねしておるのです。その間において教育委員会が指導した、こういうことをおっしゃるのですが、それは自然ですか。
  43. 福田繁

    ○福田政府委員 もちろん、先ほど申し上げました共同採択の前提としては、必要性がなければ、これはいろいろな形でまた変わった採択が行なわれるかもしれませんが、少なくとも必要性に基づいて各市町村の教育委員会がきめていくわけでございます。したがって、その間にいろいろな指導なり、実際のやり方についての相談というものはあったかもしれませんけれども、私どもは、それはやはり地域の必要性から自然に出てきたものだというように考えるわけであります。
  44. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そうすると、諸沢さんにお聞きしたいのですが、「これは採択関係者の自発的な意思によりいわば自然発生的に行なわれるようになったものであって、それはおおむね次に挙げるような理由に基づくものと思われる。」と書かれておりますね。理由はいま初中局長もおっしゃいましたが、この自然発地的というのはどういうことなんですか。
  45. 諸沢正道

    ○諸沢説明員 ただいまも局長から申し上げましたように、共同で選定したほうが教育上も教育行政上も適切である、こういうような観点に立って、採択権者であるところの市町村教育委員会がその必要を認めて、むしろその過程においては、あるいは県等の指導があったかもしれませんが、そういう方向に向かっていく過程では、やはり採択権を行使するところの関係市町村の自発的な意思があってそういうふうになったのである、こういうふうに私は考えます。
  46. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 自然発生的というのは、外から力を加えることを意味するのですか、出趣味しないのですか。
  47. 諸沢正道

    ○諸沢説明員 外から強制してそういうふうになったのではない、こういうふうに思います。
  48. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 強制すればそれは自然発生的ではないということですか。強制でなければ自然発生的なんですか。そこがおかしいじゃないですか。
  49. 諸沢正道

    ○諸沢説明員 採択権者のそういう方向に持っていきたいという意思がまずあったから、そういうふうに共同選定のほうがいいということを自然発生的と表現したわけであります。
  50. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 採択権者という、権者ということは後に問題にしたいと思うのですが、あなた方は採択権は地教委にあると言っているのです。地教委がぐるぐる全部寄ってきたところに採択権者の意思というものはないのですよ。郡市にはあなた方の解釈では採択権はないのです。寄り寄りそうしようかという計り合いです。それは採択権者ではないのです。さらにまたこうして翻り合いでやったために、郡市の教科書採択委員なりあるいは教科書委員が、こういうように持っていくいき方によって意欲を失っているのです。検定で一律化された味もない教科書がきめられ、しこうしてやり方もそういうように、自由意思というか、どの教科君がいいかという熱意を失ってしまったような方法が行なわれている。これをあなた方は採択権者だと言うが、これは採択権者ではないのです。いま採択権者とおっしゃいましたけれども、この会合には採択権者は寄っていけないのですよ。委員会がそんな会合に行くはずはないのです。さらにまたあなた方の解釈によって下請をさされている教師は意欲を失っているわけです。そういうことも問題ですけれども、この自然発比的ということばが非常に大衆を欺瞞したことばに私は聞こえる。それでお聞きしているのです。自然発生的ということは外から何らかの力を加えないことを言うのです。強制であろうが、善意の勧告であろうが、あるいはまた指導であろうが、指導してこうやってくれば当然こうなりますよ。そういうことは全然ないのですか。指導したということは認められるのですか。これは初中局長にお伺いいたします。
  51. 福田繁

