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1963-05-10 第43回国会 衆議院 文教委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年五月十日(金曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 上村千一郎君 理事 小澤佐重喜君    理事 竹下  登君 理事 八木 徹雄君    理事 小林 信一君 理事 村山 喜一君    理事 山中 吾郎君       伊藤 郷一君    田川 誠一君       濱野 清吾君    松山千惠子君       南  好雄君    杉山元治郎君       高津 正道君    前田榮之助君       三木 喜夫君    谷口善太郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君  出席政府委員         総理府事務官         (中央青少年問         題協議会事務局         長)      深見吉之助君         文部事務官         (大臣官房長) 蒲生 芳郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君  委員外出席者         検     事         (入国管理局次         長)      富田 正典君         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 本日の会議に付した案件  義務教育学校教科用図書無償措置に関す  る法律案内閣提出第一〇九号)  学校教育に関する件(公立義務教育学校の学  級編制等に関する問題)      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  義務教育学校教科用図書無償措置に関する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。村山喜一君。
  3. 村山喜一

    村山委員 三十八年の四月一日から、ことしの小学校の一年生に対しまして、教科書無償措置政令並びに省令の制定によって実施をされることになったわけでございますが、それに関連いたしまして福田初中局長のほうから、文部広報にも出ておりますように、入学式当日に一斉に給与ができるようにという談話を発表しておられるわけです。このことは、教科書の来年度の三年生までの予算制定を見ているわけでありますが、現在審議をされております教科書等無償措置に関する法律審議にあたりまして、その先がけをなすものだというような立場から、きわめて重大な問題でございますから、その実施状況は、どういうふうに——あなたが希望して談話として発表されたような形の中で行なわれたかどうか、その実態を把握されておるならば、その実情を明らかにしていただきたい。
  4. 福田繁

    福田政府委員 教科書無償の問題につきましては、いろいろ御関心をいただきまして、いろいろ御激励もいただいたわけでございますが、私どもといたしまして、昭和三十八年の四月に入る子供無償措置につきましては、いろいろ準備を進めてまいったのでございますけれども、三十九年以降の法案の作成の問題と全体の問題に関係がございますので、いろいろ関係省との話し合いにひまどりまして、政令公布も予定よりも若干おくれておるような次第でございます。したがって、政令公布がおくれましても、子供教科書の渡る時期は、これはどういたしましても入学式以後というのは困りますので、できる限り入学式をあげる以前に子供の手に渡るようにということを督励いたしまして、教育委員会あるいは発行会社等にいろいろ打ち合わせをいたしまして、できる限り全国的に一斉にこれが行なわれますように努力をしてまいったわけでございます。一部心配いたしましたのは、福井、石川等のいわゆる豪雪地帯におきまして、交通途絶等の事情によりましてできない、実際上不可能という学校が若干生じておりました。したがって、そういうところにつきましても、できる限り早く、一日も早く子供の手に渡るようにという努力教育委員会関係その他にやっていただきまして、実施をいたしたわけでございますが、そういう豪雪地帯のごく一部の学校が少しおくれただけで、あとは全国全部入学式の前日までに学校に届き、配付ができるというような状況になったのでございます。その点は関係者の御努力によることでございますが、全般的にみまして、短期間ではございましたがまず順調に給付ができたというふうに心から喜んでいる次第でございます。
  5. 村山喜一

    村山委員 政令が出ましたのが三月の五日で、政令三十三号で出ておるわけでありますが、その施行規則文部省令として二月の十三日に出されておるようであります。その同日付をもって事務次官と初中局長の通達が流されておる。その内容をいろいろ文部広報によりまして調査いたしてみますと、実施要綱というものが出ておるわけでございますが、学校長からの報告が四月の十五日までになって、それを市町村実施主体であるところの教育委員会が受領して、その受領報告書を四月の二十五日までに県の教育委員会にあげる、それと同時に受領証明書を取り次ぎ供給所に出すというようなかっこうで、府県の教育委員会は、五月の二十五日までに文部大臣受領冊数集計報告書を提出する、こういうことになっておるわけです。そこで文部省は、受領冊数集計納入完了通知書を照合して、その狂いがないかどうかを確かめた上で出すという形で、契約を結んだ発行者に対して金を支払うという形をとっておるわけでございますが、こういうような事務的な実施状況というものは、過去において、御承知のように、昭和二十六年、それから昭和二十七年、教科書無償措置として一部半額負担あるいは全額国庫負担の形で出されておりますが、その事例は、二十七年の一月十一日に、いわゆる全額国庫負担中央で一括払いをいたしまして、四月の三十日に概算払いの七五%が支払われて、その当時いろいろ事務的な問題から、地方管理機関からの報告作業というものが非常におくれた。二十七年の十一月になっても精算完了に至らなかったという、そういう歴史的な事実があるわけですね。そういうような立場から、当時の文部省財務課は各地に係官を派遣をして、そうして始末をしなければならなかったという事態があった。今度あなた方が政令並びに規則によりまして実施を進めておられるこの事務的な段階、これは一体どのような進捗状況を示しておるかということを、この際お伺いをしておきたい。
  6. 福田繁

    福田政府委員 御指摘のように、昭和二十六、七年のころは、これは市町村無償実施いたしまして、国は半額補助というたてまえをとりましたために、各市町村事務のふなれもあったと思いますが、いろいろな点で集計その他照合等が非常に手間どりまして、おくれたことは事実でございます。そういう過去の経験もございますので、今回は、できる限りそういうことのないようにということで、あらかじめ教育委員会関係者にも事務的な講習もいたしました。そうして、今回は国が一括契約をして購入するというような、いわゆる中央での決済をいたしますので、したがって、教科書会社に対しましても、三月一ぱいに八五%の概算払いをいたしたような次第でございまして、会社自体は、八五%の概算払いを受けまして、あと残り一五%を精算払いにするというような体制にいたしております。したがいまして、事務的にはいろいろ教育委員会関係におきましても御努力を願っているわけでございますけれども、以前のような遅延をするというようなことは考えられませんで、現在のところ、私ども聞いております範囲では、この集計あるいは報告等は順調に進んでいるというように聞いております。
  7. 村山喜一

    村山委員 八五%の概算払いを三月のいつされたのですか。金額は幾らですか。
  8. 福田繁

    福田政府委員 三月の二十五、六、両日にわたりまして、全部いたしました。金額は、契約代金額五億六百三十二万円の中で、四億三千万、概算払いをいたしました。
  9. 村山喜一

    村山委員 ここでお伺いをしておかなければなりませんことは、発行者資金計画というものは、三月の二十五、六日にそういうような資金概算払いがなされておりますから、この点については問題はなかろうかと思いますが、地方管理機関に対しますいわゆる事務費の問題、これはどういうふうになっておりますか、お尋ねいたします。
  10. 福田繁

    福田政府委員 当然に都道府県教育委員会あるいは市町村教育委員会事務を担当いたすわけでありますので、その事務量に応じまして、これは交付税で三十八年度は積算をいたしました。標準団体当たり、市町村におきましては五万円、それから都道府県教育委員会におきましては五十二万円という交付税による財源措置をいたしております。
  11. 村山喜一

    村山委員 その交付税積算の基礎は一体どういうふうになっておりますか。
  12. 福田繁

    福田政府委員 都道府県事務費につきましては、管内指導旅費、それから集計事務に要する賃金、それから消耗品、それから印刷費通信運搬費というものをそれぞれ見込みまして、五十二万円というものを積算をいたしております。  それから市町村教育委員会の分につきましても、打ち合わせ会出席旅費、あるいは謝金それから集計事務賃金、それから消耗品印刷費通信運搬費というものを見込みまして、五万円を積算をいたしました。
  13. 村山喜一