    ○福田政府委員 このことば通りに、自然発生というと、何かわいてきたような意味合いを持つかもしれませんが、そういうことでなくて、やはり必要性があって自然にそこに共同採択というものが行なわれた、そういう意味合いに御理解をいただければと思いますが、私どもは、全国三千余の市町村につきまして、全く指導がなかったというふうには思いません。あるいは必要に応じて指導もあったかもしれません。しかしながら指導があったからといって、それが強制になったりあるいはまた市町村が非常にいやがることを勧告するという形では、こういうところまではとうていいき得ないというように考えるのでございます。
  52. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 いやがることとかいやがらぬことを強制するという意味ではなくて、こういうことを書くのは、あたかも各教委の意思で、何ら外部から指導も何もしていないのにこうなったのだ、それ見てみろというような番き方ですよ。諸沢さん、「自然発生的に」というのはそうじゃないですか。もちろんあなた方はきめられないのです。自然発出的であろうがなかろうが、教育委員会の意思でみなきまっていくのですが、それがあたかも自然発出的なように書かれておる。これは確かにこれを読んだ人をそういうムードに引き込んでしまう。こういうことなんです。そう思いませんか。私はこれを読んで、いかに巧妙なことばを使ってあるかということに驚いておるのです。これだから広領域採択をすればいいのだという論拠が出てきておるのですね。この自然発生的ということばは、私は非常に問題だと思うのです。指導しても、あなた方は、みなから出てきた意思だから自然発比的だ、こういうように解釈されるのでしょう。何も手が加わっていないのに共同採択をしなければいかぬというように自発的な意思で出てきておるのならいいですが、指導して、かくあることが望ましいという文部省の指導が加わっておるとしたら、これはやはりいまの教育委員会はそういってはなんですけれども、事大主義的な感覚があります。したがってそこからくるところの考えから、文部省が言うのだから大丈夫だろうという考え方で、選定教科書のそういう美点というものが失われていく、そういうことを平気でやっていく、こういうように思うのです。そういうことをいままで指導されたことはないですか。
  53. 福田繁

    ○福田政府委員 文部省として特にそうしなさいと言ったことはないと思いますが、そういう必要性があって、地域地域の実情に応じた採択の仕方をするということで、今日の採択地域の広狭がありますのは、それはやはり地域の実情に応じてそこに出てきたというように考えるのであります。
  54. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 あなたがそう答えられるなら、一ぺんこれを読んでみたいと思います。三十七年三月十九日、稲田政府委員、「従来文部省としては、教科書の利用者側の便ということも考えまして、少なくとも郡市単位くらいの広さで採択することが望ましいという指導は、やってきたと思います。」とあなたはおっしゃっています。いまこのように明言されなかった。なぜそのようにごまかされるのですか。初中局長ともあろうものがそういうややこしいことを言ってもらったり、またこういうまぎらわしい文章を書いて全国に配るなんて——これは荒木文部大臣のほうから、この第五号ですか、これはまことに至りませんでしたという釈明がありました問題の雑誌ですが、しかしなおここにも諸沢さんこういうようなことを書いて、自然にずっとわいてきたんだよ、だから共同採択選定をやるのだという、理由づけのこれは大きなものですからね。この自然発生的ということを厳密にひとつあなた方も考えてもらいたい。私たちもこれは厳密に考えておるわけです。指導しておるじゃないですか。指導すればそうなりますよ。諸沢さんどうですか。
  55. 諸沢正道

    ○諸沢説明員 私はいままで採択の問題についての取り扱いにおきましては、特に文部省として共同選定を推進するというような通達等を出した記憶もありませんし、また実際の実情を見ましても、あるいは県等で指導があったかもしれませんけれども、少なくとも採択権者であるところの教育委員会、その意思を実際に決定します教育委員長あるいは教育委員の方々が、その自発的意思によって、こういう方向に進むのが望ましいのだという、そこに自発的意思があってこういうふうになったものと考えております。
  56. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それはそうですよ。そうすると、あなたはそういう指導をしたことがないとおっしゃる。さらにまた蒲田局長は、三十七年三月の十九日には、郡市単位の広さで採択をやることが望ましいということを指導しました、こうおっしゃる。文章でしなかった、何でしなかったということは問題でないのです。局長が、指導したとおっしゃったじゃないですか。そうしたらこの文面というものは、やはり大臣が率直に言われましたように取り消すべき必要がある。少なくとも誤解を生みますから。まだほかにたくさんありますから、申し上げたいと思いますが、これは全国に取り消しを出しますか。
  57. 福田繁

    ○福田政府委員 私が申し上げたことは、先ほど来の御質問は八三%程度の共同採択を行なっている事実について文部省は指導したか、こういうようなお尋ねのように考えたのでございます。したがって、意見を聞かれれば、私どもはなるべく郡市単位に共同採択したほうがよろしいという希望は持っております。しかしながら、現在の郡市単位の共同採択地区を設定するについて、文部省がそうしなさいといって指導したことはない、こういう意味に申し上げたわけでございます。したがって、そういう気持らでございますので、この法案が成立いたしますれば、もちろん郡市単位に採択地区を設定することはこの法案の基本でございますから、これは今後はやりたいと考えております。  教育委員会月報の文字を取り消すかどうかという問題でございますが、私は特に自然発生という言葉自体を取り消す必要はなかろうと考えております。そういう自然に地域の実情に応じて希望があって現在の採択地区というものが設定されたわけでございますから、特にこれの取り消しを全国に流すということは現在考えておりません。
  58. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 ことばのやりとりになりますから、それはそのくらいでいいと思いますけれども、あなた方はこれを郡市単位にしたいという希望を持っておられる。だから、この法案が通ればそのようにするのだとおっしゃるのですが、聞けば指導をしてきたということですが、あなたがおっしゃる聞けばという、その聞けばの範囲が、教育長会議のときに聞けばそれは全国に行き渡りますよ。場所にもより、人数にもよります。だから、聞けばという言葉を言われると、三人か五人が聞いたというふうに聞こえもするし、事と成り行きによれば、全国に通達したにひとしい聞き方もしておりますよ。現にあなたはそれを言っておられる。郡市単位くらいの広さで採択することが望ましいという指導は、やってきたと思います。それは三人であったか、五人であったかというようなあいまいな言い方をされておりますけれども、全国的にやってきた。そうしてその裏づけとして諸沢課長は、それは自然発生的になったのだ、こうたたみかけていけば、読んだ者が、ああ、それはそうだ、これはみな自然発生的じゃないか、やろうやろうというように持っていってあるのです。私たちはその共同採択選定というところに非常に問題を置いておるのですよ。だから、これが通ればそういう指導はします、これはあたりまえですよ。そういう法律を意図してあなた方は出されているのだから。そういうことを強弁されるのは私はおかしいと思うのです。しかし、こういう問題をめぐりまして業界では、読売新聞がすでに指摘しましたように、売り込みは潜行しておる。なぜその心配が起こっておるかというと、今度広領域でしかも五種類になる。それを文部省の意図では、ほのかに聞くところによると、三種類にするとか、二種類にするとか、それで国定にいってしまう、そして中小業者を切り捨ててしまう、こういう意図が明瞭に出てきておるというところから、私は業者に聞きますと、非常に心配をしておるわけです。そこであなた方は、おとついの質問から、あの金港堂事件は県単位の採択範囲だ。大体県単位だ。したがってああいう大きな汚職を起こしたわけです。今度やはり単位に、しかも前と違った五種にしぼって、しかも三年間という三つがついた。これで汚職が起こらぬ自信がありますか。起こる材料ははっきりとここに明示してあるのですよ。私はこの教科書の問題を論議しかけてから非常に心配をしておるのは、私の足元でも現に起こったのです。たくさんの教員が傷ついたのです。だからこのことをやかましく言うんです。起こらぬ自信がありますか。後のことやからわからないと言うでしょう。しかしながら起こらぬ自信をしっかり引き締めてやらなかったら、歴史は繰り返すんですよ。局長どうですか。
  59. 福田繁