    村山委員 そういたしますと、この教科書無償措置をめぐる事務費の問題は、権限問題といたしまして地方財政法上どういうような立場に立つわけですか。というのは、地方公共団体が処理する権限というものはない、これは国の委任専務という形の中で考えられているのかどうかということです。
  14. 福田繁

    福田政府委員 この点につきましては、両方の考え方が成り立つと思うのでございますが、こういう教科書無償という問題につきましては、その事務一切あげて国の委任事務だという考え方も、あるいはあるかと思いますが、しかしながら従来の義務教育関係から考えまして、教科書無償といえどもやはり国が全額負担をして無償措置を講ずるといたしましても、実際にそれぞれの地域あるいは管内義務教育学校、あるいはその学校に就学しております生徒、児童に対して無償措置を講ずるわけでございますから、市町村なりあるいはもう少し広く管轄しております都道府県教育委員会というものは、当然にこの無償措置について、国に協力してこれを円滑に実施する責任はあるだろうと考えております。したがいましてそういった意味で、やはり国と地方公共団体が協力しながらこれをやるというたてまえを考えますと、事務費につきましては一応こういう地方団体がみずから事務を行なうにつきまして必要な経費を、交付税でもって積算をする、こういうような形も当然にとらるべきものだと考えておるのでございます。そういう意味で、三十八年度におきましては、これは交付税において、先ほど申し上げましたような財源措置をいたしたわけでございます。
  15. 村山喜一

    村山委員 そういたしますと、地方財政法の十三条によって、国は新たな事務に要する財源措置交付税の上において措置した、こういうようなふうに解釈してよろしいわけですか。
  16. 福田繁

    福田政府委員 その通りだと思います。
  17. 村山喜一

    村山委員 そういたしますと、これらの新たな事務が、政令並びに施行規則実施に伴いまして生じたわけでありますが、この場合に、当然のことながら二十一条によるところの自治大臣の意見を聞かなければならないという手続はおとりになったのですか。
  18. 福田繁

    福田政府委員 この無償措置につきましては、全般的に自治省とも相談をしてまいった事柄でございます。したがいまして、当然に今後の実施につきましても、自治大臣相談をして、これを進めるということになろうと思いますが、事務費につきましても、当然にこれは自治省相談をいたしまして、さように決定したわけでございます。事実上の連絡を絶えずやってきたわけでございます。
  19. 村山喜一

    村山委員 この実施要綱問答集を見てみますと、教科書無償措置は、外国人子弟対象となるかどうかということに対しまして、外国人子弟でも小学校に入学する児童給与して差しつかえない、こういうふうに答弁をしておられるわけです。これをそういうふうにお考えになりました根拠というものがあれば、その法律あるいは見解というものをお示しを願いたい。
  20. 福田繁

    福田政府委員 外国人子供に対して無償給与実施するということは、これは法律的にどうだということになりますと、なかなかむずかしい問題があると思いますけれども、私どもといたしましては、公立あるいは私立学校におきましても、日本教育法によって運営されている小中学校に就学する子供については、国籍のいかんを問わず、日本義務教育学校子供として当然にこれは平等に扱うべきじゃないかというたてまえを考えたのでございまして、少なくともこの教科書無償というものは、子供に対してすべて平等に扱うということが一つ考え方になっておるわけでございます。そういった意味で、日本公立学校に入っております外国人に対しては、これをやらないのだというように差別をするよりも、むしろ一視同仁と申しますか、一様に平等にやった方がより教育効果が上がるのではないか、こういうようなことを考えましてやったわけでございます。
  21. 村山喜一

    村山委員 そういたしますと、文部省考え方というのは、教育的な見地からその問題についてはこのような態度で臨むことにした、それに限るわけですね。
  22. 福田繁

    福田政府委員 もちろん教育的な見地からでございます。
  23. 村山喜一

    村山委員 そこで、法務省入国管理局次長富田さんが見えておりますから、この際日本におけるところの外国人取り扱いの問題をめぐりまして若干質問を申し上げたいと思います。  たしか二月の五日であったと思いますが、法務大臣が参議院の法務委員会において在日朝鮮人地位をめぐる問題に言及されて、その中で、義務教育学校のそういう学童に対する教育的な問題を、法務大臣としての立場から、外国人地位的な、朝鮮人としての特殊な今日の状態の中から、生活保護法の適用の問題、あるいは義務教育教科書無償措置の問題、これは同じように取り扱うのが当然だという見解を述べられておるように聞くのであります。そこで、そういうような考え方は、一体どういうような基本的な考え方の中から出てくるのかということをまず第一点として承りたい。
  24. 富田正典

    富田説明員 ただいまの御質問は、日本在留する朝鮮人教育問題に関することかと存じますが、この問題は、在留韓人の問題とは若干はずれて参りまして、これはむしろやはり日本における教育問題と申しますか、文部省の方の所管の問題になるのじゃないかと承知いたします。法務大臣が答弁なされました趣旨は、現在日韓会談におきまして、在日朝鮮人法的地位の問題が会談一つ対象になっているわけでございますが、それに関連いたしまして、要するに北の方の勢力に属する朝鮮人とそれから南半分の方の処遇の問題、それに関連して、その就学問題等取り扱いをどうするかというような点についても、法務省入国管理局長が一応政府の主査ということになって、法的地位会談に出ておりますので、その窓口としまして法務省関係している、そういう意味で大体の——まだ会談進行中でございまして、詳しいことはきまっておりませんが、実質的にはそういう取り扱いの区別をいたしたくないという趣旨法務大臣お答えになったのでございまして、こまかい問題につきましては、むしろこれは文教担当文部省の方の所管の問題になってくるのではないかと思います。
  25. 村山喜一

    村山委員 そんなに逃げなくてもいいですよ。私は次のようなことだけをお尋ねしようと思っているわけです。日本におけるところの外国人は六十四万人、そのうち朝鮮人が五十八万八千人、この数字には間違いありませんね。
  26. 富田正典

    富田説明員 大体間違いないと思います。
  27. 村山喜一

    村山委員 そこで在日朝鮮人地位をめぐって在留資格がなくても日本在留ができる者、これは一九四五年の九月の二日以前から日本に住み、そうして一九五二年の四月二十七日まで日本在留している者、これが在留資格がなくても日本在留できる、こういうふうに法律の一二六号によって定められているようでありますが、一九四五年の九月の二日から五二年四月二十七日までに日本で止まれたその子も含むということになっているようでございます。ところが(B)項に当たるところの在留資格取得しなければ在留ができない者、これには一九五九年四月二十九日以降に生まれた者は、その(A)項の子であっても在留資格を取らなければ日本に住めない、こういうことになっているように伺うのでありますが、それはそのとおりですか。
  28. 富田正典

    富田説明員 ただいまの御質問のとおりでございます。
  29. 村山喜一

    村山委員 そうしますと、ことしの一年生は、一九五六年の四月一日から五七年三月三十一日までに出生した者が学校適齢児童として学校に上がることになるわけですが、そうしますと、ことしの一年生については、これは関係はないけれどもあと三年後には、そういうような在留資格取得しなければ在留できない子供たちが今度学校に入るようになる、その場合の取り扱いは、いまの場合には、ことしの一年生の教科書無償措置だけですが、あと来年度の予算の中には一年生から三年生までの予算措置が講ぜられており、さらに文部省計画によりますと、逐次無償措置を講じていくようになるというたてまえになっております。そうなってまいりますと、日本在留しているその朝鮮人子供たち就学期になりまして学校に上がっていく、ところがそういうような手紙をし、在留資格がいまの法律のもとにおいては、三年に一回いわゆる外人登録法によるところの届け出をしなければならない、こういうことになるかと思いますが、その場合における存日朝鮮人子弟教育無償措置の問題は、今後において、こういうような出入国管理令あるいは外人登録法との関係における地位の上から見た場合に、ことしの一年生については安定性がありますけれども、その後においては安定性がないわけですが、その場合においても、同様な無償措置の方法を文部省考えておられるのか、この点を明らかにしていただきたい。
  30. 富田正典

    富田説明員 文部省のほうからお答えになる前に、一応その在留資格取得の問題について簡単に御説明申し上げたいと思います。  日本在留する外国人は、全部在留資格を持っておらなければいけないというたてまえに入管上なっております。その例外といたしまして、先ほど先生御質問なさいました、戦前から引き続き在留する朝鮮人台湾人、これは在留資格を持つことなく当分の間在留することができるということになっております。これが在留資格を持たないで在留できる例外になっておるわけでございます。したがいまして、講和条約発行後、戦前から住んでおる朝鮮人子供として生まれてきた者、これも在留資格取得ということを手続的に行ないませんと、全然やみで在留するということになりますので、在留資格取得させるようにしておるわけでございます。これは、ただ届けさえすれば、ほとんど自動的にと申しますか、文句なしに在留資格取得できることになっておりますので、戦前から引き続き在留していた朝鮮人子供在留資格取得できないという例は、いままでに一件もございませんし、今後もないわけでございます。したがいまして、就学問題について、その子供在留資格の有無ということが問題になることは、ほとんどなかろうと存じます。
  31. 福田繁

    福田政府委員 御指摘になりましたような将来の法的地位の問題は決定いたしておりませんので、今後の課題であろうと思いますが、文部省としては、将来そういう諸般の問題が決定いたしました際には、さらにこれは検討を要する点がございますれば検討しなければならぬと思っておりますが、現在の状態から考えますと、日本の法令において公立あるいは私立学校でございましても、義務教育学校として認められ、それに就学している場合におきましては、やはり教育的な立場から考えますと、将来といえども教科書無償日本人の子供と同じようにした方がよろしいんじゃないか、こういうように考えて、できればそういう方向に進んでいきたいというように考えておるわけでございます。
  32. 村山喜一

    村山委員 私が言いたいのは、そういうような文部省教育的な見地というものが悪いということを言っておるわけじゃなくて、そういうようなことが、世界人権宣言の上からいっても、日本国憲法の上からいっても当然な行ないであるのだということを前提として、質問を申し上げておるわけです。いまの入国管理局次長富田さんの話でございますが、外人登録法違反でわれわれが聞いているのでは、一九六一年までの十五年間に十八万人が違反であげられて、六〇%が刑罰を食らっている。それは証明書の不携帯罪といいますか、自分外人であるのだという場合には証明書を持っておらなければならないわけですが、それを持っていなかったとか、あるいは不提示罪、示さなかったために罪になったとか、あるいは三年ごとに登録の切りかえをしなければならない、その場合に、申請をしなかったというので不申請罪、こういうような処罰を受けた者が十八万人に達しておる、こういうふうに伺うのであります。そうなりますと、在日朝鮮人子弟で、これから新たに在留資格を取らなければならない者は、三年間に一ぺんずつの、たとえ自動であってもそういうような措置をとらなければならないし、学校に行く場合にもこういうような証明書携帯をして行かなければならないということになるのかどうか。その点についてはどういうふうな解釈をしておられるか。
  33. 富田正典

    富田説明員 ちょっとお待ちください。
  34. 村山喜一

    村山委員 それでは、大臣にこの際お尋ねしておきたいのは、先ほど福田初中局長から、教育的な見地に立って在日外人子弟教育の問題は、日本国民子弟同様に教育をしていく、そういう立場をとりたいということを言われたのでありますが、その教育的な立場というだけでなくて、もっとやはり大臣大臣なりに高い立場からこうあるべきだという一つ見解をお持ちになっているのではなかろうかと思うのですが、大臣はやはりその教育的な見地からだけでその問題は律していこうとお考えになっていらっしゃるのか、大臣見解をこの際承っておきたいと思います。
  35. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 教育的見地に立ってこれに対すべきことが当然であって、その他の立場というものは考えられないと私は理解します。
  36. 村山喜一

    村山委員 そういたしますと、大臣は、憲法の第十四条、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、」云々というのがございますが、そういうような憲法の問題とか、あるいは世界人権宣言の二十六条、「何人も、教育を受ける権利を有する。」という非常に崇高な宣言条項がありますが、そういうような内容的なものは自分たち立場からは考えないというお気持であるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  37. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 そのとおりでございます。
  38. 村山喜一

    村山委員 ただ教育的な立場だけで文部大臣考えていって、憲法上の問題とか、あるいは世界人権宣言は念頭にないというような印象を受ける発言をなさっていらっしゃるが、そういうような問題の考え方は、なぜ大臣としてはおとりにならないのか、その心境を明らかにしていただきたい。
  39. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 私の個人的な心境いかんに基づくのでなくて、憲法趣旨にしたがって、教育的な見地が定められておる、その教育的見地に立って、いま御指摘のような課題には対処する、それが純粋に、当然のことだと思うからであります。
  40. 村山喜一

    村山委員 それであるならば、日本国憲法の、そういうような精神にしたがってという高い立場からあなたは言われるべきであって、福田初中局長と同列の立場からでなく、あなた自身が日本国務大臣としてもっと高い立場にあるはずだから、そういうようなことを堂々と国民の前に明らかにされるべきだと私は思う。  そこで、私はこの在日外人の問題は以上で終わりたいと思いますが、この際、ここで明らかにしておきたいのは、沖繩住民子弟に対する教科書無償措置が講ぜられておるわけでありますが、沖繩住民には本年度からもう小学校の一年生から六年生まで教科書無償措置を講ずるということになったやに聞くのでありますが、そのことは事実ですか。
  41. 富田正典

    富田説明員 先ほどの御質問に対してお答えいたしたいと存じます。  外国人登録法の十三条によりまして、「十四歳に満たない外国人は、登録証明書携帯していることを要しない。」という規定がございますので、学童の間はさような御心配はないと存じます。
  42. 福田繁

    福田政府委員 そもそも御存じのように、この教科書無償の問題におきまして、本土の学校子供に全部無償措置が講ぜられるという際に、日本の法令の適用を受けませんが、沖繩子供についても同様に扱いたいというようなことが各方面からいわれておりまして、沖繩政府におきましても本土の学校と同じような扱いにしたいということをかねがね希望しておったようでございます。そういうことからいろいろ向こうでも研究された結果、御指摘のように沖繩では今年四月から一年生から六年生まで教科書無償実施したというように琉球政府関係者から伺っております。
  43. 村山喜一