    ○福田政府委員 三木委員の御心配になっております点は、私ども非常にその点はよくわかるのであります。しかしながらこの制度がこういうぐあいに変わるから直ちに汚職が起こるんだというようには私ども考えません。汚職の問題は、これはいかなる制度のもとにおきましてもその発生を防止することに最大限の努力をしなければならぬことは当然であります。現行制度のもとにおいてもすでに御指摘になりましたようにいろいろな問題が起きております。したがって制度の問題とは別個に私どもはさような不正な行為が行なわれないような措置は、十分とっていきたいと考えております。
  60. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 局長、それは私は強弁だと思うんです。現行制度でも起こる、あるいはその他のときにでも起こる。それは汚職というものは、大きな金の動くところに起こるんですよ。一番原理を考えてください。金の動かぬところには汚職は起こらぬですよ。大きな金の動くようにしたじゃないですか。これは国定に近いやり方でごそっと金を動かすのですから、大手はこれでしっかりもうけるのですよ。こまいところを切ってしまったら、しっかりかかえ込めるのですよ。そうしたら汚職の材料にならぬことはない。現にこの新聞にも、潜行しておると置いておるじゃないですか。私いまこれを見越して、起こりつつある事例を出したいのですけれども、うちの党の中でもちょっと押えておるわけです。ちょっと出さんでおけという意味もありますし、出してないのですけれども、出したい例はあります。即刻出すなら出してもいいと思います。現に起こりつつあります。それは大会社からです。そして一方では、小さい業者には黙れ、黙れ、こう言うておる。その中小の業者はこれは疑心暗鬼で、ちょうどあの核停協定と同じことだ。そういうことが実際に監視ができるかというような疑心暗鬼を持っておるということをおとついからずっと言うておるのです。現実その材料はあるのですよ。それでどこから起こっているかということを言うておるにもかかわらず、他の制度でも起こります、そういう自信はありますかと言うたら、どの制度でも起こります、あるということをあなたは肯定されるのですか。今度起こったら大きいですよ。そうしてこの読売新聞が習いておるように、もはや参考書とかあるいはドリルとかという手で県のボスあるいは県庁の役人、こうしたところに手が伸びておる、こう言うておるのです。新聞指摘しておるじゃないですか。行政当局がそんなぼんやりした、あいまいな返事をしてもらったら因るじゃないか。文部大臣どうですか。
  61. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 絶対に汚職が起こらないと予言することは不可能だと思います。起こったらば汚職をやった者を法規に照らして厳重に処断するということによって反省を促す。それ以前に、政府委員も申し上げましたように、極力汚職の起こらないあらゆる考慮を払う、その努力はなすべきだと思います。現に起こらんとしておることがお気づきの点があるとすれば、お知らせいただけば直ちに手を打ちたいと思います。
  62. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 いま汚職が起こっておる問題については、さきに私が指摘して、こういう問題が起って、しかもまだ問題が残っておる。公正取引委員会に来てもらったのもそのためです。きわめて抽象的な——公正取引委員会の独占禁止法には具体的に計画書を出せと置いてある。それが具体的な計画書が出ないでそのまま流れてしまっておるわけなんです。それから汚職が起こればある程度もみ消しがある。もみ消されてのがれた人も現にある。いま東京の汚職が選挙で起こっておりますが、これも実に憂慮すべきことで、もみ消すな、政府はしっかりせいということがきょうの読売新聞に載っておる。汚職の長い歴史の中で、まともに汚職というものが最後まで摘発されたものはほとんどない。その中でのうのうと、汚職はこれで起こりませんとは保証できませんけれども、しっかりやります、こう言う資格があなた方にありますか。汚職は花盛りですよ。現にその根はどんどん下を掘っておるではないですか。すぐ出せ、出すなら処断はどんなぐあいに処断するのですか。ああいう大きな汚職が起こっても文部省は何ら処断していないじゃないですか。今度の、現に起こっておる指定取り消しの問題でも、これは骨抜きじゃないですか。これはおかしいじゃないですか。出せば、文部大臣どうやるのですか、それを言ってください。
  63. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 行政指導、行政措置でできるだけ起こらないように努力することはわれわれの当然の職責であります。起こりつつある、検察当局あるいは警察の担当すべき課題はそれぞれ専門家がおりますから、三木さんからおしかりを受けないように、そういう立場の人がしっかりやるべきだと思います。