    村山委員 憲法の条項によりますと、第十四条でも法のもとに平等だというのがあります。だから沖繩住民に対する教科書無償措置が、日本国民であるという立場から文部省としては無償措置がなされたかと思うのです。沖繩住民といえども、これは日本国民として平等に取り扱うのだ、こういうような考え方で出されたのか、それとも沖繩はアメリカの占領下にある、だから占領下にある者に対しては祖国の日本が特別にそういうような日本以上に進んだ恩恵を与える必要があるという考え方で出されたのか、そういうふうに差別がついてまいりましたのは一体どこに原因があるのですか。
  44. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 この御審議中の法律案に基づいて無償措置を講ずる課題沖繩に関する問題でございますが、むろん御指摘のように沖繩住民日本人であるというたてまえに立って企画をいたしたのであります。ただ現実の問題としましては沖繩の特殊な現状に左右されざるを得ませんので、結果的に日本内地と同じようにすることが事実上不可能だということに直面しました結果が、御指摘のようなことになっておるわけであります。ただしこの問題を契機として沖繩におきましても無償措置が六年生まで一挙に実現するということになりましたことは、御同慶に存じております。ただ、いま申し上げたとおりの事情のゆえに、日本内地が一年から六年まで一挙にいけません状態のもとに、沖繩がいわば先行しましたことに対して当然の予算措置その他が、日本の国内の事情のゆえにできないという事実問題がはなはだ残念に思いますけれども趣旨としましては日本人なるがゆえに沖繩にも実施したいということでスタートしております。
  45. 村山喜一

    村山委員 日本人だという解釈でいくならば、琉球政府の統治下にあります沖繩の人は日本の国籍を持っているのですかどうですか。国籍法によるところの対象になりますか。
  46. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 国籍法による国籍を持っておるとは現実には言い得ない状態にある、こう思います。
  47. 村山喜一

    村山委員 日本人であるというのは、法律上の根拠というのはありますか。
  48. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 国会の審議を経た法律という形に基づいての根拠というのは発見しかねるかと思います。私の承知する限りでは、沖繩に対しては事実問題として、日本が潜在的主権を持っておるという大前提だけははっきりしておる段階かと思います。だからといって、日本国内の法律という形に根拠を求めることは、今日のところはその根拠がない、しかし潜在主権があるという前提に立った限りにおいては、日本人であるということははっきりしておる、こう理解します。
  49. 村山喜一

    村山委員 そういたしますと、同じ日本人であるという立場から、日本国民としての扱いをするというのが大臣心境だろうと思う。そうなった場合に、沖繩住民子弟に対しては六年生まで無償給与措置がとられる、こちらの日本国の憲法なり法律の適用下に占める児童については三年生までしか措置がされない。この問題については、憲法上法のもとに平等であるという規定がある。その上から考えた場合に望ましいことであるのか、それともこれは困ったことであるのか、どうお考えになっておるのですか。
  50. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 無償措置がなるべくすみやかに義務教育課程全部に実施されることが望ましい意味においては、望ましい現実状態沖繩において先行しておる、そういう状態だと思います。不利益なものが沖繩住民なるがゆえに残されるということは好ましくないが、沖繩住民の利益になることが先行しますことそれ自体は、かれこれいうこともなかろう、こう理解をいたすのであります。法のもとに平等であることに沖繩といえども例外であるべきじゃないことは当然でありますけれども、これはやはり平和条約に基づく結論がしからしめておるわけでございますから、望ましくないその他の諸条件を整備するためには、潜在的主権じゃなしに日本の主権が行なわれる状態になることを待望するという課題として残る、こう思います。
  51. 村山喜一

    村山委員 平等の措置がとられることが望ましいのであって、平等でない措置がとられることは、私は望ましくないと思う。これは政府予算上決定をし、国会の承認を受けた場合には、そういうような教育の援助費というものが自由に供与できる、こういう立場から財政上の支出がなされているにすぎないのであって、法律上の根拠に基づいて沖繩住民子弟教科書無償措置をやったのではない。予算上の措置です。そういうような財政上の措置が、日本憲法なり法律に基づいてなされたのではもちろんございませんし、そういう立場からいうならば、向こうの方がそれをどのように使っても、こちらの方でそれについて関与できるものではないわけです。そのことはわかりますけれども沖繩住民子弟だけはわれわれ日本人よりもさらに先行をして、義務教育無償の線に近づけていくのだ、そういう政策を大臣としてはお持ちになっていらっしゃるのですか。
  52. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 先ほど来申し上げます大前提に立ちます限り、文部大臣として考えておるからどうだということでなしに、平和条約に淵源するところの制約のゆえに、願いは御指摘のような願いを持っておりましょうとも、現実にはそれができないという状態だと思うのでございます。
  53. 村山喜一

    村山委員 願いとしては大臣は、初め、日本本土と同じようにしてくれということでお出しになったわけですね。その点だけ確認しておきます。
  54. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 願いというのは個人的な願いでありまして、制度上、権限に基づいた願いではむろんございません。
  55. 村山喜一

    村山委員 いや、個人的な願いであろうが何であろうが、文部省予算要求を大蔵省にされ、そして大蔵省の査定の結果、国会のほうに政府のほうから提出をされた本年度の予算の決定によってそういうようなことがなされたわけなんだから、国務大臣としての荒木文部大臣のいわゆる立場というものは、自分としてはこういうような考え方でやったのだという明らかな根拠を示してもらわなければならないと思うのです。
  56. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 現在沖繩に対して、制度上、符に国会の審議を経た法律という形をとった制度に基づく措置は、現実問題としてはできない。しかし国民的な願いとして、国内と沖繩にいる住民との間に同じような措置をしたいものだという願いは国民的願いだと思います。その趣旨に立って、日本国内、内地と同じような措置を講じたいという内容の予算要求をいたしまして、それが政府で一応案ができて、国会の御承認を受けて、それを実施しつつある段階、こういう問題と思います。
  57. 村山喜一

    村山委員 そういうような予算措置を講じて、向こうのほうにそういうような金の供与をやった。やった結果、琉球政府なりアメリカの占領軍は、これに対して、沖繩のそういうような占領政策の必要性から、自分たちとしては六年生までやるのだということできめた。それは向こうのほうに統治権があるからやむを得ないんだ、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  58. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 そのとおりであります。
  59. 村山喜一

    村山委員 そこで、在日外人の問題をめぐる教科書無償の問題につきましては、教育的な見地だけでなくて、世界人権宣言あるいは日本国憲法の定めるところから、当然われわれとしては、今後外国人子弟に対しましても、日本国民子弟と同様に待遇をしてやることが必要なことだと私は考えますので、この線は、今後の在日外国人地位の問題がまだ未確定のままでございますが、そのような立場から進めていただくように要望を申し上げておきたいと思うわけでございます。  そこで、この際、教科書無償措置を受ける場合に、一ぺん受けた子供が転入学をした場合においては、再度支給をしない、ただしその場合には、生活保護法の適用を受ける者あるいは準要保護世帯として認定をされた者、さらにまた盲学校、ろう学校、養護学校に就学している者についてはこの限りにあらず、こういうようないわゆる三十八年度の一年生の無償措置実施をめぐるところの措置がなされているようでございますが、その考え方は今後においても同じような考え方だというふうに私たちは聞いておるのでありますけれども、この点についてはいかがでございますか。
  60. 福田繁

    福田政府委員 災害その他によりまして教科書の給付を受けた後になくしたというような、いわゆる災害救助法等の適用のある場合、そういう特殊な場合を除きまして、一般的に申しますと、一ぺん教科書給与を受けましてそれをなくしたとかあるいは棄損したというような際に、さらにもう一ぺんその子供教科書をやるかどうかという問題につきましては、私どもとしては、教科書無償は全部の子供にやはり公平に処置すべきものと考えておりますので、したがって一回限りにいたしたい。これは三十八年の問題だけでなく、将来の問題としても、予算措置その他につきましても、やはりそういう方針で今後考えたいと思っております。
  61. 村山喜一

    村山委員 そういたしますと、教科書を広域採択にする理由の中に、確かに転入学をした場合等の処理について非常に困る、こういう問題がありましたね。ところが転入学をした児童についてはこれは給与しないのがたてまえなんだ、こういうことになってまいりますと、転入学をする場合は、父兄のいろいろな理由、あるいは官庁あたりにつとめておりましたら、そういうような官庁の人事行政あるいは会社の必要に応じて命令をされて転勤をする、こういうような場合に伴うところの問題から、不可避的に発生をする問題なんです。その場合に支給しないということになりますと、転入児童があるがために広域採択でなければならないのだという理由が打ち消されてくると思うのですが、その点はどうですか。
  62. 福田繁

    福田政府委員 子供学校を移動する割合というものは、従来の実績が一定の割合になっております。二%から三%ぐらいだと考えておりますが、それにいたしましても、現在の採択制度のもとにおきまして、たとえば東京都内のごとく、学校がかわるごとに、あるいはまた区がわかるごとに、住居を変えた場合には、教科書が新しくなる、別の教科書を使わなければならぬということは、やはり子供の学習の上からも困ります。また父兄側にとりましてもいろいろ問題がありますので、そういった点から、ある一定の地域には同じ教科書を使ってもらいたいというのが採択関係者として希望でございます。そういった意味教科書を二へんやるかどうかという問題でなくして、一定の地区では同じ教科書を使うということが子供の学習の上からも便宜であり、また教師の共同研究その他の面から申しましても便宜だということを私ども考えておるわけでございます。したがいまして、いま御指摘になりましたような点は少し事情が違うと思うのでございます。
  63. 村山喜一

    村山委員 一ぺん支給したものについては、その後においては無償措置を講じないということになりますと、やはり親が買ってやらなければならぬ。そういうことになりますと、それは経済的な理由にはならない。いま福田さんが言うのは教育的な立場だけをおっしゃっている。だから、文部省のほうが法律案の内容の中で根拠として示しましたそういうような条項というものが、一ぺんしか支給しないのだったらそれは何もならないわけです。経済的な問題にはそれが該当しますか。
  64. 福田繁

    福田政府委員 一ぺんもらって別の学校に転校したら、そこでまた違う教科書を使っておったということになりますと、これは父兄の負担で買っていただくよりしようがないと思います。一ぺんすでに他の子供と同様にもらっているわけでございますから、なくしたとかあるいは転校の場合におきましては、これはやむを得ず二へんは支給しないというたてまえをとらざるを得ない。
  65. 村山喜一

    村山委員 二へん支給をしないように措置してあるわけですから、親の経済的な負担の上からいえば、これは提案の理由の説明にはならないじゃないかということを言っているのです。
  66. 福田繁

    福田政府委員 それは例外でございまして、一般的に申しますと、全体の子供教科書無償にするということは相当父兄負担の軽減にも役立つのだ、こういう考え方でございますので、父兄負担の軽減云々というようなことばを使ってあると思います。
  67. 村山喜一

    村山委員 そんなに質問をはぐらかしては困るのです。あなたは、無償措置にしたら父兄負担の軽減になるのは明らかだ、それはわれわれも賛成です。けれども転校をした場合に、その子供が新しい教科書を買わなければならないということになれば、その部面だけに限って見た場合には、父兄負担の解消にはならないのだ、こういうような解釈をするのが当然じゃないでしょうか。
  68. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 いま村山さんの御指摘の点はごもっともな節もあると思います。そこでいま政府委員から御説明申し上げたように、滅失棄損をしました場合は、その学童及びその保護者がいわば責任を持ってもらわねばならぬということで、これは一応はっきり言えそうに思います。そのほか、災害の場合に、いわば不可抗力として災害救助法の適用を受ける災害のときにはまた無償で支給する、その他の災害のときにはあきらめなさいという考え方に立っているわけでありますが、それもはたして将来永久にそういう考え方でいくべきかどうかというところにもある程度の問題があろうかと思います。と同時に、いま御指摘の転任したような場合に、その学童にとっては二度もらうケースになりましょうが、二度は支給しないというたてまえをとって実行に着手しておるわけでありますが、その転任というのを災害救助法の適用を受ける災害のときの滅失棄損と同列において不可抗力と考えるかどうかという課題だろうと思うわけであります。学童自身あるいはその保護者たる親がその組織体内における命令に従って移動せねばならない結果がノーと言わせない絶対性のものである限りにおいては、学童にとっては、あるいはその家庭にとっては、少なくとも不可抗力だといえないこともない。そういう理屈は一応あり得るかと思いますが、そういうことで災害救助法の適用を受けない災害の場合、及び転任等の場合、それを将来にわたってどう考えるかということは幾ぶん検討の余地もあるようにも感じます。そういう意味で検討してみたいと思います。ただし、御指摘のようなことだけを重点に考えますれば、日本全国一色に塗りつぶせば転任だけは救われるということでもありまして、その点は地方分権、地方色を織り込む限度をどこにもつていくかという課題として、その範囲内においては、転任がありましても、また買わなければならぬというケースはうんと少なくなるというところで、現実問題とのからみ合いと不可抗力でありやいなやというものの考え方政府部内としても厳密に突き詰めてどう受け取るかということとも関連をいたしましょうし、将来に向かっては検討すべき一つ課題であろうかと思います。
  69. 村山喜一

    村山委員 私は三十八年度の教科書無償措置事務処理についての一問一答をここに文部広報で見まして、いままでちょっと疑問に感じた点を明らかにいたしたわけですが、この際、文部省が今度の法案の中で統一的な広域の地域採択を進めていくのだという方針が明らかにされておりますね。そこで私は資料としてこの際要求を申し上げたいと思いますのは、いま福田局長のほうから、転入をする児童数は二%ないし三%だ、こういうような数字の説明がありました。その二%ない三%がどういうふうに転入学をしているのか、これはちゃんとはっきりあなた方のほうではつかまえておられるだろうと思う。というのは、いなかの同一市町村から同一郡内に転住をする場合、それから同一府県内に転住をする場合、さらに今度は府県を飛び越えて大阪とか東京とかというところに転住をする場合のケースはどういうふうになって、東京都内の場合には、転住をしたが、もとの学校に電車、バスを使って行っている子供もたくさんおりますから、そういうような場合とか、いろいろな場合を想定して、その数字というものをお持ちになっているがゆえに、こういうふうに市、郡単位あるいは市と郡と一緒に合わせた地域の単位、あるいは県もさらに広域採択の対象にしなければならないという、そこの客観的なめどを立てた基準というものを法律の上でお示しになっている以上は、それを裏づけるところの実態調査をなさったものがなければならないと思いますから、その資料をこの次の委員会までに提出されるように要求を申し上げておきたいと思います。  私は、あと山中委員の質問がございますので、きょうのところは、この三十八年度の教科書無償措置事務処理をめぐるところの問題についてだけ質問を申し上げまして、後日義務教育学校教科用図書無償措置に関する法律案については質疑を申し上げたいと思います。以上で質疑を終わります。      ————◇—————
  70. 床次徳二