  64. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 処断しますなんてあなたおっしゃったけれども、それは警察が処断するのだ。文部省が処断するのじゃないのですよ。そんなことを言うたら困りますね。いかにも強気のように聞こえますけれども、行政指導をやるのが当然だ、行政指導をやってもらわねばならぬ。行政指導が行き渡っておって、この通り新聞に載っておるじゃないですか。どういう事態が起こっておるかということを現実に知っておる人はだいぶおりますよ。これは私は公正取引委員会にもげたを預けてあります。あるいは、警察庁はまだ来てもらっておりませんけれども文部省にもこれはげたを預けます。いま言うように、行政指導をいたします、三十六年のあの汚職でさえああいうようななまはんかな文部省の態度で終わった。それは大手擁護をやっておるからですよ。私は大手の業者といえどもそこに従業員もあり家族もある、それらを取りつぶしてもらうというようなことを言っておりません。指定取り消しを強調しておるわけじゃない。しかしながらそういうことになるところの大きな材料文部省は提示しておきながら、そうしててんとして恥じない。そうしてそこに今度は国家統制のきついやつを持ってきて、この教科書法をいま出そうとしておる。ここに問題があるのですよ。こういう法律を与党の間でどんな審議を経たかわかりませんけれども、これは汚職に対して相当問題をはらんだところの法律です。汚職が起こりやすいようになっておるのです。いま泣き泣き業者は沈黙を守っておる。これはあとで諸沢さんにも私言いたいと思うのですが、業者はあなたのどうかつをかまされておる。十四社は電話がほとんどかかっておる。この法律のどこが悪いんだ、文句言うなという態度で出されております。私の聞くととろが真なりとせば……。  そとで、三十六年のあの汚職が起こったから、これは局長にお聞きしたいのですが、私たちは今後深甚の注意を払い、行政指導をやります、荒木文部大臣は、これは処断します、こう言ったのです。三十五年のときにも同じことを言っておるのですよ、あなた方は。それで三十六年のあの大きな汚職を起こした。今度また材料を大きなやつを提供しておって、——汚職起こせなんて材料を提供しないでしょうけれども、そういうようなぐあいに材料が出ている。ひるがえって、私は三十五年にあの問題が審議されているときに読売新聞の社説を見ました。そうしますと、三十五年の四月二十三日にきちっと今次の三十六年を予言した。さらにまた今度読売新聞は予言しておる。この事態が三十五年にやはりいわれておる。なぜこのような新聞ないしは文化人の言うことを文部省は率直に聞かないのか。まず読んでみます。読売新聞の社説で、一番目は、「次第に広い領域の採択方法がとられ、」「ボスの介入を容易にし、スキャンダルの温床となりつつあることに注意すべきである。」これは三十五年のあのときに郡市単位が示されておるのです。あなた方がいう自然発生的に郡市単位の採択ができたときに、読売新聞は、はやこれを言っておるのです。二番目は、「教師の教科書共同研究を奨励し、実績をあげているけれども、」この実績が怪しいのです。私も県の役人をしておったことがあるから、指導課ではなかったけれども、指導課でやっておることが実績があがったようにあなた方は見ておるのですけれども新聞もそう見ていることは私は問題だと思いますけれども、これはほんとうに受け取りましょう。「この研究の成果が、採択にあまり反映していない」「展示会と教科書研究の時間の関係についても再検討を要する」依然として時間は同じことです。これはあとでお聞きしたいと思うのですが、三番目、検定がきびしくなり、教育関係者は、どの教科君を使用しても同じことだ、採択者が無関心になっている。  二、三はおそらく今後問題があるだろうと思いますので、だれかまた質問されると思いますから、私は一について……。広領域採択の問題がこのときに指摘されている。そうして三十六年の汚職が起こった。まだこれも全部終結を見ていない。私たちの見たところでは、まだまだ残っております。公取は、金がない、人手がないということで、事例さえがあがればいいんだということで逃げました。荒木文部大臣の言う断固として処断はできないのです。それなり放置されている。罪のまま放置されておる。そうして三十六年の汚職を起こしておるわけなんです。同じく四月の二十九日に慶応大学の池田潔氏が毎日新聞にまた書いておられる。「まとまった金の動くところには、必ず汚職がともなうといっていいほど、ひどい汚職ばやりの当今だが、教科書売込み競争にまでそれがあると聞いて、背筋が寒くなる思いだ。」これは三十六年の汚職前に言われたことなんです。三十五年四月二十九日です。局長、なぜ新聞、学者のこの説に耳を傾けて、広領域採択でなくて、教師の自由意思によって、そうして汚職の起こらない基盤をつちかおうとするそういう研究をされないのですか。私たちはあなた方が強引にやろうとするからには、そのことに対して問題は別といたしましても、しかし真摯に二回、三回と起こった汚職をもう少し研究し、那辺にその原因があったかということを研究すべきではないですか。局長にお聞きします。
  65. 福田繁

    ○福田政府委員 いろいろと御意見を拝聴いたしましたが、私どもといたしましては郡市単位の共同採択の場合に、不幸にしてああいう事件が起きました。しかしながらこれがさらに現在よりも小地域になった場合に、それでは問題が起きないかというと、これは私は保証はできないかと思っております。したがいましてこの地域の問題よりもむしろ教科書会社自体のその不正な売り込み競争というものを根絶させない限りは、これは不可能だと考えます。また不幸にしてその不正行為にひっかかりました教職員自体については非常に気の毒でございますけれども、これはやはり公務員としての心がまえという問題もあろうかと思います。したがいましてそういう点から考えますと、やはりいろいろな点からそういう不正競争が起きないようにしていくというのが今度の考え方でございます。したがって採択の場合あるいは選定の場合におきましても、これをガラス張りの中で選定するというような仕組みを考えていくことが一つの行政措値としては必要でございます。また現在の会社が非常にたくさんありまして、そうして不公正な売り込み運動が過去においてあったという事実を考えますと、やはり現在の会社を育成しながら今後新規に乱立するということを防止するのも不公正な競争を防止する一つの方法だろうと思います。そういった点を考えまして、今度の法案においては、新しく会社ができる場合においては一定の資格を設けまして、そうして乱立しないように、ただし現在の会社に対しては既得権を認めて全部指定するというたてまえで、できる限り現在の会社を全部育成していくというたてまえにおいて法案は考えられておるわけでございます。そういう点も配慮いたしまして、いろいろな角度からそういうことが行なわれないようにということを、私ども考えておるわけでございます。
  66. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 私がお聞きしたのは、そういうことが大きな原因になっている、採択の区域が広まった、そのことを研究されないのですかということを聞いている。その防止策を聞いているのではない。防止策はあなた方はゼロなんです、いままで起こっているのですから、まだいまもあるのですから。そういう防止をこうしますとか、指定を三百万円とか、五百万円とか、いま一千万円につり上げておりますが、そういうぐあいにすれば防止されると、あなた方がこの法案を強弁しているだけの話です。何もそんなことによって防止されますか。業者は公正な宣伝活動をやりたいのですよ。それさえ抑えられて、大会社はもうすでに手が回ってしまってやっているのですよ。中小はやれないのですよ、押えられて。それが髀肉の嘆にたえないという気持ちであの読売新聞の論説を私は読んだんです。  それからあなたはいまガラス張りでとおっしゃったんですが、そうするといままでの採択委員会というものはみなガラス張りではなかったのですか。今度選定審議会を設けるとガラス張りになるのですか。こんなものはいままででもみなガラス張りですよ。どれにしましょう、これにしましょう、みな下から上がっていった、これがよけい投票率がある、それならこれをきめておこうか、それを無理に曲げたというのは一、二ですね、私が知っているのは。一回か二回か教育委員会の恣意で曲げたことはありますけれども、その他はないですよ。それでも起こっているのですよ。どこをあなた方はおっしゃるのですか、ガラス張りなんて。そんなそらぞらしいことを言われるから問題が起こってくるのです。  それならば聞きましょう。三十七年の五月二十八日、これはだれが書かれたんだか、私は非常に遺憾に思うのですが、局長は私に、三木さんも御心配の欠席の汚職事件、とこうおっしゃって、この委員会で特に兵庫の問題を取り上げられた。しからば三十七年の五月二十八日、日本教育新聞に、「兵庫に汚職第一号」こういう記事が載りました。これは三十六年の汚職の後ですよ。私はこの記事の出たことも問題だと思いますし、さらにまた私は、教育新聞にも一ぺんその内容を聞きたいと思うのですが、これはどういう意図で出たか。文部省がこれを言わなかったら、教育新聞が兵庫県まで行って調べてこられないでしょう。学校教員に商品券を贈る、これは四カ所同一のものが行なわれておりますが、これの処理はどういうぐあいにしましたか。兵庫県のほうからあなたのほうへしょっちゅう連絡をとっております。私は兵庫県の課長にも会ったのです。指導課長にも会った。処断します、やりますと言ったが、三十六年からこっち、これをどうやったのですか。一ぺん言ってください。
  67. 福田繁