    床次委員長 次に、学校教育に関する件等について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。山中吾郎君。
  71. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 まだ法案が出ていないのでありますけれども義務教育の学級編制と教員定員の標準に関する法案と義務教育施設国庫負担法の法案については、うわさに聞いておりますと、数日中に出るというお話でありますけれども、中身については、文部省と大蔵省に意見の相違が相当ある、こういうことでありますので、一般的な問題として質問をしたいのであります。  定数、いわゆる標準法に関する問題ですが、聞くところによりますと、四十五名基準という内容が一つの問題であり、他の一つは、実支出額方式の文部省の主張と大蔵省の定員定額方式の意見の対立があるとういうふうに聞いておりますが、これは間違いございませんか。
  72. 福田繁

    福田政府委員 ずっと以前から大蔵省と相談してまいったわけでございますが、結論的に申し上げまして、まだ完全に意見が一致いたしておりません。今日の段階として決定をいたしておりませんが、一学級の編制を四十五人程度に最高限をするということは、大蔵大臣文部大臣とお話し合いの結果、大体これは内定したと思っております。その点についてはそうなると思っておりますが、いま御指摘のような定員定額という、そういう考え方は大蔵省の中にございますけれども、定額方式につきましては、これは必ずしも現在の段階において大蔵省は非常に固執しているものではないと考えております。ただ従来の定数のきめ方を見ますと、標準法を相当上回りましたいわゆる過員をかかえている県が相当ございますので、そういうものについては国庫負担をやめたらどうか、こういうような意見がございます。したがって、まだその点は折衝の段階でございまして、まだきまっておりません。
  73. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 それで大臣に御意見だけ聞いておきたいことがありますが、これから文教政策のじみな二つの方面として、教育水準を引き上げるということとPTAの負担を軽減するという二つの柱はどなたが文部大臣になっても日本の文教政策の宿題だと私は思うのです。この定数関係では、そのうちに教育水準を引き上げるという大きな問題があるから、池田内閣が人づくりを強調しておる立場からいっても、この問題について確固たる御意見をお持ちになって法案の成立について努力をされるべき責任があると思うので、荒木文部大臣見解を聞いておきたいと思います。  年次計画で四十五名というものをめどにして法案を立てられておるのでありますが、この四十五名というのは、世界の教育水準あるいは近代国家としての日本教育水準で妥当と荒木文部大臣はお考えになっておるかどうか、それをお聞きいたしたい。
  74. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 昨年でございましたか、本委員会の御質問と記憶いたしますが、同一趣旨の御質問があったように思います。そのときにお答えいたしました気持ちはいまでも持っておりますが、四十五名が終着駅とは思いません。しからば何人が理想的な終着駅であるか、それは私にはまだわかりません。イタリア等は三十名と称せられることも伝え聞いておりますが、これは非常に小規模学校が多いという特異な条件もあるやに聞きます。その他の国々の例も伝え聞きはしますものの、その実態を把握しつつ——外国の例にならうというのが終着駅の問題ではないとは思いますけれども、外国の実情等も検討を加えつつ、日本の国情、また教育的な純粋な見地に立っていかにあるべきかという専門家の意見もございましょう。それらを総合いたしまして、最終段階の理想的な状態は何だということを検討すべき課題だとはむろん思うのでございますけれども、それは私はいま申し上げられません。四十五名が終着駅でないということだけは思っております。
  75. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 四十五名は終着駅でないということは、そのとおり、私もそうでなければならぬと思うのですが、どういう基準が教育的に到達すべき数であるかということは、文部省としては速急に研究されるべきではないか。わからないというのではなくて、研究されて責任のある立場から法案の作成に当たるべきだと思う。そうでないと、財政的な理由だからと押されて、押されっぱなしになるのじゃないか。その点はどうですか。
  76. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 あるいは素案としては結論的なものがあるかとも思いますけれども、私は承知いたしておりません。そこで以上の通り申し上げたわけでありますが、財政的な見地から主として考えて四十五名というのが打ち出されておることも事実でございますけれども、御承知の通り、敗戦によってベビー・ブームが襲来して、それがようやく高等学校の段階に移行しておる。そのあとの生徒減少の状態が小中学校におとずれつつある。それをいい機会に、教育効果をあげる立場から定数を考えていくべきだという課題にいま取り組んでおるわけでありますが、かろうじていわゆるすし詰め教室を改消するという一応の計画が、五十名単位で三十八年度でやっと到着した。したがってその次の高い理想状態を一応別としますれば、当面総合的に考えあわせて、具体的目標として、主として財政的見地に立って検討します場合、説をなす者は四十名と言っておる向きもあるようでありますけれども、そういう非現実的なことは別として、現実に前進できる具体性を持った案画となれば、目見当ですけれども、四十五名が適当であろうというのが、四十五名を立案したゆえんであります。もっとさらに検討を加えつつ前進していくべき課題が残っておることは、先刻申し上げたとおりであります。
  77. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 もう少し高い識見をお聞きしたいわけなんで、五カ年計画で無理ならば十カ年計画でもいいのですけれども文部省としては自主的に、一学級の生徒数の基準はこれだ、これでなければ教育はできないのだという一つの確固たる識見を発表されることだと思います。そうでないために、経済界から言われたらそれにふらふらする、青少年非行問題になると何とかしなければならない、池田総理が閣議で何か言ったならばそれに従う。そうすると荒木文政の主体性というものはないじゃないか。そうでなくて私が申し上げているのは、その四十五名ということが終局の目標でないとするなら、やはり教育的には最低限三十名なら三十名に到達しなければならぬという識見を明らかにされて、そうして大蔵省に対しても、閣議において総理大臣に対しても、積極的に荒木文政のあり方を示すべきなんです。私はそういう識見はいまのお答えにないと思う。大体家庭教師を雇うときは一対一で、家庭教師は金持ちの家はやっているじゃないですか。三十名なら三十名が——先生一人で三十名の子供の性格形成までやろうなんということはなかなかできるものじゃないので、いまの学級編制の中では子供たちはお客さんと言われている。そうして個別指導の不可能なために、絶望感の中に非行化していくということも現実の事実としてあるわけなんで、荒木文部大臣はこういうじみなほんとうの教育水準を上げるときには、事務当局にももう少し具体的に調査を命じて、そうしてその中に立って折衝せらるべきだ。そうして現実に五カ年計画でとりあえず四十名やるのだということならわかりますけれども、そういうふうな主体的な御意見を出さないで、いまのような答弁だけでずっといかれるなら、私はいつも押されてしまうと思う。他から発言があったときにだけこれに飛びついていくということにしかならないのではないか、そういうように思うので、現実の財政問題もあるでしょう。わかりますけれども、それは年次計画の立て方だと思う。新聞を見ますと、四十五名以下にするという法案の内容のように報じておる新聞もありますし、四十五名が終局点のような法案のようにしている内容も新聞の中にはあるのですが、どちらがほんとうなのか、その辺を明確にしておいていただくことが、これからの文教政策の発展のために、国会の中で言われることが大事だからお聞きしているわけで、もう一度お聞きしたいと思う。
  78. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 四十五名が終着駅でないということでありまして、それが終着駅と書いておる新聞があるとすれば、それは間違いであります。御指摘のように、現在のようやく到達しました五十名から始まって一対一に至るまでのコースが物理的にあるわけですが、五十と一の間でどこが日本として絶対的な目標であるかということを検討することは、そう簡単じゃないと思います。終着駅にあらざる四十五名を目標にいって、まずその第一次目標に到達する。それに続くところのさらに五カ年計画がこれに継続するというのが、現実的であり足を地につけたものの考え方であろうと思います。ただ四十名だ、三十名だと言ってみること、そのこと自体は何らそこに具体化された裏づけを持った理想として表現されたものじゃない。四十五名という当面懸命に努力しておるところまで到達することを急ぐことが、日本の小中学校教育について考えらるべき具体的課題だと思う。
  79. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 そういうことですから、そういう答弁しかできないのでないように、日本教育水準はどこに持っていくかということを、教育研究所であろうが部局に命じて発表さして、そうして現段階においては五カ年計画で四十五名でもっていく法案を出すというならわかると思いますけれども、それをお出しにならないで、いまのような答弁では一歩も前進しないのではないかと申し上げているわけです。単にヨーロッパ水準にならえということではなしに、個性指導という点からいってここまで持っていくべきだ、そうして荒木文政というものが、その方針が生まれてくるのだと私は思います。そういうことをお出しにならないで、現実的でないからだめだとかなんだかんだというなら、これは文教政策にならないじゃないですか。他のほうから言われたとおりに飛びついていくだけの話になってくると思う。ヨーロッパで例をいえば、アメリカが三十人から三十五人、ソ連が三十人、イギリスは小学校で四十人、中学校で三十人、フランスは二十五人から四十人、ドイツは二十五人から三十人、スイスは二十四人、日本の場合は今度ようやく四十五名に持っていこうとしておるのであって、この辺は常識的にわかるのであり、読売新聞であろうが毎日新聞であろうが、あらゆる新聞が、この水準をせめて三十名に持っていくということは論議の余地はないのだ、しかし財政上大蔵省の問題があるので、論議はされておるけれども、大蔵省の考え方もそういうふうなことでは筋が通らぬと、大蔵省の批判を異口同音にやっていますよ。そのときに文部大臣のほうでは、明確にそういう教育水準をどこへ持っていくということをお出しにならないから押されているのじゃないか。道路計画でも、五カ年計画でこう、次の十カ年計画はこうというふうに、ほかの各省ではちゃんと発表しておるのですよ。文部省だけは、そういうことは現実的にできない、四十名というと空想である、われわれが論議をしてもそういうふうな財政当局の立場と同じようなことを文部大臣が言われると思うので、私はそうでなくて、文教行政の自主性を明らかにしてお出しになって、そうしてこの法案をとりあえずここへ持っていくという法案の説明をされるべきである。そうでなければ、われわれはそれに対して理解のある審議はできない。その点は十分に御検討願うべきだと思うのです。  ここに青少年問題協議会の事務局長の深見さんがおられるから、この機会に、いい機会だと思ってお聞きしたいのですが、五日の新聞で、青少年問題に関する協議会の発表の中に、小中学校の非行少年の問題からきたと思いますが、一学級は三十名が妥当であるという識見を出しておられる。これは文部大臣はわからぬけれども、青少年問題協議会が発表しておられるから、私は問題は協議会のほうがまだ識見がある、こう思うのです。お出しになったと思いますが、その辺のところをひとつ御報告していただきたい。
  80. 深見吉之助

    ○深見政府委員 先般の新聞紙上に、中央青少年問題協議会がそのような青少年問題についての調査、研究をして発表したというような記事が出ておるのでございますが、実は、これは中央青少年問題協議会としての方針、態度として決定したことを発表したのではございません。昭和三十六年度におきまして、青少年対策の種々なる観点につきまして学者、先生方にそれぞれの立場で御研究をお願いいたしました。その中のテーマの一つに、非行青少年の年齢低下とその対策についての研究というのを武蔵野学院の院長である医学博士の青木先生にお願いをいたしました。その報告の中に——武蔵野学院というのは御承知のとおり教護院でございますが、非行少年を専門に扱っておられる立場からいたしまして、今日の青少年の非行の現状と年齢の低下をいろいろ分析した結果、基本的に教育を徹底することが必要であろう、こういうことを報告されております。その中に、自分たちの持ったデータをもってして、一学級の定員を何名にするかということの結論を出すにはまだ至っておらない、しかしながら児童生徒の数が三十人以下になることが望ましいというようなことを書いておられるのであります。これは教護院の院長として非行青少年を専門に取り扱っておられる立場から、このような非行青少年の矯正あるいは健全育成のためにきわめて最小限度のものが必要だといったような立場から論ぜられた論文でございます。これをその他の九つの研究発表とともに資料として印刷いたしましたものの中から新聞社が取り上げまして、これを大きく報道されたわけでございます。これにつきまして、中央青少年問題協議会として、まだ研究をしあるいは意思表示をするという段階には至っておりませんし、またそういう段階になるということも現在は考えておらないのでございますが、いろいろ各方面に資料としてこれを提供いたしまして、また文部省におかれても、非行青少年という特殊な観点から研究されたこの論文については、ごらんになってくださることとわれわれ思うのでございます。これらが教育行政の上にあらわれるということは、直ちにそのとおりにわれわれ中央青少年問題協議会のほうにおいて意思表示をしたという意味ではございません。その点誤解のないようにお願いいたします。
  81. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 協議会が結論を出したというのではなくて、教護学院に研究を依頼してその報告を発表された、こういうことですね。
  82. 深見吉之助

    ○深見政府委員 こちらは機械的に研究を委嘱いたしましたそのレポートを印刷して、そして資料として提供した、こういうことであります。
  83. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 福田局長に申し上げておきますが、厚生省の児童福祉白書の中に、幼児教育日本の欠陥だ、三歳ぐらいから性格形成がきまるのであるが、日本教育において欠陥は幼児教育にある。他省とかほかのほうからどんどん出されたあと文部省あとであわてるというようなことが最近二、三ではないと思うのです。その中に荒木文政は一番大事な問題を忘れておるのではないか。日教組対策だけがいつもクローズアップしている。私は日本の恒久的な文教政策の向上のために非常に寒心にたえない。こういうようにあとで押されていくのではなしに、初中教育局あるいは調査局とどういう連絡をされるか、研究を先にされて、そして日本の幼児教育あるいは義務教育における教育水準は何カ年計画でどこへ持っていく、そういうことの正確な発表を先手を打ってされるべきだと思うので、そういう計画を直ちに着手されることを希望いたしたいのですが、御意見を伺ってみたいと思います。
  84. 福田繁