    ○福田政府委員 その教育新聞の記事の内容を私いまわかりませんので、担当課長からお答えいたします。
  68. 諸沢正道

    ○諸沢説明員 私は、その当時の新聞を読んだ記憶がございませんので、そこにどういう事件を掲げてあるのか全くわかりませんけれども、ただ、昨年のことでありますとすれば、兵庫県におきまして、高等学校の教科書採択に関して、ある会社が何だったかはっきり覚えておりませんが、持って行った。ところが、それを受け取った学校のほうからすぐ県の教育委員会報告がありまして、折り返し文部省にも連絡がありましたので、さらに調査をいたしましたところ、それは中身は何か小さなのれんか何かのようなものであって、それはいわゆる公正活動の特殊指定の細則に認められております百円程度の儀札的な物品をつけてやったというような説明がございました。しかしそれは、公正取り引きの面から、どのような規制がなされようとも、採択に関し誤解を受けるようなことがあってはよろしくないということで、私はその当時県の教育委員会を通じて採択関係者にも注意を促し、かつ、発行者に対しましても、責任者を呼んで注意をした記憶がございますが、それ以外、兵庫県のことにつきましては記憶がございません。
  69. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そういうことをおっしゃるから——もう不感症になっておられるんですね。のれん百円程度だったから、儀礼だからよかった、これではちょっと私は問題だと思うのです。あの三十六年の汚職の後に、文部省は各教委に監視員を置いたという記事が載っておるのです。監視員を置かれたのですね。私は国会で稲田局長に聞きました。監視員を置かれて一体どんな問題にぶつかられ、監視員の効果があったかどうかということを聞いたのです。一件もなかったとあなたはおっしゃった。何にもなかった、きわめて静粛に事なくいったので慶賀すべきだというようなことを私に言われた。この監視員を置いたのです。そこでテープコーダーを贈ってきておるのだがどうか、中はあけていないけれども、お金を包んだ包み紙がそろっと私の机の上に置いてあったんだがどうだかということを教育委員会に届け、県の教育委員会はそれを文部省に届けて指示を仰いだ。その内容を読んでみます。「兵庫に汚職第一号高校教員に商品券贈る」「今年度の教科書採択に対する文部省や業界の自粛の動きが注目されている折り、兵庫県下ではやくも新高校教科書採択の汚職第一号ともいえる動きが起こり注目されている。」汚職ではない。汚職第一号と思われる事件です。しかし、見出しには「汚職」と書いてある。「このため兵庫県教委ではこのほど県立高校長など関係者に不詳事を起こさぬよう厳重に通達した。事件は最近、教科書業者から同県但馬地区某高校あてに教科書の内容を吹き込んだレコードにレコードプレーヤーをつけておくった例が発見されたというもの。さらに阪神間の県立某高校教員あてに商品券らしいものをおくった例も報告されており、同県教委では今後業者の売り込み合戦の激化とともにさらに続発する恐れがあると懸念、県教委は次のような通達を発した。」こう書いてある。これは諸沢さんのほうにも指示をお受けに来ているはずです。それを聞いておるのです。
  70. 福田繁

    ○福田政府委員 いまレコードプレーヤー云々のことばがありましたので私も記憶が出たのですが、昨年自粛措置を協会側がとりましたので、それに対応いたしまして、文部省としては、教育委員会、指導主事等に、不公正な事態が起きないように、その監視あるいは指導についてもお願いするという意味において、そういう係の人たちを委嘱したことがございます。その結果、先ほど三木委員は何にもあがらなかったとおっしゃいましたが、私はこの前一、二件そういうおそれのある事態がそういう人たちによって発見されて通知があったということを申し上げたのです。その一つがいまのレコードプレーヤーでございます。ある教科書会社が、兵庫県でありましたかどこでありましたか、管内の学校に、ちょうど採択時期に際会したときにレコードプレーヤーを寄付するというようなことで持ち込んだのですが、どうだろうというような話が教育委員会からありました。したがって、それについては、教育委員会に対して、そういう誤解を受けるような行為はやめさせるべきだというように当時厳命したことを覚えております。それからまた、その当該の会社に対しましては、担当の課長に来てもらいまして、そういう誤解を受けるような行為はやめてもらいたいということで厳重に注意をいたしましたところ、その注意を聞きいれまして、会社側としては、直ちにそういうことを行なわないよう取りやめた、こういうことになっておるわけでございます。そのことをいま御指摘によりまして記憶を新たにいたしました。
  71. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そういうように答えていただけばいいわけです。そこで、それをどういうぐあいに処断したかということは、注意をしたということなんですね。三十六年にそういう事態が起こって、三十七年の五月ですから、一年もたってはおりませんけれども、半年もたっておるのですね。そのときにこういう事態が起こって、新聞にはこう書いてある。注意して、それを返さして——プレーヤーを持って帰ったのでしょうね。商品券を持って帰ったのですね。そうすると、それはもう罪を構成しないのですか。文部省考え方としては注意だけでいいのですか。えらい事件が起こったあと、返したらもう罪がないわけなんですね。だれかそういう論理をなす人がいますか。人のものをとっても、それを見つかったら払ってしまったら、それはもう窃盗罪にならないんだという人がおりますか。どうですか。
  72. 福田繁

    ○福田政府委員 私のほうといたしましては、行政上の指導として、前非を悔いて、今後そういう事態を起こさないという誓約をいたします限りにおいては、それ以上のことは追及いたしません。もし何かありますとすれば、それは警察その他の関係の問題であろうと思います。
  73. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それなら、その次、このごろ指定都市の問題があるのですが、選定の問題ですね。それと、県なら兵庫県という県の立場、それから神戸市の立場ですね。両者は県に選定の仕事を与える、それでよろしい。あるいはまた神戸市は、いや、従来どおり採択権があったように、採択を市が独自で県の支配を受けずにやっておったようにやらせいという運動がいま行なわれている。この問題について、今度五大市を排除した理由を聞かしてもらいたい。これも広領域の一つのあらわれじゃないかと私は思うのですが、いままで許しておったのですか。
  74. 福田繁

    ○福田政府委員 五大市の問題につきましては、この前もお答え申し上げたと思いますが、五大市といえども、現在市町村という立場と同じ立場において教科書の採択権を持っているということは、これは私ども従来そういうことで教科書の採択の事務をやっていただいているわけでございます。  ところで、今回の採択、選定の方法が都道府県の管内において、一応市町村が採択を行ないますにあたって、数種類、三種類か六種類の種数を選定して、その選定した中から市町村で教科書を適当なものを採択してもらう、こういうような方式をとっております。したがいまして、その都道府県の選定の中には五大市も当然に入ってもらうし、あるいはまた私立学校もあるいは国立の付属の学校も同様な立場において入ってもらう、こういうたてまえをとっておりますので、したがって五大市についても一般の市町村と同じように都道府県の範囲内において選定したものの中から採択をしてもらう、こういうような方式をとりましたので、特別な考慮と申しますか、それ以上のことはこの法案の中では考えていないわけでございます。
  75. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 いや、そういうこの法案でどうなっておるかということはわかっておるのです。そうでなくて、五大市が、前には県と同じ立場において市町村のように県のほうから指示を受けていなかった、特に五大市も入れた理由は、今まで市町村と同じ立場にあったからということですか。そこのところを聞かしてください。
  76. 福田繁

    ○福田政府委員 先ほど申し上げましたように、市町村と同じ立場ということが前提でございますが、今度は都道府県単位に少なくとも五、六種類で種類を選定する、こういうことになっておりますので、したがって五大市といえどもその中で採択をしてもらう、こういうことが今回の無償措置を円滑に実施する上において、ある程度採択、選定を集中的に行なうという見地から必要だ、こういう観点から、五大市の問題につきましてもこういう扱いがなされるわけでございます。
  77. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それはまたあとの方がどうせ論議されるでしょうから、私はそれだけお聞きしておきたいと思います。当面私の県にもその問題点がありますので……。  もう少し残余がありますけれども、昼の時間がきたそうでありますから、午後からしばらく時間をもらって採択の問題をやりますから、ここでおきます。中止します。
  78. 床次徳二

    床次委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は本会議終了後再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時五十六分休憩      ————◇—————    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