    福田政府委員 御指摘になりましたことは私ども同感でございます。できる限り将来の方向を見通していろいろ仕事を進めていくことが望ましいわけでございます。ただ定数の問題につきましては、これはいろいろ人によって考え方が違うわけでありますが、三十人がよろしいという意見もございます。また四十人がよろしいという意見もあります。またいろいろ研究の結果も、四十人から四十五人くらいが妥当だという研究の結果もございます。そういういろいろなデータを私どもは参考にいたしながらいろいろな角度の問題を解決するために、総合的に考えて進まざるを得ないと思っております。したがって、一面だけでなく、いろいろな点を考慮いたしまして、できる限りいいことは前進させるような方向で、御指摘のような必要なものは年次計画を立てながら進めていきたいと考えております。
  85. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 私の質問に満足な答弁をしていただいていない。そういう意味ではなくて、そういういろいろな説があるから、そういう説をあらゆる検討を加えて、文部省日本教育水準はここへ持っていかなければならぬということをされるのが文部省の責任ではないかということなんです。それは財政問題があるでしょうから、十カ年計画を発表して、そのうちの五カ年計画を発表して、それで法案を出すというのならわかるのですが、いま局長の言われるように、ヨーロッパ水準は三十名、しかし四十名でいいという説もある、ある国では二十五名だ、ある国はまだ四十名だ、そういういろいろな説があるので結論は出せませんというのは文部省の答弁じゃないと思うのです。そうこうしておるうちに、厚生省からも出てくる、青少年問題協議会からも出てくる。各教育団体から出てくる。それをただ、いろいろな説があるので結論は出せませんというのは文部省立場かどうか。そうでないのじゃないですか。私は、こういう機会に自主的に、ある程度の批判はあろうがなかろうが、こういう到達点を持って日本の文教行政は進めるのだということをお出しになる時期が燗熟しているのじゃないか。私の申し上げていることの答弁にはならないわけで、くどくど申し上げませんが、その点もせめて荒木文部大臣は、職を去るときは事務当局にそれだけのことを指示をされて去っていただかないと、荒木文政は何も残りませんよ。今度の場合でも、日本の場合にはただ四十五名ということをおっしゃいますけれども、授業時間数から比べてみなさい。小学校、中学の先生は二十五、六時間から三十時間授業を担当しておるので、授業時間からいっても、四十五名、五十名の児童生徒数をかかえながら、しかもヨーロッパの先先からいったら授業時間数が五時間も六時間も多い。そして養護教諭も少ない、事務職員もほとんどないと同じ、そういう中で労働過重があり、いわゆる個別指導なんてできようはずがない。そういう中から教師の不平不満も出ており、文教行政に対する不信も出ておるので、そういうための学力テストもおやりになっているのじゃないですか。だからヨーロッパ水準とおっしゃいますが、担当授業時数その他を比較すれば、ヨーロッパで三十名ならば、二十五名にしなければつじつまが合わぬような実態だと思う。だからそういうものを出して大蔵省その他、財政的にものを考えておる人に迫力のある啓蒙をしなければ押されぎみだ、こういうことなので、その点を十分に御検討を私は希望いたしたい。  それと、四十五名、四十名というのは別にして、次に定員定額の方式について、大蔵省の方では今までの実支出額方式を定員定額方式に変えないと、この法案は認めないということを主張されておるといいますが、この点の見通しはいかがですか。
  86. 福田繁

    福田政府委員 私ども考え方としては、現在の義務教育学校の教員の給与の国庫負担制度というものは、これは実績負担でございます。したがって、この国庫負担法の実績負担という、いわゆる定額でなく実額負担という点は変える考えはございません。したがって残る問題としては、標準法を上回る定員についてどうするかという問題が残るわけでございます。したがって、この点は現在先ほど申し上げましたように大蔵省といろいろ交渉の最中でございますが、これを全部一律に切ってしまうということも、地方の実情に合わないわけであります。したがって、やはり特殊な事情のあるところについては、各府県で具体的に今後の生徒、児童の減少に伴って措置できるようなゆとりを残した負担のしかたというものを考えるべきではなかろうか、こう私ども考えておるわけでございます。したがって、そういう定員についてもあまり無理な事態が起きないようにしたいという方向で現在は相談をしております。
  87. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 くどくどお聞きしないために文部大臣にお聞きしたいのですが、国が二分の一負担をする。これは憲法義務教育無償の思想からこういう制度ができておるわけで、ほんとうは全額負担をするのが理想なわけでありますが、二分の一負担している。地方自治の自主性の立場から、ある知事が道路に多く使う、あるいは義務教育、人づくりにやはりこの地域は全力を注ぐべきだという判断の中に、国では二分の一しか負担してくれないけれども、県民税をこれにつぎ込んで学級編制を四十八名にする、四十七名にするというその努力が出て、そうして現在の国の二分の一負担の予算額というものから基準よりも進歩した県が出て参ります。現実に長野県がそういうふうに出ておるわけです。そういうものを否定する定員定額というものが文教政策なのです。地方自治の立場日本の文教政策を進めていくのに無償の原則という憲法の規定があるけれども、二分の一だけを負担するという現実的な制度の中においても、教育に熱心な知事が五十名の定員という場合に四十八名にして、なお県民の了解を得て、そして学級編制を改造していくということを奨励するのが文部大臣立場だ。この点を確信を持っておいでにならないと、私は大蔵省の単純な財政的立場においてまたうやむやになってしまう、非常にやわらかい態度になると思うので、この問題について確固たる立場において定員定額などに押しつけられるならば、この法案は出さぬ方がいい。文教行政の立場からそういうふうに思うので、文部大臣の御意見をお聞きしておきたい。この一週間の範囲内においてお出しになるそうでありますからお聞きしておきたいと思います。
  88. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 実額負担のたてまえをとっております国庫負担法を改正する考えはございません。ただ幾らかそこに問題があろうと思われますことは、お説のとおり県知事で非常に教育効果をあげたいという熱意のある人がおって、当該県で他の県よりも突き進んだ定数を実施するということは望ましいことであるに異存はむろんございません。けれども一方におきましては、そういうことのできない県が当然あり得るわけでありまして、意図がありましても財政的にできない県が続出するということがあった場合に、はたして各県ごとにいわばいいことであるとは言いながらも、かって気ままにやるということにまかせておくべきかどうか。できれば一緒に前進していきたいという何度からの取り上げ方もあわせ考える必要があるのじゃないか、そういう問題があろうかとは思うわけでございまして、そういうことに関連した何がしかの調整措置はやむを得ないのじゃなかろうかとも一面思います。しかしたてまえとして実額負担の現行法を変えて定員定額などにする考えはございません。
  89. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 結論的に大臣見解を聞いたから質問を終わりたいと思いますが、説明の中に、財政的にできない県のことを考えておっしゃるのですが、実態に合わないじゃないですか、貧困な県ほど人間を教育しなければならぬ。一応の国の予算措置以上に教育を改善しようとしておるのは財政豊かな県ではなく、貧しい県ですね。そこに行政のほんとうの各地域々々に即した、金のないところで教育に注ぐということがあらわれてきておるので、国の場合、ことに文部大臣の場合においては、貧乏な県ほど教育に熱心であるという実態をもっと実感を持ってそれを重視して奨励をしていくという考えをお持ちになってもらいたいと思うのです。今の御説明は、豊かな県は学級編制を改善しておって、貧乏な県は、したいけれどもしていないという認識の上に立っての御説明だったのですが、これは反対です。子供教育は、家庭でも貧乏なほどせめて子供教育だけは何とかしたいという心理は実態の中にあります。行政的な立場も。そこで私は、定員定額ということはどんなことがあっても大蔵省の財政当局と妥協してはならない問題だと思う。そうでないと、日本の民族も国家も進歩しませんよ。現実にある程度越えておるのは数県しかないのです。どんなに捨てておいても、そういう限られた予算の範囲内で文部大臣から何だかんだと言われるのを飛び越えてやるというような識見を持って、そして抵抗を持ってやる知事さんなんて二、三人しか出てこない。そういうものを押えて、そして地ならしをして、ブレーキをかけるというようなのは、国の文教政策の立場上絶対あってはならない、こう私は思うので、その点を明確にひとつ持っていただきたい。結論的に定員定額方式は妥協しない、実額主義でいくという文部大臣お答えでありますから、これ以上申し上げませんが、われわれの前に法案が出るまでに、その点ひとつあまり審議が延びないように、いい案を出すように御努力を願いたいと思います。
  90. 床次徳二

    床次委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十五日水曜日開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時二十一分散会